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農業者戸別所得補償法案要綱

第一 目的
  この法律は、農業の有する食料その他の農産物の供給の機能の重要性に鑑み、米穀、麦その他の重要な農産物の生産を行う農業者に対し、その農業所得を補償するための交付金を交付する等の措置を講ずることにより、農業経営の安定及び農業生産力の確保を図り、もって食料自給率の向上に寄与し、あわせて多面的機能(食料・農業・農村基本法第三条に規定する多面的機能をいう。)の維持に資することを目的とすること。
(第1条関係)

第二 定義
 一 この法律において「農業者」とは、次に掲げる者をいうこと。
  1 農産物の販売を目的として農業を営む者であって農林水産省令で定める要件に該当するもの
  2 委託を受けて農作業を行う組織であって農林水産省令で定める要件に該当するもの
 二 この法律において「畑作物」とは、麦、大豆、てん菜、でん粉の製造の用に供するばれいしょ、そば、なたねその他の農産物であって、次のいずれにも該当するもののうち政令で定めるものをいうこと。
  1 食料自給率の向上を図る上で国民の食生活上特に重要なもの
  2 1に該当する他の農産物と組み合わせた生産が広く行われているもの
  3 標準的な生産費が標準的な販売価格を超えると認められるもの
 三 この法律において「水田活用作物」とは、水田において生産される農産物であって主食用米(主食用として生産される米穀をいう。以下同じ。)以外のもののうち、水田における生産が広く行われ、かつ、食料自給率又は飼料の自給度の向上を図る上で特に重要なものとして政令で定めるものをいうこと。
(第2条関係)

第三 畑作物の生産を行う農業者の農業所得を補償するための交付金(畑作物所得補償交付金)の交付
 一 政府は、毎年度、予算の範囲内において、畑作物の生産を行う農業者の農業所得を補償し、畑作物の安定的な生産を確保するため、当該農業者に対し、次に掲げる交付金を交付するものとすること。
  1 畑作物の生産面積に応じて交付する交付金
  2 畑作物の品質及び生産量に応じて交付する交付金
 二 一の1の交付金の金額は、農業者ごとに、畑作物についての種類別の面積当たりの単価に、その者の当該年度における当該畑作物の種類別の生産面積をそれぞれ乗じて得た金額を合算した金額とすること。
 三 一の2の交付金の金額は、農業者ごとに、畑作物についての種類別及び品質の区分別の数量当たりの単価に、その者の当該年度における当該畑作物の種類別及び品質の区分別の生産量をそれぞれ乗じて得た金額を合算した金額とすること。
 四 各年度において、一の1の交付金の交付を受けた農業者に対して一の2の交付金を交付する場合においては、畑作物の種類ごとに、三により算出した金額から、二により算出した金額を控除して交付するものとすること。
 五 二及び三の単価は、一の1及び2の交付金の交付により畑作物の生産に要する標準的な費用の額と当該畑作物の販売による標準的な収入の額との差額の補を図ることを旨とし、畑作物の種類別の標準的な生産費、販売価格及び単位面積当たりの収穫量を考慮して、農林水産大臣が定めるものとすること。
 六 農林水産大臣は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、二又は三の単価を改定することができること。
 七 農林水産大臣は、二又は三の単価を定め、又は改定しようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならないこと。
 八 農林水産大臣は、二又は三の単価を定め、又は改定したときは、遅滞なく、これを告示するものとすること。
(第3条関係)

第四 水田活用作物の生産を行う農業者の農業所得を補償するための交付金(水田活用所得補償交付金)の交付
 一 政府は、毎年度、予算の範囲内において、水田活用作物の生産を行う農業者の農業所得を補償し、水田の有効活用を図るため、当該農業者に対し、その者の水田活用作物の生産面積に応じて交付金を交付するものとすること。
 二 一の交付金の金額は、農業者ごとに、水田活用作物についての種類別の面積当たりの単価に、その者の当該年度における当該水田活用作物の種類別の生産面積をそれぞれ乗じて得た金額を合算した金額とすること。
 三 二の単価は、一の交付金の交付により主食用米に係る標準的な所得の額と水田活用作物に係る標準的な所得の額との差額の補を図ることを旨とし、水田活用作物の種類別の標準的な収入及び費用の額を考慮して、農林水産大臣が定めるものとすること。
 四 政府は、一の交付金のほか、毎年度、予算の範囲内において、水田の有効活用及び地域の農業の振興を図るため、主食用米以外の農産物のうち農林水産大臣が都道府県知事の意見を聴いて指定するもの(以下「地域作物」という。)の生産を行う農業者に対し、地域作物の生産面積に応じて交付金を交付することができること。
 五 四の交付金の金額は、農業者ごとに、地域作物についての種類別の面積当たりの単価に、その者の当該年度における当該地域作物の種類別の生産面積をそれぞれ乗じて得た金額を合算した金額とすること。
 六 五の単価は、水田を有効活用して地域作物の生産の振興を図ることを旨とし、地域の特性を考慮しつつ、農林水産大臣が都道府県知事の意見を聴いて定めるものとすること。
 七 農林水産大臣は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、二又は五の単価を改定することができること。
 八 第三の七は、二又は五の単価を定め、又は改定しようとする場合について準用すること。
 九 第三の八は、二又は五の単価を定め、又は改定した場合について準用すること。
(第4条関係)

第五 生産調整方針に従って主食用米の生産を行う農業者の農業所得を補償するための交付金(主食用米所得補償交付金)の交付
 一 政府は、毎年度、予算の範囲内において、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律第五条第一項の認定に係る生産調整方針に従って主食用米の生産を行う農業者の農業所得を補償し、主食用米の安定的な生産を確保するため、当該農業者に対し、その者の主食用米の生産面積(主食用米の生産及び販売の状況等の農業者の農業経営に関する事情を勘案して農林水産省令で定める面積を除く。二において同じ。)に応じて交付金を交付するものとすること。
 二 一の交付金の金額は、農業者ごとに、主食用米についての面積当たりの単価に、その者の当該年度における主食用米の生産面積を乗じて得た金額とすること。
 三 二の単価は、一の交付金の交付により主食用米の生産に要する標準的な費用の額と主食用米の販売による標準的な収入の額との差額の補を図ることを旨とし、主食用米の標準的な生産費、販売価格及び単位面積当たりの収穫量を考慮して、農林水産大臣が定めるものとすること。
 四 農林水産大臣は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、二の単価を改定することができること。
 五 第三の七は、二の単価を定め、又は改定しようとする場合について準用すること。
 六 第三の八は、二の単価を定め、又は改定した場合について準用すること。
(第5条関係)

第六 収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するための交付金(変動補交付金)の交付
 一 政府は、毎年度、予算の範囲内において、当該年度の前年度における主食用米及び畑作物のうち政令で定めるもの(第六において「対象農産物」という。)の種類別の収入の額として農林水産省令で定めるところにより農業者ごとに算出した額(二において「前年度種類別収入額」という。)が、対象農産物の種類別の標準的な収入の額として農林水産省令で定めるところにより農業者ごとに算出した額(二において「標準的種類別収入額」という。)を下回った場合には、これによる農業者の農業経営に及ぼす影響を緩和するため、当該農業者(収入の減少がその経営に及ぼす影響を緩和するための積立金であってその額その他の事項が農林水産省令で定める基準に適合するものを積み立てているものに限る。)に対し、交付金を交付するものとすること。
 二 一の交付金の金額は、農業者ごとに、標準的種類別収入額と前年度種類別収入額との差額、当該差額の発生がその農業経営に及ぼす影響及び収入の減少に備えて行われる取組の状況を考慮して対象農産物の種類別に農林水産省令で定めるところにより算定した金額とすること。
 三 農林水産大臣は、二の農林水産省令を制定し、又は改正しようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならないこと。
(第6条関係)

第七 加算等交付金の交付
  政府は、毎年度、予算の範囲内において、農業経営基盤の強化、農地の農業上の利用の増進その他の政令で定める取組を行う農業者に対し、農林水産省令で定めるところにより算定した加算等交付金を交付するものとすること。
(第7条関係)
第八 調査
  農林水産大臣は、農産物の生産及び販売の状況その他必要な事項について定期的に調査をし、その結果をこの法律の適正な運用に活用するものとすること。
(第8条関係)

第九 地域農業協議会
  地方公共団体及び農業に関する団体その他の地域の関係者は、地域作物の生産の振興その他地域におけるこの法律に基づく措置の円滑な実施に資する事項について協議するため、地域農業協議会を組織することができること。
(第9条関係)

第十 交付金の交付の申請
  第三から第七までの交付金(以下単に「交付金」という。)の交付を受けようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、農産物の生産又は農作業の受託に関する計画その他の農林水産省令で定める書類を添付して、農林水産大臣に交付の申請をしなければならないこと。
(第10条関係)

第十一 交付金の返還
  偽りその他不正の手段により交付金の交付を受けた者があるときは、農林水産大臣は、その者に対してその交付を受けた交付金の全部又は一部の返還を命ずることができること。
(第11条関係)

第十二 報告及び検査
  農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、交付金の交付を受けた者等に対し、必要な事項の報告を求め、又はその職員に、事務所に立ち入り、帳簿その他の物件を検査させることができること。
(第12条関係)

第十三 罰則
  交付金の不正受給、報告義務違反、立入検査の拒否等に対して所要の罰則を設けるものとすること。
(第13条から第15条まで関係)

第十四 その他
 一 施行期日
   この法律は、平成二十八年四月一日から施行すること。
 二 「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律」の廃止
   「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律」は廃止すること。
 三 「特別会計に関する法律」の一部改正
   交付金の交付に関する事業を食料安定供給特別会計の農業経営安定勘定において経理すること。
 四 検討
   農業収入の減少を補するための保険制度の在り方については、この法律の施行後三年後を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な法制上の措置が講ぜられるものとすること。
 五 その他
  1 第三の二の適用については、当分の間、「当該年度」とあるのは「当該年度の前年度」とすること。
  2 その他所要の規定の整備を行うこと。
(附則関係)

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