衆議院

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第3号 令和5年1月26日(木曜日)

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令和五年一月二十六日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  令和五年一月二十六日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(細田博之君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。(拍手)

 令和五年のえと、みずのとうには、春の兆しや物事の終わりと始まりの意味があると言われています。日本は戦後最大の転換期を迎えており、あらゆる面で構造改革に着手し、その流れを軌道に乗せる年にしなければなりません。

 昨年、我が党は、これまで掲げてきた政治理念に基づく政策の幾つかを国会活動を通じて実現することができました。

 旧統一教会の被害者救済法案は、元々、この国会へ先送りし、ほとぼりが冷めるのを待とうとしていた政府・与党に議員立法で対案を示し、前国会中の成立を実現しました。粘り強く国会質疑と折衝を繰り返すことで、抜け穴だらけだった当初の政府案に一定の実効性を持たせることに成功しました。

 新型コロナ等の感染症法改正では、我が党の発案により、二類相当から五類への変更に関する文言が法案に追記されました。これが与野党及び政府の決断を促し、新型コロナの感染症法上の位置づけの見直しは、現在、政府の具体的な方針として進められています。

 身を切る改革では、日本維新の会が持つ科学技術・イノベーション推進特別委員長のポストを自ら返上することで、ほぼ開かれることのない特別委員会に委員長手当や公用車などの無駄な税金がつぎ込まれていることに対して問題提起をし、結果的に特別委員会を一つ廃止することができました。小さな変化ではあるものの、これまで誰もやろうとしなかった政治家の特権排除の具体的な成功事例として、画期的な変化が起きました。日本維新の会は、これからも、身を切る改革の理念の下、確実に一歩ずつ国会改革を積み重ねていきます。

 国家安全保障戦略等の安保三文書の改定については、前国会冒頭の本会議代表質問での答弁に基づき、私と岸田総理との間で議論の機会が設けられました。深刻化する安全保障環境の中で国家と国民を守り抜くという政治の責任を果たすため、自民党案よりも一歩踏み込んだ防衛力の強化を主張しました。結果としてそれに近づく形で、安全保障上の抑止力となり得る反撃能力を保有する方針が安保三文書に明記されました。

 そのほかにも、合法的ではあっても国民の理解が得られていなかった国葬儀について、本来あるべき法律の姿を我が党が与野党で最初に議員立法としてまとめ上げ、国会に提出したことは、その後の国会における検証作業へとつながっています。物価高、円安に対する総合経済対策では、将来世代への投資拡充を中心に、多くの提案した政策が実現しました。園バスの安全装置の無償化や十増十減の期日どおりの実行は、我が党が立憲民主党と協力して提出あるいは準備していた議員立法が一連の動きを確実にし、加速させたと考えています。

 こうした国民と国家にとって望ましい変化を起こすことができたのは、我が党のみならず、志ある政治家が政党の枠を超えて努力を続けた結果です。その中では、岸田総理の決断が推進力となった場面もあったと考えています。

 今国会でも、我が党は、与野党と是々非々で協力を行う中で、こうした独自の政策理念の実現を目指して、国民と国家のために全力で働いてまいります。

 その中で、次に達成したい成果の第一は、防衛費増額の財源等として示された増税路線の撤回です。

 政府は、来年度以降五年間の防衛力整備の総経費として約四十三兆円を確保し、令和九年度以降不足する財源約四兆円のうち、三兆円程度を歳出改革や決算剰余金などで賄い、残り一兆円超を法人税、復興特別所得税、たばこ税の増税で充てるとしています。

 日本維新の会は、防衛費の増額には賛成です。しかし、その財源を得るために増税は避けられないという政府・与党の説明には違和感を禁じ得ません。なぜ、数多くある方法の中から、増税という国民に負担を押しつける手段を最初から選択するのでしょうか。

 政治家がまず身を切り、政治の側が行財政改革を通じた徹底的な歳出削減と経済成長による税収増で賄う中長期的な道筋を示し、どうしても足りない部分は新たな創意工夫で捻出し、もし万策尽きた最後の一滴がどうしても出てしまった場合に限り、最小限の国民負担をお願いするのが筋ではないでしょうか。

 そもそも、この増税は、昨年末の国会では議論されていません。国会閉会を狙い澄ましたかのように、その後、たった一か月程度で急に決まりました。最初から一兆円の増税ありきで議論しているように思えてなりません。増税以外の財源を探すための努力が足りていないのではないでしょうか。

 自民党政権は、新しい資本主義のような看板を幾度となく掲げて成長戦略と称し、そこに毎年巨額の税金を投入し続けてきました。しかし、今、世界の先進国で日本の成長率は最低レベルです。経済成長、それに付随する税収増加が起きなければ、ただの予算のばらまきではないでしょうか。増税を考える前に、経済成長による増収で賄う覚悟を総理が示すのが先ではないでしょうか。

 令和四年度補正予算で税収は上振れしています。当初予算は六十五兆円でしたが、補正後の税収は六十八兆円になり、三兆円も増えました。コロナ禍からの景気回復が主要因ですので、今後はもっと税収が増えます。去年並みが続いたとして、三兆円の財源が自然に生まれます。こうした税収増はなぜ財源の中で考慮されないのですか。

 歳出の自然減もあります。コロナ関連予算はこの三年間で九十五兆円計上されています。コロナが収束すれば、歳出は年間三十兆円以上自然に減ります。防衛費に必要な財源のうち増税分は、その三十分の一の規模しかない年間一兆円です。歳出の自然減で十分捻出できるのではないでしょうか。

 また、国債を六十年で償還するという現行のルールを改め、例えば九十年償還とすれば、毎年GDP比一%分の五兆円程度の財源が生まれます。採用するお考えはありませんか。六十年という年数には何の根拠もなく、日本でしか使われていないわけですが、なぜこの数字にこだわるのですか。

 そもそも、税率を上げたから税収が増えるわけではありません。円安や物価高騰が続く中で法人税を増税すれば、政府が目指す賃上げに水を差し、経済成長に大きな悪影響を与えますが、問題はないとお考えでしょうか。

 昨年の参議院選挙での自民党の公約は、増税に一切触れていません。国家運営の根幹に関わる税の在り方の変更であり、衆議院を解散し、総選挙で国民の信を問うべきではないでしょうか。

 国民に新たな負担をお願いする前に、国会議員は身を切る改革に率先して取り組むべきです。

 日本維新の会は、結党以来、国会議員の定数の三割カットを訴えてきました。翻って、自民党は、平成二十四年十一月の党首討論で当時総裁の安倍晋三元総理が約束した議員定数の一割削減さえ、いまだ与党として着手すらしていません。

 自民党総裁たる総理に伺います。

 自民党は、昨年の参議院選挙の公約で、国会議員の定数削減に触れていません。十年前の約束はどこへ消えたのでしょうか。少なくとも、自民党がかつて国民に誓った一割削減は実現させると約束していただけませんか。

 常任委員長、特別委員長に対する手当や専用公用車、委員長室は全廃すべきだと考えます。自民党も同調していただけますか。総裁として答弁を求めます。

 日本維新の会は、国会議員に毎月、歳費とは別に百万円支給される調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費の抜本改革も訴えてきましたが、使途公開と未使用分の国庫返納に自民党が応じず、一年以上たなざらしにされてきました。今国会での旧文通費改革の実現に向け、自民党は協力すると約束できますか。総裁として答弁をお願いいたします。

 我が国の昨年の出生数は、統計開始以来初めて八十万人を割る見通しとなりました。日本は、人口危機という静かなる有事に直面しています。

 総理は、年頭記者会見で、異次元の少子化対策を掲げましたが、三本柱の、児童手当の強化、学童保育などへの支援、働き方改革は、いずれも従来施策の延長にすぎず、出生率を反転させられるとは思えません。晩婚化、非婚化の問題に光が当てられていないからです。

 総理にお尋ねします。

 人口減少に向かう悪循環から脱するには、若い世代にとって、出産と子育てが経済的にもキャリア形成の上でも負担にならずプラスになると実感できる社会環境をつくり出すことが不可欠だと考えますが、認識をお示しください。

 また、そうした社会環境を醸成するためには、児童手当のような給付ばかりに頼るのではなく、税や社会保障の負担を全体として軽減すべきであります。

 私たちは、ベーシックインカムなどをセーフティーネットとする日本大改革プランが実現するまでの過渡的措置として、個人ごとの課税方式を改め、子供の数が多い世帯ほど税負担を軽減するN分N乗方式を導入すべきだと考えますが、見解をお伺いします。

 個別施策では、全国各地で、保育、幼児教育の無償化や、十八歳までの子供の医療費無償化、学校給食費の無償化の取組が進んでいます。大阪市では、塾代を助成しているほか、幼児教育は、国の制度に上乗せして、非課税世帯のゼロから二歳児については大阪市独自の負担により更なる負担軽減を図っています。小中学校の給食費は完全無償化を実現し、来年度以降も継続される方針です。大阪府は、私立高校の授業料実質無償化を全国に先駆けてスタートさせました。

 そして、今度は、吉村洋文知事と松井一郎市長の下、維新の会のリーダーシップにより、ゼロ歳児から大学院卒業までの教育費の無償化が大阪という一地域では実現しようとしています。

 少子化の進行による国や地域の活力の減退は、地方自治体が最も強く感じています。そうした地方自治体のリーダーシップと自助努力に頼るのではなく、本来は、国が先陣を切って取り組み、地方に恩恵を与えるべきではないでしょうか。

 全国に先駆けて大阪で進むこうしたまさに異次元の少子化対策に対して、政府も同調し、後押しをするとともに、優れた取組として全国に広げていくおつもりはありませんか。

 具体策として、児童手当の給付増額だけでなく、保育、幼児教育、医療費、給食費等について、所得制限を撤廃した無償化を進めるつもりはありませんか。

 出産支援について、政府は、四月から、出産育児一時金を現行の四十二万円から五十万円に増額します。ただ、一時金を手厚くしても、医療機関が出産費用を上げるイタチごっこが想定され、効果は不透明です。

 これに対し、我が党は、出産に保険を適用し、自己負担分はクーポン等の支給で出産費用を実質無料にするべきだと訴えています。出産費用の高騰も抑えられる出産の保険適用を政府として導入するお考えはありませんか。

 総理は子供予算を倍増するを宣言しましたが、財源のめどが立たず、結論は先送りされています。政策のメニューが煮詰まっていないのに、自民党内では消費税率引上げの声まで上がっています。安心して子供を産み育てる環境を整えるには安定財源は欠かせませんが、どのように財源を確保するのですか。家計への負担がかさむ増税は少子化対策に逆行しますが、増税は選択肢にないとこの場で明言していただけませんか。

 世界的な資源高による物価高騰のあおりで、国内の消費者物価は急上昇しています。家計に対する影響を軽減するためには、物価高を上回る賃上げが欠かせません。しかし、政府が民間に期待する基本給の一律引上げは、内部留保などの余力がある大企業は対応できても、原料高に苦しんでいる中小零細企業には困難です。

 総理にお尋ねします。

 我が党がさきの総合経済対策で提言したとおり、中小零細企業の物価高を超える賃上げを実現するためには、これら事業者の社会保険料の事業者負担分の半減や、法人税率の引下げなどの施策が必要と考えますが、見解を求めます。

 賃上げを持続可能なものにするには、大企業から中小零細企業への価格転嫁が不可欠です。しかし、その具体策として政府が期待する企業間取引が適正価格で行われているのか監視するいわゆる下請Gメン制度は、長年築き上げた取引先との信頼関係を国からやってきた他人に委ねるような制度であり、日本の商習慣に合わず機能していないとの声が、事業者から私の元に届いています。

 下請Gメン制度の現状をどう捉まえていますか。中小企業に対する適正な価格転嫁をより強く推進すべきと考えますが、今後、どのような具体策を考えていますか。

 来年度予算案は一般会計で百十四兆円超と過去最大となりましたが、内実は社会保障費や国債費などの膨張が大きく、他の政策経費は約三割止まりです。税収も過去最高ながら、他の主要先進国と比べると増加が鈍いのが実情です。成長につながる支出が乏しいがゆえに税収が伸び悩み、財政が硬直化して成長の余力を失う負の連鎖が浮かび上がります。

 岸田政権の示す中長期の成長戦略は、人への投資、デジタルトランスフォーメーション、グリーントランスフォーメーションといった成長につながる取組もありますが、徹底的な改革を行い、成長を呼び込む賢い支出で税収を伸ばし、次の成長投資の財源とする好循環をつくり出そうという政治主導の決意や具体的行動が足りません。

 総理にお尋ねします。

 施政方針演説で、総理は、新しい資本主義を次の段階に進めたいと訴えましたが、これまでについてはどのように総括されていますか。

 新しい資本主義という枠組みに当てはまる様々な政策を五月雨式に出すのではなく、制度疲労を起こしている日本の経済社会のシステムを抜本的に見直す骨太の成長戦略を実行すべきではないでしょうか。

 日本維新の会は、税制、社会保障制度、労働市場を三位一体で改革し経済成長を呼び込む日本大改革プランを掲げています。このプランをどのように評価されますか。

 また、各国で経済安全保障体制の整備が進み、世界経済のサプライチェーンが分断しつつある今こそ、次の時代を牽引する技術やサービス、そして国家と国民に真に必要な物資等についてはメイド・イン・ジャパンを進めるといった戦略的な指針が必要ではないでしょうか。

 政府は、昨年末にまとめた脱炭素社会に向けた基本方針で、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故以来想定していないとしていた原発の建て替えや新増設、運転期間の延長を明記し、原発活用へと政策を転換しました。

 日本維新の会は、安全が確認され、立地自治体の理解が得られた原発の再稼働の方向性は支持します。しかし、建て替えや運転期間延長などを進める前に、政府がやるべきことがあります。

 私は、昨年十二月十九日に、青森県六ケ所原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターなどの施設を、今月十六日には、この春にも処理水の海洋放出が始まる東電福島第一原発を、それぞれ視察し、政治主導で早期に核のごみの最終処理に道筋をつけるべきだという思いを強くいたしました。

 国内の原発で保管されている使用済燃料は約一万六千トンで、電力十社の保管容量の約七五%を占めています。原発の再稼働が進めば、更に余裕がなくなります。しかし、使用済核燃料の最終処分については、最終処分法により地層処分の場所のめども立っていません。再処理工場の稼働も遅れています。

 総理に質問いたします。

 使用済核燃料の最終処分の方法や場所はいつまでに決めるお考えですか。原発の運転期間延長や建て替えを進めるに当たっては、国が責任を持って最終処分地などを決めるためのロードマップを作成し、関係自治体との調整を進めるべきではないでしょうか。

 政府の基本方針には、二酸化炭素排出に応じて企業にコスト負担を求めるカーボンプライシングを来年度から段階的に導入することも盛り込まれました。カーボンプライシングは、事業者にとって過度な負担とならず、かつ、延命策にならないことが必要であり、民間競争を促進するとともに、国際的な潮流に即した制度設計が求められます。カーボンプライシングは、脱炭素のインセンティブとして重要であり、制度を速やかに策定し、着実に実行すべきだと考えますが、総理の認識を伺います。

 新型コロナウイルスへの危機対応も大きな転換期を迎えました。政府が、この春、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを危険度の高い二類相当から季節性インフルエンザと同じ五類に引き下げることになりました。

 社会経済活動と医療体制の両立を促すべく、日本維新の会は、昨年夏の参議院選挙の公約や昨年十月のコロナ対策に関する提言第十一弾などで、五類への早期移行を繰り返し訴えてきました。先ほど述べたとおり、前国会での改正感染症法成立に当たっては、我が党の主導で、新型コロナの法的な位置づけの見直しを速やかに検討することが附則に盛り込まれました。

 かくして、私たちの主張が実現する形となりました。やや遅まきながらの方向転換ですが、社会の閉塞感を打ち破る政府の判断を支持します。

 課題は、感染対策を軽視することなく、医療体制の正常化など、平時への移行を円滑に進めていくことです。五類への引下げ後、感染者は、発熱外来などに限らず、一般病院や診療所でも受診することができるようになりますが、受入れ実績がない医療機関の忌避感は拭えないと指摘されています。自治体からのコロナ病床確保の要請がなくなれば、病床は他の病気の患者で埋まり、感染拡大時に重症コロナ患者が行き場を失うおそれもあります。

 総理に質問いたします。

 五類移行後、医療体制をどのように確保していくお考えですか。コロナ患者受診や病床確保のための医療機関への支援について、二類相当下での補助金を主軸にした体制から、診療報酬の改定によって患者を受け入れる医療機関を拡大していく体制に移行していくべきだと考えますが、御所見を伺います。

 新たな変異株の登場などで、医療体制が再び逼迫する可能性はあります。危機管理上、あらかじめ、緊急事態宣言に代わる、行動制限を発動する仕組みを構築すべきではないでしょうか。

 報道によると、政府は治療費の全額公費負担を段階的に縮小していく方針ですが、無用な混乱を招かない制度設計が必要です。どのような段階になったら、インフルエンザと平仄を合わせた通常の保険診療に移すお考えでしょうか。

 マスクの着用については、五類への移行で屋内での着用も原則不要とする方向ですが、個人の自主判断に委ねた明確かつ丁寧な指針を打ち出すべきだと考えます。見解をお示しください。

 昨年十二月、新たな国家安全保障戦略など安保三文書が閣議決定されました。深刻化する世界の安全保障環境の中で、我が国は、いずれも核を保有し、力による現状変更の意思を隠さないロシア、中国、北朝鮮の隣に位置しており、国民はトリプル危機の最前線で暮らしています。

 安保三文書の改定で、反撃能力保有への道が開かれ、防衛費のGDP比一%枠の壁が取り払われました。戦後日本をほぼ丸腰にさらしてきた空想的平和主義から脱却し、戦争を抑止する真の平和主義へとかじを切ったことは評価します。

 閣議決定に先立ち、日本維新の会は、岸田総理に提言書をお渡ししました。私たちの提案を三文書に広く反映させていただいたことを感謝いたします。しかし、まだ踏み込みが足りません。自衛のための必要最小限度の解釈の見直しや核共有の議論開始など、抑止力の肝が抜け落ちているのです。今後の具体的な防衛力整備も同様です。抑止力にならない中途半端な反撃能力であれば、保有する意味などありません。

 新人自衛官が初めて制服を身に着けたとき、こう服務宣誓をします。すなわち、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」と。命を投げ出すこともいとわず国民のために全力を尽くすという決意を示すものです。

 有事の際、自衛隊の最高指揮官として、国民を全力で守ると誓った自衛官たちに、必要最小限で戦えと本当に言えますか。他国への脅威にならない必要最小限の軍事力が本気で抑止力となるとお考えでしょうか。

 日本の防衛政策の基本、専守防衛は、国民が傷つき、犠牲になることが前提となっています。この立場を貫く以上、絶対に敵国に侵攻を許さない強力な防衛力を持つことが不可欠ではないでしょうか。核が最大の抑止力であることから目をそらすべきではありません。中国、北朝鮮、ロシアが核戦力を増強する中、日本維新の会は、我が国が核共有をめぐる議論を開始することが必要だと考えています。

 さきの日米首脳会談の共同声明で、バイデン大統領は、核を含むあらゆる能力を用いた日本の防衛への揺るぎない責務を表明しましたが、日本を守る核抑止の具体的な強化策は示されていません。核抑止問題について大統領とどのような議論をなされたのでしょうか。

 有事の際の国民保護への対応が遅れています。とりわけ、台湾に近い先島諸島の住民約十万人の避難対策は最優先の課題です。昨年八月には、中国軍が台湾周辺の軍事演習で、沖縄県与那国島の北北西約八十キロに弾道ミサイルを着弾させました。台湾から約百十キロの日本最西端の島にとって、台湾有事は対岸の火事ではありません。

 総理に伺います。

 住民の避難先となる地下シェルターは国民保護の重要な手段となります。しかし、中国、北朝鮮が共に日本を射程に収める弾道ミサイルを所有しているのに、先島諸島にはいまだに地下シェルターが一つもありません。政府はいつまでに先島諸島に地下シェルターを整備する方針ですか。

 国民保護法に基づいて政府が住民に避難を指示できるのは、自衛隊の防衛出動に必要な武力攻撃事態や武力攻撃予測事態などが認定されるときに限られています。既に軍事攻撃が始まったか差し迫ったときであり、これでは住民避難は遅れかねません。有事に至る前の段階の重要影響事態でも国民保護が行えるよう、早急に法整備すべきではないでしょうか。

 訓練で重要なのは場数を踏むことです。特に先島諸島では、台湾有事を想定し、住民の避難訓練を国主導で積極的に実施すべきだと考えますが、併せて見解を求めます。

 衆議院憲法審査会は、昨年の通常国会において、常会で過去最多、十六回の実質審議の場が持たれ、さきの臨時国会でも、ほぼ毎週の定例日に各党がテーブルに着きました。しかし、いつまでも漫然と意見の発表会をやっている猶予はありません。

 今国会では、衆参両院の憲法審査会が足並みをそろえ、改憲項目を絞った上で、国民投票をいつ実施するのか、ゴールを定め、国会発議に向けて意見集約を加速させるべきだと考えますが、所見を伺います。

 総理は、来年九月末の総裁任期中の改憲実現を明言されていますが、国民投票実施には国会発議後六十日から百八十日間必要であることを踏まえれば、遅くとも来年七月末までに国会発議をしなければなりません。それまでに国会発議を実現させると約束していただけますか。

 前国会の本院の憲法審査会では、緊急事態条項創設に関する各党見解の論点整理に入りました。今国会では、少なくとも、緊急事態条項創設の成案を得るべきではないでしょうか。自民党は具体的にどのように改憲論議をリードしていくお考えですか。総裁としての答弁を求めます。

 総理は、昨年一月、安定的な皇位継承策を検討していた政府有識者会議での議論を国会で報告しました。平成二十九年制定の天皇退位等に関する皇室典範特例法の附帯決議で、政府に対し、安定的な皇位継承を確保するための諸課題等について速やかに検討し、国会に報告するよう求めたことを受けてのことです。

 日本維新の会は、党皇室制度調査会で議論を重ね、昨年四月、政府報告書を高く評価する意見書を衆参両院議長に提出しました。意見書では、報告書が皇族数を確保する方策として示した、旧皇族の男系男子を養子に迎える案を特に高く評価した上で、古来例外なく男系継承が維持されてきた重みなどを踏まえ、立法府が静かな環境の中で丁寧に議論し、総意をまとめるよう求めました。

 しかし、この一年、他党、他会派におかれては議論された形跡がありません。天皇は、国安かれ、民安かれと祈る御存在です。静ひつな環境の中で皇統を厚くする方策を講じることは当然ですが、国会が真摯に向き合うべき課題です。

 総理に伺います。

 政府の報告書は皇族数の確保を図ることが喫緊の課題としていますが、立法府の対応をどう受け止めますか。今国会で与野党の協議体を設け、自民党が議論を主導していく考えはありませんか。総裁としてお答えください。

 日本維新の会は、若くしがらみのない政党であり、国民のために真っすぐ働くことのできる唯一の政治の力であると自負しています。今国会においても、今起こせる変化を一つ一つ積み重ねていきます。そして、必ずや政権交代を成し遂げ、国家国民のための政治を実現させることをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えいたします。

 防衛力強化の財源等についてお尋ねがありました。

 まず、防衛力の抜本的強化に当たっては、その具体的内容、予算、財源を一体的に国民にお示しするとの方針を昨年の通常国会から、そして会見でも一貫して申し上げてきました。その方針に沿って、国家安全保障会議四大臣会合、有識者会議、与党ワーキングチーム、与党税制調査会などで活発な議論を積み重ねてきました。御党からも提言を頂戴し、馬場議員とは十一月の予算委員会の質疑でも議論をさせていただきました。

 その集大成として、政権与党としての方針を三文書や税制改正大綱の閣議決定の形でお示しし、所要の法案を今国会に提出する予定です。昨年末に急に議論して決定をしたというわけではありません。

 その上で、抜本的に強化される防衛力は将来にわたって維持強化していかなければならず、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要となります。

 財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく行財政改革の努力を最大限行うべきとの御指摘、それはそのとおりであると思います。だからこそ、必要となる財源の約四分の三は、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保など、あらゆる工夫を行うことにより賄うこととしております。それでも足りない約四分の一について、税制措置での御協力をお願いしたいと考えています。

 経済成長に伴う税収増を目指すべきとの御指摘については、常々、経済あっての財政と申し上げているとおり、まずは経済を立て直すことが重要であり、その結果として見込み以上に税収が伸びれば、決算剰余金にも反映され、防衛力強化の財源として活用されることとなります。

 また、新型コロナ対策の関連歳出については、今般、これまでのコロナ予算により積み上がった積立金や基金等について、不用分を精査した臨時の国庫返納として、約〇・四兆円を防衛財源として充てることとしております。

 国債の六十年償還ルールについては、様々な意見があることは承知をしておりますが、政府としては、これを見直した場合、債務償還費の繰入れが減少する分、赤字公債は減りますが、借換債が増えることから、国債発行額は変わらず、この見直しを行いつつ、その分、政策的経費の増加に使うと、結果的に国債発行額は増加するということ、また、市場の信認への影響、こうしたことに留意する必要があると考えております。

 こうした内閣の方針について、国民の皆様に御理解を深めていただけるよう、国会での議論も含め、引き続き、丁寧な説明を行っていく考えです。いずれにせよ、何についてどのように国民の信を問うかについては、時の内閣総理大臣の専権事項として適切に判断をいたします。

 国会議員の定数削減や委員長手当等の扱い、また調査研究広報滞在費の扱いについてお尋ねがありました。

 議員定数の削減については、民主主義の根幹に関わる重要な問題であり、国会において国民の代表たる国会議員が真摯な議論を通じて合意を得る努力を重ねていくべきであると考えております。

 また、御指摘の委員長手当等や調査研究広報滞在費の扱いについては、議会政治や議会活動の在り方に関わる重要な課題であり、各党各派において御議論いただくべき事柄であります。是非、国民の皆様から御理解いただける合意に至るよう、議論を進めるよう期待をいたします。

 若い世代が出産、子育てがプラスになると実感できる社会環境の整備についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容や規模面はもちろん重要でありますが、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加する、次元の異なる少子化対策を実現したいと考えています。

 検討に当たって、何よりも優先されるべきは、当事者の声です。当事者の声をよく聞き、若い世代が出産、子育てがプラスになると実感できる社会環境の整備に向け、しっかりと取り組んでまいります。

 御指摘のいわゆるN分N乗方式については、共働き世帯に比べて片働き世帯が有利になることや、高額所得者に税制上大きな利益を与えることなど、様々な課題があるということは承知しております。

 いずれにしろ、子ども・子育て政策は我が国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で最重要政策であり、制度、予算、税制など幅広く必要な対応を検討してまいります。

 子供政策に関する地方自治体との連携等についてお尋ねがありました。

 子供政策の具体的な実施を中心的に担っているのは地方自治体であり、地方自治体の取組状況を把握し、取組を促進するための必要な支援等を行うとともに、現場のニーズを踏まえた地方自治体の先進的な取組を横展開し、必要に応じて制度化していくことは重要であると考えています。

 子ども・子育て政策に関し、地方自治体との連携を強化するため、本年四月に発足するこども家庭庁においては、国と地方との定期的な協議の場を設けることとしておりますが、これに先立ち、先日、こども政策担当大臣の下で準備会合を開催したところです。先駆的な子供政策に取り組んでいる自治体との情報共有や対話を丁寧に行い、子供政策の充実に取り組んでまいります。

 また、具体的な政策についても様々な御意見をいただきました。

 政府としては、まずは、こども政策担当大臣の下、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 子ども・子育て政策の財源についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化します。

 そして、その内容に応じて、財源についても、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 中小企業への賃上げ支援策等についてお尋ねがありました。

 目下の物価高に対する最大の処方箋は賃上げであり、まずは、この春の賃金交渉に向け、物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただくべく、下請Gメンの体制充実等による価格転嫁対策の強化、賃上げ税制、また補助金等における賃上げ企業の優遇など、政策を総動員して環境整備に取り組んでまいります。

 その上で、下請Gメンは、中小企業が取引先に対して直接に声を上げにくいという我が国の商慣行を踏まえ、取引上の困り事を含めた取引実態を把握し、業界単位で改善を働きかけるために創設された取組であり、取引適正化の観点から有効であると考えています。いただいた御指摘も含め、様々な事業者の声を伺いながら、下請Gメンや公正取引委員会の体制充実を通じて、価格転嫁対策の取組を強化してまいります。

 なお、御指摘の社会保険料の事業主負担については、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが、事業主の責任であるとともに、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資するという観点から、事業主に求められているものであり、この負担を軽減することは適当ではないと考えます。

 また、賃上げのための法人税率の引下げについては、令和四年度税制改正において、賃上げ税制の抜本的拡充を行い、企業の税額控除率を大幅に引き上げたところであります。

 成長戦略についてお尋ねがありました。

 私が掲げる新しい資本主義は、官民連携で気候変動等の様々な社会課題を成長のエンジンへ転換し、力強く成長を続ける持続的な経済をつくっていくものです。昨年六月に、骨太な成長戦略として、グランドデザインと実行計画を策定いたしました。

 これらに基づき、昨年末までに、スタートアップ育成五か年計画、資産所得倍増プラン、GX実現に向けた基本方針の策定など、個別の政策の具体化に取り組んでまいりました。

 御党の日本大改革プランの中の成長戦略は、こうした政府の成長戦略とも基本的な考え方において共通する部分が多いと考えています。昨年は御党からも提言をいただき、政策立案の参考とさせていただきました。

 また、経済安全保障も待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱として位置づけ、方針を示しています。この方針に基づき、我が国経済構造の自律性や優位性、不可欠性を高めるため、重要な物資に関するサプライチェーンの強靱化や先端的な重要技術の育成などに取り組みます。

 具体的には、半導体、蓄電池、クラウドサービスの基盤ともなるプログラムなどを特定重要物資として指定し、令和四年度第二次補正予算において、一兆円を超える国内投資支援や研究開発支援を措置いたしました。こうした取組により、戦略的に国内の製造基盤の確保などを進めてまいります。

 GX実現に向けた基本方針に関し、最終処分及びカーボンプライシングについてお尋ねがありました。

 原子力に対する国民の皆様の懸念の一つが使用済燃料の最終処分であることを踏まえ、政府一丸となって、かつ政府の責任で、最終処分に向けた取組を加速してまいります。

 今後、国、NUMO、事業者で体制を強化し、全国のできるだけ多くの自治体に最終処分事業に関心を持ってもらう掘り起こしに取り組みます。手挙げを待つのではなくして、自治体に対し、政府から調査の検討などを段階的に申し入れます。そして、文献調査の受入れ自治体に対して政府一丸となった支援体制を構築いたします。こうした具体的なアクションを早急に取りまとめ、文献調査実施地域の拡大を目指し、その実行を加速してまいります。

 また、成長志向型カーボンプライシングは、今後十年間に必要とされる百五十兆円超のGX投資を積極的に引き出していくために、投資に対するインセンティブとなる施策と投資の前倒しを促していく施策を同時に講ずるものです。

 投資のインセンティブとしては、GX経済移行債によって二十兆円規模の資金を確保し、リスクを取った先行投資がより有利となるように、大胆な支援を行っていきます。そして、投資の前倒しを促していく施策としては、炭素に対する賦課金や排出量取引市場における発電部門への有償オークションの導入により、十分な準備期間を置いた上で、炭素の価格づけを行っていきます。

 あわせて、水素や蓄電池など、先行市場を早期に立ち上げるべく、新たな規制や制度を講じていきます。これらの仕組みを具体化するための関連法案を今国会に提出する予定です。

 新型コロナ対策についてお尋ねがありました。

 新型コロナについては、原則、この春、新型インフルエンザ等から外し、五類感染症とする方向で議論を進めます。これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策措置の対応について、医療現場の混乱等を回避するためにも段階的な移行が重要と考えており、具体的な内容について検討、調整を進めてまいります。

 マスクの着用についても、五類感染症への見直しと併せて、考え方を整理し、国民の皆様に分かりやすく説明をしていきたいと思います。

 また、今後、仮に病原性が大きく異なる新たな変異株が発生した場合には、科学的知見や専門家の意見等を踏まえ、行動制限が必要となるかどうかも含めて速やかに検討し、改めて、新型インフルエンザ等対策特措法に基づき適切に対応してまいります。

 専守防衛の下での防衛力についてお尋ねがありました。

 専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針であることから、これを変更することは考えておりません。

 その上で、今回の防衛力強化の検討に際しては、国民の命を守り抜けるか、極めて現実的なシミュレーションを行った上で、必要な防衛力の内容を積み上げました。例えば、反撃能力は、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力として今後不可欠となる能力です。また、現状では十分でなかったミサイルや弾薬についても、必要な装備、数量を積み上げました。

 これらの取組により、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで国民を守り抜くことができると考えていることを御理解いただきたいと思います。

 日米首脳会談での核抑止に関する議論についてお尋ねがありました。

 先般のバイデン米国大統領との会談において、我が国の新たな国家安全保障戦略等に関し、私から説明をし、バイデン大統領から全面的な支持を得ました。また、バイデン大統領からは、核を含むあらゆる能力を用いた、日米安全保障条約第五条の下での、日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントが改めて表明をされました。

 これに先立ち開催された日米2プラス2において、拡大抑止について閣僚レベルで突っ込んだ議論が行われ、日米拡大抑止協議その他のハイレベル協議において、実質的な議論を深めていくことを改めて表明しました。これを受けて、私とバイデン大統領から、具体的協議を更に深化させるよう指示をしたところです。

 今後とも、日米同盟を強化し、もって我が国国民の安全と繁栄の確保に一層努力していく所存です。

 国民保護についてお尋ねがありました。

 武力攻撃を想定した避難施設に関しては、まずは弾道ミサイル攻撃による爆風等からの直接の被害を軽減するための緊急一時避難施設の指定促進に取り組んでいるところです。核攻撃等の、より過酷な攻撃を想定した施設については、必要な機能や課題の検討を進めているところであり、特定の地域への整備についてお答えできる状況にはありませんが、引き続き、様々な種類の避難施設の確保に向け、しっかりと取り組んでまいります。

 また、お尋ねのような、住民の避難等の国民保護措置が必要となる状況とは、少なくとも我が国に対する武力攻撃が予測される事態と評価される状況であると考えられ、そのような状況においては、重要影響事態と併せて武力攻撃予測事態の認定を適切に行い、国民保護法を適用し、国、地方公共団体、指定公共機関等が連携して国民保護に当たることになります。

 南西地域の住民避難に関しては、特定の事態を想定したものではありませんが、今年度末に、国、沖縄県、先島諸島の五市町村等が協力して、武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を実施することとしております。こうした検討、訓練等を積み重ね、練度の向上や課題の改善を図り、迅速な住民避難が行われるよう、実効性の向上に努めてまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 私自身、総裁選挙等を通じて、任期中に憲法改正を実現したいということを申し上げてまいりました。憲法改正は先送りできない課題であり、こうした考えにいささかの変わりもありません。

 昨年の臨時国会では、衆議院の憲法審査会において、御指摘の緊急事態条項をめぐって各党の主張に関する論点整理が行われるなど、与野党の枠を超え、活発に御議論いただいたことを歓迎したいと思います。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方あるいは内容について直接申し上げることは控えなければならないと思いますが、憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、そのための発議に向け、今国会においても、与野党の枠を超えて、更に積極的な議論が行われることを心から期待いたします。

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に関する報告書についてお尋ねがありました。

 附帯決議に示された課題については、令和三年十二月に取りまとめられた有識者会議の報告書を尊重することとし、昨年一月、私から衆参両院議長に対して報告を行いました。

 附帯決議においては、政府の報告を受けた場合、国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、立法府の総意が取りまとめられるよう検討を行うものとされていると承知をしております。

 昨年四月、御党が衆参両院議長に対して意見書を提出されたことは承知しておりますが、引き続き、衆参両院議長の下で検討が行われていくものと認識をしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、公明党を代表して、施政方針演説等政府四演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 ロシアによるウクライナ侵略に端を発したエネルギーや食料品の価格高騰や、いまだ続く新型コロナウイルスの感染拡大など、国民生活は大きな打撃を受けております。

 ウィズコロナへとかじを切る中で、物価高騰対策、経済の再生、直面する少子化や超高齢化社会を克服するための社会保障の充実、地政学リスクに対応した安全保障の強化など、我が国が乗り越えるべき課題は山積しております。

 公明党は、どこまでも生活現場の一人一人の小さな声に耳を傾け、地方から国政へとつながるネットワークを生かし、その中から練り上げた現場第一主義の政策実現に取り組んでまいりました。その中にこそ、この困難な状況を打開する鍵があると考えます。

 本年五月には、G7サミットが被爆地広島で開かれます。議長国として平和で安定した世界構築へのリーダーシップを発揮するとともに、日本経済を力強い回復軌道に乗せていかなければなりません。

 岸田総理は、持ち前の聞く力を存分に発揮し、こうした難局打破に向けて的確なかじ取りをお願いしたい。公明党は、与党としてしっかりと政権を支え、国民に安心と希望を持っていただくための政策実現に全力を挙げてまいります。

 以下、諸課題について質問いたします。

 初めに、物価高騰、経済再生への取組について伺います。

 電気代、ガス代の高騰による家計への影響を少しでも和らげるため、一月分から負担軽減策が始まっております。公明党の主張によりまして、都市ガス代への支援も決まり、電気やガスの使用量に応じて料金は値引きされ、御家庭や事業所に届く一月使用分以降の請求書や検針票、ウェブ明細等でも値引き額が確認できるような仕組みになっております。

 こうした前例のない負担軽減策の実行を高く評価します。引き続き、国民生活への影響を注視し、必要に応じて臨機応変の対応をお願いしたい。

 現在の日本経済にとって最も大きな課題は、持続的な賃金上昇です。近年は緩やかな賃上げ傾向にはありますが、物価上昇に追いついていないのが実情であり、これを打破する力強い政策の実行が重要です。既に大企業が次々と今春の賃上げを明らかにしておりますが、コロナ禍や原材料、資材高などの影響を受けて傷んでいる中小企業には重い課題です。

 原材料高などに見合った価格転嫁や取引適正化の徹底、円安を好機と捉えた輸出への挑戦、DX、デジタルトランスフォーメーションを導入しての生産性向上の強化、事業承継などによる世代交代への取組など、あらゆる政策を総動員して、日本経済の屋台骨とも言える中小企業を支援していかなければなりません。

 政府として、事業再構築補助金やIT導入補助金などの種々の補助金のほか、賃上げを促すための税制など、中小企業の経営を後押しする様々なメニューを用意していることは承知しておりますが、その施策がより高い効果を生むためには、それぞれの事業者が抱える多種多様な悩みに寄り添った丁寧な対応が必要です。

 中小企業の賃上げに対し、政府はどういった支援を講じるのか、また、その実効性を高めるための取組について、総理の答弁を求めます。

 エネルギー燃料の多くを輸入に頼る我が国は、世界情勢の変化によってエネルギー供給が不安定化することが改めて浮き彫りになり、脱炭素化と自給率向上を同時に進めていくことが最重要課題であることが明らかになりました。こうした中で二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減や二〇五〇年のカーボンニュートラルという国際公約を達成するには、産業社会構造の大きな変革は待ったなしであり、これを好機と捉え、日本の強みを生かした経済成長のエンジンにしていくべきであります。

 そのためには、再生可能エネルギーの主力電源化と、あらゆる分野でGX、グリーントランスフォーメーションを進める施策を総動員しなければなりません。

 昨年末に示されたGX実現に向けた基本方針案によれば、成長志向型カーボンプライシング構想の実現に向け、GX経済移行債の発行による二十兆円規模の先行投資を行うこと、二〇二五年度までに少なくとも百か所の脱炭素先行地域を選定して推進することなどが明記されており、公明党が主張してきた地域の特性に応じた脱炭素への取組の加速化も期待をされます。

 一方で、GXに向けて何をしたらよいか分からないという中小企業も多く、八割近くが検討すらできていない状況との指摘もあり、きめ細かい支援策を実行すべきです。

 今後十年間で官民合わせて百五十兆円以上の投資が必要と言われている中で、GX経済移行債の制度設計と中小企業を含むサプライチェーン全体のGX化をどう進めていくのか、総理の答弁を求めます。

 リスキリングへの支援等について伺います。

 岸田総理は、年頭の記者会見において、意欲ある個人に着目したリスキリングによる能力向上支援等を進め、構造的な賃上げを実現すると表明されました。

 本人の希望に応じて、広く国民がリスキリングに挑戦をし、賃上げに結びつく環境を整備していくことが重要です。例えば、学び直しの必要性を感じているものの、どういった目的、方法、内容の学びをしてよいか分からない方には、無料でキャリアコンサルティングを受けられる機会を提供するとともに、教育訓練費用の一部を支給する教育訓練給付については、デジタルなど成長分野のメニューの充実、土日、夜間、オンラインなど働きながら受講しやすい講座の拡大など、利用者のニーズを踏まえて拡充すべきです。また、転職、再就職する方を前職より高い賃金で雇い入れる企業に対して助成を行うなど、リスキリングの成果を賃上げへと着実に結びつけていくことも重要です。

 公明党は、コロナ禍が女性の就業に大きな影響を与えたことや、デジタル人材の需要が高まっている状況を踏まえ、女性デジタル人材育成プランの策定、実行を推進してまいりました。女性の経済的自立は新しい資本主義の中核とも位置づけられており、地域における女性デジタル人材や女性起業家の育成を力強く推進し、男女の賃金格差の是正へとつなげていくべきであります。

 また、リスキリング支援など人への投資の強化に当たっては、その財源として雇用保険も活用することが必要となりますが、雇用保険の財政状況は現在極めて厳しくなっております。雇用保険については、雇用調整助成金を大幅に拡充し、国費も投入しながら、企業による休業手当の支払いを支援してきたことにより、失業者の急増を防ぐなどの効果を上げてきたことを高く評価いたします。

 一方で、今後、長期間にわたって、事業主が拠出する保険料の一部を失業者の給付の積立金に回さなければならない事態となっており、経済界からは、この問題を早期に解決し、人への投資に注力できる基盤を整えるべきではないかといった声が寄せられております。経済再生に向け、リスキリング等、人への投資を強力に推進していくためにも、まずは雇用保険の財政問題を解決することが重要であります。

 リスキリングへの支援や女性デジタル人材等の育成、雇用保険の財政改善について、岸田総理の答弁を求めます。

 ウクライナ情勢等により、食料の安定供給のリスクが急速に高まったことを受け、食料安全保障の確立が急務となっております。

 政府は、公明党の提言を踏まえ、昨年十二月に食料安全保障強化政策大綱を策定しました。麦、大豆や肥料、飼料の国産化など、本大綱に盛り込まれた施策を継続的に実行し、食料自給率の向上に取り組むべきであります。

 また、国連食糧農業機関、FAOでは、食料安全保障について、全ての人がいかなるときにも十分で安全かつ栄養ある食料を入手できることと定義をしております。我が国では、コロナ禍の長期化を受け、家計の急変に苦しむ方々への食事支援が課題となっております。

 そこで、我が国としても、関係省庁が連携をして、生活困窮者等への食事支援を強化すべきであります。

 食料自給率の向上と生活困窮者への食事支援という食料安全保障の確立に向けた取組について、総理の答弁を求めます。

 次に、子育て、教育、社会保障の充実について伺います。

 まず、喫緊の課題である少子化対策です。

 昨年の出生数は八十万人を割り込むと見込まれ、少子化は想定を上回る進み方です。

 公明党は、子供の幸せを最優先する社会の実現と、少子化、人口減少を乗り越えるための具体策として、子育て応援トータルプランを昨年十一月に発表し、結婚、妊娠、出産から子供が教育を受けて社会に巣立つまで、ライフステージに応じた支援策の充実を提言しております。

 岸田総理は、年頭の記者会見で、異次元の少子化対策に挑戦するとして、児童手当など経済的支援の強化、学童保育など子育て家庭向けサービスの拡充、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実との三つの基本的な方向性を示されました。これらはいずれも公明党のトータルプランと軌を一にするものであります。

 総理は本年六月に大枠を提示するとしておりますが、今後、具体的な議論に当たっては、公明党のトータルプランも参考にしつつ、子供、若者、子育て世帯の声をしっかりと聞き、当事者のニーズを踏まえた検討を進めていただきたい。

 例えば、経済的支援では、児童手当について、対象年齢、所得制限、支給額など、制度の見直しによる拡充を具体的に検討すべきです。また、自治体による子供の医療費助成について、高校生を対象としている自治体は約五〇%、中学生を対象としている自治体は九五%以上に上ります。高校三年生までの無償化を目指して、是非推進すべきと考えます。さらに、〇―二歳児の保育料の無償化については、所得制限の緩和や第二子以降の無償化など、対象を段階的に拡大すべきであります。

 少子化対策について、岸田総理の答弁を求めます。

 未来を担う若者こそが持続可能な社会を実現していく力であるとの考えから、公明党は、返済不要の給付型奨学金の創設など、若者の声を政治に反映してまいりました。

 子育て応援トータルプランに掲げた、多子世帯や理工農系学部の中間所得層までへの給付型奨学金の対象拡大や、奨学金の減額返還制度の見直しも、令和六年度開始される予定であります。

 給付型奨学金の対象については、昨年六月の予算委員会で、総理より、年収六百万円までという考え方をしっかり受け止めたいとの前向きな答弁をいただきましたが、令和六年度のスタートと考えると、高校生の進路の判断や若者世代の人生設計のために、できるだけ早くこれらの制度の年収目安等を発表すべきであります。

 特に、貸与型奨学金の月々の返還額を柔軟に変えられる減額返還制度は、仮に年収目安の上限を四百万円にした場合、二十代の返還者の八〇%、三十代の半数以上が対象になります。返還者である若者の立場に立った制度にするためには、オンラインを活用した簡単な手続や、既卒者の利用開始時期の前倒し、月々の返還額を減額することにより返還期間が長引いたとしても一定額で返還したときと利子の総額が変わらないこと等が重要であります。

 給付型奨学金と減額返還制度について、総理の考えをお伺いします。

 今国会には、全ての世代が負担能力に応じて医療保険制度を支える仕組みを強化するための法改正が予定されております。

 この改正は、制度の持続可能性確保の観点から重要である一方で、現役世代から高齢者まで幅広い層に影響が及びます。本改正の必要性とその効果について政府は丁寧に説明をし、国民の理解を得られるよう最大限の努力を尽くしていただきたい。

 また、制度の持続可能性とともに、サービスの提供体制の強化も重要であります。医療機関のかかりつけ医機能を高めるための法改正も予定されておりますが、国民にとって何がどう変わるのか分かりづらいとの声も耳にします。私たちが受ける医療サービスの質はどのように向上するのか、国民目線に立った分かりやすい説明が求められます。

 今回の医療保険制度の改革の意義とかかりつけ医機能の強化について、総理の答弁を求めます。

 高齢者の暮らしを支えるため、介護保険制度は重要な役割を果たしておりますが、高齢者人口の急増などにより、取り組むべき課題は山積しております。

 今後も必要なサービスを提供し続けるためには、特に、総合的な人材確保対策と介護現場における生産性向上を加速させることが急務であります。

 認知症施策の推進も待ったなしです。認知症施策推進大綱の中間評価では、初期集中支援チームやチームオレンジの取組に課題が指摘されており、改善に向けた速やかな対応をお願いしたい。

 また、総合相談支援などの役割を担う地域包括支援センターの体制強化なども急ぐ必要があります。

 一方、給付と負担については、高齢者の生活への影響を把握し、サービスの利用控えや家族への負担が増えることのないよう、丁寧に検討していただきたい。

 介護保険制度について、総理の答弁を求めます。

 次に、新たな段階へ移行するコロナ対策について伺います。

 さきの臨時国会においては、感染症法を改正し、平時から都道府県と医療機関との間で病床や外来医療の確保などに関する協定を結ぶ仕組みを法定化し、感染症危機への備えを大きく前進させました。

 一方で、残されている課題として、感染症危機に対応する政府の司令塔機能の強化が挙げられます。

 公明党は、新型コロナとの戦いが始まった二〇二〇年の党大会において日本版CDCの創設を重点政策の一つとして掲げ、司令塔機能の強化に向け、党を挙げて取り組んでまいりました。

 こうした後押しもあり、今国会には内閣感染症危機管理統括庁の設置や日本版CDCの創設が盛り込まれた法案が提出される予定であり、評価をいたします。平時から実践的な訓練、研修を積み重ねるとともに、両組織との間で緊密な連携を図りながら、感染症危機に迅速的確に対応できる体制を構築していただきたい。

 感染症危機に対応するための司令塔機能の強化について、総理の答弁を求めます。

 この三年間でワクチン接種は進み、多様な治療薬が実用化されるなど、新型コロナ対策は大きく前進いたしました。また、全数把握の見直しや療養期間の短縮などを行い、ウィズコロナに向けた取組も進んでおります。

 本年は、新型コロナ対策による社会的負荷をできるだけ軽減しながら、社会経済活動を大きく回復させてまいりたい。そのためにも、新型コロナの感染症法上における位置づけなど、必要な見直しは着実に進めていくべきであります。総理も、一月の二十日に、原則としてこの春に五類に移行する方向で検討を進めるよう指示をされたところです。

 ただし、位置づけの見直しは、国民生活を始め医療機関や自治体などに大きな影響が及びます。仮に見直す場合は、新型コロナの感染力が季節性インフルエンザよりはるかに高いことなどを踏まえ、段階的に見直すべきであります。

 感染拡大防止のために、また、感染者がこれまでと同様に検査や治療が受けられるよう、ワクチン接種や検査費、治療費などの公費負担は当面の間継続すべきであります。

 あわせて、医療体制の確保、充実に全力で当たるべきです。入院調整や病床確保費用の補助、診療報酬加算等が直ちになくなれば、感染症法上の位置づけを見直したとしても、かえって医療現場の逼迫、混乱を招く可能性があります。したがって、特例的な予算措置は段階的に縮小すべきであります。

 さらに、新たな変異株が発生した際には、その特性を踏まえ、迅速かつ柔軟な対応が必要であります。

 こうした状況に鑑み、エビデンスに基づく丁寧な議論を積み重ねるとともに、平時へ移行する道筋を国民に分かりやすく説明していただきたい。

 以上の内容について、公明党として、一月の二十四日に政府に申入れをしたところであります。

 新型コロナの感染症法上の位置づけの見直しについて、総理の見解を伺います。

 次に、東北の復興と防災・減災対策について伺います。

 本年四月、いよいよ、福島国際研究教育機構が福島県浪江町に設立される予定です。同機構は、ロボットや放射線科学等の分野で、我が国の科学技術力、産業競争力の強化を牽引する司令塔となることが期待されております。政府は、同機構の設立に向けて、地元の意見をよく聞きながら、万全に準備を進めていただきたい。

 一方、原子力事故災害からの復興再生に向けては、ALPS処理水の処分など、引き続き、国が前面に立ち、責任を持って万全の対策を講じるべきであります。

 公明党はこれからも、人間の復興、心の復興を成し遂げるその日まで、被災者に寄り添い、復興に取り組んでまいります。

 東北復興への取組について、総理の答弁を求めます。

 令和三年度から始まった国土強靱化五か年加速化対策は、来年度で三年目を迎え、防災・減災のための対策が全国的に着実に進んでおります。

 五か年加速化対策後の在り方をどうするか。公明党がこれまで実施をしてきた地方自治体や業界団体との意見交換の中では、五か年加速化対策後も継続的に強靱化を進めるため、実施計画を法定化し、中長期的かつ明確な見通しの下、自治体が安心して推進できる仕組みや制度を構築することが必要との声が寄せられました。

 それを受け、昨年十一月には与党プロジェクトチームを立ち上げ、議員立法で今国会に国土強靱化基本法改正案を提出することを目指し、ポスト五か年対策の在り方について議論を開始しております。

 国民の命と財産を守るため、五か年加速化対策後も強力に防災・減災、国土強靱化を進めるべきと考えますが、総理並びに国土交通大臣の答弁を求めます。

 次に、外交・安全保障について伺います。

 今、国際社会は、協調と分断、協力と対立が複雑に絡み合う時代に入っております。そうした中、本年は新たに平和と安定を目指す結束した取組が重要となります。

 総理は、今月、フランス、イタリア、英国、カナダ、米国を歴訪し、各国首脳らと会談をされました。各国と、ウクライナ危機への対応を始め、国際秩序維持への結束、安保協力の強化、五月のG7広島サミット成功に向けた協力などを確認されました。また、米国とは、改定した日本の安保戦略文書を踏まえ、日米同盟の抑止力、対処力の強化や安全保障、防衛協力の方針の一致などを確認できたことを評価いたします。

 厳しい外交・安全保障環境の中で、国際社会と緊密に連携協力を図り、対話外交を積み重ねていくことは極めて重要であります。

 日本はG7議長国としてリーダーシップを大いに発揮していただきたい。G7サミットが被爆地広島開催だからこそ、核兵器のない世界に向けた大事な一歩としていくことも期待されます。公明党は、核保有国と非保有国の橋渡し役を担う政府の取組を力強く後押しいたします。また、政党外交も積極的に進め、地域の平和と安定に貢献していく考えであります。

 日米首脳会談を始め、各国首脳との会談の成果について、また、G7サミット開催の本年、どのような外交を展開していくのか、総理の見解を求めます。

 ウクライナにおける戦争は長期化し、今なお続いております。

 昨年九月、公明党は、ウクライナ周辺三か国に調査団を派遣して現地の窮状を把握し、冬の寒さに備えた支援の提供などを政府に訴えました。その結果、第二次補正予算に支援策を盛り込むことができ、現地には発電機などが届いております。

 引き続き、ウクライナと周辺国の人々に寄り添った復旧復興、人道支援を力強く進めていただきたい。

 また、ウクライナでの戦争の一日も早い終結に向け、国連がいま一度仲介する形で、ロシアとウクライナを始め、主要な関係国の首脳、外相などによるハイレベル会合を早急に開催し、停戦合意を図るなど、平和の回復に向けた本格的な協議を進めるべきだと考えます。そのために、G7議長国、また国連安保理の非常任理事国である日本が、これまで以上に国際社会と緊密に連携を図り、主導的役割を果たすべきではないでしょうか。

 ウクライナと周辺国への人道支援と今後の停戦対応について、総理の御所見を伺います。

 我が国周辺の厳しさを増す安全保障環境に対して、国民の命と平和な暮らしをどう守っていくのかが問われている中、政府は、昨年末、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の三文書の改定を行いました。

 今回の三文書改定に向け、公明党は、実務者を中心とした与党協議を積極的に行い、その中で、防衛力の抜本的強化の施策として、反撃能力を持つことを決定いたしました。

 その背景として、北朝鮮がかつてない勢いで様々なミサイルを発射し、関連技術と運用能力を飛躍的に向上させ、質、量共に著しく戦力を増強しており、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することが難しくなりつつあることがあります。

 このような状況を踏まえ、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手の領域において我が国から有効な反撃を加える能力を保有する必要があると判断をいたしました。こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、相手からの武力攻撃を抑止する力が増大すると考えます。

 一部に、専守防衛を逸脱するのではないか、先制攻撃になるのではないかなどの批判もありますが、公明党は、反撃能力といっても、あくまでも憲法九条の専守防衛の自衛権行使の一環であり、その範囲内である以上、先制攻撃は許されないことを主張いたしました。結果として、国家安全保障戦略には、平和国家として、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛に徹すること、先制攻撃は許されないことが明記されました。

 今後も、丁寧な説明の下、国民の理解を得ながら、安全保障政策を進めていただきたい。

 反撃能力の保有が専守防衛の逸脱になるのではないかとの懸念に対して、さらに、現段階において具体的な運用構想についてどう考えているのか、総理の答弁を求めます。

 防衛費の増額に伴い、負担が大きく増えるのではないかと多くの国民が不安を感じております。

 財源確保に向け、公明党は、国民の負担を最小限に抑えるために、まずは無駄の削減や使われなかった予算の活用を優先すべきと主張いたしました。

 政府は、歳出改革の徹底、決算剰余金の活用、特別会計からの繰入れなどで可能な限りの財源を確保した上で、不足する分について、税制措置を取ることとしております。

 昨年末の与党税制協議において、公明党は、中小企業に影響を及ぼさないこと、復興事業に影響を及ぼさないことの二点を強く主張いたしました。

 結果、与党として、法人税については、当初の案では百七十万円だった控除額を五百万円に拡充して対象法人を大幅に縮小することとし、復興財源については、大綱に「責任を持って確実に確保する」と明記をいたしました。また、所得税額に対して新たな付加税を一%課すものの、現在の復興特別所得税の税率を一%引き下げることで、当面、国民には負担が増えないようにしております。

 中小企業や被災地の皆さん、そして多くの国民の不安感を少しでも取り除くため、防衛力強化の財源確保について政府の取組と、国民負担をどう抑えるのか、復興事業実施への影響はどうなるのか、総理の具体的な説明を求めます。

 最後に、マイナンバーカードの活用について伺います。

 昨年末、デジタルを活用し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会の実現を目指す、デジタル田園都市国家構想総合戦略が策定をされました。

 その中で、極めて重要な役割を果たすのがマイナンバーカードであり、今後、医療機関などが患者の処方歴を把握し、不適切な飲み合わせなどを未然に防ぐ電子処方箋の運用や、アンドロイドスマホにカード機能を搭載する予定となっており、引き続き、国民の利便性を拡充すべきであります。

 また、自治体では、住民視点に立った質の高い窓口サービスを提供する、書かない窓口の導入が増えております。これは、来庁者が申請書等を記入することなく、職員の聞き取りやマイナンバーカードの活用などで簡単かつ効率的に手続の申請ができるシステムであります。

 こうしたマイナンバーカードの利活用の好事例を横展開するなど、デジタルによる住民生活の向上を後押しするとともに、成果として実用化できるまで、しっかりと検証していくべきであります。総理の答弁を求めます。

 結びに一言申し上げます。

 久しぶりにマスクなしでの質問となりました。長期に及んだコロナ禍から次のステップを踏み出す象徴的な出来事とも言えます。

 大きな変化を迎えるとき、我々政治家にとって重要なことは、国民が何を求めているのかを敏感に感じ取ることであります。その意味で、公明党は、全国に張り巡らしたネットワーク力を存分に発揮し、これまで以上に国民に寄り添う政策の実現に全力で取り組んでいくことをお誓いいたしまして、代表質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 石井啓一議員にお答えいたします。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。

 中小企業の賃上げを実現するためには、生産性の向上、下請取引の適正化、価格転嫁が重要です。

 このため、賃上げ促進税制の活用促進に加え、事業再構築補助金やものづくり補助金、IT導入補助金、新規輸出一万者支援プログラムなど、令和四年度補正予算に盛り込んだ施策の早期執行により、生産性向上支援を着実に進めてまいります。

 また、事業者に寄り添い、支援を有効活用してもらうため、商工団体等への専門家の配置に加え、新たに指導員向けの研修など、相談体制を強化します。

 また、公正取引委員会、中小企業庁の下請Gメンの大幅増員を行ったところであり、取引適正化に向けたヒアリング調査や指導等を強化していきます。

 こうした取組を通じ、中小企業の賃上げを強力に後押ししていきます。

 GX経済移行債の制度設計と、中小企業を含むサプライチェーン全体のGX化についてお尋ねがありました。

 GXに向けた今後十年間で百五十兆円を超える官民の投資の実現に向け、国による二十兆円規模の大胆な先行投資を進めるため、GX経済移行債の枠組みを新たに創設します。

 この枠組みにより、国が複数年の支援計画を示し、中期的な予算のコミットを行うことで、企業などの予見可能性を高めます。その際、支援対象とする分野については、日本の持つ強みも考慮して、将来的な日本の競争力を高めることにつながるようにいたします。

 また、日本の競争力の維持強化とカーボンニュートラルの両立を実現するためには、中小企業を含むサプライチェーン全体のGXの取組が不可欠です。

 中小企業が脱炭素に取り組むに当たっては、情報収集や費用負担等に課題があることから、省エネ、脱炭素設備の導入支援や、脱炭素に向けた事業再構築支援などを進めるとともに、こうした支援策がより効果的に中小企業に届くように、中小機構における相談窓口の設置や、専門家によるエネルギー使用の改善アドバイスの実施、また、地域の支援機関や金融機関における脱炭素に知見のある人材の育成など、相談支援体制の充実を進めてまいります。

 リスキリングへの支援等についてお尋ねがありました。

 賃上げは新しい資本主義の最重要課題であり、意欲ある個人の能力を最大限生かしながら、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつなげる好循環をつくり、持続的な賃上げを実現していきます。

 このため、まず、令和五年度予算案において、転職前の賃金より高い賃金で雇い入れる企業に対する支援や、新規事業に従事する労働者のリスキリングへの企業を通じた支援等を盛り込むとともに、主体的に学び直しに取り組む個人に対する直接支援も行うこととしており、その際、御指摘のような、無料でキャリアコンサルティングを受けられる機会の提供や、デジタル分野等成長分野のメニューの充実、土日、夜間対応等の講座拡充も進めていきます。

 さらに、昨年四月に策定した女性デジタル人材育成プランを着実に実行するとともに、令和五年度予算案にも盛り込まれた地域女性活躍推進交付金を通じて、地域の実情に応じた取組を後押しし、女性デジタル人材や女性起業家の育成を進めていきます。また、男女間の賃金格差に係る情報の開示や、女性に多い非正規雇用労働者の待遇改善、正規化の促進等により、男女間の賃金格差の是正に取り組んでまいります。

 雇用保険財政についてお尋ねがありました。

 コロナ禍において雇用調整助成金の特例措置を講じたことにより、雇用保険財政は極めて厳しい状況にあります。

 リスキリング支援など人への投資への支援や、労働移動の円滑化の強化に万全を期すとともに、雇用情勢が悪化した場合にも十分な対応を図るため、雇用保険財政の早期再建に取り組んでまいります。

 食料自給率の向上と生活困窮者への食事支援についてお尋ねがありました。

 世界規模の食料危機の中、昨年末、公明党の提言も踏まえ、食料安全保障強化政策大綱を決定したところであり、輸入に依存する肥料、飼料、主要穀物の国産化推進など、食料安全保障の強化に向けた施策を継続的に講じ、食料自給率の向上に取り組んでまいります。

 あわせて、国民一人一人が健康な食生活を確保できるよう、総合経済対策において、子供の居場所づくりの支援や食事提供等を行うNPO等への支援を拡充したところであり、政府備蓄米も活用しつつ、生活困窮者の食事支援において重要な役割を担っているフードバンクや子供食堂を支援してまいります。

 子ども・子育て政策の具体的な議論の進め方についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容や規模面はもちろんのこと、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加する、次元の異なる少子化対策を実現したいと考えております。

 御提案をいただきましたが、御党の子育て応援トータルプランも参考にさせていただき、子ども・子育ての当事者である、お父さん、お母さん、子育てサービスの現場の方、若い世代の方々の意見を伺いながら、まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 高等教育の奨学金についてお尋ねがありました。

 経済的困難を抱える学生等の支援のため、令和六年度から給付型奨学金等の見直しを行うこととしております。

 このため、給付型奨学金等の対象拡大については、対象となる世帯年収の目安を六百万円に引き上げるべきとの御提案も踏まえ、その年収目安を早急に明らかにできるよう進めてまいります。

 また、奨学金の減額返還制度については、ライフイベントを踏まえて柔軟に返還できるよう、御提案いただきました簡単な手続や利息負担の取扱い等に関して、具体的な枠組みをつくってまいります。

 医療保険制度改革の意義とかかりつけ医機能の強化についてお尋ねがありました。

 今回の医療保険制度改革は、出産育児一時金を増額し、その費用を高齢者を含む全世代で支え合うとともに、急増する高齢者の医療費について、現役世代の負担上昇を抑制するため、全世代で負担能力に応じて公平に支え合う仕組みとするなど、全世代対応型の持続可能な制度の構築に取り組むものです。

 また、併せて行うかかりつけ医機能が発揮される制度整備については、国民、患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう情報提供を強化するとともに、医療機関に対してその機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、そして地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討、公表する、こうしたことにより、地域において必要なかかりつけ医機能を確保する仕組みを設けています。こうした制度整備を進めることにより、国民、患者から見て、一人一人が受ける医療サービスの質の向上につながると考えています。

 引き続き、今国会への法案提出に向けて準備を進めるとともに、広く国民の理解を得られるよう丁寧な説明を行ってまいります。

 介護保険制度改革についてお尋ねがありました。

 超高齢社会に備え、生産年齢人口の減少に対応していく観点から、介護保険制度改革は重要な課題と認識をしております。

 このため、介護人材の確保や生産性の向上に取り組むとともに、認知症の方への対応や地域の相談体制などを充実してまいります。それとともに、制度の持続可能性を確保するため、保険料負担や利用者負担の在り方などについて、関係者の御意見を丁寧に伺いながら議論を進めてまいります。

 感染症危機に対応するための司令塔機能の強化についてお尋ねがありました。

 政府においては、今後の感染症危機に適切に対応するため、司令塔機能を担う組織として内閣感染症危機管理統括庁を内閣官房に設置するとともに、質の高い科学的知見を獲得し、内閣感染症危機管理統括庁等に迅速に提供する役割を担う新たな専門家組織として、いわゆる日本版CDCを設置するため、今国会に所要の法案を提出することとしております。

 両組織がしっかりと連携しながら、平時から、感染症危機を想定した実践的な訓練等により有事への備えを万全に行うとともに、専門家組織の科学的知見を得て政府全体として感染症危機に迅速かつ的確に対応できるよう、司令塔機能の強化に取り組んでまいります。

 新型コロナ対策についてお尋ねがありました。

 新型コロナの感染拡大から約三年。国民の皆さん、そして現場で働く医師、看護師、介護職員などエッセンシャルワーカーの皆さんの御協力をいただきながら、ウィズコロナへの移行を進めてきました。

 そして、原則、この春に、新型コロナを新型インフルエンザ等から外し、五類感染症とする方向で議論を進めます。また、これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策措置の対応について、議員の御指摘のとおり、医療現場の混乱等を回避するためにも段階的な移行が重要であると考えており、具体的な内容について検討、調整を進めます。

 こうした見直しのスケジュール等について、厚生労働省の審議会等の議論を踏まえ、早期にお示ししていきます。

 なお、ワクチンについては、類型の見直しにかかわらず、予防接種法に基づいて実施することになりますが、今後の接種の在り方についても検討を進めており、結論を得てまいります。

 東日本大震災からの復興への取組についてお尋ねがありました。

 本年三月で発災から十二年を迎える中、被災地の方々の絶え間ない御努力により復興は着実に進んでいる一方で、心のケア等の残された課題についてきめ細かく対応していく必要があります。

 また、原子力災害被災地域では、復興再生に向けた動きが本格的に始まっている一方、いまだ多くの方々が避難生活を余儀なくされており、引き続き、国が前面に立って中長期的に対応していくことが必要です。

 御指摘の福島国際研究教育機構、F―REIについては、福島、東北の復興を実現する夢や希望となるとともに、我が国の科学技術、産業競争力の強化を牽引する、創造的復興の中核拠点とすることを目指しています。まず、本年四月の設立に向けて、地元である福島県を始めとする関係機関と連携しながら、政府一丸となって取組を進めてまいります。

 また、廃炉を着実に進め、福島の復興を実現するためには、ALPS処理水の処分も決して先送りできない課題です。今後も、国が前面に立ち、責任を持って、漁業者や国民への説明、風評対策、安全性の確保等にしっかりと取り組みます。

 引き続き、東北の復興なくして日本の再生なしとの強い決意の下、被災地の皆様の声をしっかりと受け止め、東日本大震災からの復興に全力を尽くしてまいります。

 国土強靱化についてお尋ねがありました。

 激甚化、頻発化する災害に対応するため、防災・減災、国土強靱化の対策を着実に進めているところです。

 国土強靱化の五か年加速化対策後についても、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的、安定的に国土強靱化の取組を進めていくことが重要です。そのため、新たな基本計画を策定するなど、国土強靱化の着実な推進に向けて強力に取組を進めてまいります。

 欧州、北米訪問における首脳会談の成果及び本年の外交の展開についてお尋ねがありました。

 今回訪問した欧州及び北米五か国の各首脳とは、二国間の懸案、協力やウクライナ情勢を始めとする地域情勢等について率直な意見交換を行いました。

 また、私からは、G7議長国としての考えを説明した上で、G7が結束して法の支配に基づく国際秩序を守り抜くべく連携していくことについて、改めて確認が得られました。

 国際社会が歴史的な転換点にある中、我が国は、本年、G7議長国及び国連安保理非常任理事国を務めます。私は、今回の歴訪での各国首脳とのやり取りの成果を踏まえつつ、国際社会が直面している様々な課題への対応において、首脳外交を積極的かつ力強く展開してまいります。

 本年五月開催のG7広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志を力強く世界に示していきたいと考えています。

 ウクライナと周辺国への人道支援及び今後の停戦に向けた対応についてお尋ねがありました。

 日本は、これまで、ウクライナ及び周辺国等に対して、本年度六百億円の補正予算を含め、総額約十五億ドルの支援を順次実施しています。その中には、発電機等の越冬支援、カンボジアと協力した地雷対策支援も含まれています。G7議長国として、引き続き、国際社会と連携しつつ、人道復興支援においても積極的に役割を果たしていきます。

 停戦に向けた対応については、ロシアは、ウクライナ侵略を重ねて正当化しており、自らの強硬な立場を和らげ、歩み寄ろうとする兆しは全く見せていません。このような状況下で、ロシアに一刻も早く侵略をやめさせるために今必要なことは、国際社会が結束し、強力な対ロ制裁措置を講じつつ、ウクライナへの支援を継続していくことです。我が国は、G7議長国として、また国連安保理非常任理事国として、国際社会と連携しつつ、適切に取り組んでまいります。

 国家安全保障戦略等についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、新たに策定された三文書に基づく取組は、憲法及び国際法の範囲内で行うものであり、専守防衛の考え方を変更するものではありません。こうした点を含め、三文書で示した施策について、国民の皆様への丁寧な説明を行いながら、早急に取り組んでまいります。

 また、反撃能力は、弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合に、武力行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐためにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として行使するものであり、専守防衛を逸脱するものではありません。これには、スタンドオフ防衛能力等を活用することとしております。

 防衛力強化の財源確保や復興事業への影響についてお尋ねがありました。

 抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していかねばならず、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要となります。財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一について、将来世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が将来世代への責任として対応すべきものであると考えております。

 税制措置については、現下の家計や一般の中小企業に十分な配慮をすることとしています。具体的には、法人税については、中小企業への配慮を大幅に強化し、全法人の九四%は対象外としております。また、復興特別所得税については、現下の家計の負担増にならないよう、税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとされており、その延長幅は、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところであり、復興事業に影響を及ぼすことはありません。

 さらに、廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、息の長い取組についてもしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧復興に要する財源を引き続き責任を持って確保してまいります。

 こうした内閣の方針について、国民の皆様に御理解を深めていただけるよう、国会での議論も含め、引き続き、丁寧な説明を行っていく考えです。

 マイナンバーカードの利活用についてお尋ねがありました。

 マイナンバーカードは、対面に加え、オンラインでも確実な本人確認ができる、安全、安心なデジタル社会のパスポートであり、その早期普及のため、カードの利便性の拡充が重要です。

 これまで、健康保険証としての利用、ワクチン接種証明アプリ、確定申告での医療費控除等など、カードの利活用シーンを順次拡大してきました。本日から重複投薬や不適切な飲み合わせチェックができる電子処方箋の運用が開始され、マイナポータルでも処方情報を確認できるようになるほか、五月にはスマホへのカード機能の搭載が始まります。

 さらに、各地域におけるカードを活用したデジタル実装を進めることも重要です。御指摘の、役所の窓口で住民が書かない、住民を待たせない取組は、好事例として横展開が始まっており、デジタル田園都市国家構想交付金等で支援をしております。

 今後も、運転免許証との一体化や、各種国家資格の証明書のデジタル化、学生証への利用、買物時の年齢確認など、カードの利便性の向上を飛躍的に高めてまいります。また、全国のモデルとなる地域の先行的な取組については実用化まで支援をいたします。全国津々浦々で、あらゆる公的、民間サービスを簡単、便利に利用できる社会をつくるため、官民で取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井啓一議員から、防災・減災、国土強靱化についてお尋ねがありました。

 防災・減災、国土強靱化に向けた取組については、五か年加速化対策等により、例えば河道掘削やダムの事前放流など、ソフト、ハード両面にわたる流域治水等の取組を進めており、大規模な被害を未然に防止するなど、一定の効果を発揮しているところです。

 一方、今後実施予定の箇所も残っており、気候変動による降雨量の増加なども予測されていることから、取組の強化が必要です。

 五か年加速化対策後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的、安定的に取組を進めることが重要であると考えており、現在、政府において検討している新たな国土強靱化基本計画の策定に向けて、国土交通省としても、関係省庁と連携しつつ、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

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副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)

 昨年の代表質問で、私は、議場の皆さんに、この国会を賃上げ国会にしようと呼びかけました。あれから一年、国民民主党は、今年の通常国会こそ賃上げ実現国会にしようと改めて訴えます。

 アメリカでもヨーロッパでも韓国でも賃金が上がっています。なのに、日本だけ、二十五年以上、賃金が上がっていません。国民民主党は、この賃金デフレこそが日本経済の最大かつ本質的な課題と考え、給料が上がる経済の実現を公約として訴え続けてきました。

 そして、昨年二月のロシアのウクライナ侵略以降、原油価格高騰などにより、三十年ぶりの物価高となっています。であれば、賃金も三十年ぶりの上昇にしないと、国民の生活は苦しくなるばかりです。賃金が上がらないと消費も落ち込み、年金も上がりません。結局、問題は賃金なのです。だからこそ、労使のみならず、政府もありとあらゆる政策を動員して、賃上げの流れを支援すべきです。もはや賃上げは、単なる個別企業の労使交渉という枠を超えた、日本経済最大の課題です。

 まず、賃上げの必要性について、岸田総理の基本認識を伺います。

 総理の言う構造的賃上げは重要ですが、あくまで中期的な目標です。問われているのは今年の賃上げです。今年の賃上げを実現するために総理は何をするのか、特に企業の九割を占める中小企業、とりわけ労働組合のない中小企業の賃上げをどのように実現するのか、また、非正規労働者や派遣社員の賃上げをどう実現するつもりなのか、具体的にお答えください。

 加えて、賃上げのために適正な価格転嫁が必要ですが、下請や中小企業はなかなか価格転嫁できません。価格転嫁をどのように円滑に進めるのか、また、価格転嫁によって懸念される家計の消費減少対策をどう考えているのか、その具体策を総理に伺います。

 今週月曜に経団連の会長と連合の会長が会談しました。日本にしみついたデフレマインドを払拭するために賃上げが必要との認識で一致したそうです。ここに政府のトップである総理もコミットすべきです。労働組合のない企業も含め、物価上昇を上回る賃上げが必要とのメッセージを目に見える形で社会に打ち出すことが重要です。そのため、政府、労働界、経済界の代表が一堂に集う政労使会議を岸田総理が呼びかけて、今こそ開催しませんか。

 国民民主党としても、賃上げに向け政治が取り組むべき、以下十の政策を具体的に提案します。

 まず、金融政策について、岸田総理は黒田総裁の後任総裁の下で金融政策を変更すべきと考えていますか。民間銀行の住宅ローンの固定金利は既に上昇しており、急に金融を引き締めると、民間の投資と消費を冷やし、賃上げの妨げになります。金融政策の変更に当たっては、雇用や名目賃金上昇率に十分配慮すべきです。国民民主党は、政府と日銀で合意する新たな協定、アコードに名目賃金上昇率五%程度の目標を掲げるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 財政政策についても、雇用や賃金上昇率に十分配慮して決定する必要があります。国民民主党は、名目賃金上昇率が安定的に五%程度を超えるまで、財政の引締め、とりわけ増税は行うべきではないとの立場です。たとえ将来のことであっても、現時点で増税の話を持ち出すことは賃上げにマイナスの影響を与えることになります。増税議論の賃上げへの影響について、総理はどう考えていますか。また、増税を決めた場合には、その実施の前に選挙で民意を問うのが筋だと考えますが、併せて伺います。

 電力各社の発表によれば、四月から電気代が三割から四割上がる見込みです。電気代高騰に苦しむ学生や、八割節電したのに電気代は逆に四割も増えた中小企業など、悲鳴のような声がネットにもあふれています。政府の支援策で下がるのは約二割なので、四月以降は電気代が差引き一割から二割上がります。賃上げの原資を確保し、また、価格転嫁の家計への影響を和らげるためにも、電気代を更に値下げすべきと考えます。予備費を活用し、燃料費調整の深掘りや再エネ賦課金の徴収停止などで、更に一割程度電気代を引き下げませんか。総理の見解を伺います。

 クリーンルームがある半導体製造拠点や電炉のある事業所、また大型ショッピングモールなど、大量の電力を消費する工場や事業所は二万ボルト以上の特別高圧の電力を利用していますが、特別高圧は政府の支援策の対象外となっています。中には十億円単位で電気代がアップするところもあって、賃上げの原資が電気代に消えてしまって、賃上げが困難になっています。予備費を活用して、特別高圧も電気代値下げの対象に追加しようではありませんか。総理の決断を求めます。

 我が国の化石燃料依存度が八割を超え、そのほとんどが輸入に依存している現状は、エネルギー安全保障上、極めて脆弱です。昨年の貿易収支は過去最大の約二十兆円の赤字。多額の国富が海外に流出し賃上げに回らないのも、化石燃料の大量輸入が大きな原因です。持続的な賃上げの実現にとっても、エネルギー安全保障と電力の安定供給が大前提だと考えますが、総理の基本認識を伺います。

 また、電力需給逼迫の改善と電気代を下げるためには、原子力発電所の早期再稼働が必要です。とりわけ東日本における安価で安定した電力供給のためには、柏崎刈羽原発の再稼働が急がれます。そのために国が前面に出て具体的にどのような役割を果たすのか、総理の見解を伺います。

 資源価格高騰により、電力自由化によって参入した新電力の撤退が相次ぎ、電力会社と契約ができない電力難民が続出しました。また、政府は、火力から再エネに電力システムを構造転換すると言ってきましたが、今、綱渡りの電力需給を支えているのは老朽化した火力です。電力システム改革は今のような有事への備えを想定していたのか、自由化で本当に電気代は安くなったのかなどを検証し、電力の安定供給の観点から必要な見直しを行うべきです。また、供給力確保義務の徹底など、新電力への適切な事業規律の確保が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 民間企業の中には独自にインフレ手当を支給するところが出てきていますが、これは本来国がやる対策です。国民民主党は参議院選挙の公約で一律十万円のインフレ手当の給付を訴えましたが、物価上昇による消費減少対策として、また、企業の賃上げ原資を確保するためにも、国がインフレ手当を支給すべきです。なお、電子マネーやQRコード決済などキャッシュレスを活用し、期限付ポイントで給付すれば、貯蓄に回ることもなく、地域の消費活性化効果もより高まります。総理、やりませんか。いかがでしょうか。

 賃金が上がっても、税金や保険料が高くて手取りが増えない、こういう声をよく聞きます。物価の上昇は、事実上、消費税率アップと同じ効果を生み出します。実際、消費税収は増えています。名目賃金上昇率が五%程度に達するまでの間、消費税を時限で減税してはどうでしょうか。また、正社員を雇ったり非正規社員を正社員化した場合には、事業主が負担する社会保険料の減免措置を講じるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 国が賃上げを主導するのであれば、まずは、公定価格である保育士や介護士の待遇を更に改善し、公務員の給料も上げてはどうでしょうか。また、公立学校の先生が置かれている状況は更に厳しく、給特法という法律によって給料の四%分が上乗せされる代わりに時間外勤務手当がもらえない仕組みになっています。総理はこの給特法を見直す必要があるとお考えなのか、お答えください。

 総理も施政方針演説でエーザイの認知症治療薬を絶賛されました。私も期待しています。しかし、毎年薬価を引き下げていく今の仕組みのままでは、国内で優れた新薬が出てこなくなる可能性もあります。また、薬の原材料価格も高騰する中で、流通も含め、製薬業界は厳しい状況に直面しており、今のままでは賃上げは厳しいです。製薬業界での賃上げを促すためにも、薬価の毎年改定は見直すべきではないですか。総理の見解を伺います。

 昨年の臨時国会の代表質問でも見直しを提起した、百三万円、百三十万円などの年収の壁について、総理が見直しの明言をしたことは評価をいたします。では、具体的にどう見直すのか、配偶者扶養控除の廃止も含めて考えているのか、分かりやすくお答えください。

 次に、異次元の少子化対策について伺います。総理、新しい政策に取り組むには、まず、これまでの少子化対策は何が間違っていたのか、何が成功したのかを検証すべきです。また、兵庫県明石市による医療費や給食費などの五つの無償化政策は十年連続人口増加などの実績を出しているので、まず、地方で取り組んでいるこうした実績を出した政策を国が全国一律で行うべきです。住んでいる自治体によって子育て支援を受けられたり受けられなかったりする、まるで自治体ガチャのような状況は速やかに改善すべきです。

 総理、ある人からこんな相談がありました。会社から部長への昇格を打診されているけれども、子育て支援に所得制限があって、子供四人を大学に入れられなくなるから保留していると。賃上げが実現したと思ったら、所得制限にひっかかって子育て、教育支援から外れる人が増える。これは総理が目指す方向と矛盾するのではないですか。国民民主党は、昨年、所得制限撤廃法案を国会に提出しました。総理、まずは、児童手当など子育て、教育施策の所得制限撤廃を決断しませんか。賃上げと所得制限撤廃は同時に実現すべき政策です。

 国民民主党は、来週にも、障害児福祉の所得制限撤廃法案を追加で国会に提出します。子育て政策のうち、障害児の特別児童扶養手当など障害児福祉の所得制限は真っ先に撤廃すべきです。総理、せめて障害児福祉の所得制限の撤廃を決断しませんか。政治の責任で、全ての子供たちが安心して生きていける希望をつくり出していこうではありませんか。

 岸田総理、自民党が野党時代の公約に書いた年少扶養控除の復活はしないんですか。民主党政権が子ども手当を導入した際、控除から手当へということで年少扶養控除は廃止しましたが、昨年十月に六十一万人の子供を対象にする特例給付も廃止となりました。三百七十億円の財源が浮きましたが、控除も給付もなくなり、まさに子育て罰という状況が生まれています。せめて年少扶養控除だけでも復活すべきではありませんか。財源もあります。相続人なき遺産として国に帰属したお金は、昨年度六百四十七億円に達し、十年で倍増しています。こうした資金を財源として活用すれば、すぐにできます。やりましょう。

 国民民主党は、フランスの例を参考に、いわゆるN分N乗方式の導入を提案しています。昨日、茂木幹事長も言及されましたが、子供の数が多ければ多いほど世帯全体の所得税の負担が少なくなるこのN分N乗方式の導入を政府としても検討すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 さきの臨時国会で、外国人留学生の支援もいいが、日本の学生をもっと助けてほしい、こういう学生の声を紹介して質問したところ、総理は、「学生への経済的支援の充実を進めてまいりたい」と答弁されました。しかし、昨年十二月、文科省の有識者会議は、給付型奨学金の対象拡大を、三人以上の子供のいる多子世帯や理系だけに限定する報告書をまとめました。収入要件などをもっと幅広く緩和し、次元の異なるレベルに対象を拡大すべきではないでしょうか。

 異次元の少子化対策というのであれば、予算倍増の財源調達手段こそ、従来とは次元の異なる新しい発想を取り入れるべきです。国民民主党は、教育、科学技術など人的資本形成に資する予算には教育国債という新たな国債を充てることを提案し、法案も提出しました。まずは、出世払い型の奨学金などの財源として教育国債を発行し、家庭の経済事情に関係なく大学や大学院に無償で通えるようにすべきです。総理、是非前向きに検討してください。国民民主党は協力します。

 国民民主党は、必要な防衛費の増額には賛成ですが、イージスシステム搭載艦については、その有用性を厳しく検証すべきとの立場です。元々、海上自衛隊の負担を減らすためにイージス・アショアを陸上に配備するはずが、導入をめぐるどたばたでまた海に戻ることになりました。海上自衛隊の負担はかえって増えることが予想されます。迎撃能力にも疑問の残るイージスシステム搭載艦について、もっと厳格に有用性を検証すれば、必要な防衛費をもっと圧縮できるはずです。

 国民民主党は、外為特会の運用益の活用を繰り返し提案してきたので、防衛費増額の財源の一部として活用することになったことは評価します。でも、まだまだ不十分です。変動為替相場制の下で、為替介入のためだけに百五十兆円を超える多額の外貨資産を保有する必要性は乏しくなっています。むしろ、今後、外為特会は、安定財源の確保と戦略的投資のための国家ファンドに生まれ変わるべきです。資産サイドの運用を多様化、高度化すれば、シンガポールの国家ファンド、テマセク並みの年率七%程度の高いリターンも期待できます。三兆円程度の毎年の剰余金を七兆円から八兆円に倍増させることは可能です。国こそ、資産運用収入そのものの倍増を実現すべきです。総理の見解を伺います。

 日本では、暗号資産の売買益に雑所得として最高五五%の税率が課せられるため、多くの富裕層が海外に暗号資産を移転しています。今、ビットコインやアルトコインなど暗号資産の世界市場規模は二百三十兆円とも言われており、このうち日本人が約一割程度、二十兆円を保有している可能性がありますが、国内の暗号資産交換業者のビットコイン預託総量は〇・六兆円しかありません。

 そこで、暗号資産の売買益に二〇%の分離課税を導入することで国内に二十兆円規模の資産を戻すことができれば、四兆円から五兆円の所得税の税収増が見込めます。ウェブ3を活用したスタートアップ企業を育て、税収を増やすためにも、暗号資産の売買益に二〇%の分離課税を導入すべきです。総理の考えを伺います。

 防衛費を倍にしても、その分、米国からの高価な防衛装備品の購入が増えるだけでは、自分の国は自分で守る力は強化されません。一つの戦闘機を開発するのに八千四百社以上の企業が関わるとも言われますが、機微な技術であれば、そのうち一社が抜けても開発できなくなります。ましてや、他国に買収されることは避けなければなりません。総理は、施政方針演説で、防衛産業の基盤強化や装備移転の支援を進めると述べ、防衛省も法案を提出するとのことですが、こうしたリスクへの対応は十分にできていますか。

 また、防衛産業の強化と同時に、国内法の整備が急がれます。国民民主党は、経済安全保障体制を強化するためのセキュリティークリアランス法案と、積極的サイバー防御を可能とするためのサイバー安全保障基本法を議員立法として提出予定ですが、政府として、こうした法案の提出はいつを考えているのか、総理の見解を伺います。

 一昨年十二月、農林水産省は、水田活用直接支払交付金の、五年に一度の水張り要件を発表しましたが、転作を進めてきた全国の農家には不安が広がっています。このままでは離農と耕作放棄地が増え、食料安全保障にとって明らかにマイナスです。総理、水田活用直接支払交付金は、地域の実情に応じて、五年に一度の水張り要件を柔軟に緩和すべきではありませんか。

 国民民主党は、昨年、緊急事態条項に関する包括的な憲法改正の条文案を各党に先駆けて取りまとめました。緊急事態においても制約してはならない権利を定めたり、国会機能を維持する規定を設けるなど、バランスの取れた内容となっています。イデオロギー対立が起きにくい緊急事態条項、とりわけ議員任期の特例延長規定について条文案で与野党の合意を得ることが憲法改正に向けた最も現実的かつ最短のアプローチと考えますが、岸田総理の考えを伺います。

 この通常国会に、内閣提出法案として、孤独・孤立対策推進法案が提出されます。国民民主党が孤独対策と孤独担当大臣の創設を公党として初めて掲げたのが二〇一九年の参議院選挙でした。最初はユニーク政策とやゆされるだけでしたが、あれから三年半、ついに政府提出法案に至ったことは感無量です。内容も、国民民主党の法案とほぼ同じ内容です。政府・与党始め関係者の御尽力、御協力に感謝を申し上げます。

 私たち国民民主党は、これからも、必要な政策を先手先手で打ち出し、政策を先導してまいります。所得制限撤廃法案が典型ですが、そのほかにも、ヤングケアラー支援を強化するための法案や、カスタマーハラスメント対策についても具体的な政策を示し、実現につなげてまいります。もちろん、今国会最大の課題である賃上げの実現にも、対決より解決の姿勢で建設的な議論をリードしてまいります。

 賃上げ実現国会のため、そして所得制限撤廃など子育て支援の拡充のために、政府はもちろん、この議場にいらっしゃる与野党を超えた同僚議員の皆さんの協力をお願い申し上げ、国民民主党を代表しての質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員にお答えいたします。

 今年の賃上げに向けた具体策、物価高騰策、政労使会議についてお尋ねがありました。

 賃上げは、新しい資本主義の最重要課題です。まずは、この春の賃金交渉に向け、物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただくべく、政策を総動員して環境整備に取り組んでまいります。

 政府としても、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇などの取組に加え、公的セクターや政府調達に参加する企業で働く方の賃金引上げなどに取り組みます。

 また、中小企業における賃上げ実現に向け、生産性向上などへの支援を一層強化するとともに、公正取引委員会、中小企業庁において下請Gメンを大幅に増員し、下請取引の適正化、そして価格転嫁を促進してまいります。

 非正規雇用労働者等の賃上げについては、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の遵守の徹底、希望する方の正社員化支援等に取り組んでまいります。

 また、価格転嫁が進むことで物価上昇が進むことも考えられますが、足下でのエネルギー高騰対策や低所得世帯への支援などの取組と併せ、物価上昇を超える賃上げ、さらには、その先に、構造的賃上げを実現することによる家計の所得を通じ、持続的な消費の拡大につなげてまいります。

 そして、政労使会議の御提案ですが、賃上げを進めるに当たって、政府として、経済界、労働界とコミュニケーションを取りながら進めていくことは大切であると考えています。新しい資本主義実現会議においても、経団連会長、日商会頭、そして連合会長をお招きして議論をしており、賃上げについても、過去三回、テーマとして取り上げ、御意見をいただきました。今後もしっかりと労使の方とコミュニケーションを取って進めてまいりたいと考えております。

 金融政策についてお尋ねがありました。

 金融政策については、具体的な手法は日銀に委ねられるべきと考えておりますが、政府と日銀は、密接に連携しながら、経済、物価情勢に応じて機動的な政策運営を行い、構造的な賃上げを伴う経済成長と物価安定目標の持続的、安定的な実現を図っていくとの認識で一致をしています。日銀には、引き続き、政府との連携の下、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営を行われることを期待しております。

 また、新しい日銀総裁が決まっていない現時点で、共同声明を見直すかどうかについて申し上げることは控えなければならないと思います。

 防衛力強化のための税制措置と賃上げについてお尋ねがありました。

 防衛力強化と経済財政政策に対する考え方、これはよく整理して論ずる必要があると考えております。

 私は一貫して経済あっての財政との立場であり、だからこそ、多額の国債を発行して三十九兆円の総合経済対策を講じ、足下の物価高、円安への対策、構造的賃上げに向けた支援、七兆円の投資支援などを盛り込んだところです。賃上げは、新しい資本主義の最重要課題であり、労働市場改革を通じて構造的な賃上げの実現に全力で取り組んでまいります。

 他方、国民の生命、暮らし、事業を守るために我が国の防衛能力を抜本的に強化するためには、責任ある財源を考えるべきであり、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が対応すべきであると考えております。

 今般、法人税の御負担をお願いすることとしておりますが、その際にも、雇用を支える中小企業への配慮を大幅に強化し、全法人の九四%は対象外としております。防衛力強化は、シーレーン確保、サプライチェーンの維持、抑止力強化による市場攪乱リスクの低減など、円滑な経済活動に直接資する面も多く、御理解をいただきたいと考えております。

 こうした内閣の方針について、国民の皆様に御理解を深めていただけるよう、国会での議論を含め、引き続き、丁寧な説明を行っていく考えです。いずれにせよ、何についてどのように国民の信を問うかということについては、時の内閣総理大臣の専権事項として適切に判断をいたします。

 電気料金の値下げ支援についてお尋ねがありました。

 電気料金支援の水準については、春以降に想定される、全国の御家庭における平均的な負担増が二割程度と見込まれることを踏まえ、その水準と同程度の値下げとしています。これまでに値上げ申請があった七社の申請値上げ幅は電力会社ごとに異なっていますが、今回の電力料金支援を行うに当たっては、公平性や迅速性の観点から、全国一律の値下げ幅としたものです。

 また、今回のエネルギー高騰対策は、価格転嫁することができない最終消費者である家計など低圧需要家を中心とし、転嫁が困難な中小企業等が多く含まれる高圧需要家まで対象を広げ、実施をしております。

 その上で、昨年九月の物価対策において措置をした電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金では、自治体の判断により、地域の実情を踏まえたきめ細かい対応ができることとしており、特別高圧契約の需要家への電気料金支援が行われている例もあると認識をしております。

 政府としては、まずは、電気料金の値引き支援を需要家に確実にお届けできるよう、予算執行に取り組みます。その上で、今後も、経済状況を注視し、必要な政策対応にちゅうちょなく取り組んでまいります。

 エネルギー安全保障と電力の安定供給についてお尋ねがありました。

 昨年二月のロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギーの安定供給の確保が世界的に大きな課題となっており、我々は、歴史上初の世界エネルギー危機に直面していると言われています。

 我が国は、世界最低水準のエネルギー自給率、世界最高水準の中東依存度であり、しかも、山と深い海に囲まれ、再エネ適地が限られているという実態を踏まえ、いわゆるSプラススリーEの原則の下、徹底した省エネの推進に加え、再エネ、原子力など、エネルギー自給率を高める脱炭素電源への転換を推進することにより、エネルギーの安定供給を確保してまいります。

 今後の電力の安定的かつ安価な供給を確保していくに当たっては、原子力発電所の再稼働は重要です。特に、柏崎刈羽電力発電所については、一連の核物質防護事案を受け、現在、東京電力において、体質の再構築と組織改革に取り組んでいるところであり、政府としても、不断の安全向上に取り組む組織文化の醸成に向けて、しっかりと指導を行ってまいります。

 また、電力システム改革においては、災害や事故など不測の事態が発生した場合にも、全国大での迅速かつ円滑な電力の融通が行われるよう、広域的な電力供給システムが構築されました。加えて、電気料金については、小売全面自由化以降、家庭向け自由料金が規制料金よりも安価な価格水準で推移してきた実績があると認識をしております。

 一方で、足下では、採算性の悪化による既設火力発電所の休廃止の増加や、市場価格の高騰を受けた小売電気事業からの相次ぐ撤退など、新たな課題も生じているところです。

 このため、発電事業者の投資回収の予見性を高め、将来必要となる供給力を確実に確保するための市場の整備を実施するとともに、新規参入時の審査や撤退時における消費者への告知ルールの強化など小売電気事業の規律確保を進めてまいります。引き続き、大きな状況の変化に伴い生じる新たな課題に対して、制度を不断に見直すことにより、安定的かつ安価な電力供給を実現してまいります。

 十万円のインフレ手当についてお尋ねがありました。

 政府は、これまで、物価高の主因たるエネルギー、食料品等に的を絞り、きめ細やかな対策を実施してきました。

 特に、家計への影響が大きい低所得世帯に対しては、昨年六月から低所得の子育て世帯に対し児童一人当たり五万円を給付し、昨年十月頃から住民税非課税世帯への五万円の給付が開始され、現時点で対象世帯の約七割に給付金が支給されるなど、重層的な支援策を切れ目なく講じてきました。なお、こうした給付金は、低所得世帯に対して迅速にお届けする観点から、現金給付としているところです。

 加えて、現金給付以外にも、電気、都市ガス料金の負担緩和策によって、今月使用分より家庭において電気料金の二割程度を値引きすることなどにより、燃料油価格の対策と併せて、来年度前半にかけて標準的な世帯において総額四万五千円、エネルギー価格高騰の負担を軽減いたします。

 こうしたきめ細やかな対策を迅速かつ着実に実行することで、物価高から国民を守り抜いてまいりたいと考えております。

 消費税減税や社会保険料の減免についてお尋ねがありました。

 消費税については、急速な高齢化に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられています。このように消費税は社会保障制度を支える重要な財源であるため、減税は考えておりません。

 また、社会保険料の事業主負担は、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが、事業主の責任であるとともに、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資する、こういった観点から、事業主に求められているものであり、これを国が肩代わりすることは適当ではないと考えております。

 保育、介護職員や公立学校の教師等の処遇改善についてお尋ねがありました。

 保育、介護職員の処遇改善については、給付を恒久的に三%程度引き上げるための措置など、これまで累次の処遇改善を講じてきたところです。今後も、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、また負担軽減、これらを進めてまいります。

 また、国家公務員及び地方公務員の給与については、人事院勧告等に基づき、民間準拠を基本とすることが適切であると考えております。

 そして、公立学校の教師の処遇を定めた給特法上の措置等については、本年度実施の勤務実態調査の結果等を踏まえ、教職員の処遇見直しを通じた質の向上に取り組んでまいります。

 毎年の薬価改定についてお尋ねがありました。

 毎年の薬価改定については、国民負担の軽減の観点から実施をしています。

 令和五年度改定では、市場実勢価格を踏まえて薬価を見直すとともに、原材料費の高騰と安定供給問題に対応するため、不採算となっている医薬品の薬価を引き上げ、イノベーションに配慮する観点から、革新的な新薬の薬価を従前の薬価と遜色ない水準とすることといたしました。

 今後も、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性が両立するように、両者のバランスを取りながら取り組んでまいります。

 いわゆる年収の壁についてお尋ねがありました。

 配偶者控除については、これまでの見直しにより、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることがない仕組みとなっています。なお、その廃止については、配偶者控除が一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力の減少を調整する仕組みであること等を踏まえれば、丁寧に議論する必要があると考えています。

 また、いわゆる百三十万円の壁については、これを意識せず働くことが可能となるよう、その解消に向けて、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を進めているところです。

 いずれにせよ、少子化対策を強化する上で、男女共に働きやすい環境の整備は重要であり、いわゆるL字カーブの解消、男女間の賃金格差の是正などの課題に対し、女性の就労の壁となっている制度の見直しに取り組んでまいります。

 少子化対策についてお尋ねがありました。

 これまでの自公政権においては、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じた支援を進めてまいりました。少子化対策関係の予算額は大きく増加をし、例えば、いわゆる保育所待機児童は平成二十九年の約二・六万人から昨年は三千人まで減少するなど、一定の成果があったと考えています。

 一方で、少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現に至っていないということも認識をしております。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容や規模はもちろん重要ですが、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加をする、次元の違う少子化対策を実現したいと考えております。

 様々な御提案もいただきました。まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示していきたいと考えております。

 子育て、教育施策の所得制限撤廃等についてお尋ねがありました。

 特別児童扶養手当を始めとする各制度において所得制限を設けるかどうかは、個々の制度の目的や支援方法などに応じてそれぞれ判断されると考えております。

 所得制限の撤廃を含め、様々な御提案をいただきました。こうした国会での議論も踏まえつつ、子ども・子育て政策の強化について、こども政策担当大臣に指示をした基本的方向性に沿って具体策の検討を進めてまいりたいと考えています。あわせて、学生への経済的支援の充実のため、給付型奨学金等の対象拡大、出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組んでまいります。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、まずは、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化してまいります。

 N分N乗方式についてお尋ねがありました。

 いわゆるN分N乗方式については、共働き世帯に比べて片働き世帯が有利になることや、高額所得者に税制上大きな利益を与えることなど、様々な課題があるということも承知をしております。

 いずれにせよ、子ども・子育て政策は我が国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で最重要政策であり、制度、予算、税制など幅広く必要な対応を検討してまいりたいと考えます。

 学生への経済的支援の充実や、その財源としての教育国債についてお尋ねがありました。

 給付型奨学金等については、多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象拡大とともに、出世払い型の奨学金制度の導入に令和六年度より取り組むこととしております。

 その上で、今般、子ども・子育て政策を最重要政策と位置づけ、まずは、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化いたします。そして、高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組みます。

 また、財源について御提案がありました。まず内容を具体化し、財源についても、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 イージスシステム搭載艦の有用性についてお尋ねがありました。

 まず、御党からは、昨年末、安全保障政策に関する提言をいただき、大いに参考にさせていただきました。

 その上で、イージス・アショアの配置プロセスにおいては、反省すべき点も多かったと認識をしております。契約済みのイージス・アショアの高性能のレーダー等を利活用することで、イージスシステム搭載艦の整備を進めていくこととしております。

 ミサイルに関する技術は急速なスピードで変化、進化し、迎撃はより難しくなってきており、この傾向は、イージス・アショアの配備プロセスを停止した二〇二〇年と比べてもより顕著になっています。

 こうした中で、ロフテッド軌道で打ち上げられた弾道ミサイルや同時複数の発射などに対応するための高い迎撃能力を持つイージスシステム搭載艦は非常に有用な装備品であると考えております。

 省人化あるいは居住性の向上、こうしたものを図り、海上自衛隊の負担軽減にも留意しつつ、整備を進めてまいりたいと考えています。

 外為特会についてお尋ねがありました。

 外為特会が保有する外貨資産は、外国為替相場の安定を目的として将来の為替介入等に備えて保有しているものであり、その運用は安全性と流動性に最大限留意して行っています。

 他方、御指摘のあったシンガポールのテマセクは、長期的なリターンを得ることを目的としてシンガポール内外の企業に投資を行う運用機関であり、保有する外貨資産が為替介入に使われることは想定されていないと承知をしています。

 このように両者の目的が異なる中で、外為特会の外貨資産をテマセクと同様の手法で運用することは適切ではないと考えております。

 暗号資産の課税方式についてお尋ねがありました。

 暗号資産の取引への課税については、国際的な動向や、国内の所得税制全体の中でのバランス等を踏まえた対応が必要であると考えています。

 こうした考えに基づき、令和五年度税制改正において、ウェブ3に関する環境整備として、自らが発行した暗号資産で、発行したときから継続して保有しており、一定の技術的な譲渡制限がついているものについては、期末時価評価を不要とする見直しを行うこととしております。

 防衛産業の基盤強化、セキュリティークリアランス及びサイバーセキュリティーについてお尋ねがありました。

 国内防衛産業は、いわば防衛力そのものであり、基盤強化が急務です。適正な利益の確保、サプライチェーンの強靱化、事業承継など、装備品の安定的な製造のため、防衛産業基盤を強化してまいります。これらを令和五年度から実施するため、必要な予算措置や法整備などの措置を講じたいと考えております。

 セキュリティークリアランスについては、重要な課題の一つであると認識をしております。現時点で具体的なスケジュールは定まっていませんが、民間を含む幅広い関係者から更に御意見を伺いながら、議論を前に進めてまいります。

 能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野については、政府としては、総合調整する司令塔となる新たな組織を立ち上げることとしております。あわせて、御指摘の法整備についても議論を進めてまいります。

 水田活用の直接支払交付金に関してお尋ねがありました。

 今後五年間に一度も水張りを行わない農地を支援の対象外とする見直しは、主食用米の需要が毎年減少すると見込まれる中、食料安全保障の強化を図りつつ、稼げる農業としていくために必要なものです。

 同時に、見直しに伴う現場の課題を検証し、総合経済対策において、畑地化の推進につなげるため、畑作物の産地形成に必要な一定期間の畑地化支援の創設など地域に応じた柔軟な対応ができるよう、対策を講じたところです。

 今後とも、こうした対策を丁寧に説明し、離農や耕作放棄地の発生を抑制しつつ、主食用米から輸入依存度の高い麦そして大豆や野菜など需要のある作物への本格的な転換を一層進めてまいります。

 最後に、憲法改正についてお尋ねがありました。

 昨年の臨時国会では、衆議院の憲法審査会において、御指摘の緊急事態条項をめぐって各党の主張に関する論点整理が行われるなど、与野党の枠を超え、活発に議論いただいたことを歓迎したいと思います。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方あるいは内容について直接申し上げることは控えなければならないと思いますが、御指摘のように、緊急事態において、議員任期の延長を含め、国会の権能をいかに維持するかについては重要な論点であると考えております。

 憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、そのための発議に向け、今国会においても、与野党の枠を超えて、更に積極的な議論が行われることを心から期待をいたします。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)

 新型コロナ感染症の第八波による医療崩壊が深刻です。死者数は過去最悪、救急搬送困難事案も過去最悪、高齢者施設でクラスターが多発し、多くの犠牲者が出ています。第七波で起こったことが、より深刻な形で繰り返されているのです。総理、その原因はどこにあると認識していますか。政府の責任は極めて重いと考えますが、その自覚はありますか。

 このあしき連鎖を断ち切る上で決定的に重要なのが、余りに脆弱な医療体制の抜本的強化です。地域医療構想の名での急性期ベッドの削減計画をきっぱり中止し、危機に対して余裕のある強靱な医療体制をつくるべきではありませんか。

 総理は、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ五類に引き下げる方針を表明しました。しかし、医療体制の強化抜きにこの方針を実行すれば、医療現場の大混乱は避けられません。医療費を自己負担にすることは、ただでさえ高くなっている医療へのハードルを更に引き上げ、犠牲を拡大することになります。犠牲者が最悪という深刻な事態の下、医療への公的責任を放棄する方針を推進することは断じて認められません。総理の答弁を求めます。

 物価高騰からいかにして暮らしと経済を立て直すか。総理は、施政方針で、物価上昇を超える賃上げが必要と述べました。ところが、その方法はといえば、経済界にお願いするというだけで、政治の責任で賃上げを図る具体策が全く見えません。

 総理、経済界へのお願いだけで賃上げが進むと考えているのですか。そうはいかないことは、政府がこうしたお願いを安倍政権以来十年間にわたって繰り返しながら、この間に労働者の実質賃金が二十万円も下がっているという事実が証明しているではありませんか。

 大体、総理は、働く人の七割を占める中小企業が、抜本的支援なしに賃上げができると考えているのですか。城南信用金庫と東京新聞のアンケートに、中小企業の七割以上が今年賃上げの予定なしと回答しています。原材料費の高騰、コロナ危機による経営難、過剰債務という三重苦にあえぐ中小企業が、言葉だけのお願いで賃上げができるわけがないではありませんか。答弁を求めます。

 政治の責任で、賃上げを推進する具体策の実行が必要です。私は、二点に絞って提案します。

 第一は、アベノミクスで大企業の内部留保が五百兆円まで膨れ上がった、この膨れ上がった部分に五年間の時限的課税を行って十兆円の税収を確保し、これを中小企業の賃上げ支援に充てて最低賃金を時給千五百円に引き上げる、大企業が賃上げを行った場合には課税を控除し、大企業で働く人の賃上げも促進するという提案です。企業内部に滞留した巨額の資金を、経済、特に賃上げに還流させることの重要性は、総理も否定されないと思います。ならば、それを政治の責任で進めるべきではありませんか。我が党の提案はそのための最も合理的な提案だと考えますが、いかがでしょうか。

 第二に、昨年十月の最低賃金引上げは、全国加重平均で三・三%にすぎません。これは、実質賃金の計算に用いる帰属家賃を除く消費者物価の上昇率四・八%に遠く及びません。最低賃金は実質ではマイナスなのです。総理、物価上昇を超える賃上げが必要というなら、最低賃金を少なくとも物価上昇を超える水準に引き上げるために、中小企業への直接支援と一体に最低賃金の緊急の再改定を行うことは、最小限の責任ではありませんか。答弁を求めます。

 加えて、物価高騰への最大の効果的対策となる消費税五%への緊急減税と、インボイスの中止を強く求めます。

 インボイスが導入されれば、財務省の試算でも、年間売上げ五百五十万円、利益百五十万円の事業者に十五万円もの増税になります。一か月以上の所得が増税で消える。これでは仕事が続けられないという悲鳴が、中小・小規模事業者、クリエーター、フリーランスなどから続々と上がっています。総理、この声にどう応えますか。答弁を求めます。

 総理は異次元の子育て支援を掲げていますが、そのメニューを見ますと、一番大事な問題が抜け落ちています。

 政府が二〇二〇年に行った意識調査では、育児を支援する施策として何が重要かという設問に対して、断トツ一位は教育費の軽減で、六九・七%に上っています。総理、異次元と豪語するほど子育て支援に力を入れるというなら、その柱に教育費負担の抜本的軽減を据えるべきではありませんか。

 世界で最高水準の学費、日本独自の高過ぎる大学の入学金、若者に数百万円もの借金を背負わせる貧しい奨学金制度、憲法で無償とされている義務教育での給食費などの重い負担、この中の一つでも抜本的に改善のメスを入れる意思はありますか。

 日本の教育費への公的支出は、対GDP比で、OECD三十七か国中三十六位と最低水準です。にもかかわらず、来年度予算案の文教費の増加額は僅か百二億円、率にして〇・三%。物価高騰の下、実質ではマイナスです。異次元の子育て支援というなら、教育予算の抜本的な増額が必要ではありませんか。答弁を求めます。

 総理は、昨年十二月、原発回帰への大転換の方針を決めました。

 しかし、自民党は、昨年の参議院選挙で、原発の新規建設は考えていないと公約していたではありませんか。選挙が終わると手のひらを返して新規建設推進の方針を決めるのは、文字どおりの公約違反ではありませんか。

 さらに、自民党は、二〇一一年三月の東京電力福島第一原発の大事故を受けて原子炉規制法が改定された際、経年劣化による安全上のリスクが増大するため、原発の運転期間は四十年を基本とすることで民主党、公明党と合意していたではありませんか。総理は老朽原発の六十年を超える運転を認めるとしていますが、経年劣化による安全上のリスクがなくなったとでも言うのですか。

 原発事故の教訓を忘れ、被災者の苦しみを忘れた、新たな安全神話の復活と言うほかないではありませんか。

 総理はグリーンを理由としていますが、原発こそ、一たび事故を起こしたら最悪の環境破壊を引き起こし、核のごみの処分方法もありません。原発頼みを続けてきたことが、再生可能エネルギー、省エネルギー普及の障害になっています。原発ゼロを決断することこそ脱炭素を進める道だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 総理は、昨年十二月、安全保障三文書を閣議決定し、反撃能力の名での敵基地攻撃能力の保有と、五年間で四十三兆円もの大軍拡を進めることを宣言しました。

 私は、次の七つの問いを総理に提起したいと思います。

 第一は、勝手に決めるなということです。

 安保三文書自身が戦後の日本の安全保障政策の大転換だと認めているにもかかわらず、総理は、昨年の参院選でも臨時国会でもその内容を示さず、一片の閣議決定で大転換を決め、米国のバイデン大統領に報告して既成事実化した上で、ようやくこの国会に臨んでいます。順序が逆ではありませんか。民主主義を無視したやり方だと考えませんか。お答えください。

 第二は、日本国憲法との関係をどう説明するのかという問題です。

 政府は、一九五九年の伊能防衛庁長官の答弁で、敵基地攻撃について、法理的には可能としながら、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」と述べています。政府は、近年でも、この答弁について、現在でも当てはまると答弁しています。

 総理、敵基地攻撃は法理的には可能だが、その能力を保有することは憲法違反という憲法解釈を変更したのですか。お答えください。

 第三は、専守防衛と両立し得るかという問題です。

 安保三文書は、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならないと述べています。

 しかし、今やろうとしていることは何か。GDP比二%以上の軍事費となれば、日本は、米国、中国に次ぐ世界第三位の軍事費大国になります。長射程のトマホークミサイルなど、相手国の脅威圏の外からミサイルを撃つスタンドオフミサイルを大量に導入し、それを搭載する戦闘機、護衛艦、潜水艦を大増強するなど、強大な敵基地攻撃能力を保有することになります。

 それがどうして他国に脅威を与えるような軍事大国でないと言えるのか、説明いただきたい。専守防衛に徹しといいながら、専守防衛を完全に投げ捨てる。これが正体ではありませんか。お答えください。

 第四は、敵基地攻撃能力保有は自分の国を自分で守るためのものという言い訳が成り立つかという問題です。

 安保三文書は、集団的自衛権を行使する場合も敵基地攻撃能力を行使できると明記しています。

 すなわち、日本が武力攻撃を受けていない下でも、米国が海外で戦争を開始したら、自衛隊は米軍と一体に、敵基地攻撃能力を使って相手国の領土に攻撃を加えるということです。その結果は何か。日本への報復攻撃による国土の焦土化です。日本を守るではなく、日本を米国の戦争に巻き込み、国土を廃墟と化す。これが正体ではありませんか。

 現に、大軍拡の最前線に立たされようとしている沖縄では、万一、有事となった際に甚大な犠牲を被るとして、沖縄県や石垣市議会は敵基地攻撃兵器の配備に強く反対しています。沖縄を再び捨て石にするな。総理は、この声にどう応えますか。お答えください。

 第五は、敵基地攻撃能力保有は先制攻撃にならないという言い訳が成り立つかという問題です。

 安保三文書は、敵基地攻撃能力の柱に統合防空ミサイル防衛能力の強化を据えています。

 統合防空ミサイル防衛、IAMDとは、アメリカが地球的規模で構築している、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化したシステムですが、このシステムに自衛隊が米軍と完全に融合する形で参加しようというのであります。

 極めて重大なことは、米軍が二〇一七年に作成したドクトリンには、統合防空ミサイル防衛は先制攻撃作戦を含むことが公然と明記されていることです。そうなると、米軍がこの方針に即して先制攻撃で戦争を開始したら、自衛隊も一体に戦うことになるではありませんか。憲法違反であるだけでなく、国連憲章に違反する先制攻撃の戦争に、米軍の指揮下で自衛隊が参戦することになるではありませんか。しかとお答えください。

 第六は、五年間で四十三兆円もの大軍拡の財源をどう賄うのかという問題です。

 復興特別所得税の一部を軍事費に流用して期間を延長する軍拡増税に対して、我が党はもとより断固反対ですが、問題はそれにとどまりません。政府は歳出改革といいますが、どこをどう削るのかは明らかにされておらず、社会保障大削減の危険があります。さらに、軍事費を国債で賄うという、歴史の教訓を無視した暴挙に手を染めようとしています。

 結局、大軍拡を大前提とする限り、大増税、社会保障大削減、国家財政破綻、軍事栄えて民滅ぶの日本に行き着くことは明らかではありませんか。お答えいただきたい。

 最後に、第七は、東アジアに平和をつくる外交戦略についてです。

 東南アジア諸国連合、ASEANは、二〇一九年の首脳会議で、ASEANインド太平洋構想、AOIPを採択し、ASEANと日米中など十八か国で構成する東アジア・サミットを地域の全ての国を包み込む平和の枠組みとして強化し、行く行くは東アジア規模での友好協力条約を展望するという壮大な構想を提唱しています。

 日本共産党の提案は、憲法九条を持つ日本こそが、ASEANと協力し、ASEANインド太平洋構想を共通の目標として、この地域の全体をASEANのような戦争の心配のない地域にしていく先頭に立とうというものであります。

 そこで、総理に聞きます。

 一月十三日の日米共同声明では、ASEANインド太平洋構想への支持が明記されています。しかし、ASEANインド太平洋構想は、対抗ではなく対話と協力のインド太平洋地域をつくることを最も重要な構成要素として明記しています。対抗ではなく、これが要の精神なんです。この構想への支持を確認しながら、日米同盟の抑止力、対処力の強化によって地域の軍事的緊張と対抗を激化させる。これは根本的に矛盾していると考えませんか。お答えいただきたい。

 亡くなった評論家の加藤周一さんは、戦争の準備をすれば、戦争になる確率が大きい、もし平和を望むなら戦争を準備せよではない、平和を望むならば、平和を準備した方がいいという言葉を残しています。今、日本がなすべきは戦争の準備ではなく平和の準備であるということを私は心から訴えたいのであります。

 敵基地攻撃能力保有と大軍拡は、日本国憲法に違反し、専守防衛をかなぐり捨て、日本を戦争国家につくり変える歴史的暴挙です。日本共産党はその撤回を強く求めます。

 そして、この大軍拡を強行するというなら、主権者である国民の審判を仰ぐべきです。

 統一協会との底なしの癒着、政治と金の問題でのモラル破壊、これらの問題を含め、もはや岸田政権に日本のかじ取りを任せるわけにはいきません。

 解散・総選挙で国民の信を問うことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員にお答えいたします。

 まず、新型コロナの医療体制と地域医療構想についてお尋ねがありました。

 いわゆる第八波への対応については、これまで拡充強化してきた医療体制に加え、発熱外来や電話診療、オンライン診療の強化、救急医療機関の外来、入院機能の強化などに取り組んできました。足下の感染状況については、感染防止対策や医療体制の確保に努め、この感染の波を乗り越えるべく、全力を尽くしてまいります。

 一方、中長期的な人口構造の変化や地域の医療ニーズに応じて、病床機能の分化、連携により質の高い効率的な医療提供体制を確保するため、地域医療構想を進めることは必要であると考えています。病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえて、都道府県と連携して着実に進めてまいります。

 新型コロナを季節性インフルエンザと同じ五類に引き下げる方針についてお尋ねがありました。

 まず、足下の感染状況については、感染防止対策や医療体制の確保に努め、いわゆる第八波を乗り越えるべく、全力を尽くしてまいります。

 そして、原則、この春に、新型コロナを新型インフルエンザ等から外し、五類感染症とする方向で議論を進めます。これによって、より幅広く、一般の医療機関においてもコロナ患者の診療が可能となります。また、これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策措置の対応については、医療現場の混乱等を回避するためにも段階的な移行が重要であると考えており、具体的な内容について検討、調整を進めてまいります。

 賃上げについてお尋ねがありました。

 この十年間、女性や高齢者等の多様な労働参加が進む中で、パートタイム労働者等が増加し、賃金の単純な平均値は押し下げられた一方、約五百万人の雇用増が実現をし、総雇用者所得は増加をしています。

 そうした中、賃上げは新しい資本主義の最重要課題であり、まずは、この春の賃金交渉に向け、物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただくべく、民間にだけ任せるのではなく、政府としても、政策を総動員して環境整備に取り組んでいます。

 具体的には、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇などの取組に加えて、公的セクターや政府調達に参加する企業で働く方の賃金引上げなどに取り組むとともに、中小企業における賃上げ実現に向け、生産性向上などへの支援の一層の強化や、公正取引委員会、中小企業庁における下請Gメンの大幅増員による下請取引の適正化、価格転嫁の促進に取り組んでまいります。

 最低賃金については、消費者物価指数のみならず、労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力のデータを総合的に勘案して決定することとされており、引き続き、各種指標を注視してまいります。また、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指し、引き続き取り組んでまいります。

 なお、御指摘の内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることから慎重な検討が必要であると考えておりますが、企業の抱える現預金を人への投資や設備投資などに活用いただくことは重要です。あらゆる政策により、こうした未来への投資を促していきたいと考えております。

 消費税減税とインボイス制度についてお尋ねがありました。

 消費税については、急速な高齢化等に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられています。このように消費税は社会保障制度を支える重要な財源であるため、減税は考えておりません。

 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものです。中小・小規模事業者、クリエーター、フリーランスなど様々な方の懸念について、丁寧に課題を把握しながら、取引環境の整備やインボイス対応のための支援策の充実、さらには新たな税制上の負担軽減措置など、政府一体で連携して、制度の円滑な実施に向けて万全の対応を図ってまいります。

 教育費負担の軽減についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。御指摘の教育費負担の軽減を始め、個々の政策の内容や規模面はもちろんのこと、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加する、次元の異なる少子化対策を実現したいと考えております。

 今後、まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化します。あわせて、高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組みます。そして、その内容に応じて、財源についても、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 原子力政策についてお尋ねがありました。

 歴史上初の世界エネルギー危機に直面していると言われる中、エネルギー政策については、いわゆるSプラススリーEの原則の中で、近年は脱炭素に重きを置いて検討を進めてきましたが、これからはエネルギーの安定供給と脱炭素をいかに両立させるかが重要です。

 我が国の低いエネルギー自給率、高い中東依存度、再エネ適地が限られているといった厳しいエネルギー供給の状況を踏まえると、再エネ導入を最優先とし、全国規模での系統整備や海底直流送電の整備などを加速した上で、原子力を含めたあらゆるエネルギー源の活用を進める必要があります。

 原子力については、安全神話に陥ってしまった東京電力福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、いかなる場合もゼロリスクはないとの認識に立ち、安全性の確保を最優先として取り組んでまいります。

 その上で、年末に示したGXに向けた基本方針では、既存の原子力発電所の再稼働や、廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを進めるとともに、運転期間について最長で六十年に制限するという現行制度の枠組みを維持した上で、一定の停止期間に限って除外を認めるということ、また、最終処分を含めたバックエンドに政府を挙げて全力で取り組むこと、これらを盛り込んだところです。なお、運転期間の延長を行うか否かにかかわらず、高経年化を含めた安全性に関する原子力規制委員会の厳しい審査を経て、認可を受けなければ運転できないことには変わりはありません。

 この基本方針は、政府・与党において一年以上にわたる丁寧なプロセスを経て示したものであり、進め方に問題があったと考えてはおりません。国会では、関連予算、関連法案に関する活発な論戦を通じて、国民の皆様への説明を徹底してまいります。

 国家安全保障戦略等の決定の在り方についてお尋ねがありました。

 三文書については、国家安全保障会議四大臣会合、有識者会議、与党ワーキングチームなどで活発な議論を積み重ねてきました。その集大成として、政権与党としての方針を三文書の閣議決定の形でお示しをしました。議院内閣制の下では政権与党が国政を預かっており、まずは政府・与党において、一年以上にわたる丁寧なプロセスを経て方針を決定いたしました。

 この政府・与党の決定を踏まえて今国会に令和五年度予算案を提出しており、与野党との活発な国会議論を行ってまいります。それによって、更に国民の皆様への丁寧な説明を行ってまいります。

 そして、米国に対しては日本の現状について説明をしたものであり、国会と米国への説明の順序が逆や、民主主義を無視したということはないと考えております。

 反撃能力と憲法の関係についてお尋ねがありました。

 政府としては、従来から、一九五六年の政府見解で述べたような措置を行うことは法理上可能であり、そうである以上、そのための必要最小限の能力を保持することも法理上許されると繰り返し答弁しております。したがって、反撃能力に活用する装備について、憲法上の観点から認められないものとは考えておらず、今般、憲法解釈を変更したということはありません。

 その上で、近年、我が国周辺では、ミサイル関連技術と運用能力が飛躍的に向上し、質、量共にミサイル戦力が著しく増強される中、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあるという現実があります。

 これを踏まえて、弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合に、武力行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限の防衛措置として行使するものであり、こうした考えに基づいて反撃能力の保有を決定したところです。

 防衛力強化の内容と専守防衛の関係についてお尋ねがありました。

 防衛費の規模については、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げ、導き出したものです。

 また、反撃能力は、弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合に、武力行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限の自衛の措置として行使するものです。

 これらは、憲法及び国際法の範囲内で行うものであり、専守防衛の考え方は堅持をいたします。また、あくまで国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要となるものです。他国に脅威を与えるような軍事大国になろうとしているわけではなく、専守防衛を完全に投げ捨てているものでもありません。

 反撃能力の目的及び沖縄県における反対の声についてお尋ねがありました。

 そもそも、反撃能力は、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となるものです。お尋ねのような、日本を米国の戦争に巻き込み、国土を廃墟と化すものではなく、むしろ、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができるものであると考えております。

 一方で、反撃能力に活用する地上配備スタンドオフ防衛能力の具体的な配備先は決定しておりませんが、南西地域の防衛体制を強化することは今回の防衛力強化の柱の一つです。三文書の考え方について丁寧に沖縄県に説明していくこと、これも重要であると考えます。

 統合防空ミサイル防衛能力についてお尋ねがありました。

 国家防衛戦略においては、統合防空ミサイル防衛能力を強化し、我が国に対するミサイル攻撃については、ミサイル防衛システムを用いて迎撃しつつ、反撃能力を持つことにより、ミサイル防衛と相まってミサイル攻撃そのものを抑止していくこととしております。

 その上で、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動し、かつ、自衛隊は憲法、国際法、国内法に従って行動することから、米軍が先制攻撃で戦争を開始したら自衛隊も一体で戦うとか、自衛隊の指揮下で自衛隊が参戦することになるということはありません。

 防衛力強化の財源についてお尋ねがありました。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙するため、新たな国家安全保障戦略等の策定を通じて防衛力の抜本的強化を具体化し、将来にわたって維持強化していくことで、国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜いていく決意です。

 このために、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要ですが、これを歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保、税制措置などによりしっかりと確保していく考えです。

 その際、歳出改革は社会保障関係費以外の経費を対象としており、社会保障大削減の危機といった御指摘は当たりません。また、税制措置について、国民の負担感をできるだけ抑える観点から、個人、法人への影響に最大限配慮する仕組みにするとともに、政府として、コロナ禍や物価高などに機動的に対応しつつ、経済再生と財政健全化の両立に取り組む所存であり、軍事栄えて民滅ぶといった指摘も当たりません。

 なお、防衛関係費を建設公債の発行対象経費として整理したことについては、新たな国家安全保障戦略等において、防衛力の抜本的強化を補完する取組として防衛省と海上保安庁の連携や公共インフラ等が明確に位置づけられた中で、海上保安庁の船舶や空港、港湾等の公共インフラ整備が建設国債の発行対象であることを踏まえて、安全保障に係る経費全体で整合的な考え方を取る観点から、防衛省・自衛隊の施設整備や艦船建造に係る経費四千三百四十三億円について同様に建設公債の発行対象とする、こうした整理を行うことといたしました。

 インド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPへの支持と日米同盟の抑止力、対処力の強化の関係についてお尋ねがありました。

 我が国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと本質的な原則を共有するAOIPを一貫して強く支持し、地域の平和と繁栄のための協力を進めています。

 そして、先般の日米首脳会談においては、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していくとの決意を新たにし、同時に、引き続きAOIPを支持していくことで一致をいたしました。

 これらは互いに矛盾するものではなく、日米同盟の抑止力、対処力を強化することで、厳しさを増す地域の安全保障上の課題に的確に対応し、自由で開かれたインド太平洋地域を擁護していくとともに、AOIPに示されているような地域の平和と繁栄の確保と増進に向けた取組を日米が共に推進していく、こうした考えを示したものであります。(拍手)

副議長(海江田万里君) 内閣総理大臣から、答弁を補足したいとの申出があります。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほどの答弁の中で、自衛隊の指揮下と発言いたしましたが、正しくは、米軍の指揮下であります。訂正をさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    齋藤  健君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  永岡 桂子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  野村 哲郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    西村 明宏君

       防衛大臣    浜田 靖一君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    岡田 直樹君

       国務大臣    後藤 茂之君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    谷  公一君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    渡辺 博道君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 木原 誠二君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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