衆議院

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第3号 令和5年10月24日(火曜日)

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令和五年十月二十四日(火曜日)

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 議事日程 第三号

  令和五年十月二十四日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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議長(額賀福志郎君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまアニー・ジュヌヴァール・フランス共和国国民議会議員団団長御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 立憲民主党代表の泉健太です。(拍手)

 減税の言葉を弄び、何をしたいのか見えない総理。物価対策、経済対策がこんなにも遅れた総理。最初に掲げた政策はどこかに行ってしまった総理。総理の言葉遊びには、国民は失望の色を濃くしているのではないでしょうか。

 私は、会派を代表し、物価高にあえぐ国民、事業者を支える立場から質問いたします。総理、私の質問をはぐらかさずに、国民に向けて誠実な答弁をお願いいたします。

 まず、経済対策について問います。

 総理、経済対策の策定を指示したのは九月二十六日、これは余りに遅過ぎませんか。なぜ七月、八月ではなく、この時期まで遅れたのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

 また、総理は、自民、公明両党に所得税減税の検討を指示しながら、所信表明演説では所得税減税を入れなかった。なぜですか。結局、所得税減税は行うのか行わないのか、明確にお答えください。そして、行うならば、それは一年のみなのか恒久なのか、富裕層も減税対象なのかもお答えください。でなければ国民は分かりません。

 経済対策を行う上で必要なのは正しい現状分析です。物価上昇局面において過度の財政出動を行うと、一層のインフレを招き、更に物価が上がり、実質賃金が低下をし、個人消費が落ち込む。今はそのような局面ではないでしょうか。総理の見解をお聞かせいただきたいと思います。

 私たち立憲民主党は、今回、あえて規模を求めません。内閣府の今年四―六のGDPギャップはプラスとなりました。コロナ禍で私たち政治家が口にしていた、需給ギャップ分の経済対策をという環境ではもはやありません。骨太方針二〇二三でも、歳出構造を平時に戻す、緊急時の財政支出を必要以上に長期化、恒常化させないと記されており、今はもう、規模ありきや二十兆などのような経済対策ではなく、真に必要な方々への対策の重点化を図るべきです。総理、いかがでしょうか。

 こうした認識の下、立憲民主党は、物価を上回る年収アップを目指し、七・六兆規模の緊急経済対策を発表しました。ここでも留意をしたのは、需給ギャップが解消したこと、更なるインフレを極力招かないこと、ばらまきではなく重点配分することです。

 総理は経済、経済、経済と言いましたけれども、結局、国民に何を届けるのか、いまだ分かりません。まず、総理、経済、経済、経済と言うだけでなく、国民が望むのは、今年中のインフレ手当の給付、給付、給付じゃないですか。これを実行するべきだと思います。

 我が党は、緊急経済対策として、中間層の現役世代を含めた全体の六割の世帯に三万円のインフレ手当の給付を求めます。総理には是非実現をしていただきたい。これであれば、今年中に給付が可能です。

 ところが、自民党幹部は、所得税減税を念頭に、来年夏のボーナスぐらいに間に合うようにと発言しています。これは余りに遅過ぎませんか。余りに遅過ぎる。今回は、今年中の給付を急ぐべきです。我々は、物価上昇に見合った分の給付、これを行うつもりをしております。いかがでしょうか。

 そして、経済でいうと、もう一つ、ガソリン減税。これこそ、ガソリン減税、ガソリン減税、ガソリン減税と繰り返すべきではないでしょうか。

 地方の生活者ほど、苦しいガソリンの値上げにあえいでおります。トリガー条項を凍結解除すれば、リッター当たり二十五円確実に下がります。今回の補欠選挙の徳島・高知、長崎でも、この声は非常に多く届きました。我が党は、既にトリガー条項の発動法案を提出しています。総理、改めて、トリガー条項を発動させるべきだと考えます。回答を求めます。

 もう一つ、車に関しては、以前一度話題になりました走行距離課税、これはしないということでよいかどうか、改めて確認をしたいと思います。

 続いて、今回の経済対策で重視するべきは、一つ目のポイント、人への支援です。

 立憲民主党は、介護、保育、障害者福祉職員の処遇改善を求めます。こうした職種は、全産業平均よりも月額七万円以上も給与が低く、処遇改善が急務です。厚生労働省は月六千円の処遇改善を考えているようですが、これは低過ぎます。低い。最低でも、最低でも月一万、その処遇改善を求めます。お答えください。

 バス、タクシーの運転手不足も深刻です。我が党の対策には、運転手確保のための地域公共交通支援の予算増も盛り込んでいます。総理、これも是非実現をしてください。

 物流の二〇二四年問題も解決を急がねばなりません。先日も、地元の運送会社から、十月末で廃業するという連絡を受けました。ドライバーや従業員が確保できない、価格交渉も無理だったと。

 労働時間の上限規制の導入まで五年の猶予があったのに、関係閣僚会議が開かれたのは今年三月です。先日のインボイス閣僚会議の初会合もそうでした。経済対策もそうです。総理は対策が遅過ぎるんです。物流二〇二四年問題への対策は来年四月までに間に合うのでしょうか。お答えください。

 さて、インボイスです。

 総理、五十四万筆のインボイス反対署名を受け取りましたね。御覧になりましたか。どう受け止めたのかをお答えください。

 経営規模が小さいほど影響は甚大です。立憲民主党は、インボイス制度廃止法案を提出しています。免税事業者の取引排除対策は十分でしょうか。そして、個人事業主は事務負担に堪えられるんでしょうか。お答えください。

 コロナ禍で増えたゼロゼロ融資、これは来年度初頭までが返済開始時期のピークであり、企業の倒産、解雇は経済と生活に大きく影響を及ぼします。一定の要件による債務減免と金融機関の損失への国の補填、また、据置期間の延長、新型コロナ特則に倣った経営責任の回避を求めます。総理、お答えください。

 そして、賃上げ、賃上げ、賃上げ。持続的な賃上げも不可欠です。そのためには適正な価格転嫁が必要ですが、政府の体制が不十分です。価格転嫁を調べる下請Gメン、これは今約三百名体制ですね。中小企業は全国三百五十七万社ですから、余りにGメンが少な過ぎる。少なくとも千人以上にまずはしないといけません。体制強化を求めます。お答えください。

 そして、一次産業支援。農家や漁業者の燃料、肥料、飼料代の高騰対策。自治体に自由度の高い交付金を拡充し、一次産業対策に充てるべきです。そして、熊被害も今相次いでいます。鳥獣対策の人材育成の強化が必要です。総理、いかがでしょうか。

 私たちは、まず、こうした賃上げ、生活支援、人手不足など、人に着目した対策を盛り込んでいます。

 そして、もう一つのポイントは、未来への投資です。

 立憲民主党は、あらゆる産業の脱炭素化を支援するとともに、製品の国産化を進めます。しかし、例えば、今、日本の製造業の省エネ改善、これが二〇一一年からの十年でたった五・六%。これは欧米各国から大きく遅れている数字です。省エネや再エネへの思い切った投資が必要です。

 スタートアップや空飛ぶ車もよいですが、総理、地に足をつけて、日本中の建物の省エネ化、再エネ化、省エネ住宅の普及を徹底的に進める。特に、建物の断熱化、古い冷蔵庫や暖房器具のエコ家電への買換え補助、また、工場の配管の断熱性向上も非常に効果的です。総理、これら三つの予算を大幅に増やすべきです。お答えください。

 建物のこうした省エネ化は、電気代、ガス代、灯油代の支出を減らし、CO2排出も減ります。地域の工務店、電器店の仕事も増えます。これこそ、地域に根差したカーボンニュートラルへの投資、未来への投資ではないでしょうか。

 こうした立憲民主党の緊急経済対策を是非実現していただきたい。総理には中身のある対策の実現を求めます。

 さて、経済対策以外にも非常に多くの問題があります。

 まず、マイナ保険証問題です。

 総理、マイナ保険証に不安を感じる国民はたくさんいますよね。総理は変化の流れをつかむと言いましたが、是非、世論の変化の流れをつかんでください。現在の利用率、マイナ保険証、たった四・七%。しかも、この数か月は利用率が下がっています。

 データや取扱いのトラブルが相次いで、世論調査でも、現行の健康保険証廃止に延期、撤回を求める声が七割を超えています。果たして、それで来年秋までにマイナ保険証に無理やり移行させるんでしょうか。総理、聞く力は残っているんでしょうか。お答えください。

 希望者にはマイナ保険証を、しかし、今の健康保険証は一定の条件が整うまで廃止しない、これが正しい判断ではないでしょうか。過ちては改むるにはばかることなかれ。来秋の廃止は強引で、それこそ第二のデジタル敗戦になりかねません。総理は、八月の記者会見でも、状況によっては見直すと言っていますから。もうその状況が来ています。是非、今の保険証の廃止は延期をしてください。いかがでしょうか。

 そして、最低賃金。

 イギリスもフランスもオーストラリアも、既に時給千五百円以上です。このままだと、暮らしは厳しく、人材は他国に流れていってしまいます。総理、この状況で、日本は時給千五百円に到達させるのにあと十年もかけるのでしょうか。最賃千五百円達成の前倒しの実現を目指す、そう表明すべきではないでしょうか。お答えいただきたいと思います。

 続いて、消費税。

 これは、低所得者ほど家計における負担割合が高くなる税です。これを解消するために、立憲民主党は、中間層から低所得層までの消費税負担の一部を還付する消費税還付法案を出しました。総理、逆進性解消のための消費税還付を是非採用していただきたい。採用できないのであれば、その理由をお答えください。

 そして、実は日本が先進国でトップという数字があります。これが貧困率です。最新の二〇二一年の数値で、アメリカよりも韓国よりも貧困率の数値が高く、一五・四%。これが現実なんです。

 ただ、実は、この貧困率を出している国民生活基礎調査で国全体の貧困率が出るのは三年に一度。一方で、先進各国は毎年この数字を出しています。

 総理は演説に、EBPM、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングの言葉を入れましたが、貧困率については是非毎年の調査にして、日本の貧困率を改善させるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 私は、先日、ベトナムを訪問いたしました。日本での就労の人気は下がっています。理由は、一つは円安、一つは賃金水準の低さ、そして一つは技能実習制度です。外国人の安使い、便利使いは、もうこれでは人手不足を補えないという状況です。このままでは、日本自身が外国から選ばれなくなります。

 立憲民主党は、日本で働く以上、国内の労働者と同等の権利を保障する、こうした法案を提出いたします。また、既に日本で暮らす外国人が、日本語や文化を学び、地域社会で共生するための多文化共生社会基本法案を提出しています。総理、是非こうした法整備を進めるべきではないでしょうか。見解を伺います。

 農業について伺います。

 先日、中山間地域の農家の皆様と懇談をしました。集落の若手は六十歳代、若手が六十歳代。そして、耕作放棄地の再生も、担い手の高齢化で草刈りすらままならないという声でした。

 総理、我が国の農業の中心は家族経営や小規模経営です。こうした皆様を支え、条件不利地でも生産環境を確保すべきです。新たな食料・農業・農村基本法では家族経営や小規模経営をどのように位置づけるのか、お聞かせください。

 農村振興では、現在の競争力強化や規模拡大偏重を改め、コミュニティーづくりや環境負荷を考慮した農業を推進すべきです。基本法では農村機能の確保や発展をどう考えているのか、お答えください。

 そして、立憲民主党は、食料自給率五〇%を目指します。新たな基本法の下、政府は果たして何%を目標にするのか、お答えください。

 次に、財政に関する質問です。

 国の基金は、コロナ対策などで年四兆円という異常なペースで増えてきました。今や残高は何と十六兆円以上。行財政改革が必要です。河野大臣は、秋にも使用見込みのない資金は速やかに国庫へ返納するよう指導したいと述べましたが、その本気度が問われます。果たして、五兆なのか一兆なのか、それとも百億なのか、どの程度の額の国庫返納を見込んでいるのか、是非お答えいただきたいと思います。

 先日も、我が党の城井崇議員が、使う予定のない基金が千四十六億円放置されていることを突き止めました。総理、この千四十六億円は即刻国庫に返納するべきと考えますが、いかがでしょうか。

 続いて、防衛増税です。

 改めて、増税は撤回すべきじゃないでしょうか。

 立憲民主党は、対話外交とともに安全保障を重視しており、防衛費の増額は必要だと考えています。しかし、行き過ぎは駄目です。五年で四十三兆円は余りに急激で巨額です。そして、例えば、五兆円をつぎ込んで、国内で同時に六種類ものスタンドオフミサイルを開発するなど、現在の計画は戦略性そして実現可能性が怪しく、議論も不十分ではないでしょうか。

 総理、防衛増税の具体的な時期や内容は明らかにすべきです。極めて不誠実です。九月二十五日の会見でも、柔軟に判断していきたいとごまかしていた。実態が分からない増税が背後にあるのは、国民に不安を与えるんじゃないでしょうか。減税で煙に巻こうとしていますが、はぐらかしはいいかげんにしていただきたい。増税をするならいつからなのか、はっきりとお答えください。

 続いて、異次元の少子化対策です。

 三兆円半ばの財源は、結局どこから確保するのでしょうか。六月の骨太で先送り、決定は年末であれば、もうそろそろ絵姿が見えているはずです。防衛三文書やGX同様に、また国会閉会中に発表するんでしょうか。それこそ不誠実です。是非はっきりとお答えいただきたいと思います。

 医療の保険料に定額を上乗せするのか。果たして、しかし、これでは低所得者ほど負担感が高く、当事者の子育て世代、勤労世代に負担は集中します。おかしくないでしょうか。総理、この手法を採用する可能性はあるのか、お答えください。

 外交問題です。

 ガザ地区とイスラエル国内で多くの市民が死傷をしています。ウクライナでも依然として激しい戦闘が行われています。トルコやシリア、アフガニスタンでは、地震で多くの命が失われています。日本は、平和国家、人道国家としての役割が求められています。

 ハマスなどのテロ行為は決して許されず、人質は即時に解放されるべきです。そして、イスラエルの自衛措置は行き過ぎてはなりません。国際人道法等に沿ったものでもあるべきです。そして、今、ガザ地区では人道支援が急務です。

 総理、改めて、イスラエルに対して、空爆、地上侵攻の停止、ライフラインの提供、人道回廊の確保を強く働きかけるべきではないでしょうか。どのような努力をするつもりか、お聞かせください。

 ウクライナ支援を始め、日本から海外への武器移転がうわさをされています。日本は、世界から平和国家として評価を受けてきました。あくまで、救難、輸送、警戒、監視及び掃海に係る五類型を基本とし、殺傷能力のある武器の輸出については極めて慎重であるべきです。

 総理、日本は、被害を防ぎ、人命を救い、生活と復興支援の分野で中心的な役割を発揮すべきです。共同開発は別にしても、殺傷能力のある武器は基本的に輸出すべきではない、我々はそう考えますが、総理の答弁を求めます。

 続いて、旧統一教会問題です。

 旧統一教会への解散命令請求が行われました。多くの被害者の悲願がまた一つ実現をしましたが、決してこれではありません。被害回復と再発防止に向けた長く苦しい道のりは続きます。

 まずは、被害救済に必要な財産が散逸しないよう、旧統一教会の財産保全をする手だてが不可欠です。しかし、与党内からは、それぞれの被害者が裁判してやればよい、法整備は不要との冷たい声が出ていませんか。総理はそのように考えているのでしょうか。お答えください。

 個別で民事裁判をする場合、請求額の一―三割の負担が必要となり、高額寄附で資産が少なくなった被害者にとっては、裁判の負担は大変厳しいものになります。それを、訴えればいいというのは、余りに冷たい仕打ちではないでしょうか。

 立憲民主党は、今国会の初日、旧統一教会財産保全特措法を提出いたしました。個別訴訟以外の手段で財産保全を行う議員立法を、超党派で議論し、成立させようではありませんか。総理の決意をお答えください。

 細田前議長の行動については、甚だ疑問です。旧統一教会との関係の説明は不十分。総理、これまでは衆院議長だからと説明を回避してきた細田議長が一議員の立場になりました。自民党総裁として、説明責任を果たせと指導するべきではないですか。お答えください。

 立憲民主党は、国会改革、政治改革も進めてまいります。

 総理に約束をしていただきたいことがあります。もうそろそろ、いいかげん、この国会で党首討論をやりませんか。受けて立つような表情ですね。是非、やる気があるとみなしますけれども、やる気があるか、お答えをいただきたいと思います。

 ただ、総理、やるときに是非国対にも言っていただきたいんですが、あるいは議運でも様々な調整が必要ですが、時間が短過ぎます。全体の時間は、何と、たった四十五分なんです。野党が幾つあろうとも、全体は四十五分なんです。これでは、各党党首が複数いると、一党数分というような党首討論になってしまう。不完全燃焼で終わってしまいます。是非とも、この四十五分という時間を長くしていきたい。是非とも、このことについても総理にお答えをいただきたいと思います。

 自民党は、多額の企業・団体献金を集めています。政党助成金を受け取りながら企業・団体献金を集める政治をそろそろ全党共通でやめにしませんか、皆さん。

 立憲民主党は、政党本部、支部への企業・団体献金を全面禁止する法案を提出しました。総理、賛成か反対か、お答えください。

 次。現在の岸田内閣、総理を含め、世襲大臣が八名おります。個々の能力云々の前に、普通の国民にとって、世襲はやはり閉鎖的であります。そして、競争するにも大きな差を感じざるを得ません。

 そこで、世襲優遇のルールを減らすということを求めたいと思います。その一つは……(発言する者あり)橋本さん、気持ちは分かりますが。その一つは、国会議員関係政治団体の多額の資金が子供や親族に無税で引き継がれ、その潤沢な資金で政治活動が可能になっているという点なんです。総理も三世ですから、分かるはずじゃないでしょうか。

 例えば、総理が代表を務める関係団体、新政治経済研究会。令和三年の分では、パーティー収入などが約一億二千七百万円、日本医師連盟から一千百五十万円、日本眼科医連盟から一千万円など、寄附だけで合計二千六百七十万円。年間合計一億五千四百万円以上の収入があって、翌年への繰越しも一億五千万円以上あります。要は、こういう状態の団体を無税で御子息などに引き継げてしまうということなんです。

 こうした事実上の世襲優遇をやめて、一般国民が挑戦できる環境をつくるべきだと立憲民主党は考えます。国会議員関係団体の親族引継ぎ禁止、これについて賛成か反対か、お答えください。

 総理が度々におわせる解散についても伺います。

 そもそも、解散を弄ぶことは、見識ある指導者のすることではありません。

 かつて、与野党を超えて名議長と呼ばれた保利茂第五十九代衆院議長は、解散についてこう述べております。巷間、衆議院の解散問題が論ぜられるのは全く理解に苦しむ。主権者である国民の直接選挙で選ばれ、国民の厳粛な信託の下に、国政審議を行う責任と義務を負っている衆議院に対して、特別の理由もないのに、行政府が一方的に解散しようということであれば、それは憲法上の権利の濫用ということになる。まさに真っ当な見解ではないですか。

 特別な理由とは何か。保利議長は、七条解散には六十九条解散と同様の精神が必要とし、予算案や内閣の公約である重要案件が否決、審議未了になったりしたときとか、審議が長期間ストップして国会の機能が麻痺したときと述べています。

 総理、保利議長のこの見識に同意いたしますでしょうか。お答えください。

 立憲民主党は、大義なき解散を抑制する衆議院解散決定手続法案を提出します。主な内容は、解散は憲法六十九条の規定に準ずる程度に国政に混乱が生じている場合など一定の場合に限るという基本的な考え方を明示し、内閣は国会に十日前までに解散の予定日、理由を通知し、国会審議を通じてその理由を明らかにするという内容です。

 国民に選ばれた議員の皆様、改めて、議会制民主主義を守るために、この法案を議論しようじゃありませんか。そして総理、総理も、解散の場合は国会で説明し、数日の国会審議に応じてはいかがでしょうか。お答えください。

 以上、我が党の考え方を示し、総理に見解を伺いました。

 この三十年間、冷温経済をつくり、コストカット経済を進めてきたのは、自民党そのものではないでしょうか。格差や貧困対策を放置し、賃上げを怠り、人材育成を怠り、国民の所得を抑えてきたのは、自民党じゃないですか。

 経済、経済、経済と言いながら、今年中の給付もいまだ実現せず、人への投資、未来への投資も不十分な岸田政権、減税のかけ声の後ろに増税が待ち構えている岸田政権ではないですか。

 それに対して、立憲民主党は、今年中のインフレ手当の実現、増税ではなくガソリン減税、そして人への投資、未来への投資を訴え、クリーンで真っ当な政治への改革を目指します。国民の皆様、どうか力を与えてください。

 おとといの国政補選では、野党各党が連携をし、また、力を合わせ、徳島・高知で勝利をし、そして長崎で与党候補に肉薄をいたしました。宮城県議会では立憲民主党候補は全員当選を果たし、議席数を二桁に伸ばしました。

 生活者目線で、特権政治を変え、行財政改革を進め、政策を動かし、論戦できる国会にするため、私は戦います。皆様、どうか力をおかしください。

 単なる自己責任社会ではなく、日本に暮らす我々が互いに認め合い、支え合って成長していく。そんな日本にすべく、人へ、未来へ、真っ当な政治へを掲げ、立憲民主党は更に働きます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 泉健太議員の御質問にお答えいたします。

 経済対策の策定指示の時期と所得税減税についてお尋ねがありました。

 経済対策の策定は九月二十六日に指示いたしましたが、それ以前から、リッター百七十五円をガソリン価格の実質的な上限とするための補助の拡大など、国民生活を守るための機動的な対策、これをるる講じてまいりました。

 国民への還元の具体化に向けた正式かつ具体的な指示は、明後日二十六日の政府与党政策懇談会で行う予定です。与党で正式な議論も開始されていない段階で、具体化の方向性について所信表明演説で政府の考えとして述べることは控えなければならないと考えた次第ですが、いずれにせよ、御指摘のあった制度設計に係る論点も含め、国民への還元については、所得税減税を含め、早急に検討を進めてまいります。

 経済対策がインフレをもたらすのではないかというお尋ねがありました。

 足下の我が国の経済状況については、需要面では、賃金上昇が物価に追いついておらず、消費など民間需要は依然力強さを欠くこと、供給面では、潜在成長率が、三十年来のコストカット型経済の下での低成長の結果、ゼロ%台半ばの低い水準にとどまること、これらに留意する必要があります。

 その上で、今回の総合経済対策においては、物価高による国民の負担への一時的な緩和措置を含む国民への還元と同時に、供給力強化のための政策を車の両輪として行うこととしており、インフレが加速することがないよう、適切に対応してまいります。

 供給力の強化によって行われる各種の投資増については、来年以降に発現するものも含まれ、直ちに足下の物価高局面における需要増加につながるとは考えておりません。

 人手不足や資源高への対応を加速することで、中期的にインフレ圧力に強い経済を構築してまいりたいと考えています。

 経済対策の重点化についてお尋ねがありました。

 経済対策は、規模ありきではなく、中身がまず重要です。

 需給ギャップを単に埋め合わせる対策ではなく、日本経済の供給力を強化し、中期的なインフレ圧力に強い経済体質をつくるとともに、将来の成長に資する分野を厳選して対応してまいります。

 その上で、我が国経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、現時点では、賃金上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねません。デフレ脱却のための一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の御負担を緩和することも必要であると考えています。

 規模はこうした政策の積み上げの結果であり、国民生活に高い効果のある具体的な政策を積み上げてまいります。

 インフレ手当を早急に給付するべきではないかとのお尋ねがありました。

 物価高に最も切実に苦しんでおられるのは低所得者の方々であり、この方々にはスピード感を持って対応する必要があります。

 多くの自治体では、この夏以降、低所得者世帯に対して、一世帯当たり三万円を目安に支援を開始してきました。この物価高対策のための重点支援地方交付金の低所得者世帯支援枠を追加的に拡大することとし、これを経済対策に盛り込んでまいります。

 他方、賃金上昇が物価高に追いついていない現状を踏まえると、これを放置すれば再びデフレに戻りかねません。デフレ脱却を確実にするためには、賃上げが物価高に追いつくまで政府が支えることも重要だと考えます。

 こうした観点からの国民への還元について、その実施時期も含め、早急に具体化してまいります。

 トリガー条項についてお尋ねがありました。

 ガソリン価格については、これまで、燃料油の激変緩和事業によって、原油価格高騰による国民生活や経済活動への影響を緩和してきており、今般策定する経済対策において、この措置を来年春まで継続することとしております。

 トリガー条項の凍結解除については、冬季の暖房に不可欠な灯油や、中小企業や農業、漁業に広く使われる重油などが支援の対象外となっているほか、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱が生じる可能性がある等の課題があるということを承知しております。

 なお、足下では、激変緩和措置による価格抑制は約三十五円となっており、トリガー税制を通じた減税額である約二十五円を上回る価格抑制を実現している次第であります。

 走行距離課税についてお尋ねがありました。

 いわゆる走行距離課税について、政府として具体的に検討しているわけではありませんが、中長期的な自動車関係諸税の在り方については、与党税制改正大綱において、引き続き検討課題とされているものであると承知をしています。

 政府としては、与党での議論を踏まえ、対応を検討してまいりたいと考えます。

 介護、保育、障害福祉分野の職員の処遇改善についてお尋ねがありました。

 昨今の高水準となる賃上げの動向や人手不足の状況を踏まえれば、介護、保育、障害福祉分野における賃上げを始めとする人材確保への対応は重要な課題であり、岸田政権は、公定価格の見直しを掲げ、これまで累次の処遇改善を講じています。

 引き続き、ICT機器の活用による生産性向上の取組や、経営の協働化等を通じた職場環境改善に加え、令和六年度の介護、障害福祉サービス等の報酬改定に向けても、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組みを構築してまいります。

 バス、タクシーの運転者確保及び物流二〇二四年問題への対応についてお尋ねがありました。

 バス、タクシーの運転者確保については、これまで二種免許取得費用に係る支援や働きやすい職場環境の整備促進などを行っており、更なる取組を図るため、運転者確保のための措置を経済対策に盛り込むこととしております。

 また、物流二〇二四年問題への対応については、本年六月に物流革新に向けた政策パッケージを取りまとめ、このうち緊急的に取り組むべき対策を経済対策に盛り込み、速やかに実行してまいります。

 これらの取組を政府全体で、産業界とも連携しながら積極的に進め、対応に万全を期してまいります。

 インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度の延期、中止を求める署名と緊急提言については報告を受けており、これらは、制度に対して中小・小規模事業者の方が抱えている御不安や懸念の表れと受け止めています。

 免税事業者の不当な取引排除や価格引下げに対しては、税制上の特例措置を設けるとともに、公正取引委員会を始め政府を挙げて取引環境の整備に取り組んでおり、引き続き、こうした対応を的確かつ厳正に実施してまいります。

 また、個人事業者の事務負担については、簡易課税制度や、新たに課税事業者になった方向けの特例措置を用いることで、大きく軽減されると考えております。加えて、IT導入補助金によって、経理事務等のデジタル化支援も行っているところです。

 引き続き、政府一丸となって、制度の施行状況等をフォローアップするとともに、事業者の立場に立って、柔軟かつ丁寧に対応してまいります。

 ゼロゼロ融資の返済負担軽減についてお尋ねがありました。

 ゼロゼロ融資の返済本格化を踏まえ、金融機関等に対し、現場の状況をしっかり踏まえて据置期間延長等の申出に柔軟に対応するよう政府より要請し、応諾率は約九九%となっています。また、中小企業活性化協議会や中小企業の事業再生等に関するガイドラインにより、金融機関の同意の下で、個別事案に応じて債務減免を含む再生支援を実施しています。その際、事業者の経営責任を常に求めることはせず、金融機関が個別に判断しているものと承知をしています。

 今後も、こうした取組を着実に実施し、中小企業の経営改善、再生支援を進めてまいります。

 価格転嫁実現に向けた体制強化についてお尋ねがありました。

 価格転嫁の実現に向けては、下請Gメンを、二〇二一年に百二十名であったところ、今年から全国三百人体制に増強し、年間約一・二万件のヒアリングを行うほか、公正取引委員会の大幅な増員を行うなど、体制を強化してきました。

 また、年に二回の価格交渉促進月間において、年間延べ約三万社の中小企業からのアンケート回答に基づく、発注企業の価格交渉、価格転嫁の状況についての公表や、関係大臣名での指導助言等を実施しています。

 さらに、政権発足以降、パートナーシップ構築宣言を積極的に推進してきた結果、宣言を行った企業が約一千七百社から約三・六万社に増加するなど、価格転嫁に向けた機運醸成にも取り組んでいます。

 今後とも、こうした取組を総合的に講ずることで、価格転嫁対策を強力に推し進めてまいります。

 一次産業の物価高騰対策と鳥獣被害対策についてお尋ねがありました。

 物価高騰対策に関する自治体向けの交付金としては、これまで、高騰する配合飼料の使用量を低減する取組への支援や、土地改良区の水利施設の電気料金高騰への支援など、地域の実情に応じて一次産業支援が行える臨時交付金を措置しており、今般の経済対策においても、こうした措置を通じて、農林漁業者の負担軽減を図ってまいります。

 また、鳥獣被害対策については、鳥獣被害防止総合対策交付金を活用して、猟銃の射撃訓練を含む現場での実践的な訓練や、鳥獣の捕獲に興味を持つ若者等を対象とした現地見学会の開催など、対象者に応じたきめ細かな支援を行い、対策を行う人材の育成を進めてまいります。

 省エネの取組についてお尋ねがありました。

 省エネは、エネルギーコストの上昇に強い経済構造への転換に資するほか、カーボンニュートラルの実現に資することから、重要性が高まっています。

 家庭向けには、断熱窓への改修等の住宅の省エネ化支援措置をしており、自治体においては、地方交付金を活用した省エネ家電への買換え支援が実施されています。

 また、工場も含めた企業向けに、省エネ設備への更新や専門家による省エネ診断を支援し、断熱性を含めた熱効率の向上を促進しています。

 引き続き、こうした省エネ推進を図っていくこととしており、今後取りまとめる経済対策で、必要な施策を盛り込んでまいります。

 マイナ保険証についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証には、患者本人の健康、医療に関するデータに基づいた、よりよい医療の提供が可能となるなどの多くのメリットがあり、我が国の医療DXを進める上で基盤となる仕組みです。

 このため、国民の皆様の不安払拭のための措置を着実に進めるとともに、マイナ保険証のメリットを実感いただけるよう、利用促進に向けた取組を積極的に行ってまいります。

 その上で、現行の健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提との方針にのっとり、ひもづけの総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断された場合には、必要な対応を行ってまいります。

 最低賃金についてお尋ねがありました。

 最低賃金については、着実に引上げを行っていくため、引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかりと議論をいただき、その積み重ねによって、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円になることを目指してまいります。

 消費税の逆進性についてお尋ねがありました。

 消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として導入された軽減税率制度には、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を直接軽減することによって消費税の逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できる、こういった利点があります。

 他方、御党が提案されている給付つき税額控除は、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではなく、消費者にとって痛税感の緩和の実感にはつながらない、このように考えております。

 貧困率の毎年調査と貧困対策の策定についてお尋ねがありました。

 貧困率については、国民生活基礎調査の三年周期で実施する大規模調査を基に算出し、結果を公表しています。大規模調査の毎年の実施は、調査対象となる世帯の方々や調査の実務を担う地方公共団体等の負担に配慮し、慎重な検討が必要であると考えています。

 その上で、生活困窮は、様々な生活上の課題が複合的に絡み合っていることから、貧困率を含め、所得や雇用などに関する様々なデータを組み合わせながら、きめ細かく施策を展開することが重要であると考えています。

 具体的には、こうした様々なデータを活用しながら、生活困窮者自立支援制度における相談体制や住まいの支援等、一人親家庭に対する支援、最低賃金の引上げ、非正規雇用労働者の処遇改善や正規化の支援、社会保険制度における低所得者への配慮措置など、総合的な対策を講じてまいります。

 外国人材の活用及び外国人との共生に係る法整備についてお尋ねがありました。

 現在、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の下に設置した有識者会議において、技能実習制度及び特定技能制度の在り方について議論が行われているところです。政府としては、今後、有識者会議から提出される最終報告書も踏まえつつ、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度の創設等に向けて、政府全体で取り組んでまいります。

 また、我が国が多様性に富んだ活力ある社会をつくり上げていくためにも、外国人との共生社会の実現は重要です。政府としては、昨年六月に決定した外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づく取組を着実に進めてまいります。

 食料・農業・農村基本法の見直し等についてお尋ねがありました。

 農業従事者が減少する中でも、将来にわたって食料を安定供給できる農業を確立する必要があります。このため、基本法の見直しに当たっても、引き続き、規模の大小や経営形態にかかわらず、付加価値向上を目指す担い手を育成、確保していくことが重要であると考えています。

 あわせて、我が国農村地域が将来にわたって維持発展していけるようにしなければなりません。このため、六次産業化、農泊による仕事づくり等を通じて、移住者や関係人口の増大を図りつつ、環境に優しい農業等の取組を促進し、農村のポテンシャルを引き出していくことが重要であると考えています。

 また、食料自給率については、新たな基本法の下、国内生産や国内消費の動向を踏まえつつ、食料の安定供給に係る適切な目標の設定に向け、議論を行ってまいります。

 基金の国庫返納についてお尋ねがありました。

 基金については、行政事業レビューの枠組みの下で、各府省が執行状況を継続的に把握し、適正化に取り組んでおり、令和五年度においては、基金から三千百五億円の国庫返納を見込んでいます。

 御指摘の千四十六億円は、基金残高とそれまでの実績を反映した今後の使用見込みとの差額を指していますが、国庫返納に当たっては、社会経済情勢の変化や緊急時への備えとして残置すべき部分について精査が必要です。今後とも、行政改革推進会議の下、基金について厳しく点検し、不断の適正化に取り組んでまいります。

 防衛力強化のための税制措置についてお尋ねがありました。

 国民の命と我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、五年間で四十三兆円の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化を速やかに実現いたします。

 そのための財源確保に当たっては、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一については、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での協力をお願いすることとしています。

 その実施時期については、昨年末閣議決定した、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施するとの枠組みの下、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向、及びこれらに対する政府の対応を踏まえて判断をいたします。

 少子化対策の財源についてお尋ねがありました。

 少子化対策の財源については、六月のこども未来戦略方針において、まずは、徹底した歳出改革等を行い、その効果を活用しながら、国民に実質的な追加負担を生じさせない、これを目指すという財源の基本骨格、これは既に明らかにしています。先送りをしたとの指摘は当たりません。

 その際、構築する支援金制度は、企業を含め社会経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みです。低所得者に対する配慮措置など、制度設計を速やかに具体化してまいります。

 現下のイスラエル・パレスチナ情勢における我が国からの働きかけの在り方についてお尋ねがありました。

 我が国は、ハマス等のテロ攻撃を断固として非難した上で、一、人質の即時解放、一般市民の安全確保、二、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、三、事態の早期鎮静化、これらを一貫して求めてきています。

 私自身、周辺各国や欧州首脳との電話会談等において、このような日本の立場を説明するとともに、ガザ地区の人道状況改善や事態鎮静化に向けた協力を確認してきており、先般開催されたカイロ平和サミットにおいては、出席した上川外務大臣からも我が国の立場を発信いたしました。

 また、本日、ガザ地区の人道支援のため、日本政府として、一千万ドルの緊急無償資金協力を実施することを決定いたしました。

 イスラエルに対しては、上川外務大臣からコーヘン・イスラエル外相に対し事態の鎮静化を働きかけたほか、辻外務副大臣から駐日イスラエル大使に対して、一般市民の保護の重要性、国際人道法に則した対応、人道支援活動を可能とする環境の確保等について協力を要請いたしました。

 日本としては、引き続き、刻々と動く現地情勢を踏まえつつ、イスラエルを含む関係国との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期鎮静化、人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に続けてまいります。

 防衛装備品の海外への移転についてお尋ねがありました。

 防衛装備品の海外への移転は、国家安全保障戦略に記載しているとおり、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段となるものです。

 こうした観点から、今後どのような形で防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しを行っていくかについて、国際情勢の変化も見据えながら、与党における検討も踏まえ、適切に判断していく考えです。

 旧統一教会による被害の救済等についてお尋ねがありました。

 被害者救済について、法テラスにおける電話相談からの弁護団への紹介や、民事保全申立てに際しての援助など、被害者に寄り添って適切に対応するとともに、海外への送金については、外為法の規制の履行状況等について、情報収集、分析に努めます。

 このように、政府としては、旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでまいります。

 また、御党の議員立法の法案を含め、各党において様々な動きがあると承知をしており、こうした動きも注視してまいります。

 細田前議長と旧統一教会との関係についてお尋ねがありました。

 細田前議長については、御自身と旧統一教会との関係について、これまでに書面による説明を公表されるなどしてきたと承知をしております。

 その上で、政治家と旧統一教会との関係については、それぞれの政治家が必要に応じて説明責任を果たしていくべきであると考えております。

 いずれにせよ、自民党においては、既に旧統一教会及びその関連団体とは関係を持たないという方針を徹底しており、引き続き、未来に向かって関係を絶つということを徹底してまいります。

 党首討論についてお尋ねがありました。

 党首討論の在り方については、国会でお決めいただくことであり、各党各派において御議論いただくべき事柄であると考えておりますが、他方で、党首討論に限らず、具体的な政策の違いを国民の皆様の前で明らかにしながら正々堂々と議論を行っていくことは大変重要であると考えており、私自身もそのような覚悟で国会での議論に臨んでいるところであります。

 企業・団体献金についてお尋ねがありました。

 企業・団体献金については、長年の議論を経て、現在は政党や政治資金団体に対するもののみが認められており、政党等がその受取を行うこと自体が不適切なものであるとは考えておりません。

 企業・団体献金について様々な意見があることは承知しておりますが、この問題は、民主主義の費用をどのように国民が負担していくかという観点から、各党各会派において十分議論をいただくべきものであると考えております。

 御指摘の法案については、議員立法でありますので、まずは国会において御議論いただくべきものであると考えております。

 国会議員の世襲制限についてお尋ねがありました。

 御指摘の国会議員に係る政治資金の世襲制限については、議員の政治活動の在り方と密接に関わる問題であり、また、御党から関係する議員立法が提出されていることから、まずは国会において御議論いただくべきものであると考えております。

 いずれにせよ、国会議員の世襲に関する問題については、基本的には、政治家として有能かつふさわしい人を国民が広く選べるような仕組み、これをどのようにつくるかという問題であり、自民党においても、公募、予備選挙等、積極的な活用を通じて、有為な人材を広く募集、発掘に努めているところであります。

 衆議院の解散手続についてお尋ねがありました。

 衆議院の解散は憲法七条の規定によって天皇の国事に関する行為とされておりますが、実質的に衆議院の解散を決定する権限を有するのは、天皇の国事に関する行為について助言と承認を行う職務を有する内閣であり、いかなる場合に衆議院を解散するかについては、憲法上、これを制約すべき規定はなく、内閣がその政治的責任で決すべきものであると考えております。

 お尋ねの法案については、議員立法としての提出が予定されているものであり、まずはその動向を注視したいと考えております。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 稲田朋美君。

    〔稲田朋美君登壇〕

稲田朋美君 自由民主党の稲田朋美です。

 私は、会派を代表して、岸田総理の所信表明演説に対して質問いたします。(拍手)

 岸田政権が誕生して二年がたちました。四半世紀以上日本経済をすっぽりと包んでいたデフレという分厚い暗雲から、ようやく明るい日差しが見え始めてきました。コロナ禍で五十兆円あったGDPギャップはほぼ解消し、賃金の伸び率も投資も三十年ぶりの高水準です。二度とデフレに戻してはなりません。

 一方で、急激な物価高は国民生活を直撃しています。この対策には最優先で取り組まなければなりません。国民の生活を守り、物価上昇を上回る賃上げを実現し、再び強い経済をつくるために総理がどのような大胆な対策と改革を行おうとしているのか、国民のみんなが知りたいと思っています。

 総理は、聞く力を発揮されると同時に、歴史的な決断も行われました。昨年の暮れの防衛三文書の策定と反撃能力、そしてGDP比二%の防衛費の財源の見通しを立て、戦後の防衛政策の大転換について正しい方向を打ち出されました。我が国が生き延びていくための強い外交、防衛を実現しなければなりません。

 そして、強い地方です。地方の発展なくして我が国の繁栄はあり得ません。ふるさとの水田や山林、海や川が国の基本です。農林水産業を守り、災害に強い地方をつくることが日本の強さにつながります。

 強い経済、強い外交、防衛、強い地方で日本を強くすると同時に、全ての人が社会から取り残されずに大切にされる優しい国であってほしいと願います。昨日よりも今日、今日よりも明日きっとよくなる、そんな国を目指す岸田総理のその道筋を伺ってまいります。

 初めに、強い経済です。

 そもそも、よい経済とは、単にGDPが高いということではありません。究極の目標は、国民の幸福です。世代を超えて、一人一人の健康や安心感、社会とのつながりを高めていくことによって幸福度が高まる経済こそがよい経済だと考えます。国民の幸福感を実現できるように、日本経済を強くするための新たな対策でなければなりません。

 まず、物価高対策はしっかりやる必要があります。円安に加えて原油高もしばらく続く可能性があり、国民の生活を守るため、その具体策を総理に伺います。

 一方で、需給ギャップはプラスに転じています。今後は、赤字国債で足りない需要を埋めるという発想からは脱しなければなりません。更に言えば、現下のインフレ局面において過度の景気刺激策を講じることは、更なるインフレを招く可能性があります。

 むしろ、今起きていること、そして、これから乗り越えなければならないことは、人手不足であり、少子高齢化です。物価高を乗り越えるための賃金と所得の上昇、巨額の内部留保を抱える企業の投資促進、イノベーションの促進とスタートアップ、デジタルも使った人手不足対策、成長分野への労働移動を促進するためのリスキリング、資源価格が上昇する中での気候変動対策。今後の政策は、こうした課題に対する知恵を絞っていくものでなければなりません。

 また、この六月の骨太の方針では、歳出構造を平時に戻していくことが明記されました。先日の会議で総理からも御指示がありましたが、今までの経済対策のような巨額、長期間の基金は見直しの時期に来ています。

 日本経済が歴史的な転換期にある今、日本の強い経済を実現するため、我が国が取り得る新たなインパクトある対策は何なのか、総理のお考えをお尋ねします。

 総理は、税収増を国民に適切に還元すべきと述べておられます。

 そもそも、経済対策そのものが、税収増を適切に国民に還元するものです。ここ二年、補正予算によって合計約六十兆円の追加歳出を行っていることも忘れてはなりません。減税、更なる給付を議論する場合には、現下の食料品などの物価高に苦しむ世帯の日々の消費、生活を守ることに重点を置くべきです。

 税収増の還元というのは新しいメッセージです。広く国民の理解を得て効果的な政策となるよう、総理から丁寧な説明が必要だと思いますが、お考えをお聞かせください。

 経済財政運営の基本的な考え方について申し上げます。

 十年前、日本が自信を失いかけていた中で政権を取り戻した安倍晋三総理は、日本の企業や日本人一人一人の意識を切り替え、自信と主体性を取り戻すことを呼びかけました。女性や高齢者の労働参加が進み、雇用者数は四百万人以上増えました。GDPは史上最高水準、コロナの前はプライマリーバランスの赤字もかつてなく縮小しました。

 私は、積極財政と財政健全化は対立するものではなく、両立すると考えています。インフラ投資を始め、経済成長のために真に必要な政策、感染症や災害などには積極的に財政支出を行うべきです。その中で、一千兆を超える巨額の債務残高を有する我が国は、災害や感染症など様々な危機の際にも対応できる余力をつくっておく必要があります。すなわち、国家のリスクマネジメントからも財政を考えていくべきです。円安、貿易赤字が続く中で、国家の信認と通貨の価値を保ち、国民の安全と安心を守り抜くためには、足下を見られず、隙を見せない経済財政運営を行うべきです。

 総理は、アベノミクスをどのように評価しておられるのか、さらに、リスクマネジメントの観点から、経済財政運営はどのようにあるべきか、お尋ねします。

 次に、財源問題です。

 安倍政権で、消費税を二度引き上げ、その財源で社会保障の充実や幼児教育の無償化を実現しました。岸田政権では、少子化対策の予算の増額を始め、歴史的な政策決定を行い、その財源確保にも取り組んでいます。

 この中で、少子化対策の財源については、実質的に追加負担を生じさせず、社会保障改革により、保険料を抑制していく方針が明確に示されました。つまり、少子化対策のために新たな支援金を入れるが、一方で医療や介護などの保険料を改革によって抑制することで、負担増はなくなるという理解でよろしいのでしょうか。

 支援金などの少子化対策の財源について、この年末には具体案を決定する必要があると思いますが、総理に伺います。

 アベノミクスの大きな柱は女性活躍でした。女性が自信を持ち、社会の中で更に主体性を持って活躍することは、人々の幸福感を上げ、成長戦略の重要な柱です。多様なバックグラウンドや、能力、経験を持った人々が集まり、課題の解決を目指すことで、新たな知恵が生まれ、価値が創造されます。

 また、静かなる有事と言われる少子化を防ぐためにも、格差問題は重要な課題です。

 正規、非正規の格差は、生涯年収の格差となり、結婚の格差となっています。三十代前半の男性の非正規労働者の既婚者の割合は二割、正規労働者の既婚者の割合は六割です。格差解消のために、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し、非正規労働者の正規化の支援に取り組むべきです。

 政府が新しい資本主義の実現を目指す中で、女性の活躍を更に促し、正規、非正規の格差を解消するためにどのような方策を取るのか、総理のお考えをお聞かせください。

 女性活躍に関連して、夫婦の氏について申し上げます。

 海外で活躍する女性や父親の経営を引き継ぐ女性も増えています。夫婦同氏の民法の原則は維持しつつも、つまり、ファミリーネームは残しつつも、婚姻前の氏、すなわち旧姓を社会的呼称として、通称ではなく、法律上の根拠を持って使える制度、婚前氏続称制度を民法を改正してつくるべきだと私は考えます。

 新しいことに挑戦する、何かを変える、ゼロから一に踏み出すことには大きな抵抗もあります。しかし、現状維持からは何も生まれません。よいものを守るためにも、常に改革をする。日本のよき伝統を守るために、創造を恐れてはなりません。

 次に、総理が提唱されているデジタル行財政改革についてです。

 私は、元行政改革担当大臣としてその趣旨に強く賛同いたしますが、ここで、まず乗り越えるべきは、マイナンバーカードをめぐる問題です。

 保険証との統合は、重複投薬の改善など、医療全体のサービスを抜本的に向上させるものです。さらに、銀行口座とひもづけることなどで、例えば、養育費の支払いを確保したり、感染症、災害などの危機が発生した場合に、本当に必要な人に手厚く、迅速かつ効率的に支援を行うことも可能になります。

 マイナンバーカードについては、ひもづけ誤りの総点検をしっかり行い、利用者の気持ちに寄り添って、メリットを丁寧に国民に説明していくべきです。さらに、今後、マイナンバーを活用して、所得や資産に応じて、真に必要な人に支援を行っていくべきではないでしょうか。総理のお考えを伺います。

 橋本龍太郎総理は、行政、財政、社会保障、経済、金融システム、教育の六つの改革を掲げ、その中心となった行政改革では、二十一世紀にふさわしいこの国の形の再構築を図りました。デジタル行財政改革で総理が目指すものは何でしょうか。

 デジタル敗戦という危機的な現状認識があるならば、かなりの抜本的な改革を進めていく必要があります。今こそ戦後の行財政改革の流れを総括し、将来、社会の中核を担う若者たちの声も生かしながら、令和のこの国の形を総理が先頭に立ってお示しになるべきです。

 岸田政権のデジタル行財政改革は、何を改革し、何を目指すのか、総理から、国民が自分事と感じられる分かりやすい御説明をお願いします。

 政治は、制度をつくるだけでなく、それが現場でどう動いているか目配りし、不断に改善していくことも重要です。

 我が国の国際化が進展する中で、これまで日本人を前提とした昭和の時代からの制度が、外国人に適用される際に弊害が顕在化する場合があります。その例として、年金の脱退一時金制度があります。

 日本人は年金制度から脱退することはできません。ところが、外国人が帰国する場合には、年金制度から脱退し、一時金を受給できます。永住者資格がある外国人が年金脱退一時金を受給して帰国し、その後再入国して、収入が少ないという理由で生活保護を受給することも、現在の制度運営上可能となっています。

 脱退一時金制度を始め、在留資格制度や社会保障制度の運用のはざまで生じている課題について実態把握を進め、国民が納得できる制度に向けて改善を図るべきと考えますが、厚労大臣の御見解をお伺いします。

 次に、強い外交、防衛です。

 ロシアがウクライナを侵略し、中東ではハマスによる残虐なテロ行為が発生するなど、暴力により国際社会の秩序が壊される事態が相次いでいます。自らの主張の実現のために暴力を使ってはならないという国際社会の基本原則が大きく揺らいでいます。

 来年大統領選を控えるアメリカは、今後、内向きな姿勢を強めるかもしれません。グローバルサウスと呼ばれる国々も発言力を強めています。国際社会の分断が深まる中、日本は積極的な外交を展開しなければ取り残されてしまいます。

 国連安保理の常任理事国であるロシアは、隣国への核兵器の使用をちらつかせ、中国は、台湾の武力統一の選択肢を放棄しないと明言しています。このような大国の無責任な姿勢が際立つ中で、安保理はもはや頼りにはなりません。

 今後、日本はいかなるグローバルガバナンスを目指すべきでしょうか。その実現のためにどのように対応すべきと総理はお考えになりますか。

 防衛に目を転じると、我が国は、戦後最も厳しい安全保障環境にあります。

 中国は、空母などの軍事力を南西諸島を越えて太平洋に進出させています。尖閣諸島周辺では海警局の船が領海侵入を繰り返しています。北朝鮮は、昨年以降だけでも、ICBM級を含む八十発以上の弾道ミサイルを日本海に発射しました。ロシアは、中国との軍事連携を強化し、我が国周辺での艦艇の共同航行、爆撃機の共同飛行などを行っています。力による一方的な現状変更をいとわない国々に囲まれており、我が国自身の防衛力を強化していかなければなりません。

 総理の英断で、既にかじは大きく切られています。力強い外交、防衛力の抜本的強化、そして総合的な国力の向上と活用により、領土、領海、領空と国民の生命財産を守り抜く総理の御決意をお示しください。

 ウクライナ侵略に際し、ロシアはザポリージャ原子力発電所を攻撃、占拠しました。日本海に北朝鮮から多数の弾道ミサイルが発射される中、現在稼働中の原発の多くは日本海側にあります。

 原発に対するミサイル攻撃への対応は万全でしょうか。自衛隊の警護出動の対象への原発の追加、立地地域への防空システムの配備は不可欠と思いますが、防衛大臣にお伺いします。

 さて、文化芸術の振興は、我が国経済の活性化のみならず、外交、安全保障のツールでもあります。

 例えば、能やバレエは、国境を越えて、誰もがそのすばらしさを共有できる総合舞台芸術です。このような普遍的な芸術分野への支援は、我が国の価値を引き上げ、日本のファンを増やし、文化を通じた安全保障につながるのです。歴史認識など難しい課題のある韓国の尹大統領は、バレエを通じた日韓交流に強い関心と共感を示しました。これが契機となり、来年度は新国立劇場と韓国とのバレエ交流が予定されています。

 外交、安全保障のツールとしても文化芸術を支援していくべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、強い地方です。

 まず、コロナから復活しつつある観光については、人手不足が最大の課題です。デジタル技術を使って人手不足に対応している事業者に対して支援が必要です。

 インフラ対策については、国土強靱化基本法が改正され、豪雪対策についても、財政措置の義務化などを盛り込んだ六十年ぶりの法改正が実現しました。

 人、物の移動を活発化させるため、新幹線を始めとする高速鉄道、高速道路、港湾、空港等が有機的に連結したネットワーク形成が必要です。さらに、成長戦略の観点から、世界一の鉄道技術などのインフラ輸出を進めていくことも重要です。

 強い地方をつくるためには、何より日本の農林水産業が元気にならなければなりません。農業は国の基であり、我が国の農業を維持発展させることは、食料安全保障の観点からも極めて重要です。過度な輸入依存、高齢化などの課題を抱える中で、畑地化を通じた小麦や野菜などの生産拡大、スマート農業の促進が必要です。

 我が国の農業を守りつつ、強い農業をつくっていく、農林水産大臣の御決意を伺います。

 憲法改正は、立党以来の我が党の党是です。

 自衛隊明記、緊急事態条項、合区解消と一票の格差、教育無償化の四項目のたたき台を提案しています。特に、自衛隊の明記については、現在の厳しい安全保障環境と防衛力の抜本的強化の必要性に鑑みて、各党との協議を加速化して速やかな実現を図った上で、更に踏み込んで検討をしていく必要があります。

 憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という部分は、国際社会の現実、特に、最近の日本を取り巻く安全保障環境とは全く相入れないと言わざるを得ません。日本の利益を侵害しようとする外国の行為に対して、まずは自らの手で自らを守る姿勢を憲法上明らかにしなければなりません。

 また、一票の格差についても、人口比例を厳格に考える最高裁判例の積み重ねの中で、課題の多い地方の国会議員が減らされる一方、都市部でも選挙のたびに選挙区が変わるといった弊害が出てきています。選挙民とのきずなを背景にしてその声を国政につなげるのが、代表制民主主義における国会議員の役割ではないでしょうか。

 九条及び一票の格差についての総理の御所見と、憲法改正実現に向けての御決意をお示しください。

 さて、このように、日本を強くすると同時に、全ての人が社会から取り残されずに大切にされる、寛容で温かい、優しい国を目指すべきです。

 我が国のシングルマザー家庭の貧困率は、OECD諸国で最低レベル。先進国として恥ずべきことです。子供の貧困を解消し、貧困の連鎖を断ち切ることで、全ての子供の可能性が十分に発揮される環境をつくっていくべきです。これは少子化対策の土台にもなるはずです。

 我が国では、子供食堂や子供宅食、フードバンクなどの取組が、主に貧困対策の観点から、全国で広がりつつあります。一方、米国や欧州では、環境面を含め総合的な観点から、食品ロスを削減するために、食品寄附に起因した法的責任を問わない、よきサマリア人の法や、税制優遇措置などを導入しています。食品ロスの削減の推進に関する法律制定から今年で五年。我が国も、法的措置を含め、戦略的に食品寄附を促進していく必要があります。

 児童虐待についても、直近の相談対応件数は二十万件を超えるなど、年々厳しさを増しています。児童虐待により子供が命を落とすことは絶対にあってはなりません。

 食品ロスへの積極的な取組の方向性、及び年末のこども大綱でも大きな論点となる一人親家庭の自立支援、児童虐待の根絶に向けて、どのような方針で臨まれるか、総理の見解をお伺いいたします。

 二〇二三年の日本のジェンダーギャップ指数は、百四十六か国中百二十五位と過去最低でした。中でも、政治分野における女性参画は先進国で最低です。国民の過半数が女性である我が国において、社会の代表であるべき衆議院の女性比率が僅か一〇%。これでは正しく民意を反映できていない、つまり、民主主義がゆがんでいると言っても過言ではありません。

 政治分野における女性の割合は、社会の多様性の表れでもあります。多様性を許容する社会をつくることが、日本の閉塞感を打破し、活性化させ、人々の幸福感を増し、世界における日本の価値を高めることにつながるのです。政治分野における女性の参画についての意義、その推進の方策について、総理の御見解を伺います。

 旧統一教会について、政府が解散命令を東京地裁に請求したことで、損害の申出が増加する可能性があります。救済を実効あるものにするためには、損害賠償請求を容易にするなど、被害者に寄り添うことが重要だと考えますが、どのように対応されますか。

 また、教団がその財産を海外に持ち出すのではないかとの懸念も示されており、議員立法の動きがあります。政府として、こうした懸念にどのように対応されるのか、総理にお伺いいたします。

 強い日本を取り戻し、全ての人が社会から大切にされ、多くの選択肢が与えられる国をつくることが、真の豊かさを実現することであり、世界から尊敬される国になることです。

 真の保守は、復古主義でも排他主義でも現状維持でもありません。我が自由民主党は、立党以来、日本を代表する保守政党であり、野党時代には、新綱領を策定し、常に進歩を目指す保守政党であると宣言しました。

 今、この国の保守が揺らいでいるのではないでしょうか。保守とは、寛容で人に優しく、多様性を認め、自分は間違うかもしれないとの謙虚さを持ち、だからこそ、先人が積み上げたものに敬意を払いつつも、よりよい未来に向けて断固改革を進めていくことだと確信します。

 岸田総理には、日本の保守のあるべき姿を示し、これからも毅然と決めるべきことを決め、国家国民のために邁進されますことを切にお願いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 稲田朋美議員の御質問にお答えいたします。

 経済対策についてお尋ねがありました。

 我が国経済は、コロナ禍から経済社会活動の正常化が進む中で改善が続いているものの、物価高が続く中、国民の消費や投資動向は力強さに欠ける、こうした状況にあります。

 エネルギー価格の上昇については、九月には、年内の緊急措置として、リッター百七十五円をガソリン価格の実質的な上限とするため、補助を拡大しました。この措置を、電気、都市ガス料金の激変緩和措置と併せて来年春まで継続をいたします。

 また、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図るとともに、自治体が地域の実情に応じてきめ細かく生活者や事業者を支援できるよう、物価高対策のための重点支援地方交付金を追加いたします。

 このような、不安定な足下を固め、物価高を乗り越えるための施策を総合経済対策に盛り込み、実行してまいります。

 強い経済を実現するためのインパクトある対策についてお尋ねがありました。

 我が国経済は、三十年来続いてきた低物価、低賃金、低成長のコストカット型経済から、持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革を果たす、またとないチャンスを迎えています。

 このため、コストカット型経済からの完全脱却に向けて、思い切った供給力の強化を、三年程度の変革期間を視野に入れて、集中的に講じていきます。

 具体的には、半導体や脱炭素のように安全保障に関係する大型投資を始め、特に二年から三年以内に供給力強化に資する施策に支援措置を集中させ、変革期間の呼び水といたします。

 さらに、賃上げ税制を強化するための減税措置や、戦略物資について初期投資だけでなく投資全体の予見可能性を向上させる過去に例のない投資減税、特許などの所得に関する新たな減税制度、人手不足に苦しむ中堅・中小企業の省力化投資に対する補助制度を始め、抜本的な供給力強化のための措置を講じてまいります。

 税収増の還元についてお尋ねがありました。

 我が国経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えています。しかし、現時点では、賃金上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねません。

 このような認識の下、デフレ脱却のための一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の御負担を緩和したいと考えております。その際、過去二年のコロナ禍における税収の増収分の一部を分かりやすく国民に還元できればと考えております。

 国民への還元の具体化に向けては、近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を指示いたします。

 アベノミクスの評価と経済財政運営の考え方についてお尋ねがありました。

 アベノミクスは、デフレでない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大しました。

 岸田政権では、アベノミクスの成果の上に、持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革を果たすため、思い切った取組を講じてまいります。

 また、有事に十分耐えられる財政基盤を平時より備えることは不可欠です。だからこそ、財政運営に対する市場の信認が将来にわたって失われないよう、経済再生と財政健全化の両立に取り組んでまいります。

 少子化対策の財源についてお尋ねがありました。

 当面の集中的な取組の財源については、徹底した歳出改革等を行い、その効果を活用する中で、新たな支援金制度を構築し、国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指すこととしています。

 法制化が必要なものは、次期通常国会への法案提出に向けて準備をし、制度設計を含め、速やかに具体化してまいります。

 女性活躍の推進と正規、非正規雇用労働者の格差解消に向けた取組についてお尋ねがありました。

 女性活躍は、我が国の経済社会の持続的発展において不可欠であり、新しい資本主義の中核にも女性活躍と所得向上を位置づけています。

 非正規雇用労働者に女性が多いこと等も踏まえ、非正規の更なる処遇改善に向けて、正社員化に取り組む事業主への支援を講じるとともに、同一労働同一賃金の遵守徹底を引き続き図ってまいります。

 こうした取組を含め、女性版骨太の方針二〇二三に基づき、女性の所得向上、経済的自立に向けた取組を一層強化してまいります。

 マイナンバーカード及びマイナンバー制度についてお尋ねがありました。

 マイナンバー情報総点検については、個別データの点検を行っており、原則、本年十一月末までをめどに終えるよう、点検実施機関を支援し、政府を挙げて対応してまいります。

 マイナンバーカードの活用に当たっては、国民の皆様の御理解が最も重要であり、データに基づいた、よりよい医療の提供が可能となるなどのメリットについて、積極的な周知、広報に取り組んでまいります。

 また、マイナンバーを利用し、行政機関間で情報連携することで、正確な所得情報等に基づいた、迅速かつきめ細かい給付が可能となります。マイナンバー制度は、公平公正な社会を実現するデジタル社会の基盤であり、国民の信頼を得つつ、しっかりと推進してまいります。

 デジタル行財政改革についてお尋ねがありました。

 今月初め、先進的なICT教育に取り組む方々との対話という形で、教育現場でのデジタル利用の課題や、政府に期待される役割についてお話を伺いました。多様なニーズに寄り添い、質の高い教育と現場負担の軽減を両立するためには、デジタル技術の力もかりて改革を進めていく必要があります。

 このように、人口減少が進む中、教育のみならず、交通、介護など様々な分野において、デジタルを活用し、利用者起点で行財政の在り方を見直すことで、公共サービスの維持強化を図ることが求められています。規制や制度の徹底した改革、EBPMを活用した予算事業の見える化にも取り組み、社会変革の実現、それを支える令和版の新たな行財政の構築、これを目指してまいります。

 日本が目指すべきグローバルガバナンスの在り方及びその実現に向けた対応についてお尋ねがありました。

 国際社会が複合的な危機に直面する今、世界を分断、対立ではなく協調に導くため、人間の命、尊厳が最も重要であるという、誰もが疑いようのない人類共通の原点に立ち返り、人間の尊厳を中心に据えた外交を推進してまいります。

 まず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化すべく、G7や日米豪印といった同盟国、同志国との連携を推進しつつ、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々を含む国際社会の幅広い支持と関与を得るため、多様性や包摂性を重視するきめ細かな外交を通じて、経済活動の深化を含む多角的な外交を推進してまいります。

 また、強く実効的な多国間主義を推し進めるとともに、安保理改革を含む国連機能の強化に取り組み、協調のための国連を実現してまいります。

 また、グローバルな危機により甚大な影響を受けている脆弱な国、人々に寄り添ったきめ細かい協力を行うため、人間の安全保障の理念に基づき、人間中心の国際協力を着実に進めていきたいと考えます。

 我が国の安全保障環境及び安全保障政策についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命や暮らし、そして我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くこと、これは政府の最も重要な責務です。

 このために、まずは、首脳レベルを含め、多層的に積極的な外交を展開することによって、我が国にとって望ましい安全保障環境を実現していきます。

 同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要です。仮に我が国への攻撃が行われたとしても、我が国が主たる責任を持って対処できるよう、二〇二七年度までに防衛力の抜本的な強化を進めてまいります。

 外交力、防衛力を含む総合的な国力を最大限活用し、三文書で示した施策に早急に取り組んでまいります。

 外交、安全保障と文化芸術についてお尋ねがありました。

 文化芸術は、我が国、国民が好意的に受け入れられる国際環境の醸成のためにも大変重要であると考えています。

 このため、我が国の文化芸術団体やクリエーター等による国際発信、東アジア文化都市を通じた日中韓の交流、G20を始めとした文化大臣会合への参画など、様々な取組を進めているところです。私自身、G7広島サミットにおいては、生け花や食など日本文化の魅力を伝える行事を主催し、各国首脳を含め参加者から歓迎を受けました。

 今後とも、我が国の平和や安全保障への寄与も目指し、文化芸術への支援を図ってまいります。

 憲法九条や一票の格差をめぐる憲法改正への決意についてお尋ねがありました。

 憲法は、あるべき国の形を示す国家の基本法であり、御指摘のように、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増し、あるいは、人口減少や東京への一極集中が進むなど社会が大きく変化する中で、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうかを考えることは大変重要であると考えます。

 憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要です。国会の発議に向けた手続を進めるためにも、国会においてこれまで以上に積極的な議論が行われることを期待いたします。

 また、自民党総裁としてあえて申し上げれば、党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意です。

 食品ロス削減及び一人親家庭の自立支援、児童虐待の根絶についてお尋ねがありました。

 二〇三〇年度までに二〇〇〇年度比で食品ロス量を半減させる政府目標達成に向け、関連する施策パッケージを年末までに作成することとしており、御指摘の食品の寄附を促進させるための法的措置を始め、政府全体で検討を加速化させてまいります。

 また、一人親家庭への支援や児童虐待防止については、就業支援や子育て・生活支援などによる一人親家庭の貧困の解消、連鎖の防止や、児童虐待の相談支援体制の強化などにより、どのような困難があっても子供への虐待につながらないようにしていくことが必要であり、こうした方針をこども大綱に盛り込みたいと考えています。

 政治分野の女性参画についてお尋ねがありました。

 政治分野における男女共同参画の推進は、政治に民意をより一層反映させる観点からも大変重要です。

 政府としては、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の趣旨も踏まえ、女性候補者の割合が高まるよう、各政党に対する自主的な取組の要請、国や地方議会における女性議員の数の見える化や女性議員の比率向上の好事例の広報などを着実に進めてまいります。

 旧統一教会による被害の救済等についてお尋ねがありました。

 被害者救済について、法テラスにおける電話相談からの弁護団への紹介や、民事保全申立てに際しての援助など、被害者に寄り添って適切に対応するとともに、海外への送金については、外為法の規制の履行状況等について、情報収集、分析に努めてまいります。

 このように、政府としては、旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでまいります。

 また、自民党においても被害者救済の実効性確保について御検討いただいていると承知をしており、この経過も注視してまいりたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣武見敬三君登壇〕

国務大臣(武見敬三君) 稲田朋美議員の御質問にお答えをいたします。

 年金の脱退一時金についてお尋ねがありました。

 御指摘の制度の運用のはざまで生じる課題について、関係省庁とも連携しつつ、実態把握等を進めて必要な改善を図ることは重要と考えております。

 脱退一時金は、外国の方々に特有の事情を踏まえて例外的に設けられている制度でございます。厚生労働省としては、必要な実態把握を行いながら、政府内における在留資格に関する議論の状況等も踏まえ、次期年金制度改正に向けて、必要な検討を行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣木原稔君登壇〕

国務大臣(木原稔君) 稲田朋美議員にお答えいたします。

 原子力発電所の防護についてお尋ねがありました。

 弾道ミサイル攻撃に対しては、自衛隊は、イージス艦によって我が国全域を防護し、状況に応じてPAC3を原発近傍に機動的に展開することが考えられます。

 ウクライナ侵略における教訓も踏まえ、ミサイルの迎撃能力を高める不断の努力や、平素からの共同訓練による警察との連携強化等を継続していくほか、昨年十一月に福井県の大飯原発近傍地において実施したようなPAC3の機動展開訓練を行うことが重要だと考えています。

 警護出動の対象への追加、原発近傍への部隊配備については、様々な観点から検討する必要がありますが、防衛省・自衛隊として、いかなる事態にも適切に対処できるよう取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣宮下一郎君登壇〕

国務大臣(宮下一郎君) 稲田朋美議員の御質問にお答えをいたします。

 強い農業をつくっていくための取組についてのお尋ねがございました。

 我が国の農業は、食品産業等の関連産業とともに、国民に食料を安定的に供給する役割を果たしながら、地域の経済を支えています。

 しかしながら、昨今では、世界の人口増加や気候変動等の食料安全保障を取り巻く環境の変化、環境等の持続可能性の取組への関心の高まり、国内の人口減少に伴う食料供給を支える力への懸念など、農業、食品産業を取り巻く情勢は大きく変化しています。

 こうした背景を踏まえ、本年六月に政府で決定した食料・農業・農村政策の新たな展開方向において、平時からの国民一人一人の食料安全保障の確立、環境等に配慮した持続可能な農業、食品産業への転換、人口減少下でも持続可能で強固な食料安定供給基盤の確立という新たな政策の方向性を整理し、食料・農業・農村基本法の見直しを行うこととしております。

 具体的には、海外依存度の高い品目の生産拡大やスマート農業の推進に加え、肥料、飼料等の生産資材の確保や、農産物、食品の輸出の促進、みどりの食料システム戦略による環境負荷軽減に向けた取組の強化、農村コミュニティーの維持や農村インフラの機能確保等により、我が国の農業を維持発展させつつ、強い農業をつくってまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 吉田はるみ君。

    〔吉田はるみ君登壇〕

吉田はるみ君 立憲民主党・無所属の吉田はるみです。

 会派を代表して質問させていただきます。(拍手)

 岸田総理は、先日、都内のスーパーを視察されたと伺いました。ちょっと違和感がありました。野菜や肉、確かに高くなっている、思い切った対策を実行するとコメントされましたが、今回の経済対策で、その解決策は残念ながら見当たりません。いつまで続くか分からない物価高に加え、増えない収入の中、限られた家計でやりくりして、いかに安く食事を作るか、頭を悩ませている私たちの声は届いたのでしょうか。

 私が生活にこだわるには訳があります。私の実家は八百屋、私は八百屋の出身です。父は、七人兄弟の長男として、家族を養うため、高校進学を諦め、中学を卒業してすぐ十五歳で、おじいちゃんが始めた八百屋を継ぎました。私も小学校の頃から小さな八百屋の店に出て、家族総出で働きました。

 一円を稼ぐのに、汗と涙を流し、一年中、朝から晩まで必死に働く父、母の背中を見て育ちました。今日は、一円の重みをかみしめている八百屋の娘として、生活の現場の声を代弁し、岸田総理に質問します。

 大阪万博の建設費が、当初の一・九倍、千百億円の予算超過となり、総額二千三百五十億円に膨らむことが明らかになりました。身を切る改革どころではありません。このまま税金投入が続けば、天井知らずの無駄遣いになります。

 東京オリンピック、大阪万博、招致を見送った札幌オリンピックなど、高度成長期の夢をもう一度という願いかもしれませんが、今、日本が置かれている現実は、当時とは全然違います。少子高齢化で、世界でも極めて深刻な人手不足問題を抱えています。この現実から目をそらし、かつての古きよき時代で思考が止まっていませんか。要するに、政治の貧困さがこの万博予算倍増の問題に表れています。

 そもそも、運営費については国庫による負担や助成は行わないとの政府の閣議了解がありましたが、二百億円の警備費が更に国の負担として追加されました。私たちは今年一月の時点でこれ以上建設費が増えないと聞いていましたので了としましたが、当初予算の一・九倍、ほぼ倍になる万博予算は異常です。岸田総理、この予算倍増を政府はそのまま認めるのですか。お答えください。

 また、国民の負担が増える以上、これ以上の増額は一円たりとも認めないことをこの場でお約束すべきではないですか。岸田総理、お答えください。

 今回の所得減税については、期限付であるため、偽装減税との批判も出ています。つまり、法人税、所得税、たばこ税の増税によって財源を確保する予定の防衛増税は、この先ずっと続く恒久的な国民負担となる。その一方で、今回、所得税の一時的な減税を検討しています。防衛増税には所得税増税も含まれています。全くちぐはぐです。

 岸田政権の支持率が低いのは、このように、岸田総理が何をやりたいのか分からず、十年後の暮らし、十年後の日本の未来が見えない、子供たち、孫たちはどうなってしまうのかと、国民が怒っているからではないでしょうか。

 政府が検討し、年末に結論を出す可能性がある高校生子育て世帯の扶養控除の廃止は、子育て家庭への事実上の増税になります。ついては、この扶養控除の廃止と高校三年生までの児童手当の延長をセットで実施した場合、トータルのプラスマイナス、差引きをして、負担増になるのはどのような対象で、何割ぐらいの高校生子育て世帯でしょうか。岸田総理、お答えください。

 また、政府は、支援金制度と名づけ、社会保険料の引上げを検討しています。つまり、少子化対策の財源確保のために、子育て家庭を含む幅広い対象への負担増、事実上の増税を検討しています。

 まだあります。七十五歳以上の後期高齢者が支払う医療費窓口負担を二割へ引き上げ、介護保険サービス利用料の自己負担二割の対象者を拡大するなど、高齢者の自己負担増を政府は年末に決める可能性があります。私の地元、杉並区の国政報告会では、御高齢の方から、これ以上の負担はやめてほしいという声をいただいています。年末に、このような介護保険や後期高齢者医療の自己負担アップを決定するのですか。岸田総理、お答えください。

 次に、自民党が提出した埼玉県の児童虐待防止条例の一部を改正する条例案についてお伺いします。

 自民党県議団は、子供を家などに残したまま保護者などが外出するといった放置は虐待に当たる、具体的には、子供たちだけでの自宅での留守番、子供だけ家に残してごみ捨てに行く行為、子供たちだけで公園などで遊ぶこと、子供たちだけでの登下校などが該当するとしていました。

 この基準では、私は何度、娘を虐待したことになるんでしょうか。娘が小さい頃、一人で育児を担うという、いわゆるワンオペ育児をしながら働いており、また、当時、母は五十歳を過ぎて脳梗塞で倒れ障害が残り、父もその母の介護のために動けず、私は誰も頼れませんでした。育児も家事も自分一人でやるしかなく、買物に行くとき、娘を一人家に残したことは一度だけではありません。後ろ髪引かれる思いで、早く帰らなければと募る心配、子供の顔を見たときの安心と、ごめんねという罪悪感と。そんな母親の気持ちや子育ての現場の現実が分かりますか。

 この現実離れした、子供だけでの留守番を児童虐待として禁止するこの条例を埼玉県議会の自民党は提出し、委員会で賛成しました。公明党もこれに賛成しました。残念です。与党は、時代に背を向けているのではないですか。

 今の時代は、子供を家族とともに社会全体で支える時代です。私たちは、十年以上も前からチルドレンファーストを掲げてきました。やっと最近、自民党も私たちのチルドレンファーストの考えに近づいてきたのかなと思っていましたが、今回の件を見ると、やはり自民党は変われないのですね。

 現場という言葉も総理所信演説の中で多用されましたが、子育て現場の実態や当事者の苦労を全く分かっていません。埼玉県の虐待禁止条例改正案は撤回されましたが、議員団長は会見でゼロベースと語り、再度提出する可能性を残しています。この条例案は自民党の子育てに対する考え方ですか。岸田総理もこの埼玉県議団と同じ考えですか。お答えください。

 岸田総理、一人親家庭の苦労、子供の貧困の実態を御存じでしょうか。

 私は、地元で子供食堂を手伝っております。そこにはシングルマザーの方々も大勢いらっしゃいます。コロナ禍で、子供食堂は、その場で食事をするスタイルから食材配布に切り替えました。しかし、コロナ禍が明けても、食事をするスタイルではなく、食材配布を続けてほしいという御要望が多いのです。なぜだか分かりますか。それは、食事はその場で一回だけ、つまり一食限りですが、食材をもらえば数日間の食料になり、何食分も助かるからです。自転車の前後に、そしてハンドルにたくさんの食材、食料を積んでいかれるお母さんたち、子供だけで食材を取りに来る子もいます。

 私たちは、子供の貧困対策の切り札として、昨日、子供一人当たり月一万円増額する児童扶養手当増額法案を国会に提出しました。この実現には、国費で年五百二十億円、自治体負担を加えると公費で千五百億円かかります。

 政府は、年末に決定する少子化対策財源のうちの五千億円の中で子供の貧困対策予算を手当てするとしています。そのうちの千五百億円をこの児童扶養手当増額に充て、低所得の一人親家庭、貧困に苦しむ子供たちをしっかり支えていただけませんか。岸田総理の見解を伺います。

 私たちは、先週、経済対策を発表しました。立憲民主党の経済対策は、児童手当、月一万五千円を高校生に今月十月から支給を前倒し実施する。また、低所得子育て家庭の子供一人当たり五万円の子育て世帯生活支援特別金を再給付する。さらに、小学校の給食も十月から無償化する。介護職員、障害福祉職員、保育士などの月給も一万円引き上げる。これらを十月から遡り、恒久政策として実施します。またさらに、十月から奨学金の返済利子をゼロにし、加えて奨学金の返済額を所得控除の対象とします。

 このような政策こそが、ばらまきではなく、限られた予算を有効に使い、必要な方に届ける経済政策です。

 立憲民主党は、公立中学校の給食の無償化を進めるべきと訴え、三月二十七日に、議員立法、学校給食無償化法案を国会に提出しました。現在では国の約三割の自治体で給食の無償化が行われていますが、今のままでは、生まれる地域、育つ地域、そして経済的な格差で子供に不利益が生じます。小中学校の給食の無償化は国の責任で実現すべきと考えます。岸田総理のお考えを伺います。

 また、政府案では、授業料後払い制度の創設、年収六百万円までの多子世帯や、理工学部、農学部系の学生への授業料減免等の拡大にとどまり、対象者が少なく、不十分で、安心して学べる環境には到底つながりません。立憲民主党が提案する高校授業料無償化の所得制限撤廃、国公立大学の授業料無償化を実現すべきです。この二点について、岸田総理の見解を伺います。

 私たちは、本年六月に、給特法廃止・教職員の働き方改革促進法案を衆院に提出しました。現在、学校現場では、教職員の過労死ラインを超えた長時間労働や膨大な業務量が常態化し、休職者の増加や教職員希望者の減少などによって、深刻な教員不足に陥っています。ついては、事実上、残業代がほとんど払われず、長時間労働の原因となっている給特法を廃止して、教員の業務量削減や教職員の確保をすべきです。岸田総理、この法案を、与野党協力して成立させようではありませんか。

 私は、二週間に一度、国政報告を行っておりますが、毎回御参加者に伺います。異次元の少子化対策、何がありますかと聞くと、会場はしいんと静まり返ってしまいます。そう、国民にはぴんときていないのです。

 結婚を望む人が結婚を決める際の重要な要素の一つは収入ですが、岸田総理には賃金アップの決定打がありません。年収四百万円以下が労働者の約半数を占め、十月には四千品目以上の食品の値上げが行われ、生活が苦しいのです。目指すべきは、徹底的な中小企業支援と、そして労働者の賃上げ、賃上げ、賃上げです。岸田総理、思い切った賃金引上げを講じるべきと考えます。見解をお聞かせください。

 また、非正規と正規雇用の賃金格差が、結婚することを困難にし、少子化に拍車をかけている実態を政府は直視すべきです。立憲民主党の経済対策の中で、正規、非正規、男女間賃金格差の是正として、同一価値労働同一賃金の推進と非正規雇用の入口規制導入など、前倒しプランを提案しています。非正規雇用の賃金引上げや、希望する非正規雇用の方が正規雇用になる方策について、岸田総理の見解をお伺いします。

 十月十七日、東近江市の市長が次のような発言をされました。不登校になる大半の責任は親にある。この発言は、不登校に悩む子供たち、そして保護者の方々を大変傷つける発言です。岸田総理、不登校は親の責任ですか。お答えください。

 今回の第二次岸田改造内閣の目玉は、五名の女性大臣です。御期待申し上げます。

 しかし、一方で、残念だったのが、副大臣、政務官に女性はゼロでした。結果、内閣府、復興庁、外務省以外の国の行政機関では、大臣、副大臣、政務官が全て男性ということになります。

 総理は適材適所と説明されましたが、改めてお伺いします。自民党、公明党の女性議員には、副大臣、政務官を務められる人材がいないということでしょうか。それは余りにも失礼な話ではないでしょうか。岸田総理の見解を伺います。

 報道され、目立つところには女性を登用し、男女共同参画を進めているように見せて、一方で、見えないところでは相変わらず男性主導の派閥政治が続いている。昨日の総理の演説三十分の中で、女性という言葉はたった一回でした。実は何も新しいことはない、変われない自民党の体質。総理所信演説で述べられた、変化の流れを絶対に逃さない、つかみ取るという御決意が空虚に響きます。外だけよく見せるメッキのようです。いずれ剥がれてしまうのではないでしょうか。

 日本のジェンダーギャップは、今年、百四十六か国中百二十五位となり、去年の百十六位から後退しました。自民党や岸田政権のジェンダー平等は、世界基準から大きく立ち遅れています。

 母として、妻として、娘として、子育てや介護、家事を担い、そして働く人として生活を支え、たくさんの役割を担いながら、この時代を歯を食いしばって生きている、一生懸命に生きている女性たちの声が届いていますか。男性優位の時代を生きた世代が主導する、男性に都合のよい女性活躍では、社会は何も変わらないのです。

 私は当選一期ですが、こうして一国の総理大臣に直接質問する機会をいただきました。また、立憲民主党は、今週から始まる予算委員会でクオータ制を導入し、質問者の半数は女性議員です。

 私たちは、既に、二〇二二年六月、選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案を提出しています。岸田総理も、選択的夫婦別姓を推進する議員連盟の顧問を務めていらっしゃいます。早期の実現を求めます。総理の見解をお聞かせください。

 また、同性婚を認めない現行制度について、違憲又は違憲状態とした地裁判決が相次いでいます。同性婚を法制化する婚姻平等法案を今年三月六日に提出していますが、その早期成立が是非必要です。見解を求めます。

 細田前議長は、先日の会見で、セクハラの被害者が名のり出ていないからセクハラはなかったと発言されました。これは、被害女性が名のり出ることが困難である根本的なセクハラ問題を理解していない発言であり、受け入れることができません。優越的地位にある男性からセクハラを受けた被害女性が簡単に名のり出ることはできません。この細田前議長の発言に象徴されるように、自民党や岸田政権の考え方は時代遅れで、世界では通用しないのではないですか。

 岸田総理に伺います。名のり出ていないからセクハラはなかったとの細田前議長の発言は、問題ではないでしょうか。岸田総理の自民党総裁としての見解をお伺いします。

 また、このように、岸田政権は、女性だけでなく、子供の人権も軽んじていませんか。

 本日、ジャニーズ性被害者の方々が傍聴にいらっしゃっています。誹謗中傷を受けながらも勇気を出して発言してくださった被害者の方々のおかげで今回の深刻な問題が明らかになり、芸能界のみならず、子供への性加害再発防止の大きなきっかけとなりつつあります。この問題に関しては、現役のタレント、アイドルを夢見る若者、そしてファンの方々も悩み苦しんでおられます。

 ジャニーズ性加害問題は、既に三百二十五人が被害を申請し、これは世界最大規模の子供への性加害事件です。国連の人権理事会の二人の専門家が来日し、被害者七人にヒアリング調査を行い、八月四日の記者会見で、政府が被害者救済の責任を負うべきと指摘しましたが、岸田総理や政府は、今日に至るまで、ジャニーズ性被害の問題についてコメントせず、一般論をおっしゃるのみです。

 私たちは、五月十七日以降、八回、国対ヒアリングという形で被害者七人からヒアリングをさせていただき、再発防止策を考えました。そのヒアリングの中で、私の胸に残った言葉があります。今後、子供たちが、僕のような性被害に遭わないようにするための法律を是非国会で作ってください、守られていると安心できる法律を作ってほしい。この思いに応えたいです。

 私たちは、警察への通報義務について、保護者以外の地位を利用した第三者による子供への性的虐待などについても対象とする議員立法、児童虐待防止法改正法案を、本年六月、国会に提出し、与党に協議を申し入れましたが、まだ実現していません。

 そこで、岸田総理にお伺いします。

 有効な再発防止策を講じるためには、岸田総理や加藤こども政策担当大臣が、ジャニーズ性被害の被害者に会っていただき、ヒアリングすべきではないでしょうか。

 また、一般論の、子供への性暴力は許されないという従来のコメントではなく、個別のジャニーズ性加害問題についてコメントすべきではないでしょうか。

 さらに、被害者からの要望を受け、私たちが国会に提出した児童虐待防止法改正法案について、与野党協議に応じていただき、成立させましょう。

 以上三点、お伺いいたします。

 実際、子供に接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度、DBSを導入する日本版DBS法案が来年以降に先送りされてしまいました。

 性犯罪の前科が二つ以上ある者のうち、子供に対する性犯罪を繰り返す率は八五%と非常に高く、一人の人が何人もの子供へわいせつ行為を繰り返している実態があります。性被害はその人を一生傷つける、魂の殺人です。この法案提出が見送られたと報道された先月以降も、わいせつ行為や盗撮で逮捕者が出ており、子供の性被害が後を絶ちません。性犯罪は起きてからでは遅いのです。ついては、日本版DBS法案について、来年の通常国会に必ず提出すると、岸田総理、この場でお約束ください。

 自民党の杉田水脈議員が二〇一六年にSNSに投稿した書き込みについて、札幌法務局は九月七日にアイヌ民族への人権侵犯があったと認定、大阪法務局も在日コリアンに関する投稿について人権侵犯を認定しました。

 ついては、自民党総裁として、岸田総理が、杉田議員に対して、記者会見などをするよう働きかけることや、一定期間は党の役職に就かないというような、何らかの対応をするお考えはありませんか。

 秋本真利議員は、国会で質疑し、洋上風力発電業者に便宜を図った見返りとして、風力発電会社の元社長から六千万円余りに上る借入れや資金提供を受けた疑いがあるとして、受託収賄の疑いで先月逮捕されました。国会の権威を失墜させる前代未聞の事件です。

 自民党を離党したとはいえ、環境副大臣や外務政務官を務められた、政府の中にいらっしゃった方です。自民党が事態の真相を究明すべきではないでしょうか。岸田総理の見解を伺います。

 政府は、九月に、働き損を解消する百六万円の壁対処として、従業員一人当たり最大五十万を事業主に助成することを決定しました。また、百三十万円の壁対策としては、連続二回までは扶養内にとどまれるようにするとのことです。

 しかし、これらの措置は二〇二五年の年金制度改正までのつなぎの措置であり、多くの国民は、二年後はどうなるのかと不安になっています。立憲民主党は、企業要件を撤廃し、百三十万円の壁をなくすことを提案しています。

 岸田総理、結局、百三十万円の壁はなくすのですか、なくさないのですか、いつそれを行うのですか。お答えください。

 次に、老いる分譲マンションの問題です。

 日本の築三十年以上の分譲マンションは成約物件の約四〇%を占めます。どのマンションも修繕費積立てがありますが、大半の物件は、入居直後は修繕積立金が安く、年ごとに負担額を引き上げる段階増額積立方式を採用してきました。ところが、建物の老朽化と住民の低所得化が重なり、全国で、こんなに払えないと積立金不足が発生しております。改修不能になる事態も起こっています。国交省はようやく、毎年同じ額を積み立てる均等積立てを推奨を始めましたが、時既に遅し。危険な老朽化マンションが増えています。

 これは安全の問題でもあります。総理、管理組合の自立支援など、補助やインセンティブを与えることも検討すべきではありませんか。見解を伺います。

 立憲民主党は、今年に入って、三十三本の議員立法を提出しており、今日だけでも、泉代表と私を含め、二十一本の議員立法に触れながら、多くの具体的な提案をしました。

 私たち国会議員は、国民への奉仕者です。互いの違いを力に変え、建設的で、真っ当な国会議論をしましょう。国民生活を支え、誰も取り残さない、国民一人一人が大切にされる日本を未来につなぐ責任があります。

 今の政府では、日本の十年先、三十年先の未来を描けず、希望を持てない。目先の選挙や政局に右往左往し、その場しのぎの、場当たり的で、継ぎはぎだらけの岸田政権の政策では、根本的な少子高齢化や日本経済の失われた三十年は解決できません。

 女性や子供、御高齢者、働く人、そして生活の現場を軽んじ、増税や負担増が待ち構える岸田増税政権の方針転換を強く求め、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 吉田はるみ議員の御質問にお答えいたします。

 大阪・関西万博の予算についてお尋ねがありました。

 ポストコロナの中で開かれる大阪・関西万博については、国、大阪府、大阪市、そして経済界、この三者で、オール・ジャパンでその準備に取り組んでいます。

 会場建設費については、十月二十日に、西村経産大臣と自見万博担当大臣が、大阪府知事、大阪市長、経済界代表とともに、博覧会協会から必要額について説明を聴取したところであると承知をしています。

 現在、両大臣を中心に、その内容について適切なものとなっているか、また、更なるコスト増の可能性にも十分対応できるものとなっているか等も含め、必要な精査を行っているところであり、しっかり確認した上で、大阪府、市、そして経済界とも対応を協議していきたいと考えております。

 高校生のいる子育て世帯の扶養控除の在り方についてお尋ねがありました。

 こども未来戦略方針においては、児童手当の支給期間の高校生年代までの延長に際して、中学生までの取扱いとのバランス等を踏まえ、高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理する、このようにしております。

 今後、整理を進める必要があるとしても、高校生の扶養控除の廃止を前提とした議論、検討している事実はありません。

 介護保険の利用者負担等についてお尋ねがありました。

 政府として、全世代型社会保障構築の観点からの改革を進め、年末には工程を策定しますが、現時点でその方向性が定まっている事実はありません。

 このうち、介護保険における利用者負担の在り方については、骨太の方針二〇二三において年末までに結論を得ることとされており、様々な意見を丁寧にお聞きしながら検討を進めてまいります。

 埼玉県の虐待禁止条例改正案についてお尋ねがありました。

 地方議会における条例案について政府としてコメントすることは控えますが、その上で申し上げれば、子育ての現場の実態を十分に踏まえた上で、子育て家庭が孤立することがないように、仕事との両立や、子育てにおける負担や困難を社会全体で支えていくことが重要だと考えます。こうした考え方に基づいて、本年六月にまとめたこども未来戦略方針について、スピード感ある実行を図ってまいります。

 児童扶養手当の増額についてお尋ねがありました。

 まず、議員立法の取扱いについては国会でお決めいただくものと承知をしておりますが、その上で、本年六月に閣議決定したこども未来戦略方針においては、一人親家庭への支援を含め、今後、こども大綱の中で具体化する貧困に関する支援策について、今後の予算編成過程で施策の拡充を検討することとしています。

 現在、こども家庭審議会等において、児童扶養手当を始めとする経済的支援や就労支援の在り方など、多岐にわたる項目について御議論いただいているところであり、引き続き、こども大綱策定に向けて、支援策の具体化を進めてまいります。

 学校給食費の無償化についてお尋ねがありました。

 学校給食費の無償化の検討に当たっては、一部の自治体や学校において学校給食が実施されていない状況もあるため、児童生徒間の公平性等の観点から、実態を把握した上で課題を整理する必要があります。

 このため、本年六月に決定したこども未来戦略方針では、全国ベースでの学校給食の実態調査を速やかに行い、一年以内にその結果を公表する、このようにしております。その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等も含めて、課題の整理を行ってまいりたいと思います。

 教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。

 少子化対策、教育の機会均等の観点から、教育費の負担軽減は重要であり、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない負担軽減策を行ってきたところです。

 その上で、高校の授業料等については、限られた財源を有効活用する観点から、これまでに所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯への支援を拡充するなど、より教育の機会均等に資する制度となっており、高等教育段階については、給付型奨学金等の中間層への拡大、修士段階における授業料後払い制度の創設等に取り組むこととしております。

 これに加えて、多子世帯の学生等に対する授業料等の減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、対象年収の拡大も含め更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化を進めてまいります。

 教職員の働き方改革や教師の処遇改善等についてお尋ねがありました。

 教師は学校教育の充実、発展に欠かせない存在であり、教師の厳しい勤務実態がある中、教師を取り巻く環境の整備が重要です。このため、これまで、教職員定数の改善、教師を支援するスタッフの配置の充実、ICTを活用した業務効率化等に取り組んでまいりました。

 給特法の在り方については、今後、具体的に検討していくべき課題と認識しており、現在、中央教育審議会において総合的に議論が進められているものと承知をしております。

 御指摘の議員立法による提案については、まずは国会において議論いただくべきものであると考えております。

 政府としては、教育の質の向上に向け、働き方改革、処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実、育成支援、こうした取組を一体的に進めてまいります。

 賃上げや中小企業支援についてお尋ねがありました。

 賃上げは、言うまでもなく岸田政権の最重要課題であり、成長と分配の好循環が回っていく、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる、こうした経済を目指してまいります。

 そのためには、賃金や投資までカットしてきたコストカット型経済から完全脱却を実現することが必要であり、思い切った供給力の強化を集中的に講じてまいります。賃上げ税制の強化などの措置を講ずるとともに、三位一体の労働市場改革、中小企業の省力化投資など、生産性を引き上げる構造的な改革や賃上げ費用の価格転嫁対策、これらを進めてまいります。

 それとともに、急激な物価高に賃金上昇が十分追いついていない現状を踏まえ、成長による税収の増収分の一部を国民に還元し、国民の生活を守るための物価高対策に万全を期してまいります。

 非正規雇用労働者の賃上げ、そして正社員化についてお尋ねがありました。

 非正規雇用労働者の賃上げについて、最低賃金の引上げや賃上げしやすい環境整備に取り組むことに加え、同一労働同一賃金の遵守徹底を引き続き図ってまいります。

 また、希望する方が正社員として就労することができるよう、正社員化に取り組む事業主への支援を講ずるとともに、ハローワークにおける担当者制によるきめ細かな就労支援を実施してまいります。

 こうした施策を通じて、非正規雇用労働者の賃上げと正社員化を実現してまいります。

 不登校についてお尋ねがありました。

 不登校の要因や背景については、本人、家族、学校に関わる様々な要因が複雑に関わっている場合が多いと認識をしており、学びの場の確保や児童生徒の困難の早期発見、支援、こうした取組が重要であると認識をしています。

 先日公表した調査結果では、小中学校の不登校児童生徒数が過去最多になるなど、極めて憂慮すべき状況です。

 このため、今月開催された不登校対策等に関する合同会議の場において、緊急的に対応すべきものについて経済対策にも盛り込むなど、私から文部科学大臣に指示を出したところです。

 政府としては、不登校に関する対策を強化し、子供の安全、安心確保に万全を期してまいります。

 副大臣、大臣政務官の人事についてお尋ねがありました。

 人事は、本人の人格識見を踏まえ、適材適所の考えで行っており、閣僚、副大臣、大臣政務官、総理補佐官など、全体として、適材適所を徹底して行った結果として、このような老壮青、そして男女等のバランスになったところであります。

 当然のことながら、政府の外においても、国会や党内における政策の立案、議論や国会運営において、幅広く活躍いただきたいと考えております。

 いずれにせよ、女性活躍は岸田内閣において重要な課題であり、女性版骨太の方針二〇二三に基づき、全ての方が個性と能力を発揮できる社会の実現に向けて、全力で取り組んでまいります。

 選択的夫婦別氏制度及び同性婚制度についてお尋ねがありました。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、しっかりと議論をし、幅広い国民の理解を得る必要があると考えております。

 また、同性婚制度の導入については、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、国民各層の意見、国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況、そして地方自治体におけるパートナーシップ制度の導入状況等を注視していく必要があると考えています。

 いずれにせよ、政府としては、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向けて、引き続き、様々な国民の声、これを受け止めて取り組んでまいります。

 細田前議長の発言についてお尋ねがありました。

 お尋ねの発言は、当時、衆議院議長として発言されたものであり、内閣総理大臣の立場から見解を申し上げることは差し控えますが、一般論として申し上げれば、名のり出る人がいなければセクハラはないという考え方は適切ではないと考えています。

 旧ジャニーズ事務所の性加害問題などについてお尋ねがありました。

 子供、若者への性暴力は、心身に深刻な影響を及ぼす極めて悪質な行為であり、許されるものではありません。ましてや、それが長期間、広範に繰り返されたとされる御指摘の事案、これは決してあってはならないことであります。

 御指摘の事案に限らず、弱い立場に置かれた子供、若者が被害に遭う事案が後を絶たない現状を踏まえれば、全ての子供、若者が性被害に遭うことなく、安心して過ごすことができる社会の実現に取り組むこと、これが重要です。

 その際に、被害当事者等の声をお聞きすることを通じて、被害実態の把握に努めることは大切なことだと認識をいたします。これまでも、関係府省において、被害当事者や支援者等から直接お話を伺い、子供の性被害の特徴などを十分に踏まえた上で緊急対策を立案し、実施してきたと承知をしております。まずは、この対策の実行を加速してまいりたいと考えています。

 なお、御指摘の児童虐待防止法改正法案については、議員立法として提出されたものであることから、その取扱い等は、今後、国会において御議論いただくものであると承知をしております。

 いわゆるDBS法案についてお尋ねがありました。

 性犯罪、性暴力は重大な人権侵害であり、あってはならないことです。政府として、こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージに基づく対策を加速化してまいります。

 その上で、子供の性被害を防止する法制度については、与党とも緊密に連携しつつ、子供の被害防止のため、より実効的な制度となるよう検討を深めている段階であり、次期通常国会以降、できるだけ早い時期に法案を提出できるよう努めてまいります。

 杉田議員のSNSの投稿についてお尋ねがありました。

 個々の議員の記者会見の要否については、各議員が適切に判断すべきものであると考えておりますが、杉田議員については、私の内閣の総務大臣政務官を務めていた当時に、御指摘の投稿に傷つかれた方々に謝罪をした上で、その表現を取り消したものであると承知をしております。

 いずれにしても、政治家として、必要に応じ説明責任を果たしていくこと、これが重要であると考えております。

 秋本議員の受託収賄事件についてお尋ねがありました。

 御指摘の事件については、検察当局が今起訴しているところであり、今後、公判の過程で真相が明らかになるものであると承知をしております。

 百三十万円の壁についてお尋ねがありました。

 百三十万円の壁については、労働者が壁を意識せずに働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大にこれまで取り組んできたところであります。

 今般、若い世代の所得向上や人手不足の解消の観点から、当面の対応策として、年収の壁・支援強化パッケージを取りまとめたところであり、まずは本パッケージを着実に実行してまいります。

 その上で、被用者保険の更なる適用拡大などの制度の見直しに取り組むこととしており、次期年金制度改正に向けて社会保障審議会年金部会において議論を開始しており、今後も関係者の意見を伺いながら丁寧に議論を進めてまいります。

 老朽化マンションへの対応についてお尋ねがありました。

 マンションと居住者の両方における高齢化が進行している中、マンションの管理の適正化は喫緊の課題であると考えます。

 このため、地方公共団体による専門家の管理組合への派遣等に対する予算支援のほか、適切に管理されているマンションを認定し支援する制度、また、管理組合に大規模修繕工事を促す税制上の優遇措置の活用促進、これらの取組を進めており、引き続き、この取組を推進してまいりたいと考えております。(拍手)

     ――――◇―――――

井野俊郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十五日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(海江田万里君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(海江田万里君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    鈴木 淳司君

       法務大臣    小泉 龍司君

       外務大臣    上川 陽子君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  宮下 一郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    新藤 義孝君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    土屋 品子君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    松村 祥史君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 村井 英樹君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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