衆議院

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第10号 令和5年5月10日(水曜日)

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令和五年五月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田仁志君

   理事 小田原 潔君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 中川 郁子君 理事 西銘恒三郎君

   理事 源馬謙太郎君 理事 徳永 久志君

   理事 和田有一朗君 理事 吉田 宣弘君

      秋本 真利君    伊藤信太郎君

      石橋林太郎君    上杉謙太郎君

      城内  実君    島尻安伊子君

      新藤 義孝君    鈴木 貴子君

      鈴木 隼人君    辻  清人君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    本田 太郎君

      青山 大人君    篠原  豪君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      杉本 和巳君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

      吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   外務副大臣        武井 俊輔君

   農林水産副大臣      勝俣 孝明君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高村 泰夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長事務代理)

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 伊藤 茂樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北村 俊博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片平  聡君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    鯰  博行君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 内野洋次郎君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    山口潤一郎君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部審議官)            福田  工君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           恒藤  晃君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           大和 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     深澤 陽一君

  高木  啓君     本田 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  深澤 陽一君     石橋林太郎君

  本田 太郎君     高木  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     城内  実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 二千二十二年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件、二千二十二年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件及び世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長事務代理、領事局長安藤俊英君、大臣官房審議官石月英雄君、大臣官房審議官伊藤茂樹君、大臣官房参事官林誠君、大臣官房参事官北村俊博君、大臣官房参事官片平聡君、大臣官房参事官松尾裕敬君、経済局長鯰博行君、内閣官房内閣審議官高村泰夫君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、民事局長金子修君、財務省大臣官房審議官内野洋次郎君、水産庁漁政部長山口潤一郎君、資源管理部審議官福田工君、経済産業省大臣官房審議官恒藤晃君、防衛省防衛政策局次長安藤敦史君、統合幕僚監部総括官大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 おはようございます。自由民主党の中川郁子です。

 法案の審議に入ります前に、スーダンにおける邦人退避、外交力強化について質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 四月十五日、スーダンで武力衝突が発生し、我が国では、四日後の十九日、林外務大臣から浜田防衛大臣に対し、現地に滞在する邦人輸送の実施に必要となる準備行為を要請されました。二十四日、輸送機がスーダンに向かい、政府の調整で首都ハルツームから陸路で東部の空港まで移動した日本人とその御家族四十五人をジブチに輸送しました。

 迅速な対応だったと評価する声も多いと聞いていますが、海外唯一の自衛隊の拠点がジブチにあり、スーダンから近かったこと、昨年、派遣の迅速化を図る制度改正も行われ、自衛隊機を派遣、待機させる際に必要だった閣議決定の手続を省略できるようになったこと、自衛隊による在外邦人の輸送が今回で六回目ということもあり、これまでの教訓を十分に生かすことができたのであろうというふうに思っています。

 その一方で、十年前の法改正で可能になった自衛隊の車両による陸上輸送は、今回も実施することはありませんでした。

 日本人とその御家族を乗せたチャーター機は、日本時間の二十八日にジブチを出発し、二十九日に羽田空港に到着しました。

 外務省からは武井外務副大臣が二十三日から二十九日までジブチに赴かれたわけでありますけれども、状況が刻一刻と変化する中、関係国政府と連携しながらの邦人保護、特に、携帯電話もほとんど通じなかったとも伺っています。今回の任務、武井副大臣は本当に御苦労されたというふうに思っています。

 現地の様子、そして今後も起こり得る邦人保護の課題について、また副大臣御自身の感想も含めてお話をいただければと思います。

武井副大臣 お答えいたします。

 まず、大変厳しい現地の情勢の中で、様々な困難を乗り越えて勇気を持って退避をいただきました邦人の皆様に、心から敬意を表したいと存じます。

 今回の一連の退避オペレーションでは、在留邦人五十九名及びその外国籍の御家族計八名の六十七名の方がスーダンから退避をされました。私も、今委員よりお話しいただきましたが、ジブチに参りまして、ポートスーダンから自衛隊機で退避をされた邦人の皆様とその御家族をお迎えをいたしました。そして、日本に帰国をされます政府チャーター機へ搭乗される皆様もお見送りをしたところであります。

 今回のオペレーションは、スーダン国内の急速な事情の悪化に伴い、在外公館の邦人保護体制、そして現地のインフラ等に非常に大きな制約がございました。先ほどお話もございましたとおり、通信環境も極めて悪いといったような状況、そしてまた停電も続いていたといったような状況でございました。そういった中で、在外公館と本省が緊密に連携しまして、関係省庁そして関係各国と緊密に意思疎通を図りながら邦人退避の対応を進め、結果として、退避を希望されていた邦人全員の退避を実現することができたところであります。

 様々な困難の中、邦人退避を遂行した大使館、自衛隊、そして安全な退避に貢献いたしましたJICAを始めとする関係者の努力に改めて敬意を表するものであります。

 また、加えまして、邦人退避に御協力をいただきました韓国、フランス、ドイツ、米国、英国、サウジアラビア、UAE、カナダ、ヨルダンを始めとする関係各国及び国連などの関係機関にも改めて感謝を申し上げたいと存じます。

 また、先ほど委員よりもお話がございましたが、特に今回のオペレーションで実感いたしましたのは、ジブチの自衛隊拠点の重要性であります。このジブチの自衛隊拠点がなければ、今回のオペレーションは非常に困難を来したというふうに思っております。このジブチの拠点におきまして、邦人そしてまたその御家族を、退避してから滞在を受け入れていただくなどいたしました。

 そしてまた、今回の一連のオペレーションを通じまして、外務省と防衛省の連携が更に深まったものと感じておりまして、引き続き、防衛省が実施する訓練への参加等を通じて、両省間の連携を一層強化してまいりたいと考えております。

 現時点では、スーダンに、退避を希望する邦人はいないと承知しているところでありますが、ごく少数の邦人が在留されておりまして、政府といたしましては、ジブチの臨時事務所の対応を含め、スーダン国内に在留する邦人の安全確保及び必要な支援に引き続き全力を挙げて対応してまいりたいと考えております。

 また、今回の経験も踏まえまして、関係省庁と連携しつつ、海外に渡航、滞在する邦人を保護するための体制と施策を強化してまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 武井副大臣、ありがとうございました。

 次に、林外務大臣にお伺いしたいと思います。

 現在、自民党外交部会におきまして、国家安全保障戦略を具現化するための外交力の抜本的強化を求める決議の取りまとめを行っているところでございます。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している現在、危機を未然に防ぐため、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現するための強力な外交を推進する必要があると存じております。デジタル技術、AIも活用した情報力の抜本的強化、そのための基盤構築、気候変動や国際保健を始めとした地球規模の課題への対応、人間の安全保障の推進など、課題も多岐にわたっているというふうに思います。そのために、外交、領事体制の抜本的強化は必要不可欠です。

 外交の要諦は人であると考えています。先ほどのスーダンの武力衝突を始め、世界では、紛争、災害、テロ、中国での邦人拘束の事例もあります。様々発生している中で、邦人保護は外務省における最も重要な使命であると考えています。

 外務省は、有事の邦人退避について、あらゆる状況を想定しながら検討していることと思いますが、領事定員を主要国並みに拡充すること、あらゆる環境においても外交活動を継続できるよう、また、業務遂行に当たって自己負担を強いられることがないように、旅費や警備などの活動経費の確保など、旅費法改正に向けた動きも踏まえつつ、環境整備を行うことが重要であると考えています。

 在外公館は日本の顔であり、最後のとりでだと思います。様々な制約で後回しになりがちですが、緊急時の対応、邦人保護、情報保全など、新たな脅威に備えつつ、時代に即した施設整備が必要であると考えています。林大臣のお考えを聞かせてください。

林国務大臣 スーダンからの邦人退避の過程でも改めて示されましたとおり、海外に渡航、滞在する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つでありまして、その最前線である在外公館において領事体制を強化することは喫緊の課題であると考えております。

 また、在外公館施設は非常時には邦人保護の最後のとりでとなるため、施設を適切に整備することも極めて重要であります。今般のスーダンからの邦人退避など、緊急時の対応や邦人保護、情報保全等の新たな脅威への備えなど、近年、大使館に必要とされる機能が拡大する中で、在外公館施設の強靱化を図っていく必要があると考えております。

 外交力に関しましては、昨年十二月に発出した国家安全保障戦略におきましても、我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素の第一として掲げたところでございまして、我が国として主導的かつ積極的な外交を展開するべく、今御指摘のあった諸点を念頭に置きながら、人的体制、そして財政基盤、そして在外公館の整備等々をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 林大臣、ありがとうございました。

 ここからは、議題となっておりますマラケシュ協定についてお伺いしたいと思います。

 WTOは、その附属書、漁業補助金に関する協定の第三条一項をこの度改正したということであります。

 世界のIUU漁業による漁獲量は一千百万トンから二千六百万トン、日本円に換算すると一兆一千億円から二兆五千八百四十五億円に上るとされ、これは、日本の漁業、養殖業を合わせた生産量四百四十二万トンよりはるかに多く、ほぼ同等の生産額に相当すると推定されています。

 このIUU漁業が海洋環境を悪化させる原因の一つであるという指摘もあります。

 令和二年、我が国においても水産流通適正化法を成立させ、国際的にIUU漁業のおそれの多い魚種について、輸入時に外国政府が発行する証明書の添付を求める措置を講ずることとしましたが、その実態把握が難しいのが水産流通の世界であると感じています。

 その点ではよいルールができたというふうに思われますが、WTOの補助金の議論には長い歴史があります。

 今回、ジュネーブで開催された第十二回WTO閣僚会議で本議定書が採択されたわけでありますが、懸念される事項といたしましては、我が国の補助金のうち、本議定書の締結に伴い廃止しなければならないものはあるのかということであります。

 加盟国の代表で構成される漁業補助金に関する委員会が少なくとも年二回審査をされるということでありますが、日本の漁業補助金について、国際社会に向けて十分な説明ができるものであるか、お伺いしたいというふうに思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 WTO協定改正議定書によりまして、IUU漁業につながる補助金が禁止されるとともに、過剰な漁獲により資源状態が悪化した魚種につきましては、資源の持続可能な水準への回復に向けた措置が実施されていない限り、漁業者に対する補助金が禁止されるということになります。

 我が国は、平成三十年に改正いたしました漁業法等に基づきまして国際的に遜色のない資源管理措置を実施しておりますことから、我が国が本議定書を締結しても禁止される補助金はないものと考えてございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 コーヒー協定についてです。

 二〇一四年の十月一日、コーヒーの日に来日された国際コーヒー機関のシルヴァ事務局長を農林水産省でお迎えしたことがありました。当時、コンビニコーヒーが話題になっていたということもあり、農林水産省のコンビニでコーヒーを用意して、おもてなしをさせていただいたことがありました。

 国際コーヒー協定は、多くの人々、特に開発途上国における人々の生計にとってコーヒー産業が重要であることを認め、コーヒー農業者が真の繁栄を達成するためにバリューチェーン構成員の間における協力が必要であるとして、輸出国と輸入国によって締結されています。

 我が国は世界第四位のコーヒー輸入国、消費国でありますので、安定的にコーヒー原料を輸入し、国内のコーヒー関連産業が持続的に発展することは非常に重要だというふうに思います。

 一方で、消費大国であるアメリカがこの協定から離脱している中、日本が本協定を締結する意義についてお聞かせいただきたいというふうに思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 世界のコーヒー市場におきまして新興国のコーヒー需要の高まり等により需給が逼迫している中、世界第四位のコーヒー輸入国であります我が国へのコーヒーの安定的輸入の確保を図るために、我が国として、二千二十二年の国際コーヒー協定を早期に締結し、同協定が発効するに当たって、原加盟国として議論を主導する必要があると考えております。

 委員が御指摘になられましたように、アメリカが加盟していない状態でありましても国際コーヒー機関に加盟する意義といたしましては、主要なコーヒー輸出国の多くが加盟し、輸入国につきましてもアメリカ以外の主要なコーヒー輸入国のほとんどが加盟している中、輸出国と輸入国双方で構成する理事会に参加することによって緊密に情報交換を行うのみならず、我が国に輸入されるコーヒーの安全性や品質等を確保するため、コーヒーに関する国際的な政策協調の場において我が国の声を反映させていくことが挙げられると考えております。

中川(郁)委員 質問時間が終了したので、これにて質問を終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。

黄川田委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 まず、調停に関するシンガポール条約について質問をします。

 この条約について、調停による国際的な和解合意の執行等に関する国際的な枠組みを定めることで、国際商事分野において国際的な調停の利用を促進し、調和の取れた国際経済関係の発展に寄与することであるとお聞きをしました。

 有意義なことであり、公明党として、この条約の承認を望むものであります。

 ところで、この条約の承認手続と併せて国内法の整備が行われました。具体的には、先月、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律などが成立をしたところです。条約と国内法が整合性を有することは法の安定の観点から重要ですので、この法案等について、公明党として賛成をさせていただいたところでございます。

 この点、かつて、TOC条約を締結するために、テロ等準備罪の成立を先駆けたことがありました。他方で、先月衆議院で承認された日米宇宙協定については、特段の国内法整備は今国会では行われておりません。この違いはなぜゆえに生じるのでしょうか。

 そこで、条約について、国内法整備が必要なものとそうでないものとの違いについて、一般論として外務省から御説明をお聞きしたいと存じます。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が締結する条約については、憲法第九十八条二項により、誠実に遵守することが求められております。このため、条約を締結するに当たっては、我が国の既存の国内法令により当該条約の内容を十分に実施できるかどうかを様々な観点から精査した上で、それでは条約の内容が十分に実施できないと判断される場合には、新たな立法措置が必要となります。(発言する者あり)

黄川田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

黄川田委員長 速記を起こしてください。

 吉田君。

吉田(宣)委員 じゃ、質問を続けます。

 それでは、今の答弁を前提にしまして、調停に関するシンガポール条約では具体的にどのような理由により国内法の整備が必要であったのかについて、外務省、法務省からそれぞれ御説明を伺いたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 調停に関するシンガポール条約の締約国は、調停による和解合意のうち本条約の対象となるものを執行し、また、紛争が既に解決されていることを証明するために、当該和解合意を援用することを認めなければならないとされております。

 一方、本条約は、その実施のために締約国内でどのような手続を定めるかについては具体的な規定を置いておらず、それぞれの締約国の手続規則に委ねるとされております。

 我が国においては、国際性の有無にかかわらず、調停により成立した和解合意に執行力を付与するための手続規則に該当する国内法令はこれまで存在しておりませんでした。したがって、本条約を締結するに当たっては、本条約の対象となる和解合意に執行力を付与するための法律を新たに制定する必要がございました。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省からお答えしたとおりでございますが、我が国において、調停に関するシンガポール条約を実施するために必要となる手続等を規定する国内法の整備が必要である、そのためでございます。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございます。

 本条約の締結により、日本における国際調停が活性化し、外国から投資を呼び込むことが有利になったり、日本企業の海外展開を後押しすることにもなると思います。適切な運用をお願いしたく存じます。

 次に、二千二十二年国際コーヒー協定について質問いたします。

 この協定の主な内容は、国際コーヒー機関の組織、分担金、コーヒーに関する情報の交換、持続可能なコーヒー産業の実現のための国際協力及び官民連携について定めるものとお聞きをしました。

 日本は、二〇一九年生豆換算輸入量ベースで世界第四位のコーヒー輸入国であるともお聞きをしました。国民の多くが日常的にコーヒーに親しんでいることは誰もが認めるところであると思います。

 日本へのコーヒーの安定的輸入の確保を図り、生産国との友好を図るためにも本条約は有意義であり、公明党として、この協定の承認を望むものであります。

 そして、国民がこれからもコーヒーに親しむためには、生産国からコーヒーを日本に輸入する業者の皆様、また卸売の業者の皆様、流通に関わる業者の皆様、小売業者の皆様、それぞれの御努力があってのことであり、感謝しなければならないと思っております。

 この点、先ほど申し上げたこの協定の主な内容に、官民連携について定められているということでございますけれども、官と民がどのように連携するかについて、外務省から具体的に説明を受けたいと思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 二千二十二年の国際コーヒー協定では、民間部門の参加に係る規定が置かれておりまして、例えば、民間事業者や市民社会は賛助加盟員として機関の活動に関与することができる旨規定されておりますほか、官民連携の主な枠組みとして、加盟国政府の代表と民間部門の代表から構成されるコーヒー官民作業部会が新設されることになっております。

 全ての賛助加盟員で構成する賛助加盟員会は、諮問機関として、理事会の要請に応じて勧告を行うこと等ができるほか、その議長、副議長は、国際コーヒー機関の意思決定機関である国際コーヒー理事会において発言権を有しております。また、コーヒー官民作業部会は、コーヒー産業に関する官民対話等を行い、その討議の結果や勧告等を理事会に提出することになっております。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございます。

 コーヒーは世界で引っ張りだこになっているとお聞きをしました。日本国民がこれからもコーヒーに親しんでいただけるような適切な運用をお願いしたく存じます。

 次に、WTO協定改定議定書、漁業補助金協定について質問します。

 この協定の主な内容として、違法な漁業、報告されていない漁業、規制されていない漁業につながる補助金の禁止、乱獲された資源の枯渇を助長する補助金の原則禁止などを内容としているとお聞きをしております。

 昨年七月に公開された国連世界人口推計によると、昨年の世界人口は七十九・四億人であり、今後も人口は増え続け、二〇八六年に百四億人に達するというような報道に触れたことがございます。

 今後の世界の人口増加の状況に鑑みるに、漁業資源の国際的な管理の重要性は増してくるものと推察をされますので、この協定について、公明党は承認を望むものであります。

 そこで、時間の関係で、確認させていただきたいことを一つだけ質問いたします。

 乱獲により枯渇が心配される漁業資源の保全にこの協定はどのように役立つのかについて、外務省から答弁をお願いしたく存じます。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 本協定では、乱獲された資源に対する補助金を原則禁止とし、その例外として、締約国が生物学的に持続可能な水準に回復させるための措置を実施する場合に限って当該資源に対する補助金の交付が可能とされておりまして、このことから、漁業資源の保全にこの協定は資するものと考えております。

吉田(宣)委員 これからも、漁業資源の国際的な管理、人口との調和、そういったものをしっかりお願いしたく存じます。

 さて、先日、岸田総理大臣が韓国を訪問し、日韓シャトル外交が完全に復活しました。大変に喜ばしいことであり、公明党としても強く歓迎をするところでございます。岸田総理、林外務大臣始め外務省の皆様に、これまでの御努力に深く感謝と敬意を表したいと思います。

 岸田総理と尹大統領との会談では、安全保障の強化や半導体のサプライチェーン構築等の経済協力の深化などが共通認識として示され、日韓新未来開幕ともいうべき画期的会談になったと存じます。そして、この流れを日韓両国の努力で維持していくことが重要だと私は考えております。この点、その維持という観点から重要なことは、日韓の民間交流を牽引する若者世代の視点じゃないかと私は思っております。

 そこで、学術や文化芸術など、広く若者世代の日韓民間交流をこれまで以上に支援し、応援していくべきであると考えますけれども、林外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 韓国との間では、青少年交流を含む人的交流事業である対日理解促進交流プログラム、JENESYSという名前でございますが、これらを通じて、一九八九年度以降、これまで累計四万名を超える人材が交流を行ってきておるところでございます。

 今月七日の日韓首脳会談におきましては、岸田総理から、日本政府として、韓国との間でこのJENESYSによる対面での青少年交流の全面再開と交流人数の昨年度比倍増を決定したという旨を伝達したところでございます。

 日本政府として、引き続き、未来を担う若者たちの交流を支援してまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 大臣、是非その御決意、しっかり実践していただいて、日韓の若者世代の交流がこれからの未来の日韓の本当に友好関係を強く維持していくこと、そういうことにつながっておりますので、是非期待しておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

黄川田委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 立憲民主党の源馬謙太郎です。今日もよろしくお願いいたします。

 まず初めに大臣に、通告していないんですけれども、伺いたいと思います。

 サミットももう目の前になりまして、大臣も様々、各国の要人ですとかあるいは駐日大使にも頻繁にお会いになると思うんですけれども、その際に恐らくお話が出ていると思いますが、サミット前までの、国内でのLGBTQの皆さんへの差別を禁止する、あるいは理解を増進するという、そのための法律をG7で唯一持っていない日本も是非作った方がいいのではないかというお話、度々聞かれていると思います。

 そのことについて、今報道では、ちょっとなかなか、与党内で調整がサミット前までには難しいんじゃないかということも報道されていますが、大臣としてではなく一政治家として、このLGBTQへの理解増進、そしてそのための法整備の必要性について政治家林先生がどういうふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。

林国務大臣 外務省としては、インクルーシブな社会ということを常に目指し、それを我が国のスタンスを説明をしてきたところでございますが、私個人ということでここでお答えするのが適切かどうか分かりませんが、インクルーシブな社会を目指すというのは非常に大事だというふうに思っております。

 一方で、法律ということになりますと、やはり国民の理解というもの抜きにはなかなかやっていけないということも、これは一方で事実であろうかと思っております。

 もう大分昔の話でございますが、アメリカに留学をしておりましたときに、九〇年代の初頭だったと思いますが、大学の掲示板に、ゲイ・アンド・レズビアン・コーカス、コーカスというのはクラブみたいな、同好会みたいなものですが、そういうお知らせがあって、最初は、当時の私の感覚でしたから、これは何かいたずらをしているのかなというふうに思ったんですが、クラスメートに聞いてみたら、きちっとこういうコーカスがあって活動しているんだ、何がおかしいんだと逆に言われたことを思い出しております。

 それぞれの国でいろいろな状況はあるというふうに思いますが、やはり、相手のことをしっかりと理解をし、和して同ぜずという言葉がありますけれども、自分がそうでないからといって否定をするというのではなくて、いろいろな立場、いろいろな主張等があるということは、常に、このことに限らず、なるべく広くそういうことに対する理解というのは強めていく、増進していくことは必要ではないかというふうに思っております。

源馬委員 ありがとうございます。

 まだ少し時間がありますので、是非与党の皆さんには党内でしっかりと前に議論を進めていただけたらなというふうに思います。私も、大臣の御意見には全く賛同するところでございます。

 次に、ミャンマーへ無償供与された船舶が軍事利用されたのではないかという報道について伺いたいと思います。

 まずは、参考人で結構なんですが、先日、四月二十六日に、小野外務報道官の会見で、軍事利用されていたということが明らかになったという発表がされました。この委員会でも、徳永筆頭理事始め、この件について度々質疑されてきましたが、この委員会ではまだ明確な報告もございません。まず、事実関係を改めてこの委員会で報告をしていただきたいと思います。

林国務大臣 今御指摘のあった案件でございますが、ミャンマーの水上交通輸送の能力向上のため、ミャンマー内陸水運公社に対して旅客船三隻を供与した案件でありまして、二〇一六年に日・ミャンマー政府間で交換公文を締結し、二〇一七年に二隻の中古船、二〇一九年に一隻の新造船がミャンマー側に引き渡され、ミャンマー側において通勤等の交通に利用されてきたものでございます。

 この当該船舶が軍事利用されたのではないかという点につきましては、在ミャンマー日本国大使館を通じてミャンマー側に対して累次の事実確認を行ってきた結果、日本政府として、ラカイン州当局が、昨年秋の一時期、兵士や武器の輸送のために、我が国が供与した船舶を使用したという判断に至ったところでございます。

 今回の事案は、供与した機材等の適正利用を規定した国際約束に反するものと認識しておりまして、極めて遺憾であります。我が国からの厳重な抗議に対して、ミャンマー側からは遺憾の意の表明及び再発防止を徹底する旨の回答があったところでございますが、日本政府としても、再発防止の徹底を確保すべく、引き続き、状況確認と適正利用の働きかけに努めてまいりたいと考えております。

源馬委員 参考人で結構ですけれども、これはいつ分かったんですか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から答弁をさせていただきましたとおり、この件につきましては、昨年の報道以降、直ちに在ミャンマー大使館のハイレベルの方からミャンマー側に対しまして申入れを行って、これまでやり取りを行ってきたところでございます。

 やり取りの詳細につきましては、外交上のやり取りであるため差し控えさせていただきたいと思いますが、繰り返しになりますけれども、ミャンマー大使館から運輸・通信省、そして投資・対外経済関係省、外務省のハイレベル、そういうところに働きかけた回答を踏まえまして、今般、ミャンマー側による不適正使用があったとの判断に至ったところでございます。

源馬委員 いつ分かったんですか。昨年から累次の調査をしているというのは分かりましたけれども、それで実際に軍事利用されていたと外務省としていつ認識をしたんですか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、今申し上げましたとおり、やり取りの詳細は差し控えさせていただきますけれども、これまで行ってきたハイレベルの累次のやり取り、そして、現地は大使館からかなり離れたところにございまして、かつ、治安情勢が悪いということもありまして、これまで近づけなかったところでございますけれども、今年の三月に現地の大使館員が現地も視察しまして、そういう情報を踏まえて、総合的に今回そういう判断に至ったところでございます。

源馬委員 外交上のやり取りの詳細を聞いているわけではなくて、いつ外務省がこれは軍事利用を確かにされていたと判断されたのかという、いつ判断されたのかということを伺っているので、その時期をお答えいただきたいと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 この件につきましては、この委員会の場でも何度も御指摘をいただいたところでございまして、我々としましては、事実関係が判明次第、発表したいということで、御報告したいということを考えておりましたところでございます。

 その結果としまして、先ほど申し上げました一連の情報を踏まえまして、四月下旬の発表のタイミングの直前に、我々として、今回、そういう利用があったということを発表したところでございます。

源馬委員 だから、四月の二十六日の記者会見の直前にそう判断したということなんですよね。それは別に答えても全く問題ないことだと思うので、最初からその時期を答えていただければいいと思います。

 それで、四月までかかった。昨年九月に報道があってから、現地入りしたのは三月になってようやくで、そして四月に、軍事利用を確かにされていたと判断した。なぜ、これだけ調査に時間がかかったんですか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、報道で本件が報じられて以降、在ミャンマー大使館の方からミャンマー側に対しまして、繰り返し、ハイレベルの申入れを含めまして、いろいろなやり取りをしてまいったところでございます。また、今回の場所はラカイン州というところで、大使館から遠く離れていて、かつ、現地の治安状況が悪いということもあり近づけなかったということがありましたけれども、それがようやく、この三月に現地入りすることもできましたので、そういう一連のプロセスの中でかなり時間がかかってしまったということでございます。

源馬委員 じゃ、それは特殊な今のミャンマーの事情があったからということであって、今後、そういったことをほかの国とかで調査をするときには、こんなに時間はかからないという認識でいいですか。

 今、武器輸出の話なんかも議論されていますし、OSAの話もあります。ほかにも、日本のODAが軍事利用に、あるいは目的外使用をされないように、これはモニタリングは常にやっていかなくてはいけないことだと思いますが、それにこんなに、九月から四月までですから、半年以上時間がかかるということはもうないということでよろしいですか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 一般的なところから申し上げる形になってしまいますけれども、日本が行う開発協力案件、これにつきましては、供与の前に国際約束を結びまして、供与する資機材等が適正に利用されるということをまず確保しているところでございます。また、モニタリングの重要性、これは委員御指摘のとおりでございますので、事後にはそういうモニタリングをしっかりやっていく、そういう形で適正性の確保に努めてきているところでございます。

 そのシステム自体は我々としては機能しているというふうに思っておりますが、まさに今回につきましては、現地に行くことができなかった、治安状況が悪化していたということで、そこの確認ができなかったという事情がございます。

源馬委員 ミャンマーでは、私もこの委員会で指摘をしてきたとおり、バゴー橋の建設に当たって日本のODAの資金が軍系企業に流れている、そういう事実も、これは外務省も認識していると思いますけれども、ありました。引き続き、新規のODAは今止めていますが、今、オンゴーイングで進められているODAも、再びこうやって目的外利用があったり軍系企業や国軍を利することがないように、しっかりとチェックをしていっていただきたいと思います。

 それでは、条約について質問をしていきたいと思います。

 まずは、調停に関するシンガポール条約について伺います。

 これまでも、国際的な商取引において、その紛争解決手続としては裁判、仲裁、調停といった方法があり、このうち仲裁については、一九五九年発効のニューヨーク条約のように、古くから制度が整っていた、枠組みが存在してきたというふうに理解をしております。

 一方で、紛争当事者が、自主的な手続の一つである調停について、これは外務省のウェブサイトにもありますけれども、国際的な和解合意を執行するための枠組みがこれまで存在しなかったということだと理解しています。

 仲裁に関して国際枠組みがあるのに調停に関してはなかった、この理由と背景についてどのように外務省は認識されているか、教えてください。

片平政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、調停に関しては、これまで国際的な強制執行の枠組みは存在してございませんでした。

 その理由として一例を挙げさせていただければ、例えば、二〇〇二年に国際連合国際商取引法委員会、略称UNCITRALと申しますが、そこにおいて調停による和解合意への執行力の付与について議論された際には、その当時は、執行力の付与の是非や要件に関する各国の意見の隔たりが大きく、統一的な規定を設けることが困難だったという実態がございました。

 しかし、その後、国際商事調停は、国際商事紛争の解決手段として、仲裁と比較して簡易、迅速、低廉である点、当事者の合意による解決であるため、結果の予測可能性が高い点、友好的な手段であるため、企業の取引関係を継続しやすい点などから、その有効性が注目されるようになり、仲裁と同様に利用を促進するためには、調停による国際的な和解合意にも執行力を付与する枠組みが必要という機運が高まったと承知しております。

 このような中、二〇〇五年二月に調停に関するシンガポール条約の交渉がUNCITRALにおいて開始され、二〇一八年十二月の国際連合総会において本条約は採択されました。

源馬委員 調停については、商事に限らずに、例えば離婚のときとか、家事調停、あるいは民事上の様々な紛争解決の場でも国内的にも利用されている、国際的にも利用されていると思います。

 しかし、本条約では、商事の分野における国際的な和解合意を執行するための枠組みというふうになっていて、消費者紛争ですとか家事紛争、労働紛争については、第一条2において適用が明確に除外をされているというふうに理解をしております。

 この作成過程において、これらの紛争の適用を除外するとしたその理由は何なのか、教えていただきたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 済みません、先ほどの答弁で二〇〇五年と申し上げてしまいましたが、二〇一五年に交渉が開始されたということで、誤りでございます。大変失礼いたしました。

 今の御指摘の点についてお答え申し上げます。

 御指摘のとおり、シンガポール条約の下では、個人、家族又は家庭に関する紛争を解決するために締結された和解合意や、親族法、相続法又は雇用法に関する和解合意は対象から除外されてございます。

 これは、商事性を有しない紛争を対象とした場合、強制執行の場面において各国固有の法的な文化や公序と衝突しやすいことから、家事紛争などの非商事紛争は本条約の作成過程において本条約の対象から除外されたものでございます。

 また、消費者紛争や労働紛争については、一般的に、消費者と事業者の間又は労働者と事業者の間には交渉力や情報等の不均衡があることが想定され、当事者の真意に基づかない和解合意が成立するおそれが類型的に高くなると考えられることから、本条約の成立過程において本条約の対象から除外されたものでございます。

源馬委員 交渉力に差があるからこそ、そうした枠組みは本当は必要なんじゃないかと私は個人的には思います。

 政府からの本条約の概要資料の中で、なぜ早期締結する必要性があるかというところで、本条約への加入により国際的な調停による紛争解決の国内での実効性が確保されることで、我が国において国際的な調停が活性化し、紛争を適切に解決できるようになり、外国からの投資誘致及び日本企業の海外展開に資するというふうに早期に締結する必要性が述べられているわけです。

 そこで、伺いたいんですけれども、これまで我が国において行われた国際商事分野における国際調停の件数はどのぐらいになっているのか、これを諸外国との比較を含めて教えていただきたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 調停は、調停機関を利用せず、当事者自らが手続を進めるアドホック調停もあること、また、利用する企業の視点からは、企業の評判や秘密を保持したいという意向もあることから、実施件数やその内訳、特に、国際調停なのか国内調停なのか等を包括的に把握することは困難な事情がございます。

 その上で申し上げれば、日本商事仲裁協会、JCAAは、二〇二一年の調停の実施件数を一件と公表しているものと承知しております。

 諸外国との比較について申し上げれば、例えば、パリの国際商業会議所、ICCは二〇二一年の調停の実施件数を四十四件、香港国際仲裁センターは十二件と公表していると承知しております。

源馬委員 事前にいただいた資料で、今御紹介があったJCAA、これは二〇一八年で一件、そのほかにも、シンガポールだと二十七件、この年はICCだと三十七件と、圧倒的にやはり日本で行われている調停の件数というのは少ないと思うんですよ。

 この条約を締結をすると、どういう理屈で調停の件数が増え、海外からの投資が増えるというふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 国際商事紛争の解決手段としての調停の有効性が注目されている中、本条約の締結国の数は拡大することが想定されます。今後は、調停の国際的な利用が更に進んでいくことが期待されると考えております。

 こうした中、我が国が米国や欧州諸国に先駆けて早期に本条約を締結することは、商事紛争を適切に解決するための環境を整備し、外国企業による投資活動の予見可能性を高め、ひいては、外国からの投資の呼び込み及び日本企業の海外展開の促進に資するものであると考えております。

 このように、本条約の早期締結は、我が国の経済発展にも寄与するものであると考えております。

源馬委員 調停にはメリットがあるということは私も理解をしております。

 一方で、国内法で、ADR法、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律が立案されたときには、調停に強制執行の可能性を認めると、話合いのテーブルにのってこない者がいるのではないかということが想定される、そうすると、当事者を萎縮させ、かえって和解が成立しにくくなるおそれがあるのではないかという指摘があったというふうに聞いています。

 こういったことが、今まで本条約に署名していなかった我が国では、国内のこうしたデメリットのところが何らかの影響を与えていたのか、そして、併せて、一転して、強制執行を可能とする本条約を締結することに踏み切った、こういうデメリットが懸念されているにもかかわらず踏み切った理由を教えていただきたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ADR法の制定時には、御指摘のような懸念があったと承知しております。

 他方、その後、国際商事紛争の解決手段としての調停の有効性が注目されるようになっており、本条約の締約国が拡大するにつれて、今後は、調停の国際的な利用が更に進んでいくことが期待されると考えております。

 なお、本条約においては、調停合意の当事者が当該和解合意を本条約の執行の対象とすることまで合意している場合のみ、調停合意に執行力を認めることが可能となっております。

 御指摘のような懸念については、このようなことにより適切に手当てされており、強制執行を可能とする本条約を締結することに問題はないと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 次に、WTO協定改正議定書について伺いたいと思います。

 まず初めに、条文上、これは第三条のところですけれども、「違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業に寄与する補助金」というふうに書いてあります。違法な漁業に寄与する補助金という言葉遣いが果たして適切なのか、日本語として。

 寄与というのはもっと、貢献して、プラスな意味合いがあると思いますが、大臣の趣旨説明にも、寄与という言葉は使われていなかったと思うんですよ。違法な漁業につながる補助金は駄目ですよ、そういう趣旨だと思うんですが、つながるでいいんじゃないかと思いますが、なぜ、寄与するという、この日本語はおかしくないですか。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の寄与するとの表現は、英語のコントリビュートの訳語でございますけれども、まず、条文の訳文につきましては、一般に、条約の趣旨を踏まえた上で、正文テキストの意味内容が正確に反映されるよう、個々の文言の意味、我が国が締結している他の条約や国内法令における用語との整合性等を勘案しつつ、慎重に検討した上で作成しております。本議定書の訳文についても、同様に作成したものでございます。

 そして、委員御指摘の、違法なものを目的語として寄与するという表現を用いるのかという点につきましては、例えば、TPP協定におきまして、漁業補助金に関する類似の文脈におきまして、乱獲等にコントリビュートする、寄与するという表現が用いられております。また、テロや核物質関連の条約では、犯罪の実行にコントリビュートする、寄与するという文脈での使用例もございます。

 今回の用語の使用は、こうした先例も踏まえたものでございます。

源馬委員 コントリビュートには別にプラスの意味もマイナスの意味もないと思うんですよね、ニュートラルだと思うんですよ。なので、英語でコントリビュートなら別におかしくないけれども、それを日本語に訳すときに、全部自動的に寄与するに訳すとおかしいのではないかというふうに思います。

 英語も御堪能な大臣、いかがですか、寄与するというのは。

林国務大臣 今、経済局長から答弁したとおり、前例もあるということですが、通常、我々が会話で使うときの語感と、また、こういう条約でどういうふうに訳すかというのは、若干、我々の生活感覚といいますか、日常感覚とは少し違うものがあるのかなと思いながら今やり取りを聞いておったところでございます。

源馬委員 分かりました。

 私は、違法なものに寄与するというのは、ちょっと日本語としておかしいなというふうに思います。

 中身に入っていきますが、大臣の趣旨説明の中でも、なぜこの漁業補助金協定が必要なのかという目的については言及されていなかったと思います。

 そこで、伺いたいんですが、この漁業補助金協定の目的は何なのか、これはWTO協定ですから、この漁業補助金協定と貿易というのがどういうふうに関係しているのか、政府の考えをお伺いしたいと思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定は、違法な漁業、乱獲につながる漁業などを補助金の観点から規制しようとするものでございます。

 そして、WTOは物品やサービスの貿易等について規律する各種の協定を含む協定でございますけれども、その中に補助金及び相殺措置に関する協定というのがございまして、補助金についても規律の対象となっております。

 このような背景もありまして、二〇〇一年に開始されましたWTOの交渉においては、環境への配慮も念頭に、漁業補助金に関する規律についても交渉が行われることとなりました。

 なお、WTO設立協定の前文には、環境を保護し及び保全し並びにそのための手段を拡充することに努めつつ、持続可能な開発の目的に従って世界の資源を最も適当な形で利用することを考慮する旨を定めておりまして、海洋生物資源の持続可能な利用を含む環境保護や持続可能な開発の促進といった貿易と環境の課題についてWTOとして取り組むことは、WTO協定上も想定されているというふうに考えております。

源馬委員 この協定が結ばれることになると、我が国が今行っている補助金のうち、漁業補助金のうち、これに抵触するというか、ひっかかる補助金というのは今存在していると認識されていますか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 WTO協定改定議定書により、IUU漁業につながる補助金が禁止されるとともに、過剰な漁獲により資源状態が悪化した魚種については、資源の持続可能な水準への回復に向けた措置が実施されていない限り、漁業者に対する補助金が禁止されることになります。

 我が国は、改正漁業法等に基づき国際的に遜色のない資源管理措置を実施しているところでありまして、我が国が本議定書を締結しても禁止される漁業補助金はないと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 資源管理措置が適切に行われているかどうかという説明もこの協定で求められることになるというふうに聞いておりますが、令和三年度の水産白書で、日本の水産資源が枯渇してきている現状を見て、より適切に資源管理をもし行っていれば減少を防止あるいは緩和できた水産資源も多いというふうに水産白書で政府は述べているわけですけれども、我が国の資源管理の実施が十分に適切であるということ、その説明を求められるわけですが、一方で、水産白書で、もっと適切な資源管理を行っていれば減少を防げたかもしれないというふうに政府は認めているわけですけれども、それを総合して、今の我が国の資源管理の実施が適切であると十分説明できるような中身になっているのか、教えていただきたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 水産資源の過剰漁獲を防止し、また、減少した資源を回復させるためには、科学的な資源評価を実施し、資源状態と漁業による影響を正確に把握し、この結果に基づき漁業を適切に管理することが重要です。

 現在、我が国では、過去においてより適切に資源管理を行っていれば減少を防止、緩和できた水産資源も多かったとの事情を踏まえ、平成三十年に改正された漁業法により、資源評価の対象魚種を約二百種まで拡大し、この評価結果等に基づき、主要な魚種には漁獲可能量、TACによる管理を、それ以外の魚種については漁船の隻数や規模、漁獲期間の制限等を行い、さらに、これらに加えて、必要に応じ漁業者の自主的な取組を組み合わせて管理する仕組みを構築して、資源の持続的な利用と減少した資源の回復に取り組んでいるところでございます。

 以上のことから、我が国は適切な資源管理を行っていると十分に説明できる状況になっていると認識してございます。

源馬委員 もう一つだけ伺いたいと思いますが、この協定において、途上国には特別待遇があるということです。

 WTOに加入するときに、自分が途上国かどうかという申請によって途上国かどうかが決まるということで、中国やインドなんかも途上国というふうに規定されているわけですが、もう成長を十分に遂げている中国やインドが特別待遇を使ってこの協定の特別措置を、恩恵を受けることになると、この協定の意義そのものが失われてしまうのではないかと思いますが、このことについて政府はどう対応していくのか、特に、中国とインド、途上国である中国とインドにどういうふうに向き合っていくのか、伺いたいと思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 漁業補助金協定には、開発途上加盟国に関し、領海及び排他的経済水域におけるIUU漁業等に対する補助金や乱獲された資源に対する補助金の禁止について、それぞれ本協定の効力発生の日から二年間、これらの規定の適用が猶予されるとともに、紛争解決の規定の対象から除外される旨の規定等が置かれております。

 一方、現時点におきまして、委員御指摘の中国及びインドが漁業補助金協定においてどのような態度を取るかについてはまだ定かではありませんけれども、本協定には開発途上加盟国の定義についての規定はございません。

 いずれにしましても、本協定は、開発途上加盟国に関し、一定の期間に限り一定の規律の実施を猶予する等の優遇措置を設けておりますけれども、これは、開発途上加盟国の早期締結を促し、同協定の早期発効につなげていくための仕組みでございます。

 本協定に規定される優遇措置は二年間ということであり、その後には、開発途上加盟国も他の加盟国と同様に義務を負うことになります。

源馬委員 最後に一点だけ、コーヒーについて伺いたいと思います、コーヒー協定。

 先ほどもちょっと議論に出ましたが、アメリカがやはり加入していないということは非常に大きいと思うんですよね。今後、アメリカに加盟を促していく、そういう方針があるかどうかだけ、最後に伺いたいと思います。

鯰政府参考人 委員御指摘のとおり、アメリカは現在、国際コーヒー機関に加盟しておりません。これは、二〇一八年三月に、当時、トランプ大統領のときです、国際コーヒー機関から脱退を表明したわけでございます。

 その後、二〇一八年の四月、国際コーヒー機関は、機関全体といたしまして米国の脱退の撤回を促すということを決議するとともに、再加盟を望み、米国脱退後も米国のコーヒー民間部門とは引き続き緊密に連携していくという旨を明らかにしております。

源馬委員 ありがとうございました。終わります。

黄川田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 冒頭、私は、従来からこの委員会で、アジア版NATOは、結果として、権威主義国家に対峙するという点では必要であるということを何回も主張してまいりましたが、これは質問ではありませんが、ニュース、報道において、駐米大使の冨田さんがワシントン講演で、北大西洋条約機構、NATOが連絡事務所を東京に開設する方向で調整していることを明らかにした、こういうふうに言われております。

 これは私は非常に歓迎すべきことだというふうに思っておりますが、大臣、これに関してもし所見があれば。なければ次の質問に入ります。

林国務大臣 今委員がおっしゃったことは、議論はございます。まだ決まっておりませんけれども、そういう議論があるということだけは申し上げておきたいと思います。

松原委員 それでは、法案の質疑をまず行います。

 国際商事分野における紛争を解決するため、当事者が仲裁と調停のいずれかを選択しようと検討する場合、調停を選択するのはどのような場合と考えているか、お伺いします。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 仲裁は、当事者が選任した第三者である仲裁人の判断に紛争解決を委ねる手続でございます。一方、調停は、当事者が選任した第三者である調停人の関与の下で、合意によって紛争解決を図る手段であります。

 調停は、仲裁と比較して、一般的に仲裁よりも簡易、迅速、低廉であること、紛争解決の結果を当事者がコントロールすることができること、また、友好的な手続であるため、企業の取引関係を継続しやすいといったメリットがあると言われており、当事者がこれらのメリットを重視する場合には調停を利用することもあり得ると考えております。

松原委員 次に、調停、仲裁、様々ありますが、こういった条約が結ばれるということ、この内容、締結による効果を国内外のコミュニティーに周知、広報していくことが必要だと思いますが、どのような方法を検討しているのか、お伺いいたします。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 調停に関するシンガポール条約は、二〇一八年十二月に採択された比較的新しい条約であることから、現時点では締約国数は十一か国とそれほど多くありませんが、今後、締約国は拡大していくことが見込まれます。我が国としても、締約国の拡大に向けて積極的に政府として取り組んでいきたいと考えております。

 本条約の締約国が増加することにより国内的にも国際的にも調停の利用が進んでいくことが期待される中、政府として、関係省庁間でよく連携しつつ、国内外のビジネス関係者や法曹関係者への広報活動を通じて、調停による商事紛争の解決のための環境整備に努めていく考えでございます。

 具体的には、例えば、本条約の交渉が行われたUNCITRALが主催する定期会合や関連イベントのような様々な機会を捉え、我が国から国内の関係者や関係各国に積極的に働きかけや意見交換を行うことなどが考えられます。

松原委員 次に、スーダンの邦人退避について質問させてもらいます。

 岸田さんがシャトル外交で尹大統領にお会いしたときに、スーダン邦人退避について、多大な協力に改めて感謝したと報道されています。具体的にどういうことなのか、もし可能であれば御説明いただきたい。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 スーダンからの退避につきましては、スーダン国内の移動を含めまして、多くの国々あるいは機関から協力を得て実現したところでございます。

 御指摘の韓国からは、ハルツームからポートスーダンへの陸路移動に際し、輸送支援を得たところでございます。こうした協力に対しまして、今月七日の日韓首脳会談におきまして、岸田総理から尹大統領に対し謝意を表明したということでございます。

松原委員 今、邦人の陸上退避についてということで、様々な国が応援したというふうに聞いております。韓国やアラブ首長国連邦等々が邦人の陸上における退避を応援してくれたということですが、日本は、この邦人の陸上退避に関して、セキュリティーという観点からこのことに関して関わったのか、日本の自衛隊は関わっているのか、いないのか、この点をお伺いいたします。

安藤(俊)政府参考人 陸路退避の安全性に関わる詳細につきましては、ルートの安全性の観点、それから協力国との関係からも、言及することは差し控えたいというふうに思いますけれども、この陸路輸送に関しては、政府としても、邦人等の安全が確保された形での迅速な輸送が可能ということを判断し、政府としてできる限りの支援を行ったということでございます。

松原委員 事実を明確に言ってもらった方がいいんですよ。日本の自衛隊はこの地上退避、陸上退避のセキュリティーに関して参加したのか、しないのかを聞いているんです。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の邦人の輸送に関しては、自衛隊はポートスーダン国際空港からジブチまでの空路輸送をしたということであります。陸上の輸送に関しては今回は行っておりません。

 ただ、補足的に申しますと、いろいろ流動する情勢に応じて陸上輸送もあり得るという前提で、いろいろ用意はしていたところであります。実際、高機動車というそれなりの人数を乗せられる車両をジブチまで前進待機させたところであります。

 ただ、結果として、いろいろ最適な手段を選択する中で、自衛隊による陸上輸送というのは行われなかった、こういうことであります。

松原委員 重ねて聞きますが、ポートスーダンの飛行場に日本の自衛隊の飛行機を置いた、ジブチからポートスーダンにタイミングを見て行ったわけでありますが、ポートスーダンに赴いた自衛隊の隊員の方々はポートスーダン飛行場の外には出なかったという認識でよろしいですか。

大和政府参考人 自衛隊はポートスーダンの国際空港の外には出ておりません。

 ただ、ポートスーダン国際空港に到着した邦人の方々を我が方の輸送機まで誘導するための要員は行きましたし、そういう誘導はしておりましたけれども、外での活動はしていないということであります。

松原委員 以上の議論から明らかになったように、自衛隊は陸上退避のセキュリティーに関しては関与していなかったということになるわけであります。

 この邦人退避のセキュリティーになぜ自衛隊は参加しなかったのか、その合理的な説明を求めたい。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 邦人の退避に当たりましては、最も迅速かつ安全な退避を実現することが重要というふうに考えております。

 今般の首都ハルツームからポートスーダンまでの陸路での移動につきましては、予断を許さない現地情勢の中、関係国や国連機関等の協力を得て実施されたものでございまして、政府としても、邦人等の安全が確保された形での迅速な輸送が可能と判断したものでございます。

松原委員 最も間違いない日本人の邦人退避をするには自衛隊はそこにはいなくていい、こういう判断をしたということで理解してよろしいですか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 政府として、様々な選択肢を考える中で、今回、陸路での移動については、関係国や国連機関等の協力を得て実施することで邦人の安全が確保された形での迅速な輸送が可能と判断したということでございます。

松原委員 今の話は、邦人の安全なる陸上における退避、セキュリティーは自衛隊はいなくてもできます、だから自衛隊はそこには触れなかった、こういうことを外務省は言っているわけであります。

 私は、結果として、この邦人退避、大変な長い長距離を退避してきたのに関して何らかの武装集団の攻撃はなかったということですから、結果はそういうことです。しかし、もし何らかの武装集団が日本の邦人退避に関して攻撃を加えてきて、日本の自衛隊は邦人のセキュリティーを守っていない、例えば韓国であるとかこういったところの軍人さんというか、セキュリティーをしていた人間が死んだということになれば、日本の国際社会における評価はどうなったとお考えか。こんなことで、日本の国際社会における、それなりのG7の一翼を担っている国家としての矜持が保たれるのかということについて、林大臣、答弁をお願いします。

林国務大臣 先ほどから領事局長が答弁しておりますが、今回のハルツームからポートスーダンまでの陸路での移動は、大変流動的で予断を許さない現地情勢の中で、関係国や国連機関等の協力を得て、邦人等の安全が確保された形での迅速な輸送が可能と判断したわけでございまして、最善の決定だったというふうに認識しております。

松原委員 今申し上げたように、もし邦人の輸送に関して武装集団が攻撃をしてきて、日本の邦人を守っている韓国の部隊に死者が出た場合、日本の国家としての矜持は地に落ちると私は思っている。

 現地の状況の中で、韓国やアラブ首長国連邦のセキュリティー部隊は日本人の輸送を守る極めて優秀な能力があるが、それに関して日本の自衛隊が行くということは、それに匹敵するものはないというふうな判断をしたとするならば、私はそれは非常に国益にかなわないと思っているんですが、もう一回大臣にお答えいただきたい。

林国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、邦人等の安全が確保された形での迅速な輸送が可能と判断したわけでございますので、詳細につきましては、先ほどございましたように、セキュリティー上の問題もございますので、つまびらかに申し上げることはいたしませんが、今回の場合は輸送が可能だという判断でございますので、最善の決定だったというふうに認識しております。

松原委員 私は、評価というか、防衛省は頑張ったというふうに思っておりますが、指示を出したのは恐らく官邸か外務省でしょうが、これはやはり、何もなかったからこうやってよかったと言っているけれども、実際に死者が発生した場合、日本のメンツというのは極めて厳しくなるということだけ強く申し上げておきたい。やはり日本は、自らが自らを守るという当たり前の国家としての矜持をこういったところで諸外国に対して明確に示す必要があるということは申し上げておきたい。

 次に、中国による邦人の拘束事案。

 ここに一冊の本があります。鈴木英司さん、この人は中国に拘束をされて、二千二百七十九日と言われている、大変長い時間拘束をされた。

 時間の都合で、最初の質問を飛ばして二つ目に行きます。

 私はこの鈴木さんと一時間半ぐらい会って話を聞きましたよ。彼は何と言ったのか。自分が捕まった理由の一つとして、北朝鮮の張成沢、金正日の妹さんの旦那さん、これが射殺された、そのことを中国人としゃべっていたということが逮捕された理由の一つだと彼は言っている。

 そのときに、おかしいじゃないかと彼が言ったら、中国側のある人間が言ったのが、新華社通信に書かれていないことをしゃべるのは違法である、こういうふうに言ったというんですが、このことは、彼がそういうふうなことを言明していることは承知していますか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の書籍の内容、それから御指摘の邦人の方の発言について、我々としても承知しているところでございます。

松原委員 であれば、当然、中国がこの鈴木英司さんを逮捕した理由の一つとして、公安調査庁と面識があったと。公安調査庁は中国側はスパイ組織と認定しているので、そこと関係がある人間は、当然それは逮捕される条件である、このことも彼は言っていますが、承知していますね。

安藤(俊)政府参考人 繰り返しになりますが、御指摘の書籍の内容、それから御指摘の邦人の方の発言については、我々としても承知しているところでございます。

松原委員 承知をしている、承知をしているじゃなくて、話を聞いて、これを日本の今後の中国における外交の基本としていかなければいけないと私は思っています。ほかの逮捕された人間に関しても皆さんは様々な情報を取っているはずであります。

 そこで申し上げますが、この鈴木氏の発言を踏まえれば、外務省は、中国に渡航する人間に対してこういうふうに警鐘を鳴らすべきだ。新華社が報道していない外交的な話は一切するべきではない、また、中国に渡航する人間がどこかで公安調査庁の人間と名刺交換をしているんだったら、あなたは行ったら逮捕される可能性があるから行かない方がいい、こういったことを警鐘を鳴らすべきだと思いますが、お伺いする。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、外務省といたしましては、海外安全ホームページ、それから在中国大使館、総領事館を通じまして、中国では、国家安全に危害を与えるとされる行為は、刑法、反スパイ法等に基づき取調べの対象となって、国家安全当局に拘束されるおそれがある等、詳細な注意喚起を行ってきているところでございます。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つでございまして、引き続き、きめ細やかな情報発信、注意喚起を通じ、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 それじゃ駄目なんだよ。それで分からないじゃない。

 張成沢が処刑されたなんという話は日本ではみんな知っていた。テレビ局だってみんな報道しているし、新聞社だってみんな報道している。普通の日本人の感覚で、これが中国に大きな毀損を与える行為だとは思わないですよ。張成沢が北朝鮮で殺されましたね、北朝鮮はどうなっているんでしょうかねと。しかし、これは新華社通信が報道していないからアウトだと言っているんですよ。

 そんな抽象的なことではなくて、これからは、新華社が報道していない外交のことはしゃべるな、捕まる可能性があるぞと警鐘を鳴らすべきだと私は思います。

 もう一回簡単に答弁して。

安藤(俊)政府参考人 外務省といたしましても、中国に在留する邦人への注意喚起については、引き続ききめ細やかな情報発信、注意喚起を行っていきたいと考えております。

松原委員 こういう具体的なことを言ってよ。新華社が報道していないことをしゃべると捕まる可能性がありますよと一言言っておいてよ。お願いします。

 そこで、この鈴木さんは、日本大使館が極めて頼りにならなかったということをこの本の中で言っている。中国側の言いなりだった、日本大使館が積極的に動いてくれた形跡がない、やれることだけやってくれたという感じがしない、悔しい、居住監視時の日本大使館の対応は失望しかない、こういうふうに鈴木さんは言っている。

 大臣、このことについてコメントをいただきたい。

林国務大臣 個人の出版物の中身につきましてコメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論として、政府としては、中国当局による邦人拘束の事実を確認した場合、邦人保護の観点から、領事面会や御家族との連絡、求めに応じた弁護士のあっせん等、できる限りの支援を行ってきておりまして、今後も適切に対応してまいりたいと思っております。

 また、中国側に対して、首脳、外相会談を含む様々なレベルや機会を通じて、早期帰国の実現、そして司法プロセスにおける透明性の確保などを働きかけておりまして、引き続きそうした取組を継続してまいりたいと思っております。

松原委員 二千二百日、中国に拘束されていた人間がこういうことを言っているんだから、一般論としてという議論ではなくて、一人一人のこういう話をきちっと耳を傾けて、一人たりとも邦人は、日本は守るんだという姿勢を示してもらいたいと私は強く大臣には要請をしておきたいし、領事局長、やはり、こういうことを、もう本人に会って話を聞いていると思うけれども、非常に失望したというのを僕に言っていました、私に会ったときも。みんな、ほかも言っているかどうか、それは抑制的な人もいるかもしれないけれども、こういうことは明確にしていかないとまずいと思う。

 その上で、さっき新華社が報道していないことをしゃべるとリスクがあるということを言った。渡航に関して危険レベルというのがあって、レベル1は、十分注意してください、レベル2は、不要不急の渡航はしないでください、レベル3は、行かないでください、レベル4は、現地にいる人は退避してください、こういうことでありますが、私は、中国は、チベットとかウイグルとかはレベル1になっていますが、この彼の発言や、様々な日系、日本人が中国で理由も分からず拘束されている事態を見るならば、中国全域は少なくとも渡航の危険リスクをレベル1にするべきだと思います。大臣、御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 外務省海外安全ホームページに掲載しております危険情報ですが、渡航、滞在に当たって特に注意が必要と考えられる国、地域に関しまして、日本国民の生命及び身体に対する脅威を考慮しつつ、中長期的な観点からその国、地域の治安情勢を始めとする政治情勢、社会情勢等を総合的に判断し、それぞれの国、地域に応じた安全対策の目安を知らせるものでございます。

 今委員から御指摘がありましたように、中国については、新疆ウイグル自治区とチベット自治区において、過去に多数の死傷者が出る事案等が発生しまして、今後も不測の事態が発生する可能性があるということで、危険情報レベル1としております。

 また、この危険情報において、中国では、国家安全に危害を与えるとされる行為は、刑法、反スパイ法、軍事施設保護法、測量法に基づいて取調べの対象となり、国家安全部門に長期間の拘束を余儀なくされるのみならず、裁判で有罪となれば懲役などの刑罰を科されるおそれがあるので、注意するように呼びかけておるところでございます。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つでありまして、今後とも、適時適切な危険情報の見直しも含めたきめ細やかな情報発信、注意喚起を通じて、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 大臣が最後に今後はこの見直しを含めてというふうにおっしゃったので、私は矛を収めますが、少なくとも、中国は、今言ったような状況を考えたらば極めてリスクがある。危険情報1を中国には明確に当てはめる、そのことによって、中国側が、新華社通信が報道していないことはしゃべったら許さないみたいな、そんな噴飯ものの逮捕をしないようにさせる、これは外交の力だと思うので、今、変更もあり得ると言ったので、期待しておきたいと思います。

 次に、今回、ゴールデンウィーク中に、いわゆる拉致議連、拉致被害者家族会がアメリカを訪問して、米国務省シャーマン副長官と会った。そこで、拉致問題について国連安保理で取り上げようという話をしました。

 大臣も前向きの答弁をしていただいていて、この点は私は大変に評価を申し上げたいわけでありますが、日本は、当事国として参加できる韓国を誘って、日米韓共同で北朝鮮状況を正式議題として安保理に提案すべきと考えますが、御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 拉致問題を含む北朝鮮をめぐる問題につきまして国際社会が高い関心を持って取り組む、これは大変重要なことでございまして、安保理においても、北朝鮮の状況という議題の下で、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況について議論を行ってきております。今後もそのような機会を模索していきたいと考えております。

 今後の対応について現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えますが、我が国は、米国や韓国を含む関係国と緊密に意思疎通を行いながら、引き続き、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けまして全力を尽くしてまいりたいと考えております。

松原委員 予断を持っておっしゃらないんですが、従来これに対して前向きな答弁を外務委員会でしてもらっているわけですから、大臣、是非、北朝鮮の人権状況を正式課題にするように決めて関わっていただきたい。

 これは拉致被害者家族会が行ってシャーマンさんからそういう話をいただいたんだから、予断を持って言えないので何も言えませんというのでは、拉致被害者家族会や関係団体が行ったことに対して、まさにそれを無視することになってしまう。外務大臣のお立場上、そうではなくて、やるんだということを明確に要請したい。恐らく答弁は同じだろうから聞きませんけれども、明確に要請したい。

 次に、四月二十八日に日本記者クラブで、三月に着任した中国の大使が記者会見で言ったわけでありますね。台湾問題、武力行使の放棄を約束することはしない、武力による現状変更はあり得ると明確にした。その上で、台湾有事は日本有事という言い方は荒唐無稽であり、中国の純国政問題であり、日本の安全保障と結びつけることは非論理的である、極めて有害であると新しい中国の大使が言明したわけであります。このことは、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになると。

 すさまじい表現ですね。着任早々、記者クラブで話したことでこういうことを中国の大使は言った。まさに、日本の民間人にも危害を加えることを示唆した発言であり、断じて許すことはできないと思っています。

 外交問題に関するウィーン条約にペルソナ・ノン・グラータというのがある。今回の件は、まさに、外交使節団の長である大使に対してもこれを適用し、追放するべきではないか、こう思っております。

 一昨日、カナダは、中国・新疆ウイグル自治区の人権状況に批判的なカナダ議員に圧力をかけようとした理由で、在トロント中国外交官を追放しています。カナダはやっています。林大臣はカナダと同様の決意をする用意があるかどうか、お伺いをしたい。

林国務大臣 御指摘の在京中国大使の発言は、在京大使の発言として極めて不適切であると考えておりまして、外交ルートを通じて厳重な抗議を行ったところでございます。

 その上で、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であります。

 我が国の従来からの一貫した立場は、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというものでございます。

 我が国としては、こうした立場を中国側に首脳レベルを含めて直接しっかりと伝えてきておりまして、先般、私が訪中した際にも、直接、秦剛国務委員兼外交部長に対しまして、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調いたしました。

 引き続き、米国を始めとする同志国、同盟国と緊密に連携しながら、あらゆる機会を捉えて中国側に強く求めてまいりたいと考えております。

松原委員 カナダは、人権、ウイグル問題で極めて中国に批判的だった議員に圧力を加えたという理由で、ペルソナ・ノン・グラータというのは理由を言わなくていいみたいだから、実際、それによってカナダの在トロント中国大使館の外交官を追放した。

 それに比べると、この表現というのは看過していいんだろうか。今、大臣は、これに関してはとんでもないということをおっしゃった。とんでもないと口で言うだけではなくて、本国に召還しろと言うべきだと思う。こんなことを言われて、とんでもないと言うだけだったら、遺憾ですと言うのと同じで、遺憾です遺憾ですと言ったって相手は何とも思わない。

 もう一回聞きます。

 これに関してとんでもないということで怒っているのは理解しましたが、カナダのような明確な行動を取るおつもりはありませんか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、在京中国大使の発言は、在京大使の発言として極めて不適切であると考えておりまして、外交ルートを通じて厳重な抗議を行ったところでございます。

松原委員 言葉で言うだけではなくて、アクションを取った方がいいと私は思っています。

 次に、今回岸田さんが韓国に行って、いわゆる原子力発電所の処理水ですね、これについて、岸田さんは韓国と、IAEAと別個に共同検証をするということで暫定合意したという報道がされました。

 しかし、その後、西村大臣が訂正して、違うんだ、IAEAのようなものとは違うというふうにしたわけでありますが、日本側の判断としては、西村大臣が訂正したのが日本の政府の立場だという認識でよろしいか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 先般の日韓首脳会談では、両首脳が、韓国国内における理解を深める観点から、東電福島第一原発へ韓国専門家で構成される現地視察団を五月中に派遣することで一致したところであります。

 日本は、原子力の国際的権威でありますIAEAから既にレビューを受けていることから、本件視察は日韓双方がIAEAの権威を共通の前提として調整しているものであります。

 したがいまして、西村経済産業大臣から説明があったとおり、韓国国内における理解を深めるために東電福島第一原発の視察を行うものであり、IAEAのレビューのようにALPS処理水の安全性について検証やレビューが行われるものではなく、IAEA側と別個に共同検証を実施することに合意をしたというような、そういった事実はございません。

松原委員 日本側はそういう立場だということでしょう。岸田さんと尹大統領の間のそのときの空気感というのは僕は分かりませんが、朝鮮日報にはこう書いてあるんですよね。

 IAEAは、これまでTFを立ち上げて福島第一原発の汚染処理水海洋放出計画の安全性を検討してきた。ここにはIAEA事務局職員と、韓国を始め、アメリカ、中国、ロシア、フランスなどの十一か国の専門家が参加してきた。韓国政府代表団の派遣を、今回岸田さんが約束した中身でありますが、契機に共同検証が実際に行われれば、韓国はIAEAとは別のルートでこの問題について検証する世界で唯一の国家になると誇らしげに書いてあるんですよ。

 IAEAとは別にこの問題を検証する世界で唯一の国家となると朝鮮日報に書いてある。IAEAは昨年四月から五回にわたり中間報告書を出したが云々とこれは続いていますが、世界で唯一のIAEAとダブルで検証する国家になる、こう言っているんですが、韓国側はそういう理解でいるんじゃないですか。確認。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、今回受け入れる専門家は、韓国国内における理解を深めるために原発の視察を行うのでありまして、IAEAのレビューのようにALPS処理水の安全性について検証ですとかレビューが行われるものではございませんし、この点については韓国側も了解をしているものであります。

松原委員 ということは、朝鮮日報に書いてある記事は訂正されなきゃいけない、朝鮮日報の記事は間違っている、こういう認識でいいんですね。もう一回答弁してください。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 共同検証に暫定合意した等の諸般の報道については承知しておりますけれども、先ほど申し上げましたように、日韓首脳会談では、韓国国内における理解を深める観点から、韓国専門家で構成される現地視察団を五月中に派遣することで一致したということでございます。

松原委員 時間が来たので終わりますが、韓国側の朝鮮日報はそういう記事をつい先ほど出している。一般の韓国の民衆はそう思っているとしたら、また話が違うぞといって蒸し返しになるんじゃないかということを私は危惧しています。杞憂に終わることを祈りながら、今日の質疑は終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 随分と、条約に関してもそうですし、ほかのこともいろいろな委員からもう既にかなり詳細に質疑がありましたので、重ねて聞くこともあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

 まずは、WTOのマラケシュ協定に関してであります。漁業の関係でございます。

 私も、地元にも漁業者がおりますし、内海漁業ですけれども、多くの漁業者は、こういう法律ができたり条約が結ばれたりするときに、自分たちの生業がどう守られるのか、引き続き生業が続けられるのかということで非常に関心を持つわけでありまして、そういった観点からお聞きしたいと思うんですけれども、日本の漁業者がこの協定によって受ける恩恵というのはあるのか、逆に、この議定書を締結することによって廃止しなければならない我が国の漁業補償、いわゆる漁業の補助金というものがあって、そういったことによって不利益を受けることがあるんだろうか、こういうことをまずお伺いしたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 WTO協定改正議定書におきまして、まず、IUU漁業につながる補助金が禁止されます。このことで、国内外におけるIUU漁業根絶、廃絶に向けた取組を更に促進することが期待されます。

 さらには、過剰な漁獲により資源状態が悪化した魚種については、資源の持続可能な水準への回復に向けた措置が実施されていない限り、漁業者に対する補助金が禁止されることで、各国に資源管理措置の策定、実施を促すことができます。各国において資源管理が適正に行われるということは、日本の漁業者にとって歓迎すべきことだと考えております。

 なお、我が国漁船は、これまで地域漁業管理機関等が作成したIUU漁船リストに掲載されたことはございません。

 また、改正漁業法等に基づき資源管理に取り組んでいることから、我が国が本議定書を締結しても禁止される漁業補助金はなく、我が国の漁業者が不利益を被ることはないものと考えてございます。

和田(有)委員 分かりました。我が国の漁業者が影響を受ける、要するに不利益を受けるようなことはない、今やっている漁業が、これは駄目だ、あれは駄目だとか、これができなくなるということはないということですね。了解しました。

 では、これで、次にコーヒー関係の協定に行きたいと思います。

 これも何度もほかの委員から質疑があったわけでございまして、重ねたことになりますけれども、やはり、今回のこの協定を考える中で、最大の消費国であるアメリカが脱退している、こういう状況の中で、今、この協定をもう一回触らなければいけない。また、ICO加盟国の消費量が世界全体の六割になってしまっている、こういう中で、この国際コーヒー協定に参加する、している意義というのはまずあるんだろうか。

 さらに、続けて聞きますけれども、加盟国の生産量は世界の生産量の九割を占めている、そういう中で消費量に占める加盟国の割合は六割だ、減少してしまっている。こうなると、加盟消費国の意向が軽視されて、ひいては消費者への損失をもたらすことになってしまうのではないか、また、逆に、加盟していることによる国内消費者に対する恩恵というのはこういう中であるんだろうかということを考えるわけであります。

 さらに、続けて聞きますけれども、コーヒー関連業種に及ぼす影響というのは、この協定を続けていくことによってあるか。私は地元は神戸でございまして、神戸というのは、中小のコーヒー屋さん、コーヒーメーカーというんですか、コーヒーに関連する業種の皆さんが結構あります。こういう方々にとってどういう影響があるんだろうかということを、私は、地域からやはり代表して国政の場に議席をお預かりするという本意からいうと、お聞きしておきたいと思うんです。

 さらに、コーヒー生産というのは、生産国という観点からいくと、いわゆる典型的な開発経済の農業だと思うんですけれども、SDGsの観点とかそういったことから見ても、こういう開発経済の農業の育成というような観点から見て本協定の果たす役割というのは何かということを併せてお伺いいたします。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 世界のコーヒー市場におきまして新興国のコーヒー需要の高まり等により需給が逼迫している中、世界第四位のコーヒー輸入国である我が国へのコーヒーの安定的輸入の確保を図るために、我が国としては、二千二十二年の国際コーヒー協定を早期に締結し、同協定が発効するに当たって、原加盟国として議論を主導する必要があると考えております。

 米国は、現在、国際コーヒー機関に加盟しておらないわけでございますけれども、国際コーヒー機関の加盟国であるメリットといたしましては、輸出国と輸入国双方で構成される理事会の場に参加することによって緊密な情報交換が行われること、それのみならず、我が国に輸入されるコーヒーの安全性や品質等を確保するため、コーヒーに関する国際的な政策協調の場において我が国の意見を引き続き反映するために、加盟国である必要があるということが考えられます。

 また、今回の国際コーヒー協定では、SDGs、持続可能な開発目標を明記いたしまして、国際コーヒー機関が、中小規模のコーヒー生産者を含むコーヒーに関する全ての利害関係者の生活向上を目的として加盟国を支援することができる旨が新たに規定されており、SDGsの達成にも資するものだというふうに考えております。

和田(有)委員 幾つか答弁がありましたが、国内消費者に対する恩恵というのは、これを続けることは何なのか、もう一回ちょっとお伺いできますか。

鯰政府参考人 国内の消費者に対する恩恵といたしましては、先ほど答弁した内容と重複いたしますけれども、我が国に輸入されるコーヒーの安全性や品質等を確保すること、こういったことにも資するというふうに考えております。

和田(有)委員 安全性が確保される、おいしいコーヒーが飲めるという、それだけのことで結ぶものではないと思いますが、分かりました。取りあえず、協定に関してはこの程度で終えて、次に行きたいと思います。

 しっかりとやってください。いろいろな意見が出てまいりますからね、こういう協定を結ぶと。いろいろな観点からいろいろな方々が恩恵を被れるように、しっかりとやっていただきたいと思います。

 塩漬けにしてきた質問というものをこの次に予定しておるんですが、これは後に回しまして、でも今日は聞きたいとは思っているんですが、それで、先にスーダンの件をお聞きしたいと思うんです。

 もう何人もの方がスーダンの件をお聞きされました。そして、随分と、きちっと最後までは御答弁が出ていませんけれども、ある程度、今まで見えなかったものも御答弁があったかなという気が私はしております。これも重ねての部分が多いんですけれども、あえて、これはやはり大事なことだと思うので、私、お聞きしたいと思うんです。

 最初に、まず、自衛隊機の派遣を要請をしました。でも、結果的に、一般的に見ていて、自衛隊機が行く必要があったんだろうか、何のために要請したんだろうと思う方がやはり一般的に多いと思うんです。

 結果的に、自衛隊機が飛んだのはポートスーダンからでありまして、ポートスーダンはスーダンの政府のガバナンスが利いている場所であって、安全なところです。要は、安全なところに行って乗せるなら、それもチャーター機でよかったんじゃないか、わざわざ自衛隊が行く必要はなかったのではないか、じゃ、なぜ自衛隊はあそこまで行く必要があったのか、何のために行くべきだったのかという疑問が当然出てきてもおかしくないと思うんです。

 それについて、外務大臣、まずお伺いをいたします。

林国務大臣 スーダンの国内各地で武力衝突が発生するなど、流動的かつ予断を許さない情勢の中で、在留邦人等をスーダン国外に退避させるため、政府といたしまして、あらゆる可能性を追求した結果、最も迅速かつ安全な手段で邦人を国外に輸送するためには、自衛隊機を派遣することが最善という判断をしたところでございます。

和田(有)委員 あらゆる可能性を想定してということは、実際に、先ほど別の委員の質問でも答弁がありましたけれども、例えば陸上自衛隊がスーダンの極めて厳しい状況のところにも行くということもあるやもしれないという前提でそもそもはこの要請をし、飛行機も持っていき、先ほど大和さんから答弁もあったように、何か車も持っていった、当初はそういうことであった、でも、結果的にはそれを使う必要がなかったということなんですよね。でも、それを実行するためにはいろいろな国の方々の御支援をいただきました、こういうことなんです。

 ここでちょっと、次の質問に行く前に、次の質問で私が用意をして聞く前に、参考人の方でいいんですけれども、お聞きしたいんですが、陸上輸送をする、陸上で出てくるときに、いろいろな方々にお手伝いをしてもらいましたと。ここで、他国の、外国の軍隊の方に守ってもらったんですか。韓国の軍隊が鉄砲を持って横についたとか、あるいはフランスの兵隊さんが横で装甲車を走らせたとか、そういう状況でまず移動したんでしょうか。これをお聞きできますか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 陸路での退避につきましては、国連機関、韓国、UAEなどの支援を受けてハルツームからポートスーダンまで陸路で移動したということですけれども、これ以上の詳細につきましては、協力国との関係等からも、言及することは差し控えたいと思います。

大和政府参考人 私の方から、自衛隊機を出した必要性ということについてちょっと補足をさせていただきます。

 外務大臣からも御答弁がありましたとおり、現地の情勢というのはかなり流動的なものでありました。例えば、一般論になりますけれども、使用する空港というものもいろいろな選択肢があり得るということです。その選択肢によっては、リスクの度合いも異なる。

 法律にも、輸送に当たって予測される危険とそれを回避する手段というのが書いてありますけれども、一般に、自衛隊機は、例えばC130とかC2という輸送機は、チャフとかフレアという、赤外線あるいはレーダーホーミングで来るようなミサイルを回避する手段を有しています。

 それから、今回もそうですけれども、C130、C2とも、機内に防弾板を設置をして、機関銃弾などは耐えられるような、あるいは、具体的な防護性能はちょっと言えませんけれども、相当な防護性能を備えているということです。あとは、地上からの対空火器などの脅威を回避するような離着陸の方法とか、そういったものも訓練をしております。

 したがって、こういったリスクのあり得る状況において運用する機体としては、やはり自衛隊の輸送機というのは、チャーター機も含めた民間機とは随分異なるということはちょっと補足をさせていただきたいと思います。

和田(有)委員 自衛隊機は戦闘に堪え得るものでしょうから、それはそういうものだと思いますけれども、今のお二人の御答弁を聞いていると、まだやはり実際の陸上輸送のときの状況というものは定かにはできない、こういうことなんですが、恐らく、私が察するには、本当に日本人が危険にさらされる状況だったら、日本の自衛隊は、いろいろな可能性を想定して行っているわけですから、横について移動したんだと思うんです。これは私の私見ですからね、皆さんが答えているんじゃないから。

 もしそれが、本当にその状況でも日本の自衛隊が行かなかったんだったら、陸上輸送ですよ、それこそ先ほど松原さんが聞かれたように、韓国軍の兵士に守ってもらっていて、韓国軍の兵士がもしトラブルに巻き込まれてお亡くなりになったら、それは国家として大変な問題になっていたはずなんです。でも、そういう状況には至らないというか、環境がそうなっていないから自衛隊は行かなかった、だから、恐らく、論理的に考えれば、それは海外の兵隊さんに守ってもらうことはなかったということだろうと私は理解しているんです。取りあえず、今のところ。

 じゃ、そこで、この点について、どなたか参考人の方、今私が申し上げた理解についてどうお考えになりますか。

大和政府参考人 一般に、邦人のこういった不安定な地域からの退避に当たっては、そのルートであるとかあるいは手段、これは、いろいろなものを念頭に置きながら、とにかく早く安全にそれを達成できるということを選択するということです。決して自衛隊で運ぶことが目的ではありません。早く安全に邦人の皆様を外に出すということです。

 それで、いろいろな選択肢を外務、防衛が非常に緊密に連携して検討したその結果が、今回、ハルツームからポートスーダンまでの陸路輸送、ここでどういった措置が行われたかというのはちょっと私からお答えする立場にないんですが、そして、ポートスーダンに着いたらすぐにジブチまで自衛隊の輸送機で運ぶ、こういう選択肢が取られたということであります。

和田(有)委員 実は、次に、私、結局、自衛隊が行うべき役割は何なのか、作業は何であったのかということを聞こうと思って、大体、何となくそれもかぶりながらお答えになっちゃっていますが、陸上の移動に関して自衛隊の活動を検討したんだろう、でも、結果的に一番安全で早くできることをやるんだということになったということだと思うんですが、もう一回、最後にお聞きしたいのは、結局、自衛隊が行った今回の役割、今回の作業というのは何だったのかをお伺いします。

大和政府参考人 委員御案内のとおり、今回、結果として自衛隊がこの邦人輸送、邦人退避に関して行った役割というのは、ポートスーダン国際空港からジブチまでの空路の輸送であります。

 ただ、我々、どんな行動を取るべきかということについては相当、陸上輸送も含めて、幅を持って検討することにしていました。先ほど申し上げたように、相当程度の数の方々を運ぶことができる高機動車という車両を四両、ジブチに前進をさせています。そういったアセットを持っていって、いろいろな選択肢を念頭に置いて検討していたということであります。

 繰り返しになりますが、今回の、結果的に私どもの輸送機で運ぶことになった四十五名の方々について言うと、一番早く国外に退避する、特にポートスーダンまで来ていただく手段というのが、自衛隊が車両をわざわざ送っていくよりも、今回取られたようなルートと手段が最適なものであった、こういうことだというふうに認識をしております。

和田(有)委員 了解しました。もし本当に必要なときは、きっちり行って、邦人をしっかりと輸送し、守っていただきたい、こう思います。

 次の質問に入ります。

 大臣は、四月二十九日から五月七日、中南米、カリブ等々を訪問されました。とりわけ、中国の大変な強い外交攻勢にさらされて、いわゆる債務のわなに陥っているような国々があろうかと思います。

 そんな中に、我が国として外交をしに行ったわけでありまして、特にその中で、今回、台湾と、中華民国と正式な外交関係を持つ国も含まれております。幸いにして、ちょうど大臣が行っておられるときに大統領選挙があって、そして、かなりいい票数で、台湾との外交関係を維持するという候補が大統領に当選したわけでありますが、そういったことも含めて、今回の成果、評価をお伺いいたします。

林国務大臣 四月の二十九日から五月の七日まででございますが、トリニダード・トバゴ、バルバドス、ペルー、チリ、パラグアイの中南米五か国を訪問いたしました。本年一月の中南米歴訪に続きまして、価値や原則を共有する重要なパートナーである中南米諸国との友好関係を深めることができたと思っております。

 各国とは、ロシアによるウクライナ侵略を始めとする現下の厳しい国際情勢を踏まえまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、これを維持強化するために一層の連携を図るということを確認いたしました。

 また、鉱物、食料、エネルギー資源の宝庫としてその重要性が増しておりますこれらの国々との経済関係の強化の方策についても、大変有意義な意見交換を行わせていただきました。

 さらに、各地で、我が国と中南米の国々の大事な懸け橋となっておられる日系人の方々と交流を深めまして、ビジネスの最前線等で日々奮闘されておられる日系企業の関係者、親日家、知日家などとも懇談をして、各国との関係の活性化の方策について議論をいたしました。

 また、パラグアイでございますが、アリオラ外務大臣と会談を行いまして、二国間関係や国際場裏における協力など、幅広いテーマで意見交換を行いました。

 また、今委員からお触れになっていただきましたように、当選直後のペニャ次期大統領を表敬いたしまして、ペニャ次期大統領率いる新政権と日・パラグアイ関係を引き続き強化させていくということを確認いたしまして、東アジア情勢を含む国際情勢について率直な意見交換を行ったところでございます。

 我が国は、これまでも、パラグアイの経済社会インフラの整備、それから脆弱性の克服に資する協力を行ってきておりまして、アリオラ外務大臣、そしてペニャ次期大統領に対して、我が国として、今後もパラグアイの開発努力を後押ししていく考えであるということを説明をいたしまして、先方からは、日本の協力に対する謝意表明とともに、今後も日本の支援を期待するという発言があったところでございます。

和田(有)委員 これは、大統領選挙も終わって一段落した段階のことですから、これ以上お聞きしませんけれども、台湾と外交関係を、中華民国政府と外交関係を正式に結んでいる国家に対して私たちが支援をしっかりしていくということが、やはり現状変更は許さないという姿勢を示すことになるし、そのことが台湾有事を引き起こさせない一つの歯止めのパーツにはなるはずなので、しっかりとやっていただきたいと思います。

 そのことの意図はしっかりと向こうには伝わったと私は思いますが、大臣、そこら辺はどうですか。

林国務大臣 やり取りがこういうことであったということはもちろん控えなければなりませんが、パラグアイとの間では、先ほど申し上げたように、東アジア情勢を含む国際情勢について率直な意見交換を行いました。

 また、今までの開発に対する、また、インフラ整備等に対する協力についても今後も行っていくということを申し上げて、先方からは謝意の表明があったところでございます。

和田(有)委員 分かりました。

 では、次に、日台関係についてもう少し深くお伺いしていきたいと思うんです。

 日台政府間の安全保障対話についてであります。

 昨年の四月十三日の外務委員会で、私は、日本の法律で、台湾と公式に情報共有をする、交換するということは公的に可能なことなのかと質疑をいたしました。当時の上杉外務大臣政務官は、外務省が所管する法令の中で、日本政府が行う情報共有について、特定の相手との間で行うことを禁止するようなものはありませんと答弁をされた。

 重ねて、台湾の当局者と安全保障について意見交換することは現行法上何か規定はあるかと質問を私がしましたら、政府参考人の實生アジア大洋州参事官からは、外務省所管の法令の中で、日本政府が行うそうした情報共有、内容が安全保障であるということを問わずに、特定の相手との間でそういったことを禁止するというものはないという答弁でした。

 つまり、外務省が所管する法令では、外交関係のない台湾であっても、安全保障に関する情報交換は禁止されていないという答弁です。

 また、本年二月六日の予算委員会で、防衛省に対して、台湾との安全保障に関して情報交換について法令で何か禁止されているのかと質問しましたら、浜田大臣からは、防衛省が所管する法令の中で、特定の相手との間で情報共有を行うことを禁止するものはないという答弁でありました。

 台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても大変重要な話でありまして、林大臣も、外務委員会では、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、平素から体制の整備を含めて万全を期す、このように述べておられます。

 外務省にも、防衛省にも、外交関係のない台湾との間で安全保障に関する情報共有を禁止する法令というものはないということが明らかになっている中で、ちょっと前になりますが、平成三十一年の三月二日に、台湾総統の蔡英文さんが産経新聞のインタビューに答える形で、東アジアに位置する台湾と日本は同じ脅威に直面している、もうこのときから言っているんです、台湾有事について強調していて、安全保障協力の対話のレベルを上げることが非常に重要であると日台当局間対話を呼びかけ、台湾や沖縄の周辺を通過して西太平洋に進出する中国の海軍や空軍の動向に関する即時情報の共有について重要だと日本に対応を求めました。

 しかし、当時の菅官房長官は、記者会見の中で、日中共同声明の中で非政府間の実務関係を維持するというものであって、そういう発言は承知しているけれども、今何をするというものではない、適切に対応していきますというような、はぐらかすような御答弁だったわけです。

 また、当時の河野太郎外務大臣も、二〇一九年三月八日の記者会見で、日本と台湾との関係は非政府間の実務関係でいくということで一貫しております、こういった立場の中で適切に対応してまいりますというような言い方で、はっきりした答えというのはないわけです。

 そこで、お伺いしたいんですが、外交関係のない台湾と安全保障に関する情報共有を禁止する法令はないということを踏まえて、政府は蔡英文氏が求めた日台間の政府間対話についてどう対応しようとしておるのか、まず参考人にお聞きします。

林政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のありましたインタビューでの発言については承知しているところでございますけれども、政府といたしましては、台湾に関する我が国の基本的立場に基づきまして、我が国の民間窓口機関でございます日本台湾交流協会を通じて、これまでも幅広い分野で台湾との実務的な情報共有や協力関係を積極的に推進しているところでございます。

 御指摘の分野につきまして一例を申し上げれば、米台間で二〇一五年に立ち上げられ、二〇一九年から日本台湾交流協会も参加しております人材教育の枠組みでございますグローバル協力訓練枠組みにおきまして、デジタル犯罪への対応に関するワークショップ、さらには、法に基づく持続可能な海洋に関するワークショップなどを開催していると承知しております。

 引き続き、台湾に関する我が国の基本的な立場を踏まえながら、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていく所存でございます。

和田(有)委員 当時と答弁の骨子は何ら変わらないわけですね。でも、国際環境はもう変わってしまっているわけです。

 台湾有事が日本有事となる可能性がある中で、台湾在住者や観光で台湾を訪れている邦人を避難させなければならないというような状況が生まれるかも分からない。政府は、台湾政府とそういったことについてちゃんと協議をしているんでしょうか。民間ベースでこんな話をしている中で、先ほどのスーダンの話もありますけれども、自衛隊機の派遣など、協議ができるんでしょうか。どうやって対応しようと思っているんですか、大臣にお聞きします。

林国務大臣 海外に渡航、滞在する邦人の保護、これは政府の最も重要な責務の一つでございまして、平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定しまして、必要な準備、検討を行っております。

 在外邦人の保護や退避について、有事における我が国の個々の対応、また計画について個別具体的にお答えするということは差し控えなければなりませんが、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、外務省として、いかなる事態にも対応できるよう、万全を期してまいりたいと思っております。

 あくまで一般論としてでございますが、台湾との間では、我が方の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じまして、邦人保護を含めて、平時から様々なやり取りを行っておるところでございます。

和田(有)委員 もしそういった事態が近づいて、向こうの総統が直球で日本の政府高官、高官というよりはそれなりの立場のある方に、協議をしましょう、こう正式にいろいろな形で表明したときに、どうお応えになるつもりなんでしょうかね。私、今日、この質問はここで止めますけれども、これは無視するんですかね。

 例えば、現総統、蔡英文総統が日本の総理に対して、私たちはこんな状況にある、協議をしましょう、急ぎましょうと何がしかで発信したときに、黙るんですかね、無視するんですかね、実務関係で我々は対応しておりますということをツイッターか何かで書いて終わらせるんですかね。そんなことは許されないだろうし、その状況の中で、自衛隊機を飛ばすことなんて到底できないだろうと私は思います。

 今日はこの点についてはここで止めますけれども、それではやはりまずいと思いますね、本当に。そんなことを言っているから、大陸中国は、中華人民共和国は、幾らでも我々にハードルを上げていろいろなことを言ってくるんだと私は思いますね。

 次に、日台間の要人の往来についてお聞きしようと思うんです。

 台湾の蔡英文総統は、三月二十九日からグアテマラやベリーズを訪問するときに、トランジットでアメリカを経由しました。ニューヨークで下院の民主党トップの院内総務とも会談しました。ロサンゼルスではマッカーシー下院議長とも会談をいたしました。米国は、大統領権限継承順位が副大統領に次ぐ第二位の要職のナンシー・ペロシ下院議長が台湾も訪問しています。

 そういった中で、日本は、台湾の総統を始め副総統、外交部長、国防部長、行政院長のトランジットでも日本訪問は認めないとしている。そして、日本からも、台湾への訪問も、外務省の内規で課長までとしている。日本は、絶えず重要なパートナーだと御答弁なんかがある中で、そんな中で、台湾から、総統を始め副総統、外交部長、国防部長、行政院長の、トランジットでもしたいと言ってきたときにどうしているのか。

 日本は認めていないというのは事実なんですか。そのように措置した理由は何なのかを大臣にお伺いします。

林国務大臣 政府といたしましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来からの立場を踏まえて、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていくということにしております。

 今お尋ねのあった点も含めて、台湾当局関係者の訪日につきましても、こうした立場を踏まえまして個別具体的な状況に応じて対応するということにしておりまして、いわゆるハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないというようなことはしておらないということでございます。

 また、課長級までに制限されている台湾渡航というお尋ねでございますが、台湾出張者を原則課長級未満とするなどを定めた内規、これは現在存在しておりません。

 その上で、政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していく、先ほども申し上げた立場を踏まえて、日台間の協力と交流を図っていくこととしております。日本政府関係者の台湾渡航についても、こうした立場を踏まえて個別具体的な状況に応じて対応することとしております。

 二〇一七年三月でございますが、当時のあかま総務副大臣が台湾を訪問いたしまして、台北市で開催された日本台湾交流協会主催の地方PRイベントの開幕式に出席をするなどしておりまして、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていくという観点から、引き続き、個別具体的な状況に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 もう課長までとするという内規はないという御答弁をいただきました。個別具体の状況に合わせて検討しているんだという御答弁もありました。

 しかし、今一例を挙げられましたけれども、現実には、ほとんど要人の往来というものはできていない。これはやはり何か外務省の中に、規定はないにしても、規定がないから、内規だというのは変ですけれども、何らかの内部の歯止めがあるんじゃないかと思うんですが、本当にないんですか。皆さんの中で、それは個別具体に判断して、いいとなればできることになっているんですか。もう一回お伺いします。

林国務大臣 先ほど御答弁したとおり、まず、要人の往来は、個別具体的な状況に応じて対応することとしております。また、こちら側の渡航につきましても、今委員からお話のあったような内規は存在しておりません。

和田(有)委員 内規がないんですから、しっかりと必要なときには必要な人が行って、向こうの人も受け入れて、しっかりと外交をやっていただきたいということを、今日はこの点、この項に関しては私は申し上げておきます。

 最後に、ちょっと飛ばしますけれども、私がお聞きしたいのは台湾との関係の話なんですが、かつて日本が統治をしていた時代に教育を受けられ、生活をされておられた御高齢の皆さんがおられます。この方々というのは、かつて日本人であったことを非常に誇りに思っている方が多い、そして教育レベルも高かった。いろいろなことを言う人がいますが、ちゃんと教育を受けて、そして国内の、例えば李登輝昔の総統もそうです、京都帝国大学に学ばれた、そういう対等な平等な国民としての権利があって、そのこともしっかりと把握をされておられて、親日的な思いをお持ちの方がたくさんおられる。

 しかし、その方々がどんどん鬼籍に入ってきている。李登輝昔の総統もそうです、もうお亡くなりになりました。こういった方々がどんどん亡くなっていっているんです。でも、この方々は非常に日本に対する思いをしっかり持っていただいていて、そして日本人であったことを誇りに思っているんですよ。私たちは昭和二十年までは日本人であった、そのことが人生を歩んでいく上で大変プラスになったんだという思いを持っておられる方がたくさんおられる。

 こういったことを思うときに、私たちは、まず、この方々に対して感謝の思いを持つべきだと思うんです。それが今、私たちは欠けてしまっていると思う。無視してしまっている。これは私はあってはならないと思うんです。

 そして、なおかつ、この方々が親日感情のベースになっている、台湾においては。一時期の国民党政権の極めて厳しい時代、蒋介石政権の極めて厳しい時代であっても、この方々が生き抜いて、日本で教育を受けたということをひそかに誇りに思い、そして、民主化されてからそれを公にし生きてきたことが、台湾の親日感情を醸成するベースになったと思うんですね。

 私はやはり、ここにおいて、日本国はこの親日感情を有する戦前の世代の方々に何らかの感謝の意思表示をしてもいいと思うんです。そのことについて大臣はいかがお考えになりますか。

林国務大臣 台湾は、日本にとって、基本的価値を共有し、緊密な経済関係とそして人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。

 今委員から御指摘のありましたいわゆる日本語世代を含めて、日台関係の発展のために長年にわたり御尽力をいただいた台湾の方々に対して敬意と感謝を表するために、叙勲を行ってきているところでございます。

 政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来からの立場を踏まえつつ、今お話のあった日本語世代も含めて、引き続き、こうした日台双方の良好な市民感情が維持発展されますように、日台間の協力と交流の更なる深化、これを図ってまいりたいと思っております。

和田(有)委員 時間が来てしまいました。

 本当はこの後に幾つか、台湾のことも含めて、あるいは韓国との関係も、このことを含めてお聞きしたいことがあったんですが、次回に回したいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦です。

 アクリル板がないと広々していいですね。今日もよろしくお願いします。

 まず条約について伺いますが、シンガポール条約であります。

 仲裁ですとかあるいは調停、これは、紛争期間を短くするということと司法機関の省力化という意味で非常に有益だと思います。

 ただし、今回議論になっているシンガポール条約、日本が入ることもいいことなんですけれども、一方で、入っている国、署名をしている国の中で批准している国が非常に少ないというのが一つの課題です。なお申し上げれば、日本の輸出入の一位と二位を占めているアメリカと中国が入っていません。

 日本の貿易統計の中で上位に入っている国の中で、シンガポール条約を結んで調停、仲裁を推進しているのはシンガポールだけ、あとサウジアラビアぐらいだと承知をしていますが、これで有効性が果たして担保できるかどうか疑問ですが、どのように解釈をされていますでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 調停に関するシンガポール条約では、本条約が定める条件を満たす国際的な調停であれば、調停が行われた場所に関わりなく本条約が適用されるため、たとえ本条約を締結していない国で行われた国際的な調停であっても、我が国において執行の対象となり得ます。

 また、我が国が米国等に先駆けて早期に本条約を締結することは、諸外国に比べて早期に、商事紛争を適切に解決するための環境をより一層整備し、外国企業による投資活動の予見可能性を高め、ひいては、外国からの投資の呼び込み及び日本企業の海外展開の促進に資するものであると考えております。

 このように、本条約の早期の締結は、日本企業が米国企業等に先んじて調停の活用をビジネスに取り込み、経験を重ねることを促進するという意義もあると考えております。

鈴木(敦)委員 確認ですが、批准していない国と我が国の間で商取引を行った場合に、シンガポール条約の内容を適用することが可能だということでよろしいですか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 調停に関するシンガポール条約第一条1は、和解合意の国際性の要件として、当事者が営業所を有する国や和解合意に基づく義務が履行されている国を掲げておりますが、ここでは締約国に限定してございません。したがって、調停に関するシンガポール条約の締約国は、調停の当事者が同条約の締約国の企業であるか否かにかかわらず、調停による国際的な和解合意を執行する義務を負っております。

 したがって、例えば、日本企業が調停に関するシンガポール条約を締結していない国の企業との間で国際和解合意をした場合であっても、本条約が定める条件を満たせば、我が国に所在する当該企業の財産について民事執行することは可能であると考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 特に、アメリカと中国みたいな国とやり取りをするときに、先ほど事務方から御説明があったとおり、これをこれから推進していくんだ、アメリカに先駆けてという話がありました。是非入っていただくように働きかけをしていただきたいと思いますが、大臣の御決意をお願いします。

林国務大臣 調停に関するシンガポール条約ですが、二〇一八年の十二月に採択をされました比較的新しい条約であるということもあって、現時点で締約国数は十一か国とそれほど多くないわけでございます。ただ、署名国が米国等を含めて五十六か国に上っておりまして、締約国の増加が今後期待されるわけでございます。

 本条約の締結について国会において御承認いただける場合には、締約国の拡大に向けて積極的に政府として取り組んでいきたいと考えております。

 具体的に少し申し上げますと、例えば、本条約の交渉が行われました国際連合国際商取引法委員会、UNCITRALですが、これが主催する定期会合、そして関連イベント、こうした様々な機会を捉えて我が方から関係各国に積極的な働きかけを行う、こういうことが考えられると考えております。

鈴木(敦)委員 こういったいい条約についてはどんどん進めていただきたいと思いますし、調停や仲裁を進めていってどんどん紛争のハードルを下げるという意味もあると思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 別の議題に入らせていただきます。

 今日は法務副大臣にお越しをいただいております。

 私は、通告に従って、本邦外出身者に対する差別的言動及び行為について議論をしたいと思いますけれども、先駆けて、まず、国際社会において初めて人種差別の撤廃について発言したのは、いつ、どこの国であったか、御存じでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 時期については今承知しておりませんが、日本であると承知しております。

鈴木(敦)委員 官房審議官ですか。人権擁護局の出身の方でしょうか。

 正確に申し上げれば、一九一九年、大日本帝国であります。つまり、我が国が初めて人種差別の撤廃を世界に提案した。いろいろと文言の調整がありまして、結局、実現はしませんでした。実現できなかったために国際連盟とのぎくしゃくした関係が続き、あるいはイギリスやフランスといった植民地を持っている国との対立が深まって、大東亜戦争の遠因となったと言われています。これがまず我が国が差別的言動についてどう考えるかの出発点であります。我々が始めた議論です。

 その上で申し上げますが、今、国内には、平成二十八年に成立をしたヘイトスピーチ解消法という法律があります。議員立法でありました。この議員立法には罰則規定がありません。周知を徹底するという文言が入っているだけになっています。ドイツでは既に、罰則規定、三か月以上五年未満の自由刑が科されることになっていますし、二十四時間以内にSNSからの削除命令を出すこともできるようになっています。

 我々が始めた議論を、ドイツは先駆けて、先に進んでいる状態になっています。国内法を整備するべきではありませんか。

門山副大臣 平成二十八年に議員立法により成立したいわゆるヘイトスピーチ解消法は、憲法で保障された表現の自由に配慮し、一般的な表現行為に対する萎縮効果を避けるため、いわゆる理念法という形で、禁止規定や罰則の定めをあえて設けないこととして制定された経緯があるものと認識しております。

 先生御指摘の罰則を設けるなどの規制の強化につきましては、こうした法律の制定経緯等を踏まえ、その要否も含めて慎重に検討される必要があるものと考えているところでございます。

 もっとも、特定の民族や国籍の人々を排斥しようとする不当な差別的言動はあってはならないものと認識しております。

 そのため、法務省の人権擁護機関においては、例えば、インターネット上での誹謗中傷等の被害を受けた方から相談があった場合には、相談者の意向に応じて、削除依頼の方法等を助言したり、任意の調査を行い、個人の権利利益を侵害する違法な書き込みと認められたもの等については、プロバイダー等に対して削除を要請するなどの取組をしているところでございます。

 今後とも、ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえ、互いの違いを認め、尊重し合う共生社会の実現を目指し、各種人権啓発活動や人権相談の実施等にしっかりと取り組んでまいります。

鈴木(敦)委員 憲法二十一条との兼ね合いという言葉がありますけれども、では、追加して申し上げますが、国家安全保障戦略の中で、「我が国が守り、発展させるべき国益」の中に、「我が国と国民は、世界で尊敬され、好意的に受け入れられる国家・国民であり続ける。」と書いてあります。発展させるべきものは、我々国家が、そして国民が世界で尊敬され続けることですよね。表現の自由を理由として、本邦外出身者の方に対して不当な差別的発言や言動を行っていることを規制することすらできない国が、どうして尊敬されますか。これは他人の尊厳に関わる部分だと思います。

 そして、今、これから国会でも議論されるかもしれませんが、LGBTの話もあります。それも差別という言葉を使っていますけれども、結局、表現の自由を盾に、何の罰則規定も設けられない理念法になってしまうわけですよね。本当に差別をなくそうと思うのであれば、やらなければいけないことは規制をすることじゃないんですか。

 そして、今、現行で使われている人種差別撤廃条約、国連でやったものですけれども、これは犯罪として認識することを宣言しろと書いてありますよね。日本とアメリカとスイスは留保していますけれども、憲法上の理由もあると思いますが、留保していい問題とそうでない問題は私はあると思います。

 もう一つ。私がこの話をしようと思っているのは、このヘイトスピーチ、要するに、本邦外出身の方々に対する差別的な言動や暴力的な発言、そして侮辱が選挙の場で行われたということです。

 我々国民民主党が神奈川県で擁立した方は、非常に強力な差別的発言を受けて深く傷ついていらっしゃいます。この部屋の大多数にいらっしゃる自民党の方々も、仲間が差別的発言を受けているはずですよね。どうしてもっと憤らないのか。法務副大臣の仲間でもあるじゃないですか。大臣の仲間でもありますよ。そして、私にとっては同僚じゃないですか。そういう方々が選挙の場で行われた差別的発言にどうしてもっと怒らないのか。仲間の叫びも聞こえない人に有権者の叫びなんか絶対聞こえないと思います。

 その上で申し上げますが、ヘイトスピーチ解消法には、国と地方の役割分担という言葉があります。国がやることと地方がやることが決まっていますが、選挙の場で行われるような差別については国の責任だと思いますが、副大臣、いかがでしょうか。

門山副大臣 先生が御指摘された個別の事案についてはコメントを差し控えさせていただきますけれども、一般論として申し上げるならば、選挙運動等の自由の保障は民主主義の根幹を成すものである一方、不当な差別的言動は、それが選挙運動等として行われたからといって、直ちにその言動が違法性が否定されるものではないという認識をしているところでございます。

 そのため、法務省の人権擁護機関におきましては、その言動が選挙運動等として行われていることのみをもって安易に人権侵犯性を否定することなく、その内容、態様等を十分吟味して、人権侵犯性の有無を総合的かつ的確に判断した上で対応するようにしているところでございます。

 また、法務省の人権擁護機関では、選挙運動等に名をかりたヘイトスピーチの解消に向けた取組として、各種人権啓発活動を実施しているほか、関係省庁や地方公共団体を構成員としたヘイトスピーチ関連の専門部会を開催し、こうしたヘイトスピーチ対策のための情報交換等も行っているところでございます。

 今後とも、関係省庁や地方公共団体と緊密に連携し、ヘイトスピーチの解消に向けてしっかりと取り組んでまいります。

鈴木(敦)委員 だからこそ、法律に規定がないと困るんですよ。啓発をするというのは法律に規定がありますけれども、「ヘイトスピーチ、許さない。」というポスターとかステッカーとかバナーを作って法務省のホームページとかいろいろなところで公開するだけで本当に止まりますか。交通違反だって止められないじゃないですか。スピードを出すなとこれだけ言っても、スピードを出す人は出しますよね。だから警察が取り締まっているわけですよね。啓発をしたって止まらないんです。止めるためには実力が必要なんです。

 我が事として考えていただかないと止まらないですよ。人種差別だけじゃありません。いろいろな差別は止まりませんよ。私は、地元が川崎ですから、ヘイトスピーチ条例を先駆けて作った自治体でもありますので、すぐ近くに我が本邦外出身の方が住んでいたりする状況もあるのでよく分かりますけれども、結局、する人はするし、しない人はしないんですよ。これは犯罪と同じじゃないですか。

 今すぐに答えが出ないのであれば議論は続けるべきだと思いますし、そもそも日本が始めた議論だということを副大臣も是非認識をしておいていただきたいと思います。

 そして、審議官も、後ろから聞かなきゃ分からないんじゃなくて、これを分かっておいていただかないと困ります。当時その議論を先駆けてやって、だからこそ、日本はしばらくの間、そして今も一部の国々から尊敬を集め続けているわけですよ。この事実は是非理解をしていただきたい。

 そして、それを基に大臣に伺いたいんですけれども、こういった発言がいまだに続いています。大臣も外遊中に、本邦出身者だったり、あるいは邦人の方々との意見交換をされたと思います。仮に、外国で本邦出身者が差別を受けたら、そして差別的な行動や言動で被害に遭ったら、恐らくやめてくれと要請するじゃないですか。そういう方々に保護の手を差し伸べることすら日本の中でできていないのに、外国には要請なんかできませんから。

 これは外務省としても考えていただきたいと思います。外国と日本の懸け橋は外務省しかないんですよ。是非、その点、御決意をいただきたいと思います。

林国務大臣 人種や国籍などによって差別が行われるということは、いかなる社会にあっても許容されることではなくて、我が国としては、これまで、外国人等に対する偏見や差別の解消に向けてしっかりと取り組んできているところでございます。

 特に、先ほど中南米の出張についてお尋ねがありましたが、日系人の皆様との懇談、また、いろいろ展示がございまして、御案内のように、アメリカにおける日系の、戦前の話になるかと思いますが、いろいろな困難、苦難を乗り越えてこられたという展示を見ることが多いわけでございまして、そういうものを見ても、そういうことを乗り越えて我々が今ここにいるということをしっかりと前提にしながら、やはり、一人一人が個人として尊重されて、全ての人権を享受して、その人格を発展させることができる社会、こういうものを目指すためにも、我々としても、国連を始めとする国際社会や市民社会と引き続き協力の上、不断の努力を行ってまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 大臣から御紹介いただきましたアメリカのやつは排日移民法というやつですね。日本人を差別して収容所に入れるというようなこともやっていました。ドイツだけじゃないですよ。さすがに大量虐殺はしていません。これは今も続く人種差別の議論ですから、引き続き続けていかなければいけないと思います。

 時間も限られておりますので最後の質問ですけれども、経産省さんにまず伺いますが、中国がレアアース技術の輸出制限をしようと検討しているという話でありますが、二〇一〇年に我が国もレアアースの禁輸を受けました。それからサプライチェーンの多角化を進めてきたはずですが、どの程度進んでいるのか、教えてください。

恒藤政府参考人 高性能な磁石などの原材料として用いられますレアアースにつきましては、二〇一〇年のレアアースショックも踏まえまして、その輸入先の中国依存を低減するため、レアアースの使用量の少ない磁石、あるいはレアアースを使わない磁石の開発や、レアアース鉱山への出資などを通じた中国以外の供給源の確保などの取組を進めてきたところでございます。

 その結果、我が国のレアアース輸入に占めます中国からの輸入の割合は、二〇一〇年の八二%から、一昨年二〇二一年には六七%まで低下してございます。

 引き続き、様々なリスクに対応できるよう、永久磁石の生産能力の増強、レアアース使用量の少ない磁石の開発、リサイクル技術の開発導入、レアアースを始めとします重要鉱物の権益確保など、磁石の安定供給に向けた取組を進めてまいります。

鈴木(敦)委員 是非引き続き進めていただきたいと思います。

 主に中国ですけれども、リトアニアですとかあるいはオーストラリアは、国内と中国との政策のすれ違いによって様々な理由で経済的な威圧をかけてきております。この経済的威圧という言葉はG7のコミュニケの中にも入れていただいていたものですけれども、やはり、中国とほかの一か国だと各個撃破されていくんですね。

 リトアニア、オーストラリア、カナダ、韓国、モンゴル、そして日本とかノルウェーも含めてですけれども、中国からそういった経済的威圧を受けている国はたくさんあるわけで、これらを共通の枠組みとして、同志国を含めて枠組みをつくるべきだと考えますけれども、この点、いかがでしょうか。

林国務大臣 経済的威圧への対応ですが、国家安全保障戦略の記載を踏まえて、今後重点的に取り組んでいかなければならないと思っております。

 具体的な対応は多岐にわたりますが、やはり、過去の事例等を分析した上で、国際的な問題意識、今委員からもお話がありましたが、こういう問題があるというのをまず意識を持ってもらって、これを強化していかなければならないということでございます。

 一方で、国内供給能力の強化、供給源多角化等のサプライチェーンの強靱化という備えの強化も必要であります。

 実際に行為が行われた際の対応ですが、威圧行為の態様、影響の程度等に応じて個別具体的に検討されるべきものでありますが、やはり、経済的威圧が国際社会共通の懸念事項である、そして、我が国は、広く他国に対する経済的威圧を未然に防いで、経済的威圧に対して第三国が受けた被害を低減させる、これが重要であるというふうに考えております。

 こうした取組は、今御指摘があったように、同志国と連携して足並みをそろえながら進めていくことが重要でございますので、バイやG7を始めとした同志国の枠組みを通じて、外交的な取組を一層積極的に推し進めていきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 時間になりましたので終わりますが、G7だけではなくて、是非とも、そういった力のない国、G7のコミュニケの中にもあった最も脆弱な国々というのも是非仲間に入れてください。お願いします。

 終わります。

黄川田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 今回の世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書については、過剰漁獲、乱獲の禁止につながるものであり、賛成します。

 また、国際コーヒー協定、調停に関するシンガポール条約についても賛成の立場を表明しておきたいと思います。

 一昨年四月二十八日の外務委員会で、私は、当時提出されていた大西洋まぐろ類保存条約改正議定書に関連して、クロマグロの資源管理と小規模沿岸漁業について質問しました。

 今回のマラケシュ協定に関連して、引き続き、クロマグロの漁獲枠と沿岸漁業について質問します。

 大臣、クロマグロは、日本でも外国でも値が高く、飛ぶように売れる。特に三十キロ以上の大型魚は高い値段で売れ、この大型魚の漁獲配分枠を見れば、大中型のまき網優遇は一目瞭然であります。大型魚の令和四管理年度の当初配分は、大中型まき網漁業に三千六百二十九トン、そして、片や、都道府県管理の沿岸漁業に対しては千七百四十トン。沿岸漁業枠は大中まき網の四七%でしかありません。

 こうした漁獲枠の下で一体実績はどうなっているか。大中型のまき網漁業の大型魚の漁獲枠に対する実績、すなわち消化率は、第四管理期間で九九・〇、第五期間は九九・二、第六期間は九七・三。これに対する沿岸漁業の消化率は、五三・一%、七二・一%、七六・八となっています。これは、大中型まき網が捕りに行く漁業であり、産卵期の六月に日本付近に集まるクロマグロの群れを網で根こそぎ漁獲する、いわば効率漁法であるためであり、その漁獲量の大半は六月に集中している、だから消化率が一〇〇%近くになる、こういうことになっているんですね。

 元々、日本の参加する中西部太平洋まぐろ類委員会は、二〇〇二年から二〇〇四年の漁獲実績を基にクロマグロの漁獲量を削減ないしは抑制することを合意し、日本もその約束を実行しています。これは、一九九〇年代に大中型まき網漁業が太平洋のクロマグロの漁獲を激増させて資源悪化を招いた反省に立ったものであります。

 そこで、協定が言うところの過剰漁獲を禁止し、資源管理、回復を目標とする以上、一九九〇年代の資源悪化を招いた主要な原因、産卵期のクロマグロを根こそぎ捕獲するような大中型まき網をより厳しく規制する必要があるのではないか。農林水産大臣も経験された林外務大臣はどうお考えか、聞きたい。

林国務大臣 詳細は、農水省が所管しておりますので、農水省にお問合せいただきたいと思いますが、これまでも、資源を適切に管理する観点から、まき網漁業を含めた保存管理措置に国際機関でも取り組んできておるところでございます。

 外務大臣としては、責任ある漁業国日本として、引き続き積極的にこの議論に参画してまいりたいと思っております。

穀田委員 極めて簡単にお話ししていますけれども、私は、日本のやり方が世界の流れと逆行しているんじゃないかということを述べたいと思うんです。

 二〇二二年は、国連が定めた国際小規模漁業年であります。ここは、規模は小さいが価値は大きいというスローガンの下に、掲げて、小規模伝統漁業への支援を呼びかけています。日本の漁業でも九四%は小規模沿岸漁業経営体で、その数は約二万。一方、ニッスイやマルハニチロなど大手水産会社も参加する大中型のまき網漁業の経営体数は二十数となっています。

 大中型まき網優遇の下で一体どんな事態が起こっているか。私のふるさと岩手県の実情をお聞きして私はびっくりしました。

 岩手県の二〇二二年度のマグロ漁獲量は、二月二十八日現在で、三十キロ未満の小型魚が八十四・七トン、これは県に割り当てられている割当て量の九三%、大型魚は六十三・三トンの漁獲、こちらは割当て量の九五%を消化しています。こうした中で、岩手県でも、定置網漁において、クロマグロの漁獲割当てを超過しないよう、網に入ったマグロの放流を行っていて、二〇二二年管理年度は、小型魚と大型魚を合わせて十三万五千尾、推定重量として約七百三十九トンのクロマグロを放流したとのことであります。何と漁獲量の五倍以上も放流している。二〇二三年も四月時点で漁獲枠の八割を超えており、県からストップがかかっていると聞いています。

 今年の四月十五日の東海新報なんですけれども、これは、マグロ大大漁として、大船渡魚市場に一本平均百キロのクロマグロが二百六十五本水揚げされた、かつてない豊漁で活気づいた一方、県が示す本年度の漁獲枠の上限に近づいており、懸念の声が出ていると報じているところであります。

 つまり、せっかく捕ったクロマグロを泣く泣く放流せざるを得ない状況にある。こうした事態に心が痛まないのかということについて大臣にお聞きしたいと思います。

林国務大臣 今の件も一義的には農水省にお問合せいただきたいんですが、実は、私も、地元の漁師さん、島の方の方なんですが、一か月か二か月前にお話をしたときに、定置網に、ここ数年なのでございますが、マグロがかかるというお話を聞いたことがありまして、そもそもがマグロのためということでは必ずしもないところにかかるようになってくる。漁師さんの言葉をかりれば、いるところが少しずれてきているのではないか、こういうようなお話でございまして、まさにその結果として、今委員がおっしゃったように、枠を超えると放流せざるを得ない。更に言うと、定置網が破られちゃうわけですね。もう泣きっ面に蜂だ、こういうようなことをおっしゃっておられて、今委員がおっしゃっていたので、山口だけではなかったのか、こう思った次第でございます。

 まさに、先ほど来お話がある資源管理の中で、農水省の方で漁業者の実情を踏まえて適時適切に対応していくということで、しっかりと資源を管理しなければいけないというのは当然でございますけれども、資源をしっかり管理した上で適時適切にそういうことに対応していくというのは重要なことではないか。あくまで私見でございますが、そういうふうに考えております。

穀田委員 私見といいましても、とても大事な発言だと思います。別に、農水省をこれでいじめる、そんな気はないんです。要するに、認識を共有しているということが大事だ。

 そこで、今五倍のと言いましたけれども、実は、確かにおっしゃるようにここ数年という問題はあるんですけれども、二〇一八年、岩手県では放流は十八万二千尾なんですね。だから、何と千七百四十六トンなんですよ。漁獲量の九・六五倍、これだけ捨てんならぬということを見たら、ほんま大変やなと思いませんか。放流の方が捕っているものの十倍近くある。

 だから、農水副大臣に聞きたいんですけれども、さきに触れたように、国連が国際小規模漁業年を定め、小規模伝統漁業への支援という国際的な呼びかけに応えて、この際、大型魚の漁獲枠について、大中型まき網漁業と沿岸漁業の比率を逆転させるというぐらいの決断をすべきではないですか。

勝俣副大臣 ありがとうございます。

 私も静岡県の伊豆半島が地元でございまして、本当に沿岸漁業の皆さんは大変頑張っておられます。資源管理も本当に一生懸命やられているところでございます。穀田委員のおっしゃるとおり、だからこそ何百年という歴史の中でそういった漁法が続いているものだというふうに認識しております。まさに、今時代が求めている持続可能な漁法なのかなというふうに思っております。そういったものをしっかりと守っていかなければならないというふうに思います。

 様々な声を受け止めてしっかりと検討していきたいなというふうに思っております。

穀田委員 今ありましたように、だからこそ何百年も続いた漁法、この点で守らなければならない。決意はそれでいいんやけれども、具体的にどうするかという問題を私は言っているんですよね。

 つまり、小規模漁業というのを世界的には大事だということを言っている、わざわざ漁業年までつくってやっているのに、日本がやっていることは大したことないんですよね。だから、この結果は、沿岸漁業従事者や収入の変化など、二〇一八年の漁業法の改悪以後、別にそんなに向上していない、こういう実態があるわけですね。それが証明している。

 そこで、今、私はええ話を聞いたなと思いましたわ。資源管理の上で大中型まき網をより厳しく規制すべきと主張するのには私はもう一つ理由があるんですね。それは、漁法そのものの違いにある。

 大規模捕獲型で効率漁法の大中型まき網漁業に対して、沿岸漁業は定置網で行っています。これは、魚を待つ漁業なんですね。だから、資源管理そのものだ。そして、定置網に仮に百匹の魚が入ると、六十匹ほど逃げてしまって、四十匹ほどが残る。水産資源の再生産という点でも調和の取れた漁業であり、捕れるときも捕れないときもある。だから、先ほど副大臣もおっしゃったように、歴史、日本で七百年以上も続いている。

 こういう共通認識に立ったというのはとてもいいことで、その後が大事だということがいよいよはっきりしてきますわな。一般論はええけど、具体的になるとさっぱりというのがあってはあきまへんで。

 そこで、要するに、大中型まき網と定置網などの沿岸漁業では資源管理の哲学が違うということが今の私の話でお分かりいただけたかと思うんです。

 私の地元、京都の伊根町でお聞きすると、定置網であればマグロは勝手に入ってくる、しかし、漁獲枠を超えたものについては、もう一度網を引き上げて、先ほど大臣もおっしゃったように、マグロを海に生きたまま放流する。そのときに、一緒に入ったブリやサワラも逃げてしまう。これは漁業者にとって死活問題であります。沿岸漁業者は、クロマグロの来遊状況に翻弄されながら、経済的痛みを背負いつつ、必死で漁獲枠を守っている。

 宮古市の漁協でも、二百キロクラスのクロマグロが百本以上入ったが、漁獲枠との関係で放流せざるを得なかったと聞いています。十二月十日といいますから、お正月を前にマグロの値が一番いいときに、枠の九〇%を超えたからといってストップがかかる。こうした経済的損失に対して補償があってしかるべきではありませんか。

勝俣副大臣 ありがとうございます。

 委員御承知のとおり、クロマグロの漁獲枠につきましては、WCPFCの決定に基づき、水産政策審議会で取りまとめた配分の考え方に従い、沿岸漁業へも配慮しながら、漁業種類や都道府県ごとに配分して管理に取り組んでおります。

 資源管理は、関係する全ての漁業者の協力の下で取り組む必要がございます。その際、沿岸漁業につきましては、枠の遵守のための放流等が必要な場合もあることから、国としましても、放流の取組に対して一人一日当たり三千円を支援する等、一定の支援を行っているところであります。

 これまでの関係者による資源管理の努力の結果、クロマグロ資源は回復傾向にあり、二〇二二年の漁期には大型魚の増枠が実現しているところでございます。

 引き続き、沿岸漁業へ配慮等も行いながら、適切な資源管理に努めてまいりたいと考えております。

穀田委員 三千円という話がありました。今、岩手では、サケ、サンマ、スルメイカ、マダラ、岩手の主要な魚種が震災前の二%、七%、一一%、四一%なんですよね。だから、戻っていない中で、網に入ってきたマグロを含めて放流せざるを得ない、この漁民の思いを本当に受け止めなあきまへんやろ。

 しかも、三千円というような話をして、何かやっているみたいな話をしていますけれども、実は、岩手ではこのクロマグロの混獲回避のお金というのは何ぼ出ているか知っていますか。二千五百万でっせ。八十九か統で二千五百万ですから、ほんの二、三十万にしかならないんですよ。そんなことで漁が続けられると思うか。沿岸漁業を大切にするんやったら補償はきちんとせなあかんと私は思うんですね。

 それやったら、まず一つ、支援の上限額をもっと引き上げてほしいと言っているこの声に応えるべきじゃないのか。だから、沿岸の支援の上限金額を上げるべきじゃないか。

 そして二つ目に、漁協関係者は、定置網は、自分から捕りに行くのではなくて、さっき言ったように待ちの漁業だ、だから、定置網に入った分は全部認めてほしいと。一方、まき網は捕りに行く漁業なんだから、漁獲枠はそちらで調整すればいいと私は思うんですね。

 だから、沿岸漁業者の定置網に入った全てを漁獲枠として認め、その分、大中型まき網の方の漁獲枠を削るという制度設計にすれば、先ほど副大臣がおっしゃった配慮するということの実行ではありませんか。

勝俣副大臣 ありがとうございます。

 しっかりと声を受け止めて検討していきたいというふうに思うんですが、委員御承知のとおり、定置網漁業のクロマグロの漁獲量は相当量がございます。二〇一七年から二〇二一年における我が国の漁獲量に占める割合は、大型魚で約一割、特に資源管理上重要な小型魚で約三割を占めているところでございます。

 仮に、定置網に入ったものについて漁獲枠にかかわらず全てを水揚げを認め、我が国漁獲枠の超過を引き起こすことになった場合には、関係する全ての漁業者に損失が及ぶことになってしまいます。このため、クロマグロの適切な資源管理のためには、定置網漁業においても漁獲枠を設定し、これを着実に遵守してもらう必要がございます。

 なお、定置網において、漁獲枠を遵守しつつ、放流等を行わなければならない状況を最小限にするため、今後とも、農林水産省としまして、混獲回避に必要な技術開発や機器の導入への支援を行ってまいりたいと考えています。

穀田委員 話を余りそらしたらあかんわね。

 要するに、どっちを取るかという話なんですよ。沿岸漁業者の方を少し増やしたからといって、全部に迷惑がかかるわけではないんですよ。桁違いに多いんやから。それを知らぬと思ってみんなに言っていたらあきまへんで、そんなこと。

 アメリカではやっているのやから。アメリカでは、沿岸漁業者が漁獲枠を超えて捕り過ぎた場合は大中型まき網の方の漁獲枠を削るということでやっているんですよ。アメリカでやっていて、何で日本でできへんのか。日本は一番の漁業国じゃないですか。しかも、沿岸漁業を守ると言っているじゃないですか、あなた。あなたと言うと悪いけれども。そうだと私は思うんですね。

 だから、私は、ついでにもう一遍、最後に一つ言っておきますけれども、私は一昨年のときに、大中型まき網漁船の横暴勝手についても取り上げました。

 大型船がクロマグロをまき網でごっそり捕りますやんか。すると、マグロの重みで下の方のマグロは圧死するわけですわ。漁船はそれを海に投棄しているというテレビが出たんですよ。私はそのときに、個体が死んでいるかどうかにかかわらず、その数量は漁獲量であり、これを海に捨ててカウントしないというのは資源管理上大問題だと言ったわけですね。だって、一方で泣く泣く放流しているのに、片や死んだのをほっているなんて、そんなことが許せますか、人の道で。そんなことを許しているとしたら、何が水産庁だと私は思いますよ。

 だから、今言ったように、大臣は当時、正確かつ迅速な漁獲量の把握は非常に重要だ、我が国としてどのような取組が可能かしっかり考えていきたいと。その後の検討状況だけ、簡単に。

勝俣副大臣 ありがとうございます。

 その後、大中型まき網漁業の日本海におけるクロマグロ大型魚の管理につきましては、総量管理から一歩進めまして、令和四年からIQによる管理を導入しまして、漁獲報告の期限を、従来の陸揚げ日の翌月十日までの報告から、陸揚げから三日以内とする迅速な漁獲報告の義務づけなどを行ったところであります。

 今後も、こうした数量管理の高度化を図っていくため、洋上での監視も含めて、太平洋クロマグロの漁獲や流通に係る監視や制度の在り方についてしっかりと検討してまいりたいと考えています。

穀田委員 それを検討したいと言っているんだけれども、私はそのときに言ったんですよ。監視ということで言うのは本気かと。アメリカでは、漁獲データの監視及び集計において本格的なオブザーバーシステムが組まれているんですよ。四百人のオブザーバーが延べ三万五千日活動しているんですよ。人件費は産業が負担しています。そして、百二十五フィート以上の漁船には全ての操業に同乗することとなっているわけです。スペインでも、漁船に監視員を乗せ、監視カメラで不正がないか監督している。じゃ、そういうことを日本で実施するんですね。

黄川田委員長 時間が過ぎましたので、答弁は短くお願いします。

勝俣副大臣 ありがとうございます。

 スマート漁業を含めてしっかりと検討していきたいなというふうに思います。

穀田委員 検討、検討で、見当違いにならぬように。

 最初に言ったこと、沿岸漁業者を守るという立場にほんまに立たな、そのことが問われるで。私はこのことについて諦めずに追求していきます。

 おおきに。

黄川田委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

黄川田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千二十二年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

黄川田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

黄川田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

黄川田委員長 次回は、来る二十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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