衆議院

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第5号 令和5年2月9日(木曜日)

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令和五年二月九日(木曜日)

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  令和五年二月九日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時一分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、持続的な経済成長や、より公平で中立的な税制の実現等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISA制度の抜本的拡充及び恒久化を行うこととしております。

 第二に、スタートアップエコシステムを抜本的に強化するため、スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設等を行うこととしております。

 第三に、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバルミニマム課税の導入及び相続時精算課税制度等の見直しを行うこととしております。

 このほか、土地の売買等に係る登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。

 以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。井林辰憲君。

    〔井林辰憲君登壇〕

井林辰憲君 自由民主党の井林辰憲です。

 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)

 冒頭、今般、日本列島を襲った寒波、大雪により亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

 今後も降雪などが予想される中、政府においては、引き続き、各自治体とも連携しつつ、緊張感を持って万全の対策を取っていただきたいと思います。

 それでは、質疑に入ります。

 長引くコロナ禍に加え、エネルギーや食料品価格の高騰は、国民生活に大きな影響を与えています。国民の不安を払拭するためにも、予算や税制などあらゆる手段を講じて、成長軌道を確たるものにしていかなければなりません。

 そこで、本日は、こうした観点も踏まえて、今般の税制改正について質問させていただきます。

 まず、NISA制度について伺います。

 岸田総理が掲げる成長と好循環の実現に向けては、賃上げを通した家計の勤労所得のみならず、金融資産所得もしっかりと増やしていかなければなりません。

 今般のNISA制度の抜本的拡充、恒久化について、どのように貯蓄から投資への流れが加速され、資産所得倍増につながるのか、金融担当大臣から御説明をお願いします。

 次に、相続税、贈与税の改正について伺います。

 六十歳以上の世帯が保有する金融資産は全体の約六五%を占め、五十歳未満の世帯が保有する資産の四倍近くにも上る中、資産の再分配機能の確保を図りつつ、安心して若年層への贈与を進めることができる環境の整備が重要であると考えます。

 今般の税制改正においては、資産移転の時期に、より中立的な税制の構築に向け、相続時精算課税の基礎控除の創設などを行うこととされていますが、その概要と基本的な考え方について、財務大臣から御説明をお願いします。

 本日冒頭、今般、日本列島を襲った寒波、大雪の被害について申し上げましたが、今般の税制改正においては、相続時精算課税の下で贈与を受けた土地、建物が被災した場合には、相続時にその課税価格を再計算する取扱いが新設されます。所得課税においても、特定非常災害による損失に係る雑損失及び純損失の繰越期間について、損失の程度や記帳水準に応じ、例外的に三年から五年に延長する措置が講じられます。政府が今般こうした特例の創設に踏み切ったことを評価したいと思います。

 昨年秋に発生した台風第十五号は、約一万三千棟の住家に被害を及ぼしました。これから確定申告が始まる中、税務当局においても、こうした災害の被害に遭われた方々の不安にしっかりと寄り添い、きめ細やかな対応を行うことが必要であると考えますが、財務大臣のお考えをお伺いします。

 続いて、法人税に関して伺います。

 企業における各種の無形資産への投資の規模をGDP比で国際比較してみると、研究開発投資やソフトウェア投資に比べ、人材投資は諸外国に大きく水を空けられる状況となっています。この状況を不退転の決意で改善し、我が国の競争力を高めることは喫緊の課題です。

 今般の税制改正において、企業の成長を先導する人材を創出するための取組をどのように後押しするか、財務大臣から御説明をお願いします。

 続いて、国税組織の体制について伺います。

 国税職員の方々は、税収を確保し、国の財政を支えるという大変重要な職責を果たしています。経済取引のグローバル化、デジタル化が進む中、今後も、適正かつ公平な課税を実現していくため、国税組織の定員の拡充と機構の充実を強力に進めるべきと考えますが、財務大臣のお考えをお伺いします。

 最後に、税制に対する国民の姿勢について、一言申し述べます。

 税という字の由来は、稲穂を抜く、すなわち、農民が朝廷や武士に対して米を貢ぐという行為にあると言われています。しかし、議会制民主主義の発展を経、今や税制は国民の手の中にあります。税は単なる金銭的な負担ではありません。先人たち、現世を生きる私たち、そしてまだ見ぬ子孫たちが、税負担というバトンをつなぐことによって、国民の生活、そしてこの日本という国を連綿と受け継いでいくものです。

 納税者一人一人がこの国を支えるために欠かすことのできないリレー選手であるという自覚と誇りを持っていただけるよう、この議場で真摯な議論を行うことが何より大切であると申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 井林辰憲議員の御質問にお答えいたします。

 まず、NISA制度についてお尋ねがありました。

 我が国には一千百兆円に上る家計の現預金が眠っており、それを投資につなげることで、勤労所得に加えた金融資産所得を増やしていく。そして、家計の投資が企業の成長の原資となれば、企業価値の向上により、家計の金融資産所得は更に拡大する。こうした成長と資産所得の好循環を実現させていきたいと考えています。

 NISAの抜本的拡充や恒久化を通じ、中間層を中心とした幅広い層が、若年期から高齢期に至るまで、長期、分散、積立投資による継続的な資産形成を行うことを支援することで、貯蓄から投資へのシフトを進め、家計の資産所得倍増を目指していきたいと考えています。

 次に、相続税、贈与税の改正についてお尋ねがありました。

 今般の改正においては、若年世代への資産移転を進めていただく観点から、特定の方からの贈与を相続時まで累積させて納税する相続時精算課税を選択される場合には、毎年の贈与に基礎控除を創設するとともに、一年間に受けた贈与ごとに毎年贈与税を納める暦年課税を選択される場合には、相続財産に加算する贈与の期間を延長する等の措置を行うこととしています。

 これらの見直しにより、大多数の方にとっては相続時精算課税が選択しやすくなることにより、また、とりわけ多くの相続財産があるごく一部の方にとっても相続財産と一体的に課税される期間がより長くなることにより、資産移転の時期の選択に、より中立的な税制になるものと考えております。

 次に、台風十五号の被害に遭われた方に対する税務当局の対応についてお尋ねがありました。

 まず、昨年の台風十五号で亡くなられた方々に改めて哀悼の意を表するとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。

 こうした自然災害により被害を受けた方々には、雑損控除や災害減免法による所得税の軽減免除、申告期限等の延長、納税の猶予などの税制上の特例措置が用意されております。

 昨年の台風第十五号についても、被災者の方々に対しては、税務署において事前説明会を開催し、雑損控除などの特例措置の申告相談を受け付けるなど、丁寧に対応しているところです。

 これから確定申告の時期を迎えますが、引き続き、被災者の方々の事情を踏まえ、きめ細やかに対応をしてまいります。

 次に、法人税の改正についてお尋ねがありました。

 我が国の競争力を高めるためには、経済を牽引していく人への投資を促進していくことが重要です。

 こうした観点から、今般の改正においては、大学や高専等の設立のため企業が寄附を行う場合には、個別の審査を受けなくても全額を損金算入可能とするとともに、研究開発税制において、博士号取得者や一定の経験を有する研究人材の雇用を促進する仕組みを創設します。

 これらの取組を通じて、企業の経営資源を活用した教育を促進するとともに、国際競争を勝ち抜く研究開発をリードする人材投資を促進してまいります。

 最後に、国税組織の体制の充実についてお尋ねがありました。

 経済活動のグローバル化、デジタル化に対応し、適正、公平な課税、徴収を引き続き実現していくためには、税務執行体制の強化を図っていくことが重要であると考えております。

 そのため、令和五年度予算においては、業務の見直し、効率化等を最大限に進めることで、国際的な租税回避への対応など、緊要性の高い分野に人員を重点的に振り向けながら、全体として三十七名の定員増を行うなど、国税庁の体制整備を進め、適正かつ公平な課税の実現に努めることとしております。(拍手)

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議長(細田博之君) 櫻井周君。

    〔櫻井周君登壇〕

櫻井周君 立憲民主党・無所属の櫻井周です。

 会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 「信なくば立たず。信頼こそが政治の一番大切な基盤である」と岸田総理は施政方針演説で述べました。国民の皆様に納得して税金を納めていただくためには、政府への信頼が必須です。しかし、国民の信頼を失うような事案が散見されます。

 まずは、財政健全化の信憑性です。

 令和五年度予算政府案では、十兆円以上のプライマリーバランスの赤字です。一方で、財務大臣は、財政演説において、「二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進してまいります。」と述べました。

 そもそも、一月二十四日の経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料によれば、異次元の楽観論である成長実現ケースですら二〇二五年度は赤字です。成長実現ケースは実質GDP成長率を二・〇%としていますが、この十年間の自民党内閣では〇・六%、その直前の民主党内閣の一・五%を大きく下回っています。

 政府の財政健全化計画について、あるエコノミストは、およそ実現可能とは思われない、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標を形式的に堅持するだけで、財政健全化の道筋が維持されるわけでは当然ないと述べています。非現実的な計画では、誰も政府を信用しません。

 財務大臣、財政健全化の取組、実現可能な計画を作り直すことを提案しますが、いかがですか。これは、今すぐ緊縮財政をやれ、増税をやれという意味ではございません。正直にやろう、現実的にやろうという提案です。

 次に、復興税の流用問題です。

 防衛力強化のための財源確保は本法案には盛り込まれておりませんが、政府において、復興特別所得税の税率引下げ分を防衛力強化の財源に振り替える、いわば流用が決定されたと承知しています。財務大臣、復興税を防衛費に流用するのはやめていただけませんか。

 岸田総理は負担感がないと発言しましたが、負担は増えます。国民を錯誤に陥らせて増税するというのは、詐欺のようなものです。こうした詐欺のような手法での増税では、政治への信頼はますます失われます。財務大臣の見解をお答えください。

 さらに、旧統一教会について、岸田総理は、社会的に問題が指摘されている、関係を絶つことを自民党の基本方針として徹底すると述べています。

 しかし、現状、旧統一教会は宗教法人として認証されています。つまり、税制上の優遇を受け続けています。社会的に問題が指摘されている旧統一教会が納税を逃れているのでは、不信感が高まります。

 文部科学大臣、統一教会の解散請求を一刻も早く、できれば今月中、遅くとも今年度中には進めることを提案しますが、いかがですか。

 今のペースで少子化と人口減少が進めば、日本という国は消滅してしまいます。少子化の原因の一つは、経済格差、特に、若い世代は大学などの学費を貸与型奨学金という名の借金で賄い、就職した後も可処分所得が増えないことです。したがって、賃金の底上げ、経済格差是正、分厚い中間層を取り戻す、これこそが我が国が取り組むべき課題です。

 なお、頑張った人が大金持ちになる、これはすばらしいことです。ですが、たくさん稼げるのは世の中が平和で安定しているからであり、稼ぎに応じた負担をお願いするべきです。

 岸田総理は、二〇二一年九月の自民党総裁選挙で、いわゆる一億円の壁を解決すると主張しました。

 本法案は、高所得者に対する追加的な課税制度の導入が提案されています。基準が二二・五%のこの制度で、一億円の壁は解消できますか。金融所得課税での累進税率の導入を提案しますが、財務大臣の見解をお答えください。

 一方で、富裕層に対する課税を強化すれば、日本国外に移住する税逃れの問題が懸念されます。税逃れ対策の検討を提案しますが、財務大臣の見解をお答えください。例えば、アメリカには国籍保有者に対してミニマム課税的な制度がありますが、参考にしてはいかがでしょうか。

 消費税については、逆進性を緩和するためとして軽減税率が導入されましたが、どれほどの効果があったのでしょうか。財務大臣、お答えください。

 軽減税率制度は、効果的、効率的な低所得者対策となっておらず、実務上の負担や混乱などの問題も多いことから廃止することとし、代わりに、給付つき税額控除を導入することを提案しますが、財務大臣、いかがですか。

 本年十月導入予定の適格請求書等保存方式、インボイス制度については、免税事業者が取引過程から排除される、不当な値下げ圧力を受ける、インボイスの発行、保存等のコスト負担が大きいなどが懸念されています。したがって、インボイス制度の廃止を提案しますが、財務大臣、いかがですか。

 インボイス制度については、個人情報の漏えい問題も指摘されています。国税庁が開設した適格請求書発行事業者公表サイトで個人情報が公表されているとの指摘がありました。これを受けて、国税庁は、個人情報を非公開とすべく修正しました。しかし、非公開としたはずの項目は、実は簡単なプログラムで復元できるとの指摘があります。財務大臣、事業者公表サイトを即時に一旦閉鎖することを提案しますが、やっていただけますか。

 我が国の長期にわたる経済と社会の停滞の原因の一つは、賃金が上がらないことにあります。賃金の底上げを支援すべきです。

 この十年、実施してきた賃上げ税制について、賃上げ実現への思いは評価しますが、残念ながら、十分な効果はありませんでした。この十年間の自民党内閣での実質賃金の上昇率は、マイナス〇・七%です。その直前の民主党内閣ではプラス〇・一%でしたので、大きく下回っています。岸田内閣の一年間で、実質賃金は何と二・五%も低下しました。なぜ賃上げ税制では賃金が上がらなかったのか、財務大臣、お答えください。

 この分析と反省がなければ、同じ失敗を繰り返すことになります。賃上げのためには、最低賃金の引上げ、福祉従事者の賃上げ、派遣労働から直接雇用への転換、残業代未払いに対する取締り強化などの即時実施を提案します。

 ふるさと納税制度は、生まれ故郷やお世話になった地域、これから応援したい地域の力になるための制度です。ところが、近年の使われ方は、実質負担額が二千円で数万円の商品が買えるという官製オンラインショッピングになってしまっています。納税額が大きい方がメリットも大きくなる、高額所得者優遇制度です。

 ふるさと納税制度では、二〇二一年度、過去最多の八千三百二億円が集まりましたが、納税先の自治体が変わっただけで、地方全体での税収はほとんど増えません。一方で、返礼品等のコストとして三千八百五十一億円かかっています。本来、地方行政サービスに充てられるはずの税金の四六%もの額が、返礼品や大手サイト等に使われていることになります。

 そもそも、地域の力になりたいという寄附者の意思を尊重するのであれば、返礼品は不要なはずです。返礼品を禁止し、返礼品等のコストの約三千億円を地方の子育て支援等の充実に振り向けられるようにすることを提案しますが、総務大臣と財務大臣のお考えをそれぞれお聞かせください。

 岸田内閣の看板政策のはずだった所得倍増が、いつの間にか資産所得倍増にすり替えられました。今、政治が目指すべきは賃金の底上げであり所得倍増であると考えますが、財務大臣のお考えはどうでしょうか。

 一方で、今般御提案のNISA拡充には賛同します。しかし、これで果たして資産所得倍増になるのですか。効果について、金融担当大臣、御説明お願いします。

 資産所得倍増は貯蓄から投資にということですが、株式市場のパフォーマンスは、日本株よりも外国株の方がはるかに良好です。日本の個人金融資産が外国株投資に向かえば、キャピタルフライトのようなことになりませんか。それぐらい日本経済の現状は厳しいと認識しますが、金融担当大臣の認識をお答えください。

 これまで、多国籍企業による税逃れや、国家間での法人税の引下げ競争が問題となってきました。世界各国とも、医療、福祉、教育など公的サービスの充実が求められており、その財源の確保が課題でした。

 この課題に対して、二〇一二年六月、民主党の野田佳彦内閣の安住淳財務大臣の下で、税源侵食と利益移転の問題について国際的な取組、BEPSプロジェクトを立ち上げました。十年を経て、グローバルミニマム課税として結実したことを高く評価いたします。

 今般の法改正は所得合算ルールについてです。課題として残っている軽課税所得ルールと国内ミニマム課税に関する取組について、財務大臣、御説明ください。

 BEPSでの議論において、知的財産は移転価格税制と密接に関連しており、極めて重要です。我が国の知的財産に基づく産業を振興しつつ税収を確保するために、知的財産を正当に評価する手法を充実させていくことが必要であるところ、その取組について、知的財産戦略担当大臣に説明をお願いいたします。

 LGBT理解増進法案は、二〇二一年に、自民党を含め多くの政党が了解しました。しかし、高市大臣は、二〇二一年の自民党総裁選挙の際のアンケートでは、LGBT法案に反対と回答しました。今週、岸田総理は、LGBTに関する法案をきちんと進めてほしいと自民党幹部に指示したと報道があります。高市大臣、LGBT理解増進法案には賛成ですか、反対ですか。

 一方で、高市大臣は、二月七日の記者会見で、与党で党議決定し、内閣で閣議決定したといった事柄については方針に従ってまいりたいと述べました。高市大臣、LGBT理解増進法案の自民党の党議決定において反対しないということでよいですか。まさか、反対されるものではないですよね。

 選択的夫婦別姓について、二〇二一年の自民党総裁選挙で、岸田総理は、民放の番組で、導入を目指して議論すべきだと述べました。高市大臣は、選択的夫婦別姓に反対と回答しました。高市大臣は、今も選択的夫婦別姓に反対ですか。

 さらに、高市大臣は、雑誌「諸君!」二〇〇二年三月号の「ネコ撫で声の「男女平等」に騙されるナ! クタバレ「夫婦別姓」」という対談に参加し、女性を被害者的に捉えて何が何でも男女平等と唱えるのもナンセンスと発言しましたが、そのお考えは今も変わりませんか。

 なお、岸田総理も、二〇一二年、民主党政権のときに、ある対談において、民主党が所得制限をつけなかったのは突き詰めると共産主義的な側面があると、所得制限なしの子ども手当を批判しました。しかし、今になって、自民党も反省し、所得制限の撤廃を主張するようになりました。

 LGBT理解増進、同性婚、選択的夫婦別姓、所得制限なしの児童手当など、この十年間、自民党の反対によって多くの政策が実現できませんでした。この結果、日本の社会が多様性を育む機会を失い、少子化も進行しました。失われた十年について、自民党と岸田内閣に猛省を求めます。

 我が党は、他党とともにLGBT差別解消法案を提出しています。この早期成立を強く求めます。その前段として、今からでも、LGBT理解増進法案、そして同性婚、選択的夫婦別姓、児童手当の所得制限撤廃に賛成することを自民党と岸田内閣に強く求めます。

 最後になりますが、日本の官僚は優秀です。政治から木に竹を接げと命じられれば、できてしまいます。そうやって、木に竹を接ぎ、竹に木を接ぎとやっているうちに、全体としては矛盾だらけの政策体系になってしまっているのではないでしょうか。

 全ての政策について、いま一度、原理原則に立ち返り、そして我が国がどこに向かうべきなのか、政治の側が検討することを提案して、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 櫻井周議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、財政健全化の取組についてお尋ねがありました。

 財政健全化に向けては、累積する債務残高を中長期的に減少させていくことが重要であり、国、地方のプライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これにより債務残高対GDP比を安定的に引き下げること、これを政府の方針としているところであります。

 今回の中長期試算では、力強い成長を実現し、今後も歳出効率化努力を継続した場合には、二〇二五年度に国と地方を合わせたプライマリーバランスが黒字化するという姿が示されております。

 この目標の達成は容易ではありませんが、努力すれば決して実現不可能なものではなく、御指摘のような、実現可能な計画を作り直す必要はないと考えております。

 次に、復興特別所得税についてお尋ねがありました。

 復興特別所得税については、現下の家計の負担増にならないよう、その税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとされておりますが、その延長幅につきましては、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところであり、復興事業に影響を及ぼすことのないようにしております。

 そのため、復興特別所得税を防衛費に流用しているとの御指摘は当たらないものと考えております。

 引き続き、国民の皆様に御理解を深めていただけるよう丁寧な説明を行うとともに、経済成長と構造的な賃上げの好循環を実現することで国民の負担感を払拭できるように努力をしてまいります。

 次に、いわゆる一億円の壁と富裕層の税逃れ対策についてお尋ねがございました。

 いわゆる一億円の壁と呼ばれる問題については、与党税制調査会において幅広い観点からの御議論をいただいたところであり、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を導入することとされたことは、税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものと認識しております。

 政府としては、令和七年から施行される今回の改正の効果をよく見極めてまいりたいと考えております。

 また、富裕層の税逃れ対策についての御指摘がありましたが、個人が株式等を保有したまま日本国外に転出する際に、株式等のキャピタルゲインの課税逃れを防止するため、主要国と足並みをそろえて、出国時に未実現の譲渡所得に対して課税する国外転出時特例を導入する等の措置を講じているところです。

 なお、お尋ねのような国籍保有者に対するミニマム課税につきましては、居住地を基礎として国家間の課税権を調整する国際的な課税ルールとの関係等を踏まえ、慎重な検討が必要であると考えております。

 次に、軽減税率制度と給付つき税額控除についてお尋ねがありました。

 軽減税率制度は、消費税率一〇%への引上げに伴う低所得者への配慮として、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の税負担を直接軽減するものであり、消費税の逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるという点で、一定の効果を上げてきたものと考えております。

 一方で、給付つき税額控除については、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではなく、消費者にとって痛税感の緩和の実感につながらないという問題があり、軽減税率制度を見直して、給付つき税額控除を導入することは考えておりません。

 次に、インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために重要なものです。御指摘のような小規模事業者の方々の様々な御懸念について耳を傾け、政府一体で連携して丁寧に課題を把握しながら、きめ細かく対応してまいります。

 具体的には、免税事業者を始めとした事業者の取引について、取引環境の整備に取り組むとともに、令和四年度補正予算において、インボイス対応のための支援策の充実を盛り込んでいます。

 さらに、令和五年度税制改正においては、これまで免税事業者であった方がインボイス発行事業者となった場合の負担軽減措置や、少額のインボイスの保存に関する中小事業者の事務負担軽減措置などを講ずることとしております。

 その上で、国税庁のサイトにおいては、法令に基づき、インボイス発行事業者の氏名、登録番号、登録年月日などが掲載されておりますが、御指摘の、簡単なプログラムで復元される項目も法令で公表することを定められたものに含まれることから、復元されたことを理由に本サイトを閉鎖することは考えておりません。他方、その公表の在り方については、不断に検討してまいりたいと考えております。

 次に、賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 賃金については、税制のみならず、企業収益や雇用情勢など、様々な要因から影響を受けることが考えられますが、過去に行われた調査によれば、賃上げ促進税制が賃金の引上げを後押ししたと回答した企業が多くあったことや、毎年おおむね約十万社の企業に御活用いただいてきたことなどを踏まえれば、一定の効果があったと考えております。

 次に、ふるさと納税についてお尋ねがありました。

 ふるさと納税制度については、総務省において返礼品の割合に制限を設けるなどの基準が定められており、子育て支援を含め、地域活性化につながる取組のために活用されていると承知しております。

 その上で、子ども・子育て政策については、最も有効な未来への投資であり、総理指示を踏まえ、今後、こども政策の強化に関する関係府省会議において、具体的に検討を進めていくものと承知しております。

 次に、賃金の底上げ等についてお尋ねがありました。

 岸田内閣としては、物価上昇を超える賃上げの実現に向け、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充等に取り組むとともに、成長分野における大胆な投資の促進により、生産性と賃金の高い産業、企業を創出し、こうした成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めることで、構造的な賃上げの実現を図ることとしております。

 財務省としても、こうした施策を通じ、成長と分配の好循環の下、国民の所得を引き上げ、未来に希望を持つことができる社会をつくり上げてまいりたいと考えております。

 次に、NISA拡充の効果についてお尋ねがありました。

 NISAは、長期、積立て、分散投資による資産形成を支援するのに利便性の高い制度であり、中間層を中心とする層に対して、資産形成の入口として定着しつつあります。

 NISAの抜本的拡充、恒久化によって、中間層を中心とした幅広い層の資産形成を更に促し、また、金融経済教育の推進など資産所得倍増プランに盛り込まれた様々な施策も総動員して、家計の資産所得倍増につなげていきたいと考えております。

 次に、貯蓄から投資によるキャピタルフライトについてお尋ねがありました。

 新しい資本主義の下、成長も分配もを実現していくためには、家計の資金が我が国企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を生み出していくことが重要と考えています。

 そのためには、家計による投資の対象として、魅力ある日本の金融資本市場を構築していくことが不可欠であり、資産所得倍増プランでは、国際金融センターとしての地位を確立していくための施策も盛り込んでいるところです。こうした取組は、同時に、海外投資家の資金を日本に呼び込むことにもつながるものと考えています。

 このように、投資資金は内外の双方向に流れることが考えられるため、資産所得倍増に向けた取組がキャピタルフライトにつながるとは一概に言えないと考えております。

 最後に、グローバルミニマム課税制度についてお尋ねがありました。

 今般の法改正においては、制度の詳細に係る国際的な議論の進展や、諸外国における実施に向けた動向等を踏まえ、所得合算ルールに係る法制化を行うこととしております。

 お尋ねの軽課税所得ルールや国内ミニマム課税制度については、OECDにおける、本年以降、詳細が議論される見込みであり、我が国としても国際的な議論に積極的に参加するとともに、令和六年度税制改正以降の法制化を検討してまいります。(拍手)

    〔国務大臣永岡桂子君登壇〕

国務大臣(永岡桂子君) 櫻井議員にお答えいたします。

 旧統一教会の解散命令請求についてお尋ねがありました。

 解散命令の要件は宗教法人法に厳格に定められており、この要件に該当するかどうかの判断に当たっては、法人の活動に係る十分な実態把握と具体的な証拠の積み重ねが不可欠と考えております。

 解散命令請求の判断については、予断を持ってお答えすることは差し控えますが、報告徴収、質問権の効果的な行使等を通じ、旧統一教会の業務等に関して、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにするための対応をスピード感を持ちつつも丁寧に行い、その上で、法律にのっとり、必要な措置を講じてまいります。(拍手)

    〔国務大臣松本剛明君登壇〕

国務大臣(松本剛明君) 櫻井議員からの御質問にお答えをいたします。

 ふるさと納税制度について御質問いただきました。

 ふるさと納税の意義については、議員御指摘のとおりでございます。令和元年度に対象自治体を国が指定する制度が導入され、返礼割合を三割以下かつ地場産品とすることといった基準が定められました。

 返礼品として地場産品を提供することについては、新たな地域資源の発掘を促し、雇用の創出や地域経済の活性化につながる効果もあると考えております。

 自治体においては、クラウドファンディング型のふるさと納税を始め、寄附金の使い道をあらかじめ明示して募集を行う事例が増えております。例えば、子供食堂など、子育て支援に関する取組のためにもふるさと納税を募集している自治体もあると承知をしております。

 引き続き、現行制度の下で、各自治体と納税者の皆様の御理解をいただきながら、ふるさと納税制度が適正に運用されるよう取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 櫻井周議員からは、まず、知的財産を評価する手法についてお尋ねがございました。

 知的財産の価値評価に関しては、平成二十九年十一月から、知的財産戦略本部の下で知財のビジネス価値評価検討タスクフォースを開催し、平成三十年五月に知的財産の価値評価の在り方についての報告書を取りまとめ、公表しました。

 報告書では、複数の定量的な評価方法を、留意すべき長所、短所とともに紹介しています。知的財産の評価において何よりも重要なことは、企業が、経営資源を投入して価値を創造するメカニズムにおける知的財産の位置づけを明確に把握することです。そのためのツールとして、経営デザインシートを提唱しています。

 担当大臣といたしましては、関係省庁と協力して、この経営デザインシートを一層普及させ、知的財産の正当な評価が行われていくよう努めてまいります。

 次に、LGBT理解増進法案についてお尋ねがございました。

 もとより、性的指向や性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えております。

 その上で、御指摘の法案につきましては、自民党内で了承に至っていないものと承知をしております。

 自民党で、政調会における法案審査や総務会における全会一致のプロセスを経て党議決定をした場合には、私は、自民党所属議員としてその方針に従います。

 最後に、選択的夫婦別氏制度及び私の過去の対談における発言についてお尋ねがございました。

 まず、御指摘の対談でも申し上げましたが、夫婦の氏について定めた現行の民法第七百五十条は、女性を差別し被害者とする内容にはなっておりません。例えば、私の夫は、通称使用届を提出して、戸籍上は高市ですが、社会生活は山本を使用しております。また、加藤厚生労働大臣は、男性ですが、御令室の氏を戸籍名として選ばれたと承知をいたしております。

 夫婦別氏制度導入の是非については、自民党内でも以前から議論しているテーマでございます。政府として、夫婦別氏を導入するか否かを含め、現時点において方針はまだ決まっていないものと承知いたしております。いずれにせよ、様々な論点に関し、慎重に議論を進めていくことが必要だと考えております。(拍手)

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議長(細田博之君) 住吉寛紀君。

    〔住吉寛紀君登壇〕

住吉寛紀君 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 まず冒頭、防衛費増に関わる税制措置について、日本維新の会は、増税ありきで検討を進める岸田内閣の方針には真っ向から異議を唱え反対していることを明確にした上で、財務大臣にお伺いいたします。

 防衛力強化のための追加費用の財源として見込む一兆円の税制措置について、法人税、所得税、たばこ税で各々幾らの額を想定しているのか、お答えください。

 先日の予算委員会では、財務大臣は、所得税と復興特別所得税の関係について、二〇三八年以降については、負担が継続するという意味においては、今までになかった負担をお願いするということにはなるんだと思います、当面は負担の額は増えないということでありますと答弁されました。

 恒久財源として所得税付加税一%ですので、二〇三七年までは復興特別所得税から予算を振り替え、二〇三八年からは実質増税するということになると思いますが、なぜ財務大臣はこれを流用とも増税とも明言しないのでしょうか。その理由を明確にお答えください。

 法人税における追加付加税については、中小企業に配慮して、所得換算で約二千四百万円の控除を設け、結果、全法人の僅か六%弱のみが対象となるとのことですが、財政措置の税源の六、七割を占めるこの付加税について、対象を六%に絞った理由、根拠をお示しください。

 岸田総理は、昨年の参議院本会議において、我が党議員の質問に答え、租税特別措置については、政策を所管する各省庁においてその必要性や政策効果について評価を行い、毎年度の税制改正プロセス等で精査を行ってきたところと答弁されました。

 そこで、お伺いいたします。

 法人向けに現在設定されている各種租税特別措置を全部合わせたら、総額で幾ら程度の減免措置を講じているのでしょうか。当然、令和五年度税制改正プロセスの中で精査を行ったのでしょうから、大体の額は把握されているはずと思料します。財務大臣、明確にお答えください。

 その上で、対象を選別よりも、業種ごとに数多く存在する特別措置をゼロベースで見直した方が効果的なのではないでしょうか。併せて見解をお示しください。

 さて、令和五年度税制改正についてお伺いいたします。

 日本維新の会は、結党以来、簡素、公平、中立の税制を、簡素、公平、活力の税制に転換すべきとの理念を持って税制改革の提言をしてまいりました。

 総理は、今国会の冒頭の施政表明演説において、これまでの時代の常識を捨て去り、強い覚悟と時代を見通すビジョンを持って、新たな時代にふさわしい、社会、経済、国際秩序をつくり上げていかなければなりませんと宣言されましたが、提出された税制改正大綱は、いまだに各種業界やその意向を受けた政治的な駆け引きによる継ぎはぎに終始し、昨今の情勢を踏まえた、国民全体の負担を公平化するための効果的な税制改正のメニューに乏しく、国の中長期の成長戦略を見据えた税制となっているとも言い難いものです。

 大臣は、税の簡素、公平の観点から見て、今の税制をどのように認識されていますか。お答えください。

 今回の改正案では幾つかの税制措置を創設しておりますが、逆に、今回の改正で廃止した税制措置は何があるのか、お答えください。

 我々は、さきの臨時国会で、新しい規制を一つつくる場合には既存ルール二つ以上を撤廃するという二対一ルール法案を国会に提出しました。この法案は新規の規制に関するものですが、複雑化している現在の税制においても同じ考え方が必要ではないでしょうか。

 経済の活性化に真に資する適正かつ効果的な優遇税制措置は必要です。しかし、そうした措置を新たに入れるのであれば、その都度、役割を終えた、あるいは効果を余り発揮していない措置は中止し、特別措置の総量を規制していくという考えについて、大臣の見解をお伺いいたします。

 国民の中で、自分の給料から幾らの税金が引かれているのか、さっと計算して把握することができる方はほとんどいないのではないでしょうか。税制全体の構造をより簡素なフラットタックスにしていくことの必要性について、大臣の見解をお伺いいたします。

 経済成長を牽引するのは個人消費です。そのためには、いかに可処分所得を増やしていくかが肝要です。我々日本維新の会は、所得税や法人税といったフローに係る税は減税し、ストックに係る税に移行していくことによって可処分所得を増やし、かつ資産の円滑な移動を促すという税制を志向していますが、こうした我々の考えに対する大臣の見解をお伺いいたします。

 公正な税制の観点から質問します。

 我々は、元々、政治、行政の恣意的な運用の原因となる軽減税率には反対の立場ですが、複数税率下におけるインボイス制度の導入には、税の公平性から、賛同するものです。一方で、現下の燃料費増や円安に起因する物価上昇の影響を大きく受けている、これまで免税事業者であった中小零細企業への負担増は、制度の猶予などの個別の対応でなく、そもそも、消費税や法人税の減税あるいは社会保険料の減免などで対応すべきと考えますが、大臣の見解をお尋ねします。

 電子帳簿保存制度について、スキャナー保存に関わる要件緩和等を講じられたことは評価できる一方で、システム対応が間に合わなかった相当の理由がある場合には猶予措置を講ずるとしており、紙での保存も容認する方針とも受け取れます。

 社会のDX化を進める上で、電子帳簿の普及、浸透を進めることは必要不可欠です。インボイス制度における更なる経過措置も同様ですが、DX機運が損ねられないよう、政府として、対応が遅れている中小企業を中心に、環境整備や導入支援を強化すべきであると考えます。少しでも例外が残れば、結果として、事務コストは想定よりも下がらず、システム投資分が回収できないことにもなりかねません。

 税務手続のデジタル化や簡素化、マイナンバーのフル活用による確実で手間のかからない納税システムの構築、国税庁と年金機構の法人データのシステムリンクによる各種保険料の徴収漏れへの対応などへの取組状況と併せて、デジタル大臣の見解、認識をお尋ねいたします。

 NISAにおける税制改正についてお伺いいたします。

 我が党がかねてより主張していた制度の恒久化や投資枠の上限拡大、非課税期間の無期限化に踏み切ったことについては高く評価しております。NISAの手本となっているイギリスでは、恒久化後も効果を検証して改良を重ねております。政府には、簡易性、柔軟性の観点から、国民にとってより利便性が高い仕組みに改善していくことをお願いいたします。

 一方で、気がかりな点もございます。本来はNISAの大幅拡充とセットで見直すべき、いわゆる一億円の壁について、追加の税負担を求める対象が、年間所得が三十億円を上回る二百から三百人程度とごく僅かのみになったことです。今回対象をここに絞った理由、三十億円の根拠について、財務大臣、お答えください。

 現在、一人当たりの預貯金額は約七百万円とのデータもある中で、生涯投資上限額を一千八百万円に設定したことは、中間層の資産形成を後押しするというNISAの趣旨に照らせば、かなり思い切った案です。

 この二つを照らし合わせて制度全体を俯瞰した場合、投資余力のある人ほど恩恵が大きくなる金持ち優遇となってしまわないか、格差が是正されるどころか、かえって拡大してしまわないかと危惧しますが、岸田総理が掲げる分配と成長の好循環という新しい資本主義の分配機能の観点から、財務大臣の見解をお伺いいたします。

 所得の高い人の資産形成が金融商品中心という実態を考えると、損益通算範囲を拡大して総合課税化を行うことで税負担の公平化を検討すべきではないかと考えますが、併せて財務大臣の見解をお尋ねいたします。

 NISAをせっかく拡充しても、日本国内に資金が流れる仕組みをつくらなければ、米国株などへの投資となりかねず、我が国の成長への効果は限定的となります。こうした懸念に対する対応策について、金融担当大臣にお伺いいたします。

 岸田総理は、次元の異なる少子化対策を行うとしております。我が国の少子化はまさに静かなる有事であり、であるなら、税制の観点からも早急に対策を講ずるべきです。

 将来世代のための税制として、例えば、企業の女性雇用率や女性役員比率、男性育児休業取得率などに応じて企業に政策的な減税を講じる等が考えられますが、こうした考えについて、財務大臣の見解をお伺いいたします。

 我が党は、将来世代が安心して暮らせる仕組みづくりとして、チャレンジのためのセーフティーネット構築に向けて、給付つき税額控除等の最低所得保障制度の導入を基軸とした再分配の最適化、統合化を本格的に検討し、年金等を含めた社会保障全体の改革を推進するべきと考えております。

 岸田総理は、昨年の税制改正の際、今後の税制については、経済社会の構造変化も踏まえながら総合的に検討してまいりますと述べました。そして、今国会では、新たな時代にふさわしい、社会、経済、国際秩序をつくり上げていかなければなりませんとおっしゃっております。であれば、まさに今こそ、今後の税制の方向性を示すべきではないでしょうか。

 贈与税、相続税の廃止、遊休資産に対する課税強化などの固定資産税の適正化、負の所得税の考え方の導入、長期に雇用された人に有利な退職金所得控除や二分の一課税ルールの見直しといった退職金課税の見直しなど、フローからストックへ、労働市場の流動化の促進、将来世代のための税制を進めるべきと考えておりますが、もちろん丁寧な検討は大前提として、こうした見直しの方向性について、現時点での財務大臣の見解をお尋ねいたします。

 最後に、エコカー減税についてお尋ねいたします。

 日本企業の思惑を超え、世界のEV化の進行は急速に進んでおり、残念ながら、我が国の取組は遅れております。政府は、遅くとも二〇三〇年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車一〇〇%を実現できるよう包括的な措置を講じるとしておりますが、ここで言う電動車には、電気自動車のみならず、ハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車なども含まれております。世界の趨勢はEV化でまとまりつつある中で、我が国の方向性が定まっていないのではないかと危惧しますが、経済産業大臣の認識を伺います。

 EV時代への対応が遅れれば、国内での投資も起こらず、国内にお金が流れません。税制が決まっていないというのは欧米との競争において致命的と考えますが、自動車関連税制の抜本的な見直しが三年先送りされたことに関して、経済産業大臣の見解をお伺いいたします。

 我々日本維新の会は、税、社会保障制度、成長戦略、特に労働市場の流動化を三位一体として抜本的に改革する日本大改革プランを掲げております。

 次の時代に向けての改革である日本大改革プランの実現に向け、我が党は、政府と真正面から向き合い、国会で真摯な議論を行っていくことをお約束して、私の質問とします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 住吉寛紀議員の御質問にお答えいたします。

 まず、防衛力強化のための財源のうち、税制措置についてお尋ねがありました。

 本税制措置については、複数年かけて段階的に実施することとし、令和九年度において、法人税、所得税、たばこ税により一兆円強を確保することとしております。

 各税目の規模については、施行時期にもよるため今後精査が必要ですが、目安としては、法人税の付加税により六千億円強から七千億円強程度、所得税の付加税により二千億円程度、たばこ税の引上げにより二千億円程度となると考えております。

 次に、復興特別所得税についてお尋ねがありました。

 復興特別所得税については、現下の家計の負担増にならないよう、その税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとされておりますが、その延長幅については、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところであり、復興事業に影響を及ぼすことのないようにしております。

 そのため、復興特別所得税を防衛費に流用しているとの御指摘は当たらないものと考えております。

 また、二〇三八年以降も付加税が続くことは従来より明言しており、実質増税ではないかとの御指摘に対しては、経済成長と構造的な賃上げの好循環を実現することで、税制措置による国民の負担感を払拭できるように努力してまいります。

 次に、法人付加税についてお尋ねがありました。

 御指摘のように、法人税における付加税の対象は全法人の六%弱と見込んでおりますが、これは、税額で五百万円、中小法人の所得換算で約二千四百万円までは付加税を課さないこととした結果であり、地域経済、雇用を支える中小企業に配慮したものであります。

 次に、租税特別措置の減免総額等についてお尋ねがありました。

 法人税関係の租税特別措置減収額につきましては、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書に基づいて試算すれば、令和三年度において約一・九兆円となっております。

 また、租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手段となり得る一方で、税負担のゆがみを生じさせる面があることから、継続ありきではなく、必要性や政策効果をよく見極めた上で、必要な見直しを行っていくことが重要と考えております。

 次に、税制の簡素、公平に対する認識等についてお尋ねがありました。

 税制には様々な機能が期待されており、また、その在り方については、御指摘の簡素、公平の観点からも、経済社会の構造変化等を踏まえて不断に見直していく必要があると認識しております。

 この点、今般の改正においても租税特別措置を見直す等の対応を行っており、具体的には、港湾隣接地域における技術基準適合施設の特別償却や、認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例など、五項目の租税特別措置を廃止することとしております。

 次に、租税特別措置の総量規制についてお尋ねがありました。

 租税特別措置については、個々の措置について必要性や政策効果をよく見極めながら不断に見直していくことが重要であると考えており、御提案のように、機械的に措置の総量を規制することは適当ではないと考えております。

 次に、フラットタックス等についてお尋ねがありました。

 フラットタックスとは、一般的に、累進課税の対比として、税率を一律にした税制を指すと承知しておりますが、税制の基本的な役割の一つである所得再分配機能の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。

 また、議員御指摘の可処分所得の増加や資産の円滑な移動の促進に関しては、例えば、令和五年度税制改正において、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充、恒久化を行うとともに、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、資産移転の時期の選択に、より中立的な税制を構築するための相続税、贈与税の見直しを行うこととしております。

 いずれにせよ、厳しい財政状況を踏まえつつ、公平、中立、簡素の観点から、バランスの取れた税体系を構築していく必要があると考えております。

 次に、中小零細企業の負担増への対応についてお尋ねがありました。

 法人税や保険料で対応する場合、負担額が元々少ない方への効果が小さいなどの問題があります。

 また、消費税については、全世代型社会保障制度を支える重要な財源であり、これを減免することは考えておりません。

 次に、いわゆる一億円の壁についてお尋ねがありました。

 本件については、税負担の公平性を確保する観点から、市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行うこととされていたところです。

 この点、現下の所得税、社会保険料の負担率について見ると、所得金額が一億円を下回る所得層の多くがおおむね二〇%前後となっており、また、一億円を超えたあたりの所得層は負担率がそこまで大きく低下していない一方、かなりの高所得者層の負担率の低下が著しい状況にあります。

 このような負担率の状況等を踏まえ、与党税制調査会において幅広い観点から御議論いただき、税負担の公平性を確保する観点から、おおむね三十億円を超える高い所得を対象として追加的な税負担が生じるような制度設計となっております。

 次に、NISAの抜本的拡充、恒久化と一億円の壁への対応についてお尋ねがありました。

 NISAの抜本的拡充や恒久化については、中間層を中心とした幅広い層が、若年期から高齢期に至るまで、長期、積立て、分散投資による継続的な資産形成を行うことを支援することで、貯蓄から投資へのシフトを進め、家計の資産所得倍増を目指すものです。

 また、これらの取組と併せて、税負担の公平性を確保する観点から、与党税制調査会において幅広い観点からの御議論をいただいた上で、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を導入しております。

 こうした取組を通じて、成長の果実を分配し更なる成長へとつなげる、成長と分配の好循環を推進してまいりたいと考えております。

 なお、上場株式の譲渡益や配当等の課税方式については、金融市場にゆがみを与えにくいことや、税負担の軽減を目的として意図的に金融取引のタイミングを調整する行為を抑制できることなどから、分離課税が導入されてきたところです。

 いずれにせよ、政府としては、今回の改正の効果をよく見極めてまいりたいと考えております。

 次に、NISAの拡充に関する資金の流れについてお尋ねがありました。

 貯蓄から投資へを進める上では、家計の資金が我が国企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を生み出していくことが重要と考えています。

 そのためには、投資対象として魅力ある日本の金融資本市場を構築していくことが不可欠です。資産所得倍増プランでは、我が国が国際金融センターとしての地位を確立していくため、金融資本市場の活性化に向けた施策も盛り込んでいるところであり、こうした施策をしっかりと推進してまいります。

 次に、将来世代のための税制についてお尋ねがありました。

 一般的に、何らかの政策目的を果たすために税負担の軽減等を行う租税特別措置については、有効な政策手段となり得る一方で、税負担のゆがみを生じさせる面があります。

 御提案の、税制を用いて企業の女性雇用率等の向上を目指す措置についても、その検討に当たっては、まずは、要望される省庁において必要性や政策効果についてよく見極めていただくことが重要であると考えております。

 最後に、税制見直しの方向性についてお尋ねがありました。

 様々な御提案をいただきましたが、例えば、贈与税、相続税の廃止は、税制の最も基本的な役割である財源調達や再分配などの観点から、様々な課題があると考えます。

 また、退職所得課税については、これまでも、働き方やライフコースの多様化等を受け、現下の退職給付の実態を踏まえた対応を行ってきております。

 いずれにせよ、御提案いただいたものを含め、こうした具体的な税制の在り方については様々な御意見があるものと承知をしており、国民の声に丁寧に耳を傾けながら、経済社会の構造変化に対応した、あるべき税制に向け、幅広く検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 電子帳簿の普及に向けた導入支援、国税庁と年金機構の連携及び税務手続のデジタル化、簡素化についてお尋ねがありました。

 電子帳簿の普及に向けては、会計ソフトなどの導入を支援するためのIT導入補助金が措置されており、令和四年度補正予算において補助対象の拡大を行うなど、中小企業の業務効率化やDXの推進に向けた支援策の充実がなされていると承知しております。

 また、国税庁と日本年金機構の間では、従来から、源泉徴収義務者である法人に関する情報を国税庁から機構に対して提供していたところですが、二〇一八年からは、これをネットワーク化することで情報提供の頻度を上げて、情報連携を強化していると承知しております。

 さらに、税務手続のデジタル化、簡素化については、国税庁とデジタル庁で連携し、例えば、e―Taxを利用する際に、マイナンバーカードを使ってマイナポータルと連携することで、控除証明書のデータを一括取得し、確定申告書に自動入力する仕組みを構築するなど、納税者の利便性向上を図っています。

 デジタル庁としては、今後も、関係省庁と連携しながら、社会全体のDXの推進を通じて、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を実現すべく取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 住吉議員からの御質問にお答えいたします。

 我が国の自動車政策の方向性と自動車関連税制についてお尋ねがありました。

 自動車の脱炭素化には、電気自動車だけではなく、燃料の脱炭素化なども含め、様々な選択肢があります。いずれも技術的な課題があることを踏まえれば、あらゆる技術を追求することが重要であり、多様な選択肢による世界全体への貢献を通じて、我が国の国際競争力の強化を目指してまいります。

 また、自動車関連税制については、御指摘の電気自動車が最も優遇される形で、例年より長い三年後までエコカー減税を延長することとしております。

 その上で、抜本的な見直しについては、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望、カーボンニュートラルへの貢献、自動車の枠を超えたモビリティー産業の発展に伴う経済的、社会的な受益者の広がりなどの観点を踏まえつつ、受益と負担の関係を含め、公平、中立、簡素な課税の在り方についてしっかりと検討を進めてまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 国民民主党の前原誠司です。

 私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 岸田内閣は、発足当初、新しい資本主義の名の下、所得倍増を高らかにうたっていましたが、去年の骨太の方針で決められたのは資産所得倍増でした。所得倍増と資産所得倍増は似て非なるものです。

 日本銀行が発表した昨年九月末時点での国民が保有する金融資産は約二千五兆円ですが、直近の統計から推計すると、六十歳以上が六三%を保有し、五十歳以上まで広げてみると保有割合は八二%となります。二十代から四十代は、貯蓄どころか、子供の教育費や住居費、つまり家賃やマイホームのローンの返済に追われ、貯蓄どころではありません。ましてや、未婚の男性の約半分は年収が二百万円以下であり、結婚という壁も越えられないのが現実です。ゼロに二を掛けてもゼロにしかならないのです。

 日本の最大の課題の一つは、言うまでもなく、少子化による人口減少です。教育予算の倍増と教育の無償化による家計負担軽減とともに、所得倍増こそ政府はど真ん中に掲げ、賃金の上がる経済実現に努力することこそが国民に夢と希望を与えることになるのではないでしょうか。答弁を求めます。

 NISAの拡充と恒久化を否定するわけではありませんが、懸念も残ります。

 この三十年で、日経平均株価は一・二六倍程度しか増えておりませんが、ニューヨーク・ダウは約十倍以上に伸びています。二〇二一年の株価上昇率だけ見ても、日本が四・九%なのに対し、アメリカは一八・七%、ドイツは一五・八%、フランスは二八・九%であります。日本の成長率は先進国と比べても低い。そのことが株価の伸び率の差にも表れているのであります。

 ということは、資産運用を政府が奨励すればするほど、海外へのキャピタルフライトを促すことにはなりませんか。そして、円安も助長するのではないでしょうか。

 現在、日本の国債残高は約一千兆円以上に上りますが、先進国で最悪水準にある日本の財政を支えているのは国民の預貯金です。貯蓄から投資を促せば、国債の安定消化が難しくなり、外国資本の比率を高めて、金利上昇リスクが高まるのではないでしょうか。そして、それが元利償還を増やし、財政への悪影響を生じさせるのではないでしょうか。答弁を求めます。

 いずれにいたしましても、日銀が国債の半分以上を保有していること自体が異常であり、アベノミクスは持続可能ではなかったということが、貯蓄から投資を進めれば進めるほど明らかになるということを申し上げて、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 前原誠司議員の御質問にお答えいたします。

 まず、教育予算と賃金の上がる経済についてお尋ねがありました。

 教育予算につきましては、これまでも、高等教育の修学支援新制度を導入するなど、安定財源を確保しつつ家計負担軽減の取組を進めてきており、さらに、令和六年度からは、同制度の対象を多子世帯や理工農系の学生等の中間層に拡大するため、担当省庁において検討が進められているところです。

 また、賃金につきましては、岸田内閣として、物価上昇を超える賃上げの実現に向け、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充等に取り組むとともに、成長分野における大胆な投資の促進により、生産性と賃金の高い産業、企業を創出し、こうした成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めることで、構造的な賃上げの実現を図ることとしております。

 財務省としても、こうした施策を通じ、成長と分配の好循環の下、国民の所得を引き上げ、未来に希望を持つことができる社会をつくり上げてまいりたいと考えております。

 次に、資産運用の奨励によるキャピタルフライトと円安についてお尋ねがありました。

 新しい資本主義の下、成長も分配もを実現していくためには、家計の資金が我が国企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を生み出していくことが重要と考えています。

 そのためには、家計による投資の対象として魅力ある日本の金融資本市場を構築していくことが不可欠であり、資産所得倍増プランでは、国際金融センターとしての地位を確立していくための施策も盛り込んでいるところです。こうした取組は、同時に、海外投資家の資金を日本に呼び込むことにもつながるものと考えています。

 このように、投資資金は内外の双方向に流れることが考えられ、また、為替相場は様々な要因を背景に市場において決まるものであることから、資産所得倍増に向けた取組がキャピタルフライトや円安を助長するとは一概には言えないと考えております。

 最後に、貯蓄から投資と国債金利、財政への影響についてお尋ねがありました。

 国債金利は、経済、財政の状況や海外の市場の動向等、様々な要因を背景に市場において決まるものであり、お尋ねの、貯蓄から投資との関係でその動向についてコメントすることは市場に無用の混乱を生じさせかねないため、お答えすることは差し控えます。

 その上で、我が国の債務残高がGDPの二倍程度に累積するなど厳しい状況にある中、仮に金利が上昇すれば、利払い費の増加により政策的経費が圧迫され、財政が硬直化するといったおそれがあるのは事実です。

 こうした中、財政規律を守ることは極めて重要であり、累積する債務残高を中長期的に減少させていくため、プライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これにより債務残高対GDP比を安定的に引き下げることとの方針の下、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信頼が失われることがないよう、引き続き、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

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議長(細田博之君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等改正案について質問します。(拍手)

 今年に入ってからも、食料品を始め、あらゆる商品の値上げが止まりません。主要食品メーカーは四月までに一万品目を超える値上げを決めており、さらに、毎月二千品目を超える値上げが続くと指摘されています。子供におやつを買ってやれない、寒くても暖房を極力使わず生活している、終わりのない物価高騰に、全国で悲鳴の声が上がっています。

 電気代、ガス代の高騰も深刻で、一月の電気代の請求は衝撃であり恐怖であったとの声も各地で聞きました。これに対して政府の対策は極めて不十分であり、地方を中心に二千万世帯を超えて利用されているLPガス、プロパンガスは対象にすらなっていません。直ちに、電気代、ガス代の高騰分を補填する抜本対策を講じるべきではありませんか。

 あらゆるものの値段が上がる中、物価高騰に苦しむ国民を直接的に支援する最も有効な方法は、消費税の減税です。政府は、消費税は社会保障制度の財源だからと減税を否定していますが、年金カット、高齢者の医療費負担拡大を強行しておいて、その言い訳は通りません。直ちに消費税減税を決断すべきです。

 賃上げが物価高騰に全く追いついていません。

 岸田総理は、昨年秋に、物価上昇をしっかり組み込む形で最低賃金を引き上げると言いながら、なぜ足下の物価上昇率を下回る最低賃金の再改定に手をつけないのですか。

 政府は、企業の賃金支払い能力のデータを勘案して決定すると言いますが、ならば、中小企業の支払い能力の支援こそが必要ではありませんか。

 政府の対策の柱である賃上げ税制は、赤字の中小企業に役に立ちません。中小企業の七割以上が今年は賃上げの予定なしと回答しています。緊急対策として、賃上げに応じて社会保険料を軽減する仕組みを取り入れ、全ての企業が賃上げできるようにするべきです。

 物価高騰の中、インボイス制度を実施すれば、アニメーションや漫画業界を支えているアニメーターや声優などクリエーターの二割、三割が、負担が重くて廃業するしかないと訴えています。中小零細業者や一人親方、個人タクシーの免税業者も生活の糧を失うと訴えています。財務大臣はどうしてこうした声に耳を傾けないのですか。

 政府提案の負担軽減措置は、時限措置で問題の先送りでしかありません。税制により仕事を奪うインボイス制度の中止を強く要求するものです。

 インボイス制度は、大手飲料メーカーの販売員、シルバー人材センターで働く高齢者、太陽光パネルを設置する一般世帯、道の駅で野菜を売る農家など、年間数十万円という僅かな収入にも消費税の納税を強いる、まさに国民窮乏化策と言わざるを得ません。消費税の免税点制度はこういう小規模事業者を守るためにあるのではありませんか。

 一方で、大企業優遇税制や資産家優遇税制は温存されたままです。一億円の壁の是正を言いながら、来年度税制改正で対象になるのは所得三十億円超の僅か約二百人の超富裕層だけで、税負担率の上限はたった二二・五%です。所得税の最高税率四五%に全く追いつかず、およそ格差是正と言えるものではありません。株式配当については少額の配当を除き総合課税とし、株式譲渡益は高額所得者には税率三〇%にするなど、一億円の壁を取り払う抜本改正をやるべきではありませんか。

 国民生活がこれだけ窮乏しているときに、政府は、年金や医療の積立金や中小企業向けの基金、復興特別税を軍拡の財源に充てるとしています。まさに国民犠牲の軍拡予算そのものではありませんか。しかも、戦後初めて、自衛隊の艦船や施設整備のための建設国債の発行にまで踏み切ろうとしています。過去の侵略戦争で国民生活を破綻させた歴史の教訓に真っ向から反するものではありませんか。

 大軍拡をやめ、国民の暮らしを最優先すべきことを強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。

 まず、消費税についてお尋ねがありました。

 足下の物価高騰に対してはこれまでもきめ細やかな対応を行ってきており、特に、家計への影響が大きい低所得者世帯については、子育て世帯に対する児童一人当たり五万円の給付や、住民税非課税世帯への五万円の給付など、重層的な支援策を切れ目なく講じてきております。

 その上で、急速な高齢化に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中において、全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置づけられている消費税について、減税を行うことは考えておりません。

 なお、年金や医療などの社会保障制度については、必要に応じて不断に見直しを行っていく必要があると考えております。

 次に、インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために重要なものです。御指摘のような小規模事業者の方々の様々な御懸念について耳を傾け、政府一体で連携して丁寧に課題を把握しながら、きめ細かく対応していきます。

 具体的には、免税事業者を始めとした事業者の取引について、取引環境の整備に取り組むとともに、令和四年度補正予算において、インボイス対応のための支援策の充実を盛り込んでいます。

 さらに、令和五年度税制改正においては、これまで免税事業者であった方がインボイス発行事業者となった場合の負担軽減措置や、少額のインボイスの保存に関する中小事業者の事務負担軽減措置などを講ずることとしています。

 こうした予算措置や税制上の経過措置は、インボイス制度への円滑な移行のためのものであり、時限措置で問題の先送りを行っているわけではありません。

 さらに、インボイス制度移行後においても、引き続き、丁寧に課題を把握しながら、関係省庁で連携して必要な対応を講じていきます。

 次に、消費税の事業者免税点制度についてお尋ねがありました。

 事業者免税点制度は、制度の公平性や透明性を著しく損なわない範囲で、中小事業者の事務負担に配慮して設けられた制度であり、インボイス制度を導入している諸外国においても、事業者免税点制度とインボイス制度が併存しています。

 インボイス制度の導入による事業者免税点制度への影響については、顧客が消費者である場合や、取引先の事業者が簡易課税制度の適用を受けている場合や、個々の取引当事者の関係などによって、引き続き事業者免税点制度の適用を受ける事業者もいるものと考えられます。

 その上で、免税事業者が課税事業者となる場合については、会計ソフトの導入等の支援や負担の軽減措置を講ずることとしています。

 引き続き、こうした支援措置などの周知を行いながら、制度の円滑な実施に向けて万全の対応を図っていきます。

 次に、いわゆる一億円の壁についてお尋ねがありました。

 本件については、与党税制調査会において幅広い観点から御議論いただいたところであり、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を導入するとされたことは、税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものと認識しております。

 政府としては、令和七年から施行される今回の改正の効果をよく見極めてまいりたいと考えております。

 最後に、防衛予算についてお尋ねがありました。

 防衛力の抜本的強化は、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中で、喫緊の課題であり、将来にわたって維持強化していかなければなりません。

 これを安定的に支えるための財源として、今般、税外収入の確保などあらゆる工夫を講じておりますが、これらは国民の皆様の御負担をできるだけ抑えるために行っているものであり、国民犠牲の軍拡予算との御指摘は当たりません。

 また、復興所得税についても、現下の家計の負担増にならないよう、その税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとされておりますが、その延長幅については、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところであり、復興事業に影響を及ぼすことのないようにしております。

 さらに、防衛関係費の一部を建設公債の発行対象経費として整理したことについては、安全保障に係る経費全体で整合的な考え方を取る観点から、海上保安庁などの施設整備費や船舶建造費が公債発行対象経費とされていることを踏まえ、防衛省・自衛隊の施設整備費や艦船建造費についても同様の建設公債の発行対象として整理することとしたものであり、御指摘のような歴史の教訓に反するものではないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 田村議員からの御質問にお答えします。

 電気・ガス料金の支援策についてお尋ねがございました。

 今月の請求分から値引きが開始されますが、支援の水準は、規制料金の値上げ認可申請を行う電力会社、行わない電力会社が想定される中、全国の御家庭における平均的な負担増が二割程度と見込まれることを踏まえ、公平性や迅速性の観点から、全国一律でその水準と同等程度の値引き幅といたしました。

 都市ガスも、電気とのバランスを勘案し、料金上昇による負担の増加に対応する値引きといたしました。LPガスにつきましては、小規模零細事業者が多いことから、事務負担を考慮し、人件費、配送費の抑制に効果のある事業効率化に向けた支援を行い、今後の価格抑制につなげていくこととしております。

 その上で、昨年九月に措置した電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金において、自治体の判断により、地域の実情を踏まえたきめ細かい対応ができることといたしております。

 政府としては、まずは、今月の請求から反映される電気・ガス料金の値引き支援を需要家に確実にお届けできるよう予算執行に取り組んだ上で、今後も、経済状況や燃料の価格動向を注視し、関係省庁と連携して臨機応変に対応してまいります。

 また、中小企業の賃上げについてお尋ねがございました。

 御指摘の中小企業向けの賃上げ税制については、令和三年度に約十三万社が活用しており、さらに、今年度から税額控除率を最大二五%から四〇%に引き上げるなど、抜本的に拡充をいたしました。

 あわせて、価格転嫁対策と生産性向上に取り組み、赤字であるなど、賃上げ税制の活用が難しい事業者も含め、中小企業が賃上げできる環境整備を進めてまいります。

 まず、価格転嫁対策については、毎年九月と三月に価格交渉促進月間を実施しております。昨年九月の促進月間における交渉、転嫁の状況を調査し、多くの取引先を持つ約百五十社について結果を公表いたしました。調査の結果を踏まえ、交渉と転嫁の状況が芳しくなかった約三十社の親事業者に対して、今月、指導助言を実施してまいります。

 また、一月から下請Gメンを三百名体制へと更に増強しており、指導助言や業界別の取組の強化へとつなげてまいります。

 加えて、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言について、大企業への宣言の拡大とその実効性の向上に引き続き取り組んでまいります。

 また、補正予算で増額をしたものづくり補助金や事業再構築補助金について補助上限や補助率を上乗せする措置を講ずることで、給与支給総額を六%以上増加させるなどの意欲的な取組を後押ししてまいります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 田村貴昭議員より、最低賃金の再改定などについてお尋ねがございました。

 最低賃金の決定に当たっては、消費者物価指数のみならず、労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力のデータを総合的に勘案することとされており、今後の最低賃金の決定に向けて、引き続き、物価動向や今年の春闘の状況も含めた各種指標を注視してまいります。また、物価高に対しては、政府として総合経済対策の迅速かつ着実な実行を図っており、その状況も注視する必要があると考えております。

 また、中小企業が賃上げしやすい環境の整備は重要であります。厚生労働省では、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げるとともに、生産性向上に資する設備投資などを支援する業務改善助成金の拡充を行っております。

 社会保険料の軽減については、安心して就労できる基盤の整備は事業主の責任であること、労働者の健康の保持等が事業主の利益にも資することから、事業主に保険料負担を求めているものであり、慎重な検討が必要と考えております。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   松本 剛明君

       財務大臣

       国務大臣   鈴木 俊一君

       文部科学大臣 永岡 桂子君

       厚生労働大臣 加藤 勝信君

       経済産業大臣 西村 康稔君

       国務大臣   河野 太郎君

       国務大臣   高市 早苗君

 出席副大臣

       財務副大臣  井上 貴博君


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