第2号 平成20年2月28日(木曜日)
平成二十年二月二十八日(木曜日)午前九時開議
出席分科員
主査 遠藤 利明君
阿部 俊子君 大島 理森君
杉浦 正健君 野田 毅君
広津 素子君 馬渡 龍治君
兼務 高橋千鶴子君
…………………………………
農林水産大臣 若林 正俊君
環境大臣 鴨下 一郎君
環境副大臣 桜井 郁三君
環境大臣政務官 並木 正芳君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 土屋 定之君
政府参考人
(厚生労働省医薬食品局食品安全部長) 藤崎 清道君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 伊藤 健一君
政府参考人
(農林水産省総合食料局長) 町田 勝弘君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 佐藤 正典君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 内藤 邦男君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 高橋 博君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 中條 康朗君
政府参考人
(林野庁長官) 井出 道雄君
政府参考人
(国土交通省総合政策局次長) 北村 隆志君
政府参考人
(環境省総合環境政策局長) 西尾 哲茂君
政府参考人
(環境省自然環境局長) 櫻井 康好君
農林水産委員会専門員 渡辺 力夫君
環境委員会専門員 齊藤 正君
予算委員会専門員 井上 茂男君
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分科員の異動
二月二十八日
辞任 補欠選任
大島 理森君 馬渡 龍治君
野田 毅君 阿部 俊子君
同日
辞任 補欠選任
阿部 俊子君 野田 毅君
馬渡 龍治君 広津 素子君
同日
辞任 補欠選任
広津 素子君 大島 理森君
同日
第一分科員高橋千鶴子君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
平成二十年度一般会計予算
平成二十年度特別会計予算
平成二十年度政府関係機関予算
(農林水産省及び環境省所管)
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○遠藤主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。
平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算及び平成二十年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
この際、分科員各位に申し上げます。
質疑の持ち時間はこれを遵守され、議事進行に御協力をお願いいたします。
また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子君。
○高橋分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、初めて若林農水大臣に質問させていただきます。
今ほど食の危うさについて話題になるときはないかと思います。一つは、言うまでもなく食の安全の問題です。中国製の冷凍ギョーザ事件、大変な衝撃を受けました。何を食べたらいいのかわからないというのが国民の感情になっているのではないでしょうか。共同通信社の先般の調査で、行政に望むことの一位が、国内の農業を見直し、食料自給率を上げる、これが五五・五%でした。二つは、バイオエタノールや投機マネーの影響などで小麦製品などの値上げが相次ぎ、家計を直撃していることです。そして三つは、地球温暖化による異常気象の影響だと思います。
農水省の平成十八年度食料自給率レポート、「最近では、ロシアやアルゼンチン等において、自国内の供給量の確保や自国内価格の高騰を抑制するため、小麦やとうもろこし等の輸出規制が行われており、いざという時には、まず自国内への供給が優先される傾向が見受けられます。」このように指摘をし、アメリカ、中国、ベトナム、インドなど、世界地図に諸外国の輸出規制の様子を落として指摘している、そういう状況であります。
そして、こういう中、日本は食料自給率四割を割りました。お金を出せば、いつでも、何でも買える状況には既にない、言っていられないときだと思うんです。本来ならばつくれるはずの田畑を荒廃させる、あるいは世界一長い距離を高い油をたいて海外から食料を輸入してくる、他国に国民の食料をゆだねているのはもはやおかしいのではないかと思うんです。
大臣の率直な思いをお聞きしたいと思います。自給率四五%の目標を、今はちょっと実現見込みないという気がいたしますけれども、確実にこれをやり切り、そして向上させる考えがあるのか、伺います。
○若林国務大臣 最近、食をめぐって、委員が御指摘のような不安が広がっている。そのもとには、国内生産、自給率が、今委員がおっしゃられたように四〇%を割ったといったようなことへの将来の不安とお互いに相乗関係を持っておりまして、そのことがさらに大きな将来への不安へと結びついているという認識は、私もそのように持っております。
自給率につきましては、食料・農業・農村基本法に基づきます基本計画の中におきまして、できれば五〇%は国内で自給するということが期待される中でありますが、実現可能性を考えまして、カロリーベースですけれども、二十七年までに四五%を国内自給するという目標を掲げて、そのために政策を重点的、集中的に行っていくという方針のもとに努力をしているところでございます。
○高橋分科員 ありがとうございます。
できればとおっしゃった五〇%、さらにそれを超えていくということを、また、目標をやはり掲げた以上、それをしっかり堅持して、そこが農政の基本に据えられるのだということを重ねてお願いしたいと思うんです。
今、農業者との意見交換会などでも、自給率を本当に上げるつもりがあるのかということが重ねて指摘をされるわけですね。ですから、ここを本当に据えて、そのために何が必要なのかという視点で頑張っていただきたい。やはり国民が今、安全、安心な国内のものを食べたいと思っているのですから、そういう意味では非常にチャンスでもあるという点で、日本の生産者が自信を持って国民の要求にこたえられるような農政にしていただきたいということを重ねて要望したいと思います。
それで、国民自身が国内の食料の政策を決めるという食料主権の考え方、これは二〇〇四年の国連人権委員会で決議をされて、日本もそれに賛成をしております。ですから、こういう立場をやはりしっかり掲げるということを、アメリカは反対しておりますけれども、世界的には流れになっておりますので、強く要望しておきたいと思います。
その上で、きょうは具体の話に入りたいと思います。
初めに、厚労省にもおいでいただいておりますので、BSE問題について若干伺いたいと思います。
二十カ月齢以下のBSE検査が、三年間の経過措置をとっておりますが、ことし七月にその期限が切れて国庫補助が廃止される、検査が終わるということになっております。昨年の八月に、自治体の対応にばらつきがあっては混乱が生じるのだということで、これを一斉に終了するという通知が出されました。これには、検査を継続するべきだ、あるいは自治体の取り組みには少なくとも口出しをするべきではない、こういう立場で、私ども、九月に国会議員団として申し入れをさせていただいたところであります。
そこで、まず、検査に対する国庫補助について、継続の意見が上がっている自治体がどのくらいあるのか。同時に、独自に検査を継続しますと言っている自治体がどのくらいあるのか、伺います。
○藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
厚生労働省に対し、地方自治法第九十九条の規定に基づき、平成二十年八月以降の屠畜場における二十カ月齢以下のBSE検査について国庫補助の継続を要請する旨の意見書につきましては、平成十九年六月二十一日から平成二十年二月十二日までに百五十一件収受しているところでございます。
また、どれだけの自治体が予算措置をしているのかという点につきましては、ちょっと通告いただいておりませんでして、私どもの方も必ずしも十分に把握はできていないということでございます。
○高橋分科員 これは通告をしております、二つ伺いたいということで。
まず、百五十一件の意見書が出ているということでありました。全頭検査の継続をしている都道府県について、今数字がないとおっしゃったので、私どもの部屋で調査をさせていただきました、各県にちょっと聞き取りをいたしまして。三十三道県が県独自で継続される、そして十三都府県が今検討中であるということでございました。したがって、福井県は牛がいないので除いて、すべての都道府県が継続または検討している。ですから、廃止を予定しているところは一つもないということであります。
私は、やはりこの数字は非常に重いと思うんですね。意見書がこれほど上がっているということにもあらわれています。今は打ち切るときではない。予算としても、継続するにしてもわずか二億円ではないか。国民の今の食の安全、安心に対する関心からいっても、高いとは言えません。補助の継続を決断するべきと思いますが、いかがでしょうか。
○藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
屠畜場におけるBSE検査の対象につきましては、平成十七年八月に、食品安全委員会による答申を受けまして、全頭検査から、二十一カ月齢以上とする見直しを行っております。すなわち、その時点で、全頭検査という制度自体はもう存在しなくなったということでございます。その際、経過措置として三カ年、自治体が自治事務として自主的に行う二十カ月齢以下の牛のBSE検査についても国庫補助を継続することとしたところでございます。
厚生労働省といたしましては、経過措置終了までの間に、科学的知見に基づく食品安全委員会の評価結果とそれを踏まえた対応につきまして、関係者の理解を深められるよう、リスクコミュニケーションに努めてまいりたい、このように考えております。
○高橋分科員 全頭検査が打ち切られた、それはもう事実であるとおっしゃいました。それで、三年間の経過措置。これは、打ち切ったと決めた後に各自治体が、やはりこれはまだ国民の不安が払拭されていないんだということで、独自に補助をしますということを手を挙げて、それがどんどんどんどん広がっていった、そこにこたえて、やはり今は国民の不安が強いのだから継続しよう、そういう経過をたどったと思うんです。それが三年間で埋めてこられたのかということが、今の私が紹介した結果だと思うんですよ。ですから、そこにやはりこたえるべきではないか。
リスコミも確かにやられました。しかし、その中で、やはり継続をすべきではないかという意見もかなりあったと思うんです。今の意見書もまさにそうです。そこにこたえるべきではないか。引き続いて検討する考えはないか、重ねて伺います。
○藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御説明申し上げましたように、この件につきましては、食品安全基本法に基づきまして、食品安全委員会に健康影響評価ということで評価をいただいた、その結果を受けて、リスク管理機関として対応をとってきたことでございますので、それに基づく科学的な対応ということに尽きるかと思いますので、私ども、補助の継続をことしの七月で二十月齢以下につきましては打ち切るという考え方に変更はございません。
○高橋分科員 この点については重ねて要望しておきたいと思います。これまでも、七月までにまだ時間があるんだというお話をされてきました。その中で、やはり不安を払拭するだけの努力はされてきたのかということ、そこを十分に検討する必要があるのだということを重ねて指摘したいと思うんです。
注目すべきは、意見書の中身には、国内対策について今議論をしているんだけれども、やはり米国産牛肉の輸入条件の緩和について反対しているということとあわせて意見書が出ているということが多い。そこに非常に大きなポイントがあると思うんですね。
例えば、岩手県の意見書を読ませていただきますけれども、「月齢により線引きを行うことについては、多くの県民から心配の声が寄せられている。 さらに、二十カ月齢以下のBSE検査の打ち切りは、現在二十カ月齢以下としている米国からの輸入牛肉の条件緩和につながることも懸念される。米国政府のBSE対策や安全管理は、韓国における輸入米国産牛肉への特定危険部位の混入の問題やBSEの感染防止策として重要な飼料規制も不十分であるとされていることなど問題が多く、現状のまま輸入条件を緩和することは、我が国の食の安全・安心に対する信頼を失うことになりかねない。」こういう指摘をしているのです。
ですから、皆さんが別の問題だと言っても、しかし、やはりこれをどうしても打ち切るんだと言っていることには、それはいわゆる次の交渉に入れないと思っているからではないのか、地続きなのではないかという不安がやはりあるわけです。そして、米国の対策に対してまだまだ不安が大きい、この間だって違反が随分多かったんじゃないか。そういうことが背景にあるわけですよね。そのことをやはりしっかり受けとめていただきたいと思います。
大臣に伺いますけれども、新たな輸入条件の緩和、あるいは国内対策の緩和、今どちらも検討する段階にはないと思いますが、いかがでしょうか。
○若林国務大臣 国内におきます今までの全頭検査の検査体制につきましては、今厚生労働省の方からお答えいたしたことと同じ考え方で我々も臨んでいるわけでございまして、二十カ月齢以下のBSE検査については、国としては、これを補助してまで継続をしていく、継続するかどうかは自治体の判断でございますが、国としてこれを助成していくという考えは、当初計画いたしましたように、三年間をもって補助はしないこととする、この考え方は同じ考え方で、厚生省の考えに同調しているわけでございます。
そしてさらに、米国産牛肉の問題につきましては、そのことについてもお尋ねがあったというふうに受けとめまして申し上げますと、米国産牛肉については、委員も御承知だと思いますけれども、米国側からは、対日輸出条件についてOIEの基準に則した見直し、つまり月齢制限を撤廃するなどの要請が出ているわけでございます。
このことにつきましては、日米間の技術的な会合において、米国から提供されたデータについて、日米共同でその評価を含めた検討をし、報告書を取りまとめるという作業をいたしているところでございまして、この輸入条件を見直すかどうかについては、その共同の調査結果を踏まえて対応をする方針でおります。したがいまして、現時点で見直しを行うかどうかということにつきましては、政府の方針は決定しているわけではございません。
いずれにいたしましても、農林省といたしましては、厚生労働省と共通の認識でおりますが、食の安全と消費者の信頼確保を前提にいたしまして、科学的知見に基づいて対応することが必要である、こう考えておりまして、引き続き厚生労働省と連携をして適切に対処するという方針でおります。
○高橋分科員 きょうは、BSEの問題は、ここで指摘にとどめておきたいと思っております。
食品安全委員会の最終報告を受けて、二十カ月齢以下の要件の緩和、輸入条件の緩和、この際にもさまざまな問題がございました。その際には、いわゆるアメリカが主張しているような月齢制限を取っ払う、こうしたことに根拠となるような議論は一切なかったと思うんです。そういう点では、今検討する段階には一切ないんだということを重ねて指摘をしておきたいというふうに思います。
次に、米問題について質問させていただきたいと思います。
大臣はこのポスターをごらんになったと思いますけれども、昨日の朝のニュース番組でも実は大々的に取り上げられました。東北農政局が四十万円かけて三万枚つくりました。「米の作りすぎは、もったいない!」と大きく見出しが躍っております。「米の過剰作付けは、資源のムダづかいです。」と。非常に腹が立ちました。ひど過ぎると思います。日本の米づくりを支えてきた農家の誇りを踏みにじるものであり、断じて許せません。東北農団連がこれについて二十五日に農政局に抗議を申し入れをし、そして記者会見を行ったんですけれども、これが毎日新聞のネット配信などを受けて、一万件以上の書き込みが一晩であった。これくらい関心を集めたということであります。昨日のテレビでは、鳥越俊太郎さんが、農業、農民の根本を否定するものだと厳しく批判し、米は食料自給率の最後の生命線、このようなコメントをしていらっしゃいました。
大臣は、このポスターをよしとするのでしょうか。即刻回収、撤去するべきではないでしょうか。
○若林国務大臣 大変反響を呼んだということは承知いたしておりますけれども、これは一部、生産調整そのものに反対である、つくるだけ米はつくらせるべきである、そういう考え方に基づく人たちからの抗議と、それから、生産調整、米の需給の状況というのを、我々の説明が浸透していないということもあり、それらが十分理解されていない、誤解に基づく意見と、いろいろさまざまだというふうに思いますが、御質問の点につきましては、私は、このポスターを不当なものあるいは撤回をするという考えは持っておりません。
これは、今のポスターにありますけれども、過剰な作付が資源の無駄である、つくり過ぎはもったいないんだ、こう言っているわけですね。今の米をめぐります諸情勢の中で一番問題なのは、やはり、年々消費が減ってきておりまして、需要を超えた生産が行われると、十九年産がそうでありましたように、異常な下落を発生させてしまうわけですね。全米作農家の経営に大きな影響を与える。そういうことから、やはり需要に見合った生産をすることによって、米作の経営の持続的な発展が可能になってくる。
そういう中で、水田を有効に使って、米以外の作物、麦でありますとか大豆でありますとか、あるいは飼料用の作物などにつきまして、これを有効に活用する。そのためには、国がわざわざ助成もして、主食用の米以外の作物の生産を拡大するということに積極的に、重点的に取り組んでいるところでございまして、このポスターは、東北農政局が、そのような過剰の傾向にあります主食用の米の作付については政府の方針に従いましてこれを抑制して、水田という限られた生産資源を、食料自給率の向上の観点から大豆、麦などの生産に有効に活用していくということを呼びかけるものとして作成したものであると思います。
行政としても、生産調整を積極的に推進していくということについて、真剣な姿勢のあらわれであると私は考えているわけでございまして、農林省として、このような趣旨を農業関係者の方々に十分説明しながら、引き続き、生産調整の推進には全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
○高橋分科員 本当に驚きました。大臣がまさかそのような答弁をなさるとは、幾ら何でも農林水産大臣が。
このポスターについては、抗議をした農団連の皆さんは、下の方については賛成できる、趣旨についてはよくわかるとおっしゃっているんです。減反を全くやる気はないとか、絶対転作の努力をしないとか言っているのではありません。「余っている主食用米から不足している麦・大豆等へ転作し、自給率を向上させましょう。」と、協力するし、これまでもしてきたと言っています。しかし、それを資源の無駄遣いという呼び方が許されるのか。そういう誇りが傷つけられたと言っているんです。
それに対して全くの、これを正当なものだと認めると。このことに対しての農家の皆さんの怒りがどれほどのものかということを指摘したいと思います。絶対に許されません。撤回をしてください。
こうしたなりふり構わぬキャンペーンの背景には、昨年の政府・与党の一千百十一億円の補正予算の提起に基づいて、生産調整実施者のメリット料として五万円と三万円の緊急一時金、いわゆる踏み切り料、これを導入することと引きかえに、何が何でも生産調整を達成せよということが合意されたこと、これが今実行に移されていることの流れだと私は思っております。
生産調整目標達成合意書、これが中央レベルでも、そして自治体レベルでも結ばれています。特に福島県などは、過剰生産が全国一であるとして、二月十二日、中央会の会長から県農林水産部長、東北農政局長まで九名連名の合意書を確認、七日には県知事名で県議会議員あて、そして部長名で、職員の皆様へということで御理解と御協力を求めているという徹底ぶりです。また、各県ではチームを組んで戸別訪問が行われ、要するに、リストアップをして戸別訪問が行われているということを聞いております。
この生産調整目標達成合意書は、ひな形を農水省がつくったのかということを確認したいと思います。また、合意書が既に締結されたのはどのくらいありますか。
○町田政府参考人 お答え申し上げます。
米の生産調整につきましては、平成十九年産に大幅な過剰作付が発生いたしまして米価が大幅に下落したということで、平成二十年産以降、行政、農協系統などの関係者がそれぞれの役割を果たすとともに、相互に連携しながら根本的な課題である過剰作付を是正し、生産調整の実効性を確保することが必要というふうに考えております。
このため、昨年十二月二十一日に、農林水産省の農政改革三対策緊急検討本部で決定いたしました当面の生産調整の進め方、この中で、「必要な場合には、生産調整目標達成合意書の締結を行う。」としたところでございます。これを踏まえまして、昨年十二月二十七日には、生産者団体、卸売業者、小売業者の全国団体と当省が、生産調整目標達成のための合意書を締結いたしまして、関係者が気持ちを一つにして生産調整目標の達成に全力を挙げる体制を構築しているところでございます。
各都道府県段階におきましても、必要がある場合には、この全国段階の合意書を参考に、都道府県内の生産者団体、米穀販売業者などの関係団体と都道府県、地方農政局との間で協議を重ねて合意書を締結しておりまして、昨日までに十六都道府県において締結をされているところでございます。
○高橋分科員 今紹介された当面の生産調整の進め方には、過剰作付県に対するペナルティーもあるということですけれども、そのペナルティーとは何をどのようにするのでしょうか。
○町田政府参考人 ただいま御答弁させていただきましたが、平成二十年産以降の生産調整につきましては、農協系統と行政が適切に連携いたしまして、関係者が一体となって全力を尽くすということで、全都道府県、全地域で生産調整目標を達成いたしまして、ペナルティー措置を講ずる必要がなくなることが望ましいというふうに考えているところでございます。
しかしながら、ほとんどの県が目標を達成する中で、生産調整目標が達成できない都道府県、地域が生じた場合には、目標達成地域との公平性を確保するためにも、各種補助事業、融資について不利な取り扱い等、何らかのペナルティー措置を講じざるを得ないこともあり得るというふうに考えております。
いずれにいたしましても、昨年末に決定いたしました当面の生産調整の進め方を踏まえまして、目標未達成となった都道府県、地域の具体的な取り扱いについては、二十年産の生産調整のステージごとの推進状況、達成状況を見ながら適切なタイミングで決定して、生産調整目標の達成に向けた取り組みを促してまいりたいというふうに考えております。
○高橋分科員 その際、例えばマル適マークというような形で、減反に協力した米を差別化するということも検討されているということが報じられておりますが、その点についてどうなのか、それから、生産調整に協力をすれば米価が上がるという保証があるのか、伺います。
○若林国務大臣 ペナルティーの措置についてはただいま局長が御答弁申し上げたとおりでございまして、そのような状況にならないように、我々も、各生産段階、ステージごとに情報を提供しながら、そのステージごとにどのような点に留意しながらこの調整を実行、完成できるように進めていくか、そういう点を、この合意に基づいてきめ細かに進めていくということにまず取り組んでいくということでございまして、具体的にどのようなペナルティー措置を講ずるかというようなことについてまでは、現時点でなお検討しているわけではございません。
なお、生産調整を実施すれば米価が上がるかということでございますけれども、まずは、この生産調整に失敗しますと、十九年産に見られるごとく、さらに需要量を超えて生産が拡大をするというようなことになりますれば、予想もできないような形で米価の下落が起こり、米価の下落によって全米生産者の経営に大変な影響を与えるということに相なるわけでございますから、何としても予想需要量に見合った生産をすることによって、需給に基づく適正な米の価格水準が形成されるもの、こういうふうに考えているわけでございます。
○高橋分科員 そういうことで、これまで何十年も減反に協力してきたけれども、米価が上がらなかったということがあるんです。ですから、減反に協力してもいい、しかし、価格がきちんと保証されるというのであればわかるんだ、何年もどうしてここまで続けるんだということに一切お答えになっていない。それでは協力できないし、押しつけ減反で本当にいいのかということが問われていると思うんです。
昨年の農協概算払いが七千円という報道がされたときに、吹っ切れたというか、つまり、今まで農業を我慢して我慢して続けてきたけれども、もうあきらめたという方が全国で大きくふえたんだと思うんですね。もうこれ以上は我慢できない。そういう中で、今、東北の例えば単一経営農家でも、六十五歳未満の従事者がいない割合が米では八四%にも上っております。ですから、黙っていてもこのままでは自然消滅してしまう、そういう状況なんですね。
そういうときに、やはり価格の下支えをするんだというメッセージが少しでも出される。下げるから下げるからというだけのメッセージでは、これ以上はもう続けていけるはずがないんです。そこに対して少しでもこたえていくということ、一番最初に自給率ちゃんとやるとおっしゃったんですから、そのくらいのメッセージがあってもいいんじゃないですか。一言言って終わりたいと思います。
○若林国務大臣 基本的な認識が異なっているというふうにまず申し上げざるを得ないと思います。
自給率との関係でいえば、需要を超えたお米を、主食用の米を幾らつくっても、それによって自給率が上がるということにはなりません。輸入に大きく依存をしております大豆だとか麦だとか、そういうようなものを水田で作付し、水田の有効利用を図ってもらうということが自給率の向上につながっていくものというふうに認識をしているわけでございます。
○高橋分科員 その路線が今完全に破綻したからこそ、たった一年で担い手経営安定対策を見直しをしたのではありませんか。このことを指摘して、次の機会にまた譲りたいと思います。
終わります。
○遠藤主査 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。
次に、馬渡龍治君。
○馬渡分科員 自由民主党の馬渡龍治でございます。
きょうは、動物の適正な愛護と管理について、一つは獣医学の教育について、もう一つはペットフードについて、最後に自給率について質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
実は、私たちの日本の国には、もう百年以上前に動物虐待防止会というものが設立されて、その趣旨の中に、動物の虐待は人類の品格を破るものなり、文明の体面を汚すものなり、国民の幸福を妨ぐるものなり、社会の美観を損するものなり、こういった言葉が入っています。まさにそのとおりだと思いますし、インドのマハトマ・ガンジーは、国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方でわかる、こうおっしゃっております。
その動物に最も関係をする獣医師の仕事というのは、家畜やペットなど動物の病気の診断、治療や、また食肉などの検査、検疫など公衆衛生の分野でも重要な業務に携わっています。自治体では、保健所や動物愛護センターなどで動物愛護法に係る業務の担当も獣医師であります。そして、私たちにとって、身近なかかりつけの獣医師は最も頼もしい存在でもあります。
二〇〇五年に動物の愛護及び管理に関する法律が改正されて、動物愛護行政の業務が広がって、動物取扱業者の監視や指導、実験動物や産業動物の基準の周知徹底なども担うことになっています。人と動物とのさまざまな社会的かかわりに関して、社会が獣医師に求める役割と期待もまた大きくなってきています。このような社会的ニーズにこたえる獣医師を育成していくためには、何よりも獣医学教育を充実していく必要があろうかと思います。
今、十八年には、二千四百五十五万頭の犬や猫が飼養されている。国民の三世帯のうち一世帯が犬や猫を飼育していることになるわけですけれども、動物の適正飼養や取り扱い、動物福祉に関する関心はますます高まってきていて、そのような社会のニーズにこたえていくために、獣医学教育で動物愛護や福祉に関する教育を進める必要があると考えられます。
また、諸外国では、獣医学教育において動物福祉教育が積極的に取り組まれていることから、日本でも動物福祉を学びたいという学生がふえてきていると聞きます。しかしながら、国内において、動物福祉、獣医倫理、生命倫理といった科目や講座がある獣医学科を持つ大学が少ないのが現状です。
そこで、今申し上げた動物福祉、獣医倫理、生命倫理に該当する科目や講座を持つ大学数や時間などを教えていただきたいと思います。また、今までどおりの教育方針でいいのか、または改善すべき点があるとしたらどのようなことがあるのか、文部科学省の見解を伺います。
〔主査退席、杉浦主査代理着席〕
○土屋政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、獣医学教育におきまして、動物福祉については極めて重要な事項というふうに認識してございます。
御指摘がございました我が国の獣医師養成課程における現状でございますが、現在、十六の大学において獣医師の養成を行っておるところでございます。この中で、動物福祉に関しましては十六大学中十三大学において講義が行われ、また、倫理に関しましては十六大学中九大学、あるいは動物愛護に関しましては十六大学中十一大学で教育が具体的に行われているという状況でございます。
現状はこういう状況でございますが、各大学あるいは学会、獣医師会におかれましては、さらに動物福祉などの新しい科目を開設すること、あるいは現在の授業科目の見直しなどについての検討が行われているところでございます。
文部科学省におきましては、学会あるいは各大学における検討状況も踏まえつつ、獣医学教育の一層の充実にこれからも努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○馬渡分科員 動物を適正に飼養する、愛護するということは、お子さんたちの心の健やかな成長にも資するわけでありますし、現に、過去、動物を虐待した少年が凶悪犯罪に走ったという事例もありますから、こういった点をよく踏まえていただいて充実をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
次に、獣医師免許を所轄する農林水産省では、平成十九年九月に獣医事審議会試験部会のもとに獣医師国家試験に係る小委員会を設置し、この二月に獣医師国家試験の改善に関する報告書をまとめています。この改善案の中で、「社会で求められる獣医師としての資質や倫理観の確保にも寄与すべきものである」と述べていますが、動物の愛護、福祉を普及させることは、まさに今の社会が求めている獣医師の役割の一つと考えられますが、このことについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 御説明申し上げます。
獣医師法におきまして、獣医師は、その任務といたしまして、飼育動物に関する診療あるいは保健衛生の指導をつかさどることとされております。動物に関する保健衛生の向上及び畜産業の発展を図りまして、あわせて公衆衛生の向上に寄与することとされております。
獣医師が診療や保健衛生の指導を適切に行うことは、動物愛護及び動物福祉に関する正しい情報の提供や、あるいは動物の健康維持に関する啓発普及にも寄与いたしますことから、獣医師は動物愛護及び動物福祉についても社会的役割を担っているものと考えているところでございます。
○馬渡分科員 次に、動物の健康と福祉を図ることは、人間社会をより豊かで安全にすることにつながっていると思います。獣医師に限らず、動物に係る人々の責務でもあろうかと思います。
獣医師は動物福祉の取り組みにリーダーシップを発揮してもらいたいと思いますが、日本では、これに関して獣医学教育のおくれが議論されている段階です。国家試験の中に動物福祉や生命倫理の問題が出題されれば、当然教育の方もそれに向けて取り組みが進んでいくものと考えますが、ぜひ検討していただきたいのですが、ここのところの御見解はいかがなものでしょうか。
○佐藤政府参考人 御説明申し上げます。
獣医師国家試験の関係でございますが、獣医師法の第二十条の規定に基づきまして、獣医師は、飼育動物に関する保健衛生の指導が義務づけられているところでございます。動物愛護思想の普及とか、あるいは獣医師を取り巻く社会的な情勢の変化を考えますと、獣医師には、高度かつ広範な知識、技術とともに、獣医師としての高い資質やあるいは倫理観も求められているところというふうに考えております。
このため、委員御指摘のように、獣医師国家試験の改善に関する報告書案ということでまとめられておりまして、その中で、獣医師としての資質を問う観点から、獣医師として必要な倫理観等に関する問題を必須問題として出題することが提案されているところでございます。
これらの提案を受けまして、獣医師国家試験において、動物の福祉あるいは生命倫理など、獣医師としての倫理、資質を問う問題の充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○馬渡分科員 ぜひよろしくお願いします。
私たち一般人からすれば、獣医師の方というのは動物病院のお医者さんという見方が強いんですけれども、牛や豚、鶏などの家畜動物の健康も維持して、病気を診断、治療することも獣医師の大事な仕事であります。
日本も加盟している世界動物保健機関では、家畜福祉の基本原則を示し、世界基準をつくろうとしているようですが、農林水産省として、この家畜福祉に関してどのような取り組みをしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○内藤政府参考人 お答え申し上げます。
家畜福祉、いわゆるアニマルウエルフェアと呼ばれているものでございますけれども、御案内のとおり、近年、国際的に関心が高まっております。まず、EUでは家畜飼養管理基準が、また、米国でも生産者団体によるガイドラインがそれぞれ策定され、さらには、国際獣疫事務局、OIEも基準の策定について検討を開始しております。
我が国におきましても、十八年度に、家畜のアニマルウエルフェアのあり方につきまして基本的な方向性を報告書にまとめ、十九年度からは、これを踏まえまして、アニマルウエルフェアに対応した畜種別の基準の具体化を図るため、大学の研究者、生産者、消費者、動物愛護関係者など広範な分野の専門家から成ります検討会を設けまして、検討を開始したところでございます。
農林水産省としましても、今後、国内の関係者への情報提供とあわせまして国内検討を進めまして、我が国の考え方が反映されますよう、OIEの基準策定の議論に積極的に参加してまいりたいと考えております。
○馬渡分科員 ありがとうございました。
次に、ペットフードの安全確保についてお話を伺いたいと思います。
平成十九年の三月、アメリカで、家庭で飼育されている犬や猫が四千頭以上死んだと聞いています。この原因が、中国から輸入したペットフードの原料を加工したカナダのペットフードメーカーがつくったペットフード、これによって、アメリカ全土で腎臓障害によって多くの犬や猫が死んだと聞いています。飼い主を信じて食べた犬や猫が病気にかかって死んでいった。これは、ペットフードを与えた飼い主にとっては大きな心の傷になろうかと思います。
幸い、日本ではこの件に関しての事故はなかったと聞いておりますが、この間、ペットフードの安全確保についての中間取りまとめを見させていただきました。意外と早い対応をされたな、これは私の率直な感想です。
三月にそういった事故が起きて、もう八月二十日にはペットフードの安全確保に関する研究会が立ち上げられて、同年の十一月三十日にこの中間取りまとめが出された。私も、動物の適正な愛護と管理を求めて、政治活動の一つとしておりますが、このことに対しては大きな評価をしたいと思っておりますが、そのことについてお聞きしたいと思います。
十一月に取りまとめられたペットフードの安全確保に関する研究会の中間取りまとめでは、「ペットフードについて十分な安全を確保する上で、法規制を導入すべきである。」という提言がなされています。今までペットフードの安全性に関する法律がなかったこと自体が問題だったと思います。これは、メーカーの自主規制によってなされていたものだと聞いております。このような提言に対して今後どのように対応するつもりなんでしょうか。これをぜひ教えていただきたいと思います。
○櫻井政府参考人 先ほど来委員御指摘のとおり、国民のライフスタイルの変化によりまして、ペットがより身近な存在となっております。犬、猫の飼育数は推計で二千五百万匹にも上るということでございます。また、これに伴いまして、ペットフード産業の規模も拡大しておりまして、現在は約二千四百億円にも達しているというふうに考えております。
こうした中、御指摘のように、昨年三月以降、米国で有害物質を含有するペットフードに起因いたします大規模な犬及び猫の死亡事故が発生いたしました。我が国でもこのペットフードの自主回収が行われたところでございます。
このように、我が国でもペットフードの安全性を確保するということが求められているという状況を受けまして、研究会において取りまとめられた報告の趣旨を踏まえて、今国会にペットフードの安全性の確保に関する法律案を提出すべく、環境省及び農林水産省において検討しているところでございます。
○馬渡分科員 大臣、この法律がしっかりとできるように御活躍をお願いいたします。
その中間取りまとめでは、規制の対象としては、当面、犬用及び猫用のペットフードとすることが適当であると考えられる、このようにあります。どのように対応していくんでしょうか。そして、例えばウサギとかハムスターなどもかなり多く飼われていると思いますが、こういったペットフードに関してはどうなんでしょうか。
また、実験用の動物の飼料についても法的な規制の対象とすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。この見解をお聞かせください。
○櫻井政府参考人 御指摘のとおり、研究会の報告書では、犬及び猫のペットフードにつきまして、第一に、国内で流通しているペットフードの約九〇%が犬及び猫のペットフードであるということ、それから第二に、安全性の問題が顕在化をしておるということ、それから第三に、ペットフードの安全性に関します知見が相当程度蓄積をされているということから、当面は犬及び猫を対象とすべきというふうにされておるところでございます。法案の検討に当たりましても、これを尊重していくという考えでおります。
犬及び猫以外のウサギなどの愛玩動物につきましては、今後、ペットフードの流通の状況、あるいは当該動物に関します安全性に関する知見の蓄積の状況等を見ながら、必要に応じまして対象の見直しを図るということが適当ではないかというふうに考えているところでございます。
さらに、実験動物についてでございますけれども、実験動物についてもペットフードを食べているという場合も多いわけでございまして、これを規制すれば、実験動物に与えられる飼料についても安全性を確保することは可能でありまして、別途の実験動物のための規制というのは必要ないというふうに考えております。
なお、実験動物という性格上、実験の目的に必要な限度で特殊な飼料を与えるということは、これは飼料の安全性の確保という観点とはまた別の問題であろうかと思っております。
○馬渡分科員 実験用の動物に関しても、ストレスを与えない、安全を確保するというのが動物福祉の一つだと思いますので、さらなる御検討をよろしくお願いいたします。
次に、中間取りまとめでは、「法規制では安全確保の観点から重要な情報が表示されるようにすることが必要である。」としています。ペットフードは、人間の食用には適さない、例えば家畜の内臓などが原料に使用されているとのことです。使用してはいけないということではありませんが、その場合、表示はきちんとすべきではないかと思います。また、ペットフードには防腐剤や酸化防止剤などが使用されていると考えられますが、このような添加物についても成分の表示をするようにすべきではないかと思いますが、どのように今後対応していくおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 御説明申し上げます。
委員御指摘のとおり、中間取りまとめでは、「法規制では安全確保の観点から重要な情報が表示されるようにすることが必要である。」とされております。このような中間取りまとめの指摘を踏まえつつ、現在、他法令との整合性等も考慮いたしまして、規制の仕組みを検討しているところでございます。
表示の内容等につきましては、今後審議会等の場で専門家の御意見をよく伺いまして、ペットフードの安全性を確保するよう、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
○馬渡分科員 ぜひよろしくお願いいたします。
続いて、最後に大臣にお聞きしたいことがあるんですけれども、自給率について、先ほどちょっと話が出ましたけれども。
我が国では、国内で自給可能な米の消費量が大幅に減少する一方、多くを輸入に依存している穀物や大豆などの消費が大幅に増加したことなどにより、食料自給率が大きく低下し、先進国の中で最低水準になっています。
このような中で、特に小麦、トウモロコシ、大豆、その国際価格は、一つは中国やインドなどの人口超大国の経済発展による食料需要の増大、そして世界的なバイオ燃料の原料としての穀物等の需要の増大、そして地球規模の気象変動、この影響によって農業生産への、とれるとれないというものがあろうかと思います。そんな中で、中期的に継続する要因を背景とする穀物全体の需要増や在庫率の低下などにより、価格はどんどん上がってきて、今も高水準であります。
特に小麦の価格については、輸入先であるオーストラリアの二年連続の大干ばつによって大幅に上昇して、今後も安定する見込みはありません。年間でおよそ五百万トン輸入している小麦の国内生産量は、平成十七年で八十六万トン、国内消費量の一四%程度しかありません。国内で小麦をこれ以上増産しようとしても、生産能力には限界があろうかと思います。また、国産小麦の評価として、一部に高い評価を得ている国産小麦もありますが、多くは外国産に比べて品質の劣るものもあります。
一方、我が国では、主食用米の消費が大幅に減少している中で、米の生産調整が行われています。この生産調整を行う水田を麦、大豆などの生産のために活用することはもちろん重要でありますが、我が国の気候風土に適しているのは米の生産であって、それは我が国の歴史、文化、伝統に根差したものでもあろうかと思います。
そこで、こういった課題を解決して国民に対して食料の安定供給を果たしていくための方策の一つとして、原料の大部分を海外に依存している小麦粉から、国内でできる米粉の利用を図ることが重要じゃないかと考えます。
実は、平成三年ごろから米粉一〇〇%のパンというのが開発されて、今普及に向けていろいろやっているようですけれども、十年たってもなかなか一般的に普及していかない。その理由として、値段のこともあるんだと思いますけれども、実は今、米一〇〇%の粉でうどんとかパスタとかラーメンなんかもつくれるんです。そのパンも、かなり品質も向上してきて、本当に小麦でつくったパンとそう変わらないようなものもあります。現に、大臣の農林水産省の食堂では米粉によるうどんも販売されていて、結構好調だと聞いております。過去に米粉が普及しなかった理由は、さっき言いましたように、小麦と米粉の価格の差、そしてその品質のこともあろうかと思いますけれども、ここ最近では随分技術革新もされてきて、いいものができています。
そこで質問なんですが、現在まだ米粉と小麦粉の価格差はありますが、食料安全保障の観点からも、古米や古々米などを安い価格で粉への加工に回すとか、新米であっても余剰米と判断されるものは低価格で加工用に売却するなどの大胆な決断をしていただいて、小麦にかわっての、粉にした米の消費拡大を図るべきだと考えていますけれども、大臣におかれてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
○若林国務大臣 委員が御指摘になり、そしてまた御提案になりました、米粉によるパンを初めとした需要というのを拡大していかなきゃいけない、なお拡大の余地はあるということについては、私もそのように考えております。
食生活の変化によりまして、御承知のように、主食用の米の消費は残念ながら減少を続けております。そういう中で、日本の風土に最も適しているのは水田における米作であることは間違いないわけでございますので、やはり、水田の機能を維持しながら自給率の向上を図っていくためには、米自身の低コスト生産をさらに進めていくということをしながら、パンとかめんなどの原料としての米粉利用の促進に取り組んでいくことは本当に重要な課題だと思います。
特に、委員が御指摘のように、近年におきます小麦の国際需給の逼迫、さらに、国際相場も高騰している中で、輸出国側が輸出規制に入っていく、そういう兆候がございますし、また、地球温暖化に伴う異常気象というような要素も入ってきておるわけでありますから、米粉利用の必要性はさらに高まってきていると思います。
委員も言われていましたように、これまで、米粉は小麦粉と比べて割高である、こういうことは間違いございませんけれども、やはり小麦粉を使った商品に比べて米粉のパンは水分含有率が高いというようなことで、どうしてもかたくなりがちだということから、需要の拡大にそれがネックになっていたということが言えると思いますが、さらなる技術の開発努力を続けながら米粉の需要を拡大し、その定着を図っていく。
そのためには、生産地、生産者と、製粉メーカー、また製パン、製めん業者の二次加工メーカーがお互いに連携を強めまして、原料の米を低コストで安定的に供給できるような生産、流通体制を整備すること、そして、その特徴であるもちもちした食感、しっとりとした食べやすさみたいなものをむしろ一つの商品の特性として、これを踏まえた新しい商品開発というようなことも努力し、販路の確立を図っていくことが重要だというふうに認識いたしております。
農林省の下の食堂では米粉パンも売っておりますが、まだ少量であるために、今、展示するとすぐ売り切れてしまうというような状況でございます。ようやくそういう認識も広がり、その需要も高まっているということでございますので、この機会に集中的に重点を置いて、米粉のパンを初めとした需要の拡大に努めてまいりたい、このように考えております。
○馬渡分科員 力強い御答弁をいただきました。大臣のお力で日本の国の自給率をさらにアップしていただけますように、お願いいたします。
最後の質問、時間もなくなりましたので、速く読みます。
次に、近年、全国の中山間地では、農村部の過疎化に伴い、稲を植えることなく放置されている耕作放棄農地、いわゆる荒れた田んぼが急増してきています。山の保水能力や環境保全の観点からも、このように眠っている中山間地の田を活用する政策を図るべきだと考えます。環境政策の一環としても、中山間地域の田畑での生産を行うための補助や農地の有効利用のための新しい制度をつくるべきと考えますし、環境に配慮した農法の積極的支援や生物多様性に配慮した政策を進めるべきと考えますが、農水省の考えはいかがでしょうか。
○中條政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、中山間地域は、我が国農業の中で重要な位置を占めますとともに、国土の保全、水資源の涵養など多様な役割を果たしているところと承知をしております。しかしながら、同時に、傾斜地が多くて農業生産条件が不利な状況にございまして、過疎化、高齢化が進行するとともに、担い手が不足いたしまして、耕作放棄地の増加、多面的機能の低下が特に懸念されているところでもございます。
これらの課題を踏まえまして、農水省としましては、地域の実情に即しました農業生産基盤の整備、それから、中山間地域の条件不利を補正しますための直接支払い、さらには、平成十九年度からでございますけれども、農地、水、環境を保全します地域共同活動への支援、こういった施策を行っておりまして、中山間の農林水産業の振興だけではなくて、多面的機能の確保、農地の有効利用に向けた施策を総合的に行っているところでございます。
さらには、営農面でも、病害虫に強い品種の育成、それから天敵の利用、こういった環境保全型の農業の開発普及等、基盤だけではなくて営農面での指導も行っているところでございます。
また、平成十九年度から、農山漁村活性化法に基づきまして、農業だけではなくて居住者、滞在者の増加によります農山漁村の活性化といった面でも支援をしておりまして、まずはこれらの施策を着実に実施させていただきまして、十分な成果を出すことを目指す、あわせまして、現地の生の声を十分にお聞きしながら今後の中山間地域の総合的な振興に努めてまいりたい、このように考えております。
○馬渡分科員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
○杉浦主査代理 これにて馬渡龍治君の質疑は終了いたしました。
次に、阿部俊子君。
○阿部(俊)分科員 自由民主党の阿部俊子でございます。
本日は、このような機会をいただきましたことにお礼を申し上げまして、三十分間、質問をさせていただきます。
初めに、畜産における飼料高騰と国内自給率の向上に関して、三点お伺いさせていただきます。
今、国内飼料の自給率の引き上げについて検討されているところでありますが、特に、米国におけるトウモロコシを原料とするバイオエタノール生産が急増したことや、さらに、二年連続のオーストラリアにおける大干ばつなどが原因で、国際的に穀物価格が高騰しております。国内飼料自給率が二五%という、飼料原料のほとんどを米国に依存している日本の畜産、酪農経営をこれは大変直撃し、全国の畜産農家や酪農家は、経営を維持することができず、離農することが急増しています。安全な国産畜産酪農製品を供給するという観点からも、国内飼料の自給率の向上は緊急課題と考えます。
二〇〇六年十月には一トン当たり四万二千六百円だった飼料価格は、ことし一月に五万八千百円と、三六%も上昇いたしました。国内の配合飼料の消費量は年間二千四百万トンとも言われ、これは、一年間に換算すれば約三千七百二十億円もの負担増となる計算でもあります。国際的な飼料価格の高騰で、生産者の負担は前年同期に比べ一トン当たり約七千七百円もふえています。
政府においては、平成二十七年までにこの国際飼料自給率を三五%へ上げるという数値目標を定めているとお聞きしておりますが、これについて、具体的に何を、どのぐらい、どのように上げることを見込まれているかについてお聞かせいただきたいと思います。
○内藤政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十七年度に三五%を目指しまして、食料自給率の目標を設定しているわけでございます。
その達成のため、まず、粗飼料自給率を一〇〇%にすべく、耕畜連携の強化によります稲発酵粗飼料等の生産拡大、低・未利用地を活用した放牧、あるいはコントラクターや公共牧場の活用による飼料生産の外部化、組織化の推進を図っているところでございます。また、濃厚飼料の自給率の目標につきましては、一四%という目標を設定してございまして、食品残渣の飼料化、いわゆるエコフィードの推進等を進めているところでございます。
さらに、飼料価格高騰、あるいは、それに伴いまして、自給飼料の増産がますます重要になってきているという状況を踏まえまして、平成二十年度予算案におきましては、新たに、すき込まれている緑肥作物の飼料利用、それから耕作放棄地の草地としての活用、水田裏作での飼料作物の生産、供給、地域の食品残渣飼料化業者と配合飼料メーカーが連携したエコフィードの増産などを支援するための対策を計上しております。また、先般決定しました二十年度の畜産・酪農緊急対策におきましては、栄養価の高い青刈りトウモロコシの作付拡大、あるいは飼料用米の利活用に対する緊急支援対策などを措置したところでございます。
○阿部(俊)分科員 ぜひとも、そのモデル地区に関しても、よろしくお願いしたいというふうに思います。
次に、国内飼料自給率の目標年度の前倒しについてでございますが、配合飼料の高騰にもかかわらず価格転嫁が不十分な現状に対して、先日、畜産、酪農家の支援のための緊急対策として、先ほどもそちらから御説明いただきました家畜飼料特別支援資金、その融資の限度額の拡大、さらには、飼料用米導入定着化緊急対策として畜産側で取り組んでいるモデル実証を全国展開し、自給率向上のための対策が出されたところであります。
しかしながら、今後も輸入穀物の価格動向は不透明な状況にあり、価格変動の読めないトウモロコシなど輸入の飼料に頼るだけではなく、輸入飼料原料の依存から脱却し、国内飼料自給率を向上させることが本当に喫緊の課題となっています。このため、この計画の目標年度をぜひとも前倒しして進めることが必要と思われますが、それについてお考えをお伺いしたいというふうに思います。
○内藤政府参考人 委員御指摘のように、輸入飼料価格の高騰に伴いまして、自給飼料の増産はますます重要となっているわけでございます。私どもも、先ほど御説明したさまざまな対策あるいは二十年度の緊急対策、こういったものを強力に推進しまして、飼料自給率目標の早期達成を図ってまいりたいと考えております。
○阿部(俊)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
次に、飼料米のえさとしての配合率の研究の推進について御質問させていただきます。
現在、トウモロコシの代替として、米の生産調整の一環として飼料米の生産が推奨されているところであります。米は、トウモロコシと比較して五倍以上コストが高いという課題はございますが、栄養価は変わらず、むしろたんぱく質などが多く含まれていると言われています。しかし、鳥や豚と異なり、草食類である牛にとっては、飼料米は消化吸収の点で問題があることが指摘されていまして、酪農家の間では、牛のえさとして飼料米を使用することについての懸念もあるようであります。
これにつきまして、国内の飼料自給率を上げるためにも、飼料米の生産拡大を含めて利用を促進していく必要があり、そのためには、具体的に実際どの程度の混合なら牛のえさとして可能なのか、酪農家や農家が安心して飼料米の生産や使用を進めていくことができるよう、えさの配合率についての研究を進めていくことが必要であると考えますが、この研究の進捗状況と今後の方針についてお聞かせください。
○内藤政府参考人 飼料米につきましては、委員御指摘のように、栄養価で見た場合にはトウモロコシとほぼ同程度でございますけれども、牛の場合は、米の消化が早過ぎるため代謝異常が発生する、あるいは、豚の場合、脂肪の融点が下降することによる軟脂が発生する、採卵鶏では、黄色色素が少ないために卵の黄身の色が薄くなるなどの事例が報告されているところでございます。
こういうことを踏まえますと、米をどれだけ飼料として配合できるかについて畜種ごとに考える必要がございまして、現時点で明確に判断することは難しいわけでございます。
農林水産省では、こういった事例も踏まえながら、現在、飼料米を利用した畜産物の付加価値化、あるいは配合割合はどの程度がいいのかということについての給与方法のモデル実証を推進しております。例えば、我々の把握しているところでは、一〇%ぐらいの例で配合しております。まだ畜産物ができていないという事例もございますので、こういったモデル実証を進めながら、その結果を活用して、飼料米の利用拡大を図ってまいりたいと考えております。
○阿部(俊)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
次に、飲用乳の減少と価格下落について、三点お伺いをさせていただきます。
初めに、飲用乳の消費拡大についてお伺いいたします。
飲用牛乳の消費は、その他飲料との競合が激しくなったことから、おおむね減少傾向が続いておりまして、平成十八年度の飲用牛乳等向け処理量は、四年連続減少し、四百六十一万九千トンと二・五%減少しています。大手スーパーの安売りの目玉として時には一リットル当たり百円前後で小売されることで、酪農家に大きなひずみが出ているものと思います。
牛乳・乳製品は国民のいわゆる基礎的な食料でもございますし、牛乳・乳製品の消費拡大を図る観点から、国内消費の拡大対策について国を挙げて取り組んでいく必要があり、さらには、生産者団体などが実施している消費拡大のさまざまな取り組みについて一層の支援をお願いしたいと思いますが、今どのような対策を立てていらっしゃるのか、お聞かせください。
○内藤政府参考人 飲用牛乳は生乳の最大の仕向け先でございます。そういった意味からも、我々、その消費拡大が非常に重要だと考えているわけでございます。
具体的にどのように消費拡大を図っているかということにつきましては、まず、消費者の牛乳・乳製品を購入していただく際の着眼点が、例えば、体にいいですとか、商品に魅力があるとか、酪農と牛乳へのイメージがいいとか、こういったことがわかっておりますので、こういった着眼点に注目しまして、例えば、牛乳・乳製品の機能性、有用性の普及啓発、あるいは消費者にとって魅力のある新商品の開発促進、それからイメージの問題としまして、酪農触れ合い体験、あるいは料理への牛乳・乳製品の活用を推進するとともに、学校給食を通じました牛乳の普及啓発を進めているところでございます。
また、生産者団体が、御案内のとおり、中高生を対象にしました「牛乳に相談だ。」というキャンペーンを行っているところでございます。生産者団体あるいはまた消費者団体もいろいろな取り組みをしていただいておりますので、こういった取り組みとの連携を図りながら、今後とも、牛乳・乳製品の消費拡大に努めてまいりたいと考えております。
○阿部(俊)分科員 国内需要の拡大に関しては大変お願いしたいところでございますが、そうはいいましても、今後、少子高齢化でますます小さくなるばかりの日本の胃袋に対しましては、国内消費の拡大を図るとともに、海外からの外需を喚起するということが必要ではないかという議論もされているところであります。
中国では牛乳が不足し、九州から輸出をしているということも聞いています。国内の乳製品需要に限りがありますが、経済成長が著しいインドや中国などのアジア諸国では乳製品の需要が拡大しています。今後、アジアの富裕層を中心としたチーズ、バターなどの需要を初めとする海外需要は一層拡大されるのではないかと言われているところでもございます。
今後の乳製品の輸出拡大に対してどのような政策をお考えで、どのぐらいの需要が喚起できると考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
○内藤政府参考人 牛乳・乳製品の輸出につきましては、現在、香港、台湾を中心にしまして、中国に対しても輸出の取り組みが始まったところでございます。これらの地域は特に、品質や安全性に関心の高い富裕層が急速に拡大しております。私ども、今後さらに輸出を拡大する余地が、可能性が高いというふうに考えております。
このため、生産者、乳業者など関係者から構成されます、牛乳乳製品輸出促進検討委員会を十八年の六月に設立しまして、情報の収集、技術開発を進めながら、この輸出促進に取り組んでいきたいと思っております。
なお、輸出の内容を見ますと、やはり牛乳の形ではなかなか難しいわけでございますけれども、乳製品という形で今後伸びることが期待されておりますので、私どもも、こういった方々のニーズに合う乳製品の開発、それから輸送の工夫などを進めていきたいと考えております。
以上です。
○阿部(俊)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
次に、価格対策に関してお伺いさせてください。
今回、平成二十年度畜産・酪農緊急対策として、飲用乳が主体の都府県の酪農に対して、生乳一キロ当たり二円十銭相当の緊急対策を実施し、加工原料乳生産者補給金単価を前年度より一キロ一円ふやし、十一円五十五銭とすることなどが決定されました。これに対しては、私ども大変評価しているところでございます。
しかしながら、このように輸入飼料価格が高騰する状況におきましては、生産費用を考えますと、一時的な対策だけでは焼け石に水とも考えます。安定経営のためにはこの価格対策を継続していくことが不可欠でございますが、今後の見通しについてぜひともお聞かせください。
○内藤政府参考人 乳価の関係でございますけれども、二十年度の飲用牛乳向けの乳価は、生産者団体と乳業メーカーが交渉で決めるわけでございまして、昨年十二月に三円の引き上げで合意したと聞いております。
しかしながら、農水省が試算しますと、やはり、配合飼料価格が高騰しまして、生産コストを見ましても、この一年半で約五円の上昇ということでございますので、酪農家の生産者の方々は、そのコストの増加分をカバーするために乳価をさらに引き上げたいということで、引き続き交渉をしていきたいという意向があると承知しております。
このような生産コストの上昇に対しまして、委員御指摘のように、二十年度緊急対策としまして、都府県におきましては、飼料価格の高騰が乳価に反映されていない分を実質的に措置する対策としましての、一頭当たり一万六千五百円の生産性向上支援の助成金を交付することを決めたわけでございます。
何よりも、私ども、こういった生産コストの上昇に対しましては、生産性の向上、それから自給飼料の増産に努めまして、経営体質の強化を図ることが重要であるというふうに考えておりまして、先ほどの緊急対策の一環としまして、畜産経営の生産性向上に必要な機械等を個人向けに補助つきでリースする畜産経営生産性向上支援リース事業なども盛り込んだところでございます。
こういった事業を活用しまして、都府県酪農の経営安定が図られるよう、我々も支援をしていきたいと考えております。
○阿部(俊)分科員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いいたします。
続きまして、森林の保全対策に関しまして、二点お伺いをしたいというふうに思います。
まず初めに、間伐の問題についてお伺いいたします。
戦後、林野政策に関しましては、荒廃林地の復旧のために植林を促進し、植林が進んだため、現在、日本の国土の七割が森林面積となっています。私の地元岡山県では、昔からヒノキを中心に熱心に植林を行ってまいりました。この結果、森林面積の四〇%以上が人工林となり、これは全国で二十番目ということでもあります。
現在のヒノキの価格は一万一千二十四円、平成十八年のころでございますが、昭和三十八年当時と同じ値段となりまして、一番高かった時期、これは昭和五十五年当時でございますが、その四分の一の価格まで下落いたしました。
人工林は天然林と異なり、その維持管理には間伐などの手入れが欠かせませんが、実際に間伐が必要な森林の約半分で間伐が実施されていない状態でございまして、手入れ不足の森林となっていると言われています。
去る二月八日、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法が閣議決定され、今国会に提出されました。これによって、十齢級以上の森林の間伐についての助成や、七から九齢級の森林についての補助が実施される新しい制度、措置が検討されています。
今後、間伐については、森林の多様性を保持するということが重要で、いわゆる長伐期や短伐期を組み合わせた間伐、複層林、皆伐など、森林のステージに応じた間伐で山の活性化を図っていくことが重要であると考えています。
各地域に応じた間伐の推進について、今後の方策をお聞かせください。
○井出政府参考人 今委員からお話がございましたように、我が国の森林につきましては、戦後造成された人工林資源が充実しつつある中で、一方、多面的機能の発揮を図るために、間伐の実施によりまして森林の健全性を確保するとともに、長期的な視点に立って、広葉樹林でありますとか複層林でありますとか多様な森林に誘導していくことも重要となってきております。
こうした中、ことしからは、京都議定書第一約束期間が開始されまして、CO2を森林吸収で三・八%吸収するということになっております。このため、平成十九年度から二十四年度までの六年間、毎年、従来の三十五万ヘクタール程度の間伐に加えまして、さらに追加的に二十万ヘクタールの間伐の実施が必要となっております。
この目標を達成するために、間伐等の実施に必要な予算につきましては、補正予算も加味しまして、しっかりと確保をしているところであります。また、今お話のありました間伐促進の特別措置法も提案をさせていただいておりまして、地域における間伐実施に必要な地方財政措置の充実も図っております。また、森林組合等の森林施業の集約化を通じて、林業生産コストをさらに低減していくなどの取り組みも総合的に展開をいたしまして、その地域の森林の状況に合った形で間伐の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
○阿部(俊)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
間伐も重要でございますが、一方で、現在、私有林の四分の一が不在森林であることを考えたときには、不在村の森林所有者への働きかけを含めた対応が必要であるというふうに考えています。不在森林対策に関しましては、森林の持ち主を明確にするなど、森林情報の整備が大変有効であると考えますが、現在、一部の地域ではそのデータがきちんと整備されていないという指摘もあるところであります。
GIS、地理情報システム、どこの山にどのような木があるのか、いつ間伐を行ったかなどの情報を一元的に管理することができ、現在、これは平成十七年度末でございますが、約百五十三の森林組合や約半数の都道府県で導入されているというこのGISでありますが、今後、不在村森林所有者対策として、また、地籍調査も含めた森林情報の整備が必要であるという観点から、これに関してのお考えをお聞かせください。
○井出政府参考人 森林整備を計画的かつ適切に進めるためにも、この森林情報システムの整備が必要であると考えております。
このため、各都道府県におきましては、森林所有者や樹種、面積などの情報を明らかにしました森林簿というものが既に整備をされておりますが、さらに、都道府県に対しまして、森林簿と地図情報を一元化した森林GISの導入について支援を行っているところでございます。
現在、森林GISそのものは、ほとんどの都道府県、四十五府県で導入が進められておりまして、各種森林計画の策定ですとか、森林の所有界の把握、さらには間伐などの森林整備に活用されつつあるところでございます。
今後とも、このシステム等の整備をさらにしっかり進めまして、計画的かつ効率的な森林整備に努めていく考えでございます。
〔杉浦主査代理退席、主査着席〕
○阿部(俊)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
次に、森林国営保険についてお伺いをいたします。
森林国営保険については、安全で安心な森林経営を支える仕組みとして、森林組合や山主にとっては大変重要な保険でございます。
しかしながら、災害の発生から損害状況調査、事務処理まで要する時間が長く、保険金の支払いまでに長期間を要することが指摘されています。平成十六年に発生いたしました台風二十三号の影響で、私の地元の岡山県でも大きな風倒木の被害が発生いたしました。この被害の発生から保険金の支払いまでは、実に約三年間ぐらいがかかっています。
この年は災害が多く、査定や事務処理に特に時間を要したとのことを伺っておりますが、保険金の支払い金額が長期間確定しない状況においては、災害復旧計画も立てることも困難であり、なかなか復旧作業に踏み切ることができず、放置された風倒木により二次災害が発生し、その処理に当たっていた三名の方々が亡くなられたという痛ましい事態が生じました。
森林国営保険に関しましては、今後、その保険の機能を充実させるためにも、保険金の支払いを被害の届け出からせめて一年程度に早めることが必要であるというふうに考えます。これは若い担い手に希望を与えるためにも必要だと思いますが、それが非常に無理でございましたら、保険にかわるセーフティーネット、これが現在あると聞いていますが、このことに関してもぜひとも御検討を進めていただけたらと思います。このお考えをぜひともお聞かせください。
○井出政府参考人 森林国営保険についてのお尋ねでございます。
森林国営保険におきましては、従来、平年ベースでありますと、年間大体八億円程度の保険金の支払いだったわけでありますが、平成十六年度に多発した台風等による被害によりまして、十六年度については、平年の十倍以上の約八十一億円に上る保険金支払いが発生いたしております。
今委員から御指摘がありましたように、林野庁としても、人員配置の強化等によって支払い事務の迅速化に努めてまいりましたが、当該十六年災については、非常に大きな災害でございまして、林道等が被災しまして現地への立ち入りが困難になったこと等から、被保険者等からの損害発生通知書もなかなか出てこないというような状況もございましたし、その十倍に及ぶ保険金支払いのため事務処理が集中したというようなことで、時間を要してまいりました。
今後におきましては、この森林国営保険の損害調査のあり方を検討しておりまして、損害調査をどうやって簡素化するかとか、手続の電子化を一層促進することによる事務の効率化を図るといったことによりまして、保険金支払いの迅速化にさらに努力をしてまいりたいと思っております。
○阿部(俊)分科員 保険が迅速化を図られるということは、これはぜひとも必要であると思いますが、また、セーフティーネットの制度があったにもかかわらず、それが森林組合、山主の方に知られていなかったということも一つ大きな問題であると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
最後に、私の地元岡山県で力を入れております木質バイオマスの推進についてお伺いをさせていただきたいと思います。
石油燃料の高騰や二酸化炭素の排出削減の必要性から、バイオエタノールの開発は、エネルギー資源の少ない日本にとって緊急課題でございます。
しかしながら、世界では主食であるトウモロコシなどバイオエタノールの使用が進められていることでトウモロコシの価格が高騰し、これが途上国での食料危機を喚起しています。また、初めに質問させていただきましたが、トウモロコシのバイオエタノールへの利用の増加で輸入飼料が高騰し、日本の酪農家、畜産家に大きな打撃を与えています。
このように、世界の食料問題を考えたときには、バイオ燃料は、非食料、非飼料である廃材や間伐材を利用した木質バイオマスを主流にしていく必要があると考えます。間伐材や廃材の有効利用は、化石燃料由来の二酸化炭素削減になる上、健全な森を育てることやごみの減量にもつながります。
木質バイオマスについては、現在、幾つかの施設で実証実験が行われていますが、トウモロコシなどのいわゆる糖質のバイオマスと異なり、セルロースを分解する工程が課題となるほか、コストの面で採算がとれないなど、依然として多くの課題を残していますが、ぜひとも国策として積極的に進めていただきたいと思っています。その意気込みをお聞かせください。
○井出政府参考人 委員御指摘のように、非食料であります間伐材や林地残材などの木質バイオマスの利用につきましては、地球温暖化防止はもちろんのこと、林業、木材産業の活性化でありますとか、ひいては森林整備の推進につながる極めて重要な課題でございます。
このため、林野庁といたしましては、今お話がございましたように、現在のシステムでは非常にコストがかかり過ぎるということもございまして、どうやってセルロースを安定的に、大量に糖に変換できるか、あるいは、セルロースを取り出すときに邪魔者扱いされていますリグニンというものがございますが、このリグニンを変質させないで取り出して、このリグニンそのものも資源としてマテリアル利用をするというようなことで、全体のコストを下げつつ、それから生産物の価値も高めるという両方向でこの木質バイオマスの推進をしていきたいということで、現在、今年度においては、そういった技術開発の加速化を図るための低コストで効率的な製造システムの設計に取り組んでおります。
二十年度においては、さらに全国の民間企業、研究機関、大学等が持っております研究成果を総合いたしまして、この木質バイオマスからエタノールを製造するシステムをさらに実証実験に進めていきたいと考えております。
委員御指摘のように、将来のある資源というふうに考えておりますので、力を入れて頑張っていきたいと思っております。
○阿部(俊)分科員 大変力強いお言葉、ありがとうございました。
岡山県真庭市は、バイオマスタウンとして今E3を走らせているところでございますが、ぜひともE10の導入が、今新しい自動車では問題がないと言われているところでございますが、これは経産省マターの部分でもございますが、品確法によってこのE10が促進されないということを私どもバイオマスを進める議員としては非常に懸念しているところでありますので、ぜひとも御一緒に頑張ってまいりたいと思います。
本日は、質問の時間をいただきまして、大変ありがとうございました。
○遠藤主査 これにて阿部俊子君の質疑は終了いたしました。
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○遠藤主査 環境省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、これを許します。広津素子君。
○広津分科員 どうもありがとうございます。
最初に、二十一世紀の日本をどうつくるか及びその財源について御質問します。
二十一世紀になり、私たちの住む地球環境は、人類の活動により、地球温暖化や環境汚染、野生動物の絶滅などの事態を生じており、その解決は待ったなしの状況です。そのため、私たちは、人類が地球に持続的に住むことができるようにするため、生態系を維持し、環境を守って、持続可能な社会をつくることを真剣に考えなければならないときに来ております。
そこで、二十一世紀の日本は、今後十年から三十年かけてどういう形にしたいのかについて考えてみました。夢のある話になりましたが、この夢は、意識の高い皆様方のアイデアを入れて膨らませながら、ぜひ現実にしたいと思っております。
まず、我が国は、ものづくりが得意な国ですから、工業の盛んな国であり続けたいと思いますが、どす黒く汚れた工業地帯ではなく、クリーンで木々がそよぎ、緑や花が多く、再利用できる浄化された水を排出する工業エリアでありたいと思います。
家は、庭のある一戸建てに住むことが可能なくらいのゆとりが欲しく、ショッピングや病院、学校など、必要な場所には道路や鉄道を使ってすぐにアクセスできる、美しいまちづくりであってほしいと思います。そして、これは、都市への極端な人口集中をしなければ可能なことです。
また、食料自給率は、現在三九%になっておりますが、三十年後には八〇%、できれば一〇〇%にしたいと思います。
そのためには、環境、農林漁業、国土交通、厚生労働など、さまざまな視点から新しい施策が行われなければなりませんが、現在、その財源が十分あるかについて御質問いたします。
○鴨下国務大臣 今先生が国のあり方、あるいは今後の十年から三十年にかけてどういうような形にしたいか、こういうようなことでおっしゃられたわけでありますけれども、私どもも、例えて言えば工業、そういうようなことについては、できれば持続可能な形でのあり方、さらに住まい方につきましても、今お話しになりましたように、できるだけ環境負荷の少ない住まい方。
そういう趣旨においては、例えば今、道路や鉄道を使ってすぐアクセスできる、こういうようなお話がありましたけれども、できれば歩いてでもアクセスできる、こういうような町をつくっていくということが、多分、環境の問題もそうですけれども、これから高齢化しますから、高齢化した方々が便利に暮らせる、こういうようなコンパクトな町をつくっていくということも重要なことなんだろうというふうに思います。
そういう趣旨においては、私たち環境省の中では、おっしゃるように、財源も含めて、まちづくり、あるいはこれから新しいエネルギーを創出していかないといけませんから、その自然エネルギーに重点を置く上においても、十分ないわば財政的な裏打ちは必要だろう、こういうふうに考えているところであります。
こういうようなことの中で、環境省は、具体的な話としましては、環境立国日本として、我が国のすぐれた環境・エネルギー技術や豊富な人材を生かして、自然の恵み豊かな美しい国づくりを目指す、こういうようなことを一番重要な施策に置いて、今努力をしているところであります。
特に、先生もお触れになりましたけれども、地球温暖化問題、こういうようなことは人類においても共通の課題でありますから、これについても世界を挙げて、そしてさらに日本がリーダーシップをとらなければいけない、こういうような課題であるわけであります。そして、足元で言えば、ことしから京都議定書の第一約束期間に入りました。そういう中で、あらゆる分野で対策を加速する、こういうようなことのために我々はしっかりと取り組まなければいけないと思います。
そして、今お話ありましたように、私たちは、コンパクトなまちづくりを含めて、できるだけ化石燃料を使わないで、これから国が経済的にも豊かでいられる、国民が生活をする実際も、実感として豊かでいられる、こういうような意味において、低炭素社会というようなことを進めよう、こういうふうに考えているわけであります。そういうようなことの中で、今、平成二十年度の予算の中で環境保全経費の総額は二兆二千百四十一億円となっておりますけれども、持続可能な社会を本当に実現するためには、これは環境省ももっともっと頑張らないといけないわけでありまして、しっかりと、先生の御趣旨に沿った形で我々も取り組んでまいりたい、こういうふうに考えます。
○広津分科員 どうもありがとうございます。全く同感で、協力させていただきたいと思っております。
次に、結論から申しますと、私は、道路特定財源の暫定税率部分を環境税とし、一般財源化してはどうかと思っております。
現在、道路特定財源の暫定税率に関して、これを十年延長するか否かが大きな争点になっております。道路特定財源は、国税には、揮発油税、石油ガス税、自動車重量税があり、地方税には、地方道路譲与税、石油ガス譲与税、自動車重量譲与税、自動車取得税、軽油引取税などがあります。
しかしながら、そもそも、自動車やガソリン取引に税をかけたのは、まだ自動車がぜいたく品であったころが始まりで、自動車保有者は担税力があったために課税したものです。現在では、自動車は地方においては国民の足となっており、必需品であってぜいたくではないため、自動車保有者に担税力があるということもありません。そのため、当初の目的で自動車の取得やガソリンの購入に税をかけるということは、地方の人に多くの負担をかけ、現代にそぐわないと思います。
このような中、もし自動車の重量に応じて税をかけることに合理性があるとすれば、道路に負荷をかける度合いに応じて道路整備の費用を負担すると考えれば納得できます。けれども、自動車を購入するときに、自動車取得税をかけ、さらに消費税をかけることは、妥当ではないと思います。
また、もしガソリンの購入に税をかける合理性があるとすれば、これは環境という観点から考えたときに、自動車の排気ガスがCO2、NOx、SOxを排出し地球環境に迷惑をかけているため、それを回復するために使用する資金としてであれば納得できます。つまり、二酸化炭素の吸収源となる森林、農地、藻場を整備して、自動車が排出する二酸化炭素やその他の有毒物質を回収するためにこれらの税を使うのであれば納得できるわけです。
つまり、道路特定財源については、一つ一つの項目について、徴税することの妥当性と徴税金額の妥当性に関する見直しが必要であると思いますし、見直した結果は、暫定税率の部分くらいは環境税として一般財源化するのが妥当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
なお、環境税に関しましては、将来的には、乗用車のみではなく、環境に負荷をかけている他のものからも徴収するということでよいと思いますが、この機会に、揮発油税、石油ガス税、石油ガス譲与税、軽油引取税から始めるのが現実的でよいのではないかと思っております。
○古谷政府参考人 お答えを申し上げます。
自動車関係諸税は、御指摘がございましたが、それぞれ創設の経緯や課税に根拠がございまして、現状で国、地方それぞれの貴重な財源となっております。一方で、OECDの統計を見ますと、これらの税は、税の名称ですとか課税の目的、あるいは税収の使途といったことを問いませんで、燃料課税、車体課税、双方を含めて環境関連税制ということで位置づけられております。
御指摘のエネルギー関係諸税につきましては、環境面への影響を踏まえまして、そのあり方を検討する必要があることは御指摘のとおりであるというふうに考えております。
この自動車関係諸税につきましては、昨年十二月七日の道路特定財源の見直しについての政府・与党合意におきまして、税制の簡素化が必要との指摘もあり、今後の抜本的な税制改革に合わせて、そのあり方を総合的に検討するというふうにされております。具体的には、今後、抜本的な税制改革の議論が進みます中で検討をしていくことになると思いますけれども、自動車関係諸税それぞれの課税の趣旨、性格を踏まえまして、私どもといたしましても、政府・与党合意に沿って適切に対応してまいりたいと考えております。
○広津分科員 どうもありがとうございます。
次に、それでは道路整備は要らないのかということにつきまして、国土交通省に御質問いたします。
それでは、要らないのかといえば、既に十分に言い尽くされておりますように、地域の自立や活性化のためには、高規格幹線道路の整備、生活道路の拡幅、歩道の整備やバリアフリー化、市町村合併後の一体化の促進、あかずの踏切の解消など、やるべきことが数多くあります。また、点在する都市から必要な場所に便利にアクセスでき、物を運ぶことができるためには、それらをつなぐ道路、鉄道、空港、港湾のネットワークが必要です。
そのため、二十一世紀に真に必要な交通ネットワークについての方針をつくり、それに応じて、それぞれの箇所に必要となる予算を積算根拠を持って見積もり、迅速に整備していくべきであると考えます。つまり、必要なものは、道路だけではなく他のすべてを含む交通体系ですから、まず、あるべき国の姿をイメージし、それを地図に落とし込んで、それをつくるために必要な費用を算出すべきであると考えるわけです。
もちろん、三十年後の目標が、今見通したままとは言えませんが、それは変化するたびに少しずつ修正すればいいわけで、少なくとも、目標が見えないと、今何をやっているのかがわからないと思います。
そのため、現在のように、積算根拠がなく十年間五十九兆円を固定するというのではなく、多方面に迷惑をかけないために、一年間だけは道路特定財源の暫定税率を延長し、その後、道路特定財源を項目ごとに整理し、少なくとも暫定税率の部分は、環境税として一般財源化することも視野に、見直しを行わせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。環境税になっても環境関連の道路の整備の費用には使えるわけで、環境税になったから道路ができないということではないと思います。いかがでしょうか。
○北村政府参考人 お答えさせていただきます。
今、先生、道路を初めとします交通ネットワークについての御質問がまずございました。
二十一世紀に向けて、交通ネットワーク、もちろん、道路だけではなく他の鉄道、港湾、空港、それぞれあるわけでございまして、我々としましては、これからの日本を担っていく交通というのは、まずやはり、これだけグローバルな時代ですから、国際性、特にアジアを中心とするグローバルな時代にこたえられる交通ネットワーク。地域の活性化に直接的に役立つようなネットワーク。きょうのテーマでもございます環境に優しい交通ネットワークをつくっていく。さらに、高齢者等のことを考えれば、バリアフリーを初めとする利用者に優しい交通ネットワークをつくっていくというふうなことを思っておりまして、我々も、道路だけではなく他の交通機関も、選択と集中によって、重点的に今の要請にこたえていくような整備を進めていきたいと思っております。
環境についていいますと、日本の交通というのは、鉄道が、諸外国に比べると、トンキロベースでたしか三割を超えていたと思いますけれども、現状でも諸外国に比べれば環境に優しい部分があるとそれなりに自負はしておりますけれども、CO2問題を考えていく上では、やはりもっともっと努力が要る、先生の御指摘のとおりだと思います。
今の財源等の問題につきましては、先ほど財務省の方から御答弁がございましたし、我々としましても、政府全体の中で、必要な見直しを随時行いながら、全体として、二十一世紀にふさわしい、そして環境にも配慮された交通ネットワークの整備に向けてさらに努力を重ねていきたいと思っております。
○広津分科員 どうもありがとうございました。
それも、やはり私も同感でございますので、協力していきたいと思っております。
次に、ガソリンにかかる諸外国の税負担につきまして、環境省と財務省にお聞きします。
日本は、OECD二十九カ国中、ガソリン価格は二十五番目、税負担額は二十四番目であり、諸外国に比べてガソリンにかかる税負担は低く、またガソリン価格も低いと言われております。
例えば、イギリスでは、ガソリン価格は二百三十三円で、そのうち税額が百五十円、ドイツでは二百二十九円、税額百四十三円、フランスでは二百十六円、税額百三十四円、韓国では百九十三円、税額百十一円であり、税目は、環境税、炭素税です。韓国も日本より高いというのは、正直言って驚きました。そして、イギリス、フランス、ドイツは、近年、税率を逐次引き上げております。世界各国がこのように地球温暖化を防ぐために努力している中、サミット議長国である日本は、洞爺湖サミットで環境税の導入を呼びかけたいと思います。
環境税を賦課すれば次のような効果があると考えられます。
まず、エコカーへの購買意欲が上がり、環境によい効果が与えられる。次に、省エネ機器への買いかえが進む。また、それらを後押しするための補助金の原資ができる。二酸化炭素吸収源である森林、田畑、藻場の造成にかかわる補助金の原資がつくれる。そのほか、道路環境やまちづくりなどの生活環境、教育環境、福祉環境をよくするための費用も出せる。一般財源であるため、その他のことにも使える。いかがでしょうか。
○西尾政府参考人 先生御指摘のとおりに、欧州主要国では、温暖化対策などのために、エネルギーにかかわる課税の改革などが行われ、ガソリン等の燃料課税についても大幅な税率の引き上げなどが行われてきたところでございます。
環境省といたしましても、せっかく環境税を検討いたしておりますが、これは炭素に価格をつけるといったようなことで、市場メカニズムを通じて低炭素社会を実現する極めて重要な政策手段であると考えております。
その効果につきましても御指摘いただきました。一つには、課税による排出抑制効果があります。税収を温暖化対策に充当するという効果もございます。国民各層の意識改革も大変に促進されるものではないか。こういう三つの側面から効果のある環境税の創設を検討していくことは必要と考えておりますが、これにつきましては、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置づけ、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取り組みの現状などを踏まえまして、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていく、そのような課題として取り組んでまいりたいと存じております。
○古谷政府参考人 お答えをいたします。
私どもといたしましても、地球温暖化問題につきましては、環境と経済の両立という考え方に立ちまして、多様な政策手段を適切に講じていくことが必要であると考えております。
いわゆる環境税もこうした経済的手法の一つと位置づけられていると認識しておりますけれども、道路特定財源諸税につきまして、環境負荷を課税根拠とした税に見直すべきではないかという先生の御指摘につきましては、現行でも、これらの課税がCO2抑制上果たしている役割は無視し得ないというふうに考えておりまして、既に広い意味では、OECDでの位置づけにもございますように、環境に関連する税制であると言えるのではないかという認識を持っております。
こうした現行の税制を、さらに幅広く国民に負担を求めていくいわゆる環境税ということで議論していくことにつきましては、先ほど環境省の方から御答弁ございましたように、温暖化対策全体の中で総合的に検討していく必要があるというふうに私どもも認識をしてございます。
○広津分科員 どうもありがとうございました。
私としては、ぜひそういうふうになればいいなと思っておりましてこの質問をした次第でございます。
これで私の質問を終わります。
○遠藤主査 これにて広津素子君の質疑は終了いたしました。
以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
これにて散会いたします。
午前十時五十三分散会