衆議院

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第20号 令和5年4月18日(火曜日)

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令和五年四月十八日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  令和五年四月十八日

    午後一時開議

 第一 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件

 第三 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第四 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件

 第五 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件

 日程第五 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長浮島智子君。

    ―――――――――――――

 地方自治法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔浮島智子君登壇〕

浮島智子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地方議会の活性化並びに地方公共団体の運営の合理化及び適正化を図るため、地方議会の役割及び議員の職務の明確化等を行うとともに、会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給を可能とする規定の整備、公金事務の私人への委託に関する制度の見直し等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月五日本委員会に付託され、翌六日松本総務大臣から趣旨の説明を聴取し、十三日、質疑を行い、これを終局いたしました。翌十四日、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件

議長(細田博之君) 日程第二、平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件、日程第三、航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第四、協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長黄川田仁志君。

    ―――――――――――――

 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔黄川田仁志君登壇〕

黄川田仁志君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、日米宇宙協力に関する枠組み協定は、本年一月十三日に署名されたもので、日米間の個別の宇宙協力を円滑に進めるため、宇宙協力に関する基本事項について包括的に規定するものであります。

 次に、二国間航空協定に関する日・EU協定は、本年二月二十日に署名されたもので、我が国とEU構成国との間の既存の二国間航空協定の特定の規定を航空関係の現状を踏まえた内容とするものであります。

 最後に、サイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書は、令和三年十一月十七日に採択されたもので、他の締約国から、電子的形態の証拠をより迅速かつ円滑に収集するための追加の手段について定めるものであります。

 以上三件は、去る四月十一日外務委員会に付託され、翌十二日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。十四日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、順次採決を行いました結果、日米宇宙協力に関する枠組み協定は賛成多数をもって、二国間航空協定に関する日・EU協定及びサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書はそれぞれ全会一致をもって、いずれも承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二につき採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

 次に、日程第三及び第四の両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第五 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第五、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長宮内秀樹君。

    ―――――――――――――

 著作権法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔宮内秀樹君登壇〕

宮内秀樹君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するための措置を講ずるものであり、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、利用の可否に係る著作権者等の意思が確認できない著作物等の時限的な利用に関する新たな裁定制度を創設すること、

 第二に、立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合に、著作物等を公衆送信できることとすること、

 第三に、海賊版被害等の実効的救済を図るための措置として、侵害者の売上げ等の数量が権利者の販売等の能力を超える場合であっても、ライセンス機会喪失による損害額の認定を可能とすること

などであります。

 本案は、去る四月五日本委員会に付託され、同日永岡文部科学大臣から趣旨の説明を聴取しました。十二日に質疑に入り、十四日に質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、孤独・孤立対策推進法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣小倉將信君。

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) ただいま議題となりました孤独・孤立対策推進法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 近時における社会の変化により個人と社会及び他者との関わりが希薄になる中で、日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態にある者の問題が深刻な状況にあります。

 この法律案は、孤独、孤立の状態となることの予防、孤独、孤立の状態にある者への迅速かつ適切な支援その他孤独、孤立の状態から脱却することに資する取組について、その基本理念、国等の責務及び施策の基本となる事項を定めるとともに、孤独・孤立対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進することを目的とするものです。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、孤独、孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会の変化により孤独、孤立の状態にある者の問題が深刻な状況にあることに鑑み、孤独、孤立の状態にある者の問題が社会全体の課題であるとの認識の下に、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要であることを旨とすること等を基本理念として孤独・孤立対策を行わなければならないことを定めるものであります。

 第二に、国及び地方公共団体の責務、国民の努力、関係者の連携及び協力等について定めるものです。

 第三に、孤独・孤立対策に関する施策として、その推進を図るための重点計画の作成、孤独・孤立対策に関する国民の理解の増進、相談支援の推進、関係者の相互の連携及び協働の促進、当事者等への支援を行う人材の確保、養成及び資質の向上、地方公共団体及び当事者等への支援を行う者に対する支援並びに孤独、孤立の状態にある者の実態等に関する調査研究の推進について定めるものです。

 第四に、地方公共団体は、孤独・孤立対策を推進するために必要な連携及び協働を図るため、当事者等に対する支援に関係する機関等により構成される孤独・孤立対策地域協議会を置くよう努めることとするものです。協議会は、その目的を達成するため、必要な情報の交換及び支援の内容に関する協議を行い、その結果に基づき協議の構成機関等が支援を行うこととしております。また、協議会は、その構成機関等に対し、支援の対象となる当事者等に関する情報の提供等の必要な協力を求めることができることとし、協議会の事務に従事する者等は、正当な理由がなく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないこととしています。

 第五に、内閣府に、特別の機関として、内閣総理大臣を本部長とする孤独・孤立対策推進本部を設置するものです。本部は、孤独・孤立対策の重点計画を作成し、その実施を推進すること等をつかさどることとしています。また、内閣府の事務に孤独・孤立対策の推進に関する事務を追加することとしています。

 なお、この法律案の施行期日は、令和六年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。太栄志君。

    〔太栄志君登壇〕

太栄志君 神奈川十三区、太栄志でございます。

 会派を代表して、ただいま議題となりました内閣提出法案、孤独・孤立対策推進法案について質問いたします。(拍手)

 新型コロナウイルス感染症との戦いが三年を超えました。この間、未知のウイルスへの政府の対応や健康危機管理の様々な問題に直面し、孤独・孤立対策においても我が国の脆弱性が露呈されました。人と人との接触の機会が激減し、対面でのコミュニケーションが制約され、コロナ禍での社会環境の変化を背景に、人間関係への不安や漠然とした将来への不安が広がりました。

 昨年、いわゆる引きこもりの方は推計百四十六万人で、日本人の百人に一人が引きこもり状態であることが明らかになりました。さらに、昨年の自殺者数は二万一千八百人を超え、前年比で四・二%の増加となりました。とりわけ、小学生、中学生、高校生の自殺者数は昨年五百十四人と、一九八〇年の統計開始以降で初めて五百人を超え、過去最多でありました。一年間に五百人以上の未来ある子供たちが自ら命を絶つ、これは社会の緊急事態です。政治は、もっと真剣に孤独、孤立の問題に真正面から向き合い、対策を急がなければなりません。

 だからこそ、その基本理念において、孤独、孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図るとする本法律案を与野党で徹底審議し、早急に成立させなければなりません。

 私は、八年前の十二月、国政への挑戦を始め、一度の落選と六年半の浪人時代を経て、一昨年、衆議院で議席をお預かりすることとなりました。この浪人生活の中で地域をくまなく歩き、徹底した草の根活動を重ねてまいりましたが、その中で、孤独、孤立の不安に直面される様々な声を聞きました。

 特に、コロナ禍では、感染が怖くて外出できず、子育て支援の集まりなども中止が続き、ママ友もゼロ、誰にも子供のことを相談できないと一人で悩んでいるお母さんからの不安の声。調査結果によると、コロナ禍で出産、育児を経験した産婦の約三〇%が産後うつ状態にあり、コロナ禍以前の約一四%に比べても非常に高い割合であるとされています。

 また、せっかく入学した大学ではオンラインでの授業が続き、思い描いていたキャンパスライフとのギャップに落胆している、友達をつくれず孤独感を抱いていると明かしてくれた大学生の声。日本財団の意識調査では、若者の四割以上が死にたいと本気で考えた経験があることが明らかになりました。大人の三年間の自粛生活も苦しいものでしたが、子供たちが触れ合いやコミュニケーションを制約されながら過ごす三年間は、全く重みが異なるものです。改めて、今回の感染症危機が社会に与えた打撃の大きさを痛感いたしました。

 私も、あらゆる機会で、我が国の孤独・孤立対策の必要性を訴え続けてまいりました。独りじゃないよとつじつじで語りかけ、どんなことでも相談してくださいと訴えました。

 私は、二十代の頃、やりたいことや夢がたくさんありましたが、様々なことに挑戦しては、失敗と挫折の繰り返しでした。なかなか夢に近づけなくて焦るばかりで、ふさぎ込み、つらい時期を過ごしたことがありました。ただ、そんなとき、いつも私のことを気にかけて連絡してくれる一人の友人の存在があり、私の場合は、長くふさぎ込み続けることはありませんでした。

 だからこそ、誰もが安心して相談できる、オンラインも活用した相談窓口の大幅な増設、NPOやボランティアによる見守りサービスへの支援拡充、そして、孤独・孤立対策の根拠法となる本推進法の制定が待ったなしであることは間違いありません。

 本日は、そのような立場から、小倉孤独・孤立対策担当大臣に質問いたします。

 まずは、本法案を提出するに至った背景及び基本的な理念についてお伺いいたします。

 政府は、二〇二一年二月、菅政権下で、英国に次いで世界で二番目となる孤独・孤立対策担当大臣を設置したことを皮切りに、孤独・孤立対策推進会議の設置、重点計画の策定、孤独、孤立の実態把握を目的とする全国調査の実施などに取り組んできました。政府としてこれまでの取組をどのように評価しているのか、お答えください。

 また、新型コロナ感染症の感染拡大と孤独、孤立問題の深刻化について、その関連性を政府としてどのように分析されているのか、お答えください。

 そして、孤独・孤立対策に取り組む支援団体などからは、対策に係る根拠法の制定の必要性が指摘されてきました。菅政権下で本格的な対策に着手してから、既に二年間が経過してしまいました。なぜこれまで孤独・孤立対策の根拠法案を提出しなかったのでしょうか。その理由についてお答えください。

 本法律案では、内閣府に孤独・孤立対策推進本部を設置し、孤独・孤立対策重点計画を策定すると規定されています。法案が成立した場合は、二〇二四年四月一日の施行後、どのようなスケジュールで孤独・孤立対策重点計画を策定するお考えなのか、お答えください。

 また、二〇二一年十二月に策定された孤独・孤立対策の重点計画には、毎年度を基本としつつ必要に応じて本重点計画全般の見直しの検討を行うとされており、それに基づいて、策定から一年後の二〇二二年十二月に改定されました。本法案に基づく孤独・孤立対策重点計画も毎年度を基本として見直すお考えなのか、お答えください。

 さらに、現行の孤独・孤立対策の重点計画には、各省庁から二百以上の施策が列挙されています。ただ列挙するだけでは意味がなく、限られた人員と予算を生かすために、縦割りの弊害を排し、省庁横断的な取組が必要です。類似する政策は統合し、強化するべき施策への重点配分を行うなど、実効性を高めなければいけません。孤独・孤立対策重点計画を作成する上で施策の実効性の改善に取り組むお考えはあるのか、お答えください。

 次に、孤独・孤立対策の各施策の評価、検証の在り方についてお伺いいたします。

 小倉担当大臣は、証拠に基づく政策立案、EBPMを推進されてこられました。それぞれの政策分野でロジックモデルを構築し、ロジックモデルをつなぐ矢印の因果関係を科学的に分析していく必要性を認識しております。

 現行の孤独・孤立対策の重点計画では、各施策の実施状況の評価、検証を行うとともに、評価、検証の指標を検討すると明記されています。一方、孤独・孤立対策の重点計画に関する有識者会議では、直接的に孤独や孤立が解消されるのかを評価指標にするのは難しいとの指摘があります。

 政府は、孤独・孤立対策重点計画の策定に当たって、どのように評価、検証の指標を定めるのでしょうか。そして、指標の達成状況についてどのように評価、検証を行うのか、EBPMの観点も踏まえてお答えください。

 これまでの孤独・孤立対策に関する事務は内閣官房が実施してまいりました。しかし、本法律案の第二十条においては、内閣官房の孤独・孤立対策推進会議を改組し、内閣府に、特別の機関として、孤独・孤立対策推進本部を設置すると規定されています。本法律案で、ほかの省庁ではなく内閣府が孤独・孤立対策に関する事務を所管することとした理由は何か、お答えください。

 次に、NPO支援の在り方についてお伺いいたします。

 孤独・孤立対策において、NPOの役割は、孤独、孤立が元で困難な状況にある人にサービスを提供する面と、ボランティア参加などを通して存在そのものが居場所としての機能を有する面において極めて重要です。

 本法律案でも、国は、当事者などへの支援を行う者が行う孤独・孤立対策に係る活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めると規定されています。政府として、孤独・孤立対策を推進していく上でNPOに期待する役割ついてどのように考えているのか、お答えください。

 また、小規模なNPOが多様に存在できるような補助の仕組みを求める声、長期につながり続ける支援への財政的な後押しを求める声があります。このような要望を踏まえて具体的にどのような支援を行っていくのか、お答えください。

 そして、NPOなどによる活動が活発な地域とそうでない地域との差が大きく、地域に根づいたNPOを育て、活動しやすい環境を整備する必要性を指摘する声もあります。NPO活動の地域間格差について政府としてどのように認識しているのか、地域に根づいたNPO活動を推進する上でどのような支援を講じるべきであると考えているのか、お答えください。

 相談支援の拡充についてもお伺いいたします。

 NPO活動の支援に当たっては、夜間にもSNSで相談を受けるなど、当事者が相談しやすい環境の整備が不可欠です。このようなNPOなどの活動を後押しする上で、十分な人員、スタッフを確保できるような支援が必要です。政府として、相談支援を行うNPOなどに対して人材面での支援をどのように行うべきであると考えているのか、お答えください。

 最後に、このコロナ危機を乗り越えた先に目指すべき、孤独、孤立に一人で悩むことのない社会の在り方について述べます。

 それは、政治、行政を政治家や公務員だけが担うのではなく、民間を含むあらゆる人々が支える新しい公共の社会です。国民による公共への貢献領域を各分野で拡充することで、自助、共助、公助それぞれの役割を再定義することが必要です。

 今回の法案では、NPOなどにおいて現場で孤独、孤立に対する不安に寄り添う方々の意見が幅広く反映されている点について、一定の評価をしております。孤独・孤立対策においては、国民お一人お一人が、誰かの身近な人として、その人に寄り添っていただくことが必要不可欠です。

 高齢化の急進展、独居世帯の増加、不安定な国際情勢への不安感、国民生活の安全と安心を支える公務員のなり手不足など、経済社会環境が変化する中で、我が国社会が育んできた自助、共助、公助のバランスが崩れています。このような中で、今こそ、孤独・孤立対策の抜本的強化に取り組まなければなりません。

 そのため、まず、地域のきずなと公の精神に支えられた公正で誠実な政府が真摯なメッセージを届け、国民が自由な意思に基づいて公に参画する新しい公共の社会を追求しなければいけません。そして、その先に、孤独、孤立に悩む人を誰一人として取り残さない社会、相互に支え合い人と人のつながりが生まれる社会を目指すために、私も全力で取り組んでまいります。党派の垣根を越えて、一致団結してまいりましょう。

 このことを申し上げ、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 太議員から、全部で十二問御質問がございました。

 まず、孤独・孤立対策に関するこれまでの取組の評価についてお尋ねがございました。

 政府では、長引くコロナ禍の影響等により、孤独、孤立の問題がより一層の社会問題となる中で、令和三年二月より、孤独・孤立対策担当大臣が司令塔となり、孤独・孤立対策を政府一体となって推進してまいりました。

 孤独・孤立対策を始めてから約二年間の間、孤独・孤立の実態把握に関する全国調査、孤独・孤立対策の重点計画の策定及び改定、国における官民連携体制の構築、地方における官民連携体制のモデル構築、一元的な相談支援体制の試行など、様々な施策に精力的に取り組んでまいりました。

 これまでの取組により、政府として、孤独・孤立対策を進めていく上での基礎となる体制や政策基盤が一定程度整ってきたと考えております。

 いわゆるコロナ禍と孤独、孤立問題の深刻化についてお尋ねがございました。

 二〇二〇年以降の長引くコロナ禍の影響により、孤独、孤立の問題がより一層深刻な社会問題となっております。中でも、自殺者数の増加などは、孤独、孤立の問題もその要因の一つと考えております。

 内閣官房で実施しております孤独・孤立の実態把握に関する全国調査では、新型コロナウイルス感染拡大による人とのコミュニケーションの変化についても把握しております。

 先日発表した令和四年調査結果によりますと、人と直接会ってコミュニケーションを取ることについては減ったという回答が約七割となっており、それらの人では、何らかの孤独を感じる人の割合も高くなっております。

 このように、コロナ禍の影響と孤独感には一定の関連性があることが調査結果からもうかがえるところであります。

 孤独・孤立対策の根拠法案をこれまで提出してこなかった理由についてお尋ねがございました。

 政府の孤独・孤立対策は、長引くコロナ禍の影響により深刻化、顕在化した孤独、孤立の問題に対処するために取組を始めたものでありますが、社会に内在する孤独、孤立の問題については、コロナの感染拡大が収束したとしても、政府として、必要な施策を着実に実施する必要があります。また、単身世帯や単身高齢世帯の増加により、今後、孤独、孤立の問題の更なる深刻化も懸念されます。こうした中で、孤独・孤立対策の安定的、継続的な推進体制を整備することが今後必要となったところであります。

 政府では、これまで、内閣官房の所掌の範囲内において、一元的な相談支援体制の試行又はNPO等の取組モデルの調査や地方自治体の官民連携モデルの開発といった、対策を進める上での基礎となる体制や政策基盤の整備を行ってまいりました。今後は、こうした試行やモデル開発の段階から本格実施の段階へと進めていく必要が生じてきたところであります。

 このような政府における二年間の孤独・孤立対策の取組状況を踏まえた上で、今国会に法案を提出することとしたものであります。

 孤独・孤立対策重点計画の策定スケジュールについてお尋ねがございました。

 本法案に基づく孤独・孤立対策重点計画については、令和六年四月一日の法の施行後速やかに、本法案に基づき設置することとなる孤独・孤立対策推進本部を開催して決定することを想定しております。

 孤独・孤立対策重点計画の見直し時期についてもお尋ねがございました。

 孤独、孤立の問題については、その時々の社会状況等に応じて機動的に対応していくことが必要でありますことから、本法案では、孤独・孤立対策重点計画について、見直しの期限を確定的に定めることはいたしておりません。

 現時点においては、現行の重点計画に記載のとおり、毎年度見直しの検討を行うことが基本になると考えておりますが、孤独・孤立対策推進本部において、重点計画の内容と併せて、見直しの考えについても決定することになると考えております。

 孤独・孤立対策重点計画を策定する上での施策の実効性についてお尋ねがございました。

 本法案の目的規定においては、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進することといたしております。また、基本理念で定めておりますとおり、孤独・孤立対策は、社会のあらゆる分野において推進することが重要と考えております。

 現行の孤独・孤立対策においても、既存のあらゆる制度、施策に孤独・孤立対策の視点を入れて取組を進めていくという方針の下、関係府省庁の施策を盛り込んだ重点計画を定めておりますところ、こうした方針は、本法案に基づく孤独・孤立対策重点計画の策定においても踏襲するものと考えております。

 また、本法案においては、孤独、孤立の状態にある者の実態等に関する調査研究を推進するよう努めることとしており、こうした調査の結果等も踏まえて、重点計画の策定に当たって、実効性ある施策を盛り込んでいくことに努めてまいりたいと考えております。

 孤独・孤立対策の評価、検証についてお尋ねがございました。

 本法案に基づき作成することとなる孤独・孤立対策重点計画におきましては、孤独・孤立対策の具体の施策を盛り込み、施策ごとに目標及びその達成期間を定め、適時に目標の達成状況を調査することとしております。

 孤独・孤立対策の総合的な評価、検証については、孤独、孤立の問題を抱える当事者等の状況が様々でありますことから、定量的な効果測定は難しい面があると考えております。また、これまでの有識者会議におきましても、孤独・孤立対策では継続性が大事であり、評価という手法がなじむのかといった御意見や、取組のプロセスを見ていくことが重要ではないかといった御意見があったところでもあります。いずれにいたしましても、孤独・孤立対策の評価指標は今後検討が必要な課題と考えており、引き続き検討してまいります。

 孤独・孤立対策の事務の所管についてお尋ねがありました。

 さきに述べましたように、孤独、孤立の問題の更なる深刻化が懸念される中で、社会に内在する孤独、孤立の問題への対応は、政府としても恒常的に取り組むべき重要政策課題であります。また、幅広い社会課題に密接に関連する孤独・孤立対策は、政府全体を通じ、各省庁の広範にわたる施策を総合的に推進する必要があります。

 内閣官房は、国のその時々の重要政策の企画立案、総合調整を担う機関でありますが、その取組は、例えば、NPO等の取組モデルの調整や地方自治体の官民連携モデルの開発などにとどまります。

 このため、内閣府に事務を移管することにより、政府内の総合調整を行いつつ、NPO等の民間や地方自治体の取組への支援に係る本格的な事業を行うことを可能とし、孤独・孤立対策の安定的、継続的な実施体制を整備することとしているものであります。

 孤独・孤立対策においてNPOに期待する役割についてお尋ねがございました。

 孤独・孤立対策においては、引きこもり対策など、いわゆる課題解決型の支援とともに、予防の観点から、日常の様々な分野において緩やかなつながりを築けるような多様な居場所づくりも重要です。

 このような取組の推進に当たっては、基礎自治体を始めとした関係行政機関のみならず、当事者等の多様なニーズ等に応じて息の長いきめ細かな対応を行うNPOや社会福祉協議会等の役割は極めて重要であると考えております。

 小規模なNPOへの支援についてお尋ねがございました。

 孤独・孤立対策の推進に当たっては、孤独、孤立の当事者等への支援を行うNPO等への持続的、安定的な活動に向けた支援が重要です。

 このため、令和五年度予算において、NPO等が主体となった孤独、孤立問題に対する日常生活環境での早期対応や予防に資する取組モデルの構築、中間支援組織を通じた孤独・孤立対策に取り組むNPO等への支援モデルの構築を新たに実施することとしております。

 これらの実施状況も踏まえつつ、小規模団体も含むNPO等の諸活動への支援に係る施策の具体化についても検討を進めてまいります。

 NPO活動の地域差や地域のNPO活動への支援についてお尋ねがございました。

 今回の法案では、地方公共団体による関係者の連携、協働の促進の規定を盛り込んでおり、今後は、各地域において、孤独・孤立対策に関係する機関等が互いの活動を共有し、地域内の課題について議論するなど、連携基盤の構築を推進することとしております。

 太議員御指摘のように、NPO等の活動が必ずしも活発でない地域があることは承知をしており、こうした地域にあっては、例えば、社会福祉協議会、社会福祉法人、民生委員、児童委員や住民組織など、地域において現に存在している様々な社会資源を生かしながら、官民の連携を通じて孤独・孤立対策の取組を推進していくことが必要と考えております。

 また、先ほど答弁したとおり、令和五年度予算により、地域のNPO等の活動への支援の取組についても検討を行ってまいります。

 最後に、相談支援を行うNPO等への人材面での支援についてお尋ねがございました。

 孤独、孤立の問題を抱える当事者や家族等に対して、一人一人の相談時の心理的負担に留意しつつ、多様な状況に即した充実した相談支援を行えるよう、関係機関において、孤独、孤立に係る相談支援に当たる人材の確保や育成、資質の向上を図ることは大変重要と考えております。

 相談支援を行うNPO等への人材面での支援につきましては、令和五年度予算において実施する、中間支援組織を通じた孤独・孤立対策に取り組むNPO等の支援モデルの構築状況を踏まえつつ、人材育成のための研修や相談対応に関する支援についても施策の具体化を検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 福重隆浩君。

    〔福重隆浩君登壇〕

福重隆浩君 公明党の福重隆浩でございます。

 私は、自由民主党・無所属の会、公明党を代表して、ただいま議題となりました孤独・孤立対策推進法案について、小倉孤独・孤立対策担当大臣に質問をいたします。(拍手)

 まず、質問に先立ち、十五日、遊説中の岸田総理に対して、爆発物が投げ込まれる事件が発生いたしました。政治家や候補者が有権者に訴える民主主義の最も基本的な働きを妨害するものであり、断じて許される行為ではありません。一刻も早い事件の解明を望むものであります。

 さて、近年、社会的つながりが希薄化する中、日常生活及び社会生活において孤独を覚えることにより、心身に有害な影響を受けている方が多くおられます。さらに、コロナ禍の影響により、生活困窮者や自殺者など、人につながりたくてもつながれずに、追い込まれる社会的孤立の問題は一層深刻化しております。

 政府が先月公表した孤独、孤立に関する実態調査では、孤独感がしばしばある、常にある、時々ある、たまにある等と回答した方が八〇・九%であり、昨年の調査より約六ポイント上昇しています。年齢的に見ると、孤独感がしばしばある、常にあると回答した方は、二十歳代、三十歳代の若年層に高い傾向が見られます。

 最近では、性的マイノリティーの方々や定年退職後の男性の孤独、孤立も顕在化しており、もはや、孤独、孤立は誰にでも起こり得る問題であります。

 与党は、この問題を深刻に受け止め、これまでも政府と連携し、各党内に対策本部を設置し取組を進めてきました。我が党としても、有識者や民間支援団体からヒアリングを行うとともに、全国調査を実施、政府に対し申入れを行うなど、活発に取組を進めてきました。その後、政府は、対策の指針となる孤独・孤立対策の重点計画を策定し、昨年末には改定を行いました。さらに、対策を強化し、恒久的な支援体制を構築するため、与党として、法整備の検討を強く求めてきました。

 そうした経緯も踏まえ、本法案が国会に提出された意義は非常に大きいと考えます。まさに、社会的孤立は個人の問題ではなく社会の問題であります。今後も更に政府の取組を後押ししていく所存であります。

 さて、本法案には三点の基本的理念が明記されております。

 一点目には、孤独、孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要であること、二点目には、孤独、孤立の状態にある者及びその家族等の立場に立って、当事者等の状況に応じた支援が継続的に行われること、三点目には、当事者等に対しては、その意向に沿って当事者等が社会及び他者との関わりを持つことにより孤独、孤立の状態から脱却して日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようになることを目標として、必要な支援が行われることが示されております。

 この三点から成る基本理念は、非常に大事な視点であります。深刻化している孤独・孤立対策について、今後、政府としてどのような取組に力を入れていくのでしょうか。答弁を求めます。

 次に、NPO等の支援についてお伺いをいたします。

 政府は、昨年の骨太の方針の中で、NPO等の活動を支援するとともに、支援者支援など孤独・孤立対策に関するNPO等の諸活動への支援を促進する方策の在り方を検討すると示されております。

 子供の居場所づくりや、不安、困難を抱える女性に寄り添った相談事業、生活困窮者に対する支援活動など、様々なNPO法人が各地域で活動されており、その役割も更に重要になってまいります。

 令和五年度予算及び令和四年度第二次補正予算、合わせて六十億円を超える予算措置を行っており、NPO等に対して財政的に支援することは必要不可欠であり、大変重要だと考えております。また、NPO等関係する支援団体が、情報が不足している、こういった支援策が必要など、NPO等支援団体が相談できる機関が重要と考えます。

 本法案には当事者等への支援を行う者に対する支援が盛り込まれておりますが、どのような支援を想定されているのか、答弁を求めます。

 次に、地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業についてお伺いをいたします。

 国の孤独・孤立対策官民連携プラットフォームは、令和四年二月に設立され、三つの分科会を設置し、現状や課題を整理しながら、対策案を検討し提案してまいりました。

 地方自治体においても、孤独、孤立問題の深刻化に備え、関係する支援団体等の連携による対応が急務であります。一方、孤独、孤立問題は複合的事案が多く、既存の政策的対処では困難な状況も発生しており、地方自治体の取組にも大きな差が見られます。

 現在、地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームは、モデルケースとして計二十九の都道府県並びに市町村が事業に取り組まれておりますが、この二十九の団体が現在までどのような事業に取り組まれたか、お伺いをいたします。

 また、今後、全国の都道府県及び市町村まで地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームを展開する必要があると思いますが、国としての取組について答弁を求めます。

 次に、本法案には、各自治体に孤独・孤立対策地域協議会を置くよう努めるとすると規定されております。

 同協議会について、全国市長会からは、類似の制度における既存の仕組みの活用など、地域の実情に応じて柔軟に運用できるようにすべきとの意見や、自治体の孤独・孤立対策に関する取組については、十分な財政措置を講じるとともに、関係府省庁に対する事務の効率化や簡素化等に努めてほしいなどの意見表明がありました。

 地方自治体や支援団体など関係者等の現場から、丁寧かつ十分な意見を伺いながら対策を進めることが重要です。同協議会の実効性ある運用方法について、政府の答弁を求めます。

 最後に、繰り返しになりますが、社会的孤立は個人の問題ではなく社会の問題であります。

 宮本みち子放送大学名誉教授は、孤立について、いつ自分もそうなるか分からないということをどれだけ皆が共有できるかだと指摘し、社会全体の課題であるとの共通認識を広げていく必要があると述べられました。

 孤独、孤立の問題は、地道で息の長い取組が必要となります。だからこそ、公明党は、これからも、誰もが支え合う地域共生社会づくりこそ孤立対策の基盤であると考え、ネットワーク政党の強みを生かし、孤独・孤立対策に全力を注いでまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 福重議員から、四問御質問を頂戴しました。

 まず、本法案の基本理念に基づく今後の孤独・孤立対策についてお尋ねがございました。

 孤独、孤立は、人生のあらゆる場面で誰にでも起こり得るものであり、当事者や家族等が置かれる具体的な状況は多岐にわたり、孤独、孤立の感じ方、捉え方も人によって多様です。このため、孤独、孤立の問題には、当事者や家族等の状況に応じた多様なアプローチや手法により対応することが求められております。

 今後の孤独・孤立対策においては、孤独、孤立の予防の観点が重要でありますことから、孤独、孤立の当事者や家族等が支援を求める声を上げやすく、周りの方が当事者への気づきや対処をできるための環境整備、日常の様々な分野における緩やかなつながりを築けるような多様な各種の居場所づくりに力を入れて取り組んでまいります。

 また、一元的な相談支援体制の本格実施に向けた環境整備、官民の連携、協働の強化のためのプラットフォームの取組といった、当事者等に対して的確に支援を届けるための取組にもしっかりと取り組んでまいります。

 NPO等への財政的支援についてのお尋ねがございました。

 NPO等への財政的支援は、法案第十三条の、国は、当事者等への支援を行う者が行う孤独・孤立対策に係る活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとするの規定に基づき行うこととしております。

 孤独・孤立対策に取り組むNPO等への支援については、当面、令和三年三月の緊急支援策で実施した規模、内容について強化、拡充等を検討しつつ、各年度継続的に支援を行うこととしています。また、令和五年度に実施するモデル調査の取組状況等も踏まえ、孤独・孤立対策に関するNPO等の諸活動への支援策の在り方について検討してまいります。

 地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームについてお尋ねがございました。

 これまでに二十九の地方自治体において、官民連携プラットフォームを設置した上で、地域の実情に応じて、地域における担い手の把握、見える化や、孤独・孤立対策に関する普及活動などに取り組んでいただいております。

 こうした地方自治体における連携強化の実証事業は今年度も実施予定であり、本事業の成果を全国の地方自治体に共有することで、孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの構築に全国で取り組んでいただけるよう努めてまいります。

 最後に、孤独・孤立対策地域協議会の運用方法等についてお尋ねがございました。

 孤独・孤立対策地域協議会の設置については、例えば、社会福祉法に基づく重層的支援体制整備事業の支援会議などの既存の会議を活用して、各自治体や地域の実情に応じた形で設置することも可能とすることを想定しております。

 この点も含めました協議会の運営等については、地方自治体を始めとする関係者や有識者の意見も聞きながら、法案成立後の法の施行までに通知等でお示しをしたいと考えております。

 また、地方自治体に対する財政措置については、内閣官房で現在行っております地方版孤独・孤立対策プラットフォームに係る調査研究事業の実施状況も踏まえ、地方公共団体の具体的な事務と併せて、財政当局等とも協議しつつ検討したいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 浅野哲君。

    〔浅野哲君登壇〕

浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。

 ただいま議題となりました孤独・孤立対策推進法案について質問いたします。(拍手)

 国民民主党は、これまで、孤独・孤立対策について各種の調査を継続し、二〇一九年には公党として初めて孤独・孤立対策を選挙公約に盛り込むとともに、孤独・孤立対策の推進に関する法律案を提出するなど、積極的に提案してきました。それらは、二〇二一年、英国に続き世界で二例目となる孤独・孤立対策を担当する大臣の誕生にも貢献できたと自負しています。

 そして、今回提出された孤独・孤立対策推進法案は、国民民主党が提案してきた内容とほぼ同様であり、期待を持って今後の審議に臨むところです。

 しかし、孤独・孤立対策で注意しなければならないことがあります。それは、孤独、孤立に悩んでいる当事者が必要としているのは、社会的、精神的、物質的な欠乏を補ってもらうこと、例えば、単なる傾聴行為や経済的効果を有する支援などではなく、当事者自身が尊厳を保ちながら、社会的、精神的、物質的な欠乏を自ら解消できる生活環境を手に入れることだという点です。

 そのような観点から、本法案は孤独、孤立を予防、回避することにどのように貢献するのか、答弁を求めます。

 次に、孤独、孤立に悩む者と支援策との接続性、いわゆるタッチポイントの確保について質問します。

 幾ら行政が支援策をつくっても、孤独、孤立に悩む者につながらなければ意味がありません。支援策につながるための導線をどのように確保していくのかという視点が非常に重要です。

 例えば、児童虐待や性的虐待、DV、経済的困窮に悩む当事者などは、人に知られたくないという理由から、あえて相談しないケースもあります。それ以外にも、支援策にアクセスするための知識や情報あるいは交通費などがなく、支援策にアクセスできないケースも存在しています。

 このような当事者に対し、政府はどのようなタッチポイントを提供できる、あるいはしているのか、直近の取組事例についても併せて答弁願います。

 特に、電気、ガス、水道などの公共料金の滞納は、経済的困窮や孤独、孤立のサインとして認識されていますが、ライフライン関係事業者と自治体の福祉部局の連携状況や取組の効果について、直近の状況と政府の課題認識を伺います。

 次に、孤独・孤立対策の観点から、重層的支援体制整備事業について質問いたします。

 重層的支援体制整備事業は、直近の社会福祉法の改正により創設された制度ですが、この制度創設の背景や概要について説明を求めます。

 先に簡単に申し上げれば、重層的支援体制整備事業は、子供、障害者、高齢者といった属性や、要介護、虐待、生活困窮といったリスクごとに支援するのではなく、本人の状況に合わせて社会とのつながりを回復するための支援や、住民同士の関係性をベースに居場所づくりや交流の場づくりを支援するものです。このような支援策こそ、孤独・孤立対策の王道であると考えます。大臣の見解を求めます。

 ただし、重層的支援体制整備事業は、市町村から見れば任意事業であり、実施していない市町村が多く、具体的な便益は確認できませんでした。本制度の最新の活用実績を伺うとともに、今後も十分な予算確保を求めます。

 最後に、子供の孤独・孤立対策について伺います。

 令和四年の小中高生の自殺者数は、五百十四名と過去最多となりました。子供が自ら命を絶つことは絶対にあってはならないことです。

 自殺の誘因ともなる子供の孤独・孤立対策について、孤独・孤立対策推進本部は、本法案に基づく重点計画の中で子供の孤独・孤立対策を一つの柱と位置づけ、厚生労働省や文部科学省、こども家庭庁と連携し、重点的に実態把握や調査研究、対策の具体化を進めていただきたいと考えますが、答弁を求めます。

 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 浅野議員から、全部で五問御質問を頂戴いたしました。

 本法案が孤独、孤立を予防、回避することにどのように貢献するかについて、まずお尋ねがございました。

 浅野議員御指摘のとおり、孤独・孤立対策においては、孤独、孤立の問題や、それらから生じ得る更なる問題に至らないようにする予防の観点からの取組が重要と考えております。

 このため、本法案では、孤独、孤立の状態となることの予防を含めて孤独・孤立対策を定義した上で、孤独・孤立対策の基本理念を定めております。

 基本理念においては、孤独、孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであること等に鑑み、孤独、孤立の状態となることの予防の観点からの施策も含め、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図っていくことが重要である旨を定めています。

 また、当事者等への支援に当たっては、当事者や家族等が、相談できる誰かや信頼できる誰かと対等につながっているという形で人と人とのつながりを実感できることが重要と考えております。

 このため、基本理念においては、当事者等に対する支援に当たっては、その意向に沿って当事者等が社会及び他者との関わりを持つことにより孤独、孤立の状態から脱却して日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようになることを目標とすることを定めております。

 これらの基本理念にのっとり、国及び地方公共団体は、予防の観点からの施策も含め、孤独・孤立対策に関する施策を策定し、実施することとなります。

 孤独、孤立に悩む方と支援策との接続性、タッチポイントについてお尋ねがございました。

 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査によりますと、孤独感があり、支援が必要と思っていても、実際には支援が届いていない方がいることが示唆されております。その理由からは、第一に、支援を受けることを無理に我慢したり、恥ずかしさや他者への迷惑を過度に意識しないようにするための環境づくりや、第二に、支援の受け方の分かりやすさ、支援手続の煩雑さの解消や軽減が求められていると考えられます。

 このため、政府では、孤独、孤立に悩む方が支援を求める声を上げやすく、周囲の人が声をかけやすい社会となるよう、情報発信、広報、普及啓発などに取り組んでいるところです。

 例えば、孤独、孤立に関する支援制度や相談先を一元化して情報発信するウェブサイトを作成し、自動応答システムにより、相談者の悩みに応じた支援制度や相談先を案内しているところであります。さらに、本年二月からは、ソフトバンク株式会社の協力を得まして、携帯電話を利用中で、料金の支払いが遅れた方に対して行う案内の中で、孤独・孤立対策ウェブサイトを紹介する取組も始めております。

 今後とも、孤独、孤立で悩んでいる方に着実に支援を届けることができるよう取り組んでまいります。

 電気、水道等のライフライン関係事業者と自治体の福祉部局の連携状況等についてお尋ねがございました。

 電気、ガス、水道等が料金の滞納により供給停止となると生活困窮者の方は命に関わる場合があることから、ライフライン関係事業者と自治体の福祉部局の連携強化を促す取組を行っています。また、水道事業者が料金の収納や検針で地域を巡回した際に、地域で孤立していたり経済的に困窮している者を把握した場合に、早期に支援につなぐための連携についても促しているところであります。実際に、自治体と電気・ガス事業者が連携協定を締結し、事業者からの情報提供により支援につなげた事例があると承知をしております。

 孤独・孤立対策においては、孤独、孤立の問題や、それらから生じ得る更なる問題に至らないようにする予防の観点が重要です。そのためには、ライフライン関係事業者のみならず多様な民間の主体と自治体が連携して、孤独、孤立の当事者等を地域で見守り、包括的に支える支援体制を構築していくことが重要と考えております。

 今後とも、孤独・孤立対策において、官民連携の取組の裾野や参画する主体を広げていきたいと考えております。

 重層的支援体制整備事業による支援策と孤独・孤立対策についてお尋ねがございました。

 孤独、孤立は人生のあらゆる場面で誰にでも起こり得るものです。また、当事者や家族等が置かれている具体的な状況は多岐にわたり、孤独、孤立の感じ方、捉え方も人によって多様であります。このような孤独、孤立の問題には、当事者や家族等の状況に応じた多様なアプローチや手法により対応することが求められております。

 このため、当事者等への支援に当たっては、当事者等への支援に関係するあらゆる分野の関係者が有機的に連携し、分野横断的に取り組んでいくことが必要となります。

 また、孤独、孤立の問題や、それらから生じ得る更なる問題に至らないようにする予防の観点から、当事者等が支援を求める声を上げやすく、周りの方が当事者への気づきや対処をできるための環境整備や、日常の様々な分野において緩やかなつながりを築けるような多様な各種の居場所づくりを進めることも重要です。

 このように、地域において当事者等を中心に置いて包括的に支援する体制を推進していく孤独・孤立対策の考え方は、浅野議員御指摘のとおり、重層的支援体制整備事業の考え方と通じるものと考えております。

 今回の法案は、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策の施策を推進するに当たっての基礎となるものであり、重層的支援体制整備事業の活用を始め、人と人とのつながりを実感できる地域づくりを推進してまいります。

 最後に、子供の自殺や孤独・孤立対策についてお尋ねがございました。

 子供の自殺対策については、こども家庭庁、厚生労働省、文部科学省などの関係省庁が連携をして、子供の自殺の実態把握、分析、学校、地域の支援者が連携して対応する仕組みの構築、地方自治体との連携強化などにより対策を強化することといたしております。

 また、こども家庭庁では、子供の居場所づくり、地域における子供、若者の育成支援に取り組むこととしております。

 このような子供の自殺対策や孤独・孤立対策については、本法案により今後定めることとしている孤独・孤立対策重点計画においても具体的な施策として位置づけ、関係府省庁の連携の下、着実に取組を推進することとしたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 浅野哲議員より、重層的支援体制整備事業の制度概要や実績等についてお尋ねがございました。

 本事業は、地域住民の複雑化、複合化した支援ニーズを背景に、市町村における包括的な支援体制を構築するため、属性を問わない相談支援、社会参加に向けた支援、地域づくりの支援を一体的に行うものとして、社会福祉法に基づき、令和三年度から実施をしております。

 本事業の実施自治体数は、令和三年度四十二市町村、令和四年度は百三十四市町村、そして本年度は百八十九市町村が予定と、年々増加をしているところであります。引き続き、実施自治体の拡大を図るとともに、本事業を通じて包括的な支援体制の整備をするために必要な予算の確保を図ってまいります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   松本 剛明君

       文部科学大臣 永岡 桂子君

       厚生労働大臣 加藤 勝信君

       国務大臣   小倉 將信君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 和田 義明君

       外務副大臣  山田 賢司君


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