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   領域等の警備に関する法律案要綱


第一 目的
   この法律は、警察機関及び自衛隊が事態に応じて適切な役割分担の下で迅速に行動できるようにするため、領域警備基本方針の策定、領域警備区域における自衛隊の行動及び権限その他の必要な事項について定めることにより、領域等における公共の秩序を維持し、もって国民の安全の確保に資することを目的とすること。                               (第一条関係)
第二 基本原則
 一 領海等及び離島等における公共の秩序の維持のための活動は、警察機関をもって行うことを基本とし、警察機関をもっては公共の秩序を維持することができないと認められる事態が発生した場合には、自衛隊が、警察機関との適切な役割分担を踏まえて、当該事態に対処するものとすること。
 二 領空における公共の秩序の維持のための活動は、自衛隊をもって行うことを基本とすること。
 三 警察機関、自衛隊その他の関係行政機関は、領域等における公共の秩序の維持に関し、必要かつ十分な体制を維持しつつ、正確な情報を共有する等相互に緊密な連携を図りながら協力しなければならないこと。
 四 この法律の施行に当たっては、関係行政機関の活動により事態が更に緊迫することのないよう留意するとともに、この法律に基づき実施する措置は、対処することが必要な行為に対して均衡のとれた対抗措置として認められる範囲内において行われなければならないこと。
 五 この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意するとともに、確立された国際法規を遵守しなければならないこと。  (第三条関係)
第三 領域警備基本方針及び対処要領
 一 政府は、五年を一期として、領域等の警備に関する基本的な方針(以下「領域警備基本方針」という。)を定めるものとし、領域警備基本方針には、警察機関の能力強化のための基本的な事項、領域警備区域で実施する活動に関する事項その他の領域等の警備に関する事項について定めるものとすること。
 二 内閣総理大臣は、領域警備基本方針につき、原則として国会の事前の承認を得なければならないこと。
 三 内閣総理大臣は、領域警備基本方針を変更する場合には、原則として国会に報告しなければならないこととし、当該変更が領域警備区域で実施する活動に関する重要な変更であるときに限り、国会の事後の承認を得なければならないこと。
 四 国土交通大臣、防衛大臣及び国家公安委員会は、領域警備基本方針に基づき、第四の領域警備区域ごとに、領海等及び離島等において公共の秩序を維持するための行動準則について定めた対処要領を定め、内閣総理大臣の承認を得なければならないこと。            (第四条及び第六条関係)
第四 領域警備区域
 一 内閣総理大臣は、領海等及び離島等のうち、武装していることが疑われる者による不法行為が行われる場合その他やむを得ず実力の行使を伴う対処が必要になり得る場合において警察機関の配置の状況、本土からの距離その他の事情により適切な対処に支障を生ずる高い蓋然性があると思料される区域を、五年以内の期間を定めて、告示をもって領域警備区域として指定することができること。
 二 内閣総理大臣は、一の指定に当たっては、国土交通大臣、防衛大臣及び国家公安委員会の間で協議をさせなければならないこと。
 三 内閣総理大臣は、領域警備区域の指定の告示につき、国会の事後の承認を得なければならないこと。
(第五条関係)
第五 領域警備行動
 一 防衛大臣は、領域警備区域における公共の秩序を維持するため、自衛隊の部隊に対し、第三の四の対処要領に基づき、情報の収集、不法行為の発生の予防及び不法行為への対処その他の必要な措置を講じさせることができること。
 二 領域警備に従事する自衛官は、警察官職務執行法及び海上保安庁法に規定する所定の権限を行使することができること。                              (第七条関係)
第六 治安出動等の手続の特例
   内閣総理大臣が領域警備区域について治安出動を命ずる場合及び防衛大臣が命ずる海上警備行動を承認する場合においては、個別に閣議の決定を求めることを要しないこと。      (第十条関係)
第七 船舶の航行に関する通報等
 一 通報制度
   海上保安庁長官は、領域警備区域(我が国の内水又は領海である区域に限る。)における公共の秩序を維持し船舶の衝突の防止を図るため特に必要があると認めるときは、告示により、当該領域警備区域の特定の海域に関し範囲及び期間を定めて、当該特定の海域を航行しようとする船舶(軍艦及び政府公船を除く。以下同じ。)の船長等が、事前に当該船舶の名称、船籍港、船長等の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積荷その他の国土交通省令で定める事項を最寄りの海上保安庁の事務所に通報しなければならないこととすることができること。            (第十一条関係)
 二 立入検査
   海上保安庁長官は、一の告示に定めた海域及び期間において船舶交通の安全を妨げるような航行を行っていると認められる船舶がある場合において、船舶交通の安全を図るため特に必要があると認めるときは、海上保安官に、当該船舶に立ち入り、書類その他の物件を検査させ、又は当該船舶の乗組員その他の関係者に質問させることができること。                  (第十二条関係)
 三 罰則
   一の通報をせず若しくは虚偽の通報をした者又は二の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し虚偽の陳述をした者は、三十万円以下の罰金に処すること。        (第十四条関係)
第八 適切な連絡体制の構築等
   政府は、船舶及び航空機の偶発的な衝突等の不測の事態の発生を防止するため、各国政府との間で、国の防衛に関する職務を行う当局、海上における公共の秩序の維持に関する職務を行う当局その他の関係行政機関相互間の意思疎通と相互理解の増進、安全保障の分野における信頼関係の強化及び交流の推進、緊急時の連絡体制の構築その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。(第十三条関係)
第九 海上における警備準備行動
 一 行動
   防衛大臣は、国土交通大臣から自衛隊の部隊に海上保安庁が行う警備を補完させるよう要請があった場合において、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため海上における警備をあらかじめ強化しておく必要があると認めるときは、自衛隊の部隊に対し、領域警備区域を除く海上において海上保安庁が行う警備を補完するための行動(二において「海上における警備準備行動」という。)をとることを命ずることができること。
 二 権限
  1 海上保安庁法の立入検査その他の所要の規定は、海上保安官がその場にいない場合に限り、海上における警備準備行動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用すること。
  2 海上における警備準備行動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、当該職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する隊員若しくは当該職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができること。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならないこと。       (附則第二条関係)
第十 領域警備事態連絡調整会議
   国家安全保障会議設置法を改正し、国家安全保障会議の下に、関係機関の情報の共有及び連携協力を図るため、領域警備事態連絡調整会議を置くこと。              (附則第三条関係)
第十一 施行期日その他
 一 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
(附則第一条関係)
 二 定義規定その他所要の規定を設けること。

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