衆議院

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第6号 令和4年4月19日(火曜日)

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令和四年四月十九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 井原  巧君 理事 稲田 朋美君

   理事 勝俣 孝明君 理事 宮崎 政久君

   理事 湯原 俊二君 理事 吉田 統彦君

   理事 漆間 譲司君 理事 伊佐 進一君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      佐々木 紀君    高見 康裕君

      武村 展英君    土田  慎君

      中川 貴元君    永岡 桂子君

      長谷川淳二君    平沼正二郎君

      船田  元君    古川 直季君

      堀内 詔子君    八木 哲也君

      保岡 宏武君    柳本  顕君

      山本 左近君    青山 大人君

      井坂 信彦君   大河原まさこ君

      大西 健介君    中島 克仁君

      山田 勝彦君    浅川 義治君

      掘井 健智君    福重 隆浩君

      吉田久美子君    田中  健君

      本村 伸子君

    …………………………………

   議員           井坂 信彦君

   議員           青山 大人君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            若宮 健嗣君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   国土交通大臣政務官    泉田 裕彦君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     高田  潔君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          村井 正親君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    長谷川秀司君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    片岡  進君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大澤 一夫君

   衆議院調査局第一特別調査室長           菅野  亨君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     山本 左近君

  堀内 詔子君     八木 哲也君

  三谷 英弘君     柳本  顕君

  井坂 信彦君     中島 克仁君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     堀内 詔子君

  柳本  顕君     三谷 英弘君

  山本 左近君     古川 直季君

  中島 克仁君     井坂 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 直季君     鈴木 英敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

 消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案(柚木道義君外七名提出、衆法第七号)


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     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び柚木道義君外七名提出、消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として消費者庁次長高田潔さん、消費者庁政策立案総括審議官村井正親さん、消費者庁審議官長谷川秀司さん、消費者庁審議官片岡進さん、文部科学省大臣官房審議官淵上孝さん、厚生労働省大臣官房審議官宮崎敦文さん、国土交通省大臣官房審議官大澤一夫さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。湯原俊二さん。

湯原委員 おはようございます。立憲民主党の湯原俊二です。

 時間の関係もありますので、それでは早速質問に入らせていただきたいと思います。

 若宮大臣は、この間、いつも答弁でおっしゃっているのが、検討会の報告と今回の法改正の整合性、いろいろな方がいろいろ疑問を呈していらっしゃるわけでありますけれども、大臣は答弁で、検討会報告書を基礎としつつ、この検討会報告書に寄せられた御意見を含め、関係方面からの御意見も伺いつつ、政府部内において必要な検討を重ね云々といつも答弁されておりますけれども、まず、ここ、寄せられた御意見とはどこからの御意見なのか。パブリックコメントなのか。あるいは、関係方面からの御意見とありますけれども、一体、関係方面はどこなのか。もっと突っ込んで言うと、内閣法制局も含まれるのかどうかを御答弁いただきたいと思います。

若宮国務大臣 お答えさせていただきます。

 まず、検討会報告書に寄せられました御意見につきましては、同報告書について、令和三年九月の二十一日から同年の十月の二十一日まで意見募集を行ってございます。この際に提出をされました御意見のことを指しております。

 また、消費者団体及び経済団体など、幅広く御意見がこの中では寄せられたものというふうに承知をいたしているところでございます。

 次に、関係方面からの御意見ということにつきましては、同報告書を公表した後に、複数の消費者団体や経済団体と意見交換を行ってございます。その際に各団体から出された御意見のことを指しているということでございます。

湯原委員 大臣の方から、令和三年九月からパブリックコメントを二十一日まで行われた、消費者団体、経済団体から意見を聞いていると。

 改めて確認させていただきたいと思いますけれども、この関係方面からの御意見も伺いつつというのは、内閣法制局は含まれているかどうかということをお伺いしたいと思います。

 それから、やはり、今日まで議論を聞いておりますと、先日の参考人質疑もそうでありましたけれども、この検討会報告と今回の法改正がなかなか整合性が取れていないんじゃないか、こういう意見が多いわけでありまして、この点について、やはり説明責任を果たさなければいけないんじゃないか、行政としての説明責任を果たしていただきたいと思いますけれども、この点、どのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

若宮国務大臣 まず、法制局の件でございますけれども、御意見をお伺いしたという中では法制局は特に入ってございませんで、ただ、政府部内での調整の中では法制局も関与してございます。

 それから、法案の策定に当たりまして、幅広く御意見を聞くことがまず重要であるというふうに認識をいたしているところでもございますけれども、消費者庁におきましては、検討会報告書に対する意見募集を行うとともに、関係方面との間で意見交換を併せて行ってございます。

 この検討会の報告書を基礎としつつ、いただきました御意見を踏まえまして、政府部内での必要な検討を重ねた上で、内閣の責任におきまして今回の法案を提出させていただいてございます。この意見を聞いたことというのは何かの隠れみのになっているのではないかという御指摘は、当たらないものではないかなというふうに考えているところでございます。

湯原委員 若宮大臣から、内閣法制局は政府部内の検討の中で、法律を改正ということですから当然聞かれたと思いますけれども、政府の部内でということで御答弁があったと思います。

 私は、先日の参考人質疑、お三方、お伺いして、大変有意義で勉強になりました。非常に分かりやすくて、今回の法改正が、いろいろもやもやしたところもあったんですが、非常によかったなというふうに思っています。

 そこで、特に、自民党が推薦された方だとお聞きしましたけれども、河上先生が、十五分間ずつ陳述されたわけでありますけれども、冒頭、こうおっしゃっております。

 消費者契約法の制定時に、林立する特別法の間隙を縫って発生する不当な取引行為というものと消費者被害の発生に対して、後追い的に制定される特別法の補充ではなくて、包括的な民事ルールを目指した議論が始まったんだということを思い出していただきたい。そして、その後、こう河上先生はおっしゃっています。その際、要件を厳格化して、射程をできるだけ具体的な場面での勧誘行為とか不当行為に限定しようとする力と、一般的、包括的民事ルールとして、民法よりやや具体性のある規定群として用意しようとする力の綱引き、これはこの消費者契約法の立法当初から存在しておりました。冒頭にこうおっしゃっております。

 つまりは、要件を厳格化しようとする力と、そして、包括的にして、受皿を大きくして、できるだけ消費者被害を少なくしようとする力の綱引きがあった、これは立法当初からこういうことが存在しておりましたと。自民党推薦の河上先生はこうおっしゃったわけでありまして、数次にわたって改正されておりますけれども、現在もこのいわゆる両論があって、綱引きがあるという御認識かどうか、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

若宮国務大臣 今回の検討会におきましても、例えば困惑類型の脱法防止規定につきまして、対象となる行為をある程度具体化した規定とする方向性が示されつつも、その方向性の中で、具体的な要件の在り方について明確にすることが望ましいという御意見と、それからまた、過度な明確性を求めるのは望ましくない、こういった二つの御意見がございました。

 したがいまして、検討会におきましては、この要件の具体化がある程度は必要という大前提の下で、御指摘のような二つの考え方があったというふうに理解をいたしているところでもございます。

 その上で、消費者庁といたしましては、この取消権、これは、契約全体の効力が否定をされるという強い効果を伴うものであるとともに、事業者の行為規範としても機能するものであるという観点から、これまで述べてきた、使いやすさですとか、予見の可能性ですとか、要件の明確性といった要素が全て満たされる必要があるというふうに考え、今回の法律案では、事業者の勧誘行為の要件を明確にした取消権の規定を追加、拡充することとさせていただいたところでございます。

湯原委員 若宮大臣から御答弁いただきましたけれども、やはり、お話を聞くと、河上先生がおっしゃった、要件を厳格化して、勧誘要件を厳しくしてという方に立っているのかなというふうに思うわけであります。もし違うのであれば、御指摘いただきたいと思いますけれども。

 要件を厳格化すると、結果として、消費者団体の皆さん方が懸念されるように、消費者被害を後追いする、こういうことにつながってくるということを私は懸念しておりまして、未然に防ぐことができないんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 若宮大臣も、今日までの答弁で、この消費者契約法が果たすべき役割は何か、こういった観点から、法体系全体の中での消費者法が果たすべき役割、あるいは、消費者法全体の中での各法の実効的な役割分担を考えるといった、いわゆる骨太の議論が必要だとおっしゃっているわけであります。

 先日の河上先生は、参考人質疑の中で、人間本来の脆弱さというものを考えると、消費者立法もまたその対応に追われつつというふうに思っております、その結果でありますけれども、断片的な規制が次から次と拡大していっているのが現状ではないかという認識をしておりますと。そして、その後で、しかし、本来その受皿となるべき規定の整備というのは、現在、日本の場合ですけれども、遅れに遅れておりまして、世界水準から見ても取り残された状態であります、こう答えておられるわけであります。

 若宮大臣は今日まで、骨太の議論がこれから必要だとおっしゃっておりますけれども、河上参考人は、現在の状況は遅れに遅れている、こういう状況を、世界水準から見ても取り残された状態にあるというふうにおっしゃっております。

 この骨太の議論というのは、大臣、いつまでにされるのか、お聞かせ願いたいと思います。

若宮国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、この消費者契約法の取消権については、これまで述べてまいりました、使いやすさ、予見可能性、要件の明確性、こういった要素が全て満たされる必要があるというふうに考えているところでございまして、今回の法律案ではこの要件を明確にした取消権の規定を追加、拡充することといたしたところでもございます。

 今委員が御指摘になりました、消費者被害を未然に防止できていないんじゃないかという御指摘につきましては、この消費者被害の防止、これは、消費者契約法の取消権のみならず、やはり消費者法全体で図るものであろうかというふうにも思っております。被害の態様あるいは事業者の特性などに合わせまして適切な手段が取られるべきものというふうに考えているところでもございます。

 また、今後着手いたします予定の骨太の議論、これにつきましても、消費者被害防止のための必要な対策、これは消費者トラブルの将来的な動向ももちろん見据えつつということになってこようかと思いますけれども、必要な対策をしっかり検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

湯原委員 やはり、明確にいつまでに骨太の議論をということをおっしゃられないのでありますけれども、冒頭申し上げたように、河上先生がおっしゃったように、要件を厳格化しようとする力と、包括的にして消費者被害に対応するという力の綱引きがあって、残念ながら今の政府案は要件を厳格化する力が働いていて、そして、その上で、大臣おっしゃるように、骨太の議論をするんだとおっしゃるけれども、明確にいつまでにという答弁が残念ながらないというふうに私は認識をさせていただきました。

 そして、その後、この間の参考人質疑の中で河上先生も野々山先生もおっしゃったのは、自立した消費者を救済するという概念から、ヨーロッパで見られるように、脆弱な消費者、つまりは、例えば日本におけると、これから高齢化社会がどんどん進んでいって、認知症の御高齢者が八百万人と言われる時代になる。あるいは、成年年齢が引き下がって、十八歳、十九歳。二十歳未満だったのが、成年年齢の引下げによって、まだまだ社会勉強が少ない中で、ある意味でこの脆弱な消費者が増えていく傾向にあると思います。

 各参考人がおっしゃったのは、今までは自立した消費者を救済する法律だったのが、これからはこの脆弱な消費者も救済する法律に変えていかなければいけないんじゃないか、この旨の発言をされたと思いますけれども、残念ながら今の政府案だとそこまでいっていないように私は認識するわけであります。

 この脆弱な消費者という概念、これからの消費者契約法は、自立した契約者と同時に、脆弱な消費者を救済する、消費者被害を救済する、そういう法整備をしていかなければいけない、こう考えるわけでありますけれども、この点について御答弁いただきたいと思います。

若宮国務大臣 今委員が御指摘になりました、若者あるいは高齢者等の、脆弱な消費者という位置づけになってくるのかと思いますが、この被害の防止や救済、こういった点は、やはり消費者契約法、これは平成三十年の改正及び今回の法律案によっても対応されているものというふうに考えてございます。

 もちろん、消費者の様々な脆弱性につきましての対応はこれにとどまるものではなくて、将来に向けて消費者契約法が果たすべき役割というのは一体何なのか、あるいは、法体系全体の中での消費者法が果たすべき役割や、法全体の中での各法律の実効的な役割の分担、こういったものも考えていかなければいけないのではないか、そういった意味でこの骨太の議論というのが必要だというふうに考えているところでもございます。

 この骨太の議論が、先ほどすぐに期限が切れないんじゃないかというような御指摘もございましたけれども、やはりこれは、様々な制度の在り方ですとか消費者像の姿、様々な要件を兼ね備えて考えていかなければなりません。そうしますと、既存の枠組みにとらわれないルールの設定の在り方、こういったものについても検討が必要になってまいりますし、相応の時間を要する、そのように考えているところでもございます。

湯原委員 平成三十年でも今回でもこの脆弱な消費者に対する対応がされたとおっしゃっていますけれども、残念ながら、参考人も消費者団体関係者も、そうなっていないということをおっしゃっていることを御認識いただきたいと思っています。

 時間の関係で最後に、予見可能性ということをよくおっしゃいますけれども、先日の参考人質疑では、河上先生はこの予見可能性については、例えばQアンドAを作ることによって対応できるんじゃないか、あるいは、府令とおっしゃっていましたけれども、省令レベルで具体的に示すことによって事業者の予見可能性というものに対応できるんじゃないか、こうおっしゃっております。この点について一点。

 あと、時間がないのでもう一つだけ。野々山先生はこの予見可能性については、今回の法改正は極めて過剰である、極めて限定した中での要件を定めている、予見可能性のものをつくることと、場面を限定するということは全然別の話であり、包括的なものでも十分予見可能性のあるものはつくれる、こうおっしゃっているわけであります。

 そして、この野々山先生は、京都で消費者被害の裁判をされておりますけれども、だんだん裁判が難しい、要件が厳しくなってきているので裁判がしにくくなってきている、こういう陳述もされておりますけれども、この点について大臣の御答弁を伺って、時間が参りましたので、質問を終わります。

若宮国務大臣 まず、前段の方のお話でございますけれども、御指摘のQアンドAあるいは逐条解説といったものにつきましては、消費者庁が消費者契約法の内容や解釈を周知するために作成するものであり、法的な拘束力を持つものではないものの、適用が想定される事例や関連する裁判例を紹介することによって、実務における予見可能性の確保に資するものであり、今後も活用してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、この府令によります対応というのは、法律上の根拠が必要となってまいりますものの、やはり実務におけますこの予見可能性を確保する方法の一つであろうかとも考えております。こういった方法につきましても、将来に向けまして更に活用の可能性を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

 また、後段の方の御質問でございますけれども、この新しい消費者被害への対応、これは消費者契約法のみならず、先ほど来申し上げておりますが、法全体で図るべきものというふうに考えているところでもございます。今後、新たに出てくるような可能性のある悪質な商法等々に対しましても、これは全て消費者契約法で対応すべきものとは考えていないところでございます。

 今後着手する予定の骨太の議論、また、あるいは消費者トラブルの動向等を踏まえながら、消費者被害の防止のために必要な対策が検討されるべきものというふうに考えているところでございます。

湯原委員 終わります。ありがとうございました。

松島委員長 それでは、吉田統彦さん。

吉田(統)委員 おはようございます。立憲民主党の吉田統彦でございます。

 早速質疑に入りたいと思います。

 先週四月十二日に行われました参考人質疑の結果からしましても、各先生方ともおおむね政府提出の改正案については不十分という評価を感じました。今回は、これまでの経緯を踏まえて、政府提出の改正案と我が党提出の議員立法について、相違点が明らかになるような質疑をさせていただきたいと思います。

 まず政務官に伺います。

 いわゆるアダルトビデオ出演契約について、契約締結を強要されるなど、不当な勧誘がなされた場合における、その契約の拘束力からの解放を求める被害者についての救済についてです。

 三月十六日の参議院の内閣委員会で野田聖子大臣が、「アダルトビデオに強要されることは未成年であっても成年であっても女性にとってはいけない、あってはならないことだということを前提に置きますと、今でもアダルトビデオに出演契約の場合は、その契約を取り消す、例えば消費者契約法というのがございますし、さらには、ひどいことで強要された場合には、例えば民法の詐欺とか強迫という理由で取消しを行使することが可能になっています。」と答弁されていますね。

 この答弁から、民法上の規定は、錯誤、詐欺、強迫による意思表示の取消しということで理解できますが、消費者契約法上はどのような救済となりますか。お答えください。

宮路大臣政務官 消費者契約法は、消費者と事業者の格差を踏まえ、消費者が契約を取り消すことができる権利等を定めております。消費者と事業者との間の労働契約ではない契約について、委員御指摘の不当な勧誘、例えば、事業者から不実のことを告げられて消費者がそれを誤認した場合や、消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、事業者が退去させず、消費者が困惑した場合など、勧誘に際して消費者契約法第四条所定の不当な勧誘行為があった場合には、この取消権を行使することができるというふうになっております。

 ただ、そのような要件に該当し、契約を取り消す場合には、消費者がこれを主張、立証する必要がございます。

 以上となります。

吉田(統)委員 そうすると、現行法上の救済として、民法上の取消権と消費者契約法上の取消権とがあるわけですよね。

 一に、民法上の取消権は、民法の一般法としての性格から、その要件は抽象的、規範的なものであって、被害者が要件を充足することについての立証の負担が大きいですね。二に、消費者契約法上の取消権は、立証の負担という問題は相対的に小さい一方で、取消権を行使できる場面が具体的な類型として規定されているために、個別の事情によっては、いずれの類型にも該当せずに救済されない事態が生じ得ること。以上の二点から、救済手法としてはいずれも限界がありますね、政務官。

 この点、今回提出された法案は、アダルトビデオへの出演を強要された被害者が救済される場面を広げるものとなっているのかを、政務官と衆法提出者にそれぞれお伺いします。

宮路大臣政務官 今回提出いたしました政府法案は、平成三十年改正の附帯決議に対応するものでありまして、アダルトビデオ出演強要問題を念頭に置いて検討したものではございません。

 一方で、今回の法案では新たに取消権を追加することとしており、例えば、新たに追加する、勧誘をすることを告げずに、退去困難な場所へ同行し、勧誘すること、あるいは、威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害することに対する取消権については、アダルトビデオ出演強要問題にも対応できる場合があるものと考えております。

井坂議員 こちらは、救済される場面を広げるものとなっております。

 野党案は、困惑類型の一部についての受皿規定を新設することとしています。すなわち、消費者が契約を締結するかどうかについて合理的な判断をすることができない事情を有しており、事業者がその事情につけ込んだ場合の取消権を新設するものです。

 いわゆるアダルトビデオ出演契約の強要の問題については、被害者が事業者の不適切な勧誘によって合理的な判断ができない状況に追い込まれ、困惑して契約してしまうケースが多いと考えられます。このようなケースにおいて契約の効力を否定しようとする被害者にとっては、野党案による受皿規定の新設によって、消費者契約法の個々の取消し類型のいずれにも該当しないという事態そのものが生じにくくなりますので、被害者が救済される場面は拡大すると考えます。

 以上です。

吉田(統)委員 宮路大臣政務官、一言だけちょっと確認をいたしますが、先ほどの御答弁の中で、平成三十年の附帯決議に準拠してというような御趣旨の発言がありましたが、各所や様々な有識者から、附帯決議に十分に対応していないんじゃないかという声がこの立法自体にあるわけなんですが、そこは、大臣政務官、十分にこの附帯決議にはこの法案は応えている法案だというふうにお考えだと理解してよろしいですか。

宮路大臣政務官 附帯決議、相当広範な御指摘をいただいたものと考えておりますので、今般の法改正に至るまでの間に結論が出たものについて手当てを講じさせていただいているものでございまして、引き続き、平成三十年の附帯決議に応じた検討というのが必要であるということは、先ほども大臣の方からもあったかと思いますが、そのように考えております。

吉田(統)委員 では、足らざる部分に関しては今後しっかりと対応するとお約束いただけるということでよろしいですか。

宮路大臣政務官 政府全体で検討してまいるということになろうかと思います。

吉田(統)委員 では、全面的に御対応いただけるという理解でいいですね。

 では、次に進んでまいります。

 成年年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するための法整備について伺います。

 一般に、個人の判断力は年齢や経験を重ねるに従って成熟していくと考えられますが、今般、成年年齢が引き下げられたことにより、相対的に判断力が発達途上の若者が取引社会に入っていくことになります。この問題は、成年年齢引下げの時点から指摘されており、例えば、平成三十年六月十二日の参議院法務委員会での附帯決議において、「成年年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するための法整備として、早急に以下の事項につき検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずること。」として、

 1 知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること。

 2 消費者契約法第三条第一項第二号の事業者の情報提供における考慮要素については、考慮要素と提供すべき情報の内容との関係性を明らかにした上で、年齢、生活の状況及び財産の状況についても要素とすること。

 3 特定商取引法の対象となる連鎖販売取引及び訪問販売について、消費者委員会の提言を踏まえ、若年成人の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為を行政処分の対象とすること、又は、同行為が現行の規定でも行政処分の対象となる場合はこれを明確にするために必要な改正を行うこと。

 4 前各号に掲げるもののほか、若年者の消費者被害を防止し、救済を図るための必要な法整備を行うこと。

とされています。

 大臣及び衆法提出者に伺います。成年年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止するため、どのような法整備を行っていますか。

若宮国務大臣 消費者契約法では、成年年齢の引下げを見据えまして、平成三十年の改正時に、主として若者に発生している被害事例を念頭に対応策を講じたところでございます。

 これに加えまして、今回の法案では、威迫して相談を妨害した場合の取消権を追加しており、これは主として若者に適用されるケースも多いというふうに考えているところでございます。また、事業者の情報提供に関する努力義務につきましては、年齢を考慮要素に追加をしてございます。こういったことから、今回の改正は成年年齢引下げに伴います消費者被害の拡大の防止に資するものというふうに考えているところでございます。

 法案が成立した暁には、既存の規定と併せまして、新たな改正内容につきましてもしっかりと周知をさせていただきますとともに、若い方々への積極的な注意喚起あるいは消費者教育を推進していくことによって、若年成人の消費者被害の防止に万全を期してまいりたい、そういうふうに考えております。

 また、十八歳、十九歳、こういった方を含めました、特に若年者の消費者トラブルの動向、これにつきましてもきめ細かく把握をいたしまして、若年者の消費者被害の防止のための対策、何か必要になってきた場合には関係省庁とも連携した上でしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

井坂議員 野党案では、特定商取引法、保険業法などにおけるクーリングオフの熟慮期間を、二十歳未満の成年者に限り、一律に七日間延長することとしています。これによって、成年年齢の引下げによって新たに行為能力を有することとなった十八歳、十九歳の若年者が、身近な大人に相談することも含め、二十歳以上の成年者と比べてより慎重に契約の要否を検討することができることとなりますので、消費者被害の拡大の防止に資することと考えます。

 また、四年前の消費者契約法改正により追加された消費者取消権の行使のための要件がいたずらに厳格であるため、若年層を中心に、悪質事業者による消費者被害が頻発するおそれもあります。そこで、つけ込み型勧誘に係る取消権の包括規定を創設することといたしました。これにより、多様な消費者被害に対応することが可能となるため、成年年齢の引下げに伴う消費者被害の拡大についてもこれを防止することができるものと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、まず、先日来の政府の御答弁で気になる点を政務官に確認をさせていただきたいと思います。

 検討会報告書における消費者の取消権のうち、消費者の判断能力に着目した規定についてお伺いします。

 四月七日の我が党の井坂委員の質問に対する政府の御答弁で、この類型の立法措置が取られなかった理由を、Aとして、事業者の行為によって消費者の判断能力が低下しているわけではないため、従来の取消権を超える側面があるということと、B、生活に著しい支障を及ぼす内容の契約となるかは、消費者の生活状況が一様ではないことの大きく二点を挙げられたと思います。

 このうち、Aの、事業者の行為によって消費者の判断力が低下しているわけではないため、従来の取消権を超える側面があるとの答弁についてお伺いします。

 例えば、政務官、法四条四項の過量販売類型は、事業者の行為による判断力の低下を問題にしていませんので、従来の取消権には、事業者の行為によって消費者の判断能力が低下しているわけではないものが含まれているのではありませんか。すなわち、平成二十八年に過量販売類型を設けた時点で、既に従来の取消権を超えており、検討会報告書が示唆した判断能力に着目した規定は、それを拡充するものにすぎないのではないでしょうか。政務官にお伺いします。

宮路大臣政務官 消費者契約法の取消権においては、事業者の行為が主たる要件となっておりまして、御指摘のあった過量契約取消権につきましても、事業者が過量であることを認識しながら勧誘したという事業者の行為が主たる要件となっております。

 これに対し、判断力の低下に着目するという方向性が示された取消権につきましては、そのとおり判断力の低下が主たる要件となると考えられるところ、判断力の低下は事業者の行為によるものではありません。そのため、従来の取消権を拡充するものにすぎないということはやはり言い難く、従来の取消権を超える側面があるというふうに考えております。

吉田(統)委員 分かりました。

 では次に、Bとして先ほど挙げた、生活に著しい支障を及ぼす内容の契約となるかは、消費者の生活状況が一様ではないことについて伺いますね。

 これも、過量販売類型でも同様の問題があります。すなわち、過量かどうかは当該消費者にとっての通常の分量等を超えるかどうかで判断されますね。ある分量が過量かどうかは個々の消費者によって異なるわけです。現行法に同様の規定があるのに、なぜ今回の法改正では難しいと評価したのか、これをはっきりとお答えいただけますか。

宮路大臣政務官 過量契約取消権は、契約の目的となるものの量に着目するものでありまして、契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるか否かは、消費者の生活状況等の消費者の個別の事情に関わりなく、ある意味、一般的、平均的な消費者を基準として、ある程度客観的に判断することが可能であります。

 他方で、判断力の低下に着目するという方向性が示された取消権につきましては、生活に著しい支障を及ぼすものを対象とするとされたところでありますが、生活に著しい支障を及ぼすか否かにつきましては、まさに当該消費者の生活状況によって異なるため、過量契約取消権における過量性よりもより一層判断が困難であるというふうに考えております。そのため、過量契約取消権が個々の消費者の事情に着目しているからといって、判断力に着目した取消権を設けることが可能とはならないというふうに考えております。

吉田(統)委員 政務官、ある程度客観的にという部分をもう少し詳しく教えていただけませんかね、御答弁の中の。

宮路大臣政務官 例えば、布団を十枚売るというのは、恐らく、吉田委員にとっても、私にとっても、あるいは八十を超えた方にとっても多いだろうというのは、ある程度客観的に判断できると思います。

 ただ、十枚が生活に著しい支障を及ぼすかどうかというのは、吉田委員の御家族構成あるいは私の家族構成によって異なるわけですので、そこはなかなか客観的に判断しづらいところはあろうかと思います。

吉田(統)委員 一定程度分かりやすい御説明だったと思いますが、客観的な判断というのは、しかし、今、布団十枚ということがありましたけれども、五枚だったらどうなのかとか、その辺は本当に難しい判断なんじゃないかなとは思います。それは付言しておきますが。

 それでは、次に行きたいと思います。

 現行法の困惑類型のうち、法四条三項三号から五号までは、いずれも消費者が合理的な判断ができない事情を有することに着目した規定であると考えていますが、三号から五号までに掲げられた事情は、消費者の多様な事情のうちのごく一部ではないでしょうか。

 検討会報告書においても、困惑類型の脱法防止規定に関する「考えられる対応」について、消費者が有している合理的判断ができない事情が判断の対象となるが、そのような事情は多様であって受皿となる脱法防止規定を設けることは困難であると考えられる、消費者の心理状態に着目した規定により救済され得る事例を見極めた上で、法第四条第三項第三号から第五号までの受皿となる脱法防止規定も検討すべきとの意見もあった等の記載があります。

 政務官と衆法提出者に伺います。

 現行法に掲げられていない、合理的な判断ができない事情に対応する必要性の有無についてどうお考えになりますか。

    〔委員長退席、勝俣委員長代理着席〕

宮路大臣政務官 現行の第四条第三項第三号から第五号は、平成三十年の改正により設けられた規定であります。これらの規定は、平成三十年の時点において対応する必要があるものとして設けられたものであるというふうに承知しております。

 そして、これらの規定について、検討会の報告書におきましては、脱法防止規定を設けることは困難であるという方向性が示されておりまして、それを受け、今回の法律案においては、これらの規定の脱法防止のための改正はしておりません。

 ただ、将来に向けての骨太な議論においては、先ほど大臣の質疑答弁にもありましたが、必要に応じて、これらの規定を含む現行規定を見直してまいりたいというふうには考えておるところでございます。

井坂議員 対応する必要性はあると考えます。

 現行の消費者契約法四条の三号から五号までは、いずれも消費者が有する合理的な判断ができない事情を利用して契約を締結する場面だと考えますが、そのような場面は既存の三号から五号までに掲げられたものには限られません。消費者契約法の規定は、法制定以来、新たな被害類型が生じるたびに後追いで追加されてきています。法改正がなくても、新たな被害を防止し、被害者を救済できるようにするため、既存の類型よりも抽象的な規定として、個別具体的な事情に応じて、適用の可否を裁判所で判断していただく余地を残した包括的な受皿規定を設けるべきであると考えます。

 なお、この論点は、検討会報告書においては、合理的な判断ができない事情が多様であることから、一、消費者の心理状態の全てを事業者が認識することは難しいことと、二、事業者のそのような認識を消費者が主張、立証することが困難であることを理由に、困難であるとされています。

 しかし、検討会報告書も、対応する必要性があることを前提に課題を挙げているのであって、対応の必要性そのものを否定するものでは全くありません。

 また、これらの課題については、提出者としては、一、事業者が認識することの難しさについては、事業者が消費者の事情を認識しながら契約をしたという、より悪質なケースを対象としている野党案では問題となりませんし、二、事業者の認識を主張、立証することの難しさについても、民事訴訟において、事業者の認識を客観的な事実から推認することにより、間接的に立証していけば足りるところ、そのような主張、立証する余地がある以上は、その場合における消費者の救済の道を閉ざす理由はなく、立法措置を取るべきであると考えます。

 以上です。

吉田(統)委員 御答弁ありがとうございます。

 それではまた、次の項目を聞いてまいります。

 社会生活上の経験の要件について政務官に伺います。

 現行の消費者契約法四条三項三号及び四号には「社会生活上の経験が乏しいことから、」という要件がありますが、これらの規定のそれ以外の要件は充足しつつ、今の要件のみを満たさない場合もあるのではないでしょうか。御答弁をお願いします。

宮路大臣政務官 御指摘のとおり、お尋ねの点について、理論的には、社会生活上の経験が乏しいからという要件のみを満たさないため、契約法第四条第三項の第三号又は第四号の取消権を行使できないという場合もあり得るものと考えております。

 他方、昨年の国会審議では、参考人が、社会生活上の経験が乏しいからという要件について、この要件を削ることによるメリットは考えにくいという旨を述べられておりました。

 そこで、消費者庁では、平成三十年改正時の国会における御議論も踏まえ、この要件の解釈について、「社会生活上の経験が乏しいか否かは、年齢によって定まるものではなく、中高年のように消費者が若年者でない場合であっても、社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同様に評価すべき者は、本要件に該当し得る。」ということを逐条解説において明らかにしているところでございます。

吉田(統)委員 政務官、ありがとうございます。

 それでは、例えば四号を例に取って、これは政府と衆法提出者に伺います。

 四号を例にすると、消費者が、社会生活上の経験が乏しくはないものの、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げるような場合において、消費者に取消権を与える必要はないでしょうか。政務官及び衆法提出者にお伺いいたします。

    〔勝俣委員長代理退席、委員長着席〕

宮路大臣政務官 先ほど述べましたとおり、平成三十年の改正時の国会での御議論を踏まえて、この取消権について、「社会生活上の経験が乏しいか否かは、年齢によって定まるものではなく、中高年のように消費者が若年者でない場合であっても、社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同様に評価すべき者は、本要件に該当し得る。」との解釈を逐条解説において示しているところでございます。

 その後、消費者庁の研究会及び検討会におきましては、様々な角度から検討が行われましたが、「社会生活上の経験が乏しいことから、」という要件を含む現行規定の見直しを積極的に求める意見はなかったところでございます。

 こうしたことから、今回の法律案では、この要件を削除することにより、この要件を満たさない場合に取り消しできるようにということにはしておりません。

青山(大)議員 お答えします。

 現行の消費者契約法第四条第三項第四号が意思表示の取消しを認めたのは、事業者が消費者の有する不安をあおる、消費者の好意の感情に乗じるといった行為をすることが、合理的な判断ができない事情を利用して契約を締結させる点で不当なものと評価できることに根拠があると思われますところ、そのことは、消費者が社会生活上の経験が乏しいかどうかとは無関係であると考えます。

 そこで、野党案においては、事業者が消費者の有する不安をあおったり、消費者の好意の感情に乗じたりした場合に、社会生活上の経験が乏しいとは言えないことだけを理由に取消しが認められないといった事態がないよう、この要件を削ることとしております。

 以上です。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 聞きたいことがいろいろありますので、次に行きます。

 それでは、大臣に伺いますが、改正特定商取引法、預託法の契約書面等の電子化について大臣にお伺いいたします。

 まず、その経緯ですが、当時の井上信治消費者担当大臣の鶴の一声で取引対策課が対応せざるを得なかったとの話を仄聞していますが、これは事実でしょうか。経緯のみを簡潔にお答えください。

若宮国務大臣 経済社会のデジタル化が進展をする中、政府全体におきまして、このデジタル化の議論の中で、規制改革推進会議において、特定商取引法の一部取引類型の契約書面等の電子交付についても取り上げられたところでございます。また、規制改革推進会議の事務局であります規制改革推進室から、各省庁の所管法におけます全ての民民手続の書面規制について、法改正が必要な事項の検討依頼がございました。

 これらを受けまして、消費者庁におきまして検討を行ったところ、紙での交付を原則としつつ、消費者の承諾を得た場合に限って、例外的に契約書面等の電磁的方法による提供を可能とする改正を行うこととしたものと承知いたしているところでございます。

吉田(統)委員 ちょっと趣旨と違う御答弁でしたが、まあ、いいです。大事な質問がいろいろありますので。

 では、大臣と衆法提出者にそれぞれ伺います。

 特定商取引法第四条を始めとして、特定商取引法、預託法において、事業者が消費者に対して交付を義務づけられている書面があります。その役割として、一、消費者に対して契約を維持するかどうかを判断するための情報を提供する機能、二、事業者の不当な勧誘の影響下にある消費者に対し、契約の内容について警告し、その影響から逃れさせる機能が挙げられるほか、実務上、三、いわゆる見守り機能があるということも言われています。

 令和五年から、これらの意義を有する書面について、電子データで交付することができることとなっていますが、書面を電子データで交付した場合、電子機器の操作に疎い消費者はその内容を確認できないことが考えられますし、消費者の周囲の者もその存在に気づくことができないことが考えられます。

 電子データでの交付により、書面交付の機能が害されるのではないかということを、大臣と衆法提出者にお伺いします。

若宮国務大臣 書面の電子化を導入する特定商取引法等の改正に当たりましては、国会におけます附帯決議において、書面交付義務が持つ消費者保護機能が確保されるよう慎重な要件設定を行うこと等が求められているところでございます。

 国会におけます附帯決議を尊重いたしまして、現在行われております検討会での有識者の御議論も踏まえた上で、悪質事業者が悪用したり、高齢の方などデジタル機器の利用に不慣れな方々が不利益を被ることのないよう、政令、省令など、制度設計を慎重に行ってまいりたいと考えております。

青山(大)議員 お答えします。

 情報通信技術にどの程度なじみがあるか、情報機器の取扱いにどの程度通じているかといった事情は個々人によって大きく異なります。そのような状況において書面交付を電子化した場合には、書面の内容の確認がしづらかったり、そもそもできなかったりといったことも考えられますし、消費者の周囲の人も契約の存在に気づきにくくなると考えられます。

 したがって、提出者としては、電子化によって書面交付の機能が失われるおそれは十分にあると考えます。

 以上です。

吉田(統)委員 いや、大臣、これはやはりかなりリスクがありますので、周りの人が気づく見守り機能、これは本当に大事なんだと思います。ある方が契約を結んでしまったのを御家族が気づいたり、介護に来られる方が気づいたり、御家族が来て、お母さん、これ何、こんな契約しちゃ駄目、だまされているわよ、そういったことも往々にしてあることなんですね、大臣。

 大臣、しっかりと対応するとさっきおっしゃっていただいたと確信をしておりますので、ここは本当に、政府、一義的に責任があると理解していただいて、しっかりとやっていただくことをまずお願いをしまして、次の質問に移ります。

 特定商取引法、預託法上、事業者が消費者に対して交付を義務づけられている書面を電子データで交付するには、消費者の承諾が必要とされています。しかし、この書面の交付は、先ほど確認した書面交付の機能からすれば、消費者が不当な勧誘の影響下にある可能性を前提として、事業者に義務づけられているものです。

 事業者の不当な勧誘の影響下にある消費者の行った承諾は、同じく事業者の不当な勧誘の影響を受けるのではないでしょうか。政務官と衆法提出者にそれぞれ見解を伺います。

宮路大臣政務官 書面の電子化を導入する特商法等の改正に当たっては、国会における附帯決議において、消費者が承諾の意義、効果を理解した上で真意に基づく明示的な意思表明を行う場合に限定されることを確保するため、慎重な要件設定を行うこと等が求められております。

 御指摘のような、事業者の不当な行為により消費者の真意に基づく意思表明が阻害されるのではないかという点を含めまして、国会における附帯決議を尊重し、現在行われている検討会での有識者の御議論も踏まえて、政令、省令などの制度設計を慎重に行ってまいりたいというふうに考えております。

青山(大)議員 お答えします。

 消費者の承諾を要件にするということは、事業者の不適切な勧誘の影響から逃れるための書面の交付方法を、まさにその影響下にあるかもしれない本人に決めさせるということにほかなりません。承諾の取り方の規制は、承諾するかどうかの判断がゆがめられるリスクを軽減するにとどまると考えますので、電子化そのものが不適当であると考えます。

 そこで、野党案においては、昨年の法改正で特定商取引法、預託法に設けられた書面交付の電子化を可能にする規定を削除することとしています。

 以上です。

吉田(統)委員 両方のお話を聞くと、やはり、消費者の立場に立てば、野党提出の法案の、もう取り消してしまった方が、より消費者保護の立場から優れているのは明白のようにも思います。

 ただ、政務官、真摯な御答弁をいただいておりますので、ここは責任を持って、一義的な責任は政府にありますよ、しっかりとお答えをしていただかないと、消費者の保護をつかさどる消費者庁としてはあり得ない対応でありますので、しっかりとそこは大臣がリーダーシップを取っていただいて、省庁全体で本当にやってください。本当は、やはりこの電子化はやめた方がいいと思いますね、はっきり申し上げて。

 それでは、もう時間がなくなってまいりましたので、もう少しお話を聞いていきたいと思います。

 契約法の内容に戻ります。

 本法案の九条二項について、四月七日の青山委員の質問とは別の視点で政務官に伺います。

 消費者契約法の逐条解説では、法三条一項二号の情報提供の努力義務の趣旨に照らして、事業者と消費者との間で平均的な損害の額が問題となった場合も、事業者は消費者に対して必要な情報を提供するように努めなければならないと示されています。

 したがって、事業者は以前から解約料の定め方に関して情報提供義務を負っていたものであり、九条二項はこれを明確化したものと理解してよろしいですか。

宮路大臣政務官 結論から申し上げると、第九条第二項は第三条第一項第二号を明確化するために規定されたものではございません。

 まず、説明する内容につきまして、第三条第一項第二号により事業者に説明が求められるのは契約内容です。例えば、解約料について、具体的に言えば、解約料が契約に定められているか否か、解約料の支払い義務が発生する契約条件などであります。

 他方で、第九条第二項により事業者に説明が求められるのは解約料の算定根拠の概要であり、具体的には、解約料に含まれる費用項目や算定式などであるため、事業者が説明する内容が異なっております。

 また、第三条第一項第二号は契約の勧誘時に関するものでありますが、第九条第二項は、事業者が解約料の支払いを請求する場合において、消費者から説明を求められた際に説明するということになっているため、説明が求められる場面も異なるということになっております。

吉田(統)委員 もう少し細かく聞きたいところなんですが、ちょっと時間がないので、次に行きます。

 それでは、引き続き政務官に八条三項について伺います。

 八条三項では、「事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。」とありますね。

 この「重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない」とは、具体的にどのようなケースか、分かりにくいので御説明いただけますか。

宮路大臣政務官 御指摘のとおり、大変分かりづらいなというのが私の個人的な感想でもありますが。第八条第三項は、「重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない」と規定しております。これが大変分かりづらいなと思うわけですが、重大な過失を除く過失とはいわゆる軽過失のことでありまして、第八条第三項は、軽過失のみに適用されることを明らかにしていない場合を指しております。

 具体的には、損害賠償の限度額について、法律上許される限りといった文言を用いて定めるような場合、これが多々これまであったわけでございますが、これが該当するということになります。

吉田(統)委員 じゃ、最後に政務官にお伺いします。

 責任制限条項で故意又は重過失の場合を除きということまで明らかにしない規定として、例えば、消費者契約法に反しない限りとか、消費者契約法八条から十条までの規定に反しない限り、消費者契約法八条一項の規定に反しない限りなどの書きぶりも考えられますね。

 したがって、八条三項によって条項が無効とならないためには、故意又は重過失の場合を除きか、軽過失の場合に限りなどのように、故意、重過失、又は軽過失という概念を用いて規定しなければならないと理解してよろしいのでしょうか。あるいは、消費者契約法八条一項の規定に反しない限りなどの表現は無効になるのでしょうか。政務官、お答えください。

宮路大臣政務官 端的に申し上げると、御指摘のとおりだというふうに考えております。

 今回の法律案の規定が設けられる結果として、事業者には、故意又は重大な過失の場合を除きや軽過失の場合に限りといった契約条項のように、明示的に軽過失の場合に損害賠償責任の一部を免除することを定めることが求められております。

 どのような場合に明示がされたのかについては、免責条項が事業者の軽過失の場合にのみ適用されることが、一般的、そして平均的な消費者にとって明らかになっているか否かという基準によるものというふうに考えております。

 委員御指摘の消費者契約法八条一項の規定に反しない限りといったような規定ぶりでは、一般的、平均的な消費者にとって、契約条項が事業者の軽過失の場合にのみ適用されることが明らかであるとは言えず、今回の法律案によれば、事業者の損害賠償責任の一部を免除する契約条項としての効力は認められないものと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 質問を終わりますが、大変丁寧な御質問をいただき、まだまだ時間が足りないとは考えられますが、本当に御丁寧な対応をいただいたことに感謝申し上げまして、引き続き大臣、政務官も、消費者保護の観点からしっかりと進めていただきたいとお願いをして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、浅川義治さん。

浅川委員 消費者問題特別委員会、初質問をさせていただきます。

 委員長、各理事、各委員の皆様、そしてまた事前に各省庁の調整をさせていただいた職員の皆様、そして今回、特に消費者団体の関係者の皆様にも、いろいろアドバイス、あるいは、こういった観点から質問等もしていただきたいということもお伺いしました。改めて感謝を申し上げます。

 また、この委員会は、今インターネットで中継もされておりますし、追って録画でも見ることができます。御覧いただいている皆さんにも感謝を申し上げます。

 私は、昔、横浜の市会議員をさせていただいておりました。その前は地方銀行に十一年間勤めていたんですけれども、その十一年間の地方銀行に勤めている間に、いわゆる金融の自由化というのがありまして、いわゆる銀行での投資信託の販売とか、保険の販売というのが出てきた時期なんですね。

 そのときにやはり思ったのは、今、金融の、銀行の専門家が、消費者、お客様に対して、今までは預金とか融資とか一般的な定型的な商品だったところに、いわゆる価格変動のあるリスク商品を案内する。当然、銀行本体としても、金融庁からの指導もあって、相当厳格にお客様に御案内をして販売をするということが求められて、当然、そういうのが金融庁の検査でもあったんですけれども、そのときに改めて思ったのは、学校教育の中での金融教育というのがほとんどなされていないなというふうに思ったんですね。

 私が市会議員選挙に出るときに、公約の一つに、金融教育を学校教育の中で入れるべきだということを言わせていただきました。

 その後、今、社会科の教科の中でも金融教育もあるということなんですが、まさに社会人になったときの消費者としての立ち位置というのを、金融に限らず学校教育の中できっちりとやっていくということが非常に大事だなということも、その後も感じておりました。

 今回、他の委員からもう既に御質問もあるんですけれども、通告の順番をちょっと変えまして、教育関係のところのお話を先にさせていただきたいと思います。

 そのちょっと前に、実は先日、私も去年の十月に初当選させていただいて、コロナということもありますし、私は宿舎に入っていないので横浜から毎日出てきているんですけれども、初めてこの近所で居酒屋に入ってお酒を飲んだんですね、国会議員になって初めてなんですけれども。そうしたら、運が悪かったのか、お通し料が物すごく高くて、なおかつ、サービス料が物すごく高かったんですね。

 これは、もしかして横浜とこの周辺の違いかなとも思ったので、あえて私もちょっと言わなかったんですけれども、どうもやはり調べてみると、表示されていない場合に普通の居酒屋でサービス料とかを取るのはいかがなものか、拒絶もできるんじゃないかというようなことも書いてあったんですけれども、これは通告していないんですけれども、そういう解釈でよろしいでしょうか。高級なお店じゃないんです、本当に。普通の居酒屋だったんですけれども。

村井政府参考人 お答えいたします。

 今委員の御指摘のあったお話というのは、居酒屋等飲食店の店舗におけるその表示という御趣旨でよろしいでしょうか。(浅川委員「そうですね、はい」と呼ぶ)ということでありますと、いわゆるそういった外食等の店舗におけるその表示について、特段の義務づけはしていないというふうに理解をしております。

浅川委員 分かりました。やはり店舗はよく選んでから入らなきゃいけないなというところかと思いました。

 あと、済みません、私も、内閣委員会、常任委員会に所属していまして、あと国交委員会にも、せんだって、横浜の案件があったので出させていただいたんですが、その三回の委員会の中で、毎回、いわゆる未確認飛行物体、UFOについて関連して質問もさせていただいております。

 ただ、今回、この消費者委員会で特にUFOのことについてお伺いすることはないなと思っていたんですが、霊感商法ですね、もう既に規定もされていますけれども、そういうオカルトチックな話に誘われて物品の購入をさせられてしまうとか、そういうことも中にはこれまでたくさんあったので。

 私がUFOの質問をしたら、ネットに、何でそんな質問をするんだというのが七割ぐらいありまして、ちょっとその弁明をすると、アメリカの国防総省始め政府が、軍事上、安全保障上の重大な懸念をもたらすということで正式に発表しているもので、それをあえて、日本の国会では議論されていなかったので、取り上げておりました。

 ですから、オカルトとか、そういう関連で結びつけられると私もちょっと困るなと思いましたので、消費者委員会で、ここでちょっと言わせていただきます。済みません。

 では、学校関係の教育のところに入らせていただくんですけれども、今日は、政務官、鰐淵先生にもお入りいただいていますので、中心にお伺いしたいんですけれども、やはり、先ほど申し上げましたように、消費者教育は学校で重要になってきております。

 ほかの委員からも取り上げられておりましたけれども、公共という科目が必修科目にもなってきている、あるいは家庭科とか公民でも授業がされているということなんですけれども、実際に、小学校、中学校、高校ではどれくらいの時間がこういった消費者教育に当てられているかということは把握されていらっしゃいますでしょうか。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 子供たちが自立した消費者として適切な意思決定に基づき責任ある消費行動を取ることができるように、その発達の段階に応じて消費者教育を行うということは極めて重要だというふうに考えております。

 文部科学省におきましては、令和二年度から順次実施をしております新しい学習指導要領におきまして、消費者教育の内容の充実を図ってきているところでございます。

 具体的には、小学校、中学校の家庭科の時間に、売買契約の基礎などの買物の仕組みや消費者の役割、これは小学校家庭科五、六年生でございます。それから、中学校の技術・家庭科の家庭分野では、売買契約の仕組み、消費者被害の背景とその対応などについて規定をして、指導を行っているということでございます。また、高等学校におきましては、家庭科で、新たに契約の重要性や消費者保護の仕組みに関する内容を規定しておりますし、また、必履修科目、公共におきまして、多様な契約及び消費者の権利と責任に関わる課題を基にした主題を解決する学習などを行っております。

 御指摘の時数でございますけれども、時数そのものを文部科学省として網羅的に把握しているという実態はございませんけれども、例えば、令和元年度に行いました全国の指導主事を集めた会議がございます。その中で、様々な事例を共有したり協議する場があるわけでございますけれども、そこの場におきまして、例えば、各地域の高等学校におきまして、どの程度の時数を用いてどういった内容を行っているのかといったような事例は共有しておりますので、そういった形での把握をしている状況でございます。

浅川委員 そうしますと、文科省としては、全国の教育委員会に、実際にこういった消費者教育がどれくらい行われているかということは調査はしていないということでよろしいんでしょうか。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 学校自体でどれぐらいの時数を用いて消費者教育を行っているのかという、実際の授業時数など、全国的な調査といったものは行っておりません。

 他方で、昨年度、全国の教育委員会を対象に実施をいたしました委託調査というものの中で、学校を対象に、教育委員会において消費者教育関連事業を実施しましたか、教育委員会が学校の支援をしたかというふうな調査は行っておりまして、その中で、消費生活センター、企業、事業者団体などの外部講師が派遣されているといったような事例は承知をしているところでございます。

浅川委員 そうすると、もしかして一年間で一時間とかかもしれないし、学校とか先生によっては十時間ぐらいやっているとかということもあるかもしれない。

 そうすると、せっかく学校教育の中で取り入れられているので、できれば、最低これくらいはとか、そういうのが文科省の方で把握できたらいいんじゃないかな、当然、消費者庁との連携も必要かと思いますけれども。

 それとあと、外部の方を招いてということなんですけれども、外部の方に来ていただいた場合の人件費というのはどこがお支払いするんでしょうか、そういった場合は。

淵上政府参考人 まず、お尋ねの学校での授業時数についてでございますけれども、元々、学校で行われる授業全体につきましては、文部科学省の方で学習指導要領を定めておりますし、その学習指導要領に基づいて、検定された教科書を用いて各学校で授業が行われるということになりますので、当然、学習指導要領に基づいて、消費者教育に関する内容も適切に実施をされているということが前提だろうというふうに考えております。

 なお、じゃ、具体的に何時間ぐらいずつやるのかといいますのは、それぞれの各学校の教育計画の中で適切に考えていただくということかと思いますけれども、私どもとしても、先ほど申し上げました全国の指導主事を集めた会議を毎年開催しておりますので、そういった場で、学習指導要領の趣旨がしっかり徹底されるように、趣旨徹底をしますとともに、各地域の取組事例についてはしっかり共有をしていきたいというふうに思っております。

 また、外部講師の方々の人件費ということでございますけれども、これは様々な事業によって異なってくるかと思います。

 そもそも、外部講師の方々を派遣いただける事業を計画している団体もあるかと思いますので、その場合はそちら側の団体なり機関が費用も負担してやっていただくというケースもございますし、先ほど申し上げました教育委員会が事業主体となる場合には、教育委員会がその費用を負担するといったような、それぞれの事業の形態によってまちまちかというふうに思います。

浅川委員 分かりました。

 政務官、今のやり取りを聞いていただいて、学校教育での消費者教育、どういうふうに今後進めていったらいいか、もう少し文科省としても、本格的に調査をしたりとか、消費者庁と連携をして深く進めていくということが必要じゃないかなと私は今お伺いしていて思ったんですけれども、いかがでしょうか。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 今委員の方からも、実態調査も含めて、その上でしっかりとやるべきではないかということで御質問いただきました。

 学校を対象とした調査につきましては、委員御案内のとおり、やはり学校における働き方改革をしっかりと進めていきたい、そういった観点もございまして、どのような調査をするのかというのは精選をしてしっかりとやっていかなければいけないと思っております。

 その中で、現時点では消費者教育に対する調査は行わないこととなっておりますが、先ほど審議官の方から答弁がございましたとおり、全国の教育委員会の指導主事を集めた会合が年に二回ございます。六月にまた行う予定になっておりますので、そこでしっかりと全国の取組事例を横展開できるように、そういった取組はしっかりと行っていきたいと思っております。

 その上で、消費者教育、これを更にしっかりと充実をしていくことは委員御指摘のとおり重要であると思っておりまして、文部科学省としては、引き続き、消費者庁、また関係省庁とも連携しまして、学習指導要領に基づいて、本日御審議をいただいております消費者契約法なども踏まえまして、消費者教育の充実に更にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

浅川委員 ありがとうございます。期待しております。

 一応、文科省関連はここまでです。もし、政務官、お時間等の関係がありましたら、御退席いただいても結構でございます。

松島委員長 では、文科政務官、審議官、御退席ください。

浅川委員 続きまして、この法案自体のところの少し細かいところにも入っていこうと思うんですけれども、この間、参考人質疑がありまして、特に我が会派の方でもお越しいただいた三谷参考人からいろいろとお話もありました。

 その前に、そもそもこの法案ができる前の検討会での報告と今回の改正案、実際に法案として出てきたところの乖離が、特に取消権等いろいろあるということを各参考人の先生方も述べられておりましたが、ネットとかで見ると、中には、消費者庁は事業者側に配慮してこういうふうになったんじゃないかとか、そういうような書き込みもありましたけれども、実態として報告書とこの法案の乖離が出てきている点については、どういったところに原因があったのかというのを押さえておきたいんですけれども。

若宮国務大臣 委員御指摘の消費者契約に関する検討会、こちらでは、理論的にも実務的にも難しい論点、これは多数取り上げられたところでもございます。各論点につきましては、やはり意見の隔たりがあったのも正直なところでもございまして、ある程度、今回は幅のある形で取りまとめられてございます。

 国会審議でも御議論いただいている取消権については、検討会では、具体的な規定の在り方ではなくて、一定の方向性が取りまとめられております。方向性を取りまとめることに反対する意見、あるいはまた、取りまとめられた方向性に沿わない意見、具体的な要件について一致しない意見などもございました。そのため、検討会報告書においては、まず取りまとめられた方向性について記載し、その上で様々な御意見についても記載をさせていただいているところでもございます。

 消費者庁といたしましては、こうした検討会報告書を基礎としつつ、この報告書にも寄せられた御意見を含めまして、関係各方面からの御意見をいただきながら、法制的な検討を進めました。そして、今回法案として提出をさせていただいたところでもございます。

 この本改正法案、検討会報告書の延長線上にあるものというふうに考えているところでございます。

浅川委員 了解いたしました。

 続いて、一つちょっと飛ばします。

 今回、第三条の第一項第二号というところの「年齢、心身の状態、」という文言があるんですけれども、特に、先ほどもちょっと意見がありましたけれども、心身の状態というのを販売する側から見てということなんですけれども、心身の状態というのは、確かに、高齢者の場合だとか、あるいは若干精神疾患があったりとかと、いろいろなケースがあるかと思うんですけれども、それをどのような基準で判断しているのか、特に心身の状態というのはどのように判断するのかというのをちょっとお伺いしておきたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律案における契約法第三条第一項第二号では、事業者が、消費者契約の締結について勧誘をする際の必要な情報提供において、事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮することとしております。

 知ることができたものを考慮するものであり、事業者に積極的な調査や聞き取りなどを求めるものではないため、場合によっては心身の状態などについては考慮できない場合もあり得ます。

 他方で、実際に知ったものではなく、知ることができたものとしているため、勧誘者が通常であれば知ることができたものであれば、そういったことも総合的に考慮して情報を提供することが求められると考えております。

浅川委員 そうしますと、通常なら知ることができたというときに、勧誘者の側も、ベテランから初心者までいろいろありますし、非常にここら辺というのは抽象的なのか、全然知りませんでしたよと言われてしまえばそれまでだというような気がいたしました。

 続いて、九条の二と十二条の四のところですね。解約料の説明の際に、消費者に対しては算定根拠の概要となっていますけれども、適格消費者団体に対しては算定根拠というふうになっております。ここのところの違いというのはどうしてなのかというのをお伺いします。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 算定根拠と算定根拠の概要では、事業者が説明する内容が異なっております。

 まず、算定根拠は、違約金などを定めるに際して考慮した具体的な数値も含む費用項目や算定式などを意味するものであり、他方、算定根拠の概要とは、具体的な数字まで含むものではなく、考慮した費用項目や算定式等を意味するものでございます。

 このように内容が異なっている理由といたしましては、適格団体は、事業者の定める解約料が第九条第一項第一号違反として差止め請求をするかを判断するに際しては、具体的な数字を用いて検証する必要がございます。他方で、消費者については、検討会報告書においても、具体的な金額についてまで説明を求めていないと取りまとめられており、今回の法律案では説明内容を分けて規定しておるところでございます。

浅川委員 続きまして、新たに今回取消権に追加された消費者契約の目的物の現状を変更するというところなんですけれども、これは、今までの規定されている、消費者契約を締結したならば負うことになる義務の内容の実施とどう違うんでしょうか。具体的に書かれたということかと思うんですけれども。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律案では、事業者が契約の締結前に目的物の現状を変更する場合の取消権を追加することとしております。

 この取消権は、例えば、事業者が消費者の自宅を訪問し、消費者の貴金属を買い取る契約において、切断しないと十分な査定ができないと言って契約の締結前に貴金属を切断してしまう事案や、商品の売買契約の締結前に事業者が商品と一体となっているパッケージを剥がしてしまう事案等に対応するものと考えております。

浅川委員 今回、追加されているということは例外的な場面じゃないかと思いますので、今後、逐条解説等が作られるかと思うんですけれども、そこで明確にしておかれる必要があるのではないかと思います。

 続いて、自治体の消費者センターですね。この関わりというのが、先だって三谷参考人からも、一番大事なのは各現場にある地方消費者行政の充実強化だと思われますと。同時に、消費者団体の方たちが消費者庁の下請的な仕事になっている、みんな手弁当でやっているので、消費者団体への支援というのも必要だということも言われているんですけれども、この点については今後どのような、何か変化というか充実策とかというのを考えていらっしゃいますでしょうか。

若宮国務大臣 教育、啓発や見守り活動を始めといたしまして、地域においての消費者被害の未然の防止又は被害の救済を図っていくためには、行政の取組に加えまして、適格消費者団体などを含めました消費者団体が地方公共団体と連携することで、より効果的なものとなるというふうに考えているところでございます。

 消費者庁といたしましては、地方消費者行政強化交付金を通しまして、地方公共団体が行う取組のうち、適格消費者団体等の設立のほか、消費者団体が消費生活センター等と連携して行う教育、啓発活動、見守りなどの取組を支援しているところでもございます。

 また、電子メールを用いました意見交換システムを運用いたしまして全国の消費者団体との情報や意見交換などを行っているほか、消費者団体を含みます見守りの関係団体で構成をされる連絡協議会の場におきましては、高齢者、障害者の消費者トラブルにつきましての情報共有を行うなど、消費者団体への情報供給体制を構築しているところでもございます。

 こうした取組を通じまして、非常に意欲ある、頑張っている消費者団体の皆様方が地域に根差した活動に取り組めるように引き続きしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに考えているところでもございます。

浅川委員 消費者団体に直接、活動の資金とか助成金をというのはなかなか難しいのかと思いますので、いろいろ事業委託とかという形での実質的な支援をされているんだと思いますけれども、引き続きそこら辺を拡充していただければと思います。

 また、自治体の実質的に運営している消費者センター等なんですけれども、これは事前にお伺いしたら、九九%は電話相談で、ほとんどコールセンターの役割が大きいということなんです。ただ、電話のつながる時間帯というのも各センターによって違ったりもしますと。ここら辺も、各自治体の運営費が半分で、半分は国庫負担かと思うんですけれども、特に都市部とかでは件数も多く、またあるいは若年層の複雑な電子取引等についてもあるかと思うんですけれども、特にこの辺について国としての支援を拡充していくというようなお考えはございませんでしょうか。

若宮国務大臣 地方公共団体の消費生活センター、これは消費者と行政をつなぐ現場だというふうに思っております。消費生活相談や地域の見守り、教育、啓発などの最前線でまさに担っていただいているというふうに認識をいたしているところでもございます。

 先ほども申し上げましたが、地方消費者行政強化交付金を通じました支援、こうした形で地方消費者行政の充実強化というのを進めてきたところでもございます。

 そうした中、委員も今御指摘になりましたけれども、都市部では非常に多数かつ多様な御相談が多いということで、対応する必要がございます。また、逆に一方では、私自身も、徳島ですとか、あるいは東京とか、実際に現場にも足を運ばせていただきましたんですが、広範な質問、様々な御相談を、少ない人数、場合によっては一人でいろいろな御相談を承らなければならないような状況というのも目の当たりにしたところでもございます。こうした過疎地域におけます見守りの実施など、地域の実情に応じた様々な課題があるというふうに認識をいたしているところでもございます。

 消費者庁といたしましては、地方交付税交付金によりまして、各地方公共団体の人口規模に応じた御支援をさせていただいているほか、地方消費者行政強化交付金によりまして、地域の実情に応じたきめ細かな取組も併せて御支援申し上げているところでございます。

 また、消費生活相談員の担い手の確保ですとか、現場の負担を軽減するデジタル化の検討、こういった全国共通の基盤整備なども併せて進めてきているところでもございます。

 都市部のセンターの支援についても、委員御指摘のとおり、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

浅川委員 ありがとうございます。

 最後に、大臣は、特命担当大臣ということで、たくさんの職務を兼務されていらっしゃいますけれども、先日、私、カキにあたってしまったんですね、生ガキに。国会議員になって、委員会を欠席せざるを得ない状況になってしまいまして、本当に恥ずかしい話なんですけれども、大臣、カキにあたったりしたことはありますか。

若宮国務大臣 実は、私も以前、カキにあたったことがございます。大変苦しい思いもしましたので、委員のつらいお気持ち、重々理解させていただきます。

浅川委員 実は、私、飲食店で過去に二回あたっていて、それでも懲りずに、カキが好きで、全国のカキの業者さん、本当に尊敬しているんですけれども、ふと、地元のスーパーで生食用、今までスーパーで生食用は買ったことがなかったんですけれども、買ってしまって食べてしまったんですね。

 そこで、ちょっと生食用という表示、せんだって無添加の議論もあったんですけれども、生食用の基準について、消費者庁の方でそういう表示をしていていいということの基準をちょっとお伺いしたいんですけれども。

若宮国務大臣 私も、生ガキが大好きなものですから、委員と同じように、おなかを壊しても、懲りずに食べているところでもございます。

 今御指摘いただきました生ガキ、これは、食品関連事業者等が生食用の生ガキの加工等を行う際には、遵守すべき事項について、食品衛生法に基づく基準及び規格が定められているところでもございます。

 あわせまして、表示については、食品表示法に基づき定めている食品表示基準、これにおいて表示のルールを定めているところでございます。

浅川委員 私の地元、横浜市金沢区に海の公園というのがあって、そこでよくカキ小屋が冬のシーズンはあったんです、今はコロナでやっていないんですけれども。そこでは、蒸して、火を通した上で焼くという形にしているんですね。

 それで、火を通せばいいというのもあるんですけれども、生食でいきますと、今大臣がおっしゃった、食品衛生法上の基準をクリアすればいいということなんですが、今日は厚労省の方にもお越しいただいているんですけれども、いわゆるカキにあたったというときはノロウイルスであることがほとんどだと思うんですが、このノロウイルスについては食品衛生法上の生食用のカキの規格には入っていないかと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、生食用のカキにつきましては、食品衛生法に基づく規格基準といたしまして、カキの細菌数や採取海域の海水の基準、あるいは保存方法の基準等が定められているところではございますが、御指摘のノロウイルスに関してのウイルス量に関するような規格については、現時点ではそこまでの定めがございません。

 食品安全委員会の食品健康影響評価のためのリスクプロファイルによりますと、ノロウイルスについての実用可能な培養法が未確立なことから、人への感染が成立するウイルス量に関する知見などの蓄積が十分ではないといったことが報告をされている状況でございます。

 このため、我々といたしましては、過去にノロウイルスによる食中毒が発生していない、汚染の可能性が少ない海域の産地のものを使用するなどの対応に加えまして、各調理施設等の衛生対策としての、例えば定期的な清掃等々、あるいは消毒等についての対応が必要であるということで取り組んでいるところでございます。

浅川委員 いろいろ少し調べてみたら、ノロウイルスが海域にあるかないかというのを独自に、事業者さんとか地域の保健所等も調査しているケースもあるようなんですね。つまり、食品衛生法上は、ノロウイルスについてはあってもなくても別に、ほかの細菌類が検出されなければいいという基準になっている。でも、一番肝腎なのはそのノロウイルスなんですよね。

 だから、これは、今後、生食用という表示について、ノロウイルスを厚労省の方で見ていなかったらちょっと問題じゃないかなと今回思いまして、今すぐに御答弁いただけないかと思うんですけれども、食品表示と食品での健康被害のことで、生食用と書いてあれば絶対大丈夫だというふうにはできないと思うんですね。やはり生ガキを食べる以上はリスクを持って食べるというイメージが私自身あったので、そこまで法律で求めるのかというのもあるんですが、ただ、分からないで、生食用ということで平気で皆さん食べていて、やはりあたってしまうかもしれない。つまり、ノロウイルスについては何の基準も法律上とか政省令でないということになると、やはりちょっと食品の表示上は問題じゃないかなと思うんですよね。

 なので、ここら辺は、ちょっと今後、消費者庁さんと厚労省さんで、生ガキの生食用というところを何か御検討いただければと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

若宮国務大臣 食品を販売する際の表示のルール、これは食品表示基準におきまして、食品を摂取する際の安全性の確保に係る事項等といたしまして、保存の方法あるいは期限の表示など各食品に共通して表示すべき項目と、一部の食品について追加的に表示すべき項目というのがあろうかと思います。

 委員御懸念の生ガキにつきましては、生食用の場合、これは食品衛生法において、カキの生食に起因する食中毒防止を目的といたしまして成分規格あるいは加工基準などが定められているところでもございます。このための食品表示基準におきましても、横断的な義務の表示及び個別的な義務の表示として、保存の方法あるいは期限の表示に加えまして、生食用であるかないか、採取された水域などの表示が義務づけられているところでもございます。

 何より、やはり私自身もあたったことがございまして、委員もかなり厳しい状況に陥ったかと思いますので、厚労省とも連携いたしまして、どういうやり方が一番望ましいのか、消費者庁といたしましてもしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

浅川委員 前向きな御答弁をいただいたと受け止めましたので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

松島委員長 次に、掘井健智さん。

掘井委員 日本維新の会、兵庫十区の掘井健智でございます。

 時間もありませんので、早速質問に移ります。

 これまでの大臣の答弁、抜本的な検討、骨太な議論についてです。

 検討会報告書と今回の改正法案との乖離を指摘する質問に対し、大臣は、繰り返し次のように答弁されておられます。既存の消費者契約法の枠組みにとらわれない抜本的な検討についてのこと、また、法体系全体の中での消費者法が果たすべき役割や消費者法全体の中での各法律の実効的な役割分担を考えるといった、骨太な議論についてのことです。決まり文句のようなこの答弁からは、今後行われる抜本的検討や骨太の議論の内容がなかなか伝わってきません。そのため、逆に不信感を抱かれてしまっている部分もあるのかな、そんなふうに思っております。

 そもそも、平成三十年附帯決議、研究会、検討会の議論は、消費者契約に関する包括的な民事ルール、民法の特別法としての機能の中で、契約取消し、また条項無効、事業者、消費者の努力義務、また、差止め請求という既存の消費者契約法の枠組みを前提とするものでありました。しかし、従来では自立した消費者を前提としていたのに対し、今日では脆弱な消費者の保護を図る必要も出てきたんです。

 今後の消費者契約法についての議論は、既存の法的効果のほか、包括的規定、また義務規定、罰則、業務停止などの行政規制などもその対象とすべきではないでしょうか。この場合、刑事法また行政法にも広がって、民事ルールを超えることにもなります。そのように考えますと、大臣の答弁は、もっとかみ砕いて説明する必要があると思っております。

 抜本的な検討、骨太な議論、これはどのようなことなのか、根っこから変える大きな議論なのかどうか。本日の質疑の中から、いつから議論されるのかという指摘がありましたけれども、この議論の中身について、改めて大臣自身のお言葉で御教示いただきたいと思います。

若宮国務大臣 今回の法改正、これは委員も今お話しになりましたように、平成三十年の消費者契約法改正時にいただきました国会での附帯決議を踏まえて、研究会及び検討会を重ねてまいりました。そして、取りまとめられました報告書や、あるいはそれに寄せられました様々な御意見なども踏まえまして、政府部内において必要な検討を重ねて具体化したものでございます。

 前回の法改正時から長い期間を置かずにこの法案の提出に至っているところ、また、この期間に行える検討というのは全て行ったものというふうに認識をいたしているところでもございます。

 他方、消費者契約を取り巻く環境、まさにいろいろな技術の発展によって様々な状況も、あるいはコロナの状況も含めまして、環境が刻々と変化をしております。こういったことも踏まえまして、検討会の報告書で示されました新たな方向性等を踏まえますと、今後は、既存の消費者契約法の枠組みにとらわれない検討も行っていく必要もあろうかというふうに考えているところでもございます。こうした意味で、抜本的な検討と申し上げているところでございます。

 そのためには、将来に向けまして、やはり、先ほどもお話しいただきましたけれども、この消費者契約法が果たすべき役割、あるいは法体系全体の中での消費者法が果たすべき役割や各法律の実効的な役割分担、こうしたことも考えていかなきゃいけないなということで、この骨太な議論というのが必要であろうというふうに考えているところでもございます。

 今後、更に有識者の皆様方からも御意見をいただきながらしっかりと検討してまいりたい、こう思っております。

掘井委員 ありがとうございます。消費者保護が更に前進するように期待しております。

 今御答弁いただきました。ただ、問題の解決のためには、抜本的な検討や骨太な議論が不可欠なものと、また既存の消費者契約法の枠組みで解決可能なものと、区別する必要があると思っております。

 そこで、既存の消費者契約法の枠組みでも解決可能なものかどうか、以下のことをお伺いしたいと思います。

 研究会報告書、早急に必要な措置を講ずべきとされた事項の想定事案ということで、事例一でありますけれども、借入金の返済を遅滞し経済的に切迫していた認知症の高齢者が、その状況を知る事業者に、所有する不動産を廉価で買い取られた事例。

 事例二であります。末期がん患者に対して、医師がこれまで受けた治療を否定した上で、今日の十五時までにと施術を急がせたために、気が動転して八十万円の施術を受けてしまった事例。

 これらのいわゆる判断力に着目した二つの事例では、今回の改正法案に基づけば、各消費者は保護されるのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

若宮国務大臣 検討会に先立ちまして行われました研究会の報告書では、今委員が御指摘に挙げられましたこの事例も取り上げられました。こういったことを受けまして、検討会では、この事例も含めまして検討が行われておりますところでございます。

 報告書においては、最終的にどういった形で法改正案として採用するかについては、今後、消費者と事業者の双方の関係者を加えた議論に委ねることとされているところでもございます。

 取消権につきましては、やはり消費者にとっての使いやすさ、また、事業者の予見可能性、要件の明確性といった要素が全て満たされることによりまして十全に機能することとなるというふうに考えているところでもございます。こういった観点から検討を行った結果、今回の法律案としたところでもございます。

 なお、御指摘の事例一につきまして、これは民法の公序良俗違反により救済された裁判例というふうに承知をいたしているところでもございます。

 また、事例二につきましては、消費生活相談事例であるところでございまして、これまでに受けました治療を否定する行為が現行法の不実告知の要件を満たし、取消しが認められる可能性があるものというふうに考えているところでございます。

掘井委員 ありがとうございます。

 認知症患者にもやはり幅がありまして、非常に難しい問題であろうと思いますけれども、抜本的見直しに対しまして速やかに議論を進めていっていただきたい、このように思っております。

 次の質問です。

 ホワイトな事業者とブラックな事業者の峻別についてであります。

 消費者契約法の難点は、様々な消費者、事業者が存在しているにもかかわらず、画一的に適用されるために、消費者保護のための立法が不当な結果を引き起こす可能性があるということなんです。

 先週、河上参考人は、消費者志向経営を標榜している事業者と、消費者にとっての共通の敵のような、市場で悪いことをする人間を排除することの必要性を発言されました。

 ホワイトな事業者と消費者が手を取り合って、ブラックな事業者を排除する市場を形成していくために、ホワイトな事業者とブラックな事業者を事前に峻別する手だてはないものでしょうか。可能なんでしょうか。大臣の御所見を伺いたいと思います。

若宮国務大臣 今委員がお話しになりましたようなこと、ある事業者がブラックであるか否かということにつきましては、いかなる基準でいかなる主体が判断をしていくのか、現時点で広範な合意を得るというのは非常に困難であるというふうに考えているところでございます。また、どのような事業者をブラックと捉えるかは、社会経済情勢あるいは国民の皆様方の意識の変化に伴ってもまた異なり得るものであろうかと思いますので、一概に論じるのは難しいかなというふうに考えております。

 特に、消費者契約法は、消費者と契約を締結をする事業者に広く適用されます法律でございます。適用対象には、およそ全ての事業者が含まれてございます。こうした消費者契約において、ホワイトな事業者といわゆる今委員のお話にあったようなブラックの事業者とを峻別するということは困難というふうに考えているところでございます。

掘井委員 なかなか、非常に、質問しておりますけれども、峻別は難しくて、消費者契約法の永遠のテーマであるとも思っております。

 続いての質問であります。

 包括規定の取消権についてであります。改正法案については、具体的に今から質問いたしますが、まず、この取消権についてであります。

 今回の改正法案では、検討会報告書の包括規定が追加されませんでした。この包括規定と予見可能性についてでありますが、包括規定が追加されなかったその理由として、大臣は、取消権の創設には三要素が必要であるというところ、事業者の予見可能性、要件の明確性がないことを御答弁されております。

 しかし、野々山参考人からは、包括的なものであっても、十分予見可能性のあるものはつくれるとの発言がありました。

 私も、ターゲットはブラックな悪徳な事業者であるということが仮に明確であれば、包括規定であっても、ホワイトな事業者の予見可能性は充足できて、要件も明確にできると考えておりますが、こういった参考人の発言について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

若宮国務大臣 消費者契約におきましては、いわゆる今委員がおっしゃるような、ホワイトな事業者あるいはブラックな事業者、これを峻別することは難しいというふうに申し上げたところでございますけれども、仮にいわゆるブラックな事業者を想定することができたといたしましても、消費者契約法、これは消費者と契約を締結する事業者に広く適用される法律でございます。適用対象がブラックな事業者に限定した規定を設けるというのは非常に難しいかなというふうに考えているところでございます。また、この明確性というのは、消費者にとっての使いやすさのためにも求められるものでございます。

 したがいまして、ブラックな事業者に適用対象を限定することで、予見可能性や明確性の要件を不要とし、包括的な取消権を設けるということは難しいかなというふうに考えているところでございます。

掘井委員 世の中の価値観がどんどん変わっていく中で、これから包括規定と予見可能性を両立する規定を、やはり政府は希求するというか模索する必要が、まあ、なかなか難しいけれども、あるのではないかなと思っております。

 次の質問です。

 EUの消費者法と予見可能性についてであります。

 法とは国柄をもちろん体現するものであって、外国の法律をそのまま日本に導入することはできませんけれども、事業者の予見可能性が認められなくても契約撤回権が認められているのがEUなんですけれども、これがEUにおける消費者法の特徴です。

 事業者の予見可能性が認められなくても取消権を創設することは、こういった例を見て、これは可能じゃないんでしょうか。大臣の御所見を伺いたいと思います。

若宮国務大臣 今委員がお話しいただきました、外国の法制度を参照する際は、個別の法令の規定ぶりのみならず、やはり実際の運用やあるいは法律の背景、また当該国の法体系全体をやはり比較をしていかなければいけません。我が国とは大きく異なるという前提で考えますと、慎重に検討する必要があろうかというふうに考えているところでもございます。

 したがいまして、このEUの消費者法と同じものを直ちに日本の国内の消費者契約法に導入するということは可能であるとは考えていないところでありますけれども、将来に向けましては、やはり先ほど来お話に出ています骨太の議論を議論する際に当たっては、EU等外国の法制度も必要に応じて参考にしてまいりたい、こう思っております。

掘井委員 ありがとうございます。

 もちろん、文化も違いますし、価値観も違う、また法のたてつけも違うということでありますけれども、今後、研究していただきたいなと思っております。

 続いての質問であります。

 個別の取消権についてであります。

 改正法案では、検討会報告書の消費者の判断力に着目した個別の取消権も追加されませんでした。

 野々山参考人、河上参考人の発言の是非についてちょっとお伺いしたいんですけれども、検討会報告書では、判断力の著しく低下した消費者が、自らの生活に著しい支障を及ぼすような内容の契約を締結した場合における取消権の創設を取り上げております。

 一方、取消権を追加しなかった理由といたしましては、消費者庁は、事業者の行為によって消費者の判断力が低下しているわけではなく、従来の取消権を超える側面があることという理由を挙げております。

 しかし、野々山参考人と河上参考人は、消費者契約法四条四項を取り上げて、判断力の不足に着目している取消権は既にあると反論されました。

 この条項は、確かに、要件事実としては消費者の判断力の低下を必要とするものではありません。しかし、消費者庁の逐条解説は、本項の規定は、事業者が、合理的な判断をすることができない事情がある消費者に対しまして、その事情につけ込んで不要な契約を締結させるような場合と明記しております。したがって、消費者庁も、事業者の行為によらない場合であっても、判断力の不足に着目している取消権は既にあることを認めていると解しておりますでしょうか。

 この参考人の反論について、消費者庁の御所見を伺いたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 現行法の過量契約取消権は、消費者が合理的に判断をすることができないことを法律上の要件として定めているわけではございません。ですから、事業者が過量であることを認識しながら勧誘したという、事業者の行為が主たる要件となっております。

 したがって、過量契約取消権を参考にすれば、事業者の行為によらない取消権を設けることができるものではないと考えております。

掘井委員 分かりました。

 続いて、生活に著しい支障を及ぼす内容の契約について質問したいと思います。

 当該取消権を改正案で追加しなかった第二の理由といたしまして、消費者庁は、生活に著しい支障を及ぼす内容の契約となるかは、消費者の生活状況が一様ではないことを挙げております。

 しかし、自らの生活に著しい支障を及ぼすという要件は、野々山参考人が反論されたように、事業者が極めて悪質な場面に限定するという趣旨ではないでしょうか。

 この検討会報告書を見ますと、その契約が当該消費者の生活に著しい支障を及ぼすことについての事業者の認識を要件とするとあります。

 そこで、恐縮でありますけれども、この野々山参考人の反論について、消費者庁の御所見を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、勝俣委員長代理着席〕

高田政府参考人 お答えいたします。

 消費者の判断力に着目した規定については、判断力の著しく低下した消費者が自らの生活に著しい支障を及ぼすような内容の契約を締結した場合の規定として、消費者の判断力に関する事業者の認識を要件としないとの方向性が示されました。

 他方で、一定の方向性を示すことが難しいのではないかとの否定的な意見があり、方向性を示すことには反対しない意見の中でも、対象となる契約や消費者の判断力に関する事業者の認識を要件とするか否かという点で意見の一致が見られなかったところでございます。

 したがって、判断力に着目した取消権の具体的な規定の在り方について、検討会で意見の合致を見たわけではなく、意見の隔たりがある中で、ある程度幅のある形で報告書が取りまとめられているところでございます。

 このため、事業者の行為によって消費者の判断力が低下しているわけではないため、従来の取消権を超える側面があること、また、生活に著しい支障を及ぼす内容の契約となるかは、消費者の生活状況が一様ではないことから、取消権として規定することは困難であること、検討会報告書やその後の意見募集においても慎重な検討を求める意見があることから、今回、判断力に着目した取消権としては規定してはいないところでございます。

掘井委員 分かりました。

 それでは、質問時間の関係から、先にダークパターン規制の質問をさせていただいてよろしいでしょうか。

 サブスクリプションサービス、ダークパターンの規制についてであります。

 今回の改正法案では、三条一項四号によって、解除権の行使に関して必要な情報提供をする努力義務を事業者に課す内容も追加されました。

 最近問題となっている自動更新契約、つまり、いわゆるサブスクリプションサービスについても適用され、消費者保護に資する追加だと考えております。更に前進できないでしょうかということです。

 欧米では、ダークパターンに対する規制が随分進んでおります。

 例えば、米国のカリフォルニア州では、昨年にカリフォルニア州消費者プライバシー法規制が改正されたということです。消費者保護の立場から、退会や解約の手段などを分かりにくくするウェブサイトが禁止されました。

 日本では、企業の多くはダークパターンへの問題意識が非常に乏しく、欧米企業と比べて対策が遅れているとの指摘もございます。この六月に施行される改正特定商取引法においても、解約方法の明示にとどまっており、解約や退会の手続を容易にするような規制にはなっておりません。

 そこで、今後、解約方法のダークパターンへの規制をどのようにやっていくのか、大臣の所見を伺いたいと思います。

若宮国務大臣 インターネット上において、消費者を不利な決定に誘導する表記等がいわゆるダークパターンの問題として御議論されているということは承知をいたしているところでございます。

 ダークパターンにつきましては、どのようなものが問題となって、そしてまた、どのような規律が考えられるかは、社会での議論が始まったばかりというふうな状況だというふうに認識をしております。今後の議論の状況、あるいは諸外国におけます立法の状況等も含めました理論的な研究の深まりをまずは注視をしてまいりたいと思っているところでございます。

 また、ダークパターンの問題としてどのような事案が含まれるかは必ずしも明らかではないところではございますけれども、仮に、現行の法律に違反する行為が認められたような場合におきましては、法と証拠に基づいて厳正な対処をしてまいりたいと考えております。

掘井委員 新しい論点でありますけれども、非常に対応が求められると思いますので、よろしくお願いします。

 次に、契約締結時のダークパターンの規制についてであります。

 この規制については、今回の改正案に追加されました解除の場面だけではなくて、入口の、契約の場面も問題だと思っております。意思と意思の合致がないのに、勝手に契約が成立したことにされている、こんな場合があります。契約が有効に成立している場面で、先ほどの解除の場合と比べて、ある意味、問題が大きいと思っております。

 例えば、大手ネットショッピングでは、売買契約時に、消費者が見逃せば分からない、プライム会員に登録したことになるような、そんな画面に設定されておったりします。消費者がきちんと議論をした上でプライム会員を選択するような設定にしないと、消費者保護が図れないのではないかなと考えておるんです。

 この点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 契約、いずれの過程におきましても、消費者契約法に該当する場合もあるかもしれませんし、あと特定商取引法上の規制に該当するような場合、いろいろあるかと思います。

 ただ、ダークパターンというのはまだまだ議論の途中でございますので、そういった議論も踏まえながら、現在の法律において、違反等があれば厳密に対応したいと思います。

掘井委員 是非進めていっていただきたいと思っております。

 次の質問です。

 今後の法改正における具体的な進め方についてであります。

 大臣は、今後、抜本的な検討、また骨太な議論をされるとのことです。大変期待しておりますけれども、具体的にどのように進めていくのか、教えてほしいです。検討会の構成、またスケジュール感など、今、分かれば、大臣の御所見を伺いたいと思います。

    〔勝俣委員長代理退席、委員長着席〕

若宮国務大臣 将来に向けましては、消費者契約法が果たすべき役割は何かといった観点から、法体系全体の中での果たすべき役割、あるいは各法律の実効的役割分担を考えるといった骨太な議論、再三申し上げておりますけれども、行ってまいりたいというふうに思っております。

 この骨太の議論におきましては、国会での御議論でも御指摘のありました、平均的あるいは合理的消費者像ではなくて、判断力の低下ですとか、こういったものを始めとします消費者の様々な脆弱性を踏まえた制度の在り方、あるいは契約締結時以外の適用場面の拡大等、既存の枠組みにとらわれないルールの設定の在り方についても検討が必要だろうというふうに考えているところでもございます。

 こうした検討につきましては、早期に議論を開始する必要については私自身も十分認識をいたしているところでもございますので、可能な限り速やかに着手してまいりたい、こう思っております。

掘井委員 ありがとうございます。

 消費者保護のために、根っこからの改革に本当に期待しておりますので、議論が長くなると思いますけれども、速やかに取り組んでいただきたいと思っております。

 続いての質問であります。

 オプトアウト方式の導入についてであります。

 消費者裁判手続特例法の改正法案では、被害を救済しやすい制度とするために様々な措置が講じられております。これは前進していると評価しておりますけれども、しかし、被害回復裁判については、平成二十八年の法施行後、これまでに四件の訴えが提起されておりまして、一定の成果が上がっているものの、事案の数が余りに少ないと思っております。

 この点、先日の野々山参考人は、少額事件に対するオプトアウト制度の検討の必要性について発言されました。

 一方、このオプトアウト方式にはやはりデメリットもあり、オプトアウト方式導入国の米国と日本とでは法文化が余りにも違い過ぎるということもありますし、私も正直迷っております。

 そこで、将来、オプトアウト方式の導入を検討するのかどうか、消費者庁の御所見を伺いたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 いわゆるオプトアウト型の制度は、対象となる消費者が手続からの除外の申出をしない限りは裁判の対象となる仕組みと承知しております。

 検討会の報告書においては、このようなオプトアウト型の制度の検討については、本制度の見直し及び運用の各状況等も踏まえながら、将来の検討課題とすることが考えられるとされたところでございます。

 これを踏まえまして、今回の法律案が成立した暁には、その後の制度の運用の状況等も踏まえながら検討してまいります。

掘井委員 この件もじっくり議論が必要かなと思っております。

 続いての質問です。

 個人情報漏えい事案における慰謝料の故意の要件についてであります。

 慰謝料を認める場合の故意による場合、今回の改正法案においては、個人情報漏えい事案における慰謝料を制度の対象とするか否かという観点からではなくて、故意による場合という形で規定されております。

 通常、民事法においては、重過失は悪意と同視されることが多いわけでありますけれども、この点、事業者の悪意を消費者側が立証することは非常に困難であるということから、事業者に悪意がある場合及び悪意と同視される程度の重過失がある場合には取消権を行使できる旨の規定とすべきではないのかな、こんなふうにも思っておりますが、政府の見解を伺いたいと思います。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 検討会の報告書では、慰謝料を本制度の対象とするに当たりまして、事業者に追加的な応訴負担が必ずしも生じないことや応訴負担に配慮する必要が低いことを根拠に、現行の特例法上対象となる財産的損害と併せて請求される場合と事業者の故意により生じた場合を対象とするという考え方が示されたところでございます。

 今回の法律案は、これを踏まえまして、慰謝料を本制度の対象とする要件として、慰謝料の額の算定の基礎となる主要な事実関係が消費者に共通することに加えまして、現行法上対象となる損害に係る請求と併せて請求されるものか、事業者の故意によって生じるものであるかのいずれかに該当することを要することとしております。

掘井委員 ありがとうございます。

 若干時間があるんですけれども、最後にコメントだけして終わりたいと思います。

 やはり、この消費者の問題、商売を自由にやるということと、消費者を保護するという、このはざまをどこに持っていくのか、その時代の価値観も違うだろうと思いますけれども、この辺を、皆さんがある程度納得できる線をやはり議論していく必要があるのではないかなと思っております。なかなか答えが難しいことではありますけれども、御期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、田中健さん。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いします。

 十二日の参考人質疑の中で、参考人の皆さんから、今回の法改正について大変に厳しい意見が相次ぎました。ここまで検討会、調査会の報告書の内容が抜け落ちているということは経験がない、報告書の意見が反映されておらず、検討委員会の意見がないがしろにされることはその存在意義が問われる、今後の法改正についても禍根を残す、さらには、検討会、調査会の存在意義というものがないとまで言われました。

 これらの発言をどのように受け止めたのか、また、今後の検討会の在り方をどう考えているのか、まず大臣に伺います。

若宮国務大臣 消費者契約に関する検討会におきましては、具体的な規定の在り方ではなく一定の方向性が取りまとめられております。この方向性を取りまとめることに否定的な意見、あるいはこの取りまとめられた方向性に沿わない意見、あるいは具体的な要件について一致しない意見などございました。

 そのため、検討会報告書におきましては、まず、取りまとめられた方向性が提示をされ、その上で、様々な意見について記載をされているところでもございます。

 消費者庁といたしましては、この検討会報告書を基礎といたしまして、これに寄せられた御意見を含めて、関係各方面からの御意見も伺いながら、政府部内におきまして必要な検討を重ねて、今回の法律案を国会に提出をさせていただいたところでございます。

 参考人の方々からも様々な御意見の表明があったことは重々承知をいたしております。今回の法律案には、報告書を踏まえまして、現時点で法制化できるものを盛り込んだというふうに考えているところでもございます。検討会におけます議論及び報告書の延長線にあるもの、このように思っているところでございます。

田中(健)委員 参考人の先生たちもこんなことを言いたくなかったとは思うんですけれども、ここまで言わざるを得なかったということで、大臣から今、一定の方向性ということでありますが、これは多くの有識者の皆さんの多大な労力と時間が費やされております。検討会、調査会の結論を尊重した改正がされるべきであり、今回の検討会の結論で抜け落ちた論点や、また、平成三十年の、先ほど来も出ていますけれども、改正の、専門委員会の積み残しや附帯決議、こういった論点についても速やかに検討していただくことを要望したいと思います。これは先ほど検討するという答弁もありましたので、是非強く申し上げたいと思っております。

 それでは、具体的に質問に移ってまいります。

 まず、消費者の判断力の低下に着目した規制について伺いたいと思います。

 高齢者の判断能力に基づいた取消権というのは、今回の法改正には含まれませんでした。参考人質疑の中でも、今回の改正の法案に求められてきた社会の要請に十分に応えられていないものが、超高齢化社会における被害の存在だという指摘がされています。

 高齢者の自宅住宅トラブルに関しては、この委員会の中でも取り上げられてきましたが、野々山参考人から挙げられた更に二つの問題について伺いたいと思います。

 まず、保険金を使った住宅修理トラブルであります。保険金を使うから自己負担がないことを強調して、自宅の壊れているところを無料で修理できる、保険金請求のサポートもすると事業者から訪問や電話で勧誘を受け、自己負担なく修理できるならと契約をしてしまう。契約の内容や手数料や違約金の説明が不十分で、トラブルや被害に遭ってしまう。これは、平成三十年、既に国民生活センターから、高齢者の相談が増加していると注意喚起がされている事案であります。

 この当時は、二〇一七年度までの調査でありましたが、千百七十七件の相談件数が示されておりますが、その後の相談件数の推移というものをまず伺いたいと思います。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの件に関し、全国消費生活情報ネットワークシステムにおけます火災保険請求代行に関する消費生活相談の件数については、二〇一七年度は千百八十件、二〇一八年度は千七百五十九件、二〇一九年度は二千六百九十一件、二〇二〇年度は五千四百五十二件、二〇二一年度は四千百八十五件程度で推移しているものと承知しております。

田中(健)委員 最後の、二〇二一年はちょっと減ったんですけれども、それでも五千件台ということで、急増しています。さらに、二〇一一年からずっと増加をしているということで、もう常態化しているような問題です。

 さらに、この契約当事者のうち六十歳以上が八割ということで、まさにこれは高齢化社会の被害であるということが分かります。

 この問題に対しては、今回の法改正ではどのような対応が図られ、また救済に結びつくんでしょうか、伺います。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの保険金を使った住宅修理トラブルのうち、火災保険で屋根の修理ができると勧誘され、契約書を交わしたが保険が下りなかったというような事案の中には、現行法の不実告知等の要件を満たし、契約を取り消すことができる場合もあると考えられます。

 また、こうした事案の中には、消費者が契約を締結するか否かについて第三者に相談の連絡をする意思を示す場合も想定されるところでございます。この場合には、威迫する言動を交えて連絡することを妨げたようなときは、改正法案における消費者契約法第四条第三項第四号の要件を満たし、契約を取り消すことができる場合があると考えられます。

 以上のとおり、個別の事案によりますが、現行法及び改正法案で対応できる場合があると考えられます。

田中(健)委員 不実告知や第三者への相談を妨げることはないということなんですが、全然それは根本的な問題じゃないんですね。根本的にはやはり、今言ったように六十歳以上が八割だ、判断能力の低下が問われているわけでありまして、とても今回の改正では救済できないなと思ってしまいます。

 更に進めていきますと、この高齢者の契約におけるトラブルは、よほど意識の低い企業による例外的な事例だろう、この保険金も悪徳業者だろう、詐欺グループとか悪徳業者にだまされなければいい話だろう、そう思う方も多いかとは思いますが、そんなことはありません。

 その最たる例というのが、野々山参考人がもう一つの例として挙げられていました、令和元年に発覚した生命保険の高齢者に対する不適切販売、経済的な合理性が全く欠けるような契約、あるいは再契約ということを指摘しましたが、これはかなり控えめに言ったとは思うんですけれども、明らかにかんぽ生命の不適切販売問題であると推測がされます。

 この問題は、御案内のとおり、かんぽ生命保険の代理店に当たる郵便局が、自らの営業目標のために顧客にとって不利益となる契約を結ばせることなどの不適切な販売を行っていたというもので、日本郵便が総務省と金融庁から業務停止を出されるなど、大きな波紋を呼びました。

 この問題に関して言えば、今回の法改正でどのように対応できて、また消費者を救うことができるんでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律案では、消費者の判断力の低下に注目した規定については、検討会報告書の指摘を踏まえまして、消費者を勧誘するに際して、必要な情報を提供する事業者の努力義務におきまして、消費者の心身の状態も考慮して情報提供することとしております。

 一方、判断力に着目した取消権として規定することについては、従来の取消権を超える側面があることや、検討会報告書等において慎重な検討を求める意見がありましたことから、今回の法案には盛り込んでいないところでございます。

 そのため、委員御指摘の生命保険の不適切販売の問題について、消費者の判断力の低下に着目した規定で救済が図られるものではございません。

 もっとも、こういった問題は、業を所管いたします官庁による行政処分等によって適切に対応が行われるべきものでありまして、行政処分等がなされれば、民法の不法行為による損害賠償請求ができる場合もあると考えられます。

 また、現行法第四条第一項第一号の規定する不実の告知等の要件を満たす場合には、現行法により契約を取り消すことによって消費者を救済できると考えられます。

田中(健)委員 今答弁ありましたけれども、消費者を勧誘するに際しての必要な情報を提供する事業者の努力義務において、消費者の年齢及び心身の状況も考慮して情報提供すると。

 今回、判断力に着目した取消権が盛り込まれなかったけれども、これを規定したということでありますが、具体的に、じゃ、この内容で、先ほどの上記の二つの例、住宅保険ないしはかんぽ保険の場合、事業者というのはどのような対応をこの法規制が施行されると求められるんですか、しなきゃならないんでしょうか。また、それによって、今言いました、判断力の低下に着目した高齢者をどのように守ることにつながるのか、再度お聞きをします。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の消費者契約法の改正法案では、勧誘時の事業者の情報提供の努力義務について、知識及び経験に加え、年齢及び心身の状態も考慮すべき事情として追加することとしており、事業者としては、これらを総合的に考慮した丁寧な情報提供が求められることになります。

 一般的に、事業者が努力義務に違反した場合には、直ちに損害賠償請求等の私法的効力を生じさせるものではございません。

 しかしながら、具体的な事例については最終的に裁判所の判断となるものの、事業者が消費者の判断力の著しい低下を知ることができたのに、十分な説明をしなかったため、消費者が誤認して契約を締結した場合には、事業者の努力義務違反も考慮した上で、契約の取消しや無効が認められることがあり得るものと考えられます。

 また、現在の法体系は、消費者契約法のほか、消費者トラブルの多い取引分野に適用される個別法や各業種の実態や特性を反映した業法が存在しておりまして、これら個別法、業法によって、違反行為に対して行政処分が規定されるものも存在しております。

 委員御指摘の悪質事業者による問題事例については、そういった他の法律の運用状況なども踏まえて、必要な対応を検討してまいりたいと思っております。

田中(健)委員 とても被害を未然に防いだり救済するにはつながらないと思います。先ほど来、被害の後追いが今回議論になっておりますけれども、被害の後追いもできていないのではないかと思ってしまいます。

 丁寧な情報提供を求めるといっても、そもそも、だまそうとしている人たちでございますから、さらに、判断能力が低下しているという高齢者でありますから、そこをどういうふうにして守れるのかという視点が大切だと思っています。

 更に進めますと、このかんぽの件では、外部の特別調査委員会によりますと、不祥事件届出事案のうち、これもやはり高齢者が契約者や手続者となった事案が四割以上でありまして、さらに、乗換契約の場合においては、半数以上が高齢者とされています。これは、不適切販売のターゲットとして、判断力が低下した高齢者が狙われたというふうに言われています。

 そして、これらの被害に遭った高齢者の中には、診断こそされてはいないけれども、認知機能が低下している隠れ認知症も多く含まれていたというふうに考えられています。野々山参考人の資料にもありましたが、契約を結びやすい高齢者をゆるキャラとか半ぼけなどと内輪で呼び合って、不要な契約を複数結ばせていたなどの実態も明らかになっており、本当に許せないことでありますが、判断力が低下した高齢者や認知症の人をターゲットとした不適切販売が常態化をしていたということが推測をされています。

 検討委員会の中の議論を見ますと、判断力の著しい低下について、内閣府令又は逐条解説等により基準の明確化を図った上で取消権を設けることにしてはどうかという提案がありました。これでは、どんな議論がされ、結果これは盛り込まれなかったわけですけれども、どうして今回盛り込まれることにならなかったのか。

 特に、今指摘したのは認知症でありますが、これも先ほど来話もありましたけれども、二〇二五年には七百三十万人と、六十五歳以上の五人に一人が認知症になるという指摘がされています。今後の大きなテーマとなり得る、というよりは、今すぐ取り組んでいかなきゃならない問題だと考えていますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

若宮国務大臣 検討会では、判断力の著しい低下につきまして、判断力を客観的に判断できる簡便な基準という観点から、一定の検査等を活用することで、内閣府令あるいは逐条解説等により基準の明確化を図ることができないかといった検討も行われたところでもございます。

 しかしながら、この判断力の低下に着目した規定につきましては、事業者の行為によって消費者の判断力が低下をしているわけではなく、従来の取消権を超える側面があることや、意見募集などにおきまして慎重な検討を求める意見があったことなどから、取消権としては規定をしないこととしたため、判断力の著しい低下に関する基準についても今回の法律案には盛り込まれていないところではございます。

 しかしながら、今委員も御指摘なされたとおり、認知症、今後ますます増加するおそれというのがあろうかと思っております。判断力の低下した消費者に対する保護の在り方につきまして、法体系全体の中において、消費者法令の果たすべき役割を考える等の骨太な議論の中でしっかりと検討してまいりたいと思っております。

田中(健)委員 認知症は、若年性の認知症も増えておりまして、いつ自分も含め誰がなるか分かりません。それによって消費者被害に遭うということも、どなたでも可能性があるということであります。ですから、是非、全部の法体系を含めた議論、骨太の議論ということを大臣は何度もこの委員会で言っていただいておりますが、一日も早くこの議論を前に進めていってほしいと思っています。

 更に進めていきます。

 平成二十九年の民法の改正によりまして意思無能力のルールが明文化されましたが、一般的に、十歳未満の子供や精神疾患や認知症が重度である、つまり意思無能力者がした法律行為は無効となることとされましたが、それだけでは消費者を保護し切れないということで、消費者契約法においても、判断力が低下した消費者を守る規定が必要であるということが大きく期待をされてきていました。

 野々山参考人の指摘にもありましたが、後追いになってしまい、どんどん細かい限られた場面への適用になっており、使いやすさということから逆行している、むしろ、使いやすいということであれば、ある程度汎用性のある要求にして、しかもそれをしっかりと救済できるという規定にすべきだ、その意味で、より抽象化した規定の検討が必要というふうに述べられています。私もそのとおりだと思います。しかし、その方向になかなか行かない。先ほども二つの議論がずっとこの消費者契約法では走ってきたという議論がありました。

 だからこそ、今回の報告書では、妥協の産物であったかとは思うんですけれども、要件が狭く、更に一部の消費者しか使えないものの、その分、規定された範囲は具体的であり、明確にした提案というものが出されておりました。しかしながら、これも採用されませんでした。

 取消権に関していつも答弁されるのは、消費者にとっての使いやすさ、事業者の予見可能性、要件の明確化という要素が全て満たされることにより十全に機能するとありますが、今回の報告書の提案においては、私はこの三要素を満たした上で提案されたと思っておりますが、何が足りなくて法制化に至らなかったのか伺いたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 取消権を法で定めるに当たっては、御指摘の三つの要件が必要と考えております。

 また、検討会報告書では、取消権について三つの方向性が示されましたが、そのうちの二つについては、方向性を示すこと自体に否定的な意見もございました。そして、示された方向性についても、その方向性に沿わない意見や具体的な要件についての意見の一致が見られなかったところでございます。

 これらのことから、検討会では、意見の隔たりがある中で、ある程度幅のある形で報告書が取りまとめられており、消費者庁としては、意見募集や関係方面の御意見も踏まえた上で今回の法案を提出したところでございます。

田中(健)委員 これまで何度も答弁、聞かせていただいた内容であります。

 取消権、強い効果と事業者の行動規範としての機能を持つということも併せて何度も述べられて、当然のことだと思いますが、だからこそ、幅があるということで結局ざるになってしまい、どんどんと、こぼれていく人たちを救えないということになってしまっているということを改めて申し上げたいと思います。

 具体的に議論を進めていきますと、まさにこれらの例は、高齢者のまた問題に戻りますが、判断力の低下と脆弱性の問題につながってくると思っています。

 この脆弱性に関しても、河上参考人からは、消費者契約の目的規定の中にはっきりと、何のためにこの法律があるのか、特に、私は、人間としての脆弱性を前提として、こうした人たちが被害を被らないように守るのがこの法律の本当の使命の一つだということをはっきりと書く、ある種の適合性原則に関わるような規定を目的規定にかけるというような強い発言がありました。

 この脆弱性に関しては、どのように政府としては考えているのか、また消費者契約法ではどのように位置づけをされているのか、伺います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差を踏まえ、消費者が契約を取り消すことができる権利等を定めている法律でございます。

 このような一般的な消費者と事業者との間の格差を中心としつつ、これまでの法改正においても、若年消費者の被害事例や高齢者の被害事例に着目した取消権の規定を追加するなどの措置を講じてきたところでございます。

 委員御指摘の、河上参考人がおっしゃっていた、適合性原則や人間としての様々な脆弱性に着目して消費者契約法の目的規定から検討するためには、これまでの消費者契約法の枠組みを超えた議論が必要であると考えており、今後、抜本的な議論の中で検討してまいります。

田中(健)委員 枠組みを超えた議論ということで、さんざんこの議論をしてきたのではないかと思っておるんですけれども、更に進めますと、今、格差というキーワードがありましたけれども、一方、この問題について、野々山参考人からは、とても大事なのは、消費者像をもう一回見直すことだという指摘がありました。

 消費者像とは、事業者と消費者にはもちろん格差があるけれども、今まで考えられていたのは、いわゆる自立ができる消費者であった、そこの中での格差でどういうものを検討するかということであったけれども、高齢化社会の中では、消費者の中でも脆弱な消費者が出てきている、非常に脆弱な消費者だ、様々な困難な状況の中で更に一時的に脆弱な状況になる人もいるということであります。

 つまり、脆弱な消費者というものが存在するんだということをまず認めて、そして、その中で、格差がある中で、更に脆弱な消費者があるということを見直さなきゃならない、そこから始まるんだということがありました。

 これも消費者問題においては根源的な問題につながると思っており、大変に重要な指摘かと思いますが、現在想定している今度は消費者像というものについて伺いたいと思いますし、また、脆弱性に関連して、消費者像をまず見直すという指摘をどのように考えたらいいか、伺います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差を踏まえ、消費者が契約を取り消すことができる権利等を定めている法律でございます。

 このような消費者と事業者との間の格差を中心としつつ、参考人質疑において河上参考人がおっしゃられたように、これまでは集団としての平均的、合理的消費者像が念頭に置かれてきたものと承知しております。

 一方で、野々山参考人がおっしゃられるように、高齢化社会の中では、一般的消費者に比して、より脆弱な消費者の保護が重要な課題と考えております。加えて、一般的な消費者であっても、必ずしも合理的であるとは言えず、むしろ、人間として様々な脆弱性があることが明らかになってきております。

 このような消費者像は、必ずしも現行の消費者契約法の枠組みでは捉えられないものと考えられますので、今後、抜本的な検討の中で議論してまいります。

田中(健)委員 同じ答弁になったんですけれども、抜本的な改革、また議論を一日も早く進めていただきたいと思います。

 時間がありませんので、次に移ります。

 今度は消費者の心理状況に着目した規定について伺いたいと思います。

 この報告書に対して、事業者からは、予見可能性がなく、実際の企業実務にどのような影響を及ぼすものかが全く見えないという指摘があり、特に、消費者の心理状況に着目した規定については強く反対との意見が出されていました。結果、今法案では、取消権、威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害した場合だけの説明にとどまりました。

 この点、先ほどもちょっとありましたけれども、野々山参考人からも、この予見可能性は必要だ、ただ、極めて過剰であり、極めて限定的な中で要件を定めてある、予見可能性そのものをつくるということと、それから場面を限定するというのはまた全然別の話だという指摘がありました。

 まず、予見可能性、この考えについて大臣に伺いたいと思います。

若宮国務大臣 消費者庁では、検討会報告書を基礎に検討を進めて、取消権、これは、強い効果と事業者の行為規範としての機能を持つことから、消費者にとっての使いやすさ、事業者の予見可能性、これらのための要件の明確性といった要素が全て満たされることにより十分に機能するというふうに考えているところでございます。今回の法律案では、事業者の勧誘行為の要件を明確にした取消権の規定を追加、拡充をしたところでもございます。

 今委員がお話しになりました野々山参考人の御意見、承知をいたしているところでもございますけれども、消費者庁といたしましては、消費者にとっての使いやすさや、予見可能性、明確性とは別の観点から、殊更場面を限定して取消権を規定したわけではないということを御理解いただければというふうに思っております。

田中(健)委員 包括的なものであっても、予見可能性、つくれるとも言っていますので、是非取り組んでいただきたいと思います。

 時間になりましたので、最後に。

 社会の要請に私は十分に応えられていないというふうに思います。被害者の後追いになってしまっているどころか、未然に消費者の保護もできていないのが今の消費者契約法の現状ではないか。消費者契約法の本来の役割である業法等の空白や隙間を埋めて、取引事業者の行動指針となる包括的な民事ルールに向けた検討を直ちに行って、既存の枠組みにとらわれないと先ほど来言っていました、骨太という言葉もありましたが、抜本的な議論を求めたいと思いまして、質問を終わります。

松島委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日、資料を出させていただきました。資料の六ページの事例八を見ていただきたいんです。

 独り暮らしの八十代の叔母から、引っ越さなければならないらしいと慌てた様子で電話があったので、出向くと、一週間前に来訪した不動産事業者と自宅マンションの売却の契約をしたことが分かった。家の中を調べたところ、契約書はなかったが、○○より敬老金五十万円というメモがあり、口座を確認すると契約二日後に売却の手付金として五十万円が振り込まれていた。四か月以内に家を引き渡すことになっているというが、叔母本人は契約したことを覚えておらず、引っ越すつもりはないという。解約を申し出ると、事業者から、契約は成立しており、既に手付金も支払っている、今なら手付倍返しで解約に応じるが、あと数日過ぎると売却契約金の二〇%を違約金として支払ってもらうことになると言われた。叔母は独り暮らしで日常生活を送っているが、認知症の症状があり、介護認定も受けているという事例でございます。

 この事例、見ていただきますと、事業者は、こうやって営業をかけていけば、高齢者の方々が路頭に迷おうと、知らぬ顔で、安く不動産を手に入れるか、あるいは手付の倍返しでお金が入るか、あるいは売却契約の二〇%の違約金のお金が手に入るかということなんです。

 資料の事例八の少し上のところにありますけれども、高齢者の方にとって、年齢、体力、資力等において訴訟をすることはとてもハードルが高い、最寄りの消費生活センターで被害の救済を図る際にも活用できる規定にしてくださいということで、全国消費生活相談員協会の皆さんがおっしゃっているわけです。

 検討会でこういう事例も救済しようということで、長年話し合って、判断力が著しく低下しており、生活に支障が生じる、極めて悪質なケースで取消権を認めていこうと折り合って、そういうふうに折り合いをつけてきたのに、法案には入っていない。

 なぜこういう事例さえ救済しようとしないんでしょうか。大臣。

若宮国務大臣 検討会におきまして方向性が示された、判断力の低下に着目した規定につきましては、検討会報告書の御指摘を踏まえまして、消費者を勧誘するに際して、必要な情報を提供する事業者の努力義務において、消費者の心理状態も考慮して情報提供をするということとしております。

 一方、判断力に着目した取消権として規定をすることにつきましては、事業者の行為によって消費者の判断力が低下しているわけではないため、従来の取消権を超える側面があること、また、生活に著しい支障を及ぼす内容の契約となるかは、消費者の生活状況が一様でないことから、取消権として規定することは困難であること、検討会報告書やその後の意見募集におきましても慎重な検討を求める意見があることなどから、今回の法案には盛り込んでいないところでございます。

 今委員が御指摘になられましたような事例では、意思無能力により無効となる可能性もあると考えられるかと思いますが、判断力の低下等の個々の消費者の多様な事情に応じまして、消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる制度等につきましては、将来に向けて消費者契約法が果たすべき役割は何かといった観点から、法体系全体の中で消費者法が果たすべき役割、あるいは消費者法全体の中での各法律の実効的な役割分担を考えるといった骨太な議論が必要となると考えられるため、そういった中でしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

本村委員 民法のことも言われたと思うんですけれども、高齢者の方が訴訟をするのにはかなりのハードルがある、だからこそセンターで救済できるようにしてほしいというのが現場の相談員の皆さんの声なんです。この声に応えていただきたいというふうに思います。

 参考人質疑でも、全国消費者団体連絡会の三谷参考人が、そうやっていろいろな事業者の行為によって判断力が低下するわけではないとか、生活は一様じゃないとか、そういうことを言うわけですけれども、しかし、現に被害に遭われている人はどうすればいいのか、救うべき人を救うことができる、そういう法制度にしてほしいということを強く求めておられました。

 弁護士の野々山参考人、また元消費者委員会の委員長の河上参考人共に、事業者の行為によらない事由での取消権が現行法でもあると陳述をされました。先ほど来御議論がありますけれども、判断力の低下などの事情が消費者にあることを前提とした過量販売取消権があるということを野々山参考人は述べられ、そして、河上参考人も、これまでも事業者側の行為様態とは関係なしに取消し事由にして突っ込んだものがあるというふうに述べておられます。

 答弁が先ほどありましたけれども、救済できない理由に固執するんじゃなくて、救済できるように最善を尽くしませんか。河上参考人は、日本は世界から遅れているとおっしゃられておりました。事業者の行為によらない事由での取消権を認めていくべきだということも述べておられました。

 被害を受けた消費者を救済するために、事業者の行為によらない事由での取消権を認めていくべきだと思いますけれども、大臣、御答弁、お願いしたいと思います。

若宮国務大臣 現行法の取消権、これは、例えば不実を告げた、あるいは退去しないなど、事業者の行為が主たる要件となっているため、御指摘のような取消権は、従来の取消権を超える側面があるというふうに考えているところでございます。

 一方、消費者契約を取り巻きます環境の変化、検討会報告書におきましても新しい方向性が提案されていることなどを踏まえまして、既存の消費者契約法の枠組みにとらわれない抜本的な検討が必要だというふうにも考えているところでもございます。

 委員の御指摘も踏まえながら、これまでいただいた様々な御意見、あるいは国会での御議論も踏まえて、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

本村委員 また資料の六ページの黄色い線を引いたところを見ていただきたいんです。

 これも全国消費生活相談員協会の皆さんの資料なんですけれども、不動産売買はすぐに取引が完了するものではなく、物件の査定から始まり、媒介方法、引渡時期、移転登記等を不動産業者、買主と協議するため、売却目的や売却後の消費者の住居について、契約前にある程度分かります、したがって、高齢者が自身のライフプランを持ち、納得の上で自宅を売却している状況であるか否かの判断は難しくありませんというふうに指摘をしております。

 本当にそのとおりだというふうに思いますけれども、この指摘を大臣はどう受け止めておられますでしょうか。こういうことはできるはずなんですけれども、どう対応されますでしょうか。大臣にお伺いをしたいと思います。

若宮国務大臣 判断力の低下に着目をした規定につきましては、検討会の報告書を踏まえまして、勧誘の際における事業者の努力義務として、消費者の心理の状態も考慮して情報提供をするということを規定しているところでございます。

 したがって、救わなくてもいいと考えているわけでは全くございませんで、御理解をいただければというふうに思っているところでございます。

本村委員 この審議を経てもこういう被害が救済できないということはあってはならないというふうに思っているわけです。

 高齢者の方が、覚えていないけれども、家を売却する契約をしてしまい、住むところがなくなってしまうという深刻なケース、こういう被害が出ないように国交省とも連携をしてやらないといけないというふうに思いますけれども、私、国交省としても、家の買取りに対して事業者を、こういう被害に遭わせないように、規制をするべきだというふうに思いますけれども、国交副大臣に来ていただきました。お願いしたいと思います。

泉田大臣政務官 今委員から御指摘のございました宅建業法がございます。宅地建物取引業者が消費者から不動産を買い取る場合であっても適用がございます。

 この宅建業法には、相手方を威迫する行為、それから、相手方が契約を締結しない旨の意思表示をしたにもかかわらず勧誘行為を継続する行為、こういったことを禁止いたしております。

 また、取引の公正を害する行為をしたとき、業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき等、個別の事案の態様に応じて監督処分の対象となり得るということでございます。

 特に議員御指摘のような、高齢者の自宅の売却に関するトラブル、これにつきましては、昨年六月の国民生活センターの要望を受けまして、免許行政庁である都道府県や地方整備局等に対し、宅建業者の指導を徹底するよう周知をしたところでございます。

 国交省といたしましては、引き続き、消費者庁そして国民生活センター、関係業界団体と密に連携し、宅地建物取引をめぐる消費者保護を図ってまいりたいと思います。

本村委員 国交省としても、こういう悪質な事業者は排除していくということでやっていただきたいというふうに思います。

 先ほどもお話をさせていただきましたけれども、今回、検討会で話し合われた、判断力に着目した取消権の話合いの折り合いをつけたのは、極めて悪質なケースで折り合いをつけたわけですけれども、このことに対して反対しているのは一体誰なのかということを具体的にお示しをいただきたいというふうに思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 取消権については、強い効果と事業者の行為規範としての機能を持つことから、消費者にとっての使いやすさ、事業者の予見可能性、要件の明確性という要素が全て満たされることにより十全に機能することになるものと考えており、今回の法律案では、こうした観点から、要件を明確にした取消権の追加、拡充を図ったものでございます。

 したがって、今回の法律案は、特定の者が反対したことによって現在の法律案の内容になったものではございません。

本村委員 報告書を受けて、様々な御意見を聞いて、そして法案になったというふうに伺ったんですけれども、反対する人はいなかったわけじゃないですよね。

高田政府参考人 繰り返しになりますけれども、三つの要件によって十全に機能することになるものと考えております。それに当たりましては、検討会での御議論、それから検討会が終了した後でのパブコメ、それから検討会を踏まえての意見交換などなど、いろいろ行いまして今回の法律案にしたのでございますけれども、特定の者がということではございません。

本村委員 明確に反対する意見など、パブリックコメントでも見させていただいておりますけれども、ある。

 いろいろな事業者の人が意見するというふうに思うんですけれども、河上参考人が指摘をされた特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討会報告書の中には、消費者の脆弱性につけ込む悪質商法の手口の巧妙化、複雑化には断固とした対応をする必要がある、具体的には、法執行の強化はもちろん、消費者利益の擁護及び消費者取引の公正確保の推進のため、消費者被害を発生させる悪質事業者、共通の敵にターゲットを絞った実効的な規制等を新たに措置する抜本的な制度改革を実行するべきであるというふうに書かれています。

 こういう視点でこの消費者契約法の方も早急に法改正に着手をするべきだというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

若宮国務大臣 委員が今御指摘になられましたとおり、特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会の報告書では、検討の視点として、消費者被害を発生させる悪質事業者、いわゆる共通の敵でございますが、にターゲットを絞った実効的な規制等を新たに措置する抜本的な制度改革を実行すべきとの指摘がされたものというふうに承知をいたしているところでございます。

 他方で、この消費者契約法、こちらの方は、消費者と事業者のあらゆる契約に、業種やあるいは分野を問わず当てはまる事項についての民事ルールを定める法律であるため、この共通の敵である悪質事業者を念頭に置いた検討を行ったとしても、法律の効果、これは悪質事業者以外の事業者へもひとしく及ぶことを考慮する必要があるものというふうに考えているところでございます。

 悪質事業者にターゲットを絞った実効的な規制の在り方につきましては、消費者契約法の在り方のみならず、消費者法全体の中での各法律の役割分担といった観点からしっかりと議論してまいりたいと考えているところでございます。

本村委員 参考人質疑の中でも幾度となく言われましたけれども、市場で悪いことをする事業者を排除するために、商道徳に反するような事業者は市場から撤退してもらうために、公正なルールをつくるために、消費者も事業者もお互いに力を合わせるという姿勢を持っていくということが必要だ、悪質な事業者にお金が回るということは社会にとってマイナスになるんだ、そういうことも含めて、経済団体や事業者などに大臣が是非説得していただいて、対話を進めていただいて、こういう共通認識を持つようにということで進めていただきたいというふうに思いますけれども、経済団体、事業者への働きかけ、対話を是非、大臣、していただきたいと思います。いかがでしょうか。

若宮国務大臣 繰り返しお話し申し上げていることになりますけれども、今回の法律案におけます取消権、これに関して申し上げますと、強い効果と事業者の行為規範としての機能を持つことから、消費者にとっての使いやすさ、事業者の予見可能性、あるいは要件の明確性という要素が全て満たされることによって十全に機能することができるというふうに考えているところでございます。こうした観点から、要件を明確にした取消権の追加、拡充を図ったものでございます。

 したがいまして、今回の法律案、特定の経済団体あるいは事業者などが反対したことによって現在の法律案の内容になったものではないということをまず御理解をいただければと思っております。

 また、もし仮にですけれども、特定の経済団体あるいは事業者などが反対することによって、消費者庁におけます法改正の検討が困難になるような場合には、私のリーダーシップの下でしっかりと対応し、理解を得られるように努力をしてまいりたい、こう思っているところでございます。

本村委員 相談事例を、今日、この全国消費生活相談員協会の皆さんの資料で、私、先ほど事例八を紹介させていただいたんですけれども、事例は幾つも載っておりまして、今回の法改正ではこの事例、なかなか救済ができないんだというお話もお伺いをしております。今回の法改正では本当に限定され過ぎていて、救済できないわけでございます。

 今、消費者庁の方では、消費者基本計画の一部を改正する素案なんかを出して、改正するということもやられているというふうに思いますけれども、七か月の研究会の議論と、そして一年九か月かけた検討会報告書の中で法案に反映されなかった、消費者の判断力に着目した取消権や、あるいは消費者の心理に着目した取消権を始めとして、この重要な課題について改正するということをしっかりと明記をしていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

若宮国務大臣 消費者契約法に関しましては、既存の枠組みにとらわれない、抜本的な検討が必要であるというふうに考えております。そのためには、将来に向けまして、この消費者契約法が果たすべき役割は何かといった観点から、法体系全体の中で消費者法が果たすべき役割、あるいは消費者法全体の中での各法律の実効的な役割分担を考えるといった、骨太な議論が必要だというふうに何度か御答弁申し上げているところでもございます。

 したがいまして、この消費者基本計画におきましても、御指摘の論点について、結論を先取りするような記載をすることというのは適当ではないというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、消費者の保護にとってよりよい制度となるように、有識者の皆様方からの御意見も伺いながらしっかりと検討してまいりたい、こう思っております。

本村委員 改めて、先ほど、事業者が反対したわけではないということで答弁があったんですけれども、今回新たに追加された三類型の取消権なんですけれども、どういった経過でこれになったのか。検討会では議論をされていないわけです。盛り込んだ経過が不透明になっております。

 消費生活相談にこの三類型の取消権、本当に、退去困難な場所へ同行し勧誘ですとか、威迫する言動を交え相談の連絡を妨害するとか、契約前に目的物の現状変更とか、そういう相談が多く寄せられていたのかということや、あるいは盛り込んだ経緯、理由を明らかにしていただきたいと思います。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 検討会におきましては、困惑類型の脱法防止規定や消費者の心理状態に着目した規定について議論が行われたところでございます。

 前者の困惑類型の脱法防止規定については、検討会において、対象となる行為をある程度具体化した上で規定するという方向性が示されたところでございますが、消費者庁において、消費生活相談の相談事例も参考にしつつ、勧誘をすることを告げずに退去困難な場所へ同行した場合を退去妨害に対する脱法防止規定として、また、契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にした場合を契約前の義務実施の脱法防止規定として、それぞれ追加したものでございます。

 後者の消費者の心理状態に着目した規定につきましては、検討会の議論において、消費者の心理状態に着目した規定が消費者を困惑させる場合との区別が難しいという指摘も踏まえまして、消費生活相談の相談事例も参考にしつつ、困惑類型の追加という形で、消費者を威迫して第三者との相談を妨げて勧誘した場合の取消権を規定することとしたものでございます。

 したがいまして、新たな三類型の取消権については、検討会報告書の延長上にあるものと考えております。

本村委員 検討会では議論になっていないのに勝手に法案になったというか、ということなんですね。そこもかなり不透明だというふうに思います。

 今回、報告書の中身が法案に入っていないということで様々御批判があるわけですけれども、先日の三人の参考人の方々は、受皿となる取消権が必要だということを強調されておられました。

 この点について、若宮大臣に、参考人質疑、確認しているというふうに思いますけれども、そうした三人の方が受皿となる取消権が必要なんだと言うことをどういうふうに受け止めているのかということを、いま一度御答弁いただきたいと思います。

若宮国務大臣 消費者庁といたしましては、この取消権、これは契約全体の効力が否定をされるという強い効果を伴うものであるとともに、事業者の行為規範としても機能するものであることから、これまで述べてきました、使いやすさ、予見可能性、要件の明確性といった要素が全て満たされる必要があるというふうに考えているところでございます。そして、今回の法律案を提出させていただいたところでもございます。

 参考人の皆様方から幅広い多数の御意見の表明があったことを重々承知をいたしているところでもございます。将来に向けました骨太の議論の中で、参考人の皆様方の御意見も参考にさせていただきたい、こう考えております。

本村委員 元内閣府の消費者委員会委員長の河上先生は、高齢者、若年成人等に関して、その判断力不足に、あるいは経験につけ込んで不当な利益を上げるというような事業者から消費者を保護するために消費者に取消権を与える提案が、なぜこうも難渋しているのか、私には理解できませんということをおっしゃっているわけです。こういう声も重く受け止めていただきたいというふうに思います。

 今回、相談することを遮った場合は取り消すという事項も入っているわけですけれども、そのときに、相談する先として一八八があるかなというふうに思うんですけれども、その相談を受ける皆様方からも御意見が来ております。

 全国消費生活相談協会の皆さんが、政府はどこに住んでいても質の高い相談、救済が受けられるよう体制整備をしていくんだ、消費者生活相談員の配置促進をしていくんだ、資格保有率の向上をやっていくんだというようなことを言うわけですけれども、実際、現場では、交付金の見直しによる財源不足で相談員を雇用できない、あるいは雇用したくても相談員を確保することができないなどにより、相談員の数が減少しているというふうに言われています。特に相談員不足は深刻ですと。

 相談員の量と質の確保のためには、相談員の待遇改善が喫緊の課題です。相談員確保のために財源支援を含めた具体的な支援策を示してくださいというお声や、あるいは、会計年度任用職員制度が導入されました。消費生活相談員の処遇改善が図られたのか、実態が不明確です。この相談員協会の会員の皆さんからは、処遇悪化や人員削減による多忙などの報告もあります、新たに問題が発生していないか実態を把握し、問題があれば地方公共団体へ要請する必要があります、早い段階で実態調査を実施して公表してくださいという現場の声がございます。

 是非、この現場の声に応えてしっかりとやっていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

若宮国務大臣 先ほども、ほかの方の御質問の中で御答弁申し上げたんですが、私自身、東京都あるいは徳島県の相談現場を訪問させていただき、皆様方とも懇談をさせていただきました。しっかりと、長時間にわたって意見交換もさせていただいたところでもございます。

 この消費生活相談員、地域の現場において消費者からの相談等に直接対応するなど、地方消費者行政の最前線で大変重要な役割を担っていただいているということを本当に実感しているところでもございます。この相談員の処遇がその能力や経験等に見合ったものとなるよう取組を進めていくことも、重要な課題だというふうに認識いたしております。

 消費者庁といたしましては、処遇の改善につきまして地方公共団体に粘り強く働きかけを行うとともに、地域の現場におきまして指導的な役割を担う指定消費生活相談員等の活動を支援する経費、これを新たに地方消費者行政強化交付金の対象とするなど、処遇改善に向けた取組を御支援申し上げているところでもございます。

 また、会計年度任用職員制度につきまして、消費者庁の調査によりますと、制度導入前の令和元年度から制度導入後の令和三年度にかけまして、一時間当たりの報酬単価が約二割程度上昇するなど、相談員の処遇改善につながっているものと認識をいたしているところでもございますが、今後も継続的に処遇面の把握にも努めてまいりたいというふうに思っております。

 また、委員が今御指摘になりました相談員の減少、これに対しましても、国が直接実施をします相談員の養成事業による担い手の確保に努めつつ、消費生活相談のデジタル化なども通じましたお一人お一人の負担の軽減、こういったことにも努めてまいりたいと思っておりますし、重層的な、様々な対策によって相談員の方々が十分に力を発揮できるような環境づくりに取り組んでまいりたい、こう思っているところでございます。

本村委員 昨日も消費者庁の方とやり取りをしておりまして、相談先がないという若い人たちも今現場ではいると。それで、その相談先となるのが一八八になり得ると私は考えているんです。

 じゃ、その相談する電話、SNSの活用も必要だというふうに思うんですけれども、十六時までしかやっていないとか、十七時までしかやっていないとか、日曜日はやっていないとか、そういう実態があるわけで、今の規模でいいというふうには私は考えていませんで、もっと、二十四時間三百六十五日に近づけるようにしていかなければいけないというふうに思うんですけれども、そこら辺の体制強化もお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

若宮国務大臣 今委員が御指摘になりました、なかなか二十四時間三百六十五日、これはいろいろ考えますと難しい側面もあろうかと思いますけれども、確かに、消費者の皆様方においての様々な御相談事、様々な人によっての生活スタイルも違ってまいりますので、いろいろな工夫をしてまいりたい、こう思っているところでございます。

本村委員 相談の強化も求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 以上で、ただいま議題となっております両案中、内閣提出、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松島委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、勝俣孝明君外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大河原まさこさん。

大河原委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

 なお、委員長の御配慮に感謝して、着座にて読み上げをさせていただきます。

    消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 法改正後直ちに、諸外国における法整備の動向を踏まえ、消費者契約法が消費者契約全般に適用される包括的な民事ルールであることの意義や同法の消費者法令における役割を多角的な見地から整理し直した上で、判断力の低下等の個々の消費者の多様な事情に応じて消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる制度の創設、損害賠償請求の導入、契約締結時以外への適用場面の拡大等既存の枠組みに捉われない抜本的かつ網羅的なルール設定の在り方について検討を開始すること。

 二 一の検討の際には、超高齢社会が進展し高齢者の消費者保護の重要性が高まっていることや、成年年齢の引下げ後における若年者の消費者被害の状況等を踏まえ、悪質商法による被害を実効的に予防・救済するとの観点を十分に踏まえること。

 三 一の検討の際には、「平均的な損害」の額に係る立証責任の転換を含め、消費者契約に関する検討会の報告書において将来の検討課題とされた事項等について引き続き検討すること。

 四 消費者契約法第四条第三項第三号については、同項第一号及び第二号の従前の解釈を狭めるものではないことを周知すること。また、同項第四号に関し、内閣府令で相談を行う方法を定めるに当たっては、特定の相談方法が除外されることがないように網羅的に規定すること。

 五 消費者契約法第九条第二項の算定根拠の概要の説明については、請求されている損害賠償又は違約金が平均的な損害の額を超えているか否かについて消費者が理解し得るような説明を事業者がすべきことを周知すること。

 六 消費者契約法第十二条の三から第十二条の五までに関し、内閣府令で要請の方法を定めるに当たっては、適格消費者団体が過度の負担を負うことがないようにすること。

 七 集団的消費者被害回復制度における共通義務確認訴訟の対象範囲の拡大及び和解の柔軟化並びに簡易確定手続の対象消費者への通知方法の見直し等について、十分な周知を行うとともに、政省令等を検討するに当たっては、改正の趣旨を踏まえたものとすること。

 八 差止請求制度及び集団的消費者被害回復制度が実効的な制度として機能するよう、新たに創設される消費者団体訴訟等支援法人に対し、充実した業務を実施するための支援を行うとともに、適格消費者団体及び特定適格消費者団体に対する支援の充実及びPIO―NETに係る情報の開示の範囲の更なる拡大の検討を行うこと。

 九 裁判手続のIT化及びオンラインでの紛争解決(ODR)推進の議論を踏まえて、簡易確定手続における特定適格消費者団体と対象消費者の間の手続のIT化に当たって、必要な支援について、検討を行い、必要な措置を講ずること。

 十 消費者裁判手続特例法等に関する検討会の報告書において、提言がなされたが改正事項とはならなかった「公告に要する費用の一定額を事業者が負担すること」、同報告書で将来的な検討課題とされた「特定適格消費者団体が事業者以外の第三者から対象消費者に関する情報を取得すること」及び「財産に関する情報を含む事業者の情報の開示手続を新設し、同手続を含む事業者の情報について行政機関や事業者以外の第三者から取得すること」について、改正法の運用を踏まえ必要な検討を行うこと。

 十一 より効率的に集団的な被害回復を図る制度として、オプトアウト方式等の事業者に不当な収益を残さないための有効な手段の導入について、改正法の運用を踏まえ必要な検討を行うこと。

 十二 悪質商法による被害に遭った消費者の被害回復には、集団的消費者被害回復制度のみでは不十分であることから、特定適格消費者団体又は行政庁による破産申立て及び行政庁が加害者の財産を保全し違法収益をはく奪する制度などを含め、改正法の運用を踏まえ必要な検討を行うこと。

 十三 具体的な消費者団体訴訟事案に関し、適格消費者団体等の活動状況や消費者団体訴訟の訴訟結果を一覧できる仕組みの構築等を通じて、消費者が安心して案件を確認し、訴訟に参加できる環境を整備すること。

 十四 全国どこに住んでいても質の高い消費者行政サービスを受けることができる地域体制を整備することが重要であり、そのためには全国各地の消費生活センター及び消費生活相談員の活動支援に努めることが不可欠であることから、その実現に向けて地方公共団体に対する更なる支援に努めること。その他、地方消費者行政の体制の充実・強化のため、恒久的な財政支援策を検討するとともに、既存の財政支援の維持・拡充、消費者行政担当者及び消費生活相談員に対する研修の充実、消費生活相談員の処遇改善等による人材の確保、若年者が利用しやすくなるようSNSを活用した消費生活相談窓口の充実に向けた支援措置、地方公共団体の執行体制強化につながる支援措置、消費者安全確保地域協議会の設置の促進等の適切な施策を実施すること。

 附帯決議案は以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

松島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松島委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。若宮健嗣国務大臣。

若宮国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

松島委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

松島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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