衆議院

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第8号 令和5年3月7日(火曜日)

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令和五年三月七日(火曜日)

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  令和五年三月七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまラシード・タールビー・エル・アラミー・モロッコ王国衆議院議長御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 御報告することがあります。

 元本院議長横路孝弘君は、去る二月二日逝去されました。痛惜の念に堪えません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 つきましては、議院運営委員会の議を経て横路孝弘君に対する弔詞を贈呈することといたしました。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに本院議長の要職につき終始議会政治の発展に貢献された横路孝弘君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣後藤茂之君。

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) ただ今議題となりました新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症の発生及びまん延の初期段階から効果的に対策を講じ、国民の生命及び健康を保護するとともに、国民生活や国民経済への影響が最小となるよう、感染症の発生及びまん延の防止に関する施策の総合調整等に関する機能を強化する必要があります。

 このため、感染症の発生及びまん延の初期段階から新型インフルエンザ等対策本部が迅速かつ的確な措置を講ずるための仕組み等を整備するとともに、内閣官房に感染症の発生及びまん延の防止に関する施策の総合調整等に関する事務並びに同対策本部等に関する事務を所掌する内閣感染症危機管理統括庁を設置することを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、新型インフルエンザ等対策本部長は、新型インフルエンザ等のまん延により、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるにもかかわらず、総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合は、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置に係る事態又は新型インフルエンザ等緊急事態に至る前であっても、新型インフルエンザ等対策本部が設置されている間において、指定行政機関の長や都道府県知事等に対し、必要な指示をすることができることとします。

 第二に、地方公共団体の事務の代行等について、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定により実施する措置に加え、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の規定により実施する措置についても代行等が可能となるよう対象事務を拡大するとともに、新型インフルエンザ等緊急事態に至る前であっても、新型インフルエンザ等対策本部が設置されている間において代行等を行うことができることとします。

 第三に、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置に係る事態又は新型インフルエンザ等緊急事態において、都道府県知事が正当な理由なく要請に応じない者に対し命令を行うに当たって勘案する事項を法令上明確化することとします。

 第四に、新型インフルエンザ等対策に係る費用について都道府県又は市町村の負担を軽減するために特別の交付金の交付に関する規定を設けるとともに、地方債の起債の特例を設けることとします。

 第五に、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置することとします。

 内閣感染症危機管理統括庁は、感染症の発生及びまん延の防止に関する施策に係る司令塔機能を強化するため、新型インフルエンザ等対策本部長である内閣総理大臣を助け、行政各部の対応を強力に統括することといたします。具体的には、政府行動計画の策定及び推進に関する事務、新型インフルエンザ等対策本部に関する事務、新型インフルエンザ等対策推進会議に関する事務のほか、行政各部の施策の統一保持上必要な企画及び立案並びに総合調整に関する事務のうち感染症の発生及びまん延の防止に関するものをつかさどることとします。また、内閣感染症危機管理統括庁に内閣感染症危機管理監等を置くこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田野瀬太道君。

    〔田野瀬太道君登壇〕

田野瀬太道君 自由民主党・無所属の会の田野瀬太道です。

 ただいま議題となりました新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 三年前、国内初の新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、政府・与党は、国民の皆様、医療関係者など多くの方々に御協力をいただきながら、未知のウイルスとの戦いに一丸となって取り組んでまいりました。

 ある日突然、地球上からウイルスが消えてなくなるということはあり得ない。ウイルスは、変異を繰り返しながら世の中に存在し続けるわけであります。すなわち、コロナ禍からの脱却、コロナウイルスからの克服とは、人間側がいかにウイルスに順応するのか、いかに未知のウイルスに対する備えを万全にするかが肝要であるということは、当初から周知の事実でありました。

 早期発見、検査体制の整備、病床の確保などの医療体制の強化、ワクチン接種の推進、治療薬の研究開発、そして、国民の暮らしや事業者のなりわいを支援するための思い切った緊急経済対策を講じるなど、多角的に取組を進めてまいりました。

 オミクロン株への置き換わりが進んだ昨年以降は、できる限り社会経済活動を維持しつつ、重症化リスクの高い方々への対応に重点を置き、国民の命と暮らしを守ることに全力で取り組んできたところであります。

 私の秘書がコロナに感染した際、迷惑をかけて本当に済みませんとしきりに頭を下げました。あなたは、無症状なのに自発的に検査に行き、陽性であることを発見してくれた、事務所内や市中での感染拡大を未然に防いでくれて本当にありがとう。コロナ禍における心のありよう、意識の持ち方についても、我々は多くのことを学び、教訓を得たところであります。

 そこで、改めて、これまでの新型コロナウイルス感染症対策を振り返り、どのように評価されておられるか、総理にお伺いをいたします。

 次に、感染症危機に対応するための司令塔機能の整備についてお尋ねいたします。

 感染症はいつ発生するか分からず、グローバル化が高度に進展した現代社会において、初動対応を誤ると人命と社会経済活動の双方に甚大な影響を及ぼします。また、感染症危機対応においては、医学的専門知識が必要であることは言うまでもなく、変異するウイルスを相手に、情報収集も含め、息の長い取組を継続することも必要です。周りを海に囲まれた島国である我が国の地理的特性を生かし、各種水際対策を強化充実させ、備えを進めておくことも非常に大事なことであると考えます。

 国家の最高レベルでの総合戦略機能を発揮し、これらの難しい課題を高い見識で取りまとめ、強力なリーダーシップの下、各種政策を進めることが必要であることは、これまでに得た教訓の一つであります。

 今般、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置するわけですが、何がどう変わるのか、その設置の意義について後藤国務大臣にお伺いいたします。

 今回の新型コロナウイルス感染症への対応においては、平成二十四年に成立したインフル特措法の初めての適用ケースでありました。全体の方針を決める政府と、現場を預かる都道府県が懸命にコロナに立ち向かいました。その一方で、両者の連携が必ずしもうまくいかなかったのではないかとの指摘もあるところです。

 そこで、インフル特措法について、新型コロナウイルス感染症対策の課題をどのように認識し、次の感染症危機に備え、いかなる点を改正するのか、改正の意義を後藤国務大臣にお伺いいたします。

 今回の法案は、次の感染症危機への備えを万全にするための非常に重要な法案であり、速やかな成立が求められます。我々自由民主党は、コロナ禍からの脱却を目指し、コロナ前の日常を取り戻すために引き続き全力で取り組んでいくことをお約束し、私の質問を終えます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田野瀬太道議員の御質問にお答えいたします。

 これまでの新型コロナ対策の評価等についてお尋ねがありました。

 政府としては、国民の命と暮らしを最優先で守る観点から、感染拡大と社会経済活動のバランスを取りつつ、科学的知見やエビデンスを重視し、新型コロナ対策に最大限取り組んでまいりました。この間の、医療、介護の現場で働く職員の皆様を始めとする国民お一人お一人の御理解と御協力に改めて感謝を申し上げます。

 こうした取組により、新型コロナの人口当たりの感染者数等は他のG7諸国と比べて低い水準に抑えられ、GDPや企業業績は既に新型コロナ前の水準を回復し、有効求人倍率もコロナ前の水準を回復しつつあると承知をしております。

 新型コロナについては、特段の事情が生じない限り、五月八日から、新型インフルエンザ等感染症から外し、五類感染症に位置づけることを決定いたしました。国民の皆様の御理解と御協力を得ながら、円滑に平時の日本を取り戻していけるよう、万全の準備を進めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 田野瀬太道議員の御質問にお答えいたします。

 内閣感染症危機管理統括庁の設置の意義についてお尋ねがありました。

 昨年五月から六月にかけて開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において、一元的に感染対策を指揮する司令塔組織を整備することが必要との御指摘がなされたところです。

 今回の法改正で設置される内閣感染症危機管理統括庁は、このような感染症危機対応における司令塔機能を担うものであり、平時の準備、感染症危機発生時の初動対応、政府対策本部の事務等に係る司令塔機能を一貫して統括庁に集約し、意思決定を一元化、迅速化するとともに、厚生労働省との一体的対応を確保しつつ、新たに専門家組織として設置される国立健康危機管理研究機構の質の高い科学的知見を踏まえて感染症危機に対応することとしております。

 これらの司令塔機能の発揮を通じ、国民の生命、健康の保護と社会経済活動との両立を図りながら、感染症危機に迅速的確に対応することが可能になるものと考えております。

 インフル特措法の改正意義についてお尋ねがありました。

 昨年五月から六月にかけて開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において、初動期等において、政府と都道府県が一体となって危機対応できる仕組みづくりが必要、感染が著しく拡大した場合も行政機関の機能を維持できる仕組みづくりが必要等の指摘がなされたところです。

 今回の法改正は、このような新型コロナウイルス感染症への対応の課題を踏まえ、政府対策本部長の指示権の発動可能時期を前倒しして、政府対策本部が設置されたときから行うことができるようにするとともに、地方公共団体の事務の代行等について、要請可能時期及び対象事務を拡大し、感染症法に基づく事務も含め、政府対策本部が設置されたときから行うことができるようにするなど、感染症の発生及び蔓延の初期段階から国と地方が一体となって迅速かつ的確な措置を講ずるための仕組み等を整備するものであり、次の感染症危機への備えに万全を期すことを目指すものです。(拍手)

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議長(細田博之君) 中谷一馬君。

    〔中谷一馬君登壇〕

中谷一馬君 立憲民主党・無所属の中谷一馬です。

 会派を代表して質問します。(拍手)

 まず、放送法の政治的公平について伺います。

 小西洋之議員が入手した内部文書が全て総務省の行政文書であると、今朝、松本大臣が認めました。本件を総理主導で即時に徹底調査し、結果を全て公表すると約束していただけませんか。

 そして、全くの捏造文書だと断言した高市大臣は、大臣はもちろん、衆議院議員も辞めるべきではありませんか。

 平成二十七年の高市大臣答弁以降、テレビ局は、一つの番組が放送法四条違反とみなされれば停波のおそれがあるため、政権の意向を気にする必要が生じています。安倍政権時代の放送法の解釈変更は、戦前の検閲制度と同じではありませんか。総務省官僚の説明を無視して、安倍総理の意向を体した礒崎元総理補佐官が、一方的に解釈変更を迫ったのではないですか。礒崎氏は、補充的説明をしてはどうかと意見したと言い訳していますが、これが解釈変更でなければ、一体何なのでしょうか。

 礒崎氏が総務省に働きかける前までは、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体を見て判断するとの解釈だったのではないですか。現時点でも同じ解釈ですか。それとも、一つの番組でも放送法四条に反すると判断できるとの解釈ですか。総理は、放送法の従来の解釈は変わっていないと答弁していますが、なぜそのように断言できるのですか。明確に答弁願います。

 総理、国民は真実が知りたいのです。真実を伝えているテレビ局への政治介入は真っ平御免です。そうではないと言うなら、放送法の解釈を変更しようとした事実があったのかなかったのか、客観、中立な第三者委員会を立ち上げ、公正公平に調査していただけませんか。総理の決意を伺います。

 次に、法案に関連して、新型コロナウイルス感染症の政府対応について伺います。

 政府のコロナ対応については、衆参の附帯決議において、第三者的立場から、客観的、科学的に検証し、結果を公表することが求められています。

 そうした中、政府は、新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議を設置し、報告書をまとめ、それを踏まえる形で内閣感染症危機管理統括庁の創設を決定しました。報告書において、今後とも多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めたいと締めくくられていることを踏まえ、更なる検証と是正について、順次、総理に提言します。

 まず伺いますが、有識者会議では、経済界、首長会、医療関係団体などを中心にヒアリングが行われましたが、一か月という短期間で報告書がまとめられ、期限ありきの突貫工事で十分な検証ができていないと懸念する声が数多く上がっていることを踏まえ、これで終わりではなく、更に時間をかけてしっかりと検証すべきと考えますが、いかがですか。

 また、構成員の日本プライマリ・ケア連合学会の理事長から、子育て中の方の声も聞き報告書に盛り込みたかったとの指摘がありましたが、そもそも、子育て中の方の意見を聞かなかったのはなぜですか。理由を教えてください。

 なお、子育て世代の声をないがしろにすることはあってはなりません。

 防衛予算はGDP比二%という数字ありきで決めておいて、子供予算の倍増に関しては数字ありきではないと逃げるのは、ひきょうではありませんか。

 今必要なことは、増税ではなく、人への投資です。総理が、子供を含む家族を支援する政府予算の倍増を総裁選で表明されてから約一年半の月日が経過していますので、中身が決まっていないは言い訳になりません。

 子ども・子育て予算は、何をベースに倍増させ、年に何兆円の予算増がいつ実現されるかは、三月中に示されるたたき台、若しくは六月までに示される財源を含めた大枠で明らかになりますか。それとも、六月時点でも明らかにならない可能性もあるのですか。また、いつになれば、年に何兆円の子ども・子育て予算が増えることが明らかになるのか。国民に分かりやすく、明快に御答弁ください。

 次に、アベノマスクについて伺います。

 安倍元首相が全戸配布した布マスク、いわゆるアベノマスクについて、大阪地裁が、単価や発注枚数などの黒塗り文書の情報を開示するよう、国に命じました。

 そこで伺いますが、一般配布事業を含んだアベノマスク事業の費用総額について、精査中と逃げ続けず、速やかに明示していただけませんか。また、そもそも、国で購入した物品の説明を国民に行うことは当たり前だと考えますが、総理は、国民へアベノマスクの単価や発注枚数などを正確に教えなくてもよいとお考えですか。所見を伺います。

 さらに、司法から、不開示情報を公にすることで国の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するものとは言えないと判決文ではっきりと言い渡されている現状を踏まえれば、担当省庁任せではなく、総理がリーダーシップを発揮して、各所へ情報公開するように指示をしていただくことが国民に対する真摯な対応であると考えますので、この場で逃げずに公開すると明言をしていただけませんか。英断を求めます。

 次に、新型コロナワクチンについて伺います。

 これまで、合計八億八千二百万回分の新型コロナワクチンの購入、流通などに際して、二兆四千三十六億円の予算を計上しており、総予算措置額を総契約数量で割った単価が二千七百二十五円となります。

 そうした中、モデルナの従来株ワクチンについては、本年二月をもって全て有効期限切れとなり、約四千六百十万回分を廃棄し、各地に残った一千七百八十万回分も廃棄の見通しで、合計廃棄見通しは六千三百九十万回分となります。また、アストラゼネカの従来株ワクチンは、昨年九月に既に約一千三百五十万回分廃棄され、約十万回分の廃棄見通しがありますので、合計廃棄見通しは約七千七百五十万回分となります。これを二千七百二十五円の単価で仮に計算すると、二千百十二億円程度の損失となります。

 そこで伺いますが、ワクチンを購入した当初は何人の方に何回の接種を行う想定で、結果として八億八千二百万回分のワクチンを購入することになったのですか。また、当初の計画時には廃棄数、割合などはどの程度の想定であり、今回の約七千七百五十万回分の廃棄見通しは想定の範囲内であるのか、甘かったと考えているのか、教えてください。

 そして、このワクチンの大量廃棄と損失について、総理はどのように受け止めているのか、所見を伺います。

 さらに、情報がまだまだ開示されていない中において、令和四年度補正予算で九千万回分のワクチン予算として四千七百五十億円が計上されており、単価は五千二百七十八円程度となりますが、この数量と予算感がどういった積算根拠を持って妥当であると考えているのか、各メーカーからの仕入れ想定や流通などの詳細も踏まえながら明示してください。

 次に、新型コロナワクチンの後遺症について伺います。

 ワクチン後遺症と疑われる症状に苦しんでいる方々は、原因不明の頭痛や倦怠感などに見舞われ、治療のすべもないまま、不安を抱えておられます。

 ワクチン接種を国策として推進してきたことを踏まえ、総理に伺いますが、接種により多くの方が重症化を回避できた一方、その犠牲となられた後遺症に苦しむ方に対して、発生メカニズムや治療方法の研究開発などを政府が国策として対応する責任があると考えますが、いかがですか。

 その上で、短期、長期の副反応に関して、国としてデータを早急かつ積極的に収集、分析、公開すべきであり、後遺症などの健康被害とワクチン接種との因果関係の究明を国が責任を持って実施すべきと考えますが、ワクチン後遺症を含む副反応や健康被害の救済の実効性確保に対する総理の覚悟を伺います。

 次に、新型コロナワクチン予約システムの過大請求事案について伺います。

 ワクチン接種予約のコールセンター業務において、パソナが大阪府枚方市、吹田市及び兵庫県西宮市に合計約十億八千万円を過大請求していた問題を受け、厚労省は、本年二月十日、全国の自治体に対し、ワクチン接種に係る全ての業務委託が適切に実施されているかを速やかに確認し、情報提供するように依頼しています。

 そこで伺いますが、この過大請求事案について、総理は問題をどのように受け止めているか、教えてください。

 また、厚労省の事務連絡を踏まえて複数の自治体から報告を受けていると伺っていますが、事務連絡から約一か月が経過した本日時点で、何件の自治体から報告を受け、実際には不適正と疑われる事案は幾つあるのか、現状について教えてください。

 さらに、国が財源を支出する事業に関して業務委託が行われる際、管理が甘くならぬよう、政府が主導し、委託先の検査体制や再委託に関する要件定義の在り方を自治体にアナウンスするなどして、不正が起こりにくい環境を整える考えはありませんか。所見を伺います。

 次に、内閣感染症危機管理統括庁について伺います。

 現在、新型コロナウイルス等感染症対策推進室において感染症対応に関する事務が行われていますが、現体制にどのような問題があると認識し、統括庁を新設することで具体的にどんな改善が見込まれると考えているのか。また、新設に当たり、どのような統廃合を行うことで行政改革を進める想定であるのか。そして、本来的には局レベルの部門に対して、あえて庁とつける理由は何ですか。教えてください。

 さらに、統括庁のトップとなる内閣感染症危機管理監は、本来、省益にとらわれず、専門家の意見を軽視しない、状況変化に対応できる人材が望ましいと考えますが、内閣官房副長官の充て職にされた理由は何ですか。

 また、現在、新型コロナウイルス感染症対策分科会、アドバイザリーボード、厚生科学審議会感染症部会など複数の専門家会議がありますが、これらの役割を再定義する必要性をどのように考えていますか。所見を伺います。

 そして、感染症危機管理統括庁は、総理が総裁選当時に創設するとしていた健康危機管理庁とは異なるように感じます。バイオテロや災害全般などオールハザード型の一元的危機管理組織ではなく、感染症に限定した組織をなぜ内閣官房に設置するのですか。感染症のみならず健康危機全般に対応する健康危機管理庁の創設は諦めたのでしょうか。所見を伺います。

 次に、政府対策本部長の指示権について伺います。

 法案では、本部長である総理は、対策本部の設置時から、都道府県知事等に対し、必要な指示を行うことができるとされています。

 しかし、コロナ禍において、一部の自治体の長が政府の要請を拒否した事例がありましたが、都道府県知事が総合調整に基づく所要の措置を実施しない場合、本部長の指示はどの程度強い効力を持つのでしょうか。また、指示に従わない場合、具体的にどのような対応を行うことで実効性を確保しますか。併せて所見を伺います。

 最後に、内閣法の一部改正について指摘しますが、内閣官房のつかさどる事務に、「法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、内閣官房に属させられた事務」という包括条項を追加していますが、何でもありで際限をなくすような改正ではなく、統括庁運営に必要最小限度の所掌事務の記載を検討すべきではありませんか。所見を伺います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 中谷一馬議員の御質問にお答えいたします。

 放送法の政治的公平についてお尋ねがありました。

 御指摘の文書については、総務省において、総務省の行政文書であることを確認し、本日中に公表する予定との報告を受けております。ただし、当該文書の内容が正確なものだったか等について、総務省において引き続き精査を行っていると承知をしております。

 放送法の解釈については、放送法を所管する総務省において責任を持って整理をし、従来の解釈を変更することなく、補充的な説明を行ったものと承知をしており、その経緯については、放送法を所管する総務省において国民に分かりやすく適切に説明することが重要であると考えております。

 新型コロナ対策の検証についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対策については、昨年、新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において、御指摘の子育て中の方を含め個人の方からの意見は聴取してはおりませんが、経済団体、地方団体、医療関係団体等からの意見聴取も含め、五回にわたって熱心な御議論をいただき、対策の検証を十分に行うとともに、次の感染症危機に向けた中長期的な課題を取りまとめていただいたところです。

 政府としては、まずは、新型コロナ対策の終息に向けた取組を着実に進めると同時に、有識者会議の報告書を踏まえ、統括庁の設置を含めた次の感染症危機への対応を具体化していくことが重要と考えておりますが、新型コロナへの対応については、不断の検証を行いながら、次の備えに反映させてまいります。

 子ども・子育て予算倍増の基準や時期についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策に関係する予算については、まずは政策の中身が重要であり、政策の内容を詰めなければ倍増の基準等を申し上げることはできないと考えています。今後、子ども・子育て政策として充実する内容をパッケージとして具体化し、その予算を踏まえて、六月の骨太の方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示します。

 財源については、充実する政策の内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。

 布製マスク配布事業についてお尋ねがありました。

 厚生労働省において実施した布製マスク配布事業には、議員御指摘の一般配布事業を含め、これまでに総額約五百七億円を要しています。

 その上で、単価及び数量の開示については、情報公開制度の趣旨にのっとり、厚生労働省など関係省庁において、大阪地裁の判決を踏まえて対応してまいります。

 新型コロナワクチンの購入と廃棄についてお尋ねがありました。

 世界各国によるワクチンの獲得競争が継続する中、接種を希望する全ての国民の皆様にワクチンをお届けできるよう、接種回数を含め、様々な可能性を視野に入れて、複数の種類のワクチン企業と確保に向けた交渉を行ってきました。結果的に、有効期限が到来したワクチンは医薬品の適正な管理の観点から廃棄せざるを得なかったものの、これまでの確保の取組は必要なものであったと考えております。

 また、令和四年度補正予算についても、個社の単価は明らかにできませんが、様々な可能性を視野に入れながら、ワクチン購入費と流通経費等として必要と見込まれる額を計上しています。来年度の新型コロナワクチンの接種については、厚生労働省の審議会における結論を踏まえて、適切な量のワクチンを確保していきます。

 新型コロナワクチンの後遺症等についてお尋ねがありました。

 新型コロナワクチン接種後の副反応が疑われる症状については、副反応疑い報告制度により医療機関等から情報を収集し、因果関係を含め、専門家により分析や評価を行っています。また、予防接種法上の健康被害救済制度に基づく幅広い救済に努めています。さらに、いわゆる後遺症も含め、ワクチン接種後の副反応と疑われる症状の実態把握に関する新たな研究や調査も開始をしています。

 これらの取組を通じ、ワクチンの後遺症の研究等を国が主導して行うとともに、接種後に健康被害が生じた方への救済を着実に進めてまいります。

 ワクチン接種に係る委託事業者の過大請求事案や業務委託の在り方についてお尋ねがありました。

 御指摘のような過大請求事案はあってはならず、誠に遺憾であり、各自治体により、委託事業者に対し返還請求等がなされているものと承知をしています。

 この事案の発生を受け、厚生労働省から自治体に対し、ワクチン接種に関する全ての業務委託が適切に行われているかを速やかに確認するよう依頼をしたところ、現在、二自治体から情報提供を受けておりますが、不適正事案であったかも含めて、厚生労働省等において確認中です。

 自治体が行う事業については、一義的には、各自治体において適切な事業実施に努めるべきものと考えますが、国としても、今回のような不正事案を自治体に周知するなど、再発防止のために必要な対応を講じてまいります。

 内閣感染症危機管理統括庁の設置の意義等についてお尋ねがありました。

 昨年の有識者会議の報告書等を踏まえ、行政の縦割りを排し、各省庁の対応を強力に統括する司令塔組織として、内閣感染症危機管理統括庁を国政全般の総合戦略機能を担う内閣官房に設置することとしたものです。

 この組織は、これまで内閣官房において感染症危機対応を担っていた新型コロナウイルス等感染症対策推進室や新型インフルエンザ等対策室といった既存組織を廃止して機能を一元的に集約をし、総理及び官房長官を直接支えて各省庁の取組を統括するために、内閣官房副長官をトップとして据え、司令塔機能を発揮するものとして設計しており、こうした組織の役割を的確に表現するため、統括庁という名称を用いたものです。

 また、司令塔機能を強化する中で、専門家組織の知見を活用することも重要であると考えており、御指摘の会議体が引き続きそれぞれに期待される役割を果たしていただきながら、新たに設置するいわゆる日本版CDCと連携し、統括庁が科学的知見に基づく政策立案の取組を推進してまいります。

 なお、オールハザード型の一元的危機管理組織にすべきとの御指摘については、感染症に係る危機管理については、通常の災害対応とは異なり、医学や公衆衛生に係る専門的知見を踏まえた政策判断が重要であることなどを踏まえ、今回の法改正においては、感染症危機管理に特化した組織をつくることとしております。

 政府対策本部長の都道府県知事等に対する指示についてお尋ねがありました。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定に基づく政府対策本部長の指示は、法律上、助言や勧告よりも強力な手法ですが、指揮監督のような法的拘束力を有するものではなく、相手方の自発的な遵守を期待するものです。

 しかしながら、政府対策本部を設置している間は国、地方を通じた対策の一体性の確保が強く要請される時期であり、事実上、各機関一体となった災害応急対策の実施のために、政府対策本部長の指示が遵守されることになると考えております。

 内閣官房の所掌事務規定についてお尋ねがありました。

 御指摘の内閣法の条文は、改正後の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、政府対策本部の事務などを内閣感染症危機管理統括庁が処理するに当たっての根拠として設けたものです。

 この規定に基づき内閣官房が所掌する事務は、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の関係法律において、国政全般の総合戦略機能を担う内閣官房の所掌事務規定との親和性が高く、そして、内閣官房において所掌するべき特別の理由があるものに限ることとしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 阿部司君。

    〔阿部司君登壇〕

阿部司君 日本維新の会、阿部司です。

 私は、党を代表して、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に質問いたします。(拍手)

 三年を超えた新型コロナウイルスへの危機対応も、大きな転換点に入りました。五月八日には、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、危険度の高い二類相当から、季節性インフルエンザと同じ五類に引き下げられます。

 本当に暗く長いトンネルでした。とはいえ、まだ完全には抜け出せるわけではありません。何より重要なのは、これから先の体制を遺漏なく構築することであります。

 三年余りのコロナ禍では、行政が医療体制の拡充を呼びかけながら、実際には病床の逼迫は繰り返されました。医療品の備蓄の必要性は過去に何度も指摘されてきましたが、これも準備不足が露呈しました。重大な瑕疵や問題点を挙げれば切りがなく、日本の感染症対策は脆弱だったと言わざるを得ません。

 新たな感染症危機に備え、行政の体制や組織を強化することを目的とした本法案は、我が国の感染症対策におけるあまたの構造的課題の抜本的解決につながるものでなければなりません。組織を見直すといっても、看板のかけ替えに終わっては本末転倒であります。

 そこで、以下、総理にお尋ねします。

 政府は、各省庁の感染症危機への対応を統括し、司令塔機能を強化する組織として、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置するとしています。現時点でも内閣官房の新型コロナウイルス等感染症対策推進室が感染症対応の事務を担っていますが、現行制度のどのような点に問題があると認識されているのですか。また、統括庁を新設することで、具体的にどのような改善が図れるとお考えでしょうか。

 総理は、一昨年の自民党総裁選で、感染症対応を一元的に担う健康危機管理庁の創設を掲げられました。当時の構想では、内閣府の常設組織として設置し、担当大臣も設けるということでしたが、どのような理由で本法案における統括庁の形にしたのでしょうか。健康危機管理庁創設に向けての過渡的な措置なのでしょうか。

 今回の法改正は、新型コロナ感染症対応に関する有識者会議が行った検証の報告書を踏まえたものだと説明されていますが、政府として、どのように総括、本法案の提出に至ったのでしょうか。私は、昨年の有識者会議報告書が求めているように、更なる検証を実施していく必要があると考えていますが、併せて見解をお伺いいたします。

 また、感染症危機への対応については、国、地方を通じて迅速に措置を講じなければなりませんが、市町村等の実情に応じて求められる対応が異なる場合など、現場の裁量に委ねるべきものもあります。

 現行は、政府の危機管理は、内閣危機管理監の下、いわゆる事態室が担っています。感染症に関する危機対応が統括庁に移管されますが、事態室との連携をどのように図っていく方針ですか。また、生物化学兵器の使用など感染症に係るテロが起きた場合、統括庁はどのように対応すると想定しているのでしょうか。

 感染拡大とそれに伴う行動制限は社会経済活動に大きな影響を及ぼすことから、医療、公衆衛生分野の視点だけに偏らないような意思決定の仕組みを構築する必要があると考えますが、有識者で構成されるインフルエンザ等対策推進会議と統括庁はどのように対応していく方針でしょうか。

 政府は、統括庁に加え、医学的な見地から専門家の助言を得るため、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、国立健康危機管理研究機構を設立する方針で、改めて関連法案を提出すると伺っています。

 米国では、強力な権限を持ったCDCが、膨大なデータを基に新型コロナの感染症対策を主導しましたが、日本の国立感染研は、ウイルスの分析などでは一定の力を発揮したものの、科学的知見を政策に反映させるための提案能力は乏しかったと言わざるを得ません。

 この新たな研究機構は日本版CDCと言えるほどの権限と能力を備えたものとすべきと思いますが、統括庁と研究機構の連携体制はどのように構築していくお考えでしょうか。

 平成十三年一月の省庁再編、いわゆる橋本行革により一府十二省庁の現行体制になってから、二十二年が経過しました。この間、省庁の編成は維持される一方、異なる省庁に横串を刺すという名目の下で、内閣の総合戦略機能を担う内閣官房は肥大化を続け、推進室や本部、会議といった新たな部署は、現在、四十近く存在しています。

 今般、新たに統括庁を発足させるのであれば、緊急性が低くなった業務を見直し、整理してしかるべきではないでしょうか。

 平成二十七年に制定された、いわゆる内閣官房・内閣府業務見直し法によって、内閣官房の五つの事務が内閣府に移管、一元化され、内閣府の九つの事務は各省等に移管されました。この法律の衆議院附帯決議では、内閣官房、内閣府の業務について、施行後三年を目途とした見直し規定が置かれました。しかし、施行から七年が経過したのに、政府は見直しに動いていません。明らかに怠慢です。

 総理、お得意の、検討するという答弁は必要ありません。内閣官房と内閣府の業務を適正な規模にすべく、直ちに改革に着手するとお約束いただけないでしょうか。

 現行では、内閣総理大臣が都道府県知事や各省庁などの行政機関に適切な対応を急がせる指示権を行使できるのは、行動制限がかかる緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の期間に限られていますが、新型コロナ禍では感染蔓延時に医師、看護師などの医療人材や病床確保などに手間取り、初動が遅れるケースが多々ありました。

 緊急事態宣言及び蔓延防止等重点措置時において、事業者等に対する要請等の実効性を確保するために、事業者に命令を発出する際の、特に必要があると認めるときを法令上明確化するとしています。具体的にどのような内容を想定しているのでしょうか。

 新型インフル特措法第五十条の物資、資材の供給要請など、緊急事態宣言下のみ適用される規定は幾つもありますが、これらは政府対策本部の設置後から対応できるようにする必要はありませんか。お答えください。

 また、地方公共団体は新型インフルエンザ等の発生時に実施する措置について特例的に地方債を起債できるとしていますが、起債の対象については、具体的にどのようなものを想定しているのでしょうか。例えば、事業者への協力金の支給や地域活性化のための経済対策は対象に含まれるのでしょうか。当該地方債を財源に充てた措置について、政府として法令上の適合性や効果などの検証は行うのでしょうか。

 さて、日本維新の会は、社会経済活動と医療体制の両立を促すべく、昨年一月のコロナ対策に関する提言などで、五類感染症への早期移行を繰り返し訴えてまいりました。前国会での改正感染症法成立に当たっては、我が党の主導で、新型コロナの法的な位置づけの見直しを速やかに検討することが附則に盛り込まれました。かくして実現する形となりましたが、政府の決定は一年遅かったと指摘せざるを得ません。

 なぜ日本維新の会が五類への早期移行を強く主張してきたのか。それは、現在の新型コロナウイルス感染症は、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアシステムで対応すべき疾患と考えるからです。

 以下、厚生労働大臣に質問します。

 政府は、新型コロナの五類感染症への位置づけを奇貨として、あるべき日本の医療提供体制の構築に向けての議論を進めていくことが不可欠です。具体的には、新型コロナ流行期におけるかかりつけ医の役割や医師の応招義務の在り方、保健所を中心とした管理体制の見直しなど、ウィズコロナ下におけるあるべき地域包括ケアシステムについて議論を進めていくべきと考えますが、見解を求めます。

 この際、業務が多岐広範にわたる保健所の体制を見直すことも必要と考えます。保健所の感染症部門については、設置自治体である都道府県の指定病院に集約すれば、感染対策における都道府県知事の指揮命令機能が実効性を増すと思料しますが、認識をお示しください。

 五類への移行後は、感染者は発熱外来などに限らず、一般病院や診療所でも受診することができるようになりますが、受入れ実績がない医療機関の忌避感は拭えなかったり、物理的に対応が困難であったりする医療機関もあると指摘されています。一昨年の第五波の頃からは、コロナ病床として確保された病床が使用されず、医療機関が補助金だけを手にする幽霊病床の問題も露呈いたしました。

 五類下での医療提供体制の拡充を実現するために、政府は、コロナ患者受診や病床確保のための医療機関への支援について、二類相当下で要件を満たせば支給される補助金を主軸とした体制から、コロナ患者を治療した場合に発生する診療報酬の上乗せによって患者を受け入れる医療機関を拡大、確保していく体制に移行すべきではないでしょうか。所見を伺います。

 五類への移行に先立ち、今月十三日からは、マスクの着用が個人の主体的判断に委ねられます。しかし、実際には各業界団体などの判断が優先される場面が想定され、脱マスクをめぐる混乱が社会の分断を深めかねません。

 日本国内でなかなかマスクを外せない光景が続いている現状は、落ち込んだインバウンド復興への足かせになったり、子供の成長にとって悪影響を及ぼしたりと、デメリットも少なくありません。政府には、一層丁寧な説明が求められます。

 総理にお尋ねします。

 ポストコロナの経済復興、需要喚起の機運醸成や教育的観点からも、いま一度、関係省庁が連携して、可能な限り、国民が極力マスクを外せる環境づくりを急ぐべきではないでしょうか。

 日本国内のマスク着用については、どのような場面でマスク着用に意義があったのかという科学的な検証結果がほとんど国民には知らされておりません。政府には、こうした検証を政府の責任で行い、その結果を国民に分かりやすく伝え、マスクを外せる明確な基準を策定するよう提案いたします。

 最後に、これに対する総理の見解を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 阿部司議員の御質問にお答えいたします。

 内閣感染症危機管理統括庁を新設する意義等についてお尋ねがありました。

 昨年六月に取りまとめられた新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議の報告書において、次の感染症危機に備え、危機に迅速的確に対応するための司令塔機能を強化し、一元的に感染対策を指揮する体制が必要であることが指摘されました。

 内閣感染症危機管理統括庁は、こうした指摘を踏まえ、感染症危機対応における司令塔組織として設置することとしており、統括庁が司令塔機能を発揮し、各省庁等における平時の準備を充実させることを通じて、感染症危機の発生時に迅速かつ的確な対応を行うことが可能となるものと考えております。

 さらに、統括庁は、各省庁の対応を強力に統括し、政府全体を俯瞰した総合的な視点での感染症危機管理を推進するため、各省より一段高い立場で国政全体の総合戦略機能を担う内閣官房に、総理、官房長官が直轄する恒常的な組織として設置することとしたものです。

 本法案の提出に至った経緯と、更なる検証の必要性についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対策については、昨年、新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議で検証を行うとともに、次の感染症危機に向けた中長期的な課題を整理し取りまとめたところであり、一元的に感染対策を指揮する司令塔組織の必要性など、有識者会議で指摘された課題等を踏まえ、内閣感染症危機管理統括庁の設置等に必要となる法律案を提出したところです。

 政府としては、まずは、新型コロナ対策の終息に向けた取組を着実に進めると同時に、統括庁の設置を含めた次の感染症危機への対応を具体化していくことが重要と考えておりますが、新型コロナへの対応については、不断の検証を行いながら、次の備えに反映させてまいります。

 感染症に関する危機対応と意思決定の仕組みについてお尋ねがありました。

 感染症危機の初動期の対応においては、内閣危機管理監等が、臨時に命を受け、内閣感染症危機管理統括庁に協力するなど、双方の知見を生かして連携して対応することとしており、生物化学兵器の使用など感染症に係るテロについても、感染症危機の様相を帯びる場合には、統括庁は内閣危機管理監等と連携して対応することとなります。

 また、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく行動制限については、国民の生命、健康の保護の観点のみならず、国民生活、国民経済への影響を含め検討することが必要となるため、法律、社会、経済分野の専門家や自治体関係者も入った新型インフルエンザ等対策推進会議の意見や、新たな感染症の専門家組織として設置される国立健康危機管理研究機構の知見を踏まえて、統括庁の司令塔機能の下で政府の方針を決定してまいります。

 内閣感染症危機管理統括庁と国立健康危機管理研究機構の連携体制についてお尋ねがありました。

 感染症等に関する科学的知見の基盤、拠点となる新たな専門家組織、いわゆる日本版CDCを創設するため、本日、国立健康危機管理研究機構法案を閣議決定いたしました。

 内閣感染症危機管理統括庁との連携については、統括庁の求めに応じて、研究機構が迅速に質の高い科学的知見を提供し、政策決定に役立てるという枠組みを構築するため、法案において、研究機構から統括庁への科学的知見の報告や、政府対策本部の会議への出席を求める規定等を設け、両者の密接な連携を実現してまいります。

 統括庁の発足と業務の見直し、内閣官房、内閣府の業務の規模の適正化についてお尋ねがありました。

 内閣官房、内閣府においては、御指摘の附帯決議や平成二十七年の閣議決定を踏まえ、三年後の見直しとして個別業務の精査を行い、その結果を踏まえ、消費税価格転嫁等対策推進室や社会保障改革担当室を廃止したほか、お互いに密接に関連する部局において後方業務等を一体化するなど、業務遂行の効率化を図るなどしてきたところです。その後も、一億総活躍推進室、人生一〇〇年時代構想推進室、統計改革推進室、働き方改革実現推進室を廃止するなど、組織の統合や廃止等の必要な対応を行ってきており、今後も、内閣官房、内閣府が重要政策に関する司令塔機能など本来の役割を十分発揮できるよう、事務の不断の見直しを行ってまいります。

 インフル特措法に基づく各種措置についてお尋ねがありました。

 事業者に命令を行う必要性を判断する際に勘案すべき事項を政令で規定することとしておりますが、同種の施設、業態において新型インフルエンザ等の患者が多数発生していることなどを想定しており、施行までの間に具体化をしてまいります。

 御指摘の物資及び資材の供給の要請を含む新型インフルエンザ等緊急事態措置については、国民の自由や権利を一定程度制限する措置が含まれること等からも、緊急事態宣言下においてのみ講ずることが可能としております。政府としては、物資及び資材の供給等について、有事において適切に供給がされるよう、必要な備蓄など平時からの備えにしっかりと努めてまいります。

 地方債の特例の対象は、基本的には、感染症法に基づく病床確保等について国費のかさ上げを行ってもなお残る地方負担を中心に考えており、協力金の支給や経済対策は想定しておりません。この地方債を活用する事業については、地方の事業であり、地方公共団体において、法令等の規定に基づき、検証を含め、適切に実施していただくものと考えております。

 マスクを外せる環境づくり等についてお尋ねがありました。

 マスクについては、専門家から、着用の有効性に関する検証結果と科学的知見が示されています。これを踏まえ、マスクの取扱いについては、今月十三日から見直すこととし、マスクの着用は個人の判断に委ねることを基本とすることとしました。また、各個人のマスク着用の判断に資するよう、感染防止対策としてマスクの着用が効果的である場面などを示し、一定の場合にマスクの着用を奨励することといたしました。

 既にリーフレットやウェブサイト等を通じた周知を行うとともに、関係省庁が連携して各業界団体における業種別ガイドラインの見直しを支援しておりますが、今後とも、様々なツールを使って広報に努めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 阿部司議員より、三問御質問いただきました。

 医療提供体制の構築についてお尋ねがございました。

 新型コロナなど新興感染症の蔓延時における医療提供体制については、昨年の感染症法改正により、都道府県と医療機関との間であらかじめ協定を締結する仕組みとし、令和六年度から始まる第八次医療計画と合わせた施行に向けて、現在、議論を重ねております。

 また、新型コロナを五類感染症に位置づけることに合わせ、御指摘の医師の応招義務の在り方や入院調整等の保健所を中心とする管理体制も含めた各種対策、措置の段階的な見直しについて、関係者の意見も伺いながら、現在、具体的な内容の検討、調整を進めております。

 さらに、政府としては、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めるための医療法の改正案を今国会に提出したところであり、国会で御審議をいただき、法案の成立を踏まえ、制度整備を着実に進めてまいります。

 新型コロナ対応の経験も踏まえ、今後、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる二〇四〇年頃を視野に、新たな地域医療構想の策定や地域包括ケアシステムの構築など、医療、介護の提供体制を検討してまいります。

 保健所の体制についてお尋ねがございました。

 保健所は、積極的疫学調査の実施や、調査から得られた知見に基づく感染症対策の企画立案など、感染症の蔓延防止等に必要な業務を総合的に実施しております。これらの業務を主に治療等を行う医療機関に集約することで十分な対応ができるとは考えておりませんが、感染症対策において、都道府県知事の指揮命令機能の実効性を高めていくことは重要と考えております。

 このため、昨年十二月に成立した改正感染症法において、平時における都道府県知事の総合調整権限や指示権限の創設、都道府県連携協議会の設置など、感染症対策における都道府県知事の関与や関係機関との連携の強化を図ることとしたところであり、実効性のある体制構築を図ってまいります。

 医療機関への財政支援についてお尋ねがございました。

 新型コロナの感染症法上の位置づけの変更に伴い、幅広い医療機関で新型コロナの患者が受診できる医療体制に向けて、これまで新型コロナの患者を受け入れてきた医療機関には引き続き受け入れていただきつつ、新たに受け入れていただく医療機関も増やしながら移行を進めることとなります。その際、医療現場の混乱等を回避するためにも、必要となる感染対策や準備を講じつつ、国民の安心を確保しながら、段階的な移行を行うことが重要であります。

 このため、外来や入院に関する診療報酬上の特例措置や病床確保料の取扱いを始めとした各種対策、措置の段階的な見直しについては、平時の日本を円滑に取り戻していけるよう、関係者の意見も伺いながら、現在、具体的な内容の検討、調整を進めており、今月上旬を目途に具体的な方針をお示ししたいと考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 河西宏一君。

    〔河西宏一君登壇〕

河西宏一君 公明党の河西宏一です。

 ただいま議題となりました新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案について、公明党を代表し、質問をいたします。(拍手)

 人類が新型コロナウイルスに遭遇し、日本で最初の感染が確認されてから、一千百五十日がたとうとしています。国内の感染者数は累計三千三百万人を超え、七万二千人余りの方がお亡くなりになりました。改めて、心からお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 この間、我が国は、海外のようなロックダウンを行うことなく、感染拡大防止と社会経済活動の両立、ワクチン接種や検査体制の確立など、国民の皆様に多大なる御協力をいただき、現在も、終息とウィズコロナ社会を目指す途上にあります。

 その中で、私たちは、我が国の感染症をめぐる危機管理がいかに脆弱かを痛感いたしました。この反省と教訓の下、本法律案では、内閣官房に、公明党としても一貫して創設を求めてきた、いわゆる縦割りを打破する司令塔である内閣感染症危機管理統括庁を設置するとともに、蔓延防止等重点措置や緊急事態宣言が発せられる前であっても、内閣総理大臣が国の行政機関の長や都道府県知事等に対して指示権を行使することを可能とし、加えて、感染防止のための協力要請に正当な理由なく応じない事業者などに対し、都道府県知事が命令を行う際の勘案事項を政令で定めることとしています。

 有事では、やむを得ず指示や命令が必要である点は理解する上で、何より重要なのは、協力要請の中身について国民的合意を得ることであります。そのためには、この三年余り、国民の皆様の深い御理解に支えられてきた新型コロナ対策について、精緻かつ真摯な検証が必要ではないでしょうか。

 例えば、飲食店などへの時短要請や個人への外出自粛要請は、どの程度感染拡大を防止したのか。また、行政検査を大きく上回る頻度で行った高齢者施設や障害者施設の集中的検査や社内のモニタリング検査は、二次感染をどの程度防ぐことができたのか。今後、更なる検証を行い、各対策の効果と副作用を可能な限り定量的に国民に示していくことが、次の感染症危機における対策の根拠を強靱にし、ひいては協力要請の説得力、公平性にもつながるものと考えます。

 昨年、一定の検証を行った有識者会議の報告書も、今後とも、社会、経済、財政への影響、財源の在り方、施策の効果などについて多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めています。

 そこで、岸田総理へ伺います。

 今後、政府は、従前の新型コロナ対策について更なる検証を行っていくお考えはあるか、また、今後の感染症対策全般のPDCAサイクルをどのように回していくのか、総理の答弁を求めます。

 また、本法律案では、市役所や保健所などでクラスターが発生した場合などを想定し、都道府県などによる代行や他の自治体からの応援などについても、蔓延防止等重点措置などが発せられる前から可能とし、対象範囲も感染症法に規定する措置まで拡大するものであります。

 ここで忘れてはならないのは、幾ら法律で代行や応援の範囲を拡大しても、必要な人材がいなければ現場は機能しないという点であります。したがって、クラスター対策やワクチン接種を現場で支えた自治体職員や感染症医療に携わった多くの潜在看護師など、有事でしか得られなかった人材と知見は我が国最大の財産と言えます。また、例えば、東京都墨田区などで地域の医師会、薬剤師会、訪問看護ステーションなどが有機的に連携した姿は、地域包括ケアシステムそのものであります。

 そこで、新型コロナ対策で得られた知見を最大限生かし、今後の感染症対策に必要な人材を医療、介護や自治体などの各分野において持続的に確保、育成するとともに、五類への移行後も、横断的なネットワークが継続され、より深化するような仕組みづくりが必要であると考えますが、総理の御見解を伺います。

 新型コロナは未知のウイルスであったがゆえに、当初、テレビやネットなどには様々な情報があふれ、専門的知見に基づく適切な情報提供や政策判断が大きな課題となりました。

 こうした観点から、三年前、公明党は、専門家会議の創設を提案。その後、現在の新型コロナウイルス感染症対策分科会の前身として設置され、専門家が発する情報や助言の意義は国民の皆様も大いに実感されたことと思います。

 一方で、政府方針と個々の専門家の発信が時に食い違って国民に伝わるなど、リスクコミュニケーションの在り方にも一定の課題を残しました。

 そこで、岸田総理に伺います。

 今回新設する統括庁と、新たな専門家組織として検討されている日本版CDC、加えて、厚生労働省の感染症対策部の三者は、どういった役割分担で連携を図り、情報を発信するのか。国民の皆様に分かりやすく御説明をいただきたいと思います。

 また、この三つの新組織の連携が問われる最初で最大の局面は、今後いつ来るとも分からない新たな感染症危機への初動対応です。水際対策やクラスター対策などの封じ込めを、いつ、どのレベルで行うのか。社会経済活動への影響を見極めながら、スピード感、発信力、そして説得力が伴った決断と対応が求められます。

 これに備えるためには、統括庁が主導して、パンデミックを想定したTTXなど実践的な訓練を平時から行い、人事や体制の変わり目でも揺るがない、危機対応力の構造的な維持強化を図ることが極めて重要だと考えますが、総理のお考えを伺います。

 また、次のパンデミックのおそれがあるとして指摘されているのが、抗菌薬の効かない薬剤耐性菌による感染症です。有効な対策を取らなければ二〇五〇年には世界で年間一千万人が命を落とすとの指摘もあり、新型コロナ感染症で亡くなった累計六百八十七万人をも大きく上回る推計です。先週二月二十八日、公明党のグローバルヘルス推進委員会としても、対策を政府へ申し入れたところです。

 この薬剤耐性菌への対応は、統括庁が日本版CDCと緊密に連携し、速やかに取り組むべき課題だと考えますが、今後の方針について、総理に伺います。

 コロナ禍は、公的給付の支給スピード、保健所のICT化、ワクチン関連のシステム、接触確認アプリなど、デジタル化をめぐる多くの課題を突きつけました。例えば、有識者会議でも指摘されたとおり、ワクチンの追加接種の間隔を短縮した際、自治体による紙の接種券の送付が間に合わず、到着のタイミングで接種時期が左右されたことは、デジタル化の遅れが国民の命に直結するおそれのあった事態でもありました。

 こうした教訓を踏まえ、統括庁は、デジタル庁と連携し、感染症対応のデジタル化について、国民に対し明確に工程表を示し、着実に取り組むべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。

 最後に、障害者などへ配慮した感染症対策について伺います。

 緊急性が求められた今回の新型コロナ対策は、あらゆるオペレーションが健常者前提で進みがちでした。例えば、ワクチン接種券も点字の封筒で送付されるか否かは、自治体によって対応が分かれました。しかし、この点は有識者会議の報告書でも触れられておらず、十分に検証されたとは言い難い状況です。

 感染症対策は、ひとしく国民の命を守る政策です。デジタル化も含め、障害者や高齢者など、誰かが取り残されるような仕組みであっては断じてなりません。この点も十分に踏まえた統括庁の司令塔機能の在り方について、総理の答弁を求め、質問を終わります。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 河西宏一議員の御質問にお答えいたします。

 新型コロナ対策の更なる検証とPDCAサイクルについてお尋ねがありました。

 新型コロナ対策については、昨年開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において検証を行い、これを踏まえて、次の感染症危機に向けて、感染症法の改正や本法案に基づく取組を進めているところです。まだ新型コロナとの戦いは終わっておらず、不断の検証を行いながら、次の備えにしっかりと反映させてまいります。

 また、今般の新型コロナ対応の経験や有識者会議報告書を踏まえ、政府行動計画等の内容を充実させ、計画や訓練等が有事に機能するものとなっているかを統括庁において点検し、更なる改善を行うこととしております。こうしたPDCAサイクルを着実に推進し、平時の備えが有事においてしっかりと機能するよう取り組んでまいります。

 感染症対策に必要な人材の確保、育成や横断的なネットワークについてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナ対策の経験を踏まえ、昨年の感染症法等の改正により、都道府県や関係機関等が人材の確保や育成を含む保健医療体制の確保策等を平時から協議する都道府県連携協議会の創設、感染症蔓延時に専門人材が保健所業務を支援するIHEATの仕組みの法定化、看護職員を医療機関等へ派遣する仕組みの整備を行ったほか、感染症対応業務に従事する保健師の増員や感染症の知識を有する介護福祉士の養成等を進めています。

 また、新型コロナワクチン接種の実施体制の確保等についても、これまでの取組の教訓を今後の接種に生かしてまいります。

 こうした取組を通じて、平時からの感染症有事に備えた継続的な人材の育成、確保や横断的なネットワークの構築が図られるよう取り組んでまいります。

 新たに設置される組織の連携や感染症危機対応における課題についてお尋ねがありました。

 感染症危機への対応については、内閣感染症危機管理統括庁が司令塔機能を担い、国立健康危機管理研究機構が統括庁の司令塔機能を支える質の高い科学的知見を迅速に提供することとしております。また、統括庁の司令塔機能の下、感染症対応の実務面での強化を図るため、厚生労働省に感染症対策部を設置することとしております。

 統括庁の司令塔機能の下で三者が密接に連携しつつ、感染症対策に当たり、国民への情報発信をしっかりと行うとともに、各省庁等が行う平時からの備えについて、実践的な訓練により有事への備えを万全なものとし、薬剤耐性対策などの課題に対しても、科学的知見を活用しつつ、関係省庁の一層の連携強化を図り、総合的な政策立案を進めていくことにより、新たな感染症危機に迅速的確に対応してまいります。

 感染症対応のデジタル化についてお尋ねがありました。

 昨年六月に取りまとめられた有識者会議の報告書では、新型コロナウイルス感染症対応にとどまることなく、医療DXを推進し、平時から、データ収集の迅速化及び拡充を図るとともに、デジタル化による業務効率化やデータ共有を通じた見える化を推進することが必要との指摘がありました。

 内閣感染症危機管理統括庁においては、こうした指摘を踏まえ、感染症危機対応における政府の司令塔として、デジタル庁を始め関係省庁と連携を図りつつ、計画的に感染症対応のデジタル化を推進していきます。

 障害者や高齢者などへ配慮した感染症対策についてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナ対応では、基本的対処方針に基づき、重症化リスクの高い高齢者等を守ることに重点を置くとともに、障害者等に与える影響を十分に配慮した上で実施してまいりました。

 今後の感染症対策においても、誰一人取り残さないという考えが極めて重要であると考えております。これまでの新型コロナ対応について不断の検証を行いながら、本法案に基づき、デジタル化への対応を含め、内閣感染症危機管理統括庁が司令塔となって、関係機関が連携して、障害者や高齢者を含め、全ての国民の命と健康を守ることができるよう取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 長友慎治君。

    〔長友慎治君登壇〕

長友慎治君 国民民主党の長友慎治です。

 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問します。(拍手)

 令和二年一月、国内で最初の感染者が確認されて以来、感染者数は増減を繰り返してきました。これまでの三年間の感染症対応をめぐっては、例えば、ワクチン接種を早めたい首相官邸と供給量不足等を懸念する厚生労働省とで足並みが乱れたり、水際対策として政府が航空会社に要請した国際線の新規予約の停止がすぐに撤回されたりなど、組織の方針が異なり、混乱を招く場面が多々見られました。

 現在、医療体制の整備やワクチンの調達を担うのは厚生労働省、水際対策は外務省や法務省が担当し、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく飲食店への時短要請などについての地方自治体との調整は内閣官房が窓口となっています。その中で、司令塔機能を担う組織として内閣感染症危機管理統括庁を設置することになっていますが、新たな庁をつくっても、単に各省庁から報告を受け取り、まとめるだけの組織では意味がありません。

 岸田総理に伺います。

 内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置することで、どのように適切な対策を機動的に講じることができるようになるのか、具体的にお答えください。

 コロナ禍では、行政が医療の拡充を呼びかけましたが、実際には病床の逼迫が繰り返されました。検査の拡充や医薬品の備蓄の必要性は何度も指摘されてきましたが、これも準備不足が露呈しました。政府は、その原因は何だと総括しているのでしょうか。統括庁が設置されれば、このような問題も起きなくなるのでしょうか。総理に伺います。

 政府は、五月八日より、新型コロナウイルス感染症の位置づけを現在の二類相当から五類に移行する方針を発表しました。五類に移行した場合、医療費やワクチン接種の負担はどうなるのでしょうか。

 私たち国民民主党は、昨年夏の時点で、五類とは違う対応を三つほどする四・五類を提案してきました。一つは、ワクチン接種や診察の自己負担については引き続き公費負担を認める、二つ目は、重症者あるいは重症者の入院者数については把握し、全数把握は必要ない、三つ目は、病床確保義務は都道府県知事などの義務として残した方がいいという内容です。

 今回、五類に移行することで、医療費やワクチン接種費用を国民が負担することになるのか、岸田総理に伺います。

 新型コロナウイルス感染症対応において、多くの自宅、宿泊療養者が発生しましたが、感染症法が、原則、酸素吸入が必要など一定水準以上の医療が必要な者は感染症指定医療機関に入院することを前提とした法体系になっています。このため、自宅療養者が外来、往診、訪問などの医療の提供を受けた場合、入院医療のような公費負担の仕組みがありませんでした。

 これについては、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金により自己負担の免除を行いましたが、今後更に感染拡大のリスクが高まった際、自宅、宿泊療養者が医療を受けることを想定した、新たな公費負担医療の仕組みづくりが必要だと思いますが、担当大臣に伺います。

 さらには、デルタ株の蔓延で病床が逼迫した際やオミクロン株による感染拡大時には、自宅や宿泊療養施設での療養が必要なケースが急激に増大し、自宅等で症状が悪化して亡くなる方も増えました。

 その際、現場からは、政府が自宅療養に方針を切り替えた結果、訪問看護師の負担が激増した、それにもかかわらず、政府が処遇改善を優先したのは医療機関に勤務する看護職員であって、訪問看護師への処遇改善に差があった、同じコロナ患者に命懸けで対応することに変わりはないのに納得できないとの不満の声が聞かれました。今後このようなことがないように検証されたのか、担当大臣に伺います。

 日本経済の土台を支えてきた中小企業が大きな逆風にさらされています。コロナの影響にロシアのウクライナ侵攻が加わり、今後、借金の返済に行き詰まる企業が増えることが懸念されています。

 私たち国民民主党は、昨年三月に、議員立法、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案、コロナ版金融モラトリアム法案を参議院に提出しました。この法律案は、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた中小企業者や住宅資金借入者の債務の負担状況に鑑み、これらに対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めるもので、具体的には、対象となる債務者から申込みがあった際に、金融機関は貸付条件の変更に努めるほか、負担軽減の相談に対応するための体制整備や相談対応の状況について行政庁への報告義務などの施策を講ずる内容です。

 新型コロナウイルス禍で債務返済に窮する債務者を救済することが狙いですが、政府は、今後、新型コロナウイルス感染症に伴う経営難に陥った中小企業をどのように支援していくつもりか、担当大臣に伺います。

 このコロナ禍の三年間で、子供たちも大きく影響を受けました。

 一斉休校があったり対面授業が制限されたりで、学びの場を失ったと感じる子供たちがいます。また、マスクを着用するしないで教室内での分断や差別を感じ取り、ストレスを受けた子供たちもいます。コロナ前と今では、就寝時間の乱れ、間食の増加、勉強以外でテレビ、スマホ、ゲームの画面を見ていたというスクリーンタイムの増加も顕著です。国立成育医療研究センターの調査によれば、行動が制限され抑圧された学校生活、日常生活でいらいらを募らせ、思春期世代のうつ症状の増加も懸念されています。

 これらのことが子供たちの心と体にどのような影響を及ぼすことになるか、政府は検証しているのでしょうか。コロナ世代の子供たちを長期で見守る体制を構築する必要性があると思いますが、担当大臣の見解を伺います。

 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 長友慎治議員からの御質問にお答えいたします。

 内閣感染症危機管理統括庁を設置する意義についてお尋ねがありました。

 内閣感染症危機管理統括庁は、各省庁の対応を強力に統括し、政府全体を俯瞰した総合的な視点での政策を立案し、各省庁より一段高い立場で感染症危機管理を推進することとしております。

 統括庁が司令塔機能を発揮し、各省庁における平時の準備を充実させることを通じて、感染症危機の発生時に迅速かつ的確な対応を行うことが可能になるものと考えております。

 これまでの新型コロナ対応と統括庁の設置の意義についてお尋ねがありました。

 これまでの新型コロナ対応において、医療機関の人員確保や入院調整、病床確保の困難さ、検査体制や医療物資の不足などの課題があり、平時からの感染症危機管理の重要性が浮き彫りとなったところです。このため、昨年十二月に感染症法等を改正し、数値目標を盛り込んだ予防計画を都道府県が策定し、地域の医療機関等と協定を締結することなどにより、平時からの備えを確実に推進することとしています。

 さらに、内閣感染症危機管理統括庁の司令塔機能の下で、平時から各省庁等が訓練や医療物資備蓄等の備えを的確に行うとともに、感染症危機発生時には、各省庁の対応を強力に統括し、政府全体を俯瞰して、総合的な対応を迅速かつ的確に講じてまいります。

 新型コロナの五類への移行に伴う医療費やワクチン接種の自己負担についてお尋ねがありました。

 新型コロナの感染症法上の位置づけの変更に伴い、医療費の自己負担分に対する公費支援も見直すこととなりますが、急激な負担増が生じないよう、通常のインフルエンザの場合の負担水準も参照しつつ、自己負担分に係る一定の公費支援について、期限を区切って継続することとしています。

 現在、具体的な内容の検討、調整を進めており、今月上旬をめどに具体的な方針を示したいと考えております。

 また、来年度のワクチン接種については、特例臨時接種の実施期間を一年間延長し、必要な接種は引き続き自己負担なく受けられるようにしてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 長友慎治議員の御質問にお答えいたします。

 新型コロナ感染症に伴う債務の返済に窮する中小企業の支援についてお尋ねがありました。

 政府としては、官民金融機関に対し、事業者から条件変更等の申出があった場合、実情に応じて迅速かつ柔軟に対応するよう繰り返し要請しています。条件変更の応諾率は約九九%となっています。

 また、民間ゼロゼロ融資の返済本格化を迎えることから、返済期間を長期化しつつ収益力改善を支援するコロナ借換え保証制度を本年一月十日より開始し、既に約九千件の申込みを承諾しています。

 さらに、四十七都道府県に設置されている中小企業活性化協議会が個別の事案に応じた債務圧縮や減免も含む再生支援を行っており、今後ともしっかりと支援してまいります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 長友慎治議員より、二問の御質問を頂戴いたしました。

 自宅、宿泊療養者の医療費の自己負担についてお尋ねがございました。

 新型コロナの医療費については、新型コロナの感染症法上の位置づけの変更に伴い急激な負担増が生じないよう、通常のインフルエンザの場合の負担水準も参照しつつ、自己負担分に対する一定の公費支援について、期限を区切って継続することとしております。

 先ほどの総理の御答弁のとおり、現在、具体的な内容の検討、調整を進めており、今月上旬を目途に具体的な方針をお示ししたいと考えております。

 なお、新型インフルエンザ等感染症の患者の外来医療や在宅医療については、昨年の感染症法改正により、令和六年四月から入院医療と同様の公費負担医療の仕組みを創設することとしており、法の施行に向けての必要な準備を進めてまいります。

 訪問看護師の処遇改善についてお尋ねがございました。

 自宅療養中の新型コロナ患者に対する訪問看護については、その緊要性に鑑み、通常の評価とは異なり、緊急に訪問看護を行った場合に対する診療報酬上の特例措置を設けるなど、支援を行っております。

 一方、令和三年度の経済対策等に基づいて実施している看護職員の処遇改善については、看護職員の賃金水準が全産業平均に比べて高い状況の中で、コロナ医療など、地域において一定の役割を担っていると評価できる医療機関を対象として実施したところであります。

 まずは、今般の処遇改善の措置が看護職員の給与にどのように反映されているかなどについて検証を行う予定であり、その検証結果や様々な実態を踏まえながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、そして負担の軽減を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 長友議員から、コロナ禍における子供の心身への影響についてお尋ねがありました。

 新型コロナウイルスの流行による子供の心身の影響につきましては、例えば、厚生労働科学研究において、新型コロナ流行前の子供と新型コロナ流行下の子供の発達検査の成績を比較する研究を進めているところと承知をいたしております。

 また、厚生労働省において、母子保健の国民運動である健やか親子21を通じて、社会全体で子供の健やかな成長を見守り育む地域づくりを目指してきたところであり、年度内の見直しに向けて検討している成育医療等基本方針の改定においても、子供の心や生活習慣に関する評価指標を取り入れるなどして関係者の取組の充実を図ることとしているものと承知をしております。

 こども家庭庁発足後は、こうした取組をしっかりと引き継ぐことにより、引き続き、全ての子供が健やかに育つ社会の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    後藤 茂之君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       内閣府副大臣  藤丸  敏君


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