衆議院

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第2号 令和5年1月25日(水曜日)

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令和五年一月二十五日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  令和五年一月二十五日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(細田博之君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 立憲民主党の泉健太です。(拍手)

 まず、寒波に遭われた、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。

 命と暮らしを守ってほしい。我が国の平和と繁栄を壊さないでほしい。政府だけで勝手に決めないでほしい。当たり前ですよね。こうした多くの国民の声を聞いてまいりました。その思いを形にし、党の政策と併せて、会派を代表して総理に質問いたします。

 総理の施政方針演説では、幾つかの驚きがありました。防衛増税をするのに増税との言葉を一切使わなかった。これは明らかに増税隠し演説ですよね。これ以降の答弁でも増税という言葉を使わないつもりでしょうか。これだけ是非が問われている異次元の金融緩和にも全く触れませんでした。子ども・子育て予算の倍増の財源を全く語りませんでした。高齢者が物価高に苦しんでいるのに年金の言及は一言もありませんでした。

 総理は、我々は再び歴史の分岐点に立っていると演説で述べましたが、まさに総理の示す方向によって、日本の安全保障環境が悪化をし、財政が悪化をし、再生可能エネルギーへの転換が遅れ、少子化を深刻化させ、経済の低迷と格差拡大を招きかねません。

 立憲民主党が先頭に立って政府・与党と対峙し、法案と予算を厳しく審査し、国会論戦に臨みます。政府には真摯な答弁を求めます。

 防衛費、まさに額ありき、増税ありき、国会での議論なし、乱暴な決定ではないでしょうか。冷静で合理的な積み上げを欠き、現場の負担を考慮することもなく一気呵成に決めたことは大きな問題です。閣議決定の後に国会で議論をするならば、議論の結果次第で防衛三文書も当然修正すべきです。それが真っ当な民主的手続ではないでしょうか。

 立憲民主党は、国の防衛に責任を持つ政党として、昨年、「外交・安全保障戦略の方向性」を発表いたしました。国民の皆様に是非御覧いただきたいと思います。ミサイル防衛能力の強化、宇宙、サイバー、電磁波、認知戦、無人化等の強化、継戦能力の強化、自衛隊の人的基盤の強化、重要防護施設の防御の強化など、時代の変化に即した質の高い防衛力の整備を立憲民主党が現実的に訴えていることを御理解いただけると思います。

 だからこそ、額ありき、増税ありきの岸田政権には失望をいたしております。まずは、真の歳出改革で、施策の選択を行うべきではないでしょうか。それもせず国債や増税に頼るのは、まさに邪道であります。

 具体的に問題点を問います。

 まず、決算剰余金の半分を防衛費に転用するという手法についてです。年度内に使われなかった決算剰余金を防衛費に特定財源化すれば、あらかじめ予算を膨らませ、余らせ、防衛費に転用可能となります。これでは財源ロンダリングではないでしょうか。穴の空いたバケツと一緒であります。もしこうした手法が判明をすれば、これは総理辞任、閣僚辞任物だと思いますが、総理、その覚悟はありますか。

 また、総理は、戦後初めて防衛費に建設国債を充てるつもりです。この禁じ手を使って一体幾らを確保するつもりなのか、お答えください。かつて日本は、戦時国債を乱発し、軍拡も戦線拡大も止められずに敗戦し、財政も破綻状態となった。それを教訓に、戦後は建設国債を防衛費には充ててこなかったはずです。

 総理、建設国債での防衛費調達を撤回する考えはありませんか。また、国債の六十年償還ルールを変更して防衛費を捻出するという奇策まで打つつもりですか。お答えください。

 そして、防衛増税。震災復興の所得税を防衛費に転用するのは、ひどい政策です。あり得ません。

 私は、昨年の三月十一日の午後は東北で、そして今年の一月十七日早朝は神戸で、直接、震災の犠牲者を追悼いたしました。復興とは本当に長期に及ぶものである。それを実感いたしました。

 だからこそ、東日本大震災の復興は、全国民の支え合いとして税によって進められてきたのです。この復興特別所得税を防衛費に転用するのは、大震災の被災者、犠牲者、全国の国民の思いに背く手法ではありませんか。

 防衛増税を行うなら、解散・総選挙で国民の信を問え。総理、お答えください。

 国民の皆さん、野党六党も防衛増税に反対です。力を合わせて防衛増税に反対をいたしましょう。そして、もし総理がその方針を変えないなら、解散・総選挙で、増税反対の意思を示そうではありませんか。

 戦禍の恐怖にさらされているウクライナに連帯を表明し、ロシアの即時停戦と全面撤退を求めます。総理、日本に可能な貢献分野は限られますが、更なる民生支援や復興支援に向け、ゼレンスキー大統領との早期の会談を持つべきです。

 総理は、急激な防衛費の増額、防衛増税、反撃能力と、安保政策の方針を大転換しました。しかし、これで平和が訪れるのかといえば、周辺国との緊張は依然として高い状態が続いています。これがいわゆる安全保障のジレンマです。総理、日本と周辺国との外交・安全保障環境において、どのような手法でどんな未来を描いておられるのか、説明ください。

 反撃能力についてです。

 そもそも、政府の言う反撃能力とは敵基地攻撃能力と何が違うのか、総理は明確にしていません。国民に分かりやすく説明すべきです。

 まず、立憲民主党は、相手国のミサイル発射着手段階における日本からの敵基地攻撃は、国際法違反の先制攻撃にならざるを得ず、反対の立場です。政府の反撃能力も、もし相手国のミサイル発射の阻止を目的とするならば、同じく国際法違反の先制攻撃とみなされるでしょう。

 存立危機事態での敵基地攻撃についても、我が国へのミサイル攻撃を防ぐための必要最小限度のやむを得ない措置とは言えませんので、我々は反対です。

 さらに、相手国の移動式ランチャーをこちらからミサイルで狙うことはほぼ不可能という中で、攻撃対象を固定目標に狙いを置き換える議論があります。それはミサイル発射阻止のための必要最小限度のやむを得ない措置の範囲内でしょうか。反撃能力とは、港湾、航空基地、指揮命令系統の中枢も含む、ミサイル発射阻止を超えた抑止力であるという考えを取るのか、お答えください。

 自衛隊が長射程のミサイルを保有する必要性については一定理解をします。米軍は、アジアのミサイルバランスが中国優位に大きく傾く中で、地上発射型中距離ミサイルの第一列島線上への配備を考えていたようですが、自衛隊による長射程ミサイルの配備でこれを見送る方針を固めたと言われています。

 ただ、このことは、日本の戦力が米国とその同盟国の持つ抑止力に組み込まれ、一体として運用されることになる可能性を示唆しています。

 政府は、新たに陸海空三自衛隊の部隊を指揮する常設の統合司令部を新設するようですが、実際、韓国の米韓連合軍司令部では、有事の際は米軍側司令官が連合軍司令官を兼ね、指揮を執り、NATOでも米軍が指揮を執る仕組みがあります。

 総理、このような指揮権の共有や移譲を考えているのか、お答えください。日米の一体化が進めば進むほど、専守防衛を逸脱する懸念が拭えません。どのような歯止めを考えているのか、お答えください。

 日米関係は我が国の基軸です。しかし、日本には日本自身の果たすべき外交的役割があるのではないでしょうか。周辺を見渡したとき、我が国近隣外交は悪化の一方です。

 特に、北朝鮮には同じ言葉で非難と抗議を繰り返すばかりですが、拉致問題の解決も一向に進んでおりません。御家族の思いに寄り添っていただきたい。条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意と毎回同じ総理の言葉でありますが、何か算段や見通しがあっての言葉なのか、お答えください。

 ロシアのウクライナ侵略は言語道断です。しかし、ドイツもフランスもウクライナ戦争発生後にロシア大統領と首脳会談を行い、米国国防長官もロシア国防相と会談をしております。我が国も何らかの形で対ロ外交を再開し、停戦や撤退を求めつつ、仲介の可能性を探るべきではないでしょうか。漁業協議、北方墓参の再開をどうするのかもお答えください。

 中国とは、経済的にも歴史的にもつながりが深い隣国で、友好的、安定的な関係を再構築すべきです。日本は、米中の間に立ち、対立を緩和に導く重要な役割があります。G7広島サミットまでに再度の首脳会談をすべきと考えますが、いかがでしょうか。

 そして、総理、私は、国家安全保障戦略の策定の趣旨の部分の記述を強く懸念します。

 先進民主主義国の普遍的価値を既存の国際秩序とし、そうでない国は普遍的価値を共有しない一部の国と記している。この姿勢では、まるで力と力の対決ではないでしょうか。我々の持つ普遍的価値は正しいと思います。しかし、正しいとしても、それを対立軸とすることが国際社会の分断を招いているのではないでしょうか。

 国際社会は、そもそも、宗教、政治体制、価値、慣習の違う国家の集合体であり、民主主義対非民主主義の二項対立ではありません。異なる価値の対等なぶつかり合いと調和を前提とし、共感と理解をつくり上げていくべきではないでしょうか。対話と交流の中で相互の理解と調和を育む。これが本来の、本当の日本外交ではないでしょうか。

 総理、この安全保障戦略の文章を修正しませんか。お答えいただきたいと思います。

 日銀黒田総裁がいよいよ任期を迎えます。

 総理、安倍総理がアベノミクスを打ち出し、黒田総裁が異次元の金融緩和を始めた。当初は二年で二%のインフレ目標を実現するだったが思うように進まず、安倍総理は、さらに、この道しかないと強弁をし、アベノミクスを続けました。

 黒田総裁は、物価が上がれば賃金も上がるとも発言をしていましたが、結局、この十年、日本は物価だけが上がり賃金が上がらない状態でありました。事実、今も実質賃金は下落をしています。

 総理、ずばり聞きます。アベノミクスは失敗した、そう思いませんか。異次元の金融緩和が賃金上昇につながらなかった理由をお答えください。

 一月二十一日号の週刊東洋経済の見出しは、異次元の緩和から戸締まりの時代へ、日銀、宴の終えんでした。元日銀理事の三人が鼎談をし、成果がなかったことがこの十年の成果だったと総括をしております。悪い円安で物価は上がり、財政規律は弛緩し、地域金融機関の経営は悪化し、金融市場は機能が低下しました。

 総理、もう異次元の緩和から方針を転換されますね。お答えください。

 イールドカーブコントロールやマイナス金利は今後どうするのか。二〇一三年の政府、日銀の共同声明は見直すのか。最近の国債市場は、市場のゆがみの状態となっている。長期金利をコントロールする日銀の金融政策は破綻していませんか。お答えいただきたいと思います。

 日銀がETFを大量購入した結果、日本の多くの有名企業の上位株主が、何と日銀となってしまいました。異常な状態だとは思いませんか。そして、これをどうやって正常に戻すか、お答えください。

 総理、黒田総裁の後任は、アベノミクスを継承する人物、見直す人物、どちらの方向を選ぶのでしょうか。頓挫が明らかになった以上は、安倍・黒田路線を見直す方を次期総裁に選ぶべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 財政です。

 令和五年度当初予算の一般会計は百十四兆円。十一年連続で過去最大規模です。税収も過去最大の六十九兆円を見込んでいますが、それでも新たに約三十六兆円の借金をせねばなりません。今後、金利が上昇すれば、一千兆円以上の巨額な国債残高の利払いに苦しむことになります。だから金利も上げられないと言われています。

 もはや、トゥービッグ・トゥーリスキー、大き過ぎ、危険過ぎる状態ではないでしょうか。総理、このような財政運営が持続可能だと考えるのか、お答えください。

 我が党は、国会に独立財政推計機関を設け、政府の財政運営が持続可能かを検証する仕組みを提案しています。この提案はいかがでしょうか。見解を求めます。

 そして、来年度でも予備費は五兆円。もういいかげん、この巨額の予備費の規模は財政民主主義に反しませんか。お答えください。

 エネルギーについてです。

 立憲民主党は、現在の国際的なエネルギー市場の混乱を踏まえ、電力の安定供給のためには、当面、火力や原子力について、これまでの厳格な運転再開の基準やルールを守りつつも、最小限の活用はあり得るものと考えています。

 その上で、国民の皆様、今問われているのは将来の電力供給の在り方だと思います。将来の安定供給を、再生可能エネルギー、原子力、このどちらで実現することを望むのか、これをお考えいただきたいと思うのです。

 総理は、昨年までの、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減するという方針を、年末のGX実行会議で、原子力を脱炭素電源として最大限活用、運転期間の延長、再稼働の加速、次世代革新炉への建て替え、建設に転換しました。

 しかし、総理、原子力の災害リスク、武力攻撃リスク、事故リスク、大規模停電リスク、廃棄物処理リスクは、他の電源に比較してやはり大きいのではありませんか。お答えください。

 国民の皆さん、実は、私たちの行った過去数年の電力消費量に基づいた試算でも、省エネ、再生可能エネルギーの推進、送電網の改革、蓄電技術などを活用すれば、将来には、電力の安定供給、原発に依存しない社会は実現可能です。技術はそこまで向上しております。立憲民主党は、多くの専門家と検討を重ね、環境エネルギー重点政策にそのプランをまとめております。是非御覧いただきたいと思います。あとは、まさに皆さんの選択なのです。

 もちろん、エネルギーの転換には、電源立地地域の振興対策、雇用の公正な移行なども含め、丁寧な対応が求められます。再生可能エネルギーも原子力も、燃料の国際価格の上昇には強い電源ではありますが、各種リスクを考えれば、また、社会課題を成長のエンジンへと転換すると総理が言うならば、やはり、太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡大こそが有望な成長のエンジンではないでしょうか。

 原子力を今後も長期に続けていけば、それだけ再生可能エネルギーは伸び悩みます。技術も停滞をします。国民の皆さん、将来の電力供給の話です。その在り方を選んでください。もっと政府主導で再生可能エネルギー発電を大いに伸ばす。それが立憲民主党であります。

 総理、十二月の消費者物価指数は前年同月比で四%上昇しました。これは四十一年ぶりの上昇率です。連合が主張している物価上昇に負けない賃上げを何としても実現せねばなりません。立憲民主党も、賃上げに向け、各種提案を行っています。

 ただ、城南信金と東京新聞が中小企業七百三十八社に聞き取り調査を行ったところ、今年の賃上げ予定はなしとの回答が七二・八%にも上っています。

 中小企業の賃上げには、原材料や燃料に加え、労務費分の価格転嫁が不可欠です。中小企業庁の調査では、価格転嫁に応じた相手企業の割合は四六・九%と半分以下、価格転嫁が全くできていない企業も全体の二割です。

 私は、さきの国会で、総理に価格転嫁宣言をと提案しましたが、経済産業省が進める価格交渉促進月間というのがあります、この啓発予算と取組期間を拡大して、中小、下請の価格転嫁を後押ししませんか。お答えいただきたいと思います。

 また、雇用の正規化が賃金を引き上げます。正社員を増やした中小企業の社会保険料の事業主負担分の一定部分を助成する、これを是非実行していただけませんか。お答えください。

 もう一つは、控除の壁の問題です。最賃が上がって、パート、アルバイトの方々が控除の壁に今まで以上に早く到達してしまう。立憲民主党は、税制改革要望で控除額の引上げを訴えております。これを是非実行しませんか。総理、お答えください。

 そして、介護や障害者福祉、保育の現場の更なる処遇改善、これも行いませんか。お答えください。

 求めていた会計年度任用職員の待遇改善は前進します。立憲民主党は、官民双方の賃上げをこれからも後押しいたします。一方、調査研究広報滞在費の使途公開や残金の返還、あしき慣習の見直しなど、国会自身の改革には精力的に取り組んでまいります。

 ストップインボイスの声が、全国の小規模事業者やフリーランス、税理士の皆様などから起きています。インボイス制度の導入によって、五百万者以上の免税事業者の取引排除、そして廃業が懸念をされています。総理、実施を見直しませんか。そして、VOICTIONなど当事者団体から直接話を聞いていただけませんか。お答えください。

 世界で増えるEV車は新たな可能性です。しかし、寒冷地での電池切れ、レアアースの国際的な争奪戦、充電スタンドなどの整備の課題もあります。各国政府やメーカーの動向、時間軸をよく理解し、水素やプラグインハイブリッド技術など多様な選択肢を持って日本企業の優位性を保つことは重要です。この点をどう考えているのか、総理、お答えください。

 続いて、子育て政策です。

 総理が今になって最重要と位置づけた、子ども・子育て支援政策。しかし、これは、だまされてはいけません。防衛増税を目立たないようにするためのまやかしではないでしょうか。

 その証拠に、防衛費倍増はどんどん具体化するのに、何年も前から我々がチルドレンファーストと訴えてきた子ども・子育て予算の倍増は、今から議論と検討を行い、大枠を示すのは六月ですよね。完全に防衛費の後回しではないですか。

 更に驚いたのは、総理の演説です。まず、私自身、意見を徹底的にお伺いするところから始めます。そこからですか、総理。この少子化で、四年も与党の政調会長を務められた総理が、そこからのスタートだとは驚きました。この十年間、自民党政権の施策の問題点は何だったと分析していますか。過去の政策の検証も行いますか。お答えください。

 この子供予算倍増は、立憲民主党が何年も前から提案をしていました。遅過ぎるぐらいです。倍増は、異次元ではなく最低限の少子化対策です。総理、この政府の子ども・子育て予算倍増は、どこから財源を確保するつもりなのか、お答えください。

 私たちは、子育て支援こそ、将来の経済成長、税収増、社会保障費の減少にもつながる将来への投資だと考えています。だからこそ、この分野にこそ税を最優先に配分していくべきだと考えております。

 経済的理由で子供を持てない人をゼロにする、政府はこれを目標にしませんか。我が党の若者組織りっけんユースにも、同世代からのこうした声が届いています。児童手当に所得制限を設けながら年少扶養控除を止めたままの自民党にも多くの批判の声が上がっていると思います。

 具体的に問います。実現するつもりがあるか、それぞれお答えください。

 給食費の無償化。高等教育の無償化。若者に借金を負わせる貸与型奨学金の改革。奨学金の出世払いに子育て当事者減免制度を追加。育児休業給付の賃金一〇〇%給付、これは、実は昨年から、森永乳業が最大二十八日間の出生時育児休業給付金において実現を始めています。法定の制度で給与の約六七%支給のところを一〇〇%有給というふうに変えたのです。これらの政策は国が強力に進めるべきではないでしょうか。

 そして、改めて、児童手当は所得制限を撤廃、高校三年生まで支給、これも絶対に実現すべきです。できないのであれば、その理由もお答えください。

 少子化の背景の一つが、家事、育児の負担が女性に偏っているということです。日本の男性は、先進各国でも家事、育児時間が最少です。男性の皆さん、育児、家事をしましょう。これは私たちおじさん世代もです。私もやっています。男性皆で意識を変えましょう。

 総理、育休退園を知っていますか。自治体によって、親が下の子を産み、育休に入ると、保育所に通っている上の子も家で育てなさいと退園させられる。これは、親にも子にもかなりの負担です。国として改善しませんか。お答えください。

 続いて、コロナです。

 新型コロナの位置づけを五類に変えるならば、入院勧告、外出自粛要請、診療や入院先の医療機関の体制、国民に何を止め、何を維持するのかをお答えください。医療費やワクチンの公費負担は維持すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 昨年発生した救急車の横転事故は衝撃でした。救急隊員が事故発生まで約十七時間ほぼ出動続きの中で居眠り運転を起こしたという事故だったからです。今後も事故が起きる可能性は大きいとの声が上がっています。政府はどのような対策を講じますか。お答えください。

 小泉政権のマクロ経済スライドと安倍政権の年金カット法で、現在の年金制度は物価上昇に負ける年金になっています。物価高騰の中、年金生活者の生活は大変厳しいものとなっています。さすがに今年は少額アップとなるでしょうが、今後の物価上昇次第では年金生活者支援給付金を手厚くすべきです。総理の見解を伺います。

 先日、あるお母さんから、娘が夢だった教員になった、でも仕事が余りに過酷で心身を壊して入院してしまった、こんな職場を変えてくださいと涙ながらに訴えてこられました。教員の時間外勤務が横行をしています。国の調査では、過去最多の五千八百九十七人もの公立学校の教職員が精神疾患で病気休職中であります。総理、政府を挙げて学校の働き方改革と教職員の増員を推進する考えはありますか。お答えください。

 最後に、平和で美しい日本と世界を残していくためには、長期的、地球的視野に立つことが不可欠です。和の心を持って、あらゆる立場の分断を乗り越えて、調和的な未来を創造するために力を尽くす。これは、私たち立憲民主党が策定をしたビジョン22、その前文の一部です。これを是非全国民の皆様に御覧いただきたいと思います。私の質問も、まさにこのビジョン22の長期的、地球的視点に立ったものであります。

 立憲民主党は、調和の取れた国家予算を目指します。過度な防衛費増で国民生活を圧迫させません。価値の異なる国とも調和と平和の外交を目指します。本来の市場機能と調和した金融政策を目指します。人口構成や財政支出などの世代間格差を調和させる政策を進めます。そして、未来社会に調和した再生可能な電力を増やしてまいります。これが、我々立憲民主党の基本的な姿勢であります。

 不適切な組織との密接な関係、政治資金の不祥事、こんなおかしな政治を正すために、少子化対策を始め結果を出せない政権を替えるために、立憲民主党は更に改革と進化を続けてまいります。

 今、全国では、草の根民主主義と多様性、持続可能性を尊重し、立憲ボトムアップビジョンを策定した約千二百名を超える立憲民主党の自治体議員の仲間と、そして多くの新人たちが、地域の福祉を向上させ、共助と公助が機能する、支え合いの社会をつくるために活動をしております。

 この日本を政権交代のある国にする、私は、その思いで、現在四十八歳でありますが、約三十年間、活動を続けてまいりました。同じ思いの国民の皆さんも全国におられると思います。どうかそのお力をおかしください。私は、皆様の先頭に立って、自民党政権の法案や予算をただし、立憲主義や政策ビジョンを実現してまいります。

 私たちは、政権を担える力をつけ、必ずや政権交代を果たす。その決意をお伝えし、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 泉健太議員からの御質問にお答えいたします。

 まず、防衛費増額についてお尋ねがありました。

 国際秩序が重大な挑戦にさらされ、国際関係において対立と協力の様相が複雑に絡み合う時代となっています。そして、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面をしています。

 その中で、防衛力の抜本的強化、維持を図るためには、これを安定的に支えるためのしっかりとした財源が不可欠です。財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革の努力を最大限行うこととしております。このうち、決算剰余金については、過去の実績を踏まえ、その規模を見込んでおり、あらかじめ予算を膨らませることで防衛費に充てることは意図しておりません。

 また、防衛関係費を建設国債の発行対象経費として整理したことについては、新たな国家安全保障戦略等において、防衛力の抜本的強化を補完する取組として、防衛省と海上保安庁との連携や公共インフラ等が明確に位置づけられた中で、海上保安庁の船舶や空港、港湾等の公共インフラ整備が建設国債の発行対象であることを踏まえ、安全保障に係る経費全体で整合的な考え方を取る観点から、防衛省・自衛隊の施設整備や艦船建造に係る経費四千三百四十三億円について、同様に建設国債の発行対象として整理することとした次第です。

 また、国債の六十年償還ルールについては、様々な御意見があることは承知しておりますが、政府としては、これを見直した場合、債務償還費の繰入れが減少する分、赤字公債は減りますが、借換債が増えることから、国債発行額としては変わることはなく、これを見直しつつ、その分を政策的な経費増加に使うということになりますと、結果的に国債発行額は増加すること、さらには市場の信認への影響に留意する必要がある、こうしたことを考えております。

 復興特別所得税については、与党税制改正大綱において、税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとしており、その延長幅は、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところであり、復興事業に影響を及ぼすものではありません。

 こうした内閣の方針について、国民の皆様に御理解をいただけるように、国会での議論も含め、引き続き丁寧に行っていく考えです。いずれにせよ、何についてどのように国民の信を問うかについては、時の内閣総理大臣の専権事項として適切に判断をしてまいります。

 外交と安全保障環境についてお尋ねがありました。

 先ほど申したように、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面をしています。

 我が国の周辺国、地域においても、核・ミサイル能力の強化、あるいは急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層顕著になっています。

 この歴史の転換期の中で、我が国は、主権と独立の維持、そして国民の生命、身体、財産の保護、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、さらには国際社会が共存共栄できる環境、こうしたものを実現してまいります。

 そのために、外交力そして防衛力を含む総合的な国力を最大限生かして、首脳レベルを含め、現実的な外交を積極的かつ力強く展開してまいりたいと考えています。

 反撃能力と日米の指揮権についてお尋ねがありました。

 反撃能力は、弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合に、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の防衛の措置として行使するものです。その対象についても、攻撃を厳格に軍事目標に対するものに限定するといった国際法の遵守を当然の前提とした上で、ミサイル攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限の措置の対象を個別具体的な状況に照らして判断していくことになります。

 こうした反撃能力は、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力として今後不可欠となる能力であり、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えています。

 また、新たに創設する常設の統合司令部については、あくまで陸海空自衛隊の一元的な指揮を行うための司令部であり、御指摘のような日米間での指揮権の共有や移譲といったことは考えてはおりません。

 北朝鮮、ロシア、中国についてお尋ねがありました。

 北朝鮮との関係について、お尋ねの今後の算段や見通しについて明らかにすることは、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため差し控えなければなりませんが、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すとの方針の下に、引き続き、あらゆる働きかけを行います。

 特に、最重要課題である拉致問題については、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で果断に取り組んでまいります。

 ロシアについては、ウクライナ侵略を一刻も早くやめさせ、対話への道筋をつくるため、G7を含む国際社会と連携をしつつ、強力な対ロ制裁を講ずるとともに、ウクライナへの支援を継続していきます。ロシアとの外交上のやり取りは、相互の大使館ベース等で日々行っており、お尋ねの漁業協議についても適切に対応してまいります。また、北方墓参を含む四島交流等事業については、日ロ関係の中でも最優先事項の一つであり、一日も早く再開できるような状況になることを強く期待しております。

 中国については、次の日中首脳会談について現時点で何ら決まってはおりませんが、昨年十一月の日中首脳会談で得られたモメンタムを維持しながら、中国に対しては、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め、首脳間を始めとする対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築をしてまいります。

 国家安全保障戦略の記述についてお尋ねがありました。

 御指摘の記述は、国家安全保障戦略を策定する前提として、国際社会の厳しい状況についての認識を冷静に述べたものであり、力対力の姿勢を示しているとか国際社会の分断を招くものとの指摘は当たらないと思います。修正することは考えておりません。

 その上で、歴史の分岐点を迎える中で、国家安全保障戦略にのっとって、普遍的価値に立脚しつつ、国益を守るため、首脳レベルを含め、現実的な外交を進め、対話を行ってまいりたいと思います。

 金融政策と日銀総裁の人事についてお尋ねがありました。

 政権交代以降、アベノミクスによって、デフレではない状況をつくり出し、二%程度の賃上げを実現して、全体として雇用者所得の総額は上昇しました。他方で、女性や高齢者等、パートの労働参加が進み、こうした方々の比率が上昇したことなどを要因として、雇用者全体の一人当たりの賃金は伸び悩んだものと認識をしております。

 金融政策については、御指摘のイールドカーブコントロール、マイナス金利、ETF購入等の具体的な手法は日銀に委ねられるべきと考えておりますが、政府と日銀は、密接に連携をしながら、経済・物価情勢に応じて機動的な政策運営を行い、構造的な賃上げを行う経済成長と物価安定目標の持続的、安定的な実現を図っていく、こうした認識において一致をしております。

 日銀には、引き続き、政府との連携の下、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営を行われることを期待しております。

 また、日銀総裁人事については、黒田総裁の任期は本年四月八日までとなっており、その時点で日銀総裁に最もふさわしいと判断する方を任命することが基本であると考えております。今後の経済の動向も見ながら的確な判断を行ってまいります。

 なお、新しい日銀総裁が決まっていない現時点で、共同声明を見直すかどうかについて申し上げることは控えなければならないと思います。

 持続可能な財政運営、独立財政推計機関及び予備費についてお尋ねがありました。

 私の経済財政運営の基本は、経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に取り組んでいくというものです。この基本に立って、新型コロナや物価高騰等、足下の経済状況に機動的に対応するとともに、財政や社会保障制度の持続可能性への信認が失われることがないよう、歳出歳入両面の改革を続け、責任ある経済財政運営に努めてまいります。

 院内における機関の設置については、国会において御議論いただくべき事柄であり、政府としてお答えすることは控えますが、その上で、政府としては、経済財政諮問会議において、専門的また中立的な知見を有する学識経験者なども参画する形で経済財政運営について議論を行っており、引き続きこの体制の下で適切な政策運営を行っていきたいと考えております。

 予備費については、令和五年度予算において、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費四兆円並びにウクライナ情勢経済緊急対応予備費一兆円、これを措置しており、新型コロナの感染拡大や物価高騰、世界的な景気後退懸念など、予期せぬ状況変化に引き続き万全の備えを講ずるため、必要な措置であると考えております。

 その上で、今回計上する予備費については、年度内の予見し難い予算の不足に充てるため、予算の一部として国会で御審議いただくこと、また、予備費の支出は、憲法、財政法の規定に従って事後に国会の承諾を得る必要があることから、財政民主主義に反するものではないと考えております。

 原子力政策についてお尋ねがありました。

 昨年二月のロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギーの安定供給の確保が世界的に大きな課題となっています。近年は脱炭素に重きを置いて検討を進めてきましたが、これからはエネルギーの安定供給と脱炭素をいかに両立させるか、これが重要となります。

 政府としては、引き続き、再エネ導入を最優先とし、最大限の導入に取り組みます。具体的には、全国規模での系統整備や海底直流送電の整備などを加速した上で、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、二〇三〇年度の再エネ比率三六%から三八%に向けて取り組んでいきます。

 その上で、我が国の厳しいエネルギー供給の状況を踏まえれば、原子力を含め、あらゆる選択肢を活用していくことが必要となります。原子力については、安全神話に陥ってしまった東京電力福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、いかなる場合もゼロリスクはないとの認識に立ち、安全性の確保を最優先として取り組んでまいります。

 原子力発電所の事故が引き起こされた場合には、周辺地域に放射性物質が飛散するおそれがあること等から、自然災害や技術的トラブル、テロ等に対しては、高い独立性を有する原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の新規制基準の下、厳格な規制を行うとともに、これらによる原子力災害のリスクに備えて、関係府省が連携し、避難計画の策定支援や訓練の実施、避難道の整備など原子力防災体制の充実に取り組んでいきます。

 また、武力攻撃に対しては、事態対処法や国民保護法等の枠組みの下で必要な措置の準備を行うほか、特に、弾道ミサイル等の攻撃に対しては、イージス艦やPAC3などにより対処することとしております。

 また、大規模停電リスクについては、原子力施設だけではなく、他の発電規模の大きな電源でも生じ得るものであり、電力ネットワーク全体の問題として、供給余力の確保など電力システムの強靱化に取り組んでまいります。

 そして、廃棄物処理リスクへの対応としては、使用済燃料の再処理や最終処分、廃炉といったバックエンドの課題にも正面から向き合ってまいります。特に、原子力に対する国民の皆様の懸念の一つが使用済燃料の最終処分であることを踏まえ、政府一丸となって、かつ政府の責任で、最終処分に向けた具体的なアクションを早急に取りまとめ、取組を加速化してまいります。

 中小企業の価格転嫁及び社会保険料の事業主負担についてお尋ねがありました。

 価格転嫁を後押しする価格交渉促進月間は、最も価格交渉されている時期が毎年三月と九月であることを踏まえて、その時期に実施しておりますが、それ以外の時期においても、下請Gメンによるヒアリングやアンケート調査、周知啓発活動、親事業者への指導助言などを通じ、一年を通じて取引適正化に取り組んでいます。

 また、令和四年度補正予算と令和五年度当初予算案を合わせ、下請取引対策の予算は拡充しており、今月から下請Gメンを三百名体制へと増員するほか、フォローアップ調査や周知啓発の取組も充実させていきます。加えて、公正取引委員会においても大幅増員を行っており、独禁法や下請法などを厳正に執行してまいります。

 社会保険料の事業主負担については、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが、事業主の責任であるとともに、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資するという観点から、事業主に求められているものであり、これを国が肩代わりすることは適当ではないと考えております。

 配偶者控除、介護、障害福祉、そして保育職員の処遇改善についてお尋ねがありました。

 配偶者控除については、これまでの見直しにより、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることがない仕組みとなっております。いずれにせよ、いわゆるL字カーブの解消、男女間の賃金格差の是正などの課題に対し、女性の就労の壁となっている制度の見直しに取り組んでまいります。

 そして、介護、障害福祉、保育職員の処遇改善については、給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置など、これまで累次の処遇改善を講じたところです。今後も、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減、こうしたものを進めてまいります。

 インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものです。御指摘のような小規模事業者の方々の懸念について、様々な声に耳を傾け、政府一体で連携して丁寧に課題を把握しながら、きめ細かく対応してまいります。

 具体的には、フリーランスの方々を含め、免税事業者を始めとした事業者の取引について、取引環境の整備に取り組むとともに、令和四年度補正予算においてインボイス対応のための支援策の充実を盛り込み、さらに、令和五年度税制改正において新たな負担軽減措置を講ずることとしております。

 引き続き、制度の円滑な実施に向けて万全の対応を図ってまいります。

 自動車産業の戦略についてお尋ねがありました。

 脱炭素、デジタル化、自動走行などの大変革の時代にある我が国自動車産業が引き続き世界をリードしていくためには、日本企業の強みを生かして競争力を確保していくことが必要です。

 自動車の脱炭素化に対しては、現状、完全な技術は存在しません。このため、電気自動車のほか、御指摘の水素やハイブリッド技術、燃料の脱炭素化などを含めた多様な選択肢を追求していくことが我が国の方針です。

 政府としても、国際交渉や産業界との連携を通じて、各国の政策や市場の動向、インフラ事情などの課題を把握することにより、多様な選択肢による解決策の提供と日本企業の市場獲得に貢献してまいります。

 子ども・子育て支援についてお尋ねがありました。

 これまでの自公政権においては、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じた支援を進めてまいりました。少子化対策関係の予算は大きく増加し、例えば、いわゆる保育所待機児童は平成二十九年の約二・六万人から昨年は約三千人まで減少するなど、一定の成果があったと考えています。

 一方で、少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての願望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現には至っていないと認識をしております。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。御指摘の経済的支援の強化を始め、個々の政策の内容や規模面はもちろんのこと、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加する、次元の異なる少子化対策を実現したいと考えております。

 今後、まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化いたします。そして、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 子育ての経済的負担の軽減に係る具体的な政策や、いわゆる育休退園についてお尋ねがありました。

 現在、最重要政策と位置づけている子ども・子育て政策について、こども政策担当大臣に指示をした基本的方向性において、児童手当を含めた経済的支援の強化や育児休業制度の強化を含めた働き方改革の推進等を掲げています。あわせて、高等教育の負担軽減に向けた出世払い型奨学金制度の導入にも取り組みます。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、今日も泉議員の方から様々な御提言、御意見をいただきましたが、まずは、今の社会に必要とされる子ども・子育て政策の内容を政府としては具体化してまいりたいと考えております。

 また、いわゆる育休退園についてですが、保護者が育児休業を取得した場合、既に保育所等を利用している子供については、市町村が必要と認める場合には継続利用を可能としており、各市町村において、制度の趣旨と地域の実情を踏まえつつ、適切に対応していただきたいと考えております。

 新型コロナの位置づけや救急についてお尋ねがありました。

 新型コロナについては、原則、この春に、新型インフルエンザ等から外し、五類感染症とする方向で議論を進め、これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策措置の対応について、段階的な移行の検討、調整を進めてまいります。

 なお、ワクチンについては、類型の見直しにかかわらず、予防接種法に基づいて実施することになりますが、今後の接種の在り方についても検討を進めており、結論を得てまいります。

 救急については、救急出動件数の大幅な増加に対応するため、国民に対して救急車の適時適切な利用を広報するとともに、医療機関における救急搬送の受入れ体制を整えるよう取り組んでまいりました。今般の事故を踏まえ、救急隊員の適正な勤務環境の確保を全国の消防機関に再度要請してまいります。

 年金生活者支援給付金についてお尋ねがありました。

 年金については、マクロ経済スライド等により、長期的な給付と負担のバランスを確保することで、将来にわたって持続可能な仕組みとしており、この仕組みの下で着実に支給をしてまいります。

 物価高への対応については、御指摘のように年金生活者支援給付金によるのではなく、年金受給者を含め、住民税非課税世帯への五万円給付など、きめ細かく対策を講じてまいります。

 教職員の働き方改革と増員についてお尋ねがありました。

 子供たちの指導に当たる教師は学校教育の充実発展に欠かせない存在であり、教師の厳しい勤務実態がある中、学校における働き方改革や教職員定数の改善を進めることは重要であると認識をいたします。

 このため、小学校における三十五人学級の計画的な整備や高学年における教科担任制の推進等の教職員定数の改善、教員業務支援員などの外部人材の配置の充実、ICTを活用した業務効率化等に取り組んでいます。

 今後とも、本年度実施の勤務実態調査の結果等を踏まえ、教師でなければできない仕事に全力投球できる環境の整備を図ってまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 茂木敏充君。

    〔茂木敏充君登壇〕

茂木敏充君 自由民主党の茂木敏充です。

 会派を代表して、岸田総理の施政方針演説について質問します。(拍手)

 コロナとの戦いも四年目を迎えました。新型コロナの世界的感染拡大は、各国の経済社会に大きな影響を与えています。特に保健医療体制が脆弱な途上国の状況は深刻で、グローバルサウスとも呼ばれる国際社会の分断にもつながりかねない状況となっています。

 また、昨年二月のロシアによるウクライナ侵攻以降、ウクライナでは緊迫した状況が続いています。そして、これは我々が長年にわたって構築してきた国際秩序を揺るがしかねない事態を招き、また、物価高、インフレの進行始め、世界経済に大きな影響を与えています。

 一方、昨年末、岸田政権が打ち出したGXへの投資拡大や、デジタル、イノベーション、スタートアップ、そして人への投資は、新たな経済社会の構築に向けた第一歩とも言えると考えています。

 今、世界は、そして日本は、希望と共感の世界か混迷と不信の時代かの分岐点に立っている。そんな基本認識、危機意識を持って質問させていただきます。

 まず、国際社会の問題です。

 今年は外交の年です。この一月から日本は国連安保理の非常任理事国となり、五月にはG7サミットが広島で開催されます。ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海や南シナ海での力による一方的現状変更の試みなど、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を真っ向から否定する動きが一段と激しさを増し、我々は、戦後最も厳しい複雑な安全保障環境に直面しています。

 総理は、年明け早々にG7の五か国を訪問し、首脳同士の率直な意見交換を行い、G7議長国としての行動をスタートされました。特に、日本の外交・安全保障政策の基軸である米国でのバイデン大統領との首脳会談は、昨年末の安保関連三文書の策定直後であり、両国の外交・安全保障戦略のすり合わせを行う上で非常に時宜を得たものであったと考えています。

 そこで、まず、岸田総理に、G7首脳との会談の意義と成果、特に米国訪問の手応えについてお尋ねします。

 また、五月のサミットでは、ウクライナ情勢、ウクライナ支援が大きなテーマの一つになると思います。

 そこで、総理自らウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領との首脳会談や現地状況の視察等を行っておくことが望ましいのではないかと考えますが、総理の御意向をお聞かせください。

 G7の結束、国際社会の結束、そして国際秩序の維持強化がかつてなく求められる状況で開催される今年のG7サミットは、平時のサミットではありません。それだけに、議長国として日本が主導的役割を果たすことが期待されます。

 また、今年のサミット、唯一アジアで開催されるG7サミットでもあり、パワーバランスの変化が激しいこの地域において、自由で開かれたインド太平洋を推進していく上でも極めて重要な機会だと考えています。

 さらに、国際社会は、対立の一方で、気候変動、保健、さらにグローバルサウスといった地球規模の課題、人類共通の課題に協力して対応していかなければなりません。

 そこで、五月の広島サミットでは、何を主要テーマとして取り上げ、どのような成果を目指すのか、総理のお考え、決意を伺います。

 もう一点、核軍縮について伺います。

 北朝鮮の核・ミサイル開発が進み、ウクライナではロシアによる核の威嚇が行われる中で、広島での開催となる今年のG7サミット。これは、核軍縮・不拡散の観点からも大きな意義があると考えます。

 唯一の戦争被爆国である日本として、核兵器のない世界を目指すと明言されている広島出身の総理に、今後の取組や核兵器のない世界に向けた決意について改めて伺います。

 我が国が国難ともいうべき厳しい状況に直面する中、昨年末、岸田政権は、歴史の転換点ともいうべき三つの大きな政策決定を行いました。

 まず第一に、我が国の防衛力の抜本的強化です。

 安保関連三文書をまとめ、防衛予算を今後五年間で四十三兆円に増額するなど、加速度的に厳しさを増す我が国周辺の安全保障環境に対して、まず、我が国自身の防衛力を抜本的に強化する明確な方針を打ち出しました。

 二つ目は、今後の成長分野であり、地球環境との共存という新たな経済社会の構築に向けたGXへの投資拡大です。

 政府は、昨年末、GXに関する基本方針を決定し、今後十年間でGXの分野に百五十兆円を超える投資を目指すことにしました。現在の投資を倍増するという野心的な目標で、日本の経済社会構造を大きく変革していくという強い意思表明でもあります。

 三つ目が、子供関連予算の倍増方針の決定です。

 現在、日本が直面している深刻な課題の一つが少子高齢化であることは間違いありません。四月にはこども家庭庁がスタートします。一方、結婚、出産の適齢期を迎える若者人口は二〇三〇年頃から大きく減少する見通しで、この十年が少子化を反転させる最後の勝負になります。そんな危機意識に立った決断だったと考えています。

 そこで、これら三つの政策決定について、それぞれ、その背景、政策目標、そして具体策をお聞きします。

 まず、安全保障問題について。

 ロシアによるウクライナの侵略は、我々が長年にわたって構築してきた国際秩序を根本から揺るがしています。また、ウクライナに限らず、力による一方的現状変更の試みが増大しており、東シナ海、南シナ海の海洋秩序は大きな挑戦を受けています。

 我々が築いてきた秩序とは何か。それは、国境の不可侵、主権平等、紛争の平和的解決といった、政治体制の違いのいかんにかかわらず、どの国も守らなければならない国際社会の基本的な原則です。

 こうした原則が、権威主義的国家からの挑戦、独自の歴史観や世界観を持つ指導者の野心によって簡単に毀損された。これが今回のウクライナ問題の本質であり、ウクライナ情勢は決して対岸の火事ではありません。

 冷戦構造の崩壊から三十年、国際社会は新たなパラダイムシフトに直面しています。時代の流れを冷徹に分析し、それを先取りし、必要な総合的国力を備えること、これが国家安全保障の要諦です。

 そうした意味で、今回、国家安全保障の最上位の政策文書と位置づけられた新たな国家安全保障戦略の採択は、歴史的意義を持つものです。総理は、今回の国家安全保障戦略をどのように位置づけ、今後どのような安全保障政策を進めていくのか、お考えを伺います。

 防衛力の抜本的強化をめぐっては、四十三兆円という数字に注目が集まり、これが唐突に出てきたのではとの指摘もなされています。しかし、事実関係から申し上げますと、政府は一昨年末から十八回のNSC、国家安全保障会議を開催し、その中で、岸田総理は、防衛力強化の内容、予算、財源の三つを一体的に議論し、明確な方向性を示すと明言されてきました。そして、その方針に基づき、与党内でも議論を重ね、昨年末の決定が行われたと理解をいたしております。

 我が国が直面する現実に目を向ける必要があります。中国は、五年後、二〇二七年に向けて、建軍百周年の奮闘目標を掲げ、人民解放軍の現代化を図っています。北朝鮮も、ここ数年でミサイル・核開発能力を格段と向上させています。

 今後五年間の取組が死活的に重要で、グローバルスタンダードの防衛力を整備することが日本の将来を左右すると言っても過言ではありません。

 そこで、防衛力の抜本的強化に向けた総理の決意、そして防衛費の増額、その財源の在り方について、お考えを伺います。

 二つ目に、GXへの投資拡大について。

 今、欧米各国は、新たな成長分野としてグリーン分野に狙いを定め、投資支援策を進めており、GXへの投資競争は激しさを増しています。

 なぜ世界的にこのような動きが進んでいるのか。それは、GXへの投資が、新たな文明、経済社会の創造に向けた取組であるからではないでしょうか。

 人類は、これまで、農耕社会から始まり、厳しい自然に打ちかち、豊かさを手に入れるため、工業化社会、高度情報化社会へと進歩を重ねてきました。しかし、これからは、人類と自然が共存し、人類の進歩が地球環境を犠牲にしない新たな成長を実現する、そんな新しい経済社会を目指す必要があります。そのために進めるのが、GX、グリーントランスフォーメーションだと考えています。

 GXに向けた取組が企業の競争力、国家の競争力に直結する時代、この分野での日本の潜在力を最大限引き出し、国際競争を勝ち抜くためには、大規模投資を実現する仕組みが不可欠です。

 昨年十二月二十二日に決定したGX投資の基本方針では、グリーン分野での巻き返しに向け、まず政府がGX経済移行債を発行して財源を確保し、二十兆円の大胆な先行投資を行うこととしております。政府が十年スパンの投資目標を掲げ、産業界の予見性を高め、単年度予算の弊害を克服しようとしていることは評価します。その上で、この分野の来年度の予算は、令和四年度補正と合わせても一・六兆円で、まだ産業界の投資を引き出す呼び水効果としてはインパクトに欠けるとの声も聞かれます。

 今後、GX経済移行債による資金調達と投資支援、また、これを裏打ちする成長志向型カーボンプライシングなど、新たな仕組みの導入、どのような基本方針とスケジュール感で進めるのか、西村経済産業大臣にお伺いします。

 次に、GXの推進と表裏の関係にあるエネルギー政策についてお伺いします。

 エネルギー政策については、まず、省エネを進め、太陽光など再エネの導入を拡大することが重要であり、全国規模での系統整備の加速や洋上風力の導入拡大などに最優先で取り組む必要があります。また、将来のエネルギー源として期待される水素分野で世界をリードするためには、水素、アンモニア製造のサプライチェーン構築などを大胆に進めなければなりません。

 その上で、それぞれのエネルギー源の特性に注目すると、残念ながら、今問題となっているエネルギーの安定供給や価格の問題、さらに安全性、地球環境に優しい、これら四つの条件を全て満たす完璧なエネルギー源は存在しません。

 さらに、ロシアによるガスパイプラインの供給停止のように、資源、エネルギー供給が国家戦略化し、地政学上のリスクが国際市場の不安定化、エネルギー価格の高騰をもたらしています。

 そのような中で、脱炭素電源の一つであり、かつ準国産エネルギーでもある原子力について、今回、安全性は大前提という基本方針は堅持しつつ、運転期間の取扱いの見直し、次世代型原子炉への建て替えなど、一定の方向性が出されたことは率直に評価したいと思います。

 他方で、東日本大震災と福島第一原発事故の経験から、原子力の活用に慎重な声が根強いことも事実です。また、再処理、最終処分といった、いわゆるバックエンドの問題も残されたままです。

 原子力が、今、世界が直面する課題、エネルギーの安定供給と地球温暖化対策の両立の観点から重要な電源であることは確かです。その上で、今回の方針決定は、ここ十年の我が国の原子力政策の転換との受け止めもあります。

 そこで、総理に、今回、原子力について安全性を確保した上で更に活用する方針を打ち出した背景や今後の取組方針について、国民に対して丁寧な御説明をお願いします。

 最後に、子育て支援についてです。

 人口減少はデフレの大きな要因であり、日本がコロナの次に乗り越えなければならない大きな壁、それが少子化という壁であることは間違いありません。

 子供、若者の力はまさに国力です。昨年の新生児は初めて八十万人を下回る見込みです。戦後のベビーブームでは毎年二百六十万人、一九七〇年前後の第二次ベビーブームでは二百万人の子供が生まれており、新生児の数はおよそ三分の一になっています。そして、結婚、出産の適齢期を迎える若者人口は二〇三〇年頃から大きく減少する見通しです。つまり、この十年が少子化を反転させる最後の勝負となります。

 総理は、年頭の記者会見で、異次元の少子化対策に挑戦すると表明されました。四月には、子供政策の司令塔となるこども家庭庁が発足します。

 私も、若者や子育て世代が将来に希望を持って安心して子育てできる社会の実現に向けて、今こそ、大胆で前向きな政策を打ち出すべきだと考えています。

 そこで、まず、少子化問題に最優先で取り組む総理の決意を改めてお伺いします。

 政府は、これまでも、保育の受皿整備、出産費用の支援など様々な取組を進めてきましたが、課題も残されています。今後、どのような政策を進めるべきか。一つの参考事例として、先進国の中で二〇〇〇年以降も高い出生率を維持しているフランスの政策を見てみたいと思います。

 第二次世界大戦後のフランスでは、少子化による国力の低下がドイツの侵略を許してしまったとの反省から、ドゴール大統領が、家族の人数が増えれば増えるほど減税につながるN分N乗方式という画期的な税制を導入しました。

 また、国や企業が財源を拠出する家族手当金庫を創設しました。今では、この金庫、七兆円の財源規模に達し、様々な子供政策、子育て世代を支援しています。

 こうした基盤に加え、九〇年代以降、いわゆるシラク三原則、すなわち、子供を持つことが経済的にマイナスにならない、いつでも子供を預けられる場所がある、子供を持ってもキャリアでマイナスにならないという三原則の下で、様々な支援策を充実させました。

 日本の少子化対策、このシラク三原則の観点から改めて整理をしてみると、進めるべき政策が大きく三つあると思います。

 第一に、子育てに対する経済的支援の抜本的拡充です。その要となる児童手当については、全ての子供の育ちを支えるという観点から、所得制限を撤廃するべきだと考えています。また、多子世帯への加算などについても、前向きに検討を進めるべきだと思います。

 第二に、質の高い子育てサービスの充実です。これまでの取組の結果、例えば、待機児童は二〇一七年の二万六千人から直近では三千人まで減少するなど、大きな成果がありました。一方で、サービスの質という点では、現場での人手不足もあり、様々な課題が残されています。

 まず、公定価格となる保育人材の更なる処遇改善が必要です。また、三歳未満の子供の約六割が未就園児であり、子育てに悩んでいる家庭も少なくありません。保育所など地域の子育て資源をフル活用して、全ての子育て家庭が気軽に相談できる場所や一時預かりなど、子育てサービスを拡充していくべきだと考えます。

 第三は、働き方改革と女性活躍です。これまでも、育児休業給付金の段階的引上げなどの取組が進められてきました。しかし、仕事と子育ての両立、さらに、女性の職場復帰を含め、子供を持ってもキャリアでマイナスにならないという観点からは、更なる政策推進が必要だと思います。

 私は、子ども・子育て支援策は、全体の事業規模の議論の前に、今お話ししたような主要政策の整理が必要だと思います。そして、日本の未来を担う子供たちにとって、また子育て世代にとって、どんな政策が本当に求められているのか、また、それをどのようなスケジュールで具体化していくのか、そして、社会全体でどう安定的に支えていくのか、こういった順序立てたアプローチが必要だと思います。

 政府では、小倉少子化担当大臣の下に省庁横断の会議を新設し、具体策の検討をスタートしました。自民党においても、私が本部長を務める「こども・若者」輝く未来創造本部を中心に、活発な議論を進めていくことにしました。

 そこで、小倉大臣に、六月の骨太方針に向けて、重点課題は何か、また、どのように議論を進めていくのか、お伺いをいたします。

 次に、統一教会について。

 この問題をめぐっては、現在、二つの問題、一つは旧統一教会の活動実態の解明、そして、もう一つ、被害救済、再発防止への取組が喫緊の課題となっています。

 まず、実態解明について、政府は、宗教法人法上初めてのケースとなる質問権を行使し、回答の精査を進めています。今後、悪質性、組織性、継続性の観点から法令違反が確認されれば、旧統一教会に対して、速やかに宗教法人としての解散命令の請求を行うべきだと考えます。政府に厳正かつ迅速な対応を求めます。

 被害救済、再発防止については、昨年の臨時国会で、悪質な献金を規制する法案を成立させました。今回の新法は、不当な寄附の勧誘を禁止し、違反した場合には刑事罰を科すなど、現行の法体系上、最大限の規定を盛り込みました。

 さらに、私も各党の幹事長、書記局長と協議を重ね、法案に、法人側の配慮義務を盛り込み、また、実質上の上限規制を設けるなど、野党の意見も可能な限り反映しました。

 この法案については、与野党の枠を超えて協力し、早期の成立を目指したいと各党に呼びかけ、ぎりぎりの交渉の結果、臨時国会の最終日に、多くの政党の賛同を得て成立させることができました。

 新法の成立を受け、早急かつ幅広い被害救済、再発防止にどう取り組むのか。また、宗教二世の家庭における子供への信仰強制始め、児童虐待などの問題も指摘されています。こうした課題への対応も含め、今後の取組方針について、総理のお考えを伺います。

 ウクライナ情勢が緊迫化した昨年二月以降、世界的に物価が高騰し、日本でも、直近、四%の上昇となっています。

 ただし、日本の場合、欧米のような経済全体で需要が供給を上回る全面的インフレではなく、物価高の原因の八割はエネルギーと食料品価格の上昇です。そこで、ガソリン価格の激変緩和措置、輸入小麦の政府売渡価格の据置きなど、エネルギー、食料品をターゲットとした対策を取ってきました。

 特に、ガソリン価格の抑制、英国やドイツなど欧州各国が一リットル二百五十円以上まで行っているのを見ても、一定の成果を上げていると思います。昨年十月には、事業規模七十一・六兆円の総合経済対策を取りまとめました。この中で、この冬以降の電気・ガス料金の負担軽減策、ガソリン代も含めて一般家庭で月平均五千円、総額では四万五千円という手厚い対策となっています。

 同時に、今後の対応策としては、物価上昇に負けない、インフレ率を上回る継続的な賃上げが極めて重要です。これが経済の好循環を実現し、日本経済を新たな成長軌道に乗せる鍵を握ると言っても過言ではありません。

 日本は、この二十年、デフレからの脱却を目指してきましたが、エネルギー価格や円安を発端とする今回のようなコストプッシュ型の物価上昇を望んできたわけではありません。本来は、需要が増え、マーケットや企業収益が改善し、それに対応して賃金も上がるという能動的なインフレを目指してきたと理解しています。

 そこで、本来目指してきた賃金上昇を伴う能動的なインフレを実現するために、人への投資が何より重要となります。令和五年度予算にはこの人への投資についてどのような施策を盛り込み、それによって持続的な賃上げの実現始めどのような成果を期待しているのか、総理の見解をお聞かせください。

 もう一点、現在、コロナの影響で地方経済が疲弊し、地方は厳しい状況に置かれています。こうした中、四月に行われる統一地方選では、物価高対策、地域経済の再生、地域医療、地方の公共交通ネットワーク、さらに災害対策など、暮らしに密着した政策が争点になると考えています。

 過去最大百十四・四兆円となる令和五年度予算では、物価対策や中小企業対策などに加え、地方自治体のデジタル実装の加速化、デジタルの活用による観光、農林水産業の振興など、様々な施策が盛り込まれています。

 そこで、総理に、デジタル田園都市国家構想を含め、改めて地方創生に向けた政策実現への決意をお伺いいたします。

 また、この地方創生、そして食料安全保障とも密接に関連した地方の基幹産業が農林水産業です。若者にとって勤労意欲の湧く魅力ある農業、夏祭りの笛や太鼓の音が響き渡る活力あふれる農村づくり。野村農林水産大臣に、我が国農政の今後の在り方について見解をお聞きします。

 次に、新型コロナへの対応について。

 この三年間のコロナとの戦い、厳しい状況が続く中、国民の皆さんの御協力、そして現場の医療関係者の献身的な取組などにより、感染の波を一つ一つ乗り越え、ウィズコロナの社会への移行が進んできました。

 新型コロナ感染症への科学的知見も蓄積し、ワクチンの接種や医療提供体制の強化も図られてきました。海外では、今、屋外でも屋内でもマスクを着用している姿はほとんど見かけません。日本も、そろそろ本当の日常を取り戻す新たなステージに移行すべきタイミングではないでしょうか。

 政府でも五類感染症への見直しの本格的検討に入ったと承知していますが、移行のタイミング、また、その際の公費支援やマスク着用はどうしていくのか。総理から国民の皆さんに対して、明確かつ分かりやすい説明をお願いします。

 昨年、衆院の憲法審査会は、年二十四回と過去最高のペースで開催されました。そして、緊急事態条項に関する論点整理を示すなど、議論を大きく進めることができました。今年は、これ以外の改正項目についても具体的な議論が進展することを期待したいと思います。

 今年で日本国憲法は公布から七十七年を迎えます。安全保障環境始め、時代環境が大きく変化しているのは間違いない事実です。さらに、社会構造や国民意識も大きく変化をしています。

 こうした時代の転換点にあって、新しい時代にふさわしい憲法の在り方について、できるだけ早期に国民の皆様に選択肢を提示し、憲法改正を実現すべきと考えますが、総理の御見解を伺います。

 厳しさを増す安全保障環境に対応した防衛力の抜本的強化、日本の経済社会を変革するGX投資、さらに、少子化という最大の壁を乗り越える大胆な子ども・子育て支援策。

 いずれも、国難とも言える我が国の現状を打破し、明るい未来を切り開くために必要不可欠な政策方針だと考えます。しかし、これらの政策を実現するには、様々な困難が伴い、そして何より国民の皆様の理解と支持が不可欠であります。

 まさに、総理が就任以来強調してきた信頼と共感の政治が今求められています。岸田総理には、日本には、どんな困難も乗り越えていく人材力、さらに意志と底力がある、このことを力強く国民に語り、その実現の先頭に立っていただくことを期待して、私の代表質問といたします。

 意志あるところに道は開ける、エブラハム・リンカーンの言葉です。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 茂木敏充議員の御質問にお答えいたします。

 G7首脳との会談の意義と成果、米国訪問の手応え並びに私のウクライナ訪問の可能性についてお尋ねがありました。

 今回訪問した欧州及び北米五か国の各首脳とは、二国間の懸案、協力やウクライナ情勢を始めとする地域情勢等について率直な意見交換を行いました。

 また、私から、G7議長国としての考えを説明した上で、G7が結束して法の支配に基づく国際秩序を守り抜くべく連携していくことについて、改めて確認をいたしました。

 バイデン米国大統領との会談においては、我が国の新たな国家安全保障戦略等に関し、反撃能力の保有や防衛費の増額等を含め、私から説明をし、全面的な支持を得ました。今後とも、日米同盟を強化し、もって我が国国民の安全と繁栄の確保に一層努力してまいります。

 ウクライナ情勢については、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進しつつ、G7や同志国との間でも緊密に連携して対応を継続していきます。ゼレンスキー大統領との間では、これまでも緊密に意思疎通を行ってきております。招待を受けている私のウクライナ訪問については、現時点で何ら決まってはおりませんが、諸般の状況も踏まえ検討していく考えです。

 広島サミットのテーマと成果、並びに核兵器のない世界に向けた取組についてお尋ねがありました。

 現下の国際社会は、歴史的な転換期にあります。本年五月開催のG7広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてや使用を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志を力強く世界に示していきたいと考えています。

 広島サミットで扱う具体的なテーマとしては、ウクライナ、核軍縮・不拡散、経済安全保障といった課題が想定されますが、同時に、エネルギー、食料安全保障を含む世界経済や、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題なども取り上げられることになると思います。また、こうした諸課題へのG7の取組を通じて、グローバルサウスへの関与も強化してまいります。

 また、広島サミットはアジアで開催するサミットであり、自由で開かれたインド太平洋に関するG7の連携についてもしっかりと確認したいと考えています。

 核兵器のない世界に向けた道のりは一層厳しいものとなっていますが、被爆地出身の総理大臣として、引き続き全力を尽くす決意です。広島サミットに向けても、ヒロシマ・アクション・プランを始め、これまでの取組の上に立って、国際賢人会議の英知も得ながら、現実的、実践的な取組を進めてまいります。

 国家安全保障戦略の位置づけ等についてお尋ねがありました。

 まず優先されるべきは、積極的な外交の展開です。同時に、外交には、裏づけとなる防衛力が必要です。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるかという観点から、防衛力の抜本的強化を具体化しました。今回の決定は、戦後の安全保障政策を大きく転換するものです。御指摘のように、総合的な国力を最大限活用し、三文書で示した施策に早急に取り組んでまいります。

 また、抜本的に強化される防衛力は将来にわたって維持強化していかねばならず、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要となります。財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一については、将来の世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が将来世代への責任として対応すべきものと考えています。その際、現下の家計や一般の中小企業に十分な配慮をすることとしております。

 原子力政策についてお尋ねがありました。

 昨年二月のロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギーの安定供給の確保が世界的に大きな課題となっており、我々は、歴史上初の世界エネルギー危機に直面しているとも言われています。

 エネルギー政策については、いわゆるSプラススリーEの原則の中で、近年は脱炭素に重きを置いて検討を進めてきましたが、これからはエネルギーの安定供給と脱炭素をいかに両立させるかが重要です。特に、我が国は、世界最低水準のエネルギー自給率、世界最高水準の中東依存度であり、しかも、山と深い海に囲まれ、再エネ適地が限られているという実態があります。

 こうした厳しいエネルギー供給の状況を踏まえ、再エネ導入を最優先とし、全国規模での系統整備や海底直流送電の整備などを加速した上で、原子力を含めたあらゆるエネルギー源の活用を進める必要があります。

 原子力については、安全性の確保が大前提であり、引き続き、厳しい規制基準に基づき、厳格な安全審査を行います。その上で、年末にお示ししたGXに向けた基本方針では、既存の原子力発電所の再稼働を進めるとともに、一定の停止期間に限り、運転期間の追加的な延長を認めること、廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを進めること、最終処分を含めたバックエンドに政府を挙げて全力で取り組むことなどを盛り込んだところです。

 この方針について、今後、各地で開催する説明会などを活用して、直接国民の皆様の声に耳を傾けるとともに、国会での議論を通じて政府の考えを説明するなど、あらゆる機会を捉えて丁寧に説明してまいります。

 少子化問題に最優先で取り組む決意についてお尋ねがありました。

 急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています。子ども・子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない問題と考えます。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容や規模面はもちろんのこと、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加する、次元の異なる少子化対策を実現したいと考えております。

 まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化します。そして、担当大臣によるたたき台の内容を踏まえ、私の下で更に検討を深め、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 旧統一教会問題の被害救済、再発防止への取組についてお尋ねがありました。

 新法は、与野党間の議論を踏まえた規定を盛り込み、国会に提出し、更に実効性を持たせる形で修正をいただき、早期成立が実現いたしました。

 昨年末以降、QアンドAの公表など、新法の周知、広報に精力的に取り組んでまいりました。また、一月五日には、一部の禁止行為や行政措置、罰則に関する規定を除き、新法が施行されました。引き続き、全面施行に向けて、関係府令の整備や法律の解説の充実、執行体制の強化や相談体制の充実等に全力を尽くしてまいります。

 また、児童虐待への対応としては、児童相談所への弁護士の配置等に加え、児童福祉司や児童心理司の増員や、法テラス等との連携を強化するなど、体制の強化に着実に取り組みます。さらに、市町村や児童相談所において宗教二世の方々に関する児童虐待に適切に対応できるよう、QアンドAを昨年十二月に公表いたしました。

 今後も、被害救済、再発防止に向け、こうした取組を着実に進めてまいります。

 人への投資についてお尋ねがありました。

 意欲のある個人の能力を最大限生かしながら、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつなげる構造的賃上げを実現するため、意欲ある個人に対するリスキリングによる能力向上支援、職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革に官民連携で着実に取り組むことが必要です。

 このため、まず、令和五年度予算では、企業間、産業間の労働移動円滑化に向けた支援として、転職前の賃金より高い賃金で雇い入れる企業に対する支援、主体的に学び直しに取り組む求職者に対する直接支援、そして新規事業に従事する労働者のリスキリングへの企業を通じた支援等を盛り込んでいます。こうした施策を着実に実行し、成長と分配の好循環を全力で実現していきます。

 地方創生についてもお尋ねがありました。

 日本経済再生のためには地方を元気にすることが重要です。昨年十二月に閣議決定したデジタル田園都市国家構想総合戦略に基づき、基幹産業である観光、農林水産業の振興など、デジタルの力も活用して、地方創生を加速化、深化していきます。

 令和五年度予算では、昨年創設したデジタル田園都市国家構想交付金を、追加で千億円計上しています。各地域の優良事例の横展開を加速化することで、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会の実現を目指してまいります。

 新型コロナ対策についてお尋ねがありました。

 新型コロナの感染拡大から三年。国民の皆さん、そして現場で働く医師、看護師、介護職員などエッセンシャルワーカーの皆さんの御協力をいただきながら、感染の波を乗り越え、ウィズコロナへの移行を進めてきました。

 そして、原則、この春に、新型コロナを新型インフルエンザ等から外し、五類感染症とする方向で議論を進め、これに伴う公費支援など様々な政策措置の対応については、急激な負担増とならないよう、段階的な移行の検討、調整を進めてまいります。

 また、マスクの着用についても、五類感染症への見直しと併せて、考え方を整理し、国民の皆様に分かりやすく説明していきたいと思っています。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 昨年の臨時国会では、衆議院の憲法審査会において、緊急事態条項をめぐる各党の主張に関する論点整理が行われるなど、与野党の枠を超え、活発に御議論いただいたことを歓迎したいと思います。

 御指摘のとおり、時代の転換点にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、憲法を通じて我が国の有様や世界の中での位置づけを考えることは大変重要であると考えています。

 憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、そのための発議に向け、今国会においても、与野党の枠を超えて、更に積極的な議論が行われることを心から期待をいたします。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 茂木議員からの御質問にお答えいたします。

 GXへの投資についてお尋ねがございました。

 GXに関しては、世界で国家を挙げた大規模な投資競争が激化する中で、我が国としては、二〇五〇年のカーボンニュートラル達成等の国際公約と、エネルギー安定供給、経済成長を共に実現するGXを促進するため、今後十年間で百五十兆円を超える官民投資を実現することを表明いたしました。

 そして、その実現に向けて、昨年十二月に、今後十年を見据えた、GX実現に向けた基本方針を取りまとめたところであります。

 今後、この基本方針に基づき、GX経済移行債を活用した二十兆円規模の大胆な先行投資支援や、成長志向型カーボンプライシングについては、GXに取り組む期間を設けた上で、徐々に引き上げていく方針をあらかじめ示すことなどを通じて、企業のGX投資を前倒しするインセンティブが付与される仕組みを創設いたします。

 そのため、今国会に必要な法制上の措置について関連法案として提出し、GX投資を強力に推進するための具体的な取組を更に加速して進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 子ども・子育て政策の強化に関する重点課題と議論の進め方についてお尋ねがありました。

 総理の指示を踏まえ、私の下で開催しているこども政策の強化に関する関係府省会議におきましては、総理から示された、第一に、児童手当を中心とした経済的支援の強化、第二に、幼児教育や保育の量、質両面からの強化と全ての子育て家庭を対象とした支援の拡充、第三に、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実の三つの基本的方向性に沿って、有識者、子育て当事者、若者などから、これまでもヒアリングを行ってまいりましたが、今後は更に丁寧にヒアリングを重ねた上で、具体策の議論を進めてまいります。

 この方向性は、茂木議員がシラク三原則を引用して挙げられた三つの柱とも軌を一にするものであります。こうした視点も踏まえまして、先ほど申し上げた関係府省会議において、政策の整理を行い、三月末をめどに具体的なたたき台を取りまとめるべく、全力を尽くしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣野村哲郎君登壇〕

国務大臣(野村哲郎君) 茂木敏充議員の御質問にお答えをいたします。

 活力ある農業、農村づくりに向けた今後の農政の在り方についてのお尋ねがありました。

 茂木議員御指摘のとおり、活力ある地方には農業の活性化が不可欠でございます。しかしながら、輸入穀物や生産資材の価格が高騰する一方、国内では農業従事者が急速に減少するなど、我が国の食料安全保障上のリスクは高まっていると認識いたしております。

 このため、まず、昨年末に策定した食料安全保障強化政策大綱に基づき、輸入原料や輸入生産資材への過度な依存を低減していくための構造転換対策を進めるとともに、スマート農林水産業の推進、農林水産物、食品の輸出促進や、みどりの食料システム戦略等の施策を進めてまいります。

 また、食料、農業、農村を取り巻く厳しい環境下で食料安全保障を確立していくために、食料、農業、農村政策を見直す必要があると考えております。このため、現在、食料・農業・農村基本法見直しのための検証を行っており、国民的コンセンサスを形成しながら検証を進め、六月をめどに政策の新たな展開方向を取りまとめてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) おおつき紅葉さん。

    〔おおつき紅葉君登壇〕

おおつき紅葉君 立憲民主党のおおつき紅葉と申します。(拍手)

 おととしの夏まで、私は、フジテレビの政治部の記者としてこの国会の中で取材をしていました。私生活では、小学校一年生と三年生の子供二人を育てる母親であります。急激に人口減少が進むふるさと小樽で立候補を決意したときには、既に衆院選まで僅か二か月でした。これがいかに無謀な挑戦か、政治部記者として重々承知をしておりました。でも、このままの政治では駄目だと思ったのです。

 このかいわいで、ある政治家からこんな言葉を聞きました。子育て中の女性を担当記者にするなんて、うちを軽視している。子育てしている女性記者が担当になると軽視していると認識を持つのか。何でと率直に思いました。

 この感覚、世の中で子育てしながら働く女性が一度は感じたことがある違和感ではないでしょうか。この古臭い考えの政治家が国の政策を決めるから、女性が活躍できないのではないですか。いつになったら本当に女性活躍の時代が訪れるのですか。女性総理はいつ誕生するんですか。

 総理は、この国の人口減少に歯止めをかける異次元の少子化対策を行うと言いますが、ここにいる政治家の皆さんは、肝腎要の社会システムを変える覚悟をお持ちですか。少子化対策の会議で女性は何割ですか。結局は、政策の決定において凝り固まった考え方から抜け出せない、業界団体の利益優先で、目の前で政治から距離を取る、次の世代を置き去りにした結果が今の低投票率を生み、国民置き去りの政治が日本の人口を減少へと導いているのではないでしょうか。

 一期生でまだまだ短い政治家経験ではあるものの、元記者として、そして母親として、地方出身者として、東奔西走する中で地域ととことん向き合ってお聞きしたこと、あるいは気づきを得たことも踏まえ、岸田内閣の政府四演説に対して、会派を代表して質問いたします。

 それでは、子ども・子育て支援、政府の少子化対策について伺います。

 まず冒頭、私たち立憲民主党は、二年前と昨年の二度にわたり、児童手当を高校三年まで対象拡大する議員立法を国会に提出し、政府と与党にその実現を強く求めてきました。しかし、政府も与党も動きませんでした。

 なぜ、児童手当を高校三年まで対象拡大すべきという立憲民主党の提案を今まで無視してきたのですか。岸田総理、その理由をお答えください。

 施政方針演説で、総理は、少子化対策の中身も不透明で、財源も積み上げていません。子供政策の財源に、岸田総理は社会保険料を充てるのではないかとの声も出ていますが、その可能性はありますか。岸田総理、お答えください。

 また、異次元の少子化対策を次元の異なる少子化対策に言い換えたのはなぜですか。岸田総理、お答えください。

 今や、五十歳の段階でおよそ三人に一人がお一人様である現状があります。この国で、多くの方が、家族を持つ将来像を描けていないのです。

 だとしたら、今求められているのは、その逆の発想、つまり、家族という枠にとらわれなくとも、望む人が子供を産み、苦しいときは社会が手を差し伸べる支え合う構造をつくることこそが求められているのではないでしょうか。

 そのためにも、まずは、子ども・子育て予算を倍増するためのロードマップを策定すべきです。

 総理は、当面、消費税に触れないと言っていますが、当面だけではなく、今回の子供予算倍増において、岸田政権では消費税増税は検討も実施もしないということですか。もし消費税増税をしないのであれば、岸田総理、この場で約束してください。

 もし消費税ではなくとも、財源として消費税以外の増税を今後検討する可能性はあるのですか。岸田総理、お答えください。子供ファーストか、増税ファーストか、これが統一地方選の争点です。

 民主党政権はチルドレンファーストを掲げて子ども手当をつくりましたが、その重要性に気づかず、所得制限をつけるなど制度を改悪し、少子化対策をここまで放置したのは今の与党ではありませんか。

 岸田総理は、子供ファースト、少子化対策が最重要政策と言いますが、私たちは、防衛予算倍増よりも子育て予算倍増が先だと考えています。子育て予算倍増を防衛予算倍増より先に実現すべきではないですか。岸田総理、お答えください。

 子供政策が最重要課題と言いながらも、岸田総理は言行不一致です。なぜなら、防衛力強化、防衛増税、防衛費倍増は年末に閣議で短期間で決めたのに、子供政策は中身も財源も全く白紙です。中身もないのに何を議論するんですか。国会を閉じる六月に財源の提示をすると言っていますが、のんびりし過ぎていませんか。本当にやる気があるのですか。最重要政策であるならば、この国会でメニューと財源をセットで示すべきではありませんか。岸田総理、お答えください。

 これでは、子供ファースト、最重要政策ではなく、岸田政権は子供後回し政権ではないですか。さらに、政府は、今後、防衛費のために、行財政改革などにより、五年間で十四・六兆円を捻出するのですか。このお金の一部を子供政策に回す気はないのでしょうか。岸田総理、お答えください。

 実際に、岸田政権は、子供ファーストではなく、防衛費倍増ファースト、防衛増税ファーストの、子供政策後回し政権です。口先だけ、子供ファースト、少子化対策は最重要政策と言うのは、逆に、岸田政権の子供政策軽視の表れです。子育て世代、これから子供を育てたいと思う世代が希望を持てるように、岸田総理、いつまでに今回の少子化対策を財源とセットで策定するのですか。お答えください。

 厚労省の調査では、日本の子供の貧困率は一三・五%、つまり七人に一人の子供が貧困なのです。私たちは、参院選の政策で、児童扶養手当は子供一人当たり月額一万円を加算し、二人親低所得世帯にも支給しますとしています。また、児童館など居場所づくりに加えて、子供たちと気持ちを分かち合う人員体制の整備は不可欠と考えます。この二点について、岸田総理、お答えください。

 次に、この国を守る手段と防衛増税について伺います。

 昨年末、唐突に、そして一方的に、国民にも国会にも説明することなく決めた防衛増税、岸田増税を国民も私たちも認めるわけにはいきません。この国会は子供国会にすべきなのに、これでは増税国会ではありませんか。

 岸田総理は、防衛力強化の財源として、将来世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が将来世代への責任として対応していくと述べ、増税という言葉は使われませんでした。これは増税を意味するのですか。岸田総理、お答えください。

 もし増税を意味するのであれば、なぜ正直に増税と言わなかったのですか。なぜ増税を隠したのですか。岸田総理、お答えください。

 私たち野党のみならず、与党内からも説明不足との批判が出ています。一度、防衛増税は撤回すべきではありませんか。増税ファーストではなく、子供ファーストの国会にしませんか。総理の見解をお伺いします。

 国民の理解のない増税強行はすべきではありません。まずは、統一地方選挙で防衛増税の是非を国民に問うべきではないのですか。岸田総理、お答えください。防衛増税、岸田増税の、イエスかノーか。これは統一地方選挙の大きな争点だと私たちは考えています。

 また、あえてお伺いしますが、そもそも、日本は軍事大国を目指すのですか。それが総理の国家観ですか。岸田総理、お答えください。

 仮に平和な時代が将来来たとしても、未来永劫に防衛予算のGDP比二%は維持するのですか。岸田総理、お答えください。

 自民党の皆さん、この物価高、燃料高、ゼロゼロ融資の返済が始まるこの時期に、岸田増税内閣に勝手に増税を決められていいのですか。菅前総理からも、防衛増税は唐突であり、説明不足との批判が出ています。何でもっと怒らないんですか。いつからトップが増税を決めたらそれに従うようになったのですか。それが新時代における自民党のやり方ですか。

 次に、統一教会の関連で伺います。

 昨年末に、立憲民主党と日本維新の会が提出した議員立法がきっかけになり、被害者救済法が成立したことは、第一歩であり、評価しています。しかし、実際には、今年に入ってからも旧統一教会からの合計一千万円以上の信者への献金の呼びかけが続いております。一日も早く解散請求をすべきと考えます。

 また、積み残しとなっている養子縁組、つまり養子あっせん法違反の問題は、警察による捜査をすべき段階です。また、昨年末にQアンドAが出された宗教的虐待防止についても取り組む必要があります。

 岸田総理、今、岸田総理に求められているリーダーシップとは、細田議長に公開の場で説明責任を果たさせ、自民党と旧統一教会との関係を明らかにし、清算することです。しかし、昨日の細田議長の説明では全く不十分で、非公開でした。

 ついては、岸田総理から細田議長に指示をして、記者会見など、マスコミの前で、選挙の際に旧統一教会の票を割り振ったのかなど、国民に対して真摯に旧統一教会との関係を説明させるべきではないでしょうか。岸田総理は細田議長をかばうおつもりですか。岸田総理の覚悟を伺います。

 昨年十一月二十九日、一億数千万円の献金をして返金請求の裁判中の、仮名中野容子さんの母親が、旧統一教会により困惑した、認知症も疑われる状態でサインをした寄附の一部の返金のみで和解する旨や寄附の返金を求めない旨の合意書、いわゆる念書について、岸田総理は、一般論としつつ、民法による不法行為が認められる可能性があるとの重要な答弁をされました。それを基に、十二月末に公表された被害者救済法のQアンドAのQ12において、困惑した状態でサインをした、寄附の返金を求めない旨の念書は、民法上の公序良俗に反するものとして、無効になり得るとの考えを示されました。

 ついては、このQ12は、新法の内容にだけ関係するものではなく、中野容子さんのような施行前の被害に対しても同様の考えが当てはまると考えてよいのか、岸田総理の御答弁を求めます。

 また、岸田総理の重要な答弁をQアンドAに明記した意図は、QアンドAでは、念書を書かせて損害賠償請求権を行使しないことを約束させること自体が献金の違法性を基礎づける要素となるとされています。これは、例えば、過去に繰り返し民法の不法行為が認定されているような問題のある団体が、わざわざ念書で損害賠償請求権を行使しないことを約束させているような場合には、当該団体が違法又は不当な方法で献金をさせたと推認され、裁判上で認定されやすくなるということなのでしょうか。岸田総理、お答えください。

 岸田総理は、昨年十月、ガバナンスコードと呼ばれる党の行動指針を改定し、都道府県連に対して、旧統一教会との関係遮断の徹底を通知し、統一地方選の公認、推薦でも遵守するように求めています。

 しかし、共同通信の調査で、自民党の十二県連が旧統一教会側との接点や関係遮断の意思を確認しない方針であることが明らかとなりました。では、該当する自民党の県連を読み上げます。宮城県、秋田県、千葉県、新潟県、富山県、愛知県、兵庫県、和歌山県、鳥取県、岡山県、熊本県、最後に細田議長のお膝元の島根県。

 そして、福島県と、安倍元総理のお膝元の山口県は、何と無回答です。おかしいと思いませんか。

 そこで、お伺いします。

 岸田総理は、統一地方選挙において、自民党の都道府県連に対して、旧統一教会との接点や関係遮断の意思を確認するよう指示をまだしていないのですか。これこそ総理のリーダーシップが問われているじゃないですか。この場で、全ての都道府県連に速やかに関係遮断の意思を確認させるとお約束ください。いかがですか。岸田総理、お答えください。

 さて、総理、自民党はなぜLGBT差別解消法、同性婚、選択的夫婦別姓を認めないのですか。多様性を尊重する法整備は、G7各国を見ても日本のみ遅れています。同性婚の法制化は結婚の自由を認めるだけのこと。選択的夫婦別姓もそう。同姓を選ぶ夫婦は同姓、双方の前の姓を残したければ公的に認める。最高裁も二度にわたり国会での議論を求めています。こうした多様性を尊重すれば、一人一人がありたい自分として輝き、力を発揮します。

 岸田総理、LGBT差別解消法、同性婚、選択的夫婦別姓を認めませんか。お答えください。

 次に、燃料高と物価高についてお伺いします。

 十年に一度の最強寒波が襲来しています。こんなに寒いのに、燃料高や物価高が止まりません。部屋は外と変わらないような寒さなのに、暖房をつけることもためらってしまう。まさに爪に火をともすような生活で、これまではできていた当然のことを我慢している方がいます。総理は、一般的な家庭で十万円を超える光熱費の請求書がアップされている「#燃料代高すぎ」のSNSを御覧になっていますか。岸田総理、お答えください。

 東京国立博物館でさえも、光熱費が予算の倍以上です。国の施設への支援は十分だとお考えですか。また、一般家庭でも実感できる光熱費の更なる補助など実施する考えはありませんか。岸田総理、お答えください。

 物づくりの工場では光熱費の爆上がりは深刻です。特別高圧電力に補助金が出ないことで、製品価格に反映できないとの悲鳴もあります。これでは賃上げにつながりにくく、若者の製造業離れで物づくり大国日本が衰退の危機につながりかねません。

 また、建設業でも、資材価格の高騰による建設事業費の上昇も賃上げの障害となっています。労務費、原材料費、エネルギーコスト等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や適正な工期の確保、公共事業の建築単価及び公共工事設計労務単価の引上げが必要と考えますが、岸田総理の見解を伺います。

 次に、豪雪地帯の雪害対策について伺います。

 今週、十年に一度の最強寒波が日本列島を襲っていますが、被害状況や必要な支援の状況について把握していることを、総理、お答えください。

 総理、雪国の雪かきって本当に大変なんです。でも、雪かきしないと、子供たちのための通学路も買物に行く歩道もすぐに雪で埋まってしまう状況です。JRだって、大雪で電車が止まれば社員がスコップを持って線路の雪をかいて、列車が走るという当たり前を何とか提供しているんです。

 昨年十二月に決定された豪雪地帯対策基本計画の重点事項として新設された、親雪、利雪による個性豊かな地域づくりについては、どのようなイメージを持っているのでしょうか。除排雪の担い手の確保や人材育成、早期の通行止め、除雪機の配備、更新の配慮など、着実に除排雪体制の強化を推進した方がより効果的だと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 地域の除排雪に加え、高齢者を始めとする要援護者世帯などの雪かき、雪下ろしなどの対策に取り組む自治体を支援するために、市町村道の除排雪経費への財政支援の拡充、三月に交付すべき特別交付税の繰上げ交付、農業被害対策の強化を図るべきだと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 次に、第一次産業について伺います。

 率直に、総理の施政方針演説を聞いて、食料安全保障といいながら、一次産業の現状への危機感を全く感じませんでした。

 今一番深刻な問題は何だと思いますか。農家さん、漁師さんに聞いて回りました。

 何より深刻なのは後継者がいないことだというのです。あっちの畑もこっちの畑も、昔は野菜を作っていたのに今じゃ荒地だ、一度荒地になったらもう一度耕すのは一苦労だよと。

 そこで、伺います。

 立憲民主党としてワーキングチームを設置し、議論しておりますが、政府としてこれからの農政をどのように考えておられるのか、食料安全保障の観点からも岸田総理の考えをお聞かせください。

 史上最悪の牛乳ショックが日本を襲っています。飼料の高騰で、搾っても搾っても赤字。子牛は一頭千円、いや、それ以下でも取引されています。昨年、牧場に泊まって牛のお世話をしましたが、今の支援では焼け石に水と、一刻も早い解決策を求めています。価格上昇の影響を緩和するとされている配合飼料価格安定制度は十分な対応ができず、乳製品のカレントアクセス枠全量輸入も早期に見直しが必要です。鳥インフルエンザ対策も不十分です。

 今の世代も次の世代も希望を持って営農を継続できるように、十分に機能しない配合飼料価格安定制度を補完する何らかの施策を緊急に実施する必要があると考えますが、総理の所見を伺います。

 また、浜の人たちは、現在、後継者不足に加え、水産資源の減少、漁業者の減少という大きな問題に直面しております。初競りに行ったときに、漁師さんから、魚がいなくなるのが先か、漁師がいなくなるのが先かと悲痛な声を聞きました。

 地球温暖化防止税の導入に伴い、燃料の税が負担増にならないような措置を早急に手だてする必要があると考えます。命を懸けて海に出て、厳しい割にもうからないとなれば、次の世代に続きません。

 浜の活力再生プランをより大きな規模で行っていくなど、担い手を育成する大胆な改革をしていただけないでしょうか。総理の水産業に対する覚悟をお聞かせください。

 また、漁業関係者は、ALPS水の海洋放出による諸外国からの風評被害を懸念しています。処理水の放出は漁業者の理解を得ているのでしょうか。得られるためにはどのような努力をしていくのでしょうか。総理から明確な説明を求めます。

 次に、地域の公共交通の在り方について伺います。

 この国における鉄道誕生から百五十年。北海道にも新幹線が延伸し、工事が進んでいます。一方、並行在来線については、赤字の懸念から、それぞれの自治体が廃線を決定しました。私の地元小樽から長万部へ向かうJR函館線も、何とか残してほしいと根強い声があるものの、沿線自治体の判断で廃線が決まりました。

 地域の公共交通の再編、地域の公共交通に対する公的資金の投入を含む地域公共交通への具体的な支援策について、国民全体の暮らしを守る観点から、今後の公共交通の在り方をどのようにお考えですか。地方における地域の公共交通に係る人材を確保するために国の支援が必要と考えますが、総理の見解を求めます。

 トラック輸送における運転手不足問題が指摘される中、大量の農作物などを運ぶには鉄路が必要です。食料安全保障の観点からも、国土の二二%を占める北海道の鉄路維持には国の支援が不可欠です。道路整備が必要なように、線路整備を国が行う特区を設けるなど、国の関与について、今国会での法改正等も含めて、総理の見解をお聞かせください。

 次に、昨年四月に発生した北海道知床沖の遊覧船沈没事故について伺います。

 まずは、事故によってお亡くなりになられた二十名の方々の御冥福をお祈りし、御家族、御親族の皆様にお悔やみ申し上げます。行方不明である六名の方々が一日も早く御家族の元にお帰りになれるように願います。

 事故から九か月がたちましたが、私たちはこの事故を決して忘れてはならないのです。新たな事故を生まないことこそ、国に課せられた大きな責任です。

 今回の事故を契機に国の運航労務監理官が増員されたとのことですが、現下の運輸局の体制で検査、監査の実効性が確保されたと言えるのか、総理の見解を伺います。

 さらに、政府は有事に備えた自衛隊と海上保安庁の連携強化を打ち出しましたが、海上保安庁の救難体制も十分と言えず、その体制をいかにするかは急務です。海難救助空白地帯の解消に向けて、船舶や人員確保など体制整備に関し、岸田総理の覚悟を聞かせてください。

 次に、マイナンバーについて質問します。

 マイナポイントによって普及率は向上していますが、ただ、その予算額は二兆一千百十三億円にも上ります。この予算規模と効果に国民が納得しているとお考えですか。岸田総理、お答えください。

 総理は、マイナンバーの利用拡大に向け、年金や児童手当を振り込む公金受取口座について、マイナンバーとひもづけた登録を加速させる特例制度としてオプトアウト登録を創設しようとしています。丁寧な手続を踏んでやるというのであれば、極めて慎重に対処すべきと考えますが、岸田総理の見解を伺います。

 マイナ保険証の受付対応をめぐり、全国の病院や診療所の三割弱が、義務化される四月までに必要なシステムを導入できない見通しで、これを機に病院を閉じようと思うという医師もおります。半年の猶予期間延長のほかに、更なる支援の可能性について、岸田総理の見解を伺います。

 次に、外国人労働者の受入れについて質問します。

 昨年、JICAが、日本が更なる経済成長を達成するため、二〇四〇年には、二〇二〇年比で約四倍、六百七十四万人の外国人労働者が必要という報告書を発表しました。しかし、外国人労働者との共生なくして経済成長はできません。総理、その認識はありますか。

 そのためには、日本人と同等の権利を外国人労働者に保障する制度への転換が必要であり、外国人技能実習制度等の外国人労働者受入れ制度を抜本的に見直しするとともに、多文化共生社会を実現するための基本法を制定すべきです。総理の見解をお聞かせください。

 あわせて、出入国管理、難民認定制度についても質問します。

 収容施設におけるウィシュマさんやカメルーン人男性の死亡事件、イタリア人男性の自殺。なぜ入管で死亡事件が起き続けるのですか。総理、名古屋入管が所持する二百九十五時間分のウィシュマさんのビデオ映像を一刻も早く開示し、真相究明を行うよう指示していただけますか。お答えください。

 総理は、今国会に入管法改正案を再提出します。まさか、二年前に多くの国民から国際法違反だと強く反対され廃案になった改悪案の骨格を変えずに、そのまま出してくるのではないでしょうね。総理が法の支配を訴えるのであれば、難民認定、保護制度も国際ルールを満たすものにつくり直すべきです。総理、今こそ、国際法に合致した認定基準の導入と、第三者機関の難民等保護委員会を創設しませんか。岸田総理、お答えください。

 さて、これまで述べてきたことを踏まえれば、岸田増税内閣には国民の切実な声はほとんど届いていないことは明らかです。

 止まらない物価高と爆上げの燃料高の生活の中で、ニュースを見ても、国会で話されているのは、議論もなく進められる防衛増税と中身のない少子化対策ばかり。ならば、次の世代が政治から離れて当然なのかなと、私でさえ考えてしまうこともあります。

 今、立憲民主党は衆参合わせて百三十六人の政党です。野党第一党とはいえ、決して大きい党とは言えません。だからこそ、一人一人が問題意識を持ち、おかしなことにはおかしいと叫び、地域に暮らしている人の生の声を国会へ届け、その思いを形にしていかなくてはなりません。

 人口減少を始めとした多くの国難の中で、この国をよくするために残された時間は決して長くはありません。私のような一期生からベテランまで、この国を何とかよくしようと一番思っているのが私たち立憲民主党です。子供たち、そして次の世代に続くために、様々な課題に向き合っていきます。その決意を申し上げて、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) おおつき紅葉議員の御質問にお答えいたします。

 まず、児童手当に関する議員立法と子供政策の財源についてお尋ねがありました。

 御指摘の提案については、これは議員立法ですので、まずは国会において御議論いただくべきものであると考えております。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容や規模面はもちろんのこと、地域社会や企業の在り方を含め、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加する、次元の異なる少子化対策を実現したいと考えています。

 そのために、まずは、こども政策担当大臣の下で、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化いたします。そして、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、そして国、地方の役割、また高等教育の支援の在り方などを工夫しながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。財源についても、ここで整理をするということであります。

 異次元の少子化対策と次元の異なる少子化対策の言葉の違いについて御質問いただきましたが、これは違いはありません。また、消費税について、これまでも述べているように、当面、触れることは考えておりません。

 子供政策のメニューと財源等についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない課題です。出産育児一時金の大幅増額や伴走支援の強化などを先行させつつ、本年四月に新設するこども家庭庁の下で、子ども・子育て政策の抜本強化に取り組みます。

 まずは、こども政策担当大臣の下で、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。その中で、政策の内容に応じて、各種の社会保険との関係、国、地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 なお、防衛力強化のための財源は、年末に決定した方針に従って確保してまいります。

 児童扶養手当と児童館など居場所づくり等に関する提案についてお尋ねがありました。

 児童扶養手当については、これまで累次の改善等を実施してきたところですが、御提案のような拡充については、一人親世帯等の家庭の生活の安定と自立の促進という制度の目的を踏まえる必要があると思います。

 また、児童館など居場所づくり等については、本年四月に発足するこども家庭庁において、子供の居場所づくりに関する指針を策定するなど、子供が安心して過ごすことができる場の整備を進めることとしております。

 いずれにせよ、まずは、こども政策担当大臣の下で、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化し、その内容を踏まえて、私の下で更に検討を深め、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 防衛力強化とその財源についてお尋ねがありました。

 まず、施政方針の言葉についてお尋ねがありましたが、昨年末に政府・与党で確認をし、閣議決定した、防衛力強化のための財源確保の基本的な考え方や税制措置の内容、これは全く変わりはありません。施政方針演説では、これを前提に、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一について、将来世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が将来の世代への責任として対応していくという考え方を述べたものであります。また、子ども・子育て政策については、先ほど申し上げたとおり、支援の強化に取り組んでまいります。

 そして、統一地方選挙ですが、統一地方選挙は、国民の最も身近なところで行われる大切な選挙であり、地域の課題が論ぜられる選挙ではありますが、一つ一つ取り組んできた我々の政策、国政における政策についても丁寧に訴え、国民の皆さんの理解を得ていきたいと考えております。

 また、五年間かけて強化する防衛力は、その後も維持強化していかなければならないと考えておりますが、平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならないとの基本方針、これは今後も変わらないと信じております。

 細田議長と旧統一教会の関係についてお尋ねがありました。

 細田議長については、御自身と旧統一教会との関係について、これまで、書面による説明を公表されたほか、昨日、与野党の代表者に対して、懇談形式の質疑に応ずる形で説明されたものと承知をしております。

 細田議長の説明責任の果たし方については、三権の長たる議長として、今後とも御自身の判断で適切に対応すべきものであると考えております。

 不当寄附勧誘防止法のQアンドAについてお尋ねがありました。

 新法により寄附に関する規律が確立することで、悪質な寄附勧誘が民法上の不法行為として認定されやすくなる効果が期待できると考えております。念書が無効であるかについては個別の事案により裁判で判断されるものではありますが、新法による寄附に関する規律の確立と相まって、不当な寄附勧誘に関する念書の無効性についても認められやすくなる効果があるものと考えております。

 なお、御指摘のQアンドAにおける念書に関する記載は、現民法の解釈であり、一般論として、新法施行前についても当てはまります。

 そして、寄附勧誘が不法行為に当たるかどうかは個別の事案によりますが、御指摘のように、損害賠償請求を行使させないことや、返金逃れを目的に個人に対して念書を作成させている場合には、それ自体が法人等の勧誘の違法性を基礎づける要素となるとともに、裁判において民法上の不法行為が認定されやすくなるものと考えております。その際、過去の裁判例において法人等が寄附の勧誘について不法行為認定を受けている場合などには、同じ法人等が関係する他の事案についても、被害者がこうした裁判例を援用しつつ、類似の手法による勧誘を受けたなどとして寄附勧誘の不当性を主張することにより、その主張が認められやすくなる、こういったことはあると考えられます。

 自民党と旧統一教会の関係についてお尋ねがありました。

 自民党においては、旧統一教会及び関係団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、ガバナンスコードを改定し、その方針について党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところです。

 全国都道府県連に対しては、統一地方選挙の公認、推薦に当たり、このような党の方針を遵守し、適切に対応するよう通知をしており、党本部として、各都道府県連との間でそれを具体化するため、緊密に意思疎通を図っているところであります。

 いずれにせよ、未来に向けて関係を絶つべく、適切に対応してまいります。

 理解増進法、同性婚、そして選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。

 性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない、これは当然のことであります。

 その上で、それぞれについて申し上げますと、理解増進法案については、議員立法として議論があると承知しており、まずは、その動きを注視したいと考えております。

 また、同性婚制度の導入については、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えております。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、しっかりと議論し、より幅広い国民の理解を得る必要があると考えております。

 いずれにせよ、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向け、引き続き、様々な国民の声を受け止め、しっかりと取り組んでまいります。

 光熱費高騰への対応についてお尋ねがありました。

 SNSやテレビ番組などでエネルギー価格の高騰に対する不安の声があることは承知をしております。

 ロシアのウクライナ侵略などにより、世界的に天然ガスを始め価格高騰が続いており、各国において光熱費の急激な上昇を招いています。

 我が国においては、天然ガスの長期調達契約などの利点を生かして、電気代、ガス代の上昇幅は欧州諸国より緩やかなものとなっていますが、ユーザーにとっては急激な負担増となっており、政府として、エネルギー負担全般に対する過去前例のない思い切った支援を行っています。

 今回のエネルギー高騰対策では、一月に前倒しして電気代等の値下げを実施するとともに、使用量に応じた支援を行うこととしており、平均的な御家庭では九月までに四万五千円の支援額となると見込まれる一方、より多く消費せざるを得ない家庭については更に多くの支援額となる仕組みとなっております。

 独立行政法人等の公的機関における光熱費の高騰への対応については、一般的に、節電努力や事業見直しによる支出抑制、自己収入増の努力など、各機関の工夫の下で対応することが基本となっています。その上で、東京国立博物館の負担増については、本施設を統括する独立行政法人国立文化財機構における支出全体の見直しなど、全体のマネジメントにより、国宝の保存に支障がないよう取り組んでいく方針であると聞いております。

 政府としては、まずは、電気、都市ガス、燃料油価格の値引き支援を需要家に確実にお届けできるよう、予算執行に着実に取り組んでまいります。その上で、今後も、経済状況を注視し、必要な政策対応にちゅうちょなく取り組んでまいります。

 建設業等における資材価格高騰についてお尋ねがありました。

 賃上げを実現するためには、あらゆる業種において、労務費、原材料費、エネルギーコスト等を適切に転嫁できる環境をつくることが重要です。中小企業が継続的に賃上げできる環境整備に向けて、下請取引の適正化、価格転嫁を促進してまいります。

 また、建設業は国民生活や社会経済を支える重要な存在であり、資材価格等が高騰する中、価格上昇を反映した請負代金の設定や適正な工期確保が図られるよう、取引の適正化に向けた環境整備を進めてまいります。

 あわせて、公共事業について、適正価格での発注を推進するとともに、公共工事設計労務単価について必要な費用を適切に反映し、物価上昇を超える賃上げにつながるよう取り組んでまいります。

 雪害対策についてお尋ねがありました。

 一月二十四日からの大雪による被害状況については、本日九時三十分の時点で、人的被害として、死者一名、災害との関連を調査中の死者二名、軽傷一名などの報告を受けております。

 亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 大雪による近年の被害の発生状況を踏まえ、防災態勢の強化についてあらかじめ関係機関等に呼びかけを行ったほか、一月二十日、二十三日に関係省庁災害警戒会議を開催し、政府一体となって対応しているところです。

 また、豪雪地帯対策基本計画に盛り込んだ親雪、利雪による個性豊かな地域づくりについては、雪国ならではの景観の創造、保全や雪冷熱エネルギー等の利活用など、豪雪地帯における自然的特性、固有の文化等を生かす取組を想定しております。

 他方、雪による被害を最小限に抑えるため、除排雪の担い手の確保や人材育成、短期間の集中的な大雪時におけるちゅうちょない通行止め、除雪機械の更新等への配慮などについて新たな計画に位置づけたところであり、今後、着実に推進してまいります。

 自治体が財政事情でちゅうちょすることなく道路の除雪を迅速に行えるよう、必要に応じ、国による除雪費の補助の追加や特別交付税の交付により財政支援に万全を期していくほか、農村地域における防雪柵の設置や農業用施設の除排雪への支援を通じて、引き続き、農業被害対策に取り組んでまいります。

 これからの農政、飼料対策、水産業の改革についてお尋ねがありました。

 食料安全保障を確保するためには、肥料、飼料の価格高騰や海洋環境の変化による不漁など、私自身が車座対話を通じ生産者の皆さんから直接伺った課題を克服し、農林水産業を、次世代に引き継がれるよう、夢を持って働ける、稼げる産業とする必要があると考えております。

 このため、足下の肥料、飼料の高騰に伴う生産コスト抑制対策や国産化を進めつつ、スマート農業や更なる輸出拡大支援などを強力に推進してまいります。その中で、昨日、配合飼料コストを抑制するための追加策を講ずるよう指示したところであります。

 さらに、食料安全保障を含めた諸課題に対応するため、来年度中に食料・農業・農村基本法改正案を国会に提出することを視野に、六月をめどに食料、農業、農村政策の新たな展開方向を取りまとめます。

 また、食料安全保障の観点からは、水産大国日本の復活が重要であり、デジタル水産業戦略拠点の創設等を通じた意欲ある漁業者の育成を図りつつ、資源管理の着実な実施や養殖業の成長産業化などの施策を総合的に進めてまいります。

 ALPS処理水の海洋放出についてお尋ねがありました。

 廃炉を着実に進め、福島の復興を実現するためには、ALPS処理水の処分は決して先送りできない課題です。

 これまで、政府としては、漁業者との対話や風評対策、メディアを通じた情報発信強化等に取り組んできました。

 また、ALPS処理水の海洋放出の影響を乗り越え、持続可能な漁業継続を実現するための基金等の対策を措置し、全漁連会長からは、漁業者との信頼関係構築に向けての姿勢と評価する談話も示されました。

 安全性の確保についても、IAEAによるレビューを受けつつ、あらゆる機会を通じて高い透明性を持って国内外に説明をし、理解醸成に取り組んでいきます。

 今後とも、全漁連からの申入れも踏まえ、漁業者や国民への説明、風評対策、ALPS処理水の安全性の確保等にしっかり取り組むとともに、漁業者を始めとする関係者の皆様に丁寧に説明をしてまいります。

 地域公共交通の在り方についてお尋ねがありました。

 地域公共交通は、人口減少等による長期的な需要減に加え、新型コロナの影響により厳しい経営状況にあります。

 こうした状況を受けて、公共交通サービスの維持、確保を図り、国民全体の暮らしを守る観点から、地域の関係者が連携、協働し、利便性、持続可能性、効率性の高い地域公共交通ネットワークへのリデザインを進めることとしております。

 このため、令和四年度第二次補正予算及び令和五年度当初予算において、地域公共交通に係る人材育成の支援を含め必要な事業を盛り込むとともに、現在、国土交通省において、地域公共交通の再構築を促進するための法案の準備を進めているところであり、国として、地域公共交通の支援に取り組んでまいります。

 知床遊覧船事故についてお尋ねがありました。

 検査、監査の実効性確保については、今般の事故を受けて、旅客船の安全に関する通報窓口の設置やリモート監査の導入、日本小型船舶検査機構の監督強化などの取組を進めています。

 加えて、来年度には全国の運航労務監理官及び船舶検査官の増員を予定するとともに、今国会において旅客船の安全確保のための法案を提出するなど、旅客船の安全、安心対策に万全を期してまいります。

 海難救助に関する海上保安庁の体制強化については、来年度は、釧路航空基地へのヘリコプターの増強や機動救難士の新たな配置、オホーツク海域に面する部署への大型巡視船の配備などを予定しており、より迅速な人命救助を可能とするため、適切に取り組んでまいります。

 マイナンバー制度についてお尋ねがありました。

 マイナポイント第二弾は、昨年六月末に本格的にスタートして以降、二千五百万人以上の方がマイナンバーカードを申請しております。キャッシュレス決済の拡大や消費の喚起にも貢献しており、マイナポイント事業はカードの早期普及等に相当の効果があると考えております。引き続き、その意義を国民の皆様に丁寧に説明してまいります。

 公金受取口座については、デジタルに不慣れな方でも簡易に登録できるよう、関係法を改正し、本人への通知による口座の登録方法を創設することとしております。特に、高齢者の登録率が低い傾向にあることも踏まえ、年金受給者を対象とすることを想定しております。本制度においては、丁寧な手続を取るとともに、国民の皆様に混乱が生じないよう周知、広報をしっかりと行ってまいります。

 マイナンバーカードによるオンライン資格確認については、本年四月の原則義務化に向けて、保険医療機関、薬局で導入を進めていただいております。一方、導入に必要なシステム整備が間に合わないなどやむを得ない事情がある場合には、導入義務の経過措置を設けるとともに、導入支援のための財政措置の期限も延長いたしました。これらの支援措置を医療現場に丁寧に案内し、オンライン資格確認をしっかりと進めてまいります。

 外国人労働者との共生についてお尋ねがありました。

 我が国が多様性に富んだ活力ある社会をつくり上げていくため、外国人との共生社会の実現は重要であると認識をしており、昨年六月に決定しました外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づき、取組を着実に進めてまいります。

 また、技能実習制度及び特定技能制度の在り方を抜本的に見直すため、昨年十一月、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の下に設置した有識者会議において、様々な立場や視点から御議論をいただいているところであります。

 入管収容施設における死亡事件や難民認定手続等についてお尋ねがありました。

 入管収容施設においては、被収容者の人権を尊重しつつ、適正な処遇が行われなければならないことは言うまでもないと認識をしております。

 令和三年三月の名古屋入管における被収容者死亡事案を受け、法務省においては、現在、医療体制強化等の改善策に着実に取り組んでいるところです。

 御指摘のビデオ映像の開示に関しては、保安上の観点、また、亡くなられた方の名誉、尊厳の観点からの問題があることを踏まえつつ、法務省において適切に判断するものと考えております。

 我が国の出入国在留管理制度は、出入国管理及び難民認定法に基づき、手続の適正性を確保した上で運用されており、我が国が締結する人権諸条約に違反するものであるとは考えておりません。

 難民認定手続については、その他の出入国在留管理行政上の様々な手続と密接に関連していることから、出入国在留管理庁において行うことが適当であり、第三者機関を設置することは考えておりません。

 政府としては、出入国在留管理制度全体を適正に機能させ、真に庇護を必要とする方々を適切に保護するとともに、送還忌避、長期収容問題という喫緊の問題を一体的に解決するため、今国会に入管法改正案を提出することとしている次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

佐々木紀君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(海江田万里君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(海江田万里君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    齋藤  健君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  永岡 桂子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  野村 哲郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    西村 明宏君

       防衛大臣    浜田 靖一君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    岡田 直樹君

       国務大臣    後藤 茂之君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    谷  公一君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    渡辺 博道君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 木原 誠二君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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