衆議院

メインへスキップ




消費者団体訴訟法案要綱


第一 目的等 
一 目的
この法律は、消費者の被害の発生又は拡大を防止すること及び消費者に被害が発生した場合において適切かつ迅速な救済を行うことの重要性にかんがみ、適格消費者団体による差止請求及び損害賠償等団体訴訟に関し必要な事項を定めることにより、消費者の権利利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
二 適格消費者団体
適格消費者団体とは、第二の一の1の登録を受けた消費者団体をいう。
三 差止請求
1 適格消費者団体は、次の差止請求をすることができる。
@ 消費者契約法第12条の規定による請求
A 不当景品類及び不当表示防止法第11条の2の規定による請求
B 特定商取引に関する法律第58条の4から第58条の9までの規定による請求
2 1の@の差止請求については、消費者契約法を改正し、@及びAのほか、BからDまでについても差止請求をすることができることとする。
@ 消費者契約法第4条第1項から第3項までに規定する行為
A 消費者契約法第8条から第10条までに規定する条項を含む契約の締結の意思表示
B 民法第90条の規定により無効とされる消費者契約の条項を含む契約の意思表示
C 消費者契約の締結についてする詐欺行為又は強迫行為
D A又はBの意思表示を行うことを推薦し、又は提案する行為
 3 消費者契約法を改正し、差止請求は、当該差止請求と内容及びその相手方が同一である他の適格消費者団体を当事者とする差止請求に係る確定判決が既に存在するときであっても、することができる。
四 損害賠償等団体訴訟
 適格消費者団体は、共同の利益を有する多数の消費者の被害の救済を図るため、裁判所の許可を得て、自己の名をもって損害賠償等団体訴訟(共同の利益を有する多数の消費者のために事業者又はその事業の利益のためにする行為を行った役員に対し損害賠償請求権その他の金銭債権に係る給付を求める訴えであって、当該消費者の意思に基づくことなく提起されるものをいう。以下同じ。)の追行をすることができる。
第二 適格消費者団体 
一 適格消費者団体の登録等
1 差止請求関係業務又は損害賠償等団体訴訟関係業務(以下「消費者団体訴訟業務」という。)を行おうとする者は、消費者権利官の登録を受けなければならない。
2 消費者権利官は、1の登録の申請があったときは、3により登録を拒否する場合を除き、適格消費者団体登録簿に登録しなければならない。
3 消費者権利官は、1の登録の申請をした者が次のいずれかに該当するときは、その登録を拒否しなければならない。
@ 法人でない者
A 営利を目的とする法人
B 消費生活に関する情報の収集及び提供並びに消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の権利利益の擁護を図るための活動を行うことを主たる目的としない法人
C 定款又は業務規程が法令に適合しない法人
D その業務を行う役員の一定割合を特定の事業者の関係者が占めている法人
E この法律その他消費者の権利利益の擁護に関する法律で消費者権利院規則で定めるもの又はこれらの法律に基づく処分に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から3年を経過しない法人
F 1の登録を取り消され、その取消しの日から3年を経過しない法人
G 暴力団員等がその事業活動を支配する法人又は暴力団員等をその業務に従事させ、若しくはその業務の補助者として使用するおそれのある法人
H 政治団体
I 役員に成年被後見人、破産者で復権を得ないもの等がある法人
J 消費者団体訴訟業務を遂行するために必要と認められる消費者権利院規則で定める基準に適合する財産的基礎又は人的構成を有しない法人
4 適格消費者団体の登録の有効期間は5年とし、更新することができる。
5 1から4までのほか、変更の届出、承継、解散の届出その他適格消費者団体の登録等に関する所要の規定を設ける。
二 差止請求関係業務
差止請求権の行使に関する注意義務、消費者権利官に対する報告、消費者の被害に関する情報の取扱い、秘密保持義務、財産上の利益の受領の禁止その他差止請求関係業務に関する所要の規定を設ける。
三 損害賠償等団体訴訟関係業務
損害賠償等団体訴訟関係業務に関する注意義務、消費者権利官に対する報告、秘密保持義務、財産上の利益の受領の禁止その他損害賠償等団体訴訟関係業務に関する所要の規定を設ける。
四 経理
消費者団体訴訟業務に係る利益の処分、区分経理その他適格消費者団体の経理に関する所要の規定を設ける。
五 消費者権利官による監督
報告及び立入検査、改善命令、登録の取消しその他適格消費者団体の監督に関する所要の規定を設ける。
六 判決等に関する情報の公表
消費者権利官は、適格消費者団体からの報告を受けて、差止請求又は損害賠償等団体訴訟に関し、それぞれ判決等に関する情報を公表するものとする。
七 資金の確保
国及び地方公共団体は、適格消費者団体による消費者団体訴訟業務の実施に必要な資金の確保に努めるものとする。
八 強制執行等の制限
適格消費者団体が損害賠償等団体訴訟の確定判決に基づき弁済として受領した財産、費用の前払として受けた財産等に対しては、損害賠償等団体訴訟に関し生じた債権に基づく場合を除き、強制執行、国税滞納処分等をすることができない。

第三 差止請求に係る訴訟手続等の特例
差止請求に係る訴訟手続等に関し、書面による事前の請求、訴訟の目的の価額、管轄及び間接強制の支払額の算定について、特例を設ける。

第四 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例等
一 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例
1 訴訟の提起の方式等
(1) 損害賠償等団体訴訟の提起は、訴状に、損害賠償等団体訴訟である旨及び当該損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者の範囲を記載してする。
(2) 損害賠償等団体訴訟に係る訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。
2 訴訟の追行の許可
裁判所は、適格消費者団体が提起した損害賠償等団体訴訟が次の要件のいずれにも該当するときは、当該損害賠償等団体訴訟の追行の許可の決定をする。
@ 当該損害賠償等団体訴訟に係る訴訟の目的が、共同の利益を有する多数の消費者の有する損害賠償請求権その他の金銭債権であるとき。
A 当該損害賠償等団体訴訟の追行が、当該損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者による訴えの提起その他の方法に比して、当該対象消費者の権利の実現上有利であると認められるとき。
B 当該適格消費者団体によれば、適切に当該損害賠償等団体訴訟の追行をすることができると認められるとき。
3 許可の決定の公告
裁判所は、2の許可の決定が確定したときは、直ちに、対象消費者の範囲、除外申出期間、当該決定に係る損害賠償等団体訴訟の請求の趣旨及び原因の要旨その他所要の事項を官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法その他最高裁判所規則で定める方法で公告しなければならない。
4 除外の申出
対象消費者は、除外申出期間内に、裁判所に対して、損害賠償等団体訴訟からの除外の申出を書面によりすることができる。
5 対象消費者の範囲の変更
裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、対象消費者の範囲を変更することができる。ただし、控訴審においては、相手方の同意がある場合に限る。
6 訴訟の追行の許可の取消し
裁判所は、適格消費者団体が適切に損害賠償等団体訴訟の追行をしないときその他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、2の許可を取り消すことができる。
7 訴訟手続の中断及び受継
(1) 6による許可の取消しの決定その他の事由により、当該損害賠償等団体訴訟の追行をするすべての適格消費者団体が当該損害賠償等団体訴訟の追行をすることができなくなったときは、その訴訟手続は中断する。
(2) (1)により損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続が中断したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、中断した当該損害賠償等団体訴訟を受け継ぐべき適格消費者団体を指定するものとする。
(3) 裁判所は、(2)の指定をすることができないときは、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。
8 職権証拠調べ
裁判所は、損害賠償等団体訴訟において、職権で証拠調べをすることができる。
9 相当な損害額の認定
損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
10 訴えの取下げ等
適格消費者団体は、裁判所の許可を得なければ、損害賠償等団体訴訟に係る訴えの取下げ、請求の放棄、裁判上の和解又は上訴の取下げをすることができない。
11 確定判決の効力が及ぶ者の範囲
損害賠償等団体訴訟の確定判決は、対象消費者(4の除外の申出をした者を除く。)に対してもその効力を有する。
二 損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令に関する手続の特例
1 申立ての要件
適格消費者団体は、損害賠償等団体訴訟の追行の許可前であっても、一の2の@からBまでのいずれにも該当することを疎明して、当該損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令の申立てをすることができる。
2 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例の規定の準用
一の1の(1)及び9は、損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令に関する手続について準用する。
三 配当手続
1 裁判所による監督
配当手続に係る事件は、裁判所の監督に属する。
2 指定
適格消費者団体について、当該適格消費者団体の追行に係る損害賠償等団体訴訟において確定した損害賠償請求権その他の金銭債権の管理又は配当を適切に行っていないときその他重要な事由があるときは、裁判所は、当該適格消費者団体の有する当該損害賠償等団体訴訟に係る確定判決に基づく地位を承継すべき適格消費者団体を指定するものとする。
3 報酬等
適格消費者団体は、裁判所の許可を得て、損害賠償等団体訴訟に係る確定判決に基づき弁済として受領した財産のうちから、配当手続のため必要な費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
4 配当計画の提出
適格消費者団体は、配当を行おうとするときは、次の事項を記載した配当計画を裁判所に提出しなければならない。
@ 配当に加えるべき対象消費者の範囲
   A 確定判決に基づき弁済として受領した財産の総額
B Aのうち配当に充てることができるものの額
C 配当の基準及びその方法
D 権利の届出をすべき期間及びその方法
E 権利の確認の方法
F 権利に関する紛争の処理に関し必要な事項
G その他最高裁判所規則で定める事項
5 配当計画認可の決定等
(1) 裁判所は、提出された配当計画が次のいずれにも該当するときは、配当計画認可の決定をしなければならない。
    @ 法令及び最高裁判所規則の規定に適合するものであること。
A その内容が確定判決に基づいていること。
B その内容が公正かつ衡平であること。
(2) 裁判所は、配当計画認可の決定があったときは、配当計画等を公告しなければならない。
6 配当計画の実施等
(1) 配当計画認可の決定があったときは、適格消費者団体は、速やかに、配当計画を実施しなければならない。
(2) 適格消費者団体は、配当が終了した場合において、配当可能な金額に相当する金銭に残余があるときは、これを国庫に納付しなければならない。
(3) 適格消費者団体は、配当が終了した場合には、遅滞なく、裁判所に計算の報告をしなければならない。

第五 罰則
適格消費者団体の役職員が差止請求又は損害賠償等団体訴訟の相手方から差止請求権の不行使又は損害賠償等団体訴訟の追行をしないこと等の報酬として財産上の利益を受けた場合等について、所要の罰則を設ける。

第六 施行期日等
一 施行期日
この法律は、消費者権利院法の施行の日から施行する。ただし、第一の三の1のBに係る部分は、特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。
二 経過措置及び関係法律の整備
  この法律の施行に伴う経過措置及び関係法律の整備について所要の規定を整備する。
三 検討
 国は、この法律の施行後5年を目途として、消費者の被害の状況、適格消費者団体による差止請求及び損害賠償等団体訴訟の状況その他社会経済情勢の変化を勘案しつつ、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.