衆議院

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第15号 令和5年4月4日(火曜日)

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令和五年四月四日(火曜日)

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 議事日程 第八号

  令和五年四月四日

    午後一時開議

 第一 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 岸田内閣総理大臣の「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」に関する報告及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長橋本岳君。

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 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔橋本岳君登壇〕

橋本岳君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、経済社会の構造改革を推進するとともに、デジタル田園都市国家構想を実現するため、地方公共団体からの提案等を踏まえ、国家戦略特別区域諮問会議等において検討した結果に基づき、所要の措置を講ずるものであります。

 その主な内容は、

 第一に、補助金等交付財産の目的外使用等に係る承認手続の特例を国家戦略特別区域法に追加することとしております。

 第二に、データ連携基盤の整備等に関する援助を拡充することとしております。

 第三に、国家戦略特別区域法に規定されている法人農地取得事業を構造改革特別区域法に基づく事業に移行することとしております。

 本案は、去る三月十三日本委員会に付託され、翌十四日岡田国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、三十日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」に関する報告)

議長(細田博之君) 内閣総理大臣から、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 政府は、昨年十二月十六日、国家安全保障会議及び閣議において、国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画を決定いたしました。

 以下、これらについて御報告申し上げます。

 国家安全保障戦略は、国際秩序が重大な挑戦にさらされ、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、約九年ぶりに策定されたものです。

 本戦略は、外交、防衛のみならず、経済、技術等を含む多岐にわたる分野の安全保障上の問題に対し、総合的な国力を最大限活用して、我が国の平和と安全を含む国益を確保するための安全保障に関する最上位の政策文書です。

 本戦略では、我が国の国家安全保障上の目標として、主権と独立の維持、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、国際社会が共存共栄できる環境の実現等を掲げております。

 まず優先されるべきは、積極的な外交の展開です。我が国は、長年にわたり、国際社会の平和と安定、繁栄のための外交活動や国際協力を行ってきました。その伝統と経験に基づき、大幅に強化される外交の実施体制の下、今後も、多くの国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集める外交活動や他国との共存共栄のための国際協力を展開します。

 同時に、こうした外交を展開するためには、裏づけとなる防衛力が必要です。戦略的なアプローチとして、自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下での外交、反撃能力の保有を含む防衛力の抜本的強化等の方針を示しております。

 その上で、我が国を全方位でシームレスに守るための取組の強化等のため、宇宙、サイバー等の新たな領域への対応能力の向上、海上保安能力の強化、経済安全保障政策の促進等、政府横断的な政策を進めることとしております。

 必要とされる防衛力の内容を積み上げた上で、同盟国、同志国等との連携を踏まえ、国際比較のための指標も考慮し、我が国自身の判断として、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せ、そのための予算水準が現在の国内総生産の二%に達するよう、所要の措置を講ずることとしております。

 本戦略に基づく戦略的な指針と施策は、戦後の安全保障政策を実践面から大きく転換するものです。政府として、本戦略に基づき、安全保障に資する取組を着実に進めてまいります。

 次に、国家防衛戦略は、国家安全保障戦略の下、特に防衛について、目標を設定し、その達成のためのアプローチ等を包括的に示すものです。

 防衛目標として、万が一、我が国への侵攻が生起した場合、我が国が主たる責任を持って対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止、排除するといった三つの目標を掲げております。そのためのアプローチとして、防衛力の抜本的強化を中核に、国力を統合した我が国自身の防衛体制を強化するとともに、日米同盟による抑止力と対処力や、同志国等との連携を強化する方針を掲げております。

 特に、防衛力については、相手の能力と新しい戦い方に着目して、抜本的に強化することとしております。そのため、可動率の向上や弾薬、燃料の確保、主要な防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、将来の中核となる能力を強化する方針の下、七つの重視分野を示し、反撃能力の意義や必要性等に関する政府の見解も示しております。

 最後に、防衛力整備計画は、国家防衛戦略の下、我が国として保有すべき防衛力の水準を示し、その水準を達成するための計画であり、おおむね十年後の自衛隊の体制や、今後五年間の経費の総額、主要装備品の整備数量を記しています。

 例えば、スタンドオフ防衛能力としての一二式地対艦誘導弾能力向上型等の開発やトマホーク等のミサイルの着実な導入、弾薬等の早期整備、部品不足による装備品の非可動の解消や可動数の最大化等の取組を示しております。

 これらに必要な事業を積み上げ、二〇二三年度から五年間の防衛力整備計画における所要経費を四十二兆円程度としております。

 また、二〇二七年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び二〇二三年度から二〇二七年度までの本計画を賄う財源の確保については、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の創設、税制措置等、歳出歳入両面において所要の措置を講ずることとしております。

 これらの文書で示された方針は、憲法、国際法、国内法の範囲内で実施されるものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての歩みをいささかも変えるものではありません。

 これらの文書の下で、国民の生命や暮らしを守り抜くという政府の最も重大な責務を果たしてまいります。

 皆様の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」に関する報告)に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小泉進次郎君。

    〔小泉進次郎君登壇〕

小泉進次郎君 自由民主党・無所属の会の小泉進次郎です。

 ただいま議題となりました国家安全保障戦略等三文書に関する報告について、自由民主党を代表し、主に三点質問いたします。(拍手)

 まず、国家安保戦略が想定している脅威認識について質問いたします。

 国家安保戦略においては、中国、北朝鮮、ロシアに関する安全保障上の課題について説明していますが、我が国の安全保障に最も重大な影響を及ぼすのは、言うまでもなく中国です。国家安保戦略では、中国を、我が国の平和と安全、そして国際秩序にとっての最大の戦略的挑戦と位置づけています。脅威ではなく、挑戦。私は、この言葉の選択には、強気か弱腰かといった問題を超えた、より深い戦略的意味を込めたと推察します。

 中国は、言うまでもなく、我が国の抑止戦略の対象です。しかし、抑止は、最終的には相手国の為政者の心理に関わるものです。自衛隊の行動や装備だけでなく、我が国が発する言葉、つまり総理の言葉が抑止の効果に大きく影響します。中国が一党独裁から一人独裁に変容している中、岸田総理と習近平主席が向き合い言葉を交わすことがますます重要となってきます。

 防衛力の強化と首脳レベルの対話の強化、この二つの強化を両立させながら、日本の国益を守るために中国とどのように対峙していくお考えでしょうか。総理、お聞かせください。

 また、中国による日本人拘束について、日中外相会談による進展はあったのか、また今後に向けた政府の対応方針もお聞かせください。

 次に、国家安保戦略を実現するための手段について伺います。

 国家安保戦略では、この手段を総合的な国力の要素と呼び、主なものとして、外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力という五つの項目を掲げています。注目すべきは、五つの順番です。今回の三文書では、防衛力の抜本的強化を打ち出しました。しかし、総合的な国力の要素の一番に挙げたのは、防衛力ではなく、外交力となっています。

 先月、横須賀にある陸上自衛隊高等工科学校の卒業式で吉田統合幕僚長が陸上幕僚長として行った訓示に、このようなくだりがありました。我々が刀を抜いたとき、我々の任務は半分以上失敗しており、我々には、刀を抜かないために日々必死で刀を研ぐことが求められている。防衛力という研がれた刀を抜かないために外交力が大事であるし、力強い外交を進めるためにこそ強い防衛力が必要であるということだと私は捉えています。

 総理、長年外務大臣を務められた総理が外交力を一番目に位置づけた理由と、今後、抜本強化された防衛力を背景にどのような外交戦略を進めていくお考えでしょうか。お聞かせください。

 また、国家安保戦略で明記された能動的サイバー防御の導入に向けた法改正作業の加速が必要だと思いますが、総理はどのようにお考えか、お答えください。

 最後に、防衛力の抜本的強化の具体的中身について伺います。

 国会では、反撃能力、特にトマホークの議論が目立ちます。しかし、もっと目を向けるべきは、ドローンなど無人アセットです。無人アセットは比較的安く、人的損耗が少なく、耐用年数が長いという利点があり、さらに、AI等と組み合わせれば、陸海空で非対称的な優勢を獲得することができます。今後は、無人アセットを幅広い任務に効果的に活用すべきです。人口が減る日本にとって、人ありきではない発想は軍事においても不可欠です。

 総理、今後、無人アセット防衛能力をどのように開発、配備していくお考えでしょうか。お聞かせください。

 以上、主に三点について質問させていただきました。

 今後、政府に力強い外交を進めていただくには、総理や外務大臣等が外交に割ける時間を増やすことが必要であり、そのためには国会改革が不可欠です。

 外務大臣が所信を述べ、その質疑の際にも出席が求められる委員会が衆参合わせて七つもあること、これはほかの大臣と比べても最多です。七委員会は多過ぎると思いませんか。

 総理のウクライナ訪問など外交日程の後に行われる帰朝報告も、衆参両院で同じ報告を繰り返す必要があるのでしょうか。施政方針演説と所信表明演説も同じです。同じ原稿を一語一句間違えずに衆参両院で総理に読ませることが国会の役割なのでしょうか。開会式のように、衆参合わせて一回で何の問題があるのでしょうか。

 そもそも、このような国会を変えずにいることを我々議員一人一人も望んでいるのでしょうか。本音では誰も望んでいないのではないでしょうか。

 国際秩序を保てるかどうかの分水嶺にある今、我が国が力強い外交を展開するためには国会改革が不可欠であります。与野党で一致点が見出されることを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、御質問にお答えする前に、先ほどの報告の中で、二〇二三年度から五年間の防衛力整備計画における所要経費を四十三兆円程度と申し上げるべきところ、四十二兆円と発言したようであります。正しくは、四十三兆円程度であります。訂正して、おわびを申し上げます。

 その上で、質問にお答えさせていただきます。

 小泉進次郎議員の質問にお答えいたします。

 対中外交についてお尋ねがありました。

 日中両国間には、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案が存在します。同時に、日中両国は、地域と世界の繁栄に対して大きな責任を有しています。昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をする、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいります。

 その上で、邦人拘束事案に関しては、先週末に訪中した林外務大臣から、本件について中国側に抗議をし、当該邦人の早期解放を含め、我が国の厳正な立場を強く申し入れました。政府としては、引き続き、邦人保護の観点から、中国側に対し早期解放及び領事面会の実施を強く求めるとともに、御家族など関係者との連絡等、できる限りの支援を行ってまいります。

 国家安全保障戦略における外交力の記載と我が国の外交戦略についてお尋ねがありました。

 我が国の平和と繁栄、自由で開かれた国際秩序の強化のために、まず優先されるべきは積極的な外交です。同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要です。こうした考えから、我が国の安全保障には総合的な国力が必要なこと、また、その主な要素の第一の柱は外交力であるということを掲げました。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、首脳レベルを含め、多層的、多面的な外交を積極的に展開をしてまいります。大幅に強化される外交の実施体制の下、今後も、多くの国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集める外交活動や他国との共存共栄のための国際協力、これを展開してまいります。また、自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下、同盟国、同志国等と連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現し、地域の平和と安定を確保してまいります。

 能動的サイバー防御についてお尋ねがありました。

 我が国のサイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させ、国や重要インフラ等の安全を確保することは喫緊の課題です。

 政府としては、国家安全保障戦略に基づき、能動的サイバー防御等の実施のため、体制を整備するとともに、法制度の整備や運用の強化を図ることとしています。

 このため、一月末に内閣官房にサイバー安全保障体制整備準備室を設置したところであり、スピード感を持って具体化に向けた議論を進めてまいります。

 無人アセット防衛能力の強化についてお尋ねがありました。

 無人アセットには、御指摘のような安価な費用、人的損耗の局限、長期連続運用といった利点があると考えています。今後、情報収集、警戒監視や戦闘支援等の幅広い任務に活用するとともに、自衛隊の装備体系や組織をより効果的、効率的なものに見直してまいります。

 防衛力整備計画の下で、各種無人機や無人車両、無人潜水艇等の研究開発を進め、積極的に導入をしてまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 篠原豪君。

    〔篠原豪君登壇〕

篠原豪君 立憲民主党の篠原豪です。

 会派を代表して、安保関連三文書の総理報告について質問させていただきます。(拍手)

 政府は、昨年末、安保関連三文書の改定を閣議決定し、平和憲法に基づく、戦後の極めて抑制的な安全保障政策を大きく転換させました。

 それは、とりわけ、歴代政権が一貫して保有を見送ってきた、相手国領域を直接攻撃する敵基地攻撃能力、すなわち反撃能力を保有することです。また、長年、対国内総生産、GDP比一%前後にとどめてきた防衛関係費を、防衛力の抜本強化を補完する研究開発、公共インフラの整備などの経費も合わせて、二〇二七年度にGDP比二%となる約十一兆円まで倍増させることに象徴されていると思います。

 そこで、反撃能力の保有から伺ってまいります。

 存立危機事態における敵基地攻撃についてです。

 まず、反撃能力に関して、一番の懸念事項と考えている存立危機事態における行使の問題を取り上げさせていただきます。

 総理は、三月六日の予算委員会で、「我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、さらには他に適当な手段がないこと、そして必要最小限度の実力行使にとどまること、この三要件を満たした場合にこの反撃能力も行使する」と答弁をしています。

 これは、新戦略においては、日本が直接攻撃されていなくても、集団的自衛権で敵基地攻撃を行うことができると総理が解釈していることを示す答弁であると考えます。

 今回の国家防衛戦略には、反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンドオフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力と定義されていますが、特に、我が国に対する武力攻撃が発生をし、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合とは、武力攻撃事態に該当することを、総理、御確認いただけますでしょうか。

 他方で、三要件に定める存立危機事態とは、平和安全法制の審議で、当時の中谷防衛大臣が、存立危機事態は我が国に対する武力攻撃を意味する自衛隊法三条一項の直接侵略及び間接侵略のいずれにも当たらないと述べています。このように、我が国に対する武力攻撃の発生に関係した事態ではありません。ですから、存立危機事態は先ほどの反撃能力の定義に該当しないことをお認めいただけますでしょうか。総理にお伺いいたします。

 既にお分かりのように、国家安全保障戦略では、反撃能力の行使が可能になるのは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合と限定されており、武力攻撃事態以外にあり得ません。つまり、存立危機事態で反撃能力を行使することはできないのです。

 そこで、総理におかれては、まず、存立危機事態において反撃能力を行使することはできないことをお認めいただくとともに、また、三要件を満たせば反撃能力の行使が可能とする答弁は意味を成しませんので、今後使わないようにお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 一方で、安倍内閣は、存立危機事態を自衛権の発動を許容する事態とし、当時、中東ホルムズ海峡での戦時の機雷除去を例示いたしていました。しかし、他国領土内にミサイルを撃ち込むことまでは想定していなかったと想像します。

 そこで、岸田内閣において、反撃能力を使って、我が国に対する武力攻撃が発生していない存立危機事態に他国領土内にミサイルを撃ち込むことができるとあくまでも主張されるのであれば、我が国に向かってくるミサイルの発射阻止ではないわけですから、何を理由に、何を標的として攻撃するのかを明らかにしてください。

 次に、先制攻撃の禁止についてお伺いいたします。

 我が国に誘導弾等による攻撃が行われた場合とは、防衛大臣も述べているように、攻撃のおそれがあるにとどまるときではなく、また我が国が現実に被害を受けたときでもなく、他国で我が国に対して武力攻撃に着手したときと解されています。

 しかし、多くの論者が指摘しているように、ミサイル発射技術の進歩によって、いつ、どこからミサイルが発射されるのか、事実上、探知不可能な状況において、第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは不可能に近く、さらに、ミサイル発射阻止のために敵基地を攻撃することは、事実上、先制攻撃となるおそれがあるとこれまで指摘してきたところであります。そのためか、国家防衛戦略には、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、反撃能力は、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために保有すると述べられております。

 ですから、基本的な認識は我々と実は変わらないと考えます。このことについて、総理の見解をお聞かせください。

 他方で、政府は、相手のミサイル発射前でも、攻撃着手を確認すれば、相手領土を攻撃できるとする見解を変えようとしません。その理由は、抑止論だと考えます。

 しかし、専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使するという受動的な防衛姿勢に徹することで自らの武力行使の正当性を強調する考え方であり、我が国は、あえてその姿勢を維持することを国策としてきました。であるならば、第一撃を放棄すると宣言して我が国の立場に国際的な正当性を獲得することが、専守防衛にふさわしいと考えます。

 そこで、お伺いいたします。

 政府は、軍事的合理性だけでなく、判断するのは政治的な正当性も重視するべきと考えますが、この考え方に、総理、御賛同いただけますでしょうか。お伺いいたします。

 次に、日米同盟と専守防衛についてです。

 もう一つ懸念を抱いているのは、反撃能力を保有することで専守防衛が事実上形骸化してしまう危険性についてです。

 まず、一九五六年の二月二十九日の政府見解によって、敵基地攻撃は合憲であるとしながらも、我が国は、政策判断として、こうした能力を持たず、専守防衛に徹することを防衛の基本方針としてきました。これは、日本防衛義務を負う米軍が矛の役割を担い、自衛隊は盾の役割に専念できるという条件にあったことで可能になったことは論をまちません。したがって、日米同盟の盾と矛の役割分担と専守防衛は事実上一体のものであると考えます。

 そこで、日米同盟の盾と矛の基本的な役割分担が変わらないのに、なぜ反撃能力の保有が必要となるのでしょうか。お伺いいたします。

 また、弾道ミサイル防衛の対処能力の問題は別として、総理は、反撃能力の運用についても日米が協力して対処すると答弁していますが、そもそもなぜ協力する必要があるのか、その理由をお示しください。

 我が国が、反撃能力、すなわち敵基地攻撃能力を持てば、日米の役割分担が複雑になることは避けられません。特に、今年一月の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会、2プラス2は、日米の戦略の統合を象徴する節目と考えられ、今後、日米の一体化が進むことで、専守防衛が実質ないがしろにされる可能性は大いにあります。

 今回の国家安全保障戦略には、専守防衛堅持の基本的方針は不変と明記されていますが、政府は、何を歯止めとして専守防衛の枠内にとどまっていると考えているのでしょうか。既に指摘させていただいたように、武力行使の三要件は答弁の意味を成しませんので、その用語を用いないで総理にお答えいただきたいと考えますので、よろしくお願いいたします。

 日本は、反撃能力による攻撃に着手するために、米国の諜報、偵察、標的設定、損害評価の能力に頼らなければいけません。そのため、新たな指揮統制システムが日米に必要です。そして、その第一歩として、日本側が常設の統合司令部を創設し、日本自らの指揮統制を変え、米軍も、日米の軍事行動の調整が可能となるよう、日本側の統合司令部のカウンターパートになる米軍の司令部を設けることになると考えます。

 しかし、米国側は、それにとどまらず、米国との連合司令部をつくることを希望しているようです。アーミテージ氏などは、日米連合部隊を編成することまで踏み込んで主張しています。

 そこで、お伺いします。

 日本政府が指揮権の独立を損なうこうした意見にくみすることはあり得ないと考えますが、なぜそうした方針を取らないのかについて、総理の確固たる決意とともに、その理由をお示しください。

 なお、指揮権の独立を確保しても、日米の一体化が進むことで専守防衛が形骸化される危険性を認識しているのか否か、伺います。認識しているのであれば、どのような問題についてであるのか、想定されるケースをお示しください。

 次に、GDP比二%ありきの防衛費増額の問題についてです。

 防衛費をGDP比で二%に増額する問題は、オバマ政権時代に、米国の要請を受けて、NATO諸国が二〇二四年までに国防費をGDP比二%に上げる目標を掲げたことに始まりました。日本など、NATO以外の同盟国に米国が数値目標を示したのは、二〇二〇年九月、トランプ政権の国防長官が、国防費をGDP比で少なくとも二%に増やしてほしいと表明したのが最初です。

 岸田首相は、防衛力の抜本的強化は、内容、予算、財源をセットで決めると言いながら、昨年五月、バイデン大統領に対し、防衛力の抜本的強化とその裏づけとなる防衛費の大幅な増額を約束し、その直後に決められた夏の参議院選公約に、防衛費の予算をGDP比二%以上とすることも念頭に、五年以内に防衛力を抜本強化すると明記しました。

 また、昨年十一月、中期防衛力整備計画における防衛費総額を決めるに当たって、防衛省が四十八兆円を要求し、財務省が査定を基に三十五兆円が妥当として報じられる中で、岸田総理は、安全保障関連経費を加えた防衛費を二〇二七年度にGDP比二%に増額するよう関係閣僚に指示し、四十三兆円の政治決着に誘導しました。

 これらは、GDP比二%ありき以外の何物でもないのではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 次に、FMSの急増についてです。

 二〇一九年六月のG20大阪サミットに参加したトランプ大統領は、日米首脳会談の冒頭で、我々は、日本による大量の、米国製の大量の武器購入について協議すると発言しました。このため、安倍首相は、二〇一八年夏から一九年一月にかけて、早期警戒機E2Dを最大九機、F35Aを百五機、イージス・アショアを二基購入を決定し、物件費に占めるFMSの割合を二〇一九年度概算要求で一九%に跳ね上げました。十年前はたった二%です。

 しかし、これは過去の話ではありません。防衛省の二〇二三年度予算案でも、FMS契約額が一兆四千七百六十八億円で、前年度の三千七百九十七億円から一兆円以上跳ね上がっています。物件費全体では前年度比二・五倍ですが、FMSでは四倍近くになっています。

 これは、大量のFMSを恒常的に受け入れるために防衛費を増額したとしか思えません。まさに米国の要求ありきですが、総理はどのように弁明されるのでしょうか。

 以上、国民の命や暮らしを守るために、我が党は、現実的な外交、安全保障を基に、原則的でありながら柔軟に対応していくことをお約束し、質問を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 篠原豪議員からの御質問にお答えいたします。

 反撃能力と存立危機事態の関係についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略等に言う、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合とは、武力攻撃事態に該当するものであります。

 一方で、反撃能力は、一九五六年に政府見解として、憲法上、法理的には自衛の範囲内に含まれ、可能とした能力に当たるものであり、この政府見解は、二〇一五年の平和安全法制に際して示された武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるものです。反撃能力は、この考え方の下で、我が国に対する武力攻撃が発生又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合など、武力行使の三要件を満たす場合に行使し得るものであると考えております。

 存立危機事態における反撃能力の行使の態様についてお尋ねがありました。

 存立危機事態は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したからといって無条件で認定されるものではなく、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に認定され、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、必要最小限度の実力行使にとどまる場合において、自衛の措置として武力を行使することが許容されます。

 その上で、事態認定後の反撃能力の運用については、実際に発生した状況に即して、武力行使の三要件に基づき、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断することとなります。

 武力攻撃の着手についてお尋ねがありました。

 反撃能力の行使に関し、現実の問題として、相手側のミサイルの発射、特に第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは難しくなってきていることは事実です。

 こうした状況も踏まえ、国家安全保障戦略等においても、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力を保有すると記載したところです。

 その上で、実際に発生した状況に即して、武力の行使の三要件に基づき、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断をいたします。

 いずれにせよ、反撃能力は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用されるものであり、専守防衛の考え方を堅持していきます。また、先制攻撃は許されない、これは言うまでもないことであります。

 反撃能力と日米の役割分担や専守防衛との関係についてお尋ねがありました。

 近年、我が国周辺で質、量共にミサイル戦力が著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。

 政府としては、米国が日米安保条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いていますが、これに加え、我が国としても、反撃能力を保有し、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、弾道ミサイル攻撃等に対応することが不可欠だと考えております。その際、情報収集を含め、日米が連携を行うこと、これは重要なことです。

 また、専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった、我が国の防衛の基本的な方針です。反撃能力も、弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合に、そのような攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置として運用されるものであることから、専守防衛の範囲内であると考えております。

 反撃能力と指揮系統についてお尋ねがありました。

 反撃能力の運用について、情報収集を含め、日米が連携することは重要ですが、日米の統合司令部等を設置することは考えてはおりません。

 自衛隊による全ての活動は、米軍との共同対処を含め、我が国の主体的な判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われており、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動をしています。この点は反撃能力の運用においても変わりはありません。なお、専守防衛の考え方は堅持してまいります。

 防衛費の規模についてお尋ねがありました。

 NATOを始め各国は、安全保障環境を維持するために経済力に応じた相応の国防費を支出する姿勢を示しており、我が国としても、国際社会の中で、安全保障環境の変化を踏まえた防衛力の強化を図る上で、GDP比で見ることは指標として一定の意味があると考えております。

 その上で、防衛力の抜本的強化に当たっては、その内容の積み上げと併せて、これらを補完する取組として、海上保安能力やPKOに関する経費のほか、研究開発、公共インフラ整備など、総合的な防衛体制を強化するための経費を積み上げました。

 こうした積み上げの結果として、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せ、そのための予算水準が現在のGDPの二%に達するよう、所要の措置を講ずることとしたものであり、まずGDP比二%ありきという御指摘は当たりません。

 FMSについてお尋ねがありました。

 防衛力の抜本的強化に際しては、国民の命を守り抜けるか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げました。

 積み上げに当たっては、米国製であれ、国内製であれ、我が国の防衛に必要な装備品を個別に検討し、我が国の主体的な判断の下に決定しており、米国の要求ありきという御指摘は当たりません。

 その上で、国家防衛戦略等にも記載しているとおり、国内防衛産業は、いわば防衛力そのものであり、基盤強化が急務です。そういった観点から、国産の装備品の調達を進めていくことは重要であると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 三木圭恵君。

    〔三木圭恵君登壇〕

三木圭恵君 日本維新の会の三木圭恵です。

 私は、党を代表して、国家安全保障戦略始め安保三文書について質問します。(拍手)

 世界を取り巻く安全保障環境は、ロシアのウクライナ侵略によって激変しました。わけても、我が国は、そのロシアに加え、力に任せて現状変更に動く中国、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮という、いずれも核を持つ三国を隣に抱え、トリプル危機の最前線にあります。

 事異例の三期目に入った習近平国家主席体制下の中国は、台湾侵攻の野望をあらわにし、近い将来の台湾有事、すなわち日本有事は限りなく現実味を帯びつつあります。我が国は戦後最大の危機に瀕しており、なすべきは、将来世代を二度と戦争の惨禍に遭わせないための強固な抑止力を保持することです。

 昨年末の三文書の閣議決定に先立ち、我が党は、岸田総理に提言書をお渡ししました。私たちの提案を三文書に広く反映していただいたことを深謝いたします。

 しかしながら、率直に言って、二歩も三歩も踏み込みが足りません。自衛のための必要最小限度の解釈の見直しや核共有の議論開始など、抑止力強化の肝が抜け落ちているのです。今後の具体的な防衛力整備も同様です。抑止力にならない見せかけの反撃能力ならば、全く意味はありません。

 また、必要な防衛費について、対GDP比一%の壁を取り払い大幅に増額させることは当然の措置として我が党は賛成していますが、その財源の一部を増税に頼ることには断固反対であるとここで改めて強調させていただきます。

 それでは、質問に入ります。

 まず、必要最小限度の考え方についてお伺いいたします。

 防衛の様態、範囲は、相手の攻撃力によって変化します。敵国がミサイルを千発持っていれば、守る側はそれ以上を保有していなければ対抗できません。つまり、必要最小限度というのは、その時々によって変わるものだと考えます。

 その意味で、我が国がわざわざ、必要最小限度しか防衛のための装備を持たず、実力も行使しないと宣言することは、まさに敵に塩を送るに等しい愚策であります。仮に敵国が攻撃力をいかほど持ち合わせているか隠したり小さく見せたりすれば、我が国の防衛力を低下させることが可能となり、侵略を誘発する方向に作用します。どうぞ、攻めてきてくださいと言っているようなものです。日本以外に、こんな国が一体世界のどこにあるのでしょうか。

 必要最小限度という過度な自己規制で縛っていることは、根本的に我が国の防衛にとって不利になるのではないですか。悪意ある敵国に対して、抑止力として十分通用するとお考えですか。日本が保有可能な武器については制約を設けるべきではなく、また、自衛隊法に規定する自衛隊の任務についてもネガティブリスト化に変更すべきではないですか。

 以上、必要最小限度の解釈見直しについて検討するか否かも併せ、総理に答弁を求めます。

 次に、核の拡大抑止についてお尋ねいたします。

 総理に質問します。

 国家安全保障戦略の冒頭に非核三原則を堅持と明記したことで、核から日本を守るオプションを自ら縛り、思考停止にしてしまっているのではないですか。

 北朝鮮が米国全土を射程に収めるICBMを実戦配備するのは時間の問題とされ、中国も、通常兵器のみならず、核戦力でも米国を凌駕しようとしています。北朝鮮の動向に加え、米中が戦略核で均衡すれば、中距離核戦力、INFの不均衡が決定的意味を持ち、日韓、台湾などへの米国の拡大抑止は無効化され、核の傘が破れ傘になる懸念が強まると考えますが、認識をお示しください。

 このような状況下では、せめて核の傘の信頼性、実効性向上の方向性、そして情勢急変の際の対処方針を国家安全保障戦略に盛り込むべきではなかったのですか。

 米国との拡大抑止をより強固に機能させるために、核シェアリングによる防衛力強化等に関する議論を開始すべきだと考えますが、議論さえ容認できないというお考えでしょうか。

 今後の情勢によっては、緊急時に戦略原子力潜水艦を日本に寄港させ、将来的には日米共同運用するなど、拡大抑止強化策について日米協議や国内議論を進めることは排除されるべきではないと考えますが、見解を求めます。

 次に、反撃能力保有について伺います。

 その具体化には課題が多く、わけても、米国との役割区分等の調整が重要になります。

 例えば、相手が攻撃してくる兆候をつかみ取るための情報収集では、衛星を多数打ち上げ、重要な相手施設等の状況を常に監視する体制が不可欠です。次いで、いざ反撃する段階で、その施設を撃破すれば反撃の効果が得られるのかという目標の特定が重要であり、目標が定まり、実際に反撃段階になると、どの目標に対しどのミサイルで反撃させるかという攻撃の統制、調整が必要となります。ミサイルが相手国に近づくと、当然、相手は防空ミサイル等で対抗してきますから、その防空網を無力化する攻撃の統制、調整も欠かせません。

 総理にお尋ねいたします。

 反撃能力保有の実効性を担保するには、米国との共同及び陸海空自衛隊の統合を含めた全てを指揮統制する統合司令部、司令官や、指揮通信インフラが必須だと考えます。どのような枠組み、方式で米国側と調整を進め、いつまでに反撃能力保有を実現させるお考えですか。

 軍事オペレーション的な側面に加え、政治と軍事の関係において、ターゲティングリスト及び日米のそれぞれの役割を政治、軍事間で平時から調整し、最終的には日米両首脳がゴーサインを出すところまで準備させておくことが重要だと考えますが、認識をお示しください。

 反撃能力の行使という極めて高度な戦略的、政治的決定には、総理の迅速かつ明確な判断が必須となります。岸田総理にその覚悟があると明言していただけませんか。

 米国製の巡航ミサイル、トマホーク四百発が導入されますが、抑止力を向上させるためには国産ミサイルを主体にしていく必要性がありますが、政府の計画はどのようになっていますか。

 次に、サイバー防衛についてお伺いします。

 国家安全保障戦略に書かれている能動的サイバー防御は、どこまでの範囲の防御を意味しているのですか。オフェンスも含めているように読めますが、能動的サイバー防御は、アクティブサイバーディフェンスよりも広い概念として捉えられているのですか。それとも、アクティブサイバーディフェンスについては別の整理を行っているのですか。お伺いします。

 自衛隊のサイバー防衛隊を抜本的に強化、拡充していくためには、不正アクセス禁止法や不正電磁的記録罪の要件を改正して自衛隊への適用除外を認めるほか、サイバー空間の国際法たるタリン・マニュアルで認められている、平時からサイバー空間での偵察や積極防衛の権限を自衛隊に与え、正当業務とすべく自衛隊法を改正することも不可欠と考えますが、いかがですか。

 自衛隊サイバー防衛隊を、自衛隊の枠を超え、政府全体及び重要インフラ防護に活用することも必要ではないですか。

 また、縦割り行政の弊害を打破するために、インテリジェンスや治安、防衛を担う防衛省、警察庁と、通常のデータ通信に係るデジタル庁、経済産業省、総務省を統括するサイバーセキュリティー局を内閣官房に設置した上で、実動部隊として自衛隊のサイバー部隊が兼任し、まずは一万人規模の要員でサイバーセキュリティーセンターを設置することを提案しますが、いかがですか。

 以上、いずれも総理に答弁を求めます。

 防衛装備移転の推進についてお尋ねします。

 国家安全保障戦略において、三原則や運用指針を始めとする制度の見直しを検討するとされています。

 ロシアに侵攻されているウクライナには、当初、防衛装備品が送れない状況にありましたが、運用指針を変更して、やっと防弾チョッキやヘルメットが送られました。

 総理に質問します。

 国際法違反の侵略を受けているウクライナのような国には、欧米諸国のような戦車や攻撃用ミサイルの提供は困難であっても、ミサイルを迎撃する地対空ミサイル、通信情報システム、無人偵察機など、無辜の市民の生命を守るための防御的な武器を提供することは、場合によっては、平和国家の理念の範囲内との解釈もできますが、見解を伺います。

 今後、台湾有事が発生し、我が国に戦火が及ばなかった場合、日本は台湾に防衛のための装備品を提供することはできるのでしょうか。日本と台湾は強いきずなで結ばれており、また、台湾は地政学的にも日本にとって重要な地域であります。政府はどのように対応していくお考えなのか、併せてお答えください。

 次に、自衛隊と海上保安庁の連携について、総理にお伺いいたします。

 日本の海の守りのためには、第一線で対峙する海上保安庁と、後方で控える自衛隊が、切れ目なく機動的に連携できる体制を整えなければなりません。日本維新の会が国民民主党と共同提出した自衛隊法の改正により、自衛隊に警戒監視活動と限定的な武器使用を認めるとともに、海上保安庁法改正で、海保の任務に領海の警備を加えるべきです。この法案は中国に対する抑止力となると考えますが、見解をお伺いします。

 政府は、海保の能力の強化を打ち出し、自衛隊との関係はあらゆる事態に適切に対応し、有事の際には防衛大臣が海保を統制指揮下に置く統制要領の策定や共同訓練の充実を図るとしています。

 しかしながら、自衛隊法八十条に基づき海保を指揮下に置いても、実際は軍事行動ができないのであれば、防衛能力の十分な向上は望めません。海保法二十五条は、海保の軍事機能を否定しています。平時の際は海保が海の警察として他国との緩衝材的役割を果たすことは一定の意義があるとは考えますが、有事の際は軍事に関われるように、海保法第二十五条を改正するお考えはありませんか。見解をお伺いいたします。

 最後に、憲法について言及させていただきます。

 この新たな安保三文書は、第九条に実力組織として自衛隊を明確に位置づけるなど、憲法改正なくしては成り立ちません。

 国家安全保障戦略は、強力な軍事能力を持つ主体が他国に脅威を直接及ぼす意思をいつ持つに至るかを正確に予測することは困難だと記しています。これは、中国始め軍事強国が日本に侵略戦争をしかける意思を持つ可能性があることを示唆しています。また、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にあるとし、最悪の事態をも見据えた備えを盤石なものとし、我が国の国益を守っていくという決意も示しています。

 こうした安保三文書の基軸は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とうたう憲法前文を明確に否定するものです。

 自民党総裁たる総理に伺います。

 安保三文書の内容は、政府が自ら現憲法の欠陥を認めたことにほかならないと考えますが、どう認識されていますか。

 そもそも、中国や北朝鮮、ロシアが、憲法前文で言う平和を愛する諸国民であり、信頼に足る公正と信義を持ち得ていると言い切ることができますか。

 また、日本の新たな安保戦略の方向性と最高法規の前文は両立するとお考えですか。双方に一点のそごもないというならば、根拠も説明してください。

 以上、防衛力の遺漏なき抜本的強化と併せ、自身の総裁任期中の実現を公言されている憲法改正に向け、不退転の覚悟で指導力を発揮していただくよう総理に強く強くお願い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 三木圭恵議員の御質問にお答えいたします。

 必要最小限度の制約等についてお尋ねがありました。

 まず、憲法九条の下で認められる自衛の措置は、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として例外的に認められたものです。政府としては、この解釈に基づく必要最小限度に関する見解を変更する考えはありません。

 その上で、今般、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と暮らしを守り抜くための防衛力の抜本的強化を具体化しました。これにより、抑止力、対処力を強化し、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させていきます。

 また、実力組織である自衛隊の役割等は国会の民主的統制の下に置かれるべきものであると考えており、自衛隊による活動は立法措置を講ずることによって実施しており、今後もこうした考え方を維持してまいります。

 核政策を含む我が国の安全保障政策についてお尋ねがありました。

 一般論として、国の安全保障の在り方については、それぞれの時代状況、国際情勢等を踏まえた様々な国民的議論があり得ると考えております。

 他方、核共有については、非核三原則や原子力基本法を始めとする法体系との関係から認められず、政府として議論することは考えておりません。

 その上で、米国の拡大抑止は我が国の安全保障にとって不可欠です。国家安全保障戦略においても、米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する方針を掲げています。

 政府としては、米国が核を含むあらゆる種類の能力を用いて日米安全保障条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いており、拡大抑止は十分機能していると考えています。今後も拡大抑止が揺るぎないものであり続けることを確保するため、日米2プラス2や拡大抑止協議を含め、日米間で一層緊密な意思疎通を行ってまいります。

 反撃能力の実効性の確保についてお尋ねがありました。

 反撃能力の実効性の確保について、様々な御意見をいただきましたが、情報収集を含め、日米が連携すること、これは重要なことです。可能な限り速やかに準備を進めてまいります。なお、日米の統合司令部等を設置することは考えてはおりません。

 また、反撃能力保有の目的は相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力ですが、万が一その行使が必要となる場合には、政府として有するあらゆる情報を総合した上で、内閣総理大臣として迅速的確に判断をしてまいります。

 トマホークについては、国産のスタンドオフミサイルを必要な数量整備するには一定の時間を要することから、それまでの間に十分な能力を確保するため取得する予定であり、国産のスタンドオフミサイルを着実に取得してまいります。

 能動的サイバー防御やそれを行うための体制整備についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略中の能動的サイバー防御と御指摘のアクティブサイバーディフェンスとの異同について現時点で申し上げることは困難ですが、能動的サイバー防御については、武力攻撃に至らないものの、国や重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合に、可能な限りこれを未然に排除するとともに、そのようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大防止をするために導入するものであります。

 政府としては、国家安全保障戦略に基づき、重要インフラ事業者等との情報共有、政府による対処調整、支援の強化を始めとする能動的サイバー防御に必要な措置の実施や、総合調整の司令塔となる新たな組織の立ち上げ、これらの実現のための法制度の整備や運用の強化について、具体化に向けた議論を進めてまいります。その際、御提案の自衛隊サイバー防衛隊の活用等の可能性も視野に検討してまいります。

 防衛装備移転についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段であり、こうした観点から、今後議論を進めてまいります。

 その上で、防衛装備品の海外への移転は、防衛装備移転三原則に従って個別に判断することとなるため、今後の移転について予断を持ってお答えすることは困難であります。

 領海警備の見直しと海上保安庁法第二十五条の改正についてお尋ねがありました。

 武力攻撃に至らない侵害に適切に対応するためには、警察機関と自衛隊との連携が極めて重要であり、現行の法制の下、海上警備行動等の発令手続の迅速化を図ったほか、海上保安庁等関係機関の対応能力の向上、情報共有、連携の強化、各種訓練の充実など、必要な取組を推進しています。

 今後の取組については、お尋ねの法案を含め、法整備が必要という声もあります。その中で、各機関の連携を充実させ、円滑にさせるために必要なものがないか、訓練等を通じて、なお一層の検討を進めてまいります。

 また、海上保安庁法第二十五条は、警察機関である海上保安庁が非軍事的性格を保つことを明確化した規定であり、法にのっとり、事態をエスカレートさせることなく任務を遂行するという観点から、重要な規定であると認識をしております。有事の際も海上保安庁に軍事的任務を付与することは想定しておらず、海上保安庁法第二十五条を改正することは考えてはおりません。

 政府としては、今後とも、あらゆる事態を想定し、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を断固として守り抜くという強い覚悟を持って、冷静かつ毅然と対応してまいります。

 国家安全保障戦略の記述と憲法前文の関係についてお尋ねがありました。

 お尋ねの憲法前文第二段の趣旨は、従来からお答えしてきているとおり、我が国が平和主義及び国際協調主義の立場に立つことを宣明したものであります。

 これらについては、新たな国家安全保障戦略等が前提としているものであることから、新たな国家安全保障戦略等の方向性は、憲法前文の理念にのっとったものであると考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 浜地雅一君。

    〔浜地雅一君登壇〕

浜地雅一君 公明党の浜地雅一です。

 公明党を代表し、ただいま報告のありました国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の三文書について質問をいたします。(拍手)

 九年ぶりに改定されました最上位戦略文書である国家安全保障戦略においては、その結語に、我が国は、法の支配を始めとする普遍的価値を基に、国際秩序の強化に向けた取組を確固たる覚悟を持って主導していくと、我が国の安全保障の目標がうたわれています。そのための総合的国力として、第一に外交力、次に防衛力、さらに経済安保も含めた経済力の強化、加えて、官民の高い技術を安全保障分野に積極的に活用した技術力、そして、インテリジェンスを始めとする情報力の五つの力を戦略的、有機的に用いていくというアプローチを明確に打ち出し、前回から大きく踏み込んだ内容となっております。

 そこで、まず、今回の三文書に込められた岸田内閣の目指すべき安全保障環境創出にかける決意を総理に御答弁いただきたいと思います。

 次に、対中国認識について質問をいたします。

 まず、中国に対し、拘束されている日本人の早期解放を断固求めます。

 国家安全保障戦略では、中国の軍事動向は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の総合的国力と同盟国、同志国との連携により対応すべき、これまでにない最大の戦略的挑戦と表現しましたが、同時に、中国は、我が国とともにインド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定に貢献することを期待されていると、大国として本来あるべき中国の役割、期待も明記されています。

 中国の現状を的確に認識した上で、中国のリスクをマネジメントしつつ、中国との適切な関係構築を目指す意思を感じます。特に、中国がウクライナ問題についてロシアとの仲介に入ろうとしている今、法の支配が後退するような決着になることは断じて避けるべきです。

 言うはやすく行うは難しでありますが、中国との適切な関係構築は避けて通れません。今後、どのような姿勢、アプローチで対中政策に臨まれるのか、岸田総理の答弁を求めます。

 今回の改定では、防衛大綱を国家防衛戦略に改め、その内容も、我が国の防衛目標、その目標を達成するためのアプローチ及び手段を包括的に示すものとなっています。加えて、米国も、昨年、新たな国家防衛戦略を策定し、日米両国が戦略をすり合わせ、防衛協力を統合的に進めることの重要性が明記されています。

 そこで、国家防衛戦略で示された我が国の防衛目標、その目標を達成するためのアプローチ及び手段とは具体的には何であるのか。新たな防衛戦略を基に、日米同盟を、ガイドラインの見直しも含め、どのように強化、深化させていくのか、総理の見解を伺います。

 今回の三文書改定では反撃能力に焦点が当たりましたが、与党ワーキングチームの議論の中でまず着目したのが、継戦能力の強化です。ワーキングチームでは、弾薬、誘導弾の不足はもとより、維持整備費不足による装備品の可動率の低下、防衛施設の耐震性、抗堪性の不備が浮かび上がり、優先的に予算措置をすべきとの意見で一致しました。

 結果、今後五年間の防衛予算約四十三兆円のうち、弾薬や維持整備、施設の強靱化予算に十六兆円を充てることとしましたが、五年後の令和九年度には、弾薬の充足率、装備品の可動率、防衛施設の耐震化、強靱化はどの程度図れる予定なのか、防衛大臣の答弁を求めます。

 次に、反撃能力について質問をします。

 これまで、政府は、いわゆる敵基地攻撃能力は、法理上、自衛権の範囲に含まれるとしながら、政策的に保有しないとしてきました。また、日米ガイドラインでは、打撃力は米国に依存すると整理してきましたが、今回保有を認めた反撃能力は、これまでの敵基地攻撃能力や打撃力と同義であるのか、異なる部分があるのか、まず概念について、総理、お答えください。その上で、反撃能力を保有すべきと判断した政策的理由について、総理に明確な答弁を求めます。

 反撃能力を行使する場合、軍事目標以外を攻撃することは国際法違反であることは明白です。軍事目標を的確に捉えるターゲティング、また攻撃成果の評価が重要となりますが、日米でどのように目標情報の共有や役割分担等を行っていくのか、訓練も含め綿密な協力が必要と思われますが、防衛大臣の答弁を求めます。

 反撃能力に用いるスタンドオフミサイルは、国産の一二式地対艦誘導弾の能力向上型、米国のトマホークを調達することが予定されています。事トマホークについては、前世代型の装備であるなどメディアで報道されておりますが、我が国が調達を予定するトマホークはブロック5型であり、米国でも二〇二一年十月に実戦配備を開始したばかりの最新鋭型と認識しております。

 国産の一二式改良型の配備の時期とともに、トマホークはその性能を含め反撃能力行使に有効な装備であるのか、防衛大臣の答弁を求めます。

 サイバー安全保障について質問をします。

 ウクライナ侵略を見ても分かるとおり、物理的な攻撃に先立ちサイバー攻撃が行われることは今や当然の前提となっており、有事に至る前にいかにサイバー攻撃を未然に防止できるかが急務です。ウクライナはロシアのサイバー攻撃にどう対処したかといえば、例えば、侵略前の二〇二一年十月時点において、鉄道システムに仕掛けてあったウイルスを米国政府の委託業者の協力を得て発見、除去し、軍事侵略後もウクライナ鉄道は運行を続け、多くの避難民を国外に退避させています。

 この教訓からも分かるとおり、能動的サイバー防御といっても、まずは、システムの脆弱性への対策、ウイルス等の早期発見、除去、仮に被害が生じた場合の最小化と迅速な復旧の体制を整えることが重要です。その上で相手方システムへの侵入、無害化の準備を進めるべきであり、以上の趣旨は安保三文書にも盛り込まれたところです。

 今後は、民間企業に対するサイバー攻撃が発生した場合の政府に対する情報提供の義務づけ及び支援の体制整備、また、通信事業者が有するいわゆるメタ情報の活用や、相手方システムに侵入、無害化する場合の権限の付与も課題となってきます。

 重要インフラの脆弱性対策、電気通信事業法を始めとする法的整備や能動的サイバー防御の司令塔機能など、我が国のサイバー安全保障全体のロードマップを早急に示すべきと考えますが、総理に答弁を求めます。

 国民保護について質問をします。

 ワーキングチームでは、特に南西諸島の避難に議論が集中しました。住民及び観光客約十二万人を避難させるためには、武力攻撃事態よりも十分に先立って迅速な避難実施を行う体制整備が急務です。また、地下施設を活用した緊急一時避難施設、いわゆるシェルターも全国的に不足しています。

 円滑な避難の実施に向けた計画の策定、訓練、輸送手段の確保、様々な避難施設の確保に向けた取組について、官房長官の答弁を求めます。

 適切な安全保障環境の創出には、真水の防衛費以外に、安全保障に資する研究開発費の活用、海保との連携強化、空港、港湾等の公共インフラの整備、利用調整、非ODAの枠組みを利用した同志国への協力強化が重要です。

 これら安全保障関連予算の有機的な連携をどのように進められるのか、最後に総理に答弁を求め、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 浜地雅一議員からの御質問にお答えいたします。

 三文書に込められた安全保障環境の創出にかける決意についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略を始めとする三文書は、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、外交、防衛のみならず、経済、技術等を含む多岐にわたる安全保障上の問題に対し、総合的な国力を最大限活用し、我が国の平和と安全を含む国益を確保するために作成されました。

 その中で、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要です。戦略的なアプローチとして、自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下での外交、反撃能力の保有を含む防衛力の抜本的強化等の方針を示しております。

 こうした施策を通じて、我が国の主権と独立の維持はもちろん、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、国際社会が共存共栄できる環境の実現等に取り組んでまいります。

 対中外交についてお尋ねがありました。

 日中両国間には、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案が存在します。同時に、日中両国は、地域と世界の繁栄に大きな責任を有しています。昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をする、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいります。

 この点、先週末の日中外相会談等では、林外務大臣より、我が国の立場を改めて伝達いたしました。

 なお、我が国としては、ウクライナ情勢をめぐる中国の動向についても注視をしており、国際社会に対して法の支配に基づく国際秩序の維持強化の重要性を訴えていくとともに、中国に対しても、様々な機会を通じて、責任ある対応を強く求めていく考えであります。

 防衛目標とそれを達成するためのアプローチ及び手段、日米同盟の強化についてお尋ねがありました。

 国家防衛戦略では、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出といった防衛目標を示した上で、その実現のためのアプローチと手段を掲げています。

 まず、我が国自身の防衛体制の強化として、反撃能力を含む防衛力の抜本的強化を中核としつつ、外交力等を含めた国力を統合し、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせた国全体の防衛体制を構築していきます。

 また、日米同盟の更なる強化として、日米共同の抑止力、対処力や同盟調整機能の強化に資する取組を進めていきます。本年一月の日米首脳会談においても、首脳間で、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していく決意を新たにしたところです。まずは、今後の日米防衛協力の内容や日米の役割、任務、能力を含め、幅広く議論をしてまいります。政府として直ちに日米ガイドラインの見直しが必要となるものと考えているわけではありませんが、その見直しの必要性についても不断に検討していきます。

 さらに、同志国等との連携の強化として、自由で開かれたインド太平洋を実現するため、多角的、多層的な防衛協力、交流を積極的に推進してまいります。

 反撃能力についてお尋ねがありました。

 反撃能力は、一九五六年の政府見解で示された能力に当たりますが、国家安全保障戦略等に記されたとおり、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力といった考え方を端的に表すものです。その上で、必要最小限の防衛の措置として、スタンドオフ防衛能力等を活用して行使される我が国の反撃能力は、あらゆる種類の能力を有する米国の打撃力とは異なります。

 反撃能力の保有を決定した背景には、近年、我が国周辺で質、量共にミサイル戦力が著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあるという現実があります。こうした状況において、反撃能力の保有により、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。

 サイバー安全保障についてお尋ねがありました。

 我が国のサイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させ、国や重要インフラ等の安全を確保することは喫緊の課題です。

 政府としては、国家安全保障戦略に基づき、重要インフラ事業者等との情報共有、政府による対処調整、支援の強化を始めとする能動的サイバー防御に必要な措置の実施や、総合調整の司令塔となる新たな組織の立ち上げ、これらの実現のための法制度の整備や運用の強化について、スピード感を持って具体化に向けた議論を進めてまいります。

 お尋ねのロードマップについては、必要となる法制度の整備等の内容がある程度具体化した段階でお示しできるよう、検討してまいります。

 防衛力の抜本的強化を補完する取組についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障、我が国及び同志国の抑止力の向上等のための国際協力の四つの分野における取組について、関係省庁間で有機的に連携できるよう、国家安全保障局を中心に、政府一丸で取り組んでまいります。

 また、自衛隊と海上保安庁との連携については、武力攻撃事態における防衛大臣による海上保安庁の統制要領を作成し、共同訓練を行うなど、一層の強化に努めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 浜地雅一議員にお答えいたします。

 まず、自衛隊の持続性、強靱性の強化についてお尋ねがありました。

 有事において自衛隊が粘り強く活動できるよう十分な能力を確保するため、防衛力整備計画では、今後五年間で、スタンドオフミサイル等を含む弾薬等の整備に約五兆円、装備品の可動向上に約九兆円、施設整備に約四兆円の経費を計上し、持続性、強靱性を抜本的に強化することとしております。

 これにより、二〇二七年度までに、早期に弾薬、誘導弾の必要数量を整備しつつ、スタンドオフミサイルを始めとした一部の弾薬については企業の製造態勢を強化し、ラインマックスを拡大するとともに、部品不足を解消して、計画整備等以外の装備品が最大限可動する体制を確保し、南西地域における特に重要な司令部の地下化、主要な基地、駐屯地内の再配置、集約化を進め、各施設の強靱化を図ることとしております。

 次に、反撃能力の運用における日米協力についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、反撃能力は、攻撃を厳格に軍事目標に対するものに限定するといった国際法の遵守を当然の前提として運用するものであります。

 その上で、国家防衛戦略では、反撃能力に関し、日米が協力して対処していくこととしており、情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築することとしております。

 反撃能力に関する日米の防衛協力の詳細は、今後、日米間で議論していくこととなりますが、議員御指摘の情報収集や訓練を含め、日米協力の下で反撃能力を効果的に運用するための議論を深めてまいります。

 最後に、トマホークの有効性についてお尋ねがありました。

 防衛省が取得を進めているトマホークは、最新型のブロック5で、長い射程を有し、迎撃を回避する飛翔も可能であり、スタンドオフミサイルとして必要な性能を有し、反撃能力としても活用し得るものと考えております。

 国産のスタンドオフミサイルを必要な数量整備するには一定の時間を要することから、それまでの間に十分な能力を確保するため、既に量産が行われているトマホークを取得することとしたものであります。トマホークの導入時期は、一二式地対艦誘導弾能力向上型の地上発射型と同様、二〇二六年度を予定しており、これらのミサイルの取得を並行して進めることで、早期に所要量のスタンドオフミサイルを整備していく考えであります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 浜地議員にお答えをいたします。

 国民保護についてお尋ねがありました。

 住民の避難をできるだけ早く実現するためには、平素から関係機関が連携して必要な検討、訓練を進めることが重要であると認識しています。

 南西地域の住民避難に関しては、先月、国、沖縄県、先島諸島の五市町村等が協力し、武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を実施し、避難の手順を確認、具体化しました。

 また、武力攻撃を想定した避難施設に関して、弾道ミサイル攻撃による爆風等からの直接の被害を軽減するための緊急一時避難施設の指定促進に取り組み、指定は着実に進んできており、さらに、核攻撃等のより過酷な攻撃を想定した施設については、必要な機能や課題の検討を進めているところであります。

 今後とも、沖縄県、関係市町村等と連携しながら、迅速な住民避難につながる検討、訓練や、様々な種類の避難施設の確保等に取り組み、国民保護の実効性の向上に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 国民民主党の前原誠司です。

 会派を代表して、防衛三文書について質問いたします。(拍手)

 一九三九年八月二十三日、ナチス・ドイツが突如、ソ連と独ソ不可侵条約を締結し、その五日後、平沼騏一郎内閣は、今回帰結せられた独ソ不可侵条約により、欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたと総辞職します。戦っていた国同士が突如、不可侵条約を結ぶことは確かに驚きでありましょう。しかし、複雑怪奇と総辞職をする事象でありましょうか。

 そもそも、全ての国家は国益を追求しているのであり、自らの国益にかなうと判断をすれば、他国から見れば複雑怪奇な決断は当然あり得ます。国家の安全保障を担う我々国会議員は、全てを想定内と受け止め、安全保障政策を立案し、遂行する責務があると思いますが、総理の見解を求めます。

 戦後、長期政権を担った自民党政治の問題の一つは、同盟国アメリカへの依存を強めることが現実的な防衛政策だと決めつけ、自らの国を自ら守る意思と体制を十分に取ってこなかったことにあります。

 確かに、現状では、日米関係を維持強化するしか現実的な選択肢はありません。しかし、アメリカは、日本が他国に主権を侵害されれば、一〇〇%、日米安保条約に基づき行動を起こしてくれるのでしょうか。アメリカは民主主義国家です。時の大統領の人気が高いか。上院、下院はどのような勢力構成か。アメリカの世論が日本に対して同情的か。同盟関係に絶対はないと私は考えますが、総理の考え方をお示しください。

 この防衛三文書は、日米同盟関係の維持強化とともに、自分の国を自分で守る能力を高めることになるのか、御答弁ください。

 その上で、私には奇妙な議論が国会で行われていることを指摘せざるを得ません。

 一九五六年二月に出された、弾道弾などによる攻撃を防ぐに万やむを得ない必要最小限度の措置を取ること、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるという政府見解に対し、日米安保条約に基づくアメリカの打撃力という他に手段がありながら、反撃能力を持つことは違憲だという主張であります。

 まさに本末転倒。自国ではなくアメリカに頼れというのですか。米国の打撃力には期待するが、一〇〇%行使されるかは分からない、したがって、自ら反撃能力を持つことは憲法の趣旨に合致すると明確に言い切るべきです。答弁を求めます。

 鳴り物入りの反撃能力として、トマホークを四百発購入し、八隻のイージス艦に搭載するとされています。しかし、アメリカの支援なしでは日本の独自運用は不可能です。これでは、日本が打撃力を持っても、結局、アメリカ頼みで、基本的に今までと何ら変わりがありません。

 将来的には単独対処ができる体制を整えるべきだと考えますが、いかがですか。

 中国や北朝鮮が、変則軌道や極超音速など新たなミサイルを開発しています。ミサイル防衛網を更にレベルアップし、新たな脅威にも対応できるようにしなければなりません。

 その意味で、イージス・アショアには期待をしていました。多人数で運用するイージス艦には負担が重過ぎる。地上配備であれば、より少人数での対応が可能となります。しかし、ブースターを演習地内や海上に落とすことができないと、突如、イージス・アショアを断念。新たな選択肢はイージスシステム搭載艦二隻となりました。これでは、議論が振出しに戻っただけではありませんか。

 リクルートワークス研究所は、二〇四〇年に日本では一千百万人の労働力が不足すると推計しています。今でも自衛官の確保には四苦八苦しているのが現状です。人員をより少なく運用できるイージス・アショアをもう一度探求すべきではありませんか。

 岸前防衛大臣は、範囲内に落とすための改修コスト、期間を考えると、とても合理的なものではないと答弁していますが、では、改修コストと期間が具体的にどれだけかかるのか、そして、何をもって合理的でないと断言するのか、明確な答弁を求めます。

 アクティブサイバーディフェンス、ACDの導入は必要不可欠です。

 国家安全保障戦略では、武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合、これを未然に排除するとされています。他方、憲法二十一条には、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」と書かれています。

 ACDが憲法二十一条に違反しない論拠を示してください。

 サイバー攻撃について、可能な限り未然に攻撃者のサーバー等への侵入、無害化ができるよう、政府に対し必要な権限が付与されるようにするとも書かれていますが、専守防衛との整合性について明確な答弁を求めます。

 ACDの法制化について、一刻も早い成立が必要だと考えますが、タイムスケジュールを示していただきたい。また、電気通信事業法、不正アクセス禁止法、通信傍受法など、具体的に改正が必要となる既存法の列挙を求めます。

 今日は財源には触れませんでしたが、政策の実現には具体的な財源が必要不可欠です。防衛力強化が絵に描いた餅にならないよう、責任ある対応を政府に求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 前原誠司議員からの御質問にお答えいたします。

 安全保障に対する国会議員の責務についてお尋ねがありました。

 新たな国家安全保障戦略等は、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、あらゆる選択肢を排除せずに現実的な検討を行った上で策定されたものです。

 同時に、安全保障環境等について国家安全保障会議が定期的、体系的に評価を行い、重要な変化が見込まれる場合には必要な修正を行うこととしております。

 このように、想定外が起こらない仕組みを整えつつ、国会議員の皆様の御理解と御協力を得ながら、国民の生命や暮らしを守り抜くという最も重要な責務を果たしてまいりたいと考えております。

 米国の対日防衛義務及び我が国の防衛体制の強化等についてお尋ねがありました。

 米国は、本年一月の日米首脳会談の機会を含め、累次の機会に日米安保条約の下での自国の対日防衛義務を確認、表明してきており、日米同盟の重要性については、民主党、共和党を問わず、共通の認識が存在しています。日本政府として、米国が条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いています。

 その上で、我が国を守り抜くのは我が国自身の努力に懸かっている、これは言うまでもなく、こうした観点から、国家安全保障戦略等では、防衛力の抜本的強化を中核としつつ、国力を統合した防衛体制を今まで以上に強化していく姿勢を明確に打ち出しました。

 このような我が国自身の強い意思と努力があって初めて、いざというときに同盟国等とともに守り合い、助け合うことができると考えております。

 こうした我が国の取組については、バイデン大統領を始め米国各方面から全面的支持を得ており、その上で、私とバイデン大統領から具体的協議を更に深化させるよう指示をし、日米同盟を更に強化していくこととしております。

 反撃能力と憲法についてお尋ねがありました。

 近年、我が国周辺で質、量共にミサイル戦力が著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。

 政府としては、米国が日米安保条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いていますが、これに加えて、我が国としても反撃能力を保有し、これにより、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、弾道ミサイル攻撃等に対応することが不可欠であると考えております。反撃能力の保有は、こうした状況の変化を踏まえたものであり、憲法の範囲内であると考えております。

 反撃能力の運用体制についてお尋ねがありました。

 まず、国産のスタンドオフミサイルを必要な数量整備するには一定の時間を要することから、それまでの間に十分な能力を確保する必要があります。このため、国産ミサイルの開発、生産のスケジュールや製造能力を踏まえて、トマホークを取得する予定です。また、スタンドオフ防衛能力の運用に際して必要となる情報収集・分析機能や指揮統制機能についても、衛星コンステレーションを活用した画像情報の取得等により、我が国の能力を強化してまいります。

 その上で、反撃能力については、情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築することとしております。

 イージス・アショアについてお尋ねがありました。

 イージス・アショアの配備プロセスにおいては、反省すべき点も多かったと認識をしています。一方で、ロフテッド軌道で打ち上げられた弾道ミサイルや同時複数の発射などに対応するための高い迎撃能力を持つイージスシステム搭載艦は、非常に有用な装備品です。省人化、居住性の向上を図り、海上自衛隊の負担軽減にも留意しつつ、整備を進めてまいります。

 なお、仮にイージス・アショアを配備する場合、SM3のハードウェアを含めたシステム全体の改修を行う必要があるなど、運用開始までに相当長い期間とコストを要することとなり、合理的ではないと考えているところであります。

 能動的サイバー防御と憲法その他の現行法令、専守防衛との整合性、また今後のスケジュールについてお尋ねがありました。

 政府としては、国家安全保障戦略に基づき、能動的サイバー防御等の実施のため、体制を整備するとともに、法制度の整備や運用の強化を図ることとしており、憲法その他の現行法令との関係も整理しつつ、スピード感を持って具体化に向けた議論を進めてまいります。

 また、武力攻撃に至らない場合の措置として実施する能動的サイバー防御が武力の行使に該当することは想定しておらず、専守防衛に反しないということは言うまでもありません。

 具体的なスケジュールについては、必要となる法制度の整備等の内容がある程度具体化した段階でお示しできるよう、検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、日本共産党を代表し、安保三文書について質問します。(拍手)

 岸田政権が昨年閣議決定した安保三文書は、歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨て、敵基地攻撃能力の保有に公然と踏み切るものです。さらに、研究開発や公共事業まで軍事に組み込み、国民には歳出削減と増税を押しつけ、GDP二%への大軍拡を推し進めるものです。

 総理は、平和国家としての歩みを変えるものではないと言いますが、憲法九条に基づく日本の在り方を根底から覆し、国の外交も内政も軍事最優先で進める軍事国家そのものではありませんか。

 今回の敵基地攻撃能力をめぐる議論で欠かすことのできない視点は、在日米軍基地の存在です。

 一九五二年に発効した日米安保条約に基づき、今なお、全国百三十か所以上の米軍基地が存在し、世界最大の約五万四千人の米軍兵力が駐留しています。世界で唯一、空母打撃群と海兵遠征軍が前方展開し、横須賀の原子力空母や、長距離巡航ミサイル、トマホークを搭載した十一隻のイージス艦、数百機に及ぶ岩国、三沢、嘉手納の空母艦載機や戦闘攻撃機、沖縄の海兵隊や佐世保の強襲揚陸艦など、いつでも出撃できる体制を取っています。しかも、近年、オスプレイや無人偵察機の配備、海兵沿岸連隊への改編など、新たな部隊の増強が相次ぎ、地上発射型の中距離ミサイルの配備まで取り沙汰されています。

 戦後、アメリカは、先制攻撃戦略を公然と掲げ、国際法違反の侵略戦争を繰り返してきました。こうしたアメリカの強大な攻撃戦力が日本に存在し、周辺諸国に脅威を与えてきたことが、地域の緊張を生み、軍拡を誘発する要因になってきたのではありませんか。

 そこに日本も加わり、他国に攻撃的脅威を与える兵器を日米一体で更に増強することが憲法九条に反することは明らかではありませんか。こうした敵基地攻撃能力の増強は、地域の緊張を一層高め、際限のない軍拡競争に陥り、戦争の危険を引き寄せることになるのではありませんか。

 今、アメリカは、同盟国を巻き込みながら、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させた統合防空ミサイル防衛、IAMDを構築しようとしています。

 総理は、IAMDに参加することはない、全く別物だと言いますが、今でも、日米のイージス艦は、データリンクを経由し、一体的に運用しているのではありませんか。トマホークの使用時だけは別物になるなどという荒唐無稽な説明は通用しません。

 日米は独立した指揮系統に従って行動するといいますが、日本がトマホークを使用するのに必要な地形情報も攻撃目標の位置情報も、米軍から入手するのではありませんか。日米で攻撃目標の重複を避け、攻撃に最適なイージス艦を瞬時に選択するには、高度に自動化されたシステムと指揮系統の一元化が必要なのではありませんか。日米間で調整要領を検討するとしているのも、そのためではありませんか。

 南西諸島から南シナ海に至る地域の島々に長射程ミサイルを配備する計画は、元々、アメリカの軍事戦略から始まったものです。日本の敵基地攻撃能力がIAMDに組み込まれ、米軍の指揮統制の下で運用されることになるのは明らかではありませんか。

 アメリカは、二十年前に始めたイラク侵略戦争で多数の米兵の犠牲者を出しました。それ以降、同盟国や同志国を戦争の最前線に立たせるやり方に変えてきています。

 米中の覇権争いが軍事衝突に発展したとき、戦場になるのはアメリカ本国ではありません。沖縄を始めとする日本列島であり、東アジアの国々です。政府は、この地域で絶対に戦争をさせない、そのために米中双方に緊張を高める行動をやめるよう働きかけ、地域の全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させるために全力を尽くすべきではありませんか。

 二〇〇八年の日中共同声明は、国交正常化以降の両国間の合意を踏まえ、双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威にならないことを確認しています。こうした共通の土台を再確認し、平和と友好の関係を確かなものにしていく外交にこそ、政府は取り組むべきではありませんか。

 今必要なのは、戦争の準備ではありません。平和のための準備です。

副議長(海江田万里君) 赤嶺政賢君、申合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

赤嶺政賢君(続) 憲法九条を生かした平和外交に積極的に取り組むことを求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 赤嶺政賢議員からの御質問にお答えいたします。

 三文書に基づく安全保障政策についてお尋ねがありました。

 防衛力の抜本的強化の検討に際しては、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げ、防衛費の規模を導き出しました。あわせて、これらを補完する取組として、研究開発、公共インフラ整備といった総合的な防衛体制を強化するための経費等を積み上げました。こうした積み上げの考え方が大前提であり、GDP二%への大軍拡との指摘は当たりません。

 また、これまでも繰り返し申し上げているとおり、国民の命や暮らしを守り抜く上で、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。加えて、令和五年度予算には、国民生活の向上に直結する予算をしっかりと盛り込んでおります。このように、外交も内政も軍事最優先で進める軍事国家そのものとの御指摘は当たらないと考えています。

 三文書で示された方針は、あくまで憲法、国際法、国内法の範囲内で実施されるものであり、専守防衛の堅持、平和国家としての歩みをいささかも変えるものではありません。

 在日米軍の存在、反撃能力の保有及び地域の緊張についてお尋ねがありました。

 日米安全保障条約に基づき我が国に駐留する米軍のプレゼンスは、地域における平和及び安全の維持に寄与してきており、不測の事態に対する抑止力として機能してきています。

 また、反撃能力は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用されるものであり、これにより、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。

 その上で、諸外国に対して、自国の安全保障政策の具体的な考え方を明確にし、透明性を確保することは重要であります。我が国の安全保障政策に関する透明性の確保について、積極的に取り組んでまいります。

 統合防空ミサイル防衛と指揮統制についてお尋ねがありました。

 国家防衛戦略に記載されているように、統合防空ミサイル防衛能力の下、ミサイル防衛システムと反撃能力を組み合わせて、ミサイル攻撃そのものを抑止していきます。その際、情報収集を含め、日米が連携することが重要です。

 一方、統合防空ミサイル防衛能力は、米国の要求に基づくものではなく、また、米国が推進するIAMDとも異なる、我が国の主体的な取組であります。自衛隊及び米軍は、各々独立した指揮系統に従って行動し、かつ、自衛隊は、憲法、国際法、国内法に従って行動することは言うまでもないことから、日本の反撃能力が米軍の指揮統制の下で運用されるといった指摘は当たりません。

 米中関係と東アジア地域における平和の枠組みについてお尋ねがありました。

 米中両国の関係の安定は、国際社会にとって極めて重要です。日本としては、引き続き、同盟国たる米国との強固な信頼関係の下、様々な協力を進めつつ、中国に対して、大国としての責任を果たしていくよう働きかけていく考えです。

 アジアでは、ASEANが地域協力の中心として重要な役割を担っており、加えて、米中も参加する多層的な地域協力の枠組みがあります。引き続き、我が国として、ASEAN中心性を尊重し、各種の枠組みで積極的な貢献を行いながら、自由で開かれたインド太平洋を実現するための協力を一層強化していく考えです。

 対中外交についてお尋ねがありました。

 御指摘の、お互いを協力のパートナーとし、互いに脅威とならないことについて、日中間では、二〇〇八年の戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明においてこれを明記して以来、首脳、外相レベルを含む日中間の様々な意思疎通の場において、累次確認をしています。

 引き続き、昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       防衛大臣    浜田 靖一君

       国務大臣    岡田 直樹君

       国務大臣    松野 博一君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       防衛副大臣   井野 俊郎君


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