介護従事者等の人材確保に関する特別措置法案要綱
第一 目的
この法律は、加齢により心身の機能が低下した場合等に高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護従事者等が重要な役割を担っていることに鑑み、現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護従事者等の賃金の向上に資するよう特別の措置を定めることにより、介護を担う優れた人材を確保し、もって介護サービスの水準の向上を図ることを目的とすること。 (第一条関係)
第二 定義
一 この法律において「介護事業者」とは、指定居宅サービス事業者、指定地域密着型サービス事業者、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設、指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者及び指定介護予防支援事業者をいうものとすること。
二 この法律において「介護従事者等」とは、介護事業者の業務に従事する労働者をいうものとすること。
(第二条関係)
第三 優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付
一 保険給付
1 介護保険は、介護保険法第十八条各号に掲げる保険給付のほか、この法律の定めるところにより、優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付を行うものとすること。
2 1の優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための保険給付は、介護給付(居宅介護住宅改修費の支給を除く。)及び予防給付(介護予防住宅改修費の支給を除く。)と併せて行う三2の認定を受けた介護事業者(以下「認定介護事業者」という。)に対する六1に よる加算介護報酬の支給とするものとすること。
(第三条関係)
二 認定基準額
厚生労働大臣は、事業の種類及び地域ごとに、介護従事者等の賃金の当該地域における平均額を勘案し、三2の認定を受けるための基準となる介護従事者等の賃金の事業所における平均額(以下「認定基準額」という。)を定めるものとすること。 (第四条関係)
三 認定
1 介護事業者は、事業所ごとに、都道府県知事(指定地域密着型サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者及び指定介護予防支援事業者にあっては、市町村長(特別区にあっては、区長)。以下同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより算出した 介護従事者等の賃金の見込額の当該事業所における平均額が認定基準額を下回らない旨の認定を申請することができるものとすること。
2 都道府県知事は、1の認定の申請があった場合において、1の介護従事者等の賃金の見込額の当該事業所における平均額が認定基準額を下回らないと認めるときは、その認定をするものとすること。
3 認定介護事業者は、2の認定に係る事業所(以下「認定事業所」という。)内の公衆の見やすい場所に、2の認定を受けた旨の表示をしなければならないものとすること。
4 認定介護事業者は、認定事業所につき、介護従事者等の賃金の平均額が認定基準額を下回り、又は下回る見込みとなったときは、都道府県知事に、2の認定を取り消すべき旨の申出をすることができるものとすること。
(第五条関係)
四 認定の取消し
都道府県知事は、加算介護報酬の請求に関し不正があったとき、不正の手段により三2の認定を受けたとき等には、三2の認定を取り消すことができるものとすること。 (第七条関係)
五 加算介護報酬に関する基準
厚生労働大臣は、介護を担う優れた人材が確保されるようにするため、高齢者等が安心して暮らすことのできる社会の実現に介護従事者等が重要な役割を担っていること並びに介護従事者等が従事する業務が身体的及び精神的負担の大きいものであることを踏まえるとともに、他の業種に従事する労働者の地域における平均的な賃金水準を勘案し、事業の種類及び地域ごとに、加算介護報酬に関する基準を定めるものとすること。 (第八条関係)
六 加算介護報酬の支給
1 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)は、認定介護事業者に対し、加算介護報酬を支給するものとすること。
2 加算介護報酬の額は、五の基準により算定した額とするものとすること。
3 市町村は、認定介護事業者から加算介護報酬の請求があったときは、五の基準に照らして審査した上、支払うものとすること。
(第九条関係)
七 報告等
1 認定介護事業者は、毎事業年度終了後、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業年度に介護従事者等に対して支払った賃金の認定事業所における平均額を算出し、都道府県知事に報告しなければならないものとすること。
2 都道府県知事は、加算介護報酬の支給に関して必要があると認めるときは、認定介護事業者若しくは認定介護事業者であった者若しくは当該認定介護事業者の従業者であった者(以下「認定介護事業者であった者等」という。)に対し、報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、認定介護事業者若しくは当該認定介護事業者の従業者若しくは認定介護事業者であった者等に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは認定介護事業者若しくは認定介護事業者であった者の事業所、事務所その他その業務に関係のある場所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができるものとすること。
(第十条及び第十一条関係)
八 勧告
都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより算出した介護従事者等に対して支払われた賃金の認定事業所における平均額が認定基準額を下回っていると認める場合には、当該認定介護事業者に対してその理由を説明するよう求め、正当な理由がないと認めるときは、必要な措置をとるべき旨を勧告することができるものとすること。 (第十二条関係)
九 費用の負担
国は、市町村に対し、加算介護報酬の支給に要する費用を負担するものとすること。 (第十三条関係)
第四 介護従事者等の労働条件の改善
介護事業者は、介護を担う優れた人材を確保することにより質の高い介護サービスを提供することができるよう、介護従事者等の賃金の引上げ、労働時間の短縮その他の労働条件の改善に努めなければならないものとすること。 (第十五条関係)
第五 その他
一 施行期日等
1 この法律は、平成二十五年十月一日から施行すること。
2 この法律は、介護保険制度について見直しが行われ、介護を担う優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとすること。
3 第三の六1は、この法律の施行の日以後に行われた福祉サービス又は保健医療サービスについて適用するものとすること。
(附則関係)
二 その他所要の規定を設けるものとすること。