衆議院

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第1号 令和6年2月27日(火曜日)

会議録本文へ
本分科会は令和六年二月二十二日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      伊東 良孝君    田中 和徳君

      山本 有二君    若林 健太君

      小山 展弘君    宮本  徹君

二月二十六日

 伊東良孝君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和六年二月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 伊東 良孝君

      東  国幹君    大岡 敏孝君

      金子 容三君    田中 和徳君

      山本 有二君    若林 健太君

      おおつき紅葉君    小山 展弘君

      馬場 雄基君    宮本  徹君

   兼務 木村 次郎君 兼務 吉田 真次君

   兼務 神津たけし君 兼務 小野 泰輔君

   兼務 中嶋 秀樹君 兼務 早坂  敦君

   兼務 河西 宏一君 兼務 庄子 賢一君

   兼務 平林  晃君 兼務 長友 慎治君

   兼務 福島 伸享君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   環境大臣         伊藤信太郎君

   農林水産副大臣      鈴木 憲和君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   環境大臣政務官      国定 勇人君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   松下  整君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)

   (農林水産技術会議事務局長)           川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (林野庁長官)      青山 豊久君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  長崎屋圭太君

   政府参考人

   (水産庁長官)      森   健君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官)          吉田健一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           井上 伸夫君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 堀上  勝君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            土居健太郎君

   政府参考人

   (環境省環境再生・資源循環局次長)        角倉 一郎君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   金子 修一君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房緊急事態対策監)      古金谷敏之君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

   環境委員会専門員     野崎 政栄君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  田中 和徳君     金子 容三君

  若林 健太君     東  国幹君

  小山 展弘君     馬場 雄基君

  宮本  徹君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     本田 太郎君

  金子 容三君     古川  康君

  馬場 雄基君     青山 大人君

  塩川 鉄也君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  古川  康君     勝目  康君

  本田 太郎君     大岡 敏孝君

  青山 大人君     おおつき紅葉君

  穀田 恵二君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     若林 健太君

  勝目  康君     田中 和徳君

  おおつき紅葉君    小山 展弘君

  高橋千鶴子君     宮本  徹君

同日

 第二分科員木村次郎君、小野泰輔君、中嶋秀樹君、平林晃君、第三分科員吉田真次君、第五分科員神津たけし君、福島伸享君、第七分科員河西宏一君、庄子賢一君、長友慎治君及び第八分科員早坂敦君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

伊東主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました伊東でございます。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算及び令和六年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。坂本農林水産大臣。

坂本国務大臣 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明を申し上げます。

 農林水産省の最も重要な使命は、国民に食料を安定的に供給する、食料安全保障の確保です。しかしながら、昨今の食料や生産資材価格の高騰は言うまでもなく、気候変動による食料生産の不安定化、世界的な人口増加等に伴う食料争奪の激化、国際情勢の不安定化などにより、いつでも安価に食料を輸入できるわけではないことが明白となるなど、近年の世界及び我が国の食をめぐる情勢は大きく変化しています。

 一方、国内に目を向ければ、国内の人口全体が減少局面に転じ、生産者の減少、高齢化も進んでおり、将来にわたって持続可能で強固な食料供給基盤を構築することが急務となっています。

 本年は、農政の憲法とも言われる食料・農業・農村基本法が制定から四半世紀という節目の年となる中で、このような情勢の変化を踏まえ、基本法が時代にふさわしいものとなるよう、以下の観点から見直しを行い、今国会に基本法の改正案を提出いたします。

 第一に、食料安全保障の抜本的な強化として、食料安全保障を基本法の柱として位置づけ、国内農業生産の増大を基本とする食料安定供給の基本的な考え方を堅持した上で、輸出の促進、輸入の安定確保、生産から加工、流通、消費までの食料システムの関係者の連携、適正な価格形成を促す視点等を位置づけます。

 第二に、食料供給が環境に負荷を与えている側面にも着目し、環境と調和の取れた食料システムの確立を柱として位置づけます。

 第三に、人口減少下にある農業生産の維持発展と地域コミュニティーの維持に向けた政策を位置づけます。具体的には、農業生産の維持発展として、引き続き担い手の育成、確保を図るほか、新たに、担い手と多様な農業人材による農地の確保、農業法人の経営基盤の強化、農業の生産性向上、付加価値向上等を位置づけます。

 次に、人口減少下における地域コミュニティーの維持として、新たに農村関係人口の増加等に資する産業の振興や地域社会の維持等を位置づけます。

 農業政策が大きな転換点に立っているとの自覚を持ち、食料安全保障改革元年として、基本法の改正と関連施策の実現に全力を尽くしてまいります。

 次に、令和六年度農林水産予算の概要を御説明します。

 一般会計の農林水産予算の総額は二兆二千六百八十六億円であり、その内訳は、公共事業費が六千九百八十六億円、非公共事業費が一兆五千七百億円となっています。

 以下、農林水産予算の重点事項については、委員各位のお許しをいただき、御説明を省略させていただきます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

伊東主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま坂本農林水産大臣から申出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊東主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊東主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。金子容三君。

金子(容)分科員 自由民主党、長崎四区の金子容三です。

 この度は、質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 まずは冒頭、この度の令和六年能登半島地震におきましてお亡くなりになられました方々、被災された方々、いまだ避難所等での生活を余儀なくされている方々、そして震災支援のために公務出動中に犠牲となった海上保安庁の隊員の方々に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 それでは、質問に入ります。

 日本の農林水産業の従事者は減少と高齢化が進み、現在、新規従事者の年齢も高くなっております。今後、日本の農林水産業を守り、強くしていくためには、若者の育成はもとより、若者の新規従事者を増やしていくことが必要であり重要だと考えております。政府として、農林水産業の魅力や重要性をどのように若者に伝え、人材を確保していくための対策を講じていくのか、政府の見解をお尋ねします。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、若い方に農業の魅力を知っていただくこと、これは非常に重要であると感じており、これまで農林水産省におきましては、実際に農業現場で活躍する若手農業者が農業の魅力を語るイベントを開催する等の情報発信の取組を進めているところであります。

 私も先日オーガニックビレッジ全国集会に出席しましたところ、首長の皆様から、若者の取組は積極的で刺激を受けることが多いとおっしゃっておられました。私自身も、若者の新たな発想、こういったものを非常に大事にしなければいけないというふうに思っているところでございます。

 また、農業政策は大きな転換点に立っているとの認識の下、食料・農業・農村基本法の改正を目指しているところです。

 今後とも、基本法の趣旨を踏まえ、日本の農業が魅力的な職業となるよう、様々な手段を動員しながら、農業人材の呼び込みと定着を一層推進してまいります。

 とりわけ、やはり女性の就農が大事だというふうに思っております。女性が就農できるような農業環境をつくること、こういったことにも力を入れてまいりたいと思っております。

 よろしくお願いいたします。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 是非とも、引き続き、情報発信の強化、それから、農業はもうかるものである、そして、女性が働きやすい環境をつくっていただくような施策を講じていただければというふうに思います。

 続きまして、水産業における人材不足について質問いたします。

 政府がこれまで人材確保について様々な対策を講じてきたことは、私も承知しております。私の地元長崎県や、お隣の県、佐賀県唐津市や福岡県福岡市では、特に水産業の人手不足が大きな問題となっており、その中でも産地市場、魚市場での人手不足は深刻な状況です。

 九州北西部に位置するこれらの魚市場は、対馬、日本海及び九州西部海区の好漁場に面しており、一般に青物、青魚と言われるアジ、サバ、イワシなど、多獲性魚種の供給基地として重要な役割を果たしております。

 水揚げをする魚種が日本一と言われる長崎県の産地魚市場の中で取扱量の過半数を占めるまき網漁業は、集魚灯を使用した夜間のともしび操業が標準的であり、その漁法特性から、漁獲物は複数魚種の混獲である上、サイズ構成も様々となります。

 これら漁獲物を取り扱う産地魚市場では、生鮮、加工、養殖餌料などの多様な用途に対応するため、魚種別、サイズ別に選別、仕分を行うことで付加価値化と価格形成機能を担っております。

 一方で、それら機能を維持するためには一定の労働力が必要となるものの、地方における労働人口の減少と高齢化は社会問題化しており、魚市場においても例外ではありません。

 労働力確保のため、これまで様々な取組を実施してまいりましたが、漁模様による就業日時の変動や、深夜労働であることなどの特殊な労働環境が敬遠され、実態は年を追うごとに厳しく、このままでは魚市場の処理能力低下はもちろんのこと、将来的には市場運営そのものが維持できなくなることを危惧しております。

 こうした状況下にあって、魚市場の処理能力を超える一定の漁獲があった場合、スムーズな水揚げはたちまち困難となり、運搬船の沖待ち、水揚げの翌日回し、他市場への回航などが生じるほか、漁獲物の鮮度劣化を誘発し、漁業経営にも影響を与えることになります。

 現状、魚市場での選別作業員の半数以上は七十歳以上の方で構成されております。今後、人手不足が解消されなければ、魚市場の取扱量減少は避けられず、その影響は卸売業者のみならず、仲卸業者、加工業者、運送業者、荷役業者などの関連分野や漁業経営体も含めた地域の幅広い分野へ拡大すると同時に、消費者に魚が行き渡らなくなることが懸念されます。

 このような現場では外国人の労働力を強く求める声を多く聞きますが、現在の制度では、魚市場における作業は単純労務とされているため、外国人の労働力に頼ることはできません。日本の誇る水産業を守り持続的なものとするためには、魚市場による業務を単純作業とせず、制度の在り方について見直し、今後改正していくべきものであると考えますが、政府の見解をお尋ねいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 魚市場における業務の一部につきましては、既に、現行の特定技能制度の漁業区分における関連業務として漁獲物の選別、仕分に、飲食料品製造業分野における関連業務として原料の調達、受入れに、付随的に従事することは可能ということになっております。

 一方で、魚市場におけます業務それ自体を特定技能の受入れ対象とするに当たりましては、当該業務が特定技能の対象となり得る相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要するものであるのか、あるいは、技能試験を含めて、業界において適正な管理運営が可能なのか等、整理すべき事項や課題があるというふうに考えているところでございます。

 このように、業界としての議論がなお必要な状況ということと認識しておりますけれども、農林水産省といたしましても、引き続き、産地市場の在り方、これには省人化等による効率的運営等も含まれるというふうに考えておりますけれども、市場関係者などの声を聞きながら、現場の情報収集、把握に努めてまいりたいと考えております。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 特に西日本地域におきましては、選別等々、西日本と東日本とでは仕事のやり方が違うというふうなこともありますけれども、特に西日本におきましては魚種が多く、そして高齢者による働き手が多いというふうなこともあります。

 先ほど、知識、技能、いろいろな整理をする課題が多いというふうな話もございましたけれども、是非とも、特定技能の分野といたしまして魚市場の業務を加えていただく、あるいは、既存の特定技能として認められている漁業の中に弾力的に運用できるような、そういったことを検討をしていただきたいというふうに思っておりますけれども、それにつきましてもう一度お考えをお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお答えをいたしましたとおり、既に、魚市場におけます業務の一部については、現行の特定技能制度の漁業区分あるいは飲食料品製造業分野における関連業務ということで、付随的に従事することは可能ということでございますので、こういったものの活用も現場では検討をお願いいたしたいというふうに考える次第でございます。

 ただ、例えば特定技能という形で、今、西日本と東日本の漁業あるいは魚市場の仕事の違いという話もございましたが、他方で、こうした特定技能は入国管理という観点で制度があるわけでございますし、また移動の自由というところもありますので、全国的な観点から、特定技能がどの程度の知識経験を必要とするものなのか等々、その整理をした上で検討していく必要があるというふうに考えております。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 是非とも引き続き情報収集等々、一緒にやっていただければというふうに思いますけれども、この点につきまして、特定技能に含めていくというふうなことも含めまして検討していくというふうなことでよろしいか、もう一度よろしいでしょうか。

森政府参考人 本件につきましては、まずは、どのような仕事が専門的な技能として整理できるのか等々、業界の方、関係者の方でよく議論、整理をしていただくということが必要だというふうに考えております。

金子(容)分科員 ありがとうございます。では、引き続きよろしくお願いいたします。

 続きまして、漁業における資源管理について質問をいたします。

 漁業における資源管理につきましては、重要なことであり、現在も厳しく管理されております。特にクロマグロは、二〇一〇年頃に資源量が歴史的最低水準になったことから、WCPFCにおいて国際的に厳格な管理が行われた結果、資源も回復していると認識しています。

 一方で、実際の現場では異なる状況が生じております。現場の漁業者としては、十分にマグロの資源管理は進んでおり、過剰な管理がなされているのではないかという認識です。定置網に一度入ってきたマグロを再び海に帰しても、網に当たったマグロは傷がつき、放れた後に死んでしまうことも起こっています。これではマグロの商品価値が下がり、逸失利益につながりかねません。

 マグロの資源管理の重要性も承知した上で、制度の在り方等も踏まえた政府の見解をお尋ねいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 クロマグロにつきましては、漁獲枠の配分というものを行っておるわけでございますが、この際にも、沿岸漁業者に配慮した配分というのを行っております。限られた枠を遵守するために、定置網漁業等においてクロマグロを放流せざるを得ない状況が発生しているということも、私どもとして認識をしているところでございます。

 しかし、このようなことは、まさに関係者の皆様が厳しい資源管理に取り組んだ結果、資源が回復傾向になっていることの表れでもあるというふうに考えている次第でございます。

 漁業現場においては、枠の遵守のための放流などが必要な場合もあるということも踏まえまして、国としても、放流の取組に対する一人一日当たり三千円の支援でございますとか、混獲回避のための機器導入に対する支援等、一定の支援を行っているところでございます。

 引き続き、資源管理に取り組むとともに、現場の状況を踏まえて放流などの取組に対する支援を行うなど、適切に対応していきたいと考えております。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 放流の取組支援等々、非常にありがたい対応を取っていただいていることは理解しております。

 一方で、マグロの漁獲枠はWCPFCにおいて定められていることも承知しておりますけれども、日本のこれらの厳しい現状も踏まえたWCPFCへの漁獲枠増大を含めた働きかけをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。政府の見解をお尋ねいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 太平洋クロマグロにつきましては、厳格な資源管理に取り組んできた結果、資源は順調に回復しているところでございます。こうした状況を踏まえて、我が国漁業関係者を含め、増枠に対する強い要望があるというふうに承知をしているところでございます。

 このため、我が国としては、太平洋クロマグロについて各種の調査を積極的に実施をしておりまして、その結果をWCPFCが行う資源評価に提供しているところでございます。

 このWCPFCにおける資源評価につきましては、本年、新たな資源評価が行われる予定でございますので、最新の資源状況に基づいて、適切に漁獲枠の見直しが行われるよう努力してまいります。

金子(容)分科員 ありがとうございます。是非とも力強くWCPFCの方と交渉をしていただければというふうに思っております。よろしくお願いします。

 次に、燃油価格高騰対策、漁港、漁場整備について質問をいたします。

 漁業に携わる人の数が全国的に減少していることは承知しておりますが、海に囲まれた我が国において漁業の重要性は変わることはありません。日本の歴史とともに育まれてきた魚食の文化を持続的に守り、後世まで受け継いでいくには、今後も漁業を守り、時代に沿った発展を目指す必要があります。そのためには、漁業従事者に直接影響を与える燃油価格の高騰対策が引き続き必要です。

 また、私の地元長崎県を始め、老朽化の進む漁港がたくさんあります。老朽化により危険が生じている漁港の早期修復はもちろん、持続的に安心して使用ができる漁港の整備も重要です。そして、安心して漁業ができる漁場の整備が不可欠と考えます。

 燃油価格高騰対策と漁港、漁場の整備に関し、政府の見解と対策について質問いたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 まず、燃油対策ということでございます。

 漁船の燃料対策は大変我々としても重要と考えております。

 このため、漁業者と国で基金を設け、燃油高騰による経営への影響を緩和するための補填金の交付を行っているところでございます。

 具体的には、現下の燃油価格高騰を受けまして、十二四半期連続で補填金が発動されているところでございますが、引き続き、漁業者の方々が安心して漁業を継続できるよう、令和五年度補正予算で三百六十六億円を積み増すとともに、令和六年度当初予算でも十八億円を計上しているところでございます。

 今後とも、燃油価格の動向を注視しながら、漁業経営が安定して継続できるよう対応してまいりたいと思います。

 また、御指摘の漁港、漁場の整備という点につきましては、まさに、近年いろいろな災害が頻発する中で、災害に強い漁港の整備の推進が重要であるというふうに認識をしておりますし、また、我が国の水産資源を十分に活用して水産物供給を行っていくという観点から、漁場の整備についても大変重要だというふうに考えております。

 こうした観点から、私どもとしては、漁港漁場整備長期計画に基づいて、しっかりと漁港、漁場整備に取り組んでいるところでございます。また引き続き推進をしてまいりたいと考えております。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 今後とも、燃油価格の高騰は持続してしまう可能性もありますので、これらの引き続きの対策あるいは拡充というものをお願いするとともに、漁場、漁港につきましても、災害が激甚化している中ですので、スピーディーな対応をお願いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、食料自給率について質問をいたします。

 本年、先ほど大臣からも御答弁ございましたとおり、食料・農業・農村基本法及びそれに関連する法案の制定、改正を行い、カロリーベースで現状三八%の自給率を二〇三〇年までに四五%に引き上げることを目標とされております。

 そのために、農地の確保を前提とし、小麦、大豆等の輸入依存度の高い農作物の国産化や、農業所得の向上に資する畑作等への転換等の施策が講じられるものと認識しております。

 私の地元長崎県においては、中山間地域が多く、農地集約が非常に難しいところでもあります。このような地域におきまして、畑作への転換を進めるに当たり具体的にどのような支援を予定されているのか、政府の御見解を質問いたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 主食用米の需要が減少する中で、我が国の食料安全保障を強化するには、輸入依存度の高い麦、大豆、それから加工・業務用野菜などへの転換を推進していくことが重要と考えております。

 現在、各産地において、水田機能を維持しながら稲、麦、大豆等の輪作を行うのか、あるいは水田を畑地化して産地化するか、検討していただいているところでございます。

 委員御指摘の畑地化を進めるに当たりましては、麦、大豆、野菜等の産地化を図っていただくために、一つは、畑作物の生産が定着するまでの継続的な支援、これとともに、畑地化のための基盤整備、さらに、栽培技術や機械、施設の導入等への支援も併せて行うこととしております。

 農林水産省といたしましては、畑地化後の産地化を図るため、これらの支援を一体的に推進していく考えでございます。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 お金を給付するとか機械を導入するというふうな、そういったものに加えまして、より綿密な、畑地化への、営農者への手厚い支援というものをお願いできればというふうに思っております。

 続きまして、畜産関連について質問をいたします。

 私の地元長崎県には、長崎和牛という、全国でも評価の高い和牛がございます。しかしながら、昨今の飼料高騰の影響を大きく受ける中、肉用子牛価格の下落という厳しい状況を受けております。昨年は一頭当たり平均価格五十万円を割る月もあり、今年に入りまして五十万円半ばと若干回復しておりますが、このような厳しい状況において、現状、肉用子牛生産者補給金制度に加え、六十万円、臨時対策により、子牛価格の下落分を補っていただいています。

 一方で、今後も円安水準は高止まりすることも予想され、飼料高騰に対しての補填措置は引き続き重要であります。飼料高騰に対する引き続きの対策、そして適正価格への転嫁に対して、政府として今後どのような実効性のある対策を講じていくのか、政府の見解と対策について質問いたします。

鈴木副大臣 黒毛和種の子牛の全国平均価格については、委員御指摘のとおり、昨年十月に五十万円まで下落をしたものの、本年二月は全国平均で五十七万円と上向いてきているところであります。

 現在、肉用子牛生産者補給金に加えて、ブロック別平均価格が六十万円を下回った場合の、差額の四分の三を支援する臨時対策を措置しておりますけれども、まず、来年度からは、肉用子牛生産者補給金については、保証基準価格を黒毛和種について八千円引き上げて五十六万四千円とするとともに、ブロック別平均価格が六十万を下回った場合には、飼養管理向上を図る取組に対し、定額の奨励金を交付する事業を措置することとしております。

 さらには、令和五年度の補正予算において、高齢の繁殖雌牛から若い繁殖雌牛への更新を支援をし、成長がよく肉質に優れた子牛の生産を推進することとしております。

 また、大切なことは、やはり和牛肉の底堅い需要が、肥育経営、さらには繁殖経営を支えるということでありますから、引き続き、輸出促進や、国内においても消費拡大そしてインバウンド需要の喚起を図ることが重要であるというふうに思っております。

 生産者への対策と需要側への対策を併せて、しっかりと肉用牛の生産基盤の維持を図ってまいりたいというふうに思いますし、また同時に、餌の対策についても、配合飼料価格安定制度、これまでも累次にわたって異常補填基金の積み増しなどを行ってまいりましたけれども、昨年秋の経済対策においては、餌の国産化、輸出の取組の強化等の支援策も盛り込み、実施してきたところであります。

 トウモロコシの国際相場、今下がっておりますけれども、アメリカの豊作等によって下がっているところですが、ただ、円安であることは変わりはありませんので、引き続き状況を注視して、しっかり総合的に、生産者が安心して経営できるように対策を講じてまいりたいと思います。

金子(容)分科員 ありがとうございます。

 時間が来てまいりましたので、最後に、飼料高騰対策の重要性は先ほども述べてまいりましたけれども、飼料価格の高騰と同様に大きな影響を受けているのが、資材価格の高騰でございます。段ボールや発泡スチロール、そういったものの価格の高騰も農林水産業に大きな影響を与えておりますので、燃油対策や飼料価格高騰対策に加えまして、資材の高騰に対する対策も講じていく必要があると思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 これをもちまして質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊東主査 これにて金子容三君の質疑は終了いたしました。

 次に、庄子賢一君。

庄子分科員 公明党の庄子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、元日に発生をいたしました能登半島地震災害に対する農林水産業の対応方について、何点かお尋ねをさせていただきたいというふうに思っております。

 私も、この間、輪島、珠洲、七尾、穴水、能登町等々を回ってまいりまして、今週週末にもまたお邪魔をする予定でございます。

 特に被害が甚大でございました珠洲市、先週も行ってきたんですけれども、この珠洲市で農業法人を営んでおられる代表の方、十一人従業員を抱えて、あの地域は高齢化が進んでおりますので、田んぼを手放した方々の水田を受託し、何とか耕作放棄地を防ぐという努力をずっと取られてきた方でございます。その方のお話では、農地に大きなひび割れ、あるいは液状化、そして水路が地震災害によって寸断をされている、こういう状況でございまして、この春、仮にその手前まで水が来たとしても、田んぼに水を張ることは難しいのではないかというふうにおっしゃっておられて、こうした方は恐らく能登半島だけでも相当数に上るんじゃないのかなというふうに思います。これを機に、農家の方であれば離農する、漁業者であればおかへ上がるといったような人たちが増えてしまうのではないかということも懸念をしておられました。

 そこで、まず大臣にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、震災から間もなく二か月を経過する現状、今分かっている農地、農業用施設の被害状況及び漁港、漁船の被害について、概要をお示しいただきたいと思います。

坂本国務大臣 私自身、一月二十一日と二月の四日の二回、被災地を視察をいたしましたが、能登半島では、今般の地震によりまして、地域の方々の誇りであります世界農業遺産の能登の里山里海等も含め、農林水産業に甚大な被害が発生したことを目の当たりにしてまいりました。

 農林水産関係の被害状況につきましては現時点で調査中ですが、二月の二十六日十四時現在の状況として、石川県ほか富山、新潟、福井、長野、岐阜、この六県から被害の報告がありました。農地や水路、ため池などの農業用施設で四千五十か所以上、畜産農家での施設損壊が四十六件以上、山地災害や林道施設、木材加工流通施設等で三百九十か所以上、漁船の転覆、沈没、座礁二百五十九隻以上、さらには漁港で七十三漁港以上、水産業共同利用施設で六十九か所以上などの被害の報告を受けております。

 引き続き、関係自治体とも連携をして、被害状況の速やかな把握と復旧に努めてまいります。

庄子分科員 今の数字を伺っているだけでも、半島における災害の爪痕の大きさということが容易に想像できるわけであります。

 しかし、今大臣にお答えいただいた現状の数字が全体の一体どの程度なのかということについては、なかなか分かりにくいし、掌握もまだ今、途中の段階だというふうに思うんですけれども、今後、能登へ行ってみて思うのは、私も東日本の大震災を経験しているので何となくのイメージができるんですけれども、一軒一軒のおうちの再建をどうするかということはもとより、この地域全体の復興町づくりをどうするか、そういうフェーズに移っていかなければいけないわけですね。そうしたときに、復興町づくりをつくる、それに合わせて、いわゆる農業や漁業の再開をどうするか、規模をどうしていくのか、どこを復旧復興させていくのかということは、町づくり計画とリンクをしながら進めていかなければなりません。

 被災地で今非常に困っていらっしゃるのは、被災者の方々が御自分で市外や県外に独自で避難をされていらっしゃる方がかなり多くおられるので、いわゆる意向調査をかけたくとも、いわゆる復興町づくりのためのデータとなる意向調査がなかなかできない、こういう状況にもございまして、これは第一次産業の従事者の皆様も全く一緒かと思います。

 農業や漁業あるいは林業を再生したいのか、現地に戻りたいのかどうなのか、こうした把握がなかなか今困難という中で、しかし、やはり復興町づくり計画と折り合いを合わせながら、第一次産業の復旧復興をどう進めていくのかということを考える意味でも、被害の全容把握、これが欠かせないというふうに思っております。

 これを農林水産業でいうと、どのぐらいの時期に、どんな日程感でその全容を掌握していくお考えがあるのか、お尋ねをさせていただきます。

坂本国務大臣 被害の調査、非常にやはり難しいものがあります。農林省といたしましては、MAFF―SATとして、延べ五千四百人を超える職員を被災地へ派遣をしているところでございます。

 とりわけ奥能登地方を中心に、委員が行かれました珠洲を中心でありますけれども、農家の方が被災されていることなどによりまして、被害の確認が非常に難しい現場もあるというふうに今聞いております。

 本年産の米の作付時期なども見据えて、被災自治体と連携して被害状況の把握と復旧に努めてまいりたいというふうに思っておりますけれども、まずは、市町村と連携をして復旧復興カルテを作成したいというふうに思っております。復旧復興カルテの作成と並行して、県においては水産業の復旧復興の方針を作成したいというふうに思います。さらには、こういった復旧復興カルテ、あるいは県の方針を踏まえまして、県、市町村は今後の漁業者の漁業継続や住民の居住の意向を確認しながら、復旧復興カルテを見直しながら、地域の将来像について合意形成を図ってまいりたいというふうに思います。

 私も熊本地震を経験いたしまして、もう八年が経過をいたしております。主なインフラは大体復旧復興、これは国土交通大臣のおかげもありまして復興をいたしました。創造的な復興でございます。ただ、被害が多かった、一番ひどかった上益城郡の益城町などは、まだ町の区画整理も含めた復旧と復興が終わっておりません。

 熊本の場合にはこのような状況でございますので、能登の場合、またケースが違いますけれども、全力で、とりわけ農林水産業の復旧復興に努めてまいりたいというふうに思っております。

庄子分科員 ありがとうございます。是非、大臣のリーダーシップで、この地域の第一次産業の再生につきましてリードをしていただければというふうに思っております。

 大臣はここまでで結構でございます。ありがとうございました。

 農業に絞って三点目をお尋ねさせていただきますが、営農再開に向けて、今後、例えば農地や水路の復旧、あるいは施設復旧のための資金調達制度、さらには機械の再取得あるいは修繕への支援等々、非常に数多いメニューがあるというふうに思います。こうした生産者にとって営農再開に向けた重要な情報、これを生産者にいち早くどのように伝えていくかということが非常に重要です。農林水産省の対応の仕方、お尋ねをさせていただきます。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、先月二十五日の支援パッケージ決定後、直ちに、多様な支援策につきまして、生産現場での周知活動に加え、政府広報を活用して新聞で広報するとともに、事業の申請受付も開始したところでございます。

 また、国と県で合同チームをつくりまして、二月十九日から石川県内の合計二十二か所の会場で説明会を開催するなど、市町村や生産現場の末端までの周知活動を行っております。

 さらに、JAのと本店等を含む石川県内、特にJAのところをお借りしまして六か所で、県やJAと連携して、農林水産省の職員も常駐した相談窓口を設置しております。また、フリーダイヤルも開設し、農林漁業者の個別の相談も受けつつ、事業申請手続の伴走支援を行っているところでございます。

 今後とも引き続き、被災された農林漁業者に寄り添って、丁寧な情報提供や相談への対応を行ってまいりたいと考えております。

庄子分科員 二十数回以上説明会を開いていただいて、ただ、御参加いただいた方は、多分、全体の生産者の本当に僅かだと思います。その会場に来れないでいらっしゃる方々、会場で説明会があることすら伝わっていない可能性のある生産者、こうした方々にも是非情報が伝わるような工夫を今後検討をいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、スマート農業についてお尋ねをしてまいります。

 今国会にスマート農業の技術活用促進法案が提案をされる予定というふうに伺っております。これまで、農研機構などを中心として、令和元年から二百十七地区でスマート農業の実証プロジェクトが行われてまいりました。このプロジェクトで得られましたスマート農業におけます課題について、お示しをいただきたいと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 スマート農業技術は、人口減少下においても生産水準を維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するために重要であります。これまでに、全国二百十七地区でスマート農業実証プロジェクトを推進してまいりました。

 その結果、作業の省力化や負担の軽減などの一定の効果がある一方で、果樹や野菜の収穫など、人手に頼っている作物でスマート農業技術の開発が不十分な領域がありまして、開発の促進を図る必要がある。二点目としまして、スマート農機の導入コストが非常に高くて、また、それを扱える人材が不足している。三点目としまして、従来の栽培方式にスマート農業技術をそのまま導入しても、その効果が十分に発揮されないなどの課題が明らかとなっております。

庄子分科員 ありがとうございます。

 農業法人協会さんの資料を拝見をさせていただきました。この資料によりますと、スマート農業の導入割合、農業法人の協会加盟の方々ですから、規模が大きいので導入実績が高いわけですけれども、七二・四%でございますが、一方で、収穫機あるいは出荷管理システム、こうした導入事例というのはまだ少ないということでございますし、業種別で見ると、稲作は八二%と高いんですけれども、今おっしゃっていただいたように、果樹、これは五四%ということで、農業法人さんですらこういう状況だということでございます。

 今後、本格的にスマート農業技術を普及をしていくわけですが、現状は、このプロジェクトを通じて、使いやすいもの、やりやすいところから入っていっているのではないのかなというふうに思っていて、先ほどのお話のように、導入コストや人材といったこと、あるいは生産方式がまだ追いついていない分野、こういうところではかなりばらつきがあるんじゃないかなというふうに思っております。

 今後、このスマート農業技術の導入によって、作業時間が明確に短縮された、省力化が具現化した、また、価格を抑えることができた、こういう目に見える成果を出していかなければいけないというふうに思っておりますが、お考えを伺います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 昨年度に農林水産省が日本農業法人協会も含めまして農業者などを対象に行ったスマート農業技術の開発・改良に関するアンケート調査では、野菜や果樹につきまして、自動収穫ロボットや広範囲の農薬散布が可能なドローンなど、省力化に直結する機械のニーズが高く、このようなスマート農業技術が生産性の向上に貢献する分野につきまして、重点的に開発を進める必要があると考えております。

 このため、令和五年十二月に開催されました食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で決定されました「「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づく具体的な施策の内容」に基づきまして、国が主導で実装まで想定した重点開発目標を明確にした上で、これに沿って研究開発などに取り組むスタートアップなどの事業者に対する農研機構の施設供用などを通じた産学官連携の強化による研究開発などを促進するとともに、スマート農業技術の活用を支援するサービス事業体などと連携しながら、スマート農業技術に適合した栽培体系への見直しなどの生産方式の転換を促すこととし、これらを税制、金融などにより一体的に支援できるよう、今国会へ関連法案を提出するべく検討を進めてまいります。

庄子分科員 さて、全国で今、地域計画作りが進められているわけであります。この地域計画の中で、協議の場における幾つかの協議事項、例えば集積集約方針あるいは中間管理機構の活用方針などがございますけれども、スマート農業技術の活用についてはあくまで任意事項という扱いになっています。

 しかしながら、今後の生産性向上のためには、この地域計画作り、目標地図の作成の中において、スマート農業技術の導入という観点が積極的に協議されるべきテーマではないか、こう考えますが、いかがでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農業経営基盤強化促進法に基づく地域計画は、市町村が中心となって、地域の農業関係者の話合いにより、将来の地域農業の在り方や農地利用の姿を明確化する設計図として、現場の意向を起点に策定していただくものということになっております。

 今後、農業者が大きく減少するおそれがある中で、少ない労働力で食料生産を担うことを想定しておかなければならないと考えており、委員御指摘のとおり、スマート農業の活用が極めて重要になると認識をしておるところでございます。

 このため、現在、全国各地の現場で取り組んでいただいている地域計画におきまして、農地の集積、集約化を進めながら、スマート農業の活用を農業関係者に積極的に協議していただけるよう、現場の方々への働きかけを心がけてまいりたいと考えております。

庄子分科員 そうですね。まだ実際には、この協議の場の設置ができている市町村は千四百九十三あるわけですけれども、地域計画の策定、公告に至っているのは昨年十一月末時点で二百三十九ですので、これから千六百を超える市町村において策定、公告に向けて作業を加速しなければなりませんので、今おっしゃっていただいたような観点を、是非その作業の中で、もちろん生産者の方々もそうですが、市町村の担当職員さん、JA関係者、あるいは中間管理機構の皆さん、その協議のプレーヤーの皆さんがこの技術の導入ということについて積極的に議論ができますように御指導をお願いを申し上げたい、そのように思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 スマート農業技術が重要だというのは、つまり、これは農水省の発表ですけれども、今後二十年間の間に、基幹的農業従事者、現在百十六万人いるとされておりますが、この二十年間で三十万人に減るだろう、つまり四分の一に減少するということが見込まれております。そうすると、今までの生産方式で農業を行っていても持続可能にはならない、加えて、食料の安定供給という大事な使命を果たすことができないということが明らかになっているので、省力化する、時間を短縮する、こうしたスマート農業技術の導入が急がれる、こういうわけでございます。

 ただ、一方で、先ほどもお話に出ておりましたが、導入においては、やはりコストの面、機械の導入に対する補助、あるいは人材の育成、スマート農業の導入に対する財政的な国の担保というものが絶対的に必要だ、こう思いますが、この点についてお考えを伺います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、令和五年度補正予算及び令和六年度予算概算決定におきまして、先ほど申し上げました新たな展開方向で目指すこととしておりますスマート農業技術の活用の促進を図るため、スマート農業技術の開発、実用化や農研機構の機能強化、スタートアップ支援、二点目としましてスマート農業技術に適した品種の開発、三点目としましてスマート農業機械の導入、四点目としましてサービス事業体の育成、五点目としまして通信環境を含めた基盤整備、六点目としまして人材育成の強化などに必要な予算を計上したところでございます。

 今後とも、スマート農業技術の活用の推進に必要となる予算の確保にしっかり努めてまいりたいと考えております。

庄子分科員 法案が提出をされましたら、またしっかり議論を進めさせていただきますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、米の輸出についてです。

 議論してまいりましたように、生産人口が極端に減る一方で、胃袋も減っていくわけですね、人口が相対的に減少しますので。作り手が減ると同時に食べる側も減っていく。そういった中でどうやって需要を掘り起こしていくかということを考えると、輸出をどう広げていくかということが一層重要なテーマになってくる、これは間違いないというふうに思います。

 米の輸出施策につきましては、現在、米の輸出量の九割を占めておりますモデル産地を中心といたしまして、一層の農地集約化を進めて、スマート農業の推進に取り組んで、コストを下げていくこと、それによって他国産の米との価格競争力を高めていくということが非常に重要だ、こう思っております。

 そうした取組への国の支援を引き続き行っていただくことはもちろんですけれども、例えば、現在のモデル産地を更に拡大をしていくこと、あるいは輸出先国を拡大をしていくこと、こうしたことに具体的に取り組んでいただけないかなと思っておりますが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 輸出拡大実行戦略では、米では、輸出先国への継続的な供給の観点などから、一千トン超の輸出を目標とする産地をモデル産地として三十から四十産地育成することとしておりまして、現在、三十産地がこれに取り組んでおられるところでございます。

 米の輸出拡大を図っていくためには、コスト低減への取組を後押しするなど、モデル産地の更なる強化とともに、輸出品目団体を中心としたオール・ジャパンでのプロモーション、輸出支援プラットフォームとの連携等によりますマーケットインの発想に基づく市場開拓、これを行っていきたいというふうに思っております。

 さらに、委員御指摘の輸出産地の拡大につきましては、関係者が連携した説明会の開催によります新たな産地の掘り起こしとともに、例えば県域での協議会の設置など、広域モデル産地の形成に向けた情報の提供ですとか、輸出事業者とのマッチング等にも努めていく考えでございます。

庄子分科員 非常に重要なお答えをいただいたと思っております。

 例えば、一千トンまでいかないんだけれども、五百から七百トンぐらいの供給能力がある複数の生産地を少し広域でつなげてあげると、例えば商社やあるいはJA全農の皆さんから見ても、ロットがそろう広域的な産地だというふうになっていくわけで、地域を回っていると、我々も輸出に是非参画をしたいんだという声を少なからず伺ってまいりますので、是非、モデル産地の多様化といいますか、広域化といったことについてもお取組をお願いを申し上げたいと思っております。

 最後に、鳥インフルエンザのことについて、二点伺ってまいります。

 鳥インフルエンザによる殺処分についてでありますが、令和四年度、そして令和五年度の今現在までの発生件数、殺処分数及び手当金の給付額についてお尋ねをいたします。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 高病原性の鳥インフルエンザについては、令和四年度シーズンは八十四事例が発生して、千七百七十一万羽の殺処分ということになったところでございます。これに対して、今シーズン、令和五年度のシーズンでございますが、本日時点で合計九事例が発生して、殺処分数は約七十一万羽となっているところでございます。

 また、お尋ねの、発生農場への手当金についてでございますけれども、令和四年度の支払い対象は七十七の経営体でございました。これまでのところ、四十三の経営体に約七十七億円の交付決定をしたところでございます。

庄子分科員 どうもこの鳥インフルエンザの発生状況というのは少し先が読みにくいところがあって、今のお答えのように、令和四年の数字と令和五年度の今までの数字に物すごい違い、開きがあって、少ないのはもちろんありがたいことなんですけれども、では来年度、引き続きトレンドがそう低い状況でいってくれるかというと、その保証は全くなくて、急に跳ね上がるという年が交互に起きたりしていますので、気を許さずに対応に当たっていただきたいというふうに思います。

 特に、少なかったからこそ、しっかり農水省から、人や車の出入りの際の消毒の徹底だとか、野鳥、小動物を近づけないような対策という、当たり前にやらなきゃいけないことなんだけれども、緊張感が和らいでしまったりすると、それがおざなりになったりする可能性もありますので、是非、緊張感を持った発生予防、蔓延防止に努めていただきたいというふうに思います。

 この手当金についてなんですが、給付までに相当な時間を要しているという声があります。半年から一年近くかかっているよという声がある中で、この手当金の支給、もう少しスピードアップができないかというお声と、それから、例えば概算金払いのような制度の創設を求めたいという声があります。この点について、私からも求めてまいりたいと思いますが、いかがでしょうか。

安岡政府参考人 お尋ねの、発生農場に対する手当金の交付申請でございます。交付申請に当たっては、都道府県による家畜の評価額の算定などが行われた上で、家畜の所有者から農水省の方に交付申請していただくという仕組みになってございます。

 農水省としては、申請されたものから順次手当金の交付手続を進めておりまして、申請をいただければおおむね一か月で交付をしているところでございます。

 では、どこで時間を要しているかと申し上げますと、実態に応じて手当金を給付するという仕組みになっているものでございますので、農場や都道府県の段階で、実際に家禽の生産に要した費用の算出に時間がかかっているのが実情でございます。こうした状況でございますので、手当金については、各農場の実態によって評価額が相当異なります。さらには、飼養衛生管理の状況に応じて減額をするといった仕組みがございますので、慎重に審査をする必要がございますので、残念ながら、現状では概算払いは行っていないところでございます。

 ただ、先生がおっしゃるとおり、迅速に手当金を交付するというのは非常に重要でございます。聞いているところでは、令和四年度の残りの申請についても評価額の算定は進んでいるところでございますけれども、農水省としても、評価に当たって必要な書類を示すだとか、評価額の算定方法について助言をするなどして速やかな算定ができるように支援を行っているところでございますので、都道府県と協力して、迅速に手当金を交付できるよう、引き続き対応してまいりたいと考えております。

庄子分科員 作業の簡素化、そして、概算金等でつなぎをしてあげるという対応の研究、是非今後よろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

伊東主査 これにて庄子賢一君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬場雄基君。

馬場(雄)分科員 おはようございます。馬場雄基でございます。

 坂本大臣、そして農水省の皆様とは初めての国会論戦の機会をいただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ふだん農林水産業を営む皆様や、そして将来に思いをはせながら、本日、御質問させていただきたいと思っております。

 まず、地域計画です。

 とにかく何とかしてくれというふうにお話を、どの場所に行っても、より当事者になられている皆様方からお話を強くいただいているわけでございます。

 この地域計画とは、先ほど庄子委員の話もありましたけれども、農地の集約化を進めるために、地域で話し合い、そして目指すべき将来の農地利用の姿を地図に示すなど、そういったものが挙げられているわけですが、一見、聞こえはいいですし、方向性はこのとおりだと思っていますが、現場は混乱しているわけでございます。それをひもとかせていただきたいと思います。

 まず、定義についてです。こちらはまず農水省さんに伺いたいわけでございますが、地域計画が整うということの具体的なイメージをお伺いさせていただきたいと思います。

 各農家へアンケートを取り、それを単純にマップ化するということで、ワンセットで終わるということなのか。そこから、この言葉どおり、話合いを行い、取りあえずは担い手を定めるというところまでであるのか。あるいは、更に具体的に、より現実的に、十年ということであれば、厳しい作付になる場所もあると思いますから、そういったところまで本気で話し合って、具体的なスケジューリングまで定めていく、そういうふうな具体的なイメージ。どこまで持たれているのか、まず政府の見解をお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、山本(有)主査代理着席〕

坂本国務大臣 地域計画は、昨年四月に施行されました改正農業経営基盤強化促進法や同法の基本要綱に基づきまして、これまで、平成二十四年に人・農地プランというのを作成をいたしました、それを基礎にして、市町村が、農業者との協議の結果を踏まえ、将来の農業の在り方、さらには農地の効率的かつ総合的な利用に関する目標として、農業を担う者ごとに利用する農地を表示した地図等を明確に公表するものであります。

 これは、今後の地域農業の設計図となるものであります。市町村の自治事務として、現場起点、いわゆるボトムアップで策定をしていただくものでありますけれども、現場任せにしてはいけないということもありまして、農林水産省といたしましても、市町村が地域計画というものを着実に策定できるよう、専門家を活用するための支援、これを行います。それから、農業委員会の皆様方、農業委員の皆様方の活動経費、これに対しての支援を行います。予算の確保をします。それから、地域計画の策定方法などをまとめました手引を作成をいたしております。そして、先行事例の紹介や取組のキーパーソンとの意見交換を行います全国会議の定期開催などの取組を進めているところでございます。

 非常に重要な設計図となるものでありますので、今後も、市町村、それから全国農業会議所、さらには各自治体の農業委員会等の関係機関と連携しながら、現場の取組を親身になって後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

    〔山本(有)主査代理退席、主査着席〕

馬場(雄)分科員 坂本大臣、ありがとうございます。

 現場のお話を伺う限り、取りあえず担い手というものを決めればいいのか、あるいは、本気で、十年後を見据えて、しっかりとスケジューリング感も持って本当に具体的にやっていくべきなのか、恐らくこの二つで大きく話が分かれています。

 大臣としては、どちらでお考えになられますか。

坂本国務大臣 それぞれの地域によって非常に違うというふうに思います。中山間地で将来を見通せないところもあると思いますし、平地で担い手がしっかりしているところもあると思います。それぞれの地域の実情に応じて、できる限り、できる範囲の下で十年後を見据えて設計図をまず描いていただけること、それに対して国や県やそれぞれの行政関係がやはり協力をしていきたいというふうに思っております。

馬場(雄)分科員 実情をやはり是非ともお伝えさせていただきたいと思うんですが、国が地域に合わせてというお言葉を使われるのはすごく理解はできるんですが、それによって、地域がどっちを向いていいのかがよく分からなくなり、現場が混乱しているというのが今の実態ではないかなというふうに思います。

 例えば、地域計画の策定に向けた状況という資料を農水省さんが作られていると思うんですが、地区数というのもまた一つの基準になっているというふうに思います。

 令和六年度末までには二万三千三百二十六地区が予定されるというところでもあるんですけれども、市町村数は分かるんです。全体数千七百十八自治体ですから、それから千六百三十六自治体までが完了予定なんだなということは分かるんですが、この地区数というのは規模によって全く概念が変わっていく状況だというふうに思いますけれども、農水省さんとして、この地区というものをどのぐらいの規模で、どのぐらいの範囲で見られているのか、お答えをお願いいたします。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 地域計画は、将来の農地利用の姿を明確化するための、農業を担う者ごとに利用する農地を定め、地図に表示するものであり、その策定主体である市町村、農業委員会の皆様方には、負担がかかる作業に取り組んでいただいているところと認識をしております。

 各市町村では、平成二十四年から人・農地プラン作りに取り組んできていただいたところであります。今回の地域計画については、それを土台として作っていただくことが、協議を円滑に進め、充実したものになることが期待されるとともに、市町村、農業委員会の事務負担の軽減にもつながると考えているところでございます。

 このため、農林水産省から各市町村、農業委員会などに示している地域計画策定の手引におきましては、協議の場の区域について、これまでの人・農地プランの範囲や地域の歴史的まとまりの経緯を参考に設定する旨、記載しているところでございます。具体的には、集落、隣接した複数の集落、あるいは大字、旧小学校区など、地域の実情に応じて柔軟に設定していただくようにしております。

 今後、地域計画のフォローに当たりましては、それぞれ設定された区域の範囲を尊重した上で、各市町村、農業委員会からの様々な御相談に対し親身になって対応してまいりたいと考えております。

馬場(雄)分科員 局長、ありがとうございます。

 ただ、少しちょっと、何か気になってしまったお言葉もあったんですけれども、事務負担の軽減というところは、確かに言葉として使われるのは理解できるんですが、先ほど大臣は、やはり危機感を持ってやっていきましょうということを言われています。事務負担だけを考えるのではなく、将来を見据えて何をやらなければいけないのかというところを確実に、ここは農水省としてリードしていただきたいというふうに思うんですね。

 人・農地プランというのが確かにあったのは、歴史的経緯の中で私も重々承知していますけれども、例えば、今回、地域計画で動いているものを見ると、二千を超える経営体で一つのものを作っているところもあれば、二十、あるいはもっと小さい一桁の経営体で一つの地域計画を作っているところもあるわけでございます。これでいいのかというところが、同じ地域計画として語れる範囲のものであるのかというところは、非常にここは疑問に残るわけでございます。

 二千という形でいうならば、二十の経営体の百個の計画も作れるわけですよね。これはどちらも同じ概念だというふうに農水省が考えているのか、ここだけは確認を取らせてください。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど坂本大臣から答弁をさせていただいたとおり、この地域計画につきましては、十年先を見据えて地域できちんと話合いをしていただくということ、これがまず基本でございます。

 ただ、これまで人・農地プランを策定をしてきた経緯等も踏まえて、それぞれの地域において、やはり、地域の中で具体的にどういった将来の姿を描くのかというところでの、熟度といいますか、違いは、差はあるというふうに考えております。

 そういった中で、地域の実情に応じて策定をしていただくということが非常に重要であるというふうに考えておりまして、やはり、これまで、地域としてのまとまり、地域農業のエリアというのはそれぞれの地域ごとに異なってくるというところがございますので、そういったことを十分、地域の実情を踏まえて、各市町村、自治事務として取り組んでいただくことが重要であるというふうに考えております。

馬場(雄)分科員 ありがとうございます。

 もう一度伺いますけれども、二千以上の経営体で一つの地域計画を作るのと、一桁の経営体で作る一つの地域計画は同じであるというふうに感じていらっしゃるということでいいですか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれの産地、地域によって、どういった数の経営体で地域農業を営んでいるかというのは、やはり地域によって相当差があるというのが現在実情でございます。

 そういった中で、例えば、千を超えるような経営体で一つの産地等を形成しているところ、あるいは、今おっしゃったような非常に少ない経営体で地域農業を営んでいる、それぞれございますので、一律に、数で地域計画として適正かどうかということを、具体的な数で判断をするということは我々としても控えたいというふうに考えております。

馬場(雄)分科員 私、これは全く違うと思います。二千の経営体で一つの地域計画を作るのと、一桁の経営体で地域計画を作るのでは、前提となる、先ほど大臣がおっしゃってくださいました、専門家の派遣も行いますと。その専門家がどういうコーディネートをするかというのも、手法も何も全て、全部前提が異なってしまうわけですから。

 それは、いやいや、地域で決めてくれと農水省さんはおっしゃるかもしれませんけれども、実際の地域で、現場で行う方々にとってみれば、一体どの単位でやればいいのか、そしてどのぐらいの規模をどれくらい本気でやればいいのかというところを分かりかねたときに、農水省さんに聞きたいと思っても、いや、地域に任せますと。それじゃ元も子もないですし、どこに羅針盤があり、どういう方向性を導いていくのかというところに、私は大いなる疑問を抱きかねないものになっているのではないかなというふうに警笛を鳴らさせていただきたいと思います。

 是非とも、ここに関してはしっかりと、どのくらいの規模で、そしてどのぐらいの本気度でやるべきなのかというところは、是非とも、大臣、改めて農水省の意見をまとめていただければというふうに思います。是非よろしくお願いします。

坂本国務大臣 委員のやはり御意見をしっかり受け止めたいと思います。

 ただ、同じか同じでないかということで言えば、私は同じであるというふうに思っております。やはり、自分のところの地域をどうやって将来決めるかというようなことが全てでありますので、その地域でしっかり考えていただきたい。二十経営体のところは人口も千人ぐらいでありましょうし、二千経営体のところは人口も数万人いると思いますので、目指す先は一緒であるというふうに思っております。

馬場(雄)分科員 大臣、ありがとうございます。

 まさに、地域計画という名のつくものは同じだと私も思いますが、そこにたどり着くためのやり方、手法、プログラム、プロジェクトそのものは大きく異なっていくと思いますので、是非その点を取りまとめていただければ幸いでございます。

 今回の予算案でございますけれども、十三億円、令和六年度の予算案の中で、地域計画策定推進緊急対策事業というものが組まれています。こちらについて、具体的にどこにお金を主に使っていくのかなというふうに思っていたんですけれども、大臣の先ほどのお話を伺う限りは、例えば専門家、コーディネーターに対する支援金とかなのかなというふうに思っていたんですが、その点を一度確認させてください。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 地域計画策定推進緊急対策事業では、地域計画の策定に向けた取組を支援しております。計画策定主体の市町村を支援する市町村推進事業、それから目標地図の素案を作成する農業委員会を支援する農業委員会推進事業、さらには市町村の取組をサポートする都道府県推進事業の三本で構成されております。

 具体的には、まず、市町村と都道府県に対しましては、地域での話合いを円滑に進めるための専門家の活用、臨時職員の雇用、正規職員の超過勤務に対する実働に応じた対価、協議の場や説明会に必要な事務等経費、これらを支援対象としております。また、農業委員会に対しましては、目標地図の素案作成に係る経費を支援対象としております。

 令和五年度では、予算額約八億円を措置をし、地域計画を策定する全国の市町村の約三分の一の市町村が取り組んでいるところでございます。これを受けて、令和六年度では、残りの三分の二の市町村が取り組むとして、前年度の約二倍の金額となる十四億円を予算案に盛り込んだところでございます。

馬場(雄)分科員 ありがとうございます。

 私が先ほど地区にこだわったのは、実はこことつながる話でございまして、コーディネーターの数、人数というのも大きく予算に関わってくるものではないかなというのが、まさに局長の話からもよく読み取れました。

 例えばですけれども、A市では、一つの地区で一人のコーディネーターとすれば、予算案としてはそれほどなものにはならないと思いますが、例えばB市で、二百地区あった場合、それぞれにコーディネーターをつけていった場合、予算の規模は膨れ上がります。なので、A市とB市で不公平な予算の在り方になりかねないです。そういったところも含めたバランスを取るためにも、地区という考え方を、農水省さんには是非とも一定程度の方向性を示していただきたいというのが前段の整理の話でしたので、その点、お酌み取りいただければ幸いでございます。今日はこれで大丈夫です。

 少し別な論点なんですけれども、地域計画に、QアンドA、各市町村、分かりやすく説明するために用意しているものもあるんですけれども、ちょっと、ある市役所さんが作られていたQAに、気になりまして、メリットを表示するところですけれども、一定の条件を満たした担い手、ここで担い手になった人ですね、一定の条件を満たした担い手は補助金の拡充を得られると書いてあるわけでございます。しかし、これは、地域計画で担い手となった者たち全員がこれからの補助金の拡充を得られるというわけではないと、逆に読み取れてしまうわけなんですよね。

 農地利用効率化等支援交付金というのを用意されていらっしゃると思うんですが、ここには、担い手と読み取れる分野と、そうじゃない分野も予想されていまして、三つ書いてあるんです。その一つ目は、さっきの担い手です。二つ目が、認定農業者、認定就農者ですね、人・農地プランで書かれているところに該当する方。そしてもう一つ、地域における継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者。この三つが書かれているんです。

 だけれども、これはちょっと失礼な話じゃないかなと思いまして、そもそも、担い手として手を挙げるということは、十年後、しっかりやりますというふうに手を挙げた方ですよね。だけれども、最後の、地域における継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者と改めてまた書かれるというところは、少しやはり気になってしまうというか、そこは信じて、現場と国の呼吸の中でやっていくべきものなんじゃないのかなというふうに思うわけでございます。

 しっかりとその点を、記載のところも含めて、担い手の方々に任せるんだという意思を、どうか農水省の皆さん方からお言葉をいただきたいです。

村井政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘のありました三つのカテゴリー、これは我々、全て担い手ということで捉えて、事業の対象としているところでございます。

馬場(雄)分科員 ありがとうございます。

 だとすると、地域計画に関する例えばQA、各市町村、作られていると思うんですね。そのときに、一定の条件を満たした担い手、わざわざこの枕言葉をつける必要がないと思うんです。それぐらい担い手という価値を農水省は重く見ているんだということをしっかり発信していただきたいですし、各市町村に対して、QAを作るときに、担い手、一定の条件を満たした担い手となってしまうと、萎縮する部分があるんじゃないかなと私は思います。是非その点は御検討いただきたいというふうに思います。信じます。ありがとうございます。

 そしてもう一つ、このQAのところでちょっと残念なところがあるんですけれども、最後の部分とかによく書かれているんですが、これは国の制度であり、随時制度内容の変更が予想されますと書かれてしまう今の国の実態があるのだと思います。

 ちょっと悔しいというか情けないというか、大本の方針でございますので、しっかりこれでやるんだ、変更するときはこういう理由があるときに変更するということをしっかりと国が明言しないと、現場がついてこないというふうに思いますので、大臣、よかったら、その一言、しっかりとこれはやっていくんだということ、是非メッセージをいただけないでしょうか。

坂本国務大臣 しっかりやってまいります。地域計画はあくまでも、将来を、自分たちの地域をしっかりと決める、そういう設計図でありますので、それに対して私たちも全力で支援をしてまいります。

馬場(雄)分科員 ありがとうございます。

 是非省内を取りまとめいただきたいというふうに思いますし、現場から何か不安の声が上がったときに、今日大臣からそのお言葉をいただいたということをしっかり私も伝えて、地域計画が実りあるものになっていくために、私も歯車の一つになっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 続いて、有機農業に移りたいと思います。

 こちらも地元要望が強かった分野でございますけれども、農水省さんにまず伺いますが、みどりの食料システム戦略で描かれました二〇五〇年の絵姿でございます。有機農業、取組面積百万ヘクタールのものでございます。二〇一七年が二万ヘクタールぐらいのものですから、約五十倍を目指すという値ですが、こちら、政府はまず本気であるのかどうかということ、ここだけまず伺いたいです。

坂本国務大臣 これは本気でやります。耕地面積の二五%に及びます百万ヘクタール、これを何としてでもやはり実現したいというふうに思っております。

 世界の流れがそのようになっておりますし、そして、除草ロボットとかいろいろなものをつけて、支援をして、やはり有機農業は自分たちでもやれるんだというような意識をしっかり皆さんたちに持っていただくこと、そのことによって有機農業というものを普及をさせていきたい、最終的には二〇五〇年百万ヘクタールを目指す、成し遂げる、そういう覚悟で立案をしたところでございます。

馬場(雄)分科員 大臣、ありがとうございます。

 まさにこの大臣の今の覚悟と、そして現場の有機農業を営まれている皆様の現状が、大きな今ギャップの中にあるような気がしてなりません。そのギャップをどう埋めるのかというのが今の農水省の皆様方に求められている使命だと思うわけでございますが。

 有機農業を営まれている皆様方のお声を、いっぱいあるんですけれども、単に一つ挙げることができるとするならば、価格です。慣行栽培で行うものと有機農業で行うもの、市場に出てくるときはほとんど同じ金額で出てきてしまいます。しかし、ハイリスク・ローリターンの状態でございまして、自然災害のリスクや、作付でしっかりと実りある量が取れるのかどうかというそのリスクにも有機農業はありますし、また、有機JAS、それを取得するためのコストもかかっていますが、市場に出てくるときの価格は同じになってしまうということでございます。

 一番地元の方々からもよく言われていたのが、この価格差についてどうにかしなければ、今の既存の有機農業栽培者も継続することが難しい。この価格差を埋めていく方針、埋めていく覚悟、これは補助金とか支援金とかの話になるかもしれませんが、そのぐらいの覚悟が国にあるのかどうかというところ、是非ともお答えいただけないでしょうか。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、やはり有機栽培は、普通の慣行栽培と比べまして、慣行というのは普通の栽培ですね、と比べますと、やはり一・五倍から二倍程度高くなります。これは、有機農業を評価する消費者のニーズがありますけれども、有機農業では、やはり除草などで労力がかかる、あるいは病害虫の発生等により収量が減少する、様々なやはりリスクを抱えての栽培でございます。

 二〇五〇年の目標達成までには、私たちは、やはり有機農業に対するかかり増し経費とか、様々な、慣行農業とはまた別の観点で支援しなければならない部分とか、そういったものを支援しながら有機農業の裾野を広げていきたい、一方の方で消費者の方の御理解も得たいというふうに思っております。

馬場(雄)分科員 坂本大臣、ありがとうございます。是非御期待申し上げますし、そのことも含めて、地元に帰ってしっかりとお伝えして、一致団結して臨めるように頑張りたいと思います。ありがとうございます。

 最後に、林業の分野について伺いたいと思います。

 本日は、経営管理制度に着目させていただきたいと思いますが、これは、森林所有者が経営管理できない森林について、市町村が仲介役となり、森林所有者と林業経営者とをつなぐ制度のものになっております。こちらも、方向性は正直これしかないというふうに思いますけれども、現実的な問題がたくさん多くございます。

 想定内の話でございますけれども、今行っている意向調査があると思うんですけれども、この意向調査に基づいて経営管理権の集積計画が出ますけれども、現在の事業体の整備可能量を大幅に超えてくる可能性は極めて高くあると思いますし、加えて、職員の増員がなかなか見込めない中で、担当部署の業務対応可能量をこれまた大幅に超えてくる可能性が極めて多くあると思います。

 そこで、林野庁に伺いたいんですけれども、ありがとうございます。意向調査を終えて、やはり予算が足りなかったとか、やはり体制が整わなかったというのは、これは話にならないというふうに思いますけれども、この体制、十分に整っているというふうに言っていただけないでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 森林経営管理制度につきまして、現在は、意向調査も含めまして頑張っているところでございますけれども、まだまだ現場の状況というのが、準備の段階といいますか、地籍調査も進んでおりませんので、まだまだこの制度にのっとってしっかりと経営管理権を設定して森林整備に至る状況になっておりませんので、現在の予算で十分対応できているところでございます。

 今後とも、森林整備予算、非常に頑張って確保していきたいと考えております。

馬場(雄)分科員 今のお言葉ですと、ちょっとやや不安になるといいますか、現時点で今の予算ならというお言葉ですよね。

 将来はもう見据えるわけができる状態になってきていまして、意向調査がなければ見据えられないというわけではないと思います。現時点において意向調査を取られているところも既にあるわけですし、もう結構な量増えてきているなというのは、実感として林野庁も認識していることだというふうに思います。ここは信じます。

 ですが、それを見据えた上で、本当に今の予算体制でいいのか、今の体制でいいのかは、正直、これは今の方が考えないと先送りされてしまうだけになってしまうので、その先送りしない状態を林野庁さんにつくっていただきたい。その点の明言をいただけないでしょうか。

青山政府参考人 今後とも必要な森林整備事業等の予算も確保してまいりますし、森林環境譲与税につきましては、令和六年度から、譲与額が五百億円から六百億円に増額されてまいります。必要となります人工林等についての整備予算、ここで賄っていくことができると考えております。

馬場(雄)分科員 そのお言葉を信じたいんですけれども、森林譲与税の使われ方というのも、今までは、教育プログラムとして使われていたような使われ方もありますよね。森林を整備するだけじゃなくて、教育として、森のことを知ろうということにも使われていたというふうに思います。

 でも、ここから必要なのは、まさにリアルに森をどうするか、山をどうするかというところに大きな予算が組まれていかなければいけない状態になっていくと思いますので、その部分の、教育も重視しながら、ハード面の整備も意識したものに変えていかなくてはならないんだということを、まずもって、知っていらっしゃると思うんですけれども、その整備というもの、環境というものを是非ともつくっていただきたいと思います。

 最後に、大臣に伺いたいと思いますけれども、ここ、何とか市場の原理をつくりたいんですけれども、市場の原理ではなかなか国産材は使われていない状況でございます。なので、例えば、公共財の建て直しとか今始まっていきます。ビルとかも造っていきます。戸建てに関する国産材の利用というのは今結構ありますけれども、より大型化したものに関しても、木の利用、国産材を潤わせていくための市場をつくっていくための一押しを、メッセージを大臣からいただけないでしょうか。

坂本国務大臣 最も森林・林業振興のためには大事なところでありますので、私たちはこれまでも、公共施設、木造で、学校も含めて造っていきましょうというようなことをやってまいりました。それから、CLT等を開発をして、そして高層ビルも木造でやりましょうというようなこともやってまいりました。こういう中高層建築の、住宅以外の建築物でも、やはり木造建築、こういったものをしっかりと今後増やしてまいりたいというふうに思っています。

馬場(雄)分科員 木を切って、植林して、育てる、この順回転、皆様と一緒につくりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊東主査 これにて馬場雄基君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

伊東主査 次に、環境省所管について政府から説明を聴取いたします。伊藤環境大臣。

伊藤国務大臣 令和六年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その基礎となる環境政策の基本的な考え方を御説明申し上げます。

 まず、令和六年能登半島地震によりお亡くなりになられた皆様に心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。被災地域における早期の復旧復興に向け、過去の災害対応の知見や経験も踏まえて、し尿、廃棄物の処理やペット関連の対応等、被災市町村のニーズに即した支援に全力で取り組んでまいります。

 東日本大震災、原発事故からの復興再生の推進については、特定帰還居住区域における除染や家屋等の解体を着実に実施してまいります。また、福島県内除去土壌等の県外最終処分についても、技術的な検討や全国での理解醸成等の取組について、責任を持って進めてまいります。さらに、放射線健康管理やALPS処理水に係る海域モニタリング、福島再生・未来志向プロジェクトを推進してまいります。

 ネイチャーポジティブについては、民間の自主的な取組によって生物多様性が保全されている場所である自然共生サイトの認定促進や、国立公園における滞在体験の魅力向上の取組等を進めてまいります。

 気候変動対策については、二〇五〇年温室効果ガスのネットゼロに向けて、地域、暮らしの脱炭素化を主導します。地域の観点では、地域と共生する再生可能エネルギーの導入拡大に加え、地域の脱炭素化と地域課題の同時解決に貢献する脱炭素先行地域の創出や脱炭素の基盤となる重点対策を全国で実施し、地方公共団体が主導する脱炭素化を加速します。暮らしの観点では、脱炭素につながる個人の取組を促す新たな国民運動、デコ活を通じ、脱炭素型の製品等の需要を喚起するとともに、住宅、建築物の脱炭素化の推進等を進めてまいります。また、船舶のゼロエミッション化、先進的なリサイクル設備への投資等、GX推進にも取り組んでまいります。

 サーキュラーエコノミーについては、プラスチックや金属等の資源循環を推進するとともに、新たな国民運動、デコ活とも連携しながら、食品ロス削減やサステーナブルファッションの推進に取り組みます。あわせて、今般の能登半島地震での対応等を踏まえた災害廃棄物対策の強化、一般廃棄物処理施設や浄化槽の整備等を進めてまいります。

 国際関係については、二国間クレジット制度、いわゆるJCMを推進し、アジアを始めとする世界全体のネットゼロに大きく貢献してまいります。また、プラスチック汚染に関する条約交渉でも主導的な役割を果たしてまいります。

 加えて、公害健康被害対策、石綿健康被害者の救済、エコチル調査、熱中症対策、花粉症対策、有機フッ素化合物、いわゆるPFAS対策、水道の水質、衛生管理、海洋ごみ対策、ヒアリ等の外来種対策、昨年、人身被害が相次いだ熊に関する対策を含めた鳥獣保護管理、希少種保全、動物愛護管理等の取組を進めてまいります。

 原子力規制委員会については、厳格な原子力規制活動を支える安全研究の推進及び放射線モニタリング体制の強化を図るとともに、原子力の安全確保に係る人材基盤の強化等に取り組みます。

 これらの施策を実行するための令和六年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について申し上げます。

 一般会計予算では総額三千二百七億円余を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、エネルギー対策特別会計に総額二千三百四億円余、東日本大震災復興特別会計に復興庁所管予算として総額二千五百一億円余を計上しております。

 なお、環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要な施策については、お許しを得て説明を省略させていただき、委員のお手元に資料をお配りさせていただきました。詳細は、お手元の資料を御覧いただきますようお願い申し上げます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

伊東主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま伊藤環境大臣から申出がありました環境省関係予算の主要施策の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊東主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊東主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。東国幹君。

東分科員 まず、適正処理困難物の指定についてお伺いをさせていただきます。

 はるか前になりますけれども、平成三年十月の廃棄物処理法の改正によって、適正処理困難物の指定制度が導入されました。

 これは、当時の厚生大臣が、一般廃棄物の処理に関する設備及び技術に照らしその適正な処理が全国各地で困難となっている、そう認められるものを指定するとともに、市町村は、当該指定された一般廃棄物になる前の製品、容器等の製造、加工、販売等を行う事業者に対して、その処理が適正に行われることを補完するために必要な協力を求めることができるというものでありますけれども、現在、この規定に基づき指定されている品目及びその指定の背景についてお伺いします。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、廃棄物処理法第六条の三第一項の規定に基づき指定されております一般廃棄物は、廃ゴムタイヤ、廃テレビ受像機、廃電気冷蔵庫、廃スプリングマットレスの四品目でございます。

 これらの一般廃棄物は、全国の市町村を対象に平成四年に実施いたしました廃棄物の適正処理困難性に関する調査の結果に加え、四つの基準、すなわち、全国的に処理している市町村の多いもの、処理が困難と回答のあった市町村の割合が高いもの、販売店等による引取りのルートを整備することが適正な処理を確保する上で有効なもの、指定することにより引取りルートの整備が促進されるものの四つの基準を踏まえ、指定されたものでございます。

東分科員 御回答があったんですけれども、四品目の中で、廃ゴムタイヤなんですけれども、これだけは自動車の部品なんですが、それが指定に至った経緯、そして、地元の整備工場の現状を見ると、廃タイヤの処理も課題になっているんですが、廃タイヤはどのような処理がなされているのか、お答えをいただきたいと思います。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 平成四年に実施いたしました廃棄物の適正処理困難性に関する調査において、廃ゴムタイヤにつきましては、廃棄物処理施設の設備の損傷などを理由に、処理を行っている市町村は全体の約三割にとどまり、また、当時、野焼きや不法投棄による環境汚染が社会問題となっておりました。

 このため、廃ゴムタイヤの製造事業者等による処理体制を構築し、適正な処理体制を速やかに確立するため、廃棄物処理法に基づく適正処理困難物への指定を行ったものでございます。

 タイヤ交換等に伴って一般家庭から排出される廃棄物は一般廃棄物となりますが、廃棄物処理法等の規定に基づき、自動車整備工場等の協力を得ることにより、適正な処理を行うことが可能となっております。

 具体的には、自動車整備工場等に運び込まれました一般廃棄物の廃タイヤは、自動車整備の過程で発生する産業廃棄物の廃タイヤと併せて、主にセメント工場において原燃料として利用されるなど、適正な処理が行われているものと承知しております。

東分科員 廃タイヤは適正に処理されている、これは理解をするんですけれども、四品目の中で、自動車の部品と言われるものは、私は廃タイヤだけだと思うんです。だけれども、所変わって、整備工場の現状を見てみると、ボンネットとかミラーだとかをかなり整備をするよと。壊れた、破損したものは、実は廃棄物の処理料というものは整備工場は徴収できません。しかし、廃タイヤの場合はできるんですよね、処理料をもらうことができるんです。

 何を言いたいかというと、整備工場から出た部材というのは、壊れたよ、ボンネットを替えました、ミラーを替えました、これは一般ユーザーに持って帰ってくださいというのが実は今の制度設計では適正なんだけれども、日本型の商行為ではそういうことにはならないんですよね。うちで引き取らざるを得ない、でも処理料は整備工場が払っているという現状なんです。ということになりますと、整備工場は合理的でない支出を払っているということになると私は思うんですよ。でも、タイヤの場合は、タイヤ屋さんは処理費をもらうことができるということ。修理工場はもらえない、はっきり言って自分が泣いているわけなんですよね。

 ですから、私は、いろいろな制度設計はあるけれども、タイヤと同じように、ボンネットとかミラーだとか、そういったものも整備工場が処理費を一般ユーザーから加算できるような仕組みというのは考えられないだろうか。そういうことなわけなんですけれども、自動車整備工場で適正な処理がなされるべきと考える、そういうことに関して、どうでしょうか。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 自動車整備の過程で発生いたしますボンネットやミラーにつきましては、事業活動の一環で発生するものでございますので、自動車整備工場におかれましては、排出事業者として、産業廃棄物の処理業者と契約するなど適正な処理を行っていただきたいと考えておりますので、こうした中で適正に対応していただければと考えてございます。

    〔主査退席、山本(有)主査代理着席〕

東分科員 おっしゃった答弁は、当たり前なことなんですよ。

 はっきり言って、ボンネットを持っていってくださいということになると、これは家庭が処理する部分になるものだから、事業者の手から離れる。だけれども、ボンネットもミラーも、回収したり直したりしたら。直しても、一般ユーザーの所有物なんですよね、本来だったら。じゃ、それを家庭に例えば持っていったとしたらどういう処理をしなければならぬのかといったら、これはもう家庭の中で何とかせぬと駄目なものなんです。

 事業者の中でこれを加算したら、自動車の整備工場というのは処理業者じゃないものだから、処理費というのはもらうことはできない、もらったら違法ということになるものですから、かなり、ちょっと難しい問題があると思うんです。

 これからもいろいろな場面でこの問題はちょっと論議させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 あと、次、熊による被害が多くなってきております。

 林道、砂防ダム工事、測量工事、災害復旧、送電線のパトロール、アメダスの機器の管理だとか、とにかく山に入る職業というのはかなり多いわけなんです。その都度ハンターは随行してちゃんと安全の確保をしていかなければならないんですが、ハンター不足、これはもう顕著になっております。

 新人ハンターの発掘と育成に努めてきてはいるものですけれども、現行の法律は、ハンターの持っている銃なんですけれども、散弾銃を十年所持しなければライフル銃の所持はできない。

 それに対して、散弾銃の有効射程というのは五十メートルから百メートル、熊を確実に射獲できるグルーピングは三十メートルから五十メートルであるということ、それ以上の距離では半矢になる可能性が多くて引き金を引くことはできないということ。

 ハーフライフル銃であれば、練習と経験によって、百五十メーター程度までは熊を確実に射獲できるわけなんです。ハーフライフル銃は、散弾銃と比べ特別威力が強いわけではないんですが、有効射程が長くて、遠くの獲物を正確に狙えるということが利点なんです。正確性でも有効射程でもライフル銃にかなわないけれども、鹿対策や熊対策に当たる場合、距離を取って正確に命中させ捕獲することがハンターの身を守るために必要となるわけなんです。

 熊と鹿の急速な増加、熊が鹿を常食とする状態も生んでおります。幸いなことに人身被害の報告はまだないんですが、銃やわなで捕獲した鹿を回収しようとするときには、熊に威嚇される、熊に鹿を横取りされるという報告が数年目立っております。

 私の地元のほとんどの十年未満のハンターがハーフライフルを使用しているんですけれども、そのためであり、ハーフライフル銃を使用している。鹿対策にも熊対策にも必要な道具がハーフライフル銃なんです。

 指定管理鳥獣に指定されて、鳥獣捕獲等事業が実施されようとしている中で、上記の課題は理解を深めていただくべきと思いますけれども、環境省としてどのような認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。

堀上政府参考人 お答えいたします。

 環境省といたしましても、北海道のように、猟銃を用いた鳥獣の捕獲において、散弾銃よりも長い射程距離を必要とする地域では、ハーフライフル銃の使用が重要であると認識をしております。

 また、北海道の関係者は、北海道での鳥獣の捕獲に頻繁に用いられているハーフライフル銃につきまして、新たに所持する場合の条件が厳しくなることによって、エゾシカやヒグマの捕獲について新たな担い手の確保に悪影響が生じることを懸念されていると承知しております。

 今般検討されております銃規制の強化によりまして、鹿や熊等の捕獲に支障が生じることのないように、警察庁、農林水産省、林野庁及び環境省の担当者間で検討を重ねているところでありまして、現場の状況を踏まえて、環境省としても必要な意見を述べてまいりたいと考えております。

東分科員 駆除についてハーフライフル銃を持たせるということなんですけれども、現在も駆除目的の所持についてはライフル銃十年規制はないんですが、今回の、この度の法案の規制では、駆除についてのハーフライフル銃の所持を認めようとする内容も含まれているというふうに聞いているんです。

 ただ、有害鳥獣駆除は居住する市町村で行うのが通例なんですが、野生鳥獣には市町村の境界は関係がないわけなんです。居住する市町村から近隣町村に逃げ込まれると、駆除員としては手出しはできないということになります。そのため、有害鳥獣駆除を熱心に行っても、近隣町村に逃げ込まれ、また夜間に侵入され被害を受けるということが往々にしてあるわけなんです。

 例えば、策定している鹿管理計画、熊管理計画など、自治体でやっているものがあるんですけれども、狩猟による鹿や熊のコントロールを目指しておりますが、現状はそれが達成できていないために、それを補完するために、有害鳥獣駆除による個体数調整を狩猟に加えて行っているものです。

 それらの計画の中心はあくまでも狩猟であって、狩猟でハーフライフル銃を使えないことは、自治体の野生鳥獣の保護管理の推進にとって、大きな痛手になるわけなんです。

 現在も、駆除目的であれば、ライフル銃について、散弾銃十年の所持経験はなくても所持が認められる旨の警察庁の見解や国会答弁はあるんですが、実際に地元ではそれらに関する運用はほとんどされていないんです。運用されている場合でも、各市町村一名あるいは二名程度であるということ。その程度では、鹿対策、熊対策に当たる絶対人数が足りないわけなんです。

 そういったことから、若手のハンターへの参入が減ってきているということ、人口が減っているということになれば、特例所持の運用によって鹿対策、熊対策に当たることはかなり難しい現状になると思うんです。

 令和二年には、熊の出没多発等を受けて、警察、農水省、林野庁及び環境省による熊被害対策に関する関係省庁連絡会議が設置されておりますけれども、そのような会議体で上記の課題を論議することができないのか、また、その会議体の役割、そういったこともお伺いしたいと思います。

堀上政府参考人 御指摘の熊被害対策等に関する関係省庁連絡会議につきましては、熊類の地域個体群の存続と人間とのあつれき軽減の両立を目指して、令和二年十月に設置されているというところでございます。

 議員御指摘のとおり、今般検討されている銃規制の強化により鹿や熊等の捕獲に支障が生じることのないよう、引き続き、関係省庁が連携して必要な対応を検討してまいります。

東分科員 銃の使用の許可等々は公安委員会であるということを承知をしているんです。しかし、どうも縦割りというのが目立ちますので。

 銃の規制については、公安委員会はやはり一生懸命なんですよね。だけれども、そのベクトルでずっと進んでいくと、これは有害鳥獣の捕獲等々に支障が、大きな影響が出るということは、皆様方は御理解を得ていると思うんです。あとは、そういった関係省庁の連絡会議等々、これは私は重要な役割だと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げたい、このように思うばかりでございます。

 次に、カーボンニュートラルの実現に向け徹底した省エネ、脱炭素電源の利用促進などを進めると同時に、脱炭素が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠であると考えることから、CCSの導入を進めているとのことですが、これまでに行ってきた取組と今後の進め方についてお伺いします。

土居政府参考人 CCSは、二〇五〇年ネットゼロの実現に向けまして、重要な技術の一つだと認識しております。

 これまで環境省では、CCSの早期の社会実装を進めるため、二酸化炭素の分離回収、輸送、貯留及びモニタリングについて、コスト低減や環境保全を図るための検証等を進めてきたところでございます。

 また、海底下で実施するCCS事業につきましては、海洋汚染等防止法に基づきまして海洋環境への影響を審査してきたところでございまして、本国会に提出しております二酸化炭素の貯留事業に関する法律案におきましても、海洋環境の保全の観点から必要な対応は、引き続き環境省が担当するということとなっております。

 環境省といたしましては、CCSが環境保全と調和する形で適切かつ迅速に実施されるよう取組を進めていく所存でございます。

東分科員 貯留実績のあった地域があるというふうに踏まえておりますけれども、課題とか問題点はなかったのかどうか、お伺いします。

土居政府参考人 北海道苫小牧市では、経済産業省の実証事業といたしまして、海底下CCS事業が実施されております。

 本事業は、海洋汚染等防止法に基づく環境大臣の許可を受けて実施され、既に計画どおり約三十万トンの二酸化炭素の圧入を達成しているところでございます。

 これまで、海洋環境の保全の見地から大きな問題が生じておらず、漁業関係者を始めとしました地元の御理解を得て事業が進められているということから、事業全体としましては大きな問題がなかったというふうに認識しております。

東分科員 日本列島の場合、先般の能登半島の大地震に象徴されておりますけれども、日本列島の中でかなりのやはり不安定な地盤というものがあるわけなんです。地震列島と呼称されているとおりでございますけれども。

 試掘、貯留事業の許可制度並びに貯留事業に係る事業規制、保安規制の整備などは制度設計として整えていると推察するわけなんですけれども、貯留地域の理解が重要だと思いますけれども、地元自治体の関係者への合意形成の考え方についてお伺いしたいと思います。

土居政府参考人 委員御指摘のとおり、苫小牧実証事業の例から見ましても、自治体や関係者等の地元の御理解、これは重要だというふうに考えております。

 先月公表されました、今後の海底下へのCCSに係る海洋環境の保全の在り方に関する中央環境審議会の答申におきましても、事業の対象となる地域の状況に応じ、関係者との対話を通じ信頼関係を構築していくことも重要だというふうにされております。

 また、海洋投棄を規制いたします国際条約でありますロンドン議定書のガイドラインにおきまして、市民による審査及び参加のための機会が設けられることが推奨されるとされていることを踏まえまして、現行の海洋汚染等防止法の許可制度におきましても、広く国民からの意見提出の機会を設けているところでございます。

 こうしたことも踏まえまして、今国会で提出されております二酸化炭素貯留に関する法律案におきましても、利害関係者の意見提出や自治体への協議規定を設けることとしておりまして、引き続き、自治体や関係者等の地元の御理解の下で事業を進めることが重要だというふうに考えております。

東分科員 そういった地元合意形成の基になるのは科学的な知見だと私は思っているんですね。科学的な実証だとか、そういう根拠を持って合意形成の場に当たるということだと思うんですけれども、これは全国に存在する、例えば深地層研究施設など、そういった活用も考えられるのではないかと思いますけれども、見解をお伺いしたいと思います。

土居政府参考人 今国会に提出されている二酸化炭素の貯留事業に関する法律案では、海域で実施される貯留事業につきましては、事業予定地である特定区域を経産大臣が指定する際に、環境大臣の同意を得ることとされております。

 CCSが環境の保全と調和する形で適切かつ迅速に実施され、地元の御理解を得るためには、御指摘ありましたとおり、CCS事業が実施される区域の地盤や地層についての科学的知見は非常に重要だというふうに考えております。

 お話がございました深地層研究施設が保有する情報を含めまして、必要な科学的情報を不断に収集し活用してまいりたいというふうに考えております。

東分科員 そういった施設を是非活用していただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。

 残余の質問はあるんですけれども、時間でございますので、これで終了させていただきます。

 ありがとうございました。

山本(有)主査代理 これにて東国幹君の質疑は終了いたしました。

 次に、河西宏一君。

河西分科員 公明党衆議院議員、比例東京ブロック選出の河西宏一と申します。

 本日は、地元東京、特に二十三区に係るビルピット汚泥の収集運搬の課題について、伊藤大臣を始め環境省の皆様に質疑を賜りたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず早速、今日はお配りした資料を御用意いたしました。資料一にありますように、ビルピット、またその汚泥とは何ぞやということなんですが、ビルピット、建物の地下に設置をされた排水設備の一つであります。なぜこれが必要かということでありますけれども、ビルのトイレ排水あるいは厨房等の排水は、地面より高い地上階にあるものは下水道に流せるわけでありますけれども、地面より低い地下にあるトイレや厨房等の排水については、一度、地下のビルピットに貯留をいたしまして、そして水は排水ポンプでくみ上げて下水道、そしてその他の残渣物はビルピットにためる必要がありまして、この残渣物をビルピット汚泥というふうに呼ぶわけでございます。

 このビルピット汚泥は、廃棄物全体の量からすれば僅かであります。僅かでありますが、その収集運搬を怠れば悪臭あるいは硫化水素によるコンクリートの腐食ということで、衛生面、安全面、また、場合によっては防災、減災の面からもこれは悪影響を及ぼすんだろう、このように思っております。

 まず、基本的なことからお伺いをいたしますが、ちなみに、トイレ排水はこの図にあるように汚水槽へ、そして厨房等の排水は雑排水槽へ別々に貯留をされて、当然そこにたまるビルピット汚泥も、汚水槽、雑排水槽、それぞれに貯留をされます。つまり、ビルピット汚泥の収集には二つのマンホールを開ける必要があるわけでございます。

 その上で、実は、ビル一棟に対しまして出動する収集車、いわゆるバキュームカーでございます、このバキュームカーも毎回の収集運搬ごとに二台体制で出動する必要があるわけでありますが、まず、これはなぜなのかということを、御見解、参考人にいただきたいと思っております。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、廃棄物処理法上、トイレ排水に由来する汚泥はし尿を含むために一般廃棄物に、厨房等に由来する汚泥は産業廃棄物に該当いたします。

 一般廃棄物の収集運搬に当たりましては一般廃棄物収集運搬業の許可が、産業廃棄物の収集運搬に当たりましては産業廃棄物収集運搬業の許可が、それぞれ必要となります。こうしたことから、ビルピット汚泥の回収に当たり、それぞれの許可のみを持つ処理業者の収集運搬車両が出動する場合には、二台での対応が必要となるものと考えております。

河西分科員 御説明ありがとうございます。まさにそのとおりでございまして、し尿を含むものは一般廃棄物、それ以外は産業廃棄物ということで、それぞれの許可を得た車両が出動する必要があります。

 しかも、一般廃棄物においては基礎自治体において様々の許可を出しているわけでありますけれども、東京二十三区それぞれの一般廃棄物の取扱要綱というものがございますが、ここには、一般廃棄物の運搬車は区長が許可する一般廃棄物収集運搬業の専用車両とすることということになっているわけでございます。

 したがいまして、ビル一棟におけるビルピット汚泥収集も、一廃の収集車両とは別に、産廃の収集車両を出動させて、そして二台体制で、場合によってはコインパーキングとかも、都内は土地が少のうございますので、なかなかもう一台を止めておくこともできないということで、その人員なんかも出動させながら、人手も二倍かかって処理場へ運搬をしているということでございます。

 その上、次の資料二を御覧になっていただきますと、実は、一廃と産廃のビルピット汚泥はいずれも、混合処理が可能な民間処理場、二十三区内には二か所ございますけれども、そこに持ち込まれまして、一廃、産廃、共通の投入口に投じられまして生物処理が行われます。すなわち、このビルピット汚泥、貯留、収集運搬は、一廃、産廃で二つに分かれる、二手に分かれるわけでありますけれども、処理から先は一緒くたになるわけでございます。

 しかも、ビルピット汚泥の処分に係る料金、これは事業系ですので一廃も処理料金がかかるんですが、一廃も産廃もいずれも同等の処理料金で行われているということでございます。

 したがって、衛生面、また環境面、廃棄物行政への実質的な支障、これはしっかりと気にしていかなければなりませんが、また、当然、先ほど次長から御答弁いただいたとおり、事業者の方が一廃、産廃、双方の許認可を得ていること、これが大前提になりますけれども、これを前提とするならば、整うのならば、人手不足、また、昨今言われております労働生産性の向上、そしてまた、環境省の皆様が推進をされておるCO2の削減、その観点から合理化、効率化を図って一台体制にできないのかということが、実は二十三区においてずっと業界内で議論をされてまいりました。

 こうした中で、環境省の方から令和三年九月三十日に、ちょっと少し長いんですが御紹介させていただきますと、「第十二回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースを踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について」という通知を出していただきました。これは、以下、令和三年通知と呼称させていただきます。

 まず、ちょっとこの内容について確認をしたいんですが、この当該通知においては、一般廃棄物と産業廃棄物を混載して運搬しても差し支えないと明記をされております。ただし、混載するための条件が幾つか示されているわけでありますけれども、これについて御見解をいただきたいと思っております。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省におきまして令和三年に発出した通知におきましては、一般廃棄物と産業廃棄物とを混載して運搬するために必要な条件といたしまして、一般廃棄物と産業廃棄物が同様の性状を有すること、当該一般廃棄物と産業廃棄物の両方の収集運搬業の許可を有する処理業者の運搬車で運搬すること、一般廃棄物と産業廃棄物のそれぞれの数量を適切に把握できること、この三点をお示ししているところでございます。

河西分科員 明快な御答弁をありがとうございます。実際に記載をされているものから、更に抜き出して整理をしていただきました。

 今御答弁いただきましたように、廃棄物が同様の性状であること、同じような状態又は性質、物質としてですね。そして、先ほどもこれは確認をいたしましたが、収集運搬事業者の皆様が一廃と産廃、双方の許可を有すること。そして、これが大事なんですが、数量を適切に把握できること。この三条件が整えば、混載して運搬しても差し支えない。それは当然、労働生産性の向上、また、走る収集車の台数が減りますので、全部電気自動車になる時代はまだちょっと先でございますので、CO2削減にもなるんだろう、こういう観点で発出をしてくださった、そのように理解をさせていただいております。

 なお、今日取り上げておりますビルピット汚泥に関しましては、事業者の皆様から、実際、この汚泥のそれぞれ、し尿混じりとそれ以外のもののサンプルの写真を、ちょっと今日は資料三としてお配りをさせていただきました。ここにあるように、トイレから出るし尿混じりの汚泥と、厨房等から出るいわゆるそれ以外の汚泥、これは雑排水槽の方にたまるものでありますけれども、これはいずれも流体物であります。つまり、同様の性状であるというのは、この写真からも争いがないところというふうに承知をしております。都内でも、ここの部分は余り争いがないわけであります。

 その上でなんですけれども、収集運搬事業者が一廃と産廃、双方の許可を有すること、これは先ほどの条件の第二に掲げていただきました。先ほども申し上げましたように、東京二十三区においては、一廃は特別区から、そして産廃は法定受託事務ということで都の方から許可を得るということで、産廃の許可を得ますと、都内全域、多摩地域も含めて走れるようになるわけでございます。

 その上で、こういったことを踏まえながらこういう議論をしていきますと、一廃と産廃の混載を仮に可とした場合の懸念点として、汚泥収集を行うその地域において、産廃の許可しか持っていない事業者の方が、一廃であるし尿混じりのビルピット汚泥を不適切に混入させてしまうのではないか。例えば東京ですと、杉並区と武蔵野市というのは隣り合っておりますけれども、杉並区の一廃の許可しか持っていないのに武蔵野市でし尿混じりの汚泥を入れてしまったら、これは許可を持っていないということになります。そういったことがあるのではないかという懸念が寄せられるわけでありますが、それは処理場にそのまま運搬されてしまって、自治体行政の皆様が日々、また月々、年々に管理をされている廃棄物の数量の把握が正確にならないのではないか、こういう御懸念があるわけであります。

 ただ、ちょっと資料四を見ていただきますと、実は、これは単純にくみ上げて運んでいるということではなくて、一廃と産廃それぞれ、搬入伝票、また管理票で管理をされておりますので、基本的には、実務上こうした混入するという事態は私は考えにくいというふうに思っているわけであります。

 その上で、実際に今申し上げたような不適切な混載が行われた場合、どのような罰則があるのか、これについても念のため御見解をいただきたいと思っております。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 仮に、一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない産業廃棄物収集運搬業者が一般廃棄物の収集運搬を行った場合、一般廃棄物収集運搬業を無許可で行ったものとして、廃棄物処理法第七条第一項違反となります。この場合、廃棄物処理法第二十五条第一項第一号に基づき、五年以下の懲役又は一千万円以下の罰金等の罰則の対象となります。

河西分科員 御答弁ありがとうございます。

 まさにそういった罰則規定があり、そして、そういったことが起きないように、こういった搬入伝票あるいは管理票、いわゆるマニフェストというふうに言われますけれども、こういったもので日々、収集運搬、また処理が行われているということでございます。

 その上で、ちょっとここから細かいところに入っていきたいんですが、搬入伝票や管理票、ここは私も実際サンプルも拝見をいたしました。廃棄物の排出者、ビルであればビルの管理者等になります。そして、収集運搬事業者、これは運搬の受託者。そして、廃棄物の受入れ施設、先ほどの生物処理を行うところということでありますけれども、処分の受託者。あとは、運搬や処理の日時、そして、廃棄物の種類や数量を記載するような様式になっているわけであります。

 この数量について確認をしたいと思います。廃棄物の数量について、これは伝票によって、単位が書いてあるもの、また書いていないもの、書いてあってもキログラムとリッター両方書いてあったりするわけでありますけれども、これは、質量、いわゆるキログラムで把握すべきか、あるいは体積、いわゆるリットルですね、リッターで把握すべきか。これは国の法令等による縛りがあるのかないのか、これについても御見解をいただきたいと思っています。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 廃棄物の数量につきましては、一般廃棄物については帳簿に、産業廃棄物については産業廃棄物管理伝票に、それぞれ記載する必要がございますが、廃棄物処理法上は、記載する数量の単位に関する定めはなく、それぞれの自治体において適切に判断していくこととなっております。

河西分科員 ありがとうございます。特にそういった縛りはないということでございました。

 その上で、先ほど御紹介した環境省のいわゆる令和三年通知では、このように数量の適切な把握について書いてあります。ロードセル等の機器で搭載する廃棄物の数量を計測すること等により、それぞれの廃棄物、いわゆる一廃と産廃の数量を適切に把握することができること、これが条件の三番目として提示されているわけでありますが、ロードセル等で計測というふうに具体の計測方法が表示をされている。

 実は、ちょっとこれが今現場でネックになっておりまして、これはロードセル等とありますけれども、ロードセル以外の機器や計測方法、これはどういったものを想定しているのか。また、ここで言う数量も質量あるいは体積のいずれかに限定されないということ、これを確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 数量を適切に把握する方法といたしましては、ロードセルに限定されるものではなく、例えば、レベルゲージの目視によって一般廃棄物と産業廃棄物のそれぞれの数量を適切に把握することができる場合も含まれると考えております。

 御指摘の数量につきましては、重量、体積、個数など、それぞれの廃棄物を適切に把握できる単位であれば、いずれかに限定されるものではないと考えてございます。

河西分科員 御答弁ありがとうございます。まさに限定されるものでもないし、ロードセルに限られるものでもないということでございました。

 普通に考えて、紙くずやプラスチックなどの固形物のごみであれば、ごみとごみの間に空間ができますので、質量、いわゆる重量、キログラムで管理されるべき、これは当然のことなんだろうと思いますが、先ほどの写真で提示をしたように、汚泥であれば、同様の性状や比重を持ついわゆる流体物でございますので、これは一般論として、体積、いわゆるリットルで廃棄物の数量を把握しても差し支えない、私はこのように考えるわけでありますが、これも御見解をいただきたいと思っております。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、数量の把握方法につきましては、廃棄物処理法上、明確な規定はなく、重量、体積、個数など、その単位は限定されておりません。

 したがいまして、それぞれの廃棄物を適切に把握できる場合には、体積を用いることも可能であると考えてございます。

河西分科員 ありがとうございます。

 ちなみに、二十三区のビルピット汚泥、どのように数量を把握しているのかということで、資料の最後、五を御覧になっていただきたいと思っております。現在、二十三区のビルピット汚泥の排出者がどのように数量を把握しているのか。

 この写真、これは私がスマホで実際、視察で撮ってきたものなんですけれども、バキュームカーの後方にいわゆるレベルゲージと呼ばれる目盛りがございます。これをライトで照らして、どの辺りを目盛りが指しているのかというかさの部分を、すなわち体積、リットルを計測をして、そして、これを一廃の搬入伝票や産廃の管理票に排出者が明記をする、こういう仕組みになっております。そして、処理施設への収集運搬を事業者に委託をしているわけであります。

 このレベルゲージの目視による汚泥の計量方法、これは、当該通知における、令和三年通知における適切な数量の把握との趣旨から少なくとも除外されるものではない、このように考えるわけでありますけれども、これも御見解をいただきたいと思っております。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省が令和三年に発出した通知におきましては、一般廃棄物と産業廃棄物を混載して運搬するために必要な条件として、それぞれの数量を適切に把握できることを求めております。泥状の廃棄物に関する計測方法といたしましては、レベルゲージの目視によることが除外されるものではない、このように考えてございます。

河西分科員 ありがとうございます。何度も局次長が御答弁いただいているように、適切に把握ができることということが重要でありますけれども、その範疇においては、レベルゲージによる体積、リットル単位での把握も、これは除外されるものではない、こういった御答弁を明快にいただきました。

 そこで、大臣、お待たせをいたしました。大臣にお伺いしたいと思います。

 何でこんな細かいことを聞いてきたのかということなんですが、ビルピット汚泥の収集運搬を行う業界、これはいわゆる三Kの職場、大変失礼ながら、いわゆる三Kの職場であります。運転免許の取得費用も、やはり最近は非常にコストとして意識をされております。また、ビルが稼働していない土日祝日の仕事が多いわけであります。実はこの視察は江東区役所へ行ってまいりましたが、これも役所が実際稼働、動いていない祝日に収集が行われた。いわゆる暦どおりに休日が取れないことなどから、特に若者の方々が、このビルピット汚泥の業界、敬遠をされる。また、硫化水素や酸欠による死亡や負傷、事前のガス検査等、回避は心がけるんですけれども、業務災害のリスクもこれはあり得るということで採用難、また定着難、こういったことで、今ずっと国の中でも大きな問題になっている人材不足、これが深刻であります。

 都内業界団体の二十三区ビルピット汚泥適正処理推進協議会、ちょっと長いんですけれども、この皆様、四十七社ありますが、アンケート調査によれば、令和三年度末の現場従業員の平均年齢四十九・一歳、五十歳近くの方々がやられている。同時期の我が国の労働者全体の平均年齢四十三・四歳。建設業、また運輸業、二〇二四問題のまさにこの渦中の業界でありますけれども、建設業は四十四・五歳、運輸業、郵便業は四十六・九歳ということで、これと比較しても五歳から三歳ぐらい高齢化が進んでいるわけであります。

 そこで、二台体制の収集運搬を一台体制にして、労働生産性を上げることが長年の課題でございました。一時期は二層式のバキュームカーの開発なんかも検討したんですが、これはコスト、地方公共団体とちょっとなかなか折り合いがつかずに断念をしたということが数年前にあって、その数年前のまさにそのときに、令和三年通知という、いわば業界にとってはすばらしい通知を環境省から出していただいたわけであります。

 そこで、大臣にお伺いをいたしたいんですが、一廃と産廃、双方の許可を有する事業者ということが大前提になります。これは当然、利害関係もございますので、そこの許可をきちっと守っていく。その上で、一廃、産廃、いずれも同様の性状であるビルピット汚泥について、適切な数量把握も、先ほど御答弁いただいたように、現在のレベルゲージによる目視が否定されるものではない、こういったことから、一廃と産廃を混載して、これからはビル一棟に対して一台体制で、いわば新しい時代の、今の日本に合った収集運搬の形、こういった形に持っていくことは可能ではないか、このように考えるわけでありますが、大臣の御答弁をいただきたいと思っております。

伊藤国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 御指摘のように、環境省が令和三年に発出した通知においては、一般廃棄物と産業廃棄物とを混載して運搬するために必要な条件をお示ししております。

 御指摘のビルピットの汚泥については、都道府県及び市町村が、一般廃棄物と産業廃棄物のビルピット汚泥がいずれも同様の性状であり、レベルゲージの目視等によってそれぞれの数量を適切に把握できると判断する場合においては、一般廃棄物と産業廃棄物、双方の許可を有する収集運搬業者がこれらを混載して収集運搬することが可能でございます。

河西分科員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 まさに、そういった適切な数量の把握等、判断できればということで、今の大臣の御答弁を踏まえながら、これからの追い風にさせていただいて、ちょっと議論を前に、改革を前に進めさせていただきたい、このように思っております。

 また、こういったこと、今まさに、廃棄物行政はやはり自治体の皆様が最前線でありますので、自治体への周知が非常に大事だというふうに思っております。

 他方で、先ほどのロードセルという言葉が若干ちょっと独り歩きしている面もありまして、ここは局次長にお願いを申し上げたいんですが、今日の議論を踏まえまして、環境省が出していただいたこの令和三年通知の解釈についてなんですけれども、特に、適切な数量の把握の方法はロードセルに限定はされないんだと、また、単位も重量あるいは体積いずれかに縛られるものではないことなどについて、是非、自治体の皆様に対して丁寧な御説明をあらゆる機会を捉まえながら頂戴をしたい、このように思うわけでございますけれども、参考人の御答弁、お願いをいたします。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省が令和三年に発出した通知における適切な数量の把握につきましては、御答弁これまで申し上げてきましたとおり、具体的な方法や単位を環境省では限定しているものではございません。本日の御指摘も踏まえまして、今後、都道府県及び市町村に対しまして、廃棄物処理法や当該通知の趣旨について、改めて丁寧に周知してまいりたいと考えてございます。

河西分科員 前向きな御答弁、大変にありがとうございます。

 やはり自治体の皆様は、最前線で廃棄物の数量をしっかりと把握しなきゃいけないと、それはそれで責任感を持たれていますので、大きな変化をもたらそうとすると、当然、こういうことは大丈夫なのかなとか、いろいろ御懸念が出てまいります。場合によっては前例にとらわれてしまうこともあるわけでありますけれども、そういったことをやはり打開をしていくのが我々政治の責務だとも思っております。また、国のやはり陣頭指揮のお力をいただきたいとも思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最後五分となってまいりましたので、最後一点、大臣にお聞きをしたいと思っております。

 今までもるる申し上げてきたとおりなのでありますが、二十三区においては、混載化を実現するために、技術的な話になるわけでありますけれども、各区の一般廃棄物に係る取扱要綱にありまして、先ほど申し上げたように、運搬車は区長の許可する一般廃棄物収集運搬業の専用車両になることということで、実際、これを変えようとすると、二十三区、各区の規定を一気に、ロンをして一斉に変えていかなければならないということで、今、特別区長会の方でも御議論をいただいております。

 そこで、数年来、先ほど御紹介した都内の業界団体、二十三区ビルピット汚泥適正処理推進協議会、加入する四十七社の皆様はいずれも、一廃、産廃、双方の許可を持っております。むしろ、そういった双方の許可を持っている事業者でしっかりと適正に処理を推進していこう、産廃だけで一廃を組み込むようなことがないようにという非常にすばらしい取組をしていただいている事業者の皆様なんです。

 ですので、真面目にやっているのであればやはり改革を前に進めさせてほしいということで、混載化実現に向けて都や各区に働きかけを行いまして、また、東京においては二十三区清掃一部事務組合、いわゆる一組というものがございますので、そことの調整を進めて、また、特別区長会にも働きかけて一定の御理解をいただいているんですが、まだ混載化実現の見通しまでは、あと一歩、二歩ぐらいかなというところであります。

 ちなみに、ビルピット汚泥の先ほどちょっとこだわらせていただいた計量でありますけれども、これは、一組さんの方は、汚泥の投入前後の車重差で、つまり重量で量ってくださいという、実はこういった取扱要綱を出しております。一方で、これは当時でありますけれども、東京都の清掃局からは、有料化をしたときに、平成十年から十一年にかけて、累次にわたって、レベルゲージの目視、すなわち体積、リットルによる数量の把握も含めて事業者に指導してきたということで、都と区とねじれが生じている、こういったことも解消していかなければならないんだろう、このように思っているわけであります。

 その上で、やはり先ほど申し上げたように、人材不足解消、そしてCO2削減、事業の持続可能性を確保する上において、極めてこれは高い必要性があるというふうに思っております。にもかかわらず、前例とか既存の制度とかあるいは既成概念が今壁となって、混載化という今の時代の改革が進まない現場の実態がございます。環境保全に従事されるエッセンシャルワーカーの皆様でございますが、その切実な願いを我々はいただいているわけでありますけれども、是非、伊藤大臣からも、混載化実現というこの改革、後押しをいただきたい、このように思っているわけでございますが、最後、御答弁をいただきたいと思っております。

伊藤国務大臣 データに基づく御質問、ありがとうございます。

 廃棄物の処理、これは国民生活にとって本当に身近で、一日も欠かすことのできない非常に重要なことだと思います。そしてまた、今御指摘がありましたように、廃棄物の処理に関わる皆様の日々の業務、大変重要で、また大変重いものだと思っております。

 また、環境省としても、二〇五〇年ネットゼロに向けて、あらゆる分野での温室効果ガス排出削減が必要不可欠である、そしてまた、廃棄物分野においても排出削減に向けた取組が重要だというふうに考えております。このため、廃棄物処理業の持続性の確保及び温室効果ガスの排出削減の観点から、今後も、今日お聞きしたことも含めて、事業者の声を丁寧に伺ってまいりたいと思います。

 また、環境省が令和三年に発出した通知において、一般廃棄物と産業廃棄物の混載を可能とする旨をお示ししており、その内容を踏まえた適切な運用がなされるように、必要な助言等をしっかり行ってまいりたい、そのように考えます。

 ありがとうございました。

河西分科員 大臣、大変にありがとうございました。

 今日の大臣の御答弁、また環境省の皆様の御見解をいただいて、まさに環境保全に大切なエッセンシャルなワーカーの皆様の事業の持続可能性、これをしっかり確保できるように、私も東京の議員として努力してまいることをお誓いを申し上げまして、今日の質疑を終わらせていただきます。大変にありがとうございました。

 以上でございます。

山本(有)主査代理 これにて河西宏一君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島伸享君。

福島分科員 有志の会の福島伸享でございます。こんにちは。お疲れさまです。

 今日は、一月二十四日の予算委員会の閉会中審査で能登半島地震時の原子力防災の対応について質疑をしたんですけれども、いただいた時間が僅か七分だったので、その続きの質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 皆さんが御存じのように、被災地には志賀原発が立地しておりまして、災害の後、ネット上ではいろいろな情報が飛び交いました。なぜか予算委員会だとツイッターのやつを使わせてもらえないんですけれども、別にこれが事実であっても事実でなくても、例えば、内田樹さんという方は、初動があれほど遅かったのも、議員の被災地入り自粛を申し合わせたり、ドローンを禁止したりしたのも、志賀原発の被害状況が分からなかったということなら全て腑に落ちますなんて書いて、その書き込みに対して、笹山登生さんという元衆議院議員、自民党にもいらっしゃった方ですけれども、この方は、能登半島、非常に不謹慎な話になるけれども、放射能が漏れているかもしれないという仮説は、市民サイドとしては、予備として、立てておくにこしたことはないとか、ラサール石井さん、タレントのですけれども、志賀原発の周辺十五か所で放射線量測定不能、うそではないのか、過去の隠蔽体質から思わずそう勘ぐってしまうとか、いろいろな情報が流れるんですね。

 やはり、政府として正確な情報を流さないと、不安も広がるし、後の風評被害にもつながって、復興の足を引っ張るということにもなるんですが、このときも示したんですが、大臣、一ページ目の、これが原子力規制委員会の一月十三日のホームページなんですけれども、緊急情報に載っているのかと思って緊急情報ホームページをクリックすると、現在、緊急情報はありませんといって、何の情報も出てこないんですよ。

 今政府が欲しいのは、原発がどうなっているのか、安全なのか、そうしたこと、安心できるのかということなんですけれども、もうちょっとこれは発信を考えた方がいいんじゃないのと言って、岸田首相に申し上げたところ、岸田首相からは、規制委員会において審議をし、対応について見直しが行われることになるという答弁をいただきました。

 その後、どのような対応をされたか、答弁をお願いいたします。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 二月七日の原子力規制委員会で、北陸電力志賀原子力発電所の現状及び今後の対応に関して、それまでに得られた情報を取りまとめました。

 この会合の中で、初動対応が終わった後も引き続き分かりやすい情報を発信することの重要性について議論がございました。二月八日には、地震発生以来、能登半島地震に関して発信してまいりました情報等を整理いたしましたページを原子力規制委員会のホームページの中に作成をして、公開したところでございます。

 今回の経験も踏まえまして、今後同様の対応が必要になった場合には、当初から、まとめページを作成するようにするなど、分かりやすい情報発信につきまして継続的な改善に取り組んでまいりたいと考えております。

福島分科員 ありがとうございます。

 大臣、それで、今の説明でできたページが次の資料二なんですよ。デザインが余り変わっていないんですけれども、右側に令和六年能登半島地震の影響、対応というページがあって、そこをクリックすると、ちょっと済みません、資料が細か過ぎて見えなくて、虫眼鏡みたいで、見えなくて恐縮なんですけれども、このページが出てくるんですけれども、要は、お役所のペーパーがここをクリックすると出てくるだけで、一般的に、こんなホームページを国民が見たって安心することはないと思うんですね。

 国民が知りたいのは何かといったら、まず、放射能は出ているんですか、出ていないんですか、外に出ているんですか、ちゃんとサイトは冷却されて安定な状況に保たれているんですか、いろいろなトラブルが北陸電力などから報告されているけれども、それはリスクがあるんですか、ないんですかという、端的なことなんですね。

 一月一日の後、二日からは、変圧器から油漏れがして火事が起きたとか起きないとか、いろいろ情報が二転三転しました。あるいは、冷却水の放水槽の水位が変わっちゃったとか、あるいは発電所の外の海には油の膜が浮いていたとかいうと、これはもしかしたらまずいんじゃないかとみんな思うわけですよ。そうした不安を持ってこのホームページをクリックしても、恐らく得たい情報は得られないと思うんですね。

 今、映像とか画像とか、いろいろな手段があるわけですから、委員長、まだ見直すということですけれども、やはりこれはセンスないと思うんです、はっきり言って。顧客の観点に立っていないから、このデザインも含めて、もっと得やすい情報というのを発信すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

山中政府特別補佐人 分かりやすい情報発信につきましては、今後とも努力をしてまいりたいというふうに思っております。ホームページの改善についても、引き続き努力をしてまいります。

福島分科員 ありがとうございます。

 私は、このホームページを見て、ちょっと、原子力規制委員会というのが、こうした防災に対して何か当事者性が見られないんですね。西村経済産業大臣も、御当人のキャラクターかもしれないけれども、北陸電力にちゃんと情報発信しろと上から言うんだけれども、やはり国民は、北陸電力からの発信だけでは私はなかなか信用できないと思うんですね。

 そこで、ちょっと時間を取って、初動がどういうものだったかというのを検証していきたいと思うんですけれども、私、一九九九年にジェー・シー・オーの事故が起きたときに、当時、経産省で原発の立地の仕事をしていたんですけれども、おまえは茨城弁が分かるから行ってこいと言われて科技庁に出向して、その後の原子力災害対策特別措置法というのを作りました。そのときに、それまで現地に国の人はいなかったんですね。

 ただ、その後は、原子力防災専門官、原子力運転検査官というのを置いて、当然、志賀原発にも置いています。ホームページもあるんですけれども、この事故後、ホームページを見ても、何の情報も出てきません。本来であれば、現地に国の職員がいるんだから、ちゃんと見てきて、北陸電力が発表したことが事実かどうかを検査官の観点から見た上で国民に伝えればいいと思うんです。それができていないんじゃないかというふうに思ったんです。

 まず第一点、今般の能登半島の地震で、原子力防災対策指針上の警戒事態、震度六以上だと警戒事態に当たると思われます。そのときには、ERC、緊急時対応センターに情報連絡室を設置したり事故警戒本部を設置したり、宿直職員が様々な情報を発信したりというのがマニュアルに定められておりますけれども、まず、職員が参集したのはいつなのか。本部がいつ立ち上がり、職員がいつ出てきて、委員長がいつ出てきて、そうした本部がどのような動きになって、情報は、発災後、十六時十分に地震発生ですけれども、何分後に第一報が入ってきたか。その辺りの事実を教えてください。

古金谷政府参考人 お答えいたします。

 一月一日の十六時十分に能登半島の地震が発生しまして、その後、我々の方では、直後から職員が参集をしてまいりまして、十六時十九分に、いわゆる警戒本部というものでございますけれども、そういったものを設置しまして、都度、情報収集に努めている、その前からも、宿日直の担当がいますので、その者が情報収集に当たっていたというところでございます。

 逐次、北陸電力から情報収集に努め、十六時四十五分でございますけれども、北陸電力から、志賀原子力発電所の状況、電源の確保あるいは使用済燃料の冷却といった必要な機能が維持されているということが確認をできましたので、その後、十六時四十九分以降、関係部局等に情報を共有したというところでございます。

 なお、原子力規制委員長の参集は十七時三十分頃ということでございます。

 以上でございます。

福島分科員 ありがとうございます。

 もうちょっとはっきりおっしゃった方がよくて、これは、起きたのは一月一日なんですよ。つまり、宿直している方は大みそかから、二人か三人、宿直されていたんですね。本部が二人、東京に四人。四人、この三十一日にちゃんと環境省の規制庁の職員が宿直して、十五分に本部設置しているんですよ。私、これは本当に偉いと思います。もっとみんなに知ってもらっていいと思うんですね。

 規制委員長も、お正月にもかかわらず、その十七時三十分、私は決して遅いと思いません。多分、おとそ気分も明けないうちにすぐ駆けつけたというのは、私はこれは評価されていいと思います。

 ただ、これは北陸電力から十六時四十五分に来たんですけれども、国の現地にいる人たち、先ほど申し上げた現地の人たちの状況がどうなっていたのかということで、原子力緊急事態等現地対応標準マニュアルというのがありますけれども、それによると、原子力防災官がオフサイトセンターに現地警戒本部をつけて、オフサイトセンターの立ち上げ要請を関係者にするなどということが確認されております。そして、情報収集は努めて現場でやることとなっていますけれども、現地の対応の状況はどうだったんでしょうか。教えてください。

古金谷政府参考人 お答えいたします。

 我々の志賀原子力規制事務所におきます対応でございますけれども、地震発生後、速やかに検査官がオフサイトセンターにまず参集をしております。これは十六時二十分頃、一名でございます。その後、直後、十六時二十六分に先ほどの警戒本部の現地の本部というものを立ち上げておりまして、その後、オフサイトセンターにおいて現場の情報収集を行ったというところでございます。

 実際、翌朝になりますけれども、原子力検査官が発電所の方に立入りを行いまして、現地の状況ですね、変圧器の油漏れ、あるいは、使用済燃料のプールから溢水がございましたので、そういったトラブルの状況については直接確認を行ったというところでございます。

 なお、オフサイトセンターは、今回、この対応と並行して、地域の住民の方が避難をしてまいりましたので、その方への対応というものも並行して行っておりました。

福島分科員 ありがとうございます。

 現地の方も、恐らく現地に生まれ育った人じゃないと思います。東京から行っている方で、単身赴任などで行っている方だと思いますけれども、その方もやはり大みそかから、宿直ではないにしても、すぐ参集できるところにお住まいになって、二十分に、十分後に集まっているというのは、これも私は褒めていいことだと思うんです。

 ただ、一つ問題なのは、やはり、先ほど、十六時四十五分に北陸電力からの情報が入ったと言っておりますけれども、マニュアルだと、情報収集は努めて現場での確認によるとされていて、行けたのは実際は翌朝ですよね。今規制庁から説明があったように、実際には、地震があると、当日、停電している中で、電気がついているのは非常用電源があるオフサイトセンターだけなんですよね。ですから、みんな地元の人が来ていて、その対応で、現場確認どころじゃないんですね。

 やはりこの辺りのこともこれから、後ほど、最後、議論しますけれども、複合災害におけるマニュアルというのを見直さなければならない、そうした一つの教訓になるんじゃないかなと思います。

 このマニュアルでは、現地の警戒本部の広報担当本部が発災後三十分後に現地の地方公共団体や報道機関に情報発信をするとされておりますけれども、これは実際できたのでしょうか。

古金谷政府参考人 お答えいたします。

 現地での情報発信というものにつきましては、今回、先ほど申し上げましたように、避難住民への対応等ございましたので、残念ながらできておりません。

福島分科員 そういうことなんですね。だから、この辺りもマニュアルを今後見直さなければならないことだと思います。

 一番問題なのは、原子力規制委員会からの情報発信に当事者性がないことなんですね。

 当日、一月一日の六時半に記者ブリーフィング、八時半に第二回記者ブリーフィングをやりましたけれども、記者ブリーフィングはそれだけです。

 私、心配になって、当日、ちょっと老人ホームにいる父を連れて蓼科高原に泊まっていたんですけれども、何かあったらまずいので、ずうっと私はテレビをつけっ放しにして見ていました。私の妻はアナウンサーなんですけれども、見ていて、しゃべる調子がほかの気象庁やNHKのアナウンサーと違っておどおどおどおどしているから、これじゃ何か安心感を持ってもらえないよねなんという話もしていたんですけれども、まあそれはいいとしましょう。

 問題はその後で、翌日の二日に、さっき言った変圧器からの油漏れとか、火災だったんじゃないかというのがあったり、使用済燃料の貯蔵プールが、スロッシングといって地震で水があふれたりとか、あるいはさっき言った放水槽の基礎の沈下とか、あるいは発電所の前の海面上の油膜発生と、あるんですよ。こういうのが、冒頭言った、ネットで広がるネタになっていくんですね。

 そうやってみんな心配になったときに、北陸電力のホームページはいろいろ情報が出てくるんですけれども、規制委員会の姿は完全に消えちゃうんです。なぜこれは、委員長、一月一日以降ブリーフィングをしなかったんですか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会は、一月の一日、発電所の電源確保、使用済燃料の冷却等に問題がなく、モニタリングポストの値にも異常がないことを確認をいたしました。そのことを報道に向けて二回ブリーフィングを行いました。

 その後は、発電所の止める、冷やす、閉じ込めるといった安全確保上の重要な機能に関しては新たな問題が生じず、大きな状況変化もなかったことから、改めてのブリーフィングは行わずに、SNSなどによる情報発信を行ったものでございます。

福島分科員 大臣、これがいわゆる原子力村と言われる、これは非難して言っているわけじゃないですよ、技術者とか科学者が集まる組織の欠点だと私は思うんです。ずっと私も原子力行政をやっていて、国民の一般の安心というのは、安全の話は今おっしゃったとおりなんです、安心というのは、やはりちゃんとしっかりと発信をしなきゃ、国民に安心感を持っていただけないんですね。

 コロナのときに、尾身さんが、常に記者会見のときに横に座って、技術的なことに、記者からの質問に答えていらっしゃいましたよね。ああいうのが私は必要だと思っていまして、ブリーフィングを常に頻繁に行って、問題がなくても行って、でも、そのたびごとに様々な報道に対する質問が飛んでくるでしょう。そうしたことに、規制庁の広報官の人は、理系の人であっても専門家ではありませんから、どうしても表情からその信頼感が見られないんですよ。ただ、隣に例えば委員長なり原子力規制委員会の委員の専門家の方が座っていらっしゃって、この事象についてはこういうふうなリスクがあるから安心なんですとか、まだリスクはこうあるから警戒が必要ですとか、そういうことをおっしゃっていただければ、ネットで変な情報が尾ひれがついて流れることも少なくなるでありましょうし、国民の皆さん、安心すると思うんですね。

 リスクの評価を行うのが原子力規制委員会の役割なんですけれども、原子力規制委員会は一月十日まで開かれていないんです。先ほど言ったように、二日とか三日とか、いろいろな事象が起きているにもかかわらず、一月十日まで開かれていません。なぜ、原子力規制委員会は一月十日まで開かなかったんでしょうか。

    〔山本(有)主査代理退席、主査着席〕

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 今回の地震により、原子力発電所の安全確保に影響のある問題は生じていないことについては、地震発生直後から、原子力規制委員会として速やかに確認をいたしまして、また、そのことについての周知を行ってまいりました。

 その上で、一月十日の原子力規制委員会では、この地震の影響とそれらへの対応に関して委員間で検討、評価するために、原子力規制庁に報告を行わせたものでございます。

 専門的、技術的な観点から議論をするにしても、ある程度まとまった情報がなければできないことから、一定の情報整理が必要でございまして、一月十日のタイミングに原子力規制委員会を開催したことは適当であったというふうに考えております。

福島分科員 今みたいに、私、全く適当だと思わないんですよ。私自身、最初の原子力災害対策をつくった立場として、安全上問題がないと言っていますけれども、委員長、それは直接、委員長自ら国民に対して会見の場で語りかけましたか。一月一日の後、どうですか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 一月一日のブリーフィングは、私自身は行っておりません。

福島分科員 そうなんですよ。専門家から何一つなくて、自分で勝手に安全だと思っているとしか国民からは見られようがないんですね。

 なぜこうなっているかといったら、様々な防災業務計画とかマニュアルが、警戒事態とか、何とか事態のときの広報しか書いていないんですよ。その後のことは何も書いていないんです。どこで、例えば原子力規制委員会がいつ出るって、今、十日後でも全然問題ないと。私、こんな感覚でいる限り、原子力規制委員会は国民に信頼されないと思います。

 私が難しいなと思うのは、三条委員会というのは、なかなか政治のリーダーシップが発揮できないんですよ。でも、それは、個別の規制の案件については、それは関与してはいけません。でも、全体の大枠の防災の枠組みというのは政府全体でやることですね。ですから、伊藤大臣は内閣府の特命担当大臣として原子力防災を担当されているんだと思います。今の答弁を見たとおり、原子力規制委員会にずっと任せていると、およそ国民の感覚からはかけ離れたことをやりがちになるからこそ、折に触れて政治のリーダーシップがなければならないと思います。

 私は、基本は、電力会社に情報を出させるだけじゃなくて、今現地に人がいるわけですから、何か電力会社が情報を発したら、常に現地の原子力保安検査官とか防災専門官が現地に赴いて、例えば写真に撮ったり動画に撮ったりして、それだけじゃ駄目です、やはり原子力規制委員会の専門家がリスク評価を行うんです。それはどのぐらいのリスクがあるのか、安全なのか、リスクが高いのか。それをちゃんと専門家が直接国民に語りかけるということをルーチンとして、何とか事態とか、何とか宣言が解除された後もやることが必要だと思うんですけれども、大臣、お考えはいかがでしょうか。

伊藤国務大臣 御指摘のように、今回のように大きな災害があった場合は、原子力発電所の状況について、国民の関心も大変高いし、また地元や国民の皆さんに不安を与えないように、状況を正確に把握して、適時適切にそれを伝えることが必要だというふうに考えます。

 御指摘のように、具体的な情報発信の方法や中身については独立した三条委員会たる原子力規制委で判断されることになっておりますけれども、今日の御指摘も踏まえて、情報発信が分かりやすく行われるように私自身も努力をしてまいりたいと思います。

福島分科員 大臣、役所にいると必ず、三条委員会ですから原子力規制委員会でやりますと、昨日のレクのときもさんざん事務方はそれを言ってきたんです。それじゃ駄目なんです。原子力防災基本計画とか防災業務計画とか災害対応初動マニュアルというのがあるので、そこに記載しなきゃならないんです。

 役所って、マニュアルに書いてあれば、さっきの宿直のように律儀にやってくれますけれども、それに書かないと、書かないことは逆にやらないということになってしまうので、私は、災害時の原子力規制委員会や政府の情報発信の仕方については、もう一度、防災基本計画から見直さなきゃならないと思う。これはすごく記述が薄いんですよ。それをやるのは内閣府の原子力防災担当の役割だと思いますので、きちんと、これから計画、マニュアルを見直すべきで、特に大臣のリーダーシップをもって見直しをさせるべきだと思うんですけれども、大臣の思いを聞かせてください。

伊藤国務大臣 貴重な御指摘でございますので、それをしっかり受け止めて、今後検討したいと思います。

福島分科員 もうちょっと別の視点からなんですけれども、今回は、地震が起きた中での原子力の対応がどうだということになりました。当然、今回は何もなかったけれども、地震が起きたときに放射能が外に漏れる可能性もあると思って、避難とかの準備も現地でやらなければならないというふうに私は思います。

 そのことも踏まえて、現地の初動マニュアルでも、災害が起きたときに、住民の連絡の状況とか、避難場所の準備状況とか、現場周辺の交通及び交通規制の状況などを、情報収集すべき事項としてマニュアルには記載されております。

 今回、万が一放射能が漏れたときに、住民の避難が必要なわけです。でも、今回、道路が寸断されたり、そもそも、屋内避難しようにも、屋内避難すべき家が潰れちゃったりとか、様々な情報がありますけれども、現地では、誰がどのような情報収集をして、その状況がどのように警戒本部に伝えられたんでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 今回の地震に際しましては、内閣府と原子力規制委員会とで事故警戒本部を立ち上げて、必要な情報収集を行っております。

 情報収集につきましては、警戒事態においてはプラントの情報収集が中心になりますけれども、一方で、警戒本部では、石川県を始めとする各自治体と連絡体制を確立をした上で、一方で、政府の官邸対策室に職員を派遣しまして、津波警報の状況でありますとか道路の状況など、現地の被災状況等についての情報収集を行ったというところでございます。

福島分科員 私が聞きたいのはそのことじゃありません。一般的な災害の情報収集なんですよ。現地の原子力防災専門官とかがやらなければならないのは、原子力災害に備えた避難場所とか、それはもう決めているわけですよね、屋内退避の場所とか。そういうのはちゃんと調べたんですかというのを聞いているんです。

松下政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘ありましたとおり、当然、避難が必要となれば、避難先、避難ルートの調整等必要になりますので、それに備えた情報収集をするわけでございますけれども、今回は、かなり早い段階で原子力の安全に影響はないというようなことが出ていたということもありまして、警戒本部では、特に自治体等に対して負担をかけるような要請等はせずに、政府の対策本部として得られる情報を収集したということでございます。

 現地の防災専門官については、ちょっと防災専門官から基本的なオフサイトの情報について、少なくとも警戒本部では共有されなかったというのが実態でございます。

福島分科員 要するに、最後のことなんです。

 今の、最初の認識は全く甘いですよ。事故が起きて十分や二十分で、その原子力のサイトが安全だなんて到底確認できないですよ、未知のものだってあるんだから。早いんですよ、判断が。しかし、そういうときに備えて避難の準備を始めるというのを想定して、それが防災の考えですよ。あなたみたいな考えでやっている人が政府の防災対策をやることは、非常に私にとっては不安です。

 なぜこのことを言うかというと、私の地元も東海第二原発があって、今、やはり大きな問題は複合災害です。三十キロ圏内に百万人近くの人が住んでいて、地震や津波が起きたときに本当に避難できるか。地方自治体も、そうした計画を作るのにもう本当に苦労しているわけです。

 防災基本計画の中で、複合災害に対する対応の記述はごく僅かです。今の内閣府のような答弁をする方が政府にいれば、もし地震や津波との複合災害に遭ったら、恐らく避難所も分からないし、事後的に、だだだだだっと後になってやるようになっちゃったら、もうこれはどつぼですよ。菅内閣よりひどい状況になってしまうと私は思います。

 だから、私は、地震や津波との複合災害に対する原子力災害対策指針とか、原子力防災計画とか、あるいは防災基本計画の中で、もっと分厚く、特に原子力は、複合災害でも原子力と自然災害の複合災害というのは、原子力災害を優先させるのか、津波を優先させるのか、これは物すごく大きな政治判断なんです。役人じゃできません、これは。政治家が価値判断をして、何を優先させてやるのかというのを決めるのが計画であり、マニュアルなんですよ。

 これは本気になってやらなきゃ、岸田政権は再稼働を進めて、伊藤大臣の地元も原発が宮城県にありますよね。みんなどこの自治体もそれで苦労していると思いますので、複合災害に関する防災、原子力とほかの天災の複合災害に関する計画とかマニュアルをもっと根本的に充実させるように早急に取りかかるべきだと思うんですけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。

伊藤国務大臣 御指摘のように、複合災害、あり得ることです。地域の避難計画を含む緊急時対応を取りまとめている地域において、地域の実情を踏まえ、既に大規模な自然災害と原子力災害との複合災害を想定しているところでございます。

 複合災害を想定した対応として、具体的には、避難道を複数経路設定するとともに、必要な代替経路を設けて、陸路が制限される場合には、道路啓開をしつつ、海路避難、空路避難、又は必要に応じて屋内退避をすることで住民の安全に全力を尽くし、不測の事態が生じた場合には、国や関係自治体からの要請により、警察、消防、自衛隊等の実動組織が住民避難への支援を実施することとしております。

 でも、おっしゃるように、原子力防災に終わりや完璧はございません。今回の対応の経験も踏まえながら、引き続き、原子力防災体制の充実強化を図り、原子力災害対応の実効性の向上にしっかり取り組んでまいりたいと思います。

福島分科員 私は経産省で原子力立地の仕事をしていて、そのときは、原子力は外に放射能が漏れないから、災害対策の法律は必要ないと私は説明していたんです。ジェー・シー・オー事故が起きたら全く何もできなかった。現地の消防隊員の人が突っ込まざるを得なかった。

 その後、原子力災害対策特別措置法というのを作って、東日本大震災が起きてみたら、やはりそれでも対応できなかったんです。時の首相はこんな法律は使えないと言っていましたけれども、そうじゃないんです。ちゃんと基本を備えたものをやっていなかったし、十年たつうちに、喉元過ぎればで忘れ去られて、生きたものになっていなかったんですね。

 もう三度目は本当に嫌なんです、私。絶対に起こしたくない。今の政府の感覚を見ている限り、複合災害でもう私は対応できないと思いますよ。

 今回だって、オフサイトセンターに避難者が押し寄せてきたら、原子力災害の対応ができないんですよ。でも、どこかで、原子力災害を優先するのか、避難者の救助を優先するのか、これはどっちかを選択しなきゃならないときだってあるんです。どっちを優先させるか、あらかじめ計画とかマニュアルに決めなきゃならないけれども、そうしたことは今の計画やマニュアルには何も書いておりません。

 繰り返しますけれども、お役所は、計画やマニュアルに書いてあれば、そのとおり忠実に、大みそかであっても宿直をして、災害があればちゃんと駆けつける優秀さと規律を持っているんですよ。

 ただ、それを作るのは政治家です。原子力規制委員会は絶対やりません。防災の専門家でもないです。原子力の知見と防災の知見はまた別ですから、それを総合させて、あらゆる可能性を想定して計画やマニュアルを作るという、その場を設定するのは政治家の役割ですから、是非、伊藤大臣、環境大臣じゃなくて、原子力防災の大事な役割も担っていると思って、今回の震災をきっかけに、もう一度、特に複合災害の面も含めて、あと国民への広報の部分も重点的に、計画、マニュアルを是非見直していただきますようリーダーシップを発揮していただきますことをお願い申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 よろしくお願いします。ありがとうございます。

伊東主査 これにて福島伸享君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊東主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長友慎治君。

長友分科員 国民民主党の長友慎治です。

 伊藤大臣も、午後も出席ありがとうございます。

 本日は、熊本県の阿蘇、地下水の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 二月の二十四日、熊本県菊陽町で、半導体の受託生産を始めますTSMCの第一工場が開所しました。日本政府が最大四千七百六十億円を助成する国策としての事業になりまして、年内に出荷を始める、そして、年内に第二工場の着工も決まったと聞いています。経済安全保障として国内での半導体製造を重視することは大切なことであり、熊本は特需に沸いています。

 一方で、地下水を共有する熊本地域の十一市町村で、百万人が飲み水とする地下水の枯渇や汚染について心配が出ております。熊本都市圏の地下水が減少傾向にある中、大量取水する半導体工場の集積と両立できるのか、地下水を守る地域独自の対策が必要だと考えますが、政府として、今現状、どのような後押しをしているのか、教えてください。

土居政府参考人 地域の水資源といたしまして、地下水の保全の取組は極めて重要だというふうに認識しておりまして、環境省では、健全な水循環の維持、回復の観点から、地下水保全の先進事例などを示した地下水保全ガイドラインを作成し、地方公共団体の地域の実情に即した取組を促しているところでございます。

 また、熊本県では、地下水保全条例の下、地下水利用者に対し、地下水の汚染の防止、地下水の適正な採取、地下水の合理的な使用や地下水の涵養等の取組を求めており、さらに、御質問ありましたこの事業におきましては、関係者で協定を締結し、冬期の水田湛水等の取組を行うということを承知しております。

 熊本県に対しましては、これまでも、地下水の保全に関します取組の支援を環境省として行ってきたところでございますが、本件につきましても、熊本県からの相談に応じまして必要な助言等を行っていきたいというふうに考えております。

長友分科員 環境省からの御答弁、ありがとうございます。

 経済産業省からもありますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今般、熊本県として、半導体産業の県内集積を進めていく上で、地下水保全の一環として、地下水以外の水源を活用すべく、工業用水道の新規建設が必要であるとの判断があったと承知しております。

 かかる判断を踏まえまして、経済産業省といたしましても、内閣府を始めとした関係省庁と連携し、国策的意義、関連インフラを一体的かつ集中的に整備する緊急性、合理性、地方創生への寄与の三つの視点を踏まえ、令和五年度補正予算で内閣府が創設した地域産業構造転換インフラ整備推進交付金の支援対象プロジェクトとして、熊本県における拠点整備を選定し、工業水道を含めた関連インフラの整備を支援することといたしました。

 引き続き、熊本県による地下水保全及び工業水道の整備が着実に講じられるよう、経済産業省といたしましても、県を始めとする関係者と緊密に連携をしてまいります。

長友分科員 ただいま、環境省、経済産業省共に、熊本県と連携して御支援いただいている、そして、これからも要請、要望があればお応えをいただけるという御答弁をいただきました。

 当然、地元でも様々な取組をしていただいておりますし、TSMCも努力をしていただいております。TSMCの子会社になる第一工場の操業を担うJASMは、大津町にある土地改良区等を訪れて、地元の農家さんたちに、地下水の保全に取り組むということで今お願いをして回って、その取組が実際行われているということも承知しております。

 半導体製造では大量の水が使われるわけでございます。微細化した回路には、どんなちりの付着も許されない、そして、回路を転写するウェハーを、極限まで不純物を除いた超純水で工程ごとに洗浄し、品質を保たなければならない。TSMCの子会社のJASMは、この水を地下水に頼っていく、そして第二工場も造る予定になっているということになります。

 一方、白川中流域の菊陽町、大津町、それから下流の熊本市などでは、熊本地域の十一市町村が、約百万人が同じ地下水を飲み水として暮らしているという事実がございます。それだけに、一つの企業が大量に水を使うことに注目が集まることは当然だというふうに思うんですね。一日に一万二千トンの水を使うという当初の計画が二〇二二年に示されたときには、水位の低下や枯渇への不安が広がりました。これまで、地下水に影響はないのかと、地元の県や市町村の議会でも質問が繰り返されているところです。

 JASMは、昨年の九月に、日量八千五百トンの地下水採取許可を熊本県から受けまして、水の再利用率を七五%に引き上げ、取水量の三割削減を図る、こういう努力もちゃんとしていただいているんですけれども、さらに、休耕田の田に水を張る湛水で地下に浸透させ、使った量以上の水を戻す対策に乗り出しています。

 そこで環境省にもう一度確認しておきたいんですけれども、実際に地下水が不足する事態が起きる可能性は高いのか、ないのか、モニタリングを担当していただいていると思いますので改めて確認をしたいと思いますが、いかがでしょうか。

土居政府参考人 先ほど申し上げましたように、企業、また県、地元自治体、さらに、地下水を守るためのくまもと地下水財団なども参加をいたしました関係者で協定が結ばれ、モニタリングをし、適切な対応をしていくということを聞いておりますので、こちらで様々な取組が行われ、その効果についてモニタリングを行い、PDCAサイクルが回っていくというふうに考えております。

 環境省といたしましても、それらの情報を受け止めまして、必要に応じまして技術的な助言、その他をしていきたいというふうに思い、影響がないような取組にしていきたいというふうに考えております。

長友分科員 TSMCは国策でやっておりますよね。ですので、地元の住民の方々が不安に思うことに関しては、しっかりとエビデンスを示して払拭をしていただきたいなというふうに思います。

 この地域の地下水を長年研究しています東海大学の市川先生が、こういうことを所感として述べていらっしゃいます。TSMC一社なら問題はない、しかし、多くの関連企業が集積して取水を始め、道路の拡幅なども進み、地域全体が都市化すれば、広大な涵養域が潰れる、そういう指摘をしていらっしゃいます。そもそも、離農や宅地開発で田畑が減る深刻な状況がある中で、涵養の目標を設定して常に監視し、収支のバランスを取る施策が必要だというふうに御指摘をいただいているところでございますので、是非、環境省におかれましては、熊本県と連携してしっかりと取組をお願いしたいというふうに思います。

 次の質問は、水を育む草原の保全についてであります。

 二〇一九年から二〇二一年に環境省が九州大学などの研究グループと一緒に行った調査では、阿蘇地域では、森林などの樹林よりも草原の方が、下流域に多くの水を供給しているということを裏づけました。一般的には森が水を育むと言われますが、阿蘇は特別な地域で、草原が水を育むということが証明されています。

 森林よりも草原の方が、草が多くの水を体の中で地面に近いところで保水して、それを浸透させます。樹林は蒸発する量も多いんですね。そういう意味で、草原の方が水を育むんだということがメカニズム的にも分かっているところなんですけれども、阿蘇地域には全国平均の二倍余りの雨が降りますが、広大な草原がこの雨水を地下に浸透させ、豊富な地下水の涵養源となっているところです。

 阿蘇草原再生協議会によりますと、二〇一六年の阿蘇の草原面積は二万千七百九十七ヘクタールで、三十年前から約七千五百ヘクタール減っています。環境省のパンフレット「阿蘇の草原を守る」にも、西暦一九〇〇年頃と西暦二〇〇〇年頃を比較すると、草原の面積はこの百年間で約半分に減少している、そして今もなお減り続けているということが指摘をされているところです。

 草原は放っておくと森林化します。草原を管理する牧野組合の高齢化などで野焼きができず、草原の森林化が進んでいるのが草原の減少の原因です。阿蘇では、森が水を育むのではなくて、草原が水を育むというわけですけれども、草原の保全について政府の取組を伺いたいと思います。

堀上政府参考人 お答えいたします。

 阿蘇の草原につきましては、阿蘇くじゅう国立公園の主要な景観であることに加えて、農畜産業の場、あるいは水源涵養、観光資源など、多面的な機能を有していると認識しております。阿蘇の草原は野焼きによって維持されてきた、議員御指摘のとおりでございますが、高齢化等によって担い手が不足し、継続が課題となってございます。

 このような状況を踏まえまして、自然再生推進法に基づく阿蘇草原再生協議会におきまして草原の減少傾向を改善させるということを目標に、行政、地元NPO、牧野組合など、多様な主体が連携して草原の保全、再生に向けた活動が進められています。

 環境省は、この協議会の事務局を務めるほか、国立公園としての景観や草原の保全、再生を目的として恒久的な防火帯を整備するなど、野焼きの作業軽減にもつながる取組を進めているところでございます。また、阿蘇市とともに整備をいたしました阿蘇草原保全活動センターにおきまして、野焼きボランティアへの研修、それから地域の子供たちへの草原環境学習などを行ってございます。

 引き続き、多くの関係者と連携協力をしながら、将来にわたって阿蘇の草原が維持されるように取り組んでまいります。

長友分科員 ありがとうございます。

 この野焼きなんですけれども、全国でなかなか今野焼きが残っているところが少なくなっている中で、阿蘇では日本で最大の野焼きが行われるところでございます。

 もう少し野焼きの重要性について述べさせていただきたいと思うんですが、手入れをしなければ草原は荒れまして、雑多な草木が生えるやぶになるわけなんですね。

 整然とした草原を維持するために長年行われてきたのが、春に枯れ草を焼き払い、新たな芽吹きを促すこの野焼きなわけです。長いものでは一メートルを超えるほど伸びるカヤなどの枯れ草を一斉に焼き払うわけですが、一説には、千年近く前から野焼きが行われてきたというふうに言われています。

 この草原がやぶになると、生態系が崩れ、野生の動植物だけでなく、阿蘇の伏流水にも影響が出ます。整った草原の保水力は大きな木の生い茂った森林以上に保水力があるというふうに、近年はそのメカニズムが解明されてきております。

 森を形成するほど大きな木がなかなか育たない土壌の阿蘇では、荒れたやぶにせず、草原を維持することが重要な意味を持つということになっております。草原が蓄える水量を維持することで、阿蘇を源流として九州各地へ流れる六つの一級河川へ供給される水が守られるわけでございます。

 この六つの河川というのが、これは熊本だけじゃありません。九州の北部に、各地に注ぐわけですね。大分の別府湾に注ぐ大野川、宮崎の日向灘に注ぐ五ケ瀬川、それから、熊本、大分、福岡、佐賀の四県を流れ有明海に注ぐ筑後川、そして熊本県内を流れ有明海に注ぐ緑川、白川、菊池川、この六つが阿蘇のカルデラを湧水源としているというふうに、源流というふうになっております。

 ですから、これらの河川の源流となる阿蘇のカルデラの草原の問題は九州の問題にもなってまいります。また、熊本県内に数多くある豊かな湧水も、阿蘇が水がめの役割を果たすことによって生まれてきています。古くから、阿蘇を始め下流域に当たる熊本の人々が生活用水や農業用水として利用してきた水は広大な草原のたまものだということを、改めて皆さんと共通認識を持ちたいというふうに思います。

 野焼きによって守られるものは、牛のための牧草地だけではなくて、草原と畜産と稲作と地下水が高度な循環システムを形成し、世界中を見ても阿蘇だけの特別な持続可能な営みが脈々と今に受け継がれてきた。その要となる野焼きが、実は今、危機的な状況だという話をこれからさせていただきたいと思います。

 南阿蘇村では、二〇一六年四月に起きた熊本地震で草原の管理道路などが被災しました。そして、約七百ヘクタールで野焼きが中断をしたわけです。その後に重機により防火帯を設置して、南阿蘇村の村長、吉良清一村長といいますけれども、村長自身が火入れ責任者になるなどして再開を後押ししてまいりました。そして今、約二百ヘクタールまで回復してきております。

 これまで火入れ責任者は各地元の区長さんにお願いしていたわけですが、野焼きというものは事故が時々起こります。その責任をなかなか取る立場に二つ返事では引き受けてもらえない状況になってきていた。その中で、吉良村長が、自分が火入れ責任者になりまして、区長は現場の監督者になっていただくということに変更されたんですね。ほかにも、野焼き作業員の方には日当を支給したり、災害保険には村で加入する、また、野焼きのプロ人材を育成したりと独自の対策を行ってきています。

 しかし、残りの再開が非常に厳しい状況だと村長から伺いました。再開できない最も大きな理由は、防火帯の設置が困難になったということなんです。

 野焼きの際には、森林に燃え移らないように、燃やす場所と燃えてはいけない場所を分ける必要がございまして、幅が約十メートルから十五メートルの防火帯を設置するということになっております。阿蘇管内には総延長およそ四百キロメートルの防火帯があります。防火帯を設置するには、草がまだ青い時期に、幅約十メートル程度を切りまして、草が乾いたら焼却する。こうしておけば、野焼きの際に森林に燃え移ることがないということです。再開ができていない草原は、急斜面が多く、防火帯の設置が重労働であるため、高齢化や担い手不足で防火帯が設置できず、そのため野焼きの再開は困難とのことでした。今後、阿蘇の草原を保全するには、千年以上続いたやり方に戻さないと存続は非常に厳しいと吉良村長は強く訴えられています。

 この阿蘇の草原中腹の保安林の解除について検討するべきだと考えますが、政府の見解を伺います。

長崎屋政府参考人 お答え申し上げます。

 熊本県の野焼きに関連した保安林の解除につきましては、保安林が野焼きの支障になっているとの南阿蘇村からの要望を踏まえまして、昨年十二月に、南阿蘇村の一か所におきまして、保安林の指定を解除いたしまして、モデル的に野焼きを実施することとなったところでございます。

 保安林は公益目的の達成のために指定するものですので、森林以外の用途への転用は抑制すべきものですけれども、本件の保安林に関しましては、防火帯の設置や樹林帯の伐採等が自然公園法の公園事業に位置づけられまして、公益上の理由が認められたことから保安林の解除を行ったものでございます。

 解除した区域におきましては、間もなく野焼きを実施する予定と聞いておりまして、今後につきましては、野焼き実施後の現地の状況ですとか地域からの要望を踏まえまして、必要な対応を検討してまいります。

長友分科員 今、モデル的に一か所解除していただいたということをお話しいただきました。

 ほかにも野焼きが再開できていない場所があります。具体的には、夜峰山という山と御竈門山の部分なんですね。ここは急傾斜が多いからというのが原因になっております。裾野に管理道路を造り、それより上の森林は保安林の解除を行いまして草原に戻すことを地区住民も望んでいらっしゃいます。

 この地区の野焼きが再開できないのであれば、阿蘇の世界文化遺産登録も危ういというふうな声も上がっております。「阿蘇カルデラ―草地とともに生きてきたカルデラ農業景観」をテーマに、世界文化遺産の登録を目指す地元の方々の思いにしっかりと応えていただきたいことを強く要望したいというふうに思います。

 伊藤大臣、これまで阿蘇の野焼きのこと等を聞いていただきました。

 残りの時間、村長からメッセージを預かってきておりますので、そのメッセージだけお伝えさせていただきたいと思います。

 南阿蘇村は、水の生まれるふるさとと呼ばれるほど湧水が豊富で、一分間の湧水量は白川水源でおよそ六十トン、竹崎水源だと百二十トンにもなります。熊本市民の二〇二二年度の生活用水使用量を一分間当たりに換算すると百十四トンとなり、竹崎水源だけでこれより多い量になるんです。

 阿蘇の降雨量は全国平均の二倍余り。雨水はカルデラと呼ばれるお盆のような地形にたまり、広大な草原が地下に浸透させます。こうして生まれた地下水は、長い年月を経て湧水となって再び地表に現れ、集まり、白川となってカルデラから流れ出る。白川の源は阿蘇の湧水と言ってもよいということです。

 一般的な河川の流水量は降雨量に比例しますが、湧水に支えられた白川は降雨量の少ない冬季でも比較的流水量が多く、年間を通じて平準化しています。水質や生態系も健全に保たれています。

 これは、阿蘇の地下水が一年を通して安定的に流れ出ているからでありまして、こうした特性が、白川中流域での湛水事業、水田に水をため、浸透させて熊本都市圏の地下水を増やす事業を可能にしています。

 ところで、近年、この南郷谷出口付近の冬季の流水量は、年間降雨量が増えているにもかかわらず、減少傾向にあります。これには草原が深く関わっています。阿蘇の草原の面積は、この百年間で半分以上、激減。担い手不足など、野焼きができず、今なお減り続けているからです。

 東海大学の市川先生によると、針葉樹林の一〇%を草原に戻すと地下水涵養量が約百万トン増えるというふうに言われています。白川の水は、草原からの贈物です。阿蘇の草原は公共の財産として守っていくべきだと強く思います。このようにおっしゃっております。

 大臣には、今後、熊本県の阿蘇の水の保全については是非前向きな取組をお願いしたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

 私の質問は以上になります。もし大臣から何か一言いただけるようでしたら、最後、お願いしたいと思いますが、いかがでございますか。

伊藤国務大臣 貴重な御提言をいただきましたし、改めて水の重要性、そしてまた、水が、水の生態系というのも変ですけれども、巡り巡って生物多様性や地域の自然を守っているということも強く再認識いたしましたので、しっかりそれを受け止めて環境行政を進めてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

長友分科員 大臣、ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わります。

伊東主査 これにて長友慎治君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

伊東主査 次に、農林水産省所管について、引き続き質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小野泰輔君。

小野分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔でございます。

 坂本大臣には、この間の予算委員会に引き続きまして質問させていただきます。今日も、能登地震関連の、災害関連の質問ということで、よろしくお願いいたします。

 先ほど長友議員が、熊本選出の議員ではないのに阿蘇の話をずっとされていて、大臣もお聞きになったら多分すごくお喜びになったと思いますが、自然を守っていくと。私も先日、阿蘇の世界文化遺産の登録のイベントにもお邪魔をいたしましたが、これは是非大臣にも、御地元でもありますので、御尽力をいただきたいというふうに思います。

 早速質問に入りたいと思いますが、冒頭に、能登半島地震でお亡くなりになられました方々に心から哀悼の意を表しますとともに、今も、寒い中で、被災地域で避難をしておられる方々、そして復旧復興に向けて努力されている住民の方々にお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 質問は、まず、ちょっとお配りしている資料を御覧いただきたいんですけれども、二〇二四年二月二十三日付の北陸版の中日新聞なんですが、首都防災ウィーク実行委員会という、東日本大震災以降、災害に関していろいろなことを、市民運動といいますか、活動を行っている方々が、これが、被災地の石川県の馳知事に対しまして要望書を出されました。

 それが記事になっているんですが、どういうことかといいますと、コンクリートの廃棄物というのが建物が倒壊するとたくさん出ますが、これをやはり通常のやり方、今日は、国定政務官、今いらっしゃっていますが、通常のやり方でやると、やはり非常にエネルギーとコストがかかってしまうということで、それを海底で利用する。人工海底山脈というものを造って、漁場再生とかカーボンニュートラルにも資するような形での利用というのをやはり今から考えていった方がいいというようなことを提言をされたものです。

 皆さんもニュースで驚愕されたと思いますが、ビルが横倒しになったような事例が、今回、能登半島地震ではありました。熊本地震の場合にはマグニチュード七・三ですが、能登の場合には七・六。これはマグニチュードを比べると〇・三しか違いがありませんが、指数関数なので、エネルギーは能登の方が熊本よりも二・八倍ある。くいが抜けてしまってビルが横倒しになったというようなことで、そういうことで非常に大きな被害があったわけなんですね。

 この首都防災ウィークの実行委員会の皆さんがおっしゃっているのは、やはり一番大変なのは、首都直下地震とか南海トラフの地震が起きたときに瓦れきのレベルがとんでもないことになるだろうと。熊本地震のときにも、これは環境省さん、頑張っていただいて、瓦れきの処理、二年で完了したということで、大変頑張っていただいたんですが、首都直下とか南海トラフの場合には、じゃ、何年かかるのかということにもなります。

 ですから、今日ちょっと議論したいのは、震災のコンクリート瓦れきというものを、ありとあらゆる選択肢を取って、そして活用していく、そして復興のスピードも高めていき、また費用対効果も非常に高い形で活用していくということをやったらいいんじゃないかというようなことについて、ちょっと質問と議論をさせていただきたいと思うんですね。

 最初に、まず、じゃ、こういうことをやったことがあるのかないのかというと、実はあるんですね。二〇一一年に、東日本大震災が起きた後、岩手県の宮古市で、県の公共事業で、コンクリート塊を海洋活用して防波堤を造ったり漁場を整備したという事例がありますが、これは国として把握をされているかということと、それから、地元の住民とか漁業者の反応はどうだったのか。そして、現在にわたっても、このコンクリート殻という廃棄物を海の方に入れているわけですが、何か問題があるのかないのかというところについて、知っていることをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災発生時におきましては、被災地を襲った津波などによりまして大量の災害廃棄物が発生をいたしました。この災害廃棄物のうち、比較的再生利用が容易なコンクリート殻について、被災地における漁港や漁場の整備に活用した事例がございます。

 具体的には、岩手県が行った事業の中で、漁港の防波堤整備における中詰め材としての活用、ワカメ等の海藻が着底するコンクリートブロックの構成材としての活用などが行われております。

 また、これらの再生利用に関し、事前に岩手県において地元自治体及び漁業者に説明を行い、了解を得た上で実施に至ったものと聞いているところでございます。

 その後の状況については、具体的な問題があるといったような情報には接しておりません。

小野分科員 御答弁いただいたように、これは非常に地元の方でも効果が上がっているというふうに評価をされている事業のようなんですね。

 ここで、コンクリートの廃棄物がこれから大量に大きな災害で出るというようなことを考えた場合に、具体的に今後どういうことが問題になっていくかということをお聞きしたいというふうに思うんですね。

 まず、国定政務官にお伺いしたいんですけれども、コンクリート塊の材料であるコンクリートと、それからあと鉄筋ですね。今、かなり細かく破砕して使っていて、鉄筋は除いた形で使っているんですが、こういう活用をしようというふうに言っていらっしゃる方々は、実は鉄筋も入れた方が海の環境としては、鉄分ということもあっていいんじゃないかとか、あとはエネルギーの問題、細かく砕けば砕くほどエネルギーとコストはかかっていくので、鉄筋も活用すべきじゃないかというようなこともおっしゃっていたりするんですが、これが水質に悪影響を与えるのかどうかということについて御見解を伺いたいと思います。

国定大臣政務官 お答え申し上げます。

 そもそも、海洋におけますコンクリート塊などの有効活用に当たりましては、海洋環境への影響がないこと、これがまず大前提でございます。このため、そのものが一定の基準以上の有害物質を含まないことや有害物質が溶け出さないことを事前に確認をすることが必要でございまして、現にそのような運用を基本的に行っているところでございます。

小野分科員 非常に模範的な答えというか、役所らしい答え、私は国定さんは政治家だと思っておりますが、要は、安全性に問題のないものを使っているということなので、それをクリアしたら使えますよというお答えだと思うんです、当たり前の話なんですけれども。

 そこで、これは通告していないので、私の意見を申し上げたいと思うんですけれども、溶出試験とかそういうことをやって安全性を確認してくださいよということだと思うんですけれども、例えば、いろいろ、岩手県の文書とか見ていますと、震災の現場では、当然、めちゃくちゃ余裕がないわけですね。試験をしているとかいういとまがないとかということも当然あります。

 そういうときに、文書にも書かれていて、なかなかこれはいい判断だなと思ったんですけれども、公共施設とか、そもそも建設しているときに安全性が確認できて造っているものについては、そういう試験を省いた上で使っていいというふうに言っていて、こういう柔軟な発想というのは、私、平時から議論しておいて、そして有事においてもそういった判断で動いていくというのは非常に重要なことだと思うんです。

 ですから、国交省も今日来られているので、一つ御提案をしたいんですけれども、例えば、公共施設だけではなしに、使っているコンクリート材がこういった形でもう安全性が取られているということは、平時からちゃんと基準が作られているというふうに思うんですね。昔のものについてはそうじゃないものもあるかもしれませんが。

 そういったことで、仮に南海トラフとか首都直下で激しく壊れてしまって撤去する際に、その利用に関して、この場所のこのコンクリートだったらこれはすぐにでも使えますよというようなことを柔軟にちゃんと判断していけるような仕組みをつくっていただきたいなというふうに思います。これはもう質問はしませんが、そういったことを是非ふだんから考えていただきたい。それだけでも大分、復旧復興のスピードとか、それからコストという面でかなり効果があると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 もう一つ国定政務官にお伺いしたいんですが、コンクリート塊を海洋に活用するときには、これはロンドン条約に抵触するという話があります。宮古の場合、あるいは、ほかにも大槌とかいろいろ、東日本のときにやったケースがあるんですが、どういう検討があって、どういうクリアをしていったのかというところについてお話しいただきたいと思います。

国定大臣政務官 御指摘いただいておりますロンドン条約に基づく一九九六年の議定書でございますけれども、船舶等からの廃棄物の海洋投棄を規制しているところではございますけれども、単なる処分の目的以外の目的で海洋に配置する行為は、この議定書の規制対象外というふうにまず整理をされているということでございます。

 この御指摘いただいております事案は、コンクリート塊を、例えば防波堤であったりあるいは漁場の整備の資材として、適正な管理の下で有効に利用したものというふうに承知をしておりますので、先ほど申し上げました規制対象外となり、本議定書には抵触しない、こういう理屈の整理でございます。

小野分科員 ありがとうございます。

 その辺もいろいろと、海産物の問題とか、諸外国もいろいろ言ってこられるところもあるので、是非、国際的にもしっかりと、震災が起きたときの対応として説明ができるような準備もふだんからしていただければというふうに思います。

 次に、今度は平時における話に移りたいというふうに思うんですね。

 平時にも、発生するコンクリートの量というのは、我が国、相当あると思うんですけれども、これも有効活用ということで、ふだんは路盤材とか様々な、またコンクリート資源として、骨材として使うということもありますが、私は、こういう海底山脈を造るときの材料としても使うことも検討には値するんじゃないのかなと思っています。

 そこで、国土交通省にお伺いしたいんですが、年間、ビルの建て替えなどを含めて、全国で大量のコンクリート塊が発生しているというふうに思いますけれども、それがどれぐらい発生しているのか。そして、今現状では処理はどのようになされているのか。分かれば、リサイクルの費用、これは総額でも、あるいは単価とか、そういったことがあれば、ちょっと教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省が平成三十年に実施をしました建設副産物実態調査によりますと、建設工事から一年間に排出されたコンクリート塊の量は全国で約四千十九万トンとなっております。このうち、約三百二十九万トンが同一工事現場内で利用されたほか、約三千六百九十万トンが工事現場外の中間処理施設等に搬出され、破砕をされまして、再生砕石ですとか再生砂などとして再資源化されるなどしております。

 なお、直接、リサイクル費用として把握しているものはございませんが、平成三十年度の同調査によりますと、中間処理施設でのコンクリート塊の受入れ料金につきましては、全国平均で一トン当たり約二千五百円となっております。

小野分科員 年間に四千十九万トンということで、これはかなりの量ではあるんですよね。震災でももちろんいっときにして発生をするんですけれども、ちょっと私も手元にありませんけれども、東日本の数値等も見ても、やはり一年間でこれだけ平時でも発生している。もちろん、秩序立ってちゃんと発生しているので処理はよりスムーズにはいくと思うんですが、結構な量だと思います。

 そういう中で、じゃ、この毎年発生しているコンクリート殻がちゃんと使われているのかどうか。実際には、いろいろなところに積み置かれているわけでもないので、使われているとは思うんですが、そうはいっても、人口減少社会で昔ほど公共事業の数も額もそれほどはないということなので、毎年毎年発生しているそのコンクリートの廃棄物をちゃんと、これがある意味供給なわけですが、需要がどれぐらいあってバランスはどうなっているのかというところについて教えていただけますでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年度の建設副産物実態調査の結果によりますと、建設工事から全国で一年間に排出されたコンクリート塊の量は先ほど御説明しましたとおり約四千十九万トンでございますが、一方、道路の路盤材等として全国で再生利用された量につきましては約三千九百九十四万トンと、供給と、需給はおおむね等しくなってございます。

小野分科員 ありがとうございます。

 そういう意味では、有効活用されているというようなことで、リサイクルをしっかりやりながら公共事業もやられているということだろうと思います。そこは安心したんですが、今度、また災害の話に戻りたいというふうに思うんですが、これも再び国定政務官にお伺いしたいと思います。

 では、首都直下地震あるいは南海トラフ地震が起きた場合の試算なんですが、この二つの大地震が発生した場合にできる廃棄物のコンクリートの量というのはどういうふうに見積もっていらっしゃいますでしょうか。

国定大臣政務官 今ほど御指摘をいただきました件につきまして、具体的に、首都直下地震あるいは南海トラフ地震におけます災害廃棄物の発生量につきまして、有識者検討会において推計を既にお示しをしているところでございます。

 まず、首都直下型地震でございますけれども、災害廃棄物が約一億一千万トン、そのうちコンクリート殻が約六千万トン発生するというふうに推計されております。他方、南海トラフ地震でございますけれども、災害廃棄物が約二億二千万トン、そのうちコンクリート殻が約一億トン発生するというふうに推計されているところでございます。

小野分科員 大変な数だと思うんですね。

 先ほど、年間で通常発生するコンクリート廃棄物が四千万トンということでありましたが、首都直下の場合には六千万で、南海トラフのときには一億トンということで、本当に一瞬にして物すごい量が廃棄物として出てしまうということで、これをどうしていくのかということは、やはりこれは起きてから考えたんじゃ絶対遅いというふうに思いますので、国定政務官にお伺いしたいのは、こうした大量のコンクリート塊が発生した場合、どういうふうに使っていくのかという取決めがあるのか、ここについて御答弁いただきたいと思います。

国定大臣政務官 お答え申し上げます。

 今ほど御指摘いただきましたコンクリート殻の再生利用につきましては、災害廃棄物対策指針の技術資料におきまして、再生路盤材や埋め戻し材等の利用用途を既にお示しをさせていただいているところでございます。

 その上で、南海トラフ地震等の大規模災害に備えまして、有識者検討会におきまして、大量のコンクリート殻の再生利用に当たっての利用先あるいは関係部局との調整、技術的な課題等の検討を現在まさに進めているところでございます。

 引き続き、大規模災害時におけますコンクリート殻の有効利用に向けまして技術的な検討を進めてまいりたいというふうに考えておりますし、先ほど御指摘いただきました東日本大震災におけます災害廃棄物、これにつきましては、おおよそ二千万トン排出されているというところでございます。

小野分科員 ありがとうございます。

 御答弁いただいた内容ですと、路盤材とか埋め戻し材ということで、既存のやり方なのかなといふうに思ったんですけれども、先ほどもちょっと申し上げたんですが、ほかにも利用可能性がないのかというのは、是非これは各省庁と連携して、こういう使い道があるよということは今からもっともっと真剣に考えておかなきゃいけない問題だと思うんですよ。今の使い方だけだったら多分使い切れないということもあるので、私も、今回この質問をしている内容は、廃棄物を使っていない形での事業についてもちょっとこれから質問しようと思いますが、是非、環境省の方でもしっかりそういう研究も進めてもらいたいというふうに思うんですね。

 そこで、実際に、これはコンクリート殻、廃棄物を使ったわけじゃないんですが、長崎県の五島西方沖事業という事業があって、これが、マウンド礁といって、先ほどの冒頭の記事にもありましたが、ちょっと図はそういう感じなんですが、人工海底山脈を平らな海のところに造っていくんですね。そういう事業をやったんです。これは、そういった平たんな海に人工物で山みたいなものを造っていくと、海底に堆積した栄養分というのが山で海流の影響でどんどんどんどん湧き上がっていって、そして、その栄養分が太陽光が届くところに行くと植物プランクトンが発生する。それを餌にしてお魚が育っていって、そして漁獲高が上がるというような仕組みなんですけれども。

 この五島西方沖事業に関して、これはちょっと水産庁に伺いたいんですけれども、この事業の事業費、それからあと単価とか、分かりやすい指標があれば教えてほしいのと、それからあと、この事業によってどういう効果が生まれたのかということを御答弁いただきたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の長崎県五島西方沖地区のマウンド礁につきましては、平成二十二年から二十七年にかけて整備をしたものでございます。

 このマウンド礁整備に係る事業費は約九十二億円でございます。このうち、ブロックを製作する工事と、それを海上運搬、投入に係る工事の費用の割合がおよそ一対一ということでございますので、このブロック製作に係る事業費で単純に試算しますと、一立米当たりの費用は約一・三万円ということになります。

 また、このマウンド礁における増殖の効果でございますが、例えば、マアジ一歳魚の体重が一般海域と比較して約一・五倍となっている、また、マウンド礁周辺のマアジ、マサバ、マイワシの漁獲量が整備前に比べて約一・八倍に増加していることなどが調査により確認されております。

小野分科員 かなり効果がある事業だなというふうに思うんですね。そうやって、私なんかも、海の素人なので、この問題を取り上げる前は全然そういう認識がなかったんですけれども、そういうふうに海の中でうまく地形を造っていけば魚がすみやすくなって、漁獲高が二倍近くになるとかというようなことがあって、非常にいい事業だなというふうに思うんです。そういう中で、もちろん、天然石とか新品のコンクリートを使うとか、そういう話もあると思うんですが、こうした廃棄物を使って構築していくということも結構有用だろうと思います。

 岩手県の田老町の事例について記述した岩手県文書というのがちょっとあるんですけれども、これによると、通常のコンクリートの撤去処分をした場合には立米当たり一万五千円近くかかるんですけれども、海底山脈じゃなくて海岸近くのところで漁港施設を造った場合には五千六百円ぐらいの単価で済んでいるということで、被災したコンクリートの廃棄物を有効活用することによってコストダウンも図れるということで、是非、大臣、こういった効果もあるので、はまるところ、はまらないところ、そもそも海の近くの廃棄物、瓦れきなのかとか、いろいろあると思いますが、是非こういった活用も考えていただきたいというふうに思うんですね。

 この質問の最後はちょっと大臣にもお伺いしたいと思うんですが、非常にいい文書を私も見つけまして、平成二十四年七月に、漁場施設への災害廃棄物等再生利用の手引きということで、東日本大震災で瓦れきがいっぱい発生した、それを利用しながら漁場の施設の再生を図ろうというようなガイドブックができているんですね。非常によくできていて、私、これは役所が作った資料としては非常にいろいろなことに踏み込んでいて、チャレンジングだなと思うんですが、坂本大臣も非常にお忙しい中だと思いますが、これは、ちょっとぱらっと確認いただけましたでしょうか。

坂本国務大臣 その手引につきましては、東日本大震災を契機といたしまして、漁場整備にコンクリート殻を使う技術的な方法をきちんとまとめたものとして事務方から説明を受けております。

小野分科員 ありがとうございます。

 是非、これもちょっとお読みいただくと、更に深くお読みいただくと、いいこと書いてあるなというふうに大臣もお感じになられると思いますけれども、この手引を見ると、今回、石川県を始め、能登半島地震で被災してできたコンクリート殻を、これは結構使えるんじゃないかと、漁場整備に。向こうも、能登も漁業が盛んなところでもありますし、何か活用の余地があるんじゃないかということも思いますので、これは是非前向きに、こういった活用の方法もあるんじゃないかということを、環境省とも連携しながら、可能性は検討していただきたいというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 有効に活用しなければいけないと思います。

 ただ、先ほど環境省からもありましたように、以前のコンクリートですと六価クロムあたりが使われていたりというようなことがありますので、安全性をしっかり確認すること。それから、やはり海中に投入いたしますので、漁業者の方々に対する安全性、これもやはり考えること。それと、やはり刺し網とか底引き網とか小型まき網とか様々な漁法がありますので、こういう既存の漁法にやはり支障を来さないような、そういうことでこのコンクリート殻というものを活用すれば大いに資源の再生につながるというふうに考えます。

小野分科員 大臣、ありがとうございます。

 いろいろな多分クリアしなければいけないことがたくさんあると思います。そして、何より大事なのは、安全性とか、それから安心していただけること、それによって風評被害が生じないということが大前提だというふうに思いますので、是非。

 そうはいっても、先ほどから申し上げているように、災害瓦れきが本当に積み上がってしまった場合に、それをどうやって使っていくのかというのは、やはりこれは平時から考えなければいけないことだと思いますので、その点については、是非環境省とも連携しながら、検討を進めていただきたい。この水産庁が作った手引というのは、私は非常に優れたものだと思うので、これは将来の災害にも生かしていくという観点で、是非考えていただければなと思います。

 国定政務官、もうここで終わりで結構です。ありがとうございました。

 最後に、ちょっと残り時間は少ないんですが、今国会提出予定の食料・農業・農村基本法の改正について、ちょっと輸出についてお伺いしたいなと思います。

 輸出促進というのは、これは改正の中にも、まだポンチ絵しか出ていない段階で、私もそれしか見ていませんが、結構大きく取り上げています。輸出の促進の目的は、そもそも大臣は何だというふうにお考えになりますか。

坂本国務大臣 国内市場、マーケットが縮小していきますその一方で、海外市場はアジアを中心に大きく広がってまいります。そういうことで、国内にまず安定的な食料を供給するというのが第一ですけれども、やはり、日本の農産物、農水産物というものをしっかり海外に輸出をする、そのことによりまして、農林水産業の活性化と、やはり農林水産漁業者の所得、こういったものをしっかり確保していく、こういったことを目的として、輸出の産業の拡大というものを目指しております。

小野分科員 稼げる農業をやる、その一つの手段として輸出というのが選択肢でもあるんだろうというふうに私は思います。おっしゃるとおり、人口が国内では縮小していく中で、外に目を向けて農林水産業を考えていくということだと思うんですけれども。

 そこで、私も、農水省の方に、こういうのがありますよということで教えていただいて、見たんですが、輸出拡大実行戦略というのがあります。

 この中を見てみると、もちろん和牛とかは、世界的に人気があるのでどんどん伸びていくという数字になっています。二〇一九年で二百九十七億円が、二〇二五年目標で千六百億円ということで、五倍ぐらいの強気の目標を掲げているわけですが、一方で、面積が一番多い米に関しましては、やはりこれは結構大変なんですね。二〇一九年で五十二億円を、二〇二五年で百二十五億円ということで、額もちっちゃいし、それから、やはり伸びとしてもなかなか難しいだろうと。

 私は、昨日、石破さんもこのことについてはちょっと触れられていましたが、米政策をどういうふうにするのかというのは、輸出に関してどれぐらい本気度を入れてやるのかということと、それからあと、国内でどれだけの米の消費を、食料安全保障として米をどれだけ作るのかということは、非常に、もうちょっと深く考える必要があるというふうに思っていまして、例えば、ここ、米、パック御飯、米粉及び米粉製品というふうになっているので、そういう意味では、もっともっと、米の戦略的な輸出と食料自給率の維持ということ、難しい問題ではあるんですが、もうちょっと意欲的に考えていく。

 例えば、石破さんもこの間おっしゃっていました。長粒種米をやらないのかとか、そういうこともありますが、もし、最後もう時間がなくなりましたので、輸出全般でもいいですし、米の輸出のことについてでもいいですが、何か大臣のコメントがあればお願いします。

坂本国務大臣 米の輸出につきましては、非常に有望だと思います。ただ、やはり長粒種が世界のマーケットの、市場でございますので、ジャポニカ米をどれだけ売り込めるかというような課題はあります。

 しかし、ジャポニカ米はプレミアム商品として海外で非常に高級品として重宝がられておりますので、こういうものをしっかりと売り込んでいくこと。そのためには、産地を形成をして、そしてそこで多収穫米というような形での米を作る、そしてロットもしっかりと確保した上で世界に売り出していく。その売り出すときは、やはり官民一体となってプロモーションをやっていく。こういう戦略が必要であるというふうに思っておりますので、ここは、農林水産省としても、輸出拡大戦略の中にしっかりと明記をした上で、実践、実行に移してまいりたいというふうに思っております。

小野分科員 これで終わりますが、なかなか、米の、我々が抱えている農地と、それから輸出の規模ということでいうと、大分乖離があるので、やはりもうちょっとブラッシュアップしなければいけないというふうにも思いますので、これはまた議論していきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

伊東主査 これにて小野泰輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、早坂敦君。

早坂分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の早坂敦です。

 本日は、質問に是非ともよろしくお願い申し上げます。

 早速ですが、まず初めに、農業の人手不足についてちょっと認識を伺いたいと思うんです。

 現在、ふだんの仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者は、令和四年農水省の資料によると百二十三万人、平均年齢は約六十八歳。年齢構成的には、七十歳以上の方が五六・七%で約半数以上、六十歳以上になると八割になるんですね。五十歳以下の基幹的農業従事者は二一%です。農業従事者は、ここ二十年で、百二十三万人から四分の一程度の約三十万人へと急減すると見込まれております。これは確実に減少しますので。

 そこで、農業従事者の高齢化、人手不足についてどのような危機感を持っているか、大臣の見解を伺います。

坂本国務大臣 農業従事者の減少につきまして、私たちも大変な危機感を持っております。

 今委員御指摘があったように、二十年後には四分の一に減少する、これをどうカバーしていくかということでありますけれども、その一つの方法は、やはり法人をもっと活用する。農業従事者が増加しまして、法人が持つ農地面積は四分の一になります。それから、売上金額は法人が四割を占めております。さらには、農業の総生産額は二十年前と同水準である九兆円ということで、その金額を維持しております。

 こうした中で、個人経営体の基幹的農業従事者につきまして、今後、年齢構成から大きく減少することがあるという厳しい局面を見据えて、少ない労働人口で農業を支えていく。一つは法人化、一つはスマート化、そして経営管理能力の向上、こういったものでこれからの農業人口の減少というものをカバーしていかなければいけない。そのための食料・農業・農村基本法の提案ということを考えているところでございます。

早坂分科員 ありがとうございます。

 私、宮城県仙台市出身なんですね。それで、ダイヤモンドという雑誌で、農業法人で宮城県では舞台ファームさんという大変大きな、水耕栽培とかをやっていまして、本当に、あるコンビニのカット野菜を作ったりしていますので、やはり法人化とか、若手の、若い方々がもうちょっと農業に興味を持っていただきたいという思いで、是非とも大臣、よろしくお願い申し上げます。

 続いて、新規就農支援者について伺いたいと思うんですが、新規就農者数は減少傾向にあります。農業を支える人材、新規就農者確保は大変重要です。積極的に新規就農者を支援するべきだと考えます。

 令和四年度から新たな措置として、新規就農者育成総合対策が始まっております。就農準備資金や経営の開始の資金といった資金面の支援や、経営発展のための機械、施設への導入、あるいは地域におけるサポート体制充実などの支援ということでありますけれども、支援金については四十九歳以下という要件があるんですね。この状況の下、五十歳以上でも新規就農者は大変ありがたいと思うんです、貴重な存在だと思います。新規就農に当たり、財政的支援は不安を和らげる一助になるんだと思いますが。そしてまた、以前は四十四歳までが助成の要件でした。四十九歳に引き下がりました。なぜ四十九歳なのか。年齢で縛るべきではないと思いますが、要件緩和されない理由を伺いたいと思います。

 また、政府は四月から、農作業事故の防止に向けて、農機の危険性を教育する義務づけが始まりました。農業未経験者の事故防止が期待されますが、労働者を雇用していない個人経営の農家は対象外なんです。新規就農した個人の安全が担保されない可能性があります。政府は全ての農業従事者の安全を守るべきで、新規就農促進につなげるためにも、安全対策に差が生じないように法、設備が必要と考えますが、農水省の見解を伺います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農業従事者につきましては、六十歳以上が約八割であるなど、年齢構成のアンバランスが大きな課題であることから、これを是正するため、また、長きにわたって我が国の農業を担う者を確保、育成するため、四十九歳以下の若い就農者、要するに四十代以下ということになりますけれども、四十九歳以下の若い就農者に対して、資金面及び経営発展のための機械、施設の導入等の支援を行っているところでございます。

 他方、五十歳以上の方につきましても、地域の担い手として活躍することが期待されることから、農業大学校における就農を希望する方向けの研修に加えまして、令和四年度から新たに措置をしている、地域における就農相談体制や実践的な研修農場の整備等、サポート体制の充実のための支援につきましては、年齢に関係なく、新規に就農する方が農業技術等を身につけるための支援として実施をしているところでございます。

 また、本年四月より、労働安全衛生法に基づき、農業を含む全ての業種において、機械の操作方法など、全項目についての雇入れ時の労働者への教育が義務化されます。農林水産省といたしましては、例えば事業主御本人など、雇われていない方も含め、農作業安全に関する知識等が習得されるよう、農作業安全に係る研修等を実施してまいります。

 今後も、委員御指摘の内容や現場の声を踏まえつつ、新規に就農する方の育成、確保についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

早坂分科員 ありがとうございます。

 是非とも、若い方、先ほども言いましたが、農業にやはり興味がある方、そしてまた、農家で育っていない方々も興味を持ってもらって、しっかり第一次産業を支えていってもらうのもやはりこれからは若者たちだと思うので、是非ともよろしくお願い申し上げます。

 次に、農業従事者の高齢化、人手不足の穴を埋めているのが外国人の人材です。農業、水産業、酪農、畜産業においても、外国人の人材が、外国人研修生は貴重な今戦力になっているんですね。今や、外国人抜きには日本の農業は成り立たないと言ってもいいくらいだと思います。

 政府は、技能実習制度に代わり、基本的に三年間の育成期間で特定技能一号の技能水準の人材に育成する育成就労制度の政府方針を決定し、今国会の関連法案で提出予定です。特定技能への外国人のニーズは高く、それに対応した受入れ側は、待遇改善など就業環境の整備や、住環境を含む農村の社会インフラの整備も不可欠です。

 農業の担い手として日本が選ばれる国になるよう、農林水産業としても役所の各省と連携して、よりよい制度になることを御尽力いただきたいと思いますが、農水省さんの見解を伺います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘いただきましたように、農林水産の人口減少等が進行する中、外国人材を含め、農業あるいは漁業等の現場におけます労働力確保は重要であると考えております。

 農林水産省といたしましては、外国人材の技能を評価するための技能試験の実施、相談窓口の設置や優良事例の収集、周知等、それから、外国における現地説明、相談会の実施などの取組を支援することによって、外国人材が働きやすい環境整備を行っているところでございます。

 引き続き、これらの取組を推進するとともに、現在検討されております制度見直しにおきましても、農業あるいは漁業等の現場の実情を踏まえた制度となるよう、関係省庁と連携して検討を進めてまいりたいと考えております。

早坂分科員 ありがとうございます。

 是非とも、やはり外国人の皆様の力は今大切でありまして、農業だけじゃなくて、やはり技術的にも、今、この日本で農家をやりたい、そして自分の国にまた持って帰りたいというような、その技術をやはり向上させていただきたい。そしてまた、皆さんの待遇ですよね、やはり安い賃金で働いているとか、違う仕事ではありますが、是非ともそこの環境整備もよろしくお願いを申し上げます。

 次に、スマート農業の技術支援の取組や課題、検証について伺いたいと思います。

 人口減少下に生産者の減少が避けられていない現状にあり、少ない人数で農家を持続可能にしていく、そして強固な食料安定供給基盤をつくっていくことが重要だと思います。農地など食料生産基盤を維持していくには、現在よりも相当程度少ない人数で国内の食料生産を担うことになるというのを想定せざるを得ないですよね。そして、逆に、少ない人数で多くの生産資源を使えるので、やり方によっては成長産業化、あとまた農業所得の向上も追求できます。

 そのためには、スマート技術、またスマート農業開発、実用化により効率化を追求し、生産性を高くしていかなければなりません。自動トラクターやドローンなど、広い面積を少ない人数で管理、マネジメントできるような技術を進めていくことがもう待ったなしの状況だと思います。

 そこで、文科省の廃校プロジェクトというのがあるんですが、少子化などにより廃校になった学校を利活用するというプロジェクトなんですけれども、その中で、成功事例で、廃校に水槽を設置して陸上養殖を行っている事例がありました。海がなくても、そして今、なかなか魚が、いろいろなところで捕れる場所が変わってきているというのもあるんですが、海がなくても養殖できるということで、私はちょっと驚きました。

 また、人間がわざわざ海に行かなくても、スマートフォンのアプリを使って養殖魚の餌を自動で行うという技術もあります。水産業の例で恐縮ですが、これらの一つの例で、スマート技術、スマート農業への取組、課題、検証はどこまで進んでいるのか、伺います。

川合政府参考人 お答え申し上げます。

 スマート農業技術につきましては、委員御指摘のとおり、人口減少下においても生産水準が維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するために重要であります。これまでに、全国で二百十七地区でスマート農業の実証プロジェクトを推進してまいりました。

 その結果、作業の省力化や負担の軽減など非常に効果がある一方で、課題もあります。例えば、一つ目として、果樹や野菜の収穫など、人手に頼っている作物でスマート農業技術の開発が不十分な領域がありまして、開発の促進を図る必要がある。二つ目としまして、スマート農業機械の導入コストが非常に高くて、それを扱える人材が不足している。三つ目としまして、従来の栽培方式にそのままスマート農業技術を導入しても、その効果が十分に発揮されないなどの課題が明らかになりました。

 このため、政府としましては、令和五年十二月に開催されました食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で決定されました「「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づく具体的な施策の内容」に基づきまして、一つ目としまして、国が主導で実装まで想定した重点開発目標を明確にした上で、これに沿って研究開発に取り組むスタートアップなどの事業者に対する農研機構の施設供用などを通じた産学官連携の強化による研究開発などを促進する。二つ目としまして、スマート農業技術の活用を支援するサービス事業体などと連携しながら、スマート農業技術に適合した栽培体系の見直しなどの生産方式の転換を促す。これらを税制、金融などにより一体的に支援できますよう、今国会へ関連法案を提出すべく検討を進めてまいります。

早坂分科員 是非とも進めていってもらいたいという思いですね。今のスマート農業への自動トラクターやドローン、ただ、あっても使わなかったら意味がないので、やはり技術向上のためにも是非ともよろしくお願い申し上げます。

 次に、能登半島地震の被災地の件ですが、一定規模で農作業が欠かせない働き手が深刻な住宅被害により地域外に避難するなど、仕事を離れるなど、人材確保が難航しております。崩れたあぜを補強する応急処置や苗などをそろえる働き手の確保ができなければ、苗や整備がそろっていても作付できず、また、できても面積を縮小しなくちゃいけない。酪農においても、従業員が働けない、県外に避難したり、人手不足により、そしてまた、頭数ができない牛舎も出てくる可能性もあります。

 東日本大震災では、私も仙台で被災をした一人です。三月でしたが、雪が降る寒い日でした。能登も雪が降り積もり、冷たい雨も降りました。能登の方々のお気持ち、御苦労、悲しみは本当に分かります。東日本大震災、宮城県の農地は比較的早めに復旧したのかなと思われますが、石川県において、状況は異なりますが、一日も早い復旧ができると信じております。

 石川県の知事の馳知事が、農業、水産業の復旧なくして能登の創造的復興はないとおっしゃっております。政府の現状認識と対応方針を伺いたいと思います。

舞立大臣政務官 ありがとうございます。

 今般の能登半島地震への対応でございますが、私自身も今月、被災地、視察させていただきましたが、地域の方々の誇りであります世界農業遺産の能登の里山里海等も含めまして、甚大な被害が発生したものと考えております。

 このため、先月の二十五日に政府として策定いたしました被災者の生活となりわい支援のためのパッケージに基づきまして、農地、用排水施設、林地、林道、漁港等の生産インフラの復旧、そして農業用機械や畜舎、漁船等の再建、また、金融支援や共済の早期支払いのほか、また、避難を余儀なくされる場合に営農可能な方への農作業の委託ですとか家畜の避難、預託等々含めまして、各種支援策を重層的に講じることといたしております。

 省といたしましても、地域の将来ビジョンを見据えて、農林漁業者の一日も早いなりわいの再建に向けて、被災自治体と連携して全力を尽くしてまいります。

早坂分科員 ありがとうございます。

 私も、来月の十一日で震災から十三年目を迎えます。我々も本当に、逆に言うと、津波の被害が多かったので沿岸に被害があったので、実は、本当にすぐに、何十年かかるとか、そういう話も最初、農家の方々は本当に落胆していたんですが、今本当に、イチゴの農家の人たちもしっかりやっていますし、あと、今は田んぼでちゃんとしっかりとお米が取れるような状態になっています。是非ともしっかりと進めていってください。お願いを申し上げます。

 次に、食料自給率と食料安全保障について伺いたいと思います。

 一夜にして世界が変わるということは、私たちがこれまで経験をいたしました。ロシアのウクライナ侵略や、今ガザで起きている戦闘、新型コロナウイルスの流行など、一夜にして戦争が起き、ウイルスが世界中に広がっていく。世界はある種の分断が起きており、世界情勢は不安定化、不確実性が増す中、気候変動による世界的な食料生産の不安定化、また、ウクライナ情勢を受け、食料や生産資材の価格高騰などにより、輸入依存度の高い我が国の食料安全保障のリスクが顕在化しております。

 人口減少や少子高齢化などが進行する中、我が国の食料安全保障を強化するには、輸入依存度の高い品目を国産へと転換していくのが重要だと思います。

 食料安全保障について、大臣の見解を伺います。お願いします。

坂本国務大臣 まさに委員が御指摘のとおりであります。日本を取り巻く食の世界の情勢が大きく変わりました。

 一つは、気候変動です。気候変動によりまして、自然災害が頻発するようになりました。そして二つ目は、アジアやアフリカの人口増、そしてインドや中国の経済の成長に伴いまして、これまでのように欲しいときに物が入るというような状況ではなくなりました。そして三つ目は、新型コロナの蔓延、あるいは、これから温暖化によりまして病害虫の蔓延、こういったものも出てくるかもしれません。そういうような状況を、世界の情勢と日本の今の食料・農業・農村基本法が合わなくなったというのがまず第一でございます。

 そして、国内におきましても、先ほど御指摘いただきましたように、やはり農業者人口が大きく減ってくる、さらには集落機能の低下、こういったものが見られるようになった。ですから、しっかりとスマート化その他で人口減少あるいは農業者減少をカバーすると同時に、一人一人にやはりしっかりと食料が届くような、そういう食料アクセスというものを集落に対してもやっていかなければいけない。

 そういう国内事情の、国内の大きな変化も伴いまして、私たちは、今回の食料・農業・農村基本法で食料安全保障というものを第一に掲げて、これからの安定した国民の皆様への食料供給を実現させようというものであります。

早坂分科員 大臣、ありがとうございます。是非とも進めていってください。

 次、食料自給率が向上しないことに対しての対策について伺いたいんですが、将来にわたり国民の食料を安定供給すること、国家の基本的な役割だと思うんです。

 令和四年の食料自給率はカロリーベースで三八%、十三年連続で四〇%を下回っているんですね。現行の食料・農業・農村基本計画は四五%。国家の基本的役割を果たせているとは思えていないんですが。

 また、お米は我が国の国民の主食ですが、食の多様化、食生活の変化により、以前ほどお米を食べる方が少なくなり、食用米が需要が減少しております。また、輸入依存度の高い飼料を多く使用する畜産物も消費が増えているなど、要因はいろいろあると思いますが、目標達成に至らない要因は何だと認識しているんでしょうか。

 また、輸入に依存している麦や大豆など、現実的にはどこまで日本で増産することができるのでしょうか。

 また、有事の際に、海外の国々がこれまでどおり食材を日本向けに優先して共有してくれる保証はありません。なので、食料安定確保、また自給率向上は、我が国は喫緊の課題だと思います。

 十三年連続で四〇%を下回る中、四五%という数字は現実的な数字なのでしょうか。自給率を向上させるのか、現状維持なのか、達成するための本気度が試されていると思います。政府の覚悟、具体的な対策を伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 まず、食料自給率につきましては、戦後につきまして、食生活の洋風化が進んだ、又は人口の増大によって食料需要が急速に拡大したということがございまして、これをカバーするために輸入が急増し、昭和四十年度に七三%だった自給率は急減をいたしました。

 一方、現行基本法が制定された平成十一年以降は、大体四〇%前後で推移をしております。

 平成十年度前後の四〇%から令和四年度に三八%に減少したわけですけれども、この自給率の変化二%分について定量的に評価をしますと、輸入依存度の高い小麦や大豆の国内生産の拡大、これによって自給率が一・四%引き上げられた一方、自給率の高い米につきまして消費量が減少したことによって、自給率が三・〇%引き下げられたということが主要な要因となっております。

 今後は、自給率の向上に効果があった施策を更に加速化していくということが重要でございまして、麦、大豆、あと飼料や加工原料用野菜などの輸入依存度の高い品目への国産転換を更に推進していくとともに、米粉の特徴を生かした新商品開発等による利用拡大や米の輸出促進等によって米の消費の減少を少しでもカバーしていく、また販売促進をしていくということが重要だというふうに考えております。

早坂分科員 ありがとうございます。

 私、今五十二歳なんですけれども、その頃にはやはりいろいろな食べ物はなかったんですから、今は本当に外食の産業が進化していますので、やはりお米を食べる、子供たちにもそうしてほしいという思いでございますし、是非とも努力していただいて、お願いします。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、進めます。次、農業の多面的機能強化について伺いたいと思います。

 田んぼは、雨水をため込み、ダムの役割を果たし、洪水などの被害を防いでくれております。また、暑さを和らげて涼しくもしてくれますし、また、多くの生き物が育み、また、子供たちの自然の恵みを学習する場でもあります。また、日本の原風景を大切にしていく文化的な役割など、様々な価値が農業にあります。千枚田や田んぼアート、ヒマワリの畑の迷路など、水田、畑地が観光資源として側面を持ち、また、今回の能登半島地震でも、農家のビニールハウスが雨風を防ぎ、避難所の代わりとして使われた、防災機能も発揮しております。

 環境安全や防災につながる農業の多面的機能を更に周知し、理解醸成に政府は積極的に進めるべきだと思いますが、その考えがあるのかを伺いたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 農業の多面的機能につきましては、地域住民はもとより、国民全体が享受しているものであり、その内容や重要性について、広く国民の理解を得ていくことが肝要であると認識しております。

 現在、例えば、小学校社会科の教科書には農業の多面的な役割について記述されているほか、農林水産省といたしましても、ホームページへの掲載、パンフレットの配布や各種イベントでのパネル展示等を通じまして、多面的機能を分かりやすく紹介し、国民への普及啓発に努めているところであります。

 今後とも、こうした情報発信を通じまして、国民の理解増進に努めてまいりたいと考えております。

早坂分科員 ありがとうございます。

 まさに、やはりこの能登半島の地震や、我々も先ほども言いましたが、東日本大震災で、そのときは、大変、本当に、津波の被害でその防災機能が果たせませんでしたが、是非そういう取組も進んでほしいということでお願いを申し上げます。

 最後の質問にさせていただくんですが、今、日本の農業はいろいろな意味で危機を迎えているんだと思います。しかし、危機をチャンスに変えるいい機会でもあります。農業にはいろいろな可能性があります。それを生かすも殺すも政策次第ではないでしょうか。

 最後に、大臣に伺いたいと思います。

 農業を守るということは、すなわち国土を守ることにつながるんだと思います。日本の国土を守るためにも、大臣のリーダーシップにより、農業を魅力ある産業に育てていただきたいと思います。大臣が思い描く魅力ある農業はどういうものか、また、農業の未来をどう考えているのか。農業を魅力ある生産産業に転換していくという決意をお聞かせください。

坂本国務大臣 委員先ほどから御指摘のように、気候変動で食料が非常に不安定化いたします。一方で、世界のアフリカあたりを中心とする人口の増加、そしてインド、中国等の成長、そういう中で食料がなかなか手に入らないような時代になってくる。

 それでは、どうやって私たちは食料を確保していくか。やはり、減少する我が国でありますけれども、少ない人数でしっかり生産力を維持発展させていく、そのことが大事だろうというふうに思います。そのためには、やはり生産性の向上、そして付加価値の向上、そして収益率がいい農業、こういったものを実現していくことが大事だというふうに思います。

 後継者は少なくなっておりますけれども、やはり親から、農業をやっておればしっかりと安定した所得はあるんだ、間違いはないんだ、だからおまえは農業をやれ、そして、自然と対峙して伸び伸びとその中で労働をすることができるんだというようなことを、親から子へ、子から孫へ受け継いで、そして、その中でコミュニティーも成立する、そして成長産業としてもやはり発展していく、そういう農業を私自身は目指しているところであります。

早坂分科員 大臣、本当にありがとうございます。力強いお言葉、ありがとうございます。

 時間が来ましたので、質問を終わりにします。ありがとうございました。

伊東主査 これにて早坂敦君の質疑は終了いたしました。

 次に、中嶋秀樹君。

中嶋(秀)分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の中嶋秀樹です。

 本日は質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、私の地元である京都南部でよく相談される事柄をベースに、農林業全般に関わることについて質問させていただこうと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 突然ですけれども、坂本大臣は、日本三大銘茶である宇治茶を御賞味いただいたことはあるでしょうか。

 この宇治茶ですけれども、中国企業が商標登録をしていたということがありました。中国企業が商品登録をしていたということで、消費者が日本産と誤解し、高級茶である宇治茶のブランドが傷つくおそれがあります。この件は特許庁に相談し、中国側に取消しを申請し、認められました。

 農林水産省として、特定地域の知的財産として登録するGIを二〇一五年に創設され、農作物の知的財産を守ることに尽力いただいているところかと存じ上げます。

 また、商標だけでなく、シャインマスカットのように、品種そのものが流出していることも見受けられるところかと思います。

 地域産品のブランド化の後押しは農林水産物の付加価値を高め、農林水産業の経営にも影響を与えると思いますが、こういったことについて、今後、商標や品種を守るため、また農林水産業がもうかる産業になるため、どういう方向、戦略を持って取り組んでいかれるのか、大臣にお伺いいたします。

坂本国務大臣 宇治茶は私にとりましては高級なお茶で、なかなか飲む機会がありませんけれども、ありがたく飲ませていただいております。

 そういう中で、各地域の農産物を宇治茶のようにブランド化すること、これは大変重要なことで、農産物を差別化し、さらには付加価値を高め、収益そのものにつながっていくというふうに思っております。それを、いかに日本人は今まで無頓着であったかということもあります。

 私のところはデコポンというのがありますけれども、これはお相撲さんのような形をしたミカンでありますけれども、これが、アメリカのカリフォルニア州では、スモウレスラーオレンジとして、名称で売られている。まさに、日本が一生懸命、農家の方々が開発したものが、よそでは平然とそれが侵害に遭っているというようなこともあっております。

 ですから、私たちは、今委員言われましたように、GI制度や商標の活用促進、さらには、種苗法に基づく新品種登録に当たっての国内の栽培地域の限定、こういったもので、イチゴ、シャインマスカット、こういったものをやはりしっかり守っていかなければいけないというふうに思っております。

 もし、海外で日本の商標が侵されているというようなことがありましたならば、八か国の在外の日本大使館の中に疑義情報受付窓口というものを設置しております。そういうところに是非申し出ていただきたいというふうに思っております。

 こういう取組を活用しながら、活力あふれる農業と、しっかりとした所得の確保、こういったものを進めてまいりたいというふうに思っております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございました。

 最初の例の宇治茶であれば、商標を使われた損害額は二億円と言われております。逆に言うと、二億円の商機があるということだと思います。就農者の高齢化が進み、農林水産業に従事しても、経営が成り立つのか、若い方がなかなかついてきてくれないという状況もあろうかと思います。農林水産業は夢のある産業だと国民に知ってもらうためにも、今後も後押しをよろしくお願いします。

 昨日ですけれども、私のところにイチゴ農家が、紅ほっぺというのを作っている農家の方が相談に来られまして、なかなか味の品質が上がらないという相談を受けました。こういったやる気のある若者たちを是非とも後押ししていただきますよう、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 次にですけれども、米の暑熱被害についてお伺いいたします。

 昨今の温暖化の影響で、夜間の高温による米の暑熱被害が発生していると思います。米が白く濁ったり未熟米になったりと、一等米の比率が低くなったりしていると思いますけれども、近年の被害の度合いや状況について教えていただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 昨年の夏は観測史上最も気温が高く、米については、北陸地方を中心に、米粒が白濁する白未熟粒等が多く発生をしておりました。十二月末時点の農産物検査では、一等比率が過去最低となる六一・三%となりました。

 温暖化に伴う影響は近年顕在化しており、また、昨年のような状況は今後も引き続き発生することが懸念をされます。その影響を軽減するために、一つは、米についても高温耐性品種への転換、また、品質低下を防ぐための追肥、肥料を途中で打つということですとか、水管理などの栽培技術の導入を更に進めていくことが重要というふうに考えております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 その暑熱の被害を受けた米の取扱いなんですけれども、そういったお米は普通に売れるものなのでしょうか。価格が下がったり、売り物にならなかったりするのでしょうか。その場合に、例えば米粉や、牛や鳥の飼料として、価格を保って転用するといったことができるのかといったところを教えていただきたいということと、価格が下がったり、売れなくなった場合の補償や補助というものはございますでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 昨年の米は、高温の影響により白未熟粒が多く発生いたしましたけれども、一等比率は低いものの、一等から二等、三等まで含めると、例年と同程度の単位収量とはなっております。

 一方、委員御指摘のように、被害を受けたといいますか、白未熟粒が含まれる米の販売につきましては、一つは、水分量を少なくする。炊くときに、水分を多くするんじゃなくて、水分をある程度抑えて炊飯をするとおいしく食べることができる、ほとんど違いが分からないぐらいになるということもございますので、白未熟粒が混じった状態で例年どおり販売されている場合、これもかなり多いんじゃないかなと思われます。

 一方で、玄米から精米に加工する段階で色彩選別機というものを利用しますと、濁った米がはじかれます。このように白未熟粒を除外して販売されて、ただ、その分販売量が若干少なくなるというふうになりますけれども、そういった場合など様々が今あって流通が進められているというふうに考えております。

 米の収量の減少ですとか品質の低下によりまして生産者の収入が減少した場合なんですけれども、農業保険加入者につきましては、収入保険ですとか水稲共済の災害収入共済方式により、これが補填されることになっております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 今のお答えの、分かる範囲で結構なんですけれども、水の量を変えるとか、そういう広報とか周知に関してはどういったふうにされているか、分かる範囲で結構です、ちょっと教えていただきたい。

平形政府参考人 民間の全米販といいますか、お米を売る業者さんの団体の中でもそういった炊き方を、お米のソムリエですとか、実際にお米を炊いていらっしゃるすし屋の方ですとか、そういった方に登場していただいてPRをしたり、実は農林水産省の中でも、BUZZMAFFですとか、ユーチューブを通じて、職員が実際やってみて、それを食べてみて皆さんにPRするというようなことも実はやっておりまして、官民挙げてこういったPRをしたおかげで、かなりそこについては浸透を今年はしたんじゃないかなというふうに考えております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 今後もそういった周知を徹底していただければ、もっとおいしく米などを食べていけると思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に参ります。

 先ほどの質問は発生した場合の対策についてだったわけですけれども、そもそも暑熱に対応した品種の開発が待たれるわけですけれども、こちらについては地元の米農家も強く望んでおられます。全国でも同じことだと思いますけれども、どのくらい、高温でも耐え得る品種の開発は進んでいるものなんでしょうか。是非とも教えていただきたいと思います。

川合政府参考人 お答え申し上げます。

 温暖化に伴いまして、先ほど来出ております、米が白濁化する白未熟粒の発生、あるいは不稔などによりまして収量が低下するという障害が非常に顕著になってきております。高温耐性品種の開発につきましては、非常に全国から要望があります。特に近年、北日本でも高温耐性品種が求められるようになってきていまして、これらの地域にも対応する高温耐性稲の品種開発を現在進めているところでございます。

 これまで農研機構におきましては、西日本及び九州向けのにこまるという品種を始め、東北南部、北陸及び関東以西向けのにじのきらめきなど、かなりの高温に耐性のある品種を開発してまいりました。

 このほか、二〇二〇年十一月には、委員の御地元の京都府と農研機構が共同で育成した京式部など、高温耐性を持つ品種が各府県でも開発されてきております。

 昨今の高温、非常に重要でございますが、この高温を再現して選抜を繰り返さないといけませんので、その品種開発を一生懸命やっているところでございます。

 引き続きまして、都道府県のニーズに対応した高温耐性稲の品種開発を進めてまいります。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 ごめんなさい、もう一度ちょっと教えていただきたいんですけれども、でしたら、高温でも耐え得る米が今できているということですけれども、もしそれが今後、海外とかで暑い地域とかにもそういったものを将来的には売っていこうとか、そういう予定とか考えはございますでしょうか。

川合政府参考人 お答え申し上げます。

 昨今の高温というのは、私が小学校の頃の二十七度、二十八度ではなくて三十五度、三十六度、三十八度と、しかも、東北の方や北海道でも起きています。これまで耐冷性品種というのは、農水省も、研究所も、かなり力を入れてやってきたんですけれども、昨今は非常に高温でございますので、この時期に開花したり、熟する、こういった品種を作っていかないといけませんので、まず国内の、北日本それから北海道向けの品種がまだありませんので、そこを大至急今作っているところでございます。

 そこが埋まって、全国で作れるようになれば、輸出とかいろいろなものができ上がってくると思いますけれども、まずは昨今の高温に耐性をした品種を急いで作る、特に北日本向けの品種を早く作るということが重要だと思っております。

中嶋(秀)分科員 済みません。ありがとうございました。

 毎年どこかで最高気温を更新したということが流れますほど、夏の高温化は珍しいものではなくなっておりますし、是非とも、暑いという前提での品質のいい米ができることを期待しております。ありがとうございました。

 次に、お米とは変わり、お茶に関してお伺いしたいと思います。

 お茶は霜害により品質が下がると言われておりますけれども、地元の茶農家さんによると、霜害が発生した際に、品質が下がるイコール価格が下がることにつながる、さらに、収穫高が下がると二重の苦しみがあるということでございます。霜害がひどいと余り声高に言うと価格低下にもつながるので言えない、けれども、実際に発生していると収穫も下がるが、補償も受けたいと、苦しいところがあると聞きます。

 その辺りの支援についてはどのようになっていますでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 茶の凍霜害の発生状況なんですけれども、産地で一定程度まとまって被害が生じた場合には、その実態が把握できた段階で、府県の判断で公表される場合もございます。

 一方で、お茶の価格は、各生産者が生産されて、収穫された後、一次加工されて、荒茶ごとにその品質について評価がされる。具体的には、茶の市場で見本取引等によりまして買手が行う評価に基づき決まるもの、生産者段階というよりは荒茶の段階で茶の値段は決まるというふうになっております。

 その際、茶の凍霜害による品質の低下で生産者の収入がもし減少するようなことがあった場合には、農業保険加入者に対する収入保険ですとか、茶共済の災害収入共済方式によりまして対応されることになりますけれども、この共済団体が、先ほど委員おっしゃられた、個々の情報について公表するかということに関しましては、公表することは共済団体からはないというふうに承知しております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございました。

 お米もお茶も日本を代表する農産物だと思います。世界の健康志向も相まって、お茶はブームにもなっておりますので、茶業を守り育てるためにも、今後とも引き続き後押しをお願いするところでございます。

 先日ですけれども、京都は本当に海外の方々もいっぱい観光で来られ、やはり、抹茶、お茶に対する関心も本当に高いところでございます。是非とも、今後とも引き続き後押しをよろしくお願いいたします。

 次に、打って変わって、間伐についてお伺いいたします。

 山林で間伐が進んでいないと、土砂災害や洪水の原因の一つとなっている現状があるかと思います。最近の雨というのはびっくりするぐらい一気に降るゲリラ豪雨が多くなっていて、土砂災害や洪水の直接の原因かとは思うのですけれども、間伐が進んでいないと、山の保水の力が落ちていたり、流木が大量に川に流れ込んだりで、洪水が発生しやすくなります。また、根が腐っている木が多いと土砂崩れにもつながるといった現象もあろうかと思います。

 私の地元では、そこまで降ったかなというときにも、土砂崩れがあり、道路を木が塞いでしまい、しばらく通行止めで付近の住民が困るといったことがございます。その辺りの現状について教えていただきたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 土砂災害等につきましては、複合的な要因で発生いたしますが、近年は、委員からも御指摘ございましたけれども、地球温暖化等に伴う記録的な集中豪雨等によりまして、森林の機能を大きく超える自然の力を原因とする災害が多発しているところでございます。

 こうした中、森林の有する国土保全機能や災害防止機能を持続的に発揮させていくためには、間伐等の適切な森林整備が重要でございます。

 このため、林野庁としましては、森林整備事業によりまして、国と県と合わせまして間伐の費用の約七割を補助しているほか、森林環境譲与税を活用した間伐の促進等に取り組んでいるところでございます。

 これらの取組を通じまして、令和三年には三十七万ヘクタールの間伐等を実施したところでございますけれども、今後とも適切な森林の整備を推進していきたいと考えているところでございます。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 その間伐についてですけれども、どれぐらいの危機感をお持ちで、どういったスピード感で進めていく予定があるのか、是非ともお聞かせください。

青山政府参考人 間伐でございますけれども、近年は三十七万ヘクタール前後で推移をしております。

 といいますのも、我が国の森林が成熟してまいりまして、主伐期に入っております。そういう意味で、間伐の対象とする森林の面積自身は減っておりますので、そういう中で、適切な手入れをし、切って、使って、植えて、育てるという森林資源の循環利用を図っていくというのが今後重要だと考えておりますので、間伐も重要でございますけれども、しっかりと使っていくということも重要かと考えております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 例えば、間伐すれば土砂崩れも発生しないとは限らず、間伐の方法によっては、逆に木の根で土砂が止まらない、すかすかになって土砂が流れやすくなるといったことや、どういう木を残してどういう木を減らすのかといったことも考慮に入れなければならない面もあるかと思います。

 その辺りの手法についても教えていただきたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 間伐に当たりましては、実際に、経済的に成り立つところでございますと搬出を前提にしますし、経済的に成り立たないようなところですと林内に置いて行います。

 いずれにいたしましても、間伐する際に、その地域の森林を伐採することによりまして、国土保全機能でありますとか、土砂を流出させないような工夫はいたしておりますので、そういったことにも留意して間伐を進めているところでございます。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 私の知人にも山を所有している方がいらっしゃるんですけれども、やはり、山の中に木が倒れてしまった、その木、間伐した木をどうして出そうかとか、いろいろなことで悩んでいらっしゃる方もいらっしゃるので、是非とも、こういったこともしっかりと進めていっていただきたいと思います。

 続きまして、民間林の場合、所有者もなかなか間伐を進めたくても進められないといったこともあろうかと思います。処分や運搬にも費用がかかると思います。その場合に、国として、進めてもらうために何か支援をしているのでしょうか。また、もう一点、所有者が分からないといった山林もあると思いますけれども、そういった場合、どういった対処をしておられるのでしょうか。

青山政府参考人 まず、私どもの方で現在進めております森林経営管理制度に基づきまして、森林の集約をしまして、実際の施業を効率的に行うように集約する工夫をしております。

 さらに、その制度の中では、所有者不明森林等につきましても、一定の市町村の手続を経まして、告示ですとかそういったことをした上で森林施業ができるような特例措置を設けておりますので、そうしたことを通じまして、森林の整備を図っていきたいと考えております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございました。

 私の地元では山林が多く、その山林を縫って、一本道であり、塞がってしまうと困る住宅地も多くございますことから、土砂災害等については死活問題でございまして、そういった観点からお聞かせいただきました。

 それでは、続きまして、有機農業に話を移したいと思います。

 オーガニックと聞くと、体にいいのかなとか、無農薬なのかな、おいしいのかなと思い、つい手に取ってみたりするのですけれども、スーパーなどでオーガニックとシールを貼ったりPOPに書いたりする際の基準についてお伺いします。オーガニックと銘打つ際の基準というものはどういったものでしょうか。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 農産物、畜産物、それからこれらの加工食品にオーガニックですとか有機栽培などの表示を行うためには、日本農林規格等に関する法律、いわゆるJAS法でございますが、この規定に基づきまして、有機JASの基準に適合した生産が行われているということについて、第三者の認証機関から認証を取得するということが必要になってまいります。

 具体的には、有機JASでは、国際基準でありますコーデックスのガイドラインに準拠しておりますけれども、有機農産物の場合ですと、堆肥などによります土づくりを行うということですとか、播種又は植付け前二年以上を原則として化学肥料それから農薬を使用しないといったこと、それから遺伝子組み換え技術は使用しない、こういった基準が設けられているところでございます。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。明確な基準があるということで、安心いたしました。

 続きまして、農林水産省として、みどりの食料戦略システムなどを打ち出し、有機農業拡大に積極的に取り組んでおられると思いますけれども、その理由と申しますか、狙いを教えていただけますでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業なんですが、生物多様性の保全など、環境負荷の低減に資する生産の方式だというふうに思っておりますし、また、有機農産物を活用したブランド化、これを図ることによって、国内外の消費者の評価の向上にもつながる有意義な取組だというふうに考えております。

 このため、農林水産省では、令和三年五月に策定いたしましたみどりの食料システム戦略に基づきまして、一つは、地域ぐるみで有機農業に取り組む先進的な市町村、オーガニックビレッジというふうに申しておりますけれども、この創出を進めるとともに、もう一つは、除草等にかかる労力、これが大変なので、これを削減する技術、それから新しい品種の開発、普及などによりまして、より容易に有機農業に取り組むことができるような環境をつくって、有機農業の取組面積の飛躍的な拡大を目指していこうというふうに考えております。

 さらに、今国会に提出を予定しております食料・農業・農村基本法の改正案の中に、環境と調和の取れた食料システムの確立ということも柱として位置づけることと考えておりまして、引き続き有機農業を始めとする環境調和型の農業を推進していく、そういう考えでございます。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 ブランド農産物と同じように付加価値をつけて売り出すということよりも、どちらかというと、環境負荷の低減や国内で持続的に農業を発展させる意図があるということがよく分かりました。ありがとうございました。

 続きまして、有機農業は、環境負荷が少なかったり、国内で持続的に発展させることができ、また味もよかったりするとなると、いいことずくめで、どんな農家も有機農業にすればいいのにと私などは安直に思ったりするのですけれども、有機農業に向かない農産物があったりするものなのでしょうか。

 また、有機農産物はどうしても価格が高くつくものなのでしょうか。市場では安いものも求められ、おすし屋さんでいうと、高級すし店も回転ずし業界も発展してほしい、そういう、同じように、有機農業も有機農業でない農業もすみ分けをして発展していくのがいいと思っておけばよいのでしょうか。教えていただけますでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業に向く品目、それから向かない品目、なかなかちょっと言い難いところがあるんですが、まず、水稲、お米については、比較的、今の有機農業の取組の中でも面積が、かなり広い面積で取り組まれております。

 一方で、麦ですとか大豆という、日本の中でいうと多雨の気候に元々少し合っていないといいますか、乾燥するところで主に作られているところに関しては、途中で病気が発生するようなおそれがありまして、防除のためにやはり農薬をある程度使うというようなことがありまして、お米に比べると、やはり麦みたいなものは取組が少なくなります。

 さらに、例えば有機の牛乳というふうになりますと、今度は牧草から、それから家畜に与えているものから、これも全て有機のものということになりますので、大変取組は難しくなりますけれども、ただ、それぞれごとに取り組んでいらっしゃる方がいらっしゃいまして、それぞれ技術を磨いておられますので、そういったものをいろいろ横展開といいますか、伝承できるような形で我々も推進をしていきたいというふうに考えております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございます。

 有機農業とそうでない農業との発展のさせ方のバランスと申しますか、有機農産物があって、最初の質問のブランド農産物があって、一般的な農産物があってと、消費者がいろいろ選べる、選択肢があることが業界全体を引き上げることにつながると思い、お尋ねさせていただきました。

 次に、農林水産省として有機農業を国内で推進している事例が多数あると思うのですが、どういったものがあるか、この機会に御紹介いただきたいと思います。

平形政府参考人 農林水産省では、令和四年度からオーガニックビレッジという先ほど申しました取組を始めておりまして、現在、九十三の市町村で取組が開始されているところでございます。

 この中で、例えば一つ、茨城県の常陸大宮市というところなんですけれども、四十ヘクタールという非常に広いまとまりを持って、有機農業の生産団地を造られております。これによりまして安定供給を図って、学校給食などへの販路を確保している、そういう事例がございます。

 また、兵庫県の豊岡市、それから新潟県の佐渡市では、コウノトリの餌場の確保ということと有機農業を組み合わせて産地づくりですとか、あるいは農産物のブランド化、これも一緒に取り組んでいらっしゃるような例があります。

 また、三つ目なんですけれども、宮崎県の綾町というところでは、町が主体となって、有機農業を体系的に学び実践的に技術を会得できる有機の学校、綾オーガニックスクール、こういうものを整備して技術の伝承みたいなものも進めているところなど、それぞれのところが、特色ある取組をされている市町村が見られるというふうに思っております。

中嶋(秀)分科員 ありがとうございました。

 有機農業の振興、発展のためには、産地づくりの支援、また人材育成の支援、そしてバリューチェーンの構築と消費者の理解の促進と、多面的であることがよく分かりました。

 最後の質問にさせていただきます。事例に出てきたオーガニックビレッジについてお伺いいたします。

 京都府では、亀岡市のみがオーガニックビレッジ宣言をし、有機農産物の生産から消費まで住民を巻き込んで取り組んでいると思われるのですけれども、亀岡市のみで私の地元ではまだ取り組んでいないと思われます。今後取り組んでいく際に、国からはどういった支援や協力がいただけるのか、教えていただきたいと思います。

伊東主査 時間が来ておりますので、簡潔に答弁をお願いします。

平形政府参考人 オーガニックビレッジにつきましては、多くは学校給食等にその場で生産されたものを加工してそれから供給する、そういうような計画を立てていただきますので、その計画作りのための経費ですとか、あるいは食材の調達費そのものに関しても支援をすることにしておりますし、また、技術の伝承についてもこの中で支援をするように考えておりますので、是非活用を考えていただければと思っております。

中嶋(秀)分科員 本日は、地元でよく相談されていることを中心にいろいろとお伺いさせていただきましたけれども、全国的にも同じように課題になっているかと思います。引き続き、農林水産業の発展のため、よろしくお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊東主査 これにて中嶋秀樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、平林晃君。

平林分科員 公明党、比例区中国ブロック選出の平林晃と申します。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。農林水産部門において初めて質問させていただきます。

 地元の中国地方、広いエリアですが、歩いておりますと、農業、漁業に従事される皆様と頻繁にお会いをしまして、そして切実なお声を頂戴をいたします。本日の質問は、そうしたお声に基づくものであります。御答弁いただきました内容は早急に地元にお伝えをさせていただこうと思っております。大臣始め御答弁いただく皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 人口減少、全国もそうですけれども、中国地方は特に深刻な状況にあると認識をしております。

 社人研による二〇五〇年人口推計におきましては、二〇二〇年に対する人口減少率、全国平均は一七・〇%であるのに対しまして、中国地方五県ではそれぞれ全て二〇%を超えておりまして、山口県におきましては三〇%を超えている、こういう数字になっております。域内百七市町村ございますが、十八市町の人口は二〇二〇年人口の半分以下になる、こういう衝撃的な数字でございます。減少率は山間部や島嶼部において高い傾向で、六割減、こういう自治体もあるということです。

 この問題そのものを手当てすることも重要でありますが、農業は深刻な影響を受けてまいります。

 農水省は、全国の基幹的農業従事者が現在の百二十万人から二十年後には三十万人と四分の一に減ってしまう、このように推計をしておられるわけですけれども、この数字も地域によっては更に深刻、こういうことも考えられるのではないかなと思います。

 地域の農業従事者、農業団体また自治体も強い危機意識を持っておられまして、担い手をいかに確保していくかに頭を悩ませておられます。草刈りなどの共同作業を御支援いただけないか、あるいは、兼業しておられる方にもっとサポートしてもらえないか、こんなような声も頂戴をしているところでございます。

 折しも本国会では、一年半に及ぶ検討を経て、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案が審議されることになっております。食料安全保障を、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人一人がこれを入手できる状態と定義をされ、食料安全保障の確保が基本理念に規定される。あわせて、農村の振興ということも改正案の柱の一つと位置づけられており、その中には、農地の保全に資する共同活動の促進ということも基本施策として挙げられており、先ほどの声のようなものにも対応して、期待が高まっているところがございます。

 そこで、農林水産大臣にお聞きさせていただきます。食料・農業・農村基本法改正における農村の振興、その中の農地の保全に資する共同作業の促進という方向性において、今後どのような施策が講じられることになるのか、御見解を伺います。

    〔主査退席、山本(有)主査代理着席〕

坂本国務大臣 農地等の保全、最も大事なことでございます。そのための政策として、多面的機能支払いというのがございます。

 委員御指摘いただきましたように、それぞれの集落で草刈りをする、泥上げをする、様々な農業ができるような環境をみんなで整えていくというような政策でございますけれども、この政策が、やはり、人口減少、高齢化で非常に機能しなくなっている、しづらくなっているというような局面に陥っているところが多々ございます。

 そういうことで、今後どうしていくかといいますと、一つは、この多面的機能の地域というものを広域化していきたい。広域化することによって少しでもマンパワーを確保したい。そして、地域の人材、農業者だけではなくて、NPOの方々、あるいは大学生、あるいは、農業高校、地元の高校生、こういった方々に呼びかけて集落を保全していく、マッチング作業というものをしっかりやれないかというようなことを考えてまいりたいというふうに思っております。

 こういった共同作業が、農村集落を守る、ひいては農業環境を守る、そして農地保全につながるというふうに考えております。

    〔山本(有)主査代理退席、主査着席〕

平林分科員 大臣、ありがとうございます。

 多角的に担い手を確保していこうとされているということで、今までにない取組も本当に含まれているというふうに思います。是非、それをしっかりと取り組んでいただきまして、地域の担い手が確保されるように進めていただけたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 大臣へのお尋ね、この質問だけですので、必要に応じて御退席いただいても結構でございますので、よろしくお願いいたします。

伊東主査 それじゃ、どうぞ。

平林分科員 では、続けさせていただきます。

 続いては、畜産についてお尋ねをいたします。

 ロシアのウクライナ侵略による穀物流通量の減少、中国やロシアの輸出規制、歴史的な円安などの複合的な要因により、輸入飼料の価格が高騰をしております。

 その一方で、子牛価格は全国的に低迷をしている。その要因は、昨今の物価高により、比較的安価な鶏肉、豚肉などへと消費の流れが変わり、和牛肉の価格が上がりにくくなっていることなどと考えられています。

 いずれにしましても、出る方は減り、入る方は高くなる、いずれにしても畜産農家の経営は危機的な状況になっているということであります。

 そうした中、農林水産省におかれましては、和子牛生産者臨時経営支援事業を実施され、直近では、ブロック平均価格の算定方法にも見直しをしていただいており、支援がより充実しておりますことを畜産農家の方も大変喜んでおられます。心から感謝を申し上げます。

 今後は、消費拡大が重要になると思いますが、農家の自助努力には限界がありますので、例えば自衛隊に提供するとか、例えば学校給食で今以上に活用するとか、国による後押しにも期待をさせていただいております。

 その上でになりますが、輸入飼料の価格高騰に対応するために、国内での調達が重要な課題になっております。そのような問題意識の下、島根県内のある畜産事業者は、周辺農家からわらを調達して飼料とし、牛から出る堆肥を肥料として農家が利用する、よく言われる耕畜連携の取組を実施をしておられます。この際、堆肥を攪拌することにより、メタン排出量を低減でき、地球温暖化に寄与できるということもお聞きをしているところでございます。

 ただ、この耕畜連携、稲わらの回収や乾燥といった作業が手間であったり、こうした作業のために、ふだんは、普通は使わない機器を別途必要とするということであったり、そのメンテナンス費用もかさむというような、更なる負担も発生をしているということも耳にしております。

 このように、意義と課題の両面が指摘をされております耕畜連携の取組に関しまして、政府の御認識及び今後の支援の可能性を伺います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、耕畜連携でございますが、畜産サイドから適切に処理した良質な堆肥を供給をしまして、耕種サイドでは良質な飼料を生産してもらうということで、資源循環による飼料の国内調達ですとか、あるいは温室効果ガスの排出削減によります地球温暖化への対応といったような観点から大変重要なことであると認識をしてございます。

 農林水産省といたしましては、稲わらを含めました国産飼料の生産あるいは収集について、作業の拡大や省力化に必要な機械の導入ですとか、畜産農家と飼料作物を生産する耕種サイドとの連携を支援するようなことをしてございます。また、家畜排せつ物からの堆肥の生産につきましては、温室効果ガスの排出削減や堆肥の高品質化に資するような施設あるいは機械の導入への支援というようなことも取り組んでございます。

 引き続き、これら支援策が活用されるように周知を図るなど、耕畜連携を推進をいたしまして、堆肥、飼料の生産、利用の拡大というのを図っていきたいというふうに考えてございます。

平林分科員 ありがとうございます。

 意義に関してはもう言うまでもないということでありまして、それの逆の負担の部分をしっかり御支援していただけるというお話であったかというふうに思います。

 島根の例、耕と畜のマッチング、これがしっかり連携が取れているということでございます。こういったマッチングを取っていくということも極めて重要ですので、そういったことも含めて、もう取組を進めておられることも承知しておりますけれども、引き続きよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 続きまして、三点目、漁獲規制についてお伺いをさせていただきます。

 先日、地元の漁業者をお訪ねした折に御相談を受けた内容でございまして、将来を見据えた漁業の安定した継続のために、漁獲可能量、いわゆるTACにより水産資源を管理する取組が行われているところであります。

 先般、TAC報告義務に違反をした太平洋クロマグロが流通する事案が発生をし、管理や罰則強化の必要性が指摘され、措置する法案が検討されているということは認識をしております。このことを漁業者としましても当然理解できることである、このようにされた上で、一方で、昨今のTACの規制はやや厳しい傾向にあるのではないか、こういう不安の声を頂戴をいたしました。

 具体的に申し上げれば、今後、規制対象の魚種を増やす動きがあるのではないか、こういった危惧なわけでございます。魚種の拡大により制限が強化されるようであれば、漁業離れが加速し、後継者も育てられなくなる、こんな危惧をされております。

 この方はおっしゃられるんですけれども、海に出るのは楽じゃない、危険な仕事である、しかし、場合によっては一獲千金も夢ではない、こういう部分があって若者も漁業に挑戦してくれるのではないか、こうした夢にも十分配慮をしてもらいたい、こんなようなことをおっしゃっておられました。

 そこで、お聞きをさせていただきます。

 現在のTAC規制、八魚種に対して行われているということでありますけれども、これら以外の魚種に対しても、漁獲規制を今後拡大していくことになるのか、政府の見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 TAC管理につきましては、サバやマイワシなど国内における主要な魚種については既に導入がされておるということでございますが、適切な水産資源管理の観点からは、今後もTAC魚種を順次拡大していく必要があるというふうに考えているところでございます。

 こうしたTAC魚種の拡大に当たりましては、これまでも、漁業者を始めとする関係者の意見を丁寧に伺いながら検討のプロセスを進めてきたところでございます。

 具体的には、関係する漁業者等が参加する会合を複数回開催し、TAC導入に当たっての論点等の整理や具体的な管理措置について漁業者の意見を聞きながら議論を進めるとともに、ステップアップ方式によりまして課題解決を図りながら、TAC導入を進めているという状況でございます。

 今後とも引き続き、できる限り現地に赴いて、関係者の意見を丁寧に聞き、理解と協力を得ながら進めてまいりたいと考えております。

平林分科員 ありがとうございます。魚種の拡大はしていくということで御答弁がございましたが、丁寧にやっていただくと。本当に、この漁業者の方も決してTACそのものを否定しているわけでもないというふうに考えております。資源の保存は重要なことであり、ただ、でも、後継者の育成ということを心配しておられるということですので、そういった心に寄り添った対応を是非していただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、四点目の質問をさせていただければと思います。

 東広島市の、地元の一つです、井戸水から有機フッ素化合物が検出された事案について伺います。

 有機フッ素化合物とは、炭素とフッ素の結合を持つ有機化合物でありまして、その総称、PFASというふうに呼ばれているそうであります。代表的なものがPFOSとかPFOAと言われるものが、よく言われます。これらの物質は、環境中で分解がされにくく、蓄積性が高いので、分解されない、ずっと存続するということで、永遠の化学物質と呼ばれているそうでありまして、撥水剤、消火剤、コーティング剤等に用いられているということであります。これらと同様の性質を持ったPFHxSというような物質もあるということもお聞きをさせていただきました。

 このような化学性質を持っているものですので、人体に取り込んだ場合に蓄積されやすいとして有害性が指摘をされており、国際条約で製造、使用、輸入が既に禁止をされているということであります。国内でも、PFOSは平成二十二年に、PFOAは令和三年十月に使用、製造が禁止をされたということで認識をいたしました。

 こうしたPFOSやPFOAといった有機フッ素化合物が、昨年以来、東広島市の八本松という地区の十五世帯が利用する井戸水において、基準値、一リットル当たり五十ナノグラムなんですけれども、これをはるかに超える四千五百ナノグラムという濃度で検出をされています。周辺世帯は井戸水を飲料水として用いることができなくなり、水道布設が必要になったり、あるいは農業への影響を不安に思ったり、様々な影響を受けておられます。

 同種の事案は、近年、国内各地で起こっているものと聞き及んでおります。昨年八月には静岡県浜松市において、同じく九月には岐阜県各務原市や沖縄県でも検出をされているということであります。一昨年度の環境省調査では、十三都府県、八十一地点の地下水などで暫定目標値を超えていたという報道もあります。

 東広島市の事案に関しましては、高垣市長からは国に既に問合せがあったと認識をしておりますが、市長は、早期の原因特定及び暴露の人や農作物への影響の解明などを強く求めておられます。

 これらの点に関しまして政府の見解を伺います。

土居政府参考人 PFOS、PFOAにつきましては、一般論といたしまして、既に製造、輸入が禁止されているものの、過去に様々な用途で使用されたものが環境中に残存しているという性質を持っておりますため、汚染源を特定するというのは非常に困難な物質であるというふうに承知しております。

 委員御指摘のとおり、東広島市からは、今後、汚染範囲の特定に向けまして学識経験者などから成ります委員会を設置するというふうに聞いておりまして、環境省といたしましては、東広島市からの御相談、御要望に応じまして必要な技術的助言などを行っていきたいというふうに考えております。

 なお、環境省といたしましては、汚染源のいかんにかかわらず、人への暴露防止を確実に実施していくことが重要だというふうに考えておりまして、暫定目標値を超過した地点につきましては、対応の手引などを示しながら、地下水の飲用を控えるよう周知するなど、具体的な対応を自治体にお示しすることによりましてこの取組を前に進めているというところでございまして、地元自治体と連携を更に密にしていきたいというふうに考えております。

安岡政府参考人 農産物についてお答えをさせていただきます。

 有機フッ素化合物、お話のございましたPFASでございますけれども、現在、人への健康影響については、食品安全委員会が食品健康影響評価案を取りまとめて、パブリックコメントを実施しているところというふうに承知をしております。

 農林水産省としては、今後、食品安全委員会において最終的に取りまとめられる評価結果を踏まえて、農作物に関する知見を集積するということとしております。

 具体的には、農作物に含まれるPFAS濃度の調査を更に進めて、濃度分布の実態把握を進めるということとともに、農地土壌、さらには、水から農作物にどの程度移行するかといったことについても研究を更に進めて、これらの知見を明らかにするとともに、これらの結果を基に、必要に応じて関係府省と連携して対応していくということとしているところでございます。

平林分科員 いずれにしましても、本当に重要な案件になっていると思います。人への影響や農作物への影響に関しましても、まだ判然としていないというところがあるというふうにもお答えがありましたけれども、きちっとした対応をしていただきまして、東広島市のみではないと思いますけれども、そういったところに対しまして、きちっと寄り添った対応をしていただけたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 続きまして、五点目の質問をさせていただければというふうに思います。

 広島は、カキの名産地でございまして、日本一のカキ生産量です。例年、むき身が一・八万トン生産をされて、殻は十万トン以上排出をされている。このカキ殻の九割以上が、養鶏用の飼料あるいは農作物の肥料に加工されてまいりました。

 しかし、一昨年、昨年と流行した鳥インフルエンザによる大量の殺処分と、ウクライナ侵攻や円安での肥料価格高騰により、元々価格の高いカキ殻配合肥料が敬遠されてしまって、カキ殻が集積場にたまり続ける、こういう事態になっております。

 このため、今シーズンも、昨年十月一日からカキの水揚げが解禁されたのですけれども、生産調整を必要とする事態に至っておりまして、休業日が追加されたり、あるいは、水揚げ完了日の前倒しなども検討しておる、このように聞いているところでございます。

 広島県は、当面の対策として、新たに一時的な保管場所を県有地に設け、事業者団体に賃借させることを決めていますけれども、現在確保した場所でどこまで対応できるのか不透明であると。広島県漁業協同組合の専務理事は、県有地に仮置きはできるが、来年、保管場所に余裕はない、このような危機感をあらわにしているということでございます。

 このような厳しい状況にあるカキ殻処分について政府はどのような見通しを持っておられるのか、見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 養殖業から排出されますカキ殻につきましては、事業者であります養殖業者自らの責任において適正に処理が必要ということでございます。

 このため、養殖業者が自治体と協議しながら、保管場所の確保、廃棄物としての処理を検討していただくということが基本となりますが、あわせて、新たな利活用の開拓といった対応も検討していただく必要があるというふうに考えております。

 例えば、カキ殻の新たな利活用につきましては、広島県において、カキ殻を材料とした増殖礁の設置でございますとか、岡山県におきましては、底質改善のためのカキ殻の海底敷設など、漁場の環境改善等の観点から、水産基盤整備事業を活用した事例もあるというふうに承知をしております。

 水産庁といたしましては、こうした事例の周知を含め、引き続き県と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

平林分科員 ありがとうございます。利活用の開拓ということ、本当にあらゆる関係者がしっかりと知恵を絞っていかなくてはいけないと思っております。

 その上で、地元紙の報道にあった部分ですけれども、東広島市の大手半導体企業の寄附金があったということで、それを原資として、カキ殻を活用した干潟環境の改善プロジェクト、こういった試みもあるというふうに聞きました。同市の三津湾というところの干潟が、ヘドロが堆積して硫化水素が発生をしてしまって、魚介類が死滅したと。そこに加工したカキ殻を混ぜ込んで、五年がかりで干潟環境を改善する、こういう成果を上げている、こういうコンサル会社もあるということでございます。

 こういった自治体や民間企業、研究機関がカキ殻を使って海洋環境を改善する取組、こういったことも一緒になってさせていただけたらというふうに思っておりますので、御検討いただけたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、最後の質問になろうかと思います。フードバンクについてお伺いをさせていただければというふうに思います。

 先日、島根県の出雲市というところで、フードバンクの方とお話をさせていただきました。この方は、御自身で本当に献身的にこの運営をしておられるんですけれども、幼少期の体験に基づいて自発的に始められたということでございます。

 少しだけちょっと紹介させていただくと、七歳のときに、晩御飯を一緒に食べられたお父様が、僅か三軒隣の家に出かける途中で車にはねられて、即死をしてしまった。一瞬にして母子家庭になってしまったということですけれども、お母様は必死に育ててくださったということで、それでも、若き日のこの責任者の方は、晩御飯のおかずに文句を言っていたと。お母様御自身がおかずを食べられていないんだけれども、お母様が後で食べる、こんなような言葉をうのみにしていて、そんな自分を今となっては悔しく思っている、こんなようなことを吐露していただいておりました。

 その方が、私財をなげうって、二年前から常設のフードバンク施設を立ち上げておられます。島根県内には、総世帯の二%に当たる方が困窮世帯であるというふうに言われておりまして、この皆様の力になりたいとの一心で、周りからは無謀だと言われている挑戦を続けておられます。

 この施設は、倉庫スペースに登録者だけが入れる電子ロックを設置しておりまして、二十四時間利用可能なんですね。提供いただいた食料品、日用品はオンラインのデータベースで管理をされておりまして、バーコードでピッとやりますと、登録を済ませて自由に持ち出すことができると。こんなふうに利用者に寄り添った施設運営をしておられますが、食品の提供が十分ではなく、また、家賃や光熱費、これはもう当然、今自分で払っておられますので、こういった支援があるととても助かる、こんなことをおっしゃっておられました。

 一方、山口県におきましては、フードバンク山口が、行政やNPO法人、ボランティア団体などと幅広く連携をしながら、子供食堂などを展開しておられます。こちらの取組では、食品はある程度の量が御提供いただけるようではありますが、その一方で、保管する倉庫などの確保やそのための費用で苦労をしておられるということであります。また、集まってくる食品には当然のことながら消費期限がありますので、時間と闘いながら奮闘されるのですけれども、働かれる方の人件費が思うように捻出をできない、こんな現状もあるとお聞きをいたしました。

 こんなように、様々な困難を抱えながら、それでも生活に困窮する方たちの力になりたいとの思いで各地においてフードバンクが営まれておりますけれども、現状、どういった支援が行われておりますのか、また、今後、こういった支援をしていきたい、こういったことに関しまして政府の御見解を伺います。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 まず、農林水産省におけますフードバンクの支援の現状でございますが、フードバンクが業務として寄附食品を受け入れて、子供食堂などへ提供するという際に、その輸配送、輸送、配送が出てまいります。こういった輸配送費の支援、それから、倉庫、車両などを用いることになりますけれども、これの賃借料の支援、こういったものを令和三年度の補正予算以降行っているところでございます。

 また、フードバンクで、食品の衛生管理を昨今非常に求められるようになってきてございます。こういったことを踏まえまして、衛生管理技術の専門家を派遣するといったことを令和四年度補正予算以降、行っているところでございます。

 さらに、令和五年度補正予算におきましては、各地域の実情に応じて対応できますように、地方公共団体を中心といたしまして、社会福祉協議会、それからNPO、フードバンクの皆さん、それから食品事業者などの地域の関係者が連携して食品アクセスの確保に取り組むことができる協議会の設置などの支援を行っているところでございます。

 それから、今後の取組でございますが、令和六年度予算におきましては、専門家派遣の支援を継続するということとしておりますほか、より効果的な取組を進めるために、地域の食品アクセスに関する現状の調査、分析、こういったことも盛り込んでいるところでございます。

 引き続き、現場の声をよく伺いまして、フードバンクなどの実情をよく踏まえて、国民一人一人に着実に食料が届くように努めてまいりたいと考えているところでございます。

平林分科員 フードバンク、非常に重要な取組だと思いますので、支援を是非よろしくお願いいたします。

 時間となりました。質問を終わります。ありがとうございました。

伊東主査 これにて平林晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、おおつき紅葉君。

おおつき分科員 立憲民主党・無所属のおおつき紅葉です。

 早速質問に入らせていただきます。

 本日、農業の憲法とも言われる食料・農業基本法の閣議決定が行われたと伺っております。そして、ニュースでも、大臣の閣議後会見、拝見いたしました。国民に安定的な食料を届ける責務を果たしていきたいと、この力強い言葉を発信されたというように伺っております。

 そして、早速、なのでちょっと順番を飛ばして、三番の食料・農業基本法の改正についてから伺わせていただきます。

 この制定が行われたのは約二十五年前になります。この間の農業政策においては、大型の国際貿易協定が次々と発効したこともありまして、競争力の強化と大規模経営優先の傾向が強まっておりました。こうした施策と相まって、高齢化、少子化の進行が地域の農業や農村コミュニティーの維持に深刻な影響を及ぼして、現在、農村が疲弊しています。また、カロリーベースの食料自給率というのは低迷しているというのが現状です。

 そこで、伺いたいと思います。

 まずは、担い手についてです。

 平時からの食料安定供給の確保として自給率の向上があったと思いますが、政府が目標としている食料自給率の達成には、どれぐらい、現状、担い手が足りていないという認識があるんでしょうか。今後の対策と併せてお伺いいたします。

坂本国務大臣 我が国の農業は本当に多種多様であります。平場があり、平地があり、中山間地があり、そして山間地があります。品目も、そして部門ごともそれぞれ、畜産あり、野菜あり、果樹あり、米麦ありと、様々な展開がなされております。経営体の方も、農業が主業の個人経営、そして農業が副業の個人経営、さらには法人経営、その他の団体経営など、様々な経営の形態そして農地の利用、こういったものが組み合わされて成り立っているというのが日本の農業の特色であるというふうに考えております。

 一方で、食料自給率は、国内で生産されている食料が国内消費をどの程度充足しているかを示す指標でありまして、消費動向にも、大きく左右するわけであります。このため、食料自給率目標を達成するに当たりまして担い手の数や農地面積がどの程度必要かについては、一概に申し上げることは困難です。

 一方、我が国全体で人口が減少する中で、担い手の数についても減少が見込まれることから、担い手の育成、確保は必要であります。就農に向けた様々な資金メニューでの支援や機械、施設等の導入などによりまして、次世代の農業人材を育ててまいりたい、育成してまいりたいというふうに思っております。

 なお、現在の食料・農業・農村基本法の改正案につきまして、今日閣議決定をされ、国会提出を目指しておりますけれども、仮に国会で御審議いただきまして改正されました暁には、それに基づいて基本計画の策定を行うこととなります。その基本計画の策定の中で、食料自給率のほか、その他の食料安全保障の確保に関する様々な事項、こういったものの目標設定というものを適切に検討してまいりたいというふうに思っております。

おおつき分科員 じゃ、その様々な事項の中に、これから、今後の担い手の数字も入ってくるという認識、目標設定も入ってくるという認識でよろしいでしょうか。

坂本国務大臣 担い手もいろいろな定義がありますけれども、二十年後、百二十万人から三十万人になるというようなことを踏まえまして、やはり、しっかりした担い手、あるいはそれをカバーできる方々、こういったものを位置づけてまいりたいというふうに思っております。

おおつき分科員 そういった見通しというのはすごく私は大事だと思っております。なぜかといいますと、例えばこのJAの推計、こちらはJAの推計になりますが、二〇二〇年に百三十六万人いた農業の従事者の方々、二〇三〇年、もう六年後ですね、六年後にはこれが八十三万人に、そして二〇五〇年には三十六万人になるという推計が既に出ております。多分、後ろに座っている皆さんたちもよく御存じだと思います。

 例えば、数ありきだとは思いません、ただ、ある程度の目標を持って、じゃ、どういった担い手を増やしていかなきゃいけないのかなというのが、この基本法を策定するに当たって、そしてこれから計画を策定するに当たって大変重要なことになってくると思います。

 例えば、今回の法律案の概要を見させていただきました。今、七十歳以上の方々が現時点でもう五六・七%なんですよね。つまり、十年後、この方々、八十歳以上になっちゃう。そして、今、五十代以下の方々が全体の二一%。この二一%の方々で、これからもちろん若い方々も増えていくとは思いますが、やはりこの七十歳以上の六〇%の方々をどうやって補強していくのか、この数をどうやって次の世代につなげていくのかというのは、やはり重要なんじゃないでしょうか。

 こういった目標も含めて、是非、策定の中に入れていくという覚悟を示していただけないでしょうか。

坂本国務大臣 先ほど御答弁申しましたように、やはり主業農家、家族経営の認定農家というのがあります。それから、法人経営というのをこれから重視をして、経営基盤を強化をする法律も改正をしてまいります。加えて、多様な経営体というものもそれに位置づけていきますので、この基本計画の中で、どういうふうにして最終的に三十万人プラスアルファで四百万ヘクタールの農地を守っていくのか、日本の食料というものをしっかり確保して安定的な供給をすることができるか、そういう計画というのをしっかり位置づけてまいりたいというふうに思っております。

おおつき分科員 今、大臣のまさにその危機感というのはよく分かりました。

 少ない担い手でその農地をしっかりとカバーしていく必要があるんです。もちろん、これからAIももっともっと発展していくでしょう。そういった機械の力、AIの力を使ってカバーしていかなきゃいけないところも十分に理解もしつつも、やはり担い手、しっかりと危機感を持って、大臣、目標を私は持った方がいいのではないかと。数ありきではない目標設定、そして、それに向かってみんなで歩んでいく、日本全体として歩んでいくことが必要であると私は感じております。

 なぜかといいますと、大臣も地方出身だから分かると思います。私も、北海道という地で生まれ育ちました。そして、今回、私、二年前に当選したばかりの新人議員ではございますが、北海道の自分の選挙区を歩いてまいりました。そして、地域の農家さんに言われたことで、本当に胸に響いた言葉があります。国民の中で、食料の重要性について本当に機運が醸成されているんだろうか、食料の生産者として不安に思っているという声です。

 なぜかといいますと、例えば、私も今持っているこの携帯電話、これが五万円から十万円になっても、皆さん一人一人買いますよね、高くなったとはいえ。でも、野菜が百円から二百円になったら、大変なことだと。私も報道機関におりました。ニュースでもやはりそれは連日報道します。そして、報道の中でも出てくるのは、やはり買い控えという言葉なんですよ。二十円や三十円、又は百円上がった野菜を買い控える。こういった、食料に対してどうやってみんながアクセスしていくか、どういった機運をもって食料に向かっていくのか、これは実は生産者の方々はよく見ているんですよ。

 ですから、大臣、こういった現場の方々の声というものを是非胸に当てながら、その責務を果たしていただきたいと思うんですね。

 先ほどもおっしゃいました、私も伝えました、担い手不足の問題もそうです、まさに今、未来を示せるかどうかの瀬戸際に来ていると思います。

 例えば北海道、食料自給率、まだ二〇〇%以上を誇っています。その北海道でさえ、国の農業としての体を成さなくなるんじゃないかという不安を持ちながら、生産者の方々は日々、土と野菜と向き合っているんですよ。

 例えば、その方々、担い手不足が今後どうなっていくかというお話を伺いました。生産組合の役員のなり手さえもいないんだと。つまり、その地元で今後の方向性を決める組織も機能しなくなるのではないか、こういう危機感を持っているんです。

 今こそ、この日本という国の本気度が問われているんじゃないでしょうか。その中でも生き残っていかなくてはいけないという生産者の声を聞いて、是非、大臣、今回の基本法の改正について、この現場の声を十分に踏まえて、持続可能な農業の発展を実現できるのかどうか、大臣、どんな声を聞いて、これからどうしていくのか、是非お聞かせください。

坂本国務大臣 私たちは非常に、そういった食料の確保、そして現場の声を聞いて、後継者の育成、そういうのに危機感を持っているからこそ、今回、四半世紀ぶりの食料・農業・農村基本法の改正ということになりました。

 現場の声を私たちなりに聞いてまいりました。一年半をかけて、現場の方々、団体の方々、あるいは集落の方々、それぞれに意見を聞きながら、そして、結果として出てきたのが、人口減少に伴い、農業者及び農村人口が減少する中で、農業の生産の維持発展をいかにして図るのか、そして農村の地域コミュニティーをどう守っていくのかというようなことでございましたので、そういうものをしっかり盛り込みながら、農業基本法というものをこれから皆さん方と論議をしてまいりたいというふうに思っております。

 最初に言われました、食料の確保の重要さというのを本当に国民は分かっているだろうかと。

 食料安全保障というのがこれだけ声高に叫ばれるようになったのは、やはり、ロシアのウクライナ侵略によりまして、あの穀倉地帯、穀物地帯の小麦、トウモロコシが途絶えてしまった、そのことによって、間接的に、日本へもなかなか食料が来なくなった。

 加えて、中国やインドの成長、そしてアフリカ等の人口増大、そういうことによりまして、やはり、食料が手に入らなくなったということが現実のものになったということで、私たちは、危機感を持って、農地を守る、後継者、担い手を育てる、そして法人を育てる、カバーできないものは多様な人材でそれをカバーする、そういうような構図で、これからの農業というものを維持発展させていきたいというふうに思っております。それをしっかり基本計画の中にも盛り込んでまいりたいというふうに思っております。

おおつき分科員 大臣、まさに世界が危機感を持っている昨今の情勢の中で、現場の方々から聞いた声をこれから紹介をさせていただきたいと思います。

 実は、不安定な世界情勢の中で去年何が起きたかというと、北海道でもかなりの猛暑に見舞われました。生産者の方々、もちろん、皆さんたち、自分たち、責任を持ってやはり食料を供給していかなきゃいけないという気概を持って向き合ってはいるんですけれども、この猛暑はかなりの打撃になりました。

 少し声を紹介させてください。

 例えば、米、水稲では、倒伏、胴割れが見られて、シラタ、死米が多発して、整粒歩合が低下しました。麦は、赤さび病による早期の枯れ上がりや品質低下。豆は、変形、カビ、二次成長による品質低下、そして収穫時期の遅れも発生し、例えば、この収穫時期によって、急いで収穫したところに関しては、からが十分に乾燥していなくて、機械に絡まっちゃうんですよね、そうしたら。絡まっちゃって機械に無理がかかるとベルトが壊れたりとか、リスクを抱えながらの現場の作業となったというように伺っております。

 また、野菜も、高温障害で出荷できないという品目もあって、もう今年でやめなきゃいけないんじゃないか、若い農家さんさえもこんな声を上げているんです。トマトとか、ニュースでもありましたね、花落ちという、花が健康に育たずに実がつかない、そういった環境にありました。

 そして、最近、資材も高いですよね。この資材が高い中で、暑いから、遮光する資材というのがかなり現場では活用されているみたいなんですけれども、こういったことの例えば支援の拡充なんかもされたらいいなという声もございます。

 また、てん菜です。褐斑病の多発がありました。これは、一九八六年の糖分取引開始以来、過去最低の低糖分原料だったということです。

 本当に各野菜や穀物にも影響が出ているんですけれども、次には、暑さに弱い牛にも影響が出ました。猛暑によるストレスで、飼料の摂取低下や乳量の低下、繁殖成績の低下などの影響を受ける問題もありました。暑過ぎて死んでしまう牛も出てきてしまったんです。道内の牛の日射病、熱射病も過去十年で最多となりました。

 このように地球温暖化、気候変動が進む中、今後も猛暑が続いて農畜産物に高温による影響が出ることを懸念すると、気候変動に適応した新たな品種や生産技術の導入によって農業分野でも温暖化に適応していくことが求められ、生産現場への支援策の充実が必要であると考えます。

 そこで、農水省に伺います。

 農業分野における気候変動対策として、セーフティーネットの強化、また生産現場への支援と研究開発の加速化に政府は今後どのように取り組もうとしているんでしょうか。

舞立大臣政務官 先生御指摘の気候変動への対応というのは非常に重要だと考えております。

 この対応といたしましては、農水省におきまして、みどりの食料システム戦略や農林水産省気候変動適応計画に基づきまして、例えば、高温に強い品種の開発、そして温暖化に適応した栽培管理技術の開発、そして、果実の着色不良、着色遅延に対応できる優良着色系品種等、高温環境に適した品種や品目への転換や適応技術の普及の推進等の対策に取り組んでいるところでございます。

 今るる地元の事例を御報告いただきまして、ありがとうございます。今月二十日に気象庁が発表いたしました夏の天候の見通しでも、今年の夏も例年に比べて六月から八月の気温が高くなると見込まれておりまして、温暖化の影響は今後も引き続き発生することが懸念されるところでございます。

 農林水産省におきまして、令和五年度補正予算で高温耐性品種や高温対策技術の導入実証への支援措置を講じまして、現在調査を実施しているところでございますが、六年産に向けまして、各産地に更なる活用を促してまいりたいと考えております。

 農水省といたしましても、引き続き、この緩和策、温暖化を防止する緩和策と併せてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

おおつき分科員 さて、その農業者への支援策についてなんですけれども、産業政策と地域政策の両方の観点から推進することが必要だと思います。現在、経営所得安定対策や日本型の直接支払いなどが行われておりますが、これらの現行の施策で、食料の安定供給や農業の持続的発展は確立できるのでしょうか。

 そこで、伺います。

 農地の維持、そして食料の安定供給及び農業の持続的発展のため、農地が持つ多面的機能の評価に基づく面積支払い、多面的機能固定支払いとも言われます、というものや、生産コストと販売価格の差額を補填する作物別支払いの観点から、今後の農業者への支援の在り方をどう考えているか、お聞かせください。

長井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の多面的機能支払いにつきましては、農地周りの草刈り、泥上げといった農地等の保全管理活動を農業者等により構成される活動組織が地域共同で行うことに対して支援するものであります。

 本交付金につきましては、人口減少でありますとか高齢化を踏まえまして、活動組織の広域化を図りつつ、県、市町村等の支援により、外部団体等のマッチング、多様な組織や非農業者の参画等を推進することなどが必要であると考えておりまして、このような取組を通じまして、共同活動が継続できる体制づくりを進めてまいりたいと考えております。

 また、担い手経営安定法に基づきまして、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であります麦、大豆、てん菜等につきまして、諸外国との生産条件の不利を補正するため、標準的な生産費と標準的な販売価格との差額を補填する畑作物の直接支払交付金、ゲタ対策と呼んでおりますが、これを措置しているところでございますが、今後とも、制度の趣旨に基づきまして、これらの対策を着実に実施していくことが重要であると考えているところであります。

おおつき分科員 ありがとうございます。

 ただ、私は、最近、子供たちにも、人気があるという言い方じゃないですが、私、子供二人いるんですけれども、親の世代としても、やはり緑黄色野菜を子供たちに取らせてあげたいという親御さん世代も多いです。そういったことにもちゃんと特化して支援を行っていっていただきたいなとも思います、カロリーベースだけではなく。

 続きまして、農林水産省の組織・定員の関係について伺いたいと思います。

 食料安全保障の確立には、円滑な食品アクセスの確保や食料安定供給の確保に向けた構造転換など、農林水産行政には様々な課題が山積しておりまして、このことを国民に理解してもらって、幅広い農林水産施策を円滑に、そして的確に推進していくことは、十分な予算に加えて、やはり人への投資、農林水産省の人員を確保することも必要だと私は考えております。

 そこで、伺います。

 令和六年度をもって現在の定員合理化の計画が終了してしまうんですけれども、今後は、農林水産省の必要な定員確保に向けてどのように取り組むつもりでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 令和二年度から令和六年度までを対象とする第十四次定員合理化計画においては、農林水産省は他省と比べ高い合理化率となっております。

 次期定員合理化計画につきましては、各府省の行政需要の動向や定員増減の状況を踏まえて、今後、内閣人事局を中心として検討されることになるというふうに承知をしております。

 農林水産省といたしましては、食料安全保障の強化に関する様々な施策、農林水産物、食品の輸出促進、みどりの食料システム戦略の推進などを始めとした各種主要政策課題に係る行政需要を内閣人事局に対してしっかりと説明して、将来の業務運営に支障がないように努力してまいりたいと考えております。

おおつき分科員 こういった食料安全保障の確立に向けた取組をしっかりと推進するためにも、私は、必要な定員の確保と、地方組織を含めて的確な配置に是非努めていただきたいと思います。

 続きまして、二番の、食料アクセス問題に資する子供食堂等への支援策について伺います。

 この子供食堂と地域の方々のサロンの方々と、実は私、意見交換をさせていただきました。今回の食料安全保障の確保、基本法の法律案の概要にもありますが、国民一人一人がちゃんと入手できる状態にするというところがあります。やはり、この食品へのアクセスというのは、今、かなり注目をされているところだと思います。

 なぜかといいますと、NPO法人むすびえの調査によりますと、二〇二三年度の子供食堂の数というのが九千百三十二か所と、今、過去最高になっているんですね。これは、日本全国の公立中学校とほぼ同じ数だけ、今、広がっているというところなんです。

 そして、実は、昨年の夏に示された令和六年度予算の概算要求の資料の中には、新規事業として、食品アクセス支援団体活動の支援事業に十億円を要求するとしていました。しかし、令和六年度予算の概算決定の資料には、同事業についての説明がありませんでした。これについて伺います。

 この食品アクセス支援団体活動支援事業は一体どのようになってしまったのでしょうか。お答え願います。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 平時にも国民一人一人が食料にアクセスでき、健康な食生活を享受できるよう、農林水産省では、先生御指摘のとおり、食品アクセスに関する新たな事業の予算を令和六年度の予算の概算要求の中で要求していたところでございます。その後、予算編成の過程の中で、食品アクセスに対する対策、今、むすびえのお話もございましたけれども、速やかに進める必要があるということでございますので、令和五年度の補正予算の中で措置することとしたところでございます。

 具体的には、食品アクセス緊急対策事業として、地方公共団体を中心に、生産者、食品事業者、そして社会福祉協議会などの地域の関係者が連携して子供食堂などを通じた食品アクセスの確保に取り組む地域の体制づくりを進めるということとともに、地域の課題解決に向けた子供食堂の立ち上げでありますとか取組拡大に必要な経費などを支援しているところでございます。

おおつき分科員 まさに、この支援事業がなくなってしまったとしたら、国民一人一人の食料安全保障を確立していこうという中において、非常に残念なことになってしまうんじゃないかなと思うんです。

 なので、そこで伺います。

 この概算決定の資料には、食品アクセス確保対策推進事業として一千二百万円が計上されているんですけれども、これらの予算で食品アクセス問題への対策は十分だと考えていますか。また、経済的に困窮している方々の食品アクセスの確保について農水省は今後どのように取り組むつもりなのか、見解をお伺いします。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁させていただいたとおり、食品アクセスに関する新たな対策は令和五年度の補正予算で措置したところでございます。一方、お話がございました、令和六年度の当初予算に計上されているものでございますけれども、これは、今後の地域の体制づくり、食品アクセスに関する体制づくりに向けて地域の現状や調査などを行う、そういう経費を食品アクセス確保対策推進事業として当初予算で計上しているものでございます。

 このほかにも、農林水産省では、従来から、食育支援の中で、子供食堂などの共食の場の提供に対する支援、さらには、子供食堂などに食材を提供しているフードバンクに対する活動支援なども行っているところでございます。

 また、農水省以外にも、子供食堂に対する支援としては、こども家庭庁において、様々な困難を抱える子供の早期発見などの観点から子供食堂を支援するといったような予算もございます。

 関係省庁で様々な関連予算もあることから、これらの施策が各地でしっかりやはり活用されることが重要だと思いますので、現場の声をよく聞きながら、関係省庁とも連携しながら、食品アクセスに向けて支援をしていきたいと考えております。

おおつき分科員 ただ、その事業、八月の概算要求だと十億円求めていたところだったとは思うんですけれども、一・五億円になってしまったということは厳しいのかなと思うので、引き続きまた、次に向けても、拡大に向けて是非御尽力をいただきたいと思います。

 最後に、ホタテの養殖被害について伺います。

 私の地元の小樽では、ホタテガイの養殖漁業が行われています。一九八二年の養殖開始当初は成貝を主に生産していたんですけれども、今は稚貝生産を主にしておりまして、小樽市の漁業の中でもこれは主力となっております。

 ただ、去年の、やはりこの猛暑、海水温の上昇による影響がかなりありました。NHKのニュースでも報道されたんですけれども、昨年の九月下旬の時点で、海水温は平年より三度から六度ほど高い状況が続いて、これはホタテの稚貝も熱くてそこに入れられないという状況だったんですよ。本当にこれは大変でした。外国人の技能実習生の方々も、せっかく来てくれたのに働く場所がないというような状況にまで達しておりました。

 そこで、先週二十二日の予算委員会において、現在のこの養殖漁業が直面している厳しい現状について、大臣は、養殖密度の見直しや、緊急時の避難区域の確保及び高水温耐性品種の開発の対策を講じまして、持続的な養殖生産体制を目指していく必要があると答弁されていましたが、持続可能な生産体制を目指す上で、海水温の上昇がホタテガイを始めとする養殖業に及ぼす影響についてどのような認識をお持ちなのか。

 また、対応策の一環として高水温に耐性のある品種の開発というのは、具体的にどのような品種の改良なのか。あわせて、養殖漁業に対して今年度の予算案においてどのような支援が措置されているのか、どうやって現場は、いつ実感できるのか。

 是非答弁をお願いいたします。

坂本国務大臣 先般、私のところに陸奥湾のホタテガイの養殖業者の方が来られました。陳情です。これは全く小樽と一緒で、高水温でやはりほとんど被害を受けて死滅してしまったということでありました。

 小樽の場合も一緒でございまして、北海道庁によりますと、海水温の上昇の影響を受けて、養殖ホタテの稚貝及び半成貝のへい死が発生している、小樽のホタテの稚貝の養殖の水揚げは六億円にも上るというふうにお伺いをしております。

 まずは、こうした被害に対しましては、漁業共済、積立ぷらすによりまして減収が補填されるとともに、長期、低利の運転資金でございます農林漁業セーフティネット資金等を措置しているところでございます。

 また、中長期的に、この海水温の上昇、非常に深刻な問題であります。ブリが上昇して北海道近くでも捕れるようになった、その分、サケが北海道からいなくなったというようなことがあります。やはり、これからのこととしてしっかり研究していかなければいけないというふうに思います。

 まずは、できることとして、避難場所をきちんと確保しておく、避難の海域をですね、そういったことをしておく。先ほど言われました養殖密度の見直し、こういったものをやっていくということからまず始めていかなければいけないというふうに思います。

 様々な水産試験場での改良につきましては、これは今ちょうどその途上にございますので、時期が来たら委員の方にもしっかり報告をしていきたいというふうに思っております。

おおつき分科員 時間が来たので、あと二問、ちょっと質問を残してしまって大変恐縮でございます。

 このホタテについて、一言だけ申し上げさせてください。

 成貝自体が買いたたかれて、今、半値になっております。つまり、来年以降、稚貝もこれまでの価格で買い取られるとは限りません。是非、稚貝に関しても補償の確立をしっかりとしていただくことをお願いいたしまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

伊東主査 これにておおつき紅葉君の質疑は終了いたしました。

 次に、神津たけし君。

神津分科員 ありがとうございます。

 今国会では、二十五年ぶりに農業の憲法と言われる食料・農業・農村基本法の改正案が提出される予定と伺っております。本日には閣議決定がなされたと伺っております。

 日本の食料自給率は先進国と思えないほど私は低いと思っております。食料自給率を引き上げて、食料の安全保障を強化しなければならないという思いを強くしております。食料安全保障に対する危機感や問題意識については、恐らく政府の方々とも共通認識を持っているというふうに思っております。

 今回の食料・農業・農村基本法の改正なんですが、何をどのように変えるのか。理由、背景も含め、農家、農業関係者、将来を担う子供たちを含む国民全体に向けて、分かりやすく御説明をお願いいたします。

坂本国務大臣 まず、気候変動により、非常に世界の食料生産が不安定化をいたしました。アフリカ等の人口増、そして一方で、インドや中国によります経済成長、こういったことで非常に食料が入手しにくくなりました。

 そういう国際情勢の変化に加えまして、百二十万の主業農業者が、いずれ、二十年後には三十万人になるという、私たちにとっても非常に危機感を持っております。

 そういうことを考えた場合には、輸入リスクをやはり減らす、輸入をしっかりと安定的に輸入できるような状態にする。さらには、平時から国民の皆さんたちに安定的に食料を供給できる体制を整えておく。さらには、食品アクセス、中山間地や高齢者の方々、あるいは経済的困窮の方々、そういった方々にもしっかりと食品が、食料が届いていく、そういった食品アクセスという問題を充実させていかなければいけないというふうに思います。

 加えて、やはり環境との調和、そして農村社会のコミュニティーというものをしっかりともう一度復活させていく、こういうことを中心にして安定的な食料を確保するとともに、中山間地を始めとする地域のコミュニティーを維持する、さらには、後継者が農業に参入できる、あるいは就農しやすくなるような環境をつくり上げていく、女性就農も含めてその環境をつくり上げていく。そのためのやはり農業の所得の安定あるいは法人の経営基盤強化、こういったものを進めていくことがこれからの日本の農業の絵姿であるというふうに考えております。

神津分科員 丁寧な御説明ありがとうございました。

 私が伺っていたのは、食料安保の定義も併せて伺っておりまして、良質な食料が合理的な価格で安定供給され、国民一人一人が入手できる状態と定義して、これを実現していくというふうに伺っております。今回、そのために四本柱を立てていらっしゃったと思うんですが、そのためには、まず一本目のところは、食料の安全保障を強化していくというところと、それから、グリーン化、スマート化を図っていくというようなところがあったと思います。

 私、今回の法改正のところで少しだけ残念だなと思っているところがありまして、それは何かと申し上げますと、超長期での日本の農業の絵姿というものが、もう少しこの法律を改正する中において議論できていればよかったのかなと思っています。

 そういう意味においては、例えばですが、三十年後、五十年後、日本の農業がどのようになっているのかというところを示せればよかったのかなと思っているんですが、何か、もしこの点について、既に、こういうふうにやっていくんだというようなお考え方とか、これから例えば計画を作る段階でこういう予定を立てていくんだというところがありましたら、是非伺わせていただければと思います。

坂本国務大臣 まずはしっかりと農業の従事者、生産基盤、これを充実させていくということは、やはり、個人の担い手の農家というのを育てる、そして法人の経営基盤を強化をする、さらには、副業でも農業をやる、あるいは多様な担い手として農業をやる、そういう方々も、それ以外の農地をカバーする意味で確保していくということで、私は、農業がやはり国を担う総力戦として、やはり業というものを、あるいは農村というものをつくり上げていく、そういう姿を将来描いております。

 しかし、まずはこの二十年後、三十年後、今解決しなければならない問題は、先ほど委員も言われましたように、食料をしっかりと安定供給するための手段を法制化によって確保するということでございます。

神津分科員 ありがとうございました。

 そうしたら、次に、食料・農業・農村基本法の各論、また各政策について質問させていただきたいと思っております。

 私は、衆議員になる前は、アフリカに十七年ほどおりました。アフリカにいる中において、やはり先ほどおっしゃられたように、人口が急激に増加していくとかいうところもありましたし、あとは、例えば気候変動で干ばつになって飢饉が起きてしまったりとか、バッタが襲来して農作物を全て食べてしまって、食べるものがないといったような状況がありました。

 こうした意味において、私は非常に備蓄についても危機意識というものを持っておりまして、政府が保有する米の備蓄量なんですが、百万トン、それから外国産の小麦は九十万トンあると聞いているんですが、これは日本国民全体の何日分の備蓄に当たるのか、法改正実現後には備蓄量を増やしていくようなことはされるのか、伺わせていただければと思います。

舞立大臣政務官 まず、米の備蓄の関係でございますけれども、政府備蓄につきましては、十年に一度の不作等の事態があっても、その不足分を補って一年間十分に供給できる水準として、百万トン程度で運用しているところでございます。この百万トンにつきまして、直近の年間需要量を六百八十二万トンとして単純計算いたしますと、約一・八か月分となります。

 そして、小麦でございますけれども、小麦の備蓄につきましては、国内需要の八割以上を占める外国産小麦を対象として、輸入の途絶ですとか遅延等が発生した際の代替輸入先の確保に要する期間等を勘案いたしまして、今、二・三か月分を備蓄しているところでございます。

 法改正後の関係の御指摘につきましては、この備蓄というものは不測の事態の発生初期における重要な対応策の一つでございまして、国内における食料の備蓄量につきましては、民間分も含めて把握していくことが重要と考えております。このため、備蓄は、国内生産と輸入と並ぶ食料の安定供給の手段であり、その具体的な在り方につきましては、今後、食料・農業・農村基本法が改正された後に策定される新たな食料・農業・農村基本計画の検討に合わせて検討してまいりたいと考えております。

神津分科員 ありがとうございます。

 私が次の更問いでちょっとお願いしようと思っていましたのが、先ほど申し上げられた六百八十二万トンの一年間の需要に対して、百万トンのみ備蓄があるというところで、非常に少な過ぎるのではないかという意識を持っております。

 私自身は、アフリカにいて、全ての食料がなくなってしまう、外国からの輸入もなかなか難しいような例えば地域とかがあったりとかして、日本の場合には、もしかしたらば、何かしら、台湾有事の際にシーレーンが全て閉ざされてしまって輸出が難しいというようなときとかを想定して、もう少し備蓄量というものはしっかりと確保しておくべきではないかという意識を持っております。

 そして、例えば、備蓄の仕方なんですけれども、今回、能登半島地震の場合には、アクセス道路が一本しかないような村があって、そこにはなかなか物資を届けることができなかったというようなこともありました。こうした意味においては、地域の事情に応じて長期間の備蓄というものを各地域でやっていくことによって、より食料の安全保障につながっていくと思うんですが、その考え、いかがでしょうか。

舞立大臣政務官 備蓄というものは不測の事態の発生初期における重要な対応策という位置づけの中で、先生の御指摘も今日、御意見として受け止めながら、今後、先ほど申し上げましたように、基本法改正後の新たな基本計画の検討の中でまた検討してまいりたいと考えております。

神津分科員 ありがとうございます。御検討をよろしくお願いします。

 次に、三番ちょっと飛ばさせていただいて、四番目に移らせていただきます。

 昨日、予算委員会でも山田勝彦議員が少し触れられていたんですが、この二十年以上、食料自給率としては四五%以上の目標が立てられておりますが、今のところ一年も達成していない。なぜ達成することができていないのか、その原因について伺えますでしょうか。お願いします。

舞立大臣政務官 自給率の関係でございますが、ここ二十年間におきまして、国内で自給可能な米の消費が減少していることや、輸入依存度の高い飼料を多く使用する畜産物の消費が増加していることが主な要因となり、自給率が今、四〇%前後で推移しているところでございます。

 平成十年度の四〇%から令和四年度の三八%への自給率の変化二ポイント分につきましては、主な要因として定量的に評価するとすれば、例えば、輸入に依存している小麦や大豆の国内生産の拡大で一・四ポイント自給率を押し上げてきた一方で、やはり自給率の高い米の消費量の減少が三ポイント引き下げたとか、そういったような要因分析ができるかと思っております。

 そういった中で、海外依存の高い小麦、大豆の国内生産拡大等の増加分を、自給率の高い米の消費の減少等による減少分が上回っていることが原因でございまして、やはり食料自給率の向上につきましては、これまで効果があった施策を加速化させることが重要と考えておりまして、麦、大豆、飼料や加工原料用野菜等の輸入依存度の高い品目への国産転換を更に推進するとともに、米粉の特徴を生かした新商品の開発等による利用拡大や米の輸出促進等による米の消費拡大、そして販売促進を図っていきたいというふうに考えております。

神津分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたところ、私がもう一つ思うところでは、今、この二十年間で農業の人口約二百四十万人から半減しているという中において、この食料自給率を維持してきたというところにおいては、農家の皆さん、それから政府の皆さん、農業関連の仕事に従事していらっしゃる方々、皆さんがやはり努力して、ようやく今、この自給率を、半減する中でも保っていたというのはすばらしいことだというふうに思っています。

 先ほどおっしゃられたように、今、消費性向が変わってきて、米の消費量が少なくなって、大豆、小麦、それから、牛肉などのカロリーが高いものが増えてきているというふうにおっしゃられたかと思います。ただ、このまま、低いままいくのは、そうすると食料自給率が達成できない。先ほどおっしゃられたように、外国産のものより安いもの、それをやはり日本で作って国産化を進めていかなければならないというところは私も共通認識を持っております。

 一つだけちょっとお伺いしたいんですが、食料自給率なんですが、何%あれば日本は食料危機をしのいでいけるというふうに考えていらっしゃるのか、もし分かれば教えていただきたいものだと思いますが、いかがでしょうか。

舞立大臣政務官 何%あればというよりも、今、農林水産省といたしましては、四五%に引き上げる目標に向けて邁進しているところでございます。

神津分科員 分かりました。

 そうしたら、大臣から、任期中に四五%の目標を達成するということを約束していただけないでしょうか。

坂本国務大臣 今の状態では、なかなか難しいと思います。

 自給率だけで国民の安定的な食料を図るということではなくて、やはり自給率プラス安定した輸入、そして、飼料とか肥料は自給率の中には含まれませんので、こういったものも含めて、総合的に国民の皆さん方に食料が行き届くというようなことをこれからしていかなければいけないというふうに思っております。

 自給率一〇〇%にしようと思えば、とにかく米を食べなさい、芋を食べなさい、それでいいわけでありますので、そこは国民の皆さん方にしっかりと栄養のバランスを取っていただいた食料を安定的に供給するというのが、我々農林水産省の役割であるというふうに考えております。

神津分科員 お約束いただけなかったのは残念なんですが、今の段階では達成が難しいというところを理解いたしました。

 ただ、二十年以上達成できていないというところにおいては、これから是非とも、農水省の皆さん、達成できるようにまた御尽力お願いしたいと思います。

 次に、五番目の質問に移らせていただきます。

 地元を歩いていると、農家の皆さんから、飼料、肥料、燃油など、農業にとって欠かせない生産資材の高騰が生産の現場に深刻な影響を与えるというふうに伺っております。

 配付資料一のように、農産物の生産資材物価指数が上がっているにもかかわらず、農産物の価格指数は変わっていない。農産物の大半は市場流通の中で価格形成が決定されていて、資材価格が高騰する中で農家は価格転嫁ができていない。

 フランスでは、これに対して、付加価値が農業者に適正に還元されていないとの認識から、小売業者間の価格競争を規制すべきとしてエガリム法で対応していらっしゃいます。

 日本でも、再生産可能な価格で販売することが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

鈴木副大臣 御質問ありがとうございます。

 私も地元を歩いていれば、先生と同じように、生産者の皆さんから今の現状よくお伺いをしておるところです。

 その上で申し上げれば、食料の持続的な供給を行っていくためには、これは当たり前ですけれども、生産から加工、流通、小売、そして消費に至るまでの食料システムの関係者全体で、その持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならないというふうに考えております。

 このため、農林水産省としては、昨年八月から、生産から消費までの各段階の関係者が一堂に集まる協議会をまず開催をしております。まずは、流通経路が簡素でコストの把握も比較的容易であり、生産等の持続性を確保すべき品目として、牛乳とそして豆腐・納豆について具体的な議論を進め、その他の品目についても、コストデータの把握、収集や、価格交渉や契約においてどのような課題があるかなどを調査、検証することとしております。

 ちなみに申し上げますと、フランスは確かに、先生御指摘のようにあのエガリム法があるわけでありますが、なかなか、フランスと日本の食品の流通構造というのは、日本の場合はかなり中小が多いということで、やはり理解を促進するのがそう簡単ではないというふうに思いますが、何しろ、この協議会の議論をしっかり深めながら、消費者の理解を前提として、我が国の実態に即した価格形成の仕組みづくり、しっかり進めてまいりたいというふうに思います。

神津分科員 ありがとうございます。

 価格形成、先ほどおっしゃられたように、エガリム法、やはりフランスと日本の状況等の違いというのを私も理解しております。

 今回、この価格形成でやはり重要なのは、交渉力の強い買手主導ではなくて、売手の農業者側から生産費を組み込んだ、提案する仕組みというのをつくるということが重要だというふうに考えております。

 大臣にお願いしたいんですが、再生産可能な価格で販売できるように、農水大臣としてしっかりと取り組んでいくというところをおっしゃっていただきたいんですが、お願いできますでしょうか。

坂本国務大臣 農業が再生産可能な産業になるため、やはり価格形成が一番大事だと思います。

 ただ、一番難しいのは、生産者、流通、食品加工、そして小売、消費者の中で、消費者の意識とそして小売の方の意識、これをどれだけ縮めることができるのか、これが一番やはり課題であるというふうに思います。

 そのための合意形成というものを何としてでも、大臣のときに、消費者の皆さんたちにも、そしてスーパーの皆さんたちにも呼びかけて、合意形成を図った上で、生産者のやはり持続可能な適正な価格というものを決めていくべきである。その手始めとして、先ほど副大臣の方からも言いました豆腐・納豆、牛乳、こういったものからまず始めていきたいというふうに思っております。

神津分科員 御答弁ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきます。

 水田活用の直接支払交付金の見直しについてなんですが、私の地元からよく言われるのが、国が減反政策をこれまで推奨してきたと。ただ、米を五年間作付しない農地を交付金対象から外す方針を示したことについて、非常に憤りを覚えていらっしゃる方が非常に多くいらっしゃいます。

 この質問を既に多くの議員がされていらっしゃると思うんですが、私の地元でもやはり、五年に一度の水張りを強制され、廃業する農家が更に増えるのではないかという懸念を示されております。

 これは少し古い新聞記事になりますが、秋田県が県内農家を対象に調査したところによると、ソバ農家は六割が作付をやめるか、借地を返すというふうに回答されておりました。

 私の地元も、若林先生、今日いらっしゃっていますけれども、若林先生と同じ長野のやはりソバの産地でもあります。私たちのブランドの一つでありますけれども、私の地域で、長和町のダッタンソバとか、青木村のタチアカネという新しいブランドを育ててまいりました。これをやったことによって荒廃農地が削減して、さらに、排水とか鳥獣対策としてもつながってきたというような経緯があります。

 今、もう一回、ソバを作るのを一時期やめて、畦畔、あぜをもう一回作り直して水を張ってしまうと、そうすると、湿気を嫌うソバは育たなくなってしまうというところで、交付金対象から外れるとすれば、離農が増えるのではないかというふうに、そして荒廃地も増加するというふうに言われております。

 農家の皆さんに安心して営農を続けていただくために、五年に一度の一か月以上の水張りを要件とせず、水田で生産する麦や大豆、飼料作物などについて、米の生産と同水準の所得が得られるよう交付金を支払うべきだと考えますが、いかがでしょうか。

鈴木副大臣 御質問ありがとうございます。

 私の地元山形もソバの産地がたくさんありますので、同じようなお悩みや相談はたくさん受けているところであります。

 その上で申し上げますと、水田活用の直接支払交付金は、水田において、主食用米から、需要のある麦、大豆、ソバ、飼料作物等への作付転換を支援するためのものでありまして、その交付対象は水を張る機能を有している水田であることが前提ということになります。

 このため、五年間に一度も水稲の作付又は一か月以上の水張りが行われない農地は交付対象水田としないこととし、水田機能を維持しながら麦、大豆、ソバ、飼料作物等の畑作物を生産する水田については、水田でのブロックローテーションをできるところはそれをしっかりとやっていただきたいということを促す一方で、畑作物が連続して作付されている水田については、産地化に向けた一定期間の継続的な支援や基盤整備への支援も行うこととしたところであります。

 現在、各産地において、水田機能を維持して、要するに、ブロックローテーションをしっかりやって産地化をしていくのか、あるいは畑地として産地化をしていくのかということについて、それぞれの現場で検討していただいているところでありまして、農林水産省としては、需要に応じた生産とともに、農家所得がしっかりと確保されて、またそれが向上できるようにという観点から、いずれの産地の取組もしっかり後押しをしていきたいというふうに思います。

神津分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃられた内容なんですが、これまでの御答弁と余りやはり変わらないような内容だったというふうに思っています。これまで減反政策をやってきて、それをやめて、五年に一度の水張りを要求するというところ、これは政策を変更することによって、農業従事者の皆さん、やはり不安を覚えていらっしゃるんですね。

 私が思うところは、正論は正論だと思うんですね、ただ、正論を掲げて、結局、農家の皆さんの数が減ってしまうというような結果、それから荒廃地が増えてしまうというような結果につながってしまうのであれば、政策のやはり見直しというのをやっていくべきじゃないかと思いますが、御所見いかがでしょうか。

鈴木副大臣 政策を変更するたびに、現場の皆さんには本当に様々な御不安や、そしてまた御負担をかけているということは重々認識をしております。ですので、できる限り生産現場の皆さんのお話をしっかり伺いながら、今後も対応していきたいというふうに思います。

神津分科員 ありがとうございます。

 次に、後継者の育成、七番目の質問に移らせていただきます。

 地元を歩いていると、人口減少はもちろんのこと、やはり農業従事者の減少が深刻な問題となっております。それに対して農水省は、担い手確保のため様々な施策を行っていらっしゃると思うんですが、残念ながら、今のところ、まだ農業従事者の減少分というのを補えているという結果には結びついていないというふうに思っております。

 私、何でこの減少を抑えることができていないのか、それから、これについて丁寧な検証を行っていく、それから施策について、本当に今やっている施策が正しいのか、それからもう一つは、農業従事者の子供が後継者となってもらえるような施策とか、それからUターン重視施策を重視すべきだというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

鈴木副大臣 御質問ありがとうございます。

 農業者は高齢によるリタイアを主な要因として減少しており、新規就農者の確保、育成は重要な政策課題というふうに認識をしております。

 農林水産省がこれまで実施をしてきた新規就農者の確保、育成に向けた対策によりまして、農外からの新規参入者が増加するなどの成果があった一方で、所得の向上が課題となっており、着実な経営発展により、農業人材の定着を図っていくことが重要と考えております。

 新規就農者の定着がうまくいっている地域では、都道府県や農業団体等の地域の関係機関が総合的にサポートをして、必要な初期投資を行った上でしっかり経営を発展させております。

 これを踏まえまして、これまで以上に新規就農対策をしっかりと推進をしていくために、令和四年度から実施をしている新規就農者育成総合対策においては、資金面の支援に加えて、新たに、経営発展のための機械、施設等の導入を親元就農も含めて支援するとともに、地域におけるサポート体制の充実も支援することとしたところであります。やはり他産業と競争を強いられているというふうに思いますので、そうしたこともよく念頭に置いて、更なる充実、努めてまいりたいというふうに思います。

神津分科員 ありがとうございます。

 新規就農の方へ支援している部分については、ある程度、一定程度成功している部分もあるというふうに私も認識しているんですが、ただ、中長期で考えると、新規就農者の方のお子さんも次に農家の後継者となっていってもらえるような政策というのがやはり重要ではないかというふうに思っております。そういう意味においては、農家の仕事というのを一番よく知っていらっしゃる農家の子供が農家になりたいと。

 それから、ちょっと極端に言えば、農水省の方が一番農業支援の政策についてやはり御存じだというところにおいては、農水省から、自分が農水省を辞めて、もちろんそういうことはやめてほしいですけれども、農水省を辞めてでも農家になりたいというふうに思えるような政策というものを是非とも実現していただきたいというふうに思っております。

 ここに加えて、やはり農家の皆さん、今のに加えて、安定した収入というのが重要だというふうに思っております。近年、温暖化の影響ですとか局所的な豪雨によって、安定して作物が取れない、安定した収入がないという方は非常に多くいらっしゃいます。今年については、例えば私の地域でも、リンゴがなかなか花がつかなかったりとか、そういうことがあって、収入が安定していないという方がいらっしゃいました。

 かつての民主党政権の話になるんですけれども、農業者の戸別所得補償制度というのをやっておりました。ただ、このときは、やっていたのは実は米だけだったんですよね。ただ、米だけだと、やはり農業者の皆さん、収入が安定していないというところで、農業者戸別所得補償制度を野菜や果物、米、こういうところに拡大して実施すべきというふうに考えますが、いかがでしょうか。

鈴木副大臣 まず、農業者の方々が安心して生産を継続できるように、農林水産省では、現在、諸外国との生産条件の不利を補正する畑作物の直接支払交付金、そして、主食用米から他作物への作付転換の取組を支援する水田活用の直接支払交付金、そして、中山間地域等直接支払交付金などの日本型直接支払いといった、農業者に対する様々な直接支払いを行っています。

 また、農業収入が減少した場合には、セーフティーネット対策としてナラシ対策や収入保険といった制度も設けているところであり、基本的には、今後ともこうした制度を着実に実施していくことにより、農業者の経営を支えてまいりたいというふうに考えております。

 ちなみに、今先生は、米以外にも戸別所得補償みたいなものを検討したらいかがかということでありましたけれども、様々なこれは当然議論があろうかと思いますが、例えば米について申し上げれば、前の旧戸別所得補償制度と現在の政府の政策の最も大きな違いは、主食用米の個々の販売農家に生産数量目標を割り当てて、協力する農家に交付金を支払っていくという仕組みでありました。この制度ですと、米への助成を基本とするのであれば、実は、需要のある作物への転換が進まないというおそれは出てくるんだろうというふうに思います。そして、米の生産数量目標を個々の農家に割り当てるということになれば、例えばなんですけれども、輸出を、今、米についても、いろいろな農作物、促進をしなければならないということであったりとか、もっと言えば、適地適作をもっと推進するんだというようなことの問題意識からいうと、なかなか、個々の生産者の経営判断による需要に応じた生産というのが行われにくくなるということもあるのかなというふうに考えております。

神津分科員 時間が来てしまいましたので少しだけ申し上げさせていただきますが、農業、国にとってのやはり基というところでは、皆さん、国民全体で食料の安全保障というものを考えていかなければならないときに来ているというふうに思っております。

 今日、済みません、ちょっと質問を残してしまいましたが、一つだけお願いしたいのが、これは大臣、副大臣、政務官にお願いしたいんですが、記事では、農水省の職員の皆さん、残業代一割しか支払われていないというふうにも出ておりました。そういう意味においては、ちょっとその点もお気をつけていただいて、皆さんの賃金がちゃんと確保できるようにお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

伊東主査 これにて神津たけし君の質疑は終了いたしました。

 次に、大岡敏孝君。

大岡分科員 滋賀一区の大岡でございます。

 お時間いただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 農林水産業、農林水産省にとって一番大事な課題、私も最大の問題意識を持っておりますのは、担い手問題です。今後も農業、林業、水産業に携わっていただく日本人をしっかり確保できるかどうか、これは我が国の存亡が懸かっている問題だと言っても過言ではないほど重要な問題だと思って認識をしております。

 現在、我が国全体でも人口減少の局面を迎え、そして特に地方においては極端な人口減少になっていますよね。こうした中で、今後も日本の農業というのは、あるいは林業、水産業というのは、日本人のプロフェッショナルによって業がしっかり守られるようにしないといけない。もちろん、外国人労働者の力をかりることはこれから必要でしょう。必要だと思うけれども、かといって、その中心の軸の部分だけはやはりしっかり日本人が担い続ける体制を進めなければならないと思いますが、このために農水省はどのような策を持っているのか、まずこれを教えていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 大岡先生の御指摘は、私も非常に共感するところでございます。

 日本全体で人口が減少する中にあっても、日本の農林水産業の持続的な発展を図っていくためには、日本人のプロフェッショナル、そして担い手の育成、確保が大変重要と考えております。

 このため、農水省といたしまして、補助金、金融措置、税制措置など各種施策を総動員して、農林水産業の担い手の支援に取り組んできているところでございます。

 経営感覚に優れた大岡先生も、企業は人なりという言葉をよく使われるというふうにお聞きしておりますけれども、同じく、農林水産業は人なりとの考えに立ちまして、農林水産業の将来を担う人でございます担い手の経営の安定、発展を今後とも全力で後押ししてまいりたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございます。

 大変よい答弁をしていただいたと思うんですけれども、一方で、現在、農水省は一生懸命、法人的な経営体の推進をされていますよね。例えば農業でいえば、今、経営体全体の五%と伺っておりますけれども、法人的な経営体、この五%が、実際には半分近く、四〇%から五〇%ぐらいの生産量を上げている。これは非常に、私は、将来を見越すと、この流れをしっかりと確実なものにしていくことが大事だと思っております。

 一方で、そういった経営体であったとしても、まだ平均賃金が五百万は行かない。つまり、普通の民間企業であれば、中小企業にも負けるレベルなんですよね。現実的に、まだそのレベルにとどまっているというところが実態だと思いますが、政務官、ここを上げていく方策としてどういうことを考えておられるか、もしあれば、教えていただければと思います。

舞立大臣政務官 農業におきましても、他産業並みの所得、賃金が得られるという環境にすることは大変重要だと考えております。

 今回の食料・農業・農村基本法の改正の一環といたしまして、法人の重要性というものもございまして、この経営基盤を強化するといったような見直しも行う予定でございます。

 中小・家族経営を含めまして、法人の農業経営につきましても、あくまで法人はリースが基本でございますけれども、農地所有適格法人をしっかりと体力を底上げしていく、経営基盤を強化していくということを通じてまた所得の向上にも寄与できるものと考えておりまして、そういったような取組も推進してまいりたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございます。

 あわせて、私なりに、私が比較的得意としている分野で、これは農業者の所得向上につながるんじゃないかというお話をさせていただきたいと思います。

 それは、一つの世界的な大きな流れで、今、カーボンニュートラルを進めなければならない。つまり、化石燃料から脱却をしていかないといけない。その答えの一つが、バイオ燃料でございます。つまり、農作物。あるいは、林から生まれるものもありますよね、林業残渣も含めてですね。これも当然エタノールになり得る。

 有名なのは、アメリカのトウモロコシ、そしてブラジルのサトウキビ。これはもう完全に産業になって、既に実用化されています。我が国のガソリンの中にも、皆さんが使っておられるガソリンの中にも、アメリカのトウモロコシ、ブラジルのサトウキビから作られたエタノールが一部混入されているというのは、皆さん御存じのとおりだと思います。

 あわせて、世界的な流れの中で、特にジェット機の燃料、いわゆるSAFと言われるものにつきましては、これは我が国もしっかりとやっていかないといけない。これはもう世界的に約束をしています。

 現在、このSAFを作るに当たって、最も実用性が現時点では高いと言われているのが、バイオから作るSAFでございます。

 かつて、農水省はこのバイオ由来のSAFに挑戦をされましたけれども、残念ながら失敗したという話も伺っております。ただ、当時はガソリンが一リッター百円の時代ですよね。今は御存じのとおり、一リッター、補助金がなければ二百円、場合によってはそれ以上に上がる。既に、ブラジルなどでは、ガソリンの値段が上がり過ぎているので、サトウキビ由来のエタノールの混入率を上げて単価を下げる、そういった賢い使い方をしている消費者がたくさんいるのは御存じのとおりです。

 我が国も、今までというか、ここ近年の特に農業政策だと、食料自給率ということに一つ重きを置いていたので、余りこの分野には関心を持ってこられなかったと思いますけれども、一方で、農家の所得を上げていくということを考えれば、私は、バイオ由来のSAFにそろそろ農水省はチャレンジするべきではないかと思っております。

 我が国はもう既に、バイオの先に来ると言われている合成燃料の開発には着手しています。しかし、バイオがなくなることはありません。バイオも含めて、いよいよ我が国が自国で燃料を生産する、つまり我が国が産油国になるという道筋を考えれば、バイオ由来のバイオ燃料に関しても、その生産から製造に至るまでのノウハウを我が国の中でしっかりと確保しなければならない。

 あわせて、それができるようになれば、かつて油田の権益を取りに行ったのと同じように、我が国も、海外の農地、あるいは、現在荒廃している、例えばアフリカやその他の地域の農地を我が国の技術でもって使えるようにして、そこを権益として、バイオ燃料を我が国で生産するという道筋だって当然目指していかなければなりません。

 だとすると、我が国もそろそろこのSAF、バイオ由来のSAFの製造につきまして、農水省も思い切った政策展開をすべきではないかと考えておりますが、この点につきまして、どのように考えておられますでしょうか。

舞立大臣政務官 私も、参議院自民党の中でSAF推進議連に入っておりまして、SAFは推進している立場でございます。

 先生も御存じのように、この関係につきましては、エネ庁そして国交省を事務局とした官民協議会に農林水産省も参画させていただいて、導入促進に向けて官民での議論が進められているところでございます。

 国産SAFの生産についても検討されている中で、国産の農作物を原料としたSAFを製造することにつきましては、食料や飼料の安定供給と両立し、また、地域の活性化に資することも重要だと考えております。

 国産の農作物を国産バイオ燃料の原料として活用するためには、現場の再生産をどのように確保していくかが課題でございまして、まずは、原料向けの作物を価格、量の両面から長期的、安定的に引き取っていただけるかが論点になると今考えております。

 農水省といたしましては、平成二十年に農林漁業バイオ燃料法を作りましたけれども、これによりまして、農林漁業者とバイオ燃料製造業者の連携によるバイオ燃料の製造や、バイオ燃料の原材料生産等の研究開発に対する支援を通じまして、バイオマス資源のバイオ燃料としての利用を促進しているところでございます。

 引き続き、バイオ燃料法によります支援を行うとともに、官民協議会の議論にも、農水省も積極的に参画してまいりたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございます。是非、力を合わせてやらせていただきたいと思います。

 御答弁の中にもいただきましたけれども、実際には、餌用の米など、先ほど何度も指摘があったと思いますけれども、水田活用の直接支払いの中で恐らく一定程度の予算を食っていると思うんですよね。ただ、これは非常に生産性が悪い。まして、麦、大豆に関しても、作っても作らなくても三万円を払う。やはりそれは、さすがに業として行う農業としては、どれだけ生産性が上がったかを問わないというのは、余り政策としてはよろしくない。

 だとすれば、SAFに切り替えて。まして、このSAFの場合は、最終的にはジェット燃料に溶かす、あるいはガソリンに溶かすものですから、固定価格買取りだって、やろうと思えばできるんです。つまり、利用者負担でこの開発をお願いする。

 それができるようになると、皆さんの持っている水田利活用の予算だって余裕ができてきますから、もっといろいろなことができるようになるんですよ。もっと新しい付加価値にもチャレンジすることができるようになる。

 したがって、これはSAFだけの問題ではなくて、今、ふだん使っておられる交付金のもっと生産的な利活用も含めて検討していただけるとありがたいと思います。これは要望として申し上げておきたいと思います。

 次に、漁業についてお尋ねをしたいと思います。

 我が国の水産業、昭和六十年頃はマックス、ピークを迎えまして、千三百万トン程度の漁獲、それが減少の一途をたどって、現在四百万トン程度、つまり三分の一以下になっているのが現状です。残念ながら、地方では、農業と同様に担い手不足、しかも小規模な漁業で、何とか皆さん漁業を行っておられるというのが実態です。

 一方で、欧米などにおいては、船が高度化する、さらにはデータ収集を徹底して行っているなど、どの時期にどの地域で漁業をすると最も生産的かということまで考えてやる漁業に入りつつあるというふうに伺っています。

 当然、日本においても、最初に申し上げた担い手の問題を一つ取ってみても、漁業者の賃金を上げる、所得を上げるためには、当然、欧米がやっているような高度な漁業に振り替えていかなければなりません。そうすることによって生産性が上がる。さらには、そうすることによって限られた漁業資源の資源管理が科学的、合理的にできるようになるわけです。

 私は、これはまさに政府が主導して、まず、国の沿岸、EEZ内、さらには、公海上であっても、我が国が歴史的に我が国の漁場としてきた地域に関してはしっかりとデータを集めて、そして船も高度化をして、データを集めて全体を俯瞰してしっかりと管理ができる漁業に向けて取り組んでいくべきだと思いますが、この点につきましてお考えを教えていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 今、水産業につきましては、浜の再生や水産日本の復活に向けて、沿岸、沖合、遠洋と、しっかりと改正漁業法に基づきまして資源管理も行いながら取り組んでいるところでございますが、先生御指摘のとおり、収集されたデータを活用して、水産資源の適切な管理や生産性の向上を推進するということは非常に重要だと考えておりまして、今、スマート水産業をしっかりと進めているところでございます。

 農水省におきまして、全国四百以上の産地市場からICT等を活用して収集したデータを資源評価、管理に生かす取組ですとか、まさに先生がおっしゃいました、漁船から収集したデータを漁場予測に活用する取組というものも加速しているところでございます。

 こうした取組には、確かにまだまだ地域ですとか魚種において偏りがある状態のため、優良事例の全国への展開なり、スマート水産業の実証事業等、しっかりと充実してまいりたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございます。

 これはどこかの地域だけやっていても余り意味がなくて、やはり全体を見て、日本の沿岸、そして我が国が得意としている漁場、全体をしっかりデータとして見られるようにするには、当然、政府が主導して、全体を指導してやっていただきたいと思いますし、それと併せて、船の高度化そして漁港の高度化、データを蓄積する場所も当然必要になってきますので、そういったことも進めていただきたいと思います。

 関連して申し上げますと、我が国の漁業施設についてお尋ねをしたいと思います。

 我が国は、文字どおり津々浦々ですよね。津々浦々に、実際には漁民がいて漁港があってということで、それでもって我が国の発展を支えてきました。しかし、今や地方は人不足、いずれも高齢化している。小さな漁船がある小さな漁港が幾つもあって、必ずしもその漁港の装備も高度とは言えない状況が続いています。そうした中ですけれども、やはりこれはもう、選択と集中が必ず必要な状況になってまいりました。この点につきまして、今後の漁港整備の進め方についてどう考えるかを教えていただきたいと思います。

 あわせまして、今回、本当に残念ながら能登で地震がありまして、多くの漁港も被害を受けました。多くの漁民の方々も被災者になられました。本当に、私たちも全力でこの皆さんの活動を支えていかなければならないと思っております。

 しかし、能登もまさにこの例外ではなくて、湾ごとに漁港があり、漁協があり、漁民の皆さんが暮らしている。いずれも設備、装備は貧弱な状態が続いています。もう高齢化し、そして担い手もいなくなっている中、当然この復興復旧は大事なんですけれども、持続性のある形でもって復興復旧をしなければ私は意味がないと思っています。

 ただ単に、単純に元どおりにするだけ、元あった漁港に元あった漁港を造るだけ。そこに向かって、例えば隆起したところもありますから、例えば水路を掘るなどということはほとんど私は意味がないことだと思っています。むしろ、新しい形状に合わせて漁港も集約化する、漁協も集約化する、そして漁民の皆さんも、担い手がちゃんとつくれるような形で、持続的な形でもって成長的、発展的に、集約的に復旧をしていくという作業が私は必要なのではないかと考えています。

 先ほど申し上げましたデータの活用もそうです。さらには、冷蔵冷凍の設備、装備、そして漁港自体の電子化、省力化といいますか自動化、こうしたことも含めて、これまで人がやっていたことを機械でできることは機械でやる、コンピューターでやれることはコンピューターでやるということも含めて、担い手の確保を見越して、持続可能な形で漁港整備を進めていくべき。

 特に能登で一つのモデルケースとして私はチャレンジしてみるべきだと思っておりますが、この点につきましてどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 今回の石川の能登半島地震におきましては、本当に、輪島市ですとか珠洲市などの外浦海域の漁港を始めといたしまして、地盤隆起や津波等により甚大な被害が生じました。農水省も、一日も早い再開に向けて、現在、予備費を活用して被害実態を把握するための緊急調査を行っているところでございます。

 先生の御指摘の復旧復興の方針ですとか在り方につきましては、今やっております緊急調査の結果を踏まえまして、石川県等の復旧復興の考え方に基づき、短期的ななりわい再生のための仮復旧と、中長期的な機能向上のための本復旧という二つのフェーズに分けて取り組むことによりまして、一日も早いなりわいの再生を図っていきたいと考えております。

 その際、地元の皆様との対話が非常に重要でございまして、県や市町村等とも十分に調整を図りつつ、地元の漁業関係者の意向も尊重しながら丁寧に対応してまいりたいと考えております。

 今般の復旧復興が今後の全国での復旧復興のモデルとなるよう、国としても最大限のバックアップに努めてまいりたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございます。

 地元の皆様の御理解は当然必要なことですけれども、その前にやはり国として、政府として、今後持続可能な形で漁業を守るにはどうすればいいかというビジョンがなければ、住民も説得できないですよね。ただ単に住民が言っているとおりにやるのがいいことではなくて、当然、皆さんのビジョンをしっかりとお示しをして、それを説得していくという作業が、まさに官僚には、あるいは指導者である政治家には求められるというふうに考えておりますので、是非そういったビジョンを出してやっていただきたいと思います。

 過去に東日本大震災があったときに、三陸もまさに同じ状況だったんですよね。ただ、残念ながら、もうあのときは国家的な、政治も混乱をしておりましたし、原子力発電所の問題等ありまして、落ち着いてそういった計画を立てたり、議論をしたり、説得をしたりという時間がなかったというのも事実だったと思います。残念ながら三陸においては、集約化、高度化という目的は、一部はできたところはありますよ、ただ、全体としてはできなかった。

 でも、今回は、更にそれから年数も進んでおりますし、少子高齢化も進んでいますし、漁業の危機感は更に高まっているわけです。

 能登沖にはいい漁場があるのは私も分かっている。じゃ、それに向けてどういった体制でもって持続可能な漁業を守っていくのかというのは、まさに皆さんのビジョンに懸かっていると思っておりますので、私たちもできるだけの支援をしていきたいと思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 次に、営農型太陽光発電についてお尋ねをしたいと思います。

 これも、私は農業者の所得向上の一つだと考えておりまして、しかし、残念ながら現在では、一部、あるものは、平たんで非常に優良な農地であるにもかかわらず、営農型の太陽光発電が張られている。さらには、従前の農業収穫量の八割を義務づけていることから、この八割をキープするというのはなかなか難しくて、本来、耕作放棄するぐらいだったら太陽光発電を張って一定の所得を得てもらいたいんだけれども、そのようなことも十分になされず、結果としては有効な政策になり得ていないというのが実態だと思います。

 私は、本来の筋からいきますと、平たんな優良農地、ここはやはり農業の生産性を最大限高めることのみに集中するべきであって、それは、太陽光発電を張らせてくださいといっても、私は認めるべきではないと思っています。それよりも、ちゃんと農業として、業としてやれる地域ですから、ここの生産性、ここの生産量を最大化することを目的とするべきだと思います。

 一方で、耕作が困難な、斜度がきついとか形状が余りよくないとか、ともすると山林との境界で獣害が多いとか、こういったところは、むしろ積極的に太陽光発電を活用してもらって、農家の収入につなげるということだけではなくて、いわゆる里と山の境界線としてこのソーラーをうまく使うことができれば、当然、獣害が更に下に下ってくることも防げる。さらに、八割とは言わないまでも、三割でも四割でもいいですよ、水利を使いながら土壌をしっかりと残していく。耕作がいつでもできる状態に土壌さえ残しておけば、食料安全保障と言われるような緊急事態にも対応ができるようになると思っています。

 こういった考えの下に、私は、この営農型太陽光発電の在り方をもう一度皆さんの中で議論をしていただいて、最も有効な形でもって利活用を進められるように政策を見直していくべきではないかと考えておりますが、農水省の考えを教えていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 まず、先生御指摘の八割の要件の話は、現状、耕作しているところで営農型太陽光をやるというときには適用になりますけれども、耕作放棄地を再生して営農型太陽光をやるといったときには八割要件はなくて、適切かつ効率的に利用されていればいいというようなところでまた御理解をちょっといただくといたしまして、営農型の太陽光発電は、農業生産と再生可能エネルギーの導入を両立する有用な取組でございます。今後とも、優良農地を確保しつつ、地域活性化に資する形で進めていく必要があるというふうに考えております。

 一方で、議員御指摘の、斜度がきついですとか、山林との境界、こうした条件不利地域、えてして中山間地域に多いと思いますけれども、そこに営農型太陽光発電を導入する際には、当然ながら、日照の条件ですとか、また送電網への接続コストなどの課題をクリアしていく必要があると考えております。

 そうした中で、農水省といたしまして、例えば、発電設備下における地域ごとの最適な栽培体系の検討を行う取組の支援ですとか、営農型太陽光発電の取組支援ガイドブックを作成いたしまして、取組事例や必要な手続、支援制度を紹介するとともに、この発電の事業化を目指す農業者に対する相談への対応等々を行っているところでございまして、今後とも、営農型太陽光発電の適切な導入につきまして後押ししてまいりたいと考えております。

大岡分科員 是非、具体的に好事例をうまく紹介していただくなどして、やっていただければと思います。

 優良な農地は、やはり農業として、業に資するようにやっていただきたいし、山と里との境、こういったところは、八割と言わず、賢く利活用していただくのが一番いい。いざというときには当然農地に戻せるよう、水利と土壌をしっかり守る。

 このことは、水利と土壌がなくなってしまうとこれは終わりですので、もう戻りませんので、ここは残しつつ、うまく収入にもつながるように利活用していただくというのが一番賢い使い方だと思いますので、是非、引き続き検討していただきたいと思います。

 最後に、保安林制度と指定の見直しについてお尋ねをしたいと思います。

 保安林は、元々、明治の時代に大水害があったということを契機に、水源の涵養、森林環境の保全、それから土砂流出の防備など、森林の公益的な機能を発揮させるために指定されて、当然、伐採とか土地の形状変更などが規制されています。その後、固定資産税が減免されますよとか、相続するときに控除が行われますよということもあって、皆さん手を挙げられたわけですよね。それで指定されていった。

 結果として、今になってみれば、指定されたところが実は草木も生えていないただの岩がむき出しのところであって、保安林とはとても言えない状況であったり、一方で、保全されていないけれども、すごく自然環境も豊かで、土壌もあって、すばらしい木も生えていて、本来保全しないといけないところが保全されていなかったりと、今となっては実態に合わないものも出てきております。

 坂本農水大臣の御地元の阿蘇においても、元々草原だったというところに、木材需要があって、杉が植えられた。その後、そこが保安林に指定された。草原に戻そうと思っても、保安林でがちがちに指定されてしまっているので戻せない。まして、草原であれば野焼きをしないといけないんだけれども、保安林を守らないといけないので、保安林が地域を守っているんじゃなくて、地域が保安林を守るために輪地切りをして、野焼きをするだけでも輪地切りをするのでもうへとへとだというような状況にまでなってきておりました。

 そうした中、大臣、まだ御就任前、議員でいらっしゃったときから御指導いただきまして、林野庁と熊本県が協力をして、順次保安林を解除して草原に戻している、そして野焼きなどを行う上での安全性が確保されつつあるということを伺っております。

 このように、保安林の中には、指定された時期と比べて形状が変化しているとか、あるいは阿蘇のように社会ニーズの変化、あるいは森林原野の環境に関する新しい知見、つまり、草原の方が保水力もあるし、本来の姿だし、社会ニーズにも合っているじゃないかという新しい知見が出てきたものもありますので、現状にそぐわない場所、本来の機能が発揮できない場所になっていれば、少し、地域全体をよく見て、そして必要であれば解除するなど、適切な対応を取るべき時期が来ているのではないかと思いますが、農水省の考え方を教えていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 保安林制度でございますが、森林法に基づきまして、先生御指摘の、水源涵養等、公益目的を達成する上で特に重要な森林を保安林に指定して、森林として維持することを基本として、伐採や転用を規制しているところでございます。

 一方で、保安林の指定後に受益対象が消滅したり、自然現象等により保安林を復旧することが著しく困難となる場合など、指定の理由が消滅していると認められる保安林につきましては、その原因を究明した上で、順次、指定の解除を行っているところでございまして、引き続き、保安林制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

大岡分科員 ありがとうございました。

 終わります。

伊東主査 これにて大岡敏孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、木村次郎君。

木村分科員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、今日、大きく三つの柱立てで質問させていただきたいと思います。

 最初の一つ目は、リンゴの対策についてでございます。

 皆様方、今更申すまでもなく、私の青森県、特に私は、日本海側、津軽平野が地元でございまして、青森県のリンゴは大体全国の半分ぐらいを占めるというふうになっておるわけでございます。いわゆるリンゴ王国というふうに我々青森県民は自負をしておるわけでございます。

 そして、輸出も、地元の方も大変力を入れているということでございまして、国においても、いろいろ法整備等々、各品目ごとに目標設定とか、あるいはそれを担う主体、また、最近の改正で、それぞれのプラットフォーム、そういったことの基盤づくり等々、いろいろな環境が構築されてきたところ、これはまた大臣も御案内のとおりでございます。私も、数年前、福田達夫先生が委員長のときに、党の農産物輸出促進対策委員会、この事務局にも関わらせていただいておりました。

 そこで、リンゴの輸出、台湾あるいは香港等々、いろいろな富裕層がある国も含めて、いろいろ展開しておるわけでございます。輸出の九割ぐらいは青森県産というふうにも言われております。

 そこで、このリンゴの輸出についての現状、また、そして更なる輸出の促進に向けて、青森県、自治体、あるいはリンゴの関係団体等々、こういったいろいろな取組をなされておりますが、これをどのように後押しをしていくのか、大臣にお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、山本(有)主査代理着席〕

坂本国務大臣 リンゴは、二〇二三年の輸出実績が百六十七億円、青果物最大の輸出品目であります。委員おっしゃいましたように、台湾それから香港を中心に、青果物輸出全体の三割を占める重要な品目として、輸出重点品目にしているところであります。

 このため、官民が連携をいたしまして、まずは、残留農薬基準等の規制に対応した防除体系の見直しなど、生産体系の構築を進めます。そして、一昨年十二月に認定されました青果物の輸出促進団体を中心に、販路拡大に向けたPR、商談会、セミナー等の実施などの取組を行っているところであります。

 リンゴの輸出目標、二〇二五年は百七十七億円でございますので、その達成に向けて、今後とも、輸出産地の育成や販路開拓など、青森県も含めて、県や関係団体の取組をしっかりと後押しをしてまいります。

木村分科員 大臣の前向きな御答弁、ありがとうございます。

 今申し上げた国等にかかわらず、これから、あるいは富裕層を抱える中東だとか、インド、東南アジア、更にその販路拡大が期待されるところでございます。それぞれが連携しながら重層的な取組を行うことによって更に効果が発揮されていくことを御期待したいと思います。

 次に、昨年は大変な猛暑でございまして、リンゴに限らずいろいろな、水田、米も含めて、いわゆる高温障害というものがあったわけでございます。リンゴも、特にわせの「つがる」だとか、九月ぐらいから収穫されると、いわゆる日焼け状態があったりで、輸出に限らず国内でも、いわゆる贈答用のそういう見栄えがいい、そういったのがなかなか割合として下がったというような経緯もあったわけでございます。

 リンゴに限らずではあるんですが、この高温障害が昨年あった、見受けられた、こういったことを含めて、今後、このリンゴ、生産に関してどのような取組を進めていくのか、お伺いいたします。

    〔山本(有)主査代理退席、主査着席〕

平形政府参考人 お答えいたします。

 昨年七月以降に発生いたしました、例年にない高温による日焼けによりまして、リンゴの果実が出荷できないような被害が発生しております。特に、委員の御指摘のとおり、わせ品種の「つがる」では、対前年で三割出荷量が減少しました。その要因の一つとして、このような高温障害があったというふうに考えております。

 このような日焼けの対策といたしましては、主産県では、適期の収穫などの技術指導が行われてきたところでございます。

 ただ、昨年のような高温の影響というのは今後とも発生すると考えられますので、農林水産省では、一つは、令和五年の補正予算を使いまして、作目、リンゴに限りませんけれども、高温環境に適応した栽培体系への転換に向けた実証への支援ということで、高温対策の栽培体系転換支援を措置して、現在、各県から、この要望の調査中でございます。また、令和六年度当初予算案におきまして、直射日光を遮る遮光ネットの設置、また、この遮光ネットが設置しやすいように樹高の低い省力樹形への改植を行います、果樹農業生産力増強総合対策を計上しているところでございます。

 引き続き、産地における高温環境への対応に向けた取組を促してまいりたいというふうに考えております。

木村分科員 ありがとうございます。

 補正予算で措置されたということ、私も以前に説明をいただいて承知をいたしておるところでございます。今後、そういったところ、ある意味、恒常的な取組も、実証的な部分も含めて必要になろうかと思いますので、できますれば、毎年度、今後、場合によっては当初予算において所要の、ここの部分の予算の確保も前向きに検討していただくことも必要なのかなというふうにも考えております。

 三つ目、最後でございますが、リンゴ対策、こういったところを今御説明いただいたわけでございますが、こういう猛暑が今年以降も恒常的に、かなり長いスパンで続いていく、そういう可能性も十分あると思われます。そういった想定に立ちますと、そもそも、中長期的な観点から、リンゴの栽培する品種そのものの改良あるいは開発、こういったことも積極的に進めていく必要があろうかと思います。これは、自治体のいろいろな担当部署あるいは研究機関に限らず、国も連携しながら関わっていただくべきことなのかなというふうにも考えております。

 これについての所見をお伺いいたします。

川合政府参考人 お答えいたします。

 気候変動に伴う夏季の気温上昇の影響、特に夜も気温が下がらないということもありまして、リンゴでは着色不良の問題が非常に顕在化しております。

 このため、農研機構におきましては、高温でも軟化しにくくて着色に優れる「紅みのり」というものを開発しております。また、青森県の方では、夏場の気温が高い年でもよく着色する「紅はつみ」というものを開発しています。

 品種開発には、委員御存じのとおり、非常に果樹については時間を要するため、中長期的な視点に立ちまして、温暖化に対応した品種開発を今後とも都道府県などと連携しながらしっかり進めてまいりたいと考えております。

木村分科員 ありがとうございます。

 以上、リンゴの関係のお尋ねであったわけでございますが、日本全体の、これは水産も含めて、農林水産業全般に関わることになろうかと思いますが、今後、本当に温暖化、猛暑が続いていくということを、かなり強い覚悟を持って、私たち全国民がある意味意識をしながら対応していかなきゃならないかな、こんなふうにも思っております。

 桃なんかも、私の記憶だと、私の隣の秋田県の北部の鹿角市とかが北限だというふうに言われてきたというふうにも記憶しておりますが、実際は、私の地元の津軽平野でも、平川市というところが、桃を、一つのブランド化ということを目指して、大変、栽培も拡大、販路拡大に今努めておるところでございます。

 そうしたことを、一例を取ってみても、この先数十年あるいは百年、こういった長い目で見た場合に、日本全体の農作物の、それぞれの地域で今まで取れていた作物、その適地といいますか、そこが大きく塗り替わっていくということも十分予想、想定がされるわけでございます。これは、気象観測を所管する気象庁とか、いろいろ連携しながら、いろいろな研究なり重ねていく必要もあろうかと思いますが、こうしたところ、中長期的な、日本全体を俯瞰した場合に立っての農作物のこういったことについて、現状で、農水省としての問題意識はどのように持っているのかを伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農業は気候変動による影響を受けやすく、今後も、温暖化による農作物の生育障害ですとか、あるいは品質の低下、栽培適地の変化などの発生が予想されるところでございます。これは農業に限らないところなんですけれども。

 このような状況の下で、農林水産省といたしましては、将来の影響予測を踏まえた気候変動への計画的な適応策というものを講じていくために、平成二十七年なんですけれども、農林水産省気候変動適応計画というものを策定いたしました。以降、随時改定を行ってきております。

 この中では、一つは、気候変動による栽培適地の分布の予想、木村先生おっしゃるとおり、今後、温暖化が進んでいくと、今の栽培適地が変わってくる可能性がございますので、そういった分布の予想をお示しするとともに、亜熱帯ですとか熱帯作物の新規導入ですとか、更なる高温耐性品種それから適応技術などの開発、普及、こういったものを含めて、当面十年間に必要な取組を整理してお示しをしているところでございます。

 木村先生、今委員おっしゃられた中で青森県の桃の話がございましたけれども、青森県の桃は、平成十九年に九十一・四ヘクタールだったものが、平成三十年には百二十二ヘクタールまで実は拡大してきておりまして、一つのブランドになっている地域もございます。また、例えば愛媛県の場合、南の作物というふうに考えられていましたアボカドを導入をしたり、あと、ブラッドオレンジといって、これもかなり南の方のかんきつなんですけれども、こういったものを導入する、そういう動きも見られているところでございます。

 今後とも、将来の影響予測等を踏まえた計画的な適応策が講じられるように、農林水産省としても産地の後押しをしてまいりたいというふうに考えております。

木村分科員 ありがとうございます。

 本当に、そういう、かつてはこれまで予想し得なかった、私の北国から見れば南国でのそういうのを将来栽培するような、そんな時代がやってくるのかもしれません。それは農家の皆さん方も、そういうときはそういう、それなりの覚悟もある意味必要なのかな、いい意味での開き直りが必要な時代がやってくるのかなというふうにも思います。これは、みんなそれぞれが、我々、問題意識を共有しながら、中長期的なスパンで議論を交わしながら、いろいろな施策展開を図っていく必要があるのかなというふうにも考えております。

 三つ目の柱でございます。いわゆるスマート農業についてでございます。

 まず、これはもう数年、十年近く前からいろいろな取組が行われているというふうに承知をいたしておるわけでございます。日々これは、技術の進化とともに、また、政策、いろいろな支援策等も、その進化に合わせて政策も予算も連動して、いろいろな組立てを農水省の方でもやっておられるということに対しては、改めて敬意を表したいと思います。

 そこで、まず、来年度予算の主な内容、事業等についてお伺いいたします。

川合政府参考人 お答えいたします。

 スマート農業技術の活用につきましては、これまでの実証事業なんかを踏まえまして、令和五年度補正予算及び令和六年度予算概算決定におきまして、まず一点目としまして、スマート農業技術の開発、実用化、農研機構の機能強化、スタートアップの支援、二つ目としましてスマート農業技術に適した品種の開発、三点目としましてスマート農業機械の導入、四点目としましてサービス事業体の育成、五点目としまして通信環境を含めた基盤整備、六点目としまして、そういったものを扱える、あるいはそういったものを使いたいと感じられる人材育成の強化などに必要な予算を計上したところでございます。

木村分科員 ありがとうございます。

 そもそも、スマート農業を何のために促進、導入していくのか。これは、大きいところは、やはり担い手の減少だとか、また、生産者、農家の皆さんの高齢化だとか、いろいろな要因が背景としてあろうかと思います。それを一助として、大きな柱ということで、鋭意いろいろな展開がなされているというふうに思っております。

 私も、二、三年前に、地元の水田で、ドローンを活用して、農水省の補助金を採択を受けながらやっている現場も、ドローンも操作をしながら現場を体感させていただいたところでございます。

 そこで、先ほど申し上げたとおり、更に促進、展開していく必要があるわけでございます。今後このスマート農業を更に促進、加速化させていくためにどのような取組をしていくのかについてお伺いいたします。

川合政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、スマート農業技術は、人口減少下におきましても生産水準を維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するために非常に重要でございます。これまでに、農林水産省では、議員地元の青森県も含め、全国二百十七地区でスマート農業の実証プロジェクトを推進してまいりました。

 その結果、作業の省力化、あるいは労力の軽減など一定の効果がある一方で、課題もあります。果樹や野菜などの収穫、これを人手に頼っている作物のスマート農業技術の開発が不十分な領域がある、この開発を促進する必要がある。二点目としましては、スマート農機等の導入コストが非常に高く、また、それを扱える人材が不足している。三点目としましては、従来の栽培方式にスマート農業技術をそのまま導入しても、その効果が十分に発揮されないといった課題が明らかとなってまいりました。

 このため、令和五年十二月に開催されました食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で決定されました「「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づく具体的な施策の内容」に基づきまして、一、国が主導で実装まで想定した重点開発目標を明確にした上で、これに沿って研究開発などに取り組むスタートアップなどの事業者に対する農研機構の施設供用などを通じた産学官連携の強化により研究開発などを促進する、二点目としまして、スマート農業技術の活用を支援するサービス事業体などと連携しながら、スマート農業技術に適合した栽培体系の見直しなどの生産方式の転換を促すこととしまして、これらを税制、金融などにより一体的に支援できるよう、今国会へ関連法案を提出するべく検討を進めてまいります。

木村分科員 ありがとうございます。

 いろいろな機器があるわけでございますけれども、特にこれから、いわゆるAI的な、例えばそういった要素が更に加わることによって、いろいろな設備が更に精緻化して、また高度化していくことも期待できる部分があろうかと思います。

 そういったところを、いろいろなメーカー等とも連携をしながら、それぞれ、そういったことを情報共有をしながら、農家の皆さん、生産者の皆さんがやはりそこの、今答弁のあったとおり、技術、それを使えるということを、習得するということももちろん大事なので、そういったソフト面のサポート、これは基本的には自治体とか出先の方々とか、あるいは各生産団体等が担うべきものだとは思うんですが、全体を見ながら、国の方でもそういったところも目配りをしながら、いろいろな、あらゆる分野、そういったところが課題として克服されて、積極的に、スマート農業が全国に隙間なく普及して、実効性を持たせたそういう我が国のスマート農業が推進されるということを期待して、ちょっと時間は早いですが、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

伊東主査 これにて木村次郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田真次君。

吉田(真)分科員 自由民主党の吉田真次でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。今日、私、最後の質問者ということでございます。本当に皆様、お疲れのところ恐縮ではありますけれども、三十分おつき合いをいただければ、そのように思っております。

 この度はまず、食料・農業・農村基本法の改正についてお伺いをしたいというふうに思います。

 食というのは、これは人間の根源であります。私は幼い頃に、これは祖母に、衣食住という言葉があるけれども、着るものと住むところは人に見えるのでみんなお金をかけるけれども、ただ、最も大切なのは人に見えない食なんだ、だから、食べるものにお金をかけて、食べるものを大切にしなさい、こういうお教えを受けて育ってまいりました。また、一粒のお米には七人の神様がいて、一粒一粒に万人の力が加わっているということから、お米は非常に大事だということで、私も今、娘が二人おりますけれども、お米とか野菜をおいしくないと言うと、私はこれは叱ります。おいしいと言ってもいいんですけれども、そうでなかったら黙って食べなさい、こういうことを教えているところでございます。

 農は国の基という言葉がありますが、であるからこそ、やはり本法案は、まさに日本の農業の在り方を示す大変重要な法案であるというふうに認識をしております。まずは、食料・農業・農村基本法の改正の趣旨と目的、そして、社会経済状況の変化に鑑み、これに新たに加えられる観点、こうしたものも含めて御答弁をお願いをしたいと思います。

坂本国務大臣 世界で深刻な食料リスクというのが顕在化をしてまいりました。一つは、気候変動によります高温障害あるいは渇水、こういったことから食料生産が非常に不安定化をしてまいりました。もう一つは、世界的な人口増加、爆発的な人口増加、これはアフリカを中心でありますけれども、と同時に、中国やインドが経済成長をしてきたということで、食料の争奪が激化をいたしております。そういう中で、世界と我が国の食をめぐる情勢が大きく変化をしてきたということで、このような情勢の変化を踏まえて、基本法を時代にふさわしいものにしなければいけないということで、今回の改正というものに至ったところであります。

 具体的には、食料安全保障の抜本的な強化というものに取り組みます。一つは、輸入リスクの増大に対しまして、輸入国の多極化なども含めて、食料の安定供給を確保するため、平時からの食料安全保障の対策を強化をいたします。それから、これまでは、総量として必要な食料が確保できれば、それは食料の安全保障だというような考え方でありましたけれども、近年は、中山間地で高齢化して、そこにやはり買物難民の方がいらっしゃる、あるいは非常に経済格差が出てきている、そういうことで、国民一人一人にやはり食品のアクセスを充実させなければいけないということで、国民一人一人の食料安全保障の確保、こういったものの対策をしてまいります。

 そしてもう一つは、やはり環境と調和の取れた農業です。これまでは、農業といえば、それはそのまま多面的機能が当然発揮される、環境にいいということでありましたけれども、やはり、地球の温暖化、生物多様性等を考えた場合に、農業がどこかの部分で地球に負荷をかけているということも十分考えられますので、環境と調和を図っていく農業をしなければならない。

 加えて、人口減少下における農村のコミュニティーを維持をしましょう、そして、スマート農業を展開することによって担い手の減少をカバーする。スマート農業を展開するためには農地の集約化が必要ですということで、農地の集約化とスマート農業の技術の導入を図ることで、生産性の向上を図るというような考え方であります。

 ですから、そういうことを考えた場合に、現在、農業政策が大きな転換点に立っているというのは事実でございますので、この事実をしっかり受け止めて、自覚を持って、食料・農業・農村基本法の改正案の成立に向けて全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

吉田(真)分科員 ありがとうございました。

 今、食料安全保障、それから環境と調和の取れた農業、あるいは持続的な発展、それから農村の振興という、大きく分けてこの四つの観点から、この度の法改正、大きな転換点であるということで大臣から御答弁をいただきました。

 この中で、農業がやはりどこかで環境に負荷をかけているのではないかという観点というのは、私はこれは非常に大切なんだろうというふうに思っています。やはり人間が行う営みというのは少なからずそういう側面がある、そこに着目をして、この度の基本法については、その観点も盛り込んで、持続可能な農業をしっかりみんなで築き上げていこうというところでございますので、この法案、成立をした後には、しっかりこれにのっとって我が国の農業を守っていっていただきたいということを考えているところでございます。

 そうした状況の中で、今ほとんど全てを輸入に頼っている作物があるというふうに思いますけれども、そうした作物の場合は、例えて言うなら、水道の蛇口を閉められてしまったら水が出なくなるというように、外的な要因、各地の紛争であったり、あるいはエネルギーの高騰、それに伴って起こることではあると思うんですけれども、そうした外的な要因によってそれらが入ってこなくなるということで、たちまち困窮をしてしまうという危険性もあるというのは事実だろうというふうに思います。

 そうしたことにならないためにも、食料安全保障の観点というのは極めて重要でありますし、なおのこと、今、高齢化が進んできている中で後継者不足にどのように対応していくのかということ、あるいは農業法人の経営基盤の強化をどのように図っていくのかということ、それから御答弁にもありましたけれども、農地のやはり適正な利用、管理、こうした持続的な発展を目指す上で重要になってくるというところでございます。何よりも、農作物は、やはり可能な限り我々は国産のものをしっかりと食べていかなければいけない、そういう国民の意識も大切なんだろう、そういうふうに思っています。

 そうした状況がある中で、農業が抱える問題というのは、そうはいっても、今ほど申し上げたことだけではなくて、やはり多くあるんだろうというふうに思います。その中で私が一つ思っているのが、やはり有害鳥獣の被害なんだろうと認識をしているところであります。

 私の地元は、夜になると、人はもちろんですけれども、車の通りも少なくなってまいります。そうした中で、山から鹿やイノシシや猿が里に下りてきて、農作物を食べたり、田畑を荒らしたりして、大きな被害を農家の方々が受けているという状況であります。

 一生懸命育てて、そろそろ収穫をしてやっと出荷をしようかとなった段階で、そうした被害に遭う。特に猿なんかは、リンゴでも梨でもそうなんですが、取って一口かじって投げ捨てて、また次のを取ってと、そういうふうなこと、大きな被害をもたらすということで、作ってもそうやって有害鳥獣の被害に遭うということで、特に高齢の農家の方々は、これだったらもうやめた方がいいんじゃないかというふうに営農意欲を失ってしまうということ、私もよくその声をお聞きをいたします。

 ですけれども、そうなってしまうと、私たちの命をつなぐ食というものが確保ができなくなってしまいます。生産者がいなくなるということであれば、大前提としての食料安全保障も極めて難しくなってくるのではないかというふうに思っております。

 そうした対策については、もちろん、わなとか猟銃による捕獲、あるいは防護柵で被害を防止をするとか、休耕地の草刈りをすることで動物の隠れる場所をなくすということの対応を私の地元の皆様も行っているところではあるんですけれども、やはり猟友会の方々の高齢化とか、広大な農地の面積をどのように管理をしていくのか、大変難しい問題があるということがあって、こうした対策にも限界があるというのは事実であるんだろうと思います。また、近年は、中山間地域だけではなくて、市街地にも鳥獣が現れて、人への被害が発生をしてしまうというケースもあります。

 農家を守る、あるいは食を守る、そうしたことからも有害鳥獣対策というのは必須であり、これからもっともっと力を入れていっていく問題なんだろうと私は認識をしておりますが、政府としては現在この問題にどのような対応をしておられるのか、御答弁をお願いいたします。

長井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、野生鳥獣による農作物被害は全国の農村において深刻な課題であると認識しているところであります。

 鳥獣被害を軽減するためには、侵入防止柵の整備等による侵入防止対策や緩衝帯整備などの生息環境管理に加えまして、有害鳥獣の捕獲による個体群の管理の取組が重要であり、農林水産省では、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、地域ぐるみで行う取組に対して支援を行っているところであります。

 令和五年度補正予算におきましては、全国で見ますと生息域が拡大しております鹿の集中的な捕獲への支援を措置したほか、六年度当初予算におきましても、鹿やイノシシ、猿などの捕獲活動経費への支援を含めまして、九十九億円を計上しているところであります。

 農林水産省といたしましては、引き続き、有害鳥獣の捕獲を含めまして、鳥獣被害の軽減に向けた取組を推進してまいります。

吉田(真)分科員 今御答弁をいただきましたように、防護柵、それから個体の管理の面で生態調査というのも非常に重要なんだろうというふうに思っております。

 私も、ある大学の先生にお聞きをしたところ、ドングリとか、そうしたものが取れた次の次の年にはやはりイノシシが増えてしまうというような、そうしたサイクルもあるということもお聞きをしたところでありますし、地域ぐるみでみんなで協力をして有害鳥獣を防ごうという方々への支援、これはもっともっと強化をしていただきたいというふうに思います。

 何よりも防護柵で、私の地元もそうですが、何か柵の中で人間が生活をしているような状況に今なってきているところでありますし、その柵で侵入は防げても、結局それだけでは個体数が減らないという状況がある中で、やはり今御答弁にありました捕獲と防護というところの捕獲というところに力を入れて、この問題については引き続き取り組んでいただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。

 もちろん、そうした中で、先ほど木村先生からの質問にもありましたように、最新の先端技術を駆使をしたスマート農業、こうしたものの推進も是非行っていかなければならないというふうに思いますし、また、高収益作物への転換、こうしたチャレンジを応援をするとか、あるいは、付加価値をつける仕組みに対する支援、こういうことも必要なんだろうというふうに考えているところでございます。

 ただ、これは多くの方から御指摘はあったと思いますが、いずれにしても、スマート農業の導入にしても、やはり初期費用がかなりかかる、多くかかるというところがネックであります。これが事実。

 そうしたことがある中で、いかにして支援をしていくか。スマート農業の活用を技術的に支援をしていく民間の事業者もおられるということでありますので、その点については、そういう事業者への支援も含めて、それを使う農業者あるいは農業法人の皆様方への支援も含めて、官民の連携を併せて、日本の農業を守って、そして発展をさせていく。この取組を政府としても引き続き更に力を入れて行っていっていただきますように、お願いを申し上げるところでございます。

 次に、漁業の振興についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 これも私の住んでいるところの話なんですけれども、私の家は近くに田畑があって中山間地域でありますが、ただ、玄関を開けると三十秒で海に飛び込めるような、私は漁村にも住んでいる人間でございます。ですから、農業と同様、漁業というものも地域の大切な産業でありまして、幼い頃から海を身近に感じて育ってきた人間でもございます。

 当時は、漁港には船がたくさんあって、多くの漁師の方が浜で仕事をされていて、私が学校から帰ってその浜に遊びに行くと、捕れた新鮮な魚を、おまえ、これを持って帰れということでいただくこともたくさんあったということを記憶をしています。本当に活気にあふれるような港、浜であったな、こういうところなんですけれども。

 しかし、そうして昔は栄えていた港も、年々船が少なくなって、漁業あるいは水産業そのものの活気がなくなっていってしまっている。漁師さんも、いわゆる年金漁師の方々が、もううちの漁港は年金漁師の方々ばかりでありますし、ニューフィッシャー制度などで若い漁業者の方も就業はしていただいているんですけれども、その数は僅かというような状況であって、漁業の厳しさというものを本当に目の当たりにしているところでございます。

 だからこそ、この日本の漁業を元気にしていきたいという気持ちを持っているところであるんですけれども。そうした思いは持っているものの、やはり水産業を取り巻く環境というのは厳しいという中で、担い手の不足、あるいは漁師さんにおいても高齢化が進んでいる中で、我が国の水産業の就業者をめぐる動向がどうなっているのか、この点についてのまず認識を御答弁をお願いをいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 漁業就業者につきましては令和四年で十二・三万人ということでございまして、平均年齢が五十六・三歳、また、新規就業者数につきましては、近年、約千七百人程度で推移をしているという状況でございます。

 こうした中で、漁業就業者の減少も進んでおりますので、今後、若い世代を中心に、将来にわたって我が国の漁業を支える人材の就業を促していくということが重要になっているという状況でございます。

吉田(真)分科員 今お話がございました。私の周りにも、やはり親御さんが自分の子供に漁師を継がせたいかというと、もうこれでは食べていけないから、おまえはもう漁師にならなくていいというふうな声をかけられる方もいらっしゃるというところでありますけれども、そうした状況の中で、今、日本の水産業の中で、漁業者の平均所得というのは大体幾らぐらいになるというふうに把握をされているんでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 これは令和三年の数字となりますけれども、漁業者一人当たりの生産漁業所得につきましては、五百三十二万円というふうになっております。

吉田(真)分科員 一人当たり平均五百三十二万円ということで、あくまでもこれは平均でございますから、もちろん、すごく高い方もおられれば、そうでない方もいらっしゃるということでありますので、でき得れば、いわゆる中央値というような形でしっかり把握ができる数字があれば、また改めて、後日でもいいので教えていただきたいな、そのように思います。

 そうした、今、漁業を取り巻く環境も、捕れる魚とか、その季節が変わってきているという声もよく聞きます。昔はこの時期にこういうものは捕れなかったのに今はこうなっているとか、そうした環境に起因する事象、それを始め、先ほど、担い手不足、なかなか若い人が新規に漁業に従事をしていただけないというところも含めて、漁業の問題点というのも挙げ出したら切りがない、枚挙にいとまがない、こういうふうに思っているところでありますけれども、今認識をされている我が国の漁業における喫緊の課題、これは一番大きな問題ではないかというようなところがありましたらその認識をいただきたいということと、それから、それらに対してどのような対策を取っているのか、併せてお願いをしたいと思います。

森政府参考人 漁業関係、日本の水産業をめぐる様々なチャレンジがあるわけでございます。全体的な環境変化の中で、資源の、捕れる魚が変わってきている、あるいは資源が変動している、あるいは不漁が生じているというふうなことでございますとか、例えば、先ほどの担い手の確保が非常に重要になっているという点。

 さらに、特に近年の話で申し上げますと、経営コストが非常に上がっている。特に漁業におきましては、燃油費の割合が高いということでございますので、こうした燃油高騰に対しましては、漁業者と国で基金を設けまして、影響緩和のための補填金を交付をしているということでございます。これにつきましては、令和五年補正予算で三百六十六億円を積み増しておりますし、令和六年度当初予算でも十八億円を計上しているという状況でございます。

吉田(真)分科員 そうですね、今お話があったやはり燃油の高騰、これは漁業者に対して大きな痛手となっているというところであると思います。

 船を出さなければ、釣れるか釣れないか、魚が捕れるか捕れないかが分からないという状況でありますけれども、船を出さなければいけない、今、油が高いけれども沖に出ようということで、漁師さんもそうしたことがありながら頑張って漁業を行っている、操業しているわけでありますから、そこへ対する支援というのは今現在行っていただいているというふうに思いますけれども、これが途切れることがないようにお願いをしたいというのがまず一つでございます。

 それから、漁業の特有のと言ってもいいと思うんですけれども、やはり魚価ですね、魚の価格。大体、芸術品にしろ何にしろ、自分が作ったものには自分で値段をつけて売るというのが一般的だと思うんですけれども、事この漁業に関しては、基本的には魚に対して自分が値段をつけられないという、これも大きな問題なんだろうというふうに思っております。

 安ければいいということで、今盛んに言われておりますけれども、コストカット型経済からの脱却というところもございますから、本当にこんなにおいしいもので安心して食べられるのであれば、このぐらいの値段を払ってもしっかりとみんなで食べようというような、国民的な意識も変えていかなければいけない、こういうふうに考えているところでございます。

 それから、適切な資源管理、そうした中でいうと、養殖業を成長産業にしていかなければいけない、こういうところ。陸上養殖も含め、いろいろなところで取組をされているところでもございますし、育てる漁業にも力を入れていっていただきたい、こういうふうにも考えています。

 しかしながら、近年のこの温暖化によって、環境の変化ということで、いそ焼けというのがやはり大きな問題になっているというところでございます。一定程度まで育てた種苗を沿岸に放流をしても、いそ焼けによってなかなか定着をしないという事態も発生をしているところでございます。そもそも、いそ焼けという言葉自体、余りなじみがない方もおられるというふうに思いますけれども、この対策をしっかり行わないと漁業の将来はないというふうに私は思っているところでございます。

 まずは、いそ焼けというのがどのようなものであって、それが現在、我が国の漁業にどのような影響を与えているのか、このことについての御答弁をお願いをいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 全国の多くの沿岸部におきまして、現在、海水温の上昇による影響でございますとか、ウニ、アイゴなどの植食性動物によります食害による影響などによりまして、藻場が著しく衰退、消失する、いわゆるいそ焼けが生じているところでございます。

 藻場は、豊かな生態系を育む場でございまして、水産生物の産卵場や幼稚仔魚の隠れ場、餌場としての役割を持っております。水産資源にとって大変重要な場でございます。

 いそ焼けによりましてこういった藻場の機能が失われるということにつきましては、漁獲量の減少など、沿岸漁業の生産にも影響を与えているというふうに認識をしております。

吉田(真)分科員 ありがとうございます。

 今御答弁があったとおり、やはり藻場を再生をしていくということが、これは長い目で見たら、やはり日本の漁業をしっかり守っていくことにもつながると私は思っています。

 ただ、藻場の再生には非常に時間がかかるということでもございますし、海藻の定着を含めてあらゆる実験をしたり、あるいは環境調査をしたり、そうしたことと併せて、ガンガゼ、私の地元ではクロガゼといいますけれども、そうしたものの駆除も行っていかなければなりません。そうしたあらゆることについての支援も必要であります。

 藻場の再生に向けて、我が国ではどのような取組を行っておられるんでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、地域が取り組む藻場の保全、創造というものを推進するために、一つはハード対策、具体的には、水産基盤整備事業によりまして、海藻が着生しやすい基質、ブロック等でございますが、これを設置をするといったようなハード対策、それからソフト対策ということで、水産多面的機能発揮対策事業によりまして、食害生物の駆除ですとか、母藻の設置などを支援をしているというところでございます。

 また、漁業者自らが主体となって藻場保全を計画、実行できるようにということで、いそ焼け対策の手法ですとか全国の取組事例をまとめましたガイドラインを作成いたしますとともに、地方公共団体、漁協、試験研究機関等が参画をいたします磯焼け対策全国協議会を毎年開催をし、情報や知見の共有を図っているという状況でございます。

吉田(真)分科員 ありがとうございます。

 そうしたガイドラインの策定も含めて、我が国がノウハウとか実績を藻場の再生の分野で重ねるということが実現ができると、世界でも同じような問題に悩んでいるところに対して、我が国の技術も支援ができるということが可能になってくるんだろうというふうに思いますし、海洋環境の面からも、このことについては日本の強みを発揮ができるように頑張っていただきたい、そのように思っております。

 そうした包括的な海洋環境の整備を行った上で、漁業の振興というものを考えたときには、今注目をされて力を入れていっていただいているのは、やはり海業の推進でございます。

 この海業、海や漁村に関する地域資源の価値や魅力を活用して、所得の向上あるいは雇用の創出、こうしたものを図っていくということでございますけれども、漁業そのものとはまた違った形で、海業の推進についても課題があるというふうに思っておりますけれども、海業の推進における具体的な課題、その対策について御答弁をお願いをいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 漁村は、新鮮な水産物、漁業体験、独自の風景や歴史など、大きなポテンシャルを有しているというふうに認識しております。農林水産省では、こうした地域資源を活用する事業を海業と位置づけまして、その全国展開を通じて、水産物の消費増進、交流促進等につなげ、さらに、漁業地域の所得と雇用機会の確保を図るというような取組を通じて、漁村の持続的な発展を目指すということにしておるところでございます。

 例えば、課題ということでございますが、これまで、事業者が漁港においてこうした海業の取組を実施しようとする場合に、行政財産である漁港施設を活用する場合に、本来の用途以外での貸付けができないというようなことですとか、水面で事業を行う場合に、一時的な占用許可を受けるしかなく、長期的な投資が難しいといったような課題があったところでございます。

 こうした課題を踏まえまして、昨年の通常国会におきまして漁港漁場整備法改正をいたしました。具体的には、漁港施設等活用事業制度というものを創設をしまして、事業者に対して、漁港施設の長期貸付けや漁港水面施設運営権など、長期安定的に事業を実施する権利や地位を付与するといったような措置を講じたところでありますし、また、漁港管理者が漁業者などとの調整を図りながら、こうした海業、漁港施設を活用した取組を推進する計画を策定するといったような仕組みも盛り込んだところでございます。

 引き続き、こうした海業の取組を浸透させるために、地方公共団体、漁業者等の理解促進、あるいは連携の下で取り組んでいきたいと考えております。

吉田(真)分科員 ありがとうございます。

 やはり、まさに四方を海に開かれた島国である我が国にとって、この魅力を十分に生かすということ、それが漁業の振興にもつながる、そのためのこの海業の推進なんだろうというふうに私は思っているところでございます。

 私の地元、私の政治の師でもある安倍総理が初めて選挙に出られたときに、あぜ道で農家のおじいさんがぎゅっと手を握って、晋三さん、信じちょるから農家の人を守っておくれよというふうに声をかけたということでございました。その声に送り出されて自分は国会に出たんだと。ごつごつした手だった、そのごつごつした手で農業を支え、そして地域を支えてこられたと。

 これは、私は漁業でも同じなんだろうというふうに思っております。現場で頑張る農家や、そして漁業者、漁師の皆さん方が、自然とともに日々の仕事に取り組まれている、こういうところでございます。そうした方々の所得が上がって、本当に真に報われる農林水産行政となるように、坂本大臣の下に、しっかり我が国の第一次産業を守って発展をさせていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊東主査 これにて吉田真次君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十八日水曜日午前九時より開会し、引き続き農林水産省及び環境省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十三分散会


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