衆議院

メインへスキップ



第11号 令和5年5月31日(水曜日)

会議録本文へ
令和五年五月三十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田仁志君

   理事 小田原 潔君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 中川 郁子君 理事 西銘恒三郎君

   理事 源馬謙太郎君 理事 徳永 久志君

   理事 和田有一朗君 理事 吉田 宣弘君

      秋本 真利君    五十嵐 清君

      伊藤信太郎君    上杉謙太郎君

      上田 英俊君    城内  実君

      島尻安伊子君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      高木  啓君    辻  清人君

      寺田  稔君    西野 太亮君

      平沢 勝栄君    平沼正二郎君

      深澤 陽一君    務台 俊介君

      山口  晋君    青山 大人君

      篠原  豪君    松原  仁君

      青柳 仁士君    杉本 和巳君

      金城 泰邦君    鈴木  敦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  齋藤 秀生君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総合政策推進室室長)       笹川  武君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   水野  敦君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            渡邊 昇治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石瀬 素行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 伊藤 茂樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北村 俊博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片平  聡君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 田部井貞明君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 小杉 裕一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            萬浪  学君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         宮崎  桂君

   参考人

   (独立行政法人国立公文書館理事)         山谷 英之君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     務台 俊介君

  上杉謙太郎君     深澤 陽一君

  城内  実君     平沼正二郎君

  島尻安伊子君     西野 太亮君

  鈴木 貴子君     上田 英俊君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     山口  晋君

  西野 太亮君     島尻安伊子君

  平沼正二郎君     瀬戸 隆一君

  深澤 陽一君     上杉謙太郎君

  務台 俊介君     伊藤信太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     城内  実君

  山口  晋君     五十嵐 清君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     鈴木 貴子君

    ―――――――――――――

五月二十九日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(大河原まさこ君紹介)(第一三三七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事宮崎桂君、独立行政法人国立公文書館理事山谷英之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官金井正彰君、大臣官房審議官石瀬素行君、大臣官房審議官伊藤茂樹君、大臣官房審議官岩本桂一君、大臣官房審議官北川克郎君、大臣官房参事官今福孝男君、大臣官房参事官林誠君、大臣官房参事官宮本新吾君、大臣官房参事官池上正喜君、大臣官房参事官大河内昭博君、大臣官房参事官北村俊博君、大臣官房参事官片平聡君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官平井康夫君、内閣府大臣官房総合政策推進室室長笹川武君、政策統括官水野敦君、科学技術・イノベーション推進事務局審議官渡邊昇治君、厚生労働省大臣官房審議官宮本悦子君、大臣官房審議官本多則惠君、防衛省大臣官房審議官田部井貞明君、大臣官房審議官小杉裕一君、防衛政策局次長安藤敦史君、防衛装備庁装備政策部長萬浪学君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎です。

 今年の一月、イタリアを訪問した岸田首相は、メローニ首相と会談し、日本とイタリアの映画共同製作協定に関し、基本合意をいたしました。今回のG7広島サミットで日伊首脳会談が行われ、日伊映画共同製作協定の交渉が妥結したことを歓迎しております。

 この日本とイタリアの映画共同製作協定が今後いつ署名され、発効される見込みかをお伺いいたします。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 今月十八日に広島で実施されました日・イタリア首脳会談におきまして、岸田総理とメローニ首相は、日・イタリア映画共同製作協定の交渉が妥結したことを歓迎したところでございます。

 この協定は、両国の映画製作団体間の交流を強化し、両国間の映画共同製作を拡大することを目的としているものでございます。この協定を通じまして、両国の映画業界における相互理解の促進及び人材交流の一層の活発化が期待されるとともに、共同製作映画を通じた両国国民の相互理解が促進されることが期待されるところでございます。

 交渉が妥結したことを踏まえまして、現在、イタリア側との間で署名に向けて事務的な調整を進めているところでございます。できる限り早期の署名、発効に向けて鋭意取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(信)委員 今回のG7広島サミットにおいて、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加したことは大変重要であったと思います。ゼレンスキー大統領が、G7首脳だけでなく、インドを始めとする招待国の首脳たちと会談を行ったこと、これも大変意義深いことだったと思います。

 これらのことによって、ウクライナ支援や平和の構築に関し、具体的にどのような成果がもたらされたかをお伺いしたいと存じます。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序を揺るがす暴挙に対しまして、国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領に今回のG7広島サミットにおける議論に参加をいただきまして、ウクライナが置かれた現状について自らの言葉でG7や招待国等に対して直接説明をいただきました。

 それによりまして、まず、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく、G7がこれまで以上に結束して、あらゆる側面からウクライナを力強く支援し、厳しい対ロ制裁を継続していくことを改めて確認するとともに、G7以外の招待国も含めて、世界のどこであっても力による一方的な現状変更の試みを許さず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くことが重要である、こうしたメッセージをより力強く国際社会に発信することができたと考えておりまして、そういった意味で非常に有意義だったと考えております。

 核軍縮に関しましても、ウクライナ侵略の文脈においてロシアの核兵器による威嚇が問題となる中で、ゼレンスキー大統領を広島に迎え議論を行ったことは、ロシアによる核兵器による威嚇、ましてやその使用は許されないというメッセージを緊迫感を持って発信することにつながったというふうに考えているところでございます。

伊藤(信)委員 ゼレンスキー大統領は、今回、広島を見て、ウクライナの復興に生かしたい、そういう発言をなさいました。

 先日、ウクライナの農業政策食料省の幹部が宮城県を訪問し、東日本大震災からの農業復興の状況を視察しました。東松島市の農園では、宮城県の創造的復興のありように感銘を受けられて、ウクライナの農業復興政策の参考にしたいと発言していました。

 そこで彼らが言及したのは、ウクライナではロシアの攻撃によって受けた土地の修復が必要であるということです。とりわけ、不発弾の処理、地雷の撤去、瓦れきの処理が必須でございます。

 このようなことについて日本としてどのような貢献や支援ができるかをお尋ねいたします。

北村政府参考人 お答えします。

 ウクライナの復旧復興を進めていく前提としまして、委員御指摘のとおり、地雷あるいは不発弾の対策、そして瓦れきの除去、これは非常に重要な課題と認識しております。ウクライナの基幹産業であるところの農業生産や輸出力の向上を図る上でも非常に重要でございます。

 まず、地雷除去に関しましては、日本は、本年一月、長い間地雷除去を支援してきていましたカンボジアとの協力の下で、カンボジア及び日本の双方におきまして、ウクライナ非常事態庁の職員に対し、日本が供与する地雷探知機、これはALISと申しますけれども、ALISの使用訓練を行うとともに、地域コミュニティーに対する地雷リスクに関する啓発活動、そのノウハウや経験を伝える研修を実施したところでございます。

 今後も、ウクライナ非常事態庁に対する技術協力を継続するとともに、地雷探知機、地雷除去機、そして建機等の供与を行っていく考えでございます。

 また、瓦れきの除去に関しましては、東日本大震災を含む我が国の復興の経験を踏まえた瓦れき除去に関するオンラインセミナーを開催するとともに、本年四月から、イルピニ市におきまして、バックホー、あるいはバックホーローダー、そういった建機を供与しまして、ウクライナの瓦れき処理システムの構築に向けて、同市を含むキーウ州においてパイロットプロジェクトを開始したところでございます。

 引き続き、瓦れきの除去のための建機供与等も進めていく考えでございます。

 今後とも、ウクライナ側のニーズを踏まえまして、地雷、不発弾対策、瓦れき除去を含め、日本の持つ知見や経験を活用しまして、日本らしいきめの細かい支援をできるだけ迅速に実施していきたいと考えているところでございます。

伊藤(信)委員 今回の広島サミットによって、核軍縮、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー問題、気候変動、国際保健、自由で開かれたインド太平洋に関し、どのような成果があったのかをお尋ねいたします。

林国務大臣 今次サミットを被爆地広島で開催することとした大きな狙い、すなわち、各国首脳に被爆の実相に触れていただいて、それを世界の隅々に向けて発信していただくということについて、まずは大きな成果が得られたと考えております。今回、核軍縮に関する初めてのG7首脳独立文書となるG7首脳広島ビジョンの発出を得まして、引き続き、現実的で実践的な取組を継続、強化してまいります。

 また、G7サミットでは初めて、経済的強靱性、経済安全保障を独立したセッションで扱いまして、この分野に関する首脳声明を発出いたしました。サプライチェーンの強靱化、経済的威圧に関するプラットフォーム立ち上げなどに取り組むとともに、毎年継続して成果を出すため、G7の枠組みを通じて包括的な形で協力してまいります。

 加えて、食料、エネルギー問題を含む世界経済はもちろん、さらには、気候変動や開発、国際保健、AIなど、幅広いグローバルな課題についても議論を深め、今後の対応の方向性について確認することができたところでございます。

 例えば、国際社会の喫緊の課題である食料に関しては、G7と招待国の共同で、強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明を発出いたしまして、世界的な食料危機への対応と、強靱で持続可能かつ包摂的な農業、食料システムの構築に向けて、具体的な行動を示して、共に取り組んでいくことで一致したところでございます。

 また、インド太平洋についても、岸田総理から、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのための新たなプランを説明し、引き続き、G7としてFOIPの実現のために協力していくことで一致することができたところでございます。

伊藤(信)委員 今回、日本は、G7だけでなく、グローバルサウスを含む多くの国々の首脳と会談しました。今後、日本がよりフェアな法の秩序に基づく自由で開かれた国際秩序を主導する上でどのような役割を果たすことが期待されているかについてお伺いいたします。

林国務大臣 G7広島サミットでは、G7首脳に加えまして、今お話のありましたグローバルサウスを中心とする招待国首脳、そしてウクライナのゼレンスキー大統領とともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くことなどについて見解の一致を見たところでございます。

 こうした成果を、九月のG20ニューデリー・サミット、そして十二月の日・ASEAN特別首脳会議、こうしたものにもつなげるべく取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(信)委員 ありがとうございました。

 これで質問を終わります。

黄川田委員長 次に、上杉謙太郎君。

上杉委員 おはようございます。自民党の上杉謙太郎でございます。

 今日は質問のお時間をいただきまして、理事の先生方に感謝申し上げます。

 伊藤先生の質問に関連しまして、G7広島サミットについて御質問させていただきます。

 伊藤先生からもありましたが、今回のサミットの成果は非常に大きいものがあったというふうに思います。先ほど大臣から、その成果、効果等々、御答弁がありましたけれども、私の方から、これは今後についても大事だという論点でちょっとお話をしたいというふうに思います。

 G7サミットが成功して、とはいっても、参加している国はG7の国々と、あとは招待国、又は国連始め国際機関であります。ほとんどの国はテレビなり報道で見ていたということでありますから、やはり、G7に参加していないほとんどの国に対して、これから日本が議長国としてしっかりとこのG7の成果を、もちろん、日本外交の取り柄の日本目線で、低姿勢で、そして日本らしい形で成果を各国に伝えていく、そして共感を得ていただく、御同意をいただく。加えて、バイ会談等を通じて、G7のみならず、私たち日本としての国益のためにも、お伺いした国々との中で、ODAを始め様々な要望もあるでしょうから、そういったことを聞いていく、こういうことが大事だというふうに思います。

 すぐにでも外交日程を組んでいって、太平洋島嶼国もそうでありますし、ASEANの国々もそうでありますし、アフリカ、中南米もそうであります。そういった意味で、今後しっかりとこのG7を受けて外交を進めていきたいというふうに考えておりますが、大臣の御所見をお伺いできればと思います。

林国務大臣 今次のサミットに際しまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していくという強いメッセージを示すこと、そして、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々との関与を深めることの二点を重視しておりましたが、これらについて当初の狙いどおりの成果を達成できたと考えております。

 また、今回のサミットでは、グローバルサウスを中心とする八か国の招待国を交えて、食料、開発、保健、気候変動、エネルギー、環境といったこれらの国々が直面する諸課題について議論を行って、G7を超えた幅広いパートナーが協力してこれらの課題に取り組んでいくことを確認するとともに、今後我々が取るべき具体的な行動を含めて、認識の共有を図ることができました。

 例えば、国際社会の喫緊の課題である食料に関しては、G7と招待国の共同で、強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明を発出いたしまして、世界的な食料危機への対応と、強靱で持続可能かつ包摂的な農業、食料システムの構築に向けて、具体的な行動を示し、共に取り組んでいくことで一致いたしました。

 さらに、今回、招待国首脳とゼレンスキー大統領を交えたセッションにおきまして、法の支配、そして国連憲章の諸原則等の重要性について認識の一致を得ることができました。これも大変大きな意義を持つものであったと考えております。

 今後ということですが、日本のG7議長年はまさに本年末まで続くところでありますので、まさに委員からお話がありましたように、今回のサミットで達成された成果も踏まえまして、日本の国益のために、また、G7議長国として、国際社会が直面する課題に全力で対処すべく、G7の議論を積極的に牽引していきたいと考えております。

 また、本年は、G20ニューデリー・サミット、そしてSDGsサミット、そして日・ASEAN特別首脳会議など、グローバルサウスを含む国際的なパートナーと連携する機会が続きます。まさにこうした機会を捉えて、広島サミットでの充実した議論を踏まえて、様々な課題を共に解決すべく、積極的な外交を展開して、パートナーの国々との連携を強化してまいりたいと考えております。

上杉委員 大臣、ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 大臣も今までたくさんの国々を訪問されてきておりますし、大臣お一人で各諸国を回るのも大変でしょうから、外務省は副大臣が二名、政務官が三名おりますから、合計六名、手分けをして、もうコロナも終わりましたし、是非対面で、しっかりその国々を訪れて、先方の要人の方とお会いして会談をするということが大事であるわけでありますので、そういった形で是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 続いて、G7の冒頭で、慰霊碑への献花、そして平和記念資料館への見学がありました。バイデン大統領を始め、ゼレンスキー大統領も含めて、これは歴史に残ることだったというふうに思います。感慨深くもあり、意義深いものであったというふうに思います。

 これの成果、意義、そういったことではなくて、ちょっと違う視点で一問御質問をしたいのですけれども、この慰霊碑への献花、また施設の見学というものを今まで諸外国の要人はされていたのでしょうかということであります。私の知っているところでは、昨年、国際賢人会議においては見学があったというふうに承知しております。

 これからの時代、やはり被爆の実相を知っていただくということは非常に大事だというふうに思っております。今まで外務省として、例えばそういったもののツアーをアレンジするですとか、そういったことがあったのかどうか、また、今後もそういうことをやる御予定があるのか、御教示いただけたらと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 各国のハイレベルを含め、世界に被爆の実相をしっかりと伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要であります。

 先般のG7広島サミットでは、平和記念資料館の視察を通じ、被爆の実相への理解を深め、核兵器のない世界の実現に向けたG7としてのコミットメントを確認する機会になったと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、昨年十二月に広島で開催された、核兵器のない世界に向けた国際賢人会議第一回会合におきまして、出席した委員は、被爆の実相についての認識を深めるべく、慰霊碑への献花や平和記念資料館の視察等を行ったところであります。

 このほか、我が国としては、例えば、各国の若手外交官や国防関係者などを対象とした国連の研修プログラムである国連軍縮フェローシップの参加者を広島及び長崎に招待するなど、被爆の実相を伝える取組を積極的に推進してきているところであります。

 加えまして、今回、新たに我が国が拠出し、国連が立ち上げたユース非核リーダー基金、これは、核兵器国及び非核兵器国の双方から未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらい、核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークづくりを目的とするものでございまして、今月、参加者募集が開始されたところであります。

 引き続き、こうした取組を通じまして、また、各国の要望等も踏まえながら、被爆の実相の発信に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

上杉委員 ありがとうございます。

 すばらしいですね。是非進めていっていただきたいと思います。広島のみならず、長崎もそうでありますし、特に、未来のリーダーですとか外交官、また国防に携わる方々に対してやっていただいているということは非常にすばらしいというふうに思います。

 また、東京にいる在京の各国の大使館とかは、恐らくこれは、外務省にお尋ねするというよりも、もしかすると広島市に直接依頼をして、献花させてほしい、見学させてほしいというのがあるかもしれませんが、外務省としても、広島市と共有して、また長崎市と共有して、また、今回のG7の首脳またゼレンスキー大統領の献花、見学があったわけでありますから、もしかすると、各国の在京の大使館も、改めてもう一度行ってみたいという御希望もあるかも分かりません。そういう御希望がある場合は是非アレンジをしてあげていただけたらありがたいというふうに思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 続いての質問でありますけれども、今回は本当にありがとうございました。私は福島県でありますし、伊藤先生も宮城県であります。今回のG7広島サミットでは、もちろん広島産の食品もそうでありますけれども、被災地東北の復興PRも兼ねて、私たち東北の食材を使っていただきました。岩手県の乳製品、また宮城県のイチゴ、福島県は天栄村の松崎酒造の広戸川という日本酒であります。本当に感謝申し上げます。

 震災から十二年であります。G7首脳また各国の方々が来る中で、そういう方々に振る舞うディナーまたランチにおいて東北の品々を使っていただくのは本当にうれしい限りであります。また、メディアセンター等々でも、各県また復興庁の出展、PR等もありました。

 こういったものどもが要人の方々、また海外のメディアに対してどのような反応があったのか、御教示をいただけたらと思います。

北川政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘のとおり、今回のG7広島サミットでは、様々な機会を活用して、東日本大震災からの被災地の復興を世界に向けて効果的に発信するべく取り組んでまいりました。

 具体的には、委員御指摘のとおり、各国首脳が出席するワーキングランチやディナー等の機会において、被災地を含め日本各地の産品を活用し、その魅力を発信した結果、出席者からは大変好評を得たと承知しております。

 また、国際メディアセンターでは、関係省庁及び被災地の自治体が広報展示ブースを設け、動画放映やパネル展示及び被災地産品の試食、試飲機会の提供等を通じて、被災地の復興状況を国内外のメディアに発信いたしましたが、いずれも取材に訪れた外国報道陣から好意的な反応を得たと承知しております。

上杉委員 ありがとうございます。

 この好意的な反応が、それが更に復興、風評払拭、これから原発の処理水の放出等も控えておりますし、農林水産品に関して言えば、まだ多くの国々が輸入規制中であります。そういったものどもに対して効果的なものになったというふうに期待をしたいというふうに思います。

 ということで、関連してお伺いしたいと思いますが、ヨーロッパではまだ福島県産品を始めとした日本産食品の輸入規制が続いております。私も、政務官時代に携わらせていただきましたし、その後も議員としてやらせていただいてきております。私個人としては、今回のG7サミットがしっかりとこの輸入規制撤廃に貢献していただきたいというふうに思っております。

 そこで、今回のG7の中には、欧州の国、フランス、ドイツ、イタリアはまだ輸入規制中なわけであります。アメリカ、イギリスはもう解除しておりますが。そういった国々に対して岸田総理のお言葉でしっかり輸入規制に向けた働きかけを行っていただけたかどうか、御確認をいただけたらと思います。

大河内政府参考人 お答え申し上げます。

 欧州連合における日本産食品の輸入規制措置につきましては、現在、EU内部で見直しに向けた議論が行われている、こう承知しております。

 日本政府といたしましては、これまで、あらゆるレベルで欧州委員会及びEU加盟国に対し措置の早期撤廃に向けた働きかけを行ってきております。岸田総理からも、G7広島サミットの場で、EU加盟国首脳に対し、早期撤廃に向けた協力を要請した次第でございます。

 EU側での議論の結果についてはまだ予断はできませんが、日本産食品の安全性は科学的に証明されており、引き続き措置の撤廃に向けて粘り強く働きかけていきたい、このように考えております。

上杉委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。農水省と連携して是非お願いいたします。

 G7に関連する質問は以上であります。

 若干話が変わりまして、戦没者遺骨収集事業についてであります。

 さきの大戦からもうすぐ七十八年ということであります。そのときに、バイデンさん、またゼレンスキー大統領を始め献花していただいた、資料館を見学していただいたということは本当に意義深く、感慨深いものであります。

 一方で、私たちの先人、私の祖父の時代の方々は、まだ百十万柱以上の英霊の皆様が海の中に、また土の中で眠っておられるわけであります。

 厚生労働省は、今まで遺骨収集の事業を、法案ができてから精力的にやってくださっていた、ここは敬意を表したいというふうに思います。ただ、コロナがありまして、この二、三年、遺骨収集事業は進んでいなかったということでありました。

 そして、今日、ちょうどタイミングが同じになったんですが、今日の午後から、戦没者遺骨収集推進法の五年間延長する法案が厚生労働委員会で審議されることになっております。

 やはり、私たち外交に携わる国会議員、また役所の皆さんも、もちろん、今の外交、平和と未来の平和構築のために誠心誠意努力する必要がありますけれども、そのときに、同時に、さきの大戦で亡くなられた英霊の皆様に常に心をはせておく必要があるというふうに思います。そして、今、孫の世代である私たちが、その英霊の皆様にしっかりと、せめて御遺骨だけでもふるさとに帰っていただく、お返ししなければならない、これは私たちの責務であるというふうに考えております。

 そういった意味で、この法案が五年延長されることは非常にありがたいことでありますし、かつ、アメリカの方も遺骨収集事業をしていて、前々からアメリカ側からも、一緒に協力して遺骨収集をやっていこうというふうに言ってくださっております。平成三十一年に日米の覚書を交わして、遺骨収集、そして安定同位体鑑定、そしてDNA鑑定等々を一緒にやっていこうということになっております。

 日米で連携してこれから遺骨収集事業をどんどんどんどん加速させていく必要があるというふうに思いますけれども、今日は厚生労働省さんにもお越しいただいておりますので、御答弁いただけますでしょうか。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省と米国DPAA、国防総省捕虜・行方不明者調査局は、先生からお話のありましたように、平成三十一年四月に戦没者の遺骨収集に関する日米の協力覚書を取り交わしまして、それ以降、両国の戦没者等の御遺骨の収容、またDNA鑑定のための検体の採取などについて、より緊密な協力関係を築いてまいりました。

 今年二月には、DPAAのケリー・マッキーグ長官が来日して加藤厚生労働大臣と会談し、日本と米国DPAAのこれまでの協力や連携について先方から高く評価をいただくとともに、加藤大臣からも、更なる連携強化によって遺骨収集や身元の特定をしっかり進めていくことをお伝えしたところでございます。

 今後も、この覚書を踏まえて、更に協力についても進めていく考えでございます。

 また、議員立法で平成二十八年に遺骨収集推進法が成立しておりまして、この中で遺骨収集は国の責務と位置づけられておりまして、政府としては、一柱でも多くの御遺骨を一日でも早く御遺族にお返しすることが重要と認識しております。

 ただ、この推進法の成立以降、令和二年度、三年度はコロナの影響で海外における事業がほぼ実施できなかったということがございます。

 こうした中で、委員御指摘のとおり、議員立法で遺骨収集推進法を改正して集中実施期間を延長するという議論が行われているというふうに承知をしております。

 厚生労働省といたしましては、可能な限り多くの御遺骨を収容し、御遺族に早期にお返しできるよう、外務省などの関係機関、また米国等関係国の協力も得ながら、全力を尽くしてまいりたいと考えております。

上杉委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 昭和二十年にお生まれになった方も今年で七十八歳になるということですか、二〇四五年には百歳になってしまうわけであります。百年たてば、御遺族の方々も、息子さん世代の方々もどんどんお亡くなりになっていくわけでありまして、さきの大戦を経験した方々がいなくなってしまう前に、しっかりと御遺骨をふるさとに、できればDNA鑑定等で御家族を特定してその方々にお返ししていただく、お骨だけでもお帰りいただくということは我々の責務だというふうに思っております。

 私も、千鳥ケ淵の戦没者の御遺骨引渡式に毎回参列をさせていただいております。是非厚労省さんにはこれからも頑張っていただきたいというふうに思います。ありがとうございます。

 最後の質問であります。

 またがらっと質問が変わりまして、国連大学についてであります。

 今、政府を挙げて、また外務省を挙げて、国連そして国際機関における日本のプレゼンスを高めるということを鋭意やっていただいているところであります。

 この国連の中で、国連大学の本部は、皆さん御承知のとおり、日本にあるんですよね。すぐそこであります。道路を挟んで青山学院大学の斜め向かい側にあるわけであります。

 国連、国際機関での日本のプレゼンスを高めるということをやっている中で、すぐ近くに国連大学、しかもその本部がある、これは日本の強みになるわけでありまして、これから更にもっと、私たち議員も国連大学を応援するということが必要でありますし、政府、外務省としても、また文部科学省としても、国連大学と連携して教育研究を強化する等々をやっていくべきだというふうに考えますけれども、大臣のお考えをお伺いできればと思います。

林国務大臣 国連大学は、国連諸機関全体のシンクタンクとしての地球規模課題の研究に加えまして、教育機関として学位プログラムを開設するなど、人材育成の面でも国際社会に貢献しています。

 日本はこれまで、第三位の拠出国として財政的支援を行うだけにとどまらず、国連大学と日本の大学の連携を後押しするなど、教育研究面での連携強化にも取り組んできております。

 日本政府として、日本に本部を置く唯一の国連機関である国連大学の連携強化を重視しておりまして、私も、今年の三月ですが、マルワラ新学長の表敬を受けて、グローバルサウスへの関与ですとかグローバルな諸課題への対応等について意見交換を行ったところであります。

 我が国は、国連大学のホスト国として、文科省を含む関係省庁とも緊密に連携しながら、今御指摘の点を含めて、引き続き、同大学との関係を深めて、その活動を支援してまいりたいと考えております。

上杉委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、終了いたします。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官齋藤秀生君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党会派、金城泰邦でございます。

 それでは、通告に従いまして一般質問を行わせていただきます。

 初めに、G7広島サミットの総括と、今後の取組についての外務大臣の御所見と意気込みについてお伺いしたいと思います。

 先日、五月十九日から三日間開催されましたG7広島サミットにつきましては、多くのメディアで歴史的大成功との評価を受けています。また、一方では、被爆者、関係者の方から厳しい御意見も上がっているところでございます。

 このような反応も踏まえた上で、外務大臣として、G7広島サミットをどのように総括し、どのように評価しておりますでしょうか、また、今後の取組についての御決意も併せて御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 今次サミットに際しまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していくという強いメッセージを示すこと、そして、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々との関与を深めることの二点、これを重視しておりましたが、これらについて当初の狙いどおりの成果を達成できたと考えております。

 加えて、食料、エネルギー問題を含む世界経済はもちろん、さらには気候変動や開発、国際保健、AIなど、幅広いグローバルな課題についても議論を深めて、今後の対応の方向性について確認をいたしました。

 そして、今次サミットを被爆地広島で開催することとした大きな目的、すなわち、各国首脳に被爆の実相に触れていただいて、それを世界の隅々に向けて発信していただくことについても大きな成果が得られたと考えます。これは、各国首脳が今回平和記念資料館の芳名録に記載をしていただきましたメッセージ、この内容に端的に表れていると感じております。その上で、G7首脳間で胸襟を開いた議論が行われて、核兵器のない世界へのコミットメントが確認をされました。また、これらを踏まえ、核軍縮に関する初めてのG7首脳独立文書となりますG7首脳広島ビジョンが発出されまして、核兵器のない世界に向けた国際社会の機運を高めることができたと考えております。

 さらに、今回、招待国首脳とゼレンスキー大統領を交えたセッションにおきまして、法の支配、そして国連憲章の諸原則等の重要性について認識の一致を得ることができました。これも大変大きな意義を持つものであったと考えております。

 これに加えまして、日米豪印、そして日米韓の連携強化など、今回得られた成果を基に、G7議長国として、また日本の国益確保のため、全力で外交課題に取り組んでまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、冒頭、御答弁ありがとうございました。

 続きまして、今朝の北朝鮮の弾道ミサイルと見られるものの打ち上げについて質問したいと思います。本日三十一日に北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性のあるものについてでございます。

 今月二十九日に北朝鮮当局から人工衛星の打ち上げ予告があったと発表があり、防衛大臣より、北朝鮮の衛星発射に伴う自衛隊の行動命令を発出されました。それを受けて、地元沖縄では、迎撃ミサイルPAC3を臨時で配備するなど、不安と緊張感が高まっていたところでありましたが、本日、全国瞬時警報システム、Jアラートが発令されまして、沖縄県に避難の呼びかけがありました。

 防衛省からは、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表があり、韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が南方向に宇宙発射体を発射したと明らかにしたとの報道がありました。午前七時過ぎには、政府より、日本には飛来しないと見られると発表があり、避難の呼びかけを解除されました。海上保安庁は、防衛省からの情報として、弾道ミサイルの可能性があるものは既に落下したと見られるとの公表がありました。

 今朝のこの北朝鮮からの弾道ミサイルらしきものの発射について、現時点で分かっている状況などがあればお伺いしたいと思っております。

 当初は、北朝鮮が発射するであろうというところから報道があったんですが、今朝になってこのような発射があった。それにつきまして、まず、レーダーから一瞬消えた、消失したということがありましたが、そのようなことがどのようにしてそうやって起こっているのか、また、落下地域の特定については今後可能なのかどうか、そういった北朝鮮の行動に対して、国連安保理決議の違反とされているそういった北朝鮮への対応として政府はどのように対応するのか、まずお伺いしたいと思います。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま議員から御指摘がございましたように、北朝鮮は、本日、一発の弾道ミサイルの可能性のあるものを南方向に発射したが、黄海上空で消失したものと推定されていると承知しております。また、この発射は、北朝鮮が予告した期間内で予告した方向に発射したものでございますが、黄海上空で消失したことから、宇宙空間への何らかの物体の投入はされていないものと推定されていると承知しております。更なる詳細については分析中でございます。

 これを受けまして、今朝、国家安全保障会議四大臣会合が開催されまして、ただいま関係省庁で情報の集約及び対応について協議を行っているところでございます。

 いずれにせよ、北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射等、これは断じて許されるものではございません。今後とも、日米、日米韓で緊密に連携するとともに、国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議、これの完全な履行を進め、北朝鮮の完全な非核化を目指していきたいと考えております。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 私も、質問通告の段階では、まだこの日に発射されるという想定ではなかったので、当初、皆様の方に問いかけをしておりました質問につきましては、なぜ防衛省から、沖縄を含む南西地域にそういった警戒をする必要があるというふうに報道されたのか、その意図について説明していただきたいということでお願いをしておりましたので、そのことを含めて、そういったミサイルが発射されることが現実として非常に高まっているということも含めますと、国民の安全保護の地下避難施設の、私の地元沖縄でも、しっかりとした施設の設置、充実を推進する、求める声もありますので、そういった必要性があると思います。

 現時点での状況と、また早急な整備についても併せて答弁いただければと思います。よろしくお願いします。

齋藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 弾道ミサイル攻撃による爆風等からの直接の被害を軽減するためには、コンクリート造りの堅牢な建物や地下施設に避難することが有効でありますことから、こうした施設を都道府県知事等が緊急一時避難施設として指定することとなってございます。

 こうした指定が早期に行われるよう、政府におきましては、令和三年度からの五年間を集中的な取組期間として、より安全性が高いと考えられる地下駅舎や地下街、地下道等の地下施設の指定促進を重点的な取組事項の一つとして、都道府県等に対し働きかけを強めているところであります。

 緊急一時避難施設としては、令和四年四月現在でございますが、全国で五万二千四百九十か所、地下施設につきましては、うち千五百九十一か所が指定されております。また、沖縄県におきましては、緊急一時避難施設として九百三十五か所、うち六施設が地下施設として指定をされてございます。

 この緊急一時避難施設、またその中でも地下施設の指定を更に促進をしていく必要があると考えてございまして、私ども、都道府県等としっかり連携をして、この指定の促進に努めてまいりたいと考えてございます。

金城委員 是非、地下施設の整備を進めていただきたいと思いますし、こういった、北朝鮮がミサイルを発射するかもしれないということの中で、なぜこの南西地域が弾道ミサイルの先として警戒されなければいけないのかということは理由があるかと思いますが、それについても説明できればお願いしたいと思います。

小杉政府参考人 お答えいたします。

 二十九日の北朝鮮からの発射の通報を受けまして、同日、万が一我が国の領域に落下する場合に備えまして、イージス艦及びPAC3部隊による迎撃が行えるよう、先ほど委員御指摘の、弾道ミサイル等の破壊措置命令を発出いたしました。

 また、北朝鮮は過去にも四回、人工衛星と称しまして予告の上で発射を実施してございまして、この際にも防衛省として破壊措置命令を発出し、これを公表してございます。今回も同様に、国民の皆様に安心いただくとの観点からも、命令の発出を公表いたしました。

 お尋ねの北朝鮮の意図、目的につきましては、確定的にお答えはなかなか困難でございますが、一般的に、北朝鮮から見まして南の方向への発射といいますのは、地表の観測などを目的とする画像収集衛星の運用に有利な極軌道、縦の、赤道とは直角の軌道への人工衛星の投入に適しているとの指摘がございます。ですので、そういった沖縄方面に向くのではないかというふうに我々は見立てたわけでございます。

 いずれにしましても、衛星と称しましても、北朝鮮による弾道ミサイル技術を用いた発射は安保理決議に違反してございまして、国民の安全に関わる重大な問題があることには変わりございません。

 防衛省・自衛隊としましては、万が一、実際に我が国の領域に落下するものが確認された場合には、迎撃を含む必要な措置を取ることのできるよう、破壊措置命令に基づき、適切な態勢を構築してきたということでございます。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 これまでの過去の経緯も踏まえると、やはり南の地域、南西地域の体制というのが非常に大事なことが理解できると思っております。その上でも、やはり、沖縄の地下施設の整備を含めた国民保護の取組にまた一層力を入れていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、質問を移ります。

 核軍縮・不拡散への具体的な成果に向けての取組ということで、G7広島サミットでの核軍縮・不拡散への議論につきまして、G7各首脳の一致したコミットメントを世界に発信できたことを評価いたします。

 その上で、予算委員会の総理の答弁の中で、結果を出していくことが重要だとの御発信がありました。

 そこで、外務大臣として、今後、結果を出すために具体的にどのように取り組んでいかれるおつもりなのか、御答弁を伺いたいと思います。

林国務大臣 先般のG7広島サミットでは、G7首脳に被爆の実相に触れていただきまして、その上で、胸襟を開いた議論が行われて、核兵器のない世界へのコミットメントが確認をされました。また、これらを踏まえて、核軍縮に関する初めてのG7首脳独立文書となるG7首脳広島ビジョンが発出されまして、核兵器のない世界に向けた国際社会の機運、これを高めることができたと考えております。

 今後、このG7首脳広島ビジョンを強固なステップ台としながら、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組、これを一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続、強化していくことが重要と考えております。

 このG7首脳広島ビジョンでは、例えばFMCTについて、FMCT構想をうたった国連総会決議採択から三十年に当たる本年、FMCTへの政治的関心を再び集めるということを全ての国に強く求めております。そのため、我が国の具体的な努力等の一つとして、本年九月の国連総会ハイレベルウィークの機会等を利用しまして、関係国と記念行事を開催する方向で現在調整を開始しているところでございます。

 このような取組を通じまして、現実的かつ実践的な取組を着実に推進していきたいと考えておるところでございます。

金城委員 御答弁ありがとうございました。しっかりとまた推進していただきたいと思います。

 次に、国連安保理の機能不全への対応ということで、G7で法の支配による国際秩序の堅持へのコミットメントが確認されましたが、国際社会の安全保障につきましては、本来国連が機能すべきであるという考えもございます。

 その中で、今年から二年間、非常任理事国を務める日本としては、どのようにリーダーシップを取り、機能不全と言われる国連の改革について取り組むおつもりなのでしょうか。外務大臣としての意気込みも併せて御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、安保理、これは、ロシアのウクライナ侵略そして北朝鮮の核・ミサイル活動に対して有効に対応できていない現状にありまして、いわば試練のときにあるということだと思います。

 他方、安保理が各地の紛争の解決等に一定の役割を果たしている、こういう面もありまして、多くの国が安保理になお期待を寄せているということも事実でございます。

 我が国は、安保理の非常任理事国として、各国との緊密な意思疎通と丁寧な対話を通じまして、安保理が本来の役割を果たすように協力してまいりたいと考えております。

 そして、安保理改革の必要性、これも明らかでありまして、改革実現のために、議論のための議論ではなくて、具体的行動として文言ベース交渉を開始すべきだという考えでございまして、私も、昨年の国連総会の際のG4、日、独、印、ブラジルですが、このG4の外相会合におきまして、そのための連携を再確認をいたしました。また、今年一月に私が主催をいたしました法の支配に関する安保理閣僚級公開討論におきましても、私の方から改革の必要性を呼びかけまして、複数の国からも改革が必要であるという声が上がったところでございます。

 各国の利害も複雑に絡み合う安保理改革、これは決して簡単ではございませんが、引き続き、強い決意を持って、G4、そして米、英、仏、アフリカを含む多くの国々と連携しながら、安保理改革に粘り強く取り組んでまいりたいと思っております。そして、安保理改革のみならず、総会、そして事務総長、この役割の強化、これも含めまして、国連の機能強化そのものにも取り組んでまいりたいと考えております。

金城委員 御答弁ありがとうございます。

 しっかりと国連改革に向けてリーダーシップを日本が発揮していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 次に、グローバルサウスとの連携強化、また結束力強化のための拠点としての沖縄活用の提案でございます。

 沖縄には特命大使がおります。地理的にインド太平洋地域に最も近い沖縄は、文化や生活習慣に加え、抱える課題にも共通性が見られます。また、G7で強調された、人を中心に据えたアプローチという点で、沖縄には、世界に広がるウチナーンチュのネットワークと呼ばれるような、全世界に広く、強い、民衆のつながりがあります。昔、沖縄からグローバルサウスの国々へ渡った移民の方々が主に参加する世界のウチナーンチュ大会を活用した取組も効果的ではないかと思っております。

 グローバルサウス、とりわけ東南アジア、太平洋島嶼国、南米地域との連携強化、結束力強化のため、各国のリーダーを招待することも視野に入れて、沖縄での国際会議の開催促進に取り組んでいただきたいと思います。御答弁をお願いします。

水野政府参考人 御答弁申し上げます。

 国際会議等、各種会議の沖縄開催の推進に係る取組につきましては、平成十二年六月の閣議了解に基づきまして、各省庁の緊密な連携の下、政府全体として進めてございます。

 内閣府におきましては、各省庁連絡会議の主宰などを通じまして、この推進に努めているところでございます。

 参考までに、コロナ直前の令和元年度におきましては、三十九件の国際会議が沖縄で開催されてございます。

 今後も、引き続き、国際交流拠点として沖縄が発展するよう、国際会議の沖縄開催を各省庁及び県と連携しつつ推進してまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

金城委員 是非、会議開催の促進、お願いしたいと思っております。

 今日の北朝鮮のミサイル発射にも見られるように、南西地域、また沖縄というのは、非常に、防衛というか、そういった面で強化しなければいけない側面もある。しかしながら、そういった防衛だけではなくして、平和に向けた外交の取組も同時に重要であります。その沖縄において、平和外交の象徴としての国連機関の設置も我々も求めておりますし、それに向けての一つ一つの国際会議、そういったものを積み重ねていく必要が沖縄にはあるとこれまでも考えておりますし、これからも、そういった平和外交に向けての沖縄の活用、それを促進していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、新型コロナウイルス感染症の法的位置づけ変更後の外交をどのように取り組むか。

 今月八日から、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが五類に移行しました。国際関係が複雑化している中、JICA海外協力隊や留学など、個人レベルでのつながり構築の支援が今後の地域安全保障や国際課題の解決の鍵を握るのではないかと考えております。

 そこで、二点お伺いいたします。

 まず一点目。JICA海外協力隊ホームページの派遣実績の推移を確認しますと、毎年千人前後の青年を海外に派遣していた青年海外協力隊の派遣者数も、二〇二〇年には十名と激減し、二〇二一年は三百名と若干回復傾向のようですが、以前の人数にはまだ戻っていないように思われます。

 是非、早期にコロナ前の派遣者数に戻していただき、更なる派遣者数の拡大を行っていただきたいと思うのですが、二〇二二年の派遣状況や今後の見通し、派遣者数増加に向けた課題について御答弁をいただきたいと思います。

 また、グローバルサウス諸国の学生の留学の受入れについてでありますが、民間交流という視点において、国籍の違う若い世代が交流し、共に学問を学び、文化を共有する経験ができる留学は、将来、国を超えた課題の解決に大きく役立つ機会が来ると考えております。

 今後、グローバルサウスとの結束力強化のため、積極的にグローバルサウス諸国の留学生の受入れを推進することを提案したいと思いますが、現在のグローバルサウス諸国の学生の受入れ状況、今後の見込みについて御答弁をいただきたいと思います。

宮崎参考人 お答えいたします。

 JICA海外協力隊は、現地の人々とともに暮らし、課題解決に取り組むことで、草の根レベルで人と人との信頼を強め、国家間の懸け橋になる存在でございまして、私どもJICAといたしましても大変重視しております。

 委員御指摘のとおり、コロナ禍前は、JICA海外協力隊を毎年新たに約千名派遣しておりましたのに対し、四月三十日時点におきましては、六十五か国に九百十名を派遣中でございます。

 また、現在、福島県二本松市、長野県駒ケ根市の青年海外協力隊訓練所で計二百三十二名が訓練中でございまして、七月以降、各国へ順次派遣予定となっております。

 JICA海外協力隊の派遣には、委員も御承知のとおり、相手国からの派遣要請の取付け、要請内容に応じた募集、選考と、選考された候補者の派遣前訓練が必要となります。

 そのため、一朝一夕とは申しませんけれども、早期にコロナ禍前の派遣規模に戻せるよう、JICA海外協力隊事業の意義や魅力について国民の皆様にしっかりお伝えし、少しでも多くの方々に御応募いただけるようにすることを含め、組織一丸となって取り組んでまいる所存でございます。

金井政府参考人 留学生の御質問に関して御答弁申し上げます。

 日本学生支援機構によります令和四年度の調査結果によりますと、いわゆるグローバルサウス諸国のうち、委員御指摘の例えば東南アジアに関しましては、国費留学生が三千三百二十七名、私費留学生が五万二千二百九十七名、大洋州諸国につきましては、国費留学生が百二十四名、私費留学生が三百六十七名、中南米諸国に関しましては、国費留学生が六百七十八名、私費留学生が千百四十一名在籍しております。

 外務省といたしましては、関係省庁とも連携しつつ、在外公館におけます日本留学に関する情報発信、それから、国費留学生の募集、選考を通じまして、東南アジア、大洋州、中南米地域を含めまして、グローバルサウス諸国からの優秀な留学生の確保に取り組んでいるところでございます。

 また、事後でございますけれども、日本留学から帰国した後、日本のサポーターとなってもらうべく、在外公館を通じまして、現地におけます元日本留学生の同窓会組織でございますところの帰国留学生会の活動を支援しているところでございます。今年三月には、四十八か国の帰国留学生の方々の代表者の方々の参加を得まして、東京にて帰国留学生総会を開催したところでございます。

 今後も、優秀な留学生の受入れ促進に向けまして、関係省庁とも緊密に連携しつつ、これらの施策の一層の推進に取り組んでまいる所存でございます。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 これまでも、日本がODAなどを通した支援もされておりますが、それにまた加えて、人的支援、人的交流、こういったものをしっかりと進めていく中で、世界における日本の地位をより一層高めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、日本としてポストSDGsの議論をリードしていくためにどのような取組が必要かについてお伺いしたいと思います。

 SDGsは二〇一五年に設定され、今年で折り返しを迎えます。今後、目標達成の加速化に向けて、外務省としてどのような取組が必要だとお考えでしょうか。達成に向けた大臣の御決意を含め、御答弁をお願いいたします。

林国務大臣 本年はSDGs達成に向けた中間年でございます。地球規模課題が複雑化、深刻化する中で、我が国を含む国際社会全体が二〇三〇年までの目標達成に向けまして取組を加速化させるということが重要であります。

 先般開催されたG7広島サミットにおきましても、SDGs達成に向けたG7の決意、これを再確認したところでございます。我が国として、こうした国際社会の取組を引き続き主導してまいりたいと思います。

 その上で、ポストSDGsということでございましたが、より長期の国際社会の取組に関する議論、これも始まっておりまして、我が国としては、引き続き、各国と協調しながら、こうした議論にも積極的に参加してまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、御答弁ありがとうございました。しっかりと推進をしていただきたいと思います。

 次に、責任あるAIとAIガバナンスの推進についてでございます。

 二〇二二年十一月にオープンAIが提供を開始したチャットGPTがビジネスの世界でも注目を浴びておりますが、現在、大規模言語モデル、LLMを使った生成AI技術などの社会実装が想定外の速度で進み、経済成長の起爆剤となる可能性が期待されております。

 その一方で、強力なAIは大きな社会的リスクももたらすため、欧米諸国ではAIの開発促進と並行して社会受容に向けた規制論議が加速しており、G7広島サミットにおいても責任あるAIとAIガバナンスの推進について議論が交わされました。その中で、G7各国は年内にも生成AIへの対応に向けた開発や利活用の指針文書をまとめる方針を確認したとありました。

 日本では、早速、五月二十六日に、有識者会議でもあるAI戦略会議より、AIに関する暫定的な論点整理を作成されておりますが、その内容を分かりやすく御説明いただき、今後どのように議論を進めていくことになるのか、御説明を伺いたいと思います。

渡邊政府参考人 AI戦略会議の暫定的な論点整理につきまして御説明申し上げます。

 内容につきましては、まず一つは、国際的な議論を主導するということでございます。

 二つ目は、リスクへの対応と利用ということでございまして、リスクへの対応につきましては、既定のガイドライン等を事業者さんに遵守していただくということと、また、これからいろいろな懸念があるわけでございますけれども、この課題に対して既存の法制度とかあるいは体制で対応可能かどうかということを確認していくなどが挙げられております。また、利用につきましては、官民における最適な利用、それから、日本としてはやはり開発力を持たないといけないということがございまして、そういった課題が挙げられております。

 また、三つ目といたしましては、これは非常に多くの関係者があるものですから、多様な関係者を巻き込んで、迅速で柔軟な対応をしていくということが挙げられております。

 今後につきましては、G7の広島AIプロセスのスケジュールに合わせて、こちらに貢献できるように議論していくということがまとめられております。

金城委員 最後に、自由で開かれたインド太平洋の取組についてでございます。

 今年三月二十日の総理のインド訪問時の講演で、インド太平洋の未来ということでスピーチを行われました。この中では、多層的な連結性、海から空へ広がる安全保障、安全利用の取組をFOIP協力の四つの柱とする、自由で開かれたインド太平洋のための新たなプランを発表されました。

 また、G7広島サミット議長国記者会見でも、G7としてもFOIPの実現のために協力していくことで一致したとありました。

 そこで、改めて、新FOIPプランの新たな取組について外務大臣にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 本年三月、岸田総理はインドにおいて、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのための新しいプランを発表いたしましたが、これは、国際社会を分断と対立ではなく協力に導くとの目標に向け、歴史的転換期におけるFOIPの考え方や取組について示したものでございます。

 その中で、FOIP協力の新たな四つの柱を示しました。すなわち、第一に、平和を守るという最も根源的な課題への対処の在り方として、法の支配を重視すること。第二に、気候変動、食料安全保障、国際保健、サイバーセキュリティー等、幅広い分野をFOIPの中に取り込み、インド太平洋流の現実的かつ実践的な協力を推進すること。第三に、多層的な連結性の強化により、皆が裨益する形での経済成長を目指すこと。第四に、海だけではなく空も含めた安全の取組を強化することでございます。

 また、FOIP協力を拡充するに当たって、様々な手法を最適な形で組み合わせて実施をし、各国のニーズに力強く応えていくことも重要であります。例えば、ODAとその他の公的資金や民間資金等を組み合わせて、日本の強みを生かした魅力的なメニューを作って提案するオファー型の協力など、ODAの戦略的活用を推進してまいります。

 政府としては、このような取組を通じまして、そして、米国、豪州、インド、ASEAN諸国、太平洋島嶼国、韓国、カナダ、欧州など、多くの国々との連携も強化しながら、FOIPの実現に向けて更に取り組んでまいりたいと考えております。

金城委員 終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 おはようございます。徳永久志です。

 また北朝鮮がミサイルを発射をいたしました。早朝の静かな町にJアラートが鳴り響き、そして避難をする、こういうことが平和な日本であってはならないというふうに思います。ここは、しっかりとした対応を政府として毅然としていただきたいと思います。

 現状、今把握されていることについては先ほど金城先生の方からお聞きになられましたので、重複は避けたいというふうに思いますが、やはり、ここはしっかりと断固たる対応というのを外務省に求めたいというふうに思うのですが、どのように対応を予定されておられるでしょうか。

林国務大臣 先ほども金城委員にお答えをしておりますけれども、この発射事案を受けて、先ほど国家安全保障会議四大臣会合を実施して、情報の集約及び対応についての協議を行ったところでございます。

 北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射等は断じて許されず、今後とも、日米、日米韓で緊密に連携するとともに、国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進めて、北朝鮮の完全な非核化を目指してまいりたいと考えております。

徳永委員 あと、外務省から出される声明というかコメントというか対応の中に、いつもだったら、北京の大使館ルートを通じ最も強い言葉で抗議をしたとか、非難をしたとかというのが出てくるんですけれども、もう少しこうした声明も踏み込んだ表現を使っていただいて、日本は本当に怒っているんだぞということをしっかり示さないと、同じ表現を何度も何度も相手方に伝えていたってらちが明かないのではないかということを思うんですが、大臣、ここはひとつ、もう一歩踏み込んでいただけませんでしょうか。

林国務大臣 今回のものでございますが、弾道ミサイルの可能性があるものは、北朝鮮が予告した期間内で予告した方向に発射されたものでありますが、黄海上空で消失をしたことから、宇宙空間への何らかの物体の投入はされていないものと推定されておると承知しておりまして、これ以上の詳細について現在分析中でございます。

 そうしたものも踏まえまして、しっかり対応してまいりたいと思っております。

徳永委員 今回は破壊措置命令まで出しているわけですから、本当に一歩踏み込んだ形で、しっかりと声明を、コメントを出していただきたいということを強く求めておきたいというふうに思います。

 それでは、サミット関連について伺っていきます。

 まずは、サミット、大臣、本当にお疲れさまでした。また、準備をされてこられた外務省の職員の方々にも、本当に御苦労さまでしたという言葉を発したいというふうに思います。

 そうした中で、私は、サミット開催直前に、ウクライナのゼレンスキー大統領が訪日をして、サミットにオブザーバー参加というんですか、出席をされるということをお聞きして、三つのことを懸念したんです。

 一つ目は、ゼレンスキー大統領が参加するということで、これは役者がそろったな、衆議院の解散だなということを思いました。

 二つ目は、メディアの注目がゼレンスキー大統領の一挙手一投足に注がれて、サミット全体がゼレンスキー劇場みたいな形になって、日本がかすんでしまうのではないかなという懸念を持ちました。

 三つ目です。サミットには、ウクライナ支援に必ずしも積極的ではない、あるいは中立的な、例えばインドやブラジルやインドネシアも参加しているわけで、支援に積極的なG7各国と必ずしもそうではない国々との間で分断を世界にさらすことがあってはならないなということを強く懸念をしたものなんです。

 私、基本的には、何とかその懸念というものは杞憂に終わったのではないかなということも思うのですが、大臣の見解をいただきたいと思います。最初の解散の懸念とか、それは結構ですので、二つ目、三つ目の懸念について、これは杞憂に終わったというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序を揺るがす暴挙に対しまして、国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領に今回のG7広島サミットにおける議論に参加をいただきまして、ウクライナが置かれた現状について自らの言葉でG7や招待国等に対して直接説明いただいたところでございます。

 それによって、まず、G7がこれまで以上に結束して、あらゆる側面からウクライナを力強く支援し、厳しい対ロ制裁を継続していくということを改めて確認をすることができました。そして、先ほどの御懸念、杞憂になったというところとも関連するところですが、G7以外の招待国も含めて、世界のどこであっても力による一方的な現状変更の試みは許さず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くことが重要であるというメッセージ、これを一致して力強く国際社会に発信することができたわけでございまして、そういった意味では非常に有意義であったと考えております。

 さらに、核軍縮に関してですが、ウクライナ侵略の文脈においてロシアの核兵器による威嚇が問題となっている中で、そうした中でゼレンスキー大統領を広島にお迎えして議論を行ったこと、そして総理と一緒に献花等をしていただいて資料館も見ていただいた、こういう一連のことは、ロシアによる核兵器による威嚇、ましてやその使用は許されない、このメッセージを一層の緊迫感を持って発信することにつながった、こういうふうに考えております。

徳永委員 杞憂に終わったということでよかったんですけれども、若干私なりの印象を申しますと、ゼレンスキー大統領とインドの首相が会談をされて、いわゆるグローバルサウスのリーダー格ですよね、インドの首相のコメントを非常に深いなと思って見ていたんです。ロシアによるウクライナ侵略は、政治的や経済的な問題ではなくて、人道的な問題だと。非常にこれは深いなというふうに思いました。

 これを語り出すとまた時間がかかるのでやめますが、必ずしも、なかなかインドとしても複雑な状況であって、ウクライナ支援に全面的にというわけではないけれども、少なくとも、今人が殺し合っている状況について深く憂慮してくれているということについては一致できているということでは意義があったのかなと思わせていただきます。

 そこで、ウクライナに関するG7首脳声明について若干お聞きをします。

 ロシアによるウクライナ侵略が始まって一年以上が経過し、この戦争はこれから何年も続くのではないか、あるいは十数年近く続くのではないかという声が多く出てきています。一刻も早く戦争状態を終わらせたい、これは世界各国に共通した思いです。ただ、どういう形で戦争を終わらせるのかということにつきましては、まさしくこれはウクライナの未来に関わることでもありますので、ウクライナの未来はウクライナが決めるという、これは大前提であります。

 そうした中で、この声明には、ロシアに対し、進行中の侵略を止め、国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に部隊及び軍事装備を撤退させるよう強く求めるとあります。この完全かつ無条件撤退なくして公正な平和は実現されないともあります。

 そこで、まず、この完全かつ無条件の撤退の範囲は、二〇一四年にロシアに占領されたクリミア半島を含めてという理解でよいのかどうか、クリミア半島からもロシア軍の撤退を求めるという理解でよいのかどうか、確認をさせてください。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアのウクライナ侵略は、国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹を脅かす暴挙でございます。この侵略は、主権、領土一体性の侵害であり、国連憲章を始めとする国際法の諸原則の違反であるとともに、法の支配に基づく国際秩序に対する明白な挑戦であります。

 我が国としては、このような認識に立ちまして、これまでも、クリミアを含むウクライナの主権及び領土一体性を一貫して支持してきております。

 G7広島サミットにおいて採択したウクライナに関するG7首脳声明では、ロシアに対し、進行中の侵略をやめ、国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に部隊及び軍事装備を撤退させるよう強く求める旨を盛り込んだところでございます。

徳永委員 G7として、クリミアを含めて全体からロシア軍の撤退を強く求めるということが確認をされたということでありました。

 続いて、声明には、国連憲章に沿った基本原則を平和フォーミュラにおいて掲げるというゼレンスキー大統領の真摯な努力を歓迎し、支持するとあります。この平和フォーミュラというのは、昨年十一月にウクライナが提示したものでありますけれども、その内容を簡単に御説明願います。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の十一月十五日になりますけれども、バリで行われましたG20首脳会合におきまして、ゼレンスキー大統領が、平和のためのウクライナの公式といたしまして、平和フォーミュラというものを提案しております。

 その中で、放射線・原子力安全、それから食料安全保障、エネルギー安全保障、全ての捕虜と強制移住者の解放、国連憲章の履行とウクライナの領土一体性及び世界秩序の回復、ロシア軍の撤退と敵対的行為の停止、正義、環境破壊、エスカレーションの防止、それから戦争の終結の確認、以上十項目がその中で含まれているものと承知しております。

徳永委員 その平和フォーミュラですけれども、今、ロシア軍の撤退と簡単に述べられましたけれども、この撤退は、当然ながら、クリミア半島からも含めて撤退ということが示されているという理解でよろしいですか。

池上政府参考人 ウクライナ政府が提案したのがこの平和フォーミュラでございます。ウクライナ政府の一貫した立場は、クリミア半島も含めて全てウクライナの本来の領土であるという立場に立っております。

 したがいまして、この平和フォーミュラも、当然、その前提に立ったものということで認識しております。

徳永委員 G7としても、ウクライナは当事者ですけれどもウクライナとしても、クリミア半島を含むロシア軍の撤退を強く求めるということであります。これは正論だと思います。当然のことであります。私も支持をしたいと思います。

 さはさりながらなんです。

 経済制裁は、今、各国が共同してやっています。国連の非難決議も出ました。でも、ロシアの攻撃は続いています。G7で声明を出しました、平和フォーミュラを発表しました、それでロシア軍が、はい、分かりました、私が悪うございましたといって撤退はしません。ならば、結局は、これは力ずくで、軍事的手段によってロシア軍をウクライナ国外へと追い出すという以外に、現状、方法は考えられないんですよね。

 仮に、作戦のよろしきを得て、ロシア軍をウクライナ全土から追い出すことに成功したとしても、ロシア側に戦意があって、そして装備品等々を調達する能力が残されているのならば、再びウクライナに攻め込むことも予想をされるわけなんです。そうすると、まさに、終わりなき泥沼状況になってしまうということも少し懸念をするものであります。

 そこで、G7の首脳声明で求めたロシア軍の完全な撤退というのは、結果的に、これは軍事的手段によって追い出すことを意味しているという理解も一つ可能かなと思うんですけれども、大臣、この辺り、説明をお願いします。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、まさしく力による一方的な現状変更の試みでございます。

 先般のG7広島サミットに際して、ウクライナに関するG7首脳声明を発出し、今御議論いただきましたが、ロシアに対して、進行中の侵略を止め、国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に部隊及び軍事装備を撤退させるよう強く求めるというメッセージを発出いたしました。

 御指摘のように、ロシアはウクライナに対する攻撃を現在も続けておりまして、プーチン大統領は、併合したウクライナの一部地域は交渉の対象ではない、このように述べるなど、和平に向けて歩み寄ろうとする兆しが一切見られないわけでございます。

 そうした現在の状況におきましては、一日も早くロシアの侵略を終わらせるために日本がまず行うべきこと、これは、G7を始めとする国際社会と緊密に連携しながら、厳しい対ロ制裁を科すとともに、ウクライナを強力に支援していく、こういうことであろうかと考えておるところでございます。

徳永委員 ですから、ウクライナを強力に支援していくということがG7全体で確認をされた。それは、現状は、ロシア軍を軍事的にウクライナ全土から追い出していくことを支援をするというふうに読み取れるんですけれども、そうではないんですか。

林国務大臣 G7全体としてのメッセージは先ほど申し上げたとおりでございまして、その中で日本が行うべきということは、先ほど申し上げましたように、対ロ制裁とウクライナ支援の組合せ、こういうことになるわけでございます。

徳永委員 ちょっと角度を変えていきます。

 昨年の、二〇二二年三月、トルコの仲介で行われたロシアとウクライナの交渉において、当時のウクライナ政府が和平案を提示をしたというふうに報道ベースでは聞いております。大きく四項目あったというふうに伺っておりますけれども、これは簡単に御説明願えますか。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の二月二十四日に現在のロシアとウクライナとの間の戦争が開始されたわけでございますけれども、その直後の昨年の三月でございます、ウクライナは、自国の新たな安全の保証システムというものを提案して、そのために、安全の保証国となる全ての国がその文書に署名、批准する国際条約というものにしましょうということを提案しております。

 その内容といたしましては、ウクライナは、外国の軍事基地、部隊を自国に置かず、軍事、政治同盟に加盟せず、クリミアとセバストポリの地位に関する交渉については今後十五年間にわたって各々実施する、それから、ドネツク州、ルハンスク州の地位の問題については首脳間の交渉において別途検討する、こういったことを内容とするものであったというふうに承知しております。

徳永委員 この和平案の中に、恐らく、私の記憶だと、ロシア軍は、いわゆる侵略する前の、二月二十四日でしたかのラインまでまずは撤退をして、その上で今おっしゃったような交渉をするんだというふうに、それも入っているというふうに理解をしているんですが、それでよかったでしょうか。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりというふうに認識しております。

徳永委員 先ほど来、クリミアが含まれるのかというのを随時お聞きしてきたのも、ここなんです。

 ウクライナが提示した和平案の中には、ロシア軍が侵略を開始する前の、二月二十四日のラインまでまずは戻した上で交渉をということを提示をして、これは報道ベースですけれども、ロシア、ウクライナ両国の交渉団のレベルでは合意があったというような報道もされているわけであります。

 ただ、その後、ロシア軍によるブチャでの民間人虐殺とかが行われて、ちょっともうそれどころではないということで、もう一年以上交渉が行われていないということは承知をしているわけであります。

 今の段階で直ちに両国に交渉せよといっても、それはなかなか無理だということは十分に理解をしています。ただ、これから恐らくウクライナの反転攻勢が行われて、その結果的な状況が恐らくこの秋口には見えてくるんだろう。その段階で、やはり和平の機運を盛り上げていかなければいけないのではないかというふうに思っているんです。恐らく、そこまで来ると両国ともかなり疲弊感も漂ってきますので、是非ともその部分について、ある意味、和平の機運というものを盛り上げていく必要が十分にある。

 その際に、何もなしで和平案云々ということにはならないと思うので、それがやはり、トルコの仲介で行われたウクライナとロシアとの間の和平案、合意されたと報道されている、これが有力な、ある意味たたき台として出発をしていいのではないかというふうに思うのですけれども、大臣、御見解はいかがでしょうか。

林国務大臣 今までの経緯は、まさに徳永委員が今御議論いただいたとおりでございまして、昨年三月の時点では、こういう提案をウクライナが行ったということは承知をしておるところでございます。

 ただ、その後、今少し触れていただきましたように、事態がかなり大きく推移をしておりまして、ロシアがまだ攻撃を続けておりますし、先ほども申し上げましたように、プーチン大統領が、併合したウクライナの一部地域は交渉の対象ではない、こういうふうな状況でございます。

 そうした状況の中で、ウクライナの交渉にいかに臨むべきか、これはやはりウクライナの人々が決めるべき問題でありまして、我が国として、特定の案について評価をするということは適切ではないのではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、我が国として、侵略が長期化する中で、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく、G7を始めとする同志国と連携しながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

徳永委員 大臣がおっしゃったように、ウクライナの未来はウクライナが決めるんですし、ウクライナのゼレンスキー大統領の意向というのが非常に大きいというのは十分によく分かります。

 その和平案というのがウクライナから提示をされた、ここが大きいと思うんですね。ですから、ここはしっかりと我々としても重く受け止めておくべきではないか。当然、平和フォーミュラの話もあります。これもあります。しかしながら、実現可能性、即終戦をということになるならば、私は、平和フォーミュラよりも昨年三月の和平案というものが有力ではないかなということを申し上げているわけなんです。

 そこで、大臣が最後の方でお触れになった、日本がこれから果たすべき役割というものがやはりあると思うんですよ。G7議長国として声明をまとめ上げた事実は重いものがあります。責任は大きいものがあります。だからこそ、議長国として、今ウクライナに大きな影響力を持っているアメリカそしてその他のG7各国に対して、内々にでも、現実的にこの戦争を終わらせる方法について議論を開始してもよいのではないかということを強く思っているんです。

 こうした戦争の終わらせ方について考えをまとめていくその過程で、グローバルサウス、影響力を持つ、また、G20の議長国でもありますインドを始めとする国々との連携を強めていく、そうした機運を世界的に盛り上げていく。ただ機運を盛り上げていくだけではなくて、そうした国際社会が納得ができる、もちろんウクライナも納得のできる和平案というものを作り上げながら機運を盛り上げていく。そういったことがG7議長国としての日本の今年の最大の役割だというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 まさに、先ほども申し上げましたが、停戦等に係る条件やタイミングはまずもってウクライナの人々の意思によるものでなくてはならないという大前提があるというのは申し上げたとおりでございます。

 現下の状況で、まず我々が行うべきことは、ロシアが一刻も早く侵略を止めるようにロシアに対して強い制裁措置を講じ、同時にウクライナを支援していくことでございます。そして、それと同時に、一日も早くロシアによる侵略を止めるためにも、こうした試みは許さないという強い姿勢、これを国際社会が一体となってロシアに対して示していく、これが重要であろうというふうに思っております。

 今委員からもお話がありましたように、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく、G7を始めとする同志国と連携をいたしまして、G20の議長国のインドというお話もありましたが、まさに、いわゆるグローバルサウス諸国を含む世界中の国々がこうした考えを共有できるように、外交努力を継続をしてまいらなければならないと思っております。

徳永委員 ゼレンスキー大統領は、ロシアによる侵略開始から五百日となる七月に各国の首脳級の参加を得て平和サミットを開催したい旨、サミット拡大会合で発言をされたようであります。これは、開催されれば、当然、日本としては参加をするということでよろしいですね。

林国務大臣 G7広島サミットの招待国首脳も交えたセッションにおきまして、ゼレンスキー大統領から、七月に平和フォーミュラサミットを開催し、各国を招待したいという発言がございました。

 そして、サミットの際に行われました岸田総理とゼレンスキー大統領とのバイの首脳会談においても、岸田総理から平和フォーミュラを高く評価することを伝えた上で、グローバルサウスを含むできるだけ多くの国の支持と協力を得た上で具体的な取組を進めることが重要であり、引き続き協力を進めていくことを確認したところでございます。

 この平和フォーミュラサミットの詳細はまだ決まっていないと承知しておりますが、いずれにしても、グローバルサウスを含む多くの国と連携して、適切に対応してまいりたいと考えております。

徳永委員 恐らく国会は閉じているので制約はないと思いますので、必ず参加をしていただいて、今おっしゃったような強い声明を発出していただきたいということを求めておきたいと思います。

 恐らく、中には、ロシアが一方的に悪いんだから、交渉なんかせずに、ウクライナ全土から軍事的に追い出すまでウクライナは戦うべきで、世界はそれを最後まで支援するべきだという意見があります。大変勇ましくて、威勢がよくて、格好いいんだというふうには思います。

 ただ、今、このままこの戦争が長引いていけば、本当に、アメリカを始めNATOの軍事支援を得て初めて戦うことができているウクライナというのはどういうことになるんだろうなと思うんです。

 来年、二〇二四年十一月にはアメリカ大統領選挙ですよね。もしバイデン大統領が敗れて、違う人になって、この新大統領がウクライナ支援の縮小あるいはストップを決めるかもしれません。そうなると、NATOもそれに右へ倣えするかもしれません。そうなると、軍事支援がなくなったウクライナは、あっという間にロシアに全土を占領されることになるかもしれません。まさに悪夢であります。力による現状変更が実現されてしまいます。そうなってくると、もう国際社会は、弱肉強食が唯一のルールであるジャングルと何ら変わらなくなってくるということを強く思うものなんです。

 ですから、何としてでもそれを避けなければいけないから、和平への取組というものを同時に進めなければいけないということを訴えているということなんですが、この部分だけは、大臣、共有していただけますか。

林国務大臣 東ヨーロッパで起きているロシアによるウクライナに対する侵略、これは東ヨーロッパに限定して起きていることではなくて、もしこのことが許されるようなことがあれば、これは世界中に、そして、我々の存在しております東アジアに対しても間違ったメッセージを送ることになる、こういう立場から、G7や他の同志国と一体となってこれまでの取組をやってきたところでありまして、まさにその考え方は委員と共有をしておるところでございます。

徳永委員 共有をしていただきました。

 それでは、ウクライナに関する首脳声明の部分でもう一つだけお聞きをします。

 ロシアの侵略開始以降、チョルノービリ、ザポリッジャの両原子力発電所がロシア軍の攻撃を受けて占拠されています。中でも、欧州最大規模であり、かつ稼働中だったザポリッジャ原発が攻撃され、占拠され、これまでに七回にもわたって外部電源を喪失するなど、危機的な状況となっています。そうした中で、首脳声明では、ザポリッジャ原発の著しく無責任な占拠、軍事化に最も重大な懸念を表明するとしています。

 事の重要性、重大性を考えたら、これは単に懸念を表明という表現では軽過ぎるのではないかなということを思うんですけれども、こういう言いぶりになった理由はどういうものだったんでしょうか。

林国務大臣 原発に対する攻撃、占拠を含めまして、ロシアの一連の行為は国際法違反であり、決して許されない暴挙であります。ロシアに対して、このような蛮行を即座に停止するように求めるものであります。

 G7広島サミットではウクライナに関するG7首脳声明が発出されましたが、この声明で、今お話のありましたように、ロシアによるザポリッジャ原発の著しく無責任な占拠及び軍事化に対し最も重大な懸念を表明した上で、ウクライナにおける原子力施設の安全及び核セキュリティーの確保等に向けた国際原子力機関、IAEAの取組を支持するとともに、IAEAの取組に対するG7の貢献を強調して、他国にも支援の提供を呼びかけたところでございます。

 G7各国との文言交渉の経緯は、外交上のやり取りでありますので差し控えたいと思いますが、G7が一致してロシアによる原発の占拠及び軍事化に対して重大な懸念を表明し、ザポリッジャ原発の安全及び核セキュリティーの確保に向けたIAEAの取組を支持したというところ、これは極めて重要だと考えております。

 引き続き、G7議長国として、国際社会の連携を確保すべく、リーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。

徳永委員 よく分かります。ただ、文言としては、やはり私は、原発への攻撃を原則禁止としたジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十六条に明確に違反をしている、IAEA総会決議にも違反をしている、こういったことをやはり強く書いていただかないとということを思ったものですから、こういう質問をさせていただきました。

 もう時間が来ました。済みません、核軍縮についてお聞きするように御答弁の準備をいただいております。申し訳ございません。恐らく、次も一般質疑の時間は取っていただけると思いますので、次のときに必ずお聞きすることといたします。大変申し訳ございませんでした。

 終わります。

黄川田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 先般質問したことに関して、更問いという形で今日の委員会の質疑を行いたいと思っております。

 最初に、公文書というのはどういうものが公文書になるのかを内閣府にお伺いいたします。

笹川政府参考人 失礼いたします。

 公文書とはどういったものかというお問合せでございます。

 まず、法律上、公文書等という言い方をしておりまして、公文書等の管理に関する法律において、公文書等というものは、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録であって、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものである、そういうふうに書かれております。第一条でございます。

 その中身、定義といたしましては、大きく二つに分かれます。

 一つは、行政機関や独立行政法人等の職員等が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関などの職員などが組織的に用いるものとして、当該行政機関等が保有している行政文書あるいは法人文書であるというものが一つのカテゴリーです。

 それから、もう一つが、公文書管理法の規定に基づいて国立公文書館などに移管された文書、これは特定歴史公文書等という言い方をしておりますが、この二つから成っているところでございます。

 以上です。

松原委員 皆さんの机上に配付しております前回質問に使った資料ですが、内務省資料で、アジア歴史資料センター、これは表紙だけしか皆様には配付をしておりませんが、これは公文書になると考えますか。いかがでしょうか。

笹川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生がお示しされたような個々の個別の文書が公文書等に該当するかということについては、そういった文書を保有する機関において適切に判断されるべきものというふうに考えております。

松原委員 これは外務省記録と書いてありますから、鮮明にコピーを取っておりますので、外務省にお伺いします。

 内務省のこの文書は公文書ですか。

石瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の文書につきましては、外交史料館が保有をしており、そのデジタルデータについて国立公文書館のアジア歴史資料センターが公開を行っているものであり、公文書管理法上の特定歴史公文書等に当たるものと考えております。

松原委員 公文書に関して、先ほど既にどういうものかというのがありました。公文書館の目的に、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等がと書いてあります。歴史的事実の記録である公文書というふうに書かれているわけでありまして、歴史的事実として、日本国家の名誉に懸けて、少なくとも日本の国家の明治以来の行政が作ってきたのが公文書である、このように私は認識するわけであります。

 この立場からいうならば、この公文書に書かれている内容は一定のエビデンスとして価値を持つ。価値を持たなければ公文書館なんというのはつくる必要がないわけでありますが、価値を持つ。一定の事実を伝える資料として価値を持つと考えますが、御答弁をお願いします。

林国務大臣 今御指摘がありましたように、公文書等は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録でありまして、外交において一定のエビデンスとしての価値を持つものも含まれるというふうに考えております。

松原委員 一定の価値を持つものと価値を持たないものというのは、そういうふうな御答弁だったら、どういうふうにそれを峻別するのか、お伺いします。

石瀬政府参考人 お答えいたします。

 公文書等につきましては、先ほど大臣から答弁申し上げましたとおり、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録であって、外交において一定のエビデンスとしての価値を持つものも含まれているということでございまして、具体的にどのような価値を持つかということにつきましては、個別の文書によるものでございます。

松原委員 聞いていないことを答えないでくださいよ。

 今、大臣が、私はそういう答弁は想定していなかったんですね。少なくとも、公文書館の幹部と話をしたときに、公文書館にある公文書は、そういった歴史的事実、ここに書いてありますよ、目的に。歴史的事実のエビデンスとして、日本国の名誉が懸かっていますよ。日本の国の、明治維新以降、近代国家として国際連盟の五大国の一つでもあった日本の省庁というのは、それなりのプライドもあるし、名誉もあると私は思っております。

 そこが公文書としてきちっと整理したものに関して、公文書館の幹部は私に何と言ったか。それが事実と違うのであれば、事実と違うことを証明する、事実と違うということの事実関係を明らかにする、これが当然必要であると。国立公文書館の誰が言ったか私はあえて申し上げません。しかし、それはそうだろうと思います。であるからこそ、我々は上川陽子さんを議連の会長にして国立公文書館のための超党派の議連もやっている。

 つまり、そこに書かれている資料は、これはエビデンスである。反証して、その反証したものが事実として認められない限り、国立公文書館の資料は、日本国の名誉に懸けて、これは基本的には事実であるということを私は外務省は言うべきだと思いますが、これは間違っていますか。大臣、答えてください。

林国務大臣 公文書等は、国及び独立行政法人等の諸活動、そして歴史的事実の記録でございます。

 その上で、あくまで一般論として申し上げますと、公文書等の内容を否定する場合には、その根拠となる事実関係を明確にするということは当然に期待されるものと考えております。

松原委員 明快な答弁です。それで私はいいと思います。

 つまり、公文書に書かれていることは、日本の我々の祖先に対する敬意を含めて、それを初めから否定するような態度があってはいけないのは当たり前であって、それを否定するならば、否定する側が否定する材料を明らかにする必要がある、こういったことであります。今の大臣の答弁は、ぎりぎり日本の国益を守る答弁として評価していきたいと思っています。

 そこで申し上げますが、例えば、そこまでの答弁があったので次の質問は飛ばしてもいいんですが、外務省は、尖閣諸島は日本が領有権を持っていると認識していますか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島は日本の固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明らかでございます。現に、我が国はこれを有効に支配してございます。

松原委員 後の部分は、そこに日本人が上陸できないので、もうちょっと頑張ってほしいと思いますが。

 さて、そこで、尖閣は我が国の領土であると主張するときに公文書は当然有意義な説明材料になるということは、大臣の先ほどの答弁であえて質問いたしません、時間がもったいないから。

 そこで申し上げますが、前回、前々回ですか、外務委員会で私がいわゆる内務省の資料を提示しました。そのときに大臣は、この数字については確認できないので答弁を差し控えるという話でありましたが、私は、あのときは大臣としては初めてそれを見たのかもしれないので、そこは、答弁が間違っていたのではなく、先ほどの反証するならば事実関係を明確にするべきだという理屈に基づいて、確認を云々ということに関して、公文書で書かれていることは、これは、日本の我々の先祖に対する敬意を含めて、正しいんだということをおっしゃっていただきたいと思います。

 その前に申し上げますが、このいわゆるアジア歴史資料センターの資料は、目次には、国土面積、人口、そして法制、地方制度とか、二十三項目が目次にあるんですよ。その中の一つに、今これから議論したい志願兵というものも書かれている。我々のこの日本の行政の、当時内務省がやっていて、極めて精緻な資料がこの中にある。その中に、今申し上げたように志願兵という項目があって、志願兵では、前回、前々回の質問で言ったように、その応募者数がどんどん増えてきているということが書かれているわけであります。公文書の中に書かれている。内務省がきちっとしたデータに基づいてこれは作っただろうと当然思料しております。

 このことに関して、これは当然そういった歴史的事実である、歴史的事実の記録であるということを、外務大臣、この場でおっしゃってください。

林国務大臣 今委員御指摘のありましたとおり、公文書等は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録でございます。

松原委員 ということは、これは、先ほどの大臣の御答弁を含めて言うと、これに対して明確なそれと違うというデータがない限りは、これは、我々は、外交上も、我々の国の名誉に懸けて、こういったことである、事実であるということを主張することをされるということでよろしいですか。

林国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますので、もしこれに反するようなものがある場合には、その根拠となる事実関係を明確にするということは当然に期待されるものと考えております。

松原委員 つまりは、これは、一つの我々の持ち得る歴史的な事実としての文献であるという認識を御披瀝をされたというふうに思います。

 あのときに、大臣は確認すると言った。もう既に大臣はそういった非常にクリアな答弁をしているので恐縮なんですが、何を確認するつもりだったか。

 つまり、公文書に書かれていることを我々が立証する責任は私はないと思っているんです。今大臣がおっしゃったように、それが違うと言う側が事実関係で反論を、エビデンスを積み上げる必要があると思っているんですが、あのとき御確認をされると言ったのはどういう意味で発言をされたのか、発言の真意を確認したいと思います。

林国務大臣 数字等の正確さについての議論であったか、こういうふうに思っておりますが、一般論として、公文書が有する外交的価値については、それぞれの内容に鑑み、総合的に勘案の上、個別に判断していくべきものと考えております。

 そして、内務省の文書についての御議論であったというふうに思っておりますが、外務省として、当該資料に記載のある数字が正確であるかどうか等について確認すること、これは困難であると考えております。

 同資料において、急ぎ作成したものであって、内容に大幅な不備があるが、補正を加えて完璧を期そうとしたという旨の記載もありまして、こうした点も考慮する必要があると考えておりまして、こうしたところをしっかり確認の上で御答弁を差し上げた方がいいのではないか、そうした趣旨だったというふうに考えております。

松原委員 先ほど大臣は、違うエビデンスを出すならば事実関係を明らかにせいと。正論です。国立公文書館の幹部も同じことを言っていました。ここは、日本の名誉と日本の我々の尊敬の念を込めた歴史的な中においてこういったものは明らかになっているので、これに対して反論するならば証拠を出せ。当たり前であります。

 逆に言えば、我々がこれを確認するというふうに、そこまでおっしゃる必要はなかったと思っております。私は、別に林大臣を苦しめようと思って発言しているわけじゃない。ここまででやめておきますよ。

 大臣がそういうことで少し発言をこれから組み直していただければ日本の国益に合致すると思っているから、残余の公文書に関する質問は、実は、いろいろと細かく、何を調査するのかとか、そこまでやろうと思いました。しかし、大臣が、反対する側が立証責任があると。当たり前ですよ。我々の名誉に懸けて、少なくとも、戦前において国連の五大国の一つだった日本が正確に作っている文書ですから、そのことは外務省の理事者の皆さんも頭に入れてください。

 そうじゃなければ国立公文書館の存在意義は激減する。我々が上川陽子さんを会長にして世界に誇る公文書館をつくろうという動き自体が、そんなばかげた答弁をされると否定されてしまう。明確に、特に外務省はこのことについては認識をしていただきたいということを申し上げておきます。たしか、城内さんもメンバーですよね。はい。

 その上で、チョ・ユンスさんという韓国の方が言った発言があります。これは、韓国専門家、望んで日本兵になったという誤解を招くと。チョ・ユンスさんは、この公文書館のデータを彼は知らないんだと思うんだ。知らない上で、志願兵に韓国の人がどんどん応募した、これは日本側の言ってみればデマゴーグであるというようなニュアンスの発言をしている。この団体は様々なことで、歴史的に日本に対して様々なことを言ってきている団体であることは皆さんも御案内だと思っております。

 このチョ・ユンス発言に関して、私は、今回の内務省の資料は間違いなく十分な反証の材料だと考えます。反証の材料だと考えます。これだけ志願者が出てきたということは、やはりそれは、内務省が大本営発表みたいに作ったわけじゃない。反証の材料になるということを、大臣、明確におっしゃってください。

林国務大臣 韓国側の民間研究者の発言の一つ一つに対して政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。

 その上で、御指摘の資料の存在はまさに認識をしておるところでございますので、今あった御指摘も踏まえて、引き続き適切に対応していきたいと考えております。

松原委員 この民間団体から様々な問題が惹起されて、日本に対して様々な、ちょっとそんなことを言うなよということを言ってきているのが実態であります。今回も、これを見過ごしたら、ここからスタートして韓国国内で様々な議論が炎上する可能性がある。

 私は、その場合は明確にこれが公文書としてやはり反証する材料になる、これが韓国の国側から言われてきたときには反証する材料になるというふうに思っておりますが、もう一回大臣の答弁をお伺いします。

林国務大臣 先ほどの答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、韓国側の民間研究者の発言の一つ一つに対して政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、この資料の存在はまさに今御議論したとおり認識しておりますので、今あった御指摘等も踏まえて、引き続き適切に対応していきたいと考えております。

松原委員 ここまでの議論で明確になったことは、公文書に関しては、我々は立証責任を基本的に、放棄するわけではないが、持つわけではなく、反証する側が事実関係を明らかにする、それは国立公文書館の幹部がおっしゃっているとおりであります。

 そのことは明確に大臣もおっしゃったので、そのことをもって私も撃ち方やめということにしますが、きちっとこのことは外務省の関係者は認識していただいて、様々な議論の折に、公文書館にどういう資料があるか、この資料も前回の質問の前に初めて皆さんはそういうものがあったのだなと認識されたのではないかと思っておりまして、この辺も、加えて皆様には、日本の国益を守るという観点から頑張ってほしいと思います。

 次に、北朝鮮問題であります。時間が大分たってしまいましたので、様々な議論がありますが、北朝鮮拉致問題。

 総理がハイレベルの組織のイメージをおっしゃった。また、発言として、条件をつけずに会うと言った。これは、条件をつけずに会うというのは、私は、拉致問題の解決をするためにという条件があるんだろう。拉致、核、ミサイルの解決をするという条件があるんだろう。

 条件をつけずにと言いながら実際は条件がある、これはどういう解釈をしたらいいんですか。簡単に答弁してください。簡単に。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 条件をつけずにとは、北朝鮮の核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、金正恩委員長と直接向き合うとの決意をより明確な形で述べられたものでございます。

 具体的にどのような諸懸案を包括的に解決していくかについては、まさに交渉に関わることであり、手のうちを明らかにすることは適当ではないと考えてございます。

松原委員 全然答えになっていないんですよ。全然答えになっていないんですよ。まあ、そこは玉虫色でいきたいという気持ちも分からぬではないが。

 そこで、日本側の岸田さんが、私もこのとき拉致大会に出ていましたよ、シェーンバッハでやった。発言もしましたが。これを受けて、私も拉致担当大臣をやっていた人間としては、北朝鮮の中央通信で、外務副大臣に相当するパク・サンギル外務次官が、日本が新たな決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が会えない理由はないと。私は、この発言というのは極めて重要な発言だと思っております。

 この発言について大臣の御所見をお伺いします。

林国務大臣 御指摘の談話についての報道を承知しております。

 従来から申し上げているとおり、北朝鮮の意図、そして我が方の受け止め等についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、我が国の北朝鮮への対応に関しては、二十七日に開催された国民大集会で総理が述べられたとおりでございます。

 すなわち、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すが、とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人権問題であります。引き続き、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。

松原委員 私は、立ち位置は林さんの方がもちろん上でしょうが、北朝鮮側がこういったことを言ったことに対して、外務大臣として、承知しておりますと言うだけではなくて、拉致問題の解決を含めてもう少し前向きな御発言をした方が、リスクもあるかもしれないが、リスクを取って、そこは、拉致被害者家族のことを考えたら、この場での御答弁はもうちょっと色をつけてもらった方がいい。

 役人さんが作った原稿を読むのでは全然肉声が伝わってこない。北朝鮮は、私も担当大臣をやっていましたが、肉声が大事ですから、肉声で一言おっしゃってください、原稿を読まないで。

林国務大臣 ずっと肉声で答弁してきておるつもりでございますが、まさに今委員がおっしゃったような報道を承知しておるわけでございます。

 そして、従来から申し上げているとおりでございますが、北朝鮮の意図、我が方の受け止め等についてお答えすることは差し控えたいというふうに思います。

松原委員 もうちょっと、相手からもぎ取るんだと。

 いいんですよ、条件をつけずに会うと言って、条件を言ったっていいんだと思う、政治だから。

 大臣としては、やはり拉致問題に御関心が当然あると私は思っているから聞いているので、この問題に関しては、北朝鮮のこの発言は極めて重く受け止めている、これぐらいのことは言えませんか。もう一回答弁してください。

林国務大臣 まさに御指摘の談話についての報道は承知しておりますが、北朝鮮の意図、我が方の受け止め等についてお答えすることは差し控えたいと思います。

松原委員 重く受け止めるぐらいは、大臣、言った方がよろしいと思いますよ。北朝鮮は見ていますから。じゃ、進めようかとなる。それが岸田さんをアシストする外務大臣の発言だと私は思います。極めて残念です。

 時間もないので、最後に、中国の危険情報レベル1についてお伺いします。

 これは、もう時間が余りないので詳しくはやりませんが、中国に関しては、この間、鈴木英司さんの本を引用して、例えば、新華社通信が報道していない外交上の問題を話すと逮捕されることがあるということは私は既にお話をしました。危険であるという情報喚起は、外務省に聞きますと、随分している、こういうことですね。前回の質疑でもそう言っていました。

 外務省のペーパーを見ると、スパイ行為の定義は明らかではないが、スパイ行為については危険だと書いてある。それから、時間がないのではしょっちゃって恐縮なんですが、中国においては、携帯電話やパソコンといった通信機器については、盗聴されている可能性があることを認識しと書いてあるんです、外務省の文書に。これはすさまじいことですよ。盗聴されているかもしれないと国のオフィシャルの文書に書いてあるんですよ、外務省は。分かりますか。

 これは、全域が危険情報1の水準にあると警告をするべきだと思います。これから邦人が次から次へと何やらかんやらで、日中が例えば尖閣で対立したら、はい、一人捕まりました、二人捕まりました、こういうふうな話になったらたまらないので、最低限、今言った、新華社が報道していない外交上のことを中国人としゃべると捕まる可能性がありますよとか、ここに書いてあるとおり、携帯電話、パソコンは盗聴されている可能性があると書いてあるんだから、これは危険情報1にするべきだと思いますが、答弁をお願いします。簡単に。

林国務大臣 中国に対する危険情報でございますが、日本国民の生命及び身体に対する脅威を考慮しつつ、中長期的な観点から治安情勢を始めとする政治情勢、社会情勢等を総合的に勘案した上で判断しておりまして、これまでも、一連の邦人拘束事案の発生を受けて、国家安全に危害を与えるとされる行為は取調べの対象となり、長期間の拘束を余儀なくされるのみならず、有罪となれば懲役などの刑罰を科されるおそれがある旨、注意喚起をしております。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つであり、今後とも、適時適切な危険情報の見直しも含めたきめ細やかな情報発信、注意喚起を通じ、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 今後見直しをするとおっしゃった。

 中国に対しては、ウイグル、チベットだけではなくて、全域で危険情報1を出す。

 やはり、かつての胡錦濤政権時代と違うんですよ。胡錦濤政権時代には、中国のメディアで、中国はここがおかしいみたいなメディアがあったんですね。非常に自由な発言があった。今はそんなことをやったらみんな捕まっちゃう。

 つまり、中国の危険情報は、明らかに、当初、危険情報を中国に出していないときに比べて、今は加速度的にリスクは高まっているということを明確に日本国民に周知徹底をさせる必要があると思います。

 もう一回答えてください、これで終わりますから。

林国務大臣 今委員から御指摘がありましたように、中長期的観点から様々な情勢等を総合的に勘案した結果、現時点では、新疆ウイグル自治区とチベット自治区について危険情報レベル1を発出しているところでございます。

 今後とも、適時適切な危険情報の見直しも含めたきめ細やかな情報発信、注意喚起を通じて、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 時間が来たから終わりますが、これはやはり踏み込まないと、胡錦濤政権と習近平政権の時期は全く違う。全く違う。全く違うということを日本国民に認識させる、これは外務省の責任だと思います。早期に危険情報1にしてください。

 残余、アジア版NATO、NATOの日本の事務所の問題等は極めて喫緊で重要なんですが、時間がありますので、次に機会があるときに御質問したいと思います。

 終わります。ありがとうございます。

黄川田委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。質疑させていただきます。

 冒頭、北朝鮮が日本に対して人工衛星を打ち上げると通告をして、実際に今日の六時過ぎに発射した件についてお伺いします。

 北朝鮮は衛星の軌道投入に成功したのか、飛翔体がレーダーから消えたとの情報もあるようですけれども、幾つかまとめて聞かせていただきたいと思います。

 まず、これまで、人工衛星打ち上げと言って通告が何例あったのか。通告がなかった事例はあったのか。そして、人工衛星の打ち上げと称して弾道ミサイルを発射したことがあるのか。通告内容と違った事例、例えば、打ち上げの期間、危険海域等から外れたことがあったのか。また、日本の領域内に落下する可能性をどのように判断しているのか。そして、今回は軍事偵察衛星を打ち上げたと言われていますけれども、北朝鮮の軍事偵察衛星が我が国に与える影響はどの程度深刻なものなのか。そして、今回の発射が、先ほどの委員からもありましたけれども、国連安保理決議違反であれば、安保理として中止するように警告すべきだったと考えていますので、非常任理事国として日本はどのような対応を取っているのかということについてお伺いいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、人工衛星打ち上げと言いながら通報がなかった事例でございますけれども、北朝鮮は、一九九八年八月三十一日、テポドン一号を基礎としたと見られる弾道ミサイルを何ら警告もなく発射し、同年九月四日に当該発射が人工衛星の打ち上げである旨発表した事例がございます。

 また、これまで北朝鮮から衛星打ち上げの通報が何例あったかということでございますけれども、過去に北朝鮮が衛星と称する弾道ミサイルを発射した際、国際機関に対しまして事前に通告した事例は四件と承知しております。

安藤(敦)政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮による通告と異なった事例についてでございますが、例えば、二〇一二年四月の発射につきましては失敗したと見られるということのほか、二〇一六年二月の発射時には、二段目の推進装置と見られる物体が北朝鮮が設定した予告落下区域の南端の外側に落下したものと推定しているということがございます。

 さらに、今回の我々の対応についてでございますが、日本の領域内に落下する可能性があったのかどうかということにつきましては、今般の態勢を取るに当たりましては、北朝鮮からの発表も含め、各種情報を総合的に勘案した結果といたしまして、弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあるとまでは認められないものの、我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合に備える必要があると判断したことから、所要の態勢を取るべく、弾道ミサイル等の破壊措置命令を発出したところでございます。

 その上で、北朝鮮が軍事偵察衛星を持った場合の我が国に与える影響ということでございますが、北朝鮮自身が、この軍事偵察衛星の開発と運用の目的につきまして、韓国、日本や、また太平洋上における米軍などの軍事行動の情報をリアルタイムで収集することであると表明しているところでございます。

 仮に北朝鮮がこうした軍事偵察衛星を保有するに至った場合、北朝鮮の核、ミサイルを始めとする軍事力の運用を強く補完し、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすおそれがあると認識しているところでございます。

今福政府参考人 御質問の最後の点の国連安保理についてお答え申し上げます。

 これまで、弾道ミサイル等の度重なる発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものでございます。

 本日、先ほど来御指摘がございました発射された弾道ミサイルの可能性のあるものにつきましては、現在、詳細については分析中ではございますが、このような発射は、衛星と称したとしても、北朝鮮による弾道ミサイル技術を使用したいかなる発射も禁止している関連する国連安保理決議に違反するものでございます。我が国の安全保障に対する重大な挑発行為であると考えております。

 今後の対応につきましては予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、先日来、日米韓の局長級協議を電話で行うなど、安保理における対応を含め、北朝鮮への対応について日米韓の連携を確認してきているところでございます。

 今後、引き続き、米国、韓国等、国際社会と緊密に連携しつつ、北朝鮮に対して挑発行為の自制及び関連する国連安保理決議の遵守を求めてまいりたいと考えておりますし、また、決議の完全な履行を進めていきたいと考えております。

篠原(豪)委員 今、安保理決議違反であって、それはけしからぬ、それの働きかけという話でしたが、ウクライナで戦争が起きてから、中ロが反対していて北朝鮮に対する安保理決議が全くできていないんです。なので、これは国連が機能していないということでもあって、それをやってきました、やってきましたと言っても事態が動かない。こういったことがあるので、そのことの現状を今国民の皆さんにまず知っていただきたいということで、今日のタイミングでありましたので、御質問させていただきました。

 そういったことから含めまして、広島のサミットについてお話を聞かせていただきたいと考えています。

 今次の広島サミットの意義は、国連安保理事会が今申し上げましたように常任理事国のロシアの拒否権で機能不全に陥っている中、世界の新興国勢力も加わるG20もロシアの反対で一致した方向性を見出せていません。価値観を同じくするG7こそが、唯一、統一したメッセージを世界に示すことができる存在であることを示して、世界をリードしていくということは大事なことだというふうに思っています。

 一方で、創設当初、G7のGDPは世界の六割を占めていました、世界経済に圧倒的な影響力を持っていたけれども、現状から見てみると、その割合が四割ちょっとになっています。もはやG7だけで解決策を見出すのは難しい、こういったところだと思います。

 そこで、今回のサミットでは、G7陣営にもロシアにもつかない、先ほどの質疑でもありましたけれども、大臣もお答えしていましたけれども、グローバルサウスが大事だ、新興国、途上国も巻き込んで関係づくりをしていくんだ、これを重要視していくんだということだったと思います。

 もう一点大事だったのは、唯一の戦争被爆国を象徴して被爆の惨禍を発信し続けた広島でありますから、そこでやられる今回のサミットこそ核兵器のない世界への決意を発信するにふさわしい場所であり、この地を開催地に選んだ岸田首相の意図も、G7を機に核軍縮への機運を盛り上げたい、そしてその流れを確かなものにすることにあったのではないかというふうにも考えています。

 特に、実際に実務者レベルで行われていたG7の核軍縮協議を、総理の意向で首脳レベルに引き上げていますから、そういったことを考えれば、力の入れようが見て取れるような気もしています。

 こういったことから、先ほどサミットの中でいろいろ大事なことをおっしゃっていたと思うんですけれども、私が思うには、やはり、G7のリーダーシップの再構築と、もう一点、核兵器のない世界への決意を世界に示すこと、これが重要だったというふうに思っていまして、このことについて、まず外務大臣に、時間がないので手短に、どういうふうに考えていらっしゃるかということを教えてください。

林国務大臣 まさにおっしゃったとおりでございまして、サミットに際して、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していくという強いメッセージを出す、そして、グローバルサウスと呼ばれる国々との関与を深める、この二点を重視しておりましたが、当初の狙いどおりの成果を達成できたと思っております。

 被爆地広島で開催したということ、まさに、各国首脳に被爆の実相に触れていただいて、このことを世界の隅々に向けて発信していただくことについても大きな成果が得られたところでございます。そして、首脳間でのまさに胸襟を開いた議論が行われて、核兵器のない世界へのコミットメントが確認されました。そして、核軍縮に関する初めての独立文書となるG7首脳広島ビジョンが発出され、核兵器のない世界に向けた国際社会の機運を高めることができました。

 そして、招待国首脳とゼレンスキー大統領を交えたセッションで、さらに法の支配、国連憲章の諸原則の重要性、このことについて認識の一致を得ることができたのも大変大きな意義を持つものだと考えております。

 それに加えて、日米豪印、日米韓の連携強化などの成果も得られたところでございまして、これを基にしっかりと外交課題に取り組んでまいりたいと思います。

篠原(豪)委員 私も、今回の成果文書、いつもサミットの成果文書というのは総花的であるんですけれども、今回について言えば、今申し上げた二点について際立っていたんじゃないかなというふうに思っています。

 ただ、もっともアメリカでは、G7をめぐる報道が広島ではなくてウクライナ情勢一色だったというのも事実でありまして、これは、核兵器の使用に対する国民の関心がアメリカは高いというか強いですから、そうした報道ぶりはやむを得ないのかというふうにも思いますけれども、一方で、核兵器のない世界へのアメリカの本気度に懸念を持たなければいけないというふうにも考えています。

 これから核軍縮について伺っていきます。一回ゼレンスキーさんのお話をさせていただいてから後で聞いていきたいと思うんですけれども、やはりアメリカが主導しないと実現しない世界でもありますので、こういった点についてどのように分析しているかということを教えていただければと思います。

林国務大臣 委員がおっしゃるように、核兵器のない世界を目指す上では、米国を含めた核兵器国の関与を得るべく、現実的かつ実践的な取組を継続、強化していくことが重要だと考えております。

 先ほど申し上げましたように、米国を含むG7首脳との間で胸襟を開いた議論を行いまして、核兵器のない世界へのコミットメントを確認いたしました。そして、核兵器国と非核兵器国の双方が参加するNPT体制を維持強化することが唯一の現実的な道であるということを含めて真剣な議論を行いました。この議論の成果が先ほど申し上げました核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンでございます。

 このビジョンにおいて、米国を含むG7首脳の総意として、核兵器のない世界へのコミットメントを再確認し、今の世界全体の核兵器数の全体的な減少傾向を継続しなければならないとしております。そして、二二年一月の五核兵器国首脳の共同声明に言及して、核軍縮を追求するための基礎としてNPTは堅持されなければならないと記載いたしました。

 このビジョンを強固なステップ台として、米国を含めて核兵器国の関与を得るべく努力を継続しながら、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を強化、継続してまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 今、核の話がありました。では、先に核の話を聞かせていただきたいと思うんです。

 核兵器禁止条約の話をお伺いしたいと思っているんですが、核兵器のない世界を目指すとしながら、サミットの議論で核兵器禁止条約についてどのような言及がなされたのか、政府に聞いても答えていただけない。ヒアリングさせていただきましたけれども、ごにょごにょごにょごにょ言っていてなかなかよく分からない、徳永先生もお出になっていたと思うんですけれども、ということがありました。

 この条約は、やはり、今おっしゃっていたNPTの欠陥あるいは核保有国の怠慢から生まれてきたんだというふうに思っています。

 一九七〇年に発効したNPTですが、現在、百九十一か国の国、地域が加盟して、これは元々何かといえば、皆さんには言うこともないかもしれませんけれども、国民の皆さんが聞いていただいていると思いますので改めてお話ししますと、米ロ英仏中の五か国に核保有を認める代わりに、核軍縮の交渉に誠実に取り組むことを義務づけています。

 しかし、米ロの軍縮交渉は今停滞していまして、実際に何が起きているかというと、中国は核軍拡を進めて、世界になお、減ってきたというふうにおっしゃっておられましたけれども、一万三千発ほどいまだに残る核兵器でございます、これが減るどころか増えていくという兆しが見えている。これは大変だということであります。

 NPT未加盟の国のインド、パキスタン、イスラエルも核武装をこの間していまして、条約脱退を宣言した北朝鮮も核実験を繰り返してきて、我々は外務委員会でその都度、これは大変だ、こんなことを認めてはいけないということで皆さんと話をしているところであります。

 さらに、一九九五年のNPT再検討会議で核兵器国であるP5が同意したNSA、すなわち、核兵器国が非核兵器国に核を使用したり核で威嚇したりしないよう法制化を視野に検討を進めることについて、そういう話があったんですが、これも議論が全く進んでいません。

 つまり、核兵器国による拡大抑止の恩恵に浴さない非核保有国にはNPTのメリットは全くないんじゃないかということでありまして、ですから、そうした国々が核兵器廃絶を目指す国際規範が別に必要だと考え、核禁条約を実現させようということだと思います。

 だとすれば、核兵器禁止条約は、NPTが核保有国に課した核軍縮義務を誠実に履行させるてこであって、核抑止を真っ向から否定するものと決めつけることなく、排除するものではないんじゃないかと考えますけれども、核禁についてはてことして考える、これは、三番目の核兵器禁止条約の問題についてお伺いしますと通告しているところの一番最初のところでございます。

林国務大臣 核禁条約ですが、核兵器のない世界への出口と言える大変重要な条約でありますが、委員も御案内のように、同条約に核兵器国が一か国も参加しておりませず、いまだその出口に至る道筋が立っていないというのが現状であろうという認識でございます。

 こうした中で、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるように努力していかなければならないと考えております。

 先般のG7広島サミットにおいて発出したG7首脳広島ビジョンを強固なステップ台として、核兵器国の関与を得るべく努力を継続しながら、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続、強化してまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 広島ビジョンがありますので、唯一の被爆国である日本の責任として、責任というか被害国でありますけれども、そこから我々ができることとしては、核保有国と非保有国との対話を主導するというのであれば、原爆投下を肯定する世論もアメリカにはありますから、そういった米国と同じである必要は日本は全くないので、なので、核兵器禁止条約の締約国に積極的にアプローチしていっていただきたい。せっかくサミットをやったわけですから。ビジョンを作ってやっていくと言っているわけですから。後から話しますけれども、後退したなんという話も言われているわけですから。

 このことについて林外務大臣として、積極的にアプローチすべきだというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 我が国といたしましては、例えば、核兵器廃絶決議を毎年国連に提出いたしまして、核兵器国や核兵器禁止条約締約国を含む様々な立場の国の支持を得て採択されてきていることにも示されているとおり、従来から様々な立場の国との間で核軍縮に関する対話を深めるべく取り組んできております。

 二〇一〇年に日本とオーストラリアが主導して立ち上げた地域横断的な非核兵器国のグループである軍縮・不拡散イニシアティブというのがございます、NPDIですが、これは核兵器禁止条約締約国を含む十二か国で構成されておりまして、このグループとしてこれまでも、NPT運用検討会議に作業文書を提出する、こういうことで現実的かつ実践的な提案を行ってきております。

 広島サミットで発出したビジョンでございますが、例えば、全ての国に対してFMCTへの政治的関心を再び集めることを求めるなどしておりますが、当然この全ての国には核禁条約の締約国も含まれております。

 引き続き、こうしたこれまでの取組を踏まえまして、様々な立場の国への関与を継続しながら、このビジョンをステップ台として、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行してまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 核兵器禁止条約とNPTが核軍縮に向かって提携する余地は幾らでもありますし、日本政府がその先頭に立つなら、日本では国民の皆さんは多くの方がそれを支援するというふうに思います。

 二〇二二年六月にオーストリアのウィーンで開かれた核禁条約の第一回締約国会議で採択された政治宣言を見てみますと、ここには、核保有国やその核の傘に頼る同盟国は、核兵器への依存を低減するための真剣な措置を取っていない、代わりに、全ての核保有国は、核戦力を近代化したり拡大したりするために巨額を投じ、安全保障分野で核兵器の役割を高めることにますます重きを置いているというふうに断じているわけです。

 ただ、一方で、核保有国が参加するNPTとの協力分野を探る担当者を置くなど、NPTを補完するための対話を模索することも決定しているということでありますので、また、核禁条約とNPTは核兵器のない世界を目指す目標は一緒だとも言っています。

 ですので、今の大臣のお話を伺っていてやはり思うのは、二〇二三年十一月、今年十一月にニューヨークで核禁条約の第二回締約国会議が開催されますから、ここに、今のお話があるのであれば、間に入って、NPTをてこに使って日本の役割を果たして、どうしていくのかということをまとめていかなければいけないよ、世界に核がまた増えていくよというときなので、そこで、広島ビジョンを作って日本がしっかりと役割を果たしていくということであれば、これはオブザーバー参加して議論をすることも検討すべきじゃないかと改めて思いますけれども、林外務大臣の感想をお聞かせください。

林国務大臣 繰り返しになるところもございますが、核禁条約は、核兵器のない世界への出口と言える重要な条約であると同時に、同条約に核兵器国が一国も参加していない現状がございます。

 唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させる努力が大事であると述べたとおりでございまして、まさに今委員からお話のあったような核禁条約へのオブザーバー参加を求める声があることは承知しておりますけれども、広島ビジョンを強固なステップ台として、核兵器国の関与を得るべく努力を継続して、現実的で実践的な取組を継続、強化することで、核兵器のない世界の実現に向けた機運を高めてまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 今のは行かないという話だと思うんですが、そうではなくて、日本と同じアメリカの核の傘の下にある、この恩恵に浴しているドイツはそうはいってもオブザーバー参加しているわけですから、日本は唯一の被爆国ですから、そのことも、日本に核兵器を使用したということを世論で肯定するような部分もある国と被爆国が一緒である必要はないわけなので、別に核の傘とか拡大抑止を捨ててくださいとか日米同盟が大事じゃないなんという話はしていなくて、そこは極めて大事なんだけれども、その上でできることが日本にはあるんじゃないか、ドイツも参加しているからハードルはそれほど高くないんじゃないですかということを言っていますので、御検討いただければと思います。

 冷戦時代、米ソの核軍拡競争で、世界の核弾頭は、今一万三千発と言っていましたけれども、昔は七万発あったんです、核兵器というのは。これを、一方が核兵器を使えば相手側も核兵器で報復して、どちらも壊滅的なダメージを受けるという懲罰的抑止力でありますけれども、その下でいろいろと行われて一万三千発まで減ってきた。

 今、核軍縮の当時の推進力となった米ロ間の戦略的安定性がウクライナ戦争で物すごく動揺しているわけです。

 まず、ブッシュ政権が、当時、一九七二年にソ連との間で締結されたABM制限条約からの一方的脱退を決めて、二〇〇二年にこの条約が無効化しました。それで、アメリカがミサイル防衛の構築と拡充に努めてきた。これによって、従来の核抑止の在り方が大きく変化をしてきています。

 さらに、地上発射型の射程五百キロから五千五百キロぐらいの中距離ミサイルを禁止するために米ソが一九八七年に締結したINF条約からの脱退をトランプ政権が一方的に通告したことで、二〇一九年に条約が失効して、現在の状況をいえば、アメリカは、INF条約の規制を受けなかった中国が配備した二千発の中距離ミサイルに対抗するために、その開発、実戦配備に邁進していて、日本の今の安保三文書であり、これからの体制をどうしていくかというところに直接的に関係してきているということであります。

 核軍縮・不拡散に関して、岸田総理は、NPTの維持強化を図ることこそが、林大臣もそうですけれども、核兵器のない世界を実現する唯一の現実的な道である旨をサミットの文書でも述べています。

 しかし、今説明しましたように、核軍縮を可能にしたのは米ロの戦略的な安定性に基づく核軍備管理条約であって、核不拡散を規定したNPTは、実は米ロ間の戦略的安定性に不拡散によって寄与したということにすぎないわけです。結局、決めたのはアメリカとロシアなんです。我々はNPTは大事だと言っていますけれども、今こういう状態なんですということをさっきからお話しさせていただいています。

 つまり、問題は、NPTの維持強化だけではなくて、米ロ間の戦略的安定性を脅かす、これは中国がそのファクターになっていますから、ここのところの米中ロ三か国の核軍備管理体制を構築していくことが極めて重要だと思うんです、議論として。その前提として、中国との間で、中国の核戦略について最低限の透明性を確保し、相互検証による信頼関係を築いていただかないと、どんどんどんどんエスカレートしていくわけです。

 この最後の点はヒロシマ・アクション・プランに言及されていますけれども、このように、核軍縮の第一歩は、従来の米ロの核軍備管理体制を米中ロ三国間のものに代えて新たな戦略的安定性を構築していくときが来ていると考えていますので、これをしっかりやっていくというふうに、方向をこの点も転換していくんだということをやはり日本としても考えなきゃいけないときに来ていると思うんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 核兵器国と非核兵器国との双方が参加して、核兵器国による核軍縮交渉の義務を定めるNPTの維持強化、これはこれまで以上に重要でございます。今般の核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンにおいても、核軍縮を追求するための基礎としてNPTは堅持されなければならない、こう記載しております。

 今御指摘がありましたように、まさに、これと同時に、我が国として従来から、米国、ロシア及び中国を含む関係国をしっかり巻き込んだ軍備管理・軍縮の取組が重要である、こういうふうに考えてきておるところでございます。

 G7首脳広島ビジョンでは、核兵器のない世界の実現に向けて、責任ある行動や透明性向上、まさに今委員から御指摘のあったところですが、そこに力点を置きつつ、中ロに対しても具体的措置を取ることを呼びかけるとともに、中ロに対し、核軍縮の誠実交渉義務に関する第六条の規定を含むNPTの下での義務に沿って、関連する多国間及び二国間のフォーラムにおいて実質的に関与することを求めておるところでございます。

 引き続き、同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、また英仏とも連携して、G7首脳広島ビジョンも踏まえて、中ロを巻き込む形で軍備管理そして軍縮に係る取組を進めてまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 時間ですので、最後、コメントで終わらせていただきますけれども、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長が十五日に記者会見していまして、対中関係に関して、EUは、経済や外交でリスクは減らしても、デカップリングは中国に対してしないというふうに言って、アメリカのジェイク・サリバン国家安保担当大統領補佐官もこれに同調して、対中でデリスキング、リスク回避を志向していくという立場を最近表明していますので、ですので、様々な条件が整えば、今申し上げたようなことも、ロシアに核を使わせないことについての中国の協力を得ることもしっかりと議論ができていくような段階に入っていくと思いますので、そのことをしっかりやっていただきたいということを申し上げまして、時間ですので、私の今日の質疑とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

黄川田委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 私からは、まず、G7サミットのことについてお伺いしたいと思います。

 サミット、大変お疲れさまでございました。大臣始め、もちろん大臣もそうでしょうけれども、それをお支えになった多くの当局の皆さん、本当に御苦労さまでしたと申し上げたいと思います。日本においてあれだけの規模の注目を集めるものをしっかりとやり切ったということは大変なことだったと思いますし、私は、報道を見ておりまして、終わって数日間は、皆さん、燃え尽き症候群みたいになったんじゃないかと思うぐらいでございまして、大変なものだったと思います。

 その中で、先ほどの篠原先生とちょっと向きが違うのかも分かりませんけれども、コミュニケで、実は、よく見ておりますと、五十一番目、五十二番目に中国の話が出てきて、そして、そういう中で、まさに、大統領選挙を控えたアメリカの思惑を見てみたり、あるいは欧米の中国市場に対する寄りかかり、需要低迷や経済リスクを避けたいというような欧米の諸国の状況を見たりする中で、中国の発展を妨げないという姿勢が出てきている。見ておりますと、コミュニケの中に、デカップリングはしない、内向き志向にはならない、中国を害することを目的にはしていない、こう書いているわけです。これが、ちょっと甘いのではないか、中国に対して甘い顔をし過ぎているのではないかと私は思います。

 それは当然、世界の環境の中で、いろいろな書きぶりが必要なところは分かりますけれども、こういうことをすると、やはり私は、一歩でも下がると二歩でも三歩でも入ってくるのが中国だと思うんです。そういうことをよく分かった上で対応すべきだと思うんです、今後は。そのことについて、どのようにお考えになりますか。

林国務大臣 今回の広島サミットでは、G7として、中国と率直に関与をし、また、懸念を直接表明すること、このことの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある旨を確認したところでございます。

 経済面においては、G7として、デカップリングは否定しつつも、同時に、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であること、そして、中国との持続可能な経済関係や国際貿易体制強化のため、公平な競争条件を求め、中国の非市場的政策及び慣行がもたらす課題に対処するということで一致をいたしました。

 同時に、東シナ海、南シナ海情勢については深刻な懸念を表明して、力や威圧による一方的な現状変更の試みへの反対で一致をするなど、諸課題についてもしっかりと盛り込んだところでございます。

 中国との間では、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含め、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係の構築、これを双方の努力で進めていくというのが我が国の一貫した方針でございます。四月に私が訪中をした際も、秦剛外交部長、王毅主任、李強総理に対して、こうした我が国の立場を改めて伝達をいたしたところでございます。

 引き続き、G7を始めとした同志国と緊密に連携しながら、中国との間では、首脳、外相レベルを含めて、あらゆるレベルで意思疎通を行っていきたいと考えております。

和田(有)委員 何度もお聞きした答弁なんですけれども。

 先ほど、松原さんの質疑、やり取りの中でもありましたけれども、やはり胡錦濤時代とは違う習近平時代であって、そして、今私が申し上げたように、一歩引けば幾らでも入ってくる、そういうことが分かった上で、肉声で、やはり踏み込むときはぐっと踏み込む。官僚の答弁を読むだけではなく、あるときには、あれっと思わせるようなことを一言、この状況だからこそ、逆に言うと、林大臣が一言肉声を発すると、えっと思うかも分かりませんし、そういうタイミングを大臣は見ているのかも分からないし。

 そういうことも含めて、一歩下がれば二歩踏み込まれる、半歩、だからもう一歩出てみるということをやっていただきたいなということを言って、次に行きます。

 日本と台湾の話です。日台間の話です。

 ずっと私、台湾の問題を取り上げてまいりました。前回の延長線上の話をまずします。日台間の要人往来で、台湾からのハイレベルの訪日に関してです。

 五月十日の外務委員会で、日台間の要人往来について私はお聞きしました。そのとき、台湾から、総統を始め副総統、外交部長、国防部長、行政院長の訪日やトランジットを日本が認めていないのか、そういうものなのかとお聞きしたら、大臣は、個別具体的な状況に応じて対応しているんだ、ハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないということはしていないという答弁がありました。

 そこで、日本はこれまでどんな対応を具体的にしてきたのか。

 まず、これまで台湾から、総統、副総統、外交部長、国防部長、行政院長の訪日又はトランジットの事例があったかどうかを確認したい。そういう事例を挙げていただきたいんです。いかがでしょうか。

岩本政府参考人 まず、日本政府としましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえ、日台間の協力と交流を図っていくこととしております。

 御指摘の台湾当局関係者の訪日につきましては、こうした立場を踏まえ、個別具体的な状況に応じて対応することとしており、いわゆるハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないということはしておりません。

 実際、昨年七月に頼清徳副総統が私的に訪日をされました。また、昨年八月から九月にかけて、王美花経済部長が訪日されております。さらに、今月ですけれども、オードリー・タン・デジタル発展部長も訪日されております。

和田(有)委員 今御答弁があったように、複数の事例があるわけでありまして、これをやはり広げていくという姿勢が私は必要だと思います。

 その点をしっかりと申し添えながら、次に、大臣が答弁したときに、個別具体的な状況という表現をしているんです。個別具体的な状況、具体的なというのは一体どういうことを意味するのか、どういう事例を捉えればいいのか、御説明いただきたいんです。

林国務大臣 日本政府関係者の台湾渡航や台湾当局関係者の訪日につきましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという立場を踏まえまして、個別具体的な状況に応じて対応することとしております。

 したがって、この判断基準について一概に申し上げることは困難でございますが、往来する者の地位、そして、その訪問目的等を総合的に勘案して判断を行っているところでございます。

和田(有)委員 地位というのは非常にある意味でははっきりしているんですけれども、目的という言葉が出ました。じゃ、目的は、何であってはいけなくて、何だったらいいんでしょうか。もう一度お聞きしたいんです。

岩本政府参考人 目的につきましては、まさに一つ一つの訪問によって千差万別でございますので、公的なものなのか私的なものなのか、そういった点も含めて、また、実際に訪問した後にどういった活動に従事するのか、そういった点を総合的に勘案して判断していく、そういうことでございます。

和田(有)委員 これは、これ以上お聞きしても、恐らく御答弁できないんだと思うんですね。でも、これを柔軟に、これからの時代に合わせて広げていくということをしていかなければならないと思います。

 それを申し添えて次に進むんですが、大臣は、全面的に認めていないということはしていないと答弁した。その中で、具体的な話もぼつぼつ今お聞きしていますが、今答弁でもあった頼清徳副総統が訪日をされたときに、そのことを聞かれたときに、安倍さんの葬儀で私的に来られたんですよね、このときに何と答えたかというと、今御指摘のあった人物については葬儀に参加するためであってという表現をした。

 今御指摘のあった人物、なぜ頼清徳副総統と申し上げないんでしょうか。失礼だと私は思います。今御指摘のあった人物なんという言葉を、ある国家の、我々は国家としての外交関係はないにしても、国家の副総統に対して言うべき言葉ではないと思うし、それはやはりひょっとすると、中国を刺激しないようにそこまで配慮をしているのかと思ってしまうわけですが、この点、いかがでしょうか。

林国務大臣 頼清徳副総統の訪日に関しまして、七月十二日の記者会見でのやり取りでございますが、頼清徳副総統について、名前を挙げての御質問がありましたので、それに応じる形での、御指摘の人物というふうに述べたにすぎないところでございます。

 その後、七月十五日の記者会見の私の発言ですが、同副総統の氏名、肩書に言及しているほか、これまでも、例えば外交青書等でも台湾要人の肩書に言及をしてきておりますので、対中配慮という御指摘は当たらないものと考えております。

和田(有)委員 了解しました。対中配慮をしているのではないという御答弁がありました。その意気込みで今後もやっていただきたいと思います。

 今度は、日本から行く要人往来の話をお聞きします。

 五月十日の外務委員会で、日台間の要人往来について私が聞いたときに、これまで、課長までしか認められていないとする外務省の内規があったんですよねと聞きましたら、大臣は、台湾出張者を原則課長級未満とするなどを定めた内規は現在存在していないと答弁がありました。

 現在存在していないということは、かつて存在していたということでしょうし、外務省の内規が、じゃ、なぜその当時設けられて、どうしてそんなものがあって、今度はなぜ廃止になったのかということをお聞きしたいと思うんです。そのために、そういう内規が改定されているんでしょうね、その理由と時期についてお聞きしたい。それからさらに、これはあったものを廃止したと考えていいのか。廃止したとすれば、理由と時期についてお伺いをいたします。

岩本政府参考人 御指摘の内規でございますが、日台間の交流の増大に伴いまして、広範な分野での対応が必要になってまいりました。また、APECやWTO等においては、日本と台湾双方が正式なメンバーとなっております。こうした国際的な枠組みに関する業務も増加してまいりました。

 こうした点を踏まえて、二〇〇二年以降ですが、順次内規を見直して、現在はそういった内規は存在をしていない、そういった次第でございます。

和田(有)委員 分かりました。

 広範な国際的な業務が増えたりしたから、必要性が出てきたからだと。現実に合わせたというふうに考えてもいいかも分かりません。

 ちょっとここでもう一点だけ確認しておきたいんですが、大臣は、個別具体な状況に対応してきた事例としてあかま総務副大臣の訪台事例を前回挙げているんですが、ほかに何か事例はありますか。

岩本政府参考人 現職の政務三役の訪台事例としましては、今御指摘の二〇一七年三月のあかま総務副大臣の訪台のみでございます。

和田(有)委員 その一件ですよね。やはり、もっとこういう状況では、認めるといったら言葉は変ですけれども、そういう状況を許していくべきではないかと思います。

 それを申し上げて次に移るんですが、次に、日台間、日本と台湾の間の政府間対話について聞こうと思うんですね。

 これは、前回の質問のときに、林政府参考人、大臣じゃなくて政府参考人の林さんは、日本台湾交流協会を通じて、これまでも幅広い分野で台湾との実務的な情報共有や協力関係を積極的に推進してきましたと。林大臣も、日本台湾交流協会を通じて、邦人保護を含めて平時から様々なやり取りを行っていると答弁をなさいました。

 しかし、今お話があったように、答弁があったように、広範な対応をしたり国際的な業務が膨らんでいる中で、今ある、いわゆる日本でいうところの、大使館とは言いませんけれども、在外公館に当たる日本の出先機関だけでは、なかなかもう業務が追っつかないだろうと私は思うんです、人数も少ないし。

 そういったことも含めて、やはり、もっと情報共有をしていくためには、政府間対話を直接やるべきだ。要は、民間に任せている場合じゃない、高度なレベルの政府間対話をもっとしていかなければならない、情報共有をしていかなければならないと思うんですが、どうも先ほど聞いたように、今までハイレベルなやり取りは一人しかいないというような状況になっている。

 こういう状況で政府間対話をしない理由というのは何なんでしょうか。

林国務大臣 政府といたしましては、一九七二年の日中共同声明を踏まえまして、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくこととしております。

 こうした立場に基づきまして、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じまして、幅広い分野で台湾との情報共有や協力を積極的に推進してきているところでございます。

 同時に、政府としても、日本台湾交流協会とは常日頃から緊密に連携してきておりまして、引き続き日台間の交流と協力の更なる深化を図ってまいりたいと考えております。

和田(有)委員 ここで日本台湾交流協会の話になるわけで、いわゆる大使館機能は持っていると思うんですね。実質的な大使館ですよ。これがやはり余りにも規模が小さいと思います、私は。今の国際環境のこの状況の中で、このままではやはり規模が小さ過ぎるし、能力的にも不足の面が出てくると思う。

 もちろん、今の代表にしたって、何にしたって、非常に熱心にやっておられて、現場の職員の方も一生懸命やってくれていますよ。でも、やはり規模としては小さいし、協力関係や情報共有を推進しようとしても、なかなかうまくいかないものが出てくるんだと思うんです、私、何回もこの外務委員会でも予算委員会でもお聞きしてきましたけれども。

 例えばの話、防衛駐在官に相当する防衛担当主任だって、これは退役した、今、航空自衛隊の方ですかね、航空自衛隊OBの方ですかな、一人体制ですよ。アメリカは当然現役が六名行っている。南シナ海周辺国のベトナム、フィリピン、マレーシアだって一名から二名に増員している。佐官クラスです。

 そういった中で、そういう人しか抱えていない日本にとって、この出先機関がこれで本当に十分な情報共有や協力関係がやっていけるんだろうか、万全の体制だと思っておられるのかをお聞きしたいんです、大臣に。

林国務大臣 日本台湾交流協会におきましては、安全保障に関するものも含めて、台湾をめぐる状況に関して情報収集等を積極的に行っておるところでございます。その上で、政府としても、日本台湾交流協会と常日頃から緊密に情報共有等を行って、必要な対応を取ってきております。

 日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保するために、政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、平素から体制の整備も含めて万全を期してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 いかなる状況でも対応できるかと私は聞いていて、できるように頑張りますという答弁なんですけれども、私は、今のままではなかなか進まないところが出てくるだろう。一種、最終的には超法規的な、規則を超えたもので対応せざるを得ないところが出てくるだろう。

 それこそ、この間のアフリカから邦人を救出したりする話とは違うとは言いませんけれども、目の前の、全く目の前の話ですから、本当に、即私たちに影響が、もちろんアフリカの話だって影響はあるし、大切なことなんですけれども、距離が違う。そういう中で、やはり私は、もう少し踏み込んだ対応というものをするべきときがもう来ていると思います。そういうことをもう一回聞いたって同じことしか返ってきませんから、聞きませんけれども。

 そこで、台湾のことをずっと聞いてきて、私、一遍、これは聞かなきゃいけないと思っていたことがあるんです。それを今日お聞きしようと思います。

 それは、絶えず、最も大切な友人だとかパートナーだとか言いますけれども、じゃ、もし台湾を失ったら日本はどうなるんでしょうか。どう思っていらっしゃいますか。ということは、台湾とは日本にとって何なんでしょうか。核心的利益とは何なんでしょうか、我々にとっての。どうお考えになっているか、お聞きしたいんです。

林国務大臣 今委員から御指摘のあったような仮定の状況につきまして、政府としてお答えすることは適切ではなく、差し控えたいと思います。

 その上で、台湾は、日本にとって、基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。我が国として、台湾に関する基本的立場を踏まえつつ、両岸関係を注視しながら、日台間の協力と交流の更なる深化を図ってまいりたいと思っております。

和田(有)委員 これは、我々にとっては生命線ですよ、台湾は。国益を全く共有するお互いの存在ですよ、これは。もし我々が台湾を失うことがあったら、日本は立ち行かないと思いますよ。民主主義国家として、経済を中心に国を動かす国として、私は、日本という国家が成り立たなくなると思います。そういうことを認識した上でかからないとならないところまで来てしまっている。これは拭い去れない事実だと思いますよ。

 一衣帯水とかいろいろなことを言いますけれども、もしも台湾が今の台湾の姿ではなくなったら、現状変更がなされたら、日本は国家として存立の危機に立つと思います。これは存立危機の何とかの、重要事態がどうとかいうんじゃなくて、我々がこの国で末代まで、今まで生きてきたこの平和と安全を享受することはできなくなると思います、私は。そういう概念を持って進まなきゃいけないと思うんですよ。それは日本だけのためでもないし、台湾の方だけのためでもないし、両国が共に同じ利益を持っているはずだと私は思うから聞いているんです。

 そこで、これは聞きませんけれども、先ほどいみじくも出てきたのが、日中共同声明の話に戻りました。この日中共同声明の解釈を、やはり私たちはどこかで、解釈という言い方がいいかどうか分からないですけれども、物の見立てを変えないと次に進めない。これにとらわれてしまって、わざととらわれているふりをしているのかも分からないし、とらわれているという表現をしているのかも分からないけれども、きちっとどこかで言わないと、要は、中華人民共和国の主張することを尊重しているけれども、それは尊重しているのであって、必要に応じた対応はするということをやはり申し上げないと物事は私たちは進まないんじゃないかと思いますので、そのことを申し上げて、次の質問に参ります。

 次は、じゃ、しからば、今まで何度も申し上げてきた、ほかの委員の方も申し上げてきた、中国は大変今膨張をしているし、横柄にもなっているし、そういった中で、一体何発の短中距離ミサイルを保有して、日本に向けているんでしょうか。中国に対日攻撃をひるませるために十分な反撃力というのはどれぐらいのものだと想定すればいいんでしょうか。中国に現状変更しようとする台湾戦争を思いとどまらせるために必要な抑止力は現実に軍事力としてどれぐらいのものなのか、教えてください。

安藤(敦)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、中国は、継続的に高い水準で国防費を増加させ、透明性を欠いたまま、ミサイル戦力を始めとした軍事力の質、量を広範かつ急速に強化させております。

 米国防省の報告書によれば、中国は、射程三百キロメートルから射程五千五百キロメートル未満の短距離、準中距離、中距離弾道ミサイルを千三百五十発以上保有していると指摘されております。

 短距離弾道ミサイルについては、多数を台湾正面に配備しており、我が国固有の領土である尖閣諸島を含む南西諸島の一部もその射程に入っていると見られるところでございます。

 また、準中距離、中距離弾道ミサイルについては、我が国を含むインド太平洋地域を射程に収め、空母などの洋上の艦艇を攻撃するための対艦弾道ミサイルの戦力化を進めていると見られているところでございます。

 その上で、お尋ねの反撃能力、抑止力の点でございます。

 まず、我が国の防衛政策や防衛力整備は、特定の国や地域を脅威とみなし、これに軍事的に対抗していくという発想に立っているものではありません。また、いわゆる台湾有事を抑止するための我が国の能力といった仮定に基づくお尋ねについては、お答えすることは困難でございます。

 その上で、今回の国家防衛戦略等の策定に際しては、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命と暮らしを守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを始めとする様々な検討を行った上で、スタンドオフ防衛能力を含む、必要となる防衛力の内容や数量を積み上げたところでございます。

 これらを踏まえ、国家防衛戦略において、「我が国への侵攻がどの地域で生起しても、我が国の様々な地点から、重層的にこれらの艦艇や上陸部隊等を阻止・排除できる必要かつ十分な能力を保有する。」「各種プラットフォームから発射でき、また、高速滑空飛翔や極超音速飛翔といった多様かつ迎撃困難な能力を強化する。」とのスタンドオフ防衛能力の抜本的強化の方針を示しており、防衛力整備計画に具体的事業を計上しているところでございます。

 各種スタンドオフミサイルの具体的整備数量については、我が方の手のうちを明らかにすることとなるためお答えすることはできませんが、今申し上げた方針に基づき、抜本的に強化されたスタンドオフ防衛能力を活用し、反撃能力を保有することにより、ミサイル防衛と相まって、現状に比して相手の戦略的、戦術的な計算を複雑化させ、日本にミサイルを撃ち込もうとしている相手に、目的を達成することは容易ではない、攻撃はやめた方がいいと思わせる、そのような抑止効果を得られるものと考えております。

 これにより、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えているところでございます。

和田(有)委員 その答弁のとおりにしっかりとやっていただくことを期待をするところでございます。

 時間がなくなってしまいました。あと二問、実は朝鮮半島情勢についてお伺いするつもりでございましたが、また機会をいただけると思っておりますので、そのときにお伺いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

黄川田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 今回のG7サミット、外務省の皆さん、また林大臣、大変お疲れさまでした。もう繰り返し申し上げませんけれども、様々な委員も指摘しているとおり、大変大きな成果があったものと認識しております。特に、ロシアのウクライナ侵略によって壊れてしまった国際秩序を再びつくり直すという大きな転機になったのではないかというふうに捉えております。

 また、外務省は外相会合に加えて首脳会合も担当ということで、非常に大変だっただろうなと推察いたします。お疲れさまでしたと皆さんに感謝と敬意を申し上げたいと思います。

 その中で、様々な成果があったわけですが、一つ大きかったのは、F16戦闘機の供与というものについて米国を含めて一定容認の姿勢を示した、つまりは、それを促進するような一種の合意がなされたというところは非常に大きかったと思います。

 そういった戦力の面で戦況を変えるような合意をしておきながら、核兵器に関しては、ああいった平和的なセレモニーによって、ロシアが使いにくいような国際的な雰囲気を醸し出す。極めて巧妙な外交だなというふうに思ったところです。

 まず、今日は防衛省に来ていただいているのでお伺いしたいんですが、F16戦闘機というのは日本の自衛隊は持っていないわけですけれども、ですから当然供与ということにはならないと思うんですが、F2戦闘機だとかイーグルだとかというのは持っているわけですね。こういった戦闘機は今回の合意に基づき供与するといったような方針は現状はないということでよろしいか、まずは確認させてください。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナへの我が方からの支援につきましては、これまで、去年の三月以来、防弾チョッキ等は出しておりますが、御指摘のF2、F15につきまして我々から提供するという予定はございません。

青柳(仁)委員 そういうことですが、ウクライナが、ゼレンスキー大統領がおっしゃっていたとおり、日本に法的なことをねじ曲げてまで無理な協力は求めないというような発言もあったわけなんですが、それはそのとおりだろうと思います。

 その中で、今もお話がありましたが、防弾チョッキとヘルメットは今まで出していました。それから、ほかにいろいろなものが供与可能だろうというふうに思われるわけなんですが、一つ大きな一線があるのは、殺傷能力がある武器なのかどうかということだろうというふうに私は捉えております。

 今回のサミットに先立って、自民党内で、そういった殺傷能力のある武器の供与をウクライナに対して行うべきではないかという、小野寺元防衛大臣ですかね、を中心に声が上がっていたというのを報道で聞き及んでおりますけれども、この場合に、もしも殺傷能力のある武器をウクライナに供与するとなった場合に、当然、今までの憲法上の解釈の問題ですね、これは戦闘行為に含まれるのかといった問題であるとか、あるいはウクライナの緊急事態が我が国にとって緊急事態ということにはならないと思うんですけれども、そういった整理の中で、防衛装備品の移転三原則の運用指針を改定するというような議論がありましたが、その程度のことでできてしまうことなのかどうか。

 もしウクライナに対して、F16戦闘機とまでは言いませんけれども、殺傷能力のある武器を供与するとなった場合には、いかなる法解釈の下でそれは可能になるというふうに考えているか、防衛省としての見解を教えてください。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、最初の方に御指摘がございました防衛装備移転三原則及び運用指針の見直しにつきましては、まだこれは政府の中で議論中でございますので、具体的な内容についてはいまだ決まっていないという状況でございます。

 その上で、御質問の部分にお答えいたしますと、まず一つは法律の部分でございますけれども、現在、法律の関係で、先ほど申し上げた防弾チョッキでございますとか、あるいは今般提供するというふうに公表させていただいた、例えばトラックを含む車両百両を出している、これは、自衛隊法の百十六条の三というのがございまして、自衛隊で今使っている装備品でもう使わなくなったものを、いわゆる中古装備品でございますけれども、これを不用決定いたしまして他国にお渡しするという枠組みがございます。これにつきましてお渡しするというのが一つのお渡しの仕方であると考えてございます。

 ただし、それにつきましては、条文の中で、武器と弾薬、武器と申しますのは自衛隊法上の武器でございますので、殺傷兵器という御指摘がございましたけれども、いわば人を殺傷し物を破壊するようなものを指してございますけれども、こういったものについては、この百十六条の三という条文で、自衛隊の中古装備品を差し上げることができないという法律の条文になってございます。その部分は変える必要があるということでございます。

青柳(仁)委員 確認させていただきたいんですけれども、ですから、今自衛隊が持っているもの、今、不用になったものと言っていましたけれども、実際には動く車を渡しているわけですから、中古だけれども不用と認定したものということだと思うんですが、それであれば出すことはできる。ただし、殺傷能力のある武器に関しては、防衛装備品移転の三原則ですか、あれを改定しないといけないということを今おっしゃったと思うんですけれども、その理解でよろしいか、まずお願いします。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 私の説明がちょっとはっきりしておりませんで、失礼いたしました。

 二つございまして、一つは、他国に、この場合はウクライナに物をお渡しするときに、国が持っている、自衛隊が持っているもの、これが一番急ぐ場合にお渡しできるというものだと思いますけれども、これをお渡しする条文として法的根拠はどこにあるか、これが百十六条の三と言いました中古装備品を差し上げるということでございまして、ただし、その中には武器弾薬は除かれておりますので、そこを変える必要があるというのが一つ。

 もう一つ、御指摘がありましたように、移転三原則につきましては、これは殺傷兵器を出す出さないというのは実は書いてはおりませんでして、ただし、それも含めまして、運用指針を改定して総合的にどういったものを装備移転としてやっていくか、ここはまだ議論中であるということでございます。

 なお、装備移転三原則といいますのは、まさしく我が国としての輸出管理として、自衛隊が持っているものであれ、あるいは民間で製造しているものであれ、それを他国に渡してよいか、いわば国境を越えてよいかという規律といいますか、決まり事でございますので、その二つの局面があるということでございます。

青柳(仁)委員 いずれにしても、今おっしゃったとおりだと思うんですが、自衛隊法の中においても、輸出に関する法律においても、現状、人を殺傷したり物を壊したりするような兵器、武器というものは輸出ができない、ウクライナに渡すことはできない、そういう整理だと思います。

 それに関して、私は、今それを供与すべきじゃないと思っているんです。

 そういう立場で言うと、そういう議論が上がってきているというところがやや不安に思っておりまして、ゼレンスキー大統領は特にそれを求めていない、そこまでのことを、法的な解釈を変更してまでそういうことをやってくれとまで言っていない中で、そこまで検討する必要が果たしてあるのかということを思うんです。

 なぜかといいますと、一つは、去年NATOが武器の供与をウクライナに対して行ったときに、ロシア側から、その場合、全てを破壊する、こういう宣戦布告に近い表明がありました。

 ですので、これに関しては、確かにロシア側をもちろん非難しなきゃいけないわけですけれども、現状、そういう脅しがあったにもかかわらず実際にNATOと交戦状態になっていないというのは、これはひとえに、NATOの戦力の方が大きいですし、NATOがまとまってやっているので、どの国がという狙い撃ちをされていないからだと思うんですね。

 日本がやったら、日本は単独ですから、NATOが今度東京に何かつくるとか言っていますけれども、単独でそこまで踏み込んでやるのかというのは、ウクライナを支援しなきゃいけないというのは当然です、そしてロシアの国際法違反の行為を全ての国で糾弾し続けるというのはやるべきだと思います、ただ、そこまでやるべきなのかということを非常に私は心配するわけであります。

 国内の法整備をという話が今あったんですけれども、こういった問題というのは、国内で仮にそういう法整備をしたとしても、海外で、例えばロシアの側が、いや、それは宣戦布告だとみなせば国内の法整備なんて関係ないわけですね、向こうからすれば。

 ですから、外の目を考えながら慎重にこれは判断すべき問題だと思うんですが、そういう自民党の中の議論というのはやや行き過ぎなんじゃないかというふうに私は思っているんですが、これについて林大臣の御見解をいただければと思います。

林国務大臣 御通告もございませんでしたし、今、党の中の御議論を御紹介されての御議論でございますので、党でそれぞれどういう御議論をされるかということについて我々としてコメントすることは差し控えたいというふうに思っております。

青柳(仁)委員 済みません、通告をちゃんとしておけばよかったですね。

 ただ、今、同じ質問をさせていただきたいんですけれども、防衛省としてその点についてどう思うか。まず国内の法整備の問題だというふうに、今こういう議論をしているわけなんですけれども、私はそうは思わないんです。やはり、外からどう見られるか、それから、国際情勢の中でそれがどういう意味を持つのかということを考えながら、そういった殺傷能力のある武器、物を破壊する武器、武力行使に当たる武器の供与というのは考えるべきだと思うんですが、それについて、これは通告していますから、防衛省の見解を教えてください。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点は、まず、委員もおっしゃっておりますように、まだ議論の最中でございますので、移転三原則運用指針の方向性はまだ定まっていない。まさに議論している最中でございます。

 ただし、この点につきましては、国家安全保障戦略を去年十二月に政府として策定いたしましたけれども、そこに記載されているとおり、防衛装備品の海外への移転については、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出、あるいは国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのために重要な政策的手段になるという位置づけでやっているというところでございます。

 ただし、御指摘のように、ウクライナ支援につきましては、我々は国際社会と結束してやっていきたいと考えて今まで進めてきているところでございますけれども、総合的にいろいろなことを判断していきながら政策を進めていくことであると考えてございます。

青柳(仁)委員 まさに国外の状況も踏まえて総合的に判断して考えていただきたいなと思います。

 一方で、先ほどの話にあった、自衛隊法百十六条の中では武器弾薬に関しては除かれているという話なんですが、それ以外のものであれば、逆に言えば、中古品に対して出すことはできるということだと思います。

 我が党は、実は身を切る改革というのをやっておりまして、私も含めて、毎月手取りのお給料の二割を寄附しております。その寄附でたまったお金を使って、この間、ウクライナにピックアップトラックを二十台渡しまして、外務省よりも早く、来月には現地に届くという状況であります。

 今回、自衛隊車両百台を出すという話も伺っておりますけれども、ヘルメットと防弾チョッキよりもピックアップトラックの方が現地で役に立つのは間違いないわけで、それ以外にも、武器と弾薬以外でほかにもいろいろなことができるんじゃないかと思うんです。

 例えば、踏み込んで言えば、偵察用のドローンとかは、別に人を殺傷もしませんし、何も壊しませんし、だとか、あるいはサイバー攻撃に対する防御施設だとか、今自衛隊が使っているものでいろいろなものは供与可能な気がするんですけれども、そういったことについて、引き続き今回の自衛隊車両に加えて行っていく意向があるかどうか、検討があるかどうかということと、それから、その場合どういったものが考え得るのかということについて例示ができればお願いいたします。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました自衛隊法百十六条の三でございますけれども、これは、御指摘いただいたように、自衛隊で不用になりましたものを差し上げるという枠組みでございます。したがいまして、自衛隊で使い終わった車両を修理して出すというのを今回やろうとしておりますけれども、そういったものが、自衛隊自身も今後我が国防衛に備えていかなければいけない中で、なかなかないというのはございます。

 ただし、御指摘がございましたドローンにつきましては、一般の民用のものでございますけれども、防衛省・自衛隊で使っていたものを数十台既にお送りしているというのがございますし、さらにウクライナの御要望に応えて何ができるかというのは考えてまいりたいと考えてございます。

青柳(仁)委員 冒頭申し上げた国内外の事情を総合的に勘案した上での法に基づいた支援というのは、是非積極的に知恵を出して考えていただいたらいいと思います。

 特に、ドローンに関しては、私もつい先週、富士の演習場の見学に行かせていただきましたけれども、ドローンがすごく大活躍していますね、一昔前と違って。やはりああいうものを、最新式の技術を使ったもの等はきっと現場でも役に立つでしょうから、供与等を検討していただいたらいいのではないかと思います。

 また、憲法やあるいは法律に関連するものに関しては、変に法律の解釈を変えたりだとか、ちょっとした運用指針をいじったりして非常に大きく踏み込むというのは、これは、平和安全法制の中でも、今日の委員会の野党のほかの皆さんも心配されている方もたくさんいらっしゃるわけで、やるのであれば、やはり憲法改正とかきちんとした議論をした上でやるべきだと私は思いますし、我が党も思っております。

 そういった中で、憲法改正の論議というのは、衆議院の中で、今、国民民主党と有志の会と一緒に維新が緊急事態条項に関する案を出して一定議論を引っ張っているという自負がありますけれども、参議院の方はいまだに合区問題で全く進まないということで、是非、議員全員で一致してこういった議論を前に進めていくことを考えていただきたいと思います。

 次に、これは林大臣に通告した質問で、今回のG7サミットのもう一つ外交成果としてすばらしかったなと思うのは、中国に対する牽制とケアの仕方かなと思ったんです。

 というのは、G7でまとまって、そして、今デカップリングと言われている中で、こちら側の価値観というのをしっかりと一定共有して、また、グローバルサウスを含めた、インドなんかを含めたそういう包囲網をつくっていく。今回クアッドの会合も行われたわけですけれども、そういったことをやりながらも、決してデカップリングはしないと。中国に対して、ロシアに対して一緒に説得してくれということを呼びかけてみたり。

 また、デリスキング、リスクを下げるデリスキングの議論ということで、あれは要するに何を言っているかといえば、皆さんお分かりのとおりですけれども、こうやって二つの世界をつくっていく、中ロとその他でつくっていくということではなくて、お互いにそういうことをやってしまうとお互いの経済と社会にとってリスクであるから、それをお互いに下げる努力をしようよということを、向こうサイドと言うと既にデカップリングなんですが、中国側に対しても呼びかけている。EUが強硬に主張したというふうに聞いておりますけれども、そういうことが入っているということで、非常にバランスの取れた内容になっているかなと思います。

 その中で、バランスはいいんですが、一方で、台湾有事というのを先ほど我が党の和田議員も取り上げていましたけれども、我が国としては極めて重要なことなわけですね。

 この中で、なぜ今ロシアに対してこれだけ国際的な包囲網をつくっているかといえば、ロシアのような力による現状変更というのが国際社会の中で孤立を招く、そして軍事的にも失敗するし、経済的にも衰退するんだということを中国に分かってもらう、分からせる。これが抑止力になるのではないか。少なくとも私はそう思いますし、きっと多くの人がそう思っていると思います。

 そういった中で、台湾海峡の平和と安定の重要性というものも共同声明に入っているわけです、これは三年連続ということですけれども。

 というふうに言っている一方で、やはり日本政府も、中国が主張している一つの中国、台湾問題というのは内政問題であるということを、一つの中国という言葉は認めていないものの、それに該当する概念というかに関しては一定認めている。これはアメリカも、そのとおりであると。また、ヨーロッパ諸国に関しては、一つの中国という言葉そのものを認めている国もある。今回のG7サミットに先立って、フォン・デア・ライエン欧州議長が習近平主席と会合を一か月前にして、一つの中国問題に対して決して踏み込むな、こういうことを言われているわけですよね。

 ですので、そういう一つの中国という問題は一定認めているということであると、台湾有事というのは、要するに、ロシアがウクライナに侵攻しているのは、ある国が他国に侵攻している、侵略しているという話です。しかし、台湾有事というのは、中国が、台湾という他国ではなくて自分の国の中で侵攻しているという話になるわけですね。そうすると、これは同じではないというのが中国の主張でして、同じではない、むしろ内政干渉であると。

 つまり、何が言いたいかというと、今国際社会がロシアに対してやっているような厳しい制裁措置であるだとか軍事的なバックアップであるだとか、あるいは、国際場裏を通じた、国連なんかを通じたこういう包囲網みたいなものを、中国が台湾にやったときにやるべきではないということ。なぜなら、その二つの有事は違う有事だからだ。こういう理屈で中国は主張しているわけなんですが、ただ、日本が、一つの中国、内政問題であると一定そういう立場に立っている以上は、その中国の主張を認めているというふうに言わざるを得ないわけなんです。

 ここで林大臣の認識をお伺いしたいんですけれども、中国が台湾に軍事侵攻した場合、力による現状変更という意味においてはロシアのウクライナ侵略と同じである、したがって、国際社会は中国に対してロシアと同等の措置を取るべきというふうにお考えになるでしょうか。

林国務大臣 台湾との関係でございますが、一九七二年の日中共同声明を踏まえて、非政府間の実務関係として維持していくというのが我が国の基本的立場でございます。

 中国が台湾に軍事侵攻した場合という仮定の質問にお答えすることは差し控えたいと思いますが、その上で、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが我が国の従来から一貫した立場でございまして、この点、今般のG7広島サミットにおいて、両岸問題の平和的解決を促すということで一致しているところでございます。

 引き続き、我が国として、こうした立場を中国側に首脳レベルを含めて直接しっかり伝えるとともに、同盟国、同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として明確に発信していくということが重要でありまして、今後ともこのような外交努力を続けてまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 もう一回お伺いしたいんですけれども、林大臣の認識として、中国の台湾に対する侵攻とロシアのウクライナに対する侵攻というのは、力による現状変更という意味において同じだと認識されていますか。

林国務大臣 先ほども申し上げましたように、中国が台湾に軍事侵攻した場合という仮定の質問にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

青柳(仁)委員 私は仮定のことを聞いているんじゃなくて、中国による台湾への軍事侵攻ということと、それからロシアのウクライナに対する軍事侵攻ということは、力による現状変更という意味において同じかどうか、林大臣がどう思われるかということを聞いているので、仮定の話を聞いているわけではないんですけれども、もう一回お願いいたします。

林国務大臣 昨年の二月二十四日にロシアのウクライナ侵略というのは実際に起きております。一方で、中国が台湾に軍事侵攻したということは今日現在起きておらないわけでございますので、そうした仮定の御質問にお答えすることは差し控えたいと思います。

青柳(仁)委員 日本の外務大臣として、同じだと言い切っても私はいいと思いますよ。それが日本の国民と国家を守る覚悟というんじゃないですかね。

 今回の共同声明の中にも、ロシアのような力による現状変更はあらゆる場所で認めないと言っているわけです。つまり、認めないんですよ、実際には。そこにサインしているわけですから。

 これ以上この問題については聞きませんけれども、仮定の話なのでお答えできないと言うと、これは外務省の常に逃げで、外務委員会だけですよ、ここまで聞いても何にも出てこないのは。ほかの委員会でちゃんと聞けばそれなりにしっかりした答えが返ってきますよ。外交上だから、ここでスタンスを示すとなかなか外にも波及効果があるとか、そういう理由なんでしょうけれども、だからこそ、こういう委員会でこそ、林大臣は同じだという認識だった、だから、やはり中国側も、もしそうなった場合、日本政府としてはまだまだそこまで声明が出せなくても、林大臣としては、それは同じことだから、もしやったら大変なことになるぞというぐらいのことは私は必要だと思いますよ。また、それぐらいのことは考えていかないと中国に対峙する外交というのはできないと私は思っております。

 この件に関しては、これ以上聞いても同じですので言いません。

 もう一つ、一方で、先ほども申し上げたデリスキング、この概念を、これから中国に対して一緒にリスクを下げていこうというような呼びかけもしているわけなんですが、これは、今までのデカップリングだとか、あるいはクアッドだとかIPEFだとか、いろいろな形である種の中国包囲網をつくってきた、政府としてはそういう言い方はしませんけれども、実際にはそういうことだと思うんですが、それに対しては、今回、ある種、一緒にまたリスクを下げていこうという新しい概念、方向性だとは思うんですが、これについては何か、外務省として、これからこういう方針でやっていくとか、こういうことを考えているということがあれば教えていただければと思います。

林国務大臣 今回の広島サミットでは、G7として、中国と率直に関与し、また懸念を直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意があるという旨を確認しております。

 経済面において、今お話のありました、G7として、デカップリングは否定しつつも、同時に、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であること、また、中国との持続可能な経済関係や国際貿易体制強化のため、公平な競争条件を求め、中国の非市場的政策や慣行がもたらす課題に対処することで一致したところでございます。

 中国との間では、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含めて対話をしっかりと重ねて、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくというのが我が国の一貫した方針でございます。私が四月に訪中した際も、秦剛外交部長、王毅主任、李強総理に対して、こうした我が国の立場を改めて伝達いたしました。

 引き続き、G7を始めとした同志国と緊密に連携しながら、中国との間では、首脳、外相レベルを含め、あらゆるレベルで意思疎通を行ってまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 対話の窓口がなくなったらおしまいですので、こういうことを使いながら、裏ではもちろんある種の包囲網みたいなものも必要でしょうけれども、リスクを下げる、一緒に下げていくという概念は非常に面白いなと思いまして、こういうことも踏まえながらしっかりと議論していくことが非常に重要だろうと思います。

 特に、我が国はアメリカとはスタンスがここは違うはずですので、中国はただ交渉したりお願いしたりして言うことを聞くような国じゃありませんから、もちろん力でいかなきゃいけないところはいかなきゃいけないと思うんですが、とはいえ、アメリカみたいに完全に切り離して自国でやっていけるかというと、日本の繁栄を考えた場合、アジアでの繁栄を考えた場合に、果たして本当にその道が正しいのかということは自分たちの国で考えていかなきゃいけないと思いますので、ずっと日米同盟さえあれば何でもいいんだというような考え方ではなくて、きちんとこういう国際的な議論を、まさに今回のG7のように、日本が議長国となって引っ張っていくような外交がこれからは必要だというふうに思っております。

 最後に、今回、グローバルサウスとの連携ということが非常に重要視されました。私もここまで重要になるとは思わなかったんですけれども、グローバルサウスは、やはりロシアに少なからず肩を持つ国がいて、この状況でよくあそこの肩を持つなと我々の感覚だと思ってしまうんですが、中国問題に関しても多分同様だろう。それ以上に多くの国が肩を持つだろうと思います。

 また、国連は一国一票ですから、グローバルサウスを巻き込んでいくということは、これからの日本にとって極めて重要なことなわけですが、その中で、事業としては小さな話になりますが、日本に毎年百人から二百人ぐらいのアフリカ人留学生が来ております。これはABEイニシアチブというんですけれども、これは安倍元総理とは関係ありませんで、関係ないのかどうか分かりませんが、アフリカ・ビジネス・アンド・エデュケーション・プログラム、ABEイニシアチブというのがあって、これももう五年、六年ぐらいやっているんですか、毎年留学生がアフリカから、五十五か国から来ていまして、総勢もう千人を超えております。

 私は、実は、昔、民間にいたときに、ここの外部講師をお願いされてやったりとか、あるいは、民間企業と一緒にナイジェリアで、ここの卒業生たちと一緒にビジネスをやったりしたことがありました。そのときに非常に思ったのが、残念な事業だなというふうに思いました。

 私もかつてJICAで働いたことがありまして、JICAで働いていたときはこの事業には関わっていなかったんですけれども、JICAにもいい事業と余りよくない事業とあるんですが、これは大変残念な事業だなというふうに思いました。なぜかというと、何の成果が出ているか分からない。

 JICAからもらった資料を見ると、この事業の成果は、千六百人を受け入れたことであり、日本企業に二百人就職したことであり、八十五大学が協力してくれて、四百機関のインターンをしたというふうに書いてあるんですけれども、千六百人を受け入れたとか八十五校の大学に通わせたというのは日本の国民の税金を投入したというだけの話ですから、成果でも何でもないわけです。

 目的はというと、日本企業のアフリカビジネス水先案内人の育成とネットワークの構築と書いてあるんですけれども、日本企業に実際に関わっている人が全体の八人に一人しかいない、卒業後に。しかも、私が卒業生の方から、たくさんの方々から聞いたのは、彼らは卒業した後に水先案内人として役に立てていないと自分らは思っているものだから、自分たちで国際NGOをつくって、まとまりをつくって何とか役に立とうなんということをやっていて、それは完全に放置されていました。

 ですので、こういう日本の国民の血税を入れた事業でアフリカの方を呼んで、せっかくグローバルサウスとの連携とか言っているのに、こういうところでこんなもったいないことを毎年し続けているというのはどうなんだろうと思うんです。

 済みません、時間が来てしまいましたので、最後に一問だけ。

 そういったABEイニシアチブについて、私は非常に問題が多いと思うんですが、現状、どういう目的でこの事業をやっていて、それに対してどういう成果が出ていて、今後どうしようと考えているのか、外務省の見解を教えてください。

林国務大臣 この修了生ですが、日本の企業へ就職した者はもちろん、帰国後に、現地企業、政府機関、独立コンサルタント等、各々の立場でアフリカ各国の産業人材育成に寄与しまして、日本とアフリカビジネスをつなぐ水先案内人として活躍する事例が多く確認されておるところでございます。

 日本とアフリカのビジネス関係強化及びネットワーク構築については、事業開始当初に本邦協力関心企業は百社程度だったのが、現在、約四百社まで増加しておりまして、また、修了生が同窓会を組織して、日本とアフリカの懸け橋となるべく活動しております。

 同時に、修了生が更に日本企業とアフリカビジネスの連携を深められるように、修了生が日本と継続的に関わることができる仕組みを改善することが課題と認識しておりまして、今後、帰国後の修了生のフォローアップ、ネットワークを強化していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 済みません、時間が来たのでこれで終了しますが、今おっしゃった答弁が実は事実関係が全然違うんです。今日は時間がないので言いませんが、そういうネットワーク、同窓生たちこそがまさに……

黄川田委員長 時間が過ぎていますので、お願いします。

青柳(仁)委員 はい、済みません。

 事実関係について、また次回、一般質疑でやらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦です。

 G7お疲れさまでした。議長国として、サミットが成功裏に終わったことは大変よかったと思っております。

 また、大臣は重々お分かりのことと思いますけれども、日本あるいはそれ以外の国々においても、この世界でたった一か国で対峙できる問題というのはほぼなくなりつつあります。多国間の連携がなければ経済にしても貿易にしても安全保障にしても守れないという状況にある中で、G7で共同声明が発表できたことは非常に重要だと思いますし、改めて新しい課題にチャレンジするということを表明したことは大変よかったと思っています。

 その中でも、まず最初に、私も先日の委員会で質問させていただきましたけれども、経済的威圧に対しての多国間の枠組みというものは是非整備していただきたいということをお願い申し上げておりました。今回、共同声明にも発表されて、経済的威圧に対する調整プラットフォームというものを立ち上げるということが発表されましたので、一つ前に進んで、共同して同じ課題にチャレンジすることができると思います。

 ただ、いろいろな世界で、政治の世界でもそうですけれども、枠組みはできても、ちゃんと芯が入っていないということが間々あります。このプラットフォームについても、巨大な経済的威圧に対して共同して対抗するというときに、それなりにやはりいいことも悪いことも言い合って、ちゃんと血を抜いた状態で整備しないと、いざというときに動きにくい組織になってしまうと思います。

 その上で、今はまだ協議体については検討中、走りながらいるという状況でしたので、具体的にいつまでにこれができるのかというのは分からないと思いますけれども、ただ、一点、最終目標だけは日本が議長国である今のうちに決めた方がいいと思うんです。何を最終目標としてこのプラットフォームを立てたか、そのためにどの国と協力してどう動かしていくかということのためにも、日本が今だったらイニシアチブを取れますから、最終目標を是非早期に設定するということを日本としてお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今年のG7広島サミットでは、G7として初めて、サミットの議題として経済安全保障を取り上げました。そして、経済的強靱性と経済安全保障に関する包括的かつ具体的なメッセージを初めて独立の首脳声明として発出させていただきました。

 そして、今御指摘のありました経済的威圧に対する調整プラットフォームを立ち上げることを表明いたしました。このプラットフォームで、経済的威圧に関する早期警戒、また情報共有、そして対抗的な措置の検討や実施、さらには威圧の対象国の被害軽減等について協調的に実施することを想定しております。

 このプラットフォームはG7首脳の枠組みの下に位置づけられておりまして、各国の関係省庁が一体となって関与する形で、G7外相会合そしてG7貿易大臣会合の下での関連する取組と連携させながら、スコープとか日程というふうに今お尋ねがございましたけれども、なるべく速やかに、かつ効果的に運用していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 是非急いでやっていただきたいと思います。

 でも、一番これで重要なのは、G7というのはある程度の体力があるわけです。あると言っても、日本ですらレアメタル、レアアースを禁輸されたときには大変困りましたから、G7でも困るんですが。あるいは、それ以外の、これはG7の外相会合の際のコミュニケにもあったように、最も脆弱な国々にとってはもっと軽微な問題でも大きな影響をもたらしますので、G7だけではなくて、ほかの国々もこのプラットフォームに入っていただくというか対象としていただいて対抗措置を取っていただかないと、一番最初に申し上げたとおり、日本ですら一か国では経済的威圧には対抗できませんから、日本でもできないことを、例えば東南アジアの国々とか太平洋島嶼国だとか、外国への依存度が高い国々にもし経済的威圧が発生した場合、それを救済するのもG7の使命だと思いますので、G7以外にお話を広げていくためにあらゆる方法を検討できると思いますけれども、是非外務大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

林国務大臣 まさにおっしゃるとおりでございまして、経済的威圧というのは途上国を含む国際社会共通の懸念事項であります。

 我が国は、広く他国に対する経済的威圧を未然に防ぐとともに、経済的威圧によって第三国が受ける被害を低減させるということが重要であります。

 今御指摘をまさにいただきましたように、長野県の軽井沢外相会合でも、特に最も脆弱な国々のために経済安全保障を強化するとの我々の継続的なコミットメントを表明しておりまして、経済安全保障に対する脅威が途上国を含む国際社会に共通した課題であるという認識の下で、経済的依存関係を含めて、脆弱性を抱えた国々とも協力していく姿勢を明確にいたしました。

 この経済的威圧に対応する上でG7以外のパートナーとの協力を具体的にどう促進していくか、これは今後よく検討していく必要があると思いますが、今お尋ねのあった経済的威圧に対する調整プラットフォームを有効に活用しながら、外交的な取組を一層積極的に推し進めていきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 一つお願いしたいのが、国によっては、それが経済的威圧だとみなされていないとか、あるいは、G7諸国から見たらどう考えても経済的威圧なのに、その国にとってはそんなに脅威ではないと思っていたり、あるいは、我々は表面的に経済的威圧だとは認識できていないけれども、最も脆弱な国にとっては誰にも言い出せない悩みであったりということもありますので、積極的に外交を展開していただいて、そういった国々のニーズもちゃんとしっかり把握をしていただきたいと思います。

 その中で、G7には入っていませんから今回はこのプラットフォームの対象になっていませんけれども、半導体をめぐる問題というのは米中の対立の一番火種になっているところですが、当然日本も影響を受けていますし、もう一つ大きな影響を受けているのが韓国であります。

 韓国は、G7のこの枠組みには、プラットフォームの中にもありませんし、特段何の表明もしていませんけれども、このプラットフォームに与える韓国の影響というのをどのように分析されますでしょうか。

林国務大臣 韓国との間では、この二か月で三度首脳会談を実は実施しておりまして、日韓関係の進展を如実に示すものであろうと思っております。

 先般の首脳会談、五月二十一日でしたが、ここでも、両首脳が、グローバルな課題について両国の連携を強化していく、この重要性について一致いたしました。

 まさに経済安全保障も日韓両国の重要な課題でありまして、三月の首脳会談では、日韓の経済安全保障協議の立ち上げで一致しております。既に五月三日に同協議の第一回会合を開催いたしまして、まさに今お話のあった経済的威圧、さらにはサプライチェーンや機微技術についても意見交換を行ったところでございます。

 引き続き、こうした日韓両国が共に直面する課題について両国で協力を進めていきたいと思っております。

鈴木(敦)委員 韓国については、特段どういう事情でというお話はしませんが、経済的威圧を仮に受けたとしても韓国はそれを表に出せない事情があるはずです、半導体については。それは、ほかの国に工場があって、その国との関係を、国益を左右するというようなことがありますので、なかなか言い出せないと思いますから、日本も引き続き協議をしていただいて、緊密に連携を取っていただきたいと思います。彼らをこちらの陣営に、ずっと一緒に協議をしていただくというふうにお願いいたしたいと思います。

 ちょっと議題が変わりますけれども、ウクライナに関するG7首脳声明の中で、ロシア製の民生用原子炉等の締め出しということが合意をされております。

 昨年の原子炉の動きというのをよく見てみると、大半が、計画に入ったものとか着工したもの、ほとんど中国製とロシア製しかありません。日本製はたった一基、BWRX300という小型モジュール炉がカナダで計画入りしたというところまでで、大半が中ロです。

 今回問題になっているロシア製の民生用原子炉というのは、着工したのがVVER1200というロシア型原子炉なんですけれども、この原子炉もG7では計画がありません。主に今造っているのは、中国、エジプト、トルコであります。これらの国々は中ロの原子炉を主に運用しております。インドは重水炉ですから別なんですけれども。

 こういう中で、ロシア製の原子炉を仮に締め出すといっても、G7はそもそも使っていないわけであります。じゃ、何を使っているかというと、中国製を使っているわけで、ロシア製の依存度を低くするといって、かえって今、中国製の依存度が高まっている、高まりつつあるという状況にあります。

 これは、大本の問題意識というか最終目標は、どの国であってもリスクを下げる、依存度を低くするというのが主な、メインの話の中での対ロ問題ということだったはずですから、ロシアは駄目です、でも、その代わりにほかの国に依存しますじゃ全く話が別なわけですから、原発も一つの外交ですから、改めて、小型モジュール炉については日本もまだ先進的技術を持っていますから、日本製のシェアを更に増やすとか、そういう積極的な外交を展開していただかないと、エネルギーに対する依存というものはどこの国にって関係ないですから、どこの国であれ、どこかに依存したら同じことなので、依存関係を解消するということであれば、押しなべて様々なシェアを選べるようにしておかなければいけませんから、日本としての原子力についての考え方、これはG7首脳声明に入っている文章ですから、是非とも日本の外務大臣のお答えをいただきたいと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、G7の広島サミット首脳コミュニケでは、原子力エネルギーの使用を選択したG7諸国が、国内及びパートナー国において、革新炉の開発、建設の支援や強靱な原子力サプライチェーンの構築にコミットして、ロシアへの依存を減らすため、志を同じくするパートナーと協働する、こういうふうな内容が明記されておるところでございます。

 この方針と、さらには、四月に原子力関係閣僚会議で採択されました今後の原子力政策の方向性と行動指針も踏まえまして、我が国としても、今御指摘のあったようなロシアに加えて、ロシアや中国による世界市場におけるプレゼンスの向上等を念頭に置きつつ、引き続き、強靱なサプライチェーンの構築などに向けて、同志国との間で国際連携を深化させてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 イギリスも中国製の原子炉を認可したというような状況ですから、サプライチェーンを強化するという意味でいえば、今のところ選択肢は二つしかないという状態になっておりますから、アメリカ製ももちろんあるんですけれども、アメリカ製を中国が使って、AP1000という原子炉をCAP1000という機械に中国が造り直したりとか、そういうことで世界戦略をしているということですから、是非こういった部分も一つの外交のツールとしてお使いをいただきたいと思います。

 さらに、IPEFについて伺いたいと思います。

 IPEFの枠組みと運用の方法については首脳宣言にも入っておりますが、特に、アメリカのバイデン政権ですけれども、雇用と環境について非常に重視している政権だと認識しております。

 雇用については、言うまでもありませんけれども、先々日、この委員会でも随分吉良委員からもお話があったとおり、西側の考え方を押しつけるようなやり方ではIPEFも当然運用はできないと思っています。

 特に、アメリカの労働と日本の労働は違いますね。この後質問しますけれども、日本には非正規雇用という不可解な制度があります。外国にはこんな制度は一切ありませんから、そういう意味でも、日本とアメリカですら違うのに、ほかの国々に同じような労働の条件だとか環境の条件を当てはめるわけにはいきません。

 これはまだ決まっていない話ですから、是非、日本として、これはアメリカ側に伝えていただきたいんです。同じような考え方を持っている国だけじゃない、いろんな方法、考え方があるんだから、ローカライズして考えてほしいということを是非提案していただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。

林国務大臣 我が国としては、まずは米国によるインド太平洋地域の経済秩序への関与という戦略的な観点からIPEFを重視しておりますが、また、IPEFを通じてこの地域全体で持続可能で包括的な経済成長を実現することが重要であると考えております。

 こうした観点から、今委員からお話のあったことに関連しますが、やはり各国が参加しやすいようなルールと、それから協力のバランスが取れた枠組みとしていくべきだ、こう考えておりまして、この考え方について、私も含めた様々なレベルでアメリカに伝達した上で、必要な調整を行ってきているところでございます。

 最近で申し上げますと、二十七日にデトロイトで閣僚級会合が行われましたが、外務省の山田外務副大臣から、IPEFにおいて各国の関心や懸念への配慮が必要であるという旨を発言したところでございます。

 引き続き、米国そしてASEAN諸国を始めとする地域のパートナーと手を携えて、IPEFを通じた具体的成果の実現を目指してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 アメリカが主導でやるのは構いませんが、それにしっかりとコミットメントして、言うところは言って入れていただくというのが日本の立場だと思います。是非よろしくお願いしたいと思います。

 次に、NATOについて伺いたいと思いますが、NATOの東京事務所を開設する方向で調整しているということであります、まだ何も決まっておりませんが。これについて、これは仮定の話ということになるかもしれませんが、仮に日本が定期的に協議をすることができる環境が整うという状況になったときに、日本としての抑止力への影響はどれぐらいあると見積もっておられますでしょうか。

林国務大臣 NATOによる日本への連絡事務所の設置についてでございますが、現在、NATOの中で種々の検討が進められておりまして、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、NATOは信頼できる必然のパートナーでありまして、我が国としては、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分である、こうした認識の下で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するため、日・NATO間の協力を更に強化していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 NATOと協力するということについては、いろいろな枠組みがありますから、安全保障のことを考えても重要なことなんだろうと思います。

 ただ、次の質問ですけれども、NATOという組織との関係、それに対する日本の振る舞い方というのは、東アジアの一番大きな懸念事項だと思います。

 というのも、アジアで初めてこういった動きが出てきているわけです。そもそも、連絡事務所を開設する、しないという話の前に、する方向で調整している、あるいは検討しているという情報が表に出ているだけでこれだけ大きな騒ぎになるわけです。当然、国内だけではなくて、諸外国、どことは言いませんけれども、ある一定の国々はこれに対して反発をすることもありますよね。だから、今後、日本がNATOとどのように振る舞うかというのは非常に重要な問題だと思います。

 一方で、大臣がおっしゃったように、NATOは信頼できるパートナーであるということは今までの日本の歴史を見てもそうなんだろうと思いますけれども、この後、どこまで近づくか、どう振る舞うかというのは非常に重要なところですから、今は結論は出ないと思います、出せないと思いますし、それは分かっていても口に出さないのがいいんですよ。

 だから、おっしゃっていただく必要はないと思いますけれども、NATOという組織と我が国と、安全保障とかいろいろな影響を踏まえてどうつき合っていく方向性であるか、大臣のお考えをいただければと思います。

林国務大臣 まさに今委員がおっしゃっていただいたように、NATOは信頼できる必然のパートナーでありまして、引き続き、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であるという認識の下で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するために、日・NATO間の協力を更に強化していく考えであります。

 この考え方の下で、日本とNATOは、現在、国別適合パートナーシップ計画、ITPPというものの改定に向けて取り組んでおります。

 我が国としては、このITPPを通じて、伝統的な協力分野に加えまして、サイバー、宇宙、偽情報、そして重要新興技術等の新分野、こうした分野でもNATOとの連携を更に強化していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 NATOとどうおつき合いするかというのは難しいとは思いますけれども、アジアと北大西洋の話ですから同じ議題を同じようには扱えないと思いますが、ここはやはり、先ほどのIPEFの話じゃないですけれども、うまいこと調整をしていただいておつき合いをいただきたいと思います。

 今度はスリランカについて伺いたいと思いますが、先日も、スリランカのウィクラマシンハ大統領が来日をして議論をされました。債務の問題についてもいろいろと議論されていると思います。パリ・クラブを中心として日本も債務の処理に協力しておりますけれども、スリランカだけではないです。債務のわなというのはいつ誰がかかるか分かりませんから、これから先、これと同じような事象が発生することも容易に想像できるわけであります。

 ですから、そのときには今と同じような枠組みが使えるか使えないかということなんです。

 G20を始めとした共通枠組み、これは財務省が所管かもしれませんけれども、これについては承知をしておりますが、今後スリランカのように同じように債務のわなに陥った場合に、今回と同じようにパリ・クラブ、日本を中心に支援が可能であるかということは、協議が必要だと思いますけれども、非常に重要なところだと思います。

 困ったときに誰に助けを求めるかという窓口を日本が担うべきだと私は思いますので、これがまた今後使えるかどうかについて伺いたいと思います。

林国務大臣 スリランカの債務問題につきましては、我が国は、インドとフランスと共に、スリランカ債権国会合を共同議長として立ち上げまして、五月九日に第一回会合を開催いたしました。この債権国会合の下でスリランカの債務再編プロセスを進めていくことを確認したところでございます。

 先週、ウィクラマシンハ大統領訪日に際して私も同大統領を表敬いたしましたが、その際にこの債務問題についても意見交換を行いまして、大統領から、債務再編をめぐる議論における日本の貢献に対し謝意が述べられたところでございます。

 引き続き、透明かつ公平な債務再編の実現に向けて、他の主要債権国、そしてIMF等の国際機関とも緊密に連携して、プロセスを主導していきたいと思っております。

 他国で同様の債務問題が発生した場合においても、パリ・クラブ及び非パリ・クラブ、全ての債権国が参加して透明かつ公平な負担の下で解決を図る、これが重要だと思っておりまして、この点、先ほど触れていただきましたように、低所得国については、二〇二〇年十一月にG20とパリ・クラブで合意されました債務措置に係る共通枠組みがありまして、これまでに四か国が同枠組みの下で債務再編を要請しておるところでございます。

 一方で、スリランカのような中所得国にはこの共通枠組みが適用されないわけでございますので、今後、我が国が主導する債権国会合を通じて、スリランカが債務危機を克服して、パリ・クラブと非パリ・クラブ双方の債権国を含めた多国間の協調による中所得国の債務再編のいわば成功モデルとなるようなことを期待しておりまして、そうした意味で我が国として必要な働きかけをしっかり行っていきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 成功モデルというのはいい表現ですね。非常に重要だと思います。

 なぜ日本が窓口になるべきだと申し上げたのは、債務のわなに陥りそうな国々が日本の近くにあるからです。なので、是非その門戸を広げていただくということ、そして、スリランカを成功事例として、ほかの国々にも、中所得の国々にも適用の可能性があるということを是非示していただきたい。今後、この動きに期待をしたいと思います。

 最後に、少し時間を取らせていただいて、G7サミットの共同声明に戻らせていただきますけれども、労働という項目があります。三十六番。重要なことですから読み上げますけれども、「全ての人に働きがいのある人間らしい良質な仕事を保証し、」という文言があり、その先に、「質の高い雇用の創出、」という文言も入っています。

 G7でこれについて合意したことは非常に喜ばしいことですけれども、三点同時に伺いますが、まず、そもそも、G7諸国の国々と我が国で一番大きな違いは、先ほど申し上げたように、非正規雇用というのが存在します。是非、皆さん、厚生労働大臣になったと思ってください。外国に行って非正規雇用を何と訳すんですか、何だと説明するんですか。何の説明もつかないんです、非正規雇用という言葉自体。

 そもそも、G7でこういった合意をして質の高い雇用の創出という合意が取れているにもかかわらず、非正規雇用という不安定な仕事がいまだにこの国に残っています。私もその経験者ですからよく分かります、彼らの苦しみは。なので、G7で合意をして良質な仕事をこうやって保証するのであれば、非正規雇用という考え方が妥当であるかどうかというのがまず問題の一つ目です。

 二つ目、非正規雇用の人たちというのは、社会的な事情であるとか、あるいは、経済、天変地異もそうですね、私の場合は東日本大震災でしたけれども、そういった事情を受けて新卒で会社に入れなかった。そうすると、何のスキルもないまま中途社員として入社するんですよ。中途雇用の人たちはスキルを持っていますから、追いつくのがやっとですし、そもそもそのスキルもないんです。

 だから、この労働という項目の中で高々と掲げられているリスキリングやアップスキリングと言われても、アップするものがないんです。スキルがないんです。そもそも何のスキルもない。そのまま非正規雇用を継続していって、年を経てきて転職しようと思ったって、スキルがないからできませんよ。そうなっちゃったら、ずっと非正規ですよ。これは良質な仕事とは言えない。働きがいのある職場でもありません。これをどう考えるかです。

 アップスキリング、リスキリング、言ってもいいですけれども、それは必要なので整備すべきですけれども、非正規の方々にはそもそものスキリングから必要だということ。これが二点目。

 そして、三点目ですけれども、私としては、非正規雇用という考え方、在り方そのものがもう既にこの共同声明にある質の高い雇用でも働きがいのある人間らしい良質な仕事でもないと思います。

 いろいろ御説明をいただくんですけれども、例えば、望んで非正規雇用になっている人がいる、時短雇用が望みだという人がいるから、その人のためだというんですけれども、そういう人たちのための枠組みはもうあるじゃないですか。時短勤務ができる制度はいっぱいある。会社にも制度がありますよね、育休が取れたりとか、時短で帰れたりとか。いろいろな制度があるのに、国がそれを保障してどうするんですか。

 普通は正規で雇用するのが当然です。非正規雇用というのは、だから非と書いてあるんです。正規じゃないから非正規なんです。だから、それは国が保障するべき制度ではないんです。私は、この非正規雇用は廃止して消滅させるべきだと思います。

 この三点、伺いたいと思います。

畦元大臣政務官 お答えいたします。

 まず、最初の質問に対しまして、G7倉敷労働雇用大臣会合における議論の下、リスキリングやアップスキリングは、DX、デジタルトランスフォーメーションや、GX、グリーントランスフォーメーションなどの産業構造の変化に対応するための労働者の能力の向上にとどまらず、生産向上や賃上げにつながるものであり、コストではなく投資、人への投資であるとの認識の下、誰一人取り残さない包摂的な労働市場を構築するとともに、質の高い雇用の創出に向けて取り組むことを、G7各国で共有して取組を進めるために記載したものです。

 二つ目の質問ですが、非正規のところですけれども、おっしゃるとおり、海外には非正規はないというのは存じております。

 希望する方が正社員として就労することができるよう、先ほどお話のあった正社員になりたい方が正社員として就労することができるよう、非正規雇用から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金による支援や、ハローワークにおける正社員就職に向けた担当者制によるきめ細かな就職支援などを実施しております。

 また、非正規雇用で働く方につきましては、処遇改善に向けた同一労働同一賃金の遵守の徹底やキャリアアップ助成金により、賃金引上げの取組なども支援しています。

 三つ目の質問になりますが、非正規雇用労働者に対する基礎的なスキル訓練につきましては、非正規雇用労働者等の求職者の方に対して、無料で受講できる求職者支援訓練において、コミュニケーション能力、またビジネスマナーなど、社会人としての基礎的な能力を身につける基礎コースに加え、実践的な技能や知識を習得する実践コースを実施しており、御指摘のような非正規雇用労働者を含む求職者、正規社員になりたい方のために必要な支援は実施しておりますし、今後も、このような施策を通じて、非正規労働者の正規雇用化の処遇改善に向けてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

鈴木(敦)委員 人への投資というのは我々も主張していますから、当然なんですよ、やるべきだと思います。

 後ろにいる役人の皆さんだって考えてみてください。今やっておられる仕事は大変な仕事をされていますよね。留学の支援があったりとか研修もあると思います。でも、非正規だったらどうしますか。やりがいなんかないじゃないですか。もし来年任期を切られるかもしれないとなったら、皆さんはその時点から仕事のやる気がなくなると思いますよ。その中で生産性を高めろと言われてもなかなか難しいと思います。

 ハローワークについてお話がありましたけれども、ハローワークの仕組みは使いづらいです。私は三か月使っていましたけれども、あれはなかなかマッチングできないし、実際は年齢制限が設けられていたり、性別によって採らないと言われたりとか、結構往々にしてあります。私もいまだにたまにハローワークに行ってシステムを見ますけれども、いっぱいありますよ、そういう事例は。だから、これは是非とも、今ありますではなくて、ちゃんと常に監視をしてください。そうしないと使いやすいものにはなりません。

 もう一つ。教育訓練についても物が限られ過ぎています、カテゴリーが。先ほど申し上げたとおり、一度も社会に正社員として出ずに非正規雇用で働いてきた私たちのような人間は、そもそものスキルがないんです。パソコンができるとかスマホができるのはみんな誰でもできるんです。だから、これはリスキリングにもアップスキリングにもならないです。特定のアプリケーションが使えるとかプログラミングができるとか、そういう部分になってくるので、是非この部分は、レクの際にも言いましたけれども、拡充をしていただいて、再び前に踏み出せるように、一度就職できなかったからといって全てを諦めなくても済むようにしていただきたいと思います。

黄川田委員長 既に持ち時間が経過していますので、御協力ください。

鈴木(敦)委員 済みません。

 ちなみに言っておきますけれども、今ほど申し上げた非正規雇用は全労働者の四割ですから、是非よろしくお願いしたいと思います。

 終わります。

黄川田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、北朝鮮が、本日、人工衛星と称する飛翔体を発射した問題について述べておきたいと思います。

 国連安保理の累次の決議は、弾道ミサイル技術を使った発射や開発関連の全ての活動を禁じており、今回の発射は国連安保理決議に違反するものであります。

 我が党は、北朝鮮に対し厳しく抗議するとともに、アジアと世界の平和と安全の脅威となる核開発と関連した活動を中止し、放棄すべきであることを重ねて求めておきたいと思います。

 同時に、見落とせないのは、日本政府が、弾道ミサイルの発射に備えるとして、沖縄などで軍事的対応を強めていることであります。こうした政府の対応は、地域住民から批判と不安の声が高まっています。

 そこで、本日は、政府が安保三文書に基づき進めようとしている敵基地攻撃が可能な長射程ミサイル配備計画について質問します。

 井野防衛副大臣に質問します。

 皆さんにお配りしている配付資料一枚目にあるように、防衛省は、先月、既存の一二式地対艦誘導弾の射程を大幅に伸ばす能力向上型や高速滑空弾の開発、量産について、三菱重工と契約したと発表しています。契約額は合わせて三千八百億円近くに上ります。

 そのうち、量産する一二式地対艦誘導弾と高速滑空弾は、いつ頃から部隊配置を開始するつもりですか。

井野副大臣 防衛省では、令和四年十二月に策定された防衛力整備計画に基づき、防衛力の抜本的強化の重要な柱の一つであるスタンドオフ防衛能力の強化に努めているところでございます。

 このうち、一二式地対艦誘導弾能力向上型、地発型の量産につきましては、部隊配備を可能な限り早期に実現するように努めておりまして、今年度より量産に着手することとし、令和五年四月に、委員御指摘のとおり、契約をいたしました。納入につきましては、令和八年度及び令和九年度となる見込みでございます。なお、この一二式能力向上型の配備先等については、まだ決めておりません。

 また、島嶼防衛用高速滑空弾の量産につきましても、同じく今年度より量産に着手することとしており、本年四月に契約し、納入については、同じく令和八年度及び令和九年度となる見込みでございます。こちらについても、現時点で、どの部隊に配備するということは決めてございません。

穀田委員 どの部隊だというような話は聞いていないんですけれども、先回りせぬでもよろしいがな。二〇二六年度にも配備を開始するということですかね。

 一二式地対艦誘導弾をめぐっては、防衛省はこれまで、二〇一九年に奄美大島と宮古島に、安保三文書の決定以降は石垣島に、それぞれ駐屯地を開設し、運用部隊を配置してきました。

 配付資料の二枚目は、防衛省の今年の一月の地対艦誘導弾部隊の配置に関する資料です。これを見ますと、防衛省は、今年度中に沖縄本島の勝連に、奄美、宮古、石垣に配置した運用部隊を束ねる第七地対艦ミサイル連隊を新編するとあります。

 この部隊を新編する目的、部隊の概要は何ですか。

井野副大臣 南西地域は、その全長が約一千二百キロに及ぶ広大な地域でありまして、島嶼部に対する侵攻を洋上においてより効果的に阻止し、島嶼部を防衛するために、平成三十一年三月に奄美大島、令和二年三月に宮古島、令和五年三月に石垣島へ、それぞれ地対艦誘導弾部隊を配備してまいりました。

 こういった経緯の上で、南西地域の島嶼部における防衛体制を強化するため、これらの配備先のおおむね中間地点であります沖縄本島において、これらの部隊を指揮統制し管理するため、第七地対艦ミサイル連隊を新編した上で、連隊本部、本部管理中隊などの本部機能、射撃中隊及び整備部隊などの部隊を令和五年度に勝連分屯地に新編することといたしました。

穀田委員 そういう経過だと。

 私は、二〇二一年の四月二十三日に本委員会で、沖縄本島にも一二式地対艦誘導弾を配備する計画があるのではないかと指摘したんですね。そのとおりだったということですよね。

 安保三文書は、スタンドオフミサイル部隊として、地対艦ミサイル連隊を現在の五つから七つに増やすとしています。新編される第七連隊はその一つであります。長射程化した一二式地対艦誘導弾が量産されれば、真っ先にこの部隊に配備されるのではないか。ここを今度はちゃんと聞きます。

井野副大臣 済みません、先ほどちらっと申し上げましたが、一二式地対艦誘導弾能力向上型について及び島嶼防衛用高速滑空弾については、現時点において配備先等は決めておりません。

穀田委員 大体、長射程ミサイルの配置先についてただすと、判で押したように、まだ決まっていないと繰り返すわけですよね。

 南西地域で最も西側に位置する与那国島で防衛省が今月十五日に行った住民説明会でも、なし崩し的に敵基地攻撃のミサイルを配備することはしないと約束してほしいとの訴えが出された。これに対して、防衛省は、現時点では配備計画はないと繰り返したと聞きます。

 しかし、浜田防衛大臣は、三月二日の参院予算委員会で、現時点で配備しないというのは、今後どうなるか分からないということだと答弁しているんですね。今後分からないと答弁している。つまり、今後配備する可能性があるということなんですよ。

 そこで、林外務大臣に聞きたいと思います。

 政府が長射程ミサイルの配備を否定しない中、今、住民の間には、有事の際に攻撃目標になりかねないとの懸念と不安が広がっています。

 配付資料の三枚目は、沖縄県議会が三月三十日に採択した政府宛ての意見書であります。

 そこには、敵基地攻撃能力による攻撃は、相手国からミサイルなどによる報復を招くことは必至で、沖縄が再び標的とされるとの不安が県民の中に広がっていると強調しております。

 その上で、政府に対して次のように述べています。アジア太平洋地域の緊張を高め、沖縄が再び戦場になることにつながる南西地域へのミサイル配備など軍事力による抑止ではなく、外交と対話による平和の構築に積極的な役割を果たすこと、このように求めています。

 この意見書は、資料にもありますように、外務大臣宛てにも提出されたはずであります。林大臣はこの訴えをどのように受け止めておられますか。

林国務大臣 今御指摘のありました沖縄県議会による意見書に基づく要請につきましては、先月、吉川外務大臣政務官が対応させていただきまして、私も報告を受けているところでございます。

 この意見書も指摘しておりますように、沖縄を再び戦場にしてはならないということは当然であると考えております。

 我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性、これはより一層高まっておりまして、まず優先されるべきは積極的な外交の展開であります。外交力、防衛力を含む総合的な国力、これを最大限活用しつつ、力強い外交を展開し、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出していく考えであります。

 その上で、防衛力により、沖縄を含む我が国に脅威が及ぶことを抑止することが重要であり、防衛力は外交の裏づけにもなるというふうに考えておるところでございます。

穀田委員 今お話がありましたように、沖縄が再び戦場になることはあってはならない、当然だということがありました。

 私がいつもこの問題についてお話をお聞きしますと、必ず、丁寧な説明をすると。総理大臣の好きな言葉はこれですよね、丁寧な説明。大体、丁寧な説明というのは、聞いたことは余りないんだけれども。

 政府、防衛省は、うるま市で住民からの説明会の開催要求を一貫して拒否しておることは一言述べておきたいと思います。

 今、私は発言を聞いていまして、そこで、井野防衛副大臣に聞きたいんですけれども、これまで政府は、南西地域での自衛隊部隊の増強は武力攻撃の可能性を低下させるもので、沖縄県民を含む日本国民の安全、安心につながると説明してきました。長射程ミサイルの配備もそのためだとしてきていますが、ほんまにそうか、本当にそうかと。

 配付資料の四枚目は、陸上幕僚監部が二〇一八年十月の部内会議で使用した陸幕施策説明の一部であります。

 これです。ちょっと大きくしたのがこれなんですね。皆さんのところには半分のやつで渡していますけれども、ここには、将来の我が国防衛における陸上防衛力の役割として、領域横断的な作戦のイメージ図が記されています。これはどういうものですか。

井野副大臣 この具体的なイメージ図ですけれども、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域と陸海空という従来の領域の組合せによる戦闘様相に適応することが、ある意味、領域横断的な対応ということになってくるかと思います。こういったことが死活的に重要になっているという問題意識の下、これらの領域を横断的に活用した防衛力を構築していくといった当時の概算要求の考え方を踏まえた陸自の検討内容のイメージ図であるということであります。

穀田委員 領域横断作戦というのは、二〇一五年の日米ガイドラインに盛り込まれ、その後、二〇一八年の防衛大綱で具体化されたもので、現在の安保三文書に引き継がれた防衛構想であります。

 このイメージ図を見ますと、北朝鮮や中国と見られる地域から日本に弾道ミサイル攻撃が行われることを想定し、これをBMDで迎撃することに加え、師団、旅団の作戦基本部隊による機動展開、水陸機動団による両用作戦、日米による共同作戦などが記されています。

 とりわけ看過できないのは、これらの軍事作戦が南西地域で生起する長射程火力戦闘を軸に描かれていることであります。この長射程火力戦闘とは一体何ですか。

井野副大臣 長射程火力戦闘とは、こうした長距離のミサイルを用いた作戦行動という趣旨でございます。

穀田委員 なるほど。長距離ミサイルを使う作戦だと。

 だから、防衛省はこれまで領域横断作戦に関するイメージ図を複数公表していますが、南西地域で長射程火力戦闘を行うと説明されたものを見たのはこれが初めてであります。しかも、長距離のミサイルを使うということを述べたのも、これも初めてじゃないかと思うんですよね。

 そこで、配付資料の五枚目、陸上幕僚監部が二〇一八年十一月の部内会議で使用した、陸上自衛隊の将来体制に関する資料であります。これも、私が資料要求を行ったことに対して防衛省が提出したものであります。

 ここには、「海空領域」とある箇所に、「長射程火力戦闘機能の整備・強化を通じた南西地域における抑止・対処態勢の充実」と記されております。そう記載されていることは確認できますよね。

井野副大臣 「長射程火力戦闘機能の整備・強化を通じた南西地域における抑止・対処態勢の充実」というのは、陸上幕僚監部で使用された資料に記載はあるということであります。

穀田委員 記載はあると。そちらの提出したこの資料は、そちらの資料であって、そういうことが確認できるということですわな。

 この記述でも分かるように、長射程火力戦闘は南西地域での戦闘を想定したものだということになります。

 昨年九月十九日付の北海道新聞は、南西地域の陸自部隊の配備について、防衛省内では南西の壁と呼んでいると報じています。その中で、元陸上幕僚長の岩田清文氏は、南西諸島は戦闘地帯になる可能性があると指摘しています。

 長射程火力戦闘は、まさにそうなることを想定したものではありませんか。

井野副大臣 我々としては、常に様々な脅威というものをシミュレーションし、そして検討し、我が国にとって必要な防衛体制というものを検討しているところでございますので、これは必ずしも南西というところに限ったわけでなく、また、今の技術的な面も含めて、北朝鮮を含めて、様々なミサイルだったり長射程化というものが今の科学技術からなされているということを踏まえた上で、様々検討しているというところでございますので、必ずしも南西ということに限っている話ではございません。

穀田委員 必ずしもということは、そういう想定もしているということですよね。

井野副大臣 南西を故意に排除しているというわけでもございません。あらゆる脅威というものを検討し、シミュレーションしているというところでございますので、南西というものも排除しているわけではないし、日本国全土を見て、その脅威というものを排除し、そして抑止していくということが大事だと思っております。

穀田委員 そういう一般論はせずに、いずれにしても、南西諸島が一つの焦点になっているということは確かだし、このイメージ図は、全国で、全部やっているわけじゃないんですよね。一番リアルに書いているのは、ここに長射程火力戦闘と書いているのは、ここに書いているわけで、こっちも、北海道のこっちとか、東北のこっちとか、こっちに書いているわけじゃないんですよ。一番リアルな図で想定しているのはこれだと。

 ということは、一番可能性があるのは、ひょっとしたらここだと想定しているということですか。

井野副大臣 様々な蓋然性は、当然、濃淡はあるんだろうというふうに思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、南西に限っているわけでもありませんし、あらゆる脅威、そういったものに対抗、そして抑止をしていくということが大事だと思っております。

穀田委員 なぜこんなことを言っているかというと、やはり、先ほど沖縄県議会の意見書を言ったわけじゃないですか。この図も見せたわけじゃないですか。ここにありますように、南西地域における抑止力、態勢の充実、こういう長射程火力戦闘機能の整備というのはここだと、三つも四つも例を挙げて言っているわけじゃないですか。そのときに、一般論を、どこでもかしこでもというような話をしたって、それは駄目ですよ。

 何でこんなことを言っているかというと、沖縄戦では四人に一人が犠牲になったけれども、その最大の教訓は、軍隊は住民を守らないということなんですよ。実際に、北海道新聞で岩田元陸幕長は、本格的に武力攻撃を受ける事態になれば、自衛隊に住民を保護する余力はないと明言しているのであります。

 しかも、抑止力を高めることで武力攻撃の可能性を低下させるというけれども、安保三文書では、領域横断作戦について、その抑止が破られた場合に行うとされているわけではありませんか。つまり、長射程火力戦闘は、その結果、南西地域で生起する事態だということは明らかであります。

 配付資料六枚目を見てください。自衛隊の体制、装備に関する防衛省の二〇一八年十二月の資料です。この資料も防衛省が提出した資料であります。

 これを見ますと、「長射程火力戦闘機能の強化」として、「高速滑空弾の整備、SSM・中SAMの長射程化」と明記されています。そう記載されていることは確認できますね。

井野副大臣 これは平成三十年十二月に防衛省が作成した資料でございまして、ここに「長射程火力戦闘機能の強化」ということが記載されていることは事実でございます。

穀田委員 事実だと認めた。だから、やはり、このSSMは一二式地対艦誘導弾であるし、中SAMは中距離地対空誘導弾のことであります。長射程火力戦闘では、これらを長射程化したものを使うということになるわけですね。

 だから、先ほどスタンドオフミサイルの配備先はまだ決まっていないと答弁されたけれども、私が指摘した内容を見て、この間ずっと見ても、まさしく、これを見てもですよ、この内容を見ても、南西地域への配備は既定路線だということが明らかではありませんか。いかがですか。

井野副大臣 このときの長射程火力戦闘という中で具体的なアセットとして我々が検討していたのが、平成二十九年度より、現有装備品でありました一二式地対艦誘導弾の射程を延伸した一二式地対艦誘導弾改というものの開発に着手していたところでありまして、これを基に、長射程火力戦闘機能の強化ということの趣旨でありました。

穀田委員 だから、その配備先は南西になるというのは既定路線じゃないのかと。装備の長射程化の経過を聞いているんじゃないんですよ。それは、皆さん、聞いていて分かりますやろ。

 要するに、私が言っているのは、配備先は決まっていないというけれども、防衛省は、今月の十五日、先ほど言っていましたけれども、与那国島で行った住民説明会で、長射程化した中SAMを配備すると説明しているじゃありませんか。この内容を説明しているんですよ。

 それからまた、一二式地対艦誘導弾や高速滑空弾にしても、二〇一八年の防衛大綱以降、領域横断作戦に必要な能力として位置づけてきたではありませんか。

 この一連の動きを見ても、現地での発言を見ても、長射程ミサイルが南西地域に真っ先に配備されることは疑いないということだと思います。

 外務大臣、先ほどの意見書にもあるように、大軍拡の最前線に立たされようとしている沖縄では、長射程ミサイルの配備が再び戦場になることにつながると強い批判が上がっています。この長射程火力戦闘は、まさに沖縄が戦場になることを想定したものであります。

 林大臣、こんな事態を想定しておきながら、こういう問題について一切説明してこなかった政府の責任は極めて重大ではないかと思うんですが、いかがですか。

林国務大臣 南西地域の防衛体制について記載をしております国家防衛戦略等の内容につきましては、これまでも国会における質疑等にお答えする形で随時説明してきたと承知をしております。

 南西地域の防衛体制を強化することは、今回の防衛力強化の重点の一つと承知しておりまして、今後とも、政府として引き続き丁寧な説明を行っていくことが重要であるというふうに考えております。

穀田委員 今ありましたように、国家防衛戦略の中身にも、今の私が指摘した内容が全部書いているんですよね。今、丁寧な説明を行うとおっしゃいましたから、私は全てをきちんと説明すべきだということを確認しておきたいと思います。総理大臣のように、テレビで見ているときは丁寧な説明と言って、それっきりというんじゃなくて、林大臣の場合には、お話がありましたように、全てをきちんと説明すべきだということを述べておきたいと思う。

 抑止力を向上させるということで武力攻撃の可能性を低下させるということを常に防衛省は言うんですけれども、違うんですよ。長射程火力戦闘というのは、今大臣がおっしゃった戦略、この中にちゃんと書いているんですけれども、その抑止が破られた結果、南西地域で生起する事態なんですね。そのことの考えをしっかり整理しておかへんと、ごまかされてはならないと思います。

 安保三文書は、集団的自衛権の行使として、敵基地攻撃能力の使用を可能にした。浜田防衛大臣は、二月六日の衆議院予算委員会で私の質問に対し、集団的自衛権を行使した場合、相手国から報復攻撃を受け、日本に大規模な被害が生じる可能性を認めました。長射程ミサイルを配備した南西地域が真っ先に攻撃対象とされ、甚大な被害が生じるのは明白であります。

 したがって、長射程ミサイルの配備など、日本に戦火を呼び込む大軍拡計画は中止すべきだ、そのことを強く求めて、質問を終わります。

黄川田委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会の吉良州司です。

 幾つか質問通告をしているんですけれども、そのうち、G7、ウクライナに関わる問題では徳永議員、そして核軍縮に関わるところでは篠原議員とかなり重複するところがあるので、ただ、その中でもできるだけ重複しないように、ちょっと工夫して質問をしたいと思っています。

 まず、防衛費倍増問題についてお伺いします。

 安全保障というときに、三文書でもそうですけれども、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境、これは決まり文句になっているんですけれども、そして、じゃ、具体的に何が厳しくなっているんだと聞いたときに、どの国ですかと仮に聞いたとしたら、先ほどの答弁でもあったように、特定の国を想定したものではありませんという答えが返ってくる、それは分かっています。

 けれども、宇宙、サイバーを除いて、世界地図を見たら、東アジアを見たら、どこの国を想定しているだろうというのは明らかでありまして、それは、北ではロシア、それから北東で北朝鮮、そして西で中国。外務省として決して国名を具体的に言えないのは分かっています。

 ただし、じゃ、防衛費を倍増しなければいけないほどの、安全保障環境がウクライナ戦争以前よりも厳しくなったか。侵略というものは相手の能力と意図、意思、こう言われますけれども、当然、私の方からはあえて言いますけれども、対ロシア、対北朝鮮、対中国に対しては、ウクライナ戦争以前から、当然ながら、既存の防衛費の範囲内で、苦しくはあっても備えをしてきたはずなんです。じゃ、ウクライナ戦争が勃発したからといって、今言った三つの国の、さっき言った、日本に脅威を与えるような能力と意図が、防衛費を倍増しなければいけないほどに、その能力と意図が倍増したのか。

 この点について、林大臣の見解を求めたいと思います。

林国務大臣 我が国の安全保障政策は、委員もおっしゃっていただきましたように、特定の国や地域を脅威とみなして、これに軍事的に対抗していくという発想に立っておらないわけでございますが、一方で、我が国周辺には強大な軍事力を有する国家などが集中し、まさに、北朝鮮の核・ミサイル開発、そして中国の透明性を欠いた軍事力の急速な増強など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面をしております。

 こうした中で、我が国は、昨年末に、新たな国家安全保障戦略等を策定をいたしました。この戦略の中において、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保して、自由で開かれた国際秩序を強化する上で、外交の重要性を認識をしているところでございます。同時に、このような外交には裏づけとなる防衛力が必要であり、防衛力の抜本的強化を決定したところでございます。

 そして、委員からは意図と能力ということがございました。これは、我々も、もう随分前ですが、留学をした時代に、安全保障の入口として、この意図と能力というのは随分議論したということは記憶をしておるところでございます。

 まず、意図について、戦略にも書かれておりますけれども、強力な軍事能力を持つ主体が他国に脅威を直接及ぼす意図、これをいつ持つに至るか正確に予測するということが困難であるために、そうした主体が持っている能力に着目して、我が国の安全保障に万全を期すために防衛力を整備する必要がある、こういう考え方に立っておるところでございます。

吉良委員 そういう答弁が返ってくるだろうとは思っていましたけれども、私の問題意識は、防衛費を倍増しなければいけないほど、その脅威なり懸念が増しているのかという問題意識なんです。

 北朝鮮、今日も弾道ミサイルと思わしきものを発射しましたけれども、北朝鮮のミサイル発射又はある時期までの核開発、今もやっているかもしれません、これについてはこれまでも想定し得たこと。

 そして、中国とは一方できっちり握手をして仲よくしなければいけない国だと思っていますけれども、中国が年々、防衛費を二桁倍増していく、それによって近代化を増して、ある意味では軍事能力が極めて高まってきたというのは昨日今日に始まったことではない、ここ十数年ずっと、二十年、言われ続けてきていることなんです。

 なのに、このウクライナ紛争があったときに、国民世論としては、ある意味、二十一世紀のこの時代になって、まだ二十世紀的な、領土に侵攻してきて、こんな侵略があるのかと。これは、日本国民も含め、世界はびっくりしたと思いますよ。

 もちろんそこは認めた上で、けれども、我が国を取り巻く安全保障環境といった場合には、口が裂けても個別名は言えないにしても、ある意味では強大な軍事能力を持った国があるわけです。

 繰り返しますけれども、その国の軍事力に対して備えをしてきたわけです。ここに来て、倍増しなければいけないと。倍増しなければいけないほどの脅威が増してきたんですか。これが私の問題意識です。

 もう一度、お答えいただきたいと思います。

林国務大臣 例えば、北朝鮮でございますが、やはり近年、かつてない高い頻度で、特に昨年一年間、それまでと比べてみますと、かなり高い頻度で、かつ、新たな態様での弾道ミサイルの発射を繰り返してきておりまして、急速にその能力が増強されておるということでございます。

 また、中国は、その国家目標の下で、国防費を継続的に高い水準で増加をさせまして、十分な透明性を欠いたままで、核・ミサイル戦力を含む軍事力を広範、かつ、これも急速に増強してきております。

 ロシアは、言うまでもないことですが、我が国周辺における軍事活動を活発化させ、我が国固有の領土である北方領土でも軍備を強化しているところでございます。

 そして、それに加えて、さらに、ロシアと中国が戦略的に連携をしているということ、これも安全保障上の強い懸念でございまして、少し具体的に申し上げますと、そういう状況を背景にして、昨年の国家安全保障戦略を作らせていただいたということでございます。

吉良委員 答えづらいのは分かっているんですけれども、残念ながら、答えになっていません。

 私の方からこの場で言うことがいいのか分かりませんけれども、私自身の認識として、北朝鮮というのは、いろいろ花火のようにミサイルを打ち上げていますけれども、最終目的は金王朝を維持することですから、その金王朝体制が崩壊するようなところまではやらない。いろいろ見ていると、そういう意味ではかなり賢い、ずる賢いというか、国だと思っています。

 では、ロシア。確かにウクライナには侵攻しました。これは現実です。しかし、よく言われるように、GDPは韓国以下です。そして今、ウクライナ戦争によって国力をかなり疲弊させている。そういう中で、では、ロシアの脅威が、さっき言った防衛費を倍増させなければいけないほどのものなのか。

 では、中国に目を転じましょう。先ほど来、台湾問題についても議論がなされています。以前も言いましたが、私自身も台湾有事は日本有事だという問題意識と備えは必要だというふうには思っています。そして、台湾問題はあくまでも平和裏に解決されるべきだとも思っています。しかし、中国が、先ほど来出ている国内問題である台湾の問題を解決する以前に、それ以外の国に現実問題として侵攻するようなことが考え得るのか。

 等々、外務省、外交官、外務大臣というのはプロですから、さっき言った、漠然と、二十一世紀になってこんな軍事侵攻が起こるのかではなくて、個別具体的に、どういう国のどういう能力が増していて、そして、今の意思、意図がどうなのか。そして、当然ながら、意思、意図をくじくために抑止力を備える。そして、意思、意図を軽減させるために外交があるんじゃないですか。

 そういう中で、もう一回だけ、くどいですけれども、防衛費を倍増しなければいけないぐらいの意思と能力を含めた脅威の増大があるんでしょうか。

林国務大臣 先ほど、最初に申し上げましたように、強力な軍事能力を持つ主体が他国に脅威を直接及ぼす意思をいつ持つに至るか、若しくは今持っているかどうかも含めて、正確に予測するということは困難でありますので、国家安全保障戦略は主体の能力に着目しておるわけでございます。

 そして、先ほど、中国、北朝鮮、ロシアの安全保障上の動向については申し上げたとおりでございまして、更に詳細にということになりますと、これは我々の諜報、インテリジェンスの能力ということをさらけ出すということにつながりかねないということもありまして、先ほど申し上げたところは国家安全保障戦略に書かせていただいたところでございますが、そういう状況を踏まえて、この国家安全保障戦略をまとめさせていただいたということでございます。

吉良委員 もうこれ以上、重複した質問はいたしませんけれども、本当に悔しいですけれども、日本はこの三十年間、日本だけが経済成長をせず、ほかの先進国は賃金上昇に伴い三倍、オーストラリアなんかは五倍ぐらい豊かさを増している中で、日本だけ停滞しているんです。けれども、多くの議員も、国民も、まだまだ九〇年代半ばの、日本のGDPが世界のGDPの一七%を占めていた時代の大国意識を持ったまま、今五%ですよ、日本だけ停滞しているんですよ。このようなときに、毎年五兆円もの、防衛費を倍増する、それが身の丈に合った今の姿なのか。

 私もずっと、自主防衛力を含めて防衛力の増強は必要だと言ってきた人間です。ただし、倍増するほど必要なのか。そのお金があったら、今、日本の最大の危機は、少子化であり、その少子化を克服するための子育て支援であり、そこに五兆円を投じてほしい。このことを強く申し上げて、次に移ります。

 広島G7サミットについては、これまでも議論がなされていました。政府からも、成功したという話がございました。そこは、私は完全承服はしませんけれども、認めたとして、ゼレンスキー・ウクライナ大統領を招聘したことによる、デメリットと言うとなんですけれども、それによってG7広島サミットに何か問題が、問題という言い方はよくないですね、当初想定した目的というものが達せられなかった又はその度合いが減じてしまったということはないでしょうか。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序を揺るがす暴挙に対しまして、国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領に今回のG7広島サミットにおける議論に参加いただき、ウクライナの置かれた現状について自らの言葉でG7や招待国等に対して直接説明いただきました。

 それによって、G7がこれまで以上に結束をして、あらゆる側面からウクライナを力強く支援し、厳しい対ロ制裁を継続していくことを改めて確認して、そして、招待国も含めて、世界のどこであっても力による一方的な現状変更の試みは許さず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くということが重要であるということ、これを力強く国際社会に発信することができたと考えております。

 さらに、ウクライナ侵略の文脈においてロシアの核兵器による威嚇が問題となる中で、ゼレンスキー大統領を広島に迎えて議論を行ったことで、ロシアによる核兵器の威嚇、ましてやその使用は許されないというメッセージ、これを緊迫感を持って発信することにつながったと考えております。

 今申し上げたようなことがございましたが、来られたことによって何かが失われたとか機会を喪失したということは、今すぐ思い浮かぶことはないと考えております。

吉良委員 大臣、覚えていていただければありがたいんですけれども、私は、前回の外務委員会で、広島サミットを単にG7が結束してウクライナを支援するとかロシア制裁を強化するという、悪いけれども、余りにもありふれた、そんな会合にするのではなくて、停戦に向けた第一歩にしてほしいということを申し上げました。

 一言でいいです。大臣、その私のお願い、提言については覚えておられますか。

林国務大臣 今委員のお顔を見て思い出したところでございます。

吉良委員 ありがとうございます。

 申し訳ないですけれども、いろいろ発信された内容というのは、ここにいらっしゃる議員たちはみんな想定していた範囲内ですよ。けれども、一番大事なのは停戦じゃないですか、先ほど徳永委員からも問題提起がありましたけれども。

 停戦に向けて、ブラジル・ルラ大統領ではないですけれども、ゼレンスキーさんを呼んで、また、プーチンさんを呼んでも来ないでしょうけれども、外務大臣を呼ぶなりしてやるのならともかく、ロシア側から呼ばないのであれば、ゼレンスキー大統領を呼んだことによって、先ほど来出ている分断とか、特にグローバルサウスは正義で食っていけないんですよ。前も言いました、マズローの五段階説じゃないですけれども、まだ自己実現の五段階に行っていない。それに行っているのはG7とか先進国だけですよ。そこまで行っていない国は、正義で飯は食っていけないんです。

 だから、今、グローバルサウスに対してもG7に対しても多大な影響力を持っているインドも、ゼレンスキーさんとはきっちり会う。けれども、同時に、十四億の民を食べさせていくために、三割も安く原油を買えるんだったら、それはロシアから買いますよ。

 多くの国は、食っていく、生き抜いていくために外交をやっているんですよ。正義で飯を食えるのは本当に一部の先進国だけですよ。

 そういう中で、今言いましたように、私は、ゼレンスキー大統領を招聘したことによって、停戦への第一歩というところが、先ほど言いました、私が懸念していた、結束してウクライナ支援をする、ロシア制裁を強化するというところに終わってしまったということは極めて残念であります。

 それからもう一つは、当初、やはりグローバルサウス、それもインドやインドネシアをお呼びして、最近急速に外交関係がよくなった韓国も呼んで、そういうグローバルサウス、重要国を呼ぶというのを私は物すごく期待していました。

 実際、中身的には、もしかすると、ゼレンスキー大統領が来なかったとしても、議論をし、かつ、共通の目的を確認して、それに邁進する環境をつくれたんだと思いますけれども、少なくとも、どう映るか、報道されるかについては、ゼレンスキー大統領一色になって、日本にとって一番大事なグローバルサウス、その連携強化、この部分が薄れてしまったのではないか。それが私の言う、ゼレンスキー大統領を呼ぶことによる、ある意味ではマイナス効果だと思っています。

 同意してもらうことは一〇〇%ないと思いますけれども、ごく簡単に、私の問題提起に対するコメントをお願いします。

林国務大臣 このサミットに際しましては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していく、この強いメッセージを示すこと、そして、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々との関与を深めること、この二点を重視しておりましたが、これらについて当初の狙いどおりの成果が達成できたと考えております。

 ゼレンスキー大統領自身に対面で御出席いただいて、G7と同大統領、そして招待国の首脳を引き合わせたセッション、これを開催することとともに、まさにその場において、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持等について認識の一致を得ることができたわけでございまして、これは大変大きな意義を持つものであったというふうに考えておるところでございます。

 また、招待国とのセッションからいろいろな文書も出ておるというのは委員御案内のとおりだというふうに思っております。

吉良委員 一点だけ指摘しておきますと、事の真相は分かりません、報道ベースですけれども、ブラジル・ルラ大統領との面談予定が、少なくともゼレンスキー大統領は現れなかったということ、そして、ブラジルのルラ大統領は、ウクライナの戦争のためにG7に来たわけではない、このことは国連で解決すべきだということを発言しているというふうに報道では聞いています。その発言を聞いても、先ほど言った私の問題提起、少なくともルラ大統領はそれを口にしたということだと思います。

 それと、先ほど徳永委員が指摘した、私は何としても停戦してもらいたい、それは、ウクライナ、ロシア両国のためでもあり、これも、これまでの外務委員会で言いましたように、この紛争が起こっているために、食料が高騰し、エネルギー価格が高騰し、さっき言った、先進国は高くなっても買えますけれども、貧困国は買えない、貧困層はそれで飢えて餓死してしまう、この現実があるわけです。

 そういう意味では、ウクライナのことはウクライナが決めるべきだと、ここまで世界的に影響を及ぼしているこの紛争、戦争を、やはりG7としても早期に終わらせることが、本来、世界秩序を回復するというG7の目的であるべきだと思っています。

 私は、すごく懸念するのは、先ほど、やはり徳永委員からトルコの停戦案というのが出ていました。実は全く同じことを、私、トルコの停戦案を見る前に、私自身の独自案として出していました。これは以前の外務委員会でも、実際こういうことを発信していたというのを見てもらったと思っています。

 一番心配しているのは、結局、何のことはない、停戦の合意の前提が、二月二十四日以前、つまり、クリミアと、ドンバス地方の人民共和国と言われる二国、このことについては、現状維持か、将来、知恵のある世代に考えてもらおうということで、結局、これだけ紛争が長引き、そして、二月二十四日以前に戻ってしまう、こんなことがあっていいのかと。

 そして、クリミアについて言うと、クリミアはウクライナから見れば不当に占拠されている状態、不当に実効されている状態。これは、日本の北方領土も同じじゃないですか。北方領土を、我々は話合いであくまでも取り返そうとしている、武力なんかに訴えるわけにはいかない。だから、認めているわけではないけれども、現状維持を放置しながら、話合いで解決していこうとしているわけではないですか。クリミアの問題についても、日本の北方領土を考えたら、そう多くのみんなも、クリミアを取り返すまで全部やれというふうには、すぐにはならないはずです。長い期間かけてウクライナに帰属させる、そういう意思を持つことは、それはあっていいと思います。けれども、足下ではないでしょうという問題意識を提起しておきます。

 最後に、もう時間がなくなってまいりましたので、核軍縮について。私も、広島サミットで相当期待したんですけれども、これは篠原委員の問題意識と提起を、私もそのまま申し上げます。

 その前段として、私は、日本政府がNPT体制を維持、そして、本来あるべき姿にしていくことが最も重要だと考えていて、一方で、核廃絶については、究極のというか、最終目標の出口としてそれを求め続けているということは認めます。

 その方針の中で、今回、広島でサミットをやり、原爆資料館も見てもらったG7の国々がいて、日本が、核の傘、拡大抑止を提供してもらっている米国も見てもらったわけです。

 そういう状況の中で、日本が核兵器禁止条約に署名をする、その前段として、少なくともオブザーバー参加をする。そのことと、当面の間、さっき言った、最終的な出口として、核廃絶、それが究極の出口だ、けれども、その出口に至るまでの間は、日本も、今言った、軍事力が強大な国々が周りにあって、しかも全部核保有国だ、そういう意味で、アメリカの核の傘、そして拡大核抑止を利用させてもらう。そのために、当面は、核保有国による核保有、そして核保有国が提供する核抑止を認める。けれども、それは暫定的なものだ、究極の出口に至るまでだという中で、核兵器禁止条約、署名するなり、オブザーバー参加することは、基本的な政府方針とやはり相反するものでしょうか。

 私は、篠原議員と同じで、この私がというのはなんですけれども言うんですから、核兵器、今笑っているけれども分かりますよね、吉良州司がこういうことを言うってびっくりしていると思います。でも、私は、核兵器禁止条約にできれば署名をする、前段としてオブザーバー参加する、それでいて究極の目的を目指していく、それまでの間は拡大核抑止を容認する。間違っていないと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今回の平和記念資料館の視察ですが、これはやはり、被爆の実相への理解を深めて、核兵器のない世界の実現に向けたG7としてのコミットメントを確認する機会になったと感じております。

 核禁条約ですが、先ほどの篠原委員との質疑でも述べたとおりでございますが、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約であります。この点、厳しい現実を直視し、国の安全保障を確保しつつ、こうした現実を核兵器のない世界という理想に近づけていくべく取り組むこと、これは決して矛盾するものではないと考えております。ただし、核兵器禁止条約には、核兵器国が一国も参加しておらず、いまだにその出口に至る道筋が立っていないというのが現状であります。

 こうした状況を踏まえまして、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるように努力していかなければならないと思っておりまして、今委員がおっしゃったような声があることは重々承知をしておりますけれども、G7首脳広島ビジョンを強固なステップ台として、核兵器国の関与を得るべく努力を継続しつつ、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくということで、現実的で実践的な取組、これを継続、強化していくことが重要だというふうに考えております。

吉良委員 今大臣がおっしゃったことは、核兵器禁止条約に入ったって、核兵器保有国の関与を促していくことは私はできると思いますよ。やはり唯一の戦争被爆国として、それを言う権利がありますから。

 もう時間がなくなったので、最後に問題提起だけで終わりますけれども、私がこういう問題提起をすることの一つは、核抑止力の有効性なんです。

 私は、今回のウクライナ戦争を見ていて、アメリカが、NATOが、ロシアとの直接対決を極力、通常兵器であっても避けようとし続けている。仮の話です。ロシアが戦術核を使ったとして、じゃ、NATOが、アメリカが、核報復をするか。私は、ないと思っています。先ほど来言っている、基本的価値を共有するという、その価値を共有する国々は核兵器は使いませんよ、報復といっても。私は、それを、核抑止力の非対称性が今回のウクライナ戦争で見えたと思っています。

 核抑止力というのは、やったらやられて、やられる自分の方が被害がもっと大きいということが分かる理性、またその判断力を前提に核抑止力というのは成り立っていると思っています。こっちは理性がある、相手は理性がないかもしれない、そういう中では……

黄川田委員長 時間が経過していますので、質疑を終了してください。

吉良委員 はい。

 核抑止力の非対称性というのがかいま見えたのではないかと私は思っています。

 それだけに、張り子の虎にならないようにしなければいけませんけれども、核抑止の在り方、見方について、もう一回我々が再検討する必要があるだろうということを提起して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.