衆議院

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第23号 令和5年4月27日(木曜日)

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令和五年四月二十七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十二号

  令和五年四月二十七日

    午後一時開議

 第一 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第三 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第五 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出)

 第六 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 永年在職の議員森山裕君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 日程第一 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第五 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出)

 日程第六 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第四十九番、和歌山県第一区選出議員、林佑美君。

    〔林佑美君起立、拍手〕

 第四百三十五番、山口県第四区選出議員、吉田真次君。

    〔吉田真次君起立、拍手〕

 第四百三十六番、千葉県第五区選出議員、英利アルフィヤ君。

    〔英利アルフィヤ君起立、拍手〕

 第四百三十七番、山口県第二区選出議員、岸信千世君。

    〔岸信千世君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 国会議員として在職二十五年に達せられました森山裕君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 表彰文を朗読いたします。

 議員森山裕君は国会議員として在職すること二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) この際、森山裕君から発言を求められております。これを許します。森山裕君。

    〔森山裕君登壇〕

森山裕君 この度、院議をもって永年在職議員表彰を賜り、心より厚く御礼を申し上げます。

 とりわけ、地方議員時代から数えて四十八年間、苦しいときも応援をしていただいた地元の皆さん、ほとんど家庭を顧みなかった私の議員活動を支えてくれた家族に感謝を伝えたいと思います。(拍手)

 戦局が厳しさを増す昭和二十年四月八日、鹿児島が大空襲を受けた日に、鹿児島県鹿屋市の防空ごうの中で生まれました。

 実家は農業と新聞販売店を営んでおり、小中学生の頃は、朝六時から眠い目をこすり、錦江湾に浮かぶ桜島に一礼をし、自転車で新聞配達をする毎日でした。

 中学校卒業後、つらい農業はやりたくないと思い、鹿児島市の会社に就職しました。その会社の理解があったおかげで、働きながら夜間課程に通うことができました。

 三十歳で鹿児島市議会議員に初当選をし、参議院議員として初めて国会議員のバッジをいただいたのは五十三歳。この選挙では、「地方分権・地域主権」を掲げました。二十三年間の地方議員生活で、日本を支えているのは地方であり、第一次産業であると実感をしたからです。

 平成二十七年、TPPが政府間交渉で大筋合意に達した二日後、農家の方々からは不安の声が上がる中で、農林水産大臣を拝命しました。大臣室の椅子に座り、目に浮かんだのは、郷里の先輩や後輩たちの姿でした。今日も汗水を流して田畑を耕し、家畜を育て、国を支えている。農業から逃げた私は、政治家としてその奮闘に応えなければならない。現場主義を自らに誓い、積極的に現場を回りながら、TPPの説明を尽くし、安全、安心な日本の農林水産業は強いこと、若者が誇りを持って働ける産業に育てることを訴えました。

 「政の大体は、文を興し、武を振るい、農を励ますの三つにあり」。教育、国の守り、そして農業を大事にすることが政治の根幹であるという、郷里の偉人、西郷南洲翁の言葉を胸に刻んでいます。食料安全保障の重要性が今ほど高まっている時代はなく、今後もしっかりと取り組んでまいります。

 これまでを振り返り、一つだけ誇れることがあるとすれば、政治活動に誠実に取り組んできたことです。多くの同僚に支えられ、自民党の国会対策委員長を歴代最長の千五百三十四日間務めさせていただきましたが、法案審議では、譲れない一線を守りつつ、野党の皆さんの意見にもできる限り耳を傾け、合意形成を図ってきたつもりです。(拍手)

 小中学校の頃、新聞配達中に、「がんばっているね」「学校に遅れないようにね」と優しく声をかけていただいた地域の皆さん。夜間課程に通わせてくださり、学ぶことができる幸せを教えてくださった勤務先の方々。農業を守り続ける郷里の仲間。政治家としての原点である市議会の先輩方。皆さんを思い出すたびに、「これからも、まっすぐに。前へ。」という気持ちに立ち返るのであります。

 今後も、国民と国会のため、引き続き誠実に邁進することをお誓い申し上げ、お礼の御挨拶といたします。

 この度は誠にありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 日程第一 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長橋本岳君。

    ―――――――――――――

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔橋本岳君登壇〕

橋本岳君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、デジタル社会の基盤であるマイナンバー及びマイナンバーカードの利用の推進に関する各種施策を講じ、もって国民の利便性の向上及び行政運営の効率化を図ることを目的とするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、個人番号等の利用の促進を図る行政事務の範囲を拡大することとしております。

 第二に、在外公館における個人番号カードの交付等に係る手続を整備することとしております。

 第三に、戸籍等の記載事項に氏名の振り仮名を追加することとしております。

 第四に、行政機関の長等からの預貯金口座情報等の提供による登録の特例を創設することとしております。

 第五に、医療保険の資格確認のために必要な書面の交付等の措置を講ずることとしております。

 本案は、去る四月十四日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、十八日、河野デジタル大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入りました。二十日には参考人から意見を聴取し、二十五日質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

議長(細田博之君) 日程第二、投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第三、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長黄川田仁志君。

    ―――――――――――――

 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔黄川田仁志君登壇〕

黄川田仁志君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、日・バーレーン投資協定は、令和四年六月二十三日に署名されたもので、我が国とバーレーンとの間の投資の促進及び保護に関する法的枠組みについて定めるものであります。

 次に、日・アゼルバイジャン租税条約は、令和四年十二月二十七日に、日・アルジェリア租税条約は、令和五年二月七日に、それぞれ署名されたもので、我が国と締約相手国との間の二重課税の除去及び脱税等の防止に関する法的枠組みについて定めるものであります。

 以上三件は、去る四月十八日外務委員会に付託され、翌十九日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。昨二十六日、質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、順次採決を行いました結果、三件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二につき採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

 次に、日程第三及び第四の両件を一括して採決いたします。

 両件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第五 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第五、孤独・孤立対策推進法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長大西英男君。

    ―――――――――――――

 孤独・孤立対策推進法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔大西英男君登壇〕

大西英男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進するためのものです。

 その主な内容は、

 第一に、孤独・孤立対策の基本理念を定めるものです。

 第二に、孤独・孤立対策重点計画の作成について定めるものです。

 第三に、内閣府に、孤独・孤立対策推進本部を設置するものです。

 本案は、去る四月十八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、翌十九日、小倉国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入りました。二十六日には参考人から意見を聴取し、同日質疑を終局しました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第六、脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長竹内譲君。

    ―――――――――――――

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔竹内譲君登壇〕

竹内譲君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、我が国における脱炭素社会の実現に向けて、非化石エネルギー源の利用の促進を図りつつ電気の安定供給を確保するため、電気の安定供給の確保等の観点から発電用原子炉の運転期間を定めるとともに、長期間運転する発電用原子炉施設に関する技術的な評価の実施及び長期施設管理計画の作成を義務づけるほか、使用済燃料再処理機構の業務への廃炉の推進に関する業務の追加、再生可能エネルギー発電事業計画の認定の取消しに伴う交付金の返還命令の創設その他の規律の強化等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る三月三十日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、四月五日に西村国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入りました。十四日参考人から意見を聴取し、十九日環境委員会及び原子力問題調査特別委員会との連合審査会を開会いたしました。さらに、二十六日には岸田内閣総理大臣に対する質疑を行うなど慎重に審査を重ね、同日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、自由民主党・無所属の会、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの四会派共同提案により、国民の原子力発電に対する信頼を確保し、その理解を得るために必要な取組を推進する国の責務について、国民の例示に、電力の大消費地である都市の住民を加えるとともに、国民の理解と協力を得るために必要な取組を推進するものとする等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について討論、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 討論の通告があります。順次これを許します。山崎誠君。

    〔山崎誠君登壇〕

山崎誠君 立憲民主党の山崎誠です。

 会派を代表して、政府提出、脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案について、反対の理由を申し述べます。(拍手)

 まず、法案の前提となる岸田政権のグリーントランスフォーメーションの基本方針についてです。

 エネルギーは、言うまでもなく、私たちの暮らし、産業、社会に不可欠なインフラであり、その安定供給は、国がその責任を担う重要分野です。まきから石炭、石油、ガスなど化石燃料へ、そして原子力へ。さらに、今、気候危機を受けて、再生可能エネルギーへとシフトしようとしています。人類の発展とともにエネルギー源も変化し、産業もエネルギーとともに育ってまいりました。私たちは、こうした歴史的な変化の中にエネルギー政策を位置づける必要があります。

 さらに、ウクライナ戦争を受けて、世界は、資源産出国に依存する化石燃料から、エネルギーの自給自足を可能にする再生可能エネルギーへのシフトを加速しようとしています。武力攻撃の目標となる原発は、その存在自体が国家安全保障上のリスクであるとの認識も広まっています。

 例えば、ドイツは、四月十五日に、残っていた三基の原発を停止し、脱原発を完了しました。それに合わせて、再生可能エネルギーの導入目標を引き上げ、二〇三〇年までに電力の八〇%を再生可能エネルギーにすることを決め、化石燃料からの脱却を加速化しています。

 世界が再生可能エネルギーへのシフトを加速しているのに、岸田政権は日本独自の路線を取ろうとしている、それが原発回帰を中心とした岸田GXです。衰退する日本産業の再生の道がこの選択肢なんでしょうか。この方向性で日本は発展できるのでしょうか。

 日本は地震大国であり、元々、原発の運転には適しておりません。日本の原発の耐震基準は、住宅メーカーの基準よりも低いと言われている。千ガルを超える地震が頻発する日本では、原発は常に過酷事故のリスクにさらされています。また、国家間の緊張が高まっていると言われる中で、武力攻撃の目標とされる原発を日本は動かし続けてよいのでしょうか。

 東京電力福島第一原発事故から十二年が過ぎましたが、いまだに原発事故は収束に至っていません。次々と問題が発覚している。一号機では、圧力容器を支える土台のコンクリートが広範囲にわたって溶け落ちてしまっていることが判明、地震に耐えられるか、再評価が必要な状況です。廃炉現場は大変厳しい現実を抱えています。原発回帰を決めるのであれば、この東京電力福島第一原発事故の収束にめどをつけること、そして全ての被災者の完全な生活再建を実現してからにしていただきたい。今も被災のただ中にある福島の皆さんには、到底、原発回帰は御納得いただけません。国民の理解は得られません。

 一方で、日本の再生可能エネルギー、これは大変豊かであります。日本は再生可能エネルギー大国です。環境省が昨年四月実施した我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査では、我が国には電力供給量の二倍の再エネポテンシャルがあるとの結果が報告されています。例えば、営農型太陽光発電、ソーラーシェアリングと蓄電池を組み合わせて導入することで、日本の電力消費の大きな部分を安定供給することが可能なのであります。太陽光のみならず、風力、水力、地熱、バイオマス、大きなポテンシャルを有するのが日本です。

 厳しいエネルギー事情にある今こそ、再生可能エネルギー導入に高い目標を掲げるべきです。中長期的には、再エネも原発もではなく、再エネです。日本が選ぶ道は、原発依存からの一日も早い脱却、再生可能エネルギーへのシフトしかありません。

 世界で大きく成長している再生可能エネルギーや蓄電技術などの分野を日本はGXでもっと後押しすべきです。原発の市場は再エネに比べて極めて小さく、限られています。安倍政権下、トップセールスで進められた原発輸出は、ことごとく失敗、実績はゼロです。せっかく日本がリードをしていた太陽光パネル、風力発電装置、蓄電池などの技術分野ですが、今市場を支配しているのは、中国や韓国の企業です。日本の最後のとりでである自動車もEV化に乗り遅れ、厳しい状況になりつつあります。自公政権の産業政策の失敗の結果ではないでしょうか。世界は日本の都合で動いてくれません。岸田政権の都合を世界は忖度はしてくれません。与党の皆さんは、こうした不都合な真実にしっかりと向き合っていただかなければなりません。

 GX脱炭素電源法について問題点を指摘します。

 東京電力福島第一原発事故を教訓に、安全最優先といいながら、運転期間の定めを利用政策だとして規制の対象から外そうとしています。運転停止期間も加えて六十年を超える運転を認めようとしています。どんなに厳格な検査を実施しても完全ではありません。そのことを考えれば、高経年化した原発を停止するのではなく運転するということは、安全の後退であると誰の目にも明らかです。東京電力福島第一原発事故を教訓に定められた原子力安全規制の柱である、重大事故対策の強化、バックフィット制度、四十年運転規制、そして規制と利用の厳格な分離について、これらに変更を迫る立法事実は存在せず、堅持しなければなりません。

 今回の原子力基本法改正では、原子力産業への支援が国の責務、基本的施策として詳細に規定され、原発依存を固定化するものとなっています。どんな支援を予定しているかも定かではありません。経済合理性を失った原発を動かし続けるために国がお金を出すということ、税金を使うということでしょうか。

 こうした国の支援は、再生可能エネルギーの導入にこそ注がれるべきです。著しくバランスを欠く原発優遇は、再エネシフトの遅れをもたらします。大きな問題です。長期にわたる対応が必要となる原発廃炉や使用済核燃料の廃棄問題に関する国の関与と協力を明確にすることは重要ですが、原発延命のための原発優遇は全く次元の異なる問題です。

 GXの推進を、低迷する日本経済の復活のチャンスにしなければなりません。GX、エネルギー政策については、国民的議論が必須です。政府が進めている経済産業省主導のGXは、この点が決定的に欠けています。経産省の産業政策はことごとく失敗に終わっている。国は、過去の反省を踏まえて、大企業だけではなくて、広く、有識者、中小企業、働く皆さんの声、国民の声を集めて真のGXを実現するよう強く求めて、反対の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史です。

 私は、日本維新の会を代表し、脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等一部改正法案、いわゆるGX電源法案について、賛成の立場から討論します。(拍手)

 まず冒頭、我が党が主導した政府提出法案の修正協議について、共に知恵を絞ってくださった国民民主党、有志の会、そして修正協議に対応してくださった、応じてくださった政府・与党各位に、敬意と感謝を申し上げます。

 私たち日本維新の会は、十年前の結党以来、自民党に対する真の挑戦者でありたいと願ってきました。この十年にわたる私たち日本維新の会の国会活動を通じて、五五年体制から続く古い野党の在り方、つまり、政府・与党案に対する対案を出さずに反対のための反対に終始する野党の在り方は、過去のものとなりました。国会で正々堂々と対案を示し、国民の前で政策競争を展開する、これこそが令和の時代にふさわしい新しい国会の姿であり、本来のあるべき国会であると考えますが、いかがでしょうか。

 我々日本維新の会は、三月九日に提言書を経済産業大臣に手交し、三月二十八日には対案として原発責任明確化法案、電力市場自由化促進法案を国会に提出した上で、GX推進法案や本法案の審議に臨んできました。

 政府・与党のプランAと私たち日本維新の会が提案するプランBとは一見大差がないように見えるかもしれませんが、しかし、その自民と維新の違いこそが国の盛衰を決していく分水嶺なのであると改めて宣言をしておきたいと存じます。

 例えば、今回私たちが提案し、昨日の経済産業委員会で可決いただいた修正点の第一は、原子力基本法に新たに設けられた、原発に対する国民の理解を得るという国の責務規定において、理解を得るべき国民の例示に、電力の大消費地である都市の住民を加えるというものでありました。

 令和三年十月に改定されたエネルギー基本計画には「理解と協力」という文字が何度も出てきますが、その大宗は、原子力施設が立地する地域の関係者の理解と協力であります。同様に、今回の政府提出法案の原案に例示として規定されていたのも、原子力施設が立地する地域の住民の理解だけでありました。

 これを見ておかしいと思わない与党議員はどうかしています。そうでしょう。ちょっと、拍手をお願いします。いや、そうでしょう。だって、原発立地地域の関係者は、原子力について十分理解していますよ。理解しているから、原発等の原子力施設が立地できてきたし、再稼働も進展しているし、そして、ALPS処理水の海洋放出の準備も進んでいるのであります。

 理解していないのは、原発立地地域の住民ではなくて、原子力施設の誘致を検討したこともない、高レベル放射性廃棄物の最終処分場など自分たちには関係ないという認識を持っている大都市の住民、電力の大消費地である都市の住民ではないでしょうか。ALPS処理水の海洋放出に当たって風評被害が懸念されているのも、福島の住民の皆様の理解が足りないからではなくて、海産物の大消費地である都市に住む消費者の理解、消費者の理解が及んでいないからであります。

 そうした、人間として当たり前の認識に基づいて、人間としてだよ、人間として当たり前の認識に基づいて、日本維新の会の共同代表でもあった石原慎太郎当時の東京都知事や松井一郎当時の大阪府知事は、率先して東日本大震災の瓦れきを受け入れ、ALPS処理水の海洋放出についても、これは反対もすごい、だって大阪市役所は反対派に取り囲まれたんだから、それでもあえて大阪湾への放出、ALPS処理水の大阪湾への放出を提案してきたのであります。(発言する者あり)ちょっと、誰。本当に失礼だよね。まあ、やめておきましょう。

 昨日の経済産業委員会で可決いただいた修正点の第二は、原子力規制委員会の審査の効率化や審査体制の充実など、原子力安全規制の在り方について政府としてしっかりテーブルに上げて検討すべきことを条文に明記するというものでありました。

 東京電力福島第一原発事故というシビアアクシデントを受けて、当時の原子力安全・保安院を解体し、新設された原子力規制委員会でありますが、その任務、組織、ガバナンスの在り方について不断の見直しが必要であることは言うまでもありません。

 ところが、他党の委員には、どの辺、その辺だよね、他党の委員には、法案の審議時間、質問時間の大半を法案の中身ではなく手続論に充てる姿勢も目立ちました。つまり、今回の提出法案、なかんずく原子炉等規制法改正案の企画立案に当たって、推進側の経産省が規制側の原子力規制委員会にアプローチしたじゃないか、けしからぬと批判を続けたのであります、彼らはね。

 しかし、令和二年七月に運転期間延長認可の審査に係る見解を最初にまとめたのは規制委員会であったし、それを受けて経産省が電気事業法の改正を立案し、その電気事業法の改正に伴って、いわば跳ね返りで原子炉等規制法の改正が必要になるから、いわゆるハネ改正、ハネ改正といいますね、そのハネ改正について経産省が規制委員会にアプローチし説明したというのが事の経緯だとすれば、それの何が問題だというのでありましょうか。全く理解できません。

 経済産業委員会の理事会でも、経産省と原子力規制庁との面談記録の存否に議論が集中したと聞き及んでいますが、そうした筋違いの追及、そうした筋違いの追及が官僚の諸君を萎縮させ、本来残すべき記録が行政文書として残らないという悪循環が発生しています。

 そもそも、原子力施設に係る安全規制の在り方を決定する責任は内閣と国会にあります。原子力規制委員会を傘下に収める環境大臣が原子炉等規制法の閣議請議大臣であり、環境大臣と経済産業大臣とが原子力規制の在り方について協議をするのは、仕事をする上で不可欠なことであって、何の問題もありません。逆に、逆にですよ、ちょっと聞いてよ、逆に、原子力規制の在り方を原子力規制委員会が内閣から独立して改変し出したら、その民主的統制はどう担保されるのでありましょうか。

 以上、政府・与党のGX電源法案に対する私たちの修正点とその趣旨、考え方を、私たちの修正案に反対票を投じた政党と委員各位にも御理解いただけるように丁寧に説明をさせていただきました。

 最後に、念のために明確に申し上げておきますが、原発政策、エネルギー政策に係る私たち日本維新の会の自民党政権に対するチャレンジは、本法案の可決、成立をもって終わるわけではありません。むしろ、スタートであります。検討条項に明記した原子力安全規制の在り方に関する検討を含め、原発政策、エネルギー政策の不断の検証と見直しは、政府だけに委ねるのではなく、私たちの責任、そして国会の責任において決定していく所存であります。

 私たち日本維新の会は、二〇一五年三月に原発再稼働責任法案を国会に上程して以来一貫して、一貫してだよ、一貫して、原発を再稼働させるのであれば、国の責任、電力事業者の責任、そして原発立地地域のみならず電力大消費地の責任を明確にすることが不可欠であり、仮にそれができないのであれば、原発利用はフェードアウトしていかざるを得ないと指摘をしてきたわけであります。こうした考え方は現在も変わっておらず、これからも日本維新の会の原発政策、そして日本維新の会のプランBの完全実施に向けて努力を続けていくことを国民の皆様にお誓いし、賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、原子力基本法、電気事業法、原子炉等規制法、再処理法、再エネ特措法を改定する、いわゆる原発推進五法案に断固反対の討論を行います。(拍手)

 東京電力福島第一原発事故から十二年、いまだ事故は終わっていません。被害が深刻化しているにもかかわらず、原発回帰へと大転換する本法案を僅か一か月足らずの審議で採決するのですか。あの事故を忘れたのかと、国民の怒りの声が上がるのは当然であります。

 反対理由の第一は、脱炭素を口実に原発を最大限活用し、その利用を将来にわたり固定化、永続化するものだからです。

 原子力基本法に原発利用を国の責務と明記し、安定的な事業環境整備を行うとする本法案は、財界や原子力産業界の要求を丸のみしたもので、まさに原子力産業救済法にほかなりません。

 しかも、核のごみ処分は見通しがなく、核燃料サイクルは既に完全に破綻しています。安全神話に陥り、福島事故を防げなかったことを真摯に反省といいながら、全く逆行するものであります。

 第二は、福島第一原発事故の反省と教訓から生まれた原発運転期間の原則、推進と規制の分離を踏みにじるものだからです。

 原子力規制委員会は、原発の停止期間を運転期間から除外せよとの原子力産業界の要求を、時計の針は止めないとはねつけてきました。ところが、運転期間の規定を推進側の経済産業省が所管する電気事業法に移す本法案は、経産大臣の延長認可によって、最長で東日本大震災から十二年間の時計の針を止めるものです。

 延長は何度でも可能であり、現行の原子炉等規制法にあった一年前までという申請期限もなくなりました。その審査には科学的、技術的要素はなく、形式的な事項を確認するだけの名ばかり。しかも、非公開で全くのブラックボックスです。

 現行法は原則四十年で廃炉なのに、老朽原発の七十年超の運転さえ可能とする仕組みになることを、審議の中で政府は認めました。

 こんな重大な法案を、推進側の資源エネルギー庁と規制側の原子力規制庁が密談で進めていたことは言語道断です。

 原子炉圧力容器の設計寿命は四十年。原発が停止している間も経年劣化は進み、安全上のリスクは増大します。政府は規制委員会が厳格に審査するといいますが、運転開始から六十年以降の劣化状況の審査方針すらまだ決まっていません。

 規制委員会の長期施設管理計画認可制度も、電力会社の申請書類をチェックするだけで、現地で設備、機器の状態確認を行うことすら要件としておらず、老朽原発の安全を担保するものになり得ません。

 第三は、電源のあらゆる選択肢を口実に原発を推進することが、再生可能エネルギーの導入を一層阻害するものになるからです。

 再エネこそ、エネルギーの安定供給と自給率向上に大きな力を発揮します。化石燃料の価格高騰が電気料金の大幅な引上げを招いているときに、燃料費ゼロの再エネの出力を抑制する、こんな愚策はありません。

 破局的な気候危機回避には、もはや一刻の猶予もありません。世界で広がる再エネ一〇〇%、RE一〇〇の取組に、経済界と産業界の期待も需要も高まっています。我が国は、再エネ潜在量が電力量の七倍も存在する、再エネ資源大国です。

 今こそ、地産地消型で地域経済活性化に資する再エネ最優先で、多くの国民が願う原発ゼロに転換することを強く求め、反対討論といたします。(拍手)

議長(細田博之君) 浅野哲君。

    〔浅野哲君登壇〕

浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。

 ただいま議題となりましたGX脱炭素電源法案について、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 近年のエネルギーに関する地政学上の変化やロシアのウクライナ侵攻、カーボンニュートラルをめぐる世界の動向など、我が国のエネルギーを取り巻く環境は大きく変化いたしました。欧州を始めとする世界各国が脱ロシア依存やエネルギー安全保障の確保を進める中、我が国でもエネルギー価格が上昇しており、我が国の資源外交の強化や国産エネルギーの増強は、政治が解決すべき喫緊の課題となっています。

 また、エネルギーの安定供給なくして、カーボンニュートラル社会の実現はありません。国のエネルギー、電力政策においても、いま一度、エネルギー安定供給の確保を最重要事項に位置づけた上で、環境と共生する再エネ電源の最大限導入や次世代革新炉を含む原子力発電の利活用、レジリエントな送配電網及び需給調整ネットワークの整備等を進め、カーボンニュートラル時代に対応した、現実的なエネルギー供給体制の構築を急ぐことが重要です。

 本法案は、再生可能エネルギーの最大限導入に向けた環境整備や事業規律の確保を図るとともに、これまで曖昧なままとなっていた原子力発電の政策上の位置づけを明確化し、利用規制の現代化とバックエンド政策の充実を図る内容であり、国民民主党が目指す現実的なエネルギー供給体制の構築に資するものとして賛成することといたしました。

 しかし、我が国のエネルギー供給体制には、まだ対処すべき課題が多くあります。

 例えば、再生可能エネルギーの中核を担う太陽光パネルは世界シェアの七割を中国が保有し、我が国が輸入しているパネルの八割は中国で製造されたものであり、経済安全保障上の観点から対応が必要です。そのため、志を同じくする国々との強固で強靱なサプライチェーン構築、我が国が資源、技術共に強みを持つペロブスカイト太陽電池やレアアースフリー電池の社会実装に向けた研究開発を果敢に進めるべきと考えます。

 また、五月十九日からはG7広島サミットが開催されます。我が国が保有している原子力や高効率火力に関するサプライチェーンは、欧州やグローバルサウス諸国のエネルギー安全保障やGXを達成するための政策上の課題解決に貢献できるものです。三月の本会議でも申し上げましたが、岸田総理には、G7サミットの中で、我が国のエネルギー産業界の強みをPRし、今後の国際連携や当該技術、製品を通じた国際貢献の幅を更に広げられるよう、最大限の努力をしていただくことを重ねて求めます。

 最後に、本法案審査の中で改めて明らかとなったのは、今回、電気事業法に新設した原子力発電所の運転期間の上限規定について、科学的、技術的根拠ではなく、政治的判断に基づいている点です。

 将来、原子力発電所の運転期間について再び議論が行われることがあっても、客観的な根拠がないのでは議論が深まりません。現代の発電事業者の予見性を確保するとともに、後世の議員が的確な判断ができるよう、経済産業省には、運転期間の上限規制に関する科学的、技術的根拠を見出し、運転期間の在り方についてより深みのある規制としていくことを求めて、私の討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第七 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第七、生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長三ッ林裕巳君。

    ―――――――――――――

 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔三ッ林裕巳君登壇〕

三ッ林裕巳君 ただいま議題となりました生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、生活衛生等関係行政の機能強化を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、食品衛生基準行政に関する事務を厚生労働省から消費者庁に移管すること、

 第二に、水道整備、管理行政のうち水質又は衛生に関する事務を厚生労働省から環境省に、それ以外の事務を厚生労働省から国土交通省にそれぞれ移管すること

等であります。

 本案は、去る四月十八日本委員会に付託され、翌十九日加藤厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、二十一日から質疑に入りました。昨二十六日国土交通委員会との連合審査会を開会し、同日質疑を終局いたしました。次いで、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣河野太郎君。

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 国民がデジタルを活用した、より良いサービスを享受できる社会を実現するためには、経済社会の仕組みをデジタル時代に合ったものに作り直していく必要があります。

 このため、デジタル臨時行政調査会を立ち上げ、二〇二四年六月までにアナログ規制を一掃することとしております。

 この法律案は、デジタル臨時行政調査会におけるこれまでの検討等を踏まえ、デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するために必要な法律上の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、情報通信技術の効果的な活用のための規制の見直しを、デジタル社会の形成に関する施策の策定に係る基本方針として位置付けることとしております。あわせて、行政機関等における情報通信技術の効果的な活用や、いわゆるテクノロジーマップなどの規制の見直しに資する情報の公表及び活用について定めることとしております。

 第二に、フロッピーディスク等の記録媒体を提出することとされている申請等の行政手続について、オンラインにより行うことができるようにすることとしております。

 第三に、特定の場所における書面の掲示を求めている、いわゆる書面掲示規制について、その内容をインターネットを利用して公衆の閲覧に供しなければならないこととする等の措置を講じ、いつでもどこでも必要な情報を確認できるようにすることで、利便性や安心、安全の向上を図ることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上、この法律案の趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。緑川貴士君。

    〔緑川貴士君登壇〕

緑川貴士君 秋田県に住んでいる、立憲民主党の緑川貴士です。

 ただいま議題となりました法律案につきまして、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 政府は、目視による確認や対面手続、書面の掲示、人の常駐などをアナログ規制と位置づけて、法律や政省令、通達など、合わせて九千六百六十九項目の国レベルの規制を見直し、法改正が必要なものを本改正案に盛り込んでいます。利用者の負担軽減や利便性の向上、業務の効率化につなげるための改革であるとしていますが、点検、検査などのデジタル化に関しては、省力化を急ぐと安全性を損ねる懸念もあり、効率化と安全性をどう両立させるかが課題です。

 河川やダムの点検などでは、人が現地に赴いて目視で確認することを義務づけている規制を改め、ドローンや水中ロボットなどを活用できるようになります。人手が不足している中、最新技術を使えばより精緻な点検が可能ですが、技術を過信し、危険を見逃したり、安全が損なわれたりすることがあってはなりません。デジタル化によって、現場の技術者の経験に培われた勘を軽視することもあってはならないと考えます。

 デジタル化を行った場合の安全性の確保について、どのような担保を講じていますか。特に、重要インフラについては人による監視を継続して行うことを検討するべきであると考えますが、河野大臣の御見解を伺います。

 今年一月、国土交通省近畿地方整備局管内の河川監視カメラが不正アクセスの被害を受けて、カメラの運用が停止される事案が発生しました。不正アクセスの原因は、初期設定のパスワードが変更されていなかったことでした。

 カメラが勝手に操作されれば、豪雨時の情報提供に支障が生じるおそれがあったことが指摘されています。同様の事案の発生を未然に防いでいくために、政府として不正アクセスの防止にどのように取り組んでいるんでしょうか。斉藤鉄夫国土交通大臣にお尋ねします。

 今回のアナログ規制の見直し対象には、国が自治体に義務づける、保育所の運営状況をチェックする実地検査も含まれます。この実地検査は、職員の人手不足への配慮などを理由に今年度から緩和され、一定の要件の下、リモートなどでの検査が可能になりました。

 昨今、バスへの園児の置き去りや保育士による虐待が相次いで表面化している中、行政の、施設に対する指導監督の責任と検査の重要性は増しています。保育所内の雰囲気や音、におい、保育士の表情や子供への接し方など、現場でなければ分からないことも多く、検査の緩和の流れに大きな疑問の声が上がっています。市民の意見公募、パブリックコメントでも、検査の緩和に肯定的な意見は一件もありません。

 河野大臣、子供の安全、当事者の声を踏まえ、アナログ規制の見直しの対象から外すべきではないでしょうか。

 そして、小倉將信こども政策担当大臣にも伺いますが、こども家庭庁が今月発足し、こどもまんなか社会の実現を目指そうというのに、検査の緩和という大人の都合が優先され、子供を守る視点が欠けており、子供政策の推進に逆行していませんか。実地検査の実施率の更なる低下を助長するような緩和ではなく、自治体が管内の施設の実地検査を行える体制を取れるように支援することこそ必要ではないでしょうか。真摯な御答弁を求めます。

 本改正案では、デジタル規制改革を国の基本方針として定め、新しい法律がこれからのデジタル社会に適合しているか、アナログを押しつけるような法律になっていないかを常時チェックする機能を持つ、いわゆるデジタル法制局に関連する規定を措置することとしています。

 河野大臣、規制によりデジタル技術の効果的な活用が妨げられてきた事例として、どのようなものがありますか。また、デジタル技術の活用が妨げられないようにするための措置として、具体的にどのようなことを想定しているんでしょうか。答弁を求めます。

 他方、新規に立法するものについては、デジタル原則に沿っているかをチェックするデジタル法制審査を既に昨年の臨時国会から実施しています。

 デジタル法制審査の成果は何でしょうか。改正案で実現するデジタル法制局によってどう変わるんでしょうか。また、デジタル法制局に加え、政策立案に当たる各省庁の原局原課レベルにもデジタル改革担当を置くことも検討するべきであると考えますが、河野大臣の御所見を伺います。

 書面掲示規制について、本改正案は、インターネットによる閲覧などを可能とし、いつでもどこでも必要な情報を確認できるようにすることで、利便性の向上を図ろうとしています。従来の書面による掲示も維持した上でインターネットによる閲覧なども可能にするよう義務づけることは、利用者の保護やデジタルデバイドへの配慮などへの観点から評価できますが、事業者などにとって過度な負担になることも懸念されます。

 負担がある場合、政府は、その軽減策としてどのようなことを考えていますか。また、デジタル対応が免除される事業者の範囲やデジタル化が困難な事業者などへの支援について、河野大臣、どのようにお考えでしょうか。

 二〇〇〇年十一月に成立した情報通信ネットワーク社会形成基本法、いわゆるIT基本法以来、二十年以上が経過しましたが、日本の行政のデジタル化はかけ声倒れに終わってきたと思います。

 実際、コロナ対策でも、一人十万円の給付や雇用調整助成金のオンライン申請でのトラブル、一斉休校時にはほとんどの公立学校がオンラインの授業に対応できていなかったこと、各種の給付金の支給や感染者の数の集計に手作業が多く残されたことによる混乱など、様々なデジタル化の遅れが露呈しました。

 河野大臣、この二十年来のデジタル化の遅れについて、どこに原因があったとお考えでしょうか。また、行政のデジタル化の課題はどこにあると認識されていますか。デジタル改革の司令塔としてデジタル庁が発足して、一年半余りがたちました。デジタル庁の歩みについて、どう評価されているでしょうか。明快な御答弁を求めます。

 デジタル、規制、行政のあらゆる改革の共通指針である構造改革のためのデジタル原則の一つとして、硬直的な事前規制ではなく、リスクベースで性能などを規定し、データに基づいて改善し、機動的な政策形成を図るというアジャイルガバナンスの原則を掲げています。

 他方、自分たちは間違えてはいけないということが重視され、いわゆる無謬性の追求がコロナのような緊急事態での対応の遅れにもつながった側面があります。

 リスクを取って変えたところで、失敗したら自分の評価が下がるという思いもあり、重要な決断が先延ばしにされ、前例踏襲主義から抜け出すことができない。こうした状況をどのように変えていくお考えでしょうか。河野大臣の御見解を伺います。

 行政のデジタル化を進めるに当たって、専門人材の不足が問題です。

 特に、大都市部と地方とではデジタルの基盤や人材の格差が大きく、IT技術者の六割が東京圏に集中していると言われています。地方ほど、ITに精通した人材の確保が難しいのが実情です。また、デジタルの進展によって、結局、東京の企業が地方の業務を引き受けることになれば、地方の利益や雇用を吸い上げる構図に陥りかねないとの指摘もあります。

 働き手の職業能力開発、中小企業による職業訓練、女性や退職後のシニア世代のセカンドキャリアへの支援など、社会人の学び直しへの投資を加速させ、デジタル人材の裾野を広げることが重要です。自治体を含めたデジタル人材の育成、確保への支援について、松本剛明総務大臣に伺います。

 来庁者の窓口手続を職員が端末で支援する書かない窓口の取組も始まるなど、自治体のオンライン化、デジタル化も加速する中、あらゆる行政の現場に対してDXの浸透を後押ししてほしいと考えますが、地方公共団体の条例にも、対面での手続や書面の掲示を求める規制が残っています。

 政府は、地方公共団体に対して、アナログ規制の点検、見直しに取り組む際のマニュアルを公表していますが、地方自治の本旨を尊重しつつ、地方公共団体におけるデジタル改革をどのように推進していくのかについて、松本総務大臣にお尋ねいたします。

 生成AIが脚光を浴び、新たな産業革命にも匹敵する技術であると注目されています。

 政府は、チャットGPTを含む生成AIの活用について検討するため、省庁横断の戦略チームを立ち上げました。業務効率化に向けて利用を検討する省庁がある一方、情報の取扱いなどをめぐる課題も指摘されていますが、今後どのような方向で検討していくんでしょうか。

 また、岸田総理は、チャットGPTを含む生成AIについて、来月十九日に開幕するG7広島サミットの議題として、国際ルール形成を主導することを目指しています。生成AIには、著作権の侵害や、個人、企業情報の漏えい、人権侵害などのリスクがあることも懸念されています。ヨーロッパでは規制の動きが出ています。AIを使いながらも健全に社会を発展させていくためには、一定のルール作りが不可避です。政府としてどのようなルール作りを目指していくのか、松本総務大臣に伺います。

 デジタル化は、そのメリットの反面、国民の統制強化の手段になり得ることにも留意するべきであり、いわゆるデジタル専制主義になりかねない側面もあります。

 そうした中、台湾では、行政の情報をオンラインで市民と共有し、その提案を政策に反映させています。台湾のデジタル相に当たるオードリー・タン氏は、デジタルは民主や自由を促進するためのものだと語っています。日本でも、デジタルを民主主義の深化に役立て、人間本位の社会づくりに生かすための理念と制度が求められています。

 インターネットなどテクノロジーを使って法律や政策づくりに民衆の力を取り込んで、それを生かすクラウドローや、多様な市民の意見を集めて議論を集約し、政策に結びつけていくための参加型民主主義プロジェクトのためのオンラインツールであるデシディム、あるいは、チェンジオーグといったオンラインの署名キャンペーンを始め、デジタルを活用した民意形成の新しい仕組みが生まれています。

 国民が行政や立法の意思決定プロセスに直接参加できるシビックテックによって課題解決を進めていくことについて、河野大臣の御所見を伺います。

 個人情報を国家統制や大企業の利益のために使う方向ではなく、人権をどう守るかも課題です。

 EUは、デジタル時代の権利と原則に関する宣言を出して、個人が自分のデータの使われ方をコントロールできる権利、意思決定がAIに影響されないことの保障などを求めています。

 デジタル臨調では、有識者委員からも、テクノロジーや企業が個人や国家を支配する、国家がテクノロジーや企業を使って個人を支配するのではなく、個人がテクノロジーを通じて価値を享受したり、価値の実現のために国家や企業に能動的に働きかけができるようにすることを目指すデジタル改革を社会に発信するべきであり、デジタル社会の主人公としての個人の在り方が強調されています。

 EUのデジタル時代の権利と原則に関する宣言についての河野大臣の御認識と、デジタル社会における人格権やデジタル手続による適正な処遇を受ける権利、データ基本権などをデジタル権利宣言としてまとめることも考えられるという有識者の指摘に対して御見解はいかがでしょうか。

 立憲民主党は、デジタルを生かして様々な社会課題を解決し、もっといい未来をつくっていく決意であることを申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) まず、デジタル化に際しての安全確保についてのお尋ねがありました。

 アナログ規制の見直しは、御指摘の重要インフラに関する点検も含め、デジタル技術が活用可能になるよう、現行法令を技術中立的にしていくものですが、見直しに際しては、人が点検などを行う場合と同等の安全性が確保できるよう、必要に応じて技術検証を実施することとしています。

 今後、規制所管官庁を中心に必要な技術検証を進めることに加え、デジタル庁としても、規制の見直しに活用可能な技術を整理したテクノロジーマップを整備、更新することで、十分な安全性の確保に努めてまいります。

 次に、保育所の監査についてのお尋ねがありました。

 アナログ規制の見直しに当たっては、デジタル技術を活用した際にも、安全性や実効性が規制の趣旨、目的などに照らして必要な水準を確保できていることが前提と考えています。

 こうした考えの下、先般の児童福祉法施行令の改正において、実地監査を原則とした上で、効果的かつ効率的な監査が行えるよう、一定の要件を満たした場合には実地によらない方法での指導監査を可能とするとともに、不適切事案が発生した自治体では全ての保育所に実地監査を行うことや、監査の実施率向上のために定期的な実施率の把握、公表などを行うこととされました。

 これにより、限られた人数の職員が効率的、効果的に検査を行いつつ、施設の適切な運営と保育等の質の確保を図ることができるものと考えております。

 次に、デジタル技術の効果的活用についてのお尋ねがありました。

 例えば、目視による施設や設備の点検は、まさに規制によりデジタル技術の効果的な活用が妨げられてきた事例です。

 デジタル技術の効果的な活用が妨げられないようにするために、昨年末に、アナログ規制約一万条項に関する見直しの工程表を取りまとめたところです。

 この工程表に基づき、個別の規制の見直しやテクノロジーマップの整備などを着実に進めてまいります。

 次に、デジタル法制審査についてのお尋ねがありました。

 昨年の臨時国会提出法案からデジタル法制審査を試行実施しており、七項目の代表的なアナログ規制に関係し得るとされた条項については、デジタル技術が活用できる旨を明確化する通知、通達の整備時期等と併せて、点検結果を公表しています。この取組により、各法案のデジタル原則適合性を確認しているところです。

 本法案により、デジタル社会の形成に関する基本方針としてデジタル法制審査に関連する取組を位置づけ、自律的、継続的な規制の見直しを推進していくこととなります。

 今後とも、各府省庁の法令審査担当等と連携しながら、デジタル法制審査を推進してまいります。

 次に、書面掲示規制の見直しについてのお尋ねがありました。

 事業者にインターネットで必要な情報を公表いただくに当たっては、施行に向けて十分な周知を行うほか、各規制所管省庁において運用に関するガイドラインを整備するなど、事業者の混乱が生じないよう、所管省庁と連携して対応してまいります。

 また、対応困難な一部の零細事業者については適用を除外することとしており、その具体的な基準については、各規制の趣旨や対象業界の実情を踏まえて、各規制所管省庁の省令において規定することとしております。

 こうした零細事業者については、実情に応じて柔軟に対応しつつ、将来に向けて段階的にでもデジタル化の取組を促していくこととされており、事業者のデジタル化の各種支援措置についても情報提供等が適切に行われるよう、関係省庁と連携し対応してまいります。

 次に、デジタル化の遅れと課題、デジタル庁の歩みについてのお尋ねがありました。

 デジタル化の課題としては、例えば、府省庁横断的な視点が十分ではなく、国や地方がそれぞれ情報システムを構築していたなど、各府省庁や地方が個別にデジタル化を進めてきたことが挙げられます。

 この課題が、新型コロナ感染症への対応において明らかになったと考えております。

 デジタル庁の歩みとしては、二〇二一年九月にデジタル庁が設立されてからこれまでの間に、新型コロナワクチン接種証明アプリの提供、アナログ規制の撤廃に向けた法令約一万条項の見直し方針の確定、マイナンバーカードの申請数が約九千六百万件を超え、国民の大多数に行き渡るといった成果を着実に上げてきていると考えております。

 次に、アジャイルガバナンスについてのお尋ねがありました。

 社会の複雑化、環境の変化が加速している中、政府がその時々の課題に適切に対応するためには、無謬性や安易な前例踏襲に陥ることなく、データやエビデンスに基づいて機動的、柔軟に政策を見直し、未知の課題にはトライ・アンド・エラーで果敢に取り組むというアジャイル型の対応が必要です。

 このため、デジタル臨時行政調査会においても、アジャイルガバナンス原則をデジタル原則の一つに位置づけ、デジタル時代にふさわしい、機動的で柔軟な政策の立案や見直しが可能となるよう、行政事業レビューや政策評価制度の見直しなどに取り組んでいます。

 このようなアジャイルガバナンスの考えが定着していくよう、引き続き、関係大臣とも連携しつつ取り組んでまいります。

 次に、デジタル技術を活用した民意形成の仕組みについてのお尋ねがありました。

 新しい政策や行政サービスをつくるに当たっては、国民の声をよく聞き、常に改善していくことが重要であり、その手段としてデジタル技術は極めて有用です。

 一部の地方公共団体においては、シビックテックと連携した取組を進めていることも承知しています。

 デジタル庁においても、アイデアボックスによる意見募集と議論の場の提供、共創プラットフォームによる自治体職員との対話など、多様なデジタル技術を活用して広く国民の声を聞いており、引き続き、行政サービスや政策に国民の声を直接役立てる取組を進めてまいります。

 最後に、EUが策定した宣言文書に関する認識等についてお尋ねがありました。

 まず、御指摘のEUの宣言文書は、オンラインにおける選択の自由、連帯と包摂、安全やセキュリティーの確保など、EUが目指すデジタルトランスフォーメーションに向けた原則を示すものであると認識しています。

 これらの考え方は、我が国がデジタル化を進める上でも参考とすべきものと認識しており、デジタル社会形成基本法において個人の権利利益の保護を基本理念として規定しているほか、デジタル社会形成のための基本原則においても、「オープン・透明」「公平・倫理」「安全・安心」「包摂・多様性」などを盛り込んでいます。

 また、デジタル社会における人格権等を宣言としてまとめるという趣旨の有識者の御指摘については、現在、国内外においてデジタル社会の在り方に関して様々な議論がなされているものと承知しており、デジタル庁としても、国内外の議論を注視し、必要な検討を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 緑川貴士議員から、国土交通省としての不正アクセス防止策についてお尋ねがありました。

 議員御指摘の近畿地方整備局の河川監視カメラについては、不正なアクセスが判明したことから、即座に通信を停止させるとともに、全国の同様のカメラを全て点検し、対策が必要なカメラの特定を行いました。

 この点検結果に基づき、国土交通省では、現在、五月中の配信の再開を目指し、カメラの交換や通信ポートの閉塞などの不正アクセス防止策を講じているところです。

 また、河川監視カメラ以外のカメラ、センサー等の機器類についても、一斉点検を実施するとともに、不正アクセス防止策の徹底を図りました。

 国土交通省としては、引き続き、内閣サイバーセキュリティセンター等の関係府省と連携しつつ、必要な対策をしっかりと進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 保育所等への監査についてお尋ねがありました。

 保育所等に対する指導監査については、保育所等の保育内容や保育環境を適切に確保する観点から大変重要と考えております。

 このため、保育等の質を確保するとともに、指導監査の実効性を更に高める観点から、先般の政令改正において、実地監査を原則とした上で、効果的かつ効率的な監査が行えるよう、一定の要件を満たした場合においては実地によらない方法での指導監査を可能とするとともに、不適切事案等が発生した自治体では全ての保育所等に実地監査を行うことや、監査の実施率の定期的な把握、公表を行うことなど、監査の実施率向上のための取組を行うことといたしました。

 あわせて、令和五年度の地方交付税措置において、保育所等に対する指導監査の体制強化のため、標準団体当たり職員一名を増員するとともに、自治体、保育所双方の事務負担の軽減に資するよう、自治体における好事例の把握、横展開を行っているところであり、国としては、引き続き、自治体による保育所等への指導監査の実施をしっかりと後押ししてまいります。(拍手)

    〔国務大臣松本剛明君登壇〕

国務大臣(松本剛明君) 緑川議員から三点御質問をいただきました。

 まず、デジタル人材の育成、確保への支援について御答弁申し上げます。

 行政のデジタル化を進めるためには、その担い手となるデジタル人材の育成、確保が急務と考えており、デジタル田園都市国家構想総合戦略の下、政府一丸となって取組を進めております。

 総務省といたしましても、地域における必要な人材を確保するためのリスキリングの推進に要する経費や、地方公共団体におけるデジタル人材の育成、確保に要する経費に対して、新たに財政措置を講じたところです。

 引き続き、関係省庁と連携しながら、デジタル人材の育成、確保にしっかりと取り組んでまいります。

 次に、自治体のデジタル改革について御答弁申し上げます。

 人口減少、少子高齢化等の様々な課題に直面している地域において、物事が根幹から変わるDXへの取組は社会変容の先駆的な原動力となり得るものと認識しております。

 このため、自治体行政の改革や地域社会の課題解決、地域発の成長につながるよう、DXの先進事例の横展開や財政措置等により、地方公共団体の取組を後押ししてまいります。

 具体的には、書かない窓口等のフロントヤードの改革等を通じた住民目線に立った行政サービスの充実や、様々な政策分野における地域課題の解決に向け、これらの取組を支えるデジタル人材の確保、育成や、デジタル原則に基づく条例等の規制の点検、見直し等について、関係省庁とも連携しながら推進してまいります。

 最後に、生成AIに関する政府の活用の検討の方向性及び国際ルールの方向性について御答弁申し上げます。

 生成AIについては、開発の振興、利活用の推進、適切な規制という三つの観点のいずれもが重要だと認識しており、政府における活用においては、プラス面だけではなく、使い方によってはリスクも生じることを念頭に検討してまいりたいと考えております。

 国際ルールの方向性についてもこのような考え方を基本とし、G7デジタル・技術大臣会合では、責任あるAIとAIガバナンスの推進を議題とすることとしております。各国・地域の意見をよく聞きながら、議長国として各国との議論を主導してまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 堀場幸子君。

    〔堀場幸子君登壇〕

堀場幸子君 日本維新の会、堀場幸子です。

 デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問をいたします。(拍手)

 新型コロナウイルスは、日本社会の抱えていた多くの問題を浮き彫りにしました。特に、デジタル化の遅れは顕著な問題として認識されました。

 全国の保健所でファクスを利用していたことは、衝撃としか言いようがありません。休校に伴い、一人一台のタブレットを配付された際は、WiFi環境が整っていない家庭がありました。学校が開始されたら、児童生徒数の多い学校では、全員分のタブレットを一度に充電するとブレーカーが落ちてしまう懸念があるなど、ハード面での遅れもあらわとなりました。

 新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAは、陽性者との接触を利用者に通知することにより国民の行動変容を促し、感染症対策の一端を担うことが期待されておりました。プライバシーに配慮するため、グーグルとアップルが開発したAPIを採用し、スマートフォンのブルートゥース機能を使って個人情報を収集しない形で接触確認をする仕組みが採用されました。多くのスマートフォン利用者がアプリをダウンロードすることにより感染拡大の防止に貢献するという社会的メリットを政府は強調しておりましたが、幾ら安全性と社会的便益を強調しても、導入のインセンティブとはなりませんでした。デジタル技術の活用の恩恵を社会が受けるためには、技術の進歩だけではなく、社会にどのように浸透させるかの戦略が非常に重要だと痛感した事案です。

 河野デジタル大臣にお尋ねします。

 デジタルの技術を社会に浸透させる国家戦略をお答えください。

 それにしても、日本社会のデジタル化、本当にやる気があるのかなと疑問に思ってしまうのは私だけではないと思います。

 私は一期生です。通常国会もまだ二回目です。だからこそ感じるのは、政府の対応が余りにも遅いということです。子供政策の議論の際はいつも感じておりますが、検討をしている間に子供たちは大人になってしまいます。

 給食無償化に関しても、三月二十九日、立憲民主党と合同で、実施法である学校給食法の一部を改正する法律案を提出いたしました。与野党共に賛成の給食の無償化。政府は、「こども・子育て政策の強化について 次元の異なる少子化対策の実現に向けて」において、給食の無償化に向けて、給食実施率や保護者負担軽減等実態を把握しつつ、課題の整理を行うとしております。

 永岡文部科学大臣にお尋ねいたします。

 文部科学省は給食実施率や保護者負担軽減の実態を把握していますか。把握しているにもかかわらず、一体何を調べるのか、お答えください。

 同様に、小倉担当大臣にお尋ねします。

 既に文部科学省では分かっている実態を把握し課題を整理するのに、三年もの月日をかけるのはなぜですか。給食の無償化を実現するタイムスケジュールをお示しください。

 そもそも、少子高齢化は随分前から認識されていました。それを、政府は、検討という名で放置してきたのではありませんか。昨年の出生数が八十万人を切って、慌ててありったけの政策を寄せ集めて、時間をかけて検討しているだけではありませんか。余りにも国民の感覚とずれています。

 ずれているといえば、これだけ多くの国民が、生活が苦しい、お金に余裕がないと困っているにもかかわらず、税金や社会保険料を上げようとしています。一方で、旧文通費の使途公開や国会議員の議員定数削減といった議員の既得権益の改革は行いません。政府と国民の感覚のずれは、もはや当たり前のことなのでしょうか。

 先日の地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会にて、旧文通費について我が党の委員が質問した際、河野大臣は、身を切る改革ではなく、実のある改革を行いますと答弁されました。

 河野デジタル大臣にお尋ねします。

 旧文通費に関する実のある改革とは何ですか。何もしないことを実のある改革と称しているのですか。明確にお答えください。

 このデジタル規制改革推進の一括法案もそうです。

 アナログ規制に関して早期に対応してほしいという声は多く上がっていたはずですが、令和三年十一月にデジタル臨調がやっと設置され、令和四年六月に、アナログ規制七項目について項目ごとの規制見直しの基本的な考えを示しました。基本的な考えを示すまで七か月です。それから半年して、九千六百六十九条項の見直し方針及び工程表が確定しました。デジタル化された作業であれば、これほど時間がかかるとは思えません。

 このアナログ規制一括法案が提出されるまで、ここまで時間がかかったのはなぜですか。デジタル社会を目指しつつも、アナログ規制が置き去りになっていた理由を教えてください。そして、この作業はデジタル化されていなかったのでしょうか。併せてお答えください。

 そして、この法案を説明する冊子が紙媒体で配付されています。メールでURLを送っていただければ、各議員が持っているパソコンで見ます。アナログ規制を撤廃する法案を三百五十ページほどの紙媒体で説明するのはなぜでしょうか。お答えください。

 この法案で、電磁的記録媒体による申請がオンラインにて申請できるとなっております。電磁的記録媒体、フロッピーディスクですが、今現在どの程度利用されているのでしょうか。CD―Rですら今や使われているのか、疑問に思います。現在、フロッピーディスクはどの程度社会で使われているのか、そして、この法改正で電磁的記録媒体を使った申請を廃止しないのはなぜか、お答えください。

 デジタル手続法の改正においては、最先端のデジタル技術がどのように活用できるのかをテクノロジーマップを使って作成、公表し、モデルケースを示していくとされております。一方で、国に準じた努力義務を持つ地方自治体において、オリジナルで活用することにはハード、ソフトの両面から限界があるのではないかとも考えています。

 日本全国津々浦々、携帯の電波が入りにくい山間部まで最先端の技術を活用したデジタル化をしていくためには、どのような改革が必要だとお考えでしょうか。

 多くの地方自治体にとって大きな課題は、デジタル人材の確保です。提示されたモデルケースを実際に運営していくためには、デジタル人材が必要不可欠です。アナログ規制を撤廃してデジタル化が進んだとしても、使っている人がアナログでは元も子もありません。

 各省庁はもちろん、地方自治体のデジタル人材の確保についてどのような対策を取っているか、お答えください。

 デジタル化が進んでいく上で避けて通れないのは、サイバーセキュリティーです。ウクライナにおけるハイブリッド戦争は、日本におけるサイバーセキュリティーの脆弱さを露見させました。そもそも、日本ではサイバー攻撃への対応が一元化されておりません。防衛の定義すら曖昧で、アクティブディフェンスについても、どこまでが許容されるのかを議論しているところです。

 政府や行政機関のデジタルインフラを所管するデジタル庁では、サイバー攻撃に対し、どのような体制を組まれているか、お答えください。また、世界一の能力を誇るスパコン「富岳」はサイバー防衛で活用されているかどうかも併せてお願いいたします。

 デジタル化した社会の行き着く先は、ソサエティー五・〇と呼ばれるサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによりつくられる人間中心の社会であると承知しております。第五期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会として提唱されました。AIやロボットが社会実装されたソサエティー五・〇に向けて、国家戦略が求められています。今国会では、AIテキストツールであるチャットGPTの活用も初めて議論されています。

 科学技術政策担当大臣にお尋ねいたします。

 政府は、いつ頃ソサエティー五・〇の時代が到来すると考えているのでしょうか。また、発達するAIテキストツールについて政府はどのように活用するのか、AIの基盤をどのように社会に浸透させるのか等、AIの国家戦略をお答えください。

 防犯、防災、エネルギー、生活インフラ等、生活をより効率化したスマートシティーにおける都市OSについても考えていかなければなりません。断片的な活用をしていた取組を集めてビッグデータ化し、生活の効率化と利便性を向上していくことは、未来の地方自治体の使命でもあります。様々な自治体で実証実験が行われておりますが、EUで開発された都市OSであるファイウェアを活用している自治体もあります。

 今後、日本のオリジナル都市OSを構築していくのか、その研究や技術開発はどのようにして構築していくのかといった都市OSの未来について、デジタル庁のお考えをお答えください。

 そして、都市OSと併せて議論されている、データとプライバシーについてお尋ねいたします。

 ビッグデータの一つ一つは個人情報が含まれております。その取得に対する国民の共通理解が得られているとは言い難い状態をどのように解決していくのでしょうか。データ取得と個人情報保護についての政府の見解と理解促進の方法を教えてください。

 ビッグデータを活用し、スパコンで分析し、成長したAIやロボットが今まで人間が行ってきた作業や調整を代行、支援してくれる時代。デジタル社会の未来像は、人間中心といいつつも、人間を超えていく存在になるかもしれない、こういった漠然とした不安を持つ国民は少なくありません。特に不安を駆り立てるのは、今ある仕事の多くがなくなると言われていることです。極端に言うと、労働という概念から変えていく必要があるということです。

 未来の我々人間はどのような仕事をしていると想定して、我が国の教育方針を決めているのでしょうか。そして、そのためにはどのような能力を強化していかなければならないのか、また、子供たちの能力をどのように発見し向上させるのか、永岡文部大臣、具体的に教えてください。

 人類は様々な道具を発明して発展してきました。観察し、研究し、試行錯誤を重ねてきた結果、利便性が向上し、豊かになりました。今を生きる私たちは、まだ見ぬ道具に不安を感じてしまうことがあるかもしれません。

 しかし、どんなに便利になっても変わらないものがあります。人と人の信頼関係や、苦難を共に乗り越えていくことでつくられてきたきずなです。社会というものが人間の集まりである限り、それは変わりません。だからこそ、人生が苦しいときもあるかもしれないけれども、何度でも挑戦できる、何かを達成した喜びを感じることができる、自分の人生を謳歌できる、そういう日本であるために邁進していくことをお約束申し上げ、私からの質疑を終わりにいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) まず、デジタル技術の社会への浸透のための国家戦略についてお尋ねがありました。

 デジタル庁と厚生労働省によるCOCOAの総括報告書で、ダウンロードが四千万件を超え、短期間で急速に普及し、個人に対する注意喚起の効果が見られたとの評価があったこと、利用者アンケートの結果から、利用者属性に応じた働きかけが更なる普及につながる可能性があること、有効な機能を平時から改善を重ね運用し信頼を高めつつ、緊急時にも活用することが望ましいとの考え方などをお示ししました。

 政府としては、誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を目指し、デジタル社会の実現に向けた重点計画を昨年六月に閣議決定しております。COCOAの教訓も生かしつつ、デジタル化に向けた国家戦略であるこの重点計画に沿って、社会全体のデジタル化の実現に向けた取組を推進してまいります。

 次に、調査研究広報滞在費についてのお尋ねがありました。

 調査研究広報滞在費の削減など、政治に要する費用の問題については、国会において各党各会派の間で御議論いただく事柄であると考えます。

 なお、衆議院の委員会において答弁した、実のある改革とは、国益に沿い、また国民の利益となる改革一般を指して使用したものです。

 次に、アナログ規制の見直しに時間を要した理由についてのお尋ねがありました。

 コロナ禍により、デジタル化の妨げとなるアナログ規制の存在が浮き彫りになったことから、政府としては、デジタル臨時行政調査会を設置し、その見直しを可及的速やかに進めてきたところです。

 二〇二一年十二月にデジタル原則が決定されてからの約一年間で全ての法令を総点検し、アナログ規制を定める約一万条項について見直し方針、時期を決定するなど、過去に例のないスピードで進められてきたものと認識しています。

 なお、これらのアナログ規制の見直しでは、規制所管省庁との調整作業などのデジタル化は容易ではなかったものの、法令のデータベースの徹底活用や規制の類型化などにより、可能な限り効率的に作業を進めてきたところです。

 次に、国会議員の方々への本法案の御説明方法についてのお尋ねがありました。

 デジタル庁としては、新たな試みとして、本国会提出法案から、議員の御理解を得た上で、オンラインやタブレットによる御説明を導入しているところであり、引き続き、委員の御指摘も踏まえ、こうした取組を行ってまいります。

 次に、記録媒体による申請についてのお尋ねがありました。

 フロッピーディスクについては、他の容量の大きい記録媒体も普及していることなどから、実際に使用されている場面は極めて限られているものと認識しております。

 記録媒体の使用については、システムが使用できない場合の補完的な方法として定めている場合などもあることから、今般の改正で、記録媒体の使用を一律に廃止することはせず、オンラインでの手続を可能とすることとしております。

 次に、地方のデジタル化についてのお尋ねがありました。

 デジタル社会の恩恵を実感いただくには、暮らしに密接に関連する地方自治体においてもデジタル技術を活用していくことが必要です。

 そのため、自治体におけるアナログ規制の見直しが進むよう、国における見直し等をベースにしたマニュアルの公表、実際に見直しを行うモデル自治体を通じた課題の整理、活用可能な技術を容易に把握できるテクノロジーマップの整備、デジ田交付金による財政面での支援などを国として行っているところです。

 引き続き、自治体におけるデジタル技術の活用を推進するため、必要な取組を行ってまいります。

 次に、地方自治体のデジタル人材についてのお尋ねがありました。

 地方自治体におけるデジタル人材の確保を図るため、市町村のために都道府県等が行った人材確保に要する経費について、総務省において特別交付税措置を講じています。

 また、デジタル庁においても、総務省やJ―LISと連携して、地方自治体におけるデジタル人材の確保、育成を支援するべく、研修コンテンツの提供や講師派遣など、地方公務員向けの研修内容の充実に向けて取組を進めています。

 次に、サイバー攻撃に対する体制等についてのお尋ねがありました。

 デジタル庁では、NISCと連携し、サイバーセキュリティーを含む情報システムに関する基本方針を示しています。

 また、デジタル庁は、重要度の高いシステムを整備、運用していることから、優秀なエンジニア人材を採用してセキュリティーの実装を進めるとともに、庁内に専門チームを置いて、セキュリティーの監査を実施するなどしています。

 なお、「富岳」の活用を含めたサイバー防衛に関する御指摘については、国家安全保障戦略において、「サイバーセキュリティに関する世界最先端の概念・技術等を常に積極的に活用する。」とされており、今後、関係省庁において検討が進むものと承知しています。

 最後に、都市OS及びデータ取得と個人情報保護についてのお尋ねがありました。

 都市OS、すなわち、まちづくりを支えるデータ連携基盤の構築に当たっては、データの相互接続性やシステムの拡張性が保たれることが重要であり、政府として、基本となるアーキテクチャーを整備しています。

 また、地域実装を加速するため、デジ田交付金を通じて基盤構築を支援しているほか、デジタル庁において基盤の中核部分を開発し、無償公開しています。

 こうした取組を通じ、データ連携基盤を効果的に活用したまちづくりと、それを支える産業の活性化に引き続き取り組んでまいります。

 なお、スマートシティーの実施に当たっては、データを取り扱う地方公共団体等において、個人情報保護法に基づき個人情報を適正に取り扱う必要があります。こうした点について、必要な周知、広報を行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣永岡桂子君登壇〕

国務大臣(永岡桂子君) 堀場議員にお答えいたします。

 まず、学校給食費の無償化についてお尋ねがありました。

 文部科学省においては、学校給食を実施している学校数やその形態等の概要、地方創生臨時交付金を活用した学校給食費の保護者負担の軽減に向けた取組状況について調査を実施しているところです。

 学校給食費の無償化に向けては、これまでの調査で把握してきた内容の最新状況に加え、児童生徒間の公平性の観点から、学校給食を実施していない自治体、学校の事情や、学校給食の提供を受けていない児童生徒の状況、実施内容による学校給食費の差異といった詳細な実態について把握するとともに、学校給食費の負担の在り方の観点から、現在、設置者により実施されている保護者負担軽減に関する取組の詳細を把握することが必要と考えています。

 いずれにせよ、岸田総理の下に設置されたこども未来戦略会議において、子ども・子育て政策の強化に向けて更に議論を深めるとされていることから、文部科学省としても、こども家庭庁と連携しながら対応してまいります。

 次に、未来に向けた教育の方針についてお尋ねがありました。

 超スマート社会においては、労働市場の構造や職業そのものが抜本的に変わることが予測されます。子供たちがこうした社会の変化に対応するためには、他者と協働し、人間ならではの感性や創造性を発揮しつつ、自ら新しい価値観を創造する力を身につけることが一層重要になります。

 そのために、初等中等教育段階においては、全ての子供たちの可能性を最大限に引き出す個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図り、次代を切り開くために必要な資質、能力を育成していく必要があります。

 また、高等教育段階においても、文理横断的な知識やスキル、能力を身につけ、新たな技術や価値を発見、創造していく人材を育成する必要があります。

 先般、中央教育審議会において、次期教育振興基本計画についての答申が取りまとめられたところであり、文部科学省としては、答申を踏まえて計画を策定し、中長期的な人材育成に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣小倉將信君登壇〕

国務大臣(小倉將信君) 給食の無償化について、私にもお尋ねがございました。

 加速化プランにおいては、学校給食費の無償化に向けて、給食実施率や保護者負担軽減策等の実態を把握しつつ、課題の整理を行うこととしています。

 給食の実施率や給食を実施していない理由については、自治体によって様々であり、関係者との議論が必要であると認識しています。

 このため、文部科学省において、更に実態把握を進めるとともに課題の整理を行っていくものと承知をしており、こども家庭庁としても、速やかに課題の整理が進むよう、文科省と連携をして取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 堀場幸子議員から、私には、ソサエティー五・〇の到来時期及びAIの国家戦略についてお尋ねがありました。

 ソサエティー五・〇については、我が国が目指すべき未来社会像として提唱されています。この社会像を基に、二〇三〇年を見据えて、科学技術・イノベーション政策を体系化し、関係府省一体となって取り組んでおります。

 また、生成AIにつきましては、一般論として、業務負担の軽減等につながり得るものですが、一方で、利用に伴う様々なリスクが考えられます。

 政府機関においては、業務で取り扱う情報の漏えい等のリスクに関する対策の基準を定めており、現在、一般的な生成AIは、当該基準において、約款型の外部サービスとして位置づけられています。

 職員は、要機密情報を取り扱う場合には、原則として、これら外部サービスを利用することはできません。

 他方で、要機密情報を取り扱わない場合には、外部サービスを利用することはできます。しかしながら、外部サービスの利用に際しては、プライバシーや著作権の侵害等を含めたリスクを踏まえて利用可能な業務の範囲を決定すること等が必要であり、それぞれの省庁が定める規程を踏まえた対応が求められます。

 また、AIの国家戦略としては、政府は、昨年四月に、AI戦略二〇二二を策定しています。その中で、社会実装の充実に向けては、AIの信頼性の向上、AI利活用を支えるデータの充実、人材確保等の環境整備、政府におけるAI利活用の推進などを掲げて取り組むこととしております。

 AIをめぐる情勢は非常に流動的でありますので、内閣府を中心に関係省庁が連携して、引き続き、AIの動向の把握に努め、適切に取り組んでまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    松本 剛明君

       外務大臣    林  芳正君

       文部科学大臣  永岡 桂子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    西村 康稔君

 出席副大臣

       デジタル副大臣 大串 正樹君


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