衆議院

メインへスキップ




琵琶湖の保全及び再生に関する特別措置法案要綱


第一 目的
  この法律は、琵琶湖が、我が国最大の湖であり、近畿圏において治水上又は利水上重要な役割を担っているのみならず、多数の固有種が存在する等豊かな生態系を有し、貴重な自然環境及び水産資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであるにもかかわらず、その保全及び再生を図ることが困難な状況にあることに鑑み、琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針を定めるとともに、琵琶湖の保全及び再生に関し実施すべき施策に関する計画を策定し、その実施を推進する等の特別の措置を講ずることにより、国民的資産である琵琶湖を健全で恵み豊かな湖として保全及び再生を図り、もって近畿圏における住民の健康な生活環境の保持その他の近畿圏の健全な発展に寄与することを目的とすること。                                   (第一条関係)
第二 基本方針
 一 主務大臣は、琵琶湖の保全及び再生に関し実施すべき施策(以下「琵琶湖保全再生施策」という。)を推進するため、琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針(以下単に「基本方針」という。)を定めなければならないこと。
 二 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとすること。
  1 琵琶湖の保全及び再生に関する基本的な指針
  2 琵琶湖保全再生施策に関する基本的な事項
  3 その他琵琶湖の保全及び再生に関する重要事項
 三 基本方針は、琵琶湖の特性及び琵琶湖をめぐる状況の変化を踏まえつつ、関係地方公共団体が多様な主体の参加と協力を得て策定し、及び実施する琵琶湖保全再生施策について国が必要な支援を行うことを旨として、長期的な観点から、自然環境の保全及び再生を直接の目的とする施策を講ずるのみならず、琵琶湖の環境との調和に配慮して、土地利用、産業の振興、治水及び利水その他自然環境の保全及び再生に関係する分野の施策を講ずることを通じて、総合的かつ効果的に琵琶湖保全再生施策の推進を図ることを基本理念として定めるものとすること。
 四 主務大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、関係府県の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議しなければならないこと。
 五 主務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこと。
 六 四及び五は、基本方針の変更について準用すること。               (第二条関係)
第三 琵琶湖保全再生計画
 一 滋賀県は、基本方針を勘案して、琵琶湖保全再生施策に関する計画(以下「琵琶湖保全再生計画」という。)を定めることができること。
 二 琵琶湖保全再生計画においては、次に掲げる事項を定めるものとすること。
  1 計画期間
  2 琵琶湖の保全及び再生に関する方針
  3 国からの財政的援助を含めた琵琶湖保全再生計画を実施するために必要な財源の確保の見通し
  4 琵琶湖の保全及び再生のための次に掲げる事項
   (一) 自然環境の保全及び再生に関する次に掲げる事項
    (1) 水の安全の確保のための有害物質による汚染の防止に関する事項
    (2) 水質の改善に関する事項
    (3) 水源の涵養に関する事項
    (4) 生態系の保全及び再生に関する事項
    (5) 景観の保全及び整備に関する事項
   (二) 農林水産業、観光、交通その他の産業の振興に関する事項
   (三) 治水及び利水に関する事項
   (四) 琵琶湖保全再生施策に取り組む主体その他琵琶湖保全再生施策の推進体制の整備に関する次に掲げる事項
    (1) 住民、事業者、特定非営利活動法人等の多様な主体による協働の推進に関する事項
    (2) 琵琶湖保全再生施策の推進体制に関する事項
   (五) 琵琶湖保全再生施策の実施に資する次に掲げる事項
    (1) 調査研究に関する事項
    (2) 体験学習を通じた教育その他の教育の充実に関する事項
  5 その他琵琶湖の保全及び再生に関し必要な事項
 三 琵琶湖保全再生計画は、国土形成計画法第二条第一項に規定する国土形成計画、近畿圏整備法第二条第二項に規定する近畿圏整備計画、湖沼水質保全特別措置法第四条第一項に規定する湖沼水質保全計画その他の法律の規定による計画であって琵琶湖に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならないこと。
 四 滋賀県は、琵琶湖保全再生計画を定めようとするときは、あらかじめ、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、関係地方公共団体の意見を聴き、及び主務大臣に協議しなければならないこと。
 五 滋賀県は、琵琶湖保全再生計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係地方公共団体に通知しなければならないこと。
 六 四及び五は、琵琶湖保全再生計画の変更について準用すること。          (第三条関係)
第四 財政上の措置
  国は、琵琶湖保全再生計画に基づく事業が円滑に実施されるよう、その実施に要する経費について必要な財政上の措置を講ずるものとすること。                     (第四条関係)
第五 地方債についての配慮
  関係地方公共団体が琵琶湖保全再生計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政事情が許す限り、特別の配慮をするものとすること。                           (第五条関係)
第六 資金の確保等
  国は、琵琶湖保全再生計画に基づく事業の実施に関し、必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならないこと。                            (第六条関係)
第七 水の安全の確保のための措置
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の水の安全を確保することが近畿圏における住民の生活及び事業活動にとって極めて重要であることに鑑み、有害物質による汚染により琵琶湖の水質に重大な影響が及ぶことを防止するために必要な措置を講ずるものとすること。              (第七条関係)
第八 水質の改善のための措置
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の水質を改善するため、下水道、浄化槽、農業集落排水施設、農業用用排水施設等の排水処理施設の整備及び管理その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第八条関係)
第九 水源の涵養のための措置
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の水源の涵養を図るため、森林の保全及び整備その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                        (第九条関係)
第十 水位の調整のための措置
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の水位を適正に保つため、関係者により構成される協議会の設置等による関係者相互間の連携の確保その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。(第十条関係)
第十一 湖辺の自然環境の保全及び改善等
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖における水質の改善並びに生態系の保全及び再生を図るため、ヨシ群落及び内湖(琵琶湖と水路によってつながっている琵琶湖特有の湖沼をいう。)の保全及び再生等の湖辺の自然環境の保全及び再生その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。  (第十一条関係)
第十二 海外から導入された動植物による被害の防止
 一 国は、琵琶湖におけるオオクチバス、コクチバス、ブルーギルその他の海外から我が国に導入された動植物による生態系及び漁業に係る被害の状況に鑑み、その被害を防止するため、これらの捕獲等の防除が適確に行われるよう、これを行う者に対し必要な支援をするものとすること。
 二 関係地方公共団体は、琵琶湖におけるオオクチバス、コクチバス、ブルーギルその他の海外から我が国に導入され、生態系及び漁業に被害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある動植物の防除を行うよう努めるとともに、その被害の防止に関する啓発活動その他その被害の防止に必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                              (第十二条関係)
第十三 カワウによる被害の防止
 一 国は、琵琶湖におけるカワウによる著しい漁業及び植生に係る被害の状況に鑑み、その被害を防止するため、広域的な連携のための協議会を設置するとともに、関係地方公共団体に対し、防除の有効な実施に関する技術的な助言、情報の提供その他必要な支援をするものとすること。
 二 国及び関係地方公共団体は、琵琶湖におけるカワウによる被害の防止及びその被害に係る自然環境の回復のため、カワウの防除等による個体数の管理、森林の保全及び整備その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                           (第十三条関係)
第十四 景観の保全及び整備
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖が歴史的な景勝地として国民の貴重な財産であることに鑑み、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その景観の保全及び整備のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                            (第十四条関係)
第十五 水草の除去等
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖における湖底の底質の保全及び改善、悪臭の防止等による生活環境の改善、漁業環境の改善並びに船舶の航行の安全の確保のため、水草の除去、湖岸に漂着したごみ等の処理、湖底の耕うん、湖底の底質の保全及び改善等に資する水産動物の種苗の放流その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                         (第十五条関係)
第十六 環境に配慮した農業の普及等
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の保全及び再生に資する農業の振興を図るため、環境に配慮した農業の普及、多くの生物を育む水田の整備に対する支援その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                                     (第十六条関係)
第十七 水産資源の適切な保存及び管理等
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の環境と調和のとれた持続的な漁業生産活動の振興を図るため、琵琶湖における水産資源の適切な保存及び管理のための措置、水産動物の種苗の放流、漁場の保全及び整備その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。              (第十七条関係)
第十八 エコツーリズムの推進等
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の観光の振興を図るため、エコツーリズムの推進その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                      (第十八条関係)
第十九 湖上交通の活性化
  国及び関係地方公共団体は、琵琶湖への関心を高めるとともに、琵琶湖周辺の環境負荷の軽減、災害時における旅客又は貨物の輸送の確保等を図るため、湖上交通の活性化のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                             (第十九条関係)
第二十 その他の産業の振興のための措置
  国及び関係地方公共団体は、第十六から第十九までに定めるもののほか、琵琶湖の環境と調和のとれた産業の振興のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。        (第二十条関係)
第二十一 治水及び利水
  国及び地方公共団体は、琵琶湖及びその周辺の地域において講ぜられる治水及び利水に関する施策が、治水及び利水の目的を十分に果たし、かつ、琵琶湖の環境と調和したものとなるよう、必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                         (第二十一条関係)
第二十二 多様な主体の協働
  国及び関係地方公共団体は、個人、事業者、特定非営利活動法人等の多様な主体が協働して琵琶湖保全再生施策に取り組むことを促進するため、これらの者が琵琶湖保全再生施策に参画することができる機会の提供、これらの者の間の交流の促進その他必要な措置を積極的に講ずるものとすること。
(第二十二条関係)
第二十三 関係者の協力
  主務大臣、関係行政機関の長、関係地方公共団体、関係事業者等は、琵琶湖保全再生計画の実施に関し、相互に連携を図りながら協力しなければならないこと。              (第二十三条関係)
第二十四 調査研究
 一 国は、琵琶湖の自然環境の状況を適切に把握し、琵琶湖保全再生施策の実施の基礎とするため、水質の汚濁の原因、貧酸素水塊の発生機構、カワウの個体数の管理の手法、水草の生態及び損なわれた生態系の状況に関する調査その他の琵琶湖の自然環境に関する調査を行うとともに、その結果を公表するものとすること。
 二 関係地方公共団体は、国との連携を図りつつ、琵琶湖の自然環境に関する調査を行うとともに、その結果を公表するよう努めるものとすること。
 三 国及び関係地方公共団体は、一及び二の調査の結果を踏まえ、水質の浄化、生態系の保全及び再生等の琵琶湖の自然環境の保全及び再生に関する調査研究の推進並びにその成果の普及等の措置を講ずるよう努めるものとすること。                         (第二十四条関係)
第二十五 教育の充実等
 一 国及び関係地方公共団体は、農業体験、魚を学ぶ体験学習、自然観察会その他の自然を観察する機会の充実、エコツーリズムの推進等を通じて、国民に対する琵琶湖の自然環境に関する教育を充実させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
 二 国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の保全及び再生の重要性についての国民の理解と関心を深めるよう、一の措置のほか、琵琶湖の保全及び再生に関する広報活動その他の普及啓発、琵琶湖の環境の保全及び再生に関する教育及び学習の振興、琵琶湖の特性を生かした観光の振興その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                        (第二十五条関係)
第二十六 琵琶湖の日
 一 琵琶湖の保全及び再生に対する国民の意識を高めるため、琵琶湖の日を設けること。
 二 琵琶湖の日は、七月一日とすること。
 三 国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとすること。                              (第二十六条関係)
第二十七 資料の作成及び公表
  政府は、琵琶湖の保全及び再生の状況並びに政府が琵琶湖の保全及び再生に関して講じた施策に関する資料を作成し、適時に、かつ、適切な方法により公表しなければならないこと。  (第二十七条関係)
第二十八 主務大臣
  この法律における主務大臣は、総務大臣、農林水産大臣、国土交通大臣、環境大臣その他の政令で定める大臣とすること。                             (第二十八条関係)
第二十九 施行期日等
 一 この法律は、公布の日から施行すること。
 二 この法律については、この法律の施行の日から五年以内に、この法律の施行の状況を踏まえ、必要な見直しが行われるものとすること。                         (附則関係)

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.