第1号 平成22年3月5日(金曜日)
本国会召集日(平成二十二年一月十八日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。委員長 樽床 伸二君
理事 太田 和美君 理事 木村たけつか君
理事 橋本 博明君 理事 山花 郁夫君
理事 横光 克彦君 理事 齋藤 健君
理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君
石田 三示君 大谷 信盛君
川越 孝洋君 工藤 仁美君
櫛渕 万里君 小林千代美君
斎藤やすのり君 田島 一成君
田名部匡代君 玉置 公良君
村上 史好君 森岡洋一郎君
矢崎 公二君 山崎 誠君
吉川 政重君 小池百合子君
近藤三津枝君 園田 博之君
古川 禎久君 山本 公一君
中島 隆利君
平成二十二年三月五日(金曜日)
午前九時二十分開議
出席委員
委員長 樽床 伸二君
理事 太田 和美君 理事 木村たけつか君
理事 橋本 博明君 理事 山花 郁夫君
理事 横光 克彦君 理事 齋藤 健君
理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君
石田 三示君 大谷 信盛君
川越 孝洋君 工藤 仁美君
櫛渕 万里君 小林千代美君
斎藤やすのり君 田島 一成君
田名部匡代君 玉置 公良君
村上 史好君 森岡洋一郎君
矢崎 公二君 山崎 誠君
吉川 政重君 近藤三津枝君
柴山 昌彦君 園田 博之君
古川 禎久君 山本 公一君
中島 隆利君
…………………………………
環境大臣 小沢 鋭仁君
環境副大臣 田島 一成君
環境大臣政務官 大谷 信盛君
政府特別補佐人
(公害等調整委員会委員長) 大内 捷司君
環境委員会専門員 春日 昇君
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委員の異動
三月五日
辞任 補欠選任
小池百合子君 柴山 昌彦君
同日
辞任 補欠選任
柴山 昌彦君 小池百合子君
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二月一日
地球温暖化抑止のために国内対策の抜本的転換を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一三号)
同(笠井亮君紹介)(第一一四号)
同(穀田恵二君紹介)(第一一五号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第一一六号)
同(志位和夫君紹介)(第一一七号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一一八号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一一九号)
同(宮本岳志君紹介)(第一二〇号)
同(吉井英勝君紹介)(第一二一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国政調査承認要求に関する件
環境の基本施策に関する件
公害紛争の処理に関する件
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○樽床委員長 これより会議を開きます。
国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
環境の基本施策に関する事項
地球温暖化の防止及び低炭素社会の構築に関する事項
循環型社会の形成に関する事項
自然環境の保護及び生物多様性の確保に関する事項
公害の防止及び健康被害の救済に関する事項
公害紛争の処理に関する事項
以上の各事項につきまして、その実情を調査し、対策を樹立するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中調査を進めたいと存じます。
つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○樽床委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○樽床委員長 環境の基本施策に関する件及び公害紛争の処理に関する件について調査を進めます。
この際、環境大臣から所信を聴取いたします。小沢環境大臣。
○小沢国務大臣 環境大臣の小沢鋭仁でございます。
第百七十四回国会における衆議院環境委員会の御審議に先立ち、環境行政に対する私の考え方を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いしたいと存じます。
さきの所信表明演説で鳩山総理大臣は、命を守ることを鳩山内閣の基本的な姿勢として強調されました。このことは、環境行政においても基本的な姿勢とすべきと考えています。
命を守ることから環境行政を考えると、公害健康被害に遭われた方の救済や、そのような被害を生み出さないということがまず挙げられます。これは、環境省が環境庁として生み出されたときからの基本的な課題です。しかし、環境行政において命を守る観点は、それだけにとどまるものではありません。私たちとともに生きるさまざまな生き物の命を守ることも求められています。また、そのような比較的目の前で実感しやすい課題とともに、地球上のさまざまな地域に生きる人々や生き物、さらには、将来に生きる私たちの子供たちの命を守ることも重要な課題です。まさしく、この世の中の生きとし生けるものの命を守ることが環境行政に課せられた使命です。
このためには、私たちの経済社会を、目の前の利益を追うだけでなく、時間的にも空間的にも、もっと幅広く長期的な利益を追いかけるようなものに変えていく必要があると考えています。
このような考え方は、ともすると経済成長を妨げるとも考えられてきました。しかし、私たちが生きている環境を守っていくことは、私たちの経済社会を持続可能なものとして保つ上で必要不可欠なことは言うまでもありません。また、経済が発展し、社会が成熟化してきた日本においては、このような新しい価値観に基づく需要が今後の経済成長に欠かせないのではないでしょうか。そして、そのような価値を実現するための物やサービスは、今後ますます世界じゅうで必要とされます。
私は、そのような新しい需要を掘り起こすためにも、また、何よりも今と将来を生きる世界じゅうの命を守るためにも、環境問題、特に地球環境問題への対応を、これまでのような外圧対応の消極的なものから、世界をリードするものに抜本的に変えていきたいと考えています。
さて、地球温暖化対策に関しては、昨年末のコペンハーゲンにおける国連気候変動枠組み条約第十五回締約国会議、いわゆるCOP15において、アメリカ、中国などの主要国が入る新たな枠組みに向けた第一歩を踏み出すことができました。このコペンハーゲン合意を受けて各国はそれぞれの削減目標などを提出しており、約百カ国、世界の排出量の八割以上を占める国々がコペンハーゲン合意に賛同の意を表明しています。
二〇二〇年に向けた我が国の温室効果ガスの排出削減目標としては、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提に、一九九〇年比で二五%削減を目指す旨を気候変動枠組み条約事務局に登録しました。アメリカや中国を含むすべての主要国も、それぞれの目標などを条約事務局に提出し、今後、メキシコで行われるCOP16に向けてさまざまな議論が行われることになりますが、日本としても、COP16での合意に向けて、議長国であるメキシコを強くサポートしていくつもりです。
国際的なリーダーシップを発揮しつつ、地球と日本の環境を守り、将来に向けて発展し続ける社会をつくるために、二五%削減に向けた今後の取り組みの基本的な方向を定める地球温暖化対策基本法制定の御審議を今国会においてお願いしたいと考えています。あわせて、現在、二〇二〇年に二五%、二〇五〇年に八〇%削減の実現に向けた道筋を示すロードマップの策定を進めており、三月中に骨子を取りまとめる予定です。
この二五%削減は、日本の物づくりにとってチャンスです。価格面だけでなく、環境面から性能が重視されることにより、日本の産業の強みである技術で勝負できます。日本の環境・エネルギー技術に磨きをかけ、積極的に伸ばしていくことこそが我が国の経済成長の道です。
また、温暖化対策は、日々の暮らしの面で我慢を強いるようなものではありません。断熱性の高い住宅に示されるように、むしろ、今より快適で住みやすい暮らしをあわせて実現するものです。さらに、地域のさまざまな資源や人材を活用しながらエコ社会としての地域づくりを行うことで、地域活性化をもたらすことができます。
そして、これらの対策は、資源の効率的な活用による温室効果ガスの排出削減にも結びつく循環型社会づくりや、地球温暖化が及ぼす影響を防ぐことや地球温暖化によって生じるリスクを防ぐ観点のある自然共生社会づくりとともに進めることによって、より豊かで力強い日本の経済社会をつくることができます。
このための具体的な取り組みとしては、まず、地球温暖化対策税の来年四月からの導入や排出量取引の導入など、市場の変革に努めます。また、エコポイント活用や、わかりやすく正確な情報提供などにより、省エネ製品への買いかえや住宅の省エネ改修等、緑の消費を拡大します。さらに、環境金融などによって企業の環境投資を促します。原子力発電についても、安全性を大前提としながら推進するため、国民の皆様の理解を得られるように努めてまいります。
地域冷暖房システムや地域の特色を生かした交通システムの導入、廃棄物焼却熱の活用など、いわば環境公共事業の促進や人材育成、活用の支援など、地方公共団体に加え、コミュニティービジネスやNPOなど新しい公共の担い手とともに、地域からエコ社会をつくるための取り組みも進めます。また、そのような地域の活動を、チャレンジ25キャンペーンや学校を含むさまざまな場面における環境教育と有機的につなげていきます。
さらに、これらの取り組みを世界に広めるとともに、地球温暖化対策における先進国と途上国とのかけ橋となるために、環境汚染対策と温暖化対策を同時に進めるコベネフィットアプローチなどの国際協力を初めとする鳩山イニシアチブを推進します。
国際生物多様性年である本年十月には、愛知県名古屋市で生物多様性条約第十回締約国会議、いわゆる国連地球生き物会議が開催されます。この会議では、これからの生物多様性の世界目標や、遺伝資源の利用と利益配分に関する国際的枠組みづくりなどについての合意を目指しています。地球の生き物とともに生きていくため、議長国としてこの国連地球生き物会議を成功させることを目指します。
そのため、日本として、SATOYAMAイニシアチブを推進することや、世界的な生物多様性にかかわる調査研究体制の整備、途上国の支援等の貢献を行い、それとともに、国内においても、生物多様性基本法に基づき新たな生物多様性国家戦略の策定を進めるなど、議長国としてふさわしい生物多様性保全の取り組みを行いつつ、世界への発信に努めます。また、国連地球生き物会議を機に、地球の命とともに生きることの重要性に対する理解と関心を高めたいと考えています。
この国連地球生き物会議に向けた議論や昨年の自然公園法等の改正を踏まえて、生物多様性の恵みを実感できる魅力的な国立公園を地元の皆様と一緒になってつくり上げます。また、そのためにも、地域の活性化に資するエコツーリズムを推進します。さらに、生物多様性を保全する民間の活動を促進するための新たな法律の御審議をお願いしたいと考えています。あわせて、希少な動植物を守ることや、人と生き物のすみ分けを含む必要な管理を行うこと、動物愛護を推進することなど、生き物とともに生きるための国内における取り組みも進めます。
これまで述べてきましたように、今日、環境行政の課題は、地球温暖化対策や生物多様性の保全等、一層多様化しております。そのため、さまざまな事業を行うに当たって、環境に与える悪影響を未然に防止し、環境保全を図っていく必要が高まっています。そうした状況に適切に対応するため、早い段階でさまざまな事業を環境の側面から考えることができるような制度づくりなどを盛り込んだ環境影響評価法の改正について御審議をお願いしたいと考えています。
今後、ますます資源が貴重になってくる中、我が国の経済社会の持続性を高め、大量生産、大量消費、大量廃棄からの脱却を図るためにも、循環型社会へと向かうことは非常に重要な課題です。小型家電からのレアメタル回収を初めとするリサイクルの充実に加え、廃棄物の発生抑制や、リユースを促進します。また、廃棄物になった段階では、安全な処理を行い、適切に処分することが必要です。これらのため、意欲と能力がある優良事業者を支援するなど循環産業の育成、地域循環圏の形成、アジア域内でのスリーRの推進に取り組みます。
また、不適正な処理、特に不法投棄を防止して地域住民の不安を解消することは、安全、安心な社会づくりの観点から廃棄物行政の基本になります。このため、衛星画像を活用した監視体制の構築などに取り組みます。また、このような課題を中心に、廃棄物の適正な処理の確保と循環的利用を促進する観点から、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正するための御審議をお願いしたいと考えています。
直接国民が環境被害をこうむることを防止し、命が守られる社会をつくることは、まさに鳩山総理大臣の思いを実現する、政府としての基本的な役割です。微小粒子状物質のモニタリング強化や対策検討、地域における有害大気汚染物質対策強化など、越境汚染も視野に入れた国内、国外一体となった取り組みによる大気環境の保全、排水規制の的確な実施や費用対効果の高い浄化槽整備などによる水環境の保全、土壌汚染対策法の改正を踏まえた土壌環境の保全、海岸漂着物処理推進法に基づく対策の推進など、我々を取り巻く環境の保全を図り、国民の安全、安心を保ちます。特に、近年の一部の企業によるデータ改ざん等の残念な事例も踏まえ、事業者や地方自治体における効果的な公害防止対策の推進のため、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正するための御審議をお願いしたいと考えています。
また、子供たちの命を守りはぐくむための長期的で世界各国と協力した調査を初めとして、化学物質管理の強化を進めます。
さらに、公害健康被害対策にもしっかりと取り組んでいきます。特に水俣病問題については、昨年制定された特別措置法に基づく救済措置を求める方とも、裁判で争われている方とも早期に解決を図ることにより、水俣病被害者の早期救済を実現できるよう最大限努力してまいります。また、石綿健康被害の救済と実態把握の推進、毒ガス弾等対策などを着実に進めてまいります。
以上、当面の取り組みの一端を申し上げました。環境省が環境庁として発足して来年で四十年になりますが、命を守るという観点から、環境行政に求められる役割、そして国民からの期待は年を追うごとに一層大きなものになっています。特にことしは、世界的にも、今後の地球温暖化対策や生物多様性保全のあり方を決める重要な年になります。幅広い視点を有する省として、世界的な視野を持ちながら、足元から環境対策を進め、豊かで持続的な社会経済づくりにつなげていきたいと考えています。委員各位におかれましては、環境行政の一層の推進のため、今後とも御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。
以上であります。
○樽床委員長 以上で環境大臣の所信表明は終わりました。
次に、平成二十二年度環境省所管予算及び環境保全経費の概要について説明を聴取いたします。田島環境副大臣。
○田島副大臣 私の方から、平成二十二年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について御説明申し上げます。
まず、一般会計予算では、総額二千七十一億八千四百万円を計上しております。
以下、その主要施策について御説明申し上げます。
第一に、地球環境保全対策については、コペンハーゲン合意を踏まえた国際的枠組みづくりを進めつつ、温室効果ガス排出量を二〇二〇年までに二五%削減に向けた各種対策に取り組んでまいります。あわせて、そのための税制の推進については、低炭素化を促進する観点から、地球温暖化対策税の検討を含め、税制全体のグリーン化を推進してまいります。また、アジアを中心とする環境協力を含む地球環境保全対策の推進を図ります。これらに必要な経費として、四百二十七億二千万円を計上しております。
第二に、総合的な環境政策の推進については、環境と経済がともに向上、発展することに着目した分析、研究を進め、持続可能な社会を構築する基礎を確立するべく、世界に貢献する環境経済政策の研究、グリーン購入法の適正な推進、環境教育の推進などに必要な経費として、六十五億六千四百万円を計上しております。
第三に、廃棄物・リサイクル対策については、リデュース、リユース、リサイクルのいわゆるスリーRの取り組みの推進、不法投棄対策や適正処理対策の推進などに必要な経費として、七十八億八千八百万円を計上しております。また、循環型社会形成推進交付金などを活用した廃棄物処理・リサイクル施設や浄化槽の整備に必要な経費として、五百九十一億三千四百万円を計上しております。
第四に、自然環境の保全対策については、本年十月に愛知県名古屋市で開催される生物多様性条約第十回締約国会議を成功させ、その成果を国内外で推進するため、二〇一〇年以降の世界目標やその達成のための国際的な基盤づくりに向けた取り組みの推進、生物多様性の社会における主流化、国立公園や世界自然遺産などのすぐれた自然環境の保護と適正な利用、外来生物対策の推進などに必要な経費として、百七十五億二千二百万円を計上しております。
第五に、公害健康被害対策等については、公害健康被害補償制度や石綿による健康被害に係る救済制度の適正かつ円滑な実施、水俣病対策や国内における旧軍毒ガス弾対策、化学物質対策の着実な推進に必要な経費として二百六十四億五千五百万円、大気、水、土壌環境等の保全対策については、アジア・コベネフィット・フォーラムの構築など、経済発展の著しいアジア諸国において公害防止と温暖化対策を同時に進めるコベネフィットアプローチのネットワークを形成する取り組みを初め、微小粒子状物質、いわゆるPM二・五対策や低公害車の普及、土壌環境対策の推進など良好な環境を確保するために必要な経費として四十五億三千六百万円、環境保全に関する調査研究、技術開発については、環境汚染の監視と防止、地球環境の保全、廃棄物の適正な処理に関する調査研究、技術開発の推進に必要な経費として九十九億七千五百万円を計上しております。
第六に、国民のニーズ、地域の実情に応じた環境政策を展開するため、地方環境事務所における経費として、五十四億五千三百万円を計上しております。
次に、特別会計予算について御説明を申し上げます。
特別会計予算では、家庭や職場での排出削減対策の推進、低炭素社会形成の促進、国内排出量取引の総合的な検討、再生可能エネルギーの導入拡大、京都メカニズムクレジットの計画的かつ効率的な取得、技術開発などに必要な経費として、エネルギー対策特別会計に一般会計から三百五十五億円の繰り入れを行い、総額として三百八十七億一千六百万円を計上しております。
以上が、平成二十二年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の概要であります。
最後に、各府省の平成二十二年度環境保全経費の概要について御説明申し上げます。
まず、政府全体の環境政策を効果的に実施することを目的として取りまとめております環境保全経費につきましては、平成二十二年度におけるその総額として一兆二千五百九十六億円を計上しております。
これを事項別に見ますと、地球環境の保全のために六千百九十四億円、大気環境の保全のために二千百二十一億円、水環境、土壌環境、地盤環境の保全のために一千二十六億円、廃棄物・リサイクル対策のために八百五十八億円、化学物質対策のために八十億円、自然環境の保全と自然との触れ合いの推進のために一千四百七十二億円、各種施策の基盤となる施策等のために八百四十五億円をそれぞれ計上しております。
以上、平成二十二年度の環境省所管の予算及び各府省の環境保全経費の概要について御説明申し上げました。
○樽床委員長 以上で説明は終わりました。
次に、平成二十一年における公害紛争の処理に関する事務の概要等について説明を聴取いたします。大内公害等調整委員会委員長。
○大内政府特別補佐人 公害等調整委員会が平成二十一年中に行った公害紛争の処理に関する事務について御説明申し上げます。
まず、公害紛争の処理に関する事務について申し上げます。
第一に、平成二十一年に当委員会に係属した公害紛争事件は、港湾の防波堤工事によって漁業被害が生じたとして損害賠償を求める高知県須崎市における防波堤工事による漁業被害責任裁定申請事件、廃棄物処分場の運営と水質環境の悪化の被害などの因果関係の判断を求める筑紫野市における産業廃棄物処分場による水質汚濁被害原因裁定申請事件、風力発電施設の稼働と健康被害との因果関係の判断を求める静岡県東伊豆町における風力発電施設からの低周波音による健康被害原因裁定申請事件など合計四十七件であり、このうち新規に受け付けた事件が二十八件に上るなど、係属事件数は大幅に増加しております。
また、平成二十一年中に終結した事件は、建設工事に起因する粉じんによる財産被害の損害賠償を求めた港区における粉じん等財産被害責任裁定申請事件など十四件であり、同じく増加しております。
以上のほか、水俣病損害賠償調停申請事件の調停成立後に申請人の症状に変化が生じたとして慰藉料額等の変更を求める申請が四件係属し、現在までのところ、このうち三件について手続が終了しております。
第二に、平成二十一年に都道府県公害審査会等に係属した公害紛争事件は八十六件であり、公害の種類別では、騒音に係る事件が多くなっております。これらのうち、同年中に終結した事件は四十六件であります。
第三に、平成二十一年に取りまとめた、平成二十年度における全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口に寄せられた公害苦情は、前年度から六%減少し、約八万六千件となっております。
これを苦情の種類別に見ますと、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭などいわゆる典型七公害に関する苦情は約六万件で、それ以外の苦情は約二万六千件であります。
当委員会では、公害紛争の迅速かつ適正な解決に資するよう、多様化、複雑化する公害紛争に着実に対応するとともに、公害紛争処理制度の利用の促進を図ってまいります。
具体的には、本制度を利用する地方在住者の負担を軽減するための被害発生地などの現地における審問期日等の積極的な開催や、紛争解決のため当事者にかわって当委員会みずから行う調査の充実に取り組むとともに、国民や関係機関に対する本制度の周知などに努めてまいりましたところ、係属事件数の大幅な増加など一定の効果が上がりつつあり、今後とも引き続きこうした取り組みを進めてまいります。
また、公害紛争処理または公害苦情処理を担う都道府県及び市区町村との情報の交換などにも努め、緊密な連携を図ってまいります。
続きまして、平成二十二年度公害等調整委員会の歳出予算要求額について御説明申し上げます。
当委員会の歳出予算要求額は、五億六千万円となっております。
このうち主な事項といたしましては、第一に、公害紛争処理制度の利用に係る地方在住者の負担の軽減を図るため、現地で審問期日等を開催するための経費として八百万円を計上し、第二に、公害紛争事件の迅速かつ適正な解決に資するため、事件に係る調査を実施するための経費として二千六百万円を計上しております。
以上が、平成二十二年度公害等調整委員会の歳出予算要求額の概要であります。
公害等調整委員会といたしましては、今後とも、これらの事務を迅速かつ適正に処理するため、鋭意努力してまいる所存であります。何とぞよろしくお願い申し上げます。
○樽床委員長 以上で説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前九時四十七分散会