衆議院

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第7号 令和5年11月20日(月曜日)

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令和五年十一月二十日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  令和五年十一月二十日

    午後一時開議

 第一 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 官報の発行に関する法律案(内閣提出)

 第三 官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第四 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件

 第五 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会、内閣提出)(参議院送付)

 第六 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会、内閣提出)(参議院送付)

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員請暇の件

 日程第一 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 官報の発行に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件

 日程第五 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会、内閣提出)(参議院送付)

 日程第六 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会、内閣提出)(参議院送付)

 鈴木財務大臣の財政についての演説及びこれに対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員請暇の件

議長(額賀福志郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。

 笠井亮君から、十一月二十六日から十二月三日まで八日間、請暇の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長田野瀬太道君。

    ―――――――――――――

 国立大学法人法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔田野瀬太道君登壇〕

田野瀬太道君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国立大学法人等の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図るために必要な措置を講ずるものであり、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、事業の規模が特に大きい国立大学法人において、運営方針会議を設置するとともに、中期計画の作成等について、運営方針会議の決議によるものとすること等の特例を創設すること、

 第二に、国立大学法人等が長期借入金や債券発行できる費用の範囲の拡大等の措置を講ずること、

 第三に、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合し、国立大学法人東京科学大学とすること

などであります。

 本案は、去る十一月七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、翌八日盛山文部科学大臣から趣旨の説明を聴取しました。次いで、十日に質疑に入り、十四日には参考人から意見を聴取し、翌十五日質疑を終局いたしました。十七日、討論、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。牧義夫君。

    〔牧義夫君登壇〕

牧義夫君 立憲民主党の牧義夫です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました国立大学法人法の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 本改正案に対しては、多くの大学関係者から反対の声が日に日に高まっております。

 改正案では、事業の規模が特に大きい国立大学を特定国立大学法人に指定し、中期目標や中期計画、予算、決算に関する運営方針事項について決定する運営方針会議を設置することとしております。この運営方針会議の委員の任命に当たり文部科学大臣の承認を必要とすることについて、政府による大学の自治や学問の自由への介入ではないかという強い懸念が上がっております。

 政府、文部科学省が稼げる大学を目指す余り、大学の自治と学問の自由が奪われかねない、大変危機的な状況が生まれております。改正案が通ってしまったら、文部科学大臣による運営方針委員の承認拒否など、第二の日本学術会議問題が起こると危惧をされております。

 そもそも、この運営方針会議を設置することになった経緯について疑義があります。

 二〇二二年二月一日に総合科学技術・イノベーション会議がまとめた最終まとめの中では、この合議体必置は国際卓越研究大学だけを対象としていたものでした。しかし、いつの間にか、設置の義務は事業の規模が特に大きい国立大学に広げられました。この結論に至る間には、中央教育審議会での議論もなく、大学関係者の理解も得られていません。立法事実は一体どこにあるんでしょうか。

 立法事実に疑念があることに加えて、国会審議における手続にも瑕疵があると言わざるを得ません。

 十一月八日の文部科学委員会において、法案の趣旨説明が、与野党の理事が合意に至らないまま強行的に行われました。また、十分な審議時間を確保すべきと繰り返し訴えたにもかかわらず、政府に対する質疑時間は、与野党合わせて五時間半しかありませんでした。そこまで審議を急ぐ必要は全くありません。審議に時間をかけると問題点が世の中に知れ渡ってしまい、日本学術会議の任命拒否問題と同様、学問の自由に制限をかけていると思われるという判断だったのではないでしょうか。

 十一月十四日の文部科学委員会での参考人質疑では、四人の大学関係の参考人にお越しいただきました。国立大学の仕組みや在り方を大きく変える重要な改正であるにもかかわらず、四人全員が、本改正案の内容を知ったのはつい最近だったと答弁されたのです。大学関係者の驚き、そして怒りが急速に高まっております。関係者の協力が得られない中では、制度ができてから、しかし、うまく運用されるわけがありません。大きな制度改革であるならば、中央教育審議会などの議論を経て、時間をかけて丁寧に議論すべきだったと悔やまれてなりません。

 短い委員会審議の中では、私たちの懸念は何も払拭されませんでした。このままでは、この法案に賛成することは到底できません。

 日本国憲法第二十三条は、「学問の自由は、これを保障する。」とし、教育基本法第七条第二項では、「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」と定められています。この趣旨が将来にわたってゆがめられることがあってはなりません。

 本改正案に対して強い抗議と反対の意を示し、私の反対討論といたします。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 宮本岳志君。

    〔宮本岳志君登壇〕

宮本岳志君 私は、日本共産党を代表し、国立大学法人法一部改正案への反対の討論を行います。(拍手)

 そもそも、学問の自由は、戦前の国家権力による学問の自由への侵害への反省から、日本国憲法第二十三条に明記されたものであり、学問の自由を保障するためには、大学の構成員が大学運営に参加する民主的仕組みである大学の自治が不可欠です。この大学の自治への介入を繰り返してきたのが歴代自民党政権の大学政策でした。

 その上で、本改悪案は、政府が政令で指定する大規模な国立大学に新たに運営方針会議の設置を義務づけ、この会議に中期目標、中期計画や予算、決算など大学運営の主要方針を決める権限を与え、大学の最高意思決定機関とするものにほかなりません。しかも、その委員を文部科学大臣の承認を経て学長が任命する制度にすることによって、まさに大学の人事に文科大臣が介入する余地を与えるものです。

 本改悪案は、こうした国家権力の介入を許すとともに、大学教職員の意思とは無関係に、大学運営の主要方針を決定する大きな権限を運営方針会議に与えるもので、制度的に大学の自治を掘り崩し、学問の自由を侵害するもので、看過できません。

 合議体の設置は、国際卓越研究大学法の審議の時点では、その他の国立大学法人には適用しないとの答弁が繰り返されました。それが突然、認定を受けていない大学にも設置させることとされ、その理由や検討過程が全く明らかではありません。大学への説明も全く不十分です。

 十七日の国大協総会では、本改悪案が新たな国立大学の選別になりかねないと会長が懸念を表明しています。

 本改悪案は、選択と集中を極限まで推し進め、高コスト、非効率とされる学問分野を切り捨て、稼ぐためにはデュアルユースの名で軍事研究さえいとわない大学をつくること、また、政府や財界が求める大学づくりを学内の教職員の意向を無視して強引に進める体制を構築し、学問、研究の発展を阻害するものにほかなりません。

 今、学問の自由が危機に瀕しています。日本学術会議会員の任命拒否を撤回し、大学への政治的介入をやめ、学問の自由と大学の自治を保障することを強く求め、討論を終わります。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 官報の発行に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第二、官報の発行に関する法律案、日程第三、官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長星野剛士君。

    ―――――――――――――

 官報の発行に関する法律案及び同報告書

 官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔星野剛士君登壇〕

星野剛士君 ただいま議題となりました両案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、官報の発行に関する法律案は、官報の発行主体、官報に掲載すべき事項、官報の発行の方法その他官報の発行に関し必要な事項を定めるものでございます。

 次に、官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案は、官報の発行に関する法律の施行に伴い、独立行政法人国立印刷局の目的及び業務の範囲の見直しを行う等関係法律の規定の整備を行うものであります。

 両案は、去る十一月十四日本委員会に付託され、翌十五日自見国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。十七日、質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、順次採決いたしましたところ、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件

議長(額賀福志郎君) 日程第四、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長勝俣孝明君。

    ―――――――――――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔勝俣孝明君登壇〕

勝俣孝明君 ただいま議題となりましたCPTPPへの英国の加入議定書につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本議定書は、本年七月十六日にCPTPP締約国及び英国により署名されたもので、CPTPPへの英国の加入のための条件として、CPTPPが規定する各分野のルールの英国による遵守並びに締約国及び英国が互いに付与する市場アクセスに関する約束等について定めるものであります。

 本件は、去る十一月十日外務委員会に付託され、同日上川外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。十七日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決を行いました結果、本件は賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第五 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会、内閣提出)(参議院送付)

 日程第六 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会、内閣提出)(参議院送付)

議長(額賀福志郎君) 日程第五、金融商品取引法等の一部を改正する法律案、日程第六、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長津島淳君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔津島淳君登壇〕

津島淳君 ただいま議題となりました両法律案について、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案は、顧客本位の業務運営を確保するための規定の整備、国民の金融リテラシー向上等に向けた金融経済教育推進機構の創設、企業開示に関し法令上の四半期報告書の廃止等を行うものであります。

 次に、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案は、特別法人出資証券のデジタル化、上場日程の期間短縮を図るための振替制度の見直し等を行うものであります。

 両案は、前国会、本院において可決され、参議院において継続審査となっていたもので、去る十一月十七日、参議院において可決の上、本院に送付され、同日当委員会に付託されました。

 当委員会においては、同日、趣旨の説明を省略した後、順次採決いたしましたところ、金融商品取引法等改正案は賛成多数をもって、社債、株式等振替法等改正案は全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) これより採決に入ります。

 まず、日程第五につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第六につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(額賀福志郎君) 財務大臣から財政について発言を求められております。これを許します。財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 先に閣議決定いたしましたデフレ完全脱却のための総合経済対策を受けて、今般、令和五年度補正予算を提出することといたしました。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明申し上げます。

 日本経済につきましては、コロナ禍の三年間を乗り越えて改善しつつありますが、輸入物価の上昇に端を発する物価高の継続は、国民生活を圧迫し、回復に伴う生活実感の改善を妨げています。

 こうした認識の下、十一月二日に、デフレ完全脱却のための総合経済対策を閣議決定いたしました。

 総合経済対策は、変革を力強く進める供給力の強化と、不安定な足元を固め、物価高を乗り越える国民への還元の二つを車の両輪として、新しい資本主義の実現に向けた取組を更に加速するものです。

 具体的には、物価高から国民生活を守ること、地方、中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現すること、成長力の強化、高度化に資する国内投資を促進すること、人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動、推進すること、国土強靱化、防災・減災など国民の安全、安心を確保することに取り組んでまいります。

 次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出いたしました令和五年度補正予算の大要について申し述べます。

 一般会計につきましては、歳出において、総額で約十三兆二千億円を計上しております。

 その内容としては、総合経済対策に基づき、物価高から国民生活を守るための経費として約二兆七千四百億円、地方、中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現するための経費として約一兆三千三百億円、成長力の強化、高度化に資する国内投資を促進するための経費として約三兆四千四百億円、人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動、推進するための経費として約一兆三千四百億円、国土強靱化、防災・減災など国民の安全、安心を確保するための経費として約四兆二千八百億円を計上しております。また、国債整理基金特別会計への繰入として約一兆三千百億円、地方交付税交付金として約七千八百億円、その他の経費として約一兆四千九百億円を計上するとともに、既定経費を約三兆五千百億円減額しております。

 歳入においては、税収について、最近までの収入実績等を勘案して約一千七百億円の増収を見込んでおります。また、税外収入について、約七千六百億円の増収を見込むほか、前年度剰余金約三兆三千九百億円を計上しております。

 以上によってなお不足する歳入について、公債を約八兆八千八百億円発行することとしております。

 この結果、令和五年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対して歳入歳出ともに約十三兆二千億円増加し、約百二十七兆五千八百億円となります。

 また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。

 財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、成長力の強化、高度化に資する国内投資の促進や、国民の安全、安心の確保等の取組を推進するため、約八千九百億円を追加しております。

 以上、令和五年度補正予算の大要について御説明申し上げました。

 現在、コストカット型の経済から三十年ぶりの変革を果たすまたとない機会を迎えております。この機会を活かし、物価上昇を乗り越える構造的な賃上げと攻めの投資の拡大によって、消費と投資の力強い循環につなげていく必要があります。そのため、本補正予算の一刻も早い成立が必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鎌田さゆり君。

    〔鎌田さゆり君登壇〕

鎌田さゆり君 立憲民主党・無所属の鎌田さゆりです。

 会派を代表し、ただいま議題となりました鈴木財務大臣の財政演説に対する質疑を行います。(拍手)

 先週十一月十五日、国連安保理において、一致点を見出し、ガザにおける戦闘の人道的休止を求める決議が可決されました。国際社会の一致した声が両者に届き、人道的な長期の休戦が実行されることを切に望むものであります。

 決議案の提案者ではなかった我が国は、決議採択に向けてどのような努力をされたのか、総理、御説明願います。

 自民党の五つの派閥の政治団体について、政治資金パーティーの収入の一部が収支報告書に不記載だとして告発状が出ています。もし事実なら、自民党中に政治と金の問題が広がっている可能性があります。岸田総理は、宏池会の会長として、自民党総裁として、説明責任を果たすよう強く求めます。

 コロナが五類となり、歳出構造を平時に戻していくと六月の骨太方針で高らかにうたったにもかかわらず、物価高対策以外の予算が圧倒的に大きい水膨れの補正予算案として提出されました。選挙目当ての所得減税の次は、選挙目当てのばらまき予算ではないですか。歳出構造を平時に戻していくとの方針は撤回したのでしょうか。岸田総理に伺います。

 総理、覚えていらっしゃいますか、岸田ノート。私には聞く力があると掲げていましたが、もはや聞く力があるとは到底思えません。分配の言葉はお蔵入り。実質賃金は十八か月連続でマイナス。直近のGDPもマイナス成長。唐突に浮上した所得税減税も、開始は来年の六月。余りに遅く、この先に控える増税を覆い隠すための選挙目当ての偽装減税だと多くの国民が見透かしていることすらも感じられなくなるほどの鈍感力が著しいです。

 さて、二〇二五年開催予定の大阪・関西万博についてです。

 会場建設費が当初の倍近くも膨れ上がり、三百五十億円の大屋根、リングは、誰もがお金をかけ過ぎていると感じる事業すら見直さないまま費用増額を容認し、国民に負担を押しつけるのはもうやめていただきたい。身を切る改革とは真逆ですね。国民負担を打ち出の小づちとでもお思いなら、大間違いです。

 今回の増額で、国民、大阪府民、大阪市民の負担は一体幾らになるのでしょうか。総理、お答えください。

 総理、もう、物価上昇の影響が想定外だったという見通しの甘さで今以上の国民負担が生じることは、あってはなりません。更なる国民負担はないと、この場で約束をしてください。

 総理が任命した政務三役の相次ぐ辞任は、もはや辞任ドミノです。総理の言う適材適所とは、不適材不適所でしたね。副大臣、政務官に女性を起用しなかったことは、総理は間違いではなかったと今でもお考えですか。総理、お答えください。

 総理は、所得税減税に当たり、過去二年間の増収分を国民に還元すると表明されました。一方、十一月八日、衆議院財務金融委員会において、鈴木財務大臣は、この過去の増収分は既に使っている、つまり、還元の原資はもはや存在しない旨の答弁をされました。総理大臣と財務大臣と、言っていることが違うではないですか。

 総理、還元の原資は既に存在せず、所得税減税のためには、新たに国債、つまり借金をしなければいけないとお認めになりますね。財源があるかのように語り、国民を欺いて、罪悪感はないのですか。

 総理、今ここで、増収分を国民に還元するという発言は根拠がなく、誤りだったと認め、訂正すべきです。いかがですか。

 旧統一教会による被害者救済のため、被害者や全国霊感商法対策弁護士連絡会は、財産保全の必要性を訴えています。

 私たち立憲民主党は、臨時国会開会日に財産保全法案を提出しています。一方、与党側から出された考えは、財産保全の法律は作らず、裁判の支援を強化するという内容です。裁判の支援強化はもちろん必要ですが、真に寄り添う態度とはほど遠いと言わざるを得ません。

 総理にお伺いします。

 もし財産保全法を成立させないのであれば、いざ解散命令が出た際に、旧統一教会の資産が既に韓国や他団体に移された後で、被害者には全く賠償金が支払われない危険性がありますが、自民党としては、被害者に賠償金が一切支払われず、被害者救済が全く実現しなくても全く構わないということですか。

 なぜ自民党は、被害者からの財産保全の切なる要望を聞かずに、財産保全法は憲法違反だから成立させないようにとの旧統一教会からのファクスの要望どおりの方針を決定したんですか。今まで選挙応援をしてもらい、これからも選挙応援をしてもらう旧統一教会への御恩返しですか。お答えください。

 私が生まれ育った家庭は、自民党選挙のど真ん中にありました。自民党の選挙といえば、旧統一教会から全面支援を受けていたのを見てきましたから、こう指摘せざるを得ないのです。旧統一教会同様、旧自民党から脱却できないのでしょうか。

 裁判で旧統一教会による被害が認められ、賠償請求ができたとしても、財産が散逸し、救済されないことにならないために、自民党総裁として、立憲民主党の財産保全法案に賛同し成立させるよう、自民党に指示すべきではありませんか。

 悪質なホストクラブ問題について。

 この問題は、客に支払い能力をはるかに超える数十万円、数百万円もの売掛金債務を負わせ、その返済のために風俗で働くことや売春を強いる点に悪質性があり、客の支払い能力を基に信用を与える通常の売り掛けとは全く違います。人生を狂わされるケースや、被害者が自死に追い込まれる被害も出ています。職業安定法違反、売春防止法違反による逮捕も相次ぎ、消費者契約法のデート商法に該当する可能性があり、海外での売春にも拡大し、露木警察庁長官は、背後に犯罪グループが存在する可能性を指摘しました。

 私がお目にかかった被害者の御家族は、自分の娘と同じ被害に遭う人をなくしてほしい、自分の娘は社会復帰のチャンスは与えられないのか、助けてほしいと切々と訴えておられました。

 総理、悪質なホストやホストクラブ商法は問題と思われませんか。どのようにして被害を防止し、被害者を救済するおつもりですか。私たちが来週にも国会提出予定の、現行法を最大限活用しての被害防止のための理念法案、悪質ホストクラブ被害防止法案を超党派で成立させるべきではないですか。見解をお伺いします。

 私は、十六年間の浪人時代を経て国会に戻していただいた人間です。この間、父の介護をし、今、娘は保育士として働き、私の耳には、介護職、保育士の賃金アップを訴える声が多く寄せられています。

 立憲民主党は、介護・障害福祉従事者処遇改善法案、そして保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案も提出をしています。

 しかし、今回の補正予算案では、介護職員、障害福祉職員には、二%程度の月額六千円アップにとどまっています。総理は報酬年額四十六万円アップ。国庫に返納するから勘弁してとは、何ともお粗末なてんまつではないですか。

 保育士等関連補正予算案では六百二十億円が計上されていますが、これは人事院勧告に伴う毎年のルーティン的な引上げにすぎません。子供が好きという情熱だけで保育業務をやっていけるとでもお考えなのでしょうか。保育士さんたちの悲鳴に近い声を、見ざる、聞かざるではないですか。

 総理、月額六千円で、介護人材の流出を防ぎ、必要な人材を確保できるとお考えなのでしょうか。もっと引き上げるべきではないですか。また、保育士の賃金をどう上げていくのか、プランがあるなら今こそお示しください。

 児童手当の拡充は、今回の経済対策で前倒しが決定されましたが、実施は来年の十二月からですね。国難とは口先ばかり。全てが遅過ぎます。

 立憲民主党は、財源を示した上で、十月に遡り、今すぐ高校生までの全ての子供に一人当たり一万五千円の児童手当を支給することを提案しています。

 総理、児童手当の拡充は、立憲民主党の案並みに増額をし、来年十二月からではなく、今すぐやるべきではないですか。

 貧困が背景にあり、一日三食食べられない子供がいる我が国の現実を、総理は直視すべきです。

 私たち立憲民主党は、児童扶養手当増額法案を既に提出しています。総理も、早稲田ゆき議員の質問に対して、児童扶養手当の拡充を検討すると答弁されましたね。私たちの議員立法のように、児童扶養手当を、一子、二子、三子以降でも、子供一人当たり月一万円を増額すべきではありませんか。総理の御所見を伺います。

 厚労省は、今月十日、マイナ保険証で診療情報を閲覧する仕組みを活用している病院の半数が患者にとってのメリットはないと感じているとの調査結果を公表しました。現実は、マイナ保険証の利用率は五月から六か月連続で低下しているではないですか。十月分は四・五%にすぎません。

 総理、来年秋の今の保険証廃止は見送るべきです。そもそもマイナンバーカードは任意だったではないですか。国民と自治体の混乱を招かないためにも、今すぐに廃止の延期を決断すべきです。御見解を伺います。

 今年は、特に、北海道、東北三県を始めとする全国各地で、熊による農作物への被害、人への被害も多く報告されています。山の手入れをおろそかにし、林業政策にお金をかけてこなかった結果だと、私は地元で多くのお叱りを受けています。

 熊による人への被害を防ぐために、ハンターや専門家の不足に対し早急に対応すべきと考えます。総理の御所見を伺います。

 人は誰でも、どこに、どのような環境に生まれるか選べません。生きる命がある限り、全ての人がひとしく幸福を追求する権利を全うできる日本社会となるよう、私たち立憲民主党は、必ずや築いていくことを国民の皆様に誓い、私の代表質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 鎌田さゆり議員の御質問にお答えいたします。

 十一月十五日に国連安保理において採択された決議についてお尋ねがありました。

 本決議は、四本の決議案が理事国間の対立によって否決された後、ガザ地区の現状に鑑み、早急に児童を含む人道状況の更なる悪化を防ぐために、安保理の児童と武力紛争作業部会議長を務めるマルタが提案したものです。我が国も、理事国の一員として、その採択に向けて各理事国への働きかけを行うなど様々な外交努力を行い、そして賛成票を投じました。

 全ての当事者が本決議に基づき誠実に行動することを求めるとともに、引き続き、関係国、国際機関との間で意思疎通を行い、人道状況の改善と事態の鎮静化等に向けた外交努力を粘り強く、そして積極的に続けてまいります。

 補正予算と骨太方針の記述との整合性についてお尋ねがありました。

 今回の補正予算は、骨太の方針に掲げられた歳出構造を平時に戻していくとの観点も踏まえつつ、デフレ完全脱却のための総合経済対策を実行するために真に必要な事業を積み上げたものであり、ばらまき予算との御指摘は当たりません。

 同時に、今回の補正予算においては、合わせて五兆円となる特定目的予備費を半減し、財源として活用するとともに、国債発行による公債金収入を令和四年度第二次補正予算よりも着実に抑制するなど、平時の歳出構造に向けた一つの道筋を示すことができたと考えております。年末までの予算編成過程で、更なる歳出構造の平時化を検討してまいります。

 大阪・関西万博の会場建設費についてお尋ねがありました。

 今回、会場建設費を増額して最大二千三百五十億円といたしましたが、増額分の五百億円についても、国、大阪府市、経済界が三分の一ずつ負担することとなっており、大阪府市は等分の負担と承知をしております。このため、国は最大約百七十億円、大阪府及び大阪市はそれぞれ最大約八十五億円の増額となると承知をしております。

 博覧会協会による今回の見直しでは、今後の物価上昇も見込んだ上で、予期できない更なる物価上昇等に対応するための金額も見積もっていることから、更なる増額は想定しておりません。

 西村経済産業大臣、自見万博担当大臣の下、博覧会協会における会場建設費の執行を厳格に管理監督し、無用な国民負担を生じさせることがないよう、不断の見直しに努めてまいります。

 副大臣、大臣政務官の人事についてお尋ねがありました。

 一般論として、人事については常に適材適所であるよう心がけているところであり、副大臣、大臣政務官の人事についても、閣僚、副大臣、大臣政務官、総理補佐官など、全体として適材適所となるよう努めた結果、当初のような老壮青、男女等のバランスとなったところです。

 他方で、結果として政務三役の辞任が続いたことについては、任命権者としてその責任を重く受け止めているところです。

 国民の皆様の信頼を回復できるよう、内閣として、一層の緊張感を持って、与えられた課題に全力で取り組んでまいります。

 定額減税と国民への還元との関係についてお尋ねがありました。

 今般の所得税、住民税の定額減税における還元は、コロナ禍に耐えた過去二年間、国民の皆様からいただいた所得税、住民税の税収増である三・五兆円に相当する規模について、今度は物価高で苦しまれている国民の皆様に対して税の形で分かりやすくお返しするという趣旨で実施するものです。国民の皆様から見れば、コロナ禍の際に納めた税金が戻ってくるという意味で、還元そのものです。

 鈴木大臣は国の財政の構造について説明したものと理解しておりますが、単年度ではなくコロナ禍からの国の財政の全体を通して見れば、国民の皆様からいただいた税金の一部を国民の皆様にお返ししていることになると考えております。

 いずれにせよ、今回の定額減税も含め、令和六年度予算の歳出歳入の構造については、年末に向けた予算編成過程で検討していくこととなりますが、その際には、定額減税の実施と併せて、歳出構造の平時化を更に進めていくことが重要になるものと考えております。

 旧統一教会による被害の救済や財産保全についてお尋ねがありました。

 旧統一教会の解散命令請求を行った後、裁判所が解散命令を行うまでの間に、当該宗教法人の財産が散逸するおそれがあるのではないかという声があることは十分承知をしております。

 このため、自民党を含めて与野党において、被害者救済や財産保全の観点から、法案提出を含め様々な議論がなされているものと承知をしております。

 いずれにしても、真に実効的な被害者救済となる方策について、国会において御議論をいただきたいと考えております。

 また、自民党においては、旧統一教会との関係を持たないことを徹底することとしており、引き続き、この方針を徹底してまいります。

 悪質なホストクラブへの対策についてお尋ねがありました。

 いわゆるホストクラブの利用客が、高額な利用料金の売り掛けによる借金を背負い、その返済のために売春するなどの事例があること、承知をしております。

 議員立法については、まずは国会において御議論いただくべきものであり、政府の立場からお答えすることを差し控えますが、政府としても、関係省庁が一層緊密に連携をし、ホストクラブ従業員による売春防止法違反、職業安定法違反等の違法行為の取締りのほか、風営適正化法に基づくホストクラブへの立入り、指導、消費者契約法等の関係法令の周知、また、相談対応の強化等の対策をしっかり行ってまいります。

 介護職員そして保育士の賃上げについてお尋ねがありました。

 介護、保育分野における賃上げへの対応は、喫緊かつ重要な課題であると認識をしております。

 このため、今般の経済対策においては、介護分野について、人材確保に向けて必要な財政措置を早急に講ずることとし、補正予算において、そのための施策を盛り込みました。

 その上で、令和六年度の介護報酬改定においては、活用可能な法人における賃上げ税制の活用等も踏まえつつ、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、現場の方々の処遇改善に構造的につながる仕組みを構築するべく、検討を深めてまいります。

 また、保育士の賃金については、こども未来戦略方針を踏まえて、費用の使途の見える化を行いながら、民間給与動向等を踏まえた更なる処遇改善の対応を行ってまいります。

 児童手当及び児童扶養手当についてお尋ねがありました。

 児童手当の抜本的拡充については、実施主体である地方自治体の事務負担も踏まえつつ、来年度中に実施することとしており、今般、児童手当の支払い月を隔月の年六回とする法改正を併せて行い、拡充後の初回支給を来年十二月にすることといたしました。

 また、今般行うこととしました定額減税は、高校生や児童手当制度の現行の所得制限外の子供も含めて行われるものであり、実質的に児童手当の抜本的拡充を更に前倒しする効果があるものであると考えております。

 また、御指摘の児童扶養手当に係る議員立法の取扱いについては、国会でお決めいただくものと承知をしております。

 その上で、こども未来戦略方針においては、一人親家庭への支援を含め、今後、こども大綱の中で具体化する貧困に関する支援策について、今後の予算編成過程で施策の拡充を検討することとしており、引き続き、こども大綱の策定に向けて、支援策の具体化を進めてまいります。

 健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証は、我が国の医療DXを進める上で基盤となる仕組みであり、マイナ保険証の利用件数は、九月、十月と再び増加傾向となっております。

 今般の補正予算案では、マイナ保険証の利用促進のための医療機関等への支援に必要な予算を計上し、まずは一度、国民の皆様にマイナ保険証を使っていただき、質の高い医療などメリットを感じていただけるよう、医療機関や保険者とも連携をして、利用促進の取組を積極的に行ってまいります。

 その上で、現行の保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提との方針にのっとり、ひもづけの総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には、必要な対応を行ってまいります。

 熊対策のためのハンターや専門家の確保、育成についてお尋ねがありました。

 熊対策を含めた鳥獣被害対策を担うハンターや専門的な人材の育成については、関係省庁が連携をして、鳥獣被害防止総合対策交付金事業などを活用した自治体の取組を支援しています。

 また、最近の熊の大量出没を受け、緊急的対応として、熊が出没している地域への熊対策の専門家を派遣する事業を実施することとしております。

 引き続き、自治体と連携しつつ、関係省庁が一丸となって、熊による被害防止に取り組んでまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 西銘恒三郎君。

    〔西銘恒三郎君登壇〕

西銘恒三郎君 自由民主党の西銘恒三郎です。

 自由民主党・無所属の会を代表し、令和五年度補正予算案に対して質問します。(拍手)

 国政の根幹は安全保障、つまり、平和な状態を永続させることであります。その実現には首脳会談が大きく貢献するものだと私は考えています。総理、あらゆる機会を見つけて、どんどん首脳会談を重ねてください。国のトップが膝を突き合わせ、対話を積み上げることが平和を実現するものと確信します。

 初めに、さきに行われたAPEC首脳会談、日米首脳会談、日中首脳会談の成果について、総理にお伺いします。

 我が国は、今、世界的な物価高騰や厳しさを増す安全保障環境など、様々な変化に直面しており、国民の間には、実質賃金の減少や平和への脅威など、変わってしまうことへの強い不安が蔓延しています。まず、我々は、これにしっかりと対応し、国民の命や暮らしを守り抜かなければなりません。

 他方で、変化はチャンスでもあります。成長の可能性、そして所得向上へとつながる、国民の希望を大きく育て、未来に向かう今をしっかりつくることこそが、政府・与党の果たすべき役割ではないでしょうか。

 今、国民が最も不安に感じているのは、足下の急激な物価高騰です。エネルギーや食料品など、生活に欠かせないものの値段が上昇していることに加え、円安によるコスト増大も深刻です。

 同時に、個人消費や設備投資が力強さに欠ける厳しい状況が続いております。私も、地元竹富町の島々で、小規模事業者や畜産農家から、借入金の返済期間を延ばしてほしい、今を乗り切るための支援が欲しいという切実な声を聞いております。

 現場のニーズに寄り添う形で支援を講じることが強く求められていますが、円安の影響や物価高、餌代高騰などの対策について、総理の御所見をお伺いいたします。

 総理が先頭に立って取り組んでいるのが賃上げです。様々な生活用品の価格上昇が国民生活に大きな影響を与える今、国民が実感できる賃上げ、すなわち、現下の物価上昇を上回る賃上げに全精力を集中させるべきです。

 そのために、政治が率先垂範し、賃金上昇の流れを加速させる。例えば、保育、医療、看護、介護などの現場で働く方々の賃金引上げに、まず政治が思い切って取り組むべきですが、政治が、総理御自身が所得向上や経済の好循環を何が何でも実現するんだという強い決意をお聞かせください。

 成長する経済を実現するためには、積極的な投資が不可欠です。私は、コロナ前の二〇一九年、台湾のTSMCを訪問し、最先端半導体の技術開発や国際的な投資競争、経済安保の激しさを目の当たりにしました。我が国が半導体分野でこれ以上後れを取ることのないよう、しっかりと後押ししなければならないと思います。

 半導体はありとあらゆるものの基盤であり、まさに産業の米です。半導体産業への投資が我が国産業全体の発展や経済好循環にどうつながっていくのか、総理のお考えをお聞かせください。

 我が国は、今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。特にインド太平洋地域では、中国の尖閣諸島周辺における領海侵入、台湾海峡や南シナ海での現実、それらへの懸念が急速に高まっています。

 世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは許されません。本年、G7議長国、国連安保理非常任理事国を務める我が国は、国際秩序の維持発展に向けて大きな役割が求められています。世界が歴史的転換期にある今こそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を断固として守り抜くとの強い意志を我が国が先頭に立って世界に示すべきと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 中国やロシアが我が国の水産物に対して科学的根拠もなく輸入停止措置を行っていることは、断じて容認できません。逆に、我が国のおいしい水産物を、国内での消費はもちろん、米国や台湾、ASEAN諸国、インドや中東など、中国、ロシア以外の国々への安定した販路を確保していくべきであります。

 こうした中国やロシアによる経済的威圧に対し、我が国として毅然とした対応が求められています。サプライチェーンの強靱化やルール形成への関与など、経済分野における安全保障の更なる強化に向けた具体的な対応について、総理にお伺いいたします。

 私の地元で四百四十年余り続く伝統行事、大綱曳があります。綱引きを行う東西両陣営を元気づける大きな旗頭が掲げられます。この旗頭、西側には「民栄」と大きく書かれ、東側には「国豊」と書かれています。つまり、民が栄えて国が豊かになる、国が豊かになって民が栄えるのであります。

 好循環社会をつくることこそ、政治の仕事です。民栄え国豊か、国豊かで民栄える好循環社会を実現するため、総理、国民の声に耳を傾けながらも、どうか自らの信念に基づいて、政策を一つ一つ着実に、スピード感を持って実行されることを強く要望しまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 西銘恒三郎議員の御質問にお答えいたします。

 APEC首脳会談、日米首脳会談、日中首脳会談の成果についてお尋ねがありました。

 今般のAPEC首脳会議では、アジア太平洋地域の持続可能な発展と成長に向けた我が国の積極的姿勢を訴え、各国首脳の賛同を得て、我が国の重視するルールに基づく多角的貿易体制の重要性や公平な競争条件の確保への取組などを成果文書に明記することができました。

 日米首脳会談では、中東、ウクライナ、中国や北朝鮮を含むインド太平洋地域の諸課題もあり、日米の連携がこれまで以上に必要な中、国際社会の様々な課題について率直に意見交換を行いました。バイデン大統領からは、日米同盟の重要性がこれまでになく高まっているとの発言があり、日米間の連携を一層強化していくことを確認いたしました。また、バイデン大統領からは、来年早期の国賓待遇での米国への公式訪問の招待がありました。

 中国の習近平国家主席とは、約一年ぶりに会談をし、ALPS処理水をめぐる問題を含めた諸懸案について我が国の立場を明確に伝えつつ、幅広い課題について大局的な観点から率直な意見交換を行いました。そして、建設的かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性を改めて確認しました。その上で、引き続き、首脳レベルを含むあらゆるレベルで緊密な意思疎通を重ねていくことで一致をいたしました。

 円安の影響と物価高対策についてお尋ねがありました。

 円安の日本経済への影響については、一般論として、プラス面、マイナス面双方の様々な影響がありますが、マイナス面である輸入価格の上昇等を通じた物価高については、これまで累次の対策を講じてまいりました。

 その際、議員御指摘の小規模事業者や畜産農家等の声に寄り添うことは重要であると考えております。政府から金融機関等に対し、小規模事業者や畜産農家を含む事業者の状況をしっかりと踏まえて、据置期間延長等の申出に柔軟に対応するよう要請をし、条件変更の応諾率は約九九%となっています。引き続き、事業者のニーズに応えた資金繰り支援を講じてまいります。

 さらに、今般の経済対策において、ガソリン、電気・ガス価格の激変緩和措置を通じた生活者、事業者の支援と、エネルギーコスト上昇に対する経済社会の耐性強化に向けた省エネ促進支援等、物価高の影響を受けた畜産農家等が円滑な資金の融通を受けられるようにする資金繰り対策など、厳しい状況にある方々への支援に万全を期すための施策を盛り込んでおります。

 これらの総合的な対策を通じて、足下の急激な物価高から国民生活と事業活動を守り、持続的な経済成長を実現してまいります。

 賃上げについてお尋ねがありました。

 賃上げは岸田政権の最重要課題であり、成長と賃金の好循環が回っていく、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指してまいります。

 先日開催した政労使の意見交換の場においても、私から経済界に対して、足下の物価動向を踏まえ、来年の春闘に向け、今年を上回る水準の賃上げの御協力をお願いしたところです。

 中小企業が使いやすいように賃上げ税制を拡充強化するとともに、価格転嫁対策、特に労務費の適切な転嫁の強化を強く働きかける観点から、今月下旬に労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を公表し、全国的にその周知徹底を図ってまいります。

 御指摘の保育、医療、介護等の分野における賃上げに向けても、着実に取組を進めてまいります。

 保育については、民間給与動向等を踏まえ、令和五年人事院勧告を反映した更なる処遇改善の対応を行ってまいります。

 また、医療、介護の分野においても、人材確保に向けて必要な財政措置を早急に講ずることとし、補正予算案において施策を盛り込みました。その上で、令和六年度の介護報酬、診療報酬の同時改定においては、活用可能な法人における賃上げ税制の活用も踏まえつつ、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、現場の方々の処遇改善に構造的につながる仕組みを構築するべく、検討を深めてまいります。

 半導体産業への投資についてお尋ねがありました。

 半導体は、デジタル化や脱炭素化の実現に不可欠であり、さらに、経済安全保障の観点からも重要な戦略物資です。半導体の安定的な供給の確保は喫緊の課題です。

 半導体分野での国内投資を進めることで、経済成長の基盤をつくってまいります。大型プロジェクトが進むことにより、地域に良質な雇用を生み、賃上げと投資の好循環の実現が期待できます。

 実際、半導体投資が進んでいる熊本県の工場では、全国平均より五万円以上高い水準の初任給が実現し、九州七県においても、設備投資額の伸び率が、前年度実績に比べ、全国平均の二〇・一%を大幅に上回る六一・七%増と過去最高を記録するなど、投資と賃上げの好循環が生まれつつあります。この流れをしっかりとつかみ、継続していくことが、成長型経済の実現に不可欠です。

 このため、今般の経済対策、補正予算において、半導体の大型投資や次世代半導体開発に対する支援に合計約二兆円を計上し、加えて、過去に例のない投資減税などの措置を講じていくこととしております。

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くための我が国の主導力の発揮についてお尋ねがありました。

 現在、国際社会は歴史の転換点にあります。各地で深刻な事態が多発し、我が国周辺においても一方的な現状変更の試みや北朝鮮の核・ミサイル開発が続けられ、安全保障環境は戦後最も厳しいものとなっています。

 こうした中で、我が国が議長国として主催をしたG7広島サミットでは、G7に加え、招待国の首脳との間で、世界の平和と安定に関する議論を行い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序や、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の諸原則の重要性につき認識を共有することができました。

 また、今月初めにはフィリピンとマレーシアを訪問し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化し、そして人間の尊厳が守られる世界を目指していくという点について両国首脳と一致をし、緊密に連携していくことを確認いたしました。特に、フィリピンとの間では、初となるOSA、政府安全保障能力強化支援の供与や、RAA、円滑化協定の交渉開始、海洋安全保障能力向上に係る協力など、具体的な進展が得られました。

 引き続き、G7、日米韓、日米豪印といった枠組みも活用しつつ、同盟国、同志国との連携を推進し、国連安保理非常任理事国として世界の平和と安定に貢献してまいります。その中で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に主導力を発揮し、国民の安心、安全を守り抜く決意です。

 経済的威圧への対応についてお尋ねがありました。

 政府としては、特定の国家による経済的威圧により、国家の自主的な政策の意思決定や健全な経済発展を阻害されることは認められないと考えています。本年五月に私が主催したG7広島サミットを始め、様々な機会を捉え、経済的威圧に対抗するとの意思を明確に示しています。

 我が国の経済安全保障の取組は特定の国を念頭に置いているわけではありませんが、経済的威圧に対しては、議員御指摘のとおり、平素より、自律性の向上、優位性、不可欠性の確保、国際秩序、ルールの維持強化、産業界との連携の観点から取組を進めることが必要であると考えております。

 例えば、我が国は、これまでも、経済安全保障推進法等に基づき、半導体や蓄電池等の重要な物資について安定供給確保に向けた取組を進めているほか、本年のG7広島サミットでは、経済的威圧への対応を強化するため、我が国が主導して経済的威圧に対する調整プラットフォームを立ち上げ、同盟国、同志国等との連携を強化しているところです。

 引き続き、経済的威圧への効果的な対応を含め、経済安全保障の強化のための取組を政府一丸となって進めてまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 伊東信久君。

    〔伊東信久君登壇〕

伊東信久君 日本維新の会の伊東信久です。

 財政演説について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 我が国の経済は、長いコロナ禍を脱し、緩やかな成長軌道を描き始めています。内閣府の最新試算では、二〇二三年四月から六月期のGDPギャップがプラス〇・一%となり、需要不足が解消に向かっています。足下の七月から九月では個人消費や企業の設備投資がマイナスになるなど、いまだ予断を許さない状況ではありますが、賃金、税収などではよい兆候が表れています。

 一方で、エネルギー価格や輸入物価の高騰によって物価高が惹起され、国民生活に厳しい影響を与えています。今年の九月まで、実質賃金は十八か月連続でマイナスとなっています。

 かかる状況において行うべきことは二つあり、一つは、物価高対策と生活困窮者支援、もう一つは、規制改革によって健全な競争を取り戻し、経済が回復する自然な流れを後押しする必要があります。そこで、足下の経済状況や今必要な経済対策、そして規制改革について政府に質問いたします。

 まず、足下の経済状況と政府の経済対策についてお伺いします。

 足下では、物価と賃金の好循環が見え始めました。内閣府のGDPギャップもプラスに転換し、データ上は需要不足が解消したことになります。コロナ禍では、GDPギャップのマイナスを埋め合わせるために、巨額の補正予算を組み続けてきました。GDPギャップが解消したのであれば、なぜ総額十七兆円規模の経済対策を組むのでしょうか。総理に伺います。

 鈴木財務大臣は、過去の税収増分の還元について答弁した際、税収の上振れ分は使用済みであり、減税を行った場合は国債を発行しなければならないと発言しました。なぜ、このような状況下で無理に国債を発行してまで経済対策を行うのでしょうか。現在の局面で、ばらまきと言われかねない政策を実施する必要はあるのでしょうか。総理に認識を伺います。

 このようなばらまき色の濃い政策を行う一方、政府は、コロナ禍で拡張した財政の平時への回帰を掲げています。しかし、今般の補正予算総額は十三・二兆円、来年度の所得税、住民税減税を含めれば十七兆円台前半に上り、二〇二〇年度から減少を続けているものの、いまだにリーマン・ショックの発生した二〇〇九年度の補正予算に並ぶ規模となっています。総理が思うに、今は平時なのでしょうか、それともリーマン・ショックと並ぶ経済危機にあるのでしょうか。総理の認識を伺います。

 変化の時代にあっては、ばらまきをすることだけが対応策ではありません。一九七〇年代の日本では、オイルショックを逆手に取って高効率な省エネ社会への転換を果たし、自動車や電機など、新ビジネスを次々と生み出してきました。

 総理は、改造内閣に、変化を力にする内閣と命名しましたが、政府の経済対策からは、コロナ禍以降の社会の変化に対してどのように適応して日本の成長につなげるか、方向性が全く見えてきません。政府は、コロナ禍以降の社会の変化をどのように認識した上で、どのように変化を力にしようとしたのでしょうか。その認識が、国土強靱化や食料安全保障、花粉症対策など、特に政府の経済対策の第五節に掲げられている総花的な政策にどのようにつながったのでしょうか。総理の認識を伺います。

 このように、政府の経済対策からは長期的な改革の方針が見えてこないため、総理肝煎りで実施する所得税減税、給付の組合せについても、景気浮揚効果は余り見込めないでしょう。現役世代は、将来、負担が増加することへの不安から、減税分のお金は消費せず、貯蓄に回そうと考えるはずです。所得税減税にどの程度の景気浮揚効果を見込んでいるのでしょうか。総理と財務大臣に伺います。

 現役世代が今最も苦しんでいるのは、社会保険料の負担です。例えば、国民年金保険は、誰でも一律同額、一か月当たり一万六千五百二十円です。社会人になりたての若者からこの金額を徴収するのは、余りにも酷ではないでしょうか。

 日本維新の会の経済対策では、逆進性の高い社会保険料を減額し、可処分所得を増やします。加えて、年度末までに高校教育を無償とすることにより、現役世帯の教育費負担を和らげます。どちらの政策も、本来は長期的に腰を据えてやるべきことではありますが、私たちが思い描く未来を少しでも実感していただくために、まずは本年度実施する案となっています。

 翻って、政策を掲げる所得減税では、果たして来年度、再来年度やそれ以降、どのように国民の負担を軽減していくか、長期的な展望が見えてきません。

 特に、さきの予算委員会の質疑の中で我が党議員が指摘してきたように、既に社会保障制度、特に医療保険制度における給付と負担のバランスは崩壊しており、高齢化に伴って上がり続ける現役世代の負担は既に限界を超えています。我が党は、この構造問題を抜本的に解決すべく、医療制度改革タスクフォースを立ち上げ、後期高齢者医療制度の見直しを含む改革プランの取りまとめに入っています。

 総理は、この構造問題に対して共に立ち向かっていくお考えはあるのでしょうか。今回の所得減税を第一歩として、長期的に上がり続けている国民負担率の軽減に、とりわけ医療制度改革に取り組んでいくべきだと考えていますが、総理の御所見をお伺いします。

 社会保険料が今後一層増えていくことは明らかです。政府は、少子化対策の財源として、社会保険料に支援金を上乗せする方針です。これは、子育ての負担を子育ての当事者である現役世代に押しつけるものです。たとえ子育て世帯への給付が増えるとしても、同世代で子供を持たない人にとっては負担が増えることになります。つまり、単なる世代内での所得移転でしかありません。

 このような政策を取り続ければ、少子高齢化が一層進むことは間違いないでしょう。今後、団塊ジュニア世代が高齢化し、現役世代の人口が少なくなると、支援金は今の社会保険料同様にどんどん増えるのではないでしょうか。こども政策担当大臣の認識を伺います。

 一つ支援制度をつくれば一つ負担を増やすという今の少子化対策のやり方で、本当に現役世代が安心して子育てができるとお思いでしょうか。総理の認識を伺います。

 エネルギー価格の高騰にも現役世代は苦しめられています。しかし、事業者へ補助金を渡すことでガソリン価格を引き下げようとする燃料油価格激変緩和対策事業でも問題点が明らかになっています。

 会計検査院は、本事業で交付した補助金の効果について調査したところ、ガソリン価格の値下げ幅は、交付された補助金の額よりも少ないことが明らかになりました。このように、事業者への補助金は、全額が価格転嫁されるとは限りません。また、当初の狙いを外れ、価格転嫁されなかった補助金が実質的に事業者を支援してしまうことにもつながりかねません。

 日本維新の会は、集めて配るのではなく、そもそも集めない経済対策を主張しています。補助金ではなく、価格そのものを引き下げる政策こそが、消費者に効果が直接及び、競争環境もゆがめない、最も効率のいい政策であると考えます。

 政府は、ガソリン価格の高騰に際して、どのような判断で事業者への補助金を政策の手段として選んだのでしょうか。また、慮外に事業者を支援してしまうことについては、どのようにお考えでしょうか。総理の見解を伺います。

 日本維新の会は、ガソリン価格の高騰対策として、暫定税率の廃止を主張しています。一方で、総理は、令和四年五月二十五日の参議院本会議にて、気候変動が社会課題となっている中で、当分の間税率の廃止については慎重であるべきだと述べています。

 気候変動の対策のために必要というのであれば、ガソリン税を一般財源化したことと矛盾するのではないでしょうか。お金に色はついていないのですから、財政全体を広い目で見て、行財政改革を行うことで捻出できないのでしょうか。これを踏まえて、暫定税率はきっぱりと廃止するべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 政府の経済対策では、生産性向上を含む供給力強化に向けた取組を行うとしていますが、供給力の強化は、ばらまきによってはできません。既得権を打破して規制改革を推進し、イノベーションを推し進めなければなりません。規制改革について質問をいたします。

 まず、規制改革のシンボルとして、ライドシェアについてお伺いします。

 今国会の所信表明演説で、総理は、ライドシェアの課題に取り組むと述べられました。しかし、政府の経済対策の中には、「不便の解消に向けた地域の自家用車・ドライバーの活用の検討」という表現が表れるのみで、ライドシェアの言葉が消えました。これは、既に海外で導入されているいわゆるライドシェアと同じものでしょうか、それとも、既得権益のキメラ的な、地域限定のライドシェアもどきなのでしょうか、どちらでしょうか。

 ライドシェアへどのような態度を取るかは、既存の業界団体との関係性と新しいテクノロジーによる新市場の創造のどちらを重視するかの分かれ目であると考えます。

 先日の規制改革推進会議では、ワーキンググループの委員七名が、二〇二四年をめどに、ライドシェア事業を新たに位置づける法律の制定を検討するように求めました。加えて、年内をめどに、現行法の運用見直しに向けた具体的な方針を打ち出すように求めています。当然、変化を力にするために、この提言の内容を重く受け止め、意見書のスケジュールどおり推進するおつもりであると信じていますが、いかがでしょうか。総理及び規制改革担当大臣にお尋ねします。

 次に、農業分野の規制改革についてお伺いします。

 政府の経済対策には、食料安全保障を冠した農業の支援策が数多く含まれています。しかし、先月、会計検査院が、水田活用の直接支払交付金事業という、水田で畑作をするという実質的に米の減産を進める補助金について調査したところ、百三十億円余りが不適切に交付されていました。不適切な交付がこれだけの額に上るのは、良質な米をより多く生産したいという農家の熱意に反しており、そもそも無理がある政策だったのではないでしょうか。総理の認識を伺います。

 本気で食料安全保障を強化したいのであれば、米農家にふだんからより多くの米を生産していただき、並行して海外市場も開拓して、輸出にも力を入れるのが筋だと考えます。もし有事になれば、輸出用の米を国内に回すことで、すぐに食料を確保することができます。アメリカやオランダ、ドイツなど諸外国に倣って、米の減産を進める政策は改め、米農家の努力を後押しし、米の輸出を進めるべきと考えますが、総理の認識を伺います。

 最後に、雇用分野の規制改革についてお伺いします。

 政府の経済対策では、構造的賃上げに向けて、三位一体の労働市場改革を進めるとしています。しかし、構造的な賃上げを起こすには、捕捉率の高いセーフティーネットの整備から始めて、人材の流動化を進めることで、労働者の生活の安全を守りながら成長産業に容易に移動できる、いわゆるフレキシキュリティーを構築しなければなりません。

 フレキシキュリティーが実現することで、労働者にとっては、情熱を持って働くことのできる仕事を見つけることにつながり、また雇用者にとっては、今までは大企業などの正社員としてなかなか雇うことのできなかった優秀な人材を採用するチャンスが広がります。人材の流動化を進める必要性及びそのための具体的な対応策について、総理の見解を伺います。

 選挙対策のばらまきを行いながら、長期的には規制には手を入れず、潜在成長率も高まらない、そのような政府の経済対策に対して、日本維新の会は、社会保険料減免を行うことを柱に、緊急的に必要な物価高政策や生活困窮者支援を実施し、規制改革、社会保障制度を通じて長期的な構造改革を実現し、持続可能な社会を実現していくことをお約束して、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 伊東信久議員の御質問にお答えいたします。

 今般の経済対策及び現在の経済状況についてお尋ねがありました。

 今般の総合経済対策では、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化する供給力の強化を最も重要な柱としつつ、デフレに後戻りしないための一時的な措置として、所得税、住民税の定額減税等によって国民の可処分所得を下支えすることとしております。

 その規模については、国民にとって真に必要で効果の高い政策を積み上げた結果であり、ばらまきとの批判は当たらないと考えています。

 同時に、今回の補正予算においては、合わせて五兆円となる特定目的予備費を半減し、財源として活用するとともに、国債発行による公債金収入を令和四年度第二次補正予算よりも着実に抑制するなど、平時の歳出構造に向けた一つの道筋を示すこともできたと考えております。年末までの予算編成過程で、更なる歳出構造の平時化を検討してまいります。

 また、我が国経済は、現在、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円を超える見込みの設備投資、五十兆円ものGDPギャップの解消の進展など、明るい兆しが見られ、デフレ脱却の千載一遇のチャンスを迎えています。そのため、リーマン・ショック後の世界的金融危機の影響を受け、経済が悪化していた時期とは状況が異なると認識をしております。

 コロナ禍以降の社会変化への認識と経済対策における対応についてお尋ねがありました。

 我が国の経済は、ただいま申し上げたように、コロナ禍を乗り越えて、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、三十年ぶりの株価水準、また、過去最大規模の名目百兆円の設備投資など、長年のコストカット型経済、デフレからの脱却に向けた変革のチャンスを迎えています。他方、賃上げが物価に追いついておらず、民需は力強さを欠いており、人口減少の下で人手不足が常態化する中、社会変革の必要性が高まっています。さらに、自然災害の激甚化、頻発化など、経済社会を持続可能なものとする大前提となる国民の安全、安心の確保が更に課題となっています。

 このため、今般の経済対策においては、物価高から国民生活を守り抜く、デフレに後戻りしないための一時的な措置として、国民の可処分所得を下支えする、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化する供給力の強化を図る、デジタル技術等を活用した各種の制度・規制改革など、変化を力にする社会変革を起動、推進する、国土強靱化や食料安全保障、花粉症対策など、国民の安心、安全を確保する、これらを一つのパッケージとして策定いたしました。

 経済対策に盛り込んだ施策を着実に実行することで、変化を力にし、我が国経済を新たなステージへと移行させてまいります。

 所得税減税の効果、国民負担の抑制、医療構造改革の推進についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、国民負担の抑制は、日本経済を持続的で競争力のあるものとするために重要です。そのためには、まず、国民所得の向上、とりわけ現役世代の賃上げが不可欠であり、岸田政権においては、政労使の連携強化、賃上げ促進税制の強化、賃上げの原資となる企業の競争力強化、また、下請取引の適正化など、総合的かつ全力で取り組んでいるところです。

 今般の定額減税は、こうした努力に加え、物価高に打ちかつ賃上げ、国民所得の増加を官民の連携によって実施するために、企業の賃上げを促しつつ、官も減税という形でこれを下支えするものであり、国民負担の抑制に資するものです。確実に可処分所得を伸ばすことで、消費拡大、ひいては経済の好循環につなげてまいります。

 また、国民負担の抑制という観点からは、御主張のとおり、構造改革、そして構造改革に伴う税負担や社会保障負担の抑制が重要です。

 このため、岸田政権においては、少子化対策の当面の集中的な取組に際しても、全世代型社会保障を構築するとの観点からの歳出改革を複数年にわたって継続することにより、それによって得られる公費の節減等の効果、社会保険負担軽減の効果を活用しながら、実質的に追加負担を生じさせないことといたします。こうした努力は、安倍政権以来継続している医療、介護の効率化や、負担の適正化を通じた全世代型の社会保障制度構築に向けた構造改革の取組を継続し、そして強化するものです。

 少子化対策についてお尋ねがありました。

 先ほども申し上げましたとおり、少子化対策の当面の集中的な取組の財源確保に当たっては、全世代型の社会保障を構築するとの観点からの歳出改革を複数年にわたって継続することにより、それによって得られる公費の節減等の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用するとともに、賃上げに伴う実質的な国民負担の軽減効果も活用することとしております。

 支援制度は、こうした歳出改革等の効果の範囲内で構築することにより、実質的な追加負担を生じさせないことといたします。こうした歳出改革を通じた子育て予算の財源確保は、現役世代に負担を押しつけるものではなく、むしろ、賃上げと歳出改革による実質的な国民負担の軽減と児童手当等の政策の抜本的強化によって子育て世帯の受益増を確実にもたらし、全世代型社会保障の構築にも資するものであると考えております。

 ガソリン価格高騰策についてお尋ねがありました。

 激変緩和対策事業を通じてエネルギーコスト負担軽減を図っていますが、トリガー条項の凍結解除や暫定税率の廃止に比べて、灯油や重油なども支援対象とできるほか、買い控えやその反動による流通の混乱を防ぎ、迅速かつ臨機応変に価格抑制を図ることができると承知をしております。現にこれまでも、最大で四十一円の補助金を投入して、トリガー条項の凍結解除を上回る価格抑制を図ってきています。その際、補助の効果が適切に小売価格に反映されるよう、卸価格の引下げを確認した上で事後精算とするほか、ガソリンスタンドへの全数の価格調査などを通じて、小売価格への適切な反映を促してきております。

 価格モニタリングや業界団体を通じた周知徹底、それらの取組の更なる工夫や改善などにより、不適切な事業者への支援ではなく、本事業の趣旨を踏まえた価格設定がなされるよう今後も取り組んでまいります。

 揮発油税等の当分の間税率についてお尋ねがありました。

 揮発油税等については、平成二十一年に道路特定財源は廃止されましたが、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情を踏まえ、それまでの税率が維持され、当分の間税率とされたものと承知をしております。こうした状況は現在も変わりはなく、こうした税制上の取扱いを変更することは考えておりません。

 その上で、ガソリン価格については、これまで、燃料油の激変緩和事業によって、原油価格高騰による国民生活や経済活動への影響を緩和してきており、今般策定された総合経済対策において、この措置を来年四月末まで継続することとしております。

 ライドシェアの課題についてお尋ねがありました。

 ライドシェアは、各国の事情によって状況は様々であり、確たる定義はないと承知しておりますが、多くの国で、デジタル技術を活用しながら、自家用車の有償利用や一般ドライバーの活用を進めています。

 現実に生じている地域交通の担い手や移動の足の不足といった深刻な社会課題に向き合い解決していくため、ライドシェアの課題に取り組むこととしており、観光地や都市部を排除することなく、また、デジタル技術を活用した新たな交通サービスという観点も排除せず、諸外国の先進的な事例や、御指摘の規制改革推進会議の有志委員の意見書も十分に勘案しながら、年内めどに方向性を出し、できるものから速やかに実行してまいります。

 水田活用の直接支払交付金及び米の輸出についてお尋ねがありました。

 御指摘の交付金は、需要が減少する主食用米から輸入依存度の高い麦、大豆等への転換を後押しするものであり、生産者の経営を下支えするものです。今般の会計検査院の指摘については、農林水産省において真摯に受け止め、適切な運用を徹底してまいります。

 また、国内産地における麦、大豆等への転換と併せて、米の海外需要の開拓を積極的に進めてまいります。今回の補正予算においても、米を含む農林水産物、食品の輸出促進対策を措置しており、輸出に意欲的に取り組む生産者、産地を支援してまいります。

 人材の流動化を進める必要性と対策についてお尋ねがありました。

 持続的な賃上げを実現するためには、成長分野への労働移動の円滑化は重要であり、就職支援や能力開発支援、雇用のセーフティーネットの確保などに総合的に取り組んでまいります。

 具体的には、今般の経済対策において、キャリアコンサルタントが転職相談等に応じるための体制整備として、官民連携による求職、求人情報の充実や、企業の生産性向上に資する人材の受入れを促進するための助成制度の創設を盛り込んでいるほか、雇用保険制度において、自己都合の離職者がリスキリングに取り組んでいた場合などの失業給付の要件緩和に向けて検討を進めています。

 こうした取組と併せて、リスキリング支援の拡充にも取り組み、希望する労働者の円滑な労働移動を支援してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 伊東議員の御質問にお答えいたします。

 定額減税等についてお尋ねがありました。

 定額減税を含む今回の総合経済対策については、その全体の経済押し上げ効果が内閣府の試算として示されており、実質GDP換算で十九兆円程度と見込まれていると承知をいたしております。

 その上で申し上げれば、今般の定額減税は、短期的な景気浮揚のみを目的としたものではなく、経済全体のデフレマインドからの転換を促し、物価上昇を乗り越える構造的な賃上げ、消費と投資の力強い循環という大きな経済の流れにつなげていくために行うこととしたものであり、経済対策の各種施策と併せて実施していくことで、デフレからの完全脱却を果たしていくことが重要であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕

国務大臣(加藤鮎子君) 支援金制度についてお尋ねがありました。

 支援金制度は、賃上げと歳出改革によって実質的な国民負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で構築することにより国民に実質的な追加負担が生じないこととし、具体的な設計を行っているところです。

 本制度は、現役世代のみならず、企業とともに、高齢者も含めた全ての世代が、さらに、歳出改革の努力によって生み出された公費も併せて、子育て世帯を支える仕組みとすることを検討しているところです。

 また、子供、子育て政策に要する経費については、医療、介護のように、高齢化等に伴う自然増があるものではないと考えています。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) ライドシェアについてお尋ねがありました。

 ライドシェアは、一般的に、アプリなどで自家用車、ドライバーと利用者をマッチングさせ、輸送サービスを提供するものであると考えておりますが、決まった定義はなく、海外では様々な形態で運営されているものと認識しております。

 地域の移動の足の状況については、規制改革推進会議のワーキンググループにおいて、都市部や観光地を含む多くの首長の方々などから現場の実情を伺いました。私としても、改めて、各地で移動の足の不足が深刻化している実情を痛感したところであります。

 政府としては、御指摘の委員有志の意見書も参考にしつつ、自動運転、タクシーの規制緩和、ライドシェア、この三点で地域の足を確保すべく、まずは年内に一定の結論を得るよう、スピード感を持って取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 赤羽一嘉君。

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 公明党の赤羽一嘉です。

 令和五年度補正予算案につき、総理並びに関係大臣に質問させていただきます。(拍手)

 総理、帰国直後のお疲れのところ、大変失礼かと存じますが、率直な物言いでエールを送らせていただきます。

 一九九五年一月十七日、私は、いてつく冬空の中、高速道路や建築物が軒並み倒壊し、ガス臭が漂い、のたうつ電線により火災が広がった阪神・淡路大震災を体験いたしました。修羅場の中から復興する市民の底力も見てきました。そうした市民の皆様とともに、現場第一主義に徹しながら、一日も早い真の復興の実現に我が人生を懸けることが自らの使命と腹を決めたのが私の原点であります。

 総理、今こそ、一国の最高責任者として先頭に立って政策を進めていただきたい。聞く力を標榜してスタートしたのですから、徹して国民の声に耳を傾け続けるべきです。そして、将来の日本の姿や我々国民の暮らしがどうなるか、その政策ビジョンを堂々と示し、この国の未来のために身命を賭して働く覚悟を今こそ示すべきです。

 我々与党は、日本の未来のため、国民の豊かな暮らしの実現のため、共に戦うことをお誓い申し上げ、以下、質問に入ります。

 まず、国民生活を守る物価高対策です。

 私自身、買物をするたびに、いつも購入する食料品の値段が大幅に高くなっていることに驚き、思わず購入をためらうことも度々です。ある民間の調査では、標準的家庭の食費は年間四万八千円程度の増加との試算もあり、特に、おむつや粉ミルク、乳製品等の値上がりが続いている状況です。

 年金で暮らす高齢者の皆様や食べ盛りのお子さんがいる家庭の家計のやりくりがどれほど切実であるかは、想像に難くありません。また、中小零細事業者も、価格転嫁がままならぬ中、厳しい経営を迫られています。政府が今最優先すべきことは、物価高に苦しむこうした方々が安心してお正月を迎えられるようにすることです。

 補正予算案に計上されているガソリン、灯油、電気・ガス料金の引下げの継続及び住民税非課税世帯などへの一世帯七万円の支給は、必ず年内に実現すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 来年六月に実施予定の所得税、住民税減税について、一度きりの減税で本当にデフレからの脱却ができるのかと、多くの国民はいぶかしく思っているのではないでしょうか。政府は賃上げと減税でデフレ脱却を描かれているようですが、デフレ脱却のための減税の継続と賃上げの具体的処方箋について、総理の答弁を求めます。

 中小零細企業は、エネルギー、資材等の高騰、人手不足、多重下請構造など厳しい現実に直面し、持続的な賃上げは容易ではありません。とりわけ、地域住民の生活を支える物流、建設、飲食、観光、そして医療、介護、障害福祉、保育等のエッセンシャルワーカーの人手不足が深刻です。

 物流は、働き方改革が実施される明年四月以降、現在の物量の一四%が運べなくなるとの深刻な調査結果があり、現在の国民生活が維持できるかどうか、極めて厳しい状況です。

 また、災害が起こるたびに地域の守り手として昼夜分かたず応急復旧に全力を挙げる地方の建設業者の多くも、人材の育成、確保、事業の継続に困難を極めています。

 物流業、建設業共に、多重下請構造が健全経営を困難にさせています。今こそ、政府が本腰を入れて多重下請構造の改革に乗り出し、荷主や施主も巻き込んで、現場で汗するトラック、タクシーのドライバーや建設技能労働者の賃上げを実現すべきです。国土交通大臣の答弁を求めます。

 少子高齢社会にとって極めて重要な介護士や保育士等、ある意味で公定価格で賃金が決まるエッセンシャルワーカーの賃上げも、最優先で実現すべきです。総理の答弁を求めます。

 人手不足に対する処方箋の一つが、女性の活躍です。

 残念ながら、日本の労働慣行は、長らく、年功序列、終身雇用の下、男性正社員が圧倒的に優遇され、女性が働きにくい環境でありました。女性が活躍できない企業、組織は、サステーナブルではありません。最近の若年夫婦では当たり前の共働きをしながら、安心して子育てができる社会の実現が急務です。

 自公政権による長年の取組で保育所待機児童は大幅に改善されましたが、育児休業の更なる取得を促すために、給付金の支給率を実質手取り十割相当に引き上げ、育休期間の代替要員の確保など、誰もが利用しやすい育児休業制度に改善すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 結婚や出産を機に退職された女性が再び働きやすい環境をつくることも重要です。パートで働く場合、いわゆる年収の壁のため就業調整を行わざるを得ず、年末の人手不足がより深刻となっている実態があります。今般の経済対策で、年収の壁に係る特例措置が取られたことは評価します。引き続き制度改革を進めるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 構造的な人手不足の今こそ、省人化、省力化投資を実行し、生産性を上げることが重要です。

 我が国の時間当たりの労働生産性は、OECD三十八か国中二十七位、G7では、一九七〇年以降最下位が続いています。

 神奈川県のある旅館は、深刻な人手不足から、窮余の一策として、自動システムの導入による省人化を徹底的に進め、営業日は週四日とし、休館日は従業員の研修に充て、サービスの質を向上させながら、一泊九千八百円の宿泊代を段階的に引き上げ高級旅館としたところ、客足は落ちることなく、収益も大幅に増加した成功例もあります。

 タクシーのドライバー不足も指摘され、ライドシェアも議論されていますが、地方部のタクシーの実車率はおおむね三割台、つまり、一日の七割近くの時間は空車状態です。一方、東京都内では、タクシーの配車アプリの導入を進めた結果、実車率が飛躍的に向上しました。国土交通省がかつて大規模な予算でETCの導入を一気に進めた例を参考に、タクシーの配車アプリの導入を全国一斉に進め、実車率を上げた後に、実際にどのくらいタクシーが不足しているのか分析することが先決と考えます。

 中小企業の省人化投資による生産性の向上について、総理並びに国土交通大臣の御決意を伺います。

 賃上げの大前提は、経済の成長と好循環の実現です。

 最先端技術の基盤となる半導体や蓄電池、水素やペロブスカイトなど、次世代エネルギーに集中的かつ戦略的な大規模な国内投資を行い、確実に国際競争力をつけることが重要です。そして、その成長の波及効果が地方の中小企業にも行き渡るよう推進すべきです。経済産業大臣の答弁を求めます。

 本年も、過去を上回る規模の大雨災害が全国各地で発生しましたが、これまでの防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策や防災・安全交付金等を活用した流域治水対策により、被害が最小化されたと評価します。

 さきの通常国会で、防災・減災、国土強靱化法の改正が成立し、実施中期計画の策定が義務づけられたことから、五か年加速化対策後も、継続的かつ安定的に防災・減災、国土強靱化対策が講じられるものと理解していますが、総理の見解を伺います。

 以上、令和五年度補正予算案について伺いました。

 公明党は、物価高騰に負けない持続的な賃上げの流れをつくり、日本経済の再生と豊かな国民生活の実現を目指し、今回の経済対策を着実に実行することが重要と考えます。そのためにも、本補正予算案を速やかに成立させ、各対策を早期執行することを強く訴えさせていただき、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 赤羽一嘉議員の御質問にお答えいたします。

 エネルギー価格の激変緩和対策事業及び住民税非課税世帯への支給についてお尋ねがありました。

 エネルギー価格の激変緩和措置については、国民生活を守る観点から、家計や中小企業等の負担軽減に向けた取組として、当面の間継続していく必要があると認識をしています。

 このため、今般の経済対策において、燃料油については来年四月末まで措置を講ずることとし、電気、ガスについては、現在の措置を来年四月末まで講じ、五月は支援の幅を縮小することといたしたところであります。

 また、物価高に最も切実に苦しんでおられるのは低所得者の方々であり、この方々にはスピード感ある対応が重要です。御指摘の一世帯当たり七万円の支給については、自治体に対し、検討の参考にしていただけるよう、交付金の内容等を速やかにお示ししており、自治体からの質問や相談にも丁寧に対応することで、年内の実施開始を目指してまいります。引き続き、自治体とも連携して、しっかりと取組を進めてまいります。

 所得減税や賃上げについてお尋ねがありました。

 我が国経済はデフレ完全脱却のための千載一遇のチャンスを迎えており、今般の所得税、住民税の定額減税は、デフレに後戻りしないための一時的な措置として、国民の可処分所得を下支えするものです。

 本格的な所得向上策に向けては、先週十五日の政労使の意見交換において、足下の物価動向を踏まえ、来年の春闘に向けて、今年を上回る水準の賃上げの協力を経済界にお願いしたところです。あわせて、賃上げ促進税制の拡充や価格転嫁対策の強化に取り組んでおり、官民連携により、来年に向けて、賃金、そして所得税、住民税の定額減税を含めた可処分所得が物価を超えて伸びていくよう取り組んでまいります。

 このように、賃上げと定額減税との相乗効果を発揮することにより、消費を下支えし、経済の好循環の実現に取り組んでまいります。

 エッセンシャルワーカーの賃上げについてお尋ねがありました。

 医療、介護、福祉分野における賃上げへの対応は、喫緊かつ重要な課題と認識をしております。

 このため、これらの分野について、人材確保に向けて必要な財政措置を早急に講ずることとし、補正予算案において施策を盛り込みました。その上で、令和六年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、活用可能な法人における賃上げ税制の活用等も踏まえつつ、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、現場の方々の処遇改善に構造的につながる仕組みを構築するべく検討を深めてまいります。

 また、保育についても、民間給与動向等を踏まえ、令和五年人事院勧告を反映した更なる処遇改善の対応を行ってまいります。

 誰もが利用しやすい育児休業制度の実現や、共働きを基準とした制度改革についてお尋ねがありました。

 女性活躍を推進する上で、男女共に仕事と育児を両立できる環境づくりや、年収の壁を意識せず働くことができる環境づくりが重要です。

 このため、政府としては、こども未来戦略方針を踏まえ、最大二十八日間、育児休業給付の給付率を手取りで十割相当へ引き上げることを検討するとともに、育児休業期間中の代替要員の確保など、育児休業を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を強化していくこととしております。

 年収の壁については、支援強化パッケージを着実に実行した上で、被用者保険の更なる適用拡大などの制度の見直しに取り組むこととし、次期年金制度改革に向けて議論を開始しており、今後も、関係者の意見を伺いながら、丁寧に議論をしてまいります。

 これらの施策を着実に進め、共働き、共育てを推進してまいります。

 中小企業の省力化投資についてお尋ねがありました。

 中小企業が人手不足を乗り越え、成長していくためには、生産性向上が不可欠です。

 このため、今般の総合経済対策で、中小企業の省力化投資を強力に支援してまいります。その際、省力化にどこから手をつけてよいか分からないといった声があることも踏まえ、カタログからメニューを選ぶように省力化対応製品を導入できる、簡易で即効性のある支援を行ってまいります。

 中小企業の省力化投資、生産性向上をしっかりと後押しすることで、売上げ、収益を拡大し、賃上げにつながっていく環境をつくってまいります。

 防災・減災、国土強靱化についてお尋ねがありました。

 激甚化、頻発化する災害に対応するため、五か年加速化対策を含め、防災・減災、国土強靱化の対策を着実に進めています。

 議員御指摘の治水対策を始めとする防災、減災の取組により、全国の対策箇所では被害を抑止する効果が確実に積み上がっていますが、対策が急がれる箇所も数多く残っております。このため、五か年加速化対策後も、継続的、安定的に取組を進めていくことが重要です。

 さきの通常国会で改正された国土強靱化基本法により、中長期的な施策と事業規模の見通しを持って進めていく法的な枠組みが設置されたことを受けて、中期計画の策定に向けた取組をしっかりと進めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 赤羽一嘉議員にお答えいたします。

 まず、運輸業や建設業の多重下請構造の是正などを通じた、現場で働く労働者の賃上げについてお尋ねがありました。

 運輸業や建設業の方々は、国民生活や経済活動を支えるエッセンシャルワーカーであり、二〇二四年問題も踏まえ、処遇改善による担い手確保が重要な課題であると認識しています。

 このため、まず、トラック運送業については、標準的な運賃の見直し、トラックGメンによる監視、指導の強化、荷主の協力や多重下請構造の是正に向けた法制化などを組み合わせて、賃金原資の確保に取り組んでまいります。

 また、タクシーにつきましては、運賃改定の迅速化により、既に八五%の地域が新たな運賃となっており、引き続き、運賃改定を原資とした早期の賃上げを促進してまいります。

 さらに、建設業につきましては、引き続き、元請業者に対し下請取引の適正化を要請し、下請次数の削減に取り組むとともに、賃金原資を確保し、これが技能者に賃金を支払う専門工事業者まで行き渡るようにするための制度的対応の検討を進めるなどにより、技能者の賃上げを実現してまいります。

 国土交通省としては、それぞれの業界の特性などを踏まえつつ、これらの取組を通じて、現場で働くトラック、タクシードライバーや建設技能労働者の賃上げに向けて、関係省庁、産業界とも連携し、全力を尽くしてまいります。

 次に、事業者の省人化投資による生産性の向上についてお尋ねがありました。

 まず、宿泊業においては、観光需要の回復に伴い人手不足が深刻化しており、タクシーにおいても、コロナ禍を契機として運転者が大幅に減少した結果、担い手の確保が喫緊の課題となっております。

 こうした課題に対応するには、処遇改善による担い手確保のみならず、DXの推進などによる省人化、省力化を進め、生産性を向上させることが重要です。

 具体的には、宿泊業において、従業員の働き方を効率化、省力化し、人手をかけるべき業務に人材を集中投下できるよう、スマートチェックインシステム、予約等管理システム等、業務の効率化や省力化に資する設備投資に対して支援を行ってまいります。

 タクシーについても、配車アプリの導入による実車率の向上など、タクシー事業者のDX化による生産性向上の取組にしっかりと支援を行ってまいります。

 令和五年度補正予算案においては、こうした生産性向上のための取組を進めるため、所要の額を計上しているところであり、持続可能な観光や交通サービスの実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 赤羽一嘉議員からの御質問にお答えいたします。

 グリーン分野などへの投資を通じた経済の好循環の実現についてお尋ねがございました。

 世界的に、デジタル化、グリーン化など、時代の大転換点を迎える中で、企業の賃上げ実現に向けては、思い切った投資を行い、日本経済全体の収益力を高め、それにより再び新たな投資につなげる、こうした好循環を実現し、持続的な経済成長軌道に飛躍させるための構造改革を大胆に進める必要があります。

 そのため、御指摘のように、新たな時代に必要となる半導体、蓄電池、さらには水素、ペロブスカイト太陽電池といった成長分野における大胆な投資を加速させます。今回の経済対策におきましても、経済産業省計上四・五兆円のうち約二・七兆円の予算を活用し、成長力を高めるために必要な投資を引き出してまいります。

 また、こうした取組や成果をサプライチェーンを構成する中小企業にまで広げることが重要であり、ものづくり補助金によるGXに資する革新的な製品、サービス開発などの支援や、中小機構による相談窓口による支援などの取組を着実に進めてまいります。

 こうした取組を進め、デジタル、グリーンなど最先端の分野で世界をリードすべく大胆な投資を加速させることで、我が国の経済成長、産業競争力強化につなげ、さらには、賃上げが続き、大胆な、大幅な所得向上につながる経済構造への転換を実現してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 西岡秀子君。

    〔西岡秀子君登壇〕

西岡秀子君 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 ただいま議題となりました令和五年度補正予算案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 そもそも、補正予算の編成は、財政法第二十九条の規定により、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出を行う場合に限り認められるとされております。しかし、近年、本来であれば当初予算として措置すべき緊急性のないものが多く含まれ、規模ありきの編成が常態化しています。また、コロナ予備費以降、巨額な予備費も常態化し、名称変更、使途の拡大等が行われ、一層不透明な運用となっています。財政民主主義の観点からも問題であると考えますが、岸田総理大臣の御見解をお伺いいたします。

 九月の実質賃金は、前年同月比二・四%、十八か月連続マイナスとなり、名目賃金の上昇を上回る物価高騰が極めて深刻であることが改めて浮き彫りとなりました。国民生活、事業経営、地域経済を守るための物価高騰対策は最重要課題です。

 今回の総合経済対策において、燃料油、電気・ガス料金の激変緩和措置を二〇二四年四月まで延長し、五月からは激変緩和の幅を減少する方針が示されました。ガソリン価格の激変緩和については石油元売会社への補助金であり、既に六・二兆円の国費がつぎ込まれています。しかし、本当に補助金分の値下げが行われているかは極めて不透明です。

 先般、会計検査院から六十二億円にも及ぶガソリン価格の調査費の無駄遣いが指摘をされました。エネ庁も価格調査を行っているため、二重に無駄が生じています。

 国民民主党は、さきの衆院選挙の公約として掲げて以来取り組んできたトリガー条項凍結解除を、今こそ出口戦略として実行すべきと考えます。

 会計検査院の指摘をどのように受け止め、今後どのように取り組む方針であるか、岸田総理大臣にお伺いいたします。

 一方で、賃金上昇に伴う名目所得の増加によって、より高い所得税率が適用され、賃金上昇率以上に税負担が増えるブラケットクリープ対策が必要です。

 国民民主党は、十月に、国民に直接届く経済対策を打ち出しました。物価高騰を上回る持続的な賃上げを実現するためにも、所得税減税として、三十年ぶりのインフレによる生きるコストの上昇を考慮し、基礎控除、給与所得控除の額を引き上げることによって可処分所得を増やす生活減税を提案し、法律案を提出しています。

 政府の所得税、個人住民税の減税は、スピード感に欠けるとともに、一年間の期間限定の対策では十分な減税効果が得られないと考えますが、岸田総理大臣の御見解をお伺いいたします。

 更なる電気代の高騰が危惧される中、国民民主党は、当面の間、世帯平均年間一万円程度の引下げを実現する再エネ賦課金徴収一時停止を昨年の参院選の公約として掲げて以来取り組み、法律案を提出しています。その実現についての御見解、また、現在、特別高圧電力についても地方創生交付金を活用して価格高騰対策が可能とされていますが、特に、製造業、物づくり産業の現場においては事業経営に大きな影響を与えており、支援の強化が必要であると考えますが、岸田総理大臣の御見解をお伺いいたします。

 政府は、経済成長と少子化対策を車の両輪に、若者、子育て世帯の所得を増やすための取組を掲げています。実質賃金の低下と出生率の低下の相関関係は強く、少子化対策としても持続的な賃上げ実現が大変重要であり、特に、若者、子育て世代の給与水準の向上は喫緊の課題です。

 加えて、奨学金は高等教育を受けている二人に一人が利用しており、卒業後、貸与型奨学金の返済が重い負担となり、将来にわたって人生設計が描けず、結婚、出産をちゅうちょせざるを得ない状況となっています。岸田総理大臣として、この状況をどのように転換していく方針であるか、お伺いいたします。

 百八十を超える基金が存在し、その中には、執行されないまま残金が積み上がり、一方で人件費等の管理費だけが支出される不適切な運用がなされています。政府が秋の行政事業レビューで全ての基金の点検、見直しを表明する中で、本補正予算では、三十一にも上る基金に四兆三千億円が計上されています。

 半導体生産拠点整備、宇宙開発分野への支出等、いずれも重要な取組であるものの、本来であれば当初予算に計上し、基金の是非も含めて十分な国会審議を経て決定されるべきものであると考えますが、岸田総理大臣の御見解をお伺いいたします。

 こども未来戦略方針において、安定的な財源三・五兆円を確保するために、歳出改革の徹底、社会保障費の歳出改革に努め、新たな支援金制度を構築することが示されました。歳出改革の具体的な内容が明確ではありません。また、防衛財源についても徹底した歳出改革がうたわれており、どのように両立していくのか、実現性に懸念があります。徹底した歳出改革の内容について、岸田内閣総理大臣に明快な御説明を求めます。

 ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、中東情勢も深刻化する中で、国際社会における核の脅威が高まっています。

 十二月八日から、核なき世界へ向けて、第三回目となる国際賢人会議が被爆地長崎で開催されます。岸田総理大臣も出席へ向けて調整されているとのことですが、会議の提唱者でもある岸田総理の出欠の御予定について伺います。

 一方で、今年、二十七日から、ニューヨークで核兵器禁止条約第二回締約国会議が開催されます。我が国は、オブザーバー参加をして、唯一の戦争被爆国として役割を果たすべきであると考えますが、岸田総理大臣の御見解をお伺いいたします。

 国民民主党は、常に国民生活に寄り添い、国民のための政治に邁進し、今後とも全力で取り組むことをお誓いし、私の質問を終わります。

 御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 西岡秀子議員の御質問にお答えいたします。

 補正予算と予備費についてお尋ねがありました。

 補正予算の編成は、財政法に基づき、緊急性等が認められる事業を計上するものであり、今回の補正予算についても、総合経済対策に掲げられた物価高対策や賃上げ実現のための取組を速やかに実行するために緊要となった経費が予算計上されており、規模ありきの指摘は当たらないと考えております。

 また、予備費についても、コロナ対策や物価高騰への対策など、予期せぬ事態への万全の備えとして計上してきたものであり、さらに、今回の補正予算においては、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費について、コロナ禍から平時への移行等を踏まえ、重点化を図る観点から所要の減額を行うとともに、物価高に賃金上昇が追いつかない中、賃上げ促進の環境整備のため必要な経費について、予期せぬ不足が生じた場合も機動的に対応できることを明確化するべく、見直しを図るものとなっております。

 このように、今回の補正予算や予備費の取扱いを含め、これまでの政府の対応が財政民主主義の観点から問題のあるものとは考えておりませんが、引き続き、国民の皆様への説明責任をしっかり果たしてまいります。

 燃料油価格激変緩和対策についてお尋ねがありました。

 激変緩和対策事業を通じてエネルギーコスト負担軽減を図っていますが、トリガー条項の凍結解除や暫定税率の廃止に比べて、灯油や重油なども支援対象とできるほか、買い控えやその反動による流通の混乱を防ぎ、迅速かつ臨機応変に価格抑制を図ることができると承知をしています。出口を見据えるに当たっても、原油動向や取引環境等も踏まえながら、支援幅を調整しやすい等の利点があると考えております。

 その際、補助の効果が適切に小売価格に反映されるよう、卸価格の引下げを確認した上で事後精算とするほか、ガソリンスタンドへの全数の価格調査などを通じて、小売価格への適切な反映を促してきております。

 御指摘の価格モニタリング調査は、その一環として、電話等によりガソリンスタンドの全数調査を実施した上で、価格設定の根拠が不明なガソリンスタンドを個別訪問するなど、激変緩和対策による価格抑制の実効性を最大限確保すべく実施しているものです。

 小売価格の推移を統計的に分析している既存の調査とは目的、手法が異なるものですが、今回の会計検査院の指摘を受け、先月十月から調査方法の改善を行ったところです。引き続き、調査の実施方法等について不断の見直しを図るなど、激変緩和対策を適切に実施してまいります。

 ブラケットクリープ対策と所得税、住民税減税の効果についてお尋ねがありました。

 所得税のブラケットクリープ対策は、何年も物価上昇や構造的賃上げが継続的に持続する局面においては検討課題となり得ますが、我が国経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、現時点では賃金上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねません。

 ブラケットクリープ対策を考える段階ではなく、むしろ、デフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の御負担を緩和することこそが必要であると考えております。このため、所得税、住民税の減税を、賃上げとの相乗効果を発揮できるタイミングである六月に実施することとしたものであります。

 所得減税と賃上げとの相乗効果を発揮し、経済の好循環の実現に取り組んでまいります。

 電気代への支援についてお尋ねがありました。

 カーボンニュートラルの実現に向けて、国民負担を抑制しつつ、再エネの最大限の導入を図るため、再エネ賦課金を含む現行の制度を着実に運用していくことが必要であると認識をしております。

 また、工業団地や電力多消費産業の中小企業等を支援することは重要であり、今般の総合経済対策においても、地域の実情に応じて困難な状況にある方々をしっかり支える観点から、重点支援地方交付金を追加することといたしました。

 引き続き、製造業、物づくり産業等の現場の皆様の声も聞きながら、必要な支援を届けてまいります。

 若者、子育て世代の所得向上についてお尋ねがありました。

 本年六月にまとめたこども未来戦略方針では、若い世代の所得を増やすことを第一の柱に据えており、児童手当の大幅な拡充、高等教育費の負担軽減、年収の壁の見直しなど、長年指摘されながら実現できなかった経済的な支援策の拡充に取り組んでいます。

 こうした取組に加えて、岸田政権では、最重要課題として賃上げに取り組んでおり、三位一体の労働市場改革などの生産性を引き上げる構造的な改革を進めることで、若者や子育て世代も含めた持続的な賃上げを実現してまいります。

 また、奨学金の返還については、返還の猶予や毎月の返還額を減額する制度などにより、負担軽減を図ってきました。さらに、令和六年度からは、返還中の方が結婚や出産などのライフイベントを踏まえて柔軟に返還できるよう、減額返還制度の利用可能な年収上限を引き上げることとしており、奨学金返還の負担の軽減を進めてまいります。

 基金についてお尋ねがありました。

 基金については、その時々の政策課題に的確に対応するため、各年度の所要額をあらかじめ見込み難い事業か、弾力的な支出が必要かなどの観点から厳正に審査を行った上で、基金の造成や予算措置の必要性を判断しています。

 その上で、今回の補正予算では、宇宙分野における研究開発など、我が国の成長力の強化、高度化に資する事業等において基金を活用することとしていますが、これらは、経済対策に掲げられた柱に基づく施策を迅速かつ効率的に実施するために、補正予算での計上が必要であると考えております。

 なお、こうした基金に充てる資金を含めて、予算は国会における審議、議決を経ることとされており、このプロセスの中で、政府として説明を尽くしてまいります。

 歳出改革についてお尋ねがありました。

 少子化対策の当面の集中的な取組である加速化プランの財源確保に当たっては、六月のこども未来戦略方針に基づき、賃上げと歳出改革によって実質的な国民負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することとしております。こうして、国民に実質的な追加負担が生じないことといたします。

 歳出改革の具体的な内容については、サービス提供側の質の向上と効率化、例えば、医療提供体制の効率化や介護分野におけるITの活用など、幅広い取組も視野に入れつつ、具体的な改革工程を年末までに策定する中でお示しした上で、二〇二八年度までの毎年度の予算編成過程において、実施して積み上げてまいります。

 また、防衛力の強化のための財源としての歳出改革については、社会保障関係費以外の経費を対象とし、骨太方針に基づき、これまでの歳出改革の取組を継続する中で、財源を確保することとしております。

 核兵器のない世界に向けた国際賢人会議への私の出席及び核兵器禁止条約第二回締約国会合への我が国のオブザーバー参加についてお尋ねがありました。

 長崎において開催する核兵器のない世界に向けた国際賢人会議の第三回会合については、引き続き、諸般の事情が許せば、私自身も出席すべく、調整を行っているところです。

 また、核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておらず、いまだその出口に至る道筋は立っていないのが現状です。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければなりません。

 我が国としては、引き続き、五月のG7広島サミットで発出した核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンを強固なステップ台としつつ、国際賢人会議の英知を得ながら、昨年八月のNPT運用検討会議で私が提唱したヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続、そして強化してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、二〇二三年度補正予算案について質問します。(拍手)

 国連のグテーレス事務総長は、ガザが子供たちの墓場と化している、国際人道法の明白な違反だと強く非難しています。ハマスの無差別攻撃は国際法違反であり、絶対に許されるものではありませんが、どんな理由があっても、ガザのジェノサイドを許してはなりません。

 政府は、イスラエルの軍事行動を国際法違反と批判し、民間人を多数犠牲にする軍事行動を直ちに中止することを求めるべきではありませんか。

 安保理決議は、ガザ地区全体における十分な日数の緊急かつ拡大された人道的戦闘中断を決議しました。戦闘休止とハマスの人質解放が伝えられていますが、今必要なのは即時停戦です。そのための緊急行動を国際社会に呼びかけるべきではありませんか。総理、お答えください。

 内閣府は、七月から九月のGDPが実質〇・五%減、三四半期ぶりにマイナス成長となったと発表しました。年率換算で二・一%のマイナスですが、GDPの五割強を占める個人消費の落ち込みが影響しています。しかも、その最大のものは食料品の値上げによるものです。

 総理、国民は、日々、食べるものまで切り詰める深刻な状況に追い込まれています。補正予算案は、もう暮らしていけない、そういう国民の声に応えるものになっているでしょうか。

 半年先に一回限りの所得税減税は、各種世論調査でも約六割が評価しないと答えています。毎日の買物で減税効果を実感できる消費税減税こそ、緊急かつ最大の物価対策ではありませんか。免税業者、フリーランスにも増税となるインボイスは中止すべきです。

 政治の責任で賃金の底上げを行うべきです。日本共産党は、大企業の莫大な内部留保に課税し、中小企業の賃上げを応援する財源にして、最低賃金全国一律千五百円を訴えています。中小企業の賃上げ支援は、設備投資などの間接補助ではなく、直接補助を、黒字を条件とせず行うべきです。

 政府は、介護職員の処遇改善に三百六十四億円計上しています。これは、常勤介護職員の数に六千円を掛けたものにすぎません。これでどうして介護で働く全ての職員の賃上げができるでしょうか。そもそも、昨年度の介護労働実態調査においても、介護処遇改善加算を算定した事業所は七五%で、そのうち基本給を引き上げたのは四割にもなりません。全ての介護労働者に届く仕組みにすべきです。

 二百十五万人の介護労働者の処遇改善には四百億円足らずの一方で、政府は、今回新たに半導体大手への補助など、四兆三千億円もの基金を積み増ししています。予算の優先順位が逆ではありませんか。来年のトリプル改定に際し、医療、介護、福祉の報酬を賃上げと労働条件改善に結びつけるべきです。

 二〇二四年問題が叫ばれています。物流、運輸などの分野で担い手が不足している背景には、毎年過労死などがトップという長時間労働と低賃金があります。五年間も残業規制を猶予しながら、政府は何をしてきたのでしょうか。人間らしく働ける条件改善と多重下請構造にメスを入れ、暮らせる賃金が確実に手元に届く仕組みをつくるべきと考えますが、答弁を求めます。

 こどもまんなか社会を語る前に、各自治体に広がっている学校給食の無償化、子供医療費の無料化、国保の子供均等割は無料、これらを国制度にすべきです。

 こども未来戦略方針の加速化プランの財源のため、支援金制度を創設するとしています。広く医療保険料に上乗せするのに、新たな負担を生じさせない、子育て世帯は給付が負担を上回ると説明しているのはなぜでしょうか。子育て世代の最大の要望は教育費の負担軽減です。高等教育の無償化目指し、学費も奨学金返済も半額、入学金ゼロへ踏み出すべきではありませんか。

 気候変動、地球の危機は早まっています。日本が国際社会の中で責務を果たすためには、省エネや産業部門での脱炭素の取組は当然ですが、重要な鍵は、エネルギーと食料の自給率を抜本的に高めることです。日本の食料が輸入頼みなのに対し、諸外国は補助金で自国の農業を守り、飢餓のときには輸出を制限します。生産者と地域、国土を守るために、生産費に見合う支援をするべきです。

 原発事故の反省を忘れたかのような原発推進はあり得ません。原発ゼロを前面に、地域住民が賛成できる再エネでエネルギーの自給率を高めるべきではありませんか。

 マイナ保険証の利用率が四・五%にとどまっているとして、利用促進に八百八十七億円計上しています。国民が求めているのは、保険証を残すことです。デジタル化に対応できないクリニックなどが閉鎖を決断しているのが現実です。やることが本末転倒ではありませんか。

 軍事費に過去最大の八千百三十億円を計上したことは重大です。敵基地攻撃能力のための長射程ミサイルの取得、沖縄県民の意思を踏みにじる辺野古新基地の埋立費用、馬毛島への巨大基地建設、オスプレイの佐賀空港配備など、憲法九条を踏みにじり、住民の反対の声を押し切って基地増強を進めることは断じて許されません。削除を求めます。

 最後に、まともな経済対策を取れず、度重なる不祥事で国民の支持を失った岸田内閣は退陣する以外にないことを指摘し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 高橋千鶴子議員の御質問にお答えいたします。

 ガザにおけるイスラエル軍の行動についてお尋ねがありました。

 イスラエル軍による個別具体的な行動については、事実関係を十分に把握することが困難である中、その法的評価をすることは控えますが、しかしながら、我が国は、全ての当事者が国際法に従って行動すること、これは一貫して求めてきております。イスラエルに対しても、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する旨を伝えた上で、人道的休止が必要であること、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきております。

 私自身、先般のAPEC首脳会議の機会を含めて関係国と会談を重ね、ガザ地区の人道状況改善や事態鎮静化に向けた協力を確認しております。

 引き続き、全ての当事者に国際人道法を含む国際法の遵守を求めつつ、関係国、国際機関との間で意思疎通を行い、人道状況の改善と事態の鎮静化等に向けた外交努力を積極的に続けてまいります。

 消費税減税とインボイス制度についてお尋ねがありました。

 物価高対策としては、燃料油、電気・ガス料金の激変緩和措置を延長するとともに、最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々に寄り添った対応を図るために、住民税非課税世帯に対して、既に措置した三万円に加えて、できる限り早く七万円を追加し、一世帯当たり十万円を目安に支援を行います。

 加えて、先週十五日の政労使の意見交換において行った賃上げの協力のお願いや、賃上げ促進税制の強化等の賃上げの取組と、所得税、住民税の定額減税の実施により、官民連携して、来年に向けて賃上げを含めた可処分所得が物価を超えて伸びていくよう取り組んでまいります。

 その上で、消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。

 また、インボイス制度は、複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要な制度であり、これを廃止することも考えておりません。

 中小企業に対する賃上げの支援についてお尋ねがありました。

 賃上げは、言うまでもなく、岸田政権の最重要課題です。最低賃金については、最低賃金法で定める労働者の生計費等を考慮しつつ、着実な引上げを行っていくため、引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の賃上げ額についてしっかりと議論をいただく必要があります。そうした積み上げにより、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指してまいります。また、労働者の七割が働いている中小企業の賃上げをしっかりと後押しするため、省力化投資などの生産性向上支援や価格転嫁対策を進めてまいります。

 なお、賃金の直接補填については、企業の生産性や稼ぐ力を向上させない限り企業収益の拡大につながらず、長期的な賃上げや事業の継続に結びつかないことから、慎重な検討が必要であると考えております。

 介護職員等の賃上げについてお尋ねがありました。

 介護、医療、福祉分野における賃上げの対応は喫緊かつ重要な課題であると認識をしております。

 このため、今般の経済対策においては、介護等の分野について、人材確保に向けて必要な財政措置を早急に講ずることとし、補正予算案において、そのための措置を盛り込みました。

 その上で、令和六年度の介護報酬、診療報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定において、活用可能な法人における賃上げ税制の活用等も踏まえつつ、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、現場の方々の処遇改善に構造的につながる仕組みを構築するべく、検討を深めてまいります。

 物流二〇二四年問題への対応についてお尋ねがありました。

 これまで、トラックドライバーの処遇改善を図る観点から、平成三十年に標準的な運賃を創設し、その周知、浸透を図るとともに、荷主に対する要請等を継続して行ってまいりました。

 こうした取組を加速化するために、本年六月に物流革新に向けた政策パッケージを策定し、このうち、特に緊急的に取り組む対策については、物流革新緊急パッケージとして取りまとめ、今般の総合経済対策に盛り込んだところです。

 その中で、標準的な運賃の引上げ、トラックGメンによる悪質荷主の監視、指導強化等を図るとともに、構造的な対策として、荷主への荷待ち時間削減等の取組の義務づけや、元請事業者への多重下請構造是正に向けた運送体制可視化の義務づけなど、労働時間縮減と賃上げ原資確保を同時に図る措置の法制化にも取り組み、エッセンシャルワーカーとして日本の物流を支えておられるトラックドライバーの処遇改善に全力を尽くしてまいります。

 少子化対策の施策やその財源、教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。

 御指摘の学校給食費の無償化については、全国ベースの実態調査を行い、その上で、課題の整理を丁寧に行ってまいります。子供の医療費については、無料化を国の制度にすることによる受診行動への影響なども見極める必要があることなど、課題が多いと考えております。子供の医療費の負担軽減及び国民健康保険における子育て世帯の負担軽減については、基礎となる国の制度と、各地域における様々な実情を踏まえた地方自治体による支援が相まって行われることが適当であると考えております。

 また、少子化対策については、当面の集中的な取組の財源確保に当たっては、賃上げと歳出改革によって実質的な国民負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、国民に実質的な追加負担が生じないことといたします。

 教育費の負担軽減については、令和六年度から、給付型奨学金等の対象を多子世帯や理工農系の学生等の中間層への拡大を行うとともに、貸与型奨学金の減額返還制度の年収要件を緩和いたします。加えて、多子世帯の学生等に対する授業料等減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化を進めてまいります。

 食料とエネルギーの自給率向上等についてお尋ねがありました。

 国民の生活基盤である食料とエネルギーの自給率を高めていくことは、極めて重要な課題です。

 食料自給率については、収入保険制度等により農業者の経営安定を図りつつ、過度に輸入に依存している麦、大豆、飼料作物等の国内生産の拡大を一層進め、需要に対応した農業構造への転換を支援すること等により、その向上に取り組んでまいります。

 また、エネルギー自給率については、将来にわたってエネルギーを安定的に供給する体制を構築するべく、徹底した省エネの推進と、地域と共生した再エネ、安全性の確保を大前提とした原子力など、あらゆる選択肢を確保し、その向上に取り組んでまいります。

 マイナ保険証の利用についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証は、我が国の医療DXを進める上で基盤となる仕組みであり、マイナ保険証の利用件数は、九月、十月と再び増加傾向になっています。

 今般の補正予算では、マイナ保険証の利用促進のための医療機関等への支援に必要な予算を計上しており、まずは一度、国民の皆様にマイナ保険証を使っていただき、質の高い医療などメリットを感じていただけるよう、医療機関や保険者とも連携して、利用促進の取組を積極的に行ってまいります。

 また、院内の電子化が進んでおらず、紙レセプトで請求を行っている医療機関については、オンライン資格確認の導入を義務としないなどの措置を講じつつ、適正に導入を進めています。

 なお、現行の健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提との方針にのっとり、ひもづけ総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には必要な対応を行ってまいります。

 防衛関係費に係る補正予算についてお尋ねがありました。

 国民の安全、安心を確保することは、経済社会を持続可能なものとするための大前提です。安全保障環境が厳しさを増す中、令和五年度補正予算案では、自衛隊の運用体制の速やかな確保や災害対処能力の強化等のため、八千百三十億円を計上いたしました。

 一層厳しさを増す安全保障環境に的確に対応するため、防衛力の抜本的強化を進めてまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    鈴木 淳司君

       法務大臣    小泉 龍司君

       外務大臣    上川 陽子君

       財務大臣

       国務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  宮下 一郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    新藤 義孝君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    土屋 品子君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    松村 祥史君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 村井 英樹君

       財務副大臣   赤澤 亮正君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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