衆議院

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第5号 令和2年5月19日(火曜日)

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令和二年五月十九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 穴見 陽一君 理事 勝俣 孝明君

   理事 武村 展英君 理事 冨岡  勉君

   理事 永岡 桂子君 理事 青山 大人君

   理事 尾辻かな子君 理事 古屋 範子君

      畦元 将吾君    伊藤信太郎君

      泉田 裕彦君    門山 宏哲君

      工藤 彰三君    佐藤 明男君

      繁本  護君    中村 裕之君

      西田 昭二君    百武 公親君

      藤丸  敏君    船田  元君

      堀内 詔子君    宮路 拓馬君

      石川 香織君    大河原雅子君

      下条 みつ君    西岡 秀子君

      宮川  伸君    山本和嘉子君

      浮島 智子君    畑野 君枝君

      串田 誠一君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            衛藤 晟一君

   内閣府副大臣       大塚  拓君

   内閣府大臣政務官     藤原  崇君

   厚生労働大臣政務官    小島 敏文君

   会計検査院事務総局第二局長            篠原 栄作君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            油布 志行君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     高田  潔君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    坂田  進君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     工藤 彰三君

  堀内 詔子君     中村 裕之君

  山際大志郎君     泉田 裕彦君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     繁本  護君

  工藤 彰三君     伊藤信太郎君

  中村 裕之君     堀内 詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  繁本  護君     山際大志郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、御報告いたします。

 当理事会におきまして、本案審査中、有識者又は専門家等を参考人として招致し、御意見を聴取してはいかがかとの提案がございました。

 しかし、委員長としましては、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発出されている中、感染の防止及び感染リスク軽減の観点から問題があるのではないかとの思いがございます。

 そこで、各会派の御協力を得まして、各会派で独自に有識者等の御意見をお寄せいただき、資料として取りまとめました。

 資料は、委員各位の参考に供するため、お手元に配付いたしております。

 この際、お諮りいたします。

 配付資料につきましては、これを本日の委員会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔資料は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総合政策局審議官油布志行君、消費者庁次長高田潔君、消費者庁審議官坂田進君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長篠原栄作君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。穴見陽一君。

穴見委員 おはようございます。自由民主党の穴見陽一でございます。

 この公益通報者保護法の改正につきまして、トップバッターで質問に立たせていただくことを大変光栄に存じます。

 トップバッターでございますので、基本的な法案についての質問からさせていただきたいと思っております。

 企業の法令遵守を目的として、平成十八年に公益通報者保護法が施行されておりますけれども、その後も、残念ながら、消費者の安全、安心を損なう企業の不祥事は相次いでございます。

 近年の例を挙げますと、自動車メーカーが長年無資格者に完成検査をさせていたという事例や、また、銀行みずからが書類を改ざんして融資を実行していたというようなケースもございました。こういった事例は、毎年のように、非常に重大な違反も繰り返されているわけでございます。

 このような法令違反は、消費者保護の観点から、早期に是正されなければなりません。その意味では、法令遵守を目的とする公益通報者保護法の改正が大変重要だと理解しておりますけれども、改めて、今般、政府として公益通報者保護法の改正が必要だと考えた理由について、お答えいただきたいと思います。

衛藤国務大臣 委員には、まずは、自民党の公益通報者制度の取りまとめに当たりまして、幹事として大変御尽力いただきましたことに、改めて感謝を申し上げる次第でございます。

 消費者の安全、安心を守るためには、事業者による不正行為の防止と是正を図ることが極めて重要であります。そのためには、この公益通報者保護制度が果たすべき役割は大変大きいものがあるというぐあいに認識いたしております。

 そうした考えのもとで、公益通報者保護法は平成十八年に施行され、その後も、消費者庁として、民間事業者や行政機関向けのガイドラインを策定、改正し、広く周知活動を行うなどの取組を行ってまいりました。

 この間、大企業や行政機関を中心に、内部通報制度の整備が進むなど、一定程度実効性の向上がなされた一方、近年も、消費者の安全、安心を損なうような事業者の不正行為が後を絶たない状況があります。

 そのため、事業者の自浄作用を十分に発揮してもらうことなどにより、法令違反行為が早期に是正される環境を確保し、公益通報者保護制度の実効性を更に高める必要があると判断し、必要な体制整備等を義務づけるなどの改正法案を提出したものであります。

 本改正法案により、公益通報を安心して行うことのできる環境をつくることにより、事業者の信頼性の確保につながり、事業者、消費者双方の利益になるものと考えております。

穴見委員 大臣、ありがとうございます。

 公益通報者保護法については、平成三十年の十二月に内閣府の消費者委員会から答申が出されておりますけれども、改正法案の提出までに一年以上かかっているわけでございます。

 この一年間どのような検討を進めてきたのか、お教え願いたいと思います。

大塚副大臣 消費者庁においては、公益通報者保護制度の実効性を向上させるために必要な法改正項目について、関係者の間で意見の隔たりが大きい項目が残っておりまして、この調整を丁寧にしていく必要がある、こういうことがあったわけでございます。

 そういう中で、消費者委員会の答申を踏まえて法制的、法技術的観点から整理を行い、幅広く関係者から意見を聞くというプロセスを進めてまいりました。

 この中で、令和元年十月には、自民党の方でも消費者問題調査会のもとに公益通報者保護制度に関するプロジェクトチームが設置をされまして、これは穴見先生も役員として大変重要な役割を果たしていただいたというふうに承知しておりますけれども、ことしの二月には論点を取りまとめをいただいております。また、同じく与党の公明党さんからもことしの二月に提言をいただいている、こういう状況でございます。

 こうした提言を踏まえて消費者庁において検討いたしまして、当初の答申から踏み込んだ部分もあったわけでございますけれども、最終的に今回の法案提出に至った、こういう経緯でございます。

穴見委員 副大臣、ありがとうございます。

 ただいま御答弁いただいたとおり、自民党でも、宮腰先生、大臣をお務めいただいておりましたので非常に強い責任感で座長をお務めいただきまして、小倉先生を事務局長として公益通報者保護制度に関するプロジェクトチームを立ち上げて、永岡先生、また柴山先生などに加えて、私もそのプロジェクトチームとして、熱心に、この制度をよりよくさせていただきたいという思いで議論をさせていただきました。

 また、公明党様におかれましても御議論いただき、提言がなされたところですが、このような意見を受けて、また消費者委員会の答申を受けて、さらに政府として、また、こういった、先ほど副大臣にもおっしゃっていただきましたけれども、守秘義務の重要性という答申の中にはなかった論点についても規定されることになったわけでございます。

 守秘義務の重要性につきましては、我が党のPTでも活発に議論がなされました。最終的にどうして守秘義務を規定することになったのかをお伺いしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 誰が通報したのかという情報が漏えいされ、不利益取扱いにつながる事案が見られることから、不利益取扱いを抑止する観点からは、公益通報者に関する情報漏えいの防止が極めて重要でございます。

 また、消費者庁の調査によれば、通報をためらう理由として、誰が通報したかが知られてしまうことへの懸念が多く挙げられています。公益通報者が安心して通報する環境を整備する観点からも、情報漏えいの防止を十分図る必要がございます。

 このような実態を踏まえまして、守秘義務を設け、刑事罰の対象とすることで、公益通報者が不利益取扱いを受けることなく安心して通報できる環境を確保することとしたものです。

穴見委員 ありがとうございます。

 ただいま、不利益な取扱いを受けることなく安心して通報できる環境を確保するとの御答弁をいただいたわけですけれども、不利益な取扱いを受けない、安心して通報できるということは、当然、通報促進という点からは重要な点でございます。この点では、不利益取扱いに対する行政措置を導入すべきだという立場があるということも承知をしております。自民党でも、この論点については、関係省庁からもヒアリングをするなどして、極めて精力的に激しく議論させていただいたところでございます。

 改正法案では、最終的に守秘義務は規定するものの、不利益取扱いに対する行政措置は含まれなかったと承知しておりますけれども、不利益取扱いに対する行政措置を改正法案に含まなかった理由をお答えいただきたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益通報者に対する不利益取扱いは、通報をちゅうちょさせ、事業者が法令遵守を図る機会を失わせるものであり、あってはならないと考えております。

 改正法案においては、従業員等に対する守秘義務を課すとともに、事業者に、公益通報者に関する情報が漏えいしない体制、公益通報者に対する不利益取扱いを防止する体制の整備を求めることとしております。このように、公益通報者に対する不利益取扱いを事後的にではなく事前に抑止することがまずは重要と考えております。

 他方、公益通報したことを理由とする不利益取扱いに関する事実認定については、当事者間で争われた場合、当事者双方の主張や証拠に照らして判断しなければならず、行政機関にとっては非常に困難であることなどから、今回は、不利益取扱いが生じた場合の事後的な行政措置ではなく、不利益取扱いの事前抑止に資する刑事罰つきの守秘義務を設けることといたしました。

 今般の改正によって不利益取扱いを抑止する効果がどの程度高まったかについては、施行後の実態も十分踏まえ、検証していきたいと考えており、改正法案の附則第五条にもこの趣旨を規定しているところでございます。

穴見委員 ありがとうございます。

 公益通報者保護制度の実効性を確実なものとするためには、今回の改正内容をしっかりと周知することも欠かせないと考えております。特に通報する側にとっては、どういう場合に自分が救われるのかということがわかりづらいと、通報をちゅうちょしてしまう懸念もあるわけでございます。

 このため、例えば、この法律が適用されて敗訴した事業者の判決が確定した場合、消費者庁がそれを公表すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

藤原大臣政務官 ただいま委員おっしゃられましたとおり、この法律が適用された判決を公表することにつきましては、通報しようとする者にとっては不利益取扱いから保護されることへの期待感を高めることにつながり、同時に、事業者にとっては不利益取扱いが禁止されることの認識を持つことにつながることから、おっしゃるとおり、制度の普及促進に有益なものであるというふうに考えております。

 今回の改正では、第十八条におきまして、公益通報に関する一定の情報の収集、整理及び提供について規定を設けることとしております。この法律が適用された判決もその情報の一つであり、消費者庁において把握した際には、十八条にのっとり、その内容をウエブサイト等において情報提供することを検討しておるところであります。

 また、あわせて、判決の名宛て人である事業者名も公表することを検討していくところであります。

穴見委員 ありがとうございます。

 この不利益取扱いに関しては、さまざまな論点が自民党の中でも議論をされまして、裁判によって結果が出た場合は公表するというお話ですけれども、当然、行政措置について要望している立場からは、裁判では時間がかかるし費用もかかる、そういった負担を通報者にかけるのではなくて、事前に行政によってそのような指導がなされるべきではないかというような意見があるわけであります。

 ただ、それだけの行政能力というか、今の消費者庁の実態に即して、また、実際に、こういった不利益取扱いの事案というのは、多くは労働関係法規に抵触をして、労働審判であるとかさまざまな、この法律にかかわらないところのほかの法律で処理されるべき、そういった事案も多々あろうということであって、その前さばきのところが非常に重要なんだろうというふうに考えてございますし、また、そういう議論をさせていただいたわけであります。

 それでは、時間も迫ってまいりましたので、最後に、今回の法案に対する大臣の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

衛藤国務大臣 繰り返しになると思いますけれども、消費者の安全、安心を損なう事業者の不祥事を早期に是正をし、被害の防止を図るために、公益通報者保護制度の実効性を向上させることが極めて重要であると認識いたしております。

 公益通報を安心して行うことのできる環境をつくることは、消費者の利益につながるだけではなく、企業の信頼性の確保につながるなど、事業者、消費者双方の利益になるものです。

 このため、今般、与党での熱心な御議論も十分踏まえ、法案として提出させていただきました。改正法案は、我が国経済社会の健全な発展にとって重要なものであるため、ぜひとも今国会において御賛同いただきたいと考えています。

 私としても成立に向けて全力を尽くしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

穴見委員 最後に、何点か指摘をさせていただきたいと思うんですけれども、そもそも、この改正法案そのものが、本来、公益通報者保護法によっては五年後に検討して修正等々対策をということだったのが、十四年以上、つまり三倍近くかかって初めてきょうここに至っているということは、決してあしき前例としてはならないんだというふうに思います。

 今回、附則五条で、今回の法改正に伴うさまざまな状況を勘案した上で、三年後に見直しが行われるというふうに書かれてありますけれども、本当にちゃんと三年後にやっていただかなければ困るということだろうと思います。残された、積み残しになった論点も多々あって、消費者委員会の中で指摘されていた内容についても、まだまだ十分に酌み取れていないところもございます。

 そんな中で、まだまだ、日本の消費者保護の観点から考えたときに、国際的に見てもかなり立ちおくれていると言わざるを得ないと思います。外国人から日本での消費生活についてのさまざまな御意見を伺うに、非常に消費者に冷たいといいますか、事業者側が、例えば返品措置一つにしても、又はクレームの受け付け一つとっても、非常に手続が煩雑かつ拒否的であって、非常に消費生活を送りにくいというような声も聞いております。

 ほかの国では、返品はすぐにでも、一カ月以内だったらいつでもできるとか、三カ月以内だったらいつでもできるとか。日本の場合は、それに対して、写真を送れだの書類を書けだの、いろいろ手続論を押しつけてきて、そして最終的には、事務的に消費者を疲弊させてそういった措置に応じない等々の、そういった問題も指摘されております。

 結局、今、SNS時代にもなって、企業の不祥事というのが簡単に拡散される時代になってきたと思います。私も経営者ではあるんですけれども、その観点からしても、やはり、こういった公益通報者保護制度をしっかりと整備することによって、逆に、そういった無秩序な形で拡散されて、コントロールできない社会的な制裁に企業がさらされるよりも、やはり正当な方法で通報して、そして、通報者保護制度が使いやすくなって初めて、そういった無秩序な、さまざまな怪情報の漏えいによって企業が社会的制裁を受けたり、それは誤解に基づくというようなことも含めて、そういったことで企業価値を損ねてしまったりというリスクがかえって高まるわけであります。

 そういう意味においては、今回このような法案で、ようやく党としても各界からの合意がとれたということで、成立に向けて懸命に努力してまいりましたし、これからも野党様の御理解もいただきながら成立させていこうと願っておりますけれども、本当に積み残しは非常に大きいし、やはりこういった消費者保護の法律が弱い、若しくは行政能力が弱いということでもって日本の企業を甘やかして、国際競争力を結果として下げて、最終的には企業のためにならない、若しくはそういった予測不能な、コントロールのできないいろいろなルーモアの中で企業が傷ついていくという中で、日本の企業自体が弱体化していくことにつながってはならない、そういう思いもあるわけでございます。

 どうか、法律がもし成立した暁には、しっかりと行政能力を高めていただいて、日本の消費者を守り、また、それはひいては日本の企業を鍛え上げる、そういうよき法律となることを祈念いたしまして、質問を終えさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、武村展英君。

武村委員 自由民主党の武村展英でございます。

 きょうは、お時間をいただきましたこと、心から感謝を申し上げたいと存じます。

 この審議を通じまして、公益通報者保護法、この法律だけではなく、ガイドライン、指針も含めた、法律の運用も含めた、そうした全体が重要なんだろうというふうに思います。

 また、内部通報者保護制度、これは内部統制の一環をなすものであります。内部統制というものは経営者が構築するものであって、最終的には経営者がど真剣になって取り組まなければ、この制度は骨抜きになってしまいます。経営者の意識を高めていくことが重要だと思いますし、また、今回、公認会計士監査、財務諸表監査との関係についても触れさせていただきたいと存じます。

 それでは、質疑に入ります。

 最近の不祥事についてお聞きしたいんですが、どのようなものがあるか、また、上場企業の不適切会計に絞って言えば、これは最近どういう状況にあるのか、消費者庁、金融庁からそれぞれお聞きをしたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 最近の企業不祥事といたしまして、例えば、国の規制に反して、資格を持たない者が自動車の完成検査を実施していた事例、保険契約の乗りかえにおいて、保険料の二重払い、一時的な無保険状態の発生等の不適切な販売が多数生じていた事例、国の承認と異なる製法で血液製剤を製造していた事例などが存在しております。

 これらの事例においては、一部の従業員において法令違反が認識されていたものの、早期の通報や通報を受けた違反行為の是正へとつながらないといった実態が見られました。今回の公益通報者保護法の改正は、こうした実態を踏まえて検討してきたものであります。

油布政府参考人 不適切会計の状況についてお答えいたします。

 民間調査会社の集計でございますが、二〇一九年の暦年一年間に不適切会計を開示した上場企業は七十社でございます。これは、二〇一九年度でとりますと六十九社ということでございますが、いずれにせよ、二〇〇八年に集計を開始して以降、一番多い数字となっているということでございます。

 その背景につきましては、企業側の不適切会計の数自体がふえた可能性ももちろんございますし、監査法人による発見の数がふえたといったような可能性もございますので、一概にお答えすることは難しいのでございますけれども、金融庁といたしましては、いずれにしても、引き続き動向をしっかり注視してまいりたいということでございます。

武村委員 ありがとうございました。

 前回、法制定のときにも、さまざまな不祥事が契機となってこの制度が導入されたというふうに存じておりますけれども、それは今の状況の中でも余り変わることはなく、また、不適切会計に限って言えば増加傾向にある。こうした制度の中で、やはり、内部統制そして公益通報者保護法の強化というものはこれからますます必要になってくるというふうに思います。

 それでは、公益通報者保護法の改正についてお聞きをしたいと思います。

 実効性のある法制定、これは、表面的には、私は諸外国に比べて極めておくれているというふうに認識をしています。これほどまでに法改正がおくれた理由、その認識をお伺いいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者庁といたしましては、平成十八年の法施行以来、法の施行状況に係る調査を実施するなどし、その結果を踏まえて、事業者が取り組む事項を明確化、具体化するなどの観点から、ガイドラインの策定、改正や制度の周知、広報に取り組むとともに、適切な内部通報対応体制を有する事業者に関する認証制度の推進など、制度の実効性向上に向けて必要な対応を行ってきたところでございます。

 また、法改正に向け、諸外国の制度の最近の状況を調査したほか、平成三十年十二月に取りまとめられた消費者委員会の専門調査会の報告書には、更に関係者間の丁寧な調整を実施する必要がある論点があったため、取りまとめ後も、関係者の意見を丁寧に聞き、調整を進めてまいりました。

 こうした制度の実効性向上に向けた取組や調整の結果、今国会においてこの改正法案を提出した次第でございます。

武村委員 ありがとうございました。

 二ページ目をごらんください。

 確かに、法改正は随分おくれている状況です。しかしながら、法律の改正という形式ばかりではなくて、法律をどのように運用していくのか。ガイドライン、これは私の資料でもつけさせていただきましたけれども、こうしたものの中で実務的に重要な点を非常にたくさん取り上げておられます。こうしたものを含めた全体の運用が重要だというふうに思います。この点は、後ほど改めて議論をさせていただきたいというふうに思います。

 続きまして、ここからは、内部通報についてお伺いをしたいというふうに思います。

 内部通報制度は内部統制の一環であるというふうに言われています。内部通報制度を単体だけで考えるのではなくて、経営を規律するガバナンス、そして経営者が経営管理目的で構築をする内部統制、こうしたものの中で一体として内部通報を整備していく必要があるというふうに考えますが、消費者庁の認識をお伺いいたします。

大塚副大臣 武村先生は、公認会計士として、非常にプロの視点で、日ごろから消費者行政、公益通報制度、御指導いただいているわけでありますけれども、今回の質問を受けまして、まことに鋭い御指摘だなというふうに思ったわけでございます。

 公益通報制度は消費者庁が所管をしており、同様に、内部通報、内部統制システムを規定するルールとしては、法務省が所管している会社法もございますし、金融庁が所管している東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードというのもございます。また、経団連も、独自にそういったガイドラインのようなものを設けているところもあるわけでございます。

 目的が同じ部分とそうでない部分もあるわけですけれども、しかし、整えるべき体制という意味ではかなり重複してくるところもあろうと思います。信頼性を持って従業員が駆け込むことができる相談窓口をしっかり整備をするということになるんだと思いますけれども、また、目的が違いがあるとはいっても、やはり、先ほど穴見委員の質疑の中でもありましたけれども、近年、SNSとかそういったところで無秩序にいろいろなことが拡散していく、こういう中にあって、企業にとっても、内部通報体制をしっかりとっておくということが、自律的に違法、不適切な状態を是正していく最後のチャンスということにもなるわけであります。

 そういう企業にとっても大事な体制をしっかり整備をし、それを公益通報の体制としっかり一致をさせて運用していくということが非常に重要だろうというふうに私も思っているところでございまして、多分、体制の整備を公益通報保護法の改正で求めていっているわけでありますけれども、その整備すべき体制をどう評価していくかとか、そういうシステムを整えていく中で、内部統制システムのところから途切れることなく一貫したシステムとして公益通報の保護に至るようなシステムを整えていくということが非常に重要じゃないかな、こういうふうに思っておりますので、私もそういうふうに指導していきたいというふうに思っております。

武村委員 ありがとうございました。

 三ページ目をごらんください。内部統制の検討のこれまでの経緯をまとめた資料です。

 その中では、二〇〇〇年、平成十二年に大和銀行株主代表訴訟事件、これは地裁での判決ですが、初めて、内部統制を適切に整備、運用する責任が取締役等にある、これは監査役も含んでいるというふうに解しますが、取締役や監査役にあるという最初の判例が出ました。そこから、二〇〇二年、当時は商法でしたけれども、商法が改正をされ、体制整備が義務づけられました。金商法では、二〇〇六年に内部統制報告制度、日本版SOXが導入をされたわけであります。

 一つここで留意をしておきたいのは、取締役や監査役に内部統制の整備それから運用の責任があるという、こうした今で言う会社法の規定ですね、これは大企業だけではなくて中小企業にも同じようにあるということです。配付した資料では四ページ目になります。

 この内部通報制度というのは、内部統制の最後のとりでになっています。理想的には、そもそも不祥事が発生しない、事前に防止をするのがこれは理想ではありますけれども、どうしても発生をしてしまった、その際には内部通報制度が最後のとりでになっているわけで、企業がみずから自浄作用を果たせるかどうか、それの非常に重要な点だと思いますので、私は、中小企業であっても、ぜひとも、実務の負担はあろうかと思いますけれども、前向きに捉えていただくことが重要だというふうに思っています。

 そして、これは、法律の改正だけではなくて、運用をどうしていくのかということが重要だというふうに思っています。そういう意味では、今後、法改正の後に指針を定めるということをお聞きしております。この指針をどのように定めていかれるのか、その御認識をお伺いいたします。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法案においては、事業者に義務づける体制整備の内容について指針を策定することとしており、指針では、事業者が最低限実施すべき事項を定めることを想定しております。

 具体的な内容は、今後、関係各方面の御意見も踏まえて検討してまいりますが、例えば、通報者に対する不利益取扱いを禁止すること、通報に関する情報の共有範囲を、窓口担当者、調査担当者等の公益通報に対応する担当者やそれらの管理責任者にとどめること、通報者に対する不利益取扱いをした者や情報を漏らした者への懲戒その他適切な措置や漏えいの拡大防止及び再発防止に関する内規を定めるとともに運用すること等を指針で示すことを想定しています。

 また、消費者庁では、これまで、この法律を踏まえて各事業者が取り組むことが推奨される事項を具体化、明確化するなどの観点から、各ガイドラインを策定、改正し、周知及び普及に向けて取り組んできたところでございます。

 今回の改正法案が成立した暁には、指針を策定する一方で、改正内容を踏まえ、各ガイドラインの内容を見直し、通報制度が実効的に機能するよう取り組んでまいりたいと考えております。

武村委員 ありがとうございます。

 これまでの取組の中におきましても、ベストプラクティスとしてガイドラインを制定されています。これは五ページ目に載せさせていただきましたけれども、こうしたベストプラクティス、そしてまた認証制度、自己適合宣言認証制度といったものも導入をされていまして、こうした取組、よい取組というのは企業価値を上げていくものであって、こうしたものはぜひ続けていただきたいというふうに思いますし、指針として最低限のものを実務的に定めていかれるということであります。こうしたガイドラインというような取組も残しつつ、新たに指針というもので実務的な点も担保をしていく、ぜひこうした、有効といいますか、効果のある法の運用に努めていただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間が迫ってまいりましたので次の質問を飛ばさせていただきまして、こうした内部統制の一環を占める内部通報制度ですが、この法改正が財務諸表監査に及ぼす影響についてお伺いをいたします。

油布政府参考人 財務諸表監査について申し上げますと、数年前の不正会計事案を踏まえまして、金融庁に会計監査の在り方に関する懇談会が設置されまして、平成二十八年に提言を取りまとめておりますが、その中におきましても、不正会計を発見できなかった一因として、内部通報制度が機能していなかったこと、あるいは、その上で、内部通報制度につきましては、窓口の存在の周知徹底、あるいは通報者が安心して意見を言える制度とするということなどが提言されていたところでございます。

 今回の法改正の結果、経営者などに対します牽制機能が働き、会計不正の抑止という観点からも質の高い財務諸表監査が可能になることを期待してございます。

武村委員 ありがとうございました。

 ここからは不適切会計についてお話をさせていただきたいというふうに思いますが、不適切会計をめぐりましては、日本公認会計士協会は、この十五年から二十年、ひたすら不正発見の姿勢を強化してまいりました。しかしながら、内部通報制度を含む内部統制は、経営者によって無効化をすることができます。また、内部統制というものは担当者の共謀によっても無効化をされることがあり、一定の限界があるというふうに言われます。

 私は、こうした経営者不正に対しては罰則の強化が必要だというふうに思います。この内部通報制度にしましても、形だけ整えるのでは何の効果もありません。経営者自身の姿勢、それから意識というものをこれからますます高めなければ、こうしたものの実効性は上がりませんし、こうしたものを骨抜きにしようと思えば何とでもできる、そういったものだというふうに思います。

 私は、最終的には、経営者不正に対しては罰則の強化が必要だというふうに思います。この点につきまして、金融庁の御見解をお伺いいたします。

油布政府参考人 財務諸表に関する責任につきましては、会計監査人には、独立した立場から財務諸表の適正表示について意見を表明する責任がございます。その一方、内部統制システムの構築も含めまして、正しい財務報告を行う責任は、一義的には財務諸表の作成者、すなわち経営者にあるということでございます。

 こうした責任を負う経営者等に対しましては、不正会計を行わないよう実効的な牽制機能を働かせることが重要であるということで、刑事上、行政上、民事上の制裁など、いろいろな方策が用意されてございます。このうち刑事上の責任についてその法定刑の上限を申し上げますと、現在、有価証券報告書等の虚偽記載は経済犯罪の中では最も厳しい水準とされているということで、これは先生もう御案内のとおりでございます。

 この点を踏まえまして、繰り返しになりますけれども、不正会計を行おうとする、そういう誘因のある経営者等に対しましては、牽制機能が十分に働く状況にあるということが重要であると考えております。このため、金融庁といたしましては、この牽制機能の発揮状況につきまして常に問題意識を高く持ちつつ注視するとともに、必要に応じまして適切に対応してまいりたいと考えてございます。

武村委員 ありがとうございました。

 参考資料の七ページ目には、日本公認会計士協会会長手塚正彦さんの会長声明を添付しています。先ほど冒頭に質問をさせていただきました、不適切会計の最近の事例が増加をしている、それに対応して会員また準会員に対して注意喚起をする、そうした文書であります。

 最後のページ、八ページ目には、監査制度の整備ということで、この二十年余り、さまざまな企業の不祥事がありました。それに対して、「会計監査に関する制度的な対応」、この中では、不正発見の姿勢の強化を、ひたすらこの不正会計というものに正面から向き合って、みずからの能力を高めていく、そしてツールを開発していく、そうした努力の一環がこの制度的な対応の中で読み取れるものというふうに思います。

 ぜひとも、最終的には、会計監査というものにはおのずと限界がある、このことから、経営者の意識を高めていく、このことは内部統制だけではなく、この内部通報制度についても同じように言えることだというふうに思いますので、ぜひとも消費者庁や金融庁の皆様にはこうしたことも踏まえてこれからお取組をいただきたくお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 本日は、公益通報者保護法改正案について質問をしてまいります。これまでのお二人の質疑者と重なる部分もございますけれども、立法の趣旨、また改正点の論点について順次質問を行ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 近年、自動車のリコール隠しであるとか、また保険の不適切販売等、社会問題化する企業の不祥事が絶えません。公益通報者保護制度の重要性が再認識をされていると思います。消費者の安全、安心を確保する観点からは、公益通報を通じた法令違反行為の未然防止と早期是正を一層推進するとともに、通報者が通報を行いやすく、また、より保護されやすくする必要があります。制度の実効性を高めるために、法改正を急ぐ必要がございます。

 同法案は、平成十六年、成立となりました。私も、議員になったばかりでございましたけれども、党内での議論に参加をいたしました。公明党としても大変活発な議論を行い、成立させることができました。

 そして、平成十八年四月に施行されてから十四年が経過をしてしまいました。消費者庁の調査結果によりますと、事業者における不正を発見する端緒の第一位、これは内部通報であるということから、法制定の意義があったというふうに考えます。

 本年二月七日、公明党消費者問題対策本部、また内閣部会で衛藤大臣に提言を提出をさせていただきました。

 現行法の附則第二条では、法施行後五年をめどに、法の施行状況について検討を加えて必要な措置を講ずる旨の記載がされております。ガイドラインの作成はしたものの、なかなか抜本的な改正というのは行われずにまいりました。こうした中で、企業の内部通報制度が機能せず、大きな不祥事に発展してしまうという例、また、通報者が企業から不利益処分を受けた事例などが相次ぎまして、公益通報者の保護が図られるとは言えない現状があります。

 今回の改正では、企業みずからが不正を是正しやすく、安心して通報ができる、行政機関等への通報を行いやすくすることを目的として改正がなされております。通報者の範囲に退職者及び役員を追加するとか、あるいは通報対象事実の範囲に個人の生命身体の保護等に係る法律で過料の理由とされている事実を追加するなどなど、改正点が盛り込まれております。通報者保護が強化される内容になっておりまして、本改正案の早期成立が望まれるところでございます。

 まず、この法改正から、十四年も経過しているにもかかわらず、これまで抜本改正が行われなかった理由についてお伺いいたします。

 また、内部通報は極めて重要になっておりますので、法改正は、今、時代が求めていると思います。本改正案の一刻も早い成立に向けて、大臣の決意をお伺いいたします。

衛藤国務大臣 まず、古屋委員には、公明党の各委員会における議論を終始リードしていただきまして、そして、本日の、与党全体の中の案を入れて、ここまで、抜本改正にこぎつけたことに対しまして、改めまして感謝を申し上げる次第でございます。

 消費者庁としては、平成十八年の法施行以来、法の施行状況にかかわる調査を実施するなどし、その結果を踏まえて、事業者が取り組む事項を明確化、具体化するなどの観点から、ガイドラインの策定、改正や、制度の周知、広報に取り組むなど、制度の実効性向上に向けて必要な対応を行ってきたところでございます。

 また、法改正に向けては、平成三十年十二月に取りまとめられました消費者委員会の専門委員会報告書には、更に関係者間の丁寧な調整を実施する必要がある論点があったために、取りまとめ後も、関係者の意見を丁寧に聞き、調整を進めてまいりました。

 こうした制度の実効性向上に向けた取組や調整の結果、今国会においてこの改正法案の御審議をお願いすることとなったものであります。

 今般の改正法案は、公益通報者保護制度を大きく充実するものであり、我が国の経済社会の健全な発展にとって重要なものになると考えております。

 担当大臣として、早期成立に向け万全を期したいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

古屋(範)委員 私も、この十四年ぶりの改正、大変重要だと思っております。消費者の保護、ひいては安全、安心な国民生活を築いていくためにも、一刻も早い成立を期して頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、不利益取扱いに関する行政措置についてお伺いをしてまいります。

 専門調査会報告書におきましては、不利益取扱いに対する抑止の観点から、通報を理由として通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を導入した上で、具体的措置として、助言、指導を行うほか、重大かつ悪質な事案を対象に勧告を行って、勧告に従わない場合は公表することができることとすべきということが盛り込まれました。

 裁判例あるいは消費者庁の調査結果を見ますと、まだまだ、公益通報を理由とした解雇その他の不利益取扱いは依然として行われていると思います。雇いどめであったり、業務上必要性とは無関係な配転命令、解雇など、希望する業務の担当から排除される、このような事例が続いております。民事ルールだけでは不利益取扱い抑止の効果が十分ではないということが言えるかと思います。

 今回、通報者に不当な扱いをした企業に対する行政措置や罰則の導入は見送られました。この不利益取扱いを抑止する効果を期待して、行政措置を求める声というのは大きいというふうに思います。

 今回、先ほど委員長からも御発言がございましたように、新型コロナの緊急事態宣言発令下で、理事間で知恵を出し合いまして、委員長に御決断をいただいて、各団体から書面で御意見を頂戴いたしました。

 その中でも、例えば、全国消費者行政ウォッチねっと事務局というところからも、通報者への不利益措置は、消費者、投資家を含む社会全体の利益に反する悪質な行為として刑事罰、少なくとも行政措置の対象にすべきだという御意見をいただきました。また、全国消費者団体連絡会からも、不利益取扱いに対する行政措置に関しては、今回見送った理由となるさまざまな課題についてどう対応するのか、課題解決に向けた道筋をつけてほしいというような御意見をいただいているところでございます。

 こうした不利益取扱いを抑止するということに関して、内部通報したことによる不利益なのか、あるいは、いや、それは営業成績とか通常の人事に従って行ったものだというふうに言われると、この区別が、なかなか立証していくというのは難しいだろうというふうに思います。

 今回の法案で不利益取扱いに対する行政措置が導入されなかった理由についてお伺いしたいと思います。また、不利益取扱いに対する行政措置の導入については、改正法で、附則五条に施行後三年をめどとする見直しが規定をされております。検討の内容、また今後のスケジュールについてお伺いをしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、制度の実効性確保のため、行政措置という事後的な対応ではなく、不利益取扱いを事前に抑止することが重要と考えたところでございます。

 この観点から、改正法案においては、従業員等に対する守秘義務を課すとともに、事業者に、公益通報者に関する情報が漏えいしない体制、公益通報者に対する不利益取扱いを防止する体制の整備を求めることとしております。

 これに対し、不利益取扱いに対する行政措置については、事実認定や執行体制に多くの課題があることから、今回の改正法案では導入しないことといたしました。

 また、施行後三年を目途とする見直しの内容につきましては、附則第五条の趣旨を踏まえ、まずは消費者庁において施行後の状況についてしっかりと把握、分析していくことが必要であると考えております。

 それらの分析結果等も踏まえ、不利益取扱いに対する行政措置や刑事罰、立証責任の転換など、どのような対応が適当かについて、関係者の御意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 公明党の提言にもこのことは盛り込ませていただきましたけれども、ぜひ次の改正に向けて前向きな検討を行っていただくようにお願いをしたいと思います。

 次に、公益通報者の救済について伺ってまいります。

 現行の保護法では、公益通報したことを理由に解雇とした解雇の無効、そのほか不利益取扱いの禁止が規定をされております。実際には、解雇や不利益取扱いを受けた公益通報者は、解雇無効など救済を求める場合には、最終的に民事訴訟で争う、裁判を起こすこととなります。現状では、内部通報をした人が不本意な人事の扱いを受けたこととして裁判で争う事例というのは少なくありません。

 裁判では、不利益取扱いが公益通報に対する報復であるということを説明する責任、立証責任は公益通報者の側にあります。しかし、通報者が公益通報と不利益取扱いとの因果関係を立証するというのは大変難しいことであります。容易なことではありません。

 勧告などの行政措置をするには、通報対象事実に該当するかどうか、また、各法令を所管する行政機関と連携して厳格な事実認定をする必要があるために、消費者庁の機能強化は欠かせないというふうに思います。まだまだこの消費者庁の調査体制というのは整っていないのではないかと思います。

 公明党の消費者問題対策本部の提言の中におきましても、勧告や公表が確実に実施できるだけの行政の体制強化、また、裁判における立証責任について通報者の負担軽減ということを訴えさせていただきました。

 今回の改正で、内部通報者に対する報復を防ぐ手だてが尽くされているのか、あるいは、公益通報者の救済を実効性ある制度にすることが報復の抑止につながると思いますけれども、通報者が本当に安心して通報ができるのかどうか、安心できる制度をつくるべきだと思います。

 今回の改正で、先ほど申しましたように行政措置の導入は見送られましたけれども、これで公益通報者に対する不利益取扱いを抑止する制度として機能していくのか、安心できる通報制度になるのか、真に公益通報者の保護に資するものとなるのか、その実効性について消費者庁にお伺いをいたします。

高田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案では、保護の対象となる公益通報者の範囲や通報対象事実を広げることとしたほか、公益通報者が不利益取扱いを受けてしまった場合においても、権限のある行政機関や行政機関以外の外部通報先への通報の保護要件を緩和するなど、訴訟においてより救済がされやすくなる制度といたしました。

 また、訴訟以外においても、第三者が介在して個別の労働紛争解決のあっせんをする制度として、労働審判のほか、厚生労働省や各都道府県等の関係機関、いわゆるADRがございます。

 今後、これらの制度を運用する機関との連携を図ることで、不利益取扱いの救済がされやすくなる取組を進めてまいります。

古屋(範)委員 私たちの提言の中でも、専門調査会報告書の提言も踏まえて、今後制度を更に充実させる観点から、行政の体制強化を図ることということを述べております。しっかりこの体制強化をしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、消費者庁の相談ダイヤルに寄せられた相談事案の傾向を見てまいりたいと思います。

 通報者の属性として、まず、労働者というのが五八・八%です。退職者が一一・九%、他の事業者というのが三・六%で、役員が〇・七%というような調査結果が出ております。今回の改正で、保護される通報者として退職者そして役員を追加したということは評価できると思います。

 その上で、退職者について、退職後一年以内に通報した者であるという要件が課されております。専門調査会報告書では、保護の対象とする退職者の範囲について、労働者名簿の保存期間が三年と定められております、このことを踏まえまして、退職後三年以内とすることも考えられるとされておりました。

 本改正案におきまして保護される通報者の範囲、退職後一年というふうに区切った根拠についてお伺いをしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正法案は、法令違反行為の早期是正を促すことをその目的の一つとしております。そのような観点からは、保護される通報を退職後一定の期間内のものに限定し、早期の通報を促していく必要があります。

 また、実際に退職後の通報を理由として不利益取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報された事案であり、このため、退職後一年以内にされた通報を保護すれば、実際に不利益取扱いが想定される通報のほとんどを対象とすることができると考えられます。

 さらに、退職から長期間経過後の通報については、証拠の散逸等により、通報を受けた事業者が適切に対応することが困難であるとの指摘もありました。

 このような考え方により、まずは退職後一年以内に通報した者を保護の対象としたものでございます。

古屋(範)委員 やはり一年以内に通報されたものが多いということ、また、長期間退職した後の通報になりますと証拠なども散逸してしまっているのではないかということから、一年ということにしたということでございました。

 私たち、党内で、この一年ということもいろいろと議論いたしました。提言の中でも、この一年ということに関しましても、通報者がより保護されやすく、また、これから通報の実態等も踏まえて、法令違反行為の早期是正を図る観点からまずは一年としたわけですけれども、今後、その運用状況を踏まえて必要に応じて見直していくということを提言をさせていただきました。

 これも、今後の運用状況を見ながら、果たして一年が妥当なのかどうか、また次への改正に向けてしっかりと検討をお願いしたいと思います。

 時間が近づいてまいりましたので、残された質問は次の委員会に回したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。立国社の尾辻かな子です。

 きょうは公益通報者保護法の議論ということでありますけれども、今、緊急事態下ということでもあります。新型コロナウイルス対策についても急務を要しておりますので、冒頭に少しだけ新型コロナウイルス対策のことをさせていただいて、法案審議に入りたいというふうに思います。

 きょう議論させていただきたいのは、政府が配布をしている布製のマスクのことであります。

 カビとか異物の混入が続きまして、これは消費者問題でもあると思うんです。本来、このように製品がいろいろなことがあったら、配布はやはりやめるべきですし、全量を回収するということが本来製造した会社などはすることになります。ですので、今の状況、マスクの状態、そして、市中でマスクが出回っていることを考えると、もうマスクの配布は中止してもよいのではないかという観点から、何点かお聞きをさせていただきたいというふうに思います。

 その前に、なかなか事実がよくわからないという部分があります。例えば、これはさまざまな予算でやっているわけですけれども、令和元年度予備費で契約したマスクもあれば、令和二年度予備費で契約したマスク、介護施設用であったり、全戸配布用であったり。

 それぞれちょっと、もしわかるようであれば教えていただきたいんですけれども、令和元年度予備費で契約したマスクが何枚、配布済みが何枚か、令和二年度予備費で契約した介護施設等分のマスクが何枚で、配布済みが何枚か、令和二年度予備費で契約した全戸配布分マスクは何枚で、配布済みは何枚かという、今、現状どうなっているのかということについてお答えいただければと思います。お願いいたします。

小島大臣政務官 お答えをいたします。

 数を申し上げますが、全戸配布向け六千五百五十万枚、介護施設等向け二千万枚、妊婦向け五十万枚でございます。

尾辻委員 済みません、私が聞いたのは、令和元年度予備費で契約した介護施設等分はどれか、令和二年度予備費で契約した介護施設等分は何枚か、そして、全戸配布分も令和二年度予備費で契約したのは何枚かということになります。

 もし手元になければ、委員会の方に資料として提出いただければと思いますので、お願いいたします。

小島大臣政務官 ちょっと手元に持っていないですから、後ほど提出します。

尾辻委員 では、委員長、そのようにお取り計らいをお願いいたします。

土屋委員長 はい。

 そのようにお願いいたします。

尾辻委員 ですので、一体幾らのお金を使って、何枚つくって、そして今何枚配布されたのかということが、まずわかるようにしていただきたいということが一つ。

 契約書について。これも、きのういただいたのは、令和元年度予備費で契約した契約書はいただきましたけれども、令和二年度予備費で契約した契約書については結局出てきませんでした。

 これは、また出していただけるかどうか、もしあれだったら、また委員会の方に出していただければと思いますが、いかがでしょうか。

小島大臣政務官 今聞きましたので、これは後ほど出します。

尾辻委員 ありがとうございます。

 それと、令和元年度分のことを見ると、実は単位ですね、何枚そこにつくっていただいて単価が幾らだったのかというところが、実は黒塗りで出てきません。これでは本当に、これは随意契約ですから、その契約が妥当であったのかどうかということがちょっとわからないんですね。

 今後、同じような事態があるかどうかというのはちょっとわかりませんけれども、例えば他社さんがそこに参入できるのかどうかというようなことを考えた場合に、単価と枚数がどれぐらいで納入しているのかという状況がわからないと、これは全くのブラックボックスになってしまうかと思いますので、ぜひここの黒塗りは外していただきたいと思います。いかがでしょう。

小島大臣政務官 お答えいたします。

 私も、厚労省にいまして、各医療用の備品について逐次チェックをしております。例えば、長くなりますけれども、サージカルガウンですよね。(尾辻委員「いやいや、いいです」と呼ぶ)いいですか。それは、また整理して報告しますけれども。

尾辻委員 では、取っていただけるということでよろしいでしょうか。

小島大臣政務官 これも、全部内容を申し上げたいんですけれども、他の企業の契約との関係もありますので、差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、私も、秘書の方で逐一単価について精査をしておるところでございます。

尾辻委員 要は、私たちが、ではその随意契約が、本当に相場に合わせてとか妥当であったのかどうかというのが、これは検証不可能になってしまうという問題があります。

 原資が税金でございますので、やはりこの黒塗りは外していただきたいと思いますし、皆さんがおっしゃる理由、きのうも聞いていると、今後の布マスクの調達や企業活動に影響を及ぼすおそれがあるため開示を差し控えるという理由になっているんですね。

 ただ、この理由が情報公開法の第五条の二のイに当たる、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものに、私、これは該当しないと思います。ですので、外せるかどうか、やはり検討いただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

小島大臣政務官 尾辻委員の御懸念はよくわかります。

 ただ、私たちは、要するに、調達に関して、余りにも法外な単価ではいけないということで、きちっと内容を精査しますけれども、それぞれ各納入業者との関係もありますので、単価については差し控えたい。よろしくお願いします。

尾辻委員 ちょっと納得はできませんけれども。

 これは、やはりわからないことになると、税金の正しい使い方として検証できませんので、外していただきたいということを改めて要望しておきます。

 次に、契約内容が適切だったかということについてもお聞きしたいんですが、この私がいただいた令和元年度予備費で契約をした契約書を大体読むと、少しばらつきはあるんですが、信義誠実の原則があって、検査の項目があって、瑕疵担保の項目がある。ただ、一社、興和という会社に関してだけは、瑕疵担保についても、非常事態への対応として実施されることに鑑み、納入現品について隠れた瑕疵を発見した場合であっても乙に対し責任を追及しない、こういう項目が入っております。

 さらに、一般的な契約である、つまり、不良品を納品をするということは誰の責任かというと、メーカー側、製造者側、つまり、あちら側の責任として、正しいもの、しっかりした製品を納入していただくのは当たり前のことなんですね。この契約ではそれを担保できないんじゃないか、そういう契約をしてしまったんじゃないか。普通ある損害賠償請求もないので、これは不良品が納入されても損害賠償ができない、こういった契約は適正なんでしょうか。

小島大臣政務官 お答えいたします。

 尾辻委員の御指摘のことについて、私も実はこれを調べてみました。一社、そういう規定がなかったんですが、一番最後に、いわゆるそうした、もし瑕疵があった場合にはきちっと両者で協議しましょうという実は一文が一番最後についておるんです。他の業者と比べて何でないんだというのは、全くおっしゃるとおりだと思うんですけれども、私もそのことは同感なので、今の契約を見てみました。最後にそういう条項を、さっき申し上げたように、問題があった場合には協議するとなっておるところでございます。

尾辻委員 不良品が入った場合に、本来は正しいというか良品を入れていただくというのは当然の契約行為だと思います。今回の契約でそれが担保できますでしょうか。

小島大臣政務官 お答えいたします。

 それはもう当然でして、きちっと、先ほど申し上げたんですが、条項というか、枠外にありますから、それに基づいて、もし不良品がありましたら、きちっと、そういう責任といいますか、お話はしたいと思っております。

尾辻委員 ということは、損害賠償請求はないけれども、損害賠償請求はできるというふうに、そして、このことに関しては請求されるということでしょうか。

小島大臣政務官 そのとおりにきちっと対応いたしたいと考えています。

尾辻委員 あと、今話題になっている再検品の費用のことについてもお伺いいたします。

 実は、四月二十三日に、興和と伊藤忠というマスクの納入のところが、未配達分はみずから再検品するというふうにプレスリリースをされました。ところが、同じ四月二十三日に、政府は宮岡という会社と八億円で検品の契約をしている。これは、八千五百万枚と私は聞いているんですけれども。ちょっと、だから、今、会社は会社で再検品すると言っているのに、政府は政府で八億円で八千五百万枚を検品しているという、これは何か二重になっているような気がするんです。

 さらに、ちょっともう時間がないので、この再検品の八億円というのは、本来、先ほど申し上げた、きちんと契約されて納品されていればかからなかった費用じゃないかと思うんですが、このあたり、いかがでしょうか。

小島大臣政務官 お答えいたします。

 まさにこのマスクは、国民の方々がしっかり不安を解消していただくこと、そして、一日も早くマスクを届けたいという角度からこのことを取り組んだわけですけれども、今のお申し越しの件につきましては、メーカー側に対しまして、求償権を含めまして、今後検討していきたいというふうに考えております。全く、八億円出して、出し切るということはないように、しっかりとこれから、落ちつきましたら、メーカー側とも協議していきたいというふうに考えております。

尾辻委員 私、その宮岡との契約書で八億円というのを持っているんですけれども、これを破棄するということですか、今おっしゃったのは。再検品する業者と八億円の契約書というのは、もう手元にいただいております。野党側にもさまざまなペーパーが出ておりますが、これを今、政務官は、見直す、八億円かからないようにするとおっしゃったわけですが、それでよろしいんでしょうか。

小島大臣政務官 八億円が今、前面に出ていますけれども、検品をしてみて、枚数によって、実は八億円を下がる場合もあるわけですね。

 でも、それにしましても、再度申し上げますけれども、やはり基本的には、メーカーが受けて、メーカーが検品をして納入するのが当たり前ですから、そのことはきちっと踏まえて、これから事が一応おさまりましたら、納入業者と、しっかりとそういう面で、求償権についても含めて検討をしていきたいと思っております。

尾辻委員 要は、この八億円は、本来要らなかった八億円であると。それは議論していくということですから、本来かからなかったものを、かかっているということについて、そして、それは、私はもう、やらなくて、そして、町にはマスクがあるわけですから、そろそろマスクの配布というのを中止して、その分のお金は、もっと必要なところや、第二波、第三波に向けての準備のことに変えるべきだと思います。

 ちょっと、きょう、会計検査院に来ていただいていますので、検査院にもお伺いしたいと思いますが、今回の不良品に対する経費追加としての検品など、本当にそれが会計的に無駄のない適切な契約で、一番効率的に目的達成されたのかということを、本件契約、一連の会計処理が終わった時点で、やはり検査院は検証しなければならないと思います。災害のような今回の状況だからこそ、いろいろなものがいいかげんになっていないのか、おざなりになっていないのか、これは会計検査院としてしっかり検証、検査すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

篠原会計検査院当局者 会計検査院は、これまで、厚生労働省が実施している業務に係る支出等の会計経理について、合規性、経済性、効率性、有効性の観点から幅広く検査を実施し、その結果を検査報告に掲記するなどしているところでございます。

 委員お尋ねのマスクに係る契約を含む厚生労働省の会計経理につきましては、国会での御議論等も踏まえ、引き続き適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

尾辻委員 検査、検証をお願いしたいと思います。

 政務官、最後に。

 もう、私は配布を中止すべきだと思うんです。ここを見渡してください。アベノマスクをしていらっしゃる方、いますか。配布されたマスクが、やはり今、もう不織布のマスクが出ていますし、手づくりで布マスクを持っていらっしゃる方もいます。という意味でいうと、需要の部分も余り今ない状態ですので、今この状況に至って、もう配布をする理由がなくなっていると私は思います。ですので、ここはやはり政治判断として、政務官、ぜひもう配布を中止していただきたいと思います。いかがでしょうか。

小島大臣政務官 お答えいたします。

 私も、厚労省にいまして、まだまだ、先生、おっしゃるんですけれども、非常に今、全体的に十分に行き渡っているということは、私はまだ、まだそのようには考えておりません。

 そういう中で、一応、今下がったんですけれども、今後もし、こういう、もしじゃなくて、緊急事態が解除されて、また今度、もう一回、韓国のように、再度、二波が、三波が来るかもわからない。そういうことを考えれば、やはり、しっかり国民の方々に、安心のために、一日も早くマスクをお届けするということは、私たちの政策目的としてしっかりと努めていきたいというふうに考えております。そういう状況です。

尾辻委員 ちょっと、まだ配られるということで、非常に残念です。もう配布を中止していただいて、そのお金は、さっきおっしゃった第三波とかで来るときの不織布のマスクの備蓄に回すなり、できると思います。御検討ください。

 以上でマスクに関しては終わりですので、御退席いただければと思います。ありがとうございました。

 それでは、済みません、法案審議の方に入っていきたいと思います。

 今回、新型コロナウイルス緊急事態宣言がある中での法案審議ということになりまして、消費者庁長官もただいま自宅待機というような状況でございます。また、参考人質疑も、やはり、感染症拡大の観点からいうと、書面でもって意見をいただくという形式になりました。

 今本当に、この状況でこの法改正の議論をすべきだったのかということについては、やはり若干疑問が残るのではないかということをまず指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 そして、これは皆さんもおっしゃっていただいているとおり、二〇〇六年が施行で、施行後五年を目途に検討をして必要な措置を講ずるということになっておりました。今、二〇二〇年、十四年かかったということで、これは余りに改正まで長かった。そして、これを二度と繰り返してはならないというふうに思います。

 まず、この法律なんですけれども、実は非常に、十一条しかないんですね、薄い法律というか、条文は少ない。今回改正されても、実は二十二条しかない。しかし、何か複雑でわかりにくいんです。

 公益通報は、本来、万人が使いやすくシンプルにする法律でなくてはならないと思いますが、大臣、この法律、本当に国民の皆さんにとってわかりやすい法律になっていますでしょうか。大臣の受けとめをお聞かせいただければと思います。

衛藤国務大臣 この法律には詳細な内容の規定があるために複雑に見えるかもしれませんが、要件が具体化、明確化されていることで、通報しようとする者にとって法の適用があるか否かわかりやすいという側面もあると思っています。

 消費者庁としては、多くの方に制度の内容を知っていただけるよう、制度の周知、広報に努めてまいりたいというぐあいに考えております。

尾辻委員 具体化のところで絞り過ぎていて、何か公益通報にほぼ当たらない、内部通報に当たらないということがやはりあって今回は広げるわけですけれども、やはりもっとシンプルに、わかりやすい法律を私たちは目指していくべきだと思います。

 この公益通報に関しては、OECDやG20サミットなんかでも議論してまいりましたけれども、今回の法改正によって、この法律はいわゆるグローバルスタンダード、例えばEU指令であったりアメリカや韓国、こういったレベルに達したというふうに評価されますか。それとも、達していないとすれば、それはどのような部分であるというふうに大臣はお考えになっておられるでしょうか。

衛藤国務大臣 実際、今回の改正においては、例えば守秘義務の導入等々はG20ハイレベル原則にも沿うものであります。その他、公益通報者の範囲の拡大や保護要件の緩和、内部通報体制整備義務の導入など、各国の制度も参照しながら大幅に制度の見直しを行うものであり、遜色がないものと思いますが、まだまだ課題はあるということで、附則五条で検討を三年以内に行うということをさせていただいているところでございます。

尾辻委員 私は、正直言いまして、この十四年間法改正を放っている間に、ほかの国はどんどんどんどん上がっていってEU指令までできたわけです。それに比べて、今日本がそこに追いついているかというと、正直、そこに追いついている法改正にはやはりなっていないと言わざるを得ない。まず、その認識を持っていただきたいと思います。

 例えば、アメリカのような通報による報奨制度がありません。つまり、それに対してインセンティブが働くのかというようなこともありますし、韓国のような公益通報を担当する専門部署である国民権益委員会というものも実はないわけです。やはり、グローバルスタンダードから見たら、かなり今改正したとしても差があるということを指摘しながら、何とかそれをグローバルスタンダードに近づけるために、今回ぜひ皆さんと一緒に修正も考えていただきたいということを申し上げて、ちょっと個別の話に入っていきたいと思います。

 まず、確認ですけれども、運用実態でございます。

 公益通報者保護法によって通報者が保護された裁判例、昨年の五月十四日の委員会の答弁で二件でございました。今の時点で、その二件から件数に変更はありますでしょうか。

衛藤国務大臣 公益通報者保護法により通報者が保護された事案として把握しているのは、二件でございます。

 ただ、裁判によらず解決されている事案も一定数存在しているものと考えられます。

 以上です。

尾辻委員 やはり、要件などが厳し過ぎて、当たらない。特に、裁判でも二例というのは、やはり、私たちはこれを重く受けとめなければいけない数字だと思います。

 ちょっと確認いたしますが、例えば、今回の法改正が改正されたと仮定して、私たちがちょっとこだわっている森友問題の公文書改ざん、この決裁文書改ざんを実際に行っている人物が省庁に設置をしている内部通報先に通報した場合、公益通報者としてこの方は保護されるのかということを確認したいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 個別の事案についてはお答えを差し控えますが、一般論として言えば、公文書の適正な管理は行政運営の透明性を高める上で極めて重要でございます。本法との関係では、国の行政機関の通報対応に関するガイドラインにおいて、本法が対象とする消費者の利益の擁護等に関連する法律に限らず、公文書管理法違反も含め、法令違反の通報を広く受け付け、また、これら通報者を不利益取扱いから保護するよう求めているところでございます。

 今後とも、ガイドラインの周知を通じて、公文書管理法違反も含め、法令違反の通報に広く対応し、不利益取扱いをしないよう求めてまいります。

尾辻委員 公益通報者保護法のところに公文書管理法は当たりますか。だから、今の時点では刑事罰がないので当たりませんよね。今回の改正で行政罰が入りますけれども、これでも入りませんよね。確認です。

高田政府参考人 お答えいたします。

 本法の目的等に鑑みまして、公文書管理法違反は該当いたしませんけれども、ガイドラインにおきまして、法令違反の通報を広く受け付けるということになっているところでございます。

尾辻委員 つまり、ちょっとすれ違っているんですけれども、公益通報者保護法における公益通報には当たらないわけですよね。うなずいていただきました。そうなんです。

 こんな大事件があって、でも、今回の保護法の改正では、確かに刑事罰から行政罰に範囲は広がっていますけれども、ただ、この場合は、公文書管理法が罰則規定がないから公益通報にならないというような、やはり狭いんですね。ですので、本来、もう少し、やはり、公益通報に当たる、通報者に当たるという部分を広げないと、本当に重要なことを通報できる、それを担保できる法律にこれはなっていないということであると思います。

 ですので、例えば、こういうことを二度と起こさないためには、そういう仕組みをつくるのは立法府、私たちに課せられた使命ではないかということを申し上げておきたいというふうに思います。

 あと、この間、さまざまな企業不祥事が続いてきました。内部通報した人が配置転換をされるとか役職を解かれる、仕事がなくなるなど、企業側からの不利益をこうむってきています。

 今回、内部告発者、内部通報を守る法改正になっているのかという観点から、お聞きをしていきたいというふうに思います。

 まず、労働者から、今回、一年以内の退職者と役員というのが入りました。ただ、取引先業者は入っていないんですね。公益通報、内部通報で有名な西宮冷蔵さんなんかは、これは取引先企業でしたから、ここは実は、今回の法改正でも通報者の範疇に入らない。先ほど申し上げたように、刑事罰に行政罰が加わっても、やはり限定列挙であって、法令を指定しないと、この法律のここに違反していると言わないと内部通報者になれない仕組み、これもまだこのままなんですね。ちょっと時間があれば、このことは後で聞きます。指摘を今しておきます。

 例えば、報復をちゃんと罰則でもって禁止しないといけない。EUの公益通報者保護指令では、通報への報復に罰則を規定しています。例えば韓国も、通報者に対する不利益措置、罰則があり、通報の後、二年以内に通報者に対して不利益措置があった場合は、公益通報を理由に不利益措置が講じられたものとみなすと、非常にわかりやすくできているわけです。

 今、消費者庁が二〇一六年に実施した調査では、通報経験がある六十三人の労働者のうち半数程度が、やはり不利益な取扱いを受けたというふうに回答していますし、スルガ銀行の第三者調査なんかを見ても、通報しようと思ったけれどもやめた、その理由には、やはり制裁や報復があるということなんです。

 ですから、今回の法改正は、先に公益通報業務従事者に守秘義務を課す、そして罰金を科すということで、事前抑止みたいなことは入りましたけれども、やはりこれだけでは不利益取扱いのおそれというのは解消されないというふうに思うわけです。附則には不利益取扱いの是正に関する措置のあり方が入りましたけれども、これはあくまで今後の検討であります。

 実は、消費者委員会の答申は、不利益取扱いをした事業者に対する行政措置の導入、行政措置の種類としては、助言、指導を行うほか、重大かつ悪質な事案を対象に勧告を行い、勧告に従わない場合には公表を行うことができることとすべきとなっていた。でも、法改正には至りませんでした。

 大臣、報復への行政措置や罰則がなければ不利益取扱いを抑止する効果はないのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

衛藤国務大臣 今回の改正法案においては、従業員等に対する守秘義務を課すとともに、事業者に、公益通報者に関する情報が漏えいしない体制、公益通報者に対する不利益取扱いを防止する体制の整備を求めることといたしまして、公益通報者に対する不利益取扱いを事後的ではなく事前に抑止する内容となっていることは御指摘のとおりでございます。

 また、事業者に内部通報体制整備義務を課し、事業者内において不利益取扱いを禁止するとともに、違反して不利益取扱いを行った者に対して懲戒その他適当な措置をとることを内容とする社内規程を定めるとともに、それに基づき運用することを想定いたしております。

 このような対応によりまして、不利益取扱いに対する事後の制裁や行政措置ではなくて、違法な不利益取扱いの事前抑止を通じ、幅広く公益通報者を保護することができるというぐあいに考えているところでございます。

 また、今ございました御指摘の点につきましては、やはり運用上の問題として、附則第五条によって十分検討していきたいというのが今回の全体の改正に向かっての意思でございます。

尾辻委員 私は、やはり、行政措置だけではなくて、罰則までやって不利益取扱いをこういうふうに抑止しないと、さっきの事前のところだけでは不十分だと思うんですね。

 それはなぜかというと、例えば、助言、指導、勧告、公表、この行政措置に、では本当に効果があるのか。労働法制の中で、不利益取扱い禁止規定が入っていて、実は公表まで至ったものというのは、私、きのうもヒアリングで確認したんですけれども、大体、関係者の中で思い当たるのは実は一件なんです。一件しかなくて、妊娠を理由とする解雇で、男女雇用機会均等法第三十条に基づく公表というのが平成二十七年九月四日に一件だけ公表されているんですが、結局、それですら、そんなぐらいの運用実態なんですね。

 だから、これが入ったらすごく恐ろしいことが起こるんじゃないかというふうに皆さんは思われているかもしれませんけれども、労働法制の分野においても、実は、公表までしてもどこまで抑止できているのかなというような状況があって、だからこそ、命令と刑事罰までしっかり入らないと、これは実効性が担保できないと思うわけです。

 ですので、大臣、附則の中にも入っているとおっしゃいましたので、これはしっかり、事実認定、執行体制に課題ということは聞いておりますが、これは鶏と卵でありまして、やるんだと決めて実行していけば、できる体制をつくることが大事ですので、ぜひ政治の意思を示していただきたいというふうに、ちょっと次の質問がありますので、これは要望にしておきたいと思います。できるだけ早くこの不利益取扱いの措置をやっていただきたいというふうに思います。

 次の論点は、では、実際に不利益を受けた人がどのようにして被害を回復するのか、その負担をどうやって軽減するのかということについてお聞きをしていきたいと思います。

 ちょっと何回も出して恐縮ですけれども、お隣の韓国は国民権益委員会というのがありまして、ここが本人のかわりに会社を調査して処分するんですよ。その処分に会社が不服の場合も、会社と国が裁判をして、本人が費用負担とか裁判の負担がほとんどないような状態をつくっています。

 では、日本はどうかというと、先ほどから委員の皆さんが御指摘されているように、不利益取扱いを受けた人は、自分の会社で勤務をしながら自分の会社を民事訴訟で訴える。それも、例えば人事のことであれば、事業者には幅広い人事考課裁量権が認められていますから、これはもう本当に難しい闘いで、オリンパスでいうと、内部通報者として頑張っていただいた浜田さん、長い長い裁判を闘ってきたわけです。ですので、やはりこのルールを変えなければいけない。浜田さんは、究極のざる法だと公益通報のことを言われている。実際に内部通報された人が、こんなんじゃ使えないし、自分が裁判で訴えないとどうにもならないというのはおかしいんじゃないかと言われています。

 大臣、お聞きしますが、この部分、結局変わらないわけなんですね。今のこの制度のままで、通報者側のリスクと負担はやはり大き過ぎると思うんです。大臣、その認識はいかがでしょうか。

衛藤国務大臣 今回の改正法案では、事後的な行政措置や裁判のみならず、不利益取扱いを事前に抑止する観点から、公益通報者に関する情報の漏えい防止のための刑事罰つきの守秘義務を導入する、そして不利益取扱いの禁止を定めるなどの通報体制整備義務を事業者に課すということを行いました。

 また、公益通報者と事業者との間で紛争が生じたとしても、裁判に至る前に行政機関等による裁判外紛争解決手続、ADRにおいて和解成立し、解決される事例も存在するものと思っています。

 今後、労働審判など関係法、機関との連携に取り組むほか、不利益取扱いの是正の重要性に鑑み、改正法案の附則第五条の規定も踏まえまして、その是正に関する措置のあり方についても必要な検討を行ってまいらなければいけないというぐあいに考えております。

尾辻委員 今回、法改正に盛り込まれなかったところが、ちょっと大臣の認識とあれなんですけれども、やはり解雇についての立証責任の緩和、転換ですね。先ほど申し上げたように、最後、本人が民事訴訟で立証責任を負ってやらなければいけないという部分は、やはり変えなければいけないと思います。これは専門調査会で議論されましたけれども、改正案に盛り込まれなかったわけです。

 この立証責任の転換というのは既に労働法制ではされていまして、例えば男女雇用機会均等法第九条の第四項は、妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は無効とした上、ただし書きで、事業者が当該解雇が妊娠、出産を理由とする解雇でないことを証明した場合には解雇を有効にするというようなことがもうできているわけです。

 なので、解雇が通報から例えば一定期間内に行われた場合は、立証責任を事業者に転換すべきではないか。さらに、解雇以外の不利益取扱いも、例えば、配置転換や減給や降格、出向について、これは会社の裁量であっても、本当にこれは裁判で違法性を争うのは困難なので、事業者側が不利益取扱い、公益通報を理由とするものではないことをやはり証明する、ここを入れるべきだというふうに思います。いかがでしょうか。

衛藤国務大臣 公益通報を理由とした解雇その他の不利益取扱いについて、通報者の負担軽減の観点から、立証責任の緩和又は転換を求める意見があることは承知をいたしております。

 他方、消費者委員会においても、解雇も含めて、悪意ある労働者に制度が利用される、無用な争いを避けるために通報者に対する措置を一時的に凍結するなど、立証責任の転換により円滑な労務管理等を阻害するとの懸念が示されまして、消費者委員会の答申においても今後の検討課題とされております。

 また、解雇以外の不利益取扱いについても、配転などについては一般に事業者に広い裁量が認められており、そうした中での立証責任を転換することは、労務管理実務への影響の内容、程度等についてさらなる検討が必要と考えられております。

 こうした観点から、今回は、改正法案において、解雇以外も含め、直接立証責任の緩和又は転換について規定することは見送らざるを得ないというぐあいに思ったものであります。

 なお、改正法案の附則第五条では、公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方について検討規定を設けていますが、これは、立証責任の緩和又は転換についても含めて検討を行うという趣旨でございます。

尾辻委員 今重要な御答弁をいただいたかと思います。附則の五条のところは、立証責任の緩和、転換も含めての課題であるということであります。それであるならば、もう少しここがしっかりと次の検討課題であるということを、私は条文上わかるようにすべきではないかというふうに思いますので、ぜひこの辺、修正に盛り込んでいただきたい、皆さんと御議論していただきたいと思います。

 それでは、次に参ります。

 公益通報対応業務従事者の守秘義務違反のことについてです。

 有識者の方から提出いただいたところで、日弁連消費者問題対策委員会副委員長の志水弁護士からの指摘事項の中に、改正案の十二条には正当な理由なく通報者を特定する情報を漏らしてはならないというふうにあるんですが、この正当な理由というのをやはりもう少ししっかりとどういうことなのかということを規定するべきではないかということ、また、本人の承諾を正当な理由とする場合は、守秘義務を解除することにより想定される事態を説明して理解させた上で、書面による確認が最低限必要じゃないかというようなことをしっかり定めるべきじゃないかということを指摘されていますけれども、これについてはいかがでしょうか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正によって設けられる公益通報対応業務従事者の守秘義務には刑事罰が科せられているところ、刑事罰の解釈については御指摘のとおり明確性が求められております。

 消費者庁としては、この点に関して、逐条解説や当庁のホームページにおけるQアンドAなどにおいて解釈の明確化を図っていく必要があるというふうに考えております。

 御指摘の点につきましては、正当な理由に関して本人の同意がある場合にというところでございますけれども、今般の改正によって設けられる守秘義務は通報者保護の一環であるため、御指摘のとおり、通報者本人の同意がある場合には、守秘義務違反に当たらない正当な理由が認められる場合に当たります。

 この同意に関しては、必ずしも書面によらなければならないわけではございませんけれども、通報者本人の真意に基づく必要があると考えられますので、例えば、同意の範囲や同意によって通報者に生じるリスクについて誤解を生じさせて得た同意では、正当な理由には該当しないと考えられます。

 一般的には、口頭の同意はその有無や範囲について紛争が生じるおそれがありますが、書面で同意を得ている場合にはそのようなおそれは小さいと考えられております。

尾辻委員 例えば、口頭で、いいですよと言っただけで、これは正当な理由ということで広がってしまったら、本人がどれだけ不利益があるかというのはわかりませんので、ここは、先ほど逐条解釈をちゃんとしていただくとか、書面でもやっていただくということでよろしいですか。確認です。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘を踏まえまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。

尾辻委員 不利益にならないように、しっかりと規定していただきたいと思います。

 あと、内部通報をした方が、実は、だから、法令違反ではなかった、行政罰、刑事罰ではなかったということになると、この通報事実自体もやはり守秘義務のところからは解除されることになるんでしょうか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正によって公益通報者を特定させる事項について守秘義務が課せられるところ、その対象はこの法律が定める公益通報がなされた場合でございます。ただし、公益通報に該当しない通報であっても、不正行為のおそれに関する通報に関する秘密を保持することは、公益通報者保護制度の実効性を向上するに当たって重要であると考えられます。

 そうした観点から、消費者庁において策定、公表している民間事業者向けガイドラインにおいては、例えば、法令違反のほかにも、内部規程違反等についても幅広く通報を受け付けることが適当であるとした上で、寄せられた通報に係る秘密保持の徹底を図ることが重要である旨を定めているところでございます。

 消費者庁としては、引き続き、こうした通報に係る秘密保持の徹底について周知啓発を進めていく予定でございます。

尾辻委員 これは、内部通報に当たるかどうかはやはりわかりにくいんですよ。だから、当たらないと判断されたときでも、しっかり何かガイドラインなどで守秘義務を課していただきたいということを申し上げて、これはいろいろまだ課題があります。皆さんとよりよい法律にしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 立国社の山本和嘉子でございます。

 きょうは、公益通報者保護法の改正ということで質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、法案審議ということで、若干ちょっと他の委員と重なる質問もあるかと思いますけれども、御容赦をいただきたいというふうに思います。

 専門家によりますと、この法律が施行されて、公益通報者保護法で通報者が保護された裁判例はわずか二件ということでございます。また、行政機関に通報しても放置したとか、通報者の氏名を漏えいしたなどの事例もたくさんあったということでございます。

 この法律が活用されていない部分がたくさんあったということでございますけれども、代表的なのがオリンパスの社員の浜田さんという方、有名な方ですけれども、内部通報の末、法廷闘争に十年近く争ったということがありました。

 浜田さんは、振り返って、建前上は通報者の保護ということをうたいながら、信じた人間ははしごを外される危険な法律であるということをおっしゃっています。その最たるところは、通報者の情報を漏えいしてはならないという条項がないということだったというふうにおっしゃっていました。法廷闘争を余儀なくされたのは、そもそも通報者情報の無断漏えいということでございました。

 公益通報者保護法を、さっきも尾辻議員がおっしゃっていましたけれども、究極のざる法というふうに批判されておりましたけれども、大臣、この法律について、施行十四年、どういうふうに総括されるか、おっしゃっていただけますでしょうか。

衛藤国務大臣 消費者庁としては、法制定以来、事業者が取り組む事項を明確化、具体化するなどの観点から、ガイドラインの策定、改正や、制度の周知、広報に取り組むなどの対応を行ってきたところであります。

 こうした観点から、労働者においては公益通報者保護法の認知度が向上するとともに、事業者において内部通報制度の導入が進められるなど、制度の定着が一定程度図られてきました。しかし、残念ながら、昨今においても、通報制度が十分機能していれば違反行為も早期に是正することができた不祥事がまだ見られるところであります。

 法改正では、御指摘のように、公益通報に関する業務に従事する者に対する刑事罰つきの守秘義務が設けられるほか、浜田さんも最もこれを主張したところでございます、守秘義務をどう確保するかということを言われたところでございまして、ここを事業者に対しまして体制整備義務を課しまして、不利益取扱いの防止や通報に関する情報の管理に関する取組を促しまして、制度の実効性を高めることというぐあいにしております。

 風聞しますと、浜田さんも今回の改正については大変評価をいただいているというぐあいにお聞きをいたしております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 これまでのいろいろな事例、浜田さんのことも含めて、それを踏まえた法改正になっているというふうに期待をさせていただきたいと思いますけれども、これまで多くの不当な取扱いを受けた方、国民生活の安心、安全を脅かすいろいろな不祥事がありましたけれども、それが泣き寝入りに終わってしまった方々もたくさんいらっしゃると思いますので、この新しい改正案が生きることを期待したいというふうに思います。

 引き続きの質問なんですが、それで、浜田さんがおっしゃっていたこと、それが反映されつつ、今回の改正案では、第十二条で、公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、この公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないと規定されましたけれども、この正当な理由というのは具体的にどのような内容なのか、ちょっとわかりにくいなというふうに思います。例えば、限られた人間関係の中で発生した事案では、どれほど通報者の秘密に配慮しても個人の特定はでき得るわけだというふうに思います。

 その調査のイメージ、どういうふうに調べるのかというものもちょっとわかりにくいので教えていただきたいということと、あと、過失で情報漏えいした場合も刑事罰となるのか、そのあたりも全体的にわかりやすく御説明いただけたらというふうに思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 守秘義務は、公益通報者に対する不利益取扱いの契機を抑止するために重要である一方、法令遵守という公益通報者保護制度の本来の目的を達成するためには、守秘義務によって必要な調査が過度に妨げられないようにすることが必要でございます。

 事業者において内部通報があった場合には、一般的には、通報者本人から詳細を聴取する、聴取した情報に基づいて関係資料の精査、確認をするほか、関係者からもヒアリングをする、必要に応じて権限のある行政機関に報告を行うなどのプロセスを踏むものと理解しております。

 このような調査の過程で、公益通報者の保護を図りつつ法令遵守を促すとの観点からは、公益通報者本人の同意がある場合や法令に基づく場合のほか、公益通報に関する調査等を担当する者の間での情報共有等、通報対応に当たって必要な場合などを正当な理由がある場合として想定しております。

 なお、例えば、御指摘のように、小規模の事業者で調査を実施する場合等には、情報共有の範囲を必要最小限にしているにもかかわらず、調査を実施していることがわかってしまうだけで通報者が推知されてしまうことも想定されますが、そのように調査を実施していることが知られてしまったとしても、その調査が通報に基づき実施されていることを伝えていない限り、それだけでは公益通報者を特定させる事項を漏らしたことにはならず、守秘義務違反には当たらないと考えられます。

 また、刑事罰は過失犯の規定がない限り故意犯が対象となりますので、過失犯の規定を設けていない改正法案では、過失による漏えいは処罰の対象外となります。

山本(和)委員 守秘義務を課す改正案、これに関してはいいことだというふうに思います。その上で、守秘義務が解除される正当な理由については慎重に当たっていただきたい、不利益にならないように当たっていただきたいというふうに思います。

 そこで、更に大臣にお聞きしたいんですけれども、公益通報対応業務従事者の守秘義務違反については、個人には刑事罰を科すが、内部通報体制の整備義務を担う事業者に刑事罰がないというのはどうしてなのか。複数の人間で業務分担をしたり、そんたくや過失が介在した場合、また、制度的にすばらしくてもそれを企業トップが実質管理する場合でも、個人だけに刑事罰を問えば本当に十分であるのか。いわゆる両罰規定を導入しないと事業者に自浄作用は期待できないというふうに思いますけれども、どのような見解か、お答えいただければというふうに思います。

大塚副大臣 御指摘のように、公益通報者保護制度の実効性の向上に当たっては、公益通報者を特定させる事項の漏えいを防止するということは、それを契機として不利益取扱いが生じ得ることからそれを防止するという観点であったり、また、制度への通報者からの信頼を向上する、そういう観点から非常に重要な事項だというふうに認識しております。

 守秘義務違反を犯した個人については刑事罰を科すことと今回したわけでありますけれども、事業者については、今回の改正において、内部の公益通報に対応するための体制整備等を行う義務を課すこととしているわけでございます。その義務には、通報に関する情報を適切に管理するということももちろん含まれるわけでございます。

 そして、この義務に違反した場合、最終的には事業者名が公表される、こういうことになるわけでございます。事業者名を公表するということは、事業者は社会的に大きな制裁を受けるということにつながっていくわけでございます。このことによって、一つは、事業者の秘密漏えいに対する抑止を図ることができる。更に言えば、体制をしっかり整備していなかったということに関しては、経営者は株主代表訴訟等によって責任を厳しく問われることに結果的になるんだろうというふうに思うわけでございます。

 このような公表の仕組み、それから代表訴訟等、他の制度によって担保されている仕組み、こうしたことを組み合わせることによって、事業者には、公益通報者を特定させる情報の漏えいを抑止する、そういうことが適切に図られるというふうに考えられることから、今回、両罰規定は導入をされていないということになってございます。

山本(和)委員 そこで、事業者に対する、不利益取扱いをする行政措置についても大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 消費者委員会が、不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を導入すべきというふうに答申をし、消費者団体も、ここが最も重要なポイントであるというふうに指摘をしています。

 しかしながら、この改正案では、一切この行政措置が導入されなかったということでございます。その理由は何かということをお聞きしたいと思いますし、また、その行政措置として、助言、指導、勧告、公表、できれば是正命令も制度化すべきではないかなというふうに思いますけれども、大臣の御所見をお聞きしたいというふうに思います。

衛藤国務大臣 公益通報者に対する不利益取扱いは、通報をちゅうちょさせ、事業者が法令遵守を図る機会を失わしめるものであって、あってはならないというぐあいに考えます。

 改正法案においては、従業員等に対する守秘義務を課するとともに、事業者に、公益通報者に関する情報が漏えいしない体制、公益通報者に対する不利益取扱いを防止する体制の整備を求めることとしております。このように、公益通報者に対する不利益取扱いを、事後的ではなく事前に抑止することがまずは重要と考えています。

 他方、公益通報したことを理由とする不利益取扱いに関する事実認定については、当事者間で争われた場合、当事者双方の主張や根拠に照らして判断しなければならず、行政機関にとっては非常に困難であるばかりでなく、仮にそうした場合は裁判で行われることと変わりがないため、今回は、不利益取扱いが生じた場合の事後的な行政措置ではなくて、不利益取扱いの事前抑止に資する刑事罰つきの守秘義務を設けることといたしました。

 今回の改正によって、不利益取扱いを抑止する効果がどの程度高まったかについては、施行後の実態も十分踏まえ、検証していきたいと考えております。改正法案の附則第五条にもその趣旨を規定しているところであります。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 大臣が今おっしゃいました、施行後のいろいろな検証をしっかり進めていただくというのは大事なんですけれども、やはり、この法律の目的というのが、企業が自浄して労働者を守るということが目的の一つであるというふうにも思いますので、その事業者、自浄するという部分はしっかり、処分ということも含めて検討を更に深めていっていただきたいと思います。

 公表しても従わない、是正命令にも従わない事業者には刑事罰しかないとの専門家の御指摘もございます。また、先ほど来から出ておりますEU公益通報者保護指令にも、通報を妨害又は妨害しようとすること、通報者等に対する報復、通報者等に対する濫用的訴訟提起、通報者の身分についての守秘義務違反に対し、効果的で相当な抑止力のある制裁を用意しなければならないとの規定がございます。それと比較すると、我が国の今回の改正案で不利益取扱いに対する刑事罰が導入されていない、そこがすごく大事だと思うのですが、その理由について教えていただければと思います。

衛藤国務大臣 不利益取扱いに対する刑事罰、直罰を設けることは、積極的な立場と慎重な立場との意見の隔たりが大きく、今回の改正法案には含めていませんが、今後、必要に応じて検討すべきものと認識をいたしております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 公益通報した人を保護せず、守秘義務違反をした例えば窓口の人だけを罰して事業者はそのままということがある、それは不公平だと言われている中で、ここはしっかり今後の重要課題として大臣は御認識をいただきたいというふうにも思います。

 引き続きまして、通報対象となる法律四百七十本の解除、限定解除についてお聞きをしていきたいというふうに思います。

 公益通報者保護法の対象となる法律は、別表と政令に掲げられた合計四百七十本とされております。通報者がこの四百七十本の法律と見つけた違反行為を照合して保護対象になっているかどうかを確認するというのは、物すごく負担になるというふうに思います。本質的に不要であって、合計四百七十本の法律という限定を私は解除すべきであるというふうに思います。

 実際、現行法第二条第三項第一号では、「個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」と規定されております。最後に申し上げましたこの「その他の利益の保護にかかわる法律」との文言、そもそもの限定が外れてはいないのか。

 例えば、通報件数の多い税法、補助金適正化法、国家公務員法など、国民生活に重大な影響を及ぼしかねない行為。先ほどもお話が出ておりましたけれども、森友学園の問題、公文書の改ざんを指示されたことを苦に、みずから命を絶った赤木さんの、この方の思い。もしもこの制度が活用できたら、近畿財務局職員で公務員だった赤木さんは告発することができたかもしれない。でも、内部告発することができなかったからこそ、命をかけて世の中に問うことになった。本当に痛切に思っています。パワハラやセクハラもしかりでございます。

 通報対象とこういったことがなるのではないかと思いますが、どのような見解か教えていただけますでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 公益通報者保護法は、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の遵守を目的としているところ、委員御指摘の税法、補助金適正化法、国家公務員法、公文書管理法等は、専ら国家の機能にかかわる法律と考えられ、この法律の対象には当たりません。

 また、どのような行為が通報対象事実として保護の対象になるかは通報者と事業者の双方にとって明確であることが必要であるため、現行法では刑事罰で担保されている行為を通報対象事実としているところ、御指摘のパワハラやセクハラは、個別の国民の利益に関係するところがあると考えられ、例えば強制わいせつ罪や暴行罪等の刑事罰に結びつく場合であれば、この法律による保護の対象となります。

山本(和)委員 パワハラとかセクハラとかも対象となるということですか。

 もう一度、済みません。

高田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のパワハラやセクハラは、例えば強制わいせつ罪や暴行罪等の刑事罰に結びつく場合であれば、この法律による保護の対象となります。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 赤木さんの話に戻せば、この法律があったら赤木さんは通報することが、国家公務員法、公文書管理法など、こういうことが適用できれば、公益通報者保護法が本当にこれに適していたのではないかなというふうに思います。

 今となっては遅い話ですけれども、これからのことも考えて、通報対象を広げていくということをしっかり検討していっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、二号通報の真実相当性の要件緩和についてお聞きをします。

 二号通報、行政通報の保護要件について、改正案では、通報対象事実が生じ、また、まさに生じようとしていると思料し、かつ、公益通報者の氏名や当該通報対象事実の内容なども記載した書面を提出するとの要件緩和が行われましたけれども、専門家の間では、そもそも一号と二号に差をつける合理的な理由がないのではないかという御指摘もありますけれども、これに関してどういう認識か、お伺いをしたいというふうに思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、行政機関に対する公益通報の保護要件を事業者に対する公益通報の保護要件に合わせて、思料することで足りることとすべきとの議論があることは承知しております。

 この点に関しては、事業者への公益通報と同じ要件で行政機関に通報してよいということになると、事業者内部の自浄作用を高めることへのインセンティブが働かないことや、労働者が事業者に対して負う誠実義務とのバランスから、事業者に対する公益通報の要件と行政機関に対する公益通報の要件との間に一定の差を設けることが望ましいと考えられ、消費者委員会の答申においてもそのように取りまとめられたところでございます。

 したがって、御指摘のように、行政機関への公益通報の要件を緩和することについては慎重に検討する必要があると考えております。

山本(和)委員 続いて、三号通報の特定事由の追加についてお聞きをしたいと思います。

 消費者委員会の答申では、三号通報、マスコミへの通報の保護要件について、事業者が内部通報体制の整備義務を履行しない場合につき、客観的、外形的に判断可能な要件について法制的、法技術的な観点から整理を行い、特定事由に追加するということでおおむね合意だったというふうにも聞いております。

 にもかかわらず、改正案では、「公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合」を追加したということでございますけれども、この「信ずるに足りる相当の理由」とは具体的にどういうものなのか、そもそもこういうのはどこから出てきたのか、それをちょっとわかりやすく説明していただきたいというふうに思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の内部通報体制の整備義務は、企業において通報をしっかりと受けとめて自浄作用を発揮し、法令遵守を徹底していただくため、今般の改正で導入しようとしているものです。

 その内容にはさまざまなものが含まれておりますが、特に重要なものは、まず第一に、通報者に対する不利益取扱いの禁止、第二に、通報者に関する情報漏えいの禁止、第三に、窓口に通報があった場合の適切な調査の実施の三点であると考えられます。

 この三点のうち、一点目の不利益取扱いの禁止については、現行法でも、不利益取扱いを受けるおそれがある場合が報道機関等への通報が保護される場合の一つとして位置づけられております。

 三点目の適切な調査についても、現行法では、事業者に通報してから二十日経過しても事業者から調査を行う旨の通知がなかったり、正当な理由なく調査をしなかったりする場合が報道機関等への通報が保護される場合の一つとして位置づけられております。

 他方、二点目の情報漏えいの禁止につきましては、報道機関等への通報が保護される場合に位置づけられていませんでしたので、今般の改正において、通報者に関する情報が漏えいするおそれがある場合を報道機関等への通報が保護される場合の一つとして位置づけることといたしました。

 なお、御指摘の信じるに足りる相当の理由とは、例えば、過去に漏えい事案があり、再発防止策が不十分な場合や、体制整備義務に関する指針のうち情報管理に関する定めが遵守されていない場合などが考えられます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 特定事由を追加すること自体はいいことだというふうに思いますけれども、具体的に、今申し上げた正当な理由がなくて漏らすと信じるに足りる相当の理由というのがちょっとわかりにくかったので、これを聞かせていただきました。

 次に、改正案の第七条では、「公益通報者に対して、賠償を請求することができない。」と、賠償請求禁止が条文上初めて明確化されました。これによって、通報に付随する行為、例えば通報を裏づける資料、例えば帳簿とか名簿とか、証拠となる書類の収集行為も免責となるのか。

 本来、通報者による証拠持ち出しを、事業者が不正隠滅を目的に、守秘義務の決まり文句で圧力をかけて妨害することに社会的正義はない。通報の萎縮が起こらないよう、通報を裏づける資料の収集行為の免責もしっかり明確化し、法制化すべきであるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正法案では、公益通報によって事業者が損害を受けたことを理由とした損害賠償の請求について公益通報者の責任を免責することとしているところ、この免責は、公益通報によって生じた損害についてであって、御指摘の通報を裏づける資料の収集行為によって生じた損害についてまで必ずしも及ぶものではございません。

 通報を裏づける資料の収集については、通報を受けた者が調査や是正措置に着手するために重要な位置づけを占める一方、内部資料の持ち出しは事業者における情報管理や企業秩序に対して悪影響を及ぼす場合もあるため、これらのバランスをとることが必要であると考えております。

 このため、消費者委員会の答申にも記載されたように、まずは、これまでに集積された通報を裏づける資料の収集行為に関する裁判例を整理、分析し、当該収集行為に関する責任の有無についての実務上の運用の周知を進める取組を進めたいというふうに考えております。

 具体的には、消費者庁が開催する説明会において解説を行うとともに、今後、これまでの裁判例の概要を消費者庁のホームページに掲載することを予定しております。

 政府としては、今後、改正法案の成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいります。

 なお、裁判例においては、問題となった収集行為が通報内容の立証のためになされたものであり、公益通報との間に因果関係が認められるとして通報者に責任はないとしたものがある一方、収集行為が不正行為とは無関係のものに対するものが多いこと等から、通報者の責任を認定したものもあると承知しております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 次に、立証責任の緩和についてお聞きをしたいと思います。

 専門調査会の中間整理で、解雇が通報された一定期間内に行われた場合に立証責任を転換すべきとの明確な、明快な方向性が示されていましたけれども、答申では、一転して、今後、必要に応じて検討ということで、完全削除されたということでございます。

 これはもう後退だと思うんですけれども、これはなぜ起きたのか。企業側の負担も考慮しなければというふうに考えるのであれば、例えば、対象を解雇に限り、立証責任の転換について、保護すべき通報者の判断基準に合わせて、三年若しくは五年以内の解雇に限定する案もあり得たというふうに思いますけれども、どういうふうにこれを考えられたのか、教えていただければというふうに思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益通報を理由とした解雇その他の不利益取扱いについて、通報者の負担軽減の観点から、立証責任の緩和又は転換を求める意見があることは承知しております。

 他方、消費者委員会においては、解雇も含めて、悪意ある労働者に制度が利用される、無用な争いを避けるために通報者に対する措置を一時的に凍結するなど、立証責任の転換により円滑な労務管理等を阻害するとの懸念が示され、消費者委員会の答申においても今後の検討課題とされております。

 また、解雇については、裁判実務では事業者にも一定の立証の負担があり、現状においても一定程度労働者側の立証負担が軽減されていると理解しております。

 こうしたことから、改正法案に直接立証責任の緩和又は転換について規定することは見送ったものの、消費者庁において裁判例を整理するなど取組を行い、その周知を通じて通報者の負担が軽減されるよう努めてまいります。

 また、改正法案の附則第五条では、公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方について検討規定を設けておりますが、これは、立証責任の緩和又は転換についても含めて検討を行う趣旨でございます。

 政府としては、御指摘のような案も含めて、今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいりたいと思います。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 消団連の方からも意見が来ていまして、通報者が不利益取扱いの無効を求め裁判を起こした場合でも、不利益取扱いを受けたことを立証する資料は通報者の手元にはほとんどなく、立証に苦労するということなどの事例があると。立証責任を事業者側に転換し、事業者が通報者を通報したこと以外の理由で解雇及びその他の不利益取扱い、降格、減給、配置転換したことを立証しなければ無効であるというふうに規定すべきだという御意見もあることを紹介しておきます。

 今後も検討すべき重要な課題であるというふうに思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、報奨金制度についてもちょっとお聞きをしておきたいというふうに思います。

 アメリカや韓国には報奨金制度という、事業者の不正行為を行政や司法当局に通報し、その通報で国若しくは自治体に一定以上の利益、利益というのは不当利益の返還若しくは罰金、課徴金、それらをもたらした場合、その利益の一定割合、例えば一〇%から三〇%と言われておりますけれども、一定割合を報奨金として支払う制度というのが存在するというふうに聞いております。

 この報奨金制度を我が国で導入をするということについて検討されているのか、それともこれから検討するのか、そのあたりを教えていただければと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、米国や韓国においては、通報者に対する報奨金制度が設けられているものと承知しております。

 報奨金は通報者にインセンティブを与えることで通報件数を増加させることができますが、反面、報奨金目当てで軽微な違法行為や形式的な違法行為を狙った通報がなされるという悪影響も指摘されているところでございます。

 そのため、個別の分野に関する法律での導入は別として、通報対象事実がさまざまな法律に及んでいる本法においては、報奨金の導入はさまざまな課題があり、諸外国の状況も見つつ慎重に検討すべきものと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 そもそも、我が国のこの制度を考えますと、公益通報で違反行為が是正されて社会はそのメリットを受ける一方で、通報する個人としては、不利益取扱いのリスクがあるということを懸念して、おびえながらも正義を信じて通報する、コストを一人でかぶって通報するという、勇敢なことだというふうに思います、称賛に値するというふうにも思いますけれども、社会はその個人をどれだけ守ってあげるかということも考えると、やはりこれはちょっと寒々しいと言わざるを得ない法律かなというふうに思います。

 この制度の基本構造にそもそも問題はないか、今後この公益通報者保護法をどのような方向に持っていくおつもりか、大臣にお聞きしたいと思います。さまざまな今後の検討課題というのも御指摘をさせていただきましたけれども、それについてどういうふうに今後されていく方向性なのか、お答えいただければというふうに思います。

衛藤国務大臣 委員御指摘のとおり、公益通報は法令違反を早期に是正し被害の防止を図るものでありまして、公益通報者保護制度の実効性の向上は社会全体にとっても非常に重要であると考えています。

 他方で、通報が濫用されることにより、事業者に風評被害などの損害を不当に生じさせることや、真に対応しなければならない通報が埋もれてしまうこと等により違法行為の是正が図られなくなるといった事態は避けなければならないと考えます。

 今回の改正法案においては、当事者間の利益のバランスを図りつつ、実行可能な制度とする観点から、公益通報者に対する不利益取扱いを事後的ではなく事前に抑止することを重視し、守秘義務や事業者の体制の整備を求めることとしています。

 なお、附則の検討条項においても、御指摘のような観点も含め、さまざまな観点から議論がなされることは重要であると考えている次第であります。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 この公益通報者保護法の改正案は、まだ積み残しする部分、そういうこともたくさんあるというふうに思いますけれども、通報者に寄り添うことが本来の目的でもあるはずでございますので、そういったことが、不利益を受けた方に対して当たり前に使える法律になるようにぜひともお願いをしたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 公益通報者保護法の一部を改正する法律案について、衛藤晟一担当大臣にきょうはお伺いいたします。

 新型コロナウイルス感染症により、東京都など八都道府県は緊急事態宣言が継続しております。参考人質疑が開かれるべきところ、きょうはそれがかなわないということでございますけれども、各関係者、各界の皆さんから、委員長の御配慮にもより、本委員会に文書による御意見が寄せられているということで、本当にありがたく存じます。

 全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局長からの御意見を御紹介させていただきたいと思います。

  昨年だけでもIHIの無資格検査、かんぽ生命の保険不適切販売、関西電力幹部の金品受領などいくつもの不祥事が起きています。不正が長期間潜在していたにも拘らず通報がされなかったり、内部通報があってもそれが機能していない事例もあります。

  公益通報者保護法の施行後、状況の調査や制度の実効性向上のための検討を進め、ガイドラインの策定など必要な対応をしてきたとのことですが、いまだに社会に大きな影響を与えるような大企業の不祥事が発覚したり、通報したことを理由に不利益な取り扱いを受けた人がいることから、消費者団体として抜本的な法改正を求めてきました。

  本来であれば、もっと早く法改正されるべきではありましたが、今回やっと改正案が審議されるということで、まずは第一歩として公益通報者保護法が確実に改正されることを望みます。

  また、提出された改正案の内容は内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会の報告書にほぼ沿って整理されたと考えますが、以下の論点については、国会での十分な審議を求めます。

というふうに述べられておられます。

 そこで、まず最初に伺いたいのは、不利益取扱いに対する行政措置についてです。

 浦郷事務局長は、

 一、不利益取扱いに対する行政措置について

   制度の実効性確保のため、事後的な行政措置ではなく事前抑止を考え、本改正案では不利益取扱いに対する行政措置は設けず、刑事罰つきの守秘義務導入や通報体制整備義務を事業者に課したとのことですが、不利益取扱いへの抑止力ということであれば、行政措置を設けることが一番効果的と考えます。

と述べられております。

 私もそういうふうに思います。

 衛藤大臣に伺いますが、不利益取扱いを行った事業者への行政措置や刑事罰について、大臣は、五月十五日の本会議で、制度の実効性確保のため、事後的な行政措置ではなく、不利益取扱いを事前に抑止することが重要と答弁されましたが、抑止力ということであれば行政措置を導入するのが一番効果的だと思いますが、いかがでしょうか。

衛藤国務大臣 公益通報者に対する不利益取扱いは、公益通報者が誰であるかわからなければ、なされることはありません。したがって、不利益取扱いを抑止するためには、誰が通報したのかという情報が漏えいされないようにすることが最も効果的と考えられます。

 他方で、行政措置は、既に不利益取扱いが生じた後に個別に行政権限を発動するものであるため、不利益取扱いを一般的に防止するというものではありません。

 これらの観点から、今回は、不利益取扱いを事前に抑止することを重視いたしまして、刑事罰つきの守秘義務を導入するほか、不利益取扱いの禁止を定めるなどの通報体制整備義務を事業者に課することとしたものでございます。

畑野委員 どういうふうにやはり不利益な取扱いをやめさせていくのか、このことは本当に喫緊の課題です。

 きょう文書で御意見をいただいている方の中で、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長の志水芙美代弁護士の御意見も付されております。

 少し御紹介しますけれども、

  公益通報者の保護は、企業の違法な活動を明らかにして公正な競争を確保し、遵法企業こそが活躍できるようにする役割がある。このことは、消費者保護に資することはもちろん、日本経済の競争力の向上ひいては社会全体の利益にも直結する。世界的にも、二〇一九年十月にEUで公益通報者保護指令が承認されるなど、企業の違法行為への監視の仕組みが厳格化している流れである。

こう述べられて、「一 不利益取扱いに対する行政措置」、今回、「条文なし」と書かれた後に、

  通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置及び刑事罰を導入すべきである。現行法下での問題点は、通報者に対し不利益取扱いを行った事業者に対し、行政・刑事上何らのペナルティも課されず抑止力がない点にある。不利益取扱いの未然防止・早期是正のためには、行政措置及び刑事罰を導入すべきである。前記EU指令においても、不利益取扱いに対して「効果的、比例的で抑止効果のある罰則を課さなければならない」としている。

このように述べられているのは本当に大事だというふうに思います。

 そこで、更に大臣に伺います。

 先ほど御紹介した浦郷事務局長は、さらに、不利益取扱いに対する行政措置について、このように述べられておられます。

  不利益取扱いに対する行政措置に関しては、事実認定が困難、また執行体制の確保が不十分などの課題があるということで、附則五条で今後検討をするという内容にとどめられています。施行後三年を目途とした検討において、不利益取扱いに対する行政措置が導入され、さらには刑事罰の導入も検討されるべく、今回導入を見送った理由となるこれらの課題にどう対応するのか、課題解決に向けた道筋をつけていただくよう求めます。

このように述べられております。

 そこで伺います。

 衛藤大臣は、五月十五日の本会議の御答弁で、事後的な行政措置を導入するには事実認定や執行体制について多くの課題があるとされておりますが、それでは、これらの課題にどう対応されていくのか、課題解決に向けた道筋をどのようにお考えになっているのか、伺います。

衛藤国務大臣 不利益取扱いに対する事後的な行政措置を導入するには、私も本会議で申し上げましたように、事実認定や執行体制について多くの課題があり、また、仮に行政措置を導入するための十分な執行体制を確保できたとしても、解雇その他の不利益取扱いが公益通報を理由とすることの因果関係を行政機関が立証することはまだまだ困難であるという課題が残ります。

 御指摘の行政措置は、違法な不利益取扱いを抑止する方策として検討されたものですが、今後、先ほど申し上げましたような課題がある中で、今回の改正法によって規定される刑事罰つきの守秘義務や体制整備義務の運用状況や実効性を分析、検討した上で、違法な不利益取扱いを抑止するためにどのような方策が効果的で実行可能かを踏まえ検討してまいりたいということで、附則五条の中にこれを書き込んだところでございます。

畑野委員 前回からの今回の改正に物すごい時間がかかっているわけですね。ですから、大臣、そうおっしゃっていただいているのであれば、これは速やかに進めていただきたいと思いますが、検討、いかがですか。

衛藤国務大臣 そのような議論も、相当、与党内においても、また消費者庁の中においても議論をいたしました。そういう中で、まずは大きな一歩を歩み出そう、そして、附則の中で、今度は三年ないし五年の中で検討をしなければいけないということで、これを書き込ませていただいたところでございます。

 今はまだ、そこまでの体制が消費者庁にあるかということを問われれば、消費者庁としてもなかなか即答ができなかったというのが実情でございます。

畑野委員 大臣でおられるのですから、衛藤大臣のときに消費者庁の体制をしっかりつくる、そういう構えをお示しいただきたいと思うんですが、いかがですか。

衛藤国務大臣 一昨年の暮れに委員会から報告があり、指摘がなされ、それで、私どもも、消費者庁としても、そしてまた与党内においても、これは本当に真剣に議論をさせていただいて、ここまで来たところでございます。

 ですから、これは真剣に検討するということが前提で、附則の中に盛り込ませていただいた。我々も、そういう意味では、このことの検討は背水の陣で臨まなければいけない、そういう覚悟で取り組んでいるところでございます。

畑野委員 背水の陣でというお答えでございましたので、これは消費者庁だけではもちろんできないわけですね。ですから、政府全体で、大臣としてぜひ力を発揮して進めていただきたいと思います。

 きょうの文書の御意見の中で、全国消費者行政ウォッチねっと事務局長の拝師徳彦弁護士もいろいろと御提案されております。

 不利益措置への対応

  保護法に解雇無効等の民事ルールしか規定がない状態では、通報者は、不利益措置を受けたら自分で裁判を起こして、敗訴リスクや訴訟コストを一人で背負って、職場で孤立しながら戦わなくてはなりません。これでは、情報の透明化役たる「通報者」が萎縮してワークせず、情報が不透明なままになります。不祥事の是正・予防に繋がりません。通報者への不利益措置は、消費者・投資家を含む社会全体の利益に反する悪質な行為として刑事罰、少なくとも行政措置の対象とすべきです。

ということで、いろいろな体制のことについても御意見を述べられている。

 大変大事だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 次に、立証責任の転換について伺います。少し順序を変えまして、大臣に引き続き伺いたいと思います。

 消団連の浦郷事務局長の御意見では、

 四、立証責任の緩和について

   通報者が通報を理由として不利益取扱いを受けたことの立証責任の緩和については、調査会報告書において今後必要に応じて検討とされましたが、通報者が不利益取り扱いの無効を求め裁判を起こした場合でも、不利益取扱いを受けたことを立証する資料は通報者の手元にはほとんどなく、立証に苦労するなどの事例があります。立証責任を事業者側に転換し、事業者が通報者を通報したこと以外の理由で解雇及びその他の不利益取扱い(降格・減給・配置転換等)したことを立証しなければ無効と規定すべきです。

   これについては、附則五条の公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方についての検討規定に含めて検討を行う趣旨と説明がありましたが、附則五条の中に明記して、今後引き続き検討することを求めます。

と述べられています。

 また、日弁連の志水弁護士は、御意見の中で、「二 立証責任の転換」、これも、条文がありませんと書かれた後に、

  不利益取扱いが通報を理由とすることについて、事業者側に立証責任を転換する規定を設けるべきである。具体的には、通報者側が公益通報をしたことと不利益取扱いを受けたことを主張立証した場合には、不利益取扱いが通報を理由とすることの立証責任を事業者側に転換すべきである(事業者が別の理由で解雇等したことを反証しなければ通報に基因した解雇等と認定される)。

  事業者側に人事裁量が与えられ、情報も証拠も圧倒的に偏在しており、訴訟追行のための資金力にも大きな格差があることに照らすと、労働者側の立証軽減の必要性は高い。この点、裁判実務における事実上の推定の活用に委ねるという考え方もあるが、事実上の推定の活用はそれが現実に適切に活用されるとは限らず、明文での転換規定がある場合とは大きく異なるのであって、通報者が安心して公益通報できるために、立証責任を転換する規定を設けるべきである。

このように述べられております。

 大事な御意見だと思うんですね、それぞれ。

 立証責任の転換を、私たち日本共産党は、二〇〇四年のこの法律の法案審議の際に修正案を提出して、盛り込むべきだと述べてまいりました。

 衛藤大臣に伺いますけれども、これはやはり立証責任の転換を盛り込むべきだと思うんです。政府は、また大臣の御答弁も、立証責任の転換あるいは緩和について附則五条の検討規定に含むというのならば、だったら、そのことを明文化して、条文にしっかり明記するべきだったんじゃないんですか。いかがですか。

衛藤国務大臣 今後の検討課題として、不利益取扱いに対する行政措置の導入を求める意見があるほか、今御指摘のように、立証責任の転換を求める意見や不利益取扱いに対する命令制度や刑事罰を求める意見があるということは承知をいたしております。

 これらは不利益取扱いの抑止や是正といった目的で共通していることを踏まえて、改正法案の附則第五条では、それを総体としてひっくるめまして、「公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置の在り方」と明示いたしまして、検討事項とさせていただいているところであります。

畑野委員 立証責任の転換について、今後検討していくお気持ちは強くおありなんですか。

衛藤国務大臣 これは課題としてなっておりますので、最初からこの附則五条の中で検討していくという意思で、それを総体として、「公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置の在り方」というぐあいに書かせていただいたところでございます。

畑野委員 ひっくるめてしまうと、先ほどの弁護士の方の話のように、やはり法律にきちんと明記しないと、これはなかなか現場では大変だということはあるんです。

 私は、何かひっくるめてとおっしゃるのでは、個々のやはり記述、明文化が必要だというふうに思います。そういうところに、本当にこれはやる気があるんですかというのを私は思うわけなんですよ。これだけ議論されてきたわけですから、長い間、そして、関係者の皆さんも、また通報者の皆さんもこれだけ苦労してきたわけですから、こういうことをしっかりとやるべきだ。

 これは、委員長、ぜひ今後の委員会の中の議論でも深めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

土屋委員長 今後、理事会でも、皆さんと検討しながら、深めていければと思います。

畑野委員 時間が参りました。

 まだまだたくさん伺いたいことがあったんですが、大臣からも御答弁いただきましたので、また次回に深めてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 まず最初に、本法案が公益者保護をして通報しやすくなるという法案というふうにお聞きしておりますけれども、これまで通報がしにくかった理由と、それに対する改善というものがどこであるのか、概括的に説明をまずしていただきたいと思います。

衛藤国務大臣 今回の改正法案では、安心して通報を行いやすくするという観点から、事業者に対し、内部通報に適切に対応するための必要な体制の整備を義務づけるとともに、担当者に対する刑事罰つきの守秘義務を設ける等の措置を講じています。

 これらは、通報をためらう理由として、不利益取扱いを受けたり、自分が通報したことが知られてしまったりすることへの懸念が多く挙げられていることを考慮したものであります。

 このほか、行政機関等への通報を行いやすくするという観点から、行政機関への通報が保護される場合として、氏名等を記載した書面を提出する場合を追加する等の措置を講じています。

 これは、従来の行政機関に対する通報の保護要件である不正行為の発生を信ずるに足りる相当の理由の判断は個々の通報者には難しいため、氏名の記載等、一定の要件を満たせば相当の理由の有無は問わないとしたものであります。

 これらの措置により、通報を行いやすくしたり、事業者による不正行為の防止と是正がより促進されていくものと考えています。

串田委員 これまでの質疑の中でも両罰規定というのが出てまいりました。私も、陳情を受けて話をしたりとか、今回の参考人質疑のかわりの参考書も出していただいたときにも議論をしたんですが、両罰規定というのは非常に大事であるというふうに私も考えながらも、しかしながら、企業が罰せられるというようなことになったときに、企業が率先してこの問題を取り上げて発掘していくということに対して、むしろ隠蔽方向に向かうということもないのだろうか、そういう懸念を申し上げたことがあるわけでございまして、むしろ、例えば事業者の中に何か問題がある場合、それは、本当に真摯に、企業側が内部統制システムなどによって厳正な制度をつくっていながらも、そういうことが起きたときには、企業は率先してその問題を発掘し、問題の箇所を公表するなり明確化していくということが私は必要ではないだろうかと。そういうときに、それが発掘されると企業が処罰されるということになってしまうと問題なのかなと。

 したがって、過失の場合と故意の場合というような形で、企業が企業ぐるみでそのようなことを行った場合には企業が責任を負う必要があるけれども、そうでない場合にまで結果責任を負わせるということになると逆方向ではないかというようなことも私は議論させていただいたんですが、この点に関して、大臣としての見解、あるいは参考人でも結構ですけれども、御意見があればお聞きをしたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正では、事業者に対して事業者内部の公益通報に対応するための体制整備等を行う義務を課すこととしており、この義務には通報に関する情報を適切に管理することも含まれております。

 その具体的な内容としては、情報を漏らした者への懲戒その他適当な措置をとるべきことを内規で定めること等を想定しておりますけれども、法案の第十一条第四項では、それらを含む事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を内閣総理大臣が定めることとされております。

 本指針を踏まえたこのような内規が各事業者において策定され、適切に運用される過程で、御指摘のような、不正の隠蔽ですとか漏えいの原因についての調査等がなされることになると考えております。

串田委員 その制度をしっかりとつくり上げた上で、なおかつそういう漏えいがあった場合には厳しくというようなことは当然あると思うんですが、結果責任ということではなくて、非常にそこの部分のふぐあいというようなことがあれば、先ほど大塚副大臣もお答えいただいていましたように、株主代表訴訟なりの民事的な損害賠償というものが発生するんだろうなと思うんですが、その過程の中で、衛藤大臣が、先ほど、消費者庁としてのある程度限界もあるというお話もありました。

 私もそのとおりだと思うんですが、これは消費者庁の問題ではありながらも、不利益に取り扱われるということは、労働組合法の七条の不当労働行為もそうなんですけれども、労使関係というものが非常に強く感じられていて、むしろ、労働基準監督署とか、こういったようなことによって不利益を与えてはいけないんだというようなことを遵守していくということが必要だと私は思っているんです。

 すぐに訴えができるとか訴訟ができると書かれても、世の中そんなに簡単に、訴訟というのは勇気がないとなかなかできないし、お金も時間もかかるということで、これは、消費者庁に限らず、一般、全般的ではあるんですけれども、一番に関連をしていかなければならないのは労務関係、労働関係なんじゃないかと思うんですが、衛藤大臣としてのその点の認識、お伺いしたいと思います。

高田政府参考人 本法律、消費者庁が所管しておりますけれども、改正法の施行、運用に当たりましては、厚生労働省始め関係省庁と連携して対応してまいりたいと思います。

串田委員 本腰を上げないと、配置転換だとか昇進というのはほかの理由でもってもできてしまうという意味で、極めてこれはデリケートな問題なわけです。ですから、この公益者通報もしやすくするためには、まさにここの部分の、労務関係に対して、労働基準監督署もこの点についての不利益が行われないということを徹底していくということがないと、これはなかなか遵守できない。解雇なんという非常にはっきりした形で行われるなんてことは、なかなか企業も行わないことになるのではないか。それ以外の、目に見えないような形で不利益を与えてしまうということ自体をこれからも気をつけていかなければならないというふうに思うんです。

 情報の守秘を行う場合の担当者というだけでこれが十分に保護に値するのだろうかという疑念はあるんですが、情報を漏えいしない会社での範囲というものに関してはどのように限定されているんでしょうか。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益通報者保護制度の実効性の向上に当たって、通報者の匿名性を確保することは極めて重要なことでございます。

 その観点から、今般の改正では、御指摘の担当者に対する刑事罰つきの守秘義務を設けているほか、事業者に対して事業者内部の公益通報に対応するための体制整備等を行う義務を設けることとするとともに、報道機関等への通報が保護される場合として、事業者が公益通報者を特定させる事項を漏えいするおそれがある場合を追加することとしております。

 これらの措置によって、事業者における適切な情報管理に向けた取組が組織的にも促され、通報者の匿名性などが確保されると考えられます。

串田委員 その通報なんですが、事業形態によってもすごくまちまちだと思いますし、通報しなければいけない箇所というのも本当にまちまちで、事務職の人もいれば、現職として現場でいろいろと携わっている人もいて、いろいろなところに気がついたりして、これはこのままではいけないなと思ったときに、一体自分はどこに通報したらいいんだろうか、その通報の仕方はどうしたらいいんだろうか、電話するのか、事務所に、そこの担当者に何か話をしに行かなきゃいけないのか、書面を出すのだろうかというような意味で、通報しやすくするといっても、通報の具体化というのが果たして行われているんだろうか。

 例えば、事業所の中に、従業員にはいろいろな部署の手帳なり配付があると思うんですが、公益通報課とか公益通報係なんというのが果たしてあるんだろうかというと、ない事業者というのも多いんじゃないかな。そうなると、本当に不正を通報したくても、自分は一体どこに通報したら、上司に言えばいいのか、でも、上司は本当に担当者なのかというようなことも含めまして、具体化という点では、十分な形に、まだわからないんじゃないかなと思うんですが、こういったようなものをガイドラインなりなんなりをつくっておかないと通報しようにもしにくいんじゃないかと私は思うんですが、この点について、いかがでしょうか。

高田政府参考人 お答えいたします。

 通報の方式としては、電話、ファクス、電子メール、ウエブサイト等、さまざまなものが考えられますが、内部通報制度は事業者における自浄作用の向上やコンプライアンス経営の推進に寄与するものであり、基本的には、各事業者がみずからの規模や業種、形態等の実情に応じて通報を活用しやすいよう整備、運用していくことが望ましいと考えられます。

 他方、通報を促進する観点からは、通報者にとって通報に関する手続等が明確であることが重要です。そのため、消費者庁が策定、公表している民間事業者向けガイドラインにおいては、通報の方式も含め、通報対応の仕組みについて社内に継続的に周知、研修を行うことが必要である旨を示しているところでございます。

 今後とも、ガイドラインに沿った取組が行われ、各事業者の従業員等にとって通報の手続が明らかになるよう、消費者庁として必要な周知活動を実施してまいります。

串田委員 最後の質問にしたいんですが、今の詰めなんですけれども、今、そのガイドラインを遵守してもらいたいというのはわかるんですが、一般の会社としてどの担当部署がやるんだよと、一般の名称でいいですよ、どの担当者はやるんだよというのを明記していただいて、こういったような、この委員会の質疑を見ていただいている民間事業もあると思うので、自分たちはこの部署はやらなきゃいけないんだなというような責任感を持っていただきたいんですが、何という部署がこの法案を提出をする側として推薦できるというか、妥当だとお考えになっているのか、お答えをしていただきたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 それぞれの会社において、部署名はそれぞれの会社の考え方がありますので、ちょっと消費者庁としてこういう名前がというのはなかなか申し上げにくいところでございます。

 いずれにしましても、ここの部署であるということを社内に周知徹底していただくということが重要かと思います。

串田委員 名称はちょっと言いにくいということでしたが、今言ったようなことに関しては、企業としては、まず、どこかの部署でこれを遵守しろということ自体はしなきゃいけないんだという回答をいただいたということにしたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次回は、来る二十一日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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