衆議院

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第5号 令和4年4月1日(金曜日)

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令和四年四月一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 関  芳弘君

   理事 勝俣 孝明君 理事 菅家 一郎君

   理事 小泉進次郎君 理事 笹川 博義君

   理事 源馬謙太郎君 理事 田嶋  要君

   理事 漆間 譲司君 理事 角田 秀穂君

      畦元 将吾君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    石川 昭政君

      石原 正敬君    小倉 將信君

      武村 展英君    辻  清人君

      中西 健治君    穂坂  泰君

      宮澤 博行君    八木 哲也君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      中島 克仁君    馬場 雄基君

      松木けんこう君    遠藤 良太君

      奥下 剛光君    中川 康洋君

      斎藤アレックス君

    …………………………………

   環境大臣政務官      中川 康洋君

   環境大臣政務官      穂坂  泰君

   参考人

   (三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社経営企画部副部長/プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト)

   (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科非常勤講師)           吉高 まり君

   参考人

   (同志社大学政策学部教授)            吉田  徹君

   参考人

   (WWFジャパン専門ディレクター(環境・エネルギー))          小西 雅子君

   参考人

   (所沢市長)       藤本 正人君

   環境委員会専門員     飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)


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     ――――◇―――――

関委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社経営企画部副部長/プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科非常勤講師吉高まり君、同志社大学政策学部教授吉田徹君、WWFジャパン専門ディレクター(環境・エネルギー)小西雅子君及び所沢市長藤本正人君、以上四名の方々に御出席いただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、吉高参考人、吉田参考人、小西参考人、藤本参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず吉高参考人にお願いいたします。

吉高参考人 おはようございます。

 それでは、早速、私から、今回の案件に関して、環境金融の観点からお話しさせていただきます。

 私、金融機関で三十年、そのうち半分以上を環境金融に関わってまいりました。現在、三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三社兼務しておりまして、上場企業、投資家、お客様、そして地方自治体、地銀、それから中小企業に向けて、海外の動向を踏まえながら、サステーナビリティー、ESG投資のアドバイスをしております。

 本日は「グリーンシフトに必要なマネー」と題した資料を御用意しておりますので、最初のページから御参照ください。

 まず、私、長年、環境金融に関わってまいりましたが、これほど金融機関が環境や社会課題を重視する世の中になるとは思ってもいませんでした。百八十度変わったと言っても過言ではございません。それほどリーマン・ショックが金融システムの歴史において衝撃的だったかと思います。異常気象が世界で頻発し、二〇一〇年以降、ESG投資が劇的に進みました。そして、このコロナ禍では、業績見通しなど財務諸表が出にくかったのもありまして、非財務情報を統合して企業評価をするESG投資が更に進んだと言えます。

 ESGのEの環境は、環境にコストをかけて社会貢献することではありません。環境法を守るのはGのガバナンスです。Eは、環境の将来のリスク、ビジネス機会に対する経営戦略です。そして、Sは、人権、ジェンダーの将来へのビジネス影響やサプライチェーンに関するリスクが含まれます。つまり、投資家は、上場企業だけではなく、その契約関係にある非上場、中小企業も評価するわけです。

 次のページでございますけれども、コロナ禍の金融緩和政策で市場に多くの資金が流れましたが、その際、情報開示が進み透明性が高くESG評価の高い企業の方に、このリスク局面で株式、債券によい結果が得られたというデータも出てまいりました。

 さらに、コロナ禍でグリーン事業に資金使途を限定したグリーンボンドの発行が増えまして、投資家に大変人気を博しております。これは、結局、本業で、資金をグリーンで調達して成長していこうとしていることが分かりますので、投資家にとっては確実に実行ができるメリットがあります。投資家と話しますと、とにかくグリーンは企業の成長性を評価しやすいというふうに言っております。

 資料の三ページ、御覧ください。

 ESG投資の主流は、企業のネガティブ側面を評価するよりも、リスクとビジネス機会を統合評価し、将来性のある企業に投資をするESGインテグレーションが主流です。企業の将来の成長性を重視しています。これがESG投資になります。

 四ページにありますとおり、今、二〇二〇年でESGマネーは三千九百兆円と言われ、その後も非常に伸びております。投資先としては、上場、非上場も含め、将来性を見ると、気候変動など、グリーンの企業が注目されております。しかし、まだ投融資先は足りておりません。資本市場では新たに、グリーンで評価する企業を求めているということでございます。

 資料五ページ、御覧ください。

 先ほども申し上げましたとおり、ESG投資ではサプライチェーンも企業の力として評価します。米国では再エネは安価で、化石燃料のように国際市場での影響が少なく、長期安定的に調達できる地域もありますため、大手IT企業は、リスクヘッジのために再エネ一〇〇%で事業運営し、さらに、リスクを回避するためにサプライチェーンにもそれを求めています。アップルのサプライチェーンにいる日本企業の多くは、今、再エネ一〇〇%で製品を造っているわけです。

 これはITだけではないんですね。私、中小企業さん、地方にお伺いすると、自動車やその他の産業でもこれは始まっております。やはりESG投資家からの影響が増えていると思われます。

 六ページと七ページ、御覧ください。

 気候変動に関しては、投資家のことばかりではないんですね。銀行も含め金融機関にとって異常気象は金融システムを脅かすと認識されており、そのために発足したのが、G20で、金融安定理事会における気候関連財務情報開示タスクフォース、TCFDでございます。要は、世界のどこかで異常気象が起これば、それによって、損害保険というものの莫大な支払いはロンドンのシティーやニューヨークの再保険会社にヒットするわけです。その影響は、ひいては銀行など金融システム全体に影響するということが不安視されているわけです。

 そこで、銀行など金融機関は、自社の投融資ポートフォリオの気候リスクを把握する必要が出てまいりました。もちろん、金融機関ですから、返済や収益を考えれば、ビジネス機会の双方を評価する必要がございます。

 このTCFDによる情報開示はもう既にグローバルスタンダードになっており、我が国の金融庁も、コーポレートガバナンス・コードの改定では、今日から始まりますプライム市場上場企業はTCFDの情報開示、そして、それ以外の企業に対しても気候変動の情報開示を促しております。これはリードタイムを提供しているということだと思いまして、世界中では義務化が進んでいるということは御案内のとおりかと思います。

 資料の八ページでございますけれども、金融機関は、欧米の場合、カーボンプライシングでCO2に対する価格が明確化されまして、投融資へのリスク評価が非常に容易になりました。再エネ価格も化石燃料と競合いたすようになり、グローバルな行動規範のプレッシャーが増加したことで、今大変資金の導入が進んできたことというのはデータでももう分かっております。これがマネーのグリーンシフトです。

 資料の九ページでございますけれども、これが日本の環境資金の全体像を表しております。

 私自身、二十年近く、いかにこの環境資金を企業の技術に展開できるかということをしてきたわけですが、カーボンニュートラルに必要な主な資金源は赤字で示しております。民間からのグリーンプロジェクトの資金源は、株式や債券を買うことというよりかは、どちらかというと出資やローンなどが直接的な資金になります。したがって、公的資金、いろいろな政策と民間資金の循環がグリーンシフトを起こすというふうに考えます。

 次に、十ページでございますけれども、今申し上げた様々の資金でございますが、ここに、日本政府が掲げておりますグリーン成長戦略の産業・技術分野に必要な民間資金というのは、やはり、ローンや出資、非上場向けの投資などが主流かと思われます。では、これらの資金はこれらの今掲げている技術にどのようなフェーズでどのように入っていくのか、そのときの課題を解決することが大変重要かと思っております。

 十一ページを御覧ください。

 現在、我が国のグリーン成長戦略の政策枠組み、資金も大変多く手当てしていただいておりますが、重点技術分野別に工程表をつくっておられます。

 まず、技術開発フェーズから実証フェーズ、ここは、官民パートナーシップで、政府基金や補助金と、あと民間、事業会社の実証の投資などが中心になるかと思います。その後の導入拡大フェーズでは、下にございますような重要政策として、税制やら標準化など、様々な重点政策が立つかと思います。通常はこういったことをすることにより民間投資が参入でき量産化されるということが期待されるわけなので、その次に自立商用フェーズ、こういうふうに考えます。

 しかし、実際は、私自身が、温暖化ガス削減技術、日本の技術を海外に展開しようと思ったときに、それだけでは簡単に民間金融機関が入らないという経験をいたしました。そこで、今回の案件によりまして、公的資金によるリスクマネーを供給して民間投資を誘発することは大変有効だと考えております。

 次のページで、その理由について述べたいと思います。

 このページには、気候変動対応ビジネスの事業タイプを独立プロジェクト型と企業の設備投資型に分けて、そして各種のファイナンスの手法を示しております。リスクの度合いも違いますし、様々な手法が違います。

 これらのファイナンス手法の要件の主なものを幾つかここに挙げております。四つほど挙げておりますけれども、この中で、私自身がこれまでの様々な気候ファイナンスをする際に、最も金融機関の高いリスクが技術でございます。つまり、金融機関はなかなか新たな技術に対してリスク評価をする経験がないということです。実績が少なければハイリスクとなりますため、多少の政策措置はあっても、他の収益が高そうなビジネスがあれば、比較して、どうしてもそちらに行ってしまう。つまり、多少実証したぐらいでは民間金融機関はリスクを評価できず、簡単に資金が動かないということがございます。

 十三ページを御覧ください。

 この図は、ベンチャー企業のファイナンスのステージを表しているものです。通常、何かのビジネスを始めると。創業当時は、補助金やエンジェル投資家などのスイートマネーと言われるものがございます。そして、期待に沿ってある程度資金はできるんですけれども、今度、また、上場間際でも期待感が高まるので資金も集まります。ただ、問題は、この中間で本当に採算性が取れるのか、社会に実装できるのかという、その中間、これをデスバレー、死の谷と呼ぶんですけれども、ここで非常に資金調達に苦しい時期があります。ここを助けるファンドというのは通常たくさんあるんですけれども、グリーンではほとんどございません。

 私自身の経験から、日本の温暖化ガス削減技術を、非常に高い技術ですけれども、例えば途上国で展開しようと思っても、なかなか民間資金はついてこないんですね。やはり、金融機関にとって、日本にとっては当たり前でも海外にとっては当たり前じゃない技術は地元の金融機関は評価できないのでなかなかファイナンスを出してこない、こういった評価を共につくり上げるメカニズムというのは必要だと私は感じておりました。

 すなわち、今、日本で新しいイノベーションの技術を入れるためにはまさにこのメカニズムが必要だと思っています。これは本当に日本国内で言えることで、やはり、グリーンイノベーション戦略の過程で、導入拡大フェーズで、民間金融機関に新技術のリスク評価のこういった実績を共有するメカニズム、これがデスバレーを乗り越えるのに大変有効かと思っております。

 その温暖化ガス削減技術の展開を進めるために、十四ページですけれども、私自身もずっとファイナンスメカニズムを本当に考えてまいりまして、これは日本国内用にモディファイしたものなんですけれども、私自身が長年気候変動ファイナンスを金融機関の中でやってまいりまして、メガバンクでさえ、最初は海外で再エネにファイナンスを拡大するのに十年近くかかっています、大変時間がかかります。新たな技術に民間資金の導入拡大を助ける、評価実績をとにかく共有して、デスバレーを官民で乗り切るパートナーシップが必要かと考えます。

 民間の金融機関は将来を見て動きます。将来のグリーンシフトに向け、金融機関がリスクを分散しながら、新たなグリーン技術投融資への経験や評価の知見の蓄積をいたしまして、同時に世界の投資家へのメッセージにもなるかと思います。そして、これによってリスクマネーの関心も呼ぶことになると考えられます。

 最後に、参考資料として、当社がSDGsで成長する産業をちょっと分類して予想しているんですけれども、今の考え方は高成長を見込める産業創出にも非常に適応できるかと考えております。

 以上になります。どうもありがとうございました。(拍手)

関委員長 ありがとうございました。

 次に、吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 本日は、どうぞよろしくお願いいたします。同志社大学の吉田徹と申します。今朝は、このような場にお呼びいただいて、ありがとうございます。

 今朝は、私からは、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、また地球温暖化対策全般について、いかに一般市民や住民による対策への能動的な参加が必要であって、また、それはいかにして実現されるべきかについて私見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 言うまでもなく、気候変動対策は待ったなしの状況にあります。御案内のように、さきにイギリスで開かれた国連のCOP26では、世界の温室効果ガスの排出量を二〇一〇年比で二〇三〇年までに約四五%削減することなど、気候変動対策を加速化させることが合意されました。また、こうした情勢を受けて、近年では、クライメートジャスティスですね、気候の公平性などというふうに訳されますけれども、気候変動について我々一人一人が責任を果たさなければならないという意識が広まり、例えば、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんや、日本を含む各国でもフライデーズ・フォー・フューチャーという、既に本委員会でも参考人として出席した方もいらっしゃると思いますけれども、若年層を中心とした、より一層の気候変動対策を求める活動が活発になっていることも周知の事実かと思います。

 今回の温対法の改正案は、気候変動対策をより強化することを目的とするものでありますことから、大変に歓迎すべきものであると考えております。

 そうした意味で、法律案の方向性そのものに異論はございませんけれども、他方で、そこに欠けているもの、あるいはより一層法律の趣旨を強化するものとして、どのようなものがあり得るのかについて述べたいというふうに思います。具体的には、まず気候変動対策におけるいわゆるくじ引民主主義の活用例、そして気候変動対策におけるこの種の民主主義が持っている有意性、そして最後に、なぜこうした施策が求められているのかという三点になります。

 まず一点目についてでありますけれども、現在の先進国の気候変動対策で大きなトレンドとなっているのは、気候民主主義とも言われる、実際の対策の受益と負担の対象となる住民らに積極的に関与をしてもらう形で対策を進めるというものです。

 配付資料の一を御覧いただきたいと思いますけれども、大規模なものとしては、二〇一九年にフランスとイギリスでは、このくじ引民主主義という手法を用いてどのような気候変動対策を具体的に進めるのか市民、住民自らに考えてもらう、いわゆる気候市民会議が大規模な形で開催をされております。こうした取組は、国レベルだけではなくて自治体レベルでも、例えば、アメリカのワシントン州やイギリスのオックスフォード市でも開催されておりますし、また、日本でも札幌市や川崎市で実践がなされているところであります。

 ちなみに、ここで言うくじ引民主主義というのは、単にランダムに市民を選んだり、討議したい人に参加してもらうというようなものだけではなくて、ミニパブリックスや抽せん制議会あるいは討論型世論調査などと呼ばれますけれども、ドイツなどでは既に一九七〇年代から用いられている公共的な意思決定の手法ということになります。

 詳しくは配付資料の二を御参照いただきたいというふうに思いますけれども、これは、まず無作為抽出で住民に参加を広く呼びかけ、その中から参加する意思のある方々を標本として、その地域や地区の社会の縮図となるようないわば代表団をつくります。これは、御案内のように、一般的な世論調査と同じような方法ということになります。

 ただ、くじ引民主主義で異なるのは、その抽せんによる議会が招集される前ないしそのさなかに、専門家や利害当事者からのレクチャーや情報提供を受けて、これらの客観的な分析を基に、ファシリテーターの進行によって市民、住民同士が政策について討議を行い、一定程度の方向性を示したり賛否を決めたりするというところにあります。直近ではパリ市が抽せんによる市民議会の設置を決定しましたけれども、こうしたくじ引によって選ばれた市民が公的な決定に関わる制度という意味では、日本では裁判員制度が思い浮かぶところだろうというふうに思います。

 二点目ですけれども、ではなぜ各国や各地で気候変動対策においてこのくじ引民主主義が多用されているのかということを知る必要があります。

 これは、人々の行動変容や意識改革なくして気候変動対策は成功し得ないというこの問題の特性に関わるものです。実際、地球の平均気温上昇を一・五度以内にとどめて二〇五〇年までにゼロカーボンを実現するためには様々な手段が存在しており、どのような手段を用いるべきかについては、御案内のように、専門家の間でも往々にして意見が分かれるという状況にあります。しかも、地球温暖化対策が、人々に不便や、場合によっては経済的コストをもたらす様々な負の効果が付随するものであれば、それに納得をしてもらう必要があります。

 例えば、ドイツでは、エネルギーシフトを実現させるに当たって、二〇〇〇年に再生可能エネルギー法というものが施行されましたけれども、そうした影響もあって、過去二十年間に家庭用の電気料金が倍以上も値上がりするというような経験をしております。

 そうした中で、負担を一方的に求めたり、対策の実効性を知らなかったりすることになれば、人々は対策の正当性を疑ったり、自ら実践しなかったりするということもあれば、温暖化対策そのものが非難をされる可能性も予見できるところであります。あるいは、エネルギー消費を減らすために、断熱材を効果的に導入した方がいいのか、電気料金のタイムシフト制を用いたらいいのか、そもそも公共交通機関を拡充した方がいいのか、脱炭素社会実現のための手段として何が好ましいのかということは、人々の生活環境やライフスタイルに大きく左右されるということになります。

 こうした課題の特性を考えれば、行政や立法府からのいわばトップダウン的な施策というものは、十分な効果を持たないばかりか、反発を買う可能性すらあります。簡単に言えば、万人が影響を被るにもかかわらず、万人が納得するような政策的な解がないというのが地球環境問題の特質の一つになっています。そうであれば、政策的な解は、みんなが納得の上で合意して決めたというものしかあり得ませんし、そのための手法として現在重宝されているのがこのくじ引民主主義ということになります。

 ただ、いわば素人が公共政策に関与することについての不安や懸念が残るということもあるかもしれません。しかし、内外のくじ引民主主義についての一連の研究調査によれば、客観的な情報提供があり、十分な時間を尽くして公平な討議が行われる場合は、特に不確実性の高い課題については政策的にも妥当な結論が出される傾向にあると結論づけられています。最近では認識的民主主義などと呼ばれていますけれども、簡単に言えば、集合知が働けば極めて常識的な結論が導き出されるという実証研究も存在をしています。

 現在、日本では政府、自治体、そして企業が主体となって気候変動対策を進めていますけれども、各種の意識調査を見ても、日本国民の関心が十分に高いとは言えません。例えば、ピュー・リサーチ・センターの国際調査によれば、気候変動がとても心配、ある程度心配と回答した十八歳から二十九歳までの若年層の割合は日本では六七%でありますけれども、これは、アメリカの七一%、イギリスの七六%、あるいはフランスの八五%と比べてもかなり低いという状況にあります。

 このくじ引民主主義は、皆が意思決定と方策決定の主体的な責任を負う可能性があるという意味合いでは、当事者性を涵養し、公共的義務を果たしてもらうための責任を自覚してもらうような作用も持ちます。そして、こうした主体性や能動性がなければ、社会の隅々まで、まさにオール・ジャパンで取り組まなければならない気候変動対策を十分に実効的な形で推し進めることは難しいと言わざるを得ません。

 こうした地域住民の巻き込みという点では、例えば環境省による脱炭素先行地域づくりといった事業がありますけれども、これなどでは住民参画の取組は再生エネルギー導入に際してのゾーニングに関わる部分などにとどまっており、行動変容や、自らがどのような行動変容が望ましいのかと思うのかといった、合意形成をつくるための制度的枠組みは不十分なものにとどまっているように見受けられます。

 ドイツのNGOのジャーマンウォッチというのがありますけれども、これがさきに発表した世界気候リスク指標では、アフリカのモザンビークやバハマなどに次いで、日本は気候変動によって被るリスクが世界で四番目に大きい国だというふうにされています。つまり、最も深刻なダメージを気候変動で受ける国であるにもかかわらず、それに対する危機意識が薄いという、このギャップを埋めるものとしても、この気候市民会議が活用されるべきと考えているところであります。

 もちろん、お分かりのように、こうしたくじ引民主主義の制度設計や運営には入念な準備が欠かせません。もし、くじ引民主主義による気候市民会議のような場を設けるのであれば、行政による運用ではなくて、独立の立場でもってこれらを運営する専門家や、その進行を担うファシリテーターなどが不可欠になってきます。そうした担い手が自治体に育つような継続的な支援、あるいは住民がこうした最先端の専門家の知見を基にした地域の脱炭素化を考えられるための専門家派遣事業の仕組みなど、そうした人への投資も必要になっていくことは言うまでもありません。

 最後の点になりますけれども、イギリスの気候市民会議に関わったニューカッスル大学のエルスタッブ教授は、政治不信が渦巻いている現在の政治においては、参加や熟議をしたり、影響力を与えたりする機会を増やすことによって、ガバナンスの過程における市民の役割を問い直し、広げるために編み出される新たなプロセスや制度が必要だと強調しています。

 配付資料の三を御覧いただければと思いますけれども、これは、OECDがまとめた、加盟国でのくじ引民主主義の実践例の推移をまとめたものです。御覧いただくと、これは二〇一〇年代に入って各国で大変増えているということが見て取れるかと思います。

 議員の皆様方を前にして誠に恐縮ではありますけれども、各国でのポピュリズム政治やフランスのイエローベスト運動に象徴されるような、こうした抗議運動の蔓延というのは、今の議会制民主主義だけを政策や法律の正当性の根拠とした政治の在り方がいわば袋小路に陥っているということを指し示しているということについては、多くの研究者の意見が一致をしているところであります。

 その一方で、各国でこのくじ引民主主義の実践が進んでいるというのは、公共政策の正当性を現状とは異なる意思決定の方法によって回復しなければならないという危機意識の裏返しでもあるんだろうというふうに思います。

 気候変動対策を含めて、様々な不確実性の高いリスクに現代社会は手探りの状況でこれから対処していかないとなりません。こうした時代においては、より広範かつ制度的な形でもって市民や住民の参画が求められるのは論理的な必然でもあるということを最後に申し上げて、私の意見とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

関委員長 ありがとうございました。

 次に、小西参考人にお願いいたします。

小西参考人 皆様、おはようございます。本日は、意見を述べさせていただく機会をありがとうございます。

 私たちWWFは世界百か国で活動している環境保全団体でして、私はそこで二〇〇五年から、COP会議、昨年のCOP26でちょうど十六回目の参加になりますが、国内外の政策に環境とエネルギーの提言をしております。

 実は、今もIPCC会議第六次評価報告書の第三作業部会中でして、今はオンライン会議になったので、この後、午後二時から夜中の四時まで参加するんですけれども、今日はせっかくですので、まずIPCCの最新の知見を踏まえた今までのおさらい、それから意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、一ページ、おめくりいただいて、巨大に用意してきてしまったので、見開きで御覧いただければと思いますが、このままではこれから、十年後、二〇三〇年頃には平均気温の上昇は一・五度に達すると予測されています。

 御存じのように、一・五度と二度の間で非常に大きな差があることが分かっております。例えば熱波ですが、一・五度だと大体、産業革命前に比べて九倍ぐらいなんですけれども、二度になるとそれが十四倍になる。それが、このまま政策を余り追加で入れないと、四度になると四十回になるということで、五十年に一度の猛暑が毎年のように起きるといったような世界が私たちが追加の対策をしなければ待っていることになるわけです。

 今回、新しく分かったことが、海面上昇が一・五度と二度で差はあるんですけれども、実は、今後、一・五度、二度に抑えても海面は上昇していくんですね。ですので、六ページを御覧いただきますと、二三〇〇年には、たとえ二度に気温上昇を抑えたとしても最大で三メートルぐらい、もし四度になってしまうと七メートルぐらいまで上がっていくということが予測されています。

 おめくりいただいて、今回の報告書の新しいメッセージとしては、既に私たちには、温暖化の悪影響に対して準備をすることを適応といいますが、その適応の限界を超える現象が起こっているということです。それを損失と被害というような形でパリ協定でもこれから対応することにはなっていますが、温暖化は既に私たちにとって非常に後戻りできないところまで来ている現象もあるということで、せめて一・五度に抑えようというのが今の現状ということになっています。

 そのために重要なのが二〇五〇年カーボンニュートラルなんですけれども、今後十年、特に二〇三〇年までに、今大体、IPCCで、一〇年比で四五%、世界全体で削減が必要と言われていますが、この十年の削減ができなければ一・五度に抑えることは非常に難しくなるということが分かっております。

 これを受けてCOP26は、これまでパリ協定は御存じのように二度未満が長期目標だったんですけれども、事実上、一・五度の方を目指すことになりました。カーボンニュートラル二〇五〇年ですね。この中でやはり石炭火力が一番の温暖化の最大要因ということで、国連の文書の中では非常に珍しいことなんですが、石炭だけを取り上げて削減方針が示されています。インドなどが二〇七〇年にゼロを言ったことによって、初めて二度未満も視野に入ってきたんですが。

 次、おめくりいただいて十一、十二ページで、まだまだ二〇三〇年の各国の目標は、一・五度はおろか二度にも整合していません。ということで、これからも引上げを求められていくことになります。COP27においても今後継続的に引上げを求められるということがここで決まりました。

 そして、十三ページ、温暖化の最大要因として石炭火力に言及されたんですけれども、岸田首相の演説では、日本も今回、二〇三〇年に四六%削減、さらに五〇%の高みを目指すと。しかも、途上国への追加の資金支援を表明して非常に高く評価されました。

 しかし、残念なことに、次、おめくりいただいて十五ページ、再び環境NGOから化石賞というのを受賞していることを皆様は御存じだと思います。太陽光などの再生可能エネルギー普及のために火力発電が今後も必要として、アンモニアや水素などによって火力発電のゼロエミッション化を図って、それをアジアに展開していくといったようなことで、これはむしろ石炭火力を始めとする火力発電の延命策ではないかということで世界から評価されているわけです。

 なぜ私がこれを説明しているかというと、次の温暖化の対策法の改正案で、事業の選定のときに非常に気をつけて国際的な基準に沿ったものを選んでいく必要があるからだと思うからです。

 COP26で更に明らかになっているのが、金融界とか産業界とか、いろいろな非国家アクターの活躍です。それがあって、パリ協定がこれから推進されていくことになります。

 ということで、次、十八ページからが今回の一部改正案に対する意見なんですけれども、三つ、主に述べさせていただきたいと思います。

 おめくりいただいて、十九ページ。

 まず、今回の改正案、これは基本的には地域の脱炭素ロードマップに沿って地域の脱炭素化の取組を財政的に支援する仕組みを立ち上げて、民間の資金を立ち上げて更に取組を強化していこうということなので、基本的に、どんどん早く進めてください、なるべく規模も拡大してと思うんですけれども、そのときにやはり気をつけていただきたいことは、二〇三〇年までに排出量をほぼ半減するということが非常に重要ですので、それに沿った事業を選んでいただくことが非常に重要になってきます。

 そのためには、脱炭素化委員会の委員と事業の選定が重要になってまいります。特に、地域の脱炭素化事業というのは、今非常にゼロカーボンシティー宣言が増えて六百か所ぐらいになっているんですけれども、まだ具体策に結びついていないので後押しが必要なんですが、その後押しのときに方向性をきちっと、国際標準に沿った方向で選んで支援していただきたいなと思っております。

 二十ページ、支援基準なんですが、事業の選定は脱炭素化委員会が環境大臣が定めた支援基準に基づき決定するとのことなので、支援基準を策定するのが非常にポイントになってくると思っております。

 繰り返して申し上げますと、まず、二〇三〇年までに削減ができるかどうか。もちろん、今回、事業の拡大はいいことなんですけれども、これまでのエネルギー特会とは違いまして、基本的に、例えば森林とかに広がってまいりますが、基本はやはり省エネ、そして再エネ。もちろん地域の環境保全とのバランスも重要ですし、あと、適応。今、適応法ができて、地域は適応計画が進んで、私も環境省の適応の補助金の審査員をさせていただいているんですが、三年たってきて、どんどんどんどん自治体さんが能力が向上されて、適応計画が着々と進んでいくのを感じています。ですので、政策の後押しは非常に重要だと思うんです。

 今、IPCCの新報告書でも言われますが、適応との、緩和とのコベネフィットのある事業というのがありますので、今日はちょっと時間がないので今詳しくは御説明しませんけれども、そういった適応とのコベネフィットでより地域にベネフィットが回るような、そういった事業を選定していける支援の基準が大事だと思っております。

 もう一つ、日本の一つの課題だなと思っているんですが、日本はどうしても、温暖化対策というと革新的技術に頼る傾向があります。しかも、短期的対策と長期的対策というものが比較的タイムラインを考えずに話される傾向があることを非常に懸念しております。

 二十一ページ、スライドを御覧いただきますと、例えばグリーン成長戦略なんですが、二〇五〇年の参考値として、例えば再エネは六〇%ぐらいが限界ですね、水素・アンモニア発電は一〇%みたいな、割と一つのシナリオに基づいた形で、二〇五〇年、ひいてはそこにつながる二〇三〇年というものがイメージされています。

 ここで、二〇三〇年に向かって規制的措置と支援的措置が必要と書いてあって、今回の改正案で支援的措置は充実していくんだと思うんですけれども、規制的措置が日本はまだ十分に入っていないということも非常に懸念されています。ですので、やはり、二〇三〇年に向かっては、まず、今の既存の技術でできること、省エネを推進して可能な限り再エネを導入してということが基本になってくるのではないかと思っております。

 例えば、二十二ページのIEAのネットゼロシナリオの技術シナリオを御覧いただきますと、IEAも、二〇三〇年半減までに必要な対策は、黄色で二〇三〇年に線を引かせていただきましたが、社会変革や既存技術の普及拡大と。例えば、建物の断熱化ですとか、車のEV化ですとか、石炭火力廃止などが挙げられます。

 特に、日本でも断熱化は非常に重要なんですけれども、建築法のあれが今国会で、与野党共に反対はされていないと思うのに、是非、本当は早く、速やかに導入して省エネを進めるべきだと思うんですが、そういったことをやって、かつ、それに沿って地域も進めていくといった形が非常に重要だと思いますので、まず、そこの、今できることで半減をしていくということが非常に重要になってくると思っております。

 今、日本がすごく一生懸命やろうとしている水素とかアンモニアとか、いずれ必要になってきますけれども、それは二〇五〇年に向かって必要な革新的技術ですので、それを今、強力にメインで進めることが二〇三〇年までの対策というふうには混同されないことが非常に重要かなと思っております。

 続いて、おめくりいただいて、これはほんの参考までなんですけれども、二十三ページ、日本はかなり、技術に関しても国際標準からは少し離れているところがあるなと思われる例も挙げております。

 例えば、トランジション戦略で、電動車というのは日本の場合はガソリン車が含まれますので、そこからの出口戦略をどう描くかといったことが示されていなかったり、あと、石炭火力にアンモニア燃焼をしていくというのは、既存の石炭火力を続けるということには役立つかもしれないんですけれども、今の水素というのは日本の場合はグレー水素で、CCUSでもなく、しかも、そのままオーストラリアとかで造って運んでくるといったような計画だとCO2削減にはつながらない、少なくとも二〇三〇年に向かってはつながらないといったことがありますので、やはり二〇三〇年までに半減していく事業の選定というところは非常に注意が必要かなと思っております。

 二十五ページは、ネットゼロに向けたトランジションとしては、国際的な考え方では、今ある既存の技術で可能な限りリニアに減らしていって、でも、いずれ必要になる、除去ですね、大気中のCO2を除去する技術も必要なんだけれども、それは、今の削減を九〇%ぐらいまで可能な限りやって、残り大体一〇%ぐらいは炭素の大気からの除去でニュートラルにするというのが、カーボンニュートラルの考え方として今議論されている内容です。

 ということで、事業の選定に非常に重要なのが、次、二十六ページ、脱炭素化委員会の人選でございます。お聞きすると、以前のグリーンファイナンス機構が恐らくそのままこの新しい機構になるというような話を聞いておりますが、脱炭素化委員会で事業の選定をしていくということですので、そこは非常に多様な人選が必要だと思っております。

 特に、エネルギーが絡んできますので、日本の場合はなかなか、グローバルな知見を持った研究者が中央の中でなかなか数多くはいらっしゃらない状況ですので、是非、グローバルな基準で考えられる脱炭素知見に明るい研究者や、シンクタンク、NGOなども含めた人選が必要じゃないかと思っております。もちろん、地域おこしに詳しい有識者とかは当然。多様な人選が必要だと思っております。ガバナンスが非常に重要だと思っております。

 続いて、二十七ページ。もう一つ、続いては、今回は国の必要な財政上の措置などに関する規定の追加ということで、自治体への支援ですね。

 前回の改正のときもそうだったんですが、実は、再エネというのは自然豊かな中核都市未満の市町村に豊富にございます。本当は、再エネ目標を立てる市町村に対しては、努力義務ではなくいわゆる促進、再エネの促進区域というのもセットで設定されることが望ましかったとは思っているんですけれども、今回の支援の仕組みの中に、是非、都道府県において市町村の促進地域設定を奨励する要素を入れていただければなと思っております。

 もちろん、再エネ特区においては地域の環境保全との両立を図ることも、これは、事業の選定のときにもそうですし、自治体の支援のときにも重要であるということはもう書かれていますので、これはそうだと思っております。

 何よりもやはり、自治体の人材支援、これをどういうふうにサポートしていくかというのが非常に重要だと思っております。前の適応法のときもそうなんですけれども、既に人材がいらっしゃるところはすぐに立ち上がってどんどんどんどんレベルアップされていくんですけれども、全部が全部そういうわけではないので、そこにどのように人材支援をしていくかというのは、一つ、鍵を握る大きな要素だなと痛感しておりますので、脱炭素事業においても自治体の支援ということは非常に、その仕組みをつくることが重要だと思っております。もちろん、徹底してこういう支援の仕組みがありますよということをお知らせしていくということも重要だと思っております。

 最後に、ちょっとここからは離れるんですけれども、本来は、温対法というのは基本的に環境省の足下でできることが書かれた法律で、各省庁の気候変動に対する施策を全体的にカバーしているものには残念ながらなっていません。御存じのように、日本の場合はエネ起源CO2が日本の温室効果ガスの九割を占めますので、重要なのは、エネルギー政策も含めた気候変動対策の政府全体での推進ができる基本法が本当は必要だと思っております。以前、基本法を各政党さんが出されていましたけれども、今こそ、パリ協定にふさわしい基本法というものも是非御検討いただきたいなと思っております。

 中でも、今重要なのは日本の省エネを推進するカーボンプライシング。これがまだ、ちゃんと、規制的要素の排出量のキャップ・アンド・トレードとかが入っていません。炭素税も二百八十九円と非常に低い額ですので、国内外でこれから炭素国境調整措置とかが入ってくる中で、日本に明示的な炭素価格がないというのは日本の企業の国際競争力の方に影響すると思っています。ですので、そういったものも要るということが本当は入って、基本法というものが適応法と緩和法と併せてできるということが必要だと思っております。

 中でも、次の二十九ページに基本法の中に盛り込むことが考えられる主な内容を入れさせていただいていますけれども、カーボンバジェットの概念もすごく重要だと思っております。

 すなわち、CO2は非常に安定したガスなので、一回大気中に排出されると、生態系に吸収されない限り蓄積されます。蓄積された濃度に応じて気温は上がるので、結局、予算があるわけですよね、これから排出できる。そのカーボンバジェットに沿った政策、これから温暖化対策をやっていくということがきちっと入ると本当に日本の本気度も世界に伝わりますし、かつ、政策の一貫性というのもできると思いますので。今のままだったら、一・五度の炭素予算は十年以内に使い切ってしまいます。一・五度に十年ぐらい後にはなってしまいますので、是非それを御検討いただきたいと思っております。

 三十一ページ、一応、イギリスがカーボンバジェットを採用しておりますので、その例を出しております。

 三十二ページには、今までお話しさせていただいた意見をまとめさせていただいております。

 そのほか、カーボンプライシングとかGXリーグに思うところとか、いろいろ参考資料もつけさせていただいておりますので、よろしかったら是非御参考になさってください。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

関委員長 ありがとうございました。

 次に、藤本参考人にお願いいたします。

藤本参考人 おはようございます。埼玉県所沢市の市長の藤本と申します。

 本日は、環境委員会で意見を述べる機会をいただきましたこと、光栄で、本当に感謝申し上げます。

 それでは、本市の取組について御説明した後、改正案について意見を述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料に沿って御説明をいたします。

 まず、一ページ目を御覧ください。

 所沢市は、都心から三十キロの首都圏に位置する埼玉県南西部の中心的な都市でありながら、となりのトトロの舞台となった狭山丘陵や武蔵野の雑木林、茶畑や三富新田という農地など、豊かな緑に恵まれた、都市機能と自然を併せ持つ都市であります。

 農地で生産されるものは、お茶やホウレンソウ、里芋、様々でありますけれども、葉物野菜が中心で、都市農業の強みを生かせると思いますが、しかし、どうしても、道路や倉庫を呼び込んで、そこに売ったり土地を貸したりすることで安定した収入を得たいと望まれる傾向があり、農地も減少しつつあります。

 二ページ目を御覧ください。

 私が市長となったそのきっかけは、東日本大震災と原発事故でありました。あのとき誰もが感じたことだと思うのですが、人間は万能ではない、人間は所詮自然の一部でしかないのかもしれないということを痛感し、その思いを決して忘れず市政に当たってまいりました。

 福島の原発は、東京の人々の電力のためでありました。何かの犠牲の上に成り立つ便利さ、快適さだけを求める、そんな生き方は反省し、知恵を絞って、時には我慢をしながら、エネルギー、資源を貪る形で成り立っている今のライフスタイルを転換し、子供たちに持続可能な社会を継承するため、今の大人が本気にならなければいけないと感じています。

 市長になるまで埼玉県議をさせていただきましたが、埼玉県議を務めさせていただいているときには二十四時間営業の是非を問うたりもしました。そして、二〇一一年の市長就任後も、小中学校二校へエアコンを導入することについて問題を提起するなど、便利さや快適さの追求やエネルギー使用の在り方について人々に訴えてまいりましたが、それが市民の合意になったかというと、必ずしもそうとは言えない現状であります。

 いずれにしても、そのような考えの下、人と人のきずな、人と自然との共生をしていくために、マチごとエコタウン所沢構想という構想を策定し、エコタウン所沢の実現をこの十一年間目指してまいりました。

 そして、現在、環境基本計画と所沢のマチごとエコタウン構想を一緒にした所沢市マチごとエコタウン推進計画というものを作り、ゼロカーボンシティー宣言をした上で、脱炭素社会の構築、みどり・生物多様性の保全、循環型社会の形成などを実現すべく、各種施策に邁進しているところであります。

 本日は、主に所沢市の脱炭素化や再生エネルギーの普及について御紹介をさせていただきます。

 三ページ目を御覧ください。

 まずは、再生可能エネルギー政策について申し上げます。

 所沢市は、二〇一四年に一般廃棄物最終処分場へメガソーラーを、また、二〇一八年には調整池にフロートソーラーを整備し、今まで市の遊休地であったところを活用するという形で再生エネルギーの普及を推進してきました。この二つの施設については、固定価格買取り制度、FITを活用し、その電気を売った収入を市の基金に積み立てて、市の施設の省エネ改修に充ててみたり、市民がエコリフォームをしたり太陽光発電や蓄電池又は電気自動車などを購入するときの補助金として還元させていただいております。

 その他、ごみ焼却発電や浄水場の小水力発電、小中学校の屋根を貸して太陽光を発電していくという太陽光発電事業など、再生エネルギーの積極的な普及に努めてまいりました。

 四ページ目を御覧ください。

 昨年度には、民間主導によるソーラーシェアリング事業も開始されました。長年遊休農地であった約一・七ヘクタールの農地でブルーベリーやブドウの栽培と約一メガワットの太陽光発電事業が開始され、年間見込み発電量である約百十二万キロワットアワー全量が地域新電力を通じて市の施設で今使用されております。

 まさに、この取組は、再生エネルギーの普及、遊休農地の活用のみならず、再生エネルギーと農産物の地産地消、さらには、障害を持った方々にも働いていただくということで、農福の連携による農業活性化など、地域循環共生圏の推進につながるものだと考えています。

 五ページ目を御覧ください。

 二〇一八年には、再生エネルギーを市民全体へ普及するため、民間事業者、市内金融機関、そして商工会議所とともに地域新電力会社ところざわ未来電力を設立いたしました。先ほど御紹介いたしました市のごみ焼却発電、そしてメガソーラーやソーラーシェアリングが生み出す電力などを電源とし、市の施設や市民に環境に優しい電力として供給をしているところです。

 六ページ目を御覧ください。

 所沢市では緑も大切にしております。二酸化炭素を吸収し、ヒートアイランド現象を緩和してくれるからであります。具体的に申し上げますと、条例に基づいて里山保全地域という保全地を指定し、市民による保全活動とセットで買取りによる公有地化を進めております。また、まちなかみどり保全地区、みどりのエコスポットといった、市街化区域に残っている貴重な緑を、固定資産税、都市計画税は十年間いただきません、ですから十年間保存をお願いしますという形で市独自の取組を進めているところです。

 七ページ目を御覧ください。

 最後に、今後のまちづくりの方針について説明をさせていただきます。

 所沢市は、脱炭素を目指すことはもちろんのこと、人と人のきずな、自然との調和、共生、そして、それらを大きく包含する、人を中心にしたまちづくりというふうに表現しているんですけれども、人を中心にしたまちづくりを併せて進めているところです。

 脱炭素社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの更なる普及、利用を推し進めるとともに、市の施設の省エネ化を推進していきます。また、地域脱炭素ロードマップで示される公共施設への太陽光発電導入目標の達成を目指すとともに、助成制度を用意して市民、事業者の再エネの導入を促進したり、市の施設のLED化を進めています。

 人を中心にしたまちづくりの具体的施策としては、車のための道づくりから人のための道づくりへと発想を転換し、街路樹の樹冠を広げ木陰をしっかりとつくっていったり、川沿いの散策路を整備して人々と川と緑が一緒に感じられるようにしたり、道にベンチを百か所設置したりといった、歩きたくなるまちづくりを進めるとともに、シェアサイクルの拡充、地域公共交通の拡充によって、自動車を使わなくてもいいように、交通分野の低炭素化、ゼロカーボンに取り組んでいくつもりでもあります。

 以上が、所沢市の現状の取組であります。

 それでは、本改正案の地方公共団体に対する財政上の措置について意見を申し上げます。

 二〇五〇年二酸化炭素排出実質ゼロを表明するゼロカーボンシティー宣言、所沢市も二〇二〇年の十一月に宣言いたしました。宣言した以上は本気で取り組んでいかねばなりません。

 昨年度よりゼロカーボンシティ推進室を設置し、各所属が温暖化対策を自分のこととして捉え、庁内一丸となって施策を進めておりますが、少子高齢化と人口減少が進む中、財政はこれからもずっと厳しく、限りある財源の中で新しい取組を進めていくことは非常に大きな課題となっております。二月末現在、埼玉県内六十四の市町村のうち、既に二十六市町がゼロカーボンシティー宣言をしておりますが、皆同じような財政状況であり、このままでは新たなことについては手が出せず、目標の達成は難しいものであります。

 今般の改正案については、国の財政支援が法的に位置づけられるものであり、かつ複数年度の継続的な支援が担保されることから、新規事業を自治体が実施し、それを続けていく上で確かな追い風になると考えています。

 また、民間事業者との連携も欠かせません。法改正によって継続的な支援の方向性が示されることから、より幅広いチャレンジングな取組が促されるものと考えます。

 以上のことから、ゼロカーボンシティーを表明する、また、これから表明しようとしている全国の自治体においてとても有用なものと考え、本改正案に賛同するものです。

 一方で、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金の脱炭素先行地域づくり事業におかれては、各自治体の実情、特色を踏まえた評価を是非しっかりと行っていただきたいと存じます。例えば、当市も今後、先行地域の応募へ向け準備、検討を進めておりますが、先ほど御説明申し上げました人と人とのきずなが紡がれていくような、人を中心にしたまちづくり、そしてみどりの保全など、所沢市らしさをしっかりと出していきたいと考えています。

 また、脱炭素ドミノを起こすためには先行地域以外の地域を脱炭素化する仕掛けが必要であり、引き続き国、県、市町村が一体となって進めていくような施策の検討を行っていただければと存じます。

 最後になりますが、二〇五〇年までのカーボンニュートラル達成は非常に高い目標です。自然と調和するように、エネルギーはなるべく使わないように、使うエネルギーは再生可能エネルギーで賄うなど、地球を痛めつけないようにライフスタイルを変えていかねばならず、足し算だけでなく引き算でも考えていく覚悟が私たち一人一人に必要と考えます。

 また、本改正案に加え、今後は、地球温暖化対策にも資する都市公園とか生産緑地といった都市部の緑をどのように確保していくかという観点についても課題があり、政府全体で検討していただければと思うものであります。

 地球温暖化対策を進めるためにはどうすればよいのか。

 世界が、国が、自治体が、未来の子供たちから預かるこの地球を引き継いでいくために、今、脱炭素の声を上げてはおります。が、残念ながらそれはまだまだ浸透していません、胃の腑に落ちておりません。

 気候危機を共通認識とすることこそ必要であります。環境を担当する職員だけでなく、市職員みんなが、事業者が、そして市民みんなが本当にそうなんだと思って行動していく、そんな環境をつくっていけるよう、所沢市もゼロカーボンを達成することを前面に打ち出して、今後も市政を運営していく所存です。

 衆議院環境委員の皆様の一層のお力添えをお願い申し上げまして、説明を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

関委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

関委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。畦元将吾君。

畦元委員 自由民主党、畦元将吾です。

 本日は、お忙しい中、当委員会に参考人として御参加いただき、ありがとうございます。

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案に関する意見陳述として、大変に貴重な御意見をありがとうございます。

 それでは、何人かの参考人の皆様に質問をさせていただきます。先ほどお話しいただきました内容と重複する部分もあろうかと思いますが、補足説明などを含めて、再度、ポイントなどを意見としていただければ幸いです。

 では、最初に、参考人の皆様にお伺いいたします。今回、改正の実際の施行に当たり、脱炭素化支援機構の活動や脱炭素先行地域づくりが成功していくために、環境省を始めとして関係省庁がどのような役割をしなければいけないのか、参考人の皆様に御意見をお伺いできれば幸いです。

吉高参考人 御質問ありがとうございます。環境省の役割ということでございますね。ありがとうございます。

 私自身、今回の法案に関して、大変に促進できる法案だと思っております。ただし、私、地方自治体や地方銀行に参りまして、まだまだ、なかなか理解をされていないところがございます。特に、地銀の場合とか信用金庫、先ほどの所沢市さんの場合はちゃんと組み込んでいらっしゃいましたが、なかなか理解されていない部分がございます。

 どうしても、こういった案件をするためには公的資金と民間資金の循環が必要ですので、是非、金融機関、特に地方の金融機関や中小の金融機関、中小企業が理解できるような、そういった仕組みをつくっていただければと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

吉田参考人 ありがとうございます。

 基本的に、ほかの先進国を見ていると、環境意識に一番問題意識を持っていて、そして実際に取り組む意欲や行動力があるのが、いわゆるZ世代と呼ばれている若年層であるわけですね。先ほども申し上げましたけれども、国際比較調査で見ても、非常に日本の若年層というのは相対的には意識が低いというような状況にあります。

 ただ、気候変動は、二〇五〇年あるいはその先のことを我々は議論しているわけですから、彼らの将来についての話であるわけですね。そういった意味では、ほかの国でも中高年よりは若年層が意識が高いんですが、日本はむしろ中高年の方が意識が高いという逆転現象が起きていて、人口動態等の条件もあるかと思いますけれども、そういった状況にある。

 一方で、環境省は相対的に予算も限られているというような状況もあるかと思いますので、若年層に向けたアプローチを地域一丸となって、彼らの問題である、ひいては我々の未来のことでもあるというような形で、積極的な啓発活動というのもやはり必要になってくるんじゃないかなというふうに思ってございます。

 以上になります。

小西参考人 ありがとうございます。

 何より大事なのは、先ほど申し上げたんですけれども、支援基準とそれから脱炭素化支援機構のガバナンスづくりだと思うんですが、それともう一つ、今回、支援事業の幅を広げるということで、例えば、森林対策ですとか、あと交通対策とかも含まれてくることになると思っております。とすると、関係省庁で、例えば国土交通省さんとか農水省さんとか経産省さんとか、是非、しっかりと協調していただいて、地域で進めていただきたいなと。

 特に、例えば、プラスチック対策もそうですけれども、シェアリングエコノミーに変えていくとかロードプライシングをするとか、そういった、二〇三〇年半減が可能で、かつ、今ルールを変えればできるようなことということに是非取り組んでいただくためにも、関係省庁としっかり連携して進めていただければなと思っております。

 ありがとうございます。

藤本参考人 環境省マターにしないで、全省庁が一致して取り組んでほしいと思います。国が宣言したということは、市が宣言しようがしまいが、やらなくちゃいけないことであります。一蓮託生であります。これは世界マターの話であります。

 所沢市でいいますと、環境クリーン部が宣言して予算編成において頑張ろうとみんなに呼びかけましたが、出てきた予算は全然反映されませんでした。それぞれ、教育委員会は文科省とつながり、建設部は国交省とつながっています。ですから、やはり、今感じたことは、環境クリーン部マターではなくて市全体のマターにしていかなくちゃいけないんだということを痛感しているところです。

 以上です。

畦元委員 ありがとうございました。参考人の皆様方の御意見を十分に参考にさせていただきたいと思います。

 では、次の質問に行きます。

 次は、吉高参考人にお伺いいたします。

 今回の法改正の内容、脱炭素化支援機構の創設は世界のESG投資発展の流れに沿っているものと評価できますでしょうか。ESG投資の実務の第一人者でもある吉高参考人に質問させていただきます。

吉高参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、世界ではESGマネーはあるんですが、まだまだ日本では少ない。そして、グリーンに投資先を求めている投資家と話すと、やはり、日本の企業と政策が本当にグリーンに向かっているのかという、その資金のメッセージ性が少ないというふうに言われているんですね。

 ですので、私が今回の法案の改正で大変期待しているところは、まさに投資家のメッセージになる。先ほど申し上げた死の谷を越えるというのは、まさに、ビジネスで大きくなる、拡大するというシグナルになるわけですね。海外に向けて発信していただき、海外からの資金も呼び込む、こういったことでは、本当にESG投資の流れに沿ったものだというふうに理解しております。

畦元委員 ありがとうございました。

 もう一点、吉高参考人にお尋ねします。

 実際に、この機構の活動により脱炭素投資を拡充していくためには、どのような点に留意して運営していけばよろしいでしょうか。お考えを教えてください。

吉高参考人 先ほども申し上げましたけれども、私自身が二十年間、この気候変動に関して、ビジネスに金融が支援できるようにというところで最も難しいところが、なかなか新しいものに対しての評価が、過去に実績がないものに対しての評価ができないというのが金融機関にございます。成長性は見るんですけれども、それに対してのリスクをいかに低減されているかということがなかなか。

 これまでの機構ですと、初期の方ではリスクは低減できるんですけれども、まさに、採算性があって、ビジネスとして大きくなるまでの間のリスクというのが実は低減される措置ではなかったと思います。まさにこの機構で最初から、例えばパイロット事業からビジネスになるまでの間を金融機関とともに評価軸とか標準化とかしまして、それで金融機関がお金を出すような仕掛けにしていただきたいというふうに思っています。

 とにかく、御存じのとおり、ネガティブなものにはお金は行かない、ポジティブなものにお金が。そのポジティブなものをどう評価するかというのを定量的にですね。カーボンプライシングの話もしましたけれども、カーボンプライシングのようにちゃんと定量化されますと金融機関は評価できます、そこにお金が流れていくということでございますので、この新しい機構でそういったことを期待したいというふうに思っております。

 ありがとうございます。

畦元委員 ありがとうございます。とても分かりやすく具体的に説明いただき、ありがとうございます。

 では、次に移ります。次は、藤本参考人に質問させていただきます。

 脱炭素の取組ですが、単に温暖化ガスがゼロに向けて削減していることだけでなく、住民の暮らし、地域、企業、経済活動の質の向上につながるようにしていくにはどうすればよろしいでしょうか。先ほど幾つかお話は聞いたんですが、補足とか、もっとあればお願いいたします。

藤本参考人 なかなかいい答えはないと思います。

 一つには、やはり、意識の格差が一番阻んでいるものだと思いますので、映像の力とかテレビやメディアの力で、環境に取り組むと得をする、環境に取り組むと格好いい、おしゃれだというふうな雰囲気をつくっていただいて、市民全体がそれを応援するような部分、あと、このままじゃ何度上がっちゃうからどうなるんだよということをどんどんみんなに伝えて、その上で民間企業には損得で訴える部分があると、また動きやすくなるんじゃないかなと思っています。

畦元委員 ありがとうございました。大変参考になりました。

 時間も来ていますので、では、最後の質問です。参考人の皆様にお聞きいたします。

 カーボンニュートラルの実現のために、今回の法改正の内容に限らず、あらゆる政策を総動員して取り組んでいかなければならないと考えております。何か、参考人の方々のアイデア、御提案があれば御教授ください。先ほど話したことに対して補足などがあれば、よろしくお願いいたします。皆様にお聞きしております。

吉高参考人 ありがとうございます。

 先ほどの私の資料の八ページ、実は私の博士論文でもありますけれども、金融がお金を動かすというのは、定量的にそこに投資をすることがどうポジティブに評価できるか、定量的ではなくてはいけない、それも金銭的な定量的。そこにはどうしてもカーボンプライシングというのがないと評価は難しい。

 実際に今、金融機関は、お客様に対して、CO2の排出量に対する財務的評価はし始めております。ですので、これが、他の国の指標を使って評価しているのでは本当の評価には私はならないと思っています。実際に今、企業はそういった他の国の世界的な形でやっているわけなんですけれども、実際の日本のカーボンに対する価格は違うはずですね。ですので、政府にとって、日本の民間金融機関を動かすためにも、きちっとした定量化、財務的なインパクトの定量化を是非図っていただきたいと思っております。

 ありがとうございます。

吉田参考人 ありがとうございます。

 今、私は諸外国の政治経済を研究している者でございますけれども、ヨーロッパを含めアメリカもそうですけれども、日本より先進的な取組をしているというのは確かです。

 ただ、一方で、そこがここに来て、様々な反動、バックラッシュみたいなものを呼び込んでいるわけですね。なぜかというと、人やお金の動きが全く脱炭素社会に向けて変わっていく、それによって当然ながら、得をする人たちもいますが、損をする人たちもいるわけですね。そういった人々に対していろいろなインセンティブをつけて何とか社会的な摩擦を緩和しようとしているわけですけれども、それでも様々、経済的環境によって、それに対する反動とか反感というものが広がっている状況です。

 日本は幸か不幸か環境対策の取組が相対的には遅れていますので、そういった感情はまだ出てきていないわけでありますけれども、これからより一層強化をしていくとそういった意識というのが広がってくる可能性がある、そのことを見据えて、単にお金の回し方であるとかインセンティブを与えるだけではなくて、そうした反感をいかに緩和しながら進めていくかというような先取りの発想が、これからより一層効率的な脱炭素社会への道筋をつける上でも重要になってくるのではないかというふうに思ってございます。

 ありがとうございます。

小西参考人 ありがとうございます。

 やはり、今、カーボンニュートラル、最終的に必要になるのは、どうしても、残っている残余排出量をいろいろな革新的技術で相殺することなんですけれども、だけれども私たちに今一番重要なのは、二〇三〇年に向かって省エネをきっちり進めて、そして四六%削減、五〇%を確実にやっていくということが一番重要だと思っております。

 先ほども少しお話ししたんですが、省エネをいかに政策で強力に進めていくことができるかというのが非常に重要だと思っておりまして、まず第一歩は、建築物省エネ法を是非速やかにお願いしたいなと思っております。

 そして、今、吉高参考人もおっしゃったんですけれども、日本にきちっとカーボンプライシングを。カーボンプライシングは、今、定義が広がってしまって、いろいろなボランタリーなものも言われているんですけれども、そうじゃなくて、やはりきちっと炭素税を、少なくともCO2排出量に比例した形ですら日本は今ないので、そこに行くように、しかも予見可能性を持って、それが二〇三〇年には例えば五千円、四〇年には一万円とか、そういうふうになっていくということが政策で示されると、企業も脱炭素投資に踏み切りやすくなります。

 ですので、予見可能性のあるキャップ・アンド・トレード型の排出取引制度、炭素税みたいな省エネを後押しする政策の導入を是非進めていただければなと思っております。よろしくお願いします。

藤本参考人 ありがとうございます。

 温対法の改正とはちょっと違う観点になるかとは思うんですけれども、二つありまして、一つは、地域新電力を支える仕組みをお願いしたいと思います。再生可能エネルギーを何とかしようということでいろいろなところで地域新電力会社が立ち上がりましたけれども、今は市場の電力が高くなって、最終的には、生き残れるのは体力のある大企業で、今までどおりの電気というふうになります。ですので、この動きを止めないような仕組みをお願いできればと思っています。

 また、もう一つは、都市部に多い生産緑地、これが非常に大切な緑だという位置づけは変わってきたわけではありますけれども、しかし、最終的には最後に全部が宅地になる運命です。ですので、雨水が浸透し、そしてヒートアイランド現象も緩和して、更にCO2も吸い上げてくれる、その生産緑地を残せる仕組みも是非ともお考えいただいて、やっていただければありがたいなと思っています。

 以上です。

畦元委員 参考人の皆様、大変貴重な意見をありがとうございました。

 これで私の質疑は終わります。

関委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 近藤昭一でございます。

 今日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 また、四人の方、本当に貴重な御意見を賜りましたことを感謝を申し上げたいと思います。

 それで、私の方から、四人の参考人の方からそれぞれ、温暖化対策、こうしていくべきだ、こういう仕組みでやっていくべきだ、こういうお話がありました。そういう中に、何年か前から百八十度転換をした、そんなお話もありました。

 実は、私も、国会で仕事をさせていただいて以来、長く環境委員会にいます。そういう中で、温暖化対策、温暖化の問題とは随分前から、二十年も三十年も前から言われてきたところであります。しかし、なかなかそういうものが進まなかった。先ほど、経済的な面でいつも、温暖化対策等々をすると経済的にお金がかかって、利益でいうとマイナスなんだと。こういうこともよく言われてきたというのが私のこれまでの経験であります。

 しかし、その中で、さっき御指摘もありましたように、というか、これまでも指摘をされてきたところがある。それはいわゆる自然災害なんです。温暖化によって自然災害が、ここ数年、特にそういうことが言われるというか実感されるようなことになったわけですが、早くから言われてきたと思います。自然災害が大きくなって、つまり保険ですよね、保険の支払いが大変に負担というか大きくなってきた。

 こういうことも考えれば、早くから温暖化対策は必要だ必要だと言われてきた、しかし、ここまでこういうふうに来てしまった、そこの原因といいましょうかね、なぜだったのかということを吉高さんと小西さんにお聞きしたいんですが、いかがでありましょうか。

吉高参考人 ありがとうございます。

 まず、多分、金融機関が最も損害保険で大規模と感じたのはハリケーン・カトリーナかと思います、二〇〇五年の。そこから急速に、要はアメリカで起こった大被害もロンドンのシティーでヒットするというのがあります。一方で、バーゼルという、銀行当局でも土壌汚染リスクというのは担保に直接直結するので比較的リスクが評価しやすかったんですけれども、見えないCO2というのは非常に低い評価がしにくかったというところがございます。

 そういった点では、先ほど申し上げたように、欧米ではカーボンプライシングが出てきて徐々に評価ができるようになり、それから再エネも安価になってきたという、これに時間がやはりかかってきたんだと思います。実際には、欧州で最初に炭素税が入ったのは一九九〇年初頭ですので、これだけ欧州でも時間がかかってきたわけですね。

 その中で、要は競争性が出てきたというのがまず金融機関の目線です。おっしゃるとおり、保険会社の支払いも莫大です。実際に銀行がプロジェクトファイナンスする際には、保険会社が保険を掛けます。そうすると保険がたまってしまう。普通の事業も金融機関、銀行にとっては影響を受けてくるということで、いよいよリスクが高まってきたというのが最も大きいというふうに思っております。

 二〇〇五年、あと、二〇一〇年ぐらいがサンディですね、ハリケーン・サンディ。一一年が東北大震災。日本の保険会社だけで払っているわけではないんですね。再保険、再々保険会社がそこで保険を崩して払うわけなので、世界中に影響してきたというのが大変大きい、喫緊の課題になってきたというのがあろうかと思います。

 以上でございます。

小西参考人 ありがとうございます。

 今、吉高参考人がおっしゃったことに尽きるんですけれども、やはり、日本においても最初にすごく気候変動に意識が高かったのは損害保険会社さんだなと思っておりまして、そこから社会が追いつくまでにすごく時間がかかってきていますけれども。

 二〇一五年にパリ協定が成立したとき、科学に非常に忠実に、いずれゼロにするという、当時としては非常に考えられないような画期的なことに世界二百か国が合意した、この背景の裏には、もちろん気候変動による悪影響が、例えば二〇〇四年の、欧州の猛暑でフランスで既に数千人以上が亡くなったりとか、そういったことが起きているという背景もあるんですけれども、一番大きなものは、再エネの普及とかで実際に脱炭素がビジネスになってくるという認識が企業の中に広がって、逆に言えば脱炭素化ということが不可能なところには思えなくなったということが一番大きくて、パリ協定が成立したというふうに理解しております。

 ですので、これから、一番怖いのは、私たちは今、抵抗力がないものに触れていかなければならない。例えば今回のコロナでも我々はすごく痛感していますけれども、デング熱とかジカ熱とかそういった、元々ある地域はまだ免疫がある人たちがいる中で、それが例えば蚊の生息域が広がってこれまでにないところに来ると、免疫のない人たちにそれが行くみたいな、これまでにないような事態がこれから更に増えていきますので、そこの意識、怖がってやるのか、それともビジネスだと思ってやるのかということは、どちらで人が動くかは分からないところなんですけれども、より強力なドライバーとなって脱炭素化政策は進んでいくんじゃないかなとは理解しております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。早くから指摘をしてきた、また懸念の声もあったけれども、なかなかそれが、数字的に説明がどういうふうにされてくるかということとか、あるいは、残念ながらそのリスクがより大きく体感される、実感されるというところの中で変わってきたんだというところもあるんだと思います。

 ただ、だからこそそういう中でしっかりとした温暖化対策をしていかなくちゃいけない、ですから、委員会でも温暖化対策の法案の改正をして実効性のある、実のある対策を進めていかなくてはならない、こういうことで法案が今審議をされているわけであります。

 そういう中で、吉田参考人、また藤本参考人からもお話がありました、また小西さんからも御指摘があった、いわゆる温対基本法がなぜできないのか、今のところまだできていないのか、やはり、そういうものがしっかりないと。これは、今私が質問させていただいた、それに対する必要性の証明とか説明とか、感じるリスクの大きさとか、声だとも、世論というか、声もあるんだと思います。

 そういう意味では、私も御指摘のあった温対基本法をしっかりと作らなくてはならないと思っていますし、あるいは、この間、私がずっとこの環境委員会でも時に言及させていただいてきたところでありますが、それはエネルギー基本計画なんですね。

 残念ながら、私は、新しく策定されたエネルギー基本計画も、もっともっとチャレンジングというか再エネを重視したものにしなくてはならない、しかし、残念ながら、石炭あるいはLNG、そうしたところに対する割合が、まだまだ目標としては私は低いというふうに思っています。やはり、エネルギー基本計画にしっかりと政府が示したものがなければ、民間投資というものもなかなか進んでこない。

 今度、官民ファンドがつくられて、その中で投資を進めていくということでありますが、この法案の審査に当たって、前回の委員会でも全ての委員の人が指摘をされたことであります。これまでもファンドはあったけれども、それはなかなか必ずしもうまくいっていなかったところがある、それは戦略に欠けていたのではないかと。では戦略をどうつくっていくか、どういう戦略をつくってそれを実行していくかということになると思うんです。

 つまり、基本法を作っていく、エネルギー基本計画を作っていく、こうしたことの意思決定の在り方だと思うんですね。企画のつくり方だと思います。意思を持って企画をつくっていく、その企画をもって、法案の改正の主な目的になると思いますが、財源をつくって、そして誰がどう実行していくかということが非常に重要だと思うんです。

 これまでも、そういう意味では、法案等々があるとパブリックコメントなんかが行われて、多くの皆さんの声を受け止めて、受け止めてはいるけれども、ではそれが反映されてきたかというと、私の知る限りの中では、パブリックコメントはするけれども、それが反映されてきたかということもある、そういうことが実は、温対基本法が、あるいはエネルギー基本計画が私が思うには十分でなかったというところがあると思うんです。

 そうした意思決定に関わって、吉田参考人、また藤本参考人、特に藤本参考人は自治体の長としてそうした市民の皆さんの声を受けてそれをどう実行していくかという、地域新電力のことにも言及されましたけれども、吉田参考人、また藤本参考人にお伺いをしたいと思います。

 世界的にもそういう動きが高まっているということをおっしゃいましたけれども、改めて、くじ引によって選ばれた人が議論していくというような話もありました、そうしたことを、今度、官民ファンドの中で脱炭素化委員会等もつくられるわけですけれども、こうした官民ファンドができて、それをきちっとした実効性のある投資にしていくにはどういうものがより重要なのかということを、改めてお聞かせいただきたいと思います。

吉田参考人 ありがとうございます。

 まさに、こうした環境対策にいかに実効力を持たせるかということが必要になるわけですね。その場合は、既存の行政や自治体が旗を振るだけではなくて、いかにそれに対してフォロワーシップを発揮してもらうかということが必要になってくるわけですね。そこで、いろいろ行政の側も、今御指摘があったように、例えばパブコメ、パブリックコメントをやったり公聴会をやったりということでありますけれども。

 問題は、そうした場合、往々にしてあることですけれども、言ってみれば非常に意識の高い、参加意識のある、そういったものに参加する余裕のある人々がそこに来る、そうした人々の意見を基に経営政策が形成されているというのが一般的なパターンであるわけですけれども、先ほど来から申し上げているように、環境対策はみんなに関わることでありますから、みんながリスクを背負うわけですね。ドイツの社会学者にベックという人がいますけれども、彼はリスク社会に階層は関係がないということを言うわけですね。ひとしく、どんな立場の条件でも、そのリスクを背負うことになる。そうであれば、ひとしくみんながその政策形成の場に何らかの形で関わるという、そういったプラットフォームが必要になってくるわけですね。その中の一つとして考えられるというのがくじ引民主主義ということでありまして。

 これは、繰り返しになりますけれども、単にランダムに、アトランダムに人を選ぶわけではなくて、例えば所沢市なら所沢市の人口集団に似たようなミニパブリックスというふうに、属性に基づいて、年齢とかジェンダーとかあるいは居住地域に基づいた、小さなミニパブリックス、小さな公衆というものを再形成するんですね、再現するわけですね。そうした人々の、専門家が介在しながら議論をして、その時々の指針に賛成をしたり、反対をしたり、あるいは修正案を求めたりというような形で行っていくというのがこのくじ引民主主義ということでありますけれども、当事者意識を涵養してもらわなければ政策というのは実行力を持たないので、そのための手段としてこうした手法を考えることができるということになります。

 ありがとうございます。

藤本参考人 ありがとうございます。くじ引民主主義についての見解ということでよろしいんでしょうか。

 市民の意見を聞くことは非常に重要だと思っています。そして、所沢市も、くじ引というか、同じように人々に、無作為抽出で選んで、手を挙げた人ではなくて無作為抽出で意見を言っていただくという、その機会を今つくろうとして予算にも入れました。

 ただし、一つだけ申し上げたいのは、自治体によって市民の状況というのはいろいろでありまして、先ほど参考人の方から、実は、田舎の地域というか地方の山間部の方が再エネの可能性は非常に高いんだというふうなお話がありましたけれども、でも、そういうところにお住まいの方はどちらかというと温暖化にはもしかしたら関心がないかもしれない人ばかりかもしれない、逆に町場の人たちは再エネにすごく関心があって、地球温暖化にも関心があるかもしれないというので、市町村によって結構差があるのではないか。

 ですから、市町村の武器としてそういうような、くじ引民主主義のような機会は所沢市は取ります、しかし、一律に自治体それぞれにさせるということはちょっと難しいところがあって、そういう点では、武器として使えるところに任せてというか、自治に任せていただきたいというところも考えているところです。

 以上です。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 公共というか、社会がどういうふうに動いていくか、どういうふうに動いたら温暖化対策をしっかりしていくというふうに社会がどう動いていくか、あるいは、社会というか、多くの人の意思がそう動いたとしても、きちっとして社会がそう動いていくかということが非常に重要なんだと思います。

 そういう意味で、今、それぞれの参考人の皆さんから大変に貴重な御意見を聞かせていただきました。ありがとうございました。そして、この法案改正によって新しい仕組みをきちっとつくって、実のあるものができるようにしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

関委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 本日は、本当にお忙しい中、貴重な意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 これまでもたくさん皆さんがおっしゃっていることで、重なっていることも多くあるかと思いますが、非常にざっくりとした質問なんですけれども、現在の日本政府の気候変動対策、やっていることに関して、所感だったり問題点だったりをそれぞれの参考人の方にお伺いしたいと思います。非常にざっくりとした質問でありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

吉高参考人 ありがとうございます。

 先ほどの御質問者にもございましたとおり、ここ急に動いているという気がいたします、日本の政策が。本来でしたらもっとスピード感を上げていかないと、例えば金融機関の今の世界的な動きは、私が二十年もこれをフォローしていっているにもかかわらず、追いつけないほど世界が変わっているんですね。なので、そのスピード感を非常に懸念しているところです。例えば、私がいろいろな委員なんかをさせていただくと、検討会を何回かやって、最後に報告書をまとめて発表すると。これでは、申し訳ないですけれども、間に合わないというのが今の私の肌感覚です。

 ですので、もちろん、環境省、国交省、経産省、農水省、今一丸となってやっていらっしゃるとは思うんですけれども、それにも増して、私自身、スピード感を求めたいというふうに思っています。でないと金融機関が日本にお金を呼び込めないんじゃないかという危惧が大変いたします。

 例えば、今回のこういった機構をつくって、機構をつくりましたと、その後の機動力ですよね。いろいろなことに対して、世界が変わったときにすぐに動けるような、機動力を持つような機構にしていただかないと、法案を通してから動いているようでは、大変申し訳ないんですけれども、間に合わないのではないかというぐらい世界が。

 今回の、例えば、いろいろな地政学リスクで反対になるんじゃないかというような御意見もございますけれども、金融機関はその先も見ます。短期でももちろん動きますけれども、先も見ておりますので、是非そういった視野に基づいて政策をお考えいただければと思っております。

 ありがとうございます。

吉田参考人 ありがとうございます。

 日本の環境対策、何が問題かというのは、問題だらけのような気はするんですけれども。

 一つ、日本的な特殊事情が諸外国と比べてあるんですね。それは何かというと、専門用語で脱物質主義的価値観なんというふうに言いますけれども、先ほどの委員からの御指摘にもありましたけれども、一九七〇年代に大きく先進国の環境意識に対する規範みたいなものが変わるんですね。それは何かというと、物質主義的な価値観、これは、所得であったり収入であったり、そういったものなんですけれども、そうではない、広く、環境であるとかライフスタイルであるとか、そういったものがこの現代社会においてこそは大事だというような意識が大きく広まることになったのは七〇年代、八〇年代のことなんですね。

 そこから御案内のように例えば当時の西ドイツは緑の党というのが生まれて、昨年政権交代があって連立内閣の一角を占めていますけれども、そういった新しい争点が政治に注入されてきたというような経験があるのに対して、日本は世代間断絶もあってそういった大きな社会変革を経験しなかったというところが歴史的にはあるんだろうと思います。

 その一方で、二点目として、結果として今どういうふうな状況になっているかというと、確かに今、先般ずっと話があったように、ビジネスの場では、マネーを動かすことによって環境対策を進めていこう、それから、学校教育の場ですね、小学校、中学校教育の場においては、例えば先般のSDGs教育なんかを通じて意識を高めていこうと。

 ただ、これはマネーとファッションの話になっちゃうわけですね、どうしても。その間を埋める例えば行動規範であるとか意識変容であるとか、そういったものが本当は付随しなきゃいけないんだけれども、そこがなかなか盛り上がってこないというのが今の日本社会の状況で、結果として、常にお金を回し続け、常に予算をつけ続け、あるいは常に何らかのムーブメントにしないと、この環境対策が進まない。それが結果的になかなか、持続可能な、あるいは効率的な環境対策につながっていないのではないかというような気がしております。

 文字どおりの所感でありますけれども、以上になります。

小西参考人 ありがとうございます。では、簡潔に三点。

 まず一つが、気候変動は基本的に日本ではエネルギー対策なので、やはり、エネルギーを考える省庁とそれから環境を考える省庁が一緒に政策をつくる体制をつくることが一番求められていると思います。それぞれ別々に優先事項が違って動いていると、どうしても違う方向に行くので。そこがまず一つ。

 あともう一つが、先ほど吉高委員もおっしゃったんですが、日本はすごく国際的な動きに疎いところがありますよね。ただ、ここのところ外圧が強く来て。石炭火力もそうですし、二〇三〇年の削減目標、NDCもそうですね、外圧でいきなり方針が変わるみたいなところがあると、やはり急変リスクがあると思うんですね。そうすると、企業さんも、いきなり変わるかもしれないみたいな、それに対応する方がよほど大変なので、やはり、外圧ではなく、自ら国際的な動きに沿って、しかも、今、吉高委員もおっしゃったんですが、私も本当についていけないぐらい急に動いているんですね。

 実は、こういうことを言ってはなんですが、WWFのポジションはいつも必ず、はるかに政府を超えるポジションを持っていなきゃいけないんですけれども、途中でそれが間に合わなくなって慌てて書き換えたということがあるぐらい急に日本は動いたんですね。ですので、動くとなると早いんですが、外圧で動くのではなく、これからは自ら動いてほしいなと思うのが二点目。

 三点目は、ちょっと細かいことなんですけれども、規格の国際標準化を日本は軽視しているなと思うんです。脱炭素社会というのは新しい産業革命なので、新しい産業ですよね。例えば、電力系統とかもそうですし、それぞれの再エネの規格とかもそうなんですけれども、日本独自のものが世界標準になっていかないと、結局、例えば欧州発のものが東南アジアで広まって、国際標準だからそちらの世界が席巻して、日本企業がそこに入ろうと思うと規格が違って入りにくいみたいな。

 国際標準化をしていくということにもっと目を向けて、日本企業がむしろ世界で標準化するような、そういったことに力を入れてもいいんじゃないかなと思っております。

 ありがとうございます。

藤本参考人 脱炭素の動きが急に動き始めたというふうに皆さんはおっしゃっていますけれども、それでよかったなと思っています。

 前菅首相がゼロカーボンをやるんだというふうに宣言されて、本当にできるのかとみんながテレビなんかで言ってましたけれども、でも、そう言ったことによって退路が断たれたので今動き始めたんだと思っているんですね。

 ですので、これから国民の意識も変わっていかなくちゃいけないし、あと、財政支援は今回の改正案に含まれていますので非常にありがたいなというふうに思っています。国民の意識を是非とも、今度はどういうふうにやったら本当に危ないんだということを、みんながそう思って、それをやる、ちょっとトライする企業やトライする自治体を、そうだよね、よくやってくれたねと言ってくれるような、そんなような状況をつくっていければいいなと思っています。

 以上です。

漆間委員 本当に貴重な意見をありがとうございました。

 続きまして、小西委員にお伺いいたします。ちょっとお話の中にもありましたカーボンプライシングにつきまして、今、日本政府のカーボンプライシングに対する対応について思うところだったり、進めるためにどうしたらいいのかということに関して具体的にお聞かせいただければと思います。

小西参考人 ありがとうございます。

 実は参考資料につけていたのを御覧いただいたのかなと思いますけれども、やはり日本はカーボンプライシングが、省エネをいかに進めるかという強力な政策が今はまだない状態ですので、これがすごく必要だと思っております。

 参考資料にもつけているんですけれども、今、例えば、日本ではカーボンプライシングを余りにも長く審議会で議論しているうちにだんだんだんだん、ボランタリーなものもそうだし、自主的なものもそうだし、ベースライン・アンド・クレジット制度もそうだし、すごく定義が広がってしまっていて、例えば経産省で今、GXリーグとか、ちょうど岸田首相がおっしゃった後、タイミングよく出ているので、これが日本のカーボンプライシングとして出ていくのかもしれないんですけれども。

 でも、一番重要なのは、炭素の排出量に応じた形で、炭素を排出しないようにインセンティブがつく形が一番の基本ですので、そのレベルの炭素税の導入、あるいは、キャップ・アンド・トレード式の、大排出主体にはきちっと排出枠を与えて政府全体で四六%削減が担保されるような政策の導入がすごく必要だと思っております。今、あるいはと申し上げましたけれども、なるべく多くの主体が参加するためには、排出量取引制度、キャップ・アンド・トレードと炭素税の両方が入ることが望ましいと思っておりまして、過去十年以上にわたって議論しているので、ここは是非、前提を導入とした議論を可能な限り早く始められればなと思っております。

 ありがとうございます。

漆間委員 今回の法改正のところとはちょっと離れるかもしれないんですけれども、あわせて、資料にもありましたので、GXリーグに関しての所感をお伺いできればと思います。

小西参考人 ありがとうございます。

 GXリーグは、参考資料の三十八ページからつけてあるんですけれども、基本的には、政策を省庁だけがつくるのではなく企業さんと一緒に話し合ってつくるという制度で、そこはとてもいい意図だとは思うんですけれども、三番目にある、参加したい企業は排出量取引制度に参加してもいいですよという仕組みになっています。それが三十八スライドなんですけれども。

 でも、企業の参加は任意で、削減目標を自主的に決められて、削減目標が達成できない場合には排出量取引制度の新たな市場で排出枠を購入して目標達成に使うことができる、けれども目標が達成できなくても罰則はないという形なので、これはやはり、今までの自主行動計画のプレッジ・アンド・レビューをちょっと変えて、プレッジ・アンド・トレード型かなと思っております。

 これが日本の炭素価格として国際的に通用する形には、この自主的な仕組みでは残念ながらなり得ないだろうなと思っております。規制的なキャップの中での炭素価格と自主的な中での取引価格というものはレイヤーが違うので、そのためにも、GXリーグでいくんだったらば、きちっと参加を義務づけた、全企業にある一定以上の裾切りでやるといった形の規制型のキャップ・アンド・トレードにしていくべきだと思っております。

漆間委員 私からの質問は以上とさせていただきたいと思います。

 本日は本当にありがとうございました。

関委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 参考人の皆様におかれましては、年度初めで何かとお忙しい中、御出席いただきまして、本当にありがとうございます。

 時間の関係もありまして、参考人の皆様にちょっと質問できないかもしれませんけれども、あらかじめ御了承いただければと思います。

 初めに、吉高参考人に幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 一点目として、まず、今回創設しようとしている新たなファンドに対する評価と、こうした官民ファンドに求められる役割ということに関してお伺いしたいと思います。

 世界的にこうしたESG投資の契機になったというのが、二〇〇六年の国連によります責任投資原則の提唱。今お話もありましたとおり、そこからリーマン・ショックを経て、世界的にはこうしたESG投資が拡大をしてきた。ただ、日本の場合は、二〇一五年にGPIFが署名をしたというあたりからということでかなり出遅れている、また、規模もまだまだ世界的に見れば小さい中にとどまっている。

 そうした中で、今回新たに設立しようとしている脱炭素化支援機構は、収益が確立していない脱炭素事業へ投資を行うことで脱炭素社会の実現に寄与しよう、こういう目的であるわけですけれども、この新たなファンドの創設については、今後日本がカーボンニュートラルを達成していくためには毎年数兆円規模の追加投資が必要だと言われている中にあって初年度は二百億円ということで、小粒であるというような意見もございますけれども、そうしたことも含めた評価、また、カーボンニュートラル実現に向けて官民ファンドの果たすべき役割について、これまでの御説明に対して追加しておっしゃりたいこと等があれば、是非お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉高参考人 ありがとうございます。

 私自身、二十年近く、いかにして日本の技術に対してファイナンスをつけていくかと考えたときに、今おっしゃっていただいた、リスクのところというのは、非常にいろいろな段階がございまして、そのリスクを低減するファンドというのは本当に必要です。

 例えば、アジアでも、インドネシアではそこを低減するファンドなんかもありますし、インドでも新たな技術を入れるために金融機関と一緒になってやるファンドがございます。日本では今まで気候変動に関してはなかったということでは、非常に私は画期的だと思っているんですね。

 ただお金を出すだけではなくて、金融機関、今、例えばメガでしたら相当な勢いで気候変動に対する価値を研究しているんですけれども、地銀ですとか、あとは信金さんとか、まだまだそんな知識はないわけです。そのために何が必要かって、データなわけですね、そしてノウハウですね。この機構では、単なるお金を出すだけではなくて、ノウハウとか知見とか定量化の仕方とか、こういったものを日本中の金融機関を巻き込んで是非やっていただきたい。

 何度も申しますけれども、ESG投資の、株式を買ったり債券を買ったりする投資家の群もいます。ただ、債券や株式を発行しているのが銀行であったり、地銀もそうです、銀行でもあったり、それから事業会社でもあったりするわけなので、二つの面で、つまり、銀行との関わりの面と、それから、ESG投資家がこの国全体、そしてこの産業全体に期待感を持つというシグナルを出すような発信、こういったことも是非やっていただきますと、これをてこにして、ここの、今の資金をてこにして新たな資金を呼び込むことができるのではないかと思っています。

 ただ、おっしゃるとおり、そんなに大きな資金ではないです。我々金融機関から見ればそんなに大きくはないですが、やはり、てことして非常に重要な資金だとは思っております。

 以上でございます。ありがとうございます。

角田委員 ありがとうございます。

 続きまして、吉高参考人に、これからの、特に企業が取る行動、在り方についてお伺いしたいと思います。

 先日、エシカル就活のプラットフォームを運営している代表の方からもお話を伺ったんですけれども、今、業種や業界で就職先を選ぶという考え方から、気候変動や人権など社会課題に取り組む姿勢から企業を選ぶ人が増えていると。採用する企業の側からも、社会課題に関心を持っている人は優秀な人材が多く、企業がこれから将来にわたって存続していくためにも、ESGの取組は不可欠という意識が広がっているとのことでした。

 ただし、その一方で、独自の基準でそこでは企業を評価して情報を提供しているんですけれども、SDGs重視、あるいはESGに取り組んでいるといっても、取りあえず計画は作りましたというところがまだまだ多くて、欧米に比べると、まだ情報開示一つを取っても不十分な企業が多いということでありました。

 こうしたことについて、今後、企業に特に求められること、それを促進していくために必要な施策等についてお考えをお伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉高参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、私、慶應義塾大学で十年ほど教えておりまして、昨年の私の教え子、新卒が北海道下川町に就職いたしました。それはなぜかというと、SDGsだからです。それから、横浜の大川印刷さんという中小企業さんも、これまでになかった六大学からの新卒を、それはSDGsをしているからなんですね。

 おっしゃるとおり、私も、最近、就活セミナーで講演しますと、非常に質の高い質問があります。SDGs、二〇三〇年まで、その企業は本業としてやるのか、その後まで我々は就職しているのに、その後はどうしているんだというような質問も受けます。株式会社は利益追求なのにCSR部や環境部でやるのか、それでは意味がない、どうするのかという質問を受けます。このように、大変優秀な学生です。私の授業は環境ビジネスデザイン論なんですが、もう今はスマホで、アプリで、こんな環境ビジネスがあるというふうにプレゼンしてしまいます。デジタルネイティブです。

 こういった人材を採るために、私は、地方や中小企業さんというのはまさにSDGsやESGをしていくべきだというふうに常日頃から申し上げているんですけれども、おっしゃるとおり、SDGsを掲げるだけで実際の中身が伴っていないと、すぐに、今本当に若い方々はSDGsを勉強していらっしゃるので、化けの皮というわけではないですけれども、ウォッシュと言われることになりかねない。そこで、自治体が今SDGsに取り組んでいらっしゃいますし、国でも取り組んでいらっしゃるので、そういった企業に対して、PDCAで間に合いそうな、モニタリングの経営システムというのはあった方がいいのではないかなと思っております。

 ただ、やはりデータが出ないとなかなかモニタリングができませんので、例えば、データをつくるためのそういった基準みたいな、基準というんですかね、評価軸みたいな、こういったものがあれば非常にいいのかなとは思っております。なかなか今コロナ禍で、中小企業さん、地方でもなかなか手は出ませんが、将来を見詰めて、新たな人材、そして、企業価値を上げるために是非御検討いただければと思います。

 ありがとうございます。

角田委員 ありがとうございました。

 それでは、地方の現場で脱炭素社会構築のトップランナーとして、近隣市とも連携をしながら推進に奮闘されている藤本市長にお伺いしたいと思います。

 カーボンゼロ、この実現は極めて大きな改革であって、その成功のためには、やはり、市民、企業の理解と納得、さらには協力と参加を得られるかどうか、ここが大きな鍵になってくるんだろうと思います。そのために、直接市民と向き合う地方自治体としてどのような取組を進めてこられたのか、お伺いをしたいと思います。

 特に、所沢市の場合は、市域の温室効果ガスの排出量の半分以上を民生部門が占めており、そのうちの更に半分以上が家庭部門からというふうになっております。ゼロカーボンシティーを実現する上で、とりわけ市民の理解を深め協力を得ていく取組が不可欠だと思いますので、この点について、啓発活動など、特に力を入れている取組についてお伺いできればと思います。

藤本参考人 ありがとうございます。市民の理解を得る啓発活動はどんなものがあるのかという御質問だと思います。

 地域新電力会社を立ち上げて、例えば所沢市の場合はライオンズ球場がありますので、地域新電力でそのうちの一部がライオンズの若手を応援するお金に使われますよとか、そんなような形で、ちょっとおしゃれに広めていったりとかですね。あとは、もちろん太陽光発電等をやっておりますので、メガソーラーなんかで使われたお金は環境学習やそういうのに使われるようになるんですよと、還元されていくんだというふうなことを工夫してやっているつもりです。

 また、先ほども申し上げましたけれども、市街化区域の緑も守っていくために、なかなか、買うというのは何億円もかかっちゃうんですけれども、では固定資産税や都市計画税は今は減免しておきますので保存していただけませんかというようなシステムを広げたりしております。

 ただ、なかなかそれは理解されません。今、所沢市は、レジ袋有料化を国でやったことによって、レジ袋をごみ袋として使えるようでは国の動きを阻止することになっちゃうから、では、ごみ指定制、すなわちごみ袋有料化なんですけれどもね、どうしましょうかと。

 それは、インセンティブとしては環境税を導入するのと同じように効果はあるんだけれども、市議会議員の皆さんの中では、前はごみ袋は有料化すべきだねと言った方も、いざ市がやりたいと言い始めると、一気に、選挙の前ですので反対に回ります、慎重派に回ります、忘れてしまいます。そういうのが、おととい、審議会で答申があったばかりでもあります。

 ですので、そういう点でいうと、これが主流になるようにということは、やはり、これをやらないと孫の子のぐらいにアウトになるんだというのをみんなが理解しなくちゃいけないということを土壌としていかなければいけないんじゃないかなと思うんです。

 ちょっと答えになっていませんけれども、以上でございます。

角田委員 非常に分かりやすい御答弁、課題がよく見えた気がいたします。

 時間がありませんので、ここで参考人の皆様に一問御質問させていただきたいと思います。

 先ほど来お話も出ておりますけれども、カーボンプライシング、その中で特に炭素税について、日本も取りあえずやっているということになっていますけれども、CO2に比例した本物の炭素税導入に対するお考え、小西参考人はもう十分お考えが分かっているんですけれども、それと、導入した際の税収の使い道について、お考えがあればお伺いしたいと思います。

吉高参考人 ありがとうございます。

 先ほどから申し上げたように、金融機関が評価できるように、国際的に納得のいくようなレベルにしていただきたいと思っております。今あるのは低いというのは、残念ながら、税でやっているという、今の税金のレベルなんですけれども、実際にこれが本当に評価できるのかというのが裏づけがないということがあります。

 私は排出権取引をずっとやってきたんですね、ビジネスを通して。これはインフラにとてもお金がかかりまして、キャッシュの決済から全部つくるのに、それに時間をかけるのがどれぐらい重要なのかというのは、一つ、私の中では懸念事項です。なぜかというと、日本は遅れていますので、ここから排出権市場をつくるインフラづくりというのは相当の力仕事だと思っています。税金の場合は一定程度入るとは思うんですけれども、いろいろなオプションもないと納得感もいかないというところもあろうかと思いますので、そこは仕組みとしてお考えいただければなと思っております。

 以上です。

吉田参考人 ありがとうございます。

 私は諸外国の事例しか申し上げられることがないんですけれども、配付した資料の一にやや詳しく書いてございますけれども、フランスで気候市民会議が開催された経緯というのがあります。それが何かというと、記憶に新しいと思いますが、二〇一八年末にフランスで、数百万人を動員した黄色いベスト運動というのが盛り上がったんですね。

 なぜそもそもそうした抗議運動がここまで広がったのかというと、炭素税が原因だったわけですね、当時のマクロン大統領がそれを引き上げると。地方に住んで車でしか移動できない人たちが、それでは生活に困るというのが波及的に広がっていったのがイエローベスト。それに対して当時の行政府が何をしたか、マクロン大統領がどうしたかというと、では皆さんとともに考えましょうよということをやったわけですね。

 議員の皆さんの前で釈迦に説法ですけれども、一般的に、公共政策のメニューというのは四つぐらいしかないわけですね。一つがあめ、補助金とか、それが一つありますね。むち、罰則ですね。あとは、説得をする、コミュニケーションですね。四つ目は、最近だとナッジという手法が注目されていますけれども、一方、ステークホルダー化をするという考え方もあるわけですね。つまり、当事者にさせちゃうということですね。

 御案内のように、環境問題というのは、先ほど来から申し上げたように、皆に関わることですから、皆が当事者になるわけですね。では、あなたがステークホルダーとしてこの問題を考えた場合にどうしますかといって、一緒に輪に取り込んでいくというのが必要になってくるわけですね。その一環としてのくじ引民主主義であり気候市民会議であったということだけ申し上げておきたいと思います。

 ありがとうございました。

関委員長 小西参考人、時間が来ておりますので、簡潔に、御協力をお願いいたします。

小西参考人 税収の使い道は、それぞれ、やはり、国際競争力にさらされている業種へのいろいろな免税とか還付とか、あるいは、当然ですが、脱炭素化支援機構、当初は二百億ぐらいで始まると思うんですが、ゼロを一つ大きくしていくべきだと思っておりますので、そういったことに使って、まさに気候変動対策を加速させていける力になると思っております。

 ですので、これは、税制中立にしていくという形でいくと、大事なのは、やはり国際的に本当にネットゼロにどれぐらい必要かなという。IEAでは、今先進国は二〇三〇年に大体百三十ドルぐらいとか言っていますし、カナダは、十五ドルずつ上げて二〇三〇年には百七十ドルとかいった、そういう予見可能性を見せていますので、それで予算の使い道というのもより効率的になるんじゃないかと思っております。

 以上です。

藤本参考人 賛成です。そして、そのときに、いただいた税の部分はきちんと還元されるんだということを明記して、見える化していただければと思います。

 最後は未来の子供たちが笑えればそれでいいことですから、広い、地方と大都会とかいう平面的なところとか先進国と途上国とかいうことだけではなくて、過去から未来へという時間軸も入れて討議していただければなと思っています。

 以上です。

角田委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

関委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 本日は、参考人の皆様、お時間をいただきまして、誠にありがとうございます。何点か皆様に質問させていただきたいと思います。

 まず、今回の温対法の改正案の中で、私が特に関心を持っているのが脱炭素化支援機構。この機構、新たな官民ファンドをつくることが果たして本当に政府が推進する脱炭素化の取組としてよいのか、それをするのであればどういったファンドにするべきなのかというところを、少し、最初、御質問させていただきたいと思います。

 まず、吉高参考人に伺いたいんですけれども、御意見の中でも、グリーンな、クリーンな投資先を世界中で皆さんが渇望されていて、投資先、融資先がなかなか不足をしているというお話がございました。これは、SDGsの分野に限らず、いい投資先というのが世界中で不足していて資金が余っている状態だと思いますので、この分野でも重要なことだというふうに思います。

 そういった中で、今回の脱炭素化支援機構のような官民ファンドは、どちらかといえば、ただの資金供給を行うだけではなくて、案件を発掘したりだとか、経営を支援していく、ナレッジを提供するということが重要だ、こういったお話を先ほどもしていただいていましたけれども、改めて、この脱炭素化支援機構がどういった役割を果たすべきだとお考えなのか、教えていただけますでしょうか。

吉高参考人 先ほど申し上げましたとおり、金融機関が環境や社会課題を評価基準として金融活動をし始めたのはここ最近なんですね。金融機関には、まずストーリーもイメージもないんですね。事業会社側にはあったとしても、金融機関は今まで評価する経験も知見もないんです。ですので、私は、この機構が、そういった金融機関が納得するようなストーリーや将来のシナリオ、ロードマップ、こういったものを見せられるような機構になってほしい。

 というのは、私もいろいろな企業の経営者とお話しすると、いや、投資家は何も聞いてこないよ、何も評価していないんじゃないかとおっしゃいます。投資家側は、いや、欲しい情報が出てこないと。ただ、企業側がこんな分厚いサステーナビリティーレポートを出していても、投資家側に届いていないんですね。これはなぜかというと、投資家側に元々そういった土台がない、金融機関は土台がないので、評価する軸がないんですね。

 ですので、この機構で一番大事なのは、何度も申し上げていますけれども、データや知見、事例、実績を外に発信して、ほかの金融機関、ここに入らないほかの金融機関に、納得して、これなら融資できる、これなら出資できるという道筋をつくっていただくというのが大変重要かと思っております。

 よろしくお願いいたします。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。それぞれの投資先が持っているストーリーであったりとか戦略であったりとかを、逆に出資者の一人として周りに発信できるような役割をということだと思うんですけれども。

 先ほどいただいた資料の中を見ますと、デスバレーを越える支援を行うということの必要性が書かれていて、これはどちらかというと、今のお話を聞いていても、ベンチャーキャピタルみたいな感じで、二人三脚でその投資先と歩んでいけるようなファンドみたいなものを想定されているというふうなことかと思いましたけれども、そういった中で、どういったファンドの人材を採っていくのかというのは極めて重要になると思うんです。

 人材募集に関して、こういった人材を採るべきだとか、そういったところで御知見とか御示唆があれば、是非教えていただければと思います。

吉高参考人 私は大学でも教えておりまして、今までですと、環境問題とか社会課題に興味を持つ、ある程度、一部の方々で、今は学生もこういったものに関心が高いので、広く新卒も採っていただきたいと思いますし、なぜかというと、次世代と一緒につくらなければ。私が一番気になっているのは世代間のギャップなんですね、感覚が違います。ですので、まず若い方も是非入れていただきたいということがございます。

 それから、海外の視点も必要ですので、是非、外資系やそういった経験のあるような金融のプロというのも是非入れていただければ。環境問題が分かるということではなくて、環境と経済の両方が分かる、市場が分かる、環境の世界の動向が分かる、この両方が分かるような人材を広く求めていただければと思っております。

 よろしくお願いいたします。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 そういった中で、最後に吉高さんに聞こうとしていたこと、先ほどちょっと小西参考人が触れられていたんですけれども、今回の脱炭素化支援機構への資金の出資、財投で二百億円というところで、多分、脱炭素化に向けた予算、ほかにもいろいろな予算がありますけれども、やはり桁が少ないと思いますし、やるのであればしっかりとやっていくことが重要だと思いますけれども、そこの点に関しては、吉高さん、予算についてどのようにお考えか、教えていただけますでしょうか。

吉高参考人 おっしゃるとおりでございまして、是非、一桁、上に上げていただくのが。それでないと、通常、例えばグリーンボンドとかも百億、二百億単位で金融機関は動きます。それはなぜかというと、デューデリジェンスとかをしまして、審査に莫大な費用がかかるので、その費用も考えると、二百億のてこでどれぐらいのものが動けるのかというのが非常に限界的だと思います。

 先ほど、私、海外のと申し上げました。あと地方ですよね。先ほど所沢市長もおっしゃっていましたけれども、地方でもそういう人材はなかなかいないというのがありますので、いろいろな類型で、規模を大きくして、どういう類型でお金をつけて、どの分野で上げていくのかというのを、技術だけじゃなくて様々な類型でお考えいただくことが重要かと思っております。

 よろしくお願いします。

斎藤(ア)委員 ありがとうございました。

 次に、吉田参考人と、あと藤本参考人、市長にお伺いしたいんですけれども。

 先ほど吉田参考人からは、日本の世論における脱炭素化、環境問題に対する意識が欧州に比べて低い部分があるというお話がありまして、それの解決策の一つとしてくじ引民主主義というか市民参加型の脱炭素化政策の策定というものを挙げていただいたんですけれども、それと同様に、環境教育というものにも少し触れていただいていました。

 例えば、吉田参考人からは、海外と比べて日本の環境教育の問題点であったりとか、また、市長には、どういったところで今所沢市で環境教育に取り組んでいらっしゃるか、どういったことをされようとしているのか、少し教えていただければと思います。

吉田参考人 ありがとうございます。

 ずっと先ほどからそういう話題になっていると思うんですが、日本だと、エコロジーとか環境というと、極めて狭い分野として理解されてしまうわけですね。そうではなくて、生活に関わるもの、あるいは、私は社会科学者でありますけれども、非常に重要な、様々な最先端の分野、学問分野に関わるものであるということをまず理解してもらう必要があるのかなと思うわけですね。

 つまり、エコロジーとか環境、言葉は何でもいいんですが、環境と経済であるとか、あるいはエコロジーの問題、気候変動対策の問題、安全保障の問題でも当然ながらあるわけですね、それが移民や避難民の問題につながっている。あるいは、エコロジーと女性の人権であるとか、エコロジーと災害であるとか、エコロジーと科学技術であるとか。

 先般、現政権は大学ファンドをつくって、新しい学術創成分野をつくろう、成長分野をつくろうというふうにしておりますけれども、そういった積極的な、一つの広い意味での科学技術の分野、社会科学の分野としてこのエコロジー問題を捉えていくというようなことも非常に重要に、教育の上では大事になってくるんじゃないかというふうに思ってございます。

 ありがとうございます。

藤本参考人 ありがとうございます。

 環境教育は本当に必要だと思っています。所沢市では、環境クリーン部が小中学校へ出向いていって出前講座というのをしたり、あとは、こどもサミットを行ったり、又は地球にやさしい学校大賞というので表彰したり、いろいろしています。でも、本当だったら授業でもっと根本的なことを勉強してもらいたいと思っています。

 それは環境省マターではなく文科省マターであって、総合学習の時間にきちんと、学習指導要領の中に位置づけるとか、そうしないと、各教育委員会は、やはり市の教育委員会は県の教育委員会と文科省しか見ていませんので、国の方から動いていただければと思っています。

 以上です。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。是非、ほかの委員とも協力をして、連携をして取り組んでいきたいというふうに思います。ありがとうございます。

 最後に、小西参考人に伺いたいと思います。

 先ほど、プレゼンテーション資料を見た中で、非常にショッキング、この議論の中では既に皆さんも御存じかもしれませんけれども、気温上昇を一・五度に抑えても、二一〇〇年には海面が二十八センチから五十五センチ上昇する、十年に一度、五十年に一度の極端な気候の発生確率が高くなるということでございます。

 これから更に災害気候が激しくなるということでもあると思うんですけれども、二〇三〇年に排出量を半減して二〇五〇年にゼロにしてもこういった状況は続くということなんでしょうか。その上で一体我々は何をしていくべきなのかについて、最後にお伺いをできればと思います。済みません、ざっくりとした質問で。

小西参考人 ありがとうございます。

 気温上昇、一・五度上がると、結局、こういった影響はもう避けられないんです。ただし、二度上がるよりもはるかに軽減される。ましてや、今のまま、世界各国のNDCというか削減目標を足し合わせると少なくとも二・四度上がってしまいますので、今私たちに残されている選択肢は、温暖化の影響はどちらにしても深刻化する、でも、それをどのレベルに抑えられるか。人類が共存できないレベルまで上がってしまうのをそのまま手をこまねいて見ているのか。それとも、すごく痛いけれども、今後十年で半減して、二〇五〇年、本当にゼロにするという道で、それでもまだ一・五度に抑えられるか。

 ということで、重要なのは、気候変動対策と同時に、実は、深刻化してしまうことが予測されるものに対して準備していくことですね、適応ですね。先ほどから教育をおっしゃっていますけれども、この気候変動対策というのは命を守る防災対策でもありますので、結局は、適応とそれから削減、両方がこれから非常に必要になってくると思います。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 少しまだ時間があるので、また小西参考人に伺いたいんですけれども、適応の部分なんですけれども、災害対策を行う、ソフト面、ハード面、いろいろあると思うんですけれども、適応に関して、これから日本政府が考えていかなければならないことについて、御示唆を幾つかありましたらいただければと思うんですけれども。

小西参考人 最後に、非常に重いアンカー、いただきまして。正直、この適応、ちょうど新しい報告書が出たばかりなんですけれども、緩和に比べて非常にこちらの方がお金が集まっていません。それで、なかなか進んでいない状況にあります。国内でもそうですし、特に途上国においては非常に生存に関わるような問題になっています。

 ですので、日本としてすごくできることは、日本はやはり非常に気象災害が元々多い国なので防災対策は優れているんですね、特に気象庁さんのいろいろな予測とかも含めて。ですので、それを、これからはインフラでもはや防ぐことはできないレベルに、すなわち洪水に対して堤防を日本各地に張り巡らせるということはもはや間に合わないので、いざそうなったらば逃げるみたいな、そういった発想の転換がすごく必要になってきます。

 同時に、日本は途上国に対してすごく大きな貢献ができる立場にありますので、日本の持つ防災技術というものを、もちろんこれはビジネスにもつながりますし、世界中に拡大していくといった両方が求められると思います。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。大変重いテーマだと思いますけれども、やはり、これほど温暖化が進んでしまったからこそ受け入れて適応して対策をしていかなければいけない部分もあると思いますので、しっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。

 本日は、お忙しいところ、長時間にわたりまして、お答えいただきましてありがとうございました。

 これにて私の質問を終わらせていただきます。

関委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十八分散会


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