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   離島振興法の一部を改正する法律案要綱


第一 目的規定の改正                               (第一条関係)
  離島の国家的国民的役割及び離島の置かれた現状と背景をより明確にするとともに、離島の振興の目的として、人の往来及び生活に必要な物資等の輸送に要する費用が他の地域に比較して多額である状況の改善、地域間の交流の促進、居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに定住の促進について明記すること。
第二 基本理念及び国の責務規定の新設
 一 基本理念                             (第一条の二第一項関係)
   離島の振興のための施策は、離島が我が国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全、自然との触れ合いの場及び機会の提供、食料の安定的な供給等我が国及び国民の利益の保護及び増進に重要な役割を担っていることに鑑み、その役割が十分に発揮されるよう、厳しい自然的社会的条件を改善し、地域間の交流の促進、居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進が図られることを旨として講ぜられなければならないものとすること。
 二 国の責務                             (第一条の二第二項関係)
   国は、一の基本理念にのっとり、離島の振興のため必要な施策を総合的かつ積極的に策定し、及び実施する責務を有するものとすること。
第三 離島振興の実施体制の強化等
 一 主務大臣の追加                  (第三条、第四条及び第二十一条の三関係)
   離島振興基本方針及び離島振興計画に係る主務大臣について、従来の国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣のほか、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣を追加すること。
 二 国土審議会への報告                         (第二十一条の二関係)
   主務大臣(国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣)は、毎年、離島の振興に関して講じた施策について、国土審議会に報告するものとすること。
第四 離島振興基本方針及び離島振興計画に係る規定の整備
 一 離島振興基本方針関係                         (第三条第二項関係)
  1 離島振興基本方針に定める事項として、新たに次に掲げる事項を追加すること。
   (1) 雇用機会の拡充、職業能力の開発その他の就業の促進に関する基本的な事項
   (2) 介護サービスの確保等に関する基本的な事項
   (3) 自然環境の保全及び再生に関する基本的な事項
   (4) 再生可能エネルギーの利用その他のエネルギー対策に関する基本的な事項
   (5) 離島の振興に寄与する人材の確保及び育成に関する基本的な事項
  2 離島振興基本方針に定める事項の例示として、次に掲げる事項を追加すること。
   (1) 人の往来及び物資の流通(廃棄物の運搬を含む。)に要する費用の低廉化
   (2) 妊婦が健康診査を受診し、及び出産に必要な医療を受ける機会を確保するための支援
   (3) 子どもの修学の機会を確保するための支援
   (4) 地震災害(地震に伴い発生する津波等により生ずる被害を含む。)の防除その他の防災対策
 二 離島振興計画関係                    (第四条第二項から第六項まで関係)
  1 離島振興計画に定める事項について、一の離島振興基本方針に定める事項の改正に準じた改正を行うこと。
  2 その全部又は一部の区域が一の離島振興対策実施地域である市町村は、当該地域に係る離島振興計画が定められていない場合には、単独で又は共同して、都道府県に対し、当該市町村に係る離島振興計画の案を添えて、当該地域について離島振興計画を定めることを要請することができるものとし、要請があったときは、都道府県は、速やかに、当該要請に係る離島振興対策実施地域について離島振興計画を定めなければならないものとすること。
  3 市町村は、離島振興計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、その離島振興対策実施地域の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすること。
第五 離島活性化交付金等
 一 離島活性化交付金等事業計画の作成                    (第七条の二関係)
  1 都道府県は、離島活性化交付金等事業計画を作成することができるものとすること。
  2 離島活性化交付金等事業計画には、離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等で政令で定めるものに関する事項及び計画期間を記載するものとするほか、離島活性化交付金等事業計画の目標等を記載するよう努めるものとすること。
 二 交付金等の交付等                            (第七条の三関係)
  1 都道府県又は離島関係市町村等(その全部又は一部の区域が離島振興対策実施地域である市町村その他の者をいう。以下同じ。)が2の交付金等を充てて離島活性化交付金等事業計画に基づく事業等の実施をしようとするときは、当該都道府県は、当該離島活性化交付金等事業計画を事業等所管大臣に提出しなければならないものとすること。
  2 国は、1の都道府県又は離島関係市町村等に対し、1の事業等の実施に要する経費に充てるため、それぞれの事業等ごとに、交付金等の交付を行うことができるものとすること。
 三 離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等の公表            (第七条の四関係)
   国は、毎年度、二の1の事業等及びその他の離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等で当該年度に実施するものについて、その内容を取りまとめ、公表するものとすること。
第六 財政上及び税制上の措置等
 一 財政上の措置等                               (第六条関係)
  1 国は、第二の一の基本理念にのっとり、毎年度、予算で定めるところにより、離島振興計画の円滑な実施その他の離島振興対策実施地域の振興に必要な財政上の措置等を講ずるものとすること。
  2 国及び地方公共団体が離島振興計画に基づく公共事業の実施に要する経費について予算に計上する際の離島振興計画の実施に係る予算の明確化についての特別の配慮について定めること。
 二 税制上の措置等                              (第十九条関係)
   国は、離島について、人の往来及び生活に必要な物資等の輸送に要する費用が他の地域に比較して多額である状況を改善するとともに、産業基盤及び生活環境等に関する地域格差の是正を図り、並びにその地理的及び自然的特性を生かした振興を図るため、離島の振興のための特別の措置を講ずることによって、離島の自立的発展を促進し、島民の生活の安定及び福祉の向上を図るとともに、地域間の交流を促進し、もって居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進を図ること等としている第一の目的の達成に資するため、租税特別措置法等の定めるところにより、離島振興対策実施地域の振興に必要な税制上の措置等を講ずるものとすること。
 三 地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置の拡充              (第二十条関係)
   地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置の対象業種に情報サービス業その他総務省令で定める事業を追加すること。
第七 基本的施策の充実
 一 医療の確保等                      (第十条第七項から第九項まで関係)
  1 国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域に居住する妊婦が健康診査を受診し、及び出産に必要な医療を受ける機会を確保するため、妊婦が居住する離島に妊婦の健康診査又は出産に係る保健医療サービスを提供する病院、診療所等が設置されていないことにより当該離島の区域外の病院、診療所等に健康診査の受診又は出産のために必要な通院又は入院をしなければならない場合における当該通院又は入院に対する支援について適切な配慮をするものとすること。
  2 都道府県は、医療計画を作成するに当たっては、離島振興対策実施地域における医療の特殊事情に鑑み、当該地域において医師等の確保、病床の確保等により必要な医療が確保されるよう適切な配慮をするものとすること。
  3 その他離島振興対策実施地域における医療の充実に関する規定を整備すること。
 二 介護サービスの確保等                          (第十条の二関係)
   国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における介護サービスの確保及び充実を図るため、老人福祉法第五条の二第一項に規定する老人居宅生活支援事業に係る介護サービスの提供、介護サービスに従事する者の確保、介護施設の整備、提供される介護サービスの内容の充実等について適切な配慮をするものとすること。
 三 保健医療サービス等を受けるための住民負担の軽減            (第十一条の二関係)
   国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における保健医療サービス、介護サービス、高齢者福祉サービス及び保育サービスを受けるための条件の他の地域との格差の是正を図るため、離島振興対策実施地域の住民がこれらのサービスを受けるための住民負担の軽減について適切な配慮をするものとすること。
 四 交通の確保等                               (第十二条関係)
   離島振興対策実施地域における人の往来及び物資の流通に関する条件の他の地域との格差の是正を図る旨を規定するとともに、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域に係る海上、航空及び陸上の交通について、人の往来及び物資の流通に要する費用の低廉化に資するための施策の充実に特別の配慮をするものとすること。
 五 情報の流通の円滑化及び通信体系の充実                   (第十三条関係)
   離島振興対策実施地域における情報通信技術の利用の機会の他の地域との格差の是正を図る旨を規定すること。
 六 農林水産業その他の産業の振興               (第十四条第二項及び第三項関係)
  1 国及び地方公共団体は、離島における水産業の重要性に鑑み、離島振興対策実施地域の漁業者がその周辺の海域の漁場において安定的に水産業を営むことができるよう、水産動植物の生育環境の保全及び改善について適切な配慮をするものとすること。
  2 現行法に規定する事項及び1のほか、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域の特性に即した産業の振興を図るため、生産性の向上、産業の振興に寄与する人材の育成及び確保、起業を志望する者に対する支援、先端的な技術の導入並びに他の産業との連携の推進について適切な配慮をするものとすること。
 七 就業の促進                              (第十四条の二関係)
   国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域の住民及び離島振興対策実施地域へ移住しようとする者の離島振興対策実施地域における就業の促進を図るため、良好な雇用機会の拡充並びに実践的な職業能力の開発及び向上のための施策の充実について適切な配慮をするものとすること。
 八 生活環境の整備                            (第十四条の三関係)
   国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における定住の促進に資するため、住宅及び水の確保、汚水及び廃棄物の処理その他の快適な生活環境の確保を図るための施策の充実について適切な配慮をするものとすること。
 九 教育の充実                        (第十五条第一項及び第二項関係)
  1 国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における教育の特殊事情に鑑み、子どもの修学の機会の確保に資するため、離島の区域(当該離島の区域が二以上の市町村の区域にわたる場合にあっては、当該離島のうち一の市町村の区域に属する区域。以下同じ。)内に高等学校等が設置されていないことにより当該離島の区域内から当該離島の区域外に所在する高等学校等へ通学する場合又は当該離島の区域外に居住して当該高等学校等へ通学する場合における当該通学又は居住に対する支援について適切な配慮をするものとすること。
  2 国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における教育の特殊事情に鑑み、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の規定による公立高等学校等を設置する地方公共団体ごとの教員及び職員の定員の算定並びに離島振興対策実施地域に所在する公立の高等学校等に勤務する教員及び職員の定員の決定について特別の配慮をするものとすること。
 十 地域文化の振興                              (第十六条関係)
   離島振興対策実施地域において伝承されてきた文化的所産の多様性を強調するとともに、国及び地方公共団体は、その担い手の育成について適切な措置が講ぜられるよう努めるものとすること。
 十一 観光の振興及び地域間交流の促進                     (第十七条関係)
   離島と他の地域との間の交流の拡大について規定するとともに、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における観光の振興について適切な配慮をするものとすること。
 十二 自然環境の保全及び再生                       (第十七条の二関係)
   国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域及びその周辺の海域における自然環境の保全及び再生に資するため、海岸漂着物等の処理並びに生態系に係る被害を及ぼすおそれのある外来生物及び伝染病の防除及び防疫その他の生態系の維持又は回復について適切な配慮をするものとすること。
 十三 エネルギー対策の推進                        (第十七条の三関係)
  1 国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域において、その自然的特性を生かしたエネルギーを利用することが、その経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及びエネルギーの供給に係る環境への負荷の低減を図る上で重要であることに鑑み、再生可能エネルギーの利用の推進について適切な配慮をするものとすること。
  2 1のほか、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域におけるエネルギーの利用に関する条件の他の地域との格差の是正、島民の生活の利便性の向上、産業の振興等を図るため、離島振興対策実施地域における石油製品の価格の低廉化その他のエネルギーに関する対策の推進について適切な配慮をするものとすること。
 十四 防災対策の推進                           (第十七条の四関係)
   国及び地方公共団体は、離島が四方を海等に囲まれている等厳しい自然条件の下にあることを踏まえ、災害を防除し、及び災害が発生した場合において島民が孤立することを防止するため、離島振興対策実施地域において、国土保全施設、避難施設、備蓄倉庫、防災行政無線設備、人工衛星を利用した通信設備その他の施設及び設備の整備、防災のための住居の集団的移転の促進、防災上必要な教育及び訓練の実施、被災者の救難、救助その他の保護を迅速かつ的確に実施するための体制の整備及び関係行政機関の連携の強化その他の防災対策の推進について適切な配慮をするものとすること。
第八 離島特別区域制度の整備                        (第十八条の二関係)
  政府は、地域における創意工夫を生かした離島の振興を図るため、当該離島振興対策実施地域内に区域を限って規制の特例措置その他の特別措置を適用する制度の創設について総合的に検討を加え、必要な措置を講ずるものとすること。
第九 期限の延長                               (附則第二項関係)
  離島振興法の有効期限を平成三十五年三月三十一日まで十年間延長すること。
第十 施行期日等
 一 施行期日
   この法律は、平成二十五年四月一日から施行すること。ただし、第九及びこれに伴う規定の整備並びに二及び四については、公布の日から施行すること。
 二 財源の確保に係る検討
   離島の振興のための施策を実施するために必要な財源の確保については、離島が我が国及び国民の利益の保護及び増進に重要な役割を担っていることに鑑み、その安定化を図る観点から検討が加えられ、その結果に基づいて、必要な措置が講ぜられるものとすること。
 三 防災機能の強化を図るための財政上の措置等
   政府は、離島の防災機能の強化を図るため、この法律の施行後早急に、離島振興計画に基づく海岸、道路、港湾、漁港等の整備に係る事業について、離島振興対策実施地域に係る地方公共団体の財政負担の軽減を図りつつ、強力に推進する仕組みを整え、所要の財政上の措置等を講ずるものとすること。
 四 特に重要な役割を担う離島の保全及び振興に関する検討
   国は、速やかに、我が国の領域、排他的経済水域等の保全等我が国の安全並びに海洋資源の確保及び利用を図る上で特に重要な離島について、その保全及び振興に関する特別の措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
 五 医療法の一部改正
   第七の一の2に係る規定の新設に伴い、医療計画を作成するに当たっての離島振興対策実施地域における必要な医療の確保についての配慮に関する規定を新設すること。
 六 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の一部改正
   第七の九の2に係る規定の新設に伴い、離島振興対策実施地域に高等学校等が設置されている場合における公立高等学校の教職員定数の加算に関する規定を新設すること。
 七 経過措置等
   所要の経過措置を定めるとともに、所要の規定を整備すること。

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