第12号 令和5年3月24日(金曜日)
令和五年三月二十四日(金曜日)―――――――――――――
議事日程 第六号
令和五年三月二十四日
午後一時開議
第一 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
第二 株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 防衛省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
日程第二 株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 防衛省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
岸田内閣総理大臣のインド共和国、ウクライナ、ポーランド共和国訪問に関する報告及び質疑
午後一時二分開議
○議長(細田博之君) これより会議を開きます。
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日程第一 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
○議長(細田博之君) 日程第一、放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。
委員長の報告を求めます。総務委員長浮島智子君。
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放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔浮島智子君登壇〕
○浮島智子君 ただいま議題となりました承認案件につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本件は、日本放送協会の令和五年度収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の承認を求めるものであります。
まず、収支予算は、一般勘定において、事業収入六千四百四十億円、事業支出六千七百二十億円となっており、事業収支における不足二百八十億円については、財政安定のための繰越金の一部をもって補填することとしております。
次に、事業計画は、経営計画の修正により、スリムで強靱な新しいNHKを目指した構造改革を更に強化し、番組の質の維持を大前提とした衛星波の一波削減や受信料の値下げを行うとともに、地域放送・サービスの充実、共感と納得に基づく営業活動等に取り組むこととしております。
なお、この収支予算等について、総務大臣から、公共放送として提供する放送番組の質を維持しつつ、事業経費の一層の合理化、効率化に取り組むとともに、受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けた取組を着実に進め、受信料収入と事業規模との均衡を早期に確保すること等を求める旨の意見が付されております。
本件は、去る三月十三日本委員会に付託され、翌十四日、松本総務大臣から趣旨の説明を、また、日本放送協会会長から補足説明をそれぞれ聴取した後、質疑に入り、去る十六日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本件は賛成多数をもって承認すべきものと決しました。
なお、本件に対し附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) 採決いたします。
本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。
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日程第二 株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第二、株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案、日程第三、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。財務金融委員長塚田一郎君。
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株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案及び同報告書
国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔塚田一郎君登壇〕
○塚田一郎君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案は、同銀行が、我が国産業のサプライチェーンを支える外国企業等への貸付けや、海外事業を行う国内のスタートアップ等への出資のほか、国際金融機関によるウクライナ向け融資を保証することなどができるようにするものであります。
次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案は、同銀行が加盟国の復興等を支援するために設ける基金に対し、国債による拠出を可能とするものであります。
両案は、去る三月十五日当委員会に付託され、同日鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取し、十七日から質疑に入り、二十二日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、順次採決いたしましたところ、株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案は賛成多数をもって、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案は全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、両案に対しそれぞれ附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) これより採決に入ります。
まず、日程第二につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第三につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第四 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第四、私立学校法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。文部科学委員長宮内秀樹君。
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私立学校法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔宮内秀樹君登壇〕
○宮内秀樹君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、我が国の公教育を支える私立学校が、社会の信頼を得て一層発展していくため、社会の要請に応え得る、実効性のあるガバナンス改革を推進するための措置を講ずるものであり、その主な内容は、次のとおりであります。
第一に、学校法人の役員等の選解任の手続等に関する規定を定めるとともに、理事選任機関を必置機関とし、理事と評議員の兼職禁止、役員等については、その近親者等の就任制限を強化する等の措置を講ずること、
第二に、学校法人の意思決定の在り方を見直し、大臣所轄学校法人等においては、重要な寄附行為の変更等は、理事会の決定に加え、評議員会の決議を必要とすること、
第三に、役員等による特別背任、贈収賄等についての刑事罰を整備すること
などであります。
本案は、去る三月九日本委員会に付託され、翌十日永岡文部科学大臣から趣旨の説明を聴取しました。次いで、十五日に質疑に入り、十七日には参考人から意見を聴取し、二十二日質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第五 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第五、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。国土交通委員長木原稔君。
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地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔木原稔君登壇〕
○木原稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、近年における地域旅客運送サービスを取り巻く厳しい状況に鑑み、その持続可能な提供の確保に資する関係者の連携と協働による取組を一層推進するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、ローカル鉄道の再構築を図るため、地方公共団体や鉄道事業者からの要請により、国は再構築協議会を組織し、同協議会において再構築方針を策定すること、
第二に、地方公共団体と交通事業者が協定を締結して行うエリア一括協定運行事業を法律に位置づけること、
第三に、鉄道とタクシーにおいて、地域の関係者間の協議に基づく協議運賃制度を創設すること
などであります。
本案は、去る三月十四日の本会議におきまして趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。
翌十五日斉藤国土交通大臣から趣旨の説明を聴取し、同日質疑に入り、十七日参考人から意見を聴取し、二十二日質疑を終了しました。
質疑終了後、本案に対し、日本共産党から修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。
その後、採決いたしました結果、修正案は否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第六 防衛省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第六、防衛省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。安全保障委員長鬼木誠君。
―――――――――――――
防衛省設置法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔鬼木誠君登壇〕
○鬼木誠君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、自衛官の定数の変更を行うとともに、地方防衛局の所掌事務に国際協力に関する事務を追加するものであります。
本案は、去る八日本委員会に付託され、翌九日浜田防衛大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。二十三日、質疑を行い、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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内閣総理大臣の発言(インド共和国、ウクライナ、ポーランド共和国訪問に関する報告)
○議長(細田博之君) 内閣総理大臣から、インド共和国、ウクライナ、ポーランド共和国訪問に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 三月十九日から二十三日にかけて、インド共和国、ウクライナ、ポーランド共和国を訪問したところ、概要を御報告いたします。
インドにおいては、モディ首相との間で、G7及びG20サミットで扱われる主要課題について幅広く意見交換を行い、両サミットに向けて連携していくことを確認いたしました。また、地域情勢、二国間関係等についても議論をし、日印特別戦略的グローバルパートナーシップの下での日印関係強化の方向性について確認をいたしました。
さらに、インド訪問中に政策スピーチを行い、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのための新たなプランを発表いたしました。
これらの成果も踏まえつつ、インドとの協力を引き続き推進してまいります。
ウクライナにおいては、ゼレンスキー大統領との首脳会談において、私自身にとって、ロシアによる侵略後初めてのウクライナ訪問であることを触れた上で、今次侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす、決して許すことはできない暴挙であり、日本は、議長国としてG7の揺るぎない結束を維持しながら、ロシアに対する厳しい制裁とウクライナへの強力な支援を継続していく旨、また、五月のG7広島サミットでは、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという決意を示すとともに、国際社会が直面する食料問題などに取り組みたい旨伝えました。
また、私とゼレンスキー大統領との間で、今般、基本的価値を共有するウクライナとの関係を、特別なグローバルパートナーシップに格上げすることで合意をし、共同声明を発出いたしました。さらに、日・ウクライナ情報保護協定の締結に向けた調整を開始することといたしました。
加えて、私は、キーウ郊外のブチャ市を訪問し、犠牲者への献花を行い、ロシアの暴挙により悲惨な体験をされた方々から直接話を聞き、日本政府から越冬支援として同市に供与された発電機の視察を行ったほか、キーウ市内の戦死者慰霊記念碑で献花を行いました。
今回のウクライナ訪問により、私自身、この目で現地の情勢を見、またゼレンスキー大統領との間でじっくり議論を行ったことで、現地の状況をより実感を持って把握することができました。また、日本とウクライナとの関係はより一層強固なものとなり、G7議長国を務める日本として、ウクライナ侵略への対応を主導する決意を示すことができたと考えております。
ポーランドにおいては、ドゥダ大統領及びモラビエツキ首相と会談を行い、ポーランドがウクライナへの軍事、人道支援の拠点として最前線で大きな役割を果たしていることに対し敬意を示し、ロシアによるウクライナ全面侵攻から一年を迎える中、ポーランドを含め、同志国が引き続き結束し、厳しいロシア制裁とウクライナへの力強い支援を継続することの重要性を確認いたしました。(拍手)
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内閣総理大臣の発言(インド共和国、ウクライナ、ポーランド共和国訪問に関する報告)に対する質疑
○議長(細田博之君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。辻清人君。
〔辻清人君登壇〕
○辻清人君 自由民主党の辻清人です。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、岸田総理の今般の外国訪問について質問いたします。(拍手)
今なお続くロシアによるウクライナ侵略、東シナ海や南シナ海での中国の力による一方的現状変更の試み、台湾海峡の平和と安定を脅かす動きなど、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を真っ向から否定する動きが白昼堂々行われています。
このように、かつてなく厳しい安保環境、そして激変する国際環境において我が国の国益を守り抜くため、岸田総理は、不退転の決意で、安全保障政策の大転換となる新たな国家安保戦略を策定されました。その中で、外交力は第一の国力の主な要素であり、望ましい安全保障環境を能動的に創出するための力強い外交を展開していくことを掲げました。総理はそれを戦略的意図を持って着実に実践されている、その中での今回の外国訪問であったと認識しています。
昨年二月二十四日に始まったロシアによるウクライナ侵略。その当初から、総理は、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分である、ウクライナはあしたの東アジアかもしれないという点を示されてきました。そして、力による一方的な現状変更の試みは決して成功しないことを国際社会が結束して示していくべきであると強く主張されてきました。
今般、インドからウクライナ、ポーランドを訪問し、それぞれの地で総理の考えを力強く発信されました。タイミングも含めて、このような問題意識を体現する外交ともいうべき非常に意義のある訪問であったのではないでしょうか。
そこで、まず、インドについて伺います。
日印両国は、インド太平洋地域において、自由や民主主義の盟主として、地域のみならず、世界の平和と繁栄の確保のために、法の支配といった原則や基本的価値を重視し、様々な取組を牽引してきました。国際秩序の根幹が揺るがされている中、本年、G7とG20の議長国をそれぞれ務める両国のリーダーが、法の支配に基づく国際秩序の維持強化の重要性や、力による一方的な現状変更は許さないとの力強いメッセージを発信したことは意義深いものであったと考えます。また、FOIPの新プランに関する政策スピーチを通じて、歴史の転換期において、平和と繁栄を享受するための国際秩序の在り方を提起し、インド太平洋の未来のための指針を示されたことも大きな意味を有します。そこで、今回のインド訪問の成果について総理にお伺いします。
次に、極秘裏に訪問されたウクライナについて伺います。
日本の首相として戦後初めての戦地入りは、様々な側面から大きな政治決断であり、歴史的な訪問だったのではないでしょうか。世界で最も厳しい、力による現状変更の試みに直面するウクライナを訪問したアジアで唯一のリーダー、そして、G7議長国としての訪問という意味でも、ウクライナを始め国際社会からも高く評価されています。
総理は、ウクライナへの連帯を示し、対ロ政策を抜本的に転換してロシアに対する厳しい対応を取っている姿を改めて示されました。この問題への対処が欧州や大西洋だけでなくグローバルなものたらしめている点が、このキーウ訪問によって更に説得力のあるものになったと考えます。
また、くしくも時を同じくして、モスクワでは、中国、ロシアの首脳が会談しました。力を信奉し、力の論理によって現状を変更しようとする中ロのリーダーが示したものは、我々と異なるものがあり、決して受け入れることのできないものです。と同時に、結果として、今回総理が各地で示した法の支配に基づく国際秩序を守り抜く重要性がより一層の重みを持って示されたのではないでしょうか。
力による現状変更が何をもたらしたのか、今回のキーウ訪問を通じて、総理は、御自身の目でどのような現実を見て、どのような思いをはせたのか、総理御自身の言葉で率直な感想をお聞かせください。
また、ゼレンスキー大統領との首脳会談の成果についても伺います。
そして、最後に、今回の経験を踏まえて、広島サミットに向けてどのような外交を戦略的に展開し、サミットの成果にどのように生かしていくのか、総理のお考えと決意を伺います。
総理、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、外交のかじ取りは歴代内閣で最も難しいものなのかもしれません。それだけに、岸田総理には、引き続き、確固たる決意を持って歴史的な難局を乗り切り、国民の生命と財産、そして自由で開かれた世界を守り抜くことに力強く取り組んでいただくことへの期待を申し上げます。
結びに、今般の歴史的な訪問を支えた官邸、外務省、各省並びに関係諸国の方々に心から敬意と感謝を申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 辻清人議員の御質問にお答えいたします。
今回の私のインド訪問の成果についてお尋ねがありました。
今般のインド訪問においては、G20議長国であるインドのモディ首相との間で、G7及びG20サミットに向けた両国の連携や、日印特別戦略的グローバルパートナーシップの下での日印関係強化の方向性を確認いたしました。
また、インドとの連携は、グローバルサウスとの関与という観点からも重要です。インドは、我が国と基本的価値や原則を共有する重要なパートナーであり、引き続き、関係強化に努めてまいります。
先般の私のウクライナ訪問についてお尋ねがありました。
私は、三月二十一日にウクライナ・キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行いました。
首脳会談に先立ち、私は、キーウ郊外のブチャ市を訪問し、犠牲者への献花を行い、ロシアの暴挙により悲惨な体験をされた方々から直接話を聞き、また、日本政府から越冬支援として同市に供与された発電機の視察を行ったほか、キーウ市内の戦死者慰霊記念碑で献花を行いました。
私自身にとってロシアによるウクライナ侵略後初となる今回の訪問でしたが、現地の情勢、張り詰めた空気といったものをまさに自分の目と耳で直接感ずることができました。
首脳会談においては、ゼレンスキー大統領に対し、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、日本は、G7議長国としてG7の揺るぎない結束を維持し、G7としてロシアに対する厳しい制裁とウクライナへの強力な支援を継続していく旨、また、五月のG7広島サミットでは、G7として法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという決意を示すとともに、国際社会が直面する食料問題などに取り組みたい旨伝えました。
また、日本政府として、昨年来進めてきた総額七十一億ドルの支援に加え、今般、新たに、エネルギー分野などへの二国間無償支援等約四・七億ドル及びNATOの信託基金を通じた殺傷性のない装備品支援約三千万ドルを供与することを決定した旨伝えました。
さらに、私から、唯一の戦争被爆国として、ロシアの核兵器による威嚇も、ましてやその使用もあってはならない旨伝えました。
また、今般、私とゼレンスキー大統領との間で、基本的価値を共有するウクライナとの関係を特別なグローバルパートナーシップに格上げすることで合意をし、共同声明を発出いたしました。さらに、日・ウクライナ情報保護協定の締結に向けた調整を開始することといたしました。
今般の外遊の経験を踏まえた、G7広島サミットに向けた外交や決意についてお尋ねがありました。
今般のインド、ウクライナ訪問を経て、五月のG7広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないものとして断固として拒否をし、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志を力強く世界に示していきたいと考えております。
また、インドのモディ首相との間では、G7とG20のそれぞれのサミットに向けて連携していくことを確認いたしました。引き続き、幅広い国際社会のパートナーとの連携強化も推進してまいります。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 徳永久志君。
〔徳永久志君登壇〕
○徳永久志君 立憲民主党の徳永久志です。
会派を代表して、先ほど報告がありました岸田総理のウクライナ訪問について質問いたします。(拍手)
まずは、総理、インドから強行軍の中でのウクライナ訪問、お疲れさまと申し上げるとともに、御無事で何よりと申し上げたいと存じます。
国会開会中の総理の海外訪問は衆参両院の議院運営委員会理事会で了承を得ることが慣例ですが、今回は、戦争が行われている国への訪問だから、情報を一定秘匿して対応せざるを得ないと我が党泉健太代表が発言されたとおり、事前の承認を省略するのは、例外的措置として、やむを得ないものと存じます。
そして、時あたかも、中国の習近平国家主席がロシアを訪問していた日と重なり、アジアの二人の首脳が、侵略する国と侵略される国を結果的に同時に訪問したこととなり、その対比の中で、法の支配に基づく国際秩序を守り抜き、ウクライナへの支援をリードしていく姿勢を国際社会に発信できたことは、率直に評価させていただきたいと存じます。
これで総理の念願がかなったわけですが、ただ訪問しただけではいけません。キーウの惨状を目の当たりにして得たもの、首脳会談の成果を、今後の対応、そしてG7広島サミットへとつなげていかなくてはなりません。その観点に立ち、以下、質問します。
今回の訪問に際しては、事前の情報漏れを防ぐため、首相官邸と外務省のごく少数しか知らされず、政府は情報管理を徹底したと胸を張りますが、本当に大丈夫だったのでしょうか。
例えば、複数のメディアが経由地のポーランドで岸田総理を乗せた車列を撮影しており、列車に乗り込む姿も報じられました。到着まで完全に秘匿されたバイデン米国大統領との差は否めません。当然ながら、列車に乗り込む場所や時間が分かれば、キーウへの通過地点や到着時間などが簡単に判明します。政権批判をするメディアへの規制は熱心なようですが、御自身の安全確保のために、報道の自粛要請はできなかったのでしょうか。
さらに、飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイムで表示するウェブサイト、フライトレーダーには、総理が利用したと思われるチャーター機の記録が残っており、十九日に東京からインドへ、二十日にはインドからポーランドへ向かったことがはっきりと分かっています。組織的に航空機を追跡する能力のある集団なら、チャーター機の動きをリアルタイムで追跡することは十分に可能だったでしょう。事実上、丸裸と言われても仕方がありません。
事は、日本国内閣総理大臣の安全に関わる問題です。国が威信を懸けて対応しなければなりません。また、万一、有事があった際には、ウクライナにも被害をもたらし、ゼレンスキー大統領の安全にも関わってきます。
指摘した点も踏まえ、今回の訪問の安全確保、情報管理についての検証を早急に行うべきだと考えますが、総理の御見解を伺います。
ロシアのウクライナ侵略は、昨年二月に突如行われたわけではありません。二〇一四年、ロシアがウクライナ南部のクリミアを併合したことから始まっています。
クリミア併合時の安倍総理は、ロシアに対する制裁措置を、実効性のない、いわば形式的なものにとどめました。そして、クリミア併合から二年後の二〇一六年、安倍首相は、懸念を表明していたオバマ米国大統領の意向を無視してロシアを訪問し、プーチン大統領に八項目の日ロ協力プランを提示しました。二〇一六年から二〇一九年までの間に十五回の日ロ首脳会談が行われ、安倍首相のロシア訪問は八回に及んでいます。二〇一六年、安倍総理の地元山口県長門市の高級老舗旅館に招待しての首脳会談、二〇一九年の、ウラジミール、君と僕とは同じ未来を見ていると述べたウラジオストクでのスピーチは記憶に新しいところであります。
この間、多数の政府間、民間の経済合意が結ばれ、二百件を超える民間プロジェクトが創出をされ、その約六割で具体的な投資に結びついたとされています。クリミア併合以降、欧米から厳しい経済制裁を受けていたロシアにとって、さぞかしありがたい支援であったことでしょう。そして、領土問題も二島返還に条件を引き下げたものの、交渉は一ミリも進みませんでした。
こうした一連の対応は、クリミア併合の罪をあやふやにし、結果としてロシアを増長させ、ウクライナ侵略の遠因の一つとなり、外交の失敗と言わざるを得ません。二〇一四年以降の取組を厳しく総括し、安倍日ロ外交から岸田日ロ外交へと敢然とかじを切ると宣言するべきです。この間に外務大臣であった岸田総理の見解を伺います。
また、今もなお、八項目の日ロ協力プランを遂行するためのロシア経済分野協力担当大臣が存在し、西村経済産業大臣が兼務しています。経済制裁を担当する大臣が経済協力のポストを兼ねるなど、何度理由を聞いても理解できません。
ゼレンスキー大統領との会談では、日本は、一貫してロシアを強く非難し、厳しい制裁を行うとともに、ウクライナに寄り添った支援を行うと述べられました。この言葉を具体的に行動に移し、G7議長国として、広島サミットの主催者として、その重い責任を果たすためにも、二〇一四年のクリミア併合時の日本の対応及びそれ以降の対ロシア外交の総括を厳しく行うことに加えて、ロシア経済分野協力担当大臣のポストを廃止することが不可欠だと考えますが、総理のお考えを伺います。
総理は、ゼレンスキー大統領との会談において、昨年来進めてきた総額約十六億ドルの人道、財政支援に加え、約五十五億ドルの追加財政支援を実施すると述べられました。また、NATOの信託基金を通じた殺傷性のない装備品支援に三千万ドルを拠出することを決定しました。現実を直視した妥当な判断です。
ただ、日本は、防衛装備移転三原則があり、装備品移転については厳格な手続を設けています。NATOの信託基金を通じた装備品の購入について、政府として、殺傷性のない装備品に充てられているか否かを確認する必要があろうかと存じますが、いかがでしょうか。確認する方策は具体的に考えておられるのかを併せて総理に伺います。
ゼレンスキー大統領との首脳会談において、同大統領から、G7広島サミットでは、ロシアによる核兵器使用の威嚇への対応や、原子力発電所の占拠についてもしっかり取り上げてほしい旨の発言がありました。まさに悲痛な叫びであり、日本として真摯に向き合うことが求められます。
ここでは、原子力発電所について取り上げます。
ロシアは、昨年のウクライナ侵略開始直後、北部にあるチョルノービリ、南東部にある欧州最大の発電能力を有するザポリージャの原子力発電所を攻撃し、占拠しました。
特に、ザポリージャ原発は、占領を続けて軍事拠点化し、ウクライナの反撃に対して核の盾としました。同原発周辺にはその後も攻撃が繰り返され、送電線や変電所の損傷により外部電源が喪失し、非常用ディーゼル発電機による原子炉の冷却を余儀なくされる危機的状況が相次ぎました。まさに東京電力福島第一原発事故を思い起こさせる状況です。
ジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十六条は、原発への攻撃を原則禁止すると定めていますが、ほかの原子力施設は対象となっていません。また、同五十六条第二項では、当該施設が軍事施設の主要電源になっているなど、軍事的重要性が高ければ攻撃が許されるという解釈の余地があるとの指摘があります。
今回のザポリージャ原発への攻撃、占拠によって、大規模な放射性物質の放出を伴う核リスクが顕在化する中、ジュネーブ諸条約第一追加議定書が定める原発への攻撃や占拠の禁止について、条約の改定や解釈の統一などに早急に取り組み、違反した国は確実に戦争犯罪に問える仕組みづくりを急ぐ必要があります。東京電力福島第一原発事故を経験し、原子力施設の損壊がもたらす影響をどこよりも熟知している日本こそが、こうした取組をリードしていくべきです。そのスタート地点は、被爆地広島で開催されるG7サミットであるべきであり、主要議題であるべきです。総理の見解を伺います。
また、G7広島サミットでは、ウクライナ戦争の早期停戦、和平に向けた取組も議題に上がるはずです。
前段に言及しましたが、総理がウクライナ訪問中に、中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談、中ロ関係を深めることを確認しています。中国は、ウクライナ危機の政治的解決に係る中国の立場と題する和平案のようなものを発表しました。中身的には、一見してもっともらしいことを羅列していますが、ロシアの主張がかなり肯定されており、和平交渉の土台になり得るのか、甚だ疑問であります。
曲がりなりにも中国が動き始めた中、総理は、ゼレンスキー大統領と和平交渉についての意見交換はされたのでしょうか。また、日本が停戦交渉、和平交渉に果たすべき役割はどういうものがあると考えておられるのか、伺います。
この戦争が始まって一年以上が経過しました。国際社会としてロシアへの経済制裁を進めておりますが、ここに来て、制裁疲れという面がかいま見えてきました。また、戦争の影響によるエネルギー価格や食料価格の上昇により、途上国を中心に、早急に停戦を望む声が出てきました。ウクライナは自国の主張ばかりせずに、妥協して即時停戦すべきという意見、ロシアが昨年二月に侵略をしかける以前の状況に戻れば停戦すべきという意見が出る一方、ゼレンスキー大統領は、二〇一四年に併合されたクリミアを含めたロシア軍の完全撤退を求めています。
こうした二つの意見について総理のお考えがずっと気になっていたところ、今回のウクライナ訪問で、日本とウクライナとの間の特別なグローバル・パートナーシップに関する共同声明が発表されました。この中にこう書かれています。両首脳は、国際的に認められた国境内におけるウクライナの主権及び領土の一体性を完全に回復することが、世界の平和、安定及び安全にとって不可欠であるとの見解で一致した。
ウクライナの主権及び領土の一体性を完全に回復することとあるわけですから、これは、ゼレンスキー大統領の主張、すなわち、二〇一四年に併合されたクリミアを含めたロシア軍の完全撤退が実現するまで戦うという主張を日本が支持したことを表明したと受け止めましたが、それでよいのか、総理にお伺いいたします。
以上、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 徳永久志議員にお答えいたします。
ウクライナ訪問の危機管理についてお尋ねがありました。
先般の私のウクライナ訪問に当たっては、厳重な保秘を前提に、ウクライナ政府等と慎重に調整を重ねた上で、秘密保全、安全対策や危機管理面等において遺漏のないよう最適な方法を総合的に検討いたしました。その際、安全対策の関係上、厳に限られた者に限り情報管理を徹底し、必要な準備を行いました。
具体的な方法について詳細について申し上げることは控えますが、安全対策や危機管理対策、情報管理について万全を期しており、今回、特段の問題があったとは考えておりません。
二〇一四年以降の我が国の対ロ外交に関するお尋ねがありました。
ロシアとは、これまで、領土問題を解決して平和条約を締結するという方針の下、その時々の情勢を踏まえながら、粘り強く平和条約交渉を進めてきました。過去の日本の対ロシア外交に問題があったとは考えておりません。
また、ロシアによる侵略後の現在の基準でもって当時の我が国の対応について評価することは適切ではないと考えております。
しかしながら、今般のロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根本を揺るがす暴挙であり、我が国は、従来の対ロ外交を大きく転換し、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、幅広く厳しい対ロ制裁を取るなど、毅然と対応してきているところです。
同時に、漁業などの経済活動といった日ロが隣国として対処する必要のある事項については、我が国外交全体において何が我が国の国益に資するかという観点もしっかり考えつつ、適切に対応してまいります。
その上で、北方領土問題に関しては、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針を堅持いたします。
ロシア経済分野協力担当大臣のポストについてお尋ねがありました。
現下のウクライナ情勢を踏まえれば、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはできず、八項目の協力プランについて、ロシア経済に資するような取組を行うことは想定しておりません。
一方で、昨年来の情勢を受け、関係する日本企業等に様々な影響が及んでおり、ロシアからの撤退に向けた資産整理あるいは送金の手続等にも時間を要しています。このことを踏まえ、協力プランに沿って投資等を行ってきた日本企業に対して、政府として、事態の展開に応じて、現地法への対応のための情報提供や相談対応を行う必要があると考えております。
このため、御指摘の担当大臣については、現在のところ、廃止することは考えておりません。
NATOの信託基金を通じたウクライナ支援についてお尋ねがありました。
今般拠出を行うNATOの信託基金については、拠出国が使途の指定を行うことができます。我が国の拠出を通じた支援についても、NATOを通じたウクライナへの殺傷性のない装備品の供与に使途を指定した上で、今後、細部を調整することを予定しております。
原子力発電所の攻撃や占拠に関する対応についてお尋ねがありました。
原発の占拠を含め、ロシアによる一連の行為は決して許されない暴挙です。東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国として、強く非難するとともに、ロシアに対し、このような蛮行を即座に停止するよう求めてまいります。
また、ジュネーブ諸条約第一追加議定書が禁止しているような原子力発電所への攻撃や占拠、これはいかなる場合であっても許されず、国際社会がその実効性を高めるために連携していく必要があると考えています。
原発の占拠を含め、ウクライナ侵略におけるロシアの一連の行為に対し、G7は、これまでも、ウクライナの主権が完全に尊重される形でIAEAの取組を後押しするなど、結束して対応してきました。G7広島サミットでは、ロシアによる侵略への対応を主導していく考えであります。
ゼレンスキー大統領との和平交渉に関するやり取り及び日本が停戦交渉、和平交渉に果たすべき役割についてお尋ねがありました。
ゼレンスキー大統領との首脳会談においては、ゼレンスキー大統領が平和への道として提唱をしている平和フォーミュラについて、私から高く評価することを伝えた上で、グローバルサウスを含むできるだけ多くの国の支持と協力を得た上で具体的な取組を進めることが重要であり、引き続き協力を進めていくことを確認いたしました。
ウクライナが懸命に祖国と自由を守る努力を続ける中、ウクライナの将来を決める交渉にいかに臨むべきか、これはウクライナの人々が決めるべき問題です。
我が国として、G7始め国際社会と連携しつつ、一刻も早くロシアの侵略を止めるため、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進し、リーダーシップを発揮してまいります。
同時に、いわゆるグローバルサウスの国々を含めた国際社会が一致して声を上げていくことが重要だと考えています。こうした国々に対し、法の支配に基づく国際秩序の堅持の重要性を訴えつつ、丁寧に働きかけを行い、理解を得ていく必要があります。日本は、これまでにも様々な機会を利用してアプローチを続けてきていますが、本年はG7議長国という立場も活用して、国際的な議論を積極的にリードしてまいります。
ロシアとウクライナの停戦についてお尋ねがありました。
ロシアのウクライナ侵略は、国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹を脅かす暴挙です。国連憲章を始めとする国際法の諸原則の違反であるとともに、法の支配に基づく国際秩序に対する明白な挑戦でもあります。
我が国は、これまでも、クリミアを含むウクライナの主権及び領土の一体性、これを一貫して支持しております。
しかしながら、ウクライナが懸命に祖国と自由を守る努力を続ける中、ウクライナの将来を決める交渉の在り方については、ウクライナの人々の意思抜きに決めるべき問題ではないと考えています。
一刻も早くロシアの侵略を止めるため、G7議長国として、国際社会と緊密に連携しつつ、引き続き、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進してまいりたいと考えております。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 青柳仁士君。
〔青柳仁士君登壇〕
○青柳仁士君 日本維新の会の青柳仁士です。
党を代表して、岸田総理の帰朝報告について質問いたします。(拍手)
我が党は、ロシアによるウクライナ侵略が始まった当初より、声明や提言等を通じて、ロシアの軍事侵攻は国家の主権と領土の一体性を侵害する露骨な侵略行為であり断じて容認できないという認識を示し、日本政府に対しては、民主主義陣営と固く結束しつつ、終始一貫した行動を取るよう求めてきました。
同時に、欧米の政治リーダーたちが、新たな国際秩序が形成される歴史の転換点に立っているという大局観と覚悟を持ち、国内で賛否の分かれる政治決断をトップダウンで迅速に打ち出している一方、岸田総理は、主体的な決断力に欠け、日本政府が後追いの受動的な対応に終始していることについて懸念を表明してきました。
今回の岸田総理のウクライナ訪問は、ロシアの暴挙に対する国際社会の揺るぎない団結とウクライナを支援する日本の立場を明確に示したことなど、両国首脳の関係構築を含め、一定の成果があったと認識しています。
しかしながら、岸田総理及び日本政府の姿勢は、引き続き、ビジョンなき後追いであると言わざるを得ません。ウクライナ危機は第二次世界大戦後の国際平和秩序を根本から揺るがすものであり、その影響は、欧州にとどまらず、我が国を含む東アジアにも及ぶという当事者意識と危機感が足りていないように感じます。
まず、今回の岸田総理のウクライナ訪問は、G7の首脳の中で最後でした。なぜこんなにも遅かったのでしょうか。国内外からの要望が強くなり、訪問せざるを得ない状況になってから、ようやく重い腰を上げたように映っています。
また、今回の訪問で四・七億ドルの無償資金協力や三千万ドルのNATOの信託基金を通じた装備品支援を約束したことは評価しますが、これらはいつ頃現地に届く予定でしょうか。
日本維新の会に所属する国会議員は、全員、身を切る改革として、歳費の手取り額から二割、賞与の三割をカットしており、国庫返納が法律上可能になるまでの間、それらの資金を積み立て、災害や紛争などの復興人道支援に対して寄附を行っています。先週、その資金から一・五億円を活用して、ウクライナ政府の求めるピックアップトラック二十台を供与しました。こうした要請は以前からあり、本気で支援しようと思えば、すぐにでもできます。
また、今回のウクライナ訪問では、ポーランド出国時から岸田総理の動向は広く一般に向けて報道されていました。一国の首相が命の危険の伴う紛争地に行く際に、あり得ないレベルの情報管理です。これでは、安全保障の面で、同盟国、同志国からの信頼も得られません。
ゼレンスキー大統領を含むウクライナの要人は、生きるか死ぬかの戦いのさなかにあります。この日本政府のずさんな情報管理のせいで、居場所の特定などにつながるような重要な情報の漏えいが起きていないことを切に願います。
なぜ、今回、総理の渡航情報は事前に漏れてしまったのでしょうか。それに対する反省はありますか。今後の対策としてどのようなことをお考えでしょうか。
首脳会談では、ゼレンスキー大統領から、ウクライナ危機を解決するための日本のリーダーシップに対する強い期待が表明されました。
武器の供与や自衛隊の派遣など軍事支援への期待ではありません。世界第三位の経済規模を持つ大国であること、G7のメンバーであり今年の議長国であること、国連安全保障理事会の非常任理事国の常連であることを中心とした、日本の持つ国際的な影響力に対する期待です。
日本は、国際社会で名誉ある地位を占めたいと願い、国づくりを進めてきました。今は、その名誉ある地位に見合った役割を果たす責務があります。
まず、世界に大きな影響力を持つ国の一つとして、新しい国際平和秩序の構築に貢献していかなければいけません。特に、国際社会が、今回のウクライナ危機への対応を通して、ロシアの次のリスクとして中国を見据える中、アジアにおいて中国に対抗し得る唯一の国である日本の判断と行動は、世界全体の平和にとって極めて大きな意味を持っています。
国際的な包囲網の構築と同盟国、同志国の強固な連携によりロシアの力による現状変更を成功させないことは、将来的な中国リスクの解消にもつながります。
我が党は、昨年末の安保三文書改定時に、日米豪印四か国にイギリスとEUを加えた強力な包囲網を形成し、いかなる国もインド太平洋で一方的な現状変更の試みができない状態をつくるべきと総理に提言しました。こうした構想を日本が主導するお考えはありませんか。
岸田総理がウクライナを訪問した日は、中国の習主席がロシアを訪問した日でもありました。このことで、日中が両陣営に分かれ、対立を深めたという見られ方をした可能性はないでしょうか。
力による現状変更をしかける国に対して、同盟国、同志国が結束して、国際的な法と秩序を守らせることは、世界の恒久的な平和維持のために行っていることです。ロシアに対しても、中国に対しても、必要なときには対立を辞さない断固たる決意が必要です。しかし、意味もなく対立をあおることは当然避けるべきです。
中国は、自己中心的で国際常識の通じない相手であり、我が国の軍事的な脅威でもあります。将来の日本の安全と繁栄のためには毅然として対峙していかなければいけません。一方で、歴史的、地理的、経済的には日本と関係の深い隣国であり、お互いの努力により未来志向の関係を築いていくことが本来は期待されます。
その意味で、日本の安全保障の根幹が日米同盟であることに疑いの余地はありませんが、アジアの平和秩序をつくる上での日本と米国の立場は必ずしも同じではありません。米国主導で行われているアジアの平和秩序の再構築が本当に我が国及びアジアにとって最適なものであるかどうかは、本来、アジアにおけるリーダーとしての日本が考えるべきことです。
米国の考えた構想やイニシアチブに賛同したり意見を言ったりというだけではなく、日本から構想を示して米国の理解を求めるのがあるべき姿と考えますが、日米外交においてそのようなやり取りはどの程度行われているのでしょうか。
我が国の平和と繁栄を維持するには、アジアにおける新しい国際秩序を自ら構想し、その実現に向けて国際社会に踏み込んだ提案をすることが重要ですが、そのお考えはありますか。
新しい国際平和秩序をつくる機会として、今年の五月に行われるG7サミットは絶好の場であり、日本は議長国という最高のタイミングが訪れています。このタイミングでのG7議長国のトップとして、日本とアジアの将来を見据え、岸田総理は、どのような姿勢でG7サミットに臨み、どのような構想を打ち出すお考えでしょうか。
また、アジアを超えて、世界全体に視野を広げれば、ウクライナ危機を契機に、各国で経済安全保障の整備が進んでいます。サプライチェーンが分断され、世界経済あるいは世界そのものが分断されつつあります。経済のブロック化は、これまで世界に成長をもたらしてきたグローバル化と逆行し、最終的には異なるブロック同士の対立や戦争に発展するリスクもあります。
世界の平和と成長を維持するための新しい国際秩序についてこのG7で示される方向性は、今後の世界に対して極めて大きな影響力を持つと考えられますが、現時点で総理はどのような構想をお持ちでしょうか。
日本の国連における大きな存在感、そして、今年からの国連安全保障理事会の非常任理事国としての立場も重要です。ウクライナ危機を受けて、第二次世界大戦以降、世界の平和と安全保障の仕組みが根本から崩れかかっています。その最大の要因は、国連安全保障理事会の機能不全です。
国連安全保障理事会、すなわち安保理とは、核兵器に象徴される強大な軍事力と拒否権を持つ五大国が結集して、世界の平和と安全を保障する仕組みです。しかし、裏を返せば、五大国自身による国際法違反の行為は止めるすべがないという構造的問題も抱えています。今、まさにそれが表面化しています。
国連は、一見、全加盟国が参加する国連総会が最高意思決定機関であり、国連事務総長がリーダーであるかのように見えます。しかし、実際は、最重要事項に関する実質的な意思決定は安保理で行われています。国連総会に強制力のある議決はできません。国連事務総長は、安保理が推薦しなければ候補者にすらなれません。
そして、安保理を改革するためには国連憲章の改正、つまり、国連総会での採択に加えて、安保理の全常任理事国を含む三分の二以上の国連加盟国の批准が必要であるため、五大国が一つでも反対すれば、この構造を変えることはできません。
機能不全に陥った安保理に対して国連が現在行っていることは、強制力はなくとも国連総会の決議や国連事務総長の声明などを出し続け、国際的な世論を喚起するとともに、国際社会の結束を求めることです。これらは安保理に対する法的強制力はありませんが、一定の行動変化を促す効果はあります。
安保理の非常任理事国としての立場から、真に国連を機能させるための変化をしかけていくことは十分に可能です。それこそが、安保理改革を正面から訴えるゼレンスキー大統領が岸田総理に期待していることではないでしょうか。岸田総理は、今年から国連安全保障理事会の非常任理事国のトップとして、どんなことをやりたいと考えておられるのでしょうか。
また、これまで日本政府が進めてきた安保理改革は、何十年もの間、ほとんど提案が実現していません。昨年、我が党の馬場代表から岸田総理に提言したとおり、日本は、従来からの国連改革を求め続けるだけでなく、コフィ・アナン元国連事務総長時代に議論された、任期四年から十年程度の安保理準常任理事国の設置を実現すべく、国際社会に強く働きかけるべきだと考えますが、総理の所見を求めます。
加えて、国連の要職に日本人を送り込むことも変化を促す上で意味があります。ハイレベルポストになると、各国は元大臣などを候補者に出してくる一方、日本は官僚や民間人の候補者しか出せておらず、競争上、不利に働いている面があります。総理大臣と外務大臣を務められた岸田総理を含め、日本も閣僚経験者を始めとする政治レベルの人材を国連のハイレベルポストに送り込むことも検討すべきと考えます。また、国連事務総長を含む最高レベルのポストを日本が取りに行くことも検討すべきと考えますが、これらについての総理の所見も伺います。
国連は一国一票です。自由民主主義国家と権威主義国家との間で二者択一を迫られる局面の多いASEANを始めとするグローバルサウスに対し、開発協力を通じて、主権の尊重、法の支配、自由な経済活動など、基本的な価値観を共有していくことが不可欠です。総理のお考えをお尋ねします。
また、今年の前半に開発協力大綱が改定される予定になっていますが、そうした要素をどのように取り込んでいくお考えでしょうか。
以上、世界に大きな影響力を持つ日本のかじ取りを任されている総理大臣として、主体的な構想を持ち、リーダーシップを発揮していただくことを切にお願い申し上げ、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 青柳仁士議員の御質問にお答えいたします。
先般の私のウクライナ訪問についてお尋ねがありました。
私のキーウ訪問については、ゼレンスキー大統領からの累次にわたるウクライナ訪問の要請を踏まえ、秘密保全、安全対策や危機管理等において万全を期すべく慎重にウクライナ側との調整を重ねた結果、今般、準備が整ったことを受け、現地時間二十一日に訪問を行うこととしたものであります。
G7各国は、異なる国内制度や地理的条件、さらにはNATOのような各国が属する国際枠組み等、様々な考慮事項を踏まえつつ、それぞれにとり最適なタイミングでウクライナへの訪問を行ってきたと認識をしております。
この間、日本としては、強い危機感を持って、ロシアによる暴挙が欧州だけの問題ではなく東アジアを含む国際秩序そのものを揺るがす問題であることを訴えてきました。私も、ゼレンスキー大統領と累次にわたる首脳会談をオンラインで行い、ウクライナへの連帯の意を伝達するとともに、対ロ外交を大きく転換し、強力な対ロ制裁とウクライナ支援を行ってきました。
その一環として、本年、G7議長国に就任した後の二月二十四日には、ゼレンスキー大統領の参加も得てG7首脳テレビ会議を主催し、G7としてのウクライナ侵略への対応を主導してきております。今次ウクライナ訪問においては、五月のG7広島サミットへのゼレンスキー大統領のオンラインでの参加を招待し、同大統領から快諾をいただいたところでもあります。
ロシアによる侵略が継続する中、物理的な相互訪問には種々制約がありますが、引き続き、首脳レベルを含め緊密な連携を継続してまいります。
ウクライナへの支援実施のスケジュールについてお尋ねがありました。
今般、日・ウクライナ首脳会談では、エネルギー分野等への新たな支援などへの四・七億ドルの二国間無償支援等を供与すること、また、NATOの信託基金を通じた殺傷性のない装備品支援に三千万ドルを拠出することを表明いたしました。
支援の詳細については、今後、ウクライナや国際機関と調整を行ってまいりますが、御質問の時期については、可能な限り迅速に支援を進めたいと考えております。
ウクライナ訪問の危機管理についてお尋ねがありました。
今般の私のウクライナ訪問に当たっては、厳重な保秘を前提に、ウクライナ政府等と慎重に調整を重ねた上で、秘密保全、安全対策や危機管理面等において遺漏のないよう最適な方法を総合的に検討いたしました。その際、安全対策の関係上、厳に限られた者に限り情報管理を徹底し、必要な準備を行いました。
具体的な方策について詳細について申し上げることは控えますが、安全対策や危機管理対策、情報管理について万全を期して、所要の対処を施した上で移動に臨んだところです。今回、特段の問題があったとは考えておりません。
インド太平洋における外交の取組についてお尋ねがありました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性が一層高まっています。
こうした中、我が国は、日米同盟の強化、同志国等との連携を通じた、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を更に推進していかなければならないと考えています。具体的な取組方法は種々ありますが、例えば、日米豪印においても率直な意見交換を重ね、力による一方的な現状変更への反対を世界に発信しているところでもあります。
私のウクライナ訪問及び我が国のアジア外交の在り方についてお尋ねがありました。
今般のウクライナ訪問を通じ、日本が法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという決意を世界に向けて示すことができたと考えています。その際、我が国がグローバルサウスを含む国際社会と深く連携していくとの姿勢、これも明確に示しました。
また、アジア外交に関して、私は、インドでのスピーチにおいて、日本が提唱した自由で開かれたインド太平洋、FOIPのビジョンを更に発展させる、こうしたプランを発表いたしました。
日本としては、日米関係を基軸としつつ、様々なパートナー国との連携を深め、FOIPを推進するための協力を一層強化してまいりたいと考えております。
G7広島サミットに向けた姿勢や構想についてお尋ねがありました。
今日、国際社会は、コロナ禍に見舞われ、また、国際秩序の根幹を揺るがすロシアによるウクライナ侵略に直面をし、歴史的な転換点にあります。こうした中で開催されるG7広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないものとして断固として拒否をし、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志を力強く世界に示したいと考えております。
同時に、エネルギー、食料安全保障を含む世界経済、また、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題へのG7としての対応を主導してまいります。こうした諸課題へのG7による積極的な貢献と協力の呼びかけを通じ、グローバルサウスへの関与も強化してまいります。
また、広島サミットはアジアで開催するG7サミットであることから、自由で開かれたインド太平洋に関するG7の連携についてもしっかりと確認をする機会にしたいと考えております。
安保理改革についてお尋ねがありました。
安保理は、ロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核・ミサイル活動に対しては有効に対応できていない現状にあり、試練のときにあると考えます。
我が国は安保理非常任理事国として、各国との緊密な意思疎通と丁寧な対話を通じ、安保理が本来の役割を果たすよう努力していく考えです。
そして、安保理改革については、国連において、長年にわたり議論が積み重ねられてきております。我が国としては、議論のための議論ではなく、改革実現に向けた行動を開始すべきときであると考えています。文言ベースでの交渉をすべき時期を迎えていると考えております。
特に重要なのは、安保理の構成が現在の国際社会の現実を反映するよう、常任及び非常任の双方の議席を拡大することであり、この考えは日独印伯のG4やアフリカ等を含む多数の国が支持をしており、また、米国のバイデン大統領も昨年の一般討論演説でこれを改めて明確に支持いたしました。
準常任理事国という案があることは承知しておりますが、現時点では、我が国としてそのような案を検討しているものではありません。
いずれにせよ、各国の利害も複雑に絡み合う安保理改革は決して簡単ではありませんが、引き続き、G4や米英仏、アフリカを含む多くの国々と連携しつつ、粘り強く取り組んでまいります。
国連のハイレベルポストへの人材の送り込みについてお尋ねがありました。
政府としても、国連を始めとする国際機関のハイレベルポストの獲得、これを重視しております。
国際機関のハイレベルポストの性質により、技術的、専門的知見がより求められる場合も、また政治的センスが強く求められる場合もあります。いずれの場合も、関連の経験、語学力、マネジメント力などは大前提となります。
今後とも、日本社会全体から幅広く人材を見出し、重要なトップポスト、ハイレベルポストの獲得に向けて、政府全体としてしっかりと取り組んでまいります。
グローバルサウスへの対応及び開発協力大綱の改定についてお尋ねがありました。
現在、国際社会は、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々への関与を更に強化し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化することがますます重要になってきております。
こうした認識の下、新たな時代における人間の安全保障の理念に立脚しつつ、ODAの戦略的活用を一層進めるとともに、SDGsの達成や自由で開かれたインド太平洋の理念の実現といった外交的取組の強化に引き続き努めていきたいと考えております。
こうした視点も踏まえながら、開発協力大綱を本年前半をめどに改定し、我が国の開発協力の大きな方針を示したいと考えております。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 吉田宣弘君。
〔吉田宣弘君登壇〕
○吉田宣弘君 公明党の吉田宣弘です。
公明党を代表し、質問いたします。(拍手)
昨年末に閣議決定された国家安全保障戦略の最後の部分に次のように書かれております。
「希望の世界か、困難と不信の世界かの分岐点に立ち、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の下にあっても、安定した民主主義、確立した法の支配、成熟した経済、豊かな文化を擁する我が国は、普遍的価値に基づく政策を掲げ、国際秩序の強化に向けた取組を確固たる覚悟を持って主導していく。」
確かに今の日本は、ここに言う、希望の世界か困難と不信の世界か、その岐路に立たされていることを真正面から認識しなければなりません。そして、希望の世界に向かうために日本は国際秩序の強化に向けた取組を主導していくべきであり、まさに、今回、岸田総理はこの覚悟を持って外交を進められたと高く評価いたします。
クアッド及びFOIPにおいて重要国であるインド訪問、そして、ロシアによる侵略に苦しむウクライナを電撃訪問されたことは、G7広島サミットを控えたこの時期において非常に意義のある訪問であったと思います。
まず、インド訪問について質問いたします。
インドは、今年中に、人口において中国を抜き、世界で一番人口の多い国になると言われています。加えて、日本に対する貿易相手国としても、コロナの影響を受けつつも輸出入共に近年増加傾向を示しており、日印関係の更なる強化が期待されるところです。
そこで、岸田総理は、この度のインド訪問により、日印関係はどのように強化されると認識しておられるのかについて答弁を求めます。
次に、インドの地にて、岸田総理は、FOIPの新しいプランを発表されました。私も拝読をさせていただきましたが、深く感銘を受けました。「平和の原則と繁栄のルール」「インド太平洋流の課題対処」「多層的な連結性」「「海」から「空」へ拡がる安全保障・安全利用の取組」の四本柱から成る新プランは、冒頭に述べました希望の世界への確かな道しるべになることを確信します。
そこで、今般、岸田総理によるFOIPの新プランがこのタイミングで、さらにインドの地で発表された意義について、岸田総理の答弁を求めます。
続いて、岸田総理は、ウクライナを電撃訪問されました。
紛争の停戦、国際社会の平和のためにも、侵略を受けているウクライナとの連携を更に進めていくことは極めて重要です。その中で、G7議長国として、ウクライナへの連帯と支援の継続や対ロ制裁の継続などについてしっかりとお伝えいただいたことをお聞きしており、大変に意義あるもので、高く評価いたします。
まず、岸田総理は、ロシア軍による一般市民への虐殺が行われたブチャを訪問し、犠牲者への献花を行い、悲惨な体験をされた方々から直接お話を聞かれたと承知をしております。岸田総理におかれましては、侵略を犯したロシアに対する強い憤りとともに反戦への誓いを新たにされたことと推察いたしますが、ブチャを訪問された岸田総理の感想を含め、改めて総理の御決意をお聞かせください。
次に、ウクライナへの支援について、日本が昨年来進めてきた約十六億ドルの人道、財政支援に加え、改めてウクライナへの連帯を示すため、約五十五億ドルの追加財政支援を行うことを岸田総理は表明されており、今般は、さらに、エネルギー分野などで新たに四・七億ドルの無償支援を供与することを表明されました。今後、これらの支援を着実に実施し、電力不足への支援、地雷除去に対する支援、農業生産や輸出能力回復に向けた支援、人道支援など、今後も日本ならではの形で切れ目なく支援を行っていくことが重要だと思います。
そこで、これらを早く、本格的に日本が役割を果たせる状況を整えるためにはどうしたらよいのか、今後のウクライナ支援及び復旧復興の在り方についての議論も必要だと思いますが、今後のウクライナに対する支援について、総理の見解をお聞かせください。
次に、総理は、ポーランドのドゥダ大統領、モラビエツキ首相ともそれぞれ会談を行い、ウクライナに対する軍事及び人道支援の拠点として最前線で対応するポーランドとの間で、戦略的パートナーシップに基づき、ロシアによるウクライナ侵略への対応を含め、二か国間及び国際場裏での協力を強化することを確認されました。
公明党は、昨年、ウクライナ避難民の実情や支援ニーズを探るため、調査団をポーランド、モルドバ、ルーマニアに派遣しました。ウクライナの復旧復興を考えたとき、周辺国との連携が必要なことは言うまでもありません。ウクライナの隣国であるポーランドは避難民の最大の受入れ国であり、こうした周辺国支援のために、現地のニーズをしっかりと受け止め、日本のODAの効果的な活用を含めて、議論を深めていただきたいと思います。
また、日本国内のウクライナ避難民においても、身元引受先のあるやなしやにかかわらず、充実した日本語教育、就労支援、生活相談などを引き続き実施し、更なる避難民の受入れ推進に努めていくべきと考えます。
そこで、周辺国への支援、また、日本国内における避難民への支援について、今後どのようにされていくのか、岸田総理の答弁を求めます。
ロシアのウクライナ侵略を一刻も早く止めるためには、ロシアに対して侵略を直ちに停止するように求めるとともに、国際社会が結束をして厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援を継続することが必要であり、G7議長国として対応を主導していくことが重要ではないでしょうか。制裁を維持強化することが不可欠だと思いますが、今回の共同声明では、第三国が制裁措置を回避しないことへの期待も示されました。
そこで、ウクライナへの侵略に対する対ロ制裁の今後の方針について、総理の見解を求めます。
最後に、岸田総理のウクライナ訪問と時を同じくして、中国の習近平国家主席はロシアを訪問しました。
今後の国際平和を考えるに当たって、この対照的な出来事が日本を含む西側諸国と中ロとの対立という構図になることは避けなければならないと考えます。ウクライナのゼレンスキー大統領も習近平国家主席とオンライン会談を実施するかもしれないという観測もある中、ロシアによるウクライナ侵略の即時停止、撤退を目指す観点から、中国が果たす役割も冷静に考えておく必要があると考えますが、対中外交における岸田総理のお考えをお聞かせください。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 吉田宣弘議員にお答えいたします。
今回の私のインド訪問を踏まえた今後の日印関係と自由で開かれたインド太平洋、FOIPの新プランについてお尋ねがありました。
今般のインド訪問においては、モディ首相との間で、G7及びG20サミットに向けた両国の連携や、日印特別戦略的グローバルパートナーシップの下での関係強化を確認いたしました。インドは、我が国と基本的価値や原則を共有する重要なパートナーであり、今回確認した事項を実行に移しつつ、引き続き、関係強化に努めてまいります。
日本は、本年のG7議長国として、法の支配に基づく国際秩序の堅持や、グローバルサウスと呼ばれる国々との関係強化を重視しています。本年のG20議長国であり、FOIP実現のために連携が必要なパートナーであるインドとの間でこういった考えを共有する意味でも、今回、インドでFOIPの新プランを発表したことは有意義であったと考えております。
今般の私のウクライナ訪問についてお尋ねがありました。
三月二十一日、私は、ウクライナを訪問し、ロシアによるウクライナ侵略による被害などの状況を直接視察したほか、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行い、ウクライナ国民に対する日本の揺るぎない連帯を直接伝達いたしました。
また、キーウ近郊のブチャも訪問し、犠牲者への献花を行うとともに、ロシアの暴挙により悲惨な体験をされた方々から直接話を聞く機会を得ました。
今回、自らの目と耳でそういった体験を行って、改めて、ロシアによるウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であることを改めて実感して帰ってきました。
惨劇をこれ以上繰り返さないため、ロシアによる侵略を一刻も早く止めなければなりません。G7議長国である我が国は、このためにリーダーシップを発揮していく必要があります。今回のウクライナ訪問を踏まえ、こうした決意を新たにしたところであります。
我が国は、G7議長国として、国際社会と緊密に連携しつつ、引き続き、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進してまいります。
今後のウクライナに対する支援及び復旧復興の在り方についてお尋ねがありました。
日本は、侵略開始直後から、人道、財政、食料、復旧復興の分野で総額七十一億ドルの支援を着実に実施してきています。今般の首脳会談では、ウクライナ側のニーズを踏まえ、エネルギー分野などへの五億ドルの新たな支援を表明いたしました。ゼレンスキー大統領からも、日本のこれまでの支援に対し、深甚なる感謝の言葉が述べられました。
今後も、国際社会と連携しつつ、ウクライナに寄り添い、ウクライナ国民のニーズを踏まえた支援を行ってまいります。地雷対策、瓦れき処理、電力、農業等様々な分野で、日本の持つ経験や知見を活用しながら、切れ目なく、日本らしいきめ細やかな支援を行ってまいります。
ウクライナ周辺国への支援及び避難民支援についてお尋ねがありました。
日本は、これまで、ウクライナ周辺国に対して、国際機関や日本のNGOを通じて人道支援を実施してきています。
これに加え、人口比で最大規模の避難民の受入れ国であるモルドバに対しては、医療機材の供与を行っており、また、一億ドル相当の円借款を供与する方針です。避難民の最大の受入れ国であるポーランドに対しては、ODAを通じた支援が可能となるよう整理を行い、二十二日の首脳会談の際にその旨伝達をいたしました。
ウクライナ避難民の日本国内への受入れについては、地方自治体、民間団体と連携しつつ、これまでに二千三百人を超える方々を受け入れ、日本で安心して生活ができるよう、教育、就労、生活等の必要な支援を行ってまいりました。
引き続き、避難民の方々のニーズを踏まえ、政府全体で支援を行ってまいります。
ウクライナに関する対ロ制裁の今後の方針についてお尋ねがありました。
ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、欧州のみならずアジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。そのような行動には高い代償が伴うことを示していくことが必要です。我が国は、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、ロシアの個人、団体等に対する制裁、銀行の資産凍結等の金融分野での制裁、輸出入禁止措置など、厳しい措置を迅速に実施してきました。
制裁が一層効果的なものになるためには、第三国が制裁措置を回避し、制裁の効果を損なうことがないように努力していくことが重要です。
二十一日の日・ウクライナ首脳会談においては、私から、厳しい対ロ制裁を継続することが不可欠であり、特に制裁回避、迂回対策が重要である旨言及をいたしました。
我が国として、一刻も早くロシアが侵略をやめるよう、制裁の迂回、回避対策を含め、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、強力な制裁措置を講じていくとともに、制裁の実効性を確保すべく、適切に対応していく考えです。
対中外交についてお尋ねがありました。
日中両国間には、様々な可能性とともに数多くの課題や懸案が存在いたします。同時に、日中両国は、地域と世界の繁栄に大きな責任を有しています。昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をする、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいりたいと考えています。
その上で、我が国としては、ウクライナ情勢をめぐる中国の動向についても注視をしており、中国に対しては、様々な機会を通じて、引き続き、責任ある対応を強く求めていく考えです。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 鈴木敦君。
〔鈴木敦君登壇〕
○鈴木敦君 国民民主党の鈴木敦です。(拍手)
まず、インドからウクライナ、ポーランドの訪問、大変お疲れさまでした。
G7首脳の中で最後のウクライナ訪問となったという見方もありますが、現地の最新状況を見、聞き取ってきたことは、G7サミットで実のある会議を主催する上で非常に有益であろうと思いますし、この時期の訪問については、外交上、大変結構であったろうと考えております。
ただし、さきにも御指摘がありましたとおり、総理の動向がポーランド入国時点から把握可能であったことは危機管理上極めて問題であったことは、私からも指摘しておかなければなりません。
アメリカのバイデン大統領がウクライナを訪問した際、ジャーナリストには携帯電話の携行を禁止、キーウに到着するまで報道が禁じられておりました。我が国の場合、総理がお乗りになっていた飛行機の映像、プシェミシルから列車に乗車する映像などを報道が速報しておりました。別段問題はなかったとおっしゃいますが、これがカメラでなかったらどうなさるおつもりですか。
何より、これによって、日本国内閣総理大臣の安全を脅かすのみならず、先方のゼレンスキー大統領の動向をも予見可能としてしまったのです。
武力紛争が生起している地域を訪問する際は、極めて厳格な危機管理の認識が必要です。関係各所には猛省を促すとともに、問題ないと答弁されておられますが、この件について実際どのように捉えておいでなのか、総理に伺います。
現地でもお聞き及びとは思いますが、ロシア軍は、ウクライナ領内から複数の子供を再教育と称してロシア国内に連れ去り、ロシア人家庭に編入するという深刻な人権侵害を行っております。北朝鮮による拉致問題の解決を最重要課題と位置づける我が国が、この問題に他人事でいるわけにはいきません。
五月に予定されているG7広島サミットでは、我が国も拉致被害当事者国であるとの認識の下、この他国による拉致という深刻な人権、主権侵害への対応を議題に加えていただくことを求めますが、総理の御見解を伺います。
岸田総理のウクライナ訪問と時を同じくして、ロシアのプーチン大統領は、ロシア訪問中の中国の習近平国家主席と会談を行い、共同声明では、中国が主権と領土保全のために取る措置をロシアが断固支持すると明記し、台湾問題についてこれまでより踏み込んだ内容となりました。プーチン大統領はウクライナ停戦に向けた中国の仲介案を平和的解決の基礎とすることができると称賛するなど、中国のロシアへの影響力が日を追って増しています。
昨年のロシアと中国との貿易額は、前年比約三割増えました。また、輸出決済通貨における人民元の割合は、昨年一月の〇・四%から九月に一四%に上昇し、ロシア財務省は外為市場への介入を今年から人民元で実施すると決めたと報じられています。人民元経済にロシアが取り込まれ、経済のみならず外交でも、中国へのロシアの依存度は今後も高まることが予想されます。
一方の中国は、ロシアへの影響力を高めると同時に、エネルギーを安定的かつ安価で確保でき、さらにはロシアの軍事技術の入手も可能になると見込まれます。中国によるロシアの取り込みが世界の経済面、軍事面双方の長期的安全保障に与える影響について、総理の認識を伺います。
中国の影響力拡大はこれだけではなく、サウジアラビアとイランの外交関係正常化の仲介は、中東をめぐる地政学にとって衝撃的な出来事と言わざるを得ません。ドルが基軸通貨である基盤の一つに、原油取引決済がドル建てであることが挙げられますが、圧倒的な石油購買力を持つ中国は、中東産油国のエネルギー市場における影響力を一段と高めると同時に、湾岸諸国に対して提案している原油取引の人民元決済を実現することで、世界経済の秩序を一変させることができます。
中国は、人民元決済の拡大、エネルギー取引の手段の独占によって米国との競争に勝利する意図を有していると考えられ、日本を含む西側諸国としては懸念すべき状況と考えますが、総理の御見解を伺います。
米国はシェール革命によりエネルギーを自給できますが、日本にはできません。我が国は原油の約九〇%を中東地域からの輸入に頼っており、国内で原油、天然ガスの生産ができる米国と全く同じエネルギー政策を取り続けることは不可能です。我が国の今後のエネルギー戦略は、我が国による、我が国独自の資源外交を展開する必要があると考えます。
中東産油国との関係強化に向けた、国家の総力を挙げた資源外交を加速度的に進めるべきではないでしょうか。また、米国にも中東への強いコミットを働きかけるべきと考えますが、総理に併せて伺います。
ALPS処理水の海洋放出をめぐっても、中国外務省軍縮局が、国内外のメディアを集めた記者会見において、ロシアなど周辺国のほか、南太平洋諸国などとも連携して反対していくと発言しました。私が、かねてから外務委員会及び東日本大震災復興特別委員会において、我が国の政策に反対している国家のみならず、世界に広く理解を得る努力をせよとお訴えしてきたのは、こういうことになるからであります。
今からでも遅くはありませんから、早急に、極東地域のみならず、太平洋島嶼国、ヨーロッパ諸国、アフリカ諸国とも連携を深める必要があります。いわゆる西側の価値観のみを強調した外交ではなく、交通、公共インフラなど我が国が強みとする分野を生かした、安全保障も視野に入れた多面的な外交を戦略的に進めるべきと考えますが、総理の御見解を伺います。
ロシアによるウクライナ侵略以降、世界は、法の支配と民主主義を重視する国々と、権威主義的な政治体制の国々との間の勢力争いの様相を示しています。いわゆるグローバルサウスと言われる国々が権威主義的な勢力にのみ込まれないよう、世界の法と民主主義を断固として守り抜く強い覚悟が必要であることをお訴えし、私の質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 鈴木敦議員の御質問にお答えいたします。
まず、ウクライナ訪問の危機管理についてお尋ねがありました。
今般の私のウクライナ訪問に当たっては、厳重な保秘を前提に、ウクライナ政府等と慎重に調整を重ねた上で、秘密保全、安全対策、危機管理面等において遺漏のないよう、最適な方法を総合的に検討しました。その際、安全対策の関係上、厳に限られた者に限り情報管理を徹底し、必要な準備を行いました。
具体的な方策について詳細を申し上げることは控えますが、先ほども申し上げましたとおり、安全対策、危機管理対策、情報管理等について万全を期して所要の対処を施した上で移動に臨んだところであります。特段の問題があったということは考えておりません。
G7広島サミットの議題についてお尋ねがありました。
子供を含むウクライナ国民のロシアによる強制的な移送については、様々な情報発信が行われていると承知をしております。こうした行為の真相は、国連を含む関連機関等により徹底的に明らかにされなければならず、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携をしてまいります。
北朝鮮による拉致問題は、時間的制約のある人道問題です。拉致問題の解決のためには、我が国の取組に加え、国際社会との緊密な連携も重要です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、政府として全力で取り組んでまいります。
ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮による拉致問題を含む重大な人権侵害は極めて重要な課題であり、G7広島サミットにおいてもしっかりと議論を行ってまいります。
中国によるロシアの取り込みについてお尋ねがありました。
近年、中国とロシアは緊密な関係を維持しております。経済面では、三月二十一日に行われた中ロ首脳会談において、プーチン大統領が、二〇二二年の貿易額は千八百五十億ドルという歴史的な記録を達成した、二〇二三年には二千億ドルという目標を超えるだろうと述べるなど、中ロ間では様々な分野での経済協力関係が強化されているものと承知をしています。
また、軍事面についても、共同での軍事演習の実施、共同航行、共同飛行といった日本周辺での一連の動きなど、両国の軍事協力が緊密化していると認識をしています。
こうした中ロ関係の深化が世界の経済面、軍事面の長期的安全保障に与える影響について予断を持ってお答えすることは控えたいと思いますが、いずれにせよ、我が国としては、こうした中ロの動向について高い関心を持って注視しつつ、我が国の安全保障の観点から適切に対応していく考えです。
エネルギー市場における中国の動向や米中の競争、そして中東諸国との外交についてお尋ねがありました。
国際通貨システムにおける人民元の役割に関する動向やエネルギー市場における中国の動きは、我が国経済や世界経済に大きな影響を与えるものです。関連する中長期的な動向について、日本政府として注視をしてまいります。
その上で、我が国としては、同盟国たる米国との強固な信頼関係の下、様々な協力を進めつつ、中国に対しては、国際社会のルールにのっとり、大国としての責任を果たしていくよう働きかけてまいります。
中東産油国と我が国は、これまで長年にわたる友好関係を築いてきており、近年では、伝統的なエネルギー分野での協力のみならず、世界の脱炭素社会を共に実現するために、水素、アンモニアなどのクリーンエネルギーや産業多角化といった幅広い分野を含む包括的な資源外交を推進しております。
我が国としては、引き続き、米国を始めとする関係国と連携しつつ、エネルギー安全保障の観点からも重要な中東諸国との関係を一層強化するべく、努めてまいりたいと考えます。
多面的な外交展開についてお尋ねがありました。
自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的な価値、そして国際的な規範、原則は、途上国を含む国際社会の平和、安定と経済発展の基礎となるものであり、これらを守り抜くことは我が国の外交の重要な柱の一つであると考えます。
同時に、地政学的競争が激化する今日の国際社会において、国境を越えて人類の存在そのものを脅かす地球規模課題に対応するためには、価値観の相違、利害の衝突を乗り越えて協力することがかつてないほど求められていると考えています。
本年のG7議長国として、法の支配に基づく国際秩序を堅持していくというG7の意志を示していくと同時に、我が国が強みとする分野も生かしつつ、気候変動、エネルギー、食料、保健、開発等のグローバルな諸課題への積極的な貢献を通じて、グローバルサウス等への関与、これを強化し、そしてリードしていきたいと考えております。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 穀田恵二君。
〔穀田恵二君登壇〕
○穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理のウクライナ訪問報告に対し質問します。(拍手)
岸田総理とゼレンスキー大統領による共同声明は、ロシアのウクライナ侵略が法の支配に基づく国際秩序の根幹を損ない、国連憲章にうたう基本原則、特に主権及び領土一体性の原則に対する重大な違反であると断じました。これは当然のことです。
ロシアのウクライナ侵略開始一年に当たって開催された国連総会緊急特別会合は、国連憲章の原則に従ったウクライナの包括的、公正かつ永続的な和平を求め、そのための外交努力への支援の倍加を国際社会に要請する決議案を百四十一か国の賛成多数で採択しました。
日本政府は、外交努力への支援の倍加をいかなる形で果たそうとしているのですか。
国連総会決議は、国連憲章遵守の一点で国際社会が団結することの重要性を強調しました。民主主義対専制主義と、世界をあれこれの価値観で二分するのではなく、国連憲章遵守の一点を更に多数の国々の声にしていくことこそ、この残虐で無法な侵略戦争を終わらせる最大の力になるのではありませんか。答弁を求めます。
今、外交努力の倍加が求められているときに、岸田総理は、ウクライナは明日の東アジアなどと称して、ロシアの無法な侵略を口実に、空前の大軍拡を推し進めようとしています。全く逆ではありませんか。
ウクライナ侵略の最大の責任がロシアにあることは言うまでもありません。しかし、戦争に至った経過と背景を見たときに、ヨーロッパには欧州安保協力機構というロシアも含めた包摂的な平和の枠組みがあり、一九九九年には紛争の平和的解決の憲章が確認されていました。しかし、NATOの側もロシアの側もこの枠組みを生かさず、軍事対軍事の悪循環に陥ったのではありませんか。
軍事対軍事では平和はつくれない、これがヨーロッパの教訓ではありませんか。しかと御答弁いただきたい。
にもかかわらず、岸田総理は、歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨て、日本をミサイル列島にする敵基地攻撃能力のための大軍拡を進めようとしています。断じて許せません。
次に、ウクライナ支援の在り方について聞きます。
憲法九条を持つ日本がやるべきことは、保健医療、食料、復興、インフラ支援など、非軍事の人道的支援に徹することです。
ところが、岸田総理は、首脳会談で、ウクライナに、NATOの信託基金を通じた殺傷性のない防衛装備品支援に三千万ドルを拠出することを表明しました。
ウクライナの側は、兵器、ウェポンと発表していますが、具体的にどのような兵器を支援するのか、なぜ明確にしないのですか。何を支援するか、その内容はNATOが決めるのではありませんか。殺傷性のないことをどう担保するのですか。結局、NATOの軍事支援の一部を肩代わりすることになるのではありませんか。明確な答弁を求めます。
そもそも、我が国は、憲法九条の下で、国際紛争を助長しかねないとして武器輸出禁止三原則を国是としてきました。これを安倍政権が二〇一四年に撤廃し、武器輸出に道を開いたものです。
その下で、岸田政権は、紛争当事国であるウクライナにドローンや防弾チョッキなどの防衛装備品を供与し、今回、さらに、NATOを通じた兵器支援を行おうとしています。なし崩し的に際限のない兵器輸出を拡大するものであり、憲法九条に反することは明らかではありませんか。
また、両国間の情報保護協定の締結に向けた調整を開始することで合意したといいますが、紛争当事国といかなる軍事情報を何のために共有するのですか。これまで政府が米国やNATOなどと締結してきた米国主導の同盟国間の秘密保全体制の拡大ではありませんか。答弁を求めます。
こうした軍事協力の拡大も、九条の平和主義とは相入れません。
最後に、核兵器の問題です。
岸田総理は、首脳会談で、唯一の戦争被爆国である日本として、ロシアの核兵器による威嚇は受け入れられないと述べたといいますが、他方で、米国の核抑止力に依存し、いざというときに核兵器を使用し、広島、長崎のような惨禍をいとわない立場とは両立し得ないのではありませんか。
国連総会は、昨年十二月、核兵器禁止条約の第一回締約国会議の開催を歓迎するとした決議案を、国連加盟国の約六割に当たる百十九か国の賛成多数で採択しました。核兵器禁止条約と題する決議の採択は五年連続で行われています。
日本原水爆被害者団体協議会は、ロシアのウクライナ侵略で核による威嚇が行われているとして、核兵器をなくすことでしか核戦争の危機を回避することはできないと強調し、戦争による核攻撃を受けた唯一の国である日本政府は、核兵器の禁止から廃絶へ、今こそ先頭に立って世界をリードするときだと述べています。
岸田総理、今こそ、禁止条約に日本が参加して、G7広島サミットにおいても唯一の戦争被爆国にふさわしい役割を発揮すべきではありませんか。
そのことを強く求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 穀田恵二議員にお答えいたします。
ウクライナ関連の外交努力への支援についてお尋ねがありました。
御指摘の国連総会緊急特別会合においては、ウクライナの平和を求める決議が、全加盟国の七割以上を占める百四十一か国の賛成により採択されました。これは、国連加盟国の圧倒的多数が、ロシアによる侵略の即時停止を求め、ウクライナへの力強い支持を表明したものです。
また、同決議では、御指摘のように、ウクライナにおける包括的、公正かつ永続的な平和を達成するための外交的取組への支持の強化、これを求めています。
我が国としては、グローバルサウスの国々を含めた国際社会が一致して声を上げていくことが重要であると考えており、こうした国々に対し、我が国として、これまでにも様々な機会を利用したアプローチを続けておりますが、本年は、G7議長国という立場も活用し、国際的な議論をより一層積極的にリードしてまいりたいと考えています。
国連憲章の遵守についてお尋ねがありました。
昨年十月、百四十三か国が賛成したウクライナの領土一体性及び国連憲章の原則の擁護に関する決議は、国連総会として国連憲章の原則と目的を守る強い意思を表明したものです。
また、本年二月に百四十一か国が賛成した決議は、国連憲章の原則にのっとった、ウクライナにおける包括的、公正かつ永続的な平和を求めています。
一刻も早くロシアが侵略をやめるよう、国際社会が結束して毅然と対応し、これらの決議の実施に至ることが重要です。そのために、我が国として、G7を始めとする各国と連携しながら、力による一方的な現状変更の試みに対抗する国際社会の取組をリードしていきたいと考えます。
外交努力と防衛力強化についてお尋ねがありました。
国民の命や暮らしを守り抜く上で、まず優先されるべきは外交努力です。同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要です。
今般の防衛力の抜本的強化については、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げ、そして導き出したものであります。
これは、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要なものであり、我が国の抑止力、対処力を向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させていく考えであります。
ロシアによるウクライナ侵略についてお尋ねがありました。
まず、今回のロシアのウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、いかなる理由であっても断じて正当化することはできません。明白な国際法違反であり、強く非難をいたします。
その上で申し上げれば、欧州安全保障協力機構、OSCEは、ウクライナもロシアも加盟する信頼醸成を行う国際機関ですが、紛争の平和的解決の原則を破ったのはロシアであるというこの厳然たる事実、これを見過ごしてはならないと考えています。
NATOの信託基金を通じたウクライナへの支援についてお尋ねがありました。
今般拠出を行うNATOの信託基金については、拠出国が使途の指定を行うことができます。我が国の拠出を通じた支援に関しても、NATOを通じたウクライナへの殺傷性のない装備品の供与に使途を指定した上で、今後、細部を調整することを予定しております。
武器輸出三原則等では、実質的には全ての地域に対して輸出を認めないこととなったため、政府は、個別の必要性に応じて、例外化措置を重ねてきました。こうした中で、新たな安全保障環境に適合するよう、それまでの例外化の経緯を踏まえ、包括的に整理し、二〇一四年に防衛装備移転三原則、これを定めました。
御指摘のウクライナに対する防弾チョッキ等の提供は、この防衛装備移転三原則と自衛隊法第百十六条の三に基づき、適切に行ったものです。また、今般のNATOの信託基金への三千万ドルの拠出は、殺傷性のない装備品支援を想定しているものです。
このような我が国のウクライナ支援は、現行の制度に基づき適切に実施してきているものであり、際限のない兵器輸出を拡大するとか、また、憲法九条に反するといった御指摘は当たらないと考えています。
日・ウクライナ間の情報保護協定についてお尋ねがありました。
情報保護協定は、我が国政府と相手国政府との間で相互に提供される秘密情報について、受領国政府が自らの国内法令に従って適切に保護するために取る措置等を定めているものであります。
これまで我が国が締結してきた情報保護協定は、いずれも憲法の規定の範囲内で締結され、憲法第九条の平和主義と相入れないものではありません。
ウクライナとは協定の締結に向けた具体的な調整を開始することで一致したところであり、我が国として、その内容について、今後、憲法の規定の範囲内でウクライナ側と協議を行ってまいります。
拡大抑止についてお尋ねがありました。
今回の日・ウクライナ首脳会談において、私から、唯一の戦争被爆国である我が国として、ロシアの核兵器による威嚇は受け入れられず、ましてや核兵器の使用はあってはならないとして、G7広島サミットでも強く発信していきたい旨述べました。ゼレンスキー大統領とも一致をいたしました。
我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国国民の生命財産を守り抜いていくためには、米国の拡大抑止、これは不可欠です。
こうした現実を直視し、米国の拡大抑止の下、我が国の安全保障の確保という最重要の課題に対応していくことと、ロシアによるウクライナ侵略の中での核兵器による威嚇を非難するということ、これは別物であり、これらが両立し得ないという指摘は当たりません。
核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。
核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておりません。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしなければなりません。
そのためにも、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、G7広島サミットも念頭に、ヒロシマ・アクション・プランを始め、これまでの取組の上に立って、現実的かつ実践的な取組を進めてまいります。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時九分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸田 文雄君
総務大臣 松本 剛明君
財務大臣 鈴木 俊一君
文部科学大臣 永岡 桂子君
国土交通大臣 斉藤 鉄夫君
防衛大臣 浜田 靖一君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 木原 誠二君