衆議院

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第11号 令和5年4月7日(金曜日)

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令和五年四月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    尾崎 正直君

      大野敬太郎君    工藤 彰三君

      小寺 裕雄君    杉田 水脈君

      鈴木 英敬君    田野瀬太道君

      平  将明君    中野 英幸君

      中山 展宏君    平井 卓也君

      平沼正二郎君    牧島かれん君

      松本  尚君    中谷 一馬君

      太  栄志君    本庄 知史君

      馬淵 澄夫君    山岸 一生君

      岩谷 良平君    浦野 靖人君

      早坂  敦君    河西 宏一君

      福重 隆浩君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

      櫛渕 万里君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (国家公務員制度担当)  河野 太郎君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 谷  公一君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)

   (共生社会担当)     小倉 將信君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   後藤 茂之君

   国務大臣

   (経済安全保障担当)

   (科学技術政策担当)   高市 早苗君

   内閣府副大臣       星野 剛士君

   デジタル副大臣      大串 正樹君

   経済産業副大臣      中谷 真一君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  溝口  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高村 泰夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  廣瀬 健司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  小柳 誠二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       窪田  修君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  木村 陽一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 飯田 陽一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 五味 裕一君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進室次長)           黒田 昌義君

   政府参考人

   (内閣府再就職等監視委員会事務局長)       吉田 徳幸君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    渡邊 国佳君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          浅野 敦行君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松本  圭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房スタートアップ創出推進政策統括調整官)        吾郷 進平君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         南   亮君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         加藤  進君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           五十嵐康之君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  堀場 幸子君     早坂  敦君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  早坂  敦君     堀場 幸子君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

    ―――――――――――――

四月六日

 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官溝口洋君外二十三名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 馬淵でございます。

 一般質疑の時間をいただきました。

 まず官房長官にお尋ねをさせていただきたいんですが、まず冒頭、これは三月の三十日でしたか、報道に上がりましたが、また、これにつきましては今もう各社が報じておりますけれども、国土交通省元事務次官が、民間会社であります空港施設の副社長、この方も国土交通省のOBでいらっしゃいます、この副社長を次期社長にするように求めたということが明らかになりました。今回、国交省の元事務次官が、ある意味、公務員制度の信頼自体をゆるがせにするような不祥事ではないかとも、このように考えるわけでありますが、まず、長官、これをどのように受け止められておりますでしょうか。お答えいただけますか。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 今回の件につきましては、国土交通省において対処されており、現職職員による空港施設株式会社への再就職のあっせん、職員OBから国土交通省に対する働きかけのいずれについても確認できないと承知をしております。

 職員OBが現役職員の関与なく行う知人への仕事の紹介や採用活動などは、既に公務を離れた、予算や権限を有していない民間人としての活動であり、こうした民間人の活動に対する調査は予定していません。

 いずれにしても、公務の公正性やそれに対する国民の信頼を確保することは大切であると考えており、引き続き、政府としては、第三者機関である再就職等監視委員会による厳格な監視の下、再就職等規制の遵守の徹底を図ってまいりたいと考えております。

馬淵委員 いわゆるOB。

 現職の職員に関しては、これは国家公務員法の改正時に、再就職等に関しましては厳しい規制をしいたということでありました。当時、二〇〇七年、第一次安倍政権下の改正でした。利害関係企業への地位の要求など、あるいは再就職のあっせん、こういったものが現役職員による行為として規制がかかりました。

 こうした状況で、今もお話ありましたけれども、窓口を一元化するということで、官民人材交流センター、また、その監視役として再就職等監視委員会も設けられたわけであります。当時、私も行革に取り組んでおりましたのでよく記憶しておりますが、この改正法で、今は二年間、届出が必要とされているわけですね、離職をされるときには。

 しかしながら、今回はOBの方々ということでありました。したがって、ここの国家公務員法の改正の行為規制にはかからないということであります。

 私も、先日、国土交通委員会の中で同僚議員の質疑がありまして、斉藤大臣からの御説明も受けております。

 元次官とその副社長、この両名に聞き取りを行われて、そして、民間企業の役員人事に関与している疑いを招きかねない発言があったことが事実であると判明し、甚だ遺憾だ、このように大臣は述べられました。また、こうした状況の中で、元次官でありますから大変な権限があるわけですけれども、当時、現役時代は権限があったわけですが、今後、現役時代に担っていた公務に係る権限を行使可能であるかのような誤解を招かないよう、自覚を持っていただきたい旨伝えた、こう述べられています。

 しかし、現実には、OBの関与といいますか、このような状況というのは何ら規制がないわけです。先ほど長官がおっしゃったように、民間人でいらっしゃる、私人でいらっしゃるということではありますが、やはりこうした課題については、今回、国土交通省の方でこのようなことが明らかになったということでありますが、二〇一七年には文部科学省の天下り問題、これに関しては、関与した現役の職員は処分がなされました。ただ一方、当時も、仲介を担ったOBは不問とされているわけですね。このときにも、果たしてこれでよいのかという議論がありました。

 今日においてはこれはまだ何も手つかずでありますが、国家公務員制度の信頼を揺るがしかねない、このような事態に対して、官房長官、先ほどは調査等も考えていないとおっしゃっておられましたが、今私が申し上げたような状況の中で、改めて、官房長官として全省庁に対して、少なくとも、こうした事例がないのかということについては調査を求めるべきではないかと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど答弁をさせていただいたとおりでありますけれども、既に公務を離れた、予算や権限を有していない民間人としての活動であり、こうした民間人の活動に対する調査は予定をしておりません。

 一方で、先ほど、国土交通大臣の方から答弁をさせていただきましたとおり、現職の関与はなかったという調査の結果でございますけれども、国土交通省等々の関与が疑われる、誤解を与えるというようなことがあってはならないという意識の上で、今適切に対応されていると承知をしております。

馬淵委員 国土交通省では、両名を呼んで、また、自覚を持って行動せよという、これはかなり厳しく言われたんだと思います。しかし、では他省ではどうなのかということですよ、私が今申し上げているのは。

 民間人となられた、退職後二年経過して届出が必要なくなった方々がどういう状況におられるかというのは、全て捕捉せよというのはなかなか大変なことです。

 しかし、一方で、次官というのは大変な権限を持っている。私も、国土交通省、よく分かりますけれども、所管官庁として、いわゆる許認可の権限を持っています。したがって、その権限を背景にというのは、当然ながら、民間企業からすれば、それを想定しやすい、忖度とまでは言いませんが、少なくともそれを感じることは間違いないでしょう。ですから、空港施設側も、このような人事に対しての介入というのはとんでもないんだということで、ある意味、声明も出されているわけです。批判する、反論する声明も出されています。

 私が申し上げているのは、こうした事態がほかでもないかということです。今回は、この空港施設という会社がプライム市場に上場されていますから、当然、役員の選任というのは極めて高いコーポレートガバナンスの下に行われるものです。したがって、それはできないんだということは、こういう報道がある中では表に発信しなければなりません。でも、そうではない企業も中にはあるはずなんですね。このような上場をしていない会社、また所管省庁によって許認可を受けている企業、こうしたところが声を上げることができないような状況、これは場合によってはあるかもしれない。なので私は申し上げているんです。

 これは再就職の問題ということで、私、絡めて言っているわけではなくて、むしろ、このような不祥事がひょっとすると埋もれているかもしれない。全省庁に対して、こうした事例がないか調べなさいと言うことは、私は、官房長官としておっしゃることは別におかしくはないと思いますよ。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 政府の立場としては、先ほど申し上げましたとおり、民間人の方の活動に対する調査は予定をしておりません。政府として、第三者機関である再就職等監視委員会による厳格な監視の下、再就職等規制の遵守の徹底を図っているところであります。

 一方で、先生から御指摘があったとおり、それぞれの出身省庁の影響があるかのような誤解を与えるようなことがあってはなりません。その件に関しては、まずは御本人の自律的な、しっかりとした意識をしっかりと持っていただくということが肝要だと考えております。

馬淵委員 国土交通省はもう既に指示を出されています。他の省庁で起きていないかということを申し上げているんですが、政府としてはそうした取組はされないということだと今官房長官ははっきりとおっしゃったと私は思っています。

 私たちは、国家公務員法の改正、二〇〇七年、当時、対案も出して、そして、ある意味、内閣人事局を含めたあの仕組みの中では、我々がつくり込んでいったという思いがあります。しかしながら、このような不祥事が出るということについては、やはりもう一度精査していかねばならないという思いを持っておりまして、我々、これは衆議院となりますけれども、政府ではありませんが、院の調査局による予備的調査、これを行おうというふうに考えております。その場合には、衆議院調査局から、いわゆる国会から、政府に対して、官公署に対して資料提出等の必要な協力を求めることになります。

 官房長官、これは全省に対して当然そういった協力を求めてまいりますので、官房長官におかれましては、このことに対して誠実に対応していただけることを強く求めますが、いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 まず、それぞれ、国会において、委員会また委員の先生方の調査活動等に関して私が発言をする立場にございませんが、当然のことながら、委員の先生方からの様々な御指摘等がございましたら、政府としては、誠実に、適切に対応させていただきます。

馬淵委員 これは私どもとしては早急に取り組みたいと思っておりますので、今御答弁いただきました、誠実に対応ということですので、各省庁に対してもこれはしっかりと官房長官からも求めていただきたいというふうに思います。

 その上で、離職後二年以内に関しては再就職の届出ということが法定されているわけでありますが、今回のことを踏まえれば、長期にわたって元管理職職員の再就職の状況というものを把握しておく必要があるのではないかといった議論も出てまいりました。

 そこで、官房長官、これもお尋ねしますが、このような届出期間に関しては、二年ではなく、より長期に設定すべきではないかということも議論として出てまいっておりますが、いかがお考えでしょうか。

窪田政府参考人 事実関係だけ手短に申し上げますが、二年と制定しました経緯がございまして、離職後というのは、元職員であっても民間人でございますので、個人のプライバシーは保護されなければなりません。個人のプライバシーと公務の公正さという観点から現状の規制になっているところでございます。

馬淵委員 ここはなかなか難しいかもしれませんが、でも、この二年という期間が果たして妥当なのか。当時はこうした形で再就職の届出をするということで法定したわけでありますけれども、より長期というのも、これも一つ、私は考え方としてあるのではないかと思います。

 長官、ここで私が今申し上げたことに対しての御所見はございませんか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 現行の制度におきましては、再就職情報の届出制度は、再就職の透明性の確保及び退職の管理の適正化を図ろうとするものでございまして、現行制度は機能しているというふうに考えております。

 また、御議論に関しては、それぞれ先生方でまた御議論があることかと思います。

馬淵委員 これはまた改めて、予備的調査の結果も踏まえて国会の中で審議をしていかねばならないと思います。

 官房長官、会見があると聞いていますので、次、最後にしますけれども、私は、実は、今回の件というのは、天下り問題ということでは、直接的な問題ではないなと思っているんですね、背景には天下りという問題がありますが。つまり、今回の問題というのは、元事務次官、いわゆる職務と利害関係のある、国と密接な関係のある法人に対して、人事への介入と目される行動を取ったことが問題だと思っています。

 このようなことを、斉藤大臣は、自覚を持って行動してくれ、このように伝えたということでありますが、大臣、これは通告ではないですが、政治家として当然ながら霞が関の役人の皆さん方と向き合っておられるわけですから、では、このような事態を招かない方法、この事案の再発防止にはどのような対応が必要だと考えられますか。これは大臣の御所見として伺いたいと思います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 退職したOBの方におかれては、現役時代に担っていた公務に係る権限を行使可能であるかのような誤解を招かないよう、自覚を持っていただくことが重要であると考えております。

馬淵委員 いや、個人の自覚に委ねるのであれば再発防止にならないんですよ。我々は、それこそ様々な、現場を抱える役所の経験もありますが、そのときにどうやってフェールセーフ、失敗を犯さないようにするか、再発防止するかということについては、皆、個々人、気をつけなさいでは駄目なんですよ。制度化が必要なんですね。

 大臣、これは大臣に何か考えがおありかどうかというのを私は分からずにお伺いしていますし、私自身もなかなか難しいなと思っているんですよ。でも、やはりこの事例を考えると何らかの方策を検討していかねばならない、そう思っています。

 ですから、天下り問題と一緒くたにするのではなくて、こうした、ある意味、権限を背景とするような方、いわゆる国公法の改正のときに出ましたけれども、職務と利害関係のある、あった、そして国と密接な関係のある法人に対して介入するというようなことをどう止めていくべきか、これは重要な問題だと思うんですが、改めて、大臣、それは何らかの検討というのは必要じゃないでしょうか。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど来答弁させていただいておりますけれども、既に公務を離れた、予算や権限を有していない民間人としての活動に関してどういった調査、規制ができるかということは、やはり極めて慎重であるべきものだと思います。

 一方で、先生の御指摘をいただいた問題意識に関して、これも先ほど来答弁させていただいていますが、自分の出身の省庁等に対する影響があるかのような誤解を与えることがないように、これは自覚を持って、自律的に行動をしていただくということになるのではないかと思います。

馬淵委員 難しいのは私もよく承知していますが、やはりこれは埋もれていることもたくさんあると思いますので、検討すべきことではないかというふうに思います。二〇一七年の文科省のときも同様だったわけでありますから、今、あれから六年たってやはりこうして出てくる。水面下にあることもたくさんあるかもしれません。

 政府としてはここはしっかり取り組んでいただきたいと思いますし、我が立憲民主党としては、予備的調査に基づいて、このことを国会でもただしてまいりたいというように思います。

 官房長官、御離席いただいて結構ですので、どうぞ会見に行っていらしてください。ありがとうございます。

 済みません、後藤大臣、後藤大臣も次の参議院での御予定があると聞いておりますので、端的なところで質問させていただきたいと思います。

 後藤大臣のお時間が限られていると承知しておりますが、私、昨年の十一月に大臣に質問をさせていただいたわけでありますが、そのときには、いわゆる給付の仕組みに関して、システムに関して大臣に幾つかの御質問をさせていただきました。

 今回は、低所得者世帯への三万円給付、これが柱となって、物価高対策、総額二兆二千億円を支出することが閣議決定されました。この中で、低所得者世帯を含めて、これらの交付金が出てくるわけですが、ここでは、国が地方に配る地方創生臨時交付金、これは一兆二千億を追加ということで、七千億が、地方で利用世帯の多いLPガス料金負担軽減、あるいは家畜の飼料が高騰する酪農家への支援などということが想定されているということであります。また、五千億円が、低所得者世帯に一律三万円を目安に配る対策などに使われるという想定だ、このように説明を受けているわけであります。

 これは、十一月も申し上げたんですが、あのときは五万円でしたが、単発の給付、その都度、巨額の事務経費がかかる。そして、今回、こうした状況は、本当に同じことをやっているけれども、いいかげんに仕組みを変えなきゃ駄目じゃないですかと私は当時大臣にもお話をしたわけです。

 まず、事実関係だけ確認です。内閣府の事務方から、今回の事務経費の総額とその内訳について端的に説明をお願いします。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの重点支援地方交付金の中に創設されました五千億の低所得者世帯への支援枠の事務費につきましてのお尋ねでございますが、過去の給付事務の経験、情報を基にいたしまして、市町村における、過去、何回もやりましたので、今回、審査、入力作業の効率化を図れることを見込みまして、三百八十四億円を計上しております。内訳は、人件費、業務委託、これはコールセンターなども含んでおりますが、振り込み手数料や郵送費等々を含んだ数字ということでございます。

馬淵委員 今回のこの三万円給付、低所得者世帯ということで限られる世帯に対してではありますが、三百八十四億円。内訳は、今、黒田さんから説明ありました。これは、自治体から上がってこないと正確な数字は出てこないということですよね、それは承知をしております。

 昨年、五万円の給付、これに関しては、事務費は五百十億円でした。事務経費の内訳として、いわゆるコールセンターの設置などの付随費用で、これが二百五十四億円、振り込み手数料や郵送費が九十二億円かかったとされています。そして、今回は三万円の配付で三百八十四億円。五分の三ということではなく、若干そこは高くつくと思いますが、相変わらず高額の事務費がかかっているわけですね。

 こうした状況で、私は、前回も言いました、今回また言わなきゃいけないなと思っているのは、給付をこれだけ繰り返しているわけですから、ほとんどの世帯の状況というのは自治体が把握しているはずなんですね。したがって、こうした状況の中で、相当にこれは早くできなきゃいけないわけですが、自治体の支給はいつ頃になるのか。これも内閣府の事務方から端的にお答えください。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 具体的な支給時期につきましては、最終的には市町村の判断となりますけれども、国といたしましては、まずは、現在の時点では、自治体の財政上の不安なく検討を進めていただけるよう、予備費の閣議決定後速やかに交付額の算定方法などをお示しをしたところでございます。自治体におきましては既に検討が開始をされているというふうに承知をしておりまして、予算額を決定した自治体もあると聞いております。

 給付事務の経験、情報を生かして、可能な限り早期に支給できるように働きかけていきたいというふうに考えております。

馬淵委員 済みません、黒田次長、もう一回確認ですけれども、具体的にいつ頃になるのか、速やかにという話じゃなくて。私は内閣府からのレクでも伺っていますが、具体的にいつ頃になるのかお答えください。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 最終的な具体の支給時期というのは市町村によって判断されますけれども、臨時交付金全体のスケジュールということで申し上げますと、実施計画を受け付けるのが五月の末、二十九日が締切りでございます。交付決定をするのが七月中でございますが、先ほど申し上げました専決であるとか、いろいろな手続をすることによって、自治体の方が早く、先行して支給をするということも可能であるというふうに通知をしております。

馬淵委員 ありがとうございます。

 これは、五月二十九日、総体としてですけれども、これに自治体が計画を国に提出、そこから七月頃というお話です。

 今、黒田次長からもありましたが、専決によって先に自治体が配付する、給付する、こういったところも出てくるでしょうけれども、結局これは、自治体がそれだけ危機感を持っているわけですよ、早く渡さなければ意味がないから。にもかかわらず、これは閣議決定から半年かかるんですよ、七月というのはね。

 やはり私は、給付の仕組みというのが、これほど繰り返しやっているのに相変わらず同じことを繰り返している、このように言わざるを得ないんですよ。

 給付が遅いというのは、やはりプッシュ型の給付というものが徹底されていないということです。これに関しては、マイナンバーを活用したプッシュ型の給付を取り入れている自治体もある、先ほどまた専決といったこともおっしゃっていますけれども、結局、自治体によって様々ということでありまして、ここは地域の実情を尊重しているなんという話じゃないと思います。結局、国が遅いから、自治体の首長さんが皆一生懸命知恵を絞ってやっているわけですよ。国が遅いということは認識しなきゃいけないと思うんですね。

 うなずいておられるので、大臣、国が遅いという御認識はありますか、どうでしょう、お答えいただけますか。

後藤国務大臣 国としても、各地方団体としても、できる限り早く給付したいという気持ちは共通だと思います。しかし、今、そういう期間がかかっているということについては、できる限り短くすべきだという御指摘のとおりだと思います。

馬淵委員 大臣も私と同じ認識をお持ちいただいているというのはありがたいんですが、でも、急がなきゃいけないという、ずっとかけ声だけなんですよ。根本的なプッシュ型の仕組みをつくろうという意思がないから、今日まで放置されているに私は等しいと思います。

 これは、何度も、いろいろなところでも、いろいろな方々もおっしゃっていますけれども、結局、今回も、自治体に任せるといっても、国の審査が介入するために給付がやはり遅れて、また事務費がかさむことになります。

 そもそも、国が直接給付できるようなひもづけということにやはり踏み込まざるを得ないと私は思っておりまして、例えば、アメリカやドイツ、カナダ、オーストラリア、シンガポール、基本的に給付金は申請不要です。いわゆる本当のプッシュ型ですよ。口座にお金が入る、そして、そのお金を使った上で、最終的には、その後、事後に精算という仕組みを取っているところもあれば、もう渡し切りだから、とにかくお金を振り込む。このような申請不要が本来のプッシュ型だ、私はそう思っています。自治体に任せればいいという話ではなかなかないんじゃないか。

 特に、今回のこの事務費の中身に関して、前回と同様にコールセンター等々出てくると思うんですが、これも、こうした付随的な費用も含めて、入札についての何か具体的な義務づけとかあるいは規定、こういったものは通達として出されているか。

 これを聞きましょうか。黒田次長、端的にあるかないかでお答えください。国はそうしたガイドライン、規定、通達を出していますか。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 地方創生臨時交付金につきましては、全国一律ではございませんので、入札の条件とかを国の方から示すことはございませんが、ただ、かねてからも給付業務というのは自治体で執行していただいておりますので、その経験、効率化、そうした事例につきましてはこれから周知をしていきたいというふうに考えております。

馬淵委員 もう何回も同じことをやっているからできるだろうということだと思うんですけれども、そうじゃないんですね、私が申し上げているのは。

 結局、入札ということも、通達がないがゆえに、ある意味、自治体がそれぞれ随契など様々な方法でやっている可能性が高いですし、逆に言うと、事務経費は三百八十四億円、これは上限ですから、過去の事例を基にそれだけの予算を措置しているわけですけれども、自治体が上限すれすれまでお金をかけてもいいということになれば、それこそ結局無駄になるわけですよ。税金の無駄遣いが起きるわけです。やはりこうしたものに対して厳しく目を向けなければならない。細かいと言われるかもしれませんが、私は極めて重要だと思います。

 今、自治体ごとに問合せやコールセンターの設置がなされているんですが、例えばこれも、隣接する市町村で、本当にそれが自治体ごとに要るのか、広域のブロックといった方策も当然取ってもいいわけです。これはなかなか自治体同士では難しいんですよ。国がやはり指導していく部分が必要だと思います。

 このように、給付のシステム構築ということについての真摯な取組が十分なされていないというのが私は非常に残念に思っておりまして、そこで、大臣、十一月四日の私の質疑では、単発ではない、継続的に行える給付のシステムの検討に取り組まないんですかと私が尋ねたその質問に対して、大臣はこう答えられております。給付を行う場合には事務費をどうやって減らしていくか、先進国のように、システム的に、きっちりと速くに、そしてコストを低く給付できる仕組みをつくっていくことは、我が国にとって必要だというふうに思いますと、この検討に対して、ええ、そういう検討を進めてまいりますと、大臣、答弁されているんですね。

 もちろん、交付金の給付の性格上で所管の大臣がいろいろ違うというのは承知しています。ただ、経済財政の担当の大臣として、今大変な厳しい環境の中で、いかにそれを引き上げるかという再分配政策、前も大臣は再分配政策の重要性をおっしゃっておられましたが、この再分配政策の要となるような給付のシステムに対して、検討を進めるということを、大臣の御決意としていただいたんだとは思いますが、今日においてまだ私は進んでいないと思っておりまして、これはどのようにお考えですか。お答えください。

後藤国務大臣 まず、馬淵委員の、給付金を迅速かつ効率的に支給することが政策効果を最大限発揮するためにも大変重要であるという御指摘、そのことについては全くそのとおりです。

 それで、政府においては、公金受取口座登録法に基づく特定公的給付の指定制度に基づく取組は推進しているところであります。これは、特定公的給付に指定をいたしますと迅速に給付対象者を把握できる、例えば税務情報を参照できるとか、あるいは、支給事務を効率化、例えば公金受取口座を使って振り込みができるというようなことを可能にする制度であります。

 二〇二一年五月の制度開始以来、八件の国主体の給付金、百六十件程度の自治体独自の給付金がこの特定公的給付に指定されまして、住民税非課税世帯の給付に限らず、児童手当と同等とか、自治体が設ける低所得者要件による給付などについて、マイナンバーも用いた形での給付が行われているものと承知をいたしております。

 ただ、公金受取口座の指定はまだ四千八百万件ぐらいしかされておりませんし、マイナンバーを用いて情報の名寄せ等を行うといっても、八千万件ということで、その基盤については、全ての方に行き渡るようなものではありません。

 今般、物価高対策の追加策に盛り込んだ住民税非課税世帯当たり三万円を目安とする低所得者世帯支援についても、この特定公的給付の活用を自治体に是非してほしいと、これは給付するのが自治体なので、そのことはお願いしておりますし、今申し上げたように、公金受取口座の登録がされていないと、せっかくこういう制度があっても通用しないということでありますし、給付主体が特定公的給付制度にそれぞれ毎回登録をしなければならないというような事態もございます。

 まずは基盤をどういうふうにデジタル化、整えていくかということでありますけれども、デジタル化の進展の中で、より効率的に、デジタル基盤を使った給付制度については、基盤を整えながら、その整えられた基盤に応じて、より一般的な制度もこなせていけるように、機械的に、手仕事でやるような、そういうことにならないように、共通の方式で給付制度ができる限りできるように、そういう方向で検討はしていきたいと思いますが、今委員が御指摘されたように、今この場において、具体的にどういうことが進んでいるのかということについては、今後頑張ってやらせていただきたいということにとどめさせていただきます。

馬淵委員 取り組まれていることというのは私も承知していますが、でも、単発給付がやはり前提なんですね。今後も、継続的な給付というのは、世界的な景気の動向の不透明さを考えると必要になりますから、重ねて申し上げますけれども、継続的な給付、そして口座申請、それは、逆に言えば、徴税の情報の中で逆戻しにお金を動かすことによって給付ができるわけですから。これはまた機会があれば議論したいと思いますけれども、そうした継続的な簡便な仕組みというのを考えるべきだということを私の方から申し上げておきたいと思います。

 御予定があると聞いていますので、どうぞ席を離れていただいて結構です。

 済みません、それでは、谷大臣、国際指名手配の件に関してお尋ねをしたいと思います。

 ガーシー容疑者、参議院議員でいらっしゃいましたが、除名をされたということで、今は容疑者となられたわけです。そして、国際指名手配ということが注目を集めています。

 この国際指名手配と呼ばれるもので、国民は、これは指名手配がかかって、もう拘束されるのかなどと思うのではないかと思うんですが、逮捕状が先月出ましたけれども、その後もSNSのライブ配信が継続されて、海外で優雅な生活を送っているというふうに見られがちです。

 こうした状況で、この国際指名手配、国会の委員会審議というのは、警察庁が把握している限り今日までなかったということでありますので、国会の中で改めてこれを問いたいと思います。

 国際手配は、ICPO、国際刑事警察機構の全加盟国の警察の組織力を通じて、国外逃亡の被疑者の所在発見等に努めるものと聞いております。ICPOのデータベースに被疑者の人定情報、犯罪事実、法的根拠を入力した上、顔写真、指紋を添付して送付。手配は、審査を終えて早ければ二、三日後ということで、これは大変迅速に動く仕組みになっております。

 さて、しかし、こうした手配の基準でありますが、明確には定まっていないらしくて、重大事件、あるいは社会的な反響等を考慮して決定ということだそうです。この国際指名手配の現況というのはなかなか調べても出てこないんです。

 そこで、警察庁の事務方にお尋ねします。これは数字だけ端的に答えてくださいね。令和三年における国外逃亡被疑者と検挙数、これはどうなっていますか。

渡邊政府参考人 お答えします。

 令和三年末時点になりますけれども、我が国で罪を犯し、国外へ逃亡しております被疑者は六百九十三人でありまして、同年中に検挙した国外逃亡被疑者は二十八人となっております。

馬淵委員 僅か四%なんですね。非常に少ないんですよ。

 では、再度お尋ねします。これも数字だけお願いします。国際指名手配の件数と検挙数、先ほどは国外に逃亡した被疑者と検挙数でしたが、じゃ、その中で、国際指名手配をかけた件数と、そして検挙数、これについてお答えください。

渡邊政府参考人 お答えします。

 警察では、国外逃亡被疑者を検挙するため、ICPOを通じた国際手配を行っていることは委員御指摘のとおりです。

 令和四年末時点で、百三十件程度の国際手配が我が国からの要請に基づいて実施されております。検挙という意味では、先ほどの御答弁と重なるんですが、令和三年末時点の数字になるんですけれども、令和三年中に検挙した国外逃亡被疑者は二十八人ということでございます。

馬淵委員 二十八人は国外逃亡被疑者ですね。したがって、国際手配のこの百三十件、この方々がどれぐらい検挙されたかを聞いています。お答えいただけますか。

渡邊政府参考人 お答えします。

 二十八人を検挙しているというふうに申し上げておりますけれども、これと、先ほど申し上げた百三十件程度の国際手配、必ずしも対応関係にないところでございまして、百三十件のうち何人というのはなかなかお答えするのは難しいというところでございます。

馬淵委員 捜査に影響するから答えられないと言っていましたけれども、何も影響しないですよ、こんなの。本来なら明らかにすべきだと私は思いますけれどもね。

 今、答えないということでありますから、これはもう仕方ありません。いずれにせよ、低率ですよ。つまりは、逃げ得ということが公然と語られるわけですね。ガーシー被疑者宛てに発付された日本の逮捕令状、これはUAE当局は逮捕する根拠にはならないんですよ。これは確認もしました。

 では、この国際手配をかける意義というのはどこにあるのかということになりますね。つまり、先ほど言ったように、極めて低率、逃亡した人を捕まえるのは四%。さらに、国際手配をかけても、それは言えないと言っていますが、更に低いわけですよ。手配をかけても、逮捕令状、日本の令状は外国では通用しません。こういう状況で、じゃ、この手配の意味は何なんですかと。

 つまりは、国民に対して、こんな悪いやつは国際指名手配しましたというような話を外に向いてするだけの意味なんですか、これは何の意味があるんですかということに対して、端的にお答えいただけますか。事務方の方でお願いします。

渡邊政府参考人 お答えいたします。

 国際手配によりまして、ICPOの加盟各国に国際手配の情報が共有されます。このことによって、加盟各国からの情報提供を受けることが期待されます。また、具体的な情報もあれば、被疑者の所在確認、さらには、被疑者の所在国と連携した身柄の確保に結びつくことも考えられます。また、国際手配によりまして、被疑者に対して、捜査が進行中であることを示し、逃亡等を断念させる場合も考えられます。

馬淵委員 結局、情報共有と情報提供を得られる、そして、犯罪者に対して、被疑者に対しての心理的プレッシャーをかけられるという話ですが、プレッシャーがかかっているように見えない方が結構出ているわけですよ。現実には、優雅な生活を動画配信しながら示している。私たちも、国際手配をかければ、国際的な捜査機関によって身柄が拘束される、そんなイメージがあったんですが、そうじゃないんですね。要は、銭形警部は存在しないということですよ。したがって、捜査員の派遣はあったとしても、拘束が非常に困難であるということです。

 最近はどうなっているかというと、フィリピンのルフィ事件でもありましたけれども、結局、こうした手配をかけても、まあ、ルフィ事件の場合は既に入国管理のところで拘束されたわけでありますが、二国間での交渉の引渡し、こういったものが結ばれている、犯罪人の引渡条約を締結しているのは米国と韓国、二か国だけです。こうした状況で、逃げ得を許してしまわないのか。

 さらには、海外に逃亡している間に、永住権の獲得というのが実は非常に簡単にできてしまう国々もたくさんあります。UAEなどは他国の内政には干渉しないということでありますし、こうした中で、納税額や投資額、これが一定程度超えればパスポートの交付もなされるということが出てきます。つまりは、日本のパスポート、今、外務省の方で旅券返納命令も要請していますが、日本のパスポートがなかったとしても、UAEのパスポートを手にすれば、それで国外にも幾らでも逃げられる。こうした状況の中で、逃げ得と呼ばれるようなことが起きてしまいはしないか。

 現実に、私は、国際指名手配という名の下に、警察がやっている感を出しているだけに終わっては意味がないと思っていますので、こうした状況をどうしっかりと変えていくのか、あるいは、より検挙に結びつけていくのかということ、これは谷大臣の方からお答えをいただきたいと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

谷国務大臣 国外逃亡被疑者の、委員言われます逃げ得を許さず、その早期検挙を図ることは大変重要なことであると認識しております。

 警察の方では、国外逃亡被疑者を確保するため、外国捜査機関等との迅速な情報交換、ICPO等を通じた捜査協力を推進しているほか、条約などを活用して国際捜査共助等に取り組んでいるものと承知しております。

 ただ、馬淵委員御指摘のように、令和三年度では、七百人のうち四%ほどしか逮捕できていない、そういう現状もしっかり踏まえながら、今後とも、より積極的な情報交換を始め国内外の関係機関との連携を一層深めて、国外逃亡被疑者の早期検挙、しっかり検挙するということに努めるよう警察を指導してまいりたいと考えております。

馬淵委員 大変難しいことだとは私も承知をしています、他国の内政の問題にも深く関わるので。しかし、国際指名手配をかけました、これである意味一件落着かのようにして、そうはいいながらも、ずっとまだ逃亡を続けています、どこにいるか分からない、こんな話になってしまっては意味がないんです。

 やはり警察の威信というものを考えれば、国外逃亡並びに国際指名手配というこの枠組み、仕組みをどのように、より効果のある、結果に結びつけられるような方策に変えられるかということは重要な施策だと私は思いますので、これは国家公安委員会委員長として、大臣として指導力を発揮して、そのように努めていただくことが重要だと思います。

 もう時間がありませんが、大臣、最後に、今私がそのように求めを、訴えておりますが、御決意を一言いただけますか。

谷国務大臣 馬淵委員の御指摘のとおりかと思います。我々も、何も、国際指名手配をしたからといって、それで満足することなく、現実に検挙する、それが何よりも犯罪防止につながることかと思いますので、またいろいろ工夫しながら、連携を深めて、汗をかいてまいりたいと思います。

馬淵委員 ありがとうございました。

 終わります。

大西委員長 次に、平将明君。

平委員 自由民主党の平将明です。よろしくお願いいたします。

 まず、サイバーセキュリティーについてお伺いしたいと思います。

 私も副大臣をやっていましたし、藤井さんもやっていましたが、オリンピック、パラリンピックのときに結構サイバー攻撃をされましたが、何とかディフェンスをし切ったんだというふうに思います。

 あのときは、重要インフラ事業者と政府が一体になって情報共有をして対処をするという体制を整えて事なきを得たんだと思うんですが、今、ハイブリッド戦争みたいなものになってきて、ロシアがウクライナに、実際戦車とかが入ってくる一年前からサイバーの世界で戦争が始まるわけであって、一方で、アジアの海も大変きな臭くなってきているわけであります。

 NISCの体制というのは、実は、安全保障というキーワードが入ってきた時点で動かないんですね、いわゆるサイバーの事象だけに対応しているので。一方で、もうハイブリッド戦争ですから、二〇二五年とか二〇二七年に有事とかいろいろ言われていますけれども、その一年前からいろいろな攻撃が想定されるわけであります。ですから、我々は、オリンピック、パラリンピックと同様かそれ以上の体制をつくらなければいけないし、安全保障という文脈でもちゃんと対応できるようにしていく必要があると思います。

 最近、NTTとかANAとかJRとか、いわゆる重要インフラ企業でいろいろなシステム障害が起きています。私、心配しています、正直言って。

 そういった中で、その体制を強化すべきだというふうに思いますけれども、NISCでいうと安全保障の話は言えないので、今、これは政府としては体制強化、体制拡充をすべきだと思いますので、それを内閣官房にお答えいただきたいと思います。

小柳政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、近年のサイバー空間における厳しい情勢を踏まえますと、我が国のサイバー空間の安全かつ安定した利用、特に我が国政府機関や重要インフラ等に対し、安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃が行われるおそれがございます。

 こうした重大なサイバー攻撃は、国民の安全と安定した経済社会活動を確保するために、可能な限り未然に排除するとともに、発生してしまった場合には被害の拡大を防止する必要があります。このような観点から、政府といたしましては、昨年十二月に国家安保戦略を閣議決定し、政府機関等のシステムのセキュリティー強化、能動的サイバー防御の導入、これらに必要となる組織や法制度を含む体制の整備等に取り組むことといたしました。

 また、これらの取組を実現、促進するために、内閣サイバーセキュリティセンターを発展的に改組し、サイバー安全保障分野の政策を一元的に総合調整する新たな組織を設置することとしております。

 本年一月三十一日付で内閣官房に設置したサイバー安全保障体制整備準備室におきまして、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させていくとする国家安全保障戦略の具体化について、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

平委員 本来、谷大臣がサイバーセキュリティー担当なんですが、谷さんはNISCの範囲でしか答えられないので、安全保障が係ってきた瞬間答えられないということで、内閣官房に答えていただきましたけれども、是非、高市大臣、河野大臣、有力大臣でありますので。

 危ないのは、NISCから拡大NISCに移行している期間でも、相手は関係ないので攻めてきます、必要があれば。そのときにちゃんと対応できるような体制と、あと、オリパラでやっていたような体制は今すぐにでももう一回復活をさせて、民間事業者、インフラ事業者と政府が情報共有をして対処する仕組みはフルで動かしながら、拡大NISC、安全保障にも対応できるように是非していただきたいと思います。

 それでは、次にAIについてお伺いしますが、今お手元に配ったのは、AIホワイトペーパーということで、私が座長を務めている自民党デジタル社会推進本部のAIの進化と実装に関するプロジェクトチームの提言書ですが、これは実はまだ政調を通っていないので、自民党の正式な提言ではありません。萩生田さんに怒られるかもしれませんが。ですから、それを前提に、まあ、政調を通ると自民党の政策になってきますけれども、AIの世界は動きが速いので、早め早めにこういうのを出しておいた方がいいだろうなということで、先出しで、PTの提言として見ていただければと思います。

 これは、フルバージョンは私のホームページに載っていますので是非見ていただきたいと思いますし、是非、委員長、お願いは、iPadを持ってきて、これは大変なんですよ、印刷したり、データを刷るの。今iPadを通信につなげちゃいけないという訳の分からないルールに縛られていて、これは、つなげられれば、みんな、ではそこを見てくださいで終わる話なんですけれども、一々紙にしなければいけない。もういいかげんこれはやめていただきたいと思います。委員長、コメントはいいです、しっかりとまた協議をしていただきたいと思います。

 例えばこの表紙の画像ですけれども、これも生成AIです。プロンプトを入れて、こんなのが出てくるという話です。この中に入っている挿絵も全部生成AIで作っています。

 先般、中谷先生もGPTを使ってどういう質問をするかというのをやられましたが、いわゆるこれはAI新時代になってきて、基盤モデルというんですけれども、わあっとデータをあらかじめ読ませておいて、それで具体的なタスクに応えるということで、ラージランゲージモデルとか、生成AIとか、チャットGPTとか言われるものですね、これが基盤モデルとかAIのファウンデーションモデルと言われている。これは前からあったんですけれども、オープンAIが出てきて一気に一般化をして、すごい社会にインパクトを与えていて、ソニーの研究所の北野さんに言わせると、内燃機関、半導体、インターネットと同等かそれ以上のインパクトのあるイノベーションだというふうに言われています。

 それで、皆さんもGPTで遊んでいると思いますが、非常によくできているんだけれども、このテクノロジーと、あとリスク、あとはインパクト、これを見極めて、やはり早急に国家の政策にする必要があると思います。

 AIのチャットボットとかをやっていると、例えば、恋人のように受け答えしてと言うと本当に恋人のように受け答えをするし、最後、私を消さないでとか懇願をしてくるので、AI自体が、シンギュラリティー、何かが起きているんじゃないかと思う人がいるかもしれませんけれども、これは起きていなくて、結局、GPTというのは内在的な動機はないんですよ、GPTそのものに。質問をしたことに対して最適化する能力が物すごく上がっているんですね。

 ですから、こういったことを全部見極めながら、最終的には、法律とテクノロジーだけでも駄目で、法律とテクノロジーと、多分、倫理とか、いろいろな観点からレギュレーションを作っていかなければいけないと思うんですが、一方で、何か怖いからやめておこうみたいなのは、これは絶対取ってはいけないんだというふうに思っています。

 ここで、要は何を書いてあるかというと、まず二つの選択肢があります。例えば、チャットGPT、オープンAIみたいに世界で物すごい進んでいるものを使い倒すという選択肢、若しくは、結構自民党的に言うと、自民党の好きな、日の丸連合体で国産オープンAIを作りましょうみたいな選択肢がありますけれども、ここで言っているのは、両方やりましょうということです。

 結局、海外のファウンデーションモデルは、大体一兆円ぐらい突っ込んで、一つの分野のプレラーンドで、学習で二、三百億ぐらいかかっていて、これはなかなかキャッチアップするのは難しいと思います。ですから、こういったものは、同盟国、同志国であれば、情報の管理とかをちゃんと留意をしながら使い倒すというのが一つ。一方で、だからといって日本が何もやらないかというのはやはりあり得なくて、安全保障上の問題もあるので、日本は日本でちゃんと取り組みましょうねというのが、この提言の中身です。

 あと、日本でやるとなったら、では何が足りないんですかといったところで、一番大事なのは演算能力です、計算能力。多分これは世界で、オイルを取り合いにした後にデータの取り合いになると言いましたけれども、これから演算能力の取り合いになります。ファウンデーションモデルというのは物すごく計算量が指数関数的に上がっていくので、付加価値を生み出せない人はもうコンピューターにアクセスできないようなことになりますので、そのいわゆる計算能力を上げるということと、あと、読ませるデータをちゃんと整備をする。

 私が、CSTIの、科学技術・イノベーションの担当副大臣をやっていたとき、既にもう四、五年前かもしれませんが、AIレディーな社会をつくりましょうと言っていたんですね。AIに備えた社会をつくりましょうと言っていたんですが、やはり日本のデータが足りないということになるんだと思います。

 ちなみに、プロンプトでこういう画像を出すと金髪の女の子が当然出てくるわけですね、やはり欧米発、アメリカ発なので。それで、これをずっとめくっていっていただくと、日本の寺院、下に番号が振ってあって、これは二枚ずつ重なっているので、十ページだと思いますけれども、例えば、シュラインズ・オブ・ジャパンというプロンプトで生成すると、富士山と日の丸があるんだけれども、見たことのないような、神社だかお寺だかよく分からないようなのが出てくる。これは、日本のいわゆるデータが、そのAIが事前に読み込んでいる中でデータが少ないので、こういうふうなゆがみが出てくるということです。

 だから、こういうことも解消をしていかなければならないということで、計算能力の向上とデータの整備、さらには、いわゆるAIガバナンスみたいなものをしっかりつくって、みんなが安心して使えるようにしましょうと。それには、政府が率先をしてAIを使い倒すべきだと思います。

 ということで、AIは新時代に入ったので、その新時代にふさわしい、やはり政府の網羅的な司令塔であったり国家戦略をつくるべきだというふうに思いますけれども、高市大臣、いかがでしょうか。

高市国務大臣 今、大変示唆に富んだ御質問を賜りました。

 まず、AIと倫理といった問題につきましては、七年前のG7情報大臣会合で日本から世界に初めて発信したということで、それがどんどんG20などに共有されていっている。ここのスタートは誇りに思っております。

 ただ、御指摘のように、例えばチャットGPTのような生成系AIと言われるものでございますけれども、これはいい面だけじゃなくて、様々な課題も指摘されています。

 ただ、AIには多様な活用方策というのが想定されますので、これまでAIになじみがなかった方なども、例えばプログラミングで活用できたり、仕事や日常に大きな影響を与えるものでもございます。ですから、AIは新たな時代に差しかかっていて、先ほど委員が触れられましたけれども、また新たな戦略、しっかりとした国の戦略というものは必要だということで、新たなAI戦略の策定についても検討してまいりたいと思います。

 それから、もう一つの御指摘、データですとか計算資源の規模、これがAIとしての性能を左右する度合いというのが従来よりも大きいです。ですから、やはり経済規模が大きい国ですとか、それからいわゆるビッグテックのような企業に対して、AIの開発競争で優位に立つというのはなかなか大変なことでございます。

 今考えているのは、我が国が力点を置くべき技術ですとか取組、これを戦略的に見極めて、その中で重点的にリソースを投じていくことができないだろうかということです。強みというのは、例えば物理ですとか化学ですとか機械、ここは日本は強いですので、ロボティクスですとか製造プロセスの情報処理、こういったところ、また、あと脳情報を活用したAI、こういったところは日本が強みとして誇れる部分だと思います。

 しっかりと取り組んでまいります。

平委員 イーロン・マスクさんが、チャットGPT、GPTの5の開発を半年止めるべきだと言っていましたけれども、私は反対で、どうやって法律と倫理とテクノロジーでガバナンスをするか。その間、中国はどんどん進化していくんです。頭がよくて、めっちゃ悪いAIとかが出てくるんです。だから、それをやはり我々は常に上に行っていなければいけない。

 あと、今の高市大臣の指摘でいくと、今言ったニューラルモデルじゃなくて、日本が得意なのは、今言っていたラージランゲージモデルはニューラルモデルという、脳でいうと右脳なんですけれども、左脳みたいなシンボリックモデルのところは強いんですよね。だから、右脳と左脳があって初めて人間の脳と同じように、そのバランスもやらなければいけないし、更に言えば、やはりこのラージランゲージモデル、ファウンデーションモデルが物すごい指数関数的に発展をしていて、これは自然言語とコンピューター言語のトランスレートがすごいいいので、コンピューター言語が分からなくても指示ができちゃって、そのままロボティクスへ直入みたいな話になるので、右脳と左脳両方やらなきゃ駄目ですということなので、是非お願いします。

 その上で、やはり政府が率先してこういったテクノロジーを入れていくべきだと思います。政府答弁とか、あと、いわゆる行政に対する問合せだとか、書類の不備だとか、この辺はAIが使えると思います。いろいろな留意点はあると思いますが、この辺、是非、公務員制度改革の河野大臣、率先して導入をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 国家公務員制度担当大臣として、やはり霞が関の働き方改革を進めて、有為な人材を霞が関に集めていかなければならないと思っております。

 マネジメントの改革も大事ですが、やはり業務の効率化、デジタル化、これも進めなければならないと思っておりまして、AIの導入というのは積極的に考えていきたいというふうに思っております。

 ただ、フィードするデータがどういうふうに取り扱われるのか、それから、今のチャットGPTも、適当に、いいかげんな答えが返ってきて、河野太郎さんは一九七一年生まれと、どこからそんなのが出てきたんだみたいなのが返ってきて、私も驚いたりということがありますので、やはり取扱いには気をつけないといけないと思いますが、私としては、働き方改革に大きく資する、大量の情報を非常に効率的に扱ったりということもできますので、そこは積極的に考えてまいりたいというふうに思っております。

平委員 チャットGPT、私も初めて触れたときに、平将明ってどんな人と言ったら、日本の中世の有力な武将と出てきましたので、まあ、ありがちなバイアスがかかっている。ただ、一方で、専門家が使う分には、下書きで使う分には、物すごい有効です。

 一方で、今、イタリアがちょっと、個人情報で不透明なところがあるので止めたりしていますけれども、あれも私は解決できると思いますが、できれば、ちゃんと同盟国、同志国の信頼できる国の一番進んでいるところの例えば企業と基本合意書みたいなのを結んで、オープンデータだけ、例えばAIに議事録を読ませる分には余り問題もないと思いますし、もっと突っ込んでやるんだったら、サーバーはちゃんと日本に置くとか、取扱いはこうするとか、そういうのをちゃんと詰めた上で、政府がまず使ってみる。

 いろいろな問題が出てくると思いますけれども、それも、レギュレーションとかルールで解決するのかテクノロジーで解決するのかというやり方もあると思いますし、また、そのことで民間が使いやすくなっていく、実装しやすくなっていくということもあるんだと思いますので、この辺は、是非、政府が率先をしてAIを入れていただきたいと思います。

 あと一分ぐらいあるのかしら。じゃ、計算資源のところでちょっと追加的に言いますけれども、まさに、NICTとか理研とか産総研にあります。この演算量だけじゃ足りないので、これをサブスクにして貸せるようにするとか、内部留保がたっぷりある企業を応援することはないと私は思うので、若い研究者とかスタートアップにそういう計算資源を使わせて、このAIの分野で頑張る。

 あと、一番日本が欠けているのは、例えば私もCSTIの担当をしていましたけれども、結局、もうかるモデルをつくるのが下手くそなんですよね。だから、今回だって、オープンAIというのが入って、すぐマイクロソフトはサービスを実装していますよね。ですから、そういったビジネスモデルをつくるというところも一緒にやっていくべきだというふうに思います。

 引き続き、来週これが政調を通りましたら正式に持ってきますので、予習をしておいていただければと思います。

 終わります。

大西委員長 次に、櫛渕万里君。

    〔委員長退席、宮路委員長代理着席〕

櫛渕委員 れいわ新選組、櫛渕万里でございます。

 まず冒頭、昨日、陸上自衛隊のヘリコプターが沖縄上空で消息を絶ったと伝えられております。一日も早く、全員の無事の帰還を心よりお祈り申し上げます。

 さて、今日は、原子力政策の憲法とも呼ばれる原子力基本法の改正案が、この度、GX電源法案、五つに束ねられ、政府提出されたことに強く抗議いたします。

 委員長、内閣委員会も合同審査に加えていただくよう、お取り計らいをお願いいたします。

宮路委員長代理 後刻、理事会で協議いたします。

櫛渕委員 本日は、束ね法案、五つのうちの二つ、原子力基本法改正案と再処理法改正案について質問いたします。

 まず、原子力基本法についてです。

 今回の改正案を見ますと、大きな疑問があります。まるで政府は、未来永劫、原子力を推進することを宣言しているものです。エネルギーというのは情勢や技術の進歩で変化するものですが、人類がコントロールできず廃棄物処分もできない危険で未熟な原発の利用の推進、そのことを国が法律で責任を持つんですか。全く理解できません。原子力基本法を改正する立法事実は何か、ほかの法律で対応できない理由はどのようなものなのか、根本的な問いが浮かんできます。

 原子力基本法は、先ほど申し上げたとおり、原子力利用の憲法ともいうべき最も基本的な法律であると、関西電力のホームページにも書かれております。今回のように、地球温暖化の防止や国の責務など、既にエネルギー政策基本法に書かれている内容を盛り込む必要はありません。また、原子炉の運転期間は現在でも原子炉等規制法にあり、今回、改正案で電気事業法にも書き込まれるわけですよね。

 高市大臣、なぜ理念法であるはずの原子力基本法に詳細な規定が定められることが必要なんでしょうか。そして、原子力基本法改正の議論はどこでなされたのか、お聞きします。

 経緯を政府に聞きますと、GX会議で審議されたとおっしゃいますけれども、GX実行会議は法的に見ても存在が確かなものとは言えず、本来なら原子力委員会で議論を行うのが筋のはずですが、法改正を議論した形跡は見当たりません。

 高市大臣、この二点、お答えください。

高市国務大臣 まず、原子力基本法の改正でございますが、これは、ロシアによるウクライナ侵略等の地政学リスクの増加によるエネルギー安全保障強化の必要性、また、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現の観点などから、原子力を含むあらゆる選択肢を追求することがますます重要になっているということでございます。

 今般の脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案では、既存原子力発電所の最大限の活用や廃止措置の円滑化などに向けた法的措置を講じることとしておりますけれども、これらの法制度の運用を含めた政策判断のベースとなる基本原則について、法律レベルで明確化することが適切だと考えました。

 このため、原子力のエネルギー利用に関する基本原則として、国及び原子力事業者が安全神話に陥り、東京電力福島第一原子力発電所の事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に向けて最大限努力すること、エネルギーとしての原子力利用に当たっては、電気の安定供給の確保、カーボンニュートラルの実現、エネルギー供給の自律的向上に資するよう国が必要な措置を講ずる責務を有すること、安全性の確保を前提に、原子力事故の防止に万全の措置を講じ、国民からの信頼確保、立地地域の課題解決に向けた取組を推進することなどを原子力基本法に明記する改正案を提出いたしました。

 先ほど、なぜ原子力委員会じゃないのかというお話でございますけれども、この改正案は内閣府科学技術・イノベーション推進事務局で作成をいたしました。当然、原子力利用に関する基本的考え方、これは原子力委員会が改定したもの、これをしっかり見据えながら対応をいたしております。

櫛渕委員 基本原則、このことを法令化で明確化することが望ましいというお話が先ほどありましたけれども、これこそ原子力委員会で取りまとめられたものですよね。だから、おかしいんですよ。

 原子力委員会の基本的考え方がまとめられたのは今年二月二十日であり、それを政府が尊重すると閣議決定したのが二十八日です。そして、原子力基本法改正を含むGX電源法案の閣議決定も同じ二十八日。基本的考え方に書かれた基本原則は法令化で明確化することが望ましいとされたから法改正案につながったと根拠にするのは、時系列的に見てもおかしいんですよ。

 そして、原子力委員会の基本的考え方を尊重すると閣議決定しながら、司令塔とも言える原子力委員会にその案文を政府が示して議論を求めることもしていないですよね。

 立法事実と立法経緯が全く不明確なまま、基本法に事細かく、国の責務として、エネルギーの原子力利用が定められているのは大問題です。

 そもそも、原子力委員会の基本的考え方とは何か、見ていきたいと思います。理念には、こうあります。原子力エネルギー利用のみならず、工業、医療、農業分野における放射線利用など幅広い分野で人類の発展に貢献し得ると書かれており、その下に、次のように、九項目にわたる重点的な取組が原子力委員会でまとめられた、これが基本的考え方です。パネルで示します。

 国の責務として今回の原子力基本法に最大限盛り込まれた項目は、ピンクで塗ってある2なんですね。エネルギー安定供給やカーボンニュートラルに資する原子力利用、ここが最大限盛り込まれ、ここに当たるものが、先ほど大臣がおっしゃられた原発の再稼働、長期運転、革新炉の開発と建設、そして核燃料サイクルの取組などを可能とするものなんですよ。

 そして一方、薄いピンクの方を見ていただきたいです。ちょっと色が薄くて見えづらいかもしれませんが、御覧ください。6、国の関与の下での廃止措置及び放射性廃棄物の対応は、なぜか国の責務とされておりません。

 わざわざ原子力委員会で国の関与の下でのとまとめられているのに、高市大臣、なぜ廃止措置及び放射性廃棄物の対応が国の責務に入らなかったのか、お答えください。

高市国務大臣 まず最初に、委員が御指摘された原子力ですけれども、これはエネルギーとしての利用のみならず、工業、医療、農業などの幅広い分野において、放射線、ラジオアイソトープが利用されております。

 今回の法律案でございますが、これは、今年二月に閣議決定したGX実現に向けた基本方針に基づいて所要の措置を講ずるものですから、原子力基本法改正案においては、エネルギーとしての原子力利用に関する基本原則を明確化しているということでございます。

櫛渕委員 国の責務に何で廃炉のことが書いてないのか、そう私はお聞きしているんです。

 大臣、今、廃炉が決定している原発は全国で何基ありますか。(発言する者あり)

高市国務大臣 済みません、すぐに答えられなくて。

 二十四か所ということです。

櫛渕委員 大臣が二十四基と答えられるかどうかが嫌がらせですか。びっくりしますね。原子力基本法を所管する大臣ですから、廃炉の原発が今何基かぐらい、普通、答えられると思いますよ。

 原発推進だろうと、脱原発だろうと、原子力基本法に国の責務を盛り込むならば、それは、廃炉、そして放射性廃棄物の対応が最優先であると私は考えます。

 使用済み燃料プールにたまる燃料は約一万六千トン貯蔵され、管理容量の約七六%に上っています。具体的にどのように対応されていこうとしているんですか。これほど政府肝煎りのGX関連法案で、新たな国債を二十兆円も出すんですよね、それなのに事業者任せなんでしょうか。廃炉が決まれば発電できなくなり収入がないわけですから、事業者任せでは進まない、それは専門家がいろいろな会議の現場で言っておられます。国がやるしかないんですよ。地震や津波のリスクだけでなく、今や安全保障リスクも最大化しつつあることは、北朝鮮の度重なるミサイル発射一つ取っても明らかです。大臣、危機感が足りなさ過ぎるんじゃありませんか。

 れいわ新選組は、公約の一つに廃炉ニューディールを掲げています。原発は即時禁止、国の責任で原発を買い上げて、国の財源で廃炉と地域の産業再生事業を推進するということをうたっています。当面は、原発地域、立地自治体には電源三法交付金と同等の財政支援をして、廃炉技術の研究と、専門人材、解体労働者を公務員化して雇用保障もしていく。その国営組織は地域発展の支援も行っていくものをイメージしています。例えばイギリスのNDA、原子力廃止措置機関のようなもの、こうしたものを国がしっかりと責任を持って、国の責務を書くのであれば、原子力基本法にこうした廃炉に向けての国の責任を書くべきだと私は思います。

 そして、さらに、国の責務には、現行の第七条にある核燃料サイクル政策が、エネルギー供給の自律性の向上という文言で新たに示され、強化されている点も見逃せません。先ほど大臣もおっしゃいました。

 六ケ所村の再処理工場は、昨年、二十六回目の完成延期が発表されています。当初の完成予定は一九九七年、もう二十五年前ですよ。一説には十四兆円とも言われる研究開発費を投じながら、試運転中にトラブルが相次ぐなど、既に破綻は明らかです。

 本来、いいかげん撤回して方向転換しなければならない核燃料サイクルを、今回の法案で国の責務に格上げしてしまえば、政策を固定化し、そこに予算が流され、一方、世界では二〇三〇年に五百兆円規模の再エネ市場が生まれる状況、こうしたことがあったとしても、将来の柔軟性は奪われ、国や事業者、ひいては国民生活に深刻な影響を及ぼすおそれがあるわけです。大臣、この核燃料サイクル強化を表す文言は削除してください。

 我が国は、GX基本方針について、エネルギーの安定供給を目指す、ウクライナの戦争、先ほど大臣おっしゃいましたよね、安定供給を目指すということをGX方針でもうたっています。そうであれば、我が国の自給率を上げるために、純国産エネルギーである太陽光や洋上風力など再エネ開発導入を加速させ、送電網を整備していくことを最大限やることが、安全にも安定にも環境にも低コスト化にも資する道であると考えます。核燃料サイクルを継続することは、間違いなく国家衰退の道です。大臣にはよくよくこのことをお考えいただいて、削除を求めます。

 次に、再処理改正案についてお伺いします。

 今回、廃炉を推進するための機関をなぜ使用済燃料再処理機構に担わせることにしたんでしょうか。この機構は原発推進のための組織です。そこが廃炉推進業務を担当し、拠出金の確保や管理を行うというのは、幾ら廃炉、再処理、MOX燃料と三つの分別管理をしたとしても、一つの認可法人が行うわけです。

 副大臣、今日は来ていただいていますので、経産副大臣にお伺いします。

 先ほど御指摘したように、核燃料サイクルを前提とした再処理は事業として非常にハイリスクであり、機構が破綻した場合、廃炉のための拠出金はどうなるのか、お答えください。

宮路委員長代理 中谷副大臣、質問時間を経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

中谷副大臣 はい。

 今回の制度措置は、原子力事業者が責任を持って自社の原子炉の廃炉を実施する原則は維持した上で、その責任を貫徹させるため、認可法人に民間事業者が円滑かつ着実な廃炉を実施するための資金管理等の業務を行わせるものでありまして、そのための費用を拠出金といたしまして事業者に納付させるものであります。

 この点、使用済燃料再処理機構は、民間事業である再処理等に必要となる資金管理を行う機構であります。よって、拠出金を事業者から納付する類似の仕組みを採用しているというところであります。

 それに引き換えまして、この原子力発電環境整備機構、NUMOは、高レベル放射性廃棄物の最終処分を自ら実施する主体ですから、これは技術集団なんですよね。資金を管理するということを考えますと、使用済燃料再処理機構の方が適しているというところでありまして、こちらに担わせているということであります。

櫛渕委員 もう時間がなくなりましたのでまとめますが、原発を推進しようとする機関が、廃炉に向けたお金、拠出金を、真逆のものを一つの機関でやるなんて、そもそも間違っていますよ。

 NUMOじゃないのであれば、放射性廃棄物や最終処分の資金管理をする原子力環境整備促進・資金管理センターでもいいんじゃないんですか。明らかにこの資金管理センターかNUMOの方、こうした最終処分や放射性廃棄物の処理を行う、これまでそのことを積み重ねてきている知見があるわけですから、そちらの方に資金を集めるような形で是非とも修正をお願いしたいと思います。

 GX推進のためではなく、これは国のためです。将来のためです。是非見直しを求め、私の質問を終わります。

宮路委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、国交省の幹部OBが国交省と利害関係のある民間企業、空港施設の人事に介入した問題について質問をいたします。

 国交省にお尋ねしますが、国交省作成の、国土交通委員会の理事会に提出した説明ペーパーの中に、国土交通省幹部職員への確認とありますけれども、どの幹部に確認したのか。この確認したという幹部職員が誰かをまず教えてもらえますか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、三月二十九日、これは新聞報道が出る前ですけれども、三月二十九日に朝日新聞からの取材がございました。これを受けて……(塩川委員「幹部職員が誰かだけ答えて」と呼ぶ)はい。

 実は、三回、確認行為を行ってございます。

 今申し上げた取材を踏まえまして、航空局内で関与の有無を確認するとともに、翌日の三十日の新聞報道を踏まえ、国土交通大臣から事務次官へ、そして事務次官から官房長や航空局長へ、さらに大臣官房人事課長からその他の関係幹部へ、関与の有無を確認しております。

 さらに、四月二日に新聞報道が出たことを踏まえまして、大臣官房人事課長より、報道に名前が出てきました山口氏が空港施設株式会社の代表取締役に就任した時点の航空局長など関係幹部、さらに、空港施設株式会社に入社して以降の東京航空局長経験者、これらの方々へ関与の有無を確認しているところでございます。

塩川委員 国土交通審議官、省名審議官とかには確認されたんですか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 審議官についてお尋ねがありましたけれども、三月三十日におきましては、先ほど大臣から次官、次官から官房長と申し上げましたけれども、そのほか、大臣官房人事課長から航空局の本省部長級、審議官級の三名、さらに、本省課長級の六名に対して、関与の有無を確認しているところでございます。

 さらに、四月二日の新聞報道を踏まえまして、改めて、先ほど申し上げた山口氏が空港施設株式会社の代表取締役に就任した令和三年五月時点での航空局長、航空局の本省部長、審議官級の三名、さらに、本省課長級の六名、加えて、山口氏が同社に入社した令和元年十二月以降の東京航空局長経験者、この方々に対して関与の有無を確認したところでございます。

塩川委員 省名審議官に確認したのかということを、もう一回、ちゃんと答えてよ。

宮路委員長代理 加藤総括審議官、端的にお答えいただけますか。

加藤政府参考人 国土交通審議官に対しましては確認は行っておりません。

塩川委員 私、国交省の天下り問題は、二〇一一年のときにこの内閣委員会で何度か取り上げたことがあります。国交省が組織的に天下り人事を行っているということを告発しました。その後、二〇一三年に再就職等監視委員会が違法認定をいたしました。

 どういった案件だったのか、説明をいただけますか。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の事案につきましては、二〇一一年当時、国土交通審議官であった職員が、ある二つの団体の理事長に対し、当該団体の役員ポストが空くかどうかの情報提供を依頼し、また、うち一つの団体には、国交省の元職員が無職であろうとの情報を提供したことなどが認められたものでございます。

 こういった行為が、元職員を再就職させる目的で、営利企業等の地位に関する情報提供を依頼したり、当該者に関する情報を提供することなどを禁ずる国公法第百六条の二第一項の規定に違反する行為に該当すると認定されたものでございます。

 以上でございます。

塩川委員 再就職規制、国公法違反が認定される二件、そういったことを明らかにしたということですけれども、そのときに、では、誰がやったかというと、省名審議官だったわけですよ、国土交通審議官。つまり、そのときの旧運輸省のトップが実際に旧運輸省系の天下り人事を差配をしていたといったことが違法に問われたわけであります。国土交通省の事務次官を務めた宿利正史氏が国土交通審議官のときに、元幹部職員の天下りで口利きを行ったとして、政府の再就職等監視委員会が国公法違反と認定した案件であります。

 私は、玉突き人事ですとか、こういった人事について調査と、天下りそのものの禁止を求めてきたところですけれども、そこで、国交省OBの副社長を社長にするよう求めたという本田勝元事務次官ですけれども、旧運輸省出身で、二〇一一年の私の質問当時は官房長だったと思いますが、それでよろしいですか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 大変申し訳ありません、事前に御通告いただいておりましたので、本田の経歴の詳細については、今、手元に用意してございません。

塩川委員 二〇一一年のこの不祥事を私が質問したときに、国交省として報告書を取りまとめているわけですよ。そのときに、二〇一一年の九月から官房長だったのがこの本田勝氏ですから、その関わりについては承知していないんですか。

 この報告書がどういう中身かということは、事前にも要請しているわけですけれども、それについて答えてもらえますか。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十三年二月そして三月にかけてなされました、委員御指摘の、当時在職中であった国土交通審議官による言動が国家公務員法で禁止された再就職のあっせんに該当するのではないかという点、これにつきまして、平成二十三年八月から十一月にかけまして、国土交通省において国土交通副大臣を委員長とする調査委員会を設置いたしまして、当事者からヒアリング等を通じた調査を行ったところでございます。

塩川委員 副大臣をトップにした調査委員会、その際に取りまとめた報告書、これは当然、官房長だった本田勝氏が関与していますよね。

加藤政府参考人 平成二十三年八月から十一月にかけて行われました調査、その結果につきまして、省内の幹部で共有されているものと考えております。

塩川委員 当然、官房長ですから、人事について統括しているわけで、こういった調査委員会をやっていた人なんですよ。

 本田勝さん自身が、その後、省名審議官、国土交通審議官にもなり、事務次官にもなっているんです。二〇一一年の案件で、二〇一三年に再就職監視委員会で違法が認定された際、その二件に関わっていた宿利氏に次いで、旧運輸省畑で、その後、事務次官に上がったというのが本田勝氏なんですよ。旧運輸省関係の人事をいわば統括をする、こういう立場でやってきた方であって、そういった人が今回名前が出ているというところについて、やはり深く関与があるんじゃないかということを考える必要があると思うんです。

 二〇一一年の事件のときには、旧運輸省のトップの省名審議官が実際に差配をしていた。今回の案件について、現役はどういうふうに関与していたかということがきちっとまず確認されなければいけないのに、現役職員の国交審議官、旧運輸省畑の人を含めて調査もしていないんですから、これでまともな調査と言えるのかということがあるわけであります。

 ですから、そもそも二〇一一年当時の調査そのものが極めて問題があった。つまり、二〇一一年当時、二回質問をして、それぞれ国交省が調査を行って報告を出したんですが、その二回とも、当然のことながら、国交省としては白という結論だったわけです。それなのに、二年後に、少なくとも再就職監視委員会はそのうちの二件について違法を認定するということだったわけですから、こういった調査報告、黒だったものを白と認定したような調査報告を取りまとめた中心にいたのが本田勝氏だったということも、リアルに見ておく必要があると思います。

 国交省のこの白という結論は再就職監視委員会の調査結果で覆されたわけでありまして、本田氏を始め、国交省がまともな調査をするつもりがなかったということが、ここに示されているということが言えると思います。

 その上で、資料をお配りいたしました、各省の再就職、天下りなど、人事に関する予算委員会要求資料、日本共産党として毎年要求しておりますけれども、見ていただきましたように、この再就職、天下り状況に関する資料について、未回答の役所というのが幾つか残されているわけであります。

 それを見ると、国土交通省については、二〇一九年以来ずっと未回答のままを続けているわけであります。これは国会の行政監視の発揮に当たって極めてゆゆしき問題だと思っておりますが、何でこんなふうに未回答なんですか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、資料要求の対象期間が過去十年となっておりました。一方で、国土交通省における職員の退職後の民間企業等への再就職の届出に関する資料の保存期間、これは一定期間、三年に限られているというところでございます。こうしたことを踏まえますと、要求への対応が困難でございますので、提出を行っていなかったと承知しております。

 一方で、保存期間内のものについては、提出は可能でございます。このため、今後、同旨の資料要求がなされた場合には、要求者の御了解をいただけるということを前提に、しかるべき対応を図ってまいりたいと考えております。

塩川委員 そんな説明を一言もしないで、未回答のままなんですよ。これは誠実な対応だと言えるんですか。ほかの役所は出しているんだから。なぜ出せないのかといったことについて、こうすれば工夫ができますとか、この点があるのでお答えがなかなか困難ですとか、そういうことも何にもなしに、未回答のままでずっとやっている。このこと自身が、まともに、こういった天下りについて明らかにするつもりがない、要するに隠したいと思っているんじゃないのかということを言わざるを得ません。

 それで、官房長官にお尋ねしますけれども、私、今回の事件を考えたときに、要は、これまで、現役の方が、トップの幹部が実際に天下りを差配をしていた、それをこういった形で違法性が問われたものですから、直接現役が表立って動けないということをもってOBを介して行っているんじゃないのか、こういうことが当然のことながら想定をされるわけであります。

 現役幹部がOBの人事に口を挟めば違法となる。そのため、現役幹部の代わりに幹部OBが天下りに関与しているのではないのか。こういったことについて、この資料を出すことを含めて徹底調査すべきだと思いますが、官房長官、いかがでしょうか。

松野国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。

 空港施設株式会社の件につきましては、一般論として、法規制の対象に当たらないOBの行動について、国土交通省としては調査する立場になく、またその権限も有しないところでありますが、国土交通省が関与しているという誤解を招きかねないものであることから、国土交通大臣の指示の下、本田元国土交通事務次官及び山口元東京航空局長の両名に対し具体的かつ詳細な聞き取りが行われ、その結果、現役職員の関与が疑われる事実は確認できなかったものと承知をしています。

 さらに、関係する部門の幹部職員に対して確認を行った結果、現職職員による空港施設株式会社への再就職のあっせん、OBから国土交通省に対する働きかけのいずれについても確認できなかったと聞いています。

 いずれにせよ、引き続き、国土交通省において適切に対応していくことが重要であると考えております。

塩川委員 国土交通審議官がOBに働きかけしたかどうか、確認していないんですよ。それぐらい、確認しろという指示、出せませんか。

宮路委員長代理 既に持ち時間が経過しておりますので、最後、加藤総括審議官。

加藤政府参考人 お答えします。

 今般の調査の対象につきましては、空港施設株式会社の役員人事に係るあっせんを行い得る者、あるいは、空港施設株式会社、当時の代表取締役である山口氏から不当な働きかけを受け得る者として、一般的に想定し得る者を調査対象としたところでございます。今回の報道を踏まえた調査の対象としては適切であると考えております。

塩川委員 かつては国交審議官が天下りに関与していたということが違法だと問われたわけですから、そういった対象の人をしっかり調べるのは大前提でありますし、そういう調査を求めるとともに、天下りあっせん禁止ではやはり駄目なんですよ。天下りそのものを禁止することが求められていると思いますし、少なくともOBを介した再就職あっせんは禁止をすべきだということを求めて、質問を終わります。

宮路委員長代理 次に、河西宏一君。

河西委員 おはようございます。公明党の河西宏一でございます。

 本日は、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私、昨年九月、公明党の調査団の一員としまして、ウクライナ避難民の実態調査で、ポーランドなど東欧三か国、計八か所の避難施設などを訪れました。大変印象的だったのは、多くのウクライナ人男性は戦地に残っているため、避難民の多くは女性と子供であるという点、そして、こうした中で、各施設にキッズスペースがきめ細やかに設置をされていたという点、非常に印象的でございました。

 そして、これは調べましたら、決して場当たり的な対応ではなくて、明確な基準があるということでございます。それが、人道行動における子どもの保護の最低基準、CPMSと略されますけれども、これは、国連機関や国際NGOなどが参加する団体により二〇一二年に制定をされております。緊急支援の現場で子供を暴力、虐待そして搾取から守る、二十八の最低基準を示されております。

 例えば、この十番目に、精神保健及び心理社会的な苦痛に関する基準がございます。これは、災害や戦争で日常や家族を失った子供にどう接するべきかということでありますが、実際にふだんと様子が異なる子供がいた場合に、決して大人から何があったのなどと無理に事情を聞き出してはいけないわけであります。まず自己紹介し、目線を子供の高さに合わせ、そして、本人が話したいときに話せる状況をつくって耳を傾けることが重要であります。こうしたことが実は子供のレジリエンスの向上につながるわけでありまして、また、その上で、それでも自傷行為など日常生活に支障を来す場合は、適切な医療につなげることになってまいります。

 そこで伺いますが、こうした知見は、この災害大国日本に生きる多くの大人が認識をすべき点だというふうに考えますけれども、内閣府の防災担当におかれましては、今御紹介したCPMS、どういった御認識をお持ちか、政務官にお伺いをしたいというふうに思います。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の人道行動における子どもの保護の最低基準、CPMSは、災害や紛争など、緊急支援の現場において子供たちを暴力や虐待、搾取から適切に守り、子供の権利を実現するための概念及び具体的措置が記載された国際基準として、様々な国際機関、NGO、専門家等で構成される子どもの保護ワーキング・グループにより作成されたものと承知いたしております。

 これまでも、内閣府においては、CPMSに取り入れられているスフィア基準、NGO、赤十字等によって作成された人道支援の質の向上を目的とする基準を参考にしながら、被災者の生活環境の向上に向け取り組んできたところでございます。

 災害時に女性や子供が置かれる状況が厳しくなるおそれがありますので、女性や子供のニーズを踏まえた支援は、避難所の生活環境を改善する上で重要であると認識をいたしております。

 人道行動における子どもの保護の最低基準、CPMSも参考にしながら、自治体と連携し、子供に寄り添ったきめ細やかな支援に取り組んでまいります。

河西委員 ありがとうございます。

 このCPMSの十五番目には、実は、有事におけるキッズスペースの重要性が説かれているわけでございます。

 今日は資料をお配りしておりますが、資料一は、実際の避難所で、これは我が国ですが、子供の行動を撮影したもので、国際NGOのセーブ・ザ・チルドレン様から御提供いただきました。これはある意味大変衝撃的な写真でありますけれども、写真一は火葬場を縫いぐるみで再現した様子、写真二は避難所で食べられないお魚定食を描いた様子、そして写真五、裏面ですが、町が消えてしまいましたと言って絵を消す遊び、写真六は水害に遭うおもちゃの車、そして写真七は避難警報を聞いて逃げる状況を再現している様子であります。

 これは申し上げるまでもなく、この子供たちは単に遊んでいるわけではございません。過酷な体験を遊びの中で再現することで、自分なりに災害を受け止めて、体験を昇華して、心を安定させて、そして平常心を取り戻す。この大事なプロセス、非常時では正常な行動になるわけであります。

 こうした場面を現場で目の当たりにされてきたNGOの方々は、避難所で、子供の避難所確保や遊び支援、これは、子供が日常を取り戻し、健全な心身の発達と心の安定をサポートする上で、長期的に見てもその意義は極めて大きいと、鋭く指摘をされております。

 ところが、我が国の実態は、残念ながらまだ足らざるところがあるわけでございます。

 例えば、資料一の下段の写真三、四は、ある避難所で屋外に設置されたキッズスペースでありますけれども、真夏の炎天下で屋根すらない場所もございました。残念ながら、キッズスペースは有事に生きる子供や親にとって重要だという認識がまだまだ不十分なんだろうというふうに思っております。今後、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が高い確率で発生すると指摘をされている中で、見過ごせない課題なんだろうというふうに思っております。

 そこで、内閣府が策定する避難所ガイドライン、ガイドラインがあるわけでありますが、キッズスペースの位置づけはどうなっているか、簡潔に御答弁をお願いしたいと思っております。

五味政府参考人 避難所運営ガイドラインにおきましては、避難所の運営が適切に行われるよう、避難所を設ける際に留意すべき事項をチェックリストとしてお示しをしております。

 委員御指摘のキッズスペースにつきましては、ガイドラインでは、応急、復旧期、発災後一週間までにキッズスペースや学習のためのスペースの設置を検討することとし、自治体に取組を促しているところでございます。

河西委員 ありがとうございます。

 このガイドラインが示す避難所の運営業務チェックリストを資料三にお示しをさせていただきました。いつ誰が何をするか、担当や優先順位が整理をされているわけでございますが、例えば生理用品の確保などは最優先で実施をされるわけでありますが、しかし、キッズスペースの設置は、発災後三日から一週間までの検討項目ということで、かなり優先度は後ろの方ということを言わざるを得ないわけであります。

 加えて、資料四にある全体の工程表にも記載自体がない状況でございます。

 もちろん、避難所自体もスペースに物理的な余裕があるものではありませんので、だからこそ、検討項目止まりですと、おのずとレイアウト段階で排除されて、どうしても屋外に行ってしまうということであります。

 公明党は、党内で、国や地方で女性防災会議を立ち上げまして、女性の視点は母子スペースの確保など推進をしてまいりましたが、子供の視点、これに立ちますと、更に深化をさせる必要があるんだろうというふうに考えております。

 そこで、提案でありますが、有事で子供がどういう状況に置かれるのか、政府でもう一度御検討、また見詰め直していただいて、キッズスペースをできれば初動で実施すべき項目に格上げをしていただきたい。また、設置には準備段階で一定の物資も確保する必要がありますので、国からの御支援、これも検討してはどうかと考えますが、政務官にお伺いいたしたいと思います。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 避難所において子供ができる限り日常に近い生活を送ることができるよう、避難所の生活環境の改善を図ることは重要と認識をいたしております。

 内閣府の避難所運営ガイドライン等を踏まえ、例えば、平成三十年西日本豪雨、令和元年東日本台風、令和二年七月豪雨、令和三年熱海市の土石流災害の際に、地元自治体がNPO法人などと連携をし、玩具や絵本等の物資の確保も含め、子供の遊び場や学習場所を確保するなど、取組が行われたと承知をいたしております。

 今後とも、自治体と連携をし、災害時の避難所におけるキッズスペースの設置状況や必要な物資の確保状況を踏まえつつ、子供に対する配慮を始め、避難所の生活環境が向上するよう、必要に応じ、ガイドラインの見直しを含め、適切に取り組んでまいりたいと思います。

河西委員 御答弁ありがとうございます。是非、前向きに御検討、推進をお願い申し上げます。

 中野政務官、以上でございますので、ありがとうございました。

 続きまして、避難所をめぐる課題、累次にわたって指摘をされてきたわけでありますが、女性目線に加えて、今日は、子供目線も必要だということを指摘を申し上げました。また、女性、子供、若者の目線に欠けるのは、何もこの話題に限った話ではないわけであります。万が一、避難所のキッズスペースなんて所詮は遊び場だと考える大人がいれば、これは改めるべきなんだろうというふうに思っております。

 そこで、いよいよこの四月に本格始動した、こども家庭庁にお伺いいたします。

 一丁目一番地で目指すこどもまんなか社会、名刺にも書いてありましたけれども、この構築、これは当然、平時のみならず有事も包括するものなんだろうというふうに思っております。したがいまして、その実現の過程において、避難所のキッズスペースの設置普及、これは重要な取組ではないか、このように考えますけれども、政府の御見解をいただきたいと思っております。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど内閣府の中野政務官から御答弁がございましたとおり、内閣府において、自治体と連携し、災害時の避難所におけるキッズスペースの設置等の状況等を踏まえつつ、避難所における子供の生活環境が向上するよう取り組んでいるものと承知をしております。

 今御紹介いただきました、こどもまんなか社会の実現を目指すこども家庭庁といたしましても、避難所のキッズスペースの設置普及を含め、こうした取組は大変重要であるというふうに考えておりまして、避難所運営において、子供や子育て当事者の視点を欠くことのないよう、内閣府ともしっかりと連携してまいりたいと考えております。

    〔宮路委員長代理退席、委員長着席〕

河西委員 ありがとうございます。

 是非、この重要性を御認識いただいて、連携をいただきたいと思っております。やはり、こども家庭庁ができたことによって、有事も含めて現場でこういうふうに変わった、そういう実感が非常に大事だというふうに思っておりますし、私も全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。

 ただ、先ほどガイドラインの点を申し上げましたのは、やはり、避難所開設は最終的に自治体が行うものという、こういった課題があります。したがいまして、地域において子供、若者の生の声がきちっと行政に届く実効性ある仕組み、これを築いていくことが必要でございます。

 公明党は、この四月、いよいよ前半戦はもう今本番期間中でありますが、統一地方選の重点政策に、各自治体で子供若者議会の創設推進、また、これまでも私もこの委員会で取り上げてまいりましたファシリテーター、その育成、普及を掲げております。

 これは、委員会で議論した上で、私も党内で提案をして今回盛り込んでいただいたものでありますが、例えば、愛知県の新城市の若者議会、既に好事例が生まれておりまして、毎年度、十六歳から二十九歳までの二十名が委員となりまして、メンター等のサポートも受けながら、年間一千万円の予算の使途を議論できるという枠組みであります。その結果、図書館機能の充実など、利用者急増を実現するなど、実績も積み上げてきているということでございます。

 是非、政府におかれましても、今日取り上げた避難所キッズスペースの設置、これは今日の話題、代表的な論点ということでありますけれども、子供、若者の意見が地域社会に反映される実効性ある仕組み、これを是非つくっていただきたいというふうに思いますし、各自治体の子供若者議会の設置、これも是非後押しをしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。御見解をお願いいたします。

浅野政府参考人 お答えいたします。

 この四月に施行されましたこども基本法におきましては、基本理念として子供の意見の尊重が掲げられております。国や地方自治体が子供施策に子供の意見を反映する措置を講ずることが義務づけられております。

 子供政策の具体的な実施は、中心的に担っているのは地方自治体でございますが、地方自治体における子供、若者の意見を反映する取組が広く行われることは、子供の視点で子供の最善の利益を第一に考えるこどもまんなか社会を社会全体で実現していく上で大変重要でございます。

 昨年度実施いたしました子供の意見反映に関する調査研究におきまして、委員御指摘の愛知県新城市の子供若者議会を始め、地方自治体における様々な先進事例を収集し、報告書にまとめ、地方自治体に広く周知いたしました。

 今後とも、こども家庭庁におきましては、様々な好事例の横展開やファシリテーターの派遣等を通じて、地方自治体における取組をしっかりと後押しし、子供、若者の声が地域社会に反映されていくよう支援してまいりたいと思います。

河西委員 ありがとうございます。

 好事例をお示しいただけるということでございます。ただ、この議会、最終的には各自治体でお取組をいただかなければならないところでございますので、公明党としても、国会議員と地方議員でしっかり連携をしながら、共に取り組ませていただきたいというふうに思っております。

 最後、一問、話題を大きく変えまして、マイナンバーカードについてお伺いをいたします。本日は、副大臣、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 先般、我が党の地方議員さんから、現場目線ならではの御要望をいただきました。日頃、地域で懇談をしておりますと、特に高齢者の方から、国はマイナンバーカードと言うけれども、肝腎のカード自体になぜマイナンバーカードと書かれていないのか、分かりにくいと複数御指摘をいただきました。

 私も、その電話をいただいた瞬間にマイナンバーカードを見たわけでありますが、今日は資料五に、総務省のですね、この事例の、絵面が書いてありますけれども、個人番号カードと書いております。また、高齢者の方には、文字がやや小さくて、分かりにくいという印象につながっているんだろう。

 当然、私も、法律上は個人番号カードでありますので、そのことは認識をいたしますし、通称がマイナンバーカードということもよく理解をしております。ただ、このカードを個人番号カードと日常的に呼ぶか。少なくとも私は、いまだ見聞きしたことはないわけであります。

 一方、マイナンバーカードの申請件数は九千六百万件を超えまして、ほぼ全国民に普及させる目標を達成したと、先日、河野大臣の御発言もあったところであります。

 ならば、次は、量とともに、既にこだわっていただいていると思いますが、デザインも含めた、質も含めて、一層こだわっていただきたい。また、人生百年時代、二〇〇七年生まれは半数以上が百七歳以上まで生きるということでありますので、高齢者を始め誰もが親しみやすいマイナンバーカードに進化することを期待したいと思います。

 そこで、最後、御提案ですが、マイナンバーカードが最初に発行されたのは二〇一六年一月、そして、カード自体の更新時期、これは十年後の二〇二六年一月ということで、あと三年弱であります。そこを目指しまして、そろそろこの券面に、法律上の名称ではなく、国民がなじみやすいマイナンバーカード、かつ、もう少し大きいフォントサイズで表記することを是非御検討いただきたいと思いますが、副大臣、いかがでございましょう。

大串副大臣 マイナンバーカードは二〇一六年一月より交付を開始しておりまして、その有効期限が、発行時点で十八歳以上の方については十回目の誕生日とされております。

 呼称については、個人番号カードが法律上の名称でありますが、今御指摘ありましたように、より親しまれやすいマイナンバーカードという呼称を周知、普及することとしております。

 御紹介いただきましたとおり、カードの券面にマイナンバーカードとの記載がないこと、あるいはフォントが小さいなど、様々な御意見があるところと承知をしております。

 現在発行しているカードにつきましては、今後、順次有効期限を迎えるということもありまして、今日いただいた御指摘も踏まえて、今後、次世代のカードを設計するに当たっては、カードの券面記載事項について、様々な関係者の御意見も丁寧に伺いつつ、分かりやすさという観点も踏まえて、しっかりと検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

河西委員 今後、デジタル社会、またDXに向けて、基本的なインフラになるということで、また、国際社会も注目をするところでもあると思いますので、そういった意味で誇れるマイナンバーカード、また、国民の皆様に親しまれるマイナンバーカード、是非その進化を期待をして、本日の質疑を終わらせていただきます。

 大変にありがとうございました。

大西委員長 次に、阿部司君。

阿部(司)委員 日本維新の会、阿部司です。

 本日は、いわゆるLGBTQ、性的少数者に対する政策に関する質問をさせていただきます。

 現在、このLGBTQをめぐる議論は大変複雑でして、どのように手をつけていけばいいのか判然としない状況にあるのかなと思っております。冷静な議論を展開していけたらと考えております。

 早速ですが、資料の一を御覧ください。

 性の在り方は、グラデーション的に構成をされていると言われています。一、生物的性、二、性自認、三、性的指向、四、表現の性といった四つの基準にそれぞれの度合いで考えることになります。

 一の生物的性については、生まれた際の身体の性のことです。二の性自認は、自分の性別をどのように理解するかです。トランスジェンダーと言われる方々のように、心と体の性が一致していないときに焦点となります。三の性的指向は、恋愛や性愛における感情がどのような対象に向かうかになります。女性として女性が好き、男性として男性が好きといったようなものです。四、表現の性は、立ち振る舞い、ファッション、物腰といった、らしさに関連するものであります。

 これらを切り分けて分析をしていくことが重要となります。

 これらのうち、本日は、二の性自認及び三の性的指向に関する部分を論点としてまいりたいと思います。

 初めに、先般、岸田総理大臣が、同性婚を認めたら社会が変わってしまうとおっしゃっていたことについてお伺いしたいんですけれども、同性婚を認める、制度化することに具体的にどのような危惧があるのか、政府としての御見解をお聞かせください。官房長官、お願いします。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 同性婚制度の導入については、親族の範囲やそこに含まれる方々の間にどのような権利義務関係等を認めるかといった国民生活の基本に関わる問題であって、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、その意味で、全ての国民に幅広く関わるものと認識をしています。全ての国民に幅広く関わる問題であるという意味で、社会が変わっていく問題であるからこそ、議論することが重要であり、国民全体でしっかりと議論を深めていく必要があると考えています。

 御指摘の総理の御発言も、このような趣旨を述べられたものと承知しています。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 家族の根幹、家族観に関わる大きな問題ということで、LGBTQの当事者のみならず、日本国民全体に影響が及ぶ制度、影響が生じる制度であることに鑑みて、慎重な上にも慎重な議論が必要であるという認識だと理解をいたしました。

 官房長官、こちらで御退席いただいて結構でございます。

 同性婚については、憲法との関係も重要であろうと思います。日本国憲法第二十四条には、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」とありますが、この点について、同性婚は制度化できるのか、法務省、お聞かせいただけますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 憲法第二十四条第一項は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定しており、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立、すなわち同性婚制度を認めることは想定されておりません。

 このように、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立を認めることは憲法上想定されておらず、少なくとも、同性婚に関する規定を設けていない現行民法は憲法に違反するものではないと考えております。

阿部(司)委員 憲法では想定されていないという御答弁だったんですけれども、例えば、オランダなんですが、同性婚が制度化されている国では、同性愛者を法的に差別した、いわゆるソドミー法と言われるものがありました。まず、この法律を破棄して、その次に、同性カップルの関係を事実婚として保護をして、準婚契約法やシビルユニオン法といった新たな制度を用いて法的に保護をして、最終的に同性婚を認めるといった形になっていきました。

 この同性婚を認める上で重要なことは、婚姻を男女間の関係ではなくて、二人の密接な関係として捉え直したことであります。つまり、婚姻において性別を必要な要件とせずに、性別のいかんを問わず、全てのカップルに可能なものとしました。この点を捉えて、同性婚ではなく全性婚と表現することもあります。現時点で同性婚が可能な国々でも、このような慎重な検討と技術的な対応がなされてきたということであります。

 この分野の先進国であっても段階を踏んで徐々に進めてきたということですから、我が国においても、一気呵成に成し遂げることを目指すよりも、可能なことから積み上げていくことが現実的なんじゃないかなと私個人的には考えております。

 そこでお伺いをしたいと思います。小倉大臣への質問なんですけれども、まだいらっしゃって……。

 同性婚をすぐに認められないにしても、LGBTQ当事者の方々の権利をしっかり保護していくことが大事だと思うんですけれども、ここについての御見解をお伺いをできればと思います。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えています。

 LGBT当事者の方々の御意見をお伺いすると、家族に理解されず、誰にも相談できない、心が許せる人間関係がつくれず孤独といった事例や、性的マイノリティーの方は自殺におけるハイリスク層であるといった切実な声がございました。

 政府としては、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、引き続き、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 今御答弁いただいたんですけれども、小倉大臣いらっしゃいましたので、同じ質問を、是非、小倉大臣の口から直接お答えいただきたいんですが。

 同性婚をすぐに認められないにしても、LGBTQ当事者の方々の権利をしっかり保護していくことは大切かと思いますが、この件について、是非御見解をお聞かせください。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 まず、同性婚については法務省の所管であり、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、LGBTの広く権利ということでございます。

 私も政府と同様の見解でございまして、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えております。

 LGBTの当事者の方々の御意見をお伺いしますと、家族に理解されず、誰にも相談できない、心が許せる人間関係がつくれず孤独といった事例ですとか、性的マイノリティーの方は自殺におけるハイリスク層であるといった切実な意見もございました。

 そういったことも踏まえまして、政府としては、多様性が尊重され、全ての人々が互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、取り組んでいくべきだというふうに思っておりますし、私も政府の一員として、様々な国民の声を受け止め、しっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 しっかりLGBTの方々の権利というものを保護していくことが大事である、多様性を認めていくことが大事であるという御趣旨の御答弁でありました。全くそのとおりだと私自身も感じております。

 同性カップル間でも婚姻が可能になることが当事者の望むことだろうと感じていますけれども、現時点において、何が同性婚の制度化における最大の阻害要因になっているのかを特定することは重要であると考えます。

 そこで、法務省にお伺いしたいんですけれども、同性婚の制度化が進まないことの問題の所在はどこにあるとお考えでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 同性婚制度の導入の問題は、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であって、国民的なコンセンサスと理解を得た上でなければ進めることができないと考えております。

 このような観点からすると、最大の阻害要因は何かというお尋ねに対して、特定の具体的要因を挙げてお答えすることは困難でございます。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 要は、さっき松野官房長官からの答弁にもありましたけれども、国民の理解、コンセンサスをいかに得ていくか、家族観が変わってしまうことなので、そこの議論をいかに深めていくか、こういった点が重要なのかなと思っております。

 もちろん、日本は民主主義国家ですから、民主的な議論によって決定されていくことになっていくかと思います。そのため、理解とコンセンサスが要されるというのは当然の話だと思います。この点、冷静に議論を積み重ねて理解とコンセンサスの形成を図っていくことに、私自身、しっかり貢献をしてまいりたいと思います。

 一旦話題を変えたいと思います。

 自治体において、公設トイレを改める動きがあると伺っています。前回の一般質疑でも堀場議員が指摘をさせていただきましたけれども、女性用トイレ、男性用トイレ、バリアフリートイレの三つが設置されてきたものと思いますけれども、女性用トイレが外されて、男性用トイレとバリアフリートイレの二つに置き換わっているところもあると聞いております。とすると、いる場所によって、当事者の方々は使えるトイレに違いが出てくることになります。

 そこでお伺いしたいんですけれども、各自治体の判断で決定されているところではあると思いますが、政府として施設の在り方について基準を示した方がいいのではないかなと思いますけれども、こちら、国土交通省、いかがでしょうか。

五十嵐政府参考人 お答えいたします。

 都市公園におけるトイレの整備に当たっては、多様な利用者の視点に立ち、誰もが使いやすいトイレ環境としていくことが重要であると認識しております。

 都市公園におけるトイレの整備につきましては、公園管理者である地方公共団体などにより行われておりますが、国土交通省といたしましても、公園管理者が公園施設の整備を行う際の参考として、都市公園の移動等円滑化整備ガイドラインを定め、技術的助言として周知をしているところであります。

 昨年三月に改定をした同ガイドラインでは、社会的な変化や公園利用者の要請に合わせた標準的な整備内容として、公園内のトイレにバリアフリートイレを設ける際には、性的マイノリティーの方などの利用に配慮し、男女共用のものを一以上設置することなどを明記しております。

 国土交通省といたしましては、誰もが使いやすい都市公園の整備促進に向け、引き続き取り組んでまいります。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 女性トイレが少なくなって混雑しないかちょっと心配な点もありますけれども、しっかりこの点も社会的に議論を進めていく必要があるかなと思います。

 次の話題に移ってまいります。

 LGBTQの方々は、偏見、差別にさらされていると指摘をされております。これはある種の生きづらさを生じさせている懸念があります。

 そこで、お伺いをいたします。

 政府として、社会生活においてLGBTQ当事者に生じる差別にどのようなものがあるか、把握しているものをお聞かせください。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 LGBTの当事者の方からは、セクシュアリティーについて家族は無理解で誰にも相談できなかった、学齢期にいじめられて人間不信となり引きこもりを経験した、会社でアウティングされ日々苦しい思いをしている、医師等がジェンダーに関する悩みについて無理解で相談を受け止めてもらえていないなどといった御相談が寄せられるものと伺っております。

阿部(司)委員 教育現場ですとか家庭、また職場で、いまだに偏見、そしてスティグマ、これも差別と同じような意味になりますけれども、これらが生じているものという御答弁だったかと思います。それによって教育を受ける側が、例えば、教育を受ける権利が侵害されたり労働が難しくなることというのは、当事者の自己実現を妨げる可能性のある問題でありまして、日本国民として、性の在り方のいかんを問わず、保護されてしかるべきであろうと思います。

 今回は、その中でも就職、そして職場での偏見や差別についてお伺いしたいんですけれども、具体的にどのような差別が生じているか、お教えいただけますでしょうか。厚労省、お願いします。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、令和元年度に、LGBTQの方々に対し、就職活動時において困ったことや働く上で困っていることについて、委託事業によるアンケート調査を実施してございます。

 この調査によりまして、就職活動時において困ったこととして、性的指向、性自認についての情報を無断で社内に広められていたこと、働く上で困っていることとして、人事評価で不利益な取扱いを受けていることなどを把握しているところでございます。

 また、同調査におけます関係団体へのヒアリングによりまして、性別移行のためのホルモン療法を行っていることを理由に内定を取り消された事例、また、在職中に性別移行したが、ひどいパワハラ、セクハラを受け、離職した事例などを把握しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、LGBTQの方々が働きやすい職場環境整備を推進することは重要であると考えております。

 このため、LGBTQの方など、特定の人を排除しないよう、応募者に広く門戸を開き、本人の適性、能力に基づいた採用基準とした公正な採用選考が行われ、労働者の就職の機会均等が確保されるよう、企業に対する周知啓発を行ってございます。

 また、セクハラ防止指針におきまして、被害を受ける方の性的指向や性自認にかかわらず、職場での性的な言動は、事業主が措置を講ずべく、セクハラに該当し得ることを明記しますとともに、パワハラ防止指針におきまして、パワハラに該当すると考えられる事例として、性的指向、性自認に関する侮辱的な言動を行うことや、いわゆるアウティング等を記載してございます。これらの内容について、パンフレット等で周知啓発を図るとともに、必要な場合には助言指導等を行うこととしてございます。

 さらに、性的指向、性自認に関する理解の促進や各企業での取組の後押しを目的としまして、企業の取組事例等をまとめた周知啓発用のリーフレットを作成し、配布、周知に努めているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、このような取組を通じまして、引き続き、LGBTQの方々が働きやすい職場環境の整備を推進してまいりたいと考えてございます。

阿部(司)委員 今、御担当の方から、そういった、実際にLGBTQの方々に対する問題というものが発生していると。これは大きな問題だと思います。本人がどれだけ努力しても、能力を涵養しても、職場で、それを発揮できるような場が奪われてしまうですとか、目標や夢をかなえられない事態、これが起こることは、LGBTQもそうでない方も、そうした事態は起こってはならないと思うんですけれども、ここは当事者の方々の尊厳の問題に関わってくる問題ですので、しっかり対応していく必要があると思っております。

 資料二を御覧いただきたいんですけれども、二〇一九年一月に大阪市で実施されたアンケートに関する結果を見ますと、LGBTの当事者は、異性愛者の方々よりも、生きる価値がないと感じた、死ねたらと思った又は自死の可能性を考えた、自殺について考えたり自殺をほのめかす行動を取ったりした、自殺を図ったといった数値が高くなっていることが分かっております。

 生きる価値がないと感じたについては二七・三%、死ねたらと思った又は自死の可能性を考えたについては二二・三%、自殺について考えたり自殺をほのめかす行動を取ったりしたについては二四・一%、自殺を図ったについては九・八%と、数値が大きくなっております。

 これは、LGBTQの当事者が、希死念慮、自殺念慮、自殺未遂経験のいずれにおいても統計有意になっていると見ることができると思います。これらの念慮、経験は、うつ病、双極性障害といった精神疾患の症状でもありまして、憂慮すべき状態であろうと考えられます。

 この点についてお伺いしたいんですけれども、政府として、このようにLGBTQ当事者の希死念慮、自殺念慮が高くなる傾向をどの程度把握をしておられ、どのような対策、対応を講じているのか。厚労省、お願いします。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、性的マイノリティーの方は自殺念慮の割合が高いことが各種の研究報告で指摘されていることは承知をいたしております。

 そうした現状を踏まえまして、昨年十月に策定した新たな自殺総合対策大綱では、性的マイノリティーの方への支援の充実も盛り込み、取組を推進していくこととしております。

 具体的には、厚生労働省といたしましては、悩みを抱える性的マイノリティーの方々が相談しやすい環境をつくるために、性的マイノリティーの方々専用の相談電話回線を設置している、よりそいホットラインへの補助、また、性的マイノリティーの方への相談支援や居場所づくりを実施しているNPO法人への補助などを実施しております。

 今後につきましても、関係省庁とも連携しながら、性的マイノリティーの方も含めて誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、引き続き、総合的な対策を推進してまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 自殺対策大綱に基づいて御対応されているということですけれども、当事者の方々にこのような傾向を生じさせる原因までその調査で明らかになっているわけではありませんが、これまで出てきた偏見、差別、そしてパートナーと婚姻ができない、これは言い換えれば、社会、制度的に祝福を受けられないことと関連しているのではないかと言えるのではないでしょうか。

 自殺未遂経験の数値も高くなっていることも注目しなければならないと思います。様々な要因が複雑に絡んでいるとは思いますけれども、このLGBTQの方々の中で死んでしまいたいと思う方が出てきてしまう社会状況なわけなんですよね。

 ここで、北欧のデンマークとスウェーデンにおいてなされた、デンマーク自死予防研究所とストックホルム大学による研究を御紹介します。

 この両国でも、LGBTQへの理解を増進する、促進する流れがありまして、パートナーシップ、同性婚の制度化を通じて継続的に状況の改善が図られ、デンマークでは二〇一二年に、二〇〇九年に同性婚が可能となりました。

 この研究の追跡調査の期間は、一九八九年から二〇〇二年と、二〇〇三年から二〇一六年となっておりますが、この間に、自殺率が、同性カップルであれば四六%、異性カップルでも二八%減少しております。もちろん、同性婚が制度化されたから自殺率が低下したという、因果の関係とは言えないでしょうけれども、ほかの様々な要因も影響していることが想定されます。

 しかし、この研究では、異性婚の制度が婚姻した者にもたらす保護効果、これが、同性婚の制度化によって同性愛者にも拡大したことが明らかになったと指摘をされております。

 婚姻の保護効果というものは、社会学者のデュルケームという方が提唱して、深化、研究されてきた概念でありまして、家族、そして地域社会、保育機関や教育機関への社会的統合を通じて、人々に人生の意味や目的を見出す機会を与えて、社会への帰属意識をもたらして、健康が害されるリスクを低減させる効果とのことです。

 婚姻にはそのような保護効果があるという理論もあると今御紹介いたしましたが、その上でお伺いをいたします。

 国民の生命を守るという観点から、同性婚などの制度にどのように向き合っていくのか、是非、小倉大臣の御見解をお伺いします。

小倉国務大臣 同性婚それ自体は、国民一人一人の家族観と密接に関わるものであって、国民生活の基本に関わる問題であります。その意味で、全ての国民に幅広く関わるものというふうに認識をしております。

 そういった中で、国民各層の意見等々をしっかり注視していく必要があると思いますし、阿部委員が御紹介をいただいたような様々な調査研究を含めて、国民皆さん方で、全体で御議論を活発にしていただくということが必要なのではないかというふうには思っております。

 御指摘いただきました研究につきましては、私としては詳細を承知しておらず、コメントは差し控えさせていただきますが、厚労省からも答弁がありましたように、性的マイノリティーの方は自殺念慮の割合が高いことが指摘されていることは承知をしておりまして、ここも厚労省において適切に対応されていると答弁があったかと思っております。

 私といたしまして、例えば、担当する孤独・孤立対策におきましては、一つの番号からNPOなど関係団体が連携して相談を受け付ける窓口体制、孤独・孤立相談ダイヤル、シャープ九九九九でございますが、の試行を行っております。これまでの試行におきましては、利用者が選択できる分野の一つに、性別の違和や同性愛に関して相談したい方を設けて試行を行い、孤独、孤立に悩む方が声を上げやすい環境整備に取り組んでまいりました。

 そういう意味では、関係省庁とも引き続き連携を図りながら、こうした政策を積み上げまして、悩める方、自殺願望のある方にしっかりと寄り添った支援ができるように取り組んでいかなければならないというふうに考えております。

阿部(司)委員 悩める方に、性的少数者の方も含めてしっかり寄り添っていくといった御答弁をいただきました。

 同性婚の話なんですけれども、既に可能となっている国でもかなり時間をかけて丁寧に議論して実現したものと承知をしております。ですので、この日本においても、しっかり国民の理解とコンセンサスを形成していく、繰り返しになりますが、これが重要となってくると思います。

 ここで、なかなか一足飛びに行くのが難しいと思うんですけれども、同性婚が認められないことによってLGBTQの方々にどのような不利益が生じてくるのかを具体的に確認をしてまいりたいと思います。

 三点、確認をさせていただきたいと思います。まず一つ目、同性婚ができない状態でLGBTQのカップルは法的な不利益を被っているのか。二つ目、婚姻できないことにより社会保障等における不利益は生じるのか。三つ目、またそれらが、うつ病や双極性障害といった精神衛生上の不利益をLGBTQ当事者にもたらすことはないのか。それぞれ、法務省、厚労省、お答えいただけますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省が所管する民法に関してお答えいたしますと、夫婦ではないカップルの方については、民法上の婚姻関係にないことから、民法が定める配偶者に当たらず、親族関係も生じないこととなり、また配偶者に認められる権利、例えば配偶者の相続権等が認められないこととなります。

日原政府参考人 私からは、社会保険におきます被扶養者の関係についてお答えをさせていただきます。

 健康保険におきましては、被保険者の三親等内の親族であり、被保険者と生計維持関係にあることなどの要件を満たした方を被扶養者というふうに定義をいたしております。このうち配偶者につきましては、被保険者と婚姻関係にある方が該当するものでございます。同性同士のカップルの方につきましては、これに当たりませんことから、配偶者には該当せず、被扶養者とはならないものでございます。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 実際に、婚姻できないことによって、今御答弁いただいたような不利益が生じているわけです。ほかにも、権利義務関係におきましては制度間で様々な違いがありまして、使用できない制度が存在することで不利益が生じるおそれがあります。これらの不利益は大きな意味を持っているように思います。

 資料三を御覧ください。資料三の、共同生活や貞操義務、生活費分担義務、こちら義務とありますが、義務化可能の誤りでした。済みません。失礼しました。

 例えば、フランスでは、現在、同性婚が認められておりますけれども、家族の根幹に関わる問題というのは、日本と、この国と同様でしたから、慎重に政策が検討、実施をされてきたと承知をしております。

 そこで、フランスは、家族とは全く別のものとして、非婚カップルの保護制度である民事連帯契約、通称PACSを制度化しました。これは、婚姻によって認められる種々の権利義務関連のうち、二者間で合意したものをまとめて共同で届け出ることで、契約当事者間以外にもその効力をもたらす制度です。この制度を利用しても、カップルは家族にはなりません。なりませんが、家族に認められる法的な利益や保護を一部受け取れるようになるものです。このPACSは、今日、同性カップルよりも異性カップルに利用される割合が高いと承知をしておりますが、婚姻によって生じる種々の権利義務関係のうち、一部を契約として有効にできるわけです。

 繰り返しになりますが、この制度は、家族の根幹にも家族観にも触れないで制度化がなされたものです。もちろん、日本とフランスでは文化や歴史が異なりますから、整理しなければならない論点もあるかとは思います。

 では、この点について小倉大臣にお伺いをいたします。

 同性婚の制度化が困難であっても、フランスのPACSに代表される制度は有用なのではないかなと私自身考えておるんですけれども、どう思われますでしょうか。また、諸外国のこのような政策を把握することに関する御見解と、具体的な適用をどのようにしていくのか、お伺いをいたします。

小倉国務大臣 同性婚を始めといたします家族制度のみならず、民事契約等々も法務省の所管でありまして、私が主体的に答弁を申し上げる立場ではないのは御理解をいただきたいと思いますが、LGBTQの方々につきましては、委員様々御指摘のとおり、社会生活の様々な場面において課題が生じているものと認識をいたしております。

 したがいまして、これまでも答弁ありましたように、政府におきましては、性的指向、性自認について、特に様々な課題に遭遇をする職場や学校等を始めとして、社会での理解増進に向けた啓発活動の充実、適切な相談対応や人権救済等、それぞれの分野を所管する各府省庁において取り組んでいるところであり、先ほども答弁申し上げたように、私も関係省庁と連携をして更に取組を進めてまいりたいと思います。

 加えまして、様々な国民の声を受け止めつつ、御指摘のように、関連する情報をしっかり収集して、国民の理解にも努めていかなければいけないというふうにも思っておりますので、この点につきましても政府全体としてしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 性的少数者、LGBTQの方々が制度的、社会的、精神的に困難を抱えていることは、これまでの質疑の中で、その一端にすぎないかもしれませんが、見えてきている部分があったかと思います。現実的に実現できるところから変えていってもいいのではないかなと私自身考えております。

 今後とも、LGBTQの皆さんの理解をしっかりと深めていく議論をこの国会でも社会でもしっかり進めていけるように、私自身も頑張ってまいりたいと思いますので、是非今後ともよろしくお願い申し上げます。

 それでは、私の質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 今日は一般質疑ということで、これから約三十分間、よろしくお願いいたします。

 参議院本会議とのスケジュールの兼ね合いがあるというふうに伺っておりますので、冒頭、小倉大臣の方に男女共同参画について今日は質問させていただきたいと思いますが、テーマとしては育児休業制度になります。

 厚労省の調査によりますと、本日、資料の一ページ目にも記載をしてございますが、男性の正社員の方に聞いてみますと、育児休業制度を利用しなかった理由を見ると、収入を減らしたくなかったからというのが一番多くの理由になってございます。

 これは、先日一月三十一日に、私、衆議院の予算委員会でも同様の問題を取り上げまして、この問題を指摘させていただきましたが、一ページおめくりいただきまして、そのときの議事録を資料二の方に記載をしてございますが、当日のやり取りの中では、育休取得時に給付される給付金については、企業が補填を行う場合、現在行われている賃上げ税制の対象になり、国からその部分、補助が出るような仕組みにもなっている、そんな答弁も当時はいただいたものでございます。

 私としては、やはり、以前から、男女共同参画を推進するという観点で、男性の育休取得をいかに取得しやすい環境にしていくかということを取り上げてまいりまして、その一つの手段として給付率の引上げというものを取り上げてきたこともございます。

 大臣に伺いたいのは、今回、政府が三月三十一日に発表した少子化対策の試案の中で、給付金制度の、給付額の引上げというもの、見直しというものが内容に含まれていたと承知をしているんですが、具体的にどのような方法によってそれを実現しようとしているのか、そして、現在政府内において検討しているその方法というのは恒久的な制度になるというふうに認識をしていいのかどうか、この二点について伺いたいと思います。

小倉国務大臣 まずは、浅野委員には、本委員会におきましても、子供、子育て政策の強化について、様々、活発な質疑をいただきましたこと、感謝を申し上げたいと思います。

 今回は、男女共同参画担当大臣としてお答えをさせていただきます。

 まず、状況を考えますと、日本の場合、家事、育児等の無償労働時間が男性に比べて女性は約五・五倍と非常に長く、家事、育児等の負担が女性に偏っていることや、仕事と子育ての両立の難しさが大きな課題の一つになっていると認識をしております。こういった課題を解消するために、まずしっかりと背景を分析をしなければいけないというふうに考えております。

 男性の育休取得率は、足下、増えてきたとはいえ一四%弱ということで、女性の八五%から比べれば非常に低い水準でございます。理由としては、この資料一で浅野委員お示しをいただいたように、二番目が職場で取りづらい雰囲気ということでもございますが、トップに来るのが収入の減少を気にしているということでございます。

 そういった背景も踏まえまして、先般取りまとめた子供、子育て政策の強化に関する試案におきましては、男性の育休取得率の政府目標を二〇二五年に五〇%、二〇三〇年に八五%に引き上げること、出生後一定期間内に両親共に育休を取得することを促進するため、男性が一定期間以上の産後パパ育休を取得した場合には、その期間の給付率を手取りで十割相当へと引き上げるとともに、女性の産休後の育休取得についても、産後パパ育休と同じ期間を限度として、給付率を手取りで十割相当へ引き上げることなどを盛り込んだと承知をしております。

 お尋ねの具体的な制度の設計についてでございますが、この給付率の引上げについては、恒久的な制度とするかどうかも含めて、制度の詳細については、今後、所管の厚労省を中心に検討を進めていくことといたしております。当然、様々な省庁がしっかり議論をするということでございますけれども、今日、答弁に立たせていただいております男女共同参画担当大臣としても、厚労省としっかりと今後の具体の設計について連携をさせていただきたいと思っております。

浅野委員 ありがとうございました。

 これから詳細設計ということですから、特別委員会の方でもこのテーマについては議論がされるというふうに伺っておりますので、我々としてもそちらでも議論を重ねてまいりたいと思いますが、私、その政府の試案、読ませていただきましたけれども、課題認識自体は非常によくまとめられているなと、ちょっと上から目線のようで恐縮ですけれども、非常に、総理からの指示を様々検討して論点を整理をされたのではないかというふうに、そこは評価をしております。

 ただ、やはり具体的に、じゃ、どういう施策でその課題をクリアしていくのかという部分について、これから本当に議論が活発になっていく部分だと思いますし、本日御紹介をいただいた産後パパ育休以外にも様々論点がございますので、是非、今後議論をさせていただければと思います。

 それでは、大臣の方はこれで御退席いただいて結構でございます。ありがとうございます。

 では、続いての質問に移りたいと思いますが、引き続き、このテーマ、今度は政府参考人の方に伺いたいと思います。

 育児休業給付金については、制度自体の内容はこれから検討するということではあるんですが、この財源については雇用保険から賄われております。皆さんも御承知のように、このところ、コロナ禍によって雇用調整助成金あるいは様々な雇用安定化施策が打たれる中で、雇用保険財政というのが非常に厳しい状態になっているというのは世間でも多くの方が知っている状況でございます。

 今回、育児休業給付金の施策を見直すことによって、雇用保険財政への影響をどういうふうに考えているのか、政府の見解を伺いたいと思います。

松本政府参考人 御答弁申し上げます。

 現行の雇用保険制度における育児休業給付は、御案内のとおり、労使折半の保険料と国庫負担を財源としておりまして、ただ、ほかの失業等給付とは区分して経理して運営しております。その支給額は年々増加しているところでございます。

 また、今般取りまとめられましたこの試案において提示されている、支給率の引上げが盛り込まれているわけでございますが、ということは、更に支給額の増加ペースが速まることが見込まれるわけでございます。

 このため、これも試案に提示されているのでございますが、男性育休の大幅な取得増等に対応できるよう、育児休業給付を支える財政基盤を強化するという点も盛り込まれてございまして、育児休業制度の充実の内容も踏まえまして、将来にわたって制度を安定的に運営できるよう、必要な対応について検討を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

浅野委員 その財政基盤を強化する方法を我々は気にしているんですけれども、労使折半ということで、もし財政基盤強化という名目の中で雇用保険料率がまた再び引き上げられる、そして、その負担を国民や事業者が負うということになれば、例えば、今、この試案の中には、若い世代の賃上げというものが大事だというふうにも書かれているんですが、その賃上げを行うための経営体力、財務基盤が事業者側で損なわれてしまうんじゃないか、こんな懸念もあるわけでありますので、今日は時間の関係でちょっとここは深くは突っ込みませんけれども、次回以降、議論をさせていただきたいと思います。

 あわせて、もう一問。

 私が一月の予算委員会で取り上げたんですけれども、先ほども紹介した賃上げ税制を活用して育休の推進というのを進める方法もあるのではないか。例えば、賃上げ税制に育休促進メニューみたいなものをつくって、こういったものを活用して、雇用保険財政への影響を最小化しつつ、育休取得率を高め、それを我が国の中で浸透、定着させていくという方法もあるのではないかというふうに思うんですが、この賃上げ税制の活用という方法は考えられないのでしょうか。

吾郷政府参考人 お答えいたします。

 今先生からの御指摘あるいは配付資料にもございますとおり、現行の賃上げ税制におきましても、従業員の育休期間中に企業から支払われた手当等は、一般的に税額控除の計算対象となる給与に含まれてございます。

 したがいまして、例えば、企業が育休取得者に対して新たに手当を支給することで、前年度と比べて給与が増加し、税制の適用要件を満たした場合には、こうした手当も含む給与の支給増加額に対して一五%、あるいは追加の要件を満たせば、大企業最大三〇%、中小企業四〇%になるかと思いますが、の税額控除を受けることができるということで、こうした観点では、企業の育休支援の取組も一定程度支援する形になっているものというふうに認識しております。

 その上で、先ほど先生も御言及になりましたが、やはり、少子化の克服に向けましては若い世代の所得を増やすことが重要だということでございまして、経済産業省といたしましては、賃上げ税制を始めとする施策を通じて、企業による賃上げの機運醸成を後押しする、国内投資の拡大を通じて賃上げの原資を拡大を進める、そういうことで、若者が安心して結婚や子育てができる環境を整備してまいりたいというふうに考えております。

浅野委員 このテーマについては引き続き議論させていただくことにいたしまして、ここからはちょっと別の、経済安全保障のテーマに移りたいと思います。高市大臣、よろしくお願いいたします。

 まず、先般、新聞報道で、中国政府が高性能レアアース磁石の製造技術について輸出を禁止する方向で検討しているという報道がございました。以前も、レアアースの輸出に関する問題というのが、今から約十年以上前にそんな議論があったというふうに記憶をしてございますけれども、今回また磁石ということで、非常に、これから自動車の電動化や様々なエネルギーが電化されていくという時代を迎えることを考えたときに、やはり無視できない内容かと思っておりますが、まず、こういった報道が出ていることに対して政府が今どのように受け止めていらっしゃるのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 中国政府が二〇〇八年に公表した、中国からの輸出を禁止又は制限する技術リストの改定作業を行っていることは承知しております。このリストでは、従前からレアアースの加工技術や合金技術の輸出は禁止されておりました。今回の改定案では、レアアース関係では磁石加工技術を新たに輸出禁止の対象にする、そのほかにも、太陽光パネルのシリコン製造技術なども輸出を許可制にするという方向で検討がなされていると聞いております。まだ改定内容は中国政府内で検討中で、公布、施行はされておりませんけれども、この制度の影響は注視してまいります。

 いずれにしましても、我が国としましては、高性能の永久磁石を作る、その技術というのは、日本、中国、世界のトップを争っている状況でございますので、しっかりとその生産体制を強化していく、それからまた、レアアースを含む重要鉱物、これがその原材料となりますので、このサプライチェーンの強靱化に努めてまいりたいと思っております。

浅野委員 ありがとうございました。

 今、この磁石の加工技術、製造技術については、我が国もしっかり世界をリードする技術水準があるということで、サプライチェーンにも触れていただきましたけれども、次の質問は、やはり、この高性能磁石というのは、先ほども申し上げましたが、EVや携帯電話など多くで利用されておりまして、経済安全保障上の特定重要物資にも指定されております。技術があって、しっかり我々も、これまでその磁石を使いながら様々な高性能な製品を作ってきましたが、今、中国がそういった技術の輸出規制を検討する中では、我々、技術は持っていますから、あとはサプライチェーンをどう確保するか、これが問題になっていくと思うんですね。

 今、サプライチェーンの確保にも努めていきたいというふうにおっしゃっていただいたんですが、改めて、どう確保していくのか。特に、私としては、様々な資源国から磁石を持ってくるようなサプライチェーンの確保も必要だと思うんですが、国内にもたくさんのリサイクル可能な物資が眠っているとも感じております。この回収やリサイクルに取り組んでいる事業者に対する支援をより一層強化すべきではないかというふうにも思っておるんですが、大臣の御所見を伺えればと思います。

高市国務大臣 今、浅野委員おっしゃってくださったとおりですが、永久磁石、EVとか携帯電話もそうですが、発電機とか家電とか、多くの製品において、モーターの性能を決定づける基幹部品でございます。また、これから世界市場の拡大も見込まれる分野でございます。

 永久磁石のサプライチェーンですが、一つは、原材料であるレアアースの供給を特定国に過度に依存している問題、それから二つ目には、国内需要に応じた国内の生産能力の増強が進んでおらず、安定供給が維持できなくなるおそれがあるということ、三点目には、永久磁石のリサイクルが進んでいない、まさに今御指摘いただいたとおりの課題がございますので、その点、サプライチェーンの強靱化を図らなきゃいけないということで、昨年十二月に経済安全保障推進法に基づいて指定した十一の特定重要物資には、永久磁石やレアアースを含む重要鉱物も含めました。

 具体的には、永久磁石の生産能力の増強、省レアアース磁石の開発、レアアース磁石のリサイクルに係る技術開発や設備投資、これもサプライチェーン強靱化のための支援対象としております。

 予算につきましても、令和四年度第二次補正予算で、永久磁石では二百五十三億円、重要鉱物では千五十八億円がそれぞれ措置されていますので、経済産業大臣と連携しながら、永久磁石のサプライチェーンの強靱化に向けた取組をしっかりと後押ししてまいります。

浅野委員 是非、リサイクル技術の向上というのを進めていただきたいと思っておりますし、是非大臣に心に留めていただければと思うのは、以前、経済産業委員会の中でフロン類のリサイクルを議論したことがございまして、そのときに問題になったのは、使い終わった家電製品などからフロンを回収するときの手間とコストが非常にかかるので、リサイクル業者がそれをやりたがらない、なかなかできない、そういう問題がございました。

 そのときも申し上げたんですが、やはり、製造段階で回収、リサイクルを前提としたデザイン、設計にするということが非常に大事になっていくと思われますし、それは、高性能磁石や、あるいは今同じように問題視されている蓄電池についても回収、リサイクルしやすい設計というものをいかに国内で普及させていくか、これが非常に大事な視点になると思いますので、今後の政策議論の中で是非意識していただければというふうに思っております。

 次のテーマに移りたいと思います。次も同じような経済安全保障の議論で、テーマは水素となります。

 政府は四月四日に水素基本戦略の骨子案を発表したと承知しておりますが、まず、この水素基本戦略というものがどういうものなのか、概要で構いませんので、政府の方から答弁いただければと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議の場において、二〇一七年に我が国が世界に先駆けて策定しました水素基本戦略の改定に向けた方針をお示ししたところでございます。

 この方針では、二〇三〇年より先の中長期的な水素導入量を明確にし、関連投資を促進するため、二〇四〇年の導入目標として千二百万トンを軸に検討するということを言っております。また、本目標達成にも貢献する大規模かつ強靱な水素等のサプライチェーン構築のため、既存燃料との価格差に着目した支援や、需要創出につながる供給インフラの整備支援などの制度整備についても盛り込んでいるところでございます。規制、支援一体型での包括的な制度整備に向けた準備を加速したいと思っております。

 水素基本戦略の改定に当たりましては、官民協議会などを通じて政策のあるべき姿について議論を重ねまして、五月目途の取りまとめに向けて検討を進めてまいりたいと思っております。

浅野委員 ありがとうございます。

 私、これからの時代、カーボンニュートラルというメガトレンドも踏まえれば、この水素という資源が非常に重要性の高いものになるというふうに思います。

 今日の資料の資料三というものを見ていただきたいんですが、水素関連の特許出願状況、これを見ますと、日本が現在、世界でトップを走っております。占有率は二四%。水素の製造に関する特許では二〇%、貯蔵に関する特許では二二%、最終的な用途に関する特許は二八%ということですけれども。やはり、日本はこれまで、基本的な技術を開発したり、特許、知財を構築するという部分では、半導体もそうでしたし、再生可能エネルギーもそうでしたが、非常に早くから着手をして、こういったポジションに一度はつくんですけれども、その後が問題なんですね。

 今日伺いたいのは、今、この水素基本戦略の改定案の中で、二〇四〇年に千二百万トン導入目標を新たに設定するということもあるように、今後どんどんどんどん水素の導入量を二〇五〇年に向けて増やしていくということなんですが、問題は、その活用の用途をどういうふうに政府が考えているのか、そして、それに産業界がしっかりついてくるのかどうか、これが非常に大事だと思いますので、まずは、政府がどのように活用することを想定しているのか、具体的に教えていただきたいと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおりですが、我が国は世界に先んじまして、燃料電池自動車や家庭用燃料電池の商用化をしました。また、そのほか、水素の海上輸送におきましても、世界で初めて液化水素さらにはメチルシクロヘキサンによる輸送を成功するなど、水素の分野において技術的な強みを有しております。

 こうした中、水素関連技術のいち早い商用化を後押しすべく、グリーンイノベーション基金等での、水素産業の鍵となります水電解装置、海上輸送技術、さらには水素発電の商用化、燃料電池自動車、水素ステーションの普及、工場での水素の熱利用、こうしたものを推進しているところでございます。

 我が国の水素利用ですが、二〇三〇年に向けては、まずは発電を中心として需要が広がり、それに伴って供給量の拡大によってコストが下がっていくと、電化が困難な熱分野ですとか、さらには運輸分野での需要も更に広がることを期待しているところでございます。二〇四〇年に向けましては、こうした電化が困難な熱分野や運輸分野、こうした部門での需要を加速させていきたいと思っております。

 今後、大規模な水素需要とこれに見合う供給網を立ち上げまして、化石燃料から水素への転換を図るため、GX経済移行債も活用しながら、既存燃料との価格差に着目した支援や、需要創出につながる供給インフラの整備支援などの制度整備を通じまして、大規模かつ強靱な水素等のサプライチェーンを構築してまいりたいと思っております。

浅野委員 今の最後の意気込みがまさに現実のものになるかどうかが本当に大事なところだと思いますので、基本的方向性は私も同意いたしますが、是非実効性あるものになるようによろしくお願いしたいと思います。

 今日は、海上輸送の話も今出ましたけれども、次の質問は、水素というのは現状やはり国内ではそれほど製造しておらず、海外で作った水素を日本に持ってきて活用する、そういう前提があります。持ってくる場合に、やはり海上輸送ですからシーレーンの問題というのがありまして、今、今日、資料の四の方に、日本とまずはオーストラリア間のシーレーン、これは石炭輸入航路なんですけれども、このような航路を通って日本に持ってきているそうでございますし、ここには記載していないんですが、オーストラリアから神戸港に水素を持ってくるときの航路、ちょっと私もまだ具体的航路は分かりませんけれども、中には台湾付近を通過する航路もあるというふうに聞いてございます。

 それで、赤い部分で書いてありますけれども、例えば、オーストラリアの右側の海域、バヌアツでは、中国が二〇一七年後半から大規模な港を建設していて、否定はしているんですけれども、海軍向けの基地を造っているのではないかというような話もございます。

 これから台湾有事であったりあるいは国際状況が複雑化する中で、シーレーンリスクというのをどう考え、どう対応していくのか。これは水素の問題あるいはエネルギー資源の議論をする際に切っても切り離せない問題ですので、ここのシーレーンのリスク認識について政府に伺いたいと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、二〇四〇年、千二百万トン、こういったことを軸に検討しておるところでございます。そしてまた、大規模な供給インフラ、こうしたことも整備していこうと考えております。

 そして、水素につきましては、化石燃料と比較しまして偏在性というものが低いとも言えるものでございまして、こうしたことが供給源の多角化を可能にする、したがいまして、エネルギー安全保障の強化につなげることができる、そうしたエネルギーであるというふうに認識しております。

 ただ、そうした中で、シーレーンのリスクというのはもちろん考えなければいけないことでございまして、私たちも、そういう意味で、水素を新たな、石油やガスと並ぶ資源と捉えまして、これまで日本政府一体で取り組んできました資源外交で培いました資源国との友好な関係、こうしたものを一層磨くとともに、さらには、協力覚書や多国間枠組みなどを通じて新たな水素生産国との関係も強化してまいりたいと思っております。

 今後、具体的なサプライチェーンが立ち上がっていくわけですが、そうした中で、まさに先生おっしゃるようなエネルギーをめぐる国際情勢、こういったものを最大限注視しまして、安定的な水素の供給を図ってまいりたいと思っております。

浅野委員 海外から、様々な輸入先から水素を確保するという努力は是非進めていただきたいと思う一方で、やはり、私自身は、水素は国内でも作れるものだと思っておりますし、国産化というのを強力に推進すべきだという立場を取っております。

 残り時間の関係で、政府の方から水素製造技術の状況について伺う予定だったんですが、申し訳ありません、これはスキップをさせていただいて、今、例えば原子力発電所の廃熱などを利用した水素製造技術ですとか、再エネ電源で発生した余剰電力を活用した水素製造技術というのが開発されております。やはり、日本がまだまだ強みを持っているんですね。先ほど特許の話をしたときもそうですが、水を電解する技術においても日本の特許水準というのは非常に高い。

 ですから、政府として水素の国産化を進めていくべきだと思うんですが、大臣はどのようにお考えになっていますでしょうか。

高市国務大臣 先ほど委員おっしゃいましたとおり、水素については、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現にも向けた重要なエネルギーでございます。先ほど、シーレーンの御指摘もございました。また、やはり、遠いところで作って運んでくる、ここでもまたCO2の発生、こういった問題もあるかと思っております。液化水素の技術、それからLNGについても、他国の大使なんかと話しますと、日本の技術が羨ましいというお声もいただいております。

 私は、経済安全保障の観点からも、水素の国内生産ということは極めて重要だと思っております。今、岸田総理のリーダーシップの下で検討を進めていただいているところでございます。

浅野委員 総理の下で検討が進められているということで、その検討内容については期待を持って注視していきたいと思いますが、最後の質問です。

 今、水素の重要性、そして様々なリスクがあること、その中で、我が国が水素という資源をしっかり確保する必要性があること、共有できたかと思いますが、今日の資料五に記載されておりますが、現在指定されている特定重要物資の中には水素は含まれておりません。一方で、天然ガスというのが含まれているんですね。

 水素は、やはり、これからはカーボンニュートラルの時代、非常に重要度の高いもの、そして我が国としても自国内で製造できる余地がある資源であります。是非、特定重要物資に追加をして、国を挙げて、水素関連技術の開発あるいは社会実装を強力に進めていくべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょう。

高市国務大臣 特定重要物資につきましては、去年、十一物資を指定いたしました。ただ、これは、経済安全保障推進法にある要件、国民の生存に必要不可欠又は国民の生活、経済活動が依拠しているという重要性、そしてまた、外部に過度に依存している又は依存するおそれがあるという外部依存性、外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性、本施策による措置が特に必要と認められるという必要性の四つの要件を満たす物資を指定させていただきました。

 二月に各省の局長級の皆様にお集まりいただいて、更にサプライチェーン調査をかけてほしいという要請を出しましたので、その中で、この要件に水素というものも入ってきて、またサプライチェーン上、非常に脆弱だというような形になってきましたら、検討対象にもなるかと存じます。

浅野委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

     ――――◇―――――

大西委員長 次に、内閣提出、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。高市国務大臣。

    ―――――――――――――

 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高市国務大臣 ただいま議題となりました医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 健康、医療に関する先端的研究開発及び新産業創出を更に促進し、国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会を形成していく観点から、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工した仮名加工医療情報の取扱いについての規律を定めるとともに、匿名加工医療情報を匿名医療保険等関連情報等と連結して利用することができる状態で提供するための仕組み等を整備するため、この法律案を提出いたしました。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように医療情報を加工したものを仮名加工医療情報と定義し、その取扱いについての規定を整備するとともに、医療情報を加工等して仮名加工医療情報を作成する事業を適切かつ確実に行うことができる者を、認定仮名加工医療情報作成事業者として認定する制度を設けることとしております。また、認定仮名加工医療情報作成事業者が作成した仮名加工医療情報の提供を受け医療分野の研究開発を行う事業を行おうとする者を、認定仮名加工医療情報利用事業者として認定する制度を設けることとしております。

 第二に、認定匿名加工医療情報作成事業者が、匿名加工医療情報を匿名医療保険等関連情報等と連結して利用することができる状態で提供するための仕組みを整備することとしております。

 第三に、医療情報取扱事業者に対し、国が実施する匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する施策への協力に努めるように求める規定を設けることとしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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