衆議院

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第7号 平成31年3月12日(火曜日)

会議録本文へ
平成三十一年三月十二日(火曜日)

    午前八時三十三分開議

 出席委員

   委員長 坂井  学君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 武部  新君 理事 寺田  稔君

   理事 藤丸  敏君 理事 川内 博史君

   理事 緑川 貴士君 理事 竹内  譲君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石崎  徹君    今枝宗一郎君

      神山 佐市君    神田 憲次君

      小泉 龍司君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    杉田 水脈君

      鈴木 隼人君    武井 俊輔君

      津島  淳君    土井  亨君

      中山 展宏君    藤井比早之君

      古川  康君    本田 太郎君

      牧島かれん君    三ッ矢憲生君

      宮澤 博行君    宗清 皇一君

      山田 美樹君    義家 弘介君

      今井 雅人君    末松 義規君

      高木錬太郎君    山川百合子君

      佐藤 公治君    古本伸一郎君

      前原 誠司君    伊佐 進一君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    野田 佳彦君

      広田  一君    青山 雅幸君

      鷲尾英一郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 米澤  健君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 浩司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    中江 元哉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           富田 育稔君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    森   健君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十二日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     神山 佐市君

  武井 俊輔君     古川  康君

  牧島かれん君     杉田 水脈君

  末松 義規君     山川百合子君

  宮本  徹君     宮本 岳志君

  野田 佳彦君     広田  一君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     宮澤 博行君

  杉田 水脈君     牧島かれん君

  古川  康君     武井 俊輔君

  山川百合子君     末松 義規君

  宮本 岳志君     宮本  徹君

  広田  一君     野田 佳彦君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     石崎  徹君

    ―――――――――――――

三月十二日

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

坂井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官米澤健君、外務省大臣官房審議官石川浩司君、財務省主税局長星野次彦君、関税局長中江元哉君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官宮嵜雅則君、農林水産省生産局畜産部長富田育稔君、水産庁漁政部長森健君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高木錬太郎君。

高木(錬)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの高木錬太郎です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 まず、ホエーについて取り上げたいと思います。乳幼児用ミルク製造用ホエーに係る関税の取扱いについてです。

 まずは、現行制度と、今回の液体ミルク製造に使用するホエーについても関税割当ての対象に追加するということでございますが、その概要を御説明いただけますでしょうか。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 乳幼児用調製粉乳、いわゆる粉ミルクの製造に使用するホエーにつきましては、関税割当て制度の対象といたしまして、二万五千トンを上限に、枠内税率一〇%が適用されております。

 関税割当て制度を利用しない場合には、枠外税率として二九・八%に加え、脂肪分に応じ一キログラム当たり四百円から千二十三円の関税率が適用されているところでございます。

 災害時や外出時の授乳を簡便に行うニーズが高まる中、液体ミルクの普及を促進する観点から、昨年八月に、厚労省所管の乳等省令におきまして、調製液状乳の定義、規格基準が設定されたところであります。

 今般の改正では、この液体ミルクの普及促進のため、液体ミルクの製造に使用するホエーにつきましても関税割当て制度の対象とし、粉ミルク製造用ホエーと共通の枠で、数量は二万五千トンのままとして、関税率一〇%を適用することとしているところでございます。

高木(錬)委員 では、次に、現在のホエーの国産、輸入、合わせた供給量を教えていただけますでしょうか。そして、それぞれの数量そして割合、これを御説明いただけますでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十九年度のホエーの供給量は約八万一千トンでございます。そのうち、国産が約二万トンで約二割、輸入が約六万一千トンで約八割となってございます。

高木(錬)委員 このホエーなんですが、現在は、乳飲料やパン、お菓子、プロテイン等の栄養食品に使われることの方が多いわけでございますが、現行制度、調製粉乳に使われているホエーの国産と輸入の割合と数量を教えていただけますか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 ホエーの国産と輸入の用途につきましてでございますが、国産ホエーは、そのほとんどが乳飲料、菓子、デザート類、発酵乳、乳酸菌飲料等の食用に仕向けられている一方、輸入ホエーは、粉ミルク、乳飲料、発酵乳、乳酸菌飲料等の食用に仕向けられるほか、約六万一千トンの輸入のうち、約三万七千トンが飼料用に仕向けられております。

 粉ミルクの原料となるホエーにつきましては、その大部分が輸入品であり、平成二十九年度は関税割当てを利用して、約七千五百トンが輸入されております。

高木(錬)委員 今、数字を伺ってまいりましたが、今回、関税割当ての対象に追加ということで、液体ミルク製造に使用するホエーがその対象となることで、乳幼児用ミルク全体でのホエーの需要はどのような変動になると思われていますか、見込みを教えてください。

 と申しますのも、国内生産者への影響ということが考えられているところだと思いますが、そのような観点からも御説明いただければと思います。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正は、既に関税割当て制度の対象となっております乳幼児用の粉ミルク製造用のホエーに加えまして、液体ミルク製造用のホエーに限定いたしまして対象に追加するものでございます。

 国内の乳幼児の数がそう大きく変わらないことから、既存の粉ミルク製造用の輸入の一部が液体ミルク製造用の輸入に置きかわるということで、ミルク用ホエー全体の輸入量が大きく増加するものではなく、国内の生乳生産者への影響は生じないもの、かように考えているところでございます。

高木(錬)委員 それでは、関税割当て制度について伺いますが、昨年の関税・外国為替等審議会の議事録も拝読させていただきましたけれども、その中で、「消化率が低く枠外輸入もない品目や、制度導入以降に国内生産が落ち込んでいる品目などについては、本制度が持つ国内生産者保護としての機能が発揮されていると言えるのか。」という指摘や、「あるいは、EPAが相次ぐ中、関税割当てよりも有利なEPA税率が適用されることにより、今後、本制度の機能が発揮されなくなる可能性がある」との議論を見かけたわけですけれども、その点についての当局の御見解を伺いたいと思います。

中江政府参考人 お答えいたします。

 関税割当て制度につきましては、関税分科会のもとに設置されました関税制度に関する研究会において点検作業が行われたところでございます。その研究会では、今委員御指摘のように、枠の消化率が低く枠外輸入も少ない品目等については、本制度の機能が発揮されなくなる可能性もあるなど、現行制度の課題に関する意見がありました。その一方で、産業は技術改善で大きく変わる可能性がある、また、国際交渉に及ぼす影響もあるということで、本制度の見直しに当たって考慮すべき事項に関する意見もございました。

 三十一年度改正におきましては、研究会における意見も考慮しつつ、御指摘のありました大型EPAの発効が相次ぐ中ではありますが、こうした変化が国内生産者や需要者にもたらす影響が定かではないこと、国内において競争力強化に向けた取組があることなどを踏まえ、現在、関税割当て制度の対象となっている品目について、引き続き現行制度を維持する必要があるとの結論に至ったところでございます。

 引き続き、来年度以降の関税改正におきましても、適切に対応してまいる所存でございます。

高木(錬)委員 ホエーにつきましてるる伺ってまいりましたが、皆さんも報道等でごらんになっていると思いますが、先週から液体ミルクの販売が始まりまして、今週も更に一社販売が始まります。そういうタイムリーな話題でありますし、また、昨日の東日本大震災八年を迎えて、災害時に液体ミルクは非常に便利だという話もあり、今回発売にいろんな経緯で至ったと伺っております。

 私も約十年間主夫をやっておりましたので、この問題には思わず敏感に反応してしまいまして、るるお伺いしてきたわけですけれども、そもそも、海外から輸入された液体ミルク、以前から流通しておりました。乳飲料として国内でも販売されておりましたが、今般、厚生労働省と消費者庁による新しい基準設定がなされ、いよいよ発売になったということでございますが、実は、業界団体から基準設定を設けてほしいという話は二〇〇九年に厚生労働省に要望があったと伺っておりますが、約十年も発売まで時間を要したわけであります。

 この点について、なぜこんなにも時間がかかってしまったのか。よもや、子育てとはこうあるべきだ、液体ミルクなど使うのはけしからぬなどという横やりみたいなものはなかったと思いますけれども、なぜ十年間もかかってしまったのかについて御説明いただきたいと思います。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がありました、二〇〇九年、平成二十一年四月に、一般社団法人日本乳業協会から乳児用液体ミルクの規格基準の設定に関する要望書を受けましたことから、同年四月と八月に、薬事・食品衛生審議会を開催いたしまして、安全性検証のため、微生物の増殖等のデータ提供を同団体に依頼してきたところでございます。

 しかしながら、同団体において、乳児用食品として高いレベルでの安全、安心の確保及び栄養成分の確保のため慎重な検討が必要であったことから、団体からデータが提供されたのは二〇一八年、平成三十年二月末となったものでございます。

 その後、厚生労働省におきまして規格基準等の策定に必要な審議等を経て、二〇一八年、平成三十年八月八日に、関係法令等の改正により液体ミルクの規格基準を策定いたしました。さらに、厚生労働省及び消費者庁において製品の販売に当たり必要な承認手続等を経て、本年三月五日に、国内で乳児用液体ミルクの販売が開始されたというふうに承知しております。

高木(錬)委員 ありがとうございました。

 次に行きます。個別品目の関税率等の見直しについてです。

 海藻製品の見直しに特化してお伺いしますが、先ほどのホエーと同様に、現行制度と今般の見直しの概要について御説明をお願いします。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 国内の零細漁業者の主要な生産品であるノリ製品やヒジキといった海藻製品につきましては、現在一七・五%から二九・八%の関税率が設定されております。

 昨年、品目分類の国際会議でありますHS委員会というところがございますが、その委員会におきまして海藻製品の分類変更が決定されました。国内においてこのまま何ら措置を講じない場合、ことしの四月以降、新たな分類において現行の税率水準を下回る関税率、具体的には一二%から一六・八%が適用されることになってしまうわけでございます。

 引き続き国内産業を保護する必要があることから、今回の関税改正において税細分を新たに設けることで、現行税率と同じ水準の関税率を維持することとしたわけでございます。

高木(錬)委員 今回の関税の見直しは調製したヒジキが対象と伺っておりますが、あえてここで原藻ヒジキについて伺ってまいりますが、現在の国産、輸入合わせた供給量について教えてください。そして、それぞれ、国産、輸入物、どれぐらいの数量なのかを教えてください。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 ヒジキの供給量についての御質問をいただきました。

 ヒジキの国内での漁獲量につきましては、平成十九年以降統計がございません。このため、直近の生産量についてはデータがないという状況でございます。なお、平成十八年におけますヒジキの国内漁獲量は、原藻重量で八千二百九トンでございました。

 一方、平成三十年におきますヒジキの輸入量につきましては四千五十二トンということになっておりますが、これは主に乾燥ヒジキということでございます。この輸入分を原藻重量に換算いたしますと約四万トンに相当すると推定されます。また、海藻類の漁獲量全般として横ばいないしは減少傾向にあることを踏まえますと、全体の供給量については合わせて四万トンから五万トン程度というふうに推定しているところでございます。

高木(錬)委員 平成十九年以降統計がない、直近のデータがないということでしたが、それまではずっと統計をとっていて、そこの時点で統計をとらなくなったというのは、どういう理由でしょうか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省が実施しております海面漁業生産統計調査におきましては、平成七年から平成十八年までの間、ヒジキの漁獲量を把握しておりましたが、その後、その他の海藻類としましてテングサ類などと集計項目が一つにまとめられたということでございます。

 農林水産統計につきましては、政策ニーズ等も勘案しながら不断の見直しを行ってきております。平成十九年当時におきましても、農業の関係の統計も含めて調査対象、分類を見直したところでございまして、その一環として、海面漁業生産統計調査におきましても、魚種分類を見直す中でヒジキをその他の海藻類としてまとめたという経緯がございます。

高木(錬)委員 ここにも統計行政の縮減、見直しという言葉がありましたけれども、国内生産者、零細のヒジキの漁師さんたちを守っていこうということであれば、きちんと数字を押さえた上で、ある種、統制した中で、コントロールした中でさまざま政策を打っていかなければいけないと思うんですが、残念ながら、ここにも統計行政の縮小の影響が出ているんだなということを感じさせていただきます。

 次に、ヒジキについて伺いますが、昨日、久しぶりに近所のスーパーに行きました。そうしましたら、乾燥ヒジキ、値段が、韓国産十二グラム税抜き九十三円、国産が十一グラム税抜き二百四十八円。三倍弱、大きな差であります。なかなか国産には手が出せないな、これが恐らく一般庶民の感覚なんだろうなと私は思います。

 そこで、考えたいのがデフレマインドというやつです。昨年の十二月にこの場で日銀総裁に私は伺いましたけれども。経済がよくなるということはお金の好循環が生まれるということだというふうに私は認識しています。国内で使われたお金がちゃんと国内で回る。国内でのお金の好循環を考えれば、やはり高くても、例えば今回のケースでいえば、消費者が国内産のヒジキを選択して購入する、ヒジキの漁師さんたちの売上げも上がる、国内での好循環とはそういうことかと思います。

 お金は天下の回りものとよく言われます。高くても買いたい人が購入できるようにする、でも、今は安い方しか選択せざるを得ない。これを変えることがデフレマインドからの脱却なのではないかと思うわけであります。つまり、国民の皆さんのお財布を温めて、中長期的な賃金の上昇の国民の期待感も高まって、その結果、高い価格でも、望めば買える、積極的に選択することができる、そういう状況をつくる、これが、過去の首相答弁でもありました、こびりついたデフレマインドというやつからの真の脱却なのではないかと私は考えるところですが、デフレ脱却担当大臣としての麻生大臣に御見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これまで申し上げてきたとおり、日本の経済状況はいわゆるデフレ、正確には資産のデフレというような状況ではないということにはなってきているんだと思いますが、デフレマインドという、これはもう二十年近く、いつからデフレになったかといえば、多分一九九二年ぐらいからそういうことになったと、多分歴史家はそう言うんだと思いますが。

 そういったデフレマインドというものにつきましては、これは払拭されるにはかなりな時間を要するものだと、それは覚悟しておりましたし、今もそうなんだと思っております。徐々に変わってきているとは思いますけれども、払拭されたかと言われれば、さようなまでには至っていないんだと思っております。

 したがいまして、これを払拭していくためには、企業収益というものは過去最高をずっと記録をしておりますし、そういった中にあって、企業の得た収益は、基本的には配当、賃金、若しくは設備投資に通常は向かうものだと思います。その中で、今、やはり、賃金に回っている分というのが、内部留保に向かっている分に比べて少ない、若しくは配当に向かっている分に比べて少ない。設備投資等々がもう少し伸びてもいいというような気がしますけれども、少なくとも賃金にはもっとそういうものが向かっておかしくないんだ、私どももそう思っておりますので。

 いわゆる労働者とか勤労者の賃金の向上というものに向けて、実感していただけるというところに行くのがやはり大事なんだと思いますので、今、我々としては、賃金の引上げに積極的な企業に対しては税制面から後押ししますとか、また、最低賃金の引上げに取り組んでいるということなんですけれども、さらに、今でいいますとAIとかIoTとかそういったような技術の進歩によって、それが生産性の向上につながると更に上げやすくなるということになるんだと思いますし、また、働き方改革によって長時間労働というのを是正するということをしますと消費にもつながっていくということにもなりますので、各種取組をしておりますけれども。

 いずれにいたしましても、引き続き、賃金アップの取組等々を通じて、デフレマインドの払拭というものに努めてまいりたいと考えております。

高木(錬)委員 今大臣から御説明があったように、労使に賃金アップの働きかけをこれまでもされてきていると承知しておりますし、また、当委員会でも、昨年でしょうか、審議されました所得拡大促進税制など、税制上のいろいろな取組も累次で改正等を含めてされてこられているということも承知していますが、なかなか実際に賃金上昇につながっていない、実質賃金が上がっていないというのが現状でありまして、今までのやり方ではひょっとしたら功を奏さないというか、結果が出てこないのではないかなということを思わざるを得ません。という指摘をして、次に参ります。

 税関についてです。

 国民の安全、安心な社会の実現について、各税関で日々業務に従事されてきておられますが、平成三十年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況が公表されました。

 その中で、不正薬物の摘発が八百八十六件、前年比一三%増、押収量約一千四百九十三キログラム、前年比八%増、特に覚醒剤は史上初めて三年連続の一トン超えとなる大量摘発ということでありますが、この現状を当局としてどのように受けとめ、今後どのように対策していきますでしょうか。

中江政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、平成三十年の不正薬物の摘発状況、摘発件数は八百八十六件、押収量千四百九十三キロと、依然として高どまりの状況です。このうち、覚醒剤の押収量が約千百五十六キロと全体の約八割近くを占めまして、三年連続で一トンを超えているということで、深刻な状況でございます。

 最近の密輸傾向、その手口を見ますと、密輸形態が多様化しておりまして、航空機旅客による密輸のみならず、クルーズ船旅客による密輸も摘発しているところでございますし、さらに、商業貨物や国際郵便物の摘発件数も急増しております。

 こういう状況のもとで、税関では、乗客の予約記録、PNRと呼んでいますが、これや国内外の関係機関との情報交換の促進等によりまして、有効な情報の活用、エックス線検査装置、麻薬探知犬等の有効活用、広域的な事案に対して警察、海保等関係機関との合同取締りの実施等の対策を講じているところでありますが、今後とも、関係機関との密接な連携のもと、不正薬物の流入防止のため、水際対策に鋭意取り組んでまいりたいと考えております。

高木(錬)委員 金地金も、昨年の罰則強化によってでしょうか、摘発の件数、押収量も減少傾向となっておりますが、ことしは消費税率引上げということもありまして、過去そうであったように、利ざやを稼ぐためにということで、またふえることも可能性としてはあるわけで、これまでも累次の対策強化に努めておられますが、そこは引き続きお願いして、ことしの税制改正でも盛り込まれていました、本人確認等々入っておりましたが、しっかりと水際で対策していただきたいというのを申し上げつつ、時間もなくなってきたので。

 ことしから来年にかけて国際行事がメジロ押しだと。G20も首脳会議だけでなくて関係閣僚会議が断続的に開催される、ラグビーワールドカップもある、TICADもある、来年になったら東京オリパラもある。そもそも、訪日外国人旅行客も、皆さん御存じのとおり急増している。

 先ほども局長からお話がありましたが、クルーズ船の増加、大型化。それから、ますます複雑化、専門化する税関業務。不正薬物の増加。密輸形態の多様化もあります。大規模空港のみならず、地方の海港、空港を通じての密輸も発生しています。

 そういった全てを考えますと、税関の業務は非常に業務量や職責が増大しているというのが現状であります。

 今の税関の職場の実情、実態に対応した体制整備は、毎年のように指摘されていますとおり急務であります。とりわけ、今私がお話ししましたように、ことし、来年、国際行事がメジロ押し。そういう中で、体制整備について、大臣の御決意と申しますか、お考えを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 高木先生御指摘のありましたとおり、訪日外国人が、平成二十四年に八百三十万ぐらい、それが昨年では三千百万ということになりますと、約三・七倍ぐらいになろうという感じでありますので、やはり、こういった急増しているという実態というのは考えないかぬところだと思いますが。

 その状況は、飛行機ではなくてクルーズ船ということになりますと、三百人単位で一回のところが三千人単位ということになる、それだけですぐ十倍ということになりますので、対応する人、機械等々による設備といったものにも絶対量がないと、とてもさばける量ではないんだと思っております。

 そういったものに加えまして、今話題になっておりますように、金地金の密輸というのは、消費税稼ぎでいろいろやるのはわからぬわけじゃないんですが、そういったものがふえてきておる。また、先ほど中江から発言があっておりましたように、いわゆる不正薬物というものについても、これはもう間違いなく増加しておりますし、今おっしゃりますように、テロの話とかいろいろなものが、私どもの取り巻く状況は厳しいことになってきておりますので。

 そういったものに対応して水際できちんと取締りができるようにするためには、ある程度、人だけではなくて、いわゆるエックス線等々の機器を対応するのはもちろんですけれども、やはりある程度の絶対量がないとどうにもならぬと思っておりますので。

 税関の定員につきましては、平成三十年までに、この四年間で毎年三桁の増員というのをやらさせてきていただいたところなので、業務量への対応に応えていくために、平成三十一年度予算におきましても、三十年度と同数、二百九人というのを、純増を計上させていただいておりますところなんですが。

 いずれにいたしましても、業務の効率化、また、機械化というか、検査機器の活用等々を図りつつも、人員とか定員とかそういった予算の確保に努めて、税関体制というものをきちんとしたものにしていくということは、この国の治安とか安全とかいうものの観点からも極めて重要なことだ、そう思って対応させていただいております。

高木(錬)委員 最後に一つだけ聞かせてください。十月の消費税率引上げについてです。

 先ほども申しましたように、昨日、スーパーに行きましたら、軽減税率導入の広報、周知のポスターが張られてありました。国民の皆さんに広く知っていただこうという努力の一環だと思っています。

 私は、今の経済状況のもとでは十月の税率引上げは凍結すべきだと思っていますが、安倍首相が、本会議や予算委員会等々で何度も、引き上げられない事態が発生しない限り引き上げる予定だと繰り返し答弁されています。

 それを受けて、民間でも、軽減税率システムを導入したり、あるいは、公募も始まっておりますが、ポイント還元についての対応も進んでおります。臨時特別の措置も予算措置として講じられました。いろいろなものが……

坂井委員長 申合せの時間が過ぎております。簡潔に。

高木(錬)委員 済みません。

 次々進んでおりますが、これをどこかのタイミングで急ブレーキを踏んでやめるということは、今後、やっていいのだろうか。引き上げられない事態ということは、既にその時点で大混乱しているわけで、それに更に税率引上げで急ブレーキを踏むということは、更に拍車がかかるのではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

坂井委員長 大臣、簡潔にお願いいたします。

麻生国務大臣 総理の方からたびたび答弁をされておられますとおりに、今回はいわゆるリーマン・ショックみたいなような事態が起こらない限り、法律で決められておりますとおり一〇%ということで、二%の引上げをやらせていただきますという方向で事を進めておりますので、今それを急激にとめるというようなことを考えているわけではありません。

高木(錬)委員 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。

 議題となっている法律案についてお尋ねをいたします。質疑の時間をいただき、ありがとうございます。

 TPP11が昨年の十二月、そして日・EU・EPAが先月、それぞれ発効いたしました。この二つの巨大な自由貿易圏では、牛肉と豚肉、重要品目として関税率の引下げと、そして新たな関税の緊急措置、セーフガードが設けられております。

 このTPP11の参加国やEU加盟国からの輸入量が発動数量を超えた場合に、その年度末までセーフガード発動時の税率が適用されることになりますけれども、もともとの現行のセーフガードの制度は、例えば牛肉の場合には、四半期の輸入量が前の年の一一七%を超えた場合に発動するというシンプルな仕組みでありました。食肉の輸入業者は、毎月の貿易統計からセーフガードの可能性を推測して、必要に応じて各社が輸入調整をする、その上でセーフガードの発動を回避することができたわけであります。

 一方で、今回のTPP11と日・EU・EPAでは、それぞれのセーフガードの対象となる輸入数量が毎月の貿易統計とは別に、今回、月の旬ごと、上旬、中旬、下旬、旬ごとにTPP11、日・EU・EPAのそれぞれの輸入数量、そしてこれまでの貿易統計の数量をにらみながら、発動基準数量を照らし合わせてセーフガードの発動の判断をせざるを得なくなりました。

 現場にとって複雑さが増しているというふうにも感じるこの制度について、麻生大臣、どのような御見解でしょうか。

麻生国務大臣 今御指摘のあった話ですけれども、牛肉の場合は、TPP11に基づくいわゆる牛肉のセーフガードというものと、従来の関税暫定税率法に基づく牛肉に係る関税の緊急措置というものは、これはいわゆる発動要件が異なっているんですよね、基本的に言えば。したがいまして、参照すべき輸入の数量も異なるんですけれども、それぞれ別個のものとして明確な形で公表されておりますのは御存じのとおりです。

 したがいまして、セーフガード措置の数量自体ということですけれども、その措置の必要性というものを背景にして、いわゆる国際交渉の進展に合わせて増加しているということはもう事実でありますので、利用者にとりましては、わかりやすい輸入数量というものと、また、発動基準数量というのがきちんとわかっていないと御指摘のとおりになろうと思いますが、ここはきちんと公表させていただきたいと思っております。

緑川委員 そういう懸念は、やはり現場でも今後あり得るということであります。関税の引下げで、見るべき指標、判断の目安が、しっかり見ていかないと混乱することにもつながりかねないです。

 自由貿易の推進というのは結構なことですけれども、何のための貿易かということもやはりしっかり踏まえた仕組みであるべきだというふうには思います。

 このセーフガードの発動基準については、今回の改正でも、前年度の輸入実績又は平成十四年度あるいは十五年度の輸入実績の平均値の大きい方を基準にすることというのがこれまでのセーフガードの現行の制度ですが、今後、牛肉については、TPP11では、麻生大臣、大まかなお話をいただきましたけれども、現行の三八・五%という関税から、一年目、もう間もなく二年目になりますけれども、二七・五%に一年目には引き下げられ、段階的に下がって、十六年目には九%まで引き下げられるわけです。更にここに日・EU・EPAにおける輸入も考えれば、牛肉の輸入量がふえていくのは間違いありません。

 そういう状況の中で、輸入業者は、貿易統計の数量、そして今言ったようなそれぞれの輸入数量をにらみながらの、発動基準数量一一七%を超えないように、セーフガードが発動しないように、現場の調整が、一一七%を超えないというところを目指してくると思うんですね。ぎりぎりのところの調整になっていくというふうに思います。

 結局セーフガードが発動されなかったにしても輸入数量はふえていく方向ですから、次の年度を考えたら、その前の年度が十四年度、十五年度よりも大きいものであれば、前の年度を基準とした発動基準数量になりますので、それならばより多くの輸入数量を確保できることになります。これはやはり需要者、輸入業者にとってはありがたいことかもしれませんけれども、セーフガードが発動しにくくなる事態というのが一方で起こり得ると思うんですね。

 この食肉の輸入業者の需要に対応する一方で、国内需要にはやはり限度があります。消費量には限度がある。そういう中では、価格競争において厳しい闘いを強いられている現場の畜産家にとっては不利にも見える仕組みに思えるんですけれども、麻生大臣、このあたりはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 今おっしゃるとおり、関税の緊急措置の話ですけれども、これはガット・ウルグアイ・ラウンドにおけます主要輸出国との協議の結果、あのときに税率を自主的に五〇%から三八・五に引き下げるという協定税率というものでさせていただいたんですが、それの代償として、下げるから、そのかわり輸入量が前年度輸入実績の一一七%というのを超えた場合については税率を引き上げますよという話をつくられた。今おっしゃるとおりなんですけれども。

 この措置というのは、短期的な輸入の急増ということによって、国内のいわゆる生産業者、畜産業者に対して、急激にどんとやられるとえらいことになるということで、激変緩和措置の効果というのを主に狙ったものだと思いますので、そういった意味では、国内保護もある程度図られる制度にはなっているんだと思いますけれども。

 今言われたように、少しずつ少しずつされたときにこちらの対応がどうなのかというのは、ちょっと別の話だったり、ここは私どもの話ではなくて、ちょっとこれは農林省の所管になるんだと思いますけれども、そういった事態というのは考えておかねばならぬのかもしれません。

緑川委員 やはり麻生大臣がおっしゃったように、激変緩和措置、つまり一時的な措置だったはずなんですね。この措置がずっと続いているということの、やはり弊害というかマイナス面というのが見え隠れしてきているのかなということがあります。

 新たな自由貿易の推進の時代に当たっては、こういう仕組みはやはり時代にフィットさせていかなければならないというふうに思います。取引現場あるいは国内の生産業者にとって、お互いにやはりメリットになるような、需給の調整をしっかりできるような関税制度でなければならないというふうに思います。

 この関税の仕組みがやはり複層的に今なっているような状況です。

 そういう中では、関税等審議会において、関税制度に関する研究会というものから、割当て枠が十分に消化されていない品目があるということが判明したという報告もなされていると聞いています。例えば、WTO協定で設定されている割当て枠と比べて国内需要が限られていることから消化率が低い、そのために枠外輸入も少ない品目があったり、また、枠内税率よりも低い水準のEPA税率や後発開発途上国特恵税率を適用した輸入がふえていることから、枠外輸入量が増加をして、結果として消化率が低い品目があるということも指摘されています。

 そういう中で、やはり、先ほどのように国内生産者の保護としての機能のあり方、また、EPAなどの発効が、今後も大型のEPAがどんどん出てきますから、大きな環境変化の中にある関税制度について、改めて、大臣、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今おっしゃるような、関税割当て制度というのは、一定数量というものの輸入には低い税率を適用して需要者利益の確保を図るという機能と、その数量を超える輸入については高い税率を適用して国内生産業者の保護を図るという機能と、両方持っている制度だということだと思いますが。

 この制度について、平成三十一年度改正において検討を行ったときに、今言われましたように、枠の数量の消化率は低くて、枠外輸入もない品目、例えば絹とか何かはそうだと思いますが、国内生産者保護としての機能が発揮されていると言えるのかという意見があります一方、今言われましたように、TPP11とか日本・EU・EPAとか、そういった大型のEPAが相次いでいるという事実がありますので、こうした変化が国内の生産者や需要者に対してもたらす影響がはっきりしていない、定かではないではないか、また、国内産業において競争力の強化に向けた取組であるという点などを踏まえて、需要者の利益というものを確保しながら国内生産者の保護を図るという機能というものを、関税割当て制度そのものについてちょっと検討をする必要があるのではないかという結論に至ったというのが、この間の委員会の話です。

 したがいまして、来年度以降の関税改正におきましても、内外の経済情勢というものを踏まえて、この点については適切に対応をしていく必要があろうかと考えております。

緑川委員 やはり求めている方向性にしっかり沿う内容を求めたいなというふうに思います。

 こういう国内生産者あるいは実需者、需要者への影響を見きわめつつ、やはり先ほど挙げた本来の目的が形骸化しないような、既に形骸化しているような品目も含めて、しっかり議論を加速させていただきたいというふうに思います。

 この関税割当て制度ですけれども、過去の輸入実績をもとに事前に割当てを行う際に、輸入業者に対して証明書を発給しているということで、行政もそうなんですが、やはり申請を行う業者の事務負担が生じて割当てが十分に消化されていない、つまり制度の活用が阻害されているというような面も聞いているというところです。

 この割当て制度に係るこうした手続の負担の一方で、TPP11、日・EU・EPAが今発効していますので、これに係る協定の発効二年目ということになって、関税率も二年目ですから、これは変わってきますね。そうなれば、やはり原産品申告書の手続といった貿易事務に係る手続の負担も、今非常にいろいろな負担が増している状況です。

 現場の負担軽減に向けて、政府としてはどのような対応を図っていくお考えでしょうか。

中江政府参考人 お答えいたします。

 まず、関税割当て制度の適用を希望する輸入者の方には、一定の期間内に所定の申請書類を添付した上で物資を所管する省庁に申請を行って、事前に関税割当て証明書の発給を受ける必要があるわけでございます。

 これまで、物資所管省においては、関税割当ての申請書の提出期間の拡大でありますとか、申請時の提出書類の簡素化など、輸入者の事務負担軽減に向けた取組を実施しているものと承知しております。

 また、TPP11や日・EU・EPAに基づく税率変更に伴う輸入者の事務負担につきましては、品目ごとの関税率の推移を表として税関のホームページに掲載、また、全国において説明会を開催するなど、事業者の理解向上に努めてきたところでございます。

 今後とも、引き続き、こうした取組を通じて輸入者の方の事務負担軽減に努めてまいりたいと考えております。

緑川委員 やはり、おっしゃるような関税制度の手続の際にかかる負担軽減のために、実情に即した簡素化、効率化、これが行政としても、そして税関職員の課税事務の負担軽減にもつながっていくというふうに思います。それが今後、お話を今したいんですけれども、ほかの業務に係る執行体制の強化にも私はつながっていくというふうに思いますので、行政、申請者それぞれの負担への対応を考えていただきたいというふうに思います。

 ことしは、元号の改元そして皇位の継承、また国際的に見れば、G20、そしてアフリカTICAD、ラグビーワールドカップ、そして来年は東京オリパラと、国際的に重要な行事が多数控えておるこの数年になりますが、テロ対策に万全を期すというのはもちろんのことなんですが、今は、金の取引価格がいまだやはり依然として上昇を続けている中で、日本では消費増税というまさにこういうタイミングであります。

 チャンスと見て、これを好機と見て、税関を通過する際にかかる消費税を逃れるために、さまざまな方法で金を運んで、その金を店などに税込み価格で買い取らせる、そしてその消費税分を利ざやとして稼ぐ密輸業者に対する一層の取締りが、やはりこれは税関職員のもう一方の使命であると思います。

 金の密輸については、消費税率が五%から八%に引き上げられた二〇一四年を境に急増している。二〇一七年の摘発は千三百四十七件、押収量はおよそ六・二トンに上ります。増税前の二〇一三年と比べて、摘発件数は百十倍、押収量が五十倍に上っています。地域別では、金の非課税地域である香港、そして韓国、中国でおよそ八割を占め、摘発件数、押収量ともに高い水準にございます。手荷物に忍ばせる密輸から、商業貨物の中に隠すケースが目立っている。三年連続で一トン以上の押収量になっているということです。

 これで深刻なのは、押収量とは比較にならない、日本から輸出されている金の量であります。おととし、二〇一七年に日本から輸出された金は二百十五トンであったのに対し、正規の輸入はたったの五トンです。つまり、日本国内での金の産出量、消費量を考えても輸出された金のうちの大半、百六十トンほどは密輸されたということが言われています。消費税の脱税額としては六百四十億円にも上るわけです。

 こうした事態を受けて、おととしの年末から、密輸対策を政府として強化をして、商社側に入手ルートが不明な金は買わないようにするなどの見直しを要請したり、また昨年は、金を密輸したり密輸された金を買い取ったりした際の罰金額を、これまでの上限の五百万円から、金の価格の最大五倍まで引き上げる関税法の改正も行われたところですが、一連の対策を行った結果である昨年を見てみましても、摘発件数、押収量が高い水準にあります。

 金の輸出量は、昨年、百五十六トンだったのに対して、輸入された金は相変わらずの七トン。同じように、国内での生産量そして消費量から判断しても、やはり輸出された金のうちの百トンほどが密輸されたということになります。おととしの百六十トンから当然これは減ったように見えるんですが、金の輸出量が年によって変動しているだけですので、密輸されたとする割合は変わっていません。取り締まれたのはごく一部にとどまっているわけです。

 一連の対策にもかかわらず、密輸されている状況が改善されていないようにも感じるんですけれども、対策の効果を麻生大臣はどのようにお感じになっているでしょうか。

麻生国務大臣 金密輸の状況というのは極めて深刻なものだと私どもも考えておりまして、先ほど申し上げましたように、空港等の職員を増員するとか、いわゆる客の携帯品の検査を強化するとか、それから門型、ゲート型の金属探知機というものを、そういう機材を活用して効率的な取締りを取り組んでおりますが。

 昨年から今御指摘のありましたように関税法の罰則の強化も行ったところなんですが、貿易統計を見てみますと、平成二十九年で二百十トンの輸出超過だった金ですけれども、平成三十年では百四十九トンと、一応輸出超過が減少しておるというのは事実だと思いますので、一定の効果は発揮していると考えることもできると思っております。

 しかし、税関で摘発したいわゆる金の押収量等々というものは、金の輸出超過量と比較すると氷山の一角ということになるのはもうおっしゃるとおりなんで、いずれにしても、税関として今後とも更に各関係省庁、法務省等と連携を密にして、金の密輸に対して一層厳格に対応していかなければならぬ、私ども基本的にはそう思っております。

緑川委員 極めて深刻というお話の一方で、一定の効果があるということで、いかに今後、すぐには即効性のある対策はないかもしれませんけれども、じわりじわりと効果を広げていくという視点が重要であるというふうに思います。

 国際取引での信用を高める観点から、金の輸出を担っているのは、税関長の許可を得ている、輸出の八割近くを大手の商社が担っているわけですが、八割近くを商社が担っているということは、結局、最初に入ってきた金を最終的には輸出するわけですから、密輸された金塊が大手の商社を通じて国際市場に流れている。密輸されたものが出ていくということになります。

 この密輸された金を買取り業者が買い、それが大手商社に転売をされて、海外に輸出されているわけです。輸出額の多くを占める商社の中には、取引先の金の入手ルート、そして形状などの確認を十分にしていない商社もあるということが聞かれます。

 商社に転売される前の段階つまり密輸グループと買取り業者との取引の間では、ことしの所得税法改正で金の仕入れ税額控除の適用について見直しされていますけれども、密輸グループの転売先となる買取り業者には、現行の帳簿に加えて、相手方の本人確認書類の写しなど取引記録を保存せよということを要件に加えていて厳格化しておりますが、密輸の抑止につなげていきたい思いは私も当然持っています。

 しかし、最終的な買取り手である商社は金の輸出額に応じて消費税分の還付を受けられるために、中間の買取り業者としては、商社に消費税込みの値段で買ってもらえるので、結局、仮に密輸と疑われる人物の本人確認をしなくて仕入れ税額控除が受けられなくても、その買取り業者の損失にはならないわけですね。最後は商社への還付という形で、脱税された消費税分を国が肩がわりしている状況です。買取り業者にとっても、商社は都合のいい転売先になっている可能性があります。

 密輸された金であると認識していないなど、事情を知らずに取引している買取り業者を罪に問うのは難しい状況であります。こうした状況に対して、麻生大臣、どのように対処されていくお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは、緑川先生、今般の改正によりまして、金地金の取引に係る仕入れ税額控除、お話しのとおりなんですが、これの制限として、密輸品とわかっていながら、課税仕入れについて、仕入れ税額控除を認めないこととする、それから、本人確認の書類の写しというのがあるんですが、この保存というものを仕入れ税額控除要件に追加するということに、新たにそういった措置を導入させていただいているんですが。

 この制限については、輸出のために金地金等を仕入れる商社というものも含めて、国内において行われます金地金取引の全てに適用されるということにしております。したがいまして、国内取引のより一層の適正化が図られることになりますし、密輸の抑止に対しても一層の効果が期待されるところだと思いますが。

 いずれにしても、これはせえのでなかなかいかないところが難しいところなので、こっちがやるとまた別のということになりますので、引き続き、こういった金地金によって先ほど言われた差額があることは確かですし、押収しているものは氷山の一角であるというのも事実ですから、そういったもので、私どもとしては、関係部局も連携の上、更に対処を強めていかねばならぬところだと思っております。

緑川委員 商社も今回適用になるというわけですけれども、結局、六百四十億円というおととしの脱税額、金の密輸されたとされる量から見れば、これだけの量が脱税されていると。そのお金にかんがえれば、やはりうまみがもちろん残るわけですね。こういう制度を適用しながらも、一定の効果を広げていくことを期待しながら、一気の根絶は難しいかもしれませんけれども、しっかりとした、現場の商社、買取り業者に対する効果的な規制というものを考えていただきたいというふうに思います。

 国内に入ってくる段階のその前の水際対策がやはりより重要だというふうに思いますけれども、近年は格安航空のLCCによって国際線の旅客便の数はもはや週五千便を超えていると言われています。アジアの各地を結ぶ直行便がふえているなど、貿易の警備体制が比較的手薄な地方空港が狙われやすくなっている、密輸のリスクが高まっていると言われています。

 どこを狙われてもおかしくないような状況、小口化の手口もますます巧妙化しているということです。一回数万円の報酬を目当てに、アルバイト感覚で一般の人を使って密輸に加担させる、こういうケースや、密輸で起訴された韓国人の被告の証言によれば、事前に九州の各空港を訪れて手荷物検査をわざわざ下見して入念に準備しているケースも判明しています。

 巧妙化している密輸に対応するために、全国の空港は、金が入ってきたらもうしようがないですから、水際対策として、効率的な門型金属探知機の導入を急ぐことももちろん重要です。

 一方で、摘発されている件数が、麻生大臣もおっしゃったように氷山の一角であります。空港だけではない部分が私は大きいというふうに考えているんですが、おととし、例えば摘発されている件数の中に、航空機の旅客による密輸は九割以上ということで、何かほとんど空港経由なのかなというふうに誤解をしてしまいがちなんですが、昨年はこの割合がおよそ六割、手口が多様化していることは間違いないんですが、あくまでも摘発件数の中での割合であります。

 日本から輸出されている金の大半が密輸であることを考えれば、氷山の一角ということも考えれば、多くが私は密航というような、海を介した密輸の取引があるのではないかなというふうに思ってしまうんですが、このあたりは、政府、どんな御見解でしょうか。

中江政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、摘発件数ベースでは、一昨年は航空機旅客による密輸が全体の九割以上であったのに対し、平成三十年は航空機旅客が六割にとどまる一方、航空貨物が約三・五割を占めております。

 また、御指摘いただきました密航も要因の一つではないかということでございますが、近年、洋上取引、いわゆる瀬取りというものや、船舶乗組員による密輸も摘発されるなど、密輸手口が多様化している状況にございます。

 このため、財務省税関としては、これまで以上に海上保安庁、警察などの関係省庁と緊密に連携して情報収集、分析に努めながら、航空機旅客による密輸のみならず、洋上取引による密輸にも対応するため、日本は長い海岸線を持っておるわけでございます、そういう中で監視艇をしっかり活用するなど、幅広く水際取締りを強化して、金密輸に対して一層厳格に対応してまいりたいと考えております。

緑川委員 やはり洋上取引の中で、もちろん公安組織だけではなくて、地元の漁協との連携ということも各税関の支所では進めているところもありますけれども、このあたりの連携が、やはり地域の実情に明るいこうした団体の力をかりることも大変重要であるなというふうに考えておりますが、今後の、特に漁協との一層の連携については、具体的に何か進むことはあるでしょうか。

中江政府参考人 それぞれの税関で、漁協など、あるいは地域のいろいろな実情を御存じの方と、これはなかなか表には言えないところもありますけれども、協力をお願いしているというところもありますが、大きなところでは、大日本水産会というところと関税局で、いわゆるMOUという協定ですね、密輸に関して御協力をお願いするというようなものを結んで全国的な取組を進めているというところでございます。

緑川委員 海を介した取引、これはまさに水際対策として一層強化を図っていただきたいというふうに思います。

 最後に、麻生大臣、一点だけ。

 訪日外国人がやはり三千万人を超えてきて、来年の東京オリンピックには四千万人が見込まれております。こういう中で、近年の密輸の地方の分散そして小口化という状況であります。効率的な検査機そして探知機の導入、普及は急ぎながらも、やはり細かい現場の対応は人でなければさばき切れません。この喫緊の対策強化のために、税関職員の人員確保、増員に向けた今後の対応についてお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これはおっしゃるとおり、人だけ集めてきて、はいといったってやれる職場じゃありませんので、しかるべき経験なり訓練なりというものを受けた職員でなければ意味がないということになりますので。

 そういった特殊技能を要する職員というのに関しまして、採用すると同時に、トレーニング、訓練、教育等々をせねばならぬということなので少々時間がかかるとは思っておりますけれども、この三年間、毎年三桁で増員をさせてきていただいて、三十一年度も、昨年平成三十年度と同様に二百九人の増員をすることにさせていただいておりますので、いろいろな形にして。金なものですから、非常に機器に対しては極めて反応としては重たいという、御存じのように水に対して比重が二十三倍もあるような重たいものですから。

 そういった意味では、私どもとしては、ゲート、門型機器の話ですけれども、探知機プラス人というので両方でこれをやっていかねばならぬというところで、さっき言われたように、地方空港を使ったLCC等々を使ったものの便数が物すごい勢いでふえてきておるところを狙われているというような数字も上がってきておりますので、そういうものを含めて対応していかねばならぬと思っております。

緑川委員 質問は以上にいたしますけれども、限られた予算、適切な配置というのは前提にしながらでも、やはり大変厳しい時代になっています。重要な行事があり、そして、増税のタイミングであり、金も価格も上がっている、密輸の小口化というのも横行している。経験豊富なベテラン職員を今こそ活用するような再任用制度、そしてまた、増員に当たっては、若手職員の質の確保のために、税関の研修所を充実させる、また、現場税関のフォローアップということもますます求められると思いますので、人への投資をぜひお願いをしたいということを申し上げて、質問を終わります。

坂井委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時三十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十三分開議

坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、金地金の密輸問題について、まず質問させていただきます。

 昨年も当委員会で質問させていただきましたが、投資目的の金地金については、EUの多くの国は非課税という扱いにしております。そのことを私も検討すべきじゃないかという立場で、きょうも質問させていただきたいと思います。

 一年前もここで消費税の金密輸にかかわっての脱税額というのが議論になりましたが、ちょっと教えていただきたいんですけれども、昨年の金密輸に係る消費税の脱税額の推計というのは幾らになっているでしょうか。

中江政府参考人 お答えいたします。

 貿易統計によりますと、平成三十年の金の輸出量が百五十六トン、輸入量が七トンでございまして、その差百四十九トンが輸出超過量となっております。

 この輸出超過量につきましては、例えば、国内で生産されて輸出される金があることや、在庫の増減等の要因もあることから、超過分が全て密輸によるものとは言えず、消費税の脱税額についても確たることを申し上げるのは難しいわけでありますが、その上で、仮に金の価格を一キロ当たり五百万円として、輸出超過量百四十九トン全てが密輸であると仮定すれば、脱税額は約六百億円となります。

宮本(徹)委員 六百億円。もちろん、先ほどお話があったとおり、全てが密輸じゃないというお話でございますが、数百億円の脱税があるということであります。昨年からの取組で密輸入の摘発件数は減少したとはいえ、いまだ大規模な脱税が行われているということだと思います。

 もう一つお伺いしたいんですけれども、一方で、国内の金売買による消費税収というのはどれぐらいになるんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税は、御案内のとおり、売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して納税額を計算する仕組みとなっております。

 このため、例えば金取引などの個別品目の取引に着目して計算するという仕組みにはなっておりませんから、金の取引による具体的な消費税収、これは把握をしていないところでございます。

宮本(徹)委員 では、金の中でも、投資目的で使われることが多いのは金地金だと思うんですけれども、その論理でいうと、当然、金地金についての消費税収も推計はできないということになるのかなと思いますけれども。

 ただ、この投資目的の金地金、想像すればわかりますけれども、投資目的で事業者が購入して、手数料だけ上乗せしてどんどんどんどん回していくということですから、仕入れ税額控除との関係で消費税が発生するとしたら、上乗せした手数料に係るところの消費税ということになるわけですから、投資目的の金地金の取引に関しては、消費税収というのはそんなに多くないと思うんですよね。

 ですから、私、ぜひ、どういうやり方で推計をやる方法があるのかなというのもありますけれども、実際に金地金が投資目的でどれぐらい取引をやられているのか、こういう推計なんかもやってですね。実際、ヨーロッパでは、先ほど言いましたけれども、金地金だとかは非課税になっているわけですよね。そのことによって日本みたいなやり方での脱税は行われていないということだと思うんですけれども、投資目的の金地金の取引による消費税収と、金地金まで消費税を課税していることによってどんどんどんどん密輸、脱税がやられて、奪われている、さっきのでいえば数百億の税金と、どっちが得なのかという、私はぜひこういう比較をやる必要があるんじゃないかと思いますが、その点いかがですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の問題意識はよく理解をしております。ただ、繰り返しになりますけれども、その消費税収を仮に推計しようと思いますと、金の、先ほどおっしゃったような取引の額のほかに、取引を、例えば事業者間取引と対消費者取引に区分するといったようなことが必要になりますので、そういったデータ自体が現在は存在していないことなどから、金の売買による消費税収についてお示しする、したがって、それを比較するというのは、現時点では難しいということを御理解ください。

宮本(徹)委員 全部が全部の統計があるわけじゃないですけれども、資源エネルギー庁の貴金属流通統計調査によれば、日本金地金流通協会の主要五十社が二〇一八年に売却した金地金は三百六十七トン、うち百十八トンが輸出と。

 この五十社というのが国内では相当大部分を占めるというふうな話も聞いておりますけれども、ちょっと私も私なりの計算をしたら、この五十社のところでの取引で生まれている消費税収というのは二十数億ぐらいじゃないかなというのが私の手計算なんですよね、それが正しいかどうかというのもあるわけですけれども。

 やはり、消費税を、金地金まで含めて課税していることによって、プラスマイナスということを考えたら、今の密輸の規模ということを考えたら、相当税収が損なわれる事態になっているのは間違いないんじゃないかなと思います。

 それで、今国会、所得税法案の改正の中で、金地金の密輸対策が強化されるということがありますけれども、この対策でどれぐらい効果があるというふうに見込んでいるのか、お答えいただけるでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 金密輸につきましては、御指摘のとおり、社会的に深刻な状況となっていることを踏まえまして、平成三十年度の税制改正で、まず、金密輸に対する関税法、あと消費税法の罰金の上限額を大幅に引き上げたところでございまして、一定の効果があらわれているものと承知をしております。

 今般の改正法案、御指摘にありましたように、法案の中に対策を盛り込んでおりまして、一つは、密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入れ税額控除を認めないこととするとともに、金地金等の取引に係る仕入れ税額控除につきましては、本人確認書類の写しの保存をその要件に追加することといたしております。

 今般の改正によりまして金地金の密輸がどの程度抑止されるのか、具体的な金額、定量的な見込みを推計することは困難ではございますけれども、例えば買取りをする金地金が密輸品でないことの確認を行うようになるなど、買取り業者のコンプライアンスの向上に資する対応が求められることとなりますので、金地金等に係る国内取引の適正性が図られ、密輸抑止に対しさらなる効果が期待されるところでございます。

 いずれにしても、引き続き、関係部局とも連携の上、しっかりと対処してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 当然、さらなる効果を期待してこういう改正案を出したということだと思うんですけれども、どこまでかというのは定量的にはかれないとおっしゃいますけれども、例えば摘発件数だとか押収量が急激に伸びる前、二〇一三年、これぐらいの水準にまでは密輸入は減少する、そういう期待は持っての対策なんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 何か、定量的に、このぐらいまでといったような、具体的な目標を持っているということは、現時点ではございません。

宮本(徹)委員 目標を持っていないと。どこまで密輸入が抑止されるかわからないけれども、やれることとして今回はこの案を出したということなのかもわかりませんが。

 昨年、一定の措置をとり、ことし、また更に措置を講じても、これで密輸による脱税がなくなる保証というのはないわけですね。その一方で、政府は十月から消費税を一〇%に引き上げるということをやろうとしております。

 そうすると、一〇%に消費税を、私たちは上げるべきでないと考えていますが、仮に引き上げたら、当然、密輸による脱税のインセンティブはより働くということになるんじゃないんですかね。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 金の密輸に関連して、消費税率が上がれば、その分、密輸を行った際のいわゆる利幅がふえることになるわけでございます。ただ、それ以外にも、金が小型で、隠匿が容易な高価な物品であることですとか、近年、金の国際価格が高どまりしていること、また、国内の買取り業者における換金が比較的容易であること等、金密輸の摘発件数が増加した要因、さまざまな要因が考えられるところでありまして、総合的な対策を講じていくことが大切だというふうに考えております。

宮本(徹)委員 否定されないので、利幅が更にふえるということですから、更にこれで、脱税すれば、もうけようという力は、間違いなく、消費税を引き上げれば働くわけですよね。

 それで、きょう、一つ資料をお配りしておりますけれども、これは、脱税の話ではありません、金の輸出量の推移と金の輸入量の推移、前回の引上げのときどうだったのかというものをお配りさせていただいております。

 過去の消費税率引上げのときには、増税前に金地金の輸入が拡大し、増税後に輸出の拡大が起こったと言われております。つまり、八%のときに輸入をして、一〇%になってから輸出すれば、金市場の取引価格が変わらなければ、手数料を引かなきゃいけないですけれども、手数料を別にすれば、それだけで二%の利益が得られるというわけですね。ですから、一九九七年四月の消費税率引上げ直前も、そして二〇一四年四月の消費税率八%引上げの際も、同じ現象が起こったというふうに言われております。

 このグラフを見ていただければわかるように、上の段が輸出量です。これは、増税前は減っているわけですが、増税後に輸出がふえている。輸入量は増税前にふえている。もちろん、相場を見ながら、どのあたりで買ってどのあたりで売ってというのは当然あるとは思いますけれども、こういう形になっているわけですよね。

 この取引は当然密輸じゃないですから、普通の正々堂々とした違法性のない取引なわけですけれども、ただ、消費税というのは、引き上げれば、こういう形で金の取引の場合は収入が得られるわけですよね。国民の税金から、還付金のような形で金の輸出入の業者のところにお金が渡るということになっているわけですよね。

 ですから、私、こういう取引というのは、こういう取引ができない国民から見れば極めて不公平なことが起きているんじゃないかなというふうに思いますが、ちょっと財務省にお伺いしますが、消費税引上げのたびにこのような金地金の取引が行われてきたということは認識されているんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お示しになられました統計、こういった統計があるということは認識をしております。また、輸出輸入の関係で、輸出をすればこういった形で還付等が行われる、そういう制度、仕組みになっているということも理解をしております。

 ただ、さまざまな要因が絡み合っている話ではございますので、それに対してどのように対応していくのかというのは、総合的な対策が必要だというふうに認識をしております。

宮本(徹)委員 だから、どう対策するのかということを考えたときに、やはり、金地金に対して消費税を課すというやり方をやっている限り、増税のたびに合法的にこういう取引が行われて、国民の税金から、こうした取引をやった業者に対して税金が流れていくということになるわけですね。

 それから、あともう一点お伺いしたいんですけれども、政府はこの間、金密輸対策を強化してまいりましたが、その一方で、気になる記事も日経新聞で見ました。二〇一八年十一月二十七日付のものですけれども、市場は混乱、認定地金すら買い取らずという指摘があります。貴金属販売大手の中でも、店頭で海外ブランドの金地金は買取りを休止する企業が出てきた、こう書いています。金先物を上場する東京商品取引所は、国際認定の地金が流通しない事態は世界でも異例で、会員取引会社は現物受渡し品の処理にも困っているということを言っております。

 財務省にこれも確認したいんですけれども、この間の密輸対策で、こうした混乱が現場に生じているという認識はあるんでしょうか。

中江政府参考人 先ほど申し上げましたように、金の密輸につきましては、その増加している要因がさまざまでございますので総合的な対策が必要だということで、これまでも、関係省庁と連携して、水際取締りにおける検査の強化や、大幅に強化された罰則に基づく厳正な処分の実施に加えまして、国内流通における透明性やコンプライアンスの強化など、金密輸に対して厳格に対応してきたところでございます。

 国内での取引についても、関係省庁と適切に連携して対応を行っているところでございます。

宮本(徹)委員 金地金は国際的に安定した価格で取引できる市場が存在しているから、消費税が課税されると、どうしても密輸による消費税の脱税リスクが生まれる。そして、税率の引上げの際に発生する仕入れ税額控除を利用した、さっき言った差額利益も発生する。さらに、消費税の仕入れ税額控除の状況も厳格にすると、国税庁に否認されたら大変だということで、リスクを恐れて現物市場が混乱する。こういうことが起きているわけですよね。

 だからこそ、ヨーロッパでは、EU指令で、金の延べ棒や金貨のような投資用の金地金については、免税の特例というのを規定して、きょう配っている資料の裏面にありますように、ほとんどのEU加盟国で免税、非課税ということになっております。この黄色いところ、書いていますけれども、インゴットと、あとバー、ここは全部exですね、排除するということが全部ついているわけでございます。ほとんどの国がそうですよね。

 ですから、税金の損失を少しでも少なくする手段というのを本気で考えるんだったら、私は、EUと同じように、投資用の金地金については非課税にする、これはやはり真剣に検討する必要があるんじゃないかと思いますが、この点については大臣に御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、これは消費税そのものですけれども、これは消費一般に広く負担を求めるものであります。加えて、金の場合の流通しておりますものの約六割、七割は宝飾品とか、またパソコンの部品なんというようなものの電子機器の部品の原材料ということになっておりますので、加えて、銀とかいう他の貴金属との課税の均衡というのを考える必要がありますので、現行法上、消費税は課税となっておるんですけれども。

 今、金密輸に対応するという目的なんでしょうけれども、金の国内取引をただ非課税にするというお話のように聞こえましたけれども、これは金の密輸物品というものが他の課税物品に移行したり、イタチごっこにもなりかねぬということもありましょうけれども、これは慎重に考えるべきところだと思っております。

 加えて、EUのように投資目的の金地金のみを非課税にすればいいじゃないかという話のように伺いましたけれども、国内の金地金の流通というのは、御存じのように、投資目的と非投資目的というのは、これは区別をされておりませんので、そういった管理がされておりませんので、そういった状況においてこの両者を適切に区分ができるかということを考えますと、いろいろ課題、問題があるんだと思っております。

 いずれにしても、この金地金の密輸につきましては、社会的に深刻な状況になっているということを踏まえて、先ほど局長の方からも答弁がありましたように、関係部局とよく連携の上、更にしっかりとした対処をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 時間になりましたのでここで終わりますけれども、先ほどの日経の記事もこう書いています。東京商品取引所などは、欧州のように投資目的の地金は非課税扱いとするのが一番の解決策ではないかとの見方も示す、財務省が非課税化を検討する気配はなく、国内金市場の混乱もしばらくおさまりそうにない、こういう指摘もされているわけですね。

 いろいろな課題があるということを大臣は今おっしゃいましたけれども、現にヨーロッパではこういう線引きでやっているというのがありますから、ぜひ、これはよく欧州の事例も研究して、いかに国民から集められた、納められた税金を脱税で逃さないようにするのかというのは真剣に研究していっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも質問させていただきたいと思いますが、大臣、関税はずっと暫定税率という形で何年も続いていると思うんですけれども、さすがにこんなに続いて暫定というのは違和感もありますし、ちょっと問題じゃないかなと思うんです。長く続いているものは、毎回言っていますけれども、基本税率化していくというのが普通の考えだと思うんですけれども、この点、どうして暫定税率が長く続いているものを基本税率化しないのか、このあたり、どのように解釈されているんですか。

麻生国務大臣 暫定税率の適用期限の延長というのは、これまでの年度の改正において、基本税率とすることを含めて検討を行ってきたんですが、短期的に関税率を見直す必要性が認められない品目については、これは基本税率化しますというのが一点。

 その時々の国内産業とか国際交渉の状況とか政策上の必要性等々を踏まえて常に見直しを行う必要のある品目については暫定税率を延長してきたところですが、平成三十一年度におきましては、同様な検討を行った結果、現行の暫定税率が適用されておる品目、麦芽等々、四百十一品目がありますけれども、これは、いろいろ検討させていただいた結果、政策上の必要性を踏まえて常に見直しを行うべきであるというのを考えた上で、適用期限を一年延長する必要があると判断をされたと理解をしております。

 来年度以降も、基本税率化の要否を含めて関係省庁と常に引き続き協議をして、必要に応じて基本税率化というものを行うなど、常にこういったものは見直しを行っておかねばならぬのであって、その時々の情勢を踏まえて対応していかねばならぬものだと考えております。

丸山委員 去年もたしか同じような答えをいただいたと、私、去年はあれでしたけれども、おととし質疑したときにそのような答えをいただいたと思うんですけれども、ずっと暫定なので、やはり見ている方、審議する方は、もうそろそろ本当に固定化するものは固定化したらいいと思うし、見直しが要ると思いますが、ここで言っても同じ、堂々めぐりだと思いますので、しっかりと、これは見られているということを意識いただければというふうに思います。

 ホエーの話を、きょうほかの委員もされていましたが、これは非常に、私も、方向性としてはしっかりやっていただきたい方向性だと思うんですが、ただ、メーカーの側から見てみたときに、今、粉ミルクをつくっているメーカーがほぼ、液体の方をつくるところもあって、逆に、粉と液体の競合の部分から、なかなか液体に移るというインセンティブは湧きにくいんじゃないかなと非常に思っているところがあって。

 今後、災害のときの対応等考えたときに、熊本地震等で、こうした液体の乳幼児用のミルクというのが必要だということで、特に海外のものを現地にということだったようなんですが、結局、何か被災地の方の話を聞いていると、余っていたとか、やはりなじみがないので、どうしても粉ミルクの方をお求めになるとか。

 でも、一方で、私も独身なので、何で知っているんだという話じゃなくて、聞く話だと、やはり粉ミルクだと、まず溶かして、温めて、人肌にしてみたいな、非常に手間ですから、そういった意味で、災害面でも、そして需要の面でも、液体ミルク、ぜひ、今までの規制を取り払ってやっていただくというのは非常に大事だと思うんですけれども、税制上、うまくインセンティブもつけていかないと、結局、粉ミルクの方が今多い中で、彼らとしても、余りインセンティブがメーカー側も湧かないんじゃないかなと非常に危惧するんです。

 こうした部分、この間の所得税関連の税法でも、いろんなインセンティブを考えて、住宅にしてもやっていらっしゃいましたけれども、こういったところをうまくインセンティブをやっていただくのは非常に財務省の税としても大事な観点だと思うんですけれども、こうした観点でお考えになることはないですかね。いかがでしょうか。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正におきまして、災害時や外出時の授乳を簡便に行うニーズが高まる中、粉ミルクにかわる新たな選択肢となり得る液体ミルクの普及を促進する観点から、昨年八月に、厚労省の所管である乳等省令において、調整液状乳の定義、規格基準が設定されたところでございまして、それを受ける形で、今般、液体ミルク製造用ホエーを関税割当て制度の対象として、低い関税率一〇%を適用することとしたものでございます。

 委員から御提案のありましたインセンティブづけにつきましては、まずは、今回の改正の効果について、関税割当ての利用状況をよく見ていく必要があると考えております。

 その上で、液体ミルクの普及に係る政府全体の取組状況を総合的に勘案しつつ、ミルク製造用ホエーの税率水準等について慎重な検討をしていきたいというふうに考えております。

丸山委員 需要を見ながらしっかりやっていただきたいと思いますし、何より、今後、災害時の対応というのは、自治体にしても国にしても考えていかなきゃいけないと思います。

 粉ミルク、もちろん防災の観点から備蓄されているものは多いと思うんですけれども、液体ミルクに関してもこうした災害の観点から備蓄を調えることでそれがまず一つの需要になりますし、今まで余り皆さんにとってなれ親しんでいないものがこうした部分からそこにつながっていくみたいなものも生じると思いますので、防災の観点から、液体ミルク、国として備蓄していくというのは一つ大事な鍵になっていくというふうに思うんです。

 液体ミルクも、実は保存期間が短いのでなかなか難しいというのもありますが、逆に、短いからこそ、入れかえることで需要も生まれるかなと、変な言い方ですけれども。例えば、もう期限が切れそうなのは、大体、防災用品で、皆さんにどうぞとお配りしたり、サンプルでお配りになったりされています、防災訓練のときに。そういったところからも普及は考えられますし、こうした防災の観点、そもそもの防災でも大事ですし、先ほど述べたようなインセンティブや皆さんになれ親しんでいただくという意味でも意味があると思うんです。

 防災の備蓄もやはり、自治体へもしっかり国として指示いただくのは非常に大事だと思うんですけれども、このあたり、具体的にどうお考えでどのようにされるつもりなのか、お答えいただけますか。

米澤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、乳児用液体ミルクにつきましては、開封してそのまま飲ませることが可能でございますし、飲用水やお湯の確保が困難な災害時にも有効であるというふうに考えてございます。また、関係の方々の関心も非常に高いと承知してございます。

 今月から全国で順次販売が開始されたばかりということでもございますので、内閣府といたしましては、まずは、災害時における乳児用液体ミルクの活用などにつきまして自治体へ周知を行うことなどを検討してまいりたいと考えてございます。

丸山委員 しっかり周知いただいて、状況を確認しながら、必要であれば指針を更に示していくとか、非常に大事な順番になっていくと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 関税、今回のを見ていますと、基本的には、しっかりやっていただきたいなと我が党としても賛成なんですが、関税の関係で昨今気になるところで、ここも検討すべきじゃないかなというところが韓国の、徴用工とは言いたくないですが、いわゆる徴用工、徴用された方々に対する訴訟に関して、日本企業の資産を現地で差し押さえるというニュースがある。それに対して、対抗措置として、国として関税の引上げを検討しているような記事が出ているんですけれども、これは飛ばしなのか、それともしっかりそうしたものを検討されているのか、事実関係をお伺いしたい。

 同時に、もしこうした措置を適用する場合、関税を引き上げるというのを適用する場合にはどんな手続が必要なんでしょうか。関税を見ていて、法律上、こうした手続はないと思う、特定の国に対して関税を引き上げるというのはないと思うんですけれども、そうした部分こそ、この関税の改正というのは必要じゃないかな、検討するに値する部分じゃないかなと思うんですけれども、今回の法改正ではもちろんこういった部分は入っていませんが、こうした部分、まずはお答えいただけますでしょうか。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 旧朝鮮半島出身労働者問題について、現在、日本政府は韓国政府に対し、韓国による日韓請求権協定違反の状態を解決すべく、協定に基づく協議を要請しているところと承知いたしております。

 この協議要請に加えて、今後、日本政府としてどのタイミングで何を行うかといった具体的内容については、官房長官から記者会見において、我が方の手のうちを明らかにすることになりますので差し控えたいと述べられているものと承知しております。

 いずれにいたしましても、日本企業の正当な経済活動を保護する観点からも、関係省庁と連携しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

丸山委員 検討するだけなら誰でもできちゃうんですね。私ですらできるし、逆に言えば、別に行政府じゃなくても一般の方でもできてしまうし、もっといけば、小学生でも検討しますと言うことはできるので、非常に聞いている方が歯がゆいですし、もっといけば、本当に検討されているのかなと、中身もおっしゃらないと余計考えるんですけれども。

 関税を今回議論する中で、今記事に出ているような、もし関税を特定の国に、韓国に対して対抗措置として当てるとしたら、これは関税法の改正が要るわけですよ。少なくとも時間がかかるわけで、法改正ですからね、急に国会が開いていないときにできるわけがないですし、国会に提出して議論しなきゃいけませんから非常に時間がかかるわけで、非常に、今のを聞いているだけでも、関税一つとっても歯がゆいですし、その他の対抗措置も、どう考えているのかもお述べにならないということは、非常に、本当に検討しているのかなというところを、聞いていらっしゃる皆さんは不安に思いますし疑問に思うと思うんですけれども、本当に検討はされているんですか。それはどうなんですか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま財務省からもございましたとおり、旧朝鮮半島出身労働者をめぐる問題につきましては、現在に至るまで、韓国政府が日韓請求権協定違反の状態を是正する具体的な措置をとらず、加えて、原告側による差押えの動きが進んでいることは極めて深刻というふうに考えております。

 我が国としては、韓国による協定違反の状態を解決すべく、韓国政府に対して、協定に基づく協議を要請し、協議に応じるよう重ねて求めているところでございまして、韓国側は当然誠意を持って協議に応じると考えております。

 この協議要請に加えまして、どのようなタイミングで何を行うかといった具体的な内容につきましては、我が方の手のうちを明らかにするということになるため、差し控えさせていただきたいと思います。

丸山委員 毎回もうずっとそのお答えで、何をやっているのかなと、お聞きになった皆さんはお思いになると思いますし、実は、慰安婦のときも同じことを、私、外務委員会で、あのときはちょうど岸田さんでしたね、岸田外務大臣だったんですけれども、合意をしたという話をされて、本当に大丈夫ですか、慰安婦の問題も、財団をつくったけれどもこれは本当に解決するんですか、いつも、毎回ひっくり返っていますよという話をそのときもしたんですけれども、いや、合意を守らせます、合意を守らせますとずっと岸田大臣はおっしゃっていたんですけれども、案の定、慰安婦の話もああいう状況になってしまった。

 同様に、レーダー照射の件も、あと低空飛行の件もありますが、それはおいておいて、日本の企業の経済活動が損なわれる中で、しっかり対抗措置というのは国としてはとっていかなきゃいけないし、もちろん、こちらからあえて荒立たせることはないという気持ちもわかります、外交がありますから。しかし、本当に聞いている皆さんは不安になると思いますし、どんどんどんどん、韓国のいつものパターンだとやられると思いますので、しっかり対応いただきたいとしか言えませんが、よろしくお願いしたいと思います。

 次に韓国がやってくるのは、恐らく、アメリカとか欧州の、自国だけじゃなくてほかの国の日本企業の、例えば今回、三菱重工業が対象になっていますが、彼らの、企業のほかの国にある資産を、その国の裁判所に訴えて差押えにかかっていくというのが通常考えられると思うんですけれども、欧州に対してやるんじゃないかみたいな話を彼らの弁護団が既に述べています。このあたりをどのように考えられていて、どのように対応されようと考えているのか、政府の見解をお聞かせください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員がただいま御言及になりましたような、御指摘のような報道、こういうことがなされていることについて我々も承知しております。また、御指摘の、原告側はいろいろ発表していますが、その一々について政府としてはコメントすることは差し控えたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、これまで政府として繰り返し申し上げていますとおり、本件問題につきましては、日本企業の正当な経済活動の保護の観点から、引き続き、関係企業と緊密に連絡をとりつつ、日本政府としての一貫した立場に基づき、適切に対応させていただきたいと思っております。

丸山委員 きょう、関税の議論ですけれども、出てきている内容は非常に細かい話が多くて、もちろん、それぞれの部分に関しては、関与していることは非常に大事な大きな案件ですけれども、何かしら、こういう他国との関係で大きな影響がというのは比較的見られない案件です。そうした中で、本当はこの関税にしてもこうした議論すべき案件があるんですけれども、何となく政府の中では後手後手な感じのイメージを与えてしまっているので、手のうちは明かせません、検討していますでは説得力がありません。しっかりこれは前に進めていただきたいと思いますが、もう繰り返しになりそうなので聞きません。

 ただ、この一連の韓国側の対応に対しては、政府側も憤りを感じているのは、たびたび政府の閣僚の皆さんの御答弁を聞いていても思いますし、何かしらできないかというのは、恐らく、与党の皆さん、自民党の中でも考えていらっしゃると思いますし、何とかしたいという思いを持っていらっしゃる議員も多いと思うんですけれども、このあたり、本当にそろそろ、ただ言うだけじゃなくて、しっかりと具体的に出していくというのは、タイミングだと私は思うんですけれども、大臣、このあたりも含めて、韓国の一連の対応等、国がどういうふうに対応していくべきか、大臣としてどのようにお考えになるか、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 外交の話なので外務省が所管しているところだと思いますが、対抗する措置というのが幾つもあるのはもう御存じのとおりなので、関税に限らず、送金停止とかいろいろな方法がありますので、ビザの発給停止とかいろいろな報復措置があろうかと思いますけれども、そういったものになる前のところで今交渉されているというところだと思いますので。

 私どもは与党をやっていますので、野党であおる立場じゃありませんので、このことに関して、少なくとも、政府として、相手国のある話でもありますので、きちんとした対応をやっていかないかぬと思っていますが、これ以上事が進んで実害がもっと出てきたということになってくると、これはまた別の段階になりますので、その段階では考えないかぬという、段階によって対応の仕方が変わってくるんだとは思っておりますけれども、いろいろなことを考えているかといえば、はい、考えています。

丸山委員 最初の発言、いろいろな話が出ましたけれども、タイミングという話がありましたし、しっかり、国民の皆さんが見ていますし、何より、韓国側も今結構センシティブなタイミングです、三・一独立運動の百周年とか。そうですが、しかして、外交ですから、言うべきところは言っていかないとあれだと思いますし、特にこの関税の議論をしているときにずっと思ったのは、そうした部分の大きな議論もなく細かい話だけで済ませているのは非常に一人の議員としても危惧しますし、対韓関係を見ていても気になる点なので指摘させていただきたいというふうに思います。

 時間もなくなってきたんですが、これは質問じゃなくて、通告が時間的に間に合わなかったのできょうはお話しかできないので、次に質問しようと思うんですけれども、大阪が、政令指定都市なんですが、堺市というところの市長が、今、政治資金収支報告書の訂正の問題で荒れているんですけれども、大きなニュースになっていまして、収支の訂正がぽろぽろいっぱい出てきて、全部で二百個以上で、それが一億三千万円以上の訂正をされるという形になるという非常に驚きの状況になっているんです。

 その市長から提出された資料をちょっと、出てきたので、きょう、ぺらぺら見ていてびっくりしたのは、税理士の方からそれは提出されているんですけれども、タイトルは、竹山修身氏の政治団体における会計処理に関する調査報告書というものです。

 税理士の方なのに、絶対的な正確性が担保されるものじゃないとか、あと、りそな銀行の通帳の残高証明がついているんですけれども、それが間違っているんだと。平成二十二年、二十五年、二十七年の額が一致しませんが、銀行からの残高証明の誤りですと書いてあるんですけれども、通常の感覚で考えたら、銀行の残高証明が三年分も誤るなんて考えられないですし、りそな銀行がまさか本当に残高証明を間違えて出したというなら、これは銀行法上、問題だし、この委員会にも来ていただいてしっかりりそな銀行に、どういうことだと聞いていかなきゃいけないというふうに思っているんですが、時間ももう終わりますし、通告の関係できょうはできませんでしたが、この話をまた次回触れさせていただきたいというふうに思います。

 これで、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦でございます。

 きょうは、ちょっと午前中の審議、私、所用がございまして、会派のかわりの者に代理で出席をさせていただきましたので、午前中の審議をちょっと聞いていませんものですから、もしかするともう既に議論があったのかもしれないテーマもあるかもしれません。重複があったらば、お許しをいただきたいというふうに思います。

 まずは、消費税と景気の関係で大臣にお尋ねをしたいんですけれども、社会保障と税の一体改革を推進をする際に党内でさまざまな議論がございました。一番骨を折っていただいたのは、ここにいらっしゃる前原政調会長でございまして、二〇一一年の暮れだとか二〇一二年の三月、長時間にわたる党内のさまざまな議論がありましたが、その中で、一つの党内議論の争点になったのが景気条項にかかわるところだったんですね。

 名目とか実質の成長率の数字を入れた方がいいという意見があったり、定性的に表現した方がいいという意見があったり、などなどありながらの、いろいろ意見調整をやった記憶があるんです。問題意識としては、どなたにも共通しているのは、やはり景気が悪いときは消費税を上げることはできないだろう、中止したり先送りしなければいけないだろう、そういう問題意識があったからなんですね。

 ところが、安倍政権においては、この景気条項というのを撤廃しましたですよね。退路を断ち切って消費税の引上げをやっていこうという姿勢なのか、これはよくわかりませんけれども、一応撤廃しました。とすると、消費税と景気の関係について、どういう基本的な見解を持っているのか。リーマン・ショックみたいな大きな激震が走ったらこれは上げられないということは、これは再々いろいろなところで答弁があったり議論があったりしているとは思います。

 私は、やはり一つ、一般論としてでありますけれども、景気後退局面なのか景気拡大期間なのかというのは、一つの大きな分岐点のような気がするんですね。その点についての大臣の基本的な御認識をお伺いをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これは、野田先生、一般論としてというお話でしたけれども、消費税の引上げというものは、消費税に限りませんけれども、何でも税金というものは、景気の拡大傾向にあるときの方が増税というものは受け入れられやすいものだというのは、常識的に、一般論としては当然のことなのであって、傍ら、必ず、税を増税ということになった場合は何らかの反応が出ますから、それに対して、いわゆる減税をこちらでするとか、いろいろな形での、経済に影響を及ぼすというところで対応して、経済運営に万全を期すというのが常識的なところだろうと思っております。

 今、我々がもう一つ考えないかぬのは、どう考えても、日本の場合は、少子高齢化というものの面からいきますと、世界百九十カ国の中で最もトップを走っているような状況にありますので、少なくとも社会保障費が間違いなくふえていく。

 年間五千億等々、いろいろな表現がありますけれども、ふえていくという中にあって、これをきちんとして、今の皆保険等々の問題を次の世代に送っていくためには、少子高齢化という国難というものをきちんと克服するためには、安定財源というものを持っておかない限りは、こういった時代の大変化には耐えていけないということでありまして、消費税率の二%の引上げというのは、この安定財源を確保するために行うということでありまして。

 その点から考えまして、私どもは、今の景気というものが、極めて好景気と言うつもりはございませんけれども、我々の置かれている状況というのは、少なくとも、企業等々を見ましても、GDPを見ましても、いろいろな形の数字は、少なくとも、間違いなく史上空前の利益を出しているというような状況に今ありますので、私どもとしては、そういった点も十分に考えて、今回の状況というのは、極めて景気後退局面の中で行っているというつもりではございません。

野田(佳)委員 その意味では、ちょっと今、大事な局面になりつつあるような気がしてならないんですけれども。やはり景気後退局面、要は、日本の経済が風邪を引きつつあるときに冷たい水を浴びてしまったら肺炎になりかねないわけですので、そういうことにならないようにする、注意深く判断しなければいけないだろうと思うんですね。

 その上で、最近、これはもう記者会見でもお答えになっていますけれども、景気動向指数が三カ月連続悪化をして、そして基調判断も引き下げるという状況になりました。これについては、今いろいろな諸説があります。さまざまな機関が分析をしているところであります。でも、間違いなく景気後退局面に入っているかもしれないなという予感を持つことも、これも否定できないというふうに思うんですね。

 そこで、足元の経済についての現状の大臣の御認識を問いたいというふうに思います。

麻生国務大臣 景気動向指数というものにつきましては、他の委員会でもいろいろ御質問をいただいたところでもありますけれども、基調判断というものは、これはもう御存じのように、三カ月間のいろいろな数字を見て、あとは、そういうのが、数字が出れば、ぱっと機械的に当てはめるというルールになっておりますので、下方への局面変化とされているのは、機械的に当てはめるとそういうことになる。

 御存じのように、景気動向指数というのは、毎月の生産とか、また雇用などの経済指標を統合したものなんですが、今、我々の分析では、一月というものを見ますと、やはり、中国のいわゆる春節というか、春の正月等々の時期が、いつもの時期が早く始まっておりましたので、中国向け輸出が手控えられたとか、また、日本の場合の正月休みは、ことしは九日間でしたか、長かったとか、また、いわゆる自動車のメーカーの部品の不都合によって生産がとまったとか、いろんなものがありましたので、私どもとしては、そういった点も考えて景気動向指数を見なければならぬと思っております。

 傍ら政府としての景気判断というものは、これはいろいろな判断指数がありますので、その中で月例経済報告というものを基調に判断をすることといたしております。現実に、今の現段階での月例経済報告の基調判断は緩やかに回復しているとの認識を示しておりますので、その現状に立って、私どもとしては、今、下降局面に入ったという一面を決して否定するわけではありませんけれども、全体として下降局面に入ったというように考えているわけではございません。

野田(佳)委員 非常に言葉を選んだ回りくどい質問の仕方を私はしているんですけれども。やはり、二〇一七年の四月あたりというのは、世界経済全体がやはり回復、拡大期間だったと思います。あのとき逃したというのは、何か、最大の好機を逃したような私は気がしているんですよね。

 前の前の質疑だったでしょうか。所得税法のときに、過去二回の先送りは痛恨のきわみだったんではないか、この問題意識を共有できますかと大臣にお尋ねしたところ、さすがに老練な答弁で、それを言ったら閣内不一致になってしまいますという御答弁をいただきましたけれども。重ねて聞きませんが、私はやはり、先般の先送りは痛恨のきわみになりかねないような、そういう危惧を今持っているということを申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 多少、これは関税関係の法案ですので関税に絡めた質問もしなければいけないと思いますので、そちらの質問に移らせていただきたいというふうに思いますが、先ほど共産党さんの質問の中にも出てまいりましたけれども、金地金の密輸の関係であります。

 昨年の四月十日に罰則が強化をされました。その背景としては、平成二十九年が、金地金の密輸の件数、過去最悪といいますか、最高で、千三百四十七件、そして、押収量が六千二百七十七キログラム、そういうことを踏まえての去年の法改正だったと思います。

 平成三十年は、これが、千三百四十七件から千八十八件へと二〇%減、それから、押収量が六千二百七十七キロから二千百十キロと約六五%減ということで、法改正が効果があったのか、ほかの違う理由なのか、その抑止効果についてどう考えているのか、関税局長、お尋ねをしたいと思います。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から今、二十九年と三十年の数字を挙げていただきました。更にもう一つ、三十年改正で罰則を強化したその前後の数字を見てみますと、罰則強化前の三カ月間、すなわち三十年の一月から三月の押収量を見てみますと約一トンでございます。それから、罰則強化後の九カ月間、四月から十二月でも約一トンというふうになっておりまして、同じ約一トンでございますので、関税法改正を境にして、押収量は月平均で約三分の一程度になっておるわけでございます。

 このように、数字の上では押収量が減少しておりまして、私どもとしては、金密輸取締りの取組が一定の効果を発揮しているのではないかなというふうには考えております。

 また、貿易量全体からした輸出量超過分につきましても減少しているということも相まって、今のような分析をしているところではありますが、まだまだ税関摘発分の金の密輸は残念ながら氷山の一角と考えざるを得ない状況でございますので、財務省税関としては、今後とも関係省庁と連携して、総合的な対策を講じていく必要があると考えております。

野田(佳)委員 金密輸については、一定の法改正によって効果が上がってきているという御認識でございました。

 税関では、ほかに、不正薬物対策とかいろいろやることがいっぱいあると思うんですが、私、ことし一番注意しなければいけないのは、テロ対策ではないかと思います。来年の東京オリンピック・パラリンピック対応ということも注目されていますけれども、むしろことしの方が大変ではないかというふうに思うんですね。

 というのは、一つは、G20サミットが大阪で六月二十八、二十九と開催をされますが、その前後に関係閣僚会議というのがございますね。財務大臣・中央銀行総裁会議がサミットのちょっと前に福岡で開催されると思います。労働大臣であるとか観光担当大臣だとか農水大臣とか、いろいろな閣僚ごとに、十カ所ぐらいあるんですか、とにかく全国各地で開催されます。時期も、五月、六月もあるし、八、九、十と秋口にかけてもあるし、期間的にもあるいは全国各地で行われるという意味においても要注意だというふうに思います。

 それから、TICAD7がありますよね。これは横浜で八月二十八から三十日。アフリカ諸国五十カ国ぐらい参加するんじゃないでしょうか。これも大事な会議です。

 それから、ラグビーのワールドカップがありますよね。九月二十日から十一月二日まで、十二会場です。札幌から、九州だと熊本とか大分まで、本当に幅広いですね。出場国二十カ国、全試合四十試合、これも注目をされます。

 そして、忘れちゃいけないんですけれども、国際的なイベントというのは、どこかから引っ張ってくるものだけではなくて、まさに日本の主催の大事なやつがありますが、それが即位礼正殿の儀であって、国の内外に新天皇即位を宣明する儀式であります。これは、各国首脳とか国家元首とか多くの人が集まりますね、十月に。前回のときには二千数百名ぐらいの方が御招待で来ているというふうに思いますので、そういう規模で行われるということだと。申し上げたように、G20はあるわ、ラグビーはあるわ、TICAD7はあるわ、そしてこういう即位の礼もあるわ、大変重要な行事、メジロ押しでございます。

 もちろんこれは、税関においても、テロ対策という意味においては水際での役割は大変比重が大きくなると思いますが、こういう各種対応は万全で今準備されているのかどうか、まずはお尋ねをしたいというふうに思います。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国では、今御紹介いただきましたように、本年、G20大阪サミット関係閣僚会合、それからラグビーワールドカップ、さらには皇太子殿下の御即位に際して即位礼正殿の儀などの儀式も予定されているところでございます。これらの機会を狙ったテロの脅威に対応するため、テロ対策の強化を図っていくことは、政府全体の喫緊の課題であります。

 このような情勢を踏まえまして、税関では、テロ対策等に必要な人員の確保、高性能エックス線検査装置等の取締り検査機器の配備、事前情報を活用した積み荷、旅客等のリスク分析、国内外の関係機関等との積極的な情報交換等を実施しているところでございます。こうした取組によりまして、G20を含む重要な国際的行事における水際でのテロ対策に万全を期してまいる所存でございます。

 もう既に三月でございまして、来月から新年度、段階的に準備を更に加速させて、テロ対策に万全を期していきたいというふうに考えてございます。

野田(佳)委員 薬物に対する対応、密輸に対する対応、そして今、テロに対する対応。水際での対応だけでも極めて複雑な、さまざまな業務量があると思いますし、加えて、大事なことは、訪日のお客さんもどんどんふえてきているわけですので、スムーズな出入国という意味でも税関の役割は大変重要になってきていると思いますけれども、税関業務が増大し複雑化する中で、定員の確保や取締り機器等の整備など、執行体制をより一層充実強化すべきだと思いますが、この点についてのお考えをお聞かせください。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 税関業務を取り巻く環境につきましては、今御指摘いただきました訪日外国人旅行者数の急増に加え、本日御議論いただいております金地金の密輸への対応、覚醒剤などの不正薬物押収量の増加、国際的なテロの脅威等、非常に厳しい状況にあると認識しております。

 こういう状況の中で、税関では、空、海において迅速な通関と厳格な水際取締りの両立を実現する必要があるわけでございまして、取締り検査機器の活用を図りながら、所要の人員を確保する必要がございます。

 税関の定員につきましては、三十一年度予算案においても三十年度と同数の二百九人の純増を計上してございます。また、取締り検査機器におきましても、現行の配備機器の更新のほか、エックス線検査装置、あるいは不正薬物・爆発物探知装置、門型の金属探知機等の検査機器を追加配備することとしてございます。

 今後とも、業務運営の一層の効率化を図りつつ、さらなる定員増も含め、必要な税関の体制整備に最大限努めてまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 最後の質問になるかと思いますけれども、G20で、さまざまな議題があると思いますが、主要議題として、経常収支の不均衡の問題というのは多分大きなテーマになるんだろうと思いますね。

 私もG20に出ていたころに、このテーマを盛んにアメリカが持ちかけてくるんですね。一定の枠を決めたらどうかとかいろいろ言うんです。だけれども、これは政府セクターだけでどうなるものでもなくて、民間セクターのいろいろな動きがあって出てくる数字ですからそんなことはできないよと、どちらかというと否定的にはね返すような立場で私は議論に参加していました。

 これは二国間でどうなる問題ではありませんし、国内の投資と貯蓄の構造の問題もありますね。特にアメリカなんかに反省してほしいのは、貯蓄不足があるじゃないですか。そういうのを度外視をして、多分、貿易の不均衡は非関税障壁にあるということを言いたいがためにこれを言ってくるんだと思いますが、議長国ですから、日本として難しいと思うんです。

 事実上、一対十九ぐらいになっている。自由貿易を大体みんな口にするのに、アメリカだけ何かちょっと違う今動きになっていますね。その中で、議長国としてどういう立ち位置で、日本は日本の国益の立場はあると思いますよ。多分、今私が申し上げたようなことが日本の主張だと思います。どういう立ち位置でこのG20に議長国として臨もうとされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 いわゆる経常収支の不均衡、グローバルインバランスとかいろいろな表現がありますけれども、これの是正というのは、世界経済というものが持続可能な成長を維持していくという観点から極めて重要なものであることははっきりしていますので、これはG20で議論するにふさわしい課題として議事次第に挙げさせていただいております。

 議論に当たって、やはり経常収支の不均衡というのは、今、野田先生おっしゃいましたように、二国間の貿易問題というのではなくて、多国間のマクロ経済のバランスというものの問題であるということをまず改めて確認をしてもらわぬと、二国間だけで解決するような話じゃありませんよと、誰に言っているかというのははっきりしていますけれども、そういったことを申し上げねばいかぬところだと思っております。

 具体的には、マクロ経済のさまざまな問題というのが、今言われましたように、貯蓄とか投資とか、そういったバランスの上にどのように影響を及ぼしているかということに着目して議論してもらわないといかぬところだと思っておりまして、例えば高齢化などというものが経常収支に与える影響についてどうやって考えているんですかといって考えていただかぬといかぬところだと思っております。

 二番目に、経常収支を理解するためには、これは貿易収支という、よく今アメリカの場合は貿易収支にこだわっていますけれども、貿易収支だけじゃなくて、所得収支とかサービス収支とかいろいろなものがありますので、こういったものに着目しておくということが重要だということを確認したいと考えております。

 日本の場合も、御存じのように、海外子会社からの配当等によるいわゆる所得収支というものが貿易収支よりはるかに黒字としては大きな幅になっておりまして、経常収支の大部分はまさにこの所得収支が占めておる今の日本の状況でもありますので、多角的な視点の重要性は明らかだと思っております。

 また、米中二国間における貿易収支に偏った、貿易紛争が世界の経済の大きな危険要素、リスクになってきているんだと思いますけれども、G20では、多国間の問題として経常収支の不均衡というものを取り上げる意義は大きいんだと思っておりますので。

 我々、議長国としては、二国間だけの話だけで妙に偏ってエキセントリックになったり、きょうまた少し変わってきたりして、日に日に変わりますので、たんびたんびにコメントするのは差し控えますけれども、そういった形で、大国の二国間だけの話だけで、話が妙なことになりますと、今、波及効果が他国にも出ますので、我々としては、そういったことに関しての議長国としてのリードをするという意味においては、両方にきちんとした貿易関係を持っております、経済関係を持っております、日本としての立場というのは極めて大きいと思いますので、十分にバランスをとった議論をリードしてまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 時間が来ました。

 ありがとうございました。

坂井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

坂井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、井林辰憲君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、日本維新の会及び社会保障を立て直す国民会議の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。緑川貴士君。

緑川委員 国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。

 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出会派を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和のとれた対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。

 一 最近におけるグローバル化の進展やTPP11、日EU・EPAの発効等に伴い、税関業務が増大し、複雑化する中で、適正かつ迅速な税関業務の実現を図り、また、覚醒剤等の不正薬物、銃器、金地金等の密輸を阻止し、水際において国民の安心・安全等を確保するため、高度な専門性を要する職務に従事する税関職員の定員の確保、処遇改善、機構の充実及び職場環境の整備等に特段の努力を払うこと。特にG20大阪サミット等の重要な国際的行事を迎えることから、水際におけるテロ・治安維持対策の遂行に当たっては、税関における定員の確保及び取締検査機器等を含む業務処理体制の整備に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

坂井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

坂井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

坂井委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

坂井委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 国際復興開発銀行は、世界銀行グループの中心的機関であり、途上国支援に重要な役割を果たしております。二〇一五年に持続可能な開発目標、いわゆるSDGsが国連において合意されて以降、世界銀行グループがその達成に向けて必要な開発資金需要にいかに対応していくかが検討され、昨年、加盟国の間で、同銀行の増資を行い途上国の支援を強化することが合意をされております。

 政府は、国際復興開発銀行が果たしたこうした役割の重要性や、本年のG20議長国として日本が国際社会で発揮すべきリーダーシップに鑑み、同銀行の増資に速やかに応じ日本に割り当てられた追加出資を実行するため、本法案を提出した次第であります。

 以下、本法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国際復興開発銀行に対し、三十四億四千四百十万協定ドルの範囲内で、新たに出資を行うことを政府に授権する規定を追加することといたしております。

 第二に、国際復興開発銀行への出資に当たって、合衆国ドル建て国債での払込みを行うことを可能にする規定を追加することといたしております。

 その他、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

坂井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明十三日水曜日午前八時二十分理事会、午前八時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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