衆議院

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第8号 令和5年4月19日(水曜日)

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令和五年四月十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田仁志君

   理事 小田原 潔君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 中川 郁子君 理事 西銘恒三郎君

   理事 源馬謙太郎君 理事 徳永 久志君

   理事 和田有一朗君 理事 吉田 宣弘君

      秋本 真利君    伊藤信太郎君

      城内  実君    島尻安伊子君

      新藤 義孝君    鈴木 貴子君

      鈴木 隼人君    高木  啓君

      辻  清人君    寺田  稔君

      平沢 勝栄君    深澤 陽一君

      青山 大人君    篠原  豪君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      杉本 和巳君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

      吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   外務副大臣        武井 俊輔君

   外務副大臣        山田 賢司君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  青柳  肇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山田 好孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石瀬 素行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 原  圭一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 中村 仁威君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           永井 雅規君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          木村  聡君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           大和 太郎君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         井本佐智子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     深澤 陽一君

同日

 辞任         補欠選任

  深澤 陽一君     上杉謙太郎君

    ―――――――――――――

四月十八日

 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事井本佐智子君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官金井正彰君、大臣官房審議官石瀬素行君、大臣官房審議官石月英雄君、大臣官房審議官岩本桂一君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房審議官原圭一君、大臣官房参事官林誠君、大臣官房参事官池上正喜君、大臣官房参事官中村仁威君、大臣官房参事官大河内昭博君、北米局長河邉賢裕君、中東アフリカ局長長岡寛介君、内閣官房内閣審議官青柳肇君、内閣審議官山田好孝君、文部科学省大臣官房審議官永井雅規君、経済産業省貿易経済協力局長木村聡君、防衛省防衛政策局次長安藤敦史君、統合幕僚監部総括官大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自民党の伊藤信太郎です。

 本日は、歴史的な視点も交えて、外交戦略について質問いたします。

 一九四九年、中華人民共和国が成立いたしました。その四十年後、一九八九年、天安門事件が起きました。また、同年五月より日本の金融政策の転換が行われ、公定歩合が段階的に引き上げられ、いわゆるバブル経済の崩壊が起きたわけであります。同じ一九八九年十一月にドイツではベルリンの壁の崩壊があり、それまで東西に分断されていたドイツが統一されました。

 この三件は、起きた地域、事件、事象の種類は違うわけでありますけれども、国際社会の構造変化と関連して起きたと考えられます。それは東西冷戦の終結だと思います。

 これにより、日本の立ち位置というのは大きく変わりました。それまでの西側諸国の間における日本の相対的優位というものが失われて、日本はグローバル社会の新しいパラダイムの中で自らの存在意義を獲得しなければならない状況になったと思います。この三十四年間は、その戦略を構築する新たな座標軸を模索してきた年月でもあったと思います。

 少し歴史を遡りますと、レーニン率いるボリシェビキの赤軍が勝利し、一九二二年十二月、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ザカフカースから成るソビエト連邦が成立し、その六十九年後の一九九一年十二月にウクライナ、ベラルーシが独立し、ソ連は崩壊しました。そして、その三十一年後の二〇二二年にロシアによるウクライナ侵略が行われ、今日に至っています。これはソ連成立の百年後に当たるわけであります。そして、今、日本も世界も大変な状況になっているわけであります。

 こう見てみますと、今後の外交戦略を考える上で、グローバルに、マクロの時間軸で、また複眼的視点で構築するということが肝要ではないかと思料いたします。

 ここで、国際社会の状況の変化というのをデータで見てみたいと思います。

 まず、軍事力、防衛力の変化です。配付資料の一ページを御覧ください。

 国防費の計算方法というのは国によって違うわけでありますけれども、防衛白書によりますと、中国の国防費は、一九九八年に三百二十五億ドルでしたが、二〇二二年には十・七倍の三千四百七十億ドルになっています。これは、日本の防衛予算の五百三十五億ドルの約六・五倍になります。中国は国防予算増額を急ピッチで進めており、米国の国防予算七千四百十億ドルに近づいていくことが予想されます。

 ロシアの国防費は、一九九八年の二百五十一億ドルから、二〇二二年の千三百二十八億ドルと五・三倍になっていますが、最近伸びが止まっておりまして、中国の三八%にとどまっています。

 次は、経済力、GDPの変化ですが、IMFの統計によると、中国のGDPは、この間、三千九百六十五億ドルから十八兆一千億ドルと四十五・六倍になっています。明らかに中国の成長率が群を抜いているわけであります。

 貿易の関係を見てみます。配付資料の三ページを御覧いただきたいと思います。

 一九九〇年の日本の対中貿易総額は百五十三億ドルでしたが、二〇二一年になると三千二百九十五億ドルとなり、対米貿易総額の二千百七億ドルを抜いています。

 配付資料の四ページを御覧ください。一九九〇年の米国の対中貿易総額は百一億ドルでしたが、二〇二一年の対中貿易総額は七千二百八十七億ドルとなり、対日貿易総額をはるかに超えています。しかも、対中国では四千二百六十五億ドルの輸入超過となっています。

 また、今、サプライチェーンを見ますと、旧東西陣営の枠を超えてグローバルなものになっています。日本を含む全ての国は、濃淡の差はあるものの、何らかの国際的相互協力、依存関係にあります。

 このような状況の中で、東西冷戦時代のように、個別の国、陣営に分けてデカップリングをすることはもはや不可能になってきていると思います。

 日本は、尖閣諸島、北方領土の問題を始め、中国、ロシアとは多くの懸案を抱えています。北朝鮮の核、ミサイル、拉致も大きな問題です。日本の領土、領海、領空、日本人の生命財産、なりわい、日本の国益、名誉を守るために、林大臣はどのような戦略を持って中国、ロシア、北朝鮮と外交を行っていくおつもりか、先日の中国との会談内容も踏まえてお聞かせ願いたいと思います。

林国務大臣 日中関係につきましては、日中間には、今お話のあったような、尖閣諸島をめぐる情勢、さらには邦人拘束問題を始め、様々な可能性とともに数多くの課題や懸案が存在するわけでございます。同時に、日中両国は地域と世界の繁栄に対して大きな責任を有しております。

 昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ねて、共通の課題については協力するという建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいります。

 この点、先般、私が訪中した際にも、秦剛外交部長、そして王毅中央外事工作委員会弁公室主任、そして李強総理に対して我が国の立場を改めて伝達いたしました。

 引き続き、首脳、外相レベルを含めて、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていきたいと思っております。

 ロシアですが、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがすものであり、引き続き毅然と対応してまいらなければならないと思っております。

 同時に、漁業などの経済活動といった隣国として対処する必要のある事項については、外交全体において何が我が国の国益に資するかという観点もしっかり考えながら、適切に対応してまいりたいと思っております。

 その上で、北方領土問題に関しては、領土問題を解決して平和条約を締結するという方針は堅持してまいりたいと思っております。

 そして、北朝鮮ですが、北朝鮮による核・ミサイル開発は我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できないと考えております。

 また、岸田内閣の最重要課題である拉致問題は時間的制約のある人道問題であります。我が国として、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す考えでございます。

 いずれにいたしましても、政府として、国民の生命財産、そして我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという方針の下で、引き続き、緊張感を持って、関係省庁間で連携して情報収集に努めつつ、引き続き冷静かつ毅然と対応してまいりたいと考えております。

伊藤(信)委員 次に、インドを始めとするグローバルサウスと呼ばれる国々との関係を今後どのように構築していく考えなのかもお聞かせください。

林国務大臣 いわゆるグローバルサウスでございますが、ロシアによるウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがす中で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化していくためには、国際社会の幅広い支持と関与が不可欠であります。そうした観点から、グローバルサウスと呼ばれる国々との関係を強化することが重要になります。

 こうした考えに立って、外務大臣就任以来、個別の会談、訪問に加えて、昨年八月にTICAD8、そして九月には国連総会、そして十一月のAPECやG20、こうしたマルチの場も捉えて、いわゆるグローバルサウスへの関与に取り組んでまいりました。

 こうした各国と対話を通じて再確認したのは、こうしたときだからこそ、我々は日本らしいきめ細やかな外交を主導すべきだということであります。今般私が主催いたしましたG7の軽井沢外相会合でも、いわゆるグローバルサウスへの関与の重要性を改めて確認いたしました。

 G7議長国として、ODAも活用しながら、多様性と包摂性を重視するきめ細やかな外交を通じて、法の支配に基づく国際秩序の維持強化が国際社会全体にとって極めて重要だという点を強く訴えていく。それと同時に、気候変動、エネルギー、食料、保健、開発等のグローバルな諸課題の解決に積極的に貢献してまいりたいと考えております。そして、その成果を、今年はインドがG20の議長国を務めておりますので、G20へしっかりと引き継いでいきたいと考えております。

伊藤(信)委員 時間が押したのでちょっと飛ばしますけれども、太平洋諸島フォーラムの国々との関係構築についてお伺いいたします。

武井副大臣 太平洋島嶼国につきましては、日本と長年の友好関係を有すると同時に、一方で、地域を分断するような動き、そしてまた、標高数メートルという国もございますので、気候変動の影響など、非常に脆弱性を抱えているところでありまして、我が国そして多くの同志国と連携して関与を強めていく必要が高まっていると認識しているところであります。

 我が国の取組といたしましては、太平洋・島サミット、PALMでございますが、加えまして、二国間の様々な交渉などを通じまして、政治レベルでの各国との間の地域情勢を含めた率直な意見交換を行うなどとともに、先方のニーズにも寄り添いながら協力を行うことで、信頼関係を構築しているところであります。

 直近では、三月の林外務大臣によるソロモン諸島及びクック諸島の訪問に続きまして、先週、私もバヌアツ及びフィジーを訪問いたしまして、首相、そしてまた、太平洋諸島フォーラム、先ほど委員からもお話がございましたが、この事務局がフィジーにございますので、この事務局長等を通じまして、地域自らが策定いたしました将来のビジョンであるブルーパシフィック大陸のための二〇五〇年戦略への支持や、そしてまた、この地域の安定と繁栄に対する我が国のコミットメントを直接伝えてきたところであります。

 さらに、来月のG7広島サミットのアウトリーチ会合におきましては、PIFの議長でありますクック諸島のブラウン首相の参加を得ることになっております。

 我が国といたしましては、自由で開かれたインド太平洋新プランの下、十回目を迎えます来年の太平洋・島サミット、そして、本年行います外相レベルでの中間閣僚会合、二国間での対話等を通じて取組を深めてまいりたいと考えております。

伊藤(信)委員 時間が押してきたので、五、六、七、八をまとめてお聞きします。

 G7が軽井沢であったばかりですけれども、G7、EU、クアッド、NATO等、いろいろな世界の枠組みがあるわけですけれども、今後、外交戦略をどのように有機的、総合的戦略に組み合わせ、防衛力だけじゃなく、外交力、経済力、文化力、信頼の醸成力を重ねた重層的なデタランスを高めて、日本の国益を守り、世界平和を達成していくのかを、今回のG7の会合の結果も踏まえ、お答え願いたいと思います。

林国務大臣 我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中で、危機に対する抑止力を高めて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するということが大変大事になってまいります。

 まず優先されるべきは積極的な外交の展開でありまして、世界のどの地域であれ、力による一方的な現状変更、また核兵器による威嚇、使用は断固として許さないという観点から、首脳レベルを始め、多層的、多面的な外交を各国、各レベルとの間でしっかりと展開していきます。このことは、この間のG7外相会合でもしっかりと確認したところでございます。

 さらに、戦後一貫して平和国家としての道を歩んできた、そしてアジア太平洋地域や国際社会の平和と安定に貢献してきたこの歩み、例えば国連平和維持活動への貢献、そして平和構築分野における人材育成、こういうことに取り組んできました。また、ODAを通じて、紛争の予防や緊急人道支援、さらには平和の定着や国づくりの支援など、継ぎ目のない取組を行ってまいりました。

 委員からはNATO、クアッドというお言葉もありましたけれども、こうしたバイやマルチも重層的に活用しながら、日本らしい多様性と包摂性を重視するきめ細やかな外交、こういうことを推進していくことによって、まさに委員が御指摘されました抑止力の向上につながると考えておりまして、引き続き、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化を主導して、平和で安定した国際環境を能動的に創出してまいりたいと考えております。

伊藤(信)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

黄川田委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党会派、金城でございます。

 大臣におかれましては、先日までのG7外相会合、大変にお疲れさまでございます。初めに大臣に、そのG7外相会合の成果と課題についてお伺いしたいと思います。

 四月十六日に始まり四月十八日、昨日まで、長野県軽井沢においてG7外相会合が開催されました。ロシアのウクライナ侵攻や台湾有事、頻発する北朝鮮のミサイル発射など、我が国を取り巻く環境が厳しい状況の中での開催であり、大変意義深い会合であったのではないかと思います。

 今回のG7外相会合の成果、そして今後取り組むべき課題について、外務大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 四月の十六日から三日間にわたりまして、G7長野県軽井沢外相会合を開催をいたしました。

 国際社会が歴史的な転換期を迎える中で、G7の外務大臣の間で率直かつ踏み込んだ議論を行うことができました。また、会合の成果として、G7外相コミュニケを発出をいたしたところであります。

 今回は、今年二回目となります対面でのG7会合でありまして、セッション全体を通じて、五月のG7広島サミットに向けたG7外相間の連携を確認をしたところであります。

 また、今年のサミットが広島で開催されるということも念頭に、核軍縮・不拡散につきましても詳細に議論を行ったところでございます。

 そして、G7として初めて、日本が重視をいたします法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序へのコミットメントや、世界のどこであれ一方的な現状変更の試みに強く反対する、こういうことを文書の形で確認をすることができたところであります。

 今般の成果も踏まえて、山積する外交課題への対応に当たって、日本として、本年のG7議長国として、G7広島サミットを念頭に、引き続き国際的な議論を積極的にリードして国際社会の平和と繁栄に貢献してまいりたい、そう考えております。

金城委員 大臣、御答弁ありがとうございました。これからも、日本を取り巻く環境の、情勢の安定のために取り組んでいただきたいと思います。

 二点目に、中国の航空宇宙活動のための飛行制限区域設定について伺いたいと思います。

 中国は、四月十六日から四月十八日にかけて、ちょうどG7外相会合の期間中、航空宇宙活動のための、航空機の飛行の安全に影響する可能性がある区域を設定し、それに対し台湾が抗議を行いました。結果、飛行制限時間が、当初の四月十六日から十八日の毎日午前九時から午後二時までだったのが、四月十六日の午前九時半から九時五十七分の間に短縮、変更されたとのことでした。

 中国が設定した区域は、東アジアの南北航路の要衝であり、また西太平洋の交通の大動脈であります。この多くの国際航路が行き交う区域に三日間にも及ぶ飛行制限区域を設定したということは、我が国にも、また関係する国々にも深刻な影響を及ぼすものであると思います。また、この三日間はG7外相会合が開催された期間でもあり、最終的に約三十分の飛行制限に変更されたものの、今後の課題を残したと思います。

 今回の件に対しまして、内閣官房、防衛省、外務省において、それぞれの御所見を伺うとともに、どのような対応を行ったのか。また、課題などを整理し、我が国に影響を及ぼすことがないように対処する必要があると思います。それぞれ御答弁を伺いたいと思います。

青柳政府参考人 まず内閣官房からお答え申し上げます。

 今般の中国による航空宇宙活動につきまして、内閣官房といたしましては、打ち上げ前の段階から関係省庁間で情報の共有に努めてきたところでございます。そして、台湾から管轄内に対する航空情報、ノータムが発行されるとともに、海上保安庁や水産庁から航行警報や漁業安全情報等を発出して船舶や漁業者等に注意喚起を行うなど、安全の確保に努めたところでございます。

 また、当該警報区域に隣接する沖縄県に対しまして、内閣官房より消防庁を通じて、また海上保安庁や水産庁から関連部署に対しまして、事前に警報の発出等について情報提供を行ったところでございます。

 また、打ち上げ後におきましては、関係省庁を通じ被害情報の確認を行っており、船舶、航空機等の被害情報等を含む異常は確認されておりません。加えまして、沖縄県に対し、関係省庁から警報の失効等についても情報提供を行ったところでございます。

 本件について、内閣官房といたしましては、今申し上げましたような、関係省庁と連携し、船舶や航空機の安全確保に努めるとともに、地元沖縄県に情報提供を行うなど、しかるべき対応を行ったところでございます。

 今後とも、様々な事態を想定し、対応に万全を期してまいりたいと考えております。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省・自衛隊は、艦艇、航空機、地上各所に設置されたレーダーなど、様々な手段を使って、我が国周辺海空域における警戒監視、情報収集を平素から切れ目なく行っております。

 人工衛星の打ち上げと推測される今般の中国の航空宇宙活動に際して、具体的に我々がどういう活動をしていたかということについては申し上げられませんが、必要な警戒監視、情報収集を行っていたところであります。

 我が国の安全を確保するため、今後とも引き続き、中国の動向に関するものも含め、様々な警戒監視、情報収集に取り組んでまいります。

林政府参考人 外務省の対応についてお答え申し上げます。

 中国側に対しまして、我が国の船舶等の安全に影響を与えないようにすること、また、沿岸国たる我が国の権利及び義務に対して妥当な考慮を払うことを含めて累次申入れを行うとともに、事実関係の詳細な説明を含め、適切な対応を強く求めていたところでございます。

 しかしながら、今般、中国側が我が国の要請にもかかわらずこのような形でロケットを打ち上げたことにつきましては極めて遺憾であり、直ちに外交ルートを通じて厳重な抗議を行うとともに、再発防止を強く要請したところでございます。

 引き続き、中国側に対しまして適切な対応を求めていくところでございます。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 外相会合が行われている期間において、中国のこのような行為。言うべきことはしっかりと言って、抗議すべきはしっかりと抗議していくところも必要だと思っております。

 三つ目に、日米地位協定に関する質問を、前回はちょっと時間がなくて聞けなかったものですから、伺わせていただきます。

 昨年五月、毎日新聞と琉球新報社が社会調査研究センターに委託をし、沖縄復帰五十年に関する世論調査が実施されました。その調査結果の中で、米軍基地の運用や米軍関係者の権利を定めた日米地位協定について、全国で五五%、沖縄県で七一%の人が抜本的に改定すべきだと答えたとの結果でした。

 このアンケート調査結果について、外務大臣としてはどのようにお感じになられましたでしょうか。御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 日米地位協定についてでございますが、今御紹介いただきましたアンケート調査を始めとして、様々な意見があるということを承知をしておるところでございます。

 政府といたしましては、これまでも、米側と様々なやり取りを行いながら、事案に応じて、効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じまして、一つ一つの具体的な問題に対応してきているところでございます。

 今後も、そのような取組を積み上げてまいりたいと考えております。

金城委員 昨今の情勢から見ますと、やはり国民の生命財産を守る取組というのは、日米のしっかりと歩調を合わせた取組は非常に重要だと思います。

 しかしながら、その一方で、沖縄県のように基地が集中する地域におきましては、事件、事故などが起こったりするわけです。そういった地元民に対する安心を与える取組も一方で必要だと思っております。

 そこで、提案いたしますが、基地のある市町村で、国、米軍、市町村が日常的に意見交換を行い、意思疎通を図り、友好関係を築き、関係者が課題解決を行えるような体制づくりを外務省として取り組んでいただきたいと考えております。

 ちなみに、三沢市や横須賀市においては、連絡協議会を設置するなど、友好関係の維持、課題解決に取り組んでいると伺っているところでございます。

 外務大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 在日米軍の安定的な駐留及び活動にとって、やはり地元の皆様の理解というのが重要でございます。

 政府といたしましては、平素から、在日米軍が所在する市町村や米軍と緊密に意思疎通を行うと同時に、地元と在日米軍等との間の対話の維持、促進、これに努めてきておるところでございます。

 こうした取組の一環として、今挙げていただきました三沢市や横須賀市を始めとする地元の中高生を対象にした在日米軍子女との交流事業などを通じて、人と人との関係構築を促進する取組というのを推進してきておるところでございます。

 外務省といたしましては、こうした取組を通じまして、関係者が日常的に意思疎通を図って、更なる交流や意見交換の機会、これを追求することができるように、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

金城委員 御答弁ありがとうございます。

 沖縄県内でも、米国総領事などの方々が定期的に地元の首長さんや関係者の方とも交流などもしている状況も私も伺っておりますので、やはり交流という部分も地元民に対する取組を強化していただければと思いますので、よろしくお願いします。

 最後に、日中韓の三か国首脳会談の再開の可能性と開催意義についてお伺いしたいと思います。

 日中韓三か国は、年一回、持ち回りでサミット、首脳会談を開催することで合意しており、二〇一九年、令和元年十二月に中国で開催したのを最後に、その後、岸田政権としてまだ開催されておりません。

 先日、韓国の尹錫悦大統領が十二年ぶりに単独来日をし、岸田総理と首脳会談を行いました。日韓関係の課題となっていた徴用工問題も話し合われ、解決への方向にあります。今後、日韓でシャトル外交を再開する確認がなされました。日韓関係の大きな前進であり、評価したいと思います。

 このような日韓関係の雪解けとも言える状況の中、日中韓三か国首脳会談開催にはまだハードルはあるかと思いますが、世界の情勢が不安定なこの時期にこそ、積極的な平和外交を展開するために日中韓三か国首脳会談を開催すべきであると考えております。

 日中韓三か国首脳会談の再開の可能性と開催意義などについて、外務大臣の決意、御所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 地域の平和と繁栄に大きな責任を共有いたします日中韓の三首脳が一堂に会し、日中韓の協力の方向性、そして具体的な協力の在り方、そして地域の諸課題等について議論するということは大変有意義だと考えております。

 今後の日中韓協力の具体的なプロセスや日程につきましては、先般の日韓首脳会談の結果、そして私が訪中した際の日中外相会談で、首脳、外相レベルを含む日中韓プロセスを再稼働させていくということで一致したということも踏まえて、まず三か国の事務レベルでしっかりと検討を進めていきたいと考えております。

金城委員 大臣、御答弁ありがとうございました。

 これからも、日本を中心としたアジアの平和と安定、そして世界の平和と安定のために引き続き頑張っていただきたいと思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 立憲民主党の源馬謙太郎です。今日もよろしくお願いいたします。

 まずは、大臣、G7外相会議、大変お疲れさまでございました。有意義な会合が続いたというふうに思います。今日はそのことについてはお聞きをしませんが、また成果を教えていただければと思います。

 まず初めに、カンボジアの状況について伺いたいと思います。

 今年、カンボジアはまた総選挙が行われます。五年前の総選挙、二〇一八年に行われた総選挙の際には、その前年に与党が最大野党を解党して、野党の幹部を逮捕し、言論、メディアなんかも弾圧をしながら、結果的に百二十五の議席を全て与党が取った、一〇〇%与党の議席になった。これが前回の総選挙で、国際社会も非常に厳しい目を向け、批判の声を上げました。

 残念ながら、日本は、注視したいというような、そのぐらいの発言にとどまっていて、結局、その選挙の際にも選挙支援として八億円の税金をカンボジアにつぎ込んだ、こういうことがありました。

 その後、民主化がまた元に戻ったかというと、決してそうではないと私は認識をしております。確かに、解党された野党はそのままで、一部また野党のようなものができて、キャンドルライト党というのができて、少し地方議会で議席を取りましたが、それでも、昨年行われた地方議会では八割の議席を与党が占めて、九九・八%の地域で与党が第一党を取った、こういう状況になっています。そしてさらに、いろいろ、元の野党の幹部たちに対する、あるいは元議員に対する弾圧も強まっているということを聞いています。

 まず、この今の状況について、カンボジアで人権状況であるとか民主主義的な状況がどういう状況になっていると認識をしているか、大臣の御認識を伺いたいと思います。

林国務大臣 今御指摘のございました二〇一八年七月のカンボジアにおける総選挙でございますが、無効票が多く出るといったことを始め、様々な残念な結果があったというふうに認識をしております。

 我が国としては、カンボジアにおいて、民主主義に根差した自由、公平な選挙が円滑かつ安定して実施されるということが重要であると考えております。そうした観点から、日本政府として、カンボジア政府との対話を継続するとともに、そのような環境醸成のための支援を行ってきているところでございます。

源馬委員 民主主義的な政治が行われることが大事という今大臣の御答弁がありましたが、果たして、野党を解党した上で選挙を行い、そして、例えば今年の三月には、元野党の党首であったケム・ソカという、カンボジア救国党、これは解党された野党ですが、このケム・ソカ氏に対して、明確なる証拠はないんだけれども、国家反逆罪で二十七年間の有罪判決を現地の裁判所が言い渡したということもありました。さらには、同国の独立系のメディアへの弾圧も強まっている。

 こういう状況で行われる今度の七月の総選挙が民主主義的な、大臣が今御答弁された民主主義的な仕組みの下で行われる選挙になるというふうに大臣はお考えなのかを伺いたいと思います。

林国務大臣 御指摘の判決やカンボジア内での様々な動きについては承知をしておるところでございます。

 先ほども申し上げましたように、やはり民主主義に根づいた自由、公正な選挙が円滑かつ安定して実施されるということが重要であり、そのための対話を継続をし、環境醸成のための支援を行ってきております。

 私自身、一月にプラック・ソコン副首相兼外務国際協力大臣と外相会談を行った際に、今年の七月の総選挙が自由、公正、かつ、多様な声を反映した形で実施されるように働きかけを行ったところでございます。

 また、カンボジアの民主的発展を後押しするための取組の一環として、今週なんですが、カンボジアの与野党の若手政治関係者を招聘して、地方選挙の様子、これを視察してもらう予定になっておるところでございます。

源馬委員 対話もやはり大事ですし、日本はカンボジアにとっていろいろとレバレッジが利く国だと思いますので、対話をしていただくことが大事ですが、同時に、やはり、カンボジアにとって大事な日本が今の状況に憂慮しているということを、こういう状況が続けばですけれども、国際社会に向けて発信していただくということも、態度として示すということも大事なことだと思いますので、是非、カンボジアの民主化に向けて、また力を注いでいただきたいと思います。

 こういう状況の中で、我が国政府は今年の七月のカンボジアの選挙に何か支援をする予定があるのか、参考人で結構ですので、教えてください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国としましては、本年七月の総選挙におきまして、カンボジアにおいて、民主主義に根づいた自由、公正な選挙が円滑かつ安定して実施されることが重要と考えておりまして、その観点から、選挙や民主主義に関するカンボジア国民の理解を深めるため、二〇二一年から専門家を選挙管理委員会に派遣しておりまして、有権者に対して同委員会が実施する主権者教育を支援しているところでございます。また、UNDPと連携しまして、政府と市民社会との間の双方向の対話促進のための研修も実施しているところです。

 引き続き、カンボジアにおける総選挙が、多様な声を反映し、自由、公正な形で実施されるよう、支援を継続していく考えでございます。

源馬委員 前回の選挙のときには、必ずしも民主的と言えない状況の中で、選挙自体を支援したということに私は反対の意見を持っていたわけですが、そういうことはないということでよろしいですね。

 同時に、選挙監視団を仮に送れば、それはやはりお墨つきをある種与えることになると思うんですけれども、そういうことは、選挙監視団を送るということはないということでよろしいですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点におきましては、先ほど申し上げました、有権者に対する主権者教育の支援、また政府と市民社会との間の双方向の対話を促進するための支援、こういったものを実施しており、継続する予定でございます。

源馬委員 一回言ったことを答えなくていいので、監視団は送らないということでよろしいですか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 七月の総選挙に選挙監視団を派遣するかという御質問でしたけれども、対応につきまして現在検討しているところでございまして、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

源馬委員 予断を持ってと、我が国がどういう支援をするかということは、だって、我々、外務委員会で質疑するのに大事なことじゃないですか。しかも、こういう状況で監視団を送るということは、カンボジアの今の政治状況にお墨つきを与えるということなので、そこは慎重に考えていただきたいと思います。

 これは、事前にレクで聞いたら、監視団は送らない方向だと思うが、スペシャルゲストを送るという、何か意味がよく分からないですよね。名前を変えただけで、スペシャルゲストを送ったら、それはお墨つきを与えるじゃないですか。

 前回の選挙のときも、実は、監視団を送っていなかったけれども、スペシャルゲストは送っていたんですよ、日本は、大使館から。レクのときに聞いたら、ほかの国も送っていたんじゃないかと言いましたが、それをもう一回確認してもらったら、ほかの国の特別ゲストというのは回答がありませんでした。結局、ほかの国は送らなかったわけですよ、お墨つきを与えてしまうから。

 今回も、日本だけ、監視団を送らないけれども、特別ゲストを送るなんということもないですね。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 対応につきまして、先ほど述べたとおり、現在検討しているところでございまして、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

源馬委員 慎重に考えていただきたいと思います。

 政務官に伺いたいんですけれども、こういう状況にある中で援助をするということは、やはり、さっきから繰り返すとおり、お墨つきを与えるということにつながると思うんですね。もし仮に援助をするんだったら、やはり人権状況の改善を条件にするとか、これはほかのODAでも同じだと思うんです、戦略的に考えていくということで。こういう状況が改善されない限りこの分野しか援助をしないとか、これは欧米がよくやることです。こういうこともやるべきではないかと思いますが、政府の考えを聞かせていただきたいと思います。

高木大臣政務官 源馬先生の御質問にお答え申し上げます。

 民主主義の定着には、その国なりの道筋や速度がございます。内戦が長年続いたカンボジアは、国民和解や制度、人材の構築を今なお進めている状況と承知をいたしております。

 カンボジアの民主的発展は、日本にとっても地域にとっても重要でございまして、その観点から、日本政府として、カンボジア政府との対話を継続するとともに、そのための具体的な取組を継続し、カンボジアの民主的な発展を後押ししていきたいと考えております。

源馬委員 通り一遍の当たり障りのない答弁でした。

 もっとODAを有効に使うためにも、ツールとしてしっかり使うべきだと思います。カンボジアが大事な国というのは、多分、それは政務官にお答えいただかなくても分かっていることだと思います。

 次に、ODA大綱の改正案について伺いたいと思います。

 まず、大臣に、この新しい改定案、現行のものとどこがどう変わったのか、分かりやすく教えていただければと思います。

林国務大臣 新たな開発協力大綱案におきましては、国際社会が、地政学的競争、そして地球規模課題の深刻化、こうした複合的危機に直面している中で、開発協力の役割、課題、手法の変化、こうしたことを踏まえまして、開発協力の一層の効果的、戦略的活用を打ち出しているところでございます。

 具体的には、基本方針において、新しい時代の人間の安全保障として、民間企業、そして市民社会といった様々な主体との間の連帯、これを柱としておりますほか、途上国とともに社会的価値をつくり出す共創、この考え方を盛り込むとともに、公正で透明性の高い開発協力のルール、指針の普及と実践を掲げることとしておるところでございます。

 また、重点政策において、複合的危機の時代に特に取り組むべき課題として、食料、エネルギー安全保障やデジタル、そして、自由で開かれた国際秩序の維持強化、気候変動、環境、保健等に分量を割いて記載をしておるところでございます。

 そして、実施においてですが、三つの進化したアプローチとして、民間企業や国際機関、市民社会等の様々な主体との連携による開発効果の最大化、そして、日本の強みを生かした魅力的なメニューを提案するオファー型協力による能動性、戦略性の強化、そして柔軟かつ迅速な協力を可能とする制度面の不断の改善、こういうところを示したところでございます。

 今後も、幅広い国民の皆様の御意見を賜りながら、新しい時代にふさわしい大綱を作り上げていきたいと考えております。

源馬委員 今、なぜ大臣にわざわざ新しいところを伺ったかというと、これは今パブコメをやっていると理解していますが、外務省のホームページを見ると、新しい改定案のPDFへのリンクが張ってあるだけで、何か御意見があったらみたいな感じになっているんですよね。もうちょっと分かりやすく、ここがこうなりましたみたいな、対照表でもいいですけれども、そういう説明もあった上でパブコメを求めるとか、もう少し何か丁寧にしてもいいのではないかなというふうに思いました。

 そのことについて御意見は求めませんが、是非、今後もこういうことはあると思うので、やはり何がどう変わったからパブコメを求めているんだということを分かりやすくしていただいた方が丁寧かと思います。

 それから、二〇二二年の十二月に開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会が大臣に提出をした報告書がありました。この中で、人権に関する提案というのがかなり大きく含まれていたと思いますが、なぜ今回の大綱改定案にこの部分が盛り込まれなかったのか、御認識を伺いたいと思います。

高木大臣政務官 委員御指摘のとおり、昨年十二月に提出された有識者懇談会の報告書では、日本の開発協力が重視すべき観点やODA実施上の原則において、基本的人権や人間の安全保障に関する提案がなされているところでございます。

 その上で、新たな開発協力大綱では、開発協力は基本的人権の推進を含む概念であるとして、基本方針、重点政策及び実施原則においても、人間の安全保障を柱として、人間の主体性を中心に置いた開発協力を行っていくとともに、基本的人権の尊重及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う旨を述べております。その趣旨はしっかりと盛り込まれていると認識いたしております。

 大綱案の文言については、委員の御指摘やパブリックコメントにていただく御意見などを踏まえながら、引き続き検討してまいりたいと考えております。

源馬委員 有識者懇談会が提案したものを無視しておいて、パブリックコメントの意見なんか聞くはずがないじゃないですか。

 今政務官がおっしゃった、人権の保障をめぐる状況に十分注意を払うというのは、現行のものと変わっていないわけですよね。ただ、その表記だけだと、例えば相手国の人権の状況が悪化したり、日本の政府のODA事業が軍事転用されたりしたときに、一方的に停止できたりしない、そういう状況じゃないですか。

 だから、やはり人権にしっかり配慮する必要があるのではないかということを新たに盛り込むべきだという提案があったと思うんですが、なぜそれをされないんですか。

高木大臣政務官 ただいま申し上げたことの繰り返しになりますが、しかしながら、御指摘も踏まえてこれから検討させていただくということでございます。

源馬委員 では、ここが変わることを大いに期待したいと思います。

 人権についてもそうですけれども、非軍事原則が守られているかとか、目的外使用されていないか、あるいは人権侵害をされていないかということをどうやってモニタリングしていくかという運用については一切記されていないんですけれども、これはどうやって徹底していくべきかをやはり大綱にも書くべきではないかと思いますが、この点について御所見を伺います。

林国務大臣 モニタリングでございますが、案件の実施前において相手国と結ぶ全ての国際約束や実施の際に取り交わす文書に軍事目的の使用の禁止を明記をいたすとともに、相手国に対して、非軍事原則の説明、またその遵守の申入れを徹底して、事後のモニタリングや相手国の状況確認等を徹底するということによって、適正利用の一層の確保に努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 このことについて、今の御質問は、大綱にというようなことでありましたけれども、そうしたことも含めて、パブリックコメント等も踏まえてしっかりと作り上げていきたいと考えております。

源馬委員 モニタリングをするといっても、結局、できていない現状があると思うんですよ。

 例えば、先日の徳永筆頭の御質問の中にあった、ミャンマーの船が軍人を乗せたり軍事物資を輸送した、それはどうだったかと聞いても、モニタリング、調査をして、四か月もたってもよく分からない、それが今の日本のODAのモニタリングの現状じゃないですか。それで本当に事実が把握できるのか。

 私が取り上げたミャンマーの軍系企業へお金が流れている件も、結局、ちゃんとモニタリングできていないから、こういうことが起きていると思うんですよ。しかも、発覚した後も止めるすべもない。

 だから、やはりここはちゃんと、ODA大綱を改定するに合わせて、しっかりモニタリングなどの運用の部分も変えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。

 ちなみに、一個聞きたいんですけれども、またカンボジアの話ですが、二〇一六年に日本政府が約十四億円の無償資金協力でプノンペン市にバス八十台を供与した、それが、二〇二一年にプノンペン市内で起きた、ある企業のスト、このストを行った人たちに突入して、現地当局は、ストライキ中の組合活動家数十人の身柄を拘束した上で、その日本が供与したバスに乗せてスト現場から強制排除して、プノンペン郊外やコロナ隔離施設に移送している、こういう報道がありました。

 この認識はありますか、外務省。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の件につきましては、昨年七月に在カンボジア大使館からカンボジア当局に対して事実確認を行いました。

 カンボジア当局の説明によれば、当時、カンボジアでは新型コロナ感染が拡大しており、抗議活動参加者の中にも新型コロナウイルスの感染者が確認されていたことから、感染者や感染の可能性のある者をコロナ検査会場や隔離施設へ移送するために、我が国が無償資金協力で供与したバスを使用したということでございました。

 これを受けまして、我が方の駐カンボジア大使から、カンボジア政府、閣僚に対しまして、人権侵害と受け止められかねない形での使用は厳に行わないよう申し入れたところでございます。

 政府としましては、今後とも、カンボジア側と緊密にやり取りを行い、本件バスの利用状況の確認に努めてまいる所存でございます。

源馬委員 それは、カンボジアが言ってきたことをそのままうのみにしただけだと思うんですよね。調べたんですか、それは。人権侵害、ストライキ中の人たちを移送したのではないかということを報道されましたが、そうではなかったということを調べたんですか、聞いただけじゃなくて。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 現地の大使から閣僚に対して申入れを行って、先方政府から説明を受けたということでございます。実際に、その当時、カンボジアでは新型コロナ感染が拡大していた当時でございますので、カンボジア政府からの説明を受け止めたということでございます。

源馬委員 だから、これが今の日本のモニタリングの状況なんですよ。大使館が向こうの政府に聞いて、ああ、そうですかと。人権侵害ではありません、コロナの人たちを移送しただけです、ああ、そうですかと。ミャンマーの国軍企業にお金が流れています、今ODAを止めたら違約金がかかります、調べもしないで、ああ、そうなんですねと。それで本当にODAが目的外使用されたり軍事利用されたりすることを防げるのか、モニタリングがそれで足るのかということを問題にしているわけです。

 時間が来ましたので、またにしますけれども、やはり今の状況だと、せっかく日本の税金を使って、有効に使われなきゃいけないこのODA資金が、有効に使われているかどうかをしっかりモニタリングできていない。今まさに、聞いただけということをお答えになったじゃないですか。だから、やはりその状況を変えなきゃいけないというふうに、それは強く申し上げておきたいと思います。

 終わる前に、もう一度だけカンボジアの選挙支援について一言言っておきますが、監視団は送らない。監視団を送ると、今のカンボジアの非民主的と言われる状況にお墨つきを日本が与えたことになります。スペシャルゲストと名前を変えても、結局、向こうは、日本の外務省の職員がちゃんと見に来てくれたと、これもお墨つきを与えることになるので、厳に控えていただきたいということを強く申し上げて、終わります。

黄川田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 外交青書で中ロの連携が進んでいるというのは書いてありますが、中国の李国防部長の発言で、冷戦時を超える軍事、政治の連携であるということを言っています。大変に刺激的な表現でありますが、このことについての外務省の分析を問いたい。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 四月十六日になりますけれども、ロシアを訪問中の李尚福中国国防部長がプーチン大統領と会談をいたしました。その際のやり取りとしてロシア側が発表したところによりますと、委員御指摘のとおり、李部長から、中ロ関係は冷戦時代の軍事、政治的同盟を超える、こういう趣旨の発言をしたものと承知しております。

 また、三月二十日から二十二日まで習近平国家主席がロシアを訪問したわけでございますけれども、その際には、共同海上・航空パトロールあるいは共同演習を定期的に実施する、あるいは、両国軍の相互信頼を深化させていくこと、こういった要素を盛り込んだ共同声明が採択されているところでございます。

 実際、共同での軍事演習の実施、それから、共同航行それから共同飛行といった日本近辺での一連の動きなど、中ロ間の軍事協力は最近緊密化しているところでございます。我が国と地域の安全保障上の観点から、我が国として重大な懸念を持っているところでございます。

 両国の対外政策を含む動向につきましては、我が国として引き続き関心を持って注視し、米国を始めとする関係国と連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 孫子の兵法じゃないですが、我が国の力、外交、展開、また、特に我々の、東南アジア地域においては、中国の様々な動き、その勢力拡大、この彼我の状況の比較の中でどう優位に立つかということが重要なんだと私は思っております。

 つまり、我々がそれぞれのグローバルサウス的なASEANの国々と連携を深めるというだけではなく、中国の影響をいかにして抑制するかということが、後でも質問いたしますが、法の支配による秩序ある世界を維持する、人権を尊重するという我々の側の発想、我々のプリンシプルからすると重要なんだというふうに思っているわけであります。

 その場合に、やはり連携というのは、いろいろな理念だけでは連携はできない。経済的な借款や、いわゆるODAを含む、こういったもののメリット、また、例えば宗教的に、イスラムの国々であれば、シーア派やスンナ派は宗教的連帯もあるだろう、また、もう一つは、今言った、法の支配に基づいて行動する、現状を守る、こういった理念もあるでしょう。この三つの分野で我々はどのようにして中国と対峙をしていくかということが、言葉を選ばず言うならば、重要だろうと私は思っております。

 だから、その意味では、我々は、ASEAN諸国との関係というのは、そういった宗教的連帯とか、こういった部分というのは歴史的に余りないわけであって、何が重要かというと、その国の政治的指導者、ステークホルダーとの間で深い人間関係をつくる。遠い親戚より近くの他人ではありませんが、そういったものをつくっていくということが必要だと思っております。

 今から十四、五年前ですが、私が拉致議連の一人の幹部として平沼ミッションでアメリカを訪問したとき、上院、下院の議員と会うということで日程を調整しましたが、思うように会えなかった。場所によっては、平沼団長以下、自民党の国会議員や我々も、また救う会や家族会も一緒になってその政治家の秘書に会うような、こういったことで終わってしまったこともある。非常に我々は残念でありました。これを当時の大使館の方に聞きますと、そこまでの人間関係ができていませんということでありました。

 私がここで申し上げたいのは、恐らく当時、中国とか、もちろん恐らくイスラエルなんかもそうでしょう、頻繁にそれぞれの議員の事務所を訪問し、具体的に言えば結婚記念日に花を持っていくとか、極めてそういう、目先というか、そういう接触を増やすことによって一体感をつくる。これは三つの要素の一体感で、大事だと思っております。

 その上で、お伺いします。

 こうした一体感、人間関係をつくる上で大使館の活動は重要でありますが、現在、大使館の役割というのはどんなふうに、簡単に言ってください、時間がありません、お答えください。

石瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、大使館等の在外公館は、我が国の存在感を高め、総合的な外交力を強化すること等を目的とし、海外で国を代表し、外交関係の処理に携わり、外交の最前線での情報収集、戦略的な対外発信などの分野で重要な役割を果たしております。また同時に、邦人保護、日本企業支援や投資、観光の促進、資源、エネルギーの確保など、国民の利益増進に直結する活動も行っております。

 これら在外公館は、在外公館自身としても主導的に外交業務に取り組むとともに、本省との間で緊密な連携及び連絡もなされており、情報関心や外交課題に関する認識等の共有がなされていることに加え、本省側から在外公館に対し、具体的な取組や働きかけ等についての指示も出すこともございます。

松原委員 一般論的にはそういう話でしょうが、具体的にどういう具体的項目に落とし込むかということなんですよ。

 ちょっととがった表現をするならば、例えばブラジルのような国、日系の三世、四世がいる国では、実際、そういった日系の方、特に、日系の方が全員そうだとは言いませんが、日本にシンパシーを持つ議員を一体この十年間で何人に増やしたのかとか、そういう具体的なことが単なる友情を増幅するよりも大事だというふうに思っております。具体的に、そこにおける日系の商工会議所をどうつくるのか、そこの日本との関係の議連をどのように拡充するのか、十人ではなく二十人、二十人ではなく三十人、こういう具体的なことがなければ、非常に曖昧模糊としていては、国益に十分に資することはないと私は思っております。

 そこで、お伺いしますが、インドネシアを始めとするASEAN諸国、島嶼国、グローバルサウスの国々の大使館は、政治家を始めとするステークホルダーとの面会等、関係強化をどれぐらい行っているか、その結果の実績、評価をどうしているか、簡潔にお答えください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の大使館は、それぞれの任国において、その国の状況を踏まえまして、政府関係者、政治家、財界人、有識者等、幅広い関係者との関係強化を始めとします日々の外交活動を通じまして、我が国の立場に対する理解の増進に努め、直面する多様な外交課題への対応を強化しているところでございます。

 このような外交活動の成果につきましては、任国政府関係者との間で形成された人脈等、必ずしも一概に評価することは難しいところでございますけれども、いずれにせよ、我が国として、グローバルサウスへの関与を強化し、国際社会の諸課題への対応を主導していくことが重要だと考えております。

 その上で、国会議員の方々が海外の要人と意見交換を行い、交流を深めることも、日本外交の強化の観点から重要だと考えております。

松原委員 時間的な制約があるので十分に言いませんが、インドネシア等において、そこの大使館の中枢の方と話したときに、そこの財界の極めて有力な人の名前も十分に知らなかったという事例があります。面談もしない。これは個別のことを言いませんよ。はっきり言って、活動が不十分だと私は思います。

 もっとほかの国は、中国なんかは物すごいやっていると思うんですよ、私。だから、中国はそれだけ細かく、ディテールにわたって、面談をし、財界人、政治家のステークホルダーはやっている。日本は、そこは、何かそこまでやっていないんですよ。やっていない証拠はたくさん出てきますよ。ここでは言いませんよ、時間がないから。

 そこで、大臣にお伺いしますが、こういったことに関して、ASEAN諸国やグローバルサウスの国々を始めとした大使館に対して、外交的成果を収めるための明確な指示、今ここでなくてもいいですよ、出すべきだと思うんですよ。日本に対してアシストする議員を増やすとか、そこの財界人の人たちをグルーピングするとか、こういう具体的な指示をやはり出すべきであって、中国はそれをやっていると思いますよ。お答えください。

林国務大臣 まさに今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に我が国が置かれております。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、これを維持強化するためにも、ASEAN、そしていわゆるグローバルサウス、こうした国々の幅広い支持と関与は大変大事であります。

 まさに今、松原委員がおっしゃいましたように、どの国がどういう仕組みなのかということによって、当然、財界、議会、いろいろなところがあるのではないか、こういうふうに思っておりまして、先ほど事務方から答弁いたしましたように、一律に、国会議員何人とか、そういうことでは必ずしもないと思いますが、やはり本省と公館との間でしっかり連絡を取り合って、この国はこういうところがあるから、こういうところを重点的にやれというのは、もちろん今までもやってきたというふうに考えておりますが、具体的にどういうふうに取り組むのか、どういうふうに働きかけるかということを更にしっかりと工夫をして、今までも指示を出してきたところですが、更にこれを強化していきたいというふうに思っております。

松原委員 はっきり言って、私は不十分だと思っています、現状では。やはり我々は、もっと明確な指示を、抽象的な指示ではなくて、外交上の部分ですからこの場では言わなくていいですよ、しかし、明確な指示を与える、こういうことが必要だ。

 同時に、その中には、中国がその国でどれぐらいこの段階で影響力を持ってきているか、彼我の対比が問題なんですよ。それは後で、様々な中国の経済的な支援の部分で話をしたいと思っています。

 次に、一問飛ばしまして、中国に対する我々の基本的理念は、G7外相会議で林大臣が既におっしゃっているように、法の支配に基づく秩序の維持、つまり、力による現状変更はさせない、また人権であると考えておりますが、その上で、法の支配や人権といった理念的な対立軸を国際的連携にいかに結びつけていくか、大臣の御所見をお伺いします。

林国務大臣 まさに、ロシアによるウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがす中で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するということ、これは、グローバルサウスを含めた国際社会の幅広い支持と関与が不可欠であります。

 まさに軽井沢の外相会合でも、グローバルサウスへの関与の重要性をG7で確認をいたしました。そして、我々は議長国として、多様性と包摂性、これを重視するきめ細やかな外交を通じて、法の支配に基づく国際秩序の維持強化、これが国際社会全体にとって極めて重要だという点を、グローバルサウスを始め国際社会全体に向けてしっかりと強く訴えていきたいと考えております。

松原委員 そのためには、私はやはり日本が、自らがいわゆるマグニツキー法を作り、また人権DDを法制化して、こういったものをグローバルサウスの国々にも、法律を守る、国際法の中で、現状を力によって変更しないということ、また、人権を尊重する、この辺はさすがに普遍的に、今大臣がおっしゃったように、通る話ですから、そういった意味では、マグニツキー法や今言った人権DDを我々も作る、そして、そういったものが必要であるということを今我々が対峙している国々にも訴えていくということが、中国やロシアの権威主義に対抗する極めて重要な対立軸になると思っております。

 次に、いわゆるメリットという点があるわけですね。メリットということで、中国にしても、日本にしても、様々な資金的な支援をしたりしているわけでありますが、中国の場合はちょっと強烈でありまして、存外、資金支援はするものの、仮借なく取立てをする。

 スリランカのハンバントタ港の件は有名でありますが、こういった事例が幾つあるのか。明確になっているのはこれぐらいかもしれませんが、九十九年の租借といいますか、所有を許してしまったということであります。お答えください、ほかにどういう事例があるか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話がございましたスリランカ南東部にございますハンバントタ港でございますけれども、二〇一七年にスリランカ政府が中国国有企業との間でコンセッション合意文書に署名した結果、この中国国有企業がハンバントタ港の管理運営会社の株式の七〇%を保有し、港の運営権が九十九年間譲渡されることになったと承知しております。

 我が国としましては、スリランカの港湾を含め、インフラ整備につきましては、インフラの開放性、透明性、経済性、さらには対象国の財政健全性など、国際社会共通の考えを十分に取り入れることが重要と考えておりまして、ハンバントタ港の運営についても引き続き注視していく考えでございます。

松原委員 中国が世界戦略で、極めてこういったことを意欲的にやっているわけであります。

 エチオピアの債務額というのは、エチオピアの国内総生産の今五九%を中国が持っているというところであります。トルクメニスタンに関しては四十億ドルの債務があり、輸出の八三・二%が中国である、これは数字のデータであります。スリランカは今のような話で、ハンバントタ港が、九十九年間中国が所有する。マレーシアは二〇一八年段階で二十七兆二千億円の中国への借金を抱えている。モルディブは八百二十五億円の借金を抱えていて、国家歳入の五〇%を超える。バヌアツは一千四百億円、改修された港には、したがって中国の海軍の艦艇がいる、こういう話が上がっている。タジキスタンは、二〇〇六年はゼロだったのが、十年たった一六年、一千億円を中国から借りていまして、中国人民解放軍が駐留をしているという情報になっているわけであります。

 こういう状況というのは、海外投資を使った多くの国に対する植民地化というふうに私は言えるのではないかと強く懸念を持っております。

 国士舘大学の助川教授の分析によりますと、中国のこういった支援というのは問題が三つある。

 それは、借り手が債務の条件や融資の大きささえも公表できないような守秘義務を与える場合がある。

 二つ目は、我々は、いわゆる先進国は、G7の国々なんかは、相手に対して情状酌量をして債務を安くする、又は、棒引きというか、返済期限を延ばしたりする。それを仮借なく取り立てる。したがって、スリランカのような港の話が起こる。

 それで、三番目なんですよ、これも問題なんですが、融資とは直接関係のない政治的、経済的な動き、例えば中国に対する敵対行為など、様々な状況下で、その場合、融資を取り消す、即時返済を要求する等の条項が含まれているのではないか、こういう話になっているわけであります。

 私は、これはある種の、新しい時代の植民地化の一つの方便だというふうに思っておりまして、これは非常に問題であり、こういうわなにはまって、多くの国々が国連の総会においても中ロと一緒になって、本来の国の、国際的な秩序、法の支配や人権を、G7の国がその部分に関して主張しようとしたときに、それに対して反対をするような動きがある種起こってくるんだろう。ある種の植民地、新しい新植民地主義のような気がしているわけであります。

 これは質問通告しておりませんが、大臣、どんなふうにお考えですか。

林国務大臣 今委員が御指摘の問題は、かねがねいろいろなマルチの場でも問題になってきておりまして、先ほど御紹介いただいたスリランカの例も、いろいろなところでこういうことを紹介しつつ、相手にも注意を促すことも含めてやってきておるところでございます。

 中国の途上国向けの融資というのは、我々ですとOECDとかパリ・クラブというのがございますが、そういうところでルールを作って、債権者がみんなで集まって、どうしましょうかと。これは国内の債権者も一緒でございます、債権者がみんな集まって、どうするか、こういうことをやるわけですが、これが、中国の場合はそこに入っていない。また、今おっしゃったような指摘も含めて、どういう契約を結んでいるのか、これも非常に不透明である、こういうことがあるわけでございまして、まさに委員がおっしゃったように、途上国をいわゆる債務のわなに陥れているという指摘が多くなされておるところでございます。そうした中国の開発協力の動向、これを注視しておるわけでございます。

 我が国は、G20またパリ・クラブ等の国際的な協議の枠組みに参加して、まさに債務の透明性の確保、そして全ての債権国間での公平な債務措置、この債務措置というのは、今委員がおっしゃったように、少し延ばすとか一部免除する、こういうことですが、こういうことの重要性を、みんなで透明性を持ってやるということの重要性を訴えてきておりまして、国際的な合意に基づいて返済猶予等の債務措置を実施してきているのが我々でございます。

 また、途上国に対しても、債務管理能力をしっかりとつけて財政の健全化に資することを目的として、公共財政管理等の分野の専門家の派遣などを通じて、それぞれの国が債務管理に必要な知識、業務ができるように、こういう定着を支援しているところでございます。

松原委員 中国の、先ほどの助川教授の話もありますが、直接債務と関係しない政治的、経済的な部分で中国に対する反発するものがあった場合は即座に返済させるとか、そういった秘密契約も入っているんじゃないか、こういうのはよく研究する必要があると思うんです。冒頭言ったように、我々がそういった国々にどうアプローチするかだけではなくて、その国々がどのように中国によって、言葉を選ばず言うならば、荒らされているかというのは確認し、それを止める作業は必要だと思います。

 その上では、さっき言った、政治家だけではなくて、それぞれの国の、インドネシアでもマレーシアでもいいですよ、既にちょっともう来てしまっているかな、厳しくなっているかな、インドネシアも中国の投資はすごいですからね、というふうには思いますが、それでも、今からでも、それがこういったことになるんだということを警告していかないと、彼らのいわゆる国家の自立性も損なわれていくんじゃないかと私は思っております。極めて重要であって、そのことは、ネガティブキャンペーンをしろというわけではなくて、事実をやはりそれぞれの国の経済界やそれぞれの国の政治家、それぞれの国のマスメディアに強くアピールするというのも大使館の作業ではないかと思っております。

 それでは、その次に参ります。日本の、今言ったパリ協定の話とか、大臣が触れましたので、次はJICAの話に入ります。

 日本国として、海外支援事業、民間が独自に行っております。私の知っている民間医療法人である徳洲会なんかは、シリアの大地震のときにすぐにTEC―FORCEを送って、二十人ぐらいで現地の様々な救援活動を行った。僕は大変にすばらしいと思っています。

 即座にこれを行っているわけでありますが、この場合、二〇二〇年末までにアフリカ十七か国に対する腎不全治療をずっとやっているということでありまして、医療の問題で貢献するというのは非常に喜ばれるということを申し上げておきたいわけであります。

 透析水の精製装置を持っていくとか、また、あわせて、アフリカの医療スタッフに対して、日本に呼んで教育を行ったりしている。また、二〇一八年から行っているタンザニアでの支援事業では、同国の依頼を受けて透析センターをバックアップ、国の方の依頼を受けて徳洲会がやっているわけでありまして、それで、腎移植治療五年の臨床成績は、導入した病院で三十例報告がされている。その場にまた、その民間医療団体も同席をして、すばらしい臨床結果の報告を受け、その病院に臓器移植センターを設立するということを徳洲会としても表明をしている。僕は、非常にすばらしい民間セクターの行動であると思っています。

 問題は、こうした事業について、資金的なものをJICAは出したりするわけでありますが、できれば、こういった民間セクターの日本の存在感と、存在感を高くするというのは先ほど理事者の答弁にもあったわけでありますが、存在感と日本のこういった医療における貢献、これは世界において非常に、誰もが否定できない。そのために、いわゆるJICA後援若しくはJICAの認証といったものが活用できないか、これについてお伺いいたします。

井本参考人 お答え申し上げます。

 徳洲会グループによるアフリカでの活動についてはJICAとしても承知しておりまして、これまでJICAも同会とアフリカに合同ミッションを派遣させていただいており、同会によるアフリカの人材に対する日本での研修に連携させていただいております。JICAといたしましても、様々なスキームや取組によりまして、日本の民間セクターの海外支援事業を後押しする重要性を理解しております。

 委員御指摘の後援、認証ではございませんが、途上国の開発課題の解決や、現地でのSDGs推進に貢献する意欲と技術を持つ企業等から公募による提案を受け、JICAが企業等を後押しする中小企業・SDGsビジネス支援事業がございます。

 例えば、アフリカの保健分野では、同事業によりまして、日本の民間企業が現地で生産を行っているアルコール手指消毒剤を活用いたしまして、医療従事者の人材育成等を通じた啓発普及活動により、衛生環境の改善を図る事業を行いました。この事業の終了後、人材育成の成果を生かして、継続的な教育啓発を現在も継続されていると承知しております。

 また、JICAが実施する衛生啓発のキャンペーンに、開発途上国で衛生関連の優れた技術、製品を普及、展開する複数の日本企業に賛同いただきましてタイアップすることにより、日本企業を後押しし現地の衛生改善を行う、インドでこのような事業を実施しております。

 こうした多様な取組を通じまして、途上国の開発課題の解決につながる民間セクターの取組を引き続き後押ししてまいりたいと考えております。

松原委員 非常に頑張っているということは評価したいわけでありますが、JICAのお金を使う云々ではなくて、今言った徳洲会の場合は認証若しくは後援みたいな名義ですよね。やっていることは立派なものですから、そういったものは、その事業ごとに出すような柔軟な仕組みもお考えいただいたらいいのではないかというのが私の趣旨でありまして、今日、理事長さんはここにはいないわけですから、よく理事会でもんでいただいて、単にお金をつけて云々ではなくて、今みたいな、今私が申し上げたようなことも検討していただきたいということを強く要請しておきます。

 次に、東アジアが、大変に今リスクが中ロの接近で高まっている。東アジア首脳会議の参加国はどういう国か、そこに中ロは入っているのか、簡潔にお答えください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 東アジア首脳会議参加国は、ASEAN十か国に加えまして、日本、豪州、中国、インド、ニュージーランド、韓国、ロシア、米国の計十八か国となっておりまして、中国、ロシアとも含まれております。

松原委員 私は前から言っているように、中国、ロシアは、ロシアのウクライナ侵略以降、完全に大国としての矜持を失っている。力による現状変更を行うことに何ら痛痒を感じないとするならば、これはもう昔の、十五年前、二十年前の中国、ロシアじゃない。それぐらいに変容してしまったと私は思っているわけであります。

 こういった権威主義国家が参加しない形での、法の支配と人権を尊重する国際的な枠組みをこのアジアにおいてつくるべきだと思いますが、大臣、御所見をお伺いします。

林国務大臣 今、中国やロシアが入っていない枠組みといいますと、例えば日米同盟ですとか、クアッド、これは日米豪印ですが、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に取り組んできておるところでございます。

 その上で、やはり地域の平和をつくって維持していく、そのためには、法の支配、国際法の遵守、これが全ての大前提であるという考えに基づきまして、必ずしも枠組みではないわけですが、ビジョンでありますけれども、FOIP、すなわち自由で開かれたインド太平洋というのは、まさに法の支配を重視することを含んでおります。

 これの新プランをこの間発表させていただいたわけですが、このプランに、地域にある各国との連携を強化して、さらに、FOIPのビジョンを共有する各国の輪、これを更に広げていくという考えを明確に打ち出しておるところでございます。

 まさに、アジアにはASEANというものがあるわけでございますが、こうしたASEANの中心性というものを引き続き尊重しながら、アメリカや豪州、韓国、インドといった地域の国々とも連携を図って、FOIPを実現するための取組を一層強化して、インド太平洋地域においてもしっかりと国際秩序を守り抜いていきたいと考えております。

松原委員 私は、とにかく中ロを除いた枠組みを重層的につくっていくことが、やはり法の秩序を守る、人権を守る上で重要だと思っております。

 時間が参りましたので最後の質問にいたしますが、こういったことを統括して省庁横断的に行うような司令塔本部というものを、ASEAN及び太平洋グローバルサウス国に対する連携戦略を進めるための、そういったものを総合的につくることというのはやはり極めて戦略的に重要だと思うんですが、大臣の御所見をお伺いいたします。

林国務大臣 政府全体のことということですので、私からなかなか全体ということでお答えしにくいところもございますが、しかし、今年は、東南アジア、太平洋島嶼国が自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた重要地域であるということを鑑みても、ASEAN関連首脳・外相会議、また日・ASEAN特別首脳会議、そしてまさに広島サミット、こういうものが予定されておりますので、関係省庁と連携して、しっかりと外交を主導していきたいと考えております。

松原委員 ディスインフォの部分とか、たくさん質問を用意をしたんですが、今日はそこまで行きませんでした。次回に譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 では、時間の関係を見ながら、通告の部分を一部飛ばしたりしながらになるかも分かりませんが、質問を始めさせていただきます。

 まず、大臣、G7会合、本当にお疲れさまでございました。これに限らず、これからずっと、広島サミットもありますし、その前に外遊もありましょうし、大変、国益を背負って活動されている。御苦労が絶えないと思いますが、しっかり頑張っていただきたいと思います。

 まず、今日、多くの委員から、G7のことも、あるいは、それに絡みながら、対中国をどうするかということも随分と議論になったわけでございますが、繰り返しになる部分もありますが、私からも聞いていきたい、このように思います。

 まずは、G7外相会合でございます。

 これは軽井沢で行われましたけれども、非常に成果が大きかったというふうに報道はございました。いろいろな話が突っ込んでできた、そういったことも報道ベースではありますが、まず、率直に、大臣の御感想なり、今回の成果についてどう捉えているのか、もう一度、繰り返しになるかも分かりませんが、お願いいたします。

林国務大臣 四月十六日から三日間でございましたが、G7長野県軽井沢外相会合を開催いたしました。まさに国際社会が歴史的な転換期を迎える中で、外相間で率直かつ踏み込んだ議論を行うことができました。また、コミュニケも発出したところでございます。

 ミュンヘンで一度対面で行いましたが、それに続いて今年二回目の対面での会合であったわけでございますが、セッション全体を通じて、五月のG7広島サミットに向けたG7外相間での連携を確認したということが一つございました。

 また、サミットが広島で開催されるということも念頭に置いて、核軍縮・不拡散について詳細に議論を行ったということでございます。

 そして、我々が重視しております法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対するコミットメント、そして、世界のどこであれ一方的な現状変更の試みに強く反対する、こういうことを文書の形で確認することができたということでございます。

和田(有)委員 法の支配を確立して、現状変更は認めないことを文書で確認したということなんですが、事前に、実は、フランスのマクロン大統領が、欧州は米中いずれにもくみしない、追従しないんだと言ってみたり、台湾有事は我々のものではないんだみたいなことを発言したやの報道がございました。そういったことについて、しっかりとただすというんでしょうか、確認をし、その結果、言質というものを取ったというんでしょうか、例えばコロンナ・フランス外相がどのように言われたのか、一度ここで確認させてもらいたいんですが。

林国務大臣 今回のG7外相会合におきましては、私から、世界のどこであれ力による一方的な現状変更の試みには強く反対するという旨を述べまして、G7外相から同様の認識が示されたわけでございます。

 台湾海峡の平和と安定については、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安全と繁栄にとっても不可欠な要素でございます。

 我が国がずっと一貫した立場として申し上げておりますのは、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するということでございまして、今回のG7外相会合において、改めて、国際社会の安全と繁栄にとって不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認いたしました。もちろん、フランスも含めてということでございます。両岸問題の平和的解決を求めることで完全に一致いたしました。

 なお、フランスのコロンナ外務大臣からは、フランスは、現状の尊重そして台湾海峡の平和と安定の維持に深い思いを持っており、力による一方的な現状変更に反対し、両岸問題の平和的解決を求めている、そして、マクロン大統領の訪中時にもこのようなメッセージを習近平主席に伝えた、こういう旨の説明があったところでございます。

和田(有)委員 分かりました。

 いろんな報道でマクロン大統領がああ言った、こう言ったというのがありましたが、そこできちっと押さえることができたのは大事だったと思います。後でフランスのことを若干、私、かする部分がありますので、今聞かせていただきました。

 そこで、今、台湾有事の話が出てきたわけで、要は、大陸中国とどう向き合うかというのが我々にとってはとにかく最大の課題であります。これは、私が最初に外務委員会に議席というか、籍をいただいて、最初のときもこういうことを申し上げたと思うんですが、とにかく我々日本人は日本列島で大陸とどう向き合うかで二千年来ずっと苦労してきたわけでありまして、そういう中で対中問題についてお伺いをしていくわけです。

 しばらく前に日中外相会談が行われました。そのことについてもいろんな方がお聞きになり、いろんな御発言もありましたけれども、もう一回振り返って私は詳しくお聞きしたいと思うんです。素朴な疑問もお聞きしたいと思うんです。

 まずは、せんだっての日中外相会談の成果なり大臣の評価というものについてもう一度聞かせてください。

林国務大臣 四月一日と二日でございましたが、外務大臣としては約三年ぶりに中国を訪問いたしました。

 滞在中、秦剛国務委員兼外交部長、そして王毅外事工作委員会弁公室主任との間で会談を実施いたしました。また、李強国務院総理への表敬を行ったところでございます。

 特に、秦剛部長との初の対面での日中外相会談におきまして、諸懸案を含めて、長時間にわたって率直な議論を行ったということは大変有意義であったと考えております。

 今回の会談では、目下の懸案である邦人拘束事案、そして安全保障分野を含めて我が国の立場をしっかりと申し入れたところでございます。

 同時に、懸案があるからこそハイレベルを含めた意思疎通が必要であり、懸案を含めて率直な意見交換を行い、今後とも首脳、外相レベルを含むあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくということで一致したところでございます。

 この関連で、秦剛部長との間では、さらに、日中韓プロセスの重要性についても意見交換を行いまして、首脳、外相レベルを含む日中韓プロセスを再稼働させていくということで一致したことも重要な成果だったと考えております。

 今後とも、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含めて対話をしっかりと重ねて、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を構築するために、中国側と意思疎通に努めていきたいと考えております。

和田(有)委員 意思疎通をするための第一歩が築けたんだ、だから非常に成果があった、こういうふうなことだと思うんですね、おっしゃられていることは。

 確かに、お帰りになった後に、官房長官も記者発表のときに、そういったことが今後考えられるので、要は、意思疎通を図っていく枠組みをつくれたので成果があった、こういうふうな表現があったと思うんです。

 ところが、ここからなんです、私が申し上げてお聞きしたいことは。

 昨日のG7外相会議が終わるや否や、中国外務省は何と発表したかというと、台湾問題は中国の内政であって、いかなる外部の干渉も許さない、こういうふうに即座に言っているわけですね。

 じゃ、大臣も、今言われたように、いろいろな懸案について申し上げたと。申し上げたんですが、じゃ、解決はしたか。当然、そんな、今日言って、あしたになるわけないだろう、こう言われるかも分かりませんけれども、しかし、拘束されている日本人は一人として解放されない。そして、尖閣諸島には中国の公船が入り続けている。懸案を伝えたからといって引いたかというと、引かない。台湾海峡の平和と安定について重要性を指摘しても、台湾問題への介入は許されない、こういう発表を即座にする。これでは全然、中国の軍事活動の活発化や南シナ海の問題でも行動を改めるというようなニュアンス、雰囲気は何もないわけです。強硬姿勢が全然変わらない。

 ということは、何を言っても聞く耳を持っていない。聞く耳を持っていない人に我々は一生懸命言っているだけ。これは、本当に言葉が悪いですけれども、犬の遠ぼえみたいなものです。あれが悪い、これは悪いと言っても素知らぬふりをしている。

 これでは話にならないわけでありまして、結果を出していかなければならない物事なわけでありまして、そんな中で、更に加えて言うと、林大臣が日中外相会談に臨んでいるときというのは、ちょうど台湾の蔡英文総統が訪米をしたとき。中国から見れば、プロパガンダ戦として見れば、まるで日本と台湾を分断したかのように見えるような状況になってしまっている。そういった状況があるわけですね。

 さらに、いわゆる中国の、中華人民共和国の在外における派出所、いわゆる警察の肩代わりをする組織なるものが日本にもあると言われている。これについて、以前お聞きしたら、私が聞いても、これはちゃんと抗議をしている、断固として抗議しているんだと言われましたが、抗議している割には、何も、撤退したわけでもなければ、どうもならない。

 そう思っていたら、アメリカは、とうとう業を煮やして、昨日ですか、FBIが外交官なのか担当する人間なのかを逮捕したということですね。外交官ではないですね、いわゆるそれに連なる人々。

 そういったことも、抗議はしていても何にも変わっていない。そこら辺について、もう一度、非常に聞きにくいですけれども、どう考えておられるのか、コメントがあればお聞きしたい。

林国務大臣 御指摘の中国による軍事演習でございますが、政府として、一貫して大きな関心を持って注視しておるところでございます。

 台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要でございます。我が国の従来からの一貫した立場は、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというものでございます。

 この点、これまでも米国またG7との間で台湾海峡の平和と安定の重要性について一致しておりまして、昨日まで開かれたG7外相会合においても、先ほど申し上げましたように、再確認をされたところでございます。

 我が国としては、こうした立場を中国側に首脳レベルを含めて直接しっかり伝えるとともに、今後とも各国共通の立場として明確に発信してまいりたいと思っております。

 また、四月十六日の中国によるロケット発射でございますが、中国側に対し、我が国の船舶等の安全に影響を与えないようにすること、また、沿岸国たる我が国の権利及び義務に対して妥当な考慮を払うことを含めて、累次申入れを行うとともに、事実関係の詳細な説明を含めて、適切な対応を強く求めていたところでございます。

 しかしながら、今般、中国側が我が国の要請にもかかわらずロケットを打ち上げたということは極めて遺憾でありまして、直ちに外交ルートを通じて厳重な抗議を行うとともに、再発防止を強く要請したところでございます。

 また、中国警察の海外拠点の問題につきましては、中国側に対しまして、外交ルートを通じて、我が国の主権を侵害するような活動が行われているのであれば断じて認められない旨、申入れを行っておりまして、先般の日中外相会談においても私から提起したところでございます。

 また、外務省といたしましては、関係国とも適切な形で情報共有を行ってきているところでございまして、引き続き、国内関係省庁や関係国とも連携して適切に対応していくとともに、我が国における活動の実態解明の結果に応じまして、適切な措置をしっかりと講じてまいりたいと考えておるところでございます。

和田(有)委員 いわゆる、何というんでしょうね、中国の在外警察というんでしょうか、何というんでしょうか、これだって、質問取りのときは警察関係の方も来ていただきましたけれども、外務委員会で外務大臣に今日はそのことを外交上の話として聞こうと思ってしておりますので、答弁はする方もおられませんから聞けませんけれども、私は、断固とした抗議をするならば、裏打ちのある政策を取らなきゃいかぬと思うんですよね。

 それは、今日は呼んでいませんけれども、警察が日本でも逮捕するとか、ここにあってこういう人間がこんなことをやっているとか、そういうことをつまびらかにして、大臣が、こんな事実があるんだということを、やはり、中国の強硬姿勢は受け入れないんだ、許さないという憤りを示さなきゃいけないと思うんです。

 さっき大臣も触れましたロケットの空域制限の話も、日本のEEZにかかっているんですよ。これは国際法で制限できるかというと、できないようですけれども、しかし、長野の軽井沢の日本が主催しているG7サミットの最中にかけているんですよ、日本のEEZの中に。これは、はっきり言えば、言葉は悪いですよ、言葉は悪いですけれども、中国は日本のメンツに泥を塗っているようなものですよ、あえてそこに僅かでもかけたということは。そのことについて憤らなきゃいけないと思うんです、私は。

 そういう意思を持ってこれからきっちり抗議をしていただきたい、こう思いますが、もう一回憤っていただきたいんですが、どうですか、大臣。

林国務大臣 先ほども申し上げましたように、四月十六日の中国によるロケット発射、これは、中国側に対しまして、我が国の船舶等の安全に影響を与えないようにすること、そして、沿岸国たる我が国の権利及び義務に対して妥当な考慮を払うことを含めて累次申入れを行うとともに、事実関係の詳細な説明を含め、適切な対応を強く求めていたところでございます。

 今般、中国側が我が国の要請にもかかわらずロケットを打ち上げたということは極めて遺憾でありまして、直ちに外交ルートを通じて厳重な抗議を行うとともに、再発防止を強く要請したところでございます。

和田(有)委員 これ以上言っても同じことの繰り返しになるので言いませんけれども、やはり我々は顔に泥を塗られているんですよ。そういう思いで憤らなきゃいけないと私は思います。

 次に、もう一つよく似た話をここで取り上げたいんです。

 それは、先般、ある報道を見ておりましたら、南極の日本の昭和基地の近所に中国が観測施設を造っちゃった、そこで何かを観測しているらしい、ところが、それが何をやっているのかもよく分からないと。

 もちろん、南極条約ではこれは規制されているわけでもないし、何でもないんですけれども、しかし、一般的にはマナーとしてはあり得ない。そういう状況があるというんですが、この南極の昭和基地の近所の中国の観測施設について、まず、担当する省庁はいかが捉えておられますか。

永井政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月、我が国の南極地域観測隊が、昭和基地から約二十キロメートル離れた場所において、半球形の中国と記載された簡易な小屋のような構造物、さらに、倒壊した自動気象観測装置と思われるものを発見したことは承知してございます。

 これらの構造物等がどのような性質のものであるか、現時点では確定的なことは申し上げることはできませんが、これらの発見場所は、我が国の観測隊が観測活動等を行う場所からも山を隔てて数キロメートル離れた場所でございまして、現在、同観測隊の活動に直接的な影響は生じてはいないと聞いております。

 いずれにしましても、文科省といたしましては、これらの構造物等に関する情報収集も行いながら、関係省庁と連携しつつ、適切に対応してまいります。

和田(有)委員 何か分からない、余り今のところ日本には影響が出ていない、こういうことなんですけれども、よく似た話を思い出すわけですね、これを聞くと。

 せんだって気球が飛んできた。初めの頃、何年か前は、これは観測気球だろう、気象の気球だと言っていたわけです。いや、ひょっとしたら防衛省は分かっていたのかも分からないですよ。自衛隊の基地の上を飛んで、無線を取っていたり、いろいろ知っていたのかもしれないですよ。でも、基本的に、観測気球だ、ああ、観測の気球かというふうに言っていたわけです。

 同じような話に私は聞こえるんです。いや、杞憂だったらいいと思うんです。でも、日本の昭和基地で使っている例えばいろいろな機器の発する電波を探っていたり、あるいは情報をそこから取っていたり、あるいは、いろいろなそういうことに関わるシステムについて、それを見ていたりしているのかも分からない。

 そういったことがあってはいけないから、しっかりと調べるべきだと思うし、外交的ないろいろな取組をすべきだと思うんですが、その点について外務省はどのようにお考えになっておられますか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど答弁がございましたように、小屋のような構造物、観測装置と思われるものが発見されているということでございます。

 南極条約第七条五項におきましては、各締約国に、南極地域における探検隊及び基地等について、事前の通告を行うということを求めております。この構造物が事前の通告を行うべき活動に当たるかどうかということにつきましては、過去の南極条約協議国会議の勧告におきましては、基地若しくは補助的な観測所において、又は船舶若しくは航空機により行われた又は計画された科学的調査を含む活動等を挙げてございます。

 現地からの報告によれば、今回発見された構造物による活動は、事前の通告を行うべき活動として挙げられている補助的な観測所における科学的調査に該当する可能性はあるものと考えておりますけれども、事前の通告は確認されていない状況でございます。

 こうしたことから、政府としましては、まずは、先ほど答弁がございましたように、当該構造物等に関する情報収集が必要だと思っておりますけれども、その結果も踏まえ、南極条約に基づいて適切に対応してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 南極条約に基づいて適切に対応するということですが、後から思えば、ああ、あれがということにならないように、しっかりと対応していただきたいと思います。

 次に、ちょっと質問を飛ばしまして、中国とどう向き合うかということを話してきたわけでございますが、議論をしてきたわけでございますが、台湾有事を踏みとどまらせるためには対中抑止をしなきゃいけないと私は思います。じゃ、対中抑止をどのようにするのかということになるんだと思うんです。

 アメリカは台湾に対して核の傘をかつての西ベルリンのようにかけているかというと、そこまでは意思は示していないと思います。NATOも核心的利益は極東アジアに持っていない。英国だってインドだってそうです、地政学的には核心的利益は持っていないです。

 唯一あるとしたら、実は、何だかんだこの間波風が立ったフランスが太平洋に領土を持っていて軍隊を駐留させている。地政学的には利害を持っているんです、実を言うと。だから非常に大事なんです、フランスというのは。フランスの航空母艦や艦艇というものは、ここまでやってくる必要があるんです、あそこら辺を通って。

 そういったこともあるわけでありまして、そういう中で、どのように中国をこれから跳ね上がらないように封じ込めていけばいいのか、そのためには新しい国際秩序を極東アジアでしっかりと組み立てていく必要があると思うんですが、その点についてどのように大臣はお考えでしょうか。

林国務大臣 今回、昨年の暮れに作りました国家安全保障戦略には、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、同盟国、同志国間のネットワークを重層的に構築するとともに、それを拡大して、抑止力を強化していく、こういう方針を打ち出しているところでございます。同盟国、同志国と連携して、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を戦略的に推進していくことで、地域の平和と繁栄に貢献していきたいと考えております。

 その上で申し上げますと、アジア地域は、欧州と比較して、域内各国の発展段階、それから政治経済体制、それから安全保障政策、これが欧州と比較しますと少し異なっているという側面がございます。

 こうしたアジア地域の多様性、そして、ASEANというのがございますが、これが地域協力の中心として重要な役割を担っている、こうしたことを踏まえて、まずは、日米同盟を基軸としながら、東アジア・サミット、EAS、そしてASEAN地域フォーラム、ARF、そして拡大ASEAN国防相会議、ADMMプラス、こうした様々な対話の枠組みを重層的に活用してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 重層的にいろいろなものを使いながらやっていくと。

 新しい国際秩序が生まれ始めているわけでして、前にも申し上げましたが、やはり、こういう表現がいいかどうかは抜きにして、いわゆるロシア、中国、イランという一つの枢軸関係というんでしょうか、人に言わせれば、アメリカのあるシンクタンクの方から言わせれば、邪悪な枢軸体制、こう言うんですが、こういったものができつつあるところに我々は向き合わなければならない。

 それを単に抑え込むというだけではなしに、対話をしながら、重層的にいろんなものを使いながらつくっていかなければならないという時期が来ておりますので、ちょうどパラダイムシフト、パラダイムシフトでしょうね、価値観が変わりつつあるんですから、そういう中でしっかりとかじ取りをやっていただきたいということを申し上げます。

 もう一つそういった中で我々がしなきゃならないことがやはりあって、大臣は四月末に中南米諸国を訪問するというふうに報道ベースで知りました。台湾と現在外交関係を持っているパラグアイも訪ねると聞いております。

 この間はホンジュラスのこともお聞きしましたけれども、結果的にホンジュラスは中華民国と断交してしまいました。パラグアイは今もって、大臣が行かれる地においては中華民国大使館というものがしっかりと存在しているわけでございます。そういう国です。

 このパラグアイが台湾と友好関係を途切れさせないように我々は精いっぱい下支えをすべきだと思いますが、その点についてお伺いいたします。

林国務大臣 今お話しになりました私の外国訪問でございますが、まだ決まっていないということは申し上げておきたいと思います。

 その上で、パラグアイでございますが、一万人の日系社会を有しておる伝統的な親日国でありまして、基本的価値を共有する重要なパートナーでございます。我が国にとっての同国の重要性に鑑みて、保健医療そして教育といった分野における支援を通じて格差是正を図るということ、そして、電力、運輸、水道等の分野における経済社会インフラ支援を通じて、持続的な経済開発を開発協力の重点分野に位置づけております。

 引き続き、この国の重要性に基づいて、ODAを含む外交ツールを戦略的に活用して、パラグアイとの連携の更なる強化というものを図っていきたいと思っております。

 台湾でございますが、これは何度も申し上げてきておりますけれども、我が国にとって基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーでありまして、大切な友人でございます。

 引き続き、このような日本政府の立場に基づいて、パラグアイのような台湾と外交関係を有する国を含めて、関係国に対しても様々なレベルで今申し上げたような我が国の考え方をしっかり伝達していきたいと考えております。

和田(有)委員 しっかりやってください。

 では、次の質問に移ります。

 何度もこれは聞いてきた話でございまして、拉致問題を解決するためにいろんな啓発活動があって、その中でお芝居をやられたり映画が作られたりしました。実写版の映画で「めぐみへの誓い」というのがあるんですが、それを海外で上映しようといって、一生懸命、ボランタリーな精神で活動されておられる皆さんもおられます。

 今回、いろいろなことを御質問させていただいたら、プラハでやる際に、大使に来ていただいて御挨拶もいただくということになったようでございます。この点に関しては、大臣に対してお礼を申し述べたいと思います。ありがとうございます。

 ところで、今後いろんなところでもっと展開していこうと思うと、これは大変な労力がかかる。今まで、もちろん全部ボランティアで、持ち出しでやってきたわけです。後で時間があれば何とかそこまで行きたいんですが、ロサンゼルスのジャパン・ハウスを借りて上映会をやったときも、日本の外務省の関係する建物なのに使用料を取られた。それを誰が出すかというと、ボランティアでやっている皆さんが、自分たちで出し合ったお金を集めて借りて上映会をやり、印刷代を工面してチラシを作って配って、全部やっておられる。本来ですと、これは国家がやるべき話ではないかと思うんです。

 日本国内で、お芝居で「めぐみへの誓い」とかそういうのを上演したときなんかは、拉致の担当省庁がそれを企画して、いろんな印刷物も作ったりとか、例えばいわゆるホールを借りたりとか、そういうお金も出しているわけです。海外の皆さんは全部自腹でやっておられるんです。

 これだけではありません。いろんなことを見てみると、日本は民間の方のボランティアに頼ってしまっている。いや、大切なことです。私たち国民が一人一人の思いとしてやることは大切なんですけれども、例えば、竹島の啓発問題、領土の問題、どれを取ってみても、結局は、国家が本来やるべきことを民間の方が私的にやってくださっている部分が多い。

 こういうことを外務省として何かお手伝いしていただく、例えば補助金を出す、あるいはODAとかJICAの一つのメニューを使って何かをするとか、そういったことはできないものなんでしょうか。あるいは、大使館にそういう何がしかの費用なりそういったことをお手伝いするようなメニューというのはないんでしょうか。何とかならないものかと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 映画「めぐみへの誓い」でございますが、昨年九月に米国ロサンゼルス、そしてドイツ・ミュンヘンで、現地日本総領事館後援の下で上映会が開催されたと承知しておりまして、今お話をしていただきましたように、五月のチェコでの上映会は、鈴木駐チェコ大使が出席し、挨拶することで調整中と承知しております。民間主導でこうした活動が進んでいるということは大変心強く思っておりまして、現地日本大使館、総領事館が後援しているところでございます。

 今までも、拉致問題解決に向けた国際世論の喚起のために、在外公館を通じたいろいろな取組を行ってきておりまして、拉致問題パンフレット、これは七か国語で作成して配付しておりますほか、アニメの「めぐみ」というものの上映会実施、現地のイベントにおける上映、さらには現地テレビ局での放映等を行ってきておるところでございまして、私からも、一層の広報活動に努めるよう在外公館に指示をしてきておるところでございます。

 今委員からお話のありました費用負担の要望も承知しておりますが、先ほど申し上げたような国際世論を喚起するための取組は外務省としても実施してきておりまして、民間主導の活動に対して後援名義の付与、それから館員が行事に出席する等の可能な支援は今まで行ってきているところでございます。

 拉致問題に関する国際世論の理解と支援を得るためにいかなる方途が効果的か、こういう観点から、不断の検討を行いつつ、積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

和田(有)委員 是非とも、拉致問題だけではなく、いろいろなことで、JICAのメニューを使うとか、大使館のいろいろなメニューを使うとか、そういうことで補助みたいなものがあってもいいと思いますので、御検討いただきたいと思います。

 最後に、今出たジャパン・ハウスの話をお聞きしたいと思うんです。

 ジャパン・ハウスは、私は行ったことがないので、見ていないものを聞くというのも申し訳ないんですけれども、パンフレットをいただいたり質問取りでお聞きしている範囲でいきますと、これを造ったときの本来の意図のとおりにできているのか。

 私は、日本の正しい姿、それは、現在の日本だけではなく、当然、歴史であったり、いわゆる歴史戦でフェイクなニュースを流されていることに対するきっちりした答えを見せるものであったり、そういったことも含めてやるべき場だろうと思うんですね。領土問題しかり、拉致問題しかり、そういったものをしっかりと示すために造った施設だと思うんですが、その役割は果たしているのか、今後どう展開していこうとしているのか、最後にお聞きしたいと思います。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のジャパン・ハウスでございますが、我が国の政策、取組、そして日本の多様な魅力を発信するために、これまで必ずしも日本に関心のなかった人々を含む幅広い層を引きつけ、これをもって親日派、知日派の裾野を拡大するために、戦略的な対外発信の拠点として設けた次第でございます。平成二十九年以降、サンパウロ、ロンドン、ロサンゼルスの三つの館を順次開館したところでございます。

 この三つのうち、委員御指摘のジャパン・ハウス・ロサンゼルスの拠点におきましても、領土保全、歴史認識問題に関しまして、講演、セミナーの開催、そして、館内ライブラリーにおきます書籍、パンフレットの開架、政策関連のリンクを集めたタブレット端末の設置などを通じまして、来館者が我が国の政策等について情報を常時入手できるような仕組みを整えてございます。

 このような取組を引き続き倍加してまいりまして、戦略的な対外発信にしっかり取り組んでまいりたいと存じます。

和田(有)委員 時間が来ましたので終わりますが、このジャパン・ハウスについて、もっとしっかりと、いい使い方が今でもできているんでしょうけれども、もっといい使い方をして、そして来館者がもっと増えて、そして本当に日本の正しい主張が世界に伝わるような使い方をしていただきたい、こう思います。

 終わります。

黄川田委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦です。

 G7外相会合、お疲れさまでした。天気がもってよかったですね。日本の美しい自然を見ていただいて、静かな環境で地球規模の課題を話していただく、大変有意義な会だったのだろうと推察いたします。

 その上で、今日はまず開発協力大綱について伺いたいと思いますが、まだ案文ですから決まってはいないと思いますけれども、その中に、「複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導」ということの中で「保健」という項目があって、中にはグローバルヘルスについて書かれております。

 まずは、この項目の中身についてどのようにお考えなのかを伺います。

林国務大臣 国際保健でございますが、人々の健康に直接関わるのみならず、経済、社会、安全保障上の大きなリスクも含む重要な問題であると考えております。

 こうした認識の下で、国際保健に関する政府としての方針を二〇二二年五月にグローバルヘルス戦略ということで策定いたしまして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCの達成を始め、国際保健を引き続き推進する旨を盛り込んできたところでございます。

鈴木(敦)委員 そのグローバルヘルス戦略を私も拝見いたしました。

 よく考えてみると、よくこの委員会の中でも一部の委員から御指摘があるとおり、やはり、日本の立ち位置だとか価値観を押しつけてはならないというのがまず大前提にあるんだろうなと思います。

 その上で、自戒を込めて申し上げますが、自分の身の回りのことを考えると、我々は具合が悪くなったら病院に行きます。もしかしたら、おなかの上に薬草を乗せて蒸している方がまだこの中にいらっしゃるかもしれませんが、基本的には病院に行かれると思います。医療にアクセスすることができています。

 皆さんが今日もこの委員室の中で飲まれている水、これも、別に何とか還元水ではありません、水道水であります。だから、きれいな水にアクセスすることも我々はできている。

 これがあって、かつ国民皆保険の下で医療にアクセスすることができているので、我々はこれだけ安全に暮らすことができていますが、グローバルサウスを始めとする開発途上国については、水も飲めない、そして医療にアクセスすることもできない、こういう現状があるわけで、この開発協力大綱の案文の中に書いてある「将来の公衆衛生危機に対する予防・備え・対応を強化するとともに、」と、そもそもそこまで行っていないんだろうと私は思っています。

 ですから、例えばワクチン、日本では、四種混合ワクチン等々で、例えばポリオですとかこういったものには九九%ぐらいはかからないとされていますが、まだまだポリオウイルスが蔓延している地域もあって、幼い命が失われている地域もあります。こういう部分をまず最初に土台からよくしていく。

 我々国民民主党はずっと賃上げの話をしていますけれども、職能給で上げていくとか手当で上げていくのではなくて、そもそもの賃金水準を上げることと同じことです。保健そのものの水準を上げていかないと、場当たり的に何かだけよくしましょうといっても、それはもちません。

 だから、ワクチンの接種ですとか医療とか水にアクセスがちゃんとできるようにするというまず最低限のところまで彼らを引っ張っていく、これを主導していくのがG7議長国の日本としての立場だと思いますが、この点、いかがでしょうか。

林国務大臣 G7広島サミットにおきましても、国際保健を重要課題の一つと位置づける考えでございます。

 新型コロナへの対応から得られた教訓、そして、直前に長崎でG7長崎保健大臣会合を開く予定にしておりますので、ここでの議論も踏まえながら、G7広島サミットで、これまでの日本の取組を生かしながら、今お話がありましたけれども、将来の健康危機に対する予防、備え、対応の強化に資する国際的な枠組みの強化、また、それに加えて、保健システム強化を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成への貢献、そして、国際保健上の諸課題に対応するためのヘルスイノベーションの促進という三つの柱について議論を主導していくことになっております。

 当然、大前提として、今委員がおっしゃったベーシック・ヒューマン・ニーズといいますか、元々の土台というのがないと、今から来ることに備えましょうといっても、今どうするんだということになりますので、そこは当然の議論として、強いて言えばまさにユニバーサル・ヘルス・カバレッジということに包含されるのかもしれませんが、そういうことを含めてしっかり議論してまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 大臣のおっしゃるとおり、将来のというのは、我々にとっては将来かもしれませんが、彼らにとっては、今既に、治すことのできない、自分たちの力ではどうにもならないウイルスと闘っている方もいらっしゃいます。是非この点を価値観の中に組み入れていただいて、G7で議論していただきたいと思います。

 次の議題に行きますが、先般、カザフスタンで選挙がありました。いろいろと問題はあったんでしょうけれども、過去では最も民主的に行われた選挙であろうと私は評価しています。彼らは頑張って民主化しようと努力していますし、我々もODAを様々やってきて、そろそろ卒業の時期だろうというところまで来ていると思います。

 彼らは、国内でウランも取れますし、天然ガスも石油も出る、レアアースも出るということで、非常に潜在的能力を持った国だと思っていますが、一方で、ロシアや中国に取り込まれることだけはしたくないという思惑があって動いているのは明らかであります。

 我々は民主主義国家であり、法の自由を持っている国ですから、彼らに対して民主化を推し進めていくことも必要だと思いますし、彼らが持っている資源というのは、我々にとっても必要な資源であろうと思います。天然ガスを持ってくるのはなかなか難しいかもしれませんが、レアアースだとか、こういった部分については彼らとの協力も非常に重要だと思います。

 カザフスタンとの外交方針は余り議論してこなかったんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 日本とカザフスタンですが、一九九二年に外交関係を樹立して以来三十年間、戦略的パートナーとして、人材育成、経済分野といった幅広い分野で関係を深めてきております。

 私も、この地域の重要性に鑑みて、昨年四月に、外務大臣としては十二年ぶりということでちょっと驚きましたが、カザフスタンを訪問いたしました。そして、昨年の十二月ですが、中央アジア五か国プラス日本という対話の枠組みがありまして、これの外相会合の際にカザフスタン外相とも会談を行って、緊密な意見交換を行っております。

 今お話があったように、経済面についても、日本企業がカザフスタンの油田の権益を保持しておりますことなど、エネルギー面を中心に活発な経済活動を行っております。そして、カザフスタンは、クロムのようなレアメタル、今触れていただきましたが、こういう埋蔵量も結構多いということでございますので、こうした分野での今後の協力の潜在性は非常にあると思っております。

 そして、これも御指摘のあったとおりですが、政治面で中ロに挟まれた地政学的状況にありますので、カザフスタンも関係国との微妙なバランスの中で外交を展開してきたわけでありますが、やはり、ロシアのウクライナ侵略以降、その影響を種々受けております。

 我が国として、昨年末の中央アジアプラス日本の対話・外相会合でも表明いたしましたが、こうした現下の厳しい国際情勢の中で、中央アジア各国が持続可能な発展を実現できるように連携を強化していく、こういう考えでございます。

 実は、G7外相会合を昨日までやっておりましたが、カザフスタンなど、中央アジアの国々が抱える具体的問題の対応を支援するということでも一致したところでございまして、カザフスタンとの間でも、地域の安定、そして二国間関係の深化に向けて引き続き協力していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 カザフスタンだけに限らず、これから民主化しようという国々に対しては我々も手を差し伸べるべきだと思いますし、彼らの民主化、自主的な民主化というか、成長を見守るだけという、光の国のおきてみたいなのを我々はやっておりますけれども、時には手を入れて彼らを守っていくということも私は重要だと思います。

 特に、ロシアと中国に挟まれたと大臣もおっしゃいましたけれども、地政学的に彼らは手を入れてきますので、我々も、自由主義国家としてやらなければならないことは、見守るだけではなくて、彼らの自主発展を促すようなカンフル剤を打つということは我々もしなければいけないと思います。

 また、今触れていただきました石油について伺いたいと思いますが、石油は、我が国は中近東と中央アジアから九割以上を輸入しておりますので、石油をめぐる我々の外交というのは非常に難しいものがあるんですけれども、最近、石油や天然資源、特に液化天然ガスについては、基本的にドルで今まで決済していたと思いますけれども、先日も質問しました、イランとサウジアラビアの外交関係の改善に中国が介入したときから人民元取引を要求していたり、あるいは、最近は、中国がフランスと天然ガスの取引をする際に人民元を決済に使う。そろそろ、オイルダラーと言われる昔からの石油決済に使われたドルの力というのがだんだん弱くなってきているように私は思います。

 これは、仮に、ドルで決済するものに人民元が取って代わる、ここまでのことは私も考えていませんが、人民元決済を取り入れる国が増える、全体的な牌が増えるということは想定しなきゃいけないと思いますし、そうなった場合、我が国はどうするかも決めなければいけません。

 周りを観察して自分たちの立ち位置を決めるのは当然ですから、日本としてはどのように観察しておられるか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 中国が国際通貨システムにおける人民元の役割の拡大等に取り組んできている、このことは承知しております。

 人民元に関する動向、そしてエネルギー市場における中国の動き、これは我が国経済、世界経済にも影響を与え得るものと考えております。

 これは委員も御承知で、釈迦に説法ですが、特定の通貨が国際経済において広く利用されていくためには、流動性、安全性の観点から通貨としての高い利便性を有する必要があるわけでございまして、こうしたことについて、中長期的な動向について引き続き注視してまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 まさに、昔、シェアが少し伸びたことがございましたけれども、二〇一五年以降は、チャイナ・ショックというのがあって、その後の資本規制も強化されて、国際通貨としての人民元のシェアが停滞している、こういうことも言われておりますので、こうした中長期的な動向はしっかり注視していかなければいけないと思っております。

 そして、エネルギー安全保障の観点から、中東諸国との関係はまさに言うまでもなく大変重要でございますので、我々としては、一層の関係強化に不断の努力をもって努めていきたいと思っております。

鈴木(敦)委員 人民元の取引量というのは、アメリカのドルに比べたら、一%未満のすごく少ない数です。だから、多分大臣も、財務大臣とかあるいはアメリカ側から、そんなことは心配要らないよと言われていると思いますが、流通量の問題ではないんです。それを取り扱っている国が増える、それが中国の周りからじわじわとヨーロッパにまで今広がる。日本円で取引できますかということです。

 だから、彼らの影響力が強くなればなるほど我々にとっては脅威です。ですから、そういった観点で見ていただきたいんです。

 流通量だけを見たら微々たるものかもしれません。でも、彼らが取り扱っているものがどんどん増えるということは、市中に出回る可能性だってあります。我が国だって、石油を人民元で決済しなければいけなくなったら外貨準備に人民元を入れなきゃいけなくなりますから、それは国家を大きく変える問題になりますので、是非注視していただきたいと思いますし、これは長期的な視点でお願いしたいと思います。

 では、次は中国について伺いますけれども、半導体についてです。

 ずっと半導体を私は言ってきましたけれども、日本とアメリカとオランダで半導体製造装置の輸出規制強化についての申合せがあったやに聞いておりますけれども、経産省から御説明を伺います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 高性能な先端半導体は、軍事的な用途に利用された場合、国際的な平和及び安全の維持を妨げるおそれがございます。このため、私どもといたしましては、かねてから、高性能な半導体の製造装置の輸出管理を強化する必要性を認識してきたところでございます。

 今般パブリックコメントの手続に付しました措置は、具体的な対象品目の技術的な検討を踏まえつつ、米国を含めた関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案した結果として、三月三十一日に公表させていただいたものでございます。これは、我が国として必要と考える措置を導入しようとするものでございます。

 なお、昨年十月の米国措置との関係について申し上げますと、今般の私どもの措置は、管理対象とする範囲を性能の値で明確化する、また、全地域向けの輸出を管理対象とするものでございまして、両者は同じ内容とはなってございません。

 いずれにいたしましても、今般の措置によりまして、技術保有国としての国際社会における責任を果たし、国際的な平和及び安全の維持に貢献してまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

鈴木(敦)委員 この輸出規制自体は非常に有益なものです。ですから、私は評価しています。

 ただ、高性能なとおっしゃいました、最先端のとも。でも、今ウクライナで飛んでいるのは果たして高性能な半導体でしょうか。普通に家電量販店で買えるようなレベルのものが兵器として使われて非常に効果を出しているわけですから、輸出規制に関しては、高性能に限らず厳格にしていただく必要があると思いますし、日本製の半導体製造装置は、基本的にまだ世界シェアで戦える技術力があります。これは保護していただきたいと思っていますし、経産委員会でも私は申し上げましたけれども、原料だとかエッチングガスだとか半導体製造装置というのは日本製が一番だとどこに行っても言われます。日本企業も自分のことを自画自賛で言っているのかもしれませんけれども、基本的には世界一の技術だと私も思っています。

 だから、保護していただきたいと思いますし、それが軍事転用されるようなことは絶対に阻止していただきたいと思いますが、一方で、何度もこの委員会でやっていますが、今、半導体というのは戦略物資です。世界にとっても重要物資になっていますから、これを輸出規制するということになれば、当然、アメリカと中国で半導体をめぐる戦いをしている中にあるので、外交方針に影響が出てくると思いますが、外務大臣の御所見をいただきたいと思います。

林国務大臣 まさに、経済産業省が公表しました半導体製造装置に係る輸出管理措置、これは、国際的な平和及び安全維持の観点から、国際ルールと整合的な形で厳格な輸出管理を行うというものでありまして、特定の国を対象としていないわけでございます。

 四月二日に日中外相会談をやったんですが、そこでも中国側から本措置について言及がありました。私から、特定の国を対象としたものではないと改めて中国側に対して説明したところでございます。

 また、これに関しまして、中国政府が、中国からの輸出を禁止又は制限する技術リストの改定作業を行っていると承知しておりまして、その具体的改定内容については、まだ中国の政府の中で検討中であり、公布、施行されておりませんが、こうした中国の制度や措置が及ぼす影響というのはしっかりと注視してまいらなければいけないと思っております。

鈴木(敦)委員 事実上の対抗措置ですよね。彼らに対して何を言っても聞かないと私は思っていますけれども。

 一方で、中国政府は、レアアース磁石だとかその製造技術の輸出を禁止する方向で調整しているようでございます。そうされると、我々は、これからカーボンニュートラルといって電気自動車をばんばん走らせましょうと言っている中で、造れなくなってしまいます。それ以外にも、レアアースを使っている様々な製品が造れなくなって国際的な競争力を失う。要するに、彼らによる兵糧攻めに遭うことになります。だから、サプライチェーンを考え直さなきゃいけません。どういう方針で当たっていらっしゃいますでしょうか。

林国務大臣 経済的威圧、こういうふうに呼んでおりますが、我々は既に二〇一〇年にこういうことを経験しておるわけでございます。

 それ以来、いろいろな議論はしてきたというふうに思っておりますが、今お話のあった永久磁石のサプライチェーンも含めて様々なリスクにも対応できるように、我が国として、サプライチェーンを強靱化するために、永久磁石の生産能力の増強、また、省レアアース磁石の開発、リサイクル技術の開発、導入、さらには、こうしたレアアース等の重要鉱物の権益確保によるサプライソースの多様化、こういうことに向けた取組をしっかりと進めてまいらなければならないと思っております。

鈴木(敦)委員 多分に中国に依存してきたことが今回は裏目に出ていると思います。

 もう最後にいたしますけれども、先ほど議論させていただいたカザフスタンは、こういった戦略物資が取れる場所であります。日本企業の進出を政府としても促していただきたいと思いますし、カザフスタン以外にもこういった戦略物資のサプライチェーンの一部を担っていただける国家はあると思いますし、そういった国々は、民主化したいと思っている国もあるはずですから、必ずしも彼らのチームには加わっていないでしょうけれども、ただ、急がないと、彼らに、困っている国々に中国が大量の人民元を投入したりすると我々が手を出せなくなりますから、急いでそういった国々に対してアプローチをしていただきたいと改めてお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、陸上自衛隊の多用途ヘリUH60JAが、今月六日、沖縄県の宮古島周辺で消息を絶った事故について質問します。

 防衛省は、昨日までに現場周辺の海底で損壊した機体の胴体部分と六名を発見したが、残念なことに五名の死亡を確認したと聞きます。

 現在の捜索の進捗状況について、井野防衛副大臣に説明を求めます。

井野副大臣 本件事故に関しては、自衛隊として、海上保安庁とともに連携し、二十四時間体制で懸命に捜索活動を継続してきました。そうした中、これまでに、空中捜索により、要救助者六名と損壊したヘリコプターの一部を発見しております。

 これまでに五名を引き上げ、いずれも亡くなっていることが確認されました。事故発生当初より昼夜を問わず懸命な捜索活動を行ってきたものの、このような報に接し、とても残念でなりません。

 防衛省・自衛隊としては、搭乗していた十名の隊員全員が一日も早く御家族の元に帰ることができるよう、海上保安庁と連携し、残る一名の引上げ、そして、いまだ行方不明のままの四名の捜索に全力を尽くしているところでございます。

穀田委員 懸命な救助活動を行う中でそうした報に接したことは、極めて残念なことです。

 お話があったように、十名の隊員が一日も早く御家族の元に帰ることができるよう、政府には、引き続き捜索に全力を尽くすとともに、事故原因の徹底究明を強く求めたい。林外務大臣の御所見を伺います。

林国務大臣 現在、防衛省が、事故の原因につきましては、陸上幕僚監部に設置した事故調査委員会で調査中であるというふうに承知しております。

 まさに今委員からもお話がありましたように、政府としては、搭乗していた十名の隊員全員が一日も早く御家族の元に帰ることができるように全力を尽くすとともに、事故原因の早期究明に向けて、自衛隊と海上保安庁に加えて、民間力の活用、これも視野に入れながら、持てる力を尽くして、機体の引揚げ、現場周辺の捜索を進めてまいりたいと考えております。

穀田委員 事故機は、飛行五十時間ごとに行う特別点検を三月下旬に実施し、確認飛行も済ませており、当時の気象条件にも問題はなかったとされています。陸上自衛隊では既に事故調査委員会を発足させているが、今回の事故に構造的な要因はなかったか、徹底究明が求められます。

 陸自のヘリに標準装備されるフライトレコーダーには位置を知らせる発信機能や海面に浮上する機能がついておらず、回収が難航しているとお聞きしますが、事実ですか。

井野副大臣 御指摘いただいた搭載されていた機材ですけれども、現時点で、済みません、確認が取れていないということでありますけれども、いずれにしても、現在、事故究明においては、フライトレコーダーを含む機体の捜索、発見された機体を引き揚げて調査していくということで懸命に作業をしているところでございますので、今後もそういった点に全力を尽くしてまいりたいと思っております。

穀田委員 落ちた飛行機の捜索するべきあれに、フライトレコーダー、つまり、今の、いわゆる一般のフライトレコーダー、つまり、海面に浮上するというのがついていないというのが報道されて、自民党の国防部会でも議論になっているわけで、その辺のことはちゃんと言ってくれぬと私はあかんと思いますけれどもね。まあ、しゃあないですよ。そういうことを分かってへんのやったら、しゃあない。

 フライトレコーダーが回収できれば、事故機の飛行高度や経路などが分かり、当時どのような異常が発生していたのかが解析できる。しかし、そうした装備がなく、それがいまだ回収できていないということだと。

 陸上自衛隊では、現在、同型機の飛行を災害派遣や緊急患者輸送などを除き見合わせているが、事故原因が判明するまでは同型機の飛行を再開すべきではないと考えますけれども、どうでしょうか。

井野副大臣 事故発生当日から、陸上自衛隊のUH60JA同型機については、先ほど御指摘いただいたとおり、災害派遣や緊急患者輸送などの任務飛行を除いて、機体の健全性の確認をするための入念な点検や必要な教育が終了するまでは、訓練飛行は見合わせているところでございます。

穀田委員 陸上自衛隊では、二〇一七年五月、北海道の山中に連絡偵察機が墜落し、四名の隊員が死亡する事故が起きました。二〇一八年二月には、佐賀県で戦闘ヘリが民家に墜落し、隊員二名が死亡、女児がけがを負う事故が起きています。また、二〇一七年十月には、事故機と同タイプの航空自衛隊の救難ヘリが浜松市沖に墜落し、隊員四名が死亡しています。

 今回の事故を受け、沖縄県宮古島市では、もし陸地に墜落していたら大変な事態になっていた、なぜ事故が起きたのか、本当に機体は安全なのかなど、住民の間に不安が広がっています。事故原因が不明のままでは、基地を抱える地域住民の不安が払拭できないのは当然だと思うんですね。

 同型機の飛行停止を特別点検や必要な教育の終了までとせずに、事故原因が判明するまでは再開すべきでないと私は思いますが、どうでしょうか。

井野副大臣 防衛省・自衛隊としては、今般の事故については大変重く受け止めているところでございます。

 任務飛行を実施する際には、必要な点検や教育を通じ、飛行の安全確保をしっかりした上で、最新の気象情報などを基に、状況を見極めて今後実施していくという考えでございます。

 訓練飛行の再開についても、機体の健全性の確認をするための入念な点検や必要な教育を終えた後に判断していくということになりますので、今後訓練飛行がどういうふうな形で再開されるかについても、現時点では予断を持ってお答えすることが難しいということでございます。

 以上です。

穀田委員 重く受け止めるということを、入念ということを二回使っているわけだけれども、浜田防衛大臣は四月七日の衆議院本会議で、自衛隊の航空機の運航に当たっては安全管理に万全を期すと表明しているんですね。そうであるならば、事故原因が判明するまでは同型機の飛行を停止すべきだと私は考えます。そのことを主張しておきたいと思います。

 次に、陸上自衛隊のオスプレイ部隊の編成問題について聞きます。

 防衛省は、二〇二〇年三月、木更津駐屯地の第一ヘリコプター団に、初のオスプレイ部隊となる輸送航空隊を新編しました。同部隊は、隊本部や整備隊などで編成され、定員を約四百三十名と定めています。このうち、十七機のオスプレイを装備するのは本部中隊と第一〇七飛行隊、第一〇八飛行隊で、水陸機動団との一体的な運用を行う、そういうことでいいですね。

井野副大臣 そのように考えております。

穀田委員 そのとおりだと。

 防衛省は、輸送航空隊の木更津駐屯地への配備は暫定的であって、二〇二五年度までに佐賀空港での本格配備、すなわち戦力化計画を進めています。

 この輸送航空隊の編成に従って、防衛省では、二〇二五年度までに、既存の各部隊からオスプレイの操縦士として七十名、整備員として約三百名を異動させていると聞きます。

 具体的にどの既存部隊からどれだけの操縦士と整備員を輸送航空隊に異動させているのか、お聞きしたいと思います。

井野副大臣 まず、どの部隊からどうだというのは、大変恐縮ですけれども、そういうものは明らかにしておりません。

 一般的に、部隊の新編や部隊を増強する場合には、スクラップ・アンド・ビルドの観点から、既存部隊の見直しや部隊定員の最適化を図りつつ、陸上自衛隊の総定数の中で必要となる定員上の人員を確保することとしております。

 先生御指摘の輸送航空隊の新編に当たっては、同職種間の人事異動により操縦員や整備員を配置するとともに、職務に応じた教育を通じ、要員を養成しているところでございます。

穀田委員 今ありましたように、輸送航空隊の編成に伴って、簡単に言えば、既存の部隊から異動を行っているということは認められたということでいいですよね。

井野副大臣 既存部隊の見直し等で定員の中からやっているという意味では、そういうところもあったりしますし、養成しているところもあったりということであります。

穀田委員 養成しているのでは間に合わぬわけだから、要するに、七十名と三百名を確保するために異動しているということは事実ですよね。ですから、肝腎なことは、私が聞いているのは、異動させているということだけは確かだと。

 そうすると、問題は、その結果何が起きているかということなんですね。既存の部隊では、操縦士や整備員の中抜け状態、つまり欠員が拡大しているのではありませんか。

井野副大臣 基本的には、そのようなことがないように、きちんと、スクラップ・アンド・ビルドの中で部隊の見直し、定員等をしっかりと最適化を図りつつやっておりますので、中抜けという表現なのかどうなのかちょっと分かりませんけれども、そういうことはないというふうに考えております。

穀田委員 スクラップ・アンド・ビルド、これも何回も繰り返しているんですけれども、そういうことはない、中抜け、欠員はないということだということですね。

井野副大臣 総定数の中で必要となる定員を確保しております。その中で、異動だったり、もちろん養成であったり、様々な形で最適な部隊配置をしているところでございます。

穀田委員 手元に、陸上幕僚監部が二〇二〇年七月三日に行った航空安全会議の資料があります。そこで、こういう資料があるんですけれども、これを見ますと、輸送航空隊が編成された二〇一九年度から戦力化される二〇二五年度までに、オスプレイの操縦士として、先ほど言ったように七十名ですよね、七十名を、十五の師旅団の飛行部隊、五個の方面ヘリ隊、ヘリ群の四個飛行隊から捻出するとある。その結果、既存部隊で機長が減少し、各部隊で平均二・五名の欠員が生じると明記されている。

 だから、スクラップ・アンド・ビルドとかいろいろ言うけれども、要するに欠員が生じるということが明記されている、そうじゃないんですか。

井野副大臣 先生御指摘の資料等が確認が取れないので、我々としてはその資料についてコメントすることは難しいところでありますけれども、いずれにしても、自衛隊として既存の定数の中で定員を適切に配置していくということでありますので、パイロットだけが少ないとか、そういうことではないというふうに思っております。

穀田委員 私は、この文書を示して、要するに欠員が生じると明記されているということを言っているわけで、スクラップ・アンド・ビルドどうのこうのと言ってやっていってごまかしてよいという話じゃないんですね。

 問題はその次も更にあるんですよね。

 陸上自衛隊では、操縦士の練度を高い順番にAからDの四段階に格付しているんですけれども、この資料によれば、各部隊からオスプレイの操縦士として捻出することによってBとCの格付の操縦士が約二〇%欠員するとある。だから、そういった問題も気にせぬと適当にやっているんだなんという話で、どないしてそれで全体の体制が維持できますねんな。そういう問題についても心を砕かなあかんのちゃうかと私は思いまっせ。

 だから、その結果、削減されるBとCの格付の操縦士が機長として実施していた飛行任務を格付Aの操縦士が代替せざるを得ないとあります。

 また、整備員についても、各部隊から約三百名をオスプレイの要員として輸送航空隊に異動することで減少し、既存部隊の整備がベテラン主体による突貫的な整備となると記されています。

 このように、資料には、オスプレイ十七機の導入によって既存の各部隊では操縦士や整備員が大幅に減少すると明記されているわけであります。

 こうした実態があることをこれまで国会や国民に一切公表してこなかったのは重大ではないのか。また、それを指摘されても、資料がどうのこうの言って、こういう現実、オスプレイを配備するに当たってそういう問題があるということをもし知らないとしたら、それはあきませんわ。どうです。

井野副大臣 我々自衛隊としては、教育訓練というものをしっかり行うことによって常に練度を維持し、そして、いついかなるときでも対応できる、即応できるような体制を整えているというふうに自負しておりますので、そういうことがないように、御指摘いただかないように、しっかりこれからも訓練を充実させてまいりたいと思っております。

穀田委員 練度を教育で維持するというのは、一つ一つの塊はいてるんですよ。だけれども、ぼこんと取られて、それで起こっている事態についての深刻さという問題を、防衛副大臣たるものが、自衛隊の中に存在しているこの極めて重大な事態について、練度で、訓練で、教育で維持できる、もしそうお考えだとしたら、こういう報告は一体全体何なんだ。

 これは、今お話ししたように、二〇%欠員する、それから、ベテラン主体による突貫的な整備となる、ここまで言って、大変なことになっているということを言っているわけですよ。それを公表していないことを私は問題にしているのであって、そう言ったら、維持しますとか、練度です、教育します、話をそんなとんちんかんなことにしたらあきまへんで。

 だから、私は外務大臣に最後に聞こうと思うんです。

 輸送航空隊という新たなオスプレイ部隊の編成によって、陸自が全国で運用する四百機近くの航空機で操縦士や整備員の体制が中抜け状態、欠員状態になっている、そのことで他の操縦士や整備員に任務が偏重している。林大臣、自衛隊員はもとより、国民の命と安全に直結する重大問題だと思いませんか。

林国務大臣 政府といたしましては、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、陸上自衛隊のオスプレイの配備は、島嶼防衛、災害救援、そして日米同盟の抑止力、対処力の強化等の観点から重要であると考えております。

 今防衛副大臣から答弁がありましたように、オスプレイの安全性、信頼性は十分に確認していると承知しておりまして、安全性に問題はないと考えておりますが、オスプレイの日本国内における飛行運用に際しましては、政府として、地元の皆様に十分に配慮し、最大限の安全対策を取るよう、万全を期してまいりたいと考えております。

穀田委員 終わりますけれども、私はオスプレイの安全性の話をしているんじゃないんですよ。そこを特化することによってほかが大変になっているやんか、欠員も生じて中抜きになっているやんか、そうしたら自衛隊員の命も大変やでと、ここまで心配していますんやで。

 だから、陸自が全国で運用する四百機近くの航空機で操縦士や整備員の体制が欠員状態になっている。そういう点でいうと、自衛隊員、国民の命と安全に直結する重大問題だ。だから陸上幕僚監部の航空安全会議で問題になった。こうした実態を国会や国民に黙ってやるということは言語道断だと私は思います。

 政府は、安倍首相就任以来、アメリカの要求に応じて、現場の自衛隊さえ必要としていないんですよ、こんな高額兵器。次々と導入し、軍事費の高騰を招いてきた。陸上自衛隊のオスプレイはまさにその典型です。

 オスプレイの配備は百害あって一利なし。改めて配備撤回を求めて、質問を終わります。

黄川田委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 私からも、G7軽井沢外相会合、お疲れさまでした。

 私は、前々回のこの委員会で、世界の分断を回避するため、また、日本外交の本来の役割というのは、G7等先進国とグローバルサウスの橋渡し役、これを担うために、価値観外交といったような考え方というか、発信をやめろということを主張させてもらいました。

 前回は、次の広島G7サミットにおいて、G7で結束してロシアに対峙するとか、そういうような議論ではなくて、一刻も早い停戦の第一歩とするようにというお願いもしておりました。軽井沢会合、いい成果を得たのでありましょうけれども、少なくとも、本音でどう話したかは別として、報道で伝わってくる限り、その第一歩とするような議論がなされていないということは少し残念であります。

 今日は、イランとサウジアラビアの国交正常化、それを中国が仲介したということの意味、そこから浮かび上がってくる国際的な、世界的な勢力バランスの変化、そして中東の勢力バランスの変化、世界秩序の変化、私はこのことを、私自身の造語ですけれども、新次元の東西冷戦という言葉を使っているんですけれども、この新次元の東西冷戦が始まっている、こういう文脈の中で、日本外交がどうあるべきかということについて議論を、短い時間ですけれども、していきたいと思っています。

 まず冒頭、ずばり、このイランとサウジアラビアの国交正常化についての評価、そしてまた、それを中国が仲介したということについての見解、評価を伺いたいと思います。端的にお願いします。

林国務大臣 三月十日に、イランとサウジアラビアが二か月以内に外交関係を再開し、大使館及び代表部を再開することで合意したと承知しております。

 第三国間のやり取りであり、詳細についてコメントすることは控えますけれども、両国が関係正常化に合意したことは、我が国として、中東地域の平和と安定化に向けた前向きな動きとして歓迎をいたします。

 また、先般発表された両国の外交関係正常化に向けては、様々な国による外交努力がずっと行われてきておりまして、こうした国際社会全体の外交努力の積み重ねの結果、この合意が実現したということを評価をしております。

 中国でございますが、近年、中東地域でも二国間、多国間の双方において幅広い分野で活発な活動を展開していると承知しておりまして、日本としても高い関心を持って注視をしております。

 我々としても、中東地域諸国との長年の友好関係を生かしながら、中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向けて積極的な外交努力を行ってきたところでございまして、今後も、こうした取組を継続していくとともに、両国間の関係正常化に向けた今後の具体的な動き、これをしっかり注視してまいりたいと思っております。

吉良委員 中東は日本にとっても非常に重要な地域でありますから、その安定化を評価するというコメントをいただいたことも評価しますし、大臣御指摘のように、今回の仲介に当たっては、中国だけではなく、イラクであるとか、カタールであるとか、それからUAEであるとか、多くの国が、まさに中東の大国、この二国がにらみ合ったまま、国交を断絶したような状態は避けるべきだといろいろな努力をしてきた結果であるということを私も認識していますけれども、やはり、最後のとどめといいますか、中国がそれを成功裏に導いたということはきちっと認識しておかなければいけないと思っています。

 先ほど言いました、大きな世界の勢力バランスの変化がある、私流に言えば新次元の東西冷戦、歩み始めているということについて、私の問題意識を、前回のように、実は、去年三月三十日付の私のメールマガジンで発信をしております。皆さん方にも参考資料としてお手元に配っていますけれども、二〇二二年の三月三十日付のメールマガジンです。

 まず、問題意識としては、1、なぜ新次元かといいますと、かつての東西冷戦、ソ連の時代の東西冷戦というのは、いわゆる共産主義のイデオロギーの力とそれからソ連の軍事力、これが西側に対する対抗、原動力だった。ただし、経済的には極めて脆弱だったことは確かであります。しかし、今回の、今始まりつつあるものは、ロシアの軍事力に加えて、中国の軍事力と経済力が加わった強力な反米同盟になる。この時点で、そこに下線を引いていますけれども、これにイランが加わる可能性が高いと私はここで断言しています。

 当然ですけれども、軍事力でいうならば、先ほど松原さんの方からも指摘がありましたけれども、例えば東南アジア、もう、中国がいい、悪いとか、好きだ、嫌いだとかいうことは別にして、その脅威を前にして、決定的な関係悪化というのは当然ながら回避しようとしています。中国の経済力については、東南アジア諸国のみならず、世界中の国々、例えば、最近でいえばフランスがいい例ですけれども、やはり中国の経済力に引きつけられて、決定的な関係悪化は避けようとする。

 2のところに書いてありますけれども、これに加えて、今言った、ロシアの軍事力との決定的な対立を避けたい、また、中国の経済力を今後とも利用したいというような国々、その中でも、人口大国でもあるBRICS、これらは、幾らG7、アメリカ、西側が働きかけようとも、ロシア包囲網には決して加わらず、中立を保とうとする。極めてしたたかです。西側とも決定的な関係悪化はつくらず、けれども、ロシアに対しても中国に対しても決定的な関係悪化を避けていく、こういう行動であります。

 そういう意味で、新次元の東西冷戦というのは、かつての冷戦と比べて、特に、東側とあえて言えば、経済力において決定的に違うという認識が必要だろうと思っています。

 3のところなんですけれども、これは後で問いとして使いますけれども、私は、去年の三月三十日の時点で、イランは実は大きく二つの選択肢があると思っていました。

 それは、トランプ以降のアメリカの対イラン制裁、徹底的な締め上げに対して反発して、中ロ側の反米急先鋒を続けて、ロシア、中国との関係強化に向かう道。

 もう一つは、アメリカも本音では、ウクライナ戦争が起こったことによって、中東でも火種を残しておきたくない、本音ではそう思っていたはずです、国内的なメッセージは別にして。

 日本は、歴史的に、イランと極めて深い、かつ良好な外交関係を持ってきておりました。そういう意味で、アメリカに対して、イランに対して、日本が働きかけて核合意をもう一回復活させて、イランに中ロへ接近させず、中立に持ってくる道が私はあったと思っています。

 それはなぜできなかったのか、しなかったのかということについて、更に言えば、今、ウクライナを攻撃しているロシアの兵器の中の最有力のものはイラン製のドローン、そのイランによる対ロシアドローン輸出というのもなくせた可能性もあるというふうに思っています。

 あともう一点、4のところに書いていますけれども、これは、表は書いていませんけれども、今後、BRICSを始めとして、人口大国が経済大国になってきます。二〇五〇年でいえば、中国、インド、それからロシアも入っているんですけれども、インドネシアといったような人口大国が、GDP、世界の十位に入ってきます。こういう人口大国かつ経済大国は、投資立国、貿易立国である日本にとっても極めて重要なお客さん、そこをも引きつけていく必要が日本外交にはあるんだろうというふうに思っています。

 5を飛ばして、6も飛ばして、7ですけれども、6のところで、対ロシア非難決議に加わらなかった国々をざっと列挙しているわけですけれども、これらは、何であんな極悪非道なロシアに反対票を投じないんだと思うかもしれませんけれども、これは、さっき言った、大国ロシアとの決定的な対立を回避したい、そのパートナーとして中国がいるので、そことも決定的な対立を回避したいという、生き抜くためのまさに知恵なんですよね。

 私がベトナムに行ったときに、当時の在ベトナム日本大使にお聞きした話があって、ベトナムは歴史上五回、対中戦争を行っている。常に中国から攻め込まれて、実は、一度も負けずに全部押し返している。けれども、戦争という意味では勝っているわけですけれども、勝った直後に、その当時の王朝の首都に、謝罪して、ごめんなさいをする、使節を送ってごめんなさいをするわけです。一方的に攻めてきた中国に対して、戦争して打ち返して、けれども、その後、ごめんなさいと言いに行くんです。そうすると、拳を上げた中国も、まあしようがないかなというので、その後数十年、場合によっては百年単位で対ベトナム侵攻はない。いい、悪いとか、正邪でいえば明らかなんですけれども、生きていくためにやっているわけですね。

 時間がだんだん押してきているので、8、9と行きますけれども、一九七一年に御承知のとおりキッシンジャーが中国を訪問して、画期的な米中国交回復が成ったわけですけれども、それは御承知のとおり、当時、対ソ連、対中国という二国の封じ込めというのは、相対的に国力が低下したアメリカが、もう限界があるということで、中国に対しては手を握り、対ソ連包囲網に集中投資をするという決断をしたわけです。

 七一年、中国の経済力というのは取るに足らなかったあの時代でも、こういうことを米国はやっているわけですけれども、ここまで経済力が強大になり、それに伴って軍事力も強大になったその二つの国を相手に、かつ、アメリカ、西側についてくるかもしれない国々も中立を保つ、そういう中で、本当に、価値観外交を含めて、対中外交、また、ロシアについても、一刻も早い停戦という道筋をつけずに、このまま世界が分断していけば、一番困るのは我が国だと私は思っています。

 言うまでもなく、中国が今回サウジとイランの国交回復を仲介したのは、サウジにとって、中国は今一番の石油輸出国ですね、御承知のとおり。一方、米国は、今や世界一の石油生産国でもあり、天然ガス生産国です。ですから、ある意味、中東に関心がない。そこの間隙を縫って、中国にとっても、十三億の民を食わせていくためには、中東というのは一番重要な地域ですから、そこにきちっとプレゼンスを、というよりも極めて大きな影響力を埋め込んでいく、これを虎視眈々とといいますか、狙ってきたその結果が、今回のサウジとイラン、中国が仲介したことによる正常化だというふうに私は思っています。

 二番目の質問なんですけれども、私のこういう問題意識。何でこういうふうな質問の仕方をするかというと、一問一問聞いても、外務省というのは、外務大臣というのは、外交の性格上、本音では絶対答えられないというのが分かっているから。表面的なので、こちらから一方的に言うしかないんですよね。

 そういう中で、このイランとサウジの国交正常化についても、手柄どうこうの話ではないんですけれども、本来、先ほど言いましたイランとの深い歴史的な日本の関係、そして、日本にとっても最も重要なサウジ、この二つを仲介して、日本自身がもっと存在感を示して、中東の安定に貢献できたのではないかと私は思っています。

 そういう意味で、日本が果たすべき役割があったのではないか、それをなぜやらなかったのか、果たせなかったのかということについて答弁を求めます。

林国務大臣 国交正常化そのものについては先ほど申し上げたとおりでございますが、まさに、イランにつきましては、昨年、日・イラン首脳会談というのをやっておりまして、また、私とアブドラヒアン・イラン外務大臣が、先週、三度目の電話会談をやっております。やはり、イラン核合意をめぐる最新の情勢、それからウクライナ情勢、中東地域情勢、こういうことについて意見交換を行って、地域、国際社会の平和と安定に向けてイランが建設的な役割を果たすように、累次働きかけを行ってきております。

 また、サウジでございますが、戦略的パートナーシップを結びまして、包括的な協力枠組みである日・サウジ・ビジョン二〇三〇の下で、幅広い分野での協力を進めてきております。こうした協力関係を踏まえて、日・サウジ首脳電話会談、また、私とファイサル外務大臣とのやり取りを含めて、累次の機会に意見交換を行ってきておりまして、こうした地道な努力の積み重ねによって、中東地域の緊張緩和、情勢安定化に向けて、外交に取り組んでまいりたいと思っております。

吉良委員 私、価値観外交をやめろと言ったときに、また、ウクライナの停戦を一刻も早くしろと言ったときに、小麦の輸出、ロシア、それからウクライナが、一番、三番ですかね、五位かということで、この戦争が継続することによって世界の中で貧困層が困っているんだ、その具体例としてソマリアを挙げましたけれども、同時にイエメンを挙げました。

 御承知のとおり、今回サウジがここに一歩踏み込んだ背景は、実はイエメンの内戦で、シーア派組織であるフーシ派がサウジアラビアにドローンを飛ばして石油生産施設を爆破したことがあったんですよね。それによってアラムコがニューヨークへの上場を一旦見送らざるを得なかったという背景もあるわけです。そういう意味で、サウジにとっても、世界が脱CO2で走る中で、石油で生きてきて、この先石油で生きていけないという危機感があり、もうイエメンの内戦にも関わっておられないという背景も私はあったと思っているんです。

 こういう合意が、だから、正常化が成ることというのは、フーシ派の後ろにはイランがいましたので、結果的にはイエメンの内戦も収まってくる可能性がある、そういう意味で、ウクライナ戦争の被害者になっているイエメンの貧困層にも恩恵が私は及ぶというふうに思っています。

 林大臣と、前に質問したときに言いましたけれども、私、何か商社マンというのは、風が吹けばおけ屋がもうかるというので、AがこうなればこれがBにこうなるだろう、BがこうなればCがこうなる……

黄川田委員長 申合せの時間が過ぎていますので、御協力をお願いします。

吉良委員 はい。

 もう先ほどの答弁で結構ですけれども、G7が命、米国が命というような外交を一刻も早く切り替えて、日本としてはグローバルサウスの橋渡しをやる、そういう中で、今回の、中国にある意味ではやられてしまったわけですけれども、広く世界益を考えて日本の外交を展開するようにお願いをして、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

黄川田委員長 次に、投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 ただいま議題となりました三件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和四年六月二十三日に協定の署名が行われました。

 この協定は、バーレーンとの間で、投資の拡大による経済関係を一層強化するため、投資の促進及び保護に関する法的枠組みについて定めるものであります。

 この協定の締結は、締約国における投資環境の整備を促すとともに、両国間の経済関係の更なる緊密化に大いに資するものと期待をされます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和四年十二月二十七日に条約の署名が行われました。

 この条約は、アゼルバイジャンとの間で現行の租税条約の内容を全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税の更なる減免等について定めております。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、アゼルバイジャンとの間で課税権の調整がより効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待をされます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和五年二月七日に条約の署名が行われました。

 この条約は、アルジェリアとの間で、二重課税の除去を目的として、投資所得に対する源泉地国課税の減免等について定めるものです。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、アルジェリアとの間で課税権の調整が効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

黄川田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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