衆議院

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第2号 令和4年1月19日(水曜日)

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令和四年一月十九日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  令和四年一月十九日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(細田博之君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 立憲民主党の泉健太です。(拍手)

 まず、新型コロナウイルスに罹患をした患者の皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、奮闘を続けておられる医療従事者、介護や保育、教育、公共交通、行政など社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーの皆様に心から感謝を申し上げます。

 また、さきのトンガ沖の噴火については、日本の漁船や養殖施設などの被害復旧とともに、トンガへの迅速な支援を行うよう提案させていただきます。

 こうして、感染症や災害、事故や失業のように、人には、どんなに平穏な日常生活を送っていても、誰にでも突然降りかかってくるリスクが存在します。

 年末、私は、仕事や住まいを失った方の一時宿泊支援や相談事業を行っている団体を訪問し、実際にコロナで仕事が激減し、家賃を払えず家を失った方々から直接話を聞きました。何とかしたい、でも、どうしようもなくて、その声が胸に刺さりました。

 成長も賃上げも低位なままで、格差は広がり、将来が見通せない、そんな日本ではなく、人と地球に配慮した新たな経済成長にも挑戦し、同時に、富を国民全体に再分配し、社会の各所に手厚いセーフティーネットを構築し、誰もが、生きていてよかった、ありがたい、頑張ろうと再起できる日本にしようではありませんか。

 新自由主義的な過度な競争や効率化で多くの人をリスクに落とすのではなく、リスクに遭遇した人を自己責任だと孤立に追い込むのではなく、私たち立憲民主党は、誰一人取り残すことなく一人一人の再起を応援する、そんな普通の安心が得られる社会を目指します。

 さて、オミクロン株が急拡大をしています。国民の皆様、マスク、手洗い、換気、改めて身近な感染防止策の徹底をお願いいたします。

 オミクロン株は重症化率は低くとも感染力が高く、感染者と濃厚接触者の急拡大で、医療機関、高齢者施設、交通、行政などの業務の継続に支障が生じる可能性があります。感染を抑え医療と社会を守る、自宅死を阻止する、立憲民主党はこの立場で質問をいたします。

 まず、政府の対応策を急ぎオミクロン前提に改善すべきです。

 例えば、コロナ対策の基本文書である取組の全体像の二回目接種者の扱い、そして蔓延防止等重点措置や緊急事態宣言の発令要件も、オミクロン以前の感染力を想定しています。現に、各都道府県も、これまでの基準で蔓延防止等重点措置を出すべきかどうか、この判断が非常に難しくなっております。総理、これらの見直しを速やかに行うべきではないでしょうか。見解をお聞かせください。

 立憲民主党は、当初から、官邸の司令塔機能の強化を提案してまいりました。しかし、総理は、悠長に、六月をめどにと演説をいたしました。遅過ぎて驚いております。なぜ今ではなく六月からなのか、今必要なものではないのか、六月からの司令塔強化策とは何なのか、お答えください。

 加えて問題なのは、感染症法改正案提出の見送りです。

 立憲民主党は、既に国会に、緊急事態宣言下で知事から医療機関に設備、人員の配置の変更等の要請、指示ができることを規定した特措法改正案を提出させていただいています。自民党も総選挙では法改正を行うと公約し、総理も、昨年、医療資源確保のための法改正と明言していましたが、なぜ感染症法改正案の提出を見送るのか、これも驚きです。なぜ後回しにするのか、すぐに議論するべきではないでしょうか。お答えください。

 ワクチンの三回目接種は更なる前倒しが求められます。今後、ファイザー、モデルナの供給見通しの更なる前倒しについてお答えください。

 そして、感染初期に有効な経口薬、モルヌピラビルを自宅療養者に配送する人材が今足りておりません。当日配送、当日投与を達成するべく、広く宅配業やボランティアの活用も含め、柔軟な対応を求めたいと思います。

 コロナ禍は、予想を上回り長期化しております。多くの事業者の経営環境が激変し、今後の見通しも不透明です。無利子無担保融資の返済猶予、また来年十月からのインボイス制度の延期、これを行うべきではないでしょうか。総理の認識を伺います。

 立憲民主党は、国民の命と暮らしを守るため、今後もよりよいコロナ対策の改善提案を続けてまいります。

 さて、日本は、バブル以降、長期の混迷の中にあります。私たちは、日本が抱え続けている根深い構造的課題の解決に当たらなければなりません。この間の行き過ぎたグローバル化、富の偏在によって、国民生活や地方、そして将来世代が打撃を受けています。

 総理は新しい資本主義と演説をいたしましたが、その中身は依然不明なままではないでしょうか。来年度予算を見ても、これまでの政策の焼き直しばかりです。新自由主義の考え方が基本だったアベノミクスとの政策的な違いはどこにあるのか、具体的にお答えください。

 私たちは、持続可能な日本を実現するための三つの分配を提案いたします。

 まず一つ目は、所得の再分配。この三十年間、格差は拡大し、経済は停滞してきました。まさに、大半の国民の消費からの経済再生が必要です。

 二つ目は、地方への分配。この三十年間、地方は衰退を続けてきました。コロナでは、都市圏の過密解消も求められております。地方圏の通信や交通、教育、介護、住居環境などを格段に向上させ、地方圏の人口を増やす、地方からの再生を図るべきです。

 三つ目は、将来への分配。この三十年間、少子化傾向が変わらず、縮小再生産の不安が高まっています。今こそ、日本の将来をつくる若い世代に率直に向き合い、課題解決の糸を探るべきです。

 まず、一つ目の、所得の再分配について伺います。

 我々は、さきの総選挙でも、所得層によっては御負担をお願いする厳しい政策ではありましたが、所得税の最高税率の引上げ、また金融所得課税の強化を真正面から訴えさせていただきました。

 ですが、総理の施政方針演説には、具体的な所得再分配政策が見当たりません。どこにあるのか、教えていただけますでしょうか。

 あえて言えば、給与を増やした企業の法人税を下げる賃上げ税制でしょうか。ただ、約七割の企業は赤字経営であります。これでは法人税はゼロということでありますので、賃上げ税制の対象外となります。インセンティブも働きません。

 立憲民主党は、この点、中小企業が新たに正社員を増やした場合に、社会保険料事業主負担の軽減を提案しています。また、希望する非正規雇用の方々の正社員化を進めるための派遣法の見直しを行うべきと考えます。この二点に関する総理の見解をお願いします。正社員となることで生活の安定性が高まれば結婚や出産も考えられる、そんな社会を目指したいと思います。

 政府の賃上げ税制自体も、ボーナスや残業代を含む給与等支給額の増加が要件ですが、安定的な可処分所得の増加と、それによる消費の活性化を図るなら、基本給の増加を要件にしてはどうでしょうか。お答えください。

 最低賃金については、中小企業への公的助成とともに、段階的に引き上げ、将来的には千五百円を目指す、我々はそう考えております。総理は、早期に全国加重平均千円以上と述べていますが、時給千円でも、週五日八時間勤務で月収十六万、これではぎりぎりの生活にしかなりません。過去の政権とどこが違うのか、お答えください。

 現在、子育て、教育、医療、介護、障害者福祉など、誰もがいつかは必要とするベーシックサービスに従事する人材の賃上げは急務であります。令和二年賃金構造基本統計調査によると、全産業平均に比べて、現金給与額の月額は、保育士、介護職員が八万円程度低く、人材不足の要因となっています。

 これも、立憲民主党は、既に、ベーシックサービス従事者の賃金引上げの二法案を出しています。具体的には、介護、障害福祉従事者の月額一万円改善法、そして保育、学童クラブ従事者の月額五万円改善法を提出しております。

 こうした提案は政府にも届き、政府は、来年度予算で、介護、障害福祉職員、保育士等の賃金を三%程度、月額九千円引き上げることといたしました。しかし、この上げ幅は十分ではありません。総理、これらの職種において、全産業平均比でどこまでの賃上げを目指そうとしているのか、お答えください。

 また、政府は、介護職員等の賃上げを来年度後半から報酬改定で対応するとしています。これだと、報酬が上がると利用者負担も上がるということになります。今後引き上げる介護職員の九千円分の賃上げは利用者負担を増やさない形で行うべきと考えますが、お答えください。

 この分野では外国人材の活用も進んでおりますが、賃金や労働条件、生活相談や多文化共生施策なども充実させ、入管法も改めねば、外国人材はいずれ日本に来なくなります。こうしたことについていかがお考えでしょうか。お答えください。

 続いて、二つ目の分配、地方への分配です。地域課題について伺います。

 総理は、デジタル田園都市国家構想で、地方のデジタル化を進め、インフラをバージョンアップさせるというならば、この際、明確に、目標の一つに地方圏の人口増を掲げてはいかがでしょうか。お答えください。

 農林水産業、農山漁村は、古来より我が国の食文化、精神文化を形成し、現代においても、水源の涵養、生物多様性の確保、食料供給、輸出、地域振興などにおいて重要な役割を担っております。今後も、後継者、就業者を育成し、なりわいとして成り立つ仕組みを整えていかなくてはなりません。

 そこで、水田から畑への転換に協力した農家を支援する、水田活用の直接支払交付金について伺います。

 政府は令和四年度からの見直しを進めていますが、耕作放棄地化や土地改良区の頓挫などを懸念する声が上がっています。昨年秋に唐突に打ち出され、既に交付金を前提に来年度の種子や肥料の手配を終えてしまっているために対応できないという声もございます。本当に令和四年度から強行されるのか、お答えをいただきたいと思います。

 今、次世代を担う多くの若者が気候危機に懸念と抗議の声を上げています。

 立憲民主党は、日本が脱炭素化など気候危機対応の分野において世界を主導するとともに、国内では再生可能エネルギーの導入で地域の自立を図るべきだと考えます。自治体が、また住民や地元企業が再生可能エネルギーを生み出すことは、地域に雇用を生み、そして域内経済の活性化にもつながります。

 第六次エネルギー基本計画においては、再エネについて、主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組むとされてはいますが、例えば、住宅用太陽光発電の国内における普及率は二〇一九年で九%であって、導入件数も鈍化をしております。住宅用太陽光発電の更なる普及を制度的に後押しすべきではないでしょうか。お答えください。

 また、立憲民主党の提出法案、公共施設省エネ再エネ義務化法は、全国の公共施設の改修や新築において、省エネ、再エネ導入の義務化を図るもので、地域活性化にもつながります。この提案はいかがでしょうか。問題点があれば、是非、御指摘ください。

 三つ目の分配は、少子化対策と教育です。

 我が国の家族関係政府支出は、GDP比で一・七三%、先進国の中で最低水準となっています。ヨーロッパ諸国に比べると半分程度。総理、これは低過ぎるとは思いませんか。

 この国会では、こども家庭庁設置も議論されます。ただ、より大事なのは、必要な助けやゆとりが得られる子育て環境をつくること、具体策を進めることです。

 現在の家庭関係政府支出は少な過ぎます。総理の演説には、若者世代の所得引上げが書かれてはいましたが、具体策がありませんでした。是非、具体策を提示していただきたいと思います。

 そして、子育て支援策において、所得制限はやめるべきです。普遍主義を採用すべきです。親の所得は変動するわけです。十八歳以下の子供への十万円給付も児童手当も、子供のための支援ならば、所得制限はなくすべきです。そして、児童手当は高校卒業年次まで拡充するべきです。総理、どうお考えでしょうか。

 先ほどの子供への十万円給付では問題が起きています。御存じでしょうか。

 昨年九月以降に離婚した世帯の推計四万人の子供に、給付金が届かない事例が相次いで確認されています。なぜか。

 昨日、当事者の方、支援団体の方と直接お会いし、話を伺いました。DVが理由で、子供三人を連れて離婚。なのに、三十万は、支給決定時点で世帯主だった元世帯主の口座に振り込まれた。自治体からは、元世帯主と連絡をして受け取ってもらいたいというのが国の方針と言われたけれども、無理です。そういう声でした。

 総理、国は本当にそんな方針なのでしょうか。是非、ここは聞く力を発揮していただきたいと思います。ここを改善する。立憲民主党は、昨日、離婚世帯子供給付金支給法案を国会に提出いたしました。総理、こうした子供たちに国費で給付金を届けられるように、是非、指示をしていただけませんでしょうか。

 日本は、他の先進国に比べ、高等教育に関する家計負担が重過ぎます。人を育てなければ、国の未来はありません。日本政府は、既に、国連社会権規約を批准し、中等、高等教育を漸進的に無償化する責務を負うことを国際的にも明確にしています。総理、立憲民主党の提案する国公立大学の授業料半額化、また給付型奨学金の大幅拡充を進めるつもりがあるか、お答えください。

 これまで国会で議論となっていることについて伺います。

 文書通信交通滞在費。

 立憲民主党は、昨年の臨時国会で、日割り、差額の国庫返納、使途報告・公開、この三点セットの法案を提出し、自民党に速やかな対応を求めてまいりました。自民党から各党各会派に対し協議の呼びかけがありましたが、議論を長引かせることなく、全議員共通のルールを作り、使途を公開すべきと考えます。総理も、是非、そうした指示を党にしていただけませんでしょうか。

 続いて、森友問題で公文書改ざんを強いられ、命を絶った赤木俊夫さんに関する裁判についてです。

 国は、突如、認諾し、一億円以上の賠償金を払い、真相の究明を願う御遺族からの裁判を終結させました。

 先日、御遺族の赤木雅子さんとお会いをしました。思いは一つ、真実を知りたいでした。

 総理、なぜ認諾をされたんでしょうか。実直な公務員だった夫を、権力が精神的に追い込み、死に追いやった。でも、財務省の調査報告書では、その真相は明らかになっていないのです。遺族の問いに答えていないのです。だからこそ、真相を知るために訴訟をしたのです。認諾は、その究明を妨害しているのです。

 岸田政権の誕生の意義は、安倍政権、菅政権による文書改ざん、隠蔽、虚偽答弁の政治を清算することにあったのではないですか。総理の聞く力、謙虚さ、これはうそなのか。うそでないならば、総理、直ちに御遺族の疑問に答える真相究明を指示してください。黒塗りのファイルの全面開示を指示してください。検察が持つ全資料の開示を指示してください。

 そして、認諾の賠償金は、国民の税金からではなく、公文書改ざんを指示した人物に負担を求める、つまり求償権を行使すべきです。総理の答弁を求めます。

 総理は、日本学術会議の梶田会長と面談したものの、学術会議法に違反する任命拒否の状態が続いています。学問の自由の観点からも、学術会議の独立性、自律性が尊重されるべきです。総理、現在違法状態という認識があるのかないのか、理由も含めてお答えください。

 その他、建設統計の不正問題、また衆議院の十増十減などの論点は、この後の小川政調会長に譲りたいと思います。

 自由、民主主義、人権、法の支配を原則に、我が国は、特に、非軍事手段としての外交、また経済活動、人間の安全保障の観点からの国際貢献に重点を置くべきです。今年三月の核兵器禁止条約第一回締約国会議に、日本はオブザーバー参加をしてはどうでしょうか。総理、お答えください。

 そして、昨年十二月十八日、拉致被害者家族会前会長の飯塚繁雄さんが、妹の田口八重子さんの帰国を果たせぬまま亡くなられました。痛恨の極みです。

 総理、代々の総理が何年も施政方針演説で、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意、この言葉を、全く同じ言葉を繰り返しております。今回の岸田総理の演説もまた、一字一句同じでありました。これでは不誠実ではないでしょうか。今年中に何か行動を起こす、その決意があるのか、是非、お答えをいただきたいと思います。

 日米地位協定の見直しです。

 沖縄や岩国など、米軍基地からのオミクロン株感染拡大は、国民の命と暮らしに直結する問題です。日米地位協定第九条では、日本の検疫法が適用除外となっております。この部分を改定することにどんな不都合があるのか、是非、お答えいただきたいと思います。

 そして、検疫だけの問題ではなく、基地への立入り、環境基準、訓練承認、事故調査などは、ドイツやイタリアなど他国ではホスト国に権限がありますが、日本では全て米軍主導となっております。総理、他国並みのホスト国権限を米国に求められない理由を教えてください。

 立憲民主党は、この地位協定見直しをやるならば、是非、賛成したいと思います。是非、その協議入りを求めます。総理の見解をお答えください。

 沖縄県名護市の辺野古基地建設。

 今後の基地運用上も看過し難い軟弱地盤が判明しています。工事費も当初から大きく膨張しています。今後の更なる米海兵隊の運用見直しの可能性も考えれば、これは進めるべきではありません。それが辺野古の基地建設です。辺野古の基地建設は中止すべきです。総理の見解をお願いいたします。

 経済安全保障です。

 米中のせめぎ合いの中で、政府は、企業の公正な競争環境を確保する必要があります。米政府が日本企業に中国との取引規制を求める一方で、米国企業には個別に許可をしている、そういう不公平な扱いがないかどうか、米国国内法の域外適用によって日本企業が中国の半導体市場においてどの程度影響を受けているのか、こういったことを調査されていますでしょうか。米国には日米企業に公平な扱いをと求めるべき、これも経済安全保障だと考えますが、いかがでしょうか。

 自国民保護についてです。

 総理は、危機にさらされた海外在留邦人を輸送する自衛隊法改正案を国会提出すると演説いたしました。果たしてどのような改正案なのでしょうか。あらゆる国と地域を想定すれば、例えば台湾からの邦人輸送はどう確保していくのか、これも重要な課題となるでしょう。昨年八月のアフガンからの邦人退避については、岸防衛大臣が、自衛隊法が障害となった事実はないと発言しております。総理、その上で、何を改正するのですか。お答えいただきたいと思います。

 敵基地攻撃能力です。

 一九五六年の鳩山一郎首相の答弁に基づく必要最小限の反撃は、法理上、当然可能であると思います。また、周辺国の状況に応じた防衛能力の向上も必要です。

 ただ、立憲民主党は、国民のために、国家間の暴発を防ぎ、現実的な防衛政策の展開を目指す立場から、指摘をいたします。

 現代は、周辺国の列車や潜水艦、移動式発射台などからミサイル発射が相次ぐ時代であります。基地攻撃だけで敵国からの攻撃を防げるものではなく、また、敵基地攻撃を実行したならば、その後は全面戦争への突入も想定され、国民の命を危機にさらします。

 抑止力として機能させるには、米軍ほどの打撃力が必要になります。だから、専門家も、アメリカと日本の明確な役割分担、いわゆる日本は盾、アメリカは矛との役割分担が必要だと述べているのです。サイバーや衛星、電磁波技術などの活用、これは検討の余地があると私は思います。しかし、日本が矛を担うかどうかの議論が曖昧なまま、用語の整理もせぬまま、なし崩しに防衛予算をつぎ込むことは、防衛予算の過度な圧迫を招くだけではなく、今後の防衛政策をいびつにしてしまいます。

 総理、この敵基地攻撃能力の保有はアメリカからの要望があるのか、まずお答えください。

 そして、保有を検討するべきとしている敵基地攻撃能力とは、我が国への攻撃の着手があった場合の反撃能力を指すのか、それとも、存立危機事態、つまり集団的自衛権に基づく防衛出動時に我が国に対する攻撃着手がない場合でも他国を攻撃する能力を想定しているのか、お答えください。

 また、実際にどのような兵器が想定されるのかも具体的にお答えください。

 こうした国家安全保障戦略の改定に関する議論、これは絶対に政府・与党のみだけで決定してはなりません。国会で議論する、総理はこれを約束すべきです。答弁を求めます。

 皇室、憲法についてです。

 昨年末、天皇の退位に関する皇室典範特例法に関する附帯決議に関する有識者会議が報告書を取りまとめました。しかし、附帯決議が求めていた、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設については、何と方向性も結論も示されませんでした。

 有識者会議の設立趣旨は、附帯決議の課題をまとめることではなかったでしょうか。総理は、この報告書がその趣旨を満たした報告書だと考えておられますか。議事録の公開、議論のやり直しの必要性についてもお答えいただきたいと思います。

 立憲民主党は、党内に検討委員会を立ち上げました。有識者会議報告書を検証し、附帯決議の求めに沿った提言をまとめたいと思います。

 附帯決議では、政府から報告を受けた国会が、安定的な皇位継承を確保するための方策について、立法府の総意がまとめられるよう検討を行うとなっております。総理も、有識者会議の報告はあくまで参考、最終取りまとめは立法府に委ねられている、その認識でよろしいでしょうか。お答えください。

 憲法です。

 立憲民主党は、論憲の立場であります。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を堅持し、立憲主義を深化させる立場から、国会においても真摯に憲法議論を行ってまいります。

 その上で、総理、憲法に自衛隊を明記せねば日本の防衛に不備が生じる、緊急事態条項を書かねば国民の命は守れない、高等教育の無償化を明記せねば高等教育の充実は不可能だ、そうお考えでしょうか。お答えください。

 また、憲法改正手続において先に整備が必要な国民投票法について、まず、外国から不当な干渉を受けることがないよう、我々は、CM規制、ネット広告規制、こうした議論を優先して行ってまいりたいと考えています。

 立憲民主党は、現行憲法を評価しております。憲法の改正は、中央集権など国家権力を強大にするものであってはならない、国民の権利を奪うものであってはならない、平和構築に反するようなものであってはならないと考えております。これからも、憲法の改正が必要であるかどうか、これをしっかり議論し、国民の皆様にお示しをしていきたいと思います。

 以上、私たち立憲民主党は、国民の自由、多様性、ジェンダー平等を大切にし、そして人に優しい持続的な経済成長を目指す、この立場を訴えていきたいと思います。

 この通常国会においても、国民の生活、そして地方、将来世代、平和を守る、その立場から、現実的でバランス感覚のある政策提案を続けてまいりたいと思います。同時に、政府や提出法案に問題点があれば、鋭く指摘し、是正をしてまいります。

 衆参国会議員だけではなく、立憲民主党には、北は北海道、南は沖縄まで、全国千二百名以上の自治体議員が活動しております。国民の皆様の声を丁寧に伺い、政策を立案し、実現する活動を続けてまいります。是非、皆様の声をお寄せいただきたいと思います。

 今後も、立憲民主党は、着実に、真面目に、前向きに、皆様の声を集め、国民の幸せのために働き続ける、このことを国民の皆様にお約束申し上げ、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 泉健太議員からの御質問にお答えいたします。

 新型コロナ対策についてお尋ねがありました。

 蔓延防止等重点措置や緊急事態宣言について、オミクロン株に対しても、専門家の意見を踏まえ、現在の医療体制の逼迫度に重点を置いたレベル分類を踏まえた総合的判断という考え方は変更いたしません。

 全国で感染が拡大していますが、こうした状況も想定し、十一月の全体像に沿って、在宅、宿泊療養を含め医療提供体制の拡充を図るとともに、予防、発見から早期治療の流れの強化に先手先手で取り組んでまいりました。

 その上で、息の長い感染症対応体制の強化策として、本年六月をめどに、危機に迅速的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめます。現下の危機対応を行いつつ、これまでの対応を客観的に検証し、広く関係者と協力の上検討するためには必要な期間であると考えています。

 ワクチンについては、必要なワクチンの確保に努めつつ、高齢者への三回目接種を加速するとともに、高齢者以外の一般の方五千五百万人についても一か月前倒しし、さらに、余力のある自治体では、順次、できるだけ多く前倒しを行ってまいります。

 無利子無担保融資の返済猶予やインボイス制度についてお尋ねがありました。

 事業者の資金繰り支援として、実質無利子無担保融資を含む既存融資の返済猶予などに柔軟に対応するよう、政府として官民の金融機関に要請をしており、金融機関の条件変更の応諾率は約九九%と、多くの事業者の返済負担軽減につながっています。

 インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであり、その円滑な移行を図る観点から、軽減税率の実施から十分な経過措置を設けるとともに、令和三年度補正予算においても、会計ソフト等のITツールに加え、パソコン等のハードウェアの導入も含めて補助するなど、事業者への必要な支援を行っていきます。

 引き続き、事業者の資金繰り支援に万全を期すとともに、インボイス制度の円滑な移行に向けて、周知、広報も含めて必要な取組を丁寧に進めてまいります。

 新しい資本主義についてお尋ねがありました。

 アベノミクスは、デフレでない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大しました。岸田政権では、アベノミクスなどの成果の上に、市場、競争に全てを任せるのではなく、官と民が協働して、成長と分配の好循環を生み出していきます。市場の失敗、外部不経済を是正する仕組みを成長戦略と分配戦略の両面から資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化いたします。

 成長戦略については、デジタル化、気候変動問題への対応、経済安全保障など、世界的な潮流の中で、我が国が克服しなければならない新時代の課題をこれからの成長分野にしていくという発想で取り組み、弱点を新時代の成長のエンジンとしていきます。その際、呼び水となる予算や規制改革、新たなルール整備などについて、マーケットをつくるとともに、これらの分野における将来の市場規模を示すなど、民間の投資を促すインセンティブを与えられるよう工夫し、官と民が協働して、あるべき成長を実現してまいります。

 その上で、成長によって得た果実の分配を行うことで、成長を支える新たな需要を創出し、次の成長につなげます。新しい資本主義の大きな特徴は、分配を成長への道筋としてど真ん中に位置づけているということです。賃上げを通じた人への分配はコストではなく未来への投資であるという考え方の下、まずは国が率先して公的価格を見直して給与を引き上げ、さらに、人的資本投資強化のための施策パッケージの創設や、価格転嫁円滑化のための施策パッケージなど、賃上げに向けた環境整備を進めてまいります。

 所得の再分配や派遣法の見直し等についてお尋ねがありました。

 所得の再分配は、まずはしっかり成長を実現し、その果実を分配することで実現していくことが基本です。その観点から、人への投資の抜本的強化などを進めてまいります。

 また、所得分配率の向上に向けて、まずは国が先導して公的価格の引上げを行うとともに、賃上げ税制の拡充、価格転嫁の円滑化などを通じた民間の賃上げに向けた環境整備を行うことにより、広く国民一人一人の所得の引上げに取り組んでまいります。

 そして、分配戦略の柱として、子育て、若者世代に焦点を当て、世帯所得の引上げに向けて取り組んでまいります。全世代型社会保障構築会議において、男女が希望どおり働ける社会づくり、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、持続的な社会保障制度の構築に向け、議論を進めます。

 労働者派遣法については、これまで、同一労働同一賃金の実現など、労働者の保護に欠けることのないよう十分留意しつつ、多様な働き方を選択できるようにするため、必要な制度改正を行ってまいりました。今後とも、制度が適切に運用され、派遣労働者の待遇改善や雇用安定が図られるよう、関係者への制度周知、指導監督を徹底してまいります。

 賃上げ税制と最低賃金についてお尋ねがありました。

 賃上げ税制については、各企業の給与体系が多様になっており、様々な支給方法に対応する必要があること、また、企業の実務面も踏まえ、煩雑でない制度設計とする必要があること、基本給や賞与を含めた給与総額を対象とすることで、より多くの企業に賃上げを行っていただける制度設計とする必要があること、こうしたことから、賞与を含めた給与総額を対象としております。

 最低賃金については、これまでも全国加重平均千円とすることを目指してまいりましたが、その後も引き続き引上げに取り組むことを明確にするため、できる限り早期に全国加重平均千円以上となるよう、最低賃金の見直しに取り組むこととしたところであります。

 介護職員等の賃上げ等についてお尋ねがありました。

 介護、障害福祉職員、保育士等の今後の具体的な処遇改善の方向性については、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されるかといった観点から検討してまいります。

 介護職員の賃上げについては、継続的なものとなるよう、介護報酬において対応することとしています。介護保険制度は、保険料負担、公費負担、そして利用者負担の適切な組合せにより、国民皆で支え合うことで持続可能なものとしており、こうした枠組みの下で対応していくことが適切であると考えています。

 また、外国人の人材が安全に安心して生活できる環境を整備することが重要であり、行政・生活情報の多言語化、易しい日本語化、相談体制の整備等により、暮らしやすい地域社会づくりを着実に進めてまいります。

 デジタル田園都市国家構想についてお尋ねがありました。

 デジタル田園都市国家構想は、高齢化や過疎化など社会課題に直面する地方にこそ新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するというものです。

 本構想において、企業版ふるさと納税の活用等によるサテライトオフィスの整備や、リモートワークの推進、デジタル人材の地方での活躍等に取り組むことで、地方への大きな人の流れを生み出し、地域が抱える人口減少などの課題についてもしっかり取り組み、解決をしてまいりたいと考えます。

 そして、水田活用の直接支払交付金の見直しについてお尋ねがありました。

 主食用米の需要が毎年減少すると見込まれる中、野菜などの収益性の高い、需要のある作物への転換を一層進めていくことが必要です。

 このため、水田活用の直接支払交付金について、現場の課題を検証しつつ、今後五年間に一度も米の作付を行わない農地を対象外とする方針をお示しするなどの見直しを行ったところです。引き続き、今回の見直しの趣旨を丁寧に説明しながら、今後五年間のうちに野菜等の生産が固定化している水田の畑地化等を促し、米の需給の安定と農業者の所得向上を図ってまいります。

 住宅、建築物における省エネ、再エネ導入の推進についてお尋ねがありました。

 御指摘の住宅用太陽光については、二〇三〇年において新築戸建て住宅の六割に太陽光発電設備を設置する目標を掲げており、こうした方針も踏まえて、住宅への導入推進に努めてまいります。

 具体的には、固定価格買取り制度や予算、税制による導入支援に加え、壁面などにも設置可能な次世代型太陽電池の研究開発など、あらゆる施策を総動員して取り組みます。

 また、公共施設の改修や新築における省エネ、再エネの導入義務化については、既に政府が率先して、保有する設置可能な全ての建築物への再エネ導入を進めるとともに、公共施設も含めた住宅、建築物の省エネ基準の適合義務化や基準の引上げなどに取り組むこととしております。

 子育て支援についてお尋ねがありました。

 我が国の家族関係社会支出の対GDP比は欧州諸国と比較して低水準にありますが、これまでも、安定財源を確保しつつ、子育て支援の充実に取り組んでまいりました。

 今後、分配戦略の柱として、子育て、若者世代に焦点を当て、世帯所得の引上げに向けて取り組みます。全世代型社会保障構築会議において、男女が希望どおり働ける社会づくり、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、持続的な社会保障制度の構築に向け議論を進めます。

 児童手当については、従来から、多子世帯や子供の年齢に応じた拡充、重点化が必要との指摘があり、昨年の改正法の検討規定に沿って検討するとされています。

 子育て世帯への給付については、迅速に支給するため児童手当の仕組みを活用しており、基準日以降に離婚した世帯への制度的な対応は難しい面がありますが、そうした方についても、住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金など様々な施策を重層的に講じる中できめ細かく支援を行うとともに、自治体に対し、地域の実情に応じて新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による給付金の支給を検討することをお願いしています。

 高等教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。

 経済的に困難な学生が学びを諦めることがないよう、しっかりと支えることが重要です。

 御指摘の授業料等の負担軽減については、真に支援の必要な低所得世帯の学生に対し、令和四年度予算案において安定財源を確保し、給付型奨学金五十九万人分と授業料減免五十九万人分を実施する予定です。無利子、有利子の貸与型奨学金についても、所得に連動した返還や返還額の減額等を実施いたします。

 今後とも、高等教育の負担軽減を着実に実施するとともに、大学卒業後の所得に応じて出世払いを行う仕組みを含め、支援を強化してまいります。

 文書通信交通滞在費についてお尋ねがありました。

 文書通信交通滞在費については、議員活動の在り方に関わる重要な課題であり、御指摘のとおり、全議員共通のルールを作るべきであると認識をしております。そのため、各党各派における真摯な議論を通じて合意を得る努力を重ね、結論を出していただきたいと考えています。

 森友学園案件に関する訴訟についてお尋ねがありました。

 今般の訴訟については、財務省において裁判所の訴訟指揮に従いつつ対応してきたところ、国の責任は明らかとの結論に至ったことから、損害賠償義務を認めたものと承知をしています。

 その上で、いわゆる赤木ファイルについては、個人のプライバシーなどに限定してマスキングをして全て提出するとともに、認諾の際にも、赤木さんが亡くなった経緯をできる限り詳細に記載した書面を提出し、御遺族の求めにも可能な限り対応するなど、丁寧な対応に努めてきたと認識をしております。

 御遺族からは情報公開請求について現在も訴訟が行われ、この訴訟において情報公開請求が取り扱われておりますが、財務省に対し、この訴訟にも丁寧に対応するよう指示したところであり、今後も、必要に応じ、しっかりと説明をしてまいります。

 なお、今般の賠償金については、国が個々の職員に対して求償権を有するとは考えてはおりません。

 日本学術会議会員の任命についてお尋ねがありました。

 一昨年十月の日本学術会議の会員任命については、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が最終判断したものであることから、一連の手続は終了したものと承知をしております。

 核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。しかし、現実を変えるには核兵器国の協力が必要ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておりません。

 御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければなりません。

 そのためにも、まずは、核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係構築に努めていきたいと考えており、来るバイデン米国大統領とのテレビ電話会談でも、核兵器のない世界に向け、共に取り組んでいくことを確認したいと考えております。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 拉致問題は最重要課題です。改めて、十四年間家族会の代表を務められた飯塚繁雄さんが御逝去されたことに心より哀悼の意を表するとともに、御家族にお悔やみを申し上げます。拉致問題の解決には一刻の猶予もない、こうした課題であるということを痛感しております。

 全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現する上で各国との連携は重要であり、来る日米首脳テレビ会談においても、バイデン大統領との間で、拉致問題の解決に向けて、両国間の緊密な連携を確認する考えです。

 あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいります。

 在日米軍における新型コロナ感染事案と、日米地位協定の見直しについてお尋ねがありました。

 在日米軍施設・区域内及びその周辺自治体で感染拡大が起こっており、政府として深刻に懸念しています。このため、私の指示で、米側に対して感染拡大の防止及び地元の方々の不安解消に向けた対応を強く申し入れてきました。

 その結果、米国は、必要不可欠な場合以外の外出を認めない、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染拡大防止措置を発表しました。

 また、日米地位協定と米国が他国と締結している地位協定との比較については、地位協定そのものの規定ぶりのみならず、実際の運用や安全保障環境等の背景等も含めた全体像の中で検討する必要があり、単純に比較することは適当ではないと考えます。

 政府としましては日米地位協定の見直しは考えておりませんが、私の指示を踏まえ、在日米軍の駐留に関わる保健衛生上の課題に対し、日米地位協定に基づく日米合同委員会において、感染拡大の防止及び地元の方々の不安解消に向けて、日米間の連携をより一層強化してまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 御指摘の地盤改良工事については、有識者の助言を得つつ検討を行った結果、十分に安定した護岸等の施工が可能であることが確認をされており、また、工事費については、引き続き、抑制に努めてまいります。

 日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策です。米国とは、閣僚間を含め様々なレベルにおいて、この方針について累次にわたり確認をしてきています。

 この方針に基づき着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。

 米中対立の下での公正な競争環境の確保についてお尋ねがありました。

 米国法の域外適用による不公正な扱いについて、企業から懸念の声があることは承知をしており、政府として、実態や影響の把握に努めています。

 米国に対しては、様々な機会を捉え、米国法の域外適用によって対象技術を保有する同志国企業にも影響が及ぶこと、また、事業の予見可能性や競争環境の公平性確保が重要であることを強く申し入れています。

 米中対立が続く中、日本企業に対しては、法令遵守の範囲を超えて過度に萎縮する必要はなく、仮に不当な対応を求められることがあれば政府が前面に立って支援することをお伝えしてきているところであり、引き続き、米国への働きかけを含め、公平な競争環境の確保に努めてまいります。

 在外邦人等輸送に関する自衛隊法の改正についてお尋ねがありました。

 先般のアフガニスタンの経験等を踏まえ、将来の海外における様々な緊急事態に際し、より迅速かつ柔軟な派遣を可能とするため、法制面で更に改善することができないか検討してきました。

 現行の規定では、自衛隊の派遣について、民間機と同程度の安全性が必要であるかのような誤解があり、先般のアフガニスタンへの派遣の際にも一部から疑問が呈されました。このため、自衛隊として予想される危険を回避するための方策を講じた上で派遣してきた実績を踏まえ、現行の規定を改正し、この誤解を解消したいと考えております。

 海外で邦人が危険にさらされたとき、邦人の保護、退避に全力で当たることは国として当然の責務であり、在外邦人等の安全確保に万全を期してまいります。

 なお、先般のアフガニスタンでの邦人等の輸送において、自衛隊法がオペレーションの障害になったという事実はありません。

 敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。

 極超音速滑空兵器や変則軌道で飛翔するミサイルなど、ミサイルに関する技術は急速なスピードで変化、進化しています。

 こうした中で、ミサイル防衛体制を始め、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのかという問題意識の下、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討してまいります。

 この検討は、米国から要望を受けて行うものではなく、我が国として主体的に行うものである、これは当然のことであります。また、憲法及び国際法の範囲内で、日米の基本的な役割分担を維持しつつ、こうした検討を進めてまいります。

 新たな国家安全保障戦略等については、様々な機会に、国民の皆様にも、また国会においても、できるだけ丁寧に説明をしていきたいと考えております。

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議の報告書についてお尋ねがありました。

 有識者会議の議事の記録は、内閣官房のホームページで公表されているところです。附帯決議に示された課題について大変丁寧に議論を尽くしていただき、バランスの取れたものになっていると考えております。

 報告書においては、皇位継承については、悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないとされており、また、皇族数確保の方策として、内親王、女王が婚姻後も皇族の身分を保持することも示されているところです。

 政府としては、この報告書を尊重することとし、国会に報告をしたところであります。今後は国会において検討が行われるものと承知しており、私としては、報告書がこれに資するものになってもらいたいと考えております。

 そして、憲法改正についてお尋ねがありました。

 現行憲法については、今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、御指摘のあった点も含め、様々な論点や意見があるものと承知をしています。そうした観点から、与野党の枠を超え、積極的な議論が行われることが重要であると考えております。

 いずれにせよ、国の礎である憲法の在り方を決めるのは国民の皆様であり、憲法改正に関する国民的議論を喚起していくため、我々国会議員が、国会の内外で議論を積み重ね、発信をしていく必要があると考えております。(拍手)

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議長(細田博之君) 梶山弘志君。

    〔梶山弘志君登壇〕

梶山弘志君 自由民主党の梶山弘志です。

 私は、自由民主党を代表して、岸田文雄内閣総理大臣の内外諸問題に対する基本姿勢についてお伺いします。(拍手)

 質問に先立ち、新型コロナによってお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、病床や御自宅で療養されておられる方々に対し心からお見舞いを申し上げます。

 また、感染予防に対する国民の皆様の御理解と御協力に、そして、国民の命と暮らしを守るため日々懸命に御努力いただいている自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所、運送業、公共交通機関などのエッセンシャルワーカーの皆様方の御尽力に、改めて感謝を申し上げます。

 岸田総理の施政方針演説を拝聴し、引き続き新型コロナウイルス感染症対策に全力で取り組む覚悟とともに、新しい資本主義の実現に向けた経済社会変革への力強い決意を感じました。

 我々自由民主党は、国難の中で一喜一憂することなく、不動心の中で決断を重ねる岸田総理の令和の大変革を全力で支えてまいりますので、どうか不退転の決意で国民の期待に応えていっていただきたいと思います。

 現在、国内外においてオミクロン株の感染が急拡大しつつあり、国民の間にも新たな不安が広がり始めております。

 岸田総理は、オミクロン株の特性を踏まえた、めり張りをつけた対策を講じるとのお考えを示されました。

 総理は、就任以来、未曽有のウイルスである新型コロナウイルスへの対応について、常に最悪の事態を念頭に、感染状況の変化を機敏に捉え、迅速に臨機応変な対応に取り組んでこられました。今般のオミクロン株への対応においても、決して油断することなく、しかしながら過度に恐れず、これまでの国内外の経験や教訓、あるいは最新の科学的知見を集約しながら、冷静かつ的確な感染症対策の強化に取り組んでいただきたいと思います。

 そして、在宅、宿泊療養を含む医療提供体制の確保状況、三回目のワクチン接種のペースアップや十二歳未満の子供たちへの接種、無料検査の拡充や経口治療薬の効果など、国民の新たな不安に寄り添った丁寧な情報発信の取組も強化すべきと考えます。諸外国と比べた国内の感染状況、並びに新型コロナへの水際対策、国内対策の徹底について、改めて総理より御説明をお願いいたします。

 新型コロナの蔓延は、我々の社会経済構造を抜本的に変化させ、それまで不変であると思っていた日常生活の景色は瞬く間に一変いたしました。混迷の中で世界のパワーバランスが変化をし、日本を取り巻く国際環境が複雑さと不確実性を増す一方で、デジタル社会の推進や気候変動への対応、経済安全保障の確保など、新たな政策課題も生まれてきております。

 しかしながら、こうした国難の中だからこそ、日本を取り巻く現状に冷静に向き合い、時代の変化に適応した新たなグランドデザインが必要なのだと考えます。

 日本の産業競争力を強化して新たな国富を生み出し、人への投資と分配によって分厚い中間層を再構築し、その好循環を力強い成長軌道へと導く中で、国民一人一人が幸せになる新しい資本主義を実現する。そして、新型コロナとの戦いを乗り越え、必ずや岸田内閣が目指す持続可能な経済社会を実現する。そのような思いを胸に、質問をさせていただきます。

 まず、外交、安全保障についてお伺いします。

 日本を取り巻く国際環境が厳しさを増す中、日本社会が持続的な経済活動を進めるためには、日本を含むインド太平洋地域の平和と安定が大前提であります。

 そのためにも、日米同盟を基軸とし、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々との連携を深め、クアッドや日・EU、日・ASEANなど、多様な地域協力の枠組みを通じて日本の外交力を強化すべきです。

 また、司法外交の推進や国際裁判への総合的な対応能力の向上など、国際社会における法の支配に基づく秩序の維持拡大の実現も重要です。

 在外公館の量と質を拡充し、中国による東シナ海などの一方的な現状変更の試みや尖閣諸島周辺の領海侵入、人権侵害問題などについて、日本の立場をしっかりと発信し、毅然とした日本外交を推進していくことも必要であると考えますが、インド太平洋地域の平和と安定の確保に向けた総理の御見解をお伺いします。

 繰り返される北朝鮮のミサイル発射や軍事バランスの変化の加速化、複雑化など、既存の秩序をめぐる不確実性が増大する中で、軍事のみならず、政治、経済、情報も含めた国家間のハイブリッド戦への対応が求められています。

 また、テクノロジーの変化や宇宙、サイバーといった新領域の安全保障上の課題も顕在化し、包括的な日本の国防力の強化も急務であると考えます。

 岸田総理は、国家安全保障戦略や防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定により、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を守り抜く考えを示しておられますが、改めて、日本の安全保障に対する岸田総理の基本姿勢をお伺いします。

 我が国周辺の国際情勢が不確実性を増す中で、国家安全保障上の脅威を的確に把握し、迅速な対応に取り組むためにも、我が国のインテリジェンス機能の充実が重要であります。

 内閣情報調査室、警察庁、外務省、防衛省、そして公安調査庁などの関係省庁がしっかりと連携し、予算と人員の拡充の中で、情報の収集、集約、分析を強化していくことが重要であると考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 次に、新しい資本主義についてお伺いします。

 総理は、成長と分配の好循環による新しい資本主義によって、国民一人一人が豊かで生き生きと暮らせる社会をつくっていくとの方針を示されました。

 成長と分配の好循環の実現のためには、国家戦略に基づいて、デジタルや気候変動、あるいは経済安全保障などの分野に投資を集中し、日本企業の経営変革を促進するとともに、イノベーションの担い手であるスタートアップ企業を徹底支援することで産業を創造し、その好循環を成長軌道へとつなげる中で、新たな分配の原資を生み出していくことが重要であります。

 岸田総理は、成長戦略の第一の柱として、デジタルを活用した地方の活性化を掲げておられます。

 デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、教育、仕事、医療、介護など、これまでその主体がばらばらに存在し、それぞれの地域から離れなければならなかった環境を、デジタル技術を利活用して包括的なサービスとして連携させ、一人一人の暮らし方に根差した新たな地域社会を創造する。そして、地域の風土や歴史を生かして地方経済を活性化させ、それを全国へと底上げする中で経済成長を実現する。そのためにも、各地域のデジタル基盤を国が主導して一元的に整備し、デジタル改革、規制改革、行政改革を一体的に進めて、デジタル田園都市国家構想を通じた社会変革を実現させていくべきと考えますが、総理の御決意をお伺いします。

 デジタル改革やデジタル社会の実現のためには、社会全体でのデジタルリテラシーの底上げやデジタル専門人材の育成、確保の同時進行が必要です。このため、デジタル庁を、既存の公務員制度にとらわれることなく、官民のデジタル人材の能力を最大限生かし、柔軟に引き出せる組織に変革すると同時に、整備すべきシステムに合わせて柔軟かつ機動的に人材の登用を行えるよう制度改革に取り組むことが必要であると考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 地方経済の活性化においては、地方創生の推進も重要です。日本の各地域は、それぞれが多彩な魅力を擁しており、地域の特色を生かした新たな事業に投資をし、生産性を向上させ、賃金水準の上昇に結びつけていくことが大切です。そのためにも、地域独自の取組テーマについては大胆な選択と集中が必要であると考えますが、現状の評価も含め、総理のお考えをお伺いします。

 また、特定地域に思い入れのある企業と自治体との新たな関係構築の中で、自治体との連携協定や民主導によるサテライトオフィス設置などの動きも出てきていると承知をしております。官民連携を推進する際には、官民のマッチングの場をより一層用意すると同時に、企業版ふるさと納税の積極的な活用も重要であると考えますが、併せてお伺いします。

 地球規模の課題である気候変動対策は、新たな成長分野の重要な種でもあります。

 近年、気候変動対策として、期限付のカーボンニュートラル目標を表明する国が急増し、そのGDP総計は世界全体の約九〇%を占めております。ESG投資を始めとする金融市場の動きの中で、あらゆる産業が脱炭素社会に向けた大競争時代に突入し、今や環境対応の成否が日本の競争力の成否を決すると言っても過言ではありません。

 一方で、特に欧米では、気候変動対策を将来世代の持続的な繁栄に向けた鍵として位置づけ、包括的な戦略の策定に着手し始めております。

 日本も、中長期的な視点に立った気候変動対策を通じて産業競争力を強化し、経済と環境の好循環による持続可能な経済成長の種を将来世代にも分配していくことが重要と考えますが、気候変動対策に日本としてどのように取り組んでいくのか、総理のお考えをお伺いします。

 経済と環境の好循環においては、産業革命以来の化石エネルギー主体の経済社会構造から脱炭素型の構造へと社会システム全体を変革していくことが必要です。また、世界各国の産業社会構造、地理的条件は多様であり、カーボンニュートラル実現の唯一の解決策は存在しないことから、日本が主導的役割を果たしつつ、多様かつ現実的なエネルギートランジションに取り組むことも重要であります。

 二〇三〇年四六%削減を中間地点とし、二〇五〇年カーボンニュートラルの目標実現に向けて全力で取り組む中で、総理が策定を指示されたクリーンエネルギー戦略では、今ある技術だけではなく、水素、アンモニアの活用やSAFの導入支援、洋上風力発電を始めとする再生可能エネルギーの徹底利用、それを支える抜本的な送電網の増強など、将来の技術革新、事業革新も見据えた、時間軸を据えた立体的な戦略を策定すべきと考えます。

 また、産業分野、電力分野での再生可能エネルギー導入による脱炭素化の促進には、気象条件に発電量が左右されないよう、蓄電池との連携が重要であり、国内生産の強化も含めた安定的な確保も必要であります。

 産業界に対し、足下の投資の加速につながるよう、経済社会変革の全体像と道筋を示していくべきと考えますが、クリーンエネルギー戦略の策定を通じたカーボンニュートラル実現について、総理の御見解をお伺いします。

 日本の安全保障上重要な技術流出を防止し、戦略物資の安定供給を可能にするサプライチェーンの構築は、経済安全保障上、極めて重要な課題であります。

 特に半導体は、デジタル化や脱炭素化、経済安全保障を支えるキーテクノロジーであり、我が国の半導体産業の基盤強化に向け、先端半導体の製造基盤確保や次世代半導体の研究開発に取り組む必要があると考えております。

 各国が産業基盤強化の支援や戦略物資の輸出管理強化に動く中、日本も経済安全保障の推進、強化に機動的に対応していくべきと考えますが、総理の御決意をお伺いします。

 世界では、イノベーションの担い手であるスタートアップが急速に増加をし、GAFAやテスラなどスタートアップ企業が革新的な製品、サービスや新産業を生み出しております。

 一方、日本からはこうしたメガベンチャーが生まれておらず、スタートアップエコシステムの整備を強化し、スタートアップを徹底支援することでイノベーションを生み出していくべきだと考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 また、気候変動対策やDFFT、信頼ある自由なデータ流通の推進など、国際的なルール形成において日本が主導的な役割を果たしていくことも重要と考えますが、併せてお伺いします。

 日本の産業を支える中小・小規模事業者への対応も忘れてはなりません。

 中小企業の社会的役割は多様であり、技術を生かして大企業に育っていく可能性がある企業も数多くあります。同時に、大企業にならなくても、地域で必要とされる商品、サービスを提供し、雇用の受皿として機能することも重要です。

 中小企業の多様な役割に合わせた、将来を見据えた支援を行い、中小企業の収益力を向上させ、税収を増やし、官民で更なる投資につなげていくことが新しい資本主義の在り方であると考えますが、中小企業政策の基本姿勢について、総理のお考えをお伺いします。

 岸田総理は、多様な農林漁業者が安心して生活できる豊かな農林水産業を構築できるよう取り組むと述べられました。

 適地適作という言葉があるように、それぞれの地域の特性を生かした高品質な国産農林水産物の国内流通を推進しつつ、輸出の促進を図り、新たな作物や市場の開発に向けて不断の支援を行うことが重要であると考えます。その際、担い手の確保、育成や経営基盤の安定化、鳥獣被害対策にも取り組むべきと考えますが、農林水産業の振興に関する岸田総理のお考えをお伺いします。

 産業競争力の強化においては、その基盤となる安定的な人流、物流網の確保も重要です。

 新型コロナにより、日本の公共交通網は極めて大きな打撃を受け、いまだに多くの企業が回復の兆しを感じられずにいます。航空、鉄道、バス、タクシー、トラック業界などの各企業には、緊急事態宣言下における移動制限や水際対策など、国や自治体からの感染症対策の要請にも対応いただきながら、公共インフラを守り抜いていただいております。こうした公共交通や物流網の確保については、強靱な経済社会の構築やサプライチェーンの確保の観点からも、単に民間事業者だからと企業努力を求めるのみならず、公共が守り抜くとの覚悟の下、国が先頭に立って支援を強化していくべきと考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 次に、持続可能な経済を実現する分配戦略についてお伺いします。

 初めに、人への分配についてお伺いします。

 岸田総理は、新しい資本主義を通じて生み出された利益を適切に分配し、次の消費、新たな需要を生み出し、更なる供給力の強化につなげる好循環を目指しておられます。

 既存の分配構造を是正し、人を中心に据えた分配を実現するためには、株主利益の人的資本への投入や適正な価格転嫁の実現など、あらゆる政策手段を通じて賃上げを実現させることが必要であります。また、官民が連携して企業が求める人材を的確に把握、共有し、職業訓練や大学などでの学び直しの実施など、人への投資の抜本強化も重要であると考えますが、今後どのような施策を展開していく方針か、総理のお考えをお伺いします。

 団塊の世代が七十五歳以上の高齢者となり始める二〇二五年に向けて、社会保障制度は、給付の面でも負担の面においても、国民の大きな不安要因となっております。

 特に、世帯所得の向上の観点からも、現役世代の負担上昇を抑えることは喫緊の重要課題であります。人生百年時代を見据えつつ、お年寄りのみならず、子供たち、子育て世代、そして現役世代まで、全世代の安心感を創出し続けていくため、年金、労働、医療、介護、少子化対策など、全世代型社会保障改革の着実な推進が必要であると考えますが、総理の御見解をお伺いします。

 新型コロナは、社会環境の変化によって内在していた孤独、孤立問題の顕在化を加速させ、その一層の深刻化も招いたものと認識しております。

 孤独、孤立に悩む方々の目線に立ち、人々の持続的な幸福の実現、ウェルビーイングといった視点にも着目しつつ、縦割りを排し、より継続的な対策に取り組むことが必要と考えております。持続可能な孤独・孤立対策を推進するためには、NPOや保護司などの民間ボランティア等への支援を強化し、地方公共団体などとも積極的に連携する包摂的支援体制の構築が必要と考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 また、新型コロナ禍で女性や子供へのDVや虐待が増加しており、被害の早期把握と包括的な支援強化が急務であります。女性や子供への暴力根絶に向けた総理の御決意について、併せてお伺いします。

 次に、将来世代への分配についてお伺いします。

 昨年十二月、政府の中央防災会議は、北海道沖から岩手県の日本海溝、千島海溝で起きる二つの巨大地震について、津波による死者数が、日本海溝の地震で最大十九万九千人、千島海溝の地震で最大十万人に上るとの想定を明らかにしました。

 近年の激甚化、頻発化する災害への対応や、急速に進むインフラの老朽化等に対応するため、災害に強い国土幹線道路ネットワークの構築や空港、港湾の整備など、防災・減災、国土強靱化の取組の加速化は極めて重要な課題であります。

 言うまでもなく、災害発生後の対応よりも、災害を未然に防ぎ、被害を最小化するための事前防災が極めて重要であります。特に、国内インフラにおいては、国の点検によって早期又は緊急に対策を講ずべきと診断された橋梁及びトンネルのうち、修繕がなされた橋梁は全体の約三六%、トンネルは約五五%であり、今後加速度的に老朽化が進行する中にあって、その対策が急務であります。

 事故や災害が起きた後の事後保全よりも、機能や性能に不具合が発生する前に修繕等の対策を講じることはメンテナンスコストの縮減にもつながることからも、より積極的なインフラ投資によって国民の命を守り、将来世代に安全、安心の資産として引き継いでいくべきと考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 また、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策については、将来への投資として令和七年度以降も持続的な取組を進めていくことが重要であると考えますが、併せてお伺いします。

 なお、建設工事受注動態統計調査に関する不祥事が明らかとなり、国民の政府統計全体に対する信頼が揺らいでおります。先週、国土交通省の第三者委員会から報告書が公表されましたが、信頼回復と徹底的な再発防止に向けた総理の御決意についてお伺いします。

 東日本大震災からの復興につきましては、震災から十年を経て、引き続き、政府・与党一体となって取り組んでいく必要があります。被災者支援や産業、なりわいの再建とともに、国際教育研究拠点の整備など、所要の施策を着実に推進していくべきと考えますが、総理の御決意をお伺いします。

 世界の社会経済構造が変革するときにこそ、我々は、日本の不変の伝統文化を忘れてはならないと考えます。

 我が国は、世界に誇る社寺や伝統芸能、美術品などの数多くの文化的資産を有しており、まずはそれらをしっかりと保護、保全し、将来世代へ引き継いでいかなければなりません。その上で、世界のアート市場から高い評価を得ている日本の現代アートなど、新たな芸術作品の創造支援にも取り組むべきと考えます。

 新しい資本主義の実現を目指す中で、日本が誇る文化的資産やアート作品、そしてアーティストたちを守り、育て、そして新たに生み出し、国富として将来世代へと引き継いでいくべきと考えますが、日本の文化、アート振興に対する総理のお考えをお伺いします。

 その際、国立新美術館をグローバルな発信拠点として有効活用するなど、我が国のアート振興に貢献する主体として独立行政法人国立美術館の抜本的な改革を進めるべきとも考えますが、併せてお考えをお伺いします。

 最後に、憲法改正についてお伺いします。

 現行憲法の自主的改正は、我々自由民主党の結党以来の党是であります。

 国民の憲法改正に関する幅広い理解を醸成しつつ、憲法改正の実現に向けた取組を強化するために、昨年、我が党の憲法改正推進本部の名称を憲法改正実現本部に改称いたしました。

 我が党は、既に、条文イメージとして、自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実の四項目について国民の皆様にお示しをしており、衆参の憲法審査会を安定的に開催し、憲法改正に関する議論を深めていくべきと考えております。我々は岸田総理の憲法改正に向けた取組を全力で応援する覚悟でありますが、改めて、憲法改正に対する岸田総理の御決意をお伺いします。

 人を大切にし、国民との間に信頼と共感を育み、分断や格差を乗り越える新しい資本主義を確立することは、我が国が更なる発展を遂げるために進むべき、大変革への道だと考えます。

 我々自由民主党は、絶えず国民政党としての自覚と使命感を胸に、党所属の国会議員、地方議員、そして党員、党友が心を一つにし、岸田総理とともにこの道を力強く進んでまいりますことを国民の皆様にお誓い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 梶山弘志議員の御質問にお答えいたします。

 新型コロナ対策についてお尋ねがありました。

 これまで、G7で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑え、国内感染の増加に備える時間を確保することができました。世界の新規感染者数が一日二百八十万人を超えるなど、内外のオミクロン株の感染状況の差は明らかであり、当面の対応として二月末まで水際対策の骨格を維持した上で、今後は国内対策に重点を置きます。

 全国で感染が拡大していますが、こうした状況も想定し、十一月の全体像に沿って、在宅、宿泊療養を含め医療提供体制の拡充を図るとともに、ワクチンの三回目接種の加速化による予防、無料検査の拡充による発見、そして経口治療薬等による早期治療への流れの強化に先手先手で取り組んでまいりました。

 内外のオミクロン株に関する科学的知見を集約しつつ、拡充してきた医療提供体制をしっかり機能させ、病床が逼迫するような緊急事態になることがないよう、各都道府県との密接な連携の下、高い警戒感を持って対応に当たってまいります。

 インド太平洋地域の平和と安定の確保に向けた取組についてお尋ねがありました。

 インド太平洋地域において、ルールに基づく自由で開かれた秩序を実現していくことが重要です。

 我が国として、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化するとともに、引き続き、ASEANや欧州を含む同志国とも連携をし、日米豪印の取組等も活用しながら、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を戦略的に推進していきます。

 中国との間では、尖閣諸島をめぐる情勢、人権など諸課題について、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。

 あわせて、在外公館を含む外交実施体制を強化し、国際社会における法の支配の強化に取り組むとともに、我が国の立場の戦略的な対外発信を力強く展開していきます。

 安全保障に対する基本姿勢についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、急速に厳しさを増しています。北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射は断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできません。

 こうしたミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や、御指摘のいわゆるハイブリッド戦といった課題、これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を守り抜いていきます。

 このため、おおむね一年をかけて、新たな国家安全保障戦略等を策定します。この中で、ミサイル防衛体制を始め、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのかという問題意識の下、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、防衛力を抜本的に強化していきます。

 インテリジェンス機能の充実についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く国際情勢が不確実性を増す中、我が国の国益を守り、国民の安全を確保するためには、情報の収集、集約、分析が極めて重要であると認識をしています。

 このような認識の下、これまでも、例えば、重要な課題の一つである経済安全保障の分野において、関連情報の収集、集約、分析体制の強化に取り組むなど、体制や能力の強化に努めてきたところです。

 引き続き、関係省庁が連携して、我が国の情報収集、集約、分析機能の一層の充実強化に取り組んでまいります。

 デジタル田園都市国家構想及びデジタル人材の活用についてお尋ねがありました。

 デジタル田園都市国家構想は、高齢化や過疎化などの社会課題に直面する地方にこそ新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するものです。

 同構想実現のため、5G、データセンターなどの整備やデジタル基盤の整備、規制・制度の総点検と一括的な見直し、オンライン診療、GIGAスクール、スマート農林水産業など、地方における先導的なデジタルサービスの実装に取り組みます。こうした取組により、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップの成長を実現してまいります。

 また、社会全体のデジタル化を推進する司令塔であるデジタル庁は、プロジェクトごとに民間出身者と省庁出身者の共同チームを組成して機動的に対応しています。

 今後は、デジタル庁も含めた霞が関全体のデジタルトランスフォーメーションを果断に進めていくため、今年から、公務員採用試験にデジタル区分の設定を行う、また、デジタル分野に重点的に人材を確保、配分する、また、外部登用を含め、優れたデジタル技術を持つ人材にふさわしい処遇を行う、また、デジタル技術を徹底活用できる働きやすい職場環境の整備を行う、こうしたことに取り組み、各省庁職員の意欲と能力を解放し、挑戦を評価する組織へと転換させていきます。

 地方創生の取組及び企業版ふるさと納税についてお尋ねがありました。

 これまでの地方創生を進める取組により、先月訪問した会津若松市におけるデジタル技術の積極的な活用のように、全国で地域の特色を生かした創意工夫が行われ、一定の効果が生まれてきました。

 デジタル田園都市国家構想の下、スマート農林水産業や中小企業のデジタル化など、デジタルの活用を支援していくことで、地域の特色を生かしつつ、生産性向上や賃金水準の上昇につなげてまいります。

 あわせて、地域経済の活性化に向けて、農林水産業の輸出促進や観光産業の高付加価値化など、デジタル以外の地域活性化にもしっかりと支援を行ってまいります。

 政府では、企業版ふるさと納税制度も活用し、令和六年度中に千の地方公共団体がサテライトオフィスの整備等に取り組むという目標を掲げております。この制度の効果的な利用方法を産業界に示し、利用を呼びかけ、企業に一層活用いただくことによりサテライトオフィスの整備を進め、地方での雇用創出、そして地方への人の流れを加速してまいります。

 我が国の気候変動対策についてお尋ねがありました。

 世界各地で異常気象が発生する中、気候変動対策は人類共通の課題であり、将来世代のためにも、この困難に立ち向かう必要があります。こうした危機感を持って、資本主義の中に様々な弊害を是正する仕組みを埋め込むことで、最大の課題である気候変動問題を克服していきます。

 同時に、世界は脱炭素の大競争時代に突入しており、脱炭素という投資分野で技術や市場を獲得していくことが、今後、我が国の成長戦略としても不可欠です。

 二〇三〇年度四六%削減、二〇五〇年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単にエネルギー供給の構造変革だけではなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。そして、世界、特にアジアで脱炭素化を主導し、気候変動対策を新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。

 クリーンエネルギー戦略についてお尋ねがありました。

 クリーンエネルギー戦略においては、カーボンニュートラルの実現に向けて、どのような分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか、時間軸を示しつつ、経済社会変革の全体像及び道筋を示していきます。

 また、御指摘のとおり、既存の技術のみならず、将来の技術革新なども見据えた、送配電インフラ、蓄電池、再エネ始め水素、アンモニアなど非炭素電源、安定、廉価かつクリーンなエネルギー供給の在り方、需要側の産業構造転換や労働力の円滑な移動など、多くの論点に方向性を見出していきます。

 気候変動問題に対応し、我が国の経済社会を炭素中立型にしていくという歴史的な変革を実現するために、政府一丸となり、検討を進め、実行に移していきます。

 経済安全保障の推進、強化についてお尋ねがありました。

 経済安全保障は、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱です。

 特に、戦略物資に関するサプライチェーンの強靱化や、安全保障上重要な技術の育成や流出防止は、経済安全保障上の最重要課題の一つです。

 このため、重要な戦略物資である半導体については、生産基盤を整備するための法整備のほか、研究開発等の支援策も措置しました。官民合わせて一兆四千億円を超える大胆な投資を後押ししていきます。

 半導体に加え、新たな法律により、国民生活や経済活動への影響が大きい物資のサプライチェーンの強靱化への支援、AI、量子といった分野への官民の研究開発、通信や電力など基幹インフラの安全性や信頼性の確保、安全保障上機微な発明の特許非公開制度の整備、これらを後押しいたします。

 スタートアップへの支援や国際的なルール形成についてお尋ねがありました。

 スタートアップへの支援については、海外勢との競争に打ちかつべく、今後五年間、スタートアップに集中的に政策資源を投入いたします。具体的には、株式公開価格の設定プロセス見直しやリスクマネーの供給拡大による資金調達の容易化、大企業人材のスタートアップでの活用やプロの起業家の創出促進による人材確保、スタートアップのグローバル展開支援や海外投資家の呼び込みなどに取り組むことで、スタートアップ企業が生まれ育つ環境を整備し、終戦後に続く第二の創業時代をつくってまいります。

 気候変動において、我が国は、市場メカニズムに関するルールなど、パリ協定の実施指針交渉を主導してきました。今後とも、二国間クレジット制度の一層の拡大等に取り組み、世界の脱炭素化を主導いたします。また、信頼性のある自由なデータ流通、DFFTの実現に向け、WTOの電子商取引の交渉において我が国が共同議長を務めるなど、国際的なルール作りにおいて中心的な役割を果たしていきます。

 中小企業政策についてお尋ねがありました。

 中小企業には、新時代に挑戦し成長を目指す企業や地域経済の基盤となる企業など多種多様な企業があり、それぞれ大切な役割を担っています。

 政府としても、新事業に挑戦する企業に向けた事業再構築補助金などにより、生産性を向上させ、成長を後押しするとともに、地域企業の経営基盤を支援するため、持続化補助金などの各施策を措置しています。

 加えて、物価高が進む中、賃上げをすることができるだけの収益を上げられるよう、価格転嫁円滑化のための施策や賃上げ促進税制などに取り組むことで、中小企業に適切な利益が残り、投資や賃上げが進む環境整備を進めてまいります。

 こうした中小企業への政策支援により、成長と分配の好循環を通じた新しい資本主義を実現してまいります。

 農林水産業の振興についてお尋ねがありました。

 我が国では、多様な農林水産業が地域経済を支えており、地域特性を生かした高品質な農林水産物の生産や販売の振興は地域活性化に重要です。

 岸田内閣においては、二兆円目標に向けた輸出品目別のオール・ジャパンでの輸出促進体制の整備や、デジタル技術の実装を通じたスマート化による生産性向上により、農林水産業の成長産業化を進めます。

 あわせて、担い手の育成、確保を推進するとともに、自然災害や鳥獣被害などの様々なリスクに対して収入保険制度等により経営安定を図りつつ、環境と調和した持続可能な農林水産業を推進してまいります。

 公共交通と物流網の確保についてお尋ねがありました。

 公共交通と物流は、国民生活や経済活動を支える不可欠なサービスです。

 このような機能を維持するため、これまで、公共交通機関の感染症防止対策や運行維持に対する支援、物流分野における省人化、自動化の促進に対する支援に加え、政府系金融機関による資金繰り支援や雇用調整助成金などによる対応を行ってきたところです。さらに、昨年末に取りまとめた経済対策において、事業復活支援金の創設等により支援を強化したところです。

 公共交通と物流網を引き続き確保していくため、国としてしっかりと取り組んでまいります。

 賃上げと人への投資についてお尋ねがありました。

 成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが、賃上げや人への投資を始めとする分配戦略です。

 賃上げについては、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げに加え、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁が行えるよう、環境整備を進めます。

 また、できる限り早期に全国加重平均千円以上となるよう、最低賃金の見直しにも取り組んでいきます。

 さらに、人への投資を抜本的に強化するため、三年間で四千億円規模の施策パッケージを創設し、民間のニーズを反映しつつ、成長分野への労働移動の円滑化や、人材育成を強力に推進していきます。

 全世代型社会保障についてお尋ねがありました。

 人生百年時代を見据えて、子供から子育て世代、お年寄りまで、誰もが安心できる全世代型の社会保障を構築していくことが必要です。

 全世代型社会保障構築会議において、男女が希望どおり働ける社会づくりや、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなで支え合う持続的な社会保障制度の構築に向け、議論を進めてまいります。

 孤独・孤立対策、女性や子供への暴力根絶についてお尋ねがありました。

 孤独・孤立対策については、昨年末に政府として初めて取りまとめた重点計画に沿って、孤独、孤立に苦しむ方々に寄り添い、支えるため、政府一丸となって取組を進めてまいります。

 このため、令和四年度予算と令和三年度補正予算案を合わせて約六十億円を活用し、NPO等の活動を継続的にきめ細かく支援するとともに、国、自治体、NPO等の連携体制を強化してまいります。

 また、保護司については、社会の安全、安心を支える極めて重要な役割を担っていることを踏まえ、自治体と連携しつつ、刑務所出所者等を地域につなぐ活動を支援いたします。

 女性や子供への暴力根絶に向けては、DV対策の抜本的強化に取り組むとともに、児童相談所の体制強化や子供を地域で見守る体制の強化を推進します。さらに、子供等に対する家庭及び養育環境の支援を強化するための児童福祉法等の改正案を提出するべく、検討を進めてまいります。

 防災・減災、国土強靱化の推進についてお尋ねがありました。

 防災・減災、国土強靱化は、議員御指摘のとおり、中長期的かつ明確な見通しの下、令和七年度に終了する五か年対策以降も持続的な取組を進めていくことが重要です。

 また、インフラ投資に当たっては、インフラの老朽化が進む中で、効率的な対策に取り組むため、計画的な点検、修繕、更新等を行い、コストの縮減を図りつつ、事前防災につなげることが重要と認識をしております。

 政府統計に対する信頼確保と再発防止についてお尋ねがありました。

 昨年末明らかになった建設工事受注動態統計調査における不適切な処理については、大変遺憾なことと考えており、国民の皆様におわびを申し上げます。

 今後、統計委員会において、国土交通省の検証委員会報告を精査の上、統計作成上の課題や問題を抽出し、各府省の基幹統計について集計プロセスを点検するとともに、再発防止策やデジタル化、人材育成などの公的統計の改善施策を取りまとめることとし、関係閣僚に対し、こうした統計委員会の活動に協力し、統計の信頼回復に向けて全力で取り組むよう指示をいたします。

 東日本大震災からの復興についてお尋ねがありました。

 昨年、被災地を訪問する中で、復興が着実に進展している一方、被災者支援や産業、なりわいの再建など、残る課題にしっかりと対応する必要があることも実感いたしました。

 また、福島の復興再生には中長期的な対応が必要です。特に、御指摘の国際研究教育拠点については、具体的な整備に向けた関連法案を今国会に提出し、福島の復興に向けた夢や希望となる姿をお示しできるよう、政府一丸となって取り組んでまいります。

 引き続き、被災者の皆様の声をしっかりと受け止め、東北の復興なくして日本の再生なしとの強い決意の下に、被災地の復興に向けて全力を尽くしてまいります。

 日本の文化、アート振興についてお尋ねがありました。

 我が国の文化資源やアート作品は、観光を通じた地域活性化などに貢献する資産であり、我が国に対する世界の憧れを生むソフトパワーの源泉でもあります。これらを将来にわたって継承、活用するため、世界に魅力を発信し、新たな創造を持続的に支えることが重要です。

 このため、世界的な現代アーティストの輩出につながるよう、作家の国際展開の支援や、作品価格の透明性向上等を通じて取引市場の活性化に注力するなど、文化、アート振興を推進してまいります。

 御指摘の独立行政法人国立美術館については、アート振興の中核として、優れた学芸員の育成による世界的なコレクションの形成、活用や、国立新美術館におけるアートの魅力のグローバルな発信など、抜本的な機能強化を進めてまいります。

 そして最後に、憲法改正についてお尋ねがありました。

 さきの臨時国会において、憲法審査会が開かれ、憲法改正に向けた議論が行われたことを歓迎いたします。本国会においても更に積極的な議論が行われることを心から期待いたします。

 国の礎である憲法の在り方を決めるのは国民の皆様でありますので、憲法改正に関する国民的議論を喚起していくことが重要です。

 現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、我々国会議員が、国会の内外で議論を積み重ね、発信していく必要があり、私自身も誠実に向き合っていく決意です。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 小川淳也君。

    〔小川淳也君登壇〕

小川淳也君 立憲民主党の小川淳也です。

 会派を代表して、今般の一都十二県の蔓延防止措置の発令などを含めコロナ対策関連など、総理に質問いたします。(拍手)

 まず、本題に入る前ですが、先週、日曜日、トンガ沖の海底火山の噴火に伴い津波警報が発令され、日本中が緊張の一日となりました。実際に被害も確認されており、心よりお見舞いを申し上げます。特に、大学受験生にとっては受難の一日となりました。気象庁の警報発令は津波到達後となったことも含め、総理の国会演説は翌日でしたから、何らか一言あってしかるべきと思っておりましたが、なぜ一言も言及がなかったのか、まず、その点、念のためお聞きしておきたいと思います。

 その上で、岸田総理の御就任以来のこの百日余り、その御労苦に対しては深く敬意を表したいと思っております。一方、いわゆるハネムーン期間は既に過ぎ去ったと言うべきであり、いよいよこれから真価が問われる。恐らく、そのことは誰より総理御自身が深く自覚しておられることと存じます。

 まず、コロナ対策についてお聞きします。

 昨日の感染者は全国で三万人を超え、過去最多となりました。子供への感染やこれに伴う休校、学級閉鎖など、新たな影響も広がっております。十分な医療提供体制による重症者や死者の抑制、後遺障害のケア、飲食店のみならず、取引先、観光、交通、文化、芸術関係者などを含め、十分な経済や暮らしへの支援により、その被害と不安を最小化させなければなりません。

 まず、事実関係をお聞きします。

 現在の感染者のうち何割がこの新たなオミクロン株の感染者ですか。感染者のうち、ワクチン接種済み、いわゆるブレークスルー感染はどのぐらいの割合ですか。そして、重症化率及び致死率は、ワクチン接種者で何%、未接種者で何%、そこに有意な差が認められるのかどうか、お聞きしたいと思います。

 今の情勢下で具体の対策を講じるには最も重要な事実分析であると思いますが、お聞きしたところ、二十万人に迫ろうかという今月の感染者のうち、僅かに百九十一人分しか分析していないというではありませんか。それで十分ですか。この事実関係及びその点に関する総理のお考えをお聞きします。

 このような激しい感染爆発を招いた以上、かねてより私どもが指摘してきた水際対策の不備については、率直にお認めいただかざるを得ないと考えます。

 入国者に施設待機を求める対象国をなぜ約八十か国に限定したのか。私どもは、全ての入国者に徹底した施設待機を求めてまいりました。約八十か国に限定してきた理由、そしてそれが十分だったのか、現在の総理のお考えをお聞きします。

 さらに、自宅待機の要請は実効性に乏しく、感染者の約三分の一は入国から三日目以降に発症するとも言われており、最短三日間とした施設待機期間も極めて不十分です。私どもは例外なく十日間の施設待機を求めてまいりましたが、最短三日間とした理由、並びにそれで十分だったのか、併せて総理のお考えをお聞きします。

 総理は、演説の中で、水際対策により国内感染増加に備える時間を確保できたと述べられましたが、本当ですか。時間が十分稼げたのであれば、なぜ、感染爆発後に入院対象を狭めたのか、入国者の多くを自宅待機に切り替えたのか。事態悪化を後追いする形で基準を緩め、対策を緩和し、現実に引きずられ、その追認と追従を繰り返す姿は、まさに、安倍、菅両政権以来、私たちが何度も繰り返し目にしてきた後手後手の対策、対応そのものではありませんか。十分時間稼ぎができた、そうおっしゃる総理の御認識の根拠について、この際、明確にお聞かせいただきたいと思います。

 考えてみれば、岸田政権のハネムーン期間は、国内においてデルタ株がオミクロン株に置き換わるいわばインターバルの期間でした。本来、感染が落ち着いていたこの時期に、準備を万端整えるべきでした。

 今回は、実に六度目の感染拡大です。過去五回の反省と検証から何を学び、何を教訓としたのか。現在のこの急激な感染爆発は、総理が何度も国会で述べられた最悪の想定の範囲内ですか、それとも想定を超えたんですか。率直なところをお聞かせいただきたいと思います。

 様々な政策分野で、一連の総理の政策判断に大きな疑問を感じる点があります。率直に申し上げれば、一度決めたこと、決まったことを容易に、時に安易に変更されることの功罪についてです。

 確かに、総理の国会等における対応は、一見、謙虚で、丁寧かつ低姿勢です。安倍、菅政権がこの点際立っていただけに、国民から見ても、また私どもから見ても、極めて新鮮かつ望ましい姿勢だと率直に思います。

 しかし、途中が丁寧であっても、やはり最終的に問われるべきは結果責任です。加えて、一見、丁寧、謙虚、柔軟であっても、裏を返せば、確固たる信念、方針、そして熟慮に欠けた優柔不断な朝令暮改とも取れるのです。

 現状、それが直ちに裏目に出ているとまでは言いません。しかし、いずれにしても、総理の背中には、一億二千万人余りの国民、そして全国津々浦々の自治体、事業者等が、振り回されるべき対象として存在していることをゆめゆめお忘れなきようお願いしたいと思います。

 さらに、総理の柔軟な姿勢は、時に全体整合に矛盾を来し、重大な結果を招きかねないことも危惧しており、併せて指摘したいと思います。

 昨年の水際対策についてです。

 昨年十一月二十九日、総理は、オミクロン株流入を阻止するために、一日当たりの入国者数を当時の一日五千人から一日三千五百人に引き下げました。これを受け、国交省は、国際線の新規予約の停止を各航空会社に通知したのです。

 折しも年末の繁忙期でした。久々の帰国や旅行、ビジネスを楽しみにしていた入国予定者、またその家族、関係者等から戸惑いの声が上がりました。世間の反発が強まるや、総理は、早々にこの方針を撤回、まさに朝令暮改で国際線の新規予約を認めてしまいました。このときの判断があたかも官邸に相談のない官僚の独善であり、官邸はあずかり知らないとでも言わんばかりの対応であり、いわば官僚に責任をなすりつけるかの姿勢に、私は随分と首をかしげたものです。

 お聞きいたします。

 国際線の新規予約を再開するのであれば、総理は、当時、一体どのように一日の入国者数を五千人から三千五百人に引き下げるおつもりだったのか、どのように御自身の決定を実行に移すおつもりだったのかをまずお聞きしたいと思います。

 あわせて、その後、実際に、十二月の一日当たりの予約者数と入国者数はどのように推移したのか、お聞きしておきたいと思います。月平均では上限を上回らなかったとの分析も聞いていますが、実際に、待機施設の部屋数、容量は、日々の変動により伸縮自在ではありません。だからこそ、厳格管理するための一日当たりの上限なのではありませんか。十二月の一日当たりの予約者数、入国者数が最大でどの程度振れたのか、この事実関係をお聞きしておきたいと思います。

 さらに、現在、第六波というべき感染爆発が進行する中、十分な医療提供体制のためには、懸案たる民間病院への要請、指導監督強化の法制化が不可欠です。この点、泉代表が述べられたとおり、我が党は、既に昨年、法案として取りまとめています。

 日本の医療費総額は約四十兆円。その九割は税金と保険料で賄われているにもかかわらず、開業が自由化され、医療への公的制御に法的根拠が乏しく、むしろ医療提供体制が市場原理にさらされてしまっている。この矛盾を正す必要性は極めて大きく、この本質に関する総理の御認識をお聞きしておきたいと思います。

 総理の朝令暮改はコロナ対策にとどまりません。

 子供給付金をクーポンとするのか現金を認めるのか、オミクロン株の濃厚接触者となった受験生の大学受験をめぐる混乱、蔓延防止措置に関連して、飲食店への協力金のアンバランスから認証店が次々と認証を返上するという本末転倒の事態など、僅か百日とは思えないほど頻発しています。

 再度申し上げますが、一見柔軟、しかし、結果的に朝令暮改の対応は、総理の決定の重みを失わせています。確固たる信念や慎重な検討に基づくものなのか、信頼が揺らいでいます。是非、大切な御決定の前には、後からひっくり返さなくて済むように、関係者のためにもよく熟考、熟慮を重ねていただく必要があると思いますが、総理の御見解をお聞きしておきたいと思います。

 次に、総理がすぐにでもお決めになるべきだと思うことについてお聞きします。

 まず、建設統計不正についてであります。

 我々の主張を聞き入れ、第三者委員会で検証を行っていただいたことに敬意を表したいと思います。今回の報告によれば、一部国会答弁とも矛盾を来す形で統計の改ざんが継続して行われ、それを覆い隠すためにうそと隠蔽が繰り返されてきました。しかも、部下の改善提案を上司がもみ消していた疑惑まで浮上しており、看過できません。改めて、政府として、責任の所在を明らかにするとともに、関係者の処分を行い、また、報告書では明らかにならなかった不正統計のGDP統計への影響について更なる説明責任を果たすべきと考えますが、この二点、総理の答弁を求めたいと思います。

 赤木裁判については、泉代表がお尋ねしたとおりですので重複を避けつつ、しかし、政府は、一億円の損害賠償責任を認めたわけですから、御遺族のみならず、その負担者たる国民に対しても、それがなぜだったのか、説明責任が生じていると思いますが、その点について答弁を求めます。

 昨年暮れ、泉代表、そしてお地元の金子恵美、馬場雄基さん共々に、東京電力福島第一原子力発電所を訪れさせていただきました。

 現場で奮闘される関係者の御尽力に深く敬意を表します。

 今も無残な姿をさらす一号機前、事故から十年以上たちましたが、放射線量は市中の約一千倍。僅かな滞在時間でしたけれども、すぐに身に着けた線量計がけたたましくアラーム音を発しました。

 眼前の光景は、今後の廃炉の困難、また処理水放出への懸念などを想起させ、面会した浪江町長は、帰還区域が人口の八割をカバーしたにもかかわらず、実際の帰還者は僅かに一割、特に仕事や子育てに追われる現役世代は避難先での生活が定着をし、かえって帰還が困難ともお話しになられました。町のあちこちには廃墟と化し雑草に覆われたままの飲食店やホームセンターがそのまま放置され、時の流れと事態の困難さがうかがい知れます。

 福島県知事は、事故の影響について、風化は進むが風評は続く、そう胸のうちを語られました。

 鉄骨むき出しの原子炉は、独り原子力政策のみならず、我々の生活を成り立たしめている暮らしと産業の基盤そのものを見直せ、そう迫っているようにも感じます。都会から遠い地方に、そしてまだ見ぬ将来世代にその矛盾と犠牲を押しつけて成り立つこの暮らしと経済とは一体何なのか、文明の矛盾について考えさせるのです。

 総理に伺います。

 国家の責任者として、このいや応なく故郷を追われた人々に、今後、どのように継続的な支援を届けるか。どのように事故の風化と向き合い、風評を含めた永続する影響を軽減するため地域に寄り添うのか。どのように住民を慰め、励まし続けるのか。処理水の海洋放出については、十分な説明の機会を設け、更なる誠意と努力を尽くすべきではありませんか。心ある総理の答弁を求めたいと思います。

 次に、沖縄です。

 今年は、一九七二年の本土復帰から五十年の節目を迎えます。折しも今年の沖縄は選挙イヤーであり、既にスタートした名護市長選挙に始まり、秋の沖縄県知事選挙に至るまで、改めて民意が問われ続ける一年となります。

 そして、この沖縄の民意ほど、この国の政治によって正当に顧みられず、時に踏みにじられ、酌み上げられなかったものはほかにない、私にはそう思えてなりません。国会に席を預かる人間の一人として、心から申し訳なく、心苦しく、強い自責の念に駆られています。

 先日も、那覇市の街頭にて青空集会を開催し、お集まりくださった皆様と対話の機会をいただきました。様々なお声からうかがえる日頃の過重な基地負担、そして現在もまた米軍由来と思われる尋常ならざる感染拡大、その現実が県民を苦しめています。

 もはやこれは人権の問題であり、差別の問題である。憲法に言う法の下の平等が侵され、人道にもとる、許されざる事態が放置されている。そのことを、我々一同、よく心しなければなりません。

 さて、岸田総理、あなたは、なぜこのような状況下で、復帰五十年の節目に当たる今年、沖縄が選挙に見舞われ続ける今年、十年ぶりの沖縄振興法が改正される今年、基地負担と尋常ならざる感染爆発に見舞われ県民が苦しむ今年、なぜこのときにあからさまに沖縄振興予算を大幅減額するんですか。圧力をかけ、見せしめとして、嫌がらせのように、札束で頬を張るかの強権的な対応を取るんですか。

 これは、かつて安倍、菅政権ですら踏み込まなかった強硬手段です。なぜ、一見謙虚で、丁寧を装う岸田政権がそこまでやるのか、その明確な理由をお聞きした上で、これを直ちに撤回し、昨年同等の予算を計上し直し、予算案の国会への再提出を要求して、総理の答弁を求めます。

 幾つか、地域立法の改正も予定されています。離島振興法もその一つです。

 日本には沖縄も含め四百に余る有人離島が存在をし、そこに約四十万人の方々が暮らしておられます。私自身、小豆島、直島、豊島含めた多くの離島を選挙区としています。離島の振興と発展は、海洋国家たる日本にとって最重要課題の一つです。

 中でも、あえて重要な政策課題を挙げるとすれば、やはり航路の問題です。高い運賃が、島民の暮らしと地場産業を圧迫し、本土からの観光客にも大きな負担、制約となっています。

 島に暮らす方々はよくおっしゃいます、我々にとっては航路も道路だと。

 もちろん、航路のみならず、地域のバス、鉄道、そしてひいては空路も含め、日本の公共交通は基本的に独立採算が求められてきました。一たび赤字になれば、すぐに整理、縮小、廃止が論ぜられ、直ちに地域の足が奪われます。

 本当にそれでよいのかを問い直す時代に入っています。これからの超高齢化社会、コロナ収束後のインバウンドの拡大なども見据え、交通弱者が多数存在する日本列島を想起し、公共交通を柱とした地域の振興策を練り直さなければなりません。そこでは、公共交通の名に真にふさわしく、公助が支え、独立採算の原則すらも大いに見直されるべきと考えます。

 欧州では、既に、鉄道は上下分離が一般化し、インフラは公共の所有、そして運行は民間が行い、全体としてコストを引き下げ、低料金での利活用を実現する例が多いと聞きます。また、航路に関しても、移動距離当たりの運賃を陸の鉄道とそろえることを原則とし、さらに、離島においては消費税を大幅に引き下げるなど、暮らしと産業を支える様々な工夫がなされていると聞きます。形式だけではなく、実質的な公平とは何かを考えていかなければなりません。

 日本では今でも道路予算のシェアが圧倒的に多く、公助が支える安価で利用しやすい公共交通の実現へと予算配分を整えていくべきではありませんか。特に、日本の離島航路には、事実上、国道の一部と目されるものも存在します。これらを含め、重要航路には道路財源を一部振り向けることを含めて、安心、安価に利用できる地域の足を確保すべきと考えますが、総理のお考えをお聞きします。

 社会の多様性並びに社会的包摂の観点からお聞きします。

 折しも昨年の東京オリンピック以来、ジェンダーの問題、多様性や社会的包摂の観点から、日本社会がいかに遅れているか、その後進性があらわとなりました。

 女性天皇の在り方を含めた皇室の在り方、安定的な皇位継承については、泉代表がお聞きしたとおりです。私は、婚姻制度の見直しについてお聞きしたいと思います。

 結婚に当たって姓の統一を強制する我が国の婚姻制度は、もはや先進国に例を見ないほど、極めて家父長的、前近代的なものと言わざるを得ません。あわせて、同性婚の問題についても、そろそろ国会は答えを出さなければなりません。

 与党に反対派が多数おられることはよく承知の上で、総理に御提案です。

 夫婦別姓、同性婚など、個々の人間観、人生観、社会観、家族観に関わるような政治課題については、必ずしも党派的政治色を前面に出すことは適切でなく、かつて子供への臓器移植を議論したときと同様、例えば、各党が党議拘束を解除し、それぞれの議員の良心と良識に委ね、法案の審議並びに採決を行うことも検討に値すると思われますが、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

 民主主義の枠組みについてお尋ねします。

 先頃、衆議院選挙区の定数について、総務省が、一票の格差を是正する観点から、十増十減が必要になるとの試算結果を公表しました。

 地方の議席が更に減少し、都会に集中する懸念は、私も共有するところです。しかしながら、法の下の平等をうたう現行憲法下において、区割り法で定めたルールの意味合いは重く、これに対する与党有力者の相次ぐ発言には首をかしげています。

 総理にお尋ねします。

 審議会の勧告が出た場合、これに従い、速やかに次期衆議院選挙に向けて、十増十減を基本として、新たな選挙区割りの議論を進めることを明確にされるべきと思いますが、答弁を求めます。

 外交問題についてお聞きします。

 総理のおっしゃる新時代リアリズム外交が何を意味するのか、よく分かりません。しかし、中国国内における人権弾圧の疑いは、国際社会として看過できません。国会決議の採択に向けて、最大与党の総裁として指導力を発揮すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 さらに、国際人権機関は、日本に対しても、再三にわたり、入国管理の適正化、司法判断の必要性、外国人の収容期間の上限制などを勧告しています。人権尊重、また国際社会の要請に応えるためにも、今国会に入管法の改正案を提出すべきであり、感染症法と同様、参議院選挙をにらんだ争点潰しだとすればこれは許されないと思いますが、総理のお考えをお尋ねしておきます。

 北方領土問題についてもお聞きします。

 総理が演説の中で述べられた、二〇一八年以降の、シンガポールのものを含め、首脳間でのやり取りを引き継ぐと明言されました。これは、五六年の日ソ共同宣言をベースとする、すなわち、安倍元総理が認めたとおり、二島返還をベースとして協議を進めるという理解でよろしいですか。総理の答弁を求めます。

 総理に速やかにお決めいただきたい諸点に加えて、最後に、総理が何をお決めになられたいのかまだ分からない、その点についてお伺いしたいと思います。

 新しい資本主義についてであります。

 私は、この間、泉代表とともに、街頭に立ち、地元香川はもちろんのこと、都内、沖縄、神奈川、各所で多くの人々の声に触れ、それを受け止め、共に悩み、考える機会をいただいてまいりました。

 なぜ対話を重んじるのか。それは、これから先も難しく厳しい時代が続くことをむしろ覚悟しているからであります。この先、様々な課題に取り組むに当たって、当たり障りのない解決策はもはやなく、むしろ、当たりながら障りながら前に進むしかありません。様々な意見や利害を調整し、立場を乗り越え、互いの信頼と尊重を旨として、求められる社会変革を遂げていく以外に選択肢がありません。そこで折り合いをつけ、納得感を高め、信頼を醸成していくには対話を重ねる以外にない、それを深く自覚しているからであります。

 対話の場では、多くの皆様から、生活の厳しさ、将来への不安が語られます。時に、それは政治や行政に対する不信にも直結しています。同時に、その悩みや不安が、自分の頑張りが足りないから、自己責任だと思い込まされている方も多く、そのことを危惧し、また胸を痛めてもいます。

 抱える不安の多くは実は政治と社会が原因であり、時代が大きく変わっているのに社会が変われない、そのはざまで多くの不安や苦しみがあることを明確にし、むしろ人々を自責の念から解放しなければなりません。その不安や心配に十分に手を差し伸べられない政治の責任をこそ率直に認め、国民の願いに真っすぐに応えなければなりません。

 総理のおっしゃる新しい資本主義とは何なのか。それは、果たして今の国民の願いや不安に応える問題意識でしょうか。

 日本社会の原型は、いわば昭和の時代に形作られました。人口は毎年増え、経済は高い成長。ほとんど全ての人々が正社員となり、給料は年々上がり、生活は向上し続ける。まさに右肩上がりの時代です。そこでは、一方、住宅から結婚、子育て、教育、医療や介護に至るまで、人生のほとんどに自助と自己責任が求められた時代でもありました。逆に言えば、それが成り立つ時代だったと思います。

 しかし、平成の三十年、前提は大きく変わりました。人口は減少に転じ、高齢化は進み、少子化と相まって人口構成は激変しました。これによって社会保障は揺らぎ、財政赤字は拡大。そして、新たに気候変動という深刻な課題も横たわっています。

 我々は、一体、これからどこへ向かうべきなのか、どのような未来を描き、どうそこにたどり着くのか。今、日本政治が答えを出さなければならないのは、まさにその問いに対してです。それは、我々が依存してきた暮らしと経済の基盤を根底から問い直し、まさに文明史的な転換を図るべき、大きな変革への道のりでもあります。

 実は、総理に御認識いただきたいシンプルな事実があります。今年、戦後七十七年目に入りますが、そのうち実に七十二年間、自民党が政権を掌握してきたという単純な事実です。

 これがある種の安定と繁栄につながった面も認めたいと思います。しかし一方で、ここに述べた人口減や高齢化、少子化、社会保障の揺らぎ、財政悪化に気候変動、あらゆる巨大な構造問題はほとんど手つかずで、その矛盾とツケをそのまま次世代に先送ろうとしているのもまた戦後七十二年間この国を支配し続けてきた自民党政治です。

 多くの国民は言い知れぬ閉塞感と不安感にさいなまれており、それは直ちにこの国の停滞と諦めにもつながっています。表面上の刹那な安定と引換えに構造改革を置き去りにしてきた、この国の政治の貧しさと愚かさ、そしてその責任の大きさを、我々野党はもとよりですが、長きにわたる政権政党の総裁として強く感じていただきたいんです。

 逆に、戦後成立した非自民政権の大半は、バブル崩壊後の失われた三十年の中にあります。更に言えば、そのうち二十年以上、もはや自民党は単独で政権を担当する力を失い、成り立ちの異なる公明党との連立、選挙協力、そして有権者の低投票率によって辛うじて体面と権力を維持してきた、そう言っても過言ではありません。

 つまり、総じて、バブル崩壊以降の失われた三十年において、昭和の右肩上がりの時代に適した自民党政治は、これを転換する理念と構想を持ち得ず、時代と状況の変化を先取る見識と力量に欠け、しかし、長年の政治の経験と技術で辛うじて体面を維持してきた。しかし、そのツケと矛盾は、いよいよ膨大なものとなり、国民生活と将来の見通しに極めて暗い影を落とし込んでいるのです。

 この三十年で時代が大きく変わったことを、まずは正面から認めなければなりません。人口減と高齢化はまだ入口。既に正社員の門は狭き門となって久しく、年々給料が上がるとは考えにくい厳しい時代。前提が大きく変わったにもかかわらず、依然として暮らしと人生のステージのほとんどにいまだに自助と自己責任が求められる昭和型の社会。これをいかに正しく変革し、むしろ公助を整え、互いに支え合い、助け合い、将来への見通しを共にするのか。確かな構造改革を進め、社会の持続可能性を回復し、次世代への責任を果たすのか。今、日本政治に求められているのは、その時代認識、見識と力量、そして決意と覚悟です。

 もちろん、これは耳当たりのよい話ばかりでは済みません。不都合な現実も聞きたくない真実も国民とともに直視して、前に進まなければなりません。逆に、この姿勢こそが、未来を切り開く可能性を秘めています。

 同時にそれは、有権者が政治に求めるものそのものが変化することをも意味しています。新たな時代にふさわしい政治家を選び、育む有権者。新たな時代を担う政治家と新たな時代の政治家を育む有権者。この二つが車の両輪となって未来を切り開いていくことを私は信じて疑いません。

 対話を旨とし、根本問題に取り組み、構造改革を進め、社会の持続可能性を回復し、未来への責任を果たす。立憲民主党はその挑戦を牽引する政党でありたい、そう願っています。

 困難な課題から逃げず、正面から向き合う日本社会。自らの誇りにかけて、子や孫に真っすぐに視線を向け、その解決に向け努力と苦心を重ねる大人たちの姿。そして、その先頭にあるべき、新たな時代にふさわしい日本政治の風景。そうした政治や社会、それぞれの生きざまや哲学、あるべき人間観や社会像が子や孫世代に引き継がれて初めてこの国の繁栄は未来永劫確かなものとなる、そう確信しています。今、国会に席を預かる我々には、それだけの時代的な使命、世代的な宿命を十分に認識し、自覚することが求められています。

 改めて、総理の言う新しい資本主義とは一体何なのか。成長と分配という言葉は聞き古しました。では、なぜそれが今まで達成されなかったとお考えなのか。重要な再分配の柱たる金融所得課税はなぜ早々に引っ込めたのか。地球環境との調和を唱える以上、炭素課税を含め、不都合に踏み込む覚悟はあるのか。そもそも、成長と持続可能性はどのように両立されるべき概念なのか。その具体的な中身、構想、実現に向けたプロセス、それを進めるに足る決意と覚悟をお聞きして、質問を終えたいと思います。

 が、ちょっと二分余りましたので、答弁は求めませんが、総理、最初の泉代表の質問に対する御答弁で、赤木裁判について、求償権があるとは考えておりませんという御発言でした。総理がそこまでおっしゃるなら、それはなぜそうなのか、なぜ求償権がないのか、それも含めて御説明される責任があると思います。

 もう一つ、学術会議の任命問題についての答弁もありました。泉代表が聞いたのは、この学術会議の任命問題が、手続が終了しているかどうかではありません。違法状態であるかどうかを聞いています。これに対して真っすぐお答えになる責任がこれもあると思いますので、指摘をしておきたいと思います。

 それもこれも含めて、いよいよ百日間のハネムーン期間を終えた岸田政権は、このコロナ感染爆発の中、いかなる手腕を発揮し、どのように国民の信に応えるのか、その真価が問われる。と同時に、我々野党は、この不備に対してどう応えていくのか。国民に政権の選択肢として、受皿として認知していただくために、我々野党はどうすべきなのか。我々野党側の責任も極めて重い、そのことを申し上げ、質問を終わりたいと思います。是非、真摯な、誠意ある回答を求めたいと思います。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 小川淳也議員の御質問にお答えいたします。

 まず冒頭、トンガ沖海底噴火に伴う政府の対応についてお尋ねがありました。

 十五日に発生したトンガ付近の大規模噴火に伴い、日本各地で潮位変化が観測されました。この変化は地震に伴う津波とは異なるメカニズムで発生したと考えられるものでしたが、日本各地で潮位の変化が生じた、それを踏まえ、気象庁において津波警報等を発表して安全確保と警戒を呼びかけるとともに、政府一丸となって情報収集等を行った、こうした次第でありました。

 そして、施政方針演説において取り上げなかったことについて御質問がありましたが、施政方針演説においてこの種の事案に言及するかどうかについては、様々な要素を総合的に勘案して判断するものでありますが、いずれにせよ、政府としては、常に緊張感を持って対応に万全を期してまいりたいと考えております。

 そして、オミクロン株の感染状況についてお尋ねがありました。

 全国の変異株PCR検査の結果によると、オミクロン株の疑いがあると結果が出た割合は、暫定で全体の約八割となっています。

 オミクロン株に関して、ブレークスルー感染の割合、あるいは重症化率及び致死率に関するワクチン接種者と未接種者の割合については、まだ十分な科学的知見が集積されておりませんが、国立感染症研究所によれば、デルタ株と比較してオミクロン株では重症化しにくい可能性が示唆をされています。

 御指摘の国内症例百九十一例の解析については、発生初期段階のオミクロン株の特性を分析、評価するために厚生労働省を中心に実施したものであり、引き続き、国内外の科学的知見を収集し続け、有識者の意見を伺いながら、対策を進めていきたいと考えております。

 水際対策と国内における感染拡大についてお尋ねがありました。

 水際対策における施設待機については、各国の感染状況等を総合的に判断の上、リスクに応じて三日、六日、十日の施設待機措置を組み合わせて、現時点で計八十三か国・地域を指定しています。

 このうち三日間の待機措置については、新型コロナの潜伏期間が平均で五日から六日とされており、出国前七十二時間以内の検査で陰性が確認された時点から入国後三日目まで三回の検査を実施することで陽性者を把握できることから、定めている次第です。

 こうしたG7で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑え、国内感染の増加に備える時間を確保することができました。世界の新規感染者数が一日二百八十万人を超える中で、内外のオミクロン株の感染状況の差は明らかであると考えます。

 過去五回の感染拡大において、例えば、保健所の業務の逼迫や、検査の目詰まり、コロナ病床が十分稼働しないといった事態が生じた経験を教訓にし、最悪の事態も想定しながら、医療提供体制の充実、予防、発見から早期治療への流れの強化に取り組んでまいりました。まずは、そうして確保した体制をしっかり機能させていきたいと考えています。

 新型コロナには未知のことも多く、全てを見通した上で判断を行えるわけではありませんが、科学的知見の集約を進め、専門家の意見も伺いながら、引き続き、先手先手で対応してまいります。

 昨年十二月の入国者数についてお尋ねがありました。

 入国者数を一日当たり三千五百人程度をめどに抑制する方針を受け、国土交通省において、邦人の帰国需要にも十分配慮しつつ、キャンセルやトランジットの状況も見通しながら、予約全体を抑制していくことといたしました。

 昨年十二月の日本到着便の予約数は、おおむね一日三千五百人を超える状況にあり、一日の最大予約数は約七千三百人、そして入国者の最大は五千八百四十一人でしたが、月末に向けていずれも減少し、十二月の一日当たりの入国者数平均は三千四百九十四人となりました。

 待機施設についても、自治体の協力を得つつ、最大限努力をし、入国者を受け入れられる必要な体制を整えた次第です。

 日本の医療体制についてお尋ねがありました。

 我が国において、公立・公的病院に加え、多くの民間病院により、全体として地域の医療が支えられていると認識をしています。こうした中、今般の新型コロナ対応においては、必要な方が確実に入院できる体制を整えるべく、公立・公的病院の専用病床化を進めつつ、患者受入れに関する書面の締結を通じて民間病院にも御協力をいただくことで、昨年の夏に比べて三割増が入院できる体制を確保しております。まずは、この確保した体制をしっかり機能させ、オミクロン株の感染拡大を乗り越えていきたいと思っています。

 その上で、今後、これまでの対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年六月をめどに、保健医療体制の確保など、中長期的な観点から必要な対応を取りまとめてまいります。

 これまでの政府の対応や意思決定についてお尋ねがありました。

 内閣総理大臣就任以来、内外の山積する課題にスピード感を持って決断を下し対応してきました。その中で、自治体や当事者の皆さんの声に丁寧に耳を澄まし、方針変更すべきと判断したことは、政治として思い切ってかじを切ることもありました。

 大切なことは、国民にとって最善の対応を取るということです。今後とも、状況が変化する中で、国民にとってよりよい方策となるよう粘り強く対応し、国民にしっかり説明するよう努めてまいります。

 建設工事受注動態統計調査に係る検証委員会の報告の受け止めと今後の対応等についてお尋ねがありました。

 先般公表された報告書において、長年にわたり複数の不適切な処理がなされていたことや、問題発覚後に国土交通省内部における不適切な事後対応の問題があったこと等が明らかになりました。このことは極めて遺憾であると思っております。

 責任の所在については、国土交通省において、関係した職員の責任を明らかにし、処分を速やかに行います。

 また、GDP統計の推計においては、今般の建設工事受注動態統計は直接用いられておらず、直接の影響はないものと承知をしております。

 今回の報告を受け、私から国土交通大臣及び総務大臣に対して再発防止等にしっかりと取り組むよう改めて指示を行ったところであり、今後、統計委員会において、今回の報告の精査と今後の公的統計の改善方策の検討を行うこととしております。

 今般の事態を重く受け止め、政府統計の信頼確保に全力で取り組んでまいります。

 森友学園案件に関する訴訟についてお尋ねがありました。

 今般の訴訟については、これまでも財務大臣から説明しているとおり、財務省において、昨年十月に示された原告側の主張を踏まえて方針を検討した結果、赤木氏が、当時、様々な業務に忙殺され、決裁文書の改ざんの指示への対応を含め、厳しい業務状況に置かれる中、精神面、肉体面において過剰な負荷が継続したことにより自死に至ったことについて国の責任は明らかであるとの結論に至ったことから、損害賠償義務を認めたものと承知をしています。

 今回、損害賠償義務を認めるに当たり、財務省に対し、別途継続している訴訟に引き続き丁寧に対応するとともに、様々な場において真摯に説明を尽くしていくよう指示をしたところであり、今後も、必要に応じて、しっかり説明をしてまいります。

 福島復興についてお尋ねがありました。

 福島の原子力災害被災地域における復興再生は粘り強く取り組むことが必要であり、引き続き、国が前面に立って取り組んでまいります。

 このため、復興再生の基本方針を踏まえ、生活環境整備、長期避難者への支援に加え、特定復興再生拠点区域の整備及び区域外の避難指示解除に向けた取組、そして国際研究教育拠点の構築、風評の払拭等を住民に寄り添って進めてまいります。

 また、ALPS処理水の海洋放出については、地元の皆様の懸念を払拭できるよう、処分の必要性や処分の方法、IAEA等によるモニタリングの在り方、処理水の安全性、風評対策の内容などについて、丁寧に説明を尽くしてまいります。

 沖縄振興予算についてお尋ねがありました。

 令和四年度の沖縄振興予算については、現下の厳しい財政状況の下、各事業の所要額を積み上げた結果、総額二千六百八十四億円を計上いたしました。

 この中で、子供の貧困対策、基地跡地利用、北部地域及び離島の振興など、今後の沖縄振興における重要分野について予算を増額し、産業競争力の強化、産業人材の育成に係る予算を新規に計上しています。また、昨年十二月に成立した令和三年度補正予算による追加額二百十八億円等を踏まえつつ、公共事業、一括交付金等についても、必要な額を計上しております。

 これらの予算を効果的、効率的に執行するとともに、これまで整備したインフラ等を最大限活用し、強い沖縄経済の実現に向けて取り組んでまいります。

 離島航路を始めとした公共交通の予算についてお尋ねがありました。

 政府としては、地域の生活や経済活動を支える公共交通の機能が維持されるよう、各交通手段について必要な予算額を計上し、地方自治体と連携しつつ取り組んでいるところです。

 この中で、離島航路については、運営費補助金や島民向け運賃割引のための補助といった財政的な支援を講じているところです。

 特に、コロナ禍により需要が減少している離島航路については、先般の補正予算により、感染症対策や観光振興などの支援を弾力的に行っております。

 今後とも、地域のニーズも踏まえながら、離島航路を始めとした地域の足の確保、維持にしっかりと取り組んでまいります。

 選択的夫婦別氏制度及び同性婚に関する党議拘束についてお尋ねがありました。

 党議拘束の在り方については、これは各党で御判断すべき事柄であり、内閣総理大臣としてその点についてお答えをすることは控えたいと思います。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、しっかりと議論し、より幅広い国民の理解を得る必要があると感じています。

 また、同性婚制度の導入については、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであると考えております。

 衆議院小選挙区の区割り改定についてお尋ねがありました。

 衆議院選挙区画定審議会設置法に規定されているいわゆるアダムズ方式により、令和二年国勢調査の日本国民の人口に基づく都道府県別定数を計算すると、十増十減となります。審議会は、この都道府県別定数による区割り画定案の勧告を、同法に基づき、本年六月二十五日までに行うものとされていると承知をしております。

 政府としては、その勧告に基づく区割り改定法案を粛々と国会に提出するというのが現行法に基づく対応であると認識をしております。

 中国における人権状況と国会決議についてお尋ねがありました。

 私の内閣では、人権を始めとした普遍的価値を守り抜くことを重視しています。我が国としては、こうした普遍的価値が中国においても保障されることが重要であると考えます。

 こうした我が国の立場は、これまでも、様々なレベルで中国側に直接働きかけてきています。私自身も、昨年十月の習近平主席との首脳電話会談で、香港、新疆ウイグルの人権状況について直接提起をいたしました。

 その上で、国会決議の採択は、国会でしかるべく御議論いただくべきものであると考えております。

 入管法の改正についてお尋ねがありました。

 国外に退去すべきことが確定した外国人の送還忌避、収容の長期化は非常に重要な課題であり、政府としても、その解決のために入管法の改正が必要であるという認識、これは従来と変わっておりません。

 改正法案については、通常国会への提出を検討中のものとしたところであり、法務省において慎重に検討を今行っております。引き続き、改正の必要性について丁寧に説明を行い、早期に国会に提出できるよう調整を進めていく必要があると考えております。

 北方領土問題についてお尋ねがありました。

 北方領土は我が国が主権を有する島々であり、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるというのが我が国の一貫した立場であります。

 ロシアとの平和条約については、次の世代に先送りせず、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針です。

 二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの諸合意を踏まえ、二〇一八年以降の首脳間でのやり取りを引き継いで、粘り強く交渉を進めていきたいと考えます。

 そして、新しい資本主義についてお尋ねがありました。

 新自由主義的な考え方によって格差や気候変動といった弊害も顕著になっている中、こうした様々な弊害を是正するために、市場、競争に全てを任せるのではなく、官と民が協働して、そうした課題をむしろ新時代の成長エンジンとしていきます。新しい資本主義とは、今述べたように、市場の失敗、外部不経済を是正する仕組みを成長戦略と分配戦略の両面から資本主義の中に埋め込むことにより、成長を実現するとともに、社会課題を解決し、持続可能なものとしていく、こうしたものであります。

 金融所得課税については、令和四年度の与党税制改正大綱において、様々な観点を踏まえ、総合的に検討していくということとされています。分配戦略において、各施策を進めていくためには順番が大切であり、まずは実際の所得を底上げする施策に重点を置きました。

 気候変動対策については、二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減及び二〇五〇年カーボンニュートラルという目標は堅持いたします。この野心的な目標を実現するためには、需給両面での産業構造変革と行動変容が必要です。この分野への投資を早急に倍増させ、成長のエンジンといたします。諸外国の対応状況をにらみつつ、カーボンプライシングの枠組みを早期に提示いたします。

 コロナ克服後の日本経済再生に向けた最も重要な経済政策は、新しい資本主義の実現であると考えています。今年の春、新しい資本主義のグランドデザインと、そして実行計画を取りまとめてまいりたいと存じます。(拍手)

     ――――◇―――――

山田賢司君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(海江田万里君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(海江田万里君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    金子 恭之君

       法務大臣    古川 禎久君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  末松 信介君

       厚生労働大臣  後藤 茂之君

       農林水産大臣  金子原二郎君

       経済産業大臣  萩生田光一君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    山口  壯君

       防衛大臣    岸  信夫君

       国務大臣    小林 鷹之君

       国務大臣    二之湯 智君

       国務大臣    西銘恒三郎君

       国務大臣    堀内 詔子君

       国務大臣    牧島かれん君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    山際大志郎君

       国務大臣    若宮 健嗣君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       内閣府副大臣  赤池 誠章君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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