衆議院

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第21号 令和5年4月20日(木曜日)

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令和五年四月二十日(木曜日)

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  令和五年四月二十日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣斉藤鉄夫君。

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 近年、空家の数は増加を続けており、今後、更に増加が見込まれる中、空家対策の強化が急務となっております。

 具体的には、周囲に悪影響を及ぼす特定空家等の除却といったこれまで進めてきた取組を一層円滑化するとともに、周囲に悪影響を及ぼすこととなる前の段階から空家等の有効活用や適切な管理を確保するなど、総合的に取り組むことが必要であります。

 このような趣旨から、この度、この法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、空家等の活用拡大を図るため、市区町村が空家等活用促進区域を定めることができることとし、同区域において接道規制や用途規制の合理化等を図ることにより、空家等の建替えや用途変更等を促進するとともに、市区町村長が空家等の活用等に取り組む民間法人を空家等管理活用支援法人として指定することができることとしております。

 第二に、空家等の適切な管理を確保するため、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある空家等を管理不全空家等と位置付け、その所有者等に対して、市区町村長から指導、勧告できる制度を創設することとしております。

 第三に、特定空家等の除却等を更に促進するため、緊急時の代執行制度を創設するとともに、所有者等に代わって空家等の管理や処分を行う財産管理人の選任請求に係る民法の特例措置を講ずることとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小熊慎司君。

    〔小熊慎司君登壇〕

小熊慎司君 立憲民主党の小熊慎司です。

 立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 先立ちまして、先日の国土交通省元事務次官による空港施設の役員人事への口利きに続き、今度は、元国土交通審議官が一般財団法人土地情報センターの役員人事に関与したと報道されています。事務次官級OBによる天下りの口利きの連続は、組織的な関与の疑いが強く、大変な、深刻な問題であります。是非とも、事実関係の解明と官僚OBによる再就職への関与禁止の徹底を強く求め、質問に入ります。

 二〇一八年現在で全国の空き家数は約八百四十九万戸と、この三十年で実に二倍以上増加いたしました。政府の人口推計等でも我が国の人口減少は今後も続く見通しでありますが、逆に、更に増え続けるのが空き家です。

 住宅は、築年数とともに資産価値が下がり続け、使わないと急速に劣化するおそれがあります。また、地域の空き家は所有者が遠隔地にいる場合があり、このような空き家では管理の頻度が低くなることが分かっています。

 二〇二一年三月に閣議決定した住生活基本計画では、空き家対策の取組を示す指標として、賃貸、売却用等以外のその他空き家数の目標を、二〇一八年の三百四十九万戸から、二〇三〇年までで四百万戸程度に抑えるとしました。一方で、一九九八年の百八十二万戸から倍増してきたことと、人口減少及び高齢化のスピードを踏まえれば、甚だ見通しが甘く、さらには、本法律案を含めて、政府の空き家対策は十分であるとはとても言えません。

 少子高齢化や人口減少が進むことによる住宅需要の変化、核家族化の進行を受けて、住宅総数が総世帯数を大きく超えている状況が長期にわたって続いていますが、新規供給も続いています。

 政府は既存ストックの有効活用を掲げていますが、具体的に官民による新規供給の在り方をどう考えているのか。また、法律案の施策のみならず、新しく土地を造るから、今ある土地を生かすの政策の方向性について、発想を転換していく必要があると考えますが、国土交通大臣の見解をお聞かせください。

 さらに、活用されていない空き家数の抑制の具体的目標値について、年度あるいは方法別などで、現状より更に踏み込んで示す考えはあるのか、見解をお伺いいたします。

 空き家件数の急増とともに、放置され管理状態が悪い危険な空き家も増えています。こうした課題に地方自治体や地域の人々が苦慮してきました。一つは、危険な空き家、いわゆる特定空き家等に対する対策、そして二つ目は、特定空き家等まではいかない空き家の維持更新や活用をどうするのかであります。

 本法律案では、特定空き家等のうち、崩落しかけた屋根など緊急的な対応を要する場合には、所有者への命令等の猶予を経ずに代執行を可能にする制度の創設が盛り込まれていますが、代執行は自治体にとってリスクのある重い判断でもあります。

 どのような場合に命令等の事前手続を経るいとまがないと判断できるのか、国として具体的に判断基準を示す必要があると考えますが、国土交通大臣の見解を伺います。

 また、特に自治体の職員には、その法的調整や様々な手続などは大きな負担であり、実際に、市区町村の六割前後がマンパワー、専門的知識の不足を訴えているとの調査もあります。自治体の実施体制へのより踏み込んだ支援も必要と考えますが、併せて考えをお聞かせください。

 二つ目に、本法律案では、新たに、管理が不十分であり、放置すれば特定空き家等となりかねない空き家を、市区町村が管理不全空き家等であるとして指導、勧告ができるとし、勧告された空き家は固定資産税の住宅用地特例が解除されることとなりました。令和五年度税制改正では空き家の譲渡所得の特別控除も拡充されていますが、そもそも、譲渡所得が少額で、除却や譲渡は手間もかかるし今のままにしておくのが一番いいという所有者も多いと思われます。

 管理不全空き家等に至る前に積極的な譲渡等を促すような仕組みが必要と考えますが、本法律案で規定する支援策のほかにどのような支援が可能か、国土交通大臣に答弁願います。

 なお、管理不全空き家等に該当するかどうかの判断や、それに基づく指導、勧告、及び、所有者が不明だった場合の財産管理制度の活用についても自治体が担うこととなりますが、現場での運用を支援する明確なガイドラインが必要です。自治体が判断するための基準、ガイドラインを具体的にいつまでに示すことができるのか、お答え願います。

 市区町村がこれまで把握した管理不全の空き家は累計約五十万件で、うち十四万件は除却、修繕されたものの、残りはそのままとなっています。

 本法律案が施行した場合、市区町村により、管理不全空き家等あるいは特定空き家等の数の年別の推移、さらに、除却、修繕等を図る空き家の具体的な目標について、それぞれお示し願います。

 また、自治体が特定空き家等や管理不全の空き家への対応を進める中で、ネックとなっているのが所有者の不明です。実際に、市区町村が所有者特定事務を行った管理不全の空き家など約五十三万件のうち、約九%が判明しませんでした。

 本法律案では、電力会社等へ照会し、特定を進めることとなっています。電力会社以外への照会先としてはどのような先が考えられるのか、また、これらの措置によってどれだけ特定されると考えているのか、具体的な見通しをお聞かせください。

 あわせて、民間事業者の活用は今後更に進むものと考えますが、官民連携による迅速な特定及び対処と、所有者の情報、権益保護とのバランスをどう取っていくべきだと考えているのか、見解をお聞かせください。

 危険な空き家や、危険な空き家となる前に、除却とともに、官、民あるいは官民連携しての有効活用の推進は重要と考えます。地域おこし協力隊と連携した空き家活用支援や、クラウドファンディングを活用するなどした民間事業者も出てきています。私の地元である会津美里町でも、TORCHという一般社団法人が役場と連携して、空き家バンクの登録数を上げています。

 本法律案では、所有者や活用希望者への普及啓発や情報提供のため、NPO法人や社団法人等を空家等管理活用支援法人に指定できるようにすることとなっています。自治体のリソースが不足する中、所有者への周知やきめ細やかな相談対応等へつなげるための制度と理解しますが、所有者の認知から空き家の管理、相続も含めた対策は、とても手間がかかります。民間活用を進めることは重要ですが、特に都市部でない地域で、事業として成立し、本当に担い手が増えていくのかどうかは懸念を持ちます。

 支援法人への財政支援や寄附の優遇等、具体的にどのような支援が可能か、お答えください。また、その要となるコーディネート人材の育成に取り組むべきと考えますが、今後どのような措置が必要か、お伺いいたします。

 また、これに関連して、NPOや民間事業者等が行う改修や調査検討等に国が直接支援するモデル事業を創設しましたが、具体的に、どの程度の自治体で年間当たり何件程度の適用を想定しているのか、御答弁ください。また、モデル事業を踏まえた課題の整理や再検討は、いつ、どのように行われるのか、お答えください。

 危険な空き家を何とかしようと、二〇二二年三月三十一日時点で千三百九十九の市区町村が空家等対策計画を策定し、空き家を生まない、ないしは危険な空き家に落ち込ませないための努力を続けています。こうした空き家の活用に対する取組への国の支援として、例えば、市区町村が行う重点活用エリアの選定や活用方針の検討等への支援上限の引上げを挙げています。

 その上で、こうした市区町村の対応について、さきに挙げたリソースの問題から、市区町村間で格差が生まれることも想定されます。マンパワー等の制約から対応が遅れる自治体への支援はどのように考えているのか、これまでの適用実績や具体的な適用の目標数値とともにお答えください。

 私の地元の会津地方を始めとして、雪国固有の問題もあります。屋根に積もる雪が住宅に、文字どおり、重くのしかかる問題です。

 屋根の雪下ろしがされない空き家では、必然的に倒壊のリスクが高まります。山間部の集落であっても比較的家屋が密集した地域では、近隣家屋や住宅にも被害をもたらしかねません。こうした雪への対策についても、具体的な支援措置、管理指針への反映も含め、考えをお聞かせください。

 その一方で、都市部でも大きな課題があります。

 国の有識者会議などでは、これまで、首都直下地震若しくは南海トラフ地震が発生した場合、住宅の倒壊を含めて甚大な被害を想定しています。過密化した都市部において放置され老朽化していく空き家は、倒壊により、直接的な人的被害をもたらす、道路を塞いで避難や救助を妨げる、あるいは火災の発生箇所となることも想定されます。これらの空き家による影響をどう考えているのか、そのための取組の方向性及び必要性について御答弁ください。

 住宅政策は、地域、国家にとって極めて重要な政策です。放置された空き家は既に地方や都市、日本全体をむしばみ始めており、今後も、残念ながら空き家が増え続けることが想定されます。本法律案では、財政、税制支援の強化や固定資産税の減額解除など、いわば、あめとむちの政策が柱となっていますが、総じて抜本的な解決を促すものではないと考えます。

 空き家の増加は、我が国にとって、進行する人口減少とともに、静かなる、そこにある危機です。今後、さらに、より明確で、かつ骨太な対策を含めたビジョンを示すべきだと申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。感謝します。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 小熊慎司議員にお答えいたします。

 まず、住宅政策の方向性や空き家の抑制目標についてお尋ねがありました。

 今後の住宅政策においては、将来世代に継承できる良質な住宅ストックを形成し、これが循環するシステムの構築などが必要です。

 このため、耐震性などが不十分な住宅の建て替えや改修、既存住宅ではニーズに応えられない場合の新築を進め、流通の活性化を図るとともに、今ある土地を生かす観点から、空き家や除却後の跡地の活用を進める必要があると考えます。

 また、その他空き家の抑制目標については、その全部ではありませんが、特に早急に対処すべき管理不全空き家等の除却等の目標を、従来より更に踏み込んで、KPIとしてお示ししたところでございます。

 次に、緊急代執行の判断基準及び自治体への支援についてお尋ねがありました。

 緊急代執行を行う際の要件については、命令等の事前手続を経るいとまがないときと本法案に明記していますが、市町村がより円滑に判断できるよう、参考となるガイドラインの作成を検討してまいります。

 また、市町村における人員や専門的知識の不足が緊急代執行の的確な実施の妨げとならないよう、弁護士への相談費用を支援するとともに、必要な手順等についても整理し、情報提供することを検討してまいります。

 次に、本法案に基づく措置以外で空き家の譲渡等を促す支援についてお尋ねがありました。

 空き家の除却や譲渡を促す措置としては、相続した空き家を除却し、譲渡した場合に譲渡所得から三千万円を特別控除する、議員御指摘の税制上の特例措置のほか、一定の空き家を除却し、又は空き家を地域活性化に資する用途に改修する場合の補助などが挙げられます。

 こうした支援措置が積極的に活用されるよう、空き家を所有し続けることに伴うリスク、例えば、空き家は傷みが早く、資産価値も低減することなどについて所有者に周知する等により、空き家の積極的な譲渡等を促してまいります。

 次に、管理不全空き家に係る措置などを自治体が運用する際の基準についてお尋ねがありました。

 市町村が管理不全空き家に該当するかを判断する際に参考となる考え方や、指導、勧告を行う際の判断基準、財産管理制度を活用する際の具体的な手順などについて、本法案の施行までに整理し、指針やガイドライン等としてお示ししてまいりたいと考えております。

 次に、管理不全空き家等の除却、修繕等に係る具体的目標についてお尋ねがありました。

 現存する管理不全の空き家や特定空き家として、市町村により、令和四年三月時点で約二十六万戸が把握されており、今後も適切に把握が行われるものと認識しておりますが、このうち、本法案に基づく措置の活用などによって、施行後五年間で計十五万物件を目標に除却や修繕等を推進してまいります。

 次に、空き家所有者の探索先、所有者特定の迅速性と権益保護とのバランスについてお尋ねがありました。

 市町村が本法案に基づき所有者の情報を照会する相手方としては、電力会社以外にガス会社等を想定しております。

 こうした照会によって、これまでの市町村情報を中心とした所有者探索では所有者を特定できなかった約一割の案件についても、一定程度、所有者の特定につながることが期待されます。

 所有者情報は個人情報に当たるため、その保護にも留意が必要であり、本法案では、法律の施行のために必要があるときに限り、市町村が情報提供を求めることができるとすることで、個人情報保護との調和を図ってまいります。

 次に、支援法人への支援策及び人材育成についてお尋ねがありました。

 支援法人は、今後、全国で増大が見込まれる空き家管理や所有者探索の事務を所有者又は市町村から受託するなど、一定の収益事業を行いながら、地域企業や個人からの資金的協力も得て、自立的に活動することを想定しています。当面は、改正法の施行後五年間で百二十法人が市町村から指定されることを目標に取り組んでまいります。

 また、国としても、所有者と活用希望者のマッチングを図るコーディネート人材の育成など、モデル的な取組を行う支援法人に対しては直接的な財政支援を行い、その横展開を図ってまいります。

 次に、空き家の改修や調査検討に係るモデル事業についてお尋ねがありました。

 令和五年度のモデル事業の実施件数はおおむね百六十件程度を見込んでおり、可能な限り多くの自治体の区域においてNPOや民間事業者等の先進的な取組が行われるよう、制度の周知に努めてまいります。

 モデル事業を通じて明らかとなった課題は、毎年度の事業完了後に整理を行い、これを踏まえ、必要な施策を検討してまいります。

 次に、人員等が不足する自治体が空き家の活用に取り組む際の支援についてお尋ねがありました。

 市町村が空き家の重点的な活用を図るエリアの選定や当該エリアでの空き家活用方針の検討、空き家の実態調査や所有者の探索といった業務をアウトソーシングする場合には、その費用に対し、国から補助を行っています。

 令和三年度の実績では、約百二十自治体に補助を行っており、人員等が不足している自治体への支援実績が多くを占めています。

 令和五年度においては、約百五十自治体への補助を目指してまいります。

 次に、豪雪地帯における空き家対策への支援についてお尋ねがありました。

 豪雪地帯においては、屋根の雪下ろしを適切に実施することが重要であり、今後、本法案に基づき国が示すこととなる空き家管理指針においても、必要な記載をする方向で検討してまいります。

 これに基づき、空き家の所有者に対しては、雪下ろしを適切に実施するよう意識醸成を図ってまいります。

 また、所有者本人が空き家の雪下ろしを行うことが困難な場合は、本法案による空家等管理活用支援法人に委託することも考えられます。

 さらに、積雪により倒壊リスクのある特定空き家を除却する根本的な対策も重要であり、市町村が代執行した場合や所有者に市町村が補助した場合には、その費用に対し、国から補助を行ってまいります。

 最後に、過密した都市部の空き家が地震時に及ぼす影響と対策についてお尋ねがありました。

 過密した都市部において、空き家が適切に管理されず倒壊等のおそれがある状態となれば、地震時には、倒壊や道路閉塞、火災による延焼等によって地域に甚大な被害をもたらすおそれがあります。

 このため、地震時等に著しく危険な密集市街地を令和十二年度までにおおむね解消することを目標に、延焼抑制効果が期待される道路整備等に加え、老朽化した空き家の除却を重点的に支援してまいります。

 また、本法案においても、特定空き家の除却等を一層円滑化するための措置を盛り込んでおり、こうした措置の活用に向けて市町村を支援することで、密集市街地の空き家対策を着実に推進してまいります。(拍手)

    〔国務大臣谷公一君登壇〕

国務大臣(谷公一君) 小熊慎司議員より、大規模地震発生時の空き家による影響と取組の方向性についてお尋ねがありました。

 大規模地震が発生した場合には、過密した都市部に限らず、広い範囲にわたって甚大な影響を及ぼすおそれがあります。建物の全壊、焼失棟数について申し上げますと、最悪のケースでは、首都直下地震にあっては約六十一万棟、南海トラフ地震にあっては約二百三十八万六千棟に上る建物が全壊、焼失すると推計されております。

 これらが発生する要因ですが、地震の揺れにより耐震性の低い木造家屋等が多数倒壊すること、また、木造住宅密集市街地を中心に大規模な火災が発生すること等によるものです。

 このため、政府においては、全壊、焼失棟数を十年間でおおむね半減させることを目標として、住宅、建築物の耐震化や著しく危険な密集市街地の解消などの火災対策等に取り組んでいるところです。(拍手)

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議長(細田博之君) 赤木正幸君。

    〔赤木正幸君登壇〕

赤木正幸君 日本維新の会、赤木正幸です。

 私は、会派を代表して、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 土地や建物などの地域空間を管理するための法律の多くは、人口増大、都市拡大、経済拡大といった右肩上がりの時代に制定されました。土地や建物には価値がある、自治体には十分なリソースがある、関係者の所在は明確であり正常な判断能力を持っているという前提がありました。

 しかし、二十一世紀の日本社会は人口減少という未経験の時代であり、空き家法は新たな課題に対処するための特徴的な法律です。人口減少時代においては、土地や建物などの地域空間の価値に対して、権利者、コミュニティー、市場の関心が低下し、放置が急増しています。人口減少という条件に関心の低下が加わり、何もしないという不作為が発生し、老朽危険空き家のように負の外部性として地域空間に喫緊の課題を生じさせています。

 そもそも、空き家法が対象としている財産権は、その濫用は許されず、公共の福祉の観点から法令の制限内で利用できるにすぎません。人口増加時代における財産権は、過剰利用の抑制によって適正利用とすることが課題とされてきました。しかし、人口減少時代のベクトルは逆であり、過少利用の引上げによって適正利用を実現することが求められています。

 人口減少時代の地域空間管理法制について、政府の課題認識と解決方針をお示しください。

 空き家は私的財産であり、維持管理は所有者の責任で行うことが原則です。しかし、管理不全状態の空き家は、防災、防犯、景観などの悪影響を及ぼす負の外部性を発生させます。住宅は単なる私的財産にとどまらず都市を形作る要素でもあるため、空き家法実施の中心は、地域住民の生命、身体、財産を保全すべく管理不全状態の空き家に対処することにあり、行政代執行という抜けない伝家の宝刀を抜き、強制執行手段を規定しました。

 しかしながら、管理不全状態になる可能性が高いと考えられる居住目的のない空き家は、二〇三〇年には四百七十万戸程度まで増加すると見込まれており、昨年三月時点の国土交通省、総務省の調査では、所有者特定事務が行われた五十七万件のうち、四万七千件は所有者すら判明していません。

 抜けない伝家の宝刀を抜き強制執行手段を規定した空き家法の成果をどう評価し、改正空き家法に反映しているか、お答えください。

 改正空き家法は、十六か条の現行法が三十か条になる大改正です。政府は、二月一日に地方六団体に意見照会を行い、初めて改正法案を示されました。しかし、付記された閣議日は三月三日であり、実質一週間程度で意見を戻すことは現実的ではありません。そもそも自治体の意見を聞く気など最初からなかったのではないかとも思われます。

 また、空き家法実施に当たって不可欠なガイドラインは、今回は内閣提出法案ですので、施行日までに十分な時間を取って示すべきです。小規模市町村の空き家法担当者がこれを理解し適用できるようになるには、六か月の猶予期間では不十分ではないでしょうか。

 本改正法案の進め方に対する評価、施行日までの猶予期間を延長する可否についてお答えください。

 市区町村の六割前後が空き家担当部局の人員不足や専門知識の不足を課題としており、空き家が増加する今後は、更なるリソース不足が懸念されています。また、特定行政庁を持たない市町村には空き家法の知識が十分にあるとは言えない状況であります。都道府県のサポートも不可欠です。政府は、気軽に市町村長という文言を法律に規定しますが、行政現場風景に対する配慮が著しく欠けていると言わざるを得ません。

 市区町村が地域の特性に応じた空き家対策を行うために更なる支援やアウトソーシングの仕組みが不可欠であることに対して、政府が取るべき対応をお示しください。

 空き家法実施の中心となるのは市区町村であり、実施の仕組みは空き家条例と基本的に同じです。空き家法は全国一律の内容となっていますが、独自に空き家条例を制定して、空き家法を封印している自治体もあります。また、市区町村からは、空き家条例に多くの事例がある緊急安全措置としての即時執行の規定を求める声が強くありますが、本改正法案には反映されませんでした。

 市区町村が中心となって実施してきた空き家法や空き家条例について政府は結果をどう評価し、本改正法案に反映しているか、御回答ください。

 改正空き家法のKPIとして、空家等活用促進区域を施行後五年で百区域指定が設定されています。

 空家等活用促進区域によって市区町村の柔軟なまちづくりが促進できると考えてよいのでしょうか。また、市区町村と都道府県の関係が変わるのでしょうか。さらに、百区域の指定をどのように実現するのでしょうか。政府の見解をお示しください。

 私的財産である空き家への支援には、老朽空き家の除却のように、放置すれば行政が対応してくれるといったモラルハザードを起こさないように慎重に実施する必要があります。一方、勧告を受けた管理不全空き家は固定資産税の住宅用地特例が解除されますが、空き家の所有者は、指導を受けても改善できない方や経済的に困窮している方も少なくありません。

 このモラルハザードの防止と空き家所有者への支援という相反する課題に対して政府はどう対応すべきか、方策をお示しください。

 改正空き家法においては、市町村長が、一定の要件を満たすNPO等を空家等管理活用支援法人として指定することができます。同法人は、委託に基づき、定期的な空き家の状態確認や、空き家管理のために必要な事業や提案を行うことができるとされています。

 指定に当たっての市町村長の裁量はどの程度あると考えればよいか。相当の技術力、情報力を持つ支援法人が提案した場合に、市町村が受けざるを得なくなる不合理が発生しないか。また、市町村の単独予算でされるとすると、十分な予算措置を講ずる必要があるのではないか。それぞれ、政府の見解をお示しください。

 意思能力が欠ける方については、不利益処分という行政行為の受領能力はありません。このため、このような方が特定空き家等の所有者になっている場合には、危険な状態となっていても空き家法に基づく手続を進めることができず、地域社会に対する重大な危険が放置される結果となっています。

 意思能力に欠ける疑いが強いが成年後見人が選任されていない方が所有する特定空き家等について、略式代執行に準じた手続や市町村長申立てによる成年後見人選任ができる旨の規定等の検討を進めることについて、政府の見解をお示しください。

 次に、空き家内の残置動産については、それが滅失するまでは所有者の所有権は消滅しません。このため、代執行においても、所有権に配慮した対応を強いられています。処理するように繰り返し求めたにもかかわらず、これに応じない場合、代執行の着手時をもって、放置された動産の所有権を放棄されたとみなす規定が現場からは求められています。所有者の怠惰によって税金が使われるのは不合理ではないでしょうか。

 代執行対象となる特定空き家等に残された動産の所有権に関して空き家法の円滑な実施の観点からの検討を進めることについて、政府の見解をお示しください。

 借地上の特定空き家の所有者が判明していれば、土地所有者は同者に対して除却を求めることが可能です。それをせずに市町村が除却の代執行をした場合、土地所有者は当該土地を自由に利用できるようになります。これは、税金を用いて私的財産を利する結果となっています。土地所有者には受益が発生しているため、これを回収しないというのは不合理ではないでしょうか。

 借地上の特定空き家等が代執行により除却された場合において発生する土地の利用価値の増加を受益とみなして負担を求める仕組みに関して検討を進めることについて、政府の見解をお示しください。

 数次の相続によりそれぞれの持分割合が少なくなっている多数者共有の特定空き家等に関して、それぞれに指導、勧告、命令をして履行状態の確認をすることは、市町村長の行政負担を過酷なものとしています。把握した共有者の数という外形的要件をもって特別な措置を規定する必要もあるのではないでしょうか。

 多数者の共有となっている特定空き家等に関して特別な措置の検討について、政府の見解をお示しください。

 多数者共有事案における共有者は、概して高齢者が多い状況です。このため、特定空き家等に対する措置が進行する間に、その死亡によって新たな相続人が所有者となる場合があります。しかしながら、なされていた措置を当然に承継させる規定はありません。

 空き家法に基づく措置を受けた者が死亡した場合の特別な手続の検討について、政府の見解をお示しください。

 今回の改正法案には、空き家になった後の管理不全空き家への措置が導入されますが、空き家の発生そのものを抑制する施策が欠けています。所有者及び家族に空き家としないとの意識を醸成、共有し、相続前のいわゆる終活の一環として、空き家対策の重要性について意識の啓発を促進することが必要ではないでしょうか。

 また、空き家を早い段階で活用するため、所有者等の判断を迅速化する取組が必要です。周囲に悪影響を及ぼすに至っていない空き家についても施策対象に位置づけ、活用を支援する取組が必要ではないでしょうか。

 より早い段階での対策についても強化が必要となっている状況において、空き家の発生を抑制する方策について、政府の考えをお示しください。

 空き家の問題は人口減少時代に特有の問題であり、本改正法案が示唆するものは非常に大きいと考えています。財産権と公共の福祉との新たなせめぎ合いの中、過少利用の引上げによって財産の適正利用を実現するという未経験の課題に日本全体で取り組む必要があります。

 日本維新の会は、自立する地域を理念に掲げ、人口減少、少子高齢化社会を乗り越えるため、地方分権を推進する政策提言を続けていくことをお約束して、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 赤木正幸議員にお答えいたします。

 まず、地域空間管理法制についてお尋ねがありました。

 人口減少時代においては、空き家や所有者不明土地が増加し、建物や土地を放置する所有者の増加も見込まれます。このため、これらが周囲に悪影響を与えることのないよう、適切な管理や活用を促進していくことが急務であると認識しています。

 こうした課題を踏まえ、昨年の所有者不明土地法の改正に続き、今般、本法案において、空き家の利活用の拡大や管理の確保のために必要となる措置を講ずることとしています。

 次に、代執行を規定した空き家法への評価と本法案への反映についてお尋ねがありました。

 平成二十七年の空き家法施行以来、特定空き家に対する行政代執行は百四十件、所有者が不明の際に行う略式代執行は三百四十二件と、市町村における代執行の取組は着実に進んでいるものと評価しています。

 しかしながら、市町村からは、緊急に代執行をしなければならない場合の対応が難しく、また、略式代執行に要した費用の回収手続が煩雑との御意見があります。

 このため、本法案では、緊急代執行制度を創設するとともに、緊急代執行や略式代執行を行った場合の費用回収手続について簡素化を図ることとしております。

 次に、本法案提出までの自治体との調整及び施行期日の在り方についてお尋ねがありました。

 本法案の検討過程では、自治体からの御意見を十分かつ丁寧に伺ってきたものと認識しております。具体的には、空き家対策を検討した社会資本整備審議会の委員として、空き家対策に取り組む自治体の協議会の会長、副会長に参画いただき、この協議会からいただいた提言を出発点として、複数の自治体ヒアリングも行いながら議論を行いました。取りまとめ案へのパブリックコメントでも、多くの自治体から意見をいただいたところです。

 次に、施行期日につきましては、本法案は市町村に義務を課すものではないことから、実施体制の整った市町村から本法案の新たな措置を速やかに活用できるよう、施行準備に最低限要する期間を考慮して、公布から六か月以内の施行としています。一部自治体の理解が進むまで全体の施行を遅らせることは積極的な自治体の取組を妨げることにもなるため、施行期日の延期は考えておりません。

 次に、市町村への更なる支援やアウトソーシングについてお尋ねがありました。

 本法案においては、人員や専門知識が不足しがちな市町村を支援するため、空き家対策に経験や実績などのある民間法人を市町村が指定し、同法人が空き家所有者の探索や相談対応などを行う仕組みを設けることとしています。

 加えて、市町村が空き家の実態調査や所有者の探索などの業務をアウトソーシングする場合には、その費用に対し、国から補助を行ってまいります。

 次に、市町村が実施してきた空き家法や空き家条例についてお尋ねがありました。

 平成二十七年の空き家法施行以来、空家等対策計画を策定済みの市町村は約八割となり、市町村における空き家対策の実施体制はおおむね整ってきました。空き家法に基づく代執行による除却等も着実に進んできたものと評価しています。

 また、空き家条例は、地域のニーズに応じた対策の推進に大きく寄与するとともに、区域を絞った重点的な空き家対策など、先進的な取組も少なくないと認識しています。

 全国的に空き家の増加が続く中、空き家対策をより強化するため、先進的な自治体の取組が他の自治体でも可能になるよう、本法案により空き家法を充実させ、取組の底上げを図ることとしました。また、あわせて、条例に基づく緊急安全措置と同等以上の対応が所有者に対して可能な緊急代執行制度についても、本法案により創設することといたしました。

 空家等活用促進区域についてお尋ねがありました。

 市町村が活用促進区域を指定した場合、市町村はその区域における空き家の活用方針を示すこととなります。また、活用促進区域においては、都道府県等が許可権者である建築基準法上の規制等について、権限関係は変えないものの、市町村が都道府県等と協議の上で規制を合理化する場合の要件を設定できるようになります。

 このため、市町村は、空き家を活用したまちづくりをより柔軟に行うことが可能になると考えております。

 国土交通省としては、市町村の区域設定の際に参考となる事例を示すなどの支援を行いつつ、施行後五年間で百区域を設定するとの目標の実現に取り組んでまいります。

 次に、空き家の除却等をめぐる相反する課題についてお尋ねがありました。

 空き家は個人財産であることから、その除却も所有者自身の負担で行うことが原則です。

 一方、周囲に著しい悪影響を与える特定空き家などについては、その影響などに鑑みて、モラルハザードを招かないよう留意しつつ、市町村が除却費を支援する場合があり、国もその一部を支援することとしています。

 次に、支援法人の指定、支援法人から提案を受けた市町村の対応についてお尋ねがありました。

 支援法人の指定は、法の定めに従い、所有者への相談対応等の業務を適正かつ確実に行うことができるかという観点から、市町村が適切に判断し、行うことができるものです。

 支援法人は、市町村に対し、空家等対策計画の作成等を提案できますが、その提案を受け入れるかは、市町村が、予算の確保も含め、主体的に判断することになります。

 次に、意思能力に欠ける疑いが強い方が所有する空き家への対応についてお尋ねがありました。

 本法案では、本年四月に民法で創設された管理不全建物管理制度等の特例を設け、市町村長が財産管理人の選任を請求できるようにしています。

 これにより、意思能力に欠ける疑いが強い所有者に代わって空き家を管理する財産管理人が選任され、空き家法による手続を取らなくても、この管理人により適切な管理が図られるものと考えています。

 次に、代執行される特定空き家に残された動産の所有権についてお尋ねがありました。

 特定空き家ガイドラインにおいては、特定空き家の代執行に当たって、所有者に代執行令書等を交付する際、動産の運び出し等を併せて求めるとともに、残置された動産を含めて代執行する旨をあらかじめ知らせておく手続を市町村に紹介しています。

 これにより、動産の残置や所有者とのトラブルが減少するものと期待されますが、市町村による代執行がより円滑になるよう、市町村から実情や課題などを引き続きよくお伺いして、どのような負担軽減策の強化が可能か、所有権の在り方に限定せず、幅広く検討してまいります。

 次に、借地上の特定空き家が代執行により除却された場合に土地所有者に負担を求める仕組みについてお尋ねがありました。

 借地上の建物が滅失した場合においても、借地権自体が消滅するものではないことから、土地所有者は、建物が滅失した後の土地を自由使用できるようにはならないものと解されます。

 他方、空き家の管理責任は空き家所有者にあり、また、空き家所有者が除却費を負担せずに跡地を使用収益できることとなるのは公平の観点からも問題があることから、代執行費用は空き家所有者に求めるべきものと考えます。

 なお、国土交通省では、市町村による代執行に要した費用の回収が困難な場合に補助を行っており、令和五年度予算から補助率を引き上げて支援を行ってまいります。

 次に、多数の共有となっている特定空き家への措置の円滑化についてお尋ねがありました。

 共有者が多数にわたる特定空き家について、共有者全員を対象に空き家法の指導等を行う方法とは別の方法としては、多数共有者の場合の特別措置ではありませんが、民法に基づく管理不全建物管理人の制度を活用することで市町村の事務負担を軽減する方法が考えられます。

 本法案では、市町村長が管理不全建物管理人の選任を請求できることとしており、この管理人によって、全ての共有者に代わって、民法に基づき、特定空き家の適切な管理が図られるものと考えています。

 また、より簡便な方法となりますが、一部の共有者に適切な管理を求める助言を行い、その理解を得ることで、その共有者が特定空き家を管理することも一定程度期待でき、こうした取扱いをガイドラインに明記して、推奨しているところでございます。

 次に、空き家法に基づく措置を受けた者が死亡した場合の手続についてお尋ねがありました。

 特定空き家が多数の者による共有状態にある場合において、このうち一部の共有者が死亡したときは、他の共有者に対して行ってきた空き家法に基づく手続は影響を受けることはなく、死亡した共有者に対する手続に限り、相続人に対して改めて行う必要が生じます。

 すなわち、特定空き家に対する措置は、所有者の財産権を制約する側面もあるため、死亡した所有者に助言、指導、勧告、命令等の手続を行っている場合であっても、新たに所有者となった相続人に対し、改めて同様の手続を経る必要があるものと考えています。

 最後に、空き家の発生抑制や早期活用についてお尋ねがありました。

 空き家は相続を機に発生することが多いことから、所有者の生前から、住宅の処分や相続の方法などを家族間で相談いただき、相続時に空き家を発生させないことが重要です。

 このため、空き家を所有し続けることに伴うリスクなどを所有者や家族に周知し、空き家にしないとの意識醸成を図ってまいります。

 また、空き家の早期活用に向けても、所有者の判断を促すため、空家等管理活用支援法人から所有者等への働きかけや相談対応の充実などに取り組んでまいります。

 以上でございます。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       国務大臣    谷  公一君

 出席副大臣

       国土交通副大臣 豊田 俊郎君


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