衆議院

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第9号 令和5年3月9日(木曜日)

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令和五年三月九日(木曜日)

    ―――――――――――――

  令和五年三月九日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 検査官任命につき同意を求めるの件

 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件

 預金保険機構理事及び同監事任命につき同意を求めるの件

 情報公開・個人情報保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員長任命につき同意を求めるの件

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 土地鑑定委員会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 検査官任命につき同意を求めるの件

 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件

 預金保険機構理事及び同監事任命につき同意を求めるの件

 情報公開・個人情報保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員長任命につき同意を求めるの件

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 土地鑑定委員会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 内閣から、

 検査官

 公正取引委員会委員

 預金保険機構理事及び同監事

 情報公開・個人情報保護審査会委員

 中央更生保護審査会委員長

 日本銀行総裁及び同副総裁

 労働保険審査会委員

 中央社会保険医療協議会公益委員

 社会保険審査会委員

 土地鑑定委員会委員

 運輸安全委員会委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申出があります。

 内閣からの申出中、

 まず、

 検査官に挽文子君を、

 公正取引委員会委員に泉水文雄君を、

 預金保険機構理事に大塚英充君を、

 同監事に坂本裕子君を、

 情報公開・個人情報保護審査会委員に白井幸夫君、勝丸千晶君、磯部哲君、野田崇君及び田村達久君を、

 中央更生保護審査会委員長に小川秀樹君を、

 労働保険審査会委員に金岡京子君を、

 中央社会保険医療協議会公益委員に本田文子君及び安川文朗君を、

 社会保険審査会委員に田村ひろみ君を、

 土地鑑定委員会委員に高田美夏君、永山篤史君、加藤瑞貴君、川添義弘君、勝尾裕子君及び坂本圭君を、

 運輸安全委員会委員に伊藤裕康君、上野道雄君及び安田満喜子君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に山下直美君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 預金保険機構理事に森内彰君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 情報公開・個人情報保護審査会委員に藤谷俊之君を、

 中央社会保険医療協議会公益委員に飯塚敏晃君を、

 土地鑑定委員会委員に杉浦綾子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本銀行総裁に植田和男君を、

 同副総裁に氷見野良三君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本銀行副総裁に内田眞一君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣西村康稔君。

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 世界的規模で、カーボンニュートラルの実現に向けた大規模な投資競争が激化しています。こうした中で、我が国においても、二〇五〇年カーボンニュートラル等の国際公約と産業競争力の強化を通じた経済成長を同時に達成するグリーントランスフォーメーション、いわゆるGXを実現するため、官民で連携して、今後十年間で百五十兆円を超えるGX投資を実現する必要があります。

 そのためには、今後十年間で二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うとともに、炭素排出に値付けを行う成長志向型カーボンプライシングを将来導入する方針をあらかじめ示すことにより、事業者の先行投資を促進する仕組みを措置する必要があります。

 本法律案は、こうした内容について取りまとめ、令和五年二月に閣議決定されたGX実現に向けた基本方針に基づき、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、政府は、脱炭素成長型経済構造移行推進戦略を策定することとします。

 第二に、設備投資支援等、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する施策に充てることを目的として、政府は、令和五年度から令和十四年度まで、脱炭素成長型経済構造移行債を発行するための措置を講ずることとします。

 第三に、令和十年度から、化石燃料の輸入事業者等から化石燃料賦課金を徴収するとともに、令和十五年度から、発電事業者に対して二酸化炭素の排出枠を有償又は無償で割り当て、有償で割り当てる排出枠の量に応じて発電事業者から特定事業者負担金を徴収するための措置を講ずることとします。

 第四に、脱炭素成長型経済構造移行推進機構に、化石燃料賦課金及び特定事業者負担金の徴収、排出枠の割当て、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に資する事業活動を行う者に対する債務保証等の支援等を行わせるための措置を講ずることとします。

 第五に、政府は、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に資する投資の実施状況等を踏まえ、施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとします。また、排出枠等に係る制度を実施する方法を検討し、この法律の施行後二年以内に、必要な法制上の措置を講ずることとします。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山岡達丸君。

    〔山岡達丸君登壇〕

山岡達丸君 立憲民主党の山岡達丸です。

 立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案、いわゆるGX推進法案につきまして質問をいたします。(拍手)

 初めに、経済安全保障担当大臣としてGX推進法案にも関わる高市大臣におかれて、その政策の遂行の信用にも関わる問題が生じていることを踏まえ、放送法における政治的公平について、高市大臣に伺います。

 平成二十七年五月十二日、参議院の総務委員会において、当時の高市総務大臣は、一つの番組のみでも政治的公平が確保されていない場合があるという旨を答弁されています。

 高市大臣は、今回のいわゆる総務省文書の一部が捏造だと主張されていますが、この五月十二日の答弁は、七十八ページにわたる総務省文書の筋書どおりとなっているのは間違いないのではありませんか。この事実を踏まえれば、高市大臣こそが黒だと見るのが自然ではありませんか。そうではないというのであれば、なぜ高市大臣は、平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会で、それまでと違う答弁をされたのでしょうか。その経緯を詳しくお答えください。

 高市大臣が捏造されたものと主張する文書の一つに、平成二十七年二月十三日の高市大臣レク結果というものがあります。

 この日に、高市大臣レク、つまり総務省の職員から高市大臣に対して政治的公平についての説明があったのかなかったのか、ここで明確にお答えをお願いします。もしレク自体がなかったというのであれば、高市大臣が個別のテレビ局の名称を挙げて、苦しくない答弁の形にするか、それとも民放相手に徹底抗戦するかと具体的に述べたとして記録されているこの文書を、総務官僚がなぜ作成できるとお考えでしょうか。お答えを願います。

 この高市大臣の答弁によって、一つの番組の内容次第で政治的公平が確保されないとみなされ、電波を止めることがあり得るというメッセージが伝わることになったのではありませんか。民主党政権に比べ、安倍政権では、報道の自由度の国際ランキングが大幅に低下しました。この十年は、自民党政権による、報道の自由が失われた十年ではありませんか。

 報道の自由に関わる重要な放送法の解釈について、補充だという言葉を使いながらも国会答弁を利用し、政府が主導する形でその意向を広げようという行為は、国会軽視、立法府への冒涜ではありませんか。そして、民主主義の根底を覆す行為であると思いますが、高市大臣にその御自覚はおありでしょうか。お答えください。

 そして、つくづく気の毒だと思いますのは、高市大臣の当時の部下の職員の皆様です。極めて政治リスクの高い案件について、慎重に対応しようと関係各所に必死に調整され駆け回っていたであろう当時の部下の方々が、できる限り正確に事実を関係者と共有しようと作成された行政文書に対し、捏造だと言い放たれました。

 当時の担当官僚は、うその行政文書を作り上げたということでしょうか。どのような動機があってそのようなことをするというのでしょうか。高市大臣は御自身の身を守りたいという思いがあったとしても、余りにも心ない発言ではありませんか。当時の部下の職員の皆様に対し、高市大臣からおわびの言葉はありませんか。この答弁の機会に、是非考えを述べられていただきたいと思います。

 GXという国家の将来を懸けた政策を成功させるためには、関係大臣と多くの官僚の皆様との強い信頼関係に基づいて推進をすることが不可欠です。高市大臣の一連の問題は、その信頼関係に大きなひびを入れるものではないかということを強く申し上げます。

 これより先は、西村経済産業大臣に伺います。

 気候変動への危機に対する意識は、国境を越えて広がり、人間社会全体の在り方を問う大きな議論に発展しています。特に、気候変動の主な原因とされる二酸化炭素の排出、その中心となる産業の在り方について大きな変革を求められる時代となりました。新たな時代に対応するべく、政府から今回の法案が提出されましたが、政策の推進に当たっては、産業の成長はもちろんのこと、そこに携わる人に対して十分な目配りをしながら遂行していくべきものと考えます。

 この法律の条文には、目的、基本理念、戦略の策定が掲げられていますが、これらの項目に、労働者の雇用や地域の経済を含めた公正な移行という言葉は盛り込まれませんでした。

 昨年の政府のGX実行会議において、その構成員からは、再三にわたり、失業なき労働移動を念頭に、公正な移行という考え方を具体的に盛り込むようにするべき意見が述べられ、最終盤でようやく、GX実現に向けた基本方針に盛り込まれたという経緯があります。

 しかし、そうした経緯があっても、今回具体化された法律案には、結局、公正な移行という言葉は含まれませんでした。これは、岸田政権が、働く者、労働者の立場を軽視しているということの表れではありませんか。西村経済産業大臣は、この指摘についてどのようにお考えになりますか。産業構造が大きく変化するのだとしたら、失業なき労働移動について政府は真剣に向き合うことが極めて重要だと考えますが、大臣の見解を伺います。

 将来の脱炭素への取組を進めた結果、現在の日本の産業競争力を失うようなことも避けなければなりません。

 特に、昨今のエネルギー価格の高騰はゆゆしき事態です。おととし、冬季の電力スポット市場が一時的に大高騰したこと、昨年には、東北の地震を機に電力供給の予備率が一時的にマイナスになるなど、ここ数年、電力安定供給の課題は顕在化しているところでもあります。

 エネルギーを取り巻く環境の変化は、国民生活にも直接の影響を与え、また、産業の競争力にも影響します。いわゆるカーボンニュートラルの実現に向けては、SプラススリーEを原則にしながら、競争力の確保と雇用への影響を最小限にとどめる努力が必要だと考えます。大臣の見解を伺います。

 GXの政策の推進に当たり、負担の在り方について伺います。

 脱炭素社会への移行に当たっては、設備投資や制度設計を含めて多大なコストがかかります。世界各国の政府の姿勢を見れば、これらのコストの負担は、特定産業のみに課すのではなく、その益を享受する国民全体で広く負担すべきものとの考えに基づいて進めることが主流となっています。

 こうした流れに対し、今回の法案に基づく制度設計では、一部の産業に負担が偏るのではないかという懸念も寄せられているところです。脱炭素への移行のためのコストが特定の産業等にかかることがあるとすれば、適正な価格転嫁も含めた環境を整備し、負担の公平性、透明性が確保されることが重要だと考えますが、大臣の見解を伺います。

 各国の脱炭素をどのように評価していくのか、国際的なルール作りにきちんと日本がコミットすることも重要です。

 現在は各国がそれぞれの基準で脱炭素を進めていますが、特に金融関係者が投資対象と見るかどうかという点において、国際的な基準が大きく影響するものと考えます。政府はこのルール作りにどのような考えで臨むか、大臣の考えを伺います。

 京都議定書を始めとするこれまでの環境負荷軽減に向けた議論では、先進国と発展途上国の間に大きな対立を生んだという歴史もあります。特に、これから大きな市場として期待が集まるアジアの諸国において現実的な脱炭素への取組がどのように進むのか、これは十分に見極めていかなければなりません。

 そして、アジアを始めとする諸外国に対する脱炭素化への支援については、日本の優れた環境対策技術によって、その存在感を大きく示すことができるということも見込めます。日本から、諸外国の脱炭素への取組に対する支援は、それを数値化し、国際社会において適切に発信をするとともに、脱炭素の国際貢献として正当に評価されるルールを求めていく必要があると考えますが、大臣の見解を伺います。

 先月二十八日、国内大手八社が出資する、次世代半導体の開発、生産を目指すラピダスが初の工場を建設するに当たり、その場所として北海道千歳市を選んだということが発表されました。

 ラピダスの小池社長は、北海道を選定した理由について、水、電力等のインフラに加えて、自然環境との調和においても半導体の生産に最適だとして、半導体生産に欠かせない豊富な水が得られるほか、太陽光や風力など再生可能エネルギーの確保が見込めることなどに大きな期待を寄せていることが報じられています。

 世界的なカーボンニュートラルの潮流の中で、こうした理由が企業における立地の選定につながったという話は、地方都市にとって非常に勇気づけられるものであると考えます。大臣に伺いますが、再生可能エネルギーが豊かな北海道について、GXの政策の推進の視点からどのような期待を寄せますか。

 そして、地方都市には、豊かな自然のみならず、多くの人材もいます。ラピダスの事例でいえば、近隣には北海道大学、室蘭工業大学、苫小牧工業高等専門学校など、いわゆる理系人材を輩出する環境が整う中で、地元の機関との連携も非常に重要であり、政府として大きな関わりを持って推進するべきと考えますが、大臣の見解を伺います。

 昨年は、政府の大きな支援に基づいて、最先端の半導体製造技術を持つ台湾のメーカー、TSMCが熊本の進出を決めました。近年の半導体の供給力不足を機に、経済安全保障の議論も盛んに行われています。半導体の国内生産体制の再構築を図ることの意義について、西村経済産業大臣に見解を伺います。

 北海道を含めて、現在の日本の経済は、中小企業に支えられています。今回のGXの推進において、一部の大企業だけが成長や技術革新の恩恵を享受するのではなく、国内の意欲ある全ての事業者が新しい産業構造に参画する枠組みを形成していくことが重要だと考えます。

 特に、物づくりに関わる中小企業は、目の前では人手不足の中で目いっぱいに生産活動を行っており、変革に対応する余力を持つことが非常に難しいというのが現状です。中小企業に蓄積された技術力を生かし、新しい時代に対応するためには、政府の包括的な支援が必要です。GX政策推進における国内中小企業に対する考え方について、大臣の所見を伺います。

 米国バイデン政権は、昨年の夏、GX分野への投資として五十兆円の政府の直接支出の方針を打ち出し、その規模の大きさと本気度に、先行するEU諸国の関係者を焦らせたという話も聞こえてきます。日本政府の打ち出した二十兆円という規模は、国際社会の投資を呼び込むという視点において十分なのでしょうか。政府は、二十兆円を呼び水に、官民合わせて十年間で百五十兆円の投資を目指すと打ち出していますが、この政府の支出規模でそこまでの投資を集めるというのは、甘い見積りではありませんか。大臣の考えを伺います。

 カーボンニュートラルの流れの中で、特に大きな変革を求められる産業の一つに鉄鋼があります。

 鉄は国家なりという言葉もありますが、多くの物づくり産業の基盤となるもので、国内企業は、質が高く、より安価なものをというニーズに応え、国際競争にさらされながら、今日まで言葉に尽くせぬ努力を重ねてこられました。しかし、脱炭素に資する超革新技術を要する製鉄法の開発は、理論上は可能とされるも、技術の壁ははるかに高く、民間企業のみの力ではとても達成できないとして、各国が莫大な支援を基に研究を進めています。

 日本の鉄鋼業が他国に先駆けて水素還元による製鉄技術の開発を実現することは、最重要課題と考えます。また、それまでの間においても、国際競争力の強化とイコールフッティングの環境整備を進めるべきと考えます。大臣に伺いますが、GXの推進に当たって、日本の鉄鋼業をどのように位置づけますか。現状の政府の支援の枠組みで十分でしょうか。見解を伺います。

 この法律により、新たな機構が設立されることになります。

 しかし、新たな機構の設立ということになりますと、どうしても思い出すのが、経済産業省が音頭を取って設立したクールジャパン機構です。二〇二一年度末の累積赤字が三百億円に達するなど、失敗が続いています。官製機構が目利きをして成功するのか、その点を指摘せざるを得ません。新たな機構は、どのような点で他の機構より存在する優位性があって、適切な目利きができるのか。クールジャパン機構の現状を踏まえて、お答えください。

 また、この新たな機構の設立の一方で、環境省には、株式会社脱炭素化支援機構なるものがあります。脱炭素に向けた取組としては、こちらの機構の業務とも重なるものがあるのではないでしょうか。GX推進機構と脱炭素化支援機構との違いについてお示しください。同趣旨の機構が複数存在するということになれば、いわゆる省庁の焼け太りという観点で、行政改革の観点からも問題が生じるものと考えますが、大臣の見解を伺います。

 以上、それぞれについて明快な答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 山岡議員からの御質問にお答えいたします。

 公正な移行と失業なき労働移動についてお尋ねがありました。

 議員御指摘の公正な移行は、GX実行会議における日本労働組合総連合会の芳野構成員の御意見も踏まえ、働く方々の立場を重視し、本年二月に閣議決定したGX実現に向けた基本方針にも明記しております。

 政府としては、この方針に沿って、多排出産業などでのGXに資する革新的技術開発などの投資を促進し、雇用確保の観点をしっかり踏まえるとともに、リスキリング等の人材育成の取組とグリーン分野を含む成長分野への円滑な労働移動を同時に進めます。

 GX推進法案で掲げている脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の実現には、排出削減と経済成長を両立させ、雇用の創出、所得の拡大につなげ、成長と分配の好循環を生み出すことが不可欠であり、公正な移行や雇用の確保の重要性を重く受け止めた規定としております。

 また、本法案成立後に法案に基づき策定するGX推進戦略についても、この考え方を反映したものとします。

 カーボンニュートラルの実現と、競争力の確保と雇用への影響についてお尋ねがありました。

 今年二月に閣議決定したGX実現に向けた基本方針では、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長、産業競争力強化を同時に実現するため、GXを進めることが重要であるとしております。

 具体的には、御指摘のSプラススリーEの原則を大前提として、産業競争力の確保にとっても不可欠な安定的で安価なエネルギー供給を確保するため、再エネの最大限導入、安全性が確保された原子力の活用を進めるとともに、徹底した省エネを進めてまいります。

 また、カーボンプライシングは、代替技術の有無や国際競争力への影響等を踏まえて導入しなければ、国外への生産移転や雇用の流出が生じる可能性もあります。このため、成長志向型カーボンプライシング構想は、技術開発も含め、企業が先行してGXに取り組む期間を設けた上で、当初低い負担から徐々に引き上げる形で導入してまいります。

 脱炭素への移行のためのコストについてお尋ねがありました。

 成長志向型カーボンプライシング構想の負担については、企業がGXに取り組む期間を設けた上で、当初低い負担から徐々に引き上げていく形で、具体的には、EUと同様に、既に商用化された代替技術を有する発電事業者が一義的に負担する特定事業者負担金と、化石燃料の消費に対し値づけする化石燃料賦課金を組み合わせて実施いたします。

 また、その設計においては、広くCO2排出に対して適用される点で公平性を考慮したものとなっており、負担水準の算定方法を法定し、制度開始前に示すことで透明性も確保しております。

 今後の詳細な制度設計や運営においても、御指摘の負担の公平性、透明性の観点などを十分に勘案して取り組んでまいります。

 脱炭素における国際的なルール作りについてお尋ねがありました。

 政府としては、脱炭素の取組を適切に評価し推進していくため、国際的な金融機関が参照する基準を含めて、GX関連の投融資を円滑に進めるための環境整備を始めとしたルール作りを進めております。

 具体的には、鉄鋼における電炉の活用や将来的な水素還元製鉄の導入などの、多排出産業が着実に炭素中立に向かうトランジションの取組について、国際資本市場協会等と連携し、基本指針や分野別ロードマップの策定をしております。また、国際的なサステーナビリティー情報開示基準について国際財務報告基準財団の議長と意見交換を行うなど、グリーンスチール、グリーン鉄などの市場形成に向けた国際評価手法の確立を推進してまいります。

 アジアを始めとする諸外国に対する脱炭素化への支援についてお尋ねがありました。

 各国では、それぞれの実情に応じた脱炭素化に向けた取組が進められており、我が国としては、世界規模でのGXの実現に貢献するべく、クリーン市場の形成やイノベーション協力を主導してまいります。

 アジアの脱炭素化に向け、先日、カーボンニュートラルに挑むアジアの各国とともに、アジア・ゼロエミッション共同体、AZECという枠組みを立ち上げました。このAZEC構想の下、標準作りといった政策協調、カーボンニュートラル達成に向けた定量分析などを含むロードマップの策定や脱炭素技術の開発、実証、実装等に向けた支援を行い、これら取組をG7を含む国際社会に発信しながら、アジアのGX実現につなげてまいります。

 GXに関する北海道への期待についてお尋ねがありました。

 御指摘の北海道の事例は、水資源、土地の拡張性、そして人材等の利点に加え、北海道は、大きな可能性を持つ再生可能エネルギーの導入を他地域に先駆けて行い、クリーンなエネルギーを安定的に供給できるようにしたことも一つの材料として工場立地を実現したと承知をしております。脱炭素化と経済成長を同時に進めていくというGXの地方への広がりの観点も重要になっている中で、地域の特色を生かして脱炭素化により工場立地を呼び込んだ事例であり、他の地域のよいモデルケースになると考えております。

 このような事例を日本各地で増やし、全国において経済、社会、産業の前向きな大変革を実現したいと考えております。

 次世代半導体に関する人材育成と半導体の国内生産体制構築の意義についてお尋ねがありました。

 次世代半導体は、AIや自動運転などの次世代のデジタル技術を支えるキーテクノロジーであり、日米欧が連携して、二〇二〇年代後半の設計、製造基盤の確立に向けて取り組んでいるところです。

 御指摘のとおり、北海道には理系人材を輩出する大学や高専などが立地しており、ラピダスの拠点選定に当たっては、それらが要因の一つになったと考えられます。

 次世代半導体プロジェクトの実現には、それを支える人材が重要であります。例えば、九州を始め各地で産学官連携による半導体の人材育成コンソーシアムが組成され、取組が強化されております。北海道においても、九州と同様の取組を進めてまいりたいと考えております。

 その上で、次世代半導体に限らず半導体は、あらゆる分野に使われる、いわば産業の脳細胞ともいうべきものであり、委員の御指摘のとおり、経済安全保障上、重要な物資の一つであります。

 また、周辺地域への産業集積等の経済波及効果も期待されており、例えば、熊本でのJASM新工場建設に伴い、地域に十年間で四兆円を超える経済効果と七千人を超える雇用を生むとの試算もあります。半導体製造基盤の強化が、投資、イノベーション、所得向上の好循環の実現につながってきております。

 こうした観点を踏まえ、経済産業省としては、令和四年度補正予算で半導体関連予算として約一・三兆円を措置しており、これを活用し、我が国半導体産業の復活に向けて、大胆かつ迅速に取組を進めてまいります。

 GX経済移行債の支援規模についてお尋ねがありました。

 欧米を中心に、脱炭素化を成長の機会と捉え、いかに先行して利益を得るかという、新技術、新製品の実装と市場獲得の競争が始まっております。

 こうした中、まずは十年程度の先行投資支援で構造転換を促し、いち早く新市場獲得を実現することが重要であり、今後十年間で約百五十兆円超の官民一体でのGX投資を実現していくことといたしました。

 この百五十兆円超の官民投資を喚起するために、新たな市場、需要の創出に効果的につながるよう、規制・制度的措置と一体的に二十兆円規模の大胆な先行投資支援を講じていくこと、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブを導入すること、国内外からの民間資金の供給拡大に向け、官民協調でのいわゆるブレンデッドファイナンスなどの活用を推進することという三つの投資促進策を一体的に講じてまいります。

 また、二十兆円という支援の規模は、必要な排出削減規模や経済規模などの観点からも、現時点での他の先進国の支援規模と遜色ないものと認識しており、不十分とは考えておりません。

 鉄鋼業への支援についてお尋ねがありました。

 二十万人の雇用を抱える鉄鋼業は、我が国経済を支える屋台骨である一方、我が国産業部門の約四割のCO2を排出するセクターであります。鉄鋼業などのCO2多排出産業において世界に先駆けて技術革新に挑戦することで、今後創出されるグリーン市場の獲得につなげていくことがGX実現に当たっての最大の課題の一つと考えております。

 このため、グリーンイノベーション基金などを活用し、水素還元製鉄などの革新的な技術の開発を支援しており、今後も、国際競争を踏まえ、支援の拡充を検討してまいります。

 こうした支援を含め、今後、成長志向型カーボンプライシング構想の下、政府として今後十年間で二十兆円規模の先行投資支援を行う方針であり、国際競争力強化、経済成長と排出削減のいずれにも貢献する取組に対しては、鉄鋼業界も含め、大胆な支援を行ってまいります。

 GX推進機構についてお尋ねがありました。

 GX推進機構は、主として、化石燃料賦課金や特定事業者負担金の徴収や、排出量取引制度の運営といった、公平性、中立性が求められる業務を担うことになるため、営利を目的とせず、株式会社形態ではない認可法人として設立いたします。

 また、GX推進機構は、長期かつ大規模で、直ちには収益の見込みが立ちにくいGX投資に対する民間金融機関等の融資を引き出す観点で、債務保証を行うことを中心とした金融支援を行います。

 一方、クールジャパン機構は、財政投融資を活用する機関として、長期的な収益性の確保を前提とする株式会社形態で設立され、主に出資を行っており、法人の目的、形態、主な金融手法に関してGX推進機構とは大きく異なっていると考えております。(拍手)

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 山岡達丸議員からは、まず、平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会の答弁の経緯についてお尋ねがございました。

 御指摘の私の答弁は、委員会の前夜に、質問通告をいただきましたので、条文と逐条解説を参考にしながら自ら答弁案一つ一つに目を通して確認し、答弁させていただいたものでございます。また、答弁の中でも述べておりますとおり、これまでの放送法の解釈を変えるものではなく、補充的な説明であり、それまでと違う答弁をしたという御指摘は当たりません。

 次に、平成二十七年二月十三日の政治的公平性に関するレクについてお尋ねがございました。

 当時、様々な部局より法律案や決裁案件などレクを受けておりましたが、平成二十七年二月十三日に、礒崎元総理補佐官と総務省事務方とのやり取りや平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会の答弁案など、放送法の政治的公平に関するレクを受けたことはございません。

 そもそも、礒崎元補佐官と総務省放送部局がやり取りをしていたとされることにつきまして、私も当時の大臣室の職員も先週まで知りませんでした。当該文書の配付先には大臣室も事務次官も入っておらず、また、大臣室のパソコンからは放送部局のフォルダは開けないといったことから、当該文書について、当時、チェックをすることも不可能でございました。

 御指摘の私の発言とされる内容につき、私は一切発言をしておりません。なぜ作成できるのかという御質問を私にいただきましても、私にはお答えできません。

 次に、放送法の解釈についてお尋ねがございました。

 平成二十七年五月十二日参議院総務委員会における私の答弁は、昭和三十九年に当時の郵政省政府参考人が行った、極端な場合は一つの番組で判断することがあり得る旨の国会答弁とも整合性の取れたものであり、これまでの放送法の解釈を変えるものではございません。

 最後に、当時の部下の職員についてお尋ねがございました。

 総務省に正確性が確認されていない文書が保存されていたことは大変残念でございますし、私自身、大きなショックを受けております。

 ただ、私は、足かけ四年にわたって総務大臣を務めました。今でも総務省には愛情を持っておりますし、多くのすばらしい職員がいらっしゃることは誰よりも承知をしていると思っているつもりでございます。(拍手)

議長(細田博之君) 経済産業大臣から、答弁を補足したいとの申出があります。これを許します。経済産業大臣西村康稔君。

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 答弁漏れがございましたので、おわびを申し上げ、追加で答弁させていただきます。

 GX政策推進のための中小企業への支援についてお尋ねがございました。

 産業競争力の強化とカーボンニュートラルの実現を同時に達成するためには、大企業のみならず、中小企業も取り残されることのないよう、GXの取組を支える官民での環境整備が不可欠であります。

 このため、令和四年度第二次補正の中小企業対策予算の中で、例えば、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品等の開発に必要な設備投資等を支援するものづくり補助金のグリーン枠を拡充する、また、事業再構築補助金のグリーン成長枠についても、中小企業の使い勝手がよくなるよう、研究開発期間を二年から一年に短縮するなど要件緩和を行いました。さらに、こうした支援がより効果的に中小企業に届くよう、中小機構における相談窓口の体制強化や専門家によるハンズオン支援の体制構築などで中小企業を支援してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 小野泰輔君。

    〔小野泰輔君登壇〕

小野泰輔君 日本維新の会の小野泰輔です。

 会派を代表して、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案、いわゆるGX推進法案について質問いたします。(拍手)

 なお、日本維新の会は、本日午前中、GX実現に向けた基本方針に関わる提言を西村GX実行推進担当大臣に提出をいたしました。政府には、私どもの提言も是非御検討いただき、施策の着実な実現に努めていただきたいと思います。

 本法案の提出理由として、エネルギーの脱炭素化に向けた取組等と産業競争力の強化とを両立させた脱炭素成長型の経済構造への円滑な移行を推進することが掲げられています。

 その軸自体には全く異論はありません。本法案は、我が国が脱炭素を追求する一方、経済成長を両立させられるかどうかの鍵を握る非常に重要な政策をデザインするものと認識しています。

 そして、我が国が脱炭素を実現することのもう一つの重要な意義は、化石資源に過度に依存しないことがエネルギー安全保障にもつながるということです。

 二〇一八年、我が国の一次エネルギー供給に占める化石燃料依存度は八五・五%となっており、福島第一原子力発電所の事故以降、高止まりしています。資源に乏しい我が国は、戦前においても戦後においても、エネルギーの確保に常に苦労し、度々経済社会が危機に瀕してきました。GXに真剣に取り組み、成果を確実に出すことこそが、持続的な地球環境への道を開くだけにとどまらず、将来に向けた国民の暮らしの安寧を保障することにつながります。

 それでは、本法案がそれらを実現するのに足るものかどうか、その中身について質問いたします。

 まず、成長志向型カーボンプライシングのうち、化石燃料賦課金についてです。

 本法案により、政府は、五年後の二〇二八年度から、化石燃料の輸入事業者等に対し、化石燃料に由来するCO2の量に応じた炭素に対する賦課金を徴収することとしています。

 そもそも、税などの新たな負担を課すことは企業活動を阻害することにもなるため、賦課金導入の前後で可能な限り中立であるべきと考えますが、この点、考慮されているのでしょうか、それとも負担を増加させるものなのでしょうか。GX担当大臣に制度の考え方について伺います。

 仮に導入することに合理性があるとしても、なぜ開始年が二〇二八年なのでしょうか。二〇三〇年の野心的目標達成には到底間に合わず、機能しないのではないでしょうか。なぜ五年後の開始としているのか、その理由をGX担当大臣に伺います。

 また、化石燃料賦課金を課すこととなった場合には、既存のガソリン税等を抜本的に見直し、カーボンニュートラル社会に向けた明示的なカーボンプライシングとして税体系を整理すべきと考えますが、この点に関し、財務大臣及びGX担当大臣、それぞれのお考えを伺います。

 排出量取引制度についても、その導入の時期が遅いのではないかと考えます。

 法案では、排出量取引制度の本格稼働を三年後の二〇二六年度とし、発電事業者への有償オークション導入を二〇三三年度としています。民間の創意工夫を生かした形でGXを強力に進めていくためには、負担の在り方を広く薄くすることに心がけつつ、できるだけ早期に全ての業界が参加する形で排出量取引制度をスタートさせ、その財源を温室効果ガス削減の結果が確実に出る投資に振り向けることが極めて重要であると考えます。

 政府の構想では、特定の産業界に過度に配慮し、任意参加の期間が長期にわたっています。自主的に頑張っている人だけが負担する仕組みでは、取組の広がりに欠くのではないでしょうか。また、有償オークションは発電事業者のみに対象を絞る形での実施となっており、温室効果ガス削減効果という点でも、産業界の脱炭素への構造転換という意味でも、有効に機能しないのではないでしょうか。

 排出量取引制度の二〇二六年度の本格稼働の本格とは何を意味するのか、二〇三〇年や二〇五〇年に向けたスケジュールとして導入が遅いのではないか、任意参加の期間が長いのではないか、そして有償オークションを発電事業者に限っているのはなぜなのかについて、GX担当大臣に伺います。

 そもそも、これまで我が国で行われてきた各種排出量取引制度の成果や教訓が、今回のGX推進基本方針にどう生かされているのでしょうか。これまでの取組についての評価と、それをどう生かそうとしているのかについても併せて伺います。

 GX経済移行債により調達した二十兆円の使途について、専門家からも指摘されているのが、カーボンニュートラル実現に向けて効果的なものとなっているかが明確でないというものです。

 例えば、水素、アンモニアの混焼に関しては、二〇三〇年政府目標においても電源構成比にして僅か一%にすぎず、カーボンニュートラル実現にすぐに利いてくる分野ではありません。もちろん、水素、アンモニアが電力以外のエネルギー源として活用幅が広いということを考慮しているものと思いますが、国内のエネルギー供給を早急に脱炭素化することは、国際的に通用する事業環境の整備という面でも非常に重要です。

 技術的に夢のある未来への投資ももちろん必要ですが、カーボンニュートラルに向けてすぐに結果が出る、今ある技術や設備を使って投資を促進していくことに注力すべきと考えます。具体的には、導入が先細ってきている再生可能エネルギーの積極的な普及や、我が国でなかなか進まない住宅等の省エネ対策などです。

 政府は、二十兆円のGX経済移行債を活用して、十年間で百五十兆円の民間投資を呼び込むとしていますが、二十兆円のうちどれだけを民間の投資インセンティブに使う見通しなのでしょうか。方向性をGX担当大臣にお伺いします。

 先ほど触れましたとおり、民間投資を加速化させるべき分野の一つは再生可能エネルギーです。

 我が国は、この十年で、他の先進諸国に比べて導入のペースが鈍ってきています。例えば太陽光発電については、系統の能力不足や系統接続の優先順位が劣後していることなど、新規導入への課題がずっと指摘されてきました。

 送電網等への大規模なインフラ投資や再エネを最大限活用するルールの策定を早急に進める必要があり、GX実現に向けた基本方針にもその推進のための施策が盛り込まれていますが、なぜこれまで思うように進まなかったのか、そして、これからは導入のペースが加速化する見込みがあるのか、経済産業大臣の御認識を伺います。

 また、議場におられる議員の皆様もよく有権者からお聞きされることと思いますが、太陽光パネルはほとんど中国産であり、山林等において野方図な開発が行われたこともあって、太陽光発電のこれ以上の導入はやめるべきだとの御意見をいただきます。

 しかしながら、住宅等の屋根や農地にもまだまだ太陽光パネルを設置する余地はあり、政府としても引き続き推進を進めていくべきと考えます。そのためには、国民に対する太陽光発電に関してのネガティブな印象を払拭するための丁寧なコミュニケーションを図っていく必要があると考えますが、経済産業大臣の御見解を伺います。

 また、太陽光発電が忌み嫌われがちなもう一つの理由として、地域がメリットを享受できない形で設置されるケースが多いということがあります。地域に裨益する形での太陽光発電の導入の仕組みについてのお考えを経済産業大臣に伺います。

 さらに、米国等と連携し、太陽光パネルを中国に依存しないサプライチェーンを着実に構築していくことも、経済安全保障の観点からも非常に重要と考えますが、その実現に向けて施策を進めていくお考えがあるのか、経済産業大臣に伺います。

 本法案における最大の疑問は、これら脱炭素社会を実現するための手段としてのカーボンプライシングが、GX経済移行債二十兆円の償還財源として位置づけられていることです。GX経済移行債の規模や償還タイミングにとらわれて炭素賦課金や排出量取引の制度設計が左右されるようでは、主従を見誤ることになるのではないでしょうか。GX担当大臣にお伺いします。

 そもそも、GXを進めるために政府が財政支出をする目的は、国が脱炭素社会の実現に向かって政策的に主導権を発揮することにより、カーボンニュートラルの達成と我が国経済の成長を同時にもたらすためです。国が率先してGX投資を促す制度設計や規制緩和を行いつつ、自らも投資や技術開発を行うことにより民間投資や需要を喚起すれば、我が国経済は成長を果たすことができるでしょう。それに伴って、税収も大きく増加します。経済成長による税収の増加を見据えているのであれば、GX経済移行債という枠にとらわれることなく、炭素賦課金や特定事業者負担金を最適にチューニングすることができます。

 何より、経済成長とそれによる税収増を成し遂げるという意欲的な青写真を描くことなく国債の償還財源を確保するという主客逆転の考えが本法案の起点になっており、極めて残念でなりません。GXを我が国経済が再び成長するための千載一遇の好機と捉え、脱炭素と経済成長を世界の他のどの国よりも成功させるためのより大胆な制度設計を行うべきと考えますが、GX担当大臣の御見解を伺います。

 本法案において、GX経済移行債やその償還財源となる化石燃料賦課金と特定事業者負担金の収入は、エネルギー対策特別会計に区分して管理されることになっています。しかし、今述べたとおり、特定財源の枠の中で施策を考えることは、カーボンニュートラル実現のために最適化された施策を打ち出すのに不向きと考えます。それに加えて、特別会計という、より国会や財政当局のチェックを受けにくい場所に多額の資金を置くことになってしまいます。

 今年度補正予算において、経済産業省は当初予算に比べ十倍近くもの補正予算を計上するなど、その肥大化が目立つようになっていますが、このGX関連の特別会計化は、それを常態化させることにもなるのではないでしょうか。GX担当大臣及び財務大臣の見解をそれぞれお伺いします。

 また、民間企業のGX投資の支援や、化石燃料賦課金及び特定事業者負担金の徴収、そして排出量取引制度の運営という異なる重要な業務を、経済産業大臣が認可するGX推進機構に行わせることとなっています。

 そもそも、このような新たな行政機構をつくることについては慎重を期すべきだと考えますし、また、少なくとも、投資支援部門とカーボンプライシング運営部門は、施策の狙いや方針については連携しながらも、業務の枢要な部分については独立性が保たれなければなりません。さらに、GX推進機構の許認可が経済産業大臣に与えられている理由も理解できません。

 GX推進機構の組織形態やガバナンスの在り方、許認可権者が経産大臣である理由についてどのように考えているのか。経済産業大臣がGX担当大臣を兼ねているため、答弁する側もそもそも切り分けが難しいのではと思われますが、GX担当大臣としての西村大臣にお伺いします。

 最後に、私どもがGXを果たすために最も重要だと考えることについて申し上げます。

 アベノミクスに代表されるように、長らく政府の成長戦略がうまくいかず、世界各国に比べて低い成長水準にとどまっている理由は、新しいビジネス創出を可能とし、民間投資を促進する適切な規制緩和やルール作りがなされてこなかったことにあります。今回の法案によって政府が二十兆円の予算を幾ら獲得しようと、グリーン関連ビジネスに立ちはだかる障壁がなくならず、また、投資家や消費者が当該マーケットが投資に値すると納得できる仕組みをつくらない限り、脱炭素の構築も、それに基づく経済成長も実現することは困難と考えます。

 日本維新の会は、既得権益者にとらわれず、しがらみを断ち切り改革を行うことにより、あるべき社会への道を切り開く挑戦者を積極的に後押ししてまいります。その一点にしか、我が国復活の道はありません。

 これからの政府のGXへの取組をどのように行うのかは、我が国が失われた三十年から脱却する契機となるのか、あるいは失われた四十年、五十年につながる結果となるのかの大きな分かれ道になると考えています。政府が脱炭素社会の実現と経済成長に向けて適切な施策を行おうとしているのか、厳しくチェックし論議するとともに、取るべき政策について積極的に提言し続けることを宣言いたしまして、私の質問といたします。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 小野議員からの御質問にお答えをいたします。

 化石燃料賦課金についてお尋ねがございました。

 我が国は、二〇三〇年度四六%削減や二〇五〇年カーボンニュートラルといった野心的な温室効果ガスの削減目標を掲げております。この目標を、エネルギー安定供給や産業競争力強化、経済成長と両立させて、持続的な形で実現していくことが重要であります。

 このため、お尋ねの化石燃料賦課金を含めた成長志向型カーボンプライシングは、御指摘の企業活動や経済への影響等を踏まえ、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく範囲内、すなわち、今後、石油石炭税収がGXの進展により減少し、再エネ賦課金総額が再エネ電気の買取り価格の低下等によりピークを迎えた後に減少していく範囲内で導入することとしております。

 化石燃料賦課金の導入時期についてもお尋ねがございました。

 第六次エネルギー基本計画を踏まえた二〇三〇年度の電源構成の見通しである再エネ三六から三八%、原子力二〇から二二%の確実な達成などを通じて、二〇三〇年度温室効果ガス四六%削減、さらには二〇五〇年カーボンニュートラル実現に取り組むこととしております。

 こうした国際公約の実現と経済成長、産業競争力強化の両立に向け、成長志向型カーボンプライシング構想を実現、実行し、早期にGXに取り組むほど将来のカーボンプライシングの負担が軽くなる仕組みとしつつ、足下から二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うことで、意欲ある企業の取組を迅速に、強力に支援することとしております。

 具体的には、御指摘の化石燃料賦課金については、企業がGXに取り組む期間を設けた上で、当初低い負担から徐々に引き上げていく方針をあらかじめ明確にしております。その導入に際しては、代替技術の有無や国際競争力への影響等を踏まえなければ、経済に悪影響を及ぼすだけではなく、国外への生産移転が生じ、世界全体で見ればCO2排出が増加する可能性もあることから、導入時期は二〇二八年度としております。

 カーボンニュートラル実現に向けた税体系についてお尋ねがありました。

 ガソリン税等を抜本的に見直すべきという御指摘については、それぞれの税目における課税根拠等に応じて、その必要性や許容性を精査の上、制度措置しており、今回の法案のみを契機として整理することは困難と考えております。

 成長志向型カーボンプライシング構想では、御指摘の化石燃料賦課金を排出量取引制度や有償オークションと併せて導入するとともに、足下から二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うこととしており、様々な政策措置を総合的に講じていくこととしております。こうした取組を通じ、二〇五〇年カーボンニュートラルの達成も含め、脱炭素とエネルギー安定供給、そして経済成長の三つを同時に実現するGXの取組を加速化してまいります。

 排出量取引制度についてお尋ねがありました。

 排出量取引制度については、本年四月から、EUと同水準である国内排出量の四割以上を占める六百社以上の企業が参加するGXリーグで排出量取引制度を試行的に開始いたします。その上で、蓄積された知見、ノウハウを活用し、二〇二六年度から、多排出産業分野を中心に、政府指針を踏まえた目標設定を行うなど、公平性と実効性をより高めた排出量取引制度を本格稼働させます。さらに、カーボンニュートラルの鍵を握る電源の脱炭素化を加速すべく、二〇三三年度から、発電部門を対象に有償オークションを開始いたします。

 あらかじめこのような将来の導入の時間軸を示すことで、早期にGXに取り組むほど将来の負担が軽くなる仕組みとしつつ、足下から二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うことにより、企業によるGXに向けた投資や取組を足下から引き出してまいります。

 従来行われてきた各種排出量取引制度の成果と今回の取組との関係についてお尋ねがありました。

 我が国では、これまで、平成二十年から二十三年に行われた排出量取引の試行実施に加えて、中小企業等の排出削減を促進するJクレジット、昨年九月から本年一月末までの東京証券取引所におけるカーボンクレジット取引市場の実証などを通じて、産業界の自発的な行動を促し、産業競争力と排出削減の両立を図ってまいりました。

 こうした取組を通じて、政府として、産業界の創意工夫を引き出すとともに、排出量取引の基礎となる排出量の計測や算定方法、炭素価格の公示など、一定の知見やノウハウを得てまいりました。

 こうした過去の事業成果、GXリーグや取引市場の進捗、海外の政策動向なども踏まえ、今後の本格稼働に向けて議論を深めてまいります。

 GX経済移行債の使途についてお尋ねがありました。

 GX経済移行債による支援の基本的考え方としては、例えば、鉄の製法を転換し抜本的なCO2削減を実現する水素還元製鉄のような研究開発や設備投資支援を含め、民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業を対象に、国内の人的、物的投資拡大につながり、産業競争力強化、経済成長及び排出削減のいずれの実現にも貢献するものについて、投資支援策を講ずることとしております。

 この二十兆円規模の支援は、全て民間の投資インセンティブを創出するために使うことを想定しております。

 再エネ導入加速に向けて、送電網の整備などについてお尋ねがありました。

 FIT制度の導入後、再エネ比率は、震災前の約一〇%から二〇二一年度には約二〇%まで倍増になるなど、着実に進展してきております。更なる再エネ導入に向けては、周辺地域の住民の皆様の理解を前提に、系統の整備、太陽光や風力の出力変動に対応するための調整力の確保を進めていく必要があります。

 このため、地域間を結ぶ系統について、今後十年間程度で過去十年間と比べて八倍以上の規模で整備を加速するとともに、調整力として重要な定置用蓄電池の導入への支援などを進めてまいります。

 太陽光発電に関する丁寧なコミュニケーションの重要性についてお尋ねがありました。

 二〇三〇年度に再エネ比率三六から三八%という目標の実現に向け、特に太陽光発電については、地域との共生を前提に、二〇三〇年度には現行の二倍程度とすることが政府の基本方針であります。

 一方、これまでに導入された再エネの中には、安全面、防災面、景観、環境への影響など、地域の懸念が顕在した例もあります。これらの地域の懸念に適切に対応すべく、FIT、FIP認定の際に、住民説明会の開催など、地域の方々への事業内容の事前周知を認定要件化するなどの措置を盛り込んだ関係法案を国会に提出したところであります。

 引き続き、地域の御理解や信頼を得ながら、しっかりと地域に根差した再エネ導入拡大を進めてまいります。

 地域に裨益する太陽光発電の導入についてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーの導入を推進していくに当たって、地域への裨益は重要な要素であります。

 地域経済の活性化という観点では、再エネの設備の建設工事や設備の補修、メンテナンス等の継続的な雇用や需要の発生が期待されます。また、小口資金を出し合うなど、地域住民が参画する取組も広がってきているところであります。

 さらに、レジリエンスの向上という観点でも、地域の再エネと既存の系統線を活用したマイクログリッドの構築により、地域のレジリエンス向上の効果も期待がされます。

 経済産業省としては、地域との共生を前提に、関係省庁と一体となって、地域に根差した再エネの導入を積極的に推進してまいります。

 太陽光パネルの国産サプライチェーン構築についてお尋ねがありました。

 エネルギー安全保障の観点からは、特定国からの供給状況に左右されることなく、より強靱なエネルギー供給構造を実現していくことが重要です。

 例えば、軽量で柔軟性を有するペロブスカイトは日本発の技術であり、主な原料であるヨウ素は日本が世界第二位の産出量となっております。

 グリーンイノベーション基金を活用しながら、研究開発から社会実装までを一気通貫で支援し、国産のサプライチェーン構築も見据え、ペロブスカイトなどの次世代太陽電池の早期実用化に取り組んでまいります。

 炭素に対する賦課金と排出量取引制度についてお尋ねがありました。

 これらの制度は、御指摘の、GX経済移行債の規模や償還タイミングを優先して制度設計しているものではなく、国による二十兆円規模の先行投資支援を含め、排出削減と産業競争力強化、経済成長を同時に実現していく観点から設計をしております。

 具体的には、企業がGXに取り組む期間を設けた上で、当初低い負担から徐々に引き上げていく方針をあらかじめ明確にし、その際、代替技術の有無や国際競争力への影響等を踏まえなければ、経済に悪影響を及ぼすだけでなく、国外への生産移転が生じ、世界全体で見ればCO2排出が増加する可能性もあることなどを踏まえて制度設計を行っております。

 こうした制度設計により、早期にGXに取り組むほど将来のカーボンプライシングの負担が軽くなる仕組みとし、企業のGXに向けた先行的な投資や取組を引き出してまいります。

 脱炭素と経済成長を実現するため、より大胆な制度設計を行うべきではないかとのお尋ねがございました。

 脱炭素のイノベーション、まさにこれからの世界経済の鍵を握るものであります。我が国は、脱炭素と経済成長を共に実現していくために重要な水素、アンモニアや、抜本的なCO2削減を可能とする水素還元製鉄、次世代太陽電池などの分野で先行しており、今後、更に取組を強化してまいります。

 そのため、長年の課題でもあった成長志向型カーボンプライシング構想を取りまとめ、新たにGX経済移行債を創設し、二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うとともに、規制・制度的措置を一体的に講じることで、百五十兆円を超える大規模のGX投資を実現してまいります。

 御指摘のように、GXを我が国経済を再び成長させるための好機と捉え、我が国が強みを持つGX関連の技術力を生かし、世界の脱炭素化にも貢献をしてまいります。

 予算編成と特別会計の関係についてお尋ねがございました。

 GX経済移行債により調達した資金は、GXに向けた投資促進のために支出することを明確にするべく、エネルギー対策特別会計で区分して経理することとしております。

 その上で、GX経済移行債については、毎年度、予算に計上し、国会の議決を経た金額の範囲内で発行するとともに、その財源を活用した予算措置についても、国会に提出し御審議をいただくこととしております。また、その執行に当たっては、グリーンイノベーション基金などで行っているような外部の専門家の目を入れた仕組みを検討してまいります。

 産業競争力強化、経済成長と排出削減を共に実現していく上で、効果的な施策をしっかりと実現してまいります。

 GX推進機構の組織についてお尋ねがございました。

 GX推進機構は、化石燃料賦課金の徴収等、公平性、中立性が求められる業務を担うため、営利を目的とせず、株式会社形態ではない認可法人とした上で、本法律案で必要な監督規定を置くなど、そのガバナンスを適切に機能させていくこととしております。

 また、GX推進機構は、経済構造を脱炭素化と経済成長を両立する形に転換していくことを目的としており、経済産業大臣が所管する化石燃料事業者や電気事業者を対象に、化石燃料賦課金の徴収や排出量取引市場の有償オークションの運営を担うとともに、脱炭素成長型経済構造への移行を産業横断で進めていくことを目的とした債務保証などの金融支援を行うことから、執行は経済産業省が担うこととしております。

 一方で、GX推進機構を含めたGX実現に向けた施策は、総理を議長、GX実行推進担当大臣である私を副議長とするGX実行会議において、環境大臣を始め関係大臣を含めて、進捗評価を定期的に実施し、必要な見直しを効果的に行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 小野泰輔議員の御質問にお答えいたします。

 まず、既存の揮発油税等の見直しを含む明示的なカーボンプライシングへの税体系の見直しについてお尋ねがありました。

 カーボンニュートラルの実現に向けては、国内外の資金を最大限活用し、社会全体の適切な移行を支援しつつ、新しい投資や技術革新を促していくとともに、削減目標の実現に向け、技術革新及びその社会実装を進めるとともに、あらゆる行動主体が脱炭素を選好する社会を構築していくといった観点から、様々な政策手段を用いながら取り組んでいく必要があると考えております。

 その上で、御指摘の、揮発油税を含む既存の燃料課税に関する明示的なカーボンプライシングへの見直しについては、それぞれの税目の課税根拠や創設の経緯、その見直しによる経済への影響などを踏まえた丁寧な検討が必要になると考えております。

 最後に、GX関連予算の特別会計での管理についてお尋ねがありました。

 GX経済移行債により調達した資金は、GXに向けた投資促進のために支出することを明確化すべく、エネルギー対策特別会計で区分して経理することとしております。

 その上で、予算については、一般会計か特別会計かにかかわらず、その必要性等について各省と財政当局の間で議論、検討を行った上で、国会に提出し御審議いただくことになっております。GX関連経費につきましても、肥大化との御批判をいただくことのないよう、財務省としてもしっかり精査してまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 鈴木義弘君。

    〔鈴木義弘君登壇〕

鈴木義弘君 国民民主党・無所属クラブを代表して、法案の質問を行います。(拍手)

 日本政府は、これからの成長戦略として、グリーン化、GXと、デジタル化、DXの二つが柱になるとしています。政府が令和三年六月に発表した二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の中でも、「グリーン成長戦略を支えるのは、強靱なデジタルインフラであり、グリーンとデジタルは、車の両輪である。」とされています。つまり、脱炭素化の達成の基盤としてDXが必須であります。

 しかし、日本のデジタル化は決定的に遅れていると警鐘を鳴らしている識者もいます。例えば、コロナ禍で、会社に印鑑を押しに行く話、感染の接触アプリが長期間機能していなかったことや保健所から情報伝達のファクス利用など集計の時間や誤りなど、DXが進んでいないというのが現状です。

 このように、いまだDXが進んでいない中でどのようにGXを推進していく考えなのか、経済産業大臣にお尋ねします。

 DXを進める中で、経済産業省は、IT人材は二〇三〇年には最大で七十九万人不足すると発表しているんですが、IT人材のうち、ビジネスプロデューサー、ITアーキテクト、データサイエンティスト、UXデザイナー、エンジニアなど、どの人材をどこで教育していくのか。それが、企業内でやるのか、大学や学校などの教育機関でやるのか。

 政府では、デジタルスキル標準を策定し、マナビDXの取組やオンライン教育ポータルサイト、ITパスポート試験、情報1の学習指導要領などにおいて人材の育成を進めていると聞くんですが、しかし、それだけで足りるのでしょうか。情報1については、指導する教員が不足しているという現場の声も聞きます。また、スピード感が足りないという感じもします。今後、どのような人材を何人、時間的ロードマップをどう示していくのか、経済産業大臣にお伺いいたします。

 発表されたGXリーグ基本構想について、二〇五〇年までにカーボンニュートラルを実現するために、二〇三〇年度あたり二〇一三年度比で温室効果ガスの四六%削減を達成するとしていますが、あと七年しかありません。間に合いますか。

 GXリーグに参加する企業各社は自主的目標を策定するだけであり、二〇三〇年の削減目標に整合するタイムラインで各社の排出量の総和を段階的に縮小させる仕組みがない、そのため、各社による自主的目標の削減量の総和が二〇三〇年の日本の削減目標に合致する保証はないとの指摘があります。GXリーグへの参加はあくまで企業の任意であり、また、離脱するにも制限がありません。これではGXリーグの対象企業の拡大にはつながらず、排出削減が目標を達成できるか、疑問が残ります。経済産業大臣に御所見を伺います。

 また、GXを推進するのに、産業界ばかりじゃなくて、林野業界にも支援する仕組みが必要ではないでしょうか。八〇%が森林の国が日本です。森林のメンテナンスを行うことでCO2を吸収する余地があるのであれば、山の手入れをすることも併せて支援することが必要だと考えます。木を見て森を見ずの言葉がありますが、これまで利用してきたJクレジットとGXリーグ構想との互換性を経済産業大臣にお伺いします。

 GXの推進に当たっては、円滑な労働移動はもとより、地域脱炭素化、産業移転に伴う地域経済の在り方を含めた、これらの分野横断的課題の深掘りが重要となるため、国、地域、産業の各レベルで政労使が加わる社会対話を行うとともに、特に、失業なき労働移動の円滑な実現に向けては、省庁横断的な対応、多様な働き方に対応した社会保障制度や学び直しに必要な生活保障などのセーフティーネットの構築、中小零細業者の雇用者への強力な支援を行っていただきたいと考えますが、経済産業大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。

 以上で終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 鈴木議員からの御質問にお答えをいたします。

 デジタル化とGX推進の考え方についてお尋ねがありました。

 GXの推進は、デジタル化と効果的に組み合わせることが重要であります。例えば、系統運用の高度化を図るスマートグリッド、IoTを活用した工場の効率化、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせて最適制御するスマートハウスなどを活用して、GXを効果的に進めてまいります。

 また、DXを進めていく中で電力消費が増加し、結果としてCO2の排出が増加することに対応するため、少ない電力消費で大量のデータを高速に処理する光電融合の研究開発などにも取り組んでまいります。

 このように、政府一丸となって、GXとDXを効果的に組み合わせながらそれぞれの効果が上がるよう、取組を着実に進めてまいります。

 DX人材の育成についてお尋ねがありました。

 DXの推進には、データサイエンティストやソフトウェアエンジニアなどのDX人材が重要です。

 DX人材については、政府全体で二〇二六年度末までに二百三十万人を育成するという目標を掲げており、関係省庁一体となって取組を強化しております。

 経済産業省では、民間教育コンテンツを一元的に提供するプラットフォームの活用促進や情報処理技術者試験の受験者数の増加等を通じて、目標の達成に向けて十分なDX人材を育成してまいります。

 また、文部科学省では、御指摘の情報1の指導教員不足の解消に向けて、都道府県教育委員会への指導を通じ、全ての高校における指導体制の充実に取り組むとともに、大学、高専においても、数理、データサイエンス、AI教育の推進などに取り組んでいるものと承知をしております。

 さらに、そうした情報教育を支援する社会人教員の派遣に向けて、地域の大学と地方経済産業局が緊密に連携して取り組んでおります。

 こうした取組を通じて、確実に目標を達成できるよう、関係省庁とも連携し、スピード感を持ってDX人材育成に取り組んでまいります。

 国の排出量目標達成に向けた取組とGXリーグの役割についてお尋ねがありました。

 GX実現に向けた基本方針では、第六次エネルギー基本計画を踏まえた二〇三〇年度のエネルギーミックスの達成や成長志向型カーボンプライシング構想の実現、実行などを通じて、二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けて取り組むことを明記しております。

 成長志向型カーボンプライシング構想においては、化石燃料賦課金は二〇二八年度から、発電事業者に対する有償オークションは二〇三三年度から導入することをあらかじめ明確に示し、早期にGXに取り組むほど将来のカーボンプライシングの負担が軽くなる仕組みとし、企業のGXに向けた先行的な投資や取組を引き出してまいります。

 また、GXリーグは、自ら掲げる野心的な排出目標の実現に向け、市場取引も活用して排出量削減を行う企業群から構成される仕組みで、昨年三月末時点で四百四十社の賛同がありましたが、現在、六百七十九社に増えており、EUと同水準である国内排出量の四割以上をカバーしております。

 本年四月の開始以降、必要なデータや知見、ノウハウを官民で蓄積しながら、制度の公平性や実効性を更に高める仕組みについて検討を深め、二〇二六年度頃より排出量取引制度の本格稼働を目指します。

 JクレジットとGXリーグの関係性についてお尋ねがありました。

 二〇一三年度から開始しているJクレジット制度は、中小企業や自治体、個人を含め、様々な主体による排出削減、吸収量をクレジットとして認証する制度です。

 一方、本年四月より活動を開始するGXリーグは、野心的な排出削減目標に向け果敢に取り組む企業群が、自らの排出量を市場取引も活用して削減する枠組みであり、GXリーグで実施する排出量取引においてもJクレジットの活用も可能であります。

 政府としては、地球温暖化対策計画において、Jクレジットを二〇三〇年度までに一千五百万トンまで拡大する方針であり、森林由来クレジットの創出拡大に向けた制度改正など、関係省庁と連携して取り組むとともに、昨年九月から本年一月末まで、東京証券取引所において取引所での取引実証を行い、更なる取引活性化に向けた検討も進めているところであります。

 今後、我が国CO2排出量の四割以上をカバーする六百七十九社の企業が賛同するGXリーグの開始により、Jクレジットの潜在的な需要と創出が更に拡大するという相乗効果が発揮されることを期待しております。

 GX推進における失業なき労働移動などについてお尋ねがございました。

 GX実行会議では、経済団体や労働組合の代表者に有識者として御参加いただき、GX実現に向けた基本方針を取りまとめました。これを受け、必要な法制上の措置を講じるものの一つが、今回のGX推進法案です。

 御指摘の失業なき労働移動については、産業ごとの実態も踏まえ、中小零細業者の雇用者も含めた幅広い人材の育成に向けた支援を行うことが重要です。

 化石燃料関連産業から低炭素産業への労働移動等が発生する場合に、実際に働く労働者一人一人がその変化に取り残されることがないよう、リスキリングなど人材育成の取組と、グリーン分野を含む成長分野への円滑な労働移動を同時に進めてまいります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

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議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十七分散会

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 出席国務大臣

       総務大臣   松本 剛明君

       法務大臣   齋藤  健君

       財務大臣

       国務大臣   鈴木 俊一君

       厚生労働大臣 加藤 勝信君

       経済産業大臣

       国務大臣   西村 康稔君

       国土交通大臣 斉藤 鉄夫君

       環境大臣   西村 明宏君

       国務大臣   河野 太郎君

       国務大臣   高市 早苗君

       国務大臣   松野 博一君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 太田 房江君


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