衆議院

メインへスキップ



第2号 令和5年11月10日(金曜日)

会議録本文へ
令和五年十一月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 小田原 潔君 理事 城内  実君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 青山 大人君 理事 源馬謙太郎君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      上杉謙太郎君    金子 俊平君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      塩谷  立君    島尻安伊子君

      鈴木 貴子君    中曽根康隆君

      林  芳正君    平沢 勝栄君

      古川 直季君    穂坂  泰君

      本田 太郎君    宮路 拓馬君

      篠原  豪君    鈴木 庸介君

      松原  仁君    渡辺  創君

      池畑浩太朗君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    鈴木  敦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   外務副大臣        辻  清人君

   防衛副大臣        宮澤 博行君

   外務大臣政務官      高村 正大君

   外務大臣政務官      穂坂  泰君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  須藤 明夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  萬浪  学君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  齋藤  敦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 日下部英紀君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       佐藤  紳君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     猪狩 克朗君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     本田 太郎君

  深澤 陽一君     金子 俊平君

  穂坂  泰君     古川 直季君

  鈴木 庸介君     渡辺  創君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     中曽根康隆君

  古川 直季君     穂坂  泰君

  本田 太郎君     上杉謙太郎君

  渡辺  創君     鈴木 庸介君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     深澤 陽一君

    ―――――――――――――

十一月十日

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長志水史雄君、大臣官房国際文化交流審議官金井正彰君、大臣官房審議官石月英雄君、大臣官房審議官岩本桂一君、大臣官房審議官池上正喜君、大臣官房審議官日下部英紀君、総合外交政策局長河邉賢裕君、中東アフリカ局長長岡寛介君、国際協力局長遠藤和也君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官須藤明夫君、内閣審議官萬浪学君、内閣参事官齋藤敦君、農林水産省大臣官房生産振興審議官佐藤紳君、経済産業省通商政策局通商機構部長柏原恭子君、貿易経済協力局貿易管理部長猪狩克朗君、防衛省防衛政策局次長安藤敦史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田委員 自民党の黄川田仁志です。

 自民党を代表し、質問いたします。時間もないので、いろいろと持論も述べたいところでございますが、要点を端的に質問させていただきたいと思います。

 上川大臣は、先週、二日から五日にかけて、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問しました。その後、帰国してすぐの七日から八日にかけては、G7外相会合の議長を務め、共同声明をまとめられました。この十日間、大変お疲れであったと思います。どうもお疲れさまでございました。中東の新たな危機に対して、上川大臣の行動力に敬意を表します。

 そこで、上川大臣、今回の中東訪問とG7外相会合の成果について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

上川国務大臣 おはようございます。

 今般、イスラエル、パレスチナ及びヨルダンを訪問いたしました。各国のカウンターパート等に対しまして、日本の立場を直接伝えるとともに、深刻化の一途をたどっているガザ地区の人道状況の改善、事態の早期鎮静化につきまして、直接働きかけを行いました。

 各会談におきましては、先方からそれぞれの立場に基づく発言があった上で、人道状況の改善の必要性、また事態の早期鎮静化に向けて連携していくということを確認したところでございます。

 また、私の中東訪問の直後に行われましたG7外相会合におきましては、十月七日のハマス等によるテロ攻撃以降初めてとなる対面によりましての会合でありまして、G7各外相による中東訪問等も踏まえ、まさに膝を突き合わせて突っ込んだ議論を行うことができました。

 その結果、G7として、ハマス等のテロ攻撃を断固として非難した上で、ガザにおける人道危機に対応するための緊急の行動を取る必要があること、人道支援を促進するための人道的休止や人道回廊を支持すること等を確認いたしました。

 同時に、ガザの持続可能で長期的な解決に取り組むことや、二国家解決が公正で、永続的で、安全な平和への唯一の道であること等を確認したところでございます。

 これらの点を含めまして、G7として初めて今般の事態に関する一致したメッセージを文書の形でまとめることができたことは、国際社会においてG7が責任ある役割を果たすという観点からも、また、本年のG7議長国としての務めを果たすという観点からも、重要な成果となったと考えております。

 その後、G7各国はこの実現に向けて努力を継続しておりまして、イスラエル側において一定の動きがあると承知しております。

 事態は予断を許しませんが、我が国としては、G7を始め、各国、国際機関との間で緊密に意思疎通を行い、人道状況の改善や事態の早期鎮静化等に向けて外交努力を粘り強く続けてまいる所存でございます。

黄川田委員 上川大臣の中東訪問をてこにして、G7が一致して共通のメッセージを発出できたことは成果があったと思います。特に、人道的休止及び人道回廊を支持したことは非常にすばらしかったと思います。そして、本日未明には、イスラエル軍がガザ北部で、住民避難のため、一日四時間の戦闘休止時間を設けるとの報道がされております。

 今、上川大臣がおっしゃったように、この実行においてはより一層の努力が必要になってくると思います。この戦闘休止が人道改善にとって必要な期間続くよう、他の欧米諸国と異なった独自の立場を取ってきた日本政府、外務省には、イスラエルだけでなく、ハマスの方にも戦闘を休止するよう、またテロ行為、攻撃をやめるよう、ハマスに影響力のある中東諸国と積極的に対話をお願いしたいと思います。

 そして、上川大臣の中東訪問の際に、イスラエルで、ハマスの攻撃で被害を受けた方や人質になっている方の御家族、さらに、ヨルダンでは、ガザ地区出身のパレスチナ人の中学生と実際に面会して話をされたと聞いております。今後の中東問題について考える上で是非とも参考にしたいので、上川大臣が現地の方々の言葉を直接聞いて何をお感じになられたか、教えていただきたいと思います。

上川国務大臣 中東訪問中でありますが、十一月三日に、イスラエルにおきまして、ハマス等により殺害、また誘拐された方々の御家族と面会をいたしました。ある日突然大切な愛する家族を奪われた、この心情に直接触れまして、心が震える思いでございました。

 お会いしたのは三組の御家族でありましたけれども、お会いすることができなかった更に多くの方々がいらっしゃるということ、この状況をつぶさに伺わせていただきまして、何としても人道的なこの今の状況に対して対応していく必要があるということを痛切に感じたところであります。

 また、日本の役割ということに対しましても大変大きな期待をいただくことになりました。このことをしっかりと心に刻んで、そして、今まさに動いている情勢の中で、日本としての役割、またG7議長国としてまだ二か月あるわけでありますので、その間の努力は最善を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

 また、十一月四日でありますが、ヨルダンにおきまして、パレスチナ難民救済事業機関でありますUNRWAの方の本部に訪問をさせていただきました。

 その中で、三人の中学生、子供たちと面談をいたしました。子供たちは、ちょうどこのガザの事態が発生する前に日本を訪問されてきた三人でありまして、最終の帰国のときにこの事態が起きたということで、ガザの中の家族とまだ一度も会っている状況ではございません。そういう子供たちの話の中からも、笑顔で接しているところではありましたけれども、その心の中に触れる、それは、ガザの状況を家族や友人から報告し、大変厳しい状況にあるということ、これについても言葉にしていただきました。

 そうした意味で、この三人の子供たちを含むガザの子供たちは未来のある子供たちでありますので、その命を本当に大事にしなければいけないという思いを痛切に感じたところであります。

 何とか再会ができるような環境を整えていく、これも大事な務めでありますので、これにつきましても最大の努力を重ねてまいりたい、このことも皆さんにお伝えしたところであります。

黄川田委員 ありがとうございます。

 大臣の体験されたことをしっかりと受け止めて、我々もパレスチナ、イスラエル、そしてハマスの問題に取り組んでまいりたいと思います。

 G7外相会合では中国についても話し合われました。共同声明では、中国による一方的な現状変更の試みに対する強い反対や、東シナ海と南シナ海の状況について深刻な懸念が示されました。

 その中国問題で我が国が直面している懸案の一つに、尖閣諸島周辺の我が国が主張するEEZ内に中国が一方的に設置したブイの問題がございます。

 上川大臣は、参議院予算委員会におきまして、日本が実力でこのブイを撤去することに関して、国連海洋法条約には明文規定がない、個別具体的な状況に応じた検討が必要で、可否を一概に答えるのは困難であるとして、外交ルートを通じた中国への撤去要請を続けると答弁されております。

 しかし、中国が撤去に応じなければどうするのでしょうか。ブイをほっておくのでしょうか。この中国の一方的な行為を放置すれば、中国の海域主張の黙認とみなされるおそれがあります。私は、日本政府が国連海洋法条約をかなり慎重に堅く解釈していると感じております。

 日本は、法の支配を国際的に強く訴える立場から、国際社会の規範となろうという姿勢については理解しております。しかし、このブイのような構造物の撤去に関して、国連海洋法条約に明文化されていない行為についても、柔軟に解釈し、実行に移してもよいのではないでしょうか。書いていないことをやってはいけないということでもないのですから、グレーゾーンですが黒ではないと考えます。

 外務省、いかがでしょうか。

岩本政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、このブイの問題に関連しまして、国連海洋法条約上、ブイの撤去等については、これを許容する規定も、そして禁止する規定も明文では存在しておりません。

 同時に、我が国としましては、ブイの撤去を含め、当該海域において関係国が有する権利及び義務、また、我が国国内法令や、当該ブイが船舶交通や我が国漁業活動へ与え得る影響等も踏まえ、どのような対応が可能か、関係省庁間で連携して引き続き検討を進めていきたいと考えております。

黄川田委員 今回のブイの設置について、外交上大変難しい判断であることは承知しています。しかし、今後も中国がブイの設置を繰り返す場合、又は複数のブイを設置するような事態が生じた場合は、これまで中国が南シナ海や東シナ海でやってきた海洋進出の実態を見ても絶対に阻止しなければなりません。日本の領海やEEZを守ることは日本という国そのものを守ることであり、外務省、政府には、もっと積極的にこの中国のブイの問題を含む中国の海洋進出に対応してもらいたいと思います。

 例えば、日本がブイを撤去することへの各国の理解を得るための努力をもっとするべきではないでしょうか。今回のG7外相会合のような重要な国際交渉の場で、ブイの問題を含む中国が行っている国連海洋法条約に違反する行為を更に積極的に各国に訴え、日本の正しさを理解してもらうべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の中国の海洋進出についてでありますが、尖閣諸島をめぐる情勢を含めまして、東シナ海、南シナ海における力又は威圧による一方的な現状変更の試み等は、日本を含む地域と国際社会の安全保障上の深刻な懸念事項であります。この点につきましては、アメリカを始めとするG7等の同志国との間で認識を共有している状況でございます。

 十一月八日に発出されましたG7の外相声明におきまして、中国に関して、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対しつつ、引き続き東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念しているとの一致した立場を表明したところでございます。

 引き続き、海洋政策に大変精通していらっしゃる黄川田委員の先ほどの御提言もございました、こうした御提言も含めてしっかりと対応してまいりたいと考えております。

黄川田委員 昨日も四隻もの中国海警局の艦船が尖閣諸島の領海に侵入しました。知恵を絞って日本の領土、領海をしっかりと守ってまいりましょう。

 以上です。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党、金城泰邦でございます。

 私の方からもイスラエル、パレスチナ問題についてお伺いをしたいと思っております。

 先週の参議院の予算委員会におきまして、上川外務大臣より、人道支援活動が可能な環境をつくるためにも、関係国に対して働きかけを行っているとの御発言がありました。その御発言のとおり、十月にはエジプト・カイロで開催された平和サミットに参加され、先週末にはイスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問、今週はG7外相会合を行うなど、大臣は、戦闘の人道的休止、二国家間解決に向けて積極的な外交を行われております。

 そこで、外務大臣にお伺いいたします。

 八日に閉幕したG7外相会合の共同声明において人道的休止及び人道回廊の支持が明記されましたが、その実現に対し、先週末のイスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問しての各国外相との会談は、今後どのように推移するとお考えでしょうか。訪問の具体的な狙いや期待している成果、その手応えについて所感をお伺いしたいと思います。

 また、現地を訪問されて、新たに実施の必要性を感じた支援の在り方や、現地で初めて知り得た情報や、国民の皆さんにお伝えしたいことがございましたら、御答弁をお願いしたいと思います。

上川国務大臣 今回の訪問におきましては、各国のカウンターパート等に対しまして、日本の立場を直接お伝えをするとともに、深刻化の一途をたどっておりますガザ地区の人道状況の改善、そして事態の早期鎮静化につきまして、直接働きかけを行ったところでございます。

 各会談におきましては、先方からそれぞれの立場に基づく発言があった上で、人道状況の改善の必要性、また事態の早期鎮静化に向けて連携していくということを確認したところでございます。

 私自身、この中東訪問を通じまして、ガザにおける人道危機に対処するための緊急の行動を取る必要性を強く認識をいたしました。今回のG7外相会合におきましては、こうした問題意識を強く主張いたしましたし、それを踏まえて、対面で一堂に会する形で集中的な議論を行うことができたものと考えております。

 今回の中東訪問とG7外相会合の成果も踏まえまして、引き続き外交努力を粘り強く積み重ねてまいりたいと思っております。

 地域の平和と安定のためには、イスラエルとパレスチナが平和に共存する以外の解決策はない、そして、今般の事案が中東和平の道を閉ざすことになってはならず、日本としては一貫して二国家解決を支持してきているところであります。

 今般のG7外相会合におきましても、ガザ地区における人道危機に対処するための緊急の行動を取る必要があるということについて一致したところでありますが、食料、水、医療、そして、これから寒い時期に入るということで燃料、シェルター、及び人道支援従事者のアクセスを含む妨害されない人道支援を可能とすること、特に、人道支援を容易にするための人道的休止及び人道回廊を支持することなどで一致したところであります。

 引き続き、イスラエル、パレスチナ双方への直接の働きかけなどによりまして、人道状況の改善、事態の早期鎮静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けてまいる所存であります。

 また、平和と繁栄の回廊構想など日本独自の取組をこれまで実施してきているところでありますので、そういったところも通じまして、当事者間の信頼醸成に貢献してまいりたいと考えております。

金城委員 答弁ありがとうございました。

 大臣の迅速な対応に敬意を表したいと思っております。

 続きまして、外務大臣は、先ほど答弁にもありました水や燃料の不足による人道危機が深刻化するこのガザ地区の一般市民に対して、総額約一千万ドル、日本円で約十五億円の緊急人道支援を行う日本政府の方針を示され、先日のパレスチナ外相との会談において、追加で約六千五百万ドルの人道支援を行う旨をお伝えしたと伺っております。

 支援第一陣の一千万ドル、約十五億円の緊急人道支援については、七百万ドル、約十・五億円を水や食料に関する支援金として国連パレスチナ難民救援事業機関、UNRWAに送金し、三百万ドル、約四・五億円を保健、医療に関する支援金として赤十字国際委員会、ICRCに送金済みと伺っております。

 しかしながら、この逼迫した状況において、資金を受けた後の物資の調達、手配についても負担になるのではないかと危惧するとともに、支援が行き届くまでに時間がかかってしまうのではないかと推測されます。

 そこで、今後我が国から行う人道支援においては、国内での在庫が見込めるものや災害備蓄品など、直接的な物資供与をもって支援を行うことも効果的だと考えますが、いかがでしょうか。今後の六千五百万ドルの追加支援の詳細について、また、日本からの直接的な物資供与についても、外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 今後の六千五百万ドルの追加支援についてのお尋ねがございましたが、今後は、食料、医療、水、衛生を始めとする現地のニーズに沿った支援ということで、国際機関や日本のNGOと協力をしつつ、スピード感を持って実施していくべく今準備をしているところでございます。

 このうち、日本のNGOによる協力といたしましては、ジャパン・プラットフォームを通じまして、食料、生活物資、そして保健、医療、水、衛生などの分野において、四百四十万ドル、六億円の支援を実施する予定でございます。

 国内に保管されている災害備蓄品でありますが、本来、災害時における国内での使用を目的としているものであり、こうした国際協力という目的に使用するためには、支援の有効性や効率性に照らし、しかるべき検討が必要と考えております。

 また、食料の支援は、これまで、現地のニーズに加え、輸送のコスト、また衛生管理の状況などを踏まえ、近隣の地域での調達となることが多いという事情がございます。そうした点も踏まえながら、現地のニーズに沿った支援を何といってもスピード感を持って実施していくことが極めて重要であるということでありますので、準備をしっかりしてまいります。

 なお、物資の直接的な支援という観点におきましては、今般、追加的支援として、JICAを通じたテント等の支援物資の輸送を開始をいたしました。

金城委員 やはり有効的な、効果的な支援、物資におきましてもそういうものが必要だと思っておりまして、私の地元の沖縄でも、災害備蓄品としてこのような備蓄おにぎりなどをスタートアップ企業が開発しておりまして、今回のガザ地区のように、水もない、火も燃料がない、そういった地域におきましては、もう既に調理済みの、レトルトパックされた、滅菌処理されている、そういった衛生的にも安全な商品もございます。

 また、沖縄の特産品でもある黒糖、これはミネラル分が多くて栄養豊富である。器も、ああいった場所では器もなかなかないと思いますので、容器としても活用できる、そういったものもございますので、ここで紹介しておきたいと思います。御検討をお願いいたします。

 続きまして、今週水曜日に、UNRWAの清田明宏保健局長から、今のガザ地区の現地の状況と、今求めていることについてお伺いいたしました。

 現地の状況について、ガザ地区では、約百五十か所のシェルターに約七十万人が暮らしている状況である。シェルター一か所の定員が二千人のところに六千人が集まっており、パンク寸前である。様々な物資を節約しながら生活しているものの、全てのものが足りておらず、燃料についてはあと一週間もつかどうか。少しずつ支援物資が入ってきつつあるが、まだまだ足りていない。今必要なのは、とにかく支援物資。一日も早い停戦と、ガザ地区北部と南部の両地域への人道回廊の設定が求められているとのことでした。

 今回のイスラエル訪問やG7外相会合も含め、人道支援活動が可能となる環境づくりについて議論が行われていると思いますが、その進展について御答弁をいただきたいと思います。

上川国務大臣 ガザ地区の人道状況は深刻の一途をたどっているということであります。

 先ほどUNRWAの清田先生のお話に触れていただきましたが、私も、ヨルダンの本部に訪問をさせていただきまして、状況についてヒアリングをさせていただいたところでございます。厳しさを増しているというところであります。

 今回は、特に一般市民、とりわけ、小さなお子さんたち、また女性や高齢者が被害に遭っているということに対しまして、心を痛めている状況でございます。何としても一日も早く支援物資が届く環境をつくっていく、これが何よりも大事であるということでございますので、その努力を重ねてまいりたいと思います。

 G7の外相会合におきましても、この点につきましては緊急の行動を取る必要があるということ、特に、食料、水、そして医療、燃料、シェルター、そして人道支援従事者の方々のアクセス、こういったものを含めまして、妨害をされない人道支援を可能とすることについては極めて重要である、そのために、その状況を容易にするための人道的休止そして人道回廊の支持、こうしたところで一致したところでございます。

 この後、既にG7各国はその実現に向けて鋭意努力を継続している状況でありまして、イスラエル側におきまして一連の動きがあると承知をしているところであります。

 事態は予断を許さない状況ではありますが、我が国といたしましては、G7を始め、各国、また各国際機関との間で緊密に意思疎通をしながら、連携をして、一日も早い、一刻も遅れることなく、人道状況の改善、事態の早期鎮静化に向けまして外交努力を粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。

金城委員 御答弁ありがとうございます。

 先ほども言及させていただきましたが、紛争開始から一か月で、G7外相会合の共同声明において人道的休止及び人道回廊の支持が明記されたことについて、人道支援活動が可能な環境づくりが一歩前進したと認識して、高く評価いたします。また、今日の報道にありましたように、一日四時間の戦闘休止、こういったことも成果であると思っております。

 その上で、次のステップとして、日本が非常任理事国を務める国連安保理におきまして、一刻も早い紛争の終結と二国家間解決を実現するための働きかけを行っていくお考えはございませんでしょうか。伺いたいと思います。

上川国務大臣 今、安保理等におきましての働きかけという御質問がございましたけれども、安保理におきましても、我が国は安保理理事国として、安保理がその責務を果たし、適切な意思表示を行うことができるよう、引き続き、他の理事国とも緊密に連携をし、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

金城委員 質問を変えます。

 SDGsに関連してですが、沖縄へのSDGsに関連した国連大学誘致について、本年八月、沖縄県那覇市で開催された、国連大学の学長、チリツィ・マルワラ学長の特別講演において、学長は沖縄での海洋研究について非常に高い関心を示しておりまして、国連大学の研究機関の沖縄設置について前向きに検討しているとの発言をいただきました。

 昨年四月、衆議院で可決された強い沖縄経済と平和創造の拠点としての沖縄をつくる本土復帰五十周年に関する決議も踏まえ、学術交流を通じた平和創造拠点の第一歩として、国連大学の研究機関の沖縄への誘致について、日本政府として誘致を検討していただきたいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 チリツィ・マルワラ国連大学学長は、委員御指摘のとおりでございまして、今年八月、沖縄県那覇市で開催された講演において、沖縄に研究機関を設置することに関心があるという趣旨の発言をされたと承知しております。

 国連大学は、国連諸機関全体のシンクタンクとして、SDGを含む地球規模課題の研究を行い、若手研究者や学生等に対する教育、知識の普及に取り組んでいるところでございます。

 日本政府といたしまして、日本に本部を置く唯一の国際機関でございます国連大学との連携強化を注視しております。国連大学が沖縄を始めとする地方自治体との関係の強化を目指していることも歓迎しております。

 委員御指摘の研究機関の設置に関しましても、外務省といたしまして、国連大学と沖縄の関係自治体との間の議論を高い関心を持って注視しておりますとともに、関係省庁とも連携しつつ、その取組をできる限り後押しさせていただきたいと存じております。

金城委員 終わります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介と申します。

 外務委員会で初めて質問をさせていただきます。上川大臣、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、大臣の中東訪問について伺わせてください。

 六千五百万ドル、約百億円の人道支援及びJICAを通じた支援物資の供与ということをお約束されているんですけれども、具体的にどこの組織に幾らということはまだ決まっていないと聞いているんですが、これはどのようなことに使ってほしいという趣旨で送る百億円になりますでしょうか。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、UNRWAに対してでございますけれども、パレスチナ難民を支援し保護するということで、パレスチナ難民を対象に、保健、医療、教育、福祉などのサービスを提供しておりますけれども、今回の六千五百万ドルの中でどれぐらいをUNRWAのどのような事業に行うかということについては、現在検討中ということで、調整しているところでございます。

鈴木(庸)委員 これはほぼ全部UNRWAに行くという理解でよろしいんですか、今の御答弁だと。

日下部政府参考人 ほぼ全部かは分かりませんけれども、かなりの部分がUNRWAに行くという理解でございます。

鈴木(庸)委員 それで、今回の百億円以外にも、これまで二十三億ドルが支援として投入されたと聞いているんですけれども、こちらについては、どちらの団体にどのぐらいの額が供与されたんでしょうか。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 二十三億ドルでございますけれども、我が国は、経済、社会の自立化促進による平和構築を目標にパレスチナに対する協力を実施してきており、一九九三年以降、昨年末の累計が二十三・二億ドルとなっております。

 その内訳でございますけれども、国際機関を通じた無償資金協力等の支援が十五・八億ドル、二国間無償資金協力が四・八九億ドル、技術協力及び草の根無償資金協力が二・五四億ドルとなっております。主に、学校とか、それから保健関係のものとか、UNRWAとか、人道支援、開発支援、そういったものに費やしているところでございます。

鈴木(庸)委員 UNRWA経由で学校支援ということなんですけれども、これまでの二十三億ドルについても、今回の百億円についても、UNRWAがかなり関わってきているという理解でよろしいわけですね。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の六千万ドルについては、まだ詳細は決まっておりませんけれども、UNRWAはかなりの部分を占めるかと想定しているところでございます。

 また、これまでについても、UNRWAにかなり大きな額を支援してきているところでございます。

鈴木(庸)委員 では、ここで、このUNRWAという組織について、外務省さんの把握している範囲で簡単に御説明いただきたいんですが。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 UNRWAですけれども、一九四九年にパレスチナ難民を支援し、保護するために設立された国連機関となっております。現在、ヨルダン川西岸地区及びガザ地区、ヨルダン、シリア、レバノンに居住するパレスチナ難民を対象に、保健、医療、教育、福祉などのサービスを提供しております。

 日本は主要ドナーの一つであり、一九五三年からUNRWAへの拠出を通じて、パレスチナ難民支援を実施しているところでございます。

鈴木(庸)委員 では、大臣にお伺いしたいんですが、このUNRWAという国際機関が欧州議会などで問題視されていることは御存じでしょうか。

上川国務大臣 こうした国際機関が様々なガバナンスを利かせてしっかりと国際貢献をしていくというところについては、これは絶えず評価をしていくべきことだというふうに感じております。この点につきましても、G7の中で様々な意見を私も耳にいたしました。

 今回、私は直接本部に伺いましたけれども、その意味で、直接伺って、実態について把握ができたことについては、大変大切な情報を得たというふうに思っております。今後ともしっかりとフォローしてまいりたいと思っております。

鈴木(庸)委員 今、実態について把握ができたという御答弁をいただいているんですけれども、今の御答弁でも、百億円の大半がこのUNRWAに流れるということなんですけれども、例えばヨーロッパでは、UNRWAが、汚職や暴力、テロを推奨する活動に資金を提供するために欧州援助基金を使用しているなどということが指摘されております。

 例えば、私も報道ベースで申し上げるしかないんですけれども、今年の四月の二十三日、これはニューズウィークの記事ですけれども、国連に関する調査団体のユナイテッド・ネーションズ・ウォッチなどの調査結果として、UNRWAが支援するお金の少なくない部分が、先ほど御答弁にありましたように、学校教育に投入されている。学校教材として使用しているのは、反ユダヤ主義や暴力を述べているような過激な教科書がかなりある。また、継続的にソーシャルメディアでテロをサポートしているような情報をアップしている人たちを教員としても採用しているという指摘が出ているわけですね。更に申し上げると、こうした教員の皆さんに対するUNRWA側の処分についても、六か月程度の停職処分であるということをこのリポートでは述べております。

 寛容と平和を教えていると主張しているにもかかわらず、実際、こうした様々な団体によるリポートで明らかになってくるのは、UNRWAに流れる資金の一部が、本来の目的とは大きく外れて、むしろ戦争をあおるようなことを教え込んでいるのではないかという強い疑念が残るわけでございます。

 一部報道によりますと、UNRWAのガザ支部についてはハマスの強い影響力を受けているというような報道もあるわけでございまして、このお金は我々の税金です。我々の税金というところを改めて申し上げたいと思います。

 これは現場だけじゃなくて、UNRWA幹部の方も大きな問題があると指摘されています。これはかなり有名になったニュースですけれども、あえて引用させていただきたいと思うんです。

 二〇一九年七月二十九日、これはアルジャジーラですから比較的ニュートラルな報道だと信じられると思うんですけれども、アルジャジーラの報道だと、国連の倫理の関係の調査によって、UNRWAの、コミッショナーゼネラルですから、何と訳すんですかね、事務局長とか長官と訳すんですかね、コミッショナーゼネラルと、副コミッショナーゼネラル、副長官と訳すんでしょうか、あとチーフスタッフ、これは首席補佐官とでも訳す、ちょっと日本語の適当な訳しは僕は存じ上げないんですけれども、この三人が国連の評判に重大なリスクを生じさせていて、即時解任も慎重に検討されるべきであると指摘されているわけです。

 具体的に申し上げると、書かれているのは、不正行為、縁故主義、いじめ、脅迫等々で機能不全に陥った職場としています。幹部の一人が、これは別に名前を出してもいいんですけれども、特別な関心を示した職員を特別な役職に就けて、UNRWAのほかの職員がエコノミークラスで移動しているところ、二人だけビジネスクラスで行っているとか、こうしたような報道もございます。

 私も直接調査団に入っているわけではなくて、報道ベースで申し上げるしかないんですけれども、これ以外にも本当に多くの問題が指摘されている団体であるということは間違いないかと思います。トランプ政権もUNRWAへの支援を打ち切って、UNRWAが資金難に陥ったことがある、こういった経緯についても外務省の方は御存じかと思います。

 そこで、あえてもう一度聞きます。百億出すんですか。

日下部政府参考人 現時点でUNRWAにどれぐらいの額が行くかについては、先ほど申し上げましたとおり、現在検討中ということで、まだはっきり固まっているわけではございません。

 また、資金の使途でございますけれども、一般的には、国際機関、NGOを通じた案件を実施する場合、これら実施機関からの定期的な事業進捗報告、事業完了時の財務面を含む事業完了報告等を通じて資金の使途は確認しているところでございます。

鈴木(庸)委員 申し上げたいのは、何に使われているか、しっかりトレースしてほしいということなんです。

 百億円の積算根拠も示されていないんです。私に言わせると、はい、はらたいらさんに五千万円みたいな感じで、つかみ金をどんと百億円。これで大国としての責任は果たしましたよと言っている印象を受けるんです。

 実際には、本来の受益者であるべき、今パレスチナであした生きているか分からない日々を送っている皆さんがいっぱいいらっしゃるわけですよね。もしこの皆さんがこの地獄を生き延びたときに、この百億円で本当に幸せになるきっかけをつかんでいただけるかどうかということだと僕は思うんです。

 改めて伺います。本当に受益者にメリットがあると、どうやって外務省としては確認、トレースをする予定なんでしょうか。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、実施機関からの定期的な事業進捗報告を受けることになります。それから、事業完了時の報告を受けて資金の使途を確認する。

 また、現在、ガザ地区にはなかなか入れませんけれども、入れるようなときになれば、その後、支援がどのようになったのかというのはまた確認していくということになるかと思います。

 これらの支援は、ガザ地区における人道状況の悪化を踏まえて、ガザ地区の一人一人に一日も早く必要な支援を届けることを目的として実施するものでありますので、当然のことながら、ガザ地区の住民が裨益することが大事になってくるかと思います。

鈴木(庸)委員 まさに今おっしゃっていただいたような事前の調査をもう少しした上で、額が額なので、特に今、日本はお金がだんだんなくなっている中で、百億円を出すことについて国民の皆さんの理解を得る努力をしっかりしていただきたい。

 その努力をする上で、全部が全部じゃない、もちろんUNRWAでちゃんとしているところがあるということは当然承知しておりますけれども、かなり機能不全を起こしている組織に対してのチェックみたいなものも含めて、是非外務省にはお願いをしたいということを改めてこのUNRWAのところで申し上げたいと思います。

 ガザ地区についてもう少し聞かせてください。

 先日、実際にガザから帰国した方の何人かにお会いさせていただきました。口をそろえて言っているのは、日本政府の対応には本当に感謝している。常に安全の確保に走ってくれて、最後はちゃんと、通行証というんですか、白いのを出してくれて、みんなをラファから外に出してくれて、本当に感謝しているとおっしゃっておりました。これは申し上げておきたいと思います。

 ただ、その一方で、日本の協力で造った多くの建物、ガザ北部にもあるらしいんですけれども、これがかなり壊れるのを目の当たりに見て、大変ショックを受けたともおっしゃっていました。このガザの中で、今までに日本が贈った、造ったものにはどのようなものがあり、これは総額で幾らぐらいになるんでしょうか。

日下部政府参考人 パレスチナ支援の中でガザ地区が幾らかというのを切り出すのは非常に難しいところがございますけれども、一九九三年以降は、学校、保健センター、難民用住宅、下水処理場などの建設をしてきております。直近でいえば、この十年ぐらいでいえば、施設案件としては、二〇二〇年に西岸及びガザ地区のパレスチナ難民キャンプにおける学校建設及び下水道網の改善計画を実施しています。それから、草の根・人間の安全保障として、二〇二二年度にはガザ地区におけるアルカララ市歩道橋建設計画、こういったものも行っているところでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 戦後についてももう既に議論が始まっていて、今のところ、御案内のように、ファタハが管理するとか、イスラエルが駐留するとか、いろいろな議論があるわけですけれども、一説には、少なく見ても六十億ドルかかるだろうと言われております。

 その中で、また壊れてしまう可能性がある中で、重ねてのお願いになるんですけれども、使われるのは我々の税金なんですね。日本人がこの百億円に期待するのは、子供の遺体を抱えたお母さんとか、家族がみんな空爆で死んでしまったような子供たちがいっぱいいると思うんですけれども、この人たちが少しでも今後に希望を持って暮らしていくための原資にしてほしい、ならば百億はしようがないよなという感じで、今余り異論が出ていないと思うんですよ。ですから、憎悪をあおる教育とか、一部幹部の遊興費に使われる、当然そういうためではないわけです。

 私も、日本にいるパレスチナ人の友人の言っていたことが大変印象に残っておりまして、親兄弟を殺されたガザの子供たちは絶対この悲しみを忘れない、忘れなくて、結局、次の世代にもハマスとかハマス的なものを受け継いでいってしまうんだ、ですから、パレスチナの悲しみと憎しみに終わりはないんだよということを言っていたので、日本が真に尊敬される人権国家として存在感を是非打ち出すためにも、この憎悪の繰り返しを和らげるために、パレスチナに対する支援というのは慎重かつ大胆に、真摯に、受益者目線で取り組んでいただきたいと改めてお願いを申し上げます。

 一言で結構なんですけれども、最後にもう一度、支援についての大臣の心意気を伺えればと思います。

上川国務大臣 日本の人権外交の基本は、苦しんでいるお一人一人にしっかり寄り添う、そして、そこに必要な支援を届ける、このことの極めてシンプルな方針をもって進めていく必要があろうかというふうに思います。

 私は、UNRWAに訪問させていただきまして、数百万のパレスチナの難民を対象にした形の活動をしているということについては、敬意を表したいというふうに思います。その内容について、保健、医療、基本的な教育、福祉、様々なサービスを提供するということ、そして、これを国際的な協調の中で行っているということ、この仕組み自身がこれから平和をつくる上で極めて大事な役割を担う機関である、こんなふうにも思っております。

 今回、三人の中学生と日本で面談をし、その方たちが帰る直前にこうした事態が起こって、そして今まだ御両親と会えない状態、そして、それぞれ、現地の避難所で悲惨な状況について絶えず情報を得ながら、苦しんでいる胸のうちを、表に表す笑顔の奥に大変そうしたものを持っているということ、これが将来どのような影響を及ぼすのかということを考えると大変つらいものがありますが、前に向かって、未来に向かって進むことができるような人権外交ということで日本の役割を果たしてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。是非よろしくお願い申し上げます。

 次に、国連総会の緊急特別会合について伺わせてください。

 国連総会の緊急特別会合についての日本政府の対応について、御説明をお願いできますでしょうか。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の国連総会決議は、今次事態悪化の直接の原因となったハマス等によるテロ攻撃、人質拘束への非難がないなど、全体として内容面でバランスを欠いているものであったため、我が国は、総合的な判断により、棄権いたしました。

 しかしながら、同決議に含まれる人道アクセスの要請など、ガザの人道状況に対処するための重要かつ前向きな要素については、我が国としても支持できる内容でございました。

 こうした中で、我が国としては、ハマスによるテロ攻撃及び人質拘束を明確に非難する文言等を追加するカナダ提出の修正案に賛成した上で、本決議自体には棄権いたしました。英国、豪州、韓国、インド等、多くの国も我が国と同様の投票態度を取っております。

鈴木(庸)委員 外交なので様々な事情があるとは思うんですけれども、賛成でもなく反対でもなく、棄権という判断をされているわけですけれども、こうした動きが、アメリカやイスラエルがどう捉えたかは別として、やはりアラブ諸国から、日本にいらっしゃる大使ベースの御意見ですけれども、例えば、安全保障理事会で日本が反対したことについては大変失望しているというような声が上がっているのは事実です。

 また、ホルムズ海峡の件などもあって、これまで比較的友好とされているイランについても、例えば、イランのIRIB、イラン・イスラム共和国放送というのが、パーストゥデーというニュースサイトが日本語で情報発信をしているんですね。

 このパーストゥデーの中に、この間の上川大臣の訪問についての記載がありまして、どういうものかというと、ガザ問題で板挟みになる日本というタイトルになっています。専門家の言葉を引用して、日本がイスラエル支持とアラブ諸国との友好関係の間で揺れ動いていると看破していて、日本政府が口先だけの言葉ややるふりだけではなく、自らの国力を使って行動しない限り、停戦にはつながらない。まあ、イランなので、なかなかそんなにいいことを書いてくれないとは思うんですけれども、やはりこういった厳しい視点があるということも申し上げておきたいと思います。

 なかなか難しいのはもちろん存じ上げているんですけれども、結局、どこに対してもいい顔をしたい、けれども、結果的にどこも日本を評価せず、日本の国際的価値を高めるような外交になっているのかどうなのかということについては、やはり検証が必要なのではないかなと思っております。

 そんな中、アラブ諸国二十一か国の大使で構成する駐日アラブ外交団という団体があるんですけれども、ここの代表を務めるワリード・シアム駐日パレスチナ常駐総代表部の代表から、辻副大臣が幾ら面会を申し込んでも会ってくれないというお話を私は伺いました。

 御本人の文言ベースですけれども、度々面会を要求したけれども、余りに会ってくれないので、リスペクトがないので完全に怒ったと。今度会ってくれなかったら、抗議のために、外交団の団長を辞任するとまでおっしゃっていたんですね。その後何とか調整にこぎ着けて、会うとか会わないとかということになったんですけれども、結局最後は会うことができず、もう会うのは諦めているという言い方をされていらっしゃいました。

 この経緯と対応について、辻副大臣に御説明をお願いしたいと思います。

辻副大臣 鈴木委員の質問にお答えしたいと思います。

 委員御指摘のとおり、シアム駐日パレスチナ総代表部大使からは面談の希望が来ていまして、お会いできていないのは、本当にこれまでに双方の都合がつかないで実現できていないということでございまして、委員の質問の後か前かは分かりませんが、来週中にもお会いするように最終調整をさせていただいています。

 もう既に委員の御質問で御指摘のとおり、今深刻の一途をたどっている中東情勢でございますが、委員の積極的な議員外交を通じてそういった御指摘をいただけること、真摯にそれを踏まえまして、これからも緊張感を持って事に当たっていきたいと思っております。

鈴木(庸)委員 忙しいのは重々承知でございますけれども、この極めて繊細な状況の中、相手を怒らせる、望んでいない外交メッセージを送ってしまったということについては、是非検証をお願いしたいとお願いを申し上げます。

 最後に、上川大臣に外交の関係で一つだけ伺わせてください。

 イスラエルの閣僚が核兵器について言及をいたしました。現在、日本は比較的イスラエルとバランスを取ろうとしている立場と思うんですけれども、仮の質問にはお答えできないという話になるかもしれないんですけれども、仮に万が一核兵器が使われるようになったときに、日本はイスラエルに対してどのような対応を取るんでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の報道につきましては承知をしております。その後、ネタニヤフ首相が、核兵器の使用可能性に関する発言について、現実からかけ離れている旨を述べ、また、当該発言を行った閣僚を、当面の間、閣議に出席させないこととしたと承知をしているところであります。

 我が国といたしましては、御指摘の発言について逐一コメントはいたしませんが、今般の事態に関連して核兵器の使用可能性に言及するような発言は受け入れられません。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。明確に否定していただいて大変感謝をしております。

 次に、国際人道問題担当の首相補佐官ポストが廃止されたことについて伺わせてください。

 予算委員会の方でも、徳永エリ議員の方からのなぜなくなったんですかという質問に対して、総理は、人選等の観点から総合的に判断したとお答えになっていらっしゃいます。

 しかし、パレスチナはもちろんなんですけれども、ウクライナ、中国など、世界各地で人権問題が多発している中で、日本としてこの首相補佐官のポストを廃止したということは、各国に誤ったメッセージを送ってしまう可能性にもつながるのではないかと大変危惧をしております。

 これについて、総理は、内閣官房長官補の下で外務省と連携をしながら対応を考えていくということもおっしゃっているんですけれども、改めて伺わせてください。なぜこのポストは廃止されたんでしょうか。

須藤政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の人事についてお答えすることは差し控えさせていただきますが、内閣総理大臣補佐官の人事につきましては、法律で五人以内とされている中にあって、担当分野、人選等の観点から、総理が総合的に判断されたものであると承知しております。

鈴木(庸)委員 五人以内というのはもちろん承知しているんですけれども、兼務をなぜさせなかったんでしょうか。

須藤政府参考人 お答えします。

 なぜ他の補佐官に兼務をさせなかったのかということでございますが、お尋ねの国際人権問題担当の内閣総理大臣補佐官の兼務、これも人事でございますので、政府の重要な課題にどのような体制で臨むかという観点などから、総理が総合的に判断されたものであると承知しております。

鈴木(庸)委員 ですから、よく言われるのは、各国が、今度はどこがカウンターパートになるんですかと言われている、そういった御指摘が出ているという話もあるんですね。

 そうすると、カウンターパートがどこになるんだ、今までは分かりやすかった、人道担当補佐官ということだった。それが今度は官房長官補の下で外務省と連携をしながら対応を考えていく。では、どこと話せばいいのか、誰がネットワークをつくっていくのかというところでちょっと疑問が残ってしまうんです。せめて参与というポストですら置けなかったんでしょうか。

須藤政府参考人 お答えします。

 内閣官房参与への任命というお尋ねかと思いますが、これにつきましても、政府の重要な課題にどのような体制で臨むかという観点等から、総理が総合的に判断されたものと承知しております。

鈴木(庸)委員 これは総裁選の公約だったと思うんですね。人権問題に万全を期すということで、なかなか期待できるなと私も大変期待をしていたところでございますけれども、問題国の人権問題の改善についてもなかなか見えにくい中で、その公約であった人道担当補佐官を廃止する意味が正直分かりません。むしろ、どういう経緯かは分からないけれども、余りにも理不尽に消えてしまったポストなので、何かの圧力でもあったんではないかなといろいろ勘ぐってしまいます。

 ですから、是非この件については、人事だからと突っぱねるのではなくて、国民に対して丁寧な説明をしていくことが政府の義務なのではないかな。特に今、先ほど来のお話の中、パレスチナの人権問題が本当に大事な問題になっている中で、人事だからこんなものだよとどこかのサラリーマンみたいな物言いをされてしまっても、我々としては大変困ってしまうので、是非このことについては、国民に説明のつく、整合性のある納得した説明をどこかでしていただければと改めてお願いを申し上げたいと思います。

 最後に、今、中国で拘束されている日本人の方について伺わせてください。

 私は、法務委員会で審議に立たせていただいたときに、政府には何とか助けてほしいと申し上げました。でも、結局逮捕されてしまいました。これは、御家族とか周りの方々のことを思うと、本当に痛惜の念に堪えません。

 これはもう皆さんには釈迦に説法ですけれども、中国の場合、居住監視制度というものがありまして、拘束されても、逮捕されるまでの間ならば、解放交渉についてはうまくいくときがあるということは御存じかと思います。

 事実、TBSの報道ベースですけれども、二〇一九年の九月ですか、北海道大学の教授の男性が拘束された事件がありました。このときにはおよそ二か月後に解放されています。TBSが情報公開請求で得た情報では、二十回にわたる当時の安倍総理大臣と中国側のトップによる会合が開かれたと言われております。

 政府としては、今回のアステラスの件についても最善の努力をしていただいたと信じたいし、信じておりますけれども、しかし、今回は残念ながら逮捕に至ってしまいました。逮捕に至ってしまったことによって、これから早期に帰国させるためのハードルというのは格段に上がってしまったのは間違いないのではないでしょうか。

 まずお伺いさせていただきたいのは、現地の大使館、日本政府も含めて、今この男性の状況についてどの程度把握されているのでしょうか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の本年三月に北京市で中国の国内法違反があったとして拘束された五十代の邦人男性につきましては、十月中旬に逮捕されたということを確認してございます。

 政府といたしましては、当該邦人が拘束された直後から様々なレベルや機会を通じて早期解放を強く申し入れてきております。引き続き、中国側に対し強く申入れを行っていきたいと考えてございます。

 また、邦人保護の観点から、これまで七回の領事面会を行っておりますけれども、引き続き、領事面会、それから御家族との連絡等、できる限りの支援を行ってきております。引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 逮捕されてからも面会はされているんですか。

安藤(俊)政府参考人 逮捕されたのは十月中旬でございますので、その後も領事面会を追求していきたいと考えてございます。

鈴木(庸)委員 今後は、政府としては、この男性又は中国政府に対してはどのような対応になるんでしょうか。

安藤(俊)政府参考人 若干繰り返しになりますけれども、引き続き中国側に対しては様々なレベルや機会を通じて早期解放を求めていくということ、それから、引き続き、領事面会を求めていくことと、御家族との連絡、こうしたことにできる限りの支援を尽くしていきたいというふうに考えてございます。

鈴木(庸)委員 申し上げたいのは、引き続き様々な機会で、これも分かるんですけれども、やはりもう少し、いわゆるトップ外交というか、外務大臣なり総理大臣が是非中国側に一生懸命働きかけていただきたいと思っております。

 というのは、御案内のように、この七月一日から、中国は改正反スパイ法が施行されてしまって、私もネットの翻訳機能で読んだだけなので、書いてあることを正確に理解しているかは別として、国家の安全に危害を及ぼす行為であると当局がみなす全ての行為が対象となる。となると、当然、拘束の基準が更に分かりにくくなってきてしまうわけですね。

 私も中国に駐在している友人が結構いらっしゃるんですけれども、不安でしょうがないと。アメリカの会社もがんがんガサ入れを受けたりしていますよね。特に七月からは、今までのやり方と何が違うのかも明確な説明がないままで七月を迎えてしまったということで、これまで以上に外務省の皆さんの自国民を保護するという姿勢が問われているのではないかと思っているんです。

 今ちょっと整理されているみたいなんですけれども、このアステラスの方については、今後、今言える範囲で結構なんですけれども、もう少し何かないですかね、引き続き連絡するのも当たり前の話なんですけれども。何かないですかね。

安藤(俊)政府参考人 まず、先ほどの答弁の訂正をさせていただきたいんですけれども、逮捕の直後に領事面会をまたやってございます。これが七回目の領事面会でございます。

 この後、引き続き、邦人の方とは領事面会を続けて、また、健康状態等も確認しつつ、中国側には様々なレベルでの働きかけ、早期解放の申入れを行っていきたいというふうに考えてございます。

鈴木(庸)委員 国内の中国の関係については法務委員会でやる話だと思うので、こちらで申し上げる話でもないかとも思うんですけれども、この先どうすればいいのかというのを企業の方も大変悩んでいるところかと思います。外務省の皆さんには、是非、日本国民を、自国民を守っていくという安心感を我々に与えていただければと思います。

 最後に、中国独特ということでもないんですけれども、パレスチナしかり、邦人の安全についての大臣の意気込みを最後に伺えますでしょうか。

上川国務大臣 今、国際社会の中で、日本の企業そして日本人の皆さんが海外で大変御活躍をされている、その皆さんの邦人保護ということにつきましては極めて重要と考えております。

 自国民保護は、国家として大変重要な基本的な機能を果たすべきものであるということで、私も外務省のトップとして、この問題につきましては、最善の努力、そして最善の対応、こういったものに尽くしてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 大変な時期だと思いますけれども、大臣のリーダーシップで是非よろしくお願いを申し上げます。

 これで質問を終わります。

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 まず第一に、十月三十一日、松野官房長官が記者会見で質問を受けた、戦後の帰還事業で北朝鮮に渡り、過酷な生活を強いられた脱北者が北朝鮮政府に損害賠償を求めた訴訟が、三十日、東京高等裁判所で差戻しということになったわけであります。

 判決で、事実と異なる勧誘で北朝鮮に渡航させ、その後出国を許さないことで居住地選択の自由を侵害し、過酷な状況で長期間生活することを余儀なくさせ、原告たちの人生は奪われたということでありますが、この北朝鮮による不法行為が認められた場合、脱北者勝訴の判決が確定した場合、日本政府としては当該脱北者を支援する用意があるか、お伺いいたします。

岩本政府参考人 まずは、この裁判自体、まだ係属中でございますので、仮定の質問について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

 その上で申し上げますと、我が国としましては、脱北者問題については、北朝鮮人権法の趣旨も踏まえ、人道的観点から適切に対処してきておりまして、今後とも引き続き適切に対応していく考えでございます。

松原委員 判決が差し戻されて勝訴が確定するまでもなく、今お話があった北朝鮮人権法によって、その六条の二項ですか、政府は脱北者の保護、支援に関し施策を講じることとする、こう書いてあるわけですね。ですから、当然、今回の判決いかんにかかわらず、このことに対しては関心を持ち、いかなる状況だろうとも支援をする、こういうふうな法の理解でありますが、間違いありませんか。

岩本政府参考人 今委員御指摘のとおり、北朝鮮人権法におきましては、「脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする。」と規定されておりますので、当然でございますが、この規定にのっとって、しっかりと対応していきたいと思っております。

松原委員 過去、私も、この脱北者を含めて先般会って、約二時間弱、話を聞きました。この裁判の中心であった方も参加して話を聞きました。

 幾つか彼らが、彼女らが指摘したことは、二〇〇八年以来、瀋陽にある日本の総領事館が脱北者の受入れをしなくなったというふうに、彼女たちは、関係者もそう思っている、言っている、こういうことであります。

 既にこれは、たしか日経新聞だったと思いますが、中国・瀋陽の日本総領事館で保護した脱北者の日本移送を計画した際に、脱北者に関し、日本政府が日本公館に連れてきて保護しないという非公式な合意が中国となされたというふうな報道がされておりますが、この真贋をお伺いをいたします。

岩本政府参考人 今委員から御指摘のありました報道は承知をしております。

 その上で申し上げますと、まず、人道的観点から、我が国で受け入れる脱北者については、身柄の安全を可能な限り確保し、円滑に我が国へ入国させることを目指して、当該脱北者が滞在する国の政府との間で必要な調整を行い、実際に脱北者も受け入れてきております。

 したがいまして、特に中国におきましては最も多くの脱北者がいるものと考えておりまして、中国との連携は重要であると考えております。そうした観点から、中国政府との間でも必要なやり取りを行ってきておりまして、我が国として中国からの脱北者の保護を行わないといったようなことはございません。

松原委員 密約はないということですね。

岩本政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、中国との間で必要なやり取りを行って脱北者の保護を図っていく、このことが重要だと考えておりますので、脱北者の保護を最重点に政府としては従来から取り組んできているところでございます。

松原委員 同じ答弁を繰り返さなくていいんだよ。

 それで、私が申し上げたいことは、瀋陽の日本総領事館で、二〇〇八年以降、何人の脱北者を保護しましたか。簡単に答えて。

岩本政府参考人 政府としてこれまでに関知している範囲でございますが、百名超の脱北者が日本に入国した事実があると承知しております。

松原委員 質問を聞いてくださいよ。二〇〇八年以降と言っているんです。

岩本政府参考人 ただいまの数字は、二〇〇八年以降、我が国政府として関知している範囲で把握している数字でございます。二〇〇八年以降の数字でございます。

松原委員 つまり、レクで二〇〇八年以降のものはないと聞いたんだけれども、いいんですね、今の答弁で。確認して。違うでしょう。

岩本政府参考人 申し訳ございません。訂正させていただきます。ただいまの数字は、これまで、全体としての数字でございます。

松原委員 だから、私が聞いているのは二〇〇八年以降ですよ。答えてください。

岩本政府参考人 済みません。特定の期間内の入国者数を含めた詳細につきましては、御本人や御家族等の身の安全やプライバシーに大きく影響すること、そして、関係国政府等との信頼関係を損なうおそれがあることから、申し訳ございませんが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 結論からいけば、総数は言えるけれども、二〇〇八年以降は言えないというのはおかしな話で、要するに、やっていないんじゃないかというのが結論なんですよ。

 だから、私が会った脱北者も、日本は二〇〇八年以降は一切受け入れてくれないと。だから、瀋陽の総領事館にはもう逃げ込まないんですよ、受け入れてくれないというので。そう彼らは言っていた。その上で、戻れば、大体見せしめになって、強制収容所か射殺されるというのが一般的な状況であるということは、外務省はよく認識をしておいてもらわなきゃいけないと思います。

 当該国との信頼関係というんだけれども、この分野に関しては信頼関係はあるんですか。ハンミちゃん事件の経緯を今ここでやっていると時間がなくなっちゃうから、日本と中国で言っていることが全然違うじゃないですか。あのときの事件、御案内のように、五人の脱北者が日本総領事館に駆け込んだ、二十年近く前の話ですよ。衝撃的でした。駆け込んだときに、北朝鮮の保衛部か、中国か、どっちか分かりませんが、追っかけてきて三人を総領事館から引きずり出した。映像は生々しく記憶しております。二人は入った。

 その二人に対して、中国の官憲が総領事館に、日本側の説明では無断で入って、その二人を強引に外に拉致して去った、日本側はこう言っています。中国側は何と言っているかというと、日本は、どうぞ二人を連れていってくださいと、ありがとうございましたと言ったという。

 このいわゆるハンミちゃん事件の中国側と日本側の全く異なった対立というのは今収まっているんですか。収まっていないとするならば、信頼関係は今でもないということじゃないですか。確認をします。

岩本政府参考人 ただいま御指摘のありました、いわゆる在瀋陽の総領事館の事件でございますが、発生当初の状況といたしましては、日本側は中国側に対して、日本総領事館の不可侵が侵されたことについて強く抗議を行うとともに、関係者五名の速やかな引渡しを要求するなどの対応を取ったところでございます。

 そして、この瀋陽事件の後、日中両国の間で領事関係の協議をする場がございました。その際、中国側からは自らの責任を認める発言もあったところでございます。そして、その後、日中両国の間では、領事協定、こういったものも結ばれたところでございます。

 こうした経緯を踏まえながら、脱北者の問題につきましても、先ほど申し上げましたように、中国政府との間でしっかりと意思疎通をしながら、適切に対応をしてきているところでございます。

松原委員 簡単に言ってもらいたいんですよ、余りテクニカルタームを使わずに。

 謝罪があったということですか。中国側の主張を彼らが曲げたということですか。彼らは暴徒が日本大使館に入ったのを防いだと言っているんですよ。とんでもない話ですよ。そこは全くすり合わせができたんですか、こんな意見の違いが。謝罪があったんですか。確認です。

岩本政府参考人 先ほど申し上げましたとおりですが、中国から自らの責任を認める発言があったという具合に承知をしております。

 更に具体的な詳細につきましては、外交上のやり取りでございますので差し控えさせていただきますが、ただ、中国側として自らも責任があった、こういう発言があったということは確かでございます。

松原委員 中国側が責任を認めた、中国側の責任を認めたということでいいんですね。いいですね、中国は責任を認めたんですね。責任を認めたということは、謝罪をしたということですよ。

岩本政府参考人 おっしゃるとおりで、中国から自らの責任を認める発言があったということでございますので、これは文字どおり、責任を認めたということだと思います。

松原委員 分かりました。責任を認めたということを言うのであれば、それであるならば、これは一定の解決が行われた。ただ、それはきちっと、外交上の秘密で、保秘であるということで、隠しているということですな。まあいいや、これ以上あなたに質問してもしようがないから。でも、その責任を認めたということはテイクノートしておきますよ。

 次、憲法前文と現実政治の乖離を問いたい。

 憲法の中の前文に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こうあります。

 質問します。

 拉致問題の発生によって、この憲法前文は極めて現実と違う状況になっているというふうに私は考えています。

 私が十数年前、拉致議連のメンバーとして、あのときは平沼先生だったか誰だったか分かりませんが、会長も一緒になって行きました。このときに、アーミテージさんと会ったときに、アーミテージさんが、拉致は現在進行形のテロである、こういうふうにおっしゃったのは極めて印象的でありました。日本に対して、北朝鮮は、拉致被害者を返さないという点において、現在も続くテロ行為を行っているという認識は、私の認識もそうであります。

 あえて申し上げるならば、拉致問題の発生は様々な原因が言われている。言われているが、その遠い原因の一つは、このような間違った憲法前文の描写、憲法前文の中にある。私はそこまで憲法前文の課題を考えております。

 北朝鮮は、御案内のとおり、二〇二二年に三十一回、五十九発の弾道ミサイルを発射し、二三年は現段階で十五回、二十三発。このことに関しては、総理大臣も外務大臣も、最も強い言葉で断固として非難する、こう言っていますよ。最も強い言葉で断固として非難する。

 この北朝鮮は、平和を愛する諸国民として、日本の生存を保持するのを依拠する国家としてふさわしいとお考えか、大臣にお伺いします。

上川国務大臣 拉致被害者御家族も高齢となる中におきまして、時間的制約のある拉致問題については、ひとときもゆるがせにできない人道問題と考えております。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。

 北朝鮮についてでありますが、近年のミサイルの発射に象徴されるように、人道問題、さらには安全保障の状況の中で多くの脅威であるということにつきましては、そうした認識の上で、日本の基本であります日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をし、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す、この考え方にのっとって取り組んでまいりたいと考えております。

松原委員 閣僚としては、憲法前文が間違っているなんて言えないと思うんですよ。精いっぱいだと思いますが、核、拉致、ミサイルという懸案があることは今お認めになった。この国家が、憲法前文で我々が言っている、我々の生存を保持する相手としてふさわしいかどうか。全くふさわしくないと私は思っております。憲法前文は破綻をしていると私は思っております。

 大臣が憲法を批判することはなかなかできないだろうから。外務省の人は批判できるのかな、立場上は。これはもうそういうことですよ、憲法前文は完全に破綻しているということを申し上げておきたい。

 その上で、日朝平壌宣言に違反した行為、ストックホルム合意に違反している行為を行っている。日本は制裁を科している。私に言わせれば十分ではないけれども、制裁を科している。制裁を科しているだけで、それ以上のことは考えられないのか。政府参考人で答えられる人がいたら答えて。簡単に答えてください、時間がないから。

岩本政府参考人 ただいま委員御指摘のありましたとおり、我が国としましても、一連の制裁措置等を講じてきているところでございます。こういった一連の措置によって、北朝鮮の厳しい経済状況と併せて考えた場合、一定の効果は上がっているのではないかという具合に考えております。

 また、併せて、引き続き、関連の安保理決議の実効性を確保するとともに、この制裁措置を含めてしっかりとした対応をしていきたい、このように考えております。

松原委員 そんなことを言っているから駄目なんですよ。少なくとも、日朝平壌宣言、ストックホルム合意、北がこれだけ合意を踏みにじっていて、なぜ破棄をしないのかということです。

 私が拉致問題担当大臣だった時代からの経緯もあって、北朝鮮側の様々な者とついこの間まで接触する機会があった。彼らは何と言っているか。この場で申し上げたいが、日本は拉致問題を怒っていないでしょうと言うんだよ。怒っていないでしょうと。怒っているならば、ストックホルム合意や平壌宣言に関して破棄をするだろうと。我々は、皆さんが怒っているというのは、ふりをしているだけだということを知っていますよと言うんだよ。こんなことを言われていいんですか。

 制裁に関して最大限のことをしているとも十分とも思わないが、この状況でストックホルム合意、日朝平壌宣言をなぜいまだに破棄しないのか。日本の怒りというのは、どこから見たって、言ってみれば、ここまでミサイルを飛ばされ、大陸間弾道弾を飛ばされ、いろいろな実験をやって、全然それを破棄することもなく。これはどういうことでしょう。大臣、お答えください。

上川国務大臣 日朝平壌宣言におきまして確認された事項が実行されていないということにつきましては大変遺憾と考えておりますが、この宣言自体を現在に至るまで、委員もおっしゃったように、北朝鮮側も否定していない以上、この宣言において確認された事項が誠実に実行されることが何より重要であると考えております。

 引き続き、北朝鮮側に対して働きかけを行ってまいります。

松原委員 これは憲法前文とは違いますから、破棄をする可能性も私は大臣には御示唆をいただきたいと思っておりました。これを破棄しないということは、日本が怒っていないし、何発撃ったって平気だよ、そういうふうに北朝鮮は日本を見切っている。ほかの国も、日本はそういう国だという話になるということは、私としては、日本国民の一人として、国会議員というよりは、一人の日本国民として大変残念です。

 次に、中国。これは、日本において、今言った憲法前文にある我々の生存をお委ね申し上げる国家としてふさわしいのか、これを二つ目に確認したい。

 尖閣諸島における度重なる領海侵犯、二〇二二年には領海侵犯二十三件、しかも、日本漁船に近づくということも十一件ぐらいやっている。我々に対して非常に圧迫を加えてきているわけであります。

 また、フィリピンのミスチーフ礁やスカボロー礁においては、中国が極めて大規模な造作を行った。これに対して、国際仲裁裁判所は、中国側の言い分はほとんど認められないということを事実上示唆した。時間がないから細かいことは読みません。もう皆さん御案内のとおりです。それに対して、中国の戴秉国元国務委員は、アメリカのワシントンにおける講演で、この国際仲裁裁判所の判決は紙切れだと。この委員会で私は一回扱いました。ワシントンの講演で紙切れだと言った。これが国際法を遵守する国家の姿と見えますか。

 そして、あろうことか、彼が個人で言ったならまだしも、そのことを翌日の中国外務省の発表で発表している。つまり、中国外務省はこれをギャランティーしたというのかな、戴秉国の発言は中国の意思であるということを事実上表明した。

 中国が国際法を遵守する国であるということは明快と言えるのか、大臣、お伺いしたい。

上川国務大臣 中国につきましては、今委員御指摘の点も含めまして、数多くの課題や懸案があるわけでありますが、我が国といたしましては、引き続き、主張すべきは主張し、中国に対しましては責任ある行動を強く求めてまいります。

松原委員 是非、上川大臣の気迫のこもった中国に対する対応を期待してまいりたい。

 先ほど鈴木庸介議員が言ったことも同じであります。中国は、新しい改正反スパイ法とかデータ三法とか、もうむちゃくちゃですよ。こういう法律を作って、私は、習近平指導部が替わったら、胡錦濤時代のようにより安全な国家になるかと思ったけれども、こういう法律を七つ、八つ作ったら、何をやったっていつでも捕まえることができる国家になってしまっている、こう思っております。

 既に先ほど質問がありましたが、罪状が明らかでない、不透明な罪状によって拘束された邦人はたくさんいる。全く中身が分からない。中国を危険情報1にするべきだと私は思っております。これだけ法的リスクが山積している国家は注意喚起をしなかったら危ないですよ。やばいですよ。

 私は、危険情報1になぜしないのか、このことは時間があれば後で質問していきたいと思います。

 この場で唯一お伺いするのは、日本に留学していた香港の学生が実刑判決を受けた。扇動罪で実刑判決を受けた。大体承知していると思いますが、説明を余り長くされると困るから私の方で簡単に申し上げますが、日本国内にいるときに日本語でSNSに投稿した内容で二か月の実刑判決を受けた。初めてだと言われている。いわゆる香港の治安を守るための香港国家安全維持法、国安法、これによって二か月の実刑判決を受けた。これは、あえて言うならば、中国のこのような態度は、日本における言論の自由というものを、結果、脅かすものになる。日本においてそういう発言を日本の憲法の下で行っている中国の女性が、留学生が戻って逮捕され、二か月勾留されている、有罪を受けている。

 私は、日本の言論の自由を侵していると思いますが、大臣に御所見をお伺いしたい。

岩本政府参考人 ただいま委員から御指摘のありました事案につきましては、我が国としましても注視をしております。

 我々としましては、香港に対しましては、従来から、一国二制度の下で、自由で開かれた公正な社会が維持されることが非常に重要だと考えておりまして、こういった考え方につきましては、香港、さらには中国側に対しても様々な機会に申し入れてきているところでございます。

松原委員 日本における言論の自由は、私は阻害されていると思っていますよ。大臣、もし答弁できるなら答弁していただきたい。無理であれば結構です。どうされますか。

上川国務大臣 人権に係る案件につきましては、いろいろな形で事態の情報を精査しなければいけませんし、また、こうした問題につきましては、先ほど別の委員からの御質問にもお答えいたしましたけれども、一人一人の人権を守る、まさに人間の尊厳を政権の中でも強く打ち出しているところでございますので、そうした視点から更に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

松原委員 日本政府はこのことは猛抗議をするべきだと思っています。これによって日本の言論空間がゆがめられるということは大変に残念無念であります。

 このような中国は、憲法前文で言う我らの安全、生存を委ねる国家としてふさわしいとお考えですか。大臣、答えてください。

上川国務大臣 今、国際社会の中で、中国について御質問でございますけれども、委員御指摘の点も含めまして、様々な課題そして懸案があるところでございますが、我が国といたしましては、引き続き、主張すべきは主張し、また、中国に対し責任ある行動を強く求めてまいりたいと考えております。

松原委員 日本の周囲にいる国の一つのロシア。

 ロシアは、一九四五年、終戦後、はっきり言うと敗戦後と明確に言った方がいいですよ、八月十八日、千島列島に侵入して、続けておりまして、ロシアは、当時ソビエトですね、スターリン・ソビエトですよ、九月五日までに北方領土を占領した。

 これは、日本は北方四島の問題で、許せない、不法行為だと言っています。ロシアは、この北方四島を不法占拠、不法行為であるという認識を持っていますか。確認です。

上川国務大臣 北方領土は、我が国が主権を有する島々でございます。我が国固有の領土であります。

 我が国といたしましては、ロシアによる北方領土の占拠については、法的根拠のない占拠である、そして不法占拠でいるという立場でございます。

 このような北方四島の不法占拠につきましては、我が国として受け入れられるものではございません。

松原委員 ロシアのウクライナ侵攻は、これは国際社会が批判をしている。日本の政府は、総理大臣、外務大臣が、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であると。暴挙を行っているわけであります。

 さて、不法占拠をし、ウクライナにおける暴挙を行っている国家は、日本の安全と生存をお委ねする国家としてふさわしいとお考えか。大臣、お答えください。

上川国務大臣 委員御指摘のとおりでありまして、ロシアのウクライナ侵略は、国際社会が多くの犠牲の上に築き上げてきた、まさに国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であると考えております。この侵略は、ウクライナの主権及び領土一体性の侵害であります。国連憲章を始めとする国際法の諸原則の違反であるとともに、法の支配に基づく国際秩序に対する明白な挑戦でもあります。

 我が国といたしましては、このような認識に基づきまして、世界のいかなる場所においても力による一方的な現状変更を許してはならず、断じて認められないという立場を明確にしてまいりました。

 今後とも、一日も早くロシアによる侵略を止め、公正かつ永続的な平和をウクライナに実現すべく、厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援を推進してまいります。

松原委員 北方四島も同じですよね。ウクライナに対するロシアと状況は違うけれども、本質は似ていますよ。

 だから、このことに関しては、やはりその国家は、今私の質問に対しては答弁していないわけですが、日本国憲法前文は事実と違う、事実を反映していない。日本国憲法の前文は我が国を囲むリアリズムとは全く異なっているということは明快であるというふうに思っております。

 次に、韓国も触れざるを得ません。

 一九五三年、日米合同委員会が、竹島における恐らく射爆場ですよね、使っていたものを、これを日本に返すということを決めました。決めた直後に、李承晩ラインというものが結果として設定をされた。

 竹島は日本の領土であるという認識で、韓国の竹島に対しての李承晩ライン設定以降の動き、これは我々は許すことができるということはないと思っておりますが、大臣に確認したい。

上川国務大臣 竹島問題につきましては、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠に基づき韓国が竹島に対して行ういかなる措置又は行為も法的な正当性を有するものではありません。

 引き続き、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜く、この決意の下で毅然と対応していく考えであります。

松原委員 竹島問題は、日本の海上自衛隊や海上保安庁においては死者は発生していませんが、御案内のとおり、朝日新聞が一九五三年二月十三日に記載しておりますとおり、第一大邦丸、五十七トン、の漁労長、瀬戸重次郎さんというんですか、韓国官憲に射殺されたことが明らかになったと朝日新聞は報じている。これは今から随分前、七十年近く前の話ですが、こういった事実が当時の韓国によって行われていた。朝日新聞の記事においては、射殺されたことが明らかになったと書いてある。

 竹島を占有し、こうしたことを行ってきた、射殺をするようなこともしたという国家に対して、我々は自国民の安全や日本の生存を依拠できると大臣はお考えか、お伺いしたい。

上川国務大臣 まず、竹島問題につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠でありまして、それに基づき韓国が竹島に対して行ういかなる措置また行為も法的な正当性を有するものではございません。

 日本の領土、領海、領空を断固として守り抜く、この決意の下で毅然と対応してまいりたいと存じます。

松原委員 今の発言こそ上川大臣の本質だと思って期待をしております。

 要するに、今私は、北朝鮮、中国、ロシア、韓国、日本の四囲の国々に関して憲法前文が妥当性を持っているかどうかについて一つ一つ御質問してまいりました。今の上川大臣の答弁や政府参考人の答弁を聞けば、これは無理だろう。この憲法前文における日本の国の平和と安全をこういった中国、ロシア、北朝鮮、韓国に委ねることはできるのか。それは法的措置を取ってけしからぬとやっていますと言っているわけですよ。これは完全に論理的には矛盾している。

 あえて憲法前文と言わないで、この文章と言った方が答えやすいかもしれない。この文章は、日本の国はそこに生存を委ねようと決意したと。四つの国、周りの国は明らかにこの文章とは異なっている、そこだけは、大臣、お認めいただけますか。

上川国務大臣 委員が今御指摘されている件でございますが、憲法前文第二段の趣旨は、従来から政府として答弁してきているとおり、我が国が平和主義及び国際協調主義の立場に立つということを宣明したものでありまして、その立場に変わりはございません。

 その上で、我が国を取り巻く地域の安全保障環境は一層厳しさを増していると考えております。政府といたしましては、刻々と変化する安全保障環境を直視した上で、我が国の安全保障上の能力と役割を強化するとともに、米国、その他の同志国等との連携を密にしてまいりたいと考えております。

松原委員 なかなか、ある意味では思い切ったことをおっしゃりたい意思を感ずる答弁です。

 要するに、前段の、我々はそういった国々、ロシア、中国、北朝鮮、韓国、そこに我々の生存を依拠するというところはコメントできない。むしろ安全保障環境は悪化している。つまり、前段は間違っているということの示唆があったと私は認識をしております。その上で、後段が日本の平和国家としての心情を訴えている、こういう理解を私はいたしました。

 これに関する答弁は結構です。もし答弁したければ、上川さん、一言どうぞ。

上川国務大臣 今申し上げたとおりでありまして、憲法の前文に掲げられている平和主義、しっかりとした国際協調主義の理念を持って現下の状況に応じましても対応してまいりたいと思っております。

松原委員 国際的な平和主義は私も否定しません。しかし、その前提条件が崩れているということはお認めだったと私は思っています。

 私は、拉致問題が生じた遠い理由の一つが、この憲法前文の誤った認識にある、諸外国に対する誤った認識にあると明快に冒頭に申し上げた。このことは肝に銘じてこれから外務省においては行動していただきたいし、やはり前文の前半部分ですな、仮定の部分ですよ。その仮定は間違っているということは、これは明らかにしていきたいと思っております。

 時間も余りありませんが、次に入りますが、次は、いわゆる人権侵害制裁法案と人権デューデリジェンスについてであります。

 後日の次の質問でここは明確に質問していきたいと思っておりますが、冒頭、上川大臣としては、G7のほかの国が持っている人権侵害制裁法案、また人権デューデリジェンス、日本が持っていない、EUは今、人権DDは作成中でありますが、G7の中で一国だけこういった法規制がないことについてどうお考えか、お伺いします。

上川国務大臣 普遍的な価値であります人権、これを擁護するとの基本的な考え方につきましては、G7の各国で完全に一致をしております。その上で、人権侵害に対してどのような対応が適切かということにつきましては、G7各国が、それぞれが適切と考える対応を取っているところであります。連携を取っている状況でございます。

 我が国は、人権は普遍的な価値であり、人権擁護は全ての国の基本的な責務であると考えております。そのような考えから、我が国はこれまで、深刻な人権侵害に対してはしっかり声を上げるとともに、対話と協力を基本とし、また、民主化、人権擁護に向けた努力を行っている国との間では二国間の対話、また協力を積み重ねて、自主的な取組を促進しているところでございます。

 そうした中にありまして、今委員から御指摘のような、他国における人権侵害に対しての様々な取組ということにつきましては、これまでの日本の人権外交を踏まえ、全体を見ながら検討していくべきものと考えております。

松原委員 時間ですから質問を終わりますが、G7の国の中で日本だけがガイドラインであったりして法的規制を持っていない。これは他の国からすると、極めて、なぜだろうという話ですよ。今年しょっぱなにイギリスのトラス前首相が来たときも、日本はなぜこれを持っていないのか、一緒になった法的な行動は取れないではないかと指摘がありました。

 私は、次の質問の機会があるならば、この辺を含めて議論していきますが、是非とも外務省においては、この人権侵害制裁法案と人権DDについて取り組まなければ人権大国としての矜持が否定されるということを明確に申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 先ほどからも各委員の方から、ガザ地区をめぐる情勢についていろいろ質問がございました。上川大臣の方からも、イスラエルやパレスチナに行かれて、ある日突然家族の命がテロによって奪われた御家族と会って、命を大事に、そういったことの御答弁が先ほどございました。私も全く同感でございますし、ハマス等のテロ攻撃を断固として非難するわけでございます。

 同時に、現在、ガザ地区におきましては、罪のない子供たちや女性、高齢者の多くが被害に遭っている状況でございます。大臣の方から、人道目的の戦闘休止、そして人道支援活動が可能な環境の確保を求めて様々な外交努力をされている。それはもちろん評価するところでございます。

 一方で、イスラエルに対しても、当然自国を防衛する権利はございますが、これほど多くの民間人、子供や女性の方、高齢者を巻き込んだ中で、イスラエルの無差別攻撃に対して大臣はどのように感じているのか、まずはお伺いいたします。

上川国務大臣 委員から私の様々な発言について御紹介いただきましたけれども、ガザ地区の人道状況は大変深刻化している状況であります。特に、無辜の一般市民の方、とりわけ、未来ある子供、また女性、高齢者の皆さんが大きな被害に遭っているということに対して大変心を痛め、今回、現地に行ったわけでありますが、そのような被害の拡大を何としても防止する、こういう中で、今回のG7の中でも成果文書としてまとまったところでございます。

 特に、同地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道的な休止、そして人道支援活動が可能な環境の確保ということを求めて様々な外交努力を重ねてきたところでありますが、まさに、G7外相会合におきましても、このことにつきましては一致したところであります。食料、水、医療、燃料、シェルター、そして人道支援従事者のアクセスを含みます妨害されない人道支援、このことを可能とすること、特に、人道支援を容易にするための人道的休止及び人道回廊を支持することなどで一致したところであります。

 全ての当事者が国際法に従って行動するということも、併せてこの間一貫して日本として求めてまいりました。特に、イスラエルに対しましても一般市民の保護の重要性と国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請しておりまして、今回のイスラエル訪問におきましてもこの点を直接お伝えしたところでございます。

 刻一刻情勢が変わっておるところでございますが、人道的な休止、そして人道的な回廊というところについて全力で注いでまいりたいと思っております。

青山(大)委員 イスラエルのガザ地区に対する無差別攻撃に対して大臣はどのようにお考えか、お伺いいたします。

上川国務大臣 事実関係を十分に把握することが困難である中、イスラエル軍の行動につきましては法的評価をすることは差し控えているところでございますが、我が国として、イスラエルの行動が国際法と完全に整合的である、こうした法的評価を行っているわけではございません。

青山(大)委員 先ほども、これまで、一九九三年以降、日本はパレスチナに対して二十三億ドルの支援ですとか様々な支援をされてきたわけでございますし、もちろん、イスラエルとも友好な関係を築いてきた日本だからこそ独自の外交もできる。

 イスラエルに対してガザでの即時停戦を求めるような、そんなお考えはないでしょうか。

上川国務大臣 今緊急で取り組むべきことは、ガザ情勢の人道的な状況を、緊急にこの状況を除去する、回復するということが第一の優先課題である、これが私が三か国を訪問し、その前、カイロの平和サミットに参加させていただく過程の中で強く感じたところであります。

 これに向けて、先ほど申し上げたような措置について、今回、G7の外相会合で一致したところでありますので、この実現に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 ちょうど十一月七日に在京アラブ外交団の皆様方と外務委員会の理事で懇談したわけでございます。ちょっと見てみましたら、ちょうど十月四日、ハマスによるテロ攻撃の前ですけれども、十月四日、上川大臣が在京アラブ外交団が主催する昼食会に参加されていろいろな懇談をされたというふうにも承知しています。

 その直後にハマスによるテロ攻撃が起こって今のような状況なんですけれども、今後、大臣として、在京アラブ外交団に対して考え方だとか状況を伝えたり説明する機会を設けることは考えているんでしょうか。

上川国務大臣 私は、十月四日にアラブ在京大使の皆さんと、こうした事態が起こる前でありますけれども、お招きをいただきまして、それぞれの国、地域と日本がどのように関わってきたのか、そしてこれからどうするか、こうした前向きな展望を持って意見交換をさせていただき、大変貴重な会合であったというふうに思っております。その直後のこうした発生でございまして、そうした中で起こったことについては、極めて遺憾であるというふうに私は思っているところであります。

 この大使との会談につきましては、先ほどの答弁もありましたが、副大臣で今対応する準備をしているところでありますので、恐らく実現していくことと思います。

 私は、いろいろな場面で様々なバイ会談をしているところでございますので、そういったものを総力を挙げて取り組んでいきたい、こんなふうに思っております。

青山(大)委員 本当は大臣がいいと思うんですけれども、先ほど副大臣がそういった会を設けるという御答弁がありましたけれども、さっき鈴木委員の方から、在京アラブ外交団の方から、再三要請があってもなかなか会ってもらえなかったというような、先方はそういうふうに受け止めているようなお話もございました。

 ちょうど二〇二二年三月ですかね、ロシアがウクライナへ侵攻した直後ですけれども、同じように、ウクライナの大使が当時の外務副大臣に、会いたいといってアポを取ろうとしたところ、なかなかそれが実現できないというようなことがあって、ちょっと問題になりました。そのときに、当時の副大臣がまるでやり玉に上げられたような、一部そういった偏った報道等があったんですけれども、それは実際どうなのかということで、この委員会でただしたところ、外務省の中の連絡の問題があったということで、当時の外務大臣に、今後そういったことがないようにということで、改めて質問した次第なんです。

 平時だったらまだ日程調整等とかの関係かもしれませんけれども、まさに今起こっている状況を見ますと、当事者からしますと、本当に一分一秒を争うような事態だと思うんですよね。その辺は平時と有事で分けて、そういった先方に対してのアポイントの要請などは別途考えるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 この事案発生後でございますが、外務省の総力を挙げてという形で、政務三役も含めて、あらゆるチャネルを通して情報収集をし、また対応する、こうした状況を今つくっている状況であります。

 私は、事案発生後でありますが、パレスチナそしてイスラエル大使とバイの面談をさせていただきました。そして、その中で様々な状況についての報告もいただくことができました。そして、直接、現場であるイスラエル、パレスチナの方、そしてヨルダンにも行かせていただきました。

 在京の大使の皆さんは、国の中の様々な情報を持っている、大変大事な役割を担っていらっしゃる方々でありますので、調整はできるだけ迅速に、速やかにやるようにと指示をしているところでございます。

 この件についてどのようなやり取りがあったか、私自身つぶさに存じ上げる状況ではございませんで、私も、自ら毎日のように電話会議を夜に、時差がありますので、重ねてきているということでございます。そうしたことについては極めて大事だというふうに思っているところであります。

 副大臣が今調整しているところでありますので、一日も早く実現をするように、更に拍車をかけたいと思っております。

青山(大)委員 前向きな答弁をありがとうございました。

 そのために、副大臣が今二名ですか、政務官も三名の方がいらっしゃるわけですし、大臣が全て対応できないのはもちろん承知でございますけれども、そういった政務三役で、平時ではありませんので、担当の範疇外かもしれませんけれども、その辺は融通して、先方としては、今日この瞬間でも自国の小さな子供たちや罪のない方たちが死にさらされているわけでございますので、先ほど大臣も、命は大事、そういった答弁もございましたので、そこは平時と今の緊急の状況で分けてしっかりと外務省をリードしてほしいと思いますので、重ねて強く要望させていただきます。

 それでは、次の質問に行きます。

 岸田総理が先週フィリピンを訪問されたということですけれども、私自身も超党派の日本・フィリピン友好議員連盟の事務局次長をさせてもらっています。そういう中で、日本はフィリピンとの友好関係が大切であることは重々承知ですけれども、外務大臣になられまして、大臣として、今後、日本とフィリピンとの関係でどういったことを重点的に進めていくべきとお考えでしょうか。

上川国務大臣 先般、岸田総理がフィリピンを訪問されました。フィリピンとの間で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化し、人間の尊厳が守られる世界を確保すべく、緊密に連携していくことを確認したところであります。

 その上で、安全保障分野につきましては、OSAによる最初の協力案件、これは、沿岸の監視レーダーシステム供与の決定、あるいはRAAの交渉開始決定等の具体的な成果を上げることができたということであります。

 また、ミンダナオの社会経済開発、観光、鉱物資源に係る協力に関する文書交換もそれぞれ行うとともに、経済、人的交流等の幅広い分野での協力を進めていくことでも一致したということであります。

 こうした具体的な二国間協力を着実に実施していくことが私は極めて重要であると考えております。

 基本的な原則また価値を共有する戦略的パートナーでありますフィリピンとの関係につきましては、様々な分野での交流をすることができる関係性、信頼の確保、こうしたことについて一層強化しながら取り組んでまいりたいと思っております。

青山(大)委員 先ほど安全保障のところを非常に強調されていたんですけれども、私はもう少し、今ももちろん経済分野、例の地下鉄の工事ですとか様々な取組をされているのを承知していますけれども、言うまでもなく、フィリピン経済というのは非常に華僑の影響力が強い地域でございますので、そういう状況も踏まえた上で、更に経済的な協力を是非推し進めてほしいということを大臣に求めるとともに、OSA、今年から新しく始まった制度ですけれども、安全保障能力や抑止力の強化への貢献ということなんですけれども、これは、大臣、今回フィリピンが初めてのケースということなんですけれども、たしか今年度予算が二十億円ついていたと思うんですよね。今回たしかフィリピンに関しては六億円というふうに聞いていますけれども、今年度、残りはどういった案件を考えているのでしょうか、お答えください。

河邉政府参考人 お答え申し上げます。

 十一月三日、OSA創設後初の案件といたしまして、フィリピン海軍に対する沿岸監視レーダーシステム供与に関する交換公文が署名、交換されました。

 令和五年度のほかの供与候補国であるマレーシア、バングラデシュ及びフィジーについては、現在、先方政府と最終調整を行っておるところであります。

 令和六年度以降のOSAの供与候補国につきましては、OSAの目的に照らした支援実施の意義や、日本として把握している各国のニーズ、各国の経済社会状況等を総合的に勘案いたしまして、今後検討していきたいと考えてございます。

青山(大)委員 OSAにつきましては必要なニーズに応じてということですけれども、是非、いたずらに、やみくもに増やすことがないよう、そこはしっかりルールを決めてやってほしいなということを主張させていただきます。

 時間がないので、次の質問に行きます。

 先日、大臣所信の中で、外交の要諦は人との考えの下、在外職員等の勤務環境や生活基盤の強化を含めというような意気込みがありました。私も全く同感でございます。

 とはいえ、私は、在外職員の処遇改善、これは多分、我が党も、この急激な為替の変動の中でしっかり対応すべき、今、省内でもそういった検討をされていると思うんですけれども、是非ここはしっかり取り組んでほしいなと思っていますけれども、今の検討状況を改めてお伺いさせていただきます。

上川国務大臣 まさに所信で申し上げたとおり、外交の要諦は人であるという大きな方針の下で、体制をしっかりとしていく必要があると認識しているところであります。外務省の職員一人一人が海外での様々な勤務環境の中でその能力を十分に発揮できるように適切に処遇するということにつきましては、外交実施体制の強化のために大変重要と考えております。

 在勤基本手当の支給に当たりましては、従来、為替変動や物価の状況を踏まえながら、必要に応じて年度内の改定を行うことで、適切な水準の維持に努めてきているところでございます。

 その上で、昨今の円安、物価高が続く中でも、在勤手当及び派遣員に支給される在外報酬につきまして適時適切に手当を支給する、こうした観点から、支給の在り方を含めまして検討している状況であります。

 今後も、外交を支える職員一人一人の一層の活躍に向けて、環境整備にしっかりと取り組んでまいります。

青山(大)委員 恐らく外貨建てにしようという検討なんですけれども、今の大臣の答弁でも、在外公館の派遣員にもしっかりそこは職員同様にやっていくという答弁があったんですが、そこは非常に安心いたしました。

 派遣員の方たちも、二年という任期ですけれども、目立たないかもしれませんけれども、大切なロジの分野とかで一生懸命頑張っていらっしゃるので、もし職員も外貨建てにするのであれば、当然派遣員さんも同じように変えてほしいということを要望させていただきます。

 最後ですけれども、ちょうど八月ですかね、中国で火傷病が発生しまして、梨やリンゴの中国からの花粉の輸入が停止されたわけでございます。

 地元の茨城県は梨の生産量が全国の第二位でございまして、自家製で受粉している農家もいるんですけれども、中国からの花粉の輸入に主に頼っている農家も非常に多いという状況で、来春の受粉期に向けて時間がない中で、今現在、地元の農業関係者、そして県の方も様々な取組をしているんですけれども、ここはしっかり国としても支援をしてほしいということで、これは参考人だと思うんですけれども、答弁の方をお願いいたします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中国における火傷病の発生に伴い、本年八月に梨花粉を輸入停止したことを受けまして、農林水産省では、本年九月に全国説明会を開催し、増産などによる来期の花粉確保を呼びかけたところでございます。

 具体的には、JAなど、産地の関係機関が一体となった、花粉採取用の受粉樹や花粉を共同で調製するための専用機器の確保、そして、専用機器の利用が同時期に集中しないよう、冬季のうちに剪定した枝を集め、順次室内で加温し、早期に開花させて花粉を採取するような手法の活用などの共同の取組を呼びかけております。

 これを受け、現在、委員御地元の茨城県を含め、各産地では、専用機器の調達や利用体制の構築などの具体的な検討が進められていることと承知しております。

 国といたしましても、補正予算において、花粉を調製する専用機器の整備や、剪定した枝を活用した花粉生産の実証、産地のこういった共同の取組を支援したいと考えているところでございます。

 その上で、花粉は梨の生産に欠かせないものであることから、今回のことを契機といたしまして、花粉専用産地の育成とともに、全国的な花粉の流通体制を構築し、輸入花粉に頼らず、国産花粉への切替えを進めてまいります。

青山(大)委員 しっかり補正で対応できるところは対応するという答弁と、これをきっかけに、国産化、輸入花粉に頼らずにしっかり国産でやっていこうという担当の農水省の方から力強い答弁をいただきました。しっかりそこは実施してほしいと思います。

 最後に、一点。

 これはたまたま八月に中国産の花粉を停止したということで、ちょうどその時期に処理水の放出に対して中国側が対抗措置を取ったから、日本もそういうことをしたんじゃないかみたいな、そういう根拠のないうわさが流布されているのを聞くんですけれども、そういうことは実際にはないというような認識でよろしいか、最後にお伺いいたします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の措置につきましては、あくまで科学的な知見に基づいて行うものであり、そういった報復措置などとは一切関係がございません。

青山(大)委員 分かりました。しっかり対応してください。

 そして、大臣につきましては、ガザ、そしてウクライナ情勢、大変厳しい状況がございますが、是非しっかり対応してほしいと思って、重ねてお伝えさせていただきます。

 以上です。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 立憲民主党の源馬謙太郎です。今日もよろしくお願いいたします。

 今日は、私は、グローバルヘルスに関することを質問していきたいと思います。

 まず、グローバル・ファイナンシング・ファシリティー、いわゆるGFFというものです、母子保健の分野の資金リソースを拡充するために国連や世銀が立ち上げたイニシアチブであります。

 今年の九月に、岸田総理は、国連のUHCハイレベル会合、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジのハイレベル会合に御参加されて、我が国としても、二〇三〇年までに途上国を含む世界全体がUHCを達成できるよう、国際社会の取組を更にリードしていく、こういう力強い発言をされたわけです。

 当然、岸田内閣の一員である上川外務大臣も同じ方向を向いていると思いますが、改めて、GFFに対して、UHC達成に向けた上川大臣の御決意と、そのために日本が果たしていくべき役割はどんなことがあるとお考えなのか、伺いたいと思います。

上川国務大臣 グローバルヘルスは、人々の健康に直接関わるのみならず、経済、社会、安全保障上のリスクを含む重要な課題であると考えております。

 こうした認識の下で、日本は長年にわたりましてUHCの達成に向けた取組を主導してまいりました。先般、G7広島サミットにおきましても、保健システム強化を通じた、より強靱、より公平、より持続可能なUHC達成への貢献にコミットするということを表明したところでございます。

 本年九月の国連総会に際しましては、岸田総理大臣が、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・ハイレベル会合に御出席されまして、私自身も、パンデミックへの予防、備え、対応、PPRということでありますが、これに関してのハイレベル会合に出席いたしました。

 このハイレベル会合におきましては、新型コロナ感染症の教訓を生かして、迅速かつ強力に国際保健の体制を発展させることの重要性について訴えさせていただいたところでございます。

 今後も、様々な国際会議における議論、成果を踏まえ、引き続き、UHCの達成を含むグローバルヘルスの推進をリードしてまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 総理大臣も、そして上川外務大臣もUHC達成に向けてしっかり取り組んでいくという御決意がある中で、国連のUHCハイレベル会合が行われた九月、そこでリーダーシップを発揮すると高らかに宣言した総理がいらっしゃったわけですが、その翌月に行われたGFFの増資会合に鈴木財務大臣が招待されていたと思うんですが、出席をされなかった、カタールと日本だけが出席しなかったということなんですが、今日は財務政務官にもお越しいただいていますが、なぜ出席されなかったんですか。これだけリーダーシップを取っていくと言っていた翌月の増資会合ですけれども。

瀬戸大臣政務官 お答えいたします。

 財務省は、世界銀行を通じてGFFの活動に継続的に支援をしてきており、これまで累計一億一千万ドルの資金拠出を行っております。

 御指摘の本年十月の会合につきましては、既に二〇二三年度分の資金貢献を表明し、拠出済みであったことも踏まえまして、出席を見送りましたが、同会合後のプレスリリースにおきまして日本の資金拠出が言及されるなど、日本の資金貢献はしっかりと認識されているものと承知しております。

源馬委員 もう拠出、プレッジ済みなので出席しなかったということですが、もうこれ以上は拠出しないということですか。

瀬戸大臣政務官 現在、予算編成の過程にありまして、現時点で今後の資金拠出について具体的なことは申し上げられませんが、GFFを始めとする国際保健の取組を進めるための予算について、引き続き適切に確保できるよう努めていきたいと考えております。

源馬委員 適切な額というのは幾らですか。レクでも額も聞いていますけれども、今のところ財務省が考えている適切な額、これは二〇二三年から二五年の計画において日本は一億五千万米ドルを要請されているわけですが、現在、先ほど政務官から御答弁があったとおり、一億一千万、あと四千万ドルということなんですが、今度の春の会合ではどのぐらいプレッジする予定なのか、少なくとも概算要求ではどのぐらいの額を要求している最中なのか、レクでも聞きましたので答弁できると思います。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 令和六年度概算要求の話ですけれども、国際復興開発銀行及び国際開発拠出金につきまして、約二百十四・三億円を概算要求として充てておりますけれども、このGFFにつきましては、その内数になるということでございます。

源馬委員 その内数を聞いているんですね。レクのときもしっかり数字が出ていましたので、内数の内訳を聞いてください。いやいや、答えていましたよ、レクの際に答えていました。

瀬戸大臣政務官 現在、予算編成過程でございますので、現時点で今後の資金拠出について具体的なことは申し上げられません。

源馬委員 では、私がレクで聞いた数字は何だったんでしょうか。

 あと残り四千万ドル、これは目指すということでいいですか。今概算要求を具体的に幾らしているかはレクでは聞きましたが、四千万ドルに満たすように目指していくということでよろしいですか。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 これまでも、厳しい財政状況の下で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCや、パンデミックへの予防、備え、対応の強化等、国際保健分野における様々な課題に取り組みつつ、GFFの資金拠出も積み重ねてまいりました。そういった中で進めていくということでございます。

源馬委員 質問したことに答えていただいていないと思うんですが、GFFからの要請にあと少しで届くわけですから、レクではそれを満たすように今頑張っているという話を聞きましたので、是非、この後、四千万ドル、来年の春会合にはプレッジできるようにしていただきたいと思います。

 それから、大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど大臣のお話にもありましたとおり、これはグローバルヘルスに関わることで、国際関係、外交に大きく関わることだと思うんですね。実際に、このGFFについては、ほかの国はどこが所掌しているかというのを見ると、例えば、カナダやイギリスやオランダとかは外務省がやっています。ノルウェー、ドイツは開発庁みたいなところですが、これも日本でいえば外務省ですね。

 なぜ、このグローバルヘルス、母子保健に関することなのに財務省が担当している。しかも、今余り御理解されていなかったような答弁でしたし、せっかくなら、やはり外務省が所管した方がいいんじゃないかと思いますが、大臣の御所見を伺えますか。

上川国務大臣 外務省の取組でございますが、政府全体の方針でありますグローバルヘルス戦略の下で、GFFが関与する母子保健分野も含めまして、UHCの達成に向けた取組を始め、外交面からグローバルヘルスを主導してまいりました。

 GFFは、世界銀行内に設立された資金調達プラットフォームでありまして、これは財務省が所掌しているところであります。外務省におきましても、円借款、無償資金協力、技術協力、国際機関への拠出金など、様々なツールを活用して母子保健改善に貢献してまいりました。

 外務省といたしましては、引き続き、財務省を含め、それぞれの役割を持つ各省庁と緊密に連携し、日本政府全体として、その支援の効果が最大限発揮されるよう努めつつ、母子保健改善を含むUHCの達成に向けた取組、そしてグローバルヘルスの推進について主導してまいりたいと考えております。

源馬委員 よく指摘される日本の縦割り行政の表れだと思います。主導していただけるなら、本当は外務省がやった方がすんなりいくと思いますね。

 これはもちろん世銀の中の一つのファンドですが、ほかの国も財務省が担当している国というのはないんですね。さっきも申し上げましたが、大体外務省や開発庁などが所掌しているということですので、是非、これは上川大臣ができることではないかもしれませんが、リードをしっかりしていっていただきたいと思います。

 次に、ポリオについて今度は伺っていきたいと思います。

 小田原理事も大変御関心高く取り組んでいらっしゃると思いますが、ポリオも、今年のG7の広島サミットあるいはG20のニューデリー・サミットにおいて、感染症であるこのポリオの二〇二六年までの根絶を目指していこう、そして、そのためには、世界ポリオ根絶計画、GPEIですが、これに対する継続的な支援をみんなでしていこうとコミュニケに明記されました。また、先ほど言ったUHCのハイレベル会合でも、ポリオ根絶に向けてしっかり頑張っていこうということが言われたわけですね。

 これも私が大臣に申し上げるまでもありませんが、もう目の前に見える、次に根絶できる感染症とポリオが言われているわけです。もう少し力を入れていけば根絶できるかもしれないというところに来ていると思います。

 このポリオを早い段階で根絶できた場合と、できずにずるずるまだ長引いた場合と、我が国にとって国益にどういうふうに影響するか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

上川国務大臣 先ほどの御質問でもお答えしたところでありますが、ポリオの根絶を含めまして、グローバルヘルスは、人々の健康に直接関わるのみならず、我が国を含む国際社会にとりまして、経済や社会や安全保障上のリスクにも関わる重要な課題と認識しているところであります。

 日本政府は、長年、ポリオ根絶に向けまして、二国間協力やユニセフ及びGaviへの拠出等を通じまして取組を支援し、着実に成果を上げてきたところであります。

 また、先ほど申し上げたとおり、日本が議長国を務めましたG7広島サミットにおきましても、G7広島首脳コミュニケにおきまして、ポリオに関して引き続き取り組む必要性がある旨を明記されております。

 ポリオを根絶するためには継続した取組が重要でありまして、引き続き、関係国際機関、関係省庁などとも連携しつつ、ポリオ根絶に向けて貢献してまいりたいと考えております。

源馬委員 私も、今までの我が国の取組を否定するわけではもちろんありません。より力を入れて、早めに根絶、少なくとも二〇二六年という目標があるわけですから、それに向けてもう一歩力を入れていく方が我が国の国益にも資するのではないかという観点で質問をさせていただいています。

 厚労政務官にもおいでいただいているんですけれども、今現在、日本ではポリオは根絶していますが、まだ世界でポリオが存在しているので、四種混合を打っていますね。それにかかっているワクチンに係る経費、費用というのは今日本でどのぐらいかかっているのか、教えてください。

塩崎大臣政務官 源馬委員からの御質問にお答えいたします。

 今御案内いただきましたように、日本では、ポリオワクチンは、予防接種法に基づく定期接種として、大半の場合、四種混合ワクチンとして接種をされております。

 四種混合ワクチンにおける定期接種の年間費用は、推計ですけれども、今年度で約三百四十億、これは手技料が含まれておりますので、ワクチンだけの費用ということでは、約二百億円と見込んでおります。

源馬委員 厚労政務官に確認したいんですが、仮にポリオが世界で根絶された場合は、もちろんこのポリオの分のワクチンは日本では打たなくていいことになるわけですよね。その瞬間ということではないと思いますが、今後打たなくてもいいということになるわけですよね。

塩崎大臣政務官 お答えいたします。

 ポリオが仮に根絶されたらということでございますけれども、そうした定期接種の継続の可否、是非、こういったことにつきましては、審議会で検討して判断していくということになろうかと思います。

源馬委員 もちろん最終的にはそうだと思うんですが、例えば、WHOなんかも、五年から十年以内には予防接種を停止できるのではないかというふうに推測している、こういうこともあるので、もちろん最終的には国内でどう決めていくかということですが、常識的に考えれば、世界でポリオがなくなったら、もう打たなくていい方向になっていくと思うわけです。

 そうすると、年間その三百四十億円、まだほかの三種は打つかもしれないので全部じゃないかもしれませんが、ここも削減できる。そして、今我が国が行っているポリオに関連する世界への支援も削減できるので、やはり一日でも早く根絶する方が当然いいと思うんですね。

 今、先ほどから出ているGPEI、世界ポリオ根絶計画が考えている、根絶の鍵だと考えている必要額というのは四十八億ドル、大体七千二百億円。このうち、日本には、二〇二二年から二六年の計画において、四十八億ドルのうち一億二千五百万米ドルを要請されています。このうち、日本が拠出しているのは一千百万米ドル。かなり少ない額になっています。これは一日も早い根絶のために増額すべきだと私は考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

上川国務大臣 日本におきましては、ポリオの根絶を、人類共通の公衆衛生上の地球規模課題、こうした形で重視しております。

 日本政府は、長年、ポリオ根絶に向けまして、二国間の協力、また、ユニセフやGaviのワクチンアライアンス、WHOを通じたGPEIへの拠出等を通じまして取組を支援してきているところでございます。

 昨年度も、外務省といたしましては、世界で残り二か国となった野生株ポリオの常在国でありますパキスタン、アフガニスタンに、ユニセフと連携する形で合計約四十二億円の無償資金協力を実施したほか、Gaviワクチンアライアンスに対しまして、ポリオワクチンを含めた定期予防接種への支援として二十二億円を拠出したところであります。

 日本としても、今後とも、ポリオ根絶に向けまして、まさに厚生労働省を含む関係省庁間でよく連携し、ユニセフを通じた二国間の協力、また、Gaviワクチンアライアンス、WHOを通じたGPEIへの拠出等による多国間でのポリオワクチン接種支援を実施してまいりたいと考えております。

源馬委員 Gaviへの支援も全く不要というわけではないと思いますが、やはり、今大臣も言及されたとおり、野生株が今残っているあと二つの国、ここを何とか抑え込むことが一番大事で、ここに我が国は、例えばアフガニスタンには八億円、パキスタンには五億円、この程度の支援しかしていないんですね。もうちょっと大きい支援をすればより早く根絶できるのではないかと思いますが、例えば、高村政務官に今日はお伺いしますが、パキスタンに五億円出していますけれども、これでどのぐらいの人にワクチンを接種してもらえているんですか。

高村大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のポリオ感染拡大防止・撲滅計画は、ユニセフと連携し、パキスタンにおいて五歳未満児を対象としてポリオワクチン接種を行うために必要な資金として五・三六億円を供与する無償資金援助であり、現在、これら児童に対してポリオワクチン接種が進められているところであります。

 本プロジェクトが終了する予定の本年十二月七日までに、約千七百九十万人の五歳未満児に対してポリオワクチンが接種される見込みであります。

源馬委員 例えば、パキスタンは人口が二億人ぐらいですよね。それで、五億円で一千七百万人打てるんだったら、もうちょっと頑張れば早くポリオ根絶を迎えられるんじゃないかと思うわけですよ。このパキスタンやアフガニスタンにバイでポリオの関連の支援をすれば、GPIの指標だって上がっていくわけですね、日本の拠出額というのは。是非力を入れていただきたいと思います。

 済みません、厚労省にまたお伺いしますが、厚労省もポリオ撲滅に向けたWHOへの任意拠出をやっていると思うんですけれども、令和六年は幾らを考えていますか。

塩崎大臣政務官 源馬委員からの御質問にお答えします。

 厚労省としては、WHOへの任意拠出金として約二・八億円を令和六年度に概算要求に計上しております。この任意拠出金の一部が、委員御指摘のWHOによるポリオの撲滅の取組に振り分けられる、こういった形になってまいります。

源馬委員 厚労省は概算要求をどれぐらい出しているか答えていただけるわけですから、財務省もレクでは教えていただきましたので、しっかり答えていただけたら。残念です。

 厚労省のWHOへの任意拠出金、令和四年度は八・二億円、五年度が五・六億円。今度、六年度は二・八億円にかなり減るということなんですか。何か大臣や総理の意気込みとは逆の方向に行っていると思いますが、なぜ減るんでしょうか。

塩崎大臣政務官 源馬委員からの御質問にお答えいたします。

 御指摘のように、WHOへの任意の拠出金ということでいいますと、過去の年度に比べると少ない概算要求になるわけでございますが、一方で、ほかの国際機関などへの拠出など、全体としてのバランスを見ていく中で、グローバルヘルスの分野についての拠出ということでは、総額は大きく変わっていないというふうに認識しております。

源馬委員 具体的にどういう機関にどういう拠出を考えていて、総額が変わっていないということですか。

塩崎大臣政務官 源馬委員からの御質問にお答えします。

 具体的な拠出先としては、グローバルファンドであったりGaviであったりCEPI、こういったところに拠出を行っております。

 その具体的な金額については、申し訳ございませんが、今は持ち合わせておりません。

源馬委員 厚労省によるポリオ関連の国際協力というところには、WHOへの資金拠出というのがメインとして書かれているわけです。そのほか、今おっしゃったような国際機関への支援というのは、厚労省が出しているポリオ関連の国際協力の一覧にはないわけですよね。

 なので、一番の柱であるWHOのポリオ撲滅に向けた任意拠出金を拠出しているんだ、この額が令和四年の八・二億、令和五年の五・六億から、更に今度は二・八億まで減るということは、ちょっと後ろ向きになっているのではないかというふうに感じてしまいます。

 もう時間が来ましたのでこれで終わりますが、大臣にも意気込みを伺いましたので、特にさっき申し上げたパキスタンとアフガニスタンへのバイでのポリオ根絶に向けた額をもう少し上げて、一日も早い、一年でも早いポリオ根絶に日本がリーダーシップを取っていって、そのことが結果的にグローバルヘルスにもいいし、我が国の国益にもつながるということだと思いますので、是非引き続きしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 終わります。

勝俣委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 三日前の十一月七日に、この委員会室に、在京アラブ外交団の二十か国の大使を始め、様々な皆さんがいらっしゃいました。衆議院外務委員会の委員長を始め、各会派の理事が様々な議論をさせていただきました。

 その中で彼らは様々な主張をされておりましたけれども、一言で言うと、とにかく自分たちの肩を持ってほしいというようなことは言っておりませんでした。そうではなくて、日本は公平性を欠いているのではないか、こういう指摘でした。ハマスのことに関しては明確にテロリズムと言って批判を公式に表明している一方で、今イスラエルが行っている人道危機やイスラエルの態度に対しては一切批判をしていない、これは、極めてこれまでフレンドリー、友好的で、インパーシャルな、中立的であった日本の態度と違うのではないか、こういう訴えでありました。

 私は、どちらかの肩を持つのがいいとか、そういうことは全然考えておりません。むしろ、場当たり的な対応で右往左往するということが一番よくないと思っておりまして、これから恒久的な日本の国民の生命と財産を守っていくためには、国際法に基づく平和、国際秩序というものをしっかりつくっていく、また、今あるそういった秩序をきちんと一つ一つの行動で全ての国に守らせる、こういうことを日本が範を示した形で行っていくことが重要なのではないかと思っております。

 そういった観点から、主に在京アラブ外交団の方で懸念していた事項について、日本政府と上川外務大臣の所見を伺いたいと思っております。

 まず一つ目の質問ですけれども、まず、ハマス等の武装勢力の武力攻撃に関して、当初、日本政府は武力攻撃というふうに言っていたんですが、途中からテロリズムというふうに、テロリストアタックですか、というふうに言葉を変えました。

 これは日本政府としてテロと認定しているわけなんですけれども、まず、日本政府にとってのテロの定義というのは何かということ、それから、これは当たり前のことですけれども、ハマスの武装勢力のテロ行為というのは国際法違反という認識であるかどうか、この点についてお伺いいたします。

上川国務大臣 今般のハマス等による攻撃は国際人道法の基本的な原則に反しておりまして、我が国は、ハマス等による攻撃を断固として非難し、そして人質の即時解放を求めてきております。

 我が国において、テロ組織を法的に認定する法制度はなく、また、テロについて国際的に確立した定義は存在しないと承知しております。

 ただし、一般には、テロリズムとは、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいい、テロ組織とは、テロリズムを行う組織を指すものとされているものと承知しております。

 先般のハマス等による攻撃は、多数の一般市民を標的として殺害や誘拐を行う残虐な無差別テロ行為を行ったものでありまして、このような観点も踏まえ、テロ攻撃として断固非難しているところでございます。

青柳(仁)委員 今のお答えで、ハマスの武力攻撃、テロ行為に関しては国際法、人道法違反であるということを明確にお答えいただいたわけですけれども、一方で、日本としてのテロ組織に対する法的な規定はない、また、そういった定義も基本的には持っていないということは、様々な世界の行為がある中で、それをテロと認定するかどうかというのは、今は日本政府、外務省の定義による、その時々の判断によるということだと思いますので、これは本来はきちんと定義した方がいいのではないかと思います。そうでないと、今回のアラブ外交団が言っているように、今回こういう状況になったところで、周りを見て場当たり的に、これはテロであり、これはテロではないというようなことを言っているんじゃないかと言われてしまえば、やはり今のお答えではなかなか納得し難いのではないかなというふうに思います。

 二つ目の質問に行きたいと思います。

 イスラエルはこれまでも、この戦争がある前から入植活動というのを行っておりました。パレスチナの地域に、言ってみれば停戦協定等の合意に違反する形で様々な、見た目は平和裏ではありますけれども、その土地にどんどん家を建てたり、土地を開拓したりということを行っている。これは国際的に認められている事実かと思います。

 これについては、中国が例えば尖閣の領海侵犯なんかをしていることを日本政府は力による現状変更と言っているんですけれども、同じようなことではないのかなというふうに思うわけなんです。これは、要するに他国の領土に勝手に入っていって勝手に家を建てているという話ですので、この点について日本政府の見解を教えていただきたいと思います。

 イスラエルの入植活動というのは国際法を遵守した活動であるというふうに認識されているのか、あるいは、それは違反だというふうに認識されているのか。それから、力による現状変更という言葉、これはウクライナの話が始まってから度々日本政府として使っているんですが、これの定義というのはどういったものであるか、教えていただけますか。

上川国務大臣 我が国といたしましては、東エルサレム及びヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動は国際法違反であり、二国家解決の実現を損なうものとの立場であります。このような立場から、我が国は、イスラエル政府に対しまして、累次にわたり、入植活動を完全凍結するよう強く求めてきております。

 御指摘の力による一方的な現状変更につきましては、例えば、武力による威嚇や武力の行使その他の力による一方的な行為によって、領域の現状を一方的に変更して既成事実をつくろうとすること等を念頭に置いているものでございます。

青柳(仁)委員 まず、確認ですけれども、イスラエルの入植活動は国際法違反であるというふうに明確にお答えいただきましたので、であれば、この点、きちんと国際的にも表明すべきではないかなと思います。

 戦争が始まったのはどこからが起点であるか、これは非常に難しい問題だと思います。ハマスの攻撃から始まったと思えば、これはテロから始まったとも言えますし、そうせざるを得ない状況に追い込まれたということで、入植活動が原因であったということであれば、そこもやはり考えなきゃいけないのではないかと思います。

 ですから、イスラエルの入植活動が国際法違反であるならば、これは国際法違反であるということを明確にした上で、このイスラエル、パレスチナ問題の立場を表明すべきだろうというふうに思います。

 それから、力による現状変更ですけれども、前段に武力による威嚇等々というのがあった上で、ただ、一方的に既成事実を積み重ねて現状を変更しようとする行為ということですので、後段の方は少なくともイスラエルの入植活動に該当すると思うんですが、はっきり教えていただきたいんですが、イスラエルの入植活動というのは力による現状変更だというふうに日本政府として認識していますか、いませんか。

上川国務大臣 まず、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動につきましては、これは、国連安保理決議第四百六十五号におきまして、文民の保護等に関するジュネーブ第四条約に違反するとされているものでございます。こうした点も踏まえまして、我が国として、イスラエルの入植活動につきましては、国際法違反であるとの立場を取っております。

 そして、我が国といたしまして、時々の情勢に応じて政策的に最も適切と考えられる表現を用いているところでございますが、我が国は、イスラエル政府に対しまして、東エルサレム及び西岸の現状を変更するような一方的な行為を控えることを求めております。

青柳(仁)委員 直接的に私の質問に答えていないわけなんですけれども、これは幾ら聞いても多分返ってこないと思うので言いませんが、そういうところが、アラブ外交団を始めほかの国々から見て、日本が非常にふらふらしているように見えるんじゃないかと思うんです。力による現状変更という定義は何なのか、それに当てはまるのか、当てはまらないのか、中国の行為とどう違うのか、はたから見たら全然分かりませんよ。ほぼ同じに見えますよ。それを、その時々の状況で周りの国々にああだこうだ言われるので態度を変えているだけなんじゃないか、こういうふうに見られているわけですよ。

 こういうところはしっかりと、先ほどのテロの話もそうですが、定義だとかをしっかりと定めた上で、まず規範があって、そして何かが起きたときにその規範に基づいて判断していく、こういうことをしっかりしていかないと、日本の外交の信頼性も失われるでしょうし、アラブの外交団、各国も日本にとっては非常に重要なパートナーですから、こういったことをこれから気をつけていかなきゃいけないと思います。

 それから、もう一つ。

 イスラエルは、今、領土を奪う意図というのを明確に示しているわけなんです、様々なネタニヤフ首相の発言等を見ていますと。そういった国が、今や、ハマスと全然関係のない一般市民を含む二百万人以上の人々を電気も水の供給もない状態に閉じ込めて、そして空爆を続けて、さらに越境して軍隊が全土に侵攻している状況です。

 私も昔、アフガニスタンの紛争地にいたことがあるんですけれども、現地では人が死んでいるわけなんですね、たくさんの方が。

 今回、アラブの外交団の方が来られていろいろな写真を持ってこられました。私が一番衝撃的だったのは、よく日本の産婦人科のホームページなんかにあるような、すごいかわいい赤ちゃんが並んでいるような写真がありました。全員亡くなっていました、その赤ちゃんは。赤ちゃんの死体が並んでいるんです。ぱっと見、外から見たら非常にかわいい赤ちゃんが並んでいるようにしか見えません。空爆を受けて、もうそういう状況になっているわけです。今日もそういう状況が続いているわけなんですね。こういった行為を放置しておく国際社会というのは、私は単純に間違っていると思います。

 これについては、いずれにしても、先ほど来から申し上げている国際法の観点から、国際人道法違反であるということを国連事務総長が何度も何度も言っているわけですけれども、日本政府としても、こうした今のイスラエルの行為というのは国際法違反の認識であるか、あるいは、アメリカ等が言うように自衛の範疇だというふうに認識しているのか、この点について教えていただけますでしょうか。

上川国務大臣 我が国といたしましては、イスラエルが、ハマスの攻撃を受けまして、国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有すると認識しております。しかし、同時に、イスラエルは国際人道法を含む国際法に従って行動しなければならないと考えているところでございます。こうしたことを、今回私はイスラエル、パレスチナ、そしてヨルダンに伺いましたけれども、イスラエルのコーヘン外相にも伝えているところでございます。

 一方、ガザ地区の人道状況につきましては深刻化の一途をたどっておりまして、特に、一般市民、先ほど表現されましたが、赤ちゃん及び未来ある子供たちが、女性あるいは高齢者が大変な被害に遭っているということにつきましては、心を痛めている状況でございます。

 事実関係を十分に把握することが困難な中でありますので、イスラエル軍の行動につきまして法的評価をすることについては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 しかし、いかなる場合におきましても、国際人道法の基本的な規範は守らなければならないと考えております。例えば、子供を含む無辜の民間人を無用に巻き込む攻撃は、国際人道法の基本的な原則に反するものでありまして、正当化することはできないわけであります。

 イスラエル軍の個別具体的な行動につきまして、攻撃に当たっていかなる情報に基づいて判断が行われたのか等、判断に当たって必要な事実関係が不明でございます。我が国として、確定的な判断を行うことはなかなか困難であると考えております。

青柳(仁)委員 今、三問、聞かせていただいたんですけれども、確認できたのは、ハマス等の武装勢力の武力攻撃は国際法違反であるということ、それから、イスラエルの入植活動は国際法違反であるということ、それから三つ目に、今イスラエルが人道危機を引き起こしているこうしたパレスチナの中における軍事行動というのは、国際人道法を守るように呼びかけていると今おっしゃいました。ということは、当然、今は守られていないということですよね。違いますかね。

 いずれにしましても、そこを明確にしていただけるならしていただきたいんですけれども、明確にできないということであったとしても、少なくともイスラエル側も国際法違反と言われるべき、批判されるべきことをやっているわけですね。そういったことについても公平に批判すべきところは批判する。今の日本の公式声明にはそういったことは一切出てこないわけですけれども、そこをまさにアラブ外交団は気にしていましたけれども、この点についてどう思われますか。

上川国務大臣 我が国といたしましては、入植活動は国際法違反であり、また、二国家解決の実現を損なうものである、こうした立場であります。このような立場から、イスラエル政府に対しまして、累次にわたり、入植活動を完全凍結するよう強く求めてきております。

 また、委員がまとめていただいたものでございますが、今般のハマス等によるテロ攻撃は、多数の一般市民を標的として殺害や誘拐を行う残虐な無差別攻撃でありまして、どのような理由であれ正当化し得ず、これを断固として非難してきているところでございます。

 また、我が国といたしましては、イスラエルが、ハマスの攻撃を受け、国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有すると認識しているわけでございますが、同時に、全ての行動は国際法に従って行われなければならず、いかなる場合におきましても国際人道法の基本的な規範は守らなければならないと考えているところでございます。

 こうしたことも踏まえまして、我が国は、イスラエルに対しましても、これまで、一般市民の保護の重要性、また、国際人道法を含む国際法に従った対応等を累次要請してきたところであります。先般の私のイスラエル訪問におきましても、私からイスラエルのコーヘン外相に改めて直接そのことを伝えました。

 引き続き、刻一刻と動く現地情勢でございます、こうしたことを踏まえて、イスラエルを含む関係国、国際機関等との間で意思疎通を行いまして、人道状況の改善、事態の早期鎮静化に向けました外交努力を粘り強く積極的に続けていかなければならないと考えております。

青柳(仁)委員 国際法は守らなければならないという基本的な立場を言っていただいたわけなんですけれども、法の下での国際秩序を強化していかないと、日本の将来的な平和と安全というのはないのではないかと思うわけなんです。

 そういった中で、国際法が重要だ、それはそのとおりです。ただ、その時々で守られていないですよね。それから、先ほどもおっしゃっていましたけれども、結局、テロリズムということについての定義も法律も何も定まっていないわけですから、その時々で場当たり的に判断しているという事実はあるわけですよね。

 それから、パレスチナについては明確な国際法違反であると言っておきながら、イスラエルに対しては、今この場ではおっしゃっていただきましたけれども、そういった声は外交的には発信されていないという状況ですので、こういったところは、やっていますということは分かるんですけれども、結局、外交は相手から見てどうかですので、相手に全然そういうふうに見えていないわけですよね。

 これは、アメリカの言うことだけを聞いていればいいとかG7の議長国だからとか、そういうことではなくて、法の下での国際秩序、平和という仕組みをつくり上げる重要なアクターとして日本がやっていく。さらには、でき上がった国際秩序、法を守らせる。いついかなるときも筋の通った行動を行う、筋の通った説明をしていくということを、範を見せていくことによってそういった国際秩序をつくっていく。それがひいては日本の平和と安全にもつながっていくんじゃないかと思うんです。場当たり的な対応ではなく、そういったことを是非考えていただきたいと思います。

 それから、次に、イスラエル側の発言として、これはどうだろうかなと思うものが幾つもあります。これについての外務大臣の所見をお伺いしたいと思っております。

 まずは、イスラエルのエルダン国連大使は、十月二十七日の国連総会の後の演説で、ハマスを壊滅させる唯一の方法はガザから根絶やしにすることだというふうに言ったわけです。これは、つまりはハマスを壊滅させることがこの戦争の終わりであると言っているに等しいんですが、先ほど赤ん坊の例を申し上げましたが、子供を殺された親は絶対に許しません。親を殺された子供も絶対に許さないと思います。

 また、私もアフガニスタンにいましたので、アフガニスタンも同じですが、ゲリラ戦に入ってしまいますと、二十年間アメリカ軍とNATO軍が全力で戦っても駆逐できないんですよ。ですから、つまり、この後この戦争がハマスを壊滅させる形で終わるなんということは現実的にあり得ないんです。そういう現実的にあり得ないことを掲げた上に、しかも、これから最悪の人道危機を引き起こすということを宣言しているようなものですね。ハマスだけを駆逐することは絶対にできませんから。

 ですので、そういったことを言う、これを国連決議、国連総会の場で言うということについて、これはどう考えてもおかしいのではないかというふうに思います。これがまず一つ目です。

 もう一つは、イスラエルのエルサレム問題・遺産相のエリヤフ氏が、十一月五日のラジオ番組で、ガザ地区への核使用について、可能性の一つだというふうに発言しました。それから、この人は、同じくガザへの人道支援物資の搬入に反対していまして、パレスチナ市民はアイルランドか砂漠にでも行けばいいというふうに言っているわけです。

 この後、ネタニヤフ首相は閣議への出席停止処分にしていますけれども、普通であれば首にして国外追放されてもおかしくないような案件ではないかと思うんですけれども、これについて。

 それからもう一つ、イスラエルのネタニヤフ首相は、十一月六日に、イスラエルが無期限でガザの治安全般の責任を担うということを言いました。これは、完全に占領すると言っているに等しいですよね。

 こういった発言を今この状態で私はとても日本の立場として認められるものではないと思うんですけれども、こうした一連のイスラエルの要人たちの発言について上川外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 まず、今、三つのケースについて御紹介がございましたけれども、我が国といたしましては、こうした他国の政府関係者の発言の逐一につきましてコメントすることについては差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、現地の状況は深刻の一途をたどっておりまして、一般市民、とりわけ、未来ある子供たち、そして女性、高齢者が大きな被害に遭っていることに大変心を痛めております。

 更なる被害の拡大を緊急に防止する、こうした観点から、イスラエルに対しましては、一般市民の保護の重要性、また、国際人道法を含みます国際法に従った対応等を要請してきておりまして、今後ともこうした様々な機会を捉えて働きかけを継続していく考えでございます。

 二つ目のケースでありますが、ネタニヤフ首相のケースでございますけれども、この発言につきましてもコメントはいたしませんけれども、今般の事態に関連いたしまして、核兵器の使用可能性に言及するような発言につきましては、受け入れることはできません。

 そして、最後の、イスラエルが無期限でガザの治安全体の認識を誰にということでの報道でありますが、これにつきましては、報道されている首相の発言の趣旨が明確でない中で、仮定の状況に対するコメントについては差し控えさせていただきます。

 報道によりますと、イスラエル政府はガザ地区を占領することは意図していないとの立場を表明していると承知しております。仮定の状況についてのコメントをすることにつきましては差し控えたいと思っております。

 その上で、今後のイスラエルの対応を引き続き注視していくところでございますが、武力による領土取得は認められないという原則は、これは、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決の基本であると認識しているところでございます。我が国としては、こうした二国家解決を一貫して支持してきているところでございまして、今後もこのような立場に基づいて適切に対応していく所存でございます。

青柳(仁)委員 今私が挙げた三つの例は、恐らく世界史の中でも相当おかしな発言ですよ。こういう発言に対して、今長々と御答弁いただきましたけれども、一言、こんなのは日本政府として受け入れられないというだけの話じゃないかと思うんです。それを、ずっと回りくどくいろいろ言って煙に巻く。

 そして、今、国際人道法違反という話もありました。人道援助をやりますというのは分かるんですけれども、人道援助は大事です、大事ですが、人道援助の前にまず停戦しないと、今日も現場で赤ちゃんも含む子供も亡くなっているわけですよね。一日でも早く停戦させなきゃいけないという状況の中で、目の前でけんかをしている人がいるところで救急箱を持ってきて、ここでいつでもけがを治せますからと言っているようなもので、まずそれを止めないことにはどうにもならないと思うんですよね。

 やはり、人道援助にしても重要は重要なんですが、あと、今の御答弁もそうですが、一貫して逃げているなというふうに思うわけです。場合によっては、外交において、逃げると言ったらあれですが、表現をぼかすことが妥当である、適当であるということもあろうかと思います。でも、先ほど来から申し上げているとおり、場当たり的に逃げ続けた先に日本の国の平和と安定はないと思うんですね。国際法をしっかり作って、その中で国際秩序をしっかりと守っていく、こういうことを日本がこういう機会にこそやっていくべきではないかというふうに思います。

 それから、最後ですけれども、こうした中で関連して一つ。

 先月、IPUという、百七十九か国の各国の国会議員が一堂に会して様々な国際問題について話し合う場がありまして、国会の代表団の一員として私も去年から参加させていただいております。その中で国連委員会の理事を務めさせていただいておりまして、今回は、ウクライナの問題でロシアが、そして、パレスチナの問題ではアメリカがそれぞれ拒否権を行使するということで、事実上、国連安保理は機能不全を起こしているということについて、極めて深刻な懸念が表明されておりました。

 日本はこれまで、今や国連の分断、対立を悪化させている拒否権行使の抑制ということについて、安保理の強化と信頼回復に、これを変えていくことが、抑制していくことが回復につながるということを主張してきております。また、常任理事国以外の加盟国による安保理の議論へのアクセスを向上させるということ、安保理の議論の透明性を高める必要性ということを訴えてきています。

 この方向性自体は私は賛成で、IPUの場でも演説で申し上げさせていただいたんですけれども、特に、今回、国連創設八十周年、未来サミットというのが開かれる中で、今、こうしたパレスチナ、ウクライナの問題もあって国際的な関心が極めて高くなっている中で、今までどおりの打ち込み方では何も動かないと思うんです。まさに異次元の打ち込みをここで考えていく必要があると思うんですけれども、大臣の意気込みについてお聞かせいただければと思います。

上川国務大臣 安保理が試練のときにある中におきまして、安保理を含む国連への信頼を回復するため、国連の機能強化が何よりも重要と考えております。

 安保理改革につきましては、本年の国連総会一般討論演説におきまして、岸田総理から、二〇二四年の未来サミット、また二〇二五年の国連創設八十周年を見据え、具体的な行動に移っていくべきということを強調した演説をなさいました。

 また、私自身も、本年の国連総会の際のG4外相会合におきまして、安保理改革実現に向けて、政府間交渉の場も活用し、具体的行動を目指すということについて提起し、協力を確認したところでございます。

 各国の利害も大変複雑に絡み合う安保理改革につきましては、決して簡単ではございませんが、G4、アフリカ、米英仏等の多くの国々と連携しながら、粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 国内には、イスラエル、パレスチナの問題と台湾有事なんかを無理やり結びつけて、G7の結束だとか自衛権だとかというところで、どうしてもイスラエルに寄らなければならないんだみたいな世論もあるとは承知しておるんですけれども、やはり、国連安保理も含めて国際秩序をしっかりとつくっていく、そういった一つ一つの努力が重要だと思いますので、これからも外務省として是非取り組んでいただければと思います。

 時間になりましたので、終了します。ありがとうございました。

勝俣委員長 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十八分開議

勝俣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 上川大臣は、本当に今、G7の外相会議をやったと思ったら中東に飛び、そしてまたという感じで、大変お疲れのところだと思いますけれども、大変大事な局面でございますので、私たちもしっかりと、いろいろな意見を申し述べながら、質疑をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最初に申し上げたいのは、前の、ウクライナの戦争が始まったときから多くの方も言われましたし、私も、外務委員会でもそうですし、予算委員会でも申し上げたことですが、世界の転換点を迎えている、それは、いわゆる新しい枢軸国というものができつつある。これに関してはいろいろな議論はありますけれども、やはり、ロシアと中国とイランを中心とした枢軸国体制が生まれ、そこに北朝鮮なんかがひっついたりして、新しい世界秩序をつくろうとする流れが一つにある。その中で私たちはしっかりと向き合わなければならない、こう思うわけですね。

 そんな中で、ウクライナの状況に加えて、今回、中東でこういった出来事が起こりました。これによって、アメリカは、やはりどうのこうの言っても、ウクライナだけではなしに、中東にも足を取られることになってくる。そうなると、今度は極東アジアの状況というものが緊張する可能性が高いと思うんです。ウクライナ、中東、そして東シナ海まで全てをカバーしてアメリカが対応するというのはなかなか大変なことだと思います。

 そんな中で、我々は我々として、はっきり言って、大陸を見ながら抑止をしていかなければならない、そういう観点で御質問をさせてもらおうと思うんです。

 その中で、これは抑止をするために聞くんですけれども、まず聞いていきたいことは、台湾有事というものが想定される、想定されるというのは変な言い方ですね、あってはならないんですが、今盛んに言われることがあります。台湾有事を抑えるために聞くんですけれども、台湾有事が起こったときには、邦人が台湾にもたくさんいます、その人々を保護しなければなりません。そういうときのために、日本は、当然、在留邦人の保護措置というものが法的にはあるわけですね。

 日本政府は、台湾については、もちろん今まで、そこにいらっしゃる林さんも堂々とこれは御答弁なさっておられましたが、自由や民主主義や法の支配という基本的な価値観を共有する極めて重要なパートナーであると。そういうところで一旦有事が起こった際に、私たちは、約二万人の在外邦人がいると言われています、経済的にも大変深い結びつきがあります、こういうときにその人々を保護しなければならないことになるわけですね。

 その根拠というのが、一般的に、在外邦人の保護措置をするためには、自衛隊法第八十四条の三において、在外邦人等の保護措置についての規定がある。その第一項二に、「自衛隊が当該保護措置を行うことについて、当該外国の同意があること。」と定められているわけです。

 昨今、今言いましたように、台湾海峡の有事の可能性が指摘されますけれども、そうなったときに、では、この「当該外国の同意」とはどこの国なんだ、どこに同意をもらうんだということになってくると私は思うんですね。

 それをお聞きする前に、まず前提として一つお聞きしておきたいんです、台湾の領土的地位について。

 台湾の領土がどこに帰属するかということを私は今までも何回かお聞きしたと思うんですが、そういうことを聞くと、独自に認定する立場にはない。サンフランシスコ平和条約において日本は台湾及び澎湖諸島に対する権利を放棄したので、日本は言う立場にないんだ、こういうふうに絶えず御答弁があるんですね、我が国政府の答弁としては。

 そのときに、では、いつから我が国政府は台湾の領土的地位について認定する立場ではないと表明するようになったのか、まず確認しておきたいんです。いかがでしょうか。

上川国務大臣 我が国は、サンフランシスコ平和条約第二条に従いまして、台湾に対します全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、台湾の領土的な位置づけに関して独自の認定を行う立場にはないということでございます。

和田(有)委員 それをいつから言い始めたのかというのを私はお聞きしたんですが、どうでしょうか。

岩本政府参考人 今御議論いただいていますサンフランシスコ平和条約でございますが、これは昭和二十七年に締結した条約でございますので、その時点で、この条約に従って、先ほど大臣から御答弁のあった立場を我が国政府としては維持しているということになります。

和田(有)委員 サンフランシスコ平和条約を結んだときからそういう答弁というか、立場を取っているということなんですが。

 次のことはお聞きはしませんけれども、その当時、それからしばらくの間は、日本は中華民国と外交関係を持っていたんですね。中華民国と持っている間は、中華民国政府が台湾を領有しているわけであって、そことの関係というものが実は外交上あったわけですよね。このことについては今日はもう触れませんけれども、その後に出てきたのが、日華断交を行って日中の国交をつくるということになったときに、実は日中共同声明というものを出したわけです。

 ここで、何度もこれもお聞きしてきましたけれども、日中共同声明の中で、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを中国は表明する、それについて日本は理解し、尊重する。ただ、理解し、尊重しているけれども、これを認めたわけではないと私は解するんです。理解し、尊重しているだけであって、それを認めているのではないと私は思うんですが、まずこの点をもう一回お聞きしたいんです。

岩本政府参考人 今委員から御指摘がありましたとおり、一九七二年の日中共同声明第三項において、日本国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明するとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持するとしておりますので、まさにここにありますとおりでして、それ以上でもそれ以下でもないということになります。

和田(有)委員 それ以上でも以下でもない。いつも、ある意味、曖昧にお答えになるわけです。認めているのではないとなぜ言えないのか。

 私はこれを再三お聞きしてきました。多くの方も伺ってきたと思いますが、これを曖昧戦略と言うんですね。アメリカなんかも、これまで、これとは話は違いますけれども、曖昧な態度をしてくる。ところが、もう曖昧にしているようでは成り立たない事態に至っていると私は思うんです。

 それはどういうことかというと、理解、尊重しているけれども、はっきりと認めていないという中で、この在留邦人の保護措置が必要になったときに、こんなやり方で法的に物事が処せるのかということになるわけです。

 結局、自衛隊法第八十四条三の第一項二で当該外国の同意を得るというときに、中華人民共和国の言っていることはごもっともでございまして、そのとおりと我々は認めているんですと言ってしまえば、当該外国、実際に攻められている台湾に我々は同意を求めることはできなくなってしまう。これは理屈ですよ。そうですよね。おたくはうちを認めていないんですから、認めていない人に向かって、どうですかとは聞けませんよね。そういう危険性をはらんでいるわけですよ。

 だから、今の時点で、我々は、中華人民共和国が言っている、北京政府が言っていることは理解し、尊重しているけれども、認めているわけじゃないんだとはっきり言っておかないと、そのときになって、どうですかね、台湾に言おうと思ったけれども、認めていない相手に聞けるかなということに、そごが出てしまうんです。

 なぜここでこういうことを聞くかというと、このことをはっきりさせることが北京政府に対する抑止につながっていく。日本はいざというときに台湾政府に対して同意を求め、しっかりと邦人保護に向かってかじを切るという意思表示になるからです。これを曖昧にしていると、日本はやはり腰が引けているな、いざというときは、おまえらが認めていないところに聞けないだろうと言われたら、もう終わりですよ。

 そこら辺について、大臣、いかがですか。

上川国務大臣 委員御指摘の点でございますが、海外に渡航、滞在する邦人の保護については、政府の最も重要な責務の一つと考えております。平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定し、関係省庁とも連携しつつ、各種の準備、検討や訓練を行っており、邦人保護の強化を図っているところでございます。

 台湾有事という仮定の質問についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、有事における邦人保護については、その時々の状況に応じて個別具体的に対応していくことになり、政府として、いかなる事態にも対応できるよう万全を期していく、こうした方針でございます。

和田(有)委員 いかなる事態に対しても対応していく、こうお答えになったんですから、ということは、仮定ですけれども、台湾有事が起こったときに当該外国に同意を求めるときは、当該外国はどこにされますか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣からも御答弁申し上げましたとおり、台湾有事という仮定の質問についてお答えすることは差し控えたく思いますけれども、一般論として申し上げれば、有事における邦人保護につきましては、その時々の状況に応じて個別具体的に対応していくことになりますけれども、政府として、いかなる事態にも対応できるよう万全を期していくということでございます。

和田(有)委員 こんなやり取り、答弁をずっと続けているわけですよ。では、いざというときにできるのかと私は本当に不思議に思ってしまうんです。当該外国と書いているんですから、当該外国を想定しておかないとどうするのという話になっちゃうわけです。

 そこで、もう一つ踏み込んでお聞きしますけれども、それだけ曖昧にせざるを得ないんだったら、法律には当該外国のとあるんですから、その当該外国という言い方をしたくないんだったら法律を変えればいいんですよ。当該外国若しくは当該地域を有効に支配する政府とか機関とか、それぐらいしておかないと、本当に融通が利かなくなると私は思います。

 そこら辺、この法律を触るということについて何か御意見はありませんか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊法は防衛省所管の法律ですので、私の方からはコメントを差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしても、有事における邦人保護については、そのときの状況に応じて個別具体的に対応していくことが大事だと考えております。

和田(有)委員 全然お答えにならない。

 何度も言いますけれども、こういう曖昧な態度を取っていると、日本は何にもできないんだな、では、日本は何にもできないんだから我々は何でもできるわ、こういうふうな誤ったメッセージを与えてしまうことになることを危惧しているわけで、今後の一つの展開として、当該外国若しくは当該地域を有効に支配する政府というような書換えをしていくべきだと私は主張しておきます。

 次に、これも曖昧なお答えの中で聞くのもなんですけれども、自衛隊法八十四条の三の第一項三で、予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保される見込みがあることと書いているんですね。当該外国の権限ある当局とは、台湾有事の際、どこを指すんだろう、どこの部署を想定すればいいんだろう。それぐらい想定しておかないと、突然そのときになって、どれですかねということはあり得ないわけで、連携及び協力を確保するために求める相手というのはどこになるんでしょうか。いかがでしょうか。

安藤(俊)政府参考人 まず、有事における対応について一般論として申し上げますと、平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定し、関係省庁とも連携しつつ、各種の準備、検討等を行って、邦人保護の強化を図っているところでございます。

 委員御指摘の点につきましては、繰り返しになりますけれども、一般論として申し上げれば、そのときの状況に応じて個別具体的に対応していくことで万全を期したいと考えてございます。

和田(有)委員 全然踏み込んでお答えはなさらないわけですね。

 ただ、そこで、次にお聞きしたいんですけれども、質問の順番は前後しますけれども、そうなると、一般論としてはどことどうというのはないと言うんですが、それにしても、やはり準備はしておかなきゃいけないはずなんですよ。本当はしているはずなんですよ、言えるか言えないかの話は知りませんけれども。でも、それだけ言わないんだから、できていないんだろうと私は思うから聞くんですけれども。

 以前、私は、この外務委員会でもそうだし、予算委員会でもそうだし、台湾ときっちりと情報共有ができる体制をつくらなきゃ駄目なんじゃないですか、それができていないと、いざというときに突然、邦人保護ですわ、自衛隊機を送りますわ、どこに着けましょう、どういうふうに展開しましょうとやり取りできないでしょうということをお聞きしてきたわけですよ。

 そういう中で、情報共有をするためには何か禁止されている条項があるんですかとお聞きしたら、前の二月六日の予算委員会のときに、当時の浜田防衛大臣も、防衛省が所管する法令の中で、特定の相手との間で情報共有を行うことを禁止しているものはないと。外務省の方はどうですかということを聞くと、これは外務委員会で聞いたのかな、このときも、外務省所管の法令の中で、日本国政府がそうした情報共有を特定の相手とすることを禁止している条項はないと。

 ということは、台湾ともできるということですよ、やろうと思えば。やる意思がない、あるいは、やることを殊更言いたくないしかない、今の御答弁を見ていると。

 しかし、この時点において、はっきりと、我々は、外交関係はないにせよ、日中共同声明で理解し、尊重はしているけれども、私たちは、台湾当局の存在は現にあって認めているし、どう考えたって、中学校の教科書に書いているとおり、領土があって、国民がいて、軍隊があって、主権があって、法律が統治している。これは国家ですよ。我々が外交関係を持っていないだけで、外交関係を持っている国は世界にはあるんですから。世界のある国の大使館なんて、ちゃんと台北にあるんですから。こういう主権の存在する国と、外交関係はないけれども我々はちゃんとやり取りできるという姿勢をやはり今示すべきだと思うんですね。

 そこら辺について御見解はいかがですか。

岩本政府参考人 まず、日本と台湾の関係は、委員も御承知のとおりで、一九七二年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持する、こういうことになっております。

 この我が国の基本的立場に基づいて、我が国は、民間の窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、これまでも幅広い分野で台湾の各部門とも交流等を行い、その中で、実務的な情報共有、そして協力関係を積極的に推進してきているところでございますので、私どもとしましては、こういう形で引き続き台湾側とも幅広い分野における情報共有を図っていきたい、このように思っております。

和田(有)委員 もうそういう時代ではないと思うから聞いているんですね。そう言って済んでいた時代ではもうない、この緊張感は。

 最初に言ったように、今、アメリカの極東アジアでのプレゼンスは、恐らく下がらざるを得ないと思います。ウクライナにも中東にもこれだけエネルギーを割くことになると、我々である程度のことをやらないと、とてもじゃないけれども、我々の安全保障というのは極めて厳しいものが出てくると思います。

 変なことを言いますけれども、今回の事象で、言葉は悪い言葉を使いますよ、一番ほくそ笑んでいる人は誰ですか。これを考えたら一番分かりますよ。恐らく北京政府は、しめしめ、我々はアメリカが手薄になったところでやりたいことができるわな、こう思っている可能性があると私は思います。

 そうすると、よく世情言われている、二千何年にどうだこうだ、台湾有事が起こる可能性がピークを迎えるとか、そういうことは、私はかなり大きなものになってきているんじゃないかと思うから言っているんです。

 その中で、次にもう一つお聞きしたいのは、事態対処法に定めるところの「関係する外国」という文言なんです。

 令和三年に事態対処法ができました。この事態対処法ができた中で書いているのは、武力攻撃事態及び存立危機事態が起こったときは、日米安全保障条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力するほか、関係する外国と協力を緊密にすると。「関係する外国との協力」という言葉が書いているわけですよ。「関係する外国」というのはどこのことを想定するんでしょうか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました事態対処法第三条の第七項でございますが、これは、第三条全体が、武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処において基本的な理念を明らかにするという規定でございます。そのうちの第七項は、お引きいただきましたように、米国との関係や国際協調に係る基本理念を定めたものでございます。

 そうしますと、この第七項にある「関係する外国」という言葉につきましては、日米安保条約に基づく米国との緊密な協力が我が国の安全保障の基軸となるものであるとの認識の下、米国以外の外国との協力も当然重要であるということから規定されているものでございます。

 したがいまして、この「関係する外国」につきましては、特定の国を念頭に置いたものではなく、武力攻撃事態等や存立危機事態への対処における外国との協力が重要であるとの基本理念を示したものでございます。

和田(有)委員 基本理念であって、特定の国を指しているものではないと言うんですけれども、そのときに、誰が見ても、言葉は悪いですよ、難癖をつけようと思ったら、では、特定の外国とはどこなんだよ、こうなってきます。それこそ、台湾有事のときに、南米ペルーであったりアイスランドとかいうことはないだろうと誰だって思うわけですよ。やはり関係する外国は台湾であって、同意を得る国は北京政府ではないわけですよ、さっきの話に戻ると。

 北京政府に、おたくが攻めてきているから、邦人を保護するために自衛隊機を台湾に行かせますと聞きますか。聞けませんよ、そんなもの。台湾政府ですよ。やはり、実効支配している台湾政府に対して、自衛隊機をこう入れて、こうやってするという作業に入っていくわけです。そういうことを今からきっちりと我々は整理をして発言をする、メッセージを送る必要があると思います。

 そのことを申し添えて、次のものに行くんですが、そこでお聞きするのは、この事態対処の話の中で、事態対策本部というものができるわけですね。これは臨時というふうになっております。しかし、臨時で本当に間に合うのか、常設機関にすべきではないか、そしてしっかり備えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が御指摘いただきましたところは武力攻撃事態対処法の十条でございますけれども、これは、武力攻撃事態等や存立危機事態への対処におきまして、対処基本方針が定められたときは、その対処基本方針に係る対処措置の実施を推進するため、臨時に内閣に事態対策本部を設置しまして、事態の対応に当たるとされているところでございます。

 当然、事態発生時には、時間的な制約がある中でも、迅速的確な判断、調整を行うことが政府として果たすべき責任であり、このため、平素から、様々な事態への対応を想定し、関係機関が連携して様々な準備や検討を行っているところでございます。

 また、武力攻撃事態等や存立危機事態に当たらない状況におきましても、一般に、政府としては、緊急事態の発生時等においては、事態に応じて情報連絡室、官邸連絡室、官邸対策室を設置いたしまして、事態の把握、対処に関する総合調整を迅速に行うこととしております。

 政府としては、これらを通じて対応に万全を期してまいります。

和田(有)委員 万全を期せないだろうと思うから、常設機関にしてやっていくべきだ、こう私は申し上げたわけでございます。

 これは一遍確認しておきたかったんですけれども、職員の規模はどれぐらいを想定されていますか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問を頂戴いたしましたが、政府としては、こうした様々な事態への対応を想定いたしまして、平素から準備、検討、訓練等を行っているところでございますが、事態対策本部の職員数につきましては、事態に応じて決するものであり、また、事柄の性質上、政府の危機管理対応能力にも関係するため、一概にお答えすることは困難でございます。

 いずれにしましても、事態発生時には、時間的な制約がある中でも、迅速的確な判断、調整を行うことが政府として果たすべき責任であり、政府としては、先ほど申し上げましたように、対処に万全を期してまいりたいと考えてございます。

和田(有)委員 そういう状況ではやはり間に合わないだろうと私は思います。やはり常設化して、職員に関してももっときっちりと、人数をはっきりして定員をつくってやるべきだと思います。

 最後に一つ聞きます。資産凍結に関してです。

 この間、パレスチナの関係で、ハマスの資金調達に加担した個人、団体を資産凍結するということが発表されました。その前には、ウクライナの侵攻が始まったときに、プーチン大統領を始め何人かの方の資産凍結をやっています。これは外国為替及び外国貿易法によってやっています。

 そこでお聞きしたいんです。いざ有事が起こったときに、私たちは中国の要人に対して資産凍結をするでしょうか。できるでしょうか。習近平氏に対して資産凍結はできますか。いかがでしょうか。

岩本政府参考人 御指摘の資産凍結でございますが、これは個別具体的な状況に応じて検討されるべきと考えておりまして、この場で予断を持ってお答えすることは控えたいと思いますが、いずれにしましても、その実施等については、その時々の国際情勢や国際社会との連帯も重視しつつ、総合的に検討していくことになると考えております。

和田(有)委員 総合的に判断するということは、中華人民共和国、北京政府の主要な人々に対してもかけることができる、こういうふうに私は思います。それを今はっきりと言うことが抑止になるんだと思うんです。

 ある方からお聞きしたんですけれども、中国政府の要人が最も嫌がることは、アメリカがアメリカに置いている自分たちの資産を凍結することだと言うんです。それをされることが嫌で、最後は交渉に乗ったりすると言うんですよ。

 だから、日本は、いやいや、そんなこと分かりませんわ、できへんかも分かりませんわと言っていたら、それは足下を見られますよ。我々だって習近平氏の資産を凍結しますよ、そういうふうにはっきりと言えば、これはちょっと、余り簡単なことはできないな、こうなるわけです。

 そういう意思表示をすべきだと思うんですが、そこら辺を全部含めて、今日は上川大臣は結局黙っちゃったので、日本は、対中国を見据えても、はっきりと言うべきことは言い、しっかりやっていくということについて、何か御決意はございますか。

上川国務大臣 海外に渡航する、また滞在する邦人の保護は、政府の最も重要な責務の一つであると認識をしているところであります。平素から、こうした様々な状況を想定して、関係省庁とも連携しつつ、各種の準備、また検討や訓練を行っているところでございまして、邦人保護の強化をしっかり図ってまいりたいと考えております。

和田(有)委員 しっかりとやっていただきたいんですが、今、我々は今までとは違う状況にあるということをお分かりだと思いますけれども、しっかりと認識をして、今度、十六日ですか、日中首脳会談があるのかな、ゆめゆめ何でも後ずさりするようなことではなく、言うべきことはしっかり言って、はっきりと物を言って向き合っていただきたいということを申し添えて、終わります。

 ありがとうございます。

勝俣委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦でございます。

 上川大臣に一番最初に申し上げたいのは、就任早々大変なことになっておりまして、これからまた世界中を飛び回っていただくことになりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 皆さんが質問されていることに先立って、まず、先週の土曜日に発生しましたネパールでの地震について伺いたいと思います。

 先国会以来、前任の林大臣の頃からずっと申し上げていますが、地震は他人事ではないということで、今回、ネパール西部の山の方で地震が起こったということですので、現状どのような情報が収集されているのか、あるいは、我が国からどういう支援体制を組んでいらっしゃるのか、教えていただければと思います。

上川国務大臣 十一月四日、これは日本時間でありますが、ネパール西部におきまして発生した地震につきましては、在留邦人の生命身体に被害が及んでいるという情報には接しているわけではございませんが、現地ではこれまでに百五十名以上の死者等の被害が生じていると承知しているところでございます。

 十一月六日、私からサウド・ネパール外務大臣に対しましてメッセージを発出させていただきました。亡くなられた方々に心からの弔意を表し、被災された方々へのお見舞いを伝達するとともに、現地のニーズをしっかりと踏まえた必要な支援を行う用意があるということにつきまして伝達させていただいたところでございます。

 現時点におきましては、ネパール政府からは具体的な支援についての要請はございませんが、引き続き、ネパール当局とも緊密に意思疎通をしっかりと図りながら、被害の状況やニーズについて情報収集をしっかりと行い、被害を受けた地域への支援の必要性につきましてもしっかりと検討してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 今のところ情報がそこまでということなんですが、事前に外務省を通じてこの地震の被害についての詳細をいただいたんですが、その被害状況の中に死者、負傷者、行方不明者、家屋倒壊というのはあるんですが、インフラについての記載が一切ないんですね。そのとき外務省の方にも水道等のインフラは大丈夫かということを申し上げましたが、山奥なのでそもそも水道がないというようなお答えでした。

 ですが、地元のカレー屋さんで話を聞きましたら、そちらの周辺では、飲み水は確かに水道は使っていないんですが、水くみ場や、あるいは川の水、あるいは井戸、こういったもので取水しているということで、地震が起きたのであれば相当被害があるはずだというようなお答えでした。現地の方の話を聞くというのは、そういう意味で大事なことであります。

 ですので、是非、情報収集される際には現地の在外公館を通して情報収集していただいて、ニーズというのはこちらでもある程度把握していただければというふうにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、本格的に質問させていただきたいと思いますが、皆さんと同じようにイスラエルについて質問させていただきます。

 今日の委員会の中でも、皆さんは、入口の、現状、停戦させるのが最優先だというふうにおっしゃいました。これはそのとおりだと思います。なので、その先のことも我々は考えるべきだと思います。

 したがって、この紛争が中断あるいは終了した暁には復興が待ち構えているわけで、そのときに日本政府が何をできるかということを考えなければいけませんが、そのときに、イスラエルとパレスチナを、どういう線引きで彼らを支援していくのかが非常に重要なことになってきますね。

 私は考えたんですが、これは外務大臣に見解を伺いたいと思いますが、今、中東地域では、日本関係船舶の安全確保ということで、自衛隊も派遣して調査をしているんですが、その取組の政令の中には、諸外国との連携ということで、「我が国は中東地域の航行の安全に係る特定の枠組みには参加せず、自衛隊の情報収集活動は我が国独自の取組として行う」という文言が書かれております。これは海上の話ですけれども、陸上でこれからどういうふうに支援していくかというときにも我が国独自の取組、枠組みを設けるべきだと思います。

 先ほどの大臣の答弁の中でも、日本の役割、G7の役割、議長国の役割ということもおっしゃっておられましたので、是非、日本の役割という意味で、日本独自の支援策というものを模索していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 まず、今般のパレスチナのガザ地区における人道状況、これが悪化が著しく、深刻になっているということでございます。ガザ地区の一般市民、とりわけ、未来のある子供たち、女性、高齢者を始めとする脆弱な一人一人に対しまして一日も早く必要な支援を届ける、これが目下の最優先事項というふうに考えております。

 現地の情勢は極めて深刻であるということでありますので、引き続き予断を許さないこともございますが、我が国からは一千万ドルの緊急無償資金協力を決定させていただきました。そして、パレスチナに対しまして、今後、総額約六千五百万ドルの追加的な人道支援を行うべく取り組んでいるところでございます。

 さらに、今般、JICAを通じまして、テント等の支援物資の輸送を開始したところであります。具体的には、今後、食料、医療、水、衛生を始めとして、様々な現地のニーズに沿った支援につきまして、国際機関や日本のNGOと協力しつつ、スピード感を持って実施していくべく準備しているところでございます。

 このうち、日本のNGOによる協力といたしましては、ジャパン・プラットフォームのネットワークを通じまして、食料、生活物資、保健、医療、水、衛生などの分野におきまして、四百四十万ドル、六億円の支援を実施する予定でございます。

 こうした状況でございますので、一日も早く、必要な支援物資を継続して、持続して届けることができるような環境整備、及び、それが適切に一人一人の方に届くように、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。そのお答え自体は、今日の委員会の中でも似たような御答弁をいただきましたので、そのとおりなんだと思います。

 その上で、一点ずつお伺いしますけれども、ウクライナに対して支援物資を送ったときには、たしかドバイに集積していたものを送ったと思います。今回はJICAを通じてテント等ということでしたけれども、もうドバイにあるものは使い切ったということでよろしいんでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 恐縮でございます、今具体的な数値は持ち合わせておりませんけれども、今、元々ドバイにあったものを活用いたしまして、テントであるとか毛布、プラスチックであるとかというのをエジプトの方に既に送り届けたという状況にございます。

鈴木(敦)委員 ドバイにあるものを使っていただいているということでよろしいですね。ありがとうございます。

 それと、もう一つ大臣に伺いたいのは、先ほど御答弁いただいたことに関連しますが、これを日本独自の枠組みとして、イスラエル、パレスチナ、いずれにしても被害に遭われているのは一般市民ですから、そういう方々を救うという意味では国とか地域は関係ありませんので、日本が日本の立場として支援するということをまず念頭に置いて、この点、支援をしていただければと思います。

 更に進めますけれども、ウクライナとロシアが紛争を始めてもう一年、二年たとうとしています。そして、今回はイスラエルとパレスチナで紛争が起こっているということで、紛争の火種が東ヨーロッパから中東に移ってきている状態の中で、これ以上世界中のどこかで大規模な紛争が起こると、それこそ世界が混乱いたします。

 ですので、今後こういった紛争が起こらないように他国とも連携を取っていかなければならないわけですが、G7議長国としてはあと二か月しか残っていませんけれども、今後は中央アジアとも連携を取っていかなければならないと思います。

 既に中央アジアプラス日本の枠組みがあることは承知していますし、林大臣が大臣時代に尽力されたことも承知しております。来年その会合を持たれることも聞いていますけれども、今後どのような姿勢で取り組まれるか、大臣の所感を伺います。

上川国務大臣 ロシアによりますウクライナ侵略によりまして中央アジア諸国が様々な影響を受ける中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化していくためにも、これらの国々との協力と連携は大変重要である、そして、これまで以上に重要になっているというふうに認識しております。

 こうした中におきまして、G7外相会合におきまして、初めて中央アジア五か国と、オンライン形式ではありましたけれども、じかに対話を行わせていただきました。そして、中央アジア諸国からは、こうした対話の継続に向けた期待が示されたところでございます。

 委員の御指摘のとおりでありまして、政府としては、中央アジア・日本対話開始二十周年に当たります来年でありますが、来年中に中央アジアプラス日本対話・首脳会合を開催する方向で、現在、各国と調整を進めている状況でございます。こうした首脳会合を通じまして、日本と中央アジアの関係を一層強化し、中央アジア各国の持続可能な発展に向けて協力を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 持続的な発展のための支援ということですので、もし今頭の中にあればで結構ですけれども、中央アジアの国々とどのカテゴリーで具体的に連携を強化していきましょうかということなんですよ。

 それぞれの課題があると思いますし、日本にできること、できないことはあろうかと思います。その上で、大臣が取り立ててピックアップしたいと思っているようなカテゴリーがもし今ありましたら教えていただければ。

上川国務大臣 具体的にこの枠組みの中で何をするかということについては、よく協議して決めなければいけないと思います。中央アジア五か国との間でやる以上は、中央アジアの連結性ということを非常に大事に考えていかなければいけないということは思っているところであります。

 バイの関係につきましても、当該の国の様々なニーズに応じてこれまでも取り組んでまいりましたけれども、共通の課題、あるいはバイの課題、様々あるというふうに思います。きめ細かな調整をしながら、また対話を重ねながら、こうした方向性について明確に切り取ってまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 連結性という言葉は非常に重要だと思います、特にこういった地域においては。なので、引き続き、きめ細かい丁寧な議論をしていただければありがたいと思います。

 なぜこれを重視するかといいますと、紛争がどんどん東に向かってきているんですね。というのと、東になればなるほど中国の影響下に入ってきますので、我々の声が届きにくくなる可能性もありますので、是非ここはきめ細かく日本の存在感を示していただければと思います。

 次に、連携しているんですけれども、今は中央アジアのお話を聞かせていただきましたが、今後もっと重要になるのは南アジア、インドであります。

 今年七月末に日印フォーラムに私も出席をさせていただいて、外務大臣も一緒にいらっしゃったんですけれども、日印フォーラムでいろいろと議論させていただきました。その中で、彼らとの連携を一番強化できるだろうなというところは、やはりエネルギーの安定供給の問題でした。

 この話は、先方の外務省もそうですし、地元の企業さんたちも皆さん重視していらっしゃるところではあったんですけれども、これまで政府はインドとの連携強化とおっしゃってこられました。例えば、具体的にエネルギーの安全保障の面で連携ができないか。

 例えば、インドは今、人口がすごく多いですね。国土も広いです。これから新幹線も七路線造っていただくので、電力を何としても安定供給しなきゃいけない。そうなると、今のまま石炭を燃やし続けるわけにはいかないと彼らも思っています。ただ、石炭は彼らの主要な産業でもあるので使わないわけにもいかないというジレンマに陥っている。ただ、石炭火力だけでは間に合わない。ではどうしようかといって彼らがかじを切ろうとしているのが原子力発電です。彼らは原発が欲しい。ただ、今インドにある原子炉は重水炉ですから、コストも高いしコストパフォーマンスも悪い、だから軽水炉が欲しいというような話をしておられました。

 日本は、それを建設するための技術があります、造っていませんし、動かしてもいませんが。インドにとっては我々の技術というのは非常に重要なはずです。エネルギーの安定供給の面で連携を取ることができれば、この二か国の関係は最も緊密な存在になれると私は確信しています。大臣はどのようにお考えですか。

上川国務大臣 インドは、我が国と基本的価値と戦略的利益を共有する特別戦略的グローバルパートナーであります。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化におきまして、インドとの関係は極めて重要であります。

 私自身も、就任直後、国連総会に参りましたけれども、その際、ジャイシャンカル外務大臣との間でバイの外相会談を実施させていただきました。二国間協力、また国際場裏での協力、さらに地域情勢について、大変幅広い分野で率直に充実した意見交換を行うことができました。

 今後も、外務大臣とも緊密に連携しながら、日米豪印、また安保理改革に関するG4などの枠組みでの協力を深め、日印関係の強化に努めてまいりたいというふうに感じております。

 インドとの間では、先ほど委員からもお触れになりましたけれども、高速鉄道事業を始めといたします経済分野につきましてはこれまでの長い歴史的な蓄積がございますが、さらに、共同訓練を始めとする防衛や安全保障分野におきましても、また観光などの人的交流分野におきましても、関係を強化していくことについては認識を共有しているというふうに考えているところであります。

 今、エネルギーというところでの取組ということでお触れになりましたけれども、そういうエネルギーの新しい、これからの気候変動に対応した取組につきましても、先端的な技術革新も含めまして共に力を合わせていく必要があろうか、こんなふうに思っております。

鈴木(敦)委員 是非具体化をしていただいて、個別の案件を一つ一つクリアしていただければと思います。

 これはあくまで参考情報として大臣にも申し上げたいと思いますが、日本では最近、線状降水帯が非常に頻発しております。線状降水帯を早期に発見するための気象レーダーというものを日本国内の企業が開発しているんですね。これを幾つも設置すると事前に線状降水帯発生情報が出せるということで、業界団体あるいは政府も気象庁も含めて期待されている技術ですが、こういったものは他国でも使えるわけですね。

 もちろんお値段の話はあるかもしれませんけれども、気象条件が悪くなって異常気象が発生するのはどこの国も同じですから、是非、こういった部分の輸出とか、関係強化に役立てるものをどんどん使っていただいてツールとして活用いただければ、このように考えております。

上川国務大臣 今委員から御指摘いただきました線状降水帯につきましては、日本の中でも、今の集中豪雨等の発生が頻発している状況の中で、それに対してどう予知していくのかというのは極めて重要な問題となっております。

 今おっしゃっていただきましたけれども、気象レーダーによりまして予知していく技術、また、そのシステムということについては、日本は国際社会から大変期待されているところであります。

 私も、大臣になる前の三月でございましたけれども、国連で四十六年ぶりに開催されました水会議に日本の総理の特使として出席いたしました。そして、その中で、特に、事前の緊急の予知システムによってのそれぞれの危機管理ということについて大変大きな期待を寄せられているところであります。

 特に、南アジアのエリアはその意味では被害が非常に大きくなるという傾向もございますので、こうした分野につきましても、積極的に協力ということと、相互に更に学び合う、こういう姿勢も含めて協力してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。力強いお言葉をいただきました。

 できれば日本国内も整備した方がいいと私は思いますが、ただ、すぐにできることではないので、国際的な協力も含めて、人命を守るという点で協力していただければと思います。

 一転して、全く別の議論でございますけれども、今現在、今年、ウクライナ軍に対して自衛隊の車両を供与いたしました。前の委員会のときに私が指摘したのは、ロシア軍も同様の車両を使っているのではありませんかというふうに防衛省さんにも伺いました。防衛省さんはいまだに、画像を見ても判断できない、類似性はあるものの、自衛隊を示す銘板等を取り外しているため、所属していたかどうか確認できない、調査中だということになっています。

 ただ、インターネット上、テレグラムなんかを見ると、明らかにロシア製の武器を積んだ車両が攻撃に使われているわけですね。高機動車の上に大砲を載せて撃っているわけであります。これを見るに、今ウクライナ軍とロシア軍両方が同じ兵器を使って戦闘を行っているという奇妙な状況になっております。

 こういうことが起こらないように、是非、現地の情報等を収集していただいて、外務大臣には助言をしていただいて、これは送ったらまずいんじゃないか、こういう情報も入っているということを積極的にプッシュしていただきたいと思います。いかがでしょうか。

河邉政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘の話がございましたが、他国に対して防衛装備品に当たる自衛隊車両の提供を行う場合は、自衛隊法や防衛装備移転三原則に基づきまして、相手国との間で国際約束をきちんと締結いたしまして、提供した自衛隊車両が我が国の同意を得ないで第三国に移転されることがないよう確認することとなってございます。

 今後も、防衛省を始めとする関係省庁と連携しながら、外務省として、相手国と締結します国際約束を通じまして適正管理を確保していきたいと考えてございます。

鈴木(敦)委員 大臣にお答えいただかなかったので、あえて申し上げますよ。その枠組みから外れた車両がロシアに渡っているという話をしているんじゃないですか。そうでしょう。

河邉政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係につきましては、委員御存じのとおり、防衛省の方で調査を実施中ということでございますので、外務省としてお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、適正管理を確保していくことは非常に大事なことだと思っておりますので、外務省といたしましては、相手国と締結する国際約束を通じ、また関係省庁と連携しながら、適正管理を確保してまいりたい、そう考えてございます。

鈴木(敦)委員 あくまでそれは、ウクライナが他国に売り払ったりしないという話じゃないですか。そんなことをしているとは言っていないじゃないですか。そういう議論をしているんじゃないんですよ。そういうところですよ、両軍で同じような兵器を使うようになっちゃうのは。ここを気をつけていただかないと、日本の高機動車を物まねしたものをロシア軍が使うわけないじゃないですか。それが流れているという情報はあるじゃないですか。それも防衛省が認めたじゃないですか。全然知らなかったようなことを言っちゃ駄目ですよ。

 続けます。大臣に伺いますが、これは別件で、自衛隊機が紛争地帯に派遣されるということが度々この度起こってきていますけれども、今回もドバイへのチャーター便から始まりました。この経緯について御説明ください。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 先般、イスラエルからドバイ行きのチャーター機を手配いたしましたけれども、この手配に着手した時点におきまして、テルアビブから定期商用便は通常の六割ほど運航しておりまして、実際に航空券を購入して定期商用便で出国している邦人も多数いる状況でございました。

 そうした中、とはいえ、航空会社が通常より便数を制限している状況がございましたので、これを踏まえまして、政府としては、早期出国を希望する邦人の方々に対して、迅速に出国するための商用便以外の選択肢を提供する観点から、チャーター機を手配することが適切と考えたところでございます。

 その後、委員御指摘のとおりでございますけれども、十月十三日に、ガザ地区北部住民に対し南部への二十四時間以内の避難警告が発出されまして、また、十四日以降はイスラエル軍による地上軍事作戦が差し迫るという状況でございまして、現地の情勢がこれまで以上に緊張度を増し、流動的になったということを受けまして、政府として自衛隊機の派遣を決定し、十月二十一日そして十一月三日にテルアビブから羽田空港までの邦人等輸送を実施したところでございます。

 引き続き、刻々と動く現地情勢を踏まえながら、関係省庁と緊密に連携しつつ、在留邦人の安全確保に万全を期してまいりたいと考えています。

鈴木(敦)委員 最後に一点だけ伺います。

 その経緯は間違いないと思います。一週間も十日も商用便で直行便を待つというぐらいだったら、一刻も早く国外に出した方がいい、その判断は正しかったと思いますが、その後で、地上戦が始まる、切迫した状況にあるから自衛隊機を派遣しようというのを誰が主体的にインテリジェンスを取ってきて判断しているんでしょうか。防衛大臣なのか、あるいは外務大臣なのか。これは大臣にお答えいただきたいと思います。どなたがどういうふうに発議されるんでしょうか。

安藤(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘の点でございますけれども、関係省庁間で緊密に情報共有を図った上で、政府全体として判断したということでございます。

鈴木(敦)委員 終わりますが、政府全体としてと逃げないで、責任者を決めた方がいいと思いますよ。

 終わります。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、イスラエルの軍事攻撃をめぐる問題について質問します。

 イスラエルの大規模攻撃によって、ガザ地区は子供たちの墓場と化し、人々の生き地獄となっていると言われるほど深刻な人道的危機にあります。圧倒的軍事力を持つイスラエルは、ガザ北部の難民キャンプや医療施設、救急車まで無差別に攻撃し、多数の民間人を殺害しています。この一か月でガザでは死者が一万人を超え、その四割以上が子供と伝えられています。

 イスラエルによる攻撃は明白な国際人道法違反であり、戦争犯罪であります。そればかりか、攻撃の規模と残虐さから見て、ジェノサイド条約が固く禁じた集団殺害の重大な危険に直面しています。

 上川大臣、ガザの深刻な人道的危機の打開は一刻の猶予も許されません。イスラエルによる攻撃中止、即時停戦を強く働きかけるべきではありませんか。

上川国務大臣 ガザ地区の状況につきましては、深刻度が増しているということについて、特に、子供たち、また女性や高齢者の命に大きな被害が及んでいるということに対しまして、私も毎日胸の潰れる思いでこの状況を注視しているところでございます。

 また、同時に、地域に飛び火して情勢が更に不安定化することについても、日本としても深刻な懸念を持っているところでございます。

 その意味で、事態が早期に鎮静化され、また、地域にテロと暴力のない平和と安定が実現することを強く望んでいるところであります。

 こうした中におきまして、今何をすべきか。人道目的の戦闘休止及び人道支援活動が可能な環境の確保をイスラエル側に求め、その実現に向けて尽力することではないかと考えております。このことこそが、現地で苦しんでいる一般市民の惨状を少しでも止めることができるという意味で最優先の課題と認識しております。

 十一月三日に私はイスラエルを訪問いたしまして、コーヘン外相に対しまして、ガザ地区の人道状況の深刻化に言及しつつ、人道的休止が必要であること、そして、全ての行動は国際人道法を含む国際法に従って行われるべきであるということを提起いたしました。

 また、今般のG7外相会合におきましても、ガザ地区における人道危機に対処するための緊急の行動を取る必要があること、そして、人道支援を容易にするための人道的休止及び人道回廊を支持するということ、そして、国際法、特に国際人道法の遵守が重要であることなどで一致したところでございます。

 G7各国は、その後、この実現に向けて努力を継続しておりまして、イスラエル側において一定の動きがあると承知しております。

 事態は予断を許さない状況であります。我が国といたしましても、G7を始め、各国、各機関と緊密に意思疎通を行い、人道状況の改善、そして事態の早期鎮静化に向けてあらゆる外交努力を粘り強くしてまいりたいと考えております。

穀田委員 G7の共同声明があったときの記者会見と大体同じことをしゃべっているだけなんですよね、残念ながら。人道状況の改善とか更なる被害の防止とか言うのであったら、まず、攻撃を中止しなさいと言うことこそ大事じゃないですか。私はそういうふうに思います。

 結局、深刻な事態を前にして、ハマスの行動に対する非難は行っても、イスラエルの蛮行を国際法違反だと批判し、その中止も停戦も求めることはしない。非常に情けないことだと言わなければなりません。人道目的の戦闘休止は戦闘の小休止を求めるものであって、これではその後の戦闘再開を容認するに等しいということなんですね。ここが大事なんですよ。

 かつての事例を引いてみましょう。

 ガザ北部では、二〇〇六年六月にも、イスラエル軍の攻撃で多数のパレスチナの民間人が死傷する事態が発生しました。その際に、外務省は、外務省報道官談話を発出し、イスラエル、パレスチナの双方に最大限の自制をもって対応することを要請すると同時に、イスラエル政府に対して、パレスチナ民間人の死傷及び民間施設の破壊をもたらす行動を避けることを正面から求めました。

 翌七月には、イスラエル軍の攻撃で子供を含む多数のレバノンの民間人が死傷する事態が発生しました。その際も、外務省は、外務報道官談話を通じて、イスラエル軍の軍事行動は域内の緊張を高めるものであり、こうした行動は問題の解決に資さないと厳しく批判した。そして、これ以上の民間人の被害を防ぎ、事態の更なる悪化をもたらさないよう即時停戦を求めると、イスラエルに即時停戦を正面から求めました。違いますか。

上川国務大臣 今般の軍事的な状況におきましての今の深刻化している状況に鑑みまして、今回、この状況を踏まえた上で、この間一貫して対応してきているところでございます。

 こうした深刻化の一途をたどっている状況が更に飛び火して情勢が不安定化する、このことに対しましても深い懸念を持っているところであります。事態が早期に鎮静化されて、地域にテロと暴力のない平和と安定が実現することを強く望んでおります。

 こうした中におきまして、今我々がすべきことは何かということでありますが、まず、人道目的の今の戦闘休止、さらに、人道支援活動が可能な環境の確保、これをイスラエル側に求めること、その実現に向けて最大限の尽力をすることと考えております。現地で苦しんでいる一般市民の惨状を何としても止めなければいけない、その意味での優先課題であると考えております。

穀田委員 二つ言いたいと思うんですね。

 同じことを二回も三回も答弁したらあきまへんで。事務方も同じことを出したら駄目だよ。これを言っておきます。

 それともう一つは、要するに、二〇〇六年のガザ北部での事態は知らないということですよ、それは今話を聞いてみて分かるように。それを聞いているのやから。

 重要なことは、外務省報道官談話にあるように、当時、日本政府は、これ以上の民間人の被害、事態の更なる悪化を止めるためには即時停戦が必要だ、即時停戦こそ民間人の被害と事態の悪化を回避する行動だとして、イスラエルに正面から即時停戦を求めていたということなんですね。それをなぜ今せえへんのかということを私は聞いているわけですやんか。

 結局、イスラエルの行動を自衛権として容認するがために、正面から国際法違反だと批判できない、即時停戦を求めることができないということだと思います。アメリカの態度に追随した余りにも情けない態度だと私は思います。

 ハマスによる攻撃が国際法違反だからといって、自衛権を盾に、圧倒的な軍事力を行使した報復を行い、ガザでのジェノサイドを行うことは決して許されるものではない。今日も生徒さんがお見えになっていますけれども、大臣がおっしゃるようにその被害を本当に止めようと思ったら、小休止ではなくて停戦ということが大事じゃないですか。それは当たり前のことですよ。要するに、その戦闘再開が次はあるということじゃないですか。それをやめさせるために、私は必要だと思います。

 しかも、イスラエルのガザ攻撃の中止と、即時停戦、国連総会決議を遵守した行動が今何よりも求められる。日本政府はそのための外交努力を尽くすべきだ、そのことを改めて求めておきたいと思います。

 次に、政府が進めるイージスシステムの搭載艦の導入問題について質問します。

 イージスシステム搭載艦は、破綻したイージス・アショアの代替として検討するものだけれども、取得経費は、来年度の概算要求額を含め、一隻三千九百五十億円、二隻で七千九百億円、関連経費を合わせると総額は九千億円に上ります。

 防衛省は、二〇二一年二月九日の衆議院予算委員会で、私の質問に対し、一隻二千四百億円から二千五百億円以上と説明していたけれども、当時より一・六倍も膨らんでいるじゃありませんか。防衛力整備計画を策定した昨年十二月の積算と比べても、二千億円増大している。だから、財政制度等審議会は、先月、イージスシステム搭載艦の取得経費が高騰していることを問題視し、ライフサイクルコストが、LCC、維持費を含めた総額です、大きく増加するおそれがあると警告しているわけであります。

 宮澤防衛副大臣、そうならないと言えますか。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 イージスシステム搭載艦の取得経費につきましては、昨年末の防衛力整備計画策定時点の計画額と比べまして、約〇・二兆円上昇しております。これは、策定時点と比べまして、令和六年度概算要求においては次の要因があるためでございます。

 まず一つ目は、イージスシステム搭載艦としての船体設計が進捗したことによる船体建造費の精緻化。二つ目は、円安に伴う為替レートの変動。三つ目は、昨年からの国内外の全般的な更なる物価の上昇。四点目は、アメリカ政府等との協議の進捗による各種装備品、システム等のインテグレーションに係る内容、経費の精緻化。これらを経費の見積りに追加的に反映したことによるものでございます。

 取得経費に関しましては、令和六年度予算への計上をもって完了する計画でございまして、これ以上増加することは想定しておりません。

 以上です。

穀田委員 二〇二一年に私が質問したときも、それ以上は想定していないと言っているんですよ。それやったら、その想定していなかったことに対して、まず反省する必要があるんやないの。何を言っているんだと私は思うわ。いつも想定していないと言って、事実はこれです、また物価が上がりました、円安が続きましたというようなことを言ってまたやることは許されへんよ。言っておきます。

 財政審は、運用や維持コストだけで既存の「まや」型のイージス艦の五千億円を超える費用が必要になると指摘しているわけですよ。現在の取得経費七千九百億円と合わせると、一兆三千億円になるんですよね。必要な経費を積み上げたと規模ありきで突き進めば、五年間で総額四十三兆円という膨大な軍事費が更に上振れし、国民負担が増大するのは明白だということを言っておきたいと思うんです。

 そこで、資料一を見ていただきたいと思います。これですね。イージスシステム搭載艦の能力を記した防衛省の資料であります。

 これを見ると、SM3ブロック2AやSM6のほか、敵基地攻撃能力に使用可能な米国製トマホーク、長射程化した一二式地対艦誘導弾など高額兵器を満載する。しかも、その他、最新鋭のイージス艦と同等以上の能力を保有すると、新たな兵器の追加搭載も想定しているわけですね。日米で共同開発に着手するGPIミサイルもそのとおりですね。さらに、その資料には、イージスシステム搭載艦にはCECという共同の交戦能力を付与するとある。

 CECとはどういうものか、簡潔に言って。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 CECとは、共同交戦能力といいまして、コオペレーティブ・エンゲージメント・ケーパビリティーの略でございます。複数のイージス艦などの間で捕捉した目標情報をリアルタイムで共有することによりまして、遠距離の目標を早期に探知し、対処するためのシステムです。

 簡潔に申し上げました。

穀田委員 安保三文書は、敵基地攻撃能力を一元的に運用する統合防空ミサイル防衛、いわゆるIAMDの構築を打ち出しました。このCECはその一角を担うものであります。

 軍事目標を攻撃するために使用可能な精度の高い情報を複数のイージス艦などの間で即時に共有し、今ありましたように、遠方の軍事目標を共同で攻撃できるようにするものであります。その機能をイージスシステム搭載艦にも装備するということであります。

 そこで、資料の二枚目、イージス艦の対空能力などを記した防衛省の資料です。

 これを見ると、共同交戦能力、CECは、「まや」型イージス艦のほか、米軍の最新鋭のイージス艦にも装備されている。丸印です。これですよね。なるんです。

 安保法制を審議した二〇一五年七月八日の衆議院特別委員会で、中谷防衛大臣は、CECを装備した日米のイージス艦の間では、目標の情報共有は可能だと答えています。

 イージスシステム搭載艦と米軍のイージス艦の間でも、当然目標の情報共有が可能になる、そうですね。一言でいいです。

宮澤副大臣 おっしゃるとおりです。

穀田委員 そうしますと、次は資料の三枚目を見ていただきたいと思うんですね。日米の情報システムの相互運用性を記した防衛省の資料であります。

 このイメージ図を見ると、日米双方は、互いのイージス艦や通信衛星で捉えた情報をCECで共有すると同時に、自動警戒管制システム、ジャッジを通じて米軍からの情報を得ている。

 イージスシステム搭載艦もこのシステムに連接することになるということで間違いありませんね。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のこの資料は防衛省出典のものでございますけれども、これは我々自衛隊の情報共有システムということでございます。

穀田委員 これを見たら、米軍と書いているじゃないですか。このシステムに連接するわね。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 米軍と情報共有可能ということでございます。

穀田委員 最初からそう言ってくれよ。見たら分かるやんか、米軍の船が一緒におるのやから。何を言っているんや。

 資料には、各アセットは、連接されたシステムを通じて、全体として最大の効果を発揮するとあります。つまり、イージスシステム搭載艦がこのシステムに連接しないということはあり得ないんですよ。

 二〇二〇年一月十九日の読売新聞では、在日米軍のシュナイダー司令官がインタビューに答え、戦闘システムをリンクでつなぐ共同交戦能力、CECによって、自衛隊と米軍の能力はより効率的、一体的になると語っています。この説明からも、CECが日米一体化を加速する機能なのは明らかであります。アメリカの司令官が言うとるねんから。

 そこで、もう一度戻りますと、配付資料の二枚目によれば、CECを装備した「まや」型のイージス艦や米軍のイージス艦ではEORというものがあります、可能だと。丸印ですね。このEORとは一体どういうものか、簡潔にお答えください。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 このEORというものは、エンゲージ・オン・リモートの略でございまして、他の艦艇などから得た目標情報を基に、自らのセンサーを使用せずともミサイルを発射、誘導する機能でございます。

 ただ、つけ加えさせていただきますと、ミサイルを発射する際には、あくまでも自らの判断が必要となるものでございます。

 以上です。

穀田委員 EORとは一体どういうものかというのを聞いたんですね。使うときの話を聞いているんじゃないんですよ。自らレーダーを出さずにミサイルを発射するものだということですよね。EORは遠隔交戦と訳される機能のことで、CECで共有した遠方の軍事目標をリモートで攻撃するというものであります。

 昨年十一月二十二日の記者会見で、酒井海上幕僚長は、CECで情報を共有していれば、日米のイージス艦で連携してEORを行うことが理論上は可能だと明言しています。イージスシステム搭載艦も米軍とのEORが可能になるということでいいですね。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、共同交戦能力、CECについては、このシステムを装備している米軍イージス艦と自衛隊のイージス艦との間での情報共有が可能となるところでございまして、それによって捕捉した目標情報をリアルタイムで共有して、遠距離の目標を早期に探知し、対処するといったEORが可能となるものということでございます。

穀田委員 だから、対処するわけだから、簡単に言って、イージスシステム搭載艦も米軍とのEORが可能になるねんねと普通の話をしているねんけれども、要するに、あれやこれや説明せんかて、そういうことだなと確認しているわけですやんか。そうなんでしょう。ノーかイエスかで言って。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 米軍イージス艦と自衛隊のイージス艦との間での情報共有が可能となるところでございます。

穀田委員 やはり極めて重要なんですよね。要するに、いろいろCECの話をしたけれども、EOR、つまり、遠隔交戦とされる機能が可能になるということは、もしこれを本当に認めたとすると極めて重大なことなんです。情報を共有しているだけじゃないんですよ。やるということを明言したということにほかならないと私は思います。

 そこで、資料の一枚目にも、イージスシステム搭載艦にCECを付与する理由について、他艦艇が追尾した対空目標をリモートで射撃、誘導が可能となると記しています。これがEORを示すのは当然自明のことだということになるわけですね。この一連の機能が、分かりますやろ、これを全部見ますとね。そういうことだなということが誰でも分かりますやんか。

 そこで、安保三文書は、安保法制に基づく集団的自衛権の行使として、敵基地攻撃を可能としています。CECやEORは、日本が集団的自衛権を行使する際に使用が排除されるのかということについてお聞きします。

宮澤副大臣 お答え申し上げます。

 CECの装備によりまして、確かに日米間のイージス艦の間の情報共有は可能となりまして、理論的にはEORも可能となると考えられます。しかし、実際にどのような場合にそのような機能を使用するかといった仮定の御質問については、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

穀田委員 排除されないということですよ。そういう可能性、理論上は可能だ、しかも、それはちゃんとできるということになって、やるかやらないかはそのときの判断というような話ですやんか。

 二〇一四年十二月二十八日付の毎日新聞は、防衛省幹部が、集団的自衛権が行使できるようになってこそCECの能力を十分生かすことができると、米軍との連携が念頭にあることを認めていると書いているんですよね、報じているんですよ。だから、CECやEORが、日米共同で集団的自衛権の行使、敵基地攻撃を行う体制の整備の一環であり、IAMDの日米一体運用の具体化なのは明白であります。

 今お話があったように、実際にやるかやらないかという問題までは言わなかったけれども、そういうことが理論上は可能だ。ということは、やるかやらないかの最終判断は別として、それは可能だということでその体制を組んでいるということがはっきりしたということだと思います。私はこのようなことは断じて容認できないということを述べて、終わります。

     ――――◇―――――

勝俣委員長 次に、本日付託になりました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣上川陽子君。

    ―――――――――――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、令和三年二月、英国が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、いわゆるCPTPPへの加入を要請したことを受け、我が国が議長を務めた作業部会の下で、英国の加入条件等について交渉を行ってきました。その結果、本年七月十六日、CPTPPの締約国及び英国の各国代表者により、この議定書の署名が行われました。

 この議定書は、CPTPPへの英国の加入条件として、CPTPPが規定する各分野のルールの英国による遵守、並びにCPTPPの締約国及び英国が互いに付与する市場アクセスに関する約束等について定めるものであります。

 この議定書の締結は、CPTPPの締約国と英国との間の自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合の促進に資するとともに、自由で公正な経済秩序の構築及び英国との二国間関係の一層の強化に寄与することが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

勝俣委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.