衆議院

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第1号 平成30年5月18日(金曜日)

会議録本文へ
平成三十年五月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

  内閣委員会

   委員長 山際大志郎君

   理事 石原 宏高君 理事 谷川 弥一君

   理事 中山 展宏君 理事 永岡 桂子君

   理事 松野 博一君 理事 阿部 知子君

   理事 稲富 修二君 理事 佐藤 茂樹君

      泉田 裕彦君    大隈 和英君

      大西 宏幸君    岡下 昌平君

      加藤 鮎子君    金子 俊平君

      神谷  昇君    亀岡 偉民君

      小寺 裕雄君    古賀  篤君

      杉田 水脈君    高木  啓君

      津島  淳君    長坂 康正君

      西田 昭二君    三谷 英弘君

      大河原雅子君    篠原  豪君

      福田 昭夫君    森山 浩行君

      山崎  誠君    源馬謙太郎君

      森田 俊和君    浜地 雅一君

      濱村  進君    中川 正春君

      塩川 鉄也君    浦野 靖人君

      玉城デニー君

  農林水産委員会

   委員長 伊東 良孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君

   理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君

   理事 福山  守君 理事 佐々木隆博君

   理事 緑川 貴士君 理事 佐藤 英道君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      稲田 朋美君    上杉謙太郎君

      加藤 寛治君    金子 俊平君

      神田 憲次君    木村 次郎君

      木村 哲也君    岸  信夫君

      小寺 裕雄君    斎藤 洋明君

      西田 昭二君    野中  厚君

      藤井比早之君    藤原  崇君

      古川  康君    細田 健一君

      宮路 拓馬君    山本  拓君

      石川 香織君    大河原雅子君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      後藤 祐一君    関 健一郎君

      江田 康幸君    大串 博志君

      金子 恵美君    田村 貴昭君

      森  夏枝君    寺田  学君

    …………………………………

   農林水産大臣       齋藤  健君

   国務大臣

   (経済再生担当)     茂木 敏充君

   内閣府大臣政務官     長坂 康正君

   外務大臣政務官      岡本 三成君

   農林水産大臣政務官    野中  厚君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    橋本 次郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          大杉 武博君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   内閣委員会専門員     長谷田晃二君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)


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     ――――◇―――――

山際委員長 これより内閣委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。

 先例により、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきます。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 きょうは、先日に引き続き、高度な自由貿易がどんな末路になるのか、そして、TPP及びTPP11並びに関連法案がいかに非常識なものかということを指摘をしながら政府の考えをただしてまいりますので、茂木大臣、齋藤大臣始め、簡潔にお答えください。

 時間がありませんので、簡潔にまとめて伺います。まず、高度な自由貿易と真の経済効果及び国内対策等についてであります。

 一つ目は、北米自由貿易協定における高度な自由貿易協定の大失敗についてであります。

 資料の一から六をごらんください。これは、カナダのカナダ人評議会代表モード・バーロウ氏が講演した資料から抜粋した資料でございます。

 資料の二をごらんいただきますと、ヒストリーオブNAFTAということで書いてありますが、NAFTAの見込みと実際。どう違ったか。CEOの報酬は急上昇した。製造業は、キャタピラー社は従業員給与の五〇%カット。拒否したら、その生産ラインをインディアナ州に移転。カナダ労働者六百人が解雇。さらに、四年後にキャタピラー社は生産ラインをメキシコへ移転。たった六年間で三十五万人の製造業カナダ労働者が雇用喪失。国民の所得は停滞。家計債務は歴史的水準に達した。生産性向上がうたい文句だったが、向上せず。カナダを再び資源依存国に突き落とした。

 その後、ケーススタディーNAFTA、資料の三。

 NAFTAのもとで、食料自給率と地域生産が落ち込む。NAFTA加盟国三カ国で、全て小規模農家は生産基盤を失う。カナダの農業輸出が一九八八年から二〇〇七年までの期間に百十億ドルから三百三十億ドルに増加したが、この間に農家所得は半分以下となり、カナダ農家の債務は二倍に膨れ上がった。カナダの農家は、一九七〇年の三十六万六千世帯から、二〇一一年の二十万四千世帯に減少した。NAFTAを通じて経済成長は確かにあったが、労働者への分配率は減少し、不平等が拡大をした。

 これがNAFTAの二十年間の歴史であります。高度な、ハイレベルな自由貿易の結果が、こんなことになったわけであります。

 資料の四でありますけれども、既に関税は十分低い。CCPAによると、FTA加盟国との関税は三から五%程度。三十章あるうち、関税と割当ては六章に関係するのみ。協定の重要部分は、ISDS、非関税障壁、規則などであり、それはむしろ保護主義的であり、大企業の権益を保護しているだけだ。協定は大企業の規則集みたいなものだ。

 まさにTPPの協定そのものじゃないですか、これは。

 そして、次に、資料の五ですが、TPPは参加国に七十七万一千人もの失業をもたらす。特にアメリカはひどく四十四万八千人の失業になる。日本はちなみに七万四千人の失業になる。発展途上国でも輸出シフトと生産合理化で失業増大が予想される。TPPは、不公平の拡大、国民所得における労働のシェアを縮小。労働分配率を悪化させ労働所得を資本側に移転。特にアメリカでは何十年もこの傾向が続いているということであります。

 そこで、彼女は、正しい規制は不可欠だ、さもないと二〇〇八年の金融危機をもたらす。これは、御案内のとおり、銀行と証券会社の垣根をなくしたためのリーマン・ショックを引き起こしたわけでありますが。パナマ文書、税金退避地の問題。規制は、不平等との戦い、包括的社会実現、気候変動への対処のために必要だ。自由貿易協定は真逆、大企業の保護、規制を貿易障害として考え、貿易に対する各国の政策権限を奪う。関税ではなく、新しいルールの新世代の貿易ルールをつくろう。こう言っております。

 そして、さらに、資料の七をごらんください。これはまさに、アメリカのタフツ大学が試算した、より現実的な経済予測であります。

 この表をごらんいただければわかりますように、まさにTPPによって、米国と日本だけGDPはマイナス成長。協定発効から十年後、米国のGDPはTPPがない場合と比べて〇・五四%減少、日本は〇・一二%減少が予測される。また、TPPによって、参加国全体で、先ほど申し上げた七十七万一千人の雇用が喪失。特に米国が深刻で四十四万八千人、日本は七万四千人の雇用が喪失。さらに、対GDP比労働分配率も全ての国で減少し、そのうち日本がマイナス二・三二%と断トツのトップです。

 これを見て、茂木大臣、どう思われますか。御感想を伺います。

茂木国務大臣 先生が配付していただいた資料、私の手元にありますのは資料のナンバーが全部ついていない部分もあるので、フォローできていないところがあるんですが。

 いずれにしても、NAFTA、これは米国、カナダ、メキシコの三カ国の間の自由貿易協定でありまして、そのスコープ、そしてまたスキームが必ずしもTPPと一緒ではないということは委員も御案内の上で御質問されていると思うんですが、このNAFTA交渉につきましては、現在見直しに向けた協議が行われているところでありまして、我が国としてコメントすることは控えたいと思っております。

 また、先生が資料としてつけていただきました、カナダ人評議会代表モード・バーロウ氏の講演等に関します資料でありますが、こういった自由貿易協定もそうでありますが、さまざまな政策については、さまざま見識ある方が御意見を述べられるということはあると思いますが、それぞれが一致をした意見ではない、このように考えておりまして、その一つ一つについてコメントすることは控えさせていただきたいと思います。

福田(昭)委員 これは事実に基づいて述べられておりますし、先日も申し上げましたが、スティグリッツ博士まで、自由貿易協定というのならたった三ページで済む、これは企業や投資家の貿易管理協定だ、自由貿易協定じゃない、こういうことをしっかり指摘をしているわけであります。こういうことを考えないと、後ほど質問しますけれども、十年後、二十年後、大変なことになると思います。

 時間の関係で、三つ目は総合的なTPP等関連政策大綱の実施についてでありますが、TPP11を含む、今回立てたこの計画でありますが、予算執行、平成二十七年から二十九年までは既に執行していると思いますけれども、平成三十年度の予算執行に、この11協定が発効しないと予算執行に影響がありますか。確認をしておきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 政策大綱に掲げられた施策には、農林水産業の体質強化策のように、TPPの発効を見据えて、これに備えることを目的として協定の発効前から実施するものと、米の買上げなどのように、協定を発効した後に必要となる施策の二種類がございます。

 現在、関連予算、政策大綱を実現するための予算として実施してきているものは全て前者に相当するものでございますので、いずれにしても実施していく必要があるものと考えております。

福田(昭)委員 ということは、別にTPP11協定を発効しなくたってこの予算は執行できちゃうんですよ。これは総額だと何と一兆六千億を超えます、四年間で。ですから、全く11協定を急いでやる必要はありません。

 そこで、その次の財源確保は省略します。関税が一兆円余りあるわけですが、これがゼロになったとき国内対策の財源はどうするんだという、ちゃんとこうしたこともしっかり議論した上で進めないとだめだということを私は指摘しておきたい。

 それで四つ目でありますが、TPP協定は米国によってもう既にほごにされているんじゃないですか。何かきのうも、総理の発言ですと、このTPP協定と関連法案を成立させて、アメリカに、二国間を絶対やらない、どうしてもマルチでやるんだというてこにしたい、武器にしたいという話なんですが、そんなことをできるはずがないと私は思うんですが、茂木大臣はどう思っているんですか。

茂木国務大臣 昨年の一月二十三日に、米国トランプ大統領はTPPからの離脱を表明したわけであります。それ以降、世界的に今保護主義への懸念が高まる中で、十一カ国は、議論を深めてTPPを早期に署名、発効させることの重要性について一致をし、結束を維持して協議を進め、この三月の八日には、チリのサンティアゴにおきまして署名に至ったわけであります。

 決して、米国によってTPPがほごにされた、これは、きちんと署名を迎えたということをもっても、そのような形ではないと思っております。

 また、実際、本年のダボス会議、これはちょうど……(福田(昭)委員「短くていいですよ」と呼ぶ)ちょっと、答弁。

 ちょうど一月の二十二日、二十三日は新宿で首席交渉官会合、これが持たれておりまして、御案内のとおり、その場でTPP11の協定文が最終的に確定をいたしまして、また、ターゲットデートとして、三月の八日にチリのサンティアゴで署名式を行う、こういったことにも合意したわけでありますが、ダボスにおきまして、ちょうどそのときに、トランプ大統領から、米国がTPPに参加する可能性について言及があった。

 これは、TPP11の交渉が大詰めを迎えて、こういった協定文が確定する、署名日まで決まった、こういう直後でありまして、やはり、こういった動きが米国の動きにも、またさまざまな発言にもプラスに働いているのではないかなと考えております。

福田(昭)委員 いや、それは甘いと思いますよ。トランプ大統領得意の交渉術じゃないですか、これは。これから六月にも、茂木大臣も参加して日米の新経済対話が始まるそうですが、時間がたてば、これははっきりしてくると思うんです、はっきりですよ。とてもとてもそんなことの役に立たないということがはっきりしてくると思います。

 そこで、五つ目でありますけれども、いまだTPP協定は発効していないわけですが、発効していないTPP協定を前提の11協定はあり得ないんじゃないですか。

 ですから、開催国、今回、開催国じゃない、参加国か、八十数項目、凍結をすべきだという要望があった。しかし、それがなぜ二十二項目に絞られたのか、そうしたこともしっかり情報開示をしてもらって、今回は秘密主義はないわけですから、全部出してもらって、では、なぜ二十二項目に絞られたのか、そこを検証しなければ、11が本当にいいのか悪いのかわからないじゃないですか。大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 先生が冒頭、TPPとおっしゃったのは、正確を期すために申し上げますと、TPP12のことであると思っておりまして、中段からおっしゃっているのはTPP11のことであると思っております。

 昨年の三月以降、十一カ国として結束を保ちながらTPP11をまとめていく、二十一世紀型の新しい共通ルールをつくっていくということが必要だ、その際、もともとのTPPが持っていたハイスタンダード、これはしっかりと維持しながら早期に合意をしたいということで、基本的には、マーケットアクセスを含め骨格の部分にはさわらないで、そこの中で、どうしても凍結すべき事項、こういったことについて、できるだけ絞り込むということで議論を重ねて、最終的に二十二項目になった、これが結果であります。

 どういう結果になったか、これにつきましては、個々の二十二項目がどういう項目であるか、また、それがどんな影響を与えるか、そういったことについても丁寧に説明会等でも行ってきておりますし、また、これは外交交渉であります。御案内のとおり、各国がその途中の過程でどんなことを言ったか、こういったことを一方的につまびらかにする、これは相手国との信頼関係、これにもかかわる問題でありますし、今後、累次の交渉、そういったことが、日EU・EPAであっても、RCEPであっても、さまざまなことで想定をされるわけでありまして、そういった今後の交渉に悪影響を与える懸念がある、こういったことから、これまでも慎重な対応をとってまいりました。今回もそのようにしたいと思っております。

福田(昭)委員 それは違うんじゃないですか。各国はちゃんとみんな情報を公開しているんじゃないですか。余りにも、いいですか、余りにも発効しない、TPP協定、12協定そのものが発効しないと、土台が崩れちゃうんですよ。

 これは要するにこじつけで、取り込むという協定になっているけれども、そのことについてはあくまでも政府間が決めたことであって、それぞれの国、日本の国民も含めて、十一カ国の国民にしっかりと説明して、それぞれの国会でしっかり議論をしてということ、ないじゃないですか。それこそ、今の話のように、外交交渉だから秘密だ、話はできないということでみんなやっているわけでしょう。こんなことが自由な貿易協定とは言えないじゃないですか。

 ですから、これは全く最初から、私は、TPP11協定をやるんだったら、12協定をほごにして、取り下げて、11協定を最初からやり直すべきだということを申し上げておきたいと思います。

 時間がなくなりましたので、次の方へ行きますが、TPP及びTPP11の問題点についてでありますが、一つ目から五つ目は全部まとめて聞きますが、時間の関係で、提案だけしておきます。

 TPP11が米国抜きの協定ならば、農林水産品の大幅な譲歩は撤回すべきではないか。それから、TPP交渉の別枠で、米国から米の輸入枠を撤回すべきではないか。この間のお答えでは何か慎重に対応するという話でしたが、きのう担当者とヒアリングをしたらば、WTO枠の六万実トン、それから国別枠の七万実トン、これも撤回したい、こう言っておりました。この間の局長の答弁は全くうそでした。

 それから、三つ目でありますが、三つ目は、TPP11でTPP枠やセーフガード水準を維持するのは、国益に反するんじゃないですか。やはり、米国抜きでは、輸入分を差し引くべきじゃないですか。

 それから、四つ目ですね。TPP11で、乳製品のTPP枠、これも削減すべきではないですか。米国分を減らせばTPP枠は約三割削減できると言われております。

 それから、五つ目。TPP11で牛肉セーフガード発動基準を引き下げるべきではないか。これも、米国分を減らせば、発動基準は約四割引き下げられる、こう言われております。これは指摘だけしておきたいと思います。

 六つ目でありますが、P4の大原則、十年後関税ゼロ、非関税障壁撤廃の貫徹された協定であります。先日の五月十日の澁谷政府参考人の答弁によると、関税は全て撤廃するということですから、関税には聖域はないということであります。そうすると、TPP及びTPP11協定は、国会の衆参決議に違反するのはもちろん、自民党も公約違反となります。

 自民党は、聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉には参加は反対しますと、国民に約束しているではありませんか。安倍総理がオバマ大統領と、いかにも聖域があるような思わせぶりの文書を取り交わして、交渉に参加したわけであります。

 協定の当初は関税が残りました、確かに、重要五品目も含めて。しかし、三年後の見直し、そして七年後の再協議で、十年後には関税が完全にゼロになる仕組みじゃないですか。P4の大原則が仕組まれている。

 したがって、これは、それこそNAFTAと同じように、二十年後の日本の農村地帯、地方、これはめちゃくちゃになりますよ。とんでもない協定を、しかも公約違反でやっているということです。これだけでも安倍内閣は辞職に値する、私はそう思います。

 こんな、国民をだまし、安倍内閣は、五年たって、いかにペテン内閣かというのがよくわかってきたんですけれども、TPPでも、まさにうそつき内閣ということです。公約違反内閣だということです。ですから、全くとんでもない、私はそう思います。

 そこで、七つ目でありますが、TPP及びTPP11協定並びに関連法案をぜひ撤回することを実は提案したいと思いますが、両大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 TPP11、これは、世界的に保護主義が台頭する中で、日本がリーダーシップを発揮して、自由で公正な二十一世紀型の新しいルールを確立するとともに、人口でいいますと五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという、巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであります。

 自由で公正な共通ルールに基づきます自由貿易体制こそが世界経済成長の源泉でありまして、TPP11によりまして、日本が二十一世紀型の新しいルールづくりをリードすることの意味合いは非常に大きいと思っております。国民と約束したこと、それを我々としてしっかり実行していきたいと思っております。

 TPP11を主導してきた日本として、この国会で、TPP11協定であったり関連国内法の早期承認、成立を図ることで、TPP11の早期発効に向けた機運というものを更に高めていきたいと考えております。

齋藤国務大臣 全体についてお答えする立場にありませんけれども、今、茂木大臣から答弁しましたように、TPPは、成長著しいアジア太平洋地域の勢いというものを日本が取り込んでいくために、非常に重要な協定だと私は思っております。

 しかし一方で、だからといって、農業がどうなってもいいなんという国民は一人もいないと思いますので、農林水産業については、体質強化策、経営安定対策をしっかり講じて、両立を目指していきたいと思っています。

福田(昭)委員 時間が来ましたのでやめますけれども、私も、自由貿易そのものを全部否定するつもりはありません。自由貿易を進めるなら、企業や投資家の利益最大化ではなく、真に国民の幸せにつながるような自由貿易を考えようじゃありませんか。

 以上指摘して、質問を終わります。

山際委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 私は、農林水産委員会に所属をしております。また、日本の一大食料基地でもございます北海道選出の議員でもございますので、このたびの審査におきましては、日本の農林水産業を守り抜くために、そういう観点に絞って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、このTPP11につきましては、報道されているとおり、既にタイが参加を表明をしております。さらに、韓国、インドネシア、コロンビア、台湾、英国など、多くの国と地域が関心を抱いているようでございます。日本がリーダーシップを持って取りまとめた国際的な経済連携協定に新たな参加国がふえていくことは、投資と貿易に関するハイスタンダードなルールに賛同し参加する国がふえるということで、我が国にとっては、目指す公平公正な自由貿易の拡大にプラスとなり、歓迎すべきことであると考えております。

 しかしながら、農林水産業の分野におきましては、我が国とは人件費において大きな差があり、安価な農林水産物を生産、供給できる東南アジアや南米などの国々や、我が国とは比べ物にならないほどの広大な農地で生産を行っている、いわゆる主要農業国といった国々による我が国への市場参加を、一層参入を加速させることも間違いないことと思います。また、忘れてはならないことであるとも自覚をしなければならないと思います。

 TPPの拡大に伴う我が国の農林水産業への影響については、その程度を最小限にとどめ、我が国の再生産可能な農林水産業を守り、かつ、食料自給率の向上を図っていくために、ぜひ、不安を抱いている農林水産業関係者を始め、広く国民一般にさらなる理解を得ていくことは必須であると考えます。

 TPP及びTPP11に対する理解醸成の取組について、まず、茂木大臣、御決意、抱負のほどをお聞きをさせていただきたいと思います。

茂木国務大臣 このゴールデンウイークにタイの方に出張してまいりました。タイで経済政策全般を総括しておりますソムキット副首相とお会いをいたしまして、タイがTPPに参加したいと、強い関心、コミットメントをお聞きをしたわけでありますが、ソムキット副首相は大の親日家でありまして、特に温泉が好きだと。どこの温泉が好きかという話をしたら、やはり登別を始め北海道の温泉は最高だ、こういう話をされておりまして、やはりまだまだ日本というのはビジネスチャンスが大きいな、こんなふうに感じたところでありますが。

 TPP、単に関税を引き下げるだけではなくて、知的財産の保護であったりとか、環境、労働規制、さらには国有企業の競争条件の規律、そして投資のルール、起業家が、また中小企業も含めて安心して投資できるようになる、こういう幅広い分野について二十一世紀型の自由で公正なルールをつくり出すものでありまして、参加各国の消費者が域内のさまざまな商品をより安く、そして安心して手に入れることができるようになるとともに、手間暇をかけてよいものをこしらえてきた我が国の農家の皆さんであったり中小・小規模事業者の皆さんにとってもビジネス拡大の大きなチャンスが生まれると考えております。

 同時に、農業者や中小・小規模事業者の皆さんに対して総合的なTPP等関連政策大綱に基づいてきめ細やかな対策を引き続き講じることで、海外展開支援、そして体質強化支援も含め、北海道の皆さんも、心配に感じていらっしゃる皆さんは多いと思います、国民の皆さんの不安や懸念にもしっかりと向き合っていきたいと思っております。

 こうした点につきましては、これまで、TPPのアトランタでの大筋合意以降、国会審議をさまざまな形で行わせていただいたり、また三百回以上に及ぶ説明会を通じて国民の皆さんに丁寧に説明をしてきておりまして、これは地域だけではなくて、業界団体、都道府県が主催する説明会にも、御要請いただいたら我々として積極的に職員も派遣をして、農林水産業の関係者、中小企業の関係者、消費者、食品関係の皆さんに丁寧に説明をしてきておりますが、こういったわかりやすい情報発信、提供、説明会、これからも努めてまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 ぜひ、大臣御答弁のとおり、今後も懸念の払拭のために取り組んでいただければと思います。

 さて、米国がTPPへの参加を取りやめたことによりまして、TPPそのものが当初の12から11になったわけでありますけれども、米国が参加しないTPP11については、米国による農林水産業への影響も緩和されることから、関連政策大綱に基づく対応に対する予算もその分少なくてもいいんじゃないかというような意見もございました。

 しかし、一方で、本年は日・EU・EPAが締結されることから、関連政策大綱も改定され、二十九年度補正予算にもその対応策が盛り込まれたところであります。さらに、今後、日中韓のFTAやRCEPの議論が動くなどとすれば、いよいよ、世界の趨勢としては、自由貿易が更に加速していくものと考えられます。今後、我が国も世界の農業国に対して一定の競争力を確保できるよう、農林水産に関する政策については、私はやはり一層強化していく必要があると感じております。

 まずは、TPPの関連対策大綱について、必要に応じて今後もさらなる改定を行い、農林水産業の経営安定を図り、競争力の強化の対策について充実をやはりぜひとも図っていくべきと考えます。齋藤農林水産大臣の所見を伺いたいと思います。

齋藤国務大臣 平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意によりまして我が国農林水産業は新たな国際環境に入った、そういう認識のもとにあったところに、また昨年七月には日・EU・EPAの大枠合意というのがありましたし、十一月にはTPP11協定の大筋合意に至ったということでありますので、こうした国際環境に我が国農林水産業が対処できるように、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて今農林水産業の競争力強化に必要な対策を講じているところであります。

 具体的には、委員御案内のように、産地パワーアップ事業ですとか、畜産クラスター事業ですとか、あるいは輸出拡大策などの体質強化の対策、これはもう既に講じ始めているところであります。

 そして、政策大綱におきましては、強い農林水産業を構築するための体質強化対策について、引き続き実績の検証等を踏まえた所要の見直しを行った上で、必要な施策を実施するとともに、関税削減等に対する農業者の懸念と不安、これは相当あると思いますので、それを払拭するために、TPP又は日・EU・EPA発効後の経営安定に万全を期すために、生産コスト削減や収益性向上への意欲を持続させることに配慮しつつ、協定発効に合わせて経営安定対策の充実等の措置を講ずるということといたしているところであります。

 農林水産省としては、引き続き、政策大綱に基づいて、新たな国際環境のもとで農林水産業を成長産業にするため、積極的に施策を講じて、前向きに取り組もうとしている農林漁業者をしっかりと応援してまいりたいと考えています。

佐藤(英)委員 それでは、影響を受けると考えられている農産品について具体的にお伺いしてまいりたいと思います。

 北海道は、生乳の生産において全国の五割以上を担っております。そうした意味からも、北海道の酪農を守ることは、日本の酪農と国内の乳製品を守ることにつながると思います。昨年、日・EU・EPAの影響にもありまして、北海道産のチーズの需要が欧州産に奪われる懸念を多くの農業者や農業関係者から伺ったところであります。

 農水省は、平成二十九年度の補正予算で、国産チーズの生産性の向上や品質の向上、ブランド化といった競争力の強化のために百五十億円の対策を盛り込み、我が国の酪農を守っていく体制を強化いたしたところであります。特に、酪農家に安心を与えたのは、再生産のために重要な経営安定対策でありますが、補正の百五十億円の中では、チーズ向け生乳として一定の品質を確保する場合、奨励金を交付するなど、きめ細やかな仕組みを整備されました。

 また、チーズ以外のクリームや脱脂粉乳、バターといった他の乳製品向けについても補給金制度の具体的な見直しによってケアがされたと認識しておりますけれども、改めて、昨年の補給金制度の見直しによるメリットについて、農林水産省としては現段階でどのように整理されているのか、お聞かせください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 酪農に関してでございますけれども、平成二十七年の十一月二十五日にTPP12協定の合意を受けまして策定された総合的なTPP関連政策大綱に基づきまして、経営安定対策として、協定発効に先立ちまして、平成二十九年度から、加工原料乳生産者補給金制度の対象に生クリーム等の液状乳製品を追加する、また、その補給金の単価を一本化するという措置を実施しているところでございます。

 この見直しによりまして、乳製品向けの生乳の中で将来的な需要の伸びが期待されます生クリーム等の供給の確保、また、単価を一本化することで乳製品ごとの需要に応じた柔軟な生乳供給の促進と酪農家の収益性の向上を図ることができるようになった、そういうふうに考えてございます。

佐藤(英)委員 今後もきめ細やかな対応をお願いをしたいと思います。

 次に、先ほど齋藤大臣もお触れになりましたクラスター事業について伺ってまいりたいと思います。

 昨年度の補正予算の目玉と言える国産チーズ強化対策百五十億円、そのうち五分の三に当たる九十億円がクラスター事業に充てられております。また、それ以外に五百七十五億円のクラスター事業予算がついており、合計で六百六十五億円になりました。

 酪農家や畜産農家にとっては、体質強化に向けて取り組むには過去最大のチャンスでもあると思います。私も、地元の酪農家を訪問し、クラスター事業などの効果について拝見し、お話を聞いてまいりましたが、飼養頭数の拡大や経営基盤の安定、さらには労働の効率化による負担軽減も実現するなど、事業がもたらす成果をやはり大いに実感をしているところでありまして、私も大変にやはり喜ばしい事業の拡大だなと思っているところであります。

 このクラスター事業は、これまで三回の補正予算で総額一千九百六十億円が計上されておりますけれども、今後、事業による効果をしっかりと検証しながら、同時に、さらなる体質強化にも取り組まれようとしている農家の方々をやはり更にしっかりと応援していただけるような対応をお願いしたいと思います。

 農林水産省として、今後の体質強化についてはどのような展望を持ちなのか、お聞かせください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP協定の大筋合意によりまして、我が国の農林水産業は新たな国際環境に入りました。こうした国際環境に対処できるように、平成二十七年度以降、毎年度の補正予算におきまして、国際競争力強化を図るための体質強化対策を講じてまいりました。

 その一つでございます、御指摘の畜産クラスター事業でございますが、地域の関係者が連携をいたしまして畜産、酪農の収益力の強化を図る取組に必要な施設の整備ですとか、機械の導入を支援しているところでございます。

 例えば、酪農で申し上げますと、搾乳ロボットの導入によりまして、一日の一頭当たりの乳量が増加するとか、労働時間が削減されるとか、そういう現場のニーズに応えながら、着実に成果があらわれ始めております。

 引き続き、現場のニーズを踏まえながら、これまでの実績の検証等を踏まえまして所要の見直しを行いつつ、効率的、効果的な事業の実施に取り組み、我が国畜産業の体質強化を図ってまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 ぜひ、推移を見きわめながら対応をよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、畜産についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、平成二十一年当時、肉用子牛の販売価格は一頭当たり三十万円台中盤でありましたが、翌年、翌々年と徐々に値上がりし、平成二十八年度末には八十五万円まで高騰をいたしました。その牛が出荷時期を迎える今年度は、肥育農家の大幅なコスト割れが懸念をされているところであります。

 昨年、畜産農家や関係者が、一様に限界を超えているとしてマルキンの見直しを求めていたことに対しまして、農水省の、これは英断だと私は思っておりますけれども、マルキンの九割補填が、予算措置が行われたわけであります。関係者にとっては、本当に英断であったと大変に評価をされていらっしゃることも事実であります。

 TPP対策の中では、輸入牛肉の影響によって国産牛肉の価格がコスト割れを起こした場合を想定し、これに対応するためにマルキンの九割補填を行えるよう、畜産の経営安定法の改正による九割補填の仕組みがつくられているわけでございます。

 本法案の成立によりましてTPP11が発効されれば、TPPの場合と同様に、将来、価格の低下に対応できるようになっているものであり、関係者にとっては重要なセーフティーネットであります。

 昨年、予算措置で九割補填が決定した際に、前倒しをしたという表現が報道等でよく使われていたと記憶しておりますけれども、現在も、一部に現行の予算措置に、マルキンだけではなく、法に基づく九割補填を実際に前倒して行うべきだという主張があるのも事実でありますけれども、改めて、農林水産省としての御見解をお聞かせください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 法制化した牛マルキンの補填率の引上げにつきましては、昨年十一月に改定されました総合的なTPP等関連政策大綱におきまして、TPP又は日・EU・EPA発効による関税削減等の影響に対応するものであることから、いずれかの協定発効日から実施することが適当である、そういうふうに考えてございます。

佐藤(英)委員 わかりました。

 次に、今、齋藤大臣も又農林水産省挙げて取り組まれている我が国の食と農の輸出拡大対策についてもお聞かせをいただければと思います。

 昨年、我が国から輸出された農林水産物と食品の総額は、確定値で八千七十一億円で、過去最高を記録したところであります。対前年比プラス七・六%、五年連続での増加を実現しているわけでありますけれども、来年度中に一兆円を達成するという目標に対しては、現実的にはあと二千億円の開きがあり、この差を二年で埋めるのはなかなかやはり容易ではないと思います。

 直近の、ことし一―三月期が約一〇%の伸びを記録していることを見れば、一兆円到達に必要なペースが一一%プラスアルファで、もう一歩更に頑張れば、全く手が届かないというレベルではないとも思われます。輸出拡大を進める上で、マーケティング、プロモーション、放射能や検疫などの規制の問題など、強化すべき課題は非常に多岐にわたっており、かかわっている方々とすれば、実際にはもう猫の手もかりたいような状況ではないかと思いますが、農林水産省を挙げて、政府全体を挙げて取組を推進していただきたいと思います。

 そこで、現在八千億円の輸出額のうち、食品や加工品を除く農林水産物の輸出額が一部にとどまっているという点があります。その中で、昨年、牛肉は前年比プラス四一%と、輸出が急増しました。また、イチゴは前年比プラス五七%の大幅な伸びを見せております。こうした、マーケットのニーズとうまくマッチすれば急速な輸出額の増加も見込める、いわば原石のような農林水産物がまだまだ眠っているのではないかなとも思われるのであります。

 こうした可能性のある農林水産物の発掘、輸出拡大への取組の状況について、大臣としての御見解をいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 今御指摘いただきましたように、我が国の農林水産物、食品の輸出額は、平成二十九年は八千七十一億円で、対前年比七・六%増、五年連続で過去最高を更新ということでありますが、今議員御指摘になられましたように、一次産品、これについて申し上げますと、例えば牛肉では前年と比べ一年間で約四割輸出がふえています。それから、イチゴについては約六割輸出がふえている。お米も約二割一年間で輸出がふえているということでありますので、いよいよこういった我々が主力だと考えておりますものに輸出の伸びが見られるようになってきたということだと思います。

 実は、このような傾向はことしに入っても続いておりますので、いよいよ我々のこれまでの取組の成果が出てきたなというふうに実感しております。もちろん、発射台が低いので伸び率が高く出るということはあるんですけれども、それでもこの伸び率は多くの方々の努力の結果だと思っておりますので、高く評価をしたいと思っています。

 更にこういう一次産品の輸出拡大を進めていかなくてはいけないと考えておりまして、輸出に関する規制等の緩和、撤廃に向けた取組ですとか、輸出先国の条件を満たすための支援ですとか、鮮度を保持した輸送技術の開発、導入、地域商社が複数の産地の産品を取りまとめて輸出を行う取組の推進ですとか、それから、省内に輸出拡大チームというのを設置いたしましたけれども、このチームにおける各地域の輸出産品の発掘ですとか海外バイヤー等とのマッチングですとか、そういうきめ細かい対策も強力に推進していきたいと思っています。

 今後とも、これらの取組を通じまして、さらなる農産物の輸出拡大を推進してまいりたいと考えています。

佐藤(英)委員 大臣、御答弁がありましたように、この機をチャンスと捉えて、ぜひ大臣、先頭に立って輸出拡大に取り組んでいただければと思います。

 また、今お話のあった米の輸出についてでございますけれども、農林水産省は昨年、米の輸出拡大プロジェクトを始動させました。将来十万トンの輸出目標を取り組むとお話をされておりますけれども、今後、米の輸出拡大を進める上で、特にアジアにおきましては、人口十三億人を超える中国、六億人のASEANの輸出が更に大きく広がっていかなければならないと思います。

 現状は、中国向けもASEANに対しても、人口七百万人の香港への輸出額にも満たない状況でもございます。中国市場は米だけで日本の二十倍以上の需要を持つとも言われており、まだまだ参入のチャンスもあろうかなと思います。

 今月の日中首脳会談の成果として、中国向けの精米工場と薫蒸処理ができる倉庫が計三カ所から十カ所にふえることになりました。私の地元北海道でも、石狩市が新たに認められ、地域は大変に沸いております。自給率一〇〇%の米を大きく輸出品目として拡大していくことができれば、我が国の農政に極めて大きな好影響を及ぼすことと思います。

 国内対策も含め、米の輸出拡大について、農林水産省の今後の取組、そしてまた状況についてお聞かせをいただければと思います。

野中大臣政務官 米の国内の消費量でございますが、毎年約八万トン減少している中で、米の輸出を拡大すべく、先生からもございましたが、昨年の九月に、コメ海外市場拡大戦略プロジェクトを立ち上げたところでございます。現在、五十六の戦略的輸出事業者、そして二百五十二の戦略的輸出基地が参加しているところでございます。

 農水省として、本年作付する三十年度米における取組の拡大に向けまして、プロジェクトの参加事業者、産地について、海外の日本産米のニーズを踏まえた情報交換、また地域ごとの説明会、海外実需者のインタビュー動画の配信等によって、丁寧にマッチングを行うとともに、海外における日本産米の需要を拡大、確保していくために、輸出事業者が行うプロモーション等の輸出拡大のための取組を支援しているところでございます。

 産地において、海外で価格競争力のある日本産米を供給していくために、多収品種や省力栽培技術の導入等によるコストを低減した生産の推進、また内外の新市場開拓を図るため、米の作付への支援、これは十アール二万円でございますが、等を行っているところでございます。

 先生からもございましたが、特に中国への米の輸出について、今般、御地元でもあられる北海道そして兵庫県の精米工場の追加等により、各産地から精米工場等へのアクセスの改善や、輸出ルート、流通ルートの複線化が進み、中国国内の需要に対してより柔軟に対応することが可能となることが期待されるところでございます。

 今回の施設追加も追い風としまして、引き続き、プロジェクトに参加した事業者、産地等と協力しながら本プロジェクトを推進して、しっかりと輸出の拡大に取り組んでまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 ぜひ、目標であります十万トンの目標に向けて取り組んでいただければと思います。

 次に、このTPPによりまして、ココアなど加糖調製品の我が国への輸出が増大されることが予想されます。同時に、TPPによって加糖調製品に対する調整金の制度も新たに位置づけられることになりました。

 これまでも砂糖に係る調整金制度は、製糖業者と国内の砂糖原料生産農家への支援に充てられており、経営と生産の安定に大いに寄与してきた大切な仕組みであります。

 TPP11の発効とともに発動される加糖調製品に対する調整金は、これまで一部輸入されていた加糖調製品に含まれる砂糖には調整金が適用されていなかったのも事実であります。いわゆるすり抜けの状態であったのも事実であります。

 今般、TPP11により新たな調整金の制度が動き出すことによって、ALICの砂糖勘定の改善が期待され、北海道や沖縄、奄美を始め、砂糖の原料となるサトウキビやビートの生産者は、これまで以上に安心して生産に取り組めることになります。

 TPPによるまた違った一面だと思いますけれども、これについてはどのようにお考えになっているのか、お聞かせください。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 砂糖は国民生活上なくてはならない基礎的食料であり、その原料作物であります北海道のてん菜、鹿児島、沖縄のサトウキビは、それぞれの地域におきまして、他に代替できない基幹作物となっているところでございます。

 TPPにおきましては、甘味資源作物につきまして、糖価調整制度を維持したわけでございますので、国内におけるてん菜、サトウキビ生産に特段の影響は見込みがたいというふうに考えてございます。

 一方、御指摘がございました加糖調製品につきましては、関税割当てを新たに設定したことによる輸入増大によりまして、糖価調整制度の安定運営に支障が生ずることも懸念されているところでございます。

 このため、加糖調製品についても調整金の対象として、これを砂糖の国内生産の支援に充当することなどを通じまして、国産の砂糖の競争力を強化し、糖価調整制度を安定的なものにするための糖価調整法の改正を行うこととしているわけでございます。

 これによりまして、国内のてん菜やサトウキビの生産者の所得の確保や経営の安定が図られ、将来にわたって安心して生産に取り組んでいただくことが可能になるものと考えているところでございます。

佐藤(英)委員 これまで具体的な農産品について伺ってまいりました。

 これまで長きにわたって国民的な議論を重ねてきたTPPでありますけれども、TPP11という形で、本年、その一歩を踏み出すことになると考えます。日本、とりわけ日本の農林水産業は、ある意味でこれから大変大きな荒波に突入することになるのではないかと思います。

 国会決議にも明らかにしておりますけれども、今後も我が国の農林水産業を断固として守り抜いていっていただきたい、また農林水産業の皆さんを絶対に失望させない、この一点は政府においても今後も絶対に譲らないという強い姿勢で妥協なく取り組んでいただきたいということを固く申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 TPP関連法案について質問をします。

 まず、国内農業への影響についてです。

 農水省は、TPP11の影響額は九百億円から一千五百億円だとしています。しかし、カナダ政府は、対日輸出が八・六%、一千四百四十九億円ふえると予想しており、カナダ一国で農水省の試算額とほぼ同額に達する状況であります。

 カナダの試算と日本の試算との違いはどこにあるんでしょうか。

    〔山際委員長退席、伊東委員長着席〕

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 カナダ政府が本年二月十六日にTPP11の経済効果分析を公表したということは承知しておりますけれども、どのような前提を置いているかなど、試算の根拠が明らかではないこともございます。農林水産省として、本分析にコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 危機感が余りないようですね。

 カナダ政府は対日輸出が伸びると予想しているんですけれども、そうしたら、日本はカナダを含めて輸入はふえないと見ているのですか。これはイエスかノーかで答えていただきたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 カナダ政府が本年二月に公表いたしておりますTPP11の経済効果でありますけれども、カナダからいたしますと、TPP12からアメリカが脱退したことを踏まえて、アメリカの分のパイが拡大したということで試算をしているというふうに考えております。

田村(貴)委員 カナダも含めて日本の輸入はふえないと見ているのか、見ていないのか、イエスかノーかで答えていただきたいと言っているんです。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP交渉におきましては、農林水産分野について、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割当てやセーフガードなどの措置を獲得したところでございます。

 それでもなお残る農林漁業者の不安を受けとめて、安心して再生産に取り組んでいただくよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて、体質強化策、経営安定対策の両面で万全の対策を講じていくこととしておるところでございます。

 例えばお米については、豪州向けの新たな関税割当て枠で入ってくるお米について、その輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れることにより、国産の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断するということでございます。

 牛肉、豚肉につきましては、省力化機械の導入、規模拡大のための畜舎整備などの体質強化策を講ずるということでございますし、牛・豚マルキンの補填率を九割に引き上げるということでございます。

 このような個別品目ごとの……(田村(貴)委員「委員長、答えていない」と呼ぶ)

伊東委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。

天羽政府参考人 はい、わかりました。

 国内対策によりまして、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量は維持されるものというふうに見込んだものでございます。

田村(貴)委員 長々長々答弁されて困るんですけれども。

 結局、ふえるともふえないとも、明確な答弁はない。ふえないと見ているんですか。だとしたら、本当に危機感がないと言わざるを得ませんよ。

 それは、カナダにしても、ほかの国にしても、対日輸出がふえなかったら、何のためにTPPに入ったんですか。そういうことになるじゃないですか。日本政府の試算は余りにも非現実的であります。

 カナダの食肉協会も、牛肉だけで対日輸出を年二億ドルふやせると小躍りしていますよ。豚肉は、カナダ一国で、農水省の生産減少見込み額の二倍、牛肉も一国でほぼ同額に匹敵します。これにオーストラリア、ニュージーランドも加われば、とても政府試算の範囲内におさまるとは思えません。日本の影響は、この九百から一千五百億、もっと大きな影響になると私は考えますけれども、農家の多くもそう思っていますけれども、農水省、いかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御説明いただきましたけれども、カナダ政府の試算でございますが、TPP12からアメリカが抜けた分のパイをカナダがとりに行くという観点で試算をしておるというものだと承知をしてございます。

 次いで、日本の国内生産でございますけれども、先ほど申し上げた体質強化策、経営安定対策の両面で対策をしっかり講ずることによりまして、国内生産量は維持されるというふうに見込んだところでございます。

田村(貴)委員 影響は大きくなっていく、明確に否定はされませんでしたね。

 体質強化とか経営コストの削減とか、それから経営安定対策とか、いろいろいろいろ対策は講じているから大丈夫なんだというふうに言われるんですけれども、本当に大丈夫なんですか。一つ一つ見ていきたいと思いますけれども。

 例えば牛肉であります。昨日、五党と一会派で、野党で、マルキンの生産費の補填をする重要な制度を拡充させる法案も、法制化する提案をしたところです。

 そのマルキンも、補填割合は引き上げられたとはいえ、現状では九割で、全額の補償とはなりません。しかも、四分の一は農家の負担であります。輸入増で価格が下がれば下がるほど、農家の負担はふえて、経営は苦しくなってまいります。

 畜産農家です。肉牛の畜産農家は、大体みんな十頭ぐらいで、小さな規模で牛を育てています。繁殖させています。

 農水省は、多くの繁殖農家が、こうした機械化や合理化で対策はできると思っておられるんでしょうか。答弁願います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、我が国の畜産、法人経営だけではなくて、中小規模の家族経営も重要な位置づけを有してございます。

 そういうことも踏まえまして、例えば畜産クラスター事業では、クラスター計画において中核的な役割を果たしている家族経営も含めて、規模の拡大を支援するとともに、キャトル・ブリーディング・ステーションですとかコントラクターといった外部支援組織、そういうものの充実を支援することで、そういう組織を活用する小規模な肉用牛の繁殖農家を含む、地域ぐるみでの体質強化、こういうことを支援しているところでございます。

 また、大規模経営向けの機械導入を支援するだけではなくて、例えば哺乳ロボットですとか発情発見装置の導入など、中小規模の家族経営も含めて、労働負荷の軽減ですとか繁殖率が向上するそのような機械に対しても、きめ細やかに支援をしているところでございます。

 農林省といたしましては、引き続き、中小規模の肉用牛繁殖農家が畜産クラスター事業等によりまして成果を上げている事例も紹介しながら、地域における畜産経営の発展に向けた取組を支援してまいりたいと存じます。

田村(貴)委員 それが小規模農家、繁殖農家にマッチングしているのかという問題がありますよね。

 この間、国会内で、農家の方と農水省の方と交渉しました。御存じだと思うんですけれども。そのときに、農水省の回答で、飼料をつくったり子牛の世話をすることはアウトソーシングなんかしたらどうかと言ったら、専門家、農家の方はみんな、失笑が起こりましたよ。荒唐無稽なことが、今、本当に政策としてあって、現場ではマッチングしていない。

 北海道のある農家は、畜産クラスターは規模拡大要件があって利用できない、むしろ、規模拡大にちゅうちょする農家を離農に向かわせている、そういうことで、何とかしてくれという要求が上がってまいりました。

 今、繁殖農家が続々と離農をしている。そして、子牛が足らずに、価格が高どまりしています。これでTPPによって子牛の価格が下がれば、今度は肥育農家が打撃を受けるのではありませんか。政府の試算は全く実情を反映していないと言わざるを得ません。

 茂木大臣にお伺いします。

 アメリカがTPPに復帰しなかった場合、輸入枠やセーフガードの発動基準は、必ず米国分を差し引くことになるんでしょうか、それは確実なことなんでしょうか。米国との交渉で、TPP以上の上乗せを受け入れることはないと言い切れますか。お答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 従前から答弁をさせていただいておりますとおり、我が国としては、いかなる国、米国も含めてですね、いかなる国とも国益に反するような合意をするつもりはございません。

 その上で、TPP11、この協定の第六条は、「TPPの効力発生が差し迫っている場合又はTPPが効力を生ずる見込みがない場合には、いずれかの締約国の要請に応じ、この協定の改正及び関係する事項を検討するため、この協定の運用を見直す。」旨を規定をいたしております。

 TPP11の交渉過程におきまして、各国に対しては、個別のさまざまな話合い、協議の中で、乳製品等のTPPワイドで設定されている関税割当ての枠数量及び牛肉等のセーフガード発動基準数量について、我が国としては見直しの対象とする旨を参加国に明確に伝え理解を得た上で、閣僚会議の場でも私から念のため各国大臣に日本の考え方を伝え、特段の異論もなかったところでありまして、こういった一連のプロセスを通じて、十分各国の理解を得ている、このように考えております。

田村(貴)委員 国益を守ると言われながら、どうしてTPPの交渉で農水分野の関税措置の削減や凍結について提起しなかったんですか。牛肉、豚肉、乳製品、米、麦、果物、日本の農産物に大きな、甚大な影響が出るにもかかわらず、日本側は、削除や凍結、再交渉も何も要求しなかったのであります。

 齋藤大臣、TPPの審議で一番農業に影響が出ると言われていますので、たくさんの農家の声が私の方にも寄せられています。

 根室の酪農家は、日本の自動車を売り込むために畜産をいけにえに出し、それをカバーするために規模拡大を押しつけ高い機械を買わせるようなやり方はもうやめてくれと訴えています。長野の果樹農家も山梨のブドウ農家さんも、関税がゼロになって更に加工品が流入してくればやっていけなくなると言っています。埼玉の野菜農家は、米や畜産がだめになれば野菜に変える人もふえてくる、一%収穫がふえれば一〇%価格が下がる野菜の現状では、野菜農家は潰れてしまうと言っています。

 協定が発効していないにもかかわらず、先行して対策予算がこれまで三兆円支出されてきました。にもかかわらず、離農は相次ぎ、地域の農村は疲弊しています。これらの声を、齋藤大臣、いかに受けとめておられますか。

齋藤国務大臣 関税が下がるということ、その一点をもって、農家の皆さんは、どうなるんだろうかという不安をお持ちになる、それは大変私もよく理解できますし、私にも、今、田村委員がお聞きになっている声はたくさん届いております。

 ただ、今回の件は、ただ下がるだけではございませんで、まず、関税削減までの期間を長期間設けているですとか、それから、いざとなったらセーフガードが発動されるですとか、それから、先ほど来から申し上げておりますように、体質を強化して競争力をつけるための予算、政策というものは既に実行に移しているとか、そういうことを丁寧にお話をしながら、皆さん方の不安を払拭をしながら前へ進んでいく、そういうことが大事だなと思っております。

田村(貴)委員 マインドの問題として、輸入農産物がふえていくと将来が見通せない、それで離農に向かわざるを得ないという状況は現にあるわけなんですよね。そこはしっかりと見ていく必要があると思います。

 輸入自由化で第一次産業を犠牲にして、そして無理な規模拡大、夢物語のような効率化でカバーしようとする安倍政権による農政は、もはや限界に達しているんだ、それが今私が紹介した農家の切実な声であると思います。

 時間が参りました。いろいろお聞きしても、一番まともなことを答えていただけないということで、徹底審議、いよいよ必要になってくるのではないかというふうに思います。審議打切りなど言語道断ですよ。徹底審議を要求して、きょうの質問を終わります。

伊東委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 TPP協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案、きょうは農林水産委員会との連合審査ということで、やはり、今ありましたとおり、幅広い委員会が所掌しているTPPの関連法案ですから、更にもっと審査の時間をかけて、国民に丁寧に一つ一つをつまびらかにしていくという姿勢をぜひ政府には求めたいものであります。

 さて、きょう私は、第百九十二回国会でのTPP協定、いわゆるTPP12ですね、前のTPP協定に関する特別委員会での法案採決に際して付された附帯決議について確認をしたいと思います。

 これは、二〇一六年の二月にオークランドで、ニュージーランドにて署名をし、そして二〇一七年一月に日本が国内手続完了をニュージーランド、寄託者に通知をした、その採決の際の附帯決議です。

 附帯決議とは何ぞやということを簡単に説明いたしますが、法を執行する、法律を執行する省庁に対して国会の要望や勧告を表明するために法律に付される、委員会のいわゆる思いを込めた決議であります。その内容は法的拘束力を有するものではないのですが、委員会の意思として尊重することが求められております。その多くが、やはり附帯決議によって法律を補完するという目的も有しておりますので、私は、この百九十二国会で付託されました附帯決議について、各省庁に確認をしたいと思います。

 この附帯決議は、一から七までの附帯決議がありますが、その中から特に、きょうは時間の都合もありますので、附帯決議を幾つか絞り込んでお聞きしたいと思います。

 まず、農林水産省にお伺いいたします。

 附帯決議二の中で、「農林水産物の重要品目について、経営安定及び安定供給のための万全の対策をとること。日本の食文化を守るため、食育の推進に努めること。また、攻めの農林水産業への転換に向けて、農林水産業の体質強化と競争環境の整備等の対策を講ずること。」というふうに記されていますが、その中で、「日本の食文化を守るため、食育の推進に努めること。」ということが非常に抽象的な表現になっております。

 この「日本の食文化を守るため、食育の推進に努めること。」への取組はどのようになっているのかを確認させてください。

井上政府参考人 お答えを申し上げます。

 日本の食文化につきましては、平成二十五年十二月に和食文化がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、国際的にも高く評価をされているところでございますけれども、多様で新鮮な食材、それから、こうした素材を生かした調理技術、また、健康的な食生活を支える栄養バランスにすぐれているといった特色を有します日本の食文化を継承していくことが重要でございます。

 このため、政府におきましては、平成二十八年に策定をいたしました食育推進基本計画におきましても、食文化の継承に向けた食育の推進を重点課題の一つとして位置づけてございます。

 具体的な取組といたしまして、農林水産省におきましては、食習慣の改善意識が高まりやすい子育て世代等を中心にした日本食文化の普及に向けた情報の発信、和食レシピの料理実演を含めたワークショップの開催、あるいは、次世代を担う子供たちが日本食文化を学習し発表する取組、さらに、学校での和食給食の普及に向けた献立の開発への支援、古くから地域に伝わる食文化を継承するためのお料理教室の開催への支援といった取組を行っているところでございます。

玉城委員 今度は、続いて、厚生労働省に伺います。

 厚生労働省には、この附帯決議の第四の項目、「残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え農作物の規制、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、科学的根拠や分別生産流通管理に基づく厳正な措置を講ずるとともに、加工食品の原料原産地表示の拡大を通じ、食の安全・安心を確保すること。特に、遺伝子組換え食品の表示義務について、国民にとってわかりやすいものとなるよう検討を加えること。また、必要な検疫・検査体制を確保すること。」と、ちょっと長い文章になっているんですが。

 その中で、この第四の中で、残留農薬と食品添加物の基準、それから、遺伝子組み換え食品の安全性、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、科学的根拠に基づく厳正な措置を講ずることについてどのように取り組んでいるのか、お聞かせください。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 まず、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議を尊重し、食品の安全を確保するために適切な措置を講じていく所存でございます。

 それぞれの項目についてでございますが、まず、残留農薬や食品添加物につきましては、国際基準や食品安全委員会における科学的なリスク評価の結果を踏まえまして、科学的根拠に基づき、規格基準の設定等を行っているところでございます。

 次に、遺伝子組み換え食品につきましては、品目ごとに食品安全委員会による科学的なリスク評価の結果を踏まえまして、その安全性を確認した上で、その品目を公表し、食品としての流通を認めているところでございます。

 さらに、BSE対策につきましては、国内、国外の双方でBSEが発生するリスクが低下いたしましたため、国内の検査体制、輸入条件といった対策全般につきまして、食品安全委員会の科学的な評価結果に基づいて、必要なリスク管理措置の見直しを行っているところでございます。

 今後も、これまでと同様、食品安全委員会の科学的なリスク評価結果等に基づきまして規格基準を設定するなど適切に対応して、食品の安全を確保してまいりたいと考えているところでございます。

玉城委員 次は、消費者庁に伺います。

 遺伝子組み換え食品の表示義務、遺伝子組み換え農作物の規制等についての取組について、お聞かせください。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 現行の遺伝子組み換え表示制度は、消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保の観点から、義務表示については、科学的に検証できることを前提として、安全性審査を経た八農産物及びこれらを原材料とする三十三加工食品群を対象として、まず、分別生産流通管理が行われた遺伝子組み換え農産物を使っている場合には遺伝子組み換え、分別せずに使っている場合には遺伝子組み換え不分別という表示を義務化し、また、任意表示については、適切に分別生産流通管理された非遺伝子組み換え農産物及びこれを原材料とする加工食品には遺伝子組み換えでないなど、分別生産流通管理が行われた非遺伝子組み換え農産物である旨を表示することができることとなっております。

 この制度は導入から約十五年が経過しておりまして、制度を取り巻く現在の状況等を踏まえまして、遺伝子組み換え制度のあり方について御議論いただくため、消費者庁では、昨年四月から有識者検討会を開催し、本年三月に検討会報告書が公表されたところでございます。

 報告書には、消費者の誤認防止や消費者の選択幅の拡大等の観点から、これまでどおり、遺伝子組み換え農産物の混入を五%以下に抑えているものについては適切に分別生産流通管理を行っている旨を任意表示することができるとした上で、遺伝子組み換えでないという表示は不検出である場合に限ることが適当であることなどが盛り込まれております。

 消費者庁としては、今後、この報告書の内容を踏まえて、消費者にとって誤認の余地が少なく、正しい情報が提供されるような表示制度を検討してまいりたいと考えております。

玉城委員 食品の安心、安全に対しては万全の構えをとっていただきたいというふうに思います。

 食料自給率について質問いたします。

 昭和四十年度以降の食料自給率は、長期的に低下傾向です。平成二十八年度、カロリーベース食品自給率三八%、生産額ベース食品自給率六八%は、近年横ばいの状況にあります。

 今後、この自給率目標をどのように設定し、そのための取組をどのように進めていくのか。食品自給率、カロリーベースで三八%というのは、諸外国が一〇〇%以上のカロリーベースを持っていることに比べると、非常に低いと言わざるを得ません。

 農水省、これをどのように高めていく取組を行うのでしょうか、お聞かせください。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 食料自給率の目標についてでございます。

 食料・農業・農村基本法の第十五条第二項におきまして、食料・農業・農村基本計画の中に食料自給率の目標を定めることとされております。

 平成二十七年三月に閣議決定をされております現行の基本計画では、平成三十七年度に食料自給率をカロリーベースで四五%、生産額ベースで七三%に引き上げる目標を設定してございます。

 これに向けてどういうふうに取り組んでいくかということでございます。

 政府といたしましては、食料自給率の目標達成に向けまして、国内外の国産農作物の消費拡大や食育の推進、消費者ニーズに対応した麦や大豆の生産拡大や飼料用米の推進、付加価値の高い農産物の生産、販売や輸出の促進、さらには、優良農地の確保や担い手の育成の推進といった各般の施策を総合的かつ計画的に講ずることとしておるところでございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 済みません、ちょっと時間が来てしまいましたが、茂木大臣、この食の安全保障、それから自給率の向上について、将来アメリカが入ってくることも予想されるTPP11、あるいは日米FTAがあるかもしれない。絶対に日本の食をTPPの犠牲にさせない、その覚悟がおありでしょうか。一言お聞かせください。

茂木国務大臣 食の安全の問題、そして食料の安全保障問題、極めて重要な課題だと考えております。

 我が国としては、いずれの国とも国益に反するような合意を行うことはございません。

玉城委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。ニフェーデービタン。

伊東委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 無所属の会の大串でございます。

 早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 私、農水委員会の方なので、農水系統の質問を主にさせていただきたいと思いますが、非常に、TPP11、そして日米の新貿易協議という大きな動きもある中でございますので、答弁の内容によっては茂木大臣にも、担当でいらっしゃいますから、細かいことは聞きませんので、通告はしていませんけれども、大枠の質問に関して全体的な方向性をぜひお聞かせいただきたいと思います。

 まず、齋藤大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、総理が訪米される前、私、TPP及び日米二国間の話に及ぶんじゃないかという懸念の中から、齋藤大臣に、農水大臣として、TPPで決まっている内容以上の譲歩はもう絶対しないということを、日米の首脳会談が四月に行われるその前に、はっきり言明してくれというふうなことを農水委員会で言いました。それに対して齋藤大臣の答えは、自分としての考えはいろいろ持っているけれどもこの場では言いませんと、残念な答弁だったんですね。

 きのうの内閣委員会では、安倍総理は、この件に関して、農業分野でこれ以上の譲歩はないというふうにトランプさんには伝えているんだというふうに言われたということなんですね。あれっと思いましてね。これが本当に守られるならいいですよ。ただ、私たちは、TPP11あるいは12の内容でも非常に心配だというのが基本的なスタンスですから、そういうスタンスなんですけれども、まさか更に譲られては困る。

 総理はきのう、これ以上譲歩はないというふうに言っているということなんですけれども、農水大臣、お答えしますけれども、なぜ、アメリカに行かれる前に農水大臣として、TPPのライン以上譲歩はしないんだという考えなんだということは言明されなかったんですか。

茂木国務大臣 私も、日米首脳会談、同席をさせていただきましたが、今後、日米間でさまざまな協議も予定をされる、こういった中で、齋藤大臣とも事前に十分お話をさせていただいて、それも踏まえ、総理として御指摘のような発言をされた、このように理解をいたしております。

大串(博)委員 茂木大臣、もう一つお尋ねしますけれども、先ほど来、茂木大臣の答弁を聞いていると、国益に反するような合意をすることはないんだということを繰り返しおっしゃっています。原則論としてそうなんだろうなというふうに私は思うんですね。

 ところが、総理のきのうの発言は、国益を害するという前提条件なしに、農業分野でこれ以上の譲歩はないと言い切っていらっしゃるように見えるんですね。そこはそういう理解でいいんですか。

 すなわち、国益に反する合意をこれからするつもりはないという以上に、農水の分野に関してはTPPのラインより更に譲歩することは絶対にないという考えだということでいいですか。

茂木国務大臣 TPP12、そしてTPP11、御案内のとおり、これは、物品・サービス、投資、知財、さまざまな分野、幅広い分野をカバーしたパッケージ合意であります。

 そこの中で、重要五品目を中心にして、しっかり日本の農業を守っていく。我が国として、攻めるべきは攻め、そして守るべきは守る、こういった中で全体として合意をしたものでありまして、そこの中で、農産物等についての市場アクセス、ぎりぎりの線だと考えております。

 全体のパッケージとしてはそのような理解をしておりまして、そういったことで、ぎりぎりの線だと総理もお話をされたんだと思います。

大串(博)委員 いや、もう一度お尋ねします。

 これからいろいろな議論もある、日米で貿易協議、新しい貿易協議もあるというふうになる。そういった中で、日本としては、しかしTPPが望ましい、そういうスタンスだと聞きます。

 そうすると、アメリカとの間でもいろいろな話合いが今後あるわけですね。その中で、国益を害するような合意をしないというのは、私たち正直言って心配があるんですよ。

 それはなぜかというと、自民党さん、与党の方でのこれまでの公約は、国益を害するようなTPPは結ばない、こう言われていて、TPPに全面反対なのかなと思ったら、国益を害するような合意はしないという前提がつくということは、国益は害していないんだということでTPPを進めちゃうという理屈に逆に使われたという、私たちは非常に不信感があるものですから、国益を害さないという前提がつくと、逆に心配になるんですよね。

 はっきり言っていただきたいんです。国益を害さないという前提抜きに、農業の分野に関してはTPP以上に、これからの米国との議論においては譲ることはないと明言いただきたいんですけれども、茂木大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 国益を害さない、害することはないという前提を置かないでということが、やはり私はおかしいんだと思うんですよ。国益を侵すことが、害することがあってはいけない、こういう前提で物事というのは考えるべきだと思っております。

 そこの中でのぎりぎりのラインというのが、先ほど申し上げたところでありまして、しかも、さまざまな経済連携というのは、各国との協議の中で成り立っていくものであります。例えば、TPP参加十一カ国で、十カ国の関税は全部下げろ、日本だけは関税は何にも下げない、こんなことでは絶対まとまらないですよ。やはり、全体の中でそれぞれの国が、ここは自分としてどうしても守りたい、こういうラインの中で合意というものは成立すると思っております。

大串(博)委員 ちょっと不安になってきましたね。

 私、きのう総理がこれ以上譲ることはないというふうに言ったと、きょうも報道に大々的に出ていますので、これは国益を害することがないという前提がとれた、これはいいことだなと私は思っていたんですね。

 ところが、それを確認したいと思って担当大臣に、国益を害する合意はしないなんていう、私たちにとっては心配な前提条件なしに、農業分野でこれ以上譲ることはないとすかっと言い切ってくださいと聞いたら、何か長々と、ちょっとよくわからない答弁が続く。何となく心配になってきましたね。

 もう一度お尋ねします。

 国益を害さない、合意はしないというのはわかります。ただ、そういう前提条件なしに、農業分野に関してはTPPのライン以上に譲歩することを今後のアメリカとの協議において行うことはないと端的に言い切ってくださいよ。いかがですか。

茂木国務大臣 TPP12で合意した内容、農業分野については最大限のものであると我が国として考えております。

 その上で、いずれにしても、だから国益を害していいんだということにはならないということは強調したい。国益を害してもいいから交渉しろと言うのでありましたら、私と先生の立場は違います。

大串(博)委員 全く私が聞いていることとは違ったことをおっしゃって。

 とにかく、農業分野においてTPPのライン以上譲ることはない、アメリカとの今後の交渉において。一言言っていただければいいだけの話なんです。私との態度が同じ、違うなんて関係ないんです。一言、この場に答弁、来ていただいて、農業分野に関してアメリカとの今後の交渉においてTPPのラインより譲ることはありませんと、この場で言明していただければいいんです。ほんの短いセンテンスです。いかがですか。

茂木国務大臣 TPP12、11で合意した内容が最大である、それ以上の譲歩は考えておりません。

大串(博)委員 TPPの中でというふうに言われました。

 今後、二国間の貿易協定、貿易協議ですね、議論がある。二国間の貿易協議の中においても……(茂木国務大臣「何にも通告しないでずっと聞いているというのはどうなの」と呼ぶ)大枠の話ですから。通告はしていませんけれども、大枠の話です。もしこれで答えられないと言われたら、大臣として私はえらい問題だと思いますよ。

 二国間でこれから協議が行われる、担当大臣でいらっしゃいますね、担当大臣でいらっしゃる。その中で、今、きのう総理が言ったような、農業分野に関してこれ以上TPPのラインより譲歩することはない、これは二国間の今後の、日米の新貿易協議、これをやられるわけですね、その中でもそうであるというふうに言い切っていただけますか。

茂木国務大臣 これから始まります二国間のFFRという新しい協議におきまして、今、TORがまだ決まっておりません。今後、それぞれの国がどういった項目が関心であるのか、こういったことを詰めた上でTORも決まってまいります。

 いずれにしても、農業分野について、我々としてはTPPで合意したラインが最大限である、こういう認識のもとであらゆる交渉に当たっていきたいと考えております。

大串(博)委員 その議論の中で、私は非常にやはり心配するわけです、さらなる譲歩があってしまうんじゃないかと。

 特に、トランプさんは、TPPは嫌だ、多国間は嫌だ、二国間の方がよりよいディールができるからと、はっきり彼は記者会見の中で、日米の記者会見の中で言っているわけですね、安倍総理を横にしながら。

 よりよい取引ができるから二国間の方がいいんだという、その貿易協議に茂木大臣は臨まれるわけです。私は、非常に大変な役割を負われたと。期待もしているんです。ぜひ頑張っていただきたいと思っているんです。

 これは、やはり私たちは、日米の二国間の協議、ディールがいいんだとトランプさんが言う以上、私たちが一般的に心配する、やはりこれは日米FTAなんじゃないかというふうな思いを非常に心配な思いとして持っているわけですね。ところが、この間、齋藤農水大臣と農水委員会で議論させていただいたところ、これは日米FTAではありませんというふうに繰り返し言われたんです。

 ただ、新しい貿易に関する協議だと銘打たれていて、あれだけトランプさんが二国間がいい、二国間がいいというふうに言われた。しかも、貿易とも名前をつけられているんですよ。

 茂木大臣も、これは日米FTAみたいなものじゃないというふうに言われていますけれども、日米FTAみたいなものじゃない根拠は何なんですか。

茂木国務大臣 今回の協議の目的でありますが、FFR、フリー、自由で、フェア、公正、さらに、レシプロカルですから、両国にとって相互に利益になるような道を探っていきたい。日米間の貿易、投資の問題、さらには、新しいルールに基づいて、自由で開かれたインド太平洋をいかにつくっていくか、そのために日米間が協力をしていく、そのための方策について議論をするということになっております。その趣旨に基づいて、具体的な協議の項目等々は今後決まっていく、そのように考えております。

 先生もおっしゃっていただきましたけれども、二国間で協議をいたします。しかし、二国間で協議をすること自体は、二国間の協定ということではございません。よいディール、まあ、ディールという言葉はなかなか日本語に訳しにくいところもあるわけでありますけれども、いずれにしても、よい成果を出したいということなんだと思っておりまして、その成果の中には、日米が相互に裨益するような、よい成果の道というのもあるんだと思っております。

大串(博)委員 いろいろ聞くと、協議だから協定ではないんだということのようなんですね。私は、どうもそれも詭弁のような感じがするなと。協議を経て協定になっていくのが通常の世の中ではないかな、私は端的にそんな気がするんですよ。協議だから協定ではないというのは、私はどうも納得がいかない感じがします。

 最後に一問だけ、農水大臣にお尋ねさせていただきたいんです。

 きのうも新聞に出ていましたけれども、TPP11による関税の減少ですね、相当なものがあります。今後これがフルにきいてくれば、例えば、牛肉でいうと二百七十億の関税の減少、麦のマークアップでいっても二百二十七億の減少。どちらも、例えば牛肉であれば畜産の経営安定対策、ALICを通じて、麦のマークアップでいえば、黄ゲタ、緑ゲタ。どれも農家の方々には極めて重要な財源になっているわけですね。これがこれだけ減収になっていく。私は、相当農家の方は心配されていると思うんですね。

 この面に関して、今政府は、予算編成過程の中でしっかり取り組んでいきます、これだけなんです。こんな不安な状況で取り残されていいわけはないと思うんですね。よって、予算をどうするつもりなのか、農水大臣からできるだけはっきり答えをいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 今、大串委員が御指摘されたことは、当初私どもも心配をしていたところでございまして、なので、総合的なTPP等関連政策大綱において、この農林水産分野の対策の財源について記述がございます。

 TPP協定が発効して関税削減プロセスが実施していく中で、今御指摘のように、将来的に麦のマークアップや牛肉の関税が減少するということに鑑みて、既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保するもの、こう明記をされておりまして、これは財務省も了解をしている書きぶりでございます。

 これに即して、TPP等関連対策を講ずるに当たっては、既存の農林水産予算に支障が出ることがないように対応してまいりたいと考えています。

大串(博)委員 質問を終わらせていただきますけれども、毎年の予算編成過程でという言葉が入っているところが肝なんですね。つまり、毎年の予算の中で厳しければ削りますよ、これは財務省の常套の文句なんですよ。

 こういったことを取り残したままで、TPP11をこれだけの短時間の審議でまさか採決してしまうなんというのは私はあり得ないということを申し上げて、質問にさせていただきます。

 ありがとうございます。

伊東委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 立憲民主党・市民クラブの佐々木でございます。

 きょうは、農水委員会から要請をさせていただいて、こうして合同審査をさせていただく機会を与えていただきました。限られた時間で、私に残された時間は十九分だそうでございますので、十二問ほど用意したんですが、恐らくその半分もできないのではないかというふうに思いますが、簡潔に御答弁をいただければというふうに思ってございます。

 さきにもずっと議論がありましたが、最初に、この協定についてお伺いをしたいと思います。

 これは、ヒアリングをさせていただきますと、題名の改正と施行期日の変更だけだというんでありますが、しかし、六条の本協定の見直し条項、これは非常に気になるところでございまして、さきの、TPP、12と言ったり、いろいろな言い方をしておりますが、を含んでいるわけですね、この中に。何ゆえこの新協定が必要なのか。

 例えば、米国のことをそこの六条の中で書いてあるわけでありますが、米国が参加をするんであれば、もとの協定を使えばいい話であって、この十一カ国の協定は十一カ国のあくまでも協定で、とりわけ十一カ国の皆さん方がTPP11と言われるのを嫌って、わざわざCPTPPという名前をつけたぐらい、独立したものなんですよ。

 ですから、これは十一カ国のための協定であって、アメリカが参加するのであれば前の協定を使えばいいだけの話だと思うのに、なぜわざわざ六条の見直し条項があるのか。これを茂木大臣にお伺いします。

茂木国務大臣 まず、TPP12、もともとの協定から若干お話をした方がいいと思うんですが、このTPPの12協定は、原署名国のGDPの合計の八五%以上を占める、少なくとも六つの国が国内法上の手続を完了する必要があり、米国が締結をしない限り、発効が不可能になるわけであります。

 このため、米国以外の十一カ国でTPP12協定の内容を実現する法的枠組み、これが今回のTPP11協定でありまして、米国が昨年の一月二十三日にTPP離脱を表明した、それ以降、世界的にも保護主義等が台頭する中で、十一カ国は議論を深めて、TPPを早期に発効させることの重要性について一致をし、結束を維持し、協議を進めて、この三月八日、チリのサンティアゴで署名に至ったものであります。

 現時点でTPP12が実現するという保証は、これは誰も持てないということなんだと思います。日本を含め、参加国としては、まずはTPP11の早期発効に全力を挙げておりまして、早期にTPPの持つ戦略的、経済的意義や効果を実現したい、これがTPP11であると考えております。

佐々木(隆)委員 今の説明では余りわからないんです。

 なぜかというと、ではアメリカが今度新しく11に加盟するということになったとすれば、十一カ国との協議が必要になるわけですよね、参加するわけですから。そのとき、ではもとのTPPはどうなるんだということについて、そこには何もその規定がないわけでありまして、しかも、協定文書に前の協定を書き込んだ協定などというのは、我々もずっといろいろヒアリングさせていただきましたけれども、前代未聞だそうでございまして、こんな協定はないそうであります。

 これはぜひ別々のものとして出し直すべきだということを考えますが、大臣の答弁をお願いします。

茂木国務大臣 新たなものでありますから御審議をお願いしているということでありまして、仮に米国がTPPに加入する場合、これを考えてみますと、TPP11協定の第五条、加入の規定でありますが、この規定に基づいて、TPP11の締結国と米国との間で合意する条件に従って加入することになります。すなわち、TPP11の締結国が合意することが必要になります。

 TPP11協定とTPP12協定は別個の国際約束でありますため、仮に米国がTPP11協定に加入した場合であっても、米国がTPP12協定を別途締結しない限り、TPP12協定が発効することはございません。

佐々木(隆)委員 ですから、別々のものとして協定を結べばそれでいいのではないかというふうに思うのであります。これはぜひ出し直すべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一つお伺いします。

 茂木大臣が担当しておられる日米新貿易協議でございますが、FFRとかいうふうに言われてございますが、この新協議は、FTAの予備協議でもないし、TPPの再協議でもない。じゃ、何の協議なんですか、これは。新貿易協議なんですから、貿易のための協議をするわけですよね、ライトハイザーさんと。

 FTAやTPPのほかに、何かまだ、更に別なものをやろうとしてこの協議を始めたのか、今目の前にあるTPPとFTAをすっぽらかして、そしてこのFFRを何のためにやるのか、これについてお伺いします。

茂木国務大臣 まず、今回の新たな協議、FFRの目的について申し上げますと、四月の日米首脳会談で合意をいたしました自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議は、日米間の貿易や投資を更に拡大をさせ、そして、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域を実現するための方策について議論をするものであります。

 我々として、二国間のFTAはこの協議で念頭に置いておらず、この点についても日米首脳会談で米側に強調したところであります。その意味で、本協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものでもなく、その予備協議でもないと考えております。

 日米二国間の協議イコール二国間の協定というわけでもありません。さまざまな項目について協議をすることはあり得る。そして、じゃ、その協議の内容はどうなっていくのか。このTORについては、今後、日米双方が自分の関心のあるテーマを持ち寄る中で決まっていくと考えておりますが、そこの中で、レシプロカルですから、まさに双方の利益となるようなさまざまな成果を出していくということでありまして、必ずしも、全体での、TPPであったりとかFTAであったり、これだけが協議とはならないのが各国との間の協議でありまして。

 例えば、エネルギーの取引をするということで海外と協議をすることがあるわけであります。アメリカは、これからLNGを海外に輸出展開していきたい、こういう思いも持っているんだと思います。一方、日本の立場からしますと、今後、エネルギー源、これを多様化していく、さらにはエネルギーの調達先を多角化していく、こういったことも必要になってくる。

 場合によっては、さまざまな分野でウイン・ウインの関係というのはつくり得る、それも協議であり、それも成果であると考えております。

佐々木(隆)委員 丁寧に御答弁いただくのはありがたいんですが、時間が限られておりますので、ぜひ御協力をいただければというふうに思います。

 協議をするというのは何らかの成果を求めていくわけで、ずっとお話合いだけ一生続けているわけではないと思いますので、そういった意味では、やはり何らかの成果を求めて協議をしているんだろう。だから、当面、目の前にあるFTAやTPPをめぐって、その先の何らかの成果に目指していくというのは、ちょっと、やはり目の前に大きな課題がぶら下がっているだけに、なかなかそこはすとんとする話ではないということを申し上げておきたいと思います。

 CPTPPについて幾つかお伺いをいたします。

 皆さんのところに配付をさせていただきました。先ほど福田委員からもお話がございましたけれども、裏表になってございますけれども、一つ、資料の一の方ですが、これは、先ほど茂木大臣がさまざまな分析があると言いましたけれども、この分析は、どの学者も同じ分析です。いろんなところで出していますけれども、ほぼ同じ傾向にあります。これは、一の方は何かというと、一九八〇年代から広域の経済連携が始まって、どんどん強まっていくに従って、どんどん先進国の労働分配率が下がっているという図です。

 なぜそんなことになるのか。これは非常に単純な話ですけれども、貿易交渉ですから、お互いに強いところをせめぎ合うわけですね。強い分野をお互いに売り込んでいけば、当然、輸入した側の方はそこの分野が弱いんですから、どんどんどんどん落ち込んでいくわけです。

 結果としてそこの労働分配率が下がっていく、結果として全体の労働分配率が下がっていくというのがこの広域連携の今の宿命なんですよね。これはもう、世界の中では、この広域経済連携というのはそろそろ限界なのではないか、そろそろ見直すべきだというのが、これは、この日本経済新聞に出ていたこれだけではありません、いろいろな学者が同じようなことを言っています。

 裏を見ていただきたいんですが、もう一つは、これはもとの十二カ国を中心にグラフにしたものでありますが、輸出依存度というのが下から二列目にあります。輸出依存度を見ますと、少し黒く網かけになっているところがいわゆるP4です。P4のところは、一〇〇%か一〇〇%に近いようなところがP4だったんですね、最初。

 ですから、これは関税ゼロにしたっていいわけです。輸出の依存度が極めて高い、しかも輸入の依存度が低い、こういう国ですから、ほとんどが一国で成り立っていない国なわけです。では、日本はどうなのか。輸出依存度一五%、ちょっと古いですけれども、今、余り変わりません、一四ぐらいです。米国は九・四。要するに、輸出に依存している割合は日本もアメリカも極めて低いんです。内需国なんです。下には棒グラフにしてありますけれども。

 だから、皆さん方が説明するように、外需に依存して、そして貿易立国としてやっていかなきゃ日本は立ち行かないというのはもう前世の話です。まさにガラパゴスです。今や日本は国内をどうするかということにもっと重点を移すべきだ。

 だから、そういった意味では、アメリカのトランプさん、私は余り好きではありませんけれども、唯一正しい選択をしたのはTPP離脱なんですよ。それがこのグラフの結果だということでありますので、この見直しをやはり私はそろそろ考えるべきときに来たのではないか、広域連携全体についてですが。このことについて茂木大臣の答弁をお願いします。

茂木国務大臣 できるだけ簡潔に答弁をさせていただきたい。もし不足がありましたらまた追加で答弁をさせていただきますが。

 自由貿易は格差を拡大させる、確かにそういった意見はあることは承知いたしておりますが、一方で、労働分配率の低下、そして格差を生じさせる主な原因、これにつきましては、第四次産業革命、AIであったりIoT、ロボット含め、そういった技術革新などの他の要因であるとする見方も多い、このように承知をいたしております。

 そして、TPP11の経済効果については、内閣官房のGTAPモデル分析では、GDPの押し上げ効果が七・八兆円、四十六万人の雇用増と、大きな効果が見込まれると試算をされております。これは関税だけの直接的な効果ではなくて、貿易、投資機会の拡大等、国内の生産性向上、雇用の拡大にもつながるものであると考えております。

 TPPであったり日・EU・EPAといった経済連携、これは経済連携の推進でありますけれども、経済連携の推進イコール外需依存だとは考えておりません。外需の獲得、こういったものもありますが、今申し上げたような国内の投資、生産、消費全体を押し上げる効果が見込まれておりまして、海外への経済連携の推進が、内需主導の景気回復、そして国内経済の拡大にもつながるものだと考えております。

佐々木(隆)委員 その発想が実は極めて私は危険だというふうに思っております。いろいろな内需があるんだというのはそのとおりなんですが、それがどんどん時代とともに動いていくわけですよね。同じところでずっととどまっているわけではなくて、同じように全部が成長するわけではない。

 その結果として、今、茂木大臣がおっしゃったようなITとかそういうところがどんどん伸びていく中で、その反対に、輸入によって影響を受ける農業なんかがどんどん疲弊をしていく。そのことは地域の格差にもイコールつながっていく。

 先ほど来、国益国益とおっしゃっているんですが、日本全体として大きくなるということと地方の格差が広がるということは、これは全く、ある意味で同じというか、国全体が大きくなったって国内での格差は広がることはあり得るわけでありますので、そこへの目配りが必要だということを先ほど来申し上げさせていただいているところでございます。

 幾つかまだあるんですが、それともう一つは、CPTPPについての中身について知らされていないというお話が先ほど来あります。交渉事だから明かされないといったって、もうこれは結果が出ている話ですから、ある程度のことは言っても何ら差し支えがないというふうに思います。これは影響試算についても同じです。農業の影響試算についても同じですが、幾ら説明をされても、途中のプロセスを共有することができなければ、どんどんこの対象になっている人々は不安になるだけなんです。半信半疑になってしまう。だから、プロセスも共有すべきではないかということを我々はずっと主張させていただいているわけでありまして。

 この交渉過程をまず明らかにし、そして、影響試算も、GTAPの話が出ましたが、あれはGTAPのイカサマですから、GTAPにないものをあそこの中に入れてGTAPだといって説明をしているので、いずれも出し直しをしていただくように求めます。

 委員長、取り計らいをお願いをいたします。

伊東委員長 わかりました。

佐々木(隆)委員 時間がなくなってきておりますので、もう一つは体質強化の話がございます、これも指摘だけさせていただきますが。

 既に体質強化はやっている、TPPが発効したら更に対策をやるんだというんですが、ではTPPがなければこの体質強化はやらなかったのかということになると思うんですが、これは、当然やらなければいけないものを、TPPの対策費を膨らませるために、わざわざTPPの方へ持っていっただけであって、例えばマルキンにしろ、それから畜産クラスターにしろ、強い農業づくりにしろ、これは本来やらなければいけないものを持っていったということであって、これについても再考していただくことを求めます。

 最後に一つだけお伺いします。

 いろいろな経済連携が進行しているわけでありますけれども、そのいろいろなTPP、どこで誰がどのようにグリップしているのかということについてお伺いいたします。

 多分、これは外務と内閣といろいろ散らばっているんだと思うんですね。茂木大臣がお相手をしている相手はUSTR、これは全部やっています、一カ所で。日本にそういう戦略がないということが、閣議でちゃんと共有しているとおっしゃるんでしょうけれども、そうではなくて、ちゃんとした仕組みをつくることが必要だということについて答弁をいただいて、私の質問を終わります。

岡本大臣政務官 お答え申し上げます。

 経済連携の交渉に当たりましては、これまでも、官邸の指揮のもと、関係各省庁で緊密に連携をしつつ、政府一丸となって取り組んできておりますし、今後も交渉の内容に応じて適切な体制を構築してまいります。

佐々木(隆)委員 終わりますが、だから、今、外務副大臣が出てきて答えなきゃならないようでは困るんですよ。茂木さんが全部答えられるようでないと、ちゃんとやっていますという話にはならないので、そのことを申し上げて、終わります。

伊東委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 国民民主党の後藤祐一でございます。

 農水委員会から質問に立たせていただきました。連合審査の開催と質問させていただくことに感謝申し上げたいと思います。

 まず、配付資料を、まだ皆さんのところに届いていないかもしれませんが、三枚ほど、これは農産物に限定していますが、各農産物ごとに、TPPで関税などがどうなるか、そして主な輸入先国はどこかというものを表にしたものをお配りさせていただきました。

 二年前にTPPの特別委員会で、まさに品目ごとに、えっ、これはこんなになるのかという意見がいろいろありました。例えば、私のところ、ミカンをつくっているところなんかもあるんですが、一ページ目の真ん中ちょっと下ぐらいのところにオレンジ、生果とありますが、初年度に二〇%削減、これは十二月から三月にできたものですね、これは結構大きな削減だと思いますし、二ページ目の頭のところ、これも私のところにあるんですが、ブドウなんかも、三月―十月は一七%を、即時関税撤廃、結構大きいですよね。こういった事実、ぜひ皆様の地元の産品を見て、うわ、これは結構きついんだなということを改めて御確認いただければと思いますが。

 その中で、12であった場合と11であった場合の効果が実は結構違ってくる、特に11の場合に、よりダメージが大きくなる可能性があるんじゃないかということで、一つ指摘をさせていただきたいと思いますが。

 この中で、アメリカが主要な輸入先国になっているものが当然たくさんあります。例えば、インゲンなんかはアメリカが二八%、カナダが二一%。太字は、TPPの十一カ国の国を太字にしていますが。オレンジの生果についてはアメリカが六七%、豪州が二九%といったように、アメリカとそれ以外のTPP11国がこういった三カ国に入っているようなものについては、これから何が起きるかを考えると、これは齋藤大臣に質問しますけれども、まず11が発効します。

 そうしますと、アメリカではなくて、例えばインゲンであれば、カナダは関税が下がるわけですよね。枠外のところは大丈夫だとか、いろんな議論があるんだと思いますが。そうしますと、こういった11国の方が、まず日本への輸出がふえる。そうすると、設備投資をしたり畑を広げたりといったことで、一回そこで、もう事実上の、日本への輸出の量というのがふえた分を先にとっちゃうわけですね。

 その後で、もしかしたらアメリカが、TPPの12になって入ってくる、あるいは、これはそうなってほしくはありませんが、日米のFTAみたいなもので入ってくる。そうしますと、最初からTPPの12でアメリカとそれ以外の国が一斉にどんと入ってきた場合に比べて、時間差があるがために、アメリカ以外の国がどんと一遍にとって、その後、アメリカが入ってきた分もまたとって、この時間差がある方が、日本に対する輸入の総量がふえてしまうんではないか。そして、その結果、価格も下がってしまうんではないか。二重の意味でダメージが大きくなるんではないかと思いますが、とりわけ、ぱっと今見た、インゲンとか、オレンジの生果とか、ブドウですとか、大丈夫でしょうか、農水大臣。

    〔伊東委員長退席、山際委員長着席〕

齋藤国務大臣 ちょっと私、後藤委員の質問の趣旨がわかりかねるところがあるんですけれども、最初からアメリカが入ってきて、インゲンなんかを見ると、恐らくアメリカの方が競争力があるのかなと、シェアが大きいですからね、思いますが。

 ただ、最初からアメリカが入ってくるケースと、それから、最初にアメリカ抜きで枠をほかの国が埋めて、それを後からまた競争力のあるアメリカがTPPに復帰をするということであれば入ってくるということになるわけでありますが、その影響については、いずれにしても、関税もそれから関税枠も同じでありますので、国内に与える影響というものは変わらないんじゃないかと私は今思っておりますが。ちょっと精査は必要かもしれませんが。

後藤(祐)委員 制度によってそれが守られているものと守られていないものがあると思うんですね、大臣。例えば、これは事前に事務方から聞いたんですけれども、インゲンなんかは、枠外のところは日本の生産分は、物すごい高い関税がかかるというのが、そこは維持されるということになっています。ですから、日本の生産の分は生産した分だけ守られていますので、需要がふえた分のところは別として、日本の国内は守られるので、インゲンは大丈夫です、確かに。

 ですが、ブドウはどうかというと、ちょっとわからないですよね。ただ、ブドウは、チリは南半球なので、アメリカとは、さっき言った関係で、もしかしたらないから大丈夫なのかもしれないといったように、一つ一つこれを分析しないと、日本の生産分だけはきちっと守られている、インゲンのような形のものは全部守られているんだったらまだいいんですけれども、必ずしもそうでないものもあると思うんですね。そこは、時間差が生まれてしまったがゆえに被害が大きくならないように、しっかり考えてやっていただきたいと思います。

 次に、マルキンにいきたいと思いますが、配付資料の四ページ目に、肉用子牛価格の推移というものを配付させていただきました。これは生まれたての子牛の価格ですが、牛マルキンについては、この三十年度から九割が予算で計上されておりますけれども、子牛の価格が過去にないほど高騰しているということで、緊急対策として補填率九割にしたということで。

 その四ページ目の、これはどうも、二十カ月ぐらいですかね、生まれてから二十カ月ぐらいで平均で出すということなので、二十カ月前ぐらいの価格というのが参考になるそうなんですが。二十八年の十二月というのが八十五万千四百円で最高値でありまして、この牛が平均すると三十年の八月ぐらいに出す牛になるということで三十年度は九割が認められたと伺っております。

 ただ、その後、子牛の価格は下がっているんですね。直近でいいますと、七十八万二千円、そこにありますね、ぐらいまで下がっている。この七十八万二千円程度で今後推移した場合は、仮にCPTPPが発効していなかった場合、この牛マルキンは八割に戻ってしまうんでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 牛マルキンは、先生御指摘ございましたとおり、子牛価格の過去にないほどの高騰ということで、肉用牛の肥育経営の収支の悪化が懸念されますので、国際協定締結の対応とは切り離した緊急の肉用牛肥育経営安定対策として、平成三十年度単年度の措置といたしまして補填率を九割に引き上げることとしておりますので、平成三十一年度については八割に戻る制度設計となってございます。

後藤(祐)委員 今おっしゃったのは、この子牛価格の相場だと八割に戻ってしまうという答弁だと理解しました。もう数字はわかっているわけですから。大変なことになるわけですね。

 しかも、これは茂木大臣に伺いたいと思いますが、TPP11、CPTPPはいつごろ発効の見込みでしょうか。もちろん、六カ国が批准ということが条件ですから明確には言えないと思いますが、三十年度、今年度中、あるいは三十一年度中ぐらいまでに発効する可能性というのは少しはあると考えてよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 このTPP11につきましては、参加十一カ国のうち六カ国で国内手続を終了した後、六十日で発効、こういったことになっておりまして、既にメキシコは四月の二十四日に国内手続を終えております。

 そして、私も、三月のチリでの会合、さらには、その後、各国のカウンターパートの閣僚とも、各国での準備状況、いろいろな話をしておりますが、予想以上のスピードで各国の国内手続は進んでいると考えておりまして、もちろん、各国の国内手続ですから、確実にこうなりますということは申し上げられないんですが、来年早々にも発効ということは十分期待できると思っております。

後藤(祐)委員 来年早々にも発効ということは期待できるという御答弁がありました。私は、どちらかというとCPTPPには反対という立場でございますので、決して望ましいわけではありませんが、発効するとなれば、このマルキンに関して言うと、豚も含めて予算が必要になるわけです。

 来年早々というと、今年度中の可能性も含めた話になるわけですが、三十年度予算は、牛はいいですけれども、豚は確保されていませんよね。その場合は補正予算とかそういうことになるかもしれませんが、三十一年度というのは、発効になっている可能性が更に高くなっていると思うんです。

 齋藤大臣に伺いますが、三十一年度予算では、牛、豚も含めて九割の予算を要求すべきではないでしょうか。

齋藤国務大臣 後藤委員の言うこともわからないわけではないんですが、この協定の発効がいつになるかというのは不確実な情勢の中で、そして、その法律が実際に施行されるということになりましたら、その時点で、法律に基づく措置でありますから、必要な予算というものはしっかり確保する、いかなる事態においてもということでございます。

後藤(祐)委員 つまり、CPTPP整備法のマルキン部分というのは事実上の予算関連法案なんですね。

 我々は、このマルキンの部分だけ取り出して、法律をきのう提出をさせていただきました。法律が通ったらすぐ施行すべきだという趣旨でございますが。

 ぜひ、この整備法も、我々、反対の立場ではございますが、このマルキン部分は、法律が通ったらすぐ施行するように修正すべきじゃないでしょうかね。あるいは、せめて来年四月一日には施行になるようにして、三十一年度予算をこれから夏に要求していくわけですよね、大臣。もし来年四月一日施行ということがこの法律に書いてあったら、財務省に対する要求は簡単なわけじゃないですか。

 茂木大臣に伺います。

 茂木大臣は経済財政担当大臣でもございますから、今の状況、TPP担当大臣でもありますので、ここは三十一年度予算をしっかり確保していただく覚悟をお聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 私が担当しておりますのは経済財政全体の運営の問題についてでありまして、当然、個々の予算の確保であったり執行、各所管の大臣において行われますが、当然必要な予算は確保されるべきだと考えております。

後藤(祐)委員 最後の、当然必要な予算は確保されていくというところに思いを少しいただいたと思っております。

 配付資料五ページ目に、先ほどの佐々木先生の、齋藤大臣の答弁の中で引用されていた総合的なTPP関連政策大綱の部分、四角の「今後の対応」というところですが、「麦のマークアップや牛肉の関税が減少することにも鑑み、」まあ、それ以外も含むということでしょう。「既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保するものとする。」と。あっ、先ほどは大串先生でしたね、これを聞かれたのは。大変失礼しました。

 大串先生は、この「毎年の予算編成過程」というのを財務省の言いわけというネガティブな意味に捉えました。そういう意味もあるかもしれませんが、逆に言うと、三十一年度予算でちゃんと確保しろというふうにポジティブに読むこともできると思いますので、ぜひ確保していただきたいと思います。

 それでは、きょうは内閣委員会との連合審査でもありますので、六ページ目は我々が出したマルキン法の概要です。

 著作権についてお伺いしたいと思いますが、今回、著作権については、CPTPPの内容ではありません。12だったときのTPPの内容ではありました。つまり、アメリカが入っているTPPにおいては、いろいろなそれこそディールの中で、著作権のところではアメリカの言うことを少し聞いてそのかわりというものが全体のパッケージとして著作権が入っていたということなんだと思いますが、今回の十一カ国のCPTPPでは著作権は入っておりません。つまり条約上の義務ではありませんが、この整備法の中では丸ごとそのまま著作権が入っています。

 とりわけ、著作権の保護期間を五十年から七十年というのは大変大きな影響があるわけですけれども、これは茂木大臣にお伺いしたいと思いますが、著作権の保護期間を五十年から七十年にすることのメリットとデメリット。当然、これは条約の義務じゃありませんから、五十年を七十年にすることのメリットの方が大きいからこの中に法律で入っているというふうに理解しますが、このメリット、デメリットを説明していただけないでしょうか。

 少なくとも、私はデメリットの方が大きいのではないかと考えます。それは、まず、著作権者を捜すのが大変困難になるんですね。いわゆる孤児著作物という問題が大変深刻になることが、まあ、現在でもそうなんですが、七十年になったら、孫を捜すとか、あるいは、子孫の方でない方に譲っていたりとか、もう調べようがないようなことが更に拡大します。さらに、青空文庫などの、ちゃんと適正な形でやっているフェアユースを広げるような活動、むしろ、こういったことでパブリックドメインを広げていくこと自体は、今のITのネットの世界においては非常にプラスの効果があると思いますし。

 そもそも日本は、著作権等の収入というのは、国際収支統計では八千五十五億円の赤字です、二〇一七年、日銀の統計です。その中で、アメリカ向けが三千五百十二億円、シンガポールが千九百三十四億円。シンガポールは入っていますから、この著作権の赤字はむしろ広がる。日本にとってはマイナスの方が、プラスももちろんありますけれども、差し引きするとマイナスの方が大きいのではないかという気がしますが。

 もちろんメリットもあると思うんです、創作へのインセンティブですとか、あると思うんですが、こういうメリットがあって、こういうデメリットがあって、でも、メリットの方が大きいからここに入っているという説明が成り立つということなんだと思いますが、ここを御説明いただけますでしょうか。茂木大臣。

茂木国務大臣 確かに、著作物、これは無体財産でありまして、その種類、さまざまであって、さらに、委員御指摘のように、著作権は登録を要することなく発生するものでありまして、市場において利用されている著作物全てを把握する、これはなかなか難しい部分があるというのは事実であると思っております。

 その上で、著作物等の保護期間については、基本的に、著作権者側は期間の延長を当然望むわけでありまして、ユーザー側は短くすることを望むため、これは、どこの国とどこの国というのもありますけれども、どの国の国内においても同じような議論の対立といいますか、それはあるんだと思っております。

 こういった双方の主張がある中で、我が国は、著作物等の保護期間を延長することによって、国際的な制度調和の促進という観点に加えまして、長期に与える収益によって、新たな創作活動であったり、新たなアーティストの発掘、育成が可能になるなど、文化の発展に寄与する。

 そして、御案内のとおり、日本の漫画であったりとかアニメ、今アジアだったりとか世界的にもすごい人気でありまして、こういった競争力の高い我が国のコンテンツについて、中長期的な著作権収入の増加が期待される、こういったメリットがあると考えております。

後藤(祐)委員 五十年が七十年になると、一生懸命つくろうって本当になるんでしょうか。子孫の方々の収入というのはわかりますが、じゃあ、五十一年以上前のもので、日本の著作物で、TPPの十一カ国で売れているものってどんなものがあるんですか。

茂木国務大臣 恐らく文化庁に答えていただいた方がいいんじゃないかなと思いますけれども、三島由紀夫先生、また、川端康成先生あたりの作品がちょうど没後五十年というのを迎えるんじゃないかなと私は思っております。

後藤(祐)委員 夏目漱石ですとか森鴎外ですとか、こういった作家のものというのは、もちろん紙媒体は有料ですけれども、キンドルなんかだと日本語のやつはもうただになっています。電子の本ではただになっているんですよね。英語版は翻訳があったりするのでちょっと違ったりするんですけれども。

 どっちの方が文化の振興に資するかは、それは、つくり手と、その読み手なり受け手、享受する側の両方を見る必要があると思いますので、残念ながら、先ほどの創作インセンティブですとか、五十が七十になってふえる著作権料の増分を新たなアーティストに投入することで文化が発展するって、これはかなり苦しい理屈のような気が、ゼロではないと思いますが、苦しい理屈だと思うんですね。

 それに比べて、著作権の赤字の問題だとか、青空文庫みたいなやつだとか、特に孤児著作物の問題というのは、現実に具体的な形で発生する問題なんですよ。その両方を見ると、著作権の五十、七十という話は、アメリカとの関係で条約の義務になっているならともかく、条約の義務になっていないのに積極的にやるというのは、私は日本の国益を害しているというふうに思います。

 さらに、問題なのは、これも茂木大臣に伺いますけれども、これから、TPP12ですとか、あるいはFFRですとか、余り望ましくないような話になっていくときに、アメリカに対するこれはカードなんじゃないんですか。いろいろ協議をしていく上で、アメリカが望んでいる著作権のとりわけ五十年、七十年という話というのは、それをやってあげるからそのかわりという、非常に貴重なカードなんじゃないんですか。アメリカに対して何の価値もないところで何でこのカードを切っちゃうんですか、茂木大臣。

茂木国務大臣 TPP11にアメリカが仮に加入をするという場合は、締約国の合意というのが必要でありまして、それは最低でも六カ国ということになるわけでありまして、これは日本だけがいいと言うからそれで加入できるという話にはなってこないと考えております。

 そして、これまでのさまざまな議論、交渉を通じて、やはり、参加十一カ国は、全体のメリットとしてアメリカには戻ってほしい、さまざまな働きかけをしていくということになると思いますが、一つの特定の項目だけをカードにしてアメリカに復帰を促すという形での議論は進んでこなかった、このように承知をいたしております。

後藤(祐)委員 苦しいですね。別に一つと言っているわけじゃないんですけれども。ここでカードを切る意味が私には全く理解できないし、今のは何ら説得的ではなかったのは、聞いておられる皆さん、わかったと思います。

 合同審査、もっと必要ですよね。ほかにもいろいろ、私は農水委員会なんで農水の話は今まで聞いていますけれども、それ以外のこと、幾らでも聞きたいことありますよ。ですが、もう時間が少なくなってまいりましたので、大変問題な、CPTPP条約の六条、見直し規定について伺いたいと思います。

 配付資料の七ページ、これが六条の規定ですが、先ほども、茂木大臣は、特に乳製品を始めとした輸入枠、TPPワイドの輸入枠、乳製品だったら七万トンという枠があります。あるいは、セーフガードなんかにもTPPワイドの枠があります。

 それを、本来アメリカが入って七万だったものが、アメリカが抜けてでも七万になっちゃうので、ニュージーランドとかオーストラリアは過剰に埋めてしまって、アメリカがその後、入ってきたらどうするんだという話が、この六条で、アメリカが入らないことが確定したときにはこれを見直すということで、閣僚会議の場でも御理解を得た、特段の異論はなかったというような趣旨のことを何度かおっしゃっておられますが。

 これはもう農水委員会で何度もやっていますけれども、先に、例えば、乳製品の七万トン枠を、ニュージーランドやオーストラリアが全部使えちゃうわけですから、アメリカ抜きで、当然ふやしちゃいますよ。ふやしちゃった後、じゃ、アメリカが入ってくるとなったら、七万をもっとふやせとか、そういう話になりかねないし、あるいは、FFRで二国間の話になっていったら、当然、アメリカから日本への、別の枠をつくれという話になるわけですよね。

 この六条はすごく大事なんですが、この読み方なんですけれども、配付資料にあるように、これはいかにも、「いずれかの締約国」、すなわち日本が、例えばアメリカが入ってこないことが確実になりました、乳製品のTPPワイド枠、七万トンを下げてください、三万トンとかに下げてくださいというような申入れをオーストラリアやニュージーランドにしたとします。

 そうした場合に、オーストラリアやニュージーランドは、「この協定の運用を見直す。」とあるので、見直してくれるかのように見えますが、これは下の英語だとレビューとあって、要は、実際、乳製品の輸出入がどうなっているかという状況をよく振り返ってみたり、あるいは協議をしてみたりといったところまではレビューだと思いますが、実際にこの協定を改正するのは、このレビューに入らないということでよろしいですか。

 「この協定の改正及び関係する事項を検討するため、」という、この「改正」そのものは、英語の方でいうと「consider any amendment」。七万トンを三万トンに変えるというのは、このアメンドメントに入るということであって、レビューそのものの内容ではない。協定を改正することそのものはレビューではないということでよろしいでしょうか。茂木大臣。

茂木国務大臣 「Article 6」二行目の途中から、御指摘のように、「the Parties shall, on request of a Party, review the operation of this Agreement so as to consider any amendment to this Agreement and any related matters.」このように書いてあるわけでありまして、この六条、「この協定の改正及び関係する事項を検討するため、この協定の運用を見直す。」、レビューと、こういうふうに規定をしております。

 委員が御指摘の、「協定の運用を見直す。」という規定は、必ず協定の改正をしなければならないとまでは言っていないということであれば、そのとおりであります。

後藤(祐)委員 そうしますと、例えば、先ほどのTPPワイドの乳製品やセーフガードの枠について、オーストラリアやニュージーランドの理解を得たというのは、レビュー、シャルレビューですから、これは義務ですよね、レビューすることについて理解を得たということであって、アメンドすることについて理解を得たということではないということでよろしいですか。

茂木国務大臣 TPPワイド枠等に関する懸念については、第六条が規定していることだけではなくて、見直しの必要が生じた場合に修正を行うことについて各国の理解が得られることも説明を期してきているところでありますが、米国の復帰が見込まれなくなった場合、これが六条にも書いてある一つの条件でありますが、各国としても、必要な見直しの項目、あると承知をいたしております。また、各国から個別にもそのような意向というのを聞いているところでありまして、そういったことも含めて、各国が、我が国が修正を行いたい、このことに理解を示したものである、そのように考えております。

後藤(祐)委員 いま一つはっきりおっしゃってくれないんですが、アメンドに理解をしたのではなくて、レビューすることに御理解をいただいたということでよろしいですか。

茂木国務大臣 最終的には、当然、合意事項ということになってまいりますが、我が国は修正したい、こういったことを申し上げて、そのことについて理解を得ていると考えております。

後藤(祐)委員 要は、日本の意思について理解をしているだけですから、別にそれでいいよと言ったわけでは全然ないということが今の答弁で明らかになりました。

 でも、この六条は、レビューはシャルですから、義務ですから、日本から乳製品の七万トン枠を見直してほしいということは、例えばアメリカが入らないことが確実になったら、それは求めることができるし、オーストラリア、ニュージーランドはレビューに応じる義務があるんです。それは別に、閣僚会合で理解があろうがなかろうが関係なく、この条約の義務なんですよ。何か、新しく理解を得たようなことをおっしゃっていますけれども、条約上の義務のことを言っているにすぎないというふうにしか見えないんですよね。

 ですから、何か、理解を得て、あたかもアメリカが入らないことが確定したら七万トン枠が下がるような期待を振りまくのはやめていただきたいなというふうに思います。

 その上で、最後、SBS米の話を少しやりたいと思いますが、二年前のTPP特別委員会では、このSBS米が大変大きな問題となりました。輸入米の価格偽装の問題であります。

 実際、今回のTPPでも、SBSの枠というのは十万トンからプラス七万八千四百トンふえるわけでございまして、これについては、附帯決議なんかを受けて、この「調整金に対応する必要な措置を講ずること。」というのを受けまして、配付資料の八ページ、これが措置されたわけでございますが、「乙及び丙は、」というのは輸入業者と卸売業者のことですが、調整金を受渡ししてはならないということを明確に定めております。

 更に言うと、卸売業者から更に先の消費サイドの方に延びるところに対しても調整金を渡しちゃいけないということはこれでカバーしているということなんですが、もともと脱法行為に近いことをやっていたわけですから、こういう規定があっても、例えば、乙と丙は、輸入業者と卸売業者は、間にダミー会社は何社か絡ませたりして実質的にお金を回しちゃうというようなことはやり得ると思うんですよ。

 間接的に渡す、間に会社をかませるようなケースもだめだということをはっきり決めるべきではないでしょうか。齋藤大臣、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 これは、平成二十八年十二月にSBS契約内容の改善を行って、そこでは、個々のSBS取引に係る三者契約に関連して、輸入業者と買受け業者及びその転売先との間の金銭のやりとりを禁止をするということにしました。

 ただ、もう本当にやむを得ないケースで例外的にやりとりを行う場合も、これは私も合理的な場合もあると考えておりますので、そういうときは速やかにその原因及びやりとりした金額などを国に報告する、そういう新しい措置を講じているところでありまして、この金銭のやりとりの禁止に係る規定の遵守状況、これはしっかり確認をしなくちゃいけないということで、この確認のために必要があると認めるときは、輸入業者及び買受け業者に対して金銭のやりとりに関して必要な報告を求めることができるという規定、それも措置をしています。

 それで、御指摘の第三者を迂回するなどのいろいろなケースがあると思いますけれども、輸入業者及び買受け業者間の金銭のやりとりがあったとすれば、それはもうそもそも契約違反だというふうに私ども考えておりまして、そのようなことがあれば、直ちにSBS契約書に基づき調査報告を求めて、事実関係を把握した上で必要な措置を講ずる、厳しく対応していきたいと考えております。

後藤(祐)委員 国は契約当事者なので、甲は国ですので、ダミー会社を通した場合でも、これで契約をとめるという御答弁だと理解します。意味のある答弁だと思います。

 最後にしますが、それでも、これは実際、闇でやっていた話ですから、そこの資料にあるように、四十三条というところでは、先ほど大臣からもありましたが、立入検査ができるんですね。しかも、これは、その下の主要食糧の需給価格安定法の五十二条という法律に基づく立入り権限があるんですね。

 大臣、一、二件やってみてはいかがでしょうか。実際に踏み込むというのを一件、二件でもやれば、これはびびり上がって悪いことはできないとなりますので。一、二件、一罰百戒ですから、別にその結果、正当であってもいいんです、権限ですから。一、二件やってみてはいかがでしょうか。効果はあると思いますが。

齋藤国務大臣 今御説明したように、実は、契約上新たに措置した調査報告規定に基づいて、SBS契約履行確認業務の一環として、SBS契約に関連した金銭のやりとり禁止の遵守状況については今随時確認をしています。

 具体的には、SBS契約を締結した全ての輸入業者及び買受け業者の双方に対して、SBS米に限らず契約相手方との間の全ての金銭のやりとりに係る取引記録を求めて、これを精査をするということをやっておりまして、これによってSBS契約に違反する金銭のやりとりが行われていないということを今確認は随時しているわけであります。

 その上で、必要な場合があれば、私ども、食糧法第五十二条に基づく立入検査を抜き打ちで実施をして、SBS契約の適正な履行に万全を期すよう努めてまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 抜き打ちでというのは力強いお言葉だと感じました。

 盛りだくさんのテーマがまだいっぱいあるんです。ここで審議が終わるなんてあり得ないですよ。本日採決するなんという話もあるようですが、断固それに反対するとともに、今回のCPTPP反対ということを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 きのう、参考人質疑が行われました。その中でいろいろな議論が行われたわけですけれども、まず最初にお聞きしたいのは、この二年間、前回のTPPの議論から二年たったわけですけれども、その間、日本の国内の農業、どういうふうになったかというのを、最近の動向をお聞かせいただけたらと思います。

大杉政府参考人 お答え申し上げます。

 この直近二年間で我が国の農業がどう成長したかということについてでございますが、まず、農産物の品目ごとに生産量に農家庭先販売価格を乗じたものを積み上げました農業総産出額というものを見てみますと、平成二十六年が約八兆四千億円、平成二十八年が約九兆二千億円でございまして、直近二年間で約八千四百億円増加したところでございます。

 また、この農業総産出額から物的経費を控除するなどした生産農業所得を見てみますと、平成二十六年が約二兆八千億円、平成二十八年が約三兆八千億円でございまして、直近二年間で約九千二百億円増加したところでございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 私の周りでも、国内で農業に従事する高齢者の方々がどんどんふえて、その方々が引退をされたときに放棄されている農地がふえていくという現状も確かにまだあります。しかしながら、今、我々の世代、若い世代が、実は、これはチャンスだということで農業に参入をしている方も多々出てきております。全く実家が農家でも何でもないそういった人が、そうやって耕す人がいなくなった畑を借りて作物を育てて、それをまた、ネットの会社、企業が直接いろいろなところに販路を自分たちで開拓して新鮮な農作物を売ったりとか、昔ではなかったような農業の形というのは、日本の国内でももう当たり前のように出てきております。

 私、地元で保育園を経営していますけれども、そこでも、そういった方々に直接販売に来てもらってお迎えに来ているお母さんたちに安く売ってみたりとか、保育園の子供たちも畑をやりますのでその手伝いをしてくれたりとか、農業に対するそういったいろいろな取組というのは地道にしなければいけませんけれども、そういったことはたくさん、私の地元でもふえてきたように思います。

 ただ、きのうの鈴木参考人からも、国内農業についていろいろと、あの方は農水省出身の方でしたけれども、さまざまな苦言がありました。一方で、中嶋参考人からは、成長させるチャンスだという意見もありました。

 確かに、一部のブランド、和牛だとか、例えば日本のマグロだとかはそうですけれども、世界的なブランドとして認知してもらえるものもたくさんもちろんありますけれども、大半は、私、地産地消で農業は終わっていると思っているんですね。

 そういった現状を見て、農業に対する不安というのは以前より今回払拭をできているのかどうかというのを、どうお考えですか。

齋藤国務大臣 農家をめぐる情勢というのはいろんな課題がございまして、もちろん、今議論になっているTPPでどうなるのかというのもありますし、そもそも、日本の人口がこれから大きく減少していく。人口というのは人の口と書きますから、口で食べていただくものを供給する産業にとってはこれもまた大きな課題になっていると思いますし、一方で、日本の農業は極めて多様でありまして、どの地域で行われている農業を一つ取り出してそこがうまくいけばいい、そういう性格のものでもないということで、いろいろなことをやっていかなくちゃいけないわけであります。

 議題になっておりますTPPについて言えば、私ども、やはり丁寧に説明をしていくということに尽きると思っておりまして、とにかく、関税が下がるわけでありますけれども、その下がる過程において長い時間をかけているですとか、それから、いざとなったらセーフガードもあるんですとか、それから、対策もたくさんこれまで説明しておりますし、委員の時間短いので一々申し上げませんが、対策もかなりの対策もやらさせていただいていますので、これからはそういったことを多くの方に理解をしていただくということに万全を期していきたいなと思っております。

浦野委員 実は、この鈴木参考人と中嶋参考人は同じ東京大学の同じ学部の同じ科の教授同士ということで、もう真っ向から、反対している方と賛成をしている方と、同じところに二人教授がいらっしゃって、ふだん学内でどういう議論がされているのか、参考人質疑のときもちょっと言ったんですけれども、一回議論を闘わせているところを聞いてみたいなというふうにも思ったんですけれども。

 鈴木参考人が意見陳述の中でおっしゃっていた、先ほども少しありましたけれども、アメリカの参入をこれからも、安倍総理も促すということで、それは大きな方向性としてやっていくということなんですけれども。だから、要は、鈴木参考人もおっしゃっていたのは、12のときよりもいい条件じゃないとアメリカは戻ってこないから、ということは、前回よりも日本にとって不利益な内容にならないとアメリカは首を縦に振らないんじゃないかという指摘をされていました。私も、もちろんアメリカの国益、アメリカとしてはそうせざるを得ぬでしょうし、それはもう当然そうなってしまうんじゃないかなと思うんですね。

 日本は、だからといって、はい、わかりましたという話じゃなくて、私は、政府が言っているように、それぐらいアメリカにいろいろなことをむしろのませたという、成果があったというふうに私も思っているんですね、実際のTPPの交渉では。私は、だから、せっかくそうやって非常に交渉をうまく進めてやったやつを、アメリカに戻ってもらうからといって、それを少しまたハードルを下げるということは余りしてほしくないなと思っています。

 そういった意味で、これからどういうふうに、アメリカを引き込んでいくときに、日本の国益というのを考えるのか、御答弁ください。

茂木国務大臣 TPP12、アメリカも含め合意をしたわけでありますが、残念ながら、昨年の一月二十三日に、トランプ大統領、TPPからの離脱を表明をされた。その後、十一カ国で結束を固め、今回の合意に至ったわけでありますが、参加国は、それぞれ、やはりアメリカには戻ってほしい、こういう意向は持っております。

 その一方で、このTPP11、参加国のさまざまな利害関係、これを綿密に調整してつくり上げた、ハイスタンダードであり、かつバランスのとれた、いわばガラス細工のような協定でありまして、そこの中の一部のみを取り出して再交渉する、見直す、こういったことは極めて困難であると思っております。

 そういった立場も踏まえながら、しかし、このTPPというものは、二十一世紀型の新しい共通ルールを成長センターであるアジア太平洋地域につくっていく、そういう観点からも極めて重要であり、また、アメリカの経済や雇用にとってもプラスになる、こういったことを粘り強く訴えていきたいと思っております。

浦野委員 グローバル化はもう絶対とまりませんし、その中で、今おっしゃったような新しい形を模索するというのをぜひしっかりとやっていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

山際委員長 次に、鈴木憲和君。

鈴木(憲)委員 自由民主党の鈴木憲和です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょう、齋藤大臣がいろいろ後の御都合があるということをお伺いをしておりますので、先に齋藤大臣から御質問させていただいて、後ほど、大きいテーマについて茂木大臣から御答弁をいただければなというふうに思っております。

 まず初めに、この間、私も地元で生産者の皆さんと相当意見交換を重ねてまいりました。

 現実に協定がこのような形で、もう発効できる状況まで来ている中で、まず一番初めに懸念をされている一つは、今回、TPP11協定が発効した場合、例えば牛肉の関税ですと十六年かけて九%まで下げていく、少しずつ下げていくということについては大変いい協定であるなというふうに思いますが、全体として関税収入が七百四十億円減少し、そのうち、農産品の関税収入だけでも、これまでよりも六百二十億円減るという政府の試算があります。

 このほかにも、例えば麦のマークアップ二百二十七億円、こういったものが減るわけですけれども、特にこういう麦といった制度については、この二百二十七億円を利用して経営安定対策を今まで国内で再生産可能なように講じてきたという経緯があります。

 こうした関税収入や麦のマークアップなど、こういったものが下がったときに、これからもこの経営安定対策をしっかりと講じていくことが可能なのかどうかというのが、生産現場の皆さんからのまず一番の懸念の点だというふうに思いますので、その点、しっかりとやっていくのかどうかについて、まず齋藤大臣から御答弁いただければと思います。

齋藤国務大臣 鈴木委員の御地元の方の不安というものを私は大変よく理解できるところでありまして、私も地元からいろいろ聞いているところであります。

 お尋ねの点につきましては、平成二十七年十一月に策定をされて、昨年十一月に改定された総合的なTPP等関連政策大綱におきまして、「農林水産分野の対策の財源については、TPP等が発効し関税削減プロセスが実施されていく中で将来的に麦のマークアップや牛肉の関税が減少することにも鑑み、既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保するものとする。」とされているところでありますので、私はこれを素直に読んでおりまして、これに即して、協定発効に合わせて措置する経営安定対策も含めて、TPP等関連対策を講ずるに当たっては、既存の農林水産予算に支障を来さない、そして十分な予算をしっかり確保して取り組んでいきたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 その点でちょっともう一点お伺いをしたいのは、その際に、私がお願いをしたいのは、今回の例えばTPPが発効すれば農業分野には当然影響はあるというふうに思います。そこで対策をしっかりとして乗り越えていこうということなのですが、今、関税が減る分で、マークアップが減る分でかかる経営安定対策のさらなる財源というのは、当然、一般財源から持ち出しになるんだというふうに思いますが、それは、農林省全体の、農業対策に係る予算の枠の外で、プラスしてとってこれるような努力をぜひ大臣としてもやっていただきたいと思いますが、御決意をお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 大事なことはきちんと予算を確保するということだと思いますので、先ほど、財務省も含めて合意した文書がありますので、きちんと対応していきたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 次に、現状、日本の農林水産業のことを考えますと、大変いい傾向にあるというデータもあります。例えば、平成二十六年から二十八年の三年間を考えると、農業の総産出額が八・四兆円から九・二兆円に、そして生産農業所得も二・八兆円から三・八兆円に、これまでずっと下がり続けてきたこの分野の数字がふえてきている。

 実際、現場の皆さんにこの数年間の感覚というのをお伺いをしても、間違いなく悪くはなっていませんという答えをいただくことができています。若い新規就農者も、少しずつですけれどもふえてきているなということ、実感としてはあるわけですが、その際に、やはり何が大切かというと、TPP11が発効したときに、国内対策をしっかりとやっていって、前向きにいろんなことに取り組めるような環境を整備していくということが不可欠だというふうに思います。

 これまでも、TPPの体質強化策として、例えば、産地パワーアップ事業、そして畜産クラスター事業、そしてさらなる基盤整備の推進、こういったことに取り組んできていただいているというふうに思いますが、現状、どのぐらい現場のニーズに応え切れているというふうに認識をしているかということについて教えていただければと思います。

齋藤国務大臣 TPP協定の大筋合意によりまして、我が国農林水産業は新たな国際環境に入ったということから、こうした国際環境に対処できるよう、平成二十七年度以降、毎年度の補正予算において、国際競争力の強化を図るための体質強化策、これを講じてまいりました。

 具体的には、産地競争力を強化するための産地パワーアップ事業、それから、畜産、酪農の収益力強化のための畜産クラスター事業、それから、農畜産業の競争力向上に必要な生産基盤の整備を行うTPP等関連農業農村整備対策、さらには、TPP参加国の関税がほぼ全て撤廃されることを踏まえた我が国農林水産物の輸出拡大対策など、競争力強化に努めてまいりました。

 そして、例えば、高性能な機械の導入や集出荷施設の整備等を支援する産地パワーアップ事業におきましては、農産物の生産コストの低減ですとか販売額の増加ということで農家の皆さんの気持ちに応えられる、それから、地域の関係者が連携して畜産、酪農の収益力強化を図る取組に必要な施設整備や機械導入を支援する畜産クラスター事業においては、搾乳ロボットの導入によりまして、一日一頭当たりの乳量の増加ですとかあるいは労働時間の削減ですとか、さらには、農地のさらなる大区画化、汎用化等を支援するTPP等関連農業農村整備対策において、米の生産コストの大幅削減や高収益作物の生産額の増加など、こういった現場の皆さんの御要望にも応えながら、着実に成果があらわれ始めていると認識をしています。

 引き続き、現場の皆さんの需要にきめ細かく応えられるように、これまでの実績の検証等を踏まえて所要の見直しを行っていくことも考えておりますし、効率的、効果的な事業の実施に取り組んで、我が国農林水産業の体質強化を引き続き図ってまいりたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 私の地元でも、実際、畜産クラスターを使わせていただいて酪農家の方が相当増頭したというケースがありまして、それで、東北で一番の規模に今度なります。

 副次的に何がいいなというふうに思ったかというと、地域の農地を、酪農家の皆さんが全部餌用の作物を植えたりとかいうことで、維持ができるというのが大変よかったんですけれども、その際に、やはり基盤整備をそこでセットでやることでさらなる効果が生まれるんだなということを感じておりますので、現状、ニーズがまだまだ実は掘り起こしていくことができるんだというふうに思っています。そういう観点で、ぜひ継続的に、この対策、しっかりと日本の農業が将来につながるようにやっていっていただきたいというふうに思います。

 もし、大臣、よければどうぞ。

 次の質問に移ります。

 今大臣からも御答弁ありましたが、長期的に考えたときには、国内の体質強化策と同時に、やはり国内需要が人口減少によって量的には減少するという中でありますので、海外に販路を見出していくということは不可欠だというふうに思います。

 今回のTPP11協定、この輸出という面を考えたときにどのようにプラスになるというふうにお考えなのか、御答弁をお願いいたします。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11の経済効果につきましては、昨年公表しているところでございますけれども、TPP11が発効して本格的な成長軌道に乗りますと我が国のGDPを約一・五%押し上げる、こういうような試算をしているところでございます。

 輸出も輸入もともにふえるというような形になるわけでございますが、貿易が促進をされ、そのことが国内の生産性向上を促し、それが実質労働賃金を上げて所得増につながり、それがまた輸出ないし輸入の増加につながる、そういう好循環を私どものモデルでは描いているところでございます。

鈴木(憲)委員 済みません、今私が答弁をいただきたかったのは、農産物の輸出についてどういうプラスがあるかということをお伺いをします。

井上政府参考人 農林水産業への影響についてお答え申し上げます。

 日本の農林水産業の発展を図る上で、海外への農林水産物、食品の輸出拡大を図っていくことが重要であるわけでございますけれども、この中におきまして、TPP交渉においては、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大の重点品目としております品目について関税撤廃を獲得をしたところでございます。

 具体的には、近年輸出の伸びが大きい牛肉について即時から十年目に撤廃、二〇一五年九月に輸出が解禁されたベトナム向けのリンゴについて三年目に撤廃、我が国の輸出にとっての新興市場として拡大を狙っておりますカナダ向けの花卉、花でございますけれども、即時撤廃、また、近年日本からの輸出額が伸びつつありますベトナムにつきましては、ブリ、サバ、サンマなどの生鮮魚、冷凍魚について即時撤廃といったことになっております。

 また、ルールの分野でも、貨物の引取りを到着から四十八時間以内に許可すること等、輸出促進につながる規定が盛り込まれておりまして、こうした輸出拡大の加速化に資する措置をうまく活用しまして、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大を更に進めてまいりたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございます。

 関税がなくなるということで、更に輸出が拡大をできるチャンスが生まれるというふうに思います。その際に、やはり、国が幾ら頑張っても意味がありませんので、民間のそれぞれ生産者団体の皆さんや生産者にみずから頑張っていただく必要があるんだというふうに思います。

 輸出をやるためにも、さらに、国内の販売活動をしっかりとしていくという意味でも、私がこれは頑張っていただきたいなというふうに思っているのは、今、養豚の事業者の皆さんで検討しているチェックオフ制度というのがあります。

 これに向けて、チェックオフ制度、実際、法制化をしなければ現実的には意味がありませんので、中小の養豚事業者の皆さんの心配というのもいろいろあるんだというふうに思いますが、政府としては、このチェックオフ制度の実現に向けて、まず養豚業界に対してどのように後押しをしていくつもりであるのか、お伺いをいたします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたチェックオフでございますけれども、平成二十八年の十一月に決定されました農業競争力強化プログラムにおきまして、チェックオフの法制化を要望する業界においてスキームを決めて、一定程度、これは七五%以上同意が得られた場合には法制化に着手をするというふうにされてございます。

 これを受けまして、養豚業界の方では、昨年の三月に、養豚の関係団体と学識経験者で構成されます養豚チェックオフ協議会を設立いたしました。この協議会におきまして、国産豚肉の輸出促進等の消費拡大活動の内容を含みますスキームにつきまして検討が行われておりまして、今後、生産者の意見も踏まえて、さらなる検討が行われるものというふうに承知をしてございます。

 農林省としては、業界の検討が円滑に進むように、引き続き、情報提供や助言を行ってまいりたいと存じます。

鈴木(憲)委員 ありがとうございます。

 もう一つお伺いをしたいのは、業界団体の皆さん、業界が頑張るということはもちろん大切なわけですが、あとは政府としてもやはり何ができるのかというのも大変大切な観点であるというふうに思うんです。その際に、私が思うのは、生産余力のある作物は何なのかということを考えれば、これは間違いなく米が輸出余力も、どの作物よりも量的にもあるというふうに思います。今現在、政府の方で米輸出十万トンプロジェクトというのを取り組んでいただいているというふうに思いますが、なかなか現実はうまくいかないという面もあるのかなというふうに認識をしています。

 率直にお伺いいたしますが、米輸出、これを拡大をしていくために一番のボトルネックはどこにあるというふうにお考えなのか、簡潔にお願いいたします。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 海外に米輸出拡大を図ろうとした場合に幾つかのポイントがあろうかと思いますが、まず、海外におきまして日本産米の品質などが認知され、その需要が拡大するということが出発点かと思います。そして、その海外の需要に対しまして日本産米を安定的に供給できる流通、販売ルートを確立すること、さらに、今委員から御指摘がございましたように、その流通、販売ルートに対しまして、価格競争力のある米を低コストで生産し供給できる産地の体制を整えることといったようなことが課題になろうかと存じます。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 まさに価格競争力が日本の米の場合は、今までの政策ももちろんあったと思いますし、ないという現実があるわけですから、今回、いろいろな関税が米についてもなくなるわけです。やはりそういう機会を利用して価格競争力をいかにしてつけられる産地を育てていくのかということを、これから農林水産省の方でもぜひ検討していただきたいというふうに思っています。

 次にお伺いをするのは、TPP対策を我々自民党でも議論をした際に、新たな市場をしっかりと開拓していこうということで、JFOODOという組織をつくりました。

 きのうJFOODOの皆さんからお話をお伺いして私が大変驚いたのは、日本にはニュージーランド産のキウイというのが定着をしていますが、実際にニュージーランドのキウイが定着するまでに今どのぐらいプロモーションフィーというのを使っているかといえば、一国平均で大体十億円を年間使うそうです。日本市場に至っては、年間で三十二億円投じてキウイをいかに売るかということを考えて彼らはやっています。

 これから外に農林水産物を出していく際に、やはりJFOODOの活動が何よりも大切だというふうに思っていますが、これは単年度でできる話ではありませんで、十年とか二十年かけてようやく日本の農林水産物の新しいマーケットが定着を、ブランドとして認知をされるということであるというふうに思うんです。

 その点で、今後、JFOODOの取組について、十年スパンでの支援がしっかりと必要だというふうに思いますが、御認識をお伺いをしたいというふうに思います。

井上政府参考人 JFOODO、日本食品海外プロモーションセンターでございますけれども、昨年の四月に設置をされまして、十二月に、和牛、水産物、緑茶、日本酒など、七つのテーマについてのマーケティング戦略を策定をいたしまして、現在、これに参加する事業者と協力をしながら、海外におけるプロモーション活動を開始をしたところでございます。

 JFOODOにおきましては、当面この七つのテーマについて、また今後必要に応じてテーマを追加をしながら、海外の消費者等に対して食文化と一体となったプロモーションを行う等によりまして輸出拡大を図っていくという活動を継続していくわけでございますけれども、これに必要な人員の配置あるいは情報発信、イベント等に要するソフト経費等につきましては、政府といたしましても予算確保にしっかり努めてまいりたいと考えております。

鈴木(憲)委員 これは国全体で取り組むべき話でありますから、農林水産省だけではなくて、経済産業省とそして財務省の理解もぜひいただいて、しっかりとやっていただきたいと思います。

 それでは茂木大臣に、済みません、お待たせをいたしまして申しわけありません。大きい話を幾つかお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、その前提として、今回、TPP11協定になっているわけですけれども、アメリカが入っていたときのTPP協定の合意に至る過程をお伺いをしても、大変細かいパズルのように、方程式合意というふうに言われていますが、細かいことに配慮をして合意をされていました。

 それが今回、アメリカが、大統領がかわって脱退をしたわけですが、まずアメリカが抜けたことによって、経済効果としては、12から11になったときに、どのぐらい効果が薄れたのかということをお伺いをいたします。

澁谷政府参考人 済みません、先ほどちょっと先走ってお答えいたしましたが、11の経済効果は、先ほど申しましたとおり、GDP一・五%の押し上げでございます。TPP12の経済効果は二・六%の押し上げという試算をしたところでございます。

 貿易額でいいますと、TPP十二カ国の中でアメリカが抜けますと半減する、半分に減るということなんですが、経済効果は四割減にとどまっているところでございます。

 これは、アメリカが抜けても、主として途上国がまだ参加国であるわけでございまして、税関手続の簡素化あるいは物流の改善といったルール面の途上国に与える効果が結果的に貿易コストを下げる、こちらの効果が非常に大きいというふうな試算結果になっているところでございます。

 四割減でございますので、GDPの押し上げは一・一ポイント減、二〇一六年ベースでいいますと約六兆円のマイナスということになります。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 やはりアメリカという大きい市場がこの協定の中からなくなったということについては、大変、輸出という面だけで考えれば残念である一方で、輸入ということを考えると、農業者の皆さんの中では、アメリカが抜けてくれてよかったというふうに思っている方もきっといるんだろうというふうに思います。

 どっちの面ももちろんあるわけですけれども、私がそこで茂木大臣にちょっとお伺いをしたいのは、トランプ大統領がTPP協定から脱退をするということを表明した背景には、グローバル化が進む中で、国内の格差、これが許容できる範囲をやはり超えて拡大をしているという認識が潜在的にはあるんじゃないかなというふうに私としては推測をしている一方で、保護主義がどんどんどんどんこのまま拡大をしていくことをやはりとめるのも日本の役割なんだろうというふうに思っています。

 大臣にお伺いをします。

 まず、このグローバル化による格差の拡大、これについて大臣はどのようなお考えを持っているか、そして、実際に交渉現場に行かれていろいろな感想があるというふうに思いますが、そういったことも含めて、茂木大臣としては、一次産業も含めて我が国の国内産業が今後どのように変わっていくべきだというふうに考えているかをお伺いいたします。

茂木国務大臣 まず、トランプ大統領でありますが、昨年、大統領に就任する前の一昨年の選挙戦においても、ラストベルトを中心にしたアメリカの、かつて盛んであったピッツバーグの鉄鋼業であったりさまざまな産業、この力を取り戻し、雇用も取り戻したい、こういった思いは強く持っていたんだろうと思います。

 それはある意味で、今シリコンバレー経済と呼ばれる地域とは違ったところなのかもしれないと思っておりまして、経済のグローバル化、これは世界経済を発展させる一方で、グローバル企業とその他の産業、さらには、先進経済と途上国経済など、格差の拡大をもたらす側面、これもあるんだろうと思っております。

 では、だからグローバル化をとめるというのではなくて、グローバル化の恩恵をいかに幅広い産業分野に届けていくか、こういったことが私は重要なんだと思っておりまして、今回のTPPは、まさにそういったグローバル化の恩恵を幅広い地域の中小企業や農業関係者、こういったところにも届けていくチャンスにしていきたいと考えております。

 シリコンバレーのグーグル、そしてまたアマゾン、こういったGAFAであったりとか、シンセンの巨大企業、これだけではなくて、日本にも世界に打って出ることができる力、そして、潜在力を持ったさまざまな分野というのはあるんだと思います。

 かつて、ブラックチェリーがアメリカから入ってくるというときに、日本のサクランボ、壊滅をするのではないか、こんなふうに危惧をされた時期もありましたが、山形の農業関係者の皆さん、本当に苦労されて、佐藤錦、すばらしいブランドをつくったわけでありまして、品質がよくて、おいしくて、安全なもの、こういったものは世界にどんどん売っていけると私は考えております。

 今回、TPPでは、投資のルールの強化であったり、通関の手続の迅速化、コンビニなどサービス業の出店規制の緩和、こういった規定も盛り込まれておりまして、こういったものを、中小企業やまた農林水産業の皆さんが世界に打って出るこういうチャンスにしていきたいと思っております。

 日本のコンビニ、すばらしいんですよ。ただ、例えば、国によっては出店規制があって、二店目、三店目が出せない。これが、出店規制が緩和されるようになりますと、そこに日本のコンビニが出ていく、そして、日本のコンビニと一緒に、そこに日本のすばらしい農産品がコラボで出ていく、こういった世界、決して夢ではない、こんなふうに思っております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございます。

 その際に、今大臣から御答弁いただいた前向きな面がたくさんあるんだということをなし遂げるためにも、体質強化策というのがやはり欠かせません。

 農林水産分野の場合は、これは中小企業も実は一緒だというふうに思いますが、一年、二年でできる話ではありませんで、やはり最低でも五年、このぐらいのスパンをかけて取り組んでいただかなければ、現実としては難しいというふうに私は思っています。

 その際に、これからTPP11に新たな加盟国があるかもしれないという話があります。特に、地元で皆さん心配をしているのは、タイみたいな農業大国というふうに言われている国が加入するということもニュースになっているわけですけれども、こういった国が加入する際には、更にまたこれで農業分野で譲歩があるみたいなことがあれば、せっかく体質強化策を講じている中で、またやる気がそがれてしまうということがありますので、そういうことのないように、ぜひ、農業面ではこれ以上もう譲らない、こういった決意があるのかないのかについて、大臣から御答弁をいただければと思います。

茂木国務大臣 TPPに関連した国内の農業への影響については、生産者と関係者の間に不安の声がある、このことは十分承知をいたしておりますし、私も、鈴木先生の御地元にお邪魔したときに、直接そういった生産者の皆さんの声も聞かせていただいたところでありまして、昨年十一月に総合的なTPP等関連政策大綱を改定して、農林水産業の体質強化等、万全な対策をこれからもとっていきたいと思っております。

 その上で、新たな国の加入ということになりますと、締約国、そこの合意というものが必要になってまいります。先日、タイでソムキット副首相とお話をしましたら、少なくとも、ソムキット副首相の一番の関心というのは、このTPPをてこに、タイの国内産業の改革、これを進めていきたいということでありましたが、いずれにしても、日本としては、タイを問わず、TPPで合意したものが最大限、このように考えておりまして、今後も、いかなる国とも国益に反するような合意をするつもりはございません。

鈴木(憲)委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 ぜひ、生産現場の皆さんがFTAやEPA交渉のたびに不安を抱くという今の状況は、私は大変悲しいことだというふうに思っています。日本の第一次産業の持続可能性、これは国のやるべき根幹の一つだというふうに思っていますので、政府をやはり信頼できるように、生産現場の皆さんの気持ちをよく考えて、そういう交渉のあり方、そして情報発信のあり方を今後とも心がけていただくようお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山際委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時四分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案は内閣委員会議録第十五号に掲載


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