衆議院

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第4号 令和5年10月25日(水曜日)

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令和五年十月二十五日(水曜日)

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 議事日程 第四号

  令和五年十月二十五日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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議長(額賀福志郎君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第四百三十七番、長崎県第四区選出議員、金子容三君。

    〔金子容三君起立、拍手〕

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。(拍手)

 ロシアによるウクライナ侵略の開始から一年八か月、パレスチナのイスラム組織ハマス等の武装勢力によるイスラエルへの攻撃は、あまたの無辜の市民を巻き込み、許し難い人道上の危機を招いています。

 我が党は、この事態を強く非難し、即時の停戦と人質の解放を求めるとともに、犠牲になった方々に哀悼の意をささげます。

 一方、イスラエル側の反撃によって、ガザ地区に住む一般市民を含む二百万人以上の人々が、電気や水、食料などの供給が遮断された状態で閉じ込められ、不安と苦しみの中で日々を過ごしています。

 全ての当事者に最大限の自制と平和的解決への行動を求め、政府にも、一刻も早い戦闘終結に向けた外交交渉や人道支援に力を尽くしていただくようお願い申し上げます。

 さて、今国会最大の争点は、政府が取りまとめを進める総合経済対策と令和五年度補正予算案です。

 日本維新の会は、現役世代の社会保険料負担の軽減を中心として、対策と期間を絞った総額十兆円規模の経済対策を対案として打ち出しました。どちらが国民生活に資するか、真っ向から議論に挑む覚悟です。

 私たちは、国会を不毛な与野党対立の場から国民のための改革競争の場へと変え、日本にとって真に必要な変化を起こすべく突き進みます。そのために、これまでの政策体系を整理し直し、政権構想の基となる成長戦略として新日本大改革プラン、及び次期衆院選に向けた公約となる基幹政策集として維新八策二〇二三の策定を進めています。批判のための批判でなく、政権に対案をぶつけ、改革を競い合う新しい政治の姿を国民にしっかり届けていきます。

 代表質問はその初戦です。全ての質問について、総理に真正面からお答えいただくことを求めます。

 今、日本経済は、全体として緩やかな成長軌道に乗りつつあります。物価高騰はいまだ国民生活に厳しい影響を与えていますが、コロナ禍を脱したことによって需要が回復し、企業の収益と設備投資、賃金上昇及び税収にはよい兆候が見られます。これは、政府も同じ認識と理解をしています。

 そうであれば、昨年までのように、規模ありきの金融緩和と財政出動によるばらまき型の需要喚起をしなければならない状況にはありません。経済が自然に成長軌道に乗っていくことを後押しし、最低限の物価高対策と生活困窮者への手当てを行うことが合理的です。

 しかしながら、今年もまた与党からは、補正予算について、二十兆円規模の赤字国債を当て込んだ大盤振る舞いを決め込む声が上がっています。国の財布は、政権維持のための打ち出の小づちではありません。もはや、コロナ禍で応急措置として実施したような補正予算による巨額の財政支出を正当化する理由はないと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 総理は、成長の成果である税収増を国民に還元すると表明しました。しかし、減税についての詳細は全く明らかにされていません。美辞麗句は並んでいるものの、その中に魂が入っているようには感じられず、リーダーとしての指導力や迫力が欠如しているのではないでしょうか。

 令和四年度の税収は七十一・一兆円となり、当初見通しより六兆円増収になっています。今年度の税収見通しも上方修正される見込みです。経済状況を踏まえれば、赤字国債発行を伴わずに国民に成長の果実を還元することができると考えますが、総理の認識を伺います。

 我が党は、経済成長による税収増が自動的に国債償還に充てられている現在の財政のルールを改め、税収増は予算に反映させた上で、更なる成長を促す再投資や時限的な減税に使うという改革案を新日本大改革プランで提案しています。

 成長の果実の国民への還元は、今回一度きりとせず、制度化していくお考えはありませんか。

 政府・与党は、補正予算の必要性について、毎年いろいろなストーリーを描き、後づけの理屈を言いますが、結局は多くが看板政策の名をかりた選挙用のばらまきで、今までの政策を無理して焼き直した印象です。経済対策を装った選挙対策と断じざるを得ません。

 総理による経済、経済、経済という連呼が話題になり、それに対して、ある野党の党首は給付、給付、給付と呼応しましたが、残念ながら、どちらもばらまきに偏っている点では同じです。あえて言わせていただくのであれば、今必要なのは改革、改革、改革、改革であります。

 財政法第二十九条によれば、補正予算とは、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出にのみ適用が可能とされています。この観点で、今回の政府の総合経済対策の中で合致しそうなのは、第一の柱の物価高対策と生活困窮者支援のみです。ほかの四つの柱のどこに緊要性があるのですか。通常予算でやるべきではないでしょうか。必要なのは、惰性化した自民党流の無駄遣いを一掃すること、つまり、異次元の歳出改革を断行することだと考えますが、総理の認識を伺います。

 総合経済対策の第一の柱として掲げられ、所信表明演説でも強調されている物価高対策を含む国民への還元は、必要なものと考えます。しかし、結局は選挙対策のためのばらまき優先という旧来の発想の域を超えず、変えられない自民党、変わらない自民党の限界を示しています。

 政府は、住民税非課税世帯を軸に低所得者層への現金の直接給付を検討していますが、現役世代より資産を持つ年金受給者が多く含まれる非課税世帯を、なぜ何度も給付の対象とするのでしょうか。還元というのであれば、可処分所得が減る中で支出が増え続け、苦しい生活環境下で歯を食いしばって社会を支え、経済の好循環をつくり出そうとしている現役世代や子育て世帯に恩恵が少ないことをどう考えていますか。

 物価と合わせて賃金を上昇軌道に乗せ、国民生活を安定化させるためには、低所得者、現役世代双方に迅速に恩恵が届き、賃上げを実感できる、すなわち、可処分所得を上げるための方策が必要です。

 我が党は、来年三月までの半年間、社会保険料について、低所得者に対しては半減、その他は三割減免することを提案しています。政府が取り入れる考えはありませんか。

 また、来年度の通常予算で、インフレなどの経済状況に合わせ、消費税を一〇%から八%に引き下げ、軽減税率は廃止することを提案しますが、総理の見解を伺います。

 エネルギー価格高騰について、石油の元売や電気、都市ガス会社への補助金によりガソリンや電気料金を下げる措置の期限は、年明け以降も継続する方針と伝えられています。当該補助金の総額は九兆円を超えています。政府の経済対策は業界団体への配慮が色濃く、不公平さやプロセスの非効率さ、経済効果の不透明さが浮かび上がっています。来春以降は、事業者への補助金支給から消費者への直接給付に転換すべきではないでしょうか。

 我が党は、現行のガソリン補助金を最小限に縮小し、ガソリン税の当分の間税率の廃止を提案します。その上で、再生可能エネルギーの普及と原発再稼働を速やかに進め、エネルギー供給を安定化させるべきだと考えますが、所見を求めます。

 総理が経済対策の第二の柱として掲げた、地方と中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方成長の実現などのアプローチも安直です。

 いわゆる年収の壁は、女性の労働意欲をそぎ、男女間の賃金格差を生みました。成長の妨げとなる壁は壊すべきですが、単に企業に助成金を出せば解決するものではありません。年収の壁の解消には、負担なき給付という優遇措置を認めた第三号被保険者制度を見直すなど、社会保障の公平性の原則を徹底すべきではないでしょうか。社会保障、年金制度改革の中で抜本的な制度改革が必要だと考えますが、総理の所見を求めます。

 賃上げを継続して経済成長を持続させるためには、企業が自ら進んで行う構造的な賃上げでなければなりません。今こそ、転職者に不利な日本の社会構造の改革に大なたを振るうべきです。

 労働市場の流動化を促す目的として、終身雇用や年功賃金、退職金、企業別の労働組合制度といった日本型雇用慣行を廃止し、ジョブ型雇用、同一労働同一賃金、NISA、iDeCoなどの拡充などと併せて、解雇の金銭補償、仮称ライフプラン制度を含む労使間のルールの制度構築に踏み切るべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 総理が経済対策の第三の柱に掲げた成長力の強化、国内投資の促進では、構造的な賃上げの環境整備と生産性向上、供給力強化に資する投資を支援するために、戦略分野の国内投資促進や特許などの所得に関する減税制度の創設を始め、合理性や緊要性が不明確な施策があれもこれもと並べ立ててあります。

 所信表明演説で強調された新しい経済ステージに向かうための供給力強化を実現するためには、何より夢や希望のある規制改革、構造改革が不可欠です。

 自民党政権の成長戦略が絵に描いた餅に終わり続けてきたのは、施策が補助金、融資、税制上の優遇措置の三点セットにとどまってきたからです。これでは競争原理が働かず、成長を阻む既得権を突き崩せません。成長力や供給力の強化に真に必要なのは、投資の名をかりたばらまきや一時的、部分的な減税ではなく、既得権に切り込む規制改革と、それによる新たな市場の創造ではないでしょうか。

 現在、これまで我が党が訴え続けてきたライドシェアの解禁に注目が当たっています。総理はようやく所信表明演説で検討する意向を示されましたが、自民党、業界団体、国土交通省の抵抗は強く、先行きは不透明です。検討にとどまらず、ライドシェアを導入し、それを皮切りに規制改革を強力に推し進めていくと、この場で宣言していただけませんか。

 総理は、経済対策の第四の柱として、人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動、推進を掲げました。

 我が国は、少子高齢化が想定を上回るスピードで進み、持続可能性を毀損する人口危機という静かなる有事に直面しています。昨年の自然増減数はマイナス八十万人と、佐賀県あるいは山梨県の人口が一年で消失した計算です。総理は、異次元という言葉を使い、少子化対策への取組を強調されていますが、施策は従来のものの焼き直しにすぎません。

 翻って、大阪市では塾代助成や小中学校の給食費の無償化などを実現し、大阪府では所得制限のない高校授業料無償化の導入を決めました。この難局を克服し、これからの成長を支えていくためには、未来を担う子供の教育への投資は不可欠であり、国が率先して思い切った対策を講じるべきです。

 私たちは、大阪で進む子育て世帯支援策のうち、地方創生臨時交付金による地方自治体を通した小中学校の給食費無償化と、就学支援金の引上げ、又は教育バウチャーによる高校授業料の無償化を今回の経済政策として提案しています。決断すれば、来年三月まで、それぞれ約三千億円の予算で即時実施可能です。その後は当初予算に毎年計上し続ける形で、全国に展開するお考えはありませんか。

 所信表明演説では、デジタル社会への変革に向けた決意が示されました。これには規制・制度改革が欠かせません。総理の意向で政府に設置されたデジタル行財政改革会議での議論がスタートしましたが、この会議体がデジタル庁や行革推進会議などを束ねる司令塔の役割を担うことになっています。行革を目指しながら会議が乱立するようでは本末転倒です。

 マイナンバーカードをめぐる相次ぐトラブルの余波で、来年秋に健康保険証を廃止し、マイナ保険証に移行する制度の行方が揺らいでいますが、国民の不安を払拭した上で予定どおり実施すべきです。先送りになれば、世界で周回遅れの日本のデジタル化が更に停滞しかねません。

 来秋の健康保険証の廃止方針について、河野デジタル担当大臣は揺るぎない立場を表明していますが、武見厚生労働大臣は明言を避け、温度差があります。総理として、予定どおり実施すると明言していただけませんか。

 日本社会のデジタル化を阻んでいるのは既得権です。デジタル化によって、これまで一部の既得権によって秘密裏に差配されていた様々な利権が白日の下にさらされ、公正公平なルールの下で透明な運用を強いられることに対する抵抗があるのです。マイナ保険証が進まないのも、背景には、それに反対する団体を中心とした既得権があることが影響しています。

 医療のデジタル化は、医療費の適正化、診療報酬、薬価の見直し、混合診療の解禁、医療、健康の産業化、電子カルテ標準化など、これまで聖域とされてきた社会保障制度の中核に改革のメスを入れることにつながります。だからこそ、総理自らが強い決意で物事を前に進めなければ、実行することは不可能です。

 令和三年六月、当時の菅総理は、国会答弁で、医療分野でのデジタルトランスフォーメーションに向けては国統一のインフラの整備が欠かせないとして、政府主導で行う必要がある旨表明しました。岸田内閣の基本路線とするお考えはありますか。そして、医療分野を突破口に、介護やその他の分野へとDXによる規制改革を拡大していくべきではないでしょうか。

 経済対策の第五の柱の政策テーマについては、国土強靱化、防災・減災から外交、安全保障、子供、若者の性被害防止、花粉症対策と、ごちゃ混ぜで戦略性が見えてきません。これらは、看板政策の名をかりた、無駄な予算要求の典型例と断じざるを得ません。中長期の戦略は一時的な経済対策とは明確に分け、財政法上、補正予算に不適当なものは通常予算に計上することを徹底すべきではないでしょうか。

 また、総理は、今年度予算に計上したコロナ、物価高対策のための予備費の使途を変更するとしていますが、容認できません。新型コロナウイルス対策で、政府が緊急性をうたって計上した巨額の予備費のずさんな管理が明らかになる中、緊急の支出に限る本来の趣旨に立ち戻らなければ、財政規律の緩みが加速しかねません。

 会計検査院の調査で浮かび上がった、予備費の未執行分の翌年度繰越しなどの乱脈ぶりを、総理はどのように反省されていますか。およそ緊急性がない構造的な課題で、本予算の予備費が余っているから補正で使ってしまえというような乱暴なことが許されるとお考えでしょうか。予備費の未使用分は国庫に戻し、国会の了承を得て、再び予算化するのが筋です。予備費の使途を変更し、賃上げ政策に充てることは撤回すべきではないでしょうか。

 異次元の歳出改革で国会議員が率先して取り組むべきことは、身を切る改革です。

 日本維新の会は、調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費の抜本改革を強く訴えてきましたが、使途公開と未使用分の国庫返納は、自民党などの非協力的な対応によって、たなざらしにされたままです。今国会での旧文通費改革の実現に自民党も協力すると約束していただけませんか。まさか、この宿題を放置したまま衆議院を解散することはないでしょうね。

 また、日本維新の会は、自民党女性局のエッフェル塔での写真撮影が発端となって国民の大きな怒りを買った国会議員の海外視察の実態を改善すべく、旅程表、旅費の領収証、事後報告書の三点を公開するよう、他の党派に呼びかけています。賛同していただけますか。

 日本維新の会は、結党以来、国会議員の定数の三割削減を訴えてきました。これに先行し、大阪では、府議会の議員定数を百九から七十九に三割削減し、議員報酬を三割削減しました。大阪市会でも、議員定数を現行の八十一から七十に削減する条例改正を実現しました。地方にできることが国でできないことはありません。

 しかし、自民党は、平成二十四年、当時の安倍総裁が国会で約束した議員定数一割削減さえ、ほっかぶりを決め込んでいます。

 加えて、昨年成立した改正公職選挙法による定数十増十減により一票の格差は是正されましたが、地方の声が届かない、面積の格差はどうするんだという声が既に伝わってきています。

 当時の安倍総裁が約束した定数一割削減を自民党の選挙公約から外している中、今後の選挙制度見直しにおいて、あまつさえ、定数増などという選択肢はないと断言していただけますか。

 いずれも自民党総裁としての答弁を求めます。

 ロシアのウクライナ侵略によって、国際平和に主要な責任を負う国連安保理事会が、拒否権を持つ五大国による国連憲章違反の暴挙に対して無力であることが露呈しました。国際秩序を破壊する独裁専制国家の行為に対し麻痺状態にある国連を放置してはなりません。

 日本は、長年、財政面に限らず、平和構築や途上国支援などの分野で国連に貢献してきました。国連改革の議論を先導する資格は十分あります。今年一月から二年間は、非常任理事国として安保理の協議に主体的に関与できる立場にあります。この機会を逃してはなりません。

 総理は、九月の国連総会での演説で、常任、非常任理事国双方の拡大を唱えました。二〇二五年の国連創設八十年に向け、抜本的に国連安保理を改革するようイニシアチブを発揮することが日本の役割と考えますが、どのように改革を主導していくお考えですか。

 日本維新の会は、我が国が、アナン国連事務総長時代に提起された、非常任理事国より任期が長く、より常任理事国に近い権限を持つ、国連準常任理事国の設置の実現を強く働きかけるべきだと提案しますが、いかがでしょうか。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、常任理事国が持つ拒否権の剥奪と、日本やインド、イスラム諸国の常任理事国入りを求めましたが、所見を求めます。

 昨年末の国家安全保障戦略など安保三文書の改定は、反撃能力保有を可能にするなど、日本が戦後の空想的平和主義から抜け出し、防衛力の抜本的強化への扉が開かれました。しかし、作文で終わらせてはなりません。

 近い将来の台湾有事、すなわち日本有事が日に日に現実味を増し、我が国をめぐる安保環境が戦後最も厳しいとされる中で、必要なのは、着実かつ迅速に実行するための推進力です。

 国家安全保障戦略には、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ能動的サイバー防御の導入が盛り込まれましたが、実現させるための電気通信事業法、不正アクセス禁止法、刑法など関連法の改正や、憲法が保障する通信の秘密との関係整理が進んでいません。

 三文書には、装備品とともに防衛力を支える双璧たる自衛隊の人的基盤の強化もうたわれました。自衛官の定員割れが続く中、人口減少時代に入り、国を守る担い手を確保するための取組が急務であることは言をまちません。

 なぜ、サイバー防衛強化のための法整備が遅れているのでしょうか。来年の通常国会では関連法の改正を行うべきではないでしょうか。

 また、安全保障上の機密を扱う人を認定するセキュリティークリアランス制度の導入も、来年の通常国会で経済安保推進法を改正し、実現させると明言していただけますか。

 政府は、年内に自衛官の確保に向けた具体策を打ち出すと伺っていますが、つけ焼き刃の施策の羅列では国を守り切れません。

 我が党は、自衛隊の給与体系を自衛隊の任務、リスクを正しく評価したものにするなど待遇を抜本的に改善するとともに、平成十五年に名目のみ導入された防衛出動手当の額を政令で直ちに定めるための法案を提出しています。いずれも不可欠の施策と考えますが、自衛隊の最高指揮官たる総理の見解を伺います。

 前国会の衆議院憲法審査会では、大規模災害時などの対応を規定する緊急事態事項の創設をめぐり、自民党、公明党、国民民主党、有志の会、日本維新の会の五党派が、緊急時には必要に応じて衆議院議員の任期を延長できる条項を設ける改憲の必要性で一致し、国民民主党、有志の会、我が党の三党派は独自に改正案をまとめました。改憲条文案について複数の政党会派で合意に至ったのは憲政史上初めてのことです。喫緊の項目には憲法九条改正や我が党が主張する教育無償化などもありますが、今国会は憲法改正実現への大きな試金石になります。

 総理は、来年九月の自民党総裁任期中の憲法改正実現を目指すと公言されています。タイムリミットはあと一年。国民投票の実施には国会発議後六十日から百八十日間必要であることを踏まえれば、総理が約束を果たすには、来年の通常国会終盤までに発議しなければなりません。

 緊急事態条項について、自民党は、我が党など三党派がまとめた改正案をたたき台にするお考えはありますか。今国会で緊急事態条項の創設を軸に改正案を取りまとめ、来年の通常国会に国会発議をすると約束していただけますか。

 求められるのは、自民党総裁たる総理の決断と強いリーダーシップです。この総裁任期中に憲法改正を果たせなかったら次期総裁選への再選出馬はしないと退路を断ち、改憲に立ち向かう覚悟はありますか。

 いずれも党総裁としての答弁を求めます。

 総理は、昨年一月、安定的な皇位継承策を検討していた政府有識者会議の報告書を国会に報告しました。平成二十九年に制定された天皇退位等に関する皇室典範特例法の附帯決議で、政府に、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について速やかに検討し、国会に報告するよう求めたことを受けてのものです。

 日本維新の会は、直ちに党の皇室制度調査会で議論を重ね、昨年四月、政府の報告書の内容を高く評価し、立法府が静かな環境の中で丁寧に議論し、総意をまとめるよう求める意見書を衆参両院議長に提出しました。

 しかし、他党派におかれては、真剣に議論された形跡がありません。自民党は昨年一月に皇室問題に関する懇談会を開いたきりで、各党会派の姿勢は怠慢と断じざるを得ません。安定的な皇位継承策の確立は国の根幹に関わります。与野党が目をそらすことなく、真摯に向き合っていくべき課題です。

 政府の報告書は、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題と指摘しています。自民党を始め各党の消極的な姿勢を総理はどう受け止めていますか。

 萩生田政調会長は、九月二十七日付産経新聞のインタビューで、総理から皇位継承の見直し作業を加速させるよう指示を受け、自身の下に議論の受皿をつくると述べています。総理自身の言葉で決意をお示しください。

 また、今後、与野党の協議体設置などで自民党が議論を主導していく考えはありますか。

 以上、党総裁としての答弁を求めます。

 日本維新の会は、経済や社会保障政策などで現状維持、微修正路線を貫く自民党に対抗できる野党として、改革競争で力を蓄えていきます。そして、必ずや政権交代を成し遂げ、国家国民のための政治を実現させることをお誓い申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えいたします。

 補正予算による財政支出の正当性、成長の果実の還元についてお尋ねがありました。

 我が国の経済状況は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、需要面では、賃金上昇が物価に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねないこと、また、供給面では、潜在成長率が、三十年来のコストカット型経済の下での低成長の結果、零%台半ばの低い水準にとどまっていること、これらに留意する必要があります。

 このような認識の下、今回の総合経済対策は、デフレ脱却のための供給力の強化と、物価高によりデフレに後戻りしないための一時的な措置としての国民への還元、これを車の両輪として取りまとめます。

 規模については、こうした政策の積み上げの結果であり、国民生活に高い効果のある具体的な政策を積み上げてまいります。

 そして、国民への還元については、今後早急に具体化を図ってまいりますが、政府としては、デフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和してまいりたいと考えております。

 経済対策、補正予算の緊要性についてのお尋ねがありました。

 賃金上昇が物価高に追いついていない現状を踏まえると、まずは物価高対策に万全を期すとともに、経済の熱量の源である賃上げの流れが継続、拡大するよう、切れ目ない対策を早急に講じていくことが必要です。

 また、GDPギャップが解消されつつある中、日本経済の供給力を強化し、中期的なインフレ圧力に強い経済体質をつくる必要があり、将来の成長に資する分野を厳選して対応してまいります。

 さらに、様々な社会課題の深刻化が懸念される中、デジタル技術を活用した社会変革の取組や、自然災害の激甚化、頻発化等に対して国民の安全、安心を確保する対策も速やかに講じていく必要があります。

 国民にとって真に必要で効果の高い具体的な政策を積み上げる中で、歳出構造の平時化を図ってまいりたいと考えます。

 低所得者層への給付と現役世代や子育て世帯の恩恵についてお尋ねがありました。

 物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図ることは極めて重要です。多くの自治体で、この夏以降、低所得者世帯に対して、一世帯当たり三万円を目安に支援を開始してきました。この物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大することとし、経済対策に盛り込みます。

 現役世代に対しては、賃上げ税制の強化など、構造的で持続的な賃上げが行われるための取組を進めるほか、子育て世帯に対しては、本年六月に策定したこども未来戦略方針に基づき、前例のない規模で政策を強化し、経済的支援の充実を図ってまいります。

 その上で、賃金上昇が物価高に追いついていない現状を踏まえ、政府として、今後、国民への還元の更なる具体化を早急に図ってまいりますが、税収の増収分の一部を還元すると申し上げたからには、現役世代や子育て世帯を含む納税者に分かりやすく還元することも検討してまいります。

 社会保険料の減免についてお尋ねがありました。

 年金、医療、介護など給付を行う社会保険制度については、現行制度においても、所得に応じて保険料負担を軽減する仕組みを設けております。社会保険制度の仕組みは、このように、低所得者の負担に配慮しつつ、相互扶助の考え方を基盤とし、必要な保険料を御負担いただくことを基本とするものです。

 御提案のように、可処分所得向上のため、幅広い者を対象に保険料の減免を行うことは、給付と負担の対応の関係をゆがめるなど、それぞれの社会保険制度に与える影響が大きく、保険者の実務上の負担など課題も多いことから、慎重な検討が必要であると考えております。

 ただ、御提案とは手法は異なるものの、政府として、デフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接に下支えし、物価高による国民の負担を緩和する、こうした取組は進めていきたいと考えております。

 消費税率の引下げについてお尋ねがありました。

 消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。

 また、軽減税率制度については、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として導入され、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を軽減することにより消費税の逆進性を緩和する効果があり、これを廃止することは考えておりません。

 エネルギー価格高騰対策の在り方についてお尋ねがありました。

 御指摘の激変緩和事業については、エネルギーコストに苦しむ国民の負担を抑制すべく、石油元売事業者や電気、都市ガスの小売事業者等を通じて、最終需要家である家庭等へ支援を実施しています。

 補助の効果が適切に価格に反映されるよう、ガソリンについては、元売が卸価格を引き下げたことを確認した上で事後精算とするほか、ガソリンスタンドに対して全数価格調査を行うなどの工夫をしており、電気と都市ガスについても、請求書等へ値引き表示をして需要家が直接確認できるようにするなど、透明性のある仕組みとしております。

 また、中長期的には、エネルギーコストの上昇に強い経済構造へ転換を進めるべく、徹底した省エネに加え、再エネ、原子力など、エネルギー自給率の向上につながる脱炭素電源の活用を進めていきます。

 なお、揮発油税等については、平成二十一年に道路特定財源は廃止されましたが、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情を踏まえ、それまでの税率が維持され、当分の間税率とされたものと承知をしています。こういった状況は現在も変わりはなく、特に気候変動が社会課題となる中、その廃止については慎重であるべきだと考えております。

 年収の壁についてお尋ねがありました。

 年収の壁については、労働者が壁を意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大に取り組んできたところです。

 今般、若い世代の所得向上や人手不足の解消の観点から、当面の対策として、年収の壁・支援強化パッケージを取りまとめたところであり、まずは本パッケージを着実に実行してまいります。

 その上で、第三号被保険者制度については、年収の壁に関する制度の見直しと併せて将来の検討課題の一つとして考えており、社会保障審議会年金部会において、関係者の意見を伺いながら丁寧に議論を進めてまいります。

 労働市場の流動化についてお尋ねがありました。

 日本的な雇用慣行については、その優れた面も大切にしながら、労使で納得いく対話を行った上で、時代の変化を踏まえた見直しを進めていくことが重要であると考えております。

 政府としては、成長と分配が持続的に回っていく、持続的賃上げが行われる経済を目指し、三位一体の労働市場改革などの生産性を引き上げる構造的な改革を進めてまいります。

 なお、解雇ルールについては、金銭を払えば自由に解雇できるという制度を導入することは考えておりません。

 ライドシェアの導入を含めた規制改革の必要性についてお尋ねがありました。

 コストカット型経済からの完全脱却に向け、供給力の強化を図り、生産性を引き上げていくためには、言うまでもなく、規制、制度の徹底した改革が必要です。

 デジタル行財政改革を強力に進める中で、御指摘のライドシェアの課題を含め、規制、制度の徹底した改革にスピード感を持って取り組んでまいります。

 地方創生臨時交付金による給食費無償化や高校授業料の無償化についてお尋ねがありました。

 学校給食費については、現下の物価高騰に対し、政府において重点支援地方交付金の活用を促し、ほとんどの自治体において値上げが抑制され、保護者負担の軽減が進んでいると承知をしています。今般策定する経済対策において、交付金の追加及び更なる活用を進めてまいります。

 また、学校給食費の無償化については、本年六月に決定したこども未来戦略方針では一年以内に全国ベースの実態調査を公表することとしております。その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等も含めた課題の整理を行ってまいります。

 そして、高校授業料については、限られた財源を有効活用する観点から、これまでに所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯への支援を拡充するなど、より教育の機会均等に資する制度としています。少子化対策や教育の機会均等の観点から、引き続き、教育費の負担軽減に向けて、取組は進めてまいります。

 健康保険証の廃止方針についてお尋ねがありました。

 二〇二四年秋に健康保険証を廃止することについては、さきの通常国会に番号法等の一部を改正する法律案として提出をし、御審議の上、可決いただき、成立したものであります。

 政府としては、国民の皆様の不安払拭のための措置を着実に進めるとともに、マイナ保険証のメリットを実感いただけるよう、利用促進に向けた取組を積極的に行ってまいります。

 その上で、現行の健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提であるとの方針にのっとり、ひもづけの総点検とその後の修正作業の状況も見極めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には、必要な対応を行います。

 医療DXの取組についてお尋ねがありました。

 医療DXは、我が国の医療の将来を大きく切り開いていくものであり、本年六月に、私を本部長とする医療DX推進本部において工程表を取りまとめ、政府主導により、取組を加速させているところです。

 具体的には、全国医療情報プラットフォームの構築等を通じ、医療だけでなく、保健や介護などの関連する分野の情報も共有可能とするよう取り組んでいます。こうした取組を進める中で、必要な規制改革にも取り組んでまいります。

 国民一人一人が安心して健康で豊かな生活を送ることができるよう、政府を挙げて医療DXを推進してまいります。

 経済対策における施策の緊要性と予備費についてお尋ねがありました。

 経済対策の第五の柱に掲げる、防災・減災、国土強靱化の推進、外交、安全保障環境の変化への対応、子供、若者の性被害防止、花粉症対策などの国民の安全、安心の確保、これらはいずれも喫緊の課題であり、経済対策の取りまとめ後、速やかに必要な経費を計上し、補正予算を編成したいと考えています。

 また、コロナ関係予備費の執行に関する会計検査院からの個別の指摘については、政府全体で重く受け止め、引き続き、各事業の所管省庁において適切な情報提供を行っていくことが重要であると考えています。

 一方で、予測困難な事態に対する万全の備えとして、一定の規模の予備費を計上し、臨機応変に、かつ時期を逸することなく対応を講じてきたこと、これは、国民や事業者を守るために必要な対応であったと考えています。

 その上で、現行のコロナ、物価予備費については、足下の物価に賃金上昇が追いつかない中で、賃上げ促進の環境整備に迅速かつ機動的に対応できるものへ見直すことが必要であると考えています。

 調査研究広報滞在費の扱いや国会議員の海外視察に係る情報公開についてお尋ねがありました。

 調査研究広報滞在費の扱いについては、議員活動の在り方に関わる重要な問題であり、国民の皆様の御理解を得られるよう、全議員共通のルールの策定に向けて、各党会派における真摯な議論を通じて合意を得ていくことが重要であると考えています。

 また、国会議員の海外視察が適切に行われるべきであるということ、これは言うまでもないことであります。そのためにどうあるべきかについては、自民党においても、今後検討してまいります。

 選挙制度の見直しについてお尋ねがありました。

 議員定数の削減については、平成二十五年に衆議院の定数五削減を実現し、その後、平成二十八年には衆議院の定数十削減が実現したところであり、その取組は続けられてきたところであります。

 その上で、議員定数の在り方については、民主主義の根幹に関わる重要な問題であり、国民の政治に対する信頼を維持していくためにはどうあるべきか、こうした観点から議論を行っていくべきだと考えております。

 国連安保理の改革についてお尋ねがありました。

 ロシアのウクライナ侵略等によって傷ついた国連への信頼を回復するため、安保理改革を含む国連の機能強化がますます重要になってきています。

 本年の国連総会一般討論演説でも、私から、安保理改革に向けて、二〇二四年の未来サミットや二〇二五年の国連創設八十周年を見据え、具体的な行動に移っていくべきだということを強調いたしました。

 特に重要なのは、安保理の構成が現在の国際社会の現実を反映するよう、常任及び非常任双方の議席を拡大するということです。この考えは、日本、ドイツ、インド、ブラジル、いわゆるG4、あるいは米英仏、あるいはアフリカ等を含む多数の国が支持をしているところです。

 このような情勢の下、御指摘の準常任理事国という案があるということは承知をしておりますが、現時点では、我が国としてそうした案を検討しているということはありません。

 また、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が、国連等の場において、安保理改革の必要性を強調するとともに、日本の常任理事国入りを支持する趣旨の発言をしたことを歓迎いたします。

 各国の利害も複雑に絡み合う安保理改革は決して簡単ではありませんが、引き続き、G4、米英仏、アフリカを含む多くの国々と連携しつつ、粘り強く取り組んでまいります。

 サイバー安全保障及びセキュリティークリアランスについてお尋ねがありました。

 我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境を鑑みると喫緊の課題であり、国家安全保障戦略を踏まえ、様々な角度から政府全体で検討を進めているところです。可能な限り早期に法案をお示しできるよう、引き続き取り組んでまいります。

 また、セキュリティークリアランスは、経済安全保障分野の情報保全強化の観点から非常に重要です。本年二月には有識者会議を設置し、制度設計に必要な議論をしていただいており、同会議での議論を踏まえ、次期通常国会における法案の提出に向けて準備を進めてまいります。

 自衛隊員の処遇改善及び防衛出動手当についてお尋ねがありました。

 防衛力の中核は自衛隊員であり、防衛力の抜本的強化のためには、全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、能力を発揮できる環境の整備が必要不可欠です。こういった観点から、三文書にも給与を始めとする隊員の処遇の向上を盛り込んでおり、これを着実に実現してまいります。

 そして、防衛出動手当は、防衛出動時の戦闘などの著しい危険性や困難性等を評価して支給する手当です。よって、実際に有事が生起した時点における諸情勢を総合的に勘案し、適切な支給額を決定するものであると考えています。

 今後とも、第一線で防衛の任務に精励する自衛隊員に対し、ふさわしい処遇の実現に努めてまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正は、先送りのできない重要な課題であり、日本維新の会が、国民民主党、有志の会と連携して具体的な改憲案を示し、建設的な議論を呼びかけておられることに、まず敬意を表したいと思います。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、国会の発議に向けた手続を進めるためにも、国会においてこれまで以上に積極的な議論が行われることを心から期待いたします。

 また、自民党総裁としてあえて申し上げれば、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いにいささかの変わりもありません。党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意であります。

 安定的な皇位継承の確保についてお尋ねがありました。

 所信表明演説で申し上げたとおり、安定的な皇位継承を確保するための諸課題等、とりわけ、皇族数の減少への対応については、国の基本に関わる重要な課題であると考えており、政府としては、皇族数確保のための具体的な方策等を取りまとめ、国会に報告をいたしました。

 内閣総理大臣の立場からは、国会における具体的な議論の進め方について直接申し上げることは差し控えますが、立法府の総意が早期に取りまとめられるよう、衆参両院議長の下で、国会における積極的な議論が行われることを期待いたします。

 また、自民党総裁としてもあえて申し上げれば、自民党においても、国会での議論に資するよう、責任ある政権与党として活発な議論を率先して行っていく決意であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、公明党を代表いたしまして、総理の所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 岸田内閣が誕生して二年がたちました。この間、直面する諸課題に果敢に挑戦をし、政策を着実に進めてきました。中でも、国民の協力により、苦しいコロナ禍を乗り越え、経済状況も改善しつつあります。

 一方で、食料品など幅広い分野で物価が高騰し、円安圧力も重なる中、特に家計に重い負担感を与え、中小企業では、原材料などのコスト上昇により、価格転嫁や賃上げに頭を悩ませているのが実情であります。また、人への投資、経済社会のデジタル化やグリーン化、防災・減災対策の充実なども待ったなしです。

 他方、国際環境は、北朝鮮の繰り返される弾道ミサイルの発射、終わりの見えないロシアのウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢の激化などで不透明感を増しております。

 総理は、経済対策の策定に向け五本柱を掲げ、今後三年間を変革期間として集中的に取り組む、大切なのはスタートダッシュだと強調されました。

 先般、我が党は、経済対策の策定に向けた提言を政府に示し、特に、物価高により影響を強く受けている生活者、中小企業に配慮すべきと主張いたしました。生活者や中小企業などが希望の持てる力強い経済対策を策定し、一刻も早くその恩恵を届け、物価高を乗り越えることが重要であります。

 政府の総合経済対策の策定に当たっては、公明党の提言を十分取り入れるとともに、あわせて、来年度通常予算や来年度税制改正も視野に入れつつ、施策を総動員していただきたい。

 以下、諸課題について具体的に質問をいたします。

 初めに、物価高騰、賃上げ、持続可能な経済成長に向けた取組について伺います。

 総理は、所信表明演説で、税収の増加分の一部を公正かつ適正に還元し、物価高による国民の御負担を緩和いたしますと述べ、先週には、与党幹部に対し、国民への還元策について、所得税減税を含む検討を指示されました。国民の多くは、具体的な還元策を期待しております。

 公明党は、物価高を克服する持続的賃上げが広く波及するには一定の時間が必要なことから、その間、家計への支援が重要と考え、国民への三つの還元策を主張しております。すなわち、第一に、所得税の減税。公明党としては定額減税が望ましいと考えます。第二に、低所得世帯への給付金の支給。第三に、電気・ガス料金、ガソリン代等の補助の来春までの延長と、自治体の実情に応じた物価高騰対策を可能とする重点支援地方交付金の増額を政府に対して求めております。これらの具体化について、政府・与党一体となって、国民が希望の持てる思い切った還元策となるよう取り組んでいきたい。

 国民への三つの還元策、特に所得税の定額減税について、総理の見解を伺います。

 医療、介護、障害福祉など、公的部門における物価高騰、賃金上昇への対応について伺います。

 本年の春闘の賃上げ率は大企業で三・五八%と三十年ぶりの高い水準となり、消費者物価指数は十二か月連続で三%以上の上昇で高止まりをしております。一方で、公定価格で運営されている医療の診療報酬は二年に一度、介護報酬と障害福祉サービス等報酬は原則三年ごとの改定のため、物価、賃金の動向をタイムリーに反映することが難しい仕組みになっております。

 今後も物価上昇が続くものと見込まれ、それに負けない賃上げを目指す中で、公的部門において適時適切に物価、賃金の動向を反映することが重要な課題であります。特に、介護分野の賃上げ率は一・四二%にとどまり、他分野への人材流出に拍車がかかっているため、賃金格差を埋める処遇改善の取組が不可欠です。

 次期診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定において、物価高騰、賃金上昇などを踏まえ必要な対応を行うとの骨太方針に沿ってしっかり対応するとともに、次期改定が適用される新年度を待たずに、経済対策において前倒しで物価高騰、賃金上昇への対応を行うべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 構造的賃上げの実現に向けた人への投資について伺います。

 物価上昇が高止まりする中、それに負けない構造的な賃上げを実現するために、人への投資の拡大が重要な課題であります。政府は、本年五月に、三位一体の労働市場改革の指針として、リスキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化の三つを一体で進め、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差の縮小や、性別、年齢等による賃金格差の解消を目指す方針を決定いたしました。働く人の立場に立って、必要な取組を着実に進めるべきと考えます。

 例えば、非正規雇用で働く方については、働きながら取り組めるリスキリングへの支援や、正社員化する企業への支援を拡充することが必要です。また、デジタル分野については、教育訓練の講座の拡大やオンライン化を図るとともに、身につけたスキルを活用できる実践の場を開拓することにより、現場の実態を踏まえたデジタル人材の育成が重要です。

 非正規雇用で働く方の支援やデジタル人材の育成を含め、構造的賃上げの実現に向けた人への投資拡大に向けた取組について、総理の答弁を求めます。

 来年四月から長時間労働の規制が強化される物流業界では、トラック運転手の人手不足は深刻化しており、問題解決は喫緊の課題であります。また、トラック運転手は全産業に比べて平均年収は低く、賃上げが必要不可欠であります。また、トラック事業者から、荷主から長時間の荷待ちを強いられる、多重下請構造の中で価格転嫁されないなどの声を多く聞いてまいりました。これまでの商慣行を見直し、トラック運転手の適正な運賃確保や待遇改善のため、法改正を含め早急に対応すべきであります。

 さらに、トラック運転手の負担軽減のため、置き配やコンビニ受取を選んだ人にポイントを付与する等の仕組みで、再配達率の削減に向けた取組が必要と考えます。

 政府は、先般、物流革新緊急パッケージを発表いたしましたが、トラック事業者やドライバーの立場に立って、運転手不足を解消し、持続可能な物流の確立に全力を尽くしていただきたいと思います。

 物流の二〇二四年問題への対応について、総理の答弁を求めます。

 GX、半導体、蓄電池、EV支援など、これからの成長分野への戦略的な投資によって日本の産業競争力を強化し、経済を再び成長軌道に乗せることが、将来の雇用、所得の向上につながります。

 事実、半導体のTSMC進出を起点とした経済波及効果は、十年で約六・九兆円、雇用効果も全体で約一万人強との試算もあります。また、既に、欧米を始めとして、CO2排出削減と経済成長を共に実現するGXに向けた大規模な投資競争が激化する中、脱炭素社会の実現のために欠かせない電動車の普及促進についても世界から後れを取っている状況であります。

 また、子育て世帯、若者夫婦世帯等に対して、高い省エネ性能を有する新築住宅の取得を支援するこどもエコすまい支援事業は、ニーズが非常に高く、既に予算上限に達し、受付が終了しております。住宅価格が高騰していることも踏まえ、引き続き、子育て世帯等への支援を行うべきであります。

 同時に、省エネリフォームも重要です。特に窓の断熱化は、冷暖房効率を上げる効果が高く、光熱費削減にもつながります。集合住宅を含む既存住宅への窓断熱改修事業を拡充すべきであります。

 EV、PHEV車両の普及と充電インフラ整備の加速化、さらには、あらゆる電子製品に不可欠な半導体、蓄電池産業の国内サプライチェーンの構築、環境性能のよい住宅、リフォーム普及について、総理の見解を求めます。

 公明党は、昨年十一月、子供の幸せを最優先する社会を実現するための具体策を、子育て応援トータルプランとして取りまとめました。

 政府は、本年四月にこども家庭庁を発足させ、六月に策定したこども未来戦略方針の中で、今後三年で実施する新たな施策をまとめた加速化プランを決定いたしました。我が党が子育て応援トータルプランで主張した数々の施策が反映されたことは、高く評価をいたします。

 加速化プランには、児童手当の大幅拡充や保育士の処遇改善など、喫緊の課題であり、期待の大きな施策が盛り込まれております。そのため、対策が急がれるものから可能な限り前倒しを行い、早期に実施すべきであります。

 また、必要な財源確保については、社会全体で支える仕組みをつくるとしておりますが、まずは歳出改革と無駄の削減を徹底して行うことが重要です。子育て当事者以外の方々も含めた全ての国民の皆様に対し、理解が広がるよう丁寧な説明を尽くしていただきたい。

 さらに、我が党が一貫して主張してきた障害児や医療的ケア児、ヤングケアラー等に対する支援とともに、物価高の影響で苦しむ一人親家庭を含む子供の貧困対策などについても速やかに実行すべきであります。

 子育て支援の抜本強化について、総理の答弁を求めます。

 公明党は、奨学金の拡充とともに返還支援にも取り組んでまいりました。

 奨学金の月々の返還額を柔軟に減額できる返還制度の対象拡大を訴えてまいりましたが、来年度からは、対象となる本人年収の上限を三百二十五万円から四百万円に引き上げ、さらに、子供二人世帯は五百万円まで、子供三人以上の世帯は六百万円まで引き上げることが決まりました。返還者全体の六割、二十代では八割が対象になることから、若者世代に期待をされており、来年度からのスタートへ向け、返還する当事者だけでなく、これから奨学金を検討する高校生や保護者等にも広く情報が届くよう周知すべきであります。

 また、自治体や企業が奨学金の返還を肩代わりする代理返還は、若者にとって奨学金返還の負担軽減となるだけでなく、中小企業には人材の確保ができ、自治体には若者の地方定着になると広がりを見せております。長野県では、公明党青年局の推進もあり、代理返還に取り組む中小企業等に対して県が負担額の一部を助成する事業が始まりました。国としても、事務処理の簡素化はもちろんのこと、全国に取組が広がるよう支援をすべきであります。

 奨学金返還の負担軽減について、総理の考えを伺います。

 子供や若者に対する性被害が後を絶たない状況が続いております。性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる重大な人権侵害であり、断じて許されません。

 本年六月、公明党は、政府に対し、性犯罪から子供や若い世代を守るための緊急提言を申し入れました。

 これを受け、政府は、関係省庁による連絡会議を設置し、こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージを策定いたしました。さきの通常国会では、刑法が改正をされ、同意のない性行為は処罰対象になることが規定されるとともに、経済的、社会的地位を悪用した性的行為も処罰の対象となりました。これらは公明党が粘り強く要請してきたことであり、高く評価をいたします。

 一方、子供と接する職業に就く人に性犯罪歴がないことを証明する制度、日本版DBSについては、子供たちを性暴力から守り抜くという出発点に立ち、真に実効性ある制度設計を行い、早期に導入すべきであります。

 子供、若者の性犯罪、性暴力を根絶する対策について、総理の答弁を求めます。

 女性、高齢者の活躍について伺います。

 公明党女性委員会は、本年五月に、すべての女性のためのトータルプランを策定し、政府へ申入れを行いました。例えば、更年期障害へのアプローチとして、健康診断において更年期障害に関する項目を追加することや、フェムテックの活用等を提言しております。さらに、企業による更年期障害に対応した休暇制度の導入など、女性が必要なときに休暇を取得できる環境整備も求められます。

 また、高齢者の活躍について、公明党は、本年六月に、地域共生社会を支える高齢者活躍推進プロジェクトチームを設置いたしました。

 内閣府の調査によれば、現在収入のある仕事をしている六十歳代以上のうち約四割の方が、働けるうちはいつまでも働きたいと回答しております。一方で、地域における生きがい就労や協同労働、福祉的就労、有償、無償のボランティアを含む社会参加活動、社会貢献など、一般就労以外の形態については、アプローチの方法が分からないといった声があります。そのため、地域のニーズと高齢者のマッチングや、定年退職後の地域セカンドキャリアを見据えた取組を行う企業への後押し、政府の高齢社会対策大綱の見直し等を行い、高齢者が地域で生き生きと活躍できる環境を整備すべきであります。

 更年期障害への対応を含む女性活躍や高齢者活躍への取組について、総理の答弁を求めます。

 認知症施策の推進について伺います。

 二〇二五年には、六十五歳以上の五人に一人、約七百万人が認知症になると推計されております。認知症施策の推進は、待ったなしの課題であります。

 本年六月、公明党が主導いたしました認知症基本法が制定をされました。この法律の柱は、認知症になっても安心して暮らし、活躍できる共生社会の実現であります。

 その観点から、政府は、先般、認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議を立ち上げました。認知症の人やその家族など様々な関係者を交えて、今後の認知症施策の在り方の議論を開始した意義は大きいと考えます。この実現会議における議論を踏まえ、認知症施策推進本部において認知症の人及び家族等の思いを的確に反映した認知症施策推進基本計画を策定し、地域における総合的な取組を加速していただきたい。

 また、認知症の新薬が年内にも実用化される見通しです。期待の声も高まる一方で、課題も少なくありません。薬を必要とする人に確実に届けられるよう、検査、医療提供体制の整備を着実に進めるべきであります。

 認知症施策の推進について、総理の見解を求めます。

 帯状疱疹ワクチンの定期接種化について伺います。

 帯状疱疹は、五十歳を過ぎると発症が増え始め、八十歳までに三人に一人が経験すると言われております。身近な病気ですが、治療が長引くケースや、三か月以上痛みが続く帯状疱疹後神経痛を発症させ、長期間にわたり患者を苦しめることもあります。

 こうした状況から、公明党は、地方議会において、帯状疱疹のワクチン接種に対する公費助成を促進してまいりました。さらに、公明党は、帯状疱疹ワクチンの定期接種化を目指しております。

 一方で、新型コロナの影響もあり、定期接種化について、国の審議会による議論は停滞しております。そのため、公費助成に踏み込めず、国の議論の行方を注視している自治体もあります。審議会における議論を加速させ、速やかに結論を得ていただきたい。

 帯状疱疹ワクチンの定期接種化について、総理の見解を伺います。

 先般、SDGサミットが開催をされ、国連は、二〇三〇年までの持続可能な開発目標、SDGsの達成に向けた政治宣言を採択いたしました。

 とりわけ、サミットにおいて、総理は、SDGs達成に向けて、人間の尊厳の重要性を強調され、国際社会の中核的理念とすべきことを各国へ呼びかけられました。これは、我が党が貫く、生命、生活、生存を最大限に尊重する人間主義、いわゆる中道の理念であるとともに、SDGsの原点を再確認するものとして高く評価をいたします。

 しかし、SDGsの達成状況は、新型コロナの流行やウクライナ戦争の影響により遅れが生じ、非常に深刻な状況であります。国連によりますと、評価可能な約百四十の目標のうち、順調に進んでいるのは僅か一五%。特に我が国はジェンダー平等や気候変動対策などが課題として指摘されており、今後の真摯な取組が必要不可欠であります。

 政府は、年末を目指し、SDGs実施計画の改定に向けた議論を進めておりますが、目標達成への本格的な行動の加速と拡大に資する見直しをするべきであります。SDGs推進本部長としての総理のリーダーシップに期待するとともに、目標達成は危機に瀕していると国連が発した警告を我が国としてどのように打開していくのか、総理の答弁を求めます。

 北朝鮮は、十月に三回目となる軍事偵察衛星の打ち上げを断行すると予告しております。弾道ミサイル技術を使用した発射は、衛星打ち上げを目的としたものであっても、国連の安保理決議に違反し、我が国のみならず、国際社会の平和を脅かす重大な問題であります。

 金正恩総書記は、先月、ロシアのプーチン大統領と会談をし、軍事協力への懸念が強まる中、さらに、核保有の永続化を宣言するなど、安全保障環境は厳しくなっております。

 日本は、米国、韓国等と緊密に連携を図り、北朝鮮に対し挑発行為の中止及び関連する国連安保理決議の遵守を求めるとともに、引き続き、情報の収集・分析機能の更なる充実が重要となります。

 北朝鮮による偵察衛星投入が安全保障環境に与える影響、また、北朝鮮の脅威に今後どのように対応されるのか、総理の答弁を求めます。

 近年、災害が激甚化しており、防災・減災、国土強靱化は喫緊の課題であります。

 本年六月の台風二号では、奈良県、大阪府を流れる大和川で治水対策を講じた結果、浸水被害が大幅に軽減されるなど、防災・減災、国土強靱化五か年加速化対策の効果が大きく発揮されました。

 特に、被災地で活躍しておりますのが、緊急災害対策派遣隊、TEC―FORCEであります。被災状況を調査し、自治体の支援ニーズを聞いて技術的なアドバイスを行うなど、被災地に大変感謝されております。今後、ドローン等のICT技術の活用や三次元計測が行えるよう、体制や機能を強化する必要があります。

 国民の生命と財産を守るため、ハード、ソフト両面で、防災・減災、国土強靱化対策のための予算を必要かつ十分に確保すべきであります。同時に、通常国会での国土強靱化基本法改正により義務づけられた中期計画を早期に策定し、五か年加速化対策を上回る事業量を確保すべきであります。

 防災・減災、国土強靱化五か年加速化対策の取組及び中期計画の策定方針について、総理並びに国土交通大臣の答弁を求めます。

 次に、ALPS処理水の海洋放出後の風評対策と福島の復興について伺います。

 ALPS処理水の海洋放出について、政府は、風評払拭に向け、不断に国内外に対する透明性の高い情報発信に取り組むとともに、更なる広報の強化に取り組んでいただきたい。

 現在、中国等による日本産水産物の輸入規制に伴い、ホタテ産業を始め多くの水産業者が厳しい経営状況に直面しております。公明党は、いち早く、生産現場等を視察し、水産物の価格下落により収入が減少したなど、関係者の皆様からの切実な声を受け、政府に迅速な支援を実施するよう強く求めてまいりました。

 引き続き、水産業の皆様が希望を持って事業を継続できるよう、合計八百億円の基金を活用した機動的な対応や、加工機器等の導入支援を迅速に実施するとともに、新たに建屋等の施設整備に向けた支援を実施すべきであります。

 あわせて、日本産水産物の需要開拓に向けて、官民が連携して消費拡大に取り組むとともに、輸出先国の多角化を強力に進めるべきであります。

 また、本年九月、政府は、福島県大熊町と双葉町の特定帰還居住区域復興再生計画を認定いたしました。帰還困難区域全ての避難指示解除に向けた第一歩となるよう、スピード感を持って除染やインフラ整備などを進めていかなければなりません。

 公明党は、希望する全員が帰還できるよう全力を尽くし、人間の復興を成し遂げるまで、被災者に寄り添ってまいります。

 ALPS処理水の海洋放出に伴う風評払拭への取組、福島の復興について、総理の考えを伺います。

 少子高齢化や人手不足などの課題を抱える我が国にとって、デジタル化の推進は喫緊の課題であります。

 一方、その基盤となるマイナンバー制度やマイナンバーカードは、本人情報のひもづけの誤りが発生するなどにより、国民の信頼を揺るがす事態となりました。デジタル化の推進には、安全、安心が大前提であります。

 政府においては、総点検の実施と、マイナンバー登録事務の横断的ガイドラインに基づく対応など再発防止対策を徹底するとともに、国民の信頼回復に向けた具体的な対応をきめ細やかに行っていただきたい。十一月末までの総点検の終了後に、万が一、別の問題が発覚した際に、迅速に対処できる仕組みを整えておくことも必要であります。

 また、政府はデジタル行財政改革を進めておりますが、大事なことは、国民目線に立った改革であります。国民が安心してマイナンバーカードを活用でき、デジタル化の恩恵や利便性を実感していただけるよう、関係省庁や全国の関係機関と緊密に連携をし、政府を挙げた万全な取組を進めていただきたい。

 マイナンバー問題に係る対策について、総理の答弁を求めます。

 最後に一言申し上げます。

 内外の諸課題が山積している中、公明党は、今後とも、ネットワーク力を生かし、小さな声に耳を傾け政策を立案し、実行に移して、国民の負託に応えることをお誓い申し上げまして、代表質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 石井啓一議員の御質問にお答えいたします。

 国民への還元の具体策についてお尋ねがありました。

 特に所得税減税についてお尋ねがありましたが、国民への還元の具体化に向けては、明日二十六日、政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を指示いたします。

 デフレ脱却のための一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の御負担を緩和したいと考えています。その際、過去二年のコロナ禍における税収の増収分の一部を分かりやすく国民に還元できればと考えております。

 また、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図ることが極めて重要です。多くの自治体において、この夏以降、低所得者世帯に対して、一世帯当たり三万円を目安に支援を開始してきました。この物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大することといたします。

 エネルギー価格の上昇については、九月には、年内の緊急措置として、リッター百七十五円をガソリン価格の実質的な上限とするため、補助を拡大しました。この措置を、電気・ガス料金の激変緩和措置と併せて来年春まで継続いたします。また、地方自治体が地域の実情に応じてきめ細かく生活者や事業者を支援できるよう、先ほど申し上げた枠組み以外の重点支援地方交付金を追加いたします。

 このような物価高を乗り越えるための施策を経済対策に盛り込み、実行してまいります。

 次期報酬改定における物価高騰や賃金上昇への対応についてお尋ねがありました。

 令和六年度は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定が行われる大きな節目の年に当たります。

 物価高騰については、国民生活やなりわいを物価高から守る観点から、経済対策において、燃料油価格や電気・ガス料金の激変緩和措置を講ずるとともに、厳しい状況にある生活者、事業者の方々を引き続きしっかりと支えるための措置として、重点支援地方交付金の追加を検討してまいります。

 賃上げについては、岸田政権は、公定価格の見直しを掲げ、これまで累次の処遇改善を講じています。引き続き、ICT機器の活用による生産性向上の取組や経営の協働化等を通じた職場環境改善に加え、同時改定に向けても、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組みを構築してまいります。

 構造的賃上げ実現に向けた人への投資の取組についてお尋ねがありました。

 岸田政権においては、成長と分配が持続的に回り、物価上昇を十分に超える持続的賃上げが行われる経済を目指していきます。

 このため、三位一体の労働市場改革など、生産性を引き上げる構造的な改革を進める中で、非正規雇用労働者が働きながら学びやすい職業訓練の実施や正社員化に取り組む事業者への支援、実践的なデジタル人材育成を含め、リスキリングによる能力向上支援など、人への投資拡大に取り組んでまいります。

 物流二〇二四年問題への対応についてお尋ねがありました。

 物流二〇二四年問題に向けては、政府として、本年六月に、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主、消費者の行動変容を柱とする物流革新に向けた政策パッケージを策定いたしました。このうち、特に緊急的に取り組む対策については、今月六日に物流革新緊急パッケージとして取りまとめ、経済対策に盛り込みます。

 これにより、再配達率半減に向けて、ポイント還元を通じ消費者の行動変容を促すとともに、モーダルシフトや省人化、省力化などの物流効率化の取組を支援してまいります。また、賃上げ原資確保のための適正な運賃収受を図る措置や、荷主に荷待ち時間削減等の取組を義務づける措置の法制化にも取り組み、政府全体で、産業界とも連携して、持続可能な物流の実現に全力を尽くしてまいります。

 GX投資の加速等についてお尋ねがありました。

 成長と分配の好循環を実現する上で、GXなど、これからの成長分野への積極的な投資を促進すること、これが重要です。

 御指摘の、電動車の普及と充電インフラの整備、半導体や蓄電池の国内サプライチェーン強靱化に向けた生産拠点整備や研究開発、また、子育て世帯等による省エネ性能の高い住宅の新築や既存住宅における断熱窓への改修等については、いずれも重要な取組であり、今後取りまとめる経済対策において、必要な支援策をしっかりと盛り込む方向で検討してまいります。

 子育て支援の抜本強化についてお尋ねがありました。

 前例のない規模で政策強化を図ったこども未来戦略方針のスピード感ある実行のため、当面の集中的な取組に必要な制度設計を速やかに具体化し、できるところから取組を実施してまいります。

 また、当面の集中的な取組の財源については、まずは徹底した歳出改革等を行い、その効果を活用しながら、国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指すこととしており、国民の皆様に丁寧に説明してまいります。

 また、今後、こども大綱の中で具体化する、一人親家庭への支援を含む子供の貧困対策、ヤングケアラー、障害児、医療的ケア児に関する支援策については、今後の予算編成過程において施策の拡充を図ることとしております。引き続き、こども大綱の策定に向けて、支援策の具体化を進めてまいります。

 奨学金返還の負担軽減についてお尋ねがありました。

 政府においては、これまでも、無利子奨学金の拡充をするとともに、厳しい経済状況などで奨学金の返還が困難な方については、返還の猶予や毎月の返還額の減額をする制度などにより、負担軽減を図ってまいりました。

 さらに、令和六年度から、返還中の方がライフイベントを踏まえて柔軟に返還できるよう、減額返還制度を見直します。今後、返還中の方への周知のほか、高校生やその保護者等にも情報が行き渡るよう、奨学金の各種案内やSNS、高校教員向けの説明資料等に掲載することにより、制度の周知を図ってまいります。

 地方公共団体による奨学金返還支援や企業による奨学金の代理返還については、返還手続のデジタル化による事務処理の簡素化に取り組んでおり、今後、税制上のメリット等も含め改めて周知し、全国での利用拡大に努めてまいります。

 いわゆるDBS法案や、子供、若者への性犯罪、性暴力対策についてお尋ねがありました。

 性犯罪、性暴力は重大な人権侵害であり、あってはならないことです。政府として、こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージに基づく対策を加速化してまいります。

 その上で、子供の性被害を防止する法制度については、与党とも緊密に連携をしつつ、子供の性被害防止のため、より実効的な制度となるよう検討を深めている段階であり、次期通常国会以降、できるだけ早い時期に法案を提出できるよう努めてまいります。

 女性活躍や高齢者活躍への取組についてお尋ねがありました。

 女性活躍に向けては、女性の就業率が上昇する中、更年期障害への対応を含む、仕事と女性の健康課題の両立が課題となっています。

 更年期障害など女性の健康課題に対しては、事業主健診の問診項目の充実や、体調不良の際に利用できる休暇制度を導入する企業事例の紹介、テクノロジーを用いて課題に取り組むフェムテックの活用等に取り組んでいます。

 また、高齢者活躍については、企業における雇用、就業機会の確保、ハローワークによる再就職支援に取り組むほか、シルバー人材センターにおいて就業機会の提供を行っているところです。

 御指摘の高齢社会対策大綱の見直しの検討も含め、経済社会情勢の変化等も踏まえつつ、女性や高齢者など全ての人が生き生きと活躍できる環境整備に向けて、施策の更なる充実を図ってまいります。

 認知症施策の推進についてお尋ねがありました。

 認知症基本法の基本理念に沿って、認知症の方が尊厳と希望を持って暮らすことができる社会の実現に向け、認知症の方御本人や御家族等の意向を十分に踏まえつつ、都道府県等に対する認知症施策推進計画の策定支援など、総合的に認知症施策を推進してまいります。

 また、アルツハイマー病の新薬であるレカネマブの新薬承認等を踏まえ、必要な早期発見、検査、医療サービス等が提供される体制整備や、治療薬の更なる研究開発を進めてまいります。

 帯状疱疹ワクチンの定期接種化についてお尋ねがありました。

 帯状疱疹については、加齢に伴い罹患率が高くなるほか、合併症により苦しむ患者もおられると承知しており、高齢化が進む我が国において、対応することが必要な疾患であると認識しています。

 ワクチンを定期接種に位置づけることについては、厚生労働省の審議会において、最新の科学的知見や費用対効果等の様々な論点について、専門的な見地から御議論いただいているところです。その結果を踏まえて必要な対応を検討してまいります。

 SDGs達成に向けた我が国の取組についてお尋ねがありました。

 本年はSDGs達成に向けた中間年ですが、地球規模課題が複雑化、深刻化するとともに、新型コロナによるパンデミックや、ロシアによるウクライナ侵略に端を発する食料危機等の影響などもあり、SDGs達成に向けた進捗には大幅な遅れが生じています。

 こうした中で、今、改めて、誰一人取り残さないというSDGsの原点に立ち返り、人間の尊厳が守られる世界を実現するべく、我が国を含む国際社会全体でSDGs達成に向けた努力を加速していく必要があります。

 本年九月に開催されたSDGサミットにおいても、私からこうした考えを強調するとともに、低所得国、脆弱国への支援を含め、我が国として、国際社会のSDGs達成に向けた取組を力強く牽引していくとの決意を述べたところであります。

 本年末には、日本政府として、SDGs実施指針を新しい時代に合わせたものに改定する予定です。その中で、現状打開のために、新しい資本主義の下での人への投資や、地球規模の主要課題への取組の強化などの対策を盛り込むことを考えています。我が国として、引き続き、国際社会全体でSDGs達成に向けた取組を主導していく所存です。

 北朝鮮の偵察衛星が与える影響及び北朝鮮への対応についてお尋ねがありました。

 北朝鮮が核・ミサイル戦力の増強を継続する中、仮に偵察衛星を保有するに至った場合、北朝鮮の核、ミサイルの運用能力は更に向上し、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を一層脅かすおそれがあります。

 このため、米国、韓国等と緊密に連携しつつ、北朝鮮に対し、挑発行動の中止と関連する国連安保理決議の遵守を求めるとともに、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、我が国の防衛に万全を期してまいります。

 防災・減災、国土強靱化についてお尋ねがありました。

 激甚化、頻発化する災害に対応するため、防災・減災、国土強靱化に対応する対策を着実に進めてまいります。五か年加速化対策等の対策箇所では、全国各地で被害を抑制する効果が着実に積み上がる一方、対策が急がれる箇所も数多く残っています。

 このため、今回の経済対策において、国土強靱化、防災・減災など国民の安全、安心の確保を柱とし、ハード、ソフト両面から事前防災対策に取り組みます。

 さらに、さきの通常国会で改正された国土強靱化基本法によって、五か年加速化対策後も、切れ目なく、中長期的な対策と事業規模の見通しを持って取組を進めていく法的な枠組みが措置されたことを受けて、施策の実施状況の調査など、実施中期計画の策定に向けた作業を進めてまいります。

 ALPS処理水関係の風評払拭と福島復興についてお尋ねがありました。

 ALPS処理水の海洋放出に関する風評払拭に向けては、御指摘のとおり、透明性の高い情報発信が重要であり、モニタリング結果も含め、引き続き、国内外に積極的に情報発信をしてまいります。

 また、一部の国による輸入規制強化を踏まえ、国内水産業を守るため、総額一千七億円の政策パッケージを取りまとめ、国内消費拡大や代替輸出先、販路拡大、国内加工の設備強化支援などに取り組んでおり、今後も、御指摘の施設整備支援なども含め、必要に応じて機動的に予算の確保を行ってまいります。

 また、帰還困難区域において、帰還意向のある住民の方々全員が一日も早く帰還できるよう、特定帰還居住区域制度に基づき、除染やインフラ整備を始めとする避難指示解除の取組を進めてまいります。

 将来的に帰還困難区域の全てについて避難指示を解除し、復興再生に責任を持って取り組むとの決意の下、政府一丸となって全力を尽くしてまいります。

 マイナンバーの問題について、対策についてお尋ねがありました。

 マイナンバー情報総点検については、個別データの点検により、原則、本年十一月末までをめどに終えるよう、点検実施機関を支援し、政府を挙げて対応してまいります。

 あわせて、ヒューマンエラーによるひもづけ誤りの再発防止対策として登録事務に係る横断的なガイドラインを今月策定したほか、迅速なインシデント対応を行うため、デジタル庁を司令塔として、府省を横断した連携体制を構築しております。

 デジタル社会における公的基盤であるマイナンバー制度に対する国民の信頼を回復し、全ての国民が安心してデジタル化の恩恵を享受できるよう、利用者起点のデジタル行財政改革に、政府、自治体、関係機関が一丸となって取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井啓一議員から、防災・減災、国土強靱化についてお尋ねがありました。

 これまで、年々深刻化する自然災害等に対し、五か年加速化対策を踏まえ、事前防災・減災対策を重点的かつ集中的に講じ、全国各地で着実に効果を発揮してきました。例えば、御指摘のあった大和川では、河道掘削などの治水対策を進めることにより、令和五年六月の台風等による出水において、おおむね同様の雨量であった平成二十九年の出水時と比較して、浸水戸数を約八割減少させることができました。

 また、TEC―FORCEについては、被災自治体からの支援ニーズの高まりなどに応えるべく、現在、平成二十年の創設当時の約六倍となる約一万六千二百名に増強しております。あわせて、迅速な災害対応を行うため、三次元計測が可能なドローンを活用した被災状況調査など、ICT技術の活用を積極的に進めており、引き続き、TEC―FORCEの体制や機能の強化を図ってまいります。

 一方で、今後、気候変動に伴う降雨量の増加等による自然災害の激甚化、頻発化、大規模地震の切迫、インフラの老朽化などが懸念されていることから、更に国土強靱化の取組を強化することが必要です。

 このため、現下の資材価格の高騰等も踏まえ、必要十分な予算を確保し、ハード、ソフト一体となった取組を進めてまいります。

 また、さきの通常国会において、国土強靱化実施中期計画の法定化などを内容とする改正法が、議員立法により成立いたしました。これにより、実施計画を切れ目なく策定し、五か年加速化対策後も継続的、安定的に国土強靱化の取組を進めることが可能となりました。

 国土交通省としては、今後とも、関係省庁と連携し、改正法に基づく実施中期計画の策定に向けて、これまでの施策の実施状況の調査を進めていく等、国土強靱化の取組をしっかりと進めてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

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副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)

 私からは、まず、賃上げ、賃上げ、賃上げと、賃上げを三唱させていただきたいと思います。

 賃上げが実現すれば、年金も上がります、子育てもしやすくなります。結局、問題は賃金です。

 今私が三回賃上げと申し上げたのは、総理、本当に経済を新しいステージに移行させるためには、少なくとも今年、来年、再来年、三年連続賃上げを実現することが必要だと考えます。

 総理、一国のトップリーダーとして、賃上げ実現に向けた力強いメッセージを出してください。岸田内閣では三年連続賃上げを何としても実現する、そのためにありとあらゆる政策手段を講じる、これぐらい言ってください。総理の決意を伺います。

 今後の持続的賃上げのポイントは、中小企業の賃上げです。しかし、中小企業や下請企業では、賃上げに必要な価格転嫁が簡単ではありません。運送業や農業は、その典型です。

 昨年、公正取引委員会は、燃料費や人件費などのコスト上昇分を取引価格に反映する協議をしなかったとして、佐川急便などの社名を公表しました。

 価格転嫁において優越的地位の濫用がないか、業界大手にこそ公取や下請Gメンを積極的に入れるべきです。総理の考えを伺います。

 次に、経済です。

 内閣府は、今年度の名目GDP成長率を四・四%と予想しているのに、なぜか税収は昨年から二兆円減る予測になっています。奇妙です。意図的に税収を低く見積もり、増税が必要と言っているのではないですか。税収に関する総理の基本認識を伺います。

 一昨年度は約十兆円、昨年度は約六兆円の税収の上振れ、そして今年度も、一九九七年以降の税収弾性値の平均値を当てはめると七十九兆円程度の税収になり、約十兆円の上振れが見込まれます。そうなれば、政府目標の二〇二五年を待たずに、来年度には前倒しで何とプライマリーバランスの黒字化を達成します。

 しかし、速過ぎる財政再建のペースは、かえって経済を減速させます。現に本年四月から六月の消費はマイナスになっています。

 今やるべきは、増税ではなく減税です。国民民主党は、国民に直接届く生活減税四本柱を中心とする経済対策を取りまとめました。

 まず、所得税の減税です。

 税収の上振れ要因の一つは、所得税の増収です。三十年ぶりの賃上げによって、所得の増加率以上に税収が増える、いわゆるブラケットクリープ現象が生じています。

 総理、税収増の還元というなら、非課税世帯への給付だけでなく、税金を払っている納税者にこそ税収増を還元すべきです。具体的には、所得税のインフレ調整、すなわち基礎控除や給与所得控除の引上げによる減税を提案します。基礎控除は、最低限の生活に必要な所得には課税しないという制度です。しかし、一九九五年を最後に、基礎控除と給与所得控除を足し合わせた額の引上げは行われていません。

 デフレからインフレに経済のステージが変化する中、生きるコストも上昇しています。だからこそ、定額とか時限とか表層的な議論ばかりでなく、基礎控除の引上げなど、インフレ時代に対応した筋の通った所得税改革が必要です。総理の考えを伺います。

 所得税と併せて大きく伸びている税収が消費税収です。物価の上昇は、消費税率の引上げと同じ効果があります。国民民主党は、名目賃金上昇率が五%程度に達するまでの間は、消費税率を五%に減税することを提案しています。また、単一税率になればインボイスは要りません。弱含んでいる消費を下支えし、中小・小規模事業者の負担をなくすためにも、税率を引き下げ、単一税率にすべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 もう一つ、絶対やるべき生活減税が、ガソリン減税です。国民民主党は、二年前の衆議院選挙のときから、トリガー条項凍結解除による旧暫定税率分、リッター二十五円十銭の減税を主張してきました。自公国の三党協議を経て補助金という形になりましたが、かえって財政支出が増えています。出口戦略の一環としても、そろそろ補助金からトリガー条項発動による減税に移行すべきときです。

 また、そもそも、暫定と言いながら来年で導入から五十年を迎える旧暫定税率や、ガソリン税に消費税を課す二重課税は見直すべきです。総理の考えを伺います。国民民主党は、暫定税率と二重課税を廃止する税制改正法案を今国会に提出しています。

 国が賃上げを主導するならば、まず、公定価格である介護や保育の従事者の給料を上げるべきです。特に、介護の人材不足は深刻です。昨年、介護就労者の数は、転職などによって初めて減少に転じました。政府が経済対策に盛り込む予定の月六千円の賃上げでは、全産業平均には全く及ばず、離職は防げません。月六千円の根拠は一体何ですか。介護従事者の待遇をいつまでにどの程度の水準にまで引き上げようとしているのか、総理に伺います。

 国民民主党は、せき止めやたんを切る薬など品薄が続く医薬品の製造、流通への支援が必要だと訴えてきました。先日、厚労省から製造メーカーに対する増産要請が出ましたが、いつ頃までにその品薄が解消されるのか、見通しを示してください。

 そもそも、今の薬価では、作れば作るほど赤字です。幾ら増産要請をしても、薬価を上げない限り、安定供給は実現しません。適正価格で国が買い取るべきではありませんか。

 また、低過ぎる薬価では、国内で優れた新薬が生まれません。製薬業界の賃上げを促すためにも、毎年改定を含めた薬価制度の在り方を根本的に見直すべきではありませんか。総理の見解を伺います。

 電気代の値下げには、原子力発電所の早期再稼働が必要です。とりわけ東日本における安価で安定した電力供給のためには、柏崎刈羽原発の再稼働が必要です。新潟県や東電任せにせずに、国が前面に出て、再稼働に向けた具体的な行動を起こすべきではありませんか。

 また、政府は、火力から再エネに電力システムを構造転換すると言ってきましたが、電力自由化で本当に電気代は安くなったのかなどを検証し、電力の安定供給の観点から必要な見直しを行うべきです。総理の見解を伺います。

 年収の壁の問題について具体策が出たことは評価します。ただ、現場では、キャリアアップ助成金を用いた新制度は使いづらいとの声が出ています。この新制度で何人が新たに保険加入するのか、人手不足はそもそも改善するのか、見通しをお答えください。

 さらに、一部の人の社会保険料を国が肩代わりすることについては、自分で保険料を納めている人との不公平感が否めません。総理、令和七年度末までの時限措置を終えた後の、年収の壁の抜本改革の姿を速やかに示すべきではありませんか。

 次に、こども未来戦略方針について伺います。

 妊娠、出産、育児を通じた伴走型支援が盛り込まれたことは評価します。ただ、肝腎の伴走者が不在です。

 フィンランドにはネウボラという無料の出産育児相談所があり、親子を同じ保健師がずっと担当するマイ保健師制度があります。出産直後の産後うつや虐待死を防ぐため、日本でも、妊娠から育児まで同じ専門家が伴走し、複数の支援サービスのコーディネートも行う子育てケアマネジャーやかかりつけ保健師といった制度の創設が必要だと思いますが、総理の見解を伺います。

 児童手当の所得制限撤廃は評価しますが、それ以外の子育て、教育政策についての所得制限が残ったままです。特に、障害児福祉の所得制限撤廃については、こども未来戦略方針には言及がありません。総理、児童手当の所得制限を撤廃するなら、せめて障害児福祉の所得制限も撤廃しませんか。国民民主党は、障害児福祉を含む所得制限撤廃法案を国会に提出しました。

 総理、異次元の少子化対策というなら、自民党が野党時代に公約に掲げた年少扶養控除を復活しませんか。本来、人的控除は最低限の生活費には課税しないという制度で、子供の生存権を保障するものでもあります。児童手当とは制度目的が異なっているので、両立は可能だと思います。総理の考えを伺います。また、児童手当を高校生まで延長する財源として高校生の扶養控除を廃止するとの声がありますが、この案に総理も賛成ですか。考えを聞かせてください。

 こども未来戦略方針では、来年度から給付型奨学金の対象を多子世帯や理工学部、農学部の中間層の学生にも拡大するとしていますが、これを多子世帯以外や文系の学生にももっと拡大すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 こども未来戦略方針では、来年度から授業料後払い制度を修士段階の学生に導入し、その財源を日本学生支援機構によるHECS債で調達することとしています。

 国民民主党は、教育、科学技術など人的資本形成に資する予算には教育国債という新たな国債を充てることを提案し、法案も提出しています。政府が検討しているHECS債の対象を更に拡大した教育国債を発行することで、望む全ての学生が大学や大学院に無償で通えるようにすべきです。総理、教育国債を前向きに検討してください。

 クリーンエネルギー自動車導入補助金、いわゆるCEV補助金や、充電・充填インフラ等導入促進補助金は人気があって、いつも年度途中でなくなってしまいます。補正予算で予算を積み増し、更に推進を図るべきです。

 なお、その際、経済安全保障の観点から、国内メーカーが国内で生産した自動車のみに補助の対象を限定してはいかがでしょうか。バイデン政権では、米国のメーカーが国内の工場で製造したEV車のみに支援の対象を限定しています。中国の車に支援を、税金を使ってどんどんやっていいのか、よく考えるべきです。

 国民民主党は、重要な情報を扱う政府の職員や民間人の信頼性を確認するセキュリティークリアランス法案と、アクティブサイバーディフェンスを可能とするためのサイバー安全保障基本法を国会に提出する予定ですが、こうした課題について政府の取組が遅れています。岸田内閣として、法案の提出はいつになるのか、お答えください。

 飼料、肥料、資材、燃料などの高止まりが続いていますが、日本農業新聞の調査によると、価格転嫁できない農家は七割に及んでいます。二〇二一年、フランスではエガリム法が公布され、農業者と取引相手との取引関係の適正化が図られています。農産物の生産コスト増の適正な価格転嫁を推進するため、日本版エガリム法が必要だと考えますが、総理の考えを伺います。来年の通常国会への提出は断念したんですか。

 福島第一原発からの処理水放出に対して中国が日本の水産物の輸入を禁止した結果、ホタテなどの水産物が倉庫に滞留して追加の保管費用がかかっています。また、中国以外でも、輸入する水産物について放射能検査や安全証明を求めてくる国も出てきています。政府として、輸入禁止によって生じた水産物の保管や検査の費用に対する支援を行うべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 国民民主党は、本年の通常国会で、日本維新の会、有志の皆さんとともに、大規模災害時などにおける国会議員任期の延長など、国会機能の維持を目的とした緊急事態条項の憲法改正条文案を取りまとめました。

 岸田総理が公約どおり、今の任期中に憲法改正を実現するのであれば、この臨時国会が勝負です。臨時国会で憲法改正条文案を取りまとめ、来年の通常国会に発議しないと間に合いません。総理の憲法改正に向けた本気度を伺います。

 最後に、総理に申し上げます。

 解散・総選挙に有利な政策ではなく、国民のための政策を堂々と進めてください。

 国民民主党は、対決より解決の姿勢で、賃金を上げ、所得を増やし、税負担や社会保障負担を引き下げる提案を積極的に行っていきます。私たち国民民主党は、今の、働いたら罰、子供を産んだら罰、子供を育てたら罰と言われるような社会を変えていきたいと思います。

 政府及び与野党を超えた同僚議員の協力をお願い申し上げ、国民民主党を代表しての質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員の御質問にお答えいたします。

 まず、賃上げについてお尋ねがありました。

 賃上げは、言うまでもなく岸田政権の最重要課題であり、成長と分配の好循環が回っていく、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指してまいります。

 今年の春闘で見られた賃上げの流れを来年の賃上げでも持続させていくことが重要であると考えています。あらゆる政策手段を集中的に講じていきたいと考えています。賃上げ税制の強化などの措置を講ずるとともに、三位一体の労働市場改革など、生産性を引き上げる構造的な改革を進めてまいります。

 岸田政権として、持続的で構造的な賃上げの実現に向けて、全力で取り組んでまいります。

 価格転嫁における優越的地位の濫用についてお尋ねがありました。

 賃上げの原資を確保するためには、業界大手を始め、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁を定着させていくことが重要です。

 そのため、公正取引委員会において、昨年末、価格転嫁における優越的地位の濫用に関する緊急調査を行い、多数の取引先に対し協議することなく価格を据え置いていた業界大手を含む十三社の企業名を公表いたしました。

 本年も、昨年より幅広い業種を対象に、業界大手を含む十一万社を超える企業への調査を実施中であり、年内をめどに結果を取りまとめることを予定しております。

 加えて、下請Gメンによるヒアリングの情報も活用しながら、中小企業等が労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分を適切に転嫁できるよう取り組んでまいります。

 税収に関する基本認識についてお尋ねがありました。

 税収は、予算編成時点で経済状況や経済見通しなどを踏まえて見積もられ、その後の状況の変化により、決算までの間で変動するものと認識をしております。

 令和五年度の税収が令和四年度決算の税収より低い水準となっているという御指摘、これは事実であります。これは、令和五年度税収は令和四年度決算が判明する前の昨年末の予算編成時点で見積もったものである一方、その後判明した令和四年度決算において予想以上に税収が伸びていたものであり、これは意図的に税収を低く見積もっているという御指摘は当たりません。

 税収増の還元についてお尋ねがありました。

 政府として、今後、国民への還元の具体化を早急に図ってまいりますが、税収の増収分の一部を還元すると申し上げたからには、分かりやすく納税者に還元することを検討してまいります。

 所得税のインフレ調整をすべきという御指摘がありましたが、我が国経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、現時点では、賃金上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねない、こうした状況にあると認識をしております。

 ですから、今、税制のインフレ調整を考える段階ではなく、むしろデフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和することこそ必要であると考えております。

 消費税減税についてお尋ねがありました。

 消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。

 また、軽減税率制度については、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として導入され、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を軽減することにより消費税の逆進性を緩和する効果があり、これを廃止して単一税率にすることは考えておりません。

 ガソリン税の在り方についてお尋ねがありました。

 まず、エネルギー価格高騰から国民生活やなりわいを守らなければならない、こうした思いについては共有をいたします。トリガー条項の凍結解除については、灯油や重油などが支援の対象外となるほか、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱が生じる可能性がある等の課題があると承知をしています。このため、燃料油価格対策として、燃料油価格の激変緩和措置を、今般策定する経済対策において来年春まで継続することとしております。

 その上で、御指摘の揮発油税等の当分の間税率は、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情を踏まえて設定されているものであり、また、消費税の課税標準としての価格に個別間接税を含むという取扱いは国際的に確立したルールとなっているため、こうした税制上の扱いを変更することは考えておりません。

 介護従事者の処遇改善についてお尋ねがありました。

 昨今の高水準となる賃上げの動向や人手不足の状況を踏まえれば、介護分野における賃上げを始めとする人材確保への対応は重要な課題であり、岸田政権は、公定価格の見直しを掲げ、これまで累次の処遇改善を講じています。

 今般の経済対策における対応は、御指摘があった金額を含め、具体的な内容が今固まっているわけではありません。引き続き、ICT機器の活用による生産性向上の取組や、経営の協働化等を通じた職場環境改善に加え、令和六年度の介護報酬改定に向けても、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組み、これを構築してまいりたいと考えております。

 医薬品の安定供給及び薬価制度についてお尋ねがありました。

 医薬品の流通は、国が定めた薬価を踏まえつつ、市場で自由に取引していただくという医療保険制度の下で行われているものであり、企業に増産していただけるよう、経済対策などにより着実に支援をしてまいります。

 せき止めやたん切り薬などの医薬品の需給は、感染症の流行状況などにより左右されることから、見通しを立てることが難しい面がありますが、関係者と連携の下、国民に必要な医薬品を確実にお届けできるよう、今後ともあらゆる手だてを講じてまいります。

 また、薬価制度については、国民皆保険制度の持続性とイノベーションの推進、この両立を図りながら、薬価の維持や引上げを行う仕組みも活用しつつ、令和六年度薬価改定に向けて議論を進めてまいりたいと考えます。

 柏崎刈羽原子力発電所の再稼働と電力自由化の検証についてお尋ねがありました。

 柏崎刈羽原子力発電所については、一連の核物質防護事案等を受け、現在、東京電力において、再稼働に向けて体制の再構築と組織改革に取り組んでいるところです。

 原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針です。その上で、政府としても、東京電力に対し、しっかりと指導を行うとともに、地元の理解を得られるよう、前面に立って原子力の必要性や意義を丁寧に説明してまいります。

 これまでの電力システム改革を通じて、広域的な電力供給システムの構築とともに、小売全面自由化が進められ、需要家の選択肢が拡大はいたしました。一方で、足下では、主に輸入燃料価格の高騰の影響を受けて電気料金が上昇し、大手電力会社による規制料金の値上げも行われています。

 これに対して、激変緩和措置を講じつつ、中長期的には、省エネ対策の徹底に加え、再エネ、原子力など脱炭素電源への転換の促進を通じて、エネルギーコストの上昇に強い経済構造への転換、これを進めてまいります。

 引き続き、これまでの取組や新たな課題について検証を行い、制度を不断に見直すことにより、安定的かつ安価な電力供給を実現してまいります。

 年収の壁についてお尋ねがありました。

 年収の壁については、労働者が壁を意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大に取り組んできたところです。

 今般、若い世代の所得向上や人手不足の解消の観点から、当面の対応策として、年収の壁・支援強化パッケージを取りまとめたところです。まずは本パッケージを着実に実行し、特定の見通しに基づいて対象人数を画することなく、年収の壁に近づく可能性のある全ての方が壁を乗り越えられるようにしてまいりたいと考えています。

 その上で、被用者保険の更なる適用拡大などの制度の見直しに取り組むこととし、次期年金制度改正に向けて社会保障審議会年金部会において議論を開始しており、今後も関係者の意見を伺いながら丁寧に議論を行ってまいります。

 伴走型支援についてお尋ねがありました。

 本年六月にまとめたこども未来戦略方針に基づき、妊娠期から切れ目のない支援を行うための伴走型相談支援を実施しており、その継続的な実施に向け、制度化の検討を進めることとしています。

 伴走型相談支援の担い手については、保健師などの専門職や、一定の研修を受講した上で行うこととしていますが、制度化の検討を進める中で、地方自治体の取組状況などを踏まえつつ、御指摘の点も含め、実効的な支援を提供するための方策について検討してまいります。

 障害児福祉の所得制限についてお尋ねがありました。

 障害児福祉の所得制限など各制度の所得制限の在り方については、各々の制度の目的や支援方法に応じて、それぞれの制度において定められているものであると考えています。

 一方、こども未来戦略方針においては、全ての子供の育ちを支える経済的支援の基盤を強化する観点から、児童手当の所得制限撤廃などに取り組むこととしております。これは、障害児の家庭の経済的負担の軽減にもつながるものであると考えております。

 同時に、障害児支援については、支援基盤の拡充に重点を置きながら取り組むこととしており、児童発達支援センターの機能強化を始めとして、速やかにその具体化を進めてまいります。

 年少扶養控除についてお尋ねがありました。

 政府は、本年六月に策定したこども未来戦略方針に基づき、当面の集中的な取組を進め、我が国の子供一人当たりの家族関係支出をOECDトップのスウェーデンに達する水準とする予定です。このように、主として歳出面の取組で前例のない規模で子供、子育て政策の強化を図る中、かつて子供手当の創設に合わせて廃止された年少扶養控除の復活は検討課題としてはおりません。

 また、高校生の扶養控除については、こども未来戦略方針において、児童手当の支給期間の高校生年代までの延長に際して、中学生までの取扱いとのバランス等を踏まえ、高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理するとされています。

 高校生の扶養控除については、このような切り口から整理を進める必要があるとしても、子供、子育て政策の強化のための財源確保を目的として見直すことは考えておりません。また、高校生の扶養控除の廃止を前提として、議論、検討している事実はありません。

 給付型奨学金の対象拡大についてお尋ねがありました。

 高等教育の無償化については、低所得世帯を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金の支給を併せて実施してきたところであり、さらに、令和六年度から、負担軽減の必要性の高い多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大することとしております。

 これに加えて、多子世帯の学生等に対する授業料等減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、対象年収の拡大も含め、更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化を進めてまいります。

 教育国債による大学の無償化についてお尋ねがありました。

 御指摘のHECS債は、令和六年度から修士段階の学生を対象として導入する授業料後払い制度の財政基盤を強化するため、学生等の納付金により償還が見込まれること等から導入することとしたものです。

 教育国債については、安定財源の確保や財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。

 クリーンエネルギー自動車やインフラの導入補助金についてお尋ねがありました。

 脱炭素に不可欠な電動車の普及に向けて、消費者の需要や企業の投資意欲を継続的に喚起していくことは重要であり、これらの補助金について経済対策に盛り込むことを検討していきます。

 また、現在の導入補助金では、生産国ではなく、車両の性能を踏まえて購入費用を補助しています。御指摘の国内メーカーや国内生産された自動車の優遇については、WTOルール上の課題もあると承知しておりますが、自由貿易の維持とGX実現の二つのバランスを取る観点から、引き続き、適切な補助制度を検討してまいります。

 セキュリティークリアランス及びサイバー安全保障についてお尋ねがありました。

 セキュリティークリアランスは、経済安全保障分野の情報保全強化の観点から非常に重要です。本年二月には有識者会議を設置し、制度設計に必要な議論をしていただいており、同会議での議論を踏まえ、次期通常国会における法案の提出に向けた準備を進めてまいります。

 また、我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境を鑑みると喫緊の課題であり、国家安全保障戦略を踏まえ、様々な角度から政府全体で検討を進めているところです。可能な限り早期に法案をお示しできるよう、引き続き取り組んでまいります。

 農産物の価格転嫁についてお尋ねがありました。

 燃料、肥料、飼料等の価格が高騰する中、安定的な食料供給を実現していくためには、生産に加え、流通、加工、小売等の各段階を通じた持続可能性を確保していく必要があります。こうしたことから、現在、農林水産省において、これら食料供給を担う各段階の関係者による協議会を設け、適正な価格形成の仕組みを議論しているところです。

 フランスのエガリム法についてお話がありましたが、我が国では中小の小売業者が多数存在するなど食品の流通構造等にフランスとの違いがあり、今申し上げた協議会の議論も踏まえ、消費者の理解を前提として、我が国の実態に即した価格形成の仕組みづくりを進めてまいりたいと考えます。

 ALPS処理水の海洋放出に伴う中国等による輸入規制強化を踏まえた水産業者への支援についてお尋ねがありました。

 ALPS処理水の海洋放出以降の一部の国による輸入規制強化を踏まえ、国内水産業を守るため、総額一千七億円の水産業を守る政策パッケージを取りまとめました。

 風評影響を受けた水産物の保管については、既に用意した三百億基金による支援に加え、予備費の使用により、中国等への輸出減が顕著な品目であるホタテ等に対する重点的な支援も開始したところです。

 また、ALPS処理水の海洋放出に伴い、新たに放射性物質検査証明書の提出を義務づけた国や地域はありませんが、引き続き、科学的根拠に基づかない措置についてはその即時撤廃を求めていくとともに、全国の水産業支援に万全を期してまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正は先送りできない重要な課題であり、国民民主党が日本維新の会、有志の会と連携して具体的な改憲案を示し、建設的な議論を呼びかけておられることに、まず敬意を表したいと思います。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、国会の発議に向けた手続を進めるためにも、条文案の具体化等、国会においてこれまで以上に積極的な議論が行われることを期待いたします。

 また、自民党総裁としてあえて申し上げれば、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いは、いささかの変わりもありません。党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)

 イスラエル・ガザ紛争による人道危機が深刻です。

 ハマスによる無差別攻撃は明白な国際法違反であり、我が党は、これを強く非難するとともに、人質の即時解放を求めます。

 同時に、イスラエルによる大規模な空爆、完全封鎖、住民の移動の強制、おびただしい犠牲をもたらす地上侵攻の動きは、どれも国際法を乱暴にじゅうりんするものです。我が党は、イスラエルに対して、ガザに人道危機をもたらしている全ての行動を中止し、地上侵攻を中止することを強く求めます。

 日本共産党は、双方に対し、暴力の連鎖を止め、人道支援のアクセスを保障し、即時停戦に向けた交渉のテーブルに着くことを求めます。

 日本政府に対し、二つの点を求めます。

 第一に、ハマスに対する非難だけでなく、イスラエルに対して、無法な空爆、封鎖、地上侵攻の中止を求めるべきではありませんか。第二に、イスラエル、パレスチナ双方との関係を最大限に生かし、停戦に向けた交渉を促すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 物価高騰から暮らしを守ることは、今国会の最大の課題です。

 物価高騰でなぜこんなに暮らしが苦しいか。それは、根本に、三十年に及ぶ経済の停滞と暮らしの困難、失われた三十年があるからではないでしょうか。働く人の実質賃金は、二十六年間で年六十四万円も減っています。長期にわたって実質賃金が減り続けているところに物価高騰が襲ってきた、ここに暮らしの特別の困難があるのではないでしょうか。

 この事実は、総理も認めざるを得ないようです。総理は、所信表明で、この三十年間、コストカット型経済を続け、賃金や設備投資までコストカットの対象にしてきたことが経済の停滞を招いたとし、コストカット型経済からの完全脱却を主張しています。

 それでは伺います。日本経済をコストカット型経済にしてしまったのは一体誰なのか。

 賃金のコストカットのために、非正規雇用を四割にまで広げてしまった。企業の社会保険料のコストカットのために、医療、年金、介護など社会保障の連続切下げを進めてきた。企業の税のコストカットのために、法人税を大幅に減税し、その穴埋めに消費税の連続大増税を進めてきた。どれもこれも、財界の旗振りに従って自民党政治がやってきたことではありませんか。

 コストカット型経済から抜け出すためには、三十年来の経済政策の大本からの切替えが必要だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 日本共産党は、九月二十八日、経済再生プランを発表し、失われた三十年を打開して、暮らしに希望が持てる日本をつくるために、働き方、税財政、エネルギーと食料、三本柱の改革案を提案しました。幾つかの中心課題について、総理の見解を伺います。

 第一は、最低賃金の抜本的引上げです。

 改定された最低賃金は全国加重平均で千四円。ドイツ千九百二十三円、イギリス千八百七十五円、フランス千七百八十五円の五割から六割程度です。総理には、深刻な国際的立ち遅れの認識がありますか。

 全労連などと静岡県立大学の研究者が共同で行った最低生計費調査によると、単身の若者が暮らしていくのに必要な生計費は、全国どこでも時給千五百円から千六百円以上となっています。千四円では労働者の生計費を満たしていない、とても暮らしていけない水準であるという事実をお認めになりますか。

 総理は、二〇三〇年代半ばに千五百円にと言っていますが、生計費に満たない現状を十数年先まで我慢せよというのですか。中小企業支援と一体に、全国一律で千五百円への最低賃金引上げは急務と考えませんか。大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、十兆円程度の税収を中小企業の賃上げへの直接支援に充てるべきであります。総理の答弁を求めます。

 第二は、非正規ワーカーの待遇を抜本的に改善することです。

 正規と同じ仕事をしているのに、賃金が低く、ボーナスも出ず、育児休暇も取れない。痛切な訴えであります。非正規ワーカーは、この二十年で一・五倍、二千百万人を超えています。ところが、賃金は正規労働者の六七%、その上、ボーナスや各種手当も出ないなどの低賃金が押しつけられています。非正規雇用の七割は女性であり、生涯賃金で一億円もの男女賃金格差をつくり出しています。

 総理は、非正規ワーカーのこの現状が、労働者全体の実質賃金を引き下げ、雇用におけるジェンダー不平等の大きな要因となっているという事実をお認めになりますか。お答えください。

 日本共産党は、十月十八日、非正規ワーカー待遇改善法案を提案しました。非正規ワーカーの雇用の安定を図り、差別と格差をなくし、ジェンダー平等を促進する包括的提案であります。どれもヨーロッパでは当たり前のことです。

 総理、こうした包括的な保護立法が必要と考えませんか。答弁を求めます。

 第三は、消費税減税です。

 総理は、所信表明で、税収の増収分の一部を還元すると述べ、減税を言い出しました。しかし、その中身は、効果がないことが証明済みの賃上げ減税の名での大企業減税と、期限付の所得税減税です。所得税減税は、所得の少ない人への恩恵がない上、長期の実質賃金減少の下での時限的措置では焼け石に水であります。

 総理に問いたい。減税といいながら、なぜ消費税減税だけはタブーにするのですか。物価高騰は食料品を中心にあらゆる品目に及んでいます。消費税減税こそが直接物価を下げる最も効果的対策と考えませんか。富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税は廃止を目指し、緊急に五%に減税すべきです。インボイス増税はきっぱり中止すべきです。答弁を求めます。

 第四は、年金の引上げです。

 物価高騰で年金の目減りが止まりません。貯金を取り崩しての暮らしです、命が尽きるのか、貯金が尽きるのか、どっちが早いかと不安でいっぱいです。高齢者の切実な声であります。この十年間で、年金額二百万円の方の年金は何と十五万円も目減りしました。マクロ経済スライドなど、年金削減のシステムのせいであります。

 総理、こんな冷酷非情な仕組みを放置したままでよいと考えているのですか。

 日本共産党は、年金削減をやめ、物価上昇に応じて増える年金への改革を行うことを提案します。高額所得者への保険料優遇の是正、年金積立金の計画的活用、現役世代の賃上げによって、持続可能な年金制度をつくることはできます。

 総理、政治の責任で、高齢者にも希望と安心を届けるべきではありませんか。答弁を求めます。

 第五は、教育費負担の抜本的軽減です。

 高過ぎる学費と貧し過ぎる奨学金が、若者を苦しめています。多くの学生が、学費を払うため、少しでも割増しになる深夜バイト、徹夜バイトをやっています、眠くて授業が成り立ちません。先日、学生の皆さんと懇談した際に出された訴えであります。一方、若者が背負わされている奨学金の借金は、三十年間で七倍にもなり、十兆円に及びます。

 総理、学生を深夜バイト、徹夜バイトに追い立て、大学を卒業したら十兆円もの借金を背負わせる、こんな政治がまともな政治と言えるでしょうか。高等教育無償化を目指し、直ちに大学等の学費を半額にし、入学金制度を廃止し、奨学金を給付制中心に改め、奨学金返済の半額を免除すべきであります。答弁を求めます。

 来年度予算の防衛省の概算要求は、長射程ミサイルの導入、開発がメジロ押しとなり、米軍再編経費を含めた軍事費は八兆円まで膨れ上がりました。重大なことは、概算要求で、自衛隊の常設統合司令部の設置のための予算がつけられ、その目的が米インド太平洋軍司令部と調整する機能の強化にあることが初めて明記されたことです。

 総理、これは、米インド太平洋軍の指揮の下に、自衛隊が事実上組み込まれることを意味するものではありませんか。お答えください。

 私は、一月の予算委員会で、長射程ミサイル保有の目的が、米国の主導する統合防空ミサイル防衛、IAMDに参加するためのものであること、米国はIAMDの基本原則に先制攻撃を公然と据えていることを明らかにし、米国の先制攻撃の戦争に自衛隊が参戦する危険性を告発いたしました。

 総理、自衛隊の常設統合司令部の設置と米インド太平洋軍司令部との一体化は、そうした危険な道の具体化そのものではありませんか。しかとお答えいただきたい。

 総理は、日米同盟の抑止力の強化が日本を守る道だと繰り返します。しかし、抑止の本質は、恐怖によって相手を思いとどまらせることにあります。日本が恐怖で構えたら、相手も恐怖で構え、恐怖対恐怖、軍事対軍事の悪循環に落ち込みます。この道こそ日本の平和を危うくする道ではないでしょうか。相手に恐怖を与えるのでなく、安心を与える外交こそ必要です。

 そのような外交を実践しているのがASEAN、東南アジア諸国連合です。ASEANと協力して、ASEANが提唱しているASEANインド太平洋構想、すなわち、東アジア・サミットという、日米中を含む東アジアの全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させ、東アジアを戦争の心配のない地域にしていく構想を実現するための外交を進めることこそ、平和をつくる希望があるのではないでしょうか。総理の見解を求めます。

 沖縄県辺野古新基地建設について、政府は、県に代わって設計変更を承認する代執行に向け、提訴を行いました。沖縄県の上告を退けた最高裁判決は、憲法が定める地方自治をないがしろにする不当なものであり、それを背景にした代執行も全く不当なものですが、代執行は、放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときに限定されています。

 それでは、著しく公益を害しているのは誰か。

 一九九六年の日米合意で普天間基地の返還を決めましたが、県内移設を条件にしたため、この世界一危険な基地は、二十七年間、一ミリも動いていないではないですか。総理、沖縄県民の民意に反して県内移設に固執してきた政府こそが著しく公益を害していることは明らかではないですか。

 辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時無条件撤去を強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員の御質問にお答えいたします。

 現下のイスラエル・パレスチナ情勢における我が国の対応についてお尋ねがありました。

 我が国は、ハマス等のテロ攻撃を断固として非難した上で、人質の即時解放、一般市民の安全確保、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、また、事態の早期鎮静化、これらを一貫して求めてきています。

 イスラエルに対しても、上川外務大臣からコーヘン・イスラエル外相に対し事態の早期鎮静化を働きかけたほか、辻外務副大臣から駐日イスラエル大使に対し、一般市民の保護の重要性、国際人道法に則した対応、人道支援活動を可能とする環境の確保等の協力を要請いたしました。

 また、パレスチナとの間でも、上川外務大臣がマーリキー外務・移民庁長官と電話会談を行い、カイロにおけるアッバース大統領との意見交換も行い、引き続き事態の早期鎮静化に向けて取り組んでいくことを確認するなど、様々なやり取りを行ってきております。

 日本としては、こうした関係を生かし、引き続き、刻々と動く現地情勢に応じつつ、イスラエル及びパレスチナを含む関係国や関係者等との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期鎮静化や人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に続けてまいります。

 経済政策の切替えの必要性についてお尋ねがありました。

 我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国に比べて低い経済成長が続き、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷し、デフレが継続する、こうした悪循環にあったと承知しており、こうした中で賃金が伸び悩んだと考えております。

 しっかりと成長を実現した上で、成長の果実を国民に分配することで所得の向上につなげていく。こうした令和版所得倍増を始めとする新しい資本主義の官民連携による二年間の取組が、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、五十兆円ものGDPギャップの解消など、前向きな兆しにつながったものであると認識をしています。

 こうして、三十年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスが巡ってきました。このチャンスをつかみ取り、低物価、低賃金、低成長のコストカット型経済から、持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革を実現してまいります。

 このため、今回の総合経済対策は、デフレ脱却のための供給力の強化と、物価高によりデフレに後戻りしない一時的な措置としての国民への還元、これを車の両輪として取りまとめてまいります。

 最低賃金についてお尋ねがありました。

 最低賃金については、我が国と諸外国では最低賃金の適用対象となる労働者の範囲などが異なり、その水準を単純に比較することはできませんが、最低賃金法で定める、労働者の生計費等を考慮し、公労使三者構成の最低賃金審議会での議論を踏まえて決定されています。

 今後も着実に引上げを行っていくため、引き続き、最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかりと議論をいただき、その積み上げによって、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指していきます。

 内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることから、慎重な検討が必要であると考えておりますが、中小企業における賃上げ実現に向けては、省力化投資など生産性を引き上げる構造的な改革や、賃上げ費用の価格転嫁対策等を進めてまいります。

 非正規雇用労働者の処遇や包括的な保護立法についてお尋ねがありました。

 特に女性に多い非正規雇用労働者について、所得の向上や男女間格差の是正を図っていくことは重要な課題であると考えています。このため、非正規雇用労働者の正社員化に取り組む事業主への支援を講ずるとともに、同一労働同一賃金の遵守徹底を図ってまいります。

 また、不合理な待遇差の解消、男女の均等な待遇の確保など、非正規雇用労働者の雇用安定を確保するための措置については、パート・有期雇用労働法、男女雇用機会均等法など、それぞれの法律において規定しているところであり、引き続き、これらの法律の趣旨、目的に沿って、適正な運用、これを図ってまいります。

 消費税減税についてお尋ねがありました。

 物価高対策としては、エネルギー、食料品といった分野に重点を置きながらきめ細やかな対応を行ってきており、特に、家計への影響が大きい低所得世帯に対し、重層的な支援策を切れ目なく講じてきました。さらに、今般、過去二年のコロナ禍における税収の増収分の一部を国民に還元し、物価高による国民の負担を緩和することとしており、こうした対策によって物価高から国民生活を守り抜きます。

 その上で、消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。

 また、インボイス制度は、複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要な制度であり、これを廃止することも考えておりません。

 年金制度についてお尋ねがありました。

 年金制度については、前年の物価等の変動に応じて年金額を改定することを基本としながら、将来世代の負担が過重にならないように、マクロ経済スライド等により、長期的な給付と負担のバランスを確保することで、将来にわたって持続可能な仕組みとしており、今後とも、この仕組みの下で年金を着実に支給してまいります。

 高等教育費の負担軽減について、幾つかの御提案をいただきました。

 高等教育の無償化については、低所得世帯を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金の支給を併せて実施してきたところであり、さらに、令和六年度から、多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大いたします。

 これに加えて、多子世帯の学生等に対する授業料等の減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、対象年収の拡大も含め更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化を進めてまいります。

 また、貸与型奨学金の返還については、返還の猶予や毎月の返還額を減額する制度などにより支援を行ってきたところであり、令和六年度から、この減額返還制度の年収要件を緩和し、更なる負担軽減を図ってまいります。

 常設の統合司令部と日米の指揮関係についてお尋ねがありました。

 国家防衛戦略等において、自衛隊の統合運用の実効性を強化するため、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行う常設の統合司令部を速やかに創設することとしております。

 その上で、自衛隊と米軍の関係については、自衛隊による全ての活動は、我が国の主体的な判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われており、自衛隊及び米軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することから、自衛隊が米軍の指揮下に入るということはありません。

 日米同盟の抑止力の強化と東アジア外交についてお尋ねがありました。

 日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、いかなる事態においても日本国民の生命財産を守り抜くためには、我が国防衛力の強化と併せ、日米同盟の抑止力、対処力を高めることが必要不可欠です。

 さらに、日米同盟は、現在、インド太平洋地域と国際社会の平和と安定の礎の役割を果たすに至っており、日米両国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPというビジョンを踏まえつつ、望ましい安全保障環境の創出に共に取り組んでいます。

 その上で、我が国は、ASEANが提唱するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを一貫して強く支持しているほか、御指摘の東アジア首脳会議については、米中も含む各国首脳が率直な対話を行う重要なフォーラムであると認識をしております。

 日米同盟など抑止力、対処力の向上と、地域における包摂的な対話の枠組みは、互いに矛盾するものではなく、日米同盟の抑止力、対処力を強化することで、厳しさを増す地域の安全保障上の課題に的確に対応し、自由で開かれたインド太平洋地域を擁護していくとともに、AOIPに示されているような、地域の平和と繁栄の確保と増進に向けた取組を推進してまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思っております。

 辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づき着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。

 引き続き、地元の皆様への丁寧な説明を行いながら、全力で取り組んでまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    鈴木 淳司君

       法務大臣    小泉 龍司君

       外務大臣    上川 陽子君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  宮下 一郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    新藤 義孝君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    土屋 品子君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    松村 祥史君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 村井 英樹君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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