衆議院

メインへスキップ



第5号 令和5年11月7日(火曜日)

会議録本文へ
令和五年十一月七日(火曜日)

    ―――――――――――――

  令和五年十一月七日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、国立大学法人法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部科学大臣盛山正仁君。

    〔国務大臣盛山正仁君登壇〕

国務大臣(盛山正仁君) 国立大学法人法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 国立大学法人は、それぞれの強みや特色を活かして、教育、研究、そして、その成果を活かした社会貢献に積極的に取り組んでいます。最近では、国際卓越研究大学制度の創設や地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの策定など、様々なステークホルダーとともに、研究力の強化に向けて大学の活動を充実させる政策を進めているところです。そのような中で、大学の大きな運営方針の継続性、安定性を確保することや、多様な専門性を有する方々にも運営に参画いただくこと、また、大学の自律的な財務運営を支えるためにも、規制を緩和することが必要です。

 この法律案は、このような観点から、国立大学法人等の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図るため、事業の規模が特に大きい国立大学法人についての運営方針会議の設置及び中期計画の決定方法等の特例の創設、国立大学法人等が長期借入金等を充てることができる費用の範囲の拡大、認可を受けた貸付計画に係る土地等の貸付けに関する届出制の導入等の措置を講ずるとともに、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合するなどの措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、事業の規模が特に大きいものとして政令で指定する国立大学法人には、中期目標についての意見、中期計画の作成、予算及び決算の作成等に関する事項の決議、中期計画等に基づく法人運営の監督、学長選考・監察会議に対する学長選考に関する意見の陳述についての権限を有する運営方針会議を置くこととしております。また、その他の国立大学法人も、長期かつ多額の民間資金を調達する必要があることなどの特別な事情により、体制強化を図る必要があるときは、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を置くことができることとしております。

 第二に、国立大学法人等が長期借入金や債券発行できる費用の範囲について、現行制度上可能である土地の取得、施設の設置、整備、設備の設置に加え、先端的な教育研究の用に供する知的基盤の開発、整備についても可能とすることとしております。

 第三に、国立大学法人等の所有する土地等の第三者への貸付けについて、あらかじめ文部科学大臣の認可を受けた貸付計画に基づいて土地等の貸付けを行う場合には、現行制度上、個別の貸付けごとに必要となる文部科学大臣の認可を要せず、届出によって行うことができることとしております。

 第四に、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合し、国立大学法人東京科学大学とすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。菊田真紀子君。

    〔菊田真紀子君登壇〕

菊田真紀子君 立憲民主党の菊田真紀子です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題になりました国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する趣旨説明質疑を行います。(拍手)

 法律案への質問の前に、適材適所と言われている岸田内閣の構成と、文部科学行政において重要な課題となっている旧統一教会問題に関して取り上げます。

 岸田内閣の政務三役が相次いで二人辞任しました。

 まず、山田太郎文部科学大臣政務官が、既婚者でありながら女性と不適切な関係を持ったことを認め、辞任しました。

 続いて、柿沢未途法務副大臣が、東京都江東区長選挙の公職選挙法違反事件に関与したことを認め、辞任しました。

 山田氏は、性行為の対価として現金を支払った事実はないと説明していますが、現金を支払ったこと自体は否定していません。不適切な関係を持った女性に現金を支払ったのであれば、何に対する対価と言い繕おうが、適切な現金の支払いであるはずがありません。山田氏は即刻、参議院議員を辞職すべきです。

 柿沢氏についても、公職選挙法違反の疑いで木村弥生江東区長は来週には区長を辞職されるとのことです。辞職する原因となった有料広告の提案を行い、選挙違反を主導したとも言える柿沢氏が衆議院議員を辞職しなくて済むのでしょうか。新たに、報道によると、江東区議会議員に現金を配ったことを柿沢氏本人が認めました。柿沢氏も即刻、衆議院議員を辞職すべきです。

 そもそも、内閣改造時に副大臣、政務官に女性を一人も任命しなかったこと自体が大きな問題でしたが、岸田首相は、人事について、適材適所の考え方に基づいて行ったと繰り返して発言しています。しかし、女性との不適切な関係を持つ人物を、青少年の健全な育成の推進に関することを所掌する文部科学省の大臣政務官に任命をし、選挙違反を主導するような人物を、法秩序の維持を任務とする法務省の副大臣に任命する人事の一体どこが適材適所なのか、あきれるばかりです。

 岸田政権の二年間で、大臣四人、副大臣一人、政務官三人、総理秘書官二人が辞任したことになります。どなたもきちんと説明責任を果たさないままで、国民の政治不信を増大させていることを岸田政権と自民党は深く反省すべきです。

 続いて、旧統一教会に対する財産保全について質問します。

 文部科学省から旧統一教会に対する解散命令請求が東京地方裁判所に出されましたが、被害者や弁護士連絡会からは、解散命令が出ても賠償金が支払われなければ被害者救済にならない、旧統一教会は賠償金の支払いを回避するため財産を韓国や他団体に移す危険性が高い、現行法では対応が不可能なので早急に財産保全法を成立させてほしいとの切実な要望が出ています。

 私たち立憲民主党は、三十三人の被害者から四十七回にわたりヒアリングをし、一年近く協議を重ね、臨時国会初日に財産保全法案を提出しました。

 そんな中、旧統一教会が一部の自民党議員に、財産保全法案を国会提出しないように、野党の法案は憲法違反だ、現行法で財産保全はできるという趣旨のファクスを送付したことが明らかになり、岸田首相も事務所でのファクス受取を認めました。

 まさか自民党は、選挙で応援してもらった旧統一教会からの要望を受けて、今国会での法案成立を断念させようと考えているわけではないはずです。速やかに与野党協議をスタートさせ、超党派で、財産保全法をこの臨時国会で成立していただけるよう強く求めます。

 なお、旧統一教会が記者会見を行い、最大百億円を政府に預けることを検討していると報じられています。これは財産保全法の成立を阻止したいという旧統一教会の思いの表れであり、百億円をはるかに上回る巨額の資産を韓国やほかの団体へ移す危険性があり、財産保全法の一日も早い成立が必要です。

 そこで、盛山文部科学大臣にお伺いします。

 大臣は過去に旧統一教会と関係があったことを認めておられますが、財産保全の議員立法成立が与野党の議論が調い実現すれば、政府として全力を尽くすとお約束いただけますでしょうか。お答えください。

 法案の内容について質問します。

 まず、運営方針会議の設置についてです。

 政治権力と大学の自治、学問の自由との関係にまつわる一つのエピソードがあります。

 今から七十三年前の一九五〇年、太平洋戦争終結後、各国と講和条約を結ぶ際に、我が国の国内では、講和のやり方をめぐる論議が沸騰していました。

 吉田茂首相は、アメリカ及びその陣営に属する国家とだけの単独講和を決意し、交渉を進めていましたが、学者、知識人などの間では全面講和論が強まり、国論が二分していました。南原繁東大総長は、一九五〇年の卒業式で平和と全面講和を熱っぽく説きました。

 そうした中、吉田首相は、自由党の両院議員総会秘密会において、永世中立とか全面講和などというのは言うべくして到底行われないことだ、それを南原繁東大総長などが政治家の領域に立ち入ってかれこれ言うのは、曲学阿世の徒で、学者の空論にすぎないと発言しました。三日後の記者会見で、南原総長は、学問の冒涜、学者に対する権力的強圧以外のものではない、全面講和は国民が欲するところで、それを理論づけ、国民の覚悟を論ずるのは政治学者としての責務だ、それを曲学阿世の徒の空論として封じ去ろうというのは、日本の民主政治の危機であると反論の声明を発表し、鋭く対立をしました。

 その後、単独講和に向かうことになりますが、戦後日本の行く末を決める重大な外交政策をめぐって、時の最高権力者と最高学府の長とが一歩も引かずに対立するこのエピソードは、政治権力と大学の自治、学問の自由との間の緊張関係を余すことなく伝えていると思います。

 私は、このような緊張関係が政治権力と大学の自治、学問の自由の間のあるべき姿ではないかと考えていますが、近年の自民党政権では、大学の自治、学問の自由を政治権力で介入、抑圧しようとする動き、南原総長の言葉をおかりすれば、学問の冒涜、学者に対する権力的強圧を目指す傾向が見られます。

 三年前の菅政権による日本学術会議の会員任命拒否は、それがまさに如実に表れたものですが、今回の国立大学法人法改正案でも、大学の自治、学問の自由が阻害されることになるのではないかと懸念される改正内容があります。

 本法案では、理事が七人以上で一定の要件を満たす国立大学法人に対して運営方針会議の設置を義務づけ、運営方針委員は、文部科学大臣の承認を得た上で、学長が任命することとされています。

 文部科学大臣の承認は特定国立大学法人の申出に基づいて行うものとするとはされていますが、これでは、日本学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命すると規定しながら任命が拒否された学術会議のときと同じように、時の政権と主義主張が異なる人物は運営委員として文部科学大臣が承認しないのではないかと危惧します。

 ただでさえ、大学は、文部科学省から選択と集中を迫られ、文部科学省の顔色をうかがわなくてはいけない状況に追いやられています。今回の改正において、運営方針委員の任命に文部科学大臣の承認を必要とすることにより、これまで以上に大学の運営が文部科学省の意向に従わざるを得なくなるのではないでしょうか。

 そもそも、運営方針会議で決定される中期計画や予算、決算自体について、文部科学大臣の認可、承認が必要となっています。その上、更に運営方針委員の任命に文部科学大臣の承認まで必要でしょうか。

 運営方針委員の任命に文部科学大臣の承認を必要としている理由と、大学の自治、学問の自由に対する不当な介入につながることはないと断言できるのか、文部科学大臣、明確にお答えください。

 国立大学法人の統廃合に関連してお尋ねします。

 今回の法改正において、東京医科歯科大学と東京工業大学を統合することとしています。この統合は、世界の勝ち組を目指すと表明していて、意欲的な取組だと思いますが、新大学として大学ファンドに応募したいとの意向を表明していることからも、今後、文部科学省による選択と集中、大学の統廃合推進の流れがより加速していくのではないかと考えます。

 高額な研究費を少人数に集中して投じるより、少額でも多くの研究者に配分する方が、国全体として画期的な成果を効率よく出せるとの分析結果を筑波大などの研究チームが発表しました。裾野を広げずに頂点を高くすることはできません。すぐ目に見える短期的な成果や経済波及効果に偏重せず、多様な分野の研究を支援する息の長い取組も、国家にとって必要ではないでしょうか。

 ずっと減らされ続けてきた大学の基盤的経費である運営費交付金や私学助成を増額すべきと考えますが、文部科学大臣の見解を伺います。

 私立大学の今春の入学定員充足率が全体で一〇〇%を下回り、定員割れとなった大学の割合はほぼ半数となりました。収容定員充足率が九〇%未満となれば、経常費補助が減額されることになり、経営は苦しくなります。

 さらに、十月十一日の財政制度等審議会の分科会において、定員割れ状態にある私立大学に対して改善に向けた適正化計画の提出を求め、作成しない場合には補助金を大幅に減少させたりゼロにしたりするという、厳し過ぎるのではないかと思われる仕組みが提案されました。

 また、光熱費や物価高騰に円安まで重なり、学費の値上げに踏み切っている私立大学が相次いでいますが、学費の値上げに踏み切ることができるのは大規模な私立大学ばかりです。地方の小規模な大学は、そもそも東京を始めとする大都市に志願者が流れてしまうために、学費を値上げすることができず、ますます経営が苦しくなっています。

 朝日新聞と河合塾の共同調査では、授業料や入学金など、新入生が払う初年度の納付金について、将来の予定も含め、全学で値上げ、一部学部・学科で値上げした大学が、全国平均では、二〇二三年度では七%、二〇二四年度では一三%でしたが、東京や関西にある入学定員が三千人以上の大学では、二〇二三年度では二七%、二〇二四年度では三一%となっています。それとは対照的に、地方に多い三百人未満の小規模大学では、値上げを行う大学は二〇二三年度三%、二〇二四年度七%にすぎません。

 国公立、私立を問わず、地方の大学は、地方創生の観点からも、その地域において欠かすことのできない役割を果たしており、安易に統廃合を促すようなことはせず、地方の大学への支援を手厚くする考えがあるか、文部科学大臣と地方創生担当大臣の両大臣に質問します。

 大学ファンドの運用について伺います。

 令和四年三月から、科学技術振興機構において、十兆円規模の大学ファンドの運用が開始されました。文部科学省は、十兆円ファンドという大きなあめをぶら下げて選択と集中を迫り、運営費交付金を削減するというむちを振るってきましたが、令和四年度の運用実績は六百四億円という赤字になっています。大学ファンドは、毎年三千億円もの運用益を達成することを目標としていますが、出だしからこのような運用状況で、本当に大丈夫でしょうか。

 大学ファンドの令和四年度の運用実績をどのように捉えているか、また、今後の見通しをどう考えているのか、文部科学大臣、お答えください。

 今回の法案は、大学の在り方を根本から変える法案です。大学関係者の意見を十分に聞くこともなく、拙速に結論を出すべきではありません。慎重かつ丁寧に、審議が十分なされることを強く求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣盛山正仁君登壇〕

国務大臣(盛山正仁君) 菊田議員にお答えいたします。

 まず、旧統一教会の財産保全に関する議員立法についてお尋ねがありました。

 仮定のお話についてお答えすることは困難ではありますが、一般論として申し上げれば、宗教法人に係る法律については、財産権のほか、信教の自由にも関わる憲法上の問題も生じ得ることから、憲法を尊重、擁護しながら法律を誠実に執行することが重要であると認識しており、国会で成立した法律については、そのような考えに基づいて適切に執行してまいります。

 次に、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認についてお尋ねがありました。

 国立大学法人は、現行制度上、学長が法人運営に関する全ての事項を決定する権限を有しており、主務大臣である文部科学大臣が、国立大学法人の申出に基づいて学長を任命することとなっております。

 運営方針会議を設置する国立大学法人については、学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲するため、文部科学大臣が学長を任命する現行制度上の趣旨を勘案し、法律上、主務大臣の関与として文部大臣が承認するという手続を規定することとしております。

 なお、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、承認を拒否することはできないものであるとの趣旨を明らかにするため、文部科学大臣の学長任命の規定に倣い、承認は特定国立大学法人の申出に基づいて行うものとすることを規定することとしております。

 次に、国立大学法人運営費交付金や私学助成についてお尋ねがありました。

 国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金は、我が国の高等教育及び学術研究の水準向上や均衡ある発展を担う国立大学や私立大学が、人材の確保や教育研究環境の整備を行うために不可欠な基盤的経費です。

 近年、国立大学法人運営費交付金及び私立大学等経常費補助金の予算額については、前年度と同額程度を確保しているところです。

 大学が教育研究活動を継続的、安定的に実施するためには、基盤的経費と競争的経費をバランスよく確保する必要があることから、これらの確保に全力で取り組んでまいります。

 次に、地方大学への支援についてお尋ねがありました。

 地方大学の振興を図ることは、その地域における教育研究のみならず、地方創生を担う人材の育成や地域産業の活性化の観点からも重要であり、各大学においては強みと特色を生かした教育研究の充実や地域との連携に取り組むことが必要であると考えています。

 こうした観点から、文部科学省においては、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージも踏まえ、地域を牽引する人材育成を実施する地域活性化人材育成事業など、地域の発展に貢献する地方大学を支援しているところです。

 さらに、本年九月に、中央教育審議会に対して、高等教育全体の適正な規模を視野に入れた、地域における質の高い高等教育のアクセス確保の在り方等について諮問したところであり、その議論を踏まえつつ、地方の大学が果たす多面的な役割等も考慮して、大学改革にしっかりと取り組んでまいります。

 次に、大学ファンドの運用実績についてお尋ねがありました。

 大学ファンドの運用実績について、令和四年度末時点においては、収益額はマイナス六百四億円となりました。一方、大学への助成の財源となる当期総利益は七百四十二億円であり、運用開始以降の通算で六百八十一億円を将来に向けて確保しています。

 収益額がマイナスとなった要因として、令和四年度は運用立ち上げ期であることに加えて、価格変動の激しい市場環境下で、債券等の安定資産から慎重に運用を行ったため、このような運用結果になったものと聞いています。

 今後、令和十三年度までに、運用目標である三%プラス長期物価上昇率を達成できる資産構成割合の構築を目指してまいります。(拍手)

    〔国務大臣自見はなこ君登壇〕

国務大臣(自見はなこ君) 菊田真紀子議員にお答えいたします。

 地方大学への支援についてお尋ねがありました。

 地域の活力の向上や持続的発展のためには、地域における大学が果たす役割が極めて重要であると認識をしております。

 このため、内閣府では、地方大学・地域産業創生交付金事業により、地域における大学の振興や、これを通じた産業振興、専門人材の育成を支援しています。

 今後とも、地方創生の観点から、地方大学の活性化に向けた支援を積極的に進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 金村龍那君。

    〔金村龍那君登壇〕

金村龍那君 日本維新の会の金村龍那です。

 会派を代表し、今回の国立大学法人法の改正案を通じて、日本の高等教育の未来をどう描いていくのか、議論させていただきたいと思います。(拍手)

 二〇〇〇年代、英国の教育専門誌にて世界大学ランキング十位前後を推移していた東京大学も、近年は四十位前後と評価が低迷。九月二十七日に発表されたランキングでは二十九位に盛り返したようですが、欧米の大学の背中が遠い、そして、中国やシンガポールの大学にも引き離される状況が続いています。

 今回の法改正で加わる運営方針会議は、低迷する日本の大学に潤沢な研究費を供給するために設けられた十兆円ファンドから資金を受け取る大学が必ず設置すべき会議体とのことですが、まずは、国立大学を世界の中でどのような存在にしていきたいのか、大臣の見解を求めます。

 次に、運営方針会議ですが、この会議を設けたところで、果たして本当に機能するのでしょうか。

 国立大学には、これまでの逐次の改革で、半数以上の学外者で構成される経営協議会や、教育研究評議会のほか、理事会、役員会や学長選考・監察会議の設置も義務づけられています。ガバナンス強化のために運営方針会議を新設するようですが、屋上屋を重ねる行為であり、かえって大学のガバナンスを混乱させるのではないかと危惧します。運営方針会議を構成する外部人材よりも、内部人材がガバナンスに関与することの方がよほど重要だと思います。

 また、今回の法改正では運営方針会議の設置大学を特定国立大学と区分するようですが、既に指定国立大学という区分もあり、名称もあやふやなため、とても分かりにくい。果たしてこれでよいのでしょうか。

 もう一点、ネーミングについてです。

 東京医科歯科大学と東京工業大学が合併してできる大学は、東京科学大学という名称になるようです。この名称を否定するものではありませんが、どうしてこの名称になったのか、経緯を教えてください。英語ではインスティテュート・オブ・サイエンス・トーキョー、略称はISTになるかと思います。科学大学の科学は化学ともかぶります。この名称の大学でまさか医学や土木工学が学べると、高校生が思いつくのでしょうか。

 こちらも十兆円ファンドの候補校ですが、国際的にも印象強い、分かりやすい、また忘れられない名称にするという観点からは、英語のインスティテュート・オブ・サイエンス・トーキョーを校名にすることはできないでしょうか。私が高校生であれば、大学名に興味を持って検索し、こんな大学があるのかと強く印象に残ります。新規ブランド立ち上げの際に用いられる手法ですが、英語表記を公式名称とする案について、大臣の見解を求めます。

 自分たちにとって都合のよい名づけをするのは内向き思考に感じてしまいます。名は体を表すといいますが、組織のありように目を向け、戦略的なネーミングをお願いしたいと思います。

 先ほど、経営協議会や教育研究評議会といった既存の会議が既に多くある点について触れました。

 世界に伍する大学をつくるためには、学長がリーダーシップを発揮できる体制にする一方で、権限集中による混乱が生じないように、チェック体制を設けることが必要です。

 今回の法改正で加わる運営方針会議は、果たして既存の会議と役割分担ができるのでしょうか。特に、経営協議会は半数以上が既に外部人材であり、運営方針会議と役割がかぶってしまうように思います。DXによる省力化に取り組む中、新たな会議体を増やすことは、手順やコストを増やし、負担増とガバナンスの混乱につながりかねません。既存の経営協議会等でも運営方針会議の役割を担えると思いますが、大臣の見解をお聞かせください。

 次に、運営方針会議の構成メンバーについてですが、メンバーには、中期目標の企画管理に関わったグローバルな社会変革に対応できる人材、海外大学で運営計画に関わったことがある人材が求められると聞きました。非常に高度な人材を求める一方で、それに見合った報酬が支払えるのか、果たしてそのような高度人材を集めることが可能なのか、お答えください。

 次に、採択の際の評価基準に関連してお伺いしますが、今回は、東大や京大など十大学が申し込み、東北大学がガバナンス面でも評価されて認定候補となりましたが、そのほかは不採択となりました。特に京大は、ガバナンス体制に問題ありと指摘されましたが、これまでの逐次の改革にかかわらずガバナンスが不十分とは、一体何のための改革だったのか、具体的にどの点に問題があると判断されたのか、お答えください。

 繰り返し強調になりますが、屋上屋につくられた会議体が口出しするよりも、現場に近い内部人材が活躍できる環境づくりの方がより重要ではないでしょうか。新たな会議体の設置は、DXで省力化を目指している昨今の動きに逆行するものであり、むしろ手続を煩雑にし、現場の仕事を増やすものと考えます。日本維新の会は、シンプルで分かりやすい社会を目指しています。手続を簡素化し、そして効率的な運営となることを期待します。

 さて、初めて十兆円ファンドを受け取る東北大学の企画書を拝見しました。とても細かく、かつ具体的に目標を記載しており、重点成果指数というKPIについて、論文数やスタートアップ数を十年、二十五年といったスパンで何本以上、何社以上にするという具体的な数値が掲げられています。十五項目ほどありましたが、東北大学が世界と戦う上で最も優先すべき指数は何だとお考えでしょうか。

 また、新設されたKPIの下、東北大学は具体的にどのような大学になるのか、その上で、世界大学ランキングでは何位を目指しているのか、お聞かせください。

 一番身近で世間の注目度も高いのは世界大学ランキングであると考え、先ほどの質問をさせていただきましたが、ノーベル賞受賞者を出す、年収数億円のグローバル企業を何社創設するという目標も考えられます。税金を納めている国民が、何をもって成長し、国際競争力が強化されたと判断するのか。大臣、国民に分かりやすく、特に高校生にも分かるようにお答えください。

 高校生にも分かるようにとお願いしたのは、今、高校生にとって大学の選択肢が多過ぎるからです。大学のKPIに触れましたが、大学の分かりやすい人気数値は入試の倍率です。公立高校では、倍率が定員八割を切ると統廃合の対象となっています。大学においては現在そのような基準はありませんが、少子化の世の中でこんなに大学は必要でしょうか。入学希望者数値を基準としたKPIを設け、一定数を割る大学は統廃合の対象として大学数の適正化を図ることはいかがでしょうか。

 大学の成長には各大学の課題に合わせた柔軟な組織運営の実現が重要で、検討課題でも、自主裁量を発揮できるよう環境を整備するため規制緩和案が示されたと聞きました。自ら考え、PDCAサイクルを回し、トライ・アンド・エラーの精神でチャレンジを重ねることで成長が促進される。そのためにも、規制緩和は非常に重要であると考えます。

 五項目あった提案のうち、今回の法改正では二項目の採用にとどまりましたが、不採用案には、資産運用を主目的とする子会社設置を可能とする案がありました。つまり、大学が会社を通じて、事業投資に限らず、有価証券等の運用で収益を上げることを可能にする案ですが、私は、この案こそ一番大切だと思います。ハーバード大やイエール大は四兆円、三兆円といった規模の基金を有し、運用することで巨額の研究資金を獲得しています。

 今回の十兆円ファンドは、海外の大学がやっていることを国レベルで実施しようというものですが、現行法では、余裕金の運用は、株式を除く債券といった安全なものに限られています。これを見直し、大学単位でより積極的な資産運用を可能とするべきであると思いますが、大臣の見解をお聞かせください。また、今後進める予定があるのならば、具体的な時期についてお聞かせください。

 規制緩和による大学の収益力強化について触れましたが、関連して、寄附制度についてお聞きします。

 今回、大学が集中的に資金を集めることを検討するに当たり、寄附による増収化という案も出ているかと思います。大学卒業後に事業が成功し、資金的な余裕ができたOB、OGが、その収益の一部を大学に還元することで後輩たちの研究環境を充実させる。ハーバード大などもOB、OGから多額の寄附が集まっているようです。しかし、日本ではなかなか集まらない。寄附文化が盛んなアメリカでは、寄附の規模がGDPの二・三%にも上るそうですが、特に高齢者は自分のお金を有効に使ってほしいと考える人も多く、寄附文化が醸成されているようです。

 日本も高齢社会を迎える中で、大切な資産を若い世代に有効活用してほしいと考える高齢者が増え、我が国においても寄附文化醸成の機運が高まるのではないかと思うのですが、大臣の見解をお聞かせください。

 昨今は宗教法人への多額の寄附が問題になっていますが、教育機関への寄附が促進され、子供や若者が自分の夢を実現できる社会になってほしいと強く願います。

 そのためには、環境づくりが必要です。人気のふるさと納税と大学に単に寄附すること、この二つを比べたら、圧倒的にふるさと納税が選ばれると思います。これは、寄附金の税控除の割合が低過ぎることに起因するものです。これでは大学にお金が集まりません。こうした中、出身大学、出身高校への寄附を、ふるさと納税程度まで控除割合を高め、寄附しやすい環境をつくることが考えられます。

 大臣、寄附税制の見直しを通じて、大学に寄附しやすい環境をつくるお考えはないか、お答えください。

 大学で働く教員や学ぶ学生を社会全体で支え、日本の未来をよりよいものに変えていく、そんな未来にするべく、日本維新の会も積極的に提案をしていきたいと思います。

 最後に、十兆円ファンドの可能性についてお伺いします。

 このファンドの計画は、十兆円を元手に運用益三%以上を目指し、毎年生まれる利益を二十年単位で大学法人に拠出するとともに、元金のうち財政投融資資金約八・九兆円を二十年かけて国庫に返済し、四十年後には全額返済するものであると認識しています。

 一方で、公的年金の積立金を運用するGPIFは、前年度には一・五%、今年度上半期は九%超えの運用益を出していると聞いています。この点、十兆円ファンドはいかがでしょうか。GPIFと同程度の運用は可能でしょうか。また、可能と考えるなら、その根拠をお聞かせください。

 今後、十兆円を三十兆円、五十兆円、百兆円と増やしたら、今の十倍の資金が提供可能となり、研究費増と学生の負担軽減が可能になると考えます。ファンドの規模を拡大し、より多くの資金が教育に回れば、日本維新の会が目指す教育の無償化も実現できるのではないかと考えます。

 今後、十兆円ファンドの規模を拡大していくお考えはあるのか、お聞かせください。

 大阪では、国に先駆けて、令和六年度より高校授業料の完全無償化が実現します。子供たちが希望だけを抱き、進学先を選択できる社会、これは何も特別ではなく、政治が決断すれば実行できることを私たちは示しました。

 子供たちが将来に思いをはせたとき、未来はもっと明るいんだ、自分たちで未来を切り開いていくんだと強く自らを信じるためには、教育の充実なくして実現はいたしません。

 私たち日本維新の会は、国の礎は教育にありを体現するためにも、教育の無償化の実現を強く求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣盛山正仁君登壇〕

国務大臣(盛山正仁君) 金村議員にお答えいたします。

 まず、世界における国立大学の位置づけについてお尋ねがありました。

 国立大学については、世界最高水準の教育研究の先導や学問分野の継承、発展などを通じて、より個性豊かな魅力ある大学となることを目指しております。

 そのため、文部科学省としては、基盤的経費の確保に加え、世界に伍する研究大学の実現に向けた国際卓越研究大学制度の創設や、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学の機能強化に向けた地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの策定といった取組を通じ、国立大学の機能強化を支援していくこととしています。

 次に、東京科学大学の名称についてお尋ねがありました。

 両大学における検討の中で、統合後の大学が、これからの科学、サイエンスの発展を担い、社会とともに活力ある未来を切り開いていくという強い意思を体現する東京科学大学という名称が決定されたものとなります。

 文部科学省としても適切な名称と考え、今回の法律案を提出しております。

 なお、大学名称の英語表記については、場面や目的に応じて効果的に活用していただきたいと考えております。

 次に、運営方針会議と既存組織との関係についてお尋ねがありました。

 運営方針会議は、大きな運営方針についての決定権を持つとともに、決議した運営方針に基づいて法人運営が行われているかを監督する権限を有することとしております。

 現行法上位置づけられている経営協議会や教育研究評議会は、それぞれの重要事項を審議する学長の補助的な機関であり、運営方針会議とは役割や権限が異なることから、学長の意思決定を支えるために別の会議体として必要であると考えております。

 また、運営方針会議の設置により、国立大学法人の負担が過度なものとならないようにすることは重要であり、本法律案が成立した場合において、運営方針会議の設置趣旨を踏まえた制度の合理的な運用等の周知に努めてまいります。

 なお、運営方針会議を設置する国立大学法人が、多様な知見や実務経験を有する者の参画を得て、大きな運営方針の継続性、安定性を確保した上で、数多くの多様なステークホルダーとともに大学の活動を充実させていくことで、社会課題の解決等に一層貢献していくことができると考えております。

 次に、運営方針会議の委員の人選についてお尋ねがありました。

 国立大学法人においては、これまで、様々なステークホルダーとの関係を築いております。

 運営方針会議の委員については、各国立大学法人において、これまでのステークホルダーとの関係性を活用、発展させることで、必要な専門分野で豊富な経験を有する方に着任いただけるものと考えております。

 次に、国際卓越研究大学の評価基準についてお尋ねがありました。

 国際卓越研究大学の選定に当たっては、国際卓越研究大学法に基づく基本方針に基づき、有識者会議において、国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力、実効性が高く、意欲的な事業・財務戦略、自律と責任のあるガバナンス体制といった三つの観点を総合的に審査しています。

 京都大学に対する有識者会議からの指摘は、現行のガバナンス体制ではなく、計画で示された将来のガバナンス体制について、実効性の観点から、組織改革における責任関係や指示命令系統の明確化を求めたものと承知しております。

 次に、内部人材が活躍できる環境づくりについてお尋ねがありました。

 今回の改正案の施行後においても、国立大学法人の役職員から構成される教育研究評議会は引き続き設置されるとともに、運営方針会議の委員についても、その設置趣旨を踏まえ、法人の役職員が委員となることも可能な制度としております。

 各国立大学法人において、引き続き、役職員の能力を最大限生かした法人運営に努めていただくことが重要と考えています。

 次に、東北大学の計画案における指数についてお尋ねがありました。

 国際卓越研究大学法に基づく基本方針においては、国際卓越研究大学の認定及び体制強化計画の認可に当たり、研究力、事業・財務戦略、ガバナンス体制を審査の観点としています。

 東北大学の体制強化計画案においては、研究力に関する指標として、トップ一〇%の論文数、事業・財務戦略に関する指標として、民間企業等からの研究資金等受領額などを設定しています。これらの指標は、基本方針において国際卓越研究大学に求める要件を満たす上で重要な指標であると考えています。

 次に、東北大学の目指す姿についてお尋ねがありました。

 東北大学は、知、人材、社会価値を創出する世界に開かれた創造のプラットフォームを目指すビジョンを提案されています。

 東北大学の計画案においては、このビジョンの達成に向けた体系的なKPIが設定されていますが、世界大学ランキングについての具体の目標を設定しているものではありません。

 文部科学省としては、東北大学から提案のあったビジョンを含む体制強化計画案について、有識者会議で審査を行い、世界最高水準の研究大学の実現を目指してまいります。

 次に、国際卓越研究大学の国際競争力の考え方についてお尋ねがありました。

 国際卓越研究大学制度においては、大学ファンドによる支援を通じて世界最高水準の研究大学を実現することにより、国際的に卓越した研究成果を創出するとともに、その活用による価値創造や社会課題解決の実現を目指しております。

 このため、国際卓越研究大学法に基づく基本方針においては、世界トップクラスの研究者が集まり、相互に触発し活躍すること、次世代の一流の研究者集団を育成し、若手研究者が存分に研究できる環境を提供すること、これらを通じ、新しい研究領域を創出し続け、世界最高水準の研究大学となることなどの実現を国際卓越研究大学の目標としております。

 各大学には、それぞれのビジョンに基づき、これらの目標を実現するために体系的なKPIの設定を求めております。文部科学省としては、中長期的な観点から、各大学の実施状況等をしっかりとモニタリングしてまいります。

 次に、大学数の適正化についてお尋ねがありました。

 急速な少子化の進行等、大学を取り巻く状況が大きく変化する中、人材育成と知的創造活動の中核である大学は、一層重要な役割を果たすことが求められます。

 現在、定員充足率が一定の割合を下回った大学に対しては、大学の設置審査や私学助成の交付、高等教育の修学支援新制度の実施等に当たり、不認可や減額、不交付等の措置を講じているところです。

 その上で、入学希望者数を基準としたKPIを設定し、一定数以下の大学を統廃合の対象とすることについては、地方の大学が果たす多面的な役割等を踏まえつつ、学生のアクセス機会の確保の観点から、慎重な検討が必要と考えます。

 いずれにしても、本年九月に、中央教育審議会に対して、高等教育全体の適正な規模を視野に入れた、地域における質の高い高等教育のアクセス確保の在り方等について諮問したところであり、その議論を踏まえつつ、大学改革にしっかりと取り組んでまいります。

 次に、国立大学法人における資産運用についてお尋ねがありました。

 現行制度下においても、国立大学法人においては、文部科学大臣の認定を受けた場合などには、一定の寄附金や不動産収入を原資として、特定の有価証券や信託会社等への金銭信託といった、元本保証のない方法による資金運用を行うことができることとしております。

 次に、寄附文化の醸成についてお尋ねがありました。

 我が国において、社会全体の寄附文化を醸成し、教育や科学技術分野における寄附の増加を図っていくことは重要と考えております。

 このため、文部科学省では、大学や独立行政法人等への寄附の増加を目指し、資金調達に関する理解を深めるとともに、成功事例を共有するための寄附フォーラムを開催しています。

 引き続き、寄附文化の醸成を図り、大学や独立行政法人等への寄附を増やすことができるよう、必要な取組を進めてまいります。

 次に、寄附税制の見直しについてお尋ねがありました。

 大学が自律的な経営を確立していくためには、寄附金などの外部資金により大学の財源の多様化を進めることが重要と認識しております。

 このため、文部科学省としては、これまで、国立大学法人等への個人寄附に係る税額控除の対象事業の拡大、学校法人への個人寄附に係る税額控除の要件の見直しなどの税制改正に取り組んでおり、令和六年度においても、これらの更なる拡充について要望しているところです。

 今後とも、税制改正等を通じて、各大学が寄附金を始めとする外部資金を獲得しやすい環境の醸成に努めてまいります。

 次に、大学ファンドの資金運用についてお尋ねがありました。

 大学ファンドの運用目標は、文部科学大臣が定める基本指針において、金融等の専門家による審議結果を踏まえ、令和十三年度までに達成する目標として、三%プラス長期物価上昇率と定めております。

 現在は運用立ち上げ期にあり、基本ポートフォリオの構築の途上であるため、本運用目標を適用しておりませんが、今後、JSTにおいて、目標の達成に向けて運用していくこととしております。

 次に、大学ファンドの規模についてお尋ねがありました。

 大学ファンドは、運用益を世界最高水準の研究大学を目指した研究基盤の強化のための財源に充てるものです。現時点において、政府からの更なる財源措置により大学ファンドの規模を拡大していくことは考えておりません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 会派を代表して、国立大学法人法の改正法案について伺います。(拍手)

 今回の法改正では、一定規模の国立大学に対し、中期計画や予算などを決める運営方針会議の設置が義務づけられます。この合議体は三人以上の委員と学長で構成され、その委員は、文部科学大臣の承認を得た上で、学長が任命することになります。合議体の人選は、制度上も政府の意向を意識せざるを得ず、政府の人事介入が強まるのではないかとの声が上がっています。

 合議体への人事に対して承認を定めた理由と、拒否権を発動するのはどのような場合が考えられるのか、文科大臣に伺います。

 運営方針会議は、六年間の中期計画や予算、決算を決議し、学長に対する改善要求権及び実質的な解任権を持つことから、学長は、大学の組織運営に関して、学内の組織よりも運営方針会議の意向を優先しなければならなくなる懸念が生まれています。現場の自主性、自律性は保たれるのでしょうか。

 これまで経営協議会や教育研究評議会による審議の決定にはどんな問題があり今回の改正に至ったのか、運営方針会議のトップダウン体制で何が変わるのかを伺います。

 そもそも、運営方針会議の設置は、十兆円大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学の必要条件でした。しかし、文部科学省は、一定規模以上の国立大学として、東北大学のほかに、東大、東海国立大学機構、京大、阪大の五法人を特定国立大学法人に指定し、運営方針会議を設置することを求めるようです。どれも国際卓越研究大学を目指す大学であり、特に東大、京大は、今回の審査で認定に至らず、組織運営体制の課題が指摘をされました。

 なぜ二校が認定に至らなかったのでしょうか。政府の審査機関であるアドバイザリーボードが示す運営体制の整備方針に沿っていなかったからでしょうか。ファンドからの支援と大学のガバナンス改革は直接結びつけることなく、別物として考えて整備をすべきだと考えますが、見解を伺います。

 私立大学連盟では、私立大学ガバナンス・コードを定めており、どの大学も遵守を宣言しています。日大もホームページ上で高らかに掲げていますが、実際はガバナンスが機能不全に陥っています。形だけ整えても、適切に運用されなければ意味がありません。まず、私立大学のガバナンスの在り方についてどのように認識をされているのか、改善の必要性はあるのかを伺います。また、国立大学法人に関しては、現場の自主性と自律性の下、どのように責任あるガバナンス体制を構築していこうと考えているのかも伺います。

 改正法案は、長期借入金や債券発行ができる費用の範囲に関しても制度改正を行い、対象事業の拡大を可能としています。

 既に、大学債という新たな資金調達により、東大では二百億円分を発行し、学術、基礎研究の推進、活用が進んでいます。大学債で集めた資金の使途は、土地や施設整備などのハードの固定資産に限られていましたが、今回の法改正で、DXやバーチャルな知的な価値など、ソフトへの活用が進むことが期待されます。

 東大だけでなく複数の国立大学、さらには私大の学校法人も、私募債とは異なる公募債を手がけることで新たな金融市場が生まれ、社会変革につなげる可能性について伺いたいと思います。今後の大学の資金調達方法についての将来像、また課題について伺います。

 さらに、地方の優れた人材を発掘するため、そして地方分権の役割を担うためにも、積極的に地方の国立大学法人を振興する政策が必要だとも考えますが、見解を伺います。

 今年は、国立大学法人化法制定から二十年に当たります。稼げる分野への選択と集中を進める余り、運営費交付金が削減され、大学の運営が苦しくなり、若手研究者の育成ができないとの声が聞こえてきます。運営費交付金はしっかり確保が必要であり、更なる充実を求めます。

 最後に、二十年の法人化の歩みは成功だったのでしょうか。これまでをどう評価し、そしてどう認識しているのか、そして、今後の国立大学法人の改革はどこへ向かうのかを文部科学大臣に伺い、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣盛山正仁君登壇〕

国務大臣(盛山正仁君) 田中議員にお答えいたします。

 まず、運営方針委員に係る文部科学大臣の承認についてお尋ねがありました。

 運営方針会議を設置する国立大学法人は、学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲するため、文部科学大臣が学長を任命する現行制度の趣旨を勘案し、法律上、主務大臣の関与として文部科学大臣が承認する手続を規定しております。

 承認に当たっては、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはないと考えております。

 次に、運営方針会議の役割と既存組織との関係についてお尋ねがありました。

 現行制度上位置づけられている経営協議会や教育研究評議会は、それぞれの重要事項を審議する学長の補助的な機関であり、大きな運営方針についての決定権を持つとともに、決議した運営方針に基づいて法人運営が行われているかを監督する権限を有する運営方針会議とは役割や権限が異なるものです。

 運営方針会議を設置し、多様な専門性を有する方々にも大学運営に参画していただくことで、法人の運営方針の継続性や安定性が確保され、長期的にステークホルダーに支えられる大学運営が可能になると考えております。

 次に、国際卓越研究大学の審査についてお尋ねがありました。

 国際卓越研究大学の選定に当たっては、有識者会議において、国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力、実効性が高く、意欲的な事業・財務戦略、自律と責任のあるガバナンス体制といった三つの観点を総合的に審査しています。

 したがって、御指摘の大学については、ガバナンス体制のみの評価ではなく、変革に向けたスケール感、スピード感や、新たな研究組織への移行に際しての責任関係等の明確化を含め、総合的な観点からの評価によって、認定候補に至らなかったものと承知しています。

 次に、大学のガバナンスの在り方についてお尋ねがありました。

 私立大学を設置する学校法人のガバナンスについては、さきの通常国会において、執行と監視、監督の役割の明確化、分離を基本的な考え方として、学校法人の運営管理制度を抜本的に改善するため、私立学校法の一部を改正したところです。

 まずは、この施行に向けて着実に準備を進め、学校法人が社会の要請に応えつつ、自らが主体性を持って実効性のあるガバナンス改革を推進することができるよう、文部科学省としても必要な後押しをしてまいります。

 国立大学法人のガバナンスについては、今回の法改正により、運営方針会議を設置する法人においては、学長を含め、法律上、忠実にその職務を遂行する義務等がある委員で構成される合議体が、責任を持って大きな運営方針を決めることになります。

 また、法人の業務遂行は、国立大学法人の役職員から構成される教育研究評議会での審議等も踏まえつつ、学長が責任を持って行うガバナンス体制を構築していきたいと考えております。

 次に、大学の資金調達についてお尋ねがありました。

 大学が、自主的、自律的な運営を進めていくためにも、資金の調達方法の多様化を図っていくことは重要であると考えています。

 今般の法律案において、長期借入金等の対象を拡大することとしておりますが、他方で、長期借入金等は負債性を有するものであることから、その具体の運用に当たっては、専門的な知識を有する者の参画を得て、適切な意思決定をしていく必要があると考えています。

 また、国立大学法人制度において、通常必要となる教育研究に関する業務については、国立大学法人運営費交付金により措置すべきものであるため、引き続き、その確保に努めてまいります。

 次に、地方国立大学の振興についてお尋ねがありました。

 地方の人材育成などの観点からも、地方の国立大学が持つ役割は重要です。

 文部科学省としても、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージも踏まえ、地域を牽引する人材育成を実施する地域活性化人材育成事業などに取り組んでいるところであり、関係府省とも連携しつつ、引き続き、地方の国立大学の振興を図ってまいります。

 次に、運営費交付金についてお尋ねがありました。

 国立大学法人運営費交付金は、国立大学の基盤的経費であり、平成二十七年度以降、前年度と同額程度の予算額を確保しているところです。

 また、文部科学省においては、若手研究者の育成のため、人事給与マネジメント改革の推進、博士後期課程学生への経済的支援やキャリアパスの整備の充実などの取組を進めているところです。

 これらの取組とともに、各大学の継続的、安定的な教育研究活動を支える運営費交付金の確保に引き続き努めてまいります。

 次に、国立大学の法人化の評価と今後の国立大学法人改革についてお尋ねがありました。

 国立大学の法人化以降、自律的な運営を確保しつつ、規制緩和等を通じて大学の裁量を拡大した結果、教育研究活動の活発化や経常収益の拡大等が図られてきたものと認識しております。

 文部科学省としては、法人化当初の理念である、より個性豊かな魅力ある国立大学の実現に向けて、国内外の様々な状況も踏まえ、国立大学法人の機能を強化することが重要と考えており、引き続き、必要な改革と支援に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 宮本岳志君。

    〔宮本岳志君登壇〕

宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法一部改正案について、文部科学大臣に質問いたします。(拍手)

 そもそも、大学の自治と学問の自由は、戦前、国家が学術研究を弾圧、介入した歴史の反省に立ち、二十三条を始め日本国憲法が高く掲げた不動の原則です。大学自治と学問の自由についての文部科学大臣の見解をまずお聞きしたい。

 二〇〇四年の国立大学法人化に際して、政府は、大学の自主性、自律性を高めるためと言いました。しかし、その後行われたことは、運営費交付金の削減であり、学長権限強化の名の下に教授会を学長の諮問機関にし、文部科学大臣が任命する監事の機能権限を拡大し、さらには、大学ファンド法、国際卓越研究大学法は、リスクを負うファンドの運用益で、僅か数校のトップ大学に限定的な支援をするというやり方で、政府が大学を意のままにコントロールしようとするものでした。

 大臣、大学の自主自律に基づく大学運営、大学の自治をこれまでにない規模で破壊してきたことへの反省はないのですか。

 本法案では、大規模な国立大学法人に設置することとされる運営方針会議の構成員である運営方針委員は、学長選考・監察会議との協議を経て、文部科学大臣の承認を得た上で、学長が任命するとされています。

 なぜ委員の選出に文部科学大臣の承認が必要なのですか。これは、政府の意向に沿わない委員について、承認しない可能性があるということではありませんか。答弁を求めます。

 大臣の承認を必要とする仕組み自体、学問の自由、大学の自治への乱暴な介入で、許されるものではありません。そうではないというのなら、その担保はどこにあるのか、明確にお答えいただきたい。

 運営方針会議の設置について、国際卓越研究大学法の審議の際には、国際卓越研究大学以外の大学には同様のガバナンスは求めないとされていたにもかかわらず、本法案では、政令で指定する大規模な大学全てに設置することとされており、大学関係者からはだまし討ちとの声が上がっています。文部科学省は一体いつ方針転換し、それはどこで誰が検討したのか、答弁を求めます。

 本法案は、国際卓越研究大学の制度を足がかりに、一層選択と集中を進めるため、合議体を大学につくらせ、大学を政府の意のままにしようとするものです。政府の助成を受ける代わりに国の介入を許し、結局は、デュアルユースの名目で、軍事研究にさえ手を染めさせようとするものではありませんか。答弁を求めます。

 大臣、なぜここまで研究力が低下してきたのか、その反省と分析がありません。

 研究力強化のために必要なことは、大学の運営費交付金を始めとする基盤的経費を抜本的に増やすことであります。基盤的経費を削減し、選択と集中を推し進めてきた結果、大学の資金が枯渇し、研究が立ち行かなくなり、人件費の削減や非常勤教職員が増加しているのではありませんか。答弁を求めます。

 今年三月末、理化学研究所や一部大学で、任期付研究者の大量雇い止めが強行されました。その数は約三千人に上ります。

 必要なことは、教員や研究者の勤務条件を、任期つきや非常勤ではなくて正規雇用とし、安定して、自由に教育研究に打ち込めるようにすることではありませんか。

 これこそ真の研究力強化の道である、このことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣盛山正仁君登壇〕

国務大臣(盛山正仁君) 宮本議員にお答えいたします。

 まず、学問の自由及び大学の自治についてお尋ねがありました。

 憲法第二十三条に定められた学問の自由は、広く全ての国民に保障されたものであり、特に、大学における学問研究及びその成果の発表、教授が自由に行われることを保障したものであると認識しています。

 また、大学の自治は、この学問の自由を保障するために、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行として保障されるものであると考えています。

 次に、法人化以降の大学運営についてお尋ねがありました。

 平成十六年の国立大学法人化以降、大学運営における学長のリーダーシップの確立、また、監事の体制や機能の強化のための法改正等を行ってまいりました。

 これらの法改正は、学長の決定権の適切な発揮や学内における業務の監督を適正に機能させることを目的としたものであり、教育研究に関する大学の自主性を尊重するという大学の自治を壊すものとは考えておりません。

 次に、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認についてお尋ねがありました。

 現行の国立大学法人制度においては、学長が法人運営に全ての事項を決定する権限を有しており、主務大臣である文部科学大臣が国立大学法人の申出に基づいて学長を任命することとなっております。

 運営方針会議を設置する国立大学法人については、学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲するため、文部科学大臣が学長を任命する現行制度上の趣旨を勘案し、法律上、主務大臣の関与として文部科学大臣が承認するという手続を規定することとしております。

 なお、その承認に当たっては、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはできないものとするため、文部科学大臣の学長任命の規定に倣い、承認は国立大学法人の申出に基づいて行うものとすることを規定することで、大学の自治への介入とはならない制度としております。

 次に、運営方針会議の設置に関する経緯についてお尋ねがありました。

 今回の法案におけるガバナンス強化の議論の契機となった国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論においては、大学ファンドからの支援を受け、自律的な大学へ成長する大学は、経営に係る意思決定機能や執行に関する監督機能の強化のために合議体を設置することが必要とされたところです。

 その後、具体の法律案を検討する過程で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、事業規模が特に大きい国立大学法人については運営方針会議の設置を義務づけるとともに、その他の国立大学法人については、大学からの申請を踏まえ、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することとしております。

 この点については、本年九月以降、科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会、国立大学協会の会議において、改正の方向性をお示ししながら検討を進めてきたところです。

 次に、合議体の設置についてお尋ねがありました。

 運営方針会議の設置は、多様な専門性を有する方々に大学運営に参画していただくことで、法人の運営方針の継続性、安定性を確保し、長期的にステークホルダーに支えられる大学運営を可能とすることを目的としているものであり、御指摘のような政府による大学への関与の強化等を目的とするものではありません。

 なお、文部科学大臣による運営方針委員の承認に当たっては、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはないと考えております。

 次に、基盤的経費と教職員の雇用に関する課題についてお尋ねがありました。

 国立大学法人運営費交付金は、平成二十七年度以降、前年度と同額程度の予算額を確保しているところです。また、国立大学の経常費用が法人化以降増加している中で、近年、人件費については微増傾向であり、大学を本務とする教員のうち任期の定めのない教員の割合については、おおむね同じ割合で推移している状況となっております。

 研究力強化のためには、研究者が腰を据えて挑戦的な研究に取り組める環境を整備することが重要であり、各大学においては、運営費交付金のみならず、民間資金を活用して任期の定めのないポストを確保する取組なども行われています。

 こういった取組を進めていくためには、基盤的経費と競争的研究費をバランスよく確保する必要があることから、引き続き、これらの確保に全力で取り組んでまいります。

 次に、研究者等の雇用環境についてお尋ねがありました。

 無期転換ルールの適用を免れる意図を持っていわゆる雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくなく、これまで、各大学や研究機関等における職員の雇用管理等について適切な対応を促してまいりました。

 文部科学省では、基盤的経費や競争的研究費の確保を通じ、各機関における研究者の雇用環境の整備に係る取組を支援しています。

 加えて、国立大学における若手ポストの確保など、人事給与マネジメント改革等を考慮した運営費交付金の配分の実施等の取組を進めてきているところです。

 また、理化学研究所等の個別の研究開発法人においても、若手研究者の育成支援のためのポスト新設や支援拡充といった動きも見られます。

 文部科学省としては、我が国の研究力強化のため、引き続き、魅力的な研究環境の構築を図ってまいります。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       国務大臣    自見はなこ君

 出席副大臣

       文部科学副大臣 青山 周平君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.