衆議院

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第9号 令和5年3月29日(水曜日)

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令和五年三月二十九日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    尾崎 正直君

      大野敬太郎君    神田 潤一君

      工藤 彰三君    小寺 裕雄君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      田野瀬太道君    平  将明君

      中野 英幸君    中山 展宏君

      西野 太亮君    平沼正二郎君

      牧島かれん君    松本  尚君

      中谷 一馬君    太  栄志君

      本庄 知史君    馬淵 澄夫君

      山岸 一生君    岩谷 良平君

      浦野 靖人君    堀場 幸子君

      河西 宏一君    福重 隆浩君

      浅野  哲君    塩川 鉄也君

      緒方林太郎君    大石あきこ君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (海洋政策担当)     谷  公一君

   国務大臣

   (共生社会担当)

   (男女共同参画担当)   小倉 將信君

   国務大臣

   (新しい資本主義担当)

   (新型コロナ対策・健康危機管理担当)

   (全世代型社会保障改革担当)

   (経済財政政策担当)   後藤 茂之君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   高市 早苗君

   国務大臣         岡田 直樹君

   内閣官房副長官      木原 誠二君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   文部科学副大臣      簗  和生君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     自見はなこ君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   内閣府大臣政務官     西田 昭二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            城  克文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鹿沼  均君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  林   学君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  廣瀬 健司君

   政府参考人

   (内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室次長)           柳樂 晃洋君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   松浦 克巳君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          柳   淳君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   原  宏彰君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 吉岡 秀弥君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小川 康則君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   村山  裕君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            岡田 恵子君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官)            奈須野 太君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        村田 茂樹君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  山本  仁君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    渡邊 国佳君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    原  和也君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            川崎  暁君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          片岡  進君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   楠  正憲君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            小笠原陽一君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     木村 公彦君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁在留管理支援部長)       君塚  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   前田  努君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           原  克彦君

   政府参考人

   (文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官)  森友 浩史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           青山 桂子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           朝川 知昭君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房施設監) 杉山 真人君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           上田 幸司君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 田部井貞明君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 茂木  陽君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     西野 太亮君

  平井 卓也君     神田 潤一君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     平井 卓也君

  西野 太亮君     平  将明君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣提出第二三号)

同日

 特定秘密保護法の撤廃に関する請願(本村伸子君紹介)(第六一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣提出第二三号)

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官城克文君外九名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。青柳陽一郎君。

青柳(陽)委員 立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 時間が短いので早速質疑に入りたいと思いますが、総理、今日はよろしくお願いいたします。

 総理は、昨日、予算案成立後のインタビューで衆議院解散について問われましたが、否定していません。そうすると、この間、日韓首脳会談、日独首脳会談、インド訪問、ウクライナ電撃訪問、予備費のばらまき、広島サミットの政治利用など、自身の選挙パフォーマンスに見えてしまいます。

 我々はもちろん政権に対する対立軸をこれからも示してまいりますが、総理、国民に問う信は何ですか。まさか保身のための解散ではないですよね。伺います。

岸田内閣総理大臣 まず、解散などということについては全く言及しておりません。

 私が申し上げたのは、今、統一地方選挙、それから衆参の補欠選挙、そして今目の前にある先送りできない様々な課題に取り組むこと、それに尽きると申し上げた次第であります。

 それ以上のことは考えておりません。

青柳(陽)委員 それでは、特措法の質疑に入ります。

 今般の新型コロナウイルスのような有事が発生した際、司令塔機能の抜本的強化、そしてこれまでのコロナ対応を徹底的に検証すると言ったのは、これは岸田総理の言葉です。これについては私も全く同じ認識ですが、総理、これまでのコロナ対応、徹底的に検証されましたか。

岸田内閣総理大臣 検証ということでは、昨年、まずは新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議で検証を行うとともに、次の感染症危機に向けた中長期的な課題を整理し、取りまとめました。その中で、次の感染症危機に備え、危機に迅速的確に対応するための司令塔機能を強化し、一元的に感染対策を指揮する体制が必要である、こういったことが指摘されたことを踏まえて、現在御審議いただいている法案提出に至ったということであります。

 政府としては、新型コロナ対策の終息に向けた取組、これを着実に進める、それと同時に、内閣感染症危機管理統括庁の設置を含めた次の感染症危機への対応を具体化していく、これが重要だと思います。

 そして、検証については、これは引き続き、戦いが続いているわけでありますので、不断の検証を行うことにより次の備えに反映させていきたい、このように考えております。

青柳(陽)委員 今お話のありました有識者会議のメンバーも、今総理からはこれからも検証を続けていくという答弁がありましたが、是非続けていただきたい。有識者会議のメンバーも、まだ検証が足りていない、また、今回の有識者会議の結論についてはそもそも期間、期限ありき、結論ありきだったという指摘もあります。ですから、今、現段階でも、私は総理の言う徹底検証がなされていないという認識です。

 特に、この間、訴訟でも敗訴したアベノマスク、それから一斉休校については、検証された跡がありません。専門家の意見やエビデンス、データ、税金の使われ方、どれを取っても、このアベノマスクについては政策判断としては間違っていたんじゃないかというふうに思いますが、見たいものだけ見て、そして見たくない現実は検証していない、これでは改革につながらないと思います。

 総理は、このアベノマスク、一斉休校についてどのように評価し、そしてどのように検証されているのかについて伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 個別の課題、御指摘のアベノマスク、さらには一斉休校ですとかダイヤモンド・プリンセス号における感染拡大ですとか、あるいはCOCOAの効果ですとか、そうした様々な課題、指摘があります。こうした個別の施策の効果等の検証については所管省庁においてそれぞれ実施しており、その上で引き続き適切な判断を行っていくべきものであると考えております。

 御指摘の点も踏まえて、今回のコロナとの戦いにおいて様々な検証しなければいけない課題、本当に多くの省庁にまたがっております。それぞれの省庁において、所管分野において検証を実施していくことが重要であると考えています。

青柳(陽)委員 個別の事業とおっしゃいましたけれども、今申し上げたアベノマスク、これは国家プロジェクトに近いですよね、国民全員にマスクを配る。あるいは一斉休校、これも個別の事業とは言えない、全国に影響のあった事業ですから。

 この評価について、総理、どう考えているのか、お答えください。

岸田内閣総理大臣 当時、未知の感染症との戦いの中で、マスクが国民の中で不足している、大きな社会問題になっていました。こうした社会問題に対して政府として具体的に対応しなければならない、これは当然の役割であると思います。その中で、一つの手段としてこのアベノマスクという施策を用意したということであります。

 その当時の切迫した状況を考えた中で、一つの政策として政府がこうした対策を取ったということについては、理解しなければならないと思っております。

青柳(陽)委員 今回の問題は、科学者の意見とかエビデンスとか感染症に対してどういう効果があるのかというものと政治判断、政策判断があったんですが、私は、政治判断、政策判断が先にありきということを今後慎んでいかなきゃいけないというのが今回の教訓だと思っていますので、この二つの事業についてはもう少し踏み込んだ検証が必要だというふうに思っています。

 もう一つは、税金の使い道です。これも検証されていない。会計検査院は、コロナ対策予算、令和元年度から三年度、千五百二十九事業、九十四兆円について、不用額四兆円と指摘していますが、財務省は全く精査する気がないというのがこの国会の議論で分かりました。

 そして、もう一つ大きな問題は、予備費の積み増しです。コロナ発生前、予備費は通常五千億円程度です。それが、毎年五兆円、十兆円と積み増すことが常態化しています。予備費は、国会審議で内容を追えない、そして政権の財布代わりに使われてしまうという予算です。コロナ対策以外に流用されたという指摘もあります。予備費の問題は、与野党を超えて、国会で問題意識を共有すべきだと思いますよ。これはきちんと精査しなきゃいけない。

 コロナ予算の精査と、そしてもう一つ、国会の機能を低下させる巨額の予備費の積み増しはもうやめて、通常額に戻していく。総理、約束してください。

岸田内閣総理大臣 これまでの新型コロナ対策の関連予算については、未知の危機に対応して国民の命と健康を守り抜く、これを最優先に、医療提供体制を構築していくための支援、あるいはワクチン接種体制を整備するための支援など、切れ目なく行ってきたところです。

 そして、まず、関連予算について御指摘がありましたが、新型コロナ対策の関連予算の使用についての検証ということにつきましては、将来の感染症対応や今後の予算編成につなげるためにも、個々の事業や施策について言及されている会計検査院の報告のほか、行政事業レビューなども活用しながらしっかり評価を行い、これまでの新型コロナ対応の検証を進めていくことが重要であると考えます。

 そして、予備費についてですが、補正予算で予備費を積み増すこと等については、絶えず予備費の在り方ということについてしっかりと必要性を確認していくことは大事だとは思いますが、御指摘のケースの場合、新型コロナや物価高騰等による予期せぬ財政需要に迅速に対応し、国民の安心を確保するためのものであり、これは必要なものであったと政府としては考えております。

 そして、使用についても、新型コロナの感染状況を踏まえて、国民の皆様に迅速な支援をお届けするために緊急かつ機動的に対応する、そうしたことのために必要な、適切な対応であったと考えているところであります。

青柳(陽)委員 時間が来ましたので終わりますが、総理は当初、健康危機管理庁を創設するという提案をしていました。しかし、今回の統括庁は、専門家もいない、充て職ばかりで、三十八名の組織です。これは単なるコロナ室の看板のかけ替えじゃないかということを指摘して、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

大西委員長 次に、中谷一馬君。

中谷(一)委員 立憲民主党の中谷一馬です。

 岸田総理、本日はよろしくお願いします。

 私からは、まず初めに、本法案に関してAIが岸田総理に問うべきと考えている質問について伺います。

 話題の生成AIであるチャットGPTにこんなことを聞きました。あなたが日本の衆議院議員だとしたら、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案に関して、岸田文雄総理大臣へ国会でどんなことを質問すべきだと考えていますかと問うたところ、こちらのような、一例として、パネルのような返答がありました。

 この質問自体は二十秒ほどであっという間に生成されましたが、同じことを繰り返し聞くと違う内容の返答がありまして、答えとしては誤っている内容もありましたが、幅のある回答が生成され、いよいよAIもこのレベルまで来たかという所感を持ちました。

 そして、この度、関係各所に調査を依頼したところ、AIが生成した質問を国会で行い、総理が答弁した事例は確認されておらず、日本の憲政史上初めてということになるかと思いますので、本改正法案について抜粋した一問をそのまま読み上げ、質問をさせていただきます。

 改正法案に関して、地方自治体や医療現場の関係者の意見を十分に反映させているのかどうか、そして改正法案に対する関係者の反応について教えてください。

岸田内閣総理大臣 新型コロナ対策については、昨年、新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において、経済団体、地方団体、医療関係団体等から、意見聴取も含め、熱心な議論をいただき、対策の検証を十分に行うとともに、次の感染症危機に向けた中長期的な課題、これを取りまとめていただきました。

 その際に、全国知事会、全国市長会等の地方団体や、日本医師会、日本看護協会、日本病院会等の医療関係団体とも意見交換が行われており、今回の法改正は、最前線で感染症対応に当たられた地方自治体や医療現場の声を反映して整理された課題等を踏まえて立案されたものであると考えております。

 そして、この法案に対する反応については、全国知事会とは、後藤大臣の下、日頃から定期的に意見交換を実施していると承知をしており、例えば、政府対策本部長による指揮権が発動される場面及び要件を明確化すること等の意見、要望をいただいているところ、今回の法案は、いただいた意見、要望に十分応えている改正になっていると認識をしております。

中谷(一)委員 AIが生成した質問に対して、総理に答弁をいただきました。将来、AIに関する日本の歩みが歴史として語られるときには、もしかしたらこの国会での答弁が引用される時代が来るかもしれません。

 関連してもう一問伺いますが、先ほどの質問について、チャットGPTに、あなたが日本の総理大臣だとしたら、国会で問われた際にどのように返答するか教えてくださいと尋ねたところ、パネルのような返答がありました。

 私的には、私は、総理の答弁よりも、もしかしたら誠実でピントが合っているんじゃないかなということを思ったんですが、答弁された総理から見て、御自身の答弁と進化した生成AIの答弁を比較して、どのような所感を持たれましたか。教えてください。

岸田内閣総理大臣 今さっと見ただけですので、十分理解しているかどうか定かではありませんが、少なくとも、ぱっと見た場合に、先ほど私が申し上げた答弁、地方自治体、医療現場の関係者から多くの意見や提言が寄せられていますというチャットGPTからの回答の部分についても、より具体的に、全国知事会、市長会を始め具体的な関係者の名前を挙げているという点において、より実態を反映した答弁をさせていただいたのではないかと感じてはおります。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 岸田総理、私は今のはすごくいい答弁だったなと思っていて、というのも、やはりそれだけまだ学習が足りていないんだと思うんですね、このAIが。

 それで、実は三問目の提案につながっていくんですが、私は、この生成AIを活用すれば、立法府や行政府の生産性や透明性を著しく向上させられる可能性があるということを思っています。

 というのも、例えば、弁護士がウェブ上で無料相談に応じる、みんなの法律相談を運営する弁護士ドットコムが、チャットGPTを使った新たな無料法律相談サービスを今春始める方針を明らかにしています。これまでに蓄積をした百万件以上の法律相談のやり取りをAIに学ばせ、法律的な見地から正しいコメントをする相談専用の対話型AIをリリースする計画ですが、この方法は、日本の立法府、行政府でも同様のサービスをリリースすることができます。

 機密情報を除く、公開されている立法府、行政府双方の議事録や資料をAIに読み込ませ、正しい見地からコメントを生成できる対話型AIをリリースすることができたならば、立法府、行政府に携わる者の生産性を飛躍的に向上させるのみならず、国民にとっても、立法府、行政府で行われてきたことが分かりやすくなり、透明性、公正性が格段に高まります。

 そこで、行政府の長であり、立法府の与党総裁である岸田総理に伺いますが、立法府、行政府の公開されている情報を学習させた対話型AIの開発を進め、デジタル民主主義を進化させる考えはありませんか。教えてください。

岸田内閣総理大臣 近年、AI開発の世界では、多種かつ多量のデータを用いた大規模な学習を行う手法が確立され、御指摘のチャットGPTのような生成AIに著しい進化が起きている、こうした話を聞いております。

 こうした生成AIでは、一定の誤り情報が含まれ得るなどの課題はあるものの、あたかも人間のような自然な対話のほか、言葉による指示を通じたプログラミングなどの作業支援も可能である、こうした点は大きな可能性を有しているとも承知をしています。そして、生成AIを適切に使用することにより、今後は、行政に関わる職員がより多くの情報を効率的に利用する、あるいは高度な情報処理を行うことができるようになるといった可能性があるとも認識をしています。

 ただ一方で、行政においてセキュリティーを確保した上で生成AIを活用するに当たっては、費用面やデータの取扱い、また、AIを政府自身が独自に開発することが適当かどうかなどについて整理すべき点もあることから、その活用の進め方については、今後検討を進めてまいりたいと考えます。

中谷(一)委員 御答弁をいただきました。

 公開されている情報であれば、そもそもチャットGPTのような外部サービスを使って安価にこうした対話型AIを作ることもできると思いますし、仮に政府自身が大規模な言語モデルを自ら開発したとしても、これは数百億円程度でできますから、その費用は、これから来るAI革命時代にとっては、私は、その波に乗っていくということを考えれば安価な投資だと思いますので、是非、自前のAIを開発することも含めて御検討をいただきたいということを思っております。

 それでは、次に、今国会での諸課題について総理はどのように考えているかということを伺いたいと思うんですが、今国会では、現在六十二本の閣法が審議されており、十四本が衆議院を通過し、四十八本が審議中、未付託となっています。

 そうした中、報道等では、岸田政権の支持率が回復をして、岸田総理も自信を深めていることから、早期に衆議院を解散しようという自己都合の解散論がささやかれていると報じられています。その点、先ほど青柳委員からも質問させていただきましたが、明確に否定されておりません。

 その中で、総理、あなたは、総裁選で掲げられていた令和版所得倍増も子供関連予算も、まだまだ倍増の実現はなされておりません。そうした中で、防衛増税の負担だけ押しつけての解散、こういったものは国民の理解が到底得られるとは思えません。その中で、もし仮にそんな暴挙が行われたならば、もちろん私たち野党は、きっちりと政権を交代させていただき、真に国民のための政治をやっていく覚悟を持っております。

 総理、確認をさせていただきたいと思いますが、あなたは今、衆議院の解散を考えていますか、いませんか。イエスかノーかで明確にお答えください。

岸田内閣総理大臣 まず、イエスかノーかということですが、今、衆議院の解散、考えておりません。

 おっしゃるように、今、防衛力の強化ですとかエネルギー政策の転換ですとか、あるいは子供、子育て政策ですとか、先送りできない課題、これにしっかりと向き合い、そして今、国会で議論が行われておりますので、説明責任を果たしていく、これに尽きると思っております。こうした政策にしっかり取り組んでいく。

 衆議院の解散権は総理の専権事項でありますが、まずは今、こうした政策に取り組むことが第一であると考えております。

中谷(一)委員 是非、総裁選でお約束した政策というものを、国民が期待しているものをしっかりと実現をしていただきたいと思います。

 その中で、特措法の関連でも、統括庁の話、これも先ほど青柳さんから少し触れさせていただいたんですけれども、この度創設される内閣感染症危機管理統括庁は、総理が総裁選当時に創設するとしていた健康危機管理庁とは異なるように感じますが、感染症のみではなく健康危機全般に対応する健康危機管理庁の創設は諦められたんでしょうか。教えてください。

岸田内閣総理大臣 御指摘の総裁選挙において訴えさせていただきました健康危機管理庁は、公衆衛生全般に対する対策ということで訴えさせていただいたものではありますが、当時、総裁選挙が行われた時期から考えましても、広く公衆衛生といいましても、やはり感染症対策、これが念頭にあったということは間違いありません。

 ですから、今回、内閣感染症危機管理統括庁、これは、訴えておりました健康危機管理庁、健康に対して訴えた私の組織をより具体化したものであると認識をしております。

中谷(一)委員 やはりスモールになっているんですよね。おっしゃられていたのは、もっと大規模な、オールハザード型の一元組織だったんじゃないかなということを思っていたわけなんですけれども、感染症のみでやっていくということであり、なおかつ、今回、これも青柳さんからも指摘もありましたけれども、庁という名前がついているんですけれども、レベル的には局だったり室レベルの組織ですよね。

 そういったものを踏まえたときに、私たちも、首相直轄の司令塔機能を支える機関の必要性、これは理解をするんですけれども、本来はバイオテロだったり災害全般などオールハザード型の組織が必要だと思いますが、総理はその辺、どのように考えておられますか。

岸田内閣総理大臣 まず、感染症に係る危機管理については、通常の災害対応と異なり、医学や公衆衛生に係る専門的知見を踏まえた政策判断が重要であることを踏まえて、今回、法改正において、感染症危機管理に特化した組織をつくる、このようにしています。

 そして、御指摘のようなバイオテロや災害等の危機が発生した場合の指揮、司令塔機能については、内閣総理大臣の下、内閣危機管理監を始め内閣官房等が中心となって省庁横断的な取組を行う体制を整えている、こうしたことであります。危機発生時においての事象の様相あるいは推移に応じて対応できるように、統括庁、内閣危機管理監やその他の機関が連携し、迅速かつ的確に対応してまいりたいと思います。

 要は、バイオテロ、災害、複合的な危機に対しては、今申し上げた体制で臨む。そして、感染症については、より医学や公衆衛生に係る専門的知見を踏まえた政策判断が重要であるということを踏まえて、今御審議いただいている体制を用意した、こうしたことであります。

中谷(一)委員 私は、その体制では危機管理に対応し切れるかどうかというのはいささか不安でありますので、更にブラッシュアップの提言を続けてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、阿部司君。

阿部(司)委員 日本維新の会の阿部司です。

 新型インフルエンザ等特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案については、本会議や当委員会の質疑を通じて、各会派から様々な指摘がなされてきました。こうした議論を通じて国会から示されたのは、端的に言えば、この法律案で次のパンデミックに適切に対応して国民の命を守ることができるのか、このことに尽きると思います。私も、今回、岸田総理には、質問するに当たって、特にこのことを問うてまいりたいと思います。

 意思決定過程ですとか初動オペレーション、医療リソース不足、情報伝達の混乱、私権制限などなど、このコロナ禍の三年余りの振り返りと更なる検証は不可欠でありまして、しっかりと実施されることを改めて強く要望したいと思います。

 その上で、未知なる感染症に対応するために、単に司令塔機能を新たに設けるだけでは不十分でありまして、専門家の知見を生かしながら、政治が判断をして行政が実施するというガバナンスの利いた組織にしていくことが非常に重要であると指摘をさせていただきたいと思います。

 具体的な質問に入ります。

 まず、複合的な危機への対処という観点からお伺いします。

 内閣法第十五条では、内閣危機管理監が、内閣官房長官及び副長官の命を受け、危機管理を統理するとしています。一方で、今般の改正案では、感染症に係る危機管理は内閣感染症危機管理統括庁が所掌するとされています。

 先ほどからほかの委員からも指摘がありましたけれども、この危機管理統括庁は原則感染症対策のみを対象にしておりまして、危機の性質によって対応組織が異なるというような話でしたけれども、そのようなことで迅速に初動対応が可能になるのか。

 そして、そもそも危機を行政の縦割りで明確に区切ることは現実的ではないと考えております。感染症の菌をばらまくようなテロですとか、こうしたことは事態室が担うのか統括庁が担うのか。危機が単体で発生するとも限りません。地震、風水害、同時に感染症が流行するということも想定する必要があると思います。

 そこで、複合的な危機が発生した場合、迅速に初動対応をして国民の命を守ることのできる体制をどのように構築していくのか、改めて総理の御見解をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 要は、御指摘は、感染症対応と複合的な危機の対応、この対応について、どのようなそれぞれ対応をすることによって迅速に対応できるのか、こういった御指摘がありました。

 感染症に係る危機管理については、迅速な初動対応だけでなく、中長期的な視点での対応が求められること、また、医学や公衆衛生に係る専門的知見を踏まえた政策判断が重要であること、また、国民の行動によって影響の程度も変化するため、国民を巻き込んだ息の長い取組が求められることなどの点で、通常の自然災害や事故等への対応とは異なる特徴を持っている。こうした認識の下に、今回の法案では、新たな専門家組織として設置される国立健康危機管理研究機構の科学的知見を活用しつつ、感染症危機における司令塔機能一元化を担う組織として内閣感染症危機管理統括庁、これを設置するとしたわけであります。

 そして、危機管理、あらゆる危機事態に備えなければなりません。委員御指摘のような感染症危機とそれ以外の危機が複合した事象が発生した場合、例えば生物化学兵器の使用など感染症に係るテロが発生した場合にも、事象の様相や推移に応じて迅速かつ的確に対応できるよう、統括庁あるいは内閣危機管理監、こうした組織が緊密に連携して対応する、こうした対応を政府としては考えております。

阿部(司)委員 まず、複合危機が生じたときに、しっかりと初動対応をどうしていくかということをシミュレートしていく体制というのを構築していただきたいと思います。

 また、今回の統括庁に関して言えば、未知なる感染症への対応に備えて統括庁の司令塔機能の実効性を担保していくためには、統括庁の職員の皆さん、リーダーの、指揮を執る方を筆頭に、そのポジションに応じて感染症危機管理に関する研修、訓練の機会を設けて、知見ですとか判断力というものを養っていく必要があると思いますけれども、総理の御見解をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 昨年六月に取りまとめられた有識者会議の報告書において、行政各部が行う平時からの備えについて、複合的、一体的に企画立案するとともに、実践的な訓練も含め、きちんと機能しているか政府全体の立場からチェック、改善し、メンテナンスすること、こうした必要が指摘されており、平時からの研修や実践的な訓練も含めた感染症危機管理に関する人材育成、これは重要であると認識をしております。

 今回の法改正で内閣官房に設置する内閣感染症危機管理統括庁においては、このような観点から、感染症に関する知識や対応方法等について、職員の役職に応じた研修や訓練、これを行うこととしており、その具体的な内容については、できるだけ実践的なものとなるよう、今後、カリキュラムを整備してまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 階層別の危機管理のトレーニングの機会、プログラムを設けること、しっかりやっていただきたいと思います。

 次の質問に参ります。

 コロナ禍では、学校行事が中止になって、マスクを外したお友達の素顔も見ることなく、貴重な青春の期間をロスしてしまった若い世代が数多く発生してしまいました。

 こうした学齢期世代のコロナによる影響の実情を政府はどのようなものと把握をしているのか、文科副大臣にお伺いします。

簗副大臣 お答えいたします。

 学生や児童生徒等においては、三年以上にわたる感染症流行の影響で、様々な制約の下で学校生活を送ることを余儀なくされているものと認識をしており、様々な調査結果を注視しながら、コロナ禍が学生等に与えた影響を把握していくことが重要であると認識をしております。

 文部科学省で実施した関連する調査によりますと、例えば、大学生については、コロナ禍の令和二年度における大学卒業者の就職率は九六・〇%で、前年度と比較して二ポイント低下との結果が得られています。また、児童生徒等につきましては、コロナ禍の影響のみが原因であるとは断定はできませんが、コロナ禍による生活環境の変化が一因となったと考えられるものとして、例えば、令和三年度における小中高等学校の不登校児童生徒数が約三十万人になったという結果も得られているところでございます。

 文部科学省においては、こうした調査結果を踏まえながら、コロナ禍が学生等に与えた影響の状況把握に努めているところでございます。

阿部(司)委員 総理、ガクチカという言葉を御存じでしょうか。大学生が就職活動の面接で一番問われるのが、学生時代に一番頑張ったことは何ですかという質問なんですね。これをガクチカというんですけれども、コロナ禍で大学に入学した生徒は、入学式もなくて、リアルなクラスメートの顔を見る機会もなくて、パソコンのモニターをずっと見てオンライン授業を受けてきた、こういう日常を過ごしてきました。サークル活動ですとか学園祭ですとか、生涯の友人を得て、一つのことに共同して取り組んでコミュニケーション能力を培っていくような機会というものも失われてきた。その結果、このガクチカにもなかなか答えられないという実情があると言われています。

 お配りしております資料一を御覧ください。民間事業者のアンケート結果から抜粋させていただきました学生の声です。

 コロナにより、思い描いてきた学校生活を送ってこれなかった、留学を中止せざるを得なかった、アルバイトのシフトが減って生活が困窮して、中退せざるを得なかったといった生の声が寄せられています。

 こうした声を総理、どうお感じになられるでしょうか。コロナの制約の下でこうした学生生活を余儀なくされた世代をコロナロス世代と呼ばせないためにも、実態把握するとともに、所管をはっきりと定めて、継続したモニタリング及びフォローを行っていくべきと考えますけれども、総理の御見解、そして決意をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、コロナ禍によって様々な機会を失ってしまった若い方々に、今後、希望を持ってより活躍してもらう環境を整備するということは大変重要なことだと思います。

 足下、本年三月卒業予定の大学生の就職内定率、これは過去四番目に高い水準となっており、新型コロナの影響、これは落ち着きつつあるとは思いますが、しかし、政府として、今後も支援を続けなければならない、こういった認識で、卒業後三年以内の既卒者には、応募に当たり新卒扱いすることを経済団体に要請をしています。また、新卒応援ハローワーク等において新卒者及び既卒者に対するきめ細やかな就職支援を行う、さらには、就職後の職場定着のために在職者向けの相談窓口の設置などの支援を行う、こういった支援を行っております。

 文科省、厚労省におけるこうした取組を通じて、第二の就職氷河期をつくることにならないように、対策、支援を継続していきたいと思っておりますし、こうした世代の今後について、政府としてしっかりと注視をしていく、こういった姿勢は大事にしていきたいと考えております。

阿部(司)委員 就職氷河期世代へのフォローというのは決して十分ではなかったと思うんですね。この轍を踏まないように、しっかりフォローの方、御支援の方、よろしくお願いします。

 次に参ります。次は、医療DXに関してお伺いをしてまいりたいと思います。

 コロナ禍で、DXが非常に遅れているということが分かったと思います。そんな中で、将来また襲ってくるであろう未知なる感染症に備えて、我が国の医療DXはどうあるべきか、このコロナ禍の経験を踏まえて、後藤大臣の御見解をお伺いします。

後藤国務大臣 今委員御指摘のように、今回の新型コロナウイルス感染症対応におきまして、例えば、多数の患者の発生届、国民の多くを対象にしたワクチン接種などの医療機関や自治体等において必要な医療サービスを迅速に提供するために、デジタル技術の活用が求められることがあったわけです。

 また、我が国においては、疫学や臨床研究等で医療情報を利活用するための枠組みが不十分であったことがワクチンや治療薬の開発の遅れを招いた、そういう指摘もあり、反省もあります。

 こうしたコロナ禍における経験を踏まえて、今おっしゃったように、医療DXの推進は我が国にとって重要な課題であるというふうに考えておりまして、昨年十月には内閣に医療DX推進本部が設置されまして、医療DXの推進に関する工程表の策定に向けた検討が進められております。

 内閣感染症危機管理庁においても、次の感染症危機に備えまして、必要な情報を迅速かつ確実に取得できる体制整備や、医療機関等における情報入力等の負担軽減を図ることが重要であるというふうに考えて仕事をしていくことになります。

 いずれにしても、医療提供体制を所管する厚生労働省などの関係省庁と連携しながら、感染症対策におけるデジタル化を推進してまいりたいと思います。オンライン資格確認等システムを基盤とした全国医療情報プラットフォームの構築、こうしたものを進めていくことが重要だと思います。

阿部(司)委員 今、非常にこのコロナ禍でDXの遅れを痛感されたという御趣旨の御答弁と、医療DX推進本部が設置されたというお話がありました。

 これは、この骨子案を拝見したところ、推進本部のメンバーが、総理以下、官房長官、厚労大臣、デジタル大臣、総務大臣、経産大臣で、今御答弁された後藤大臣、新型コロナ対策・健康危機管理担当というのは入っていないんですよね。これは、感染症危機への対応という視点が薄い、弱いと言わざるを得ないと思います。

 配付資料二を御覧いただけますでしょうか。

 私は、この閣議決定文書は、目的のところで、未知なる感染症への対応も考慮した最適な医療の実現とすべきであって、本部長代理としてコロナ対策担当大臣も加えるべきと考えます。

 そこで、医療DX推進本部の構成員にコロナ対策担当大臣を加えて、工程表は、コロナ禍の検証を踏まえ、未知なる感染症への対応という視点を中心に据えたものとしていくべきと思いますけれども、総理の御見解をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 医療DX推進本部の構成員については、委員御指摘のとおりであります。

 コロナ禍の経験を踏まえた医療DX対応等、必要があると認めるときは、構成員以外の関係者の出席を求めることができることとしております。こうしたこの議論の必要に応じて、新型コロナ対策担当大臣についても必要に応じて会議への出席、これを求め、議論を深めていきたい、このように考えているところであります。

阿部(司)委員 これで終わりますけれども、この国会で御指摘申し上げたことを真摯に受け止めていただいて、この法律案が次のパンデミックに適切に対応して国民の命を守ることができるよう、足らざる点を補っていただけるようお願い申し上げまして、こちらで質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日時間がありませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、総理に伺いたいと思いますが、新型インフル特措法の対象となる感染症が発生している状況では、やはり現場における感染拡大を防ぐことが国民の健康と命を守ることに直結をいたします。それだけ感染拡大を早期に防ぐことが大事だということであります。

 しかしながら、今回、コロナ禍の中で都道府県側と国の判断が異なった際に、国の判断が優先された結果、都道府県がやるべきと考えたことや、国民のためにやりたいと考えたことができなかったこともたくさんあるというふうに聞いております。

 この法案では、政府対策本部長である総理の指示権の発動可能時期が前倒しされることが含まれておりますが、やはり危機管理の際には、リーダーは、指示を出すだけでなく、現場を支え、現場に委ねることも必要だと考えております。この指示権は最終手段としてできる限り発動を避け、感染リスクのある現場で戦う都道府県の判断を十分に尊重し、優先していただきたいと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 新型インフルエンザ等対策特別措置法においては、国は新型インフルエンザ等への基本的対処方針を定めて都道府県に示し、具体的な措置については、当該方針を踏まえて地域の実情をよく知る都道府県知事が判断して実施すること、これを基本としております。

 国と都道府県との間で取るべき措置に対する認識が異なる場合、こうした場合にも、現場で対応に当たる都道府県からよく地域の実情をお聞きした上で、緊密に意思疎通を図りながら対応してまいりたいと考えております。

浅野委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 続いて、後藤大臣にお伺いしたいと思います。

 都道府県が現場で迅速な対策を取るためにも、本法案の第七十条で規定された国の財政支援は不可欠だと考えております。しかし、地方創生臨時交付金は、感染症発生後に対策本部が設置され、その上で国が定めた額が地方に交付されるもので、機動性があるとはなかなか言い難い制度になっております。

 財政支援を機動的かつ効率的に行う方法として、あらかじめ都道府県と協議の上で、感染症が発生した際に機動的に拠出可能な危機管理財源を各都道府県に事前に割り当てておくことなども必要ではないかと思うんですが、是非後藤大臣の御見解を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 今回の新型コロナ対応におきましては、感染拡大防止や地域経済、住民生活の支援のため、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施できるように、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を創設し、財政支援を実施してきました。

 議員御指摘のとおり、次の感染症危機に向けて平時から感染対策について都道府県と協議しておくことは重要であるというふうに考えております。

 そのため、政府としては、今後、政府行動計画を見直すなど、平時の備えが有事においてしっかり機能するものとなるよう、都道府県等と密に連携しまして、PDCAサイクルを着実に推進していきたいと考えています。

 その上で、有事においては、特措法第七十条の規定に基づきまして必要な財政上の措置を検討することとなるわけでありますけれども、次の感染症危機において具体的にどのような財源や方法で財政支援を行うかということは、今回の新型コロナ対応や都道府県との平時からの協議内容も踏まえて、また、当該感染症危機の状況がどんなものであるかということもしっかりと踏まえた上で、所要の措置を講じてまいりたいというふうに考えています。

浅野委員 よろしくお願いいたします。

 続いての質問です。

 コロナ対応で発出された緊急事態宣言に基づく自粛要請なんですが、これは命令規定はございますが、罰則規定等はなく、法的な拘束力が弱いという指摘もされてまいりました。私は、直ちに罰則つきの強い行動制限が必要だとは今は考えておりませんけれども、次、どんな感染症が来るか分かりません。次なる危機に備えてこうした強い行動制限を検討する場合、今後、どういった枠組みでどこが検討していくのか明確にしておくべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御質問は、より強い行動制限について法整備を含めた検討はどこが行うのか、こうした御質問かと思いますが、このインフル特措法については、今回の法改正案で内閣感染症危機管理統括庁が所掌するということになっております。よって、御指摘のような検討は統括庁において必要に応じて行われることになるものと考えております。

浅野委員 統括庁が必要になった場合には行うということで、はっきり御答弁をいただきました。

 最後になります。

 この危機管理統括庁なんですが、やはり、省庁の縦割りの弊害を排してトータルで政府として感染症に対応していく、これが役割でありますが、感染症は海外で発生して日本にやってくる、今回もそういう事例でした。この海外との連携、相互協力などのやり取りというのは健康安全保障を守る上でも大変重要だと思いますが、危機管理統括庁もこういったことをやるのか、是非やるべきではないかと思うんですが、最後にお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 グローバル化の進展に伴い、今般の新型コロナのような、国境を越えて国際社会全体に感染が拡大する事態が発生しやすくなっており、国際機関や諸外国との連携強化はより重要になっています。

 そして、今後は、統括庁が、いわゆる日本版CDCと連携しつつ、感染症危機対応の司令塔機能として国際機関や諸外国との連携等の総合調整についても一元的に担うということにより、次の感染症危機に備えた国際連携をより一層強化し、国際的なネットワークの構築を図ってまいりたいと考えております。

浅野委員 終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 新型コロナウイルス感染症の感染者数の増大、それに伴って死亡者数が非常に増えております。波ごとに見ますと、第五波で死亡者の方は二千八百六十五人、第六波で九千七百九十六人、第七波で一万三千五百二十二人、第八波で二万一千四百二人と大幅に増加をしております。特に第六波から第八へと死亡者数が急激に増加をしております。

 総理、深刻な事態ではないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、新型コロナ感染拡大に際して亡くなられた方々の御家族の皆様方に心よりお悔やみを申し上げます。

 その上で、深刻な事態ではないかということですが、内容について今分析をしているところでありますが、いずれにせよ、多くの死亡者が発生したということについては、政府として重く受け止めなければならないと考えています。

 これまでのところ、新型コロナの人口当たりの死亡者数、これはOECD諸国の中でも非常に低い水準に抑えられると承知しておりますが、第六波から第七波にかけて、死亡者の急増については、増加の要因について、感染力が強いオミクロン株の流行により感染が拡大し、さらに、高齢者において基礎疾患の悪化により亡くなられるケースが多くなったことから、死亡者数が増える傾向になっていると承知をしております。

 要は、感染者の数が感染力の強いオミクロン株によって増えた、そのことによって、高齢者の方、あるいは基礎疾患や合併症を持っておられる方、こういった方々の死亡が増えた、こうしたことであると分析をしておるところであります。

塩川委員 重く受け止めているということで、なぜ死亡者数が増えたのかといった分析のところについては、オミクロンで感染力が強いことで感染者が増加をし、そういう中で高齢者、基礎疾患を抱える方などについての死亡者数が増加をしたというお話でありました。

 でも、元々、医療へのアクセスがどうだったのかというのが問われているわけであります。死亡者数が増加をしたのは、感染者数が大幅に増加をしたことで、医療の逼迫が起こって、入院加療など必要な医療が受けられない事態となったからではありませんか。

岸田内閣総理大臣 医療へのアクセス、病床の確保等については、昨年来、何段階にも分けて医療の充実に努めてきた。一昨年の夏の医療逼迫を念頭に、病床の数あるいは発熱外来に対するアクセスなど様々な工夫を加えて体制を充実させてきた、こうしたことでありました。感染者数、大幅に増えたわけですが、そうした感染者数の増加に対しても医療体制をしっかり備えていかなければならない、こういった体制の努力はしてきたところであります。

 しかし、オミクロン株については、感染力は非常に強いものの、例えば、自治体からの報告によれば、デルタ株流行期と比べて八十歳以上の致死率が四分の一以下となっているなど重症化が低下しているといった科学的な知見も示されています。

 それだけ感染者の数が多かったからして、こうした死亡者が増えたと認識をしておるところであります。

塩川委員 致死率が低下をしたとしても、死亡者数が急激に増加をしているところが問題なわけですよね。そういう点では、この間、体制を充実させてきたと言うけれども、それでも死亡者数は急激に増加をしたんです。

 それがそもそもどうだったのかの検証も必要ですけれども、この先の話でいえば、第九波もあります。医療機関の受入れ体制の拡充こそ必要なのに、政府が行っているのは、病床確保料の補助上限や診療報酬特例の重症者対応分を半分に減らすなど、現在のコロナ対応の医療機関を支える措置を後退をさせるものであります。やっていることが逆さまではありませんか。

岸田内閣総理大臣 コロナ対応については、御案内のとおり、五月から感染症法上の分類変更を予定しております。五類感染症への変更に伴って、幅広い医療機関で新型コロナの患者に対応する医療体制に段階的に移行を進めるとともに、引き続き、重症化リスクのある高齢者等に重点を置いた対応を行ってまいりたいと考えています。感染拡大が生じても、必要な医療が提供されるよう取り組んでまいります。

塩川委員 幅広い医療機関で対応する、そういう体制にシフトするということも言っているわけですけれども、全国自治体病院協議会の小熊豊会長らは、縮小された病床確保料や診療報酬特例では経営的に成り立たず、コロナ対応から撤退せざるを得ないと考える民間病院が出てくる、そうなれば公立病院のコロナ対応に負荷がかかり、公立病院も診療制限という悪循環に陥ると危惧をしております。医療機関への支援が縮小すれば、かえって担い手は減るということを言わざるを得ません。

 しかも、五月の五類移行後は感染者数や死亡者数はリアルタイムでは明らかにされなくなります。毎日の報道などによると、コロナの死亡者数は最短でも死亡から二か月後という話でありました。これでは機敏に適切な対応が取れなくなってしまうのではありませんか。

岸田内閣総理大臣 五類感染症への変更については様々な御指摘があるということは承知しておりますが、だからこそ、有識者会議において、段階的に移行することが重要である、こういった点が強調されていると認識をしております。

 段階的に体制を移行していくことによって、感染拡大が生じても、必要な医療が提供されるよう取り組んでまいりたいと考えております。

塩川委員 段階的に必要な医療支援を後退させるということですから、幾ら司令塔をつくっても、やっていることが間違っていれば何の意味もありません。

 医療逼迫を繰り返さないために、必要な支援策を維持、拡充する政策への転換を求めて、質問を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後四分、お願いいたします。最後じゃないですね、済みません。

 この審議で同じことをずっと聞き続けているんですが、この法律が通った後、政府対策本部副本部長たる新型インフルエンザ等対策特別措置法に関する事務を担う国務大臣というのは、誰が担うんでしょうか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 御質問は、政府対策本部の副本部長を誰が担うかということですが、インフル特措法上、国務大臣をもって充てると規定をされています。

 この法案の執行後に本部が新たに設置される場合には、その時々の状況に応じて、本部長たる内閣総理大臣が最適と判断する国務大臣を、大臣として充てることになると考えております。例えば内閣官房長官や厚生労働大臣、あるいは特措法に関する事務を担当する国務大臣をもって充てることが考えられますが、いずれにせよ、いかなる国務大臣を副本部長に充てるかについては、そのときの内閣総理大臣が判断することとなっております。

緒方委員 特措法の事務を担当する国務大臣というのが今ありましたけれども、それは後藤大臣でしょうか、それとも官房長官でしょうか、総理。

岸田内閣総理大臣 今の体制では後藤大臣であります。

緒方委員 しかしながら、危機管理監は、どういうふうな体制になっているかというと、官房長官の命を受け、そして職務を遂行するということになっているわけでありまして、この危機管理統括庁の中では後藤大臣が入ってくる余地がないんですね。

 この法律が通った後、後藤大臣に今発令しておられるコロナ対策担当相という立場は維持されるおつもりでしょうか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 今現在、後藤大臣に引き続き担当してもらうことを考えております。

緒方委員 そうすると、指揮命令系統がよく分からないんですね。官房長官がいて、官房副長官がいて、副長官補がいて、そういうことになっていて、後藤大臣が入ってくる余地が実はこの法律の中で想定されないわけですけれども、岸田総理が言われている指揮命令系統の一元化というのは、誰が何を判断するんでしょうか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 統括庁に係る事務を担当する内閣の担当大臣については、法律上の指揮命令系統は内閣官房長官、内閣感染症危機管理監のラインに一元化しつつ、官房長官による内閣官房の事務統括権の下で、感染症危機への対応に係る各省との総合調整等、担当大臣としての事務を事実上担うことによって、統括庁の事務の統括を担う官房長官を事実上助け、内閣の円滑な運営に寄与する、こうしたことが可能となります。こうしたことで指揮命令系統、これを整合性を取っていきたいと考えております。

緒方委員 後藤大臣にお伺いしたいと思います。

 官房長官の指揮命令系統に入るということでしょうか。

後藤国務大臣 今総理から御答弁がありましたように、内閣官房の事務というのは官房長官が統括しています。その法律上の統括している事務について、担当大臣というのは、事実上その一部について仕事をしているというのが仕組みでありまして、この部分については、今の私の立場と、この体制での所管大臣の立場は変わるものではありません。法律と果たす役割については変わるものではありません。

緒方委員 終わります。

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 この法案で感染症パンデミックの司令塔機能の統括庁をつくったとして、コロナ失策のお茶を濁そうという岸田政権のこのやり方を許すことはできません。

 この三月に何が起きたか、御存じですか。全国の国立病院の労働者がストライキを実施したんです。この日本でストをやるってどれだけの決断が要ることか。

 このストをした医療労働者、何を訴えたか、御存じでしょうか。

 一つは、労働条件の改善。これは、元々、国が医療費、医療を削減するという政策を長年続けて、人員不足が病院にあった。そこにコロナがやってきて、医療従事者は人生も横へ置いて全力対応した。なのに、国は、四度の改善要求も無視して、物価高に対応する賃金すら保障しなかった。これがストの背景の一つです。

 もう一つには、総理が、医療削減の反省がないどころか、公的病院に積み立てさせたお金、七百五十億円を防衛費に回すと決めた。昨日、その予算が通りました。あり得ない。この積立金は、独法化した公的病院の医療機器更新など、医療のために確保させてきたものです。

 岸田総理は、これに関連する防衛財源確保法の審議入りも狙っていると。これ、何をやっているんですか、今。どれだけ医療労働者の気持ちを踏みにじるのか。もう岸田政権は総辞職しても足りないんです。万死に値する。

 これは野党ももっと戦わなきゃいけないですよ。国会の外はストなのに、この中では、このぬるま湯は何なんでしょうか。時間潰しの儀式じゃないんですか。

 この質疑でもずっと訴えてきたことです。このパネルを見てください。これは、地方衛生研究所の、過去二十年に人員が削減されてきたよね、そういうグラフなんですけれども、これも構図はずっと同じなんですよ。官民問わず、どこでも同じなんです。日本で起きているのは、これ。これは衛生研究所の二十年ですけれども、労働者を人件費だコストだとカットをし続けて、人減らしや、技術継承を捨ててきたんです。これは全国でも減っている。そして、大阪のように、それを真に受けた政治勢力、維新ですけれども、そういった方が与党を占めたとき、更に極悪になるとずっと訴えてきたんです。

 でも、内閣官房の後藤大臣は、平時からパンデミックに備えてPDCAを回すと、本日も言ったし、質疑の中で十回ぐらい言っていますけれども、でも、こういったことへの具体的対策、パンデミックやこれまでの間違った人減らし、これへの反省は全くないんですよ。それはそうですよね、これからもコストカットして、蓄えたものを軍事費に使うという政権なんですから。

 だから、答えは一つ。この法案は駄目なんです。そして、総理には内閣総辞職を求めます。お願いします。

岸田内閣総理大臣 今回の法改正においては、医療従事者、そして御指摘の保健所の職員、新型コロナによる影響を受けた事業者等を代表する団体の意見聴取、これを経て作成されたものであります。

 有識者会議においても、日本医師会、日本看護協会、日本病院会等の感染症に当たられた医療関係団体に加えて、全国保健所長会といった保健所関係者の団体、さらには影響を受けた事業者ということで経団連、日本商工会議所といった経済団体等も含めた幅広い関係者の意見を反映して議論を行い、そして、それを踏まえて法律を作成したものであると認識をしております。

大石委員 ストライキを無視するような答弁、やめてください。内閣総辞職を求めます。

 終わります。

大西委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、本案に対し、青柳陽一郎君外二名から、立憲民主党・無所属、国民民主党・無所属クラブ、有志の会の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。青柳陽一郎君。

    ―――――――――――――

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

青柳(陽)委員 ただいま議題となりました新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成二十七年に制定された、いわゆる内閣官房・内閣府見直し法によって、内閣官房の五つの事務が内閣府に移管、一元化され、内閣府の九つの事務が各省庁に移管されましたが、同年の閣議決定において、内閣官房及び内閣府の業務は三年後をめどとして全面的な見直しを行うこととされていました。にもかかわらず、政府ではその後本格的な見直しが行われておらず、内閣の総合戦略機能を担う内閣官房は肥大化を続けております。

 さらに、政府は、今回の内閣法の一部改正において、内閣官房のつかさどる事務として、いわゆる包括条項を追加しており、政府答弁においても、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく事務以外に現時点で想定しているものはないが、それ以外の法律に基づく事務を担う可能性は否定されないとのことでありました。

 そこで、今後の内閣官房の肥大化を防止する観点から、本修正案を提出した次第であります。

 本修正案の主な内容は、内閣官房の所掌事務として、包括的な事務を加える改正規定を改め、内閣感染症危機管理統括庁がつかさどる事務に限定した所掌事務を加えることとしております。

 以上が、本修正案の趣旨であります。

 何とぞ各委員の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。太栄志君。

太委員 神奈川十三区の太栄志です。

 会派を代表して、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案について、反対討論を行います。

 まず、三年を超える新型コロナウイルス感染症との戦いに、今日に至るまで日本全国の最前線に立ち続けた医療従事者を始めとする多くの皆様の御尽力に、心からの敬意と感謝を申し上げます。

 以下、反対の理由を三点に絞って申し上げます。

 第一に、感染症対策の指揮命令系統の複雑化です。

 今回提出された法案では、内閣感染症危機管理統括庁の設置後、感染症有事における意思決定の主体は政府対策本部に据え置かれるままであり、統括庁の役割は総合調整にとどまります。

 また、委員会審議の中で、統括庁設置後に、コロナ担当の国務大臣は、感染症対策における権限をほぼ持たず、統括庁に対する指揮命令の権限を持たないことが明らかになりました。

 統括庁の新設が感染症対策の指揮命令系統を複雑化させ、混乱を来すことは間違いありません。

 危機管理の組織は、単純、シンプルでなければならず、平時の行政組織の理論を有事に適用してはいけません。感染症に限らず、自然災害における救命活動や医療提供、生物化学兵器による攻撃やバイオテロへの対処など、危機の種類にかかわらず、健康危機管理全般に即応できる機動的かつ強力な指揮命令系統を持つ組織をこそ創設すべきです。

 第二に、内閣官房の業務肥大化です。

 法案には、政府対策本部の事務を統括庁が処理するに当たり、内閣官房の所掌事務規定に基づき、内閣官房に属せられた事務を追加すると記載されています。これは、法律に基づく命令によって所掌事務が無制限に拡大する可能性があり、内閣官房の業務肥大化、行政改革の観点からも問題があります。

 最後に、新型コロナ対策の検証の必要性について申し上げます。

 有識者会議で示された「今後とも社会経済財政への影響、財源のあり方、施策の効果などについて多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めたい。」との指摘を受けて、更なる検証を行い、その結果を公表するとともに、必要な措置を講ずるべきです。

 今回の法案は、政府の危機管理体制を見直す方向性は同じくしているものの、賛同するには不十分であり、この度提出いたしました附帯決議案における指摘事項について、早期実現に向けた検討を進めていただくことを強く求めます。

 その上で、我が国の健康危機管理体制強化に向けて与野党を超えて取り組む決意を申し上げ、本法案に対する反対討論を終わります。

 以上です。(拍手)

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案に反対の討論を行います。

 新設される内閣感染症危機管理統括庁は、現行の内閣官房コロナ室を内閣官房長官の下の組織として法定化をするものです。

 庁の名称をつけていますが、内閣府に置かれた金融庁等のような外局ではなく、これまでに例のない統括庁であり、行政ラインはコロナ室と同じように官房長官の下にあります。統括庁に置かれる役職のトップの内閣感染症危機管理監は内閣官房副長官から指名し、内閣感染症危機管理監補は内閣官房副長官補から指名するとされており、実質的に現行のコロナ室と変わりありません。

 統括庁は、岸田総理が総裁選で掲げた健康危機管理庁に合わせて、庁の名前ありきで、組織の名前をかけ替えるものだと言わざるを得ません。

 そもそも、インフル特措法は、憲法で保障された基本的人権を制限する私権制限を行うにもかかわらず、私権制限の起点となる緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置を出す要件が曖昧で、人権侵害に対する救済措置や経済的措置に対する補償もないという根本問題があります。

 私権制限に関わっては、東京都が二〇二一年にインフル特措法に基づいて行った飲食店への時短命令に対し、東京地裁で違法だとの判決が出されています。特措法は私権制限を伴うものであり、人権侵害に対する救済措置や経済的措置に対する補償の法定化を欠いたままの法改正は認められません。

 あわせて、インフル特措法の運用を含め、政府がコロナ対策を政権の都合で科学的知見を無視して行ってきたことは重大です。全国一斉休校、アベノマスク配付、GoToキャンペーンの延長、濃厚接触者の待機期間の短縮、いずれも専門家の意見を聞かずに行われたものです。

 コロナの感染症法上の五類移行についても、厚生労働省の専門家会議は医療提供体制の確保が必要との意見であるにもかかわらず、政府は医療機関や高齢者施設への公的支援を縮小する方針です。

 インフル特措法では、有識者が総理に意見を述べる場として新型インフル等対策推進会議の設置を規定し、その下には分科会が政令で設置されています。にもかかわらず、メンバーが会議を開きたいと言っても開いていないのが実態です。

 政府が政策決定を行う際には科学的知見を踏まえるのが当然です。政権にとって都合の悪い知見を遠ざけるやり方は、市民に政府のコロナ対策への不信と混乱をもたらし、感染対策を困難にします。

 以上、これまでの感染症対策への反省と改善もないままに、政治的なパフォーマンスを行うにすぎない本案には反対であることを申し述べ、討論を終わります。(拍手)

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 有志の会の緒方林太郎です。

 本法案に反対の立場から討論します。

 今回の法案を読んで、審議してみて感じたのは、与党の事前法案審査は機能しているのかということでした。官邸のアイデアが発端となった法案を唯々諾々と通しているのではないかという懸念が拭えませんでした。

 また、内閣法の改正で、内閣官房の肥大化を可能とする仕組みがあることは看過し難いです。そもそも、内閣官房が総合調整でない事務を担うことも大問題です。二〇一五年の内閣官房・内閣府スリム化法の理念はどこに行ってしまったのか。スリム化法では、各省の大臣が総合調整を担うことができるバスケットクローズが盛り込まれました。この活用実績が余り上がっていない一方、内閣官房、内閣府の所掌事項はどんどん拡大しています。継続的にこういう組織の在り方をチェックし続ける体制が与党に欠けているのではないかと思います。

 大臣所信でも指摘しましたが、官房長官は担務を持たない大臣であるべきです。しかし、こういう法律が積み上がっていくことで内閣官房の機動性が失われていくことを強く危惧いたします。

 また、この法案では指揮命令系統が極めて複雑になっており、コロナ担当相がどういう形で関与するのかも明確でありません。危機管理の要諦である意思決定の一本化に反するものです。

 私はこれまでの後藤大臣のコロナ担当相としての活動を高く評価するものですが、その役割を矮小化しようとしているようにも見える本法案は、どう説明をこねくり回してもおかしいです。要するに、岸田総理が提案した危機管理統括庁を無理をして今の内閣官房の仕組みに接ぎ木をしようとしたため、非常に整合性が取れないものになったということでしょう。

 私の誤解かもしれませんが、審議を通じて、後藤大臣は本法案に余りいい印象を持っていないようにも見えました。その胸中、お察しいたします。

 そして、今回の法案審議でおかしいと思ったのが、官房長官が出席をしなかったことです。危機管理統括庁の担当大臣は官房長官です。その大臣の出席を求めずして審議が行われたことは不適切のそしりを免れません。本委員会の理事会で、どのような経緯から、このたてつけでの審議になったのかは承知していませんが、新設される組織の担当大臣の出席なしで国会審議が行われたことを前例としてはならないと強く申し上げておきます。

 以上、反対に至った理由を述べさせていただきました。今回のコロナ禍を通じて、我々は感染症対策について多くの学びを得ました。その知見を生かして、仮にまた同種の出来事が起きたときには、より洗練された対策が講じられることを心から願います。今回は反対となりますが、これまでコロナ対策に従事された全ての関係者の尽力に心からの感謝を申し述べ、討論とさせていただきます。(拍手)

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組の大石あきこです。

 この法案には反対です。

 この法案は、重要広範ということですごく時間をかけて審議されましたけれども、審議の中でも、司令塔機能は強化されないということ、それから内閣官房が肥大化するということ、それからパンデミックの反省、検証がないんだということで、検証がないままこのような組織をつくっても、パンデミックに次対応できないんだ、コロナ第九波にも対応できないんだということがずっと指摘され続けてきたんですけれども、全く修正のないままこれは通ろうとしているじゃないですか。全然フィードバックしないままこんなことやって、これ、何なんですか。単なる時間潰しの儀式じゃないんですか。何のためにやるんでしょうか。自民党、公明党で過半数を取っていたら何をやってもいいんですか。

 この国会の外では、先ほど言ったように、医療労働者がストライキまでして訴えていたことがある、そういったことも無視。そして、医療の現場の中で今も人が亡くなっているわけです。そういった国会の外の空気を受け止めないまま、長時間かけて、重要な法案だと言って、結局何も変えないのなら、このようなことは意味がないじゃないですか。内閣が機能していないじゃないですか。

 この法案そのものについては、政府から議論の範囲を制限された検証に基づく有識者会議の報告書を受けて作られた限界のある法律、それから、何度も申し上げている、現場でコロナ対応の第一線に立たれている医療従事者の、そして研究所、保健所の方々の汗も涙も踏まえない内容になっている。その理由としては、岸田総理の総裁選公約の帳尻合わせの新法の提出であったということです。

 このような中身のない、作られた検証から生まれた法案には当然中身がありません。だから、野党のそれぞれの委員も、この法案では駄目だと訴えたんです。でも、フィードバックがない。これは最悪なことだと考えます。この法案にも反対します。

 終わります。(拍手)

大西委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、青柳陽一郎君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、神田憲次君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、有志の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。阿部司君。

阿部(司)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

 一 新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議における「今後とも社会経済財政への影響、財源のあり方、施策の効果などについて多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めたい。」との指摘を踏まえ、新型コロナウイルス感染症に対する政府の対応について、飲食業、旅行業、宿泊業等に係る事業者の意見の聴取も含め、更なる検証を行った上で、その結果を公表するとともに、速やかに必要な措置を講ずること。特に予算に関しては、会計検査院の指摘も踏まえ、全体像の把握、使途の精査及び効果検証を行うこと。また、地方公共団体の財政措置をめぐる改正については、地方公共団体の意見を聴取し、国の財政措置の責任を単に地方公共団体に転嫁するものとならないよう、慎重に運用すること。

 二 内閣官房及び内閣府の業務の肥大化を防止するため、事務及び組織について不断の見直しを行うこと。また、法律に基づく内閣官房及び内閣府への業務の追加は、平成二十七年一月二十七日の閣議決定「内閣官房及び内閣府の業務見直しについて」等を踏まえ、内閣の司令塔機能など本来の役割を十分発揮するために必要不可欠なものに限るとともに、原則として、あらかじめ当該業務を行う期限を設けること。

 三 内閣感染症危機管理統括庁は、医療のみならず、行動経済学、データ分析、心理学、危機管理、広報、デジタルなど多様な専門的知見を活用できる体制を確保すること。

 四 内閣感染症危機管理統括庁及び国立健康危機管理研究機構は、常時情報を共有するなど緊密な連携を確保すること。

 五 内閣危機管理監については、内閣全体の危機管理という所掌事務の特殊性及び重要性に鑑み、感染症危機管理においても、その役割を十全に果たせるよう、運用上の役割を明確にすること。

 六 内閣における危機管理に係る人材の育成に努めるとともに、危機管理人材育成に係る研修プログラムを充実させ、関係職員の資質向上を図ること。

 七 感染症対応の初動期において、新型インフルエンザ等対策本部と各府省庁又は都道府県との間の調整が難航した場合には、内閣感染症危機管理統括庁は、新型インフルエンザ等対策本部長の指示権の行使については、慎重な検討に努め、あらかじめ各府省庁又は都道府県の意見を十分に聴き取り、当該意見を尊重しつつ総合調整に努めること。

 八 感染を防止するための協力要請等に関し、都道府県知事が事業者等に命令する際に勘案すべき事項を定める政令については、当該都道府県知事による機動的かつ臨機応変な意思決定を阻害することのない内容とすること。

 九 新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(以下「政府行動計画」という。)の策定に当たっては、感染症対応に有用な情報を、平時から効率的・統合的に収集・管理するための情報基盤の整備と普及策について検討し、政府行動計画の中に盛り込むこと。

 十 感染症対応の初動期において、より機動的かつ効果的に感染拡大を防ぐため、あらかじめ都道府県と協議の上、国の都道府県に対する財政支援の在り方を検討し、政府行動計画の中に盛り込むこと。

 十一 起債の特例に関し、地方債の使途を定める総務省令については、未知の感染症の発生にも対応できるよう、感染症対策に係る最新の専門的知見を活かすため、不断の見直しを行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。後藤国務大臣。

後藤国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

大西委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 後藤大臣及び藤丸副大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

大西委員長 次に、内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人としてお手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官鹿沼均君外三十九名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。

大野委員 自由民主党の大野敬太郎でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたことを心から感謝を申し上げ、また、木原副長官におかれましては、御多用中のところお出ましを賜りましたことを改めて感謝を申し上げたいと思います。

 質問に先立ちまして、先ほど新型インフルの特措法、この内閣委員会で可決をされました。今後のプロセスにおきまして、可決、成立というふうに至ったときには、是非、副長官としても、この運用、是非とも正しく行われるようにお取り組みをいただきたいことをまず冒頭申し上げておきたいと思います。

 まず伺いたいのは、総理が先日、ウクライナそしてインドに訪問をされました。

 私は、これは戦略的に非常に重要な訪問であったと思います。特にインドは、中長期的な戦略の意味合い、ウクライナにおいては、直近の課題としての戦略としての意味合い、非常に重要だと思っております。

 その上で、木原副長官はまさに同行されたということを伺っておりますので、まさに同行された総理最側近としての副長官という立場で、どういう印象をこの訪問でお持ちになったのか、そして、この訪問の意義あるいは意味、そういったものをまずはお伺いをさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕

木原内閣官房副長官 お答えをいたします。

 先般のインドそしてウクライナへの出張、訪問についての御質問であります。二つ、それぞれ分けて御答弁させていただきたいと思います。

 まず、インドにおきましては、岸田総理、モディ首相との間でG7及びG20サミットに向けた連携を確認するということとともに、日印関係強化の方向性について意見交換をさせていただきました。さらに、政策スピーチも行いまして、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのための新たなプランも発表したところであります。

 岸田首相とモディ首相との対面での会談は、これで四回目ということになります。私自身は、いずれの会談にも同席をさせていただいてまいりました。その中でも、今回の会談におきましては、インド側はG20の議長国、そして私どもはG7の議長国ということでありましたので、強い連携を図っていくということについてインド側から意欲が示されたということが印象的であったというふうに思います。

 また、モディ首相におかれましては、岸田総理と公園で散策の時間を持っていただきました。岸田総理をおもてなししようという強いお気持ちも感じましたし、個人的な信頼関係を更に一層深めたい、深めていこうという気持ちも強く印象深かったというふうに思います。

 続きまして、ウクライナでありますけれども、首脳会談に先立ちまして、キーウ郊外のブチャ市を訪問させていただきました。その際、視察させていただいた教会は、多数の銃弾によって壁が蜂の巣のような状態になっておりました。再建途上の町中においても破壊された家がまだ無残に残っている、そういうことでもありました。まさに悲惨な体験をされた被害者の方々からも直接お話を伺うことができました。

 今回の訪問を通じまして、ウクライナの方々に対する残虐行為に対して改めて強い憤りというものを覚えたところであります。また、総理と同じく、私自身にとりましても、ロシアによる惨劇の一端に触れることで、ロシアによるウクライナ侵略は、やはり国際秩序の根幹を揺るがす許されない暴挙である、そして断じて許されないものであるという思いをますます強くしたということであります。これ以上の惨劇を、あるいは惨状を防ぐためにも、ロシアによる侵略を一刻も早く止めなければならないというふうに強く感じた次第であります。

 我が国は、繰り返しになりますが、今年のG7議長国として、G7の揺るぎない結束を維持しつつ、G7としてロシアに対する厳しい制裁とウクライナへの強力な支援を継続していく。

 また、総理からゼレンスキー大統領に対しまして、G7広島サミットへのオンラインの参加も招待し、快諾を得たところであります。サミットでは、ウクライナ問題もしっかり取り上げて、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く、そういう強い決意を示していきたい、このように考えております。

大野委員 ありがとうございます。

 国際秩序が相当揺らいでいるわけでありますので、副長官としても、是非、日本の役割、非常に重要な局面に入ってきていると思いますので、是非とも注力をいただければと思います。

 お触れいただいたように、インドの訪問につきまして、特に最近よく言われるグローバルサウス、この諸国に対してどう向き合うのかということを次に伺いたいと思います。

 副長官も御存じのように、ロシアがウクライナを侵略してから、国連では約五回の総会の決議が採択をされていますけれども、これは中身を見ますと、うち三回は、投票結果、賛成が百四十対それ以外が五十、百四十対五十、これが三回で、二回は賛成が約九十に対してそれ以外が百、これは五十ぐらいのギャップがもう既にあるわけですね。百四十対五十の部分も、いわば五十がほとんど棄権あるいは無投票ということでありますけれども、五十の国がちゅうちょされているかなんなり、何かの理由でそうなっている。これは、ロシアによる直接的な影響力の行使、あるいは関係する中国による影響力の行使、こういうものもあったんだと思いますけれども、ここはやはり大きな課題を残したんだろうなと思っております。

 三回と二回の違い、これはやはり、二回のちょっと賛成が少なかったのは、まさにちょっと内容が厳しく、ロシア側にとってみれば直接権益に関わるようなことであったということで、当然厳しくてしかるべきでありますけれども、一方で、五十以上の国がほかの場合と比べて賛成から賛成以外に転じているという、ゆゆしき問題であろうかと思いますので、その意味で、改めてグローバルサウスにどう向き合うべきなのか、副長官から御答弁を賜りたいと思います。

木原内閣官房副長官 お答えをいたします。

 まさに国際社会が多様化をし、そして今御指摘いただいたいわゆるグローバルサウスと言われる国々の中で様々な特色を持った国が存在をし、またパワーが相対的に増しているというのが今の現状かなというふうに思います。

 委員から、ロシアのウクライナ侵略に対する国連における様々な決議への対応、資料を持ち合わせておりませんので詳細には評価というかコメントは差し控えますが、この問題も含め、その他の様々ないわゆる地球規模の課題、エネルギー、食料、気候変動、保健、こういった問題を解決していくに当たっては、グローバルサウスと言われる皆さんとしっかり関係を強化して取り組んでいく必要がある、そのように認識をいたします。この点は委員と同じ認識だ、このように思います。

 その際に、彼ら、いわゆるグローバルサウスの皆さんと関与するに当たっては、幾つかの点が非常に重要だと私自身思っております。一つは、やはりグローバルサウスそれぞれの国の歴史的、文化的な背景をしっかり理解をして対応するということが一点であります。その上で、そうした理解をした上でそれぞれの多様性を尊重していくということであります。この多様性を尊重するに当たっては、やはり法の支配を始めとする基本的な原則を遵守をしていくということは非常に重要であって、遵守をしつつ、分断を招かないための対話を行っていくということが必要であろう、このように思います。

 まさにこうした点に留意をしながら、様々な、国際社会として協力して対応しなければできない深刻な問題について、まずはG7首脳との間で議論を深めていくとともに、その成果をインドが議長を務めるG20に引き継いでいくことが重要であろうというふうに思います。先般のインド訪問におきましても、岸田総理、モディ首相との間で、G7とG20で連携して国際社会の重要課題に取り組むということを確認したところであります。

 そして、もう一点つけ加えますと、総理がインド滞在中に発表した、自由で開かれたインド太平洋、FOIPの新プランにおきましても、今申し上げたような考え方に沿って、各国の歴史的、文化的多様性を尊重した各国との対話によるルール作り、それから各国間のイコールパートナーシップを新たな中核的要素に据えました。その上で、国家レベルだけではない、人にも着目したアプローチを取っていくということにさせていただきました。さらに、FOIP協力の新たな四つの柱を打ち出し、FOIP協力を拡充をして、各国のニーズに力強く応えていく姿勢を打ち出したところであります。

 引き続き、FOIPを含む様々な取組を通じて、各国との連携協力の輪を広げて、世界の諸課題にグローバルサウスとともに国際社会によって対応を主導していきたい、このように思っております。

大野委員 ありがとうございます。

 今お触れいただいた、自由で開かれたインド太平洋新しいプラン、非常に的確な方向性を打ち出していただいたものだと私も非常に高く評価を、あるいは強く支持をしたいと思いますが、これから重要なのは、恐らくその具体化なんだと思います。IPEFのときもそうでありました。IPEFのときも、いわゆるいろいろな国を包摂していくという意味では、その具体化というのが重要だという認識を私もいたしましたが、これからしっかりとFOIP新たなプランで具体化というのが必要だと思うので、これは今後のG7広島サミットでも国際支持を、強化、維持のために日本が役割を非常に国際社会から求められているところでもあると思いますので、その具体化、是非お取り組みいただければと思います。

 改めてその部分につきまして、具体化につきまして、何かコメントがございましたらお願いしたいと思います。

木原内閣官房副長官 先ほど申し上げましたとおり、FOIPの新たなプランというものを総理から発表させていただきましたが、プランはまだプランでしかありませんので、やはり具体化というのは、委員がおっしゃるとおり非常に重要だというふうに思います。

 したがいまして、先ほど私が申し上げたように、しっかりと理解をしつつ、そして多様性を尊重しつつ、そして対話を通じて、個々の具体的な案件をしっかりと積み上げていくことが重要だ、このように思いますので、しっかり具体化に向けて精力的に取り組んでまいりたい、このように思います。

大野委員 ありがとうございます。是非ともよろしくお願いしたいと思います。

 質問を変えさせていただきますが、ちょっと順番を変えて、防衛省さんにお尋ねをしたいと思っております。

 副長官、ちょっとお休みいただいて結構でございます。

 昨年末、いわゆる安全保障関連三文書を改定されましたけれども、その中でも触れられておりますけれども、電波の安定利用がうたわれているところでありますので、改めて、念のためお伺いをさせていただきたいと思うんです。

 例えばドローンとか電波を利用するアセットについて、訓練から有事の事態対処について一貫として、民間アセットと電波干渉というのが、支障が出ないように以前から防衛と総務両省でしっかりと協議を進めている、あるいはその調整を緊密にしているというふうに伺っておりますけれども、改めて、現在の運用調整、一体どのように行っているのか。あるいは、三文書で示されたということでありますので、新たな取組というのはあるのかについて、防衛省さん、お願いしたいと思います。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平素から武力攻撃事態に至るまで、自衛隊と自衛隊以外の機関による電波利用の両立を図りつつ、自衛隊の電波を確保することが非常に重要でございます。

 そのため、自衛隊では、例えば電波を使う装備、そういったものを新たに導入する際には、総務省に対して周波数の申請を行いまして、総務省において電波干渉等の有無を確認する、こうして自衛隊と自衛隊以外の民間利用との電波利用の両立を図っているところでございます。

 平素であれば、こうして承認をいただいている周波数を使うことにおきまして改めて承認の必要はございません。日米共同訓練など特別な訓練を行う場合には、承認を得ていない周波数を使う場合がございますので、その際には新たに承認を申請いたしますが、これまで訓練の開始までにスピーディーに承認をいただいているというところです。

 あと、災害の緊急時などにつきましては、あらかじめ緊急時に使用する可能性がある周波数などを総務省と共有いたしまして、速やかに承認を得るようにしているところでございます。そして、武力攻撃事態におきましては、特定公共施設等利用法に基づきまして、自衛隊における電波の優先利用が可能となっている、こういった現状がございます。

 他方で、先ほど御指摘ありましたように、まさにウクライナの事例でも見られますように、無人機の利用ですとか衛星通信の利用、非常に安全保障分野での電波の利用が拡大しているところでございます。

 国家防衛戦略におきましては、「自衛隊が安定的かつ柔軟な電波利用を確保できるよう、関係省庁と緊密に連携する。」と定めたところでございますので、既に防衛省と総務省の間で新たに調整枠組みというのを設置いたしまして、現在のそういった安全保障分野あるいは民生分野における電波の最新の利用状況ですとか、あるいは電波干渉の有無に関する新たな技術的な検討、こういったものを協議しておりまして、緊密な連携を更に進めてまいりたいと思っております。

大野委員 ありがとうございます。

 問題ないように是非取り組んでいただければと思います。特にシームレスに運用することというのは重要でありますし、それに向けてアセットの開発をしようという事業者も中には出てくるかもしれませんので、そういった意味で安定的な利用というのが可能なように、引き続き積極的に取り組んでいただければと思います。

 質問を変えさせていただきますが、また副長官にもお戻りいただきまして、ちょっと話題が変わりますけれども、経済対策についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 副長官も御存じのように、また委員も共有いただいていると思いますが、現状の日本の経済状況というのは、コストプッシュインフレと言われております。最大の対策は、当然、転嫁対策であります。一方で、ちまたでは賃上げを求める声ばかりが、結構、独り歩きというか、伝播をしておりまして、結局、労働者の七割を抱える中小企業にとってみれば、賃上げだけ求められても不満だけが残る、こういう状況になっているところであります。

 当然、転嫁も進めば最終的な物価も上がりますので、当然、賃上げというのは、絶対、構造の中では必要だということでありますので、賃上げは転嫁の中に含まれる形でしっかりと進めていく。逆に言えば、元請がしっかりと転嫁に応じていただく、こういう社会構造、もっと言えば、産業構造が、ある種、物価高というのにあらがうような社会ではなくて、むしろ吸収していけるような、そういう構造に転嫁を通じてしていくべきなんだと私はすごく思っているところであります。

 当然、転嫁につきましては、政府も転嫁が進むように、民間部門につきましては、例えば、公取が調査をして余り積極的じゃないところは公表するとか、あるいは経産省が転嫁Gメンとか、そういう取組をされているのでありますので、そこは大きく評価をして、なお一層進めていただければと思いますが、一方で、転嫁の元請という意味では、政府の部門、つまり調達とか公定価格とか、そういった部分も、ある種、対応していかなくちゃいけないんじゃないか。

 すなわち、こういった分野というのは、基本的には市場調査に基づいて行われるので、結局、時間遅れが生じる。最近、時間遅れをなるべく短くしようという取組もやっていらっしゃると伺っております、実際やっていらっしゃいますけれども、しかしながら、やはり、目標となる物価、それから目標となる賃上げ、このパーセンテージ、こういったものをしっかりと分析した上で、それを設定してあげることによって、産業構造の出口で引っ張ってあげる。出口で引っ張ってあげることによって転嫁を進めるんだ、こういう方向の取組、これは、現在はもちろん激変緩和対策で入口で対策をしていますが、これは転嫁という意味では余り効果がない。むしろ、吸収するには出口でやった方がいいんじゃないか。

 これはバランスが必要だと思いますが、こういう認識の下に、改めて転嫁対策について、官房副長官として、どうやって取組を進めていけばいいのか、イメージでも結構でございますので、御答弁いただければと思います。

木原内閣官房副長官 コストプッシュ型のインフレということで、それの対応について価格転嫁対策中心に御質問をいただきました。

 今委員のお話の中で、ほとんど回答も含めてお話をいただいたかな、こう思いますが、改めて私の方から何点か申し上げますと、やはり賃上げは非常に、少なくとも重要だというふうに思っております。

 おかげさまで春闘の第二回の集計結果、平均賃上げ率三・七六%、三十年ぶりの高水準となっておりますので、これを今後どういうふうに中小企業につなげていくかということが重要であろうと思います。この点につきましては、中企庁の下請Gメン、あるいは公取委の取組ということで御紹介いただきました。労務費の転嫁も含めて、しっかり対応してまいりたいというふうに思います。

 その上で、やはり、民間部門のみならず、官における努力も重要であろうというふうに思いますので、幾つか御紹介をしたいと思います。

 一つは、公的価格につきまして、やはり制度に応じて民間給与の伸びも踏まえた改善をしっかり図っていく、看護、介護、保育等の処遇改善、見える化を行いながら進めていきたいと思います。

 また、公共工事や庁舎の清掃、警備など、政府調達に参加する企業で働く方の賃金引上げ、これにも取り組んでまいりたいと思います。

 公共料金につきましても、原材料費等が適正に転嫁され、労働者の賃上げにつながっていくよう、料金の適正化の確保の観点から検証を行ってまいります。

 そして最後に、社会保障給付の柔軟化につきましても、地方創生臨時交付金等を活用した医療機関等への支援も引き続き進めるとともに、次期診療報酬改定に向けた議論、これも行っていく中で、物価の動向や医療機関の収支の状況を注視してまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、こうした転嫁対策、出口、入口という言い方もございましたが、総合的に進めながら、物価高を克服して、民需主導の経済成長を実現してまいりたいと考えております。

大野委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたけれども、出口の部分は、やはり、明確な目標設定というもの、すなわち構造の分析というのが必要だと思いますが、その分析もしっかりと取り組んでいただければと思っております。

 本日は、必ずしも全部通告していたわけでもないのに、真摯に御答弁をいただきまして、改めて感謝を申し上げ、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

神田(憲)委員長代理 次に、杉田水脈君。

杉田委員 自由民主党の杉田水脈です。よろしくお願いいたします。

 四月一日より、こども家庭庁が発足いたします。私も、かねてよりこの内閣委員会で、日本の子供、子育て施策は親を中心に考えられており、子供の視点が抜け落ちているのではないかと指摘をしてまいりました。

 こどもまんなか社会の実現に向けて、具体的にこれまでとどう違うのか、どのように子供を中心にしていくのか、まずお尋ねしたいと思います。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 子供を取り巻く状況は、児童虐待、不登校、いじめなど、深刻化するとともに、急速に進展する少子化によりまして、令和四年の出生数は八十万人を割り込み、子供、子育て政策への対応は待ったなしの先送りできない課題でございます。

 四月一日にこども家庭庁が創設されます。これまで各府省庁において別々に行われていた子供、子育て支援、少子化対策、児童虐待対策などの子供政策に関する総合調整権限を一元化し、子供や子育て当事者、現場の視点に立ち強い司令塔機能を発揮してまいります。

 また、未就園児も含みます就学前の全ての子供の育ちや子供の居場所づくりに関する施策などに関しても、自らが事務を実施しつつ、関係省庁と連携しながら政府全体における取組を主導することとしておりまして、これまで省庁間、制度間のはざまに陥っていた課題や新規の政策課題も含め、子供や子育て当事者に対する支援を一元的に担ってまいります。

 どのように子供を中心的にしていくのかというお尋ねもございました。

 子供政策を進める上で何よりも大切にするのは、子供、若者や子育て当事者等の意見であります。様々な手法を組み合わせまして、様々な多様な意見を聞き、実現可能性等も考慮しながら子供政策に反映してまいりたいと思います。

 子供、若者、子育て当事者の意見に耳を傾け、常に子供の視点に立ち、子供の最善の利益を図るための司令塔となるよう、こどもまんなか社会の実現に向け、力を尽くしてまいります。

    〔神田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

杉田委員 ありがとうございます。私も、こどもまんなか社会の実現に向けて全力で協力してまいりたいと思います。

 新たな子育て支援対策も講じられると思いますが、現金給付による少子化対策についてはしっかりと効果の検証を行っていただきたいと思います。少子化対策のために現金が給付される、しかし、その財源を増税や子供たちが将来負担するようになる、これでは子供を産みたいと願う人は増えないのではないでしょうか。

 また、子供を産まないことを選択する女性からは、経済的な理由だけでなく、子供を産みたい、育てたいと思える社会ではない、今の世界の中で子供を幸せにできる気がしないという声も少なくありません。日本もウクライナのように他国から侵略されるのではないか、そんな中で子供を育てるのは無理だという意見も多いです。

 また、人口減少の一途をたどる日本に対し、世界の人口は増え続け、将来の食料危機に備えて昆虫食なども話題になっておりますが、将来食べ物がなくなるかもしれません、だからコオロギを食べましょうなどと言われて、子供を産もうと思えるでしょうか。

 このような経済的な理由以外の不安をどのように取り除いていくのか。食料も含めた安全保障や治安の確保、安心して子供を育てられる日本を取り戻すためにどのような対策がなされているのでしょうか。

自見大臣政務官 少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の現実を阻む様々な要因が絡み合っていると認識をしてございます。

 このような要因を一つ一つ取り除くことが必要であり、経済的支援でなく、委員も御指摘いただきました子育ての不安や孤独感、精神的な負担感などを減らしていくような具体的な施策も含めて、様々な施策を重層的に講じていく必要があると強く感じてございます。

 また、岸田総理は、個々の政策の内容や規模はもちろんであるが、これまで関与が薄いと指摘されてきた企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身の方も含めて、社会全体の意識の改革を含め、次元の異なる対策を講じていくと述べられております。

 小倉大臣の下、長年の課題を一気に解決に向けて前進するべく、子育ての不安を払拭することができるよう、今月末の取りまとめ、またさらに、四月からのこども家庭庁での具体的な施策の遂行に向けて鋭意努力してまいりたいと存じます。

杉田委員 ありがとうございます。

 国が安全であるということが最も大事なことではないかと思います。国防も少子化対策の最も大きな部分だということを皆さんにも考えていただきたいというふうに感じております。

 また、男性の育児休業促進についても懐疑的な意見が少なくありません。女性が抱える育児に関する悩みには、パートナーとの育児や家事に関する考え方の違いがあります。パートナーが育休を取得することによって、かえって心労が増す、家事の負担が増えると不安に感じていらっしゃる女性も多い。男性の育児休業取得の促進に当たり、このような女性の声も踏まえて検討が進められているのでしょうか。

 例えば、パートナーの育休ではなく、自身の親に育児を手伝ってほしいという夫婦のために、同居や近居の促進、育児のために帰省する際の交通費に係る助成のような複数の選択肢があってもよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 女性に偏りがちな育児、介護の負担を軽減するため、男性が主体的に育児、家事に関わり、男女共に希望に応じて仕事と育児の両立が図られるようにしていくことが重要であると考えております。

 そのためには、男性の育児休業の取得を促進していくことが必要でございますが、その背景には、男性労働者の中には、育児休業制度を利用したかったが実際には利用しなかった方もいること、また、育児の役割分担については自身と配偶者で半分ずつ分担することを希望する方が多いことがございます。

 一方で、先生御指摘のように、育休中に男性が育児や家事を行う時間が少ないなど、いわゆる取るだけ育休となっている事例があるといった声も承知してございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、男性育児休業の取得促進と併せまして、男性の意識改革を促して、取るだけ育休ではなく、育児休業中にしっかりと育児に向き合うことを後押しするため、企業版父親学級の推進を実施するなど、取り組んでございます。

 また、令和四年度補正予算で創設しました市町村等が実施します出産・子育て応援交付金事業でも、パートナーの育児当事者としての自覚を芽生えさせることが重要であることから、伴走型相談支援において、パートナーも一緒に面談して子育ての見通しを立てたり、妊娠期に両親学級、育児体験教室の参加を奨励しています。あわせまして、妊娠期、出産期に計十万円相当の経済的支援を行っておりますが、その用途は、妊娠期の健診受診時の交通費等や出産、育児関連用品や子育て支援サービス等の利用者負担に充てていただくことを想定しておりますが、地方自治体の創意工夫によりまして、それ以外のニーズに応じた用途を排除するものではないとしております。

 このような様々な取組を通じまして、男女が共に希望する形で育児と仕事を両立させることを支援してまいりたいと考えております。

杉田委員 様々なメニューがあると思いますけれども、それらの施策の効果の検証についてもしっかりと行っていただきたいというふうに思います。

 また、希望出生率一・八をかなえようと思いましたら、子育て支援よりもむしろ結婚支援策に焦点を当て、結婚を希望する男女がちゅうちょなく結婚を決断できる、結婚相手を見つけることができる、そうした政策にもっと重きを置くべきであると私は考えております。

 また、少子化対策については、これまで様々な施策が行われてきましたが、残念ながら、現時点で絶大な効果は見られていません。

 少子化対策を行いつつも、同時に、少子高齢化、そして人口減少を見据えた上での社会の在り方を考えていく必要があるのではないでしょうか。将来もしも日本の人口が八千万人に減るというのであれば、この国土でいかにその八千万人の人々が幸せに暮らしていけるのか、豊かで世界に胸を張れる日本を、減少した人口でいかに実現するのか、そういう社会構造の在り方の検討は行われているのでしょうか。

林(幸)政府参考人 お答え申し上げます。

 人口減少などの社会課題に直面する我が国において、一人当たりGDPを維持し、持続的成長を図るためには、労働参加を推進する必要があるほか、一人当たりの労働生産性を向上させていくことが不可欠となります。

 このため、意欲ある個人の能力を最大限生かしながら、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつながる構造的賃上げを実現するべく、意欲ある個人に対するリスキリングによる能力向上だとか、職務に応じてスキルが適正に評価され賃上げに反映される日本型職務給の確立だとか、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革に官民連携で着実に取り組んでおります。

 議員御指摘のとおり、少子高齢化、人口減少などの社会課題を踏まえた経済社会構造の在り方を検討することは重要だと考えております。現在、経済財政諮問会議におきまして、少子高齢化、人口減少などに伴う国力の縮小傾向だとか地域経済の衰退を反転させるシナリオだとか、人口減少下での社会保障制度の持続可能性強化といった論点につきまして、目指すべき経済社会構造の在り方などについて議論を深めているところでございます。

 六月の骨太方針までに将来的な子供予算倍増に向けた大枠を示すこととされておりますけれども、骨太の方針におきましては、これに加えてこうした観点も含めて、引き続き検討を深めてまいりたいと思います。

杉田委員 ありがとうございました。

 次の質問に移りたいと思います。

 さて、四月は若年層性暴力被害防止月間です。一月に議員会館内で行われた困難女性支援法のよりよい運用を願うつどいにおいて、DPI女性障害者ネットワークから、性暴力やDVの被害を受けた女性への相談窓口は電話と対面しかないことが多く、アクセス自体が困難で、相談にすらたどり着けないという非常に重要な御指摘がありました。

 性犯罪、性暴力の被害者のためのワンストップセンターでは、例えば、聴覚障害を持った被害者からの相談をどのように受けているのか、また、普及の広報活動において視覚障害者に届くような工夫がなされているのかということをお尋ねしたいと思います。

 あわせて、DVの被害者が民間シェルターを使う場合に、障害者が想定されていなく、バリアフリーでない上に、介助が入ることが拒否されているという御意見もありましたが、この支援についても併せて伺いたいと思います。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる、決して許されない行為でございまして、障害を持つ方々を含めまして、多様な被害者に寄り添った相談方法を提供することが重要と認識しております。

 内閣府では、聴覚障害のある方も相談しやすいよう、都道府県等に対する交付金によりまして、各地の性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおけるメールやSNSでの相談の導入等を支援してございます。

 また、内閣府の事業といたしまして、チャットやメールで相談できる性暴力に関するSNS相談、キュアタイムを実施しており、必要に応じ、ワンストップ支援センターと連携して支援を行っているところでございます。

 また、視覚障害を持つ方々に対する広報につきましては、内閣府ウェブサイトアクセシビリティ指針に基づきまして、ホームページ等の読み上げ機能が利用しやすいようにしているほか、政府広報と連携し、点字、大活字広報誌等を用いたワンストップ支援センター等の相談窓口に係る情報提供も実施してきたところでございます。

 引き続き、障害を持つ方々を含め、多様な被害者の方々が必要な支援を受けられるように、相談方法や広報の充実を図ってまいりたいと存じます。

 また、民間シェルターでございますけれども、私ども、民間シェルター等と連携して先進的な取組を進める都道府県等に交付金を交付することでDV被害者支援の強化に取り組んでおりますが、当該交付金では、多様な被害者を受け入れるための施設のバリアフリー化等に要する経費も交付対象としております。令和二年度には、二つの地方公共団体に対しまして、施設に手すりを設置するために必要な経費について交付決定しております。

 引き続き、今後とも、障害者等の多様な被害者を受け入れるための体制が整備されますよう、支援に努めてまいりたいと存じます。

杉田委員 昨年来、SNS等を中心に、若年被害女性等支援団体への助成金の支給をめぐって様々な指摘がなされております。必要な支援を検討するに当たって、困っている方々の本当の声を聞けているのか、そして、税金を使って行う以上、その支援が妥当であると国民が納得できるものであるかという点についての検証が必要であるかと考えております。

 男女共同参画局も積極に広報を行っていた若年被害女性等支援事業ですが、一部の都道府県の事業受給者の会計報告や、その政策の検討をする場に受給者自身が参画していたことなどが問題視されております。

 そこで、内閣府では、政策審議会や有識者会議等に参加する民間委員はどのような経緯を経て選定されているのか、お尋ねします。

原(宏)政府参考人 お答えいたします。

 国の審議会等の委員については、平成十一年に閣議決定されました審議会等の整理合理化に関する基本的計画の審議会等の運営に関する指針におきまして、「当該審議会等の設置の趣旨・目的に照らし、委員により代表される意見、学識、経験等が公正かつ均衡のとれた構成になるよう留意するものとする」ことが規定をされております。内閣府においても、この指針に沿って委員の任命を行ったところでございます。

 また、行政運営上の参考に資するため、行政機関以外の有識者等の参集を求め、意見交換、懇談等の場として開催をしている懇談会等につきましては、同計画の懇談会等行政運営上の会合の開催に関する指針に沿って、それぞれの開催主体において運営の適正を確保した上で開催しているものと考えております。

 以上でございます。

杉田委員 多くの国民が疑念を抱いたのは、公平性が担保されているかという点です。是非とも、選定の経緯を透明化し、多種多様な御意見を基に、偏ることなく政策が審議される場にしていただきたいとお願いします。

 さて、統一地方選が始まっております。昨年、選挙の応援演説中に安倍元総理が銃撃されるという、痛ましく許し難い事件がございました。二度と繰り返されないための警備や警護に関する検証は国会でも行われるべきではないでしょうか。

 令和元年の参議院選期間中に安倍元総理の街頭演説にやじを飛ばした男女二人が北海道警に排除されたとして損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は、表現の自由が警察官に侵害されたと認定しました。個別の事例について言及することは控えますが、この判決が要人警護を萎縮させたのではないかという声があります。

 選挙運動の自由と選挙運動における要人警護の在り方について、昨年の事件を契機に、警察としてどのような総括がなされ、また、どのように再発を防ぐのでしょうか。

原(和)政府参考人 お答え申し上げます。

 警察といたしましては、安倍晋三元内閣総理大臣がさきの参議院議員選挙における街頭演説中に銃撃を受け、亡くなられるという重大な結果を招いたことを極めて重く受け止めております。

 警護に関する検証、見直しの結果、警察庁の関与を抜本的に強化するなどとした新たな警護要則が昨年八月二十六日に制定されたところでございます。新たな警護要則の下、警察庁におきましては、警護上の危険度の評価、警護計画案の審査、体系的な教養訓練計画の作成等を直接実施するなどの取組を行っているところでございます。

 また、現在、御指摘のとおり、統一地方選挙が実施されておりますが、警察庁におきましては、街頭演説場所における都道府県警察との合同実査や警護計画案の予備審査等を実施し、選挙期間中における徹底した警護措置を講じているところでございます。

 本年はG7サミット等の大規模行事が予定されておりますが、新警護要則に基づく措置を引き続き確実に講じるとともに、体制の強化、装備資機材の充実等を通じて、警護に万全を期してまいりたいと考えております。

杉田委員 基本的人権の尊重は大切なことですが、先ほどの答弁にもありましたように、間もなく岸田総理の御地元でG7サミットも開催されます。テロや犯罪を未然に防ぐ警備や要人警護体制の徹底をお願い申し上げ、一問、ちょっとできなかった質問もあるんですけれども、これで質疑を終了させていただきます。

 今日はどうもありがとうございました。

大西委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳(陽)委員 立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 先ほどの特措法の質疑に続きまして、今度は経済情勢について議論させていただきたいと思います。後藤大臣、よろしくお願いします。また、小倉大臣も、ありがとうございます。

 まず、アベノミクスの評価について伺いたいと思います。

 アベノミクスは、二〇一二年以降、この道しかない、そして、まだ道半ばだと言い続けて、時には統計手法まで変えて、十年以上続けてきたわけでございますが、アベノミクスの指南役とも言われる元内閣官房参与の浜田宏一エール大学教授は、大企業のもうけが下請、中小企業、従業員に波及しなかった、トリクルダウンを起こせなかったと今年三月の東京新聞のインタビューで答えています。つまり、失敗を認めているわけです。

 アベノミクスで、確かに株価は上がりました。大企業の決算はよくなりました。有効求人倍率も改善しました。しかし、従業員の給料は上がらない。そして、非正規雇用が四割となっている。中小企業、取引先、下請、地域経済への恩恵というのは非常に限定的だったわけです。これが現実です。

 実際に、今日、配付資料がございますが、資料一の一番上の図ですね、従業員の平均給与は二十五年伸びていないわけです。ですから、消費が活発にならない、GDPの六割を占める個人消費が伸びていないということですね。一方、配当金、株主配当が増えているわけです。この図にはありませんけれども、同時に内部留保が積み上がっているということ。そして、一番下の図ですね、設備投資が全然伸びていない、設備投資に資金が回っていないという状況です。

 これが負のスパイラルになっているわけで、好循環にならなかったということですけれども、まず、この状況をどう転換していくのかというのが、今、大きな対策、問われているわけでございますが、そして、あわせて、アベノミクスの金融緩和、この弊害が表れてきている。円安になり、物価高に苦しむ事業者と国民が今出てきているわけでございます。

 まず最初に、後藤大臣に、アベノミクスの十年の評価、そして、今申し上げた、従業員の給料が上がっていかない、設備投資に回らない、個人の消費に回らない、株主配当、そして内部留保に積み上がっている、こうした現状について、どう転換していくかについて、お答えいただきたいと思います。

後藤国務大臣 まず、アベノミクスの評価については、デフレではない状況をつくり出し、バブル崩壊以降続いた長いデフレから脱却、脱却ではないです、デフレではない状況をつくり出した、デフレ脱却はまだしていないので。GDPを高め、雇用を拡大したということはあると思います。

 そのことは申し上げておりますし、大企業だけではなく中小企業においても利益は増加したわけですが、ただ、中小企業の拡大ペースが鈍かったことも御指摘のとおりです。

 賃金については、総雇用者所得は伸びたものの、女性や高齢者等が相対的に賃金水準の低いパートタイムの非正規雇用労働者として労働市場に入ってきたということで、平均の実質賃金は伸び悩んだということです。

 それに加えて、経済の実態は、今、青柳委員が分析もされているように、今申し上げているように、バブル崩壊以降の長引くデフレと低成長、リーマン・ショック以後の世界的な金融危機を経験して、企業の行動が非常に慎重で消極的になって、コストカット体質になったということで、収益増加に向かって投資をしたり、あるいは、価格を適正につけることを前提にして、実質賃金を引き上げたり中小企業への支払いを十分にしていくというような好循環も働かない事態が生じてきたということは事実だと思います。

 ですから、どういうふうに対応するのかということもお尋ねであったので、非常に大きな質問で、一問だったんですが、賃上げについて言えば、中小企業まで含めて、足下でいえば、賃上げ原資をしっかりとやはり見込んだ、サプライチェーン全体の中で、お互いに共助の姿勢で、物の価格をしっかりと定めながら、そして賃金を支払って、実質賃金が上げられるような体制、そして、投資を自ら国内においてしっかり行って、雇用の場をしっかりと国内に守っていくような姿勢、そういうようなことをしっかりとすることによって賃上げを実現していく。その賃上げをしっかりと今度は安心な社会保障等を整えることによって消費等につなげていくという形で、成長と分配の好循環を進めていかなければならない。それが今、政府が新しい資本主義として国民に御説明し、それに向かって今努力をしている最中であるということです。

青柳(陽)委員 今、大きくお答えいただきました。ありがとうございます。

 何点か続けて質問させてもらいますが、もう一つの課題は、今御答弁はなかったと思いますが、格差と貧困の固定化です。

 日本は、OECD加盟国の平均を上回る格差があって、貧困率が高い社会になってしまったわけですね。かつては一億総中流と言われていた時代もありますが、最近の労働政策研究機構とNHKの共同調査で、自分は中流より下と回答した人が五六%、中流だと回答した人は三八%、これが今の日本の社会の意識になっているわけです。

 OECDやIMFは、格差と貧困を解消すること、それが持続的な経済成長につながるという答申をしております。つまり、低所得者層を引き上げて中間層を厚くしていくことが必要という認識ですけれども、大臣はこの認識についていかがでしょうか。

後藤国務大臣 格差の状況については、基本的には、やはり、実質賃金をしっかりと確保していき、そのためには物価に負けない賃上げをしていけるような、そういう好循環が必要だということになっています。

 全体として賃金の水準等が上がっていないということなんですけれども、格差の状況についていわゆる指標で比べてみると、所得格差を示す指標はジニ係数とか相対的貧困率みたいなものになるんですけれども、五年ごとに調査される全国家計構造調査によると、直近値でもある二〇一九年、二〇一四年に引き続いて、いずれの指標も、緩やかではあるものの改善傾向にはなっていると思います。

 しかし、今委員が御指摘された、中流意識を持っている人たちが少ないというようなことは、基本的に言えば、実質賃金の伸びが少ないということがその一番の大きな原因であるというふうに思います。

 ですから、格差のない社会が好循環を導き、そして非常に厳しい状況にある方たちを少なくしていくことが、社会の幸せに加えて、経済の好循環についても重要であるという御指摘はそのとおりだというふうに思っております。

 今、足下について、物価、賃金ということについて言えば、賃金について、今必死になって、政労使の意見交換も行ったり、コンセンサスをつくりながら活動をしているところでもありますし、また、弱い立場の方々の生活を守るというために、物価対策については、食料品やエネルギー等の身の回りの商品の値上がりで最も痛手を被る低所得者の皆様方に物価対策を行っている、そういうふうに認識してやっております。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 認識もほぼ一致しておりますし、格差と貧困を解消していく、賃上げをやっていくという認識は一致しております。そのためにはあらゆる政策を総動員していく必要があるわけですけれども、今日、本当に議論し出すともう何時間でも必要なんですが、幾つかちょっと取り上げたい点を質問してまいりたいと思います。

 一つは、まず、最低賃金について伺いたいというふうに思います。

 総理は、先日の政労使会議の場で、最低賃金を全国平均千円以上という目標を示したわけですけれども、私は、これはまだ少ないし小さいというふうに思います。最賃の議論、これは中小企業の価格転嫁の問題や大企業等取引先の問題もありますけれども、やはり目標をしっかり示していくことは私は同時に必要だというふうに思っていまして、全国一律にして千五百円程度まで引き上げていく目標を持つべきだろう、日本の水準からしたら、そのぐらいの水準にしてもおかしくないだろうというふうに思っていますが、大臣のお考え、お聞かせいただきたいと思います。

後藤国務大臣 三月十五日の政労使の意見交換におきましては、総理から、今年は全国加重平均で千円を達成することを含めて公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかり議論をするように、それから、地域間格差の是正を図るために地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げていくということ、それに合わせて、この夏以降は千円達成後の最低賃金引上げの方針についても議論を行っていきたいという発言をなされております。

 政府としては、こうした総理の政労使の意見交換の場での発言もあり、この夏以降、千円というのは今年達成することも含めての三者の最賃審議会での御議論でありますけれども、いずれにしても、今、九百六十一円まで来ているわけで、その後どうしていくのかということについては、委員御指摘のように、しっかりと目標を定めて議論していくということも必要だろうというふうに考えておりますが、その後のことについては、これはあくまで賃金の決定ということなので、公労使三者構成の最賃審議会等でも十分に御議論いただく必要があるというふうに思っています。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 今、全国一律についてどうかという考えについてはお述べいただけなかったかなと思うんですが、ちょっと時間の関係上、もう一つ伺いたいと思います。

 外国人材の獲得と働き方についてですけれども、今や日本で働く外国人材は百八十二万人ですね。これはもう我が国の経済活動にとってはなくてはならない人材になっております。特に高度産業人材、こうした方々が、国際的にはむしろ人材獲得競争になっているわけです。

 一方、技能実習生、特定技能の人材、こういう人たちは、制度の目的と実態が合っていないという指摘がありました。この点については法務大臣の下に有識者会議が立ち上がったというふうに聞いておりますが、この高度人材の獲得、そして、一方で現在議論されている有識者会議の議論の方向性、これから外国人材にどう選ばれる国になっていくのか、どう外国人材が働きやすい環境をつくるのかについて、政府の検討状況をお伺いしたいと思います。

君塚政府参考人 出入国在留管理庁からお答えを申し上げます。

 今御指摘ございましたとおり、我が国が外国人に選ばれる国になるためには、外国人に日本で働き、暮らしたいと考えていただけることが大変重要でございます。例えば、外国人労働者の人権保護はもちろんのこと、賃金を含む労働条件等が充実していること、安全、安心に暮らせる生活環境があることなど、そのための制度や受入れ環境を整備することが必要でございます。

 今御指摘がございました、いわゆる高度人材の受入れに関しましては、現在、私ども仕組みを設けまして、学歴、職歴、年収等に基づくポイント制によって、出入国管理上、高度専門職の在留資格を付与しているわけでございますけれども、今回、新たな制度といたしまして、今申し述べた高度人材ポイント制とは別に、学歴、職歴あるいは年収が一定以上の者にも高度人材の在留資格を付与する特別高度人材制度、それから、優秀な外国大学の卒業生に日本国内での最長二年間の就職活動などを認める未来創造人材制度、この二つの制度を創設するということで、今準備を進めているところでございます。

 それから、もう一つ御指摘ございました、技能実習制度、特定技能制度につきましては、政府の関係閣僚会議の決定に基づき、現在開催されている、今御指摘ございました技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議におきまして、技能実習の制度目的と実態を踏まえた制度の在り方を含め、様々な観点から活発な御議論をいただいているところでございまして、本年春頃に中間報告、秋頃には最終報告をいただく日程感となっております。

 いずれにいたしましても、法務省出入国在留管理庁といたしましては、今後とも、外国人から選ばれる国になるために、種々の取組を通じまして、引き続き外国人材の受入れ及びその環境整備に向けしっかりと取り組んでまいります。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 今日は時間の関係で入管庁から御答弁いただきましたけれども、これは日本での住環境等々も必要な支援になってくると思います。またこれは議論を続けさせていただきたいと思います。

 次に、新しい資本主義とインパクト投資という手法について伺いたいと思います。

 インパクト投資という言葉が最近注目されております。新しい資本主義や、金融庁で今インパクト投資がどういう検討状況になっているか、お伺いしたいと思います。

 また、後藤大臣には、今このインパクト投資について新しい資本主義の実現会議でも検討されていると思うんですけれども、私は是非注目すべき手法だと思っていますので、金融庁からどういうものか御説明いただき、後藤大臣からも、新しい資本主義におけるインパクト投資の位置づけ、役割について、ちょっと御説明をいただきたいと思います。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 インパクト投資は、委員御指摘のように、環境、社会的な効果と投資収益の双方の実現を目指す投資でございまして、ESG投資の中でも、特に投資を通じた効果や収益性の実現に資する取組を具体的に特定するという点で、社会課題の解決と事業性の改善の双方の観点から推進の意義は大きいものだというふうに考えてございます。

 こうした考えの下で、金融庁におきましては、昨年の十月から、インパクト投資等に関する検討会を設置しまして、インパクト投資等の推進策について議論をさせていただいております。具体的には、インパクト投資の要件等を整理して取りまとめました基本的指針の作成、それから、事例やノウハウの集約、展開等を行うために、投資家や企業等が参集する場の設定といったようなことについて議論を進めているところでございます。

 金融庁といたしましては、検討会での議論を踏まえまして、関係省庁とも連携しながら、インパクト投資の推進を図ってまいりたいと考えてございます。

後藤国務大臣 新しい資本主義は、我々が直面する様々な社会的課題を成長のエンジンへと転換して、成長の果実を分配することで更なる成長へとつなげていくという、成長と分配の好循環を実現するということでありまして、経済的利益の獲得のみでなく社会的課題の解決を目指した投資であるインパクト投資というのは、まさにこの新しい資本主義の考え方を体現するものであり、推進していくべきものだ、そういう位置づけだと考えています。

 インパクト投資を推進するに当たっては、社会的課題の解決を担う社会的起業家の育成も併せて進めていくことが重要でありまして、昨年十一月に取りまとめたスタートアップ育成五か年計画においては、社会的起業家の支援を図るための推奨企業リストへの掲載だとか地方自治体とのマッチング等、いろいろな施策を進めるということで考えています。

 また、あわせて、インパクト投資の拡大に向けて基本的指針を取りまとめ、インパクト投資の普及を促していく、そういうような取組も必要であるというふうに考えております。

 官民ファンド等についても、中小企業基盤整備機構がファンド出資事業の一環として、社会的インパクトの創出にも重きを置いた支援を実行するファンドに出資したばかりであるということも聞いております。

 社会的起業家の育成とインパクト投資の拡大、車の両輪として進めていくことが新しい資本主義にとっても重要だというふうに思います。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 今、一部、次にお伺いしようと思ったこともお答えいただいたんですけれども、今日は資料を配っております。資料の二でございますね。

 まず、下の方です、グローバル視点から捉え直した日本の社会課題例ということでございますが、ジェンダーの問題、少子化、環境、高齢化、食料など、これは日本が抱える課題、世界が抱える課題ですけれども、この課題に対してビジネスとかテクノロジーの手法で投資して解決していくということですから、とてもこのインパクト投資の手法自体は注目されるべきものだ、新しい資本主義の理念にもかなうものだというふうに考えています。

 その上で、上の図ですね、インパクト投資の市場でございますが、世界はもう既に百十二兆円の投資規模の市場ができ上がっているのに対して、日本は二〇二一年、一九年から二〇二一年にかけて非常に投資の市場は大きくなっています。ただ、大きくなっているとはいえ、これでもまだ五・三兆円規模ということで、世界の流れから見るとまだまだ小さいということでございます。

 これをどう支援していくか、どう育てていくかということですね。上の右の図です、これから投資、これからまだまだ成長していく段階だということですから。

 それで、今大臣から御答弁ありました、官民ファンドを通じて協調融資や出資をしてもらう。これに加えて、これは官民ファンドの一種だと思いますけれども、中小機構とか、あるいは年金の基金を使うなど、是非育てていただきたいと思いますし、税制の支援もお願いしたいということであります。

 もう一つは、インパクト投資の研究が各所で行われていると思いますが、その研究の成果、実践知の共有を是非行っていただきたいということと、国際的なルールメイク、コンセンサス機関というのがありますから、政府から人を出していただく。あるいは、人を出すとき、企業やファンドから、民間から人を、こうした国際ルール機関に、コンセンサス機関に出す場合に政府が支援していただくとか、そういう支援策について業界からは要望がありますが、これについて受け止めを大臣からお答えいただきたいと思います。

後藤国務大臣 インパクト投資は非常に重要だと思います。日本のインパクト投資、私の考えるところでは、やはり弱いのは、そもそも、社会的課題に対してそういう投資のような形で応えていく、あるいはそういう取組を行うというまずモチベーション等が足りないこと、それから、今度はそれを実際に行っていくスキルが足りないこと、両方だと思います。

 今先生が御指摘のような点はどれも重要な点だというふうに思いますので、そうしたことも踏まえて、あくまでこれは民を中心として進めていくことでありますけれども、政府がいろんな形でそうした取組をサポートできるように、御指摘も踏まえてしっかりやりたいと思います。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 小倉大臣の質問に移りたいと思いますが、今、社会的課題を解決していくこと、インパクト投資はビジネスとかテクノロジーの手法でやっていくわけですけれども、もう一つの担い手として、NPOもその一つの主体、プレーヤーだというふうに思います。新しい資本主義におけるNPOの位置づけについて、政府の見解を伺います。

小倉国務大臣 後藤大臣の所掌であります昨年六月に閣議決定した新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画におきましても、多くの社会的課題を国だけが主体となって解決していくことは困難であり、民間が主体的に課題解決に取り組める社会を目指す必要があるとされているところであります。

 したがいまして、既存企業、そして先ほど来話がありますスタートアップ、社会的起業に加えまして、御質問いただいたNPOを始め、多様な主体がプレーヤーとして活躍していくことが重要であると私どもも考えております。

青柳(陽)委員 その主体の一つであるNPOについての支援策について伺いたいと思いますが、NPOを支援する最大の政策は税制認定制度だというふうに思っておりますが、この認定制度の要件が厳し過ぎるのじゃないかという声が当事者から多く届いていると思います。小倉大臣の元にも届いていると思いますが。

 実際、NPO法人の数は今五万件余りですけれども、その中で認定NPOは千二百、二%程度しかありません。これまで要件を、この間、この認定制度ができてから、見直しをしていただいて、相当簡略化しているし手続も早めにやっていただいているんだという説明はあるんですけれども、それでもまだ二%、年間三十法人程度ですが、この現状についての受け止めを、大臣、お答えいただきたいと思います。

小倉国務大臣 青柳委員に御紹介をいただいたように、認定NPO法人の数自体は残念ながらまだ全体のうちの二・五%ではありますが、それでも約十年前の平成二十五年の三月末の四百七と比べると、足下は千二百六十七ということで、様々な施策も奏功いたしまして、三倍程度増加をしているということでございます。

 認定NPO法人の基準について御下問がございました。NPO法人制度におきましては、その設立に際して行政の関与を極力排し容易に法人格を取得することとする一方で、認定NPO法人に関しましては、税制優遇を受けるにふさわしい法人を的確に認定することができるよう、PST基準と言われる明確かつ客観的な基準を設け、これに則して審査を行うことといたしております。

 したがいまして、当該PST基準に関しましては、他の公益性の高い法人に係る同種の基準と均衡の取れたものというふうに考えておりまして、まずはこれを的確に運用することが重要と考えております。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 今、小倉大臣からも答弁がありましたし、平成二十三年の内閣委員会の質疑で、認定の審査について、認定基準は客観的、形式的に規定されるもので、提出書類に疑義があるなどの特段の事情がない限り書類審査で行われるという答弁があります。

 この答弁は維持されていると思いますけれども、だとすれば、所管庁によって認定基準にばらつきがあるということは、これはおかしいことになります。

 東京都については、申請受理件数が当然多いわけですけれども、その割には認定数とか認定割合が少ないんです。そして、何よりも取下げ件数というのが突出して多いんです。

 これは、明らかに客観的、形式的な基準が違うということになってしまうんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

小倉国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、私どもが設けました明確かつ客観的な基準に基づいて、まずは都道府県等の所轄庁が的確に運用することが重要と認識しております。

 内閣府といたしましては、その審査の過程において必要以上の資料や煩雑な手続を要するといったことが生じないように、今後とも、所轄庁の実務担当者との定期的な意見交換等を通じて、実務審査等に関するノウハウの共有を進めるとともに、その実態を把握し、必要な助言を行ってまいりたいと思っておりますし、ばらつきがあるのではないかという委員の問題意識も踏まえて、しっかり所轄庁の担当者と意見交換を図ってまいりたいと思っております。

青柳(陽)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、是非実態を把握してもらいたい、調査してもらいたいと思いますし、軽微なミスがあったから取り下げろというのもこれはよくない、実際そういうことがあるというふうに聞いていますから、是非調査をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

大西委員長 この際、休憩することとし、午後一時から委員会を再開します。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大西委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中谷一馬君。

中谷(一)委員 立憲民主党の中谷一馬でございます。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私からは、午前に続きまして、AIについて伺っていきたいと思っています。

 まず冒頭、高市大臣に、チャットGPTの社会に与える影響、それをどのように政府として考えられているか、質問をさせていただきたいと思います。

 当たり前のことなんですけれども、とあるテクノロジーに恐れを持ったとしても、排除しようとしたとしても、テクノロジーの進化は止められませんから、やはり、時代の潮流を考えて、どのように進化を共にしていくのか、避けたりとか排除したりというよりも、どう健全に発展をさせて人類がそれを活用していくのか、そうしたことを考えていくということが求められている。そして、その上で、その恩恵が必ずありますから、公正公平にそれをどう分配するのか、そういった知恵が求められる、そうした時代になってきたのかなということを思っているわけなんです。

 そうした中で、チャットGPT、リリースからたった三か月で、一億五千万人の方がもうアクティブユーザーで使っているということが推計をされておりまして、これは、今まで、どんなアプリよりも速い速度で一億五千万人を達成をしているということが言われておりまして、その中で、データブリックスのCEOが、このチャットGPTの登場に対して、まるでゴールドラッシュということを表現をしています。

 多くの経営者が生成AIをどう生かすか模索を始められておりまして、その中で、チャットGPTのような機能がもう事業に組み込まれているだけで、そういったAIが入っているだけで企業価値が上がる、ベンチャーキャピタリストがコメントを出しているような状況でして、こういった状況を見たときに、日本でもまさにその活用が求められていくということになってくるんです。

 今、生成AIの世界市場が年平均三五%のペースで増えていっておりまして、二〇三〇年には十四兆円市場になるということが見込まれている中、アクセンチュアで試算をされていて、日本でAIがもし本格的に活用されたら成長率がどうなるか、〇・八%から二・七%まで引き上げられるという試算が出ておりまして、私たちとしても、仕事のやり方だったりとか、既存のビジネスモデルを一気に変えるだろう、このAIの勃興について向き合っていかなければならないということを思っているんですが、高市大臣から見て、このチャットGPTのような生成AIが社会にまずどのような影響を与えると推察をしていて、その対策をどう講じていきたいと思っているか、教えてください。

高市国務大臣 おおむね委員と同じ問題意識だと思っております。

 チャットGPTにつきましては、一定の誤り情報が含まれるなどの課題はまだありますけれども、あたかも人間のような対話ができるということのほかに、言葉による指示でプログラミングなどの作業支援も可能となります。チャットGPTのようなAIというのは、業務の効率化、それから生産性の向上、そのほか、十分なスキルを持たない方でもデジタルツールを使いこなせるようになるというようなことなど、様々な可能性に結びつくと認識しています。

 今後は、チャットGPTのようなAIが社会の様々な領域で使用されると言われておりまして、その影響は非常に大きい、そしてまた、これをうまく活用して成長につなげていかなければならないと考えます。

中谷(一)委員 是非、活用して成長につなげていただきたいということを思っているんですが、その中で、松野長官に伺わせていただきたいんですが、立法府や行政府の中でこれがどう使われていくかということを、先ほど、午前中の質疑の中で総理と質疑をさせていただきました。

 官房長官にも実は準備をさせていただきまして、チャットGPTに、あなたが日本の衆議院議員だとしたら、松野博一官房長官に国会でどんなことを質問すべきだと考えていますかと尋ねたところ、一例として、パネルのような、配付資料の返答がありました。

 その中で、社会保障制度、生活を支えるための具体的な政策や支援策に関するテーマをピックアップをして、チャットGPTに、あなたが日本の官房長官だとしたら、国会で問われた際にどのように返答するか教えてくださいと尋ねたところ、もう一枚の資料のような返答がありました。

 それで、私的には、これはいかにも官僚の原稿にありそうな政府答弁のニュアンスをうまく表現しているように感じましたが、官房長官から見て、今御自身が御用意してくださっている答弁原稿と進化した生成AIの答弁原稿を比較をして、まずどのような所感を持たれたか、教えてください。

松野国務大臣 中谷先生にお答えをさせていただきます。

 御指摘のチャットGPTで作成した答弁に関しましては、今拝見をしたばかりでございますので、内容に関してコメントすることは差し控えたいと思いますが、自然な日本語になっていますし、様々な可能性がある技術であると感じております。

中谷(一)委員 また後ほどでもいいので御高覧をいただければと思いますが、日本語自体は非常にきれいにというか出ていて、やはりある程度の情報が蓄積されているからこういう文章になるんだろうということを思っています。

 その中で、立法府、行政府のみならず、生成AIの進化は社会のあらゆる環境を大きく変えると思います。今後も進化するAIに対して私たち人類がどのように向き合って関わっていくのか、AIをどのように活用していくのか、そういったことが必要になると思っていますので、今日は、幾つかの分野に関する懸念について質問、提言をさせていただきたいと思います。

 まず、生成AI及びSNSと教育の関わり方について伺わせていただきます。

 チャットGPTが登場して、教育機関の対応も様々であります。学生がチャットGPTを使ってレポートなどの宿題を作成する可能性があるなど、便利なチャットボットに子供たちが依存し、思考力を奪うとして、規制する動きが出始めました。オーストラリアやフランス、アメリカの一部地域では、学校での利用を禁止した事例があります。その一方で、アメリカのその他の地域や韓国、シンガポールなどでは、デジタル教育の新潮流だと捉え、教育現場での活用を進めている事例も散見され、むしろ教育システムの改善に向けた動きも見られます。

 私自身は、仮に日本の教育現場でチャットGPTのようなAIの使用を禁止したとしても、AIは今後も大幅に性能を向上し続けるという現実を踏まえれば、あえて遠ざけるのではなく、教育者と生徒がAIをどのように使うべきであるのかということを考えた方が、日本の教育を健全に発展させ、グローバルに対応できる人材の育成につながると思っています。

 そこで、伺わせていただきますが、政府は、教育現場のAI活用をむやみに排除するのではなく、学校教育におけるAI活用の在り方を考え、学習の質の向上や業務の効率化に役立てることに対してリードしていくべきだと考えていますが、官房長官、どのようにお考えですか、教えてください。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 中谷先生から先ほど来御指摘をいただいているとおり、こういった先端の技術というのは、これは政治のありようとは関係なく発展していくものでありますし、こういった技術は、これも先生からお話をいただいたとおり、社会に大きく貢献する分野と、また、そのことによって問題が生じる、懸念材料にもなるという、これは両面を抱えているものであろうかと思います。その問題点というのをしっかり把握しながら、どういった形で社会に有用に活用していけるか、そのことをしっかりと検討してまいりたいと思います。

 教育分野等々に関しましては、専門的な各国の事例等もございますので、政府委員の方から答弁をさせていただきます。

森友政府参考人 お答え申し上げます。

 AIを活用した様々なサービスが生まれる中で、海外において、先生御指摘の、様々な取扱いや議論があるものと承知をしております。

 教育におけます新たな技術の活用に当たりましては、そのメリットとデメリットの両方に留意することが重要であると考えております。

 このため、文部科学省におきましては、学習指導要領の中で、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して問題を発見、解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質、能力として情報活用能力を育成することを定めております。あわせて、情報には誤ったものや危険なものがあること、情報を利用する際に他者の権利を侵害しないようにすることを考えさせる学習活動などを通じまして、情報モラルを確実に身につけさせることとしております。

 子供たちが自ら学び、自ら考えることは重要でございます。新たな技術の有効性や活用の可能性も検討しつつ、情報活用能力の育成や子供たちの主体性を伸ばす教育に取り組んでまいりたいと考えております。

中谷(一)委員 是非、AIを活用した教育保障の在り方について政府全体で検討していただければと思います。

 その上でなんですけれども、例えば歴史問題だったり領土問題、こうした認識に相違のある国が作ったAIだったりSNS、これを活用すると、日本の主張とは反するような内容が表記をされて、判断力が十分でない子供たちに影響を与える懸念があるんじゃないかということを述べる方が一定数いらっしゃいます。

 そうした中で、中国政府がチャットGPTについて、アリババなどの中国国内の主要IT企業にサービスを提供しないように指示をしました。これは、西側諸国のデータを学習しているチャットGPTが習近平指導部に対する批判的な回答をしかねないという懸念からこうしたことをされたんじゃないかということが報じられているわけでありますが、旧来型のプロパガンダから、SNSや生成AIの誕生で、無意識、不可視に人々の認知、行動に大きな影響を与える時代になってきました。

 このように中国政府がチャットGPTの使用を制限しようとしている状況下において、日本でも、例えば中国が開発した対話型AI、バイドゥのアーニーボット、こうしたものの使用制限を行う可能性などはありますか。官房長官、教えてください。

奈須野政府参考人 お答え申し上げます。

 AIに関する規制の在り方については、国際的にも様々な議論が行われているところでございます。その利用についても、こうした議論の動向を見極めながら、今議論になっているような利便性とそれからリスク、それと我が国としての事情、こういったことを踏まえてその必要性を判断していきたいと思っています。

 こういったことから、今、中国企業が開発したアーニーボットの事例を御紹介いただきましたが、こういった事例を含めて、個別のケースについて、今、利用規制の可能性ということをお答えできるのは早いのかなというふうに思っております。

中谷(一)委員 今の奈須野さんの答弁を踏まえると、官房長官、今のところは可能性はないという認識でよろしいですか。

松野国務大臣 先ほど政府委員の方から答弁させていただきましたけれども、お尋ねのような事例も含めて、個別のケースについては規制の可能性をお答えできる段階には至っていないということでございます。

中谷(一)委員 今後検討を始められるということで理解をしました。

 そうした中でなんですけれども、生成AIと制脳権、この問題についても触れさせていただきたいと思うんです。

 政治リスク専門のコンサルティング会社ユーラシア・グループが二〇二三年の十大リスクで生成AIを三位に挙げました。ユーラシア・グループは、大混乱生成兵器と題し、AIの技術的な進歩がデマゴーグを生んだり権威主義者に力を与えたりして、ビジネスや市場を混乱させる危険性があることを示しました。

 チャットGPTなどの利用によってコンテンツの作成に参入障壁がなくなると、コンテンツ量は指数関数的に増加していき、市民の多くが事実とフィクションを区別できなくなる懸念があります。偽情報が横行し、社会的な連帯や民主主義の基盤である信頼が損なわれる可能性があり、政府としてもこのリスクに対応していかなければなりません。

 今まで日本は、違和感のない日本語をAIで生成することが難しかった、そういった背景があったと思います。しかしながら、今後は、英語圏や中国語圏のように、こういったものが比較的簡単に生成ができてしまうという状況になると、穏やかだったような状況が一変をしてきます。

 そこで、これは官房長官に通告をしておりますので伺わせていただきますが、こうした生成AIの進化を受けて、認知領域における情報戦の環境にどのような変化が生じ、制脳権にどのような影響を与えると考えているのか、また、それらの対策をどのように講じていく考えであるのか、教えてください。

田部井政府参考人 お答えいたします。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境や、IT技術を含む技術革新の急速な進展等に伴い、我が国防衛を全うする観点からは、認知領域を含めて、これまでの戦い方の抜本的変化に対応していくことがますます重要となっていると考えられます。特に国際社会におきまして、有事に至る前の段階から、偽情報の流布により他国の意思決定に影響を及ぼすといった情報戦に重点が置かれているものと承知しております。

 生成AI技術の悪用によりまして、極めて精巧な文章や画像により偽情報の大量生成が容易になるなど、人の認知に直接働きかける手段が高度化、多様化している状況でございます。我が国としても、こうした状況を踏まえまして、認知領域を含む情報戦対応として、人工知能、AIを活用した分析機能の整備を始め、偽情報の見破りや分析、そして迅速かつ適切な情報発信等に政府全体としてしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

中谷(一)委員 官房長官に聞いておりますので、コメントいただけますか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 安全保障に関する議論におきましても、今後、情報戦の占める重要性、影響力が増大していくということは、議論があったとおりでありますし、大きな脅威となり得るものでございますので、政府委員の方から答弁をさせていただきました方向でしっかりと対応してまいりたいと思います。

中谷(一)委員 しっかりと対応が必要になると思います。

 そうした中で、次に、生成AIと選挙について伺わせていただきたいと思いますが、ケンブリッジ・アナリティカという会社がAIと広告を利用して引き起こした事件が世界中で大きな話題となりました。このケンブリッジ・アナリティカ事件では、個人情報のビッグデータから行動が変容しそうな個人をAIで分析し、特定の者が有利になるような恣意的な情報を与えることで、投票行動を変化させました。アメリカ大統領選挙でのロシア疑惑や、台湾総統選挙での中国介入疑惑と同様に、日本においても、他国の介入を許す疑念が残れば、安全保障上も大きな問題になると考えています。

 しかし、こうしたリスクに対して、現在の日本は極めて無防備です。公職選挙法では、選挙運動のための公職候補者の氏名などを表示した有料インターネット広告の掲載等については原則禁止となっていますが、公職選挙法上は、落選運動は選挙運動ではなく政治活動に含まれ、落選運動のための有料インターネット広告を仮に何億円、何十億円の規模で掲載し有権者の投票行動を変容させても、公職選挙法上直ちに規制されることがありません。そして、やってはいけない人の規定もありませんので、他国の方、例えば中国やロシア、北朝鮮の方が日本の選挙期間中に有料インターネット広告を用いて恣意的に落選運動を行ったとしても、それを取り締まる規制がありません。

 この状況を踏まえて、官房長官に伺わせていただきますが、国政選挙でいえば、一億二千五百万国民のルールや年間百兆円の予算配分を決める国会を選ぶ選挙の公正性を恣意的にゆがめる行為は、民主主義を根本から覆す危険性があるとともに、国家の安全保障を揺るがすおそれがあると考えますが、官房長官はこうした実態をどのように捉えているのか、官房長官の所見を教えてください。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 民主主義の根幹を成す選挙におきましては、表現の自由、政治活動の自由に配慮しつつ、選挙人の自由な意思による公正な選挙が確保されることが重要であると考えております。

 このため、制度として、公職選挙法第二百三十五条に規定する虚偽事項公表罪や、刑法第二百三十条に規定する名誉毀損罪など、罰則による対策を通じ、公正な選挙の確保に資することとしております。

 他方、落選運動のための有料インターネット広告の掲載につきましては、公職選挙法上直ちに規制はされておりませんが、これを規制することにつきましては、選挙制度に関わることでございまして、各党各会派におきまして御議論いただくべき事柄であると考えております。

中谷(一)委員 官房長官のコメント、聞いておりますので、是非教えていただけますか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 政府委員の方から答弁をさせていただきましたけれども、民主主義において重要な点は、一つは、表現の自由、また政治的な活動の自由というのをいかに保障するかということと、もう一つは、有権者の方の立場に立って、その自由意思をどう確保する公正な制度を維持するかという点であるかと思います。

 先生からお話をいただいているような新しい技術がこういった民主主義の根幹の部分に関してどういった影響を与え得るのかということは注視をしていかなければいけないと思いますが、選挙に関することというのは、やはり国会において各党各会派においてまずは御議論をいただくべきものと考えております。

中谷(一)委員 私、この質問を、実は、高市さんが総務大臣時代に、三年前ですね、行わせていただいているんですね。でも、残念ながらあれから全く変わっていません。そうした状況の中で、こうした技術が生まれてしまった、より危機感が高まっている状況を踏まえて、普通に考えれば、日本においても、時代の変化を踏まえて適切に対処しなければならない大問題だということを思っています。

 そこで、伺わせていただきたいんですけれども、生成AIが進化をし続ける中、諸外国からの落選運動のための有料インターネット広告の規制に関しては、私はしっかりと行った方がいいんじゃないかなと思っているんですが、官房長官、いかがでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 繰り返しになって大変恐縮でございますが、これは民主主義における根幹を成す選挙制度ということに対する事案でございますので、まずは国会において各党各会派で御議論をいただくべきものと考えております。

中谷(一)委員 安全保障上の問題に関しては政府としてもしっかりと検討していただきたいと思いますし、各党各会派の皆様にも、こういった問題があるということを是非御理解をいただき、共に議論を深めさせていただければと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 次は、ティックトック関係の質問をメインに伺わせていただきたいと思っているんですが、まず、ちょっと全体的な話を伺わせていただきたいんですけれども、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、LINE、ティックトックなど、各種SNSを利用していると、機種名、IPアドレス、デバイスID、OSや携帯キャリア、言語、メモリー、入っているアプリ、バッテリーレベル、位置情報だったり、アプリ、ファイルの名前、種類、キーストロークのパターンなど、こういった情報が収集されるということがプライバシーポリシーに記載をされているんですけれども、これらを比較して、今の五社の比較をして、企業側が収集している情報に大きな違いがあるのか、あるとすればどのような違いがあると認識しているのか、これは政府の見解を教えてください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ありましたSNS等を提供する事業者につきましては、個人情報等の取得に当たりまして、電気通信サービスの利便性の向上を図るとともに、利用者の権利利益を保護するため、個人情報保護に関する法律、それから電気通信事業におきます個人情報保護に関するガイドライン、そういったものに基づきまして、本人に対しまして利用目的の通知等を行うこととされています。

 一方で、委員御指摘ありました取得情報の比較についてでございますが、これにつきましては、届出あるいは報告等の対象と現状なっておりませんでして、総務省としても承知しておらず、比較等を行っているところではございません。

 なお、総務省におきましては、本年の六月からですが、昨年成立しました改正電気通信事業法が施行されることになってございます。それに当たりまして、多くの利用者を有する事業者に対して、利用者に関する情報を適正に取り扱うための規律、これを適用することとしてございます。

 総務省としましては、利用者に関する情報が適正に取り扱われるよう、しっかりと取組を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

中谷(一)委員 今後はしっかり比較検討をされた方がいいと思いますので、指摘をさせていただきます。

 その上でなんですけれども、今、いろいろなSNSが大体同様の情報を収集しているかなということを私から見ていて思うんですけれども、その中で、ティックトックのことが非常に話題になっているので、これはファクトチェックも含めて伺わせていただきたいんです。

 今、ティックトック側がアメリカの議会でも様々証言をしていて、中国政府とユーザーデータの共有をしたことはないという話であったりとか、中国政府がデータにアクセスすることもアクセスを強制することもできないということを明言されているんですけれども、日本政府として、ティックトックのデータに中国政府がアクセスしたという情報は得ていますか、それとも政府としてはそうした情報は把握されていませんか。これは通告していますので、官房長官、しっかり答えてください。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の企業につきましては報道等を通じて様々な指摘がなされていると承知をしておりますけれども、特定の企業に関することでもあり、また事柄の性質上、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。

中谷(一)委員 それじゃ、それは情報としては持っている可能性があるということですね。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたように、特定の企業に関することであり、また事柄の性質上、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。

中谷(一)委員 じゃ、もう一問伺わせていただきますが、これは甘利前幹事長が、ティックトックは位置情報を本人の了解なしに中国に送信している仕組みがあるのを見つけましたという情報を紹介されているんですけれども、これは政府も同様の情報を得ていますか、得ていませんか、教えてください。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の企業につきましては報道等を通じまして様々な指摘がなされているということは承知をしておりますけれども、特定の企業に関することでもあり、また事柄の性質上、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。

中谷(一)委員 差し控えていただくという話なんですけれども、わざわざ大臣経験者の方が外に出られてそういう発信をされておられるので、僕たちが確認をしなければならないような状況になっているということなんですけれども、これは、私もティックトックに関する様々な情報を収集をさせていただいたんですけれども、うわさのエビデンスとなるような情報が見つけられないんですね。

 それで、政府のインテリジェンス能力の知見について伺わせていただきたいと思っているんですけれども、政府としてはこういった情報をそもそも調べているのか調べていないのか、官房長官、教えていただけませんか。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの事柄につきまして、御指摘の企業につきましては様々な指摘がされていることについては承知をしておりますけれども、特定の企業に関することでございます、また事柄の性質上、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。

中谷(一)委員 違う答弁をしないでほしいんですけれども。特定の企業の話じゃなくて、SNS企業がそういう情報を収集しているかということを、全体総じてインテリジェンス能力の中で政府が確認しているかということを聞いています。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御質問につきましては、事柄の性質上、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。

中谷(一)委員 非常に、なぜかこの話、逃げられちゃうんですけれども、一応紹介をしておくと、レクの中では、収集していないという話を各省全部受けています。そういう話は聞いていないということを聞いているので質問をしているんですが、政府の中では、多分、このことを公で答えるのがすごく嫌なんだろうなということを今聞いていて思いました。

 その中でなんですけれども、日本政府におけるティックトックを始めとしたSNS規制に関する考え方、これも教えていただきたいということを思っているんですけれども、ティックトックに関しては、アメリカやEU、イギリス、カナダなどで、政府端末での利用を禁止しました。一方で、日本では、政府端末で機密情報を取り扱う場合には外部サービスを利用することというのはできないんですけれども、欧米とは異なり、ティックトックだけを対象にして利用を禁止するようなルールはありません。

 これは、官房長官、しっかり答えていただきたいんですけれども、今後、日本でも、ティックトックのみ対象にして利用を禁止するというようなルールが策定される可能性はありますか、教えてください。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 政府としての対応は、リスクが高いと判断されたSNSアプリが利用されることがないことを担保するものでありまして、欧米と比較して対応が不十分であるとは考えていません。

 いずれにせよ、政府としては、引き続き、海外の動向にも関心を払いながら、状況に応じて適切に対応し、セキュリティーの確保に万全を期していく考えであります。

中谷(一)委員 今のところ、それでは、ティックトックのみを規制するということはないという理解でいいですね。外部サービス全体を見て包括的に判断するというお答えですよね。

松野国務大臣 個別具体の状況に応じて適切に対応していくということでございます。

中谷(一)委員 その中で、機密情報を取り扱う場合については様々配慮が必要だと思うんですけれども、SNSなどの外部サービスというのは広報の中では禁止をされていない、要するに公開情報ですので。そういった認識を持っているんですけれども。

 その中で、様々なリスクを十分に踏まえた上で個別のサービスごとに利用可否の判断を政府としてされるんだと思うんですけれども、要機密情報を取り扱わない日本政府の広報においてティックトックを利用することは特段問題ないと考えていますか、それとも、これは問題があると考えていますか。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としての対応は、先ほど申しましたように、リスクが高いと判断されたSNSアプリが利用されることがないことを担保するものでございまして、いずれにしても、欧米と比較して対応が不十分であるとは考えていません。

 政府としては、引き続き海外の情報を関心を払いながら見ていきたいと思いますけれども、いずれにしても、リスクをにらみながら判断をするということになると思います。広報についても、リスクを踏まえながら考えたい、判断してまいりたいと思います。

中谷(一)委員 ということは、使っちゃ駄目な可能性があるということですか。

吉川政府参考人 個別アプリの利用につきましては、要機密情報を使わない場合についても、各省庁において、様々なリスクを十分に踏まえ、必要な措置の助言を内閣官房に求めたもののみ使うということになっておりますので、必要と認めたもののみの利用が認められることになっております。

中谷(一)委員 じゃ、ツイッターはよくてティックトックが駄目な理由を教えてください。

吉川政府参考人 特定の企業に関することでもありまして、また、個別の性格、事柄の性格上、お答えすることは差し控えたいと思いますけれども、各省においては、様々なリスクを十分に踏まえ、必要な措置を内閣官房に求めた上で利用の可否を判断をしておりまして、個別具体の事情に応じて適切に対応することになっております。

中谷(一)委員 答えを差し控えるなら政府参考人はわざわざ出てきていただかなくて大丈夫なので、官房長官、教えていただきたいんですけれども、私は、これは今、地方自治体でも、ティックトックというのは、地方創生の枠組みの中で、一千七百万人、日本では使っている人がいますから、やはり見ている人が非常に多いツールだということで、公式アカウントも含めて使われている事例がある。

 ただ、使う、使わないの判断は政府があっていいと思うんですけれども、地方自治体はどうしていいかが分からなくなってくると思うんですよね。その中で、少なくとも公開情報の情報配信に対して、個別の企業、特にツイッターとかフェイスブックとかみんな使っていますけれども、ティックトックだけ使っちゃ駄目だということが、なる可能性があるんですか。長官、教えてください。

松野国務大臣 まず、特定の企業を排除するということではございません。先ほど来答弁をさせていただいているとおり、情報管理に関してセキュリティーをしっかり担保していくという観点から、個別具体的に判断をしていくということでございます。

中谷(一)委員 教えてほしいんですけれども、今、アメリカ政府がバイトダンスに対して、ティックトックを運営する企業の株式を売却するように指示をしていまして、バイトダンスが売却に応じない場合にはアメリカ国内での一般利用が禁止される可能性があるとのことです。アメリカには約一億一千百万人のティックトックアクティブユーザーがいますので、これは社会的なインパクトが相当ある話だと思います。

 日本においても、ティックトックのアクティブユーザー数が一千七百万人程度と推計をされて、仮に利用が停止されたときには社会へのインパクトが大きくなると思いますが、このティックトックの利用制限を含めた同様の措置を検討する可能性がありますか。官房長官、最後に教えてください。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど答弁をさせていただきましたとおり、特定の企業を排除するということではございません。一般的に、特定の企業の製品やサービスの排除ということがありきではなく、SNS等の利用に際しては、セキュリティーやプライバシーの確保が重要であると認識をしております。

 このため、総務省を始めとして担当省庁において、より一層の周知啓発を図るなど、今後も適切に対応していくということでございます。

中谷(一)委員 今後も本件についてはファクトチェックとエビデンスの確認を含めて質疑をさせていただきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。

 内閣委員会の一般質疑をさせていただきたいと思います。

 今回も、男女共同参画に関する質疑をさせていただきます。

 何度も何度もこれは取り上げて、小倉大臣と一緒にやらせていただいているんですけれども、その大きな理由は、今の支援の体制では福祉から漏れてしまう人がいるからということです。支援という福祉は、やはり困っている人全てが受けられるものであるべきだと思っています。

 日本維新の会はそもそもダイバーシティーというものを目指しておりまして、女性局が廃止されました。ダイバーシティ推進局という形になっております。男女問わず所属をしておりまして、結果的に女性が多く困難さを抱えている課題であったとしても、男女含めて議論をしているところでございます。ポイントは、やはり女性だけが、女性局といって女性だけが集まって女性を取り巻く課題を話し合うということではなくて、男女一緒になって課題を解決しようとしているところだと私自身は認識しています。

 まず、なので、そういったことも課題意識はありながら、今回はさせていただきたいなというふうに思っています。

 支援事業と縦割り行政ということについてお尋ねしたいと思っています。

 若年被害女性等支援事業における若年とはどのような人を指すのか、また、若年被害女性支援や困難な問題を抱える女性への支援といった場合の女性とはどのような人を指すのか、厚生労働省、教えていただいてもいいですか。よろしくお願いします。

    〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕

本多政府参考人 お答えいたします。

 若年被害女性等支援事業における若年は、主に十代から二十代を想定しております。また、若年被害女性支援や困難な問題を抱える女性への支援の対象といたしましては、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性そのほかの様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性及びそのおそれがある女性を想定しております。

堀場委員 では、十代から二十代ではない女性はこの法律若しくはこの事業では救済されないという意味ですか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 対象としているのは主に十代から二十代とお答えいたしましたが、十代から二十代だけに限定しているものではございません。

堀場委員 また、困難者というのが、家庭関係が破綻していたり生活の困窮等、正常な社会生活を営む上で困難な問題を有する者ということなんですけれども、困難を有する女性ということだったんですけれども、これは男性やどちらかの性に属するかを決めかねている人であったとしてもあり得ることだと思うんですが、いかがですか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律につきましては、超党派の議員立法として、昨年五月に成立いたしました。

 この法律におきましては、女性であることによって性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害により遭遇しやすい状況にあることや、予期せぬ妊娠等の女性特有の問題が存在することのほか、不安定な就労状況や経済的困窮、孤立などの社会経済的困難等に陥るおそれがあること等を前提に、困難な問題を抱える女性を支援対象とされたものと承知しております。

堀場委員 その法律を決められるときに、様々議論があったと承知しています。我が党も入っていたんだと認識はしているんですけれども、何かちょっと、今の感じだと、そのときに、男性を含めてもよかったんじゃないかという議論がしっかりとなされたのかなということを懸念しています。何かとても極端な方向に向かっているような気がしているのが、多分今回の、困窮した若い女性限定といったところなんじゃないかなというふうに感じているところです。

 では、大臣にお尋ねします。

 若者でもない、若年でもない、女性でもない人の被害というのはどのように支援するとお考えか、教えてください。

小倉国務大臣 私の所管をする分野の範囲内でお答えをさせていただきます。

 まず、配偶者間の暴力、性犯罪、性暴力などの問題は、個人の尊厳を害する重大な人権侵害であり、決して許すことのできないものであります。そういった観点から、例えば、配偶者暴力防止法におきましては、被害者の性別を限定しておりません。

 私ども内閣府といたしましては、被害を受けた方々が、その年齢、性別を問わず、ためらわずに相談ができ、必要な支援を受けることができるよう、それぞれの問題に関しまして相談支援体制、例えば、DVの相談窓口であります配偶者暴力相談支援センターとかDV相談プラス、また、性犯罪、性暴力の窓口であります性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターなどでありますが、こうした相談支援体制の充実に努めているところであります。

堀場委員 ありがとうございます。

 今の大臣のお答えだと、配暴センターに相談に行くというのは、同性同士のカップルの場合は成立するという考えでよかったですか。

小倉国務大臣 同性同士のカップルの場合も相談に応じております。

堀場委員 ありがとうございます。

 今厚生労働省さんでやられている女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設、女性、女性、女性と、こういうふうにたくさん支援対象としているところなんですけれども、こうやって今男女共同参画局さんでやっている、性差関係なく、異性、同性どちらも関係なく支援をしていくという方向性がいいんだろうと思うんですけれども、細分化していくというメリットが余り感じられないんですね。支援をするからには、門戸は大きく開いていただいて、そして、結果として支援をするのは女性が多いというふうになってくるのが本来あるべき福祉なのかな、公平性というものであったり、支えるということであるならば、みんな一緒に支えるべきだというふうに考えているところです。

 そもそも、こういう原因に対する対策ということも考えていかなければならないというふうに思うんですけれども、こういった暴力の問題について、児童虐待というのは厚生労働省の管轄で、DVや性被害というのは男女共同参画局となっているというところなんですけれども、これは、家庭の中で行われる暴力という定義でいくならば、加害している人が同一人物である可能性というものも大きくあると思います。

 というのであるならば、今、縦割り行政で分かれているんですけれども、これによる弊害はないのかどうか。まず、厚生労働省さん、お願いしていいですか。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘は、児童虐待やDV、性被害といった問題は、それらが関連することで深刻化する事例もあるため、一体的な対応を行うべく、同一部局での対応が望ましいという御指摘かと理解をしております。

 厚生労働省では、児童の福祉を所掌する観点から児童虐待防止対策を担当しているところでございますが、委員御指摘のように、家庭内で児童虐待とDV、性被害の問題が併存するケースもございますことから、厚生労働省といたしましても、関係機関が相互に連携して対応できるようにすることは重要であると考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、子供に対する支援の地域ネットワークである要対協に配偶者暴力相談支援センターも必ず参画するよう、各市町村に対して要請をしております。また、児童相談所が児童虐待事案を扱う際に、保護者へのDVが絡んでいるかどうかを判断するためのチェックリストの作成、周知を行っております。

 四月からは、新たに創設されるこども家庭庁の虐待防止対策課において児童虐待について対応することとなりますが、引き続き、DVや性被害への対応を行う男女共同参画局と認識共有を図りながら前に進めてまいりたいと考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 四月になったらこども家庭庁管轄になるということで、こども家庭庁ということと男女共同参画局の管轄というものが最終的には小倉大臣で一括化されるものなのかなというふうには思うんですけれども、大臣はこの弊害というものを感じられますかね。

小倉国務大臣 先ほど厚労省から答弁がありましたとおりでありますが、確かに、同じ家庭内において、委員御指摘のとおり、児童虐待とDVや性暴力が同時に発生をするケースもありまして、それぞれの対策を相互に連携協力して進めていく必要があると認識しております。

 したがいまして、私ども内閣府におきましては、先ほど答弁がありましたように、配偶者暴力相談支援センターにおける要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協への参加を促しておりますほか、DV対応に当たる相談員等と児童相談所の職員の双方を対象とする研修の実施、さらには、子供や若年層の性暴力被害者に対して関係機関が連携協力等をして支援に当たった事例集の作成、配付等の取組を進めているところでありまして、引き続き、しっかり内閣府そして厚労省が連携をしてこういった事案の対応に当たらなければならないと考えております。

堀場委員 午前中にありましたインフルエンザの特措法だったり内閣法の一部を改正する法律案、これもそうだと思うんですけれども、こども家庭庁の議論のときもそうなんですけれども、縦割り行政の弊害がありますよということなので。

 一個、統括庁であったりこども家庭庁というような司令塔機能を持って、そして総合調整機能を持っていってこういうふうな形でやりますというのが、最近、最近じゃないかもしれませんが、非常に、縦割り行政を打破するためには、方法論としてそれを取られることが多いんだなというふうに感じています。でも、それで本当にこの弊害がなくならないのかどうかというのが課題だと思っています。

 現場レベルでの情報共有の課題解決のために、先ほど出てきた要対協であったり、あとは、困難な問題を抱える女性支援ネットワーク、地域協議会であったり、様々な、いろいろな協議体があると思うんですが、そうした協議会等の会議体が非常に多くつくられているかと思っています。これらが現場の負担になっているというような考えはないのか。また、別々の組織で人が連携できずに支援が行き届かなかった例というのもあると思うんですけれども、そういったことに対する担当大臣としての御所見を頂戴したいと思います。

小倉国務大臣 お答えをさせていただきます。

 複合事案と申しますか、DVと児童虐待が同時に発生をした場合、しっかり連携をして対応する必要があるという認識は、先ほど申し上げたとおりであります。

 したがいまして、今般の配偶者暴力防止法の改正法案におきまして、国が定める基本方針と都道府県が定める基本計画の記載事項といたしまして、多機関の連携協力を位置づけることや、関係機関などから成る協議会の法定化を行うことといたしております。

 今後、法案をお認めいただいた暁には、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する協議会と要対協の連携の在り方も整理をしたいと考えておりますし、政府の中の連携も重要なんですけれども、重要なのは、それぞれのケースにおいて、やはり現場の皆さんの情報共有と連携した対応ということだと思っておりますので、例えば、要対協と先ほど申し上げました配偶者暴力対策の協議会の構成員を工夫するなど、現場レベルでも縦割りによる弊害を生じさせないことが重要ではないかと考えております。

堀場委員 要対協でも、やはり課題としては、会議が多い、非効率だ、個人情報のトラブルがある、会議の結果が直接的に支援に対しての影響が少ない等の課題があるというふうに認識しています。そして、困難な問題を抱える女性支援ネットワークの地域協議会においても、代表者会議、実務者会議、個別のケース検討会議と、様々な会議が非常に多いんですね。会議が多いと、単なる報告だけになってしまったり、責任転嫁になってしまう。会議に報告していましたという、そういった責任転嫁となってくるということも考えられます。そして、連携というのはもはやうまくいかないんじゃないかなというふうに考えています。

 一つにまとめることというのはとても大事ですよねというのは、実は野田大臣のときにもさせていただいていて、そのときにお話ししていたのが岐阜県の例だったんですけれども、岐阜県では、全てが一つの建物に入った。それだけでも、やはり日々顔を合わせるだけでコンセンサスが取れる。ちょっとした休憩時間なり、廊下で会ったときに、ああ、そうそう、これねと言ってやる。そして、一つの建物の中なので個人情報というものも非常に守られやすいというような、そういった成功事例のお話とかもいただきました。

 つまり、もっと公平でシンプルな、そういうシステムにしなければ、働いている人も、保護者の人は担当はこの人、子供はこっちみたいな、全部ばらばらになってしまっていて、どこに何が、一番正しい情報が行くのか。そして、子供の支援、女性、男性も含めてですけれども、保護者の、被害を受けている方の支援という形をどのようにつくるのかということの視点は、そうやってつくられるんじゃないかなというふうに思っています。

 一方で、先ほど言いました、原因に対する対応が余りにないなというので、これはちょっとDV法の改正のときにも少しすると思いますが、性教育とか加害者プログラムとかこちら側の、みんな、例えば虐待を受けている子供は、虐待を受けていたとしても、やはりおうちに帰りたいと言います。帰したらやはりそういう目にまた遭ってしまうということは、加害者プログラム、そういったものをしっかりと重点的にやっていく必要があるんじゃないかなというふうに考えています。

 そもそものお話をさせていただきたいなと思っているんですが、そもそも男女共同参画と、わざわざ男女と分けているんですけれども、こういう場合、性別というものをどのように理解されているのか、教えてください。

小倉国務大臣 性別の考え方もいろいろあると思いますが、政府としては、一つ、第五次男女共同参画基本計画の用語解説、こちらから引用させていただきますと、お尋ねの性別につきましては、生まれついての生物学的性別のみならず、それに基づいて社会的、文化的に形成された性別、いわゆるジェンダー、こちらも含まれております。こうした双方の視点を含めて理解をすることが重要ではないかと考えております。

堀場委員 漏れのない福祉というものを実現するためには、若年とか女性といった区分ではなく、困難を抱えた全ての人に手が差し伸べられるシステムであるべきだと私は先ほど申し上げました。

 今、こういったものに関して、若年とかそういう区分をつけて細分化させて支援をしていくというシステムなんですが、これについての御所見をお願いしてもいいですか。

小倉国務大臣 委員の御指摘は、それぞれ細かい区分をつけるよりも、より包摂的、包括的に支援をすべきではないかということでありますが、岸田政権全体におきましては、多様性に富んだ誰一人取り残さない包摂的な社会の実現を目指しているところでありまして、目指すべき社会の理想は共有しているものと考えております。

 他方で、男女共同参画の担当大臣として申し上げれば、現実の社会におきましては、いまだ、政治分野における女性議員の割合の低さや、経済分野における男女間の賃金格差や女性登用の遅れなど、固定的な性別役割分担意識に根差した男女間の格差が存在をしており、国際的な水準から見ても、我が国の女性活躍、男女共同参画は立ち遅れていると言わざるを得ません。

 そういった中、解決すべき多くの男女間の格差が残されている現状では、男女という切り口から構造的な課題の把握に努めるとともに、蓄積された知見や専門性を生かして政策立案に取り組むことが重要かつ効果的であるとも考えております。

堀場委員 ジェンダーに起因する問題というのはたくさんあるというふうに思っていますし、私自身、衆議院議員としてここに立っていますけれども、非常に女性が少ないというのは当然感じているところで、今、ここ、多分後ろを振り返っても、女性という人たちは少ないんだと思います。

 我が党としても、衆議院議員が四十人いれば四人が女性ということで、割合としては非常に少ないんですけれども、これは、女性が社会進出することに対する弊害とかもありますけれども、やはり環境調整ができていないからだというふうに何度も言わせていただいているところで、それとはまた別次元のところで、福祉とか支援とかというのは、どうしても分けてしまうというところに課題があるというふうに思っています。

 そして、ジェンダーを、そういうふうに分けてしまうことで、私は、ジェンダーを固定化してしまうんじゃないかなという懸念もしています。ジェンダーの対立をあおるというか、困難な女性というところのカテゴリーだけでずっとまとまってしまうと、同一性だけでいくと、やはり男性は敵だとか、すごい、加害者なんだとかという議論に発展しがちなんですよね。男性というのは全てオオカミだじゃないですけれども、敵なんだみたいな、男女のジェンダー対立をあおるような、一定の、古い方のフェミニストの人たちはそういうふうな考え方を取られると思うんですけれども、それになってしまうんじゃないかなと思っています。

 そして、今、男女共同参画局さんであったり、性被害について取り組んでいらっしゃる様々な民間団体の皆様を見ていると、とてもそのような状態に陥っているんじゃないかなという懸念を持っています。男性は全て敵というふうな、若しくは女性はみんな全て被害に遭う可能性がある、可能性は誰にでもあると思うんですけれども、そういった固定化された思考というものが生まれやすくなってしまうんじゃないかなという懸念があるということがございまして、やはり、ジェンダーの固定化という観点からも、経験を基に支援をしていくということが大事なんじゃないかなと思っています。

 だから、女性だからとか若いからとかではなくて、そういったつらい経験であったり置かれている状況に合わせた支援、そして、根本自体を解決していくという方法を模索していくということが重要かなというふうに考えております。

 次に行きたいと思います。

 ちょっと順番が逆になってしまって後回しにされてしまったんですが、性風俗の特殊営業についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 性風俗の業界というものは異性へのサービスというものが規定されているんですが、異性へのサービス以外のものは性風俗特殊営業に該当しますか。また、異性に限定している理由を教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 風営適正化法では、性を売り物にする営業を性風俗関連特殊営業として規制の対象としておりますが、これは役務を提供する相手方が異性の客であること等を要件といたしております。

 異性の客への役務の提供という限定を付しておりますのは、実態としてそのような営業がほとんどであったことを踏まえたものと承知いたしております。

堀場委員 異性に限定されているというのは、風俗営業等の規制並びに業務の適正化に関する法律においては、第二条の六項の店舗型性風俗特殊営業の一号、二号及び七項一号の無店舗型の風俗特殊営業だというふうに理解をしているんですけれども、これが異性に限定されている理由というのが、現状が異性に対するサービスが多いからだということなんですけれども、同性同士のサービスは該当していないということでよかったですか。

山本政府参考人 ただいまの御指摘のとおり、この種の営業においてはおっしゃるとおりでございます。

堀場委員 ということは、これは風営法の対象外ということでよかったですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 風営適正化法で規制される営業ではないということでございます。

堀場委員 要するに、異性へのサービス提供が非常に多いから風営法上では異性へのサービスのみが対象となっているけれども、やはり同性へのサービスというものはこの世に存在しておりまして、そういったものに対しては風営法の対象外となっているというのが現実だということです。

 ここから、様々、議論が前に進んでいるのか止まっているのか分からない課題についてお話をさせていただきたいなと思っています。

 LGBTの理解増進法案についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、LGBT理解増進法案についての政府見解はどうなっているか、教えてください。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 LGBT理解増進法案については、議員立法の法案として、超党派の議連の議論の結果策定され、現在、提出に向けた準備が進められているものと承知しております。

 政府としては、まずはこうした議員立法の動きを尊重しつつ、注視していきたいと考えております。

堀場委員 先ほど小倉大臣は、岸田政権ではこういった多様な人を認めていくというような方針なんですよと。

 それで、文部科学省でも同様な議論があったときには、文科としてもLGBTQの理解は推進していくということで聞いているんですけれども、そもそも、政府としては、LGBTQの理解というのは推進していこうというふうに考えているということでよろしかったですか。

小倉国務大臣 政府といたしましては、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向けて取り組んでいかねばならないというふうに思っておりますし、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない、このように考えております。

堀場委員 では、別に議員立法じゃなくて閣法で提出されたらいいかと思うんですけれども、それについてはどう思われますか。

小倉国務大臣 LGBT理解増進法案につきましては、ただいま政府参考人よりも答弁がありましたとおり、議員立法の法案として、現在、提出に向けて準備が進められていると承知をしておりますので、政府としては、まずはこうした議員立法の動きを尊重しつつ、見守っていきたいと考えております。

堀場委員 この話をさせていただくと、報道等でよく話題になっているのが、銭湯とか温泉といった共同浴場において、トランスジェンダーの皆さんが、身体的特徴とは異なる方の湯舟の方を希望される場合についての対応が非常に話題となっていると認識しています。これについての御見解をお願いします。

    〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 公衆浴場につきましては、厚生労働省が公衆浴場における衛生等管理要領というものを定めております。この要領の中で、おおむね七歳以上の男女を混浴させないことなどと定めております。

 この要領で言う男女とは、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、身体的な特徴の性をもって判断するものであり、公衆浴場の営業者は、体は男性、心は女性という方が女湯に入らないようにする必要があると考えております。

 実際の公衆浴場への適用につきましては、都道府県等において条例によって定めることとしています。基本的に、この要領と同様に、男女の浴室を区別し、混浴を禁止しているものと承知しており、厚生労働省といたしましては、引き続き、こうした要領の内容等について周知を図ってまいりたいと考えております。

堀場委員 トイレが、何か結構、渋谷かどこかの公共のトイレが男女一緒になりましたというのが話題になったり、どこかの大学で、全部個室なので、そういった性差なくみんなが入れるトイレにしたりというふうにされていくことを目指していらっしゃるということがあるんですけれども、多分、私自身のこれは個人的な見解ですけれども、トイレに行こうと思って、その前が男の人だったらすごくびっくりすると思うんですね。

 そして、さっき言いましたけれども、別に男の人は全て敵とは思っていないけれども、そこに、子供とかだと、引っ張られて入ったらどうしようとか、やはり、安全とまでは言わないですけれども、ちょっとした恐怖心というのは存在するんじゃないかな。これを持つことを否定することはできないんじゃないかなというふうに思っているんですね。だからといって絶対に分けろということではないですけれども、分けてきた人が一緒になるのは非常に難しいんじゃないかなというような思いを持っているところです。

 ただ、こういうことを言うとすぐに、何かLGBTの皆さんに対する差別だのような表現になるんですけれども、安全かどうかとかそういったものが、別に差別とかではなく、どうしてもやはり見た目で、私たちは、内心までは見えないので、初めて出会う人には、どうしても見た目で怖いと思ってしまうことというのはあると思うんですね。そういった逃走本能を否定することはなくてもいいんじゃないかなというふうにも私自身は考えているところです。

 こういった、トランスジェンダーの皆様だけではないんですけれども、LGBTに対する大臣の御所見をお願いします。

小倉国務大臣 先ほど申し上げたように、私どもの見解といたしましては、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えておりまして、そのためにこそ、政府としては、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向けて、様々な、先ほどの話も含めて、国民の声を受け止めながら、しっかりと取り組んでいく必要があると思っております。

 そういった性的指向や性自認につきましては、現在におきましても、職場や学校などを始めといたしまして、社会での理解増進に向けた啓発活動の充実や、適切な相談対応や人権救済等を行っていく必要があると考えておりまして、それぞれの分野を所管する各府省庁において適切に対応されているものと承知しておりますが、その際、しっかり関係府省庁がお互いに協力、連携をすることが必要なんだろうというふうに考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 そのお答えのところであるような不当な差別というのが多分いろいろ課題になっているんだと思うんですけれども、大臣の今おっしゃった中の不当な差別というのはどういったことを指されているのか、何かあれば教えてもらってもいいですか。

小倉国務大臣 先ほど厚労省から答弁がありましたように、例えば公衆浴場におきましては、体が男性、心は女性の場合に、女湯に入らないようにする必要があると考えているということであります。こちらにつきましては、それを区別したとしても、不当な差別には当たらないということだろうと思います。

 そういった、しっかり議論をしながら、国民の多くの皆様方にこの課題について納得、理解をしていただくということが、この不当な差別に含まれている含意だというふうに考えております。

堀場委員 私も、この不当な差別というところでいろいろ議論が止まってしまっているという報道等を目にすると、やはり議論が足りないんだと思っているんですね。

 当事者の皆さんのお声を聞くのも大事ですし、さっき私が言ったちょっとびっくりしちゃうよねというようなこと、それは、例えば居酒屋とかで、一個しかないトイレに男性、女性問わず入っていて、出てきた前の人が男の人であっても、わあっとちょっと思ってしまうということがあるわけですけれども、そういったことすら、否定するその気持ちを否定する必要はなくて、それが差別ということではないんじゃないかなと私は思っています。

 ただ、先ほどから何度も言っているとおり、ジェンダーということで救済を分けるとか、そうすることによって、女性の人は救われるけれども、そういう、同性であったりとか、男性であったりとか、同じような被害に遭っていても助けられない、若しくは漏れてしまうというような人がいますとなったときに、やはりこれはちょっと不公平な社会ですよね。そして、それをやることによって、どんどんどんどん、より強い団体というか、同一性ばかり重視していってとんがっていって、本当に極端な方になっていってしまう。こういったところで男性と女性の対立というものが生まれていくんじゃないかなというふうに考えています。

 というのは、そんなに男性は敵じゃないよと私はとんとんと教えてあげたいなと思うような言説がたくさん、若年女性をめぐる課題というのは、今、ちまたでは、結構インターネット上とかでも言われています。それを考えたときに、やはり助けることはしなければいけないけれども、助ける仕組み、若しくは助ける仕組みをつくるときの体制、そういったところで、声の大きい女性がつくってきたんじゃないかなという議論があってもいいんじゃないかなというふうに思っています。

 私自身は女性ですし、女性がしんどかった経験、そして、女性がほかの人に比べて給料が低かった経験もありますけれども、そして、子供を見なさいと言われて強要された経験もありますし、いろいろな人生経験があってここに今立っていますが、だからこそ、漏れのない支援というものを、福祉ですから、やはり自由とかではなく、公平で透明性があって誰にでも門戸が開かれている、この三点が非常に重要なんじゃないかなというふうに強く強く思っていますし、今の縦割り行政とか会議ばかりやっている支援体制では、支援している人も疲れてしまう。

 そして、会議をやっているけれども一向に支援が具体化しない、そういった事例も本当にたくさん現場ではあると思っていますし、私が携わっていたことでも、なかなか進まないなと思うと、いや、次の会議にかけます、次の会議にかけますとかいって、会議にかからないと物事が進まないとか、そういった様々な男女をめぐる課題というものはあると思っておりますので、是非、この国会の場、この委員会の場で、そして、この男性が多い場でこういった発言をすることに非常に勇気が必要だということも申し添えさせていただきまして、本日の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 岸田政権は、安保三文書に基づき、敵基地攻撃能力の保有とともに、五年間で四十三兆円の大軍拡を計画をしております。二〇二七年度にはGDP比二%、十一兆円に達する措置を講ずることを明記をしております。福祉や教育、暮らしを圧迫するこのような大軍拡は認められないと申し上げておきます。

 このような大軍拡を推進する防衛力整備計画では、早期、遠方から攻撃できるスタンドオフ防衛能力の保有を掲げ、大量のスタンドオフミサイルを導入しようとしております。

 さらに、防衛力整備計画では、スタンドオフミサイルの発射プラットフォームの更なる多様化のための研究開発を進めるとともに、スタンドオフミサイルの運用能力向上を目的として、輸送機搭載システム等を開発整備するとあります。

 このスタンドオフミサイルに係る輸送機搭載システムというのはどのようなものなのか。防衛装備庁は、C2輸送機用誘導弾等発射システムの開発に係るデータ取得役務の契約希望者の募集を行っている。何を行うんでしょうか。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 スタンドオフ防衛能力の強化におきましては、それを発射しますプラットフォームを更に多様化することによりまして、相手方に一層複雑な対応を強い、我が国への侵攻をより効果的に阻止、排除することが重要でございます。

 こうした観点から、今般策定いたしました防衛力整備計画におきましては、航空自衛隊の輸送機からスタンドオフミサイルを発射することが可能となる輸送機搭載システムを開発整備することとされております。

 このため、令和五年度予算におきましては、当該システムの実現可能性等について調査研究を実施するために、輸送機搭載システムに関します調査研究経費といたしまして約三十六億円を計上させていただいているところでございます。

 お尋ねのC2輸送機用誘導弾等発射システムの開発に係るデータ取得役務と申しますのはその一環でございまして、専門的な知見を有する事業者からデータ収集、分析の技術的な支援を得まして、防衛省といたしまして必要な各種試験データの収集、分析を実施するものでございます。

 具体的に申し上げます。航空自衛隊の主力輸送機でございますC2輸送機から、スタンドオフミサイルを発射する容器のようなものを空中に投下いたします。そうした環境を風洞の中で模型を用いまして模擬いたしまして、その容器が投下された際にどのように落下するか等に係るデータを収集、分析することを予定しているものでございます。

 以上でございます。

塩川委員 輸送機について、スタンドオフミサイルを搭載、発射するシステムの実現可能性の調査研究を行っていくということです。

 輸送機ということでいえば、航空自衛隊の入間基地、美保基地、また小牧基地にありますが、輸送機のC2とC130が配備されております。

 先ほどC2の例示がありましたけれども、C2とともにC130についてもスタンドオフミサイル発射システムの調査研究を行っていくんでしょうか。

茂木政府参考人 お答えいたします。

 先ほどお尋ねがございましたC2輸送機用誘導弾等発射システムの開発に係るデータ取得役務におきましては、まさにその題名にございますように、C2を対象にいたしまして、模型を用いて各種試験データの収集、分析を実施することといたしております。

 したがいまして、C130輸送機、先ほど御指摘ございましたけれども、この輸送機を対象にいたしましたデータの収集、分析というものは、今のところ予定しているところではございません。

 その上で、付言させていただきますけれども、防衛力整備計画において開発整備することとされております輸送機搭載システムにつきまして調査研究を実施する、今そういう段階でございますので、今後これをどういう機体に搭載するかということにつきましても調査研究の中で具体的に検討されていくものでございます。

 したがいまして、現時点でC130輸送機への搭載の可能性自体を排除するものではないということは付言させていただきたいと考えております。

 以上でございます。

塩川委員 C2は対象で、C130も排除されるものではないということであります。

 資料を配付させていただきました。アメリカでは、米空軍とロッキード・マーチン社が、輸送機からスタンドオフミサイルを投下、発射できるシステムであるラピッドドラゴンの開発を進めております。先ほど説明があったように、パレットに載せて、これを投下をして、そこからスタンドオフミサイルがエンジンを吹かせて飛んでいくということになるわけであります。C130やC17輸送機での実用化を図っております。

 調査研究に当たっては、このような米軍のラピッドドラゴンなども参考にするということでしょうか。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 米国のロッキード・マーチン社が米軍の輸送機C130等から長射程のミサイルを発射するためのシステムとされますラピッドドラゴンなるシステムの開発を進めているということは、私どもも承知をしておるところでございます。

 令和五年度から実施いたします輸送機搭載システムに関する調査研究におきましては、模型を用いて各種試験データの収集、分析を実施するほかに、ラピッドドラゴンといった諸外国の取組につきましても調査をいたしまして、今後の検討の資を得るべく努力してまいる予定でございます。

塩川委員 米軍のラピッドドラゴンについても調査研究を行っていくということであります。

 物資や人員を運ぶことを目的とした輸送機が、改造することなく攻撃機化するということです。攻撃機能を持たない輸送機を攻撃機化するという点で、極めて重大であります。

 米軍の場合では、C130なら十二発、C17は三十六発ものJASSM、スタンドオフミサイルの搭載、運用可能だということも報道ではありましたけれども、このラピッドドラゴンで使用するスタンドオフミサイルは、どういうミサイルを想定しているんでしょうか。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 米国のラピッドドラゴンシステムにつきまして、私どもは開発の担当部局でもございませんので、このシステムがどういうミサイルを対象にしているのかということについて確定的にお答えすることは困難ではございますけれども、公刊情報で聞いている限りにおきましては、JASSMと言われるミサイルを搭載して運用することを目指して開発中だと聞いております。

 他方、私ども防衛省の方で今後調査研究していく輸送機搭載システムでございますけれども、まさに、令和五年度から二年かけまして、実現可能性も含めて調査研究をする段階でございまして、この成果を得られた後、開発への移行の適否などを判断していく、こういう段階でございますので、現段階でどういうミサイルを搭載するのかということにつきまして申し上げる段階にはないということを御理解いただきたいと思います。

塩川委員 スタンドオフミサイルを搭載、発射をするシステムということですから、この間、一連の爆買いの中に、スタンドオフミサイル、たくさんメニューがそろっているわけです。

 米軍の場合については、JASSM―ERと言われる、射程が千キロと言われる長距離のミサイルを運用するということでの研究開発が行われているわけですけれども、当然、スタンドオフミサイルにはトマホークなども含まれるわけです。

 日本における研究開発においては、JASSMとかトマホークとか、選択肢としてはどれを選ぶか、特定のものを排除しているわけではないということでしょうか。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明いたしましたとおり、輸送機搭載システムから発射する具体的なスタンドオフミサイルにつきましては、今後の調査研究の中で具体的に検討されるものでございますので、現時点でお答えすることは困難でございますが、トマホークに関して申し上げれば、このミサイルはイージス艦に搭載することを計画しているものでございますので、このC2等、輸送機搭載システムに搭載することは今のところ念頭にあるわけではございません。

塩川委員 この五年間、防衛力整備計画上の話ですので、その先というのはまたその先の検討でしょうから、そこでトマホークが排除されているわけではないということがあると思います。

 JASSMなどの長距離ミサイルを輸送機に搭載、発射するとなれば、広範囲が射程に入ります。政府が憲法上保有できないとしてきた、他国に脅威を与える攻撃的な兵器にほかなりません。過去、トマホークは、イラクやアフガニスタンなどでの対テロ先制攻撃戦争で米国が繰り返し使用してきた兵器であります。スタンドオフ防衛能力は、先制攻撃につながる敵基地攻撃能力の保有そのものだという点で、撤回を強く求めるものです。

 もう一つ指摘をしたいのが、火薬庫の新設の話であります。

 防衛省は、大量に導入するスタンドオフミサイル等の保管を想定した弾薬庫を、今後十年間で百三十棟建設する計画であります。防衛省は、火薬庫新設について、これまで地元説明を行ってまいりましたが、来年度の防衛省予算には入間基地の火薬庫新設も盛り込まれております。この入間基地の地元である狭山市や入間市、地元住民に説明はするんでしょうか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 令和五年度予算においては、入間基地内において、既存の火薬庫の建て替えに係る経費を計上しておりまして、昨年十二月、関係する自治体、埼玉県入間市、狭山市でございますが、関係する自治体に対しまして、入間基地における令和五年度予算案の主要事業の内容として説明させていただいたところでございます。

 また、今回の火薬庫の整備につきましては、新たな用地取得を伴うものではなく、既存の火薬庫地区における建て替えであることから、現時点においては住民説明を行う予定はありませんが、引き続き、関係する自治体を通じ、様々な形で情報提供をさせていただく考えでございます。

塩川委員 火薬類取締法では、火薬庫設置に当たっては、民家から離して設置するための保安距離が定められております。

 入間基地の火薬庫新設について、建て替えと言い換えているわけですけれども、建て替える場所というのは、現行の場所とは異なる場所に建て替えるわけですよね。それはそれでよろしいですか。

杉山政府参考人 現在のもの、既存のものがありまして、代替として別な火薬庫地区に建てまして、既存のものを解体といいますか、撤去するということになります。

塩川委員 ですから、ほかの場所に造るんですよ。そうしますと、民家からの保安距離が変わってくるわけなんです。そうなれば、こういった保安距離の要件との関係でも、地元住民の皆さんに説明するというのは行うべき最低限の責務ではないでしょうか。

 敵基地攻撃能力保有と一体に、スタンドオフ防衛能力の強化とかミサイルの大量保有のための火薬庫の新増設などが行われております。そういう点でも地元説明というのは不可欠であります。

 官房長官にお尋ねしますけれども、スタンドオフ防衛能力の開発や配備が進められ、また、そのための火薬庫の新設などが大量に見込まれております。政府は、このような敵基地攻撃能力の保有について、相手国の報復攻撃で日本に大規模な被害が生じる可能性も完全に否定できないと予算委員会でも述べております。日本に戦禍をもたらすことになるようなスタンドオフ防衛能力推進、大軍拡は撤回をすべきではありませんか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 今般、政府としては、スタンドオフ防衛能力等の自衛隊の能力を活用して反撃能力を保有することとしました。

 反撃能力保有の目的は、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力であり、これにより、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えています。

 このように、反撃能力は国民の命や暮らしを守り抜くためのものであり、御指摘のように、日本に戦禍をもたらすものではないと考えております。

塩川委員 他国に脅威を与えるような攻撃的な兵器にほかならない、専守防衛の原則を投げ捨てるような軍拡はやめるべきだと申し上げて、質問を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 よろしくお願いいたします。

 今日は、一般質疑ということで、高市国務大臣にお越しをいただきました。

 公平という言葉について今日は質疑をさせていただきたいと思います。といっても、決してどたばた劇をやるつもりはありませんので、極めて真面目な議論とさせていただきたいと思いますが。

 よく、皆様方、公平中立だという言葉を使われます。公平と中立というのは、私の中では全く違う概念だと思っています。放送法でも取り上げられましたが、あれは公平です。けれども、よく公平中立と並べて使われるわけでありますが、それぞれ、高市大臣、どのように違うというふうに御認識でしょうか。

高市国務大臣 公平というのは、偏らず、えこひいきのないこと、それから、中立というのは、いずれにも偏らず、中正の立場を取ること、それからまた、いずれにも味方をせず、いずれにも敵対しないことという意味があると思います。

緒方委員 そうなんです。

 かなりいいところまで来ておられまして、公平というのはインパーシャリティーで、中立というのはニュートラリティーですけれども、中立というのは、言葉の定義としてどういうことかというと、誰とも関わらない、誰も応援しない、ある対立する見解の中で誰も応援しないということを意味するものであって、逆に、公平というのは、全ての関係者を平等に扱うということをもって公平というと。この二つは実は概念として全く別物であるということは、事前のレクでも申し上げさせていただきました。

 そうすると、中立を達成する方法というのは、若干の差異はあるかもしれませんけれども、基本的に関わらないということなので、それを達成する方法というのは基本的に一つに集約していくんだと思います。関わらないということなので、やり方としてですね。

 けれども、公平というのは一定の平等を前提としているわけですから、平等を前提とした何らかの価値観に基づいて平等というのは判断されるわけでありますから、公平を達成するのは、そのよって立つ価値観において、達成の仕方とか最終的に達成するもの、これが私は異なってくるというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。

高市国務大臣 中立というのは特定の立場を取らないということですから、公平の概念とはまた別のものだと思います。

緒方委員 そうなんです。

 その上で、公平の在り方というのは、全ての関係者を平等に扱うということなので、平等を判断するための価値観が違えば達成されるものが異なってくるというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

高市国務大臣 なかなか難しい御質問ですが。

 様々な法律がございます。そんな中で、公平ということになりますと、例えば法律に基づいて国民がサービスを受けられる、これはえこひいきなく行政執行しなきゃいけません。そしてまた、法律に基づいて様々な機会を与えられる、チャンスを与えられる、これもえこひいきなく執行されなきゃいけないと思います。

 一方、法律で中立という言葉が出てくるものもございます。それは、ちょっと所管外で言いにくいのですが、例えば労働争議とかそういったものがあったときに、どちらの味方もせず、どちらとも敵対せず、このように行政が執行されるものだろうと思います。

緒方委員 中立というのが法律用語に出てくるのは、例えば国家公務員法における政治的中立ということで、あれは政治的なものに対して関わらない、誰も応援しないということで、関わらないということでありまして、逆に、今、大臣、いろいろな法律に基づいて平等というのは判断されるんだということでしたが、例えばですけれども、学校教育において平等を達成するというときに、純粋に形式的な平等を達成すればいいのか、アファーマティブアクション的なもの、いずれも多分、公平を達成する一つの手法だと思うんですね。

 そういう意味で、公平を達成するためには、よって立つ価値観があるので、それによって達成される公平の姿というのは異なるというふうに、私はそう思っています。多分、これで間違いないと思います。

 その上でなんですけれども、これは若干、放送法に絡めるつもりは私は余り今日はないんですけれども、例えば、全ての者に対して批判的に接するとか、全ての人間に対して批判的な目線で接するということとか、あと、司法の独立、学問の侵害を、侵害する者に対しては断固として批判的な立場に立つとか、そういう価値観に基づいて何かを判断するというのも、これも公平の中に入るんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

高市国務大臣 ちょっと、具体的な法律などの事例を挙げていただかなければ、私には判断ができません。

緒方委員 別に、何かの法律に照らしているんじゃなくて、純粋に概念を聞いているわけでありまして、例えば、報道において、全ての者に対して批判的に接するとか、誰に対しても批判的な目線で、放送法なら放送法の公平でもいいですよ、余りそっちに入るつもりはなかったけれども、そういうような形で公平を達成しようとするのは、それは一つあり得るというふうに思いませんか、大臣。

高市国務大臣 去る三月九日に、御党ではないのですが、立憲民主党の小西参議院議員から内閣府の大臣官房が伺いましたところによりますと、明日以降、つまり三月十日以降、私が放送法の解釈などに触れた場合には、国家行政組織法違反で首を取りに行くというお話を伺っておりますので、ちょっと所管外のものについてはお答えできません。

小笠原政府参考人 失礼いたします。

 ただいま放送法におけるということでちょっと言及がございましたので、放送法における政治的公平ということについて一言御説明させていただきます。

 放送法における政治的に公平であることとは、従来から、政治的問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてのバランスの取れたものであることとしております。また、その適合性の判断に当たりましては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとしてきたものであります。この従来からの解釈については、何ら変更はございません。

 なお、政治的に公平であることを含む放送法第四条の規定は、まずは放送事業者が自主的、自律的に遵守いただくものと理解をしております。

緒方委員 別に、出てきてくれと言わなかったんですけれども、出てきたからには聞かせていただきたい。

 全ての者に批判的に接するという形で報道するというのは、これは公平を達成する一つの手段だというふうに思いますが、局長、いかがですか。

小笠原政府参考人 繰り返しになって恐縮でございます。

 前半のところにつきましてということではなくて、政治的に放送法上の公平であるということにつきましては、やはり、政治的問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてのバランスの取れたものであるということとしているところでございます。

緒方委員 何度でも聞きますよ。

 全ての関係者に対して批判的な目線で報道するということは、これは公平を達成する一つの手段だと、私はさっきから同じことを聞いています。きちんと答えてください。

小笠原政府参考人 繰り返しになって恐縮でございます。

 ただ、放送法上の、出てくる公平ということでのお尋ねでございますので、放送における政治的公平ということでお答えをさせていただいております。

 政治的に公平であるということにつきましては、政治的問題を取り扱う放送番組の編集に当たって、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてのバランスの取れたものであることというふうにしておるところでございます。

大西委員長 質問は、局長、分かっていますね。

 小笠原局長。

小笠原政府参考人 では、御答弁申し上げます。

 ちょっと今、委員の御質問、あらかじめ通告ということではない御質問ではございましたが、今、御質疑の過程で、放送法と公平というお尋ねがありましたので、放送法に出てまいります政治的公平ということについて御答弁申し上げたところでございます。

緒方委員 私、ちゃんと通告いたしております。そこに総務省の方もおられました。

 局長、ちゃんともう一回、きちっと答えてください。私は、別に変なことは聞いていないんですよ。単に、全ての者に対して批判的な視点から例えば報じるということについて、これは公平の一つの達成の仕方ですよねという当たり前のことを聞いているんです。もう一度。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと繰り返しになって恐縮でございますが、私どもの立場として御答弁申し上げる場合、やはり、所管しております放送法における政治的公平の概念ということで御答弁申し上げることになります。

 ちょっと今、委員の御指摘の点につきましても、放送法上の規定の御説明ということでありますと、政治的問題を取り扱う放送番組の編集に当たって、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体のバランスの取れたものであることということに、御説明いたすことになります。

大西委員長 速記を止めましょう。

    〔速記中止〕

大西委員長 速記を起こしてください。

 ただいまの緒方君の質問に関しましては、後刻理事会で協議をいたします。

緒方委員 じゃ、ちょっと視点を変えますけれども、自分を批判していることのみをもって相手を公平でないというふうに断定することはできないというふうに思いますが、大臣、それでよろしいですか。

高市国務大臣 閣僚としてということでございましたら、常に公平性、これは心がけているつもりでございます。

 一例を挙げますと、与党の方々からの御要望であっても、そして、野党の方々が支援団体と一緒に御要望に来られたいというときも、両方とも私は対応をしておりました。過去に大臣だったときもそうでございます。

緒方委員 今日、余り放送法に入るつもりは実はなくて、ただただ、よく世間で言われる公平、これは残念ながら大臣の御関係で参議院で盛り上がっていましたが、それを別にあげつらいたいわけでも何でもなかったんですけれども。

 公平というのと中立という言葉がよく使われるけれども、結構、世間的には混同して使われていて、私の言いたかったことは何かというと、中立というのは、先ほど言ったように、誰とも関わりません、誰も応援していないですということ、ある対立する意見について、どちらにもくみさないということ、これを中立というわけですが、公平というのは、実は全ての関係者を平等に扱うということであって、例えば、これが一番如実に出るのがPKOです。国連は、はっきりと、PKOという組織は中立ではない、自分たちは公平なんだ、いかなる意味においても中立じゃないんだとはっきり言うんですね。

 そういう違いがあるので、そこは分けて考えましょうねということが言いたかったのと、もう一つは、公平を達成するためには一定の価値観を持ってやらなきゃいけないので、その価値観によって達成される公平の姿が違いますよねということ、これを言いたかったんです。ただ、なかなか難しそうだったので、また次に回したいと思います。

 もうあと五分ですね。

 今日、谷大臣にお越しをいただいております。海洋政策担当相としてお越しをいただきました。

 まず一番最初に、海洋調査についてお伺いをしたいと思います。

 二〇〇一年に、日本と中国との間で、海洋調査活動の相互事前通報の枠組みの実施のための口上書というのがあります。日本と中国、それぞれが海洋調査をするときの取決め、基礎となるものですが、これは実は、日本が中国で調査するときと中国が日本で調査するとき、対象となる海域の表記が異なっております。不平等な取決めではないかと思いますが、岩本さん。

岩本政府参考人 今委員御指摘のこの枠組み、二〇〇一年二月から運用してきております。

 この枠組みの下では、日中双方が、東シナ海における相手国の近海、これはすなわち地理的中間線の相手国側で海洋の科学的調査を行う場合、この場合には二か月前までに事前通報を行うという具合になっております。したがいまして、不平等な取決めということではございません。

緒方委員 日本は、中国の近海で調査をするときは全て事前通報の対象なんです。逆に、中国が日本で海洋調査をするときは日本が関心を有する日本の近海というふうになっていて、表現が違います。平等じゃないんじゃないですか、岩本さん。

岩本政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、そういうことではなくて、東シナ海では両国の間で境界の画定ができておりません。したがいまして、その地理的中間線の相手国側で科学的調査を行う場合、その場合にはお互いに事前通報を行うという対等の取決めになっております。

緒方委員 ちなみに、この口上書、インターネット上、どこで探しても出てきません。都合が悪いので隠しているんだと思います。

 じゃ、この口上書に基づいて日本が中国の近海で海洋調査をしたケース、そして中国が日本の近海で海洋調査をしたケース、それぞれ実績はいかがでしょうか。

岩本政府参考人 お答えいたします。

 中国が我が方の近海で調査を行ったケースでございますけれども、これについては、済みません、事前にその点についていただいていなかったので、手元に資料はあるんですけれども、年ごとに数字を書いているものですから、総計、後で足し合わせれば当然出てくるのですけれども、それはちょっと後でまた御説明をさせていただきます。

 例えばですけれども、二〇〇一年であれば、中国側からは十四件通報がございまして、十四件同意を与えております。年ごとにそれぞれ数字は異なってまいっております。

 逆に、日本側が先方の海域で調査を行った実績はないという具合に承知しております。

緒方委員 あえて外務省条約課課長補佐経験者として言うと、岩本さん、今、同意と言いましたが、これは同意を与えないんです。事前通報だけです。

 結局、中国と日本とで海域が全く、海洋調査が異なるんですけれども、これは谷大臣にちょっとお伺いをさせていただきたいんですが、日本も中国の海域で海洋調査してはどうかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがお考えになりますでしょうか。

谷国務大臣 それこそ今初めてお聞きした質問なんですけれども、関係省庁なり関係者からそういう強い要望があればまた検討をしなければならないと思っておりますけれども、私の方には、現時点ではそういう要望は聞いておりません。

緒方委員 けれども、皆さん、考えてください、もう終わりますけれども、中国、むちゃくちゃやっているんです。日本、ゼロなんです。この不均衡を私はどうにかすべきではないかと思うので、問題を指摘だけさせていただきまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 IR、カジノ問題についてです。

 先月、二月二十二日の予算委員会で、パネルで四つの問題をお示しして、大阪のカジノ計画、国の承認は余りにもあり得ないですよということをお伝えしたんです。その後の状況を踏まえて、改めて見解を求めます。

 パネル一を御覧ください。前回、二月にお示しした夢洲の大阪カジノ、IR誘致をめぐって問題が多発しているということを四つにまとめた、そこに青字で現在の更新情報を加えました。

 一つ目、不動産鑑定の違法性の疑い、収支計画の根幹が揺らいでいるという点。これも事態が動いていないか、むしろ悪化しております。これは、夢洲の不動産鑑定で、不法に大阪市が何らかの鑑定業者に指示して、安い賃料に計算させた、そして、それはIR事業者に便宜を図った、そういう違法性の疑いというのが取り沙汰されているんです。

 一月に住民監査請求があって、三月十五日に監査結果で異例の合議不調となりました。監査委員が四人いるんですけれども、その見解が分かれたというんですね。この問題に関して、賃料は適正で違法な点はないとする見解が出る一方で、不動産の鑑定条件として、IRや地下鉄の新駅ができるその開業予定が考慮されていないため適正と言えず、違法で、改めて賃料の検討を勧告すべきだという見解が示されたと。見解が分かれて合議不調だったんですね。この違法性があるという見解が出た時点で、もうストップするべきものだと考えます。

 そして、問題の二点目です。大阪府の土壌対策の方針がいまだに決まらない。昨年七月に市民が提訴して、市側は三月末まで意見表明できないと内容を隠匿し、まだ隠匿しております。それから、大阪府が、夢洲の土壌対策どないするのだ、そういう会議を昨年十二月二十三日に開いたんですけれども、対策は引き続き検討、対策は決まっていない。議事概要が公開されていないのが十二月二十三日で、まだホームページが準備中のままで、議事概要すら公開していない。三か月以上たっています。

 これは仕事遅過ぎへんかということで、二日前に大阪府に電話しまして、議事概要を公開してくれないと困るんですけれどもとお伝えしたんですけれども、何をおっしゃったかというと、いつ出すとはお答えできない、近々ですと。三か月も保留しておきながら、内容もお答えできませんと。じゃ、国の承認の審査委員会には必要なデータは提供しているんですかと聞いたら、それも含めてお答えできないと。これは一体何を隠しているんですか。

 申請を言い訳に隠匿を続けている、これは、申請を取り下げないと、情報公開法の趣旨が守れないんじゃないでしょうか。これが続くと、三番目の住民合意が全くないのが、ますます遠のくばかりなんです。

 大阪府では、二〇二二年、去年に、二十一万人もの府民が署名を出して住民投票を求めたんです、カジノをやるのかやらないのか。それを、たった一日の議会で、維新と公明党で否決したんですね。この三月にも、これは自民府議団です、自民党が、十分な情報公開、説明と理解が得られていないとして住民投票を求めたんですけれども、これまた維新と公明党が否決したんですよ。

 このカジノ計画を承認する国は国交省所管なんですけれども、国土交通大臣が、公明党が着任しているんですけれども、この状況は、一体、地元住民の思いを公明党はどう考えているんでしょうか。大臣に伺ってもいいでしょうか。代わりに答えてください。答えていただけない。

 公明党が与党の座を守るために、国では自民と公明党でくっつく、大阪では維新と公明党がくっつく、こういうことによって、結局、国交省が本来求めている住民合意というものもままならない、住民を裏切っているんですよということが言いたいんです。

 続けます。

 大阪府市の申請からもう一年が経過しようとしています。カジノ計画の大分手前のレベルで目詰まりしている。その結果、住民に開示するべき情報も開示できない。住民合意から逆走しているんですね。だから、ここは、国交省は、大阪のカジノ計画の申請を取り下げさせて、大阪府市が本来住民に対してやるべき情報公開ですとか問題解決をしてから再申請させるべきだと考えております。

 続いて、パネルの二です。

 これは、大阪府がこの四月から、高校生に向けてギャンブル参加を前提にしたギャンブル依存症の予防啓発授業を計画しているということに対して、住民が、大阪府民の住民団体が、それは駄目だ、困ると反対しているという、そのチラシを掲載しました。カジノを推進する国策の下で、これは大阪に限りませんけれども、このような形で、国が、カジノは推進する、その下でギャンブル参加を前提とした健康に遊ぶという予防啓発授業をやるということに困惑が広がっている。

 このように具体的にカジノの誘致が進んでくると、学校の先生はどのように教えたらいいのか、カジノはやめとけ、賭博は違法やと言えなくなると。カジノは、大阪府は推進して、その上がりで福祉とかを賄うと言っているので推進の立場なんですけれども、参加するに当たり、このようなことに気をつけて参加してくださいという授業になってしまう。こういうことが実際に進んで、住民や保護者も教師も困惑するんですね。

 だから、カジノが来ると何が起きるのか、こういった付随していろいろなことが我が身に降りてきて、住民はそのとき初めて気づくんですから、おいそれと住民が合意できたと言わないでほしいんですよね。カジノ計画で必須事項に住民合意があります。それを、今、大阪のカジノ計画では、議会で過半数を取ったから住民投票はもうやらなくていいとか、説明会したから住民合意ができたといって突き進もうとしていて、それを国が承認したら絶対いけないよと言っているんですよ。禍根を残すからです。だから、絶対承認してはいけないと考えております。

 この点、啓発に関する大臣に来てもらっているんですけれども、啓発をしたからといって十分だと考えないですが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 カジノを含むIRについては、現在、観光庁で区域認定の審査が行われていると承知しておりまして、大阪府において、依存症対策として、府立高校における予防啓発授業の拡充などの取組を進めていると伺っております。

 こうした取組等を通じて、青少年や若い世代にギャンブル等依存症問題への関心と理解を深めていただくことは、カジノに限らず、ギャンブル等依存症対策を効果的に進めていく上で大変重要と考えております。

 カジノ以外にも、競馬等の公営競技やパチンコといったギャンブル等をギャンブル等依存症対策基本法に基づく対象としておりますので、ギャンブル等依存症対策について高等学校で行うということについては、これは意義のあることだと思っております。

大西委員長 既に持ち時間が経過しているのは御存じですね。

大石委員 これは、カジノを、推進を前提にしたカジノの依存症対策推進計画に基づいて行われることなので、やはりカジノ依存症は増えるんです。だから、カジノは絶対に推進してはいけないし、大阪のカジノ計画は絶対に承認してはならない、これをお伝えして、終わります。

     ――――◇―――――

大西委員長 次に、内閣提出、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。後藤国務大臣。

    ―――――――――――――

 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

後藤国務大臣 ただいま議題となりました特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務づける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、特定受託事業者を、業務委託の相手方である事業者のうち、個人であって従業員を使用しないもの又は法人であって一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないものと定義することとしております。

 第二に、特定受託事業者に係る取引の適正化について定めるものであります。

 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、原則として、直ちに、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払い期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならないこととしております。また、特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払い期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならないこととするとともに、特定業務委託事業者は、当該支払い期日までに報酬を支払わなければならないこととしております。そのほか、一定期間以上継続して行われる業務委託について、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒んではならないこと、報酬の額を減じてはならないこと等、特定業務委託事業者の遵守事項を定めることとしております。

 第三に、特定受託業務従事者の就業環境の整備について定めるものであります。

 特定業務委託事業者は、広告等により特定受託事業者の募集に関する情報を提供するときは、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、正確かつ最新の内容に保たなければならないこと、特定受託事業者が育児、介護等と両立しつつ継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、必要な配慮をしなければならないこと、特定受託業務従事者に対するハラスメント行為により、その就業環境を害することのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備等を講じなければならないこと、継続的業務委託について、契約の解除をしようとする場合等には、原則として、少なくとも三十日前までに予告しなければならないことを定めることとしております。

 第四に、公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、この法律の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者等に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所等に立ち入り、帳簿書類等を検査させることができることとするとともに、この法律の違反行為があった場合等には、指導、助言、勧告、命令、公表等をすることができることとしております。

 第五に、国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、特定受託事業者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備等を講ずることとしております。

 なお、この法律案の施行期日は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る四月五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時一分散会


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