衆議院

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第3号 令和6年1月31日(水曜日)

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令和六年一月三十一日(水曜日)

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 議事日程 第三号

  令和六年一月三十一日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(額賀福志郎君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 立憲民主党の泉健太です。

 会派を代表し、質問いたします。(拍手)

 この度の石川県能登半島沖を震源とした大震災で亡くなられた方に哀悼の誠をささげ、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 ただ、本日、新たな事実が発覚しました。岸田内閣の総務大臣政務官、そして国土交通大臣政務官の二人が裏金をもらっていたことが新たに発覚いたしました。二人はいずれも、裏金のことについて、これまで言及しておりません。まさに不誠実ではありませんでしょうか。岸田内閣は、政務官の職にとどまらせることはできないでしょう。総務政務官は、能登の災害対策本部の担当でもあります。総理がここまで政務三役をチェックせず、危機管理ができていなかったのは深刻な問題です。総理の責任は重大であります。

 今回の地震では、多くの地域で住宅が倒壊し、道路、水道、電力、通信などが寸断されました。

 まず、余震や寒さが続く中にあっても、全国各地から被災地に駆けつけ、懸命に人命救助に当たってくださった自衛隊、消防、警察、海保、また道路啓開に携わった建設、土木事業者の皆さん、そして、上下水道関係者、電力事業に携わる皆様、通信事業者、物資提供事業者、物流事業者、行政関係者、医療、福祉関係者、災害ボランティアの皆様など、全ての皆様に深く感謝を申し上げます。

 発災後、多くの方々が、大切な人を奪われ、住む家を奪われ、仕事を奪われ、地域の日常と見慣れた風景を奪われました。被災地には、総理の施政方針演説にあった、きずなだけでは語り尽くせない悲しみ、苦しみ、不安が続いているんじゃないでしょうか。

 みんな、元に戻りたい、元に戻したい、その一心で、我慢しながら生活をしています。

 私も被災地で直接多くの声を聞いてまいりましたが、珠洲市で百年以上続いてきた老舗の和菓子店の御夫婦は、店舗が倒壊し、半島中部の息子の自宅に避難しておりました。その息子さんもまた、自身の飲食店が被災をされていました。珠洲の和菓子屋はもう再開できないかもとこぼしていた言葉を忘れられません。話を伺った酪農家、飲食店、旅館、漁師の方々、そして同級生と離れ離れになった子供たち。

 総理、総理は昨日の演説で、異例の措置でもためらわず、予算の制約によりちゅうちょしない、そうおっしゃられました。その言葉を、約束を、被災地も私もこの耳で聞きました。是非やりましょう。

 立憲民主党は、復興支援に協力をし、政策を提案してまいります。その意味で、震災対策の党首会談は、一月五日に一度開かれたのみであります。再度の開催を求めます。

 災害関連で具体的に質問をいたします。

 まず、被災者生活再建支援金の引上げについてであります。

 現在の最高額は三百万円。しかし、この最高額は二十年間変更されておりません。この法律は、元々超党派で成立した議員立法であります。しかし、二十年前は内閣提出で最高額が引き上げられております。住宅、家財道具、そして車を失い、長期の避難場所での生活費を考えれば、今の時代、小さな平屋の住宅でも建設に一千万以上かかります。最高三百万では生活再建は不可能であります。

 一月二十六日、国会初日ですが、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党は、この最高額を六百万に引き上げ、対象世帯を半壊などに広げる法案を提出いたしました。総理、政府として、被災者生活再建支援金の最高額三百万、これを引き上げませんか。明確にお答えいただきたいと思います。

 能登半島地震関連の予算執行は迅速であるべきです。しかし、同時に、透明性の確保が不可欠です。これまでの震災関連の予備費支出は、遅滞なく国会に報告いただけますね。また、今回の能登半島地震関連予算は、今後、補正予算で執行されますね。それはいつの時期なのかもお答えください。

 そして、近年、問題が顕在化しているのが災害救助法です。災害救助法は、制定が昭和二十二年、大変古く、何と、法律に福祉の視点が入っておりません。

 被災者の高齢化、孤立化など、個別ケアの必要性が高まっております。社会的弱者の避難、避難生活における合理的配慮、在宅被災者支援、災害ボランティアとの連携、支援者への公費負担の拡充など、改善は急務です。総理、政府に災害救助法改正の検討会を立ち上げませんか。いかがでしょうか。

 立憲民主党は、今後も、能登半島を始めとした被災地の復興に全力を尽くし、全国各地の防災対策を強化してまいります。

 さて、国民は、長きにわたり、賃金が上がらず、物価高にあえぎ、年金暮らしも厳しい状況です。教育費負担、そして医療費負担も重く、岸田政権は、さらに、防衛増税を決め、事業者に多大な負担となるインボイス制度を導入しました。

 そんな国民生活を横目に、自民党議員は、何年にもわたり、派閥を利用し、自らの事務所で裏金をつくっていたのです。そして、数千万円、数百万円の記載すべき資金を、記載しなくてよいと思った、認識がなかった、こんな言い訳をしている議員がおります。許せるわけがありません。

 ここからは少々長くなります。

 そもそも、自民党の腐敗は顕著でありました。広島で多くの自治体議員を買収した河井事件。IR関連事業者と癒着した秋元事件。有権者にカニやメロンを配った菅原事件。養鶏業から賄賂を受け取った吉川農水大臣事件。収入不記載で辞職をした薗浦事件。そして、昨年も、風力発電業者と癒着をした秋本事件。そして、現在も進行中、選挙違反の柿沢事件。この秋本、柿沢両氏は逮捕をされております。十分過ぎるほど異常な状況ではないでしょうか。

 裏金問題では、年明けに、約四千八百万円の裏金をつくって、パソコンまで破壊した愛知県の池田議員が逮捕。四千万円以上の裏金をつくった長崎県の谷川前議員は略式起訴。辞めておりますが、そのお金はどこに行ったのでしょうか。岐阜県の大野参議院議員は、約五千万円の裏金が判明し、在宅起訴。安倍派、二階派、岸田派などの会計責任者も起訴。

 さらに、起訴はされていなくとも、数千万円の裏金をつくってきた安倍派五人衆を始め、現時点で四十人近くの裏金議員が発覚をしています。まさに異次元の裏金、異次元の不祥事ではないでしょうか。

 ただ、政治家は裏金が三千万円以下なら検察から起訴されない、こんなことは絶対に納得できません。裏金が個人所得として懐に入っていたならば、これは脱税の疑いさえあります。

 総理、一般国民は、生活苦でおにぎり一つを万引きしても逮捕されます。裏金議員に道義的責任、政治的責任があるというなら、自民党総裁として、全ての裏金議員に議員辞職を求めてはどうですか。離党勧告や除名処分は行わないのでしょうか。お答えください。

 総理は、昨年十二月に、松野官房長官、西村経産大臣、鈴木総務大臣、宮下農水大臣を更迭いたしました。改めて、この理由は裏金ですか。総理の言葉で更迭理由を明確に御説明ください。

 さて、自民党政治刷新本部の中間取りまとめは、派閥解消ではなく派閥存続、政治家への連座制も盛り込まず、全く評価に値しない内容でありました。今になっても、自民党には自らを正す自浄能力がない。そのことは明らかであります。

 そこで、総理に問います。まずは実態解明です。

 総理、自民党の中間取りまとめには明確な説明責任とありますが、昨日野党四党が求めた、自民党の全国会議員への収支報告の不記載について自己申告に基づく調査を行い、作成した不記載議員リストを二月五日の朝までに提出すること、これについての回答を願います。

 次に、全派閥を対象とする不記載の実態に関する調査結果の提出、これをいつ行うか、お答えください。

 そして、二階議員、塩谷議員、萩生田議員、松野議員、高木議員、西村議員、下村議員の政治倫理審査会への出席を求めます。対応をお聞かせください。

 そして、不記載議員については、過去五年より以前の裏金、その有無と額の調査、そして公表も行っていただけますか。お答えください。

 また、派閥は、今回、中間取りまとめで、パーティー禁止、夏季、冬季の資金手当ての廃止、餅代、氷代というものらしいですが、こう書いてありますが、抜け道があってはなりません。

 まず一つ、派閥の資金集め、所属議員への資金配分は、全派閥でこれからは禁止しますね。そして、派閥幹部がパーティーを開催し、その収益を各議員に分配する、これも禁止しますね。お答えください。

 そして、これまで発覚した裏金はどう処理しますか。使途は派閥や議員任せでしょうか。ここは、まさに自民党そのものの器が問われます。少しでも反省の気持ちがあるならば、議員個人も派閥も、裏金資金を被災地に寄附してはどうでしょうか。それとも、何食わぬ顔で、これからも政治活動や飲食にその金を使うのでしょうか。お答えください。

 どんな裏金防止策をつくるにしても、まずは、このような実態を十分に解明することが不可欠であります。これは本来、自民党自身が言われずともやるべきことではないでしょうか。実態解明がおろそかでは、再発を防ぐことはできません。

 改めて、各党の皆様、是非、自民党に一人一人の議員の実態解明を求め、その検証の上で、各党で真摯に協議をし、真っ当な政治改革案を作ろうではありませんか。

 立憲民主党は、党政治改革実行本部で議論をし、他党の皆様の提案とも通じる、以下の内容を決定いたしました。

 一つ、政治家本人の処罰強化として、収支報告書の代表者を国会議員本人にします。当然のことです。連座制を採用いたします。政治資金隠匿罪を新設します。

 二つ目、政治資金の透明性の確保として、全ての収支報告書のデジタル化、オンライン提出と公開。そして、収支報告書と会計帳簿等の保存期間を三年から七年へ延長。そして、政党の政策活動費の廃止、旧文通費の使途公開と返還制度の実現。

 三つ目には、政治資金パーティー及び企業・団体献金の全面禁止、そして個人献金の促進。

 これらを提案いたします。

 金が力を握る政治から、政策で競う政治に変えようじゃありませんか。国会から裏金を一掃しようじゃありませんか。立憲民主党の提案に御理解をいただき、この国会を裏金一掃、政治改革国会にしようではありませんか。

 この国会は賃上げ国会でもあります。全国民にとって重要な賃上げについて伺います。

 実質賃金は二十か月連続で前年比マイナス、現在も物価上昇に賃上げは追いついていません。特に労務費の転嫁率は、依然、中央値で三〇%と低水準です。連合の芳野友子会長も指摘をしている、中小・小規模事業者の賃上げに力を注ぐべきであります。

 そこで、総理、まずはっきりさせたいのが、この賃上げの目標です。

 総理は当初、物価上昇を上回る賃上げ、上回る賃上げと言っていたのですが、この年末年始くらいから、物価上昇を上回る可処分所得の伸びとか、物価に負けない所得などと発言を変えています。目指すものは何なのでしょう。今年六月の大型所得減税が行われれば、可処分所得が一時的にでも物価上昇を上回るのは当たり前のことです。その目標なら誰だって達成できます。

 総理、賃上げで物価上昇を上回るでよいのか、お答えください。

 この賃上げが非常に重要な局面で、総理は、物価・賃上げ促進予備費を一兆円、今回予算案に盛り込んでおります。そこで、総理、この一兆はどう賃上げに使うのでしょう。何か不測の事態で使うのか、それともこの春闘のタイミングで賃上げ予備費を使うのか、全く分かりません。是非お答えください。

 また、今回の介護報酬改定では、介護従事者の賃金は、令和六年度二・五%、令和七年度二%アップとなる予定です。総理は昨日の演説で、医療や福祉職員の物価に負けない賃上げと言いましたが、これは上回るという意味でしょうか。これもお答えください。

 そして、昨年、立憲民主党が求めた下請Gメンの増員、これは三十人という微増でありました。今後何名まで増やすかをお答えください。

 次に、子供予算、教育無償化です。

 立憲民主党は、皆様の生活を豊かにするべく、政権を担う準備をしています。党には次の内閣があり、各省庁と十分に政策協議、政策的やり取りを実施しています。立憲民主党には政権を担当する力が備わっております。

 一方、岸田政権の子育て支援策、教育の無償化には踏み込みの弱さを感じざるを得ません。全く異次元とは感じません。希望も感じません。

 例えば、児童手当も、そして大学授業料無償化も、優遇は子供三人以上が対象なんです。しかも、この第三子の数え方ですが、三番目の子供がそのまま第三子になるわけではありません。我が子が一人でも扶養を外れると、ほかの二子は対象から外れてしまいますという極めてせこい数え方なのであります。

 現在、日本で、子供がいる家庭全体のうち、三人以上の子を持つ世帯は約一二・七%です。実際に第三子以降扱いされる子供たちはどれぐらいいるんでしょうか。お答えください。

 総理、このような状況で異次元の子育て支援と言えるんでしょうか。児童手当は第三子以降に限らず第一子から増額する、大学授業料無償化は子供の数に限らず実施する、これくらいやってこそ、異次元じゃないでしょうか。

 立憲民主党は、児童手当について、第一子から、高校卒業年次まで月一万五千円を支給すべきと提案いたします。今の時代は、夫婦が第三子にまでたどり着くことがまれなんです。第一子からの児童手当を上げる、これを求めていきたいと思います。

 もう一つの問題は、政府・与党が、児童手当の額を十分に増額もしていないのに、十六歳から十八歳までの扶養控除を縮小しようとしていることです。総理、控除を減らすのですか。お答えいただきたいと思います。

 大学授業料の無償制度、立憲民主党の案は、全ての子供の、国公立大学の授業料を無償化し、私立大学生や専門学校生にも国公立大学と同額程度の負担軽減を行うです。これでこそ、欧米に負けない教育投資。これこそが日本の力になるんじゃないでしょうか。

 公立小中学校の給食費無償化、これも立憲民主党が掲げている案です。政府は、こども未来戦略方針で、実態調査をするとしか書いておりません。総理、最速で何年後に給食費無償化を実現できると考えているんでしょうか。お答えください。

 立憲民主党の子育て支援策は、当事者目線でもあります。必要なのは、介護のケアマネのように、個々の妊婦や家庭の状況に応じ、使える制度を組み立てて教えてくれる子育て版ケアマネジャーではないでしょうか。総理、どのような環境の親子も支援にたどり着ける、この子育てケアマネを実現しませんか。

 立憲民主党は、若者の仕事と暮らしを強力に応援いたします。それなくして、結婚や出産、住宅購入など大きなライフイベントには踏み切れません。

 政府の対策は、若者の低賃金や不安定雇用などへの対応策が決定的に欠けています。三十代前半男性では、正規雇用と非正規雇用で配偶者の有無に大きな開きがあります。五十歳時点の未婚率は、男性の非正規で約六割に達します。収入の少なさや不安定さが結婚や子供の諦めにつながっていることは明白です。

 総理、初任給の引上げ、そして非正規雇用の正規化に数値目標を設定し、取り組みませんか。見解を伺います。

 子供財源三・六兆円の一部として新たに国民の皆様から徴収をする子ども・子育て支援金制度について伺います。

 現行の医療保険料に併せて徴収をするとなれば、現役世代の手取りは減ります。総理は実質的な追加負担は生じないと答弁をしましたが、それは、支援金で新たに国民が払う額の分、医療保険が減額となって、差引き負担額はゼロという意味でしょうか。当面の数年ではなく、それは恒久的に差引きゼロとなるのでしょうか。それとも、負担額は増えるが、その分、一人当たりのサービス水準が上がるという程度の意味なのでしょうか。もしそうだとすれば、実質負担増であります。お答えいただきたいと思います。

 立憲民主党は、子供財源は、社会保険料の引上げではなくして、使途が不明瞭な膨大な基金、委託業者による中抜き、腐敗の温床となる天下りなどの改革で捻出するべきだと考えます。加えて、税の所得再配分機能が先進七か国で最も低い現状を改善し、財源を調達いたします。

 その具体策である所得税の累進性の強化、一億円の壁を解消する金融所得課税の改革について、総理の見解を求めます。

 マイナ保険証についても一言言わねばなりません。

 総理、昨年十二月の利用率は四・二九%です。多くの国民がマイナ保険証に利便性を感じておりません。むしろ不安を感じています。なぜ現行の保険証を急いで廃止するんでしょうか。不安払拭なくしてデジタル化なしであります。今年十二月の保険証廃止の見直しを求めます。お答えください。

 続いて、ジェンダー問題です。

 法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を含む民法改正を答申してから、もう四半世紀が過ぎています。総理、選択的夫婦別姓制度を導入しませんか。見解を求めます。

 また、同性婚については、既に三百八十七の自治体でパートナーシップ制度が導入されています。総理は、家族観や価値観、そして社会が変わってしまうと言いましたが、実際には全国各地で多くの同性カップルが日常生活を送っているのであって、むしろ制度を改正しないと、現在の家族観や価値観、社会の変化に対応できないのです。同性婚を法的に認めようではありませんか。お答えください。

 中東情勢です。

 ハマスとイスラエルの衝突は、周辺地域をも不安定化させています。日本はパレスチナ、イスラエル双方と関係を築いており、人道や人権など普遍的な価値を軸に日本外交を展開すべきです。双方の国際法違反の疑いが強い行為には厳正に指摘をするべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 政府は、昨年末、防衛装備移転三原則の運用指針の改正を国家安全保障会議で決定いたしました。今回の決定は、現に戦闘が行われている地域への殺傷兵器の輸出は全て禁止と受け止めてよいですか。お答えください。

 そして、拉致被害者全員の帰国実現が急務です。

 立憲民主党の拉致問題対策本部でも、家族の会の皆様などからお話を伺い、一刻の猶予もない問題と考えております。北朝鮮との早期の交渉再開、直轄のハイレベル協議の見通しについてお答えください。

 また、北朝鮮向けラジオ「しおかぜ」の二波体制を維持するため、NHKに対し、特定失踪者問題調査会との双方が納得できる協議を要請すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 立憲民主党は、我が国の外交、安全保障を担える政党であります。私自身、昨年は米国とベトナムを訪問し、また、世界各国の大使や訪問団との意見交換を重ねてまいりました。特に中国、韓国、台湾、ASEAN諸国、オーストラリア、インドなどとは友好関係を深めてまいります。

 紛争を抑止するのは、まさに多国間連携と首脳間の信頼であります。日本産水産物の輸入停止問題など、中国との更なる課題解決に向け、我が国での日中首脳会談の開催についての総理の考えをお聞かせください。

 立憲民主党が政権を担ったときには、我が国の防衛体制整備には万全を尽くします。

 しかし、防衛費のGDP比二%、四十三兆円はむしろ現場を混乱させております。やはり着実な防衛力整備こそ重要です。

 ところで、防衛力整備計画策定時の想定為替レートは一ドル百八円、令和五年度予算では一ドル百三十七円、現在は百四十七円前後です。総理は、円安でも工夫して四十三兆円に抑えると国会答弁しましたが、いつ、どんな優先順位で工夫いたしますか。整備計画の変更は必須と考えますが、いかがでしょうか。防衛増税は先送りを繰り返していますが、撤回はしませんか。しないなら、増税の開始時期はいつなのかをお答えください。

 次に、政府は、我が国保有の地上配備型パトリオットミサイルの米国輸出を認める決定を行いました。

 パトリオットは、我が国ミサイル防衛の一部を担っておりますが、我が国のBMDミサイルの充足率は六割ほどとされています。令和四年の防衛力整備計画でも、数量を増加する方針とあります。果たして米国に輸出する余裕はあるんでしょうか。また、日本産のミサイルが米国以外の戦地や紛争地で使われることはないのでしょうか。そして、ライセンス料と生産費を下回るような安価で米国に輸出されることはないのでしょうか。お答えください。

 総理、続いて、皇位継承についてであります。

 平成二十九年の天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議で、国会が政府に検討を要請したのは、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等についてです。

 しかし、令和三年十二月に出された有識者会議報告書では、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題であるとして、皇位継承の問題とは切り離され、悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論することには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させるとも考えられますと記載されています。

 やはり、各党が合意をした安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等を、先送りせず真正面から議論し、一定の結論を示すことが責任ではありませんか。総理、この点、お答えください。

 さらに、総理は、自民党総裁選で、女系天皇には反対と述べられました。今もそのお考えですか。あわせて、女性天皇についての見解もお聞かせください。

 女性宮家の創設については、野田内閣の下で平成二十四年に提出された皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理では、女性皇族が婚姻後、配偶者や子を皇族とする案も検討されましたが、今回の報告書では、婚姻後も本人のみ皇族、配偶者や子を皇族としない案のみが示されました。総理、これが複数案を比較検討した結論なのか、お答えください。

 以上、これまで総理への質問を行い、同時に、立憲民主党の考え方について皆様にお伝えいたしました。

 我が立憲民主党は、既に次の内閣を設置してまいりました。それは政権を担うためであり、既に、経済、金融、エネルギー、子育て支援、教育、リスキリング、外交防衛など、主要政策をそろえております。

 そして、現職の議員に加え、立憲民主党には政権を担うための人材が集まっております。全国の総支部には、地方議会出身者を始め、弁護士、官僚、NPO、民間企業、メディア出身者など、クリーンで有能な人材を多数そろえております。

 国民の皆さん、次期総選挙で政権交代を果たそうではありませんか。

 私は、ミッション型内閣を提唱いたします。ミッション型内閣とは、古い価値観や不祥事体質を変えられない自民党政権に代わり、国民のためのミッション、共通政策を掲げ、選挙に勝ち、その政策を実現する内閣です。

 まずは、裏金一掃、政治改革救国内閣です。

 先ほど立憲民主党が提案した数々の政治改革の中身、これを実現したいと思います。現在の自民党多数の国会で、果たしてどこまで実現できるでしょうか。自民党にできなければ、我々でやろうではありませんか。新たな政権では、政治改革を必ず実現いたします。

 政治改革だけではありません。野党各党は、防衛増税は不要という政策でも、自民党と闘ってまいりました。また、ガソリンのトリガー条項凍結解除もそうであります。しかし、自民党は、行革に取り組まず、国民生活よりも業界団体を優先し続けているんじゃないでしょうか。

 ほかにもあります。自民党政権で遅々として進まなかった教育の無償化、第一子からの児童手当の増額なども必ず実現をいたします。我々が総選挙に勝利をすれば、必ずできるのであります。

 日本に政権交代は必要。国民の皆様は、今まさに、政治の浄化、政権交代可能な政治を求めております。私は、その思いに応えてまいりたいと思います。

 各党の皆様、今の自民党の腐敗ぶりに辟易としている公明党や自民党の改革派の皆様にもお考えいただきたいと思います。自民党を下野させ、新たな政権を発足させようじゃありませんか。

 自らの政治資金を大事にする政治から、国民生活を大事にする政治へ。未来の日本を希望の持てる日本へ。人へ、未来へ、真っ当な政治へ。

 全国の皆さん、どうか共に立ち上がってください。立憲民主党は、あなたとともに政治を変えます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 泉健太議員の御質問にお答えいたします。

 まず、冒頭御指摘いただきました、二人の大臣政務官についてでありますが、本日、二人の政務官から辞意が表明されたと報告を受けております。まず、本人の意向、これをしっかり確認いたします。その上で、必要な手続を進めてまいりたいと存じます。

 まず、被災者生活再建支援金についてお尋ねがありました。

 先週取りまとめた被災者の生活と生業支援のためのパッケージに沿って、被災者生活再建支援金を迅速に支給してまいります。

 その上で、被災により住宅の被害を被った被災者への経済的支援の在り方については、被災地のニーズやその事情、さらには現下の経済情勢も踏まえて、能登の事情に合わせた追加的な方策を現在検討しております。

 震災関連の予算の在り方についてお尋ねがありました。

 今月、二回の使用の閣議決定を行った予備費に係る使用総調書等は、遅滞なく、しかるべき時期に国会に提出をいたします。

 そして、今後については、残額が三千億円を超える今年度の予備費と一兆円に倍増した来年度の予備費を活用し、復旧復興の段階に合わせ、数次にわたり機動的、弾力的に財政措置を講じてまいります。

 現時点で、補正予算の提出は想定しておりません。

 災害救助法についてお尋ねがありました。

 現行の災害救助法の運用においても、福祉避難所の設置や、避難所で福祉支援を行う災害派遣福祉チーム、DWATの派遣など、福祉的な配慮を含め支援を行っております。また、災害救助法以外にも、様々な方法で要配慮者への支援等を行っているところです。

 災害対策については、個々の災害の教訓を踏まえ、不断の見直しを図ることが重要であり、今回の災害についても、今後、その対応を振り返り、福祉の観点も含めて、防災力を高める方策について総合的に検討してまいります。

 自民党の政策集団の政治資金の問題に関する処分の方針、そして閣僚人事の意図についてお尋ねがありました。

 関係者において明確な説明責任を果たすことがまずは重要ですが、党としても事実関係の把握に努めているところであり、しかるべき手順を踏んだ上で、対応を考えてまいります。

 なお、昨年十二月の閣僚人事については、自民党の政策集団の政治資金に関して様々な報道に接する中で、一人一人の御意向等を踏まえ、年末の極めて重要な時期に国政に遅滞を生じさせないとの観点から行ったものであります。

 自民党の政策集団の政治資金の問題に関して、党の調査結果の説明の在り方等についてお尋ねがありました。

 現在、自民党の各政策集団、議員側の政治団体において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところであり、その訂正作業を踏まえつつ、可能な情報提供をしてまいります。

 また、党としても早急に関係者への聞き取りを行うこととしておりますが、聞き取りの範囲や説明の在り方については、事実関係の把握の状況等を踏まえて適切に判断をいたします。

 また、関係者の政治倫理審査会への出席については、これは、国会の手続に基づき、国会で御判断いただく事柄であると考えております。

 また、我が党においては、政策集団がお金と人事から決別することとしており、党として定めたルールは当然全ての政策集団に従ってもらいます。

 そして、政治資金収支報告書への不記載があった政治資金の取扱いについては、これは、各政治団体において、法令にのっとり適切に判断されるべき事柄であると考えています。

 そして、自民党自身も自ら強い決意を持って自らの改革を実行するとともに、国会においては、信頼回復のため、法改正を伴う制度面の改革に各党各会派とともに真摯に議論をしてまいります。

 物価上昇を上回る賃上げについてお尋ねがありました。

 日本は、賃金や投資をカットするコストカット型経済から、新たな成長型経済への移行のさなかにあります。

 このため、賃上げと所得減税等を組み合わせることで、まずは、今年の夏、可処分所得の伸びが物価上昇を上回る状態を官民で確実につくり上げ、そして国民の実感を積み重ねることで、縮み志向の意識ではなく、賃金が上がることが当たり前という前向きな意識を社会に定着してまいります。そして、その上で、人への投資や企業の稼ぐ力の強化を進め、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指してまいります。

 物価高対策、賃上げ促進のための予備費についてお尋ねがありました。

 原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費については、物価と賃金の好循環の実現に向け、賃上げ促進の環境整備を含め、物価高対策に必要となる経費に予期せぬ不足が生じた際に機動的に対応できるよう、万全の備えとして、一兆円を計上しております。

 その上で、予備費については、その性格上、予測困難な事態に対応するために計上したものであり、あらかじめその具体的な使途の内容や使用する時期をつまびらかにすることは困難であると考えています。

 介護従事者の賃上げについてお尋ねがありました。

 今般の介護報酬改定では、政府経済見通しにおいて、令和六年度の一人当たりの雇用者報酬の伸びが二・五%と、物価上昇率と同水準と見込まれている中、こうした見込みと整合的にベースアップを求めていることから、物価高に負けない賃上げと表現したところであります。

 令和七年度分を前倒しして賃上げいただくことも可能な上、ベースアップ分以外の賃金の伸びもあり得ますので、まずは、物価高に負けない賃上げとして、令和六年度二・五%のベースアップを実現してまいります。

 下請Gメンについてお尋ねがありました。

 中小企業庁の下請Gメンは、政権発足時に百二十名であったところ、三百三十名まで増員することとしております。

 これに加えて、公正取引委員会の体制強化、取引実態の調査、公表、企業への指導、労務費の円滑な価格転嫁に向けた指針の策定など、価格転嫁対策を強化してまいりました。

 現時点で今後の下請Gメンの人数について具体的に計画は決まっておりませんが、体制強化のみならず、指導の充実等も含め、引き続き、総合的な価格転嫁対策を強化してまいりたいと考えます。

 児童手当及び大学の無償化の対象となる第三子についてお尋ねがありました。

 児童手当について申し上げれば、御指摘の、子供がいる世帯のうち一二・七%を占める三人以上の子供がいる世帯についてですが、この一二・七%の世帯については、第三子以降の子は、基本的に、月三万円に支給額が増額される児童手当の多子加算の対象となります。

 また、令和七年度以降の多子世帯における大学等の授業料等の無償化については、対象となる学生等の割合は一五%程度と見込んでおります。

 児童手当と扶養控除についてお尋ねがありました。

 今般の児童手当の抜本的拡充においては、子供三人以上の世帯数の割合が特に減少していることや、子供三人以上の世帯はより経済的支援の必要性が高いと考えられること等を踏まえて、子供三人以上の世帯を重点的に支援することとしております。

 十六歳から十八歳までの扶養控除の見直しについては、全ての子育て世帯に対して児童手当と併せた実質的な支援を拡充する、こうした方針の下、令和七年度税制改正において結論を得ることとしております。

 学校給食費の無償化についてお尋ねがありました。

 学校給食費の無償化の検討に当たっては、一部の自治体や学校において学校給食が実施されていない状況もあるため、児童生徒間の公平性等の観点から、実態を把握した上で課題を整理する必要があると申し上げております。

 御質問の学校給食費の無償化の時期については、現時点でお答えすることは困難でありますが、いずれにしても、全国ベースの実態調査を行い、その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等を含めた課題を整理して、速やかに結論を出してまいります。

 子育て版ケアマネジャーについてお尋ねがありました。

 子育て支援のニーズは、保健、福祉、保育など多様であることから、政府としては、妊娠期から出産、子育てまで一貫して身近な場所で相談に応じ、様々なニーズに即して必要な支援につなぐ伴走型相談支援を推進しております。こども未来戦略を踏まえ、児童福祉法に基づく新たな事業として制度化することとしております。

 そして、委員の御質問は、その担い手の在り方についてでありますが、担い手の在り方については、自治体の取組状況、体制等も踏まえつつ、制度化を進める中で、当事者の立場に立って具体的な方策を検討いたします。

 初任給の引上げや非正規雇用労働者の正社員化の数値目標についてお尋ねがありました。

 政府においては、新卒者の給与や非正規雇用の方々を含め、持続的な賃上げを目指し、三位一体の労働市場改革に取り組んでいるところです。

 また、正社員化に取り組む事業主への支援や、ハローワークにおける担当者制によるきめ細やかな就職支援を実施しているところであり、こうした施策を通じて、若者等の賃上げや正社員化を実現してまいります。

 そして、数値目標ということでありますが、こうした取組を進める際のKPI等の設定の在り方については、PDCAサイクルを進める中で検討を深めていきたいと考えます。

 子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。

 支援金制度は、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築することにより、全体として実質的な負担が生じないこととしております。

 歳出改革や賃上げによる実質的な社会保険負担軽減や、負担能力に応じた仕組みとする支援金による負担が、その差引きを含めて一人一人に与える影響は様々ですが、今申し上げた全体として実質的な負担を生じさせないという状態は、制度として維持、確保していきたいと考えております。

 所得税の累進性強化と金融所得課税についてお尋ねがありました。

 所得税については、平成二十五年に最高税率を引き上げる等の累進化強化の施策を講じており、経済社会の構造変化を踏まえながら、今後も所得再分配機能の在り方を検討してまいります。

 いわゆる一億円の壁と呼ばれる問題については、令和五年度税制改正において、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置を導入し、一定の対応が図られたところですが、こうした課題については、市場等への影響も勘案した上で議論を続けてまいります。

 マイナ保険証についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証は、我が国が医療DXを進めるための基盤として、患者本人の健康医療情報に基づくよりよい医療の実現を図るものであります。こうしたメリットを早期に最大限発揮するため、現行の健康保険証の発行を本年十二月二日に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することとしております。

 マイナ保険証への移行に際しては、デジタルとアナログの併用期間を設け、全ての方が安心して確実に保険診療を受けていただける環境整備に取り組むとともに、医療機関や保険者等と連携し、その利用促進の取組を積極的に図ってまいります。

 選択的夫婦別氏制度及び同性婚制度についてお尋ねがありました。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、しっかりと議論をし、より幅広い国民の理解を得る必要があると考えております。

 また、同性婚制度の導入については、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、国民各層の意見、また国会における議論の状況、また同性婚に関する訴訟の状況等についても注視していく必要があると考えております。

 イスラエル・パレスチナ情勢への対応についてお尋ねがありました。

 我が国は、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、人質の即時解放、一般市民の安全確保、全ての当事者が国際法に従って行動すること、また事態の早期鎮静化、こうした課題を一貫して求めてきております。

 その中で、イスラエルに対しても、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を直接要請しております。

 また、ガザ地区の人道状況改善に向け尽力してきており、引き続き、関係国、国際機関とともに、こうした外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。

 防衛装備移転三原則の運用指針についてお尋ねがありました。

 昨年末に改正した運用指針において、自衛隊法上の武器に該当する装備移転の可否については、移転先において武力紛争の一環として現に戦闘が行われているか否かを含めた国際的な平和及び安全への影響等を考慮して、慎重に検討することとしております。

 引き続き、平和国家として基本理念を堅持し、移転の可否を厳格に審査してまいります。

 北朝鮮とのハイレベル協議及び北朝鮮向けラジオ「しおかぜ」についてお尋ねがありました。

 日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り開いていくという観点からの私の決意を金正恩委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を進めていきたいと考えており、そのために様々なルートを通じて様々な働きかけを絶えず行ってきておりますが、その内容等は、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、明らかにすることは控えます。

 また、「しおかぜ」の運用について、政府からは、これまで、NHKに対し、二波体制による安定的な運用に向けた検討を促してきており、今後とも、KDDI、特定失踪者問題調査会及びNHKの三者間の協議の状況を注視しつつ、拉致被害者等に向けた情報発信に支障がないよう、適切に対応してまいります。

 日中関係についてお尋ねがありました。

 次回の日中首脳会談については現時点で決まっていることはありませんが、中国との間では、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、日本産水産物輸入停止などの諸懸案を含め、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、こうした建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくという方針の下、引き続き、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図ってまいります。

 そして、防衛費への為替の影響と防衛力強化のための税制措置についてお尋ねがありました。

 防衛費のうち、人件費や国内生産、調達、また基地対策費などは、為替の影響を直接受けるものではありません。その上で、各年度の予算編成の中で一層の効率化、合理化を徹底し、四十三兆円程度の規模を超えることなく、防衛力の抜本的強化を実現してまいります。

 税制措置については、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施するとした一昨年末の閣議決定の枠組みに基づいて、方向性を明確にし、取り組むこととしており、その実施時期についても、この枠組みの下で柔軟に判断をしてまいります。

 ペトリオットの米国への移転についてお尋ねがありました。

 移転に当たっては、我が国の防衛に影響を与えないよう慎重に見極めた上で、数量を決定いたします。

 移転されるペトリオットは、米軍の在庫を補完するものであり、事前同意なしで第三国に移転されることはなく、我が国の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与することを確認しています。

 価格についても、適正なものとなるよう決定をしてまいります。

 安定的な皇位継承についてお尋ねがありました。

 皇位継承については、有識者会議において、様々な分野の方々から幅広く意見を伺って慎重かつ真剣に議論した結果として、悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないとの結論に至ったものと承知をしています。

 また、女性皇族の婚姻後の配偶者と子については、皇族とする考えも含めて比較検討が行われたものと承知をしております。

 そして、現在、政府から報告書を提出し、国会で御議論をいただくという状況の中で、女系天皇、女性天皇について私の個人的な考え方を今この場で申し上げることは差し控えますが、政府として、有識者会議の報告書を尊重することとして国会に対して報告を行ったものであり、立法府の総意が早期に取りまとめられるよう、国会において積極的な議論が行われることを期待しております。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 渡海紀三朗君。

    〔渡海紀三朗君登壇〕

渡海紀三朗君 自由民主党の渡海紀三朗です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、岸田総理の施政方針演説について質問を行います。(拍手)

 初めに、能登半島地震についてお伺いします。

 本年一月一日、石川県能登地方を震源として、最大震度七、マグニチュード七・六という極めて強い地震が発生し、二百三十八名の貴い命が失われ、千三百名近い方々が負傷されました。また、住宅等の崩壊や火災による焼失、停電や断水等によって、今なお多くの方々が、厳しい環境の中、避難生活を強いられています。

 まずは、犠牲になられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、被災地の皆さんにお見舞いを申し上げたいと思います。

 発災以来、被災地の自治体職員はもちろん、消防、警察を始め、全国からの応援職員、ボランティアなどの多くの方々が現場対応に力を尽くされています。

 また、政府においては、半島で幹線道路が寸断されるという悪条件の下、発災直後から最大限の自衛隊員を派遣し、捜索活動や情報収集、救命救助、生活物資等の提供などを行っております。さらに、各省庁の職員を被災地に派遣するなど、迅速なプッシュ型の対応を取っておられることに対して、厳しい環境の中、懸命に活動されているこれら全ての皆さんに心から敬意を表したいと思います。

 今から二十九年前の一月十七日、今回と同規模の震度七の激震が阪神・淡路地域を襲いました。発災の翌日、政府・与党調査団の一員として現地に入りましたが、そのとき目にした変わり果てた神戸の町の姿は、今も鮮明に脳裏に残っています。テレビから流れてくる能登半島の映像があのときの光景と重なり、心が痛みます。

 被災地の一日も早い復旧復興のため、阪神・淡路大震災や東日本大震災など、これまでの大災害を通じて培った知見を十二分に生かしつつ、あらゆる手だてを講じて被災地の皆さんを支援していく決意を、まずは、この本会議場にいる与野党、会派を超えて共有したいと思います。

 今、厳しい環境の中で避難生活をなさっている方々にとって何よりも心の支えとなるのは、復興にかける政府からのメッセージ、とりわけ総理のメッセージです。まずは、何としても被災地の皆さんを支える、復興を成し遂げるという総理の決意を改めて聞かせていただきたいと思います。

 被害の規模が大きければ大きいほど、復旧復興に必要な時間は長くなります。その長い試練の期間を耐え抜く力、被災地の皆さんに勇気を与えるのは、先行きへの明快な見通しです。どのような災害においても、被災直後は初動としての人命救助や被災者の避難に専念せざるを得ません。そして次に、物資の搬送やインフラの復旧に取りかかり、さらには、本格的な暮らしの再建、産業、なりわいの再構築といったフェーズに移ります。その全体像と道筋、スケジュール感を被災者の皆様にできるだけ早く提示し、共有することが、将来への不安を解消することにつながります。

 自民党では、先週、現段階における政府に求める具体的な施策として、岸田総理に申入れを行いました。政府が、この提言も踏まえ、被災者の支援を始め、インフラの復旧、生活、なりわいの再生に向けた取組を早急に早めること、そして、この一か月後にはこうなる、三か月後には、半年後にはこうなるという見通しを一日も早く被災者の方々にお伝えするよう強く求めます。

 加えて、被災地の自治体にとって極めて切実な問題が、財政面での制約です。

 能登半島の市や町はほとんどが過疎地域に指定されており、復旧財源が不足するのは明らかです。政府は既に二回にわたって予備費の支出を決定し、政策パッケージも動き出しております。発災以来の切れ目ない対応は率直に評価したいとは思いますが、今後、被害の全容が明らかになるにつれ、被災自治体の負担が一層重くなることは想像に難くありません。

 こうした中、被災自治体が財政的な理由によって復旧や復興や被災者への支援をためらったり諦めたりすることがないよう、国が財政面においても強力に支援していくことが極めて重要であります。復旧復興財源について、総理の考えをお聞かせいただきたいと思います。

 次に、少子化対策についてお聞きします。

 少子化問題は、国を挙げて取り組まなければならない待ったなしの最重要課題であります。少子化が人口減少を加速させ、このままでは、日本の人口は、二〇五〇年代に約一億人、六〇年代には約九千万人を割り込みます。僅か五十年で、我が国の人口は三分の一を失うのです。

 資源に恵まれない我が国にあっては、人材、すなわち人の力こそが発展の原動力であり、人口の減少は国力の弱体化につながります。我が国の社会経済システムを根底から揺るがしかねないものです。何としてもこの少子化傾向を反転させ、人口減少に歯止めをかけなければなりません。あらゆる政策ツールを総動員し、誰もが結婚し、子供を産み育てたいとの希望がかなえられる、そんな社会の構築を目指さなくてはなりません。

 岸田政権では、昨年十二月に、こども未来戦略が閣議決定されました。

 この戦略では、まず、若い世代の所得を増やす、次に、社会全体の構造、意識を変える、そして、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援する、この三つを基本理念に掲げ、今後三年間の集中取組期間において、前倒しして実施する加速プランにより、子供、子育て施策の拡充を図ることとされています。

 また、加速化プランの予算規模は、年額三・六兆円程度に及ぶ、前例のない規模とされています。これにより、子供一人当たりの子育て関係予算は、GDP比で一六%程度となり、OECDトップ水準のスウェーデンと肩を並べることになります。

 こうした次元の異なる予算規模の対策に踏み切ったからこそ、児童手当の抜本拡充や、高等教育費の負担軽減などの大胆な支援の拡充が可能となりました。ライフステージや子育て世帯の状況に応じて、きめ細やかな支援策が講じられることになります。

 加速化プランは二〇二六年度までにその大宗を実施するとしていますが、このプランが実現することで我が国の社会がどう変わるのか、安定的な財源の確保も含め、総理から改めて分かりやすい説明をお願いいたします。

 続いて、教育についてお伺いします。

 教育は、言うまでもなく、国家の根幹であり、国家百年の大計であります。創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は人であり、実際に、中長期での経済成長を考えた場合に、最も成長率を引き上げる効果が高いのは教育、研究開発投資であります。そのような意味で、我が国の成長を支えるため、岸田政権において進めている新しい資本主義において、人への投資は最重要課題の一つと言えます。

 人への投資を進める上で、第一に、世界に冠たる質の高い公教育の再生を図ること、次に、不登校対策や高等教育費の負担軽減を通じて、誰一人取り残さない教育を実現すること、第三に、これらの施策を通じて誰もが安心して子育てを行うことができる環境を実現すること、この三つが特に重要であるという観点から伺います。

 まず、公教育の再生のためには、教師に優れた人材を確保することが何よりも重要です。教育は人なりと言われるように、教師は、我が国の未来を開く子供たちを育てるという崇高な使命を有するかけがえのない職業と考えます。

 我が党においては、令和の教育人材確保に関する特命委員会において、抜本的な改革の具体策を取りまとめております。

 具体的には、更なる働き方改革、高度専門職である教師の処遇改善、学校の指導、運営体制の充実、教師の育成支援などを実現するために、既成の概念にとらわれない大胆な予算の拡充が必要です。

 令和六年度の予算案には、我が党の提言も踏まえた内容が盛り込まれたと承知していますが、公教育の再生に向けた総理の決意を聞かせていただきたいと思います。

 昨今、不登校の児童生徒が急増しており、令和四年度は、小中学校で、過去最多となる約三十万人に達しています。不登校となった児童生徒の学びを継続する観点から、教育支援センター等の学校外の学びの場を充実させることも重要ではありますが、それ以上に、子供たちが不登校にならず、進んで学校に通いたくなるような学校づくりを進めていくことは、急がなくてはならない極めて喫緊の課題であります。

 学校は、単に知識を身につける場ではなく、社会性を養う場、教師や周りの子供たちとの様々な関わりの中で、将来の国家、社会の形成者として必要とされる資質を養う場でもあります。今こそ、安心して学べる魅力のある学校づくりを、スローガンで終わらせることなく、大胆に進めるべきと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 高等教育の進学率が八割を超える今、家庭の経済状況によらず、大学などの高等教育へのアクセス機会を確保することは、政府としての使命であると考えます。また、夫婦が理想の数の子供を持てない理由の一つとして、子育て、教育費用の、中でも大学などの費用負担が大きいとされており、少子化対策の観点からも、高等教育費用の負担軽減が求められております。

 教育の無償化については、他党からも様々な提言がなされていますが、その実現には莫大な財源が必要であります。長期にわたり運営可能な実効性のあるシステムとするためには、財源を含め、持続可能な制度設計が重要です。

 我が党は、この問題について、教育・人材力強化調査会において議論を進め、多子世帯に対する授業料の無償化と併せて、更に負担軽減を進めるための取組として、国の先払い制度、すなわち、在学中の授業料を国が先立って支払い、学生本人が卒業後に支払い能力に応じて納付する制度について、本格導入を目指すことを提言いたしました。

 この我が党の提言も踏まえて、高等教育費の負担軽減を今後どのように実現していくのか、総理の見解を伺います。

 次に、経済政策について伺います。

 総理は、経済は一丁目一番地だと表明されています。私自身、力強く成長する経済があってこそ、国民一人一人が幸せを実現できると確信していますが、稼ぐ力を高め、デフレと決別し、持続的に成長していく経済構造へと転換していくために、直ちに取り組むべきこと、中長期的な視野で取り組むべきことを、それぞれ的確に実施していくことが必要です。

 まずは、来年度、令和六年度こそは、総理が強調されるように、デフレから完全に脱却し、持続的な賃上げを実現する年にしなくてはなりません。直近の日銀の見通しでは、今年の物価見通しが引き下げられるとともに、来年の物価見通しはインフレ目標を下回るという予想も示されています。現時点で物価高だからといって手綱を緩めれば、その途端、元の値上げできない節約型志向に逆戻りしてしまいます。

 デフレから完全に脱却し、持続的な賃上げを実現するための取組について、総理の決意を改めて伺います。

 企業が賃上げの原資を確保する上でも、適切な価格転嫁に加え、国内投資を増やして供給力を拡大し、収益力を高めることが極めて重要です。

 一方で、今、企業経営の大きな課題となっているのは労働力の確保です。既に、飲食、宿泊業を中心に、人手不足によって営業の縮小を余儀なくされるケースも出ています。

 人手不足は、人口減少による構造的な課題であり、経済成長の制約要因になる可能性があります。

 一方で、ポジティブに捉えれば、人手不足は、企業が省力化を進め、生産性、賃金を上昇させ、成長を遂げるきっかけともなり得ます。

 まず、直面する人手不足問題にどう対処し、どのように解決していくのか。また、ピンチをチャンスに変えるという観点からは、中長期的にどのように労働生産性を高めていくのか。政府としての取組を総理にお伺いします。

 成長戦略に基づく様々な施策が功を奏し、安定した成長社会が訪れるまでには一定の時間を要します。

 その道のりでは、一昨年のエネルギー価格高騰のように、思わぬ経済環境の変化による物価急騰も生じるかもしれません。現に、今なお物価の高騰に苦しんでいらっしゃる方々がおられます。今後も、行き過ぎた物価の急激な変動には機動的に対応しなければなりません。

 短期的な取組から中長期的な緩やかな物価上昇へとソフトランディングしていくために、昨今の経済対策で打ち出した物価高騰対策がどのような効果を発揮し、今後どのような出口戦略を描いていくつもりか、総理の所見をお伺いいたします。

 我が国の経済成長力を高めていくためのアプローチの一つとして、私は、長年にわたり、科学技術立国の実現を目指し、科学技術イノベーション戦略に取り組んでまいりました。

 技術革新が社会を変革し、経済成長を牽引する力になることは論をまちません。特に、生成AIや量子技術、核融合エネルギーなど、新しい技術開発に各国がその威信を懸けてしのぎを削っている状況を考えれば、科学技術イノベーションの成否が我が国の浮沈に直結すると考えるべきであります。

 政府は、五年ごとに更新する科学技術基本計画を基に、様々な政策の充実を図ってまいりました。一方で、国土強靱化や災害対応、農林水産業の現場でも、先端科学技術をより一層活用すべき場面も数多く見受けられます。

 これまでの、それから、これからの研究成果を官民あらゆる分野で実装し、グローバルな課題解決に向けた社会の変革を率先して促すことが、国際社会における我が国の存在感や貢献を高めると考えます。それが、国民、とりわけ若者が自らの人生に夢を描ける社会を実現していくことにもつながると考えます。

 明日は今日よりきっとよくなる。その実現に向け、政府として科学技術イノベーションをどのように進めていくのか、総理にその考えと意気込みをお伺いします。

 経済についてもう一点、経済安全保障についてお伺いします。

 近年、国際情勢の不安定化と、産業構造の複雑化やテクノロジーの高度化が相まって、安全保障政策の裾野が劇的に広がっております。そのため、国家として、安全保障上の視点も踏まえた経済政策を進めていかなければなりません。

 岸田政権では、経済安全保障推進法の制定により、総合的な方針を定めるとともに、サプライチェーンの強靱化や重要技術の研究開発など、必要な施策を着実かつ強力に進めてこられました。

 他方で、我が国の経済安全保障を取り巻く環境は刻一刻と変化しており、取組の不断の見直しや新たな課題への迅速な対応が不可欠です。

 中でも、情報保全の強化は極めて重要です。

 総理は、昨年の臨時国会で、経済安全保障分野におけるセキュリティークリアランス制度に関する法律を今国会に提出する準備を進めると明言されました。

 国が保有する経済安全保障上重要な情報の保全制度を主要国にも通用する実効的なものとして整備すること、それにより産業界の国際的なビジネス機会の確保、拡充につなげることは、喫緊の課題であると考えます。

 改めて、セキュリティークリアランス制度の必要性についての認識と、総理の決意をお伺いします。

 続いて、外交について伺います。

 ウクライナやガザ地区の戦闘の終息にめどが立たない中で、新しい年を迎えました。各国が自らの国益を懸けて外交上の駆け引きを繰り広げ、国際協調の潮流が弱まっている中、今年は国際的な選挙イヤーとなっています。

 既に今月、台湾の総統選挙と立法院選挙が行われました。今後、インドネシアやロシアで大統領選挙が、また、韓国やインドでは議会選挙が予定され、十一月には四年に一度のアメリカ大統領選挙が行われます。

 グローバル化の進展とともに先進国でも格差が広がり、政治や社会的な緊張が高まることによる分断や対立が選挙によって更に深まり、国際情勢が大きく動くことも懸念されます。

 総理は、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現を掲げ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くと繰り返し外交の場で主張してこられました。

 G7の議長国として、一年間の議論の積み重ねの上に、世界の平和と安定、繁栄を実現することが、我が国に求められる役割と考えます。

 これから日本がどういったリーダーシップを世界に示していくのか、総理の外交における基本姿勢をお伺いします。

 いわゆるグローバルサウスとの連携強化について伺います。

 国際社会の中で、インドやASEAN諸国、アフリカ、中南米などのグローバルサウスと呼ばれる国々の存在感が高まっています。これらの国々は、今後も人口増加が見込まれることに加え、重要鉱物、レアメタルも産出します。経済成長、経済安全保障という観点からも、連携を深めることは極めて重要であります。

 同時に、これら諸国の社会インフラ整備への協力、安定的な国家運営への支援は、感染症対策や、難民問題の地球規模の課題を克服することにもつながり、それがひいては日本を含む先進国の利益になると考えます。

 一口にグローバルサウスといっても、各国のポテンシャルや抱えている課題は様々です。我が国がこれまで積み重ねてきた信頼関係、人的交流の実績などを基礎に、その国の実情を踏まえた支援を行うことで、日本とグローバルサウスが共に成長し、協調していく未来を描くことができます。そして、それが我が国の国際社会に対する大きな貢献になると考えます。

 総理の掲げる協調の国際社会実現のため、我が国がグローバルサウスとの関係を深めることについての意義についてお伺いいたします。

 北朝鮮について伺います。

 一月十四日には、北朝鮮は今年初めての中距離弾道ミサイルを発射いたしました。

 昨年、令和五年のミサイル発射は十八回を数え、固形燃料の使用や変則軌道、飛行距離の延伸など、北朝鮮が着々とミサイル技術を獲得していることが見て取れます。

 また、ウクライナで使用されたロシアのミサイルが北朝鮮製であるとウクライナ政府が発表しています。

 これは、国連常任理事国への武器輸出が北朝鮮の資金源やミサイル技術の向上につながっているということであり、強い懸念を覚えるところです。

 また、核やミサイル開発とともに、我々が決して忘れてはいけない拉致問題の解決があります。拉致被害者の御家族が高齢となり、時間的制約のある拉致問題の一刻も早い解決は、政権の最優先課題の一つであります。

 北朝鮮との拉致、ミサイル、核、これらの問題の解決に向け、総理の考えをお聞かせください。

 最後に、政治改革についてお伺いいたします。

 これまで、能登半島地震を含め、少子化対策、教育、経済、外交、安全保障、様々な課題に触れてまいりました。このように内外に山積する諸課題を乗り越えていくためには、何よりも国民の理解と協力が必要不可欠であります。

 そして、国民の協力を得る上で最も重要なのが、政治に対する国民の信頼です。

 信なくば立たず。およそ二千五百年前に孔子が語ったとされるこの言葉が、二十一世紀となった今なお新鮮に思えるのは、政治と金をめぐる問題が幾度と重なり、これまでも度々国民の信頼を損ねてきたからであります。

 昨年来、我が党の派閥の政治資金パーティーにおいて、政治資金規正法上の違反の不透明、不適切な会計処理が指摘され、自民党に対して国民の厳しい目、強い疑念が向けられています。

 自民党に籍を置く一人として、このような事態が生じたことについて、真摯に反省するとともに、国民の皆様に深くおわび申し上げる次第です。

 自民党では、国民の信頼を取り戻すべく、総理が本部長を務める政治刷新本部において中間取りまとめを決定しました。

 この取りまとめでは、改革の方向性を打ち出すもので、政治資金の透明性の徹底に向けて、自民党としてできることはすぐ実行する、それとともに、コンプライアンスを徹底すること、例えば、今回の不正行為の温床となった派閥から金と人事の機能を切り離し、いわゆる派閥は解消して、真の政策集団を目指すことを打ち出しています。

 そして、運用面の改革を先行して進めながら、政治資金の透明性向上に向けた制度面の改革については、各党会派との真摯な協議を経て、政治資金改正法など法整備を実施していくことが示されております。

 一昨日の予算委員会において、総理は、党としての実態を把握し、政治的な責任について考えるため、関係者のヒアリングを行うこと、また、政治資金の透明性向上のための政治資金規正法の改正や政治家の責任について、連座制も含めて、党として考えをまとめ、各党ともしっかり議論を行っていくと表明されました。

 これらの改革について、我が党内で早急に作業に着手し、結論を出さなければなりません。刷新本部の本部長として、総理の強いリーダーシップが求められています。

 岸田総理、総理は、政治は国民のものとの立党の原点に立ち戻り、我が党自らが変わらなければならないとの決意と覚悟を持って日本の民主主義を守り抜いていく、そのような強い決意を表明しておられます。

 政治の刷新に向けては、選挙制度の在り方、国会運営の在り方など見直すべき課題は山積しており、不断の改革努力が不可欠だと考えますが、同時に今、我々が問われているのは、信頼回復のために何をするかということのみならず、それをやり抜く強い覚悟があるのかどうかということであります。我々は、再び国民の信頼を回復できるのか、それともこのまま見放されてしまうのか。我々は今、瀬戸際に立っているのです。信頼回復へ向けた政治改革に対する総理の覚悟のほどを、是非とも国民にお示しください。

 岸田総理は、自民党の政調会長時代、まさにこの代表質問の場で、陽明学者、安岡正篤氏の、正しい姿勢、正姿勢という言葉を引いて、自らの抱負を披瀝されました。今こそ、正姿勢を存分に発揮し、政治に対する信頼を取り戻すべく、強い決意でこの問題に取り組んでいただくよう重ねて申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 渡海紀三朗議員の御質問にお答えいたします。

 復興への決意についてお尋ねがありました。

 今般の震災では、厳しい状況が幾重にも重なり、多くの被災者が不自由な避難生活を強いられています。

 政府としては、被災地の一日も早い復旧復興を進めていくため、被災者の生活と生業支援のためのパッケージを一月二十五日に決定し、政府を挙げて実行しています。

 その上で、息の長い取組となることを踏まえ、私自身をトップとする能登半島地震復旧・復興支援本部を新たに設置し、できることは全てやるとの考え方の下、被災自治体と緊密に連携し、そのニーズをしっかりと受け止めながら、被災者の帰還と、そして被災地の再生まで、責任を持って取り組んでまいります。

 復旧復興財源についてお尋ねがありました。

 被災自治体を財政面で支援するため、速やかに激甚災害指定を行い、復旧事業に係る国の補助率のかさ上げ措置等を実施することを決定いたしました。

 さらに、予算の制約により震災対応をちゅうちょすることはあってはならないという考え方の下、令和五年度一般予備費の活用に加えて、令和六年度予算案を変更し、一般予備費を一兆円に倍増する極めて異例な対応を取ったところです。

 支援パッケージを実行するため、まずは一千五百億円規模の予備費の使用を決定したところですが、今後とも切れ目なく機動的、弾力的に財政措置を講じていく方針であり、令和六年度予算案の速やかな成立をお願いいたします。

 少子化対策に関する加速化プランが目指す社会についてお尋ねがありました。

 加速化プランは、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てができる社会を目指します。そのために、議員からも御指摘がありましたように、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援する、この三つの理念の実現を図るものであります。

 子供一人当たりの家族関係支出は、GDP比でOECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進する一方、若い世代の所得向上と少子化対策を車の両輪として進めてまいります。財源は、まずは徹底した歳出改革等で確保することを原則としてまいります。

 優れた教師の確保など、公教育の再生についてお尋ねがありました。

 教師を取り巻く環境の整備のため、これまで、教職員定数の改善、支援スタッフの充実、ICTによる業務効率化等に取り組み、令和六年度の予算案では、小学校高学年の教科担任制の一年前倒しでの実施や、教員業務支援員の全ての小中学校への配置に必要な経費を措置したところです。

 政府としては、優れた教師を確保するため、働き方改革の更なる加速化、処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実、育成支援を一体的に進めるなど、質の高い公教育の再生に取り組んでまいります。

 不登校対策についてお尋ねがありました。

 不登校対策として、校内の教育支援センターの設置を促進することや、子供へのアンケートを基に、クラスの状況や相談のしやすさなど学校の状況を把握し、学校が子供たちにとって生活しやすい雰囲気となるよう改善する取組などを推進しています。

 政府としては、不登校対策を強化し、全ての子供が学校において適切な指導や支援が受けられるよう、安心して学べる魅力的な学校づくりを進めてまいります。

 高等教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。

 令和六年度から、給付型奨学金等の多子世帯及び理工農系の中間層への拡大等を行い、さらに、令和七年度からは、子供三人以上を扶養している場合、一定の額まで、大学等の授業料、入学料を無償といたします。

 また、授業料後払い制度については、まずは大学院修士段階に導入し、学部段階への本格導入に向けた更なる検討を進め、今後の各般の議論を踏まえて、速やかに結論を得てまいります。

 政府としては、このような取組を通じて、高等教育費の負担軽減を着実に進めてまいります。

 デフレ完全脱却と持続的賃上げに向けた取組についてお尋ねがありました。

 デフレからの完全脱却、新たな成長型経済への移行に向けて鍵となるのは、物価高に負けない賃上げの実現です。

 医療、介護、障害福祉分野の報酬改定等による公的賃上げ、賃上げ税制の拡充強化などに取り組みます。政労使の意見交換では、昨年を上回る賃上げを強く呼びかけました。

 また、一人四万円の所得税、住民税減税を行い、可処分所得を下支えし、官民が連携して、賃金が上がり可処分所得が増えるという状況を着実につくってまいります。

 さらには、持続的な賃上げに向けた人への投資を進め、賃上げを生み出す企業の稼ぐ力の強化にも踏み込んでまいります。

 人手不足への対応と労働生産性の向上についてお尋ねがありました。

 人手不足対策については、働き方改革に取り組むこと等により、女性、高齢者、外国人材などの活躍を促進し、安定的な労働力の確保に取り組んでいます。

 賃上げ税制の強化、三位一体の労働市場改革など構造的な改革に加え、中堅・中小企業の省力化投資の支援措置などにより、賃上げの実現と生産性の向上に取り組んでまいります。

 物価高対策についてお尋ねがありました。

 ガソリンや電気・ガス価格の激変緩和措置の効果もあり、足下の消費者物価上昇率は二%台で緩やかに上昇しています。

 物価高から国民生活を守る手だては緩めません。住民税非課税世帯への追加給付や、より幅広い低所得世帯への給付、子育て世帯への追加給付など、きめ細かい支援を進めてまいります。

 なお、激変緩和措置については、国際情勢、経済やエネルギーをめぐる情勢等も踏まえながら、出口戦略を含め、対応を検討してまいります。

 科学技術・イノベーション政策についてお尋ねがありました。

 科学技術は、産業構造転換の鍵であり、未来を切り開く礎です。

 令和時代の科学技術創造立国の実現に向けて、AI、フュージョンエネルギー、量子などの先端科学技術分野における戦略的な研究開発の推進、知の基盤と人材育成の強化、イノベーションエコシステムの形成などに全力で取り組んでまいります。

 セキュリティークリアランスについてお尋ねがありました。

 セキュリティークリアランスは、経済安全保障分野の情報保全強化の観点から非常に重要です。

 昨日開催された経済安全保障推進会議において、セキュリティークリアランス制度に関する新法案を早急に取りまとめ、今国会への提出に向け、準備を加速するよう高市大臣に指示したところであり、政府として検討を進めてまいります。

 外交の基本姿勢についてお尋ねがありました。

 国際社会が緊迫の度を高める中で、まず、我が国及び国民の安全と繁栄を確保するため、同盟国、同志国との連携を一層深め、自由で開かれたインド太平洋を推進します。

 その上で、G7広島サミットの成果を土台とし、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化のため、人間の尊厳に焦点を当てながら、グローバルサウスとの連携を深め、世界を分断や対立から協調に向けて導いてまいります。

 いわゆるグローバルサウスとの連携についてお尋ねがありました。

 国際社会を分断や対立ではなく協調に導き、世界が直面する課題に対応していくためには、価値観や利害の相違を乗り越える包摂的なアプローチでグローバルサウスとの連携を強化する必要があります。

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化のため、また、我が国の経済安全保障面を含めた国益にかなうよう、これらの国々との間できめ細かな外交を展開してまいります。

 北朝鮮関連の問題についてお尋ねがありました。

 我が国の方針は、日朝平壌宣言に基づき、諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものです。とりわけ、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題です。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。

 核・ミサイル問題については、米韓を始めとする国際社会とも協力しながら、関連安保理決議の完全な履行を進め、核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていきます。

 これらの諸問題の解決に向け、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めていきます。

 政治改革の決意についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、信なくば立たず。国民の信頼なくして政治の安定はありませんし、政治の安定なくして政策の推進もありません。我が党は、解体的な出直しを図り、信頼回復に向けた取組を進めなければなりません。

 さきの国会の会期末に行った会見では、国民の信頼回復のために、火の玉となって、自民党の先頭に立ってこの問題に取り組んでいくと申し上げました。この強い思いは、いささかも変わりはありません。

 まずは、党の政治刷新本部の中間取りまとめについて、私自身が先頭に立って実行をしてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 山田勝彦君。

    〔山田勝彦君登壇〕

山田勝彦君 立憲民主党の山田勝彦です。

 会派を代表し、岸田総理の施政方針演説に対し質問をいたします。(拍手)

 まずは、この度の能登半島地震で被災された全ての皆様に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 被災地支援に与党も野党もありません。一日でも早く日常が取り戻されるよう、必要な予算、必要な支援策が進まれる、そういう国会になるよう、全力を尽くしてまいります。

 いよいよ裏金国会がスタートいたしました。昨日、主要野党は自民党に対し、衆参所属全議員の裏金の関与についてのアンケート結果をまとめ、二月五日の予算委員会の前までに回答するよう求めました。野党だけではなく、国民の皆様の真相解明に対する強い要請です。この裏金リストの公表からこの問題の第一歩を歩むのだと、自民党の皆様には強く申し上げておきます。

 今回の問題、政治と金ではなく、正確には自民党と金権政治です。賄賂、買収、裏金。ここ五年で十一人もの自民党の議員が逮捕、立件されるという、まさに異常事態。私たちは、決して麻痺してはいけません。

 裏金づくりとは、所得隠しであり、脱税行為です。地元長崎県で、なぜ裏金議員は逮捕されないのか、自分たちが脱税したらすぐに捕まる、しかし、裏金議員は収支報告書を後から訂正すれば許される、国民をばかにしているのかと、たくさんの怒りの声を聞いてきました。

 自民党の派閥が政策集団に名称変更しようが、どうでもいい話です。

 総理、国民の皆様が知りたいのは、その裏金が一体何に使われてきたのかではないでしょうか。まさか、高級クラブで豪遊するためや、選挙のたびに地方議員を買収するためにばらまいていたのではないでしょうか。それとも、ただただため込んで私腹を肥やしていたのですか。岸田総理には、国民の皆様のこの最大の疑念に応える責任があるのではないでしょうか。

 そこで、総理にお尋ねいたします。

 まずは、自民党裏金議員リストについてです。

 総理は、一月二十九日の予算委員会で、収支報告書を訂正した議員について、安倍派三十人以上、二階派七人と答弁されましたが、現時点で、安倍派は正確には何人ですか。二階派は七人から増えていませんか。

 総理は、一月二十九日時点での約四十名は、収支報告書の訂正をした議員だけを対象にお答えされました。収支報告書の訂正にかかわらず、収支報告書に記載されていないお金がある自民党議員は、一体何人いるのでしょうか。

 続いて、二階前幹事長の、五年で約五十億円もの政策活動費の使途についてです。

 この桁違いのお金を一人の議員が本当に使い切れるのでしょうか。二階議員の机の引き出しの中にずっと入っていたとすれば、これは脱税になる可能性があるのではないですか。国民の皆様の疑念と怒りが高まりつつあります。インボイスや確定申告で苦しむ納税者は、脱税の疑いのある裏金議員に怒っています。この国会は、裏金国会だけでなく、脱税議員を許さない脱税国会でもあります。

 総理、まず、五年で約五十億円ものこのお金は一体何に使ったのか、いつまでに公表するのか、二階議員御本人に御確認の上、お答えください。税法上認められている使い道以外で使っていたとすれば、それは脱税の疑いが指摘されます。総理、脱税の疑いはないと断言できるでしょうか。これ以上の政治不信を招かないためにも、国民の皆様に正面からお答えください。

 続いて、岸田総理の脱法の疑いがある闇パーティーについてです。

 二〇二二年六月、広島で開かれた総理就任を祝う会は、約千百人が出席し、飲食なしで一万円の会費で開催された後、この会の主催団体から総理の政党支部へ約三百二十万円もの寄附がされています。しかも、このパーティーの受付や経理は岸田事務所が行っており、資金集めの目的は明白であるにもかかわらず、政治資金パーティーとして報告されていません。

 岸田総理、実態は政治資金パーティーではありませんか。闇パーティー、脱法パーティーとの指摘があります。予算委員会では合法だと強調されましたが、本当に合法だと断言できるのでしょうか。そして、この岸田方式の脱法の疑いがある闇パーティーは、今後も続けられるのでしょうか。続けるとすれば、それは多くの自民党議員がまねをされるんじゃないですか。そして、今後、全ての、私たち国会議員が、この岸田方式の脱法の疑いがある闇パーティーを行ってもいいんでしょうか。総理、明確にお答えください。

 総理は、確かに今も、火の玉となって取り組むとおっしゃっています。まさか、これ以上国民の怒りに火をつけるおつもりなんでしょうか。

 自民党の裏金調査チームが立ち上がりました。総理、何について調査し、いつまでに調査結果を公表されるのですか。お答えください。

 私たち立憲民主党は、裏金議員や脱税議員を決して許しません。お金の力で動く金権政治ではなく、国民の声で動く真っ当な政治へ。国民の皆様とともに真の政治改革を進め、自民党の賄賂、買収、裏金にまみれた金権政治を終わらせます。

 今国会は、農政の憲法と呼ばれる食料・農業・農村基本法が二十五年ぶりに改正される予定です。私たちは、食べることができなければ生きていけません。国は、将来にわたり、国民一人一人に食料が行き渡るよう、後継者不足で高齢化している農業や漁業の生産現場を支援しなければなりません。

 しかし、岸田総理、私の地元の農家や漁師の皆さんは、朝から畑で必死に働いたり、大変な苦労をしながら漁に出ておられますが、まさにぬれ手でアワの自民党の裏金議員に相当あきれています。

 岸田総理は、防衛予算の倍増を強行し、ミサイル整備などには大変熱心です。しかし、一方で、総理の演説からは食料安全保障への意欲は感じられず、食料自給率を上げる具体策もありません。世界中で紛争が起き、気候変動による自然災害も多発しており、世界的な食料危機の時代に、私たちの食を一体いつまで海外に依存し続けるのでしょうか。日本が海外から食料を調達できなくなった場合、先進国中最低の食料自給率三八%のままで、本当に国民の命を守れるのでしょうか。

 この国の総理大臣として、日本の食料自給率をいつまでに何%まで引き上げる目標があるのか、また、それを達成するための具体策は何か、明確にお答えください。

 食料自給率の向上のためには担い手が必要です。しかし、日本の農村、漁村は、高齢化と人口減少で崩壊の危機にあります。島の農村や漁村を回り、農家や漁師の皆さんから話を伺いました。自分の息子に島から出ていけと言った、その理由を尋ねると、農業や漁業では食べていけない、家族を養い切れない、こんな苦しい思いをするのは自分だけでいい、自分の子供にはさせたくない、この島を出て勤め人をした方がきっと幸せだ、こんな悲痛な声をたくさん聞いてきました。

 先祖代々、大切に守ってきた農地や漁業権を自分のお子さんに継がせたくない親なんていません。こんな言葉を言わせるこの国の農政がおかしい。

 自民党による農政の補助金制度は、基盤整備事業やメーカーなどの業者に流れるものばかりです。EUのように生産者に直接支払いされる制度が少なく、その上、書類申請などの手続も煩雑で、小規模な農家には補助金が全く届いていません。

 この自民党の農政を、民主党政権時、大きく転換しました。業者や農業団体にばかり流れていた国の補助金を生産者お一人お一人に直接届ける、農家の戸別所得補償制度です。生産者からの申請手続も圧倒的に簡素化しました。地元の各農村では、民主党のときの所得補償を復活してほしか、こういう声を今もたくさん聞いています。

 総理にお尋ねいたします。

 自民党政権は、なぜこの農家の戸別所得補償制度を廃止したのですか。一人一人の農家に献金する力がないからですか。国会中継を御覧いただいている全国の農家の皆様にお答えください。

 私は、議員になってこの二年間で、何度も農水省や農水大臣にこの質問をしました。すると、農家にだけ税金を使って所得補償を行うことは、納税者である国民の理解を得られないという驚くべき回答が返ってきます。

 欧米では当たり前に行われている所得補償。EUでは、農業所得に占める国の補助金の割合は八〇%と言われています。民主党政権以前、二〇〇六年には、日本の農家は、農業所得の国の補助金の割合は僅か二八%。二〇一〇年、所得補償制度が導入され、ようやく四五%まで上がりました。確実に農家の所得が向上するこの制度を自民党は廃止したのです。先進諸国の中で、日本ほど自国の農家を保護しない国はありません。納税者の理解が得難いのは、農家の所得補償ではなく、自民党の裏金議員による所得隠しの方ではないでしょうか。

 食料自給率の高いヨーロッパの国々では、環境直接支払いにより、農村の環境と農家の暮らしを支えています。農林水産業は、単なる産業ではなく、環境保全、防災、生物多様性など様々な多面的機能があります。そして、農家の皆さんは、青空の下で国民の命の源である食料を生産いただく、いわば青空公務員です。

 総理、農業が持つこのような公的機能について、国民の理解が得られないのではなく、総理には国民の理解が得られるように説明する責任があるのではないでしょうか。今回の法改正で、国からの直接支払いによる農家の所得補償を復活し、法律に明確に書き込むべきだと提案しますが、いかがでしょうか。

 地方の人口減少の理由は明らかです。農林水産業の後継者がいなくなったからです。農林水産業の再生なくして地方の再生なし。今や、農村や漁村の担い手は、七十代、八十代が中心になってきました。もう限界だ、わっかもんがおらんくなった、わっかもんに帰ってきてほしか。総理、生産現場の声です。地方再生のため、後継者対策について質問します。

 農業は自然を相手にします。計画どおりに栽培できるようになるまでは数年かかります。そんなリスクのある農業に新たにチャレンジする方向けに、年間百五十万円の補助金があります。しかし、この新規就農支援事業が五年から三年へ削減されております。なぜ、予算を拡充しなければならないのに、削減しているのでしょうか。全く理解できません。総理、すぐに元の五年に戻すべきではないでしょうか。

 さらに、この制度には大きな矛盾があり、補助金が途中で止まってしまう場合があります。例えば、最初の一、二年で人一倍努力をし、六百万円以上の所得を上げた新規就農者は、なぜか補助金がもらえなくなるのです。そうではなくて、農業には機械やハウスなど様々な設備投資が必要です。早めに利益を出した優秀な方にも補助金を一定期間継続することで、事業規模が拡大され、生産能力をより高めてもらい、食料自給率に大いに貢献してもらったらどうでしょうか。総理、新規就農者の意欲をなくすようなこの所得制限、すぐに撤廃していただけないでしょうか。

 漁業者も国の政策に翻弄されています。特に東京電力福島第一原子力発電事故により風評被害を受け、販路を失っています。漁師さんたちの本音の声です。自分たちは、日本一おいしい魚が捕れるこの海で漁を続けて、食べてくれる人を笑顔にして、そして、漁師という仕事に誇りを持っているんだ、損害賠償や補助金を求めているわけではない。

 その上で、今回の物価高により、畜産現場だけではなく、漁業の現場も悲鳴を上げています。

 今、最も深刻なのが油代です。民主党政権時代に始まった漁業所得補償により、燃油対策事業が今も継続されています。しかし、十年以上経過し、行き過ぎた円安政策も影響し、燃油が高騰し続けています。もはや、現状の制度では生産原価を補填し切れず、油代が高過ぎて赤字になるので船を出せないでいる小規模な漁師さんたちがたくさんおられます。原発政策の推進により、迷惑をかけている漁師の皆さんがせめて安心して漁に出てもらえるよう、燃油対策事業を強化していただけないでしょうか。総理、お答えください。

 次に、離島振興策について伺います。

 岸田総理は、五年で四十三兆円もの巨額な防衛予算の増額を決断されました。しかし、食料安全保障の強化には関心がないようです。

 さらに、我が国の国防を考えたとき、島嶼防衛は大変重要です。島は、我が国の領土、領海、領空、排他的経済水域などの保全といった国家的役割を担っています。しかしながら、島は、急速な人口減少により過疎、高齢化が進み、各地域で限界集落が多数存在しています。島民の皆様から、若い人たちが残れる島にしてほしい、悲痛な声をたくさん聞いてきました。

 島は、本土に比べ物価が一〇%以上高いと言われています。長崎県の五島は、この度の物価高でガソリン代がリッター二百円を超える時期がありました。東京都の神津島では今がピークで、リッター二百二十円です。島のための物価高対策、島のための新しい経済政策が必要です。

 しかし、政府の離島振興予算は、公共事業の需要の減少を理由に、二十年前の約一千三百億円から、令和五年度は約三百八十億円と、年間九百億円以上もの予算が大幅に削減されてしまっています。これでは、島の人口減少が加速してしまうのは当然ではないでしょうか。

 岸田総理は、このまま島の人口減少を放置し続けるつもりなのでしょうか。それとも、島の人口減少対策は必要だと考える、そうであれば、離島振興予算を以前の予算規模まで増やしていくべきとお考えでしょうか。お答えください。

 私は、立憲民主党島政策プロジェクトチームの事務局長として、岸田総理に政策提案をいたします。

 全国の島民の皆様の願いは、離島航路の低料金化です。私たち国民にとって、道路は生活を支える最も基礎的な社会資本であり、島民の皆様にとっては、離島航路は海の国道であり、生活に必要不可欠です。フランスでは、国土連続性交付金によって、離島航路は鉄道運賃並みに料金設定されています。

 私たち立憲民主党は、日本でもこの国土連続性交付金を新たに導入し、離島航路のJR運賃並みへの低料金化を他の野党の皆さんと一緒に提案しています。既に特定有人国境離島では島民限定で実現していますが、観光客も対象にすべきです。島民限定ではなく、観光客も対象にして、島により人が集まり、島内消費が上がれば、島民所得も上がっていきます。国境離島の島民限定ではなくて、離島航路の低料金化、完全実施いたしませんか。総理、全国の島民の皆様にお答えください。

 次に、賃上げについてです。

 自民党によるコストカット型経済により失われた三十年。この間、非正規雇用が拡大し、格差と貧困は拡大しました。そして、税と社会保障負担を合わせた国民負担率は約五〇%まで上がり、賃金は世界で日本だけが全く上がっていません。物価高の中、年金も実質下がり続け、国民生活は苦しさを増しています。

 今、最も求められる経済政策は、物価高を上回る賃上げです。しかし、岸田総理からは、賃上げの号令だけで具体策がありません。唯一あるのが法人税の減税ですが、その恩恵を受けるのは自民党へ多額の献金をしている大企業ばかりで、既に大企業には様々な優遇税制があり、今、国が政策的に支援しなければならないのは、日本の雇用の七割を支えている中小企業ではないでしょうか。

 私たち立憲民主党は、最低賃金を段階的に千五百円まで引き上げます。しかし、そのためには、中小企業への公的支援とセットで進めなければなりません。正社員として雇用したくてもできない大きな原因が、社会保険料の企業負担です。この負担を国が支援する政策、非正規で不安定な労働者を正社員にする企業の社会保険料の負担を軽くする政策こそ、最も有効な賃上げ政策ではないでしょうか。

 今国会は、外国人技能実習生の制度改革と、重要なテーマがあります。

 私の地元も、農業、介護、建設など、あらゆる分野で深刻な人手不足、現場は事業継続の危機に陥っています。少子高齢化と人口減少が加速する地方の経済社会を維持していく上で、外国人の方々の労働力は必要不可欠です。そして、私たちの国が外国人の方々から選ばれる国であるためには、様々な課題が現場にあります。

 地元の農家さんを訪ね、そこで働くベトナム人の技能実習生から話を伺うことができました。今の日本の制度で何か変えてほしい点はありますかと尋ねると、ベトナムの私の友達たちは本当はもっとたくさん日本に来たいと思っている、しかし、最初に百万円ぐらいのお金が必要で、そのお金がなくて日本に来られない。まさに当事者の生の声です。

 大きな借金を抱えて日本に来る実習生、又は、その借金もできず、日本に来たくても来られない外国人が多数存在しています。なぜ借金が必要なのか。仲介業者、いわゆるブローカーです。送り出し国と日本政府による二国間協定によってブローカーを徹底排除する、まずは重要な改革です。

 総理、新制度では、外国人の方が日本に働きに来るのに大きな借金を背負わずに済むのでしょうか。お答えください。

 外国人の受入れ企業、その複数の経営者からも話を伺いました。本来であれば時給千五百円ぐらい払っているけれども、実際に実習生には最賃ぐらいの時給になってしまうと。理由を尋ねると、住環境など初期投資だけでなく、毎月の監理費を二万円払っている。また、別の経営者からは、一人当たりの監理費を三万円毎月払っている、受入れ企業にとっては監理団体の仕事が不透明で、せめて半額ぐらいになれば、実習生の住環境をより充実でき、より仕事のモチベーションを上げられるのではないか、このように言われていました。

 受入れ企業が監理団体に払う毎月の監理費が減額されていけば、間違いなくその分、外国人労働者の賃金アップや福利厚生の充実が図られます。

 総理、受入れ企業の負担軽減のため、公的機関に監督させることとし、監理費の負担をなくす改革が必要ではないでしょうか。

 多額の借金を抱えて日本に来る。最低賃金レベルの給与から借金返済を強いられ、生活苦に陥っていく。生きるために、より稼げる環境を求め、逃げ出す。オーバーステイになり、在留資格がなくなり、入管庁へ収容される。これまでのこの負のスパイラルを生まない有効な対策が、入口のブローカーの排除、実習生や受入れ企業の費用負担の軽減です。この制度改革なくして外国人との真の共生社会は実現しません。

 そして、私たちのこの国が選ばれる国であるために、外国人労働者が地域で差別を受けることなく安全に生活できる、多文化共生社会を実現する法制度が必要です。

 私たち立憲民主党は、一昨年六月、多文化共生社会基本法案を国会に提出しました。外国人との真の共生社会をつくるため、多文化共生庁を新たに設置し、国による差別禁止を法制化すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 辺野古新基地建設工事についてです。

 私たち立憲民主党は、地方自治と沖縄県民の民意を無視した辺野古新基地建設強行に強く抗議いたします。

 繰り返し玉城知事が国に対話を求めてきたのに対して、国は、対話することなく代執行を強行し、一月十日に米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた大浦湾側の工事に着手しました。公共事業の代執行は日本で初めてで、憲法で保障されている地方自治を完全に崩壊させる暴挙です。沖縄県民の思いを問答無用と言わんばかりに踏みにじり、住民の皆様との対立はますます深まるばかりです。総理の聞く力は、一体どこに行ったのでしょうか。

 防衛大臣や官房長官だけではなく、今こそ総理自らが、沖縄県との対話による抜本的解決を目指すべきではないでしょうか。岸田総理は、玉城知事に直接会って真摯に説明し、沖縄の声を聞くおつもりがあるのでしょうか。

 被爆者問題についてです。

 長崎を最後の被爆地へ。広島出身の総理とは、この思いを共有しているはずだと信じています。長崎の被爆者は、被爆体験者として今なお差別を受け続けています。黒い雨訴訟の後、広島では新たな被爆者救済制度が始まりました。しかし、もう一つの被爆地である長崎は、その救済の対象外とされました。広島も長崎も同じ被爆地であり、同じ戦争被害者です。

 広島一区選出の岸田総理へ伺います。

 総理は、この国の救済制度が被爆地で差別され続けていいとお考えなんでしょうか。戦争被害者の救済なくして戦後は終わりません。広島の新たな救済制度は、当時の菅総理の政治決断によって始まりました。今度は岸田総理の政治決断によって、長崎の被爆体験者を被爆者と認めてもらえないでしょうか。被爆者の皆さんの平均年齢は八十五歳になりました。いたずらに時間を使うわけにはいきません。心より総理へお願い申し上げます。

 核兵器禁止条約が発効して三年がたちました。国際NGO、ICANのメリッサ・パーク事務局長は、日本政府に対し、唯一の戦争被爆国という立場だからこそ道義的な指導力を示すことができるはずだとして、まずはオブザーバーとして締約国会議に参加するよう求めています。私たち立憲民主党もこれまで国会で何度も訴えていますが、核兵器保有国が一か国も参加していないことなどを理由に参加しようとしません。これは全く理由になっていません。

 総理、日本と同じように核保有国の核の傘にあるドイツのような複数の国々が、既にオブザーバー参加しています。日本も、せめてオブザーバー参加すべきではないでしょうか。オブザーバーですら参加できない理由があるのであれば、明確にお答えください。

 昨年十月、核兵器禁止条約への参加を求め、外務省へ四万三千筆の署名を提出した元高校生平和大使で大学生のお二人から話を伺いました。お二人とも、ウィーンでの第一回締約国会議、ニューヨークでの第二回開催も現地へ行き、世界中から集まった市民社会と対話され、なぜ日本政府は参加しないのか、そういう声が日本から来た彼女たちへたくさん寄せられたそうです。総理は、核兵器禁止条約は出口戦略として重要だと言われています。しかし、彼女たちはこう言います。核兵器禁止条約は、核兵器なき世界をつくるための出口ではなく入口であると。

 総理、核兵器は安全保障ではなく人権問題です。原爆の非人道性を真に訴えられる唯一の国が日本であり、被爆地広島出身の岸田総理なのではないでしょうか。未来永劫、長崎が最後の被爆地であり続けるために、核兵器の廃絶を本気で成したいと総理は思われていますか。お決まりの官僚答弁ではなく、戦争被害者である被爆者の方々やその支援者、そして、核兵器なき平和な世界を願う全世界の皆様へ、総理のお言葉でお答えください。

 最後に、国民の皆様へ。

 私たち立憲民主党は、お金の力ではなく、国民の声で動く真っ当な政治へ。国の予算が、献金力のある企業や業界団体にばかりつくのではなく、お一人お一人の生活者へ真っすぐ届く政治へ。誰もが安心して子育てや老後を暮らせる社会へ。子供たちの笑顔と未来を守るために全力を尽くします。今の金権政治を終わらせ、もっとよい未来を一緒につくりましょう。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 山田勝彦議員の御質問にお答えいたします。

 清和政策研究会及び志帥会における政治資金収支報告書の不記載の状況についてお尋ねがありました。

 お尋ねについては、まさに現在、自民党の各政策集団、議員側の政治団体において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところであり、今この時点における正確な数字をお答えすることは困難ですが、党としても事実関係の把握を進めているところであり、今後、適切な時期に説明責任を果たしてまいります。

 二階前幹事長の政策活動費の使途についてお尋ねがありました。

 政策活動費は、各党によってその呼称は様々であるものの、政党などの政治活動のために用いられるものと承知しており、その使途の公開は政治活動の自由とも密接に関わる問題です。したがって、その使途を明らかにする場合には、各政治団体共通のルールに基づき行うべきものと考えており、政策活動費の使途についてお答えすることは差し控えます。

 なお、我が党の政策活動費は、党に代わって党勢拡大や政策立案、調査研究を行うために党役職者の職責に応じて支出しているものであり、これらの目的に沿って適切に使用されているものと認識をしております。

 私の内閣総理大臣就任を祝う会についてお尋ねがありました。

 お尋ねの会は、地元の政財界の皆様が発起人となり、また、皆様が集まって結成した、政治団体とは異なる任意団体に開催していただいた純粋な祝賀会であると認識をしております。地元の政財界の皆様の御厚意で開催していただいた会に関し、それを続けるか否かについて、私はお答えする立場にはありません。

 自民党における政治資金収支報告書の不記載の問題に関する調査方針についてお尋ねがありました。

 現在、自民党の各政策集団、議員側の政治団体において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところであり、党としても、これらの状況を把握するとともに、関係者への聞き取りを行うこととしております。聞き取りの進捗状況を踏まえながら、党として必要な説明責任を果たしてまいります。

 食料自給率についてお尋ねがありました。

 食料自給率については、二〇三〇年度に四五%との目標を掲げています。それに向け、過度に輸入に依存している麦、大豆、飼料作物等の国内生産の拡大を一層進めるとともに、需要に対応した農業構造への転換を図っています。

 今後、現下の諸情勢の変化を踏まえ、食料・農業・農村基本法を改正した上で、国内外の食料需給の動向などを踏まえつつ、食料の安定供給の確保に係る適切な目標の設定と施策体系の見直しを進めてまいります。

 農業の機能と国民理解、農家への所得補償についてお尋ねがありました。

 農業の多面的な機能については、国民全体が享受するものであり、今後とも、その重要性について国民の理解が深まるよう取り組んでまいります。

 また、農家の所得向上に向けた支援の在り方については、農業を取り巻く課題に応じて必要な政策を実施していくことが重要です。議員御指摘の戸別所得補償制度ですが、戸別所得補償制度については、米への支払いを基本とすれば、需要のある作物への転換が進まないおそれがあります。主食用米の需要の減少が続く中、収入保険制度等により農業経営の安定を図りつつ、主食用米から野菜などの需要のある作物への本格的な転換を一層進め、生産性の向上や輸出促進を支援すること等によって農業の所得向上を図っていく、これが政府の考え方であります。

 新規就農施策についてお尋ねがありました。

 新規就農施策については、平成二十四年度より最長五年間の資金交付等の支援を行ってきましたが、支援対象者が就農後の早い段階で所得を確保できる仕組みとなるよう、令和四年度からは、資金支援を三年間にして継続しつつ、新たに、機械、施設導入等の初期投資への支援や就農後の技術サポートを含む総合的な支援施策を追加したところであります。

 また、資金支援については、生活費確保の観点から、支援の必要性の高い方に活用されるよう所得要件を設けていますが、所得が基準を超えても、支援対象とすべき切実な実情がある場合には、市町村の判断により支援が可能となっている、こうした制度となっています。

 漁業用燃油の高騰対策事業についてお尋ねがありました。

 本事業においては、交付補填財源に関する漁業者と国の負担割合について、事業創設時は一律、一対一でしたが、燃油価格の高騰に応じて拡充を図り、現下の燃油高騰に対しては、漁業者一に対して国の負担割合を三として、強化した支援内容で事業を実施しています。

 今後とも、風評被害対策を適切に実施しつつ、燃油価格高騰の影響を抑え、漁業経営の継続、安定が図られるよう対応してまいります。

 離島振興についてお尋ねがありました。

 離島の公共事業関係費は主要事業の完了等に伴って減少しておりますが、近年は、定住や交流促進などソフト事業に対するニーズが増しており、これに対応した離島活性化交付金を創設し、必要な事業への支援を実施しているところです。

 また、離島航路については、日常生活に不可欠な足の確保の観点から住民を対象として運賃割引補助を行う一方で、観光客に関しては、離島ならではの観光コンテンツ作り等を通じて誘客支援を実施しているところです。

 今後とも、関係自治体とも連携し、我が国の領域や排他的経済水域の保全等の重要な役割を担う離島の振興に全力で取り組んでまいります。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。

 中小企業の賃上げ実現に向け、労務費転嫁の指針の活用を含め、価格転嫁を産業界に働きかけるとともに、賃上げ促進税制の拡充や省力化投資など生産性向上の支援を強力に進めてまいります。

 また、最低賃金については、公労使三者構成の最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかりと議論をいただき、その積み重ねにより、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が一千五百円となることを目指してまいります。

 なお、社会保険料の事業主負担については、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であり、また、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じて事業主の利益にも資することから事業主に求められているものであり、その減免については慎重な検討が必要であると考えています。

 技能実習制度の在り方についてお尋ねがありました。

 技能実習制度については、有識者会議の最終報告書等を踏まえ、発展的に解消して新たな制度を創設すべく、検討を進めているところです。

 悪質な送り出し機関の取締りの強化、手数料負担の軽減策の導入、監理団体や受入れ機関を監督指導している外国人技能実習機構を改組して機能を強化することなどについても、今検討を行っているところです。

 外国人材の適正な受入れ方策について、政府としての方針を速やかにお示しすべく、検討を進めてまいります。

 外国人との共生及び差別の禁止についてお尋ねがありました。

 御指摘の議員立法については、国会において御議論いただくべきものであると考えますが、政府としては、令和四年六月に外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等を決定し、取組を着実に進めているところです。

 政府としては、外国人を含め、全ての人が、お互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らすことができる社会を目指して、しっかりと取組を進めてまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。

 政府としては、辺野古移設が、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去するための唯一の解決策と考えています。

 これまで、私自身、玉城知事を始め地元の皆様と対話を行ってまいりましたが、今後とも、様々な機会を通じて地元の皆様への丁寧な説明を行いながら、移設工事を進めてまいります。

 被爆体験者の救済についてお尋ねがありました。

 長崎の被爆体験者に対し被爆者健康手帳を交付することについては、長崎の被爆地域でない地域では原爆放射能の影響を受けたとは言えないなどとした過去の最高裁判例との整合性など、難しい課題があると考えています。

 政府としては、被爆体験者の方々に対し、昨年四月から医療費助成の対象を拡充しており、引き続き、長崎県、長崎市の意見もよく伺いながら、どのような対応が可能なのか検討をしてまいります。

 核兵器禁止条約及び核兵器廃絶に向けた決意についてお尋ねがありました。

 私も、外務大臣時代から数多くの核軍縮関連の国際会議に出席をしてきましたが、核兵器国を動かさなければ、核軍縮をめぐる現実は何も変えられないという厳しい現実を何度も突きつけられました。

 核兵器禁止条約へのオブザーバー参加について御指摘がありましたが、先ほど述べたような核軍縮をめぐる厳しい現実を、核兵器のない世界という理想に向けていかに近づけていくのか、そのための現実的かつ実践的なロードマップを具体的に示すことが、唯一の戦争被爆国としての日本の使命であると私は考えております。

 こうした考えの下、G7広島サミットでは、核軍縮に関する初めてのG7首脳独立文書として取りまとめた核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンに基づき、一歩一歩、現実的、実践的な取組、これを継続し、そして強化していきたいと考えております。(拍手)

     ――――◇―――――

井野俊郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二月一日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(海江田万里君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(海江田万里君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    小泉 龍司君

       外務大臣    上川 陽子君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  坂本 哲志君

       経済産業大臣  齋藤  健君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    新藤 義孝君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    土屋 品子君

       国務大臣    林  芳正君

       国務大臣    松村 祥史君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 村井 英樹君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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