衆議院

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第2号 令和5年11月14日(火曜日)

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令和五年十一月十四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中根 一幸君

   理事 泉田 裕彦君 理事 大西 英男君

   理事 平  将明君 理事 中村 裕之君

   理事 野間  健君 理事 山岸 一生君

   理事 小野 泰輔君 理事 平林  晃君

      あべ 俊子君    畦元 将吾君

      石原 正敬君    今村 雅弘君

      上田 英俊君    江渡 聡徳君

      大岡 敏孝君    木村 次郎君

      佐々木 紀君    土井  亨君

      西田 昭二君    古川  康君

      細田 健一君    武藤 容治君

      宗清 皇一君    吉田 真次君

      阿部 知子君    逢坂 誠二君

      菅  直人君    田嶋  要君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      空本 誠喜君    竹内  譲君

      中野 洋昌君    浅野  哲君

      笠井  亮君

    …………………………………

   経済産業副大臣      岩田 和親君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 森下  泰君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            徳増 伸二君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     桜町 道雄君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           林  孝浩君

   政府参考人

   (水産庁増殖推進部長)  坂  康之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  湯本 啓市君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 岸川 仁和君

   政府参考人

   (環境省大臣官房環境保健部長)          神ノ田昌博君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          児嶋 洋平君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          大島 俊之君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  上坂  充君

   参考人

   (東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長)           山口 裕之君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      吉田はるみ君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三十一日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     柿沢 未途君

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     石原 正敬君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  柿沢 未途君     あべ 俊子君

  古川  康君     吉田 真次君

同日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     柿沢 未途君

  吉田 真次君     古川  康君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

中根委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 第百九十三回国会、原子力問題調査特別委員会理事会の決定により、本委員会の活動等について専門的見地から助言を求めるため、会員七名から成る衆議院原子力問題調査特別委員会アドバイザリー・ボードを設置いたしました。

 本アドバイザリー・ボードにつきましては、各会派の理事等の協議により、今国会においても設置することとなりました。

 以上、御報告申し上げます。

     ――――◇―――――

中根委員長 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、原子力規制委員会の活動状況について説明を聴取いたします。山中原子力規制委員会委員長。

山中政府特別補佐人 原子力規制委員会委員長の山中伸介でございます。

 衆議院原子力問題調査特別委員会における御審議に先立ちまして、原子力規制委員会の業務について御説明申し上げます。

 まず第一に、原子力施設等に係る規制の厳正かつ適切な実施について申し上げます。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ強化した規制基準への適合性審査については、これまでに申請がなされた二十七基の発電用原子炉のうち十七基に対して設置変更許可を行いました。また、申請がなされた二十一の核燃料施設等のうち、これまでに核燃料物質の加工施設、使用済燃料の再処理施設等について十一件の事業変更許可を、試験研究炉等について二件の設置変更承認及び七件の設置変更許可を行いました。

 発電用原子炉の運転期間延長については、これまでに申請がなされた八基のうち六基に対して許可を行いました。

 原子力施設の廃止措置計画については、これまでに発電用原子炉に対して計十八基の認可を、核燃料施設等に対して計九件の認可を行いました。

 また、平成二十九年に改正された原子炉等規制法に基づき、令和二年四月から原子力規制検査制度の運用を開始し、事業者のあらゆる安全活動について監視を行っております。

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用事案及び核物質防護設備の機能の一部喪失事案については、核物質防護に取り組む意識の醸成や多様な検知方法による生体認証の導入など、東京電力による改善措置の実施状況やその効果等について確認してまいりました。原子力規制委員会が追加検査で確認した課題のうち、残された課題について引き続き追加検査を進めるとともに、核物質防護への取組を監視、指導してまいります。

 原子力規制検査については、引き続き、事業者等とのコミュニケーションを図りつつ、検査制度の継続的改善に努めてまいります。

 また、これら以外にも、原子力施設等で事故トラブルが発生した場合には、速やかな状況確認を通じて、今後とも適切に対応してまいります。

 また、規制基準については、安全研究等により得られた最新の科学的、技術的知見、新規制基準に係る適合性審査の実績等を踏まえて、継続的に改善を図っております。

 以上のとおり、原子力施設等に関する規制が適切に実施できるよう取り組んでおります。

 第二に、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視等について申し上げます。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や汚染水対策の実施について、規制当局としての立場から、安全かつ着実に廃炉作業が進むよう、積極的な監視、指導を行うとともに、関係省庁等とも連携し、環境放射線モニタリングの実施とその結果の公表を行っております。

 令和三年四月十三日に政府方針が決定された多核種除去設備等処理水、いわゆるALPS処理水の海洋放出については、東京電力から申請されたALPS処理水の海洋放出に係る二回の実施計画の変更認可申請の審査により、規制基準を満たし、かつ政府方針にのっとったものであることを確認して認可し、この実施計画に沿って海洋放出設備の設置とその運用準備が適切になされていることを検査で確認いたしました。その後、本年八月から海洋放出が開始され、継続的に東京電力の活動を検査で確認するとともに、IAEAのレビューやモニタリングなどにより、透明性、信頼性の維持にも努めてまいります。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故調査については、放射性物質の移動メカニズム、溶融炉心の挙動等の調査、分析に関する検討内容について、科学的、技術的意見募集の結果を踏まえて、本年三月に中間的な取りまとめを行いました。今後も調査、分析を行い、それにより得られた知見を規制に活用することも含め、取り組んでまいります。

 第三に、原子力災害対策及び放射線モニタリングの充実並びに保障措置について申し上げます。

 原子力規制委員会では、原子力災害対策指針を踏まえて、本年五月三十一日に甲状腺被ばく線量モニタリング実施マニュアルを制定し、立地道府県等による当該モニタリングの実施計画の策定を円滑かつ適切に進められるようにいたしました。また、本年十月十八日に原子力災害対策指針を改正し、沸騰水型軽水炉の特定重大事故等対処施設等を考慮した緊急時活動レベルに見直しをいたしました。引き続き原子力災害対策の充実を図ってまいります。

 放射線モニタリングについては、原子力規制事務所の体制整備及び関係道府県への技術的支援等により、緊急時モニタリング体制の充実を図っております。

 また、国際約束に基づく国内の原子力施設に対する厳格な保障措置の適用により、国内全ての核物質が平和的活動にとどまっているとの評価を継続してIAEAより得ております。

 最後に、原子力利用における安全対策の一層の強化のための制度の見直しについて申し上げます。

 今年の通常国会で成立いたしました原子炉等規制法の一部改正により創設された長期施設管理計画の認可制度については、その後、必要な政令、規則等の制定や改正を経て、本年十月一日に一部施行され、新制度による手続の一部が開始されています。今後、事業者からの認可申請を受けて、その審査を厳正に進めてまいります。

 以上、原子力規制委員会の業務について御説明いたしました。

 私自身、本年九月二十六日で、原子力規制委員会委員長の拝命から一年を迎えました。この一年間、福島を決して忘れないという強い気持ちを持ち続け、独立性、透明性を堅持しつつ、厳正な原子力規制の遂行に取り組んでまいりました。今後も引き続き、特に、規制に関する情報発信と対話、現場の設備や運用実態の把握、規制に関わる人材育成などに重きを置きながら、原子力規制委員会に与えられた職責を踏まえ、原子力利用の安全が確実に担保されるよう、また、我が国の原子力規制に対する信頼が回復されるよう、今後とも努力してまいります。何とぞよろしくお願い申し上げます。

 先ほど、私の発言の中で、運転期間延長について許可を行ったと申し上げましたところは、認可でございましたので、訂正をさせていただきます。

中根委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中根委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長上坂充君及び東京電力ホールディングス株式会社代表執行役副社長山口裕之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官森下泰君、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官徳増伸二君、復興庁統括官桜町道雄君、文部科学省大臣官房審議官林孝浩君、水産庁増殖推進部長坂康之君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官湯本啓市君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長久米孝君、国土交通省道路局次長岸川仁和君、環境省大臣官房環境保健部長神ノ田昌博君、原子力規制庁長官官房審議官児嶋洋平君及び原子力規制庁原子力規制部長大島俊之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中根委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中根委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。畦元将吾君。

畦元委員 お願いします。

 原子力問題調査委員会の質問をさせていただく機会を与えていただき、ありがとうございます。

 私は、広島生まれで、原爆二世で、加えて診療放射線技師であり、その関係もあり、医療分野の放射線と身近な関係にありました。今回の質問の中に放射線医療に関する質問も含まれておりますけれども、よろしくお願いいたします。

 先ほど、山中原子力規制委員会委員長から、原子力の災害対策の充実を図るという言葉がありましたが、その辺に関することで質問をまずさせていただきます。

 日本国内の原子力の規制は、国際水準と比べて、安全基準は最高位とお聞きしております。規制委員会として、国際基準と日本を比べて具体的にどの部分において安全基準がどれくらい高いのか、教えていただければ幸いです。また、更に今後どのように改善していくのか、先ほど更なる改善をしていくとおっしゃいましたけれども、具体的なことをもし教えていただければ幸いです。お願いいたします。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて、IAEAや諸外国の規制基準も確認をいたしながら、我が国の自然条件の厳しさ等も勘案して新規制基準を策定をいたしました。

 その上で、考え得る限りの対策を求めて安全の確保に努めても、絶対安全ということは申し上げられません。すなわち、新規制基準への適合性は、リスクがゼロであるということを保証するものではございません。

 このような認識の下で、事業者と規制当局の双方が、残されたリスクを低減させる活動を継続して取り組んでいくことが重要であると考えております。

 このため、原子力規制委員会としては、最新の科学的、技術的な知見を継続的に収集しており、必要な場合には、最新の知見を規制に取り入れ、それを既設炉にも適用するバックフィット制度を導入するなど、継続的な安全性向上に取り組んでいるところでございます。

畦元委員 ありがとうございます。

 ちょっと具体的なことを聞いてもよろしいでしょうか。例えば、東日本大震災レベルの地震が起きたときは、どのような対策ができると考えてよろしいでしょうか。

山中政府特別補佐人 策定いたしました新しい新規制基準の下では、東日本大震災のときに発生いたしましたような地震や津波等に対する基準を強化するとともに、それでもなお事故は起きるものと考えまして、炉心損傷の防止、格納容器の破損の防止、放射性物質の拡散抑制としての対策や、大規模損壊による影響を緩和するための手段を要求しております。

畦元委員 ありがとうございます。

 もう一つ聞いてもよろしいでしょうか。テロなどで、ニューヨークであった九・一一のような旅客機が墜落したときのことをいうんですけれども、そのとき、どのような対策があるか、教えてください。

山中政府特別補佐人 新しい基準の中では、さらに、故意による大型航空機の衝突やその他のテロリズムに対処するため、炉心や格納容器の損傷を緩和するための可搬型設備に加えまして、信頼性を更に向上させるためのバックアップ対策としての特定重大事故等対処施設の設置を求めております。

畦元委員 ありがとうございました。

 今現在、日本の原子力技術は世界トップクラスだと思います。幾つかの視察も行かせてもらいましたけれども、常陽とかJRR3に。もちろん、規制が必要なことは分かります。安全を厳守した範囲で、過剰な規制で日本の技術者、技術、産業の更なる成長にブレーキがかかることのない環境づくりをすることも重要だと思っております。過剰な規制で恐怖心をあおり過ぎたり、風評被害が増長しない対策も必要ではないかと思っております。

 また、現在、原子力開発に必要な化学者が大変不足していると聞いております。一年前になりますけれども、常陽とかJRR3に行ったときに、化学者が、一人の方が二つのサイトに行ったり来たりするようなこともあるということを聞きました。

 また、大学の方も、私もちょっと大学の客員教授をやっているので聞いてみたんですが、化学関係の学部が減ってきているということも聞いています。理由を聞きましたら、就職がないから化学を避けることが増えてきたという方とか、優秀な方は海外に行くということも考えられますので、その辺りをすごく懸念しております。

 また、日本の強い原子力の技術は、国内だけでなく海外でも広げていき、ある意味、貿易黒字に貢献できる分野だとは思っております。日本の原子力の技術はすばらしいと思っております。

 規制と新規開発、経済とのバランスも考えた規制も必要と考えております。思いもしない新規開発が、更なる安全につながるということもあり得ると思います。その辺りのところを規制庁としてはどのようにお考えなのか、教えていただければ幸いです。

山中政府特別補佐人 御指摘いただきましたように、原子力規制においても、その人材育成というのは非常に重要であるというふうに私自身認識しております。特に、物理学者のみならず、化学者の不足というのは原子力分野で非常に進行しているというふうに考えておりまして、原子力規制の観点から、その人材育成に対して、数年前から支援を大学に対してしているところでございます。

 また、新しい技術的、科学的な知見の収集についても積極的に頻度高く行っておりまして、新しい知見が得られた場合には、すぐさま規制に取り入れるような工夫を行っております。また、自ら安全研究を実施することによって新しい知見を得るとともに、人材育成に対しても、この研究を通じて促進を図っているところでございます。

畦元委員 ありがとうございました。

 化学者は本当に少ないみたいなので、特に、私も放射線をやっていますので、化学はかなり重要な、核分裂とか必要になってくるので、是非教育をよろしくお願いいたします。

 次に、原子力発電所の再開などの審査において、私が聞いたのは一年ちょっと前なんですけれども、審査の進捗が非常に遅いという話を聞いておりました。今既にもう再開されていますけれども、その辺りのところなんですが。よく聞いたのが、どうしたらよいのか分からないとか、言われたとおりにしているんだけれどもなかなか先に進めないとかの意見も聞きました。どこに問題があったのか、もし分析されていたら教えてほしいんです。

 合理的な経済のバランスも考えますと、人員的な問題なら人手を増やすとか、審査シートを合理的にするとか、第一チェックにAIを使うとか、もちろん人の二重チェックは必要だと思っておりますけれども、何かそういうふうな対策なんかはあるんでしょうか。どこが問題で、対策があれば教えてください。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力の安全の追求に妥協は許されないのが審査の大前提でございます。このため、審査では、規制側と事業者側双方が納得のいくまで議論することが不可欠であるというふうに考えております。

 その上で、審査プロセスの改善につきましては、事業者との意見交換等を行い、継続的な改善に努めているところでございます。

 審査プロセスの改善の具体的な例といたしましては、審査会合の最後に指摘事項を双方で確認し、共通理解を得る、事業者の地質等の調査方法や実施内容をあらかじめ確認し、早い段階から指摘を行う、審査体制の充実のため、審査官の増員や研修、育成等を行うなどの取組を行っております。

 引き続き、審査プロセスの改善を継続的に行ってまいりたいというふうに考えておりますし、公開の会合の場で、審査に係る論点等について、事業者等とのコミュニケーションを図りつつ、厳正な審査を行ってまいります。

畦元委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 あと、多分、コミュニケーション不足じゃないかという感じはよく感じたんですけれども、お話を伺ったとき。今後とも、コミュニケーションをよろしくお願いいたします。

 次に、ALPS水についてお尋ねいたします。

 福島のALPS水の放射線線量は、諸外国で放水しているものと比べてトリチウム濃度など少ないと聞いていますが、実際に比較してどれぐらい違うのか、再度確認のために教えてください。資料一をお配りしていますけれども、これに対して説明をいただけると幸いでございます。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 世界の多くの原子力関連施設におきまして、国際的な考えに基づき各国が定めた規制基準を踏まえた形で、トリチウムを含む液体廃棄物を海洋等に放出しているというふうに承知しております。

 東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の海洋放出に際しましては、トリチウムの年間放出量を二十二兆ベクレル未満というふうにしております。

 一方で、お配りいただいた資料に記載されておりますように、例えば、二〇二一年の実績で申し上げると、中国の秦山という原子力発電所では年間二百十八兆ベクレル、韓国の月城という原子力発電所では年間七十一兆ベクレルのトリチウムを液体廃棄物として排出してございます。

 御指摘のとおり、ALPS処理水の海洋放出によるトリチウムの排出量は、こうした海外の原子力施設と比べましても、約三分の一から十分の一と低い水準であると認識しております。

畦元委員 ありがとうございます。

 今のように聞くと、ああ、そうなんだなと思えるんですが、これから国民にどのようにALPS水の説明をされるのか。今もされているのは分かっているんですけれども、また更に不安が残っていることもあるので、さらに、どのようにしていくか、検討しているか、何かあれば教えていただきたい。

 今のように、比較なども国民は分かりやすいと思いますし、ネット広告とかいろいろありますけれども、そういうものを使ってできるだけ国民にこの状況、事実を伝えてほしいと思うんですが、何か意見がありましたら、教えてください。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、二〇二一年の四月の基本方針決定以降、様々な形でALPS処理水に関する説明を行ってまいりました。

 地元漁業者を始めとする方々への千五百回を上回る説明会、意見交換ですとか、全国レベルで、消費者の皆様に対する情報発信として、新聞広告、ウェブ広告、あるいはリーフレット、解説動画といったものの配信も行ってまいったところでございます。西村経済大臣にも、御自身で、安全性についての御説明ということをウェブ動画やSNSを通じて行っていただいております。引き続き、こうした取組は継続してまいります。

 こうした情報発信を行うに当たりましては、御指摘いただいたとおり、各国の原子力施設との比較というのも分かりやすいコンテンツの一つだというふうに考えておりまして、実際、SNS等でこういった情報、データをシェアいただけるように、世界の原子力施設のトリチウム年間処分量といったような一枚の画像を作りまして、こういったコンテンツをSNSでやっていただくというようなことを進めてきておりますが、引き続き、こうした取組を継続してまいりたいと考えております。

 また、IAEAの包括報告書が七月に取りまとめられましたけれども、この内容も、しっかりと国際安全基準に合致し、人及び環境に対して無視できるほどの放射線影響だという結論になっておりますので、こうした報告書の内容も丁寧にしっかりと説明して、情報発信していきたいというふうに思っております。

 具体的には、経産省のウェブサイトに新しく特設の解説ページというものを設けておりまして、ウェブ広告でリンクを張る形で、より多くの方に御覧いただけるような工夫もしてございます。

 加えまして、関係機関が連携して、放出後は海水や魚のトリチウム濃度というのを迅速に分析をして、これまで計画どおりに放出できているということ、安全であるということも発信してきております。

 こういった取組を引き続き継続してまいりたいというふうに考えております。

畦元委員 ありがとうございました。

 ちょっと医療の方に入っていきますけれども、原子炉やサイクロトロンで生成する医療用RIというのがあります。割と知られていないんですが、研究原子炉なんかで放射線で治療薬を作ったりとか、今話題になっていますけれども、アクチニウム、前立腺がんの全身転移が治るようなものを作っています。

 研究原子炉で作る放射線同位元素、RIについてお伺いしますけれども、日本の医療放射線技術は世界でもトップクラスの技術です。また、医療に使うものなので命に関わりますし、前立腺がんの全身転移などは助からないと思ったんですが、これを使うことによって助かったという実例の論文もたくさん出ております。

 今後、認知症、アルツハイマーの治療薬であるレカネマブ投与の可否の診断に使うアミロイドPETのRIとか、骨転移のRIなども不可欠で使っております。また、がん治療としても、原子炉で作るアクチニウムが広がっていくことも予測されます。がん治療として、遺伝子治療、ロボット治療を含む手術とともに、RI治療も今後広がっていくと言われております。

 RIの特徴としては、医療RIは、最近では半減期は数秒から数分以内が大半です。ですから、一日、二日たてばほとんど水に変わってくるような形になるんですけれども、他の放射線物質と比べると圧倒的に、桁違いに短いのが特徴です。

 医療に使うRI線源は、ガンマ線、エックス線だけでなく、目的によってアルファ、ベータ、電子線などを使いまして、例えば、前立腺がんに使う線源に関しては破壊力の高いアルファ線を出すアクチニウムを使うんですけれども、アルファ線は紙の数枚あれば遮蔽できると言われておりまして、逆に、アルファ線の薬を投与していても、普通に歩いていても皮膚で、外には出ないというようなことも言われております。そういうこともありますので、仕事をしながら治療ができる可能性があるという形で結構注目されております。

 がん治療に使うアクチニウムは、アジア圏内では、ロシアと中国と日本の高速炉、現在、常陽でしか作れないということになっておりまして、インドもあるかないかはありますが、確認はできておりません。

 放射線管理区域から血管造影室、要は、放射線物質を血管造影室に持っていって直接がんにぶつけようというような研究なんかも進んでいるところもあります。がんセンター、東大なんかもこれをやりたいということを言っております。

 ここで質問です。ここから質問になりますが、それぞれの線質やエネルギー、半減期に考慮した放射線、RIの規制が必要ではないかと思います。これから多くのRIが出てくると思いますけれども、RIごとに規制をつくるのでは間に合わないと思います。この病気のRIにはこういう規制、この病気のRIにはこの規制というと、RIはどんどん出てきますから、今、一つ言うと、アミロイドベータがありますけれども、タウのことを作ろうとしていますので、もう間に合わないと思いますので、ある意味、線質やエネルギー、半減期を考慮したRIの規制なんかも必要ではないかと思います。

 そういうことで、この辺りはどう考えているのか、教えていただければ幸いです。

児嶋政府参考人 お答えいたします。

 まず、放射性同位元素、いわゆるRIにつきましては、原則として放射性同位元素等規制法により規制がされております。

 その放射性同位元素等規制法におきましては、使用する核種の種類ごとに線量を評価し、施設に遮蔽物を設けさせることとするなど、放射性同位元素の性質に応じた規制を行っております。

 例えば、サイクロトロンで生成され、臨床現場で用いられている、いわゆるPET四核種、具体的には炭素11、窒素13、酸素15、フッ素18につきましては、短半減期の核種として七日間の保管後には通常の廃棄物として扱えるようにするなど、個別の放射性同位元素の性質を考慮する合理的な規制を行っているところであります。

 また、医療用の放射性同位元素につきましては、昨年、未承認放射性医薬品等について、放射性同位元素等規制法と医療法の二重規制を解消する制度改正を行いました。

 その改正により、医療法等において放射性同位元素等規制法による規制と同等の規制が整備された場合には、二重規制とならないよう、放射性同位元素等規制法の適用を、医療用の放射性同位元素について、迅速かつ適切に外すことができるようになっております。

 医療用の放射性同位元素等の利用につきましては、現行の放射性同位元素等規制法による規制により支障は生じないと考えておりますが、引き続き、医療分野における放射性同位元素の利用の進展などを踏まえつつ、医療用の放射性同位元素が診断、治療等に活用されるように、規制の在り方を鋭意検討してまいります。

畦元委員 ありがとうございます。

 ただ、先ほど申しましたように、これからRIがすごい出てくると思うんですね、世界各国から。そうなってくると、それに適用が割と迅速にできるように、薬はあるけれども患者さんに使えないとなると、それは悲しい出来事なので、そこはできるだけよろしくお願いします。

 時間になりましたので、これで終わりますけれども、ありがとうございました。よろしくお願いします。

中根委員長 次に、木村次郎君。

木村委員 おはようございます。

 本委員会は、私自身は初めての所属となりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただくわけでございますが、今更申すまでもございませんが、私の地元、青森県下北半島は、原発あるいは核燃料サイクル施設を抱える、いわば日本のエネルギー政策の大きな柱を担っていると言っても過言ではないと私は考えております。

 また、私は、六年前までは一介の青森県職員だったわけでございます。この間、県政の立場から様々な場面を見てきてまいりました。また、遡れば、その前、学生時代、高校時代からいろいろな動きがあって今に至っているのかなというふうにも感じております。今日は、そうしたことにも思いを掘り起こしながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、高レベル放射性廃棄物に関わる質問についてでございます。

 青森県が、六ケ所村、また、当時の日本原燃サービス株式会社、日本原燃産業株式会社と電気事業連合会立会いの下に、原子燃料サイクル施設の立地への協力に関する基本協定、これを締結してから既に三十八年余が経過をいたしました。

 この間、いろいろな動きがあったわけでございますが、平成七年には、青森県を最終処分地にはしないということ、この確約を、四月の二十四日には電気事業者、電事連、そしてまた電力十社、そして日本原燃から確約の文書をいただいております。そして、その翌日、四月の二十五日には、同様に、当時の科学技術庁長官から確約文書をいただいている、こういった歴史的な史実があるわけでございます。その後も歴代の知事が、内閣が替わったり、節目節目で同様の確認をしてきております。

 今後の最終処分地候補地の見通しについて伺うわけでございますが、現時点で北海道の二つの地点、すなわち寿都町と神恵内村のみで、ここ三年間は新たな調査地点が出ていないということを、ある意味、大変私は憂慮いたしておるわけでございます。

 そこで、今後の候補地の見通しについてお伺いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 高レベル放射性廃棄物の問題は、原子力に対する国民の皆様の懸念の一つでありまして、将来世代に負担を先送りしないよう、我々の世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要と認識しております。

 国としましては、地域の声を踏まえながら、文献調査の実施地域拡大を目指し、全国で必要な情報提供等に取り組んでいく考えでございます。例えば、本年四月に特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針を改定いたしまして、全国の自治体を個別訪問する全国行脚を開始するなど、取組を強化してきているところでございます。

 是非一つでも多くの自治体が関心を持っていただけるよう、引き続き、最終処分の実現に向け、政府一丸となって、かつ政府の責任として取り組んでまいりたいと考えてございます。

木村委員 今いただいた御答弁、努力は多とするところでございますが、いずれにしても、少しでも多くの自治体が名のりを上げる、また、候補地が北海道とか一定のエリアに偏ることなく、日本全体の中でそれなりの数が出てくるということが私は大事なのではないかと、また併せて期待をしたいところでございます。

 それと、候補地をいろいろ選定、ピックアップしていく、そういう過程の中で、途中の過程において、比田勝尚喜対馬市長が最終的に文献調査の受入れを拒否した、断ったという経緯が先般九月の二十七日にございました。このときに市長がおっしゃっていたのは、市民の分断が起こっている、また風評被害への懸念などをそのお断り、拒否したという理由として挙げておられます。

 青森県の歴史を振り返りますと、平成に入った頃、平成に入った元年というのは、参議院の選挙があって、当時、社会党の土井党首が山が動いたとかといって、そういう自民党が大敗した年でありました。当時は、リクルートとか消費税とかいろいろな問題があって、我々自民党が大敗したわけでございますが、このときは、青森県にはもう一つの嵐、いわゆる反核燃料の、反核燃の嵐が大変なすさまじい勢いで吹いたわけでございます。むしろ、六ケ所村がある太平洋側地区よりは、私の地元の日本海側、津軽地方の方が大変な反核燃の嵐が吹き荒れたということで、私も大学時代、大変な、今も記憶にしておるところでございます。

 そこで、お伺いいたします。

 こういうふうに候補地を選定していく上で、今申し上げた対馬市のように、地域の住民においての対立あるいは分断が起こる、起こり得るということについてどのように認識され、また、こういったことに対してどのように解決策も含めて考えておられるのかをお伺いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 過去半世紀以上にわたり原子力を利用し、使用済燃料が既に存在している以上、高レベル放射性廃棄物の最終処分は、必ず解決しなければならない重要な課題であると認識しております。

 その上で、御指摘のように、対馬市長が文献調査を受け入れられない理由として市民の合意形成の不十分さを挙げられましたように、最終処分に関しては、放射性廃棄物の移動やボーリング調査を一切行わない文献調査であっても、様々な御意見があるものというふうに認識をしております。

 最終処分地の選定は、地域の皆様の理解なくしては進めることができないものでございますので、国としては、地域において、最終処分事業において賛否の偏りのない議論を丁寧に重ねていくということが重要であるというふうに考えてございます。

 例えば、全国では、少人数で双方向のやり取りを重視した対話型説明会をこれまでに百八十回以上開催してきております。また、文献調査を実施中の、先ほど御紹介いただきました二町村では、最終処分事業などの議論を深めていただく対話の場、これを三十回以上開催してきておりますほか、専門家によるシンポジウムや、延べ四十回以上の施設見学会など、地域の理解を深める多様な取組が進められてきているところでございます。

 引き続き、様々な御意見をお持ちの方々がおられるという前提で、それぞれの声にしっかりと向き合い、丁寧にコミュニケーションを取りながら、最終処分に対する理解を深めていただけるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。

木村委員 ありがとうございます。

 次に、原子力発電事業についてお伺いをいたしたいと思います。

 フロントエンド、バックエンドという大きく二つに分けて議論をするという場合に、まず、フロントエンドの課題についてでございます。

 電気事業収益のボラティリティーが想像以上に高まって、長期的に安定した収益を見通すことがなかなか困難になってきている実態がございます。また、安全対策工事費総額の予見性の低下、あるいは、後年度においてのなかなか予見が困難なバックフィットの懸念、こういったことがあるわけでございます。また一方で、訴訟リスクの高まり、こういったところも出てきているんじゃないかなと私は認識をいたしております。

 また、バックエンドに目をやった場合に、廃炉の費用、再処理事業費、また最終処分事業等について、なかなか現時点でこの費用総額を見通すことが困難になってきている状況にあろうかと思います。廃炉が進んで、新増設、リプレースが円滑に進まない場合には、後から開発した原子力電源を保有する事業者に過度な負担がかかってくる、集中する、こういった懸念もあろうかと思います。

 こうしたところを踏まえながら、フロントエンド、バックエンドにおける課題への対処から、原子力発電事業者の視点から見れば不透明性が高まっているというふうに私は考えております。そこで、これについての現状の認識と今後の方針、対応についてお伺いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力を含みます発電事業は、電力自由化により競争が進展した現在の環境下におきましては、投資回収の予見可能性が低下している状況であるというふうに認識をしてございます。こうした中で、安定供給と脱炭素を両立できる原子力発電につきまして、中長期的な予見性を確保し、安定的に事業を行うことができる事業環境を整備することは極めて重要な課題であるというふうに考えております。

 国といたしましては、さきの国会で改正されました原子力基本法におきまして、国が講ずるべき基本的施策として、安全対策投資等を行うことができる事業環境整備を明記いたしまして、現在、必要な制度整備を進めているところであります。

 例えば、廃炉に係る拠出金の整備など、廃炉や再処理等のバックエンド事業を着実に行っていくための制度の整備でありますとか、事業の予見性向上に資する発電事業者と小売事業者との長期卸供給契約の促進、再エネ等と同様に、既設原発も含めて脱炭素電源の新規投資を促すための長期脱炭素電源オークションの対象の見直しなどを進めております。

 こうした取組を通じまして、政府として、安全性の確保を大前提に必要な規模の原子力を持続的に活用することで、安定供給と脱炭素の両立に向け、責任を持って取り組んでまいりたいと考えてございます。

木村委員 ありがとうございます。

 いろいろな課題が多岐にわたろうかと思いますが、原発の事業者等の視点にも立ちながら、総合的に、様々な、しかも中長期的な課題を捉えながら対応していくということを御期待をしたいと思います。

 次に、地元、私の選挙区でないんですが、先ほど申し上げました青森県下北半島は、いろいろな原発、サイクル施設が集中立地しておるわけでございます。御案内のとおり、建設中断あるいは稼働が止まっているというところもあるわけでございます。

 こうしたところにおいて、原発やサイクル施設なども含めて、この下北半島においては、ハード面で、いざというとき防災道路として、そしてまた万が一のときには避難道路として、主要な道路の整備が大変望まれておるところでございます。

 特に、国道の二百七十九号、これは一昨年の八月の豪雨で、むつ市と風間浦の境界の辺りが特に橋が流されたりとか大変な甚大な被害を受けたところでございまして、今の現状ではなかなか抜本的には解決が難しい、効果が得られないということであれば、別線でのバイパスの整備ということが地元も強い要望があるわけでございます。

 私も、昨年の八月に、国交省の政務官の最後の公務として、現場の復旧状況を視察をしてまいりました。午後には、南北に走る下北縦貫道路、今整備中でございますが、これに対しての整備も、地元の熱い思いを受け止めさせていただいたところでございます。

 そこで、今申し上げました下北半島縦貫道路、また国道二百七十九号風間浦バイパスの整備状況、そしてまた今後の見通しについてお伺いいたします。

岸川政府参考人 お答えいたします。

 下北半島縦貫道路は、下北半島の地域振興に加え、災害時における救助、救援活動の支援など、国土強靱化にも資する高規格道路であります。国道二百七十九号とともに、下北半島地域を貫く重要な幹線道路と認識しております。

 下北半島縦貫道路につきましては、延長七十キロのうち約二十九キロが開通して、残りの区間は国土交通省と青森県で事業を実施しております。このうち、一部区間、一部区間と申しますと、むつ東通インターチェンジから、仮称でございますが、むつ奥内インターチェンジ間、そして、仮称横浜インターチェンジから横浜吹越インターチェンジ間、こちらにつきましては令和七年度の開通を目指しております。

 また、国道二百七十九号につきましては、青森県において風間浦バイパスの概略ルートの検討が行われ、先月、十月に概略計画が決定し、今後、ルートの具体化に向けて調査を進めていくと聞いております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、下北半島縦貫道路の早期整備、それから国道二百七十九号風間浦バイパスの早期具体化に向けて、青森県と連携しながら取り組んでまいります。

木村委員 ありがとうございます。

 最後の質問になります。

 去る八月二十九日に、青森県の要請を受けて核燃料サイクル協議会の場で西村経産大臣の方から、仮称ではございますが、エネルギー共創、共生会議の設置の要請を受けまして西村大臣から、早期に設置をしていきたいというような発言があったところでございます。

 御案内のとおり、下北半島は、先ほど申し上げたとおり、原発が稼働停止、建設中断を余儀なくされております。また、サイクル施設の中核を担う再処理工場、この完成が遅れを生じているということ、今まで何度もこの計画の見直し、延期が行われてきました。もちろん、規制委員会のいろいろな、様々なやり取りがあって今に至っているわけでございます。

 先ほど申し上げましたハード面、道路整備等々、また、自治体では、特に、様々な切り口での、直接のサイクルあるいは原発、そういった事業だけでなくて、やはり地域経済に及ぼす影響というのは大変大きいものがあるわけでございます。それだけに、自治体、市町村、また地域住民の皆様方が寄せている期待も大変大きいものがあるわけでございます。

 したがいまして、私自身は、新たに設置されるという期待されておりますこの会議の場において、幅広い切り口から議論が展開されるということを私は期待しておるわけでございます。

 そこで、お伺いします。

 この仮称エネルギー共創、共生会議においては、どのようなことを検討、協議し、どのようなスタンスで臨まれるのか。前段については、差し支えのない範囲で、まだ公式に、正式にスケジュールも発表されていないと思いますので、なかなか詳細なお答えは難しいのかもしれませんが、差し支えのない範囲で、また、後段については、副大臣の思いや決意も交えて是非お伺いいたしたいと思います。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 本年八月の核燃料サイクル協議会におきまして、宮下青森県知事より、核燃料サイクル施設や原子力発電所などが集中をして立地する同県の地域課題の解決に向けて、地域と原子力施設が共生をしていく将来像を考える会議体を国が主催する形で早期に設置するよう要請をいただいたところでございます。

 これを受けまして、設置する会議体につきましては、立地地域の各自治体が有する将来ビジョンを丁寧に伺いながら、国や立地自治体、事業者等が一体となり、二十年から三十年後を見据えた立地地域等の将来像とそれに向けた取組を検討していく場とすることを想定をし、関係者間で調整を進めているところでございます。

 青森県そして各立地自治体におかれましては、長年にわたり、国の原子力、核燃料サイクル政策に多大な貢献をいただいているところでもありますし、また一方で、そういった地域特有の課題にも向き合っていただいているところでございます。

 こういった点に思いを致しながら、国として、まだ仮称ではございますけれども、共創、共生というふうな言葉にふさわしい形の会議体を設置をして、そして地元の御要望をしっかり受け止め、事業者と一体となって課題解決に向けた取組を進めていきたいと考えております。

木村委員 ありがとうございます。

 この一帯、地域は、六ケ所村を中心に、むつ小川原開発地区というような言い方をしております。新むつ小川原開発計画というものがあります。直近のこの計画は、二〇〇七年、平成十九年に策定して、六月に閣議口頭了解まで得て作られた計画でございます。実は、私が県職員時代に、直接この計画の策定に携わっておりました。

 また、土地をいろいろな、分譲とかをさばく新むつ小川原株式会社というものもありまして、それ以前の計画では、残念ながら破綻して、立ち上げ直した経緯がございます。そのときは、江渡聡徳委員が一回生のときに大変な御苦労をされて、今の会社が設立されたという経緯もございます。この計画は、様々な、我が国にとっても、また国際社会としても、環境、エネルギー、技術の分野で大変な期待ができる、そういったことがうたわれておるわけでございます。

 直接の所管は国土交通省になりますが、是非、経産省、またその他省庁も含めて、国全体がこうしたむつ小川原開発計画に対して思いを致しながら今後も取り組んでいただくことをお願いを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

中根委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。よろしくお願いいたします。

 本日、まず、審査会合の効率化について質問をしていきたいと思います。

 今年の通常国会で成立したGX電源法に沿って、今後は三十年超の原子炉について長期施設管理計画等の審査を原子力規制委員会が行うこととなりましたが、国内には該当する原子炉が最大二十一基存在しており、その作業量は相当量に上ると想定されます。

 ほかの審査期間を長期化させないために対策が必要と考えますけれども、規制委員会の見解を伺いたいと思います。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたとおり、運転開始から三十年を超える発電用原子炉施設について、新制度への移行後の運転を継続する場合、経過措置期間である再来年、令和七年の六月までに長期施設管理計画の認可を受ける必要がございます。

 この長期施設管理計画申請の審査については、令和五年十一月八日の原子力規制委員会で、これまでに既に認可した高経年化技術評価等における劣化評価の確認内容を活用し、合理的な審査を行う方針とすることを了承したところでございます。

 具体的には、既許可の技術評価を前提として、最新知見が適切に収集され、それらの知見を踏まえて、劣化評価の方法の判断基準等の見直しが適切に行われているか、設備の変更等による評価対象機器の更新が適切に行われているか、これらを踏まえた評価の結果が判断基準を満足するかなどを確認することといたしております。

 また、従来から行っている新規制基準適合性審査についても、審査プロセスの改善のための取組を以前から行っているところであり、引き続き、必要な審査体制を確保し、審査を着実に進めてまいります。

浅野委員 ありがとうございます。

 次の質問ですが、今年六月、通常国会の後半ですね、六月八日の当委員会において、山中委員長は、審査の予見性を確保するため、審査の早い段階で論点を明示するとともに、審査会合の最後に指摘事項を双方で確認して、共通理解を得るというような答弁がありました。

 このような取組は、私の認識ですと、二〇二二年から一部の原子炉での審査を対象に適用されていたと認識していますけれども、この取組の効果を具体的に確認できているのか、現状について伺いたいと思います。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 御指摘の審査プロセスの改善につきましては、事業者との意見交換等を行い、継続的な改善を進めているところでございます。

 具体的には、中部電力浜岡原子力発電所三号炉及び四号炉の敷地内断層の活動性評価に関する事業者の追加調査において、調査の前に審査の論点や事業者との共通認識を得ることや、北海道電力泊発電所三号炉などの審査において、審査会合の最後に指摘事項を双方で確認をし、共通理解を得ることなどの取組を行っております。

 こうした取組による改善の効果について定量的にお示しすることは、現在のところ、困難でございますけれども、事業者との間での共通認識がより早く得られることにより、審査の手戻りが減るといった具体的な効果が得られているものと認識しております。

 引き続き、審査プロセスの改善を継続的に行ってまいります。

浅野委員 定量的な評価が難しいということなんですが、事前のレクのときにもお伝えはさせていただいたんですけれども、今、標準処理期間二年というものを大幅に超える審査の状況になっていますので、この効果の定量評価、何らかの形で我々に対してもその効果が示せるように、今後、是非その評価の方法については規制委員会の中でも検討していただきたいと思います。

 その上で、先ほど引用しました今年六月八日の委員会での委員長の発言の中には、審査の早い段階で論点を明示するということもおっしゃっておりました。この審査の早い段階というのは、具体的にどのような機会のことを指すんでしょうか。私も従前から申し上げているように、審査会合前のヒアリングも含まれるのか、その辺りを是非答弁をしていただきたいと思います。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 審査の早い段階とは、例えば、自然ハザードの審査において、特に時間を要する追加の地質調査や、津波評価における詳細なシミュレーション計算に着手する前の段階がこれに当たると考えております。そうした早い段階から論点を提示するための審査会合を追加的に開催するなどの取組を行っております。

 なお、論点の提示については、審査を行う前提となるものであるため、ヒアリングではなく、担当規制委員が出席する公開の審査会合で、事業者と十分な議論を行う必要があるものと認識しております。

浅野委員 情報公開、情報の透明性が確保された中でそういったやり取りをやることは非常に大事だと私も思いますが、一方で、山中委員長が当時委員だった平成三十年の六月六日、第十三回原子力規制委員会の中では、山中委員御自身の発言の中で、ヒアリングで何を話し合うかということが透明性に関しては重要だ、事実確認とか論点整理とかという観点であれば、それをきちんと文書で簡潔に公開するということがなされればいいのかなというような発言もされていると思います。

 昨年の十一月十日、当委員会で、山中委員長が御就任された直後のこの質疑の中でも、現場重視の規制を重視したり、あるいは、継続的改善に取り組みたいというような所信も述べておられました。

 現場が継続的に求めている審査会合前でのヒアリングにおける論点整理、あるいは手戻りの少ない工夫を是非今後も進めていただきたいというふうに思いますが、改めて委員長の御所感を伺えればと思います。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会としては、審査の透明性を確保する観点から、公開の会合で審査を行うことが大前提であるというふうに考えております。

 その上で、できる限り審査に手戻りがないように、事業者の対応方針を確認するための審査会合をできるだけ頻度高く開催をする、審査チームからの指摘が事業者に正確に理解されていることを確認する場を設けて、必要に応じて文書化を行うといった改善を進めることで、事業者の要望に応えられていると考えております。

 引き続き、審査プロセスの改善を継続的に行い、公開の会合の場で、審査に関する論点等について、事業者とコミュニケーションを図りつつ、厳正に審査を進めてまいりたいと考えております。

浅野委員 これまでも複数回このやり取りをさせていただいておりますが、やはり現場の事業者の皆さんが懸念をされているのは、審査会合というのはいわば本番なわけですね、本番で何か書類の不備があれば、前回のこの委員会でも私は指摘させていただいたように、例えば、書類の中身について誤りが見つかったとき、あるいはデータが更新されたときに、それを差し替えればいいのか、それとも追加の文書として添付すればいいのかのような、そういった認識のずれが実際に二年以上の審査の中断を招いている、こういった背景もありますので、是非ここは、ヒアリングについてもしっかりとより内容を充実させていただくことを望みたいと思います。

 次のテーマですけれども、次は、現在の原子力規制ではカバーし切れていない、いわゆる規制の欠けている部分についての対応について伺いたいと思います。

 原子力規制庁は、今年の十月十七日に、第十七回主要原子力施設設置者の原子力部門の責任者との意見交換会、いわゆるCNOとの意見交換会を開催しました。この中で、原子力安全に関する不完全性を具体化することを目的として、今後、原子力規制庁と原子力事業者、そして原子力エネルギー協議会、ATENAによる意見交換の機会を持つことを提案したと認識しています。

 私は、現状の規制ではカバーし切れていない、将来のリスクになり得るような可能性について議論するということは非常に重要だと思っておりますが、今回指摘したいのは、原子力規制委員会の発足の理念でもある原子力利用の推進と規制の分離というものに逆行しやしないかということなんですね。

 これは、私が意図しているのは、規制と推進側で癒着が起こるんじゃないかという懸念よりも、むしろ、現時点ではほぼゼロリスクと認識されているリスク因子について、双方が、これはさすがに大丈夫だよねというような楽観的な認識の下で、検討のテーブルから双方合意の下で排除される可能性があるんじゃないかということなんですね。

 ですので、この点についてどう認識しているのか、伺いたいと思います。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 委員が御指摘いただきました原子力安全の不完全性を、原子力規制委員会では欠けという呼び方で呼んでおります。

 御指摘いただいた欠けへの対応のための意見交換につきましては、原子力安全に絶対はなく、欠けがあるという認識の下、事業者と規制当局が意見交換を行って、それぞれが行っている欠けを探す活動に刺激を与えることなどを目的とした議論を行おうというものでございます。

 この意見交換は、完全に欠けがないかを通常より視野を広げて指摘し合う場とすることを考えております。何らかのリスクの有無について合意形成をする場ではないと考えています。

 また、この欠けを含めて潜在的なリスクの見逃しがないかどうか公開の場で意見交換を行ったり、重要な意思決定の際にはパブリックコメントを通じて科学的、技術的な意見を広くいただくなど、様々な活動を通じて、残されたリスクの低減に取り組んでまいりたいと考えております。

浅野委員 確かに、合意形成をする場ではない、ただの意見交換、しかもフラットな環境下での意見交換をしているということは私も伺いましたけれども、やはり、かちっとその会議の最後に本日の合意事項はこれですと確認しなくても、会話の中でお互いがそのリスク因子についてどういう認識を持っているのかというのがお互い分かり合える、分かることもあるわけですから、そういったことがないように、楽観的なリスク因子の排除がないように、是非運用面では細心の注意を払っていただきたいと思います。

 そして、先ほど原子力規制委員長もおっしゃっていましたけれども、視野を広げた検討が必要なテーマだと思います。

 そこで、今回気になったのは、今日、資料の二の方にもちょっと記載をしていますが、この意見交換会の出席者。原子力規制委員会のメンバーと、あとは規制される側の事業者、そしてその協議会に当たるATENAのみになります。本当にこれで十分な議論ができるのかというところが懸念なんです。

 今日は原子力委員会の上坂委員長にもお越しをいただいておりますが、原子力委員会もより視野を広げる意味で、しっかりと、規制される側だけが参加するのではなくて、こうした原子力委員会のような第三者、そして中立、客観的な立場の者も参加すべきではないかと思うんですが、法的な可否についても含めて、その可能性について御答弁いただきたいと思います。

上坂参考人 お答えいたします。

 御指摘の原子力安全に関する不完全性を具体化することを目的とした原子力規制庁と原子力事業者等による意見交換の機会につきましては、当該意見交換会の主催者ではないため、主催者である原子力規制委員会が判断するものと考えております。

 原子力委員会の所掌としましては、原子力利用に関する重要事項に関すること等について企画、審議、決定することとされておりますが、安全の確保のうちその実施に関するものにつきましては、原子力規制委員会の所掌として除かれております。

 一方、安全の確保の在り方等については、今後の原子力政策の羅針盤となる原子力利用に関する基本的考え方等でも、規制当局と原子力発電事業者との対等な立場でのコミュニケーション等による事業者の自主的な安全性向上の取組を促していくことが必要であることと明記しているところでございます。

 いずれにしても、当該意見交換の場への参加につきましては、原子力規制委員会の判断によるものと考えております。

浅野委員 ありがとうございます。

 今の答弁を少し整理をさせていただきますと、法的に不可能ではない、ただ、原子力委員会の所掌範囲、安全の実施に関するものは所掌から外れているということなんですが、私自身は、この欠けに関する議論、これは安全の実施に関することではなくて、安全を確保するための様々な調査にも分類されるものかなというふうに思います。

 最後の質問になるかと思いますけれども、そもそも原子力規制委員会としては、より広い視野で、多面的な観点から、今は見つかっていない規制の欠け、いわゆる穴みたいなものを見つけようということでありますので、原子力委員会を始めアカデミアや職場代表など、多様な者に参加してもらえるような場にしていくべきではないかと思うんですが、最後に伺います。

山中政府特別補佐人 欠けに関する意見交換といいますのは、現在、事業者と規制当局がそれぞれ行っている欠けを探す活動に関してお互いに刺激を与えるなどを目的として、両者の参加が基本となることを考えておりますが、御指摘いただいたように、規制者、被規制者の関係を離れた原子力技術者同士の対等な意見交換の場としたいと考えており、第三者が参加する仕組みについても議論を進めているところでございます。

 いずれにいたしましても、実りのある意見交換ができるよう、その運営については引き続き検討していきたいというふうに考えております。

浅野委員 終わります。ありがとうございました。

中根委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。お世話になります。よろしくお願いします。

 まず冒頭に、答弁者の皆さんにお願いをさせていただきますが、答弁は簡潔に、結論を分かりやすく伝えていただきたいと思います。また、質問者の質問内容を繰り返すということは避けていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず確認ですけれども、万が一の原子力発電所の事故の際に、避難計画、それについてお伺いをするんですが、事故の際に確実に機能するしっかりとした避難計画がない中で、原子力発電所の稼働が実態として進むことはない、新設の原発には核燃料の装荷はしない、これは何度か総理や経産大臣が答弁しているんですけれども、改めての確認です。この考えに変わりはないでしょうか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 万が一に備え、避難計画は、原発が稼働する、しないにかかわらず、地域住民の安全、安心の観点から策定することが重要でございます。

 お尋ねありました避難計画の策定につきまして、原子力発電所の稼働の法定上の要件とはなっておりませんが、しっかりとした避難計画がない中では、建設中の原発への核燃料の装荷や再稼働が実態として進むことはないと考えてございます。

逢坂委員 ここで言うしっかりとした避難計画、私は、確実に機能するしっかりとした避難計画というふうに言っているわけですが、これは地域原子力防災協議会において確認され、原子力防災会議において了承された計画との理解でよいでしょうか。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 議員おっしゃるとおり、地域防災協議会で確認されました防災指針に照らして、具体的で合理的な計画でございます。(逢坂委員「了承された」と呼ぶ)はい、原子力防災会議で了承されたものでございます。

逢坂委員 それでは、自治体が策定する避難計画ですけれども、災害対策基本法などの規定によって、自治体が策定する責務を有しているとの理解でよいでしょうか。

森下政府参考人 お答えします。

 地域防災計画、避難計画につきましては、原子力災害対策特別措置法の規定によって読み替えて適用される災害対策基本法によって、先ほど申し上げました原子力災害対策指針、それから防災基本計画に基づき、自治体が作成することとなっております。

逢坂委員 自治体が策定するということになっている、すなわち、策定の責務を自治体が有しているというふうに理解いたしますけれども、これらから考えると、その計画の内容についての責任というのは自治体にあるという理解でよろしいでしょうか。

森下政府参考人 委員御指摘のとおり、地域防災計画、避難計画の内容につきましては、その責任は自治体にあると認識しております。

 一方で、原子力災害の特殊性に鑑みまして、国の専門的知見が必要とされると認識しておりますため、国としては、自治体任せにせず、自治体と連携して、その計画の具体化、充実化を支援しているところでございます。

逢坂委員 原子力防災会議で一旦了承された避難計画であっても、その後の事情の変更により、自治体の防災会議において、その計画が不十分だ、そういうことで、その計画を取り下げたい、そういう申出があった場合、地域原子力防災協議会の確認あるいは原子力防災会議の了承、これは取り消されるということになるんでしょうか。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 自治体の避難計画を含みます緊急時対応につきましては、その策定に当たっては、自治体と十分に協議の上、一つ一つの地域の課題を潰しながら、最終的には確認、了承をしておりますので、自治体から突如として取下げを求められるようなことはないものと考えております。

 一方で、この一旦、確認、了承された緊急時対応につきましては、訓練などの成果やその後の事情の変更により、継続的な改善、見直しを行っていくこととしております。

逢坂委員 避難計画の内容に責任を持つ計画策定主体の自治体から、避難計画の内容に不備があるんだ、計画を取り下げてくれと主張しても、了承などを取り消さない、その理由は一体何なんですか。責任を持ってやっている自治体が、これは無理なんだ、できないんだと言っているにもかかわらず、了承を取り消さない理由は何ですか。

森下政府参考人 お答えいたします。

 先ほども答弁いたしましたけれども、この計画は、自治体と十分の協議の上で、地域原子力防災協議会において確認し、原子力防災会議で了承されたものでございまして、そのような内容のものが自治体から突如として取下げなどを求められることはないものと考えております。

 自治体における避難計画を含む緊急時対応の継続的な改善、見直しを支援していくことが、我々の立場でございます。

逢坂委員 お手元に資料を配付いたしました。新聞記事です。

 御覧いただきたいんですが、これは泊地域の原子力避難計画に関する新聞記事なんですが、この泊地域では、UPZ、ここの住民の皆さんが避難するためにはバス延べ千八百台が必要だという計画内容になっていると承知をしております。それを前提にして泊地域では避難計画が了承されているわけですが、これは北海道知事とバス協会が確認をしてこういう結論になっているわけですが、実際にバス会社に取材をしますと、半数のバス会社が、それはできない、困難だという回答をしているんですね。しかも、これは一回、回答しているだけではなくて、二〇一八年にもやり、更に二〇二二年にもやりということで、間を置いて二回やっているんですが、二回ともバス会社は、できないんだ、困難だと言っているわけです。

 こういう事情が発生する、こうなりますと、自治体ではこの計画に責任を持てない、だから、どうしてもこれは撤回したいんだというふうに仮に言ったとしても、それでも原子力防災会議で一旦行われた了承を取り消さずに、この場合でも稼働の要件を満たすという意味なんでしょうか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど内閣府から答弁がございましたとおり、緊急時対応は定期的に改善、見直しを行ってきておりますことから、地域原子力防災協議会で確認された緊急時対応が、突如として原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的でなくなることはないというふうに考えてございます。

 したがって、稼働に影響を与えるものではないというふうに考えてございます。

逢坂委員 突如としてそういう事態になることはないんだ、日常から避難計画の内容についていろいろとやり取りをしているので、そんなことはないんだという話でありますけれども、でも、千八百台のバス、そろえられませんよ、こういう話になって、これじゃ、もう避難できませんね、自治体では無理ですねと、そういうことを言っても、これは修正、撤回しないと。

 こういう場合は、やはり原発は一旦停止すべきではないですか。これはいかがですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、全国十六エリアにおいて、地域原子力防災協議会で緊急時対応の取りまとめを行っておりますけれども、緊急時対応を策定できないと結論づけた地域はないというふうに承知をいたしております。

 いずれにしても、避難計画の策定に向けましては、自治体任せにすることなく、地域が抱える様々な課題に対応した計画が策定できるよう、関係省庁連携して支援していきたいというふうに考えてございます。

逢坂委員 それじゃ、改めて確認ですが、一旦、原子力防災会議で了承された避難計画があるその原発地域においては、その後の事情がどんなに変化しようとも避難計画は撤回されることはないし、原発が止まるということも、少なくとも避難計画が理由によって原発が止まるということはない、そういう理解でよろしいですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、全国で、地域原子力防災協議会で緊急時対応の取りまとめを行っておりまして、緊急時対応の策定ができないと結論づけた地域はないということでございますので、地域が抱える様々な課題に政府全体として対応していくということは当然でございますけれども、原発の稼働に影響を与えるということはないと考えてございます。

逢坂委員 政府の姿勢がよく分かりました。一回了承されてさえしまえば、どんな事情があっても、少なくとも避難計画によって、それを理由として原発を止めたりすることはないんだという政府の姿勢でございますね。よく分かりました。

 それじゃ、次に、日本の原発ですけれども、日本の原発も、原発敷地外に影響の及ぶ過酷事故が発生し得るとの理解でよろしいでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力規制委員会といたしましては、敷地外に影響が及ぶ、いわゆる過酷事故は起こり得るという前提に立ちまして、新規制基準を策定しているところでございます。

逢坂委員 ということは、日本の全ての原発は新規制基準ができ上がる前に立地をさせていますので、日本の発電用原発は、原発敷地外への過酷な事故が発生しないことを前提にして立地をさせた、そういう理解でよろしいですか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 旧原子力安全・保安院の審査におきましては、原子炉立地審査指針に基づき、当時考えられていたレベルの過酷な事故が発生した場合を想定して行っておりました。

 そのような事故が発生した場合でも、敷地外での被曝線量が目安となる数値を超えないこと、すなわち、非居住区域及び低人口地帯とすべき範囲が敷地内に収まっていることなどを確認し、原子炉の設置を許可したものであると承知をしております。

逢坂委員 すなわち、今の答弁からすれば、放射線の影響が敷地内に収まっている、そういう判断だということでよろしいですね。改めて確認です。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 設置許可をした当時の判断といたしましては、そのような審査基準で許可をしているということでございます。

逢坂委員 今のやり取りで明確なのは、新規制基準ができる前は、原発事故が発生しても、その放射線の影響は敷地内に収まるんだ、すなわち、敷地外に影響の及ぶ過酷な事故は発生しないんだということを前提に立地をさせたというふうに理解できると思います。

 そこでなんですが、そういう点からすると、今の日本の原発というのは、避難計画がしっかりしたものができるかできないか、その可能性をきちんと探った上で立地させたものではないわけですね。しかし、それにもかかわらず、避難計画を今の法律が自治体に義務づけています。策定を義務づけているわけですから、実現不可能なことを強いている。

 法律の規定としては、これは不適切ではないかと思うんですが、いかがですか。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力規制委員会が策定しております原子力災害対策指針は、先ほど答弁ありましたように、過酷事故の発生を想定して策定しておりまして、委員がおっしゃいます地域防災計画、避難計画は、この災害対策指針に基づいて自治体が策定しております。

 内閣府といたしましては、原発があり、核燃料が存在して、リスクがある限り、避難計画が必要と考えておりまして、地域ごとに様々な課題がありますけれども、それを一つ一つ自治体と連携して潰していって、自治体が避難計画を策定するように支援をしていく、そういう立場でございます。

逢坂委員 その政府の姿勢は分かりますけれども、そもそも避難計画がきちんとできるかどうかは確認しないで日本の原発は全て立地させていますので、そういう状況の中で自治体に避難計画の策定を義務づける、これはできないことを強いている。法律上、それは非常に無理がある、不適切な規定ではないかという質問を私はさせていただいたんです。

 しかも、自然災害と違って、これは全ての自治体が、いつ起こるか分からないというものではなくて、人為的に原発というのは設置させたものですから、そのことによってできないことを義務づけられる、これは不適切ではないかという質問なんですけれども、改めていかがですか。

森下政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しとなりますけれども、原発が存在し、核燃料が存在して、リスクがある限りは避難計画が必要だと考えておりまして、課題を一つ一つ潰して、自治体が避難計画を作れるように支援をしていく、それが我々の立場でございます。

 そして、現在、全国十六のエリアで地域原子力防災協議会を設置し、避難計画の取りまとめを行っておりますけれども、これまでのところ、そのような取組をした結果、緊急時対応が策定できないと結論が出た地域はございません。

逢坂委員 原発が存在している限り、地域の意向の有無にかかわらず、避難計画が必要だという考え方は、一定程度私も理解できます。原発が存在している限り、稼働している、稼働していないにかかわらず、そこに使用済核燃料があったり、いろいろな放射性物質があるわけですから、だから、それは、避難計画が必要なんだという政府の立場は、一定程度は私は理解します。

 しかし、日本の原発は、例えば、今回、UPZの中にある自治体全てが納得して建設をしたわけではありませんので、そういう中において法律上避難計画の策定を義務づけるのは、私は不適切だというふうに思っております。

 そこでなんですが、じゃ、原子力発電所があるからどうしても避難計画を作らなきゃならないんだ、そういう政府の観点に立つとすれば、日本の原発というのは敷地外に影響の及ぶ重大な過酷事故を想定せずに立地させたため、自治体が、確実に機能するしっかりとした避難計画の策定を無理と判断した場合は、当該原発を廃炉にするというのが妥当なんじゃないですか。危険なものがあるから避難計画は作らざるを得ない。でも、避難計画ができないんだ、一番、地域の実情に精通した自治体が、これでは避難計画、無理ですよと言ったら、危険を除去する、原発を廃炉にするというのが妥当な判断なんじゃないですか。いかがですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど内閣府から答弁がございましたとおり、原発が存在している限り、避難計画の策定というものは必要だ、こういうことで、避難計画の策定に向けて、自治体任せにすることなく、地域が抱える様々な課題に対応した計画が策定できるよう、関係省庁と連携して支援をしてきているところでございますし、これからも支援をしてまいるということでございます。

 全国十六エリアにつきまして、現在、地域原子力防災協議会で緊急時対応の取りまとめを行っておりますけれども、緊急時対応が策定できないと結論づけた地域はない、こういうふうに承知してございます。

逢坂委員 原発が存在していれば危険だから、避難計画の策定が必要だ。しかし、自治体が避難計画の策定ができないと判断しても、国が支援して、何とかして有効に機能するしっかりとした避難計画を作る、維持するようにしたい、それが政府の立場だというふうに理解をしますが、答弁からはですね。私はそれに賛成しているわけではありませんけれども。

 だったら、危険を除去する、そうすれば、避難計画を無理強いする必要もありませんし、住民の皆さんを危険な状況に置くことにもならないんじゃないですか。国民の命と暮らしを守るために、そういう判断をするというのは妥当なことなんじゃないですか。重ねて、いかがですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、現在、全国十六エリアにおきまして、地域原子力防災協議会で緊急時対応の取りまとめを行ってきておりまして、緊急時対応が策定できないと結論づけた地域はないというふうに承知しておりまして、地域が抱える様々な課題に対応した計画が策定できるように、引き続き、関係省庁と連携して支援してまいりたいというふうに考えてございます。

逢坂委員 政府の姿勢を確認させていただきましたが、以前もこの委員会で、私、話をしたことがあるんですが、アメリカのニューヨーク州、ショアハムというところに一九八四年に原発ができました。ところが、地域の住民の皆さんから、これでは避難できないんじゃないかと訴訟も起きて、結果的に、一九八九年に、ただの一度も使わずに廃炉になっているんですね。こういう姿勢が、本当の意味で、国民の命を守るという政府の役割なんじゃないかと思いますけれども、日本の政府はそうではないということを改めて確認をさせていただきました。

 そこでなんですが、新設原発の場合、新しく造る原発の場合、自治体がしっかりした避難計画が策定できないと判断した場合、再確認となりますが、新設原発に燃料が入れられないし、稼働できないという理解で、改めて、よいですね。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 しっかりとした避難計画の策定ということなしに、原子力発電所に燃料が装荷され、稼働していくことはないというふうに認識をしてございます。

逢坂委員 新設原発の場合は、原子力防災会議で避難計画の了承がまだされていないわけでありますので、了承される前に、例えば自治体の防災会議、お手元に資料を出しましたけれども、避難計画というのは三段階で策定されるわけですが、最も地域に密接な、事情を知っている自治体の防災会議において、この地域では避難計画の策定は無理だと、新設原発の場合ですよ、そういうふうに判断した場合、私は、これは、原発を稼働させるべきではないというのは、稼働はさせないというふうに言いましたけれども、廃炉にすべきなんじゃないですか。だって、自治体が避難計画を作れないと言っているんですから。それはいかがですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 避難計画の策定は原子力発電所の稼働の法定上の要件とはなっておりませんが、しっかりとした避難計画がない中では、建設中の原発への核燃料の装荷や再稼働が実態として進むことはないというふうに考えてございます。

逢坂委員 核燃料の装荷や稼働が実態として進むことはないとの答弁は理解しますけれども、そもそも、自治体が避難計画を作れない、こういうふうに言っている場合、新設原発ですよ、これは、稼働を前提にして、いつまでも、それじゃ、廃炉にしないで維持しておくという意味ですか。これは社会の無駄なんじゃないですか。いかがですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 避難計画の策定に向けましては、自治体任せにすることなく、地域が抱える様々な課題に対応した計画が策定できるよう、関係省庁と連携してしっかり支援してまいりたいというふうに考えてございます。

逢坂委員 政府の姿勢はよく分かりました。稼働中、一回でも稼働したことのある原発で、避難計画が一度でも了承されていれば、それは、避難計画がどんなに不備があっても原発を止めるということはしない。それから、新設原発であって、まだ避難計画が了承前であっても、自治体が避難計画を作るのは無理だ、そう言ったところで、廃炉にはせず、ずっと長い間、じゃ、いい避難計画できますかね、できますかねということを政府が支援をする、そういう姿勢というふうに理解をいたしました。極めて社会的に無駄の多いことだと私は思いますし、自治体の皆さんに要らぬ不安を強いていることに私はなるのだと思います。

 しかし、政府の姿勢がよく分かりましたので、これから、様々な原発のある地域では、今の政府のかたくなな基本姿勢を前提にしながら様々な対処を考えていかなきゃいけないなということは、今日確認をさせていただきました。

 最後、福島第一原発の廃炉についてお伺いします。

 二つ確認です。賠償も含む二十一・五兆円、廃炉まで、燃料取り出しまで、デブリの取り出しまで、二十一・五兆円、これは、これ以上金額が増えるという見通しでよいかどうか。それからもう一点は、廃炉の最終的な形、これは決まっていないということでよいかどうか、お願いします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 二十一・五兆についてお尋ねがありましたけれども、福島第一原子力発電所の廃炉に必要な費用につきまして、これは一定の蓋然性を持った金額として八兆円という見通しをお示ししておりまして、これは現時点で変更してはございません。

 加えまして、これを除く十三・五兆円につきまして、昨年末に取りまとめられた原子力損害賠償紛争審査会の中間指針第五次追補に伴う追加賠償等によりまして、政府から東京電力への資金援助額は現在十三兆円となってございまして、交付国債の発行限度額である十三・五兆円に近づきつつあります。

 資金援助額の見通しにつきましては、現在精査中ではありますが、来年度以降、枠を超過する可能性があると見込まれておりまして、現在、見直しに向けて関係省庁含めて精査を進めているところでございます。

逢坂委員 廃炉のことを言っていない。答弁漏れ。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 廃炉の最終的な絵姿ということでございますが、最終的な廃止措置を終了した状況ということにつきましては、事故を起こした炉内の状況、燃料デブリの性状など、現時点で明らかでない部分につきまして調査、分析や必要な研究開発を進め、明らかにした上で、適切な工法、廃棄物の処分の在り方等について検討を深めていく必要があると考えております。

 政府の中長期ロードマップにおいては、二〇一一年十二月から、三十年から四十年後の廃止措置終了を目標としております。

 最終的な絵姿につきましては、地域の将来像にも関わることでもありますので、皆様の思いもしっかりと受け止めて具体化していく必要があると考えており、引き続き取り組んでまいります。

逢坂委員 終わります。ありがとうございます。

中根委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して質問いたします。

 まず、汚染水、処理水について伺います。ここで、汚染水というのは福島第一原発内で出てきた放射性物質に汚染された水で、処理水はALPSで処理した水ということで用語を使わせていただきます。

 まず、資料一を御覧ください。

 これは、インファクトというNPO法人がやったものをそのまま出してきて申し訳ないんですが、しかし、妥当な指摘であると思うので、取り上げさせていただきたいと思います。

 こちらが指摘しているのは、この処理水ポータルサイト、これは、東電が出している、東電が作っていて、その処理水についてこんなふうにやっているんですよというのを広報しているメインのサイトだと思うんですけれども、ここでの公表の仕方、ちょっといかがなものなのかなと思うところがあるので、それを指摘させていただきたいと思います。

 二ページの二のところですね、「測定・確認用設備の状況」のところをクリックしますと、資料三のこの表が出てまいります。

 この表は、赤線で囲っているところ、そこの「告示濃度限度に対する比」というのは、これは重要なわけですよね。告示濃度限度というのは、ざくっと言えば安全基準で、比というのは測定値のその比だと。いろいろな核種がありますけれども、それを見ると、大体、この六・八のマイナス〇三というのは、これは〇・〇〇六八かな、非常に低いということですよね。どれもこれも低い。

 ところが、問題となっているトリチウムに関しては、なぜかトリチウムだけ別の書き方をしている。そして、なぜかトリチウムだけ、告示濃度限度、そして告示濃度限度比が書いていないということになります。

 ただ、別に、これで悪い、最終的な処理が悪いと言いたいんじゃなくて、次のページを見ていただきますと、じゃ、一体全体、トリチウムの告示濃度限度というのは幾つかというと、これはベクレル・パー・立方センチなので、リットルに直すと六万ベクレル・パー・リッターだと。元に戻っていただいて、これは分析値が十三万ベクレル・パー・リッターだと。そうすると、あれ、処理水の段階では告示濃度限度比一以下じゃないんだ、要するに、安全基準を超えているんだということになります。

 もちろん、それが悪いというのではないですよ。だって、処理した段階ではまだ、それで放出するわけじゃないですからね。放出するときには、資料五にありますとおり、およそ八百倍に希釈されますから、告示濃度比は下がって〇・二五から〇・二八になって、一より低くなるので、それはそれで結構なんですけれども、やはり、この表を見ると、処理水の段階では告示濃度比が一以下じゃないということを見せたくなかったんですかと思われちゃうわけですよ。

 実際問題、それは超えているんだから、超えていると言ったらいいじゃないですか。超えていて、でも、だからこそ希釈して、それによって、元々は告示濃度比総和を、一を超えているものを希釈して出していますときちんと書くべきだと思うんですけれども、東京電力さんとしてどう思うのか、また、東京電力さんがそうしたくないと言うなら、経済産業省として適切にそれは指導すべきだと思うんですが、御所見を伺います。

山口参考人 東京電力ホールディングスの山口でございます。

 当社福島第一原子力発電所の事故から十二年と八か月が経過しておりますけれども、今もなお地域の皆様を始め広く社会の皆様に多大なる御心配と御負担をおかけしていることにつきまして、心よりまずおわびを申し上げます。

 お答え申し上げます。

 当社、ALPS処理水の海洋放出に当たりまして、放出の概要をお示しする際に、トリチウムについても海水で希釈する前後の告示濃度限度に対する比を公表してございます。

 具体的には、現在実施しております第三回分の放出については、希釈前の告示濃度限度に対する比は、二十九核種で〇・二五、トリチウムで二・一七、希釈後の告示濃度限度に対する比は、二十九核種で〇・〇〇三四、トリチウムは〇・〇〇二九であり、その合計は〇・〇〇三二とお示ししてございます。引き続き、正確で分かりやすい情報発信に努めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

米山委員 それは知っているんです。だって、私、ここで書きましたでしょう。それは、東電の資料を全部手繰っていくと、ぱっと見ると、トリチウムが処理水において、今おっしゃったとおり、告示濃度比が一を超えているのは書いていないけれども、ほかの資料を全部合わせれば確かに公表されていて分かる。でも、それはここに一覧として書くべきでしょうと。それは一覧として、このポータルサイト、だってポータルサイトですよ。東電がわざわざみんなに一番分かりやすいように、しかもグラフィカルにきれいにしたポータルサイトで、何で一番分かりやすいところにそれを書かないんですか。それを聞いているんです。

 それは、だって東電の会社の方なんですから、書くと言えば、まああしたにはならないでしょうけれども、一週間から一月もすれば書けるわけですよ、このサイトに。じゃ、書いてくださるんですね。御答弁をお願いします。

山口参考人 お答え申し上げます。

 分かりやすい開示をするということは大切なことでございますので、先生から承りました御意見を踏まえて、前向きに検討させていただきます。

米山委員 それはきっとしてくれるということでしょう。してくれなかったら、また延々とやらせていただきますので。それはまあそうすべきですよ。だって、事実なんですから。別にそれが悪いというんじゃないですからね。結局は、希釈して一以下にしているんですから。

 その上で、じゃ、次に御質問いたしますけれども、十月二十六日、ALPSで配管を洗浄した廃液を、従業員五人が数リットルの廃液を浴びるという事故が起こった。

 この廃液がどのようなものかは不明なんですけれども、何せ、今ほど申しましたとおり、ALPS処理は、入ってくる汚染水は、それはもう当然、告示濃度比一を超えているわけです。だって、超えているから処理するんですから。はなから超えていないんだったら、処理も要らないわけですからね。

 処理されたものも、それは直ちに危険というほどの告示濃度比ではないのは分かりますよ。二はそんなにすごいものじゃないというのは、それはそうなんですけれども、とはいえ、一は上回っているわけですよ。したがって、ALPS処理は、入るところも出るところも告示濃度比一を超えているので、基本的には健康に害を及ぼし得るものだということになろうかと思われます。

 この事故は、従業員五人は、液体を扱う現場では、かっぱ、かっぱという言い方もなんだと思いますけれども、防水性の全身を覆う衣服ということだと思うんですが、それを着ていなければならないのに着ていなかった。だから、タイベックスーツの中へ浸透してきて被曝につながったとのことなんですけれども、それは余りにもずさんじゃないですかと。だって、かっぱを着ろよと通常言わないんですかと。極めて不思議なことが起こっているんですけれども。

 これは、直近とはいいながら、十月二十六日から、まあ一か月とは言わないものの、三週間ぐらいたっているわけですから、これは一体、何でそんなことが起こったのか、また、どのように再発を防止するのか、御説明をお願いいたします。

山口参考人 お答えいたします。

 まず冒頭、大変申し訳ありません。先ほどの御回答で、希釈後の告示濃度限度に対する比が二十九核種で〇・〇〇三四と申し上げましたが、ゼロが一つ足りませんで、〇・〇〇〇三四でございました。申し訳ありません。

 十月二十五日に発生をいたしました、福島第一原子力発電所の増設ALPSの建屋内の配管洗浄作業、こちらにおけます協力企業作業員の身体汚染につきましては、本当に地域や社会の皆様に御心配をおかけしており、重ねておわびを申し上げます。

 当社は、請負企業に対しまして、作業に適した装備を着用することをルールとして定めておりますけれども、今回の作業において、このルールが守られていなかったことを確認しております。

 当社といたしましては、現在、請負企業に詳細な確認を行っておりまして、事実確認を整理した上で再発防止策を取りまとめ、速やかにお示しをさせていただきたいと思います。

米山委員 速やかなら今言えると思うんですけれども、通告もしていますし、三週間もたっていますし、そもそも、そんなに調査が要るようなことでもないわけじゃないですか。だって、着るべきかっぱを着ていなかったって、考えられることは、その指示が通っていませんでした、全然そんなことは知りませんでしたか、知っているけれども暑いから無視しましたか、ほぼほぼそのどっちかでしょう。それ以外があるとは思えないわけなんですよ。なので、そんなのにそんなに時間がかかるという理由がちょっとよく分からないわけなんです。

 さらに、このとき、作業員に指示を出す班長がいなかったということも言われており、一体全体、東電さんは作業員の方をちゃんと管理できているんですかと。

 それは、どんなところだって事故は起こりますよ。事故を一切起こすななんて言いたいわけじゃないわけです。でも、事故が起こったら、それは早急に、だって、聞き取りをしたら、多分その日に分かるようなことだと思うんですよ。だって、かっぱを着なかった理由なんて、先ほど言ったとおり、かっぱを着なきゃいけないことを知らなかったか、若しくは知っていたけれども無視したか、どっちかしかないでしょう、ほぼ。それが今出てこないというのはちょっと信じ難いことだと思うので、それはおっしゃられたとおり、早急に、今日にも調べて明日にも発表したらいかがですかと思うんですが、そこは押し問答になるので言いませんけれども、是非早急に調べて、早急にお答えください。御公表ください。

 さらに、浴びた廃液の量なんですけれども、当初、浴びた廃液は百ミリリットルと報道されて、その後、数リットルに訂正されました。これも、一体全体、何でそんなことになるんですかということを伺ってよろしいですか。

山口参考人 お答えいたします。

 十月二十五日に本件について公表した際、洗浄廃液の飛散量に関し、その時点で聞き取りが可能だった三名の作業員からの情報を基に、現場の床面に確認されている洗浄廃液の量は百ミリリットルであることを御説明し、翌二十六日の会見では、作業員へ飛散したものも含めた総量について別途確認をさせていただくと御説明をさせていただきました。

 その後、退院した二名の作業員への聞き取りも行った結果、作業員へ飛散したものも含めた総量は数リットルであることを確認できたことから、十月三十日に改めて公表をいたしました。

 当社といたしましては、先生の御指摘のとおり、正確性という点で課題があったと認識しておりまして、迅速かつ正確な情報発信に努めてまいりたいと思います。

米山委員 これも余り押し問答してもしようがないんですけれども、でも、これは、事故を想定すると、まあ正直よくある話といったらよくある話といいますか、ちょっと話は違うかもしれませんけれども、医療の現場で、吐血量とか、患者さんが血を吐きましたというのは、結構、見た人によって全然ばらばらなことを言うわけですよ。赤い血にびっくりして、数リットル吐いたとかと言って、確かめてみたら数ミリリットルだったり、若しくはその逆だったりするわけなんです。でも、吐血量というのは、大量に吐いたら死にますし、少量だったら、もしかして口を切っただけかもしれないので、それは大した問題じゃないので、結構ちゃんと確認しなきゃいけないことなわけですよね。

 この廃液量も同じ話でして、それは、だって、大量に浴びたんだったら、今後のことを考えるといろいろと、浴びた人だって大変だし、そもそも、大量に浴びるような状況というのは作業にすごい問題があるわけじゃないですか。ごくごく少量なら、それはいいとは言わぬですけれども、それはいろいろなことで起こり得るのかもしれないし、安全かもしれない。だから、結構それはちゃんと確認しなきゃいけない。

 最初から、しかも、その場で聞いた人だけではいろいろなエラーが起こることを想定して確認しなきゃいけないわけですよね。それが、やはり体制ができていませんでした、しかも、これだけいろいろなことがあった福島で、何かあったときにきちんと聞き取るということをしていなかったというのは、また次の事故が起こったとき、同じようなことで、不正確な情報把握から適切な対処ができずに、それがカスケードになるといいますか、それがどんどんどんどん次の何かを、次の不具合をしてしまって事故になることを懸念せざるを得ないと思いますので、そこはやはりきちんとした体制をつくっていただかなきゃいけないと思います。それを申し上げさせていただきたいと思います。

 次に、今度は、処理水についてということですけれども、これはいろいろな御意見があることは承知の上でちょっと、質問というか提言というか、させていただきたいんです。

 私は、先ほど来、処理水と言っているんですけれども、もちろん、処理したものは処理水だ、それはそうだと思うんですよね。でも、問題全体としては、最初は汚染水から発生して、だんだん処理して処理水になって、しかも、処理水だって、別段、先ほど言ったとおり、すごい安全というわけではない。物すごい危険とは言わないですけれども、物すごい安全というわけでもなく、最後は希釈して、やっと、ほぼほぼ無害なものになるというものなので、これを、問題全体としては汚染水問題という言い方をしたって別にいいわけです。だって、汚染水から端を発しているわけですからね。

 中間処理物が処理水なだけであって、しかも、放出するときは、実は処理水じゃなくて希釈水なわけですから、それを希釈水問題と言うのか、処理水問題と言うのか、汚染水問題と言うのか、それは、ある種、使う人が自由に使ったらいいじゃないですかということだと思うんです。

 また、私自身は、比較的物を怖がらないタイプといいますか、希釈した処理水が健康に害を与えないというふうなことに関しては特段の不安を感じないし、それは信じているんですけれども、一方、それを不安に思う人というのは、それは一定数いるわけですよ。何なら、医者の中にだって幽霊を怖がる人は一定数いるわけですよね。私は、幽霊はいないと思うし、幽霊なんか全く怖くないですけれども、医者であったって幽霊が怖いという人はいるわけです。

 ですので、それは科学的に、処理水というものが、更に正確には、きっとこれは処理水というよりは希釈水ですよね、処理水の段階では必ずしも健康に害はないとは言えないわけですから。だって、告示濃度比二を超えているんだから。正確には、希釈水は健康には害はないとして、でも、それに対して一定の恐怖を感じたり、一定の恐れを感じたりする人は別にいたっていいと思うんです。

 ところが、これはもちろん公的に言っているわけじゃないんですけれども、世間一般の中で、一部には、汚染水と言った瞬間に、その使い方を余り考えずに、ともかくそれは風評加害だと言ってバッシングする方がいる。正直、いらっしゃる。もちろん、間違いは、正しく言えばいいと思うんですよ、それは違うと。少なくとも、放出しているものは、それはそもそも処理水ですらない、希釈水だというふうに間違いは正せばいいと思うんだけれども、不要なバッシングというのは、バッシングされる側に、都合が悪い事実を隠して私たちを黙らせようとしているんだという思いを抱かせてしまって、かえって風評が広がる、むしろ、陰謀論が陰謀論として広がってしまうということになるのではないかと思います。

 先ほどの告示濃度比の示し方というのも同じような話でして、それは、最終的にはトリチウムが希釈されているのは分かるんだけれども、やはり、ちゃんと都合の悪いことも見せる、特段隠さないということによってこそ、むしろ、そういう誤解というのはなくなっていくのではないかと思います。

 資料六で、ALPS処理水に関する質問と回答というのがあるんですよね。せっかく出していらっしゃる。それは別に、労は多とするといいますか、こういうことをやってどんどん広報していただいて構わないんですけれども、その中に、やはり、私の提案として、ALPS処理水への不安を口にしてはいけないのですかという質問を作って、不安を感じるのは、それはあると思います、自然です。それを口にすることは問題ございません。ただし、それは科学的な事実かどうか、不安と科学的事実は違いますからね、科学的に事実かどうかは是非このホームページを御覧になったり、専門家にお問い合わせくださいという回答を用意して、過度な汚染水バッシングといいますか、汚染水という言葉を使うこと自体を非常にバッシングするような在り方に関しては、やはりこれは、東電若しくはそれを所管する経済産業省の方で、それに対して一定の歯止めをかけるということをすべきではないかと思いますが、御所見をお伺いします。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 ALPS処理水の海洋放出の安全性に対します不安ですとか疑問に分かりやすくお答えするということで、御指摘ありませんでしたけれども、昨年十二月に、私ども、新しくALPS処理水専用のウェブサイトの方を立ち上げまして、こちらでもQA集の方を御用意してございます。

 具体的には、本当に海洋放出しても大丈夫、本当に安全というような、不安、疑問の形で質問を作りまして、これに答える形で、放射性物質に対する安全基準を満たしていることが確認されたもののみ海洋放出されます、このため、環境や人体への影響は考えられませんといったようなお答えを御用意させていただいております。

 あわせて、安全性に関する科学的な根拠についても、当該ウェブサイトあるいは新聞広告に加えまして、解説動画やSNS等を通じて、できるだけ分かりやすい情報発信に努めてきているところでございます。引き続き、こうした情報発信に努めてまいります。

米山委員 それは私も別に否定していないんですよ、質問の趣旨として。だからこそ、資料六でそういうのはちゃんと示した上で、労は多とした上で言っているんですけれども、どうしても、こういう公共からの発信というのは、自分側は正しいです、正しいですになっちゃうわけです。

 もちろん、それは正しいですで、悪いと言っているんじゃないんです、正しいでもいいですよと。でも、幽霊を怖がっている人に対して、幽霊はいません、幽霊はいません、幽霊はいませんというホームページを作ることは、それほど意味がないといいますか、それは、ひたすら、じゃ幽霊なんというものは認めない、この人たちは認めないから駄目なんだと言ってくるわけです。もちろん、幽霊を認めろと言っているんじゃないんです。あなたが幽霊を怖がること自体が悪いわけじゃない。でも、それに関してよくよく見てくださいねという情報の発信の仕方も考えたらどうですかということです。

 特に、公的な情報発信というのは、それによって世の中全体がやはり引きずられるわけなんです。決して、私も本当に繰り返し正しい情報を発信すべきだと思うんですけれども、それは過度に不安を感じる人に対するバッシングにつながらないような、そういう配慮もすべきではありませんかということなので、それは東電及び経済産業省で御検討いただければと思います。

 次に、この風評被害を払拭する最大の方策というのは、基本、それは海洋放出しないことなわけですよ。要するに、はなから汚染水が生じなければ、はなからそんな問題はなくなるということになろうかと思います。

 レクで伺ったところによりますと、汚染水の生産量は一日百トン弱に減っているということで、ALPS処理水の処理能力は一日二千トンぐらい、放出量は一日五百トンぐらいということですので、放出が始まれば、貯蔵されている汚染水は次々と処理されて、処理水も次々と減っていくということかと思います。しかし、一方、一日百トンの汚染水が生じ続けているなら、それは、最終的に一日百トンの処理水をひたすら放出し続けることになります。

 さらに、汚染水は、実は、これは事実上、そこにあるデブリの冷却水の役割を果たしている。だから、実は、そこにデブリがある以上、汚染水をゼロにしちゃったら、むしろ過熱しちゃう。だから、汚染水はゼロにはできませんという状態にあるのであろうと思います。

 そこでお伺いいたしますけれども、汚染水の産出量を更に減少させるめどは立っているのか、そしてその方法はどうするのか。また、デブリ回収のめどは立っているのか、それとも、立っていないということなら今後どうするのか。そうした場合には、最低限の量として汚染水が発生し続けるんですけれども、それは一体どうするのかということについて、御所見をお伺いします。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 汚染水の発生量でございますけれども、建屋周辺の敷地の舗装ですとか雨水対策などの効果によりまして、二〇二二年度は、一日当たり約九十立方メートルの発生量となっております。これは、発生量の多かった二〇一四年五月と比較しまして、大体六分の一程度まで減少してきております。

 今後ですけれども、二〇二八年度の発生量を一日当たり約五十から七十立方メートルに減らしていくという目標に向けて、引き続き、建屋周辺の敷地舗装あるいは局所的な建屋の止水等の対策を計画的に進めていくこととしております。

 それから、デブリの回収に関してですけれども、こちらにつきましては、デブリの取り出し期間中にも汚染水は発生いたしますが、こうした燃料デブリの取り出しの工法にも依存してまいりますので、現時点で確定的な数字でお答えすることは難しいと考えております。

 現在、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の中に設置されました小委員会で、こうした汚染水対策も含めた形で、具体的な燃料デブリの取り出し工法について検討を進めているところでございます。

 こうした検討結果も踏まえながら、引き続き汚染水の発生量の低減に取り組みまして、デブリ取り出しを含む廃炉作業を進めてまいります。

米山委員 結局、デブリは出せるかどうか分からないし、汚染水はひたすら、量は減るでしょうけれども発生し続けるということだと思いますので、本日言ったようなことを是非御考慮いただければと思います。

 避難計画につきましては、ちょっと、用意しておりましたが、時間になりましたのでこれで終わらせていただきまして、次回にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中根委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 私は、大きく二つの質問をさせていただきます。一つは、さきに起きた廃液事故についてでございます。次に、トリチウムについての質問をさせていただきます。

 まず最初に、さきに起きました廃液事故の概要を御説明いただけますか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 十月二十五日でございますけれども、定期点検中の増設ALPSの建屋におきまして、浄化処理前の汚染水を移送する配管の洗浄作業を行っていたところ、洗浄水が作業員に飛散をいたしまして、作業員の身体汚染が確認された事案が発生いたしております。

 現場にいた作業員のうち二名につきましては、管理区域からの退出基準以下まで除染が難しいということでしたので、当日夜に病院に搬送いたしまして、現在、既に退院したところでございます。

 なお、いずれの作業員におきましても、内部取り込みは確認されておらず、病院に搬送された二名の方も、皮膚への影響は発生していないとの診断結果だったと承知しております。

 経済産業省からは、事案発生当日に、東京電力に対しまして、再発防止を徹底するとともに、作業員の安全も含め、廃炉作業における安全確保に万全を期して取り組むよう指導を行ったところでございます。

    〔委員長退席、泉田委員長代理着席〕

阿部(弘)委員 実は、NHKの「時論公論」というところで、この事故に関して詳細な二十分程度の番組が放映されたんですよ、御覧になっていないかもしれないけれども。問題点も詳細に指摘してありました。この工事を請け負ったのは東芝という会社、そして三次下請まである。その徹底がなされていなかった。

 今、答弁の中に、私、医者でございまして、医療用放射性物質の密閉放射線と実験用放射線という、核種が二種類ありますが、実験用放射線を様々使っておりました。そういう講習会を受けて、フィルムバッジをつけながら、管理区域で放射線を取り扱う実験もやっていたわけです。今、管理区域というところが出てきて、ああ、そうなのかと。やはり管理区域を指定してあるんですね。

 じゃ、管理区域を指定してあるんだったら、研修を受けて、フィルムバッジをつけて、いろいろなことをやるべきじゃないんですか。東芝さんだけじゃなくて、一次下請、二次下請、そういう管理区域内での研修や、あるいはフィルムバッジの着用などはどうしてあったんですか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、作業員の教育ということでございますけれども、東京電力におきましては、管理区域で作業される方が入所される際に、全ての方を対象に、こういった放射線防護の教育を含めて研修を行ってございます。それから、実際、現場に入る際には、APDというふうに申しておりますけれども、線量計の方を携行いたしまして、中での作業を行うことになっております。

    〔泉田委員長代理退席、委員長着席〕

阿部(弘)委員 そうなんですよ。研修のところに、ガウンテクニックとシューズの履き替えなどは当たり前の当たり前なんですが、そういうのはやっていなかったんですか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 管理区域の中でも、作業をする現場によってどうした防護装備をするかというのが、東京電力の中の規定で定まっておりますので、こういったものも含めて、研修の方で周知をしているところでございます。

阿部(弘)委員 ちょっと認識が違いますね。

 僕、この後、ウィーン大学の話をするんですけれども、ウィーン大学は、IAEAが、本部がございます。ですから、こういう核、放射性物質の実験施設や、あるいは処理区域の基準というのは世界標準なんですよ。だから、ところどころの国によって違うなんというのはあり得ないわけで、そういうことをこの国会の場で方便で言ってもらっちゃ困るんですよ。だから、国際基準だから国際基準どおりに行いました、でも、それが周知徹底できていませんでしたと言わなきゃ駄目なんですよ。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 防護の内容については、もちろん国際的な基準等も踏まえて、かつ国内のルールにものっとりまして対応しておりますけれども、今回事案の起きました増設ALPSの建屋の中での作業については、その作業の内容に応じて防護装備の方をそれぞれ適切なものを選択をするという形になってございました。

 実際に身体汚染を生じてしまった作業員の方は、アノラック、こういった液体をかぶるような作業に対して装備することになっておったものでございますけれども、残念ながら、この二人の方はこれを装備されていなかったということでございます。

阿部(弘)委員 余りこのことばかり質問しませんけれども、被曝線量が非常に高いときには、やはりより厳密に、一次下請であろうが二次下請であろうが三次下請であろうが守らないと、まずガウンテクニックさえなければ、それは、廃液がかかってきたら全部衣服にしみ込んでしまいますから、重大な放射線事故につながりますから、是非とも、NHKも全国民にそのことを周知していますので、よろしくお願いします。

 では、何で大臣が知らなかったんですか、復興大臣が。

桜町政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、十月三十日にも、衆議院予算委員会におきまして、岡本あき子議員との議論を受けまして土屋復興大臣から、いろいろな省庁と連携をしながら行うべきだということで反省をしたと答弁をいたしまして、岸田総理大臣からも、関係省庁の連携、意思疎通が重要なことで、御指摘の点がないかどうか、いま一度よく点検をさせたいという答弁があったところでございます。

 委員御指摘のように、土屋大臣は報道で知ったということでございましたけれども、この議論を踏まえまして、土屋大臣の指示の下に、関係省庁と連携をいたしまして、翌日の十月三十一日より、原子力災害の発生又は拡大の防止のために必要な措置につきまして、東京電力から新たに復興庁に対しまして直接連絡が入ることとしたところでございます。

阿部(弘)委員 緩みが原因だというふうに、両方、事故についても、その報告についてもしっかり、よろしくお願いします。

 次に、トリチウムについてお伺いします。

 トリチウムは、実は、自然界でも年間七京ベクレル、自然界でも百から百三十京ベクレルと、自然界でも非常に存在が多い放射性物質であるというふうに文献的には承知しております。その半減期やベータ線の性質、特に、トリチウムがベータ崩壊するときのベータ線の線量などの基本的な御説明はどなたかできますか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 トリチウムは、三重水素と呼ばれる水素の放射性同位体でございます。御指摘がありましたように、身の回りでは水分子に含まれる形で存在しておりまして、大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水、あるいは我々の体内の中など、自然界に広く存在するものであります。

 トリチウムが放出する放射線、ベータ線と呼ばれるものですけれども、このエネルギーは非常に弱く、紙一枚でも遮られるほどのものということでございまして、いわゆる外部被曝による人体への影響は考えられない程度だというふうに理解しております。

 また、トリチウムの物理学的な半減期ですけれども、十二・三年、トリチウムを含む水の生物学的な半減期は約十日と言われておりまして、体内に取り込んだ場合でも速やかに体外に排出され、特定の臓器に蓄積するものでもないというふうに承知しております。

阿部(弘)委員 このことについて、私は、トリチウムというのは本当に身近な放射性物質であって、そして、次の質問で、有機トリチウムでなければ、水として存在していれば内部被曝も余り起きないということをPRしてほしいと思っているんですよ。

 私は、大学院時代に招聘されてウィーン大学の医学生理学研究所に留学しておりました。実験の内容は、様々な実験を同時に行っておりましたが、血管の内皮細胞という生きた細胞を培養しながら、そこにトリチウムを取り込ませる実験をやっていたんですよ。有機トリチウムなんですよ。有機トリチウムを細胞核内に取り込ませて、そして様々な内皮細胞にダメージを与えることで、どういうふうにダメージが生じるかというのを実験していました。

 一晩置いて、何もやらないとトリチウムは外には余り出てきません。つまり、これは、内部被曝というものは余り起きないんだなということのあかしである。しかし、一旦何か活性酸素などで刺激するとそのトリチウムは外に出てきますが、トリチウムの性格からすると、水の中でほとんどベータ線が出てこない。ガイガーカウンターを当てても余り出てこない。そういう性質、線量の弱いベータ線がトリチウムのベータ崩壊の正体だということを、是非とも専門家の皆さんが国民に言ってほしいんですよ。そのために、私、質問しています。

 有機トリチウムというのはどうなんですか。ALPS処理水、処理後の濃度といいますか、どういうものでしょうか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 ALPS処理水中に有機化合物がそもそもほとんど含まれていないということでございまして、放出されるALPS処理水中のトリチウムは、ほぼ全量が、有機結合型のトリチウムではなく、トリチウム水の形態で存在しているというふうに考えておりまして、原子力規制委員会によってもそのことが確認されていると承知しております。

 ただし、東京電力が行いました放射線影響評価の中におきましては、国際放射線防護委員会、ICRPのモデルを参考といたしまして、摂取する海産物における有機結合型トリチウムの割合というのを約一〇%と保守的に考慮をしてございます。文献上は約六%という数字でございますが、今回、保守的に一〇%として計算を行いました。その結果、被曝評価、被曝の結果ですけれども、影響はほとんどないというふうにされております。この結果については、IAEAからも、人や環境に対する放射線影響は無視できる程度というふうに評価いただいております。

阿部(弘)委員 最初にお話ししましたように、自然界では七京ベクレルほどのトリチウムが発生している。そして、半減期が長いものですから、百京ベクレル以上のものが常に自然界に存在しているということです。

 農水省の方にお伺いします。食物、生物の濃縮という点では、魚やあるいは海藻類の濃縮はいかがですか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 ベータ線の影響につきまして、水産庁では、我が国の水産物中に含まれるトリチウムにつきまして、二種類の方法で分析を行っております。

 一つは、令和四年六月より実施しております精密分析という方法で、北海道から千葉県までの太平洋岸でこれまでに採取されました魚類二十九種、藻類四種を含む二百七十四の検体について分析を実施しております。もう一つは、迅速分析という方法で本年八月より実施しておりまして、ALPS処理水放出口から数キロメートル離れた二地点でこれまでに採取されました魚類百八検体を分析しております。

 この二種類の方法によりまして、本年十一月十三日、すなわち昨日時点までに分析結果が判明しました三百八十二の検体全てにつきまして、検出限界値未満という結果が得られております。

 また、東京電力が海水で希釈したALPS処理水を用いて行った、ヒラメ、アワビ、海藻のホンダワラの三種類の飼育実験によりますれば、これらの魚介類にトリチウムが濃縮することはないとの結果が得られたものと承知しております。

阿部(弘)委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、トリチウムのベータ崩壊、自身の性質からしまして、余り自然界への影響というものがない。だから、海外、だからじゃないでしょうけれども、外国のトリチウムの年間処理量がこのように多いんだというのもIAEAの理解からするとうなずけるところも少しあるかなと思いながらも、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中根委員長 次に、空本誠喜君。

空本委員 日本維新の会の空本誠喜でございます。今日もよろしくお願いいたします。

 今日は、原子力の未来予想図といいますか、青写真について質問させていただきたいと思っております。

 日本維新の会は、安全性の高い次世代の原子炉の実用化に向けて研究開発を進めるということとしております。

 私自身、原子力の研究開発、そして設計、開発、実務を担ってきた専門家としまして、今後の現実的な原子力プラントの開発、実際は、既設の軽水炉のプラントをベースにしながらも、やはり安全性を高めて、そして、小型炉という話もあるんですが、百万キロワット級の革新軽水炉、こういったものを新規にリプレースする、そして、原子燃料サイクル、核燃料サイクルをやはり完成させなければなりません。そのためにも、高速増殖炉「もんじゅ」に代表される高速炉の開発も進めるべきであろうというふうに考えております。

 資料を今お配りしております。資料の方は、表面に既設の原子炉、革新炉、そしてそのロードマップ、政府が出されたもの、裏面に日本の核燃料サイクルの現状、そういったものをまとめております。

 その中で、今日は、時間が制限がございますので二点に絞って、既設の原子炉若しくは軽水炉については今後質問させていただきたいですが、今日は、高速炉と核融合炉について質問をさせていただきたいと思います。

 やはり高速炉は、先ほど申し上げましたが、核燃料サイクルの確立に向けてはなくてはならないものでありますし、また、核融合炉、これは未来の新しい夢のエネルギーではありますが、これについても、国際協力をしながら、国際的な競争も行いながら、またサプライチェーンの維持、こういった観点からも研究開発を進めていくべきであろうというふうに考えております。

 そこで、先ほど示しました資料、表面一、こちらの方に、政府が掲げる、原子力関係閣僚会議及び革新炉ワーキンググループにおいて、新たな革新炉として五つの型式が挙がっています。革新軽水炉、小型軽水炉、高温ガス炉、高速炉、核融合炉、こういった五つがございますが、この中で、まず、各々について細かく説明したいところではございますが、まずは高速炉から話を進めたいと思います。

 高速炉、特別委員会の先生方はもう御存じかと思いますが、何が高速なんでしょうか。御存じでしょうか。知っていらっしゃる方もいらっしゃるようで、これは、中性子の速度、エネルギーが高い、高速であるということでございます。意外に知らない方がいらっしゃって、じゃ、高速炉と高速増殖炉はどう違うのということです。これは、増殖、能力を高めるか高めないか、そこにブランケット材を入れるか入れないか、こういったところでの、全く、ナトリウム冷却を行う「もんじゅ」型がベースでございますが、それでございます。したがって、高速炉といっていますが、やはり高速増殖炉「もんじゅ」、こういったものを想定しながら、新たに次のステップを進めていかなければならないというふうに考えております。

 そこで、政府の方にまずお聞きしたいんですけれども、政府の原子力閣僚会議、また革新炉ワーキンググループにおいて、高速炉の開発の位置づけをどのように取り決めてきたか、その位置づけについてまず御説明をお願いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一六年に原子力関係閣僚会議で決定されました高速炉開発の方針では、高速炉は、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減、資源の有効利用といった核燃料サイクルによって期待される効果をより高めるものと位置づけられております。この方針に基づきまして、高速炉開発の進め方を定めた戦略ロードマップが策定され、検討が進められてまいりました。

 また、昨年四月に資源エネルギー庁の審議会の下に設置されました革新炉ワーキンググループでも、こうした議論も踏まえ、次世代革新炉の一類型として、高速炉の開発炉型を具体化していくこととさせていただきました。

 その上で、昨年十二月の原子力関係閣僚会議では、高速炉開発の戦略ロードマップを改定し、複数の候補のうち、ナトリウム冷却高速炉が最も有望であるとの専門家による技術的な評価を確認した上で、二〇二四年度以降に実証炉の概念設計を開始できるよう、基本的な仕様、炉概念の選定や、プロジェクトの中核となる企業の選定を進めていく等の内容が盛り込まれたところであります。

 本年度より開始した実証炉開発事業では、専門家による技術評価の結果、本年七月、炉概念としてナトリウム冷却タンク型炉、将来的にはその製造、建設を担う中核企業として三菱重工業株式会社を選定し、研究開発を進めているところでございます。

空本委員 一応、高速炉開発の目的というのは、やはりマイナーアクチノイド、こういった有害的な放射性物質、こういったものを低減させるということを今回は前提にされておりますが、やはり増殖ということを一番の、元々の目的でした。

 今、資料の裏面に挙げておりますが、FBR、高速増殖炉を主体とした核燃料サイクル、これが元々の政府の考え方でありました。そこをねじ曲げて、高速炉。増殖を取って、高速増殖炉じゃなくて高速炉。やはりここは看板のかけ替えに見えてしまう。余りよくないと思います。

 原子力をやっている人間にとってはみんな分かっていることなんですが、やはり高速炉を進めるということは、最終的に、山中委員長も御専門でありますので、高速炉と高速増殖炉は、その増殖の比率の違いだけで、一・〇幾つにするのか一・二にするのか、この違いだけで、全く違わない、構造的には。ということで、やはり政府は堂々と高速増殖炉という文言を使っていただくべきかなというふうに考えています。なかなか回答しづらいと思いますので、そこについては追及しませんけれども。

 では、高速炉の原子力の規制に関してお聞きしたいんですが、元動燃の大洗にある実験炉常陽、また敦賀の原型炉「もんじゅ」、こういったものについて、これまで原子力規制が行われてまいりました。

 この「もんじゅ」や常陽のこれまでの規制基準を踏まえて、今後、高速炉の規制をどう見直していくのか、若しくはどのように考えていらっしゃるのか、規制当局の方からお答えください。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、新たにナトリウム冷却型高速炉が実用化され、建設されることとなった場合には、これまで常陽、「もんじゅ」に適用されてきた規制基準、それから、常陽の審査経験などを踏まえつつ、必要な規制基準を検討し、策定することとなると考えてございます。

 その際に、御指摘のどのような課題があるかということにつきましては、高速炉の炉型を含めて具体的な設定が定まらないと検討できない部分がありますけれども、ナトリウム冷却型高速炉に固有の技術的な課題というものは幾つかあるというふうに考えてございます。

 例えば、ナトリウム冷却型高速炉において特に想定すべき重大事故やそれへの有効な対策、また、ナトリウム漏えいを防ぐための対策や、それでも漏えいした場合の火災対策などの検討が必要になるというふうにも考えてございます。

 いずれにいたしましても、規制委員会といたしましては、事業者からの具体的な炉型などの提案があれば、その熟度に応じ、安全確保を図るために必要な規制基準の考え方を含め、規制の在り方を検討してまいりたいと考えてございます。

空本委員 是非よろしくお願いします。

 私は、再度申し上げますが、やはり高速増殖炉、FBRを主体としながら、液体ナトリウムの冷却高速炉、こういったものをもう一度しっかりと研究開発を行っていくべき。

 また、「もんじゅ」の今回廃止措置を行っています。五百三十体の燃料体をもう出されて、移送して、貯蔵されています。こういった廃止措置の中で得られた技術、液体ナトリウムから取り出すというのはすごく難しい技術でありまして、そこをやり切っている、今回安全にやり切った。いろいろなトラブルはありましたが、やり切ったというところも踏まえて、規制の在り方をしっかりと確立をお願いしたいところではございます。

 今現在、私も常陽で実験、試験をやったことがありますけれども、常陽が実験炉、そして原型炉が「もんじゅ」でありました。そして、今、ロードマップで期待しているところは実証炉であって、その後、商業炉につながってまいります。

 そういった意味で、「もんじゅ」が今回廃止措置になったのはとても残念でありますが、これをまた新たに立ち上げるというのは大変手間のかかること、また資金も労力もかかることと思っておりますので、残念ながら、「もんじゅ」については今回廃止措置ということで、様々な知見を得ていただいて、それで終了ということは分かるんですが、やはりリプレースの問題。リプレースといいますか、次なる実証炉をどこに設置するか。やはり「もんじゅ」があるところ、若しくは常陽があるところ、こういったところにお願いして、自治体の方々、地元住民の方々に御理解いただきながら立地する、そういった働きかけをすべきときに来ているのかなというふうにも考えます。ロードマップを本当に完成させる気があるならば、是非ともそういうことを今からお願いしたいと思います。

 続いて、高速炉の話はここで終わりまして、核融合炉、未来の夢のエネルギーについて話を進めていきたいと思います。

 私も、学生時代から中性子工学を専門として、中性子の測定とか挙動とか、そういったものを扱ってまいりました。山中委員長は御存じのとおり、中性子発生装置を使ってDT、DDの実験なんかを、核反応実験をやってまいりまして、十四MeVとか二・四MeV、メガエレクトロンボルトのエネルギーの中性子を発生させて、核融合の研究の一部をやらせていただいたことがございます。

 先ほどDTということですが、皆さんは御存じと思いますが、DT反応のうちのTというのはトリチウムでございます。そして、Dというのは二重水素、デューテリウム。このDとTが核反応、物理的には、接近して、量子トンネル効果を使っての核融合反応を起こすんです。

 やはり国際的な核融合炉の開発、この黎明期、今から七十年前頃、一九五五年、一九五八年、ジュネーブで開催された原子力平和利用会議、これを起点として国際的に核融合炉の開発がスタートしていますが、なかなか一筋縄ではいかない。エネルギーの取り出しがすごく難しい。また、様々な問題があります。私自身は、研究開発はどんどん進めるべきと思いますが、この実現性というのはかなり遠い未来であろうというふうに思っています。

 そこで、このロードマップ、革新炉ワーキングで取りまとめられています導入に向けた技術ロードマップにありますが、原型炉の建設、運転の見通し、今、国際的に進められているITER、実験炉、また、茨城県でこの間成功しましたJT60SAの開発動向、こういったものを踏まえて、文部科学省さんとしてどのように捉えられているか、御説明をまずお願いします。

林政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省では、科学技術・学術審議会核融合科学技術委員会が取りまとめた原型炉研究開発ロードマップを踏まえ、国際約束に基づき、核融合実験炉の建設、運転を行うITER計画、日欧共同でITER計画を補完、支援する研究開発を行う幅広いアプローチ活動、さらに、研究開発や人材育成等の基盤整備に取り組んでおります。

 原型炉の実現に向けては、こうしたITER計画等への参画を通じて、例えば、ITER計画における重水素、トリチウムの燃焼着火、またJT60SAにおける定常運転領域の実証、さらに材料等の照射データの取得や、テストブランケットモジュールの開発によるトリチウム回収の実証等々の科学的、技術的実現性を確認した上で原型炉への移行を判断することとしており、その時期は、二〇三〇年代に移行判断を行い、今世紀中葉までに実用化の目途を得る、こういう形で研究開発を進めております。

 引き続き、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略が策定されましたので、こうした戦略等に基づき、ITER計画の進捗や諸外国の動向も踏まえ、将来の原型炉開発を見据えた研究開発を加速してまいります。

空本委員 核融合炉、これは今、先ほど申し上げました国際的なITERで開発を進めて、また、茨城県で今JT60SA、私も先日視察をさせていただきまして、機器、そういった設備、こういったものをしっかり見てまいりました。研究開発の大事さをすごく改めて確認したところでございます。

 やはり核融合炉というのは、難しいのは材料面であります。その上で、技術開発の観点から、技術的な課題というのはどのように捉えているか、トリチウムを含めて御説明をお願いします。

林政府参考人 お答えいたします。

 フュージョンエネルギーの実現に向けては、プラズマの安定的な維持などの物理面、各機器の製作、統合技術の確立などの工学面の技術課題があると考えており、その解決に向けた研究開発を推進しております。

 具体的には、核融合科学技術委員会において、原型炉開発に向けた技術課題を項目ごとにまとめたアクションプラン、これを作成し、その項目に沿って産学官が共同しながら研究開発を実施しているところです。その中には、トリチウムの安全性の取扱技術開発や、放射性廃棄物の処分等に関する検討、低放射化フェライト鋼を始めとする核融合炉材料の開発、燃料の確保方策の検討などについて掲げられております。

 例えばでございますけれども、委員の御指摘のあった材料ということであれば、例えば、低放射化フェライト鋼のスペックの明確化や技術仕様の提示、あるいは大量に製造する技術の確立、こういったものが項目として挙がっておりますし、トリチウムの安全取扱技術ということであれば、トリチウムの除去系、計量管理の確証試験であるとか、トリチウムと材料の相互作用、そういったもののデータの取得等々の項目を挙げて、これは全国の大学、研究機関と共同しながら進めている、こういったことをしてございます。

 引き続き、核融合の早期実用化に向けて、必要な研究開発をしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

空本委員 まだまだ大変大きな課題も残っていますが、やはり研究開発は大変重要であります。そういった意味で、国がしっかりと支えていただきながら、国際的な技術協力の面もございますので、しっかりとお願いしたいところであります。

 やはりトリチウムの量というのがこれは桁違いであります。福島の十桁ぐらい違うもので、この安全閉じ込めというのはすごく大事でありまして、また、放射化物、若しくは中性子によって放射化するもの、さらには、トリチウムが表面に付着する、さらには溶解、金属に溶け込む、こういった問題もあります。そういった問題も含めて、しっかり課題解決、この研究開発を進めていただきたいのでございますし、先ほど畦元議員からありましたように、アクチニウムの開発、こういったものを高速炉でしっかりやっていただきたいというのがございまして、資源エネルギー庁、そして文部科学省、しっかり支えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

中根委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党、平林晃と申します。

 まず初めに、他委員会との兼ね合いで質問時間を調整いただきましたことを心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 中国電力島根原発二号機の再稼働が来年の夏に予定をされております。ここでいよいよ重要になってくるのが防災計画の実効性であります。計画の中身を検証し、課題を洗い出していくために、先週の日曜日、十一月五日に、鳥取、島根の両県で原子力防災訓練が実施されたと伺っています。昭和五十七年に第一回が実施されたということで、今回は三十二回目となり、百五十機関、三千九百名が参加され、明年の再稼働に向け、緊張感を持って実施されたと伺っています。

 訓練自体は大きな混乱はなかったそうですが、一方で、実際に原発事故が発生した場合、想定どおりにいかないのではないか、こういった声も上がったようであります。

 行政の立場から、今回の訓練をどのように評価し、どのような課題が得られたと考えておられるでしょうか、見解を伺います。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、十一月五日に島根県と鳥取県におきまして、放射性物質が放出された後にUPZの住民が一時移転をするという想定で、バスと自家用車を用いて避難先へ移動するという住民避難訓練が実施されております。

 現在、両県において、訓練後の住民を含む参加者からのアンケートを回収しているというところでございまして、今後、評価結果を取りまとめる予定と聞いております。

 両県では、今回の訓練を通じまして、引き続き原子力防災体制の充実強化を図っていくという方針としておりますので、内閣府としても、この取組をしっかり支援していきたいと考えております。

平林委員 まだほんの九日前であり、意見をこれから集約するというお話であったかと思います。これはしっかりと集約していただきまして、今後へしっかり生かしていただきたいと思います。

 その上で、我が党の島根県本部代表吉野和彦県議が参加された方からいただいたお声を少し伝えさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。

 例えば、松江市から江津市へ自家用車で移動する、こういう訓練に参加された。西に片道で百十キロ程度でありまして、通常移動であれば、およそ二時間程度になります。今回の訓練では、途中、線量検査所を経由して、二時間半から三時間程度の時間で移動されたそうで、スムーズな移動であったと感じます。避難経路上では要所要所に表示が出ていたそうで、経路を間違えることなく目的地にたどり着けたということですけれども、やはり本番にこれだけスムーズに移動できるのか、車の数は当然違ってくると思いますし、線量検査所を経由して最初の目的地の方にたどり着く、こうした点については事前にしっかりと県民に周知をしていただく、これが必要であろうというふうに考えておりますということが一つありました。

 また、線量検査場所に車両が集中した際に円滑に対応できるのか、こういう心配の声も上がったということであります。この点については、迅速検査のための資機材の継続的更新や最新機器の導入など、国のサポートも必要ではないかと考えております。

 さらに、今回の自家用車移動訓練に参加された方には燃料代の実費が支給されたということでありました。今後、参加者を増やしていく必要があろうかと思いますので、必要経費、国からの支援強化も検討が必要かと考えております。

 最後に、最大の課題であると感じますのが、重大事故が発生した際の自宅退避の徹底であります。我先に避難したいと思う住民、これをいかに自宅等で退避をさせるのか、その辺りについての周知活動、これは、地元自治体は当然やるんですけれども、国にも積極的な取組をお願いしたい、こういう意見がございました。

 以上、率直にお伝えさせていただければと思いますが、これは直前に伺ったので通告できておりませんけれども、もし現時点でいただける御答弁がありましたら、いただけたらと思いますけれども、いかがでございましょうか。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 事故が起きた際に実際に対応ができる能力を高めておくということは大事だと思っておりますので、今回の訓練も、両県による訓練もそうですし、研修、そういうものを通じまして災害対応能力の向上に引き続き取り組んでいきたいと思います。

 それから、資機材の件についてもございましたけれども、例えば、放射線の測定をするような装置、そういうようなものの校正とか更新というものは、今、自治体の管理のものはしっかりとなされておりますので、引き続き、そういう更新とかに必要な経費、そういうものについては内閣府として支援していきたいと思っております。

 以上です。

平林委員 ありがとうございます。

 本当に引き続き御支援をいただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、ALPS処理水の海洋放出に伴いまして、今、中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止をしている、これに対して、経済産業省は、九月四日、総額一千七億円に上る「水産業を守る」政策パッケージを発表、実施をしてくださっております。これには、我が党が現場の声を基に政府に提出した緊急決議の内容を反映をしていただいていると承知をしております。

 当初、中国向け輸出が昨年同月の五十三億円からゼロになるという深刻な影響を受けたホタテ事業者の皆様でしたが、このパッケージの実施を始めとして関係者の絶大なる御尽力により、米国に販路を見出すなど、事態打開の糸口を見出しておられます。

 本格的に事態を打開していくためには、これからの支援がより一層重要と考えております。この点について政府の見解を伺います。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がありましたように、全国の水産業の支援に万全を期すべく、千七億円の「水産業を守る」政策パッケージを取りまとめまして、支援を開始してきているところでございます。

 具体的には、需要減が顕著なホタテなどに対しまして、一時買取り、保管をする取組への支援、新規の販路開拓、ビジネスマッチングなどの支援を通じました輸出先の転換対策を講じるとともに、既存の加工場のフル活用に向けまして人材活用や加工機器導入などによる国内加工体制の強化対策を講じているところでございます。

 さらに、今般の経済対策におきましても、一時買取り、保管や販路拡大への支援を拡充いたしまして、加えて、地域の拠点となる加工施設の整備、加工事業者への資金繰り等への支援を行うこととしており、今後も、関係省庁とも連携しまして、スピード感を持って対策に万全を期してまいります。

平林委員 ありがとうございます。

 今回の経済対策は補正予算でもしっかりと御支援をいただいているということでございまして、しっかりと引き続き取組をお願いします。

 また、輸入停止措置の即時撤廃、これに関しましては、まさに明日から始まるAPEC、アジア太平洋経済協力会議において日中首脳会談を是非開催をしていただいて、建設的な対話をしていただきたい、このように御期待を申し上げますので、是非関係の皆様、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、この委員会で既に二回質問させていただいている内容を再び質問させていただければと思います。東京電力福島第一原発二号機におけます燃料デブリの試験的取り出しに関してであります。

 本件については、本年六月八日に伺ったときに、既に一回の延期が行われていた段階で二度目の延期がなされてしまって、今後、作業がどうなるのか、この見通しを尋ねたところでございました。

 そのときの政府側の御答弁は、現在、ロボットアームのソフトウェアの改良、それからその検証作業を進めており、それと並行して、二号機建屋内においては、放射性物質を閉じ込める隔離部屋等の設置作業を行っている、原子炉格納容器内につながるハッチを開けるための作業も現在進めている、こういう答弁があったところでございました。

 それから今五か月が経過をしているところでございますけれども、現時点でこの作業はどうなっていますのか、進捗を伺います。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 二号機の燃料デブリの試験的取り出しでございますけれども、委員御指摘のとおり、引き続き、楢葉町にありますモックアップ施設でロボットアームの改良、その検証を進めるとともに、原発の現場におきましても準備作業の方を進めてございます。

 具体的には、ロボットアームを投入する原子炉格納容器につながっております貫通孔というのがありますが、こちらのハッチの開放作業の方を進めてまいりました。

 作業の途中で、ハッチを固定しております多数のボルトがあるんですけれども、こちらの方が強固に固着をしていたということでございまして、様々な工法を試みて、十月十六日にこのハッチの開放に至ったというところでございます。

 また、ハッチ開放を受けまして、ロボットアームの投入に必要な貫通孔の中の空間を確保する必要がございます。貫通孔内にある堆積物を除去するため、堆積物除去装置をこれから設置する準備を進めていっております。

 加えまして、堆積物除去作業に時間を要する場合にも備えまして、堆積物が完全に除去できない状態でも燃料デブリを取り出すことが可能な方法といたしまして、過去に一度、格納容器の中に挿入した実績のあります釣りざお型の、テレスコピック式アームというふうに呼んでおりますが、こちらの使用の準備の方も進めております。

 難易度の高い作業でありますけれども、こうした作業、調査を通じて明らかになってまいります最新の状況を踏まえながら、引き続き、安全確保を大前提に進めてまいります。

平林委員 ありがとうございます。

 五か月かかってようやくハッチが開いたということでありまして、どれだけ困難を伴う作業であるのかということを感じております。

 また、開けましたら中に堆積物が詰まっていて、それを取り除かなければ元々予定しているロボットアームが入らないという可能性もある。また、その堆積物がどんなものかまだ分かっていないということかというふうに思いますので、それもしっかりと調べながら作業を進めていく。別のロボットアームの利用も検討している。本当に非常に難しい作業を進めていただいておりまして、改めて、現場で御担当いただいている全ての皆様に心から感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 それとともに、今後の作業においても、今、開けて分かったこと等がございましたが、想定外の困難に遭遇されることもあろうかと思います。その場合にも、状況を国民にきちんと御説明をいただいて、これに対してどう対応していこうとしているか、そういう方針も御説明いただくなど、透明性を持った作業の継続を御指導いただきたいというふうに思っております。そういった姿勢、作業を国民全員で見守って応援をさせていただければというふうに思っておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、これも非常に難しい問題でありますけれども、特定放射性廃棄物の最終処分場に関してお聞きをできればと思います。

 本年九月、対馬市長が、受け入れない、この意向を表明されるなど、選定はいまだ難しい状況にあると認識をしております。より多くの自治体から手が挙がるようにするために国は更なる努力をすべきであると考えておりますけれども、この点について政府の見解を伺います。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 高レベル放射性廃棄物の問題は、原子力に対する国民の皆様の懸念の一つであり、将来世代に負担を先送りしないよう、我々の世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要と考えております。

 その上で、対馬市長が文献調査を受け入れない意向を表明されましたように、最終処分に関しては様々な御意見があるものと認識しております。そうした地域の声を踏まえながら、国として、文献調査の実施地域拡大を目指し、全国で必要な情報提供等に取り組んでいく考えでございます。

 例えば、国民各層の皆様に理解を深めていただくため、少人数で双方向のやり取りを重視した対話型説明会を全国で百八十回以上開催してきております。

 また、本年四月には、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針を改定し、国から自治体への働きかけも強化してございます。

 具体的には、全国の自治体を個別訪問する全国行脚を七月から開始し、九月末までに二十二の自治体の首長を訪問させていただいたところであります。

 是非一つでも多くの自治体に関心を持っていただけるよう、最終処分の実現に向け、政府一丸となって、かつ政府の責任で引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。

平林委員 ありがとうございます。

 基本方針を改定をしていただいて、全国行脚を積極的に進めていただいているということであります。この最終処分の問題は、本当に国民全体で考えていくべき問題であるというふうに思っております。今御答弁の中にもありましたけれども、本当に多くの皆様に関心を持って、一緒になって考えていく、このことが大事だと思っておりますので、引き続きの取組をよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、最後になりますけれども、ペロブスカイト太陽電池に関しましてお聞きできればと思います。

 政府とともに我が党も再生可能エネルギーの主力電源化を訴えさせていただいております。その中で、二〇三〇年に、再エネの中ではトップの一四%から一六%の供給が目標とされていますのが太陽光発電であります。この重要な太陽光発電の次世代技術として期待されておりますのがペロブスカイト太陽電池でありますが、実用化に向けて、現在どのような状況にあって、どんな取組を進めておられるのか、政府の見解を伺います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 ペロブスカイト太陽電池は、委員御指摘のとおり、軽量で柔軟という特徴を有しておりまして、建築物の壁面など、これまで設置が困難であった場所にも導入可能である、また、主な原材料であるヨウ素は日本が世界第二位の産出量となっているということで、特定国からの原材料供給に左右されることなく、より強靱なエネルギー供給構造の実現にもつながる、こうしたメリットを持っております。

 社会実装に向けましては、大型化、耐久性の向上が鍵でございまして、これまでグリーンイノベーション基金も活用して支援を行ってきております。

 加えまして、今後、諸外国に先駆けて世界の市場も獲得していくというためには、投資の規模とスピード、この点が大事だと考えております。

 今年六月、公明党の御提言でも、技術自給率の向上に向けて、ペロブスカイト太陽電池の量産体制構築の早期実現に向けた支援の必要性と盛り込んでいただいております。

 こうしたことから、経産省では、二〇三〇年を待たずに早期にギガワット級の量産体制を構築すべく、サプライチェーンの構築支援予算を六年度概算要求に盛り込んでいるところでございます。

 加えまして、需要の創出も重要でございまして、関係省庁と連携しながら、建築物あるいは屋根、鉄道ののり面など、幅広いところで導入を進めていく。

 こうした観点では、量産技術の確立、需要の創出、生産体制整備というのを三位一体で進めていきたい、かように考えてございます。

平林委員 ありがとうございます。

 経産省側は、主に、今までのシリコンガラス基板とは異なる軽く曲げられるペロブスカイトに着目をしておられる。太陽光パネルを設置できるところには日本は既に設置してしまっているので、それ以外のところにもしっかりと設置をしていきたいということで極めて重要である。

 それとともに、現在既に設置されている太陽光パネルのリプレース、これも重要であると考えています。現在使われている太陽光パネルは、再利用が難しく、破棄することになると、三〇年代後半には年間五十万トンから八十万トンのごみが発生すると試算をされているというようにお聞きをしております。これは、対応は容易ではないかと思います。

 新しい太陽光パネルをまたリプレースで設置するときに、再び中国から購入するのではなくて我が国で供給できるようにするために、安価で耐久性に優れ、ごみの問題も考えますと、再利用も可能、こういった太陽光パネルの開発をしていくことも重要であると考えます。

 こんなペロブスカイト太陽電池の開発も進められているということを聞いておりまして、これは軽くて曲げられるということではないんですが、ガラス基板に形成されるもので、低価格で、非真空印刷プロセスで製造できるということで、製造コストを二分の一から三分の一程度まで削減されることが期待されるそうであります。

 こうした技術の可能性も様々なところに求めながら、我が国の太陽光発電の環境を整えていくとともに、我が国の競争力も高めていただきたい、そのように強く望んでおりますので、引き続きの取組をお願いいたします。

 最後に、最近、太陽光発電の出力抑制が問題となっております。蓄電池の開発促進や水素の生成などにも積極的に取り組むことにより、太陽光発電の能力をしっかりと生かし切っていただきたい、そんな取組も是非お願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 大変にありがとうございました。

中根委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 岸田政権は原発回帰政策に大転換いたしましたが、東京電力福島第一原発事故は、事故の進展メカニズムなど、未解明の問題を残したままであります。

 そこで、今日は、山中規制委員会委員長に質問したいと思います。

 事故から十二年後の今年三月、福島原発一号機の格納容器内部の調査で、水中ロボットに搭載されたカメラで、原子炉圧力容器を支える鉄筋コンクリート製の土台、ペデスタル、配付資料の上の方にありますが、その底の部分、底部の損傷状態が初めて撮影をされました。その結果、ペデスタル内壁のコンクリートが全周にわたって内部の鉄筋がむき出しになるまで喪失をし、外壁のコンクリートは、全周の調査では調査はできなかったけれども、部分的に喪失していることが判明をしております。

 まず、伺いますが、建設時のペデスタルの全高、高さ、それから内壁の全周、周囲の長さ、外壁の全周、そして厚さはそれぞれ幾らでしょうか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所一号機の建設時のペデスタルの全高は約九メーター、ペデスタルの内壁の全周は約十六メーター、外壁の全周は約二十三メーター、厚さは約一・二メーターであると認識しております。

笠井委員 では、水中ロボットカメラ映像で判明したペデスタル内壁のコンクリート喪失部分の長さ、それから高さ、深さ、奥行きはそれぞれ幾らでしょうか。底面、側面の侵食の深さは幾らになっていますか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 東京電力が実施をいたしました一号機格納容器内部調査により観察されましたペデスタル内部の状況から、内壁におけるコンクリートの喪失は、全周約十六メーター、喪失高さは約一メーター、喪失の奥行きはインナースカートまでの約〇・六メーターと考えられます。

 ペデスタルの底面については、内部調査により観察された範囲においては堆積物で覆われているため、現時点では、侵食等も含めて、その状況は確認できておりません。

笠井委員 更に伺いますが、映像で判明したペデスタル外壁のコンクリート喪失部の長さ、深さ、奥行きというのはそれぞれ幾らでしょうか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 ペデスタル外壁については、東京電力の内部調査で観察された範囲が限定されているため、全容は不明ですけれども、観察された開口部付近においては、露出している鉄筋の本数から、建設時の開口部から左右に計約六十度にわたって、高さ一メーター、奥行きはインナースカートまで約〇・六メーター、コンクリートが喪失していると考えられます。長さにいたしますと、喪失部は約三・九メーターと考えられます。

笠井委員 一号機の原子炉を支える土台の鉄筋がむき出しになるまでコンクリートを喪失している激しい損傷の状況が、事故発生から十二年たってようやく分かり始めたということであります。一号機から三号機まで炉心溶融を起こしたことは判明していますが、なぜコンクリートがなくなるまで破壊されたか、そのメカニズムを分かっているかが問題となります。

 原発再稼働の前提となる規制基準は、炉心溶融が起きた場合に原子炉格納容器の破損防止や放射性物質の大量放出を防止するための措置を求めて必ず想定する格納容器破損モードの一つに、溶融炉心・コンクリート相互作用、MCCIということを選んで評価することを電力会社に求めて、規制委員会はその評価の妥当性を審査をしております。

 これに関して、私は、福島事故後三年目の二〇一四年八月七日と十一月六日の当委員会で、当時の田中俊一規制委員長にもただしてきた問題でありますが、山中委員長に伺います。

 一号機のペデスタルの損傷のメカニズムは解明されているのか。溶融炉心・コンクリート相互作用、MCCIが起きたことによると断定できるんでしょうか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会では、東京電力福島第一原子力発電所事故の調査、分析に継続して取り組むため、委員や職員を始め外部有識者やJAEAから成る事故調査分析検討会を設置しております。

 この検討会では、コンクリート喪失の事象進展について、溶融炉心・コンクリート相互作用、いわゆるMCCIの可能性も含めて検討してきたところですけれども、現時点までの調査では、MCCIに伴い溶融すると理解されてきた金属部は残存し、コンクリートのみが喪失するという現象が観察されていることから、限られた情報を用いて現時点で確からしい推定をすることは困難であるというふうに考えております。

 そのため、原子力規制委員会では、模擬コンクリートを用いた加熱破損実験等による分析を進め、原因解明に向けて取り組んでいるところでございます。

笠井委員 コンクリートは溶けてしまっているけれども、鉄筋は残っているということで、限定情報で確実な推定は困難というお話でありました。

 再稼働の前提として必要な規制基準適合性審査、適合性審査ですから、これは安全審査ではありませんが、そこでのMCCIの評価を各原発の原子炉設置変更許可申請の審査書の該当部分から抜き出して表にまとめたのが、配付資料の下段の方にあるものであります。全てMAAPという名のシビアアクシデント解析コード、コンピュータープログラムを使ったシミュレーションの結果でありますが、解析の不確かさを評価しても、原子炉格納容器底部のコンクリートが溶融燃料で侵食される深さは最大でも十九センチ。

 一号機のペデスタルのコンクリート喪失量は、深さで見ると最大で一・二メートル、内壁六十センチと外壁六十センチの合計。これと比較しますと余りに大きな差があるということになっています。

 再稼働を前提とした原子炉設置変更許可申請のコンクリート侵食量と一号機で実際にあったペデスタルの喪失量に著しい違いがあるというのは、これは一体何が理由だというふうに考えられるでしょうか。

山中政府特別補佐人 御指摘いただきました各原子力発電所の原子炉格納容器下部のコンクリートの侵食量は、新規制基準適合性審査において、格納容器破損防止対策の有効性評価の解析結果として確認したものでございます。

 この有効性評価は、新規制基準に基づき整備される格納容器代替スプレーや代替注水系による注水などにより、格納容器下部に一定の水位が確保されていることを前提として、重大事故等対策が有効なことを確認しているものでございます。

 一方、原子力規制委員会の事故分析検討会では、東京電力福島第一原子力発電所一号機のペデスタルには、事故当初、ほとんど水が存在しなかったと推定しております。

 このため、両者の前提は全く異なっており、新規制基準に基づく重大事故等対策が講じられたプラントと東京電力福島第一原子力発電所一号機のペデスタルの状況とは直接比較できるものではないと考えております。

笠井委員 私の問いに正面から向き合って答えておられないと思うんですね。

 どのようなメカニズムで進展したのか分からない物理現象が現実に第一原発の一号機で起こったことが、限られた調査で明らかになったわけであります。さきの答弁で、メカニズムは不明であるということを答えられました。これまで考えられてきたMCCIという現象だけでは格納容器下部のコンクリートを喪失する現象を説明することはできないということが、事実をもって明らかになったということだと思うんです。

 これは、現在の解析コード、MAAPを使ったコンピューターのシミュレーションに基づく評価が妥当ではないということではないんでしょうか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 溶融炉心・コンクリート相互作用への対策の有効性評価においては、溶融炉心の広がり方や熱の伝達の仕方の不確かさを考慮して、コンクリートの侵食に対してより厳しくなるケースがないか、事業者が感度解析を行っており、審査の中で確認をしております。

 どのような感度解析を行うかは、個々の原子炉施設のペデスタルの形状あるいは注水条件の違いによって異なりますけれども、例えば、中国電力島根原子力発電所二号炉の審査においては、溶融炉心がペデスタル底面に均一に広がることを基本ケースとしつつ、溶融炉心がペデスタル壁面近くに偏って円柱状に堆積した場合の解析も併せて行っております。

 なお、このように溶融炉心がペデスタルの壁面近くに偏って堆積するケースでは、溶融炉心と水が直接接触する面積が大きくなって、溶融炉心からの熱が水に伝わりやすくなり、床面等のコンクリートの侵食量はむしろ小さくなる結果となります。原子炉圧力容器の支持機能が喪失しないことを審査の中では確認しております。

笠井委員 注水の話もしきりに先ほどからおっしゃっているんですけれども、炉水を注入する、注水すると、水蒸気爆発の危険もあると言われております。フランス、米国、ロシアなどは水張りをしないということで対策している。

 MAAPを使ったシミュレーションについては評価が妥当かのようにおっしゃいますけれども、一号機の状況は、水張りがないという状況だったから、状況が違っているからという理由でMAAPの適切性とは関係がないというのは、科学的に厳密な姿勢を欠いていると思うんです。一号機のペデスタル損傷で明らかになったコンクリート侵食の進行をMAAPで適切に評価できるか、これは早急に検討すべきではないか。

 そこで、伺いますが、一般的に、鉄筋コンクリート構造物が高温環境に置かれた場合に、内部の水蒸気が移動できずに表層部が爆発的に剥離、剥落される爆裂現象が起きる可能性があると言われております。一号機のペデスタルで爆裂が起きたという可能性はないんでしょうか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会の事故分析検討会では、東京電力が実施いたしましたペデスタル損傷部の調査に基づいて、コンクリートのみが鉄筋より剥離するメカニズムについて検討を進めています。その原因の一つとして、コンクリート内部の水分が外部からの高温に加熱され爆裂する現象についても着目しております。

 そのため、模擬コンクリートを使った加熱破損実験で、それらが起きた可能性について確認を進める計画にしておるところでございます。

笠井委員 MCCIのシミュレーションを行う解析コードのMAAPでは、爆裂によるコンクリート喪失現象を取り扱えるんでしょうか、取り扱えないのか、どちらでしょうか。

山中政府特別補佐人 今回、東京電力福島第一原子力発電所で見つかった一号機のペデスタルの損傷については、MAAPでは取り扱っていない事象であるというふうに考えております。

笠井委員 一号機ペデスタルのコンクリート喪失のメカニズムは不明だ、MCCIであるかどうか、確実な推定をすることも困難。現在の適合性審査での溶融燃料とコンクリートの評価項目に、MCCIを取り上げて爆裂現象を取り扱わないコンピューター解析コード、MAAPを使ったシミュレーションによる評価と審査は科学的な厳密さを欠いていると思うんですね。

 一F事故で、第一原発の事故で、これまで想定してきたMCCIが起きたとは考えられないんだったら、MCCIを前提にした解析コードによる対策が有効であるという電力会社の評価と規制委員会の審査は意味を持たないと思います。

 そういう点では、一号機ペデスタル喪失、損傷のメカニズム解明の結論が得られるまで原発の稼働は止めて、今やっている審査も中断すべきではないかと思うんですが、委員長、いかがですか。

山中政府特別補佐人 格納容器下部に水が確保されていなかった東京電力福島第一原子力発電所一号機と、新規制基準により注水等の対策が取られた通常の原子力発電所とは前提が異なるため、そもそも比較することはできないと考えております。

 その上で、現在までの事故分析での知見を踏まえましても、格納容器下部等への注水による格納容器破損の防止のための対策とその有効性の評価については、科学的、技術的に見て依然として実効性があるものと考えております。

 一方、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因究明については、今後とも継続して行い、調査、分析で得られた新しい知見については、規制基準への反映を検討してまいります。

笠井委員 一号機のことについては解明できていないわけですよね。

 本日冒頭、山中委員長は、活動状況の説明の中でこう言われました。東京電力福島第一原子力発電所の事故調査については、放射性物質の移動メカニズム、溶融炉心の挙動等の調査、分析に関する検討内容について、科学的、技術的意見募集の結果を踏まえ、本年三月に中間的な取りまとめを行いました、今後も調査、分析を行い、それにより得られた知見を規制に活用することも含め、取り組んでまいりますと。

 まさにそうであるならば、第一原発事故の未解明な問題を残したまま、現在の適合性審査を完了させてはならないというふうに思います。このことを強く求めて、今日の質問を終わります。

中根委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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