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第17号 令和5年4月7日(金曜日)

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令和五年四月七日(金曜日)

    ―――――――――――――

  令和五年四月七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。防衛大臣浜田靖一君。

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 趣旨説明に先立ちまして、今般の陸上自衛隊所属ヘリコプターの事故について御報告いたします。

 昨日、十五時五十六分頃、陸上自衛隊第八師団第八飛行隊所属のUH60JA一機が、宮古島周辺空域において飛行中のところ、航空自衛隊のレーダーから航跡が消失しました。

 本事案を踏まえ、私から、救助等の対応に全力を挙げること、情報収集を徹底し状況の把握に努めること等について指示をし、事案発生当初から夜を徹しての現場周辺の捜索を行っていますが、機体に搭乗していた第八師団長坂本陸将ほか九名について、現在も発見に至っておりません。

 行方不明となっている十名の人命の捜索に全力を尽くすとともに、このような事故が発生したことを重く受け止め、自衛隊の航空機の運航に当たっては、安全管理に万全を期してまいる所存であります。

 引き続きまして、防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、我が国を含む国際社会の安全保障環境の複雑化及び装備品等の高度化に伴い、装備品等の適確な調達を行うためには、防衛省による既存の調達を通じた措置や関係省庁による防衛産業の基盤強化のための各種の支援措置に加え、装備品製造等事業者の装備品等の開発及び生産のための基盤を強化することが一層重要となっていることに鑑み、装備品製造等事業者による装備品等の安定的な製造等の確保及びこれに資する装備移転を安全保障上の観点から適切なものとするための取組を促進するための措置、装備品等に関する契約における秘密の保全措置並びに装備品等の製造等を行う施設等の取得及び管理の委託に関する制度を定めるものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、装備品製造等事業者が指定装備品等の安定的な製造等の確保のために行う取組に関する計画を防衛大臣が認定し、当該計画に係る取組が着実に実施されるよう、政府が必要な財政上の措置を講ずる制度を創設するとともに、装備品製造等事業者が行う装備移転仕様等調整に関する計画を防衛大臣が認定し、当該計画に係る装備移転仕様等調整を行うために必要な助成金を指定装備移転支援法人が基金から交付するための制度を創設するものであります。

 第二に、装備品等契約における秘密を装備品等秘密に指定し、契約事業者に提供することができることとし、契約事業者の従業者が装備品等秘密を漏えいした場合等の罰則を創設するものであります。

 第三に、装備品製造等事業者に対する第一の措置では指定装備品等の適確な調達を図ることができないと認めるときは、当該指定装備品等の製造等を行うことができる施設又は設備を取得することができることとするとともに、当該指定装備品製造施設等の管理を当該指定装備品等の製造等を行っていた又は行っている装備品製造等事業者に委託するものとする制度を創設するものであります。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。渡辺周君。

    〔渡辺周君登壇〕

渡辺周君 立憲民主党の渡辺周です。

 私は、ただいま議題となりました防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案について、立憲民主党・無所属を代表して質問いたします。(拍手)

 まず冒頭に、宮古島で不明となっている坂本陸将以下全ての隊員の御無事を心からお祈り申し上げます。

 心身頑強な隊員が自力でどこかの海岸に泳ぎつき、今どこかで救助を待っている、そのような状況であることを願ってやみません。全員の無事を改めてお祈り申し上げたいと思います。

 まず最初に、日本たばこ産業のロシアにおける事業について伺います。

 岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵略に対して、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、断じて許さない、厳しい対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推し進めると何度も繰り返しております。

 ウクライナ訪問では、対ロシア必勝のしゃもじをゼレンスキー大統領に贈り、会談でも我が国の強い姿勢を示した総理ですが、その発言とは裏腹に、我が国の財務大臣が三三・三五%、六億六千七百万株を所有し筆頭株主である日本たばこ産業が、以下JTと呼びますけれども、日本たばこ産業、JTが、現在もロシア国内でたばこの製造、販売を行い、三千億円を超える莫大な税金をロシア国庫に納めております。

 JTは、ロシア国内の四工場で従業員四千人を雇用し、ロシア市場でのシェアは、最新の株主総会資料によれば、紙巻きたばこと加熱式たばこ合わせて三六・六%、およそ三七%のシェアを占めております。

 現地法人、JTインターナショナル・ロシアは、二〇二〇年度に、自らのホームページで、ロシアの国庫歳入に一・四%納めていると記載しています。たばこ税や付加価値税、法人事業税などをロシアの国庫に納めていることは、さきの私の安保委員会での質問で財務省も認めておりました。この一・四%を当時のレートで換算すればおよそ三千億円、現在のレートならばおよそ三千四百億円がロシアの国庫に入っている計算になり、これこそ、我が国企業が侵略国の財政、戦費調達に貢献しているという岸田政権の対ロシア政策最大の矛盾であります。

 JTは、一九八五年の専売公社民営化後、大蔵省、財務省幹部が、民主党政権の一時期を除いて、要職に天下りをしています。現在も元財務事務次官が副会長に就任しており、株式の保有のみならず、このように幹部人事についても密接な関係にあります。

 二〇二二年度の決算説明会資料によれば、ロシア事業はJT全体の営業利益の二二%を占めており、二〇二三年度には二五%になる試算で、ロシア市場は稼ぎ頭、ドル箱なのであります。

 三月二十三日の参議院予算委員会で、我が党の勝部賢志議員との質疑の中で、岸田総理は、ウクライナ侵略は許すことのできない暴挙であり、このような行為には高い代償が伴うと言い切りながら、このJT問題については、事業展開については同社の自主的な経営判断により適切に対応していくのが基本的な考え方とし、新規の投資やマーケティング活動等を停止していると擁護しましたが、製造、販売は、ウクライナ侵略後も従来どおりに行われているのであります。

 JTは、人権報告書を発行し、人権尊重することを高らかにうたっている理想高き企業であります。その企業が、武力侵略という最悪の人権侵害をしている国家で経済活動をして、ロシアの財政に寄与していることは、果たして本望なのでありましょうか。

 財務大臣に伺います。

 自主的な経営判断としていますが、三分の一を超える株主であれば、経営に対して強く物が言えるはずであります。財務省は、令和三年度でJTから九百三十三億円、平成三十年から令和二年度の三年間、毎年およそ一千億円の配当収入を得ています。この巨額の配当をもたらすロシア市場を手放したくない余りに、撤退や事業停止は、対ロシア強硬姿勢を世界に向かって声高に訴える政権とは裏腹に、撤退には及び腰なのでしょうか。

 昨年末に、防衛財源として、時期未定ながら、たばこ税増税で二千億円の増税をもくろんでいます。反面で、我が国の脅威であるロシア国内でたばこを製造し、その売上げで三千億円以上の税金を納めていることは、逆立ちをしても理屈が立たないのであります。

 財務大臣、JTの筆頭株主として、このJTのロシア事業について撤退や停止を検討する考えはないのでしょうか。財務大臣に明快にお答えをいただきたいと思います。

 また、官房長官にも伺います。

 今申し上げたように、JTは純粋な民間企業ではありません。政府が筆頭株主の企業であります。この我が国企業が侵略国に巨額納税で貢献している現状は、G7広島サミットの議長国として、世界に説得力を持ってアピールできるのでしょうか。是非、政府の立場をお答えいただきたいと思います。

 続いて、防衛装備品の調達方法について質問いたします。

 調達には、国産品、ライセンス国産品、FMS調達と一般輸入品があります。それぞれの調達方法について、国内調達には、国内の防衛生産、技術基盤の維持強化につながるなどの特徴があり、輸入調達には、防衛省の要求性能を満たす防衛装備品が外国企業等にある場合、開発に時間を要しないことから比較的早期に調達が可能となるなどの特徴があるとしています。

 そこで伺いますが、平成二十六年六月に策定された防衛生産・技術基盤戦略には、海外からの導入を選択せざるを得ない状況、輸入についてでありますけれども、そこには、劣後する分野や欠落(弱み)を明らかにして、めり張りをつけて戦略的に行うと書かれています。ここに書かれている劣後する分野、欠落とは、一体、どの分野、どの装備品を指すのでしょうか。この記述では、劣後する分野、弱みは今後とも従来どおり輸入せざるを得ません。国内調達の可能性を拡大していくためには、この防衛生産・技術基盤戦略は見直すことになるのでしょうか。お答えください。

 今回の基盤強化法の支援の対象に、任務遂行に不可欠な装備品を製造する企業とありますが、余りにも漠然としており、防衛生産・技術基盤戦略を改定しない限り、従来どおり、FMSが大枠を占める輸入に頼らざるを得ないのではないでしょうか。任務に不可欠な装備品であっても、輸入の方が性能も高く、単価が合理的な装備品も数多くある中で、国産でなければならない装備品とどう整合性を取っていくのでしょうか。どういった戦略、基準で判断するのか、伺います。

 防衛装備移転三原則との関係について伺います。

 関連して、防衛装備移転三原則の運用指針の緩和については、これまで、我が国の防衛生産、技術基盤は、厳格な歯止めにより、防衛産業にとっての市場は国内の防衛需要に限定されてきました。その防衛需要に対して高度な技能、技術力及び設備が必要であり、民間企業は投資に対して一定の予見可能性を求め、ゆえに防衛装備産業は、国内市場だけでは先細りとなり、海外市場に活路を見出すしかなくなってまいりました。

 現行の防衛装備移転三原則運用指針は、外国との共同研究の場合を除き、安全保障面での協力関係がある国に輸出できる装備品を、救難、輸送、警戒、監視、掃海の五分野に限定しておりますが、政府は、侵略を受けている国も輸出の対象とすることや、戦車などの殺傷能力のある武器の輸出も含め、運用指針の緩和に向け検討を進めるとしております。

 民主党政権時代のちょっとエピソードに触れますと、ハイチ大地震で復興支援のために派遣された自衛隊が、撤収に当たり、現地に車両を残した際に議論となりました。前照灯が普通車仕様になっていない、あるいは荷台に銃座が取り付けられている等の理由から、これらも厳密に言えば武器の提供に当たるということになり、柔軟に解釈、運用したことがあります。

 こうした武器の概念から、殺傷や破壊をもたらさない軍用品については精力的に開発を推し進めるべきだとは思います。防衛生産・技術基盤戦略には、繊維や化学防護装備を強みとしての素材技術として例示をしております。こうした優位性の高い分野の後押しを政府は考えていくべきであります。武器の概念から取り外して後押しをし、そして、殺傷兵器、大量破壊をもたらすような軍用品については、我が国の安全保障に資するの名の下で歯止めなき輸出が行われることによって、武器商人、死の商人に我が国はなっていくべきではありません。その考え方について、政府の考え方をただしてまいりたいと思います。お答えください。

 また、アメリカを含め多くの国は重要な装備品の移転に関して国会承認を求める制度を導入しておりますけれども、我が国において国会承認を重要な装備品の移転に関して求めていく制度についてはどうお考えか、併せてお答えをいただきたいと思います。

 続いて、次世代戦闘機についてお伺いをいたします。

 政府は、二〇三五年の配備を目指し、イギリスやイタリアと、アメリカ以外と初の共同開発である次期戦闘機を開発すると発表しました。

 そこで伺いますけれども、日本の負担は、一体、開発費用の金額はどれぐらいになるのでしょうか。機体は三菱重工、エンジンはIHI、電子機器は三菱電機等でありますけれども、各国の費用負担はどのようになるのか。そして、生産基盤は日本国内に置かれるのでしょうか。国内産業の生産技術基盤の発展や維持に貢献し、裾野広く国内産業に恩恵はもたらされるのでしょうか。その点について、日本政府はどのような役割を担っていくのか、お答えをいただきたいと思います。

 また、選択と集中についても伺います。

 スタンドオフミサイルや極超音速ミサイルを、政府は、国産で六種類のミサイル研究、量産を進めていくとしております。一二式地対艦誘導弾の能力向上型におよそ一兆円、島嶼防衛用の高速滑空弾二千億円、極超音速誘導弾に二千億円をかけるとしております。

 本当にこれだけ多種類のミサイル開発を、多額の予算をかけて一度にやる必要があるのでしょうか。選択と集中を行うという考えはないのでしょうか。その点についての防衛大臣のお考えを伺いたいと思います。

 最後に、先進技術の育成についてお伺いいたします。

 正面装備やミサイルによる迎撃能力の確保が重要である一方で、ウクライナ紛争を見ておりますと、衛星コンステレーションやサイバーセキュリティー技術、そしてドローン技術といった民生発の先進技術が戦局に大きな影響を与えました。防衛省では、民生分野や政府の科学技術投資で得られた研究の成果等の中から、革新的な研究開発に資する有望な先進技術を育成し、防衛用途に取り組むための先進技術の橋渡し研究を大幅に拡充するとしております。

 防衛に活用する先進技術育成のために、先進技術を研究している企業が参入しやすい環境を整える必要があると思いますが、政府は今後どのような方針で臨んでいくのか、政府の答弁を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 渡辺周議員にお答えいたします。

 初めに、防衛生産・技術基盤戦略についてお尋ねがありました。

 防衛生産・技術基盤戦略は、我が国の防衛生産、技術基盤の維持強化のために、平成二十六年六月に作成された文書であります。

 この文書には、当時の主な防衛装備品の分野ごとの防衛生産、技術基盤の現状と今後の方向性等について記述されており、かかる防衛産業の状況を踏まえて、防衛産業の国際競争力を強化するため、我が国に比較優位がある分野を育成し、劣後する分野や欠落する分野を必要に応じ補完するための取組を、めり張りをつけて戦略的に行う必要があると記載しているところであります。

 こうした防衛生産・技術基盤戦略の考え方は現在も当てはまりますが、諸外国による技術の囲い込みが進み、サイバーセキュリティーやサプライチェーンのリスクが顕在化するといった状況においては、装備品の取得に際して、国内基盤を維持強化する観点を一層重視していくことが重要となっています。

 こうした観点から、防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案において作成することとなっている基本方針に、しっかりと基盤強化と装備品等の調達の基本的な方向性を記載していくことを考えています。

 防衛省は、戦略三文書において特定された新しい機能、能力に重点的に投資するとともに、法案に基づく施策等により、こうした新しい基本方針の下、いわば防衛力そのものである防衛生産、技術基盤の強化に取り組んでまいります。

 次に、我が国の優位性の高い分野への後押しについてお尋ねがありました。

 戦略三文書にもあるとおり、優れた防衛装備品を創製するためには、我が国の技術力を結集することが必要であり、他国に比べて我が国に優位性がある技術について、しっかりと育成し、活用していくことが重要です。

 そのため、防衛省としては、今後とも、防衛用途に直結し得る技術に重点的に投資するとともに、重視する技術分野や研究開発の見通しを戦略的に発信し、企業等の予見可能性を高めるための取組等を進めてまいります。

 次に、次期戦闘機の費用、国内生産技術基盤、協業体制及び政府の役割についてお尋ねがありました。

 次期戦闘機の開発費については、国際協力の詳細な在り方により、将来大きく変動し得ることから、各国の費用負担を含め、お答えできる段階になく、日英伊三か国で検討を深め、可能となった段階で策定、公表できるよう検討してまいります。

 また、次期戦闘機の開発に当たっては、高い即応性等を実現する国内生産技術基盤を確保することとしており、様々な先端技術に投資するとともに、国際的に活躍する優秀な人材が育成されることで、防衛産業はもとより、産業界全般への幅広い波及効果が期待できます。

 次期戦闘機の開発に係る日英伊企業間の協業体制については、優れた戦闘機を着実に共同開発できるよう、どのような形態の組織を設置するのかも含め、三か国で検討しているところであります。

 この共同開発に当たっては、政府と我が国の防衛産業が緊密に意思疎通を図ることが重要であり、官民のオール・ジャパンの体制を取って、引き続き、国際協議等を進めてまいります。

 次に、スタンドオフミサイルの整備についてお尋ねがありました。

 射程や速度、飛翔の態様、誘導方式、発射プラットフォームといった点で特徴が異なる様々なスタンドオフミサイルの開発を行うことは、自衛隊の抑止力、対処力を向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させるために必要な取組と考えています。

 また、防衛力の抜本的強化に当たっては、関係者や国民の御理解をいただくためにも、防衛省自らが大胆な資源の最適配分に取り組むことが不可欠と考えており、一層、効率化、合理化を徹底してまいります。なお、我が国で開発を予定しているスタンドオフミサイルについて、現時点で共同開発の条件が整う見込みがあるものはありません。

 最後に、先端技術の育成と企業の参入環境の整備についてお尋ねがありました。

 防衛省は、これまで実施してきた防衛産業と中小企業等との間のマッチング事業の深化に加え、先進技術の橋渡し研究の大幅な拡充や安全保障技術研究推進制度の実施も通じて、新たな技術の発掘、育成を進めることとしております。必要な装備品の早期装備化と併せ、スタートアップ企業等が持つ先端技術を防衛産業がインテグレーションを行う装備品に取り込む施策も推進することとしており、新しい戦い方に必要な装備品の取得を進めてまいります。

 また、本法律案では、既存の事業者のみならず、新たに装備品等の製造等を行おうとする防衛関連事業者に対しても、サイバーセキュリティー強化や事業承継等を行う際に必要な措置を講じることができることとしており、新たな参入企業との連携も含め、必要な装備品等の安定的な製造等の確保に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 渡辺周議員の御質問にお答えいたします。

 JTのロシア事業についてお尋ねがありました。

 JTグループの現地法人はロシア政府に対して納税しておりますが、その多くは、ロシア国内で販売したたばこ製品に係るたばこ税及び付加価値税であり、税を負担する担税者はロシア国内の消費者であり、JTグループの現地法人はそれを納税する役割を負っているものと承知しております。

 その上で、JTグループは、ロシアにおけるたばこ事業に関して、現状、国内外のあらゆる制裁措置と規制を遵守していると承知しておりますが、現在、JTグループのロシア事業については、既に新規の投資やマーケティング活動等を停止するとともに、ロシア事業のグループ経営からの分離を含めた選択肢の検討を行っているものと承知をしております。

 政府としては、昨年三月のJTの株主総会において、株主の立場から、国際的な活動を行う企業として、ロシア、ウクライナの状況及び両国をめぐる国際社会の動向等を注視し、適時適切に対応されることを強く期待している旨発言をしているところであります。今後のJTの対応について、引き続き注視してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 渡辺周議員にお答えをいたします。

 日本たばこ産業株式会社についてお尋ねがありました。

 御指摘の日本たばこ産業株式会社は、政府が株式の一部を保有する特殊会社であると同時に、その株式の約三分の二を民間株主が保有する上場企業であります。

 このため、今後の事業展開については、国際的な活動を行う上場企業として、現在のロシア・ウクライナ情勢や国際社会の動きなどを踏まえ、同社の自主的な経営判断により、適切に対応していくべきものと考えています。

 他方、同社のロシア事業については、既に新規の投資やマーケティング活動等を停止しており、現在、同社グループ経営からの分離を含めた選択肢の検討が行われているものと承知しており、この検討の状況を注視してまいります。

 その上で申し上げれば、我が国は、一刻も早くロシアが侵略を止めるよう、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、厳しい対ロ制裁を迅速に実施してきています。また、現下の情勢を踏まえれば、ロシアとの関係で新たな経済分野の協力を進めていく状況にはありませんが、既存の民間事業については、それぞれの企業において事業ごとに検討がなされていくと考えます。政府としては、引き続き、G7を含む各国と連携しながら、関連企業等とも意思疎通を図りつつ、適切に対応していきます。

 防衛装備移転についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段となります。

 防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しの具体的な内容については何ら決まっていませんが、こうした観点から、今後、議論を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 渡辺周議員から、防衛装備移転三原則についてお尋ねがありました。

 国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的手段であり、こうした観点から、今後、議論を進めてまいります。

 いずれにしても、国家安全保障戦略で明記をしたとおり、政府として、平和国家としての歩みをいささかも変えるつもりはございません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 鈴木敦君。

    〔鈴木敦君登壇〕

鈴木敦君 国民民主党の鈴木敦です。(拍手)

 冒頭、昨日、消息を絶ちました陸上自衛隊ヘリコプターの事故に関連して、隊員の皆様の御無事と一刻も早い救助をお祈り申し上げます。

 また、防衛省におきましては、周辺海域に中国海軍の空母を含む複数の艦艇が展開していることも含め、徹底した事故調査と速やかな事故報告を求めたいと思います。

 以下、会派を代表して、本法律案について質問をいたします。

 我が国の防衛産業の強靱化は、防衛大臣が会見でもおっしゃっているとおり、防衛力そのものの強化にほかなりません。

 防衛装備品生産基盤の強化は、継戦能力だけでなく、いわゆる兵たん、防衛政策の重要な要素です。その強靱性を高めるためには、多くの買手を確保し、安定的により多くの利益を上げることにより産業競争力を強化する必要があることは論をまちませんが、我が国においての防衛産業の買手は、ほぼ全てが自衛隊に限られます。しかし、例えばドイツのラインメタル社が製造する滑腔砲は我が国の戦車の主砲にも搭載されておりますが、同社防衛・軍需部門の売上げの約六割以上が装備品輸出によって構成されているなど、諸外国の防衛産業は、輸出競争力の強化に傾注することにより、その強靱化を図っています。

 なぜ我が国防衛産業に輸出競争力が育たなかったのか。大きな理由は、武器輸出三原則の存在です。平成二十六年、防衛装備移転三原則が閣議決定されましたが、その運用指針では輸出できる案件が限定されており、輸出競争力強化策としては不十分です。そもそも、我が国には、輸出増による防衛産業の競争力強化を目標とした明確な国家戦略が存在していません。

 一方、韓国では、防衛産業を半導体に続く新しい基軸産業と位置づけており、一昨年、武器輸出が初めて輸入を超過し、既に世界有数の輸出国となっております。今後五年で、世界三位から第四位の防衛産業大国になることを目標に掲げています。日本がデフレを放置している間、国民の平均賃金が韓国に抜かれたことは、こうした政府の戦略と積極性の欠如に原因があるのではないでしょうか。

 防衛装備移転、技術協力の新たな国家戦略の策定と政府主導による積極的な輸出拡大が喫緊の課題と考えますが、防衛大臣の御所見を伺います。

 また、私が外務委員会で、斎藤アレックス議員が安全保障委員会で指摘したように、運用期限を満了し廃棄されたはずの自衛隊車両が海を渡り、ロシア軍により運用されるようなことがあってはなりません。一昨日、持ち回りNSCで決定された政府安全保障能力強化支援、OSAの枠組みは、その出口までしっかり管理した上で武器輸出拡大に活用すべきと考えますが、防衛、外務両大臣の御所見を伺います。

 政府が防衛産業のサプライチェーンを把握することは極めて重要です。なぜなら、我が国では、大企業ではなく中小企業が重要な装備の機微技術を有していることが間々あり、懸念国が我が国に設立した法人や第三国企業を介して、当該中小企業の買収や資本参加等の手段を使って技術を獲得する可能性があるからです。既に技術を移転された事例もあるやに聞いております。

 本法案第八条では、これまでは企業側の自主的な協力が前提であった、いわゆるサプライチェーンリスク調査について、初めて規定したことは一歩前進ですが、企業側の報告、資料提出が努力規定にとどまっています。しかし、努力規定で、被覆ケーブル、ねじ一本、末端のサプライチェーンまで調査し切れるのでしょうか。部品一つが装備品全体に及ぼす影響を考えても、安全保障上の重要性に鑑み、義務規定にすべきと考えます。防衛大臣の御所見を伺います。

 強靱な生産基盤を含むグローバルロジスティクスの重要性を相手は知っています。そして、こちらのロジスティクスをどう弱体化させるか、また、高度な技術をどう窃取するかを常に狙っています。

 思えば、この失われた三十年、ビジネスの世界では、日本が開発した高度な技術を、技術者の流出や産業スパイなどで他国に奪われてきました。さらには、日本経済がデフレ的な状態であるにもかかわらず、政府が緊縮財政を続け、需要不足を放置してきた結果、企業は設備投資をためらい、技術開発の基盤が失われたことで、国家そのものの競争力が失われた歴史でもありました。ついには、我が国がよって立つ最後のとりでである防衛産業の技術開発と生産基盤が危機に瀕しています。

 本法案はこの状況の打破を目指すものですが、実効性を上げるためには武器移転に関する国家戦略が必要であるとの危機感をお訴えし、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 鈴木敦議員にお答えいたします。

 初めに、防衛装備移転、技術協力の新たな戦略の策定と、防衛装備移転の推進についてお尋ねがありました。

 防衛産業に係る方針としては、昨年末閣議決定した戦略三文書において、防衛生産、技術基盤をいわば防衛力そのものと位置づけ、自衛隊の装備品を安定的に確保し、新しい戦い方に必要な先端技術を取り込むため不可欠な基盤であるとし、装備移転の推進の施策の方向性も記載しております。

 このような方向性も踏まえ、本法律案に、装備移転を安全保障上の観点から適切なものとし、これを適切な管理の下で円滑に実施するための基金、助成金の制度について定めております。

 国家安全保障戦略に記載されているとおり、防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策手段であり、こうした観点から、今後、議論を進めてまいります。

 また、防衛装備移転を円滑に進めるための各種支援を行うこと等により、官民一体となって防衛装備移転を進めてまいります。

 次に、自衛隊専用車の売払いについてお尋ねがありました。

 御指摘の自衛隊専用車の売払いについては、防衛省として、引き続き、適切に実施されるよう努めてまいります。

 政府安全保障能力強化支援については、支援を行う際に締結する国際約束により、支援対象国に目的外使用の禁止や適正管理を義務づけることとなると承知をしております。実施方針において、案件形成に際しては、必要に応じ防衛装備移転との連携を図るとされていることを踏まえ、防衛省としても、外務省やNSSとしっかり連携してまいります。

 最後に、サプライチェーン調査の規定ぶりについてお尋ねがありました。

 本法律案における調査の規定ぶりとしては、各種の基盤強化の措置の実施に活用するため、これまでの任意の調査を法定のものと位置づけ、企業からの回答結果の情報管理を厳格に行います。

 したがって、この調査は防衛関連企業が安心して回答できるものであり、また、回答するメリットもあり、強制的な措置を伴わずとも実効性のある調査ができるものと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 鈴木敦議員から、政府安全保障能力強化支援、OSAについてのお尋ねがありました。

 OSAの実施に当たり、支援の適正性の確保は重要と考えており、目的外使用の禁止や第三者移転に係る適正管理については、支援を行う際に締結する国際約束により支援対象国に義務づけた上で、適切なモニタリングを行っていく考えです。

 その上で、防衛装備移転の推進の重要性も踏まえ、関係省庁と密接な情報共有や協議等を行い、資機材の供与に際しては、日本製の資機材を積極的に活用しつつ、真に有意義な案件を形成、実施していく考えです。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣  林  芳正君

       財務大臣  鈴木 俊一君

       防衛大臣  浜田 靖一君

       国務大臣  松野 博一君

 出席副大臣

       防衛副大臣 井野 俊郎君


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