衆議院

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第1号 令和5年1月23日(月曜日)

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令和五年一月二十三日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第一号

  令和五年一月二十三日

    正午開議

 第一 議席の指定

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 議席の指定

 災害対策を樹立するため委員三十五人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員三十五人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十人よりなる東日本大震災復興特別委員会、原子力に関する諸問題を調査するため委員三十五人よりなる原子力問題調査特別委員会及び地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会及び消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 岸田内閣総理大臣の施政方針に関する演説

 林外務大臣の外交に関する演説

 鈴木財務大臣の財政に関する演説

 後藤国務大臣の経済に関する演説


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    午後零時七分開議

議長(細田博之君) 諸君、第二百十一回国会は本日召集されました。

 これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 議席の指定

議長(細田博之君) 日程第一、議席の指定を行います。

 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第二百十一番、四国選挙区選出議員、瀬戸隆一君。

    〔瀬戸隆一君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(細田博之君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 災害対策を樹立するため委員三十五人よりなる災害対策特別委員会

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員三十五人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十人よりなる東日本大震災復興特別委員会

 原子力に関する諸問題を調査するため委員三十五人よりなる原子力問題調査特別委員会

及び

 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 次に、

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

及び

 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました八特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

議長(細田博之君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(細田博之君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、後藤国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 第二百十一回国会の開会にあたり、国政に臨む所信の一端を申し述べます。

 先日の欧州、北米訪問の際、ある首脳から、なぜ、日本では、議会のことを英語でパーラメントではなくダイエットと呼ぶのかと問われました。確かに、ほとんどの国は、議会を英語でパーラメントと呼ぶようです。調べてみたところ、ダイエットの語源は、集まる日という意味を持つラテン語でした。

 国民の負託を受けた我々議員が、まさに、本日、この議場に集まり、国会での議論がスタートいたします。

 政治とは、慎重な議論と検討を積み重ね、その上に決断をし、その決断について、国会の場に集まった国民の代表が議論をし、最終的に実行に移す、そうした営みです。

 私は、多くの皆様の御協力の下、様々な議論を通じて、慎重の上にも慎重を期して検討し、それに基づいて決断した政府の方針や、決断を形にした予算案、法律案について、この国会の場において、国民の前で正々堂々議論をし、実行に移してまいります。

 検討も決断も、そして議論も、全て重要であり必要です。それらに等しく全力で取り組むことで、信頼と共感の政治を本年も進めてまいります。

 近代日本にとって、大きな時代の転換点は二回ありました。

 明治維新と、その七十七年後の大戦の終戦です。そして、奇しくもそれから七十七年が経った今、我々は、再び歴史の分岐点に立っています。

 ロシアによるウクライナ侵略。世界が堅持してきた法の支配による国際平和秩序への挑戦に対し、国連安保理は機能不全を露呈しました。さらに、この機に乗じて、ロシアとの連携を強める国、エネルギーなどで実利を追う国、核・ミサイル開発を進める主体など、国際平和秩序の弱体化があらわになっています。

 そして、もはや待ったなしとなっているのが、深刻さを増す気候変動問題、感染症対策などの地球規模の課題、世界中で生じている格差問題など、広い意味での持続可能性の問題です。

 不安定で脆弱なサプライチェーン、世界規模でのエネルギー、食料危機、さらには人への投資不足など、世界の一体化と平和、繁栄をもたらすと信じられてきたグローバリゼーションの変質、変容も顕著です。

 こうした現実を前に、今こそ、新たな方向に足を踏み出さなければならない。

 これまでの時代の常識を捨て去り、強い覚悟と時代を見通すビジョンをもって、新たな時代にふさわしい、社会、経済、国際秩序を創り上げていかねばなりません。

 先々週、G7議長として訪問した国、全ての首脳も、私と同様の認識を示しました。

 日本は、五月の広島サミットの成功はもちろん、G7議長国として、強い責任感をもって、今年一年、世界を先導してまいります。

 私は、皆さんと一緒に、この歴史の大きなうねりを乗り越え、次の世代に、この日本という国を着実に引き継いでいきます。

 力を合わせ、共に、新時代の国づくり、安定した国際秩序づくりを進めていこうではありませんか。

 そのために、今我々が直面する様々な難しい先送りできない課題に、正面から愚直に向き合い、一つ一つ答えを出していく。

 その強い覚悟で、昨年末、一年を超える時間をかけて議論し、検討を進め、新たな国家安全保障戦略などを策定いたしました。

 まず優先されるべきは、積極的な外交の展開です。同時に、外交には、裏付けとなる防衛力が必要です。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、いざという時に、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行った上で、十分な守りを再構築していくための防衛力の抜本的強化を具体化しました。

 五年間で四十三兆円の防衛予算を確保し、相手に攻撃を思いとどまらせるための反撃能力の保有、南西地域の防衛体制の抜本強化、サイバー、宇宙など新領域への対応、装備の維持や弾薬の充実、海上保安庁と自衛隊の連携強化、防衛産業の基盤強化や装備移転の支援、研究開発成果の安全保障分野での積極的活用などを進めてまいります。

 こうした取組を将来にわたって維持強化していかなければなりません。そのためには、令和九年度以降、裏付けとなる毎年度四兆円の新たな安定財源が追加的に必要となります。歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保などの行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一については、将来世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が将来世代への責任として対応してまいります。

 今回の決断は、日本の安全保障政策の大転換ですが、憲法、国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての我が国としての歩みをいささかも変えるものではないということを改めて明確に申し上げたいと思います。

 世界のリーダーと対話を重ねる中で、多くの国が新たな経済モデルを模索していることも強く感じました。

 それは、権威主義的国家からの挑戦に直面する中で、市場に任せるだけでなく、官と民が連携し、国家間の競争に勝ち抜くための経済モデルです。

 それは、労働コストや生産コストの安さのみを求めるのでなく、重要物資や重要技術を守り、強靱なサプライチェーンを維持する経済モデルです。

 そして、それは、気候変動問題や格差など、これまでの経済システムが生み出した負の側面である、様々な社会課題を乗り越えるための経済モデルです。

 私が進める新しい資本主義は、この世界共通の問題意識に基づくものです。

 官民が連携し、社会課題を成長のエンジンへと転換し、社会課題の解決と経済成長を同時に実現する。持続可能で包摂的な経済社会を創り上げていきます。

 新型コロナから全面的に日常を取り戻そうとする今年、日本を、本格的な経済回復、そして新たな経済成長の軌道に乗せていこうではありませんか。

 まずは、令和四年度第二次補正予算の早期執行など、足下の物価高に的確に対応します。今後も、必要な政策対応に躊躇なく取り組んでまいります。

 経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。

 そして、企業が収益を上げて、労働者にその果実をしっかりと分配し、消費が伸び、更なる経済成長が生まれる。この好循環の鍵を握るのが、賃上げです。

 これまで着実に積み上げてきた経済成長の土台の上に、持続的に賃金が上がる構造を作り上げるため、労働市場改革を進めます。

 まずは、足下で、物価上昇を超える賃上げが必要です。

 政府は、経済成長のための投資と改革に全力を挙げます。公的セクターや政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます。

 また、中小企業における賃上げ実現に向け、生産性向上、下請け取引の適正化、価格転嫁の促進、さらにはフリーランスの取引適正化といった対策も一層強化します。

 そして、その先に、多様な人材、意欲ある個人がその能力を最大限活かして働くことが、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつながる社会を創り、持続的な賃上げを実現していきます。

 そのために、希望する非正規雇用の方の正規化に加え、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を、働く人の立場に立って加速いたします。

 リスキリングについては、GX、DX、スタートアップなどの成長分野に関するスキルを重点的に支援するとともに、企業経由が中心となっている在職者向け支援を、個人への直接支援中心に見直します。加えて、年齢や性別を問わず、リスキリングから転職まで一気通貫で支援する枠組みも作ります。より長期的な目線での学び直しも支援します。

 一方で、企業には、そうした個人を受け止める準備を進めていただきたい。

 人材の獲得競争が激化する中、従来の年功賃金から、職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給へ移行することは、企業の成長のためにも急務です。

 本年六月までに、日本企業に合った職務給の導入方法を類型化し、モデルをお示しします。

 賃上げとともに成長と分配の好循環の鍵となるのが、投資と改革です。その具体的な取組について、五点申し上げます。

 第一に、GX、グリーントランスフォーメーションです。

 戦争の武器としてエネルギー供給を利用したロシア。国民生活の大きな混乱に見舞われた各国は、脱炭素とエネルギー安定供給、そして経済成長の三つを同時に実現する、一石三鳥の強かな戦略を動かし始めています。

 日本のGXも、この三つの目的を実現するためのものです。

 官民で、十年間、百五十兆円超の投資を引き出す、成長志向型カーボンプライシング。国による二十兆円規模の先行投資の枠組みを新たに設けます。徹底した省エネ、水素、アンモニアの社会実装、再エネ、原子力など脱炭素技術の研究開発などを支援していきます。

 これは、国が複数年の計画を示し、予算のコミットを行い、予見可能性を高め、期待収益率を見通せるようにすることで企業の投資を誘引していく、新しい資本主義が目指す官民連携の具体化です。このための法案を今国会に提出いたします。

 官民の持てる力を総動員し、GXという経済、社会、産業、地域の大変革に挑戦していきます。

 エネルギーの安定供給に向けては、多様なエネルギー源を確保しなければなりません。

 長年の懸案となっていた北海道―本州間の送電線整備など再エネ最大限導入に向けた取組に加え、安全の確保と地域の理解を大前提として、廃炉となる原発の次世代革新炉への建て替えや、原発の運転期間の一定期間の延長を進めます。また、国が前面に立って、最終処分事業を進めてまいります。

 世界規模のエネルギー危機に直面し、アジアにおける現実的なエネルギートランジションの重要性がますます高まっています。我が国は、昨年来提唱してきたアジア・ゼロエミッション構想を今春から具体化させ、アジアの脱炭素化を支援していきます。

 第二に、DX、デジタルトランスフォーメーションです。

 まず強調したいのは、デジタル社会のパスポートであるマイナンバーカードです。

 様々な工夫を重ね、昨年初めに五千五百万件だった取得申請を、八千五百万件まで増やしました。今や、運転免許証を大きく超え、日本で最も普及した本人確認のツールです。

 このカードによって、運転免許証、各種国家資格の証明書などのデジタル化や、確定申告の際にオンラインで医療費控除やふるさと納税の手続を完結することが可能となります。

 医療面では、今後、スマートフォン一つあれば、診察券も保険証も持たずに、医療機関の受診や薬剤情報の確認ができるようになります。さらには、学生証への利用、買い物時の年齢確認やコンサートのチケット購入などでの活用も進み始めています。

 本人確認が必要なあらゆる公的、民間サービスを簡単、便利に利用できる社会を創るため、官民で取り組んでまいります。

 アナログ規制の一括見直しにも取り組みます。

 具体的には、オンライン上で様々な行政手続を完結できるようにしたり、フロッピーディスクを指定して情報提出を求めていた規制を見直したりといった改革を、来年までの二年間で一気呵成に進めます。

 四万件の法令を点検し、準備が整ったものについて、一斉に見直すための法案を今国会に提出します。

 第三に、イノベーションです。

 つい先日、日米の企業が共同開発し、世界で初めて、本格的なグローバル展開が期待される、アルツハイマー病の進行を抑える治療薬が、米国においてFDAの迅速承認を受けました。

 日本発、世界初のイノベーションが、国境を越えて、認知症の方とその御家族に希望の光をもたらすことは、大変嬉しいことです。

 こうしたニュースを次々にお届けできるよう、中長期的かつ国家戦略的な視点をもって、半導体、量子、AI、次世代通信技術、さらには、バイオ、宇宙、海洋。戦略分野への研究開発投資を支援するとともに、イノベーションを阻む規制の改革に取り組みます。

 社会のニーズに応じた理工系の学部再編や、若手研究者支援も進めます。

 さらには、教職員の処遇見直しを通じた質の向上、教育の国際化、グローバル人材の育成に向け、日本人学生の海外派遣の拡大や、有望な留学生の受け入れを進めます。

 二〇二五年には、大阪・関西万博が開催されます。空飛ぶ車など、未来社会の実験場として、イノベーティブで活力ある日本の姿を世界に向けて発信してまいります。

 第四に、スタートアップの育成です。

 五年でスタートアップへの投資額十倍増を目指し、卓越した才能を発掘、育成するプログラムの拡充や、研究開発ベンチャーへの資金供給の強化、欧米のトップクラス大学の誘致によるグローバルスタートアップキャンパス構想の実現、さらには、税制による大企業とスタートアップの協業によるオープンイノベーション支援に取り組みます。

 また、創業時に、経営者保証に頼らない資金調達ができるよう、新たな信用保証制度を創設します。

 さらに、世界に伍する高度人材の新たな受け入れのための制度を創設するなど、外国人材が活躍できる環境整備も行います。

 今は日本経済を牽引する大企業も、かつては戦後創業のスタートアップでした。戦後の創業期に次ぐ、第二の創業ブームを実現し、未来の日本経済を牽引するような企業を生み出していきます。

 第五に、資産所得倍増プランです。

 長年の懸案である貯蓄から投資への流れを実現できれば、家計の金融資産所得の拡大と成長資金の供給拡大により、成長と資産所得の好循環を実現できる。そう考え、NISAの抜本的拡充や恒久化を実現し、五年間でNISAの総口座数と買付額を倍増させることにしました。

 国家戦略として資産形成の支援に取り組み、長期的には、資産運用収入そのものの倍増も見据えて対応してまいります。

 今こそ、これらの政策を力強く実行していこうではありませんか。

 そして、今年は、新しい資本主義の取組を次の段階に進めたいと思っています。

 新しい資本主義は、持続可能で包摂的な新たな経済社会を創っていくための挑戦であると申し上げてきました。

 我が国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で、最重要課題と位置付けているのが、こども・子育て政策です。

 急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています。こども・子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない課題です。

 こどもファーストの経済社会を作り上げ、出生率を反転させなければなりません。

 こども政策担当大臣に指示をした三つの基本的方向性に沿って、こども・子育て政策の強化に向けた具体策の検討を進めていきます。高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組みます。

 検討に当たって、何よりも優先されるべきは、当事者の声です。まずは、私自身、全国各地で、こども・子育ての当事者である、お父さん、お母さん、子育てサービスの現場の方、若い世代の方々の意見を徹底的にお伺いするところから始めます。年齢、性別を問わず皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したいと思います。

 そして、本年四月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども・子育て政策を体系的に取りまとめつつ、六月の骨太方針までに、将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示します。

 こども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、まずは、こども・子育て政策として充実する内容を具体化します。そして、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 安心してこどもを産み育てられる社会を創る。全ての世代、国民皆にかかわるこの課題に、共に取り組んでいこうではありませんか。

 あわせて、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支えあう、持続的な社会保障制度の構築に取り組みます。

 老若男女、障害のある方もない方も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会。

 意欲のある全ての方が、置かれている環境にかかわらず、十全に力を発揮できる社会。

 そうした包摂的な経済社会を創るため、これから、特に、女性、若者、地方の力を引き出していくための政策に力を入れていきます。

 これまでの取組により、女性の就労は大きく増え、いわゆるM字カーブの問題は解消に向かっていますが、出産を契機に女性が非正規雇用化する、いわゆるL字カーブの解消、そして、男女間の賃金格差の是正は、引き続き、喫緊の課題です。また、女性登用の一層の拡大も進めていかなければなりません。

 そのために、女性の就労の壁となっている、いわゆる百三万円の壁や百三十万円の壁といった制度の見直し、男女共に、これまで以上に育児休業を取得しやすい制度の導入などの諸課題に対応していきます。

 さらには、配偶者による暴力防止の取組を強化するため、DV防止法の改正にも取り組みます。

 こども・子育て政策の強化、男女共に働きやすい環境の整備、全世代型社会保障改革、構造的賃上げ、スタートアップなどの成長分野への投資などは、日本の未来を担う若い世代のためにこそ進めるべき取組です。

 こうした各般の取組を通じ、若者、そして若い世帯の所得向上を実現し、若者が未来に希望をもって生きられる社会を創っていきます。

 孤独・孤立対策にも本格的に取り組みます。対策の基本となる法案を今国会に提出し、孤独や孤立に寄り添える社会を目指します。

 地方創生を進め、地方が元気になること。それが日本経済再生の源です。

 地方の基幹産業の活性化に全力を注ぎます。

 観光産業については、全国旅行支援による需要喚起に加え、高付加価値化の推進、国立公園なども活用した観光地の魅力向上に取り組み、外国人旅行者の国内需要五兆円、国内旅行需要二十兆円という目標の早期達成を目指します。

 農林水産業については、肥料、飼料、主要穀物の国産化推進など、食料安全保障の強化を図りつつ、夢を持って働ける、稼げる産業とすることを目指します。

 農林水産品の輸出については、二〇二五年二兆円目標の前倒し達成を目指し、更なる輸出拡大支援を進めます。

 地方経済の基盤である高速道路網について、老朽化対策と、四車線化などの進化、改良の取組を着実に実施するための制度整備を行います。また、地域公共交通のリデザインに向け、国の支援を拡充します。

 さらには、地方への企業立地支援や海外からの人材、資金の呼び込み、官民連携によるスタジアム、アリーナ、文教施設の整備、地方議会活性化のための法改正にも取り組みます。

 地方創生に向けた全ての基盤となる取組が、デジタルの力で地域の社会課題を解決し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現するデジタル田園都市国家構想です。

 光ファイバー、5G等のデジタルインフラ整備を着実に進めつつ、今後、全国津々浦々で、本格的なデジタル実装を進めます。

 まずは、スマート農業、ドローンによる配送、遠隔見守りサービスなどを組み合わせたプロジェクトを日本の中山間地域百五十か所で実現いたします。

 また、今年四月には、レベル4、完全自動運転を可能にする新たな制度が動き始めます。二〇二五年を目途に、全都道府県で自動運転の社会実験の実施を目指します。

 全国津々浦々、全ての方々が輝ける日本を創っていこうではありませんか。

 今年、関東大震災から百年の節目を迎えます。激甚化、頻発化する災害への対応も、先送りできない重要な課題です。

 五か年加速化対策の着実な推進に加え、中長期的、継続的、安定的に防災・減災、国土強靱化を進めるため、新たな国土強靱化基本計画を策定します。

 機動的に自治体を支援するなど、大雪や鳥インフルエンザなどの対応に万全を期します。

 台風や豪雨などに対応するための予報高度化、猛暑から人命を守るための熱中症対策の強化、さらには、北海道知床の遊覧船事故を受けた、旅客船の安全性確保のための法案を提出し、災害や事故への対応力を強化します。

 政権の最重要課題である福島の復興も、地元の皆さんと共に、取組を更に前に進めます。

 昨年、長期にわたり帰還が困難であるとされた区域で初めて、住民の帰還が実現しました。

 引き続き、残る復興再生拠点の避難指示解除を目指すとともに、拠点区域外についても、意向のある方が帰還できるよう取組を具体化していきます。

 あわせて、映画など文化芸術を通じた街づくり、廃炉、ALPS処理水対策や福島国際研究教育機構の整備を政府一丸となって推進し、責任をもって福島の復興再生に取り組みます。

 新型コロナの感染拡大から約三年。国民の皆さん、そして、現場で働く医師、看護師、介護職員などエッセンシャルワーカーの皆さんの協力をいただきながら、感染の波を乗り越え、ウィズコロナへの移行を進めてきました。

 足下の感染状況については、感染防止対策や医療体制の確保に努め、いわゆる第八波を乗り越えるべく、全力を尽くしてまいります。

 そして、原則、この春に、新型コロナを新型インフルエンザ等から外し、五類感染症とする方向で議論を進めます。これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策措置の対応について、段階的な移行の検討、調整を進めます。

 マスクの着用についても、五類感染症への見直しと併せて、考え方を整理していきたいと思いますが、まずは、今一度、原則、外ではマスク不要といった現在の取扱いについて、周知徹底を図ります。

 GDPや企業業績は既に新型コロナ前の水準を回復し、有効求人倍率もコロナ前の水準を回復しつつあります。家庭、学校、職場、地域、あらゆる場面で、日常を取り戻すことができるよう、着実に歩みを進めてまいります。

 そして、今後の感染症危機に適切に対応するため、内閣感染症危機管理統括庁や、いわゆる日本版CDC設置に関する法案を今国会に提出します。

 歴史の分岐点を迎える中、普遍的価値に立脚しつつ、国益を守り抜くため、積極的かつ力強く、新時代リアリズム外交を展開していきます。

 我が国は、今年、G7議長国及び国連安保理非常任理事国を務めます。その立場を活かし、世界の平和と繁栄に向けた取組を主導します。

 ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序の根幹を揺るがす暴挙が継続し、また、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な状況にあります。

 力による一方的な現状変更の試みは、世界のいかなる地域においても許されない。広島サミットの機会に、こうした原則を擁護する、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するとの強い意志を改めて世界に発信します。

 そして、世界が直面する諸課題に国際社会全体が協力して対応していくためにも、G7が結束し、いわゆるグローバルサウスに対する関与を強化していきます。そのために、エネルギー、食料危機や下振れリスクに直面する世界経済についても、一致結束した対応を行ってまいります。また、対露制裁、対ウクライナ支援を引き続き強力に推し進めます。

 被爆地広島で開かれるサミットの機会を捉え、核兵器のない世界に向け、国際的な取組を主導します。ヒロシマ・アクション・プランを始め、これまでの取組の上に立って、国際賢人会議の叡智も得ながら、現実的かつ実践的な取組を進めていきます。

 他にも、地域情勢、経済安全保障、人権、気候変動、保健、開発といった課題にも広く対応していく必要があります。山積する諸懸案への対応に、我が国が主導的役割を果たしてまいります。

 加えて、安保理改革を含む国連の機能強化にも取り組みます。

 戦後日本が積み重ねてきた信頼関係に基づく二国間関係の強化も引き続き進めます。

 我が国外交の基軸は、日米関係です。先日の日米共同声明に基づき、引き続き、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化し、地域の平和と安定及び国際社会の繁栄に貢献していきます。また、経済版2プラス2を含む様々なチャネルを通じ、サプライチェーンの強靱化や半導体に関する協力など、経済安全保障分野における連携にも取り組みます。

 日米同盟の強化と合わせて、基地負担軽減にも引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。また、強い沖縄経済を作ります。

 日米豪印等も活用しつつ、また、アジア、欧州、大洋州を始めとするパートナー国との連携を深め、自由で開かれたインド太平洋を推進するための協力を一層強化します。そして、G7議長国として達成した成果を、インドが議長国を務めるG20に引き継ぎ、友好協力五十周年を迎えるASEANとの特別首脳会議に繋げ、アジアから世界に向け発信してまいります。また、CPTPPの着実な実施と高いレベルを維持しながらの拡大や、IPEF、DFFT等の取組において具体的な成果を目指します。

 地域の平和と安定も引き続き重要です。中国に対しては、東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みを含め、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めてまいります。そして、本年が日中平和友好条約四十五周年であることも念頭に置きつつ、諸懸案を含め、首脳間を始めとする対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築していきます。

 国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国である韓国とは、国交正常化以来の友好協力関係に基づき、日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させていくため、緊密に意志疎通をしていきます。

 日露関係は、ロシアによるウクライナ侵略により厳しい状況にありますが、我が国としては、引き続き、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。

 北朝鮮による前例のない頻度と態様での弾道ミサイル発射は断じて容認できません。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。中でも、最重要課題である拉致問題は深刻な人道問題であり、その解決は一刻の猶予も許されません。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で果断に取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。

 そのような多国間、二国間外交の最も重要なツールの一つが開発協力です。今後十年間の方向性を示す開発協力大綱を、人間の安全保障の理念を踏まえ、SDGsの達成に向けた議論をリードするようなものとすべく、今年前半を目途に改定します。

 憲法改正もまた、先送りできない課題です。先の臨時国会では、与野党の枠を超え、活発な議論をいただきました。

 この国会において、制定以来初めてとなる憲法改正に向け、より一層議論を深めていただくことを心より期待いたします。

 昨年は、旧統一教会との関係、政治と金など、政治の信頼にかかわる問題が立て続けに生じ、国民の皆さんから厳しい声をいただいたことを重く受け止めております。

 信なくば立たず。信頼こそが政治の一番大切な基盤であると考えてきた一人の政治家として、ざんきに堪えません。今後、こうしたことが再び起こらないよう、様々な改革にも取り組んでまいります。

 旧統一教会の問題については、被害者の実効的な救済と再発防止に向け、昨年の臨時国会で成立した新法等の着実な運用、そして実態把握と相談体制の充実に努めます。

 総理就任以来、私は、全国各地を訪問し、多くの皆さんと直接話をしてきました。新潟で物づくりの技術を身に着けようと一生懸命学ばれている学生の皆さん、鹿児島で子育てをしながら和牛生産に取り組んでおられるお母さん、渋谷の子育て支援施設で育児に取り組まれていたお父さん。こうした日本全国の皆さんが輝ける、未来に希望を持てる、そんな日本を創っていきたいと思います。

 この日本という国を次の世代に引き継いでいくために、これからも、私に課せられた歴史的な使命を果たすため、全身全霊を尽くします。共に、一歩一歩、前に進んでいこうではありませんか。

 引き続き、国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

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議長(細田博之君) 外務大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 第二百十一回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。

 今、世界は、歴史の転換期にあります。ポスト冷戦時代の平和と繁栄を支えた法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、重大な挑戦にさらされています。

 ロシアによるウクライナ侵略は、引き続き国際秩序の根幹を揺るがしています。ウクライナの一部地域の違法な併合や無辜の民間人の殺害等の一連のロシアによる行為は、許されざる国際法違反です。また、日本は唯一の戦争被爆国として、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れることはできません。ましてや、その使用はあってはなりません。

 欧州とインド太平洋地域の安全保障を切り離して論じることはもはやできません。日本は、いかなる地域においても力による一方的な現状変更の試みを許さないという強い決意を持って、G7を始めとする国際社会と引き続き緊密に連携をしながら、対露制裁とウクライナ支援を強力に推し進めます。

 北朝鮮による核・ミサイル活動も活発化しています。昨年は、前例のない頻度と態様での弾道ミサイル等の発射がありました。核実験に向けた動きもあります。これらの一連の行為は、日本の安全保障への脅威のみならず、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、断じて許されません。今後とも、日米、日米韓で安保理の場を含め緊密に連携して対応していきます。

 中国は、政治、経済、軍事等様々な面で国際社会への影響力を増し、それに伴い様々な難しい諸問題を提起しています。そのような中国に対し、日本は、国際社会のルールに則り大国としての責任を果たすよう働きかけていきます。

 このような挑戦に加え、国際社会が価値観の相違、利害の衝突を乗り越えて協力すべき諸課題も一層急迫の度を増しています。

 こうした情勢の中で、引き続き、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安全を守り抜く覚悟、そして地球規模の課題に向き合い国際社会を主導する覚悟、これら三つの覚悟を持って、対応力の高い、低重心の姿勢で外交を展開していきます。

 まず、G7議長国及び安保理非常任理事国として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するための取組を更に推進します。

 今回のウクライナ危機に際し、緊密に連携し、最も効果的に対応してきたのがG7です。本年、日本がG7議長国として開催する広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや核兵器による威嚇、その使用を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の意志を力強く示していきます。同時に、エネルギー、食料安全保障を含む世界経済、ウクライナやインド太平洋を含む地域情勢、核軍縮・不拡散、経済安全保障、また、気候変動、保健、開発などといった地球規模の課題などへの対応を主導していきます。私自身、昨年は十一回のG7外相会合に参加しました。本年は、私が議長を務めるG7長野県軽井沢外相会合などを通じ、G7の緊密な連携を推進していきます。G20議長国であるインドとの連携も重視してまいります。

 日米豪印での連携も格段に強化してきました。力による一方的な現状変更をいかなる地域においても許さないとの決意を示しながら、自由で開かれたインド太平洋、FOIPの実現に向けた幅広い分野の実践的協力を進めていきます。

 法の支配に基づくFOIPの重要性は一層高まっています。日本は、外交的取組を強化する新たなFOIPプランの策定を進めるとともに、日米豪印に加え、ASEANや欧州、大洋州、中南米などのパートナーとの間で、FOIPの実現に向けた連携を強化します。特に、友好協力五十周年を迎えるASEANとは、十二月を目途に東京で開催する特別首脳会議の機会に、日・ASEAN関係の将来のビジョンを打ち出す考えです。

 国際秩序の動揺がもたらす危機は、世界のいずれの国、地域にとっても対岸の火事ではありません。ロシアによる侵略は、食料、エネルギー価格の高騰などにより、中東、アフリカ等にも深刻な影響を与えています。偽情報による分断の試みという課題にも目を向けねばなりません。私自身、昨年八月のTICAD8、年末の東京での中央アジアプラス日本対話第九回外相会合、さらに先日の中南米訪問も通じ、幅広い国との対話を強化してきました。日本として、あらゆる地域の国々との間で築き上げてきたきめ細やかな地域外交を礎に、地域、国際社会の安定化のため、法の支配に基づく秩序の重要性を共有し、共に維持強化していくための努力を継続します。

 ロシアによるウクライナ侵略は、多国間主義をも脅かしています。この現状を踏まえ、私自身、先日ニューヨークで主催した、法の支配に関する安保理閣僚級公開討論において、国際社会が複合的な危機に直面する中、法の支配の下に結束するよう各国に呼びかけました。

 国連と安保理が試練を迎える中、各国との緊密な対話を通じて安保理が本来の責任を果たせるよう積極的に貢献していきます。また、国連憲章の理念と原則に立ち戻り、国連の信頼を回復するため、国連自身の機能強化が必要です。安保理改革に向けては、議論のための議論ではなく、行動が必要です。日本、ドイツ、インド、ブラジルのG4に加え、米英仏、アフリカなど関係国とよく意思疎通しつつ、早期の進展のため引き続き努力します。また、PKOその他の国連の平和構築の取組にも引き続き貢献していきます。

 ルールに基づく自由で公正な経済秩序は、日本はもちろん、世界の成長と繁栄の基盤です。引き続き、自由貿易の旗振り役としてのリーダーシップを発揮し、CPTPPのハイスタンダードの維持やRCEP協定の完全な履行の確保に取り組むとともに、WTO改革を主導します。デジタル分野でも、信頼性のある自由なデータ流通の実現に向け、WTO電子商取引交渉など、国際的なルール作りで中心的な役割を果たします。インド太平洋地域の経済秩序の維持強化のための重要な枠組みであるIPEFにおいても、IPEF参加国と緊密に連携しながら新たな枠組み作りに貢献します。

 日本企業の海外展開支援にも積極的に取り組むとともに、日本産食品に対する輸入規制措置の全廃に向け、政府一丸となって働きかけていきます。また、二〇二五年大阪・関西万博の成功に向け、引き続き力強く取り組みます。

 日本は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面をしています。

 日本の安全保障に関わる総合的な国力の要素の第一は外交力です。外交実施体制の抜本的強化に取り組みます。新たな国家安全保障戦略の下、防衛力の抜本的強化に裏打ちされた力強い外交を展開し、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出していきます。同時に、日本を守り抜く意思と能力を表す防衛力もまた他の手段では代替できません。日本自身の防衛力の抜本的強化の議論に引き続き貢献していきます。

 また、経済安全保障を推進するため、同志国との一層の連携強化や新たな課題に対応する国際的な規範の形成に積極的に取り組んでいきます。

 同時に、日本の外交・安全保障政策の基軸である日米同盟も更に深化させていきます。就任後初めてワシントンDCを訪れた岸田総理は、つい先日、じっくりと時間をかけてバイデン大統領との間で日米首脳会談を行い、日米共同声明を発出しました。私自身も総理に同行したほか、浜田大臣と共に、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官との間で2プラス2を行いました。

 米国とは、累次の会談機会を通じ、いかなる地域でも力による一方的な現状変更は決して受け入れられないことを確認してきました。日米にとって戦略的に最も重要なインド太平洋地域のポテンシャルを安定と繁栄に繋げていかねばなりません。

 そのため、日米同盟の役割及び任務の進化も踏まえ、同盟の抑止力、対処力の強化に日米で共に取り組んでいきます。その際、同盟調整メカニズムを通じた二国間調整の更なる強化、平時における同盟の取組、日本の反撃能力の効果的な運用に向けた日米間の協力の深化、宇宙、サイバー、情報保全分野での協力、同盟の技術的優位性の確保のための技術協力や、新興技術への共同投資などを重点的に進めていきます。また、米国による拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保するための努力も続けていきます。さらに、日本における米軍の態勢の一層の最適化に向けた取組を進めるとともに、普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を始め、地元の負担軽減と在日米軍の安定的駐留に全力を尽くします。

 また、昨年立ち上げた経済版2プラス2を通じて、外交、安全保障と経済を一体として議論し、経済安全保障、ルールに基づく経済秩序の維持強化といった日米共通の課題について一層連携を強化していきます。

 欧州諸国及びEU、NATOとも、この分野での連携が強化されています。昨年は、NATO首脳会合に日本の総理大臣として初めて岸田総理が、外相会合に日本の外務大臣として初めて私が出席したほか、十二月には日英伊の三か国間による次期戦闘機の共同開発への合意を発表し、本年一月には日英円滑化協定に署名するなど、欧州諸国との防衛分野での協力も進展しています。引き続き、欧州諸国及びEU、NATOによるインド太平洋への関与に向けて具体的協力を進めていきます。

 核軍縮・不拡散については、引き続き同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、岸田総理が昨年八月に提唱したヒロシマ・アクション・プランに沿って、核兵器のない世界に向けた現実的かつ実践的な取組を進めていきます。国際賢人会議等の核兵器のない世界に向けた国際社会の機運を高める取組を進めていくとともに、G7広島サミットでこうした観点から力強いメッセージを発信できるよう、G7メンバー等と議論を深めていきます。

 日本及び地域の平和と安全を維持すべく、近隣国等との間の難しい問題に正面から対応しつつ、安定的な関係を築いていきます。

 日本と中国の間には、様々な可能性とともに、尖閣諸島情勢を含む東シナ海、南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、中国による台湾周辺での一連の軍事活動、特に、排他的経済水域を含む日本近海への弾道ミサイルの着弾を含め、数多くの課題や懸案が存在しています。また、台湾海峡の平和と安定も重要です。さらに、新疆ウイグル自治区の人権状況や香港情勢についても深刻に懸念しています。同時に、日中両国は地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を有しています。中国とは、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係の構築を日中双方の努力で加速していくことが重要です。

 韓国は、国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国です。北朝鮮への対応等を念頭に、安全保障面を含め、日韓、日米韓の戦略的連携を強化していくことの重要性は論を俟ちません。国交正常化以来築いてきた友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させていく必要があり、昨年十一月の日韓首脳会談の結果も踏まえ、私と朴振長官との間を含め、韓国政府と緊密に意思疎通していきます。また、竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も日本固有の領土です。この基本的な立場に基づき、毅然と対応していきます。

 ロシアとの関係については、日本の国益を守る形で対応していきます。日露関係は、ロシアによるウクライナ侵略によって厳しい状況であり、平和条約交渉の展望を語れる状況にはありませんが、日本として、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。また、北方墓参を始めとした北方四島交流等事業の再開は、今後の日露関係の中でも最優先事項の一つです。

 北朝鮮との間では、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。最重要課題である拉致問題は時間的制約のある人道問題です。拉致問題の解決には一刻の猶予もありません。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、全力で果断に取り組みます。

 我々の擁護する国際秩序が世界の人々の信頼に足るものであるために、人類共通の課題への対応を主導していかねばなりません。国際社会の多数を占める開発途上国は、複雑化する国際情勢と地球規模課題の深刻化の中で、安定的な発展を見通すことが困難な状況に陥っています。こうした中で、新たな時代における人間の安全保障の理念に立脚しつつ、最も重要な外交ツールの一つであるODAをより一層拡充し、戦略的、効果的な活用を通じて、SDGsの達成やFOIPの理念の実現に向けた取組を加速します。そのために、開発協力大綱を本年前半を目処に改定します。

 ロシアのウクライナ侵略による食料価格の高騰に対しては、国際機関や同志国との連携に加え、TICADプロセス等を通じて、脆弱性を抱える国々の支援に取り組んでいきます。

 気候変動は人類共通の課題であり、国際社会全体が連携して取り組むべき重要な課題です。ウクライナ情勢を受けて、エネルギー安全保障の強化との両立が重要な課題となっていますが、昨年十一月開催されたCOP27の成果の上に、引き続き気候変動問題に取り組むとともに、一・五度目標に沿った排出削減努力を含め、全締約国の更なる行動を呼びかけていきます。

 国際保健は、人々の健康のみならず、経済、社会、安全保障にも直結する重要な課題です。新型コロナの経験も踏まえつつ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向け、将来の健康危機に対する予防、備え、対応の強化に資する国際的な枠組みの強化や、新型コロナで後退した国際保健課題への対応を主導していきます。

 プラスチック汚染、生物多様性の保全、深刻化する人道危機、難民・避難民、テロ、暴力的過激主義、男女共同参画など、SDGs達成に向けた諸課題にも積極的に取り組みます。

 基本的な価値である人権の擁護のため、深刻な人権侵害に対してしっかり声を上げるとともに、努力をしている国に対しては対話と協力によりその取組を促す、日本らしい人権外交を進めていきます。

 以上の諸課題について、着実に具体的な成果を挙げるためには、機動的な外交実施体制を確保するとともに、外交活動の最前線に立つ在外職員等の勤務環境や生活基盤を強化することが不可欠であり、為替、物価高の影響を受ける各種手当等の改善に取り組んでいきます。さらに、人的体制、ODAの一層の拡充を含む財政基盤、DX推進を含めた外交実施体制の抜本的強化と戦略的な対外発信に取り組むとともに、日本人国際機関職員の増加、親日派、知日派育成、日系社会との連携強化に努めます。また、佐渡島の金山の世界遺産登録に向け、外務省としてもしっかりと役割を果たしていきます。水際措置緩和に伴い国際的な交流が再活性化していることを踏まえ、在外邦人の安全確保にも引き続き万全を期します。

 議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)

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議長(細田博之君) 財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 令和五年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

 日本経済につきましては、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いております。一方、世界的なエネルギー、食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、日本経済を取り巻く環境には厳しさが増しております。

 こうした中、足元の物価高を克服しつつ、日本経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せていく必要があります。そのため、先に成立した令和四年度第二次補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、同補正予算と一体的に編成した令和五年度予算、そして令和五年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

 日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応や累次の補正予算の編成等により、過去に例を見ないほど厳しさを増しております。財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠であると考えております。責任ある経済財政運営を進めるに当たっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要であります。引き続き、経済財政運営と改革の基本方針二〇二二等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進してまいります。

 続いて、令和五年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 令和五年度予算は、歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算としております。

 具体的には、新たに策定された国家安全保障戦略等の下での防衛力の抜本的な強化やその裏付けとなる財源の確保、本年四月に新たに設置されるこども家庭庁を司令塔とした、こども・子育て支援の強化、GXの実現に向けた成長志向型カーボンプライシングによる民間投資を支援する仕組みの創設、デジタル田園都市国家構想の下での地方公共団体のデジタル実装の加速化や地方創生に資する取組への支援など、現下の重要課題に正面から向き合い、一定の道筋を付けております。

 また、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費を四兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費を一兆円措置し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や物価高騰、世界的な景気後退懸念など、予期せぬ状況変化に引き続き万全の備えを講じることとしております。

 同時に、経済財政運営と改革の基本方針二〇二二等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるという方針を達成するとともに、社会保障関係費以外について、防衛関係費の増額を達成しつつ、経済、物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行うことを通じて、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しております。

 一般歳出につきましては約七十二兆七千三百億円であり、これに地方交付税交付金等約十六兆四千億円及び国債費約二十五兆二千五百億円を加えた一般会計総額は、約百十四兆三千八百億円となっております。

 一方、歳入につきましては、租税等の収入は六十九兆四千四百億円、その他収入は約九兆三千二百億円を見込んでおります。また、公債金は約三十五兆六千二百億円であり、前年度当初予算に対し約一兆三千億円の減額を行っております。

 次に、主要な経費について申し述べます。

 社会保障関係費につきましては、出産育児一時金の増額や、出産・子育て応援交付金の継続実施など、こども政策の充実のために必要な経費を確保しつつ、国民負担の軽減のため毎年薬価改定の実施など、様々な改革努力を積み重ねた結果、先に申し上げたとおり、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるという方針を達成しております。

 文教及び科学振興費につきましては、小学校高学年における教科担任制の推進等のため、教職員定数の合理化等を図りつつ必要な措置を講じるほか、科学技術立国の観点から、量子、AI分野等の重要先端技術の研究開発を戦略的に推進するとともに、基礎研究、若手研究者向け支援を充実することとしております。

 地方財政につきましては、臨時財政対策債の発行額の縮減や、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金償還額の増額を行うなど、地方財政の健全化を図りつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしております。

 防衛関係費につきましては、新たに策定された国家安全保障戦略等に基づき、スタンドオフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、施設整備などの重点分野を中心に、防衛力を抜本的に強化するとともに、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしております。

 公共事業関係費につきましては、新技術を活用した老朽化対策やハード、ソフト一体となった流域治水対策など、防災・減災、国土強靱化に資する総合的な取組を推進するとともに、生産性向上のためのインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。

 経済協力費につきましては、国際情勢が激変する中、G7広島サミット等を見据え、自由で開かれたインド太平洋をはじめとする取組を強化しつつ、ODAは現下の国際情勢にしっかりと対応できる予算を確保することとしております。

 中小企業対策費につきましては、価格転嫁対策を強化するほか、生産性向上や事業再生、事業承継に対する支援など、中小企業を取り巻く現下の課題に対応することとしております。

 エネルギー対策費につきましては、エネルギー対策特別会計において、カーボンプライシングで得られる将来の財源を裏付けとした公債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援していくこととしております。

 農林水産関係予算につきましては、食料安全保障の強化に向けた畑地化などの対策を講じるほか、農林水産物の輸出拡大、森林資源の適正な管理による林業の持続的成長の推進、さらには水産資源管理を行う漁業者の経営安定対策等に取り組むこととしております。

 東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間において、復興のステージに応じたニーズにきめ細かに対応するとともに、福島国際研究教育機構の設立などの取組を通じて創造的復興を成し遂げるため、令和五年度東日本大震災復興特別会計の総額を約七千三百億円としております。

 令和五年度財政投融資計画につきましては、新型コロナウイルス感染症に加え、物価高騰の影響も重なって厳しい状況にある事業者への資金繰り支援に引き続き万全を期すとともに、新しい資本主義の加速や外交・安全保障環境の変化への対応等に取り組むため、総額約十六兆二千七百億円としております。

 国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約二百六兆円と依然として極めて高い水準にある中で、引き続き、市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。

 令和五年度税制改正につきましては、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充、恒久化を行うとともに、スタートアップエコシステムを抜本的に強化するための税制上の措置を講ずることとしております。また、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバルミニマム課税の導入及び資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行うこととしております。

 以上、財政政策の基本的な考え方と、令和五年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。

 我々の行動と選択は、現代にとどまらず、次の世代へと引き継がれ、後世に生きる人々の生活に大きな影響を与えることになります。歴史の転換期を生きる我々の責務として、戦後日本が直面し、積み残してきた多くの難しい問題の解決を図っていくとともに、日本経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいくことで、豊かな日本社会を次の世代にしっかりと引き継いでいかなければなりません。

 そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)

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議長(細田博之君) 国務大臣後藤茂之君。

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 経済財政政策担当大臣として、我が国経済の現状と課題、政策運営の基本的考え方について所信を申し述べます。

 我が国経済は、ウィズコロナの下で緩やかな景気回復が続いています。一方で、国民生活に身近なエネルギーや食料品を中心に物価上昇が継続し、また、欧米各国の金融引締め等が続く中で世界経済が下振れリスクに直面するなど、我が国経済を取り巻く環境は厳しさが増しています。

 このような景気の下振れリスクに先手を打ち、我が国経済を民需主導の持続可能な成長経路に乗せていくため、昨年十月に閣議決定した事業規模七十二兆円、財政支出三十九兆円の物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策について、進捗管理を徹底し、迅速かつ着実に実行します。まずは、電気料金等の負担の上昇を直接的に軽減する前例のない思い切った措置等を講じ、足下の物価高から国民生活と事業活動を守り抜きます。また、物価上昇に負けない継続的な賃上げの実現に向け、賃上げに取り組む中小企業等への支援を大幅に拡充するとともに、価格転嫁対策を強化します。さらに、新しい資本主義を加速させ、人への投資の抜本強化と労働移動の円滑化による構造的賃上げの実現、成長分野への大胆な投資拡大を図ります。

 この総合経済対策及びその裏付けとなる令和四年度第二次補正予算等を実行し、令和五年度予算と合わせ、万全の経済財政運営を行います。これらにより、来年度の我が国経済は、実質で一・五%程度、名目で二・一%程度の成長が見込まれます。引き続き、経済状況等を注視し、民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、躊躇なく機動的なマクロ経済運営を行ってまいります。

 経済財政運営の基本は、経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。必要な政策対応に取り組み、経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に取り組みます。この下で、新経済・財政再生計画改革工程表の着実な実行により、効果的、効率的な支出を推進してまいります。

 我々が直面する様々な社会課題を成長のエンジンへと転換する。そして、成長の果実を分配し、更なる成長へとつなげていく。この成長と分配の好循環を実現し、力強く成長する持続可能な経済社会を構築するため、新しい資本主義の実現に向けた取組を加速してまいります。

 我が国経済再生の鍵を握るのは構造的な賃上げの実現です。そのために、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進め、働く人の立場に立って、三位一体の労働市場改革を加速します。リスキリング、転職、キャリアアップまで一気通貫で支援する仕組みづくりや、成長分野であるデジタルやグリーンについてのリスキリングに主体的に取り組む個人への直接支援など、働く個人一人一人に着目し、その努力を支援する、人への投資パッケージを五年間で一兆円に拡充し、取組を抜本強化します。

 また、産業構造の大きな変革に合わせて、失業なき労働移動を進め、構造的な賃上げを実現していくため、労働移動円滑化のための指針を本年六月までに取りまとめます。

 さらに、貯蓄から投資へのシフトを進めることで、家計の賃金所得に加え、金融資産所得の拡大を図ってまいります。新しい資本主義が目指す分厚い中間層を形成するため、資産所得倍増プランの実行を通じて、今後五年間で、NISA口座数やNISA買付額の倍増を目指し、これらにより、長期的な目標としては資産運用収入そのものの倍増を見据えて取り組んでまいります。

 人への投資の抜本強化に加え、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXといった成長分野への投資を大胆に拡大することにより、新たな経済構造への変革を進めてまいります。

 半導体、GX、次世代の通信技術等の戦略分野への国内投資を七兆円規模の補正予算で支援します。また、スタートアップは、社会的課題を成長のエンジンに転換して、持続可能な経済社会を実現する、新しい資本主義の考え方を体現するものです。スタートアップへの投資額を五年後に十兆円規模と十倍増にすることを目標に、スタートアップ育成五か年計画を早急に実行に移し、人材、資金供給、オープンイノベーションを三本柱とする取組を一体として強力に推進してまいります。我が国に起業家精神を取り戻し、第二の創業ブームを実現することによって、将来的には世界に伍するユニコーン企業を百社創出することを目指します。このように、長期的なビジョンの提示や複数年度にわたる支援に官が明確にコミットするなど、民間の予見可能性を高め、計画的、安定的に投資が実行できる環境を整備することにより、官民連携の下、国内投資を大胆に拡大します。

 また、公益法人が、成熟した市民社会におけるパブリックの担い手としての役割を高め、多様な社会的課題に柔軟に対応できるよう、法人活動の自由度拡大とこれに伴うガバナンスや説明責任の充実を両輪として、公益法人制度の改革を進めます。

 我が国経済を再生し、新しい時代を切り拓いていけるよう、イノベーションや人への投資を進め、生産性や付加価値を向上させるとともに、適切な価格付けを通じてマークアップ率を高め、物価上昇に負けない賃上げやコスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保していく。このような連続的に拡大が続く成長と分配の好循環を、皆さんと共に築き上げてまいる所存です。

 我が国は、世界に開かれた貿易・投資立国であり続けます。本年五月に開催されるG7広島サミットは、これを世界に示し、海外の活力を積極的に取り込んで、我が国の成長力の強化や国民所得の増加につなげる好機です。魅力的な成長市場を拡大し、安定的なサプライチェーンを確保するため、ビジネス環境整備を進め、海外からの人材や資金の呼び込みに取り組みます。また、技術と意欲ある我が国企業の海外ビジネス投資を強力に支援し、海外収益とその国内還流の増加を図ってまいります。

 包括的・先進的TPP協定、いわゆるCPTPP等の経済連携の強化も進めてまいります。我が国は、これまで、CPTPP等の経済連携協定の推進を通じて、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してきました。我が国は、引き続き、本協定を通じた自由貿易の推進や、デジタル化などの新たな課題への対処において、主導的な役割を果たしてまいります。また、国内においては、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく施策を着実に実施してまいります。

 現在、CPTPPへの英国の加入手続が進行しています。CPTPPは、自由で公正な二十一世紀型の新たなルールを確立するものであり、市場アクセスの面でもルールの面でも高いレベルの内容となっています。我が国は、英国の加入作業部会の議長として、手続が協定の高いレベルを維持し、良い先例となるよう、他の参加国と共にしっかり取り組みます。また、その他の加入要請を提出しているエコノミーについても、協定の高いレベルを満たす用意ができているかどうかについて、引き続き見極めてまいります。

 誰もが安心できる全世代型の社会保障を構築してまいります。

 昨年末に全世代型社会保障構築会議において報告書を取りまとめました。本報告書に基づき、こども・子育て支援の充実、働き方に中立的な社会保障制度等の構築、医療・介護制度の改革、地域共生社会の実現等について、足下の課題とともに、中長期的な課題について、時間軸と地域軸を持ち、全世代で支え合い、人口減少・超高齢社会の課題を克服するための取組を着実に進めます。

 特に、未来への投資であるこども・子育て支援の充実については、その検討を加速し、六月の骨太方針までに、将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 さらに、包摂社会の実現に向け、女性活躍や孤独・孤立対策、就職氷河期世代支援などの取組を一体的かつ総合的に進めます。

 新型コロナウイルス感染症について、政府としては、これまで、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるように取り組んでまいりました。本年は、平時の生活を全面的に取り戻せるよう、足下の感染状況に十分注意しながら、更なる取組を進めてまいります。また、次の感染症危機に的確に対応できるよう、政府の司令塔機能を強化するため、内閣感染症危機管理統括庁の設置等のための法案を今国会に提出します。

 世界は歴史的な転換期にあり、国内においては、物価高克服と経済の再生、また少子化を始めとする構造的課題に直面しています。こうした課題に一つ一つ正面から取り組み、我が国経済を力強く再生させ、持続的な成長軌道に乗せる。そのための経済社会の改革を皆様と共に進め、新しい時代を切り拓いていくため、全力を尽くしてまいります。

 国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

佐々木紀君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十五日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(細田博之君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    齋藤  健君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  永岡 桂子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  野村 哲郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    西村 明宏君

       防衛大臣    浜田 靖一君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    岡田 直樹君

       国務大臣    後藤 茂之君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    谷  公一君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    渡辺 博道君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 木原 誠二君


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