衆議院

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第3号 令和5年11月17日(金曜日)

会議録本文へ
令和五年十一月十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 小田原 潔君 理事 城内  実君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 青山 大人君 理事 源馬謙太郎君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      東  国幹君    上杉謙太郎君

      黄川田仁志君    塩谷  立君

      島尻安伊子君    鈴木 貴子君

      中川 貴元君    西銘恒三郎君

      林  芳正君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    穂坂  泰君

      宮路 拓馬君    篠原  豪君

      鈴木 庸介君    松原  仁君

      池畑浩太朗君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    鈴木  敦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   内閣官房副長官      森屋  宏君

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   外務副大臣        辻  清人君

   外務副大臣        堀井  巌君

   財務副大臣        矢倉 克夫君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   経済産業副大臣      酒井 庸行君

   内閣府大臣政務官     神田 潤一君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   外務大臣政務官      穂坂  泰君

   国土交通大臣政務官    加藤 竜祥君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  須藤 明夫君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部企画・推進審議官) 田島 浩志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房儀典長) 島田 丈裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官)           今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 中村 仁威君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 斉田 幸雄君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片平  聡君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           坂  勝浩君

   政府参考人

   (農林水産省農産局農産政策部長)         松本  平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     猪狩 克朗君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 岸川 仁和君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 今給黎 学君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           田中 利則君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十七日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     中川 貴元君

  島尻安伊子君     東  国幹君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     島尻安伊子君

  中川 貴元君     高村 正大君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 この際、堀井外務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務副大臣堀井巌君。

堀井(巌)副大臣 外務副大臣を拝命いたしました堀井巌でございます。

 先日の委員会を公務により欠席させていただいたため、本日、御挨拶を申し上げます。皆様の御理解に感謝を申し上げます。

 様々な外交課題に直面する中、副大臣としての職責を果たしてまいります。

 特に、担当であるアジア大洋州及び中南米諸国との関係強化に努めます。

 勝俣委員長を始め、理事、委員各位の御支援、御協力を心からお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

勝俣委員長 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房儀典長島田丈裕君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官今福孝男君、大臣官房参事官林誠君、大臣官房参事官中村仁威君、大臣官房参事官斉田幸雄君、中東アフリカ局長長岡寛介君、経済局長片平聡君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官須藤明夫君、TPP等政府対策本部企画・推進審議官田島浩志君、農林水産省大臣官房審議官坂勝浩君、農産局農産政策部長松本平君、経済産業省大臣官房審議官田中一成君、通商政策局通商機構部長柏原恭子君、貿易経済協力局貿易管理部長猪狩克朗君、国土交通省道路局次長岸川仁和君、防衛省大臣官房審議官今給黎学君、統合幕僚監部総括官田中利則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上杉謙太郎君。

上杉委員 おはようございます。自民党の上杉謙太郎でございます。

 質問の機会を賜りまして、理事の先生方に感謝申し上げます。

 CPTPPの英国の加入議定書でありますけれども、思い返せば、二〇一六年にTPPがあって、アメリカが離脱ということになった。それから、CPTPPという形で、日本の相当な努力もあって、二〇一八年に発効ということになった。そして、いよいよ今回、イギリスが初めての新規の加盟国になったわけであります。

 今日は、時間も十五分でありますので、的を絞って、CPTPP全体の件と、質問したい内容はグローバルな視点からいろいろあるわけでありますが、私も福島県の米どころの選出の議員でありますから、ここはあえて、英国から貿易交渉において獲得した件について、その後質問させていただこうと思っております。

 最初に、冒頭の質問でありますから、まずは外務省さんに御説明いただきたいと思いますけれども、このCPTPP、英国の加入議定書の概要について御説明いただけますでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 本議定書は、英国とCPTPP締約国との間の加入交渉の結果を踏まえ、CPTPPへの英国の加入条件等についての法的な枠組みを定めるものでございます。

 具体的には、CPTPPの各ルールの英国への適用、物品やサービス等の分野でCPTPP締約国及び英国が互いに付与する市場アクセスに関する約束、本議定書の発効要件等の制度的事項等を定めるものでございます。

 本議定書では、物品分野の市場アクセスに関し、日本から輸出する短中粒種の精米及びパック御飯等について、英国側の関税の撤廃を新たに獲得しております。また、英国から日本への輸入に関しましては、現行のCPTPPの範囲内で合意いたしました。

上杉委員 ありがとうございます。

 早速、農業のことを言っていただいて、ありがとうございます。

 このCPTPP、特にお伝えしたいのは、太平洋を取り巻く地域の協定である、加えてハイスタンダードであるということでありますけれども、今回のイギリスは欧州の国でありますから、我々、太平洋諸国の国から見ると、地球の裏側の国家が、しかもイギリスという国家が加盟してくれたのは、これは、今後CPTPPがより地球規模で拡大していくに当たっていい後押しになったと思っております。

 また、多くの国が今加入申請をして手を挙げているところでありますから、これを日本が主導しているということで、これは大いに、これからある意味、環太平洋地域のみならず、世界全体に、そして貿易、経済の更なる発展に寄与していく、しかも、自由で開かれた真っ当な競争的市場、ルールに基づく貿易、流通、経済、こういった意味で非常に有意義なものであるというふうに考えております。

 そういった意味で、大臣にお答えいただきたいと思いますが、この英国の加入についてどのように意義等をお考えか、教えていただけますでしょうか。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、その持続可能性を維持しつつ、世界に広めていくとの意義を有する協定でございます。

 また、英国は、我が国にとりまして、グローバルな戦略的パートナーであるとともに、重要な貿易・投資相手国でもあります。このようなイギリスのCPTPP加入は、CPTPP締約国と英国との間の自由貿易、開かれた競争的な市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合の促進に資するものと考えております。

 さらに、我が国を含む環太平洋地域、ひいては世界全体の貿易、経済の更なる成長、発展や、自由で公正な経済秩序の構築に寄与することが期待されるところであります。

上杉委員 大臣、ありがとうございます。

 そうだと思います。そして、イギリスにとっては、EUを離脱したわけでありますから、このCPTPPに大いに期待をしているところだろうというふうに考えております。

 そして、全体の話から、細かい英国との貿易交渉の方についてお話を伺いたいと思います。

 今回、内閣官房のTPP担当の方ですとか、外務省さん、財務省さん、また農水省さん、経産省さん、これに関わってくれた人たちに本当に感謝を申し上げたいと思います。

 どうしてかというと、やはり米関係でありますけれども、今回の英国側との交渉において、元々、日英EPAはありましたけれども、そこでは除外になっていた米について関税撤廃を獲得したということであります。これは本当に大きな意義があったと思います。

 農水省さんの資料をそのまま読みますけれども、例えば、精米とか玄米であればキロ二十円、パック御飯であれば八%プラス六十円の関税が撤廃されています。つまり、これで関税はなくなったということですよね。それと、パック御飯は段階的に五年かけて関税が撤廃されるということであります。

 私の福島県は、皆さんも御存じのとおり、米の産地でもありますし、今、例えば、別の話ですけれども、処理水の問題があって風評の被害もあるわけであります。先日は、外務省さん、ロンドンの大使館さんが頑張っていただいて、ジャパン・フェスティバル的な日本祭りもやってくださったということでありました。

 また、ロンドンやイギリスと福島県の関係というのも結構深いものがありまして、例えば、ロンドンの福島県人会は結構盛んな活動をしております。特に、私は白河市というところに住んでいますけれども、ロンドン福島県人会の満山会長は白河市出身であります。また、うちの選挙区の近くですと、天栄村であれば、ブリティッシュヒルズといって、中世の英国の荘園をモチーフにした英国調の施設がありまして、そこが語学研修施設になっています。また、本宮市は英国庭園もありますし、結構盛んであります。

 そういった福島県から見ると、これはグローバルな話なのかもしれませんが、結構ローカルな話で、イギリスにたくさん米を輸出できるんじゃないかと期待が持てるわけであります。

 しかも、関税が撤廃された。確かに別な話で円安という課題はありますけれども、そういった意味では、この関税撤廃を機に、是非とも英国への米の輸出を、別に福島県産米というわけではなくて、日本産米の輸出をしていっていただきたいと考えているところであります。

 そういった意味で、まずは、英国において日本の米の消費量はどのくらいあるのか、農水省さんに教えていただけたらと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 英国での米の消費量といったデータはございませんが、輸出実績につきまして説明させていただきます。

 二〇二二年の英国向けの米、米加工品の輸出実績につきましては、前年と比べまして、米は五六%増の一億六千万円、パック御飯につきましては七%減の四百万円となっております。

 また、直近の二〇二三年一月から九月までの実績につきましては、前年同月期に比べまして、米は五%増の一億二千万、パック御飯につきましては、約二倍、一九四%増の七百万と順調に伸びてきております。

上杉委員 ありがとうございます。

 イギリス国内は、日本の米だけではなくて、例えばインドですとか、いろいろな方々がいらっしゃるわけでありますから、元大英帝国の領土は米を食っているところがたくさんありますから、ジャポニカ種といいますか、日本米以外にも食べる文化もあるでしょうし、そういった意味では、今後しっかりと、イギリスの中で日本の米をもっと食べてもらえるようないろいろなことをした方がいいと思うんですよね。

 農水省さんの方では日本産農林水産品の輸出拡大というのをずっとやってこられて、たしか、もう一・五兆近くまで行っていたと思います。部会等で議論していても、ただ輸出するのも難しいから、マーケットインで、しっかり相手の需要を考えた上で供給していくということで今農水省さんはやっていらっしゃると思います。

 特に、イギリスに限定して見てみたら、関税がなくなるわけでありますから、より一層、イギリスに住まう方々の、日本人もいますし、イギリス人もいます、いろいろな人がいますけれども、そういった方々に食べてもらえるような形でいろいろな施策を打っていく必要があるというふうに考えております。

 そういった意味で、米の輸出増、消費増、輸出額の増加、消費量の増加が期待できると思いますけれども、農水省さん自身はどのようにお考えか、教えていただけますか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 英国におきます日本産米の主な仕向け先でございます、すしなどの日本食レストランの数につきましては、ここ十年間で倍増し、千三百店舗となっております。

 また、パック御飯につきましても、英国を含め、最近、様々な輸出先国から、小売店の需要が増加していると輸出事業者から聞いているところでございます。

 英国への米、米加工品の輸出量は増加傾向にあり、今回、短中粒種の精米等の関税撤廃を獲得できたことから、精米等の輸出に一段と弾みがつくものと期待しているところでございます。

 また、先ほど私の答弁の中で、二〇二三年の実績で、約二倍の一九四%と申しましたが、約三倍の一九四%でございます。訂正させていただきます。

上杉委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。

 生産者側の視点でいえば、田んぼであれば、新規開拓米を作るのであれば十アール当たり幾らとかやっているわけでありますし、生産の現場もそうでありますし、流通から、あと、ロンドンを始めイギリスの各都市でどういう需要があるのかを調査した上で販売していくことが必要かなというふうに思っております。

 また、私たち日本人は、普通に炊飯器があるから、生の米、精米した米を輸出すればいいのかなと思いがちですけれども、イギリス人は炊飯器を持っていないですよね。農林水産委員会でやるべき話かもしれませんが、だからこそパック米があって、パック米は去年が少なかったというお話でありましたけれども、今はたくさん作っているわけでありますから、パック米であれば電子レンジでいける、アルファ米であればカップラーメンみたいにお湯を入れて食べられるわけでありますから、生米、精米、玄米のみならず、加工品でも構いませんから、そういうものを出していって、日本の米はこんなにおいしいのかというふうになっていけば、イギリスで売れてくれば、フランスでもドイツでも、いろんなヨーロッパの各地でも売れるようになると思いますので、是非ひとつ、農林水産品の輸出拡大をやっているわけでありますから、このCPTPPの英国の加入もセットにして、追い風になるわけでありますから、全体としてしっかりと農水省さんに頑張っていただきたいと思います。

 なので、生産者に向けての施策、助成金、また、流通企業の方々、貿易関係の方々への施策等も今後検討していただけたらありがたいと思っております。是非よろしくお願いいたします。

 米の次は、今度は、米以外にも関税撤廃を獲得したものがあります。牛肉、お茶、ブリ等であります。これについて農水省の方から御説明いただけますでしょうか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきました牛肉、緑茶、ブリにつきましては、政府として、輸出重点品目として位置づけているところでございます。

 これらの品目についての英国向けの関税につきましては、二〇一九年二月に発効いたしました日・EU・EPAや、二〇二一年一月に発効いたしました日英EPAにおきまして、既に関税撤廃を獲得しているところでございます。例えば、生鮮の牛肉につきましては、一二%の従価税プラス、キロ当たり約四百円の従量税、ブリについては、冷蔵、冷凍それぞれにつきまして、一八%、一四%だった関税が既に撤廃されているところでございます。

 このような関税撤廃の好機を捉えまして、英国での需要拡大の取組を進めてきたこともございまして、これらの品目の英国への輸出量は増加傾向で推移しているところでございます。例えば、牛肉及びブリに関しましては、昨年、二〇二二年の輸出額は、二〇一八年との比較で約二倍に増加しているところでございます。

 引き続き、経済連携協定も活用しながら、日本産の農林水産物、食品の英国への輸出の更なる拡大に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

上杉委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 イギリスだとフィッシュ・アンド・チップスが有名ですけれども、そのフィッシュを食べてみたら日本産のブリだったという日が来たらありがたいです。ちょっと味が違うかもしれませんけれども。それはちょっと難しいかもしれませんね。

 いずれにしても、例えば、牛肉であれば、今、国内の和牛生産者の皆さんは、単価がどんどんどんどん下がってきているということがあります。なので、日本の和牛を外に出していくことが必要であります。例えば、アメリカの方であれば、日米貿易協定の後、六万五千トンの枠があって、和牛の輸出が拡大してきている。一方でそういうこともあります。それゆえ、イギリスの方もそういうふうにやっていっていただけたらありがたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終了いたします。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党会派、金城泰邦でございます。

 それでは、通告に従いまして、CPTPPへの英国の加入議定書について質疑をさせていただきます。

 CPTPPは、ルール及び市場アクセスの両面において高いレベルの内容を規定しており、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広げていく意義を有する協定であるとうたわれております。

 英国の加入においては、英国が、一、CPTPP協定に含まれるルールを遵守するための手段を有することを確認し、二、物品、サービス、投資、金融サービス、政府調達、国有企業及びビジネス関係者の一時的な入国について、商業的に有意義で最高水準の市場アクセスのオファーを提供することを確認したとされており、協定の高いレベルを十分に満たすことができることが確認されたと伺っております。

 さらに、日本との市場アクセスに関する交渉においても、これまでのEPAの内容に加え、輸出に関する項目で、新たに精米の関税撤廃等、我が国にとって有利な条件で合意されたと認識しております。

 そこで、CPTPPの今後の運用等について質問いたします。

 ルール及び市場アクセスの両面において高いレベルの内容を規定しており、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広げていく意義を有するCPTPP協定に英国が加入することによる我が国に対するメリットをどのように考えておられますでしょうか。

 加えて、円安が進む中、英国がCPTPP協定に加入することで、どのような品目が増え、日本の輸出額はどれほど増額になると試算されているのか。また、これまでCPTPP内での日本の輸出額はどれほど増えているのかについても御答弁を伺いたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくとの意義を有する協定でございます。

 また、英国は、我が国にとって、グローバルな戦略的パートナーであるとともに、重要な貿易・投資相手国でございます。このような英国のCPTPP加入は、CPTPP締約国と英国との間の自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合の促進に資するものでございます。

 英国貿易の観点では、日英間の貿易、投資の枠組みとして、既に日英EPAが二〇二一年一月より発効しており、CPTPPへの英国加入による経済効果も、基本的には日英EPAの経済効果に沿ったものになると考えております。

 その上で、CPTPPへの英国の加入に際して、日本から英国への輸出に関する関税譲許として、例えば、精米や鉱工業品の一部品目については日英EPAを上回る自由化を獲得できたことから、これらの品目の輸出に一層弾みがつくものと期待しております。

 また、日本の英国からの輸入に関する関税譲許に関しては、現行のCPTPPの範囲内で合意したところであり、英国加入に伴う国内産業への影響はないと考えております。

 一方、従来のCPTPP締約国との間の貿易については、CPTPP発効からこれまでの間、新型コロナの世界的拡大や、ロシアによるウクライナ侵略、資源価格の高騰、為替変動等により、CPTPP締約国を含めた世界全体の貿易、投資を含む経済活動が大きく影響を受けております。したがって、こうした影響から切り離してマクロ的な経済効果を評価することは難しい面がございます。

 と申し上げました上で、例えば、日本のCPTPP締約国との間の貿易額は、CPTPPが発効した二〇一八年から二〇二二年にかけて、約一・五倍に増加しております。これは、CPTPPのみによる効果とは言い切れないものの、同じ期間の日本の対世界全体に対する貿易額が約一・三倍に増加したことと比較しても、大きな伸びとなっております。

 このうち、CPTPP締約国への輸出額は、二〇一八年に十・七兆円であったところ、二〇二二年に十三・一兆円と、二二%増加しております。具体的な品目で申し上げれば、例えば、二〇一八年から二〇二二年にかけて、ニュージーランドへの自動車・自動車部品の輸出は四割近く増加し、ベトナムへの冷凍サバの輸出は二倍近くに増加し、カナダへの清酒の輸出は二倍以上に増加しております。

 英国のCPTPPへの加入を踏まえ、CPTPPのメリットが更に生かされることを期待しております。

金城委員 御答弁ありがとうございました。今後への期待が大きくなるかなと思っております。

 質問を変えます。

 今回、英国がCPTPP協定へ加入する際にTPP委員会で確認した事項として、一、協定に含まれるルールを遵守するための手段や、二、商業的に有意義で最高水準の市場アクセスのオファーの二点が挙げられておりました。

 CPTPP協定は、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広げていく意義を有する協定とうたっておりますが、英国加入時に確認した二つの事項はCPTPP協定に加入を希望する全ての国に求められるものなのでしょうか、それとも、国の規模や地域特性等を勘案して個別に決定されるようなこともあるのでしょうか、御答弁を伺いたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 二〇一九年一月の第一回TPP委員会において決定されたCPTPP加入手続において、加入要請エコノミーには、次に申し上げる要件を満たすことを求めることが定められております。

 一つ、CPTPPに規定する全てのルールに従うための手段を示さなければならず、また、二つ、物品、サービス、投資、金融サービス、政府調達、国有企業及びビジネス関係者の一時的な入国についての最も高い水準の市場アクセスのオファーを与えることに同意しなければならない、これらのオファーは、貿易、投資及び経済成長を促進し、また、効率性、競争及び発展を促進しつつ、締約国と当該加入要請エコノミーとの互恵的な関係を強化するバランスの取れた結果の中で、各締約国にとって商業的に意味のある市場アクセスを提供しなければならない。このように定められています。

 したがって、CPTPPへの加入手続は、今回の英国のみならず、今後のあらゆる全てのエコノミーについて、この委員会決定に基づき進められることになります。

金城委員 御答弁ありがとうございました。加入の際のルール遵守は非常に大事だと思っております。

 次に、質問を変えます。

 米国のTPP復帰について、総理からバイデン大統領への働きかけを行っており、外務大臣からも、米国の国務長官や商務長官、通商代表に対して働きかけを行っていると認識しております。米国は、労働者保護の観点から、TPPへの復帰については消極的だという見方がありますが、現在の交渉状況について御答弁ください。

 また、今回の英国のCPTPP加入は米国のTPP復帰に影響はありますでしょうか。大臣の御所見をお伺いいたします。

上川国務大臣 我が国といたしましては、インド太平洋地域の国際秩序へのアメリカの関与を確保するという戦略的な観点から、米国のTPP復帰が望ましいと考えておりまして、こうした立場につきましては、累次アメリカに伝えてきているところであります。

 具体的に申し上げますと、委員が御指摘いただきましたとおり、岸田総理からバイデン大統領に対しまして、また、私からも、個別の会談や、米国時間の十四日に行いました経済版2プラス2等の機会を活用いたしまして、ブリンケン国務長官やレモンド商務長官、タイ通商代表に対しまして直接働きかけを行ってまいりました。さらには、アメリカの上下両院議員、有識者との面会の機会も活用するなどして取り組んできているところでございます。

 英国がCPTPPの高いレベルを満たす形で加入するということは、経済的のみならず、戦略的にも大変大きな意義を有するものでありまして、これは、日米が共に目指す自由で公正な経済秩序の構築にも資するものと考えております。

 我が国といたしまして、アメリカのTPP復帰が望ましいとの立場に変更はなく、米国に対しましては、引き続き、様々なレベルで粘り強く働きかけていくとともに、しっかりと意思疎通を図ってまいりたいと考えております。

金城委員 御答弁ありがとうございました。今後も米国の復帰に向けてしっかり大臣に頑張っていただきたいと思います。

 質問を変えます。

 現在、CPTPP協定に加入申請しているのはどちらの国々でしょうか。

 あわせて、英国の次のCPTPP協定加入申請の審議については、必ずしも加入申請順に行われるとは限らず、TPP委員会でのコンセンサスをもって決定するとされており、英国の加入手続完了まで具体的な検討は始めないと伺っております。CPTPP協定内での意思決定のほとんどが委員会でのコンセンサス制となっていることもあり、次にどの国の加入申請を審議するかは外交における重要事項だと考えておりますが、政府としてはどのように進めていくおつもりなのでしょうか。大臣の御見解をお伺いします。

上川国務大臣 現在、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナから加入要請が提出されているところであります。

 CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、その持続可能性を維持しつつ、世界に広めていく意義を有しているものでございます。

 CPTPPがそうしたハイスタンダードなルールを持続可能な形で履行するための枠組みであり続けるためにも、新規加入に当たりましては、加入要請エコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうか、ここが重要と考えるところであります。

 そのため、我が国といたしましては、加入要請エコノミーがCPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、今後も満たし続けていくという意図と能力があるかどうかについて、まずはしっかりと見極める必要があると考えております。

 加入要請の扱いにつきましては、委員御指摘のとおり、コンセンサスにより決定されるため、他の締約国ともよく相談する必要がありますが、我が国といたしましては、戦略的な観点、また国民の理解も踏まえながら対応していく方針でございます。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 CPTPPは、ルール及び市場アクセスの両面において高いレベルの内容を規定しており、ハイスタンダードな協定であるとうたっております。

 加入に関しては高いハードルがあると認識しておりますが、加入後の締結国がハイスタンダードな協定ルールを遵守しているかの監視やチェックはどのように行われているのでしょうか。今後、発言権の強い大国の加入も想定でき、小国の利益を確実に守る仕組みが必要だと考えております。政府としてはどのように考えているのか、御所見を伺います。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 CPTPPが、自由で公正な経済秩序の礎として、最先端の経済枠組みとして持続可能な形で発展し続けるためには、高いレベルのルールが全ての締結国によりしっかりと履行されている状況を確保し続けることが重要であると考えております。

 委員御指摘のとおり、ルールの履行確保の強化のための具体的な取組として、今後更に、一般的な見直しの議論の中で、高いレベルのルールの導入及び履行確保、強化の重要性を引き続き強調し、他の締結国の理解と実践を求めてまいります。

 また、TPP委員会や小委員会等、CPTPPの中に既に組み込まれている様々な制度的枠組みを最大限活用し、CPTPPの運用における透明性、説明責任、予見可能性を向上させることを通じ、履行確保、強化を図る取組を今後も続けてまいります。

 また、もう一つの御指摘でございますが、締約国間での意思決定は、協定によりましてコンセンサス方式で行われることになっておりまして、国の規模の大小にかかわらず、締約国の利益は守られると理解してございます。

金城委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介と申します。今日もよろしくお願い申し上げます。

 イギリスのCPTPPの加盟についてお伺いさせていただきます。

 イギリス政府によると、加入の経済効果の試算は、イギリスのGDPを〇・〇八%押し上げる。また、マレーシアが特にメリットがある。イギリスの経済にとってはいろいろないいデータが並んでいるんですけれども、産業的には、特に自動車と飲料・たばこが最も拡大すると言われてもおります。

 その一方で、日本については既に二国間での貿易協定が結ばれているので、余り大きな経済効果は日本にとってはないといった声も上がっていて、また、今回のイギリスのCPTPPの加盟によってどのぐらいの数値的な効果が見込めるのかということについても、政府内で試算はしていないということを伺っております。

 確かに、既存の貿易協定とCPTPPのどちらが使いやすいか、選択肢を選ぶといった利便性についてはよくなるとは思うんですけれども、実際、今回の加入によって、日本にとっての最大のメリットというのは何になるんでしょうか。

田島政府参考人 お答え申し上げます。

 英国は、我が国にとって、グローバルな戦略的パートナーであるとともに、重要な貿易・投資相手国でございます。

 御指摘のように、イギリスとの間では日英EPAが既に締結されていますけれども、英国がCPTPPへ加入することで、CPTPP締約国と英国との間の自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合の促進に資することになります。

 さらに、我が国を含む環太平洋地域、ひいては世界全体の貿易、経済の更なる成長、発展や、自由で公正な経済秩序の構築に寄与することが期待されます。

 日本から英国への輸出という市場アクセス面では、我が国は、本議定書において、特に農産品では、短中粒種の精米、パック御飯等の関税の撤廃を新たに獲得いたしました。これにより、世界的な和食ブームの中で、輸出重点品目の一つである米、パック御飯、米粉及び米粉製品などの輸出拡大に一層の弾みがつくものと期待しております。

鈴木(庸)委員 是非、数値目標も持って、これぐらいはやりたいというのも、やっていただければと思います。

 御案内のように、今回イギリスが加盟しましたけれども、イギリスの直後に、中国と台湾についてもそれぞれ加盟申請をしているという中で、中国の今の貿易の状況を見ていると、CPTPPの様々な要求に応えるというのもなかなか難しいのではないかなと感じてはしまうんですけれども、中国に対しては今後どういった対応を取っていく予定でしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、その持続可能性を維持しつつ、世界に広めていく意義を有しております。

 CPTPPがそうしたハイスタンダードなルールを持続可能な形で履行するための枠組みであり続けるためにも、新規加入に当たっては、加入要請エコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうかが重要となります。

 中国の貿易慣行に関しましては様々な意見があると理解しております。中国がCPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、今後も満たし続けていくという意図と能力があるかについて、まずはしっかりと見極める必要があると考えております。

鈴木(庸)委員 これは台湾についても同じような答弁になりますよね。そうですよね。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 台湾につきましても、同様にしっかりと見極めていく必要があると考えております。

 台湾は、我が国にとって、基本的な価値を共有し、緊密な経済関係を有する極めて重要なパートナーでございます。また、かねてから加入要請に関し、様々な取組を公にしていると承知しております。我が国として、そのような台湾による加入要請を歓迎しておるところでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。

 まずRAAがあって、次に広島アコードで。安全保障上の課題に対して、広島アコードの中では、より密接に協議、大規模で複雑な共同演習、計画のプログラムを実行することにコミットする、両国の防衛、安全保障分野の産業連携に取り組むと。

 さらには、この広島アコードの中ではCPTPPについても述べられていて、自由、公正かつ強靱な、ルールに基づく国際経済秩序を擁護し、経済安全保障上の課題に係る緊密なパートナーシップにコミットする、また、人工知能や量子などの新興技術分野も含めて、戦略的優位性の維持に向けて取り組むと。広島アコードでも、イギリスとの関係については更に高めるということが発表されております。

 これで申し上げたいことは、防衛戦略を柱に、ありとあらゆる分野で、これからイギリスとの関係を深めていこうという姿勢が示されているんですけれども、こうした一連の流れが、一部で、日英が結束することについては、新しい日英同盟ではないかみたいなことも言われているのも事実であります。

 事実、イギリス大使館の大使室長というポストも、これまではローカルポストだったのが、今年から外交官のポストになったと。それぐらいイギリスとしても日本の外交に力を入れてこようとしているのかなというのをとても感じるところでございます。

 二十世紀初頭の日英同盟では、御案内のように、大国ロシアのアジア進出の牽制が目的で、一方が戦闘状態になったときには他方の締結国も参戦するといったことでありました。今回の新たな日英同盟とも言える動きについては、今後、日本とイギリスの関係をどうしたいのか、どうなっていくのか、大臣に伺いたいと思います。

上川国務大臣 我が国の外交政策の推進に当たりましては、同盟国、同志国との連携は不可欠と考えております。英国を含みます基本的価値また原則を共有する国々、パートナーとの協力関係を更に強化していくことは重要と考えております。

 英国は、EUからの離脱後、グローバル・ブリテンとの方針を掲げ、インド太平洋地域への傾斜を表明し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて日本との協力を重視しております。同地域への積極的な部隊派遣やCPTPPへの加入の意図表明はその一環であると考えられます。

 このように、英国は我が国にとりまして極めて重要な同志国でありまして、両国は基本的価値また原則を共有するグローバルな戦略的なパートナーと考えております。そのようなパートナーとして、日英は、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢を含みます国際社会の諸課題への対応につきましても、緊密に連携をしてきているところであります。

 御指摘いただきました日英の部隊間の協力円滑化協定の締結でありますとか、日英広島アコード等の動きもその延長にあるものと考えておりまして、政府といたしましては、今後とも、広島アコードの着実な実施を通じまして、国際社会の諸課題への対応におきまして、引き続き緊密に連携していく考えでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。

 CPTPPの流れと関連して、イギリスと日本のワーキングホリデーの数を増やすと伺っております。

 まず、日本からイギリス、そしてイギリスから日本へのワーキングホリデー、今後、年間想定数はどのぐらいになるのか、教えていただけますでしょうか。

中村(仁)政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のワーキングホリデーの制度でございますが、今回、人的交流に関する両国間の協力覚書というものを作成いたしまして、日本のワーキングホリデー制度とイギリスの該当する制度、それぞれの発給数の上限を六千人に増加させるということを確認した次第であります。

 実際の発給数でございますが、これは、双方の国におけます経済情勢ですとか相手国に対する関心の高まり、こういった様々な要因によって左右されるので、現時点で確たる予測をすることは容易ではございません。その上で、彼我の間の渡航者数の多さを考慮いたしますと、今後、双方において確たるニーズはあるであろうというふうに考えておりまして、また、政府といたしましても必要な周知は行っていく考えであります。

 今回の査証発給数の上限引上げが、二国間関係の未来を担うより多くの日英の若者に対して、新たなつながりを育む機会を提供することを期待しておる次第であります。

鈴木(庸)委員 千から六千に増やした最大の目的というのは何になってくるんでしょうか。

中村(仁)政府参考人 お答えいたします。

 今回の上限の引上げの目的でございます。

 国と国との関係である外交の基本は、何といっても人と人とのつながりと信頼関係であると考えております。

 今年の五月に、日英両国の首脳間で、強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコードが発出されたわけですが、ここでは、両国が、観光、留学、研究協力、文化芸術、ワーキングホリデー、こういったものを含む人的交流の再活性化に向けて協力することを確認した次第であります。

 それを踏まえまして、今回、先ほど申し上げました協力の覚書におきまして、注力すべき協力分野の一つとして、ワーキングホリデー査証の発給数の上限の引上げを行ったところです。

 これによって、若い世代の交流が更に活発化し、日英関係において人的な交流が促進されて、二国間関係の一層の強化に向けて盤石な礎へと成熟するということを期待している、これが今回の引上げの目的でございます。

鈴木(庸)委員 日本から向こうに行く人は恐らく六千人に増えてくると思うんですけれども、逆に、イギリスから日本に来る人は千人から動かないというような見立てがあると思います。

 いろいろな視点があると思うんです、交流とか。ただ、現実問題として、二年間ですから、イギリスのワーキングホリデー、毎年一万二千人もの二十代の好奇心の強い若者が労働力としてイギリスに行ってしまうわけですよね。向こうからはほとんど、千人ぐらいしか人が来ないということになると、今、テレビでもよく、オーストラリアに行った、アメリカに行った、カナダに行った、自分の暮らし向きはこんなによくなったという出稼ぎの番組が増えていますけれども、いよいよ本当に出稼ぎの時代に突入する引き金を引いてしまうのかなと大変危惧をしております。

 ワーキングホリデー、私も小さい会社を経営していたんですけれども、よくワーキングホリデーの人たちが来ると、結構乗りで来て、まあ何とか仕事は見つかるだろうみたいな感じで日本に来る方もいらっしゃるんですね。

 何を危惧しているかというと、日本からイギリスに行って、ワーキングホリデーの皆さんが余り英語がしゃべれなくてもできる仕事というと、日本食の、和食のレストラン、特に日本人の経営者の方のレストランみたいなところが、ここが中心になってしまいます。私もロンドンに住んでいたんですけれども、こういう状況はあるのは事実なんですけれども。

 昨日の夜、実際、和食の求人がどれぐらいあるのかなと見たら、ほとんどないんですよね。ロンドンだけじゃなくて、イギリス全土に広げてみても、先ほど和食レストランが千何百とありましたけれども、これは日本人の経営のレストランでは多分ないと思うので、なかなか仕事がワーホリの皆さんは見つからないと思うんです。ですから、ホリデーの部分は満喫できるんですけれども、ワーキングの部分については機能しないということが、一万二千人もいると十分に予想されるかと思います。

 例えば、六か月以上向こうに滞在すると、イギリスの保険制度のNHSに加入できて何もかも無料になる話とか、でも、NHSだと歯医者はその対象にならないとか、そういう細かい話とかというのを多分知らないでぽんと行ってしまうケースがあると思うんです。

 そうすると、英語もほとんど話せないで、自分が成長する仕事も見つからないで、少し、四十何万円のお金を使い切ってすぐ帰ってきてしまう。それでも海外に見聞を広めに行ったということを言えるのはいいとは思うんですけれども、今後国際的な人材として育っていただくためには、やはり英語が話せるようになって、そして得難い経験をして、二十代の皆さんには帰ってきてほしいと私は思っております。

 枠は増やしました、あとは勝手に行けというのではいけないなと思っておりまして、こうした人々に対して、今後、単に枠は増やします、あとは勝手にやりなさいということではなくて、何らかのガイダンスみたいなものをする予定はあるんでしょうか。

中村(仁)政府参考人 お答えいたします。

 ワーキングホリデー制度、この制度の趣旨でございますが、二国間の取決めなどに基づいて、それぞれの国の青少年に対して、休暇目的の入国、そして滞在期間中における旅行や滞在資金を補うための付随的な就労を認める、こういう趣旨の制度でございます。それぞれの国が、自らの文化や生活様式を理解してもらう機会を相手方の青少年に対して提供して、それによって相互理解を深める、こういったことを目的としておるわけです。

 そのような制度の目的、趣旨との関係におきまして、先ほど委員の方から出稼ぎになっているのではないかというような御指摘もございました。渡航先で就労するという特徴はございますけれども、制度の目的は今申し上げたようなことで、相互理解の促進ということで、期間も一、二年に大体限定されておるというわけでございます。

 今申し上げたようなことでございますけれども、制度の趣旨を踏まえた形でこれからも運用がされていくように、私どもとしても、その実態についてはよく見ながら、不断に改善を図っていきたいというふうに思っています。

鈴木(庸)委員 終わります。

勝俣委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 まずは、英国のCPTPP加入についてお伺いします。

 先ほど来、ほかの委員の皆様からも事業者へのメリットとか経済効果等の質問がございましたけれども、私の方から、今回、英国のCPTPP加入もそうなんですけれども、今、日本も、東アジア地域の包括的経済連携、RCEPですとか、日本、EUの経済連携協定など、経済連携協定などの締結国の貿易額が日本の貿易の八割を占めるようになっている中で、これは一般の消費者、日本国民、消費者にとってどういったメリットがあるのか、どういったメリットを享受しているのか、そういったものを私はもっと広く国民の皆様に伝える必要もあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺の状況について、まずはお伺いいたします。

田島政府参考人 お答えいたします。

 日本とCPTPP締約国との間の貿易額は、CPTPPが発効した二〇一八年から二〇二二年にかけて五三%増加しております。これはCPTPPのみによる効果とは言い切れないものの、日本の対世界全体に対する貿易額の伸びが三二%の増加であったことと比較しても、大きな伸びとなっております。

 CPTPP締約国から日本への輸入に関して見ると、同時期に七六%増加しております。貿易額の増減には様々な要因があり、輸入の増加には直近の資源価格の高騰などの影響もあると考えられますが、日本の世界全体からの輸入額の伸びである四三%の増加と比較しても、大きな伸びとなっております。

 一般論で申し上げれば、輸入の増加は、内外価格差を縮小させ、実質所得を増加させるといったプラスの効果があるとされております。国内消費者がCPTPPの関税削減により享受したメリットについて、個別品目を例示して定量的にお答えすることは困難ではございますが、例えば、CPTPP締約国であるカナダから輸入するカニの関税が撤廃されるなど、消費者がCPTPP域内の様々な商品を安く手に入れることが可能となっております。

 今後も、様々な角度からCPTPPの効果を検証してまいりたいと思います。

青山(大)委員 これはちょっと大臣に聞きたいんですけれども、先ほども今後のCPTPPの加入の方針とかもありましたけれども、CPTPPに限らず、大臣として、こういった経済連携協定を今後どう考えていくのかという話と、今参考人の方から御答弁がありましたけれども、広く国民の皆さんにとってどういったことがメリットにつながっているのかというのを、私はやはり、そこは伝えていった方がいいと思うんですよね。そういうのを感じないと、なぜ広げていくのかと。

 どうしても、経済連携協定を結ぶ際、関税削減の事業者へのメリット、ここは必ず出てきますけれども、同時に、国内の農業の皆様方への影響と必要な対策というところは当然議論すべきところなんですけれども、そこはもちろん大切な部分なんですけれども、やはり一般的な消費者の皆さんにどういうメリットがあるのか、そこをしっかり伝えていくことが私は必要かなと思うんですけれども、大臣のお考えをお伺いいたします。

上川国務大臣 この経済連携協定でありますが、貿易、投資の促進という経済的な意義のみならず、相手国との外交関係の強化、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の構築、これに基づく地域や世界の安定と繁栄の確保に資する、大きな意味で外交そしてまた戦略的な大変高い意義があるものと考えております。

 今委員から、国民の皆さん、特に消費者の皆さんが、こうした大きな仕組み、取組につきまして理解をしていただくことは非常に重要なことと考えております。物も、そして情報も人も移動している状況でありますので、そういう中に私たちの暮らしがあるということを考えると、この一つずつの枠組みが直接どんな影響があるかということを知っていただく、理解していただくことが極めて重要と考えますので、枠組み全体の制度論と同時に、それを広報していく力ということについても併せて実践していきたいと考えております。

青山(大)委員 是非、大臣、まさに広報の部分、是非とも今後更に強化してほしいと思って、要望させていただきます。

 次の質問に行きます。

 当委員会でも二回質問させてもらったんですけれども、高速道路に関する訪日外国人旅行者向けの周遊定額パス、いわゆる外国人の高速道路乗り放題パスについてですけれども、このパスの目的について改めてお伺いいたします。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 高速道路の訪日外国人向け周遊パスは、外国人旅行者による観光振興や地域活性化のため、レンタカーを利用する外国人を対象として、高速道路会社が販売をしているものです。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、令和二年四月から新規の販売を停止しておりましたが、令和四年十一月以降、順次販売を再開しております。

 訪日外国人向け周遊パスは、周遊エリアの自治体や観光団体も参画の上、地域一丸となって企画やプロモーション活動を行っており、そうした地域の関係者からも、観光振興や地域活性化への寄与が大きく期待されておるところでございます。

 国土交通省といたしましても、周遊パスの御利用により、訪日外国人が国内の対象エリア内を周遊する観光が促進されることから、国内各地に広く経済効果が生まれるものと認識をいたしております。

青山(大)委員 まさに今政務官がおっしゃったように、これが始まった八年前、九年前に関しましては、当時、二〇二〇年東京オリンピックに向けて訪日外国人四千万人という目標の中で、当時の為替の状況も踏まえまして、確かに私は一定の効果があったというふうに、別に真っ向から批判しているわけじゃないんです。

 ただし、その後約三年、新型コロナウイルスの感染拡大がございました。その中で、今為替も円安になっています。そういった外国人向けの高速道路乗り放題、ほぼ無料のパスをわざわざ日本が出さなくたって、私は、訪日外国人はたくさん来ますし、彼ら自身で様々な観光地へ行くというふうに思っているんですよ。

 さらに、このパスの問題点は、日本人向けの高速道路のいわゆる乗り放題パスもあるんですけれども、日本人の割引よりも外国人の割引の方が圧倒的に多いんですよ。ですので、私は、日本人は高い高速道路料金を払っているのに、なぜわざわざ外国の皆様たちにそういう乗り放題パスをやるのかというのが問題だということを言っているんですよ。

 今現在も、十年前みたく、非常に円高でなかなか外国人の旅行客が来ない、そういう中で需要喚起をしようという時期だったらこういう政策もありかなと思うんですけれども、全く状況は変わっていると思うんです。恐らく、政務官の御地元長崎でも、本当にたくさん観光客が来ると思うんですよ。ただ、もう今の時代、このパスがなくたって、外国人の観光客は来ると私は思うんですね。

 むしろ、日本人が旅行をしたくても、今のこの物価高、円安でなかなか海外へ旅行できません。そういう中で、日本人の方たちがしっかり国内で旅行できるような、そういった需要喚起をすべきだと思うんですけれども、政務官のお考えをお伺いします。

岸川政府参考人 お答えいたします。

 訪日外国人の割引の方が日本人向けに比べて安いというところについてでございますけれども、そちらにつきましては、実際の価格としては日本人向けの方が高くなっておりますけれども、元々この周遊パスというのは、債務の償還に影響を与えない範囲で設定する、つまり、大きく損をしない、もうけるものでもないということで設定をしております。したがいまして、最終的に割引率が一緒であれば、日本人であっても外国人であっても公平ということになります。

 ちなみに、やはり、実際にパスを使う場合には、日本人の方の方が長い距離を利用されるということになりますので、結果的には、割引率、お得感というのは、日本人、外国人、変わらないというような料金の設定になっているところでございます。

 日本人向けのツーリズムについてもしっかりやっていく、この外国人向けの周遊パスについても、地域の要望、そして地域の方も一緒になって取り組んでいるものでございますので、しっかり引き続きやっていきたいというふうに考えております。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 国土交通省としては、この訪日外国人向け周遊パスは、外国人観光客を日本に呼び込むためだけでなく、外国人の観光需要を国内の各地域に取り込む効果があるものと認識をいたしております。

 また、訪日外国人向け周遊パスは、周遊エリアの自治体や観光団体も参画の上、地域一丸となって企画やプロモーション活動を行っており、そうした地域の関係者からも、観光振興や地域活性化への寄与が大きく期待されているものと認識をいたしております。

 高速道路会社に対して販売中止を働きかける予定はありません。

青山(大)委員 私は、政治家として政務官のお考えを聞きたいんですけれども。

 ですから、先ほど償還の話もあったんですけれども、別に、割り引かなければもっと収入が入ってくるわけじゃないですか。しかも、更に問題なのは、訪日外国人のレンタカーの事故がやはり増えているんですよね。何で、外国人の皆さん向け、もちろんたくさん観光に来てほしいんですけれども、我々の税金を間接的に使って呼び込んで、しかも事故も増えている、そういう中で、今の状況でわざわざこの政策を続けることが妥当か否かという話をしているんです。

 以前のコロナ前のときなんかには、私は一定の効果があったという評価はしているんですよ。ただ、そこから時代が変わって、円安になって、変わっている中で、そんな無理に続けなくてもいいじゃないですか。ほかにもっと別なものに使うべきじゃないかというような、別に批判じゃないんですよ、政務官。そういうのを政務官が政治的な判断をしてほしいというので、私は質問したわけでございます。どうでしょうか。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 同一エリア、同一期間のパスで比較すると、日本人向け周遊パス利用者と比べて、訪日外国人パス利用者の方が走行実績距離が短い傾向にあることから、結果的に訪日外国人周遊パスの方が価格設定が低くなっているところです。

 訪日外国人向け周遊パスに対して、走行実績に見合わない高い販売価格を設定した場合、周遊パスによる誘発効果が減少し、結果として、新たに高速道路を利用する外国人の減少が想定されると認識をいたしております。

青山(大)委員 もう時間なので。政務官のお考えを聞きたいんですよ。

 ですから、今のこの円安の状況ですとか、訪日外国人、先月もコロナ前に比べて過去最高を記録したという結果も残っているわけじゃないですか。そういう中で、外国人の皆様に優遇するこの高速道路の周遊定額パスについては今後見直すことも必要でないかというのに対して、政務官はどうお考えですかというのを聞いているんです。

勝俣委員長 時間が来ているので、簡潔に。

 では、先に岸川道路局次長。簡潔にお願いします。

岸川政府参考人 お答えいたします。

 委員のおっしゃる意見ももっともな部分はございますけれども、やはりこちら、外国人向けの周遊パスにつきましては、地域からの要望、そして地域と一体となってプロモーション等をやっております。また、なかなか電車やバスだけの公共交通機関ではアクセスしづらいところも、このようにレンタカーを使って行くということで、日本に来ていた観光客をより広い地方、地域の誘客へと導いていくということで、全体を考えた場合においても、このような施策は有効であるというふうに考えております。

青山(大)委員 岸川さんの考えは分かりました。

 私が聞きたいのは、加藤政務官のお考えを聞きたいんですよ。長崎出身の、選出の加藤政務官、これが今後も必要なのか、それとも、私は見直すべきだ、そこを、政務官のお考えを聞いているんです。政務三役に聞いています。

勝俣委員長 加藤大臣政務官、時間が過ぎているので、簡潔にお願いいたします。

加藤大臣政務官 しっかりと取り組んでまいります。

青山(大)委員 政務官、政務三役はお飾り物じゃないと思いますよ。

 多分、御自身も長崎出身で、お父様が議員をやられたんですかね、分かりませんけれども。しっかり、そういう御自身の考えを持って、是非国土交通行政に取り組んでほしいと思います。よろしくお願いします。

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 参議院の外務委員会でかつて道井内閣官房推進審議官が、英国の加盟により、太平洋を越えて、CPTPPが世界全体の貿易、経済の更なる発展に寄与すると発言をされているわけであります。

 CPTPPは、元々は環太平洋パートナーシップでありましたが、地理的概念にとらわれないということでよろしいでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 CPTPPにおいては、新規加入対象国、地域について地理的な限定は付されておらず、環太平洋地域に属さない国、地域であっても、合意が得られれば加入することはできます。

松原委員 このCPTPPも、世界の普遍的な、ゴールデンスタンダードとか、こういうふうに言っているわけでありますが、それを目指すのであれば、多くの国々に参加を募っていかなければいけない、このように思っています。

 私は実は、かつて地上デジタルテレビ放送において、日本・ブラジル方式というものがありました、日本・ブラジル方式が、ポルトガル語言語圏諸国、CPLP諸国において大きく影響力を確立をしたという経緯があるのを知っているわけでありますが、この経緯についてお伺いいたします。

斉田政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員の方から御指摘のありました地上デジタル放送日本方式につきましては、ポルトガル語圏諸国国際機関、CPLPに加盟している国々において、まず、二〇〇六年にブラジルで初めて採用されました。その後、日本とブラジルが協力し合い各国に働きかけたところ、二〇一三年に欧州方式を採用することを決定したアンゴラが、二〇一九年に、決定を撤回し、日本方式を採用する旨決定をしたと承知しております。

 普及の程度につきましては、ブラジルでは、二〇〇七年に地上デジタル放送を開始し、既に全国でデジタル放送を実施しております。二〇一六年以降はアナログ放送の停波を進めており、二〇二三年までに、デジタルのみを放送する完全デジタル化を目指す計画であると承知しております。また、アンゴラにつきましては、まだデジタル放送を開始しておらず、実施に向けて準備中というふうに承知しております。

松原委員 今かいつまんだ説明があったわけでありますが、この日本方式、ISDB―Tですね、これは日本・ブラジル方式ということで、十九か国が今までこれを採用している。やはり、グローバルスタンダードを取りに行くというのは大変な国益につながるということは、従来から私も申し上げているし、委員の皆様も御理解をしていると思っております。つまり、そういった意味において、このCPLP諸国における地上デジタルは、一つの我が国における成功事例として考えていくべきだと思っております。

 そして、その成功事例を、実際、日本とブラジルが中心になって、ポルトガル語圏諸国、昔ポルトガルの植民地であった地域を中心にしながら経済連携が行われているわけであります。こういう国々との連携を深めながら、日本はオブザーバー参加をしているわけでありますので、この国々をCPTPPに入れていくことは、私は、我々にとってまた一つの大きなチャンスをつくるものではないかと思っておりますが、この御見解を大臣にお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 今の御質問でございますけれども、まさに、CPLP、ポルトガル語圏諸国共同体につきましては、日伯の方式がかなり広がったということで、大変重要な役割を果たし、また、その影響は大きかったというふうに理解をしているところでございます。

 CPLPにつきましては、委員御指摘のとおり、二〇一四年に日本はオブザーバー国となっておりまして、それ以降、更にCPLPの加盟国との間で様々な形での協力を進めてきているところであります。CPLPがグローバルな影響力を有することを踏まえまして、引き続き、こうした加盟国との連携に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 もうCPTPPについては何度も説明をしているところではありますが、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、持続可能性を維持しつつ世界に広めていく、大変大きな構想でスタートしているところであります。

 CPTPPがそうしたハイスタンダードなルールを持続可能な形で履行するための枠組みであり続けるためには、新規加入に当たりましては、そのような意義を共に実現をするパートナーとしてふさわしいかどうかを見極めていくということが極めて大事だというふうに思っております。

 現時点におきましては、CPLP加盟国からCPTPPへの加入要請はなされておりませんが、我が国といたしましては、引き続き、加入に関心をお示しいただくエコノミーの動向を注視しつつ、また、戦略的な観点、国民的な理解、こうしたものを踏まえながら対応していきたいと考えております。

松原委員 とにかく拡大をすることが、国際ルールの中においてCPTPPの強さを持つことになるのは当然であります。加盟申請の申出がないということでありますが、CPLP諸国に対しては一定の働きかけをする、そういった御意思はあるかどうか、これも確認をしておきたいと思っております。担当の政府参考人で結構ですよ。お願いします。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも御答弁させていただきましたが、現時点において、CPLP加盟国からCPTPPへの加入要請はなされていない状況ではございます。

 他方、我が国としましては、引き続き、加入に関心を示すエコノミー、CPLP加盟国等がもしそのような状況になりましたら、そういうこともあり得るかと思いますが、動向を注視しながら、戦略的観点や国民の理解も踏まえながら対応していきたいと考えている次第でございます。

松原委員 事前にもっと詰めておけばよかったんですが、CPLP、この国々がCPTPPの加盟に向けて様々な準備をするとか、やはり一つの経済的なグローバルなグループをどう引き込むかというのは極めて戦略的に私は重要だというふうに思っておりまして、外務省はそういう戦略的な発想が残念ながら十分にあるようには見えませんから、CPTPPがそれだけのゴールデンスタンダードであるというならば、是非検討し、そして、CPLPにおける地デジの成功等もあるわけですから、これをCPTPPに入れる努力をするべきだということを強く要請をしておきたいと思っております。

 次に移ります。時間もなくなってまいりましたので、一つの質問は後にします。

 現在、イギリスが加盟を申請し、承認する方向での議論が進んでいるわけでありますが、イギリス以外にどのような国がCPTPPに参加をしようとしているのか、要請をしているのか、お伺いします。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、複数のエコノミーから加入要請が提出されています。具体的には、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナの六か国でございます。

松原委員 現在、その審査はいかがになっていますか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、今御説明したとおり、複数のエコノミーから加入要請が提出されておりますが、今後のプロセスの詳細についてはまだ決まっているところではございません。

 その上で、本年七月及び十一月のCPTPP閣僚共同声明においては、協定のハイスタンダードを満たす用意があり、貿易面でのコミットメントを遵守する行動を示してきたエコノミーによる加入要請に対してはCPTPPが開かれていること、意思決定は参加国のコンセンサスにより行われること、それによって、加入手続を通じてCPTPP参加国にとっての利益が拡大し続けること等を確認しております。

 また、これまでも、新規加入に関しまして参加国間で緊密に意思疎通を図ってきておりまして、加入要請エコノミーがCPTPPのハイスタンダードを満たせるかどうかや、貿易、投資に関するコミットメントの遵守状況等について情報収集や意見交換を行ってきているところでございます。

松原委員 このCPTPPのゴールデンスタンダードであるというところの質問は今割愛して進んでいるわけですが、先ほど金城先生の質問にもありましたが、そこにどういうふうな国が入るかによって、本来持っているCPTPPのよさというか、極めて透明性のあるよさが阻害される可能性は我々はきちっと認識をしていく必要がある、このように思っております。

 今回、今の加盟申請が中国及び台湾からなされているということであります。この中国及び台湾については、岸田総理がかつて答弁の中で言っているわけでありますが、彼が言うには、中国はそれなりになかなか議論があるだろう、台湾は我々と共通の、一つの方向性を持っているだろう、こういうふうな議論が岸田さん本人の、総理の口からなされたわけであって、それは、台湾に対しては、これの加盟は、イメージ的には中国の加盟よりははるかに可能性があるというふうに受け取れる文脈を岸田総理が言っているわけであります。

 また後ほど違う議員も質問するかもしれませんので、これはここまでで、私のこの部分の話は終わりにしておきますが。

 そこで、特に、中国という経済大国であります、世界第二の経済大国がCPTPPの加盟をしようとしているということでありますが、これがCPTPPの様々な諸原則に合致するのかどうか、これについて質問していきたいと思っております。

 中国の国有企業についてでありますが、このCPTPPにおいては、国有企業は、自由な競争環境を阻害することはない、そして、CPTPP経済の発展に資するという考え方が極めて重要でありますが、中国における国有企業は、このCPTPPの原則にとってマッチングする、合致する、このようにお考えかをお伺いいたします。

林政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの中国の国有企業に関する認識を含めて政府としてコメントすることは差し控えますけれども、一般論で申し上げれば、中国当局は国有企業の競争力を強化する方針を明確に打ち出しており、国有企業の扱いを含め、中国の貿易慣行に関しましては様々な意見があると理解しております。

 一方、CPTPPでは、国有企業に関する章において、国有企業による無差別待遇や商業的考慮に従った行動の確保、他の締約国の利益に悪影響を及ぼす国有企業に対する非商業的な援助の禁止、また締約国への情報提供等を規定しており、CPTPPの締約国はこれらの規定を履行する義務がございます。

 中国に限らず、CPTPPの加入要請エコノミーがCPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、今後も満たし続けていくという意図と能力があるかについては、まずはしっかりと見極める必要があると考えております。

松原委員 後の設問にあるんですが、この見極めるという作業は、それぞれのCPTPP参加国がトータルでコンセンサスを得るということなので、それぞれの国が行うわけですが、日本においてはこの見極める作業はどこが行うのか、お伺いします。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありましたとおり、CPTPPへの新規加入の意思決定は参加国のコンセンサスにより行われることになります。その際には、意図と能力があるかどうかをしっかりと見極めていくということが重要になってきます。

 御質問がありましたとおり、それを日本国においてどのように判断していくかというところでございますが、政府全体として、中国の意図、能力があるかどうかについて見極めていくことになると思います。

松原委員 次に、CPTPPが定める電子商取引について、三つの自由、情報の越境、データ保存されたサーバーの自国内設置要求の禁止、ソースコードの開示等が言われているわけであります。ちゃんと開かれた貿易のルールであります。

 中国が、いわゆる国家の安全保障を目的にして、データ三法や国家情報法などの制定をこの間していますが、これはCPTPPにおける理想とかなり外れているのではないかと率直に思っておりますが、御所見をお伺いしたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、CPTPPには、電子商取引について、信頼のある自由なデータ流通を確保する上で重要なルールを定めております。情報の越境移転の自由、コンピューター関連設備設置要求の禁止、ソースコードの開示要求の禁止などに関する規定が盛り込まれております。

 我が国は、自由なデータ流通を確保できることが、自由で公正な経済秩序を支える要素として重要であると考えております。このような観点から、CPTPPにおける電子商取引に関連する規定を重視しております。

 中国のデータ三法、個人情報保護法、サイバーセキュリティー法、データセキュリティー法について御指摘がありましたが、これらについて、日本の企業に不利益がないように、我が国としても注視してまいりたいと考えております。

松原委員 注視するも何も、ここに、情報を国家の外に出すについては、一つ一つ中国の政府関係者の了解を取れと中国の法律に書いてあるんですがね。これは全然CPTPPの基本的な精神と違うんじゃないですか。合致しますか。大臣、お答えください。

上川国務大臣 今答弁を申し上げたとおりでございますが、自由なデータ流通を確保することは、自由で開かれた経済秩序を支える極めて重要な要素であると考えているところであります。

 今はまだこの六か国をどうするかということについて加盟国間で審議をする段階ではございませんので、様々な情報につきまして精査をするという準備の段階というふうに思っております。極めて重要な要素と考えております。

松原委員 これから精査するわけですが、精査する以前に、中国の法律でTPPを否定する法律が入っているわけだから、これは、中国のこの法律はTPPの原則論と違いますねというのを言ってくださいよ、現状において。お答えください。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 中国の貿易慣行やビジネス環境に関しましては、様々な意見があり、厳しい目が向けられている状況にあるということは御指摘のとおりでございます。

 こういった中国の現状を十分認識しつつ、CPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、今後も満たし続けていくという意図と能力があるかどうかを、まずはしっかりと見極めていきたいと考えております。

 他の締約国ともよく相談する必要がありますが、我が国としては、戦略的観点や国民の理解を踏まえながら対応してまいりたいと考えております。

松原委員 我々の立場を明確にした上で、他の締約国と話をするんですよ。主語と述語の順番が違う。

 私は、中国の現状は、これだけじゃないですよ、全部ひっかかってくるんですよ。現状においては、我々は、それは全くもってTPP、CPTPPの参加国としてふさわしくないということは明確に言うべきだと思います。

 先ほど、大臣の答弁で、そこは厳しく見ていくということをおっしゃいましたから、それでよろしいですよね、上川さん。それは、そのようにしっかりしてもらいたいと思います。

 もう一回、大臣、答弁をお願いします。

上川国務大臣 ハイスタンダードな基準をしっかりと維持し、また、CPTPPの参加を増やしつつ、そして、自由で開かれた経済的な秩序をつくっていくという高い理想を掲げながら、一つずつ前進してきているところでありますので、その厳しさに応えていけるメンバーシップ、エコノミーの参加を大きく広げていきたいと思っております。

松原委員 TPPでは、協定の十九条ですかね、事実上、あらゆる強制労働を廃止する、こういったことも分かるわけであります。

 中国が加盟申請をしておりますが、中国におけるウイグル人などの労働環境、ウイグル人の強制労働が言われておりますが、こういった労働環境の改善がされたことが透明性の中で明確になることが、やはり中国のCPTPP加盟の前提条件になると思っております。

 その上で、時間もないので、次の質問に参ります。

 昨年、通常国会で、私が同志とともにマグニツキー法案を提出しました。この委員会では現在つるされたままになって、継続審議になっておりますが、大臣はこの中身を御存じでしょうか。

上川国務大臣 昨年の六月に、松原委員を筆頭提出者として、立憲民主党の皆さんから、特定人権侵害行為への対処に関する法案が衆議院に提出されたということ、そしてまた、その内容につきましては承知をしております。

松原委員 まずもって、日本は、G7の中で事実上このマグニツキー法等を持っていない国であります。マグニツキー法と人権デューデリジェンスを持つべきだと思っておりますが、このことについて御答弁を、大臣、お願いします。

上川国務大臣 我が国におきましては、人権は普遍的な価値でありまして、人権擁護は全ての国の基本的な責務と考えているところでございます。そのような考えから、我が国におきましては、これまで、深刻な人権侵害に対しましてはしっかりと声を上げるとともに、対話と協力を基本といたしまして、民主化、人権擁護に向けた努力を行っている国との間につきましては、二国間対話、協力を積み重ねまして、自主的な取組を促してきているところでございます。

 御指摘のような、人権侵害を認定して制裁を科すような制度を含めまして日本も導入すべきかということでございますが、これまでの日本の人権外交を踏まえまして、全体を見ながら、引き続き検討してまいりたいと考えております。

松原委員 上川大臣が外務大臣になったんだから、歯切れよく、こういったものは作りますと、作るための気迫を込めて、大臣としてリーダーシップを持ってやっていきます、こう答えてもらいたいわけなんですよ。今の答弁で、当然、きちっとこのことについて、内閣の閣法でマグニツキー法や人権DDが出るように大変期待をしております。

 さて、この人権DDに関して、法律ではない、日本はガイドラインを持っているわけでありますが、このガイドラインで、強制労働を伴った製品について、まさに強制力を持って輸入禁止できるかを問いたい。

柏原政府参考人 お答え申し上げます。

 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインは、二〇二一年の秋に実施いたしました企業調査において、自主的な取組を進めるためのガイドライン整備を望む声が多く寄せられたということも踏まえて策定したものでございます。

 本ガイドラインには法的拘束力はなく、強制労働を伴った製品を輸入禁止にするものではございません。

松原委員 ということは、非常に不十分だということですね。

 次、日本は、こうした強制労働を伴った商品を輸入禁止にする法律条項を持っているのか。いろいろな経緯の中で輸入禁止は可能かもしれませんが、初めからこういった観点でできるかどうかです。お伺いします。

猪狩政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の外国為替及び外国貿易法におきましては、経済制裁としての輸入規制に関しまして、三つの要件、すなわち、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときの三つの要件のいずれかに該当する場合には行うことが可能でございますが、人権問題のみを直接の理由として輸入規制などの制裁措置を取ることは難しいと考えております。

松原委員 要するに、こういったことでは強制的なことはできないということになっております。

 日本におけるあるメーカーの商品が、肌着でありますが、強制労働がサプライチェーンにあるということでアメリカでは輸入禁止になっているというのは、もう三年前からであります。やはりこういうのを持たないと、人権を語る国家として一つの矜持を失ってしまうんじゃないかと思っておりまして、大臣にはきちっと対応していただきたいというふうに思っております。

 また、中国は人権侵害が甚だしいことが既に明らかであると我々は認識しておりまして、その部分においては、安直に、中国の人権問題から、強制労働を排するTPPの基本的な精神から、この加盟は極めて高いハードルがあるということであり、そのことが解決されたという透明性のある証拠は、現地調査はできませんから、これはなかなか、現地調査もないままで、CPTPPのいわゆる強制労働排除の観点から、中国が入るということは私は認められないと思いますが、大臣、御所見をお伺いします。

上川国務大臣 CPTPPでございますが、国際的に大変重要な、今注目をされているところでありまして、これから先、六か国をどういうふうに加入していただくのかということについては、高いスタンダード、ハードルを越えて検討していかなければいけない、まさにコンセンサスの仕組みでありますので、このことについては、様々な角度からこれにふさわしい国かどうかということについてしっかりとチェックをしていく必要があるというふうに考えております。

松原委員 しっかりとしていくというか、今、中国のことを特出ししています、巨大国家でありますから。中国における人権侵害に関しては、透明性を持ってそれがないということが立証されない限り、私は、CPTPPへの加盟は、日本は体を張ってでもそれは認められないというふうに言うべきだと率直に申し上げておきたい。

 その上で、中国に関してでありますが、日本における香港女性の発言が、帰国後、逮捕された、逮捕案件になったという有名な問題がある事例であります。これは表現の自由を持つ日本にとって極めて許し難いことであると思っておりますが、今回質問したいのは、中国国籍でない人間が中国域外における発言が原因で逮捕されることの可能性、これがあるのではないかと一部の人は言っております。

 これについて外務省の見解を簡単にお伺いいたします。

林政府参考人 お答えいたします。

 我が国としまして、中国の国内法やその運用について有権的にお答えする立場にはございませんけれども、我が国としては、国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国において保障されることが重要と考えております。こうした我が国の立場につきましては、中国政府に対して直接伝達してきているところでございます。

 香港につきましても、香港基本法に規定されている言論及び報道の自由が保護されるよう求めるとともに、国際社会と緊密に連携して中国側に働きかけていく所存でございます。

松原委員 ちょっとお伺いしますが、今回の香港女性の逮捕、二か月の勾留に関して、日本の外務当局は、中国に対して何らかの、ちょっとそれは日本の国内における表現の自由に抵触する可能性があるというふうなことを含めて、そのことについて中国側に何かしらの行動を取ったということはありますでしょうか。

林政府参考人 お答えいたします。

 個別事案について述べることは差し控えさせていただきますけれども、先ほど述べたように、中国側に対しまして、普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国において保障されることが重要であると考えておりまして、中国政府に対してもこうした点について直接伝達しているところでございます。

松原委員 私はそれを言うべきだと思うんだよ。

 日本の、いわゆる日本の国内においての様々な自由というものが、中国によって、現象的に見れば、日本の国内における発言の自由が否定されたわけですよ。それは、国籍が香港の人であろうとなかろうと、否定されている。そのことに関して日本が何も言わないというのはどういうことなんですか。ちょっと大丈夫かなという気がするんですよ。

 大臣、ちょっと大臣の感想を教えてください。

上川国務大臣 今答弁の中にございましたとおり、個別の事案についてこの場で申し上げるということにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、先ほど来の答弁と重なるわけでありますが、我が国といたしましては、国際社会における普遍的価値であります自由、また、基本的人権の尊重、法の支配が中国において保障されることが重要であると考えておりまして、こうした我が国の立場については、中国政府に対しまして直接伝達をしてきているところでございます。

松原委員 大臣、個別のことについてのコメントだと言うんだけれども、中国の域外における発言が中国によって裁かれるというのは、恐らく初めてじゃないですか。

 事前にそういった事例はありますか。外務省、答えてください。

林政府参考人 お答えいたします。

 網羅的に把握しているわけではございませんが、本件が言われたような事案に当たるということかと思っています。

松原委員 だから、これは個別現象ではなく、これからこういうことが、今回の香港人の日本国内における、ツイッターにおける発言をきっかけにして陸続として起こる可能性がある。そして、それが香港国籍の香港人だけではなく、他の人間にも、中国の法律はかなりその辺がアバウトであるというふうに皆さんも承知しているわけであります。

 そうなると、CPTPPの議論を超えて、中国のこういったことに対して、日本は、自由を尊重する国家として、これが何かの普遍的な現象になる可能性があるならば行動するべきだということは、強く上川大臣に要請をしておきたいと思います。

 次に、時間も大分なくなってきましたので質問を幾つか割愛しますが、私は、実はこの後の質問で細かく事実関係を明らかにしていこうと思っていましたが、中国の様々な法律、情報法や反スパイ法の拡大解釈、何が拘束、抑留される理由か分からない。

 この間お話ししたように、鈴木さんという人は、張成沢処刑を中国でしゃべったことが、二千日以上逮捕、抑留された原因になっているというのを本人から私も聞いております。中国の新華社通信の報道等に書かれていない外交事例を一般のところで話したら、それが逮捕の遠因となっている、理由の一つになっていると。これは外務省も承知をしている話であります。

 こういう法律が次々にできてきて、私は中国は危険情報1を全域に適用するべき時期に来ていると思いますが、外務省の見解をお伺いします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中国全域の危険情報につきましては、危険レベル1を発出している中国国内の一部地域、これは新疆ウイグル自治区及びチベット自治区でございますけれども、こういった一部地域におけるような不安定な状況になっていないこと等を踏まえ、総合的に判断した結果、現時点において危険レベル1とはしていないところでございます。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つであり、今後とも、適時適切な危険情報の見直しも含めたきめ細やかな情報発信、注意喚起を通じ、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 中国に行く、若しくはいる日本人にとって、チャイナリスクはこの数年で極めて高くなっていると私は認識しておりますが、その認識はいかがですか、外務省。簡単に答えてください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 中国における状況につきましては、政府として日頃から情報収集に努めているところでございます。その評価について述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 これはちょっと大丈夫かという感じですよね。

 胡錦濤時代は、私の知人の近藤大介というのと話していたら、彼が言っているのは、胡錦濤時代は、今の中国、ここがおかしいというラジオ番組をやっていたと言うんですよ。今それをやったらすぐ捕まるだろうと言っていますよ。完全に、様々に、今、反スパイ法もそう、データ三法もそう、こういった法律が出てきて、中国におけるリスクというのは高くなっている。その辺の認識はあるんですか、ないんですか。領事局、お伺いしたい。答弁して。

安藤政府参考人 御指摘のございました反スパイ法等の問題につきましては、外務省あるいは在中国日本国大使館のホームページにおいて、国家安全に危害を与えるとされる行為は取調べの対象となり、長期間の拘束を余儀なくされるのみならず、有罪となれば懲役などの刑罰を科されるおそれがある旨、注意喚起を行うとともに、現地の日系企業関係者、在留邦人との安全対策協議会などの機会にも、在留邦人に対し注意を呼びかけてきているところでございます。

 また、御指摘がありましたけれども、本年七月の改定反スパイ法の施行を受けまして、更に外務省海外安全ホームページにおける注意喚起の内容を更新、そして、より詳細かつ具体的な形で在留邦人の皆様に注意喚起を行っているところでございます。

松原委員 事態がこれだけ深刻化し、反スパイ法を含めて、情報三法を含めて、情報法を含め、すさまじく出てきているんですよ。この状況で、中国は従来と同じ扱いをするわけにはいかないでしょう。本気で日本人を守るという思いが外務省は全くない。多くの人たちはそれぐらいの怒りを感じていますよ。これに関して、これから次々に日本人が捕まるようなことがあったら、どういう責任を取るんですか。

 私は、最後に、この問題について、これだけ習近平指導部においてリスクが高まっている、法律もどんどんできている、こうした中で中国に対する危険情報を出すのは当たり前だと思っておりますが、大臣、御答弁をお願いします。

勝俣委員長 時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。

上川国務大臣 今、様々な中国におきましての法律につきまして御指摘があったところでございますが、我が国といたしましては、中国の国内法やその運用につきましては有権的にお答えをする立場にはございませんが、様々な状況の中に、透明性の面でも司法プロセスの面でもいろいろな課題があるということについて、確保していく必要があるということは極めて重要であるというふうに考えております。

 また、予見可能性や、安全で、かつ公正なビジネス環境、こういったものが整備されるということも極めて重要であるというふうに考えておりまして、その意味で、現状がどういう状況になっているのか、今委員からもお話がございましたところでありますので、しっかりと情報を収集しながら、課題や問題はしっかりと中国に対しましても提起をしてまいりたいと考えております。

松原委員 終わりますけれども、もう少し外務省はアグレッシブに、本気で邦人、日本人を守るということをこういった場で明確に言うことが重要であるというふうに思っております。

 以上で終わります。

勝俣委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。

 外務委員会では初めて質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定への英国の加入に関する議定書に沿って質問させていただきたいと思います。

 全ての質問に対して共通いたしますお願い事でございますけれども、今まで質問を聞かせていただきまして、随分他の委員とかぶっていることが多くございます。答弁も大変だというふうに思いますが、言い足りない部分や言い足したい部分を強調していただきまして、簡潔にお願いをいたしたいと思います。

 まず、環太平洋パートナーシップ協定は、太平洋を取り巻く国を中心に自由貿易圏をつくるということでございますが、今回は、ヨーロッパ、地理的に離れた地域の国が新規に加盟するということであります。このことはCPTPPにとってどのような意義があるか、そして、今、他の委員からも質問が多くございましたけれども、まず、どのような意義があるとお考えか、大臣からお聞かせいただきたいというふうに思います。

上川国務大臣 CPTPPにつきましては、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、その持続可能性を維持しつつ、世界に広めていくとの意義を有する協定でございます。

 その意味で、今回、英国が加入するということでありますが、まさに、グローバルな戦略的パートナーであるとともに、重要な貿易・投資相手国でもありますイギリスの加入につきましては、他の締約国とイギリスとの間の自由貿易、開かれた競争的な市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合の促進に資するものというふうに考えております。

 我が国を含みます環太平洋地域、ひいては世界全体の貿易、経済の更なる成長や発展、自由で開かれた公正な経済秩序の構築に寄与するところであります。

 このCPTPPにつきましては、世界経済の大変な成長エンジンであります環太平洋地域の活力を世界に広げるとともに、同地域外のエコノミーを含めて拡大することによりまして環太平洋地域の成長を更に活性化させることを目指す、その意味で世界的に開かれた枠組みであるということであります。

 また、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、この名称にもそのような考え方が体現されているものと考えております。

池畑委員 大臣から、今、名称という部分にもこだわりのお話をしていただきました。

 イギリスは、歴史的にも、王室ということもありまして、つながりが大きい国であると思います。私もウェールズに少しいたことがございまして、イギリスという国に対して我々日本はかなりシンパシーがあるというふうに思いますし、これから大きくつながりを持って更に進んでいくべきだというふうに私も思っております。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 現在、日英間においても包括的経済連携協定、また、今大臣からもお話がありましたけれども、CPTPPに加盟して日本国内にどんな影響がありまして、また、CPTPPに参加する我が国の経済効果についてどのようなことが考えられるか、お聞かせいただきたいと思いますし、鈴木委員からもありましたけれども、イギリスはGDPが〇・〇八%上がっていくということなんですが、日本国内の経済効果というのはどういった具体的なメリットがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 英国のCPTPP加入に際し、英国からの輸入に係る日本の関税譲許については、現行のCPTPPの範囲内で合意したところであり、英国加入に伴う国内産業への影響はないと考えております。

 他方、日本からの輸出に係る英国の関税譲許に関しては、例えば、精米や鉱工業品の一部品目について日英EPAを上回る自由化を獲得できたことから、輸出に一層弾みがつくものと期待しております。

 また、経済効果についてでございますけれども、CPTPP協定発効後のマクロ的観点からの経済的効果については、新型コロナの世界的拡大、さらに、為替変動等の影響を切り離して評価することは難しいと考えております。

 一方で、マクロ経済の中の一部分に着目すると、例えば、日本とCPTPP締約国との間の貿易額は、CPTPPが発効した二〇一八年から二〇二二年にかけて、約一・五倍に増加しております。貿易額の増減には様々な要因がある中で、これがCPTPPのみによる効果とは言い切れないものの、同じ期間の日本の対世界全体に対する貿易額が約一・三倍に増加したことと比較しても、大きな伸びとなっております。

 また、企業へのヒアリングによれば、CPTPPを活用し、自動車メーカーがメキシコ等に輸出しているほか、中堅・中小企業が万年筆等をカナダ等に輸出するなど、幅広い層の我が国企業がCPTPPの関税削減のメリットを享受し、海外展開を行っていると認識しております。

 このように、政府としては、CPTPP発効により、市場アクセスに係る諸条件が改善され、投資や知財保護等のルール面での強化が進むなど、中堅・中小企業も含めて、我が国企業が海外展開に踏み出す条件の改善が着実に進んでいるものと認識しております。

池畑委員 メリットについて数字的に出すのは確かになかなか難しいと思いますが、今、具体的にいろいろ挙げていただきました。

 私は、次の質問に関わってきますけれども、輸出の面で、農林水産品の今回の合意に関して、米の輸出に対して少しこだわって質問させていただきたいと思っております。

 今まで自民党の上杉委員からも質問が詳しくございましたので、ここもなかなか答弁しにくい部分があるかもしれませんけれども、農林水産委員会で私も質問させていただきまして、農産物の輸出については、二〇二五年に二兆円、二〇三〇年までに五兆円という目標を掲げて農林水産省は取り組んでおられます。

 農林水産委員会でも質問をそのままさせていただきましたけれども、英国は米を主食とする国ではないんですけれども、るるありましたように、米のパック、そして、炊飯器がある、ないのお話もありましたけれども、そういった形で、今、七十億程度の米の輸出が日本からされております。目標額は百二十五億というふうに聞いておりますけれども、それ以外も含めまして、牛肉とかお茶、ブリなんかも頑張っておられるというお話も聞かせていただきました。

 是非この機会に、少し違う角度でどのように取り組んでいかれるのか、また、二兆円の目標に対して百二十五億の目標というのはすごく少ないというふうに私は感じているんですが、農林水産省としてどのようにその辺りを推進していこうとお考えか、答弁していただきたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 先ほどお答えした件とも若干重なるところでございますが、英国における日本産米の仕向け先である日本食レストランは、ここ数年でかなり伸びてきております。

 また、委員御指摘のありましたパック御飯につきましても、英国を始めとした様々な輸出先からも引き合いがあるという状況になっております。

 このような状況でございますので、今回、短中粒種の精米等の関税撤廃が獲得できたことから、輸出拡大に一層弾みがつくと期待しているところでございます。

 農林水産省としましても、更なる輸出拡大に向けて、輸出促進法に基づきます認定品目団体を中心に、在外公館、ジェトロと連携したプロモーションの実施など、マーケットインの発想に基づく市場拡大を行ってまいりたいと考えております。

 また、先ほどございました目標の関係につきましても述べさせていただきます。

 こちらにつきましては、二〇二五年に百二十五億円への拡大を目標に掲げております。足下、米、パック御飯、米粉及び米粉製品の輸出額は順調に伸びており、二〇二二年には、二〇一八年の二倍となる八十三億円になっております。まずは、二〇二五年、百二十五億円の目標の達成に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

池畑委員 やはり、オール・ジャパンで取り組んでいく。今、上杉委員からもお話がありましたとおり、福島、そして私たちは兵庫ですけれども、自分たちの県のお米を売りたいという気持ちもありますが、オール・ジャパンでやっていくということ。牛肉も、地元の神戸ビーフなんかを突出して神戸ビーフとして売りたいところでありましたけれども、オール・ジャパンでやっていったという経緯もあります。

 いろいろな具体的な売り方はたくさんあると思いますけれども、もっと具体的にこういうふうな戦略でやっていこうという考えがあったり、いろいろな意味で、ただお米の品種だけで勝負ができないのであれば、日本の突出したアニメの部分だとか、いろいろなくっつけ方があると思うんですけれども、農林水産省に具体的に戦略があるのであれば、もう一回答弁をいただきたいんですが。

松本政府参考人 お答えいたします。

 この目標を立てる中でございますが、イギリスは、インドからの移民が多いことなどからしまして、長粒種を使った形での米の消費が多い傾向になっております。その中でも、米粉を使った形のものもございますので、我々としましては、米粉の関係につきましてはこれから力を入れて伸ばしていきたい分野でございますので、今、英国に対します輸出としましては米粉の実績はないところでございますので、このようなものが現地の方のニーズに即すのか、まさにマーケットインの感覚を持ちつつ取り組んでまいりたいと考えております。

池畑委員 ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 現在、先ほど大臣からも答弁があったとおり、中国や台湾、ウクライナ、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイがCPTPPに新規加入の申請を行っているということでありました。申請順ではないというお話もいただきましたし、あくまでも自由貿易に関する高水準のルールを守れる国から加盟交渉を進めていくということでありましたけれども、現状のお話は答弁を聞いておりましたので結構でございます。

 また、この度の英国のCPTPPの加盟後、新規の加盟を進めていくということでありました。報道ベースでありますけれども、加入に興味を示しております韓国とかタイに対しても働きかけをしていくことが必要ではないかと考えております。

 今後、CPTPPを拡大していくために、大臣もいろいろなところで声をかけておられますというお話がありましたけれども、どのような取組を具体的に行っていこうと考えておられるか、答弁をいただきたいと思います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますが、CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、その持続可能性を維持しつつ、世界に広めていくという重要な意義を有しております。CPTPPがこうしたハイスタンダードなルールを持続可能な形で履行するための枠組みであり続けるためにも、新規加入に当たっては、加入要請エコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうかが重要になってくると考えております。

 これまでも新規加盟に関しては参加国間で緊密に意思疎通を図っておりまして、加入要請エコノミーがCPTPPのハイスタンダードを満たせるかどうか、貿易、投資等に関する実績、約束、いわゆるコミットメントと申しておりますが、の遵守状況等について情報収集や意見交換を行ってきておりました。

 我が国としては、今後とも、他の参加国と協力して、このような取組を続けていきたいと考えております。

池畑委員 是非そういった方向で進めていただきたいと思います。

 中国、台湾の加盟についても少し具体的に質問させていただきたいと思うんですが、次に控える和田代議士に譲りつつ、是非、そういった台湾、中国に関しても、松原委員からもありましたけれども、かなり注意していくことが必要だと思いますので、それも含めながら、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 最後に、TPPから離脱した米国に対して復帰するように働きかけることは大変重要だと私も考えております。

 本年五月の参議院の外交防衛委員会で、今おられます当時の林外務大臣が、米国によるインド太平洋地域の国際秩序への関与という戦略的観点から、米国のTPP復帰が望ましいと考えておられるということでありましたし、様々なレベルで米国に対してTPP復帰を粘り強く働きかけていきたいというふうにお話しでした。

 具体的にこれまで米国に対してどのような働きかけを行ってきたか、また、今後どのような対応を考えておられるのか、なかなかこういった場で答弁するのは難しいかもしれませんけれども、具体的に、聞かせていただける範囲で聞かせていただきたいと思います。

辻副大臣 委員御指摘のとおり、我が国としては、インド太平洋地域の国際秩序への米国の関与を確保するという戦略的観点から、米国のTPP復帰は望ましいと考えています。そして、こうした立場を累次米国にも伝えてきています。

 具体的には、例えば、岸田総理からバイデン大統領に対して、また、林前外務大臣に加え、上川大臣からも、個別の会談や、先日十四日の日米経済版2プラス2の機会を活用して、ブリンケン国務長官やレモンド商務長官、タイ通商代表に対して働きかけを行ってきています。さらには、米国の上下両院議員や有識者との面会の機会も活用するなど、あらゆる機会を捉えてそういった取組を行っております。

 引き続き、我が国として、米国のTPP復帰が望ましいという立場に変更はありません。そして、米国に対しては、引き続き、様々なレベルで粘り強く働きかけていくとともに、しっかり意思疎通を図っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

池畑委員 今、各種高官にそういった働きかけをしている、そして上川大臣もそういった取組を当然しておられるということなんですが、アメリカ側の反応はどんな感じなのか、聞かせていただける範囲で聞かせていただきたいんですが。

辻副大臣 アメリカは、日本とは戦略的に様々な、経済的な局面でも話合いをしていますが、その一環として、今、IPEFなど、様々な枠組みはもちろん、その中の一つとして、もちろんTPPの話合いも水面下で様々な話合いが行われている状況でございます。

池畑委員 なかなかその反応の部分というのは言いにくい部分かもしれませんが、CPTPPへ加入をしていくというのは、これから日本の国益に大きくつながっていく部分だというふうに思います。しっかり協力できる国、そして、これからつながっていかなきゃいけない国を選別しつつ、これから大きく協定を結びながら国益を追求していきたいと思っておりますので、我々日本維新の会も協力をさせていただきながら、そして、今後のつながりに向けて頑張ってまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 これで私の質問を終わらせていただきます。

勝俣委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 先週も申し上げましたが、大臣、この間にもいろいろなところに行かれて、サンフランシスコから帰ってきたばかりなんですかね。お疲れだと思います。しかし、日本のためにしっかりお願いしたいと思います。そのことも含めたようなことを後でもお聞きさせていただきます。

 まずはTPP、CPTPPでありますが、今日は英国のCPTPP加盟に際しての質疑なんですけれども、恐らく、英国も初めての状況でここまで進んできた、今までの質疑、議論の中でもコンセンサス方式でいろいろなことをやってきたというので、恐らく試行錯誤の中でここまでたどり着いたと思うんです。

 その中でも、恐らく、英国にとってもいろいろなハードルがあって、それを乗り越えたんだと思います。そして、日本も、それを支えるためにいろいろなことをお手伝いをされたと思います。

 その中で、例えば、二〇二〇年十月二十三日に日本政府はこんなことも言っています。CPTPPの加入手続に従って、英国の協定への早期加入を支援する固い決意を表明する。あるいは、いろいろな形で日本もこのことに対して努力をしたと思います。

 そこで、お伺いしたいのは、では、日本は、英国が初めて、このCPTPPを拡大していくというんでしょうか、新たに受け入れていく中で、どんなプロセスが検討されて、試行錯誤を経てそういうことをやって決めていって、そして、なおかつ、日本はそれに対して具体的に、例えば、加入を促進するために固い決意を日本は持っているとか、言うのはそれは言いますけれども、具体的にどんなことを日本はお手伝いをされたのか、そのことをまずお伺いしたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 二〇二一年二月の英国による加入要請を受けて、CPTPP締約国は、英国のWTOやEPA等のルールに基づく貿易、投資等に関する実績、約束、コミットメントの遵守状況を考慮して、英国がCPTPPのハイスタンダードを満たす用意があると判断し、二〇二一年六月、英国の加入作業部会の設置をコンセンサスで決定いたしました。

 英国の加入プロセスは、CPTPPで初めての新規加入条件であり、前例がなく、また、コロナ禍で対面の会合が制限されるなどの課題もございました。その中で、我が国は、英国の加入作業部会の議長として、オンラインなどの協議なども活用しながらプロセスを主導し、英国もこれに精力的に対応されました。

 英国との加入プロセスを通じ、CPTPP締約国は、英国が包括的で高い水準の市場アクセスを提供するとともに、国内法令等の整備を含め、CPTPPに規定する各分野におけるルールを遵守できることを確認しました。日本を含むCPTPP締約国は、こうした状況を踏まえ、英国がCPTPPのハイスタンダードを満たすことができるものと判断し、本二〇二三年七月に加入条件を承認し、英国とともに加入議定書に署名をいたしました。

和田(有)委員 という答弁が、いわゆる表の、型どおりの話ですよね。

 その中に、恐らく、先ほど辻副大臣が、アメリカのことで池畑議員が質問になったときに、いろいろなロビー活動を、一般的な言葉で言うとロビー活動ですね、のようなものをやはり日本はやっていっている。アメリカに対して、上院にも働きかけた、上院議員にも行った、あそこにも行ったみたいなことをやっているわけです。イギリスも恐らくそういうことをいろいろな方面に対してやったんだと思います。それを日本はいろいろな形で受け止めてお手伝いをしたんだと思うんですよ。そういうことを私はお聞きをしたかったんです、実を言うと。

 お答えはなかなか難しいと思いますよ。いついつ、どういう形で、どこにどう働きかけたとか、どういう会議でどういうふうに我々は推奨したとか、そういうことがあってここまで至ったんだと思うんです。そこら辺、何か言えることがあれば、どうでしょうか。

田島政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、英国の加入作業部会の議長を日本が務めたわけでございますけれども、この議長国として、様々な回数に及ぶ会合の中で日本はリーダーシップを発揮し、そのプロセスを主導して、そして、時間はかかりましたけれども、申し上げましたように、コロナ禍の中でオンラインでやらなければならなかったときもございましたけれども、その後、コロナ禍が解けて対面で会議ができるようになりましてから、迅速にまとめ上げたということでございます。

和田(有)委員 議長をやっていたということが非常に大きな意味があった、そこで主導してリーダーシップを取っていろいろな働きかけをやった、こういうことのようでございます。

 では、そこで、今度、何か国かが新たに入りたいと言ってきている中で、台湾が加入申請を既にしている。これは加入申請も、窓口がニュージーランドに決まっているそうですね、窓口として提出する先が。そこからは決まっていない。どうやって決めていくかも決まっていない。

 そういう中で、今、台湾がCPTPP加盟に向けて努力をしているわけですけれども、その加入申請をニュージーランドという窓口にするところまではしたけれども、これからどうなっていくのか、具体的にプロセスを誰がどうやってつくっていくのか、恐らく力学が働くはずです。

 そういうことを含めて、今後、台湾の加入申請をした現時点からの先のプロセスの組立て方、そういうものについてまずお伺いします。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がありましたとおり、現在、台湾を含めまして、複数のエコノミーから加入要請が提出されております。提出先はニュージーランドでございます。他方、今後のプロセスの詳細については決まっておりません。

 CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを、持続可能性を維持しつつ、世界に広めていくという意義を有しておりますので、新規加入を検討するに当たっては、加入要請エコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうかが重要になってきます。

 そこで、加入プロセスに関する意思決定については、CPTPPの高いレベルを加入後も満たし続けていくという意図及び能力があるかどうかを見極めるという観点から、一つには、加入要請エコノミーがCPTPPのハイスタンダードを満たすということを大前提とした上で、加入要請エコノミーの貿易、投資等に関する実績、約束、いわゆるコミットメントの遵守状況を考慮し、参加国のコンセンサスによって行われることになっております。

 そのため、加入要請を提出したエコノミーの扱いについては、他の参加国ともよく相談しながら進めていきたいと考えている次第でございます。

和田(有)委員 他の参加国、他の国々とコンセンサスを取っていくと。

 もう一回参考人の方に私はお聞きしたいんですけれども、では、日本は具体的に何をやれるんですか、何をやろうとしているんですか、それを聞きたいんです。一般的にこういう基準があって、これの求めるものをコンセンサスでうんたらかんたら、そんなことは分かります。では、日本という国は、外務省はどういうことをやっていくんですか、台湾加盟に向けて何ができるんですか。

 これははっきり言ってロビー活動ですよ。具体的にどこそこの国の上院に行って何を頼み、どこに行ってどこの省庁に何を頼みということを積み重ねないとできないはずなんです。口だけでここで言ってたって何にも決まりません。ここの外務委員会で、私たちは基準に満たすところを推奨しますなんて言ったって何にも決まらない。

 イギリスが加盟したんだったらイギリスがそのコンセンサスの中へ入ってくるんだか分かりませんけれども、イギリスの国会に行って国会議員の確たる人にこういうことを言い、あるいは、イギリス外務省の何とかというところに行って何を頼みということをやっていかないと何にも決まらない、何にも手助けしたことにはならないんです。口先だけになるのです。

 その点について、いかがですか、今後のプロセスに対して。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 今、加盟国の間で議論している内容の詳細についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、新規加入に関しては、これまでも参加国間で緊密に意思疎通を図っております。

 その際にポイントとなっておりますのが、加入要請エコノミーがCPTPPのハイスタンダードを満たせるかどうか、貿易、投資等における実績、約束の遵守状況についてちゃんとやっているかどうか、そういうところをちゃんと調べていく。こういったところが重要でございまして、情報収集や意見交換を行ってきているところでございます。

 こうした取組を今後とも続けていきたいと考えている次第でございます。

和田(有)委員 情報収集をして、それぞれの国の担当するところと、台湾はこういうところはちゃんとできているね、できていないねという話をしているということですね。それでよろしいですね。もう一回、その点、しているということを確認させてください。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 個別具体的な取組についてこの場で明らかにすることは差し控えさせていただきますが、繰り返しになりまして恐縮でございますが、新規加入に関して参加国で緊密に意思疎通を図っております。その際には、加入要請エコノミーがCPTPPのハイスタンダードを満たせるかどうか、貿易、投資等に関する実績、約束の遵守状況等について情報収集、意見交換を行ってきているところでございます。

和田(有)委員 そこで、今までもいろいろな議員からの質問の中で答弁もありました。台湾は非常にハイスタンダードなものを努力してやっているようだ、それなりに私たちとしては受け入れられるものではないかというようなニュアンスがある。その中で、日本政府もいろいろな形で、質疑をしたときに、我が国としてはそのような台湾の申請を歓迎しているという言葉も出ているわけです。ですから、やはり、そういう参加国での意思疎通を図り、やっていく中で、しっかりと台湾を受け入れていくためにお手伝いをする。

 ここにおられる皆さんは、選挙に出て、通って、ここにバッジをいただいて議席をお預かりしているものですから、普通は、支援してくれる方のところに行ったときに、応援してくださいと頼んだら、頑張ってくださいね、応援していますよと言って、それだけでは票にはならないわけです。我々が次に言うのは、では、知り合いの方の紹介状を書いてくださいよ、後援会入会カードを書いてくださいよと言って、そのときに、いや、それはできませんと言われたら、それで終わりなんですよ、意味ないんです。

 それと一緒で、頑張れよ、頑張れよと言ったって、そんなのは口先だけで意味がないんです。具体的に我々はきちっとやるべきことをお手伝いしていかなきゃいけないと思うんですが、その点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

上川国務大臣 委員から、今回のCPTPPに英国が加盟したプロセスについての御質問がございました。初めての新規加入ということでありますので、極めて重要な取組をこの間してきたところであります。

 先ほどの答弁の中にありましたけれども、二〇二一年二月のCPTPPへの英国の加入要請の提出を受けた上で、同年六月から加入作業部会の立ち上げを決定し、そして、その後、英国の加入要請を優先して取り扱うべきだという形の共通認識の下で、二三年七月、今年でありますが、加入議定書の署名に至るまで、英国の加入交渉に集中してきたところであります。

 その際、CPTPPのハイスタンダードを維持すること、このことはCPTPP参加国の共通の思いでありまして、そのための重要な先例となる英国の加入につきましては早期に実現することが重要、こうした認識が共通していたところであります。

 その上で、同じ七月に加入議定書の署名になったわけでありますが、七月と十一月にCPTPPの閣僚共同声明が発出をされまして、協定のハイスタンダードを満たす用意があるということ、そして、貿易面でのコミットメントを遵守する行動を示してきたエコノミーによる加入要請に対しましてCPTPPが開かれているということ、また、意思決定は参加国のコンセンサスにより行われること、そして、それによって、加入手続を通じてCPTPP参加国にとっての利益が拡大し続けるということ等を確認したところであります。

 その意味で、我が国といたしましては、先ほど来繰り返し答弁をしているところでありますが、まさにCPTPPの参加国の間で議論を重ねてきているところでありますので、そうした視点から、戦略的観点、国民の理解を踏まえながら対応していく、こうした方針でございます。

 我が国にとりまして、台湾ということで委員の方から御指摘がございましたけれども、まさに今、六か国の一つ、申請している六地域の一つであります。自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係を有する極めて重要なパートナーであります。また、台湾は、かねてからCPTPPへの加入要請に向けました様々な取組を公にしてきていると承知しております。そのような台湾が加入要請を提出したことを、我が国としては歓迎しているという状況であります。

 まさに、加入要請を提出したエコノミーが、これは台湾も含むわけでありますが、高いレベルで完全に満たすことができ、また、今後も満たし続けていくという意図と能力があるかどうか、これをしっかりとまずは見極める必要がある、こういう姿勢で臨んでまいりたいと思っております。

和田(有)委員 台湾の加盟を歓迎すると今までいろいろなところで日本政府は発言していますが、それについては変わりありませんね。

上川国務大臣 今申し上げたとおりでございます。

和田(有)委員 今申し上げたとおりというのはよく分かりませんが、時間がないので次に行きましょう。とにかく歓迎していると私は理解しました。

 次に、こういう状況の中で外交交渉をやる中で、日本と台湾は外交関係が正式にはない。交流協会を通じてやっているんですけれども、この体制というのは、台湾有事も含めて、CPTPPに加入してもらうためにいろんなやり取りをする中でも、体制としては今のままで十分なものなのでありましょうか。その点についても大臣はいかがお考えになりますか。

林政府参考人 お答えいたします。

 日本台湾交流協会では、これまでも台湾との間で様々な経済的な会議を開催しておりまして、日台間の経済関係の強化を図っているところでございます。安全保障に関するものを含めて、台湾をめぐる状況に関して情報収集を行う等、幅広い分野で台湾との実務的な情報共有や協力関係を推進しているところでございます。

 今後とも、我が国の基本的立場を踏まえながら、日台間の協力、交流の更なる深化を図っていく考えでございますし、こうした観点から、日本台湾交流協会が必要な業務を円滑かつ適切に遂行できるよう、引き続き緊密に連携してまいります。

和田(有)委員 そこで、一点お伺いしたいんです。

 防衛駐在官、何度も私はお聞きしてまいりました。今までOBの人が一人行っているだけ。これでは心もとないのではないか。私だけではなく、多くのいろんな議員が質問してまいりました。報道ベースですけれども、制服ではないけれども、事務の人が現役で行くようになったというような報道がありましたが、この点についていかがか。やはり現役の制服の方が行くべきだと思いますが、いかがでありましょうか。

今給黎政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、台湾との関係につきましては、一九七二年の日中共同声明を踏まえまして、非政府間の実務関係として維持していくという立場でございまして、防衛省といたしましても、こうした立場に基づき、適切に対処しておるところでございます。

 いずれにしましても、防衛省としましては、台湾情勢をめぐる各種動向につきましては、引き続き強い関心を持って情報収集、分析を行っていくこととしておりまして、その体制についても引き続き不断に検討してまいりたいというふうに考えております。

和田(有)委員 これ以上お答えできないんでしょうから今日はこれ以上聞きませんけれども、しっかりと体制強化に努めていただきたいと申し上げておきます。

 最後にお聞きしたいことがある。

 実は、林前大臣が中東からヨーロッパ方面、要はウクライナに行ったときの話です。民間機を使って行かれた。その結果、いろいろな民間機の事情で遅れが出た。結果的に、これは報道ベースで見たんですけれども、サウジアラビアで搭乗を予定していた飛行機が飛ばないで、ワルシャワ入りが一日ずれた、午前から午後にずれた。その結果、大統領への表敬訪問がキャンセルになったと。もう一つ書いてあるんです。中東で預けた荷物が紛失してしまったと。大臣がこんなに大切なことで行くときに、こんな程度でいいんだろうか。

 もう一つ、最近、佳子内親王殿下が、佳子様がペルーにお訪ねになったときに同じことが起こった。飛行機が飛ばない、一日ずれた。

 これの事実関係はどうなっていますか、まず聞きます。

中村(仁)政府参考人 お答えいたします。

 今年九月の林芳正前外務大臣の中東、ポーランド、ウクライナ訪問の際に、中東発の民間機の機材の不具合によってポーランド到着が遅れて、ポーランドにおいて予定していた日程の一部を取りやめたということは事実でございます。

 それから、先般の佳子内親王殿下のペルー御訪問の際に、アメリカ発の民間機の機材の不具合によってペルーへの御到着が遅れました。この遅れに伴ってその日にできなくなった行事は、関係機関との調整の上、別の日に振り替えて実施をされた次第であります。

 以上です。

和田(有)委員 これは国家の尊厳に関わる話ですよ。時代が時代なら大変なことですよ。私はそう思います。心ある、御皇室を尊敬してやまない私のような人間から見たら、これはどうなっているんだ、私はそう思います。

 そのために、一点だけ。大臣は何かコメントがありますか、これに関して。

勝俣委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、最後、では簡潔に。

上川国務大臣 激動している国際情勢でございますので、それに応じて適宜適切に行動するということ、対応するということにつきましては極めて重要だと認識をしております。

 外務大臣が実際に外国訪問を行って機動的かつ能動的な外交活動を行うことができるような、そうした環境整備は重要だと考えております。

和田(有)委員 時間が来たので終わりますが、もう一機とか、あるいは、日本が造って使えなかったMRJとか、ああいうものを使って政府専用機を柔軟に使えるような体制を研究すべきだと私は思います。そのことを申し添えて、終わります。

勝俣委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦でございます。

 まず、今日議題になっておりますCPTPPへの英国の加盟が実現したことを心から喜ばしく思いますし、英国の新規加入を心から歓迎したいと思います。

 この実現に伴う成果について、あるいは今後の展開について、あるいはその意義については、上川大臣からも前の委員の質問でお触れいただいているところであります。非常に重要なことであるという点は私も同じ見解であります。

 もう一点、追加して伺うとすれば、日本は、ほかの分野でもそうです、協定に限らず、新しい製品をつくるときもそうですが、いいものをつくり出す力はあるんですけれども、それを維持したり、あるいは効果的に運用するのが非常に苦手な国です。何でもそうなんですけれども、統一規格をつくるのもできませんし。

 今回、TPP、CPTPPの運用が始まって日本発のこうした枠組みをつくることができた。非常に喜ばしいこと。これをどう運用して、今後日本にどのような恩恵をもたらしていくかという展望は、大臣のお心から頂戴したいと思いますので、まず最初にその展望について伺いたいと思います。

上川国務大臣 今回の英国のCPTPPへの加入でありますが、その経済的な意義はもちろんのことでありますが、さらに、我が国を含みます環太平洋地域、ひいては世界全体の貿易、経済の更なる成長や発展、また、自由で公正な経済秩序の構築、こういった大変重要な世界的課題にも貢献できる要素を持ったものでありまして、まさに戦略的な意義を持っているというふうに考えております。

 今後の展望という御質問でございますが、自由で公正な経済秩序の礎として、今後もハイスタンダードを維持した最先端の経済的枠組みとして発展し続けるということにつきましては、そのための努力ということにつきましても併せてこれからますます重要になると考えております。その質の更なる向上を図るということ、さらには、実現可能な形での履行を確保するということ、そして、加入要請への対応、この三点が重要であると考えております。

 具体的に、まず、CPTPPが、時代の要請に即した高いレベルのルールを導入することによりまして、常に自己変革し続けるということが重要かと考えます。

 また、そのような高いレベルのルールが全てのCPTPPの参加国によりしっかりと履行されている、この状況を確保し続けるということも極めて重要だと考えております。

 三点目に申し上げた加入要請への対応ということでありますが、加入要請エコノミーがCPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、そして、今後も満たし続けていくという意図と能力があるかどうか、これもしっかりと見極めていく必要があるということでありまして、引き続き、参加国間での協議、相談を重ねてまいりたいというふうに思っております。

 一つずつ丁寧に対応してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 これを運用していくという意味では、管理ですね、管理というのは、しっかりと見て、そして運用していくという意味での管理はしていかなければならないものなので、是非とも、参加国と協議を続けていただいて、ハイスタンダードというものを維持していただく、質を落とさず、かつ戦略的に広げていくという体制を整えていただきたいと思います。

 今大臣からもお話がありましたとおり、今回の協定については、戦略的意義ももちろんですけれども、経済的な意義がおありだということでございました。

 今日は内閣府の政務官をお呼びしております。TPPのときの議論もそうですし、CPTPPのときもそうです。特別委員会あるいは内閣委員会、いろいろな委員会でもんできた中で、経済効果についての議論がたくさんありました。経済成長の目標というのを当初定めてつくってきたわけですけれども、今現在どの程度効果が出ているというふうに踏んでおられますか。

神田大臣政務官 鈴木委員の御質問にお答えいたします。

 まず、二〇一七年にCPTPPが合意された際に、CPTPPの経済効果の試算値として、この協定がない場合に比べまして、日本のGDPが約一・五%、約七・八兆円押し上げられるとともに、雇用が〇・七%、約四十六万人増加するとの分析をお示ししております。

 この試算値の発表に当たりましては、ほかの経済モデルによる試算と同様に、実際にどの程度の効果が発現するかの結果については、様々な不確実性を伴うために、試算値には相当な幅を持たされているものと御理解いただく必要があるということも併せてお示しさせていただいております。

 現段階での経済効果につきましては、CPTPP発効後、これまでの間、新型コロナの世界的拡大や、ロシアによるウクライナ侵略、あるいは資源価格の高騰、為替変動等により、CPTPP締約国を含めた世界全体の貿易や投資を含む経済活動が大きく影響を受けております。このため、そうした影響から切り離して評価することはなかなか難しいというふうに考えております。

 一方で、マクロ経済の中の一部分に着目いたしますと、例えば、我が国の対CPTPP締約国との間の貿易額は、CPTPPが発効した二〇一八年から昨年二〇二二年にかけまして約五三%増加しております。

 貿易額の増減には様々な要因がある中で、CPTPPの効果だけを切り取ってお示しすることは難しいことではございますが、ただ、この間、日本の対世界に対する貿易額の伸びが約三二%の増加であったということを比較しましても、CPTPP締約国との貿易額の伸びは大きな伸びとなっていると考えております。

 また、特に農林水産品の我が国からの輸出につきましては、二〇一八年以降、約八〇%の増加となっております。個別の品目でも、ニュージーランドへの自動車や自動車部品の輸出は四割近く増加、ベトナムへの冷凍サバの輸出は二倍に増加するなど、政府としては、CPTPPの発効により様々な形での経済効果があったというふうに認識しております。

 引き続き、様々な角度から経済効果の把握に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 今の政務官の御答弁には三つの要素があったと思います。

 一つは、今現在、TPPの効果だけを切り抜くわけではないけれども、マクロ的に見れば貿易そのものは効果が出ているように見えているということ。もう一つは、その効果をTPPから完全に切り離すことは困難であるという事実。もう一点大切なことは、TPPを最初に議論していた当初の段階で、事後検証ができないということが分かっていたということです。そうですよね。あくまで、試算をしたときには、いろいろな要因をはらんでいるので幅がありますよ、それで御理解くださいということだったと思います。

 ただ、その段階で既に、将来にわたって雇用を創出する、あるいはGDPがこれだけ上がっていくということの試算をする手段がなかったということを認識されておられたということでよろしいですか。

神田大臣政務官 鈴木委員の御質問にお答えいたします。

 CPTPPによる経済効果の事後分析についてどのように考えていたかという御質問というふうに考えております。

 二〇一八年十二月のCPTPPの発効後からこれまでの間、様々な先ほど申しましたような影響がございます。このために、こうした影響を切り離して評価することは難しい。これは、事前に、いろいろな、静的な分析だけではなくて、その後に起こる様々なことを事後的に合わせて、それぞれの影響を切り離して判断するのは難しいということは事前にも考えられていたことでございます。

 また、これらの影響が収束した現在であっても、御指摘のような事後的な経済効果につきましては、事前の分析手法、これはGTAPというモデル、グローバル・トレード・アナリシス・プロジェクトというGTAPモデル、世界的に使われているモデルですが、こちらを使っております。

 ただ、こうしたモデルは、事前に評価をするというものには使われておりますが、事後的に効果を測定するというモデルは、世界的に確立した手法が存在しないということでございます。このため、マクロ経済的な影響については評価することがなかなか難しいということで、これはCPTPP各国も同じような認識を持って捉えていることでございます。

 こうした中で、可能な限りCPTPPの効果を把握するために、まずはマクロ経済の中の各要素に着目して分析を行うということが有意義であるというふうに我々としては考えております。CPTPP発効後の貿易がどのように増減しているか、先ほど申し上げたようなこうした影響について把握を試みているところでございます。

 また、現在、内閣官房におきましては、研究所あるいは学術研究者たちと連携いたしまして、CPTPPの域内貿易への効果に係る分析に取り組んでいるほか、我が国とCPTPP締約国との間の輸出入の変化、あるいは個別品目の輸出入の増減、あるいは個別企業によるCPTPPの活用の状況などに着目をいたしまして、データや事例の収集を行っているところでございます。

 引き続き、CPTPP各国とも連携いたしながら、研究、検討を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 切り離して答えることができないということは昔から分かっていて、今もそうだ、あと、モデルも開発されていないというのが事実です。ですから、現段階でCPTPPだけの効果ということは検証が不可能であるということ。

 もう一つ、二〇一八年にその試算をした段階から、その時点では、新型コロナウイルスもなければ、ロシアもウクライナに侵略をしていない、資源価格も上がっていない、さらには為替の変動もありませんでした。そのときの前提で我が国はCPTPPによる試算を持ったまま今に至るわけですね。

 でも、今は当時想定していたような効果が恐らく出ないことは明らかですね。このCPTPPをつくることによって、二〇一八年当時、GDPが一・五%、雇用が約四十六万人増加すると見込んでいた試算は、現段階では想定外ですよね。そのときに入っていない要因が含まれているわけですから、そうはなっていないわけです。

 だから、この点を改善しようと思ったら、二つ方法があると思います。

 一つは、今の段階でもう一度試算を出し直すこと。GTAPに今の要因を入れて、今の状態でどういう効果が出せるのかという試算を改めてするということ。もう一つは、方法ですけれども、今から全力を傾けて、事後検証をするためのモデルを開発するか、どちらかだと私は思います、この効果を検証しようと思ったら。

 政務官はどちらの方が効果的だと思いますか。

神田大臣政務官 鈴木委員の御質問にお答えいたします。

 先ほども申しましたように、こちらの貿易協定の変更に伴う影響を試算するモデルは、事前的に試算するモデルはございますが、事後的に試算するモデルはございません。

 事前的なモデルとしては、こちらの貿易締約が発効することによって、投資が増えたり、あるいは貿易額が増えたりすることによって、各国の経済の所得が高まったり、あるいは企業の生産性が高まるということが前提になっております。それによって所得が高まったこと、あるいは賃金が高まったことで、雇用者が増えるといった影響、これを試算しているのが今のGTAPモデルということになります。

 ただ、委員御指摘のとおり、事後的に様々な条件が変わってきた場合のモデルというのはなかなか算定が難しいということでございます。

 各国といたしましても、CPTPPの締約国の中でも今様々な議論を行っているところでございます。例えば、CPTPPの締約国の間では、意味のある事後検証、事後評価の実施の可能性につきまして、学術研究者と連携しながら、分析手法や利用可能なデータなどを検討しております。

 また、我が国といたしましても、二〇二一年には、CPTPPの議長国としまして、この事後分析に関する専門家会合を主催いたしました。また、昨年二〇二二年には、シンガポールで、この事後分析に関する研究会にも我が国としても参加をし、積極的に議論を行っているところでございます。

 こうした締約国の専門家におきまして、CPTPPが貿易に与える影響、あるいは企業や労働者、あるいは中小企業に与える影響などについて現在研究を進めているところでございますので、これらの知見の共有を進め、更に研究を進めてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 今ほどの専門家会合については、説明も受けていますし、内容、共同声明も読ませていただきました。

 その中で、分析研究を歓迎するというような文言が含まれてはいましたけれども、今のところそれについて確実に全ての皆さんが使えるようなモデルではないというような御説明だったかと思います。だからこそ、日本もそれをアカデミアのところに委託するなりして研究開発をするべきだと思うんですよ。

 最初の質問に戻りますけれども、最初にも言ったとおり、せっかくつくったものをよく運用していくために、日本発の事後検証のモデルというものを世界の普遍的な価値にしようとは思いませんか。そういうものを運用していくために、例えば、内閣府でもいいですよ、ほかのところでもいいですけれども、プロジェクトチームをつくってアカデミアを呼んで、こういうモデルをつくってくださいという研究をするべきだと思います。

 今の段階ではプロジェクトチームがないんですよね。これはやるべきだと思いますけれども、この点については政務官と大臣に、必要性について意見を伺いたいと思います。

神田大臣政務官 鈴木委員の御質問にお答えいたします。

 まず、先ほど、学者などに対して共同で研究を進めるべきではないかという御指摘がございました。

 委員御指摘のとおり、まさに、CPTPPなどの貿易条約の締結によってマクロ経済の中でどのような影響があるのか、これを事後的に検証することは有意義であるという考え方は共有をされております。

 この点につきまして、内閣官房といたしましては、研究所や学術研究者と連携いたしまして分析に取り組んでおります。具体的には、内閣官房に内閣府経済社会総合研究所、ESRIといいますが、こちらと協力いたしまして、また、外部研究者の参加も得まして研究を行っているところでございます。これらの知見につきまして、各締約国とも連携しながら更に深めていきたいというふうに考えています。

 また、鈴木委員からは、こうした効果を事後的に検証する必要性について御質問もございました。

 これにつきましては、先ほどもお答えさせていただきましたように、世界的に確立した手法がないという中で、様々な角度から分析を行っていくことがまずは重要であるというふうに認識しております。

 先ほども申しましたように、事後分析に関する専門家会合を現在進めている中で、さらに、先ほどもお答えさせていただきましたような、国内の学術研究者、学者の方々と連携した研究も含めまして、更に検討を深めてまいりたいというふうに考えております。

上川国務大臣 委員が今御指摘いただきました経済効果の検証は、事前、事後という御指摘がございましたけれども、大変重要な課題であると認識しております。

 検証の方法、また必要な情報の収集等におきまして一定の制約がある中で、いかにそれを実現できるか、検証できるのかということにつきましては、CPTPP参加国ともよく連携しながら、専門家の知見も踏まえた上で、検討を更に加えていく必要があろうかというふうに思います。

 その上で申し上げるところでありますが、我が国は、自由で公正な経済秩序の構築に対するルールづくり及びその履行の確保、これを主導してきているところであります。これは、インド太平洋地域におきまして、ルールに基づく国際秩序の構築のための具体的な取組の一環でもあるという位置づけをしているところであります。

 したがいまして、CPTPPのハイスタンダードが定着をし、このことが広く普及していくということにつきましては、経済的な意義、そしてさらに、それにとどまらず、戦略的な観点、こうしたことからも大きな意義を有するものというふうに考えているところであります。

鈴木(敦)委員 時間ですので最後になりますが、政務官、是非、諸外国ができていないからという理由でやるのではなくて、日本からやるんだという意気込みをお願いします。

 終わります。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 本日の議題である英国のCPTPPへの加入問題について質問します。

 今回の議定書は、CPTPPが二〇一八年に発効して以来、十一か国以外で初めて新たな加入を認めるものであり、英国の参加によって、これまでアジア太平洋地域が中心だった自由貿易圏が欧州にも広がることになります。

 二〇二〇年にEUを離脱した英国は、インド太平洋地域に戦略的重点を移し、域外の国や地域との貿易や関係強化を図る外交政策を掲げ、CPTPPへの加入をアジア圏での貿易拡大の柱に据えてきています。

 英国政府が今年七月に公表した説明資料によれば、英国は二〇二二年、日本やカナダなどに乳製品を二千四百万ポンド輸出しているが、今後、CPTPPに加わることで、日本などの低関税へのアクセス拡大の恩恵を受けることになると強調しています。

 CPTPPへの加入を機に英国が乳製品の対日輸出を強める可能性があると思うけれども、国内に与える影響について、上川大臣の御所見を伺いたいと思います。

上川国務大臣 我が国は、英国との加入交渉の結果、他のCPTPP締約国に対して与えている譲許と基本的に同じ内容の譲許を英国にも与えることとしたところであります。

 また、譲許のうち、関税割当てにつきましては、枠数量の拡大や英国に対する国別枠の設定は一切行っておらず、農産品のセーフガード措置につきましても、現行のCPTPPの発動水準を維持したところであります。

 このように、現行のCPTPPの範囲内で合意をしたところであり、CPTPPを超える譲許は一切行っていないことから、我が国の国内産業への影響はないものと考えているところであります。

穀田委員 国内産業に影響はない。ほんまかいなと思いますね。

 二〇二一年に発効した日英EPAは、ソフト系チーズや一部の調製品について、日欧EPAで設定された関税割当ての未利用分が生じた場合に限り、当該未利用分の範囲内で日欧EPAの関税割当てと同じ税率を適用する仕組みを設けています。

 今回の議定書は、これらの品目についても、他の締約国と同じく、英国にCPTPP枠、関税割当て枠の使用を認めると言っているのではないですか。簡単に。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日英EPAにおいては、一部の農産品について、日・EU・EPAの関税割当てに未使用分が残った場合に、その未使用分の範囲内で、事後的に日・EU・EPAの関税割当てと同じ低関税率を適用する仕組みを設けてございます。

 他方で、本議定書においては、このような未使用分の仕組みについては設けておりません。

 その上で、我が国は、英国との加入交渉の結果、一部の農産品について、現行のCPTPPにおいて日本以外の締約国全体に対して設けられている関税割当ての枠数量を利用することを英国に認めております。これは現行のCPTPPの範囲内での合意でございまして、関税割当ての枠数量の拡大等は一切行っておりません。

穀田委員 日英EPAでは、ソフト系チーズなどの特恵税率の適用について、EUの輸入枠に利用残が生じた場合に限るとしていました。しかし、今回の議定書は、これらの品目についてもCPTPPの枠の利用を認め、英国の輸入枠が事実上拡大することになる。それは、将来において、あなたが正しかったか、私が正しかったか、検証しましょうや。ところが、検証するときの資料がなかなか出てけえへんのが問題なんだけれどもね。

 そこで、英国のスナク首相は、今年の三月の声明で、CPTPPへの加入によって酪農分野で日本などのより低い関税の恩恵を受けられるようになると強調しているわけですよね。このことからも、英国が乳製品の対日輸出を強めるのは明らかだと思います。

 そこで、生乳換算で乳製品の国内消費量に対する輸入割合を見てみますと、アメリカは二・二五%、EUは一・二九%にすぎません。片や、日本の輸入割合は既に三八%となっています。イギリスが輸出したがっている日本のチーズの国内自給率はたった一〇%にすぎないんです。

 現在、EUは、ロシアの禁輸や生乳生産量の増加から、乳製品市場の開拓について特に重要と位置づけ、乳製品の市場開放に躍起となっています。

 まさに今、日本の酪農が危機的状態に直面しているとき、これ以上の関税引下げや低関税率輸入の拡大を止めるべきで、そうでないと、日本の酪農業は守れないんじゃないか。農水省は断固とした姿勢を取るべきと違いますか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 平成三十一年二月に発効した日・EU・EPAの交渉におきましては、例えば、ソフト系チーズについては、国内酪農家の生産拡大の取組に水を差さないよう、関税割当てにとどめ、また、枠の数量もそうした取組と両立できる範囲内にとどめるなど、乳製品においても守るべきものは守ったと認識しております。なお、令和四年度及び本年度上半期におけるEUからの乳製品の輸入量は減少が続いているところです。

 今後も、伝統があり付加価値の高いEUの乳製品に対抗していけるように、国内乳製品の競争力の強化とともに、更なる輸出の拡大を図ってまいりたいと考えております。

穀田委員 更なる輸出の拡大を図る、それはそうなりませんで。

 今回加盟する英国は、国内の農用地の五割が採草放牧地なんですね。イギリスの酪農業には、ある意味、意外と実力があると私は見なくちゃならぬと思うんですよね。生乳は、元々、毎日生産されて、腐食しやすくて貯蔵性がないことから、飲料用となる牛乳以外は、チーズやバター、生クリーム、脱脂粉乳などの乳製品に加工されています。そんなに増えてへんと言うけれども、脱脂粉乳とかそういうのがばあんと増えているんですよね。だから、ここが今後最大の標的になってくる、このことを強く指摘しておきたいと思います。

 そこで、日本では、歴代自民党政権による農産物貿易自由化政策によって、乳用牛飼育戸数は、一九八五年に八万戸を超えていたものが、現在は一万七百七十戸にすぎません。しかも、昨年五月から今年五月にかけて九百五戸が、言い換えると十軒に一軒が廃業しています。元々、高齢化などで離農する酪農家があることは事実だけれども、かつて、これほど急激に減ることはなかったんですね。さらに、今年初めの中央酪農会議の調査では、離農を考えている酪農家が約六割。将来に全く希望が持てないとしています。

 なぜ日本の酪農危機がこんなに深刻なのか、その原因と対応策についても一言議論しておきたいと思います。

 現在の困難の大本にあるのは、ウクライナ侵略、それから政府の円安政策によって、餌である飼料代が高騰し、生産者が受け取る乳価が低迷していることにあります。

 私の地元、京都府の酪農家の現状を聞いてみました。農協との取引明細を示しての訴えでしたけれども、九月は、生乳の買取り価格より飼料代などコストが大幅に上回って、差引きマイナス百万円。牧場主が農協に対して、こんなことになっているのはうちだけかと聞いてみると、京都府中部地域では二つの酪農家を除きみんな赤字だと述べているということだそうです。

 この牧場主は、生活費を娘さんにお借りし、世帯を持っている従業員には何とか給与を払ったものの、弟さんなどの他の従業員には給与も支払えていない。生活と経営の見通しは全く立たないということでした。ふだんなら、こうしたときには子牛を売って赤字を埋める。けれども、子牛を買う肥育農家も、餌代が高くて、子牛を買えば赤字が膨れ上がるだけなので、子牛も売れない。搾乳量を増やして生乳の生産量を増やそうにも、消費の落ち込みから生産抑制を求められており、そうもできない。つまり、今言いましたように、まさにこのままでは八方塞がり。こんな状態が続けば全国で酪農家は潰れてしまうと、将来不安と危機感が語られました。

 私は、こういう現状の下で、緊急に政府の支援策を抜本拡充すべきだと思うんです。

 農民運動全国連合会は、今年三月、電子署名八万人分を添えて、酪農家の廃業や倒産を避けるために、搾乳牛一頭当たり十万円の支援を求めました。農水省は牛一頭当たり一万円の支給を決めましたけれども、それでは全く不十分です。飲用、加工用の乳価は上がったが、それでも餌代が高くて十万円でも大変だ。せめて一頭十万円の声に応えるべきと違いますか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 酪農経営の収益性は、飼料生産基盤の規模や輸入飼料への依存度により異なり、国産飼料に立脚した酪農経営では経営状況が良好な方もおられると認識しております。

 一方、飼料生産基盤を持たず、輸入飼料に依存しながら規模拡大をされた方などにつきましては、現在、経営状況が苦しくなっておりまして、そのような苦しい経営状況に置かれている方々から、一頭当たり十万円の支援の要請を受けていると承知をしております。

 農林水産省といたしましては、酪農経営で飼養されている全ての乳用牛に対して定額支援をすることは難しいと考えておりますが、これまでも、配合飼料価格の高騰等に対しましては、配合飼料価格安定制度におきまして、緊急補填などにより生産者負担の軽減を図ってまいりました。

 今後は、国際情勢の変化を受けにくい生産構造に転換するため、国産飼料の生産、利用の拡大を進め、国内飼料の生産基盤に立脚した酪農経営を推進してまいりたいと考えております。

穀田委員 最初の認識を言うときに、酪農の危機じゃないのか、こう言っているときに、良好な方もいらっしゃる。それはいるさ。そやけど、全体として酪農の危機だと言っている認識について質問しているときに、こういう実態があるんじゃないのかと言っているときに、良好な人もいはるという話をしていること自体、認識が違うと言わなければならないと私は思います。農家のところに行って言うてごらんなさいよ。あんたのところは大丈夫やろ、あんたのところもええやろと。そんなこと言えるかいな。そう言うたらあきまへんで。

 なぜ一頭当たり十万円なのか。先ほど京都の酪農家の悲痛な声を紹介しましたけれども、餌代の高騰で一日一頭当たり五百円増えた。そうすると、百頭飼っていれば一日で五万円ですよ。一か月で百五十万円も増えている。実際、九月には百万円の赤字が出た。昨年、今年と乳価の取引価格が引き上げられているけれども、この酪農家は、せめてあと十円引き上げてほしいと訴えておられます。

 しかし、ここには大きな矛盾が生まれます。取引価格の値上げは牛乳代に連動し、高物価に苦しむ消費者に一層の負担となるわけであります。しかし一方、生産者は、とてもではないけれども経営がもたない。こうしたギャップを埋めるのが政治の責任ではないのか。

 日本国内の生乳生産量は約七百五十万トン。キロ十円の補償を全酪農家にするとなると七百五十億円。牛一頭当たりに換算すると、一頭から年間一万キロ取れるとして、一頭十万円となるんですね。だから、七百五十億円あれば消費者も酪農家も救うことができる。今あったように、たった一万円の支給でよしとするんじゃなくて、一頭十万円、日本の酪農危機を救うために、せめてこれぐらいの決断をすべきだということを言っておきたいと思います。

 時間もないからもう質問しませんけれども、やはり、赤字部分を直接補填することが生産者と消費者双方のメリットになる。アメリカの農業法に基づく酪農マージン保護計画で、飼料コストと乳価の差を九割まで政府が補償し、例えば、百頭経営であれば約七百万円の最低所得保障を実現しているということです。こうすれば消費者にも迷惑がかからない。こういうことをやるべきだと思います。日本から酪農の灯を消すなという立場で私は今後とも頑張りたいと思います。

 話題を変えて、関連して、国がセーフガードの対象としている西陣織など、繊維関係の現状とインボイスの関わりについて伺いたいと思います。

 経産大臣が指定している伝統工芸品は、西陣織を含め二百四十一品目です。伝統工芸品全体の生産額の推移を見てみると、一九九八年には生産額が二千七百八十四億円、これが二〇二〇年には八百七十億円、約二千億円も減少しています。それを支えているのが、実は個人事業主であります。ここにインボイス導入による納税を強いれば一層困難になることは、火を見るよりも明らかであります。

 元々、消費税はこれまで免税点制度が設けられてきて、日本の所得税制度の大本には、生計費非課税の原則があったはずです。しかし、インボイス制度は、消費税の免税点制度そのものを突き崩すものであり、最低水準の生活を余儀なくされる職人の少額収入、生計費に課税するものであり、税制の基本原則からも絶対に許されるべきものではない。だから、この点からもインボイス制度は即刻廃止すべきだというのが私たちの主張であります。

 しかし、少なくとも、生計費非課税の原則に立てば、低収入の零細業者や個人事業主については、課税対象から外す、適用除外制度を設けるべきではありませんか。

矢倉副大臣 お答えを申し上げます。

 免税事業者のままインボイスの発行を可能とすべきという御意見であるというふうに理解をさせていただいております。

 小規模事業者を対象とした免税事業者制度は、インボイス制度開始後も引き続き利用できますが、免税事業者のままインボイスの発行を可能とするということについては、免税事業者に対しましてもインボイスの保管等の事務負担を課すことになりまして、これは、そもそも免税事業者制度が事務負担の配慮から設けられたということを鑑みますと制度趣旨になじまないこと、また、加えまして、仕入れ税額控除を水増ししたい取引相手が免税事業者に対して高い税率、税額を記載するよう求める可能性もあり、また、免税事業者の方でもそのような記載をする誘因が働いてしまう可能性もあること、以上のことから適当ではないと考えており、消費税に相当する制度を有する諸外国においても認められていないものと承知しております。

 その上で、インボイス制度には、特に中小・小規模事業者の方々から、不利な取引を強いられるおそれがあるという声もあることをよく承知しておりまして、このような観点から、免税事業者の取引関係への影響につきましては、激変緩和の観点から、免税事業者からの仕入れにつきましても発注側で一定割合を仕入れ税額控除できる六年間の経過措置を設けるとともに、免税事業者への不当な扱いを防止すべく、公正取引委員会による監視といった取引環境の整備にも取り組んでいるところであります。

 引き続き、制度の施行状況をフォローアップしつつ、事業者の立場に立って一つ一つの課題にしっかりと対応してまいります。

穀田委員 今、後半の方に答弁がありましたように、政府は六年間の経過措置を設けていて、八割、五割の仕入れ税額控除ができる。制度の柔軟運用をしているわけですね。だから、こうした制度設計は可能だということを改めて強調して、検討を求めたいと思います。

 最後に、私は、西陣織工業組合の方々とお話しして、どうなっているかということを聞いているんですけれども、これは経産に聞きたいんですけれども、西陣織の落ち込みは全国平均よりもっと大きくて、西陣織の帯地の生産量はピーク時の約六・五%、従業員数は一一%へと激減しています。織り屋さんで働く内機は千百、織り屋から仕事を請け負う出機、事実上の個人事業主ですね、これは千六百存在しています。

 西工の皆さんの危惧は、インボイスの導入を契機に、西陣織を支えている出機の半数近くが廃業の選択をするんじゃないか、丹後のちりめんも出機の大半が廃業するのではないかということなんですね。西陣織の出機、賃織りの業者などは年収百万円前後の超零細であり、当然、免税事業者であります。大体、数十年間税務処理をしたことがない、急に適格事業者になれとか、今ありましたけれども、面倒な書類作成を押しつけられるならもう辞めるわなどの声が出るほど大変だと聞いております。経産省はこうした声をどう受け止めるのか。

 また、免税事業者のままでいることを選択した個人事業主から取引停止が既に始まっており、随時あった発注が入らずに事業が継続不能になったという伝統産業従事者が日本社会から静かに姿を消していくということになりやしないか。この事態をどう受け止めているか、お聞きしたいと思います。

勝俣委員長 酒井経済産業副大臣、答弁は簡潔に願います。

酒井副大臣 お答え申し上げます。

 今委員からお話がございました西陣織を始めとした伝統工芸品の産業というのは、各地域の固有の多様な魅力を国内外に発信して地域を支えている重要な産業だというふうに考えております。

 しかし、委員御指摘のとおり、西陣織もそうですけれども、伝統工芸品の生産額や従業員の数は減っているのが現状だというふうに認識しております。

 その上で、インボイス制度に関しては、伝統工芸品産業に従事する皆さんからは、コロナ禍で業界が疲弊している中で、インボイス制度導入の対応が難しい、導入に当たってはどういった作業をすればよいのか分からないといった御意見や不満の声をお聞きしています。

 そのために、経済産業省としては、伝統工芸品関連の業界団体へのインボイス制度の周知、広報を行うとともに、西陣織について申し上げれば、京都府とも連携しながら、商工会議所や中小企業団体を通じたチラシの配布などに加えて、京都府に設置した窓口での個別相談を実施しておるところでございます。事業者の皆様のインボイス制度への対応を支援してきたところでございます。

 さらに、来月からは、伝統的工芸品産業振興協会において、インボイス対応をサポートする取組も開始する予定でございます。

 引き続き、高齢経営者や中小零細事業者にも寄り添いながら、業界の皆様のインボイス対応に対する不安を解消し、事業を継続できるよう、必要な支援にしっかりと取り組んでまいります。

穀田委員 状況認識は同じ、声も聞いている、しかし施策はさっぱり、これなんですよね。

 西陣織だけじゃないんですよ。二百四十一の日本の伝統産業は個人事業主が圧倒的なんですよ。だから、インボイス制度に対応した事務処理能力や気力や体力がない個人事業主は、一方で、先ほどありましたよ、多様で地域を支えていると。貴重な担い手なんですよね。その認識は一致しているんですよ。来年は、日本の政治の中で、伝統的工芸品産業の振興に関する法律ができて五十年になるわけでしょう。そういうときに、逆に言うと、崩壊を招く引き金となっちゃあかんということを今見る必要があるんじゃないですかね。

 だから、私は、さっき酪農の灯を消すなと言いましたけれども、伝統産業の灯も消すなということについて、しっかりと私はこれからも見詰めていきたいし、闘っていきたいと思っていますので、よろしく。

 おおきに。

勝俣委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、CPTPPへの英国の加入議定書に反対の立場から討論を行います。

 本議定書は、CPTPPが二〇一八年に発効して以来、十一か国以外で初めて新規加入を認めるものであり、英国の参加によって、これまでアジア太平洋地域が中心だった自由貿易圏が欧州にも広がることになります。

 しかし、CPTPP体制の拡大は、関税の原則撤廃や農産物の輸入完全自由化など、多国籍企業優先の際限のない市場開放を国際ルールとして押しつけるもので、各国の経済主権や食料主権を一層侵害するものであります。

 政府は、CPTPPの発効後、日欧EPA、日米貿易協定など、空前の輸入自由化を次々と強行してきました。英国とも日英EPAを発効し、米を含む全ての農産物の関税を協定発効五年後に見直すことを定めるなど、日欧EPAを超える譲歩を行ってきました。

 本議定書も、日英EPAでは、ソフト系チーズや一部調製品への特恵税率の適用は、EUの輸入枠に利用残が生じた場合に限るとしていましたが、これらの品目でも、他の締約国と同じくCPTPP枠の利用を認めることで、英国の輸入枠が事実上拡大するものとなっています。

 英国政府の発表によれば、同国は二〇二二年、日本やカナダなどに乳製品を二千四百万ポンド輸出していますが、CPTPPに参加することで、今後は、酪農分野で日本などの低関税へのアクセス拡大の恩恵を受けられるようになると強調しています。このことからも、CPTPPへの加入を機に、英国が乳製品の対日輸出を強めることは明らかであります。

 新型コロナの感染拡大やロシアのウクライナ侵略などに端を発した世界の食料危機は、食料の六割以上を海外に依存する日本の危うさを改めて浮き彫りにしました。国内農業は今や未曽有の危機に直面しており、多くの農業従事者が経営破綻や離農に追い込まれ、とりわけ酪農は、牛乳を取れば取るほど、搾れば搾るほど赤字が増える状況にあり、資金繰りがつかず、倒産、廃業が加速し、自殺者まで出る深刻な事態にあります。

 CPTPPなどの貿易自由化一辺倒、際限のない農産物の輸入自由化が日本農業に甚大な打撃を与えてきたことに何の反省もなしに、更に本議定書で一層の市場開放を推進することは断じて許されません。今強く求められるのは、食料の輸入自由化路線をきっぱり改め、食料自給率の向上を国政の柱に据え、価格保障や所得補償など、政府の責任で大多数の農家が安心して増産に励める条件を整えることであります。

 以上を指摘し、本議定書に対する反対討論とします。

勝俣委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより採決に入ります。

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定へのグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の加入に関する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

勝俣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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