衆議院

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第2号 令和6年1月30日(火曜日)

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令和六年一月三十日(火曜日)

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 議事日程 第二号

  令和六年一月三十日

    午後一時開議

  一 国務大臣の演説

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本日の会議に付した案件

 岸田内閣総理大臣の施政方針に関する演説

 上川外務大臣の外交に関する演説

 鈴木財務大臣の財政に関する演説

 新藤国務大臣の経済に関する演説


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説

議長(額賀福志郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、新藤国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 元日発生した令和六年能登半島地震。震災によって亡くなられた全ての方々の御冥福を心からお祈り申し上げます。また、被害に見舞われ、厳しい生活を送っておられる被災者の方々に、改めてお見舞いを申し上げます。

 今回の震災では、厳しい状況が幾重にも重なりました。

 半島特有の道路事情による交通網の寸断。海底隆起や津波被害による海上輸送の途絶。水道、電気、通信などライフラインの甚大な損傷。地震に弱い木造家屋が散在する小さな集落の孤立。高齢者比率五割を超える地域社会への直撃。

 悪天候と度重なる余震の中で、地元自治体、自衛隊、全国からの警察、消防の派遣部隊や自治体の応援職員、医療、福祉や道路、電力等の緊急対応チームはじめ多くの皆さんが不眠不休で、また、倒壊の危険の中で、救命救助活動やインフラ復旧に当たっていただいています。心から感謝いたします。

 こうした厳しい状況の中でも、なによりも素晴らしいのは、被災者の皆さん、また、支援に携わる皆さんの整然とした行動と絆の力です。発災直後の大混乱した状況は、皆さんの忍耐強い協力によって段々と落ち着きを取り戻しています。能登はやさしや土までもと言われる、外に優しく、内に強靱な能登の皆さんの底力に深く敬意を表します。

 政府、地元が一体となって被災者に寄り添い、生活と生業をしっかり支えていく息の長い取組を続けてまいります。また、被災者の皆様の命と健康を守るためにも、先行きの不安や懸念を解消しつつ、二次避難を広げていきます。

 異例の措置でもためらわずに実行していきます。例えば、昨年末に決めたばかりの令和六年度予算案の変更を決断し、一般予備費を一兆円に倍増しました。予算の制約により震災対応を躊躇することはあってはならないという決意です。今後、支援のフェーズは段階的に変わっていきますが、政府としては、切れ目なく、できることは全てやるという考え方で、全力で取り組んでまいります。

 また、私をトップとした令和六年能登半島地震復旧・復興支援本部を新たに設置することとしました。被災者の生活と生業支援のためのパッケージを着実に実行し、被災者の帰還と能登を含めた被災地の再生まで責任をもって取り組む決意です。

 先日、被災地を訪問し、輪島と珠洲の避難所に伺いました。大変な御苦労の中、様々な不安を抱えておられるとの声をお聞きしました。また、被災者支援や復興に向けて貴重なお話を伺いました。

 一方、過去の災害対応に比べて、新しい取組がいくつも生まれており、強く印象付けられました。

 道路が寸断され、空港も使えない中で、新たな官民連携による一気通貫の物流システムが動き出していました。自衛隊ヘリが都市部や海上からの空輸を担い、民間物流業者が荷捌き倉庫での管理や小口のトラック配送をきめ細かく行い、その先の交通途絶した避難拠点には自衛隊員が四十キロの支援物資を担いで配送するという組み合わせが短期間に動いています。

 断水していても使える温水シャワーが避難者の疲れを癒し、活躍しています。生活用水を循環ろ過し、再利用する技術をもつスタートアップ企業が持ち込んでくれました。アフリカや中東で展開している事業の逆輸入です。停電、断水でも使用可能なトイレトレーラーも全国から届けられました。

 孤立集落での自衛隊の救助活動と連携した医薬品のドローン配送、立ち入り困難な現場の上空からの被災状況調査、無線中継ドローンによる携帯回線の応急復旧等、本格的なドローンによる災害対応が行われています。

 これらに共通しているのは、日本人の伝統的な強みである絆の力が、デジタル、スタートアップ、新たな官民連携、資源循環など新しい要素と組み合わされてパワーアップし、日本の新たな力となっている姿です。

 震災の現場だけではありません。日本経済の色々な場面で新たな力が動き出しています。

 政権を担って二年四か月。三十年間続いたコストカット経済から脱却をし、社会課題解決に新たな官民連携で取り組むことで、賃上げと投資がけん引する新しい資本主義を実現し、日本を大きく動かしていきます。

 三十年ぶりの水準となった賃上げ、設備投資、株価。日本経済が新たなステージに移行する明るい兆しが随所に出てきています。

 今、我々は、長い間、日本経済に染み付いたデフレから完全脱却し、熱量溢れる新たな成長型経済に移行していくチャンスを手にしています。

 このチャンスを掴み取り、絶対に後戻りさせない。この強い決意が政治に問われています。本会議場に集う国会議員の皆さん、今年、令和六年を、これまでの積み上げを形にし、国民の皆さんに成果を実感していただく年とするため、政治の総力を挙げて断固として取り組もうではありませんか。

 震災への対応、デフレ完全脱却、そして緊迫する国際情勢への対応。日本は、内外共に正念場を迎えています。

 重要政策をしっかり進めていかなければなりません。

 外交の舵取りをしっかりと果たしていかなければなりません。

 しかしながら、政治の安定なくして政策の推進はありません。そして、国民の信頼なくして政治の安定はありません。

 その信頼が揺らいでいる。

 自民党の政策集団の政治資金の問題で、国民から疑念の目が注がれる事態を招いたことは、自民党総裁として極めて遺憾であり、心からお詫びを申し上げます。

 政治は国民のものとの立党の原点に立ち返って、自民党は変わらなければならない。その決意と覚悟をもって、政治刷新本部において集中的な議論を行いました。

 信頼回復の第一歩として合意した中間とりまとめにおいては、政治資金の透明性やコンプライアンスの徹底など運用面での改革を先行して進めつつ、制度面での改革については、各党各会派との真摯な協議を経て、政治資金規正法改正など法整備を実施していくとしています。

 また、自民党内の政策集団が、いわゆる派閥、すなわち、お金と人事のための集団として見られても致し方ない状況にあったことを率直に認め、真摯に反省し、政策集団がお金と人事から完全に訣別することを決めました。

 政治の信頼回復に向けて、私自身が先頭に立って、これらを必ず実行してまいります。政治改革に終わりはなく、今後も引き続き、政治刷新本部においてさらなる改革努力を継続していきます。

 国民の信頼回復を果たして政治を安定させ、その上で重要政策を実行してまいります。

 昨年十月の所信表明で、経済、経済、経済と申し上げました。その思いは今も全く変わっておりません。

 経済の再生が岸田政権の最大の使命です。もう一度この場でお誓いいたします。

 経済、とりわけ賃上げが今まさに喫緊の課題として求められています。

 昨年は、三十年ぶりの高い賃上げ水準となり、最低賃金も過去最大の上げ幅となりました。この流れを今年につなげ、国民の皆さんに実感いただくため、政府による公的賃上げを行います。

 全就業者の一四%を占める医療や福祉分野の幅広い現場で働く方々に対して、物価高に負けない賃上げを確実に実現してまいります。

 公共事業や給食はじめ公共サービスの調達でも、賃上げがしっかりと行われるよう、単価設定と調達制度改革を進めています。

 その上で、中小企業やパート、非正規で働く方々の賃上げです。

 赤字の中小企業や医療法人も使えるように賃上げ税制を拡大強化しました。中小企業の労務費上昇のスムーズな転嫁を後押しする公正取引委員会等の強力な指針も作りました。遵守に向けて、全国で周知徹底を進めています。

 また、パートで働く方々にとって長年の課題だった年収の壁解消のための支援策の活用を拡大していきます。

 さらに、価格転嫁が厳しいトラックドライバーの大幅な賃上げに向け、標準的な運賃を引き上げるとともに、適正な運賃導入を進める法案も提出いたします。

 建設業についても、賃上げ原資を確保するため、国が適正な労務費の目安を予め示した上で、個々の工事の下請契約等が行われることを促す法案を提出いたします。

 いずれも、賃上げのために力強い後押しとなります。

 急激な物価高から国民生活を守る手立ても緩めません。

 ガソリンや電気・ガス料金では、機動的に家庭や地域の足の負担を抑制するため、激変緩和措置を講じてきました。物価高に直撃されている年金世帯を含む住民税非課税世帯への一世帯七万円の追加給付も着実に動き出しています。より幅広い低所得者世帯への給付、子育て世帯への追加給付など、きめ細かい支援を進めます。

 そして、本丸は、物価高を上回る所得の実現です。あらゆる手立てを尽くし、今年、物価高を上回る所得を実現していきます。実現しなければなりません。

 政労使の意見交換において昨年を上回る賃上げを強く呼びかけ、春季労使交渉ではそれに呼応する動きが広がっています。政府としても、このモメンタムを保っていくべく全力を挙げます。

 春からの賃上げに加えて、六月からは一人四万円の所得税、住民税減税を行い、可処分所得を下支えします。官民が連携をして、賃金が上がり可処分所得が増えるという状況を確実に作り、国民の実感を積み重ねることで、長年続いてきた縮み志向の意識ではなく、賃金が上がることが当たり前だという前向きな意識を社会全体に定着させてまいります。

 持続的な賃上げを可能とするための人への投資を進めます。三位一体の労働市場改革を早期かつ着実に進め、多様な働き方を促すためのセーフティーネットの拡充、教育訓練やリスキリング支援の強化を図るための法整備も進めていきます。

 賃上げを生み出す企業の稼ぐ力の強化にも大きく踏み込みます。

 設備投資は、過去最大規模の名目百兆円を実現する見込みです。これを更に進めるため、国内投資促進パッケージでは、水素や半導体など未来志向の戦略的投資を促進するため、初期投資のみならず、生産段階でのコストにも着目した税額控除措置を講ずるなど、過去に例のない投資減税や補助を講じることといたします。

 地域経済をけん引する中堅・中小企業も、省力化投資の支援措置など、しっかりと後押しいたします。

 戦略的なインフラ整備も重点的に進めます。震災からの復興に向けて三月十六日の北陸新幹線の延伸を予定通り進めるとともに、リニア中央新幹線の整備に向けた環境を整えるほか、道路空間をフル活用した自動物流システム構想を早期に実現していくなど、物流革新を進めます。

 脱炭素と経済成長の両立を図るGXを進めていきます。世界初のGX経済移行債二十兆円を活用し、産業、くらし、エネルギーの各分野での投資を加速します。加えて、今国会には、水素、CCS、洋上風力の導入拡大のための法案を提出します。さらに、カーボンプライシング制度の令和八年度本格導入に向けて、大企業の参加義務化や個社の削減目標の認証制度の創設を視野に法定化を進めていきます。原子力発電についても、脱炭素と安定供給に向けた有効な手段の一つとして、安全最優先で、引き続き活用を進めてまいります。

 初の首脳会合を開いたアジア・ゼロエミッション共同体の取組を加速します。アジア諸国の多様な取組に日本の技術力や金融力で貢献し、同時に、アジアの成長力を我が国に取り込んでいきます。

 科学技術は、産業構造転換の鍵であり、未来を切り拓く礎です。一九九五年来、科学技術基本法のもと目指してきた科学技術創造立国を令和においても真に実現するため、長期的ビジョンを持った国家戦略を策定します。

 AIについては、規制と利用促進を一体的に進めます。昨年のG7広島サミットで創設した広島AIプロセスの成果として、生成AIのリスクへの対処を目的とした、初の国際的な枠組みである包括的政策枠組みに合意をしました。AIの安全性の評価手法の研究機関を設立します。

 宇宙分野についても、今月、日本の小型実証機が初めて月面着陸しました。アルテミス計画において、二〇二〇年代後半の米国人以外で初となる日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指し、民間と共同で進めます。

 バイオ、量子、フュージョンエネルギーなどの技術についても中長期的視点をもって取り組み、投資促進、規制改革を進めます。また、通信事業での国際競争力強化、研究開発の促進のために取組を進めます。

 スタートアップ育成五か年計画を加速し、新しい挑戦を後押しします。スタートアップの資金調達は十年間で約十倍となるなど、順調な増加基調にあります。人材育成、資金供給、オープンイノベーションを着実に推し進め、成長意欲が高い中堅企業に対する支援も拡充します。

 新型コロナや大規模な自然災害を乗り越え、いのちへの向き合い方、社会の在り方を問い直す機会となる大阪・関西万博の成功のため、オール・ジャパンで進めていきます。万博の主要な費用については、外部専門家の知見も活用し、その適正性を継続的にモニタリングしてまいります。

 二千兆円を超える日本の個人金融資産を国民所得の伸びと稼ぐ力に役立てます。年初から抜本的に拡充した新NISAがスタートしました。

 家計の資金が投資に向かい、企業価値向上が家計の所得増につながり、さらなる投資や消費が生まれるという好循環の実現を目指します。コーポレートガバナンス改革の実質化に加え、資産運用業とアセットオーナーの運用力の向上に取り組み、我が国のインベストメントチェーンを強化していきます。

 歳出改革を継続しながら、賃上げの取組を通じて所得の増加を先行させ、デフレからの完全脱却を果たすことは、高齢化等による国民負担率の上昇の抑制につながり、財政健全化にも寄与します。経済あっての財政であり、まず経済を立て直し、そして財政健全化を着実に進めます。

 日本経済の最大の戦略課題はデフレ完全脱却である一方、日本社会の最大の戦略課題は人口減少問題です。

 民間有志による人口戦略会議の提言の深刻な危機感も踏まえつつ、いま政府ができることは全てやるとの構えで全力を挙げていきます。

 第一は、こども・子育て政策です。

 前例のない規模でこども・子育て政策の抜本的な強化を図ることにより、我が国のこども一人当たりの家族関係支出は、GDP比で一六%とOECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進します。

 財源確保については、まずは徹底した歳出改革等によって確保することを原則とし、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することで、国民に実質的な負担が生じないこととしています。

 今年は、児童手当の抜本的拡充、高等教育の負担軽減、保育所の七十六年ぶりの配置改善、児童扶養手当の拡充など、いよいよ政策が本格実施されるステージに入ります。

 今国会に必要な法案を提出し、スピード感を持って、実行に移してまいります。

 単に制度や施策を策定するのではなく、社会全体でこどもや子育て世帯を応援する機運を高める取組を車の両輪として進めてまいります。

 こどもに対する性犯罪、性暴力は重大な人権侵害であり、あってはならないことです。こどもの性被害を防止するための法制度について、今国会での法案提出を目指し、より実効的な制度となるよう検討を進めます。

 また、質の高い公教育の再生、教育の国際化とともに、教職員の処遇見直しを通じた質の向上を図っていきます。

 女性の活躍を全力で後押しします。これまでの取組もあり、女性の有業率は五三・二%で過去最高。特に、二十五歳から三十九歳は初めて八割を超えました。これを更に進めるため、女性役員比率の目標等に向け、人材の採用、育成を支援いたします。また、男女ともに仕事と育児の両立ができるよう支援策を充実させていきます。

 高齢者や御家族の皆様にとって切実である認知症への対応も進めます。関係者の思いが込められた認知症基本法が今月から施行されました。認知症の方御本人、御家族に御参加いただいた、認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議の成果を、基本計画の策定や独居高齢者を含めた高齢者の生活上の課題への取組にいかしてまいります。

 これらの取組を通じ、年齢や障害の有無にかかわらず、全ての方が生きがいを感じられ、その尊厳が損なわれることなく、多様性が尊重される、包摂的な共生社会を実現してまいります。

 人口減少に適応しつつ、国民のニーズの多様化、複雑化に対応するため、デジタル行財政改革が求められています。デジタルの力をいかして、人手不足が深刻化する中、公務員の数を増やさずに行政サービスを持続できる環境を作ります。あわせて、基金の見直しや予算事業の見える化などを推進します。

 さらに、利用者起点で発掘した課題を踏まえ、デジタルと規制改革を組み合わせて課題を解決していく方策を実行していきます。その際、デジタル社会のパスポートであるマイナンバーカードの利便性向上を徹底的に進めます。

 特にライドシェアの課題については、地域の自家用車や一般ドライバーを活用した新たな運送サービスが四月から実装されるよう、制度の具体化と支援を行います。これらの施策の実施効果を検証しつつ、ライドシェア事業に係る法制度について、六月に向けて議論を進めます。

 自動運転についても、二〇二四年度において、社会実装につながる一般道での通年運行事業を二十か所以上に倍増し、全ての都道府県での計画、運行を目指します。

 地方創生なくして日本の発展はありません。それぞれの地域においても、絆の力を基礎に、新しい取組が始まっています。観光や農業などの基幹産業の発展を支援し、そして安心して暮らせる地域を守り抜いていかなければなりません。

 地方の成長も後押しするため、二〇三〇年訪日客六千万人、消費額十五兆円を目指します。その際、一部の地域、時期への偏在によるオーバーツーリズムを未然に防止し、全国津々浦々に観光の恩恵を行き渡らせるため、観光地、観光産業の高付加価値化と地方部への誘客を強力に推進します。

 地方が支える農業は国の基です。我が国の農業が直面する、食料や肥料の世界的な需給変動、環境問題、国内の急激な人口減少と担い手不足といった、国内外の社会課題を正面から捉え、これらの克服を地域の成長へとつなげていくべく、農政を抜本的に見直します。

 このため、農政の憲法と位置付けられる食料・農業・農村基本法について、制定から四半世紀を経て初の本格的な改正を行うべく、今国会に改正法案を提出いたします。

 さらに、不測時の食料安全保障の強化、農地の総量確保と適正、有効利用、食品原材料の調達安定化、スマート農業の振興を体系的に推進するため、これらの関連法案も今国会に提出をいたします。

 あわせて、グリーン農業、循環型林業、養殖業への転換など、環境に配慮した持続可能な農林水産業及び食品産業への転換を促進するとともに、国内の生産基盤の維持の観点も踏まえ、農林水産物の輸出をより一層促進してまいります。

 農政の基本は現場にあります。現場で日々汗を流し、苦労をされている方々に寄り添い、その前向きな取組を後押しする農政を展開してまいります。

 平時から、安全、安心を守り抜きます。能登半島地震を含め、激甚化する自然災害を踏まえ、ハード、ソフト両面から、流域治水やインフラ老朽化対策をはじめとする防災・減災、国土強靱化の取組を継続的に進めてまいります。

 また、地域における持続可能なインフラ整備に向けて、官民連携により、流域における総合的な水管理を推進するとともに、空き家、遊休不動産を積極的に活用するスモールコンセッションなどを推進します。また、資源のリサイクル等を進め、地域での資源循環を強化します。

 福島の復興は政権の最重要課題です。生活や生業を取り戻すため、政府としても全力で取り組みます。また、ALPS処理水放出を受けた中国等による日本産水産物の輸入停止に対し、即時撤廃を求めるとともに、影響を受ける水産物の国内需要拡大や新たな輸出先の開拓、国内での加工体制の強化等を着実に進め、我が国の水産事業者を守ります。

 年初の羽田空港の衝突事故を受け、二度とこのような事故が起きないよう、ハード、ソフト両面から再発防止対策に迅速に取り組むとともに、運輸安全委員会による原因究明を踏まえ、航空の安全、安心に向けた抜本的な対策を講じてまいります。

 国際社会は緊迫の度を一層高めています。ウクライナ侵略や中東情勢はもとより、米国大統領選をはじめ、今後の世界の行方を左右する重要な国政選挙も目白押しです。G7広島サミット、キャンプ・デービッドでの日米韓首脳会合など、これまでの積み重ねを形にし、日本ならではのアプローチで、世界の安定と繁栄に向け、国際社会をリードします。

 まず、同盟国、同志国との連携が重要です。四月前半に予定している国賓待遇での訪米などの機会を通じ、我が国外交の基軸である日米関係を更に拡大、深化させます。日米同盟を一層強化して我が国の安全保障を万全なものとし、地域の平和と安定に貢献をします。また、様々なチャネルを通じて、サプライチェーンの強靱化や半導体に関する協力など、経済安全保障分野における日米間の連携を強化いたします。

 先月東京で開催した日・ASEAN友好協力五十周年特別首脳会議の成果も踏まえ、また、日米豪印などを活用しつつ、関係各国との連携を強化し、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の推進における協力を一層進めます。

 国際的課題への対応などで協力していくべき重要な隣国である韓国とは、尹大統領との信頼関係を礎に、幅広い連携を更に拡大、深化させるとともに、日米韓三か国での戦略的連携や日中韓の枠組みも前進させます。

 中国に対しては、昨年十一月の習近平国家主席との首脳会談をはじめ、あらゆるレベルでの意思疎通を重ねてきています。これからも、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みに対するものを含め、我が国として主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話を行い、共通の諸課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築をしていきます。

 対露制裁、対ウクライナ支援は、これを今後とも強力に推し進めます。二月には東京で、日・ウクライナ経済復興推進会議を開催する予定です。日露関係は厳しい状況にありますが、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持いたします。

 拉致被害者御家族が高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題です。また、北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて容認できません。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現し、日朝関係を新たなステージに引き上げるため、また、日朝平壌宣言に基づき、北朝鮮との諸問題を解決するためにも、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めてまいります。

 昨年の広島サミットでは、G7以外の首脳らも一堂に会した場で、法の支配、主権や領土一体性の尊重等の重要性について認識を一致させることができました。この成果を土台としながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化を進め、ブラジルでのG20などの機会を捉え、グローバルサウスとの連携も深め、世界を分断や対立から協調に向け導いてまいります。また、食料危機や気候変動、感染症などの世界的諸課題に対しても、人間の尊厳を中心に据えた外交、国際協力を、日本ならではの強みをいかしつつ、推進いたします。

 ロシアの核兵器による威嚇や北朝鮮の核・ミサイル開発等により、核軍縮をめぐる情勢は厳しさを増しています。しかし、そのような中だからこそ、昨年発出した核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンを強固なステップ台としつつ、国際賢人会議の叡智も得ながら、ヒロシマ・アクション・プランの下で取組を一つ一つ実行し、核兵器のない世界に向け、現実的で実践的な取組を継続、強化してまいります。

 我が国が戦後最も厳しい安全保障環境のただ中にあることを踏まえ、防衛力の抜本的強化を着実に具体化し、自衛隊員の生活、勤務環境、処遇の向上にも取り組みます。

 また、日米安全保障体制を基軸とする日米同盟は、グローバルな安定と繁栄の公共財として機能しており、同盟の抑止力、対処力を一層強化します。

 基地負担の軽減にも引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。また、沖縄経済を強化すべく支援を継続します。

 防衛力の抜本的強化に必要な財源確保についても、一昨年末の閣議決定の枠組みに基づいて方向性を明確化し、取り組みます。

 防衛力の強化や外交、安全保障とともに、経済安全保障の抜本的強化が急務です。セキュリティークリアランス、サイバーセキュリティー強化に取り組みます。

 我が国のサイバー対応能力の向上はますます急を要する課題であり、関連の法整備に関し、可能な限り早期に法案をお示しできるよう、検討を加速します。

 その他の先送りできない課題についても取り組んでいきます。

 まずは、憲法改正です。衆参両院の憲法審査会において、活発な議論をいただいたことを歓迎します。国民の皆様に御判断いただくためにも、国会の発議に向け、これまで以上に積極的な議論が行われることを期待します。また、あえて自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力したいと考えております。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。

 安定的な皇位継承等への対応については、皇族数確保のための具体的方策等を取りまとめ、政府から国会に御報告しております。早期に立法府の総意が取りまとめられるよう、国会において積極的な議論が行われることを期待いたします。

 平成二十八年の熊本地震では、価値ある多くの陶芸品が破損しました。それに手を差し伸べたのは、輪島塗の職人でした。

 割れた陶器の破片を集め、漆と金でつなぎ合わせる輪島塗の金継ぎという技法で見事に修復をしました。被災地熊本の作品と輪島塗の伝統技術が融合した新しい芸術作品は、美しい復興の象徴として人々に感動を与えました。被災地を思う絆の力と、若者たちのアイデアと、クラウドファンディングによる支援が組み合わされ、日本の新たな力が輝いた瞬間でした。

 同じ被災地だからこそ、寄り添った対応ができる。保健所への職員の派遣、寄付金事務の代行、被災鉄道への支援、若い世代も含め、今度は熊本から石川に八年前の恩返しの動きが広まっています。

 伝統と若さ、民間企業と公的機関、地域社会とスタートアップ。今回の震災の復興に当たっても、こうした様々な組み合わせによって生まれる新たな力が、能登を取り戻す原動力となっています。

 新たな力は被災地にとどまるものではありません。最初から世界での活躍を見据える志を持つ若者。地域の課題を新たな技術で解決する試み。国民一人一人が持ち場でこつこつと地道に取り組んでいる現場。様々な場面で新たな力が生まれていることに気づかされます。この営みをつなぎ合わせ、デジタル、グリーン、官民連携、スタートアップなどの新しい要素と組み合わせていく。そうすれば、明日は今日より良くなる日本に向かう確かな力になっていくと確信をいたします。

 日本を変えていくこのチャンスを必ず掴み取る。

 与野党それぞれの立場はありますが、議員各位とともに、次の世代のために全力を尽くそうではありませんか。

 国民の皆さんの御理解と御協力を重ねてお願い申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 外務大臣上川陽子君。

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 所信を申し述べるに先立ち、令和六年能登半島地震の犠牲者の方々と御遺族に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、負傷された方々及び被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 海外からも多くのお見舞いと支援の申し出を頂いており、これらの国、地域及び国際機関等に謝意を表します。

 第二百十三回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。

 世界は今、歴史の転換点にあると、私は日々実感しています。

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は、今なお続くロシアのウクライナ侵略により、重大な挑戦にさらされています。また、グローバルサウスと呼ばれる途上国、新興国の存在感の高まりにより、国際社会の多様化が進む一方で、国境や価値観を超えて対応すべき課題は山積しています。

 我が国は、全ての人が平和と繁栄を享受できるよう、昨年、国際社会から高い評価を得たG7議長国としての成果を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化し、誰一人取り残さないというSDGsの理念に基づき、人間の尊厳が守られる安全、安心な世界を実現するための外交を推進していきます。

 引き続き、日本の国益をしっかりと守る、日本の存在感を高めていく、国民の皆様からの声に耳を傾け、国民に理解され、支持される外交を展開するという三点を基本方針として外交を展開していきます。

 私は、本年初頭、欧州、北米及びトルコを訪問し、各国や国際裁判所との間で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化や、ウクライナ支援、中東情勢、さらには女性・平和・安全保障、WPSや、北極、海洋等について協力を確認してきました。

 特にWPSについて、主要外交政策の一つとして力強く推進し、その重要性を発信しています。省内にタスクフォースを設置し、あらゆるツールを用いてWPSを推進していきます。

 中東情勢は引き続き予断を許しません。ハマス等によるテロ攻撃を改めて断固非難すると同時に、ガザ地区の人道状況を深刻に懸念しています。人道状況の改善、事態の早期沈静化、周辺地域への波及防止といった課題に対処すべく、私自身、対応に当たってきました。

 昨年十一月には、G7外相会合を開催する前に現地を訪問し、G7外相声明の発出に尽力しました。安保理がその責務を果たせるよう、ガザ地区の児童の保護に焦点を当てた安保理決議第二七一二号及びガザ地区に対する人道支援の拡大と監視に関する安保理決議第二七二〇号の採択に向けて精力的な働きかけを行いました。

 我が国は、引き続き、国際機関への支援等を通じ、ガザ地区の人道状況の改善に取り組みます。また、現在のような悲劇を繰り返さないため、日本が一貫して支持してきた二国家解決の実現に向け、今こそ、米国を始めとする関係国と連携しながら、積極的に貢献していきます。

 法の支配は、平和と繁栄の基礎をなすものです。先般、私は、国際司法裁判所、国際刑事裁判所、国際海洋法裁判所を訪問し、その果たす役割への支持を改めて示しました。対話と協力に基づき、国際社会における法の支配の強化のための外交を包括的に進めていきます。

 自由で開かれたインド太平洋、FOIPの実現は、日本外交の最優先課題の一つです。この理念の下、同盟国、同志国等と連携し、協力を広げていきます。

 ASEANの安定と繁栄は、我が国、そしてインド太平洋地域全体にとり極めて重要です。昨年十二月の特別首脳会議で打ち出した、新たな協力のビジョンと幅広い具体的協力を着実に実行し、関係をより一層強化していきます。

 日米豪印については、本年、外相会合の議長を務めるに当たり、FOIPの実現に向けた、地域の国々に真に裨益する実践的協力を一層推進していきます。

 日米韓の協力も、昨年のキャンプ・デービッドにおける首脳会合等の成果も踏まえ、一層進めていきます。

 さらに、欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり、欧州諸国、EU及びNATOとの連携も強化していきます。

 ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。私は、今月、ウクライナを訪問し、侵略の生々しい傷跡を自分自身の目で見て、力による一方的な現状変更を決して認めてはならないと改めて確信しました。また、ロシアによる核兵器による威嚇、ましてや使用は、あってはなりません。

 一日も早くロシアによる侵略を止め、ウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するため、国際社会と連携し、対露制裁とウクライナ支援を強力に推進していきます。

 ウクライナの復旧復興のため、官民一体の取組を進めます。昨年十一月の経済ミッション等の成果を踏まえ、来月の日・ウクライナ経済復興推進会議の開催に向けて調整を加速していきます。

 我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、外交を通じて、日本の領土、領海、領空及び国民の生命財産を守り抜きます。

 国家安全保障戦略では、日本の安全保障に関わる総合的な国力の要素として、まず外交力を挙げています。外交と防衛を連携させながら、強い経済や高い技術力、豊かな文化等、我が国が誇る様々なソフトパワーを有機的、効果的に結びつけ、総合的に外交・安全保障政策を進めていきます。

 また、政府安全保障能力強化支援、OSAの着実な実施や、サイバー安全保障、経済安全保障の推進に積極的に取り組んでいきます。

 偽情報等の拡散を含む情報操作等を通じた、認知領域における国際的な情報戦に対しては、様々な角度から情報の収集、分析を行い、適時適切な発信につなげるとともに、情報セキュリティー基盤の構築、強化にも取り組んでいきます。

 日米同盟は日本の外交、安全保障の基軸であり、インド太平洋地域の平和と繁栄の礎です。日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化、拡大抑止の信頼性、強靱性の維持強化のための努力、日本における米軍の態勢の一層の最適化に向けた取組を進めます。同時に、普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古移設を進めるなど、地元の負担軽減と在日米軍の安定的駐留に全力を尽くします。

 また、昨年十一月の経済版2プラス2第二回閣僚会合の議論等も踏まえ、戦略的観点から経済分野での日米協力を拡大、深化させていきます。

 強くしなやかな経済力で世界に存在感を示すため、官民連携を重視し、スタートアップ企業を含むあらゆるステークホルダーを巻き込みながら、経済外交の新しいフロンティアを開拓していきます。

 まずは、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持拡大に向けた取組が重要です。

 多角的貿易体制の一層の強化のためのWTOの改革、CPTPPのハイスタンダードの維持強化、RCEP協定の透明性のある履行の確保、IPEFを通じた地域の持続可能で包括的な経済成長の実現、AIや信頼性のある自由なデータ流通を含む新興課題の分野での国際的なルール作りなど、課題は山積しています。

 特に、OECD加盟六十周年を迎える本年、五月の閣僚理事会の議長国を務めるに当たり、リーダーシップを発揮していきます。

 さらに、経済安全保障も新しい時代の外交の重要な柱です。サプライチェーンの強靱化や経済的威圧への対応などに、同盟国、同志国との連携を一層強化しつつ、ODAも活用し、官民で緊密に連携しながら、取組を強化していきます。

 これからの日本経済は、グローバルサウスと呼ばれる途上国、新興国の成長を取り込んでいかなければなりません。地域ごとの課題や特性等も十分踏まえた上で、きめ細かで戦略的な経済外交を推進していきます。

 また、社会、環境の持続可能性と経済との連結、一体化を統合的に目指すことが求められる時代です。SDGsの推進に企業が積極的に関与し、日本が経済成長を実現することで、利益が社会に還元される好循環を実現するための取組を進めていきます。

 このため、開発協力大綱の下、オファー型協力や民間資金動員型ODA等を実施し、途上国の質の高い成長を実現し、同時に我が国の成長にもつなげていきます。

 また、日本企業の海外展開、日本産食品の輸出拡大、対日直接投資の推進を積極的に後押しするに当たり、在外公館が、投資環境改善を含め、日本企業を強力にバックアップするとともに、対日投資を強くアピールしていきます。さらに、企業活動の可能性を広げていくため、第三国における日本企業と外国企業の連携についても協力を推進していきます。

 二〇二五年大阪・関西万博、二〇二七年国際園芸博覧会の成功に向け、力強く取り組みます。

 ALPS処理水の海洋放出の安全性については、引き続きIAEAと緊密に連携し、科学的根拠に基づき、高い透明性をもって国内外に丁寧に説明していきます。

 日本及び地域の平和と繁栄を維持すべく、近隣国等との難しい問題に正面から対応しつつ、安定的な関係を築いていきます。

 昨年十一月の日中首脳会談に続き、私も王毅外交部長との間で日中外相会談を行いました。

 日本と中国の間には、様々な可能性とともに、尖閣諸島を含む東シナ海、南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、中露の連携を含む我が国周辺での一連の軍事活動を含め、数多くの課題や懸案が存在しています。また、台湾海峡の平和と安定も重要です。さらに、中国の人権状況や香港情勢についても深刻に懸念しています。

 同時に、日中両国は、地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を有しています。戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係を日中双方の努力で構築していくことが重要です。

 その中で、中国による日本産食品に対する輸入規制の即時撤廃を引き続き求めていきます。

 重要な隣国である韓国とは、多様な分野で連携や協力の幅を広げ、パートナーとして力を合わせて新しい時代を切り拓いていくため、様々なレベルでの緊密な意思疎通を重ねていきます。

 インド太平洋の厳しい安全保障環境を踏まえれば、日韓の緊密な協力が今ほど必要とされる時はありません。日韓関係の改善が軌道に乗る中、グローバルな課題についても連携を一層強化していきます。

 竹島については、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も日本固有の領土であるとの基本的な立場に基づき、毅然と対応していきます。

 日中韓協力は、大局的な視点から、地域及び世界の平和と繁栄にとって重要です。昨年十一月の外相会議の議論を踏まえ、早期で適切な時期のサミットの開催に向け、議長国の取組を後押ししていきます。

 ロシアに対しては、日本の国益を守る形で引き続きしっかりと対応していきます。日露関係は、ロシアによるウクライナ侵略により引き続き厳しい状況にありますが、政府として、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持していきます。

 その上で、漁業などの経済活動や海洋における安全に係る問題のように、日露が隣国として対処する必要のある事項については、我が国の外交全体において何が我が国の国益に資するかという観点から、適切に対応していきます。

 また、北方四島交流等事業の再開は、日露関係における最優先事項の一つです。今は特に北方墓参に重点を置いて、事業の再開を引き続き強く求めていきます。

 北朝鮮は、核・ミサイル活動を一層活発化する意向を明らかにしています。安保理決議違反でもある弾道ミサイルの発射等は断じて許されません。また、露朝間で強化されている軍事協力も深刻に懸念しています。今後とも、日米、日米韓を始めとする国際社会で緊密に連携して対応していきます。

 北朝鮮との間では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。

 とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせに出来ない人道問題です。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組みます。

 気候変動、環境問題、食料、エネルギー問題、国際保健課題、人口問題、難民問題、海洋の持続可能な利用等、地球規模課題は山積しています。

 これらの課題に取り組むためにも、国連が本来の役割を果たすことがますます重要になっています。安保理改革を含め、国連の機能を強化すべく取り組んでいきます。また、我が国が安保理議長を務める三月には、重要課題について活発な議論を行いたいと考えています。

 九月には国連未来サミットが予定されており、人間の尊厳という原点に立ち返り、人間の安全保障の理念に基づく人間中心の国際協力を主導していきます。また、二〇三〇年までのSDGsの包括的な達成に向けた国際的取組に積極的に貢献していきます。国際機関で邦人が職員として更に活躍できるための取組も推進します。

 本年、国際協力七十周年という節目の年を迎える中、最も重要な外交ツールの一つであるODAの意義や展望について積極的に発信し、国民の皆様により理解を深めていただく機会としたいと思います。

 同時に、核兵器のない世界の実現、日本らしい人権外交、平和構築、テロ・国際組織犯罪対策等を積極的に推進します。

 特に核軍縮・不拡散については、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続、強化していきます。

 これらの取組に加え、日本外交の新たな可能性を切り拓いていきたいと考えます。

 国家間の協力が難しい時代だからこそ、国、地域、ジェンダーなどの垣根を越えて、中高生を含むユースなど、様々なステークホルダーを巻き込んだ取組を進めます。また、駐日大使の皆様との議論を外交に連携させていく国内での活動も強化していきます。これらのようなアウトリーチ型外交の取組も、引き続き重視します。

 魅力ある日本文化や科学技術など、ソフトパワーも積極的に活用していきます。

 日・ASEAN特別首脳会議で打ち出した次世代共創パートナーシップを始め、対日理解の促進と戦略的な対外発信を更に推進していきます。佐渡島の金山の世界遺産登録に向け、関係国と丁寧な議論を行いつつ、しっかりと役割を果たしていきます。

 世界各地の日系社会との連携も強化します。

 外交の要諦は人であり、これらの取組で着実な成果を上げるため、外交実施体制の強化が不可欠です。

 在外職員等の勤務環境改善や生活基盤強化、人的体制の強化、財政基盤の整備、DXや働き方改革の推進等、外交・領事実施体制の抜本的強化に取り組みます。

 緊急事態に際し、邦人保護を始め、迅速かつ機動力のある危機対応が可能となるよう、在外公館の強靱化を推進し、人的体制を含む即応体制を充実させます。

 本年は世界各地で重要な選挙が控え、国際情勢は大きな局面を迎えます。このような中、我が国は、第十回太平洋・島サミット、TICAD閣僚会合など重要な国際会議を開催する予定です。また、G20及びAPEC議長国としての中南米諸国との連携も強化していきます。

 私は、日本が戦後八十年近くにわたって平和国家として築いてきた国際社会からの信頼や期待が非常に高いと実感をしています。

 この信頼や期待に応えるべく、本年も、国民の皆様の声に耳を傾け、理解と支持を得ながら、挑戦を続けていきます。

 議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 令和六年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

 まず、元日に発生しました令和六年能登半島地震により亡くなられた方々と御遺族に対し深く哀悼の意を表しますとともに、被災された全ての方々に心からお見舞い申し上げます。

 政府といたしましては、今日まで、被災者の捜索救助や生活支援などに全力を挙げて取り組んでまいりました。今後とも、政府の総力を結集し、被災者の生活と生業支援のためのパッケージの着実な実行をはじめ、被災者への支援を含めた被災地域の復旧復興に万全を期してまいります。

 日本経済につきましては、昨年三十年ぶりとなった高水準の賃上げや企業の意欲的な投資計画の策定など、前向きな動きが見られております。

 こうした中、足元の物価高に対応しつつ、持続的で構造的な賃上げや民需主導の持続的な成長を実現していくことが重要です。そのため、先に成立した令和五年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、同補正予算と一体的に編成した令和六年度予算、そして令和六年度税制改正を着実に実行に移していく必要があります。

 日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症や物価高騰等への対応に係る累次の補正予算の編成等により、より一層厳しさを増しております。財政は国の信頼の礎であり、経済あっての財政という方針の下、財政健全化に取り組むことで中長期的な財政の持続可能性への信認を確保していかなければなりません。引き続き、経済財政運営と改革の基本方針二〇二三等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進し、歳出構造の更なる平時化を進めてまいります。

 続いて、令和六年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 令和六年度予算は、歴史的な転換点の中、時代の変化に応じた先送りできない課題に挑戦し、変化の流れを掴み取るための予算としております。

 具体的には、医療、福祉分野の現場で働く方々の処遇改善をはじめとした物価に負けない賃上げの実現に向けた取組の推進、こども未来戦略に基づく加速化プランの迅速な実施、我が国周辺の厳しい安全保障環境を踏まえた防衛力の着実な強化など、我が国が直面する構造的な課題に的確に対応するものとしております。

 また、物価と賃金の好循環に向け、賃上げ促進の環境整備を含め、物価高対策に必要となる経費に予期せぬ不足が生じた際に機動的に対応するため、万全の備えとして、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費を一兆円措置しております。

 加えて、令和六年能登半島地震への対応として、令和六年度においても復旧復興の段階などに応じた切れ目のない機動的な対応を確保するため、一般予備費について、前年度当初予算に対し五千億円増額し、一兆円措置しております。

 同時に、経済財政運営と改革の基本方針二〇二三等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとともに、社会保障関係費以外について、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しております。

 一般歳出につきましては約六十七兆七千八百億円であり、これに地方交付税交付金等約十七兆七千九百億円及び国債費約二十七兆百億円を加えた一般会計総額は、約百十二兆五千七百億円となっており、前年度当初予算に対し約一兆八千百億円の減額となっております。

 一方、歳入につきましては、租税等の収入は約六十九兆六千百億円、その他収入は約七兆五千百億円を見込んでおります。また、公債金は約三十五兆四千五百億円であり、前年度当初予算に対し約一千七百億円の減額となっております。

 次に、主要な経費について申し述べます。

 社会保障関係費につきましては、児童手当の抜本的拡充など、こども未来戦略に基づく政策をスピード感を持って実行するために必要な経費を確保するとともに、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬改定において、現場で働く方々の処遇改善を行うこととしております。他方、市場価格を反映した薬価改定など、様々な改革努力を積み重ねた結果、先に申し上げたとおり、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめております。

 文教及び科学振興費につきましては、小学校高学年における教科担任制の推進等のため必要な措置を行うほか、科学技術立国の観点から、AI、量子等の重要分野の研究開発を戦略的に推進するとともに、基礎研究、若手研究者向け支援を充実することとしております。

 地方財政につきましては、臨時財政対策債の発行額の縮減を行うなど、地方財政の健全化を図りつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしております。

 防衛関係費につきましては、厳しい安全保障環境の中で、防衛力整備計画に基づき、防衛力の強化を着実に進めるとともに、引き続き、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしております。

 公共事業関係費につきましては、ハード面の整備とソフト面の対策との一体的な取組により、防災・減災、国土強靱化を推進するとともに、持続的な生産性の向上に向けたインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。

 経済協力費につきましては、厳しい国際情勢の中で、自由で開かれたインド太平洋をはじめとする取組を戦略的に実現しつつ、ODAは現下の国際情勢に効果的に対応できる予算を確保することとしております。

 中小企業対策費につきましては、価格転嫁対策、事業再生、事業承継支援など、中小企業等の経営課題に対応することとしております。

 エネルギー対策費につきましては、エネルギー対策特別会計において、GX経済移行債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援していくこととしております。

 農林水産関係予算につきましては、食料安全保障の強化に向け、水田の畑地化支援による畑作物の生産等を推進するほか、農林水産物の輸出先国の多角化のための販路開拓等の推進、林業、水産業の持続的成長に向けた生産基盤の強化、資源管理等に取り組むこととしております。

 東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間において、復興のステージの進行に応じたニーズにきめ細かに対応するとともに、創造的復興を成し遂げるため、令和六年度東日本大震災復興特別会計の総額を約六千三百億円としております。

 令和六年度財政投融資計画につきましては、成長力強化に向けた重点分野への投資や、国際環境の変化に対応するための海外投融資等に取り組むための総額約十三兆三千四百億円としております。

 国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約百八十二兆円と依然として極めて高い水準にある中で、市場動向も踏まえつつ、引き続き、市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。

 令和六年度税制改正につきましては、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を上回る持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等を行うこととしております。また、資本蓄積の推進や生産性の向上により供給力を強化するため、戦略分野国内生産促進税制やイノベーションボックス税制を創設し、スタートアップエコシステムの抜本的強化のための措置を講ずるほか、グローバル化を踏まえたプラットフォーム課税の導入等を行うこととしております。

 以上、財政政策の基本的な考え方と、令和六年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。

 歴史的転機を迎える今、将来世代の視点に立って、この時代を俯瞰し、日本の進路を見定める必要があります。未来は現在の連続であり、我々の現在の選択が未来を切り拓いていきます。先送りできない課題に挑戦していくとともに、日本経済を立て直し、財政健全化に取り組み、希望ある社会を次の世代に引き継いでいかなければなりません。

 そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 国務大臣新藤義孝君。

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 経済財政政策担当大臣として、我が国経済の現状と課題、政策運営の基本的考え方について所信を申し上げます。

 まず、今回の能登半島地震で亡くなられた方々とその御遺族に対し深く哀悼の意を表するとともに、被災者の方々に対し心からお見舞いを申し上げます。

 地震による被害やその経済への影響に十分留意して、今後の経済財政運営に万全を期してまいります。

 さて、我が国の経済には、現在、三十年ぶりの高い水準となる賃上げ、設備投資、株価など、前向きな動きが見られます。今は、デフレから脱却し、経済を熱量あふれる新たなステージへと移行させる、千載一遇のチャンスを迎えていると認識しています。

 景気は、このところ一部に足踏みも見られますが、緩やかに回復をしています。企業部門は好調です。業況判断は、非製造業では、バブル期以降最高水準に達し、製造業では、これまでマイナスだった中小企業でもプラスに転じました。設備投資計画も、前年度比一二・六%増となっているわけであります。

 他方、実際の投資は、計画ほどには増加しておらず、また、賃金上昇は物価上昇に追い付いていないことに鑑みると、賃金を含めた所得の伸びが物価上昇を上回る状況を作ることによって、デフレからの脱却に向け、個人消費の回復を始め、経済の再生を着実に進めていく必要があると考えております。

 官民の連携によって、当面の所得を下支えするとともに、企業の稼ぐ力を高め、その収益を持続的、構造的な賃上げにつなげる。そして、消費や投資が増加し、更なる経済成長が生まれるという、所得増と成長の好循環の実現を目指してまいります。

 このため、物価高を乗り越えるとともに、供給力を強化するため、昨年十一月には、デフレ完全脱却のための総合経済対策をとりまとめました。この経済対策には、六項目の税制改正に加え、二〇一三年以降の経済対策では最多となる三十六項目の制度・規制改革を盛り込みました。こうした施策を含め、経済対策を速やかに実行するとともに、令和六年度予算につながる令和五年度補正予算を着実に執行し、当面の経済財政運営に万全を期してまいります。

 住民税非課税世帯への一世帯当たり七万円の追加支援については、ほとんどの市区町村で給付に向けた手続きに入ったところです。これに続く、より幅広い低所得者世帯への給付や子育て世帯への加算についても、迅速に取り組みます。本年の春季労使交渉では昨年を上回る賃上げを期待しており、さらに、ボーナス支給月である六月以降には定額減税の支援を講じます。これらによって、家計の所得の伸びを高めてまいります。

 賃上げの動きを中堅・中小企業や地方に広げ、それを持続的なものとすることによって、消費の拡大につなげます。このため、賃上げ税制を拡充するとともに、賃上げの鍵となる価格転嫁対策を強化します。原材料費に加え、労務費の価格転嫁を円滑に進めるため、昨年十一月に策定した労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知徹底を図るとともに、大企業と中小企業の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言の取組を拡大します。

 これらの取組の効果も勘案し、来年度の我が国経済は、実質で一・三%程度、名目で三・〇%程度の成長を見込みます。

 次に、我が国経済の供給力の強化についてであります。

 足元でゼロ%台の低い水準にとどまっている潜在成長率を引き上げるためには、資本、労働及び全要素生産性の三つの分野において、それぞれ政策対応を強化することが極めて重要であります。

 我が国は、資本の使用年数が先進国の中でも長く、設備の老朽化が進んでいます。厳しい国際競争を勝ち抜くために、設備投資を強化することは必須条件となっています。

 このため、半導体等の戦略分野において、生産量に応じた減税制度を新たに導入するとともに、中堅・中小企業の工場新設に対する補助制度を創設します。また、中小企業の省力化投資を後押しするため、簡易で即効性のあるカタログ形式での支援を行います。こうした資金面での支援に加え、制度・規制改革を含めた国内投資促進パッケージを着実に実行してまいります。

 完全失業率は低い水準にあり、有効求人倍率が一を上回って推移する中、企業の人手不足感は高まっています。このため、従前以上に働きたいという多くの意欲ある方々が更に働ける環境整備を進めてまいります。

 ジョブ型人事の導入等によって、定年制度を廃止した企業が出てきている中で、本年春を目途として、ジョブ型人事の導入の参考となるわかりやすい指針をとりまとめます。また、経験のある高齢者を含めた全世代のリスキリングなど、就業支援に官民連携で取り組みます。

 いわゆる年収の壁に直面し、やむを得ず就業調整をしておられる方々がおられます。昨年九月にとりまとめた年収の壁・支援強化パッケージを実行することによって、時間の制約を受けずに希望どおり働くことができる環境を整備し、労働力の確保につなげてまいります。

 付加価値の創造にとって、最も重要な要素はイノベーションです。宇宙、海洋等のフロンティアの開拓を図るとともに、自動運転トラックやドローンを活用した次世代物流等の実現に向け、デジタル等の新技術の社会実装を進めます。また、国内での研究開発による特許権など、知的財産から生ずる所得に対する優遇税制を創設し、無形資産投資を促進します。こうした取組を通じ、イノベーションの力によって、我が国経済の生産性を大きく向上させてまいります。

 イノベーションをけん引するスタートアップの支援を強化するため、ストックオプション税制を拡充します。また、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想を具体化するとともに、それと全国各地の産学官による支援を有機的に連携させ、世界市場に通用するスタートアップを生み出すエコシステムの形成を目指してまいります。

 海外の経済活力を取り込むことは、生産性を高める上でも必要不可欠です。農林水産品の輸出や中小企業の海外展開の促進、対日直接投資の拡大を図るとともに、諸外国との経済連携を強化してまいります。

 特にCPTPPは、高い水準のルールを有し、先進的で野心的な貿易システムの成功例であり、また、単なる経済的な利益を超え、世界の平和と繁栄にも貢献するものです。今後、新規加入要請への対応や、協定の一般的な見直しを通じた貿易や投資ルールの更なる発展、市場歪曲的措置や経済的威圧への対処等に関する議論を深めます。そして、この協定を引き続きゴールドスタンダードとして維持発展させるよう、我が国としてイニシアティブを発揮してまいります。

 続いて、我が国経済社会の持続可能性の確保についてです。

 我が国が克服すべき最大の危機は、少子高齢化と人口減少です。若年人口が急激に減少する二〇三〇年代に入るまでに、少子化のトレンドを反転させる必要があると考えています。

 こどもは国の宝であり、昨年十二月にとりまとめたこども未来戦略に基づき、三・六兆円程度の前例のない規模で、少子化対策を強化してまいります。これによって、GDPに対するこども一人当たり家族関係支出は一一%から一六%へと上昇し、OECDトップのスウェーデンに達する水準となります。

 また、同じく十二月にとりまとめた、いわゆる社会保障の改革工程に基づき、能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障を構築することによって、将来世代を含めた全世代の安心を保障し、社会保障制度の持続可能性を高めてまいります。その中では、これまでに解決していない課題について、その原因を分析し、一つ一つの改革を着実に実行してまいります。

 経済財政運営においては、経済の再生が最優先課題です。経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組むとの考え方の下、財政への信認を確保してまいります。

 新経済・財政再生計画の改革工程表を実行する中で、DXやデータ駆動型社会の構築を進め、EBPMやPDCAの取組を通じて、ワイズスペンディングを徹底してまいります。

 その上で、国難とも言える少子高齢化や人口減少を克服し、豊かさと幸せを実感できる経済社会の実現に向けて、昨年秋から、想定される経済社会の変化とそれを力にするための取組など、中長期の重点政策課題の検討を行っているところです。次の骨太方針に、その成果を反映してまいります。

 国民生活を支えるのは経済です。我が国経済は、所得の増加と成長の好循環が実現する大きなチャンスを迎えており、今後十年の経済の行方は、このチャンスを活かせるかどうかに懸かっていると考えます。

 私としては、これを必ず実現しなければならないという強い決意の下で、各省庁の施策に横串を刺し、あらゆる政策手段を総動員することによって、我が国経済が持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済へと移行できるよう、全身全霊で取り組んでまいります。

 国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

井野俊郎君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、明三十一日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    小泉 龍司君

       外務大臣    上川 陽子君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  坂本 哲志君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    新藤 義孝君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    土屋 品子君

       国務大臣    林  芳正君

       国務大臣    松村 祥史君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 村井 英樹君


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