衆議院

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第14号 令和5年3月30日(木曜日)

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令和五年三月三十日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  令和五年三月三十日

    午後一時開議

 第一 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出)

 第二 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 第四 日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長竹内譲君。

    ―――――――――――――

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔竹内譲君登壇〕

竹内譲君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、我が国における二〇五〇年カーボンニュートラル等の国際公約と産業競争力の強化を通じた経済成長を同時に達成するグリーントランスフォーメーション、いわゆるGXの実現に向けて、脱炭素成長型経済構造移行推進戦略の策定、脱炭素成長型経済構造移行債の発行、化石燃料賦課金及び特定事業者負担金の徴収、脱炭素成長型経済構造移行推進機構の設立等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る三月九日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、翌十日に西村国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。十五日に質疑に入り、十七日参考人から意見を聴取し、さらに、二十二日及び二十四日に質疑を行いました。

 昨日、質疑を終局した後、自由民主党・無所属の会、日本維新の会及び公明党の三会派共同提案により、この法律の施行後二年以内に政府が法制上の措置を講ずるに当たっては、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する施策の在り方についての検討も行うことを明記することを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について討論、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長大西英男君。

    ―――――――――――――

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔大西英男君登壇〕

大西英男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症の発生及び蔓延の防止に関する施策の総合調整等に関する機能を強化するためのものです。

 その主な内容は、

 第一に、感染症の発生及び蔓延の初期段階から政府対策本部が迅速かつ的確な措置を講ずるための仕組み等を整備するものです。

 第二に、内閣官房に感染症の発生及び蔓延の防止に関する施策の総合調整等に関する事務を所掌する内閣感染症危機管理統括庁を設置するものです。

 本案は、去る三月七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、翌八日後藤国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、十日から質疑に入りました。十六日には厚生労働委員会との連合審査会を開会するとともに、十七日には参考人から意見を聴取しました。さらに、二十九日、岸田内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど慎重に審査を行い、質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、本案に対し、立憲民主党・無所属、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の共同提案による修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(細田博之君) 日程第三、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第四、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長黄川田仁志君。

    ―――――――――――――

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔黄川田仁志君登壇〕

黄川田仁志君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 日豪部隊間協力円滑化協定は、令和四年一月六日に、また、日英部隊間協力円滑化協定は、令和五年一月十一日に、それぞれ署名されました。

 両協定はいずれも、一方の国の部隊が、他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続及びその部隊の地位等を定めるものであります。

 両件は、去る十六日外務委員会に付託され、翌十七日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。昨二十九日に質疑を行い、討論の後、順次採決を行いました結果、両件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両件を一括して採決いたします。

 両件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣西村康稔君。

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 ロシアによるウクライナ侵略等により、世界のエネルギー情勢は一変し、諸外国は早期の脱炭素社会への移行に向けた取組を加速しています。こうした中、資源に乏しい我が国においても、グリーントランスフォーメーション、いわゆるGXに向けて取り組むとともに、エネルギーの安定供給を確保することが重要です。このため、再生可能エネルギーの最大限の導入に向けて、系統整備を加速しつつ、国民負担の抑制と地域との共生の両立に取り組むとともに、原子力については、安全性の確保を大前提とした上でその活用を進めるなど、脱炭素電源の利用促進と電気の安定供給を確保するための措置を講ずる必要があります。

 本法律案は、こうした内容を盛り込んだ上で、本年二月に閣議決定したGX実現に向けた基本方針に基づき、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 まず、電気事業法の一部改正です。

 第一に、発電用原子炉の運転期間を四十年と定めた上で、原子力規制委員会による運転停止命令等を受けていないこと等の基準に適合していると認められるときに限り、経済産業大臣が認可し、運転期間の延長を認めることとします。その際、運転期間は最長で六十年に制限するという現行の枠組みは維持した上で、安全規制に係る制度の変更等の予見し難い事由により運転を停止した期間と認められる期間に限り、六十年の運転期間のカウントから除外することとします。

 第二に、広域系統整備計画に定められた一定規模以上の電気工作物の整備等を実施する一般送配電事業者等は、その整備等に関する計画について、経済産業大臣の認定を受けることができるものとし、広域的運営推進機関の業務に、当該認定を受けた者に対して当該電気工作物の整備等に必要な資金の貸付けを行う業務を追加します。

 次に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正です。

 発電用原子炉設置者に対して、運転を開始した日から起算して三十年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、あらかじめ、その発電用原子炉施設について、十年を超えない期間ごとに、当該施設の劣化に関する技術的な評価を行い、その劣化を管理するための措置等を記載した長期施設管理計画を作成し、原子力規制委員会の認可を受けること等を義務付けることとします。

 次に、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の一部改正です。

 使用済燃料再処理機構の業務に廃炉推進業務を追加した上で、同機構の名称を使用済燃料再処理・廃炉推進機構に改めるとともに、同機構が行う廃炉推進業務に必要な費用に充てるため、実用発電用原子炉設置者等に対して、同機構に廃炉拠出金を納付することを義務付けることとします。

 次に、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法の一部改正です。

 第一に、既存の再生可能エネルギー発電設備を最大限活用するため、認定事業者が、その発電設備の増設等を行う場合には、増設等に係る部分にのみ最新の価格を適用する措置を講じます。

 第二に、再生可能エネルギー発電事業計画の認定の要件にその事業の実施内容を周辺地域の住民に周知することを加えるとともに、認定基準に違反する認定事業者に対して交付金による支援額の積立てを命ずる措置を創設するなど、事業規律を強化します。

 第三に、今般、電気事業法において創設する認定制度の認定を受けた事業者が、当該認定に係る計画に従って、再生可能エネルギー電気の利用の促進に資する電気工作物を設置しようとするときは、その工事を開始した日から、特定系統設置交付金の交付を受けることを可能とします。

 次に、原子力基本法の一部改正です。

 エネルギーとしての原子力利用は、国及び原子力事業者が安全神話に陥り、東京電力福島第一原子力発電所の事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立ってこれを行うものとし、当該原子力利用に当たっての国及び原子力事業者の責務を明確化する等の措置を講じます。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。岩田和親君。

    〔岩田和親君登壇〕

岩田和親君 自由民主党の岩田和親です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、ただいま議題となりました脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 世界的にも異常気象が発生し、大規模な自然災害が増加するなど、気候変動問題は、人類共通の危機であり、地球規模での対応が求められる課題となっています。これに対応するべく、多くの国、地域がカーボンニュートラルを宣言し、脱炭素に向けた取組を進めていますが、我が国においても、二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現という国際公約を掲げ、気候変動問題の解決に向けて、国家を挙げて貢献していく強い決意を表明しております。

 こうした中で、昨年、ロシアによるウクライナ侵略が発生をし、これに伴う国際的なエネルギー価格の高騰により、エネルギー分野のインフレーションが顕著となり、市民生活を脅かす危機的な事態に直面をしております。この未曽有のエネルギー危機を乗り越えようと、既に欧米各国では、これまでの脱炭素への取組を一層推進し、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造、社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するグリーントランスフォーメーション、GXの実現に向けた取組を加速させています。

 東日本大震災以降、エネルギー自給率が先進国の中でも特に低く、エネルギー需給構造が脆弱な我が国は、今こそ、GXを加速させ、エネルギーの安定供給を確保するとともに、気候変動問題への対応で世界をリードするための政策を具体化する必要があります。

 岸田内閣は、二月十日にGX実現に向けた基本方針を閣議決定し、エネルギーの安定供給確保に向けて、再生可能エネルギーや原子力といったエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する方針を明確化しました。これを踏まえ、GX脱炭素電源法案を国会に提出されましたが、今般この法案を国会に提出した岸田総理の狙い、そして脱炭素社会の実現に向けた決意を改めて総理に伺います。

 また、ロシアのウクライナ侵略等による燃料価格の高騰によって、国民生活にも大きな影響が生じています。岸田総理は、日本のGXは脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の三つを実現するためのものであるとおっしゃっていますが、それらは難しいバランスを取って、いわば複雑な連立方程式を解くようなものと考えます。このような情勢の中、この法案によって、今後の脱炭素やエネルギー安定供給、経済成長の実現にどのようにつなげていくのか、岸田総理に伺います。

 GX実現に向けた基本方針において、再生可能エネルギーは重要な脱炭素電源と位置づけられ、二〇三〇年度の電源構成で三六から三八%の確実な達成を目指すこととされています。再生可能エネルギーの最大限の導入に当たっては、適地への導入を進めつつ、地域との共生を促していくことが必要です。

 再生可能エネルギーの最大限の導入に当たっては、系統整備が重要と考えます。GX実現に向けた基本方針において、今後、全国規模での系統整備や、風力発電などの適地である北海道からの海底直流送電の整備を進める方針が打ち出されています。この法案においても、系統整備のための環境整備を進める観点から新たな認定制度の創設などが盛り込まれていますが、今後どのように系統整備を加速していくのか、西村経済産業大臣に伺います。

 再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、森林伐採などによる災害への懸念、環境、景観に関する不安が各地で高まり、地域や周辺住民とのトラブルの事例が増加しています。このような状況を踏まえ、しっかりと事業規律を強化して地域からの信頼を獲得することが、主力電源化を進める上での大前提と考えます。地域の不安の声に向き合い、早期の対応を行うための具体的な取組について、西村経済産業大臣に伺います。

 再生可能エネルギーを最大限活用したとしても、我が国がエネルギー安定供給の確保とカーボンニュートラルの実現の両立を図るためには原子力を活用することが必要であると考えますが、原子力の活用に向けては、安全性を最優先とすることが大前提です。岸田総理には、GX実現に向け、原子力の重要性や今後の方針を示していただいたことを強く支持します。

 今回の法案では、既存の原子力発電所を可能な限り活用していく観点から、原子力発電所の運転期間制度の見直しを行うこととしています。一方で、東京電力福島第一原子力発電所の事故を経験した我が国において、高経年化した原発を長く活用していくことに対する不安の声があることも事実です。今後、高経年化した原発の活用に当たって、原子力発電所の安全性の確保に向けてどのように対応していくのか、岸田総理に伺います。

 原子力の活用に当たっては、安全性の確保と同時に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の問題や使用済燃料の再処理施設の竣工など、原子力のバックエンドの問題についてもしっかりと対応を進めていく必要があります。こうしたバックエンドの問題について、今後、政府としてどのように対応を進めていくのか、最後に西村経済産業大臣にお伺いし、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 岩田和親議員の御質問にお答えいたします。

 法案提出の狙いや脱炭素社会の実現に向けた決意についてお尋ねがありました。

 GX脱炭素電源法案は、国民生活や産業の基盤となるエネルギーの安定供給と気候変動問題への対応を両立すべく、脱炭素電源である再エネ、原子力を含めたあらゆる選択肢を確保することを狙いとしたものです。

 脱炭素、エネルギーの安定供給、経済成長の三つを同時にバランスよく実現するためには、社会経済全体の変化も視野に入れながら、付加価値の高い脱炭素電源がエネルギーの安定供給を支え、成長を牽引していく絵姿を描くことが必要です。

 本法案では、電力系統全体の強靱化等を通じた再エネの導入促進や、原子力に関する人材、技術、産業基盤の強化、研究開発の加速などに取り組むこととしています。こうした脱炭素を基軸とした様々な取組を我が国の経済全体の発展につなげてまいります。

 原発の安全性の確保についてお尋ねがありました。

 今後も原子力を活用し続ける上で、安全神話に陥って悲惨な事故を防げなかったという反省をひとときたりとも忘れることなく、いかなる事情よりも安全性を優先していくことが重要です。

 今般の措置は、原子力規制委員会における議論に沿って、これまでの原発の運転期間に係る定めを利用と規制の観点から峻別し、電気事業法と原子炉等規制法の二つに再整理するものであります。

 具体的には、利用政策の観点から、電気事業法において、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限って、六十年の運転期間のカウントから除外することを認めることとしております。

 その上で、新たな高経年化規制として、原子炉等規制法において、運転開始から三十年を超えて運転しようとする場合には、十年以内ごとに、設備の劣化に関する技術的評価を行う等の安全規制の厳格化に向けた制度を位置づけております。これにより、より高い頻度で、より厳格な審査が行われることとなると考えています。

 すなわち、利用政策の観点からの運転期間の判断がどうであろうとも、独立性の高い原子力規制委員会が厳格な安全審査を行い、規制基準への適合性が確認できなければ、運転は一切認められない大前提に全く変わりはありません。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 岩田議員からの御質問にお答えをいたします。

 系統整備の加速化についてお尋ねがありました。

 再エネの大量導入と供給の安定性強化に向けて、地域間の電力融通を円滑化する系統整備を加速することは極めて重要です。今後、マスタープランを踏まえて、全国で送電線の整備を着実に進めてまいります。

 一方、巨額な資金が必要となる、北海道と本州を結ぶ海底直流送電等の送電線整備については、着工から運転開始までの初期費用に係る資金調達が新たな課題として顕在化しています。

 そこで、今回の法案では、海底直流送電のような特に重要な送電線については、着工段階からの再エネ賦課金の交付や電力広域的運営推進機関による貸付けにより、必要な資金調達を円滑化する予定です。加えて、民間資金の活用に向けて、別途御審議いただいているGX推進法において、債務保証等の資金調達円滑化の措置を講ずる予定です。

 これらの措置を総合的に講ずることにより、再エネの最大限の導入に向けて、必要な送電線整備をしっかりと進めてまいります。

 再エネ導入への対応についてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーについては、地域との共生を前提に、二〇三〇年度三六から三八%の導入目標実現に向けて最大限導入していくことが政府の基本方針です。

 一方、再エネの導入に際し、安全面、防災面、景観、環境への影響など、地域の懸念が顕在化した例もあると承知をしております。

 こうした地域の懸念に適切に対応すべく、本法案では、関係法令に違反する事業者に対してFIT、FIP交付金による支援を一時停止する措置や、違反が解消されず認定取消しに至った場合、違反期間中のFIT、FIP交付金による支援額の返還を命じる措置などを盛り込んでいるところです。

 本法案による事業規律の強化を踏まえ、地域と共生した再エネの導入拡大を進めてまいります。

 原子力のバックエンドについてお尋ねがありました。

 安定的かつ継続的に原子力発電を利用するためには、核燃料サイクルの推進や最終処分など、バックエンド対策は重要な課題であります。

 高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用などの観点から、核燃料サイクルを推進することが我が国の基本方針であります。使用済燃料を再処理し、回収したプルトニウム等を原子力発電所において再利用するとともに、再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分の実現を目指していきます。

 こうした核燃料サイクルの実現に向けて、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、六ケ所再処理工場の竣工に向けた取組など、引き続き着実に進めてまいります。

 半世紀以上にわたり原子力を利用し、使用済燃料が既に存在している以上、高レベル放射性廃棄物の最終処分は必ず解決しなければならない重要な課題であり、将来世代に負担を先送りしないよう、我々の世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要です。

 二月十日の最終処分関係閣僚会議で示した特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案のとおり、国が、政府一丸となって、かつ政府の責任で、最終処分に向けて取り組んでまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 田嶋要君。

    〔田嶋要君登壇〕

田嶋要君 立憲民主党の田嶋要です。

 立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案、いわゆるGX脱炭素電源法案につき、政府の危機感のなさに強い危機感を覚えながら質問させていただきます。(拍手)

 まず確認したいのは、目の前の電気料金の値上げです。

 全ての大手電力会社において、カルテル行為や新電力の顧客情報の不正閲覧など違法行為が続発している中での電気料金の値上げは、国民の理解が得られるはずがありません。

 総理、当然、原因究明や再発防止策、また罰則強化のないままの値上げは認めないということでよろしいですね。この点については、河野消費者担当大臣にも御見解を伺います。

 そして、今回のような違法行為への懸念の声は、二〇一〇年代の電力システム改革の当時から上がっていました。総理、中途半端な改革の不安的中です。電力システム改革をもう一度スタートさせませんか。

 そんな折、電気料金がモデル世帯でこの五月請求分から月に八百円程度値下がりするという知らせが入りました。言うまでもなく、これは新たな政策によるものではありません。もちろん、誰の手柄でもありません。今の再エネ買取り制度の仕組み上、来年度に向けて再計算された結果の再エネ賦課金の引下げです。

 西村経済産業大臣、化石資源値上がりの局面でこのような再エネ賦課金の引下げが起きる仕組み、そして、今後のその見通しをお聞かせください。

 さて、それにしても不可解なのは、いまだ衰えぬ、政府の原発に対する強いこだわりです。

 新増設はしないと言っていた政府が、ある日突然、原発回帰への大転換。ところが、総理は、可能な限り原発依存度を低減させるとも過去に発言。

 岸田総理、改めて、原発の新増設は進めるが、可能な限り原発依存度は低減させるということですか。であるのであれば、なぜ昨年の骨太の方針やGX基本方針から依存度低減を削除されたのですか。岸田総理、この夏の骨太方針には依存度低減の記載を復活させ、次期のエネルギー基本計画にも明記なさいますか。お答えください。

 あれから十二年。またじわじわと安全文化から安全神話への変質、回帰が始まっているように私には見えます。とりわけ、規制のとりこへの反省から三条委員会としてスタートした原子力規制委員会は、現在の山中委員長になって以来、まるで経済産業省の親しい友人になった印象で、独立性や中立性に不安を感じる言動が目につきます。

 岸田総理、李下に冠を正さずです。法律の六十年ルールを環境省所管の法律から引き剥がして経産省の法律に移そうとしたり、規制庁の内部検討資料が今なお黒塗りで出てきたり、また、経産省と規制庁の職員がこそこそと、あるいは白昼堂々と地下鉄の駅で情報交換をするなど、岸田総理、まさにこうした一連の行為が原発や原子力産業全般への国民の不信感や怒りを限りなく高めているということに思いは至りませんか。

 今回の電気事業法改正の目的は、今はどんなに長くても最長六十年までとしている原発を六十年以上動かせるようにすることです。原子力規制委員会の石渡委員が反対意見で的確に指摘されたとおり、安全審査を丁寧に長く行えば行うほど古い原発を動かせることになってしまいます。

 総理、炉規法の改正の点に話をすり替えずに、この電気事業法改正の部分については、紛れもなく安全規制を緩める方向への改正、改悪だと正直にお認めください。

 岸田総理、そもそも原発と太陽光や風力とでは、どちらの発電コストが安いとお考えですか。

 私の認識では、世界では既に太陽光や風力が圧倒的に安いのです。この十年間で劇的にコストが下がったのは、太陽光や風力が分散的に世界中で取り組まれ、資金もますます集まり、発電効率も上がり、量産効果が生じたからです。どう考えても、原発でそのようなことは起こり得ません。

 総理、事業者にとっての原発の発電コストを安くするためには、様々な補助金などを事業者に出すなど、結局は国民負担を大きくしていくことになるのではありませんか。

 半導体、太陽光、風力、蓄電池などなど、日本の将来の飯の種が政府の産業政策の失敗で次々と国際競争力を落とす一方で、経済合理性が期待できない次世代原発に政府が再び前のめりになっていく。これが、私は、日本衰退へのいわばとどめの一撃になることを強く懸念をいたしております。

 先日、ある与党の関係者の方にこんなことを言われました。田嶋さん、原発を続けるかどうかはエネルギー政策だけの話ではないんだよ、原子力基本法の第二条には我が国の安全保障に資するとわざわざ書き込んだんだよ。

 これに関しては、三・一一当時の環境大臣、今は自民党においでですが、の答弁がありますけれども、改めて問います。岸田内閣が経済合理性の全くない原発にこだわり続け、原発回帰を強める本当の理由は、電力供給というよりは、将来の日本の核武装の可能性を視野に入れた技術や知見の維持のためなのでしょうか。総理、正直に国民に御説明ください。

 ちなみに、フランスのマクロン大統領は、原発なくして核兵器産業なし、核兵器産業なくして原発なしと発言されています。

 なお、今日の核分裂技術と将来の核融合技術とは似て非なるものというのが私の認識です。

 そこで、お尋ねします。

 岸田総理、過度な期待は禁物ですが、そもそも核融合技術には、事故やミサイル攻撃等によって放射能が地域社会に拡散するリスクはあるのかないのか、また、高レベル放射性廃棄物の処分の困難性の課題はあるのかないのか、核分裂技術と比較して、それぞれ、総理の御認識を伺います。

 再エネの失われた十年。世界に大きく遅れて、二〇一二年、民主党政権下でようやく再エネ買取り制度がスタートしました。しかし、その後の十年間で、多くのメガソーラーは地域社会の嫌われ者となり、今や日本だけが失速です。

 資源の乏しい国日本、膨大な化石資源の輸入に依存し続ける日本であればこそ、燃料の要らない再エネは、本来であれば日本の救世主であり、日本こそがGXの最大の勝者、受益者になる可能性があったのです。岸田総理、大谷選手のような世界一のプレーヤーになってほしいとは申しません。せめて他の先進国並みのことをやってほしいのです。危機感がなさ過ぎるのです。三月二十日のIPCC統合報告書が強調したとおり、知識も手段も資金も既にあるのです。

 総理、今からでも、御自分の目で見て、御自分の頭で考えていただき、言葉の真の意味で、国の総力を挙げて再エネの社会実装を加速させませんか。遅れに遅れて、もう時間がないのです。その際、日本には再エネ適地が限られているとか、この十年で再エネ比率は一〇%も増えたなどということを二度と強調しないでいただきたいと思います。

 経済産業省の癖として、夢を追うような研究開発分野、とりわけ原発関係には熱心な一方で、既に実用の段階に入った、つまり、リスクも小さく経済合理性も高い既存技術、省エネも再エネも、それらの社会実装には余り関心を示しません。これは大きな誤りです。日本が遅れる根本原因です。

 岸田総理、例えば、住宅の断熱強化や、そして道路脇や線路脇のソーラー発電、営農型発電など、他省庁にまたがる分野にも、もっと本気になって政府が動きませんか。そして、その際に、総理、もっと全国の自治体を本気にさせる支援策を導入し、それぞれの地域で地産地消のエネルギーを作り出すためのゾーニングを行い、地域の協同組合や小規模事業者、個人もステークホルダーとして格段に増やすなど、ドイツやデンマークなどの先進事例に学びながら推進すべきではないですか。

 鍵は、地域社会との共生です。外からやってきた事業者がその地域の自然を破壊し、かつ利益を独り占めする再エネなど、地域に歓迎されるはずがありません。

 加えて、総理、いかなる発電設備もやがては廃棄物になります。ソーラーパネルのリサイクルを、自動車や家電の事例を参考に、混乱なく進めるための政策を今から着実に進めませんか。設備の寿命が来たときにもう一度ソーラーが嫌われ者になることのないように、総理から御所見を伺います。

 コモディティー化している今のソーラー発電産業には、経済産業省は大きな関心を持っていないと理解しています。今のソーラーの普及拡大では、ある意味、燃料の中東依存からパネルの中国依存へシフトするだけという見方もあります。

 しかし、来るべき日本発のペロブスカイト技術のソーラーパネルは、まるで下敷きのような薄さと軽さで、素材的にもコスト的にも、今普及しているシリコン系などとは全く別物です。

 であれば、岸田総理、ノーベル賞も期待されるこのペロブスカイト技術をベースに、改めて、太陽光発電に関わる物づくりのサプライチェーンを国内で再構築していきませんか。

 なお、そのペロブスカイトに必要不可欠の原料とされるヨウ素は我が国で産出されると聞いています。その我が国における世界のシェアも併せてお知らせください。

 発電側が幾ら再エネを増やしても、その電気が消費者に届けられなければ意味がありません。

 総理、再エネ発電を無補償で強制的に出力制御させている今の理不尽な制度を今すぐにでもやめませんか。そんなことを続けているから、ますます日本の再エネが魅力を失うのです。

 また、今回、政府は、送電網への今後十年間の設備投資を過去十年間の八倍以上の容量に強化するようですが、これも突然で、違和感を覚えます。

 岸田総理、そもそも、二〇一〇年代の電力システム改革により、広域的運営推進機関を中心に、分散型エネルギー社会に必要な送電網への設備投資は存分に行えることになったのではなかったですか。なぜ今頃になって法改正を言い出すのでしょう。なぜ今から急に八倍なのですか。これもまた失われた十年ではありませんか。

 結びに、私たち立憲民主党は、雇用の公正な移行をしっかりと果たしながら、二〇五〇年のカーボンニュートラルという国際公約を達成し、化石燃料にも原発にも依存しない分散型の自然エネルギー社会をつくり上げていきます。また、食料と並んで、暮らしや産業、そして我が国の安全保障に不可欠のエネルギーの自給率を高め、我が国の産業競争力を強化し、新たな経済成長を目指し、そのための官民の取組を最大限後押ししていく所存です。そのことを最後にお約束し、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田嶋要議員にお答えいたします。

 電力会社における不適切事案や電気料金の改定申請、電力システム改革についてお尋ねがありました。

 大手電力会社における不適切事案は、電気事業の公正な競争を損ない、電力システム改革の趣旨に反するものであり、極めて遺憾であります。今後、事実関係の究明や再発防止策の検討など、厳正に対応することが重要です。電力システム改革の趣旨徹底に向けて、不正閲覧が起きないような情報システムの物理分離を始め、しっかりとした検証と再発防止策の策定を、経済産業省において、有識者の意見も聞きながら行ってまいります。

 電気料金の改定申請については、燃料価格の高騰などを背景としたものであり、電気事業法に基づいて定められた手続や審査ルールに従い、厳格かつ丁寧に審査を行ってまいります。その際、国民の理解を得るため、真に必要な費用のみ織り込まれているか、経営効率化が徹底されているかなど、期限ありきでなく、厳正に審査をしてまいります。

 原発依存度低減についてお尋ねがありました。

 第六次エネルギー基本計画では、原子力について、必要な規模を持続的に活用していくとともに、原発依存度を可能な限り低減と記載しているところです。二月に閣議決定したGX基本方針においても、エネルギー基本計画を踏まえて原子力を活用していくことを明記しているように、この方針に全く変更はありません。

 来年度の骨太の方針や次期エネルギー基本計画の内容については、今後、検討を行ってまいります。

 原子力規制委員会の独立性及び電気事業法の改正についてお尋ねがありました。

 原子力規制委員会は、令和二年に、原発の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用政策の判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではないとの見解を決定いたしました。

 これを受けて、今般の制度改正では、これまでの運転期間に係る定めを利用と規制の観点から峻別し、電気事業法と原子炉等規制法の二つに再整理するものであり、原発事故の反省の趣旨を徹底するものであります。安全規制を緩める方向に改悪するとの指摘は当たりません。

 新たな高経年化規制では、より高い頻度で、より厳格な審査を行うこととなると考えております。利用政策の観点からの運転期間の判断がどうであろうとも、高い独立性を有する原子力規制委員会が厳格な安全審査を行い、規制基準への適合性が確認できなければ、運転は一切認められない大前提に変わりはありません。

 なお、原子力規制庁と資源エネルギー庁のやり取りについては、国会や会見での説明、情報公開法にのっとった対応が行われており、今後とも、必要に応じ、所管官庁において適切に対応されるべきものであると考えております。

 いずれにせよ、原子力に対する国民の信頼確保が不可欠であり、原子力規制委員会の独立性が重要である、これは言うまでもありません。国民の皆様に更に御理解いただけるよう、適切に対応してまいります。

 発電コストについてお尋ねがありました。

 二〇二一年の発電コスト検証結果によると、今後の燃料価格の動向、悪天候時における火力発電による再エネのバックアップコストなども踏まえますと、再エネと原子力のどちらが安いと一概に言うのは困難であると承知をしております。

 国によるエネルギー分野での支援としては、原子力以外にも、再エネ導入に向けた賦課金、研究開発支援などを講じており、これは、資源の乏しい我が国においてエネルギー安定供給と脱炭素を両立させるために、省エネ、再エネ、原子力などあらゆる選択肢を追求するためのものであり、引き続き、必要な支援を行ってまいります。

 原子力政策と安全保障についてお尋ねがありました。

 今般お示しした原子力利用の方針は、国民生活や産業の基盤となるエネルギーの安定供給と気候変動問題への対応を両立すべく、脱炭素電源である原子力を含めたあらゆる選択肢を確保すること、これを狙いとしたものであります。

 我が国は非核三原則を堅持しており、また、原子力基本法第二条では、原子力利用は平和の目的に限ることが明記されており、今般の方針が我が国の核武装の可能性を視野に入れているということは全くありません。

 核融合についてお尋ねがありました。

 核融合炉については、核分裂炉と異なり、燃料の供給や電源が停止することで反応が速やかに停止するとともに、メルトダウンも起こらないことから、核分裂炉に比べて、事故等により多量の放射能が地域社会に拡散するリスクは低いと認識をしております。

 また、核融合では高レベル放射性廃棄物は生じないことから、核分裂に比べて処分が容易であると承知をしております。

 再エネの社会実装や省エネの取組の加速についてお尋ねがありました。

 再エネ導入に当たっては、様々な制約がある中でも、国民負担を抑制しつつ、地域と共生しながら、二〇三〇年度に再エネ比率三六から三八%という目標の実現に向けて最大限導入していくことが政府の基本方針です。

 引き続き、建築物の屋根への太陽光発電の設置促進や、洋上風力発電の導入拡大など、関係省庁がしっかりと連携をし、再エネの最大限導入に向けて取り組みます。

 加えて、住宅の断熱強化などの省エネ分野においても、断熱窓への改修などに合計二千八百億円の支援を実施するなど、関係省庁間の連携を強化しています。

 また、地方自治体主導の再エネ導入を推進するため、地域脱炭素の推進のための交付金も活用した脱炭素先行地域の創出等を行うほか、地球温暖化対策推進法や農山漁村再エネ法に基づき、再生可能エネルギーを促進する区域の設定、これを後押ししてまいります。

 太陽光発電の廃棄とサプライチェーンについてお尋ねがありました。

 現在導入されている太陽光パネルについては、二〇三〇年代後半に大量廃棄が見込まれており、計画的に対応を進めることが必要であると考えています。

 環境省、経済産業省が中心となり、太陽光パネルの廃棄やリサイクルに関して、制度的措置を含め、検討を行ってまいります。

 また、ペロブスカイト太陽電池は、日本発の技術で、軽量で柔軟性を有するという特徴があり、建物の壁面などにも設置可能なものです。また、主要な原料であるヨウ素については、日本が世界第二位となる約三〇%のシェアを有するなど、サプライチェーン構築の上でも優位となることが期待をされています。国内サプライチェーンの構築も見据え、グリーンイノベーション基金などを活用し、早期の実用化に取り組んでまいります。

 再エネの出力制御と送電網の整備についてお尋ねがありました。

 再エネの出力制御は、安定供給のため、電力需給バランスを維持するために行うものであり、火力の最大限制御、揚水発電等による需要創出、他地域への送電などを行ってもなお供給が需要を上回る際に限定的に行うものであります。

 可能な限り出力制御を低減するため、蓄電池の導入や地域間連系線の整備などを進めてまいります。

 なお、御指摘の、地域間連系線の容量を八倍とすることについては、GX基本方針では、これまで作成した計画に基づき、現在増強に取り組んでいる東京―中部間の周波数変換設備などに、今後計画を策定していく北海道からの海底直流送電なども加え、八倍と掲げたものであり、さらに、資金調達が円滑に可能となる仕組みを本法案により整備し、取組を加速してまいりたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 電気料金の値上げと今般の電力会社の不正事案についてお尋ねがありました。

 公共料金の改定に当たっては、消費者基本法において、消費者に与える影響を十分に考慮することになっており、一定の重要な案件については、所管省庁が認可等を行うに先立って、所管省庁から消費者庁に協議がなされることとなっております。

 現在、電力会社から経済産業省に対して電気の規制料金の値上げ申請が行われておりますが、消費者に与える影響が極めて大きいことから、消費者の理解と納得を十分に得られるようにすることが重要であると考えております。

 こうした中、電力会社によるカルテルの疑いや顧客情報の不正閲覧といった不正事案が立て続けに発覚し、消費者の信頼が損なわれております。

 消費者庁としては、まずは、こうした事案が料金へ与える影響の検証、また、これら事案の発生を許してきた体制、仕組みをどう改めていくのか、経済産業省でしっかりと検討していただきたいと考えております。

 岸田総理から西村経済産業大臣には、あらゆる経営効率化を織り込み、厳格かつ丁寧な査定による審査を行うよう御指示されているところであり、こうした点についての検討も踏まえ、協議に対応してまいります。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 田嶋議員からの御質問にお答えします。

 再エネ賦課金についてお尋ねがありました。

 再エネ賦課金については、再エネ特措法に基づき、年度の開始前に、経済産業大臣が、再エネ特措法に定められた算定方法にのっとり設定されることとされています。

 具体的には、再エネ発電設備で発電された電気の買取り費用から、再エネ電気を卸電力市場に売電した場合に得られる収入を除いた額を、販売電力量で割って得られた額を基礎に定めることとされています。

 二〇二三年度の単価については、こうした算定方法にのっとり、ウクライナ情勢に起因する年間を通じた市場価格の実績等を反映した結果、一キロワットアワー当たり一・四〇円と、二〇二二年度から二・〇五円の低下、負担軽減となります。

 再エネ賦課金については、今後の再エネ導入状況や市場価格の推移等によって影響を受けるため、正確に見通すことは困難ですが、引き続き、再エネ特措法にのっとり、厳格に算定してまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。

 会派を代表して質問いたします。(拍手)

 政府は、脱炭素の目標として、二〇三〇年度の温室効果ガス排出について二〇一三年度から四六%削減すること、二〇五〇年までにカーボンニュートラルを目指すことを掲げ、二〇二一年十月に第六次エネルギー基本計画として、二〇三〇年の電源構成比率の目標を設定しています。そこでは脱炭素の電源構成比率は五七から六一%となっていますが、その実現性について、自ら、かなりチャレンジングな目標と明言しています。

 一方、二〇二二年六月、岸田総理が出席されたG7ドイツ・エルマウ・サミットのコミットで、電力部門の脱炭素目標に関して、二〇三五年までの完全に、又は大宗が脱炭素化された電力部門という目標に向けた具体的かつ適時の取組を重点的に行うことにコミットすることを各国首脳で確認しました。原文では、完全にはフーリー、大宗はプリドミナントリーですが、当時の山口環境大臣は、記者会見で、何割がプリドミナントリーかというのは必ずしも決まった定義はないが、少なくとも半分以上というところでもって、よしと答えています。

 環境・エネルギー大臣会合ではプリドミナントリーだけだったものに、首脳コミュニケでフーリーが追加された経緯を考えれば、少なくとも半分以上でよいという認識は他国とはかけ離れているとしか思えず、事実、フランスでは現時点で既に脱炭素電源が九一%を占め、ドイツは二〇三五年に一〇〇%、他の国も八〇%近くにする目標を掲げています。

 我が国として、エルマウ・サミットでの合意におけるプリドミナントリーを何割ぐらいと認識しているのか、環境大臣の言うように電力の半分程度が脱炭素となっていればよいと総理もお考えなのか、五月の広島サミット議長として明確にお答えください。

 再エネを一層拡大するためには、自由な市場を実現するための公正な取引環境が担保されていることが必須です。

 しかし、ここ最近、大手電力会社において、事業用電気販売をめぐるカルテル事案、新電力会社顧客情報の不正閲覧、さらには小売部門社員による経済産業省の再エネ発電事業者データベースの不正閲覧といった、電力市場の公正な競争を阻害する重大な違法行為事案が次々と発覚しており、抜本的な電力システム改革は不可避です。

 今月二日に開催された内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースでも、不正閲覧は新電力が大手電力の小売部門と競争することを著しく困難にすると指摘し、新電力が不当に撤退を余儀なくされたり電気料金が高騰したりした可能性も否定できないと、罰則の強化などとともに所有権分離を求めました。

 元々、二〇一五年の電力改革の際に、発送電分離に関する議論では、電力システム改革専門委員会の報告書で、中立性を実現する最も分かりやすい形態として所有権分離があり得るが、これについては改革の効果を見極め、それが不十分な場合の将来的な検討課題とするとされ、まずは法的分離でスタートしたところですが、今般、この法的分離では公正な競争条件の確保はできないということが明らかになったわけです。

 同様に、発電事業者と売電事業者についても、公正取引委員会が電力自由化の当初より発販分離の必要性を指摘していましたが、その後、大手電力グループ内において、変動数量契約がグループ内会社に有利な条件で設定されていたことが明らかになるなど、内外無差別の徹底が課題です。二〇二一年の四月時点で七百六社あった新電力の約三割に当たる百九十五社が今月までに契約停止や事業撤退、このうち二十六社が倒産や廃業に追い込まれているとの報道もありますが、燃料費の高騰のみならず、市場の自由化が健全に機能していないことにも一因があるのではないでしょうか。

 発電事業者と送電事業者を法的分離にとどまらず所有権分離していくこと、発電事業者と売電事業者を更に分離していくことが必要と考えますが、総理の見解をお伺いします。

 加えて、再発防止の観点から、電力・ガス取引監視等委員会を経産大臣の下に置くのではなく、公取委と同じ三条委員会に格上げすることや、法令に違反した事業者への罰則を強化するなど、市場を適切に監視、統制する仕組みの整備を推進することも重要であると考えますが、総理の認識をお尋ねします。

 本法案では、再エネの最大限の導入拡大支援として、再エネ導入に資する系統整備のための環境整備を進めるとしています。しかし、再エネの拡大を阻害している主な要因の解決にはスピード感を感じません。電源のポテンシャルを考慮し、マスタープランに基づき計画的に対応するプッシュ型系統整備を加速すること、系統混雑時に再エネを優先的に接続することを担保する制度を構築することについて、いつまでに、どのレベルまで持っていこうとしているのか、具体的な目標設定について、経産大臣、お答えください。

 本法案では、太陽光発電設備の更新や増設を促すための追加投資部分に関わる新制度を導入することとしていますが、一方で、乱開発等による被害を発生させないための立地規制の強化が求められています。

 政府は、認定申請前に、災害の危険性に直接影響を及ぼし得る林地開発許認可の取得を求める等の対応を省令で措置するとしていますが、災害面のみならず、景観などの問題も顕在化しています。認定要件として、事業内容を周辺地域に対して事前周知することを追加することとしていますが、もう一歩踏み込んで、そもそも、景観等への配慮も含めた立地規制の強化を法的に整備していくことが必要と考えますが、総理の認識をお伺いします。

 再エネをスピーディーに拡大していくには、太陽光発電や風力、特に洋上風力発電への重点投資を推進することが効果的ですが、GX経済移行債の二十兆円の使途には再生可能エネルギーに関わる項目が含まれていません。二〇二二年八月に成立したアメリカのインフレ抑制法でも、国内の再エネ拡大や生産体制の確立は最重点項目です。なぜGX経済移行債二十兆円の政府支援額の対象に再エネの拡大が入っていないのか、経産大臣にお尋ねします。

 これまで再生可能エネルギーの拡大を阻害してきた諸課題への具体的かつ大胆な対応策が必要です。太陽光や陸上風力発電を促進するため、耕作放棄地における農地転用を可能とする農地法改正、地熱発電を促進するための温泉法や自然公園法の規制緩和を速やかに進めていくことが極めて重要と考えますが、総理の見解をお伺いします。

 洋上発電の拡大について言えば、政府が進める日本版セントラル方式では、肝腎の漁業権調整段階では国の関与を求めておらず、最大のネックとなっています。補償金等に関わるルールを設定した上で、国が主導して漁業権調整段階から関与する、本格的なセントラル方式を導入すべきと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 今後、太陽光発電を一層促進していく際、中国への依存度が過度に高まっている太陽光パネルについて、新たなサプライチェーンを迅速に構築していく必要があると考えますが、どのように構築していくお考えか、経産大臣にお尋ねします。

 今後政府が進めようとしている既存原発の運転期間の延長や次世代革新炉への建て替えを行うに当たっては、国、地方自治体、事業者の責任を法的に明確化することが不可欠であると考えます。

 現在も、設置許可等において、実態上は関連自治体の同意を得ながら進めていますが、法的にはどこにも規定されていません。また、総理大臣の関与もどこにも規定されていません。

 設置許可や重大事故発生後最初に変更許可を申請する場合には、関係都道府県知事の同意を必要とすること、関係都道府県知事は関係市町村長の意見を聞かなければならないこと、原子力規制委員会が許可をする場合には内閣総理大臣の同意を得なければならないことなどの責任を明確化することとともに、許可後は、同意した関係都道府県は円滑な設置、運営に資するように必要な支援を行うように努めることなどを法律で明確に定めることが必要であると考えますが、総理の見解をお伺いします。

 幾ら原発の運転期間を延長しても、定期検査や設置許可等において、原子力規制委員会の審査に時間がかかり過ぎていては意味がありません。原子力規制委員会は公表している標準処理期間内に審査を終わるように努めなければならないことをきちんと法律で明文化し、手続の合理化や効率化によって審査期間を短縮するよう促すことが必要と考えますが、総理の見解をお尋ねします。

 現在も増え続けている核のごみの処理の見通しが立たないまま、国が原発の新増設を行うことは、ツケを将来世代に回すことを意味し、断じて許されません。

 これまで高レベル放射性廃棄物の最終処分場の確定が進んでこなかった理由について、総理の認識をお伺いします。

 最終処分場確定を着実に進めるために、まずは、期限を明示した工程表を作成し、加えて、その工程がうまく進まない場合のプランBも同時に準備しておくことが重要です。その上で、その工程が日程どおりに進まない場合は、設置許可や運転期間の延長の認可を認めない仕組みを導入する等、国が責任を持って処分場建設に取り組むための具体的な方策が必要ではないかと考えますが、総理のお考えをお尋ねします。

 これまで原発は国策民営で推進され、廃炉費用や損害賠償などについては、第一義的には民間電力会社の責任で対応することが求められてきました。福島第一原子力発電所の事故を受け、求められる安全水準が大きく変化し、新基準への対策のために重い負担が事業者にのしかかっています。こうした流れは、技術の進展に伴い、今後も継続することが予想されます。今後、確実な原子力事業の運営を行うには、民間の責任を有限化することを検討すべきかと思いますが、総理のお考えをお伺いします。

 さらには、今後の廃炉や最終処分場確定も勘案すれば、原子力事業は国有化して、国が責任を持って事業を推進する運営体制とした方がよいのではないかという考えもありますが、こうした考えについて、総理の認識をお尋ねします。

 最後に、省エネ促進のための施策についてお尋ねします。

 二〇二二年六月に改正建築物省エネ法が成立したものの、その内容は二十年も前の基準を義務づけているにすぎず、我が国の住宅、建築物の断熱性能向上に向けた更なる法整備が必要であると考えますが、総理の認識をお尋ねします。

 学校などの公共建築で二重窓の設置と天井、壁の断熱改修を行えば、年間暖房消費電力量は約九割、ピーク時暖房出力は七割から八割削減される、あるいは、全国約三千万戸の住宅のうち一千万戸に二重窓の設置という簡易な断熱改修工事を行えば、火力発電所四基分相当の電力ピークの抑制が可能という試算もあります。

 足下の電力・ガス料金の高騰への対応も考えると、特に低所得者層の負担軽減が喫緊の課題です。省エネに資する住宅の改修や家電製品購入のための費用を政府が直接支援する制度を、例えば三年間といった集中期間を設け、低所得者層から順次導入していくという我が党の提言について、総理の見解をお尋ねします。

 日本維新の会は、今月九日にGX実現に向けた基本方針に関わる提言を西村経産大臣に手交し、一昨日の二十八日には原発責任明確化法案及び電力市場自由化促進法案を提出しました。政府には、是非、我々の前向きな提案を真摯に受け止め、自らの言葉で答弁を行っていただくことをお願いし、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 浦野靖人議員の御質問にお答えいたします。

 G7での合意内容についてお尋ねがありました。

 昨年のG7声明で合意された二〇三五年までの電力部門の完全又は大宗の脱炭素化に向けては、各国が自国のエネルギーをめぐる状況や技術動向を踏まえ、適切に対応していくものであり、大宗についての定量的な定義はないと承知をしています。

 我が国は、第六次エネルギー基本計画において、二〇三〇年度に脱炭素電源の比率を約六割とすることを目標としておりますが、このG7の合意内容にあります二〇三五年に向けては、更に脱炭素化を進めていく、こうしたことになると考えております。

 所有権分離や発販分離、そして電力市場監視の機能強化についてお尋ねがありました。

 相次ぐ電気事業者をめぐる不祥事は、電気の適正な取引を害するもので、極めて遺憾であり、現在、経済産業省において、事実関係の厳正な調査が行われていると承知をしております。

 そして、御指摘の所有権分離については、送配電事業の中立性の確保の一つの手法ですが、一方で、安定供給との関係や再エネ大量導入に伴うネットワーク環境の変化への対応など、法的分離のメリットもあり、まずは事実関係の確認を十分に行った上で、送配電事業の中立性確保のための再発防止策の検討を行ってまいります。

 また、発電部門から小売部門への卸取引の公平性を確保するために発販分離を行うべきとの御指摘については、電力卸取引市場の活性化や取引条件の適正化等により、公正な卸取引の環境整備は着実に進んでいるものと承知をしております。

 また、電力・ガス取引監視等委員会については、安定供給や保安の確保、そして再生可能エネルギーの普及などの観点から、経済産業大臣直属の八条委員会として、エネルギー政策の枠組みの中でその業務を行うこととしております。その上で、現在、経済産業省の有識者会議において、同委員会による監視機能の強化策について議論が開始されていると承知をしており、今後、検討結果を踏まえて、適切な対応を行うものと考えております。

 再エネの立地規制についてお尋ねがありました。

 再エネの導入促進に当たっては、安全面だけでなく、景観への配慮も含めて、地域と共生した形で進めることが重要です。

 本法案では、住民説明会の開催など、事業内容の事前周知を認定要件化する措置を盛り込んでおり、事業者に対し、景観等への影響を含めて、適切な説明を求めているところです。

 また、再エネ特措法の認定については、自治体の定めた景観条例を含む関係法令の遵守を求めており、仮に違反した場合には、本法案で措置するFIT交付金等による支援の一時停止措置なども含めて、厳格に対応してまいります。

 再エネ拡大における規制緩和と、洋上風力発電に係る漁業との調整についてお尋ねがありました。

 再エネは、重要な国産エネルギー源であり、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら、主力電源として最優先で最大限導入してまいります。

 御指摘いただいた各種規制については、これまでも規制緩和や運用の見直しに取り組んできたところですが、これに限らず、再エネに関する規制については、引き続き、必要な検討、見直しを行ってまいります。

 洋上風力発電については、まず、国が海域における洋上風力発電のポテンシャル調査を行う段階で必要となる漁業者との調整については、国が行っております。さらに、有望な区域として、事業計画の段階では、再エネ海域利用法に基づき、政府と自治体、漁業者等の利害関係者が参加する法定協議会を設置し、地域や漁業との共生策の検討や、そのための基金の設置に向けた調整などを行っています。

 このように、国が調査段階から実際の事業段階まで主導的に調整に関与することにより、効率的な案件形成を実現してまいります。

 原発利用に関する責任の明確化についてお尋ねがありました。

 原発の利用は、地元の理解が重要である一方、各地域の事情は様々であることから、国が一方的、一律に進め方を決めるのではなく、地域ごとに丁寧に相談した上で対応することが必要です。そのため、知事の同意等を法律で一律に定めることは適当ではないと考えております。

 また、原子力施設の安全規制に関しては、高い独立性を有する原子力規制委員会が、あくまで科学的、技術的見地から行うべきものであると考えております。

 原子力規制委員会の審査についてお尋ねがありました。

 原子力の利用に当たっては、安全確保が大前提であり、安全の追求に妥協は許されません。原発の審査については、高い独立性を有する原子力規制委員会が、科学的、技術的見地から、法に基づき厳格に行っているところです。

 その上で、審査に際しては、規制委員会において、できるだけ早い段階で確認事項や論点を提示するといった取組を行うとともに、公開の会合で指摘事項を事業者と双方で確認し、共通理解を得るなど、コミュニケーションの強化が図られているものと承知をしています。

 今後とも、原発の審査は、規制委員会において、審査プロセスの改善を図りつつ適切に対応されるものと考えております。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場についてお尋ねがありました。

 最終処分の確定が進まない要因としては、最終処分事業の必要性に関する理解が広がらず、関心を持つ自治体が限定的なものにとどまってしまっていることなどが挙げられると考えております。最終処分の実現に向け、先行する諸外国では十件程度の関心地域から順次絞り込んでいるように、我が国でも、最初の段階である文献調査の実施地域の拡大が課題と認識をしております。

 そのため、有望地点の拡大に向けた活動の強化、自治体における判断のバックアップ、関心自治体への省庁の垣根を越えた支援体制の構築など、具体的方策を進めるべく、最終処分関係閣僚会議を開催し、最終処分に関する基本方針の改定案を取りまとめました。

 基本方針を踏まえて、従来の公募方式と市町村長への調査実施の申入れに加えて、手挙げを待つのではなく、地域に対し政府から調査の検討などを段階的に申し入れるなど、政府として責任を持って取組を進めてまいります。

 原子力事業の運営責任についてお尋ねがありました。

 原子力の利用に当たっての様々な課題に国が責任を持って取り組むという考え方は共有しており、特に、廃炉や使用済燃料の最終処分といった課題については、将来世代に先送りせず、我々の世代で解決に向けて取り組むことが必要です。

 先月、最終処分関係閣僚会議を開催し、最終処分に関する基本方針の改定案を取りまとめたところであり、政府一丸となって、かつ政府の責任において取り組んでまいります。

 また、原子力損害賠償制度については、平成三十年の原子力損害賠償法の改正の検討に際し、事業者と国の責任の在り方についても検討し、有限責任とすることには様々な課題があることから、事業者の無限責任を維持することが妥当とされたところです。同法を中心とした枠組みに基づき、被害者に対する賠償が迅速かつ適切になされるよう、責任を持って対応してまいります。

 現段階において原子力事業の国有化が必要とは考えておりませんが、政府として、事業者が安定的に安全対策や廃炉等に関する取組を行うことができるよう、引き続き、事業環境の整備に努めてまいります。

 住宅等における省エネ促進についてお尋ねがありました。

 新築住宅の省エネ化については、まず、昨年改正した建築物省エネ法において、これまで住宅等においては義務とされていなかった省エネ基準への適合を二〇二五年度から全面的に義務化することといたしました。また、二〇三〇年度までに、適合すべき省エネ基準自体も強化いたします。

 また、既存住宅も含めて住宅の省エネ化が重要との観点から、令和四年度第二次補正予算において、断熱窓への改修や給湯器の高効率化などを支援しているほか、自治体においても、地方創生臨時交付金を活用した省エネ家電買換え支援が実施されています。

 こうした省エネ投資を継続的に実施していくべく、支援策の執行状況や効果、低所得者も含めたニーズを精査しながら、引き続き、必要な支援を進めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 浦野議員からの御質問にお答えいたします。

 系統整備や系統利用の制度設計に関する目標設定についてお尋ねがありました。

 再エネの大量導入と供給の安定性強化に向けて、地域間の電力融通を円滑化する系統整備を加速することは極めて重要です。地域間を結ぶ系統について、今後十年間程度で、過去十年間と比べて八倍以上の規模の整備に向け、取組を加速してまいります。

 また、再エネ等を円滑に系統接続するために、既存系統を効率的に活用するいわゆるノンファーム型接続について、二〇二一年一月より、基幹となる送電線で受付開始をいたしました。今後、二〇二三年四月より、基幹系統より下位のローカル系統でも開始いたします。

 また、系統混雑時については、再エネが優先的に基幹となる送電網を利用できるよう、昨年十二月より、ルールの抜本的見直しを行いました。今後、ローカル系統にも適用してまいります。

 こうした取組を通じ、再エネの大量導入を進めてまいります。

 GX経済移行債の支援対象についてお尋ねがありました。

 GX経済移行債による支援では、排出削減のみならず、経済成長、競争力強化についても重要な要件としており、再エネ分野についても支援の要件を満たしたものは対象になり得ると考えております。

 また、既に、二十兆円規模の支援の内訳として、再生可能エネルギーを含む非化石エネルギーの推進に約六兆から八兆円といった見通しもお示しをしております。

 再生可能エネルギーの最大限導入については、事業規律の強化を含むFIT、FIP制度の改善などあらゆる手段を講じ、関係省庁とも連携しながら、既存の支援制度も組み合わせ、しっかりと取り組んでまいります。

 太陽光パネルのサプライチェーン構築についてお尋ねがありました。

 エネルギー安全保障の観点からは、特定国からの供給状況に左右されることなく、より強靱なエネルギー供給構造を実現していくことが重要です。

 例えば、軽量で柔軟性を有するペロブスカイトは日本発の技術であり、主な原料であるヨウ素は日本が世界第二位の産出量となっております。

 グリーンイノベーション基金を活用しながら、研究開発から社会実装までを切れ目なく支援し、国内のサプライチェーン構築も見据え、ペロブスカイトなどの次世代太陽電池の早期実用化に取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 中野洋昌君。

    〔中野洋昌君登壇〕

中野洋昌君 公明党の中野洋昌です。

 会派を代表して、ただいま議題となりました脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案につきまして、質問をさせていただきます。(拍手)

 我が国は、二〇五〇年カーボンニュートラルを掲げて、気候変動問題という世界共通の課題に対し取組を進めています。産業革命以来の、化石エネルギーを中心とした産業、社会の構造の大転換であり、このGXを実現する中で、同時に、これを日本の経済成長へとつなげていく必要があります。

 他方、ロシアによるウクライナ侵略により国際エネルギー市場が混乱し、足下では、エネルギーの安定供給の確保やエネルギー価格高騰への対応が急務であります。

 こうした中、現在、政府においては、公明党が訴えてきた、電気代、ガス代を直接値下げする激変緩和対策事業を行っております。加えて、LPガスや特別高圧電力の利用者など、必ずしもこうした支援が行き届いていない方にも対応できるよう、一・二兆円の地方創生臨時交付金を積み増す物価高対策が政府において決定されたところですが、これが実際に現場まで届くよう、政府として最大限の努力をしていただきたい。

 あわせて、電気料金改定についても厳正に対応すること、また、今後のエネルギー価格の状況を踏まえ、必要な場合は更なる対策を取ることを併せて求めたいと思いますが、今後のエネルギーに対する物価高対策について、総理の答弁を求めます。

 カーボンニュートラル実現のためにも、また、エネルギー価格高騰への対応のためにも、徹底した省エネ支援策を大胆に講じていく必要があります。

 特に、家庭分野については、住宅の省エネ性能を高めていく必要があり、現在行っている既存の住宅向けの改修支援についても、継続して行う必要があります。また、企業の省エネについても同様であり、長期的な投資計画が立てられるよう、場当たり的に予算を積むのではなく、予見可能性が高い支援が必要であります。

 こうした省エネ支援の抜本的な強化について、経済産業大臣の答弁を求めます。

 エネルギー需給構造を転換していく上では、再生可能エネルギーの主力電源化は不可欠であります。日本は再エネには地理的に不利な環境にあるとの意見もありますが、だからこそ、政府が一丸となって、再エネの最大限導入を図る必要があります。そのために必要な系統整備と出力変動への対応を、政府が前面に立ち対策を進める必要がありますし、薄くて軽く、壁などにも設置可能なペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力など、日本が強みを持つ技術を生かし、早期の開発、事業化に向けて、官民一体となった取組を進める必要があると考えます。

 公明党としても、昨日、再エネを中心としたエネルギー政策の実現に向け提言を行ったところであり、総理の強力なリーダーシップの下、関係閣僚会議を開き、再エネ、水素等の政府全体での導入拡大を進めていただきたいと思いますが、総理の答弁を求めます。

 本法案では、原子力発電の利用についても取り上げられておりますが、国と原子力事業者は、安全神話に陥った東京電力福島第一原子力発電所の事故発生後から、今なお三万人以上の被災者が避難生活を送っている現実を重く受け止め、福島第一原発の廃炉、処理水の対策、風評対策、福島イノベーション・コースト構想の一層の具体化などを通じた福島復興の加速に全力を尽くすべきです。

 また、更なる原子力の安全への不断の取組も必要です。東京電力始め電力各社による組織運営の改革及び見直し、自治体の実情を踏まえた避難経路の確保等を含む防災・減災対策の充実、テロ、サイバー攻撃への対策、国際的な安全確保の枠組み強化などを着実に進めるべきと考えます。

 また、あくまで今後のエネルギーについては再エネの主力電源化を目指し、可能な限り原発依存度を低減させるという方針を変えるべきではないと考えますが、総理の答弁を求めます。

 エネルギー安定供給の確保とカーボンニュートラル実現に向け、既存の原子力発電所の活用という利用政策の観点から、運転期間の在り方について議論がなされてきました。運転期間の上限を設けないという案もありましたが、あくまで現行の四十年プラス二十年という枠組みを維持した上で、運転を停止していた期間のみ、例外的にそのカウントから除外するということを再度確認したい。

 また、原子力規制委員会は、長期の運転停止期間中、コンクリートなどの劣化が進展する一方で、中性子脆化といった事象は劣化の要因として考慮しなくてもよいとの見解を示しています。安全規制の観点からは、今後、高経年化した原子炉が増えていくことから、安全最優先での審査を強化した上で、安全性が証明できなければ、あくまで運転期間は六十年を待たずに停止すべきと考えます。

 こうした運転期間の在り方について、総理の答弁を求めます。

 原子力をめぐる国民理解の現状を考えると、原子力については、新設や増設ではなく、廃炉が決まった炉のリプレースについて、あくまで地元からの強い要望があり、安全性が既存の原発よりも向上する場合に限って、例外的にその可能性を追求していくべきです。

 今回のGX基本方針をめぐり、あたかも廃炉が決定した原発の後は全て次世代革新炉にリプレースされるかのような一部報道もありますが、全ての炉を建て替えるのではなく、あくまで先ほど述べたようなケースに限られるのであり、結果的には原発依存度についても低減していくという認識でよいか、伺いたい。また、こうした原子力に関する政府の方針については、正確に分かりやすく国民に説明していくべきと考えますが、併せて経済産業大臣の答弁を求めます。

 原子力に関する国民の懸念は、安全性の問題に加え、使用済核燃料の処理、処分などのいわゆるバックエンド問題が不透明なことにあります。使用済核燃料再処理工場を早期に竣工することや、高レベル放射性廃棄物の最終処分を含め、バックエンド問題について国が責任を持って対処していく必要があります。

 最後に、バックエンド問題を進める上での政府の方針について経済産業大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 中野洋昌議員の御質問にお答えいたします。

 エネルギー分野の物価高対策についてお尋ねがありました。

 地方臨時交付金については、与党提言を受けて、一・二兆円の追加を閣議決定し、LPガス支援等についても活用可能な七千億円について、既に各自治体に交付限度額を示しました。今後、自治体や関係団体などに積極的に働きかけ、全国の自治体に、LPガス使用者や特別高圧で受電する中小企業向けの支援を、この交付金を利用して行っていただけるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 また、電気料金の改定申請への対応については、申請事業者が、経済産業大臣の指示を受けて、直近の燃料費等で補正をしていると承知をしており、引き続き、厳正かつ丁寧に審査を進めてまいります。

 世界的な物価高騰は依然として予断を許さない状況であり、日々変化するエネルギー価格や経済の動向を踏まえ、今後も機動的に対応してまいります。

 再エネや水素の導入拡大についてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーは、重要な国産エネルギー源であり、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら、主力電源として最優先で最大限導入していくことが政府の基本方針です。

 そのため、本法案では、系統整備に必要な資金調達を円滑化する仕組みの整備を進め、また、地域と共生した再エネの導入加速のため、再エネ特措法に基づく手続において、事業者の規律強化が図られるよう、制度を見直します。

 さらに、グリーンイノベーション基金などを活用し、次世代型太陽電池や浮体式洋上風力の技術開発や実証を進めていきます。

 水素も、脱炭素化に向けた突破口となる重要なエネルギーです。大規模かつ強靱な水素サプライチェーンの構築に向け、既存燃料との価格差に着目した支援や需要創出につながる供給インフラ整備への支援の検討を進めてまいります。

 こうした取組について、閣議決定したGX実現に向けた基本方針も踏まえつつ、来月には再エネ・水素等関係閣僚会議を開催し、政府一丸となって強力に推進をしてまいります。

 福島復興についてお尋ねがありました。

 本年三月十一日で発災から十二年を迎えました。被災地の方々の絶え間ない御努力により、復興は着実に進んでいる一方で、いまだ避難生活を送られている方もいらっしゃるなど、地域によって状況は様々です。

 特に、福島復興に向けては、福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策、風評対策、そして、この四月に設立する福島国際研究教育機構、F―REIを始めとする福島イノベーション・コースト構想の推進、帰還困難区域における避難指示解除に向けた取組の具体化など、本格的な復興、再生に向けて取り組んでまいります。

 今後も、被災地の皆様の声をしっかり受け止め、福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なしとの強い決意の下、東日本大震災からの復興に全力を尽くしてまいります。

 原子力発電の利用の在り方についてお尋ねがありました。

 原子力の利用に当たっては、安全性が最優先であることに変わりはありません。自然災害や技術的トラブル、テロ等に対しては、高い独立性を有する原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の新規制基準の下、厳格な規制を行うとともに、万が一の原子力災害に備えて、関係府省が連携をし、避難計画の策定支援や訓練の実施、避難道の整備など、原子力防災体制の充実に取り組んでいきます。その上で、安全規制の充足にとどまることなく、不断の安全向上を目指す組織文化の醸成に取り組んでいくよう、事業者を適切に指導してまいります。

 あわせて、国際的な取組として、G7各国とも連携しつつ、ウクライナの原子力安全及び核セキュリティー強化のためのIAEAの取組等を引き続き後押ししてまいります。

 また、第六次エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーについて、二〇五〇年における主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組むとの方針を示しています。同時に、原子力について、必要な規模を持続的に活用していくとともに、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、原発依存度を可能な限り低減と記載をしています。こうした方針は、GX基本方針やそれに基づく本法案においても全く変わりはありません。

 原子力発電所の運転期間についてお尋ねがありました。

 運転期間の在り方について、運転期間を最長で六十年に制限するという大きな枠組みは維持することとしつつ、震災以降の法制度の変更など、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限って運転期間のカウントから除外することを認めるという、利用の観点からの政策判断を行いました。

 その上で、新たな高経年化規制として、原子炉等規制法において、運転開始から三十年を超えて運転しようとする場合には、十年以内ごとに、設備の劣化に関する技術的評価を行う等の安全規制の厳格化に向けた制度を位置づけることとしています。これにより、より高い頻度で、より厳格な審査が行われることになると理解をしています。

 御指摘のとおり、利用政策の観点からの判断がどうであろうとも、高い独立性を有する原子力規制委員会によって最新の知見を反映した規制基準に基づき安全性が確認されなければ、運転は一切認められない仕組みであることは大前提であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 中野議員からの御質問にお答えいたします。

 省エネ支援についてお尋ねがありました。

 足下でエネルギー価格高騰に苦しむ家庭や中小企業がある中、エネルギーコストの抑制につながる省エネは最も効果的な対策です。令和四年度第二次補正予算において、企業の省エネ設備への更新を支援する省エネ補助金に後年度分も含め約一千六百億円、家庭向けには、断熱窓への改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化支援に約二千八百億円を措置いたしました。

 今回の補助金を受けて増産投資を計画している企業もあると聞いており、こうした省エネ投資の流れを止めないことが重要です。今後の予算については、執行状況やその効果をしっかり精査した上で、関係省庁でよく議論し、必要な支援を続けていきたいと考えております。

 原子力に関する政府方針についてお尋ねがありました。

 原子力については、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくことに加え、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減することを第六次エネルギー基本計画で明記しており、この方針に変更はありません。

 この記載は、再エネの最大限導入を進める中で、震災前の約三割から原発依存度を低減するという趣旨でもあります。今般、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを行っていく方針を示しましたが、廃炉となった全ての炉を建て替えるわけではなく、御地元の御理解が得られたものに限定されることから、第六次エネルギー基本計画の、可能な限り原発依存度を低減との方針と矛盾するものではありません。

 こうした原子力に関する政府方針については、国民の皆様の幅広い御理解が得られるよう、国会での議論を始め、全国各地で実施する説明会や対話型の意見交換会、全国紙、SNSといった複数のメディアを組み合わせた情報発信など、様々な手段を活用し、分かりやすく丁寧に説明してまいります。

 原子力のバックエンド問題についてお尋ねがありました。

 今後も安定的かつ継続的に原子力発電を利用するためには、核燃料サイクルの推進や最終処分など、バックエンド対策は重要な課題であります。

 高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用などの観点から、核燃料サイクルを推進することが我が国の基本方針であります。使用済燃料を再処理し、回収したプルトニウムなどを原子力発電所において再利用するとともに、再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分の実現を目指しております。

 こうした核燃料サイクルの実現に向けて、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、六ケ所再処理工場の竣工に向けた取組など、引き続き着実に進めてまいります。

 半世紀以上にわたり原子力を利用し、使用済燃料が既に存在している以上、高レベル放射性廃棄物の最終処分は必ず解決しなければならない重要課題であり、将来世代に負担を先送りしないよう、我々の世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要です。

 二月十日の最終処分関係閣僚会議で示した、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案のとおり、国が、政府一丸となって、かつ政府の責任で、最終処分に向けて取り組んでまいります。(拍手)

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副議長(海江田万里君) 浅野哲君。

    〔浅野哲君登壇〕

浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。

 ただいま議題となりましたGX脱炭素電源法案について質問いたします。(拍手)

 ロシアのウクライナ侵攻以降、化石資源の調達価格が高騰し、我が国の電気料金は上昇を続けています。国民民主党は、国民生活や国内経済を守るため、再エネ賦課金の徴収停止法案や電気代負担軽減策を早くから主張しました。

 しかし、これらはあくまでも電気を買って使うことを前提とした対策です。現在は、家庭で発電した再エネ電気の市場価値の方が購入する電気料金単価よりも低くなっており、電気を自宅で作って、ためて使うことも経済合理的な状況になりつつあります。

 再エネの最大限導入を目指すなら、再エネの自家消費化を普及策の中心に据えて取り組むべきではありませんか。経済産業大臣に伺います。

 本法案は、再エネ導入に資する系統整備を進めるため、計画認定制度の創設や交付金の前倒し、貸付制度創設などを進める内容になっています。しかし、肝腎の再エネ電源が系統のどこにどのくらいの規模で設置されるかは手当てされていません。

 政府は、広域系統整備計画の具体化に当たっては、系統内の需給バランスや調整力配置を勘案しながら、再エネの立地誘導による全体最適化を進めるべきではないかと思いますが、経済産業大臣のお考えを伺います。

 建設業の時間外労働規制の適用を目前に控え、系統整備や再エネ導入などの現場作業員の働き方改革が急務です。しかし、現場では日中の作業停電が行えず、無停電作業や深夜作業を行わざるを得ない現場もあり、作業上の安全リスクや恒常的な長時間労働などが懸念されている状況にあります。

 再エネの導入拡大を図るに当たっては、作業者の安全確保や労働環境の適正化を図る必要があると考えますが、経済産業大臣の御認識を伺います。

 本法案では、これまで原子炉等規制法で定められていた発電所の運転期間の上限規定が削除され、電気事業法の中で規定されることとなりました。しかし、規制のための法律で運転上限を定めることと、利用のための法律で運転上限を定めることは、そもそもの意味合いが異なるのではないでしょうか。

 運転期間を四十年とした理由をひもといていくと、当初、原子炉設置許可の審査の際に四十年運転を仮定して評価が行われていたことに起因しているようで、科学的評価に基づくものとは認められませんでした。電気事業法で上限を定めるに当たっては、科学的根拠に基づく合理的な内容とすべきです。

 政府においてこれまでに原子力発電所の運転期間に応じた機器の不具合発生率や物性の変化などの科学的評価を実施した事実を把握していれば、その内容も含めて御答弁願います。

 国内の原子力発電所の長期停止が続く中で、原子力の現場で安全を支えてきた人材、技術、産業基盤の持続可能性が危機に陥っています。

 日本原子力産業協会によると、現場作業者の六〇%が運転停止期間の長期化によって技術の維持、伝承ができないと感じており、そのうち八四%がOJT機会の喪失を挙げています。また、国内企業の中には原子力事業から撤退する企業も出ており、状況は深刻です。

 政府は、原子力基本法改正案第二条の三の第一号で、技術や人材、産業基盤の維持強化を国の基本的施策に挙げていますが、具体的にどのような取組を行う考えでしょうか。経済産業大臣に伺います。

 国際原子力機関、IAEAによると、二〇五〇年までに全世界で約四百ギガワットの原子力発電所の新規建設が行われ、設備容量は現在の倍になる見通しだそうです。

 しかし、現在進行中の新設案件の多くが中国、ロシアに集中しており、今後、世界中の原子力発電所が中国、ロシアの影響下に置かれる可能性があります。他方、我が国の原子力産業はフランスに匹敵する広範なサプライチェーンを有しており、今後の国際的な新規建設プロジェクトに対する日本の貢献が欧米諸国から期待されています。

 岸田総理は、昨年五月に、バイデン大統領と臨んだ日米首脳共同声明の中で、日米の原子力協力の拡大に合意をしました。今後、具体的にどのようなテーマで協力を深めていくのか、また、我が国の原子力技術の国際展開についてのお考えも併せてお聞かせください。

 来月十五日にはG7気候・エネルギー・環境大臣会合が札幌で開催され、五月十九日からはG7広島サミットが開催されます。

 今や環境問題とエネルギー安全保障、経済安全保障は密接不可分であり、我が国は、欧米諸国とともに、ロシアや中国が世界のエネルギー市場にかける攻勢に対応していかなければなりません。ロシアと中国の連携がかつてなく顕在化する中、これらの会合は、我が国が培ってきた原子力関連技術やエネルギーマネジメント技術、高効率火力発電技術やそれらを培ってきた産業基盤の政治的重要性を伝える絶好の機会でもあります。

 それぞれの会合の中で日本のエネルギー関連産業の強みをPRし、国際協力や事業の海外展開につなげていくべきと考えますが、総理大臣及び経済産業大臣、それぞれのお考えをお聞かせください。

 以上で私の発言を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 浅野哲議員にお答えいたします。

 原子力の国際協力についてお尋ねがありました。

 昨年五月の日米首脳共同声明では、次世代革新炉の開発、ウラン燃料を含む原子力サプライチェーンの構築について、両国間で協力していくことを確認いたしました。今後とも、協力の深化に向けて米国としっかり連携をしてまいります。

 また、世界では、気候変動対策、そしてエネルギー安全保障、安定供給の実現に向けて、次世代革新炉の開発等の動きも進んでいます。我が国としても、同志国との国際連携の下、我が国原子力技術の強みを生かし、研究開発や強靱なサプライチェーンの構築等に取り組んでまいります。

 G7広島サミットでのエネルギー関連技術のPRについてお尋ねがありました。

 G7広島サミットにおいては、エネルギー、気候変動、そして世界経済、経済安全保障などといった課題への対応をG7議長国として主導していきたいと考えています。

 特に、世界エネルギー危機に直面し、脱炭素への対応も進めていくに当たって、エネルギーをめぐる各国の事情は様々であり、現実的なエネルギートランジションが重要となっています。我が国が培ってきた多様なエネルギー関連技術は、その重要な手段となり、供給源の多様化や脱炭素の実現を可能にするものです。G7の各会合を通じ、現実的なエネルギートランジションの重要性に関する認識を共有することで、我が国の優れたエネルギー関連産業が海外に展開できるよう、後押しをしてまいりたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 浅野議員からの御質問にお答えをいたします。

 再生可能エネルギーの自家消費による導入拡大についてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーについては、地域との共生を前提に、二〇三〇年度三六%から三八%の導入目標の実現に向けて、最大限導入していきます。

 御指摘の自家消費の普及拡大については、FIT制度では、十キロワット未満の住宅用太陽光発電について、自家消費を前提とし、余った電力の売電を行うこととしております。また、十キロワットから五十キロワット未満の小規模な事業用太陽光発電についても、地域に根差した事業実施の観点から、二〇二〇年度以降、発電量の三割以上の自家消費を原則として、導入支援を行っております。

 さらに、建築物に太陽光発電と蓄電池を併せて設置し、自家消費を効果的に行う取組についても、環境省と連携して支援をしております。

 再エネの立地誘導による電力ネットワーク全体の最適化についてお尋ねがありました。

 再エネの大量導入と供給の安定性強化に向け、電力広域的運営推進機関が、全国大の再エネポテンシャルや需要などを織り込んだ電力系統の中長期的な絵姿を示すマスタープランを策定したところであります。

 今後、このマスタープランを踏まえ、再エネポテンシャルの高い北海道から本州に送電する海底直流送電などの地域間連系線の整備の検討を進めていきますが、その際、洋上風力等の導入区域や導入量も踏まえた上で、費用便益評価も行いながら、系統増強等の判断を行います。

 また、系統への負担を減らす再エネの自家消費の取組に対する支援など、分散型でのエネルギーの活用や、系統情報の公開等による再エネの立地誘導など、全体最適化を図りながら、再エネの最大限導入を進めてまいります。

 再エネ導入拡大に関する作業者の労働安全環境についてお尋ねがありました。

 再エネの導入が拡大する中、送配電工事の作業員について、発電事業者の機器の誤操作により作業員の安全が脅かされるケースや、発電事業者の事情での系統接続工事の頻繁な工期変更や日中の作業停電について調整できないことなどによる労働環境の悪化などが発生しております。

 このため、今月中に、資源エネルギー庁から発電事業者に対して、適正な工期を確保するため、系統接続の工事に関する計画の調整を十分に行うこと、また、作業停電を日中に行うことについて一般送配電事業者に協力することなど、要請を行うこととしております。

 こうした取組の下、まずは発電事業者における改善状況をしっかり見つつ、改善が見られない場合には更なる対策を検討するなど、電気工事を伴う作業員の安全確保や労働環境の改善が図られるよう、継続的に取り組んでまいります。

 原子力技術や人材、産業基盤の維持強化についてお尋ねがありました。

 我が国の原子力産業の高度な技術、人材、産業基盤の維持強化は極めて重要な課題であり、将来を見据えた取組を進めていく必要があります。

 本年三月六日には、関連する企業、団体から成る原子力サプライチェーンプラットフォームを立ち上げ、研究開発や技能実習、技術、技能の承継などをサポートする支援メニューを全国四百社の原子力関連企業に展開しているところであります。

 今後とも、サプライチェーンの維持強化に向けた支援をしっかりと進めてまいります。

 G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合でのエネルギー関連技術のPRについてお尋ねがありました。

 来月のG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合に向けては、足下の課題であるエネルギー安全保障を確保するとともに、脱炭素と経済成長の同時実現を目指すグローバルなグリーントランスフォーメーション、GXを進めるための方策について、まさに各国と議論を行っているところであります。

 我が国が強みを持つ再エネ、省エネ、エネルギーマネジメント、原子力、水素、アンモニア、CCUS、カーボンリサイクルなど、脱炭素に資する技術であり、こうした技術の普及拡大を目指し、G7各国との間で具体的な取組の共有を図ってまいります。関係閣僚を含む関係者が一堂に会するこの機を捉え、こうした日本のエネルギー関連技術の強みをアピールし、国際協力や事業の海外展開につなげてまいります。(拍手)

    〔政府特別補佐人山中伸介君登壇〕

政府特別補佐人(山中伸介君) 浅野議員から、原子力発電所の運転期間に応じた科学的評価の実施についてお尋ねがありました。

 これまでに、原子力規制委員会では、原子力発電所の運転期間の延長認可を行った高浜発電所一、二号炉、美浜発電所三号炉及び東海第二発電所の高経年化技術評価において、例えば、原子炉容器やコンクリートの強度等の物性値が、運転開始後四十年の時点で運転開始後六十年までの劣化を予測し考慮しても、技術基準を満足するかを確認しています。

 原子力規制委員会としては、個別の発電用原子炉の基準適合性審査について、先ほど述べた科学的、技術的な評価を個別の発電用原子炉ごとに行うことが重要であり、御指摘の運転期間を一律に決めることは困難であると考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法、原子炉等規制法、再処理法、再エネ特措法、原子力基本法の改正案について、岸田総理に質問します。(拍手)

 まず、脱炭素社会に向けた基本姿勢についてです。

 国連IPCC第六次統合報告書は、今のペースで温室効果ガスを排出し続ければ、二〇三〇年に排出限度に達すると警告しました。

 グテーレス事務総長は、気候の時限爆弾は時を刻んでいると強調し、先進国の指導者に、二〇四〇年にできるだけ近い時期に排出ゼロ達成の約束を前倒しするよう求めています。もはや一刻の猶予もありません。総理にはそういう緊迫感はありますか。

 破局的な気候危機を打開するためには、削減を、やれるところまでではなく、やり切らなければならないという姿勢が不可欠です。総理、G7議長国として、二〇三〇年度四六%削減などという低過ぎる目標を引き上げ、二〇五〇年にカーボンニュートラルの期限を大幅に前倒しすべきではありませんか。答弁を求めます。

 本法案は、脱炭素やロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー危機を口実に、原発回帰へと大転換するものです。

 重大なことは、原子力基本法を改定し、新たに、原子力を利用する国の責務を掲げ、新規建設など将来にわたる原発活用のための法的枠組みをつくろうとしていることです。同時に、原子力事業者の責務として、自主的安全性向上と称して安全対策を事業者任せにすることも看過できません。東京電力福島第一原発事故から十二年、今も収束さえ全く見通せていません。その事故の反省も教訓も投げ捨て、国民の生命と財産、日本の経済と社会を危険にさらす道ではありませんか。

 安全神話に陥り福島事故を防げなかったことを真摯に反省としながら、原発を最大限活用することほど矛盾したことはありません。

 しかも、核のごみの処分は見通しがなく、核燃料サイクルは完全に破綻しました。このことを認めないのですか。

 福島事故の反省と教訓に立って、原発ゼロに踏み出すことこそ国の責務ではありませんか。

 そもそも、岸田総理も自民党も、原発の依存度を低減する、新増設は想定していないと言ってきました。

 ところが、昨年の参議院選挙後、法令上の根拠もないGX実行会議なるもので、財界、原子力産業界の要求を丸のみにして、原発の最大限活用、運転期間の延長、次世代炉に建て替えを決めたのであります。国会と国民にまともな説明もなく、形だけのパブリックコメント実施と説明会だけで、勝手に決めた結論を押しつけるなど断じて許されません。

 福島事故を忘れたのかと、福島県民を始め国民から怒りの声が沸き起こっています。三月四日の日本世論調査会の全国調査では、原発の最大限活用の方針を評価しない、開発、建設推進に反対のいずれも六割を超え、政府は十分説明しているとは思わないが九割にも達しています。総理、丁寧に説明、聞く力などと言いながら、一切向き合わず、大転換の法案を提出するなど、民主主義をじゅうりんするものにほかなりません。

 原発の推進と規制の分離は、福島事故の重要な教訓です。

 ところが、本法案は、原子炉等規制法から原発の運転期間制限ルールを切り離し、推進側が所管する電気事業法に移すとしています。事故の教訓を真っ向から踏みにじるものではありませんか。

 運転期間の原則四十年ルールは、福島原発事故後に、老朽化による設備劣化などを考慮して導入されたものです。経済産業大臣が認めれば、原子力規制委員会の審査などで止まっていた期間を追加できる、そういう新たな仕組みは重大です。六十年超の運転延長を認めれば、原発のリスクを高めることは明らかです。答弁を求めます。

 一方で、原子力規制委員会が導入する長期施設管理計画の審査は、電力会社が提出する書類のチェックをするだけです。老朽原発の事故の危険性を減らすことなど不可能ではありませんか。

 再生可能エネルギーこそ、エネルギーの安定供給と自給率向上に大きな力を発揮します。

 日本は、再エネの適地が少ないどころか、潜在量が電力供給量の七倍も存在する再エネ資源大国です。しかも、化石燃料の高騰や円安にもびくともしません。今こそ、地産地消型で地域経済活性化に資する再エネ拡大、送電網の整備に全力を注ぐべきです。答弁を求めます。

 福島事故では、今なお多くの人々が避難を強いられています。一たび事故を起こせば、ふるさとを奪い、暮らしの土台、地域産業と文化をも破壊する原発は、人類社会とは共存できないことは明らかです。

 原発回帰を撤回し、原発ゼロを決断することを強く強く求め、質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 笠井亮議員の御質問にお答えいたします。

 我が国の温室効果ガス削減目標についてお尋ねがありました。

 先日公表されたIPCC報告書では、気候変動について厳しい現状認識と見通しが示されました。気候変動問題は人類共通の待ったなしの課題であると認識をしています。

 我が国は、パリ協定の一・五度目標と整合的な形で、二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言するとともに、二〇三〇年度の目標として二〇一三年度から四六%削減することを目指し、さらに、五〇%の高みに向け挑戦を続けることとしております。

 目標を設定した以上は、あらゆる施策を総動員し、しっかりと目標を実現することが重要であると認識をしております。我が国の目標の在り方については、目標年度や具体的な対策、施策の内容等も含め不断に検討していくこととなりますが、政府として、目標実現のため、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、さらにはGX基本方針を閣議決定しており、まずは、これらの方針に沿って政府を挙げて取り組んでまいります。

 東京電力福島第一原子力発電所事故の反省と原子力の活用についてお尋ねがありました。

 東京電力福島第一原子力発電所事故が起きた反省を踏まえ、いかなる場合もゼロリスクはないとの認識に立ち、世界で最も厳しい水準の新規制基準の策定などの措置を講じてきました。今後とも、高い独立性を有する原子力規制委員会が厳格に規制を行っていくという方針に何ら変わりはありません。事業者の自主的安全性の向上は重要ですが、安全対策を事業者任せにするとの指摘は当たりません。

 その上で、ロシアによるウクライナ侵略に伴い、歴史上初の世界エネルギー危機とも言われる状況に直面する中で、エネルギーの安定供給と気候変動問題への対応の両立が最重要の国家課題となっています。

 このようなエネルギー情勢の変化を踏まえれば、国民生活や産業の基盤となるエネルギーを、気候変動問題への対応と両立する形で、将来にわたって安定的に供給する体制を構築すべく、再エネ、原子力を含めたあらゆる選択肢を確保しておくことが重要となります。

 こうした中で、GX基本方針においても、一昨年決定した第六次エネルギー基本計画に記載されている、原子力について、原発依存度を可能な限り低減する一方で、必要な規模を持続的に活用していくとの方針は変わってはおりません。

 原子力のバックエンドについてお尋ねがありました。

 原子力を進める上での重要な課題として、我々の世代で最終処分の対策を確実に進めるべく、最終処分関係閣僚会議を開催し、最終処分に関する基本方針の改定案を取りまとめました。

 今後、基本方針を踏まえて、従来の公募方式と市町村長への調査実施の申入れに加え、手挙げを待つのではなく、地域に対し政府から調査の検討を段階的に申し入れるなど、取組を加速してまいります。

 核燃料サイクルについても、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、六ケ所再処理工場の竣工に向けた取組やプルサーマルの推進など、政府として、引き続き着実に進めてまいります。

 GX基本方針などの決定プロセスについてお尋ねがありました。

 原子力の活用を含むGX基本方針の策定に際しては、政権発足以降、首相官邸におけるGX実行会議の開催と並行して、約一年間にわたり、関係省庁の専門家会合を百回以上行うなど、議論を継続して重ねてまいりました。

 また、パブリックコメントを受け付け、その結果を受けて必要な修正を行い、本年二月に閣議決定をいたしました。これを踏まえて、GX関連二法案を本国会へ提出したところです。

 引き続き、国民の皆様の御理解が深まるよう、国会審議や説明会、意見交換会など、様々な手段で政府の方針を分かりやすく説明してまいります。

 原発の運転期間の在り方についてお尋ねがありました。

 今般の措置は、原子力規制委員会における議論に沿って、これまでの原発の運転期間に係る定めを利用と規制の観点から峻別し、電気事業法と原子炉等規制法の二つに再整理するものであります。

 具体的には、利用政策の観点から、電気事業法において、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限って六十年の運転期間のカウントから除外することを認めることとしております。

 その上で、新たな高経年化規制として、原子炉等規制法において、運転開始から三十年を超えて運転しようとする場合には、十年以内ごとに、設備の劣化に関する技術的評価を行う等の安全規制の厳格化に向けた制度を位置づけております。これにより、より高い頻度で、より厳格な審査が行われることになると考えております。

 また、独立性の高い原子力規制委員会が厳格な安全審査を行い、規制基準への適合性が確認できなければ、運転は一切認められない大前提に全く変わりはありません。

 再エネの導入拡大と送電網の整備についてお尋ねがありました。

 御指摘の再エネの潜在量の推計は国土面積等から機械的に算出したものであり、様々な制約や経済性を考慮する必要があると承知をしています。

 地域との共生と国民負担の抑制を図りながら、二〇三〇年度に再エネ比率三六から三八%という目標の実現に向けて、建築物や住宅の屋根への太陽光発電の設置促進、洋上風力の導入拡大などを通じて、再エネの導入拡大を着実に進めてまいります。

 また、地域間を結ぶ系統についても、今後十年間程度で、過去十年間と比べて八倍以上の規模の整備に向けて取組を加速してまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣      岸田 文雄君

       外務大臣        林  芳正君

       経済産業大臣

       国務大臣        西村 康稔君

       国務大臣        後藤 茂之君

       国務大臣        河野 太郎君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官     木原 誠二君

       内閣府副大臣      太田 房江君

 出席政府特別補佐人

       原子力規制委員会委員長 山中 伸介君


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