衆議院

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第11号 令和5年3月16日(木曜日)

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令和五年三月十六日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第五号

  令和五年三月十六日

    午後一時開議

 第一 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 議院法制局法の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長黄川田仁志君。

    ―――――――――――――

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔黄川田仁志君登壇〕

黄川田仁志君 ただいま議題となりました法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案の主な内容は、

 在外公館として在ローマ国際機関日本政府代表部を新設すること、

 在ウクライナ日本国大使館等の位置の地名を改めること、

 在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を改定すること

などであります。

 本案は、去る九日外務委員会に付託され、翌十日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。昨十五日に質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、日程第三、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長三ッ林裕巳君。

    ―――――――――――――

 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔三ッ林裕巳君登壇〕

三ッ林裕巳君 ただいま議題となりました両案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、駐留軍関係離職者及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者の発生が今後においても引き続き予想される状況に鑑み、法律の有効期限をそれぞれ五年延長しようとするものであります。

 次に、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、これまで戦没者等の妻に特別給付金として支給してきた国債が最終償還を迎えることから、国として引き続き戦没者等の妻に対し特別の慰藉を行うため、特別給付金として額面百十万円、五年償還の国債を五年ごとに二回支給する等の措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る三月九日本委員会に付託され、翌十日加藤厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、昨日、質疑を行った後、採決の結果、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第四、水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長笹川博義君。

    ―――――――――――――

 水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔笹川博義君登壇〕

笹川博義君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における水産加工品の原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に鑑み、水産加工業の体質強化を引き続き促進するため、法律の有効期限を令和十年三月三十一日まで五年延長しようとするものであります。

 本案は、去る三月十三日本委員会に付託され、翌十四日野村農林水産大臣から趣旨の説明を聴取し、昨十五日質疑を行いました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

佐々木紀君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、議院法制局法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(細田博之君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 議院法制局法の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

議長(細田博之君) 議院法制局法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 議院法制局法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました議院法制局法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、衆議院法制局に法案審査部を置こうとするものであります。

 本法律案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出したものであります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣加藤勝信君。

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 本格的な少子高齢化、人口減少時代を迎える中で、人口動態の変化や経済社会の変容を見据えつつ、全ての世代が公平に支え合い、持続可能な社会保障制度を構築することが重要です。こうした状況を踏まえ、給付と負担のバランスを確保しつつ、全ての世代が能力に応じて社会保障制度を公平に支え合う仕組みを構築するとともに、地域において質の高い医療及び介護サービスを効率的かつ効果的に提供し、社会保障制度の持続可能性を高めることを通じて、全ての世代が安心して生活することができる全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築することを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、こども・子育て支援の拡充を図るため、出産育児一時金に係る費用の一部について、後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入するとともに、国民健康保険の保険料について、産前産後期間における被保険者の保険料を免除し、その免除相当額を公費で支援する制度を設けます。

 第二に、高齢者の医療を全世代で公平に支え合うため、後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の設定方法について、後期高齢者一人当たりの保険料と現役世代一人当たりの後期高齢者支援金の伸び率が同じとなるように見直します。

 また、前期高齢者に係る医療給付費等を保険者間で調整する仕組みについて、被用者保険者において報酬水準に応じて調整する仕組みの導入等を行うとともに、健康保険組合に対する交付金事業への財政支援の導入や、後期高齢者支援金等の負担が大きくなる場合の財政支援の拡充を行うこととします。

 第三に、医療保険制度の基盤強化等を図るため、都道府県医療費適正化計画の記載事項を充実し、計画の目標設定に際しては、医療及び介護サービスを効果的かつ効率的に組み合わせた提供等の重要性に留意することとするとともに、都道府県ごとに保険者協議会を必置として計画の策定、評価に関与する仕組み等を導入します。

 また、都道府県が策定する国民健康保険運営方針の運営期間の法定化等を行うとともに、経過措置として存続する退職者医療制度について、対象者の減少や保険者等の負担を踏まえて廃止することとします。

 第四に、医療及び介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化を図るため、かかりつけ医機能について、国民への情報提供を強化するとともに、かかりつけ医機能の報告を踏まえて地域におけるかかりつけ医機能を確保するために必要な事項について協議を行い、当該協議の結果を踏まえて医療や介護の各種計画に反映することとします。

 また、医療保険者と介護保険者が被保険者等に係る医療・介護情報の収集及び提供等を行う事業を一体的に実施するとともに、医療法人及び介護サービス事業者の経営情報に係るデータベースの整備や、地域医療連携推進法人制度において一定要件のもとで個人立の病院等が参加できる仕組みの導入、出資持分の定めのある医療法人が、出資持分の定めのない医療法人に移行する際の計画の認定制度に係る期限の延長等を行うこととします。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和六年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。新谷正義君。

    〔新谷正義君登壇〕

新谷正義君 自由民主党・無所属の会の新谷正義です。

 ただいま議題となりました全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表し、質問をいたします。(拍手)

 人生百年時代を迎える中、我が国の最大かつ喫緊の課題は、少子化、人口減少であります。少子高齢化が進む中で、働き手、社会保障の支え手は減少を続けております。本法案のコンセプトは全世代型社会保障です。社会保障を含む経済社会の支え手を増やしながら、今の世代で制度を支えていくことを基本理念に改革を進めるべきであります。

 まず、本法案を含め、目指すべき全世代型社会保障の理念、意義につきまして、総理にお伺いをいたします。

 昨年生まれた子供の数は八十万人を下回り、想定を上回るペースで出生数の減少が続いております。この流れを食い止め、反転をさせていくためには、未来を担う子供たち、子育て世代に大胆に投資をしていくことが必要であります。

 本法案におきまして、子育て世代の支援のためにどのような対策を進めようとしておられるのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 後期高齢者の医療費につきましては、公費、後期高齢者からの保険料に加えまして、現役世代の支援金で成り立っております。

 しかしながら、制度創設以来、高齢者保険料の伸び率が一・二倍であるのに対し、現役世代の支援金の伸び率が一・七倍と大きく上回っており、現役世代の負担は増加の一途をたどっております。経済の好循環をつくっていくためには現役世代の稼ぐ力をサポートすることが重要でありますが、同時に、社会保障の過度な負担が集中をする、そういったことは制度の持続可能性の観点からも避けるべきと考えております。介護保険では、六十五歳以上の被保険者と四十歳から六十四歳の被保険者の人口比に応じて負担割合を見直しておりまして、保険料額がおおむね同じになる仕組みとなっております。

 後期高齢者医療制度における負担の世代間バランス、これがどうあるべきか、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 今後、高齢者の増加や生産年齢人口の減少が加速をしていく中で、医療資源には限りがあることを踏まえ、地域ごとに必要な医療を必要なときに受けられる体制を確保していくことが喫緊の課題でございます。

 二〇四〇年を見据えた医療提供体制の改革の目指すべき方向性についてどのようにお考えになっているか、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有する高齢者が今後更に増加していく中、法案においてかかりつけ医機能を重視した制度整備が進められることになります。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備をどのような考え方で進めていくのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 全ての世代が安心できる社会保障の構築に向けては、高齢者が住み慣れた地域において介護サービスを安心して受けられることも重要であります。

 特に、今後、二〇四〇年頃に向けて、高齢者人口の中でも八十五歳以上の方が増加する中で、介護が必要になる方や、それに加えて、医療ニーズを持つ方も多くなってくると考えられます。こうした方々に適切なサービスを提供できるよう、地域における様々な介護サービス事業所や医療機関などの関係者が情報を共有し、横断的な視点で対応していくことが鍵となってくるものと考えております。

 そこで、今回の法律案に盛り込んだ介護に関する情報基盤の整備につきまして、その内容と目指すところを厚生労働大臣にお伺いいたします。

 本法案は、社会保障を全世代で支え合うという高い理念に基づき、地域における医療、介護の提供体制を充実させるとともに、社会保障の基盤をイノベーションで強化するなど、未来型の社会保障制度の礎になると確信をしております。

 今回の法案を第一歩とし、引き続き、改革を前に前に進めていくことが重要であります。今後も政府の力強い取組をお願い申し上げます。

 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 新谷正義議員の御質問にお答えいたします。

 全世代型社会保障の理念、意義についてお尋ねがありました。

 本格的な少子高齢化、人口減少時代を迎える中で、給付と負担のバランスを確保しつつ、全ての世代が能力に応じて社会保障制度を公平に支え合う仕組みを構築することが重要です。

 このため、本法案では、出産育児一時金に係る費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みの導入、高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直しを行うとともに、医療、介護の連携機能や、かかりつけ医機能の制度化を含む医療提供体制等の基盤強化等を図ることとしております。

 こうした改革を通じ、全ての世代が安心して生活することができる全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 新谷正義議員の質問にお答えいたします。

 子育て世代の支援についてお尋ねがありました。

 生産年齢人口が急激に減少していく中で、少子化をめぐっては、これまで様々な対策を講じてきましたが、いまだに少子化の流れを変えるには至っていない状況にあります。

 このため、今般、これまで十三年間据え置かれていた出産育児一時金を来月から二割増の五十万円に増額するとともに、本法案により、子育てを全世代で支援する観点から、出産育児一時金に要する費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入することとしています。

 また、本法案では、来年一月から、国民健康保険の保険料について、産前産後期間における被保険者の保険料を免除するとともに、その免除相当額を公費で支援することとしております。

 あわせて、負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合う仕組みを強化することを通じて、現役世代の負担軽減に取り組むこととしております。

 後期高齢者医療制度における負担の在り方についてお尋ねがありました。

 二〇二五年までに団塊の世代が全て後期高齢者となる中、現役世代の負担上昇を抑制しつつ、負担能力に応じて、全世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みの構築が必要であります。

 本法案では、後期高齢者医療制度の創設以来、後期高齢者の保険料の伸びを現役世代が負担する支援金の伸びが大きく上回っていることを踏まえ、介護保険を参考に、後期高齢者一人当たりの保険料と現役世代一人当たりの後期高齢者支援金の伸び率が同じとなるよう、すなわち、後期高齢者と現役世代の負担の伸び率が同じとなるよう制度を見直します。その際、高齢者全員に一律の負担をお願いするのではなく、低所得の方々の負担増が生じないよう、負担能力に応じた負担とするとともに、激変緩和措置を講じることとしています。

 これにより、後期高齢者医療制度を、負担能力に応じて全世代で公平に支え合う仕組みに見直します。

 医療提供体制の改革についてお尋ねがありました。

 医療提供体制の改革については、全世代型社会保障構築会議の報告書にあるように、二〇四〇年頃までを視野に入れつつ、足下の短期的課題とともに、当面の二〇二五年や二〇三〇年を目指した中長期的課題について、時間軸と地域軸の視点を踏まえて取組を進めることが重要と考えています。

 今後、更なる高齢者の増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中で、全ての国民がそれぞれの地域において質の高い医療サービスを必要に応じて受けることができる体制を確保する必要があります。

 そのため、地域によって大きく異なる医療・介護ニーズや、活用可能な資源の状況を踏まえつつ、介護分野も含めた機能分化と連携、人材の確保、育成、デジタル技術の活用等の取組を一層促進することにより、全ての国民、患者へ、質の高い、効率的で効果的な医療サービスを届けることができるよう、医療提供体制の不断の見直しを図ってまいります。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備についてお尋ねがありました。

 政府としては、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考えの下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要と考えております。

 このため、本法案では、国民、患者がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう、情報提供を強化するとともに、医療機関に対してその機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえ、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討、公表することとしています。

 こうした制度整備を進めることにより、国民、患者がそのニーズに応じて適切な医療機関を選択できるようになるとともに、医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化し、地域において必要なかかりつけ医機能の確保が進むことで、国民、患者お一人お一人が受ける医療サービスの向上につなげていきたいと考えています。

 介護の情報基盤についてお尋ねがありました。

 介護サービスについては、様々な関係者が連携し、利用者一人一人のニーズに応じた対応を行うことが重要であると考えています。

 このため、本法案では、介護サービス利用者の情報を、本人や自治体、介護事業所、医療機関等の関係者が電子的に共有できる情報基盤を整備することとしています。

 こうした情報共有を通じて、地域の関係者が共同して高齢者を支えていく体制の構築を進め、介護が必要な方に、より質の高いサービスを提供できるよう取り組んでまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 井坂信彦君。

    〔井坂信彦君登壇〕

井坂信彦君 立憲民主党・無所属の井坂信彦です。

 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 放送法の政治的公平性に関する問題が、岸田政権の信頼性を揺るがす大きな問題となっています。持続可能な社会保障制度を構築する上で、その経済的基盤には経済安全保障の観点が重要なのは言うまでもありません。経済安全保障大臣として社会保障に関わる高市大臣による放送法の解釈変更に関する問題は見過ごせません。法案審議に当たり、まず、この問題について、岸田総理に質問いたします。

 高市総務大臣は、二〇一五年五月十二日の参議院総務委員会において、放送法上の政治的公平を番組全体でなく一つの番組で判断できると答弁しました。これは、補充的な説明とするのは詭弁であり、放送法の解釈変更そのものではないでしょうか。

 この解釈変更は、安倍総理が、衆議院選直前の二〇一四年十一月十八日に出演した番組で、街頭インタビューの内容に偏りがあると批判したことから始まり、二日後に自民党の萩生田筆頭副幹事長から在京テレビ局に対しお願い文書を発出、礒崎総理補佐官が総務省に働きかけ、高市大臣答弁に至ったものです。いわば安倍総理の負の遺産ともいうべきものではないでしょうか。

 岸田総理は、三月六日の参議院予算委員会で、従来の解釈を変えることなく補充的な説明を行ったものであると答弁してしまっています。

 総理に伺います。

 一つの番組でだけ、国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊更に他の政治的見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合は、現在の岸田政権としては、放送法上、政治的公平性が確保されていないと解釈するのでしょうか。また、二〇一四年十一月以前においても同じ解釈だったのでしょうか。答弁願います。

 二〇一五年五月答弁の後も、翌二〇一六年二月八日には、衆議院予算委員会において、高市総務大臣は、一つの番組でも放送法の政治的公平に反する場合には電波停止を命じる可能性がある旨答弁しています。現時点でも同じ解釈でしょうか。今もこの答弁を維持しているのであれば、岸田政権は、NHKや民放に対し、政治的圧力をかけて、自由な放送をさせないようプレッシャーをかけ続けていることになるのではないでしょうか。

 その根拠となってしまっている二つの答弁、政治的公平が一つの番組で判断できるとした二〇一五年五月答弁と、一つの番組でも電波停止ができるとした二〇一六年二月答弁を、岸田総理、修正、削除すべきではないでしょうか。今回の公表文書において、意に沿わない番組やコメンテーターを力で封じ込める姿勢が生々しく明らかになりました。安倍総理の十年の負の遺産をここで終わりにするのかどうか、岸田総理、明確にお答えください。

 さて、本法案の名称は、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案です。

 しかし、今回の法改正は、一言で言えば、社会保障の費用の分担割合を世代間や保険者間で調整しようというものであります。どんどん重くなる負担の分担方法を公平にするだけでは、全員がひとしく苦しくなるだけであります。

 政府は、防衛費を一気に二倍にしようとしています。片や、社会保障は、全世代が肩を寄せ合って、ひもじい思いをしている。総理、さすがにこの予算配分はおかしいのではないでしょうか。安全保障も大事ですが、社会保障も大事です。そういう当たり前の価値観で、限られた予算をバランスよく配分すべきではないでしょうか。

 社会保障を持続可能にする方法は、大きく二つあります。一つは、少子化対策で人口構造を変えて、社会保険料を主に負担する現役世代の人口割合を増やすこと、もう一つは、予防医療や介護予防で、病気や要介護になる人の割合を減らすことであります。もちろん、ほかにも、大幅な経済成長で社会保険料収入が増え続けたり、イノベーションで医療、介護のコストが激減する可能性はあります。しかし、コントロール可能な政策で社会保障を持続可能にする方法は、少子化対策と予防政策しかないと考えます。総理の見解を伺います。

 少子化対策については、総理が公約した子供予算倍増が完全に消えてしまいました。何の二倍かは言えない、数字ありきではない、いつまでに倍増するかも言えない、挙げ句の果てに、子供が増えれば子供予算も増えると。

 総理、出生率は過去最低です。もう三月も後半です。いつまでに子供予算を倍増するのか。何の数字と比べて倍増するのか。これらをいつ国民に示すのか。倍増のベースと期限を決める期限をお示しください。

 総理が何もしない間に、自民党からは次々とトリッキーな少子化対策が出されています。自民党の少子化対策調査会長から出された、結婚、出産で奨学金の返済を免除するという案を政府が検討する可能性があるのかないのか、端的にお答えください。

 次に、予防政策について伺います。

 千五百種類の予防医療の費用対効果を分析したアメリカの研究によると、予防医療の中で医療費を下げる効果のあるものは全体の二〇%でした。大半の予防医療は、健康にはなるが医療費も増えるということであります。

 健康増進や予防の効果が同じぐらいある政策であれば、医療、介護の費用が増える政策よりも減る政策を優先すべきです。健康な人を増やすと同時に社会保障を持続可能にするためにも、健康政策や予防政策の目的や指標に医療・介護費を減らすということを含めるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、財源について伺います。

 先日、自民党の参議院幹事長が、少子化対策の財源について、国債もあり得るという認識を示しました。社会保障の持続可能性を高めるために少子化対策や健康、予防政策を実施し、その財源の一部を国債で賄うことについて、総理の見解を伺います。

 また、総理のために内閣府の中に設置され、委員は総理が任命、解任できる、独立性ゼロの経済財政諮問会議ではなく、社会保障財政の持続可能性や国債の返済可能性を厳しくチェックする独立財政機関が必要です。総理の見解を伺います。

 少子化対策や予防政策について、政策面と財政面の効果を科学的に評価、検証する仕組みも必要です。イギリスでは、ホワット・ワークス・センターという独立した専門機関があり、エビデンスの収集や政策選択への活用を行っています。日本も、このようなエビデンスセンターを設けて、科学的根拠に基づいて少子化対策や予防政策を取捨選択すべきと考えますが、御所見を伺います。

 次に、本法案の問題点であるかかりつけ医について伺います。

 政府は、今回、医療機関の質を担保するための認定制や、担当する患者を明確にするための登録制の導入を見送りました。これで超高齢化社会をしっかり支える医療体制になるのか、甚だ疑問です。全世代型社会保障構築会議が示した方針よりも後退しており、厚生労働省は、一体、誰の顔色を見ているのでしょうか。かかりつけ医をあらかじめ決めておくのは糖尿病など継続的なケアが必要な患者に限定しており、制度の土台として不十分と言わざるを得ません。この方法だと、かかりつけ医が明確でない人が残り、コロナ禍で経験した機能不全が再び繰り返されることにならないでしょうか。また、かかりつけ医に診療義務を課すわけではないため、患者にとって分かりにくいとの指摘もあります。

 今申し上げた評価は、私の言葉ではありません。日経、産経、毎日、読売、朝日の社説や記事から抜き出してつなげたものであります。本法案のかかりつけ医は不十分であると、全国五大紙が全て批判をしているのです。

 なぜ、誰のために、認定制度と登録制度の導入を見送ったのか、お答えください。

 全世代型社会保障構築会議の報告書にも、今回の制度整備は、国民一人一人のニーズを満たすかかりつけ医機能の実現に向けた第一歩と捉えるべきであると書かれています。今回の法改正はあくまで第一歩であり、国民一人一人が信頼できるかかりつけ医を持てるようにするのがゴールだと法律に明記すべきではないでしょうか。

 コロナ禍では、自宅療養を余儀なくされる患者が急増し、あってはならない自宅放置死が多数出てしまいました。立憲民主党は、患者が確実に医療につながる仕組みを整備するため、一昨年の六月に日本版家庭医制度法案、昨年三月にコロナかかりつけ医法案を提出しています。一方、今回の法改正で果たして自宅放置死を防げるのか、総理に伺います。

 また、前段で申し上げた予防政策を地域で実施するためにも、かかりつけ医は欠かせないと考えますが、総理の認識を伺います。

 最後に、出産育児一時金について伺います。

 今回の法改正に伴い、出産育児一時金が四十二万円から五十万円に増額されます。一方で、出産費用を保険適用にすべきという声が与党の元総理からも上がっています。出産費用を保険適用にするメリットとデメリットは何か、政府は保険適用を検討するのか、お答えください。

 都道府県別の出産費用を見ると、鳥取県や佐賀県の平均三十五万七千円に対し、東京都は平均五十六万五千円と二十万円も高くなっています。一律五十万円の出産育児一時金では、出産費用が安い地域ではお金が余り、出産費用が高い地域では全く足りないことになります。都道府県によって平均的な出産費用が大きく異なる現状について、総理の問題意識をお聞かせください。

 政府は、今後、出産費用の内訳を調査するとのことであります。分娩費など基本的な費用だけを比べても都道府県により大きな地域差があることが分かったら、出産育児一時金の金額を地域によって変えたり、保険適用で全国一律の金額にするなど、出産費用の地域差を政策的に解消するのかどうか、総理に伺います。

 社会保障の持続可能性を高めることは、全ての世代にとって最重要の課題であります。単に全世代で負担を分かち合うだけでなく、科学的根拠に基づいた少子化対策や予防政策を全世代で実行することこそ、真に持続可能な全世代型社会保障を構築する方法であると申し上げて、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 井坂信彦議員の御質問にお答えいたします。

 放送法の政治的公平についてお尋ねがありました。

 平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会で総務大臣が答弁した放送法の政治的公平の解釈については、放送法を所管する総務省から、責任を持って、国会答弁等において、従来の解釈を補充的に説明し、より明確にしたものであり、現在においてもその解釈が維持されている旨説明がなされ、それは一貫して維持されているものであると承知をしております。

 報道の自由を始め表現の自由は、憲法で保障された基本的人権の一つであるとともに、民主主義を担保するものであり、これを最大限尊重することは当然のことであります。

 平成二十八年二月八日の衆議院予算委員会で総務大臣が答弁をした放送法違反の場合のいわゆる停波命令については、放送法を所管する総務省から、責任を持って、国会答弁等において、放送法が憲法によって保障される表現の自由や国民の知る権利を保障することを目的としていることも踏まえ、極めて慎重な配慮の下、運用すべきであると従来から取り扱ってきている旨説明がなされ、それは一貫して維持されているものであると承知をしています。

 これらを踏まえ、放送法を所管する総務省において放送行政を適切に運用しているものと承知しており、放送事業者にプレッシャーをかけ続けているとの御指摘は当たりません。

 御指摘の二つの答弁については、こうした一貫した説明に沿って行われたものと承知をしており、このような意味で、安倍総理の十年の負の遺産との御指摘は当たらないと考えております。

 社会保障への予算配分についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が急速に進む中、全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでいくことが、そのための予算の確保を含め、重要であると考えております。

 令和五年度予算案においては、社会保障関係費を約三十七兆円計上しており、これは一般歳出の五割を占めるものです。

 さらに、子ども・子育て政策の抜本的強化に取り組んでおり、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 同時に、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙しており、安全保障と社会保障どちらか一方という二者択一の問題ではなく、政府の責任として、共に必要な予算額をしっかりと措置してまいります。

 社会保障を持続可能にする方策についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が進む中、社会保障を持続可能なものとするためには、人口減少の流れを変え、経済社会の支え手を増やすとともに、必要な社会保障を確保しつつ、負担能力に応じて公平に支え合う仕組みを早急に強化する必要があります。その観点からも、少子化対策は重要であると考えております。

 疾病、介護の予防についても、特定健診、保健指導の実施など、社会保障を持続可能にする観点も踏まえながら、必要な取組を行ってまいります。

 子ども・子育て予算の倍増についてお尋ねがありました。

 急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込み、子ども・子育て政策への対応、これは待ったなしの課題です。

 個々の政策の内容や規模はもちろん重要なことですが、これまで関与が薄いと指摘されてきた企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身の方も含めて、社会全体の意識の変革を含め、次元の異なる対策を講じていく中で、何としても少子化トレンドを反転させていきたいと考えております。

 子ども・子育て政策に関する予算については、まずは政策の中身が重要であり、政策の内容を詰めなければ、倍増の基準や時期を申し上げることは適当でないと考えております。そこで、こども政策担当大臣の下、従来から申し上げておりますように、三月末をめどとし、子ども・子育て政策として充実する内容をパッケージとして具体化いたします。そして、これも従来から申し上げておりますように、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示してまいります。

 少子化対策として、奨学金の返済免除の案についてお尋ねがありました。

 御質問の案については、党の議論の過程で出されたものであり、党として最終的にそのような意見を取りまとめたものではないと承知をしております。

 少子化対策をめぐり、様々な議論は尊重すべきと考えておりますが、党内で意見をまとめる前の段階で、私の立場から、一つ一つの案について、検討する可能性を含め、評価することは控えさせていただきます。

 子ども・子育て政策について、まずは、こども政策担当大臣の下、充実する内容を具体化することとしております。これと併せて、教育についても、今の社会において必要とされる施策に取り組んでまいります。

 健康増進や予防に関わる政策の目的や指標についてお尋ねがありました。

 誰もが、できる限り医療や介護を必要とせず、健やかで心豊かに生活できる社会を実現するため、健康増進施策を進めることが重要です。

 国民健康づくり運動である健康日本21においては、健康寿命の延伸を目標とし、生活習慣の改善や健康づくりに取り組める環境整備等に関する指標を設定しており、医療費や介護費については、直接の指標としては設定しておりませんが、医療費適正化計画と共通の指標を設定するなど、医療費への影響を踏まえつつ、健康増進施策の取組を進めています。

 これまでも、例えば特定健診、特定保健指導の医療費適正化効果の検証事業を行うなど、エビデンスの収集に努めてきたところであり、今後とも、こうした知見の蓄積を図りつつ、国民の健康増進施策をしっかりと進めてまいります。

 少子化対策等の財源と独立財政機関の必要性についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て政策については、まずは政策の中身が重要であり、こども政策担当大臣の下、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策として充実する内容をパッケージとして具体化いたします。そして、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくか、これを考えてまいります。

 独立財政機関については、政府としては、経済財政諮問会議において、専門的、中立的な知見を有する学識経験者なども参画する形で経済財政運営について議論を行っており、引き続き、この体制の下で適切な政策運営を行っていきたいと考えております。

 科学的根拠に基づいた少子化対策や予防政策についてお尋ねがありました。

 我が国においては、EBPMを推進するため、各府省にEBPM統括責任者を置き、エビデンスに基づく政策立案を進めることとしております。

 こうした体制の下、御指摘の少子化対策については、来月設置するこども家庭庁において、各種統計における子供や家庭に関するデータや調査研究などを更に充実させるとともに、政策効果を明らかにし、エビデンスに基づく政策立案、実践を行ってまいります。

 また、予防政策については、厚生労働省において、予防、健康づくりの取組を効率的、効果的に実施していくため、実証事業を実施し、健康増進効果等のエビデンスを確認、蓄積しながら、保険者等による予防、健康づくりを推進してまいります。

 かかりつけ医の制度の在り方についてお尋ねがありました。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備に当たっては、御指摘の認定制や登録制を含め様々な議論が行われましたが、政府としては、全世代型社会保障構築会議の報告書において、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すべきである、このように報告書においてされたことを踏まえて、今回の制度を法律化したものであります。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備について法律にゴールを明記すべきとのお尋ねがありました。

 今後、更なる高齢者の増加や生産年齢人口の急減が見込まれる中で、全ての国民がそれぞれの地域において質の高い医療サービスを必要に応じて受けることができる体制を確保するためには、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めることが重要であり、本法案が成立すれば、着実に取組を進めてまいります。

 そして、議員御指摘のとおり、全世代型社会保障構築会議の報告書においては、国民一人一人のニーズを満たすかかりつけ医機能が実現するまでには、各医療機関、各地域の取組が必要であり、今回の制度整備はそれに向けた第一歩と捉えるべきであるとされています。

 本法案の附則には検討規定が設けられており、これに基づき、改正後の各法律の施行の状況等を勘案し、改正後の各法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講じてまいります。

 予防政策を地域で実施するためのかかりつけ医の必要性等についてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナ対応で浮き彫りになった課題を踏まえ、次の感染症危機から国民の命と健康を守るため、流行の初期段階から速やかに機能する保健医療提供体制の構築を図ること等を目的として、昨年来、感染症法等の改正を行っているところです。

 政府としては、未知の感染症への対応について、全ての医療機関に感染症医療を行うことを一律に求めることは困難と考えており、自宅療養者等に対する医療の提供を含め、各医療機関の機能や役割に応じて協定を締結することで、感染症医療を担う医療機関をあらかじめ適切に確保していくこととしております。

 また、本法案では、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能を一般的なかかりつけ医機能としており、疾病の予防のための措置を行う機能の確保が重要であると認識をしております。

 出産費用の保険適用等についてお尋ねがありました。

 出産費用の保険適用については、全国一律の診療報酬で評価されることとなる一方、妊婦自身の自由な選択により様々なサービスが利用され、地域差も見られる実態等を踏まえると、医療保険制度との整合性をどう考えるかなどの課題があると考えております。

 出産費用が年々上昇し、地域によって差が生じている現状の中、平均的な標準費用を全て賄うよう、来月から、出産育児一時金を全国一律で五十万円に増額することで対応してまいります。あわせて、出産費用の見える化に向けた取組を進め、妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて適切に医療機関を選択できる環境を整備してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 池下卓君。

    〔池下卓君登壇〕

池下卓君 日本維新の会、池下卓です。

 ただいま議題になりました全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 人生百年時代の中にあって、国民が不安なく、それぞれの人生ステージにおいて希望の持てる新しい未来を築くこと、その実現は政治に課せられた大きな使命であります。

 我が国を取り巻く少子高齢社会が抱える課題は、世代間扶養でつないできた社会保障の将来像に暗い影を落とし、政府が、その財源のため、あらゆる手段を講じられてきたということは十分理解できます。しかしながら、本来、医療は納税者たる国民が自身の健康と命を守るため享受する当然の権利であり、社会構造の変化によって抑制されるものではありません。

 先日、我が党では、地域で共有する標準的な薬剤選択の使用方針に基づく採用医薬品リスト、いわゆる地域フォーミュラリーを全国に先駆けて取り組んでおられる大阪府八尾市の薬剤師会様より御意見を拝聴いたしました。

 最も印象に残ったのは、フォーミュラリーの真の目的は、地域医療において質と安全が担保される標準的な薬物治療の推進であって、医療費の大幅な削減は副次的な産物であるとおっしゃっていたことにあります。まさに、地域医療を支えるため、患者、医療機関、流通、保険者、薬局が一体となって、住民の健康を守る医療の質の向上を通じた医療費の適正化に取り組んでおられるという感想を持ちました。

 今回、政府は、歯止めのかからない少子化と超高齢化社会に対応する施策の一環として本法案を提出されたわけですが、果たして、国民、患者目線に立った医療の充実につながっているのか、また、将来に不安を残さない社会保障制度となっているのかという観点から質問をさせていただきます。

 まず、子ども・子育て支援の拡充について、総理にお尋ねをいたします。

 本法案では、出産育児一時金の支給額の引上げに伴う費用負担と子ども・子育て支援の全世代公平負担の実現がうたわれ、後期高齢者医療制度からの支援も求めています。日本維新の会としても、全世代で公平に医療を支える制度の維持に向けた政府の強い意思表示は高く評価するものです。

 一方で、現在の我が国の医療制度は、あくまで共助の精神で存立する社会保険方式に基づいています。したがって、我が党は、通常分娩を公的医療保険の対象となる医療に位置づけ、三割の自己負担を妊婦健診と併せてクーポンで支給し、実質自己負担をゼロにするということを主張し続けてまいりました。

 我が党の提案は、出産費用の地域格差や、一時金の増額に乗じた分娩医療機関における出産費用の値上げ対策としても効果があり、内閣府子ども・子育て本部や四月発足後のこども家庭庁の施策として、是非、子ども・子育て政策の一環として推進していただきたいと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 次に、本法案のもう一つの柱である医療、介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化についてお伺いをいたします。

 本法案では、かかりつけ医機能発揮のための制度整備を行っていますが、そもそも論として、かかりつけ医の法的な根拠また定義が何らなされておりません。これでは、誰がどのようにしてかかりつけ医の役割を担うのかが分かりません。何をかかりつけ医に期待するのかも漠然としていて分からず、本法案で、国民が安心してかかりつけ医を選択できるための準備が制度として整うとは評価できません。まずは、かかりつけ医としての機能をしっかりと定義し、そのような機能、役割を担う医療機関の数を増やし、国民に安心してかかりつけ医を選択できる環境をつくり出すことが政治の責任と考えます。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 本法案による医療費適正化計画の策定に当たり、都道府県が留意すべきかかりつけ医機能の確保の具体的な内容について、どのようなスケジュール感で都道府県にお示しになるつもりなのか、明らかにしてください。

 具体的なかかりつけ医機能やかかりつけ医の養成計画などを国が何ら示すことなく、各種計画への反映だけを押しつけるというのは余りにも無責任です。現在、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大で浮き彫りになった課題の克服も含む第八次医療計画の策定に都道府県は取り組まれようとしているところですが、ここに、地域特性を生かした多職種連携の在り方が検討、反映された、かかりつけ医機能に係る整理を含む方向性を政府が示すべきだと考えます。

 例えば、地域で患者、市民を幅広く診るための、地域特性を加味した具体的なプライマリーケアチーム像とプライマリーケアチームの担い手育成の方針を明示すべきであると考えます。その上で、かかりつけ医機能を有する医療機関には、標榜診療科目として、かかりつけ医科などと国民に分かりやすいように看板に表記ができるようにするなど、研修を含めた体制づくりを推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 必要なときに必要な医療を迅速に提供できる体制づくりが、かかりつけ医制度の定着に欠かせません。かかりつけ医制度を機能させていくためには、かかりつけ医機能を担う医療機関の数とともに、国民目線からニーズを丁寧に検証し、かかりつけ医を自由に選択できる環境を整備することが肝要であります。

 しかしながら、今回の政府案は、地域におけるかかりつけ医機能の情報提供にすぎず、慢性疾患を有する高齢者を取り巻く外来機能報告制度にとどまっている感が否めません。一体、現役世代を含めた多くの国民、患者が希望する、かかりつけ医の制度化に向けた政府の取組はどのようになっているのでしょうか。国民が求めるかかりつけ医とは、自分の日頃の状態をよく知っているお医者さんと併せて、自分の日頃の状態の変化を伝えられるお医者さんなのであります。

 したがって、国民のライフスタイルが多様であることを考えれば、小さいお子さんをお持ちの御家族や御年配の方々は、居住地に近いところにかかりつけ医が必要でしょう。また、就労世代の皆さんには、職場に近いところにある医療機関にそうした機能を求めることでしょう。また、こうした多様なニーズに応えるためには、ライフスタイルの変化に対応して、かかりつけ医を容易に変えることができる環境も求められるのではないでしょうか。

 そして、このときに必須となるのが、かかりつけ医の診療情報を共有化できる医療情報の利活用環境の整備であると考えています。必要なときに必要な医療情報に瞬時にアクセスできる、医療DXを含めた体制づくりは早急に検討すべきであります。

 特に、医療データの利活用の意義として、一つ、治療の質の向上、二つ、医学研究や医薬品開発などの医療の技術革新、三つ、医療現場の負担軽減が期待できる医療資源の適切配分、四つ、医療費の適正化による社会保障制度の持続性確保などが挙げられますが、あわせて、これらの関連するあらゆる医療情報の適切な連携を可能とするプラットフォームの構築も喫緊の課題であると考えます。

 政府は、現在、電子カルテについて、一次利用を想定した医療従事者アンケートを基に、連携するデータを三文書六情報としていますが、一次利用、二次利用それぞれの場面でどのような情報が必要なのか、いま一度、市民、患者、業界の声を丁寧に聞き、十分な検討をしていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

 せっかく苦労して収集した貴重な医療データが限定的な活用にのみとどまることがないよう、将来的に可能性が広がるような、一次、二次に分け隔てることなく一体となった、拡張性、柔軟性を追求したデータ基盤体制づくりが必要と考えますが、スケジュール感と併せて、その展望について、厚生労働大臣の御見解をお聞かせください。

 さらに、本法案のうたう持続可能性という観点から、給付と負担の見直しについて質問をいたします。

 我々日本維新の会は、世代間で公平な仕組みを構築する社会保障制度の確立を目指しています。まさに、社会保障制度の持続可能性は国民にとってとても大事なテーマです。

 しかし、本法案にあっては、介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化がうたわれておりますが、基盤強化に欠かせない給付と負担の見直しについては調査のみであり、先送りされている感が否めません。

 例えば、高齢者の負担能力に応じた給付や負担の在り方については、高齢者のライフスタイルの多様性、例えば、現役並みの収入とはいいながらも、貯蓄に余裕がなく、昨今の物価高を乗り切るため、意に反して働かなければならない高齢者の生活状況を十分に調査した上で、世代を超えた公平な負担の在り方を考える必要があります。

 現役世代も、いつかは高齢者になります。今の若者が将来の日本の社会保障制度に不安を抱かないようなルール作りも必要ではないでしょうか。つまりは、介護保険料の納付開始時期の年齢の見直しについても、全世代対応型で社会保障を構築するのであれば、子ども・子育て世代の負担増にも配慮をしながら、給付と負担の見直しについては調査をし、全体像を制度設計した上での議論を進めていただきたいと考えますが、厚生労働大臣の御意見をお聞かせください。

 世界に冠たる国民皆保険を支える我が国の医療制度を堅持するには、医療費の適正化が喫緊の課題であることは論をまちません。冒頭に紹介しました、財政審などでも医療費適正化の方略として度々話題となっているフォーミュラリーもその一つです。

 しかしながら、現状のように後発医薬品の安定供給が不十分な状況にあって、後発医薬品の使用促進を国家政策の根幹に据えるのは、余りにも医療現場の現状を無視した机上の空論と思えます。単純に削れるだろうから削ってしまえといった現行の薬価の毎年改定などは、国民負担の軽減という正論を盾に取った対症療法的な愚策であると断じざるを得ません。

 画期的な医療品の恩恵を受けるのは誰なのか、ほかならぬ納税者である国民であります。一方的な財政論にあおられた結果、いつの間にか世界の標準的な医薬品が日本では開発、供給されなくなり、国民の健康と命を守る薬という大きな切り札を国民が知らないうちに失っていたという悲劇が起こらないよう、財政の規律とイノベーションの評価の両立に立って、総理から力強いお言葉をいただきたいと思います。

 我々日本維新の会は、子供のために使われる大規模な財源を確保することを目指し、GDPの一定割合を必ず子供のために配分する義務的予算枠を確保し、この財源を活用した子ども・子育て施策を断行していくことを提案しています。今回の法案で進められる諸政策が、総理のおっしゃる異次元の少子化対策による子育て支援を目的としているのであれば、共助によって支えられる医療保険の財源に依拠するような子ども・子育て支援の拡充ではなく、本家本元の少子化対策、子ども・子育て予算から充当する制度設計をするなど、異次元の少子化対策を実施するための革新的な財政活用が必要ではないでしょうか。

 持続可能な社会保障制度の実現こそが我々の誓いであることを述べ、私からの質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 池下卓議員の御質問にお答えいたします。

 出産費用の保険適用についてお尋ねがありました。

 妊婦の方々が安心して出産できる環境を整備することは重要です。このため、来月から医療保険における出産育児一時金を大幅に増額するとともに、出産費用の見える化を進め、妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて適切に医療機関を選択できる環境を整備してまいります。

 出産費用の保険適用については、妊婦自身の自由な選択により様々なサービスが利用され、地域差も見られる実態等を踏まえると、全国一律の診療報酬で評価する医療保険制度との整合性をどう考えるかなどの課題があると考えており、出産費用の見える化を進めることが重要であると考えております。

 これらについては、医療保険制度を所管する厚生労働省の所掌となりますが、子ども・子育て支援に関する施策については、こども家庭庁と関係省庁が密接に連携をし、必要な対応を行ってまいります。

 財政の規律と医薬品のイノベーションの評価についてお尋ねがありました。

 日本の製薬産業が絶え間ないイノベーションにより革新的な新薬を生み出し、グローバルに競争するための環境を整備していくことは重要であると考えております。

 同時に、二〇二五年までに全ての団塊の世代が後期高齢者となり、医療費の増加が見込まれる中で、国民皆保険の持続性という視点も重要です。

 今後も、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性が両立するよう、両者のバランスを取りながら取り組んでまいります。

 今回の改革の財源についてお尋ねがありました。

 今回の改革では、医療保険の給付である出産育児一時金を大幅に引き上げることとしており、その財源は保険料で賄うことが適切であると考えております。あわせて、子育てを全世代で支援する観点から、出産育児一時金に係る費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入することとしており、現役世代の負担が軽減されることで、少子化の克服につながるものと考えております。

 いずれにせよ、子ども・子育て政策については、まずは充実する内容を具体化し、その内容に応じて、社会全体でどのように安定的に支えていくか、これを考えてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 池下卓議員の御質問にお答えいたします。

 医療費適正化計画の策定と、かかりつけ医機能の確保についてお尋ねがありました。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備は、身近な地域において日常的な医療を提供するかかりつけ医機能が確保される結果として、医療費適正化計画の内容である住民の健康の保持の推進や医療の効率的な提供の推進に資することから、計画の策定に当たり留意すべき事項として規定をしております。

 本法案では、かかりつけ医機能のうち、高齢化の進展等を見据え、特に、今後、地域で確保していく必要があるものについて医療機関に報告を求めることとしていますが、その詳細については、法案の成立後、令和七年四月の施行に向けて検討を進め、都道府県が医療費適正化計画においてかかりつけ医機能の確保の状況に留意した目標、施策を定められるよう、適切に対応してまいります。

 かかりつけ医機能の体制づくりについてお尋ねがありました。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めるに際しては、国民、患者がそのニーズに応じて医療機関を適切に選択できる仕組みとすることが重要です。

 かかりつけ医機能には多様な機能が含まれることから、診療科目としてかかりつけ医科を標榜できるようにすることについては、慎重な検討が必要と考えております。

 政府としては、本法案により、医療機能情報提供制度について、かかりつけ医機能に関する項目、内容を国民、患者に分かりやすいものに見直すとともに、地域で必要なかかりつけ医機能を確保するための方策について地域の関係者で協議し、協議結果に基づき、例えば、医療従事者に対する研修の実施、医療機関同士の連携の強化などの取組を進めることとしており、こうした取組を進めることで、それぞれの地域で必要な医療が確保される対策を構築してまいります。

 医療データの利活用についてお尋ねがありました。

 電子カルテ情報のうち、医療機関等の間で共有することが有用な情報については、全国的に閲覧可能とするための仕組みを含め、二次利用も視野に入れながら、まずは一次利用について、患者団体の方等も構成員とする有識者検討会で検討を進めております。

 電子カルテ情報を含む保健医療情報については、個人のデータを自ら一元的に把握できるようになることで国民の更なる健康増進に寄与すること、データの二次利用による創薬が可能になることなどを目指して、全国医療情報プラットフォームの創設に向けた検討を進めているところであります。この春を目途として策定予定の医療DXの工程表に基づき、一次利用、二次利用共にその具体化を進めてまいります。

 介護保険料の納付開始年齢の見直しについてお尋ねがありました。

 介護保険制度の被保険者範囲については、制度創設以来、要介護となった理由や年齢にかかわらず給付の対象として、保険料を負担する年齢層も拡大する制度の普遍化を目指すべきではないかなどを中心に議論が行われてきました。

 昨年十二月の社会保障審議会の意見書においては、若年層は受益と負担の関連性が希薄であることから第二号被保険者の対象年齢の引下げには反対、また、将来的には介護保険の被保険者範囲を拡大して介護の普遍化を図るべき、さらに、高齢者の就業率の上昇や健康寿命の延伸の状況なども踏まえながら第一号被保険者の対象年齢を引き上げる議論も必要など様々な意見があり、引き続き検討を行うことが適当であるとされました。

 こうした様々な立場からの御意見や介護保険制度を取り巻く状況の変化も踏まえつつ、引き続き議論を行ってまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 佐藤英道君。

    〔佐藤英道君登壇〕

佐藤英道君 公明党の佐藤英道です。

 ただいま議題となりました全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、公明党を代表し、質問をいたします。(拍手)

 これまでの我が国の社会保障は、現役世代に対する支援は主に企業や家庭が担い、年金や医療などの給付を受けるのは主に高齢者となっておりました。しかし、少子高齢化が想定以上に急速に進み、家族や地域社会が変容し、担い手が急減していく中、単に高齢者の給付を削って子供や若者に給付を移すのではなく、高齢者も現役世代においても、ライフステージに応じて、適切な負担に基づき、誰もが必要な給付が受けられるという考え方に基づいて、将来にわたって持続可能な全世代型社会保障へと転換していくことが急務となっております。

 全世代型社会保障制度を構築することの重要性について、まず、総理の御見解を伺います。

 次に、出生数の八十万人割れについて伺います。

 二月二十八日、厚生労働省から令和四年十二月分の人口動態統計速報が公表されました。その内容は、出生数が七十九万九千七百二十八人と過去最少となり、初の八十万人を下回る結果となりました。岸田総理は、一月二十三日に行われた施政方針演説において、出生数が八十万人を割り込む見込みであることを踏まえ、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と表現されました。

 この出生数八十万人割り込みという事実について、岸田総理の受け止めと、急速に進む少子化への対応策について御見解を伺います。

 次に、出産育児一時金増額の効果について伺います。

 我が国の社会保障制度の持続性を確保するには、希望する方が出産を選択できる環境整備が急務であります。

 公明党は、昨年十一月に子育て応援トータルプランを発表し、その中で、出産育児一時金の増額について提案いたしました。公明党は、これまで、一時金の増額を一貫して主張し、段階的に引き上げてきた歴史があります。昨年十二月十四日には、公明党の全世代型社会保障推進本部が全世代型社会保障構築に向けての提言を岸田総理に行い、その提言にも、出産育児一時金について、現行の四十二万円から、五十万円以上を確保することを盛り込みました。昨年十二月に公表された全世代型社会保障構築会議報告書には、本年四月から出産育児一時金の額を五十万円に引き上げることが明記されたのであります。

 今回の出産育児一時金の五十万円への引上げの効果をどのように見込んでおられるのか、総理のお考えを伺いたいと思います。

 次に、出産費用の見える化について伺います。

 出産育児一時金の増額の効果が十分に発揮されるには、妊婦の方々が出産に関する費用やサービスを踏まえて適切に医療機関を選択できる環境を整備する必要があります。さらに、出産費用が年々増加傾向にあることを踏まえ、出産費用の実態や要因を調査し、出産費用の見える化を進めることが極めて重要であります。

 出産費用の見える化について、その具体的な内容と今後の進め方を伺います。

 次に、世代間の扶養から全世代での支え合いへの転換について伺います。

 本法律案では、出産育児一時金の増額に当たって、その支給費用について後期高齢者医療制度からの支援が盛り込まれております。後期高齢者医療制度からの出産育児一時金への支援は、全世代型社会保障構築会議の報告書が掲げる「全世代で支え合い、人口減少・超高齢社会の課題を克服する」というテーマに沿った、子育て世代を現役世代、高齢者世代を問わずみんなで支えるというメッセージの強い制度整備ではないかと考えます。

 出産育児一時金を後期高齢者医療制度からの支援も含めて全世代で支えるという仕組みを整備する意義について、総理の御見解を伺います。

 次に、出産時における保険料負担の軽減について伺います。

 急速に進む少子高齢化に少しでも歯止めをかけるには、一層の子育て世帯の負担軽減、次世代育成支援が必要となります。本法律案では、出産する国民健康保険の被保険者について、産前産後期間の相当分である四か月間の保険料を免除することになります。

 本法律案における出産時における保険料負担の軽減について、その具体的な内容をお伺いいたします。

 次に、高齢者負担増の激変緩和措置についてお伺いします。

 全世代で子育て世代を応援する意義は極めて重いものであります。今回の法案では、出産育児一時金への支援に加え、後期高齢者の医療費の負担を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うための後期高齢者負担率の見直しも含まれております。

 公明党の昨年十二月の岸田総理への提言には、高齢者に急激な負担増が課されることのないよう、激変緩和等の措置を行うことを盛り込みました。こうした公明党の提言などを踏まえて、本法律案には激変緩和措置が盛り込まれましたが、具体的にどのような措置なのか、対象となる方はどのような方々なのか、どの程度負担増を抑えられるのか、高齢者の皆様にとって安心でき、御理解をいただけるように、丁寧な説明が必要です。

 激変緩和措置の具体的な内容について、高齢者の皆様へ分かりやすく説明をお願いします。

 最後に、かかりつけ医機能に関する法整備の意義について伺います。

 今後の高齢者人口の増加と生産年齢人口の急減という急速な少子高齢化の進展の下では、医療や介護の担い手、施設設備等の限りある資源を有効に活用しながら、地域における医療や介護ニーズの増大に的確に対応することが求められます。本法律案では、医療や介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化の一環として、かかりつけ医機能について制度整備を行うこととされております。

 このかかりつけ医機能が発揮される制度整備については、公明党の昨年十二月の岸田総理への提言では、高齢者や障害者等を含め全ての方が必要なときに必要な医療が受けられるように体制を構築し、患者、医療機関双方が納得して活用できる分かりやすい仕組みとすることを求めさせていただきました。

 本法律案によるかかりつけ医機能とは何なのか、現行の医療提供体制の何が変わるのか、期待されるかかりつけ医機能の効果はどのようなものか、お伺いをいたします。

 以上、本法律案を通して全世代型社会保障への転換が一層推進されることを期待し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 佐藤英道議員の御質問にお答えいたします。

 全世代型社会保障制度を構築することの重要性についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が進む中、将来にわたって社会保障を持続させる観点から、負担能力に応じて、全ての世代で公平に皆が支え合う仕組みを強化することが重要です。

 また、高齢者を含め誰もが安心して希望どおり働き活躍できる社会を実現していくことは、経済社会の支え手を確保する観点からも重要であり、働き方に中立的な社会保障制度の構築を進めるとともに、働く人の立場に立った労働市場改革を進めてまいります。

 こうした取組を通じ、全ての国民がその能力に応じて支え合い、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障がバランスよく提供される全世代型社会保障制度の構築、これを目指してまいります。

 昨年の出生数が八十万人を割り込んだことの受け止めと、少子化への対応策についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、昨年の出生数は八十万人を割り込み、僅か五年間で二十万人近くも減少しました。我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況、まさに危機的な状況に置かれていると受け止めており、子ども・子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない課題であると認識をしております。

 個々の政策の内容や規模はもちろんですが、これまで関与が薄いと指摘されてきた企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身の方も含めて、社会全体の意識の変革を含め、次元の異なる対策を講じていく中で、何としても少子化トレンドを反転させていきたいと考えております。

 近く、目指す社会像や基本理念、基本的方向性等についてお話をしたいと考えています。その上で、こども政策担当大臣の下、三月末をめどに、子ども・子育て政策として充実する内容をパッケージとしてお示しいたします。

 出産育児一時金の引上げの効果についてお尋ねがありました。

 急速に少子化が進展する中、子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資であり、最優先の課題です。

 出産については、平均的な標準費用を全て賄えるよう、これまで十三年間据え置かれていた出産育児一時金を、来月から、過去最大の引上げ幅となる二割増の五十万円に増額するとともに、費用の見える化を進めることとしております。

 これにより、出産に係る経済的負担が大幅に軽減され、安心して妊娠、出産できる環境の整備につながるものと考えております。

 出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みについてお尋ねがありました。

 今回の制度改正では、出産育児一時金を大幅に引き上げるとともに、少子化を克服し、子育てを全世代で支援する観点から、出産育児一時金に係る費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入することとしております。

 こうした改革は、少子化の流れを変え、全ての世代が支え合い、安心して生活することができる全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築につながるものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 佐藤英道議員の御質問にお答えをいたします。

 出産育児一時金の大幅な増額と併せて、出産費用の見える化の取組を進めることとしており、来年四月を目途に、医療機関等の特色や出産費用等について、新たに設けるホームページで医療機関等ごとに公表することとしております。

 公表項目などの詳細については今後検討を進めますが、この取組により、妊婦の方々が各医療機関等における分娩費用やサービス内容等の情報を入手しやすくなることで、医療機関等を適切に選択できるようになると考えております。

 また、出産費用の上昇や地域差の状況について、より詳細な費用分析を行うとともに、出産費用の見える化の効果検証にも取り組んでまいります。

 出産時における国保の保険料負担の軽減についてお尋ねがありました。

 急速に進展する少子化により、昨年の出生数が八十万人を割り込む中、子供を安心して産み育てることができる環境を整備していくことは重要な課題であります。

 このため、本法案では、来年一月から、国民健康保険の保険料について、産前産後期間における被保険者の保険料を免除するとともに、その免除相当額を公費で支援することとし、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ります。

 高齢者の保険料負担の見直しについてお尋ねがありました。

 今回の制度改正により、令和六年度から高齢者に新たな御負担をお願いするに当たっては、高齢者全員に一律の負担をお願いするのではなく、低所得の方々の負担増が生じないよう、負担能力に応じた負担とするとともに、出産育児一時金に対する後期高齢者からの支援対象額を二分の一とするなど、激変緩和措置を講じることとしています。

 こうしたことにより、均等割保険料のみが賦課される約六割の低所得の方々には制度改正に伴う負担の増加が生じないようにするとともに、さらに、その上の所得の約一二%の方々についても、令和六年度は制度改正に伴う負担の増加が生じないようにしております。

 こうした制度改正の趣旨や内容について、激変緩和措置を含め、丁寧な周知、広報に取り組んでまいります。

 かかりつけ医機能についてお尋ねがありました。

 本法案では、かかりつけ医機能を、医療機関の機能として、「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と規定をしております。

 その上で、国民、患者がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう情報提供を強化するとともに、医療機関に対してその機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえ、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討、公表することとしております。

 こうした制度整備を進めることにより、国民、患者がそのニーズに応じて適切に医療機関を選択できるようになるとともに、医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化し、地域において必要なかかりつけ医機能の確保が進むことで、国民、患者一人一人が受ける医療サービスの向上につなげていきたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 会派を代表して、ただいま上程されました全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 出産育児一時金の五十万円への増額が示されました。しかし、出産費用は保険適用外の自由診療であるため、出産費用が一時金引上げ以上に増加し続ければ、その効果が相殺されてしまいます。

 実際、二〇〇〇年代初め、出産育児金の額は三十万円でしたが、現在は四十二万円。比例するかのように出産費用も上がり、当時三十万円台だった平均出産費用は、公立病院で四十五万円となっています。また、地域差が大きく、鳥取県が平均三十五万七千円である一方、東京都は平均五十六万五千円です。

 一回限りの出産育児一時金を引き上げても、このままでは出産費用が上がるだけになりかねません。また、全国で金額に差が生じている問題も抱えたままになっています。どう解消していくのか、総理に伺います。

 将来は、妊産婦健診を含め、分娩費用等を保険適用とすべきと考えます。その上で、特別な個別付加価値メニュー以外を対象とした一時金を支給し、出産後のおむつ、ミルク等の現物支給を行い、産後サポートも併せて行うことで、子ども・子育て支援へとつなげていってほしいと思いますが、総理の考えを伺います。

 少子高齢化、人口減少社会時代を迎え、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築することは、政治に求められた必須であり最大の問題です。

 今回の法律案は、後期高齢者の医療保険料大幅引上げだと言う人がいる一方で、改革の最大の意義は現役世代の負担減だとも言われます。程度の差はあれ、どちらも正しい意見ではないでしょうか。問題は、現役世代は自分がどれだけ高齢者に支援をしているのか、高齢者も幾ら現役世代から支援してもらっているのか、これが分かりにくいことではないでしょうか。今の前期高齢者納付金の制度はかなり複雑であり、そして、今回更に複雑怪奇なものになろうとしています。

 現役世代がどれだけ負担するのか、高齢者がどれだけ自助するのかを全世代で考え議論する、国民的議論が必要です。そのために、社会保障全体において、権利と義務の両方を伴う当事者である国民に開かれた政策決定過程に移行していく必要があるのではないかと考えますが、総理の見解を伺います。

 また、自分の問題として考え議論してもらうためには、現状の給与明細に基本保険料と特定保険料を示すとともに、例えば、雇用保険のように別の徴収として独立させ、高齢者を支えるために各自がどれだけ負担をしているのか、分かりやすく見える化を行うことを提案します。現役世代の理解促進につながると思いますが、総理、いかがでしょうか。見解を伺います。

 かかりつけ医機能の制度整備について伺います。

 まずは、定義です。

 法案には、「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」とあります。つまり、医療の提供を行う機能としか言っておらず、これでは何を定義しているのか分かりません。定義を法律に盛り込んで格上げするとのことですが、抽象的な表現にすぎず、具体的な責務規定はありません。現場は何が変わるのでしょうか。医療の提供以外の様々な機能の明確化、規定整備が必要だと思いますが、総理の見解を伺います。

 かかりつけ医機能が果たす役割も見えてきません。

 厚労省は、かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業報告の中で、かかりつけ医機能に関する事例集を作り、かかりつけ医機能には多様な役割があることを分かりやすく説明をしています。しかし、法案では例示が極めて限定的なものになってしまっています。かかりつけ医の果たすべき役割を、これまでの研究調査を活用して、具体的例示を国民に示していくべきと考えます。今回、機能、役割を限定した理由、そして今後の方針について、総理に伺います。

 また、新たにかかりつけ医機能報告制度が新設されます。

 報告対象が慢性の疾患を有する高齢者その他継続的な医療を要する者と限定されていますが、かかりつけ医機能は健康な現役世代にとっても重要であります。コロナ禍の中で、熱患者がかかりつけ医と思っていた近隣の診療所や病院で受診を断られたり、ワクチン注射を受けられなかった事例が続出をしました。当初、新型コロナの自宅等療養者が相次いで亡くなってしまったのは、健康な人にかかりつけ医がいなかった、そして機能しなかったことが要因であり、大きな課題であったはずです。かかりつけ医機能において、急性期の患者や健康な住民は対象外となるのでしょうか。報告対象を限定した理由を総理に伺います。

 これまで、かかりつけ医に関して、財政審や健保連を中心に、第三者が医師の機能や質を担保する認定制や、患者が最初に受診する医師を決める登録制などの議論そして提案がなされてきました。これらの制度において、政府内ではこれまでどのような議論がなされてきたのでしょうか。今回採用するに至らなかった理由と併せて伺います。

 日本の医療は、いつでも、どこでも、それほど重い負担なく医療サービスを受けられるという国民皆保険制度をつくってきました。また、軽い風邪やけがでも大病院で受診ができます。フリーアクセスが当たり前だからです。自分で自由にどこの病院でも診療所でも行けるというフリーアクセスは、日本独特の仕組みであり、よい面がある一方、本来、高度治療に専念するはずの大病院が患者であふれてしまい、混雑を招いているという一面があるのも事実です。本来の医療サービスが必要な患者に行き届かないことにもなりかねないと課題を指摘されてきました。

 政府の全世代型社会保障構築会議の報告書では、今回の制度整備はあくまで第一歩と位置づけています。是非、フリーアクセス、認定制や登録制、あらゆる選択肢をタブーなく議論を続け、かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて更なる取組を進めてほしいと考えますが、総理の決意を伺いまして、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田中健議員の御質問にお答えいたします。

 出産育児一時金等についてお尋ねがありました。

 妊婦の方々が安心して出産できる環境を整備することは重要です。そのため、来月から出産育児一時金を大幅に増額するとともに、出産費用の見える化を進め、妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて適切に医療機関を選択できる環境を整備してまいります。

 そして、出産費用の保険適用については、妊婦自身の自由な選択により様々なサービスが利用され、地域差も見られる実態等を踏まえると、全国一律の診療報酬で評価する医療保険制度との整合性をどう考えるかなどの課題があると考えており、出産費用の見える化を進めることが重要であると考えています。

 他方で、妊娠から出産、子育てまでの身近な伴走型の相談支援と経済的な支援を一体として実施する事業を創設するとともに、産後ケア事業の利用料減免措置の導入などを行うこととしており、これらの取組を通じて、子ども・子育て支援へと適切につなげてまいります。

 社会保障に関する国民的議論の必要性と現役世代の理解促進等についてお尋ねがありました。

 将来にわたって社会保障を持続させる観点から、負担能力に応じて、全ての世代で公平に皆が支え合う仕組みを強化すること、これが重要です。

 本法案は、高齢者の保険料と現役の支援金の伸びを同一にする、被用者保険における負担能力に応じた格差を是正するといった点で、現役世代の保険料負担をより公平なものとするものです。また、提出に当たっては、全世代型社会保障構築会議や厚生労働省の審議会において、幅広い方々に委員として御参加いただき、国民に開かれた形で議論を取りまとめています。

 高齢者医療制度の支え手である現役世代の理解促進は重要であると考えており、高齢者にどの程度の支援を行っているか理解を深める観点から、給与明細書にこうした支援に充てられる保険料額を示す取組が行われている例もあり、こうした取組が広がることは重要であると考えております。

 引き続き、現役世代の理解促進を図るため、必要な取組を進めてまいります。

 かかりつけ医機能の制度整備についてお尋ねがありました。

 本法案では、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能を一般的なかかりつけ医機能とした上で、国民、患者が自ら適切に医療機関を選択できるよう情報提供の充実を図るとともに、日常的な診療の総合的、継続的な実施、在宅医療の提供、介護サービス等との連携など、今後、地域で確保していく必要がある具体的なかかりつけ医機能を定めて、医療機関に対して報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえ、地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討、公表する仕組みを創設することとしております。

 情報提供の充実については、例えば、休日、夜間の対応など、国民、患者の医療ニーズを踏まえた情報提供項目に見直すとともに、全国統一のシステムを導入することにより、医療機関の選択に資する分かりやすいものに見直してまいります。

 また、新たに創設するかかりつけ医機能報告については、複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有する高齢者の増加が見込まれることから、継続的な医療を要する者として慢性疾患を有する高齢者を例示していますが、具体的には、今後、有識者等の意見を聞いて、議論をしてまいります。

 こうした制度整備を進めることにより、国民、患者が適切に医療機関を選択できるようになるとともに、医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化し、地域において必要なかかりつけ医機能の確保が進むことで、医療サービスの向上につながるものと考えております。

 なお、認定制や登録制についても様々な議論が行われましたが、政府としては、全世代型社会保障構築会議の報告書において、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮できるよう促すべきであるとされたことを踏まえて、今回の制度を法案化したものです。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けた更なる取組についてお尋ねがありました。

 今後、更なる高齢者の増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中で、全ての国民がそれぞれの地域において質の高い医療サービスを必要に応じて受けることができる体制を確保するためには、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めることが重要であり、本法案が成立すれば、着実に取組を進めてまいります。

 御指摘の全世代型社会保障構築会議の報告書においては、国民一人一人のニーズを満たすかかりつけ医機能が実現するまでには、各医療機関、各地域の取組が必要であり、今回の制度整備はそれに向けた第一歩と捉えるべきであるとされています。

 本法案の附則には検討規定が設けられており、これに基づき、改正後の各法律の施行の状況等を勘案し、改正後の各法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講じてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 日本共産党を代表して、健康保険法等改正案について質問いたします。(拍手)

 本法案の第一の問題点は、七十五歳以上の高齢者の保険料負担割合を見直し、保険料を大きく引き上げようとしている点であります。

 二〇三〇年時点での後期高齢者負担率は、現行制度では幾ら、法改正すれば幾らになると見込んでいますか。来年七十五歳を迎える方が九十歳までに支払う一人当たり保険料の合計は、法改正すれば現行制度に比べおおよそ何倍増えますか。今回、負担増となるのは、年収百五十三万円、月十二万七千五百円以上の方です。なぜ年収百五十三万円なのですか。物価高騰の中、政府は、年金を目減りさせております。総理は、月収十二万七千五百円の方の生活に余裕があるとお考えでしょうか。昨年十月の後期高齢者医療の窓口負担二倍化が受診に及ぼしている影響をどう把握されているのでしょうか。

 後期高齢者医療費に占める国庫負担の比率は、制度発足から減っています。後期高齢者支援金に係る国庫負担額も含め、仮に制度発足時の国庫負担率に戻せば、幾ら国庫負担は増えますか。現役世代の保険料負担の上昇を抑制する、そのためというのであれば、国庫負担こそ増やすべきであります。

 本法案の第二の問題点は、都道府県の保険料の水準の平準化の名の下に、自治体が独自に行っている保険料軽減をやめさせようとしていることであります。

 既に二〇一八年度から国保の都道府県化が進められ、自治体の法定外繰入れをやめる圧力がかけられております。全国の自治体の一般会計から国保会計への法定外繰入れの総額は、二〇一七年度と比べ、一体、幾ら減っていますか。

 同じ医療を受けるのに、国保が他の保険者よりも突出して保険料が高いことこそ問題であります。政府がやるべきは、公費投入を増やして、せめて協会けんぽ並みの保険料に引き下げることなのではありませんか。とりわけ、人頭税と同じ均等割は廃止すべきです。子育て支援、少子化対策としても、十八歳までの均等割は直ちに廃止すべきです。

 加えて、国民健康保険には傷病手当制度がありません。コロナ禍では、私たちも求め、非正規労働者など向けのコロナ特例の傷病手当制度ができましたが、これも廃止されようとしています。働き方の違いによる差別はなくすべきです。国の責任で傷病手当制度を設けるべきではありませんか。

 本法案の第三の問題点は、出産一時金の引上げとセットで、出産一時金の費用を新たに後期高齢者医療制度に求めている点です。

 負担を求める先が違うのではありませんか。総理は子育て予算の倍増を掲げていますが、これからも、少ない年金の高齢者に負担増を求めていくのでしょうか。弱い者同士で負担を押しつけ合うような仕組みにしてはなりません。所得一億円の壁をなくすなど、大企業、富裕層優遇を正すことで財源を確保すべきなのではありませんか。何よりも、大軍拡予算をやめれば、大きな財源が出てくるのではありませんか。

 第四に、医療費適正化の名で、個々の患者にとって必要な医療が抑制される危険です。

 医療費が医療費見込みを著しく上回る場合には、その要因の解消に向けて、医療機関などと協力して対策を取る努力義務が都道府県に課されます。医療資源の効果的、効率的活用に関わって、医療資源の投入量に差がある医療として、白内障手術や化学療法の外来での実施、リフィル処方箋が例示されております。手術、抗がん剤などの提供形態の違いには、医療資源の偏在や患者の状態、生活、社会的背景もあり、医療資源の均てんこそ優先すべきではありませんか。また、薬の処方期間は医師の判断によるものであり、国が長期処方を目標値に設定して推奨するようなことは、見落としや状態悪化始め、医療安全上も無責任なのではありませんか。

 さらに、本法案は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備が法律に明記をされます。

 卒前卒後の医学教育に、かかりつけ医機能を発揮する医師を養成する視点が求められます。一人の医師が地域の患者ニーズを全て満たせるような診療を行うことやかかりつけ医機能を担うことは困難であり、グループ診療、病診連携など、地域の中での連携が重要です。絶対的な医師不足の解消も必要です。同時に、フリーアクセスへの更なる制限がかかるような制度にしては決してならない、このことを指摘しておきたいと思います。

 医療制度に関わり、二点お伺いしたいと思います。

 子育て支援にとって重要なのが子供の医療費無料化であります。十八歳まで医療費の無料化を進める自治体が今広がっております。国の制度として、十八歳までの子供の医療費の無料化を進めるべきではありませんか。総理の決断を促したいと思います。

 最後に、健康保険証の廃止についてであります。マイナンバーカードの取得は任意です。任意であるにもかかわらず、誰もが医療にかかるために必要な健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化することは、全く筋が通らないのではありませんか。マイナ保険証を使わない人に発行する資格確認書は、窓口負担を高くし、毎年、申込みの手続を必要とするといいます。取得が任意であるマイナ保険証を使わない者に対するペナルティーを課すことは許されないのではありませんか。

 健康保険証廃止の撤回を強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員の御質問にお答えいたします。

 高齢者の保険料負担の見直し等についてお尋ねがありました。

 本法案は、高齢者負担率について、後期高齢者人口の変化を反映する仕組みとすることで、後期高齢者一人当たりの保険料と現役世代一人当たりの後期高齢者支援金の伸び率が同じとなるよう見直すものであり、二〇三〇年度時点での負担率は、現行制度で一三・三四%、見直し案では一四・〇六%となる見込みです。

 二〇四〇年頃までの一人当たりの保険料額は、様々な要因によって影響を受けるため、正確にお示しすることは困難ですが、二〇三〇年以降においては、後期高齢者人口も減少局面に入ることから、負担率の伸びは緩やかになり、二〇四〇年頃には、現行制度と今回の改正案とではおおむね同じ負担率となる見込みです。

 今回の見直しでは、負担能力に応じた負担とすることで、現行制度において均等割保険料のみが賦課される年収百五十三万円以下、約六割の低所得の方々には、制度改正に伴う負担の増加が生じないようにすることとしております。また、昨年十月からの窓口負担割合の見直しが後期高齢者の受診に与える影響については、国会の附帯決議に基づき、適切に把握できるよう取り組んでまいります。

 そして、後期高齢者医療に対する国庫負担については、仮に制度が創設された平成二十年度の国庫負担割合を令和二年度の後期高齢者医療費に乗じた場合、約六兆円となり、同年度の国庫負担の総額約五・五兆円との差は約五千億円となりますが、制度創設当時から現在まで、給付費に対しては三分の一の国庫負担を維持しています。引き続き、国として、安定的な保険財政の運営に向け、必要な財源を確保してまいります。

 国民健康保険の法定外繰入れや均等割保険料等についてお尋ねがありました。

 国民健康保険の法定外繰入れの総額は、二〇一七年度は千七百五十二億円、二〇二〇年度は七百六十七億円であり、九百八十五億円減少しておりますが、平成三十年度の国保制度改革により、他の制度より手厚い公費による財政支援を更に拡充し、毎年約三千四百億円の追加公費を投入しています。

 国民健康保険の均等割保険料については、世帯の人数に応じた応分の御負担をいただくことが基本ですが、所得の低い世帯には一定の負担軽減を行うとともに、今年度から、未就学児の均等割保険料を一律半額に軽減しています。

 また、傷病手当金については、国民健康保険には様々な就業形態の方が加入しているため、保険者による任意給付としており、これを全国一律の制度とすることについては、被保険者間の公平性や財源の確保など、課題が多いと考えております。

 出産育児一時金に対する後期高齢者医療制度からの支援等についてお尋ねがありました。

 現在は、出産育児一時金の費用は現役世代自身の保険料を基本として賄われていますが、後期高齢者医療制度の創設前は、高齢者世代も出産育児一時金を含め子供の医療費について負担していたことを踏まえ、今回の改革では、子育てを全世代で支援するため、出産育児一時金について後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入することとしており、その際には、負担能力に応じた負担とすることで、低所得の高齢者の方々の負担増が生じないようにしております。

 また、子ども・子育て政策の充実について、財源を考えていくに当たっても、まずは政策をしっかり整理することが必要であると考えており、財源については、充実する政策の内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくのかを考えてまいります。

 なお、大企業、富裕層優遇税制の是正についての御指摘ですが、税制については、所得税の最高税率の引上げなど、経済社会の変化を踏まえた累次の改正を行ってきており、また、今般の税制改正でも、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化、こうしたことを行うこととしております。

 防衛力の抜本的強化は国民の命を守り抜くために待ったなしの課題であり、子供政策とどちらか一方という二者選択の問題ではなく、共に実現していくことが政府の責任だと考えており、防衛力強化のための財源は、年末に決定した方針に従って対応してまいります。

 医療費の適正化についてお尋ねがありました。

 地域における医療資源については、必要な医療が提供されるよう、都道府県において、医療計画に基づく医療提供体制の整備が行われており、こうした医療資源が効果的、効率的に活用されるよう取り組んでまいります。

 また、薬の処方期間は個々の患者の状態に応じ医師の判断により決められるものであり、そうした医療サービスの特性に留意しつつ、地域ごとに、都道府県、医療関係者、保険者などが地域差などの実態を把握した上で協議を行い、適正化に向けた実効性のある取組を推進していきます。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備についてお尋ねがありました。

 政府としては、国民、患者目線に立って、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要であると考えております。

 このため、医学教育については、医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいて、医師として求められる基本的な資質、能力として、新たに「総合的に患者・生活者をみる姿勢」、これを追加しています。

 また、本法案では、地域で必要なかかりつけ医機能を確保するための具体的方策について地域の関係者で協議することとしており、協議の結果に基づき、例えば、医療従事者に対する研修の実施、医療機関同士の連携の強化等の取組を進めるとともに、医師確保計画に基づく医師確保の取組を推進することにより、地域ごとに必要な医療を必要なときに受けられる体制を確保してまいります。

 子供の医療費についてお尋ねがありました。

 子供の医療費については、国として、医療保険制度において、就学前の子供の医療費の自己負担を三割から二割に軽減しています。さらに、子供の医療費の支援は自治体独自の子供の医療費助成制度として広く行われており、これを全て国の制度として実施することは、対象年齢や自己負担の有無等で様々な違いがあるほか、自己負担の軽減による受診行動の変化も考えられ、厳しい医療保険財政等を勘案すると、課題が多いと考えております。

 一方で、子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、こども政策担当大臣の下、三月末をめどに、子ども・子育て政策として充実する内容をパッケージとして具体化し、その上で、骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

 健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。

 マイナンバーカードを保険証として利用することにより、よりよい医療を受けていただくことが可能になる、医療制度全体の効率化につながる、こうした、患者、医療機関、薬局、保険者にとって、様々なメリットがあります。こうしたメリットを早期に実現するため、令和六年秋に健康保険証の廃止を目指すこととしております。

 国民の皆様には、マイナンバーカードと保険証を一体化するメリットを御理解いただけるよう、丁寧に説明する努力を重ねてまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       外務大臣    林  芳正君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  野村 哲郎君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       厚生労働副大臣 伊佐 進一君


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