衆議院

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第7号 平成31年4月10日(水曜日)

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平成三十一年四月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    石崎  徹君

      上野 宏史君    大岡 敏孝君

      大隈 和英君    金子 俊平君

      木村 次郎君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    新谷 正義君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮路 拓馬君    盛山 正仁君

      山田 美樹君    吉野 正芳君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      吉田 統彦君    稲富 修二君

      岡本 充功君    白石 洋一君

      牧  義夫君    山井 和則君

      桝屋 敬悟君    鰐淵 洋子君

      高橋千鶴子君    丸山 穂高君

      中島 克仁君    柿沢 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       根本  匠君

   法務副大臣        平口  洋君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 沖部  望君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           佐伯 修司君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁在留管理支援部長)       丸山 秀治君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   宇波 弘貴君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高橋 俊之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大島 一博君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  木下 賢志君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         江崎 禎英君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  塩崎 恭久君     吉野 正芳君

  丹羽 秀樹君     木村 次郎君

  山井 和則君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     金子 俊平君

  吉野 正芳君     石崎  徹君

  牧  義夫君     山井 和則君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     盛山 正仁君

  金子 俊平君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     丹羽 秀樹君

  盛山 正仁君     塩崎 恭久君

    ―――――――――――――

四月八日

 学童保育(放課後児童健全育成事業)を拡充し、子育て支援の充実を求めることに関する請願(穴見陽一君紹介)(第六九四号)

 同(中谷真一君紹介)(第六九五号)

 同(小林茂樹君紹介)(第七三四号)

 同(牧義夫君紹介)(第七六五号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(岡本あき子君紹介)(第六九六号)

 同(高井崇志君紹介)(第六九七号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第六九八号)

 同(中曽根康隆君紹介)(第六九九号)

 同(鷲尾英一郎君紹介)(第七〇〇号)

 同(阿部知子君紹介)(第七三六号)

 同(岡本三成君紹介)(第七三七号)

 同(北村誠吾君紹介)(第七三八号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第七三九号)

 同(吉川元君紹介)(第七四〇号)

 同(中谷元君紹介)(第七六六号)

 同(堀井学君紹介)(第七六七号)

 同(緑川貴士君紹介)(第七六八号)

 同(井出庸生君紹介)(第八〇六号)

 同(川内博史君紹介)(第八〇七号)

 同(斉木武志君紹介)(第八〇八号)

 同(階猛君紹介)(第八〇九号)

 同(橋本岳君紹介)(第八一〇号)

 同(山井和則君紹介)(第八一一号)

 子供のための予算を大幅にふやし国の責任で安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第七三二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七三三号)

 福祉職員の大幅な増員と賃金の引き上げに関する請願(阿部知子君紹介)(第七三五号)

 患者負担をふやさないことに関する請願(大島敦君紹介)(第七六四号)

 障害福祉についての法制度拡充に関する請願(黄川田仁志君紹介)(第八〇四号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため夜勤改善と大幅増員を求めることに関する請願(川内博史君紹介)(第八〇五号)

は本委員会に付託された。

四月九日

 七十五歳以上の医療費負担の原則二割化に反対することに関する請願(第四一号)、保育、医療、介護、年金など社会保障制度の連続改悪をやめ、拡充を求めることに関する請願(第七九号)、中小零細企業の社会保険料負担の軽減、国庫負担増に関する請願(第一一九号)、介護保険制度の改善、介護従事者の処遇改善等に関する請願(第二二一号)、同(第二六六号)、国の責任でお金の心配なく誰もが必要な医療・介護を受けられるようにすることに関する請願(第二三八号)、国の責任で社会保障制度の拡充を求めることに関する請願(第二五四号)、子供のための予算を大幅にふやし国の責任で安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(第三四四号)、同(第七三三号)、若者も高齢者も安心できる年金制度の確立を求めることに関する請願(第三五九号)及び福祉職員の大幅な増員と賃金の引き上げに関する請願(第三九四号)は「宮本岳志君紹介」を「穀田恵二君紹介」にそれぞれ訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官沖部望君、統計局統計調査部長佐伯修司君、出入国在留管理庁在留管理支援部長丸山秀治君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官高橋俊之君、医政局長吉田学君、健康局長宇都宮啓君、子ども家庭局長浜谷浩樹君、老健局長大島一博君、保険局長樽見英樹君、年金局長木下賢志君、政策統括官藤澤勝博君、経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官江崎禎英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。安藤高夫君。

安藤(高)委員 おはようございます。自由民主党の安藤でございます。

 本日は質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 では、早速質問の方に移らせていただきたいと思います。

 まず、電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金の創設ですけれども、医療は大事なインフラです。新たに創設される医療情報化支援基金は、この基金の対象として、電子カルテの標準化に向けた電子カルテ導入の費用の支援があり、とてもありがたく思っています。現状、電子カルテの導入率は低く、中小の医療機関においては四割以下の導入率であります。ぜひしっかりと進めていただきたいと思います。

 まず、電子カルテの導入に当たっては、ベンダーは、医療情報として標準化されており、そしてまた互換性を持っていることをぜひ参入の条件にしていただければ、そう思っています。

 また、電子カルテの導入費用といっても、端末代だとかネットワーク代、そしてまた構築作業にかかわる諸費用などもあります。それを踏まえて、電子カルテの標準化に向けての初期導入費用の補助についてより詳しく教えていただければと思います。

 また、加えて、新規導入だけではなくて標準化の規格にそろえていくためには、いわゆるリプレースなども対象になっていくのかどうか、これは大きな問題ですけれども、見解はいかがでしょうか。よろしくお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきました医療情報化支援基金において実施を予定しております電子カルテの標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等の導入の支援事業につきましては、国の指定する標準規格を用いて相互に連携可能な電子カルテシステムなどを導入する医療機関に対して、その初期導入費用を補助するものでございます。

 申し上げました国の指定する標準規格につきましては、現時点で例えば医薬品や病名等の標準コードでありますとか医療情報の出力形式などを想定してございますが、委員御指摘いただきましたように、相互に連携可能なという点も念頭に置いて、具体的な要件については、今後、関係有識者の意見も踏まえて検討してまいります。

 また、対象費用といたしましても、御指摘の更新費用、いわゆるリプレースの費用につきましては、国の指定する標準規格を実装しない電子カルテから実装する電子カルテに更新するという場合につきましては、その導入経費について補助対象とする方向で検討する予定でございます。

 いずれにいたしましても、この基金の趣旨に沿って、効果的、効率的な支援になるように今後考えてまいりたいと思っております。

安藤(高)委員 ぜひ、標準化、互換性、それからリプレース、非常に重要なことなので、しっかりとお願いいたしたいと思います。

 次ですけれども、医療と連携が必要になっている分野、介護もそうですが、あると思います。電子カルテについては、在宅医療とか介護施設の現場でも同様の仕組みが用いられています。このような分野においての電子カルテの普及や標準化についての厚労省のお考えをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

大島政府参考人 医療、介護のデータの関連につきまして、昨年度、相互に関連する、分野がまたがるデータの標準化につきまして総務省の調査研究がございまして、それに参加いたしました。

 この中では、山形県鶴岡市と青森県八戸市の二地域において、厚生労働省として様式で定めています、ケアマネジャーがつくります入院時の情報提供書、それから退院、退所時の情報記録書というのがございまして、これが病院等医療機関とケアマネ事業所の間を行き来するということになりますので、ここを、ICTを用いた情報連携の実証が行われました。標準仕様の検討等が行われました。

 今年度はこの成果を踏まえまして、今度は厚労省の方でそういう調査をやりまして、今年度中に一定の標準仕様を作成していきたいと考えておりまして、医療と介護の情報連携のまずはできるところから着実に進めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 今局長おっしゃったように、現場では、在宅医療を行う中で医療と介護の連携というのは非常に重要でございまして、こういうところにかかわっているのは弱小事業所も多いわけでございますので、ぜひ、地域医療介護総合確保基金というものがきちっとそのような事業所に確実に資金が回っていくようによろしくお願いしたいと思います。

 続けて、次の質問ですけれども、ナショナルデータベースと介護データベースの連結解析等について質問させていただきたいと思っています。

 NDB、それから介護DB及びDPCのデータベースの連結は、今後ますます非常に重要になってきます。それらの情報は、患者さんとか利用者の方の個人情報で、セキュリティーの問題が重要になってきております。

 現在、それぞれの情報は匿名化を行っていくと聞いておりますが、どのような形で進んでいくのかということと、このデータベースの連結に関しては、全世代型の医療と介護、それからまた予防データベースを目指していくべきだと思います。これは非常に重要だと思います。

 さらに、小児とか、特定健診、ですから、四十から七十五歳に該当しない世代の情報、それから障害者の方の情報というものがあります。こういうものを含めて、今後どのようにしていくのか。

 また、データベースの活用という観点からすると、これまでに既に蓄積されているNDBや介護のデータベースなどもあるわけですけれども、これらについての活用ができる仕組みというものも非常に重要になってくると思います。これについてぜひお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

樽見政府参考人 三点御質問があったというふうに承りました。

 まず、ナショナルデータベース、介護データベース、それからDPCデータベースの連結というのを、安全性ということも含めてどういうふうにやっていくのかということでございます。

 この連結につきましては、それぞれのデータベースは引き続いて別々に運用しながらハッシュ値という文字列を活用することで、匿名化した状態のまま各データベースの中から必要なデータを特定いたしまして、連結して解析できるようにするというやり方をとるわけでございます。

 このハッシュ値という値でございますけれども、患者の氏名などを復元することができない形に変換をして値をつけるということでございますので、そういう意味で、ハッシュ値というのをつけるということ自体が安全性の高いものでございますけれども、データベースへの収載あるいは研究者の方々への提供を行うといった際には更に別のハッシュ値というものに変換するといったような措置を、二重三重に講じるということによって、さらなるデータの安全性の確保を図るということとしているところでございます。

 それから、今回のNDB、介護DB、DPCデータベース以外のデータベースというのが第二点目の御質問であったと思います。

 対象とするデータベースの充実ということは、さまざまなパターンの分析というものを可能にいたします。幅広い世代の国民の健康寿命の延伸に役立つ効果的な施策の推進あるいは研究開発の発展ということにつながることが期待されるという点で重要なものだというふうに思っております。

 ただ、一方で、ほかのデータベースというのは必ずしも匿名化をされておらないというものがあるわけでございまして、そうした課題もございますので、今回の法改正に先立って有識者会議で御議論いただきましたけれども、そこの報告書においても、他のデータベースとの連結解析については、具体的ニーズや匿名で連結解析を行うための技術的手法等に留意しつつ検討を進めるべきというふうに方向性が示されているところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、御指摘のように、まさに今後整備が進むことが期待される幼少期や若年期、あるいは障害に関するデータというものも含めて、さまざまな関係するデータベースとの連結解析ということについても検討をしっかり進めてまいりたいというふうに考えております。

 それから、三点目で、過去のデータということでございます。

 先ほど申し上げましたように、ハッシュ値というものをつけます。今までNDBと介護DBでは、両データベースを連結するために新たなハッシュ値を今度つけるわけでありますけれども、それとは別の、それぞれのデータベース固有のハッシュ値というものを今はつけているということになっているわけでございます。

 ですので、連結解析が始まります二〇二〇年度以降に発生するレセプトデータには新しく連結解析のためのハッシュ値をつける、それから、前から使っているハッシュ値と特定できるようにするということにいたしまして、過去に収集したデータにつきましても、新しく連結解析できる形で収集をしたデータと特定ができるようにしますので、そういうものとはあわせて連結解析ができるようにしたいというふうに考えているところでございます。

 そのために必要なシステム改修などを着実に進めていきたいと考えています。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 今お聞きして少し安心した気持ちになっていますけれども、全世代的に、そしてシームレスにデータが入ることが地域包括ケアを成功させる大きな点になると思いますので、よろしくお願いします。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次は、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施等に関してでございます。

 高齢者の保健、介護予防を推進していくことに関して、特に注目されているのがフレイル対策だと思っております。これについて、国の考えている今後の方針はいかがか、ぜひ根本大臣の御見解をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

根本国務大臣 委員の今のお話のように、フレイル対策、これは非常に大事だと思っております。フレイル予防を視野に、保健事業と介護予防を一体的に進めていきたいと思っております。

 私も、ことしの一月に、西東京市のフレイルチェックの取組に市民の皆さんと一緒に参加させていただきました。

 西東京市では、通いの場などにおいて、市民のボランティアの皆さんが集まって市民の皆さんのフレイルチェックをやる。簡易チェックへの回答や、片足立ち上がりテスト、私もやりましたけれどもちゃんとできました、指輪っかテスト、こういうものを楽しく実施できるフレイルチェックを活用しながら、個々人の状態に応じた予防事業が行われておりました。

 専門家の指導を組み合わせながら、元気な高齢者の皆さんが担い手としてやりがいを持って参画されて、これによって地域の健康づくりが前向きに進む機運が高まっている、こういう様子に私も感銘を受けました。

 このような取組を踏まえて、私としては、地域に根差した介護予防の事業と保健師等の医療専門職を活用した保健事業を地域の実情に応じて一体的に進めることが重要だと考えています。

 具体的には、例えば、通いの場などの社会参加の場を充実させて、地域ボランティアなども育成しながら、こういう場を活用しながら、医療専門職による健康相談あるいは健康教室などを実施する、医療、介護、健診などの情報を一体的に分析して地域の健康問題を分析する、さらに、生活習慣病の重症化のおそれのある者や、医療・介護サービスなどに全く接続していない閉じこもりのおそれのある方などを把握して、必要に応じ個別訪問型のアウトリーチ支援を実施する、こういった取組を進めることが考えられます。

 今回の法案で高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施を盛り込んだのは、このような全国各地でやっている今の取組を全国で展開していただきたい、こう考えているためであります。

 厚生労働省としても、このような取組を行う医療専門職の市町村への配置を特別調整交付金も活用して支援するとともに、事業メニューのイメージなどを整理したガイドラインをお示しするなど、一体的実施の効果的な展開に向けてしっかりと支援していきたいと思います。

安藤(高)委員 大臣、現場を見ていただきましてありがとうございました。ぜひ他のシルバー世代の大臣の方々にも広めていただいて、席を立つときには片足立ちで立って、元気で暮らせるようによろしくお願いします。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 介護予防事業や地域支援事業を実りあるものにするためには、リハビリの専門職の活用というものが大変役立つと思っています。例えば、地域包括支援センターの構成メンバーにPT、OT、STなどを加えるのも一つの手ではないかと思います。また、介護予防の取組においても、さまざまな流れをワンストップでやることによってより効率的な仕組みができると思いますが、そこら辺の厚労省の御見解はいかがでしょうか。

大島政府参考人 お尋ねがございました、介護予防ですとか地域包括ケアの取組におきましてリハビリテーション専門職の関与を促していくということは重要な課題と考えております。

 このため、リハビリテーション専門職によるいわゆる地域リハビリテーション活動として、介護予防に関連する事業への関与につきましては助成の対象となっているところではあります。

 それから、地域包括支援センターにつきましては、保健師と社会福祉士、それから主任介護支援専門員、いわゆる主任ケアマネジャーの三者が法令上の必置職員となっておりますが、地域の実情に応じまして、市町村の判断によってその他の職種も配置はできる、その中で総合相談事業ですとか継続的マネジメント支援事業を行うということは可能にはなっております。

 したがいまして、こういう判断で今市町村がリハビリテーションの専門職を置けば、そこに対して一部活動費等の助成が行われるという仕組みにはなっています。最近の調査では、地域包括支援センターに在籍するPTが五十五人、OTが三十八人という数字がございます。

 いずれにしましても、介護予防あるいはこういう地域包括支援事業における効果的な専門職のかかわり等につきまして、引き続き検討してまいりたいと考えます。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 現場では介護予防とかフレイル対策が結構ごっちゃになっていたりもしますので、そこら辺、リハの専門家はきちっとそういうことを踏まえて活動できますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問ですけれども、介護予防事業や地域支援事業において地域でさまざまな課題があります。重要なのは、地域においてしっかりとしたアウトカムを出していくことではないか、そう思っています。

 例えば、フレイル予防において、フレイルの実態の評価ということですけれども、これも東日本と西日本では全然違っておりまして、北東北なんかはどちらかというと結構控え目な点数になっているんですけれども、西日本の方々はどちらかというと行け行けどんどんで、物すごいモチベーションで、自己評価も高い状況になっていて、物すごい差がついてきています。

 これが実態なんですけれども、ぜひ、このフレイル予防に関する、特に評価に関して、人材の育成ということも重要なポイントになってくると思います。ぜひ、こういうことを踏まえて、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの三層構造で、きちっとインジケーターを設けてPDCAサイクルで回していって、ちゃんとした分析、評価をつくる仕組みづくりが必要ではないかと思います。

 また、その評価の中で、例えば高齢者の栄養機能もしっかりとサポートする必要があると思います。例えば、特に在宅で活躍をする場がある栄養ケア・ステーション、これに関してもしっかりとした評価を行う。また、認知症のサポーターがいるのであれば、栄養サポーターというようなことがあってもいいと思います。そのような仕組みづくりをしていったらどうかと思いますが、そこら辺の厚労省の御見解をお願いしたいと思います。

大島政府参考人 介護予防の取組はだんだん広がっておりますし、今後も推進してまいりたいと考えておりますが、そういう介護予防の取組そのものをどう評価していくのか、指標の設定、それを踏まえたPDCAサイクルに沿った展開というのを、今後、質的なものを向上させる上では考えていく必要があると考えております。

 このため、近々、一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会という検討会を立ち上げたいと考えておりまして、夏ごろに中間まとめ、年内には結果を出していきたいと思いますが、その中では、介護予防事業に今後求められる機能、指標設定も含めたPDCAサイクルに沿った推進方法等につきまして検討を行う予定にしております。その中には、栄養士、栄養学科の先生も入っていただく予定にしております。そういう意味で、栄養に関する取組も重要な要素として認識しているところでございます。

 先生御指摘のとおり、今、日本栄養士会によりまして、栄養ケアを提供する栄養ケア・ステーションが全国二百四十四カ所あると聞いております。こうした取組との連携も含めまして、関係者の御意見をよくお伺いしながら、効果的な介護予防の取組が全国的に広がるように努めてまいりたいと考えます。

安藤(高)委員 栄養ケア・ステーションも、現在少し手弁当状態でありますので、しっかりと補助をしてさしあげていただければと思います。あと、やはり、現場ではアウトカムがどうなっているのかということをさんざん言われますので、それをしっかりとした仕組みをつくっていただければと思います。

 最終的にこのような事業を進めていくためには、さまざまな法の根拠を示していく必要があると思います。さまざまな法律を一つに束ねていくためには、ぜひ、地域包括ケア基本法とか、あるいは地域共生社会の基本法みたいなものがあればいいのではないかな、そう思いますので、また御検討のほどよろしくお願いいたします。

 最後の質問になりましたけれども、審査支払い機関の機能の強化でございます。

 今回の法改正においても、支払基金そして国保連合会の機能の強化と効率化が行われていくことになっております。であれば、例えば、国保と社保は同じ物差しで審査する必要があるのではないか。我々医療人は、やれ国保やれ社保を考えて医療を行っているわけではないわけです。また、もしそのような審査の基準が決まったら医療機関さんにもそのようなソフトを配る、あるいはソフトを使用できるようにすると、これは物すごくいい効果になってくると思いますが、そのような合理化の対応についての厚労省の御見解をお聞きしたいと思います。

樽見政府参考人 審査支払い機関に関する御質問でございます。

 審査支払い機関、まさに、これまでの審査の経験の中でさまざまな知見といいますかそれを培ってこられたわけでございます。これを活用して医療機関における適正なレセプトの提出に向けた支援ということを行うことができれば、これがまず非常に重要な役割になるのではないだろうかということが一つあると思います。

 今回の法律改正の中で理念規定を新設することにしています。これは、支払基金においても国保連においても理念規定を新設するわけでありますけれども、その中で、「診療担当者に対する診療報酬の適正な請求に資する支援その他の取組」ということを入れていまして、今回、法律改正の中で、こういう審査支払い機関のこれまで培ってきた知識経験というものをレセプトの請求というところを効率化していくために役立てる、まず理念規定の中に入れているというところでございます。

 医療機関の方からより適正なレセプトが提出される環境が整うということになりますると、審査支払い機関からレセプトを返戻するという必要も減ってくるということになりますので、医療機関側においても審査支払い機関の側においても、双方の業務の合理化も図られるというふうに考えているところでございます。

 もう一つ、支払基金と国保連の審査というものの考え方を統一化していくという御指摘だったと思います。

 支払基金と国保連が連携しながら、審査委員の審査の前段階でレセプトのコンピューターチェックというのをやっているわけでありますけれども、そのレセプトのコンピューターチェックの項目というものについて、平成二十九年度から支払基金と国保連が連携をして順次公開をしているという取組をしているところでございます。

 これに加えまして、二〇二一年の秋ごろから支払基金が新たな審査支払いシステムというものを稼働させるということを予定しているわけでございますけれども、そこにおきまして、医療機関等からのオンライン請求に係るシステムというものを拡充しまして、こうしたコンピューターチェックルールというものをここに搭載して、支払基金が正式にレセプトを受け付ける前にこのチェックにひっかかるという請求であればそれを医療機関にお知らせするというシステムを、これは二〇二一年の秋ごろからの稼働のシステムの中でこれを入れるということを今検討しているところでございます。

 これは今、支払基金の方で具体的に検討しているところでございますけれども、国保連のサイドにおいてもこれを活用していくということが考えられるというふうに思っているところでございます。

 こうした取組を進めることによりまして、医療機関の請求事務と審査支払い機関の審査業務の効率化ということに向けて、引き続いてしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

安藤(高)委員 今のお話はすごくいいことだと思います。画期的なことではないかと思います。

 現場でも、今までは、しっかりと医療を行ったにもかかわらず、一つ事務的なミスで病名がないとばっさりと切られてしまって、もう全部報酬をいただけないような状況がありましたけれども、このような改革によってそういうふうな非効率な部分が少しでもなくなればどんどんまた進んでいくと思いますので、ぜひともまたこれを前向きにお願いしたいと思います。

 これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 おはようございます。立憲民主党の吉田統彦でございます。

 まずは、大臣、本法案との直接の関係はないんですが、四月の終わりから十連休がございますね。その前に医療機関で若干ちょっと混乱が起こっていることがあるので、念のため、それを確認させてください。

 医療機関がいつ診療していつ休診するか、このことは医療法の第八条の届出事項とされていますね、大臣。さらに、診療日を恒久的に変更しようとする場合は、医療法施行令四条三項の規定によって都道府県知事に届出が必要である、そのように私も承知しております。そして、この届出は、各都道府県で医療法を所管している医療整備課や医療政策課といったところに届け出る、そのように理解しております。

 実は、今回の十連休に当たって、なぜか、この届出が必要であるのではないかといううわさが一部であったようであります。

 各都道府県の医師会が在宅当番医は取りまとめを多分しているんですね。これは理解できるんですが、本届出に関して、このいわゆる診療日の変更を医師会が取りまとめるということはあり得ないと思いますが、どうでしょうか。

 そもそも、この十連休において、通常とは違う曜日などを休診にするとか、あるいは休日にもかかわらず患者さんの利便性のために診療を行う、こういった場合に届出が必要であるというのは非常にナンセンスであります。

 これが不要であるのであれば、厚労省としてはどのようなふうに把握をしているのか、念のため確認させてください。大臣、お願いします。

根本国務大臣 委員、いろいろ現場の皆さんからお話を聞いておられると今感じました。

 委員、今、医療法八条あるいは施行令四条三項の紹介がありましたが、医療法上、診療所を開設した医師が診療日や診療時間を変更したときは、十日以内に都道府県知事に届け出なければならない、こうなっております。それは委員のおっしゃるとおりであります。しかし、これはあくまでも通常診療する日時を変更する場合に届け出なければいけないとしたものであって、臨時的、一時的に診療日や診療時間を変更する場合にまで届出を求めるものではありません。

 今回の十連休においても、連休中の診療に対応するために診療日や診療時間を変更する場合があると考えられますが、これは臨時的、一時的な変更であるため、委員おっしゃられるように、届出は不要であります。これについては、既にことしの二月に実施された各都道府県の医政関係の主管課長会議において説明をしておりますが、改めて周知徹底をしたいと思います。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。しっかりとやっていただいたということで。

 ただ、これは大臣、ちょっと問合せなんかが都道府県からもあったんですよね、やはり。どうですか。

根本国務大臣 先ほど申し上げましたように、都道府県の医政関係の主管課長会議において説明しておりますが、担当課にも問合せがあったという事実はありました。

吉田委員 大臣、やはりそれは細かくレクしてきのう伝えてありますので、しっかり答えていただいて、ありがとうございます。

 やはりこういうことは結構、まあ無駄なことは医療機関も行政もない方がいいので、こういった通知や、そもそも、こういったことはまたありますし、学会とかで休診したりするときも全部一々変更しなきゃいけなかったら大変ですから、その辺はしっかりと通知をいただくことと、これを機会に、この法令上の取扱いも少しフレキシブルに、今、歯科医師なんかも、日曜日にやっているところはいっぱいあるんですね、利便性のために。

 医療機関もだんだんそうなっていったり、フレキシブルに休診日に対応したり、そういうこともふえてくるので、運用や法律自体を変えなければいけないのであれば若干どこかのタイミングで変えるとか、そういった、これから時代のニーズに合わせてフレキシブルに変えていくといったおつもりは、大臣、ないですか。

根本国務大臣 法令上の今の規定がありますけれども、それは法令上の規定の運用の範囲内で柔軟に、フレキシブルにやるということは可能だと思います。

吉田委員 ぜひ柔軟に、あくまで国民のために、大臣、やっていただければと思います。

 それでは、ちょっと通告の順番とは違いますが、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関してお伺いしたいと思います。

 私は、今回、この内容を当然評価するところであります。我が国の将来的な医療費、介護費のことを考えても、今までの例えばデイサービスの中身だとかそういったところは、考えるべきところは考えなければいけない、それは政治家として当然思うところであります。

 実際、今、国の方は、軽度の介護サービスに関しては予算を縮小している、もちろん、重度なものに関してはそう大きく変化がない、そのように承知しております。その一方で、介護予防の事業には、今後しっかりと予算をつけてやっていく必要があるのではないかと思います。

 そこで、大臣、確認なんですが、今回の改正案によって、政府はより一層、以前の医師法、医療法の大きな改正のときのように、軽度の介護サービス等に関しては縮小して介護予防に力を入れていく、そういった方向転換をするために大きくかじを切ったという判断をしてもよろしいのでしょうか。大臣の明確な答弁を求めます。

根本国務大臣 委員の御指摘のような、介護保険制度における給付や事業の枠組みに変更を加えるということを、今回審議いただく改正案は目指すものではありません。

吉田委員 そうすると、これはどういった意味があるんですかね。今言ったように、介護予防に重点を置くということじゃないんですか、そう書いてありますけれども。大臣、ちょっと今の答弁では全然御理解いただいていないように感じますが。

根本国務大臣 先生の最初の前段の指摘に対しては、介護保険制度における給付や事業の枠組みに変更を加えることを目指すものではないと今答弁をさせていただきました。

 そして、今回の改正案は、介護予防と御高齢者の保健事業、これは今まで介護保険あるいは医療保険とそれぞれやっていましたけれども、そこを、介護予防と高齢者の保健事業を一体的に進めよう、こういうことが目的で、高齢者の心身の多様な課題に対応した効果的できめ細やかな支援を目指す、これが今回の目的、狙いであります。

吉田委員 質問は後段の方が重要でございますので。

 今の答弁はちょっとわかりにくいので、具体的に何をやるんですかね。今の御答弁では、非常にぼんやりとした御答弁で具体性がない。それに予算をつけるとかそういうことではとても容認できづらいので、具体的に何をやるのか、ちょっと例示をしていただけませんか。

根本国務大臣 介護保険を活用して社会参加の場を充実するということで、今、通いの場を設定していろいろな皆さんに来ていただいておりますが、こういう場を活用して、医療保険制度の枠組みによる、医療専門職による健康相談、健康教室などを実施する、そして、医療、介護、健診情報などを一体的に分析して地域の健康課題などを把握する、あるいは、医療・介護サービスに全く接続していない閉じこもりのおそれのある方を個別訪問して必要なサービスに接続するなどの取組を進めることとしております。

 要は、介護予防と高齢者の保健事業を一体的にやる、これが今回の目的であります。

吉田委員 大臣、では、そこをしっかりやっていくということで、繰り返しになって、さっき御答弁いただきましたが、現行の介護サービス等の予算を縮小していくとかそういった意図は今後当面ないというふうに理解してよろしいでしょうか。

根本国務大臣 そういう枠組みを変更することを目指すものではなくて、介護事業と保健事業、これを一体的にやることによって、一人一人の高齢者の方の健康をしっかりと守る、あるいは元気になっていただく力を引き出す。こういう保健事業と介護予防、これを一体的にやるということが目的ですから、今の御指摘のようなことは考えておりません。

吉田委員 では、縮小するようなことはない、皆さん安心して今までどおり、受ける側、提供する側もやっていただければいいという理解で、大臣、よろしいですね。

 それで、先ほど安藤委員からもお話がありましたNDBと介護DBの連結解析についてお伺いしたいと思います。

 今改正案では、医療、介護で別々に存在するそれぞれのデータベースを活用するということですが、例えば、医療と介護のはざまでは、ケアマネジャーさんの質の差が激しいという指摘を以前お話をさせていただいたことがあります。人格、能力、利用者及び家族の立場に立った対応がちゃんとできているかということに非常に大きな差があります。

 もちろん、多くのケアマネジャーはすごく頑張っていただいて、私も敬意を表するところでありますが、やはり本当にこれはかなり質の差が大きい。以前指摘をさせていただきましたが、時にはケアマネジャーさんが関連事業の方に金品の要求をするという不道徳な事案も実際に散見をされている。これは加藤前大臣と議論をしっかりさせていただいたんです。

 このような医療と介護をつなぐ、言いかえれば紡ぐ分野の質の向上について、以前、当委員会の質疑でも問題を指摘して、加藤大臣からは、質の向上を図るといった答弁をいただいたと思いますが、今回の医療と介護のデータベースをこういったことに利用すると、匿名化するということなんですが、質の向上を図る一助になると思うんです。

 ただ、このデータベースを、現場の医療、介護、そして時として利用者にフィードバックしてトランスレーショナルに利用することが可能なのかということ、ある意味、それが可能であれば、質の向上という意味では千載一遇のチャンスだと思いますが、単なる匿名化された解析だけであれば、そういった国民に実益のあるフィードバックは不可能になってしまうんじゃないかなと思うわけです。単なる役所の自己満足になってしまう可能性すらあると思うんですが、大臣、それはいかがですかね。

根本国務大臣 これをきちんとやっていけば、委員がおっしゃられるように質の向上にも資することになる、これを私も期待をしております。

 具体的にどういうことをこれからやろうとしているのかということでありますが、NDB、介護DBの連結利用によって、医療保険、介護保険のサービスの利用状況などのトータルな分析が可能になります。

 例えば、在宅復帰を可能とする要因に関しては、入院中の治療やリハビリ等の内容、そして退院時の多職種カンファレンスがあったかどうか、その有無、退院後の医療・介護サービスの内容、施設サービスや通所介護の利用などということでありますが、こういうものを地域ごとに分析して、例えば、脳梗塞で入院してその後退院した患者がどのような医療・介護サービスなどを利用したか、そして、その利用したことが在宅での生活の維持につながっているのかなどが明らかになることで効果的な医療・介護連携につながることを期待しています。

 委員まさに御指摘のように、じゃ、これをどう活用していくか。単なる学術研究的なものではありませんから、これを具体的に活用して実践していく、これが必要だと思います。

 この分析結果については、研修などケアマネジャーなどの質の向上対策にも活用していきたい、こう思います。これによって、提供される介護サービスの質の向上が期待されますので、これは国民の皆さんの生活にとってもプラスになるように、効果的に運用していきたいと思います。

吉田委員 しっかり御答弁いただきました。ぜひこれは具体的にしっかりと活用していただきたいんですね。

 再三になりますが、ケアマネジャーさんはよく頑張っていらっしゃると思います。ただ、本当にこれは、御本人が思っているより、今後、医療、介護を紡ぐという意味では重要なポジションなんですね。

 特に、かかりつけ医、在宅医療を政府は推進していますよね。もうこれはずっと長い間推進しているわけですが、在宅医との連携が非常に希薄な部分があるんです。いわゆるかかりつけ医と患者さん、患者さんの家族、それをやはりつないでいくのはケアマネジャーさんですが、ここが非常に不足しているというのを私も感じるところなんです。

 在宅、かかりつけ医と利用者、その家族を紡ぐという意味で、今回の解析は今大臣がお答えいただいたように役に立つ、フィードバックがされて質の向上が図られると考えていいですか。ちょっと具体的にその辺をお答えいただけますか。

根本国務大臣 私も、委員がおっしゃられるように、ケアマネの役割は非常に大事だと思います。まさに家族がいて、それで在宅医もいて、そこをケアマネが、専門家ですから、きちんとつないでいく、これが必要で、具体例では、先ほど申し上げましたが、例えば、脳梗塞で入院して、患者が病院で治療をしていただいて、そこでどういう医療や介護サービスを利用したか、こういうものが明らかになって、そしてその結果、在宅での生活の維持にどのようにつながっているのか、こういうことが明らかになりますので、こういう明らかになったことをベースに、これをケアマネの研修などに活用していくことによって、ケアマネの皆さんの質の向上、あるいは、いろいろ学んでいただくわけですから、これは確実に効果があるだろう、こう私は期待しています。

吉田委員 確実に効果があるだろうと大臣におっしゃっていただいたので、確実に効果を出すようにしっかりこれを運用していただくことを希望して、期待をしますので、大臣、よろしくお願いいたします。

 それでは、時間がなくなってまいりました。医療情報化支援基金について、大臣にお伺いします。

 平成三十一年度予算として、医療情報化支援基金三百億円が計上されています。これは、オンライン資格確認の導入に向けた医療機関、薬局のシステム整備の支援を行うこととされています。しかし、それと同時に、電子カルテの標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等の導入の支援も含まれていますね、大臣。

 三百億円の基金を設置するというんですが、まず、この三百億円の根拠を一つ教えていただきたいこと。すなわち、基金がどのような事業に対してどの程度の金額の支援を見込んでいるのか。また、この基金でどの程度まで普及を進めるつもりなのかということ。また、基金ですから、将来、当然枯渇しますね。一体何年で基金がなくなることを見込んでいるのかということを、大臣、お答えいただけますか。

根本国務大臣 新設する医療情報化支援基金、これは大きく二つの狙いがあります。一つは、オンライン資格確認の導入のための医療機関及び薬局でのシステム整備の支援と、電子カルテの標準化に向けた医療機関の電子カルテシステムなどの導入の支援、これが大きな二つの柱であります。

 そして、三百億円についてはそれぞれに充てるんですが、例えばオンライン資格確認のためのシステム整備の積算、これは百五十億円を予定しておりますが、これは、現在レセプトオンライン請求を実施している施設の三分の一程度に所要額の半分を補助することを想定しております。

 そして、この具体的な内容、交付の条件は、今後、医療機関や薬局の資格確認のシステムの状況や改修内容、具体的な運用なども踏まえて精査していきたいと思いますが、できる限り多くの医療機関及び薬局で導入が進むように運用してまいりたいと思います。

 そして、委員の最後の御質問ですが、これは今、三百億円を基金として用意していますから、どんどん使ってまいります。仮にこの基金が、複数年で使ってまいりますけれども、これについて将来どうなるのかということについては、仮定のお話になりますので、これはなかなか困難であることは御理解いただきたいと思います。

 要は、できる限り多くの医療機関及び薬局で導入が進むように、効率的かつ効果的な予算の活用に努めていきたいと思います。

吉田委員 何年ぐらいでなくなると想定しているのかということはお答えしにくいかもしれないんですが、逆に言うと、これは何件の医療機関の導入に対して三百億円という数字が算定されているのか。つまり、大体それで、何年でなくなったり、どの先で基金が、必要であれば積み増しをしなければいけないかということがわかってくる。

 もう時間がないので、これは最後の質問にさせていただきますが、何件、どれくらいの数の規模の医療機関に対しての基金としてこの算定がされているのかということを、大臣、これはちょっと大事な話なので、お答えいただけませんか。

根本国務大臣 オンライン資格確認のためのシステム整備、これは百五十億円を予定しておりますが、これの考え方は、現在レセプトオンライン請求を実施している施設、今、医療機関、薬局の合計二十一万施設のうちの六割がレセプトオンライン請求を実施している施設になりますが、これの三分の一程度、要は四万施設に所要額の半額を補助する、実は、百五十億円を積算するときに、そういう想定、前提で百五十億円を用意しております。

吉田委員 大臣、もう片方の方は。それは百五十億ですよね。半分の百五十億に関してはどうなんでしょう。そちらも聞きたいんですが。これで終わりますけれども。

根本国務大臣 もう一方の百五十億円は、電子カルテの標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等の導入の支援ということで、これは国の指定する標準規格を用いて相互に連携可能な、要は互換性のある電子カルテシステムを導入する医療機関に対して、その初期費用を補助するというものであります。

吉田委員 お答えになっていないですけれども、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 前回に引き続き、健康保険法の改正案ということなんですが、その前に一点、ちょっと新聞報道等、記者発表があった介護保険の支払基金の話を確認させていただきたいと思います。

 介護保険の第二号被保険者の介護保険料の算定誤りがあった、健保組合と共済組合で誤りがあって徴収額が二百億不足する事態が起こっているということでありまして、これはきのうですか、厚生労働委員会の理事懇談会で資料を提出いただいております。

 まず、やはり問題となるのが、この参考値を、どうして計算の算定誤りをしたのかというところ。そして、支払基金から一報が厚生労働省にあったのが一月二十三日。ただ、その一月二十三日に厚労省の担当者がそれを知ったけれども、結局、確定値が出るまではいいんだということで、二カ月以上ほってしまったというようなことで、ここには非常に私は問題があるんじゃないかなというふうに思っています。

 ここについて、まず、この事態をどのように受けとめているのか。そして、私はちょっと、やはり厚労省の中で二カ月放置したというのは、これは遅いんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 まず、全体の制度から申し上げたいと思います。

 健保組合などは、毎年度、支払基金が設定する係数に基づいて、介護納付金額とそれに応じた介護保険料率を予算で決定しております。そして、この係数については、医療保険者の予算編成に間に合わせるために、年度末に告示で示す係数の確定値とは別に、年末に係数の参考値を提示しております。こうした流れの中で、昨年末に支払基金が設定した係数の参考値に誤りがあって、健保組合が組んだ予算の中で想定している水準より介護納付金が上回ることになった、こういうことであります。

 コンパクトに言いますと、こういう事態を招いたことは私は極めて遺憾であります。

 今回の事案の過程で特に節目となるのが、昨年末における支払基金の誤った参考値の設定と、支払基金から厚生労働省への誤りの一報があった一月二十三日であります。それぞれについて問題点があると考えております。

 一つは、昨年末の参考値に関しては、支払基金においてはダブルチェック体制をしき、それを実施していたが、十分に機能せずに誤りを見つけることができなかった。そして、参考値の算出については、二〇一七年度の介護納付金の確定に用いる被保険者について、誤って二〇一九年度の被保険者数を用いているということに気がついたのが一月二十二日であった。

 そして、一月二十三日の支払基金の一報に関しては、しかるべきレベル及び方法で報告されずに、担当者の電話により行われた。また、それを受けた厚生労働省の担当者は、その情報を課内や局内で共有せずに、上司もこうした実務を担当者任せにしていた。その結果、厚生労働省として、実は、その時点で参考値を修正して周知を図るべきだったと私は思いますが、医療保険者に示す段取りをとることができなかった。実は、こういう経緯であります。

 ですから、私は、このような事態を招いたことは極めて遺憾で、これからも、私も厳正に注意をしましたけれども、こういう事務手続的なものをきちんきちんとやれるように対応していきたいと思います。

尾辻委員 二カ月間何の対応もしなかったということは、私は非常に問題だと思っているんですね。

 二カ月なぜほっておいたのかということについて、明確にお答えをいただきたいと思います。

大島政府参考人 一月二十三日に、支払基金から、係長から厚生労働省の係長に誤りがあるという連絡があったわけでございますが、それにつきまして、しかるべきレベルあるいは方法で報告されずに、担当者からの電話により行われました。また、それを受けた厚労省の担当係長は、その情報を課内あるいは局内で共有せずに、その結果、参考値を修正し直すという段取りをとることができなかったわけですが、その背景には、支払基金、厚労省の双方の担当者とも、係数が、今回約二千円上がるということになったわけなんですが、その二千円の変更の保険料率等への影響度がどうなるかということを十分認識せず、そのために上司や幹部に情報が上がらなかったという経緯でございます。

尾辻委員 認識ができなかったということは私は非常に問題だと思いますし、ここ最近、毎月勤労統計でもそうですけれども、担当者レベルは知っているけれども、それを上司に相談しないという事例が立て続けに起こっている。これは同じ構図じゃないかなというふうに私は思うんですね。

 なので、間違いが見つかった時点でしっかり上司とか上の人たちと相談をして改善をしないと、自分がいわば言うことによって今まで予定調和でやっていたものが壊れることに対するおそれの方が多くなっているんじゃないかというような気がしてなりません。

 ちなみに、大臣は、このことはいつお知りになったんでしょうか。

根本国務大臣 委員がおっしゃるとおりだと私は思いますよ、担当者の対応はですね。

 そして、三月中旬、私がこの報告を、こういう計算ミスが生じておって、支障がないように対応していくという報告を受けたのは、三月十九日であります。

尾辻委員 何か、三月十九日、結局やはり二カ月間、大臣も知らないままにこれが放置されて二百億円徴収額が不足するという事態を招いたというのは、これは遅過ぎると思います。ちょっときょうはあれですので、このことを指摘しておきたいと思います。

 今後どうされるのかということについてもお聞かせください。

大島政府参考人 今回不足する二百億でございますが、まず市町村にとりましては、二・九兆円の交付金を、介護納付金をもとに交付を受けるわけでございますが、支払基金から二・九兆円の交付が参ります。二百億、仮に支払基金の収入が、納付金が減ったとしましても、支払基金の中には二〇一八年度決算のために積み立てている剰余金約一千七百億円の見込みがございまして、その活用ができますことから、市町村の交付金は確実に交付されます。このため、介護保険財政への影響はございません。

 一方、医療保険者、健保組合等につきましては、今大体、本人、事業主それぞれ、月平均三千二十七円の保険料相当額でこの納付金が賄われていますが、今回の二百億円は、平均すれば約五十五円分の月額の保険料の不足になると考えられます。

 これは、健保組合によりまして、その分は通常の予算の中で対応できるところもございますし、そうでないところもございます。そうでないところは、そのための方策としまして、一つは予備費や準備金を活用していただけるということ、二つ目に、介護保険法に基づく納付猶予という規定がございまして、それを活用することができるということにいたします。この組合せも可能でございます。

 したがいまして、いずれにしましても、今年度の保険料水準に影響を及ぼさずに済むことになっておりまして、よく健保組合等と相談しながら、円滑に今年度の予算を執行していけるように、十分な丁寧な相談に努めてまいりたいと考えております。

尾辻委員 いろいろ剰余金とか予備費、準備金を活用するということなんですけれども、ただ、例えば準備金というのは、もともと今後への備えが目的で、法定額が決まっているものですよね。例えば、これを取り崩したら法定額を下回ったりとかそういうケースも想定されると思うんですけれども、その辺はどうされるんでしょう。

大島政府参考人 御指摘のように、介護保険は一カ月分の法定の準備金を持つようになっています。それを超える分は取崩しが可能ですので、そこは問題ございません。

 そこにつきましては、一つは政令を変えてその基準を緩めるかどうかという検討はございますが、仮に現行のままとした場合には、先ほど申し上げました納付猶予の規定、介護保険法に基づいて納付を一年間猶予する規定がございまして、これを活用していただくということを中心に考えているところでございます。

尾辻委員 人間なので、ミスはどこかで起こるものだと思います。ただ、そのエラーが、このようにずっと対応がおくれてしまうということはやはり起こってはならないことだと思いますので、この辺、厚生労働省として、何か法令上違っているものに対して自分から言うことができないというようなことが立て続けに起こっているんだということをしっかり認識していただきたいと思います。

 では、健康保険法改正の方に行きますけれども、国民年金や被用者保険の被扶養認定に国内居住要件がつくことは、やはり今回の改正法で非常に私は問題だと思っています。

 やはりこれは内外無差別原則に反することだと思うんですけれども、まず、これはいつからこのように国内居住要件がつくということを適用するのか。そして、もう一つ確認しますけれども、ということは、今まで被用者保険で被扶養になっていた人が、この居住要件がつくことで外れる人がいるということでよろしいでしょうか。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 国内居住要件の見直しにつきましては、来年の四月一日に施行するということにしているところでございます。

 それから、まさにその要件が変わりますので、これによって被扶養者から外れる方が出るということになります。

 この国内居住要件は、ただ一方で、一部例外を設けるということにしておりますので、こうした扱いの詳細については、この法律の成立後に省令に規定した上でその解釈を通知するということにしたいというふうに考えているところでございますので、被扶養者から外れるということが想定される方がなるべく早期に状況を把握して見込みが立てられるように、省令改正や通知の発出に、法律を通していただきましたならば、できるだけ速やかに取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

尾辻委員 対象者が一体何人ぐらいになるのかということ、どのぐらいの人数がこれによって外れる見込みとなるのか、その辺の数値はお持ちなんでしょうか。これは大臣に聞くというふうに最初に通告させていただいているんですが。

樽見政府参考人 恐縮でございます。数字でございますので、私の方から。

 現行の健康保険制度では、国籍あるいは居住地を問わずに、適用事業所に雇われている方を被保険者とする、その方に扶養されている家族を被扶養者とするという仕組みでございます。ですので、健康保険の保険者、健保組合とか協会けんぽ、保険者の側では、居住地ということでの正確なデータを把握しておらないということになっております。

 そういう意味で、今回の改正によって被扶養者から除外されることになる人数ということについては、正確なデータは把握をしておりません。

尾辻委員 正確なデータがない、何人外れるかわからない、なのにこういうことをするというのはおかしくないですか。

 こうやって、なぜこういうことをするのかということなんですけれども、それも来年の四月一日からですから、今まで被扶養にできていた人がいきなり外れるわけですよね。そういう不利益があるのに、その人が何人ぐらいいるかわからないということでこういう法改正をするということに、まず私はすごく問題があると思います。

 せめて人数ぐらい把握して、これぐらいの人に影響があるんです、それでそこをやるというのならわかりますけれども、何人ぐらいいるかわからない、なのに要件をつけさせていただきますというのは、これはおかしいんじゃないですか。

 次は必ず大臣が答えてください、質問通告も大臣にしていますので。

 これが結局、じゃ、どういう結果を及ぼすのかということですけれども、繰り返しいろいろな方も質問されていますけれども、基本的に、例えば技能実習や特定技能の方は家族帯同が認められていませんよね。ということは、基本的に技能実習生や特定技能の方々は家族を被扶養にできないということに結果的になるということでいいですか。

根本国務大臣 今回の制度では、技能実習生や特定技能一号に帯同できずに現地に残した家族は、日本に生活の基礎があるとは認められないため、国内居住要件の例外として位置づけることは考えておりません。

尾辻委員 技能実習と特定技能の方々は家族帯同ができないですよね。なので、基本的に家族を被扶養にできない、家族が海外に居住していますからね、ということで、外れるということでいいですかと聞いているんです。

根本国務大臣 私、今答えましたが、そこは対象となりません。

尾辻委員 そういうことになると、同じ保険料を払っているのに、この方々は、特定技能や技能実習の家族の方は除外されるんですよ。これは内外無差別原則に反しませんか。そして、なぜ今これをやる必要があるんですか。

根本国務大臣 今回の国内居住要件の導入の考え方ですが、健康保険制度の基本的な考え方としては、国内居住者が国内の保険医療機関を受診した場合に保険給付を行うことが原則であります。一方で、海外駐在者や海外旅行者の増加など、社会環境の変化を受けて、これまでも海外療養費制度の導入など必要な対応を実施してまいりました。

 しかしながら、今回、更にグローバル化が進展する中で、例えば、日本に生活の基礎がなくて国内の医療機関を受診する蓋然性が低い方まで被扶養者として健康保険の対象になるといった、これまで想定していなかった事例が生じております。また、健康保険制度の運営においては保険者による適正な認定事務が重要ですが、諸外国における各種証明書類の発行状況、物価の違いに鑑みると、身分関係や生計維持関係について正確に認定することが実務上困難を伴っております。

 こういうことで、健康保険制度の基本的な考えに立ち返って、海外の医療機関を受診した場合の給付は例外であることを徹底する観点や、適正な認定事務を確保する観点から、諸外国との制度比較を行った上で、被扶養者について原則として国内居住要件を設けることとしたものであります。これが基本的な考え方であります。

尾辻委員 内外無差別原則にこれは反する行為だと思いますよ。なぜ今なのか。そして、これによって技能実習生、特定技能の方々の家族を排するということになる結果を見ると、これは無差別原則に私は反すると思います。

 ちょっと時間がないので飛ばしますけれども、国民年金のことについて、実は今回、まとめ法案で八本ありますから、同じように被扶養者は海外居住要件をつけるんですけれども、これはほとんど説明がありません。ここも実は大きな論点になると思うんですね。例えば、今まで海外に居住していて年金の被扶養になっていた人が突然外れてしまうわけですから、これも影響が大きいわけです。こういったことについて、まとめ法案である、束ね法案であるがゆえにほとんど議論されていないし、こちらにも説明がない、こういう状況は私は非常に問題だと思います。

 ちょっと時間がないので、外国の方の、例えば特定技能やこれから入ってくる方、技能実習生の方というのは、基本的に年金を払っています。これの払戻しが、この前も聞きましたけれども、三年なんですよね、脱退一時金というのは。これから技能実習生とか特定技能の方々というのは三年以上いるのに、この掛けた金額は戻ってこないんですよ。つまり、家族の被扶養というのはもう来年からだめだよと言っているのに、じゃ、こうやって掛けた年金は来年の四月から返ってくるのかといったら返ってこないので、これは余りにも不平等だと思います。なので、この対策もしっかりとるべきだということを指摘しておきます。

 同じく、関連してですけれども、外国人材の受入れ・共生の総合策の九十三のところ、社会保険の加入義務違反のことについてちょっと確認をしておきます。

 例えば、国民年金と国民健康保険に対して滞納した場合、これは在留資格を剥奪するんだということをここに書かれているわけですけれども、例えばその原因が雇用主の法令違反だったというときに、仕方がなく国民年金や国民健康保険に入っていた、それで滞納になった、こういう場合でも、こういう原因によっても在留資格を今度認めないということになるのかということについてお聞きしたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、特定技能外国人が社会保険制度上の義務を履行せず、国民健康保険料を滞納していることが判明したときは、直ちに在留資格の変更や在留期間の更新を認めない処分を行うわけではなく、まずは地方出入国在留管理局において当該外国人に義務を履行するよう指導することになります。

 また、お尋ねのように、雇用主の法令違反等があったような場合でございますが、特定技能外国人が本人の責めによらない理由により国民健康保険料を滞納してしまった場合には、係る事情を勘案して適切に在留期間更新許可の許否判断を行うこととなります。

尾辻委員 こうやって、雇用主の方が加入義務違反のときはこういう原則ではないと思いますので、この辺はしっかりと運用していただきたいと思いますし、本来であれば、労働者本人がしっかり社会保険の加入を個人で申請できるようにするのが一番いいんじゃないかなというふうに思います。

 今回の扶養のことについて、被扶養の海外居住要件について聞かせていただきましたけれども、本来であれば、誰を扶養にするのかということについてはもう少し大きな社会保障の観点で考えなければいけなくて、ここで居住要件だけやって外すというような話ではないということは強く申し上げておきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 まず、私も介護保険の計算ミスの関係から確認をさせていただきたいと思います。

 資料もお配りさせていただきましたが、まず確認をしたいのが流れでございます。

 先ほど尾辻委員の質問でも確認できましたけれども、一月の二十三日が、まずは、数値を誤ったかもしれないということで厚労省の方に通知があったということですか。それで、三月五日に正しい数字の連絡があって、三月の六日に厚労省が基金の担当係長とその上司を呼んで聞き取りをした。三月の二十九日に事務連絡、きのう理事懇で提出をいただきました資料のように事務連絡を行ったということで、大臣が知ったのは三月の十九日だったということが先ほど確認できました。

 まず、きょう私の配らせていただいた資料の、ネットからとった大臣の会見の概要メモ。介護保険以外の記者さんの質問については、これは割愛をさせていただいております。

 大臣のコメントですが、最初は全く介護保険の関係は触れることなく会見が行われて、私からは以上ですということで会見が終わって、記者さんの質疑がある。その記者さんたちから介護保険料について質問という流れになっていますけれども、大臣は、改めて別に会見をしようかなと思ってこの場では言わないというお考えだったのでしょうか。どういうお考えだったんでしょうか。このことに関して大臣から会見がないということについて、どういうお考えだったのか、経緯を教えてください。

根本国務大臣 会見は、こちらからこういうことを報告するというのがまずあって、それは、その時点その時点で、例えば最近私が会見で申し上げたのは、農福連携ということをやります、こういう仕組みを立ち上げて、あるいは政策対応をやります、例えばそういうことは会見で申し上げましたが、会見の冒頭というのは、その時点で私から皆さんに報告すべきところを言うので、それが基本なんですよ。そして、後は、記者さんから閣議後の記者会見でいろいろな質問がされる、これが私の会見であります。

池田(真)委員 はい、わかりました。今の会見については農福連携の会見だったということですが、では、三月二十二日に事務連絡を行った、この件に関する会見はする予定があったんですか、しないということをお決めになっていたんですか。

大島政府参考人 大臣からは、昨日、記者会見の場で、この間の、我々に指示がありました事実関係の把握の取りまとめの御報告等がございました。

池田(真)委員 今大臣にお伺いしているんですけれども、事務連絡を三月二十二日にして、四月の五日に別の会見があって、既にこういう質問がある。

 きのう会見があったと今おっしゃいましたけれども、そうではなくて、その時点で、する必要はないという判断だったのですかというふうに大臣にお聞きしています。

根本国務大臣 今委員の御質問は、三月二十二日に……(池田(真)委員「二十九」と呼ぶ)二十九日に事務連絡を発したということ。私は、事務連絡を発出したこと、これは報告は受けていません。

 つまり、局長にきちんと答弁させますけれども、三月二十九日の事務連絡というのは、一連の、要は、確定値が決まったときにたしか告示で発表しますから、そのときに各関係者のところに確定値はこうですよということを通知した、その事務連絡だと思います。

 これは、通常、行政は行政でしっかりやっていますから、その行政の手続の中の対応だと思っております。その意味で、その通知を発したということは私は報告は受けておりません。これは、行政の責任と判断において、通常の行政もそうですけれども、私はその一環だと理解をしております。

池田(真)委員 それでは、大臣がこのことを知った三月の十九日以降、なぜ何も、会見でもプレスでも何でもいいんですが、公表しなかったのでしょうか。

根本国務大臣 私が報告を受けたのは、当時、口頭で報告を受けたわけですが、事務方から、介護納付金に関する計算ミスが生じているが、支障がないよう対応していくという報告を受けたので、そこはしっかり対応するようにということを申し上げたということであります。

池田(真)委員 では、質問の仕方を変えます。

 こういった事態、全部終わってからの前にですけれども、ミスがあったよということについては、大臣は報告を受けて、その後に、しっかりするように、やり直すようにという指示をした、そこまではいいんですけれども、その時点では特段公表する必要はないというお考えだったということでよろしいですよね。これは確認ですので。

根本国務大臣 あのときの報告は、支払基金に事務誤りがありました、要は計算ミスが生じている、それと、それに厚生労働省としても対応していることのみの報告を受けました。それをどのように公表するかは、これは私が明示的に指示するまでもなくて、本来、担当部局が支払基金と協議しながら判断すべきものと思っております。

 対応の問題点については、私は先ほど申し上げましたけれども、一月下旬の対応について、支払基金、厚生労働省、双方に問題があったと考えております。この時点で関係者に周知すべきだったと思います。

池田(真)委員 関係者とはどなたでしょうか。

根本国務大臣 参考値というのは、それぞれの健保組合が次年度の予算を組むに当たっての参考値ですから、それは、要はそれを利用する健保連であります。

池田(真)委員 そうしたら、大臣にお聞きしますけれども、では、四月の五日、会見をして、記者さんから質問があった。その後に、みずからその後プレスもなく、理事懇でこういう資料が出てきたという状況で、これは遅いのではないかなと思っています。

 なぜかというと、もう四月の五日、この記者さんのやりとりをした段階で、ネットニュースとかがばんばん流れているんですよ。私は地元におりましたけれども、既にそのとき地元で、かなり多くの方々から、国民の皆さんからこれに関する質問がありました。当然、厚労省なりから会館の方にですけれどもペーパーが配られているのではないかと思って私も確認の電話を入れたんですが、説明ができるようにと思ったんですけれども、それが何もないということだったので、要は、こういうところに危機意識をちゃんと持っていただく必要があると思います。

 こういう今私が申し上げましたことを受けて、大臣、どう思われますか。

根本国務大臣 私は、一般論として、厚生労働行政はきちんと組織のガバナンスあるいは危機管理対応をしっかりやるべきだと思います。

 その意味では、私は、質問がありましたが、今回の件に対しては、「支払基金における対応及び省内における対応を含め事実関係を十分に確認したいと思います。その上で、より適切な対応がとれていたのかどうか、検証して必要な対応を行いたい」四月五日の記者会見ではそういうふうに申し上げております。

池田(真)委員 もう繰り返しませんので。極めて対応が遅いと思います。わかったときにすぐに発信をしていただくこと、説明していただくことというのが、危機管理だけではなくて、国民の不安を払拭する一つの材料でもありますし、信頼を回復しないとまずいんじゃないかと思います。

 こちらの方の新聞記事でもあるように、厚労省、またもやミスみたいな形で、立て続けに国民は不安に思っているわけですから、こちらの方は、何か事が起きたらすぐに、わかっている部分、これから確認する部分、そういう方向性を示すだけでも一歩一歩の信頼回復につながっていくものだというふうに思います。

 特に私の方にあったのは、この件が実際に、私たち、事務の人たちはわかりますよ、これは利用者さんには大きな影響があるかないかとかというのを。事務手続の人たちではないわけですから、国民の皆さんは、こういうニュースをぱっと見たときに、自分たちの負担に影響があるのか、保険料の変更があるのか、又はサービスに影響があるのかということを懸念されるわけです。実際には事務の関係では全く今の段階ではないわけですけれども、そういう部分をすぐにあわせて発信することが重要だと捉えています。

 ですから、先ほど私がお聞きした、関係機関というのはどこですか、関係者はどこですかというのはそれも含めてなんですが、昨日お伺いしたところ、この事務連絡は、本当の事務手続に直接関係するところだけだったというふうに伺っております。

 そういう意味では、住民の窓口であります市町村ですとか、あるいは包括ケアセンターですとか、さまざまな介護保険に関係する方々、業務に直接ではなくて、介護保険に利用者さんと一緒に携わる方々に広くこの件は周知する必要があると思っているんですが、大臣、その辺の周知についてはいかがお考えでしょうか。

根本国務大臣 まず、先ほど私が申し上げましたが、対応の問題点については、先ほど述べたとおり、一月下旬の対応について、支払基金、厚生労働省、双方に問題があったと考えますから、この時点で実は支払基金と健保組合等の関係者にまず周知すべきだった、予算を組むわけですから。

 さらに、その三月六日以降、具体的な対応策を検討したわけですが、要は、三月に対応策を含めて通知した時点、ここで私は公表すべきだったと思います。

 そして、今委員のお話を聞いて私も思いましたが、制度を運営する側、運用する側は、やはり、この制度をいかに運用するか、今回のようなミスが生じたときに制度上どう対応するか、リカバリーするか、そういうことを考えるわけです。

 ただ、いろいろな報道がされますから、そうすると、委員がおっしゃられたように、実際影響がないところまで介護保険料という話が出ると、そこに携わっている皆さんあるいは国民の皆さんが、おっ、大丈夫か、そういう不安や懸念を持たれるだろう、私も政治家ですから、それは思います。

 その意味では、今回の件についても、きちんと今、事実関係を含めて、対応策も含めて明らかにしておりますが、こういう実際のところに不安はありませんとか、あるいはそういう問題は生じません、実際の現場の市町村レベルでそういうことはきちんと丁寧に周知をしていかなければいけないと思います。

池田(真)委員 プレスでも結構ですし、ホームページへの張りつけでもいいので、多くの方がちゃんとそのことを把握、見れるように、ぜひ改善をしていただきたいと思います。

 また、あと少しですが、関連で、納付猶予について、ちょっと実務的なことですけれども、これは大臣の承認が必要ということなので、大臣に承認していただくのは当然だと思いますけれども、ただ、ここで、納付猶予の場合なんですが、毎月毎月行うのか、それともある程度まとめてなのかというのは、これはちょっと、事務もかなり、今回のミスによって、金額には影響はないとかいろいろなことをおっしゃっていますけれども、実際にやる現場は、事務負担というのは確実にふえると思います。その辺のお考えをお聞かせください。

大島政府参考人 おっしゃいましたように、これは事務負担、なるべく円滑にして、お手間をかけないようにしたいと思っています。

 具体的な手続は、保険者が、まず、理事会、組合会の議決を経まして対象期間を決めていただきます、何期分とか、どれだけとか。それを支払基金に対しまして納付猶予として申請をいたしまして、支払基金はそれを厚労省に送って、厚労省が申請を承認する、こういう手続になりますので、この手続を周知するとともに、なるべく相談に柔軟に応じてまいりますので、その点も周知してまいりたいと思います。

池田(真)委員 よろしくお願いします。

 あと、もう一点。今回の件に関して、実際には予備費等で充当していくということで、大きな影響がないだろう、何とか済むだろうというお考えだということは確認できましたが、その影響はないというふうに判断していること自体が私は問題じゃないかなと思います。これをまた繰り返すんじゃないかと思うんですね。

 結局は、今回、何か大きな変化があった、システムが何か変わった、何か制度が変わったというわけではない、通常の、平常の段階でミスが起きているわけですね。これはそもそもダブルチェックが、先ほどの答弁では、十分に機能していなかったという答弁がありましたけれども、少しも機能していなかったというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

大島政府参考人 確かに、支払基金ではダブルチェックの機能を既に持っておりまして、その上で起こったことでございます。支払基金も、このダブルチェックをいかに実効性を持たせるかということで今、見直しの検討に入っておりまして、作業マニュアルを再整備するとか、ダブルチェックをする範囲を詳細に設定し、より起きにくくするようなことをやるとか、あるいは、事故や想定外の事態が起こった場合には情報を報告し、一元的に集約する仕組みをつくっていくという検討をしていると聞いております。

 それから、厚労省におきましても、情報が上がらなかったわけですので、業務のラインにおいて、こういう多額な金額を扱っているところにおきましては日常的な情報共有を徹底するということ、それから、制度運営に影響を与える可能性があること、影響の程度がよくわからないこと、これは自分で勝手に判断せずに、速やかに幹部に報告する習慣を徹底していくこととしてまいりたいと考えています。

池田(真)委員 ぜひよろしくお願いします。

 実務レベルの方々は当然、変えていこうというふうに思われるとは思いますが、大臣の方も、報告が上がった後の対処についても、もう一回、今回の件は見直して、次に何かほかの事件が起きたときには、どういうふうな段階でトラブルあるいは対処していったらいいのかということをぜひ振り返っていただいて、厚労省の行政に対して信頼が持てるようにしていただきたいと思いますので、ここはぜひお願いしたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってしまいました。

 そして、きょう資料に、海外に住まわれる御家族についての扶養認定を受ける手続が必要ですというペーパーをつけさせていただきましたが、これは、今の時点で海外にいらっしゃる扶養されている方々について今配られているというか、必要な説明書になっています。

 これなんですけれども、今回は見直しをするというのが、どこまでの範囲の見直しをしようと思っているのかなというところで確認をしていきたいのですが、そもそも、外国人の問題といいますか、健康保険に関しては、一九八一年十月に難民条約に批准をしたということに基づいて、一九八二年の一月からこの国籍要件といったものが撤廃された。以降、平等に、社会保険も原則として強制的な適用になっているということで、ここは変わりはないわけだと思うんですね。

 こういう中で、じゃ、実際はどうなっているか。

 今、昨年改正されました新たな入管法で、そちらの方の見込みの数値とか議論が多くあったんですが、ちょっと一歩振り返りまして、今までの技能実習生にもいろいろ問題がありましたが、そもそも、日系の外国人の労働者については、平成二十二年は、社会保険加入が四五%で国保は一九%で、いずれにも入っていない方々が一一・九%です。とある県において、日系の外国人の方々の調査に関しては、平成二十三年ですが、社保が四〇%で国保が三五%、いずれにも入っていない方が一四・九%、こういう未加入の方々もいらっしゃるわけですね。

 要するに、今、外国人の方は二百六十万人以上にふえているわけで、どんどんふえていく中で、そもそも、外国人も同様に健康保険の問題、これは日本人も同様だと思いますから、健康保険の問題というのは、将来のビジョンをちゃんと描いていかないといけない。なのに、今回、外国人だけ特化して見直しをするような調査が行われたということは、非常に人権差別ではないかなというふうに思われます。

 ここでお伺いしたいのですが、滞納される方については国へ帰すみたいな、要は在留資格を見直そうというようなことまで今回盛り込まれてしまったんですが、日本人のことでお伺いしますけれども、日本人も、滞納の方は二百八十九万世帯いらっしゃるわけですね。そういう方々について、どういう対処をお考えなんですか。

樽見政府参考人 健康保険制度は助け合いの仕組みでございますので、保険料を納めていただけないということになりますると、保険料をしっかり納めていただくために調査をしたり、あるいは強制徴収、差押えといったようなところに最終的には行くというような形になりますけれども、いろいろな手段を使って保険料を納めていただくための努力を保険者において重ねることになるということでございます。

池田(真)委員 日本人も一緒になって、同様にいろいろな対処をしていただかなければいけませんし、事業主が健康保険の方に加入させていないというのはきちっと取り締まらなければいけない。

 本人たちは、外国人の方々は、高くて払えないし、遡及されることによって更に払えなくて未加入の方がふえている。しかも、若い年齢層がふえているんですね、二十代、三十代。ということは、この方々は将来、無年金になる可能性が高いわけです。

 これは、外国人だけではなく、日本人もそうですよね。引きこもり世帯が、今、引きこもりも六十一万人という方がおりますし、無貯蓄世帯は単身で四六・四%、これが今、日本人の状況ですから、もう一度全体的な仕組みを見直すことと同時に、今回の海外の扶養家族の認定については、今いるエリート層の外国人の扶養は認め、そうではない方々だけは排除するというようなことだけは絶対に行わないようにしていただきたい。日本人と外国人の差、そして外国人同士の差別、これは絶対にしていただかないようにお願いを申し上げます。お答えいただけますか。お願いします。

樽見政府参考人 資料につけていただきました海外に居住する被扶養者の認定は、保険者によって認定方法が違っているというような指摘があったものですから、昨年の三月に、海外に居住する被扶養者の認定方法を公的書類等によるということで統一をしたわけでございます。

 これは、海外に居住する被扶養者の認定全てにおいて適用される認定方法でございますので、国籍による差別につながるというようなことではございません。このことを申し上げたいと思います。

 それから、滞納というところに関して、無年金という話がありましたけれども、例えば所得が低いような方については、国民年金では免除というような仕組みもございます。そういったようなことも含めて、丁寧に、実情に合わせた形で保険料をできるだけ払っていただく、社会保険、公的保険が切れないようにしていくということについては努力をしていくということだというふうに考えております。

池田(真)委員 外国人も、ぜひ、いずれ帰国する人ではなく、実際住まわれている生活者として、日本人同様、きちんと対応していただくことをお願い申し上げまして、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 このたびの医療保険制度にかかわる審議は、私は、そもそも時代が、大きく令和という時代を迎えようとしていて、医療並びに介護の持続可能性、保険制度の持続可能性もそうですが、必要な人に必要な医療が、あるいは介護が行き渡るかどうかということで、冒頭はちょっと骨太な議論をお願いいたしたいと思い、きょう、厚生労働省の医政局の統括調査官の江崎さんにも御出席をお願いいたしました。お時間を都合していただいて、ありがとうございます。

 さて、質問に入らせていただきます。

 未来投資会議が、これは安倍総理の肝いりですが、三月二十日に開催をされて、「全世代型社会保障における疾病・介護の予防・健康インセンティブ」ということをテーマに議論が行われました。簡単に言うと、健康寿命を延ばして、昔から言うぴんぴんころりですね、それでその方の幸せと、医療費をあわせて抑制したいということも背景におありなのかもしれませんが、私は、ここに二つの大きな問題があると思います。

 一つは、もう三十年も昔からアメリカのラッセルが指摘したように、予防医療にお金をつぎ込むことが医療費の抑制、トータルに見てどうなんだろうか、これはずっと議論のあるところでございます。

 もう一点は、予防、健康、ここを強調することによって御病気や障害のある方を逆に排除しかねない。スウェーデンなどでもかつて、きょう午後、問題になりますかもしれません、優生手術などは、そうした健康ということを前面に打ち立てた中で、不良な子孫を残さないという形で取り組まれてきた政策であります。

 二つの面においてきっちり総括をしないと、私は、これからの時代、持続可能性あるいは人々の幸せということで問題が起こると思います。

 まず、昨年の十月二十五日、私は、江崎さんや、この前御紹介した遠藤先生が御出席になるシンポジウムに出席をいたしまして、そのときの江崎さんの御発言がお手元のコピーでございます。

 これは、社会保険旬報という雑誌に、このシンポジウムの後、載せられたもので、当日の御発言、そのとおりだと思いますが、ここには、いわゆる医療費が人生の中で、六十五歳以降急速に増加し、八十歳以降は入院に係る費用の割合が高くなるとして、下のようなチャート図が示されております。そして、これの御説明、「現状1人当たりの年間医療費をみると、人生の終盤でその大半が使われていることが分かる(図13)。医療現場の実感としても人生の最終盤になってあらゆる医療資源が投入されるが、本当に患者のためになっているのか疑問視する声も多い。」というふうに江崎さんは発言しておられますが、私たち大半の医療者はある意味こういう疑問視はしておりませんで、その方の一番お幸せを願って命を支え、またお見送りをするということをやっております。

 江崎さんには次のページをあけていただきまして、これは医療費の三要素でございます。一人の方がどのくらい受診するか、一件当たりの日数がどのくらいか、これは入院ですから、入院の日数がどのくらいか、そして一日当たりの医療費がどれくらいかを三要素に分解したものがございます。

 これを見ると、人生八十歳以上の方に多額な入院費が毎日使われているということではございませんで、ごらんいただきましたらわかりますが、六十五歳から七十五歳くらいまでのところは、やはり、ある意味高度先進医療も含めて、がんの治療も含めていたしますので、一日入院費は高くなってまいります。

 御高齢者は医療費が高い高いと言われますのは、その頻度ですね。人間も古くなってまいりますとというか年を重ねますと、あちこちいろいろな障害というか御病気を抱えます。でも、それはきちんとケアされるべき生存権のお話であって、江崎さんがこの一枚目の図で示され、なおかつ御説明されたことは、私はちょっとミスリードになると思うんです。

 人生最終盤にたくさんの医療資源が投入されて、それが患者にも医療者にも不幸になっているというような言い方は、この二枚目を正しく評価していただければちょっと違う表現になるのではないかと思いますが、いかがでしょう。

江崎政府参考人 お答えを申し上げます。

 議員御指摘のとおり、必要な人に必要な医療が提供されるのは最も大事なことだと思っております。

 当日の私の発言でございますけれども、委員がお示しいただきました資料の前段のところに書いてありますように、「大切なのは社会保障費の多寡ではない。」と。そして、医療や介護は患者や高齢者を幸せにするためのものであり、それによって患者や高齢者のQOLが向上するのであれば、必要な医療は迷わず行うべきだと申し上げた上で、現状では、八十代、九十代の高齢者の方に対しても、病院に搬送されれば、若い方と同じように、内科でだめなら外科手術と、あらゆる手を尽くして延命治療が行われております。そして、最後は、高齢の方でも蘇生術まで施されておりますけれども、実際にこれが本当に患者のQOL、まさに患者にとって、幸せにするということにつながっているんだろうかという趣旨で申し上げたものでございます。

 そして、人生百年時代を迎えまして、人生の最終盤に高齢者に対しましてどのような医療サービスを提供するかは、今後の医療の重要なテーマでございます。したがいまして、同じ費用をかけるなら、高齢者の方々の幸せ、QOLの向上に力を注ぐべきではないかとの趣旨で申し上げたものでございます。

 以上です。

阿部委員 私は、今の御答弁はやはりちょっと認識が違うと思うんですね。御高齢期で御入院されて、搬送されて、あらゆることをやっているかというと、決してそうではないからこそ、医療費の一日の額が低くなってくるわけです。

 これは、最近、医療でもビッグデータを活用してさまざまに分析をしておりますので、江崎さんなら御存じだと思いますが、康永先生の分析でも、八十歳未満と八十歳以上では、いずれも八十歳未満の方が、入院について、一回一回、使われる費用が多いわけです。これはビッグデータですから、日本じゅうのDPCの病院を全部合わせてやった結果でありますので、ぜひ今のお立場で私は認識を改めていただきたいんです。

 この前、根本大臣にもお示しいたしましたが、例えば嚥下性肺炎、これについても、御高齢の方で、そうそう医療費を高く、何もかもつぎ込んでやっているわけではありません。もちろん必要なことはやってございますし、八割の方が退院していかれるということを御紹介しました。

 私は、何といっても、今の江崎さんの発言はミスリードだと思います。よく医療現場と対話していただいて、江崎さんはばりばりの官僚でいらっしゃいます。御出身の経済産業省から、今度、厚生労働省で医療政策を担うために来ていらしていて、その御発言は私は納得できません。

 ただ、やはりこれは対話が必要と思います。医療現場で今どんな努力をしておって、しかし、それは決して患者さんにやみくもにやれる限りをやっているというわけではない。その方にとってよいことは何かと絶えず考えながらやっていて、その結果、データで示されるものが、八十歳以上と以下では、八十歳以上の方が金額が低いというエビデンスが出ておりますので、今の私の御紹介は康永教授のデータですけれども、経産省は本当は知っていらっしゃると思いますけれども、ぜひ御検討をよろしくお願いしたいと思います。

 そして、今度、医療費お化けという問題を少し取り上げさせていただきますが、その前に、お示しした二枚目のデータからわかるように、六十五歳から七十五、八十くらいまでは、いろいろな治療によって、その方が御病気であってもむしろ元気に暮らせる時代が来ているということだと思います。

 昔、一病息災といいましたが、最近では多病息災と申します。いろいろ御病気があっても、例えば、がんも治られますし、心臓の心筋梗塞でも早期介入できちんとその後もお元気ですし、今の時代の医療モデルは多病息災、そして人生モデルも多病息災なんだ、これはぜひ根本大臣に御理解をいただきたいと思いまして、次の質問に行かせていただきます。

 医療費の集計というのは、これも昔々から、お化けが来るぞみたいに、過大に評価されております。

 大臣、お手元の三枚目をあけていただきますと、これは、平成六年から平成十八年まで、いわゆる国民医療費の見通しが一体幾らと言われてきたかというデータでございます。

 実は、この点は、亡くなられた仙谷由人さんが二〇〇六年にこの厚生労働委員会の場で取り上げていて、例えば平成六年百四十一兆円、平成十二年になったら八十一兆円、平成十八年六十五兆円、何でこんなにバナナのたたき売りみたいに医療費の予測が下がってくるんですかというとき、その質問をされました。そのとき、水田医政局長だったかなと思いますが、それはGDP比で換算しているのでこれだけ違いますとおっしゃいました。

 でも、数値というのはひとり歩きするわけですよ。例えば、この二〇二五年段階で比べるんですけれども、平成六年段階では、百四十一兆円も二〇二五年になったら医療費がかかりますよと言われて、ついこの前、平成十八年、ついではないですが、六十五兆円。

 さて、もし資料があったら、二〇一八年度の医療費は一体幾らだったでしょう。医療給付じゃなくて、医療費総額で構いません。厚労の担当がわかれば教えてください。どうでしょう。

冨岡委員長 すぐできますか。

 質問通告していなかったの。(阿部委員「していないです。結構です、私が教えますから」と呼ぶ)はい。

阿部委員 厚労省ともあろうものが、二〇一八年度の医療費は一体幾らなのと聞かれて答えられないことが質問通告に当たるなんてことは茶番ですよ、正直言って。何をもとに論議しているんですか。いいかげんにしてください。どうですか。

樽見政府参考人 申しわけありません。正確な数字と思いまして、ちょっと逡巡しておりました。

 手元にあります直近の数字で、平成二十八年度ということでございますので、二〇一六年の数字でございますけれども、国民医療費、四十二兆千三百八十一億円でございます。

阿部委員 今のが二〇一六年で、私がいただきました二〇一八年度は四十三・一兆円でございました。

 本当に国民をばかにしているというか、ミスリードしますね、百四十一から八十一、六十五、四十二とか三とか。

 やはり私たちは、今の時代、どのくらい医療費がかかるんだろうとみんな思っているわけですよ。何より持続可能性を願っているわけですね。そのもとになるデータが、厚労省が出してくるものがこんなに動いたのでは、論議が本当に、やはりかかっちゃ困るなとみんな思っています、日本人は真面目だから。

 でも、必要なものを必要に積み上げて提供するのが医療でありますから、大臣には、今後出されるいろいろな数値について国民にきちんと説明責任を負っているということを、これは仙谷さんが二〇〇六年に指摘したんです。今、それから何年たちましたでしょうか。もう十四年近くです、十三年。一向に変わっていない。実は、見直しの都度、ころころころころ数値が変わるんです。でも、そういうものだというふうに言った上で示すなら、国民も幽霊、お化けには恐れない、まあそうかくらいなものでありますから。

 大臣、いかがでしょう。

根本国務大臣 私も、この問題は、確かにずっと今までもその時点その時点の数字を見てきましたが、要は、私は前から思っていましたけれども、やはりその時点その時点で将来推計に引き写して名目で見ると、例えば名目GDPの伸びがどのぐらいか、そして、医療費はそれに近い形で伸びるんじゃないかというようなことで前提を置くと、将来は名目値で見るとぐっと膨れ上がるから、ですから、例えば十年前どうだったんだというと、大体結果的には、その時点その時点で名目値は修正されるんですよ。

 だから、本当は、やはり二〇四〇年とか例えば将来を見通す場合には、名目値だけで見るとそれは実はミスリードなので、その前提条件を明らかにしないといけない。本当は、全体で将来を見るために、その意味ではGDP比で見た方が要は名目のバイアスがとれて、実は将来の経済規模に対して今、GDP比率で医療は何パーだと、そこで見た方が私はより適切だと思います。

阿部委員 日本は、OECD諸国の中でも対GDP比で高いわけではありません。また、一人当たりの医療費も、そういう見方をすれば高いわけではないのです。長い国民健康保険の歴史の中で、ある意味でですけれどもコントロールをされてきておる。だからこそ、世界に冠たる国民皆保険が続けられるし、続けなくてはいけないんだと思いますので、大臣はそこを御認識の上で国民によく御説明いただけたらと思います。

 引き続いて、この間問題になっておりますいわゆる特定技能の、あるいはこれまでのいわゆる在留資格における、健康保険において御家族、扶養家族外しという言葉を使わせていただきますが、について御質問をいたします。

 これは大臣のお手元の、めくって三ページの資料に書いてございますが、健康保険法で、一体どういう歴史で扶養家族が認められてきたか。

 私はせんだって大臣に御質問をして、大臣は、昭和十四年あたりの戦時体制下で、銃後の守りなどのために御家族の扶養をきちんとして、医療保険も認めましょうといったところのお話をしてくださいました。

 もともとは大正十一年に御本人だけ健康保険ができまして、これは労働争議が背景にあって、きちんと労働者を遇しないと大変だというところから始まって、そして戦争を挟んで、戦後は、亡くなった方のために、その御家族、御遺族をより広く補償しようと。すなわち、物事には歴史の流れがあって、思想があるんだと思うんですね。

 昭和五十五年改正で海外療養費がスタートして、これは、グローバル化した中で、大臣は国内で受けた医療に給付するんだとおっしゃったけれども、そうじゃないわけです、海外で医療を受けたって給付がされるんだと。グローバル化への第一歩でありました。

 しかしながら、今回は、いろいろな意味で御家族を連れてこられないで、単身で日本に来ている特定技能実習者などの祖国に残された御家族には給付をしないということですが、これが社会保障制度審議会でどんなふうに論じられたか、厚労省としては一体どんなデータを出されたのか、私は本当に疑問に思います。私が議事録を見ても、ほとんど資料らしいものがない。例えば、外国人の御家族が海外でどのくらいの医療費を使っておられるかのデータもない。それを私どもの仲間が、エビデンスがないのに何で負担だ負担だと言うんだと聞いたんだと思います。

 大臣は、この国に来ていただく外国の方がこの国で安心して働けるための第一は何だと思いますか。私は、祖国で暮らす御家族をやはりきちんと健康上も守ることだと思うんです。私は、そこがないこの国の外国人行政というものは冷たいし、せんだっても、ベトナムの方が亡くなってお葬儀を都内の寺院でやったときに、御家族は来られないからスカイプでその映像を送った。本当にこんな非人間的なことをやっていていいのかと強く思います。

 大臣、具体的な質問ですが、今回、特定活動という名で、日本で出産された技能実習生や、あるいはこれからの特定技能の方のお子さんの在留が認められるようになりました。すなわち、妊娠して出産されるわけです。このときに母子手帳をとりに行くんですけれども、自治体の窓口にきちんとした多言語対応があるのか。やはり母子手帳をもらわないと、妊産婦健診も受けられない。

 二つお伺いします。窓口にそういう対応があるのか。そして、母子手帳は、少なくとも、本当は母国語が一番です。日本の母子手帳、プラス英語で訳したのをつけているところもあります。そうしたことも、大臣、当然必要になってくる施策なんだと思います、グローバル化の時代。このことについて御答弁ください。

根本国務大臣 昨年十二月に総合的対応策、これを閣僚会議で決定しました。そして、その中でさまざまなこれからの対応方針を定めましたので、これに基づいて、出産、子育て、医療、福祉などの社会保障制度を含む生活に必要な情報の解説を記載した生活・就労ガイドブック、これを法務省を中心に政府横断的に取りまとめられて、本年四月一日にホームページ上で公表いたしました。

 今後、生活・就労ガイドブックの冊子化等を行って、市区町村などで配布するとともに、十一言語をめどに多言語化を進めていく予定であります。

 それからもう一つ、母子健康手帳の多言語化については、自治体において実情に応じて実施いただいているところでありますが、厚生労働省として何ができるか、これは自治体からの要望や実情を踏まえて、委員の今のお話もありましたが、考えていきたいと思います。

阿部委員 母子手帳は、児童福祉法の始まった昭和二十三年に日本発、オリジナルな制度でございます。今、世界に普及をしています。日本の宝です。その親子の情報を詰め込んだ母子手帳をぜひ母国語で届けてあげていただきたいと思います。

 質問を終わらせていただきます。

冨岡委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの西村智奈美です。

 前回質問に立たせていただいて、そのときに答弁が十分返ってこなかった点について、改めて質問をさせていただきたいと思っております。

 まず一つは、例示についてですね。

 国民健康保険の被扶養認定における国内居住要件が今度は導入をされるということになりまして、ただし、日本に生活の基礎があると認められる者についても、例外的に要件を満たすということとする。この例外的に要件を満たす者は、今後、省令で例示をするということのようなんですけれども、私は、前回の質問で、例示をされて、その例示をもとに、恐らくは窓口の人がそれをもとに判断して、認定するしないということになってくるんだろうというふうに思うわけです。

 これは、やり方を一つ間違えますと窓口の人たちに、やり方を間違えますとというか、そういうやり方は恐らく窓口の人たちにとっても大きな負担になるし、やり方を間違えれば差別的な取扱いだということで非常に大変なことになりかねない、まさに差別事件になりかねないというふうに思いますので、しっかりとここは例示、どういうふうな考えで省令を定めるのか、そのことだけは少なくとも明らかにしてもらいたい。

 留学とか海外赴任に同行する家族はというような答弁もありましたけれども、これも、海外の事例も非常に漠としているし、厚生労働省もその内容についてきちんと調査をしておりません。そのことを先日の質問でも質問をしたんですけれども、もう一回、大臣、この例示について、省令についてはっきりと答弁をしてください。

根本国務大臣 省令では、具体的に、留学生、海外赴任に同行する家族、海外赴任中に生まれた子や海外赴任中に結婚した配偶者など身分関係の変更があって新たに同行家族とみなすことができる者、こういうことを規定することを想定しています。

 こういう事例に相当するかどうか、これは、具体的な判断のルールについては、委員も御指摘がありましたが、公平性の観点からも、保険者に委ねるのではなくて、厚生労働省において各保険者に対して通知することとして、保険者はこの通知に基づいて認定することを基本に考えています。

 例えば省令で、外国において留学をする学生、確認方法はビザによる確認を基本とする、こういうことを具体的に通知において、きめ細かく考え方を明らかにしていきたいと思っています。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

西村(智)委員 今の話はレクで聞いた話と何ら進展がないんですよね。

 そうすると、例えば、いろいろなケースは考えられるというふうに思うんですよ。一時帰国するということもあるでしょうし、ビザの変更をしなくても滞在目的が変わっているということも、これは法制上はあってはいけないことだとは思うんですけれども、一時的にそういうこともあるのではないかというふうに思います。

 ですので、ここは省令できっちりと明らかにすべきだというふうに改めて申し上げたいと思っていますし、また、くれぐれも、保険者が何か恣意的な判断、裁量判断でやるようなことがないように、負担にならないように、そこはぜひ留意していただきたいと思っております。

 それで、もう時間がありませんので、もう一点、きょうまた法務省の副大臣にもお越しいただいています。

 前回、総合的対応策のところで、社会保険への加入促進として、新たな在留資格による外国人については、保険料を一定程度滞納した者からの在留期間更新許可申請等を不許可とする等の対策を講じるとありました。一定程度とはどういうことか、これは極めて重大なことだと思うんです。

 前回は、認定審査のあり方そのものにかかわるからはっきりとは言えないというふうに答弁をされましたけれども、これは大変大きな問題だと思うんですよ。行政罰を新たに科すということでありますから、そこはあらかじめ、やはり、どの程度の期間あるいはどの程度の額を滞納した場合には対象となるんだというその考え方ぐらいは示しておいていただかないと審議になりません。

 そこで、改めて伺いたいと思います。

 日本国内でこれまで、例えば社会保険料を徴収できなかった場合には、納付相談をして、督促状を送って、それでも滞納があったときにはまた納付相談をやってというようなことを、繰り返し繰り返し丁寧に自治体の方で行っているわけです。

 まず、副大臣なのかな、厚労省なのかな、伺いたいと思うんですけれども、外国人と日本人と差別なく債権の未回収部分については回収の努力をするのだということで確認しておいてよろしいですよね、これは。

根本国務大臣 それはおっしゃるとおりです。

西村(智)委員 その上で、では法務副大臣にお伺いをしますけれども、一定程度の滞納があることを把握した場合、ビザまで要するにとっちゃう、在留許可まで認めないということですから、これは大変な行政罰だと思います。やはりある程度の考え方なりは示していただきたいと思いますけれども、期間ないしは額、これについてはっきりと明確に答弁をお願いいたしたいと思います。

平口副大臣 お答えをいたします。

 在留を認めない処分を行う際には、社会保険料の滞納があった場合に在留を認めないこととするか否かにつきまして、個別の事案ごとに、滞納の期間だけでなく滞納に至った経緯等も含め、さまざまな事情を総合的に勘案して判断することとなるため、一概に申し上げることは困難であり、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

西村(智)委員 前回よりちょっと進歩はした答弁でしたけれども、でも、全然及第点にはなっていません。

 当然のことだと思います。それはやはり個々個別の事情を細かく聞いて判断することになる、当然のことを言われただけで、私は、だとすると、法務省の方は、この一定程度の滞納をした場合にビザの更新あるいは変更を許可しないというふうにあえて総合的対策として打ち出しているのは、何か別の理由があるんじゃないかというふうに思うんですよ。

 つまり、これまでの審議でも明らかになりましたけれども、エビデンスがないのに総合的対策をやろうとしている。あるいは、国内での、認定の要件をもう一回厳しく管理監督するようなことを外国籍の労働者に対してのみやる、外国籍の方に対してのみやろうとしている。そういうふうに書かなければいけない何か事情があったのじゃないか。だとすると、これはもう本当になくてもいい対策だというふうに私はやはり考えざるを得ないです。

 そのことを指摘して、時間になりましたので質問を終わります。どうもありがとうございました。

橋本委員長代理 次に、白石洋一君。

白石委員 健康保険法ですけれども、私の地元を例に、健康保険があっても使えなければ意味がない、あるいは使い勝手が悪ければこれは価値が下がる、ここに問題がある。恐らくこれは全国でも地方が悩んでいる問題で、その格差をどのように是正していくか、こういう観点から質問させていただきます。

 これは図で見たらわかると思うんですけれども、私のところ、四国中央市で、患者はいらっしゃる、ニーズはある、需要はある、しかし、近くに総合病院あるいはお医者さんがいらっしゃらないから外に行く、長い時間かけて他県あるいは他市に行ってサービスを受ける。医療サービス、ニアリーイコール健康保険ですね。ここの問題をどうするかということなんですね。

 数字でもありますけれども、お手元にお配りした資料ですが、一ページ目上のところで、四国中央市、これは宇摩と言っておりますが、宇摩医療圏からの流出患者割合が二六・七%と、流入を大幅に上回っているわけですね。これは、ほかの医療圏、他県あるいは隣の市に患者さんが行っているということです。

 これが都市部であれば、ほかの医療圏であったとしても、近くだと電車に乗ることもできるでしょう。しかし、地方の場合は、ほかの医療圏、他県というのは、時間がかかる、お金もかかる、だから非常に不便だ、健康保険があっても受けられない、こういうことであります。

 この上の方は愛媛県の資料でありますけれども、隣の県、香川県でもその問題は認識していて、香川県の方に隣の県から、これはほぼ宇摩医療圏から、高度急性期十人、急性期三十一人、回復期十八人、合計五十九人、平均一日当たり流入していますということを認識しているわけですね。

 こういう問題、これは私の地元だから鮮烈に意識するわけですけれども、ほかの地域でもたくさん起きていると思うんです。この問題について、まず、厚労省としてどのような対策、そしてこれからどうしようとしているか、概要を教えてください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員今御指摘いただきました課題、実は、二つの切り口があるように私ども整理をして受けとめたいと思います。

 一つは、地方部における医師あるいは病床の不足というものをどういうふうにこれから対応していくことによって是正、格差是正をして取り組んでいくかということ。それに加えて、二次医療圏、都道府県は一義的に今、地域医療の確保に当たってのお役目をお願いしておりまして、その中における二次医療圏単位での取組というものを中心に組み立てておりますが、さらには、患者の移動によっては二次医療圏を超えるあるいは県を超えるという自治体についてどのように取り組むか。ある意味で、二つのフェーズについてのお尋ねのように思いました。

 一つ目の、二次医療圏、都道府県がそれぞれの二次医療圏の中でどのように病床を確保し医師を確保するかという点につきましては、現在、地域医療構想を策定し、二〇二五年の必要な病床数の推計を行った上で、必要な医療を適切な場所で受けられることを目指して取り組んでいただくという取組を行っておりますし、医師の確保につきましても、平成三十年、昨年、医療法、医師法を改正いたしました。それに基づく取組を通じて、医師偏在対策というものを進めるということにしてございます。

 その上で、二次医療圏や都道府県境を超えた患者の移動というものが起こっているという事態につきましては、地域医療構想による必要な病床の整備及び医師確保計画を通じた医師偏在対策、いずれにつきましても、県境あるいは二次医療圏境を超えた患者の移動を加味してそれぞれの計画において考えていただくようにということで国からその考え方をお示ししておりまして、関係する県が調整した上でそれぞれ策定していただくという形で、今、そもそも、病床あるいは医師を確保するための前提となる計画を策定していただくに当たっての県境超えあるいはエリア超えというものについての考え方を示させていただいております。

 そのような考え方を踏まえて、現在、それぞれの地域における地域医療構想調整会議における地域医療構想の推進状況、あるいは医師確保計画の策定状況というものが進んでおりますので、国としましては、そのような状況を把握させていただいた上で都道府県に対して必要な助言を行うなど支援を図ってまいりたい、このようなスキームで進めさせていただいているところでございます。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

白石委員 大まかに二つ、地域医療構想と医師の偏在を是正する政策ということなんですけれども、そうすると、地域医療構想の策定というのが非常に重要になってくると思うんですね。肌感覚では、これは非常に大変な問題だ、歩いていたらそのことを訴えられるということなんですけれども、ちゃんとそこにその切実さが反映されているのかどうかというところを一つ確認しないといけないなと思うんですけれども、その医療圏において、高度急性期、急性期、そして回復期、慢性期の医療需要と病床、そしてそのために必要な医師の数、その現状認識と将来予測をどのように把握されていらっしゃるんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、将来の医師需要と必要な病床数という地域医療構想における考え方につきましては、二次医療圏、構想区域ごとに、二〇二五年における高度急性期、急性期、回復期、慢性期の医療需要と必要病床数を推計しているところでございます。

 この推計方法につきましては、二〇一三年の性・年齢階級別の入院受療率をそれぞれの地域につきましてまず測定をし、それを用いて、二〇二五年の性・年齢階級別の推計人口に基づいた入院需要をまず算出する、その入院需要の数値に対して各医療機能の病床稼働率を加味することにより必要病床数を算定するという形で、現在、それぞれの地域において策定をいただいておるところでございます。

 二つ目として、医師の問題については、現在の充足状況あるいは今後の予測について申し上げますと、二〇一八年に全国の医師の需給推計をまず全国ベースで行わせていただきました。その中で、現状、足元につきましては医師の供給は需要を下回っておりますけれども、長期的には全国レベルでは医師の供給が需要を上回るという推計結果になってございます。

 しかしながら、先ほど御質問にもありましたように、全国レベルで医師が充足したとしても、地域偏在対策が十分に行われなければ地域レベルでの医師の充足は達成されないと認識をしておりまして、医師偏在対策の推進を図るために、まずは医師の多い少ないというものを客観的に示す指標として、医師偏在指標の暫定値を先日公表させていただきました。これが足元であります。

 それに加えて、将来、二〇三六年時点におきましても、将来の人口推計や疾病構造の変化等をもとに推計を行いまして、二次医療圏ごとの必要医師数についての暫定値をあわせて公表させていただいたところでございます。

白石委員 その推計もぜひしっかりとしていただいて、切実さがちゃんと反映されているというところにしていただきたい。

 最初の方の、病床、特に急性期あるいは高度急性期の対応ができる総合病院のところ、この総合病院が近くにない、だから、難しい病気やあるいは大けがをしたときにどうするんだ、どうなるんだ、この不安が大きいわけですね。

 需要はある、そこに病院がない、その病院を何とかつくる。今は医者が不足していて、どちらかというと病院が撤退しております。私の地元でも、県立三島病院が廃院になり、あるいは周桑病院、西条にあるんですけれども、ここが大幅に縮小されているというところがあるんです。

 需要はあるわけですから、それを立て直すために、どのようなそのギャップを埋めるための方策を打っていらっしゃいますでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 地域医療構想は、将来の目指すべき医療提供体制の姿でございますので、これに向けて地域の医療関係者が情報を共有した上で共通認識を持つ、そして先ほども申しました都道府県が設置する地域医療構想調整会議において、それぞれの主体が将来を見据えた機能分化、連携の方策についてお考えいただき、かつそれを医療機関相互の協議を通じて実現するために、一定の絵柄を地域において共有していただくということを通じての方策になってございます。

 その上で、具体的にその構想に向けての実現方策といたしまして、厚生労働省、医療行政の立場からは、地域医療介護総合確保基金というものを都道府県に設けて支援をさせていただいております。

 具体的には、この基金を通じて、病床機能の転換等に伴う医療機関の建てかえでございますとか、あるいは医療機器を導入する、さらには地域医療構想の達成に向けた機能転換に伴い退職する職員の退職金割増し相当額の補助などの財政支援を通じまして、先ほど来申しております地域医療構想に掲げられている絵と現状の間を埋めるべく、それぞれの地域における関係者のお取組を促しているというところでございます。

 なお、平成三十一年度は、総合確保基金の医療分を百億円増額させていただいたところでございまして、それぞれの地域の実情に応じて、また関係者のお話合い、関係者の御意向を踏まえた上で、必要な支援につきましては引き続き国としても取り組ませていただきたいと思っております。

白石委員 その地域医療介護総合確保基金、大事だと思います。百億円増加ということなんですけれども、それで総額幾らになったんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 平成三十一年度政府予算、公費ベースで、医療分につきましては千三十四億円、これは消費税を財源とする形で基金として財源を確保させていただいているところでございます。

白石委員 愛媛県でいえば、人口は大体全国の一%、それを考えたら、一千三十四億円の一%、まあ十億円程度。それで足りるのかなと。ぜひ、地方、困っているところをより一層重点的に配分していただくようお願いいたします。

 加えて、総務省の方でも、地域の課題に対して、医療格差に対してどのような対策を打っていますでしょうか。

沖部政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省におきましては、平成二十七年三月に新公立病院改革ガイドラインを発出いたしまして、各公立病院におきまして新たな公立病院改革プランをつくって、平成三十二年度までを標準期間といたしまして、改革その他取組を行っていくということを要請してございます。現在、全ての公立病院におきまして、この新公立病院改革プランを策定しております。

 この改革プランにおきましては四つ柱がございますが、そのうちの一つの重要な柱といたしまして、地域医療構想を踏まえた役割を明確化し、それに基づいて運営していくということがございます。まさに今御説明ありましたように、地域医療構想という全体の枠組みの中におきまして、公立病院といたしましても適切な医療の提供を行うべく取り組んでいるところでございます。

白石委員 総務省としては公立病院に対してということだと思うんですけれども、普通交付税交付金の対象となっている自治体病院、具体的には、どこで、どれぐらいの財政措置が行われているんでしょうか。愛媛県西条市、新居浜市、四国中央市のところでおっしゃっていただければと思うんですけれども、わかりますか。

沖部政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま手元に資料がございませんで恐縮でございますが、公立病院につきましては、例えば施設整備を行う場合には病院事業債を一〇〇%充当することが可能でございまして、その元利償還金に対しまして二五%分、通常の場合ですが、普通交付税措置を講じるなど行ってございます。

 例えば、例示的に、公立病院の例といたしまして、愛媛県の新居浜・西条構想区域について申しますと、二つ病院がございまして、愛媛県立新居浜病院それから西条市立周桑病院とございます。

 新居浜病院につきましては現在建てかえ中ということで、約九十六・二億円の事業費で取り組んでおりますので、それに対しまして、今申し上げた所要の地方財政措置が講じられているものと承知しております。

白石委員 民間でやっていけないということであれば公立病院に頼らざるを得ないところが出てきますので、ぜひここをしっかりと支援して、これは私のところだけじゃなくて全国的な問題だと思いますので、よろしくお願いします。

 二つ目の切り口で課題としまして、医師不足。病床があって、病院がたとえできたとしても、お医者さんが来ないという問題ですね。

 お手元の配付資料でいうと二ページ目で、「医師不足 最悪 三万人超」、愛媛県でいったら六百五十九人、これは愛媛新聞さんの二月の記事でありますけれどもこういう問題が、今も不足しているのに将来更に不足しそうだということなんですね。

 このことについて、厚労省としてはどのような対策を打っていますでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、新聞が引用されております資料、ことしの三月二十二日の医師需給分科会において私どもがお示しをいたしました、二〇三六年時点における必要医師数の資料からと思いますけれども、実は、この資料、まず事実関係から申し上げますと、機械的な推計に上位推計と下位推計を設けておりまして、これまでの地域における医師の供給量が最大なものを上位推計とし、供給量が最小な仮定を置いたものを下位推計としておりますものですから、ここで、今お話がございました愛媛県の二〇三六年時点での六百五十九人減というのは下位推計でございまして、同日発表しました資料の中では、今申し上げました上位推計でいくと愛媛県は三百十七人プラスという数字になっているということをまず事実関係としては申し上げたいと思います。

 いずれにいたしましても、都道府県間の医師偏在は是正すべきということで考えておりまして、これは全国的レベルでの課題、国が主導すべき課題だと認識してございます。

 そのために、平成三十年の医療法、医師法改正に基づきまして、医師偏在指標というものを設けることといたしております。

 その医師偏在指標におきまして、医師少数都道府県とされた、まず県、都道府県におきましては、都道府県から大学に対して地域枠あるいは地元出身者枠の設定、拡充を要請していただく。二つ目として、都道府県知事からの要請により、医師多数県などの大学に設けられる医師少数県での勤務を条件とする地域枠、これは県またぎ地域枠と言っていますが、多い県に設けられる少ない県の地域枠というものを設定するなどにより、医師少数都道府県への偏在是正という取組を進めていくことにしてございます。

 また、改正法におきましては、都道府県は、地域医療対策協議会において協議が調った事項に基づいて、医師の派遣調整、あるいは医師不足地域における医師の確保と医師不足地域に派遣される医師の能力開発、向上の機会の確保の両立を目的といたしましたキャリア形成プログラムを策定していただくことにしております。

 厚生労働省といたしましては、各都道府県や関係団体等と連携しながら、こうした地域の実情に応じた対策に取り組むことにより、全国的な医師偏在の是正が進んでいくものと考えておりますし、そのために全力を尽くしてまいりたいと思います。

白石委員 不足というのは、頑張らなければこうなってしまう。ぜひ全力を尽くしていただきたい。

 総務省の方として、対策はどのようなものがありますでしょうか。

沖部政府参考人 お答え申し上げます。

 地域や特定の診療科で医師が不足している現状に対応するため、総務省といたしましては、道府県が実施する医師の確保のための奨学金又は貸付金に要する経費につきまして、地方財政措置を講じているところでございます。

 具体的には、地域の公的医療機関等に卒業後一定期間勤務することを条件とした医学部生向けの奨学金貸与事業及び医師不足が顕著な診療科の後期研修医に対する研修資金貸与事業につきまして、地方負担の三割を特別交付税により措置しているところでございます。

白石委員 その予算規模は幾らぐらいですか、あらあらで。

沖部政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十年度について申し上げますと、全体で約十七億円の特別交付税を算定してございます。

白石委員 奨学金のところで、その支援で十七億円、特別交付税交付金の総額が八千億規模の中でいえば非常に少額だな。地域の本当に困っていることですので、もちろん、八千億というのは相当、例えば防災・減災対応とかあると思うんですけれども、医療の問題は本当に大変なので、厚労省だけじゃなくて総務省としても力を入れていただきたいというふうに思います。

 本題は健康保険法の改正ですけれども、今回の健康保険法の改正で、先ほど来のテーマである総合病院不足、医師不足に対してどのような効果が見込まれますか。

樽見政府参考人 今回の健康保険法等の改正でございます。お尋ねの総合病院不足、医師不足ということへの対応ということになりますと、率直に申し上げて、それを直接的な目的としたようなものではございません。

 しかしながら、この法案に含まれている内容を実施していくことによって、例えば、オンライン資格確認というものを行えることになっておりますけれども、これの導入によりまして、個々の加入者の資格情報が即時に確認できるということで、医療機関の事務が大幅に効率化できるということが期待できる。

 それから、医療のレセプトデータと介護のレセプトデータの連結解析、あるいはデータの第三者提供ということが法案に含まれておりますけれども、これによって各自治体あるいは研究者でさまざまな分析が可能になりまして、医療・介護提供体制の効率的な整備というものにつながるデータが期待できる。

 それから、高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施するということになりますので、地域のハイリスクの方について分析ができる。そうしますと、地域の医療ニーズをより具体的に明らかにすることができるといったような効果が見込まれるわけでございます。

 こうした取組によりまして、医療資源の効率的な活用を進める、あるいはこうしたデータを各自治体でしっかり活用していただくということが、よりよいといいますか、より的確な地域の医療提供体制の構築に資するものというふうに考えているところでございます。

白石委員 ぜひ、困っている人に手を差し伸べるような使い方をしていただきたいと思います。

 根本大臣、この地方の総合病院不足、医師不足の問題、大きな問題ですけれども、この地域格差解消について意気込みをお聞かせいただけますでしょうか。

根本国務大臣 私も今、白石委員の御質問、答弁、ずっと聞いておりました。

 白石委員がおっしゃられるように、まさに地域によって、提供体制も違いますし、課題、問題点も異なります。だから、これをいかにして、我々、適切な医療提供体制、あるいは医師不足の対応をやる必要がある、こう考えております。

 その意味では、地域医療提供体制については、医療計画を通じて、一義的には都道府県を中心に確保が図られておりますが、医療提供体制の地域差への対応は国として重要な問題だと認識をしております。

 もう既に、具体的な政策の中身についてはそれぞれの局長から答弁がありましたが、厚生労働省としては、地域医療介護総合確保基金による財政支援を行うとともに、やはり、それぞれの都道府県で取り組んでいただいておりますが、地域の議論の状況を定期的に把握をしながら、きめ細かな助言なども行っていきたいと思います。

 そして、やはり大きな柱は地域医療構想の推進ですから、これはそれぞれの地域ニーズに応じた医療機能を確保していく。

 そして、平成三十年医療法、医師法改正に基づいて、医師偏在の是正、これは例えば地域枠の拡充、活用等々の医師偏在の是正、こういうことのための具体的な対応も今打ち出しておりますが、この医師偏在の是正を通じた地域の医師確保、これをとにかく、我々、丁寧に御意見等をお聞きしながら、これは精力的に進めていきたいと思います。

白石委員 大臣、ぜひ精力的に進めていただきたいと思います。

 次の質問に移りたいと思います。

 先日、内閣府の未来投資会議で、これからは疾病を治癒する時代から一歩進んで予防するというふうにしていくんだということが議題になったと思います。

 疾病を予防するという意味で、本当に身近なところで、例えば歩きましょうとかメタボにならないようにしましょうとかいろいろあると思うんですけれども、その中で一番目に見えて効果があるものというのは、私はインフルエンザのワクチン接種だと思うんですね。

 このワクチン接種、今は疾病じゃないということで保険の対象になっていない。自由診療です。だから、お医者さんによっては、極端に言えばいかなる治療サービス価格をつけてもいいんですね。そういうことになっている。一回ワクチンを打つのに大体五千円ぐらいかかっているんだと思うんですけれども、それが一万円であっても文句は言えない。かかりつけのところに子供を三人連れていって、ワクチン接種をお願いしますと言われて、例えばそこで一人一万円だと言われて高いなと思っても、もうここまで来た以上はお願いしますと言わざるを得ないわけですね。

 国がこれから疾病予防というところに力を入れていこうということで、内閣府でもそのような議論がされているのであれば、私は、まずインフルエンザのワクチン接種を保険の対象にすべきだというふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 公的医療保険の考え方ということになりますが、公的医療保険では、疾病や負傷の治療を保険給付の対象にしているということでございまして、いわば保険事故ということで、そういう予測できない疾病とか負傷とかということを対象にしているということで、疾病の予防ということについては保険給付の対象外というふうになっているということなんでございます。

 したがいまして、インフルエンザのワクチン接種ということも、疾病の予防ということで医療保険の対象とはしていないという整理になっている。

 これを保険給付の対象にしたらどうだということを御指摘と思いますが、一つは、予防接種というのは、いわば希望者皆さんを対象にするという形になるものですから、いわば保険事故という形の保険という考え方になじまないのではないかという考え方が一つ。

 それから、保険給付の対象とするということになりますと、その分保険料も上がるということになります。そういうことについて、被保険者や保険者から理解が得られるのかといったような課題があるということでございまして、慎重に検討していくことが必要であるというふうに考えているところでございます。

 ただ一方、保健事業ということで、先ほど資料にもありましたけれども、健康保険組合においては保健事業として予防接種に対する補助を実施しているというところはございます。

白石委員 時間の関係から最後の質問を根本大臣にしたいんですけれども、やり方はいろいろあると思うんです。例えば通常の保険の対象ではないにせよ、負担割合が五割ですよとか七割ですよとか、そういったところからやるとか、あるいは、公定価格あるいは推奨価格帯、これ以上にはしないとか、そういうやり方でやっていくことがあり得るんじゃないかと思うんです。

 その点、未来投資会議で疾病の予防について提言、発言されている根本大臣の御所見はいかがでしょうか。最後の質問にしたいと思います。

根本国務大臣 委員おっしゃるように、予防、健康づくり、この取組は非常に重要だと思っております。

 二〇四〇年を見据えた社会保障・働き方改革本部、こういうものを設定して、未来投資会議でも議論を進めていますが、そのうちの三本柱の大きな柱が、より長く元気に活躍できる人材の確保、そして予防、健康へのインセンティブ措置の強化、要は、健康寿命の延伸を図る、これを今大きな柱にしております。

 それで今、委員の御提案については、先ほど局長からお答えしたとおり、それぞれ課題があって慎重な検討が必要だと考えております。

 ただ一方で、相当数の健康保険組合においては、保健事業としてインフルエンザの予防接種に対する補助を実施しております。

 また、厚生労働省としても、健康保険組合の予防、健康づくりに対するインセンティブ措置の対象にインフルエンザのワクチン接種等の実施を取り入れて、その推進を図ってきたところであります。

 引き続いて、このような取組を通じて、予防、健康づくりの取組を推進していきたいと考えています。

白石委員 ありがとうございました。終わります。

冨岡委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 国民民主党の稲富修二でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、法案の質疑の前に、先ほど来御質疑がありました介護保険料の算出のミスについてまずお伺いをしてまいりたいと思います。

 お手元の資料の中で、二枚目になります。これは、先ほど来ありましたけれども、介護保険料の最大二百億円の計算ミスがあり得るということでございました。

 これは、まず幾つかの段階で問題があると私は認識をしています。まず最初に、基金のところで計算ミスを、事務的なミスというふうにおっしゃっておりますけれども、ミスをされている。二つ目が、報告がおくれているということ。三番目が、じゃ、二百億円をどう確保するか、しっかりと支払いをしていただくか、そして再発防止をどうするかということかと思います。

 そこで、まず率直に伺いますが、非常に基本的な、毎年やっているようなことを、なぜ基金がミスをしたのか、お伺いをいたします。

大島政府参考人 支払基金でダブルチェックもやっていたということでありますが、本来、今回間違った内容といいますのは、実は介護保険制度というのは概算精算制度という仕組みをとっておりまして、概算でまず予算の処理をやって、二年後に精算をする、そういう仕組みになっております。

 介護納付金を算出する場合も、二〇一九年度の介護納付金というのは、二〇一九年そのものの介護納付金の費用に、二年前の二〇一七年で概算でとっていた介護納付金を確定値と精算しまして、そのやりとりをする、それが二〇一九年の介護納付金になるという仕組みになっていまして、二〇一九年の数字を使う部分と二〇一七年の数字を使う部分がございます。

 支払基金に聞いたところでは、二〇一七年の精算の作業の中に、二〇一九年の数字を紛れ込ませてというか、混同して使ってしまった、被用者の数を、本来二〇一七年の数でやらないといけないところを二〇一九年を使ってしまい、そこがダブルチェックをやっていたけれどもわからなかったということであります。

 したがいまして、ダブルチェックのやり方をもっと工夫することがあるということで、年度によって欄の色を分けるとか、そういうダブルチェックの手続そのもの、マニュアルそのものも見直しをより精緻化するということが必要であろうということを言っておりまして、本当に、ふだんから数字をちゃんと扱っているのにもかかわらず、こういうミスがあったことはまことに申しわけないと存じております。

稲富委員 今後はその体制を新たにしっかりとするということかと思います。

 次が、これも先ほど御指摘がありましたけれども、報告がおくれたという点でございます。

 そこで、事実確認をまずいたします。厚生労働省から健保組合へ、参考値の誤りがある、そして確定値が大きく変わる可能性があるということを報告したのはいつでしょうか。

大島政府参考人 一日、二日ちょっとあれがある、三月六日か七日です。といいますのは、支払基金の担当課長から当方の課長補佐の方に、正式に、誤りがありましたということを来て説明したのが三月六日でありますので、その日、恐らく三月六日前後ということであります。

稲富委員 ありがとうございます。

 これは、私はここが問題だと思う……(大島政府参考人「済みません、ちょっと訂正します。申しわけありません」と呼ぶ)訂正ですか。

冨岡委員長 やり直しますか。

 大島老健局長。

大島政府参考人 三月六日に課長補佐に連絡がありまして、健保連に伝えたのは三月十一日だそうであります。

稲富委員 それはまた日付が五日間ずれるんですよね。

 参考値も、予算組みをして、明らかに次年度の予算が変わり得るということもわかった上で、なぜ六日に報告があって十一日になるのかということ。それともう一つ、先ほどこちらで、池田委員でしょうか、なぜそれを報告しないのか、大臣が会見でそういったことを公表しなかったのかという御質問がありましたけれども、私は、厚生労働省が健保組合にそういう報告をすると同時に、当然国民に対しても、こういう間違いがあったということは公表すべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 何で三月六日になったかということで、これは担当が確定値を出せるようにという指示を出したので、三月六日に厚生労働省に確定値、確定値というのは三月下旬に告示しますから、だから、そこで三月六日に確定値が来て、それで結果的には二百億円の不足が生じる、だから、それにどう対応するかということで対応策を講じて、そして健保組合に、予算に大きな影響を与えないように具体的な対策を講じた、これが事実関係だと思います。

 そして、報告の話ですが、やはりこれは行政の全体の仕事の中でやっておりますから、どの時点でどういう報告をするか、それは行政のそれぞれの判断だと思っています。そこはきちんと事実関係を踏まえて明らかにして、私は先ほどの答弁でも言いましたけれども、これは結果的に組織間のやりとりの話ではありますが、国民の皆様にいろいろな不安あるいは懸念をもたらす可能性もあるので、ここは、この事案については全体を整理した上で周知を図る、丁寧に説明をするということが必要だと私は思います。

稲富委員 これは、社会保障診療報酬基金と厚生労働省があって、あと健保組合があってという流れですけれども、基本的には、厚生労働省が最終的には健保組合に対して参考値も確定値も伝えるわけですよね。

 だから、厚生労働省からすると、いや、基金が間違ったんだということかもしれませんけれども、最終的には、要するに民と公の関係でいくと、健保組合からしたら厚生労働省ですよ、最終責任者は、もちろん。当然、告知をするのは厚生労働省ですから。最終的に三月二十九日に告示をするのは厚生労働省ですし、参考値を言うのも、厚生労働省が健保組合に言うわけですよね。だから、これは厚生労働省が問題なんですよ、私からすると。もちろん、基金も問題ですよ。だけれども、それを伝えて、要するに、誤ったことをそのまま公じゃない部分に伝えている最終責任者は厚生労働省にあると思うんです。

 だから、先ほど、行政の間でいろいろなことがあるのでということかと思いますが、しかし、これはやはり、今ちょうど支払基金の改正法を提出するということもわかっていて、しかも提出をしていて、それがミスをしているということもわかっている上で、しかもそれを国民あるいは国会に報告しないというのはいかがなものかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 私は、今回の事案は大変遺憾であります。

 そして、おっしゃるとおりなんですよ、各健保組合に係数を示すわけだから。だから、参考値というのは、健保組合は予算を組む必要があるので年末に参考値として出す、そして最終的に係数を確定して、確定値を出して年末に告示で示す、こういうことなんですね。

 だから、これはおっしゃるとおりに、一月二十三日に参考値の係数が変わるということがわかった、これはそれぞれの健保組合の予算をきちんと組んでもらうための参考値ですから、一月二十三日に健保連、健保組合に、参考値がこういうことになりますということは、私は関係者にこのタイミングで周知を図るべきだったと思います。その意味では、事案からいくと、実はその時点が一番のポイントだったと私は考えています。

稲富委員 もちろん、一月二十三日にわかった時点で、厚労省から関係者に、これはおかしい、要するに上振れする可能性があるということぐらいは言わなきゃいけないです。

 同時に、先ほど御答弁がありましたけれども、三月六日に説明があって、三月十一日に、五日間あいている。さらに、大臣に言うのは三月十九日ということで、更にまた日付があくわけです。したがって、厚生労働省が事の重大さを認識していないとしか思えないんですよね。

 普通であれば、二百億という、大きな財源の誤差の中でこれだけのことがあったら、私だったら、会社員をやっていましたから、おかしい、これはまずいといって、やはり上司に報告しますよね。それが五日、六日たったら、お前、何をやっているんだという話になるわけです。

 だから、これは、まず十九日に大臣に行くということもおかしいし、そして大臣が十九日にわかった時点で、それは健保連にはその前にこういう事態になったという報告はあったとしても、国民、国会に対してやはり報告するべきじゃないでしょうか。

 なぜそれをされていないのかということをもう一度御答弁いただけないでしょうか。

大島政府参考人 三月六日に支払基金の担当課長から報告がありまして、翌日、今度は部長を呼びまして厚労省の課長が内容を聞き、影響の度合いを把握いたしました。それで、私には、土日を挟んで十一日の月曜日に報告があり、これはすぐ影響の度合い、善後策を講じないと予算執行上大変なことになるだろうということで、そこから健保連とかなり濃密に打合せ等々をいたしました。それの過程で、先ほどのような納付猶予の仕組みを使うとかいうことが方策としてまとまってきた形になります。

 健保連との間でそういう実際の運用をどうしていくかということの見通しがつきましたのは、三月下旬、二十六日だったと思います。実際の細かい文言ができましたのは二十八日の夜でありましたので、通知を二十九日に出したわけですけれども、その通知がまとまるぐらいのタイミングで公表するべきであったということにつきましては、私もそのように反省しております。

稲富委員 これは、私が思うのは、厚生労働省と基金の関係があって、基金がミスをして、厚生労働省としても意思疎通がうまくいかなかった、そしてそこを、これから意思疎通を図る対策を講じるというお話ですけれども、本質的には、それは民間からすると、あるいは健保連からするとどうでもいい話で、いつ参考値なり確定値が来るのか、要するに公と民の間の関係でいうと、誰が責任を持ってこれをやってくれるんだというところが大事で、当然これは厚生労働省である、最終的に健保連にそれを伝えるのはそこにある、告示をするのもそこにあるわけですから。これはやはり厚生労働省が最終責任者であって、そこの危機感の欠如がこれだけずれ込んだ原因じゃないかと私は思うんです。

 この件、最後にですけれども、改めて大臣、これは責任を誰もとらなくていいんでしょうか。その点、お伺いします。

根本国務大臣 委員がるる述べられたように、今回の事案は私も大変遺憾であります。

 その意味で、もう経緯等については局長から答弁がありましたが、私から、担当部局として老健局長、支払基金理事長の双方に対して厳しく注意するとともに、正確で丁寧な事務の遂行の徹底を指導いたしました。

稲富委員 今後このようなことがないように、ぜひ体制の整備に取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、法案審議に移ります。

 国民健康保険と健康保険の間における保険料の二重払いの解消というものが今回の法案の中でございます。その現状、対応について、概略を簡単に説明いただきたいと思います。

樽見政府参考人 国民健康保険と健康保険の間におきます保険料の二重払いということでございますけれども、本来健康保険の対象であるにもかかわらず適用を逃れていた事業所が、遡及して健康保険の適用事業所になった、そういうような場合に、加入者の方も、本来は健康保険であった者が国民健康保険の方に入っていたということになりますので、国民健康保険から健康保険に遡及をして加入することになるんだということでございます。

 健康保険の保険料は時効二年間ということで、二年間分さかのぼって徴収されるという形になるのでございますけれども、国民健康保険料につきましては年度単位でということで、遡及して年度単位で賦課、減額を行った上で還付するんですけれども、賦課決定は各年度の最初の保険料の納期から二年経過以降はできないということになっておりましたので、健康保険料は二年間さかのぼって徴収されるんですが、国民健康保険料が返還されるのは二年丸々にならないということが生じるということで、結果として保険料が二重払いとなるということがございましたので、これを解消したいということでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 この二重払いを解消するというのは非常に前向きなことで、この制度の見直しについては率直に評価をしたいと思います。

 そこで、市町村によっては国民保険税という形で取られているところもありますが、その場合はどうなるでしょうか。

樽見政府参考人 国民健康保険税で保険の負担を求めている自治体がございます。保険税の場合には、賦課決定は各年度の最初の保険税の納期から五年を経過する日までということになっておりまして、時効二年よりも長い期間、地方税法で賦課決定がさかのぼってできるということになっておりますので、税でやっているところについては健康保険との間における二重払いは生じないということになっております。

稲富委員 ありがとうございます。二重払いは生じないという確認をさせていただきました。

 今回、制度見直しの発端になった行政相談というのは、加入義務のあった事業所が遡及して健康保険に加入することになったということに起因をします。そもそも事業者が適切に健康保険の加入手続を行っていれば、こういうことはないわけでございまして、解消するということより、そもそも加入義務、適用事業所がしっかりと加入をするということが本筋だろうと思います。

 そこで、伺います。

 健康保険の事業所、加入義務があるにもかかわらず加入手続を行っていない事業所あるいは未加入者の実態を把握していらっしゃるかどうか、お伺いをいたします。

高橋政府参考人 厚生労働省におきまして、年金の、国民年金の被保険者の就業状況などを調査する国民年金被保険者実態調査というのがございまして、これに基づいて、一号被保険者のうち厚生年金の適用の可能性がある方というのを推計してございます。先般公表しました調査結果で、百五十六万人と推計してございます。

 これは年金の方の推計でございますが、厚生年金と健康保険は、適用事業所の要件でございますとか被保険者の要件が基本的に同一でございますので、厚生年金の適用の可能性がある方は同様に健康保険の適用の可能性もある方、そういうふうに推計してございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 厚生年金のところでは、推計として百五十六万人が加入漏れである、推定としてあるということで、資料一、一枚目にお配りをしておりますが、今御答弁がありましたように、適用事業所の要件についても健康保険と厚生年金はほぼ同じであるということから、恐らくこの程度の数の方が未加入であるという推定が成り立つという御答弁だったかと思います。

 改めて、この加入漏れのことなんですけれども、厚生年金のことで結構なんですが、そうはいってもかなりの数の方がいらっしゃるということで、先ほど申し上げましたように、本来であれば適用事業所の方が加入をするというのが当然ですけれども、それに対して、加入促進のために今どのような実績があるのかということをお伺いいたします。

高橋政府参考人 厚生年金、健康保険の適用促進でございますけれども、日本年金機構におきまして、国税庁の協力などもいただきまして、法人税の情報提供をいただきながら厚生年金の適用の可能性がある事業所を把握しまして、加入指導を行っているところでございます。

 実績といたしましては、平成二十七年三月末時点で、国税情報に基づく適用調査対象事業所は九十七万件ございましたけれども、三年たちまして、三十年九月末の時点で四十万件と半減してございます。これになお引き続き鋭意努めているところでございます。

 そのほか、既に適用事業所になっているところでありながら未適用の従業員がいる、こういうことがありまして、これは、総合調査など事業所調査の中で未適用の従業員の適用指導を行うということをやってございます。この実績でございますが、平成二十九年度は一万九千二百四十一人ということでございます。

稲富委員 ありがとうございます。これはぜひ、そもそも未適用事業者をなくしていくというのが必要だと思いますので、お取組をよろしくお願いします。

 それで、改めてですけれども、保険の場合は国保と健保の間の二重払いの可能性があるということですけれども、年金の場合はないかどうかということをお伺いします。

高橋政府参考人 国民年金と厚生年金でございますけれども、この資格の得喪に係る事務処理は日本年金機構が一元的に行ってございますので、例えば厚生年金にさかのぼって加入したというときには、その分、国民年金の資格は喪失するわけでございますけれども、既に納付された国民年金保険料についてしっかり還付する、こういう取扱いを行っておりまして、還付できずに二重になるということはないというような運用をしてございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 二重払いはないという御答弁をいただきました。ありがとうございました。

 次に、残りの時間で、少し高齢者の単身世帯についてお伺いをしてまいります。

 以前、当委員会で、ひとり暮らしの方がふえていくということを申し上げました。二〇四〇年には四割の世帯がひとり暮らしであるということを申し上げました。

 そこで、高齢者のひとり暮らしの現状についてなんですけれども、高齢者単身世帯の収入について、現状、どのような平均になっているのかということをお伺いします。

藤澤政府参考人 国民生活基礎調査によりますと、六十五歳以上の単身世帯におけます平成二十八年の平均所得金額を申し上げますと、二百四万円でございます。また、うち公的年金・恩給は百三十三万四千円となっているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 資料、お手元の三枚目でございます。単独世帯のところで、総所得は二百四万円、そして公的年金がそのうち百三十三・四万円ということで、やはり、当然ながら収入は年金に頼っているところが多いということでございます。一方で、夫婦のみ世帯、要するに二人世帯と比べると、はるかに単独世帯の方が、その半分以下の平均の収入になっているということも同時にわかります。

 次に、単身世帯の支出、どういったところで生活費を支出しているのかということをお伺いします。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 総務省の家計調査で、単身世帯のうち六十五歳以上の世帯について、一世帯当たり一カ月間の消費支出を見ると、平成三十年は十五万二千七百九十一円となっています。内訳を見ると、支出額が最も多い費目は外食や生鮮野菜などの食料で三万六千七百八十円、全体の二四・一%を占めています。次いで、贈与金を含むその他の消費支出が多く、三万四千五百九円、全体の二二・六%を占めております。

 以上です。

稲富委員 どうもありがとうございます。

 大体の生活感がここでわかると思います。年金に頼り、やはり食費あるいは住居費にかかっているという中にあって、これから今あった二百四万円の世帯がどんどんふえていくということです。二人であれば四百万円あるけれども、そういう世帯がどんどんふえていくということでございまして、さらに、三枚目の下の方を見ると、所得階層別にいくと、一番階層が低い第一という階層になると百二十三万円が年収であるということで、月十万円程度というところがあるのが現状で、それが二〇四〇年には四割近くになるということです。

 この生活の中で、高齢単身世帯、これからどんどんふえていくという世帯の生活について、国として対応をどう考えるのかということを最後にお伺いいたします。

根本国務大臣 まず、社会保障制度における低所得者対策、これは、共助の仕組みである社会保険制度を中心として、この制度における低所得者対策を強化する、もう一つは、公助の仕組みである社会福祉制度において対策を強化する、この二つの考え方を基本として充実を図ってきています。

 また具体的には、近年、単身、夫婦のみの高齢世帯が増加して、厳しい生活を送られている方々がいる中で、より多くの国民を皆保険、皆年金の制度でカバーしていけるように、年金受給資格の二十五年から十年への短縮、負担能力に応じた保険料設定になっている医療や介護の保険制度の中で、低所得者でも負担可能な水準に保険料を抑えるよう、医療、介護の保険料負担軽減の強化を既に実施しています。

 さらに、本年の消費税率の引上げに合わせて、低年金の方への年金生活者支援給付金の創設、低所得者に対する介護保険料軽減の強化を実施するなど、総合的な取組を進めてまいります。

 また、生活保護の受給に至る前のセーフティーネットの仕組みとして創設された生活困窮者自立支援制度、これを昨年の通常国会で改正して、例えば、高齢者の就労を求めるニーズが高い等々も踏まえて、就労支援の対象者の範囲を高齢者も含めることとして、そのほか、就労支援や家計支援の支援体制を強化するなど、生活困窮者への支援の強化を図っています。

 できる限り高齢者が生活に困窮することのないよう、さまざまな施策を講じて支援していくことが重要であると考えています。

稲富委員 ありがとうございました。

 高齢者をきょうは申し上げましたけれども、前回は、女性の中高齢の方もふえているということで、単身世帯がこれから一番の大きな世帯になるということで、ぜひ社会保障の中で強い位置づけを持っていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 改正入管法が今月施行となり、日本で働きたいという外国人の希望者は政府の想定を超えていると報道されていました。今日、既に二百五十万人を超える外国人が在留をしておりますが、私たちと同じように公的医療保険に強制的に加入することが求められており、負担をする義務があると同時に給付を受ける権利もあります。そこに差別があってはならない、こう思います。

 そこで、けさのNHKのニュースで報道がありましたけれども、東京オリパラの準備を円滑に進めるために、海外の大会関係者に特定活動の新たな在留資格を与えることを調整しているということです。九十日以上の滞在を予定している、大会組織委員会が認めた関係者及びその配偶者と子供を認めると。これは本当は法務省に質問したかったんですけれども、間に合いませんで、さっき確認をしましたところ、四月二十六日までパブコメを現在実施中ということです。

 オリンピックという意味では確かに初なんだけれども、国際的なスポーツ大会や万博のようなイベントの際は、こうした活動をやっていると在留資格を認めている。そして、確認できたイベントとしては、二〇〇五年の愛・地球博のときに配偶者と子供も認めている、こういうことであります。

 そうすると、厚労省とも協議を行ったということを確認しています、やはり九十日以上ということでの同じ条件で在留し、同じ外国人である、まして日本の労働力不足に対応するという目的でやってくる外国人のうち特定技能一号は家族の帯同を認められない。これはやはり差別になると思うんです。ここに国内居住要件というのがかぶさっていくわけですから、どうしても納得がいかない。

 こうした、在留資格に条件をつけることによって、いろいろなことが起こったときに条件をつける。そうすると、この資格はいいけれども、この資格はだめとなったときに、同じ保険料を払っていて、しかも一家の大黒柱である外国人が被扶養者の分は認められないというのはやはりおかしいのではないでしょうか。

樽見政府参考人 まず、オリンピック、パラリンピックの関係でございます。

 これについて在留資格を与えるかどうか、そこの整理につきましては法務省の方になりますので、私の方からのコメントは差し控えたいと思いますけれども、しかし、そういうことも含めまして、三カ月以上の滞在が見込まれるということになりますと、住民票の対象になって、国保の取扱いの対象となるという考え方で私どもとしても関係省庁と調整をしているというのは事実でございます。

 その上で、被扶養者の考え方というものについて、私どもとして、今回の制度、外国人と日本人ということで国籍による区別というのはしてはおらないわけでございますので、まさに保険の考え方という中で、被扶養者の範囲というものについて、最近のグローバル化でありますとか、手続上、なかなか外国にいると困難である、そういったような状況も踏まえまして、今回のような提案をさせていただいているというところでございます。

高橋(千)委員 全く説明になっていないと思います。

 グローバル化によって最初の国保の国籍条件が取られたのも、昭和六十一年、一九八七年のアクションプログラムですよね。これは、やはり市場開放のために被扶養という、国籍条件も取るという考え方ができたと思うんですね。でも、これは、言ってみれば国の都合といいましょうか、それはオリンピックに来る方たちと何が違うんだということは、やはり説明になっていないと思うんですよ。

 これはやはり、私、さっき聞くよと言いましたから、できれば整理をしていただいて、この法案は本当にこのまま通していいんだろうかということを疑問に思いますので、もしそれ以上の具体的な説明があれば伺いますけれども、なければ整理していただきたいんですが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 国籍ということでいいますと、まさに健康保険制度は、被用者の疾病リスクについて、それをみんなで分担するという考え方でございますので、これは国籍や居住地を問わず被保険者として適用しているという考え方でございます。

 それで、国民健康保険。先ほどもお話がありましたように、例えばオリンピックの関係で日本に来て、それで三カ月以上滞在して住民票を得るという形になりますと、これは、雇用がどうなるかというのはありますけれども、恐らく国民健康保険の対象になるということだろうと思いますけれども、国民健康保険の方につきましても先生御指摘のように国籍要件というものを撤廃しまして、それで同じように適用しているということでございまして、そういう考え方で、今回のオリンピック、パラリンピックの関係者が来日する、そこで三カ月以上の滞在になれば国保の適用になるということで関係省庁で調整をしておるということを申し上げましたけれども、これはまさに国籍要件がない、内外無差別という考え方の帰結ということでございます。

高橋(千)委員 国籍要件がないからと。それはわかっています。

 だけれども、逆に言うと、では、どうしてかな。外国人だからということで差をつけていないのに、なぜ特定技能の場合は限定されて、そうじゃないところは認められて、そこに波及してくるわけですよね、考え方によって。特定技能だって、後から質問するつもりでしたけれども、国保になる可能性があるわけですよね。やはりそこは、被扶養者という考え方をどこで、では、何のために今回つけたのかという、結局そこに戻っていくことになりますけれども、説明がちょっとわからないです。

樽見政府参考人 恐縮でございます。

 私も今、先生の御指摘にちょっと言葉足らずだったかなというふうに思いましたけれども、その特定一号、二号という、いわば家族帯同ができるかどうかというのが入国管理上の問題ということになるわけでございます。

 私どもの方としては、結局、国内にいらっしゃる方に適用することを原則にするということでございまして、そういうことで、家族帯同ができるかできないかということについて私どもの方でどうこう言っているということではなくて、あくまでそういう在留資格の結果として国内にいらっしゃるかどうかということが私どもの今回の考え方で、国内に居住するということを原則的な要件にするということとを組み合わせた結果として、外れてくる方が出るということでございます。

高橋(千)委員 要するに、私が言いたいのは、健康保険にはもともと国籍条件がなかったわけですよね。そういう中で、何らかの事情によって、つまり、外国人は、今回の入管法は移民政策ではないということをわざわざ断りを入れているわけですよ。

 そういうことの中で、健康保険のいわゆる不正使用だとか、本来はほとんど実績がないのに、実態がないにもかかわらずそれを殊さらに大きく言って、問題があるかのような議論をしてやる。そうやって、同じ条件で、同じ滞在期間であるにもかかわらず、条件をつけたら、一家の大黒柱だけれども認められないということがあるのはやはりおかしくないかという問題提起をしているんです。

 これはやはりもう一回整理をしていただいて、理事会でも議論したいと思います。これは最初の問題提起です。

 委員長、お願いします。

冨岡委員長 はい。理事会で諮らせていただきます。

高橋(千)委員 その上で、国保について、今、オリパラの場合は三カ月ということで、国保の対象になるだろうと。なるだろうですよね、あくまでも。国内の企業との関係で、被用者保険の場合もあるかもしれない。

 ただ、そういう状況もあるんです。つまり、短期の雇用契約を繰り返している、非正規の形で外国人が来る場合や離職した場合、そういう場合にやはり国保というのがきちっと対応できなきゃいけないと思うので、そこはしっかりお願いしたいと思います。

 これは実は質問のつもりだったんですが、ちょっと時間がもったいないので、要望にとどめます。

 それで、次の質問に入りたいと思います。

 資料の3なんですけれども、市町村における高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施についてということです。

 特定健診・保健指導は、七十四歳まで義務で、七十五歳以上は努力義務とされてきました。なので、実施者も市町村と広域連合というふうに分かれているわけです。

 有識者会議の報告では、「七十四歳まで実施してきた特定健診・保健指導の情報も七十五歳以降には共有されていないようなケースも多く、健診結果を踏まえた個別の支援も十分には行われていない状況にある。」と指摘をしています。

 改めて、何で後期高齢者制度をつくったんだろう、これは言っておきたいなと思います。これはわかっていたことですのでね。メタボ対策に特化した特定健診に対し、後期高齢者は、病気になるならもう既になっている、いわゆる決着がついている、そういう説明が当時あったんです。同時に、医療費適正化対策が位置づけられたということがあったと思います。

 そこで、ポンチ絵にある、人の絵がある上の囲みなんですけれども、医療・介護データ解析というところに、医療レセプト、特定健診、介護レセプト、要介護認定、フレイルチェックなどという、データの集積しているイメージの絵があります。

 これは、問題は、それぞれのデータは、高齢者一人一人の個人の総合的なデータとして名寄せし、活用するという意味でしょうか。具体的に、そのデータをどのように集約し、誰が、どのように活用するのか、お答えください。

樽見政府参考人 この説明の資料で御指摘の医療・介護データ解析というふうに書いてあるわけでございますけれども、市町村におきまして、国保のデータベースというものを活用しまして、市町村が保有しておられます、国保の被保険者であった当時の特定健診や医療レセプトの情報、それから後期高齢者医療制度に移行した後の健診や医療レセプトの情報、それから介護レセプトの情報というものを一体的に把握できるようにするという考えでございます。

 ですので、市町村におきまして、高齢者の保健事業を実施する際にも、国保の被保険者であった当時の特定健診や医療レセプトの情報というものも一体的に把握する、介護も一体的に把握するということで、過去からの継続したデータ分析に基づきます効果的な保健事業の対象者の抽出、保健指導の効果的な実施、医療サービスへの適切な接続、あるいは、既往歴などを活用したフレイル予備軍の抽出といったような取組が進むことを期待しているということでございます。

 また、こういういわば個人に着目したハイリスク者へのアプローチというだけでなくて、市町村におきましては、地域の健康課題の把握ということで、保健事業の実施地区の重点化あるいは支援内容の検討、あるいは、介護情報もあわせて把握することによって介護を受けておられる方にアウトリーチをかけていって、個別訪問等による実態把握あるいは保健指導の実施といったようなところにも役立てていただくということが考えられるというふうに思っております。

高橋(千)委員 これまでも、データの問題を議論していた際に、やはりそれを利用するときは匿名化情報であるという議論があって、傾向だとかそういうのを見るんだということだったんですが、これは明らかに個人に着目したものであるというので、ハイリスクな人を見つけ出すとかそういう理由があるんだろうけれども、今御説明いただいたように、過去からの健診データは全部個人にひもづかれちゃって、わかっちゃう。だから、物すごく重大な個人情報なわけですよね。それをまずどうするのか。要するに、とても欲しがる人もいるわけですけれども、その対策がまず求められると思う。

 ナショナルデータベースの場合は、医療費適正化計画という目的があります。だけれども、介護の場合は、介護保険事業計画に生かすんだという意味でデータを集積してきたわけで、もともと目的が違うよねという議論はされてきたと思うんですね。やはりそういう意味では、目的が、ほかにもいろいろあるかもしれないけれども、結局、一体化によって医療費適正化のやはりツールとなりましょうか、そういうことになるんじゃないでしょうか。

 そして、その財源は特別調整交付金を使うということを言っておりますので、当然、それは評価の指標が必要ですよね。そういうときに、やはり自立支援、つまり介護保険からの卒業、そういったことが評価の対象になっていくんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 御指摘の、NDBと介護DBの一体的な名寄せとか解析ということも今回の法律案の中に入っておりますけれども、それはまさにビッグデータとしてのデータの分析であり活用ということになります。

 先ほど申し上げた、市町村がいわば高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施する、また、そこで地域のニーズを洗い出したりハイリスク者を洗い出したりする。そういうための医療・介護データ解析、国保データベースを活用してのデータ解析は、先生御指摘のとおり、これはいわば名前つきの情報という形になりますので、同時に、これはしかし、一つの市町村の中の情報ということになりますから、日本全国で突き合わせて解析というような性質のものではございません。

 そういう意味で、市町村には情報の管理をしっかりとやっていただきたいと思いますし、そういう情報の管理の安全性というところについては気をつけていく必要があるというふうに私どもも思いますけれども、情報についてはそういうことになっております。その上で、特別調整交付金というもので一体的な実施というところについて支援をしていくということを考えております。

 ただ、これは、いわば、今、市町村において一体的な実施ということに向けた体制が必ずしも十分ではないところが多いと思います。そこをしっかりとした体制を組んで一体的な実施をやっていただくということが主たる目的でございますので、何か、医療費適正化効果があるから特別調整交付金をつけるというようなことを今の段階で考えているということではなくて、まさに地域でどういう体制をつくっていただくかということに着目をしてつけていきたいというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 そうすると、まず、今、データは個人にひもづくものだから非常に重要であり、それは市町村の中の話ですよということ、全国ではないですよという御説明がありました。

 そうすると、ちょっとまた問いを飛ばすんですが、一番最後の資料を見ていただきたいんですが、これは、検討中ということで、昨年の四月十九日の社会保障ワーキング・グループの見える化の検討会の中に厚労省が出した資料ですけれども、マイナポータルを活用した特定健診データの個人向け提供サービスというふうなことで、やはり個人にどんどん過去のデータがひもづいていくんだなということがまずわかる。そういう議論をまずしてきた、一方では。

 それと、昨年の七月の社保審の介護保険部会で総務課長は、新たな要請といたしまして、経済財政諮問会議におきまして、医療と介護のレセプトデータを全国的に連結すること、又は、健康、医療、介護のビッグデータを連結し、医療機関や保険者、研究者、民間等が活用できるようにすることが期待されていると。

 なので、これはまだ検討中ですけれども、結局、そういう準備を今しているということではないですか。それは事実ですよね。時間なので、一言。

樽見政府参考人 おっしゃいました後半の全国規模のビッグデータということは、先刻来御説明しております、NDBと介護DBの連結で第三者への提供ということではないかなというふうに思います。

 資料の、マイナポータルを活用した特定健診データの個人向け提供サービスということになりますと、これはまさに、マイナポータルを活用してこういうものを御本人に提供することを検討しているということでございますが、これは、加入者がマイナポータル上で健診データを閲覧する際には、まず御本人がマイナポータルというものを開設することが基本になるわけでございます。そのほか、個人認証の仕組みというものを組み合わせて活用することができますので、漏えいのリスクはかなり低くなるように、そこを非常に意識しながらこの検討ということについては進めているというふうに考えております。

高橋(千)委員 やはりこの法案は、まだ時間が足りません、継続してやっていただきたいことを望んで、終わります。

冨岡委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、健康保険法等の改正案、質疑させていただきたいというふうに思います。

 るる皆様からいろいろな論点で議論がありましたので、私からは、不正の受給というか、不正にこの保険のサービスを受けられている状況について、やはりしっかりとそうした部分は確認していかなきゃいけないということで、今回、その部分に触れていきたいんです。

 今回の改正で、生活の拠点が日本にない親族の方までが健康保険の給付を受けられている状況、一言で言うと、在外被扶養者の方をはじく、国内の居住に限るという改正を行っておりますが、これまで、こういった方々はどれぐらいの人数がこの保険の給付を受けられていて、額として一体どれぐらいになっていったのか、このあたりをまず、基礎的なデータとして国として把握されているのか、お伺いできますでしょうか。

樽見政府参考人 午前中の質疑でも答弁の際に申し上げましたが、現在の健康保険制度は、まさに、国籍、居住地を問わず、適用事業所に雇用されている者を被保険者とする、その者に扶養されている家族を被扶養者とするとして適用する仕組みでございますので、健康保険の被保険者あるいは被扶養者の居住地に応じたデータというものについては把握をしておらないということでございます。

丸山委員 把握をしていないのに改正が必要というのは、いまいち説得力に、つまり立法事実として説得力に欠けると思うんですけれども、そもそも、これをどうしてやろうと思ったのか。そのデータもわかっていないのに、どうして変えようと思ったんですか。

樽見政府参考人 健康保険制度は、国内の保険医療機関を受診した場合に保険給付を行うということが制度の原則ということなわけでございます。ただ、その中で、例えば海外駐在者あるいは海外旅行者がふえてきたというようなことで、海外療養費を昭和五十六年に導入したといったような形で法改正を実施して、給付の範囲を拡大してきたということでございますけれども、更にグローバル化が進んでいるという中で、例えば健保組合におきます海外療養費の支給件数というものを見ますと、直近で見ても、平成二十年度は八万件でございましたが、平成二十八年度には十二万件に増加をしている。

 そういう中で、諸外国での各種証明書類の発行状況あるいは物価の違いといったようなものをきっちり踏まえまして、国外に居住する被扶養者の認定あるいは海外療養費の支給というものをきっちりと行う、それを正確に把握してきっちり事務を行うということがなかなか難しいという相談も、健保組合などから私どもに多数寄せられているというような状況がございます。

 それから、これまで想定していなかった、例えば日本に生活の基礎がなくて国内の医療機関を受診する蓋然性が非常に低い、日本に一度も来たことがない例えば被扶養の家族が外国にいらっしゃるというようなこともあるという話も指摘をされているという中で、国内の保険医療機関を受診した場合の保険給付が原則であるという基本的な考え方に立ち返って、諸外国の制度比較も行った上で、被扶養者について、原則として国内居住要件を設けるというふうに考えたものでございます。

丸山委員 国内の要件を設けるべきだと私も思いますけれども、しかし、立法するときに、立法事実として、やはりこういった基本的な部分の調査はあってしかるべきだと思いますし、やられる前にできる限り、どうしたらこういった部分がわかるのか、こういった現状があるというのは示していただかないと議論にならない可能性があるんですね。方向性としてはやっていただきたいですが、今後、しっかりこういった部分も、減る額がわかるわけなので、そうした部分もまた確認していきたいと思います。

 同時に、一回も日本に来たことがないのにこういった被扶養者として受けられるのは確かに気になりますし、もう一つは、成り済ましの部分も非常に問題だと思います。他人の健康保険証で、まあ、健康保険証を偽造するというのは余りないかもしれません、コピーを使ったらどうこうというのはあるかもしれませんが、他人のを使うというのはあるんじゃないかとたびたびこれも指摘を受けていますけれども、この不正がどの程度行われているのかとか、その被害額がどうかとか、その辺の見解も含めて、どのように把握されていますか。

樽見政府参考人 成り済ましということにつきましても、なかなか、事の性質上というところもございますけれども、件数でありますとか、それによって詐取をされた額といったようなデータというものについては、恐縮でございますけれども、私どもの方として持っておらないということでございます。

 ただ、まさにその成り済ましということによって受けることがある、あるいは、少なくともあり得るということについての御指摘はいろいろなところで寄せられていることでございまして、それに対する対策というものは、まさに助け合いでやっている保険制度でございますので、そこをきっちりと運用していくという観点から取り組んでいく必要があるだろうというふうに考えております。

丸山委員 ずっとうちの党は言っていますけれども、何でこういうときにマイナンバーカードをしっかりひもづけでも活用してやらないんだ。顔写真がついている、しっかり機能もひもづけちゃえば、しっかりこうした部分は防げるじゃないですか。全然やらないですし、去年も、外国の移民の話、労働者の話のときも、交渉のときに、このマイナンバーをうちはこだわったんですよ。こだわったんですが、残念ながら法文に、検討条項としてはあれでしたけれども、なかなかそれの検討も進んでいないので、うちの党としては非常にこの点は遺憾ですが、この問題こそきちんとマイナンバーを含めてやっていかなきゃいけないのに、すごく遅い気がするんですよ、今回の件も。

 一応、やろうとされているのはやりますけれども、結局併用で、今の健康保険証でもできるんだったら、変わらないじゃないですか。何でこれはマイナンバーが進まないんでしょうかね。いかがでしょう。

樽見政府参考人 御指摘のとおり、マイナンバーを使いますと、顔写真もついておりますので、成り済まし対策ということからも非常に有効だというふうに思います。

 今回の御提案申し上げている法律案でオンライン資格確認ということを入れておりまして、これが広まっていけばまさにマイナンバーカードを被保険者証として利用できるというか、マイナンバーカードが保険証になるということになるわけでございますので、これによるメリットというのは、医療機関の側にも本人の側にも保険者の側にもあるということでございますので、このマイナンバーカードが保険証になるということを進めていきたいというふうに思っているわけでございます。

 ただ一方で、いわばオンライン資格確認というのは、そういう意味でそれをしっかり進めていくわけですが、あまねく医療機関でこれが使えるようになる、そういうことを進めていかなきゃいけません。そのために基金もつくって進めていくということになります。

 それからもう一つは、マイナンバーカードの普及率といいますか、多くの被保険者がマイナンバーカードを取得しているということが必要になってまいりますので、そういうふうになるまでの間、保険証を持ってきて、それが使えないということになりますと、かえって加入者の方に不便を強いることになってしまうということで、ここは併用という扱いになっているわけでございます。

 ただ、おっしゃいますように、マイナンバーカードが保険証になるということになりますとメリットは大きいということでございますので、それは進めていきたいと思っています。

丸山委員 厚労省さんはふだんは、これやれ、あれやれ、これしかだめだという規制が多いんですけれども、何でこれだけこんなにゆっくりで、いつまでにこれをやるから、この間に変えてくださいねで、紙幣だって発行の日は決まっていますけれども、当分併用ということですが、入れかわる、ああいう方法じゃなくても、厚労省さん得意の、もうやるなと決めてしまって、やったらいいと思うんですけれども、言ってもここは平行線ですから。ただ、方向は徐々にでは、我々としては徐々だと思いますが、しかし、やってくださっていると思うので、前には進めていただきたいんですけれどもね。

 ただ、成り済ましという点では今回の法案は非常に不足があると思っていまして、というのは、先ほどのは要は併用できるわけですよ、現行のものと。それで、確認を、今、一応、こうやることで防ぎますと。医療機関が必要と判断する場合には本人確認の提示を求めることができる、保険証とは別に。ただ、今でもできるわけですよ、医療機関で、本人ですかと。何が違うんですか。これによってそんなに抑止効果って上がるんでしょうかね。どうお考えなんですか。

樽見政府参考人 おっしゃるとおり、今でも、個々の医療機関の判断によって本人確認書類の提示を求めるということはできます。

 ただ、まさに成り済まし対策ということで、医療機関の窓口で本人確認書類を提示させるということが成り済まし対策として有効な手段だというふうに思いますので、先ほど来、外国人ということでよく指摘がされますので、これは外国人、日本人にかかわらず実施するということで、国籍による差別とはならないようにするということは申し上げておきたいと思いますけれども、そういう基本的な考え方に立ちながら、どういうケースでこういう本人確認をやっていただくことが有効かというようなことについて、私どもの方として運用方針みたいなものを考えて示していくことが必要ではないかなというふうに考えているところでございまして、それに向けて取組をしたいというふうに考えております。

 昨年末に関係閣僚会議で取りまとめられた総合的対応策においても、医療機関が必要と判断する場合には本人確認書類の提示を求めることができるよう必要な対応を行うというふうになっておりますので、そういう旨について通知を発出し、そこで一定の考え方を示していくことが必要ではないかなというふうに思って取り組んでいるところです。

丸山委員 ぜひそれをやっていただきたいんですが、同時に、医療機関に基準をお示しするんだから、医療機関にもヒアリングをしてほしいんですよ、本当にこういうのがあるのかどうか、疑いがあるのかどうか、身分証を持っていなくて困ったことがあるのかどうか。ぜひそれも一緒にやってもらいたいんですけれども、可能ですか、そういうのって。

樽見政府参考人 今でも一部ヒアリングをやってございますけれども、引き続きまして、御指摘を踏まえて、考えてまいります。

丸山委員 しっかり、最初の立法事実の部分も含めて確認していっていただきたいというふうに思います。

 もう一回、今回、国内の居住の例外要件も一応求めると。もちろん、日本人の扶養の方で留学に行かれたとか、そういった方も十分あり得ますし、一時海外赴任されているみたいな、こういう方が不便にならないようにしなきゃいけないというのは当然だと思うんですけれども、これをぜひ、できる限り明確そして具体的に定めていただくことが非常に大事だと思います。これはどういったものを想定されているのかというのが一つ。

 同時に、ちょっと時間がなくなってきたので、数字もお伺いしたいんですけれども、日本人の海外被扶養者で対象外となる人数はどれぐらいになると見込んでいらっしゃるのか、重ねてお伺いできますか。

樽見政府参考人 被扶養者要件で、日本国内に住所を有しないけれども日本国内に生活の基礎がある者という例外の考え方でございますけれども、これについての考え方は、現在の考え方ですが、これまで日本で生活しておって、外国にいても、渡航目的に照らして、今後再び日本で生活する蓋然性が非常に高いというふうに考えられる方。それから、渡航目的が就労というものではない、就労で行っているということになりますと、そこに居着くということが相当の蓋然性があると思いますので、そういうことではないという考え方でございます。

 具体的には、省令におきまして、留学生、海外赴任に同行する家族、それから、海外赴任中にお子さんがお生まれになったとかあるいは海外赴任中に結婚された配偶者など身分関係の変更がありまして新たに同行家族とみなすことができる方などを規定することを想定しているところでございます。

 具体的なその判断のルールについては、保険者に委ねるということではなくて、公平性を確保するという観点からも、厚生労働省において考え方をしっかりと通知しまして、保険者はこの通知に基づいて認定するということを基本にしたいと考えています。(丸山委員「人数は」と呼ぶ)

 申しわけありません。

 それから、人数でございますけれども、最初のお話に戻るんですが、在外被扶養者の数ということについて私どもの方として正確なデータを把握しておりませんので、数については、現時点ではわかりません。

丸山委員 しっかり明確に、一律になるように、不公平がないように基準は定めていただきたいのと、これも本当にエビデンス、立法事実の部分なんですけれども、どれぐらいの数字の方でどれぐらいの額なのかというのがわからないとやはり議論も明確に、きれいになりませんので、こういった部分もしっかり見ていっていただきたいというふうに思います。

 最後に、時間がなくなってきましたので、きのう理事懇で御説明がありましたけれども、介護納付金の算定の事務誤りの件。

 厚労省さんはこんなものばかりですよ。何かいろいろな間違いがあるとか、そのたびに申しわけございませんというふうなあれをいただくんですけれども、しっかり再発防止をやっていただきたいんです。

 びっくりしたのは、この理事懇でのお話だと、御報告が上司に上がるのがすごく遅いわけですよ、日付は、一月にわかって、でも、結局この三月になってとか。

 びっくりしたのは、次官に報告がないという発言があったんですけれども、これは事実なんですかね。さすがにこれぐらいの案件だと即座に、上司に上げるのが遅かったんですが、しかし、上がった瞬間には上まで上がってしかるべきだと思うんですけれども、報告がなかったというのは事実なんですか。

大島政府参考人 事実でございまして、報道があるまで次官には報告しておりませんでした。

 これは、介護納付金の算定に関して、老健局がみずから果たす業務と捉えて、そのさなかにおきまして、事態を知ってからは、医療保険者の予算運営に大きな支障が生じないよう、どのような対応を取り得るのかを最優先課題と捉えて検討を行っておりました。

 ただし、振り返ってみれば、その結果、二十八日には対応策がまとまりまして、全国の健保組合に翌日通知を出したわけでございます。それで足りたとそのときは考えたわけですが、しかし、振り返って考えますと、事態が通常と異なることでありましたわけですので、対応策が決まり、連絡を出した時点ぐらいのタイミングで、次官にも上げ、発表もすべきだったと今は反省しております。

丸山委員 けしからぬ状況ですけれども、大臣、これはしっかり処分も必要だと思いますよ、こういうのが続いてばかりなので。

 大臣、この件は処分されないんですか。注意はされたということですけれども、明らかに、二百億のお金ですし、次官にまで報告がないというのは異常な状態だと思うんです。時間がありませんので、最後にこれを伺って私の質疑を終わりたいですが、大臣、きちんとこれは処分までしてくださいよ。どうですか。

根本国務大臣 今般の事案については、昨年末の係数の参考値の設定に際して支払基金が事務誤りをしたこと、そして、一月下旬に支払基金から厚生労働省に一報があった際に、支払基金、厚生労働省の双方で、部局内で情報共有や迅速な初動対応ができなかったこと、これが問題であったと考えています。

 今般の事案は極めて遺憾であり、四月九日に私から、担当部局、老健局長と支払基金の双方に対し、厳しく注意するとともに、正確で丁寧な事務の遂行の徹底を指導いたしました。

丸山委員 終わりますけれども、遺憾じゃいかぬので、遺憾じゃだめですよ。しっかりやっていただきたいんです。やっていただきたいということを申し上げまして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 社会保障を立て直す国民会議の中島です。

 先週に引き続いて質問させていただきます。短い時間ですので、前回の質問の確認からさせていただきたいと思います。

 前回、オンライン資格確認導入について、運用面の効率化、これは理解できますが、マイナンバーカードの普及がなかなか進まない中で、国民にとっての、患者さんと言ったらいいでしょうか、メリットに対して、局長からは、転居など保険が変わった後、マイナンバーカードで利用できるとか、あと高額医療の事務手続が簡略化できるとか、そういったメリットがあるというふうにお答えいただいたんです。

 私からは、その先にもっとこうなっていく、具体的には、医療介護総合確保基金で島根や広島、滋賀のように情報連携、将来のICTを利用して、ここは遠隔医療も関係してくるかもしれない、後ほど御質問しますが、そういったものを目指しているんだと明確に示すべきというお答えをいただいたんですが、ちょっと最後が曖昧だったので、再度大臣に確認をしたいんです。

 今回のオンライン資格確認システムの導入、マイナンバー制度のインフラを活用して、これを基盤として、保険資格確認にとどまらず、医療、介護等の分野の情報連携の共通基盤を構築することを目指しているという理解でよろしいでしょうか。

根本国務大臣 私もその理解は同じです。

 やはり、効率的な医療・介護情報の連携を実現するためには、ICTを活用した情報連携が非常に重要だと思います。

 厚生労働省としては、医療・介護情報の連携のための地域医療情報連携ネットワークに対して地域医療介護総合確保基金による構築経費の補助を行い支援をしてきたところであります。これからも、効率的、効果的な支援となるように十分に配慮しながら支援を続けていく予定です。

 また、費用対効果の観点を踏まえながら、個人の健診、診療、投薬や介護に関する情報が医療機関の間で共有できる全国的な保健医療情報ネットワークの構築を目指して、必要な実証事業もしております。

 その意味では、これからも、電子カルテの標準化の促進など、医療・介護分野の情報連携、委員のお話のように共通基盤の構築、これをしっかり取り組んでいきたいと思います。

中島委員 今お答えいただきまして、先週資料にも出したんですが、しまね医療情報ネットワーク、この背景は、医師偏在であったりとかそういう過疎な地域、これは医師の働き方にも関連することだと思いますが、マイナンバーカードも、そもそもその参考にしたのはエストニアですね。もちろん人口規模も経済規模も違いますが、ICT先進国、そして、そういう医療過疎な地域、医師が偏在しているような地域で、ICTを使って、更に利活用して、どこにいても質の高い医療を受けられるようなそういう整備をしていく。

 大臣、ここも確認なんですが、いわゆるこれを構築していくということは今お答えいただいたんですが、遠隔医療の検討会も行われている最中だと思います。総務省においては、更にテクノロジーとかICTを使って、医師偏在の地域においても良質な医療が培われるようなそういう体制を整えていくんだということも検討されています。

 確認ですが、今回、今お答えいただいたということは、提供体制面においても更に質の向上にもつなげていくという理解でよろしいかどうか、お答えいただきたいと思います。

根本国務大臣 私も、エストニアは大変注目して、フィンテックなども研究してまいりました。

 今、高齢者の通院負担の軽減や医師偏在によって医師が少ない地域の医療確保の観点などからも、オンライン診療がより活用され得ると考えております。その意味では提供体制や質の向上の一環だと思います。

 そして、現在、オンライン診療については、平成三十年三月に発出したオンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに向けた検討会を開催して、今議論中であります。

 適切な例としては、状態の安定した患者について、かかりつけ医などによる定期的な直接の対面診療の一部をオンライン診療に代替するなどでありますが、検討会においては、かかりつけ医等が担う日常診療圏内における診療を補完するものとして、在宅診療との組合せや地方における専門医へのアクセス改善などに資する仕組みを検討しているところであります。

 これからも、オンライン診療普及状況、安全性、有効性に係るデータなどの収集結果などを踏まえて、適切なオンライン診療の普及推進に努めていきたいと思います。

中島委員 今、検討会も行われている中で、大臣からも明確に、今後、ICTの利活用を更に進めていって、遠隔医療というよりはオンライン診療ですね、オンライン診療を更に拡大していくというふうに私は受けとめました。よろしいですね。うなずいていただければいいです。

 その上で、先ほど今回のオンライン資格確認、その実効性が本当にどこまでいくのか。前回もお示ししましたが、電子カルテの普及状況も、診療報酬や前にあった基金を使いながら普及に努めてきたにもかかわらず、一般病院は四六・七%、四百床以上では八割を超えておりますが、一般診療所においては四〇%強という状況になっている。

 さらに、今回のオンライン資格確認の導入ということで新たな基金が設けられるわけですが、先ほど言った大きなグランドデザインをお示しした上での今回のオンライン資格確認の導入ということですが、基盤である電子カルテ、その統一化もままならない状況で、これは一体いつまでに具体的にそういうビジョン、目指すのはいいんですが、具体的にいつまでに行うつもりなのか、お示しいただければと思います。

根本国務大臣 電子カルテは、医療機関の業務の効率化や医療従事者間の円滑な連携を図るなどの効果があると考えています。

 厚生労働省としては、医療機関間の情報連携が円滑に行えるようにするために更に標準化した電子カルテの普及を進めることが重要だと認識しております。

 今回御審議いただいている法案において、医療情報化支援基金を創設して、国の指定する標準規格を実装する電子カルテを導入する医療機関に対して財政支援をすることとしています。これによって、技術的な方向性を明らかにすることとなって、業界全体を標準化へ誘導することができるとともに、電子カルテの普及が進むものと思っています。

 この電子カルテの導入に係る基金、これは百五十億円を用意しておりますが、本年十月に社会保険診療支払基金に創設する予定であります。

 今後の具体的な補助要件等々については、有識者会議を開催して決定してまいりますが、この基金を活用してオンラインや電子カルテの導入、いろいろな状況はあるんですけれども、これはできるだけ迅速に進めていきたいと思っております。

中島委員 大臣が言われたことは、その思いはあるということはわかるんですが、先ほども言ったように、従来から診療報酬や基金において電カルの普及、また統一化、互換性を高めるということは、私たちから言えばなぜ最初からやっておかなかったんだ、もうそれに尽きるわけです。

 また新たな基金ができてやっています感だけはあっても、実際にどうも信用ならない。いつになったら本当にそういうことができるのか。これはやはり、タイムスケジュールをつくって、いつまでにこれを標準化する、いつまでに何%にするということは明確に示すべきだということを申し上げて、十分しかございませんので質問を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

     ――――◇―――――

冨岡委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長宇波弘貴君、厚生労働省健康局長宇都宮啓君、子ども家庭局長浜谷浩樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。

田村(憲)委員 自民党の田村憲久でございます。

 きょうは、一般質疑の時間に質問をさせていただくことになりましたが、旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給に関する法律案、この後、委員長起草ということで提案されると思いますが、これに対する質問というよりは、私もこの立法の過程に携わらせていただいております。そういう意味では、かかわった者、立法者の意思といいますか考え方、これを整理させていただきながら、若干の質問という形でお許しをいただきたいというふうに思います。

 与党の旧優生保護法に関するワーキングチームの座長として、約一年間、この議論にかかわってまいりました。何より、優生手術を受けられた方々が非常に御高齢になられておられるということを鑑みますと、なるべく早くこの法案の提出をしていかなきゃならない、こういう思いできょうを迎えたわけでありまして、改めてその責任の重大さを痛感いたしております。

 少しばかり経緯をお話しさせていただきますと、旧優生保護法は、昭和二十三年に議員立法により全会一致で成立をいたしました。内容は、遺伝性疾患を理由とした優生手術の実施等についてを定めておる法律であります。被害を受けられた皆様方には、本当に今の人権意識からするとこれは許されないような、そういう内容でございまして、私も、これは全会一致の議員立法でございますから、立法府に身を置く一員として深くおわびを申し上げる次第であります。

 その後、平成八年に同じく議員立法によって母体保護法に改正されて優生手術に関する規定等は削除されましたが、昨年一月にこの法律施行下の優生手術を受けられた方が国家賠償請求訴訟を起こされ、現在まで七地裁二十人の方が提訴をされている状況であります。

 そのような状況の中でありまして、昨年三月に与党ワーキングチームが設置をされ議論がスタートいたしました。平成八年の改正で優生手術に関する規定は削除されておりますので、優生手術が行われたのは最低でも二十数年前ということになります。

 このため、まず、与党ワーキングチームといたしましては、当時の優生手術に関する個人記録が都道府県や医療機関等にどの程度保管されているのか、これを厚生労働省に対して調査を要請するところから始めました。また、あわせて、資料が残っている場合は保存期間にかかわらず当分の間はこれを保存措置を講ずること、これも要請をさせていただきました。

 ここでまず厚生労働省に確認をさせていただきます。

 旧優生保護法が施行されていた当時の優生手術の実施件数は統計上どれぐらいであるのか、そして、昨年行った調査、この結果はどのようなものであったのか、確認いたしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、旧優生保護法が存在しておりました昭和二十四年から平成八年までの間における優生手術の件数でございますけれども、統計上、全体で約二万五千件でございます。

 この内訳でございますけれども、本人の同意を要しない法四条と法十二条に基づくものが約一万六千五百件、それから、本人の同意のもとに実施する、旧法ですけれども、法三条に基づくものが約八千五百件となっております。

 また、都道府県等における優生手術に関する個人記録の保有状況を調査いたしましたけれども、この結果といたしましては、個人が特定できる実人数は五千四百人でございました。内訳といたしましては、手術実施が確認できる人数が三千七十九人、優生手術が審査会で適とされた人数が二千百五人、それから、優生手術が申請された人数が二百十六人となっております。

 なお、このほかにも、医療機関等における優生手術に関する個人記録の保有状況についても調査いたしましたが、その結果でございますけれども、百九十四の施設、団体から千六百五十一人分の個人記録があるとの回答がございました。

田村(憲)委員 今御説明がありましたとおり、統計上、優生手術の実施件数約二万五千件というふうに推測されるわけでありますけれども、実際問題、都道府県にその記録が残っているのは、手術の実施が確認できた人数、これは三千人、それから、それに近い記録が残っている人も含めて五千四百人しかないということであります。

 つまり、旧優生保護法に基づいて優生手術を受けた方を対象に何らかの立法措置を行おうといたしますと、大多数の方は記録がほとんど残っていないということが前提であるということであるわけであります。

 また、与党ワーキングチームでは、立法措置を検討するに当たりまして、当事者の皆様方の御意見を直接伺うことも行いました。昨年十月には全国優生保護法被害弁護団から、そして十一月には優生手術に対する謝罪を求める会の皆様方から、いろいろと御意見、御要望をいただいたところであります。

 そして、それらの御要望を参考にしつつ、与党ワーキングチームで議論を重ね、また、超党派の議員連盟の皆様方とも意見交換をした上で、昨年の十二月に基本方針を取りまとめたわけであります。

 そして、ことしに入り、残された論点について整理した上で、最終的に超党派の議連の皆様方と調整を行い、三月十四日に、これは議連の皆様方と我々ワーキングチームは同じ内容で法案を取りまとめたところであります。

 我々が法案を取りまとめるに当たり特に論点があった点について、幾つかここで御説明をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の法案は特に前文を設けることといたしておりますが、その中で、反省とおわびの主体が「我々は、それぞれの立場において、」となっております。これに対して、主体が明確ではないのではないか、このような御意見もいただきました。

 この点について、立法者の意思としてはっきりと申し上げさせていただきたいと思います。この「我々は、それぞれの立場において、」とあるのは、主に旧優生保護法を制定した国会、そして制定された法律を執行していた政府、これを特に念頭に置いております。

 一方で、国会と政府以外にも、当時、旧優生保護法にかかわっていた立場としては、例えば、優生手術の適否を決める審査会を運営した都道府県でありますとか、実際に優生手術の実施にかかわった者なども考えられるわけであります。

 これら具体的な主体として考えられるものを全て列挙することは難しいということから、法案では「我々は、それぞれの立場において、」と規定せざるを得なかったというところは御理解をいただきたいと思いますが、重ねて申し上げますが、主に国会と政府、これを念頭に置いておるということは御理解をいただきたいというふうに思います。

 次に、一時金の支給対象者についてであります。

 与党ワーキングチームで議論をスタートした時点で、旧優生保護法に基づき本人の同意なく強制的に不妊手術が行われた方を対象にすることは当然でありますが、法律上は本人の同意のもとに不妊手術を行われた方をどのように考えるか、これも論点でありました。具体的には、法律の手続上は同意が得られたとしても、その同意がいわゆる真の同意でなかったケースがあるのではないか、その場合はそのような方も対象とすべきではないかというのがこの論点でありました。

 対象に含めるという点では与党ワーキングチームでは異論はなかったわけでありますが、あとは法案においてどのようにそのような方を捉えるかという点、これを議論したわけであります。

 本人の同意のもとで不妊手術を受けた方については、個々のケースを見た上で、その同意が真の同意と認められない場合には対象とするという考え方もあり得ます。しかしながら、手続上本人の同意が要件になっていたとしても、強制的な不妊手術を認めていた旧優生保護法の存在により、同意することが当然視される社会通念が形成されていたものと考えられます。

 このため、今回の法案では、本人の同意の有無は問わないこととし、強制的な不妊手術を受けた方に加え、本人同意のもとに不妊手術が行われた方についても対象とするといたしました。

 さらに、対象者をどうするかという議論の中で別の大きな論点もございました。いわゆる違法な不妊手術等を受けた方の扱いをどうするかという問題です。

 例えば、旧優生保護法に基づく優生手術は、その対象となる疾患や術式が法令上定められています。一方で、術式と認められていなかった、例えば子宮摘出の方法により不妊手術が行われた事例もあることが指摘をされておりました。このような事例については旧優生保護法上明確に禁止されており、これに違反した者に対する罰則規定も設けられていたところであります。

 このような事例への対応については、旧優生保護法上の適法、違法という問題はありますが、少なくとも旧優生保護法の存在が背景にあることは疑いがないわけでありまして、今回の法案での扱いに差を設けるべきではないという与党ワーキングチームの一致した結論となったわけであります。

 今回の法案の前文で「旧優生保護法に基づき、あるいは旧優生保護法の存在を背景として、」としているのは、まさにこの点を踏まえたものであります。

 そして、対象とするいわゆる違法な不妊手術等を受けた方の範囲についても、例えば母体の保護や子宮がん等の疾病の治療を目的とするものなど、優生思想とは関係ないことが明らかである場合を除いて、広く対象とするものといたしたものであります。

 一時金の対象者についてはできるだけ幅広く対象にしたいというのが、与党ワーキングチームそして超党派の議員連盟の共通の考え方であります。

 この考え方に基づき、本人同意の有無を問わず、そして旧優生保護法上適法かどうかを問わず、できるだけ幅広く対象にしている点が今回の法案において大きなポイントであり、この点はぜひ御理解をいただきたいと考えております。

 次に、今回の法案では、一時金の額は一律に三百二十万円といたしております。

 昨年十二月に取りまとめた基本方針では、一時金の額については、諸外国の例等も参考に引き続き検討することとしており、この点が最後まで残った論点でございました。

 最終的に、今回の一時金の額は、一九九九年、当時のスウェーデンにおける強制不妊手術を受けた方に対する補償金十七万五千クローナ、これを日本円の現在の価値に換算した金額を参考にしつつ総合的に判断したものであります。

 スウェーデンの一時金の額を日本円に換算する場合は幾つかの方法がありますが、今回は、一時金の支給対象となる方の立場に立って金額が高くなる方法を参考にいたしました。

 具体的には、一九九九年当時の十七万五千クローナをまずは購買力平価で当時の円に換算し、次に、消費者物価指数で現在価値に換算すると三百十二万円となりますが、この金額をもとに総合的に判断をいたしまして、三百二十万円としたものであります。

 先ほど与党ワーキングチームの議論の経過を紹介した際に、当事者の皆様からも御要望を直接お聞きしたことをお話ししましたが、そこでは、優生手術を受けた記録が、先ほども厚生労働省の方から御説明がありましたけれども、都道府県に残っている方については個別に今回の法案の対象となることをお知らせすべきだという御意見をいただいております。これも、御要望をいただく中において非常に我々が悩んだポイントでもございました。

 この点についていろいろな議論をいたしましたけれども、個々人の置かれている現状はさまざまでありまして、例えば、今の御家族には一切伝えていない方もおられます。記憶から完全に消し去って一切思い出したくないと思われている方もおられるかもわかりません。このような中で、一律にお知らせすることは慎重に対応すべきものではないかという結論に至ったわけであります。

 そのかわりと言ってはなんですけれども、一時金の支給手続等について十分かつ速やかに周知を行うこと、そして、相談支援など請求に関し利便を図るための措置を適切に行うことを今回の法案で明記しております。

 あわせて、周知や相談支援等に当たっては、対象者の多くが障害者であることを踏まえ、関係者の協力を得るとともに、障害の特性に十分配慮することも明記したところであります。関係者の皆様にはこの点についてぜひとも御理解をいただきたいと思っております。

 今回の法案は、公布日施行となっていることで、実務を担う厚生労働省や都道府県に極めて短時間で準備や対応を行っていただく必要があります。しかしながら、大変な御苦労をおかけするわけでありますが、法案の早期かつ円滑な施行は極めて大事なポイントであり、厚生労働省には円滑な施行に向けて最善の努力を尽くしていただくようお願いをいたしたいと思います。

 最後に、大臣にお伺いします。

 今回の法案では、対象者の方に対する一時金の支給業務を厚生労働省が担うこととなっております。また、政府としては、法案の施行に係る予算措置も行っていただく必要があります。正式には、委員長の起草の後、提案されるわけでありますけれども、法案が成立したその場合、大臣としてどのような対応をしていただくのか、御決意をお聞かせください。

根本国務大臣 今委員からこの法律について、立法意思、そして丁寧な御説明がありました。

 法案が成立した場合には、その趣旨を踏まえて、地方公共団体や関係団体等の協力を得て、一時金の支払い手続等について十分かつ速やかに周知を行うとともに、請求のための相談支援等の取組を進めてまいります。今回の法案の趣旨や内容について広く国民に周知を図ることも大変重要と考えております。しっかりと取り組んでまいります。

 また、法案の施行に係る予算措置については、法案が成立した場合には、政府としては、法律を誠実に執行するべく対応することになると考えております。

 いずれにしても、法案が成立した場合には、厚生労働大臣として、一時金の着実な支給に向けて全力で取り組んでいきたいと思います。

田村(憲)委員 よろしくお願いいたします。

 今回の法案の内容については、弁護団始め関係者の皆様方からはいろいろな御意見があることは承知をいたしております。ただ、この法案は、旧優生保護法が議員立法により全会一致で成立した法律であることに鑑み、この一年間で、国会議員の立場からどのような対応ができるか与野党問わずいろいろと悩みながら、一定の結論が得られたというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 また、本件のように国家賠償請求訴訟が行われているような事案については、最終的な司法の判断を待った上で対応するのが通例であるとも言われておりますが、これに関しましては、対象になる方が大変御高齢になられておられるということも踏まえながら、司法の最終的な判断を待たずして立法府として対応を行うべきとの方針のもとで、可能な限り早急に今回の内容を取りまとめさせていただいた次第であります。そこもぜひとも御理解をいただきたいと思います。

 平成の時代もいよいよ残すところ三週間になってまいりました。どうかこの法案が平成のうちに成立をいたしますことを心からお願い申し上げて、私からの質問といいますか、趣旨の説明にかえさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 私も、旧優生保護法に係る法律案について発言をしたいというふうに思います。

 与党ワーキングチームの座長でもあります田村議員から、ただいま議論の経過あるいは今回取りまとめた法案のポイントについて御説明、御紹介をいただきました。

 私ども公明党も、昨年二月、山口代表が、本人の意に反して手術が行われた実態があるとすれば人権上大きな問題がある、与党としてはもちろんだけれども、幅広い理解を得て救済のあり方を見出すべきと発言、以来、与党ワーキングチームも設置されまして、この一年間、本件に深くかかわってまいりました。本日、この後、委員長提案という形で法案が示されるに至ったこと、本当に感慨深いものがあります。

 私の方からは、今回の法案の大きなポイントであります対象者の認定あるいは認定審査会の判断の考え方を中心に、何点か、与党ワーキングチームの議論の紹介あるいは確認をさせていただきたいと思います。

 まず、審査会の判断等に係る基本的な考え方でございます。

 今回の法案においては、先ほど田村議員のお話にもありましたように、一時金の支給対象者の範囲をできるだけ幅広くしている点が大きなポイントであります。

 次にポイントとなるのが、その対象者に該当するかどうかをどのように判断していくかという点になるわけであります。

 この点については、優生手術を受けたかどうかを確認できる記録が残っていない方が大多数であること、そして、いわゆる違法な不妊手術等を受けた方も対象としていることを踏まえまして、一時金の支給対象者に該当するかどうかの実質的な判断は厚生労働大臣の裁量に委ねるのではなく、有識者から組織される第三者的な認定審査会を新たに設置しまして、その認定審査会が認定に当たっての実質的な判断を行うこととしております。法案では、厚生労働大臣は認定審査会の審査の結果に基づき認定を行うとしているのは、まさにこのような趣旨なのでございます。

 一方で、記録が残っていない方が大多数の中、認定審査会は具体的にどのような考え方で判断を行うかというと、今回の法案では、認定審査会は、請求者及び関係者の陳述、医師の診断の結果、診療録の記録内容その他の請求に係る情報を総合的に勘案して、事案の実情に即した適切な判断を行うと規定しているわけであります。

 直接的な証拠がなくてもできるだけ認定をしていくとの方向性を今回の法案の中に可能な限り書き込みたい、そのような思いで衆議院法制局にもぎりぎりまで考えてもらいましたけれども、総合的に判断して、事案の実情に即した適切な判断を行う、これが法案に書き込める限界とのことでありました。

 このため、法案とは別に、認定審査会の判断に関して我々立法者の意思をあらかじめ明確にしておく必要があると考え、与党ワーキングチームや超党派の議連の皆さんとの間で調整をいたしまして、三月十四日の法案取りまとめのタイミングと合わせて、審査会の判断等に係る基本的な考え方という文書を取りまとめたところでございます。

 その内容について、ここで紹介をしたいと思います。

 まず、今回の法案では、厚生労働大臣に請求があった場合、一時金の支給の対象者であることが明らかな場合を除いて認定審査会の審査を求めることとしております。逆に言いますと、対象者であることが明らかな場合には、認定審査会の審査を求めることなく速やかに認定を行うということでございます。

 具体的にはどういう場合かといいますと、基本的な考え方の中では、例示の一つとして、都道府県に優生手術を受けたことを直接証する資料、例えば当時の旧優生保護法施行規則に基づく優生手術実施報告票がある場合、あるいは、二つ目として、当時の都道府県優生保護審査会による審査の結果、適とされたことがわかる資料があり、かつ、カルテなど実際に手術を受けたことがわかる資料がある場合というのを示しているわけであります。実際に請求が出てきまして、その請求に係る状況が今お話ししたような例示に該当するような場合には、認定審査会の審査を求めることなく、厚生労働大臣が速やかに認定を行うということでございます。

 このほか、優生手術を受けたことを直接証する資料ではないけれども、都道府県優生保護審査会に申請があった資料のみが残されているというケースというのも考えられます。これだけでは、認定審査会の審査を求めることなく認定を行うケースに該当することにはならないかもしれませんが、認定に当たっての有力な材料であることは間違いありませんので、このようなケースであれば、基本的には、認定審査会における審査によって対象者に該当すると判断されることになるのではないかと考えている次第であります。

 次に、認定審査会に審査が求められた場合の基本的な考え方についてであります。

 請求に係る記録が残っていない場合も多いこと等を前提に、請求者等の陳述内容を十分に酌み取り、収集した資料等も含めて総合的に判断した上で、柔軟かつ公正な判断を行うこととしております。その上で、具体的な判断に当たっては、その陳述内容が、当時の社会状況や請求者が置かれていた状況、収集した資料等から考えて、明らかに不合理でなく、一応確からしいということを基準にするということにしております。これは、年金記録問題の際に総務省に設けられた年金記録確認第三者委員会の判断の基準を参考にしたものでございます。

 以上が、与党ワーキングチームと超党派の議員連盟との間で取りまとめた内容でございます。

 ここで、厚生労働省にお聞きしたいと思います。

 今回の法案において、実際に認定を行うのは厚生労働大臣であり、また認定審査会も厚生労働省に置かれることになっておりますけれども、先ほど紹介した基本的な考え方を受けて厚生労働省としてはどのように対応されるのか、お考えをお聞きしたいと思います。

根本国務大臣 今、桝屋委員から、今回の法律の立法意思、立法の趣旨、そして解釈の基本的な考え方、解釈の基本、こういうことも御説明いただきました。

 今回、超党派の議員連盟の間で与党ワーキングチームとともにおまとめいただいた、審査会の判断等に係る基本的な考え方は、その内容の解釈も含めて今御説明をいただきました。これは、立法者から明確に示された御意見として大変重いものだと認識しております。この立法者の趣旨、御意思、これをしっかりと踏まえて対応していきたいと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。ぜひとも、重要なところでございまして、立法者の意思をしっかりと踏まえて御対応いただきたいと思います。

 次に、一時金の支払いの関係でございます。

 今回の法案は、対象となる優生手術等を受けた方が高齢であること等を踏まえ、できる限り早期の取りまとめを目指したものでありまして、また、そのために、法律の施行日も、公布の日から施行するということにしております。

 そこで、厚生労働省にお聞きしますが、実際に請求が行われてから認定そして一時金が支払われるまでどのくらいの期間を要すると想定されているのでしょうか。今回の法案は、一時金の支払い事務は独立行政法人福祉医療機構に委託するということにもなっておりますが、こうしたことも含めてお示しをいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 請求から一時金支給の認定までに要する期間につきましては、これは個別事情により異なると思います。例えば、都道府県の保有する記録があるかどうか、それから医療機関等に対する調査に要する期間、審査会での審査に要する期間、こういった大きく三つの事情がございまして、そういう意味では一概にお答えをすることは難しいと考えております。

 一方で、認定から一時金の支払いまでに要する期間につきましては、できるだけ速やかな支払いが行われますように、支払い事務を委託することとなります独立行政法人福祉医療機構とも調整を行いまして、基本的には認定の翌月の月末には一時金を支払うことができるように検討してまいりたいというふうに考えております。

桝屋委員 さらに、優生手術等に関する調査でございます。

 今回の法案では、前文で述べたような事態を二度と繰り返すことのないよう、共生社会の実現に資する観点から、優生手術等に関する調査を実施するということにしてございます。これは、旧優生保護法に関して、今回の法案を成立させることで終わりということではなくて、過去にこのような事実があったということを直視し、そして後世に伝えていくことが大事であり、そのことが国全体で目指している共生社会の実現にもつながる、そのような気持ちから今回法案に明記したものでございます。

 具体的な調査としては、例えば旧優生保護法の立法過程や運用状況等を調査、整理することが想定されております。また、その主体としては、法案では国とだけ規定をしていますけれども、この点に関しては、与党ワーキングチームと超党派の議員連盟との間で議論した結果、旧優生保護法が議員立法により成立した経緯等に鑑みまして、国会を主体とすることが適当ではないかと考えている次第でございます。

 いずれにしても、調査の内容も含めて、具体的な対応については引き続き議論をしていきたいと考えております。

 それから、施行準備について確認をいたします。

 先ほどの質問にも通ずるわけでありますが、今回の法案は、法律の施行日は、公布日施行。対象となる優生手術等を受けた方が高齢であること等を踏まえて、一刻も早く一時金をお支払いできるようにと考えたからにほかなりません。一方で、一時金の請求の受け付けや相談支援は都道府県が担うことにしておりますので、円滑な施行を考えた場合、時間的な余裕がない中で、できる限り事前の準備をしていただくことが重要と考えております。

 このため、与党ワーキングチームにおいては、法案骨子案を議論した三月一日に、いまだ国会に提出されていないタイミングではありましたけれども、早期の法案提出そして成立を想定し、速やかに都道府県との調整を開始するよう、厚生労働省に対して要請を行ったところであります。この点に関しましては、超党派の議員連盟からも同時に同じような要請がなされたと伺っております。

 このような要請を受けて、厚生労働省としてはどのような対応を行っているのか、確認をさせていただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案は公布日施行とされているものと承知しております。このため、一時金の支給業務を行う厚生労働省といたしましても、円滑な施行に向けた対応が極めて重要であるというふうに考えております。

 議員御指摘のとおり、与党ワーキングチーム、それから超党派の議員連盟から要請をいただきました。これを踏まえまして、三月十八日に都道府県に対する事務説明会を開催いたしまして、早期の法案成立を想定いたしまして必要な準備を行うよう依頼を行いました。

 また、現在、請求に当たって必要となります請求書等の様式の整備、あるいは周知、相談等に活用いたしますリーフレットの作成など、必要な準備を進めているところでございます。

桝屋委員 ありがとうございます。法案の早期成立を想定し、円滑な施行に向けて、引き続き準備をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 終わりになりますけれども、先ほど田村議員も話をされておりました、今回の法案の内容については、弁護団を始め関係者の皆様からさまざまな御意見もございまして、もろ手を挙げて歓迎されないことは重々承知をしているわけであります。しかしながら、本件にかかわった与野党の議員全員が、立法者の責務としてこの問題に真摯に向き合い、そして、現時点において我々がとり得る方策として取りまとめたのが今回の法案だと考えてございます。その点はぜひとも御理解をいただきたいと考えている次第でございます。

 今後も、法案の内容やこれまでの経緯、議論の経過等を繰り返し丁寧に説明することで、関係者の皆様に今回の法案の趣旨や内容を理解していただけますように最大限努力していくことを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの西村智奈美です。

 旧優生保護法は、昭和二十三年に戦後初の議員立法として成立し、優生思想のもと、不良な子孫を出生することを防止するとともに、母性の生命、健康を保護することを目的として、優生手術や人工妊娠中絶等について規定していました。

 平成八年に、優生保護法を母体保護法に議員立法で改正し、遺伝性精神疾患等を理由とした優生手術や人工妊娠中絶に関する規定を削除しました。この間、実に約半世紀もの間、我が国では優生思想に基づく強制的不妊手術が法定化されていたことになります。

 関係団体が長く取り組んできた課題でありましたが、二〇一八年一月三十日、旧優生保護法下の強制不妊手術に対する初めての国賠請求訴訟が仙台地裁に提訴されたことをきっかけに、悲惨な実態を明らかにするよう求める声が高まりました。

 旧優生保護法は戦後初の議員立法として制定されたという経緯から、優生思想を乗り越えるために超党派で議員連盟を立ち上げて、まずは実態把握から始めようということで、二〇一八年三月五日に、優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟が設立されました。

 本人の同意によらない不妊手術は約一万六千五百件、同意のあるもののうち、遺伝性疾患等を理由とするものを含めれば約二万五千人とされます。本人の同意によらないものは、都道府県に設置された優生保護審査会で審査、決定を行うとされていましたが、審査会を経ずに行われたケースも多数あるとの指摘があります。いずれにしても、実態はまだほとんど明らかになっていません。

 本人の同意があったとしても、それは真の同意だったのでしょうか。また、厳正な手続を経ずに、素行不良などという極めて主観的な理由や、身寄りのないこと、貧困などを理由に行われた手術、福祉施設などに入居する条件として行われた手術や結婚の条件として行われた手術など、根拠法すら存在しない手術が多数行われていたとの指摘もあります。法に規定されていない術式、コバルト照射が行われていたという指摘もあります。最年少は、九歳の子供に対しても手術が行われました。余りにもむごいと言わなければなりません。

 手術後に痛みや体調不良が継続する方は少なくなかったでありましょう。しかし、差別意識が根深く残る中、周囲にも家族にも告げることができず、ずっと胸にしまっておくしかなかった方々も相当数おられるはずです。

 法が、個人の尊厳や性と生殖の権利を踏みにじり、社会のモラルまで大きくゆがめてきました。そして、これらのことは、紛れもなく、厚生省から発出された法施行のための多数の通知と事務連絡、地方自治体からの疑義照会によって促進されてきました。

 強制的不妊手術を当たり前とする社会的風潮を生み出した責任は、法律を制定した立法府と、法を促進してきた、履行してきた行政府にあると私は考えます。現在の立法府の一員として、このことを深く胸に刻んでいかなくてはならないと思っています。

 同時に、このような重大な人権侵害、非人道的行為が現在も行われていないか、私たちは注意深く見ていく必要があります。また、後世に向けて、二度とこのような優生思想による非人道的な行為が繰り返されることのないよう、しっかりと検証を行うことが必要と考えます。

 議員連盟の活動として、勉強会と並行し、厚生労働省に実態調査を求めてまいりました。議員連盟の活動の経緯は、私がきょう添付しております資料の5と6に記載をされております。

 二〇一八年五月二十四日に立法措置を検討する法案作成PTを立ち上げ、議員連盟の勉強会十回、法案作成PTの会合十回、これらを開催する中で、弁護団、被害当事者の方々、有識者の方々、優生手術に対する謝罪を求める会、日本障害者協議会、DPI日本会議、DPI女性障害者ネットワーク、全日本ろうあ連盟、そして自治体議員、国会図書館などからのお話を伺いながら法案を取りまとめ、同じく旧優生保護法への対応を検討してきた与党ワーキングチームと調整を行い、既に御高齢の方々に迅速な対応ができるよう法案作成をしてきたところです。

 御協力くださった関係者の方々に深く敬意と感謝をあらわします。本当にありがとうございました。

 法案の内容について、法案作成PTにかかわってきた立場から、法案作成に当たって留意してきた点を申し述べたいと思います。

 第一に、前文です。

 「我々」は、既にありましたとおり、主として国と国会を指すものであります。同時に、法案の対象者を旧優生保護法に基づく手術を受けた方以外の方々までも広げたいという考えがあり、このような書き方となりました。

 第二に、対象者です。

 法施行当時の社会状況を考えれば、法に基づく優生手術を受けた者とするだけでは不十分であると考えました。そこで、対象者を広げるため、法が存在した間に優生手術を受けた者、また法施行期間中に生殖を不能にする手術等を受けた者、これは母体保護のみを理由とする手術を受けたことが明らかな者などを除くということにしておりますが、法施行日、すなわち法が成立する日に生存されている方を対象といたします。

 第三に、権利請求、認定審査のあり方です。

 一日も早く権利申請ができるようにしたい、負担感なく請求ができ、適正かつ速やかに認定審査が行われるようにしたいと考えてまいりました。厚生労働大臣が認定を行いますが、独立し有識者で構成する認定審査会が判断したら、自動的に厚労大臣によって認定される形です。

 また、厚労省の調査により、手術を受けた方のうち、最大で約五千四百人の方のお名前等が特定できる可能性があることがわかりました。できるだけ速やかに、かつ請求される方の御負担にならないように、厚労省が収集した資料によって請求者が手術を受けたことが明らかな場合は、認定審査会の審査によらず認定します。

 また、請求者に係る優生手術等の実施に関する記録が残っていない場合も多いと考えられること、旧優生保護法に基づかない形で生殖を不能にする手術等を受けた方も法案による対象としていることから、請求者の陳述、医師の診断、診療記録等を総合的に勘案して、適切に判断することにします。

 具体的な判断に当たっては、記録や資料が存在しなくとも、請求者等の陳述の内容が、当時の社会状況や請求者が置かれていた状況、収集した資料等から考えて、明らかに不合理でなく、一応確からしいことを基準といたします。これは、添付しております資料の8に記載されているとおりです。

 第四に、対象者ができる限り負担なく早期に請求できるよう、手続の支援や相談、障害の特性に配慮した体制の整備などを図ります。

 第五に、調査、検証です。

 なぜこのような悲惨な人権侵害が起きてしまったのか、その背景や経緯をしっかりと調査し、後世に残して、二度とこのような悲惨なことが繰り返されないよう、国会が責任を持って調査その他の措置を実施することといたしました。これは、資料の9にありますとおりです。

 与党ワーキングチームとも、この点については、旧優生保護法が議員立法により成立した経緯等に鑑み、法案に規定する調査については、その主体は国会とする方向とし、具体的な対応については調査の内容も含め今後引き続き議論するということで合意いたしております。

 国会は、引き続き、今後も調査という点で大変重い責任を負っておりますので、これを果たしていかなければならないと考えております。

 第六に、法の趣旨や内容について、対象者への周知とともに、国民全体への周知をしっかりと行うことによって、対象となる方が早期に負担感なく請求権を行使できる環境を整えたいと考えております。

 最後に、一時金の金額です。

 おわびの気持ちを金額にするのは大変難しく、また、さまざまな御意見もあるところと承知をしておりますが、スウェーデンの例を参考にし、三百二十万円とさせていただきました。

 以上であります。

 立憲民主党・無所属フォーラムとしては、法案審査に際し、弁護団からも改めてヒアリングを行い、賛成を確認いたしました。

 さてそこで、厚生労働省に質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど申し述べましたとおり、厚生省が発出した通知及び事務連絡等は、私は強制的不妊手術を促進したと考えております。報道等で明らかになった通知の中で、実は、厚生労働省が把握していない、ホームページに掲載をしていないものがかなりあります。資料7に、報道等で把握された旧厚生省からの自治体への通知等の一覧がございますけれども、この中で、資料の1、すなわちこれは厚生労働省の現在のホームページにも出ておりますが、厚生省から自治体へ発出された通知及び事務連絡で、ここに記載されていないものがあります。

 発出者が発出した文書を保存していない。公文書の管理のあり方としては大変大きな問題がありますが、それは今の議題ではないとしても、今後、いわゆる国会が行う調査を行っていくに当たって、やはりこのような通知ないしは事務連絡等の資料は網羅的に収集していく必要があると考えております。

 現在厚労省の手元にないものであっても、都道府県等から取り寄せていわゆる調査の資料に資するべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。また、疑義照会の文書についても同様とすべきではないかと思っております。いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案の成立後に国会が主体となりまして実施される優生手術等に関する調査につきましては、旧優生保護法は旧厚生省が所管、執行していたことからも、厚生労働省といたしましてできる限りの協力をしていく必要があるというふうに考えております。

 委員から御指摘がありました、現在厚生労働省が保有していない過去の通知等につきましては、昨年行いました調査の結果、基本的に特定の都道府県におきまして保有していることまでは確認できております。今後、国会による調査が行われまして、必要が生じた場合には、都道府県から提供していただくなど最大限の協力をしてまいりたいというふうに考えております。

西村(智)委員 よろしくお願いいたします。

 二番目の質問ですけれども、やはり、今回の法案が成立いたしましたときに、この内容、情報が当事者の方にきちんと届けられるということが極めて大切だと思っております。

 法案作成にかかわった者の立場、私たちの意思としては、例えば障害者手帳の更新などの行政手続の機会を利用したきめ細やかな案内、つまり、障害者手帳の更新のときに小さな紙を挟むとか、相談支援窓口の設置、それからポスターあるいはパンフレットを作成する、医療機関、障害者支援施設等を通じての呼びかけ等々いろいろ考えられるわけですけれども、このように丁寧に細かく周知することはもとより、この法案の趣旨を広く国民に丁寧に周知すべきであるというふうに考えます。つまり、それは、差別意識を助長することが万が一にもないよう行うべきだというふうに考えるところだからでございます。

 また、国会が行う調査の報告がなされた後にも、周知のあり方について不断に検討していくべきだというふうに考えますが、この点、大臣、お考えはいかがでしょうか。

根本国務大臣 今、西村委員からいろいろと御指摘がありました。

 我々、法案の趣旨を踏まえて、委員お話しのように、今回の法案の趣旨や内容について広く国民に周知を図り、丁寧にというお話もありました、周知を図って御理解いただくよう努めることが大変重要だと考えておりまして、この周知についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。

西村(智)委員 最後の質問になります。

 昨年、厚生労働省は、超党派議員連盟と与党ワーキングチームの要請により、都道府県、市町村、特別区、厚労省内部と関連施設、各医療機関、福祉施設が保有する優生手術についての資料や記録について調査をいたしました。しかし、これは任意の調査であったため、結果としては、とても完全というものとはほど遠い結果だったと受けとめております。

 他方、手をつなぐ育成会や全日本ろうあ連盟などでも、独自にヒアリング等々の調査を行っておられます。私たちが把握していないほかの団体も、独自の調査を行っておられるかもしれません。今後、国会が具体的に調査を行っていく過程において、そういった団体の調査結果から情報として得られるものも恐らくはあるのではないか、このように考えております。

 そういった得られた情報から個別のケースが出てきた場合に、それについて確認したいということも具体的な調査の過程では十分にあり得る、考えられることだと思いますが、そのようなとき、国会から厚生労働省の協力を求められた場合、厚生労働省として協力する用意があるかどうか伺いたいと思います。

 また、法案では、認定審査会は、市町村、医療機関、福祉施設に記録の調査等を行って報告を求めることができる、こういう認定のプロセスの仕組みになっております。そこで得られた情報もとても貴重な情報ではなかろうかというふうに思いますので、これを当然個人等が特定できないような形で国会の行う調査に活用させたらいかがかというふうに思いますが、これについて厚生労働大臣の見解を伺います。

根本国務大臣 今委員がお話しになられました、国会において実施される優生手術等に関する調査については、円滑な実施に向けて、厚生労働省としてもできる限りの協力を行っていきたいと思います。

 また、委員から御指摘のあった、法律施行後に行われる一時金の請求に関する資料の提供については、請求者の個人情報保護との関係を整理し、どのような形で提供が可能か検討していきたいと思います。

 また、国会が調査を行うに際して、個別のケースに関し医療機関など関係機関に協力いただく必要がある場合には、厚生労働省としても、協力の要請や必要な調整を行うなど、可能な限り努力していきたいと考えています。

西村(智)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 今回、旧優生保護法に対応する法案を作成するということで、私自身、非常に責任の重いことを、その一部を担わせていただきました。大変な歴史的な事実であるということを我々は本当に重く受けとめなければなりませんし、また今後二度とこのようなことがないようにしていく必要もあります。

 立法府として今の時点でできることに最大限取り組んだ結果として、今回、法案を委員長提案という形で起草していただく運びになります。ぜひ一日も早く成立をさせて、お一人でも多くの方が立法府の思いを受け取っていただけるようにと心から願って、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、一般質疑という形ではあるんですが、旧優生保護法のもとで優生手術を受けられた方に関して私も質問をさせていただきたいと思います。

 今回、超党派で法律案が起草されようとしている、準備をされているということは承知をしていますが、まだ提出をされていないので、その中身について子細に答えるのはなかなか難しいんだと思いますが、さりとて、現実、どういうような課題があるのかということはきちっと整理をしなきゃいけないと思います。

 もちろん、本人の意思、また意思に反してはもっと、よりそうなんでありますけれども、手術を受けることになったという方に対しては、私も、国としてそこは一定程度の責任を感じる必要があるだろうというふうに思っています。

 そういう意味で、本来であれば個人の責任ということではないんだと思いますけれども、若しくは、どこか、誰か一つの機関の責任ということではないんだとは思いますが、結果として起こったことを、国として、またそれぞれの立場でこういうことを起こさないようにしていくということが重要なんだという点については、十分私も賛意を示すところであります。

 一方で、対象となる方が一体どういう方なのかということについてはしっかり確認をしておく必要があると思います。

 当然、旧優生保護法が存在した間に優生手術を受けた方というのは対象になるだろうと思います。一方で、こうした期間に生殖を不能とする手術等を受けた人というのは一体どういう人が入るのか、ここが聞きたい、確認をしたいところであります。とりわけ、生殖を不能にする手術を受けたといっても、疾病の治療や、また帝王切開などにおいても場合によっては生殖を不能とする手術となった方もいらっしゃると思います。

 そこで、お伺いしたいと思います。健康局長にお答えいただくのかもしれませんが、要するに旧優生保護法が存在した間に帝王切開を受けた方で今生存されている方、若しくは単純子宮全摘などに伴って両附属器の摘出術を受けた方、こういった方はそれぞれ何人ぐらい今この日本で生きているというふうにお考えなのかということについてお答えいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のような、今回の一時金の対象となり得る年齢層の帝王切開の件数については、きっちりは把握をしておりません。

 ただ、参考となるものといたしまして、医療施設調査におきまして、昭和五十九年から三年ごとに帝王切開の件数の調査が行われております。具体的には、それぞれの調査年の九月中、九月一カ月の実施件数について調査があります。

 この調査によりますと、昭和五十九年は、病院及び診療所での帝王切開の手術件数でございますけれども、これが八千五百二十八件、昭和六十二年は八千八百八十一件、平成二年は八千九百件、平成五年は一万千百七十三件、平成八年は一万二千六十一件となっております。

 また、御指摘の子宮全摘術及び附属器の摘出術の件数についても、今回の一時金の対象となり得る件数としての正確な把握はございませんけれども、参考までに、NDB、レセプト情報・特定健診等情報データベースによりますと、直近の平成二十八年度に実施された手術件数につきましては、外来では、子宮附属器腫瘍摘出術、これは腹腔鏡によるものでございますけれども、八十四件。これは外来でございます。それから、入院につきましては、子宮全摘術が三万六千百二十一件、子宮附属器腫瘍摘出術、これは開腹によるものが三万四千五百四件、子宮附属器腫瘍摘出術、腹腔鏡によるものが四万六千五百六十三件となっております。

岡本(充)委員 きょうは健康局長に来ていただいているんですから、ちょっとお聞きしますけれども、こういった疾病はいろいろなものがあるとは思いますけれども、今回、疾病の治療ではなく生殖を不能にする手術を受けた者ということを決めようと思うとさまざまな困難があるんだと思いますが、何かいいアイデアがあるのか、ちょっとお聞かせいただけませんか、健康局長。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 正直申し上げていいアイデアというものは思いつきませんが、今回の判断に当たりましては、審査会の方で医学的な面も含めて審査をされるというふうに伺ってございます。

岡本(充)委員 つまり、大臣、私は、できるだけ、申請する方、本当に必要な方にきちっと、我々がこれからつくろうと思っている法律の思いが届くということが必要だと思う一方で、結局、外形的に対象者になる方がたくさん出てくるんじゃないか。しかも、万の単位。今の話を聞いていただいたらわかるとおり、一カ月で、帝王切開しているだけで八千人、九千人ですよ。先ほど言いました子宮摘出術をしている方は、万の単位でいらっしゃる。

 こういう方々が、外形的に手術の跡はあり、なおかつ、年を重ねてくると卵巣があるかどうかわからない、CTで見ても卵巣がわからない、こういう状況になってきた場合に、手術を受けていたときに生殖不能の手術をされていたかどうか、これを証明するのがなかなか難しくなるんじゃないか。今、健康局長も、にわかにはいいアイデアがないと言われたわけです。

 法律が成立後、公布から施行までに一定の時間がある可能性があると思います。そういう中できちっと、漏れがあってはいけないけれども、余り大きな、本来対象にならない方も含めて、外形的な要因ができてはまずいのではないか、こう思うわけでありますが、これについて、大臣、どう思われますか。

根本国務大臣 今回の法案では、対象者に該当することが明らかな場合には厚労大臣が速やかに一時金の支給認定を行う、それ以外の場合には、厚生労働省に置かれる認定審査会に審査を求め、その審査結果に基づき厚生労働大臣が認定を行うこととされている、これが法案の中身だと思います。

 そして、今、岡本委員からお話がありましたが、対象者に該当するかどうかの判断については、それが適切になされるように、認定審査会は医療分野を含めた有識者で構成されることとされており、また、認定審査会には、必要に応じて、請求者や関係人に対して報告や文書の提出などを求める権限が付与されていると承知をしております。

 その意味で、審査会の判断に関しては、今回の法案では、請求者及び関係人の陳述や医師の診断の結果などを総合的に勘案して、事案の実情に即した適切な判断を行うものとされておられると承知をしております。

 そしてさらに、先ほども、これまでの各先生の質問の中で、この法案の考え方、立法者の意思、これはかなり詳しく説明をしていただいたと思っております。

 特に、この審査会の判断等に係る基本的な考え方において、認定審査会は、請求者等の陳述内容を十分に酌み取って、収集した資料等も含めて総合的に勘案した上で柔軟かつ公正な判断を行うこと、明らかに不合理でなく、一応確からしいことを判断の基準とすることが、この法律の解釈、立法者の意思も基本的な考え方でも示されておられますので、これは基本的には審査会の判断ということで、厚労大臣には、先ほども話がありましたが、裁量の余地はないという趣旨の立法者の意思も示されたものだと思っておりますが、いずれにしても、これらのことを踏まえながら、厚生労働省として適切に対応していきたいと思います。

岡本(充)委員 審査会の決定に対して、厚生労働省は、大臣は、それに基づいて、決定に従うんだというところはそうなんですが、審査会にどういうふうに厚生労働大臣がお願いをするかというのは、厚生労働省でつくるわけですよ、どういう基準で、どういうふうにしていくか。

 そういう意味でいうと、じゃ、もう一回確認しましょうか。どちらの局長でも結構です。先ほど言った、疾病があったかないかは別として、生殖を不能とする手術を受けた可能性があるというふうに判断され得る方というのは結局何人ぐらいいるんですか。年数を掛け合わせると何人ぐらいいるんですか。どうですか。単年度、単月、それを掛け合わせて単純計算すると一体何人になるのか、説明してください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、一時金の対象となり得る年齢層の帝王切開の件数や子宮の摘出の件数等については、正確な数字を把握しておりません。

 そういう意味では、医療施設調査あるいはNDBでわかる数字は先ほどの数字でございまして、その中で、個別個別で審査会の判断をしていただくというようなことになるというふうに思います。

岡本(充)委員 まあ、計算をすればそれはわかる話なんですよ。かなり大きな数になり得るという意味において、その中で本当にどうだったのかということをきちっと理解するためには、やはりカルテが必要です。一方で、医師の協力がなければ審査が受けられないというのでは、やはりそれでは本来必要な方に届かない。これはほかの制度でも私は実感をしたわけでありますので、そういう意味で、この基準が極めて難しいわけです。

 各省、本当はいろいろな考え方を聞きながらやるべきだと思いますし、また、厚生労働省の中でも、こう言っては申しわけないですけれども、子ども家庭局の中だけで決める話ではないと思います。役所の中、厚生労働省の中でも、各局の意見を聞きながらきちっと審査のあり方、たてつけを決めていく、もっと言えば政府全体できちっと決めていく、こういう必要性があると思いますが、それについて、大臣、いかがですか。

根本国務大臣 現段階は、与党及び超党派の議員連盟で基本的な考え方をまとめられた段階であります。今後は、法案が成立、施行された段階で審査会を設置し、もう基本的考え方も示されておりますので、この基本的な考え方を踏まえて、その審査会のもとで具体的な審査基準を検討していくこととなると考えております。

岡本(充)委員 違う。子ども家庭局だけで決める話じゃないですよと言っているわけです。少なくとも厚生労働省全体、可能であれば政府全体で、どういう基準があるべきなのかということをきちっと協議して決めるべきですよと言っているんです。どうですか。

根本国務大臣 基本的には審査会で具体的な審査基準というのを検討していくこととなると思いますが、厚生労働省も、この法律を施行するわけですから、委員がおっしゃるとおり、子ども家庭局だけではなくて、ここは厚労省全体として取り組んでいく課題だと思っております。

岡本(充)委員 政府全体の中でもきちっとこれは協議をするべき話だと思いますので、そこは大丈夫ですね。

根本国務大臣 ここは、法律を所管している厚生労働省を中心として、具体的な審査基準、これは審査会で決めていただくものですが、厚生労働省として、中心となってお手伝い、多分お手伝いするという形だと思います、ということになろうかと思います。

岡本(充)委員 中心は厚生労働省としても政府全体だ、こういう理解でよろしいわけですね。そこだけ確認です。

根本国務大臣 関係省庁もありますので、それは関係省庁も含めてということだと思っております。

岡本(充)委員 そこで、ちょっときょうは財務省に来ていただいているんですが、一般論です。

 平成三十一年度予算が成立をしています。この段階で、数百億、数千億、幾らかわかりませんけれども、出費が生じるという場合にはどういう対応があり得るのか、これについてお答えをいただきたいと思います。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論でということでございます。今、法案そのものについては、提出される前でございますので、具体的なことのお答えについては差し控えさせていただきたいというふうに考えておりますけれども、一般論として申し上げれば、議員立法を含めて、成立した法律については政府として誠実に執行する義務があるということでございますので、法案の成立後、その趣旨を踏まえて適切に対応してまいりたいというふうに考えております。予算の計上及び執行に当たっても、それが適切に行われることは言うまでもないことかと思います。

岡本(充)委員 いや、どういう手法があるのかということを聞いているんです。適切にと言いますけれども、でも、だって予算はでき上がっちゃっているわけですから。どういう方法で出費することができるのか、こう聞いているんです。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しでございますけれども、法案が成立した後、その趣旨を踏まえて、必要な財源の規模あるいはタイミングなども見ながら適切に対応してまいりたいというふうに考えております。具体的な措置については御容赦いただければと思います。

岡本(充)委員 一般論だから。どういうことがあり得るのかと聞いている。例えばでもいいんですよ、こういうことだ、こういうことだといって。どういう方法があるのかと聞いている、一般論として。

宇波政府参考人 これを一般論で申し上げることは難しいわけでございます。それぞれ施策の中身に応じて予算措置をすることになります。委員がおっしゃっているように、それを毎年度の予算編成の中でやるとか、あるいはその他の方法で予算措置するとかいうことはあるわけですけれども、これを一般論で申し上げることは難しいわけで、法案が成立した後、その趣旨を踏まえて適切に対応させていただきたいと思います。

冨岡委員長 じゃ、ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こして。

宇波政府参考人 まことに恐縮でございます。法案が提出された後、その財源規模などについてもこれから後、政府としての答弁があるかというふうに思います。現時点で、法案が提出される前の時点では、先ほど申し上げたような一般論で恐縮でございますけれども、申し上げた次第であります。法案が成立した後、その趣旨を踏まえて適切に対応させていただきたいというふうに考えております。

冨岡委員長 難しいんですかね。一般論ではそこまでの答弁ですか。例えばということで、いいですか、後でまた聞いていただければと。

岡本(充)委員 じゃ、理事会に出してください、理事会に。どういうような方法があるのか、協議してください。

冨岡委員長 じゃ、理事会で諮ります。

岡本(充)委員 最後に、これは診療録を確認するというような手続が出てくる可能性があります。古い診療録を出すときにはいろいろ費用がかかるわけですが、この費用は病院が持つことになるんでしょうか、都道府県が持つことになるんでしょうか、それとも国が持つんでしょうか、そこについてお答えをいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 結論から申しますと、今回の法案に基づく医療機関における記録の調査につきましては、これは協力を求めるということでございまして、医療機関には努力義務がございますけれども、協力を強制するものではございません。

 ただ、今回の法案におきましては、請求書には氏名や手術を受けた医療機関名それから時期等を記載することとなっていると承知しておりまして、各医療機関等における調査につきましては、ある程度調査範囲を特定した上で実施することが可能であるということで、事務負担もそれほど大きくはならないものと想定をいたしております。

 医療機関等に対しまして医療機関関係団体等を通じまして丁寧に説明を行うことで医療機関等において適切に調査を行っていただけるよう、厚生労働省としても理解を求めていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 もう時間ですから終わりますけれども、これも答えていないです。いや、人数がすごくふえてきて申請する人がすごくふえた場合には医療機関への負担が大きいんです。一体誰がそれを負担するのか、きちっとこれも理事会に提出をしていただきたいと思います。

冨岡委員長 はい。諮ります。

岡本(充)委員 これで質問を終わります。

冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、優生保護法下の強制不妊手術についての委員長提案を想定とした一般質疑をされていると思います。私もそうしたいと思います。

 議員連盟を昨年三月に立ち上げ、法案作成PTの一員として私も参加をしてまいりました。最初は、正直、まとまるのかと不安なときもありました。ただ、先ほど西村座長からの報告もあったように、超党派の議連であり、参加をしているどの議員の方も、国会の責任、議員立法である、全会一致である、その責任を本当に重く受けとめて、責任を果たさなければならない、そういう立場で取り組んできたと思っています。

 決して満点ではありません。原告を始め当事者がいて、その方たちのために法案をつくってきたはずなのに、残念ながら、現時点では喜んでもらえるものとなっていません。

 では、どうするのか。法案はスタートにすぎません。議員立法として四八年に成立してから九六年の廃止まで、国会がほとんど関与しなかった立法不作為が問われているのです。一時金が極めて少ないとの指摘もあります。できればもっとふやしたいと、それは思います。

 ただ、対象をなるべく限定しない、一律支給というところにこだわった。認定制度によって厳しくはじかれることのないように考えたわけです。また、損害賠償を求めている訴訟とは別であること、つまり訴訟を縛るものではないということを明らかにすることも大事なことでありました。

 問題は、いかに一人でも多くの被害者に届けるか、そして、なぜこうしたことが起こったのか、再発防止のためにこれを真剣に検証することが求められている、このように思っております。

 資料の一枚目を見てください。これは、昨年の三月五日の超党派の議員連盟の設立趣意書です。全部読みたいですが、アンダーラインのところだけ読ませていただきます。「ナチスドイツの断種法を参考にしたという、優生思想に基づく旧優生保護法は一九九六年に優生思想に基づく条文を削除するなどの改正を行った上、母体保護法と改められました。しかし、優生手術を強制された被害者にとっては、結婚が破談となった方や、子どもを産み、育てるという夢を奪われた方、今でも健康被害を訴える方もいます。これらの行為は基本的人権である自己決定権や幸福追求権(憲法十三条)に対する侵害であることは明らかです。国からの正式な謝罪もなく、補償なども行われていません。」こうした認識のもとに、下の方に書いてありますが、「これ以上、被害者の方々を苦しめ続けてはなりません。人としての尊厳を守り、人権を回復していくためにも、支援を検討する必要があります。」と。

 まだここでは立法化ということは出ていないんですけれども、そのために必要ないろいろな調査や、それから当事者からいろいろなヒアリングをするんだ、こうしたことを決めての設立趣意書だったわけです。

 大臣に伺いますが、これまで厚労省は、当時は適法だった、合法だったからという答弁を繰り返してきました。今でもそうでしょうか。この議連の、これは超党派ですから歴代の厚労大臣も入っております、設立趣意書の趣旨に賛同いただけるでしょうか。

根本国務大臣 旧優生保護法については、今委員から既にお話がありましたように、昭和二十三年に全会一致で議員立法により成立したものと承知をしております。

 今回、ワーキングチームあるいは超党派の議員連盟の皆様が本当に取り組んでいただいて、今まさにこれから法案が成立されることになるかと思いますが、その意味では、この設立趣意書は、私は今見させていただきましたけれども、議員立法で今回こういう対応をしていただいている。その意味で、私は、この今回の法律のもとで、しっかりとこの法律を施行していく、取り組んでいくということが大事だと思っております。

 そして、この旧優生保護法については、現在、国家賠償請求訴訟が提起され、係争中でありますので、私の方から政府としての見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

高橋(千)委員 率直に言って、PTの議論の中で今の厚労省の答弁を何度も聞いてきたから、それが大きな壁になったんです。だから大臣に聞いています。政治家としての大臣に聞いています。

 当時、法律が確かにありました。でも、それで、今さまざま検証されてきて、だましてもいい、そういうことまで通知を出して、本来その法律に基づいても対象とならなかった人まで手術をされた、そうしたことはもう既にわかっているはずですよね。それでも、今でも、あのとき合法だったからいいんだという立場に立つのか。私たちは、それを乗り越えるために議論をしてきました。

 政治家である大臣にもう一度伺います。

根本国務大臣 繰り返しになって大変恐縮ですが、旧優生保護法については、現在、国家賠償請求訴訟が提起され、係争中でありますので、今、大臣としてということもありましたが、政府として見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

高橋(千)委員 極めて残念な答弁であります。

 政治決断が、やはり法律というのは、議員立法というのは、どこかで政治決断が求められると思うんですね。

 結局、裁判というのは、一つ終われば、いや、別の地裁もあるからとか、最高裁まで行かなきゃとなったら、もう、絶対時間稼ぎになる、間に合わないんですよ。だからこそこういう議論をしてきたわけです。ですから、大臣自身がこの現実をきちんと受けとめていただきたい。このことを重ねて指摘したいと思います。

 昨年三月二十八日付で、政府は、各都道府県に資料の保全を求める通知を出して、四月十二日付で資料の確認及び保全について依頼する通知を発出しました。

 これについては、最初、与党PTの求めによるというもので説明をされたわけですけれども、調査をする時点で、議連としては、調査の費用をまず国が補助すること、あるいは、対象を広げて、医療機関だとか福祉施設だとか、後でわかる児童相談所とかいろいろあるわけですよね、調査の範囲をできるだけ広げることを求めてきたわけですが、その点でも、厚労省は極めて消極的な姿勢でありました。

 青森県の健康福祉部によると、国が所有する台帳では二百六件の優生手術がされたとしているものの、手元に残る資料は百四十八件だったんです。だけれども、その資料を調査するために、実際には、さっき言ったように国は消極的なんだけれども、県としては関係機関にさまざま依頼して調査をしてくれました。年度末の大変忙しい中でありました。国は一切お金を出さないわけですけれども。

 でも、その中で、とても大事な資料が出てきたんですね。生活保護の相談台帳から十件、児童相談から四件、障害福祉サービスの受給相談の台帳から五十件。つまり、聞き取りをしていく中で、かつてそういうことがあったということを打ち明けた。それは、多分相談を受けたときはまだこういう議論をしていなかったと思うんですが、そのメモを見つけ出した。これは本当に貴重な取組だと思うんです。

 厚労省がこうした事例を承知しているのかということと、今後、立法化し、一時金をお支払いすることになったとしても、自治体の協力なしには絶対進みません。財政支援も含め、どのように自治体の協力を仰いでいくのか、考えをお聞かせください。

根本国務大臣 厚生労働省が昨年実施した調査において、今委員からお話がありましたが、青森県から、生活保護台帳、児童保護台帳、青森県障害者相談センター資料に優生手術に関する情報が含まれていたとの報告を受けております。御協力をいただきました。

 今回の法案では、都道府県が請求の受け付けや記録の調査、相談支援等の業務を担うこととされていると承知をしております。一時金の支給事務を円滑に実施するためには、委員御指摘のとおり、都道府県の協力は不可欠と考えています。

 また、そのような観点から、都道府県の行う事務処理に必要な費用については国が交付することとされていると承知をしております。

 厚生労働省としても、この法案が成立した後、速やかに都道府県との調整を開始するよう要請を受けたことも踏まえて、都道府県に対して事務説明会を、これを三月十八日に開催しましたが、行うなど、都道府県の協力のもとに円滑な法律の施行ができるよう準備を進めております。

 法案が成立した場合には、厚生労働大臣として、一時金の着実な支給に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。

高橋(千)委員 成立と同時に公布をし、施行していくということで準備を進めてくださっている、これはありがたく思っております。

 やはり、それぞれの県が頑張っていることをしっかりと評価していただいて、仕事がふえるわけですから、それにきちっと交付をしていく、そして相談がしっかりできるように対応していただきたい、このように思います。

 資料の2のところに改めて優生保護法の条文をつけておきました。この第一条が、「この法律の目的」とあるんですけれども、「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」と。

 この「不良な子孫の出生を防止する」という言葉、この条文を読んだときに、これをなぜ我が党も含め全会一致で議員立法で成立したのか、本当に驚いたし、悔しいし、明らかにしていく責任があると思っています、この経過について。

 そして、各報道機関も資料の掘り起こしに努力をされているわけですけれども、例えば毎日新聞が昨年の六月二十五日付で、強制不妊手術、三十四都道府県の情報公開による開示資料、これを細かく報道されております。

 その中には、やはり青森県の審査会の中での意見があったことですとか、あるいは、六九年発行の医学雑誌、日本医事新報の中で、県の現場では手術に対する疑問の声が表面化をしていた、ここの審査会の委員が、この資料の右側の方、四条のところが、要するに同意がなくてもいいということですとか、そうしたことに対して、憲法違反なのではないか、こうした意見を出しているということに対して厚生省が、当時は厚生省、回答をしなくてもよいというふうに答えたなどの記録があったと言われています。

 厚労省には、こうした疑義照会などの記録があると思うんですね。今回、こうしたものは全て公表すべきと思いますが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の件ですけれども、九〇年に精神科医らでつくる学会が青森県に出した質問書につきまして、「県は旧厚生省と打ち合わせたうえで、回答する必要はないとした文書を残している。」こういった報道がなされていることは承知をいたしております。

 厚生労働省におきましては、昨年、疑義照会への回答も含めまして、厚生労働省内において保有する旧優生保護法に関する資料を調査いたしまして、その結果、確認できたものにつきましては、個人情報等に該当する部分をマスキングした上で公表いたしました。

 御指摘の内容に係る記録につきましては、この調査におきまして確認できませんでしたので、公表資料には含まれておりませんけれども、別途、青森県におきまして保有していることは確認できております。

 今回の法案におきまして、国は、旧優生保護法に基づく優生手術等について調査を行うこととされているというふうに承知をいたしております。

 今後は、厚生労働省が保有していない過去の通知等につきましては、保有が確認された都道府県から提供いただくなど、必要に応じてこういった調査に協力、対応してまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 資料の一番最後に、昨年七月十一日付の東奥日報、ちょっと字が、縮小したのでとてもちっちゃくなっておりますけれども、左側の下の方に「担当局長 七三年に疑問視」ということで、そもそも、精神疾患のことを遺伝性だ、精神薄弱などを遺伝性などという医学的な見解がないのだ、根拠がないのだということなどを議論しただとか、あるいは厚生省の中からも疑問の声が上がっていたというふうなことが記事になっているわけですけれども、そうした今の審査会の委員の質問も含めて立ちどまるチャンスが幾らもあったのに、どうして突き進んできちゃったのか、このこともやはり、国会がどうだったのかも含めて検証する必要があるというふうに考えているんです。

 それで、この記事のメーンは、提案した方、あるいは当時どんな議論をしたのかということを書いているんですけれども、提案者である谷口氏の当時書いたものは、ちょっと読みにくいんですが、資料の三番目につけておきました。

 アンダーラインを引いているんですけれども、これも議連で、PTで勉強会をしたときに、産児抑制が強化される中で、このままでは優良な子孫が減って不良の子孫がふえるという逆淘汰が起こるのではないか、そういうことを考えて人口増加の抑制、出生の制限を行う以外にないということで議論をしていたということがわかっているわけなんですね。本当に、そこまで主張していたのかということに改めて驚くわけであります。

 この議論を最初に始めたときは、やまゆり園の事件もありましたけれども、今現在だって優生思想はあるんじゃないか、そういう問題意識を私たちは持っているわけですよね。そのことも含めて、再発防止のためにはこうした時代背景や国会での発言も明らかにしていく必要があると思うんですけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

根本国務大臣 旧優生保護法は昭和二十三年に全会一致で議員立法により成立をしたものと承知をしております。

 今委員が御紹介されたように、どうしてこういう法律が制定されたのか、その理由も今、資料でお配りされております。あるいは、当時の提案理由説明などにもその背景が書かれていると思いますが、この議員立法に至る背景、その意味ではさまざまなものがあったのではないかと考えられますが、いずれにしても、今のお尋ねについては政府としてお答えする立場にはないと考えております。

高橋(千)委員 ちょっと今の答弁は驚いたんですが。さまざまな背景がある、しかもお答えする立場にない、それは違うでしょう。それは違うと思いますよ。

 残念ながら時間が来てしまったので終わりますけれども、結局、誰がこれを検証するのかということを議論したときに、では、最後は国会が国会の責任でやろうということを決めたわけです。そのときに、当然それは、政府がその当時どんなことを言ったのか、国会もどういうことを言ったのかも含めて明らかにしていかなければいけない。少なくとも、前の大臣などが述べた再発防止という立場などは共有していただけると思うんですが、そういう意味で、大臣の誠意ある回答が得られなかったなということは非常に残念に思っております。

 時間が来てしまったのでもう言いませんけれども、きょう、資料に、4、5、6ということで、河北新報の、当時、最初に訴えてくれた方たちがどんな思いでしてきたのかという記事も載せておきましたので、見ていただいて、最後に大臣の御発言がありますから、少しそこに心を込めていただきたいなと決意をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。

冨岡委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 本日三回目、厚労では二回目の質疑ですが、私の一般質疑できょうは最後だと思いますが、二十分間いただきましたのでしっかり質疑していきたいと思います。

 きょうの厚労省の答弁を聞いていても、また最近の自公政権の動きを見ても、やはりちょっとおかしなところもたくさん出てきているなと思います。

 きょうだって、国交委員会でアイヌ新法の、通過しましたけれども、見ていても大丈夫かなという内容ですよ。そもそも、何十億、何百億というお金をかけてまた新たな箱物をつくって、しかも、赤字だったらどうするんだと言ったら国が補填すると言うし、アイヌの定義がどうか明確じゃない。

 さらには、それに対して、じゃ、どこがやっているんですか、協会さんが判断してと。その協会はどうやって判断しているのかと言ったら、戸籍を見ると言うんですけれども、じゃ、戸籍でわかるのかと言ったらわからないと言いますし。なおかつ、その戸籍がわからないので最後はどうするんですか、口頭で聞くとか。

 ちょっと変な法案、このまま通していいのかなというのが閣法でできて、なおかつきょう通過しましたけれども、まあ、うちは明確に反対しましたが、こういうものとか多々あります。

 大阪の選挙でも、大阪の自民党さんが、きょうは福島みずほさんも来ていますけれども、社民党から共産党さんの支援まで受けて、ちょっとおかしいですよ、最近。毒を食らわば皿までという言葉もありますけれども、ほんまに清濁あわせのみ過ぎて濁ばかりになってしまったら、おなか壊しますよ。おなかを壊して困るのは国民なんですよね。

 厚労省のきょうの答弁を聞いてもそうですけれども、本当にしっかりしていただきたいですし、政権与党、数を持っていらっしゃるんですから、本当に国民のことを考えて、国家百年の大計を見据えてやっていただきたいです。もうアイヌなんて本当に国家百年の大計を誤るものだと私は思っていますけれども。

 きょうは厚労の一般ということで、旧優生保護法ですけれども、同時にこの件も、議員立法じゃなくて、政府が本当は決断をしてやるべきだったんじゃないかなというふうに思います。

 例えば、改めて伺いたいんですけれども、旧優生保護法に対する現在の政府の見解、これは非常に曖昧じゃないですか。何で政府としてしっかり、どういうものだったのかという、きちんと政府としての見解を出せないんですかね。どうお考えなんですか。いかがですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、旧優生保護法につきましては、昭和二十三年に全会一致で議員立法により成立したものと承知をいたしております。

 現在、旧優生保護法につきましては、国家賠償請求訴訟が提起されております。係争中でございますので、政府としての見解を申し上げることは差し控えたいというふうに思います。

丸山委員 本当にそればかりですよ。

 例えば、じゃ、この旧優生保護法の違憲性についてはどうなんですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 恐縮でございますけれども、繰り返しになりますが、現在、旧優生保護法につきましては、国家賠償請求訴訟が提起され係争中でございますので、いずれにいたしましても、政府としての見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

丸山委員 きょうも恐らく傍聴で優生保護法の関係者の方が来られていると思いますけれども、今まさに裁判の話をされました。例えば過去の自民党政権でも、小泉内閣でしょうか、取り下げたものだってありました。和解に持っていく手だってあるわけですよ。政府として、自民党政権なんですから、議法だ議法だとか言わずに、政府として決断をするという手もあったと思うんですけれども、これもできないんですか。

浜谷政府参考人 繰り返しの答弁で大変恐縮でございますけれども、旧優生保護法につきましては係争中でございます。政府として見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

丸山委員 もうそればっかりですし、もちろん、今回の法案をガラス細工で積み上げてくださった多くの関係者の皆さんの御尽力に感謝申し上げたいと思いますけれども、しっかりこういったところにこそ政治のリーダーシップが本当は要る。リーダーシップをやはり一番とれるのは政権、政府という形だと思いますので、こういったところに自民、公明の政権の厚さを出せばいいのに、残念ながらできていないことに、おかしいと思いますし、何よりきょうのアイヌの件も、大阪の選挙も通じて、最近ちょっと変やないかなとすごく思います。しっかりやっていただきたいと重ねて申し上げますが、ただ、質疑で確認したいところもありますので、具体的に中身を聞いていきたいと思います。

 今回、一時金の支給が定められております。私としてはできる限り議法で、委員長提案という形ですけれども議法で出されて、提案者の立法意図をきちんと議事録に載せていただいて、それが次の、例えば同類の法案が出たときにしっかりそれを、こういった審議が残っているというのを残すべきだと私は理事会でも主張を申し上げまして、今回PTの座長も務められ、そしてこの法案に尽力されてきた田村委員から先ほどるる御説明がありましたので、これは非常に、述べていただいてありがとうございます。

 今回の法案を見ていると、過去の法案でどういったものがというのはほとんど残っていないんですね、委員長提案にしちゃうと残らないんですよ。具体的に、公式な文言として、議事録として残らないので。何で三百二十万円かというのはちゃんと残しておいていただきたかったので、お願いして述べていただいたことに、非常に感謝申し上げたいと思うんですけれども。

 こうした一時金の支給について定めているほかの国内法、今回のものは出されてからしか答えられないという話なので、ほかの国内法はどういったものがありますか。お答えできますか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 議員立法によりまして一時金を支払った例でございますけれども、把握している限り、類似の例として二つございます。

 一つは、ドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関する法律、これに基づく特別一時金。それからもう一つが、戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法、これに基づく特別給付金。この二つがございます。

丸山委員 これも余り残っていない、どういう経緯でみたいなのがちゃんと残っていなかったんですよね。

 同時に、海外の事例を今回るる御説明をいただいて、どうして三百二十かというお話がありましたけれども、ほかにも含めて、同様に、一時金の支給に対して海外でどのように定められているか、こういった事例を厚労省として把握されているのかどうか。もしあれば、その内容もきちんと確認したいので、お答えいただけますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 強制的ないし本人の意思によらない優生学的不妊手術を受けた方に対する一時金の支給に関する諸外国の事例、これといたしましては、先ほど来質疑で出ておりますスウェーデンにおきまして、一九九九年五月制定の一部の不妊手術を受けた者に対する補償のための法律によりまして、強制的ないし本人の意思によらない優生学的不妊手術を受けた者一人につき十七万五千クローナを支給したものがございます。

 また、ドイツにおきましては、ナチス時代の優生学的な不妊手術の被害者に対して補償が行われたものと承知をいたしております。これは一回限りの補償金として五千マルクを支払ったほか、一九八八年以降は戦禍通則法を適用して年金を支給している例がございます。

丸山委員 裁判が係属中だという話ですけれども、恐らく、この関係の皆さんが一つ懸念されているのは、裁判で判決が出た場合、この一時金はどうなるんですかと。これは別枠だと聞いているので、そういう理解でいいのか。この辺の、厚労省として現時点で言えることは何かあるんですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 現在係争中の訴訟に関する仮定の話につきましては、答弁を差し控えたいと思います。

丸山委員 結局、こういう形での委員長提案で、なおかつ政府答弁になると、やはりこうなってしまうんですよ。基本的には答えられない、しかもさらに裁判の状況だということで、何ら本当に必要な、未来に対して、過去どういう議論の経緯でこれが出てきたのかなと、正式に議事録に残したいのに、残念ながらこうして出てこないことは私は遺憾だと思いますし、なおかつ、今後、議員立法をやるときにしっかり議事録に残すということも、委員の皆さんに御配慮をぜひともいただきたいというふうに思います。

 さっきのアイヌの件も、この件もそうですけれども、自公の政権の中にも志を持っていらっしゃる方はいっぱいいらっしゃると思いますので、ぜひ、おかしなことは政権内でもおかしいと言っていただきたいと思いますし、我々も外からですがおかしなことはおかしいと申し上げていきたいというふうに思いますが。

 そういう意味では、裁判があるからこの辺のことは全部聞けないわけですね。ということですよね。だから、そういうことであれば、もう少し話をかえたいんですけれども。

 仮に、法施行の場合の話、裁判とは別の話ですね、そのときに私が気になっているのは、万が一逆の、国民の税金ですから、税金ですからね、しっかりと本当に必要な方に充てていただく必要があると思います。そうした中でも、法案を見ていると、万が一、不正受給みたいなものもあり得るんじゃないかなとすごく思います。

 特に、今回は幅広く多くの方を救おうという政治的な議法の決断もあって、明確に受けられたという方はもちろんですけれども、その部分が曖昧な方にもできる限り、確認はしながら支給ができるような仕組みになっているがゆえに、逆に不正も、要は、関係がないのに御自身でお受けになったように、もうどこの病院かも残っていない、病院も潰れてしまったと。そうした中で、私は違うのにもらえるやんか、三百二十万円ももらえるのかと。そんな不正があったら、この法の趣旨とは逆の、本当に救うべき方にお金が行かず、不正の方に行ってしまう。

 これはきっちり確認していっていただきたいんですけれども、法施行の場合には、この万一の不正支給に対する対策、こうした部分をどう捉えられているのか、お答えいただけますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来質疑で出ておりますけれども、今回の法案におきましては、対象者に該当することが明らかな場合には厚生労働大臣が速やかに一時金の支給認定を行います。それ以外の場合でございますけれども、厚生労働省に置かれます認定審査会に審査を求めまして、その審査結果に基づき厚生労働大臣が認定を行うこととされていると承知いたしております。

 また、一時金の支給認定が適切になされるように、認定審査会につきましては、医療、法律、障害者福祉等に関する有識者で構成されることとされております。また、厚生労働大臣あるいは認定審査会には、必要に応じて、請求者、関係人に対しまして報告や文書の提出等を求める権限が付与されております。

 こうした仕組みの中で、厚生労働省といたしまして、法案が成立しました暁には適切に対応していきたいというふうに考えております。

丸山委員 この法の中で、例えばこうした不正があった場合には何かしらの処罰がもちろんあるわけじゃないんですけれども、明らかに詐欺等刑法犯にその場合は当たると思うんですけれども、そういった対応をとる、役所としても。きちんとまず確認していく、そういうものがないようにする、本当に必要な方にきちんとお金が渡るようにする。同時に、万一、確認してその方々が不正だというのがわかればきちんと対処をする。刑事的な対処も含めて、きちんとそこに対しては対応するという理解でよろしいんですね。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 仮にですけれども、一時金の支給対象者に該当しないにもかかわらず、そのことを偽って一時金の支給を受けた場合には、これは刑法の詐欺罪に該当するものというふうに考えられますので、それに応じた適切な対応をする必要があるというふうに思います。

丸山委員 真に渡るべき方に渡すために、おかしなことに対してはしっかりと対応いただきたいと思います。

 同時に、今回の法案は、法の成立後直ちに施行ということで、本当にすぐに施行されるんですけれども、懸念するのは、都道府県で事務を受ける者も多いわけで、そうした中で、都道府県の事務方の対応がばたばたしないかな。そこでミスが、昨今ミスが多いので、そういった意味でミスが生じないか非常に大事ですし、現場の方は急なところもあってなかなかあれだと思いますけれども。そこに対して事前に手を打たれているというふうにも聞いていますが、改めて、きちんと都道府県の現場との連携はできますかね。どのようにお考えですか。

浜谷政府参考人 今回の法案は、公布日施行とされているものと承知しております。したがいまして、都道府県と連携して、円滑な施行に向けてのしっかりとした準備が重要であるというふうに考えております。

 これも先ほど来申し上げておりますけれども、与党ワーキングチーム、あるいは超党派の議員連盟からの要請も踏まえまして、三月十八日に都道府県に対する事務説明会を開催いたしました。この際、法案成立を想定いたしまして、必要な準備を行うよう依頼を行いました。

 また、一時金に係る認定のための調査あるいは一時金の支給手続の周知などにつきまして、関係機関、関係団体等に対しまして協力を依頼してまいりたいというふうに考えております。

 また、このほか、現在、請求に当たって必要となる請求書等の様式の整備、周知、相談支援等に活用いたしますリーフレットの作成など、必要な準備を進めているところでございます。

丸山委員 先ほどお話のあった、法文にも調査と周知の規定がありますので、しっかりこれはやっていただかなきゃいけないんですが、現在まではどのような対応を政府としてとられてきたのか、非常に関係者の皆さんも御意見があるところだと思います。お聞きしたいんですけれども、現在までどういったものを行ってきたのか、そして法施行でどう変わるんですか、このあたりを政府としてどう理解されるのか、お答えいただけますか。

浜谷政府参考人 まず、現在まででございますけれども、現段階ではこれから法案が起草される、こういう段階でございますので、そういう意味では、そういうことを想定しまして、都道府県等に対しまして準備を要請しているというような段階でございます。

 今後でございますけれども、今回この法案が成立した場合には、地方公共団体あるいは関係団体の協力も得まして、一時金の支給手続等につきまして十分かつ速やかに周知を行いたいと思っております。また、今回の法案の趣旨、内容につきまして、広く国民に周知を図りまして、御理解いただくようしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

丸山委員 本来、御関係の皆さんが周知をお願いしたいところは本当はそこではないと思いますし、そもそものこの問題のありようから、国としてどう考えていくんだというところも含めて、どう対応していくんだというところも含めてだと思いますけれども。

 本当にガラス細工のように積み上げていただいての今回の法案でございますので、もうこれ以上、これに対してぐだぐだ言うことはしませんけれども、しっかり法施行の後には寄り添っていただいて御対応いただけるようにお願い申し上げまして、そして、何よりこの法案の成立に向けて御尽力されてこられました全ての関係者の皆様に感謝申し上げまして、私からの質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

冨岡委員長 次に、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給に関し必要な事項等を定めようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、本法律案には特に前文を設け、旧優生保護法のもと、多くの方々が、生殖を不能にする手術又は放射線の照射を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことについて、我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする旨を明記しております。ここで、「我々は、それぞれの立場において、」とあるのは、旧優生保護法を制定した国会や執行した政府を特に念頭に置くものであります。

 さらに、前文では、今後、これらの方々の名誉と尊厳が重んぜられるとともに、このような事態を二度と繰り返すことのないよう努力を尽くす決意を新たにし、国がこの問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚して本法律を制定する旨を規定しております。

 第二に、国は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対し、一時金を支給することとしております。ここで、一時金の支給対象者である「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者」とは、旧優生保護法が存在した間に旧優生保護法の規定により行われた優生手術を受けた者、及び、当該期間に旧優生保護法に基づかずに行われた生殖を不能にする手術又は放射線の照射を受けた者であって、この法律の施行時に生存しているものとしております。

 ただし、母体の保護や疾病の治療を目的とするものなど、優生思想に基づくものでないことが明らかな手術等により生殖が不能となった者は、対象から除くこととしております。

 第三に、一時金の額は、三百二十万円としております。

 第四に、厚生労働大臣は、一時金の支給を受けようとする者の請求に基づき、一時金の支給を受ける権利の認定を行うこととするとともに、この請求は都道府県知事を経由してすることができることとし、請求の期限は施行日から五年とすることとしております。

 第五に、都道府県知事及び厚生労働大臣は、一時金の支給を受ける権利の認定に必要な調査を行うこととしております。

 第六に、厚生労働大臣は、一時金の支給の請求を受けたときは、請求者が旧優生保護法に基づく優生手術を受けたことを証する書面等がある場合を除き、厚生労働省に設置する旧優生保護法一時金認定審査会に審査を求め、その審査の結果に基づき、一時金の支給を受ける権利の認定を行うこととしております。

 なお、審査会は、請求者及び関係人の陳述、医師の診断の結果、診療録の記載内容その他の請求に係る情報を総合的に勘案して、事案の実情に即した適切な判断を行うこととしております。

 第七に、国及び地方公共団体は、一時金の支給手続等について十分かつ速やかに周知するための措置を適切に講ずることとするとともに、国及び都道府県は、相談支援その他一時金の支給の請求に関し利便を図るための措置を適切に講ずることとしております。

 なお、これらの措置を講ずるに当たっては、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者の多くが障害者であることを踏まえ、障害者支援施設、障害者支援団体その他の関係者の協力を得るとともに、障害の特性に十分に配慮するものとしております。

 第八に、国は、特定の疾病や障害を有すること等を理由として生殖を不能にする手術又は放射線の照射を受けることを強いられるような事態を二度と繰り返すことのないよう、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する観点から、旧優生保護法に基づく優生手術等に関する調査その他の措置を講ずることとしております。

 第九に、国は、この法律の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めることとしております。

 なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

冨岡委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。根本厚生労働大臣。

根本国務大臣 衆議院厚生労働委員長提出の旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案につきましては、政府としては異議はありません。

冨岡委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

冨岡委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十二日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会


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