第16号 令和5年4月6日(木曜日)
令和五年四月六日(木曜日)―――――――――――――
議事日程 第九号
令和五年四月六日
午後一時開議
第一 仲裁法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案(内閣提出)
第三 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣提出)
第五 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 仲裁法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案(内閣提出)
日程第三 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣提出)
日程第五 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(細田博之君) これより会議を開きます。
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日程第一 仲裁法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案(内閣提出)
日程第三 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第一、仲裁法の一部を改正する法律案、日程第二、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案、日程第三、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長伊藤忠彦君。
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仲裁法の一部を改正する法律案及び同報告書
調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案及び同報告書
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔伊藤忠彦君登壇〕
○伊藤忠彦君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、仲裁法の一部を改正する法律案は、経済取引の国際化の進展等の仲裁をめぐる諸情勢の変化に鑑み、仲裁廷が命ずる暫定保全措置に基づく強制執行等の手続等を定める等の措置を講じようとするものであります。
次に、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案は、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の締結に伴い、その的確な実施を確保するため、和解の仲介を行う手続において成立した国際和解合意に基づく強制執行を可能とする制度を創設しようとするものであります。
次に、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案は、認証紛争解決手続において成立した和解に基づく強制執行を可能とする制度を創設する等の措置を講じようとするものであります。
以上三法律案は、去る三月二十九日本委員会に付託され、同日齋藤法務大臣から趣旨の説明を聴取し、四月四日、質疑を行い、採決の結果、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) 三案を一括して採決いたします。
三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第四 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第四、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長大西英男君。
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特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔大西英男君登壇〕
○大西英男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するためのものです。
その主な内容は、
第一に、特定受託事業者に係る取引の適正化について定めるものです。
第二に、特定受託業務従事者の就業環境の整備について定めるものです。
本案は、去る三月二十八日本委員会に付託され、翌二十九日後藤国務大臣から趣旨の説明を聴取しました。次いで、四月五日に質疑を行い、質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第五 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第五、道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。国土交通委員長木原稔君。
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道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔木原稔君登壇〕
○木原稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、高速道路等の適正な管理及び機能の強化を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、高速道路の更新事業等に必要な財源を確保するため、料金徴収期限を最長で令和九十七年九月三十日まで延長できることとするとともに、債務返済を確実に行うため、その期間を五十年以内に設定すること、
第二に、高速道路等の料金を車両の運転者又は使用者に請求できることを明確化すること、
第三に、高速道路の通行者等の利便の確保に資する施設と一体となった駐車場の整備に対して、新たな財政支援を行うこと
などであります。
本案は、去る三月二十八日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、翌二十九日斉藤国土交通大臣から趣旨の説明を聴取しました。四月四日質疑に入り、同日参考人から意見を聴取し、昨五日質疑を終了しました。
質疑終了後、本案に対し、立憲民主党・無所属及び国民民主党・無所属クラブから、それぞれ修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。
次いで、討論を行い、採決いたしました結果、両修正案は否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(細田博之君) この際、内閣提出、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣鈴木俊一君。
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) ただいま議題となりました我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案の趣旨を御説明申し上げます。
令和五年度以降における我が国の防衛力の抜本的な強化及び抜本的に強化された防衛力の安定的な維持に要する費用の財源に充てるため、財政投融資特別会計財政融資資金勘定及び外国為替資金特別会計からの繰入金、独立法人国立病院機構及び独立行政法人地域医療機能推進機構の国庫納付金並びに国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入を確保するとともに、これらの税外収入を活用した防衛力強化資金を設置することとしたところであります。
本法律案は、このための法律上の手当てについて措置するものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、令和五年度において、財政投融資特別会計財政融資資金勘定から、二千億円を限り、一般会計に繰り入れることができることとしております。
第二に、令和五年度において、特別会計に関する法律第八条第二項の規定による外国為替資金特別会計からの一般会計への繰入れをするほか、同特別会計から、約一兆二千億円を限り、一般会計に繰り入れることができることとしております。
第三に、独立行政法人国立病院機構は、令和五事業年度において、積立金のうち、四百二十二億円を国庫に返納しなければならないこととしております。
第四に、独立行政法人地域医療機能推進機構は、令和五事業年度において、積立金のうち、三百二十四億円を国庫に納付しなければならないこととしております。
第五に、防衛力の抜本的な強化及び抜本的に強化された防衛力の安定的な維持のために確保する財源を防衛力の整備に計画的かつ安定的に充てることを目的として、当分の間、一般会計に防衛力強化資金を設置することとしております。この資金は、防衛力整備計画対象経費の財源に充てる場合に限り、予算の定めるところにより、使用することができることとしております。
以上、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小田原潔君。
〔小田原潔君登壇〕
○小田原潔君 自由民主党の小田原潔であります。
ただいま議題となりました我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案について、会派を代表して質問させていただきます。(拍手)
現在、我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。ロシアによるウクライナへの侵略や、中国、北朝鮮による軍事行動が活発化している中、我が国の主権と独立を維持し、国民の生命と財産を守るためには、抑止力を高め、その裏づけとなる防衛力を強化していくことが重要であります。
このような状況下において、岸田内閣は、昨年十二月十六日に、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の安保関連三文書を取りまとめ、相手に攻撃を思いとどまらせるための反撃能力の保有など、我が国自身が防衛力を抜本的に強化していく方針を明確にし、歴史の転換点とも言える今、新たな一歩を踏み出すための決断を行いました。
新たに策定された防衛力整備計画においては、抜本的に強化される防衛力の具体的な達成目標とともに、今後五年間で必要となる防衛力整備の金額として、四十三兆円程度という規模が示されたところであります。この計画に基づき、先般成立した令和五年度予算においては、防衛関係費について、これまでの水準を大幅に上回る六・八兆円が確保され、スタンドオフ防衛能力や統合防空ミサイル能力などの重点分野を中心に、防衛力の強化が図られています。
防衛力整備計画で示された防衛力の抜本的な強化の内容と、それを裏づける今後五年間の防衛力整備の水準に係る方針は、政策の大転換ともいうべきものです。この意義について国民の十分な理解を得るためには、四十三兆円の中身が、我が国が直面する厳しい安全保障環境に対処するために必要不可欠なものであるということを国民に対して丁寧に説明していく必要があると考えます。
そこで、防衛力の抜本的な強化に向けた決意を改めて岸田総理にお伺いするとともに、今後五年間で必要となる防衛力整備の水準である四十三兆円についての具体的な内容について御説明願います。
こうした防衛力強化のための取組は、将来にわたって維持していく必要があります。今後五年間のみならず、令和十年度以降も、裏づけとなる安定的な財源によってこれを支え、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対応することが重要であると考えます。その上で、今後必要となる予算に対する財源の見通しを示し、国民に対する説明責任を果たしていくことが必要であります。
その財源の確保を図るために、防衛力強化のための財源確保法案が今国会に提出されたところであります。本法案においては、その財源として必要となる、特別会計からの繰入れや独立行政法人からの国庫納付といった税外収入の確保や、これらの税外収入を活用した防衛力強化資金の創設のために必要な規定が盛り込まれています。
今後五年間における防衛力整備の水準である四十三兆円と、令和十年度以降の防衛費増額のために必要となる財源をどのように確保していくのか、今回の財源確保法案の必要性と併せて、鈴木財務大臣にお伺いいたします。
なお、財源確保に当たっては、国民の負担をできる限り抑制し、国民の不安感を払拭する必要があると考えております。国民生活に関わる多くの品目が値上げされている状況下で増税を伴うということになると、本来あるべき、国防費を倍増してでも行うべき防衛力強化の論点がややずれ、国民の皆さんに応援してもらいにくくなることを懸念いたします。税制措置について、具体的にどのように国民負担を抑えていくこととしているのか、岸田総理から御説明いただけないでしょうか。
また、税制措置の実施時期については、税制改正大綱において、令和六年以降の適切な時期とされています。十分かつ慎重な検討を行っていくことが必要であると考えますが、実施時期の判断に当たっては、具体的にどのようなことを考慮し、どのように議論を進めていかれるおつもりなのか、岸田総理から御説明いただきたいと思います。
最後に、新たな税制措置によって、賃上げの流れを止めるようなことがあってはなりません。防衛財源の確保も重要ですが、持続的な賃上げの実現も日本経済の再生のために取り組むべき課題であります。足下の物価高に負けない賃上げに向けた政府の具体的な取組を総理にお伺いし、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 小田原潔議員からの御質問にお答えいたします。
防衛力強化に向けた決意と防衛力整備の具体的な内容についてお尋ねがありました。
力による一方的な現状変更の試みの深刻化や北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、防衛力を抜本的に強化することを決断いたしました。
この検討に際しては、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行い、可動率向上や弾薬、燃料の確保、主要な防衛施設の強靱化、スタンドオフ防衛能力の強化、ミサイル防衛システムと反撃能力を組み合わせた統合防空ミサイル防衛能力の強化、宇宙、サイバー、電磁波等の新たな領域への対応、また南西地域の防衛体制の強化など、必要となる防衛力の内容を積み上げました。
これらについて、今後五年間にわたり予算をしっかり確保し、防衛力を緊急的に強化いたします。これにより、抑止力、対処力を向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させていく考えであります。
防衛力強化に係る税制措置についてお尋ねがありました。
税制措置については、法人税について、五百万円の税額控除を設けることで、全法人の九四%を対象外とするとともに、所得税について、現下の家計の負担増とならないよう、復興特別所得税の税率を引き下げた上で、その下げた範囲内で新たな付加税をお願いするなど、十分な配慮をすることとしています。
また、実施時期については、令和九年度までの過程において、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を踏まえて、閣議決定した枠組みの下で、税制措置の実施時期を柔軟に判断していく考えであります。
賃上げについてお尋ねがありました。
賃上げは、新しい資本主義の最重要課題です。春闘の賃上げ率は三十年ぶりの高水準となるなど、大企業を中心に力強い動きが出てきています。
この動きを中小企業等に広げるため、先日、政労使の意見交換の場を持ちました。政府としては、今後、公正取引委員会の協力の下、労務費の転嫁の在り方について指針をまとめていくなど、価格転嫁の促進に取り組むとともに、事業再構築補助金やものづくり補助金などにより、着実に生産性向上を支援し、賃上げの動きをしっかりと後押しをしてまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 小田原潔議員の御質問にお答えいたします。
防衛力強化のための財源確保等についてお尋ねがありました。
抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していかねばならず、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が不可欠であります。
その財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保といった行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一については税制措置での御協力をお願いしたいと考えております。
今般の財源確保法案は、これらの財源確保策のうち、主として税外収入について所要の措置を講じるものであり、具体的には、令和五年度における特別会計からの繰入れ等を規定するとともに、確保した税外収入を令和六年度以降も活用できるようにするため、防衛力強化資金を設置するなど、必要な規定を盛り込んでおります。
令和十年度以降においても、防衛力強化資金を通じて防衛力の維持を安定的に支えられるよう、税外収入等の更なる確保に努めるとともに、歳出改革の徹底にも最大限取り組んでまいります。(拍手)
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○議長(細田博之君) 末松義規君。
〔末松義規君登壇〕
○末松義規君 立憲民主党・無所属の末松義規です。
会派を代表して、ただいま議題となりました我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案について質問いたします。(拍手)
NATO諸国においては国防費をGDP比二%を目標としていることは承知していますが、我が国はNATOに加盟していません。NATOのメンバーでもない我が国が、なぜ防衛費のGDP比二%目標を達成する必要があるのか。米国から強い圧力を受けたとの情報がありますが、総理、その経過を含め、明確に御説明ください。
なお、NATO諸国においては、二〇一四年に国防費をGDP比の二%到達の目標を設定し、二〇二四年までの十年間かけてゆっくり達成するようですが、二〇二一年時点で二%に未達の国が三十か国中二十二か国もあるので、NATOメンバーでもない我が国が急ぐ理由は全くありません。今回、我が国では、いきなり五年間で防衛費をGDP比二%に持っていこうとしています。財政的に厳しい我が国としては、その実現に極めて無理があると考えますが、総理、いかがですか。
政府は、防衛費だけをいわば聖域化して、度を越した総額四十三兆円規模の防衛費を提案しています。
日本を取り巻く安全保障環境の変化等に鑑みれば、当然、真に必要な予算を積み上げた結果として、一定程度防衛費を増額することは、立憲民主党としても必要だろうと考えています。ただし、差し迫った喫緊の課題は防衛だけではないため、今後、極めてバランスの悪い予算配分となります。四十三兆円という度を越した巨額防衛費の設定は、現下の極めて厳しい予算状況を考えると、戦略設定を間違えたものと言わざるを得ません。
例えば、昨年の出生数が八十万人を割ったことが象徴的ですが、子ども・子育て支援も待ったなしの課題です。
岸田総理も子供関連予算の倍増を掲げましたが、今回の令和五年度予算では、防衛費が対前年比で二六%増となった一方、子供関連予算は二・六%増にとどまっており、極めていびつな予算構造と言わざるを得ません。このいびつな予算構造についての御見解を問います。
また、総理が言われた子ども・子育て関連予算倍増構想について、具体的スケジュールと金額をここでお示しください。
今回示されたのは令和九年までの財源確保策であり、令和十年以降の見通しは示されていません。GDP比二%相当の防衛費総額と今回の財源確保の枠組みは、令和十年以降も恒久的に続くことになるのでしょうか。
そもそも、戦時国債が大量に乱発され、借金の対GNP比が二五〇%を超えた第二次世界大戦の末期の一九四四年と同様に、我が国は、借金一千兆円の国債を抱え、対GDP比二五〇%程度と借金まみれになっています。この我が国の現状では、幾ら防衛費を倍増しても、財政的に見て戦争を行えるような国ではないと判断され、我が国に対する侵攻のハードルが下がってしまいます。健全な財政、強い経済力は、我が国の抑止力に不可欠です。
そこで、まず、日本の財政状況と継戦能力に関する総理の御見解を問います。
当然のことですが、戦争回避のために全力を尽くすため、外交力の抜本強化が必要です。外交力の中核は人材です。外務省の職員や在外公館等で活動する防衛駐在官を拡充し、情報収集・分析能力、体制を抜本強化すべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
さらに、総理も外務大臣経験者として御理解いただけると思いますが、通常の外交に加えて、我が国として戦略的なロビーイング活動を大幅に拡大させて、重要国リーダーたちとの恒常的な人的パイプを強化することが不可欠だと思いますが、総理、いかがでしょうか。
一方、歴史的、地理的、政治経済的に考えて、我が国は米中の緊張緩和を主導するに最もふさわしい国だと考えますが、総理、その外交を主導していかれるお気持ちはありませんか。
今、非常に大きな懸念として一般的に言われているのが、台湾有事です。
立憲民主党としても、一定程度の防衛力増強は必要であると考えています。
しかし、防衛体制が整備されると同時に、日米共同防衛力が強化され、その能力が高まれば高まるほど、台湾有事の際に、米国から我が国の自衛隊が頼りにされて、台湾を守るという構図の中、我が国も戦争への道に巻き込まれることにならないのか、国民から大きな懸念が寄せられています。このような深刻な懸念に対して、総理はどのように答えられますか。お答えください。
日米の防衛協力において、いわゆる盾と矛という考え方が従来用いられてきました。我が国は盾として専守防衛に徹し、米国が矛として他国に対する敵地攻撃を行うという役割分担です。
政府の考えでいくと、今後、我が国は反撃能力を保有することになります。政府が先制攻撃を否定していることから、周辺事態ではなく、我が国に武力攻撃がなされた時点で、日米共同武力対処事案となります。その際、米国から、我が国を守るという立場から、我が国に対して、自衛隊による反撃行為として敵国を一部攻撃するよう頼まれた場合には、我が国が従来の基本的立場を維持することなく、矛の役割を担って攻撃をしていくことになるのでしょうか。それとも、その可能性は全くないと言い切れるのでしょうか。
この問題は、我が国がとことん戦争に巻き込まれることになるか、あるいは、日米同盟を破綻させることになるかという究極的選択につながる、極めて重大な問題であります。総理の内容のある御見解を求めます。
直接的な対応を担う自衛隊の諸課題について申し上げます。
第一に、急拡大した防衛予算に対応できない自衛官不足問題や、台湾有事等の顕在化による自衛官の集団退職を防止する改善策。二番目は、サイバー関係の人員の確保に当たっては、民間の優秀な高度技術者を幅広く予備自衛官にしながら、民間人専門家を大量にリクルートすること。三番目は、作戦運用の効率化と各種法制、規制の改善により、実質的防衛力を強化すること。四番目は、世界水準の何倍もの割高な調達になっている国内製装備品の存在やライフサイクルコストの大幅な高騰に対する改善策をまとめること。
これらは私たちが多くの専門家との会合を重ねた上での一部のポイントですが、総理の御認識を問います。
財源確保策の諸問題について、具体的な問題点を申し上げます。
政府は、防衛増税として復興特別所得税の流用を掲げていますが、その一部を防衛増税に流用し課税期間を十四年間も延長するというのは、国民に対するだまし討ち的な流用であり、被災者の心情をじゅうりんするものです。
この間、何度も取り上げられた問題ですが、手を挙げまして三・一一直後に宮城県の現地緊急対策本部長となり、その後、三・一一担当の総理補佐官、初代復興副大臣、震災復興特別委員長を務めた私としては、被災者のお気持ちを代弁させていただき、改めて、安易な防衛増税の撤回を強く求めます。総理、いかがでしょうか。
度々指摘されているとおり、今回利用するとされている税外収入は、大手町プレイスの売却収入が象徴的ですが、いずれも一時的な財源にしかならず、持続性、安定性を欠くのではないでしょうか。また、令和十年度以降、具体的な収入のめどは立っているのでしょうか。
それ以外にも、深刻な問題を抱えています。
今回、地域医療機能推進機構、JCHOの積立金の不用見込額として三百二十四億円を国庫返納させるようですが、本来、JCHOの積立金に余剰が生じた場合は、年金特別会計に納付しなければなりません。今回の法案は、その規定を無効化して、三百二十四億円を防衛財源に充てることを可能とするもので、年金財源の流用そのものです。
JCHOの山本修一理事長は、そもそも、積立金はコロナ禍の現場の病院努力の見返りであり、積立金の六百七十五億円があっても経営資金として足りない状況だと述べています。このような状況で、積立金の半分の三百二十四億円を不用と見込んで防衛費に流用するのは、乱暴に過ぎるのではないでしょうか。
決算剰余金は、前年度予算で不用とされたものなどから構成されており、そもそも安定的に確保できるものではありませんが、例えば、予備費を計画的、意図的に不必要に膨らませることで、決算剰余金を膨らませることは可能です。
実際に、令和四年度予算では、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費が約二・八兆円、昨年十二月に新設されたウクライナ情勢経済緊急対応予備費が手つかずのまま一兆円残っており、合計すると、予備費としては過去最大の三・八兆円が不用額とされそうです。政府は、不用額が生じた場合、特例公債の発行額の抑制に努めるといいますが、そこには財務省の大きな裁量余地があり、かなりの部分が決算剰余金となることでしょう。
特に、決算剰余金は補正予算の財源とされてきました。防衛財源に決算剰余金を充当する代わりに、補正予算の財源として赤字国債を発行するならば、事実上、防衛財源として赤字国債を発行するのと同じことになります。これこそ、いわば防衛財源ロンダリングとなり、政府によって、極めて巧妙な裏手口となり得ます。これに対する総理の御見解を問います。
歳出改革では毎年二千百億円程度を捻出するとされていますが、その具体的な内容は全く明らかにされていません。総理、確実に実現するめどは立っているのでしょうか。
最後になりますが、外務省勤務時代、イラン・イラク戦争で、図らずもすさまじい戦争体験をした私にとっては、日本の政治家の最大の目的は戦争回避であり、戦争突入は政治家の無能の結果であるということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 末松義規議員の御質問にお答えいたします。
防衛費の規模についてお尋ねがありました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しており、我が国の判断として、今後五年間で緊急的に防衛力を強化していくことが不可欠であると考えています。
NATOを始め各国は、安全保障環境を維持するために、経済力に応じた相応の国防費を支出する姿勢を示しており、我が国としても、国際社会の中で、安全保障環境の変化を踏まえた防衛力の強化を図る上で、GDP比で見ることは指標として一定の意味があると考えています。
その上で、防衛力の抜本的強化に当たっては、その内容の積み上げと併せて、これらを補完する取組として、海上保安能力やPKOに関する経費のほか、研究開発、公共インフラ整備など、総合的な防衛体制を強化するための経費を積み上げました。
こうした積み上げの結果として、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せ、そのための予算水準が現在のGDPの二%に達するよう、所要の措置を講ずることといたしました。
今般の決定は、我が国自身の判断として行ったものであり、米国からの要請を受けたとの指摘は当たりません。
また、厳しい財政事情の中、財源確保については、できる限りの行財政改革を前提とした方針について政府・与党で確認をし、昨年末に閣議決定をしており、これに基づき着実に取り組んでまいります。
防衛費及び子ども・子育て予算についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙する中、国民の命と暮らしを守り抜くためのものです。一年以上にわたる活発な議論を積み重ね、その過程において、必要となる防衛力の内容を積み上げ、防衛費の規模を導き出した上で、令和五年度予算に計上したものであり、必要な予算であると考えております。
また、子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資であり、最優先の課題です。これまでも、社会のニーズ等を踏まえつつ、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、必要な支援を進め、その結果、少子化対策の予算額は、政権交代以降、平成二十五年度の約三・三兆円から令和五年度の約六・三兆円と大きく増加をしています。
さらに、今月発足したこども家庭庁の下で、子ども・子育て政策の抜本強化に取り組んでまいります。先般取りまとめたたたき台を踏まえ、必要な政策強化の内容、予算、財源について更に具体的な検討を進め、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。
岸田政権は、防衛力の抜本的強化と子ども・子育て政策の抜本強化、どちらか一方という二者選択の問題とするのではなく、政府の責任として、共に必要な予算をしっかりと措置してまいります。
防衛費の財源についてお尋ねがありました。
抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していかなければならず、この防衛力を安定的に支えるためには、令和九年度以降、毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要です。
その財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるため、あらゆる工夫を検討した結果、歳出改革、決算剰余金の活用、そして、様々な取組により確保した税外収入等を令和十年度以降も含めて防衛力整備に計画的、安定的に充てるための防衛力強化資金の創設、これらの取組により、必要な財源の約四分の三を確保することといたしました。
それでも足りない約四分の一については、将来の世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いしたいと考えております。
これらの取組により、強化された防衛力を将来的にわたり安定的に支えられるよう、必要な財源をしっかりと確保してまいります。
我が国の財政状況と継戦能力についてお尋ねがありました。
しっかりとした経済財政の基盤を平時から維持強化していくことは、国家安全保障の観点からも重要であると考えています。この点、国家安全保障戦略においても、我が国の経済は海外依存度が高いことから、有事の際の資源や防衛装備品等の確保に伴う財政需要の大幅な拡大に対応するためには、国際的な市場の信認を維持し、必要な資金を調達する財政余力が極めて重要とされているところです。
引き続き、足下の経済状況に機動的に対応するとともに、財政の持続可能性への市場の信認が失われることがないよう、歳出歳入両面の改革を続け、責任ある経済財政運営に努めてまいります。
情報収集・分析体制、重要国との恒常的な人的パイプの強化、そして米中関係についてお尋ねがありました。
外交力強化のために、情報収集・分析能力を向上させることは極めて重要です。我が国は、世界全体に二百三十一の在外公館を設置し、幅広い情報源や人脈を有しており、日頃から、情報収集・分析能力の強化に取り組んでいます。
昨年末に決定された国家安全保障戦略において、多様な情報源に関する情報収集能力を大幅に強化するなどとされていることも踏まえ、業務の合理化等も行いながら、外務省員、防衛駐在官といった人員体制の強化に鋭意努めてまいります。
人的パイプの強化については、各国・地域において対外発信力を有し、将来を担う人材を積極的に我が国に招聘し、訪日後もフォローアップをするなど、多層的な人的つながりの戦略的強化に努めてきております。
米中両国の関係の安定は、国際社会にとっても極めて重要です。既に私自身、両国首脳と累次対話を重ねていますが、引き続き、同盟国たる米国との強固な信頼関係の下、様々な協力を進めつつ、中国に対して、大国としての責任を果たしていくよう働きかけてまいります。
いわゆる台湾有事についてお尋ねがありました。
御指摘のような仮定の質問にお答えすることは避けなければなりませんが、いわゆる台湾有事における我が国の対応は、憲法、国際法や平和安全法制を始めとする国内法令に従って、個別具体的に行われていくことになると考えます。
いずれにせよ、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要と考えており、台湾をめぐる問題について、対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの我が国の一貫した立場であります。
反撃能力についてお尋ねがありました。
お尋ねの武力攻撃事態における反撃能力の運用については、実際に発生した状況に即して、武力の行使の三要件に基づき、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断いたします。
反撃能力は、米国から頼まれて行使するものではなく、国民の命や暮らしを守り抜くために行使するものであり、我が国の主体的な判断の下で運用され、日本が戦争に巻き込まれることになるか、あるいは日米同盟を破綻させることになるかという選択につながる問題ではありません。
自衛隊の諸課題についての認識に関するお尋ねがありました。
自衛官不足、退職防止及びサイバー関係の人員確保といった人的基盤に関わる課題、運用の効率化と規制改善といった運用の円滑化に関わる課題及び装備品の調達に関わる課題といった諸点について御指摘をいただきました。
御指摘については、防衛力を強化するためにいずれも重要な課題であると認識をしています。
例えば、人的基盤に関わる課題については、防衛省において、有識者検討会で精力的に検討いただきながら取り組んでまいります。また、装備品調達に関わる課題については、防衛産業はいわば防衛力そのものであるという視点も取り入れて取り組んでまいります。
いずれにせよ、防衛力を抜本的に強化するに際して必要な、重要な御指摘と受け止めさせていただきます。
税制措置についてお尋ねがありました。
復興特別所得税については、現下の家計の負担増にならないよう、復興特別所得税の税率を引き下げた上で、その下げた範囲内で新たな付加税をお願いすることとしております。また、復興財源との関係では、復興債の発行を通じた柔軟な資金調達が可能であるため、復興特別所得税の税率を引き下げても、毎年度の復興事業の円滑な執行には問題は生じません。加えて、この措置は、復興事業や復興債の償還のための財源としてお願いをしている復興特別所得税の課税期間の延長をするものであり、その延長幅は、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているため、復興事業に影響を及ぼすことはないと考えております。このように、復興税を防衛目的で流用したとの御指摘は全く当たりません。
さらに、廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、息の長い取組についてもしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧復興に要する財源を引き続き責任を持って確保してまいります。
政府としては、復興事業に影響を及ぼすことがないことを、被災者の方々を含め国民の皆様に御理解いただけるよう、引き続き丁寧な説明を行ってまいります。
防衛力強化のための財源についてお尋ねがありました。
税外収入については、令和五年度予算において、特別会計からの追加の繰入金や国有財産の臨時の売却収入等により、現時点で見込める最大限の金額として四・六兆円を確保した上で、防衛力強化資金を通じて、防衛力の整備に計画的、安定的に充てていく方針としております。
令和十年度以降についても、令和五年度予算において令和九年度までの五年分に充てられる税外収入四・六兆円を確保したことも踏まえ、防衛力強化資金から年平均〇・九兆円程度の安定財源が確保されるよう、今後も、引き続き、更なる税外収入の確保に努めてまいります。
地域医療機能推進機構の積立金の国庫への納付は、新型コロナ対応を行う中で一般財源を原資として措置をした病床確保料に係る収益のみを対象とするものであることなどから、年金特別会計でなく一般会計に納付することとしたものであります。
こうした政府の方針についても、国民の皆様に御理解いただけるよう、引き続き丁寧な説明を行ってまいります。
予備費と決算剰余金の関係についてお尋ねがありました。
予備費を含めた歳出に不用が生じることが見込まれる場合には、税収等の動向も見極めながら、特例公債法の規定に基づき特例公債の発行額の抑制に努めることとしており、予備費の規模やその不使用による歳出不用の増加と決算剰余金の金額が対応するわけではありません。
その上で、防衛力強化財源として、決算剰余金の活用について申し上げれば、直近十年間の平均が一・四兆円程度であることを踏まえ、財政法上、公債又は借入金の償還財源に充てるべき二分の一を除く、残りの二分の一の〇・七兆円程度を活用見込額として見込んだものであり、予備費を計画的、意図的に膨らませること等を前提に防衛力強化の財源として考えているわけではありません。
また、決算剰余金が補正予算の財源として活用された事例があることは事実ですが、これは制度的に決められたものではなく、予算編成後のその時々の事情に応じて、今後、補正予算を編成すべき必要性が生じた場合には、その財源についても、その時々の税収見込みや歳出不用の見込み等を踏まえて、機動的な対応を取ることになります。
したがって、防衛財源ロンダリングといった御指摘は当たりません。
歳出改革についてお尋ねがありました。
防衛力強化のための財源としての歳出改革については、社会保障関係費以外の経費を対象とし、骨太方針に基づき、これまでの歳出改革の取組を継続する中で財源を確保することとしております。
こうした考え方に基づき、令和五年度予算においては、二千百億円程度の防衛関係費の増額を確保いたしました。
令和六年度以降も、毎年度の予算編成において、政府・与党連携して歳出改革を継続し、令和九年度時点において、令和四年度と比べて一兆円強の財源を確保してまいります。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 井上英孝君。
〔井上英孝君登壇〕
○井上英孝君 日本維新の会の井上英孝です。
私は、会派を代表して、総理に質問いたします。(拍手)
ウクライナに侵略したロシア、力に任せて現状変更に動く中国、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮と、いずれも核を持つ三国を隣に抱え、トリプル危機の最前線にある我が国の安全保障環境は、この一年で大きく変化をいたしました。
日本維新の会は、我が国の防衛能力を積極的に強化することには大いに賛成をするものですし、そのために一定の追加の財源が必要であることにも理解を示すものであります。
しかし、その財源を増税で賄おうとする岸田政権の姿勢は全く理解できません。我が党は、昨年十二月十六日、いち早く、増税方針の撤回を求める緊急声明を発出し、増税方針の撤回を求めてきました。
去る二月二十一日、財務省が発表した令和四年度の国民負担率は、四七・五%でした。国民所得のほぼ半分が公的負担に奪われる事態に、SNS上では、江戸時代の年貢に例えて五公五民という言葉がトレンド入りし、令和の時代に江戸時代と同じように年貢を取るのかなどの批判が噴出しました。
昭和四十五年には二四・三%だった負担率が、約二十年後の平成元年には三七・九%、その約三十年後に四七・五%と急上昇し続け、このままいけば、五〇%を超えるのも時間の問題です。
そうした中、政府は、先週、今後の少子化対策のたたき台を公表しましたが、その財源として、今度は、公的医療保険の月額保険料の上乗せの検討に入ったとの報道がなされています。
国民負担率がこれだけ上昇している中、税金や社会保険料、借金という国民負担を増やす手段だけでしか財源を確保しようとしない岸田政権には、もはや唖然とするばかりです。
江戸時代初期には四公六民だったのが、享保の世以降、五公五民となり、その後、六公四民となったことで百姓一揆が多発したのが歴史であります。国民はまさに今一揆の寸前かと思いますが、こうした国民の感情について、どのような認識をお持ちですか。
国民の怒りはまだ続きます。
歳出のほぼ全ては安定財源が必要な恒久的支出ですが、そこには国債発行で財源を確保しながら、防衛費だけは安定財源として増税が必要であるという政府の説明では理屈が通らないからです。
再度、総理に伺います。
そもそも、予算上の歳出はその全てが個別に特定財源を有しているわけではないのに、防衛費増の財源に限って特定財源を確保しようとするのはなぜでしょうか。総理は、防衛力は将来にわたって維持強化していかなければならず、これを安定的に支えるために国債でというのは未来に対する責任として取り得ないと国会で答弁されていますが、ほかの歳出は維持強化する必要のない歳出ということですか。防衛費を特別視する明確な理由をお答えください。
財源が足りないからといって、税金や社会保険料を値上げして財源を確保するのであれば、そんなことは誰にでもできることです。今後、岸田政権は、新たな施策を導入するたびに、増税や社会保険料増あるいは借金増を行うという方針なのでしょうか。増え続ける社会保障関係費の抜本的な見直しを含めて、歳出全体の中で組替えを行うという選択肢をなぜ取らないのか、理由をお答えください。
更に国民は怒っています。
防衛力強化のために、今後、年に四兆円の恒久財源が必要とし、うち三兆円は税外収入などで恒久財源を確保したものの、それでも足りない一兆円分は増税で対応せざるを得ないとの説明に納得できないからです。政府が確保したとする三兆円は、本当に恒久財源でしょうか。
決算剰余金については、政府は、直近十年間の年平均で一・四兆円の実績があるとして、財政法で認められた上限の〇・七兆円を毎年の財源として積み上げていますが、これは恒久財源ですか。お答えください。
税外収入についてお伺いします。
政府が確保した四・六兆円のうち、三・一兆円は外為特会からの繰入金です。そのうち、令和四年度余剰金の上振れ一・五兆円は、金利上昇や円安進行で外貨建て債券が上がったことによるものですが、これも恒久的に見込めるとお考えですか。
また、たまたま税外収入として四・六兆円が令和五年度に積み上がったからといって、令和九年度以降、それを五で割った毎年約〇・九兆円が恒久財源として確保できるとするのは、余りにいいかげんではないですか。併せて認識をお伺いいたします。
今後発生する国有財産の売却益については、全て防衛力強化資金に繰り入れるから恒久財源となるということですか。お答えください。
歳出改革についてお伺いします。
単なる増抑制を歳出改革と言っているだけで、増えた支出に見合う分の予算を削っているわけではなく、まやかしではないですか。
歳出改革で令和五年度は真水で幾ら財源を確保したのですか。具体的に、どの事業を幾ら減らして恒久財源を確保したのですか。令和五年度の歳出削減として計上している〇・二兆円の根拠は、何度聞いても理解できません。国民が理解できるように、分かりやすく御説明ください。
しかも、令和五年度で〇・二兆円程度しか積み上がっていないのに、令和九年度以降は毎年一兆円を恒久財源として計上していますが、現時点で具体策がないのに、安定財源と言い切れるのはなぜですか。お答えください。
総理、結局、決算剰余金の活用も、税外収入も、歳出削減も、どれも恒久財源ではないじゃないですか。鈴木財務大臣は、予算委員会で、我が党議員の質問に対して、防衛費、整備費以外には一切使えない防衛力強化資金そのものが恒久財源であると理解不能な答弁を行いました。なぜ、恒久的に確保できるめどの立っていない、ワンショットの財源の積み上げである防衛力強化資金そのものが恒久財源となるのか、総理、分かりやすく御説明ください。
そもそも、財源は、岩盤規制を始めとする規制改革などを行い、経済成長による増収で確保すべきとの我が党の主張に対して、総理は、経済再生に取り組む中で、その結果として見込み以上に税収が伸びれば決算剰余金にも反映され、防衛力強化の財源として活用されることになると答弁されています。
総理、お気づきですか。政府がまず確保すると言っている三兆円も、経済再生による税収増も、現時点ではどちらもまだはっきりと見通せていないというのは同じではないですか。なぜ先に増税が来るのですか。初めから、財務省の税制措置を財源に組み込むという方針ありきで一兆円の増税が決められたのではないですか。見通せていない三兆円を財源として利用するのであれば、残りの一兆円も経済成長による税収増を利用すればいいではないですか。そんなに御自身の描く成長戦略に自信がないのですか。認識をお伺いいたします。
少し観点を変えて質問します。
令和五年度の剰余金等を今後数年間プールするために防衛力強化資金の設置が必要という考えは理解できます。また、外為特会の進行年度からの繰入れ、財投特会からの繰入れ、積立金や基金の不用分の国庫返上など、現在の法律では実施できないことを実施できるようにする特措法として本法案が必要ということも理解できます。
しかし、わざわざ具体額を確定的に盛り込む必要はありません。例えば、外為特会について、令和五年度の剰余金見込みを一・二兆円と確定する必要はなく、例えば一・二兆円以上とすれば、もっと剰余金が発生する見込みが立った場合、年度内に資金を繰り入れることが可能となります。
百歩譲って、本法案が予算と並行して審議されているのであれば、本法案に令和五年度予算に計上されている額に関する内容が含まれているのは理解できますが、既に予算が成立しているタイミングで審議している本法案で額を確定する必要はありません。
年度内に想定以上の繰入れが可能と見込めるようになると一兆円の増税が必要なくなるという議論になるのを避けるためではないですかと勘ぐってしまうわけですが、既に成立した令和五年度予算に計上している額をわざわざ本法案に盛り込むことの必要性につき、お答えください。
岸田政権下での予算は、補正予算、予備費、基金といった例外的措置を大規模に乱発していて、財政規律を失っていると言わざるを得ません。その中で、歳出は無尽蔵に増え続け、政策効果や優先順位が不明確なばらまきに使われています。
総理、歳出削減を本気で進める気はあるのですか。人に負担を強いるのであれば、まずはそれを決める国会議員が自ら襟を正すことから始めるのは当然です。政治家が自らの身を切る改革ぐらいできずに、国民に痛みの伴う歳出削減なんてできるはずはありません。財源が必要になったら取りやすいところから取って、自分たちの身や既得権は守るという姿勢を、日本維新の会は断じて容認できません。総理の見解をお伺いします。
二〇一二年十一月、安倍元総理は、二〇一三年の通常国会までに衆議院定数を大幅に削減すると確約しました。しかし、いまだに実現されていません。復興特別所得税導入の際に行われた国会議員歳費二割カットは僅か二年で終了しましたが、今回、国民には復興特別所得税の期限延長を求めています。昨年の通常国会に結論を得ると自民党が約束した、いわゆる旧文通費の使途公開や残金返金についても、先送りになったまま実現していません。
総理は、毎回、各党各会派の間で御議論いただくべき事柄であり、議論が進むことを期待しますと他人事のような答弁を繰り返していますが、旧文通費にしても、議員定数削減にしても、与党自民党がやると覚悟すればすぐにでもできることです。
特に文通費については、我が党が中心となって既に議員立法で具体案を提示し、既に案がまとまって、与野党協議会を行ってきている案件にもかかわらず、昨年の国会での与野党の約束を自民党が一方的にほごにしているものです。総理、少なくとも文通費改革ぐらいは、国会で決められることなんですから、今すぐにやりましょう。国民に負担を強いようとしている岸田総理が、岸田総裁として自民党に指示すればいいだけなんですから。歳出削減というなら、まずは国会議員が覚悟を示しましょうよ。今、まさに統一地方選挙の真っただ中です。総理、国民に向かって、文通費の使途公開と残金返還について今すぐ党に指示すると、この場でお約束してください。
総理がこの場で約束できないということであれば、我々日本維新の会は、岸田政権の基本方針に真っ向から対立し、旧文通費改革の問題を先送りにする岸田総理の姿勢に対し、与野党超えて意見を同じくする政党、政治家と大きな固まりをつくり、あらゆる手段を講じて、徹底的かつ無制限に糾弾し続けます。また、今後の岸田政権のあらゆる政策について、財源と国民負担の観点から徹底的に追及してまいります。覚悟を持ってお答えください。
この十年で消費税が二回も増税され、コロナ禍で国民は疲弊し、ようやく回復基調となっているこの段階での増税は、せっかくのムードに水を差す愚策です。
国債の償還ルールの期間の見直し、外為特会に積み上がっている百六十兆円を超える外貨資産の活用、円安介入で外債を売って獲得した円の活用など、まだまだ財源として検討できるメニューはたくさんあります。
日本維新の会は、増税ありきの方針には最後まで反対をし、国民感覚に寄り添った政策提言を続けていくことをお約束して、私の質問を終わります。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 井上英孝議員の御質問にお答えいたします。
国民負担率等についてお尋ねがありました。
今般の防衛力強化は、国民の命と暮らしを守るものであります。その財源については、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革を徹底した上で、それでも足りない財源について、将来の世代に先送りすることなく、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いしたいと考えています。
御指摘の国民負担率については、少子高齢化に伴う社会保障給付の増大に伴ってそのための負担も増加し、給付と負担の両面において上昇傾向が続いていると承知をしています。
このように、国民に御負担いただいた税金や保険料は、年金、医療などの社会保障給付を始め、教育、防衛などの公的サービスという形で国民に還元されており、受益と負担を考慮することなく、江戸時代の年貢と同列に論ずることは不適当であると考えております。
歳出と歳入の関係についてお尋ねがありました。
令和五年度予算については、防衛費以外にも、国民生活に必要な予算をしっかりと盛り込んでおります。
その上で、予算編成に当たっては、従来より、骨太方針等に基づき、財政規律の方針を定めつつ、真に必要な財政需要に対応するため、恒久的な歳出を大規模に増加させる場合には、これに対応した安定的な財源を確保することで個別に対応してきており、防衛力強化のほか、例えばGX、社会保障の充実、国際観光政策についても、そのような考え方で対応してきたところであります。
抜本的に強化される防衛力は、国民の命と暮らしを守るため、将来にわたって維持強化していかなければならず、この防衛力を安定的に支えるためには、令和九年度以降、毎年度四兆円のしっかりとした財源が必要です。その財源確保に当たっては、決して増税等ありきではなく、国民の負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革等に取り組むことで必要な財源の約四分の三を確保することとし、それでも足りない約四分の一について、税制措置での御協力をお願いしたいと考えています。また、その際にも、現下の家計や九四%の法人にとって負担増とならないよう、十分な配慮をすることとしております。
なお、御指摘の歳出改革については社会保障も含めて聖域なく取り組んでおりますが、防衛力強化のための財源としての歳出改革については、防衛関係費が非社会保障関係費であることを踏まえ、社会保障関係費以外の経費を対象として、これまでの歳出改革を継続する中で財源を確保することとしております。
防衛力強化のための財源についてお尋ねがありました。
まず、決算剰余金については、直近十年間の平均が一・四兆円程度であることを踏まえ、財政法上、公債又は借入金の償還財源に充てるべき二分の一を除く、残りの二分の一の〇・七兆円程度を活用見込額として見込んだものであり、過去の実績を踏まえた根拠ある見通しに基づくしっかりとした財源であると考えております。
また、税外収入については、令和五年度予算において、外国為替資金特別会計からの追加の繰入金や国有財産の臨時の売却収入等により、現時点で見込める最大限の金額として四・六兆円を確保した上で、防衛力強化資金を通じて、防衛力の整備に計画的、安定的に充てていく方針としております。
令和十年度以降についても、令和五年度予算において、令和九年度までの五年分に充てられる税外収入四・六兆円を確保したことも踏まえ、防衛力強化資金から年平均〇・九兆円程度の安定財源が確保されるよう、今後も、引き続き、更なる税外収入の確保に努めてまいります。
歳出改革については、令和五年度予算において、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続する中で、二千百億円程度の防衛関係費の増額を確保しました。社会保障関係費以外の経費には、経費ごとに様々な増減があり、特定の分野の削減が防衛関係費の増額に当たっているというわけではありません。社会保障関係費以外全体について、骨太の方針に基づいて歳出改革の取組を継続する中で、防衛関係費の増額を確保したところであります。令和六年度以降も、毎年度の予算編成における歳出改革を継続し、令和九年度時点において、令和四年度と比べて一兆円強の安定財源を確保することとしております。
経済成長による税収増と財源確保法案の内容等についてお尋ねがありました。
経済成長に伴う税収増を目指すべきとの御指摘については、常々、経済あっての財政と申し上げているとおり、まずは経済を立て直すことが重要であり、その結果として見込み以上に税収が伸びれば、決算剰余金にも反映され、防衛力強化の財源として活用されることとなります。
また、財源確保法案については、令和五年度予算関連法案として国会に提出したものであり、防衛力強化のための財源確保の一環として、特別会計法等では予定されていない特例的な対応であることから、令和五年度予算における特別会計からの繰入れ等の税外収入の確保に係る規定を盛り込んでいるところであります。
抜本的に強化される防衛力は将来にわたって維持強化していかなければならず、これを安定的に支えるためには、しっかりとした財源が不可欠です。そのため、先ほども申し上げたとおり、更なる税外収入の確保や歳出改革の徹底など、あらゆる工夫を最大限行った上で、それでもなお不足する財源については、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々の責任として、税制措置での御協力をお願いしたいと考えております。
身を切る改革、調査研究広報滞在費の使途公開についてお尋ねがありました。
調査研究広報滞在費の使途公開等については、議員活動の在り方に関わる重要な課題であり、各党各会派において御議論いただくべき事柄であると考えておりますが、御党と一致、確認した事項も踏まえ、国民の皆様から御理解いただける合意に至るよう、各党各会派における協議において是非本格的な議論が進むことを期待しております。
いずれにせよ、防衛財源の確保に当たっては、行財政改革の努力を最大限行ってまいります。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 稲津久君。
〔稲津久君登壇〕
○稲津久君 公明党の稲津久です。
私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案につきまして、総理並びに財務大臣に質問いたします。(拍手)
我が国は、今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。
北朝鮮は、かつてない頻度でミサイル発射を続けており、その技術力も、現在のミサイル防衛能力では対応が難しい変則軌道のミサイルや核弾頭搭載の能力を保持するなど、日に日に向上しています。私の地元北海道においても、漁業や海運関係者を始め地元住民は、いつ頭上に落下するかも分からないミサイルにおびえながら暮らしているのが実態です。
また、国連安全保障常任理事国でありながら、国際法を無視してウクライナを侵略したロシアによって、第二次世界大戦後、世界各国が協力して築き上げてきた国際秩序は危機に瀕しています。
こうした周辺国も含めた動向に対し、現実の脅威から国民の命と平和な暮らしを守ることは政治の使命であり、そのために防衛力を強化し、抑止力を高めることは不可欠であると考えます。
一方で、防衛費増額のための財源確保に当たっては、物価高などの現状を考慮し、国民負担を最小限に抑えることも政治の大事な役割の一つであると考えます。
以下、防衛力強化に向けた財源の確保について質問いたします。
政府は、昨年、国家安全保障戦略など安保関連三文書を取りまとめ、今年度からの五年間で約四十三兆円を確保するとの方針を発表されました。これまでの防衛費から比べると、この五年間の合計でおよそ十七兆円を上乗せすることになります。非常に大きな増額であり、この予算を活用してどのように防衛力を強化していくのか、その効果や必要性を国民の皆様に理解し、納得していただくことが重要です。
そこで、今回の防衛費増額について、総理が決断された背景、今後想定される脅威やその対応策などについて、具体的な事例を交えていただきながら、分かりやすい説明をお願いいたします。
厳しい安全保障環境にどう備えるかというのが今回の議論の出発点です。そのために必要な防衛費についても、NATOの対GDP比二%目標と同レベルにすべきといった、単純に総額ありきで決めるものではなく、今何が必要なのかをきちんと積み上げた上で、必要な防衛力の確保に取り組むことが重要であると考えます。
そこで、防衛費の増額分は一体何に使われるのか、具体的な使い道をお示しください。財務大臣の答弁を求めます。
その上で、財源の確保に当たっては、国民負担をお願いする前に、歳出改革や税外収入の確保など、政府の努力が先に立つことが筋であります。政府として最大限に努力をして、これ以上はどうしても捻出できないという説明がなければ、国民の理解は得られないと考えます。
公明党としても、昨年の与党税制協議において丁寧に議論すべきと主張し、税制措置については、二〇二四年以降の適切な時期として、改めて議論を行うこととしたところであります。
しかしながら、本法案によって直ちに税負担が拡大すると誤解をしている国民も少なくありません。
本法案は、税外収入から確保する四・六兆円程度の追加財源のうち約一・五兆円を捻出するために特別の措置を講ずるものであり、まさに政府の財源確保のための努力の一環であると認識しておりますが、総理から改めて、本法案によって増税が実行されるわけではない点、まずは政府として財源捻出に最大限の努力を行うという点について明言をいただきたいと思います。総理の答弁を求めます。
本法案では、税外収入から集めた財源をプールし、複数年度にわたって計画的に支出するための防衛力強化資金を創設することとしています。この仕組みは財政の効率化や予算の単年度主義の弊害を是正することにつながるものと高く評価しますが、法文上では、当分の間と、期限があるように表現されています。恒久的な制度ではなく、なぜ当分の間としたのか、その理由をお聞かせいただきたい。また、どの程度の期間を想定し、年間どのくらい繰り入れられると見込んでおられるのか、財務大臣の答弁を求めます。
本法案には、もう一つの政府の努力である歳出改革、無駄削減については記述がありません。
政府は、毎年度〇・二兆円程度、五年間で累計三兆円超を歳出改革で捻出するとの方針としておりますが、これはどこで担保するのでしょうか。国民に明らかにしていただきたい。
また、歳出改革に当たっては、社会保障費を始めとして、国民生活に不可欠な分野の予算が削られてしまうのではないかとの懸念の声が上がっています。公明党は、そのようなことは断じてあってはならないと強く主張しておりますが、歳出改革の方針について、総理の答弁を求めます。
関連して、昨年末に策定された国家安全保障戦略において、我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素として初めに掲げられた外交力について伺います。
ロシアによるウクライナ侵略のように、いかなる地域でも、力による一方的な現状変更は決して許してはなりません。そのための取組として重要なのは、我が国自身の防衛体制の強化に裏づけられた外交努力です。
安全保障は、今、各国の思惑が複雑に絡み合い、エネルギーや食料の危機を生じさせ、さらには気候変動、保健、開発などといった地球規模の課題解決の遅れにもつながっています。
加えて、我が国周辺の極めて厳しい安全保障環境に対応するためには、日米同盟の強化が極めて重要であるとともに、オーストラリアやインド、欧州、また、韓国や東南アジア諸国、中東、アフリカ諸国等とも連携、交流を積極的に推進するなど、対話による多国間協調が可能な環境づくりが大切であると考えます。
こうした取組を着実に実施することによって、我が国を取り巻く安全保障環境の改善につなげ、日本のみならず、アジアや、ひいては世界の平和と繁栄を築いていくことができるのだと確信します。
G7広島サミットの開催を間近に控え、G7議長国、安保理の非常任理事国として、岸田総理がリーダーシップを最大限に発揮されることを期待していますが、このような国際環境の中で、日本はいかなる外交を展開していくのか。日本の外交の重要性、具体的な取組について、総理の答弁を求めます。
以上、本法案によって確保した財源を活用して必要な防衛力の強化が果たされるとともに、世界の平和と、国民の皆様が安心して生活を送ることができる社会の実現を念願して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 稲津久議員の御質問にお答えいたします。
防衛力強化の必要性についてお尋ねがありました。
力による一方的な現状変更の試みの深刻化や北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、防衛力を抜本的に強化することを決断いたしました。
この検討に際しては、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行い、可動率向上や弾薬、燃料の確保、スタンドオフ防衛能力の強化など、必要となる防衛力の内容を積み上げました。
例えば、ミサイル攻撃に対しては、イージス艦やPAC3に加えて、警戒管制レーダーや地対空誘導弾など、迎撃能力の更なる能力向上に努めます。加えて、統合防空ミサイル防衛能力の下、ミサイル防衛システムと反撃能力を組み合わせて、ミサイル攻撃そのものを抑止してまいります。
こうした取組により、抑止力、対処力を向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させていく考えであります。
財源確保法案の内容等についてお尋ねがありました。
今回の防衛力強化のための財源確保法案は、令和五年度以降における防衛力の抜本的な強化等に要する費用の財源確保のための努力の一環として、特別会計からの繰入れ等の税外収入の確保や防衛力強化資金の創設などについて、所要の法制上の措置を講ずるものであります。
今回の法案には、議員御指摘のとおり、税制措置について規定は盛り込まれておりません。税制措置については、昨年末に閣議決定した枠組みの下、その実施時期について、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を踏まえて、今後、柔軟に判断していくことになります。
財源確保に当たっては、政府として財源捻出に最大限の努力を行うべきとの御指摘はそのとおりであり、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保といった行財政改革の努力を最大限行ってまいります。
歳出改革の方針についてお尋ねがありました。
防衛力強化のための財源としての歳出改革については、社会保障関係費以外の経費を対象とし、骨太の方針に基づき、引き続き、令和五年度以降、歳出改革を継続し、令和九年度時点において、令和四年度と比べて一兆円強を確保することとしております。
こうした方針に基づき、毎年度の予算編成において、政府・与党連携して歳出改革の徹底に努めてまいりますが、同時に、現下の政策課題に対応し、国民生活を支えるために必要な予算額はしっかりと措置をしてまいります。
日本外交の重要性及び具体的な取組についてお尋ねがありました。
我が国の平和と繁栄、法の支配に基づく国際秩序の強化のため、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。現下の厳しく複雑な安全保障環境の下、首脳レベルを含め、多層的、多面的な外交を力強く展開してまいります。
具体的には、多くの国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集め、他国との共存共栄のための国際協力を実施してまいります。また、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、同盟国、同志国等との連携を一層強化してまいります。あわせて、地球規模課題等での協力などを通じ、グローバルサウスとの関与を強化してまいりたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 答弁の前に、趣旨説明に関する発言につきまして、一か所訂正をさせていただきたいと思います。
趣旨説明に関する発言の中で、国立病院機構は、令和五事業年度において、積立金のうち、四百二十二億円を国庫に返納しなければならないと発言をいたしましたが、正しくは、国庫に納付しなければならないということでありますので、訂正をさせていただきます。
稲津久議員から、防衛関係費の使途についてお尋ねがありました。
新たに策定された防衛力整備計画の規模は、これまでの中期防衛力整備計画の規模を大きく上回るものでありますが、これは、我が国の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、一年以上にわたる議論を経て、必要な防衛力の内容を積み上げた結果として導き出されたものであります。
その内容は、今後五年間に必要とされる防衛力の整備内容をパッケージとして積み上げたものであり、その増額分の内容のみを取り出して御説明することは困難でありますが、増額された防衛関係費は、装備品の可動率向上や弾薬の確保、主要な防衛施設の強靱化、スタンドオフ防衛能力の強化、ミサイル防衛システムと反撃能力を組み合わせた統合防空ミサイル防衛能力の強化、宇宙、サイバー、電磁波等の新たな領域への対応といった内容を積み上げたものとなっております。
次に、防衛力強化資金の設置期間等についてお尋ねがありました。
この防衛力強化資金については、政府としては、強化された防衛力を安定的に維持していくために必要である限りにおいてこれを設置したいと考えており、その設置期間について、当分の間としたところです。したがって、政府として、設置期間の具体的な終期時期を想定しておりません。
また、同資金への繰入額についてですが、今後の繰入額について現時点で具体的に見込めるものではありませんが、令和五年度予算において同資金に約三・四兆円を繰り入れることとしております。政府としては、防衛力の抜本的な強化を安定的に支えられるよう、今後とも、引き続き、税外収入の確保に努めてまいります。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 斎藤アレックス君。
〔斎藤アレックス君登壇〕
○斎藤アレックス君 国民民主党の斎藤アレックスです。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました防衛財源確保法案について質問いたします。(拍手)
戦後最も厳しいと言われる我が国の安全保障環境を鑑みれば、平和を守るための徹底的な外交努力を前提とした上で、抑止力を強化し、そして、いざというときに国民の生命財産を守るために、我が国独自の防衛力を強化することは必要です。また、予算不足から自衛隊の既存の装備が運用できなかったり自衛隊の施設が極めて老朽化していたりする問題を解消して、自衛隊の能力を回復するため、そして、高度化する新たな脅威に対抗するための必要な装備調達や教育訓練のために、防衛費の増額は必要であるとの立場に国民民主党は立っています。
ただし、増税を前提としてまで組んだ防衛予算の規模や使途が適切なのか、そして、拡大した防衛予算を賄うために安定的に財源を確保することができるのかは、丁寧な政府からの説明と、国会での慎重な議論がなければなりません。
まず、いわゆる防衛増税についてはいつから行うのか、また、令和六年度以降も防衛力強化資金への繰入れを続けなければ早晩その資金は枯渇することになりますが、追加の繰入れの財源の算段はあるのか、説明を求めます。
財源として震災復興税を防衛費に回すという手法も、今ある徴税システムを流用することで国民への説明責任から逃げようとする邪道ではないでしょうか。本来は、金融所得の総合課税化、いわゆる所得一億円で逆に所得税率が下がる一億円の壁問題の解消や、多国籍企業への国際課税、デジタル課税の強化といった公平な課税システムへの改革を通じて財源を確保する方策を追求すべきと考えますが、総理の認識を伺います。
国民民主党は、抑止力の強化に資する反撃能力の獲得には賛成です。
ただし、新しい安保三文書と防衛予算の増額による反撃能力の獲得が日本の安全保障政策をどう変化させるのか、国民への丁寧な説明を行い、理解を得られるよう徹底的に努力することは死活的に重要との立場であり、今の岸田政権には決定的にその努力が欠けていると言わざるを得ません。
二〇一四年の集団的自衛権の行使容認の閣議決定後、翌二〇一五年の安保法制の質疑において、集団的自衛権と反撃能力の関係を問われた際、政府は、現在我が国は敵基地攻撃能力を保持しておらず、個別的自衛権の行使、集団的自衛権の行使としても敵基地攻撃を想定していないという趣旨の答弁をされており、二〇一七年には、改めて当時の総理大臣が、いわゆる敵基地攻撃能力については、日米の役割分担の中で米国に依存しており、今後とも日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていないという趣旨の答弁をしています。
長射程のスタンドオフミサイルの取得で実効的な敵基地への反撃能力を自衛隊が保持することになり、安保法制制定時には、想定していない、考えていないと説明していた集団的自衛権の行使による敵基地攻撃が可能となることは、戦後の安全保障政策の大きな転換点であるはずです。総理は、そのことが国民に十分に理解されているとお思いでしょうか。御認識を伺います。
具体的な例を使って、説明を求めたいと思います。
例えば、日本が直接攻撃を受けていない段階で、米国に向けて飛翔する弾道ミサイルを発射した他国の基地や発射地点を自衛隊が攻撃する可能性はあるのか。また、同様に日本が直接攻撃を受けていない段階で、紛争地から逃げてきた邦人を含む避難民を乗せた米国の艦船を防護するため、その艦船に攻撃をしかけてきた他国に自衛隊が反撃を加える可能性があるのか。どのような方法で反撃をするのかの回答は求めません。反撃をする可能性があるのか、お答えください。
いざ有事となれば、その様態には様々なケースがあるわけですから、政府、自衛隊にとっては困難な判断の連続となるはずです。だからこそ、具体的な仮説を立てて自衛隊ができることを整理しておかないと、いざというときに行動に出られず、抑止力が有名無実だったということになりかねません。
また、国民への説明と国民理解が不十分なまま、重要影響事態や存立危機事態における自衛隊の作戦行動の範囲が国民の想定を超えた場合、事態のエスカレーションを招いたとして、危険を冒して任務に当たった自衛隊がいわれのない批判を受ける危険性があると思いますが、総理の認識を伺います。
このような事態を避けるためにも、本法案を始めとした今国会での安全保障政策の審議においては、岸田総理と浜田防衛大臣を始め内閣には、改めて中身のある答弁を強く求めたいと思いますが、総理の意気込みを伺います。
そして、以上の議論に真正面から向き合えば、新しい安保三文書と自衛隊の能力の拡大によって、日米同盟の性質が大きく変化することは明らかです。それは、すなわち、守るアメリカ、守られる日本という一方的な同盟関係の下に受忍してきた日米地位協定と思いやり予算の負担のそれぞれについて、見直す時期がやってきたことを意味するのではないでしょうか。
沖縄を始めとする駐留米軍を抱える地域の負担軽減のためにも、日米地位協定に関して、また国民の税金が使われている思いやり予算に関して、日本の政治家として、それぞれ、米国に見直しのための協議を求めるつもりはありませんか。総理に伺います。
戦後日本に残された外交、安全保障上の大きな課題を永遠の課題としないために、与野党を超えた取組を、総理を始めとする政府関係各位、そして本院議員の皆様にお願いして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 斎藤アレックス議員の御質問にお答えいたします。
税制措置の実施時期等についてお尋ねがありました。
税制措置については、昨年末に閣議決定した枠組みの下、その実施時期について、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を踏まえ、今後、柔軟に判断していくことになります。
また、防衛力強化資金については、令和五年度予算において確保した防衛力強化のための税外収入四・六兆円をしっかり確保し、このうち一・二兆円を令和五年度予算の防衛関係費に充て、残り三・四兆円を資金に繰り入れ、令和九年度までの五年間の防衛力の整備に計画的、安定的に充てていく方針としております。
令和十年度以降についても、令和五年度予算において令和九年度までの五年分に充てられる税外収入四・六兆円を確保したことも踏まえ、防衛力強化資金から年平均〇・九兆円程度の安定財源が確保されるよう、引き続き、更なる税外収入の確保に努めてまいります。
税制措置についてお尋ねがありました。
税制について様々な御指摘をいただきましたが、防衛力の抜本的強化に必要な財源確保のうち、税制措置の内容については、与党税制調査会において幅広い税目について議論を行った結果、法人税、所得税、たばこ税という三税目による対応となったものであると承知をしております。
復興特別所得税については、現下の家計の負担増にならないよう、その税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとしておりますが、その延長幅については、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとしているところであり、復興事業に影響を及ぼすことはありません。こうした点について、国民の皆様に御理解いただけるよう、引き続き丁寧に説明を行ってまいります。
また、より公平で中立的な課税の実現に向け、これまでも様々な見直しを行ってきており、令和五年度税制改正においては、一億円を超える所得の実態等も踏まえつつ、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置を導入することとしており、また、国際課税の見直しについては、グローバルミニマム課税の導入を行うこととしております。
そして、御指摘の金融所得の総合課税化については、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点から、総合課税ではなく分離課税が導入されてきたことを踏まえれば、慎重な検討が必要であると考えております。
存立危機事態における反撃能力の行使と国民の理解についてお尋ねがありました。
存立危機事態は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したからといって無条件で認定されるものではなく、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に認定され、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、必要最小限の実力行使にとどまる場合において、自衛の措置として武力を行使することが容認をされます。
その上で、反撃能力は、我が国に対する武力攻撃の発生又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合など、武力行使の三要件を満たす場合に行使し得るものです。
そして、個別の事例について幾つか御質問がありましたが、事態認定後の反撃能力の運用については、実際に生じた状況に即して、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断するものであると考えております。
いずれにせよ、反撃能力の行使を含む自衛隊の行動は、あくまで国民の命と暮らしを守り抜くためのものです。国民の皆様の御理解と御協力が得られるよう、引き続き、政府としての考え方を可能な限り丁寧に説明をしてまいります。
日米地位協定と同盟強靱化予算の見直しについてお尋ねがありました。
日米地位協定については、これまでも、米側と様々なやり取りを行いながら、事案に応じて、効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つ具体的な問題に対応してきております。
また、同盟強靱化予算については、日米両政府の合意に基づいて適切に分担されていると考えております。現時点で現行の特別協定期間終了以降の経費負担の在り方について予断することは差し控えさせていただきますが、今後とも、日本側の適切な負担の在り方について不断に検討してまいります。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 田村貴昭君。
〔田村貴昭君登壇〕
○田村貴昭君 日本共産党の田村貴昭です。
私は、日本共産党を代表し、軍拡財源確保法案について質問します。(拍手)
本法案は、岸田政権が昨年閣議決定した安保三文書に基づき、今後五年間で総額四十三兆円もの大軍拡を推し進めるための新たな基金、防衛力強化資金を創設するものです。憲法の平和主義と財政民主主義を踏みにじる違憲立法にほかなりません。
初めに、大軍拡の規模と根拠についてです。
四十三兆円の流れをつくったのは、昨年十一月の総理の指示でした。防衛省が四十八兆円、財務省が三十兆円台半ばを主張する下で、二〇二七年度に防衛費とそれを補完する取組でGDP二%に達する額とするよう、両大臣に指示したとされています。
政府は、補完する取組として、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障、国際協力の四分野を推進するとしていますが、五年間で何をどこまでやるのか、検討を進めるための仕組みもまだ決まっていません。
にもかかわらず、どうして二%と指示できるのですか。総理が否定していた数字ありきの決着そのものではありませんか。
二%への引上げは、アメリカが同盟国に繰り返し要求してきたものです。エマニュエル駐日大使は三文書を大歓迎し、その理由を、裏づけとなる予算をつけたからだと公言しています。
結局、アメリカの軍拡要求に応えることが二%の根拠ということではありませんか。
米国製兵器の購入額は激増しています。二〇二三年度のFMS、対外有償軍事援助は一兆四千七百六十八億円で、前年度の四倍という破格の伸びになっています。
五年間のFMSの総額は一体幾らになるのですか。必要な防衛力を積み上げたというのならば、総額と根拠を示すべきではありませんか。
米国製の長距離巡航ミサイル、トマホークを四百発購入するといいますが、既に在日米軍は大量のトマホークを保有しています。どれだけ配備すれば十分だというのですか。
元々、長距離ミサイルの配備を主張していたのは、アメリカです。アメリカの世界戦略と軍需産業のもうけのために日本の予算でミサイルを買わせる、これが事の真相なのではありませんか。
計画断念に追い込まれたイージス・アショアは、今や巨大なイージスシステム搭載艦に変貌し、アショア以上の金食い虫になっています。
システム全体の改修に相当なコストと期間がかかるとして配備を断念しながら、従来以上にコストが膨らんでいることを国民にどう説明するのですか。
FMSは、契約価格、履行期限は見積り、支払いは前払い、いつでも契約解除できるという、アメリカ政府に極めて有利な契約方式です。
二〇二〇年の参議院本会議の決算警告決議でFMS調達の改善を求めたにもかかわらず、未納入、未精算の問題は今も解消されていないではありませんか。
大盤振る舞いはFMSだけではありません。自衛隊施設の強靱化と称して、全国二百八十三地区で核攻撃にも耐えられる司令部の地下化などを進めようとしています。
総理、核攻撃によって全てが破壊し尽くされた後に、地下で生き残った司令部が一体何を守るというのですか。
あの地獄を二度と繰り返さないための外交こそ、総理がやるべきことではありませんか。
次に、軍拡財源の確保策についてです。
今回創設する防衛力強化資金には、国立病院機構の積立金四百二十二億円、地域医療機能推進機構、JCHOの積立金三百二十四億円等を不用見込みとして国庫に返納させて繰り入れるとしています。しかし、JCHOは、積立金の額に残余があるときは年金特別会計に納付することが法律に明記されています。
年金財源を軍拡に流用するなど、許されるはずがありません。マクロ経済スライドが発動され、物価高騰の中、年金の給付額が目減りしている中で、これをどう国民に説明するのですか。
中小企業向けのゼロゼロ融資の基金の残金二千億円も繰り入れるとしていますが、コロナ融資の返済が始まり、苦境にあえぐ中小企業への支援にこそ充てるべきではありませんか。
五年間で三兆円以上の歳出削減を行うとしていますが、具体的に何を削るのですか。中身も示さず、総額だけは既成事実化するなど、到底許されません。
東日本大震災に対応するための復興特別所得税の軍拡財源への転用には、予算委員会でも批判の声が相次ぎました。被災者、国民を愚弄するものであり、撤回すべきです。
また、五年間で三兆五千億円の決算剰余金を軍拡財源に充てるとしていますが、これまで補正予算の財源としてきたものです。災害支援や学校の修繕費など、緊急に対応が必要となる予算の財源をどうやって確保するのですか。
さらに、決算剰余金の増額で九千億円の財源を見込んでいますが、これは多額の予備費の計上を前提としたものではありませんか。
巨額の予備費を積み上げ、国会の審議権を奪った上、軍拡財源に回すなど、財政民主主義のじゅうりんも甚だしいと言わなければなりません。
そして、岸田政権は、戦後初めて、軍拡財源のために建設公債四千三百四十三億円を発行することを決めました。
財政法第四条は、公債の発行を原則禁止しています。これは、かつて大量の公債を発行し、歯止めなき軍備増強で侵略戦争を遂行し、国の財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験に基づくものです。
軍拡財源のための公債発行は、歴史の教訓に真っ向から反するものではありませんか。
以上、総理の見解を求め、質問とします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村貴昭議員にお答えいたします。
防衛費の規模についてお尋ねがありました。
NATOを始め各国は、安全保障環境を維持するために、経済力に応じた相応の防衛費を支出する姿勢を示しており、我が国としても、国際社会の中で、安全保障環境の変化を踏まえた防衛力の強化を図る上で、GDP比で見ることは指標として一定の意味があると考えております。
その上で、防衛力の抜本的強化に当たっては、その内容の積み上げと併せて、それらを補完する取組として、海上保安能力やPKOに関する経費のほか、研究開発、公共インフラ整備など、総合的な防衛体制を強化するための経費を積み上げました。
こうした積み上げの結果として、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せて、そのための予算水準が現在のGDPの二%に達するよう、所要の措置を講ずることとしたものであり、GDP比二%ありきという御指摘は当たりません。
また、今般の決定は、国民の命や暮らしを守り抜くために我が国自身の判断として行ったものであり、アメリカの軍拡要求に応えたという指摘も当たりません。
FMSの総額、トマホークの取得数及び米国からの装備品の調達についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化に際しては、国民の命を守り抜けるか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げました。
どのような機能を持った装備品が必要であるかについては、この過程で当然積み上げを行っていますが、米国から調達するか、国産で調達するか、確定していないものもあります。このため、各年度の予算編成過程でその規模をお示ししてまいります。
また、トマホークを含むスタンドオフミサイルについても、シミュレーション過程で必要な数量を導き出しており、米軍が保有するミサイルの数量に左右されるといったものではなく、また、米国の世界戦略と軍需産業のもうけのために取得するものでもありません。
イージスシステム搭載艦のコストについてお尋ねがありました。
まず、イージス・アショアの配備プロセスにおいては、反省すべき点も多かったと認識しております。一方で、ロフテッド軌道で打ち上げられた弾道ミサイルや同時複数の発射などに対応するための高い迎撃能力を持つイージスシステム搭載艦は、非常に有用な装備品です。
イージスシステム搭載艦の整備に当たっては、契約済みのイージス・アショアのレーダー等を利活用するとともに、可能な限り合理化を徹底して、経費を抑制してまいります。
FMS調達、自衛隊施設の強靱化及び外交努力についてお尋ねがありました。
FMSの未納入、未精算については、二〇一九年度以降、履行状況を把握する体制の強化などを行ってきた結果、近年は、未納入額が減少するなどの成果も出ていると承知をしております。引き続き、改善に向け取り組んでまいります。
また、自衛隊施設の強靱化については、司令部の地下化等により、継戦能力を高めることが重要です。こうした取組により、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。
その上で、国民の命や暮らしを守り抜くために、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。首脳レベルを含め、多層的、多面的な外交を展開してまいります。
防衛力強化のための財源についてお尋ねがありました。
地域医療機能推進機構の積立金の国庫への納付については、新型コロナ対応を行う中で一般財源を原資として措置をした病床確保料に係る収益のみを対象とするものであることから、年金特別会計ではなく一般会計に納付することとしたものであります。
また、ゼロゼロ融資については、足下の資金需要等を踏まえて昨年九月末に申請受付を終了したこと等を受け、当該融資のための基金から不用見込み分〇・二兆円を国庫納付することとしたものですが、他方で、コロナ借換え保証の運用を開始するなど、引き続き、中小企業の資金繰りには万全を期しているところであります。
そして、歳出改革については、令和五年度予算において、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続する中で、二千百億円程度の防衛関係費の増額を確保いたしました。社会保障関係費以外の経費には、経費ごとに様々な増減があり、特定の分野の削減が防衛関係費の増額に当たっているというわけではありません。社会保障関係費以外全体について、骨太方針に基づき、歳出改革の取組を継続する中で、防衛関係費の増額を確保したところであります。令和六年度以降も毎年度の予算編成における歳出改革を継続し、令和九年度時点において、令和四年度と比べて一兆円強の安定財源を確保することとしております。
最後に、復興特別所得税については、現下の家計の負担増とならないように、その税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとしておりますが、その延長幅については、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとしているところであり、復興事業に影響を及ぼすことはなく、復興特別所得税を防衛目的で転用したとの御指摘は当たらないと考えております。こうした政府の方針については、被災者の方々を含め国民の皆様に御理解いただけるよう、引き続き丁寧に説明をしてまいります。
防衛力強化のための決算剰余金の活用等についてお尋ねがありました。
決算剰余金が補正予算の財源として活用された事例があることは事実ですが、これは制度的に決められているものではなく、今後、予算編成後のその時々の事情に応じて、仮に補正予算を編成すべき必要性が生じた場合には、その財源についても、その時々の税収見込みや歳出不用の見込み等を踏まえて、機動的な対応を取ることになります。
また、予備費については、新型コロナや物価高騰といった直面する危機に対して、臨機応変かつ機動的な対応を行うため、適切に予算計上し、使用を判断してきたものであり、防衛財源を確保するために意図的に多額の予備費の予算計上を前提としているとの指摘は当たりません。その上で、予備費を含めた歳出に不用が生じることが見込まれる場合には、税収等の動向も見極めながら、特例公債法の規定に基づき特例公債の発行額の抑制に努めることとしており、歳出不用と決算剰余金の金額が対応するわけではありません。
令和五年度予算から防衛関係費の一部を建設公債の発行対象経費として整理したことについては、防衛力の抜本的強化を補完する取組として防衛省と海上保安庁との連携や公共インフラ等が明確に位置づけられた中で、安全保障に係る経費全体の整合性を図るために実施したものであり、建設公債を防衛関係費の増額のための財源としているものではありません。したがって、軍拡財源のための公債発行との指摘は当たりません。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十四分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸田 文雄君
法務大臣 齋藤 健君
財務大臣 鈴木 俊一君
国土交通大臣 斉藤 鉄夫君
国務大臣 後藤 茂之君
出席内閣官房副長官及び副大臣
内閣官房副長官 木原 誠二君
財務副大臣 井上 貴博君