衆議院

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第10号 令和5年3月14日(火曜日)

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令和五年三月十四日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  令和五年三月十四日

    午後一時開議

 第一 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長塚田一郎君。

    ―――――――――――――

 関税定率法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔塚田一郎君登壇〕

塚田一郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、内外の経済情勢等に対応するため、令和五年三月末に到来する暫定税率等の適用期限を延長するとともに、税関長が税関事務管理人を指定できる等の規定の整備を行うほか、個別品目の関税率の見直し等を行うものであります。

 本案は、去る三月六日当委員会に付託され、翌七日、鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入り、十日質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長伊藤忠彦君。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊藤忠彦君登壇〕

伊藤忠彦君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を十五人減少するとともに、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少しようとするものであります。

 本案は、去る三月七日本委員会に付託され、翌八日齋藤法務大臣から趣旨の説明を聴取し、十日、質疑を行い、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣斉藤鉄夫君。

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 地域公共交通は、住民生活や地域の社会経済活動に不可欠な社会基盤ですが、人口減少やモータリゼーション等による長期的な利用者の落ち込みに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるライフスタイルの変化の影響もあり、大変厳しい状況に置かれています。特に、大規模な設備を要する鉄道については、一部のローカル線区におきまして、利用者の大幅な減少により、こうした設備を活かした大量輸送機関としての特性が十分に発揮できない状況が出てきています。

 こうした状況を踏まえ、地域の関係者が共創、すなわち連携と協働を通じて、利便性、持続可能性、生産性の高い地域公共交通ネットワークへのリデザインを進めるための仕組みを構築することが急務となっています。

 このような趣旨から、この度、この法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、法律の目的に、地域の関係者の連携と協働の推進を規定することとしております。また、国の努力義務として、関係者相互間の連携と協働の促進を追加するとともに、地域公共交通計画への記載に努める事項として、地域の関係者相互間の連携に関する事項を追加することとしております。

 第二に、ローカル鉄道の再構築を図るため、大量輸送機関としての鉄道の特性が十分に発揮できていない区間について、地方公共団体又は鉄道事業者は、国土交通大臣に再構築協議会の組織を要請できることとし、国土交通大臣は、関係地方公共団体から意見を聴取した上で、基準に合致すると認める場合には、再構築協議会を組織し、同協議会が再構築方針を策定することとする等の措置を講ずることとしております。

 第三に、バス、タクシー等の地域公共交通のリデザインを図るため、地方公共団体と交通事業者が、一定の区域、期間について、交通サービス水準と費用負担に関する協定を締結し、交通サービスの提供を行う事業と、交通分野におけるDX、デジタルトランスフォーメーションや、GX、グリーントランスフォーメーションを推進する事業をそれぞれ法律に位置づけることとしております。

 第四に、鉄道とタクシーにおいて、地域の関係者の連携と協働の一層の推進や地域に根差した輸送サービスの充実を図るため、地域の関係者間の協議が調ったときは、国土交通大臣による認可に代えて、届出により運賃設定が可能となる協議運賃制度を創設することとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。末次精一君。

    〔末次精一君登壇〕

末次精一君 立憲民主党の末次精一です。

 立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。(拍手)

 地域公共交通の確保、維持をめぐっては、頻発化、激甚化する災害時の物流維持のため、経済安全保障の観点がますます重要になっています。

 経済安全保障担当大臣として地域公共交通活性化法案にも関わる高市大臣におかれましては、その政策遂行の信用にも直結する問題が話題となっていることを踏まえ、放送法の解釈について、高市大臣に伺います。

 二〇一五年二月十三日の放送法に関する高市総務大臣レクについて、高市大臣は、三月八日の参議院予算委員会で、このようなレクは受けたはずもございませんと答弁し、三月九日の衆議院本会議でも、放送法の政治的公平に関するレクを受けたことはございませんと明確に否定しておられます。

 ところが、昨日の参議院予算委員会において、総務省の担当局長から、二〇一五年二月十三日に放送関係の大臣レクがあった可能性が高いと考えられますとの答弁がございました。

 大臣の御発言であれ、総務省官僚の御発言であれ、国民からいたしましたら、どちらも、本来、信頼、信用されるべき発言であります。しかしながら、その両者の発言が食い違っているという点は、国民に対する不要な不安、不信を与えかねません。

 再度確認いたします。

 高市大臣は、二〇一五年二月十三日に放送関係の大臣レクを受けられましたか。お答えをお願いいたします。

 大臣レクの存在を否定されるなら、レクそのものが存在しなかった具体的証拠をお示しいただけますでしょうか。行政文書に示されている二〇一五年二月十三日十五時四十五分から十六時に高市大臣が具体的に何をしたか、御確認の上、お答えをお願いいたします。

 さて、厚生労働省が二月二十八日に発表した人口動態統計の速報値において、二〇二二年の国内の出生数が統計開始の一八九九年以降初めて八十万人を下回ったことは衝撃を与えました。

 出生減による自然減に加え、転出超過による社会減も相まって、とりわけ深刻な影響を受けるのは地方です。この流れの中で深刻な危機にさらされているのが、地域公共交通であり、誰もが安全で安心して移動できる社会であります。

 路線バスや地域鉄道の利用者の割合は、長期的な減少傾向に歯止めがかからず、コロナ前の二〇一九年時点で、バス事業者の赤字の割合は七四%、経常収支が赤字である鉄軌道事業者は七八%に及んでいます。二〇〇〇年以降二〇二二年二月までに廃止された鉄軌道は、全国で四十五路線、千百五十七・九キロメートルに及び、これは東京―福岡間の在来線の距離に匹敵する長さです。

 地域の移動の足がなくなるとき、最も大きな影響を受けるのは、通勤や通学の足を必要とする若年世代、通院の足を必要とする人々、高齢者といった移動の制約を受けやすい人々であります。この意味で、地域公共交通は、まさに誰もが安心して安全に住み続けられるためのプラットフォーム、すなわち社会インフラであります。

 このような考え方に基づき、欧州では、地域公共交通は公共財に準じる公共サービスと位置づけられ、税金でひとしくその基盤を維持する仕組みが整えられています。例えば、フランスでは公共交通の特定財源として都市交通税があり、ドイツにおける公共交通への補助金はエネルギー税を財源としています。ここには、地域住民の暮らしを守る責務は国や自治体にあるという公益性の原則があります。

 ところが、日本では、公共交通の運営主体は事業者であり、公的資金に頼らない商業輸送が基本となっています。それは、独立採算でやっていく公共企業体として位置づけられていた、一九八七年の、国鉄を分割・民営化した国鉄改革以来、公共輸送機関の経営は市場の動向に委ねるということが国の基本的な考えになってきたことと関係しています。

 そのような中で、マイカーを中心とする自動車による輸送を中心に置いた日本の交通政策とともに、マイカー利用の急速な拡大と軌を一にし、地方部を始めとして、各地で、公共交通機関が地方任せ、事業者任せにされたまま、危機にさらされてきたのです。

 こうした過去の経緯を踏まえ、少子化の中で、私たちは、改めて、地域公共交通のネットワークを通じて地域の人々の暮らしを守ることの責務を考えていかなければいけませんが、本法律案が政府の人口減少対策とどのように整合するのか、少子化対策の観点から、少子化対策担当大臣に伺います。

 こうした現実を踏まえ、地域公共交通の運営主体の在り方についてはどのようなお考えか、国土交通大臣の見解を伺います。また、公共財として地域の人々の足を守る責務を果たすため、公益性の原則に基づきどのような政策変更が必要となっているのか、伺います。以上の点を踏まえた上で、本法律案における地域公共交通ネットワークの再構築とは何を意味するのか、お聞かせください。

 本法律案では、協議会の在り方について、現行法においては自治体が地域公共交通活性化再生協議会又は任意の協議会を開催できるとされていたものから、鉄道事業者又は自治体からの要請に基づき、国土交通大臣が国による協議会、いわゆる再構築協議会を開催できるものとしています。

 ここで最も重要なことは、地域の将来像について、住民や交通従業者、高校生などの若年世代や、買物、通院における利用者、高齢者や、マイカーを持つことが難しい人々など、移動の制約を受けやすい人々を中心に幅広い人々の意見を十分に聞き、教育や医療、福祉政策と連携しながら、地域の将来像を冷静に議論できる、地域が直面する課題に対応するための合意形成の舞台ができるかどうかであります。

 地域住民の通院や通学のための移動手段の確保などの生活基盤の維持の重要性を十分考慮し、低い輸送密度や赤字路線であることなどの経済合理性のみで公共交通の存廃を判断すべきではないと考えますが、再構築協議会での検討に当たっては、どのような考え方に基づき路線の評価を行っていくのか、国土交通大臣の見解を伺います。

 鉄道は、つながっていてこそ、その本領を発揮するものです。鉄道の路線が複数の地方公共団体にまたがっている場合、市町村の実情や意見が異なるために生じる温度差が課題となっているケースが、現行の協議会において既に生じております。

 このとき、市町村や都道府県などとの十分な調整ができない場合には、交通ネットワークが分断されるおそれがあります。市町村、都道府県の地域の将来像の議論、そして国が果たすべき責務とが相互に連携することで初めて人々の移動の足がつながると言えます。

 広域的な公共交通ネットワークの維持に関し、国が果たすべき役割や交通ネットワークの分断を生じさせないために必要な機能について、国土交通大臣の見解を伺います。

 一つの地方公共団体だけであっても、再構築協議会を組織するよう要請することができるか。また、複数の地方公共団体が再構築協議会を組織することに反対している場合であっても、国土交通大臣は再構築協議会を組織することができるのか。併せて伺います。

 地域や事業者、そして、何より、利用者となる住民の納得感を得るため、少数意見なども含めた幅広い意見を継続的に酌み取るための仕組みづくりについて検討すべきと考えますが、国土交通大臣の見解を伺います。

 また、再構築協議会において鉄道からバス等への転換について協議を行う際に地域が直面するのは、深刻な運転手不足でもあります。本法律案では、必要な場合には実証事業を通じて対策案の実効性を検証するとしていますが、現に起こっていることとして、バス路線への転換後、一定期間の後に補助が打ち切られることで、減便に拍車がかかり、公共交通が急速に衰退する事例が後を絶ちません。

 地域公共交通の持続可能な発展を図るためには、実証実験などの試行期間のみならず、それ以降も活用可能な中長期的な支援の仕組みが不可欠であり、そのために、複数年度にわたって活用可能な予算を措置すべきと考えますが、国土交通大臣の見解を伺います。

 とりわけ、バスやタクシー等の自動車運転事業は、全産業と比べ、労働時間は長く、年間所得額は低くなっており、若年者ほど就業を敬遠する状況にあります。自動車運転事業の有効求人倍率は全職業平均の約二倍となっており、運転手不足は深刻です。

 人員確保に向けた事業者の取組に対する息の長い支援があることで初めて冷静にモード転換の議論が行えるようになると思われますが、具体的な支援の方向性について、国土交通大臣の見解を伺います。

 コロナ禍を通じ、ほとんど全てのバス、鉄道事業者が赤字経営となり借入金が膨らむ中で、鉄道、バス廃止の傾向に拍車がかかっています。コロナ禍で経営危機が深まった事業者への支援は継続されるべきと考えますが、具体的な支援の見通しについて、国土交通大臣の見解を伺います。

 民営化された鉄道をめぐっては、海外では上下分離方式が普及しています。地上インフラの建設や保有を自治体が担うことで、事業者と自治体が連携しまちづくりを進めていく方策でもありますが、路線を維持するため、自治体への負担が重くのしかかっています。

 広域的な公共交通ネットワークの維持のために、民営化された鉄道において、線路などの地上インフラを公共的な所有形態とし、地方任せにせず国が支援を行う考え方について、国土交通大臣の見解を伺います。

 例えば、ドイツの幾つかの自治体で実施されている市民乗車券は、市民に市民乗車券として一定の負担をひとしくお願いする代わりに、公共交通機関を利用するごとの運賃はなしとするものです。これでは収益性がなくなるのではと思われがちですが、マイカー利用から公共交通への乗換えや、自動車を持たない人の社会参加を促進し、いわゆる隠れた受益者を発掘し、利用者が逆に伸びたとの報告があります。

 人口減少と利用者減の数字のみを前提とした公共交通政策から発想を転換し、住民の移動の自由を守るという観点から公共交通の需要を発掘する取組の方向性について、国土交通大臣の見解を伺います。

 移動手段のつながりは人のつながりであり、経済のつながり、ひいては国土の維持発展そのものであります。加速度的な人口減少社会を真正面から捉え、地域に寄り添い、人の暮らしに寄り添い、事業者、働く仲間に寄り添う、そんな地域公共交通政策が必要です。すなわち、それは、いつしか、日本の公共交通政策が公益性より収益性を重視する余り、国が公共政策の基本から長い間目を背けてしまった事実を直視し、根本にある考え方を見直すことではないでしょうか。

 今まさに必要なことは、新自由主義的な経済成長至上主義からの脱却と発想の転換です。移動が困難になる人々を生じさせないこと、自由に選択し円滑に安全に利用できることのために地域公共交通はあるのだという基本に立ち返り、国の責務を果たすべきであると申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 末次精一議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、地域公共交通の運営主体の在り方、必要な政策変更、再構築の意味についてお尋ねがありました。

 我が国においては、多くの場合、民間事業者が地域公共交通の運営を担っており、それを前提として、地域の足という公共性の高いインフラとしての性格等を踏まえ、官民を始め多様な関係者の連携を強化することが重要でございます。

 このため、今般の改正法案や予算など、あらゆる政策ツールを総動員した支援により、多様な関係者の連携、協働を促進することとしております。

 御指摘の再構築、リデザインとは、こうした取組を通じて、地域公共交通ネットワークの利便性、持続可能性、生産性を高めていくことを意味しております。

 次に、路線の評価の考え方についてお尋ねがありました。

 ローカル鉄道は、輸送密度が低く、事業収支が赤字である場合であっても、各地域で果たしている意義、役割は様々であり、その在り方については丁寧に見ていく必要があります。

 そのため、路線の評価に当たっては、ファクトとデータに基づき、いわゆるクロスセクター分析の手法も活用しながら、まちづくりや観光など、地域戦略の視点に立って、地域にとってあるべき公共交通とは何か、それを関係者の間でどのような役割分担で維持していくかという観点など、多面的に行うべきだと考えております。

 次に、広域的な公共交通ネットワークの維持に関係して、再構築協議会を組織するに当たっての国の役割や、幅広い意見を酌み取る仕組みについてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、鉄道は一般的に広域的な交通ネットワークを形成するものであり、自治体を超えた調整が必要となることもあることから、今般の改正法案においては、都道府県をまたぐ路線など広域的な路線の再構築に当たっては、自治体又は鉄道事業者からの要請に基づき、国が再構築協議会を組織することとしております。

 この要請は一つの自治体のみで行うことができますが、国は、協議会の設置に際しては、他の沿線自治体からも意見を聴取することとしております。

 御指摘の、複数の自治体が反対している場合には、協議会の設置及び再構築方針の協議は事実上困難となりますので、国として対策が必要と認めた際は、協議会の設置に反対している自治体からその理由を聴取しつつ、広域行政組織である都道府県とも連携して、粘り強く調整してまいります。

 また、再構築方針の策定に当たっては、住民、利用者等の利害関係者の意見を適切に反映するため、意見聴取の機会等の措置を講ずることとしております。

 次に、鉄道からバスに転換後の持続的な支援の仕組みや、人材確保の方向性についてお尋ねがございました。

 地方部における路線バスの経営状況は極めて厳しく、国及び自治体の支援によってサービスを維持している状況であり、また、バスの運転手不足についても喫緊の課題と認識しております。

 このため、協議の場においてバスに転換する選択肢が検討される場合には、その運行ルートのほか、国及び自治体、鉄道事業者による持続可能な費用負担の在り方について協議することとなります。また、あわせて、担い手となるバス事業者の経営状況、車両や運転手の確保の見込み等を確認する必要があると考えております。

 なお、今般の改正法案では、複数年にわたる長期安定的な支援を可能とするエリア一括協定運行事業の創設を盛り込んだほか、令和五年度予算案では、社会資本整備総合交付金に新たな基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加するなど、バス事業者に対しても実効性ある支援策を講じることとしております。

 また、バスの乗務員不足対策としては、賃上げを含む乗務員の労働環境の改善を早期に実現するべく、バス事業者等が行う運賃改定の申請に対して、迅速かつ適切に認可を行ってまいります。これに加え、バス事業者等による人材の確保、二種免許取得に要する費用について、令和四年度補正予算により支援制度を創設したところであり、これらを通じてしっかりと取り組んでまいります。

 次に、コロナ禍で経営危機が深まった事業者への支援の見通しについてお尋ねがありました。

 人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化などによる長期的な需要減に加え、新型コロナの影響により、公共交通サービスを支える交通事業者を取り巻く経営環境は一層深刻化しております。

 このため、令和四年度補正予算及び令和五年度予算案において、地域のバス等に対する運行費等への支援のほか、社会資本整備総合交付金や財政投融資等の新たな枠組みを含めて、地域公共交通に対する支援策を充実強化しました。

 また、政府全体としても、交通事業者を含めた中小事業者の資金繰り対策については、本年一月に債務の借換えの円滑化のための新しい保証制度を創設したところです。

 国土交通省としては、引き続き、事業者の方々の声もよく伺いながら、経営状況の把握に努め、関係機関と連携して、必要な支援が行えるよう取り組んでまいります。

 次に、線路などの公共的な所有形態についてお尋ねがありました。

 鉄道の運営の形態については、国によって、人口密度や都市構造、国と地方政府の関係等が異なることから、様々な形態が選択されております。

 我が国においては、全国的な高速鉄道ネットワークを形成する整備新幹線は鉄道・運輸機構が建設、保有する一方、地域公共交通を担うローカル鉄道については、上下分離方式を採用する場合、鉄道施設を自治体等が保有する形態が一般的です。

 この場合においても、国からの安全対策を始めとする補助金について、補助率のかさ上げにより地方負担の軽減を図っておりますが、今般、社会資本整備総合交付金を活用するとともに、地方交付税措置を拡充するなど、地方負担の更なる軽減を図ってまいりたいと考えております。

 最後に、地域公共交通の需要を発掘する取組についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、地域公共交通を再構築し、持続可能性を高めていくためには、地域公共交通の需要を発掘することが重要です。

 このため、令和四年度補正予算及び令和五年度予算案においては、地域公共交通の利便性を高めることや、様々な関係者との連携を強化すること等により、教育、医療、福祉などの送迎を地域公共交通が担うようにするなど、現在は地域公共交通の利用に結びついていない需要を掘り起こすための予算を計上しているところでございます。

 また、地方運輸局等を通じ、先進事例の収集やノウハウの提供等も行ってまいりたいと考えております。

 国土交通省としては、こうした取組により地域公共交通の需要を発掘し、持続可能性を高めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 末次精一議員からは、まず、放送関係の大臣レクについてお尋ねがありました。

 三月九日の衆議院本会議では、平成二十七年二月十三日とされるレクについて、「当時、様々な部局より法律案や決裁案件などレクを受けておりましたが、平成二十七年二月十三日に、礒崎元総理補佐官と総務省事務方とのやり取りや平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会の答弁案など、放送法の政治的公平に関するレクを受けたことはございません。」と答弁させていただきました。

 総務大臣として、三月末までに地方税法改正案、地方交付税法改正案、NHK予算を国会でお認めいただかなくてはなりませんので、二月は、自治税務局、自治財政局、情報流通行政局を始め、様々な部局よりレクを受けておりました。

 情報流通行政局との関係でいいますと、NHK予算の国会提出に向けた準備を急いでいた時期でございますので、NHK予算やNHK予算に付する大臣意見に関するレクを受けた可能性はあり得るとは思います。

 次に、二〇一五年二月十三日の十五時四十五分から十六時の間、具体的に何をしていたかとのお尋ねがございました。

 御通告を賜り、総務省にも問い合わせましたが、八年も前の大臣スケジュールは残っていないということで、議員会館の政務日程でも、八年も前のものは残っておりませんでした。当日になってから大臣日程の追加も多々ございましたので、八年前の特定の日時について詳細を確認する方法がないことについては、御理解を賜りますようお願いを申し上げます。

 なお、問題の本質は、私の平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会での答弁が礒崎元総理補佐官の影響を受けたものか否かということだと思いますので、そうでないことを証明するため、委員会前夜の私と大臣室の答弁案に関するやり取りのメールや、答弁案を作成した課から大臣室に送られてきた資料につきまして、お求めをいただけましたら、本院に提出をさせていただきたく存じます。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 末次議員から、地域公共交通活性化法案と人口減少対策との整合性について、少子化対策の観点からお尋ねがございました。

 少子化の進行は、人口の減少と高齢化を通じて、労働供給の減少、将来の経済や市場規模の縮小、地域社会の担い手の減少など、社会経済に多大なる影響を及ぼすものと考えております。

 本法律案は、人口減少等による長期的な利用者の落ち込みなどの状況を踏まえ、地域の関係者の連携、協働を通じ、利便性、持続可能性、生産性の高い地域公共交通ネットワークへの再構築を進めるためのものであると承知をしております。

 少子化対策として、結婚や子育ての希望をかなえるための環境整備を進めることにより、結果として将来の持続可能な社会づくりにつなげていくと同時に、当面の人口減少を見据え、政府全体として、それに対応する地域社会づくりを進めていくことは極めて重要であるものと承知をしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 一谷勇一郎君。

    〔一谷勇一郎君登壇〕

一谷勇一郎君 日本維新の会の一谷勇一郎です。

 党を代表し、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 近代世界の発展は、工業分野で始まった技術革命が運輸、交通分野に波及し、人や物の大量輸送への道を開いた交通革命があってこそ実現したと歴史家が指摘しています。

 日本も例外ではありません。明治五年に新橋―横浜間で初の鉄道が開通したことを皮切りに、百五十年を経た今に至るまで、様々な公共交通機関が人と物をまさに日本経済の血流のように全国に行き渡らせ、長きにわたる経済発展を支えてきました。

 しかし、近年は、地方部から都市部への人口移動が加速し、その都市部でも人口減少局面に入りつつある現状で、長期的な視野の政策が整えられてこなかったことにより、日本経済を支えてきた公共交通機関は崩壊寸前の危機的状況に陥っています。

 私はタクシーをしばしば利用しますが、ここ二年ほど、自分自身より若い世代であろう運転手さんにお会いしたことがありません。タクシーのみならずバスも運転手の高齢化に加え、コロナ禍による需要の減少によって、多くの企業と運転手が廃業を余儀なくされ、供給不足に陥っています。

 一方、地方の鉄道では、多くの不採算路線が維持できるか否かの瀬戸際に立たされています。

 団塊の世代が七十五歳を迎える二〇二五年以降、自家用車の利用は更に減り、足の便を公共交通機関に頼られる方々の数は更に増えていくと予想されます。

 今こそ公共交通機関の再生に向けて動き出さなければ、日本社会は、交通手段を失った地方から、血流が十分に届かない手足のように次第に壊死していくおそれがあります。経済活動を滞らせず活性化するために、国として地域の公共交通機関をいかに維持していくのか、明確な処方箋と指針を示す必要があります。

 その上で、国土交通大臣にお伺いします。

 我が国の地域交通の現状及びこれまでの地域交通に対する政策の効果について、それぞれどのように評価されていますか。人口減少やコロナ禍によるテレワークなどの行動変容により、公共交通の需要の更なる変化や減少を迎えると見込まれる中、地域公共交通の在り方や公共交通への支援の方策について、どのような長期ビジョンを描いていらっしゃいますか。

 地域公共交通対策の課題の一つは、この分野に関する知識を持つ専門家が極めて少ないことです。その第一人者で国土交通省の様々な検討会等に参加しておられる名古屋大学の加藤博和教授によれば、この領域に関して見識を持ち、適切な分析や提案をできる方は、全国でも二十人前後にすぎないそうです。政府として、このような状況をどのように受け止めていますか。

 人口減少期における地方の公共機関の維持整備については、いまだ経験した国がありません。一般企業のこれまでの経験や知識だけでは適切な戦略を立てることは難しいと思料しますが、政府として何らかの対策を講じていくお考えはありますか。併せて国交大臣に答弁を求めます。

 総じて、地域鉄道や地域の路線バスの乗客数は減少傾向にあり、多くの事業者が赤字経営にあえぐとともに、地域鉄道の廃線、路線バスの廃止が続くなど、地方自治体の公共交通機関は継続が難しい局面にあります。現行の地域公共交通の活性化及び再生に関する法律がこれまで果たしてきた役割及び同法に基づく地域での取組について、政府としてどのように総括されていますか。その総括を今回の本法律案に具体的にどのように反映させたのですか。いずれも国交大臣に伺います。

 現在でも、平時の輸送密度が一日当たり千人未満の鉄道路線については特定線区再構築協議会を設置し、その路線の在り方について議論することになっていますが、そもそも、そこに専門知識を持つ方を同席させようとしても、その数は圧倒的に不足しています。

 国交省の平成二十八年度地域公共交通に関する全国的な現況把握のための調査によれば、平成二十七年度で地域公共交通専任担当者数が一人もいない市町村は七七・四%で、全体の四分の三を超えています。

 国交大臣に質問します。

 実際に公共交通機関を運営する地方の現場と国をつなぎ、国の方針を各自治体での交通機関運営戦略に落とし込むことができる専門家がいないのも大きな課題となると考えます。人口が少ない地方公共団体ほど専任担当者が少なくなる傾向にあり、より交通事情が厳しくなるであろう自治体こそが人材不足になっていると見受けられますが、どのように認識されていますか。今後、地域公共交通を担う地方公共団体の人材の育成、確保のために政府として具体的にいかなる支援策を講じていくお考えですか。

 現場の実情を分かりやすく数字で示すための調査も十分な精度では行われておらず、現状では、運賃収入総額や乗務員による僅か数日間の目視による乗降客数の計測などにとどまっています。概算であっても、乗客のより細かなデータを収集する仕組みづくりを国が音頭を取って行う必要があると考えますが、いかがですか。明確な答弁を求めます。

 幸い、私たちは、デジタルデータの収集と活用が極めて容易になった時代を生きております。目視やアンケートなど全体像が見えない情報ではなく、国が輸送ニーズの情報をデジタルで収集するシステムや機材の開発に取り組み、DXを通じた輸送ニーズの可視化を先導し、地域自治体もその技術を利用しやすくしていくような取組が不可欠と考えますが、見解を伺います。

 自治体がより現状に即した公共交通機関の運営戦略を構築するために、国交省に地方公共交通機関対策チームをつくり、各自治体との間をつなぎ、現場の実情を反映した戦略づくりを支援する専門家を育てていくべきではないですか。自治体にたまたま熱意があふれる首長と能力を備えた担当者がいるかどうかでその自治体の公共交通の未来が決まるような現状では、多くの国民が足を奪われ、地域経済とともに衰えていくことになりませんか。併せて国交大臣の所見を求めます。

 第二の課題は、地域自治体の人口動態が変化する中で公共交通を維持するために、交通手段そのものを多様化し、その変化に柔軟に対応できるよう備えていくことです。

 諸外国の事例を鑑みれば、鉄道、バス、タクシーなどに加えて、建設コストが少ないライトレール、LRTや、既存の道路や線路敷を利用するために設備投資が少なく済むがバスよりも輸送量が大きく定時性に優れたバス・ラピッド・トランジット、BRT、小規模輸送力の拡大につながるライドシェアなど、新たな交通手段を積極的に導入していくことが欠かせないと考えますが、国交大臣の見解を伺います。

 例えばBRTについて、日本では昨年四月の時点で全国にまだ二十八件しか導入事例がありませんが、その一つが私の地元神戸で始まったポートループです。緊急事態宣言解除直後の一昨年十月には利用者が二万人を超えるなど、市民や旅行者などに大いに活用されております。昨年四月には新神戸への延伸も実現しました。

 ライドシェアについても、交通網が手薄な地域での救世主の一つとして力を発揮することは疑いの余地がありません。神戸市北区では、地域住民が自家用自動車で運行する淡河町ゾーンバスで地元の方々の足として活用が進んでいます。犯罪の増加などを懸念する声がありますが、ライドシェアが定着している国々では、むしろ利用者からフィードバックが行いやすく、安全で信頼性があると受け止められていると聞いております。

 新たなビジネスチャンスの芽を摘むことは地域経済の発展への足かせにもなりますが、いずれも、導入に向けて、国による規制が分厚い壁として立ちはだかっています。

 国交大臣に質問します。

 こうした分野でも国が規制改革に踏み切らなければ、不作為による障壁を維持していくことになりますが、どのように認識されていますか。地域の公共交通の再生、経済の活性化に向け、LRT、BRT、ライドシェアを導入すべく、今こそ規制の改革に真剣に取り組んでいくと約束していただけませんか。口先だけで改革を唱えていても、真の社会変革はなし得ません。国が規制解除の方針を明確に示すことにより、地方自治体もそれに倣った新たなチャレンジを実践していくことにつながると考えますが、所見をお尋ねします。

 将来的には、自動運転車が輸送規模の小さい路線の公共交通を担うことが予想されますが、その間、あるいは、それでは不足する路線をしっかりと埋めていくためにも、また、利用者のより詳細なデータの活用などを通じて柔軟に輸送需要に応えていくためにも、一層広く公共交通手段を利用していくべきだと考えます。

 もちろん、前線で安全な操縦を担うドライバーを確保していくことが不可欠です。しかし、現状では、多くのタクシー運転手はコロナ禍の余波で収入が大幅に減り、最低賃金を割り込むケースも少なくないと聞いています。

 国交大臣にお尋ねします。

 特に過疎化が進む地域において、タクシーは住民の重要な足となります。自治体が公務員としてドライバーを雇用し、地域交通機関の担い手として安定した雇用を保障することも、公共交通機能を維持するための一つの選択肢ではないですか。

 平成十八年に路線バスについて導入された協議運賃制度を、今回、鉄道事業にも導入するに至ったいきさつは何ですか。

 交通手段が多様化すれば、利用者側にもそれらを柔軟に活用していくことが求められます。そこで必要となるのが、ニーズと様々な移動サービスを組み合わせた、ルートの検索から予約、決済まで一括して支援するモビリティー・アズ・ア・サービス、いわゆるMaaSのシステムです。

 国内では複数のMaaSが立ち上がっていますが、範囲や対象などが限られているものも多く、また、臨時運行の実施や遅れ状況といった最新の情報を反映できるものになっていないなど、真にワンストップの交通機関利用支援サービスと言えるものは存在しません。国交省が他省庁と共同で推進しているMaaSシステムのデータ連携などをより強力に推し進めていくことが、公共交通機関の利便性を高めるために重要だと考えます。

 また、これらのサービスが利用されればされるほど、交通機関の利用、ニーズに関する統計がより高い解像度で得られることになります。柔軟な交通手段の利用をMaaSによりサポートし、そこから得られたニーズ情報を基に、更に柔軟な交通手段の運用を進めることで、誰も取り残さない公共交通機関の運営により近づいていけるのではないでしょうか。観光地や商業施設などへのアクセスを向上させれば、新たなニーズを創出することもできるはずです。

 ニーズの創出を促し、地域の経済社会を活性化させていくためにも、政府がMaaSの導入を主導し、積極的に制度設計に関与していくべきだと思料しますが、国交大臣の見解をお伺いします。

 我が国では、地方の過疎化や高齢化の加速が、不採算路線やバス、タクシーの運転手不足を生む大きな要因となってきました。その意味で、首都圏に集中する様々な機能を漸次移転し、地方を活性化させていくことも、こうした課題の解決につながると確信しています。首都圏での災害発生時には、各地方都市が機能の一部を代行すれば、日本の社会経済全体の機能停止を防ぎ、より迅速な復興を実現する基盤にもなります。

 地方の公共交通機関の持続可能性を日本の社会経済の持続可能性に結びつけるためにも、こうした地方分権の取組は不可欠と考えますが、最後に国交大臣の所見をお伺いし、私の質問を終わります。

 皆様、誠に御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 一谷勇一郎議員の御質問にお答えいたします。

 まず、地域交通の現状と政策の効果についてお尋ねがありました。

 地域公共交通は、人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化等による長期的な需要減により、引き続き、多くの事業者が厳しい状況にあります。

 国土交通省としては、これまで、地域公共交通の長期的な需要減を踏まえ、地域公共交通活性化再生法に基づき、自治体が中心となり、その維持等に向けた取組を進めてきたほか、予算面でも、地域公共交通の維持等のための予算を確保してきたところです。

 また、昨今の新型コロナの影響を踏まえ、地域の鉄道、バス、離島航路などにおける運行維持や感染防止対策について、これまでにない手厚い支援を行ってきたところです。

 このように、これまでの政策は、各地域における公共交通の維持等に向けて一定の役割を果たしてきたものと認識しております。

 次に、地域公共交通の在り方や支援の長期ビジョンについてお尋ねがありました。

 今後の長期的な方向性について、国として、デジタル技術を活用しつつ、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会の実現を目指しています。

 地域公共交通は、国民生活や経済活動を支える不可欠なサービスであり、デジタル田園都市国家構想を推進し、地方の活性化を図っていく上で重要な基盤です。

 そのため、先ほど御答弁申し上げた地域公共交通の現状を踏まえ、地域の関係者が連携、協働し、地域公共交通のリデザインを進め、利便性、持続可能性、生産性を高めていく必要があります。

 国土交通省としては、今後とも、地域公共交通のリデザインを図るための地域の取組をしっかりと後押ししてまいります。

 次に、地域公共交通に関わる専門家と自治体の人材不足の現状に対する認識、そして人材育成の支援策についてお尋ねがありました。

 地域公共交通の専門家や自治体担当者は不足していると認識しております。その育成は重要な課題です。

 このため、令和四年度補正予算において、地域公共交通やまちづくりに関する専門家を育成するためのセミナー開催等の予算を計上したところです。

 また、自治体の人材育成、確保を支援するため、国土交通大学校における自治体職員に対する研修、地域公共交通計画を作成するためのガイドラインの提供、地方運輸局による助言、有識者の紹介などを行っているところでございます。

 今後も、地域の声をよくお聞きしながら、令和四年度補正予算や令和五年度予算案を活用して、人材育成を含めた地域の連携、協働の取組をしっかり後押ししてまいります。

 次に、人口減少期における地域公共交通の維持整備策についてお尋ねがありました。

 地域公共交通については、人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化等による長期的な需要減により、引き続き、多くの事業者が厳しい状況にあり、その維持等に向けて対策を講じていく必要があります。

 このため、交通事業者だけでなく、地域の関係者が連携、協働して地域公共交通のリデザインを進め、利便性、持続可能性、生産性を高めていくことが必要であると考えており、令和四年度補正予算及び令和五年度予算案において、こうした取組に必要な各種メニューを措置しております。

 また、今般の改正法案には、ローカル鉄道やバス、タクシー等のリデザインを図る仕組みの創設を盛り込んでおり、国土交通省としては、予算、法律などあらゆる政策ツールを活用して、交通事業者を含めた地域の取組を支援してまいります。

 次に、現行法の総括と今般の改正法案への反映についてお尋ねがありました。

 地域公共交通活性化再生法は、地域における公共交通の将来像を定める地域公共交通計画の作成などを柱とする法律です。これまで全国で七百余りの計画が作成され、これに基づく事業が実施されるなど、地域における公共交通の維持等に一定の役割を果たしてきたものと認識しております。

 一方で、人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化等による長期的な需要減により、引き続き、多くの事業者が厳しい状況にある現状を踏まえ、地域の関係者が連携、協働して、地域公共交通のリデザインを進めていく必要があります。

 このため、地域公共交通活性化再生法を改正し、地域の関係者間の連携と協働の促進について法律に明確化するとともに、ローカル鉄道の再構築のための仕組み、バス等のエリア一括協定運行事業、鉄道やタクシーの協議運賃制度を創設するなど、地域の関係者の連携、協働促進を通じた地域公共交通のリデザインの取組を進めることとしております。

 次に、国によるデータ収集の仕組みづくり、DXを通じた輸送ニーズの可視化、自治体によるデータの活用促進についてお尋ねがありました。

 委員御指摘のとおり、地域における最適な交通の在り方を検討するに当たっては、利用者のデータの収集及び活用は重要なものと認識しております。こうした認識の下、例えば、世界的な標準となっている交通情報のフォーマット、このフォーマットによるデータ連携が可能となるよう、システム整備等を支援してきたところでございます。

 現在、交通政策審議会において地域公共交通のリデザインのための具体的方策について御議論いただいているところですが、その中でも、交通事業者が保有する情報のデータ化と自治体等が利活用しやすい環境の整備が課題とされたところでございます。

 このことを踏まえ、更なる情報のデータ化と利活用の推進について検討を進めてまいります。

 国土交通省内の専門家育成と自治体の能力のばらつきについてお尋ねがありました。

 地域における公共交通の在り方については、地域の実情を踏まえ、関係者間でしっかり協議をして決めていくことが重要です。一方で、こうした取組は、首長の個性、意欲や自治体担当者の能力で左右されている面もあると認識しております。

 このため、国土交通省が全国組織である強みを生かして、全国の先進事例やノウハウを収集、提供するとともに、省内の研修の充実等により、地方運輸局等が各地域の困り事をしっかりと受け止められるようにしてまいります。その上で、今般の改正法案や予算など、あらゆる政策ツールを活用して、地域公共交通のリデザインに取り組んでまいります。

 LRTやBRT、ライドシェア等の導入及び規制改革についてお尋ねがありました。

 地域公共交通のリデザインを実施するに当たっては、各地域が、地域の実情を踏まえ、創意工夫を生かして進めていくことが重要であると考えています。

 このため、令和五年度予算案において、自治体にとって自由度の高い社会資本整備総合交付金に新たに基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加し、地域公共交通のリデザインのために必要な施設整備等を支援できることとしています。

 地域においてLRTやBRTなどの新たな交通手段の導入が選択された場合には、この交付金を活用し、地域の取組をしっかり後押ししてまいります。

 規制の在り方については、安全性の確保、利用者の保護等を前提として、必要な見直しを行ってまいります。

 その上で、いわゆるライドシェアについては、運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、このような形態の旅客運送を有償で行うことは、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題があると考えております。

 タクシー乗務員の雇用についてお尋ねがありました。

 過疎化が進む地域において、タクシーは住民にとって重要な交通手段である一方、タクシー事業の乗務員確保は大きな課題であると考えております。

 議員お尋ねのように、自治体が公務員としてドライバーを雇用してタクシー事業を行うことは、バス事業と同様、制度上可能でありますが、その実施は自治体の判断によるものと考えております。

 他方、現在、全国の多くのタクシー事業者から、賃上げを含む乗務員の労働環境の改善を早期に実現するべく運賃改定の申請がなされているところであり、国土交通省としては迅速かつ適切な認可を行うこととしております。また、タクシー事業者による人材の確保、二種免許取得に要する費用について、令和四年度補正予算により支援制度を創設いたしました。

 これらの取組を通じ、タクシー乗務員の確保、タクシー事業の持続可能性の向上に取り組んでまいります。

 協議運賃制度を鉄道事業にも導入するに至ったいきさつについてお尋ねがありました。

 現行の鉄道運賃制度は、鉄道事業全体で収支均衡を図るという考え方に立ち、運賃の上限を認可する制度としているため、鉄道路線ごとの特性を生かし、地域の創意工夫を反映するという点では不十分でした。

 今回の協議運賃制度を導入することにより、個々の路線が置かれた状況に着目し、例えば、並行するバスとの共通運賃化を通じて地域公共交通サービスの高度化を実現するなど、地域の実情に応じた柔軟な運賃設定について、地域の合意を条件として、届出により可能とすることといたしました。

 MaaSの導入推進についてお尋ねがありました。

 MaaSについては、公共交通の利便性向上のみならず、観光振興等の地域課題の解決に貢献することが期待されています。

 国土交通省では、我が国におけるMaaSの普及を図るため、令和元年度からこれまで、四十七地域の様々な取組に対して支援を行ってきたところです。その中で、MaaSに関わる事業者間でのデータの連携や活用も進めてまいりました。

 今後は、これまでの取組の上に立って、サービスの更なる高度化を図るため、交通と商業、観光、福祉等の連携や、サービスの広域化等が重要であると考えております。

 国土交通省としては、こうした認識の下、関係省庁とも連携しながら、引き続き、地域公共交通の利便性を向上し、その持続可能性や生産性を高めていくため、MaaSの高度化を推進してまいります。

 最後ですが、首都圏に集中する機能の分散による地方活性化等についてお尋ねがありました。

 東京への人口や諸機能の過度の集中は、地方からの人口流出による地方の活力喪失の要因となっていることに加え、首都直下地震等が切迫する中で、被害拡大のリスクが高まるなど、その弊害を是正する必要があります。

 国土交通省としては、新たな国土形成計画を本年夏に策定することとしており、その中で、東京一極集中の是正に向け、関係府省とも連携して、地方への人の流れを加速させる取組を強化するなど、国土全体にわたって人口や諸機能が分散する、持続可能で活力ある国土づくりについて議論を進めていきたいと考えています。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 伊藤渉君。

    〔伊藤渉君登壇〕

伊藤渉君 公明党の伊藤渉です。

 私は、自由民主党・無所属の会、公明党を代表し、ただいま議題となりました地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 鉄道やバスなどの地域公共交通は、言うまでもなく、生活インフラの根幹であり、観光等の地域経済の礎として大きな役割を担っています。高齢化の進展に伴い、運転免許返納者が近年大幅に増加していることから、公共交通による移動手段の確保は、より重要性を増しています。

 しかしながら、公共交通を取り巻く状況は、人口減少や過疎化を始めとする地域構造の変化により厳しさを増す一方、近年では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、厳しさに追い打ちをかけられている状況です。また、昨年から続く燃料価格高騰は、地域公共交通事業者の経営を直撃しています。

 これからの地域公共交通はどうあるべきか。公明党は、住民、利用者の目線に立って、地域公共交通の再構築を図ることにより、持続的に安心して暮らし続けられるよう、地域公共交通の利便性の向上を図り、地域活性化につなげていくべきと考えます。

 以下、質問いたします。

 地域公共交通を取り巻く状況は、さきに述べたとおり、年々悪化しております。特に一部ローカル鉄道は、沿線人口の減少や少子高齢化、都市構造の変化に伴うマイカー利用への移動等により、人口減少の速度を上回るペースで利用者が大幅に減少し、大変に厳しい状況に直面しています。

 こうしたローカル鉄道の厳しい現状の克服に向けて、今回の改正案はどのような効果があるのか、国土交通大臣の答弁を求めます。

 持続可能性と利便性の高い地域公共交通ネットワークへの再構築に向けて、改正案の目的規定には、国の努力義務として、関係者相互間の連携と協働の促進を追加することとしています。

 例えば、群馬県前橋市では、タクシー事業者と介護事業者が送迎業務を連携する事業が実験的に行われています。これにより、タクシー事業者においては経営基盤の強化、介護事業者においては送迎委託による効率化等の効果が上がっています。

 このように、複数の主体が公共交通と垣根を越えて連携し、地域課題の解決を目指す取組は、新たな地域公共交通の在り方の好事例です。今後、地域一体となって持続可能な交通軸の形成に向けて国が支援すべきと考えますが、国土交通大臣にお尋ねいたします。

 改正案では、自治体又は鉄道事業者からの要請に基づき、再構築協議会を設置することができることとしていますが、同協議会を設置することにより、廃線になってしまうのではないかと不安視する声があります。

 国はあくまで中立的な立場を堅持し、自治体の意向を十分に踏まえた上で協議会を設置すべきです。国土交通大臣にお伺いをいたします。

 また、改正案では、国土交通省は、新たに、地方公共団体や鉄道事業者等が将来のローカル鉄道の在り方を協議する再構築協議会の設置後、鉄道輸送の高度化、バス等への転換などの実証事業に対し、地域公共交通再構築調査事業として支援することとしています。

 調査事業を実施するに当たっては、例えば上下分離方式も含めた様々な工夫ができるよう、国はメニューを十分に提示するなど、地域の実情に応じ、きめ細かく支援すべきです。また、自治体や住民の意向を十分に尊重することが何より重要です。国土交通大臣の答弁を求めます。

 一方、再構築協議会において、将来の地域公共交通の在り方について合意がなされた場合、再構築方針を作成し、その方針に基づくインフラ整備に取り組む自治体に対し、社会資本整備総合交付金による財政支援を行うこととしています。こうした地域公共交通の整備に対し、国が責任を持って公共事業として財政支援することは画期的であり、高く評価します。

 国による財政支援を地方自治体が有効に活用することができるよう、国は必要かつ十分な予算を確保し、地方を支えていくべきと考えます。加えて、自治体の裁量度が高い同交付金制度にあって、公共交通への支援の実効性をどう確保するか、国土交通大臣にお尋ねいたします。

 地方では、人口減少、コロナ禍を背景に、乗り合いバスの利用者の減少が進んでいます。三大都市圏以外の一般路線バス事業者の実に九九・六%が赤字となっており、大変厳しい経営が続いています。

 公明党は、事業者の皆様から、新型コロナウイルス感染症の拡大や原油価格の高騰により大変厳しい経営を強いられているなど、切実な声を聞いてまいりました。

 これまで、行政は、路線バス事業者等への経営支援を行うことによりサービスを維持してきましたが、改正案では、新たに、地域公共交通利便増進事業を拡充し、エリア一括協定運行事業を創設することとしています。

 エリア一括協定運行事業では、自治体と交通事業者が協定を締結したエリアについて、一括して運行する交通事業に対して自治体が支援することとしています。また、同事業において、国は、事業初年度に事業期間全体の支援額を明示し、期間を通じて補助金を交付することとしており、予見可能性の観点から、こうした支援を行うことを高く評価します。

 既存の運行経費に対する支援からエリア一括で複数年にわたる支援とすることによって、どのような効果があると考えているか、国土交通大臣にお伺いいたします。

 改正案では、道路運送高度化事業を拡充し、AIオンデマンド交通、キャッシュレス決済やEVバスの導入など、交通のDX、GX化を推進する事業を創設することとしています。

 近年の環境への配慮に対する意識の高まりに加え、コロナ禍を契機として、ライフスタイルや価値観の変化などによる利用者のニーズ、移動手段の在り方が多様化しています。こうした社会情勢やライフスタイルの変化に対応するためには、DX、GX化とともに、更なる推進のための取組が求められます。

 私の地元である愛知県の春日井市では、MaaSウェブアプリを活用し、交通機関のデジタルチケットの販売や市のAIオンデマンドバスの配車予約など、市民が移動に必要な情報に手軽にアクセスすることができるモデル事業を実施しています。同事業のように、公共交通を利用する全ての人がデジタル技術などを活用した公共交通の利便性を享受することができるよう、また、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、キャッシュレス決済システムの普及やEV、燃料電池バスの導入を更に促進すべきです。

 そのため、例えば、交通のDX、GX化に向けた導入目標の設定などの取組が必要と考えますが、国土交通大臣の答弁を求めます。

 また、改正案では、鉄道及びタクシーについて、地域の関係者間の協議が調ったものであれば、国交大臣への届出による運賃設定を可能とする協議運賃制度を創設することとしています。

 柔軟に運賃設定ができることから、他の事業者との間に不当な競争を引き起こすような運賃設定を防止する必要があると考えますが、国土交通大臣にお尋ねいたします。

 最後になりますが、本年を地域公共交通再構築元年と捉え、本改正案による地域公共交通の再構築に向けた様々な取組によってピンチをチャンスに変えていくとの決意で、地域公共交通の利便性、持続性、生産性を向上させていくべきだと考えます。

 地域公共交通の将来の在り方が住民目線で検討されることが何より重要であり、多くの方々が納得した形で、それぞれの地域で持続可能で多彩な地域生活圏が形成されるべきです。政府におかれましては、住民や自治体の意向を十分に聞き、丁寧に進めていくことを求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 伊藤渉議員の御質問にお答えいたします。

 まず、ローカル鉄道の厳しい現状の克服に向けての今般の改正法案の効果についてお尋ねがありました。

 一部のローカル鉄道においては、人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化など、鉄道事業者の経営努力のみでは避けられない事情により、輸送人員が大幅に減少し、大量輸送機関としての鉄道特性が十分に発揮できていない状況が見られます。

 この中には、バス等への代替可能性や地域の観光振興における役割等の観点から、引き続き鉄道を維持する必要が高いものもあれば、輸送需要にきめ細かく対応できるバス等に転換した方が利便性と持続可能性を高められるものもあります。

 今後、更なる人口減少も予測されている中で、地域や利用者にとって最適な形での地域公共交通の維持、確保を鉄道事業者の経営努力のみに委ねることは限界があり、まちづくりや観光振興に取り組む沿線自治体との官民連携を通じた再構築の取組が急務と考えております。

 今般の改正法案においては、国が再構築協議会を設置することができることとし、こうした官民連携を積極的に促していくことといたしました。この中で、再構築の取組に最大限協力するよう鉄道事業者を適切に指導するとともに、再構築に取り組む自治体を予算面でもしっかり支援してまいります。

 地域一体となった持続可能な交通軸の形成に向けた国の支援についてお尋ねがありました。

 地域公共交通については、その多くが厳しい状況にある現状を踏まえ、地域の関係者が、共に創る共創、すなわち連携と協働をして、持続可能となるよう再構築を図る必要があります。

 このため、今般の改正法案においてこの趣旨を明確化するとともに、令和四年度補正予算及び令和五年度予算案においても、地域公共交通のリデザインに向けた取組を支援するための予算を大幅に拡充しております。

 また、地方運輸局も活用して、こうした予算制度の周知や先進事例の全国展開に加え、各プロジェクトへの伴走型の支援を積極的に行ってまいります。

 国土交通省としては、こういった取組を通じて、御指摘のありました持続可能な交通軸の形成を含め、地域一体となった地域公共交通のリデザインに向けた取組をしっかりと後押ししてまいります。

 次に、再構築協議会を設置する際の自治体への意向確認の必要性についてお尋ねがありました。

 今般の改正法案においては、新たに、自治体又は事業者からの要請を受け、国が関係自治体の意見を聞いた上で地域公共交通の再構築の方針を策定するための協議会を設置することとしております。

 この再構築の方針においては、鉄道を廃止してバス等に転換するか、鉄道を存続させて利便性を高めるか、定めることとなりますが、これは関係者の協議が調うことが前提とされており、地域の了解なく廃止の方針が決定されることはありません。

 いずれにせよ、国としては、廃止ありき、存続ありきという前提を置かず、あくまで中立的な立場から、ファクトとデータに基づく議論を促してまいります。

 次に、協議会における調査、実証事業についてのきめ細かい支援方策や、自治体や住民の意向を尊重する重要性についてお尋ねがありました。

 全国各地のローカル鉄道の現場においては、公有民営方式の導入や、まちづくり、観光施策との連携など、官民連携による鉄道再生の取組やバスなど他の輸送モードとの相互協力、新技術を活用した運営コストの低減など、様々な形で維持、活性化に向けた取組が行われているところです。

 国土交通省としては、再構築協議会において、このような先進的な取組を紹介しつつ、地域の実情に応じて必要な助言を行うとともに、新たな補助制度も活用し、調査事業によるファクトやデータの収集、実証事業による対策案の検証を始めとするきめ細かい支援を行ってまいります。

 さらに、鉄道事業者だけではなく、沿線自治体や利用者を始めとする地域の声をよく聞いて、関係者の合意形成に向け、しっかりと取り組んでまいります。

 次に、社会資本整備総合交付金による地域公共交通への支援についてお尋ねがありました。

 地域公共交通のリデザインを実施するに当たっては、各地域が、地域の実情を踏まえ、創意工夫を生かして進めていくことが重要であると考えています。

 このため、令和五年度予算案において、自治体にとって自由度の高い社会資本整備総合交付金に新たな基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加し、地域公共交通のリデザインのために必要な鉄道、バスの施設整備等を支援できることとしています。

 今後、地域の取組をしっかり支えていくことができるよう、地域の御要望や執行状況を踏まえ、必要な予算の確保に取り組んでまいります。

 また、公共交通への支援の実効性の確保については、まちづくりに関する計画と地域公共交通に関する計画が相互に連携するような制度設計を行うとともに、地方運輸局と地方整備局の連携も深めつつ、制度の周知や先進事例の全国展開を積極的に行ってまいります。

 次に、エリア一括協定運行事業に対する支援の効果についてお尋ねがありました。

 バス事業等の赤字が拡大する中で、現行の運行経費に対する補助は、個別の路線ごと、また年度ごとに赤字を埋める補助であることから、従来のバス事業等を改善するインセンティブが働かず、長期的視点からの事業運営が行われていないといった課題がありました。

 このため、今般の改正法案において、交通事業者が地方公共団体と協定を締結して、エリア内の路線を一括して複数年にわたって運行するエリア一括協定運行事業を創設することとし、この事業に対しては、協定期間中に運行の赤字が減っても、当初の補助金の金額は減らさず、複数年にわたって安定的に支援を行うこととしています。

 このように、エリア一括協定運行事業を支援することにより、路線の再編による需要の集約化や運行の効率化などの効果が期待されるとともに、長期的視点からの事業改善を促すことになると考えております。

 次に、交通DX、GXに向けた導入目標設定についてお尋ねがありました。

 デジタル技術の進展やカーボンニュートラルの達成など、社会経済情勢が変化する中において、地域公共交通のリデザインを進めていくためには、交通DX、GXの推進は非常に重要な取組の一つであると考えています。

 議員御指摘のとおり、政策の効果的な推進のためには定量的な目標設定も重要な手段であり、政府の関連の計画に交通DX、GX関係の目標が設定されております。

 例えば、交通DXについては、交通政策基本計画において、MaaSを全国で実装する観点から、キャッシュレス決済の活用を含む新たなモビリティーサービスに取り組む地方公共団体の数を令和七年度に七百件にする、交通GXについては、二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略において、バスを含む八トン超の大型商用車について、二〇二〇年代に電動車五千台の導入を目指すといった目標が設定されております。

 国土交通省としては、社会経済情勢の変化や技術の進展等を踏まえ、より効果的な目標の設定や充実に努めてまいります。

 最後に、協議運賃制度についてお尋ねがありました。

 今般の改正法案において、鉄道とタクシーについて、地域の関係者による協議が調ったときは、従来の認可制による運賃によらず、届出で運賃を設定できる制度を導入することとしております。

 国として、自治体、交通事業者等により行われる協議の構成員として、適切な運賃設定がされるよう、協議に参画をいたします。

 また、協議により決定され届出された運賃が他の事業者との間に不当な競争を引き起こす運賃となった場合には、鉄道事業法又は道路運送法に基づき変更命令を出すことができることとしております。

 これらにより、協議運賃制度について適切な運用を図ってまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、地域公共交通活性化再生法改正案について質問します。(拍手)

 長引くコロナの影響で、ローカル鉄道の存続が危機的状況に置かれています。昨年、JR各社が輸送密度二千人未満の線区を公表し、百円の収益を上げるために一万円かかるなどとセンセーショナルに報じました。

 危機の背景について、政府は、人口減少やマイカーへの転換、都市構造やライフスタイルなど、環境の変化を挙げています。その政府自身が東京一極集中を進め、整備新幹線や高規格道路などの開発を進めてきた一方、地方の生活の足としてのローカル鉄道はその役割を縮小させてきたのです。

 赤字ローカル鉄道の問題は、独り鉄道の責任ではありません。問われるのは地域の再生そのものであり、政治の責任も免れないと思いますが、見解を伺います。

 大臣は民間事業者では限界があると答弁しましたが、分かり切っていたことです。一九八七年の国鉄分割・民営化では、採算の取れない八十三の特定地方交通線を廃止、移管対象にして、四十五路線が廃止されました。JRに引き継いだローカル鉄道は、内部補助制度で維持存続させるというのが国民との約束でした。自民党は、ローカル線もなくなりませんと公約を掲げていたではありませんか。

 JR各社は、スリム化と称して、減便、特急、急行の廃止、駅の無人化、駅トイレの撤去など、サービスの切捨てを進めてきました。結果、利用者を遠ざけ、維持困難になる負のスパイラルに陥っています。コロナは単なる口実にすぎません。既に本州のJR三社などは黒字に転換しているのではないですか。

 国自身が正面から国鉄分割・民営化を反省し、鉄道を維持、活性化していくために責任を果たすべきです。

 輸送密度が千人未満でも、貨物路線は再協議の対象外とするのはなぜですか。

 また、脱炭素社会に向けて鉄道の利用拡大は重要だと考えますが、お答えください。

 鉄道路線廃止については、二〇〇〇年、届出制に緩和されましたが、これを許可制に戻すべきです。

 一九八〇年代当時、EUでも鉄道の民営化が進みました。インフラ部分は国等が保有し、運行部門のみを民営化する上下分離方式が採用されています。線路などのインフラは道路と同じ公共施設であり、自動車と同じレベルで競争できるようにするためだと聞いています。日本の鉄道に対しても同じことが言えるはずです。

 日本でも、整備新幹線はインフラ部分を鉄道・運輸機構が保有する上下分離方式になっています。赤字路線だけを切り取るのではなく、全体のネットワークを維持する、そのために国がインフラ部分を保有すべきと考えますが、見解を伺います。

 法案について伺います。

 国が再構築協議会を組織しなければならないのはどのようなときか、また、国が協議会を組織する際に地方公共団体は必ず参加をしなければならないのか、伺います。

 再構築協議会が行う実証事業や再構築方針には、ローカル鉄道をそのまま存続する道も含まれますか。斉藤大臣は、地方紙の取材に答えて、半分以上は残るのではと述べていますが、その真意を伺います。

 交通手段再構築事業では、バスや乗り合いタクシーへの転換を規定しています。三大都市圏以外の路線バスの赤字事業者の割合は、鉄道よりも多い、九九・六%。運転手のなり手がいないなどとして、バス路線の廃止も増えています。この現状をどう認識しているのか、本当にバス転換が鉄道の代替策になり得るのか、見解を伺います。

 鉄道の協議運賃制度について伺います。鉄道運賃を原則一律で運行距離によって定めている理由は、運賃の地域間格差を生まないためではなかったか、確認させてください。地域ごとの協議運賃になれば、運賃が値上げされるか、あるいは、値上げが鉄道を維持する条件にされるという懸念があります。お答えください。

 終わりに、昨年で鉄道開業百五十年を迎えました。鉄道ファンを魅了してやまない美しい橋梁や渓谷、駅舎など、ローカル鉄道の魅力を生かし、まちづくりや地域再生につなげていきたいと決意を申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 高橋千鶴子議員から御質問いただきました。

 まず、ローカル鉄道の問題に対する政治の責任についてお尋ねがありました。

 ローカル鉄道の利用者の大幅な減少については、人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化など、鉄道事業者の経営努力のみでは避けられない事情が背景にあると考えております。

 そのため、鉄道事業者任せにすることなく、自治体が主体的に関わりながら、どのような地域の将来像を実現していこうとしているのか、その中でどのような地域公共交通が必要なのかというビジョンを持った上で、地域公共交通の機能の回復に共に取り組んでいくことが急務となっていると承知しております。

 今般の改正法案は、そうした事業者と沿線自治体の連携、協働を国として積極的に促していく観点から提案させていただいているものですが、この中では、人口減少や少子化への対策、国土の在り方等に関する国の政策の方向性との整合性を確保していく必要もあります。

 こうした取組の推進に当たっては、当然ながら、政治のリーダーシップも重要になってくると考えております。

 次に、JR本州三社などが黒字に転換している点や、国鉄分割・民営化についてお尋ねがありました。

 JR本州三社及び九州につきましては、コロナ禍の影響により大幅な赤字を計上いたしましたが、利用状況は改善傾向にあり、令和四年度においては、令和元年度までの水準には及ばないものの、黒字決算を予想しております。

 今般の改正法案においても、上場後のJR各社については、JR会社法に基づく大臣指針を遵守し、内部補助も活用して路線を適切に維持することが大前提であり、この考え方に変更はありません。

 他方、一部のローカル線については、人口減少やマイカー利用の普及等を背景に、輸送需要の大幅な減少等により、大量輸送機関としての鉄道特性が十分に発揮できない状況が出てきています。

 国土交通省としましては、国鉄改革が目的とした鉄道の再生は着実に図られているものと評価しておりますが、その一方で、こうした問題への対応が急務と考え、関係者との連携と協働により、地域公共交通の利便性と持続可能性の向上を図る観点から、今般の法改正を提案させていただいているところです。

 次に、貨物路線の取扱い及び脱炭素社会に向けての鉄道利用拡大についてお尋ねがありました。

 貨物鉄道輸送は、CO2排出量が営業用トラックに比べて十分の一といった地球環境に優しい大量輸送機関であり、カーボンニュートラルの実現やトラックドライバー不足に対応する観点からも、ますます大きな役割を担っていくことが期待されます。

 昨年、国土交通省において開催した地域モビリティー検討会でも、貨物列車が現に走行している線区、災害時や有事において貨物列車が走行する蓋然性が高い線区においては、引き続き、鉄道の維持を図っていくことが強く期待されることが提言されています。

 今後、こうした考え方を地域公共交通活性化再生法に基づく基本方針に盛り込み、新たな制度を適切に運用していきたいと考えております。

 次に、鉄道路線の廃止についてお尋ねがありました。

 鉄道路線の廃止については、鉄道事業法上、一年前までの届出制になっておりますが、これは、平成十一年の鉄道事業法の改正において、需給調整規制を廃止する観点から、鉄道事業の参入について免許制から許可制とされたことに合わせ、退出についても許可制から届出制とされたものです。

 他方、先ほど申し上げましたとおり、JR会社法に基づく大臣指針により、上場後のJR各社については、路線の適切な維持のほか、路線を廃止しようとするときは、輸送需要の動向等を関係自治体等に対して十分に説明することが求められており、現に、地域との十分な対話と理解なくして鉄道の廃止の届出が行われた事例はありません。

 このように、鉄道事業者が地域と真摯にかつ丁寧に向き合うことが基本であると考えており、引き続き、現行制度を適切に運用してまいりたいと考えております。

 欧州における事例と併せ、鉄道のインフラ部分の保有についてお尋ねがありました。

 鉄道の運営の形態については、国によって、人口密度や都市構造、国と地方政府の関係等が異なることから、様々な形態が選択されております。

 我が国においては、御指摘のとおり、全国的な高速鉄道ネットワークを形成する整備新幹線は鉄道・運輸機構が建設、保有する一方で、地域公共交通を担うローカル鉄道については、上下分離方式を採用する場合、鉄道施設を自治体等が保有する形態が一般的です。

 この場合においても、国からの安全対策を始めとする補助金について、補助率のかさ上げにより地方負担の軽減を図っておりますが、今般、社会資本整備総合交付金を活用するとともに、地方交付税措置を拡充するなど、地方負担の更なる軽減を図ってまいりたいと考えております。

 次に、国が再構築協議会を組織するに当たっての条件についてお尋ねがありました。

 再構築協議会は、沿線自治体又は事業者からの要請に基づき組織するものとしており、沿線自治体又は事業者から要請があった場合、国は、当該要請に係る区間が大量輸送機関としての鉄道の特性を生かした運送サービスの持続可能な提供が困難な状況にあるか、当該区間に係る交通手段再構築を実施するために関係者相互間の連携と協働の促進が特に必要であるかのいずれにも該当すると認める場合、協議会を組織することとしております。

 また、協議会設置の通知を受けた者は、沿線自治体を含め、正当な理由がある場合を除き、協議に応じなければならないとしております。

 他方、国は、協議会の設置に際しては、沿線自治体の意見を聞かなければならないこととしており、沿線自治体の理解なく協議会が設置され再構築の方針が協議されることは、基本的に想定されません。

 いずれにせよ、国としては、協議会を設置する場合には、こうした制度の趣旨を沿線自治体に対してしっかりと説明し、協議会への参加を粘り強く要請してまいります。

 次に、再構築協議会での実証事業の実施や再構築方針策定に当たっての鉄道存続の可能性についてお尋ねがありました。

 再構築協議会での協議に当たっては、廃止ありき、存続ありきという前提を置かずに議論するものであり、実証事業の実施や再構築方針の策定において、鉄道輸送の利便性向上により輸送需要を回復する内容とすることはあり得ると考えております。

 なお、御指摘の私の発言は、協議会の関係者による議論の結果、鉄道として存続する線区が一定数出てくる可能性があるのではないかという趣旨で述べたものでございます。

 次に、バス転換が本当に鉄道の代替策になり得るかについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、地方部における路線バスの経営状況は極めて厳しく、国及び自治体の支援によってサービスを維持している状況であり、また、バスの運転手不足についても喫緊の課題と認識しています。

 このため、協議の場においてバスに転換する選択肢が検討される場合には、その運行ルートのほか、国及び自治体、鉄道事業者による持続可能な費用負担の在り方について協議することとなります。また、あわせて、担い手となるバス事業者の経営状況、車両や運転手の確保の見込み等を確認する必要があると考えています。

 なお、今般の改正法案では、エリア一括協定運行事業の創設を盛り込んだほか、令和五年度予算案では、社会資本整備総合交付金に新たな基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加するなど、バス事業者に対しても、実効性ある支援策を講じることとしています。

 こうした対策も踏まえ、あくまで、当該地域と利用者にとってより利便性と持続可能性の高い公共交通の在り方という観点から協議が行われるべきものと考えております。

 最後に、協議運賃制度についてお尋ねがありました。

 まず、鉄道事業者の運賃については、例えば、JRにおいては、幹線、地方交通線及び電車特定区間などの区分に応じた上限運賃を設定しており、その上限の範囲内において、各社の届出により割引運賃の設定が可能となっております。

 今回の協議運賃制度は、地域の関係者の連携と協働の一層の推進を促し、例えば、並行するバスとの共通運賃化を通じて地域公共交通サービスの高度化を実現する等、地域の実情に応じた柔軟な運賃設定を可能にするよう、新たに導入するものでございます。

 以上でございます。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣    齋藤  健君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    高市 早苗君

 出席副大臣

       国土交通副大臣 豊田 俊郎君


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