衆議院

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第3号 令和4年10月6日(木曜日)

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令和四年十月六日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  令和四年十月六日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(細田博之君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 たくさんの御声援をいただきまして、ありがとうございます。

 日本維新の会の馬場伸幸です。(拍手)

 総理、私は、一般の国民の皆さんが日々不安に思っていること、そして疑問に感じていることを、代表して質問いたします。国民が理解しやすい御答弁を是非お願い申し上げます。

 さて、一昨日、北朝鮮が日本海に向けて発射した弾道ミサイルが、我が国上空を通過し、太平洋に落下しました。今年に入ってから北朝鮮の弾道ミサイル発射は二十回目で、少なくとも三十六発となり、年間発射数で過去最多を更新しました。これらを受け、衆議院で昨日抗議の決議を採択したばかりですが、北朝鮮は、本日も弾道ミサイル二発を日本海に向け放ちました。

 日本政府は、弾道ミサイルが発射されるたびに非難と抗議を繰り返しています。しかし、非難や抗議だけでは平和を守ることはできません。実際、北朝鮮は、国際社会の声に一切耳をかさず、増長する一方です。九月には核兵器の使用を法令化し、七回目の核実験を強行するおそれも指摘されています。

 こうした周辺国の脅威に加え、ウクライナ危機により根底から覆された国際平和秩序の中で、今後の我が国の安全保障は、これまでの延長線上で考えるべきではありません。日本維新の会は、国民と国土を断固守り抜くための積極防衛能力の構築に向け、政府並びに国民に果敢に提言していく所存です。

 防衛費の大幅な増額、反撃能力の保有、核の共有に関する議論、経済安全保障の整備、日米同盟の強化による抑止力と対処力の強化など、これまで我が党が主張し続けてきたことは、政府によって、不十分かつ遅まきながらも、一定程度実行に移されようとしています。

 しかし、そうした新たな脅威に対する様々な対策は、本来、個々に検討すべきものではありません。包括的に安全保障戦略の中に取り込み、具体的な行動に落とし込んでいくことが不可欠です。

 そのための重要な節目が、政府が年末までに改定を予定している国家安全保障戦略、防衛計画大綱、中期防衛力整備計画、いわゆる防衛三文書の改定です。これらは閣議決定によって行われるため、国会の審議を経ずして決定されてしまう可能性があります。

 総理に伺います。

 この重大な政策決定に当たって、政府には、閣議決定前に国会で改定案を示していただきたいと思います。我が党は、政府・与党とオープンに議論する用意があります。いかがですか。より多くの国民に理解と国防意識を深めてもらうためにも不可欠だと考えます。

 今回の防衛三文書の改定においては、軍事面の抜本的強化だけでなく、非軍事面での安全保障体制の整備を防衛戦略上どのように位置づけるのかが極めて重要です。

 五月に成立した経済安全保障推進法は、我が党が国会において指摘してきたとおり、罰則がないなど実効性の面で様々な課題を抱えており、薄皮一枚のよろいを羽織ったにすぎません。足らざる部分の法整備を進め補強していくことは、一刻を争う至上命題です。

 例えば、日本は国家機密などを扱う職員の適格性を確認するセキュリティークリアランスの体制が脆弱であるため、安全保障上致命的に重要な情報を同盟国、同志国の情報機関と共有することができていません。

 総理に伺います。

 今後、法改正を行い、セキュリティークリアランスの抜本的強化を行うお考えはありませんか。

 また、日本は、諸外国にあるスパイ防止法も持ち得ていません。法律を制定するお考えはありませんか。

 セキュリティークリアランスとスパイ防止法について、早期に実現させることができないならば、何が障害になっているのですか。明快な答弁を求めます。

 さらに、安全保障上重要な土地の利用を規制する重要土地等調査規制法が九月二十日に全面施行されましたが、規制の対象行為が土地の利用に限定されて、売買に踏み込んでいないため、阻害行為を未然に防ぐことができません。

 足下では円安が加速し、外資による日本の不動産取得は更に進むおそれがあります。日本も諸外国と同様に、一段と踏み込んで、土地の売買も規制対象にすべきではないですか。できないならば、理由を御説明ください。

 我が国の安全保障強化を妨げる根本的な要因には、自衛隊の存在すら明記できない憲法改正の問題があります。

 日本国憲法は、今年五月、施行七十五年を迎えました。さきの通常国会では、ここ数年、新五五年体制たる与野党の談合によって固く閉じられていた憲法審査会の開かずの扉が開きました。私たちが開催を粘り強く訴え続けてきた成果と自負していますが、本院では、ほぼ毎週、定例日に各党がテーブルに着き、立法府があるべき姿を取り戻しつつあります。

 しかし、肝腎なのは、会議を開くことではなく、実質的な議論を行い、結論を得ることです。

 総理にお尋ねします。

 今国会は、憲法改正に向けた議論が真に軌道に乗るか否かの重大な試金石になります。衆参両院の憲法審査会を着実に開き、激動の時代に即応できる最高法規の中身の議論を滞りなく進めていくことが不可欠ですが、認識をお示しください。

 総理は、昨年の自民党総裁選で、再来年九月までの総裁任期中の憲法改正実現を明言し、この夏の参議院選挙後には、国会での改憲論議をリードし、できる限り早く国会発議に至る取組を進めるという決意を示されました。

 総裁任期中の改憲実現は国民への約束と捉えてよろしいですか。今国会では具体的にどのように改憲論議をリードしていきますか。また、遅くともいつまでに国会発議を実現させたいとお考えですか。明確な期日目標をお示しください。総理及び自民党の総裁として明快な答弁を求めます。

 日本維新の会は、平成二十八年に、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所設置の三項目から成る憲法改正原案を取りまとめ、今年の五月と六月に、九条に自衛隊を明記する改正条文案と侵略や大規模自然災害などに対応するための緊急事態条項創設案を相次いで公表しました。

 総理に質問いたします。

 我が党の九条改正案と緊急事態条項案についてどのように評価されていますか。これらについては自民党も改正草案として示しています。他党に速やかな対案の提示を促し、今国会中に集約を図ってしかるべきと考えますが、見解をお示しください。

 政治生命を懸けて憲法改正に取り組み続けた安倍元総理が、さきの参議院選挙の演説中に凶弾に倒れました。

 国葬儀には国内外の約四千二百人が参列し、非業の死を遂げた故人を真心を込めて送ることができました。改めて哀悼の意を表するとともに、葬儀委員長を務めた岸田総理を始め、準備や進行、警備、海外から迎えた要人の接遇等に当たった全ての関係者の御労苦に感謝を申し上げます。

 日本維新の会は、憲政史上最長の八年八か月にわたり重責を担った安倍元総理の内政及び外交上の功績や、諸外国から寄せられた弔意に応えること、テロや暴力を許さないという意義などを鑑み、国葬儀を挙行することについては支持する立場を取ってまいりました。

 一方で、国葬儀が決定された当初から、その根拠や意義、予算などを国会と国民に対し速やかかつ丁寧に説明を尽くすよう、総理に強く求めてまいりました。故人や御遺族のことを考えれば当然のことであります。

 しかし、総理が国会で説明を行ったのは、閣議決定から一か月半たった後です。しかも、不十分な内容によって国民の不信と疑念を増幅させ、世論調査では反対が賛成を凌駕しました。一人でも多くの国民の皆さんが前向きな弔意を示せる環境がつくれたはずであり、甚だ遺憾であります。

 総理に伺います。

 心静かに故人を送る葬儀の実施過程において、国民が事実上分断されるような混乱を招いた責任をどう考えますか。なぜ国会や国民への説明が遅れたのですか。国民の広範な理解を得るための努力が足りなかったのは明らかですが、総理として猛省すべき点はどこであると考えますか。

 日本維新の会は、こうした混乱を二度と招かないために、国葬儀の実施要件や費用の扱いを定めた法律を今臨時国会が開かれると同時に提出いたしました。挙行に当たり時の政権の恣意的な判断を排除するためにも、法定化は不可欠だと考えます。

 総理にお尋ねします。

 国葬儀は内閣府設置法上の国の儀式であるため全てのことは内閣だけで決められるという、つじつま合わせのような政府の法解釈に対して国民の理解は得られていると考えていますか。

 総理は国葬儀の基準策定に否定的な立場を示されていますが、今後も内閣府設置法上の国の儀式を法的根拠にするおつもりなのでしょうか。

 我が党の法案は、本来の国葬、すなわち天皇陛下の大喪の礼と今回のような国葬儀との定義を明確に分けた上、その対象者を選定するための基準と手続を可能な限り法律上において定めました。今回なし崩し的に岸田内閣によって行われた国葬儀の実施や費用に関する事前承認及び事後の報告について国会で行うことを義務づけています。我が党の提出した国葬儀法案について、総理の見解をお示しください。

 安倍元総理に凶弾を放った容疑者がいわゆる旧統一教会に深い恨みを抱いていたことで、宗教法人による常軌を逸した諸活動にいかに対処していくべきかが喫緊の課題となっています。

 旧統一教会は、一九八〇年以降、不安をあおって法外な値段でつぼや印鑑類を売りつける霊感商法や高額献金など、様々な社会問題を起こしました。信者と教団とのトラブルは今も絶えません。

 自由意思に基づく信教の自由は保障されなければなりませんが、公序良俗に反する形態の活動は法で縛りをかけるべきであります。

 まず急ぐべきは、現行法の抜け穴を塞ぎ、信者の家庭や人生を壊すような活動に歯止めをかけることです。これ以上、苦しむ人を生んではなりません。高額献金を規制したり、宗教二世を含む被害者を救済できる法整備が不可欠です。

 そこで、日本維新の会は、マインドコントロールなど自由な意思決定ができない状態でなされた過剰な寄附、献金の取消しを可能とする被害防止法案の骨子をまとめました。悪質で過剰な寄附を判断する目安として金額を明記する、いわゆる上限規制の一つに踏み込み、また、取消権は司法判断により家族なども行使可能とする内容で、法案提出を目指して、立憲民主党とも調整を進めています。

 総理に伺います。

 被害者の救済について、総理は、政府を挙げて全力で取り組むと述べられていますが、具体的に現状の何をどのように変えるつもりでしょうか。

 平成三十年の消費者契約法改正で、霊感商法による契約を取り消せるようになりました。しかし、教会側が拒絶した場合は裁判となり、被害者側が霊感商法であることを証明しなければなりません。消費者庁によると、これまでに霊感商法に対する取消権を行使した裁判例はありません。

 このため、専門家の間では、消費者契約法の実効性に問題があると指摘されています。それでも法改正を行わず、この状況を放置するのでしょうか。

 政府は、現行の、法令に違反し著しく公共の福祉を害する行為などを要件とする宗教法人法に基づく解散命令の執行に及び腰のように受け取れます。宗教法人は税制上の優遇措置の対象ですが、霊感商法に関与するような団体が法人格を失うことには重要な意味があります。悪質なケースに対しては、宗教法人の解散命令規定を柔軟に適用すべきではないでしょうか。見解を求めます。

 また、我が党は、宗教法人法の改正案を提出する用意があります。政府としてしっかり受け止めていただけるか、見解を伺います。

 日本維新の会は、個々の議員の接点については、それぞれの議員が説明すべきであり、揚げ足取りに力を割くべきではないと考えております。政府には、被害者救済等にしっかりと取り組むことを求めます。

 国葬と旧統一教会問題に加え、岸田内閣が国民の信頼を失ったもう一つの大きな要因は、物価高騰に対する不十分かつ遅れた対応です。

 ロシアのウクライナ侵略の余波で、世界的なエネルギー危機、穀物価格の高騰が続く中、我が国は、円安がコスト上昇に拍車をかけ、商品、サービスの値上げラッシュとなっています。これが中小事業者の経営や低所得者を中心とした国民生活を直撃し、ようやくコロナ禍の落ち着きで取り戻した国内の経済社会に冷や水を浴びせています。

 政府は、九月二十日、食料品、エネルギー価格の激変緩和措置、生活者及び事業者への支援など、約三・五兆円の予備費の支出を決めた上、九月末には、総理が総合経済対策の策定を指示しました。今月末をめどに取りまとめ、今国会で三十兆円規模の令和四年度第二次補正予算案の成立を目指すとされています。

 総理に伺います。

 多くの国民の皆さんが物価高騰により苦しんでいる中、岸田内閣は、検討が長過ぎ、決断と実行が遅過ぎます。物価高騰については、七月の参議院選挙以降、政府の重要課題となっていました。しかし、総理が総合経済対策の取りまとめの号令をかけたのは先週です。なぜ三か月近くも放置したのですか。

 帝国データバンクの調査によれば、約七割の企業がこれまでの政府の物価高騰対策に効果を感じていません。これまで岸田政権が行ってきた対策に対するこうした厳しい評価について、どのように受け止めておられますか。

 対策の効果が出ない根本的な要因は、新型コロナウイルス感染症対策と同様、危機的状況になってから経済活動に介入し、場当たり的な対策と現金給付等の一時的な痛みの緩和でやり過ごそうとする逃げの姿勢にあると考えます。

 岸田内閣からは、新しい資本主義という総花的で抽象的な言葉が繰り返されるのみで、差し迫る危機をいかに乗り越え、その先にどのような経済社会をつくるのかという中長期の具体的なビジョンが全く伝わってきません。

 総理に伺います。

 目下の経済状況について、どのような今後の見通しを持っていますか。また、危機を収束させるために描いている道筋と、その先にある新しい日本の経済社会の絵姿について、具体的にお聞かせください。

 岸田内閣は、山積する課題への対処を先延ばしにしてきただけでなく、国会を開いて問題解決に当たるべきと提案した野党の国会召集要求にも耳をかしませんでした。短時間で終わる閉会中審査でお茶を濁し、長い夏休みを決め込みました。

 衆参いずれかの院で総議員の四分の一以上の要求があった場合、内閣が臨時国会を召集しなければならないことは、憲法五十三条に定められています。しかし、期限が設けられていないため、内閣は野党からの臨時国会の召集要求を放置し続けてきました。

 これまで、憲法五十三条に基づく衆議院での臨時国会の開催要求は全部で三十九回ありました。しかし、このうち、一か月以内に開かれたのは九回にすぎません。最長で百七十六日を要した例もあります。平成二十九年には、安倍政権が召集要求に約三か月応じなかったことへの損害賠償訴訟で、那覇、岡山両地裁が、憲法違反の可能性に言及し、内閣に臨時国会を召集する法的義務があると判断しました。

 総理に伺います。

 野党による臨時国会召集の要求に対し、岸田内閣はいかなる理由でこのような無責任な対応を取ったのですか。政策や疑惑への追及や批判を避けたいというよこしまな政治的思惑が影響しているのではないですか。

 憲法五十三条は、少数派の意向を尊重するために定められたものであり、民主政治の基礎とも言える規定です。内閣の姿勢は国民軽視そのものです。総理はどう認識されておられますか。

 岸田内閣を含む歴代自民党政権の対応を見れば、憲法五十三条の後段はもはや実質空文化していると受け止めざるを得ません。見解をお示しください。

 こうした不正常な事態の打開のために、我が党は、去る三日、この当然の問題意識を共有する他の野党とともに、臨時国会の召集が要求された場合に二十日以内の召集を内閣に義務づける国会法改正案を共同提出いたしました。衆議院法制局だけでなく、憲法学者の多くが、憲法五十三条後段を受けて国会法で召集期限を定めることに法的な瑕疵は一切ないと判断しています。憲法を改正しないと対処できないという理屈は、やらないための言い訳にすぎません。

 総理に質問します。

 自民党は、野党時代の平成二十四年四月に発表した憲法改正草案に、「要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。」と自ら期限を明示しています。当然、私たちが提出した国会法改正案に反対する理由はないと考えますが、いかがですか。

 仮に同調できないというなら、与党の立場になってしまえば、自らが打ち出した憲法改正草案は関係がないということですか。率直な答弁を求めます。

 自民党政権が本来あるべき政治の筋を通せないのは、政治家の自己保身を最優先する、永田町病と呼ばれる古い体質にとらわれているためと思います。

 政府は、衆議院小選挙区の一票の格差是正に向け、今国会に、都道府県の選挙区定数を十増十減させる公職選挙法改正案を提出する予定です。

 令和二年の国勢調査に基づき、政府の衆議院選挙区画定審議会、いわゆる区割り審が六月、岸田総理に行った勧告により、過去最多の二十五都道府県百四十選挙区で区割りの見直しが求められています。自民、公明両党が議員立法により成立させた衆議院選挙制度改革関連法案に基づき平成二十八年に導入されたアダムズ方式の結果です。当然、勧告に従って公選法を速やかに改正しなければなりません。

 ところが、今国会での改正実現どころか、法案の提出さえ暗雲が立ち込めています。都市部五都県で十増、地方は十減とする区割り審の勧告に対し、自民党内から、理にかなわない反発が噴出しているためです。地方の声が国政に届きにくくなると言えばもっともらしい主張ですが、定数が減る県の選挙区の候補者調整を避けたいという本音が透けて見えます。

 地方の人口減や都市部への人口集中が続く限り、一票の格差の問題が生じることは避けられません。民主主義国家において、選挙への投票権は国民の重要な権利です。そこに大きな格差があってはならないのも、国会で自ら決めた法律を尊重するのも、当然のことです。

 総理に伺います。

 今臨時国会において、区割り審の勧告どおり、十増十減による公選法改正案を政府から必ず提出するとこの場で明確にお約束していただけませんか。

 また、この公選法改正案が成立するまでは衆議院の解散権は縛られると察しますが、法案が成立せずとも解散はできるとお考えですか。お答えください。

 国会議員の定数削減を訴え続けてきた我が党としては、この機会に、十増十減と言わず、議員定数の削減、すなわち増を伴わない減のみで一票の格差を解消する方法もあると考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 日本維新の会は、国会議員に毎月歳費とは別に百万円支給される文書通信交通滞在費、いわゆる文通費について、日割り支給と領収書公開の義務づけをセットにした歳費法改正案を国会に提出し、全所属議員が自主的に領収書を公開してきました。さきの通常国会では、日割り支給、使途の公開、残金の返還の三点セットを国会の場で訴え、会期中に結論を得ることについて与野党の合意を取り付けました。

 しかしながら、日割り支給の実現と調査研究広報滞在費への名称変更のみが先行し、本丸の使途公開と残金返還についての協議は自民党によって一方的に中断されました。今日に至るまで、会期中に結論を得るという約束はほごにされたままです。

 自民党総裁たる総理に伺います。

 旧文通費の改革に背を向ける自民党の姿勢をどう受け止めますか。なぜできないのですか。

 自民党の主張する、議員の身分に関わることは全会派の合意が原則なる永田町のへ理屈は、国民に理解されていると思いますか。

 ボールは自民党にあります。今国会で自民党は旧文通費改革から逃げず、必ず三点セットを実現させると宣言してください。

 それでも自民党が動かないならば、全議員共通のルールができる前に、政権党のトップとして率先して自主的に領収書を公開し、国会議員の範を示す考えはありませんか。

 また、新型コロナウイルス感染拡大を受け、経済的に厳しい環境に置かれた国民に寄り添う趣旨で、一昨年五月から国会議員の歳費二割を削減する措置が行われていましたが、今年七月末をもって終わりました。

 物価高騰等により多くの国民の生活状況はまだまだ苦しい中、二割の歳費カットも続けるのが筋だと考えます。全党全会派に同調と協力をお願いしたいと考えますが、いかがですか。

 昨日、北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんが、とらわれの地で五十八歳の誕生日を迎えました。今月十五日は、北朝鮮が日本人拉致の非を認めた平成十四年九月十七日の日朝首脳会談を経て、政府認定の拉致被害者十七人のうち五人が帰国を果たして二十年となります。

 しかし、この間、拉致問題は膠着状態のまま歳月だけが流れました。十一月十五日には、めぐみさんが拉致されて四十五年に至ります。どれだけ長く残酷な日々なのか。被害者や御家族の方々の心痛をどのように受け止めていますか。

 総理は、常々、拉致問題は内閣の最重要課題だと強調されていますが、最重要課題が二十年間一歩も進捗がないことについて、どう考えていますか。

 これまで指摘してきた全ての問題も同様です。永田町や霞が関の発想を駆使して国会答弁を切り抜けることには、何の意味も価値もありません。国民が納得できる、目に見える変化を起こすことが、政権を預かる政党と総理大臣としての最低限の責任ではないですか。

 九月二十八日、日本維新の会は結党十年を迎えました。国政での活動とともに、大阪では地方行政を預からせていただき、政策の実行を通して少しずつ国民の皆様の御支持を得られるようになってまいりました。地道な改革の積み重ねにより、古い自民政治よりも、新しい維新政治の方が国や地域のためになっているという実感が広がっていることを感じています。

 我が党はあくまで是々非々ですから、政策が一致した政党との政策協力は当然です。しかし、政治的理念の一致しない政党同士の合従連衡や選挙協力といったことは一切あり得ません。

 日本維新の会は、この先の十年も、国民の期待を裏切ることなく、全力で政治の責任を果たし、改革に邁進していきます。継承そして新たな飛躍をスローガンに、維新をここまで育ててきた先人たちの心意気や努力を引き継ぐとともに、必ずや政権交代を果たし、国家国民のための政策を実現させることをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えいたします。

 新たな国家安全保障戦略等の策定についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略等に関する御党の見解は、政府・与党内で検討を進めるに当たっても大変参考になるものだと感じています。

 新たな国家安全保障戦略等について閣議決定前に御党と議論を行うという御提案については、公党党首間でのやり取りも含め、建設的なものとして受け止め、検討させていただきます。

 セキュリティークリアランスとスパイ防止法についてお尋ねがありました。

 いわゆるセキュリティークリアランスについては、経済安全保障推進法の衆参両院の附帯決議で示され、また、骨太の方針二〇二二に示したとおり、重要な課題の一つであると認識をしております。まずは、実際にクリアランスが求められる具体的事例の把握、検証などを行っていきたいと考えております。

 いわゆるスパイ防止法の必要性については、様々な議論があると承知しておりますが、国の重要な情報等の保護を図ることは極めて重要であり、必要な取組の充実強化に努めてまいります。

 そして、外国資本の土地取得についてお尋ねがありました。

 重要土地等調査法は、重要施設等に対する機能阻害行為を防止することを目的として、まずは、その拠点となり得る土地等の利用実態について調査を行います。その上で、特別注視区域においては、土地等の所有権移転等に際しての事前届出が義務づけられます。

 これに加え、必要に応じた利用規制を適時適切に行うことにより、実効性の確保に努めてまいります。

 いずれにせよ、まずは、本法に基づき、指定区域内の土地等の所有、利用状況の実態把握に努め、本法の執行を着実に進めるとともに、執行状況を踏まえて、更に何が必要なのか、不断に検討してまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 私自身、総裁選挙等を通じて、任期中に憲法改正を実現したいということを申し上げてまいりました。こうした考えは、いささかの変わりもありません。

 さきの第二百八回国会において、衆議院、参議院合わせて二十回を超える憲法審査会が開催され、御党を含め、近年になく活発に御議論いただいたことを歓迎したいと思います。

 内閣総理大臣の立場からは、御党の御提案の個別的内容も含め、憲法改正についての議論の進め方や内容について直接申し上げることは控えなければならないと思いますが、憲法改正は最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、そのための発議に向け、本国会においても、与野党の枠を超えて、更に積極的な議論が行われることを心から期待いたします。

 安倍元総理の国葬儀の実施、法的根拠及び御党提出の国葬儀法案についてお尋ねがありました。

 安倍元総理の国葬儀については内閣府設置法及び閣議決定を根拠として執り行ったところであり、国の儀式を行うことは立法権にも司法権にも属さず行政権の範囲に含まれていると考えられ、このことは内閣府設置法第四条第三項で明らかになっているところであり、これまでも繰り返し御説明させていただいてきたところであります。

 他方、国葬儀に関しては、国会や国民への説明の在り方も含め、様々な御意見、御批判をいただいたことは真摯に受け止めなければならないと考えております。

 今後、国民のより幅広い理解を得て国葬儀を実施することができるよう、政府としては、今回の国葬儀について検証を行うこととしています。まずは、幅広い有識者の方々から御意見を伺い、国葬儀について論点と意見を整理することから始めます。できる限り早期にこの整理をお示しした上で、今後、内閣総理大臣経験者の国葬儀の実施については、国会との関係など、どのような手順を経るべきなのか、一定のルールを設けることを目指してまいります。

 その際、政府のお示しする整理を素材として、与党はもちろん、国会においても党派を超えて御議論いただき、国民各層の幅広い理解を得ることができるように努めてまいります。

 お尋ねの法案については、法案でありますので、まず国会において御議論いただくべきものであると考えております。

 そして、旧統一教会問題に関する被害者の救済と消費者契約に関する法令等の改正についてお尋ねがありました。

 「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議においては、九月五日から三十日までの間を相談集中強化期間と位置づけ、合同電話相談窓口を設けるなどして相談対応を行いましたが、引き続き多くの相談が寄せられていることなどを踏まえ、その期間を延長し、合同電話相談窓口を継続することといたしました。

 また、寄せられた相談内容は金銭的トラブルが多数を占め、これらは法的に複雑な問題であるため、法律の専門家による支援につなげる相談窓口を法テラスに新設するとともに、親族間の問題や心の悩みなど様々な相談に対応できるよう、法テラスと消費生活センターを中心に、各相談機関が連携してネットワークをつくり、総合的な体制を構築してまいります。

 さらに、消費者庁の有識者検討会の議論や合同電話相談窓口に寄せられた相談内容を踏まえつつ、霊感商法等に関して、不当な勧誘があった場合の取消し事由の拡大や取消権の行使期間の延長など、消費者契約に関する法令等の見直しの検討を加速し、早急に結論を得るよう、河野担当大臣に指示をしたところであります。

 このように、政府としては、被害者の救済に万全を尽くすとともに、消費者契約に関する法令等について見直しを進めます。

 旧統一教会に対する解散命令の請求と宗教法人法の改正についてお尋ねがありました。

 宗教法人の法人格を剥奪するという極めて重い対応である解散命令の請求については、信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえ、慎重に判断する必要があると考えてはおりますが、社会的に問題が指摘されている団体に関して、政府としては、関係法令との関係を改めて確認しながら、厳正に対応していくこととしております。

 また、宗教法人法の改正案を提出する用意があるということでありますが、これも法案の議論でありますので、国会においてまず御議論をいただくべきものであると考えております。

 物価高騰への対策についてお尋ねがありました。

 物価高騰への対策については、本年四月に原油価格・物価高騰等総合緊急対策を取りまとめ、五・五兆円の予備費を措置し、その後、七月そして九月に予備費を機動的に活用して、累次にわたり、切れ目のない対策を講じてきました。

 足下の物価高は消費者の暮らしや事業者の経営に大きな影響を与えており、国民の皆様からの厳しい声もいただいておりますが、そうした声をしっかりと受け止め、今後の対策に生かしてまいります。

 我が国経済の見通しについては、コロナ禍から社会経済活動の正常化が進みつつある中で、持ち直していくことが期待されていますが、足下では、ロシアによるウクライナ侵略と円安によるエネルギー、食料価格の高騰、世界の景気後退懸念が日本経済の大きなリスク要因となっています。

 こうした状況に対し、今月中に総合経済対策を取りまとめ、この物価高から国民生活と事業活動を守り抜いてまいります。まずは、物価高騰や世界経済の減速に伴う下押し圧力を乗り越え、日本経済を一段高い成長経路に乗せるとともに、成長と分配の好循環を実現し、日本経済を必ず再生してまいります。

 臨時国会召集要求への対応及び議員立法についてお尋ねがありました。

 憲法五十三条の解釈については、これまで法制局長官が答弁してきたとおり、同条後段の定めは憲法に規定されている義務であると考えております。八月十八日に行われた臨時国会の召集要求については、国会のことであるので、与党とも相談しながら対応を検討し、臨時国会で審議すべき事項等も勘案して、十月三日に臨時国会を召集することを決定したものであります。

 御指摘の法案の内容については、これまでも様々な議論があったことを承知しておりますが、議員立法でありますので、まずは国会において御議論いただくべきものであると考えております。

 衆議院選挙区のいわゆる十増十減についてお尋ねがありました。

 所信表明演説で申し上げたとおり、衆議院の選挙区については、本年六月の衆議院選挙区画定審議会の勧告に基づいた改定を行うため、公職選挙法の改正案を今国会に速やかに提出いたします。

 また、内閣が衆議院の解散を決定することについて憲法上これを制約する規定はなく、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任を決すべきものであると考えております。

 なお、議員定数の削減については、議会政治の根幹に関わる重要な問題であり、各党各派において御議論いただくべき事柄であると考えております。

 調査研究広報滞在費、旧文書通信交通滞在費の扱いや議員歳費についてお尋ねがありました。

 調査研究広報滞在費の扱いについては、議員活動の在り方に関わる重要な課題であるからこそ、引き続き、使途公開等について与野党間で議論が続いているものと認識をしております。そのため、引き続き、各党各派において真摯な議論を通じて合意を得て、国民の皆様の理解を得られるような全議員共通のルールを作ることが大事であると考えております。その上で、私自身も、国会議員の一人として、合意に従って対応してまいります。

 同様に、議員の歳費についても、政治活動の根幹に関わるものであることから、各党各会派の間で御議論いただくべき事柄であると考えております。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 拉致被害者の御家族からは、私自身、累次お会いする機会に、長年にわたる苦しみや悲しみ、何としても結果を出してほしいという切実な思いを直接伺っております。御家族がお年を重ねる中で、解決に向けて一刻の猶予もないという切迫感を私としても共有しております。

 二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していないことは痛恨の極みであると感じております。

 そして、最重要課題である拉致問題については、政府として様々な働きかけを行っているところであり、そうした中で、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいります。私自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、公明党を代表して、総理の所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 岸田内閣が誕生して一年がたちました。

 この間、連立政権合意を結び、政策を着実に進めてきた一方で、コロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵略に伴う原油高や電気料金、ガス料金の高騰、さらに急激な円安も重なり、新たな困難な課題に直面し、国民生活や中小・小規模事業、農林水産業などの幅広い分野に深刻な影響をもたらしております。

 国際情勢に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵略による国際秩序に対する重大な挑戦や繰り返される北朝鮮のミサイル発射などにより、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しております。また、気候変動による自然災害も世界各地で相次いでおります。まさに多重危機ともいうべき事態に直面しております。

 他方、医療従事者の懸命な努力や国民挙げての協力に支えられ、新型コロナの第七波の感染者数は減少基調が明確となっています。この機会を捉え、ウィズコロナに向けて、新型コロナの感染再拡大に最大限注視しつつ、感染症対策と社会経済活動の両立を図り、傷んでいる日本経済を再興することが重要です。

 そのため、予備費で措置した追加策の円滑な活用とともに、政府の総合経済対策の策定に当たっては、更なる物価高騰対策や持続的な賃上げ、投資促進や需要喚起策、ウィズコロナ下での感染症への対策等を一段と推し進めることが重要です。

 以下、諸課題について具体的に質問します。

 電気、ガスや食料品など、生活に欠かせない品目の値上げが続いています。今月、多くの食品企業が値上げを予定し、電気・ガス料金は、燃料費高騰の影響で今後更なる値上げが見込まれています。円安や価格転嫁の進展を見据えれば、今後、ますます幅広い商品やサービスの値上げが続いていくことが懸念されます。国民の暮らしを守り、安心を届ける対策の実現に向けて、以下、質問をいたします。

 初めに、先月予備費で措置した追加策について申し上げます。

 まず、低所得世帯に対する給付金についてです。住民税非課税世帯だけでなく、家計が急変した世帯も対象となることが余り知られておりません。家計急変世帯については申請が必要となるため、対象となる方々が漏れなく支援を受けられるよう、周知、広報の強化をお願いしたい。

 あわせて、この度創設された電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金は、各自治体の判断で、低所得世帯への給付金の上乗せや対象拡充のほか、電力コストの増加分を価格転嫁できない医療機関や介護施設など、電気・ガス料金の高騰に苦しむ事業者への支援にも活用できます。各自治体が各地の実情に応じたきめ細かい追加策を実行できるよう、政府においては、好事例の横展開や可及的速やかな執行に向けたサポートをお願いしたい。

 以上、予備費による物価高騰への追加策の迅速かつ効果的な実行について、総理の答弁を求めます。

 脱炭素化への流れによる液化天然ガスの国際市場価格の上昇に加え、ロシアのウクライナ侵略による原油高騰などが重なり、エネルギー燃料を海外に大きく依存している我が国のエネルギー供給に対するリスクが高まっております。三月には電力逼迫警報が、六月には注意報が発令され、これから迎える冬の電力需給についても逼迫の可能性が指摘されております。

 そうした中、経営が軒並み悪化している新電力会社と契約していた事業者の多くが、九電力会社との最終保障契約に追い込まれた上に、九月から市場連動型価格へ移行したことで、より一層の料金高騰に苦しんでおります。

 今や需給逼迫と料金高騰という二つの危機に襲われているのが実態であり、エネルギーの安定供給、大胆な省エネ、そして何より負担軽減が強く求められております。

 総理は、所信表明演説で、電力料金について、前例のない思い切った対策を講じますと表明されましたが、電力、ガスの需給逼迫への対策、さらに、思い切った電力料金対策の内容について、総理にお伺いをいたします。

 ピーク時には一日当たり八千五百件を超えていたコロナ融資、原油価格・物価高騰対策融資への申請数は、現在、コロナ前の水準と同程度まで落ち着いてきました。

 しかし、資材、エネルギーの高騰や今月から始まった最低賃金の引上げへの対応など、中小企業は引き続き厳しい経営を強いられる一方で、これまで受けてきた融資の返済時期を迎えつつあります。いわゆるゼロゼロ融資の返済開始のピークは来年七月と言われており、公明党には、中小企業経営者から、返済に追われる不安を訴える声が数多く寄せられております。

 資金繰り支援の強化や各種補助金の継続など、安定的な経営に向けた収益力改善、事業再生、再チャレンジ等のきめ細かな支援を一層強力に進めるべきと考えますが、実態に即した実効性のある中小企業支援策について、総理の答弁を求めます。

 政府は、今月十一日から、インバウンドの本格再開に向け、入国者受入れ数の上限撤廃や個人旅行、ビザなし渡航の解禁を行うことを決定いたしました。あわせて、同日より、全国旅行支援や、スポーツや音楽、文化芸術等への需要喚起策も開始することが決定しました。

 全国的な需要喚起策は我が国の経済や地域活性化の起爆剤となるものであり、政府は、感染対策に努めつつ、全面的にバックアップすべきです。特に、観光、宿泊産業は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、大変厳しい局面が続いており、観光地再生・高付加価値化事業の基金設置などの支援を行うべきです。そして、観光立国の復活に向け、全国旅行支援を始め需要喚起策や観光産業の振興を着実に進めるべきです。

 また、飲食店の経営環境も極めて厳しい状況であり、全国旅行支援等に加えて、飲食店の需要喚起策を全国で強力に実施すべきです。

 観光、飲食業等の需要喚起への取組等について、総理の答弁を求めます。

 ウクライナ情勢等により、価格高騰や物流の停滞など、多くの食料を輸入に頼る我が国のリスクが顕在化しました。足下で相次ぐ食料品の値上げに対し、冬を迎えるハウス園芸への支援などセーフティーネット対策等を含め、引き続き、食料品の価格高騰対策を切れ目なく実行すべきであります。

 その上で、将来にわたって食料を安定的に確保する食料安全保障の確立が重要です。特に、その鍵となる自給率向上に向けて、麦や大豆等の生産拡大への支援、耕作放棄地等を含む農地の最大限の活用、新規就農者への支援など、各種施策を大胆に強化すべきです。あわせて、食料等の調達国の多元化や備蓄の充実を図っていただきたい。

 一方、製造、加工、流通事業者や飲食店への設備導入支援等を推進し、国内のフードサプライチェーンを強靱化する改革も必要です。

 さらに、持続可能な農林水産業への再構築も大変重要です。そのため、デジタル化、グリーン化や販路開拓への支援、価格転嫁対策等により、生産者の所得を拡大する環境整備を強力に推し進めるべきです。

 以上の提案を踏まえ、食料品の価格高騰対策や食料安全保障の確立について、総理の答弁を求めます。

 エネルギーや物価の高騰を乗り越え、景気を上向かせるためには、持続的な賃上げが欠かせません。中小企業に対して、事業再構築補助金などを通じて脱炭素化やデジタル化に向けて思い切った投資を促すことで、生産性向上や成長を図り、賃上げの原資を確保していくことが重要です。

 あわせて、政府が本年六月に閣議決定したいわゆる骨太の方針には、公明党の主張を踏まえ、価格転嫁や多様な働き方の在り方について合意づくりを進めるとともに、データ、エビデンスを基に、適正な賃金引上げの在り方について検討を行うことが明記されました。是非、検討を開始していただきたい。

 また、社会的課題の解決につながる新たなイノベーションを生み出し、経済成長の原動力となるスタートアップ企業が注目されております。政府は、公的資金活用の抜本的強化、若手研究者を含めた起業家教育の推進など、スタートアップ支援の新たな方針を打ち出しております。

 一方、日本には、バイオや量子技術、ロボットなど、優位性を誇る分野があります。こうした強みを生かすことも重要です。スタートアップの創出と成長の加速へ、大胆かつ実効性ある取組を進めていただきたい。

 以上、中小企業の持続的な賃上げやスタートアップの創出と成長の加速に向けた支援策について、総理の見解を求めます。

 ウィズコロナを進めるに当たり、さらに新型コロナ感染症の第八波に備えるために、ワクチン接種の促進が重要です。先月からはオミクロン株BA・1に対応する二価ワクチンの接種が始まっており、混乱なく、円滑、迅速にワクチン接種できる体制の構築に万全を期す必要があります。

 一方で、オミクロン株は重症化リスクが低く、さらに第七波の新規感染者数も減少している中で、若者世代に対していかに接種促進できるかが大きな課題となります。また、接種間隔の五か月から三か月への短縮や、BA・4、5対応の改良ワクチンが昨日承認されたという状況があります。国民がどのワクチンをいつ接種すべきか迷ったり、接種を控えたりすることのないよう、若者世代の接種の意義を始め、国民に対して丁寧かつ積極的に情報提供を行っていただきたい。

 過去二年間は、年末年始に大きな流行の波が起きました。今年の年末に向けて、オミクロン株対応の二価ワクチン接種を加速することが重要であり、接種を担う自治体に対して最大限の支援を行うとともに、適切な情報提供に努めていただきたい。

 ワクチン接種促進の取組について、総理に伺います。

 第八波への対応については、検査、医療提供体制の再構築も重要です。先週から全数届出の見直しも始まったところですが、重症化リスクの高い人を守るための保健医療体制の強化をお願いしたい。

 あわせて、自宅で速やかに検査ができるよう、国が承認した検査キットの確保に万全を期すとともに、インターネット等で国が承認していない検査キットが研究用として販売されていることから、適切な情報提供に努めることが重要です。

 また、安心して自宅療養をできるようにするため、既に承認されている外国産飲み薬の更なる確保とともに、国産飲み薬の実用化にも全力で取り組んでいただきたい。

 一方で、インフルエンザとの同時流行も懸念されます。新型コロナとインフルエンザの症状は似ているため、患者本人が見分けるのは困難です。そのため、同時に流行すれば発熱外来に患者が集中し、速やかに受診できないおそれがあります。そして、受診の遅れにより発症後速やかに治療薬を投与すべきタイミングを逸する可能性も指摘されております。

 検査、医療提供体制の強化や国産飲み薬の実用化、インフルエンザとの同時流行への備えに万全を期していただきたい。総理の答弁を求めます。

 子育て支援の充実について伺います。

 二〇二一年に日本で生まれた子供の数は約八十一万人と、想定よりも七年程度早く少子化が進んでいます。結婚、妊娠、出産は個人の自由な意思に基づくものですが、子供の幸せを最優先に、若い世代が希望を持って将来を展望できる環境の整備が喫緊の課題です。

 公明党は、結婚、妊娠、出産、幼児教育から高等教育までの支援を段階的に充実させる子育て応援トータルプランを年内に策定、公表し、その実現を目指します。

 政府においても、岸田総理は、将来的に子供政策の予算の倍増を目指すとの考えを示されており、来年四月に発足するこども家庭庁の下で必要な子供政策を体系的に整理し、骨太の方針に倍増への道筋について明確に示していくとしております。

 一方で、少子化は想定を上回るスピードで深刻化しており、少子化対策や子供政策の充実に早期に着手すべきと考えます。特に、〇―二歳児は、児童虐待の死亡事例の半数以上を占めており、また、幼稚園、保育所等を利用しない未就園児が約六割に上ります。〇―二歳児を含めた、妊娠期からの切れ目ない支援の充実について、子育て支援策の中でも先行して政策パッケージを策定、実行するなど、優先的に取り組むべきと考えます。

 子育て支援、特に妊娠期から〇―二歳児への支援の充実について、総理の答弁を求めます。

 大学など高等教育の在り方を検討する政府の教育未来創造会議が取りまとめた第一次提言には、公明党がかねてから主張してきた、返済不要の給付型奨学金の中間層への拡充や、奨学金の減額返還を、無利子、有利子にかかわらず、現在返還中の人も含め、自らの判断で柔軟に減額返還できる仕組みの創設が盛り込まれたところですが、対象者の年収基準は今後の検討となっております。

 公明党は、コロナ禍や物価高騰の影響を受け、厳しい経済状況の中で進学を希望している学生や、奨学金の返還に苦労している若者等の声を踏まえ、給付型奨学金の対象を多子世帯や理工農系の年収六百万円の中間層までに、また、奨学金の減額返還制度の対象を二十代の返還者の八〇%に当たる年収四百万円までに拡大すべきと訴えてきました。

 学生の進路選択に影響を与えるこれらの施策について、早急に年収基準を含めた制度の在り方を検討、公表し、前倒しできるものは可能な限り速やかにスタートすべきです。

 また、自治体や企業による奨学金の返還支援の推進や、大学等に学費の納入期限の延長を促すなど、今の若者の痛みを敏感に感じ、スピード感を持って、あらゆる手だてを講じるべきです。

 給付型奨学金の拡充及び奨学金の減額返還制度について、総理の見解を伺います。

 いわゆる二〇四〇年問題への対応について伺います。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、高齢者人口がピークを迎える一方で、社会保障の主な支え手である現役世代が、二五年から四〇年の十五年間で約一千二百万人も急減します。

 こうした危機の時代とも言える四〇年に向け、医療、介護を始め社会保障のトータルな改革をどう進めていくのか、極めて重要な課題であり、国民の皆様に安心と希望をもたらすため、将来のビジョンを示すのが政治の責任です。

 そのため、公明党は、さきの党大会において、四〇年までの諸課題を克服する新たな構想として、安心と希望の「絆社会」二〇四〇ビジョン(仮称)の策定に取り組み、二三年度中をめどに仕上げたいと発表いたしました。

 このビジョンの作成に当たっては、教育、医療、介護など人間が生きていく上で不可欠なサービスを無償化するベーシックサービスの考え方等を踏まえ、教育や医療、介護などの望ましい給付の在り方、改革の優先順位などについて検討いたします。その上で、財源や負担の在り方を議論し、四〇年までの社会保障改革の大きな流れを示すビジョンとして示したいと考えております。

 政府においても、二〇四〇年という危機の時代をどう乗り越えていくのか、その方向性を早急に示し、具体的な施策を明確にすべきであります。総理の見解を伺います。

 防災・減災対策について伺います。

 本年八月三日からの大雨や台風十四号、十五号により、全国各地で災害が発生しました。

 亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に衷心よりお見舞い申し上げます。

 台風十四号による災害では、国、県管理河川において、氾濫による浸水被害や河川水位上昇に伴う内水被害など、大きな被害が発生しました。

 一方で、宮崎県の五ケ瀬川流域では、過去の台風で市街地が浸水した際と同規模の雨量、水位を台風十四号で記録したものの、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策で治水対策を講じたことにより、河川の氾濫を回避し、延岡市の中心市街地への浸水を防止しました。防災・減災対策の効果が明確に示されたところであります。

 政府においては、今後も五か年加速化対策の着実な推進を図るとともに、五か年加速化対策後においても、引き続き、通常予算とは別枠で、継続的、安定的に防災・減災、国土強靱化対策を講じるべきであります。総理並びに国土交通大臣の見解を伺います。

 福島第一原発事故からの復興、帰還等の促進に向けた環境整備について伺います。

 本年から復興拠点における避難指示解除が順次行われています。これを新たなスタートと捉え、復興拠点における帰還、住居環境の整備を進めつつ、復興拠点区域外への帰還、居住に向けた取組も進めていくことが重要です。

 政府においては、与党提言を踏まえ、住民一人一人に寄り添い、帰還意向の丁寧な把握とスピード感を持った対応を図っていただきたい。公明党は、引き続き、人間の復興を成し遂げるまで被災者に寄り添ってまいります。

 帰還等の促進に向けた取組について、総理の決意を伺います。

 次に、外交・安全保障政策について伺います。

 先月、日朝平壌宣言から二十年を迎えましたが、拉致問題は、被害者五人の帰国以降、実質的な進展をしておりません。また、今年に入り、今朝の発射を含め二十四回もミサイルを発射し、さらに日本上空を通過させるなど、これまでになく異例の頻度、また新たな態様での発射を繰り返しております。核実験の実施を含め、更なる挑発行為に出る可能性も懸念されております。

 政府は、国際社会と結束して、一刻の猶予もない拉致問題と核・ミサイル問題の解決に向け、具体的な外交努力、取組を進めていただきたい。

 拉致問題の一刻も早い解決のため、そして北朝鮮からの脅威に対応するために今後どのように臨まれるのか、総理の答弁を求めます。

 北朝鮮の核・ミサイル開発の動向を始め、我が国周辺の厳しい安全保障環境に鑑みれば、日韓や日米韓の協力の進展がこれまで以上に重要なときはありません。

 先月、岸田総理と尹錫悦大統領が直接会って対話をされました。関係改善の推進を訴える新政権となったことを好機と捉え、首脳間での不断の対話を続けていただきたい。

 先週、公明党も、国葬儀に参列するため訪日された韓日議連の代表団と会談をいたしました。当面する課題に対し、知恵を出し、努力し、解決する、そして未来の世代に課題を残さない道を開くことが政治家の責任と考えます。

 日韓関係を健全な状態に戻すための取組について、総理に伺います。

 九月二十九日、日中国交正常化五十年の節目を迎えました。公明党は、中国との交流に一貫して取り組み、対話の扉を開く役割を担いながら、両国関係の改善に力を注いでまいりました。両国の間には様々な課題がありますが、主張すべきことは主張しながらも、建設的で安定的な関係を築くべきであります。

 そのためにも、政治、経済、文化、そして地域間交流、青少年交流など様々な分野で交流を強化し、草の根レベルでの信頼醸成を図るとともに、気候変動を始めとする地球規模課題について協力して取り組んでいくことが重要です。

 今後どのように建設的で安定的な日中関係を築いていくのか、総理の見解を伺います。

 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、それに対処するために、現実に即した着実な防衛力の整備、強化に加え、日米同盟の抑止力や対処力を強化していくことが重要です。

 先日、政府は、防衛力の強化に向けた予算や財源を議論するため、様々な分野の専門家による有識者会議の初会合を行いました。年末には、国家安全保障戦略等の三文書の改定が行われます。

 公明党は、三文書改定に向けて、真に必要な防衛力整備の内容、優先順位、財源等について考え方を整理するとともに、与党内そして政府との協議を深め、国民の理解が得られるよう議論を進めてまいります。

 真に国民の命と平和な暮らしを守るためには、防衛力の強化のみならず、対話、外交の強化も必要不可欠です。また、有事に耐え得る経済、金融、財政面における脆弱性の解消を図ることも重要と考えます。また、防衛体制、研究開発、防衛産業の在り方、自衛官の任務環境の改善など、根本的な論点についてもしっかり議論していくべきであります。

 そのため、防衛費については、初めから規模ありきではなく、真に必要な予算を総合的な観点で組み上げていただきたいと思います。

 防衛力整備、強化について、総理の見解を伺います。

 霊感商法や悪質な勧誘による寄附の被害者の救済、被害防止対策について伺います。

 今回の旧統一教会に関連した問題の本質は、社会的に問題やトラブルの多い団体と政治家との関係であります。政治家は、そうした団体とは関係を持つべきではありません。

 一方、霊感商法や悪質な寄附強要による被害は深刻です。

 現在、政府では、被害者の救済と新たな被害の防止のため、関係省庁が連携し、検討が進められていると承知しております。

 まずは、国民に対する適切な情報発信、注意喚起とともに、相談窓口におけるスタッフ研修やマニュアルの更新など、相談者に寄り添った体制強化を図るべきです。また、学校のみならず、広く国民に対する消費者教育を積極的に進めていくことも重要であります。

 現行制度における課題などを見極めて、消費者関連の法制度を見直すなど、被害者の救済に万全を期し、効果的な被害防止対策を講ずるべきであります。

 霊感商法や悪質な勧誘による寄附の被害者救済と被害防止策について、総理の見解を求めます。

 最後に一言申し上げます。

 公明党は、「大衆とともに」との立党精神が示されてから六十年の節目を迎えました。

 公明党議員一人一人が、立党精神を胸に、国民に寄り添い、一人一人の声を的確に受け止めてまいります。そして、政策を練り上げ、解決策を導き出し、山積する内外の諸課題解決へ向けて全力で取り組むことをお誓い申し上げ、代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 石井啓一議員にお答えいたします。

 物価高騰対策の迅速かつ効果的な執行についてお尋ねがありました。

 低所得世帯に対する給付金の周知、広報については、国民向けのリーフレットなどを活用しながら、支給対象に家計急変世帯も含まれていることなどを周知し、対象者が漏れなく支援を受けられるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 また、地方創生臨時交付金については、より重点的、効果的に活用いただけるよう、今般、生活者、事業支援の推奨事業メニューをお示しいたしました。速やかに執行するため、自治体の事例について情報提供に努めるとともに、自治体からの相談に丁寧に対応することにより、地域の実情に応じたきめ細やかな支援を速やかにお届けしてまいります。

 電力、ガス需給逼迫への対策、電力料金対策についてお尋ねがありました。

 この冬の電力供給については、休止中の火力発電所の稼働や必要な燃料の調達、再稼働済みの原子力発電所の稼働確保など、最大限の供給力確保に向けて万全の取組を進めてまいります。また、都市ガスの需給については、事業者間での融通が円滑に行われるための枠組みの創設や、万が一需給の逼迫が生じた場合に都市ガス使用の節約の要請等の需給面の対策が実施できるよう、検討を進めてまいります。

 電力料金については、急激な値上がりリスクに対応し、家計、企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない思い切った対策を講じます。内容については現在検討中ですが、与党とも意見交換をしながら、十月末の経済対策の取りまとめに具体策を盛り込んでまいります。

 中小企業支援策についてお尋ねがありました。

 新型コロナの影響の長期化に加え、資材、エネルギーの高騰や逼迫、最低賃金引上げ、さらにはコロナ融資の返済本格化を迎えつつあるなど、中小・小規模事業者は厳しい事業環境にあると考えています。

 こうした状況を踏まえ、資金繰り支援については、官民金融機関等に対し、事業者からの条件変更等の申出に迅速かつ柔軟に対応するよう要請するとともに、先月拡充した日本公庫による低利融資を最大限活用してまいります。さらに、コロナ融資の返済本格化に向けて、借換え保証の創設を検討してまいります。

 加えて、収益力改善、事業再生、再チャレンジをきめ細かく支援するため、相談窓口の機能強化など、中小企業活性化協議会による支援充実を進めます。

 原材料価格の高騰等に対しては、取引適正化を進める公正取引委員会等の執行体制を強化し、価格転嫁対策を徹底してまいります。

 また、新しい資本主義実現会議において総合経済対策に反映すべき重点事項としてお示ししたように、各種補助事業を拡充することで、事業再構築や生産性向上などの前向きな取組を支援してまいります。

 観光、飲食業等の需要喚起策についてお尋ねがありました。

 観光業、飲食業等については、新型コロナの大きな影響を受けており、コロナ禍からの需要回復、地域活性化を図ることが重要となっています。

 御指摘の観光地や観光産業の再生、高付加価値化については、総合経済対策の中で制度を拡充し、計画的、継続的に推進をしてまいります。

 また、今月十一日から再開する全国旅行支援については、旅行、宿泊商品の割引だけでなく、飲食店など、地域で利用できるクーポンの内容を充実させるとともに、実施に併せて、地域の食や文化芸術などを踏まえた魅力的な旅行商品の提供を促進してまいります。

 これらを通じて、観光立国の復活に向けて取り組むとともに、宿泊業、旅行業のみならず、飲食業なども含めて、幅広い需要喚起を図ってまいります。

 食料品の価格高騰対策と食料安全保障の確立についてお尋ねがありました。

 食料品の価格高騰に対しては、施設園芸や漁業の燃油高騰対策、肥料価格高騰に対する支援金の仕組みの創設や、輸入小麦価格、配合飼料の負担を十月以降も据え置く措置など、機動的に対応してきました。今後、総合経済対策を取りまとめ、農産物や肥料、飼料の国内生産を通じた食料安全保障の確保などに取り組んでまいります。

 その上で、農林水産業を取り巻く状況の変化に伴い、食料安定供給上のリスクが顕在化していることを踏まえ、スマート農林水産業、輸出促進、グリーン化、食料安全保障の強化を農林水産政策の四本柱として、食料安全保障の強化と農林水産業の持続的な成長を推進してまいります。

 中小企業の持続的な賃上げやスタートアップの支援策についてお尋ねがありました。

 中小企業の持続的な賃上げに向け、これまで、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げ、各種補助金や公共調達における賃上げ企業の優遇等を行ってきました。

 さらに、事業再構築補助金などを通じて生産性向上を支援するとともに、価格転嫁対策を徹底してまいります。また、十月四日の新しい資本主義実現会議においては、公正取引委員会に対し、中小企業の賃上げが可能となる環境を整備するため、転嫁拒否行為については企業名を公表するなど、踏み込んだ対応を要請いたしました。

 加えて、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性向上、更なる賃上げを生むという構造的賃上げに向けて、労働移動円滑化に向けた指針の策定や、リスキリングを始めとした人への投資の支援の抜本強化等に取り組んでまいります。

 スタートアップについては、日本が優位性を誇る分野などにおいて社会的課題を成長のエンジンへと転換できるよう、年末のスタートアップ育成五か年計画の策定に向けて、スタートアップの創出と成長の加速に向けた支援策を検討してまいります。

 具体的には、ベンチャーキャピタルへの公的資本の投資拡大、優れたアイデアや技術を持つ若い人材への支援制度の拡大、経営者の個人保証を不要とする見直しなど、大胆かつ実効性のある支援策を一体的に講じていきます。

 ワクチン接種促進の取組についてお尋ねがありました。

 過去二年、年末年始に新型コロナの感染拡大の波が到来したことを踏まえ、若者を含め、年末までに希望する全ての対象者がオミクロン株に対応した新型ワクチンの接種を完了できるよう、自治体と連携して接種体制を整備することとしております。

 既に先月から接種を開始しておりますが、自治体の負担軽減を図り、接種を促進するため、職域接種についても、十月十七日の週以降、準備が整った接種会場から順次実施する予定です。こうした取組を通じて、山場となる今月から十一月にかけて、一日百万回を超えるペースの接種体制を整備し、ワクチン接種を加速してまいります。

 また、オミクロン株対応ワクチンは、従来型のワクチンを上回る重症化予防効果等があり、ウイルスが今後変異する可能性がある中で、今後の変異株に対してもより効果が高いと期待されています。こうしたワクチンの有効性や安全性に関する情報については、SNSやリーフレットなど様々な媒体を活用しながら、若者を始めとした国民の皆様に丁寧に周知し、できるだけ多くの方に接種を受けていただくよう取り組んでまいります。

 新型コロナの検査、医療提供体制の強化についてお尋ねがありました。

 保健医療体制については、引き続き、新型コロナ病床の確保や診療・検査医療機関の取組を継続するとともに、高齢者施設等における医療支援の強化等を行い、高齢者等重症化リスクの高い方を守るための強化、重点化を進めてまいります。

 また、検査体制については、国が承認した検査キットのインターネット販売を可能とし、自宅で速やかに検査できるようにいたしました。あわせて、研究用ではなく国が承認したものを使用していただくよう、適切に周知を図っております。

 国産経口薬については、第三相試験において良好な結果が得られたことが発表されており、今後、詳細なデータの提出を受け、速やかに審査を進めてまいります。

 また、インフルエンザと新型コロナが同時流行した場合の備えは重要であり、ワクチンによる予防のほか、治療薬の確保や外来等の保健医療体制の確保も進め、万全を期してまいります。

 子育て支援の充実についてお尋ねがありました。

 我が国の将来を支える人材を育む未来への投資として、子育て、若者世代への支援を強化し、少子化対策に大胆に取り組むことが求められており、特に、ゼロ歳から二歳児を含めた、妊娠、出産、育児を通じた包括的支援が提供される体制等の構築が重要な課題です。

 このため、親の働き方にかかわらない、子供の年齢に応じた切れ目のない支援強化の在り方について検討を指示したところであり、今後、全世代型社会保障構築会議において、年末に向けて議論を進めてまいります。

 今後の子供政策に関する予算については、こども家庭庁の下で、子供の視点に立って、必要な子供政策が何かをしっかり議論した上で、体系的に取りまとめ、社会全体での費用負担の在り方の検討と併せて、子供政策の充実に取り組んでまいります。

 給付型奨学金の拡充及び奨学金の減額返還制度の見直し等についてお尋ねがありました。

 教育未来創造会議の提言においては、授業料減免及び給付型奨学金の対象について、中間所得層の多子世帯や理工農系の学生に拡大するとともに、減額返還の見直しなどにより、卒業後の所得に応じて奨学金を柔軟に返還できる仕組みを創設することが提言され、先般、工程表を作成いたしました。

 この中で、これらの制度は、令和六年度に導入することといたしました。いただいた御指摘を受け止め、年収基準も含め早急に明らかにできるよう、制度設計を進めてまいります。

 さらに、自治体や企業による奨学金の代理返還の推進などにも現在取り組んでいるところであり、引き続き、学生等への経済的支援の充実を進めてまいります。

 二〇四〇年に向けた社会保障制度改革についてお尋ねがありました。

 高齢者人口が二〇四〇年頃をピークに増加を続ける一方、現役世代の減少が顕著となる中で、持続可能な社会保障制度を構築していくことは、成長と分配の好循環を実現するためにも極めて重要です。

 特に、未来への投資として、子育て、若者世代への支援を強化し、少子化対策に大胆に取り組むことが求められています。また、増加する医療費について、能力に応じて、全ての世代で公平に支え合う仕組みを強化するとともに、国民目線での医療・介護制度の改革を前に進めることも待ったなしの課題です。

 こうした中で、御党において、財源や負担の在り方を含め、二〇四〇年までの社会保障改革の大きな流れを示すビジョンを議論されることは極めて重要な取組であり、敬意を表し申し上げます。

 政府としても、これらの課題について、現在、全世代型社会保障構築会議において検討が進められており、今後、二〇四〇年頃を視野に入れつつ、全世代型社会保障の構築に向けた取組を進めてまいります。

 防災・減災対策についてお尋ねがありました。

 線状降水帯による豪雨など、災害が激甚化、頻発化する中で、国民の生命財産を守り、災害の被害に遭う方を一人でも減らすことは我々の使命です。

 このため、国土強靱化の五か年加速化対策を引き続き推進してまいります。先月三十日に指示した新たな総合経済対策についても、国民の安全、安心の確保を柱として掲げて具体的な施策の検討を進めることとしており、御指摘を踏まえながら、防災・減災、国土強靱化についてもしっかりと盛り込んでまいります。

 また、五か年加速化対策後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的、安定的に国土強靱化の取組を進めていくことが重要です。更なる取組のための新たな基本計画を策定し、中長期的かつ継続的に防災・減災、国土強靱化に取り組んでまいります。

 福島の帰還等の促進に向けた取組についてお尋ねがありました。

 将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組むとの決意に揺らぎはありません。

 政府としては、各自治体の個別の課題や要望を丁寧に伺いながら、特定復興再生拠点区域の整備を進めてまいります。また、同区域外について、与党提言も踏まえて、二〇二〇年代をかけて帰還意向のある住民の方々が帰還できるよう、帰還意向の確認を丁寧に行い、避難指示解除に向けた取組をスピード感を持って進めてまいります。

 北朝鮮についてお尋ねがありました。

 我が国としては、日朝平壌宣言に基づき、核、ミサイル、そして最重要課題である拉致問題といった諸懸案を包括的かつ早急に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す考えです。

 北朝鮮は、今年に入ってからも、今朝の発射を含め、弾道ミサイルを計二十一回にわたって発射しています。これらの極めて高い頻度で続く一連の挑発行動の中で、四日、我が国上空を通過する形で弾道ミサイルを発射したことは、我が国の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であるとともに、地域及び国際社会全体の平和と安全を脅かす暴挙であります。

 私は、四日の夜、バイデン大統領と電話会談を行って、北朝鮮の完全な非核化に向け、安保理における更なる対応等について、引き続き、日米、日米韓で緊密に連携していくことを確認いたしました。今後とも、米国、韓国を始め国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化を目指してまいります。

 最重要課題である拉致問題については、様々な働きかけを行っているところであり、そうした中で、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいります。私自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意であります。

 日韓関係についてお尋ねがありました。

 韓国は、国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国です。

 先月の国連総会の機会に懇談した韓国の尹大統領との間では、懸案を解決し、日韓関係を健全な関係に戻す必要性を共有するとともに、一九六五年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係を未来志向で発展させていくことで一致をいたしました。また、労働者問題に関して、現在、両国間で行われている外交当局間の協議を加速するよう指示をしたところです。

 日韓関係を健全な形に戻し、更に発展させていくため、首脳間を含め、韓国政府と緊密に意思疎通をしてまいります。

 中国との関係についてお尋ねがありました。

 日中両国間には、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案が存在します。同時に、日中両国は、地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を有しています。

 中国とは、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案を含め、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係を日中双方の努力で構築してまいります。

 防衛力の整備、強化についてお尋ねがありました。

 安全保障環境が急速に厳しさを増す中、抑止力、対処力の強化は最優先の使命です。先般開始した、国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議においても議論を進めていただくとともに、新しい国家安全保障戦略等の策定に向けた議論を加速し、与党とも十分連携しながら、予算編成過程で結論を出します。

 その際、議員御指摘のとおり、政府全体の資源と能力を総合的かつ効率的に活用した、我が国として必要とされる総合的な防衛体制の強化を図るとともに、経済力の強化を促す研究開発、技術力の向上が不可欠です。

 議員の問題認識に正面から取り組みながら、必要となる防衛力の内容の検討、予算規模の把握、財源の確保、これらを一体的かつ強力に進め、その過程で、国民の皆さんに丁寧に説明し、理解を得ていきます。

 そして、最後に、霊感商法による被害者救済や被害防止策についてお尋ねがありました。

 国民に対する適切な情報発信等については、「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議が設けた合同電話相談窓口に寄せられた相談状況等を踏まえ、現行法を活用した国民向けの分かりやすい法的整理をQアンドA形式で法務省のホームページに掲載するとともに、消費者教育の取組を強化するほか、相談のノウハウ等に関して各種研修を充実させるなど、全般的な体制を取ることといたしました。

 寄せられた相談内容は金銭トラブルが多数を占め、これらは法的に複雑な問題であるため、法律の専門家による支援につなげる相談窓口を法テラスに新設するとともに、様々な相談に対応できるよう、法テラスと消費生活センターを中心に、各相談機関が連携してネットワークをつくり、総合的な相談体制を構築し、相談者に寄り添った体制強化を図っていきます。

 さらに、消費者庁の有識者検討会の議論や合同電話相談窓口に寄せられた相談内容を踏まえつつ、霊感商法等に関し、不当な勧誘があった場合の取消し事由の拡大や取消権の使用期間の延長など、消費者契約に関する法令等の見直しの検討を加速し、早急に結論を得るよう、河野担当大臣に指示をしたところであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井議員から、防災・減災、国土強靱化対策についてお尋ねがありました。

 本年も、八月三日からの大雨や台風十四号、十五号等によって、河川の氾濫や内水による浸水など、全国各地で多くの被害が発生しております。

 これらの災害によりお亡くなりになられた方々とその御家族に対し心よりお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた方々とその御家族に心よりお見舞い申し上げます。

 これまでの五か年加速化対策等により、河道掘削など、事前防災対策を強化してまいりました。また、台風十四号では、過去最多となる百二十九のダムで事前放流を行ったところです。

 その結果、御指摘の五ケ瀬川流域を始め、国が管理する多くの河川では、堤防の決壊等による大規模な浸水被害の発生を食い止めることができました。

 一方、当時の水位は、降雨量があと少しでも増加すれば氾濫するおそれがあるところまで上昇しており、また、気候変動による降雨量の増加も予測されていることから、今後、更なる事前防災対策の強化が必要です。

 国土交通省としては、今回の総理指示を踏まえ、防災・減災、国土強靱化対策にスピード感を持って取り組んでまいります。

 また、これらの対策は、中長期的かつ明確な見通しの下、計画的に進めることが必要であり、五か年加速化対策後も継続的、安定的に国土強靱化の取組を進めていくことが重要であると考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)

 まず、台風十四号、十五号で亡くなられた方にお悔やみを申し上げ、被災された皆様にはお見舞いを申し上げます。

 現地に行って被災者の声を伺ってきたので、まず、岸田総理に二点お願いです。

 先週訪問した静岡市清水区では、大量の災害ごみが住宅のそばの広場に積まれたままになっていました。今後、浸水被害が発生する可能性がある地域では、都道府県と市町村が調整して、あらかじめ災害ごみ置場を決めておくよう、国からも要請できませんか。

 次に、被災した飲食店からは、やっとコロナ禍から立ち直れると思っていたのに心が折れそうだ、そういう声がありました。過去の台風被害でも設定された小規模事業者持続化補助金の台風枠を追加公募してください。

 二点お願いです。

 さて、国民民主党は、選挙で約束した公約を実現するため、引き続き、対決より解決の姿勢で、給料が上がる経済の実現に全力を注いでまいります。

 また、物価高に苦しむ国民の声を聞くため、参議院選挙直後から私自身が全国を回って、既に三十四都道府県を訪問しました。また、ユーチューブやツイッターでも、多くの切実な声が日々届いています。今日はその声を総理に直接ぶつけますので、官僚の原稿ではない、政治家としての言葉で、熱のある答弁をお願いしたいと思います。

 全国を訪問して一番多く聞いたのは、給料が上がらない、あるいは年金が下がる中で、物価高に苦しむ声です。

 国の統計によれば、七月の実質賃金は四か月連続のマイナスで、物価の上昇に賃金の伸びが追いついていません。最近だけではなく、二十五年間実質賃金が下がり続けているのは日本だけです。

 総理、なぜ日本では賃金が上がらないのか、どうやって上げるつもりなのか、岸田内閣の基本認識と方針を改めて伺います。

 国民民主党の経済政策は、まず、積極財政で、需要不足を解消します。同時に、教育国債の発行で、子育て、教育、科学技術投資を倍増して経済全体の生産性を上げます。そして、求職者ベーシックインカムなどセーフティーネットの充実で、円滑な労働移動を促します。この三つの柱で、給料が上がる経済を実現してまいります。

 総理に、日本経済の基本認識を伺います。

 総需要である国内総生産、GDPと潜在GDPの差である、いわゆる需給ギャップの最新の数字は幾らですか。お答えください。

 私たち国民民主党は、どの党よりも早く、先月十三日に、二十三兆円の緊急経済対策を取りまとめました。少なくとも十五兆円程度の需要不足があるとの前提に立ち、積極財政による経済対策を訴えています。

 政府は、先月、住民税非課税世帯への五万円給付を決定しましたが、住民税非課税世帯の約八割は高齢者です。物価高に苦しんでいるのは高齢者だけではありません。民間調査会社の試算によれば、物価高による家計負担は昨年に比べて九万八千円増加しています。

 総理、需要不足という認識があるなら、私たち国民民主党が緊急経済対策に盛り込んだ、国民一人当たり現金十万円を一律給付するインフレ手当こそ、今必要な経済対策ではありませんか。

 緊急経済対策の財源についても提案があります。

 政府は、為替相場への介入原資として、外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会に約一・三兆ドル、日本円にして約百八十兆円の資産を保有しており、そのほとんどがドル建ての米国債です。今、記録的な円安なので、円建ての含み益が相当出ているはずです。機械的に計算しても、約三十七兆円あります。

 総理、外為特会の円建て含み益は本年一月に比べて幾ら出ていますか。円安で苦しんでいる個人や事業者がいる一方で、国の特別会計は円安でうはうはです。総理、円安メリットを生かすなら、緊急経済対策の財源として、外為特会の円建ての含み益を充ててはどうですか。

 電気代の上昇が止まりません。家庭用の電気代は、昨年に比べて二割以上アップ、震災前に比べると五割近くアップしています。実は、この値上げ分の三分の一が、電気代に上乗せされている再生可能エネルギー発電促進賦課金、いわゆる再エネ賦課金によるものです。

 国民民主党は、さきの参議院選挙の公約として、公党の中で唯一、再エネ賦課金の徴収停止による電気代値下げを打ち出しました。これで、一般的な家庭で約一二%、産業用で一七%、電気代を下げることができます。

 総理が指示された前例のない思い切った対策として、国民民主党の提案する再エネ賦課金の一時徴収停止による電気代値下げを採用してはどうでしょうか。我々は実現に必要な再エネ特措法改正案も提出するので、あわせて、与党としても御協力をいただきたいと思います。

 電力自由化によって参入した新電力の撤退などによって、電力会社との契約ができない電力難民が続出しました。円安メリットを生かした産業の国内回帰にも大きな障害となっています。

 総理、これまで進めてきた電力自由化で本当に電気代が安くなったのかなど十分に検証した上で、電力の安定供給の観点から必要な見直しを行うときではないでしょうか。お答えください。

 原子力発電の活用について伺います。

 総理は、所信表明演説で、次世代革新炉の開発、建設について、専門家による議論の加速を指示したと述べましたが、幾ら検討を指示しても、そもそも、造るかどうかを決めなければ、電力事業者が投資に踏み切ることはありません。

 総理、岸田内閣として、原発の建て替え、リプレースを行うのかどうか、今ここで明言をしてください。

 総理の所信でも、グリーントランスフォーメーション、GXを重点投資分野と位置づけていましたが、電気自動車など新車購入を補助するクリーンエネルギー自動車導入促進補助金、いわゆるCEV補助金が、軽のEVなどが人気で、今月末には予算がなくなる見込みです。

 総理、せっかくCEV補助金が人気なのですから、補助金の空白期間をつくるべきではありません。追加予算を補正予算で積み増して、自動車分野のGX化を加速化すべきではありませんか。

 次に、安全保障について伺います。

 政府は、外交・安全保障政策の根幹である国家安全保障戦略など三つの文書を年末までに改定するとのことですが、我々国民民主党も、台湾海峡問題や中国、北朝鮮のミサイル開発に対応できる骨太の安全保障政策を年内にもまとめ、総理にも提言する予定です。

 そこで、総理に伺います。

 我が国の継戦能力、有事の際に組織的な戦いを継続できる能力はどの程度我が国にありますか。また、防衛省による調査で、全装備品のうち足下で可動するのは五割余りしかなく、可動していない五割弱の半分が整備中、残りは修理に必要な部品や予算がない整備待ちという報道もあります。これは事実でしょうか。秘密に関わることですが、可能な範囲で現状を明らかにし、必要な防衛費の増額について国民の理解を得るべきではないでしょうか。

 また、我が国の防衛を考える上で避けて通れないのは中距離弾道ミサイルです。

 ミサイル防衛システムが無力化される可能性のある極超音速の中距離弾道ミサイルの開発と配備が周辺国で進んでいます。中距離弾道ミサイルに対する自衛隊施設の抗堪性、すなわち敵の攻撃に耐えて機能を維持する能力を高めるために、自衛隊の重要施設の地下化や航空機のシェルター整備などを進める必要があると考えますが、総理の認識を伺います。また、個人宅など民間にもシェルター設置を促す考えがあるのかも併せて伺います。

 先月、他を圧倒する子育て政策で人口の増加、税収増加を実現している兵庫県明石市の泉房穂市長を訪ね、お話を伺ってきました。泉市長は、国の所得制限が少子化対策ではなくて少子化加速策になっていると批判をされていました。政府は、今月から、一定の所得以上の家庭の児童手当の特例給付を廃止しました。国民民主党は、泉市長と同じく、子育て支援策には所得制限を設けず一律に支援すべきとの考えから、この臨時国会の初日に所得制限撤廃法案を提出しました。

 総理に伺います。

 子育て支援策の所得制限によって、中間層の子育て世帯が取り残され、かえって少子化を加速しているとの泉市長の指摘に対する総理の見解を伺います。

 全国を回っていますと、驚くほど多くの学生や大学院生が我々国民民主党の集会や街頭演説会に来てくれます。そのときによく出る質問が、岸田総理は外国人留学生の受入れ支援を拡大するようですが、それなら日本人の学生をもっと助けてほしいという切実な声です。この問いに総理はどう答えますか。

 また、給付型奨学金の要件緩和を検討しているようですが、三人以上の子供がいる多子世帯や理系だけに限定しようとしています。ここはけちけちせずに、保護者の年収など、給付型奨学金の要件を幅広く緩和すべきです。財源は、国民民主党の提案する教育国債を発行すれば解決します。併せて総理に伺います。

 もう一つ、全国を回ってパート、アルバイトの皆さんからよく聞く声は、いわゆる年収の壁です。働く時間を調整しないと、社会保険料や所得税を徴収される年収百三万円、百六万円、百三十万円などの壁に達して、世帯全体の所得が減少する逆転現象が起きてしまう問題です。

 去年、今年と最低賃金が上がっていることはいいことなんですが、そのことで年収の壁に早く達してしまいます。店長さんや経営者の方も、年末にかけて忙しい時期に人手の確保ができなくなると困っています。

 当面は、最低賃金のアップに連動して年収の壁の上限を引き上げるような見直しをした上で、やはり抜本的な制度改正が必要だと考えますが、総理の考えを伺います。

 最後に、旧統一教会について伺います。

 まず、国会に調査特別委員会を設置し、物価高騰対策など本来の政策議論と同時並行でできる枠組みをつくることを、議場内の与野党の同僚議員に提案したいと思います。

 また、昨日の総理答弁では、現行法である宗教法人法八十一条に基づく解散命令について、判例を踏まえて慎重に判断するとのことでした。しかし、その判断材料をそもそも政府、行政庁は持っているんでしょうか。

 総理、少なくとも、宗教法人法七十八条の二に基づく報告を旧統一教会に対して求めたり、質問することはしないんでしょうか。現行法適用に関する総理の見解を明確にお示しください。

 法に基づく報告徴求に慎重だとすれば、現行法はざる法だということになります。仮に今後法改正をしたとしても、運用がざるでは意味がありません。

 先日、大分県別府市の「太陽の家」を視察しました。故中村裕医師が、ノー・チャリティー・バット・ア・チャンス、保護より機会をを理念に設立した社会福祉法人で、オムロンを始めとした民間企業と共同出資会社を次々と設立し、障害者の就労機会を飛躍的に拡大してきました。是非、岸田総理にも視察していただきたいと思います。私は、そこに、理想の障害者雇用の姿を見るとともに、人を中心に置いた資本主義の姿を見ることができました。

 総理の言う新しい資本主義は若干迷走しているように思います。私は、一人一人を尊重し大切にする経済こそ新しい資本主義だと確信しました。金融資本、つまりお金も大切ですが、資本主義を構成するもう一つの要素、人的資本、すなわち人を大切にする政策を徹底することこそが日本再生の鍵だと考えます。だからこそ、私たち国民民主党は、人づくりこそ国づくり、これを理念に掲げています。

 改めて、人への投資の倍増による日本再生に本気で取り組むことを総理に強く求めて、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員の御質問にお答えいたします。

 台風被害への対応についてお尋ねがありました。

 まず、改めて、一連の台風で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

 浸水被害を含め、災害からの早期の復興に向けては、災害廃棄物の仮置場の候補地を事前に選定しておくことは極めて重要です。政府としては、自治体に対し、仮置場選定も含めた災害廃棄物処理計画の策定を促しており、そのための支援も行っているところです。改めて、計画策定と現場での円滑な運用について徹底してまいりたいと思います。

 また、台風十五号で被災した中小企業への支援策として、災害救助法が適用された静岡県に対し、中小企業関係団体等による特別相談窓口の開設、災害復旧貸付けの実施等の措置を講じています。こうした取組を進めつつ、小規模事業者持続化補助金を含む適切な支援策を講じていくべく、早急に被害実態の把握に努めてまいりたいと思います。

 賃上げをめぐる基本認識と方針についてお尋ねがありました。

 我が国は、バブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国と比べて低い経済成長が続きました。この間、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷し、デフレが継続する、こうした悪循環となりました。こうした中で、企業に賃上げを行う余力が生まれにくくなったことから、賃金が伸び悩み、他国より低い賃金水準になったと考えております。

 このトレンドを一気に反転させ、成長と分配の好循環による新しい資本主義にふさわしい賃上げを実現するためには、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生むという好循環を実現することが不可欠です。

 このため、短期的には、来春の賃金交渉において物価上昇をカバーする賃上げを目標に、価格転嫁対策や中小企業の支援等に取り組みます。

 さらに、中長期的に必要となる構造的賃上げに向けて、賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革を実現するため、労働移動円滑化に向けた指針を来年六月までに取りまとめるとともに、リスキリングを始めとした人への投資の支援を五年間で一兆円のパッケージへと抜本強化してまいります。

 需給ギャップ、家計への給付、再エネ、外為特会についてお尋ねがありました。

 まず、内閣府の推計によれば、最新の本年四月―六月期の需給ギャップは、年率換算でマイナス十五兆円であると承知をしています。

 足下の物価高に対しては、家計への影響が大きい低所得世帯向けの給付金を迅速に実施するほか、地域の実情に応じた子育て世帯への支援などに使用可能な新たな交付金等を創設いたしました。さらに、家計、企業の電力料金負担軽減について御党を含め様々な御意見があるところですが、総合経済対策において、電力料金負担の増加を直接的に緩和する思い切った対策を含め、エネルギー、食料品等の価格高騰により厳しい状況にある生活者、事業者への支援を強化し、消費を下支えしてまいります。

 また、外為特会の外国為替評価損益は、各年度決算を基に毎年三月末の数値をお示ししており、最新の令和四年三月末は一兆円であります。

 しかしながら、外為特会が保有する外貨資産は、外国為替相場の安定を目的として、将来の為替介入等に備えて保有しているものであり、財源確保のために外貨を円貨に替えるのは、実質的にドル売り・円買いの為替介入そのものとなります。G7等での国際的な合意において、為替介入は過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われることとされており、この面から適当ではないと考えております。

 エネルギー政策についてお尋ねがありました。

 いわゆる新電力が大手電力会社よりも割安な料金メニューを提供するなど、電力自由化は、電力料金の負担を抑制する一定の効果があったと考えております。

 他方、電力自由化で安定的な相対取引が縮小したこと等により、火力発電の採算性が悪化し、新設抑制や休廃止などが生じているほか、国際エネルギー市場の混乱による影響などもあり、エネルギー安定供給の再構築は急務と言える状況です。

 足下では、ロシアのウクライナ侵略による世界的な燃料価格の高騰等の影響を受け、更に電力料金が高騰するリスクがあることから、家計、企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない思い切った対策により対応していきます。

 さらに、電力需給逼迫という足下の危機克服とGX推進を両立させるべく、再エネ、省エネの最大限の導入、原子力の最大限の活用に取り組んでまいります。また、次世代革新炉の開発、建設を含むあらゆる選択肢について、年末に向け、専門家による議論の加速を指示したところであり、専門家の意見も踏まえ、年末までに具体的な結論を出せるよう、検討を進めてまいります。

 自動車分野のGX化についてお尋ねがありました。

 脱炭素化へのチャレンジに当たり、自動車の電動化を進めることは重要です。電気自動車等の購入補助金は昨年の約二倍のペースで申請をいただいており、早ければ今月末にも受付を終了せざるを得ない状況です。

 新しい資本主義実現会議では、今般策定する総合経済対策の重点事項としてGX投資を掲げていますが、その中には電気自動車等の購入支援を盛り込んでいます。引き続き、自動車分野のGXを加速するべく、必要な措置を用意していきたいと思います。

 自衛隊の継戦能力、ミサイルへの対応等についてお尋ねがありました。

 安全保障環境が厳しさを増す中、自衛隊の継戦能力、そして装備品の可動数は必ずしも十分ではないと承知をしております。

 こうした中で、自衛隊が各種活動を継続的に実施できるよう、十分な数量の弾薬の確保や装備品の可動数の増加、地下化、構造強化等の自衛隊施設の抗堪性の向上、こういった取組が重要であると認識をしております。

 また、武力攻撃を想定した避難施設の在り方についての議論の中で、御指摘の民間シェルターの設置についても検討を行っているところであります。

 新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた議論を加速する中で、これらの点についてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 子育て支援策の所得制限についてお尋ねがありました。

 各制度における所得制限の在り方については、個々の制度の目的や支援方法に応じて、それぞれの制度において必要性が判断されるものと考えております。

 例えば、児童手当については、家庭等の生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的として支給するものであり、この目的の下、現在の所得制限は、本則給付で中学校修了前までの児童のおおむね九割が対象となっており、いわゆる中間層の方々にも支援をお届けできていると考えております。

 日本人の学生への支援については、給付型奨学金や授業料減免の対象の拡大、また卒業後の所得に応じて奨学金を柔軟に返還できる仕組みの創設、これらを令和六年度に創設することとしており、学生への経済的支援の充実を進めてまいりたいと思っております。

 そして、その際、財源については、国民各層の理解を得つつ、社会全体でどのように負担していくかという観点から幅広く検討していくことが重要であり、教育国債という御指摘については、安定財源の確保や財政の信認確保の観点から慎重に検討する必要があると考えております。

 いわゆる年収の壁についてお尋ねがありました。

 これまでの見直しにより、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることはない仕組みとなっておりますが、社会保険において労働時間や収入によって適用が変わる問題に対し、働き方に中立的な制度の構築を図ることが重要であると考えております。

 例えば、いわゆる百三十万円の壁については、短時間労働者への被用者保険の適用拡大により、これを意識せず働くことが可能になると考えており、全ての方が希望どおり働けるよう、引き続き、こうした取組を進めてまいりたいと考えます。

 そして、旧統一教会に対する宗教法人法に基づく報告及び質問の可否についてお尋ねがありました。

 宗教法人法第七十八条の二の規定に基づく報告及び質問に関する権限は、宗教法人について、解散命令の事由等に該当する疑いのある場合に限り、所轄庁が行使することができるものです。

 この権限の行使について検討するに当たっては、宗教法人法の趣旨を踏まえながら、宗教法人に対して報告及び質問を行う必要があると認められる場合には、宗教法人法の規定に従って行使すべきものであると認識をしております。

 いずれにせよ、社会的に問題が指摘されている団体に関して、宗教法人法を含め、関係法令との関係を改めて確認しながら、厳正に対応してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)

 冒頭、北朝鮮による弾道ミサイル発射を強く非難するとともに、軍事的挑発を抑えるために、国際社会が協調して外交的対応を強化することを求めるものです。

 まず、私は、総理が国民の約六割の反対を一顧だにせず、安倍元首相の国葬を強行したことに強く抗議します。

 総理、国民の多数が国葬に反対したのはなぜだと考えますか。強行したことへの反省はないのですか。

 強行されたからといって、国葬が憲法違反であることは絶対に曖昧にできません。総理は、八月十日の記者会見で、国葬を、故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式と明確に定義しています。総理の言う国全体としてとは、どういうことですか。日本の国の主権者は国民であり、国全体としてとは、国民全体としてということになるではありませんか。これが、憲法十九条が保障する思想及び良心の自由を侵害する敬意と弔意の強制になることは明瞭ではありませんか。

 総理は、一人一人に弔意を強制するものではないと言いました。しかし、実際の国葬の場では、総理や菅前総理が安倍氏を天まで持ち上げる礼賛演説を行い、それをほとんどのテレビ局が生中継しました。中央官庁は職員に黙祷を指示し、ほとんどの都道府県が半旗や弔旗を掲げました。まさに、直接間接の敬意と弔意の強制が行われたではありませんか。答弁を求めます。

 政府・自民党と統一協会との癒着問題について聞きます。

 まず問いたいのは、総理が、統一協会という団体をどういう団体と認識しているのかという問題です。

 統一協会は、正体を隠した伝道活動、霊感商法や高額献金、当事者の意思を無視した集団結婚など数々の反社会的行為を行い、そのいずれに対しても違法との判決が確定している団体です。

 総理は統一協会について社会的に問題が指摘されている団体と言いますが、問われているのは総理自身の認識です。統一協会が反社会的団体であるという認識をお持ちですか。はっきりお答えいただきたい。

 その上で問いたいのは、自民党と統一協会との深刻な癒着が統一協会による被害を拡大してきたことへの反省があるのかという問題です。

 多くの元信者は、政治家から祝電や祝辞が寄せられるのを見て、こんなに高名な政治家の方まで支持してくださっているのだから、お父様の教えは間違いなく正しいんだとの確信を持ったなどと証言しています。総理、自民党の多くの政治家が統一協会の広告塔として利用され、被害を拡大してきたという反省はありますか。お答えください。

 総理は、八月三十一日の記者会見で、統一協会との関係を絶つと約束しました。しかし、この約束には行動が伴っていません。

 私は、五つの問題点を提起したいと思います。

 第一は、自民党の対応が、統一協会との接点を所属国会議員個々人に自己申告させるという議員任せの対応になっていることです。

 そのため、集計結果を発表した後も、新たな接点が次々に発覚し、追加報告を余儀なくされるという泥沼に陥っています。議員任せでなく、党として責任を持って国会議員、地方議員の癒着の全容を調査すべきではありませんか。

 第二は、政府としては何の対応も行っていないという問題です。

 第二次岸田政権の大臣、副大臣、政務官、補佐官などの国会議員八十人のうち、統一協会と接点や関係があった議員は三十六人にも上っています。政府として責任を持って統一協会と政務三役などとの関係を徹底的に調査するべきではありませんか。

 第三は、行政がゆがめられた疑惑を放置していることです。

 統一協会は、一九九七年、文化庁に対して名称変更を求めますが、文化庁は、実態が変わっていないのに名前だけ変えることはできないと名称変更を認めませんでした。それが、二〇一五年、突然、名称変更を認めることになりました。なぜ、名称変更を認めないという方針が覆されたのか。当時文部科学審議官だった前川喜平氏は、下村博文大臣の意思が働いたことは間違いないと証言していますが、政治家の関与と圧力がなかったのか、総理の責任で調査すべきではありませんか。

 第四は、総理が、安倍元首相の調査について、限界があると背を向けていることです。

 安倍氏は統一協会の最大の広告塔だった政治家です。参院比例選挙で統一協会の会員票を差配する役割を担っていたとの証言もあります。故人になったとしても、関係者や関係書類の調査など、意思さえあれば調査できるはずです。安倍元首相と統一協会の癒着の全貌について、責任を持って調査すべきではありませんか。

 第五に、自民党と統一協会とは、一九六八年、笹川良一ら日本の右翼と岸信介元首相らが発起人となって、統一協会と一体の勝共連合を日本で発足させて以来の歴史的癒着関係があります。

 半世紀以上にわたって、自民党は統一協会を反共と改憲の先兵として利用し、統一協会は自民党の庇護の下に反社会的活動を拡大してきました。この歴史的癒着関係の全体を過去に遡って徹底的に調査し、国民に報告すべきではありませんか。

 以上、五つの点について、関係を絶つというなら、明確な答弁をいただきたい。

 最後に、これだけ重大な反社会的行為を続けている統一協会に、宗教法人としての税制上の優遇などを続けることは全く道理がありません。宗教法人法に基づく解散命令を請求すべきです。総理の見解を問うものです。

 物価高騰が深刻です。暮らしと経営を守るために政治は何をなすべきか。

 まず総理に伺いたいのは、物価高騰の最大の原因となっている異常円安の問題です。

 日銀は、九月二十二日、異次元の金融緩和政策の維持を決定しました。異常円安と物価高騰が更に進むことは分かり切っているのに、やめるにやめられないのです。総理、アベノミクスによる金融政策が完全な手詰まりに陥っているという事実をお認めになりますか。

 そして、なぜ手詰まりに陥ったかといえば、日本が賃金が上がらない国から抜け出せないところにその最大の原因があると考えますが、いかがですか。

 私は、二つの点に絞って緊急提案を行います。

 第一は、中小企業の賃上げへの直接支援を抜本的に強化することです。

 この十年間、政府が賃上げ政策の柱としてきたのは賃上げ減税でした。しかし、元々黒字の企業しか対象にならないこの制度は、実効ある賃上げ政策にはなりませんでした。そのことは、この十年間、賃上げどころか、実質賃金が年間平均二十七万円も減少した事実が証明しています。

 総理、この政策の失敗を直視し、実効ある賃上げ政策への抜本的見直しを図るべきではありませんか。

 とりわけ、最低賃金千五百円の実現に向け、中小企業の賃上げへの直接支援を抜本的に強めることを求めます。多くの都道府県の最低賃金審議会は、政府に対し、中小企業の賃上げに対する社会保険料の減免、新たな助成金の創設など、直接支援の改善強化を要望しています。

 総理、この声に全面的に応えるべきではありませんか。

 日本共産党は、大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、大企業で働く労働者の賃金を上げることを促進するとともに、十兆円の税収を中小企業の賃上げ支援に使う賃上げ政策を具体的に提案していますが、この提案を真剣に検討すべきではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、消費税を緊急に五%に減税し、医療費の負担増を撤回することです。

 物価高騰は、ほとんど全ての商品とサービスに及んでいます。そして、所得の少ない人ほど物価高騰の影響は深刻です。そうした下、消費税五%への減税こそ、暮らしを守る上で最も効果的な対策であることは明らかではありませんか。

 コロナ危機の下でも空前の利益を上げている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税減税を決断すべきです。インボイス導入は中止すべきです。

 物価高騰のさなか、年金が減らされ、さらに、十月から七十五歳以上の医療費窓口負担を二倍にするという血も涙もない政策が強行されたことに、強い怒りの声が広がっています。厚生労働省は、負担増による受診控えで給付費を年一千五十億円も削減できると推計しています。

 総理、受診控えが健康悪化を招き、逆に医療費の増大につながる悪循環を引き起こす危険をどう考えますか。医療費負担増政策を中止し、軽減へとかじを切るべきではありませんか。答弁を求めます。

 総理が、所信表明で、新型コロナ対応について、行動制限を行わずに今年の夏を乗り切れたと語ったのには驚きました。あなたの目には、第七波による死者が一万三千人を超え、最悪になっているという現実が見えないのですか。無為無策、成り行き任せの対応への厳しい反省を強く求めます。

 今、特に重大なのは、政府が、ウィズコロナへの対応として、療養の考え方の転換なるものを進めようとしていることです。今後、発熱外来を受診できる対象を高齢者、基礎疾患のある人、子供、妊婦に絞り、それ以外の患者は、自己検査を行い、自宅療養を求めるというのです。これでは、今年の冬にかけてコロナとインフルエンザの同時流行が危惧される下で、高熱に苦しむ患者が医療を受けられない事態が更に深刻化しかねません。

 総理、医療へのアクセスを制限する制度改変ではなくて、医療提供体制を抜本的に強化拡充することこそ政治の責任ではありませんか。答弁を求めます。

 九月十一日投開票された沖縄県知事選挙で、オール沖縄の玉城デニー知事が自公推薦候補に圧勝しました。総理は、この選挙で示された民意をどう受け止めていますか。

 知事選でのオール沖縄候補の勝利は三回連続ですが、今回は、自公推薦候補が辺野古新基地建設の加速を初めて公然と公約に掲げ、辺野古問題が明確に争点になった上での審判となりました。辺野古移設は主要な争点ではなかったなどの言い逃れをする余地は、もはや全くありません。

 総理、知事選で示された民意は、辺野古新基地建設中止、普天間基地閉鎖、撤去にあることをはっきり認め、辺野古が唯一の解決策などという破綻した理屈は撤回すべきではありませんか。

 総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員の御質問にお答えいたします。

 故安倍元総理の国葬儀の実施についての考え、国全体としての意味するところ、弔意表明についてお尋ねがありました。

 先週執り行った安倍元総理の国葬儀は、国内外から多数の参列があり、多くの方々の弔意に応える厳粛かつ心のこもったものとなりました。国葬儀の参列者が約四千二百人、一般献花者も二万五千人を超え、また、海外からは二百十七の国、地域、国際機関等から七百三十四人の参列者がありました。海外からお越しになった多数の参列者の方々から寄せられた弔意に対し、礼節を持って丁寧にお応えすることができたと考えております。

 他方で、国葬儀に関しては、国民の皆様や各党各会派から様々な御意見、御批判をいただいたことも事実であり、その多くに共通するのは、説明が不十分であるとの指摘であったと認識をしております。このことは真摯に受け止めなければならないと考えており、今後、今回の国葬儀について検証を行うこととしております。

 今般の国葬儀は、国の儀式として国の名において行う葬儀であり、我が国として故人に対する敬意と弔意を表す儀式であることから、故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式と述べたところであります。

 また、今回の故安倍元総理の国葬儀の実施に際しては、国民一人一人に喪に服することを求めるものであるとの誤解を招くことがないように、国において弔意表明を行う閣議了解は行わず、国から地方公共団体や教育委員会等の関係機関に対する弔意表明の協力の要請も行っておらず、弔意表明の強制であるとの御指摘は当たらないと考えております。

 なお、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙祷することといたしましたが、これは、各職員に対して黙祷する機会を設けることとするという趣旨であり、職員一人一人に対して黙祷することを求めたものではなく、弔意表明の強制であるとの御指摘は当たらないと考えております。

 旧統一教会に対する認識と旧統一教会と政治の関係についてお尋ねがありました。

 いわゆる旧統一教会については、悪質商法に関する問題、親族の入信に起因する家族の困窮等の問題等、様々な問題が指摘されていると承知をしており、このような状況を踏まえて、社会的に問題が指摘されている団体であると私も認識をしているところであります。

 被害を受けられた方がいらっしゃる中で、多くの自民党の国会議員が旧統一教会と様々な接点を持っていたことにより、結果として当該団体の信頼を高めることがあったとの指摘については、重く受け止めております。

 その上で、私の政権においては、各閣僚等それぞれが旧統一教会との過去の関係を調査、説明し、新たな接点が判明した場合には、その都度、追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底すること、これを方針としております。自民党においても、それぞれの議員がこの方針遵守を徹底し、これを担保するためのチェック体制を構築してまいります。

 旧統一教会との関係についての調査の在り方についてお尋ねがありました。

 各議員はそれぞれ政治家として独立して様々な活動を行っていることから、個々の議員と旧統一教会との関係については、それぞれの議員が政治家の責任において丁寧に説明を尽くす必要があると考えております。

 自民党においては、今後、各議員が旧統一教会と関係を持たないという方針遵守を徹底し、これを担保するためのチェック体制を構築してまいります。地方議員についても、今後、国民の信頼を回復するため、旧統一教会との関係を持たないという方針を徹底してまいります。

 また、私の政権における基本方針は、各閣僚等それぞれが旧統一教会との過去の関係を調査、説明し、新たな接点が判明した場合には、その都度、追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底するということです。引き続き、この方針を徹底してまいります。

 平成二十七年の旧統一教会の名称変更の経緯についてお尋ねがありました。

 宗教法人法上、名称の変更等のための規則変更については、所轄庁の認可ではなく、認証による制度とされております。このため、宗教法人から規則変更の認証申請を受理した場合、所轄庁は、変更しようとする事項が法令に適合しているかなど宗教法人法に定める要件を審査し、その要件を備えていると認めたときは認証する旨の決定を行う必要があります。

 本件規則変更の認証申請についても、所轄庁として、当該申請の内容が法令に規定された要件を備えていることを確認し、認証の決定を行ったものであり、政治家や大臣の政治的な関与や圧力はなかったと報告を受けており、この点に関して、今後、新たな調査は予定していないと承知をしております。

 安倍元総理及び自民党と旧統一教会の関係についての調査についてお尋ねがありました。

 安倍元総理が旧統一教会とどのような関係を持っていたかの調査については、当時の様々な情勢における御本人の心の問題である以上、御本人が亡くなられた今、十分に把握することは限界があると考えております。関係者や関係書類を調査したとしても断片的にならざるを得ない上、本人が何も釈明、弁明できないなど、十分な調査はできないと考えております。

 自民党においては、所属国会議員と旧統一教会との関係について点検を行い、その結果を発表いたしました。旧統一教会との関係については、各議員が政治家の責任において丁寧に説明を尽くす必要があると考えており、今後も、各議員が最大限説明責任を果たすとともに、当該団体との関係を持たないことを徹底してまいります。

 また、自民党の政策決定に当たっては、幅広く国民の皆さんの声を聞くとともに、関係省庁からの説明、有識者、専門家等の議論など様々なプロセスを経て政策決定をしており、御指摘のように特定の団体と癒着し不当な影響を受けている、こうしたことはないと考えております。

 いずれにせよ、国民の信頼を回復するため、未来に向かって当該団体と関係を持たないことを徹底すること、これが大切であると考えております。

 旧統一教会に対する解散命令の請求についてお尋ねがありました。

 宗教法人の法人格を剥奪するという極めて重い対応である解散命令の請求については、信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえ、慎重に判断する必要があると考えておりますが、社会的に問題が指摘されている団体に関して、政府としては、関係法令との関係を改めて確認しながら、厳正に対応してまいります。

 金融政策と賃上げについてお尋ねがありました。

 金融政策については、出口の考え方を含め、具体的な手法は日銀に委ねられるべきですが、日銀は、現在は、経済を支えて、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的、安定的に実現することが必要であって、金融緩和を継続することが適当である、このように説明していると承知をしております。

 賃上げに関しては、政府において、構造的な賃上げを総合経済対策の重点分野の一つとして掲げ、正面から果断にその実現を目指してまいります。

 日銀には、引き続き、政府との連携の下、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて努力されることを期待しております。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。

 岸田政権では、賃上げを最重要政策として取り組んできました。具体的には、賃上げ税制の拡充、公的に決まる看護、介護、保育などの現場で働く方々の給料引上げ、各種補助金や公共調達における賃上げ企業の優遇、転嫁対策等による賃上げしやすい環境づくり等を行ってきました。今年の春闘においては、それまで低下傾向であった賃金引上げの水準が反転し、コロナの影響を受けていない企業では三%以上、全業種を通じても二・〇七%の賃上げが行われ、最低賃金についても、過去最高となる、全国の加重平均で三十一円の引上げを行っています。

 さらに、継続的な賃上げに向け、賃上げ、労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革を実現するため、労働移動円滑化に向けた指針を来年六月までに取りまとめるとともに、リスキリングを始めとした人への投資の支援の抜本強化を断行してまいります。

 また、中小企業が賃上げできる環境の整備に向けては、事業再構築補助金やものづくり補助金などを通じて生産性向上を支援するとともに、価格転嫁対策を更に強力に進めてまいります。

 なお、御指摘の社会保険料の減免については、被保険者と事業者の支え合いの精神に基づき保険料負担が労使折半とされていることから、また、内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることから、慎重な検討が必要であると考えております。

 消費税減税、後期高齢者の窓口負担等についてお尋ねがありました。

 足下の物価高に対しては、家計への影響が大きい低所得世帯向けの給付金を含め緊急の支援策等を講じ、さらに、今月中に総合経済対策を取りまとめることとしており、御指摘の消費税減税は考えてはおりません。

 また、インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであり、その円滑な移行を図る観点から、十分な経過措置を設けるとともに、円滑な実施に向けて、事業者の負担を軽減する支援や取引環境の整備等について、引き続き、政府一体で連携して取り組んでまいります。

 御指摘の後期高齢者の窓口負担割合の見直しは、現役世代の負担上昇を抑える観点から、負担能力や家計への影響を考慮した上で、一定の収入以上の方々についてのみ、その窓口負担を二割とするものであり、配慮措置も講ずることで、必要な受診の抑制を招かないようにしております。

 新型コロナ対応についてお尋ねがありました。

 今年の夏は、国民お一人お一人が基本的な感染対策を徹底してくださったおかげで、三年ぶりに緊急事態宣言等の行動制限を行わずに過ごすことができました。社会経済活動との両立を進め、多くの国民の生活となりわいを支えることができたと考えております。

 一方で、オミクロン株が主流となった本年七月から九月までの感染拡大に際しては、約一千百万人が感染し、一万人以上の方が亡くなられました。御家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。引き続き、国民の安心、安全のために努力を続け、責任を果たしてまいります。

 先月、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しいたしました。療養の考え方の転換に当たっては、若い軽症者等が安心して自宅療養をできるようにするため、検査キットのインターネットでの販売を解禁するとともに、体調悪化時等に連絡、相談できる健康フォローアップセンターの全都道府県での整備、体制強化を行いました。また、発生届の対象外の方々にも必要に応じて宿泊療養や配食等の支援が可能になるようにする等、必要な環境整備を整えています。

 インフルエンザとの同時流行を想定した外来等の保健医療体制の確保も進めることとしております。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。

 辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づき着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。

 引き続き、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、全力で取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    寺田  稔君

       法務大臣    葉梨 康弘君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  永岡 桂子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  野村 哲郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    西村 明宏君

       防衛大臣    浜田 靖一君

       国務大臣    秋葉 賢也君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    岡田 直樹君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    谷  公一君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    山際大志郎君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 木原 誠二君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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