第2号 平成20年2月28日(木曜日)
平成二十年二月二十八日(木曜日)午前九時開議
出席分科員
主査 倉田 雅年君
井上 喜一君 金子 一義君
佐藤 剛男君 中馬 弘毅君
萩原 誠司君 藤野真紀子君
松本 文明君 山本ともひろ君
笠井 亮君
兼務 上田 勇君
…………………………………
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 泉 信也君
国務大臣
(金融担当) 渡辺 喜美君
国務大臣
(少子化対策担当) 上川 陽子君
政府参考人
(内閣府食育推進室長) 齋藤 敦君
政府参考人
(警察庁長官官房長) 米村 敏朗君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 片桐 裕君
政府参考人
(警察庁交通局長) 末井 誠史君
政府参考人
(金融庁総務企画局総括審議官) 大藤 俊行君
政府参考人
(金融庁監督局長) 西原 政雄君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 二階 尚人君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 田中 敏君
参考人
(預金保険機構理事長) 永田 俊一君
内閣委員会専門員 杉山 博之君
財務金融委員会専門員 首藤 忠則君
予算委員会専門員 井上 茂男君
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分科員の異動
二月二十八日
辞任 補欠選任
井上 喜一君 藤野真紀子君
金子 一義君 萩原 誠司君
中馬 弘毅君 松本 文明君
笠井 亮君 高橋千鶴子君
同日
辞任 補欠選任
萩原 誠司君 金子 一義君
藤野真紀子君 山本ともひろ君
松本 文明君 中馬 弘毅君
高橋千鶴子君 赤嶺 政賢君
同日
辞任 補欠選任
山本ともひろ君 井上 喜一君
赤嶺 政賢君 佐々木憲昭君
同日
辞任 補欠選任
佐々木憲昭君 穀田 恵二君
同日
辞任 補欠選任
穀田 恵二君 笠井 亮君
同日
第二分科員上田勇君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
平成二十年度一般会計予算
平成二十年度特別会計予算
平成二十年度政府関係機関予算
〔内閣府所管(内閣府本府、警察庁、金融庁)〕
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○倉田主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。
平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算及び平成二十年度政府関係機関予算中内閣府所管について審査を進めます。
内閣府本府について質疑の申し出がございますので、これを許します。藤野真紀子さん。
○藤野分科員 自由民主党、藤野真紀子でございます。
きょうは、食育について幾つか質問をさせていただきたいと思っております。
ことしは、年明け早々、冷凍ギョーザの問題等がございまして、今改めて食への信頼が大きく問われているところだと思います。そんな中で、平成十七年に制定されました食育基本法の重要性を国民の皆様が本当に再認識をしていらっしゃるところだと思います。
本日は、食育の中でも特に私が大切だと思っております子供の食育につきまして、幾つか質問をさせていただきたいと思っております。
今回のギョーザ事件でもわかりますように、まさに人の命を生かすも殺すも食だということを再認識したところでございます。とはいえ、環境汚染も進みまして、ケミカルなものだけではなく、食というものも、天然、自然のものでさえリスクのないものはなく、安心、安全に関する知識ですとか知恵、それから人間本来が持っております食に対します選別能力、そういったものがまさに命を守ってくれる大切な要素になってくると認識をしているところでございます。
子供のころの食育の重要性を今強く感じるところでございますが、明治のころ、体育の根源も食物にあり、また知育の根源も食物にあると言う作家がおりましたが、明治生まれの作家村井弦斎の言葉でございます。まさに、食は命の根源であるといったごく当たり前のことを日々の生活の積み重ねの中で学ぶ子供のころの食育こそ、自力で生き抜く力を養う大切な教育と考えております。
食育の取り組みは、家庭ですとか学校、そして地域社会というところでしっかりとなされていくべきものでございますが、まず、学校における食育推進につきましてお伺いをさせていただきます。
食育をさらに学校で進めようというところで、栄養教諭の制度というものを食育基本法の中に盛り込んでおりますが、現在の公立の小中学校の栄養教諭の配置の状況、そして今、総合学習の時間が削減されている中で、一体、具体的に食育指導をどういった形でしているのか。その配置状況は、数だけではなく、日本全体の学校の何%ぐらいまで来ているのかというところを教えていただきたいと思います。
○田中政府参考人 御説明申し上げます。
栄養教諭は、平成十七年度から配置が順次進んでございます。平成十七年度末三十四名、十八年度三百五十九名ということで、平成十九年現在におきましては九百八十六名という配置状況でございます。
栄養教諭は学校における食育推進の中核的な役割を担うということで、文部科学省としては、全都道府県における栄養教諭の早期配置が必要であるということを考えてございまして、その配置拡大ということに努めているところでございます。
先生御指摘の数値ということでございますけれども、公立学校におきましては、栄養教諭、現在四十五の道府県におきまして九百八十六名ということが配置をされてございます。学校栄養職員数約一万二千名でございますので、一割ということでございます。
学校数の割合ということでございますけれども、これは、複数の学校を兼務しているというような実態が現在ございます。したがって、単純計算をいたしますわけになかなかいかないものですから、学校数の割合というのはなかなか申し上げにくいというふうに思っているところでございます。
○藤野分科員 ありがとうございます。
それほど進んでいないんじゃないかなという気はしております。と申しますのは、幾つか問題点があるのかなということがございまして、学校でもともと仕事をしていらっしゃる栄養士さんが、栄養教諭になられて、取得をしていかれる場合が今多いかと思います。そうしますと、今言っていらっしゃったように、兼務をされたりですとかということで、全校に配置をしていくという平成二十二年度の目標に本当に達することができるのかなというところも若干心配の種でございます。
と同時に、とにかく子供の教育は、小さいお子さんというとついつい手を抜いてしまいがちなんですけれども、本当は一番大事なところだと思うんですね。ですからこそ、こういったところをきちんと手当てしていかなければ、後々、ニートの問題ですとか引きこもりですとか、結局はそういった大きな問題に発展してしまうと思います。
ですから、そういうことを考えまして、子供さんたちにしっかりと自力で生きていける力をつけるためにも、この栄養教諭の制度、きちんと目標に達するようにしなければいけないと思います。
まだスタートしたばかりでございますので、栄養教諭の方たちの中で幾つか問題点が起こっております。どんな制度も初めのうちはいろいろな問題が起きてくることと思いますけれども、その一つに、今、栄養士さんと栄養教諭の二つの資格をお持ちだというところで、採用のときに、雇用の形態でございますが、まずは栄養士のところで職員として採用しようというような学校もあると聞いております。そうしますと、処遇、待遇に関しましては、まさに職員の給与、待遇となります。そんな中で、仕事に関しましては栄養教諭というものを要求されていくということになっております。
栄養教諭の皆様はもともとはしっかりと食育をやりたい方が多うございますので、それを苦にはしないけれども、やはり国が栄養教諭というものをきちっと制度化したのであれば、むしろ栄養教諭として雇用するのが当然であり、栄養教諭としての仕事を確立してもらうということが大切なことではないかと思っております。
その点も考えまして、今後、この栄養教諭の方向性というものをきちっと見ていかなければいけないのではないかなと思っております。そのために、従来の栄養士さんと栄養教諭との線引きということも大切なことではないかと思います。
今まで栄養士さんというのは、給食の栄養を考えていればよかった、でも、子供さんたち一人一人に、体のこと、そしてしゅんのもの、何をどう食べればいいのか、何をどう自分の力で選別していけばいいのか、そういったことを教えなければいけない、それは大変な時間を費やすことだというお話でございます。そんな中で、本当に、将来的には栄養士さんが一人きちっと栄養管理をし、かつ栄養教諭がその指導を三百六十五日きっちりと子供さんにしていくというような仕組みをつくれれば、これは子供にとってはすばらしいことではないかと思います。
それともう一つ、今学校の中で、一年間を通しまして、栄養教諭が何をどうしてプログラムをつくっていくのか、どの時間、何時間ぐらい子供の食育教育をするのかということが全く見えていない、この枠組みをきちっとつくり上げていくことによって栄養教諭の仕事が確立するのではないか、そういったお声も栄養教諭の方たちから出ているところでございます。これはスタートしたばかりの制度でございますから、いろいろこれから手直しをしたり考えていったりしなければいけないと思いますが、ぜひともそういった現場の声を聞きながら、いい形に、子供のために、今後修正をしていかなければいけないと考えております。
次に、給食のことでございます。
私は東京生まれの東京育ちでございます。ですが、なぜか味のふるさとは九州の長崎平戸島でございます。なぜかといいますと、私の祖母がずっと一緒に暮らしておりまして、我が家は東京にあったものの、料理が全部九州の平戸の料理でございました。そんなこともありまして、大きくなっていろいろなことがあったり海外に行ったときに、やはり九州の味を食べるとほっとして、また頑張ってあしたも仕事をしよう、そんな気力がわいてきたものでございます。
そんなことを考えますと、やはり、懐かしい子供のときの食の記憶というものは、大きくなって、子供たちに、自分のふるさとを思い起こしたり、そして国を愛する心を呼び起こさせてくれると同時に、生きる力というものもまた与えてくれるというふうに思っております。
そこで、給食のことでございますけれども、給食の方でも、食育基本計画の中の九つの目標値の中に、地産地消といいますか、地元の、地場のものを使って給食をなるべくつくっていこう、そういったことも盛り込まれていたと思います。
昨今の食の安心そして安全の面からも、お母様たちの声は、やはり子供たちには、輸入物に頼らず、できるだけ我が国の安心で安全な食材を使ったものを食べさせたい、そういった声が今上がっているところでございますが、この給食に関しまして目標値を立てました。地場のものを使って給食をつくっていこう、こういった目標に関しましての質問でございますが、現状はどんなものかということでございます。
それともう一つですが、二十年度予算の中に、学校給食における地場産物活用方策等に関する調査研究費が組み込まれております。この予算額及びその具体的な内容、これはまさに流通を変えて、若干給食費が上がるからそれを手当てしようというものなのか、何らか調査するお金なのか。むしろ、実際に子供たちが食べるものへの援助というもの、国の援助も必要じゃないのかなと考えるところでございますが、この辺のところを教えていただきたいと思います。
○田中政府参考人 御説明申し上げます。
先生御指摘の、給食における地場産物の取り入れということでございます。
学校給食におきまして地場産物を活用するということにつきましては、先生御指摘のとおり、子供たちが身近に実感を持って地域の自然、環境、食文化、産業ということについて理解を深めるというようなこと、あるいは食べ物への感謝の気持ちを抱くというようなことから教育的な意義があるということで、文部科学省としてもその積極的な活用を進めているところでございます。
先生御指摘のように、食育推進基本計画において、平成二十二年度までに三〇%ということでございますが、現在、約二三%というところでございます。
文部科学省としては、教師用の食に関する指導の手引でございますとか、あるいは地場産物の活用の事例集というようなものをつくりまして、各学校に配付をしているというところでございます。
文部科学省としては、いろいろな場面を通じて、その重要性を積極的にいろいろなところに情報発信ということに努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
次いで、先生から御質問がございました、平成二十年度予算案におきまして盛り込んでございます学校給食における新たな地場産物の活用方策等に関する調査研究ということの内容について御説明を申し上げます。
本事項は、調査研究ということでございますものですから、まさに調査研究事業でございまして、予算としては約四千万円ということを予算案に計上しているところでございます。
具体的には、各都道府県内において、年間を通して地場産物を学校給食で安定的に使用できるように、地場産物の安定供給のための体制の整備をどう進めていくのか、あるいは、地場産物を教材として活用した指導プログラムということをどんなふうにしていったらいいのか、そして、地場産物を使用した食品をどういうふうに開発するのかということについて、全国約二十地域程度を想定してございますけれども、学校給食あるいは食材の生産、流通等に知見を有する団体に委託をして、実施を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
本事業の実施によりまして、地場産物を供給するための体制の整備、あるいは地場産物の活用というようなことが促進されるよう、文部科学省としては期待をしているところでございます。
以上でございます。
○藤野分科員 ありがとうございました。
四千万というと、かなり貴重なお金だと思います。これを投じたからには、来年度、その次には必ずやこれが着々とパーセンテージが上がり、三〇%が目標になっておりますけれども、平成二十二年には必ず三〇%、子供たちが地元のものを食べられるような形にならなければいけないのかなというふうに思っておりますので、この点、しかと頑張っていきたいと思っております。
今回の冷凍ギョーザの問題、たびたび出てまいりますけれども、我が国の自給率の低さも改めて国民の皆様は実感して、聞いてはいたけれどもこういうことかと改めて理解されたところだと思っております。
できる限り輸入に頼らず自国で賄うということが食の安心、安全にもつながるという声が多く聞かれるようにもなりました。まずは給食から、せめて給食だけでも国内産で賄いたいという多くの親御さんのお気持ちを酌み取りまして、国として頑張っていかなければいけないと思っているところでございます。
次に、米飯につきまして、給食の中でお米を食べていく、これは週にどのくらいなのか、平均二・九ということでございましょうか、約三日間ということでございます。
これも、自給率のこともございますけれども、自給率はお米に関しましては日本は九五%とかなり高いところでございます。ですから、食のとり方を変えることによって自給率を上げることもできる。むしろ給食というものできっちりと米飯をふやすことによって、給食の中から自給率を上げるということも可能になるのではないかと思っておりますが、かといって、子供たちに毎日御飯を食べろという強制をするわけにもいかない。これだけグローバルの世界でございますから、それぞれ、パンもあり、そしてパスタもあり、それぞれ他国の食文化というものも吸収して、これは決して悪いことではないと思っております。
ということで、一つ御提案の中に、米粉というものが最近かなり出てまいっております。給食のパンも、そしてめんも、小麦粉というのはアレルギーもあることでもございますし、米粉というものの普及をさせまして、せめて給食に出てくるパンは実は米なんだ、給食に出てくるめんは実は日本の米なんだと。この米粉も、日本に流通しておりますのは中国産もございますので、これはぜひ日本のものという形で給食の中に取り込めるようなことができないか、こういった考え方に関しまして、ぜひ御所見をお伺いしたく存じます。
○田中政府参考人 御説明申し上げます。
学校給食におきましての米粉パンを使用する学校ということにつきましては、年々増加をしているところでございます。これは私どもでございませんけれども、農林水産省の調査では、平成十八年度において学校給食で米粉パンを使用したことがあると回答した小中学校は、全国で約八千校と承知をしてございます。十六年度四千校、十七年度六千校、十八年度約八千校というようなことで、徐々に伸びてきているところでございます。
また、学校給食を実施している学校等では、学校給食用食材を供給している都道府県の学校給食会では、平成十九年度、二十府県について米粉のパンを学校等に供給しておるというところでございまして、そこにはできるだけ当該府県で生産されたお米を粉に加工したものを使用しているというふうに聞いているところでございます。
一方、学校給食会の売り渡し価格というようなことを見ますと、やはり米粉のパンは小麦粉のパンに比べて若干割高であるというようなことも伺っているところでございます。一部の都道府県ではそのためのいろいろな手だてを講じているというふうに聞いてございます。
文部科学省としては、やはり先生がおっしゃったような重要性ということも一方あるということも踏まえながら、地場産物の使用割合を向上させる一つの方策としてこういうこともあるよねというようなことを考えているところでございますが、実際には、学校給食の実施者でおられます市町村の教育委員会等がそれぞれの事情に応じて判断をされるというふうに考えているところでございます。
○藤野分科員 ありがとうございました。
米粉というのは確かに割高ということで、そういったことも含めまして、国がサポートをする中で、日本の米なんだという、食育というのは非常に広範囲なものですから、どこかにピンポイントを当てまして、日本の米というのはまさに象徴的なので、そういったところで子供たちの心に植えつけたらどうなのかなということでございまして、これも前向きにまた検討していきたいなと思っております。
子供の育ちの中で最も基本になるのが信頼のきずな、これは、親と子、それから先生と子供たち、生徒たちというような信頼のきずなではないかと私は思っております。信頼というのは、親と子の間に関しましては、どういうときに積み重ねていくものかと申しますと、やはり時間をともに過ごせば過ごすほど、信頼関係というのは、まさに薄紙を合わせていくがごとく日々構築されていくものと思っております。
その親子のともに過ごす時間の中で、親からの思いを子供に伝え、そして子供はそれを受けとめながら、まさに親に愛されているという実感を確認しつつ子供たちは成長していくのだと思います。その信頼があってこそ安心があり、その安心し切った子供たちから初めて、人生の将来に向かって、未知に向かって第一歩を踏み出す勇気というものが生まれてくるはずでございます。
そんな中で、今家庭の中に、どうやら家族の数が減ってきてしまった。以前上川大臣にも御相談したことがございます。かつて私たちは大家族の中で食卓を囲んでまいりました。その後、核家族になりました。そして女性の働き方が随分と大きく変化をした中で、今子供たちは家の中でひとりぼっちで御飯を食べている、そういった図が浮かび上がってきております。
実は、これは読売新聞でございますが、平成十八年だと思います。家族で毎日夕食をという、夕食をとっている子供たちの記事でございますけれども、「「食育」に警鐘」とございます。これは二〇〇四年のデータでございますが、家族で毎日夕食をとっている子供というのが二六%、一九七六年が三六・五%ということで、夕食を家族とともにとるという当たり前のことが今なくなってきている、これも大変な問題だと思います。
食育の中では、いわゆる孤食が増加傾向にあると言われておりますが、その実態というものがどうなのかということ。そして、食卓を囲む家族がいない、そういったことによって引き起こされてくる状況というものが当然出てくるかと思います。これは、体のことではもちろんバランスのいい食事がとれないということ、そして親子のきずな、先ほど申しましたように、お互いに時間を共有するといった、そういった時間もとれないということになってくるかと思います。
そんなことも考えまして、その状況等に関しましてお伺いしたいと思います。
○上川国務大臣 藤野先生におかれましては、子供のための食育ということで、大変力強い活動をされ、またいろいろな御提案もいただいてきましたので、この場で先生の活動に対して心からの敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。
今御質問の孤食のことでございますが、統計的に見ますと、ここ二十年間で、家族そろっての夕食の機会が年々減少をしているところでございます。先ほど数字を挙げられましたけれども、一九八六年から二〇〇四年の約二十年間で見てみましても、毎日家族がそろって夕食をとる子供の割合は、御指摘のとおり、三六・五%から二六%に減少しているという実態がございます。
また、ほかの調査でございますが、夕食をひとりで食べる子供、ひとりぼっちで食べる子供が、平成十七年度では、小学生で二・二%、中学生で六・九%でございます。これに子供たちだけで食べるという数を加えてみますと、小学生では六・八%、また中学生では一一・八%という大変残念な数字になっているところでございます。
家族で一緒に食べる機会が多ければ多いほど、日常的な、例えばあいさつをするとか、あるいはすっきりと朝目覚めるとか、また朝食を食べるというそうした確率が非常に高くなっているという傾向でございますので、そういう意味でも、孤食の現状はなかなか厳しいというふうに思っております。
原因ということでございますけれども、家族それぞれの生活時間、また価値観、ニーズが非常に多様化しているということ、また、日々忙しい生活を送る中で、毎日の食の大切さに対しての意識が希薄になってきたのではないかということが、食生活やこれを取り巻く環境の変化とともに大きな影響を子供に及ぼしているというふうに考えているところでございます。
また、家族で食卓を囲む、まさに家族団らんの食卓というのは、望ましい食生活や知識を習慣づけたり、またコミュニケーションなどを通じて精神的な豊かさを得る、あるいは先ほどあいさつという話を申し上げましたけれども、マナーなどを習得する上で大変重要な機会であるというふうに思っております。
また、子供たちの心と体の成長とかあるいは人格の形成にも大きな影響を及ぼしておりまして、先ほど先生から家族のきずなというふうにおっしゃいましたけれども、まさにきずなを高め合うための大変大事な機会であるというふうにも思っているところでありまして、私は、家族の団らんの食卓こそ最大の食育の場であるというふうに思っております。そういう意味では、孤食そのものが、そうした食育の場が、家庭の中からその機能が失われてきつつあるということに大きな警鐘を鳴らしているというふうに思っております。
そういう意味では、食育基本法また基本計画をもとに、家庭に対しての働きかけ、また、先生御指摘のような学校での働きかけも含めまして、地域全体で国民運動を展開しながら、子供の食について手を抜くことがないような取り組みに一層全力で取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
○藤野分科員 ありがとうございました。
最後、もう時間がございませんけれども、食卓というのは、私が選挙に立たせていただいたころは、食育というのは単に料理のことだろうとか大したことじゃないとか、そういった声がたくさんございました。食卓というのは、お母様たちだったら本当にそれは実感しておわかりになるかと思いますけれども、まさにそれは体をつくる場、空腹を満たすようなえさ場ではないということをしっかりと認識していきたいと思っております。
まさに子供たちの人格形成の場である、そのことを深く認識いたしまして、家庭の中にお母さんが戻るような仕組み、そして職場復帰の保障ができ、かつ収入的にも保障がされるような、安心して子育てができるような仕組みをすることによって、夕方、せめて夕食のひとときでも家族がそろえるようなそんな社会になったら、きっと子供たちが非行に走るということは少なくなってくるのではないかと思っております。
食卓というものには四つのポイントがあると言われています。まず人が必要である。食べ物があるだけではいけない。そこに相手が必要である。この相手、人とのかかわりの中で、感情のやりとりがされる中で心の豊かさがはぐくまれる。
二つ目には距離。この距離は、テーブルを挟んで近いということでございます。コミュニケーションというのは、人と人、言葉でされますが、ここに表情が入ります。表情というのは心をあらわすものでございます。子供と親との間で近い距離でのコミュニケーションは、言葉だけではなく、表情そしてしぐさによって子供の心をさらに豊かにしていくものと思います。
そして、時間でございます。先ほど申し上げたとおり、これは薄紙を重ねていくように、極めて時間が必要だと思っております。楽しいことがたくさんある、幸福感をたくさん感じた子供たちは、大変勇気ある強い子供に育つと思います。
そして、頻度でございます。食卓というのは、ただ御飯を食べる場ではなく、まさに家族が集う場、家族がそこに集まる場として家族のきずなを深めていく、そういったような認識をしているところでございます。
本当にきょうは貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。今後とも、子供たちのために、また皆様のお力をかりて尽力をしていきたいと思っております。
以上で終わらせていただきます。
○倉田主査 御苦労さまでした。
これにて藤野真紀子君の質疑は終了いたしました。
〔主査退席、佐藤(剛)主査代理着席〕
―――――――――――――
○佐藤(剛)主査代理 次に、金融庁につきまして質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩原誠司君。
○萩原分科員 おはようございます。自民党の萩原誠司でございます。
きょうは、渡辺大臣にわざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。
きょうは、睡眠預金について少し議論をし、お伺いしたいと思います。
御案内のとおり、睡眠預金といいますのは、長期にわたって取引が行われていない預金口座のこと、どこの国にもこういうものはございますし、またどこの銀行にも、あるいは農協にも、ほとんどすべての金融機関にこういう長期にアクセスのない預金というものが存在するわけでありますが、この取り扱いについては、主要な先進国と日本とでは相当大きく異なっているという実態にございます。
そこで、問題意識としては、我が国においても先進国の動向というものをしっかり見た上で、これまでの取り扱いのままで本当にいいのかどうか、そろそろ本格的に議論を行うべき時期に来ているのじゃなかろうか、そういう問題意識で全体としての質問をさせていただきたいと思います。
まず、原点でありますけれども、日本の睡眠預金につきましては銀行の特別利益に計上されているというふうに承知をしておりますけれども、どういう考え方に基づいてそういう処理になっているのか、確認の質問をさせていただきたいと思います。
○西原政府参考人 お答え申し上げます。
今委員御指摘のとおり、睡眠預金につきましては、銀行は、最終取引日以降十年を経過した預金については、長期間払い戻し請求がなかったという点を考慮しまして、会計上の取り扱いとしては利益計上をした上で、税務上も益金算入をしているというふうに承知をいたしております。
しかしながら、銀行の実務といたしましては、民事上の権利である消滅時効の援用はしないということでございまして、そういう意味では、利益計上はしているものの、預金者は権利を失うということではなくて、その後であってもいつでも払い戻しを受けることができるということになっているというふうに承知をいたしております。
○萩原分科員 概略そういうことになりますけれども、もちろん、多くのケースにおいてはそのまま利益計上が継続をすることにもなっているということです。
おもしろいのは、そういう取り扱いの方法をどういうレベルで定めているかという点だと思いまして、ここに参考までに持ってまいりましたけれども、睡眠預金については銀行協会が通達を出して規律をしている。銀行協会は、証券業協会とは違って任意の団体でございまして、規律に関する権限は本当は一切ないところがカルテル的に規律をしているという状況自身が日本の特殊性としてなかなかおもしろいのですけれども。
最終的に、睡眠預金だということで、さっきお答えがあったような利益計上する前に、持ち主と想定される方に確認の通知を出しますね。これがおもしろい文章になっていまして、この文例までも銀行協会がおつくりになって、各銀行にお示しされているのですけれども、「拝啓 当店をご利用いただき誠に有難うございます。さて、お取引いただいております○○預金については、長い間、入出金等の動きがありません。万が一お忘れの場合は当店あてご連絡下さい。敬具」と。これは一切、その後の取り扱いが没収に近いというんですか、特別利益に計上するんだということに触れた条項も文言もない。
一方で、私たち海外の事例を、例えば留学でありますとか勤務とかで知るべき立場にある同僚もいっぱいいるのですけれども、しばらくほっておきますと、日本に通知が来まして、アメリカの場合ですけれども、あなたの預金は州の管理に移ることになりますのでよろしいですかという、極めて明確な問い合わせが来て、それに対して答えていく、こういうことになっているわけであります。
ある意味では、確かに、権利については時効の援用をしないということもあるわけで、守られているように見えながら、どうも日本の取り扱いについてはしっかりした規定というものが存在しないような、逃げ腰の感じがどうしてもするというふうに多くの方々が思っている、そういう実態にもあるということをまず申し上げさせていただきたいと思うんです。
そこで、日本のこの扱いがいいのかどうかについては、幾つかの機関において議論が内々の形でされているわけであります。
きょうお願いしているのですけれども、預金保険機構におきまして、諸外国と日本はどう違うんだということ、特にこの数年間、欧州において新規の立法例があったこと等を念頭に置いて調査研究が行われておりまして、それが預金保険機構のホームページからも見ることができますし、また、研究を抄訳されたいわゆるリポートにも掲載されているわけであります。
そこで、お伺いを申し上げたいのですが、こういった諸外国における睡眠預金の取り扱いについて改めて預金保険機構の中で調査研究をされた、その背景と目的についてお伺いをしておきたいと思います。
○永田参考人 お答えいたします。
平成十七年四月のペイオフ全面解禁以降、預金保険機構といたしましては、万が一金融機関が破綻した場合に、速やかに名寄せを完了いたしまして早期に預金の払い出しを再開できますよう、金融機関の名寄せデータ整備状況について、立入調査とか名寄せデータのシステム検証などを通じて検証してきているところであります。
ところが、名寄せによりまして各個人ごとに保護される預金額を特定するためには、預金の権利者を特定いたしまして、同一預金者の預金を合算する必要があるわけですが、預金者情報が不正確であることが少なくない休眠預金口座につきましては、名寄せデータ整備が難しいため、破綻処理を煩雑化あるいは遅延化させる要因となるのではないかというふうに考えております。
このため、私ども預金保険機構としては、休眠預金を整理いたしまして、名寄せの迅速化、効率化を図る必要があると考えていたところでございますが、たまたま、先ほどもおっしゃられたような、最近イギリスにおいて休眠預金を集約する動きが始まったことなどから、諸外国の事例について研究を行っていたというところでございます。
○萩原分科員 ありがとうございました。
今お話をしていただいたように、我が国ではペイオフの問題があった。そうすると、破綻処理について一定の勉強をする必要がある。破綻処理のときに、睡眠預金口座というものが手続を何十倍に煩雑化させるおそれがあるから、これは問題だという意識で調査が企画をされ、やってみたらさまざまなことがわかってくるわけであります。
先ほどちょっと申し上げましたけれども、アメリカでは、たしか州が管理をしていて、ニューヨークの例で言いますと、この間ニューヨークの一番新しい情報を拝見したのですけれども、八十億ドルぐらいでしたか、ニューヨーク州だけで約一兆円弱の睡眠預金等が存在をしているわけでありますし、一個の件数で一番多かったのが、一人の方で、方といっても一つの口座ですかね、一億六千万円相当のものが掘り出された、埋蔵金ではありませんけれども掘り出された、こういう状況になっています。
ただ、アメリカの場合、非常に丹念に情報の公開ができていまして、インターネットその他でアクセスをしていくと、包括的な形で、自分の名前に該当する睡眠預金があるかどうかということの確定ができる。別にそれが少額であっても、たしかできる形になっていたような気がいたします。
ところで、先ほど私、銀行協会の御通知によるところの預金者に対する通知文例をお話ししたのですが、もう一個ぜひこの場で申し上げておきたいことは、こういった通知が出るものというのは、日本の場合、これも銀行協会というところの御指導によって、預金金額が一万円を超えるものなんです。一万円以下のものについては、実は何の音さたもなくすっぱり、黙って特別利益にこれは自動的に計上されているわけですけれども、こういったところが果たして本当にいいのかどうかということが若干気にはなるわけであります。
ところで、先ほどのお答えにもありましたように、預金保険機構では、発端は破綻処理にまつわる睡眠預金の存在の煩雑性だったわけですが、いずれにしても、諸外国の動向というものを調査研究されているわけであります。
そこで、お尋ねをしておきたいわけですが、アメリカ、カナダあるいはオーストラリア、ニュージーランド、これは大体似ているんですけれども、こういったところの取り扱いについてはどんなふうな理解をされておられるか。
そして、これもちょっとお話がありましたけれども、アイルランドや英国に立法例が出つつありますけれども、これについてはどういうふうにその内容を理解しておられるか、把握しておられるか、この点についてお伺いをしたいというふうに存じます。よろしくお願いします。
○永田参考人 お答えいたします。
まず、アメリカでございますけれども、先ほども先生おっしゃられたようなことでありますが、各州により制度が異なっているわけでございますけれども、原則といたしまして、三年ないし七年程度取引がない預金債権については、各金融機関の口座から、各州の未請求債権管理部署というものがあるんですが、そこに移管されまして、州の管理下に置くこととされております。
なお、時効の関係ですが、時効の適用はございませんで、州は預金者があらわれるまで永久に預金債権を管理することとされております。
それから、立法措置の関係でございますが、アイルランドでは、二〇〇一年に立法措置がなされまして、休眠預金は、新たに設置された休眠預金基金に移管されます。国立財務管理庁がこれを管理することとなっております。
なお、休眠預金基金に移管された後も、預金者の預金に対する権利は、これも永久に失われることはないということであります。
それから、イギリスにおきましては、現在法案の審議中でございますけれども、十五年以上取引がない休眠預金については、預金者の権利を恒久的に保障しつつも、還付基金に移管されるということになっております。
オーストラリア、カナダでも同様の制度が行われていると承知しております。
○萩原分科員 アメリカの場合は、一点だけ補足をさせていただきますと、預金だけではないんですね。アンクレームド・プロパティー、つまり財産権すべてについて、あるいは債権すべてについて、持ち主が存在が不確定なもの、株なんかも対象になるとか、あるいは労働債権のうちの一部もそういうものの対象になっていくとか、いろいろな形があります。日本でいうと、例えば消えた年金なんというのも、またこっちへ移ってきて、そこで生き返ってくるような、そういう制度になっているという、非常におもしろいものになっています。まあ、きょうは預金だけに議論を集中したいわけでありますけれども。
もう一つ、ヨーロッパの方で補足を申し上げておきたいのは、アイルランドの法律は、管理の部分とそれから使用目的の部分があって、社会福祉の増進のために活用していくというふうに規定をされています。もちろん、永久に権利喪失がないので全部は使えませんけれども、一定の確率、大数法則の中で当然ある程度の目算がつくわけでありまして、その目算の中で余剰が生じることが明らかになったものについては、社会保障のために活用していく。あるいはイギリスの場合には、大まかに言うと慈善事業の振興でしたか、チャリティーアクティビティーの振興のためにこれを活用していく、こういうふうになっているわけであります。
いずれにしましても、日本と随分扱いが異なっている。いろいろな面で異なっているわけでありますけれども、まず、各国の扱いについて、ある程度共通点があるんですね。いろいろな観点から見るとある程度の共通点というものがありますけれども、各国の休眠預金についての共通点、日本との違いという意味での共通点について、概括的に整理をしてお答えをいただければ幸いかと存じます。
○永田参考人 お答え申し上げます。
共通点ということでございますので、申し上げますと、まず、アメリカ、カナダ、オーストラリア、アイルランドなど多くの国におきましては、休眠預金を一元管理する機関を設立しておりまして、休眠預金は、金融機関に留保されずに、公的な性質を有する管理機関に移管されることとなっております。
なお、近年、イギリスにおいても、先ほど申し上げましたような休眠預金を集約する動きが始まっているということであります。
それから次に、こうした国々では、金融機関から一元的管理機関に預金が移管された後も、預金者が有効な請求を行えば預金が返還されるという取り扱いになっております。
それから、三番目でございますが、休眠預金を一元管理する諸外国におきましては、当該管理機関におきまして簡単に預金の確認ができ、また、その確認ができれば容易に引き出しを行うことができる制度が整えられているというようなことが、我々、この執筆を担当した者の研究においては明らかになっております。
○萩原分科員 ありがとうございました。
そういうことで、幾つかの特徴が共通に存在をするわけですが、次は、その共通に存在する特徴というものを私たちの国、社会においてどう評価するかというところに論点が移る必要があるわけだと存じます。
公的一元管理が行われ、権利が保護されながら活用されていく、こういうスタイルをとっているという特徴が共通にあるわけでございますけれども、こういう処理の仕方について、例えば預金者の目から見ていいのか悪いのか。あるいは破綻処理との関係で、これはもうほとんど自明なんですけれども、楽なのかどうか。あるいは金融機関としては、これがいい面もあり悪い面もあると思うんですけれども、どうなのか。というふうに観点を整理した上で、諸外国で行われている公的一元管理というものをどう評価するか、これについて、預金保険機構のお考えをお尋ね申し上げておきたいと存じます。
○永田参考人 お答え申し上げます。
預金者、それから破綻処理、あるいは金融機関との関係ということでございましたが、私ども、破綻処理という関係から、先ほど申し上げましたような関心を深めたということでございますので、仮に休眠預金を一元的に管理する制度を導入する場合、預金保険機構といたしましては、破綻処理の観点から、あらかじめ、預金者と連絡がとれなくなっております口座を一元的管理機関に移管することで、名寄せ処理など破綻処理の円滑化に資するものと考えております。
それから、預金者、金融機関等との関係につきましては、これは私どもだけで判断できるわけではありませんし、また、どのような仕組みを構築するかにもよりますけれども、諸外国の事例によりますれば、次のようなメリットがあると諸外国では考えられているということでございます。
まず、預金者といたしましては、失念した預金につきまして一元管理する機関に問い合わせをするということで、権利を有する預金の有無を効率的に確認できる。また、休眠預金を保管していた金融機関に行くことなしに、管理機関を通じて預金を引き出すことができるといったメリットが挙げられています。また、金融機関といたしましては、預金者と連絡がとれない預金口座の管理を続ける事務負担を軽減することも可能と考えられております。
他方、デメリットといたしましては、金融機関にとりまして、一元的管理機関に移行する事務手続が負担となるといったようなことが挙げられてはおります。
なお、こうした制度の構築について検討する際には、申し上げた今のような利害のほか、新たに法制度の整備が必要となるといった点にも留意する必要があるのではないかというふうに思っております。
○萩原分科員 もちろん、どういう具体の制度をつくっていくかによって利害得失も異なってくる、そういう前提を置く必要がありますけれども、要するに、諸外国が、ある一定のきっかけをもって、透明性の高い預金者保護というものをやりながら公的管理をしていくことによって、預金者の地位の安定というものを図る。そして、大きな流れを見ておりますと、細かい、睡眠預金を含めてずっと管理をしていくことに対する金融界の負担というものを軽減する方向で議論をしていこう、そんなふうになっていますし、そのことが、当然でありますけれども、破綻処理等における状況の安定性というものにもつながっている、こういう評価を一般的にはしていいのではないかというふうに思われるわけであります。
ところが、そう思って私も幾つかの金融関係の方々にこの話を伺っていますと、大体、リアクションが極めてポジティブではないわけですね。ネガティブというか、ポジティブではないわけであります。恐らく金融機関としては、やはりこれは、えらい簡単に申し上げますと、せっかくの利益の束をむしり取るのはやめてくれということなのかどうかわかりませんけれども、ある種の非常に否定的なリアクションというものが起こってくるわけでございます。
そういうことを拝見すると、先ほど申し上げたこの通知の仕方が納得ができるわけですね。「万が一お忘れの場合は当店あてご連絡下さい。」とは書いてあるけれども、これが自分の特別利益になることは一切言わない書き方というものと整合性がとれて理解をされていいのかなと思いながら、そんな推量もするわけでございます。
そういうことを念頭に置きますと、今、預金保険機構の永田理事長の方から、かなり抑えてはいるけれども、いいメリットがあるかもしれないというお答えがあったんですけれども、実は、この話を勉強するために金融庁の方々にお越しをいただいて、過去四カ月ぐらいかな、議論をしているんですけれども、金融庁のサイドにおける勉強の程度の低さとかリアクションというのは相当なものがございまして、恐らくそのことというのは銀行のリアクションを反映したものかなというふうに考えざるを得ないような気もしてくる。
そこで、全く同じなんですが、金融機関にとって、こういった公的管理、睡眠預金についての一元管理をすることについて、金融庁としてはどうお考えになっているのか。先ほどは預金保険機構の方からお話を伺ったんですけれども、あのままでいいというなら話は非常に簡単なんですけれども、金融庁として公的一元管理論についてどうお考えなのか。ここはやはり別個、分けてお伺いしたいと思っておりますので、大臣、よろしくお願いいたします。
○渡辺国務大臣 大変分科会にふさわしいテーマで、非常に興味深い問題提起をしていただいたと思いました。
私も、御指摘のように、実は余り勉強したことはありませんでした、正直申し上げて。金融機関の方から考えますと、確かに特別利益という形にはなるのでありますが、何がしかの払い出しは毎年あるわけでございますから引き当てを積まないといけないわけですね。また、事務管理のコストも当然これはかかるわけでありますから、特別利益が出るから、それだけでメリットがあるとも言えないのではなかろうかと思うんです。ですから、そういったコスト面のことも考えれば、公的管理に移すという話は全く荒唐無稽な話ではなかろうと思います。
一方、公的管理に移す場合には、では、どの時点で、どのような手続で移すのかという問題、それから、預金の管理や返還にかかわる事務をどの機関が担うか。例えば、先ほどのお話ですと、預金保険機構が担うということもあり得るのかもしれません。では、そのコストはだれが負担をするか。預金保険機構の場合には預金保険料という形になるのかもしれませんが、これは当然金融機関が払うコストなんですね。このコストは最終的にだれのところに影響が及ぶかというと、これは預金者のところに及ぶわけでございます。そういったことが合理性が担保できるかどうかという問題も一つあろうかと思います。
先ほどの米国の例では、アンクレームド・プロパティーとおっしゃったんでしょうか、預金だけでなくていろいろなプロパティーがこういう世界で管理されるんだというのは大変私は興味深く聞いたのでございますけれども、預金を保有し続けることに、金融機関は利益を失いますけれども、預金の管理や返還事務から解放されるのは確かであります。イギリスでは、現在法案化した制度では、睡眠預金を国庫に移管するものの、返還事務は銀行が行うということになっているそうでございます。
したがって、金融庁として方向性を持ってこの問題について考えが及んでいるわけではございませんが、興味深い問題提起をいただいたものと思って考えさせていただきたいと思います。
○萩原分科員 ありがとうございました。
いろいろな議論が背景に潜んでいます。例えば、イギリスの議論やアメリカの議論。アメリカは、実は今から七、八年前に、こういう睡眠預金について、銀行の特別利益になっていいのかという社会的な批判がありまして、それはやはり違うだろうというふうになった。しかし、それだけの議論だと利益の分捕り合戦になっちゃうので、管理コストの問題を考えて、そこは銀行の利益につながるんだという立論をした上で社会のものに戻していった歴史がある。ヨーロッパでは、これもよくわからないんですけれども、僕が聞いた限りにおきますと、例えば第二次世界大戦のときに社会に動乱が起きましたね。その動乱の過程でいっぱいの、いわゆる持ち主不明というか持ち主死亡というか、あるいは相続もできないような状況の中で、各銀行にいろいろなものがたまっていった。それを一体どうするんだというような議論の中、それは社会にそろそろ還元をした方がいいんじゃないかとか、いろいろな議論が積み重なってこういう社会的な制度というものにもなっているわけでございます。
私は、実は、この問題を最も最初に考えたというか、そういうことになるのかなと思ったことがありますのは、岡山で市長をしておりましたときに、市営住宅にお住まいになっていた八十代の女性の方が、これは独居でしたけれども、死亡されました。遺言が残ってございまして、地域の民生委員にあててあったんですね。そのとき、その方は、私の預金は相続もいないので、この預金については挙げて私が今まで世話になってきた岡山市の社会福祉に充ててくれ、こういうことだったんですよ。大臣、何ぼあったか知っていますか。これは質問ではありませんけれども、五千万ですよ。
その民生委員の方が、バイクに乗って、カブに乗って市長室に向かう、市長室はカブは来られないけれども、もう息せき切ってやってきて、アポなしですよ、市長に会わせてくれ、市長に会わせてくれと言うのですね。余りにも血相がすごいので、入ったらどうですかと聞いたら、これです、これですと言って、五千万円のあれを発見したんだと。
こういうものは恐らく、要するに睡眠預金のようなアンクレームド預金になっちゃうのですね。これは実は、少額のものというのは私たちが学生のときにあった口座とかいっぱいあるんですけれども、大きなものはこういうことなんですね。
私は、そのときに思ったのは、なるほどそういうふうに考えていただいたのかと。つまり、預金については、その方は、市営住宅で、ひょっとしたら生活保護の対象だったかもしれないんだけれども、一生懸命に、それでもつめに火をともすようなつましい生活をされて、残したものを社会に還元したいと言ってきたわけです。ああ、なるほどそういう考え方もあるのかと。この福祉社会において、今後、相続税の問題もあるんですけれども、死亡税という考え方もあります。つまり、死んだときに残っているものは、自分のもの、子孫のもの、そして社会のもの、こういう考え方もできるんじゃなかろうかということをそのときに思ったんです。そしてこの問題の端緒を得たんです。
最後に一点だけお伺いをしたいんですが、今までは預金者の観点だったんですけれども、社会にとってこの睡眠預金というもの、これは霞が関の埋蔵金と違いまして毎年発生するんです。アメリカの場合でいくと数千億円発生をしているわけですね、コンスタントに毎年毎年。それを、もちろん最終的に権利は保護しつつも、大宗、つまり九割以上は使える可能性があるとしたときに、日本国の国民として、銀行の方には申しわけないんだけれども、他の諸外国と同じように私たちの国の社会保障等に充てさせてはもらってはどうですかというふうに考えてもなかなか、そう筋が違っているとは思えないと思います。
そこで、立法府としてもこういった問題をどこかで議論するときが来ると思うんですけれども、そのときには、ぜひ大臣、さまざまな知的協力を金融庁からも提供していただきますように心からお願いを申し上げて、そして、もし御感想がございましたら一言だけいただいて質問を閉じたいと思いますので、よろしくお願いします。
○渡辺国務大臣 大変興味深い御提案でございますので、またこの御提案をきっかけに考えさせていただきたいと思っております。
○萩原分科員 ありがとうございました。
○佐藤(剛)主査代理 これにて萩原誠司君の質疑は終了いたしました。
次に、上田勇君。
○上田分科員 おはようございます。公明党の上田でございます。
渡辺大臣には、行政改革にも今一生懸命取り組んでいただいておりまして、本当に心から敬意を表する次第でございます。
きょうは、行革ではなくて金融の問題について質問させていただきますが、金融システムにかかわるいろいろな議論というのは、これからの日本の経済を考えたときに最も重要な政策課題ではないかというふうに私は考えておりまして、今、金融庁の方でも準備をされております競争力強化プラン、この内容なりについて御質問させていただきたいというふうに思っておりますけれども、本題に入る前に、貸金業の問題について何点かお伺いをさせていただきます。
平成十八年に貸金業法が改正をされました。私も法改正に与党の立場で携わってまいりましたけれども、政府・与党の中での論議の過程では、今回の改正が非常に抜本的な制度の改正になるということ、上限金利の引き下げ、あるいは貸し出しの総量規制の導入といったこれまでにない措置がとられるということから、信用収縮が生じて普通の人に必要な資金が供給されないというような事態が起きてしまうんじゃないかとか、あるいは中小の事業者の資金調達が円滑に進まないんじゃないかというような問題の提起もありまして、大変慎重な議論を重ねてまいりました。
改正の内容としては、もう既に成立をしたとおりではあるんですけれども、法改正から一年余りが今経過をしたところでありますけれども、例えば金利規制や総量規制の導入前であっても既に金利を引き下げる動きがあらわれていたり、改正法に合わせた形で業界も対応しようというような動きが見られております。
そこで、現時点において信用収縮により経済に悪影響が及ぶ、そういう事態というのが見受けられるのかどうか、そこをまずお伺いしたいのと、それから、これから具体的に、実際に上限金利の引き下げとか総量規制が導入をされるわけでありますけれども、それを見通した上での今後のそういう信用収縮等の懸念について、お考えを伺いたいというふうに思います。
○西原政府参考人 お答え申し上げます。
貸金業法の改正に伴う信用収縮、これが経済に悪影響を与えるのではないか、こういうお話でございました。
立法当初から、今御指摘のとおり、いろいろと議論をされ、やはり上限金利、これを引き下げる、あるいは総量規制等々の影響がダイレクトに来ては困るというようなこと、それから急激な与信の引き締めということが生じては困るというようなことで、これらの導入についてはおおむね三年の準備期間を設けるということで、直ちには導入しないという形にはなっておるわけでございます。
それから、総量規制については、事業者の資金調達、これにも配慮をいたしまして、事業者向けの貸し付けとかあるいは個人事業者の貸し付けについては例外とするというようなことにもさせていただいております。しかしながら、今御指摘のとおり、上限金利につきましても前倒しでやろうというような動きも出てきております。
そういうようなことで、今後どういうような影響が出てくるのかというのは十分注視していかなきゃいけないと思いますが、若干最近の数字を見てまいりますと、貸金業者の消費者向けの貸し付け、これについて見てまいりますと、もちろん、改正の影響かどうかというよりは傾向的にずっと減少しているということはあるんですが、この残高がやはり最近減少傾向にあるということは間違いございません。
これは、大手四社について見てまいりますと、十九年三月期は五兆四千百八十七億円という残高だったものが、直近の昨年の十二月末では四兆九千四百九十九億円ということで、四千六百八十九億円減少しております。
ただ、これをさらに分析してまいりますと、実は、過払い金の返還請求、これがかなり増加している中で、それによって元本が減少するというようなことも起きております。これが千四百七十六億円減少している。あるいは、実際に貸し倒れというような形で二千六百八十九億円。したがって、その差は五百二十四億円ということになるわけですが、いずれにしても減少傾向にあるということが言えようかと思います。
そういった中で、やはりこの減少というのが経済に何らかの影響を与えてくるのではないかということで、我々としても十分注視していかなければいけないというふうに思っておりますし、これから本格的に総量規制あるいは上限金利の抑制といったことになった場合にどういう影響が出てくるか、なかなか予測は難しいんですけれども、よく我々としては注視をしていかなければいけない、こう思っております。
○上田分科員 ありがとうございます。
法改正のときにもさまざまな角度からの検討が行われました。今御報告いただいたように、全体としてそういう貸し出しは減少傾向にあるということでありますけれども、幸いそれほど大きな社会問題になっているというようなことは現時点ではないということではないかというふうに思います。
ただ、これは、これからちょっと、特に経済の先行きに対していろいろと今不透明感が強まっている中でありますので、個人もさることながら、特に事業者については、中小企業、個人事業主、こうした人たちが適正な事業を行っていく、それに必要な資金が調達できないというような事態、それはやはり避けていかなければいけないわけでありますので、その点についてどういうお考えか、また何か具体的な方策があれば御説明いただければというふうに思います。
○西原政府参考人 御説明をさせていただきます。
今回の法改正がございまして、中小企業等に与える影響、これについてやはりきちっとした対応をしていかなければいけないということでございます。
我が国の金利の実勢を見てまいりますと、銀行等につきましては数%以下という低金利での貸し付けという実態があるわけですが、一方で二〇%を超えるような高金利での貸金業者による貸し付け、いわば真ん中がなくて低いところと高いところ、よくフタコブラクダというような状況として説明をするわけですが、必ずしもリスクに応じた適切な金利の設定がなされているとは言いがたい状況にあるというふうに思っております。
こうした中で、上限金利の規制ですとか、あるいは総量規制、多重債務者問題の解決といったことの対策のために今回の貸金業法の改正がなされたわけですが、やはり中小企業に対する影響、これが急激に来ては困るというようなことから、先ほど申しましたように、三年間の準備期間、あるいはそういう事業者向け、あるいはそういった資金については総量規制から外すというようなこともなされてきたわけですが、しかしながら、足元を見ましても、やはり中小企業については、ほかの問題として、原材料費の高騰による負担の問題ですとか、それから建築着工件数の問題等々、いろいろな収益を圧迫する要因が中小企業には多々生じております。そういうようなことで、資金繰りの厳しさが増すというこの状況のもとで、中小企業をめぐる経営環境というのが現在厳しくなっているというふうに認識をしております。
したがいまして、政府といたしましては、年度末の資金需要期を迎えるに当たりまして、関係閣僚の方において、去る二月二十日でございますが、年度末に向けた中小企業対策についての申し合わせをさせていただいております。その中では、いわゆるセーフティーネット保証等の継続、強化ですとか、あるいは中小零細事業者に対しての国民生活公庫のいわゆる融資限度額の引き上げですとか、それから年度末の金融繁忙期における中小企業の資金繰りへの配慮要請を各金融機関にするとか等々の手だてを講じたわけでございます。
しかしながら、こうした当面の対策ということにとどまらずに、やはり構造的な問題にも対応していくことが必要であろうというふうに私ども思っております。
例えば、我が国の中小企業の特徴でもございますが、資本の割合が少ないという問題でございます。したがいまして、そういった中におきまして、資本性の資金の供与というのが非常に重要な今後の課題になっているというふうに認識をいたしまして、その中で具体的な対応策としては、例えば十分な資本性が認められるような借入金、これについては資本とみなすというような形で、融資先の企業の債務者区分を査定できるような形での金融検査マニュアルの改定、これは現在パブリックコメントに付しておりますが、そういうことを心がけております。
それからもう一つは、今回改正法案を提出したいと思っておりますが、銀行グループの株式保有制限の例外措置といたしまして、事業再生を行う会社を株式保有の例外措置として加えるというようなことも盛り込んでいきたいというふうに考えております。
そういうような対策、いろいろ打ってまいりたいと思っておりますが、いずれにしましても、貸金業者の動向あるいは借り手の動向、これにつきましては十分今後も注視をして対応していきたいというふうに考えております。
○上田分科員 ありがとうございます。
そういう信用収縮の心配もある、その一方で多重債務問題が非常に深刻になっている中で、それを上回るそういう社会的な要請があるという判断に立って、かつてない抜本的な改正を実行したわけであります。そういう意味で、これから経済への影響については、ぜひ十分注意深く見守って、注視をしていただいて、適切な対応をとっていただく、その一方で、もう既に決められたスケジュールにのっとって着実に実行に移していっていただく、そのことをぜひお願いしたいというふうに思います。
それでは、今度は金融・資本市場競争力強化プランのことについて何点か御質問させていただきます。
昨年十二月、金融庁ではこのプランを公表されました。我が国では千五百兆円に及ぶ個人金融資産がありながら、我が国の金融資本市場の競争力というのは、これはロンドンとかニューヨークに比べると随分おくれをとってしまった。それだけじゃなくて、今やアジアのシンガポールとか香港といった市場に比べても、競争力がないなんということも言われているわけであります。
せっかくこれだけの大きな資産を持ちながら、金融資本市場、マーケットが十分機能していないがために、その富が結局は外国に流出してしまっている、いいところを横取りされてしまっているというような事態があるわけでありますので、いかにして我が国の資産を日本の経済の成長のために使っていくかというのは、非常に重要な問題だというふうに考えております。
その意味で、今、金融庁として金融資本市場の国際競争力を強化しようというプランを公表されて実行に移していく、私は非常に重要なことだというふうに思っております。
そこで、まず最初に、我が国のそうした金融資本市場の国際競争力を強化する必要性また意義について、大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。
○渡辺国務大臣 上田先生御指摘のように、我が国には、家計の金融資産が膨大に富として蓄えられているわけでございます。世界じゅうで今ソブリン・ウエルス・ファンドというのが取りざたされておりますが、大体これが三兆ドルなんですね。三百兆円ちょっとぐらいであります。一方、我が国家計の富はその五倍、一千五百五十兆円であります。塩漬けの預貯金になっている分だけでもその半分、七百五十兆円ある、ソブリン・ウエルス・ファンドの倍の規模でございます。したがって、こうした富が動き出すならば、恐らく日本の経済には大変な活性化インパクトをもたらしていくのではないかと当然考えられるところでございます。
残念なことに、我が国の金融のあり方というのが準戦時体制のころから大きく変わってまいりました。戦前は、産業資金の調達というのは株式市場で行うのがむしろ普通でありました。圧倒的な割合を資本市場で調達したのでございます。準戦時体制のもとでは統制型のシステムに移っていくわけでございますから、直接金融から間接金融への大幅なシフトが行われました。
戦後、この一九四〇年体制と言われるシステムはずっと続いてきたのでございます。そのシステムの上に乗っかって戦後資本主義というのは行われてまいりました。ふと気がついてみると、日本の法人、企業は、資本がとても少ない。今でもそうなんですが、大体資本は三五%、負債が六五%あるんですね。こういう構造的な問題を抱えた国は、恐らく先進資本主義国では日本だけだろうと思います。結局、その構造が家計の金融資産にも反映をしてきてしまっているということでございます。
日本の金融産業が今大体三十五兆円GDPに貢献をしておりますが、これがもっとGDPの割合を高くしていくならば、まさに金融産業が戦略産業として日本のGDPを押し上げていく、そういう効果があろうかと思います。先ほど御指摘をいただきました金融・資本市場競争力強化プラン、これを今国会に法案化して提出いたしますので、御審議のほど、よろしくお願いを申し上げます。
○上田分科員 ありがとうございます。
まさに、我が国の金融マーケット、その強化というのは喫緊の課題だというふうに思っております。日本の金融システムは、金融危機のときにはむしろ実体経済の足を引っ張るようなものでありました。政府の努力もあって、ようやく経済の成長に何とか貢献できるようなシステムになりつつあるのかなというような感じがいたしておりますが、まだまだ十分に機能していないんじゃないかというふうに思います。
イギリスとか先進諸国においては、それだけにとどまらず、金融が一つの国をリードしていくような産業として位置づけられていて、むしろ経済を引っ張るような、牽引するような高い成長率を示しているわけであります。日本もやはりそういった視点での取り組みが必要になってきているんじゃないかというふうに思っております。
今回の競争力強化プラン、これは日本のマーケットの競争力を高めていく上で必要な、まさに必要条件が備わっているんじゃないかというふうに私は思っているんですが、ただ、やはりそこに盛り込まれている施策だけでは、必ずしも活性化をしていくだけの十分な条件は備わっていないんじゃないのかなという気がいたします。
その一つが、やはりマーケットには資金が循環されなきゃいけないわけであります。
先ほど家計部門の資金のお話もあったんですが、ただ、我が国の場合には、家計だけじゃなくて、実は公的部門に非常に資金のストックが多いんですね。年金積立金あるいは外国為替の資金、そういった資金もありますし、また、家計部門の資金についても、先進諸国に比べると、例えば確定拠出型の年金とかがまだ余り発達をしていない。それから、個人資産形成のための支援策ということもこれからいろいろ考えられるのではないかというふうに思います。こういった施策をやはり戦略的に進めていかなければいけないんだろうというふうに思っております。
ただ、これは、もちろん金融庁だけでできる問題ではなくて、内閣挙げた取り組みが必要だというふうに思っているんですが、こうした点について、ぜひ渡辺大臣にリーダーシップを発揮していただいて、内閣一体となって取り組んでいく、そうした方向にぜひ引っ張っていただきたいと思いますが、お考えをよろしくお願いいたします。
○渡辺国務大臣 私のもとに、金融市場戦略チームというのをつくらせていただきました。まずはサブプライムローン問題の原因究明、あるいは対応策等について議論をしていただいてきております。第一次レポートを昨年の十一月に出しまして、その後、ことしに入りましてから、ソブリン・ウエルス・ファンドの調査分析について議論を開始したところでございます。
先ほども申し上げましたように、ソブリンファンドが世界の金融資本市場の中で無視できない、そういう存在にもう既になっております。いわば戦略的互恵関係とでも言うべきものが必要であろうかと存じます。つまり、投資する側も投資を受け入れる側も、どちらもウイン・ウインの関係が構築されなければ金融資本市場はうまくいかないわけでございます。
そういったことを考えれば、今、いろいろなマルチの会合の場面でこの問題が議論をされてきております。そういった議論を横目で見ながら、我が国としても、公的部門のお金の運用をどうするかというようなことについても、方向性が定まっているわけではございませんが、議論を始めたところでございます。
○上田分科員 ありがとうございます。
マーケットの競争力という意味では、もう一つは、人、人材の問題があるというふうに思います。
大臣は、金融専門人材の育成を図っていくという観点から、金融サービス士という資格制度、これを提案しているというふうに、先日、本を読ませていただきました。また、金融庁でも、金融専門人材に関する研究会を設置して検討を進めているということも伺ったところでございます。
こうした資格制度は、やはり金融のプロフェッショナルを養成する、そしてまたその地位や処遇の向上を図っていくという上からも注目すべき点だというふうに思っております。またその一方で、今度は投資する立場、投資家の信頼を得るという意味からも、こうした資格を持っている人たちがそういう市場を担っているということが役立つのではないかというふうに思っておりますが、そういう意味で、そうした金融サービス士という資格制度の趣旨、それから今後の取り組みについてお考えを伺いたいというふうに思います。
○渡辺国務大臣 やはり日本の市場が公正で透明で世界に開かれ、なおかつ内外のお金が集まってきやすい、そういう市場でなければなりません。そのためには、やはり金融に明るい専門の人材、またコンプライアンス感覚を共通に持ち合わせている人材、そういう人たちが至るところに散らばっておれば、いわば生態系の秩序というものは極めて安定的に保たれるのではないかと考えたところでございます。
先ごろ、金融商品取引法が施行された時点で、法律に書いていないようなことまで過剰防衛的にやってしまったところがあるわけでございます。例えば七十歳以上の方には家族が同伴しないと投資信託は販売できませんなどという話は、これは明らかに過剰防衛でございまして、そういったことがなぜ起きたのかといえば、やはり共通のコンプライアンス感覚が金融当局と金融機関において持たれていなかったせいではなかろうかと思い至ったわけでございます。
そういったことを考えれば、やはりこういった専門人材をどのような形で育成するか、はたまたこれを資格制度にするかどうか、いろいろな観点からこういった専門人材のキャリアパスなども考えて、今議論を始めさせていただきました。もう既に三回ほど議論を行っております。この三回の議論でも、相当突っ込んだポイントが指摘をされております。これは、先ほどの戦略チームとはまた別のチームでございますが、ここにおける議論もさらに詰めて、結論を出していきたいと考えております。
○上田分科員 ありがとうございます。
金融のプロというと、とかく商品開発とかトレーディングとか、そういう金融工学的なプロというイメージが強いんですけれども、今大臣からお話があったように、投資家とマーケットを信頼できるようにつないでいく、そういうコンプライアンスとか、やはりそういうすぐれた専門家が必要になってきているのではないかというふうに思っておりますので、ぜひ積極的な御議論をいただきたいというふうに思います。
それで、最後になりますが、もう一つ、やはり人の問題では、日本人のプロを養成していくというだけじゃなくて、マーケットはグローバルですから、外国で活躍をしているそうした金融のプロの人たちにも日本で十分力を発揮してもらう、自由に活動できるようなそうした開かれた市場にしていかなければいけないだろうというふうに思っております。そうした外国の高度な知見とか技能を持った専門家が活動しやすい環境をつくっていく、これも重要な課題であろうというふうに思っております。
そんな中で、そういった外国の金融関係者の中から要望が出ているということは、それは、例えば専門家は今自由に、むしろ積極的に招聘しようというような感じなんですけれども、しかし、実際家族を連れてくることになると、児童保育者とか家事ヘルパーとか、そういった人たちも一緒に来ないとなかなか実際は日本に来ようというつもりにならない。確かに、そういった外国人の専門職の方々を見ていると、御夫婦とも専門職について仕事をばりばりやっている人が多いわけでありますし、また、海外から転居してくる場合に、やはり家庭の中ではしゃべっている言語は英語なんでしょうね。子供も、ずっと長年の中で、むしろそういう使用人の人の方に親よりも懐いているというようなケースもあるんだと思います。そうすると、やはり同行していきたいな、そういう要望が強いというのは理解できるところなんですね。
そこで、こうした方々の入国についてもっと柔軟に我が国としても対応すべきではないかというふうに考えておりますが、ここは、金融庁それから法務省、それぞれ御見解をお伺いしたいというふうに思います。
○大藤政府参考人 お答えいたします。
我が国金融資本市場の競争力強化に向けまして、先生から今御指摘いただいたとおり、我が国のみならず、国籍を問わず金融や国際取引等に関し高度な専門性を有する人材を広く世界から確保することが必要であると考えておりまして、またその環境整備に努める必要があると考えております。
昨年末に策定いたしました金融・資本市場競争力強化プランにおきましても、外国人家事使用人の入国審査における予見可能性の向上等の施策を盛り込んだところでございます。
これを踏まえ、金融庁といたしまして、具体的には、早速、申請者の予見可能性の向上に資するため、法務省入国管理当局の協力をいただきまして、金融機関向けに、外国人家事使用人の入国審査に関しまして、その要件や運用等についての説明会を来月に開催することを予定しているところでございます。
また、金融庁といたしまして、今後、法務省を初めとする関係省庁におかれまして、我が国金融資本市場の競争力強化の観点から、金融機関の外国人従業員が家事使用人をより円滑に雇用するための措置につきまして検討がなされることを期待しているところでございます。
○二階政府参考人 お答え申し上げます。
法務省といたしましても、委員御指摘の、高度な知識、技術を持って活躍される外国人の方の本邦における生活環境の整備の重要性を認識しております。その一つの方策として、家事使用人の入国をもっと柔軟に認めるべきとの意見があることもお聞きしております。
家事使用人を受け入れようとする外国人の方々は、必ずしも我が国の制度に詳しいわけではないと承知しております。このため、法務省入管局としましては、金融庁に御協力いただき、来月にも家事使用人の入国手続に関する金融機関向け説明会を開催することとしております。
そうした機会を利用して、外国人の家事使用人を受け入れるための要件及びその運用について御説明し、申請者の予見可能性の向上に努め、円滑な受け入れを図ってまいりたいと考えております。
○上田分科員 少々時間をオーバーして大変恐縮でございます。
以上で、終わらせていただきます。
○佐藤(剛)主査代理 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。
次に、松本文明君。
○松本(文)分科員 渡辺大臣、私は、御尊父の美智雄先生にかつて大変お世話をかけました。その当時、大臣は御尊父の秘書官をなさっていたと思います。昨晩、答弁者の中に喜美大臣の名前を発見いたしまして、ゆうべは心躍って眠れない時間を過ごしました。これできょう御指摘をする問題の八割方は解決するだろうと、大変大きな期待を寄せておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
最初の質問であります。
昨今、生命保険会社、損害保険会社による契約者への払い渋りが大変多い状況にある、看過できない状況にある、私はそういう認識を持っているわけでございますけれども、大臣の危機意識といいましょうか、御見解はどこら辺にあるのか、伺いたいと存じます。
〔佐藤(剛)主査代理退席、主査着席〕
○渡辺国務大臣 松本委員御案内のように、昨年、保険会社の不払い問題というのが大変な社会問題になりました。私は、保険会社が保険金を払わないでどうするんだ、こう申し上げたわけでございます。不適切な不払いについては、洗いざらい出させてもらいました。
その中で、今委員が御指摘のいわゆる払い渋りという問題も一部あったかと思います。例えば、医療保険とか、がん保険とか、自動車保険の特約とか、こういった問題について、委員の御指摘のような問題が含まれておったわけでございます。もとより、適切な保険金を適時に払い出すということは、最も基本的な保険会社の責務であります。
この不払いに対して、金融庁としては、保険会社に対して業務改善命令を出しました。保険金支払い管理体制の整備など、各種の再発防止策の策定、実施を求めてまいりました。また、迅速かつ適切なお客様対応も求めてきたところでございます。
各保険会社も、こうした問題に対する対応の中で業務改善は進んできているものと認識しております。
○松本(文)分科員 各保険会社が販売をしている保険商品、これについては、国が許可というんでしょうか認可というんでしょうかをしている、こういう話でありますから、当然、国においてもそれなりの責任があるんだろうと私は認識をしているわけでございますが、法的根拠を含めてそこら辺のことについて御説明をいただきたい。
○渡辺国務大臣 御指摘のように、保険業法に基づいて金融庁が保険会社に免許を付与いたします。その際、販売予定の保険商品については、保険業法に定める基準にのっとって審査を行うことになっております。その後、新たな保険商品の販売を行うという場合にも保険業法に基づく認可が必要となります。
これらの保険商品の審査に際しての具体的な基準としては、例えば、保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれのないものであること、また、保険契約の内容が公序良俗を害するものでないこと、そして、保険料等の算出方法が保険数理に基づいて合理的かつ妥当なものであることなどが定められているわけでございます。
したがって、こうした基準を満たせば保険商品が認可されるということになります。
○松本(文)分科員 実例でお尋ねをいたします。
かなり年数はたってしまいましたけれども、私が大変お世話をかけた方が交通事故で亡くなりました。その事故現場は、朝車を運転して出かけた方が電柱にぶつかって、そこで亡くなっているということを発見されました。早朝でございまして、目撃者もだれもなかったわけでございまして、警察による解剖等々がなされました。
当然、交通事故による死亡ですから保険金を請求しました。そのときに保険会社は、運転中に脳梗塞を起こされて電柱にぶつかったわけであって、事故によって亡くなったわけでないから保険金は払えません、こう言われました。
しかし、脳の異常というのが事故によって起こったものなのか、運転中に起こった結果として事故があったのか、事故が体の異常を起こしたのか、その因果関係はだれにも証明できないわけでございます。
保険会社は、当然、それは事故によって亡くなったのではなくて脳梗塞によって亡くなった、亡くなった結果車がぶつかって事故の態様を示した、こう言うわけですし、遺族の方は、そんなことはあり得ない、事故によって頭をぶつけて梗塞が起こったんだ、こういう話になるわけでありますが、こういう場合の説明責任は遺族方にあるのか、それとも保険会社の方にあるのか。約款上そこまで詳しく書いてないわけでございますけれども、国としての御見解をお示しいただきたいと存じます。
○西原政府参考人 お答え申し上げます。
今のお話、どちらが立証しなければいけないのか、こういうお話でございました。
これは、一般的にでございますが、事実関係の立証責任に関しましては、権利を主張する側、これが権利の成立要件の立証責任を負わされているということで、保険金の支払いに当たりましては、保険金の請求者、契約者、これが支払い事由の立証責任を負うものと解されているというところでございます。
最高裁の判例でもございまして、例えば災害死亡保険金の支払いの判例がございますが、その支払いを請求をする者は、発生した事故が偶発的な事故であったということを主張、立証責任を負うというのが判例としてございます。
しかしながら、個々の事案においては、やはり保険金の支払い事由の発生状況ですとかあるいはその背景等々もさまざまでございますので、事実関係の詳細に係る立証責任の所在については、一概に申し上げるというのは難しいんじゃないかというふうに思っております。
そういうこともございまして、保険会社の基本的でまた最も重要な任務というのが保険金の支払いということでございますので、いずれが立証責任を負うということであるにせよ、保険会社としては、保険金支払いの可否の判断に当たっては、事実関係の調査、確認、これを十分に行うということが重要であるというふうに認識をいたしています。
したがいまして、私どもの監督指針の中でもそれを明示してございまして、「保険金等の支払可否の判断にあたっては、立証責任が保険会社側にあるか、請求者側にあるかにかかわらず、事実関係の調査・確認を十分に行う態勢となっているか」どうか、これは確認のポイントになってございます。
それからまた、その「支払事由が発生した場合には、利用者保護、利用者利便の視点に立った適切な損害調査、事実の確認や顧客対応等が行われるような態勢が整備されているか」どうか、この辺が私どものチェックポイントになってございます。
以上でございます。
○松本(文)分科員 立証責任、こう言われましても、すべがないというのが多くの国民それぞれでありますから、そこら辺はやはりもう少し保険会社の側に大きな責任を持っていただきたい。保険商品を売ることによって稼いでいるのは保険会社ですから、ぜひその点は認識を持って指導をいただきたいな、こう思うわけであります。
次の事例であります。
この方は、平成七年ですからかなり前から、東京女子医科大学病院で、糖尿病という持病を抱えていらっしゃいました。このことを告知した上で、自分は糖尿病でこういう治療を受けているんだからということを言ったんですけれども、いや、それでも保険に入れるから、心配をしないで保険に入ってくださいという勧誘員からの熱心なお勧めをいただいて、平成十六年の六月に保険に加入をされました。
ところが、平成十八年に体のぐあいが悪くなって、入院をされました。そのときに主治医が二人かわられました。退院時に、どういう病気になっているのかということで診断書をとられました。そうしましたら、全部で五つの病名が書かれていたんですけれども、その中の一つに肝細胞がん、こういう項目があって、ああ糖尿病から肝がんになったんだなという程度のそのときは認識でありました。
ところが、平成十八年の十月にまたぐあいが悪くなって外来で治療を受けたときに、入院してがんを摘出しましょう、こういう指導を受けて、同じ病院の三人目の主治医、この方に正式にがんの告知をいただきました。そして、がん保険に当然加入をしているわけでございますから、そのときに初めてがん保険金を請求いたしました。請求をいたしましたら、それに必要な請求書類を整えてくださいと。当然の話ですから、それを整えました。
それで請求をしたんですが、そのときに、ここにありますけれども、保険会社から、こういう診断書をとってください、こう言われました。この診断書の中で記入していないところがあるのでこのがん保険は払うことができない、先生に依頼をしてここのところはしっかり書いてもらうようにしてください、こういう指導を受けて、先生と交渉をいたしました。保険会社もその病院に行って、がん告知をした先生にそのことをお願いしました。
ところが、病理診断はつけていないので書けません、がん告知の日にちもしっかり書いてありますから、これで保険の方は適用になるはずです、そういう先生の指示で、また出しました。それでも、病理診断はつけていないので書けませんではとても払えません、こういう話でございます。
今度は保険会社の方からその医師に面会をしてそこをきちっと聞きたいということで、病院に伺いました。そうしたら、その先生は、私の前にどの先生のときにそうなったのか定かではないということなのか、それとも病理診断はしていないのか、どういう理由によるのか定かではありませんが、私はこれ以上は書けません、こう言って突き返されました。前の先生方のところも保険会社は当たったようでありますが、忙しいのに一々保険会社の相手なんかしていられないよ、こういうことで突き返されました。
そこで、患者本人が改めてまた病院の方に、三回目か四回目の話なんですが、保険の適用を受けられるような診断書を書いてください、こうお願いをしたら、もうあの診断書を書いたんだからあれでいいんだよ、今の主治医が書くのが当たり前だろ、一々うるさくてやってられないよ、こう言われました。
患者の心情としては、がんになったということで、それだけで大変なショックを受けているわけですね、家族を含めて。そして、担当医に自分の命を預けているわけです。もうこれ以上は先生に依頼することはできないと一歩引いちゃって、結果的にいまだにそのお金は払われていないというのが実態なんです。
そこで伺いたいのは、保険金請求をするに際して診断書というものがあるんですけれども、この診断書はどう書かなければならないかということについては、厚労省というんでしょうか、医師会というんでしょうか、そういうところと十分な打ち合わせの中で、保険金請求に必要な診断書、最低限これだけは書かなくちゃいけないよ、逆に言えば、これだけ医師が証明をしてくれたら出しますよというような打ち合わせ協議というのは行われているのか行われていないのか。これは医師が悪いのか、患者が悪いのか、保険会社が悪いために保険金が払われないのか、そこら辺のことについて明確な御答弁をいただきたい。
○西原政府参考人 今、診断書のフォーマットについてのお話がございました。この辺、大変大事な問題だと思っております。
保険金請求時に必要となる医師の診断書、これについては、様式自身は各社さまざまでございまして、現状において統一的なものとなってございません。これはやはりそれぞれ商品ごとに内容が違っておりまして、それに応じたものとなっているというようなこともございまして、そういうようなことで、完全に統一するということは難しいかなというふうには思います。
しかしながら、実際に必要な事項を正確に記載していただくということを医師の方にしていただくということは非常に必要なことだというふうに思っております。したがいまして、できるだけ医師にとってもわかりやすいような診断書、これをフォーマットとして作成するというのは重要なことであるというふうに認識をいたしております。
そこで、今回の保険会社においての支払い漏れの原因の一つとして、いろいろ調べてまいりますと、診断書の記載内容の見落としですとか見誤り等々の問題が起きております。したがいまして、診断書の様式の改訂というものをお願いするとか、あるいは医師向けに診断書の記載上の留意点、こういったものを作成するなどの取り組みを行っている保険会社もございます。しかしながら、さらに業界全体としまして診断書の様式を標準化しようということで、現在、生命保険協会が中心になって、診断書の様式の標準化に向けた検討をいたしております。
そういうようなことで、私どもとしては、こういった見直しの取り組みができるだけスムーズに行われるよう引き続きフォローをしていきたいというふうに思っております。
○松本(文)分科員 この診断書の経緯について私も何回も伺いました。この医師は、これで大丈夫だから、こういうふうに何回も念押しをされているんですね。直筆で、附せんまでつけてやっているんです。ということは、こういう診断書で通る保険会社もあるし、通らない保険会社もある、こういう話なんですね。
問題なのは、保険会社それぞれが、全国の医師会、医者一人一人に、こういう基準でこういうものを書いてくださいということをお願いできる立場にあるのかどうか、関係がどうあるのか。国がそれぞれの保険商品について認可を与える際に、その証明というのは医師からもらわなくちゃいけないわけですから、これは、保険会社に任せておいて、おまえら、勝手に医師会とうまくやれよみたいな話で済む話ではない、私はそう思うんですよ。
国の責任においてきちっとルールをつくって、保険証明についてはこういう手続でお願いをしたいということを医師会なり病院側なりにきちっと国の責任において通知するのが妥当だ。保険会社にお任せして、うまくやってくれよみたいな、これはいかにも無責任な話だ、こう思うんですが、大臣、ちょっと御感想をいただければと思います。
○渡辺国務大臣 今、松本委員が御指摘になられたような不合理なことがないように、金融庁として、診断書の標準化、そういったことが今どんなぐあいになっているのか、きちんとフォローアップをさせていただきます。
○松本(文)分科員 ありがとうございます。
次に伺いたいのは、保険会社が、この保険金請求には疑問あり、こう感じたときには調査に当然かかります。そして、その契約者の了解を得た上で、病院の先生方に、先生、この診断書でちょっとわからないところがあるんですが、この点はどうだったんでしょうか、こういったお話に行かれます。
ところが、本人の了解のとり方というのがまちまちでありまして、何年も前に契約をしたときに、細かい字で書いてある約款、契約書があります、その一番下の方に名前と署名と判こをくださいと。当然、契約するときですから、はいはいと言って判こを押します。それにそういう調査をしてもいいよというような、本人の認識は全然、元気、ぴんぴんしているわけですから、病院、自分の主治医のところへ勝手に保険会社が行かれるなんて思っていない。そういう時点で判こを押したものが、何十年か先もそのまま生きている事例があるんですね。
ここに寄せられている事例は、ある人が、社会保険中央病院ですから新宿ですね、新宿の分院を自分の常に通っている病院として、そこにずっと通っておられました。本人の住まいは八王子です。ところが、夜中に血圧が上がっちゃった、物すごい勢いで上がっちゃったから、近くの病院に駆けつけて入院をした。仕方がなくてという言い方は語弊がありますが、そこで入院をした。入院をしたから保険会社に保険金請求をした。そうしたら、保険会社に、本人の改めての了解も何もなくて、社会保険中央病院を初めとしていろいろな、かかっている病院の先生に会って、これはどういうことなんですか、病院を急に変えられるというのは不自然だと思いませんか、病歴はどうですかといろいろ聞き回られちゃった。そうしたら、その先生は患者に対して、僕の診察、日ごろの治療では不審があるからそこの病院なんですかみたいな話になって、患者にとっては大変にやりづらい環境が出ている。
こういうことに対する指導というのは一体どういうことになっているのか、お答えいただきたいと思います。
○西原政府参考人 まず、募集の段階において契約事項の重要な点についてはしっかりと説明をするということは、我々、募集管理体制の整備の非常に重要なポイントだと思っております。したがって、募集時においてどのようなきちっとした説明が行われたか、これは非常に重要なポイントだと思います。
実は、不払い問題等々が起きたのも、原因として募集に問題があったというようなこともございますので、そういう点は我々としても重要だと思っておりますので、しっかりとした監督をしていきたいというふうに思っております。
それからまた、いろいろなそういう問題事象が起きたときにぜひ利用していただきたいと思いますのは、各業界団体の中の認定投資者保護団体ですとか、あるいは裁定審査会、これは中立、公正な弁護士ですとか消費生活相談員等で構成され、そこがいろいろと審査してくれる、無料で審査するというようなこともございます。
したがいまして、そういうようないろいろな問題が生じたときに、そういうようなところをぜひ利用していただきたいなというふうにも思っております。
○松本(文)分科員 昨今、プライバシーの問題にうるさい時代であります。そして、それぞれ国民はそれぞれの地域でそれぞれの人間関係の中で暮らしているわけでありますから、その人間関係がまずくなるような調査のありようというのは、これはやはり考え直してもらわなくちゃいけないわけでありまして、十数年前か二十数年前に結んだ契約時の問題ではなくて、行動を起こす前に最低限どれだけのことをしなくちゃいけないのか、この程度のことについては、きちっと国で責任を持って指導をいただきたいと思います。
もっともっとたくさん問題点を抱えているわけでありますが、あと二分になりました。
この方は歯医者さんであります。歯医者さんが、ベンツを買って数日ですかでぶつけられました。そうしましたら保険会社から電話がかかってきました。そして、うちの方で弁償しますから、こう言われて、買ったヤナセに持っていきました。そして見積もりを送ったところ、その見積もりは高過ぎるからうちの方で工場を探しますからと保険会社に言われた。自分が信頼する工場で、自分が入れたディーラーで直せない。この歯医者さんは、お金があったものですから、こんな縁起の悪い車はもういいと引き取らせたんですね。そして、とにかく幾ら弁償してくれるんだい、こう言ってもなかなか金額が提示されない。問題なのは、その間、加害者が電話一本よこさない。最後は、弁護士の内容証明で、こうこうこうですと一方的に言ってくる。そして、不都合があったらどうぞ裁判を起こしてください、こう言わんばかりの弁護士の内容証明になっている。
やはり、事故を起こしたら、起こした人が加害者の責任で被害者に対しておわびをするというのが社会常識だ。申しわけありませんでした、自分のできる範囲の中で、損害は私の方で弁償します、何とか勘弁をしてくださいということから始まって、それを助けるのが保険でなくちゃいけない。
最初から保険会社が出てくる、保険会社ならまだしも、最初から弁護士による内容証明文書が届いてくる。普通の人が内容証明文書を見たらびっくりしますよ、弁護士だとか内容証明なんて見たことないんですから。そういう保険会社の対応、態勢というのは、この国の社会正義という観点、そういう点から考えてもおかしなことになっている、私はそう思うんですね。
もっと加害者がきちっと責任を感じるということが第一義的。そして、加害者が加入している保険会社は、自分のところのお金をできるだけ少なく払おうというのではなくて、加害者の立場、被害者の立場に立ってスムーズに保険金は払われるべき、こう思うのですが、もう少し厳しい監督体制、一体どうなっているのか、調査をして御指導いただきたいと思います。
大臣の感想を求めて、私の質問を終わります。
○渡辺国務大臣 一般的に、保険会社が保険金を払わないでどうすると私は申し上げております。もし不適切な不払い等があれば厳格に対処してまいります。
○松本(文)分科員 ありがとうございました。
○倉田主査 これにて松本文明君の質疑は終了いたしました。
―――――――――――――
○倉田主査 次に、警察庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。山本ともひろ君。
○山本(と)分科員 おはようございます。自由民主党の山本ともひろです。
きょうは、泉大臣に御出席をいただきまして、予算委員会の大変貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。限られた時間ですので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。
まず最初に、障害者の駐車禁止免除の件についてお伺いをしたいと思います。
実は、私の母が障害者手帳を持っておりまして、といいましてもそんなに重度のものではございません。等級でいいますと、たしか五級だったと思います。ひざが少し悪くて、それで障害者手帳を持っております。
その母が、社会貢献といいますか公共の福祉といいますか、何かそういったものに大変興味があって、ボランティア活動なんかを熱心にやっておるんです。障害者のスポーツセンターに通っておりまして、本人は障害者の認定を受けていますが、ボランティアをする側として行っております。水泳をやったり、何かそういうものにかかわって指導したりとか、そういうことを、障害者が障害者施設に行ってボランティアをやるというのは、我々健常者、一般人からするとちょっと不思議な感じもしますが、そういうことをやっております。
その中で、ふだん一緒に活動をしている、あるいは活動の中で接する人たちからいろいろな話を母も聞いてきまして、そこから私のところにもその声が届いてくる。
実は、私の同級生の母親も少し足に不自由な点がありまして、障害者の認定を受けている。その同級生の母親からも訴えがありまして、それはどういう訴えかというと、障害者の駐禁免除の基準というものが変えられましたという訴えがありまして、今までそういった基準が設けられていたものが、突然といいますか、当事者にとっては突然変えられる。今まであった基準というのは、恐らく、いろいろなことを想定して、その基準がいいと思って設けていたわけだと思うんです。しかし、その基準が変わった。
話を聞いていますと、各地域によってもどうもその基準もあいまいなような、基準がばらばらだというような話も聞きました。そもそも、なぜ基準が変わったのかということ。そして、地域によって違う。障害を抱えている人にとっては、例えば左手が不自由である、右足が不自由であるとか、条件としては一緒、にもかかわらず、また、地域に行けば、路上駐車の、駐禁の免除を受けることができる地域もあればできない地域もある。これはどうも、障害者の側からすれば、何でだろうという素朴な疑問があるんですね。
私も同じ気持ちで、なぜその基準を改めたのか、そして、地域によってなぜその基準が変わっているのかというところを少し教えていただきたいなと思います。
○末井政府参考人 駐車禁止とされている場所におきまして、身体に障害をお持ちの方が使用中の車両や、例えば引っ越しのトラックがやむを得ず路上に駐車しなければならないという場合に対応する方策は二つございます。
一つは駐車の許可という制度でございまして、もう一つが、先ほど御指摘の駐車規制からの除外措置、こう言っております。これはいずれも、公安委員会が定めるところによって、駐車許可は警察署長が出します。公安委員会が定めるところによって、除外措置につきましてはいろいろなものが事前に決まっている、こういうことになっております。
そういったことを前提といたしますが、まず、昨年の二月になぜ変えたかといいましょうか、基準を私どもが示したということがございます。これは、全国警察にいたしまして、駐車規制と駐車許可の運用の見直しについて指示をしたわけでございます。
その背景でございますが、平成十八年六月、新駐車対策法制というものが施行されまして、民間委託の導入によりまして放置車両の確認というものが格段にふえてきた、そしてまた、使用者責任ということで逃げ得ということもなくなってくる、こういったことがございまして、いわば取り締まり力の充実が図られてきているということがまず背景にございます。
そういったことを契機といたしまして、物流業者の方々やあるいは福祉活動に従事されている方などからさまざまな要望や御意見、なぜ取り締まられるんですかといったことが多かったわけでございますが、同時に、日本郵政公社が民営化されまして、いわば郵便小包といったものはほかの民間の業者と同じものをやっている、郵便物は違う、そういったものについても手直しをする。いわば公平性からの対応というものが迫られてきた、こういうことがございまして、今後の駐車秩序の一層の改善に向けた全体的な見直しを行う必要があると考えたところでございます。
見直しの中で、御質問の福祉への関係でございますが、まず身体に障害をお持ちの方などについては、これまで特定の車両については駐車の除外となっておったんですが、移動される利便を考えますと、御本人に、いわば本人交付の標章としようという形で利便性を上げることにしました。また、車いすの移動車など、専ら福祉目的で、いわゆる福祉タクシーと呼ばれるものでございますが、こういったものについても対象にしようということもしたわけであります。
そして、駐車許可に多いわけでございますが、用事、用務でございますが、どのような事情でそこにとめなければならないかということについて、特定のものに限ることではなくて、駐車しなければならない特別の事情、駐車の必要性と、そこにとめられた場合に駐車規制としての意味合い、交通の危険なり渋滞の原因になるといったところを比較考量して具体的に考えなさいと。その場合に、繰り返して特定の場所に駐車する必要がある場合には一括して許可すればいいといったような形で、許可の運用の弾力化を図ったところでございます。
一方で、除外対象となる身体に障害をお持ちの方の基準につきましても、他の制度を参考にしながら、このあたりが基準ではないか、先ほどおっしゃったようにばらばらであるということで、考え方はこうではないかということを示す必要があって示したわけでございます。
ばらばらではないか、全国一律ではないということでございますが、この除外措置、一番最初に申し上げましたけれども、都道府県の公安委員会が駐車規制を行う、交通規制の中から除くという意味合いにおいて、除外する対象の具体的な範囲につきましては、各都道府県公安委員会が考えることである。その考える際に参考となるのは、道路の状況なり交通の実態といったところをそれぞれにお考えになる、こういうことになりますので、警察庁として基準を示しますけれども、従前もそうでありますが、ある意味全国一律ということには必ずしもならない、ただ、考え方は統一をしたい、こういうことでございました。
○山本(と)分科員 昨年の二月に基準を見直した、その中で、車両ではなくて本人に交付をする、それは恐らく、利用者、障害をお持ちの方にとっては大変いい改正だったと思います。要するに、お年寄りで、自分は車両は持っていないけれども、自分自身に交付をしてもらえれば、それを、友人の車を使うとかタクシーを使うとか何かしら車両を使う際にも、私は障害者で、そういう除外の標章を受けていますよということで恐らく利用ができるんでしょうから、大変いいんだと思います。
全国ばらばら、一律ではないというのも、各都道府県の公安委員会で、その状況、状況、地域によっての特性、地理的要因であったりとかあるいは交通の量、または人口に対する障害者の割合ですとか、いろいろな面を判断して、各都道府県の公安委員会が判断をなされるのだと思いますし、それは恐らく、地域に合った、特性に合った基準なんだと思います。
そういったことでは、きちっとやっていただきたいなと思うんですけれども、実際、基準が変わって、では、今まで交付を受けていた人たち、でも今回の基準が変わったことによってもう交付が今後得られない、そういった障害者の方たちはこれからどうしていけばいいんでしょうか。
○末井政府参考人 従来除外措置の対象とされていた方の一部が対象の範囲外となるような改正が行われました都道府県におきましては、三年間引き続き対象とする措置を講ずるなど、対象外とされた方に直ちに不利益といったものが生じないような配慮は行っております。そして、関係団体等から要望、意見をお聞きして、今後のあり方などにつきまして検討を進めているものと承知をしております。
警察庁としても、このような対応が徹底されることはとても重要であると考えておりまして、ことしの二月、都道府県公安委員会規則等の改正によりまして、影響を受ける関係者、関係団体等に対しまして、継続的に対話の機会を設け、積極的に要望、意見等を聴取しまして誠実に対応することといったことを内容とする通達を発出いたしました。
したがいまして、各都道府県警察におきましては、この通達を受けて、経過措置三年というものが経過した後の対応につきましても、要望、意見等を聴取して、改めて検討が進められるものと考えております。
○山本(と)分科員 基準が四級から三級の一に変わっております。こうなりますと、例えば何か交通事故とかそういう形で片足を失ってしまったというような方も、この新しい基準でいくと除外の対象者にはならないわけですね。そうなると、これは恐らく障害者の方にとっては相当大変な日常生活になるんだと思います。
既に私の地元でもそういった声が大きくなってきておりまして、地元の京都市の左京区選出、我が党所属の石田宗久府会議員という仲間の議員のところにも、私の母やあるいは同級生の母親の仲間たちが訴えに行きまして、真摯に声を聞いていただいて、対応もしていただいております。また、山科区選出の同じく我が党所属の菅谷寛志府会議員も、府議会で昨年、この問題提起をしていただいております。
そういった意味合いからも、やはり地域でそういう声も出ている、我々のところにもその声が届いてきている。そして、きょうはこの予算委員会の貴重な時間をいただいて、泉大臣にもこの話を聞いていただきました。今、局長のお話であれば、三年間の間でいろいろな関係団体からきちっと声を聞いていただいて、その皆さんの思いを三年後の時点で反映もしていただけるということですので、三年間きちっと、警察の関係者の人たちにも、地域ごとの関係者のお話、障害者の団体のお話、あるいは障害者の当事者だけではなくて一般の人たちからも、どういうような利用をされているのか、ふだんどうお考えになっているのかとか、そういったことも含めて幅広く声を聞いていただいて、三年後も皆さんが困らないような制度をつくっていただきたいなと思っております。
今のこの質疑を聞いておられて、泉大臣、いかがでしょうか。三年間皆さんの声を聞いていただいて、何とかいい制度の改正に持っていっていただきたいと思うんですが、大臣の御見解をよろしくお願いいたします。
○泉国務大臣 山本委員の母親が、ボランティア活動を通じる中で、身体に障害をお持ちの方々のお困りの状況を直接委員の方にお話しになっておる、その上に立っての御質問でございますので、大変切実な問題があると思って受けとめさせていただきました。
申し上げるまでもございません、この問題は、交通の流れを円滑にする、あるいは危険防止のためにこうした措置をとらせていただいておりますが、そういう中で、身体に障害をお持ちの方々のことも十二分に配慮をしなければならないことは当然でございます。
ルールが朝令暮改であってはまたこれは大変御迷惑をおかけするわけでございまして、先ほど局長が答弁をいたしましたように、この二月の通達といいましょうか、指示した中で、しっかりその関係者、体の不自由な方初め、あるいは宅配業者その他いろいろな方、道路を活用される方々の御意見をよく聞いた上で、その地域に合った対応策をとるようにということを指示しておるわけでございますので、関係の方々と継続的に対話をさせていただきまして、誠実に取り組ませていただきたいと思います。
すべての方々に御納得いただける、御理解をいただけるということで、なかなか難しい点もあろうかと思いますが、できるだけ交通弱者の方々には、思いを受けとめさせていただくように努力をさせていただきます。
○山本(と)分科員 泉大臣、大変温かい、そして力強い御見解をお示しいただきまして、本当にありがとうございます。三年間のその経過措置の中で、いろいろな人たちの声を受けとめていただきたいなと思っております。
次に、日ごろ、我々ドライバーあるいは車を利用する者にとりまして安全に運転をするというのは当たり前ですし、また周りのドライバー、あるいはバイクのライダーも安全に運転をするというのは当然のことでありますし、交通ルールを守るというのは当たり前の話でありますが、中には、路上駐車をしてしまう、あるいはスピード違反をしてしまう、シートベルトを着用せずに運転をしてしまう等々の人たちがどうしてもいる。それはやはり警察がしっかりと取り締まりをしているという現状があります。
これも一般論ではありますが、例えば、スピード違反の取り締まりをしています。スピード違反の取り締まりを警察が熱心にそのときはやっている。やっていますと、例えば対面のところには車が路上駐車をされている。しかしながら、今はとりあえずスピード違反を取り締まっているんだということで、どうも、スピード違反を熱心に取り締まっているがゆえに目の前の路上駐車は余り気にしていないのではないかとか、あるいは路上駐車を取り締まって、その取り締まりをしている最中に、明らかに猛スピードで走っていく車がいる。それも実際は、スピードも測定していないでしょうから、そのスピード違反もなかなか取り締まらないのではないかというような、一般の感覚からいきますと、やはり警察も官僚組織でありお役所であり役人だから、セクショナリズムもあるだろうし、縦割り行政もあるだろうし、一つのこと、これをやるんだということになると、それ以外のことはなかなか目が行き届いていないのではないかという声が多数寄せられておるんですが、実際のところはいかがなんでしょうか。
○末井政府参考人 都道府県警察におきましては、警察官それぞれに、治安の維持、国民の生命身体を守るという仕事がございますので、仮に、例えば交通警察官であったときに、ひったくりがあれば、それは知らないということはないと存じております。そしてまた、例えばスピード違反の取り締まりをやる場合に、交通の安全と円滑を確保するための活動に従事しておりますので、当然のことながら、違法行為、交通関係ということになりましょうけれども、それは取り締まりをするものというように承知をしております。
○山本(と)分科員 今の御答弁ですと、スピード違反の取り締まりをしている目の前で路上駐車をしている放置車両があれば、きちっとそれも取り締まりを行っているということのようですので、それはやはりしっかりと正義の名のもとに取り締まりをしていただきたいなと思います。
そういった中で、スピード違反であれば、スピード違反をしましたね、では車をとめて、少しわきに入っていただいて、運転手さん、スピード違反ですよということで車両をとめて取り締まりを行っていると思うんですが、その際に、皆さんも御承知のとおり、車のフロントガラスのところに、ルームミラー、バックミラーがついております。そこの裏側ぐらいに四角の車検のシールが張ってあります。その車検のシールを見れば、車検をきちっと受けているのか受けていないのかというのが大体一目瞭然であります。
その場合、スピード違反で車をとめさせた、あるいはシートベルトをつけていなかったのでわきに寄せて取り締まった。そういう際に、車検をちゃんと受けているのかどうか、そういうシールをちゃんと警察官は見ているんでしょうか。
○末井政府参考人 平成十九年中、交通取り締まり活動におきまして、無車検運行により四千六百五件検挙をしております。これは、十八年中であれば四千六百三十三件、十七年中で四千百十五件と、大体同様のものが行われている。
交通取り締まり活動が一定水準で行われている中に、例えば、先ほどスピード違反もございましたし、シートベルトであれば、そのときにそれが目につけば当然のごとくに取り締まりをやっているという証左であろうと考えております。
○山本(と)分科員 道交法違反で、スピード違反でもシートベルトの不着用でも、車をとめて、その際に、車検のシールできちっと警察官も、車検を受けていない車両には車検を受けるようにというふうに指示をしているということですので、それは我々としても大変ありがたい話です。車検を受けていない整備不良の車両が道路を走っているということは、我々にとっても何か交通事故に巻き込まれる可能性も出てくるわけですから、そういったスピード違反やわかりやすいもの以外に、そういう細かなところまで現場の警察官の皆さんがチェックをしていただいているのは、大変心強く思います。
一方で、車検の四角のシールは大体皆さん御存じなんですが、大体はフロントガラスの左上ぐらいに丸いシールが張ってあるのを御存じでしょうか。これは定期点検のシールでございます、ダイヤルシールなんて言われておりますが。この定期点検は、実は毎年受けるようにと法律で義務づけられております。
こういった義務づけをされている定期点検ですけれども、実は罰則がございません。ですから、定期点検を受けていなくても別におとがめがない。そういったものですが、それに関しても、例えばその丸いダイヤルのシールを見たら、どう考えてもこれはもう三年前のシールじゃないか、あるいはそのとめてみた車はどう見ても整備不良だろう、定期点検を受けてないだろうというような車両、あるいは、話をしている間にドライバーが、いや、定期点検なんか受けてないよ、忘れていたななんというようなことになった際に、罰則はありませんけれども、やはりそれも現場の警察官が、運転手さん、忘れているんだったらきちっと定期点検を受けなさいよ、これは義務づけられているんだよというような、これはみんなが安心して道路を利用するという意味合いにおきましても、定期点検を受けていない車両がどんどん通っているのと、きちっと毎年皆さんが定期点検を受けている車両が通っている道路では、それは当然、定期点検をみんなが受けている状況の方が安全性は高いわけですし、我々も安心して車を運転することができるわけです。また、交通事故を未然に防ぐ、そういう抑止をするということも私は警察に求められている役割だと思います。
そういった、罰則はありませんけれども、定期点検に関してもやはり現場の警察官が、お忘れじゃないですか、ちゃんと受けてくださいねというようなことを言っていただきたいと思っているんですが、現状はいかがでしょうか。
○末井政府参考人 委員おっしゃいましたように、交通事故を防止するために、だれがどのような手段で何を行うかということについては、いろいろな選択がございます。
現在、警察におきましては、例えば現場におきましては、先ほどおっしゃいました、整備不良車両運転という観点では、年間、昨年で九万七千件余の検挙をしておりますし、一昨年は十一万七千件余の検挙をしております。
こういった中で、整備不良という形で、具体の、本来運転してはいけないといったレベルのものについて、私どもは、その私どもの力を集中して取り締まりをしているという現状がまずございます。多くの実態がある場合に、どこに集中するかというのは選択の問題があろうか、こう思うわけであります。
現在、定期点検の励行につきましては、国土交通省におきまして、毎年度、自動車点検整備推進強化月間を設けるなどして広報啓発活動をされておる、それについて私どもは後援をしておるという実態もございますし、また、交通の方法に関する教則におきましても、自動車を運転する前の心得といたしまして、定期点検を行って必要な整備を行うべき旨記載しているところであります。
したがって、そういったことを前提とした中での話ではございますが、現場におきまして、例えば整備不良の取り締まりをする際には、そういった自動車の定期点検をしていないということが判明いたしますれば、それについては定期点検の重要性を啓発するということについてはあり得るところであり、そのような指導はしていこうと考えておるところでございます。
○山本(と)分科員 定期点検の励行をドライバーに求めていく、現場の警察官もそういったアドバイス、助言、促していただけるということで、大変ありがたい話だと思います。それは、道路を利用する我々車のユーザーもそうですし、ドライバーもそうですし、あるいは歩行者の人たちもそうですし、大変ありがたいと思います。
こういった今の定期点検の話、車検と違いまして罰則もありませんので、少し認知度も低いようでありますが、そういったものも現場の警察官で対応していただけると大変ありがたいなと思います。
こういった定期点検の議論、大臣はどのように思われますか。
○泉国務大臣 車の定期点検は、車に乗られる方御本人の安全を守る、さらに、通行者でありますとか他の車の安全を守る上に大変重要なものだと思っておりまして、先ほど局長から答弁がございましたように、これは道路運送車両法に基づく規定で、国土交通省の方でいろいろな啓発活動をやっていただいております。
警察といたしましても、安全を守るという上から必要なことだと考えておりまして、委員御指摘をいただきましたように、これからも機会あるごとに、定期点検、整備をやっていただくように注意喚起をしてまいりたいと思います。
○山本(と)分科員 大臣からも、現場、現場でそういったものを発見した場合はきちっと指導をしていくというような大変心強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
きょうは、本当に大変貴重なお時間を大臣出席のもといただきまして、ありがとうございました。
以上で質問を終わらせていただきます。
○倉田主査 御苦労さまでした。
これにて山本ともひろ君の質疑は終了いたしました。
これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
先生方におかれましては、審査に御協力、ありがとうございました。
これにて散会いたします。
午前十一時三十三分散会