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第6号 令和4年2月22日(火曜日)

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令和四年二月二十二日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  令和四年二月二十二日

    午後一時開議

 第一 令和四年度一般会計予算

 第二 令和四年度特別会計予算

 第三 令和四年度政府関係機関予算

 第四 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 令和四年度一般会計予算

 日程第二 令和四年度特別会計予算

 日程第三 令和四年度政府関係機関予算

 日程第四 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 令和四年度一般会計予算

 日程第二 令和四年度特別会計予算

 日程第三 令和四年度政府関係機関予算

議長(細田博之君) 日程第一、令和四年度一般会計予算、日程第二、令和四年度特別会計予算、日程第三、令和四年度政府関係機関予算、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。予算委員長根本匠君。

    ―――――――――――――

 令和四年度一般会計予算及び同報告書

 令和四年度特別会計予算及び同報告書

 令和四年度政府関係機関予算及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔根本匠君登壇〕

根本匠君 ただいま議題となりました令和四年度一般会計予算外二案につきまして、予算委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、予算三案の概要について申し上げます。

 令和四年度一般会計予算の規模は百七兆五千九百六十四億円であり、前年度当初予算に対して〇・九%の増加となっております。

 歳出のうち、国債費及び地方交付税交付金等を除いた一般歳出の規模は六十七兆三千七百四十六億円であり、前年度当初予算に対して〇・七%の増加となっております。

 歳入のうち、公債金は三十六兆九千二百六十億円で、公債依存度は三四・三%となっております。

 特別会計予算については、十三の特別会計があり、会計間の取引額などの重複額等を控除した歳出純計額は二百十八兆四千八百六十六億円となっております。

 政府関係機関予算については、沖縄振興開発金融公庫など四機関の予算を計上しております。

 なお、財政投融資計画でありますが、その規模は十八兆八千八百五十五億円で、前年度当初計画に対して五三・八%の減少となっております。

 この予算三案は、去る一月十七日本委員会に付託され、同月二十一日鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取し、同月二十四日から質疑に入り、基本的質疑、一般的質疑、集中審議、参考人質疑、中央公聴会、分科会を行うなど、慎重に審査を重ね、昨二月二十一日締めくくり質疑を行いました。

 審査においては、経済・財政・金融政策、新型コロナウイルス感染症への対応、新しい資本主義の具体的取組、建設工事受注動態統計調査の不適切処理問題、燃油価格高騰対策、デジタル田園都市国家構想、こども家庭庁の創設、賃金引上げに向けた取組、経済安全保障など、国政の各般にわたって熱心に質疑が行われました。その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。

 昨日、質疑を終局後、立憲民主党・無所属、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党から、それぞれ、令和四年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出され、趣旨の弁明がありました。

 次いで、予算三案及び各動議について討論、採決を行いました結果、各動議はいずれも否決され、令和四年度予算三案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 三案につき討論の通告があります。順次これを許します。源馬謙太郎君。

    〔源馬謙太郎君登壇〕

源馬謙太郎君 立憲民主党の源馬謙太郎です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました令和四年度一般会計予算外二案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 新型コロナウイルス感染症が確認されてから、既に二年以上がたちました。

 亡くなった多くの皆様に心から哀悼の意を表しますとともに、闘病されている皆様、後遺症に苦しんでいる皆様にお見舞いを申し上げます。

 また、医療従事者を始めとして、この二年間、感染症対策に最前線で従事してくださっている皆様に心より感謝を申し上げます。

 まず、予算の中身に先立って、その前提となる岸田政権の基本姿勢に関する問題について申し上げたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は、減ってはいるものの、今なお高い水準を推移しており、特に、重症者及び新型コロナウイルスに感染して亡くなった方の数は増加を続けています。二月に入り、一日における新型コロナウイルス感染症に感染して亡くなった方の数は過去最多、自宅死が相次いだ昨年夏の第五波を超えるという重大な事態になっています。

 一方で、新型コロナワクチンの三回目接種はいまだ全国民の約一四%と遅々として進まず、先進国の中で最下位に準ずる水準にとどまったままです。

 我々が予算委員会でも度々指摘してきたように、三回目接種までの期間を昨年十二月の段階で六か月に前倒ししていれば、これほどまでに重症者数や死亡者数が拡大していなかったのではないかと思います。対応が全て後手後手になり、ワクチン接種回数などの目標を定めることにも時間をかけた、政府が招いた結果と言わざるを得ません。

 加えて、検査に必要な機器や体制も不足しており、濃厚接触者ですら検査できない状況が各地で続いています。医療現場だけでなく、保健所業務も逼迫しています。

 岸田総理は、総理就任以降、最悪の事態を想定しているとしきりに口にしてきましたが、今のこの状況も想定していたのでしょうか。実際には、想定も準備も甘かったのではないですか。

 その原因は、国民の犠牲と協力によって何とか抑え込んだ第五波後の小康期間に安心し、ブースター接種や検査体制の拡充といった準備を怠り、オミクロン株による第六波到来の直前まで水際対策を緩和したり、挙げ句の果てには米軍の検査なし入国を放置するなどといった、政府全体の気の緩みにあります。誰がやっても難しいコロナ対策ですが、判断の先送りによる対応の遅れは人災です。

 国土交通省の統計不正への対応においては、岸田内閣の不誠実で無責任な態度が明らかになりました。

 不正のあった建設工事受注動態統計は、GDPの算出にも影響を与え、予算編成の土台ともなる国の基幹統計の一つです。統計は民主主義の根幹を支える国民の公共財であり、統計不正はまさに民主主義の危機そのものです。それにもかかわらず、大した影響はないと済ませようとする姿勢は問題です。

 この問題について、岸田総理は、昨年十二月の臨時国会において、運用については既に令和二年一月の数字より改善を行った旨、答弁をされました。しかし、実際にはその後も都道府県から不適切な数字の報告が続いており、その影響がどの程度のものなのか分からない状況が続いています。昨年十二月の岸田総理の答弁は明らかに誤っていたものの、その誤りも一向に認めようとしません。

 予算の各目明細書に多数の誤りがあったことも明らかになりました。

 昨年の通常国会でも、政府提出法案に条文自体の誤り十四件を含む計百八十一件のミスがあり、政府は重層的な点検体制の整備など再発防止策をまとめたにもかかわらず、それが生かされなかったのは、政府全体に緊張感が欠如していることの表れと言わざるを得ません。

 今国会に政府が提出を予定している経済安保推進法案の責任者の一人である藤井前内閣審議官の更迭問題についても、岸田内閣の対応は極めて不誠実でした。

 法案作成過程及び経済安全保障関連の予算の情報が外部に流出した可能性はないのか、まさに安全保障が懸念される中、政府は、事実関係の調査中として、予算委員会でも十分な説明を行わず、大きな懸念が残るまま予算案の採決を行おうとしています。一体、調査にどれだけ時間をかけるのでしょうか。何週間もかかる調査ではないと思います。法案提出の前には必ず調査結果を明らかにすることを求めたいと思います。

 自民党京都府連が府内の選挙区の候補者から金を集めて地元の議員に配っていた問題もありました。

 選挙買収の疑いもあり、政治の信頼を根底から揺るがす問題です。国家公安委員長が私の思いで額を決めたという九百六十万円は、ぴったり同額が地方議員に配られていました。国家公安委員長の思いとは一体どんなものだったのでしょうか。しかも、予算委員会で、御自身の政治資金に関する質問に、官僚が用意した答弁を読んでいる国家公安委員長を見て、日本の警察行政に不安を覚えました。

 このとおり、予算の提出者たる政府の姿勢には枚挙にいとまがないほど多くの問題がありますが、予算の中身にもまた多くの問題が存在しています。

 令和四年度予算においては、オミクロン株を始めとする第六波の到来を踏まえ、感染拡大防止のための予算、そしてコロナ禍で困難な状況にある国民の暮らしと事業を守るための予算を十分に措置すべきです。しかしながら、政府の予算案では全く足りません。

 また、新しい資本主義の実現を図るための予算を措置するとのことですが、そもそも新しい資本主義とは何なのか、予算委員会での審議を通しても、結局、全く分かりませんでした。

 一方で、五兆円にも及ぶ過大な予備費、年度内に支出される見込みのない公共事業関係費、消費税を財源とした病床削減、病院統合事業に係る予算、普天間飛行場の辺野古移設に係る予算、カジノに関連する予算などが計上されていますが、これらは削減、縮減すべきです。

 こうした認識に基づいて、我々立憲民主党は、予算委員会において、政府予算の足らざるを補い、無駄を削る組替え動議を提出いたしました。

 その内容は、無料検査の実施、治療薬の開発支援の拡充、後遺症への対応など新型コロナの感染拡大防止と万全な医療提供体制の確立に向けた取組の強化に係る本当に必要な予算、新型コロナの影響で減収したワーキングプアの方々への給付金支給、トリガー条項の発動と灯油、重油の購入費補助、奨学金の返還免除など国民の暮らしを守るための予算、事業復活支援金の拡充、観光産業事業継続支援金の創設、地域公共交通への支援、農業者戸別所得補償制度の復活と拡充、文化芸術への支援など国民と事業を守るための予算であり、十一兆六千億円の追加歳出を求める内容となっています。

 また、持続可能な社会の実現に向けた予算として、本年十月から予定されている一定年収以上の後期高齢者の医療費窓口負担割合の引上げの撤回、政府案よりも充実した介護、障害福祉職員、保育士等の処遇改善、児童手当の拡充、カーボンニュートラルの実現に向けた施策の抜本的強化、統計不正の防止に向けた統計人材の確保などに五兆一千億円を計上すべきとしています。

 大変残念ながら、この組替え動議は否決されてしまいました。与党の皆様には、第六波到来の影響を受けて、二年にも及ぶこの困難な状況に追い込まれている国民の声が聞こえていますか。苦しんでいる国民や事業者が本当に十分救われると思いますか。

 我々の提出した組替え動議は、そうした国民の切実な声を予算に反映したものです。国難とも言える現在の状況を乗り越えていく上では、野党が出した案でも、いいところは取り入れるべきであり、今回の与党の皆様の対応は非常に残念であります。我々が再三提案してきたにもかかわらず拒否し続けてきたワクチン接種の目標設定を、最後は与党に質問されてそれに答えるという体裁にこだわった、予算委員会で度々見た光景と重なります。

 以上、この令和四年度予算は、新型コロナウイルス感染症第六波の到来にもかかわらず、感染拡大防止のための予算も、コロナ禍で苦しむ国民の暮らしと事業を守るための予算も全く不十分であり、そして、これからの時代を見据えて持続可能な社会を実現していくための予算としても全く不十分です。一方で、不要な予算が多額に計上されている内容となっており、賛成できるものではありません。

 今後も、対応がとにかく遅く、検討ばかりでなかなか前に進まない政府の姿勢をただすとともに、積極的に政策を立案し実現していくことをお誓い申し上げまして、反対討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 今枝宗一郎君。

    〔今枝宗一郎君登壇〕

今枝宗一郎君 自由民主党の今枝宗一郎です。

 私は、会派を代表して、令和四年度一般会計予算外二案に対し、賛成討論を行います。(拍手)

 まず初めに、コロナで亡くなられた方に心よりお悔やみを、闘病中の方にお見舞いを申し上げます。

 この二年、医療などエッセンシャルワーカーの皆様には、大変な御尽力をいただいてまいりました。また、国民の皆様には、今回の蔓延防止等重点措置でも、感染拡大防止に御協力をいただいております。おかげで、現在では、多くの地域で新規陽性者が減少に転じております。重症者や亡くなられる方が遅れて増加をいたしますし、またBA・2の問題もございますので、緊張感を持たねばなりませんが、国民の皆様には、まず心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 さて、ここで、日本のコロナの実態を諸外国と比較してみたいと思います。

 オミクロン禍の感染者は、先進諸外国では人口百万人当たり十万人から二十万人ほどであります。我が国は二万人程度と、五分の一から十分の一であります。死者も、先進諸外国は人口百万人当たり三百人ほど、アメリカでは特に多く、六百人に近い中で、我が国では二十七人程度と、十分の一から二十分の一であります。

 オミクロンは感染力が強く、これまでと同じ対応をしていれば、医療適応ではない入院で病床はすぐに満床になり、医療崩壊をし、更に多くの命が危機にさらされていたかもしれません。しかし、政府においては、水際対策で一か月以上の時間を稼ぎ、この間に得られたオミクロンの科学的知見に合った対策をしっかりと取ったおかげで、病床逼迫を第五波よりも抑えております。

 また、国民の暮らしに直結をする雇用に関しましても、失業率五%、一〇%の先進諸外国もある中で、我が国は二・七%と抑えておりました。これは、雇用調整助成金の特例措置が非常に大きな効果を上げていると考えております。特例措置は、今後も、現在の高い水準を維持するべきであります。

 ほかにも、中小企業支援や、子育て世代、生活が苦しい方、学生などへの給付金で、暮らしを支援いただいております。

 コロナ対策だけではなく、本予算は、格差や長期の低成長といった我が国の構造的問題を抜本的に解決する新しい資本主義の実現を図る予算となっております。

 以下、本予算に賛成する主な理由を申し述べます。

 第一に、成長戦略といたしまして、イノベーションを重視し、宇宙、海洋や、デジタル、AI、量子など、約一・四兆円という過去最大の科学技術振興費を確保しております。

 中でも、グリーン産業はとりわけ有望であります。新技術の研究開発に重点を置かれ、カーボンニュートラルに向け、多様な選択肢を目指せる、こういった予算になっております。水素社会の実現の鍵になる小型の水素ステーションの整備の補助金も初めて盛り込まれました。

 また、ただの成長ではなく高付加価値型の社会経済を目指すためには、分散型の国づくり、一極集中の打破、地方移住も進めねばなりません。そのためにデジタル田園都市国家構想は最適であり、交付金で地方のデジタル技術の実装、地方創生を支援することとしております。

 第二に、新しい資本主義の実現に重要な分配戦略、中でも賃上げであります。

 先進諸外国では、この三十年間、実質賃金は少なくとも三割か四割ぐらいは上がっておりますけれども、残念ながら、我が国ではほとんど変わっておりません。

 賃金が上がれば、可処分所得が増え、そして消費も伸びる。まさに、分配が成長を押し上げ、好循環につながってまいります。

 しかし、我が国では、企業の成長がなかなか賃上げや分配につながっていかない、成長から分配の間の目詰まりが問題でありました。それをまさにパラダイムシフトさせようとしているのが岸田政権だと思います。

 それゆえ、本予算案には、看護、介護、福祉、保育、幼児教育などの現場で働く方々の給与を三%引き上げる、官の賃上げが盛り込まれております。さらに、春闘も是非とも頑張っていただきまして、これを民の賃上げにつなげていきますけれども、そのとき課題になるのが生産性の低さであります。

 生産性を上げるとともに、賃上げをした企業への補助金、補助率の引上げ、企業収益を株主還元中心だけでなく、賃上げや下請、取引企業への配分の適正化を推進する、こういった予算も措置をされております。

 第三に、一般予備費五千億円に加え、コロナへの備えとして予備費五兆円が措置されています。

 今年度の予備費も四千億円程度あり、ガソリン高騰へのリッター二十五円水準の対策も可能な予算があります。

 現在我々が行うべきことは、コロナやウクライナの厳しい情勢を踏まえて、適切な対応をすること、本予算を早期に成立させ、いち早く国民や事業者の皆様に支援策の中身をお知らせし、予算執行をできるだけ円滑化、お手元に届けることではないでしょうか。

 本予算に御賛同賜りますことを心からお願い申し上げ、私の賛成討論とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。(拍手)

 まず冒頭、立憲民主党及び共産党に苦言を申し上げます。

 菅直人元総理らが、福島の多くの子供たちが甲状腺がんに苦しんでいるなどと事実に基づかない虚偽の情報を国際社会に拡散し、風評被害を繰り返している件について、また、立憲民主党議員による原英史国家戦略特区ワーキンググループ座長代理に対する誹謗中傷について、立憲民主党はいまだに関係者の処分や謝罪をしていません。

 加えて、予算委員会の中央公聴会において、共産党の宮本徹議員は、予算委員会理事会が承認した原公述人の陳述内容について、私的な反論をとうとうと述べたなどと、公聴会をおとしめる発言を行いました。

 人権と公益を擁護する観点から、立憲民主党及び共産党には改めて厳正な対処を強く求めておきたいと存じます。

 私は、会派を代表して、令和四年度予算三案に反対の立場から討論を行います。

 これまで、政府は、新型コロナに対して、医療提供体制の強化、ワクチン接種、人流、経済活動の制限など、様々な感染防止対策を講じてきました。それらが一定の効果を生んでいることは率直に評価するものです。

 しかし、コロナ禍は三年目を迎えてもなお収束のめどが見えず、しかも、新型のオミクロン株の流行による第六波が到来するなど、新たな局面を迎えています。

 今必要なことは、これまでの対策を漫然と続けるのではなく、対策内容の検証と総括をしっかりと行うことです。そうしてこそ、より効果的な蔓延防止対策が実現でき、重症化を防ぎ、不幸にもお亡くなりになるという事態をなくすことができます。そして、蔓延防止と経済活動再開を両立させる、命とともに暮らしを守る対策への転換こそ求められています。

 総理は、新型コロナ対策に万全を期しつつ、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を図るための予算と言います。しかし、予算案をめぐる我が党の質疑を通じて、総理が言う新しい資本主義は、従来の古い自民党政治と何ら変わらず、旧態依然とした、中身のない単なる言葉遊びだということがはっきりしてきました。

 私たちが予算案に反対する理由の第一は、政府のコロナ対策が、進行、拡大しつつある第六波の実態に全く合っておらず、今後予測される新たな感染拡大の事態にも十分な対応ができないことです。

 オミクロン株は感染力が非常に大きく、無症状の陽性者や軽症の感染者、そしてその濃厚接触者がこれまでとは桁違いの規模とスピードで拡大しています。そのため、医療機関も、療養施設も、保健所も、対応が追いついていけない状況が生まれています。

 その上、濃厚接触者が増大したことで、医療や福祉などのいわゆるエッセンシャルワーカーが不足する深刻な事態になっています。そのほかのあらゆる職種においても、コロナを原因とする人手不足や休業が広がっており、コロナそのものによって健康が脅かされるだけでなく、コロナ対策の規制によって暮らしと営業が圧迫されています。

 オミクロン株に軽症者が多いという特性を踏まえ、保健所を介さなくても患者自らが医療にアクセスして、診療所やクリニックで、検査や、抗体治療や、経口治療薬などによる治療ができるようにすべきです。

 我が党は、そのために、新型コロナ感染症の感染法上の分類を現行二類から五類あるいは五類相当に改めるように提案しています。これは、コロナの脅威を軽視しているからではなく、誰もが必要なときにいつでも医療にアクセスできる権利と機会を保障し、コロナから国民の健康を守るための必要な措置だからです。

 政府は、様々な口実でこの提案を拒否していますが、法改正も含め、蔓延の状況に合わせて臨機応変に対応する姿勢が求められます。

 反対理由の第二は、国民が求める経済成長の展望が全く示されていないことです。

 総理は、成長と分配の好循環を実現する要が賃上げだとしています。賃上げはもちろん必要なことです。しかし、肝腎な具体策は、優遇税制や補助金、最低賃金の見直しといった小手先のつけ焼き刃ばかりです。これでは好循環による持続可能な経済成長など望むべくもなく、一人一人の勤労者への実際の賃上げ効果も限定的です。

 例えば、介護職員、保育士等の賃上げへの補助金にしても、一人九千円の給付が実現するかのような説明によって期待が膨らみましたが、実際の介護現場で働く全ての人たちで分配すれば四千円ほどになってしまい、期待を裏切るものになっています。その上、小さな事業所ほど給付を受けにくい仕組みになっています。補助をするなら、思い切って、個々の職員に直接給付する仕組みに転換すべきです。

 また、総理は、勤労者皆保険制度を目指すとも言いますが、これは、既存の、企業を通じた社会保障の仕組みを多様な働き方をしている全ての人に拡張するもので、ますます企業側に大きな負担を強いるものとなります。結果的に賃上げを阻む要因になりかねません。

 私たち維新の会が提案している社会保障制度改革は、企業という船にみんなを乗せるという発想をやめて、政府、行政が直接個人にセーフティーネットを提供しようというもので、最低所得保障制度、ベーシックインカムもその一つであります。

 そもそも、本来、賃上げは企業間の市場競争の結果として実現されるものであって、人材の流動化を阻む規制を見直すことこそ真っ先に取り組むべき課題です。この労働市場の改革は、労使間の交渉任せでは実現できるものではありません。労働市場の流動化や解雇規制の在り方について、抜本的な法律改正を含めて、直ちに議論を進めていくべきです。

 また、中国の台頭とその脅威が日増しに顕在化してきたさなかにあって、実効性のある経済安全保障の確立は急務です。しかし、政府の方針では、中国に遠慮してか、経済安保の概念や規制のルールが曖昧にされ、中途半端な対策の羅列になってしまっています。

 中でも、法制化が遅れた上に、報道によれば、与党の一部からの要求により、準備していた法案から調査拒否に対する罰則が削除されたといいます。調査と罰則は、法の実効性を担保する重要な要素です。自由な経済活動と安全保障を両立させるのであれば、安易に罰則を軽減するのではなく、対象の産業や具体的な品目を見分ける組織的なインテリジェンスとその体制を構築することこそ重要です。

 政府が関連する人員を約二百八十名増員することは評価しますが、実際の仕事の中身は、省庁横断で取組を進めるなどと、従来型で抽象的な構想しか持っていません。経済安保にとって必要不可欠なスパイ防止法の制定についても、後ろ向きの姿勢です。

 反対の第三の理由は、国民に大きな負担増を押しつけておきながら、行政改革も政治改革も進んでいないことです。

 コロナ禍で国民所得が大幅に減少し、令和三年度の国民負担率は、過去最大の四八%になるとの見込みです。その上、七十五歳以上のうち、およそ二割の方々には、医療費窓口負担を現行の二倍に引き上げることをお願いしなければなりません。

 こうした中で、どんな行政改革があったでしょうか。全くと言っていいほど見当たりません。

 鳴り物入りで始まろうとしているこども家庭庁にしても、幼保一元化を実現するのならともかく、むしろ逆に、認定こども園を加えた三元化を固定化し、文科省、厚労省、内閣府の権限をそのままに、その上に新たな役所を置くという、まさに屋上屋を重ねるものになっています。

 政府だけでなく、国会議員もまた、国民の厳しい目を自覚すべきです。

 今国会の冒頭から、議員一人一人に交付される月百万円の文通費の問題が注目されましたが、やっと各党間の協議が始まったというだけで、具体的には何も進んでいません。ルール作りは結構ですが、ルールがなければ何もできないというのであれば、国民の理解は得られません。自ら進んで、やれることはやる姿勢を示すべきです。我が党は、既に、領収書を添付した上で、使途を全て公開しています。他の議員各位におかれましても、同様に、自主的に使途公開を実施し、国民の負託に応えることを望むものです。

 私たち維新の会は、失われた三十年を乗り越え、格差社会を打破し、経済成長を取り戻すために、税制、社会保障制度、労働市場を三位一体で改革していく日本大改革プランを打ち出しています。これは、言葉を弄ぶだけの岸田政権の新しい資本主義に対して、具体的な中長期的ビジョンを示した対案です。

 税制においては、成長のための税制を目指し、消費税のみならず、所得税、法人税を減税するフロー大減税を断行すると同時に、ストック課税の在り方を見直し、フローからストックへを基軸とした、税体系全体の抜本的な改革が必要です。

 喫緊の課題としては、二年を目途として、期間限定の消費税五%の減税を実施することを提案しています。これは、長期低迷とコロナ禍を打破するために何としても必要なことです。

 コロナ禍に加え、ガソリン価格の高騰が国民生活に大きな打撃を与えており、この対策も急務です。我が党は、既に、ガソリン税を一時的に軽減するトリガー条項発動法案を国民民主党と共同で提出しています。総理は、トリガー条項も含めてあらゆる選択肢を排除しないと答弁しています。この言葉どおりの速やかな実現を強く求めるとともに、我が党も、法改正に向け、他会派とも引き続き力を合わせていく決意です。

 岸田総理の新しい資本主義がプランAとすれば、私たちの大改革プランはプランBと言えるものですが、そのどちらが国民の可処分所得を増やし、格差を是正して、真に豊かな生活を国民にもたらすのか。私たち維新の会は、同じ土俵の上で、逃げることなく、がっぷり四つに組んで、正々堂々と自民党、岸田政権と対決していくことをお誓い申し上げ、令和四年度予算三案に対する反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 公明党の稲津久です。

 ただいま議題となりました令和四年度予算案につきまして、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 初めに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に哀悼の誠をささげますとともに、現在治療中の皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 以下、主な賛成理由を申し述べます。

 第一に、感染拡大防止に万全を期し、国民の命と暮らしを守り抜く予算となっている点であります。

 令和三年度補正予算によって、既に、三回目のワクチン接種や飲み薬の確保、感染急拡大時も対応可能な医療提供体制の再構築に向けた取組が着々と進んでおります。

 その上で、本予算案において、新たな変異株等による予期せぬ状況変化に機動的に対応できるよう、五兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を確保して万全を期しており、雇用調整助成金や休業支援金、産業雇用安定助成金等による雇用の下支え、バスやデマンドタクシーなど地域の暮らしに不可欠な交通サービスの維持、活性化を支援するなど、コロナ禍から国民の命と暮らしを守り抜くものとなっております。

 第二に、コロナ後の経済再生の道筋を確かなものとするべく、新しい成長と分配の好循環を実現する予算となっている点です。

 まず、事業者がコロナ禍の克服へ前向きに取り組めるよう、四月以降も、日本政策金融公庫による新型コロナウイルス感染症特別貸付けを始め、DX等の新規設備投資や事業再構築といった前向きな取組に対する低利な融資制度を実施するとともに、資本性劣後ローンの活用といった柔軟な対応を継続することにし、事業再生や事業承継支援も強化しております。

 我が国の新しい成長に向け、その源泉となる科学技術振興費に、過去最高となる約一・四兆円が計上されています。未来社会実現の鍵となるAI、光・量子技術、先端半導体など重点分野の研究開発を戦略的に推進するとともに、研究力の向上に向けて、公明党が求めてきた博士課程学生に対する経済的支援やキャリアパス整備が盛り込まれたほか、財政投融資四・九兆円を投じて十兆円規模の大学ファンドが実現します。さらに、イノベーションの担い手となる研究開発型スタートアップ企業に対する支援を強化する点に大いに期待します。

 そして、成長戦略の柱となるグリーンとデジタルに大胆な投資をしています。

 グリーンについては、二〇五〇年カーボンニュートラル目標の達成に向け、工場等における省エネ設備への支援、クリーンエネルギー自動車や太陽光発電の導入支援、再生可能エネルギーの主力電源化や、カーボンリサイクル技術の開発、実用化に向けた研究開発等を推進することとしています。

 デジタルについては、デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、光ファイバーや5G基地局など、地方のデジタル基盤整備を進めるとともに、地方創生推進交付金一千億円を確保し、自治体を支援することとしています。

 また、昨年発足したデジタル庁を中心とした情報システムネットワークの整備に四千六百億円、デジタル行政のインフラとなるマイナンバーカードを来年度末までにほぼ全国民に普及する取組に約一千億円を計上したほか、公明党が誰一人取り残さないデジタル化を求めてきた、デジタル活用支援員による講習会の全国的な実施が盛り込まれるなど、行政のデジタル化を一層加速化することとしています。

 その上で、成長の果実を労働者に分配してこそ次なる成長につながるとの考えの下、人への投資に重点が置かれている点を大いに評価いたします。

 まず、賃上げについては、民間部門に先んじて、看護、介護、保育、幼児教育などの公的部門で働く方々の賃金を恒久的に三%引き上げることとしています。中小事業者に対しては、最低賃金の引上げを支援する業務改善助成金による財政支援を講ずるとともに、労務費の上昇や原油、原材料価格の高騰等によるコスト増をきちんと価格に転嫁できる環境を整備するため、下請Gメンの倍増による取締りの強化やパートナーシップ構築宣言企業の拡大など、下請取引の適正化対策を強力に推進することとしています。

 さらに、人への投資については、三年間で四千億円を投じるとした上で、来年度は一千十九億円を計上し、デジタルなど成長分野を支える人材育成のための教育訓練や、非正規労働者の正社員化といったキャリアアップのための訓練等を実施することとしています。これは、まさに、我が党の公約である女性デジタル人材十万人プランの実現につながるものであり、コロナ禍で影響を受けた女性が、教育訓練を受講し、デジタル分野で活躍することで、より高収入を得る機会を獲得できるものとして期待がされます。

 こうした分配戦略が、男女の賃金格差を是正し、家計の所得水準を向上させ、消費や投資の拡大につながり、また次の成長に連動する、まさに成長と分配の好循環の実現の鍵となります。

 第三に、子育て、教育支援が一層充実する点であります。

 幼児教育、保育の無償化、私立高校授業料の実質無償化、高等教育の無償化のいわゆる三つの無償化は、来年度も着実に実施することとしています。

 これに加えて、公明党の長年の主張が実り、いよいよ来年度から不妊治療の保険適用が実現します。

 そのほか、未就学児の国民健康保険料の軽減、さらには、公明党が求めてきた、家事や家族の世話などを日常的に行っている子供たち、いわゆるヤングケアラーに対する支援体制強化事業や、子供食堂など民間団体と連携した支援対象児童等見守り強化事業、多様な困難を抱える女性に対する民間団体による支援強化推進事業を新たに盛り込んでおります。

 このほか、気候変動の影響で災害が激甚化、頻発化する中、防災・減災、国土強靱化関連予算として三・八兆円を計上し、五か年加速化対策の二年目として計上した令和三年度補正予算と併せて、ソフト対策の強化やインフラの老朽化対策等の取組が一層加速化されることが期待されます。

 また、第二期復興・創生期間の二年度目に当たり、必要とされる復興施策を着実に推進するため、五千七百九十億円を計上したほか、通学路における交通安全対策を計画的かつ集中的に支援するための個別補助事業の創設など、国民生活の安全、安心に関わる重要課題に取り組むこととしています。

 さらに、みどりの食料システム戦略を踏まえた持続可能な食料システムや、農林水産物、食品の輸出拡大、また、課題となっているウッドショック対策とともに、国産材の安定供給体制を構築することが盛り込まれています。

 以上、令和四年度予算案は、令和三年度補正予算と一体で編成する、いわゆる十六か月予算として、感染対策に万全を期し、国民の命と暮らしを守り抜くとともに、成長と分配の好循環を実現し、ポストコロナの新しい社会における、経済再生への確かな一歩を踏み出すための予算であります。

 本予算案の速やかな成立と迅速かつ着実な執行を強く求め、私の賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 予算委員会での公聴会に関わって、衆議院規則第八十三条では、「公述人の発言は、その意見を聴こうとする案件の範囲を超えてはならない。」とされています。公聴会での私の発言は議会人として当然の指摘であり、自らを省みることなく、逆に私の発言を批判するなど、不当な言いがかりであると申し上げた上で、日本共産党を代表して、政府提出、二〇二二年度予算三案に反対の討論を行います。(拍手)

 まず、本予算に求められる最大の課題は、コロナパンデミックから国民の命と暮らしを守ることです。この点で、予算案は全く不十分です。

 新型コロナ感染が原因で亡くなる方が急増し、入院できず、検査も受けられない事態が生まれています。野党や自治体が昨年から求めてきた接種期間六か月でのワクチン三回目接種の判断に後れを取り、甘い見通しで検査キット確保やPCR検査能力、発熱外来を含む医療提供体制の整備が後手後手となった岸田政権の責任は重大であります。

 医療体制の確保では、マンパワーが何よりも大事です。パンデミックのさなか、地域医療構想に基づき公立・公的病院を始めとした急性期病床の削減を進めるのはやめるべきです。誰もが必要な検査、治療が受けられるよう、医療体制の確保を図るべきです。高齢者施設でのクラスターが広がっており、三回目ワクチン接種を急ぐと同時に、職員の頻回検査の頻度を上げる必要があります。

 コロナ禍が続く中、生活の困窮、営業苦が広がっております。事業復活支援金を持続化給付金プラス家賃支援給付金並みへ拡充するとともに、困窮者に対する給付金の拡充や、中小企業、小規模事業者への支援の拡充、消費税の五%への引下げ等が必要であります。我が党が改善を求めた小学校休業等対応助成金は申請の簡素化が図られましたが、対象者全員が利用できるよう、更なる改善を求めるものであります。

 予算委員会の審議を通じて、コロナ対策で在日米軍の検疫の大穴があることが明らかになりました。

 在日米軍は、昨年秋から日本と整合的な検疫を一方的にやめ、オミクロン株の感染拡大の要因になったにもかかわらず、その責任を認めず、今なお、出国前及び入国後の検査に抗原定性検査を使い、日本の検疫に合わせようとしておりません。ゲノム解析の結果も、いまだ知らせません。出入国に際しての検査をやめる際、日本側に伝えたか否か、両政府の言い分が食い違っているにもかかわらず、やり取りのメールも日米合同委員会の議事録も明らかにしようとしません。

 これでは国民の命と暮らしが守れません。岸田政権は、対米追従の姿勢を改め、日米地位協定を改定し、日本の検疫法を米軍にも適用すべきであります。

 第二に、本予算案は、新自由主義からの転換どころか、新自由主義、アベノミクスを継承するものです。

 年金削減や七十五歳以上の高齢者の医療費二倍化の一方、富裕層優遇税制の見直しは先送り、大企業優遇税制を温存、拡大しています。総理も、物価高が高齢者の暮らしに影響しているとお述べになりました。ならば、年金削減はストップすべきです。大企業、富裕層に力に応じた負担を求める大改革を行い、中小企業支援とセットの最低賃金引上げ、教育無償化、介護、障害者福祉、子育て支援の拡充を図るべきです。

 ケア労働者の処遇改善は、一桁足りません。抜本的に引き上げると同時に、公立保育園の保育士も含め全員の賃金が上がるよう、制度の改善を図ることを強く求めます。八百万人の労働者に影響を及ぼすマイナス人勧は撤回すべきです。

 ジェンダー平等の土台中の土台である男女賃金格差の是正に向け、岸田総理が我が党の求めに応じて企業への開示義務づけの検討を表明したことは一歩前進です。大事なことは、実効ある是正策を取ることです。賃金格差の是正を法で義務づけるべきです。コース別雇用管理など間接差別の是正にも真剣に取り組むべきであります。

 石炭火力発電への固執は、未来に対して無責任であると同時に、日本経済にとっても先のない道であります。廃止の目標を持ち、再エネ、省エネなど、気候変動対策を抜本強化すべきであります。

 第三に、本予算案は、「いずも」型護衛艦の空母への改修と、搭載機となるF35B戦闘攻撃機の取得、電子戦機や長距離ミサイルの開発など、実質的に敵基地攻撃能力の保有を進めるものであり、断じて許されません。

 重大なことは、岸田総理が、集団的自衛権行使での敵基地攻撃能力の検討を否定せず、その下で、岸防衛大臣が、我が国の戦闘機が相手国の領空に入って爆弾を落とすことについて、検討の選択肢として排除しないと明言したことであります。

 他国の領空に侵入して空爆を行い、無実の市民の命を奪う武力の行使が憲法上許されないことは明々白々であります。二〇一五年当時の安倍総理の答弁にも背きます。

 台湾有事を想定した日米共同作戦計画の策定は、沖縄、南西諸島住民を戦闘に巻き込むものであり、到底許されません。沖縄県民の民意を無視した辺野古新基地建設は、直ちに中止すべきです。土地買収費用の異常なかさ上げが明らかになった馬毛島基地建設の撤回を求めます。

 軍事に軍事で対抗する軍拡競争は、地域の緊張を悪化させるだけです。憲法九条に基づく平和外交に本気で真剣に取り組むことを強く求めるものであります。

 以上、指摘し、反対討論といたします。(拍手)

議長(細田博之君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)

 初めに、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々と御遺族の方々にお悔やみを申し上げます。

 また、感染されて闘病中の方々の一刻も早い回復をお祈り申し上げます。

 また、感染リスクに向き合い、社会生活に必要不可欠な仕事に就かれている皆様に心から敬意を表しますとともに、感染拡大防止に協力していただいている全ての国民の皆様に感謝を申し上げます。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました令和四年度予算三案につきまして、賛成の立場から討論いたします。

 正直申し上げて、本予算案は、私たち国民民主党が目指す内容に比べれば、百点満点ではありません。だからこそ、私たちは、賃上げ税制の拡充や教育国債の発行による教育予算の倍増、トリガー条項の凍結解除などを柱とする組替え動議も提出をいたしました。反対多数で否決されたことは残念です。

 しかし、不十分な点があるものの、以下の理由から、党として賛成を決定いたしました。

 第一に、いまだコロナ禍という緊急事態にあることから、予算の早期成立が求められていること。

 第二に、賃上げや人づくりを重視する姿勢は、国民民主党がさきの衆議院選挙でも掲げた給料が上がる経済の実現、人づくりこそ国づくりと方向性において同じであること。

 そして、第三に、国民生活にとって目下最大の課題である原油価格の高騰に対して、国民民主党が衆議院選挙の追加公約で掲げたトリガー条項の凍結解除によるガソリン値下げを岸田総理が検討することを明言し、実現に向けた方向性が明らかになったこと。

 以上であります。

 これらを踏まえ、令和四年度予算案に賛成することといたしましたが、野党が当初予算に賛成するのは、昭和五十二年以来四十五年ぶりです。そのときは、昭和四十八年の第一次オイルショックと昭和五十四年の第二次オイルショックの間の年で、原油価格の高騰によって生じた狂乱物価と言われるインフレと、それを抑え込むために行った公定歩合の九%引上げという金融引締めによって景気が悪化し、不況に陥った時代でもありました。

 今も、ウクライナ情勢の緊迫化もあって、まさに同じようなことが起きようとしています。オイルショック以来の原油価格の高騰に国民があえいでいる今だからこそ、野党は反対という前例踏襲的な対応ではなく、何が今の国民生活と経済にとって最良かという観点から、政治家として判断したものです。

 コロナ禍を経た新しい時代には、国会における与野党の関係も新しいものにしていく必要があると考えます。

 他方で、不十分な点があることも事実です。特に、私たちが重視している人への投資について、倍増といいながら、当初予算の文教科学振興費は増えていません。人への投資をどうやって倍増させていくのか、私たち国民民主党の声も聞いて政策立案を行っていただくことを強く要請いたします。

 そもそも、私がトリガー条項の凍結解除の必要性を最初に訴えたのは、安倍政権下の二〇一八年十月の代表質問でした。その後、岸田総理就任後の代表質問で提案し、昨年の総選挙中に追加公約として掲げ、選挙後の代表質問、予算委員会でも繰り返し提案してきました。ずっと、凍結解除は適当ではないとの答弁でしたが、先週、二月十八日の予算委員会集中審議での私の質問に対して、初めて、御指摘の点も踏まえ、あらゆる選択肢を検討すると答弁をいただきました。言い出しっぺとして、トリガー条項の円滑な発動に国民民主党としても協力していきたいので、速やかな実現を改めて要請します。

 とにかく、今、トリガー条項の凍結解除によるガソリン値下げの具体化が急がれます。当面、予備費を使って現在の石油元売各社への補助額を拡充することでつなぐことはやむを得ないと思われますが、ウクライナ情勢の変化によっては、四月以降に一バレル百二十五ドルを超えるような水準に達し、今より更に三割近く高騰する可能性も指摘されています。こうした最悪の事態に備えて、速やかに税制改正の検討を開始し、トリガー条項を機動的に発動できるようにすることは、危機管理対応としても不可欠です。

 発動時の地方財政やマーケットの混乱回避策、発動、解除要件の見直し、そして油種の追加などについて、早急に検討すべきです。

 ガソリン価格の高騰に苦しむ国民を一刻も早く救うため、トリガー条項発動による、リッター二十五円十銭、軽油については十七円十銭の減税を可能とし、消費者や事業者に負担減のメリットが分かりやすい制度にすべきです。今のままでは、事業者のコスト負担が増えるばかりで、賃上げの原資が吹き飛んでしまい、賃上げどころではありません。

 賃上げ、そして私たちが掲げる給料が上がる経済の実現にはトリガー条項の凍結解除が急がれることを改めて議場の皆さんにも訴えたいと思います。

 私たち国民民主党は、コロナ禍の真っただ中で、改革中道、対決より解決を掲げて結党した政党です。これからも、永田町の前例にとらわれず、何が国民にとってベストなのか、この判断基準に従って、一つでも多くの公約を実現するため、あくまで政策本位で行動してまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。

 ただいまから十分後に記名投票をもって採決いたしますので、しばらくお待ちください。

    ―――――――――――――

    〔発言する者あり〕

議長(細田博之君) 御静粛に。

 令和四年度一般会計予算外二案を一括して採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。

 なお、今回の投票につきましては、順次間隔を空けて登壇していただくため、通常より時間をかけて氏名点呼を行わせます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(細田博之君) 投票漏れはありませんか。速やかに投票してください。

    〔投票継続〕

議長(細田博之君) 速やかに投票願います。

    〔投票継続〕

議長(細田博之君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

    〔発言する者あり〕

議長(細田博之君) コロナ蔓延の折ですから、私語は慎んでください。

 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百五十二

  可とする者(白票)        三百一

  否とする者(青票)       百五十一

議長(細田博之君) 右の結果、令和四年度一般会計予算外二案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

    ―――――――――――――

令和四年度一般会計予算外二案を委員長報告のとおり決するを可とする議員の氏名

あかま 二郎君   あべ  俊子君   安倍  晋三君   逢沢  一郎君

青山  周平君   赤澤  亮正君   秋葉  賢也君   秋本  真利君

東   国幹君   畦元  将吾君   麻生  太郎君   甘利   明君

五十嵐  清君   井出  庸生君   井野  俊郎君   井上  信治君

井上  貴博君   井林  辰憲君   井原   巧君   伊東  良孝君

伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君   伊藤  達也君   池田  佳隆君

石井   拓君   石川  昭政君   石田  真敏君   石破   茂君

石橋 林太郎君   石原  宏高君   石原  正敬君   泉田  裕彦君

稲田  朋美君   今枝 宗一郎君   今村  雅弘君   岩田  和親君

岩屋   毅君   上杉 謙太郎君   上田  英俊君   上野 賢一郎君

江崎  鐵磨君   江渡  聡徳君   江藤   拓君   衛藤 征士郎君

遠藤  利明君   小倉  將信君   小里  泰弘君   小田原  潔君

小野寺 五典君   小渕  優子君   尾崎  正直君   尾身  朝子君

越智  隆雄君   大岡  敏孝君   大串  正樹君   大塚   拓君

大西  英男君   大野 敬太郎君   奥野  信亮君   鬼木   誠君

加藤  鮎子君   加藤  勝信君   加藤  竜祥君   柿沢  未途君

梶山  弘志君   勝俣  孝明君   勝目   康君   門山  宏哲君

金子  俊平君   金子  恭之君   金田  勝年君   上川  陽子君

亀岡  偉民君   川崎 ひでと君   神田  憲次君   神田  潤一君

菅家  一郎君   木原  誠二君   木原   稔君   木村  次郎君

城内   実君   黄川田 仁志君   岸   信夫君   岸田  文雄君

北村  誠吾君   工藤  彰三君   国定  勇人君   国光 あやの君

熊田  裕通君   小泉 進次郎君   小泉  龍司君   小島  敏文君

小林  茂樹君   小林  鷹之君   小林  史明君   小森  卓郎君

古賀   篤君   後藤  茂之君   後藤田 正純君   河野  太郎君

高村  正大君   國場 幸之助君   佐々木  紀君   佐藤   勉君

齋藤   健君   斎藤  洋明君   坂井   学君   坂本  哲志君

櫻田  義孝君   笹川  博義君   塩崎  彰久君   柴山  昌彦君

島尻 安伊子君   下村  博文君   新谷  正義君   菅   義偉君

杉田  水脈君   鈴木  英敬君   鈴木  馨祐君   鈴木  俊一君

鈴木  淳司君   鈴木  貴子君   鈴木  憲和君   鈴木  隼人君

関   芳弘君   薗浦 健太郎君   田所  嘉徳君   田中  和徳君

田中  英之君   田中  良生君   田野瀬 太道君   田畑  裕明君

田村  憲久君   平   将明君   高市  早苗君   高階 恵美子君

高木   啓君   高木   毅君   高木  宏壽君   高鳥  修一君

高見  康裕君   武井  俊輔君   武田  良太君   武部   新君

武村  展英君   橘  慶一郎君   棚橋  泰文君   谷   公一君

谷川  とむ君   谷川  弥一君   津島   淳君   塚田  一郎君

辻   清人君   土田   慎君   土屋  品子君   寺田   稔君

冨樫  博之君   渡海 紀三朗君   土井   亨君   中川  貴元君

中川  郁子君   中曽根 康隆君   中谷   元君   中谷  真一君

中西  健治君   中根  一幸君   中野  英幸君   中村  裕之君

中山  展宏君   永岡  桂子君   長坂  康正君   長島  昭久君

二階  俊博君   丹羽  秀樹君   西田  昭二君   西野  太亮君

西村  明宏君   西村  康稔君   西銘 恒三郎君   額賀 福志郎君

根本   匠君   根本  幸典君   野田  聖子君   野中   厚君

葉梨  康弘君   萩生田 光一君   橋本   岳君   長谷川 淳二君

鳩山  二郎君   浜田  靖一君   林   幹雄君   林   芳正君

平井  卓也君   平口   洋君   平沢  勝栄君   平沼 正二郎君

深澤  陽一君   福田  達夫君   藤井 比早之君   藤丸   敏君

藤原   崇君   船田   元君   古川   康君   古川  禎久君

古屋  圭司君   穂坂   泰君   星野  剛士君   細田  健一君

細野  豪志君   堀井   学君   堀内  詔子君   本田  太郎君

牧島 かれん君   牧原  秀樹君   松島 みどり君   松野  博一君

松本  剛明君   松本   尚君   松本  洋平君   三谷  英弘君

三ッ林 裕巳君   御法川 信英君   宮内  秀樹君   宮崎  政久君

宮澤  博行君   宮路  拓馬君   宮下  一郎君   武藤  容治君

務台  俊介君   宗清  皇一君   村井  英樹君   村上 誠一郎君

茂木  敏充君   盛山  正仁君   森   英介君   森山   裕君

八木  哲也君   保岡  宏武君   簗   和生君   柳本   顕君

山際 大志郎君   山口  俊一君   山口   晋君   山口   壯君

山下  貴司君   山田  賢司君   山田  美樹君   山本  左近君

山本ともひろ君   山本  有二君   吉川   赳君   吉野  正芳君

義家  弘介君   和田  義明君   若林  健太君   若宮  健嗣君

鷲尾 英一郎君   渡辺  孝一君   渡辺  博道君   赤羽  一嘉君

伊佐  進一君   伊藤   渉君   石井  啓一君   稲津   久君

浮島  智子君   大口  善徳君   岡本  三成君   河西  宏一君

北側  一雄君   金城  泰邦君   日下  正喜君   國重   徹君

輿水  恵一君   佐藤  茂樹君   佐藤  英道君   斉藤  鉄夫君

庄子  賢一君   高木  陽介君   竹内   譲君   角田  秀穂君

中川  宏昌君   中川  康洋君   中野  洋昌君   浜地  雅一君

平林   晃君   福重  隆浩君   古屋  範子君   山崎  正恭君

吉田 久美子君   吉田  宣弘君   鰐淵  洋子君   浅野   哲君

岸本  周平君   鈴木   敦君   鈴木  義弘君   田中   健君

玉木 雄一郎君   長友  慎治君   西岡  秀子君   古川  元久君

三反園  訓君

否とする議員の氏名

安住   淳君   青柳 陽一郎君   青山  大人君   荒井   優君

新垣  邦男君   井坂  信彦君   伊藤  俊輔君   石川  香織君

泉   健太君   稲富  修二君   梅谷   守君   江田  憲司君

枝野  幸男君   おおつき紅葉君   小川  淳也君   小熊  慎司君

小沢  一郎君   大河原まさこ君   大串  博志君   大島   敦君

大西  健介君   逢坂  誠二君   岡田  克也君   岡本 あき子君

奥野 総一郎君   落合  貴之君   金子  恵美君   鎌田 さゆり君

神谷   裕君   菅   直人君   城井   崇君   菊田 真紀子君

玄葉 光一郎君   源馬 謙太郎君   小宮山 泰子君   後藤  祐一君

神津 たけし君   近藤  和也君   近藤  昭一君   佐藤  公治君

坂本 祐之輔君   櫻井   周君   重徳  和彦君   階    猛君

篠原   豪君   篠原   孝君   下条  みつ君   白石  洋一君

末次  精一君   末松  義規君   鈴木  庸介君   田嶋   要君

堤  かなめ君   手塚  仁雄君   寺田   学君   徳永  久志君

中川  正春君   中島  克仁君   中谷  一馬君   中村 喜四郎君

長妻   昭君   西村 智奈美君   野田  佳彦君   野間   健君

馬場  雄基君   原口  一博君   伴野   豊君   福田  昭夫君

藤岡  隆雄君   太   栄志君   本庄  知史君   馬淵  澄夫君

牧   義夫君   松木けんこう君   松原   仁君   道下  大樹君

緑川  貴士君   森田  俊和君   森山  浩行君   谷田川  元君

山岡  達丸君   山岸  一生君   山崎   誠君   山田  勝彦君

山井  和則君   柚木  道義君   湯原  俊二君   吉川   元君

吉田 はるみ君   米山  隆一君   笠   浩史君   早稲田 ゆき君

渡辺   創君   足立  康史君   阿部  弘樹君   青柳  仁士君

赤木  正幸君   浅川  義治君   井上  英孝君   伊東  信久君

池下   卓君   池畑 浩太朗君   一谷 勇一郎君   市村 浩一郎君

岩谷  良平君   浦野  靖人君   漆間  譲司君   遠藤  良太君

小野  泰輔君   奥下  剛光君   金村  龍那君   沢田   良君

杉本  和巳君   住吉  寛紀君   空本  誠喜君   高橋  英明君

中司   宏君   馬場  伸幸君   早坂   敦君   藤田  文武君

藤巻  健太君   堀場  幸子君   掘井  健智君   前川  清成君

三木  圭恵君   美延  映夫君   岬   麻紀君   守島   正君

山本  剛正君   吉田 とも代君   吉田  豊史君   和田 有一朗君

赤嶺  政賢君   笠井   亮君   穀田  恵二君   志位  和夫君

塩川  鉄也君   田村  貴昭君   高橋 千鶴子君   宮本  岳志君

宮本   徹君   本村  伸子君   緒方 林太郎君   吉良  州司君

北神  圭朗君   仁木  博文君   福島  伸享君   大石 あきこ君

たがや  亮君   山本  太郎君   海江田 万里君

     ――――◇―――――

 日程第四 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第四、地方税法等の一部を改正する法律案、日程第五、地方交付税法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長赤羽一嘉君。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 地方交付税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、地方税法等の一部を改正する法律案につきましては、土地に係る固定資産税及び都市計画税の負担調整措置について、コロナ禍における支援策として、令和四年度について商業地等の課税標準額の上昇幅を半減する措置を講ずること、また、賃上げ促進策として、法人事業税の付加価値割における給与等の支給額を増加させた場合の特例措置の拡充を行うこと、そして、住宅借入金等に係る個人住民税について、特別税額控除の延長等を行うことでございます。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきましては、地方財政の収支が不均衡な状況にあること等に鑑み、令和四年度分の地方交付税の総額の特例措置を講ずるほか、地方交付税の単位費用等の改正、震災復興特別交付税の確保、自動車税減収補填特例交付金及び軽自動車税減収補填特例交付金の廃止等の措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る二月八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、同日両案について金子総務大臣から趣旨の説明を聴取した後、十日に質疑入りいたしました。その後、十五日、十七日及び昨二十一日に質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、両案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、委員会において、持続可能な地方税財政基盤の確立並びに新型コロナウイルス感染症及び東日本大震災等への対応に関する件について決議を行いました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。おおつき紅葉君。

    〔おおつき紅葉君登壇〕

おおつき紅葉君 立憲民主党・無所属のおおつき紅葉です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案に対し、いずれも反対の立場で討論を行います。(拍手)

 まず冒頭、新型コロナウイルス感染症や相次ぐ災害によってお亡くなりになられた方に心から哀悼の意を、療養されている方、困難を抱えている方に心からお見舞いを申し上げるとともに、医療従事者、自治体職員、エッセンシャルワーカーの皆様に心から感謝を申し上げます。

 それでは、地方税法等の一部を改正する法律案に反対する理由について申し上げます。

 第一に、本来目指すべき分権社会に向けた税源移譲がなされていない点です。

 所得格差や資産格差がますます拡大する中、税制においても所得再配分機能を強化する観点からの見直しが不可欠です。あわせて、分権、自治を進める立場から、税源移譲を始め税の分権化も求められています。政府案は、小粒な改正ばかりで、極めて不十分と言わざるを得ません。

 第二に、固定資産税について、商業地のみ税額の上昇幅を半分に抑える措置が残された点です。

 昨年度は、二一年度限りの臨時異例の措置として、住宅地や農地等も含めた土地に係る税額が据え置かれました。今回、税額が上昇する住宅用地や農地等については既定の負担調整措置による負担を求める一方、商業地だけ減額というのは公平を欠きます。そもそも、固定資産税は市町村の基幹税であり、国の一存で決定することのないよう配慮すべきです。また、税収減になる自治体への補填も不十分です。

 第三に、効果が不明確な賃上げ促進税制が地方税にも盛り込まれている点です。

 岸田総理の目玉政策の一つとして、賃上げ促進税制の見直しが行われます。元々、二〇一五年度に法人事業税付加価値割の課税標準から一定額を控除できる仕組みが導入されたものの、効果が出ているとは言い難いとの指摘があります。そもそも、企業の七割近くが赤字法人で法人税を納めていない中、黒字企業あるいは大企業だけが減税の恩恵を受けるとすれば、中小企業の労働者との賃金格差を拡大させることになりかねません。

 第四に、燃油高騰対策が講じられていない点です。

 燃料の高騰が国民生活や事業活動に大きな影響を及ぼしています。政府は元売への補助金で対応していますが、低減効果は僅かです。

 総理は、昨日の予算委員会で、ようやく、トリガー条項も含めてあらゆる選択肢を排除せず、更なる対策を早急に検討したいと発言しました。しかし、トリガー条項を発動可能にするには法改正が必要であるのに、本改正案には盛り込まれておらず、対応が後手後手であると言わざるを得ません。

 また、トリガー条項の発動が一年間続いた場合、地方で五千億円程度の減収が見込まれ、トリガー条項を発動する際には、地方の減収分を国費で補填するなど、地方財政の安定にも十分配慮する必要があります。

 あわせて、トリガー条項の効果の及ばない灯油や業界で燃料として使う重油の高騰対策も強化するよう求めます。

 第五に、地域医療構想に基づき再編を行った医療機関に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の創設が、公立病院の統廃合を誘導する懸念があることです。

 しかし、感染症病床全体の約六割を占め、感染症医療においては非常に重要な役割を担っているのが公立病院を始めとする公的病院であり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、公立病院等が担う役割の重要性が再認識されています。

 公立病院の再編統合を前提とせず、地域医療の確保のための自治体の主体的な取組を十分に尊重するべきです。

 第六に、森林環境譲与税について、今回の法案では手つかずとなっている点です。

 山崩れや流木、氾濫などの大きな災害が毎年のように発生しており、森林整備の財源を手厚く確保していくことには異論はありません。

 しかしながら、制度開始の二〇一九年度と二〇年度に市区町村に配分された資金の五四%が使われず、基金に積み立てられていたことが明らかになりました。配分が手厚い大都市部では使い道が少ない一方、配分額が少ない小規模自治体は少額過ぎて使途がなく、積み立てておくしかないという状況です。

 自治体への配分基準で人口割が三割を占め、森林の少ない都市部が優遇されていることが要因ではないでしょうか。森林面積や林業関連の指標に重点化した配分にするとともに、専門的な人材確保等にも使えるよう使途を見直すなど、課題の解決が必要です。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 二〇二二年度の地方交付税総額や地方が自由に使える一般財源の確保、臨時財政対策債の大幅抑制、交付税特別会計借入金の償還額増加などは、一定評価できるものです。

 しかし、以下のような問題があります。

 第一に、交付税率の引上げが見送られている点です。

 財源不足額も一九九〇年代以来の縮小となったとはいえ、前年度から繰り越された約一・三兆円に依存しており、これを差し引けば、依然として四兆円近くの財源不足額が存在しています。地方交付税法第六条の三第二項に基づく地方交付税率の引上げなど、地方交付税の財源不足への抜本的対策を行うべきです。

 第二に、赤字地方債である臨時財政対策債の一層の縮減、廃止が求められる点です。

 確かに、三年連続で新規分の発行が行われず、初めて一兆円台まで縮小し、臨財債残高も前年度から二・一兆円減少しています。

 しかし、二十年以上も臨時の状態が続き、地方からも廃止の意見が強く寄せられています。後年度の地方交付税で償還するはずだった既往の臨財債の償還を新たな赤字地方債の発行で賄うということでは、財政を圧迫し、住民生活に影響が出かねません。

 第三に、職員数の増加にかかわらず、給与関係経費自体は減少している点です。

 保健師、児童福祉司、一般職員を含む計画人員が純増傾向にあり、人材の強化を図る兆しが見られることは評価します。今後の業務量の増加を考えれば、給与関係費、人員の確保を図るとともに、会計年度任用職員を始めとする臨時、非常勤職員の均等待遇を前進させるべきです。

 第四に、税収及び交付税総額の見通しへ懸念がある点です。

 内閣府が十五日に発表した二〇二一年の国内総生産速報値は、物価変動を除く実質で、前年比一・七%増となり、三年ぶりのプラス成長となっています。

 しかし、政府は、実質GDPを二・六%と見込んでおり、二二年度は三・二%の見通しで税収を見積もっています。今後、税収減や交付税の減額による混乱が生じることのないよう、強く求めます。

 さて、岸田新政権が掲げる新しい資本主義に盛り込まれたデジタル田園都市国家構想、カーボンニュートラル、科学技術・イノベーションなどは、いずれも多くの地域の政策に依存しており、これに従来の新型コロナ対策、保健医療、社会保障の取組、さらには人口減少社会における社会インフラの維持管理、公共交通対策など、多くの財政負担が生じる可能性があります。

 一般行政経費において、地域社会のデジタル化の推進、まち・ひと・しごと創生事業、地域社会再生事業費も別枠で確保されていますが、将来にわたる安定財源として経常経費化する必要があります。持続可能な地方税財政の姿をいかに描いていくかが大きな課題です。

 最後に、今季、地元北海道を始め多くの地域で大雪や厳しい寒さに見舞われています。雪害対策や灯油価格への支援のための特別交付税の対応に万全を期していただきたいと思います。

 地方の声、そして、これからの世代の声をしっかりと聞くことをお願いし、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 守島正君。

    〔守島正君登壇〕

守島正君 日本維新の会、守島正です。

 私は、会派を代表して、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 我々日本維新の会は、基本政策である維新八策二〇二一の中で、地方自治、国の在り方を示しています。すなわち、明治維新後の廃藩置県以降、連綿と続いてきた中央集権体制から、地方分権体制、道州制に移行し、国の役割を明確に絞り込み、国の機能強化と地方の自立を実現するというものであります。

 現在の、国が決定して地方が執行するというやり方の限界は、まさに、今現在、コロナ対応における国と地方の関係で露呈されています。

 昨年十二月、我が党の代表である松井大阪市長が、コロナ対応での十万円支給をめぐり、五万円のクーポンには意味がないと全額を現金で一括給付するという方針を示し、結果として、国もそれを認め、大阪市では年内の一括給付をいち早く実現したことは記憶に新しいところであります。

 今後、ますます我が国でデジタルトランスフォーメーションが進行すれば、国から地方に権限を移譲していくという考えを更に超え、地方が決定し国が基幹インフラを使って執行するという形へと変化していくことが考えられます。地方が各々で給付金に関わる意思決定をして、国がマイナンバーにひもづいた国民の口座に振り込むといったような形であります。

 当然、そうした体制に移行していくためには、財源も地方に移譲していく必要があります。消費税は地方自立のための基幹財源と位置づけ、税率設定を地方に任せた地方税に移行する、国が総需要を算定して交付する地方交付税は廃止し、調整財源の配分を地方が合議で決める新たな制度として地方共有税を創出するというのが我が党の一貫した考えであります。

 二〇〇六年、第一次安倍内閣では、更なる分権改革と地方への税源移譲を盛り込んだ地方分権改革推進法が時限立法として制定されましたが、二〇一〇年に失効して以降、分権改革は足踏みをしています。今こそ、地方が自らの権限と責任で地域ごとの実情に応じた対策を国の財政措置を待たずに実行できる、十分な税財政基盤を確立する体制への移行を推し進めるべきであります。

 日本維新の会は、大阪での改革の経験を全国に広げ、国政に生かすべく、これまで、地方の声を重視した政策を政府に求め、提案してきました。

 十年にわたり維新の会の首長により行政運営が行われ、私自身も市議を長く務めた大阪市では、この間、市政改革を強力に推し進めた結果、六年後の二〇二八年度には、自立した財政運営が可能となる不交付団体となる見通しに至ったことを明らかにしました。日本維新の会が、自ら、自立した自治体への取組、努力を実践しているのであり、実現すれば実に三十五年ぶりのこととなります。

 地方の財源不足に対して、建設地方債の増発などを除いた残余の不足分については国と地方が折半して補填する、いわゆる折半ルールが令和四年度まで適用され、その折半部分を地方が臨時財政対策債を発行して賄うこととなっています。しかしながら、本来は、地方財政審議会が出した意見書のとおり、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は法定率の変更により、その全額について国が対処すべきものであり、臨時財政対策債の発行自体をなくすべきと考えております。

 こうした観点に立って、議題に上がっている来年度の地方交付税を眺めてみると、地方交付税総額は前年よりも〇・六兆円上回る十八・一兆円を確保しつつ、臨時財政対策債の発行を前年度より三・七兆円と大幅に抑制し、残高も二・一兆円の縮減を実現したこと、加えて、交付税特別会計借入金の償還額も令和四年度で四千億円、令和五年度で二千億円増額することとしており、不十分ではあるものの、我が党がこれまで主張してきた内容に沿うものとなっており、一定の評価ができるものであります。

 一方、令和三年度補正予算による地方交付税の増額、臨財債の償還、一・三兆円の繰越し等を相殺すれば、令和四年度の財源不足額は四兆円規模となり、構造的に財源不足が続いていることに変わりはありません。臨時財政対策債についても、借金で借金を返済する自転車操業の状態が長らく続いてきたこともあり、償還スキームがはっきりと見通せていません。今後、更なる高齢化で社会保障費が増大していくこと、公共施設の老朽化対策などで地方財政がますます厳しくなることも予見され、構造的な課題についての抜本的な解決策は見えていません。

 本来、予算案に反対をした場合、予算に密接に関連する本法案には反対をするのが政党としての筋という見方もあります。

 しかしながら、国、地方共に厳しい財政状況の中、総務大臣が先頭に立って臨財債発行を大幅に抑えた予算案を作成されたことは、再来年以降は臨財債を発行しないという方向性の道筋をつけたという意味で、大変意義のあることと考えています。

 こうした道筋が、今後、地方財政の抱える根本的な構造問題を解決し、地方が安定的な自主財源を確保していくための第一歩となるためにも、今こそ、二〇一〇年以降停滞している分権改革を進めていくことが肝要であります。

 ポストコロナの我が国の持続可能な未来を切り開いていくためのビジョンとして、道州制への移行を一歩でも前に進めていくことに大いに期待をいたしまして、本法案の賛成討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 宮本岳志君。

    〔宮本岳志君登壇〕

宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、地方税法、地方交付税法等改正案への反対討論を行います。(拍手)

 新型コロナウイルスの感染爆発で、療養者数も重症者数も増加し、命を落とす方も増え続けています。

 保健所機能が逼迫し、新規感染者の把握が遅れ、発熱しても受診できない方、入院調整がつかず、翌日、自宅で容体が急変し死亡された方など、医療崩壊とも言える深刻な事態が広がっています。

 住民の命を守るために、地域医療の拡充、公衆衛生の確保など、公的部門の再構築が緊急の課題であるにもかかわらず、岸田政権は、今年も、地方の歳出を前年度と同水準に抑え込む方針を地方に押しつけています。

 一般財源総額実質同水準ルールと呼ばれるものは、前年度を下回らないように財源を確保するなどと言いながら、実際は上回ることを抑制するものにほかなりません。

 この方針のために、保健師や児童福祉司等の増員のための財政措置も、他の一般財源を削減、抑制した範囲の措置に狭められ、国民の命に関わる今日の深刻な現場の実態に全く応えたものにはなりません。

 また、行政削減と個人情報の利活用のための自治体DXの推進を地方に押しつけることは許されません。

 今行うべきは、住民の命と暮らしを守り支えるための財政需要を十分に算定し、地方交付税の法定率の引上げ等を行い、地方に必要な財源を確保することです。抜本的な見直しを求めます。

 地方税法についても、格差と貧困が広がる下で、生計費非課税の徹底や、所得再分配機能の強化などが求められています。

 ところが、本法案では、昨年度に据え置いた土地の固定資産税について、二〇二二年度はその措置を取り払い、商業地や住宅用地、農地等の課税標準額は引き上げられます。国民にとっては増税です。

 岸田政権が目玉政策とする賃上げ促進税制は、賃上げを保証するものにはなっておりません。

 地域医療構想に基づき再編を行った医療機関の不動産取得税の特例は、地域医療機関の再編統合を税制から後押しするものです。命を守る医療体制を崩すことは許されません。

 以上、反対討論といたします。(拍手)

議長(細田博之君) 西岡秀子君。

    〔西岡秀子君登壇〕

西岡秀子君 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 私は、ただいま議題となりました二法案につきまして、会派を代表して、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 国民民主党は、コロナ対策を始め、増大する社会保障関連経費等の歳出増を踏まえて、地方の一般財源総額を安定的に確保することが極めて重要だと考えております。

 この度の改正は、地方交付税総額について前年を上回る十八・一兆円が確保され、地方の借金とも言える臨時財政対策債の発行が一・八兆円と大幅に抑制された点は評価できると考えます。

 しかし、根本的な解決がなされたわけではありません。国税、地方税共に大幅な増収が見込まれ、繰越金が一・三兆円あったことによるものであり、法定率の引上げを含めた抜本的な見直しを行い、地方の借金である臨時財政対策債によらない、持続可能な地方財政制度の確立を今こそ断行すべきです。

 また、停滞する我が国の経済を動かすためには、国民民主党が最重要課題として掲げる賃上げ税制について、より多くの法人に賃上げを促す観点から、法人事業税、固定資産税及び消費税の減税措置を講じ、幅広く効果を波及させ、賃上げに結びつけるための独自の法律案を提出いたしました。

 なお、今回の改正には、法人事業税の付加価値割における特例措置の拡充が盛り込まれており、その内容は不十分ではあるものの、賃上げを強力に推進する姿勢を示されたものと理解いたします。

 さらに、国民民主党は、昨年の衆議院選挙で、全政党の中で唯一、トリガー条項凍結解除を公約として戦い、法案も提出いたしました。

 現下のガソリン価格を始めとした燃料費の高騰が地方の暮らし、地域経済に深刻な影響を及ぼしている現状を鑑み、岸田総理から、トリガー条項凍結解除について検討する旨の方針が示されたことを評価いたします。

 今申し上げた国民民主党の提出法案は、いずれも、地方の減収分を補填するための必要な措置を講ずることが大前提です。

 以上が、国民民主党として賛成する理由です。

 最後に、コロナ禍で疲弊する保健所を始め、地方公務員の増員については、必要な更なる増員と財政措置を求め、私の賛成討論といたします。

 御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第六、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長薗浦健太郎君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔薗浦健太郎君登壇〕

薗浦健太郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げ等を促す観点からの賃上げに係る税制措置の拡充や、カーボンニュートラルを実現する等の観点から、住宅ローン控除制度の見直し等を行うものであります。

 本案は、去る二月一日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、当委員会に付託され、四日鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取し、九日から質疑に入り、二十一日、岸田内閣総理大臣に対する質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 討論の通告があります。順次これを許します。稲富修二君。

    〔稲富修二君登壇〕

稲富修二君 立憲民主党・無所属の稲富修二です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 岸田総理は新しい資本主義を打ち出しましたが、今回の税制改正案には新しいものはなく、従来の小粒な改正の延長にすぎません。日本経済や国民生活を改善する意思を感じない改正であり、到底賛成できません。

 以下、理由を申し上げます。

 反対する一つ目の理由は、岸田政権には、法案以前に、財政運営に対する基本姿勢に問題があることです。

 財務省による決裁文書の改ざん問題であります。改ざんに関与させられ自死に追い込まれた赤木俊夫さんの御遺族が国を訴えていた裁判について、昨年十二月、国は、急遽認諾することを決め、裁判を終結させました。赤木さんが亡くなった経緯の真相解明に蓋をしたことは極めて遺憾であり、政府の不誠実な態度に怒りを覚えるものであります。

 問題はここで終わりませんでした。約一億七百万円の損害賠償金の支払いを、改ざんを指示した人物ではなく、全額を国民に求めるとのことであります。このような税金の使い方は到底認められるものではありません。当然、国家賠償法に基づく求償権を行使すべきであると度々訴えておりますが、政府は、改ざんを指示した人物に重大な過失があるとは考えていないために、求償権を有するとは考えていないとの回答に終始しています。赤木さんが改ざんの強要で自死に追い込まれたことは明白であり、これが重大な過失に当たらないのであれば、一体何が重大な過失に当たるというのでしょうか。

 本当に国家財政を任せて大丈夫なのか、岸田政権の公正観、公平感が疑われます。国民の信頼に関わる根幹の問題であります。問題の解決に向け、真摯に対応されることを強く求めるものであります。

 反対する二つ目の理由は、目玉と言われている賃上げ税制の効果が期待できないことです。

 賃金が上がらないことが日本経済にとって最大の問題であり、賃上げを実現するための施策に取り組むことについては同じ立場であります。しかし、今回の法案での拡充策は、何ら新味がありません。その効果については、委員会審議を通じても、説得力のある説明は政府からついぞ聞くことはできませんでした。

 そもそも、約七割に及ぶ赤字法人には全く効果のない政策です。そして、赤字法人の大半は中小企業でありますから、賃上げ税制の適用を受けられる大企業と適用を受けられない中小企業との間で格差が生じ、分配どころか、経済格差を逆に拡大させることになりかねないと危惧しております。中小企業が雇用の約七割を支えていることを併せ考えれば、国民の多くはこの賃上げ税制の恩恵を受けられないことになります。

 賃上げ促進の税制自体は、第二次安倍政権から導入、実施されてきましたが、この間、実質賃金は上がっておらず、むしろ下がっていたというのが現状です。今回の賃上げ税制も、制度の拡充が行われたとはいえ、これまでの基本的な仕組みを変えておらず、その質、量において、賃金が上がらないという日本経済の構造問題を解決するという効果検証もございません。

 今回の賃上げ税制の拡充により、国税、地方税合わせて平年度ベースで一千七百三十三億円の減収が見込まれています。むしろ、これだけの財源があれば、人への投資を更に拡充できるはずであります。

 反対する三つ目の理由は、岸田政権は足下の国民生活に対して極めて冷淡な対応を取り続けていることであります。

 まずは、インボイス制度の導入です。

 この本会議場でもインボイス制度の導入延期を求めましたが、岸田総理は、軽減税率の実施から十年間の十分な経過措置を設けていると、相変わらずの御答弁に終始されました。極めて残念であります。

 改めて申し上げますが、二〇一九年の軽減税率実施から二〇二三年のインボイス制度導入までは四年間しかありません。加えて、この間、新型コロナウイルス感染症の発生と拡大の影響を受けて、多くの事業者が厳しい状況に置かれております。経過措置の期間を設定したときとは状況が大きく変わっております。総理は、事業者の方々への不安に応えてまいりたいともおっしゃいましたが、本当にそうお考えであるならば、今からでも遅くありません、最低限、導入の延期を決断すべきであります。

 次に、高騰するガソリン価格への対応です。

 この法案の審議入りの一週間前、レギュラーガソリン小売価格の全国平均が約十三年ぶりに一リットル当たり百七十円を超えました。以降、今日まで値上がりを続けており、値下がりの兆しはまだ見えておりません。ただでさえコロナ禍で家計が傷んでいる中で、この値上がりは死活問題になりかねません。

 政府は、燃料油価格激変緩和措置を発動し、石油元売会社に対して補助金を支給することを決定しましたが、支給額は既に上限の単価五円に達しております。これ以上の価格抑制効果は期待できない上に、そもそも小売価格が確実に値下がりするかどうか不透明であり、家計負担の軽減という観点からは、不十分な仕組みと言わざるを得ません。直接的にかつ十分に家計の負担を軽減するためには、トリガー条項の凍結を解除し発動すべきです。

 昨日の予算委員会で、岸田総理は、トリガー条項も含めてあらゆる選択肢を排除せず、更なる対策を早急に検討したいと御答弁されております。危機に瀕する国民生活の中、検討の時期は終わったと思います。実行すべきであります。我々は、昨年の時点で、既に、トリガー条項の凍結を解除し発動するための法案を提出しております。値下げを求める国民の切実な声に耳を傾け、トリガー条項の発動、そして、その効果が及ばない灯油、重油については購入費を補助するなど、家計の負担軽減につながる政策を早急に実行すべきであります。

 反対する四つ目の理由は、今改正案は検討事項が多く、質、量共に中身が乏しく、税制改正を通じ日本経済を再生させる総理の熱意を全く感じないことであります。

 格差拡大、少子化、人口減少、莫大な財政赤字という構造問題に対しても、検討ばかりで、税制を通じた解決は盛り込まれておりません。大玉の改正をことごとく先送りしております。今般の税制改正では、総理が総裁選で主張していた金融所得課税の強化を見送りました。この姿勢にこそ、とにかく大過なく無難に過ごしたい、そういう岸田政権の本質が現れているのではないでしょうか。

 税制の改正には必ず反対がつきまといます。特に、増税についてはなおさらです。やらないことについては、反対が少ないかもしれませんが、時間という目に見えない膨大なコストを伴います。総理の聞く力が実行力の欠如にならないか、大変心配しております。

 我々は、この間、コロナ禍での国民生活を支える政策とともに、所得税の最高税率引上げ、将来的な総合課税化を見据えた金融所得課税の強化、法人税への超過累進税率導入など、負担増をお願いする財源確保策も明確に主張してまいりました。

 欧米でも、コロナ禍における財政支出の増大を受けて、財源確保のために、大企業や富裕層に対する増税等を検討あるいは実施する動きが進んでいます。我が国の公債残高は、令和三年度末に初めて一千兆円を超える見通しであります。財政状況がますます厳しくなる中、財源確保に向けた具体的な税制改正の議論が政府・与党内で低調だったことは極めて問題であり、日本の財政に対する信頼を揺るがしかねません。

 以上の理由から、政府提出の所得税法等の一部を改正する法律案については、明確に反対するものであります。

 総理、政権誕生からのハネムーン期間は終わりました。検討を重ねる期間も終わりました。実行するときであります。

 現下の厳しい状況を乗り越えていく上で、税制が果たすべき役割はますます大きくなっていると考えます。我々は、今後も、政府の問題点をただすとともに、これからの時代のあるべき税制の在り方について提案を続けてまいります。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 長友慎治君。

    〔長友慎治君登壇〕

長友慎治君 国民民主党の長友慎治です。

 私は、国民民主党を代表し、本法案に賛成の立場で討論します。(拍手)

 本法案の目玉政策である賃上げ税制については、賃金を引き上げることは日本経済にとって喫緊の課題であり、国民民主党も、さきの衆議院選挙では、給料が上がる経済を公約に掲げました。

 しかし、資本金一億円以下の法人は約六割が赤字であり、本税制のインセンティブは働きません。我が党は、賃上げのためのインセンティブとして、法人事業税、固定資産税などの軽減措置を提案しています。中小企業にとっては、社会保険料の減免をインセンティブにする方策もあり得ます。

 そもそも、企業の生産性が向上しない限り、賃金は上がりません。政策のターゲットは企業の生産性向上であるべきです。減税があるからといって賃金を上げる企業などありません。これまでの制度でも、生産性が上がり賃金の引上げができた企業が結果として減税の恩恵を受けているだけで、その政策誘導効果は疑問です。

 政府も、補助金の補助率引上げや下請取引の適正化など、税制以外の環境整備を進めるとのことですが、国税以外の地方税や社会保険料の減免など、総合的な施策を講じることが必要だと考えます。

 更に言えば、国民の税金で給料を上げるくらいであれば、直接、所得型の給付つき税額控除の実施を提案します。その財源を株式配当などへの金融所得課税に求めれば、所得の再分配にも資することになり、格差是正が進みます。財源は、所得控除の整理縮減でも捻出できます。所得控除から税額控除に移行すれば、富裕層の負担を増やし、所得の再配分効果が更に強化されます。

 政府はガソリン補助金制度を実施していますが、現場のガソリンスタンドでは、値下げは一部に限定され、据置き、若しくは価格を引き上げたスタンドすら見られました。現場は大変混乱しています。補助上限の引上げを検討するなど、政府も政策の不十分さを認識しています。そこで、さきの臨時国会で我が党と日本維新の会で法案を提出したトリガー条項の発動が今こそ必要であり、法案審議を求めます。

 本法案審議の過程で、租税特別措置についてスクラップ・アンド・ビルドの原則を維持することにつき、財務大臣の前向きな答弁がありましたが、コロナとの戦いが収束した暁には財政規律を守る姿勢を堅持していくべきです。

 東日本大震災の後、巨額の復興予算が必要となった際に、当時の国会は、将来の世代にツケを回さないために、震災復興特別税を決めました。その結果、二年間の復興特別法人税に加え、二十五年間、二・一%の所得税の付加税を徴収し、住民税は、十年間、千円引き上げる形で、財源に充てることができています。

 コロナ禍に対応するため、真に国民の命と暮らしを守るための歳出増加はやむを得ないと考えますが、そのための債務は特別に管理し、将来は震災復興特別税のような仕組みで、後代に負担を残さないようにすべきです。

 そのことを申し上げた上で、本法案の狙いである成長と分配の好循環及びカーボンニュートラルの実現に向けた改正案の内容は必ずしも十分なものとは言えないものの、我が党の政策と方向性において軌を一にするものであり、今後、我が党の提案を真摯に取り上げていただくことを前提に、本法案に賛成するものであります。そのような我々の姿勢を、自信を持って堂々と国民の皆様に訴えていきます。

 そして、これからも、是々非々で、政策先導型の改革中道政党として、与野党問わず連携し、国民の皆様が望む政策を一つでも多く実現することを誓いまして、私の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 赤木正幸君。

    〔赤木正幸君登壇〕

赤木正幸君 日本維新の会の赤木正幸です。

 私は、政党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 総理は、施政方針演説の中で、成長と分配の好循環の要となるのが分配戦略、その第一は所得の向上につながる賃上げですと声高に宣言されました。そして、賃上げに関わる租税措置の抜本的強化と銘打って、本法案に盛り込まれた賃上げ税制の拡充を示されました。しかし、税制改正のほかに示された公的価格の引上げ、中小企業の価格転嫁のための環境整備、最低賃金の引上げ等を含め、どれも小手先の対応、従来施策の延長のオンパレードで、これでは格差を是正する新しい資本主義を掲げる岸田政権として余りに乏しい内容ではありませんか。

 二〇一三年以降十年近く実施してきている賃上げ税制は、二〇二〇年度までに利用額が二兆円を超えていますが、賃金上昇という果実を得るには至っていません。そもそも、法人税を支払うことができる黒字企業のみが適用対象となっているこの措置において、恩恵を受けている企業数は、今ですら、大企業、中小企業共に全体の一割程度にとどまっています。

 新型コロナウイルス感染症との戦いが長期化し、景気が低迷する一方、昨年度の税収は過去最高を更新、法人税も見通しをはるかに上回る結果となりました。これは、飲食サービス業を始め多くの中小零細企業がコロナで大打撃を受けてあえいでいる一方、いわゆる巣ごもり需要の増加等で業績を大きく伸ばしている企業もあり、企業間格差が広がっていることを意味しています。そうした状況下、ターゲットとすべき業種や職種を絞り、より効果的な手を打つといった工夫や努力もせずに、単に黒字企業のみが恩恵を受けるという現在の措置を少し拡充する内容で、一体どれだけ更なる賃上げ効果が見込まれるのでしょうか。三十年にわたり低迷、横ばいしている賃金を回復軌道に乗せ得る案とお考えなのでしょうか。

 総理は、成長分野への労働移動を推進するとおっしゃいます。しかし、言葉だけは勇ましいものの、新しい資本主義や勤労者皆保険と同様、中身が見えてきません。人への投資として三年で四千億円の施策パッケージをやると自ら施策を並べていくことを宣言されていますが、根本原因となっている環境の改善、構造改革には踏み込まれません。様々な弊害を是正する仕組みを埋め込み、そして分配や格差の問題にも正面から向き合うという総理の施政方針は、一体どこに反映されているのでしょうか。昨年の所信表明演説で、改革という言葉を一言も盛り込まれなかったことにもうなずけます。

 技術が日進月歩で進化し、新たな分野での成長産業が次々に生まれていく一方、従来の事業継続だけでは市場から淘汰されるといった分野も多く出てきています。企業が時代の流れに合わせてフットワークよく事業領域を転換しなければ生き残れない今の時代にあって、現在の硬直的な日本型雇用、賃金制度は、企業にとってだけではなく、何よりも労働者にとって大きな弊害となっており、その根源にあるのが時代に合わない解雇規制です。

 企業にしてみれば、一度雇用したらずっと雇い続けなければいけないのでは、なかなか賃上げに踏み切れません。また、社員を雇う際に、まずは非正規かパートを雇うことを考えてしまうことは、当然の帰結です。賃上げは、本来、企業間の市場競争の結果として実現されるものであり、企業が高成長分野への事業転換を進め、結果として生産性が向上し、働く人の賃上げを実現していくことこそが正しい筋道です。

 解雇規制の緩和や金銭解決による解雇の導入の話になると、すぐに首切り法案として批判が出てきますが、本当にそうでしょうか。労働者から見た場合、解雇規制に守られている大企業の労働者は全体の三割にすぎません。その中にも、終身雇用に基づく年功賃金により、労働の対価である現在の給与に不満を抱えている方は数多くいます。もっと大事なことは、中小企業で働く約六五%の労働者が、何の補償すらなく簡単に解雇されてしまうという現状に日々直面しているという事実です。そうした弱い立場にある労働者にとって、解雇の際に転職のための追加支援金の受給がルールとして約束されれば、労働環境は大きく改善します。若者世代にとっても、望まぬ非正規やパートでの就職を余儀なくされる現状を大きく変えることができます。

 時代に合わない解雇規制の緩和について、総理は、我が党からの質問に対して、本年度中に法技術的な論点について専門的な検討を取りまとめる、また、その結果を踏まえて検討していきたい旨の答弁をされましたが、そこには覚悟もスピードも感じられません。既に十年以上議論されてきたテーマであり、そのたびに、首切り法案との誤ったメッセージによる反対で腰砕けとなってきた案件です。成長分野への労働の円滑な移行が重要と考えているのであれば、今こそ、コロナ禍で露呈した脆弱な日本の従来型システムから脱却すべきであり、また、大きなチャンスではないでしょうか。

 もちろん、労働者が解雇され次の仕事に就くまでの生活保障がなければなりません。だからこそ、解雇規制の緩和と同時に、行政によるセーフティーネットの充実をしっかりと行うことは不可欠と考えています。

 日本維新の会は、コロナ禍であえぐ現状を考えれば、まずは高騰するガソリン代に対処すべく、速やかにトリガー条項の適用を可能とする法案を提出し、また、二年間の消費税五%への減税を断行して、国民の可処分所得を上げるべきと主張しています。

 加えて、日本維新の会は、構造的問題から逃げることなく、税制、社会保障制度について真正面から改革を図る日本大改革プランを発表しています。フローからストックへをコンセプトとする税制改革、セーフティーネットとしてのベーシックインカム導入による抜本的社会保障改革、地方分権改革、労働市場改革、規制改革、デジタル改革による成長戦略、これら三位一体改革のプランによって、真の意味で持続可能な社会保障システムを構築するとともに、閉塞感の強い国民生活に豊かさの実感を取り戻します。

 従来の発想や既得権益にとらわれることなく、抜本的な制度改革、規制改革を断行すべきです。我々日本維新の会は、その先頭に立って国民の皆様のための政策実現を目指すことをここにお誓いし、本法案についての反対討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、反対討論を行います。(拍手)

 先日の本会議質疑において、岸田総理は、新自由主義的な考え方により格差や貧困が拡大するなどの弊害が明らかになったと私に答弁しました。しかしながら、その弊害は、本税制改正法案により、改善されないどころか、むしろ、格差拡大など、弊害の拡大すら懸念されます。

 岸田総理は、総選挙で、所得税の一億円の壁の改善を公約したにもかかわらず、本法案に金融所得課税の強化を盛り込まず、棚上げしました。格差是正への逆行であるとともに、重大な公約違反であり、許されません。これが、反対する第一の理由です。

 政府の白書が指摘しているように、新型コロナウイルス感染症の影響の下でも、近年の株価の上昇により、更に所得格差、資産格差が拡大しています。富裕層を優遇する金融所得課税の温存ではなく、直ちに格差是正のために応分の負担を求める所得税の改正を行うべきです。

 過去二十年間で、大企業の利益は約二倍、内部留保は約三倍、配当は十七兆円増えて二十・二兆円になりました。一方、家計の可処分所得は、十三・九兆円増加したといいますが、消費税増税による家計負担の増加分を差し引くと、可処分所得の増加はほぼゼロという状態です。

 消費拡大、格差是正のためにも、二十年間分の可処分所得を奪った消費税増税分を減税により国民に還元するべきです。あわせて、中小零細業者や農家、フリーランス等を廃業に追い込む消費税のインボイス制度は、当然、中止すべきです。

 法案に反対する第二の理由は、財界の要望に応えて、オープンイノベーション促進税制や5G導入促進税制など、大企業に対する減税の拡充、継続を盛り込んでいることです。

 賃上げ促進税制を含め、政策効果も疑わしいまま大企業に有利な減税措置を繰り返しても、労働者の賃上げには回らず、配当や内部留保を拡大させるだけです。

 岸田内閣の目玉政策である賃上げ促進税制は、二〇一三年に安倍政権の下で導入されました。しかしながら、二〇二〇年度の実質賃金は二〇一三年比で四・八%減少するなど、全く効果を上げていません。そもそも、二〇一九年度に利用した企業数は、国内企業約二百七十五万社に対して約十三万社しかなく、たった四・七%の適用にすぎません。

 約六割が赤字の中小企業に恩恵が及ばない本制度では、貧困と格差の是正にはつながらず、大企業の内部留保を拡大させるだけです。

 中小企業支援の抜本的拡充と一体に、最低賃金を千五百円へ引き上げ、正規雇用者の割合を増やす労働法制の改革など、賃上げ政策の根本的な政策転換が必要です。

 また、オープンイノベーション促進税制の適用対象は、高水準の利益を上げているIT、金融、バイオ関連等の大企業であり、十分な投資余力もあります。技術革新競争のための投資は、自らの経営判断ですべきです。リスクのある投資だからと減税を要望するのは、大企業の御都合主義でしかありません。

 また、5G促進税制も、寡占状況の大手通信事業者が携帯事業で高水準の利益を上げており、減税による恩恵が内部留保に積み上がるだけです。

 自民党政権が租税特別措置など大企業減税を繰り返すことで、法人税は空洞化しています。資本金百億円超の大企業や連結法人の実際の法人税負担割合は、法人税率二三・四%に対し、たった一三・〇%しかありません。

 新自由主義の弊害を是正するのが新しい資本主義といいながら、実際には大企業優遇税制の拡大、継続を更に図る本法案には反対であります。

 以上で討論を終わります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣 岸田 文雄君

       総務大臣   金子 恭之君

       法務大臣   古川 禎久君

       外務大臣   林  芳正君

       財務大臣   鈴木 俊一君

       文部科学大臣 末松 信介君

       厚生労働大臣 後藤 茂之君

       農林水産大臣 金子原二郎君

       経済産業大臣 萩生田光一君

       国土交通大臣 斉藤 鉄夫君

       環境大臣   山口  壯君

       防衛大臣   岸  信夫君

       国務大臣   小林 鷹之君

       国務大臣   二之湯 智君

       国務大臣   西銘恒三郎君

       国務大臣   野田 聖子君

       国務大臣   堀内 詔子君

       国務大臣   牧島かれん君

       国務大臣   松野 博一君

       国務大臣   山際大志郎君

       国務大臣   若宮 健嗣君


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