衆議院

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第4号 令和4年12月6日(火曜日)

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令和四年十二月六日(火曜日)

    午後三時三十三分開議

 出席委員

   委員長 稲田 朋美君

   理事 井原  巧君 理事 牧原 秀樹君

   理事 宮崎 政久君 理事 宮下 一郎君

   理事 山井 和則君 理事 吉田 統彦君

   理事 池畑浩太朗君 理事 古屋 範子君

      東  国幹君    柿沢 未途君

      勝目  康君    小林 鷹之君

      土田  慎君    中曽根康隆君

      中山 展宏君    長谷川淳二君

      鳩山 二郎君    平沼正二郎君

      船田  元君    穂坂  泰君

      松島みどり君    保岡 宏武君

      渡辺 孝一君    青山 大人君

      井坂 信彦君    石川 香織君

      大河原まさこ君    早稲田ゆき君

      浅川 義治君    沢田  良君

      國重  徹君    吉田久美子君

      田中  健君    本村 伸子君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            河野 太郎君

   内閣府副大臣       大串 正樹君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     黒田 岳士君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    植田 広信君

   衆議院調査局第一特別調査室長           菅野  亨君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月五日

 辞任         補欠選任

  石川 香織君     山井 和則君

同月六日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     中曽根康隆君

  田畑 裕明君     東  国幹君

  堀内 詔子君     渡辺 孝一君

  山田 勝彦君     石川 香織君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     田畑 裕明君

  中曽根康隆君     穂坂  泰君

  渡辺 孝一君     堀内 詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  穂坂  泰君     上杉謙太郎君

同日

 理事堀内詔子君同日理事辞任につき、その補欠として宮崎政久君が理事に当選した。

同日

 理事山田勝彦君同日委員辞任につき、その補欠として山井和則君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十二月六日

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出第二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

稲田委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事堀内詔子さんから、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任及び委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に

    宮崎 政久さん    山井 和則さん

を指名いたします。

     ――――◇―――――

稲田委員長 ただいま付託になりました内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。河野国務大臣。

    ―――――――――――――

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案

 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 社会経済情勢の変化等に対応して、消費者の利益の擁護を更に図るため、消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる範囲を拡大するとともに、取消権の行使期間を伸長する等の措置を講ずるほか、独立行政法人国民生活センターの業務として適格消費者団体が行う差止め請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行う業務を追加する等の措置を講ずる必要があるため、この法律案を提出した次第です。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、消費者契約法に関しては、意思表示を取り消すことができる不当な勧誘行為の類型を改正し、事業者が消費者に対し、霊感等による知見として、当該消費者又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該消費者契約を締結することが必要不可欠である旨を告げることとしています。

 この不当な勧誘行為に係る取消権の行使期間を、追認をすることができるときから三年間、消費者契約の締結のときから十年を経過したときに伸長することとしています。

 第二に、独立行政法人国民生活センター法に関しては、独立行政法人国民生活センターの業務に、適格消費者団体が行う差止め請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行うことを追加するとともに、和解仲介手続及び仲裁の手続について、適正かつ迅速な審理が実現されるように所要の規定を新設するほか、消費者紛争の当事者である事業者の名称等を公表することができることとするなどの改正を行うこととしています。

 その他、所要の規定を整備することとしています。

 引き続きまして、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 法人等からの寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護等を図る観点から、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止し、当該不当な寄附の勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めるとともに、寄附の意思表示の取消しの範囲の拡大及び扶養義務等に係る定期金債権を保全するための債権者代位権の行使に関する特例の創設等の措置を講ずる必要があるため、この法律案を提出した次第です。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、法人等は、寄附の勧誘を行うに当たり寄附者等に配慮しなければならないことを規定するとともに、寄附の勧誘に関する禁止行為として、不当な勧誘により寄附者を困惑させてはならないこと及び借入れ等による資金調達を要求してはならないことを規定しております。

 第二に、法人等が禁止行為に違反した場合の勧告、命令等の行政上の措置等について規定するとともに、当該行政措置に係る罰則について規定しております。

 第三に、不当な勧誘により寄附者が困惑して寄附を行った場合における意思表示の取消しについて規定するとともに、扶養義務等に係る定期金債権について、確定期限の到来していない部分を保全するための債権者代位権の行使に係る特例を設けることとしております。

 第四に、国は、寄附者等が権利の適切な行使により被害の回復等を図ることができるようにするため、日本司法支援センターと関係機関及び関係団体等との連携の強化を図り、利用しやすい相談体制を整備する等必要な支援に関する施策を講ずるよう努めなければならないこととしております。

 その他、この法律の運用上の配慮に関する規定など、所要の規定を整備することとしております。

 以上が、これらの法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

稲田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として消費者庁次長黒田岳士さん、消費者庁審議官植田広信さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹さん。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 トップバッターということでございますので、既に予算委員会あるいは今日の本会議等々で審議がかなり重ねられておりますけれども、改めて、今回の法改正及び新規立法の目的についてお伺いをしたいと思います。

 私も一九九七年に弁護士になって以来、こうした消費者保護というのは、いろいろな事件が起き、そして、残念ながらそのときの法律ではなかなか被害者の方を救済できないという事態が起こったときに、この皆様を何とかしてお救いしたいということで努力をしてきたのが、まさに消費者行政の歴史だったというふうに思います。

 他方で、これは通常に考えますと民間同士のことが多くて、そこには契約自由の原則があります。また、憲法上の基本的人権の尊重の制限がかかるというのは、どの場合でも必ず妥当するわけです。そういうことから、大体こうした被害の救済をするという法律、これまでPL法とか様々やってきましたけれども、かなり専門家の審議会等を立ち上げて慎重にやってきたというのが今までだったと思います。

 今回、与野党の皆様の大変な御努力によって、多分歴史上でも最も早い、こうした法律ができたということでございます。改めて大臣に、これだけ短期間に、そしてかなりの内容が詰まった法律を作った、その思いについてお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 この旧統一教会問題に関しましては、被害者の救済、その再発防止を図ることが急務と言っていいんだろうと思います。そうしたことから、できる限り速やかに法案として取りまとめるということが要請されているというふうに考えておりまして、憲法上の財産権あるいは信教の自由といったことには最大限の配慮をし、現行の我が国の法体系の中で許される限り最大限、禁止行為や取消権の対象というものを広げたというふうに考えております。

 先日国会に提出いたしました消費者契約法の改正法案、これは、いわゆる霊感商法への対応の強化を求める社会的な要請が高まっている中、消費者被害を防止する、救済の実効性を高めるという観点から、消費者契約法の取消権の対象範囲を拡大し、取消権の行使期間を延ばすといった措置を講じました。

 また、この消費者契約法では捉えられない、消費者契約に当たらないような寄附については、不当な勧誘があれば取り消すことができるようにすると同時に、法人などによる不当な寄附の勧誘を禁止し、勧告を始めとする行政措置を定めることを内容とする新法といたして、国会に提出をしたところでございます。

牧原委員 今大臣におっしゃっていただきましたけれども、今回の法律は、本当に野党の皆様からいち早く議員立法が出されたということは、私は非常に大きいことであり、それを受けて与党側でも真摯に検討し、また政府でも同時並行で、これだけスピーディーに閣法を準備していただいた。本当に国会の歴史にも残る、すばらしい、一致団結した国会の在り方じゃないかなと思うんです。

 他方で、急いだことによる、今も大臣ちらっと話がありましたけれども、やはり憲法上の適合性というのは必ず問われるのではないかと思いますが、具体的に、憲法二十条の信教の自由や憲法二十九条の財産権に反しないという点について、改めて大臣に確認をしたいと思います。

河野国務大臣 この新しい法案の運用に当たりましては、憲法上の財産権はもちろん、社会において寄附が果たす役割、これの重要性については留意をしなければなりません。また、学問の自由、信教の自由、あるいは政治活動の自由への十分な配慮が必要であるという旨を規定しております。

 新法で特例を設ける債権者代位権につきましては、自らの権利を保全するために、必要な限度で他人の権利を行使することを認める制度でございます。今回の新法では、これを活用しやすくするということで、個人の財産権の侵害とならない限度で家族らの被害救済にも資することができるようにするように、財産権にも配慮したものになっております。

牧原委員 この法案に関して、憲法にも適合性があるということであります。非常にその判断がぎりぎり難しかったと思いますが、改めて関係者の皆様に感謝を申し上げつつ、最大限のぎりぎりの範囲で、やはり被害者の救済を図っていかなきゃいけない、こう思うんです。

 先ほどお伺いしたことで、被害者救済が目的の範囲に当然入って、元々の経緯でもあるんですが、他方で、どこまで遡及できるのかという問題があります。当然、法律は、普通に考えますと、その制定時から先の話に適用があって、その当時法律がなかったものを急に遡及して適用するということは基本的に難しい。仮に野党の皆様の法案であったとしても、何法であったとしても、これは難しいことになります。

 この法律で具体的に言いますと、例えば、寄附の方の新法でいいますと、法律の制定前に行われた寄附というのは対象になるのか。あるいは、今日の議論でも、際してという部分、これに関して、過去に困惑させた後、その後は個々には困惑をしていなくても対象になるんだという総理答弁が繰り返し行われておりますけれども、例えば、この法律の制定前の困惑というのも今後の寄附についての適用があるのか。

 この辺についての遡及適用について、既存の被害者の皆様に対する救済について、政府の見解をお答えください。

大串副大臣 現在まさに被害に遭っている方の救済については、重要な課題であると認識をしております。

 法律は基本的に過去に遡及して適用されるわけではないことから、法改正や新規立法によって対応することは、御指摘のように難しい面がございますけれども、消費者契約法の改正案では、霊感等による知見を用いた告知の場合の取消権の行使期間を延ばした上で、これを現行の取消権について時効が完成していない場合にも適用することとしております。

 また、新法に規定する配慮義務については、それ自体が遡って適用されることはないものの、過去の寄附に関する被害についての民法上の不法行為の認定等において考慮される可能性がございます。これにより、現在被害に遭っている方の救済範囲を広げることができると考えております。

 また、国民生活センター法の改正によって、国民生活センターによる重要消費者紛争解決手続、いわゆるADRが迅速化されることで、現在の被害者の紛争解決がより迅速に行われることが期待されると考えております。

牧原委員 今お話があったように、今回の特に配慮義務、これが既存の被害者の皆様の救済における、例えば民事裁判等で考慮される結果、広がるんじゃないかという期待感を示されたわけですけれども、もう一度具体的に聞きますけれども、例えば、さっき申し上げたように、法律前の困惑を生じて、そして今後寄附する場合、これは適用になるということかどうか、ちょっと確認をさせてください。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 ケース・バイ・ケースではございますけれども、勧誘を受けて困惑したのが法律の適用前でございましても、それを、困惑していることが続いていることを知っていて、それに乗じて寄附を勧誘して、それによって意思表示をして寄附を行ったという場合には対象になるものというふうに考えております。

牧原委員 今のは結構重要で、今後も一種遡及的な適用として、これまでは随分前に生じた困惑でずっと献金をしてきたけれども、今後はその献金がそのまま認められるとは限らないということがあるということですから、これは私は非常に被害防止には大きな意味を持つというふうに考えます。

 それから、先ほど副大臣からお話があったように、仮に遡及適用できないのでなかなか救済できないという場合は、国民生活センター等のことによって被害者を救済するという話でしたけれども、法律の適用にならなかったとしても、そうした形で被害者救済をありとあらゆる手段を通じてやっていくということは非常に大切だというふうに思いますが、改めて、ここの取組についてお答えください。

植田政府参考人 政府といたしましては、旧統一教会問題に関しまして、相談体制の強化による被害者の救済というものに取り組んでおるところでございます。

 法務省が中心になっております、先般、関係省庁連絡会議におきまして、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策を取りまとめているところでございます。

 この取りまとめでは、法テラスの抜本的な充実強化、消費生活相談等の強化、宗教二世の方も念頭に置いた精神的、福祉的支援の充実及び子供、若者の救済について、各関係機関で実施する具体的な諸施策を明記して、これについてそれぞれが連携して取り組んでいくことを確認しておるところでございます。

 政府といたしましては、引き続き、こうした取組を通じまして、被害者の救済に万全を尽くしてまいりたいと存じます。

牧原委員 是非そこの、政府全体での取組、民間の皆さんや弁護士会等も含めて取り組んでいただきたいと思うんです。

 今の話にもちょっと関連するんですけれども、既存の二法の改正案については消費者庁が当然所管官庁であると思うんですが、新法は、寄附、これに対する規制というのは、今まで具体的に消費者庁ではなかったわけです。いろいろなお話を我々も聞きましたけれども、いわゆる寄附者を消費者だというふうに定義づけをすること自体、非常に違和感があるんだとおっしゃっている、ほかの宗教団体だったり、NPOの方だったりする方も少なくありません。

 改めて、新法、寄附に関する規制を消費者庁が所管をするというようなことで妥当であるのか、そして、この執行をやはり消費者庁がやっていくのか、それとも、もっと政府全体で改めて体制を強化してやっていくのか、ここについての今後の執行体制についてお聞かせください。

河野国務大臣 消費者契約法で対象といたします贈与契約などに当たる寄附と、新法で対象とする単独行為に当たる寄附で規制の態様に違いが出ないように、消費者契約法で取消権の対象とされるものと同等の不当勧誘行為を新法でも取消権の対象とするということにしておりますので、また、債権者代位権ですとか法テラスに係る規定があることを踏まえまして、新法は、消費者契約法と同様に消費者庁と法務省で共管をすることとしておりますが、行政措置に関する部分は消費者庁が所管をするということにしてございます。

 執行体制につきまして、この法案の運用については、宗教法人のほかにNPO法人等様々な法人の活動において、寄附が果たす役割の重要性、それから、先ほど申し上げました学問、信教あるいは政治活動の自由といったことに配慮が必要とされているということも踏まえまして、関係省庁の協力を得ながらではございますが、消費者庁において必要な体制の整備を講ずることとしております。

牧原委員 その執行体制は結構重要な課題に私はなるんだというふうに思います。やはり、これまでの消費者庁の皆さんの執行とは一段また違うフェーズになると思いますので、是非その強化に取り組んでもらいたいなと思います。

 そういう意味で、今大臣も御指摘をいただいた、例えばNPOとか学術団体、学校とか、こういう今回の法の適用を受ける寄附を今でも大切にされている団体等がございます。私もNPO議員連盟というのに入っているんですけれども、そういうところでは、むしろ、これまで税制改正等で寄附を促すように累次改正を行ってきたというところがございます。

 今回の法律によって、いわゆる寄附という文化や雰囲気を壊さないかという心配もこうした皆様からは上がっておりますけれども、そこについて、これまでの政策との整合性をどう配慮したのか、ここについてお答えください。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来大臣からも答弁されておりますように、新法案の運用に当たりましては、NPO法人や学術団体等、様々な法人の活動において寄附が果たす役割の重要性に留意しなければならない旨を規定しております。また、本法案における禁止規定は、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為と考えられるものであり、配慮義務も、真っ当に寄附を募っている法人等であれば当然に配慮されているものに限っているものであります。

 そのため、通常のNPO法人であれば、寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化の醸成に対する不当な抑制にはつながらないものと考えております。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによりまして、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり、これまでの政策との整合性が取れないといったことにはならないものと考えております。

牧原委員 是非そこの発信は大切にしてもらいたいなと思うんです。あくまで、これは通常ならあり得ないような寄附、悪質な寄附、これを取り締まるということであって、善意に基づく寄附というのは全く対象にならないので、そうしたことは従来どおり大いにやってもらいたいということだと思いますので、関係団体の皆様にはよくおっしゃっていただきたいと思うんです。

 特に、今回、附則で、今回の施行というのは、公布から僅か二十日後なんですね。ですから、二十日しかない中で、今、ネットでわあっと情報が広がったりすると非常に混乱を生む可能性もありますので、是非とも政府においては、この二十日間は非常に厳しいということで、相談体制の充実や、あるいは今おっしゃったような趣旨の周知、これを是非徹底してもらいたいというふうに考えます。

 今回の法律で度々議論になっている文言で、困惑という文言がございます。

 今回の与野党間の協議でも一番難しかったのは、マインドコントロールをどうするのかということだと思います。それで、基本的には、そうした内心のことを法律に落とし込むというのは結構難しいので、それを行為の悪質性等に置き換えてやったということですが、困惑というのは、最後、やはり内心のこととして残ってしまいます。

 今日も本会議で定義をお聞きしましたけれども、裁判上、困惑ということを要件にすると、非常にその立証を難しくしてしまうんじゃないかというふうに考えられるんですけれども、ここについて御見解をお聞かせください。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 マインドコントロールと困惑についてでございますけれども、まず、マインドコントロールについて定義を行うのが難しい理由につきましては、御指摘のとおり、本人の内心が、外から見て、なかなか、マインドコントロールなのか純粋な信仰心なのか判断できないということがあろうかというふうに考えております。

 一方、困惑といいますのは、同じく本人の内心ではございますけれども、本人が困惑したとかあるいは困惑していたと主張することによりまして、本人であれば立証することが可能な状態であるというふうに考えております。

 先ほど定義もお話がありましたけれども、消費者契約法の逐条解説では、困惑とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう、畏怖をも含む広い概念ということとされているところでございます。

 また、裁判上の立証についてでございますけれども、例えば、献金に至るまでの悪質な勧誘行為を具体的に示しつつ、御本人が入信当時にあおられた不安が根底にあったということであるとか、被害者本人の方が献金当時の状況を客観的に振り返ってみれば困惑していたと後から気がついたということを主張されれば、被害者本人が当時困惑していたことということを立証し得るのではないかというふうに考えております。

牧原委員 困惑という文言が、マインドコントロールとはまた違って、本人が後から気づいたときに立証しやすい文言として設定されたということでありますので、そこは非常に意味があると思います。

 他方で、度々議論になっていますけれども、本人は私は困惑していないと言うけれども、周りから見ると、いや、困惑しているでしょうという場合ですね。ここについては、財産権との関係も含めて難しい課題でありますけれども、引き続き、実態の運用も含めて見ていかなきゃいけない点かなとは思います。

 それで、こうしたところも含めて、今回は禁止規定と配慮規定を使い分けるという工夫を行って、法律の適用で救済をなるべく広くしようという努力がうかがえるわけですけれども、この配慮義務というのは、労働安全衛生法の安全配慮義務とか、今までも、法律があって、それがあると立証しやすい、損害賠償請求の場合にやりやすいということは確かにあります。

 他方で、本会議でも、これまでも繰り返しやっていますけれども、禁止規定としてまとめるべきだったという意見が根強くありますけれども、改めて、実務上の観点も含めて、配慮義務と禁止規定をなぜ分けたのか、ここの政府の意図をお伺いします。

植田政府参考人 お答えいたします。

 禁止規定と配慮義務規定でございます。

 まず、禁止規定でございますけれども、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を、可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきというふうに考えております。禁止行為を規定する新法の第四条、第五条につきましては、禁止される法人等の行為を規定しているということでございます。

 一方、第三条の配慮義務にあります、自由な意思の抑圧、それから、適切な判断をすることが困難な状態、生活の維持を困難にするというのは、いずれも勧誘によってもたらされる結果としての個人側の状態というものを規定しておりまして、配慮義務においては、必ずしも法人等がなすべき行為や、してはならない行為を規定しておるというわけではございません。

 そのため、配慮義務の規定につきましては、個人側の事情であるとか誤認させるおそれといった幅広い概念で捉えることによりまして、被害の救済の防止に資するというふうに考えております。

 かえって、禁止行為としてこの対象となる法人の行為を規定してしまいますと、これに当てはまらない行為については、同様の結果をもたらされたとしても配慮義務の対象外となるということになってしまいますので、それは適切ではないのではないかということで考えております。

 したがいまして、規定が困難だということであるとともに、不適切だというふうに考えておるということでございます。

 先ほど先生から言っていただきましたけれども、このような配慮義務を規定するということで、これに反するような不当な勧誘行為が行われた場合には、民法上の不法行為の認定、それに基づく損害賠償請求が容易となるということで、被害救済の実効性は高まるものというふうに考えておるところでございます。

牧原委員 確かに、罪刑法定主義ではありませんが、禁止にされて、それを違反した場合に、罰則とか行政罰とか、こういうものを受けるということになれば、それはやっちゃいけないんだということが明確じゃなければ、えっ、これもやっちゃいけなかったのかということで、それにひっかかるということがあってはならないというのはいわゆる法律の原則でありますので、これを切り分けつつ、最大限、配慮義務という形で、何とか救済を広げたいということはよく分かりました。

 他方で、この配慮義務、確かに曖昧ではありますけれども、しかし、配慮義務違反でも相当悪質な場合というのがあり得ると思うんです。そういう意味では、これに対する行政の報告を求めたり、勧告をしたり、公表したりというような形でのことが、今ちまたの報道では、協議されているということでありますので、是非、こうした実効性があるという形は、私は進めていかなければならないということは申し添えさせていただきます。

 そしてもう一つ、裁判をやったりするのにこれはどうなんだという議論が、今日も本会議で度々なされたこととして、必要不可欠という文言がございます。

 これは、従来の消費者契約法の霊感商法取消しの規定のところでは、確実にとなっていたものが、今回、必要不可欠となって、新法にも跳ねているというものであります。ぱっと聞くと、確実にを必要不可欠にしたことによって救済が広がったのかというのは何となく分かりにくいというのは、私は当然みんなが抱く疑問ではないかと思うんですけれども、これをこういうふうにして、必要不可欠でいいという政府の思い、見解についてお答えください。

植田政府参考人 お答えいたします。

 まず、確実にを必要不可欠と変更した理由でございますけれども、現行の規定では、消費者契約を締結することによって消費者の重大な不利益の回避が確実に可能であるということを告げるということになっておりますけれども、霊感によります不利益の回避というのは主観的なものでございまして、後で言った言わないというような話にもなりかねないという問題があるというふうに考えておりますところ、今般の改正では、消費者の重大な不利益を回避するための手段として、消費者契約の締結が必要不可欠であるというふうに言うということでございます。この契約が必要だと言ったということは後から立証、説明しやすいのではないか、そう言いましたよねということを確認しやすいのではないかというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、現行の規定に比べて要件の明確化を図ったというふうに我々は考えておるところでございます。それが、確実にを不可欠にと変更した理由でございます。

 それから、必要不可欠の不可欠につきましては、ただ必要だと言っただけでは、霊感の規定によりますと、例えば厄払い、厄年を心配している方に厄払いをお勧めするとか、そういった勧誘の仕方も対象になってしまうのではないか、宗教的に容認されている普通の宗教活動まで対象が広がってしまうのではないかということで、そこはある程度、必要不可欠ということで、その契約を結ぶことの必要性、切迫性が強く示されているという場合を対象にしておるということでございます。

牧原委員 最初の確実にというところは、いわゆる不利益なことが確実に起きてしまうというようなことを言っていたけれども、それよりは、要するに、それをやらなきゃいけない、例えば霊感商法で買わなきゃいけないとか、そういう行為が今度は必要不可欠という対象になるので、それが立証とすると、より明確になるということですね。それは、本当に果たしてそうなのかということも考えると、ちょっと分かりにくいなと思うんです。

 ちょっともう一回お答えいただきたいんですけれども、不可欠と言ってしまうと、例えば、容易に想像できるのは、いやいや、私たちは不可欠とまでは言っていませんと。例えば、これをやった方がいいんじゃないんですかとお勧めをしたぐらいでね。絶対それをしなければ駄目なんですというようなところ、そうしなければあなたは地獄に落ちるじゃないですけれども、そういうふうなところが普通に考える必要不可欠ということなんですけれども、そこまで、ほかの手段がないというところまで相当ぎりぎり言わなきゃいけないということで、ここは必要不可欠という解釈でよろしいんでしょうか。

植田政府参考人 ケース・バイ・ケースのところもあるかとは存じますけれども、ほかに選択肢があって、自分でどういうふうにするか選べる場合ということでございますけれども、ほかの規定が、この四条の規定が、例えば退去妨害であるとか不退去であるとか、どうしようもないような状況の規定が並んでいるところに、この条項だけ、必要ということで、選択肢はあって断ることもできた、でも、勧められたので寄附をしましたというところの必要性、切迫性というのをどの程度まで捉える必要があるのかというところのバランスだと思いますけれども、そこは、必要不可欠だからといっても、完全に一つの選択肢しかないというところまで言っているわけではございませんが、そこは、実際の事案に応じた、どういう言い方をされた、それまでの経緯も含めた判断をされるということかと存じます。

牧原委員 今の解釈は多少幅が広くて、さっき私が申し上げたように、ぎりぎりに、何か、それ以外ないというよりは私は幅が広いように聞こえましたけれども、ここは当然、そういうふうに言えば、では必要でいいじゃないかという議論が本会議場でも出てくるので、いや、そうじゃなくて、やはり必要不可欠なんだというのは、さっきおっしゃっていたように、ほかのことを考えると、必要にすると広過ぎちゃうというようなことだと理解しましたので、改めて、そこはより明確にしていただいて、バランスをしっかり取っていただきたいな、こう思います。

 最後に、今回、非常に難しい議論で、与党、野党の協議の中でもなかなか最大の論点として残ってしまったという話を聞いているのが、いわゆる二世の方とか、被害者の方についてどうするかということだと思います。

 本人にも当然憲法上の財産権の保障がありますので、本人が完全にこうだと自由意思で言っているものを他人が取り消すというのは極めて難しいというのは、これは憲法の問題なので、それはそのとおりだ、こう思います。

 ここについて、この新法では、将来に発生する扶養義務等に係る定期金債権、婚姻費用とか、それから養育費等で、履行期が到来していなくても債権者代位権の特例として認めるというものを作りました。これは、民法を超えた部分というのは、まさにこの将来債権の部分を保全債権として、いわゆる第三者が債権者代位権を行使できるということで、これは今まで私も聞いたことがない画期的なアイデアだとは思うんです。

 他方で、養育費とかを考えますと、当然、二世の皆様の、被害者の話なんかをお聞きすると、要は、子供の頃に大変な思いをした、自分は給食だけが唯一のまともな食事だったとか、いろいろなお話があって、それを、例えば子供が、この難しい債権者代位権とかいうのがあって、自分たちの養育費も特例で認められるのでといって、例えば自分で弁護士事務所に行って、私はこれを行使したいなんてやるのはほぼあり得ない事態だ、こう思うんです。

 ですから、これは非常に厳しい制限の中で考えられた特例で画期的だとは思いますが、現実に行使を考えると、養育費のような形での場合に、未成年の子供たちが使うということには、よほど配慮をしたり制度を整えたりしなければ、私は現実的じゃないと思うんです。

 そういう意味で、未成年の子供についての救済方法について政府はどういうふうに考えているか、お答えください。

植田政府参考人 債権者代位権でございますけれども、御指摘のように、未成年者の子供たちが使うというのはなかなか現実的ではないというような御指摘もいただいておりますところ、未成年者を含め、家族らが債権者代位権の適切な行使によって被害回復が図れることにできるよう、全力で支援をしていくということが重要と考えています。

 法案の中では法テラスを位置づけておりますけれども、法テラスは、経済的に余裕のない方がトラブルに遭ったときに無料で法律相談を行うですとか、弁護士、司法書士費用等の立替えを行うといった民事法律扶助業務を担っておるということで、この点でも法テラスと関係機関が連携を果たして、まず相談体制の整備をしていくことが重要なのではないかというふうに考えております。

 それから、二世の方々の支援でございますけれども、関係省庁、連携してやっておりますけれども、児童相談所の現場職員に、児童虐待であるかどうかを判断する際に、保護者の信仰をもって消極的な対応を取らないようにでありますとか、学校においても、相談において宗教に関係することを理由に消極的な対応を取らないように、全国の教育委員会に対して周知するなどの対応を行っておるところでございます。

 なかなか相談する場所がなかったというお声も聞こえておりますので、是非、政府としては、このような取組を通じて、宗教二世の方、それからお子様、未成年の方々の悩みに寄り添った支援に万全を尽くしてまいりたいというふうに考えております。

牧原委員 いずれにしても、今後の執行が極めて大切でございますので、ここは政府、あるいは与野党を超えて、全力でみんなで取り組んでいくべきことだと思います。

 これで終わります。

稲田委員長 次に、國重徹さん。

國重委員 公明党の國重徹です。

 旧統一教会は、宗教的な脅しを伴った霊感商法、法外な金額の献金の強要などによる被害を積み重ねてきました。関係省庁による合同電話相談窓口、また法テラスにも多くの被害相談が寄せられています。このような現状等を踏まえ、被害救済、被害防止のための実効性ある対策をどう講じていくべきか。

 法律の効果というのは、原則として遡及はしません。つまり、既に生じているこの被害については、基本的には現行法で対応することになるわけです。だからこそ、相談支援の物的、人的体制の強化、また充実を図っていくことが大事になります。我が党もこれまで、予算委員会や、政府に対する提言、また本会議等でも、その旨、繰り返し訴えてまいりました。

 その上で、社会的に許容されない悪質な寄附の勧誘行為に対しては厳正に対処をしていく、新たな被害を防いで、被害を救済する、実効性ある法律を作ることが極めて重要になります。

 他方で、寄附行為やその勧誘行為というのは、精神的自由とも関わる行為であります。社会通念上正当な寄附勧誘や、それに対する寄附を不当に萎縮させるような、過剰な規制となってもいけません。

 法律を作る際には、その必要性、実効性とともに、許容性、つまり、新たな法律を作ることによって生じ得る副作用はどの程度なのか、他方利益との調整はきちんとできているのか、憲法上の問題はないのか、こういったことも冷静に見極めて、今と未来に責任の持てる、バランスの取れた法律に仕上げていく必要があります。

 今般の消費者契約法改正案と新法案は、現在の我が国の法体系の中で許され得る限り、被害防止、被害救済に資する実効的な法案とすべく、禁止行為、取消権、配慮義務、行政措置や刑事罰など、様々な規定を組み合わせたものとなっております。

 限られた時間になりますけれども、具体的に確認をさせていただきたいと思います。

 今般の改正法案、新法案の策定は、旧統一教会をめぐる霊感商法、法外な献金強要等の深刻な被害に端を発しております。そのようなことから、いわゆる霊感等の知見を用いた告知によってなされた契約や寄附の被害、これをどう救済していくのか、今回の法案の中でここに最大の焦点が当たっています。

 そこで、これを具体化した法文、改正法案の四条三項六号、新法案で言いますと四条六号について、具体的に確認をさせていただきます。

 霊感商法、またそれと同様の寄附勧誘の被害実態について見ますと、決してその都度その都度不安をあおっているわけではありません。しかし、現行法ではその都度不安をあおる行為が必要とされておりまして、これでは被害者を広く救済することはできません。

 そこで、改正法案、新法案では、霊感等による知見を用いた告知に関して、不安をあおった場合だけではなくて、不安を抱いていることに乗じた場合も取消しの対象とされ、適用範囲が広くなったと認識をしております。具体的に取消しの対象がどのように広がることになるのか、お伺いいたします。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる霊感等を用いたマインドコントロール下で生じる被害に対応するため、今般の消費者契約法改正法案及び新法案においては、霊感等の知見に基づく告知に関し、その場で不安をあおる場合のみならず、本人の精神的な状態が不安を抱いていることに乗じる場合をも取消権の対象としております。

 不安を抱いていることに乗じる行為には、例えば、当該法人等が過去に教義を教え込むなど、寄附の勧誘とは切り離して不安をあおった、そうやってあおった不安を個人がその後も抱き続けている場合にこれに乗じる行為や、また、当該法人等が直接引き起こした不安ではなくても、個人がそのような不安を抱いていることを例えば聞き出して、それを知りながらこれに乗じる行為といったことも含まれるというふうに考えております。

 不安を抱いていることに乗じる行為は、過去に不安をあおられたことによって生じた不安をその後も抱き続けている者に対して、そうと知りながら、これに乗じて、複数回にわたって寄附を勧誘する、こういった行為につきましては、個々の寄附を勧誘する時点におきまして、この時点において改めて不安をあおらなかったとしても、それぞれ、不安を抱いていることに乗じての要件を満たすことになります。

 このように、より広く取消権を行使できるものと考えております。

國重委員 ありがとうございました。

 るる御答弁いただきましたけれども、不安を抱いていることに乗じて、この要件が入ったことによって被害者がこれまで以上に広く救済されることになる、これは非常に重要な文言だというふうに思います。

 次に、必要不可欠の要件、先ほど来ございますけれども、必要不可欠の要件について、この必要不可欠では厳格過ぎて、必要だけを要件にすべきだという御意見がございます。

 しかし、必要不可欠だけではなくて必要だけを要件にしてしまいますと、政府答弁でも示されているとおり、例えば厄払い、また交通安全祈願などが、厄年、交通事故といったような不利益を回避するために祈願を勧めるものであって、そうした社会通念上許されている行為にも対象が広がってしまうという懸念があります。副作用の強い過剰な規制となってはいけません。

 一方で、必要不可欠の要件を余りにも形式的に解して、本来救われるべき被害者が救われないというようなことになってもいけません。

 必要不可欠の要件を判断するに当たっては、当該勧誘行為のその場、その時点におけるやり取りだけを見るんじゃなくて、それまでの様々な経緯も踏まえて法人等の言動を考慮、解釈をした際に、寄附は必要不可欠という趣旨を相手に告げたと評価できるかどうか、これを認定していくものと理解をしています。

 このような柔軟な解釈を行うという理解で間違いないかどうか、答弁を求めます。

植田政府参考人 御指摘のとおりでございまして、勧誘行為全体として、必要不可欠という言葉と同等程度の必要性や切迫性が示され、寄附をすることが不利益を回避するために必要不可欠である旨を相手に告げたと同じようなことを言われたと評価できる場合には、これに該当するということでございます。

國重委員 要は、その場、そのときだけの言動を見るのではなくて、全体的に考察をして、必要不可欠という趣旨を告げればいいという答弁と受け止めました。

 次に、改正法案四条三項、また、新法案四条柱書きにある「困惑」、これについても焦点が当たっておりますけれども、この困惑に関して確認をしていきます。

 まず、困惑の定義、困惑とはどのような精神状態をいうのか、お伺いします。

植田政府参考人 困惑でございますけれども、消費者契約法の逐条解説を御紹介したいと思いますけれども、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう、畏怖をも含む広い概念ということでございます。

國重委員 旧統一教会の事例で、最初は不安をあおられて困惑していたんだけれども、最後は使命感が芽生えて寄附するというような事例が国会でも度々取り上げられております。この点、一見、使命感に基づいて寄附を行っていたとしても、その裏には、それをしなければ不利益を免れることができないという不安感、困惑状態、こういったものが混在している場合もあると思われます。

 このような混在型の場合も、被害者救済の観点からは困惑の要件に当たるとすべきと考えますが、答弁を求めます。

植田政府参考人 被害事例とされるような場合にありましては、一見すると、使命感、責任感、義務感などから寄附を行ったように見えていたとしても、既に不安をあおられているなどして、その背後には、そのような責任感を果たさなければ不利益を回避することができないという不安感があって困惑している場合もあるということでございまして、このような場合には困惑に当たり得るということでございます。

國重委員 それでは、困惑というのが一切なくて、純粋な信仰心、宗教的信念に基づいて寄附をした場合には、これはもはや困惑の要件には当たらない、これで間違いないかどうか、お伺いします。

植田政府参考人 お答え申し上げます。

 勧誘を受けましても、困惑することが一切なく、純粋な使命感のみに基づいて寄附をした場合ということにつきましては、困惑をして寄附をした場合には当たらないというふうに考えております。

國重委員 困惑がないから困惑には当たらないと、ある意味当然の答弁をいただきました。

 これを踏まえて、次は河野大臣にお伺いいたします。

 そのような困惑が一切ない、純粋な信仰心、宗教的信念に基づく寄附、こういった寄附まで被害と決めつけて取消しの対象にした場合、債権者代位権によって第三者による取消しも可能となります。思想、良心の自由、信教の自由、幸福追求権、財産権などへの過剰、不当な介入となって、憲法上の問題も生じ得ると考えます。

 このような純粋な信仰心、宗教的信念に基づく寄附を取消しの対象にした場合、どのような問題が生じると河野大臣はお考えでしょうか。お伺いいたします。

河野国務大臣 適切な勧誘行為の下で、困惑が一切なく、純粋な信仰心などに基づいて行った寄附について、これまで取消し事由として第三者による取消しが行われるようにした場合には、信教の自由、財産権、幸福追求権といった憲法上の権利に対する過度な制約となりかねないというふうに思います。

 適切な勧誘行為の下で、個人が宗教的信念に基づくなど、その真意に基づいてする寄附については、意思表示に瑕疵がなく、取消しの対象とはならないというふうに考えます。

國重委員 適切な勧誘行為の下に、困惑が一切なくて、純粋な信仰心、宗教的信念に基づいて、また、真意に基づいて行う寄附、これには意思表示の瑕疵はない、だから取消しの対象にもならない。河野大臣、これもある意味当然のことです。適切な勧誘行為ですし、これもある意味当然なんですね。こんなものが取消しとかになったら、とんでもないことになります。

 一方で、困惑が一切なくて、純粋な信仰心、宗教的信念に基づいて寄附をした場合であったとしても、その状態が悪質、不当な働きかけによって生じたもので、自由な意思決定ができない状態でなされたもの、こういったものの場合には、その寄附を取消しの対象として救済すべき、こういった御意見もあります。その問題意識、全く理解できないわけではありません。

 ただ、そもそも困惑がない、純粋な信仰心、宗教的信念の発露としての自由な意思決定に基づく寄附と、困惑がない、純粋な信仰心、宗教的信念に基づきながらも自由な意思決定ができない状態での寄附、この二つの違い、線引きを果たして明確にできるのか。

 その上で、純粋な信仰心、宗教的信念に基づく行為が自由な意思決定ができない状態でなされているという特殊な状態、これを作出するような悪意ある不当な働きかけというものをどのように切り出して、明確に法律で規定をしていくのか。自由な意思決定ができない状態というこの結果に至る過程、行為、働きかけというのは様々ありまして、それらを行為規範として客観的かつ明確に切り出すということは、これは私は相当困難であろうと思います。

 悪質で不当な行為には、何らかの対処が必要です。他方で、その行為を明確に類型化できず、不明確で過剰な行為規範となる場合には、思想、良心の自由や信教の自由、幸福追求権に対する過剰、不当な介入となり得る、また、それらの権利に基づく寄附や勧誘行為にも過剰、不当な萎縮効果を与えてしまう、こういった懸念があります。

 以上のことからしますと、河野大臣、このような場合の悪質、不当な働きかけについては、取消し事由の拡大で対処するというよりは、むしろ、裁判実務で最も活用されている不法行為を柔軟に活用していく方が適切なんじゃないか。また、そのような不法行為の認定に関する裁判所の判断を容易にする、円滑化する、そういったために、新法ではどのような規定を設けているのか、併せてお伺いいたします。

河野国務大臣 取消権は意思表示をなかったことにする強い効果を有するものですから、予見可能性を確保して適切に機能するものとするために、可能な限りその要件を客観的また明確なものにするように規定をしなければならないと思います。

 他方、勧誘によってもたらされる結果、あるいは誤認させるおそれなどの幅広い概念を捉えることのできる配慮義務の規定は、裁判実務において、委員おっしゃったように、最も活用されている不法行為の認定を容易にするということで有益と考えます。

 複数の献金、寄附を繰り返し行っているケースなどについては、一回一回の意思表示の瑕疵を捉えて取消権を行使するというよりも、これらの一連の行為を一体的に捉えて、全体として社会的に許容し難いか否かといった観点から判断することも可能な、不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する方が適当とも考えられると思います。

 こうした点から、配慮義務や禁止行為規定が不法行為の認定を容易にすることが被害救済に有効であるというふうに考えられます。

 この新法案につきましては、取消権と寄附の勧誘に当たっての法人の配慮義務を規定するという二段構成を取ることによって、配慮義務に違反するような不当な寄附、勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定、それに基づく損害賠償請求を容易にする、そして被害救済の実効性を高める、そういうことになるだろうと期待をしているところでございます。

國重委員 先ほど言ったようなケースでは、取消し事由の拡大というよりも、不法行為、これを柔軟に活用していく方が望ましいというような答弁と受け止めました。

 更に言えば、配慮義務を法律上規定することで、不法行為の認定に必要な注意義務違反を認めるに当たって、当該配慮義務は法律上明確に義務として規定されていることになるんだというふうにして、不法行為の認定が容易になるということです。

 一方で、三条各号の配慮義務、この義務があることによって、社会通念上正当な寄附勧誘を行っているNPO法人などに対して、その活動の支障が生じるようなことがないようにすべきであります。これが支障となって寄附が集まらなくなったり、寄附文化の醸成が阻害されることになれば、かえって、苦しんでいる人、困っている人を助ける活動をしているNPO法人等の経済的基盤、これを揺るがす、損なうことになります。

 この点、例えば三号の「誤認させるおそれがないようにすること。」とは、積極的に誤認させることがなければよくて、NPO法人が被災者支援のために募った寄附が、被災地への物資の輸送費とか、あるいは人件費に使われた場合であったとしても、被災者支援のために必要なものである、こういうことから、三号の配慮義務違反には当たらないと考えております。そのような理解でいいか、答弁を求めます。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、積極的に誤認させるわけではないということであれば、例えば被災者の支援のために寄附を集めて必要経費として一部充てられたという場合には、誤認させるということには当たらないというふうに考えられます。

 ただ、なかなか一般の方々は必要経費、費用という部分についての概念の幅があったりするものですから、そこはしっかり説明もしていただければというふうに思います。

國重委員 実効性は極めて大事であります。

 他方で、社会通念上、正当な寄附勧誘が萎縮するようなことがあってもなりません。この点、政府においては、そのような萎縮が生じないよう、不安を抱かれないようしっかりと周知していくべきと考えますが、どうでしょうか。

黒田政府参考人 先ほど牧原委員からも御指摘のございました、この短期間で法律を作っているということもございます。寄附勧誘を行っている方々に不安を抱かれることがないように、この新しい法律の趣旨につきましてしっかりと周知していきたいと思っております。

國重委員 時間の関係で、二問ありましたけれども、一問にさせていただきます。

 配慮義務の中で、家族の生活の維持を困難にすることがないよう配慮する旨の規定も設けられているように、今、二世の方たちの救済、これも強く求められております。

 この二世を含めた家族の救済については、配慮義務のほか、五条で、借入れ等や居住用の建物、生活の維持に欠かせない事業用の資産を処分することなどによって寄附のための資金を調達することを要求することを禁止するなど、実質上の上限規制も設けられています。

 その上で、債権者代位権の特例を設けて、一定の場合には、将来債権についても家族が債権者代位権を行使できるようにしました。これについて、将来債権、ぎりぎりの中で認めたんだけれども、でも、被保全債権が扶養請求権だけだったら額が少ないじゃないか、被保全債権等の範囲を広げるべきだという御意見もございます。

 しかし、あくまでこれは特例として将来債権を認めたものでありまして、現行法でも、例えば、親が子供のカードを無断で作って、それを無断悪用して法人等に寄附をした場合には、それぞれの法律の要件を満たせば、子の親に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を被保全債権として債権者代位権を行使することが可能です。

 また、今回の新法案には、法人等の家族に対する配慮義務が設けられておりますので、家族の、法人等に対する不法行為の認定、これに基づく損害賠償請求も、これまでよりは容易になります。更に言えば、今回実質的な上限規制を設けたことで、これに反して家族の生活の維持が困難になったときには、配慮義務と併せて、その不法行為の認定も更に容易になるであろうと思っております。

 現行法の不法行為による損害賠償請求権等を被保全債権として債権者代位権を行使できること、新法により債権者代位権の利用可能性が広がっていること、さらに、今回、配慮義務や上限規制を設けたことによって不法行為の認定が容易になることなど、様々な仕組み、制度が導入されていて、これらが全体として相まって、寄附者のみならず家族の救済が可能になっていると考えますけれども、河野大臣の見解をお伺いいたします。

河野国務大臣 現行法でできることに加えまして、新法及び消費者契約法に基づく取消権あるいは禁止行為などを定める、また、被保全債権が扶養義務等に係る定期金債権である場合については、債権者の代位権の特例として、履行期が到来していなくともこの行使を可能といたしました。

 また、配慮義務を規定することにより、配慮義務に反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、不法行為の認定、それに基づく損害賠償が容易となりますし、また抑止効果にもつながるものだろうと思っております。

 また、新法案には行政処分を導入しておりますので、寄附者の家族から法人等による禁止行為の情報提供がなされ、勧告、命令あるいは法人名の公表が行われることによって、本人に対して脱会を働きかけやすくなり、寄附者本人が自身の被害に気づいて被害を回復する行動を起こす契機ともなるだろうと思っております。

 委員おっしゃるように、こうしたことが、全体として、勧誘された人あるいはその家族の救済の実効性を高めることになるだろうというふうに考えております。

國重委員 実効性あるこの法案を一日も早く成立をさせる、それとともに相談支援の体制も更に充実強化をさせていく、根本的なリテラシー教育、これもしっかりと進めていく、ありとあらゆる手を打って被害者を救済し、新たな被害を防止するための取組を更に力強く進めていっていただきたい、このことを最後に強くお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

稲田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、明七日水曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十一分散会


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